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特表2023-540832複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ
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  • 特表-複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ 図1
  • 特表-複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ 図2
  • 特表-複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ 図3
  • 特表-複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ 図4
  • 特表-複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】複数のモノリシックレーザダイオードを含むAlInGaAs/InGaAsP/InP端面発光型半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/40 20060101AFI20230920BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20230920BHJP
   H01S 5/24 20060101ALI20230920BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20230920BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01S5/40
H01S5/22
H01S5/24
H01S5/343
H01S5/042 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574185
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021031540
(87)【国際公開番号】W WO2021247201
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】16/889,963
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507092089
【氏名又は名称】セミネックス・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SEMINEX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アボウッジャ シディ
(72)【発明者】
【氏名】ビーン デイヴィッド エム.
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AD04
5F173AD10
5F173AF06
5F173AF15
5F173AF58
5F173AG20
5F173AH14
5F173AJ03
5F173AP42
5F173AR02
5F173AR07
5F173AR14
(57)【要約】
アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン化AlInGaAs/InGaAsP/InP材料系を用い、長波長(1250nm~1720nm)で放射する複数のレーザダイオードを含むモノリシックな端面発光型半導体レーザ装置である。各レーザダイオードは、アルミニウムインジウムガリウムヒ素量子井戸(AlInGaAs QW)とアルミニウムインジウムガリウムヒ素(AlInGaAs)障壁とを含む活性領域を備え、トンネル接合部と呼ばれる高濃度ドープ、低バンドギャップ及び低抵抗性のインジウムガリウムヒ素接合により、その後のモノリシックレーザダイオードに接続される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン化AlInGaAs/InGaAsP/InP材料系を用い、長波長(1250nm~1720nm)で放射する複数のモノリシックレーザダイオードを含む端面発光型半導体レーザ装置であって、
前記モノリシックレーザダイオードは、1つ以上のトンネル接合部により互いに接続され、
各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び3つ以下の量子井戸を有する活性領域を備える、端面発光型半導体レーザ装置。
【請求項2】
アルミニウムインジウムガリウムヒ素の量子井戸のサイズは、5nm~10nmであり、前記活性領域は、Pドープされた閉じ込め層が5e16cm-3-25%/+50%の濃度で始まり、最終濃度1e17cm-3-25%/+50%まで増加する逆導電型ドーピングの2つの閉じ込め層の間に配置され、前記Pドープされた閉じ込め層の直後の界面層は、前記閉じ込め層の最終ドーピング濃度と1e18cm-3+/-300%との間の一定のドーピング濃度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1e17cm-3と6e17cm-3との間のドーピング濃度を有する各モノリシックレーザダイオードにおけるInP基板とクラッド層を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
各モノリシックレーザダイオードのPドープされたクラッド層には、亜鉛がドープされる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各モノリシックレーザダイオードは、活性領域と少なくとも1つのクラッド層との間のアルミニウムインジウムヒ素層を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
各モノリシックレーザダイオードにおけるアルミニウムインジウムヒ素層には、亜鉛がドープされ、濃度が1e18cm-3以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記モノリシックレーザダイオードの数は、2つ、3つ、4つであり、各モノリシックレーザダイオードは、屈折率分布型の閉じ込め層を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、P型アルミニウムインジウムガリウムヒ素導波路層は、1e17cm-3以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、P型アルミニウムインジウムガリウムヒ素クラッド層のドーピング濃度は、1e18cm-3以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、N型アルミニウムインジウムガリウムヒ素導波路層のドーピング濃度は、1e17cm-3以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、N型アルミニウムインジウムガリウムヒ素クラッド層のドーピング濃度は、5e17cm-3以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
各モノリシックレーザダイオードにおける複数の空間モードをサポートする上部モノリシックレーザのリッジ導波路構造を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記活性領域を介して上部p型インジウムガリウムヒ素接触層からエッチングされた溝を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記溝の深さは、2μm~10μmであり、前記溝を形成する壁は、45度~80度の角度で傾斜する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
開口幅は、2~350μmであり、キャビティの長さは、0.5mm~4mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
光は、1250μm及び1720μmのスペクトル範囲で放射する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
複数のモノリシックレーザダイオードを含むリン化インジウム基板上に成長した端面発光型半導体レーザであって、前記モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び量子井戸を有する活性領域を備え、複数の活性領域の前記量子井戸の構造は、少なくとも2つの放射領域が少なくとも5nmだけ異なる放射波長を有するように、層の厚さ及び/又は材料組成の点で互いに異なる、端面発光型半導体レーザ。
【請求項18】
複数のモノリシックレーザダイオードを含むリン化インジウム基板上に成長した端面発光型半導体レーザ装置であって、前記モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び量子井戸を有する活性領域を備え、複数の活性領域の前記量子井戸の構造は、全ての放射領域が5nm内の範囲で同じ放射波長を有するように、層の厚さ及び/又は材料組成の点で同じであるか又は互いに異なる、端面発光型半導体レーザ装置。
【請求項19】
1つのモノリシックレーザダイオードと別のモノリシックレーザダイオードとの間のフォトルミネセンス放射差は、5nm未満である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
各モノリシックレーザダイオードは、5nm~10nmの厚さを有するアルミニウムインジウムガリウムヒ素障壁を備える、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、前記トンネル接合部の厚さは、50nm以下である、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記トンネル接合部は、P型及びN型の2種類のインジウムガリウムヒ素層を備える、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記トンネル接合部のP型インジウムガリウムヒ素層には、5e18cm-3より高く、1e20cm-3以下のドーピング濃度を有する炭素又は亜鉛がドープされる、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
前記トンネル接合部のN型インジウムガリウムヒ素層には、5e18cm-3より高く、1e20cm-3以下のドーピング濃度を有するシリコン又はテルリウムがドープされる、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
前記トンネル接合部のP型インジウムガリウムヒ素層の厚さは、50nm未満であり、N型インジウムガリウムヒ素層の厚さは、50nm未満である、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年6月2日に出願された米国特許出願第16/889963号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(光検出と測距)は、レーザ放射を利用して距離を検出する技術である。LIDARは、対象物からの反射後、レーザからの信号の放出から検出器に戻るまでの時間差を測定する。通常、複数のモノリシックレーザは、パルス状態で使用されており、レーザと検出器とは、互いに近接している。レーザパルスは、放射され、一部のパルスは、対象物から反射されて検出器によって集光される。パルス放射から検出器に戻るまでの時間差を計算する。この情報に基づいて距離を計算する。特定の視野で異なる距離を検出して測定することにより、三(3)次元画像を生成する。生成された画像は、処理され、自動運転及びアダプティブクルーズコントロールシステムなどの自動車用途に利用される。
【0003】
従来、ガリウムヒ素GaAs、アルミニウムガリウムヒ素AlGaAs、インジウムガリウムヒ素InGaAs材料を用いて905ナノメートル(nm)の範囲で動作する近赤外レーザは、LIDARシステムに用いられる。これらのレーザ材料系は、単一のモノリシックレーザに対して1ワット毎アンペア(W/A)という高効率を示す。しかし、高出力905nmレーザは、眼に安全でなく、網膜を損傷する可能性がある。
【0004】
端面発光型レーザダイオードでは、出力パワーを大きくするために、2つ、3つ、4つ以上のレーザダイオードを半田接合により互いに積層してレーザ同士を接続する製造が多く行われている。積層半田接合されたレーザダイオードの出力パワーは、2つのレーザダイオードの積層構成における単一のレーザダイオードの出力パワーのほぼ二(2)倍であり、3つのレーザダイオードの積層構成における単一のレーザ出力パワーの三(3)倍である。また、積層されたレーザの電圧低下は、2つのレーザダイオードを積層すると2倍になり、3つのレーザダイオードを積層すると3倍になる。2つの積層レーザダイオードの光学出力サイズ径は、一般的に、単一のレーザチップの厚さと接合線の厚さの合計に等しい。3つの積層レーザダイオードの光学出力サイズ径は、2つのレーザダイオードの厚さと2つの接合線の厚さの合計に等しい。
【発明の概要】
【0005】
一方、長波長(波長>1300nm)の単一モノリシックレーザ効率は、通常、905nmレーザ効率の約半分しかない。同時に、積層された半田接合レーザダイオードは、いくつかの用途に適していない。レーザファイバ結合とLIDARなどの長距離用途の場合、複数のレーザダイオードからの分離された出力を正確に焦点を合わせることは、困難である。
【0006】
一般的に、本発明は、1300nmより高い波長を有する、眼に安全な領域で動作する長波長の高出力レーザに関することが多い。複数のモノリシックレーザを使用して高出力レーザを達成する。
【0007】
このようなレーザには多くの用途がある。これらの用途には、軍事IFF(敵味方識別装置)及びミサイル防衛システムのための軍事測距用途が含まれる。これらの眼に安全なレーザは、自動車用LIDAR及びアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)用途など、他の多くの用途にも使用することができる。更に、これらの眼に安全な高出力レーザは、視覚制御及び機械制御などの産業環境でも適用することができる。
【0008】
本発明は、1W/Aに近づくより高い効率を達成でき、眼を安全にし、長距離LIDAR用途に適している複数のモノリシック長波長レーザに適用することができる。多くの場合、これらの複数のモノリシックレーザは、1ナノ秒(ns)と150nsの間のパルス条件用途に使用される。
【0009】
一般的に、一態様では、本発明は、アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン化AlInGaAs/InGaAsP/InP材料系を用い、長波長(1250nm~1720nm)で放射する複数のモノリシックレーザダイオードを含む端面発光型半導体レーザであって、モノリシックレーザダイオードは、1つ以上のトンネル接合部により互いに接続され、各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び3つ以下の量子井戸を有する活性領域を備える、端面発光型半導体レーザを特徴とする。
【0010】
実施形態では、アルミニウムインジウムガリウムヒ素の量子井戸のサイズは、5nm~10nmであり、前記活性領域は、Pドープされた閉じ込め層が5e16cm-3-25%/+50%の濃度で始まり、最終濃度1e17cm-3-25%/+50%まで増加する逆導電型ドーピングの2つの閉じ込め層の間に配置され、前記Pドープされた閉じ込め層の直後の界面層は、前記閉じ込め層の最終ドーピング濃度と1e18cm-3+300%との間の一定のドーピング濃度を有する。
【0011】
好ましくは、1e17cm-3と6e17cm-3との間のドーピング濃度を有する各モノリシックレーザダイオードにおけるInP基板とクラッド層が使用される。また、各モノリシックレーザダイオードのPドープされたクラッド層には、亜鉛がドープされてもよい。
【0012】
現在、各モノリシックレーザダイオードは、活性領域と少なくとも1つのクラッド層との間のアルミニウムインジウムヒ素層を備える。更に、各モノリシックレーザダイオードにおける前記アルミニウムインジウムヒ素層には、亜鉛がドープされてもよく、濃度が1e18cm-3以下であってもよい。
【0013】
前記モノリシックレーザダイオードの数は、2つ、3つ、4つであってもよく、各モノリシックレーザダイオードは、屈折率分布型の閉じ込め層を含む。また、1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、P型アルミニウムインジウムガリウムヒ素導波路層は、1e17cm-3以下である場合がある。更に、1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、P型アルミニウムインジウムガリウムヒ素クラッド層のドーピング濃度は、1e18cm-3以下であってもよい。1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、N型アルミニウムインジウムガリウムヒ素導波路層のドーピング濃度は、1e17cm-3以下であってもよい。また、1つ、2つ又は全てのモノリシックレーザダイオードにおいて、N型アルミニウムインジウムガリウムヒ素クラッド層のドーピング濃度は、5e17cm-3以下であってもよい。
【0014】
各モノリシックレーザダイオードにおける複数の空間モードをサポートする上部モノリシックレーザでは、リッジ導波路構造を使用してもよい。また、溝は、前記活性領域を介して上部p型インジウムガリウムヒ素接触層からエッチングされてもよい。更に、前記溝の深さは、2μm~10μmであってもよく、前記溝を形成する壁は、45度~80度の角度で傾斜する。
【0015】
開口幅は、2~350μmであってもよく、キャビティの長さは、0.5mm~4mmである。
【0016】
現在、光は、1250μm及び1720μmのスペクトル範囲で放射する。
【0017】
一般的に、別の態様では、本発明は、複数のモノリシックレーザダイオードを含むリン化インジウム基板上に成長された端面発光型半導体レーザであって、モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び量子井戸を有する活性領域を備え、複数の活性領域の前記量子井戸の構造は、少なくとも2つの放射領域が少なくとも5nmの範囲で異なる放射波長を有するように、層の厚さ及び/又は材料組成の点で異なる、端面発光型半導体レーザを特徴とする。
【0018】
一般的に、別の態様では、本発明は、複数のモノリシックレーザダイオードを含むリン化インジウム基板上に成長された端面発光型半導体レーザであって、前記モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、各モノリシックレーザダイオードは、比率の異なるアルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素で構築された障壁及び量子井戸を有する活性領域を備え、複数の活性領域の前記量子井戸の構造は、全ての放射領域が5nm内の範囲で同じ放射波長を有するように、層の厚さ及び/又は材料組成の点で同じであるか又は異なる、端面発光型半導体レーザを特徴とする。
【0019】
1つのモノリシックレーザダイオードと別のモノリシックレーザダイオードとの間のフォトルミネセンス放射差は、多くの場合、5nm未満である。また、各モノリシックレーザダイオードは、多くの例では、5nm~10nmの厚さを有するアルミニウムインジウムガリウムヒ素障壁を含む。好ましくは、前記モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により互いに接続され、前記トンネル接合部の厚さは、50nm以下である。
【0020】
トンネル接合部は、多くの場合、P型及びN型の2種類のインジウムガリウムヒ素層を備える。前記トンネル接合部のP型インジウムガリウムヒ素層には、5e18cm-3より高く、1e20cm-3未満のドーピング濃度を有する炭素又は亜鉛がドープされてもよい。トンネル接合部のN型インジウムガリウムヒ素層には、5e18cm-3より高く、1e20cm-3未満のドーピング濃度を有するシリコン又はテルリウムがドープされてもよい。トンネル接合部のP型インジウムガリウムヒ素層の厚さは、50nm未満である場合があり、N型インジウムガリウムヒ素層の厚さは、50nm未満である場合がある。
【0021】
以下では、構成要素の構造及び組合せに関する新規的な種々の詳細も含め、本発明の前述した特徴、その他の特徴及びその他の利点を、添付の図面を参照しながら詳細に説明し、更に、添付の特許請求の範囲に規定する。なお、本発明の実施形態として示す装置及び方法は、あくまでも例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の原理及び特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく多様な数多くの実施形態で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面において、同一の参照符号は異なる図面においても同一の部品を指す。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0023】
図1】複数のモノリシックレーザダイオード構造の本発明に係る、エピタキシャル層構造を示す概略側断面図である。
図2】2つのトンネル接合部により接続された3つのレーザダイオードを有する本発明に係る半導体装置の構造を示す概略横断面図である。
図3】シングルレーザダイオード、ダブルモノリシックレーザダイオード、トリプルモノリシックレーザダイオードの電流の関数としてのミリワットの出力パワーのプロットである。
図4】リッジ導波路を有する複数のモノリシックレーザダイオード構造を有する加工後レーザチップを示す概略側断面図である。
図5】薄い低温半田を用いて銅製のヒートシンクに実装されたパッケージ化されたレーザチップを示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「及び/又は」は、関連するリストされた項目のうちの1つ以上の任意及び全ての組合せを含む。更に、単数形と冠詞“a”、“an”及び“the”は、特に明記しない限り、複数形も同様に包含することを意図する。更に、含む(includes)、備える(comprises)、含んでいる(including)及び/又は備えている(comprising)という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、素子、及び/又はコンポーネントの存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、素子、コンポーネント、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことを理解されたい。更に、コンポーネント又はサブシステムを含む素子が別の素子に接続されるか又は結合されると言及され、及び/又は示される場合、他の素子又は介入素子に直接接続されるか又は結合され得ることを理解されたい。
【0026】
本明細書では、第1、第2などの用語を使用して様々な素子を説明するが、これらの素子は、これらの用語によって限定されないことを理解されたい。これらの用語は、1つの素子を別の素子から区別するためにのみ使用される。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下で説明される素子を第2の素子と称することができ、同様に、第2の素子を第1の素子と称することができる。
【0027】
特に定義されない限り、本明細書では使用されるすべての用語(技術用語及び学術用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはないことが更に理解されたい。
【0028】
一般的に、多くの実施形態では、モノリシックレーザダイオード構造を用いて、レーザダイオードの光源サイズを小さくし、出力パワーを増加させる。これは、複数のレーザダイオードを他のレーザダイオードの上にエピタキシャルに堆積させてモノリシック構造を生成することにより達成される。ダイオードは、トンネル接合部と呼ばれる低抵抗性の薄い接合部で接続される。
【0029】
図1は、本発明の原理に従って構築された複数(トリプル)モノリシックレーザダイオード構造700のエピタキシャル層構造を示す。図2の側面図は、モノリシックレーザダイオード構造の各レーザダイオードが、ビーム1、ビーム2、ビーム3という独自のビームをどのように生成するかを示す。
【0030】
より詳細には、例示の実施形態では、3つのモノリシックレーザダイオード400、500、600は、エピタキシャルに積層される。しかしながら、他の例では、2つ又は3つ以上のレーザダイオードは、積層される。
【0031】
複数のモノリシックレーザダイオード構造700の厚さは、シングルレーザダイオードよりもわずかに厚い。更に、複数のモノリシックレーザダイオード構造700の電圧低下は、場合によってはシングルレーザダイオードより10倍以上高い。
具体的には、電圧低下は、ダブルモノリシックレーザダイオード構造では、シングルダイオードの電圧の2倍以上である。電圧低下は、トリプルモノリシックレーザダイオード構造では、シングルレーザの電圧の3倍以上である。
【0032】
更に、複数のモノリシックレーザダイオード構造700のそれぞれのレーザダイオード400、500、600の活性領域100、200、300内の温度は、その電圧が高くなり、その厚さが厚くなるため、シングルレーザダイオードの活性領域に比べて高い。一般的に、複数のレーザダイオードをエピタキシャルに積層することは、高電圧と厚さのために問題であり、これにより、レーザを発熱させる光学的及び電気的損失を増加させ、光学性能を低下させ、信頼性を低下させる。
【0033】
例示の例では、モノリシックレーザダイオード400、500、600は、それぞれのトンネル接合部により互いに接続される。各トンネル接合部は、n型InGaAs層とp型InGaAS層で形成される。具体的には、第1トンネル接合は、下部レーザダイオード400とその後のモノリシックレーザダイオード500との間に位置し、p型InGaAS層14とn型InGaAS層15を備える。第2トンネル接合部は、中間のレーザダイオード500と上部モノリシックレーザダイオード600との間に位置し、p型InGaAs層28とn型InGaAS層29を備える。
【0034】
より高いパワーが必要な場合、モノリシックレーザダイオード構造700には、より多く、例えば、3つ以上のレーザダイオードを有してもよい。
【0035】
図1に示すように、各モノリシックレーザダイオードは、活性領域100、200、300を含む。第1レーザダイオード400の活性領域100は、第1AlGaInAs障壁層6と、第1AlGaInAs量子井戸7と、中間のAlGaInAs障壁8と、第2AlGaInAs量子井戸8と、第2AlGaInAs障壁9とを備える。同様に、第2レーザダイオード500の活性領域200は、第1AlGaInAs障壁層20と、第1AlGaInAs量子井戸21と、中間のAlGaInAs障壁22と、AlGaInAs量子井戸23と、第2AlGaInAs障壁24とを備える。最後に、第3のレーザダイオード600の活性領域300は、第1AlGaInAs障壁層34と、第1AlGaInAs量子井戸34と、中間のAlGaInAs障壁36と、第2AlGaInAs量子井戸37と、第2AlGaInAs障壁38とを備える。
【0036】
活性領域100、200、300は、導波路層と内側クラッド層及び外側クラッド層との間に位置する。一般的に、内側クラッド層の厚さは、外側クラッド層の厚さより薄い。
【0037】
更に、レーザダイオード400、500、600の活性領域100、200、300は、単一又は多重量子井戸構造を含むことになる。現在、量子井戸材料の組成及び層厚は、1250nm~1720nmの所望の半導体レーザ放射波長に基づいて選択される。
【0038】
多くの実施形態では、レーザダイオード400、500、600が同じ波長で放射することは、重要である。多くの用途では、複数のレーザの中心波長放射は、動作時には互いに10nm以内、好ましくは動作時には5nm以内、理想的には1nm以内である必要がある。
【0039】
放射波長の測定は、複数のモノリシックレーザダイオード10を、レーザの加熱又は冷却を行う室温で動作させ、放射波長を測定することにより行うことができる。また、波長測定の代替方法は、エピタキシャルウェハのレベルで行われるフォトルミネセンス放射又は好ましくは脱金属化の状態でレーザダイオードエミッタによる測定により測定することである。これらの近接又は同じ波長で動作する波長を達成することは、構造700の深さ及び隣接するレーザの熱伝達の程度によって、各モノリシックレーザダイオード400、500、600が異なる温度で自然に動作するため、困難である。言い換えれば、深いエミッタは、構造の冷却側から遠くにあり、熱くなる。更に、他のエミッタの間に挟まれたエミッタは、隣接するエミッタによって加熱され、はるかに熱くなる。
【0040】
一般的に、レーザダイオード400、500、600を加熱することにより動作波長が長くシフトするため、各レーザダイオード400、500、600が異なる温度で動作すると、異なる方式で高い温度へシフトする。
【0041】
一般的な半導体において、複数のレーザダイオード(400、500、600)のそれぞれの動作波長を近づけるために、各レーザダイオード(400、500、600)の組成及び厚さを、熱による波長シフトを補償する程度に十分に異ならせる必要がある。低温又は未加熱の各エミッタの波長は、エミッタに熱を誘発させずに、波長を測定するフォトルミネッセンス(PL)測定法を用いて測定してもよい。この動作を補償するために、エミッタのPL測定法は、最小1nmおよび最大10nmだけ異なる場合がある。
【0042】
更に、本実施形態では、pドーピングは、亜鉛である。1つ、2つ又は3つのモノリシック活性領域のうちの活性領域における亜鉛の拡散は、波長をより高い値にシフトさせ、該値は、フォトルミネセンス時に測定される。同じ波長で2つ又は3つのモノリシックレーザを全て放射するために、活性領域の厚さ及び/又は材料組成を変更することにより、波長を補償する必要がある。
【0043】
具体的には、異なる放射波長を達成するために、複数のモノリシックレーザダイオード400、500、600では、量子井戸の厚さ及び量子井戸の材料組成がモノリシックレーザごとに異なる。いくつかの実施形態では、異なるモノリシックダイオード間で5nm以上の異なる放射波長を有することが好ましい。他のいくつかの実施形態では、異なるモノリシックダイオード間で5nm以内で近接するか又は同じである放射波長を有することが好ましい。
【0044】
モノリシックレーザダイオード400、500、600の活性領域100、200、300の温度が異なることによる活性領域100、200、300間の波長放射差は、材料組成補償により低減される。
【0045】
量子井戸の組成及び厚さは、活性領域100、200、300のいずれか1つの活性領域から他の1つの活性領域への放射が同じ波長又は異なる波長にあるように調整される。これは、エピタキシャルウェハのレベルでX線回折特性を用いて測定してもよい。
【0046】
更に、nドープ型リン化インジウム基板層n+InP 0は、電気伝導性InP基板である。エピタキシャル層成長の最後にp型GaInAs層45を成長させて、P-オーミック接触層とする。
【0047】
基板上に成長された第1層0は、n+InPバッファ層1に続き、該バッファ層は、モノリシックレーザダイオード400、500、500を含む複数のモノリシックレーザダイオード700をエピタキシャルに成長させるために使用される。バッファ層の厚さは、約1μmである。
【0048】
複数のモノリシックレーザの活性領域100、200、300のそれぞれは、ステップインデックス型又は屈折率分布型の分離閉じ込めヘテロ構造(GRIN-SCH)のいずれかの光閉じ込め層の中央に位置する。各活性領域100、200、300の各側にあるInP層は、光閉じ込め構造のための光クラッド層及び多重量子井戸(MQW)活性層を形成する。側方光閉じ込めは、埋め込みへテロ構造又はリッジ導波路構造のいずれかによって提供される。
【0049】
この装置は、縦電流注入型で動作する。側方電流閉じ込めは、埋め込み紐幾何形状、隆起したリッジのリッジ導波路又は二重トレンチ形成のいずれかによって達成される。これに代えて、堆積酸化物が電流を側方光閉じ込め構造の中心領域に閉じ込める埋め込み絶縁又はメサ絶縁であってもよい。
【0050】
一般的な目的は、長波長域(1250nm~1720nm)で複数のビームを放射するモノリシック半導体レーザダイオード構造を提供することである。複数のモノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部により接続される。複数のモノリシックレーザ層及びトンネル接合層は、応力を低減し、各レーザダイオード及び各活性領域で発生する放熱性を向上させるように設計される。複数の活性領域間の温度ばらつきを低減することにより、複数のモノリシックレーザダイオードの活性領域間の波長差を低減する。
【0051】
吸収及び損失を低減するために、トンネル接合部(14、15)、(28、29)が薄くなることが望ましい。トンネル接合部の厚さは、50nm以下であってもよい。
【0052】
複数のモノリシック半導体レーザ構造は、アルミニウムインジウムガリウムヒ素(AlInGaAs)、ガリウムインジウムヒ素リン(GaInAsP)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムリン(InP)(AlGaInAs/GaInAsP/InGaAs/InP)材料系を用いる。各モノリシックレーザ設計、活性領域層、光キャビティの設計及びトンネル接合部の設計は、活性領域の温度上昇を最小化し、レーザ効率への影響を最小化するために最適化されることが好ましい。
【0053】
その結果、図3に示すように、1250nm~1720nmの波長の高出力パワーの半導体レーザが得られる。シングルレーザの出力パワーは、高く、ダブルモノリシックレーザの出力パワーは、シングルレーザの出力パワーの約2倍である。トリプルモノリシックレーザダイオードの出力パワーは、シングルレーザの出力パワーの約3倍である。4つ以上のモノリシックレーザダイオードについても同様のパワー増加が期待される。
【0054】
図1の複数のモノリシック半導体レーザ構造は、複数のモノリシックダイオード400、500、600を含み、各レーザダイオードは、活性領域(100、200、300)を含む。活性領域(100、200及び300)は、導波路層(5、11、19、25、33及び39)の間にエピタキシャルに成長する。導波路層(5、11、19、25、33及び39)は、クラッド層(2、3、13、16、17、27、30、31、41)により囲まれる。クラッド層は、導波路層及び活性領域の上下にエピタキシャルに成長する。各モノリシックレーザダイオードは、トンネル接合部(14、15)及び(28、29)によりその後のモノリシックレーザに接続される。
【0055】
この構造において、各モノリシックレーザダイオード(100、200、300)の活性領域は、圧縮歪AlGaInAs井戸(7、9、21、23、35、37)と引っ張り歪AlGaInAs障壁層(6、8、10、20、22、24、34、36、38)とを含む歪補償多重量子井戸構造である。量子井戸の厚さは、10ナノメートル(nm)以下である。井戸の幅は、臨界厚さの限度内で所望の動作波長を得るように調整される。
【0056】
複数のモノリシックレーザダイオードの各活性領域は、ステップインデックス型又は屈折率分布型の分離閉じ込めヘテロ構造(GRINSCH)のいずれかの光閉じ込め層の中央に位置する。各側(2、13)、(16、27)、(30、41)にあるInP層は、各モノリシックレーザダイオード(400、500、600)及び多重量子井戸(MQW)活性層(100、200、300)の光閉じ込め構造のための光クラッド層を形成する。側方光閉じ込めは、埋め込みへテロ構造又はリッジ導波路構造のいずれかによって提供される。
【0057】
複数のレーザダイオード活性領域(100、200、300)は、AlInGaAs障壁で囲まれた1つ、2つ、3つ以上の量子AlInGaAs井戸を含む。活性領域は、P型及びN型AlInAs/AlInGaAs/InP導波路の中央に配置される。導波路層(5、11)、(19、25)及び(33、39)は、AlGaInAs/InPクラッド層(2、13)、(17、27)、(30、41)に囲まれる。各モノリシックレーザダイオード(400、500、600)は、トンネル接合部InGaAs/InGaAs(14、15)、(28、29)によって次のモノリシックレーザに接続される。
【0058】
図1は、本実施形態のように、複数のモノリシックレーザ装置を構築するために用いられる複数の半導体レーザの層構造を示す。図1に示すエピタキシャル構造は、有機金属気相成長法(MOCVD)及び分子線エピタキシー法(MBE)などの従来のIII-V化合物半導体エピタキシャル成長技術を使用する。
【0059】
好ましい構造は、次のとおりである。出発基板0は、N型InPであり、1μmのN型InPバッファ層に続き、その上に、シリコン(Si)ドーピング濃度が最大で3e18cmである厚さ1μmのN+InPの下部クラッド層を成長させ、次に、格子整合させた厚さ15nmの遷移領域、(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで0.5<x<1)からAl0.48In0.52Asに遷移した層3~4が、分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層4~12で続く。次は、Al0.48In0.52Asから始まり(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで、0.5<x<1)で終わる厚さ45nmの下部屈折率分布型(GRIN)層5がある。シリコンドーピング濃度は、n型下部クラッド層2から遷移層3~4を経由して下部GRIN層5まで3e18cm-3から徐々に減少し、GRIN層5でシリコンドーピング濃度は、5e16cm-3となる。
【0060】
ドーピングしないレーザ活性領域100は、一組の圧縮歪AlGaInAs量子井戸7、9を有し、これらは、歪が互いに補償され転位の臨界厚さが中和されるように、各側をAlGaInAs障壁層6、8、10によって引っ張り歪の下で閉じ込められる。各々5nm~10nmの井戸厚さを有する2つの量子井戸7、9が示される。障壁層の厚さは、層6、8及び10についてそれぞれ5nm~10nmである。
【0061】
次に、AlxGa(1-x)In0.53(ここで、0.5<x<1)から始まりAl0.48In0.52Asの界面層12で終わる厚さ40nmの上部GRIN分離閉じ込め層(GRIN SCH)11が配置され、これはレーザ活性領域100の上に成長する。層12には、Al0.48In0.52Asの追加層が含まれる。p型Znドーピング濃度は、層12の完成に向かって成長が進むと、5e16cm-3から徐々に増加し、濃度は、6e17cm-3に達する。代替的に、ステップインデックス型分離閉じ込めヘテロ構造(SISCH)をGRIN SCHの代わりに活性領域100の周りの閉じ込めとして用いることができるであろう。
【0062】
GRIN層11~12の上に、1e17cm-3から始まる濃度でZnドープされた厚さのp型InPの上部クラッド層13を成長させる。層11、12及び13は、下部層3、4及び5の光インデックスプロファイルの鏡像であり、最下層のモノリシックレーザダイオード400を形成する。
【0063】
最下層のモノリシックレーザダイオード400の上部クラッド層13上には、トンネル接合層14、15が成長する。層14は、25nm+100%/-75%のInGaAsに亜鉛又は炭素を1e19cm-3の濃度でPドープしたものである。P-InGaAs濃度は、5e18cm-3と1e20cm-3との間の任意の値であってもよい。層15は、25nm+100%/-75%のInGaAsにシリコン又はテルリウムを1e19cm-3の濃度でNドープしたものである。P-InGaAs濃度は、5e18cm-3~1e20cm-3の任意の値であってもよい。
【0064】
トンネル接合N-InGaAs層15上には、1.5μmの厚さのN+InPから始まり第2モノリシックレーザ500が成長する。シリコン(Si)ドーピング濃度が最大で3e18cm-3である下部クラッド層16を成長させ、次に、格子整合させた厚さ15nmの遷移領域、(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで0.5<x<1)からAl0.48In0.52Asに遷移した層17~18が、分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層18~26で続く。
次は、Al0.48In0.52Asから始まり(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで、0.5<x<1)で終わる厚さ45nmの下部屈折率分布型(GRIN)層19がある。シリコンドーピング濃度は、n型下部クラッド層16から遷移層17~18を経由して下部GRIN層19まで徐々に減少し、GRIN層5でシリコンドーピング濃度は、5e16cm-3となる。
【0065】
ドープされていないレーザ活性領域200は、一組の圧縮歪AlGaInAs量子井戸21、23を有し、これらは、歪が互いに補償されるように、各側をAlGaInAs障壁層20、22、24によって引っ張り歪の下で閉じ込められる。各々5nm~10nmの井戸厚さを有する2つの量子井戸21、23が示される。障壁層の厚さは、層20、22及び24についてそれぞれ5nm~10nmである。
【0066】
次に、AlxGa(1-x)In0.53(ここで、0.5<x<1)から始まりAl0.48In0.52Asの界面層26で終わる厚さ40nmの上部GRIN分離閉じ込め層(GRIN SCH)25が配置され、これはレーザ活性領域200の上に成長する。層26には、Al0.48In0.52Asの追加層が含まれる。p型Znドーピング濃度は、層26の完成に向かって成長が進むと、5e16cm-3から徐々に増加し、濃度は、6e17cm-3に達する。代替的に、ステップインデックス型分離閉じ込めヘテロ構造(SISCH)をGRIN SCHの代わりに活性領域200の周りの閉じ込めとして用いることができるであろう。
【0067】
GRIN層25~26の上に、1e17cm-3から始まる濃度でZnドープされた1.5μmの厚さのp型InPの上部クラッド層27を成長させる。層25、26、27は、下部層17、18及び19の光インデックスプロファイルの鏡像であり、活性領域200の周りに第2モノリシックレーザダイオード500を形成する。
【0068】
第2モノリシックレーザダイオード500の上部クラッド層27上には、トンネル接合層28、29が成長する。層28は、25nm+100%/-75%のInGaAsに亜鉛又は炭素を1e19cm-3の濃度でPドープしたものである。P-InGaAs濃度は、5e18cm-3~1e20cmの任意の値であってもよい。層29は、25nm+100%/-50%のInGaAsにシリコン又はテルリウムを1e19cm-3の濃度でNドープしたものである。P-InGaAs濃度は、5e18cm-3~1e20cm-3の任意の値であってもよい。
【0069】
トンネル接合N-InGaAs層上には、1.5μmの厚さのN+InPから始まり第3モノリシックレーザ600が成長する。シリコン(Si)ドーピング濃度が最大で3e18cm-3である下部クラッド層30を成長させ、次に、格子整合させた厚さ15nmの遷移領域、(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで0.5<x<1)からAl0.48In0.52Asに遷移した層31~32が、分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層32~40で続く。次は、Al0.48In0.52Asから始まり(AlxGa(1-x))In0.53As(ここで、0.5<x<1)で終わる厚さ45nmの下部屈折率分布型(GRIN)層33がある。シリコンドーピング濃度は、n型下部クラッド層30から遷移層31~32を経由して下部GRIN層33まで徐々に減少し、GRIN層5でシリコンドーピング濃度は、5e16cm-3となる。
【0070】
ドープされていないレーザ活性領域300は、一組の圧縮歪AlGaInAs量子井戸35、37を有し、これらは、歪が互いに補償されるように、各側をAlGaInAs障壁層34、36、38によって引っ張り歪の下で閉じ込められる。各々5nm~10nmの井戸厚さを有する2つの量子井戸35、37が示される。障壁層の厚さは、層34、36及び38についてそれぞれ5nm~10nmである。
【0071】
次に、(AlxGa(1-x))In0.53(ここで、0.5<x<1)から始まりAl0.48In0.52Asの界面層40で終わる厚さ40nmの上部GRIN分離閉じ込め層(GRIN SCH)39が配置され、これはレーザ活性領域300の上に成長する。層40には、Al0.48In0.52Asの追加層が含まれる。p型Znドーピング濃度は、層40の完成に向かって成長が進むと、徐々に増加し、濃度は、6e17cm-3に達する。代替的に、ステップインデックス型分離閉じ込めヘテロ構造(SISCH)をGRIN SCHの代わりに活性領域300の周りの閉じ込めとして用いることができるであろう。
【0072】
GRIN層39~40の上に、1e17cm-3、好ましくは6e17cm-3以下から始まる濃度でZnドープされた1.5μmの厚さのp型InPの上部クラッド層41を成長させる。層39、40、41は、下部層31、32、33の光インデックスプロファイルの鏡像であり、活性領域300の周りに上部モノリシックレーザダイオード600を形成する。
【0073】
上部クラッド層41上には、pオーミック接触層43~46が形成される。
クラッド層41と接触層43~46との間に、レーザ加工中にリッジ導波路をエッチングする際のストップ深さを制御するために、厚さ20nmのp-GaxIn(1-x)AsyP(1-y)(ここで、0.1<x<0.5及び0.2<y<0.8)のエッチストップ層42を成長させる。エッチストップ層は、P型導波路層39とpオーミック接触層43~46との間の任意の位置に位置してもよい。次に、Znドープされた厚さ1μmのp-InP層43が成長し、続いてZnドープされたp型GaInAsP層44からInGaAs層45へと徐々に続き、これらは、レーザ加工中にオーミック接触層になる。最終的に、Znドープされたp-InP層46のキャッピング層が成長してレーザ層構造が完成する。
【0074】
説明した詳細なドーピングレベルは、好ましいレベルであるが、25%以下~50%以上の範囲は、許容可能である。1e18cm-3を超えるドーピング層は、2倍又は3倍の範囲を許容範囲とすることができる。
【0075】
上記層の厚さは、好ましい実施形態であるが、上下へ10%の変動は、許容可能である。
【0076】
シングルモノリシックレーザダイオードには、亜鉛がpドープされる。複数のモノリシックレーザ構造MOCVD成長時間が長く、MOCVD成長温度が高いため、亜鉛が活性領域に拡散する確率が高い。活性領域での亜鉛拡散は、レーザダイオード放射の低い波長への波長シフトを引き起こす。
【0077】
活性領域100における亜鉛の拡散を低減し制御するために、最下層のモノリシックレーザダイオードの層11、12には、亜鉛ドーピングが変更される。層11及び12の亜鉛ドーピング濃度は、1e17cm-3未満である。
【0078】
活性領域200における亜鉛の拡散を低減し制御するために、第2モノリシックレーザダイオードの層25、26には、亜鉛ドーピングが変更される。層25及び26の亜鉛ドーピング濃度は、1e17cm-3未満である。
【0079】
トンネル接合部における吸収損失をなくすために、トンネル接合部P-InGaAs/N-InGaAsの厚さは、非常に薄く、例えば、50nmである。
【0080】
エピタキシャル層の数を低下させることで、複数のモノリシックレーザダイオードにおける電流拡散を低減する。上部モノリシックレーザ以外、多くの層は、他のモノリシックレーザダイオードから除去されており、そのうち一部の層は、厚い層である。厚い層を除去することにより、複数のレーザダイオード400、500、600の複数の活性領域100、200、300における電流拡散を低減する。
【0081】
好ましくは、装置は、SCH及びクラッド用ドープp型の縦電流注入型半導体層と、SCH及びクラッド用ドープn型の他方の組とを有する。側方電流閉じ込めは、埋め込み紐幾何形状、隆起したリッジのリッジ導波路又は二重トレンチ形成のいずれかによって達成される。これに代えて、堆積酸化物が電流を側方光閉じ込め構造の中心領域に閉じ込める埋め込み絶縁又はメサ絶縁であってもよい。
【0082】
図4は、図1に示す構造を用いてエピタキシャル成長させたウェハで製造された複数のモノリシックレーザ構造700の加工後チップ710を示す。加工後の複数のモノリシックレーザチップ700は、モノリシックレーザダイオードとトンネル接合部を備えたリッジ構造712を有するリッジ導波路型レーザである。各モノリシックレーザダイオードは、屈折率導波型の側方導波路閉じ込め構造を有する。
【0083】
リッジ構造712は、電流閉じ込め構造を形成する活性層を介してエッチングされることが好ましい。リッジ導波路構造の側面は、マルチモード光動作をサポートする。基板のオーミック直列抵抗及びオーミック加熱を低減するために、n型InP基板714の裏面は、研削及び研磨手順を用いて薄化される。n型オーミック接触層716は、薄化された基板714の裏面に形成される。
【0084】
装置ウェハのリッジ側壁718及び上面は、SiOなどの絶縁層720で被覆される。図5に示すように、SiO絶縁層720は、接合部の短絡を回避し、装置がP側の下に実装された後、リッジの下の活性領域を通過するように電流を閉じ込める。薄化された複数のモノリシックレーザチップ710は、半導体産業における標準プロセスを用いたダイ分離と面劈開が行われた後、低温半田732を用いて銅製のヒートシンク730に実装され、図5に示す複数のモノリシック装置が形成される。複数のモノリシックレーザの最適化設計と組み合わせた実装構成により、活性領域100、200、300の装置温度が低くなり、より高い電流密度でレーザ出力パワーを増加させることができる。
【0085】
本実施形態では、1ns~100nsの短い電気パルス条件で、複数のモノリシックレーザチップ710をヒートシンク730のp側の上に実装することができる。複数のモノリシックレーザの最適化設計及び短い電気パルス条件と組み合わせた実装構成により、活性領域100、200、300の装置温度が低くなり、より高い電流密度でレーザ出力パワーを増加させることができる。
【0086】
一例では、複数のモノリシックレーザは、マルチチャンネルバーとして加工され、各チャンネルが単一のエミッタに対応する。エミッタの数は、2~19個である。チャネルは、互いに電気的及び光学的に分離される。この場合、一部のLIDAR及びビジョンの用途の必要に応じて各チャネルを個別に動作させることができる。チャネル間の分離は、活性領域100、200、300を介したp-オーミックInGaAs接触層からの深い溝エッチにより達成される。溝の深さは、3μm~15μmであり、溝の側壁の角度は、45度~82度である。
【0087】
他の例では、複数のモノリシックレーザは、チャネル間で電気的に分離されることなく、マルチチャンネルバーとして加工される。各バーには、2~19個の単一のエミッタが含まれ、一部の高出力レーザ用途の必要に応じて全てのエミッタを同時に動作させることができる。
【0088】
この複数のモノリシックレーザチップのキャビティは、劈開加工によって形成されたフロントファセットミラーとバックファセットミラーとの間に形成される。複数のモノリシックレーザチップのキャビティの長さは、0.5~4.0mmである。レーザチップの開口幅は、50~350μmである。これらの装置のパラメータ範囲は、電子注入と熱散逸を大きな面積に分散することによって、レーザの熱的及び電気的効率を良好に最適化する。
【0089】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して詳しく示し、記載したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に種々の変更を加えてもよいことが当業者には理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】