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特表2023-540883可撓性電子機器のための耐薬品性エラストマーバインダ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】可撓性電子機器のための耐薬品性エラストマーバインダ
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230920BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230920BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20230920BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20230920BHJP
   G02F 1/1685 20190101ALN20230920BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/28 Z
H01M4/62 C
H01M4/86 B
H01G11/38
G01N27/28 331Z
G02F1/1685
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511923
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021046179
(87)【国際公開番号】W WO2022040103
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,609
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.ブルートゥース
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】506138351
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メン,イン シャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スカーフ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ルー
【テーマコード(参考)】
2K101
5E078
5H018
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101AA22
2K101BA02
2K101BC02
2K101BD61
2K101EC92
2K101EC93
2K101EJ02
5E078AA08
5E078AB01
5E078BA42
5E078BA44
5H018AA01
5H018DD05
5H018EE02
5H018EE05
5H018EE12
5H018EE18
5H018EE19
5H018HH05
5H028AA05
5H028BB03
5H028CC02
5H028EE01
5H028EE05
5H028EE06
5H028EE09
5H028EE10
5H050BA04
5H050CA02
5H050CB13
5H050DA11
5H050EA24
5H050FA02
5H050GA20
5H050HA10
(57)【要約】
耐薬品性エラストマーバインダ、及び前記バインダに基づく可撓性の印刷された高性能電気化学システムに属する、組成物、材料、方法、製造の物品及び装置。耐薬品性、可撓性エラストマーバインダは、ウェアラブル且つ可撓性の電子機器のための印刷可能な可撓性の高面積エネルギー密度電池、及び印刷可能な可撓性燃料電池に使用することができる。より一般には、開示されるバインダ材料は、任意の印刷された電気化学及び電子システム、例えば、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、センサ、回路の相互接続、有機電気化学的トランジスタ、タッチスクリーン、太陽電池等に使用することができる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体であって、
複数の粒子、及び
フッ素を含むポリマー、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含み、
ポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
耐薬品性可撓性複合体。
【請求項2】
ポリマーがコポリマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
コポリマーが塩素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
コポリマーが臭素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項6】
コポリマーがヨウ素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項7】
ポリマーが有機溶媒中に可溶性である、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
複数の粒子における粒子がコーティング材料のコーティング層を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
コーティング材料が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
炭素質材料が、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項14】
金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項15】
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項16】
金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物又はスルホン酸塩の1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項17】
ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項18】
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項19】
糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、請求項10又は12に記載の複合体。
【請求項20】
ポリマーの耐薬品性が、pH10超、pH4未満又は塩度2M超への耐性を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項21】
ポリマーの耐薬品性が、pH14超、pH1未満又は塩度5M超への耐性を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項22】
複合体が、力学的に自立型であるように構造化されている、請求項1に記載の複合体。
【請求項23】
複合体が、電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている、請求項1に記載の複合体。
【請求項24】
電気化学装置及び/又は電子装置が、燃料電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、電気化学的センサ、回路の相互接続装置、トランジスタ、電池、太陽電池又はタッチスクリーンの1つである、請求項23に記載の複合体。
【請求項25】
耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクであって、
有機溶媒及びフッ素を含むポリマーを含むマトリックス、ここで、ポリマーは有機溶媒中に溶解しており、ポリマーはエラストマーである、並びに
マトリックス内に含有されている複数の粒子
を含み、
ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、ポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
印刷用インク。
【請求項26】
ポリマーがコポリマーである、請求項25に記載のインク。
【請求項27】
コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、請求項26に記載のインク。
【請求項28】
コポリマーが塩素を含む、請求項26に記載のインク。
【請求項29】
コポリマーが臭素を含む、請求項26に記載のインク。
【請求項30】
コポリマーがヨウ素を含む、請求項26に記載のインク。
【請求項31】
有機溶媒がケトンを含む、請求項25に記載のインク。
【請求項32】
ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン又はベンゾフェノンの1つである、請求項31に記載のインク。
【請求項33】
有機溶媒がエステルを含む、請求項25に記載のインク。
【請求項34】
エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸イソプロピル又は安息香酸エチルの1つである、請求項33に記載のインク。
【請求項35】
ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、請求項25に記載のインク。
【請求項36】
ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、請求項25に記載のインク。
【請求項37】
複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項25に記載のインク。
【請求項38】
インクが、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項25に記載のインク。
【請求項39】
炭素質材料が、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項40】
金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項41】
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項42】
金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物又はスルホン酸塩の1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項43】
ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項44】
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項45】
糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、請求項37又は38に記載のインク。
【請求項46】
インクが、印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーである、請求項25に記載のインク。
【請求項47】
インクが、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、3D印刷、射出成形、スタンピング、転写印刷、又は水転写印刷の1つを介して堆積させるように構成されている、請求項46に記載のインク。
【請求項48】
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体であって、
複数の粒子、及び
ハロゲン元素の原子を含むコポリマー、ここで、コポリマーはエラストマーであり、コポリマーは、コポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含み、
コポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
耐薬品性可撓性複合体。
【請求項49】
耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクであって、
有機溶媒、及び構造内にハロゲン化学元素を含むコポリマーを含むマトリックス、ここで、コポリマーは有機溶媒中に溶解しており、コポリマーはエラストマーである、並びに
マトリックス内に含有されている複数の粒子
を含み、
ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、コポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
印刷用インク。
【請求項50】
可撓性電池であって、
複数の粒子、及び
フッ素を含むポリマー、
ここで、ポリマーはエラストマーであり、
ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含む複合材料
を含み、
ポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
可撓性電池。
【請求項51】
複数のZn粒子を含む第1の弾性複合材料の第1の層、及び第1の層内に複数のZn粒子を閉じ込めている第1のフッ素含有ポリマーを含むアノード、
複数のAgO粒子を含む第2の弾性複合材料の第2の層、及び第2の層内に複数のAgO粒子を閉じ込めている第2のフッ素組み込みポリマーを含むカソード、並びに
アノード及びカソードの間に配置されたヒドロゲル電解質の層
を含む、可撓性電池。
【請求項52】
第1のフッ素含有ポリマー及び第2のフッ素含有ポリマーが、同じフッ素含有ポリマーである、請求項51に記載の電池。
【請求項53】
Zn粒子がBi2O3粉末によって覆われている、請求項51に記載の電池。
【請求項54】
アノード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第1のセパレータ材料の層を含む、請求項51に記載の電池。
【請求項55】
第1のセパレータ材料がTiO2を含む、請求項54に記載の電池。
【請求項56】
カソード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第2のセパレータ材料の層を含む、請求項51に記載の電池。
【請求項57】
第2のセパレータ材料がセルロースを含む、請求項56に記載の電池。
【請求項58】
ヒドロゲルが水酸化カリウム-ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲル(KOH-PVAヒドロゲル)である、請求項51に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許文献は、2020年8月17日に出願された、「可撓性電子機器のための高pH耐性エラストマーバインダ」と題する米国仮特許出願第63/066,609号の優先権及び利益を主張する。前述の特許出願の内容全体が、この特許文献の開示の一部として、参照によって組み込まれる。
【0002】
この特許文献は、エラストマーバインダ材料に関する。
【背景技術】
【0003】
コンフォーマル電子機器は、複雑で非平面的且つ変形可能な表面、例えば、皮膚等の生体組織、織物、ロボティクス及びその他に適合できる、新しい、台頭しつつある電子装置のクラスである。コンフォーマル電子装置としては、多様な表面幾何に適用し、適合することができる、可撓性基材上に形成された電気回路及び装置を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで開示される技術は、耐薬品性(chemical-resistant)エラストマーバインダ及び前記バインダに基づく可撓性の印刷された高性能電気化学システムを達成するために、様々な実施形態において実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示される実施形態の一態様は、複数の粒子を含む電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体に関する。複合体はまた、フッ素を含むポリマーを含み、ここで、ポリマーはエラストマーであり、また、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、さらに、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0006】
開示される実施形態の別の態様は、有機溶媒とフッ素を含むポリマーとを含むマトリックスを含む、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷可能な(印刷用)インクに関し、ここで、ポリマーは有機溶媒中に溶解しており、ポリマーはエラストマーである。インクはまた、マトリックス内に含有されている複数の粒子を含み、ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、ポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0007】
開示される実施形態のなおも別の態様は、複数の粒子を含む電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体に関する。複合体はまた、ハロゲン元素の原子を含むコポリマーを含み、ここで、コポリマーはエラストマーであり、コポリマーは、コポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、コポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0008】
開示される実施形態の一態様は、有機溶媒と、構造内にハロゲン化学元素を含むコポリマーとを含むマトリックスを含む、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクに関し、コポリマーは有機溶媒中に溶解しており、コポリマーはエラストマーである。印刷用インクはまた、マトリックス内に含有されている複数の粒子を含む。有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、印刷用インクの有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、コポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0009】
開示される実施形態の別の態様は、複数の粒子と、フッ素を含むポリマーとを含む複合材料を含む、可撓性電池に関し、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0010】
開示される実施形態のなおも別の態様は、複数のZn粒子を含む第1の弾性複合材料の第1の層、及び第1の層内に複数のZn粒子を閉じ込めている第1のフッ素含有ポリマーを含むアノードを含む、可撓性電池に関する。電池はまた、複数のAgO粒子を含む第2の弾性複合材料の第2の層、及び第2の層内に複数のAgO粒子を閉じ込めている第2のフッ素組み込みポリマーを含むカソードを含む。電池は、アノード及びカソードの間に配置されたヒドロゲル電解質の層をさらに含む。
【0011】
この特許文献に記載される主題事項は、以下の特色の1つ以上を提供する具体的方法において、実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】開示される技術の一実施例実施形態による、レイヤーバイレイヤー(交互積層)印刷及び真空封止組み付け方法の図示である。
図1B】開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Zn電池セルの構造の図示である。
図1C】開示される技術の一実施例実施形態による複数の組み付けセルの図示である。
図1D】開示される技術の一実施例実施形態による印刷電池の可撓性の図示である。
図1E】開示される技術の一実施例実施形態による可撓性AgO-Zn電池によって電力供給された、可撓性Eインクディスプレイシステムの図である。
図2A】開示される技術による印刷電池の一実施例実施形態の実施例画像、並びにモルフォロジー(形態)的及び電気化学的特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図2B】開示される技術による印刷電池の一実施例実施形態の実施例画像、並びにモルフォロジー的及び電気化学的特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図2C】開示される技術による印刷電池の一実施例実施形態の実施例画像、並びにモルフォロジー的及び電気化学的特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図2D】開示される技術による印刷電池の一実施例実施形態の実施例画像、並びにモルフォロジー的及び電気化学的特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図3】開示される技術の一実施例実施形態によるいくつかの実施例の電池の複数の層の顕微鏡3D画像である。
図4】開示される技術の一実施例実施形態による電池のアノードについての、実施例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像及び関連する実施例のエネルギー分散型X線分析(EDX)画像である。
図5】ここで開示される技術の一実施例実施形態による実施例の印刷TiO2セパレータのSEM画像である。
図6】開示される技術の一実施例実施形態による実施例の電池のカソードのSEM画像、並びに対応するカソードのバインダ由来のフッ素及びカソードのAgのEDXマッピングである。
図7】相異なる倍率における、開示される技術による実施例の印刷セルロースセパレータのSEM画像である。
図8】相異なる苛性材料濃度を有する、開示される技術による実施例のヒドロゲルの伝導率のプロットである。
図9】相異なる電解質濃度についての、ここで開示される技術の一実施例実施形態による実施例の電池のサイクル動作についてのプロットである。
図10A】サイクリックボルタンメトリー(CV)分析に使用した、開示される技術による実施例の3電極セルの図示である。
図10B】サイクリックボルタンメトリー(CV)分析に使用した、開示される技術による実施例の3電極セルの図示である。
図11】開示される技術の一実施例実施形態による実施例の、電池の、印刷Agアノード集電体及びAuスパッタ炭素カソード集電体のCVを示すグラフである。
図12】最初の5サイクルの放電及び対応する4サイクルの充電に含まれる、開示される技術の一実施例実施形態による実施例の、Zn参照に対するアノード、カソード及びセル全体(full cell)の電位プロファイルを示すグラフである。
図13】一次電池として稼動する、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Znセルの電気化学的性能の特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図14】セルが充電式電池として稼動する場合の、開示される技術の実施例実施形態によるAgO-Znセルの電気化学的性能の特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットである。
図15】相異なる容量範囲における、開示される技術の一実施例実施形態による電池のサイクル動作を示すグラフである。
図16】0.5Cのレートにおける、開示される技術の一実施例実施形態による電池のサイクル動作を示すグラフである。
図17】直列に接続した、ここで開示される技術の一実施例実施形態による2つの8層2×2cm2電池の、0.05Cのレートにおけるサイクル動作の図示である。
図18】カソード及びアノードのEISフィッティングに使用した等価回路を示す図である。
図19】放電及び充電中の一実施例実施形態によるカソードについて、並びに対応する充電及び放電中のアノードについてのナイキストプロット及びEISフィッティングを示すグラフである。
図20】様々な力学的変形下、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Znセルの性能の特性評価の実施例の結果を描いた画像、略図及びプロットである。
図21】電池を100サイクルの10%の長手方向の延伸にかけながら1mAの放電時に収集される、開示される技術の一実施例実施形態による1×5cm2電池の電圧プロファイルを示すグラフである。
図22】この特許文献に開示される技術の実施例実施形態による実施例の可撓性AgO-Zn電池による、可撓性Eインクディスプレイシステムの電力供給を描いた画像及びプロットである。
図23】開示される技術による、一実施例の可撓性Eインクディスプレイシステムの略図である。
図24】ここで開示される技術による実施例の電池のポリマー系印刷組み立てのイラストレーションである。
図25】この特許文献に開示される技術による実施例の、印刷AgO-Zn電池の段階的バッチ組み立ての画像である。
図26】対応するステンシルを使用して印刷された、開示される技術による実施例のアノード及びカソードの厚さ較正の結果を示すグラフである。
図27】開示される技術の一実施例実施形態による実施例の電解質ゲルの組み立て中に撮影した画像である。
図28】開示される技術の実施例実施形態による、電池についてのパルス状放電プロファイルの詳細を示すグラフである。
図29】ここで開示される技術の一実施例実施形態による実施例の電池の、人力による曲げ及びひねりを示す画像である。
図30】開示される技術による電池によって電力供給された、一実施例の可撓性Eインクディスプレイシステムの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
可撓性電子機器の勃興には、費用効率的で拡張性のある(製造における)、良好な力学的及び電気化学的性能を有する可撓性電池が必要である。可撓性電子機器からの利益を得る製品、例えば、電池、燃料電池、酵素センサ等に使用することができるポリマーは、良好な化学的安定性(例えば、低pH、高pH及び/又は高塩度条件下で)並びにある程度の力学的可撓性及び/又は伸縮性(延伸適性)の両方を有するべきであり、さらに同時に、このようなポリマーを組み込んだ装置の良好な電気化学的性能を可能にするべきである。しかしながら、現在の可撓性電子機器装置は、実務上、実際の使用において装置が典型的に直面する激しく極端な条件下で性能を発揮できる材料を利用していないため、しばしばこれらの要件を満たさない(そのため、時期尚早な故障のおそれがある)。特に、電池、燃料電池及び/又はバイオセンサの用途に使用される材料は、例えば、有害な化学種、高pH及び/又は高温に曝露されることがある。必要なものは、可撓性電子装置に使用することができ、且つこのような条件下で性能を発揮し、持ちこたえることができる特化された材料である。
【0014】
可撓性電子機器装置は、高度の化学的安定性を保有するべきである。この安定性は、装置が稼動し得る条件の範囲内で化学的に安定な材料を使用して提供することができる。さらに、例えば、可撓性ウェアラブル電子機器に電力供給するためのウェアラブル形態の要素電池に使用される材料によって、電池が十分な電力を供給し、ウェアラブル装置の長期的稼動に十分なエネルギーを貯蔵することが可能になるべきである。現在の可撓性フィルム電池は、0.1~5mAh/cm2を収容できるにすぎず、これは多くの実用上の用途には十分ではない。可撓性ウェアラブル電子装置のために、このような可撓性フィルム電池又は他のウェアラブル電力供給源を進歩させることにおける限界から、十分なエネルギー貯蔵を可能にしながら、化学的又は力学的劣化に耐える傾向が大きい、好適な材料が必要とされている。
【0015】
ここで開示されるものは、耐薬品性エラストマーバインダ、並びに前記バインダに基づく可撓性の印刷された高性能電気化学システムに属する、組成物、材料、方法、並びに製造の物品及び装置である。
【0016】
開示される技術のいくつかの実施形態によれば、可撓性電子機器のための、劣化に対して高い化学的復元性を提供するための耐薬品性可撓性複合材料は、ポリマー及び複数の粒子を含み、ここで、ポリマーはフッ素を含み、且つエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び閉じ込められた複数の粒子は、弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。)。様々な実施例実施形態では、ポリマーはコポリマーであってもよい。
【0017】
いくつかの実施では、例えば、開示される技術による耐薬品性、可撓性エラストマーバインダは、ウェアラブル且つ可撓性の電子機器のための、高い面積エネルギー密度を有する印刷可能な可撓性電池又はスーパーキャパシタ、印刷可能な可撓性センサ、及び低pH、高pH又は高塩度を含む特殊な稼動環境を要求する、印刷可能な可撓性の燃料電池、太陽電池、ディスプレイパネルに使用することができる。より一般には、開示されるバインダ材料は、任意の印刷された電気化学システム及び電子システム、例えば、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、センサ、回路の相互接続、薄膜又は有機電気化学的トランジスタ、タッチスクリーン、太陽電池等に使用することができる。
【0018】
いくつかの実施例実施形態では、開示される技術による、フッ素組み込み又は塩素組み込みエラストマー性(弾性)コポリマー(例えば、バイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマー(quaterpolymer)、例えばFKM/FPMフッ素ゴム又はテトラフルオロエチレンプロピレン(FEPM))は、粒子及び有機溶媒と混合された、開示される技術によるフッ素組み込み(又は塩素組み込み)エラストマー性コポリマーを含有する、インク又はスラリーを硬化した後(例えば、高温において及び/又はある特定の量の時間をかけて)、弾性ポリマー-粒子複合体中の粒子を固定するバインダとして使用される。この特許文献では、「フッ素組み込み(incorporating)ポリマー」という用語は、「フッ素含有(containing)ポリマー」という用語、「フッ素を含む(comprising)ポリマー」若しくは「フッ素を含む(including)ポリマー」等の用語若しくは表現、「フルオロポリマー」という用語又は「フルオロエラストマー」という用語と互換的に使用される。同様に、「塩素組み込みポリマー」という用語は、「塩素含有ポリマー」という用語、「塩素を含む(comprising)ポリマー」若しくは「塩素を含む(including)ポリマー」等の用語若しくは表現、「クロロポリマー」という用語又は「クロロエラストマー」という用語と互換的に使用される。
【0019】
いくつかの実施例実施形態によれば、開示される技術によるコポリマー(例えば、バイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマー)は、その構造中に1つ以上のタイプのハロゲン元素、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)又はテネシン(Ts)等の原子を組み込むことができる。いくつかの実施例実施形態では、コポリマーはエラストマーであってもよい。
【0020】
例えば、開示される技術によるポリマーは、相異なる架橋度、ポリマー鎖長、フッ素化又は塩素化による、0~4個のフッ素原子によってフッ素化されたエチレン及び/又は0~6個のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンの組み合わせからなってもよい。例えば、開示される技術によるポリマーは、Dai-El、Viton、Tecnoflon、Fluorel又はAflasであってもよい。開示される技術によるコポリマー又はターポリマーのモノマーは、エチレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルのいずれであってもよい。ポリマーは、有機溶媒中に溶解させ、様々なタイプの材料と混合して、(例えば、高温で溶媒を蒸発させた後、)可撓性の高pH、低pH又は高塩度に耐性の複合体を形成することができる。粒子、例えば、グラファイト、カーボンブラック、亜鉛、銀、銅、ビスマス、金属の酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化チタン(IV)、他の固体有機材料粉末、例えば、セルロース、メチルセルロース、スクロース又はポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド等と混合すると、溶解したポリマー及び粒子が、印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーを形成する。溶媒を、例えば高温(例えば、30セルシウス度超の温度)において除去した後に得られる複合材料は、力学的に自立型(例えば、その力学的構造をそれ自体で維持することができる)、軟質、可撓性、延伸適性且つ多孔質である。印刷/キャスト複合体は、シーラント、カプセル化、集電体、電極、電極表面コーティング、セパレータ又は電解質の部分として使用することができる。
【0021】
この特許文献に開示される技術による複合材料を用いて組み立てた装置は、電気化学的に活性でありながら、自己劣化せず、化学的に安定であり得る。開示される技術によるバインダを含有するインク又はスラリーを使用して印刷された電極は、低インピーダンスを保持することができ、電気化学的又は電気的性能に影響を及ぼすことなく、非常に厚くなることができる(例えば、インク又はスラリーが硬化した後)。開示される技術による可撓性複合材料もまた、曲げ、ひねり及び延伸の変形に対して、ある特定の量の力学的復元性を提供する。例えば、開示される技術による材料及び技法を使用して生産された(例えば、開示される技術による、バインダとしてのエラストマー性材料との複合体として配置された(deposited))可撓性電子機器は、例えば曲線的な表面にフィットするように、巻きつける又は曲げることができ、成形することができる。様々なコンフォーマル電気化学システムの場合に、開示される技術による材料の化学的安定性によって、装置の堅牢性及び耐久性が確保される。
【0022】
開示される技術によるいくつかの実施例実施形態では、開示される技術による化学的に安定なフルオロエラストマーは、例えば、低分子量ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン)並びに/又は低分子量エステル(例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸イソプロピル及び安息香酸エチル)中に溶解させることができ、且つ炭素質粉末(例えば、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブ)、例えばマイクロ粒子、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド若しくはフレークの形態の金属粉末(例えば、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III))、金属塩(フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物(塩)、オキシ水酸化物(塩)、スルホン酸塩)、糖類及びその誘導体(例えば、グルコース、スクロース、セルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(dodecyl benzene sodium sulfonate)、Triton-X 100、Triton-X 114、Zonylフルオロ界面活性剤、Span 80、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩)、又は他のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレンオキシド)と混合して、開示される技術によるポリマー-粒子(又はポリマー-粉末)複合インク又はスラリーを形成することができる。インクは、相異なる印刷技法を介して、例えば、電極、セパレータ、又は電解質の部分として、様々な基材上に配置させることができる。印刷された要素(例えば電極)は、その後組み付けて、低pH、高pH又は高塩度の条件において使用するための電気化学的セルとすることができる。
【0023】
いくつかの実施例実施形態では、開示される技術によるフッ素含有又は塩素含有ポリマーは、メチルイソブチルケトン(MIBK)中に溶解させ、酸化銀(I、III)及びカーボンブラックと混合してカソードインクを形成することができ、亜鉛及び酸化ビスマスと混合してアノードインクを形成することができ、酸化チタン及びセルロース粉末と混合してセパレータインクを形成することができ、グラファイト及びカーボンブラックと混合して導電性集電体インクを形成することができる。インクをレイヤーバイレイヤーで印刷して、高pH電解質(例えば、pH>10又はpH>14を有するもの)とともに動作することができる、開示される技術による銀-亜鉛電池を形成することができる。開示される技術による印刷銀-亜鉛電池は、このような高pHにおいて安定であり、高電流放電のための低セルインピーダンスとともに、大きな面積容量(例えば50mAh/cm2超)を提供する。
【0024】
様々な実施例実施形態によれば、開示される技術によるポリマーバインダは、ウェアラブル及び可撓性の電子機器のための、印刷可能な可撓性高面積エネルギー密度電池に使用することができる。開示される技術によるエラストマーポリマーバインダはまた、特化した稼動環境(例えば、低pH、高pH又は高塩度)を要する、印刷可能な可撓性燃料電池に使用することもできる。ポリマーはまた、任意の印刷された電気化学システム及び/又は電子システム、例えば、センサ、電池、スーパーキャパシタ、燃料電池、エレクトロクロミックセル、回路の相互接続、薄膜又は有機電気化学的トランジスタ、タッチスクリーン、太陽電池等に使用することもできる。
【0025】
開示される技術によって調合されたインク又はスラリーは、様々な生産方法、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、3D印刷、射出成形、スタンピング、転写印刷、水転写印刷等によって、基材上に堆積(付着)させることができる。基材としては、可撓性ポリマー、延伸適性エラストマー、様々な織物(テキスタイル)、ガラス、セラミックス、金属等を挙げることができる。基材は、例えば、平坦なシート又は様々な湾曲表面に構造化することができる。基材上に堆積させたインク又はスラリーは、例えば、高温又は強化換気に曝露して過剰の溶媒を除去することによって硬化させることができる。インク又はスラリーはまた、紫外光若しくは可視光を当てること、又はペルオキシド若しくはビスフェノール硬化剤と相互作用させることもできる。インク/スラリー堆積物の厚さは、例えば、堆積の時間、インク若しくはスラリーの粘度、インク若しくはスラリーの希釈、添加剤を含むこと、又はステンシルの厚さを制御することによって、制御することができる。硬化後に反復的堆積を実施して、複合材料をレイヤーバイレイヤーで堆積させ、大面積容量又は大表面積のための大きな面積装填量を得ることができる。得られる堆積材料層の厚さを決定する、ここで開示される技術による個々のインク調合物についての較正曲線は、堆積方法、堆積変数、及び堆積の反復又はサイクルの数に基づいて確立することができる。
【0026】
耐薬品性の可撓性エラストマーバインダの組成物、材料製品、方法及びこれらを組み込んだ装置の非限定的な実施例実施形態及び実施が、この特許文献において開示される。特に、開示される技術のいくつかの実施例は、可撓性電子機器のための高性能印刷AgO-Zn充電式電池の以下の実施例において具体化される。
【0027】
以下の実施例の実施において、可撓性、充電性(再充電性、rechargeability)、高面積容量及び低インピーダンスを特色とする、印刷可能なポリマー系AgO-Zn電池の実施例実施形態が記載される。ここで開示される技術によるエラストマー性基材及びバインダを使用することで、集電体、電極及びセパレータを、レイヤーバイレイヤーで印刷(例えばスクリーン印刷)し、積み重ね構成で真空封止することができる。開示される技術による電池は、サイズ及び容量をカスタマイズ可能であり、一次用途の場合、54mAh/cm2もの大きさの面積容量を有する。この電池は、例えば、高電流ドレインを要する可撓性Eインクディスプレイシステムに電力供給するために使用し、市販のコインセル電池と比較して優れた性能を呈した。先進的なマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)及び電気化学インピーダンス分光法(EIS)を使用して、開示される技術の一実施例実施形態による電池を特性評価し、反復的なひねり及び曲げによって力学的安定性を試験した。開示されるAgO-Zn電池は、広範囲の電子機器に電力供給するための実用的な解決を提示し、実用的で高性能な可撓性電池の将来的な開発に大きな関わりを有する。
【0028】
センシング、ディスプレイ及びワイヤレス通信における用途のための多機能可撓性電子機器における最近の関心から、補完的な可撓性エネルギー貯蔵策の開発が唱えられている。ウェアラブル可撓性電子機器市場の指数関数的成長にもかかわらず、毎年生産される数千万の装置のための実用的なエネルギー貯蔵策を提供するために、拡張性があり、低コスト且つ高性能な可撓性電池技術が依然として必要とされている。多くの既存の可撓性電池は、研究所から市場への変換を妨げる、複雑で低スループット、高コストであり、したがって実用性が限定的な組み立て方法に依存している。開示される技術による印刷高性能電池は、低コストを維持しながら、可撓性及び拡張性の必要性に対処するものである。低コストの厚いフィルムを組み立てる技術を使用することで、開示される技術による可撓性電池部品を、例えば、伝統的な低メンテナンスのスクリーン印刷又はドクターブレードキャスティング機器を使用して、シートからシート(sheet-to-sheet)又はロールからロール(roll-to-roll)で印刷することができ、したがって、可撓性電池の低コスト大量生産が実現する。
【0029】
市販されている印刷可撓性電池の中でも、水性亜鉛(Zn)系変換セルは、スループットが高く生産コストが低い製品を開発することに成功した。Znアノード化学は、低い材料コスト、高い理論容量(820mAh/g、5854mAh/L)、良好な充電性及び安全な化学的性質に起因して、可撓性電池市場のために特別な関心を持たれている。加えて、Zn及び水性電解質は、周囲環境において容易に取り扱うことができるため、Zn系電池の機器及び生産コストは、リチウムイオン電池と比較してしばしばかなり低い。しかしながら、市販のZn系印刷可撓性電池は、通常は非充電式であり、低容量及び高インピーダンスを特色とし、したがって、用途が低電力の使い捨て電子機器のみに限定される。酸化銀-亜鉛(Ag2O-Zn)電池は、充電可能な化学的性質を有し、高電流放電に耐えることができる。このような電池における酸化還元反応は、アルカリ性電解質中の亜鉛イオン(Zn2+)及び銀イオン(Ag+)の溶解、並びにそれらの過飽和が誘導する沈殿に依存しており、これは、式1~6に示す通り、1.56Vの安定な電圧を維持しながら迅速に起こる。
アノード:
(溶解)
【0030】
【数1】
(緩和)
【0031】
【数2】
(全体)
【0032】
【数3】
カソード:
(溶解)
【0033】
【数4】
(緩和)
【0034】
【数5】
(全体)
【0035】
【数6】
【0036】
これらの電池の大部分は、可逆的酸化還元反応を得るために、銀の低い酸化状態の使用にもっぱら依存しており、一方で酸化還元反応を式7に記載した高い酸化状態(AgO)は、稀にしか利用されていない。
【0037】
【数7】
【0038】
以前のAgOの利用が過小であるのは、不安定であること、すなわち、Ag2Oに転移するときの格子相の変化、これは充電性を妨げる不可逆的な形状変化を生じ得る、及び酸素を発生させる反応に起因する、電極の気泡発生を生じ得る原因となる、高い充電電位のせいであると考えることができる。しかしながら、ひとたびこれらの事項が対処されれば、遥かに大きな理論カソード容量(Ag2Oの場合の231mAh/gからAgOの場合の432mAh/g)を利用することができる。今のところ、文献に報告されている印刷銀-亜鉛電池は依然として、稼動中の大きな電圧低下をもたらす高い内部抵抗(例えば約102Ω)とともに、低い充電性(例えば50サイクル未満)、限定的な容量(例えば、一次セルの場合は12mAh/cm2未満、二次セルの場合は3mAh/cm2未満)を有する。このような限界が、可撓性電子機器における銀-亜鉛印刷電池の適応を妨げている。
【0039】
ここで、実施例実施形態及び実施によって示されるように、可撓性電子機器のための実用的なエネルギー貯蔵策として、超高面積容量、低インピーダンス及び良好な充電性を有する、全印刷、可撓性且つ充電式のAgO-Zn電池のための新たな材料及び組み立て方法が提示される。
【0040】
開示される技術による電池セルの組み立ては、開示される技術によって調合された粉末-エラストマー(又は粒子-エラストマー)複合インクを、低コスト、高スループットでレイヤーバイレイヤー印刷して、集電体、Znアノード、AgOカソード及びこれらに対応するセパレータを形成することに依存する。電池は、2つの全面的に印刷された電極の間に挟まれた低インピーダンス電解質として、水酸化カリウム(KOH)-ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ヒドロゲルを有する、低実装面積の積み重ね構成を採用している。熱可塑性スチレン-エチル-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)エラストマー系基材を使用することで、稼動中、電解質を保護し、適切なセル圧力を確保するために、組み付けた電池を直接的に熱-及び真空-封止することができる。この組み立て及び組み付け方法は、相異なるセルサイズで調整可能な面積容量を有するように適用することができ、具体的な用途に合わせてカスタマイズ可能な電池の形態要素が可能になる。AgOのより高い酸化状態を十分に利用することで、開示される技術による実施例の印刷したままのセルは、一次用途の場合、低内部抵抗(例えば約10Ω)を維持しながら、54mAh/cm2超の高面積容量に達することができた。さらに、開示される技術による最適化されたサイクル動作プロファイルを利用することで、印刷セルは有意な容量損失を呈することなく、0.2C~1Cの放電を持続しながら80サイクルを超えて再充電され、各サイクルを通じて低インピーダンスを維持していた。さらに、開示される技術による組み立てセルは、反復的な曲げ及びひねりの変形に対する顕著な堅牢性を示した。典型的な可撓性電子機器への電力供給における性能を実証するため、ここで開示される技術による組み立て薄膜電池を、内蔵型(integrated)マイクロコントローラユニット(MCU)及びブルートゥース(BT)モジュールを有し、パルス状大電流放電が要求される可撓性Eインクディスプレイシステムに首尾よく実装した。低コストで拡張性のある生産方法、ポリマー系可撓性アーキテクチャ及びカスタマイズされたインク調合物を活用することで、開示される技術による全印刷AgO-Zn電池は、望ましい力学的及び電気化学的性能によって、次世代可撓性電子機器に電力供給するための実用的な策を提示し、印刷可能な可撓性電池のさらなる開発のための新たなベンチマークを設定する。
【0041】
開示される技術による可撓性AgO-Zn電池の、一実施例の全印刷組み立て方法は、力学的特性、化学的安定性及び加工性に基づく、基材、封止及びインクバインダに関するエラストマーの慎重な選択に基づいて設計した。SEBSを基材材料として選択したのは、良好な溶媒加工性、高pH下での化学的安定性、顕著な弾性及び適当な融点(約200℃)のためであるが、これらによって、容易にキャストして、化学的に安定で、可撓性であり、電池を支持し、封止するために熱封止可能なフィルムにすることができる。インクの堆積のためには、集電体、電極及びセパレータの好ましい形状及び厚さへの効率的な組み立てを可能にするため、スクリーン印刷の、低コストで高スループットな厚膜技法を使用した。開示される技術の一実施例実施形態による電池のスクリーン印刷は、アノード及びカソードの両方についての集電体、電極及びセパレータに対応する、6種のインクのカスタマイズされた調合物に依存する。導電性且つ可撓性の銀インク及びカーボンインクを、それぞれ、アノード及びカソードの集電体として印刷した。両方のインクは、エラストマーバインダとしてSEBS、及び溶媒としてトルエンを使用して、インクをトルエン可溶性SEBS基材にしっかりと結合させる。アノードインクは、樹枝状結晶(dendrite)形成を低減し、H2の気泡発生を抑制するための添加剤として酸化ビスマス(Bi2O3)を有する、Zn粒子から構成され、その一方でカソードインクは、電気化学的安定性を増強するための少量の酸化鉛コーティング、及び電極の電気伝導性を増強するために添加されるカーボンブラックを有する、AgO粉末から主に構成された。高度に酸化性のAgOによる酸化の傾向が弱い低級ケトン中での溶解性のために、化学的に安定な(例えば、高pH、低pH及び/又は高塩度で安定な)エラストマー性フルオロコポリマーを、両方の電極についてバインダとして使用した。溶存銀イオンを捕獲及び低減して、材料のクロスオーバーを防止するために、セルロース粉末を使用して多孔質カソードセパレータを形成した。いくつかの実施形態では、カソードセパレータはセロファンで作製することができる。二酸化チタン(TiO2)系インクを、Zn樹枝状結晶成長に対する物理的障壁として作用するアノードセパレータのために調合した。最後に、水酸化カリウム(KOH)によって架橋された固相ポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲルを、漏出のリスクのない、セルの可撓性を補完する電解質として調製した。水酸化リチウム(LiOH)及び水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を、電解質の化学的安定性を維持し、亜鉛の溶解を最小化するために、電解質中の添加剤として使用した。
【0042】
図1Aは、開示される技術の一実施例実施形態による、レイヤーバイレイヤー印刷及び真空封止組み付け方法を図示している。ここで開示される技術の一実施例実施形態による電池の組み立ては、基材の調製によって始まり、ここでは、トルエン中に溶解したSEBSの樹脂を、フィルム流延機を使用してワックスペーパー上にキャストし、オーブン中で乾燥させて透明弾性フィルムを形成した。まず、Agインク及びカーボンインクを、集電体としてSEBS基材上に印刷し、導電性及び化学的安定性を増強するために、炭素集電体上に400nmの金の層をスパッタした。次いで、Znインク及びTiO2インク、並びにAgOインク及びセルロースインクを、対応する集電体上に印刷した。セルを完成させるため、KOH-PVAヒドロゲル電解質をサイズに裁断し、2つの電極の間に挟んだ。最後に、電池のシートを熱封止及び真空封止し、個々のセルに分離し、1シッティング(1回)における複数のセルの拡張性シートバイシート組み立てを完結させた。
【0043】
図1Bは、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Zn電池セル100の構造を図示している。セル100は、2つの電極の間に挟まれたヒドロゲル電解質で構成され、各側は、熱封止性SEBS基材、集電体、活物質電極及び対応するセパレータで構成される。セル100は以下の層を含む: SEBS基材111、炭素集電体(CC)120、CC120上にスパッタされた金(Au)の層130、AgOカソード140、セルロース系セパレータ150、ヒドロゲル電解質160、TiO2セパレータ170、Znアノード180、Ag集電体190及びSEBS基材112。開示される技術の一実施例実施形態による可撓性真空封止AgO-Zn電池は、9層の複合材料で構成され、したがって、レイヤーバイレイヤースクリーン印刷(例えば図1A)を使用して容易に組み立てることができる。ステンシル印刷技法の主な利点は、特定の形態要素及び容量要件を有する相異なる用途に合わせることができる、カスタマイズ可能なセルの寸法である。
【0044】
図1Cは、相異なるカスタマイズされたサイズにおける、開示される技術の一実施例実施形態による複数の組み付けセルを図示している。例として、図1Cに示す相異なるサイズのセルは、図1Bに示したセルの場合と同じ組み立て方法を使用して組み立てられたが、相異なるサイズを有する可撓性電子装置に内蔵させることができる。
【0045】
図1Dは、開示される技術の一実施例実施形態による印刷電池の可撓性を図示している。形状及びサイズとは関係なく、組み付けセルは非常に可撓性で、反復的な力学的変形のもとで耐久性があり(図1D)、これによって、様々な変形に対する高い復元力が要求されるウェアラブル且つ可撓性の電子機器への電力供給に、非常に好適となる。
【0046】
図1Eは、開示される技術の一実施例実施形態による可撓性AgO-Zn電池によって電力供給された、可撓性Eインクディスプレイシステムを示す。ここで開示される技術によって組み立てられたAgO-Zn電池の優れた電気化学的性能によって、高電力を必要とする電子機器における薄膜電池の用途が大きく広がる。この潜在能力は、マイクロコントローラ及びブルートゥースモジュールを有する可撓性ディスプレイシステムに、電力供給することによって実証された(図1E)。図1C~1Eにおけるスケールバーは1cmである。
【0047】
図2A~2Dは、開示される技術による印刷電池の一実施例実施形態の実施例の画像、並びにモルフォロジー的及び電気化学的特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットを示す。
【0048】
図2Aは、開示される技術による実施例の印刷3×3cm2セルの電極及びセパレータの画像を示す:(i)AgO電極(カソード)210、(ii)Zn電極(アノード)220、(iii)セルロースセパレータ230及び(iv)TiO2セパレータ240。
【0049】
図2Bは、SEM(図2Bにおける上段)及びマイクロCT(図2Bにおける下段)によって撮影した、セルの対応する層の顕微鏡画像を示す。
【0050】
図2Cは、実施例のゲル電解質の伝導率を温度の関数として示すデータプロットを示す。
【0051】
図2Dは、実施例の、Zn金属疑似参照電極を有する3電極セルを使用した、セル全体(プロット250)の2V及び1.35Vの間の40サイクルのサイクリックボルタンメトリー(CV)、並びにアノード(プロット255)及びカソード(プロット260)における対応する電位シフトを示す、データプロットを示す。電解質環境下での対応する電圧窓(アノードは-0.3~0.3V、カソードは1.2V~2.2V)内の集電体のCVを、電極CVに重ねる。掃引速度: 10mV/秒(s)。
【0052】
印刷された電極及びセパレータ(図2A)を、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び非侵入性in-situマイクロメートル規模X線コンピュータ断層撮影法(マイクロCT)によって特性評価した。マイクロCTによって、電池の非破壊検査という機能が有効になるが、これは、電池セルの解体を必要とせずに、変形状態で電池を特性評価するのに非常に有益であり得る。図2BにおけるマイクロCT画像は、SEM画像に一致する、初期状態のアノード、カソード、セルロースセパレータ及びTiO2セパレータのモルフォロジー(形態)を示している。これらのフィルムの3次元(3D)画像を図3に示すが、これらは、材料構造のより包括的な理解をもたらす。
【0053】
図3は、マイクロCTを使用して生じた、いくつかの実施例のカソード(パネルA)、セルロースセパレータ(パネルB)、アノード(パネルC)及びTiO2セパレータ(パネルD)の顕微鏡3D画像を示す。図3におけるパネル(E)は、異なる角度における開示される技術の一実施例実施形態による曲げた1×5cm2電池の3D画像を示し、図3におけるパネル(F)は、実施例の、電池の層間に亀裂も層間剥離も示していない、電池の上部のズームイン(拡大)図を示す。
【0054】
開示される技術のいくつかの実施例実施形態による、粗に充填されたZnアノードは、50μm~100μmの範囲内のサイズを有する大きな粒子を含み、これによって、電解質との自発的反応によって誘導される表面不動態化(不活性化、passivation)を低減することができる。エネルギー分散型X線分析(EDX)はさらに、Zn粒子の表面上を、Bi2O3及びフルオロポリマーバインダが均一に覆っていることを示している(図4)。
【0055】
図4は、ここで開示される技術の一実施例実施形態による電池の実施例アノードにおいて実施される、開示される技術による複合材料の一実施例実施形態のSEM画像を示す(画像410)。図4における画像410に示す複合材料は、複数のZn粒子と、バインダとして作用し、ポリマーによって形成された構造内に複数のZn粒子を閉じ込めるように構成された、フッ素を含むポリマーとを含む。複合材料のいくつかの実施形態では、複合材料の粒子は、粒子の外表面を覆う(例えば少なくとも部分的に)コーティング材料のコーティング層を含む。例えば、画像410(図4)に示す複合材料の特定の実施例実施形態では、Zn粒子は、Bi2O3粉末(粉末は、例えば、0.1nmから100マイクロメートルの間のサイズの粒子を含むことができる)の層によって覆われている。図4はさらに、実施例の、SEM画像410に対応する、複合材料のバインダ(フッ素を含むポリマー)由来のフッ素(画像420)、並びに複合材料のZn粒子(画像430)及びZn粒子の酸化ビスマスコーティング層のビスマス(画像440)のEDXマッピングの画像を示す。
【0056】
図5は、ここで開示される技術の一実施例実施形態による実施例の、相異なる倍率を有する印刷TiO2セパレータのSEM画像を示す。開示される技術のいくつかの実施例実施形態による電池のTiO2セパレータは、電池のZnアノードの粒子と比較して遥かに小さな粒子を含有して、密で均一なフィルムを形成し、したがって、効果的に樹枝状結晶成長を低減することができる(図5)。
【0057】
比較として、例えば、AgO電極(カソード)は、1~20μmの粒子を使用して多孔質電極を生成し、これは、溶存Ag種を捕獲するために同様の粒子サイズを有するセパレータと組み合わされた(それぞれ図6及び図7)。
【0058】
図6は、ここで開示される技術の一実施例実施形態による電池の実施例カソードにおいて実施される、開示される技術による複合材料の一実施例実施形態の実施例SEM画像610を示す。画像610(図6)に示す複合材料は、複数のAgO粒子と、バインダとして作用し、ポリマーによって形成された構造内に複数のAgO粒子を閉じ込めるように構成された、フッ素を含むポリマーとを含む。図6はさらに、SEM画像610に対応する、カソードのバインダ(フッ素を含むポリマー)由来のフッ素(画像620)、及びカソードのAgO粒子のAg(画像630)のEDXマッピングの画像を示す。
【0059】
図7は、実施例の、相異なる倍率における、カソード電極のための印刷セルロースセパレータのSEM画像を示す。
【0060】
総じて、多孔質電極には電解質が容易に浸透することができ、これによって、より厚い電極を有するセルを組み立て、面積容量を増加させることができる。PVA系電解質の伝導率(図2C)は、広範囲の温度(例えば-10℃~60℃)において102mS/cmのオーダーである。固相ヒドロゲルは、電極を適切に湿らせる能力を保有し、これによって、樹枝状結晶成長を阻止する漏れのない電解質障壁としての役割を果たしながら、より多くの電流サイクル動作が可能となる。水酸化物濃度は、電解質の伝導率に対する効果をほとんど有しないことが示されたが(図8)、電池のサイクル寿命への有意な影響を有しており(図9)、したがって、36.5重量%に最適化した。
【0061】
図8は、実施例の、相異なる苛性材料濃度を有する、ヒドロゲルの伝導率のプロットである。一次傾向線(linear trendline)は、プロットにおいて与えた式を使用して適合させ、表1に列挙した。図8におけるデータ系列及び関連する一次傾向線810は、26.3%の苛性濃度に対応する。図8におけるデータ系列及び関連する一次傾向線820は、31.8%の苛性濃度に対応する。図8におけるデータ系列及び関連する一次傾向線830は、36.5%の苛性濃度に対応する。
【0062】
【表1】
【0063】
図9は、実施例の、26.3%(プロット910)、31.8%(プロット920)及び36.5%(プロット930)の電解質濃度を有する、電池のサイクル動作を示す。50%の容量範囲を使用し、セルを0.2Cのレートでサイクル動作させた。
【0064】
図10A及び10Bは、Znホイルを疑似参照電極として使用して、サイクリックボルタンメトリー(CV)分析に使用した3電極セルを表示している。いくつかの実施例実施形態によるAgO-Zn電池は、CV掃引範囲として使用される、1.35V~2Vの窓内で充電及び放電するように設計される。図2D(図2Dにおけるプロット250)におけるセル全体のCVに示される通り、10mV/秒の掃引速度内で、セルは、最大20mA/cm2の高い電流密度を受けることができ、高電流で放電するセルの能力を証明している。外部Zn参照を使用することで、セル全体のCVを使用して、各電極の電位シフトを別々に測ることができる。図2Dに示される通り、相対アノード電位(図2Dにおけるプロット255)は掃引中に有意にはシフトせず、その一方で、カソード電位(図2Dにおけるプロット260)がセルにおける電位変化の大部分を担い、これは、AgOカソードが、充電-放電過程における律速電極となっていることを示唆している。
【0065】
図10A及び10Bは、CV分析に使用したセルの構造を図示している。図10Aは、集電体を試験するための単極の掃引に使用されるセル構造を示す。3電極半電池のCV特性評価は、作用電極として印刷電極(例えば図10Aにおける1010)、対電極として白金ホイル1030、参照電極としてZn金属ホイル(又はストリップ)1020、並びに電解質として2ピースのKOH-PVAヒドロゲル1015及び1025を用いて組み付けたセルにおいて実行した。図10Aにおける電極1010(例えば、一実施例実施形態によるセルのアノード又はカソード)は、集電体1005及びヒドロゲル1015の間に配置される。図10Bは、参照電極として外部Zn金属ストリップを用いて、セル全体の掃引に使用されるセル構造を示す。3電極セル全体のCV特性評価は、1.35Vから2Vの間で実行した。図10Bにおいて、1035は金(Au)集電体であり、1040はAgOカソードであり、1045はセルロースセパレータであり、1050はKOH-PVAヒドロゲルであり、1055はZn金属ストリップであり、1060はKOH-PVAヒドロゲルであり、1065はTiO2セパレータであり、1070はZnアノードであり、1075は銀(Ag)集電体である。
【0066】
対応する電圧窓における集電体のCV(図11)を、図2Dのプロット255及び260に重ねると、予想される電位範囲内の集電体の電気化学的安定性が実証される。
【0067】
図11は、実施例の、プロット1110には印刷Agアノード集電体(CC)の、プロット1120にはAuスパッタ炭素カソードCCの、それぞれ対応する図2Dのプロット255及び260において使用した電圧範囲における、CVを示す。掃引速度: 10mV/秒。Ag集電体の電流密度は負電位方向に向かって上昇するが、これは、充電過程の間に、アノード上で予想される水素発生反応が起こっていることに対応することは、注目に値する。このような望ましくない反応は、通常の充電過程ではより低い電流密度が使用されるため、一般に回避され、これは、より小さなアノード分極に対応する(図12)。
【0068】
図12は、最初の5サイクルの放電(プロットA~D)及び対応する4サイクルの充電(プロットD~F)中のZn参照に対するアノード(プロットA、D)及びカソード(プロットB、E)、並びにセル全体(プロットC、F)の電位プロファイルを示す。図12における垂直線は、EIS測定を行った実例に対応する。
【0069】
図13は、一次電池として稼動する、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Znセルの電気化学的性能の特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットを示す。図13におけるプロット(A)は、1層の活物質を用いて印刷され、1mAの電流で放電させた、様々なサイズのセルの得ることができる容量を示す。図13におけるプロット(B)は、相異なるサイズのセルの、対応するインピーダンスを反映するボードプロットを示す。図13におけるプロット(C)は、1層~8層の活物質を装填した2×2cm2セルの得ることができる容量を示す。図13におけるプロット(D)は、相異なる面積装填量を有する2×2cm2セルの、対応するインピーダンスを反映するボードプロットを示す。
【0070】
相異なるセルサイズ及び面積装填量に適応させるための、開示される技術によるセル設計の能力を評価した。電極設計を変動させることによる、同じ電極厚さを有するが形態要素が異なるセル、及び印刷される活物質の層の数を変動させることによる、同じ形態要素を有し、厚さが異なるセルを組み立て、1mA定電流で放電させた。図13プロット(A)に示される通り、1層(アノードは約120μm、約45mg/cm2、カソードは約75μm、約26mg/cm2)の電極厚さを有し、1×1cm2、2×2cm2、1×5cm2、2×5cm2及び3×3cm2のサイズを有するセルを調製したところ、容量はセル面積に比例して上昇し、8mAh/cm2の平均面積容量を有する。これらのセルのインピーダンスを2電極EISによって測定し、図13プロット(B)に提示した。高周波数及び低周波数ドメイン全体にわたるインピーダンスの全体的な上昇は、セルサイズが上昇するにつれて集電体の抵抗が上昇することによって、セルの接触抵抗が上昇することを示唆している。2×2cm2のサイズを有するセルはまた、1、2、3、6及び8層の電極を印刷することによって面積装填量を増加させながら、特性評価した。図13プロット(C)に実証される通り、活物質の面積装填量が増加するにつれて、セルの面積容量が比例して上昇し、8層の電極(アノードは約800μm、約310mg/cm2、カソードは約500μm、約180mg/cm2)では54mAh/cm2もの大きさに達する。相異なる厚さを有するセルのEISはまた、厚さが上昇するにつれてインピーダンスが有意には上昇しないことを示し、低周波数ドメインにおいてインピーダンスが小幅にのみ上昇することは、より厚い電極に起因する拡散抵抗のわずかな上昇を示唆している(図3プロット(D))。このような挙動は、イオンの拡散について抵抗をほとんど生じない、アノード及びカソードの両方の大きな細孔サイズに帰することができる。総じて、開示される技術の一実施例実施形態による印刷AgO-Znセルには、広範囲のサイズ及び面積装填量において優れた性能を確認することができ、したがって、適当なサイズ及び容量で様々な電子機器に電力供給するための一次薄膜電池として、カスタマイズ性が提供される。
【0071】
図14は、セルが充電式電池として稼動したときの、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Znセルの電気化学的性能の特性評価の実施例の結果を描いたデータプロットを示す。図14におけるプロット(A)は、0.2Cの充電Cレート、並びに0.2C、0.5C及び1Cのまちまちの放電レートを用いた、開示される技術の一実施例実施形態による印刷AgO-Zn電池のサイクル動作性能を示す。図14におけるプロット(B)は、相異なる放電Cレートのもとでの電池の電圧-容量プロットを示す。図14におけるプロット(C)は、相異なるサイクル数におけるAgO-Zn電池の電圧-容量プロットを示し、充電-放電プロファイルの安定化を示している。図14におけるプロット(D)は、0.2CのCレートにおいてサイクル動作させた50サイクル中のAgO-Zn電池の直流内部抵抗(DCIR)を示す。図14におけるプロット(E)は、Zn金属疑似参照電極を用いた3電極セルにおける、1回の完全な放電-充電サイクル中の電池のZnアノードのEISプロファイルを示し、図14におけるプロット(F)はAgOカソードのEISプロファイルを示す。
【0072】
一次電池としての用途を超えて、開示される技術の一実施例実施形態による可撓性AgO-Zn電池の、二次電池としての電気化学的性能も特性評価した。セルが変換タイプの化学的性質で稼動するため、不可逆的な粒子形状の変化を招くであろう、アノード材料の過剰酸化又はカソード材料の過剰還元を回避することは重要である。このシステムにおける容量の損失は、アノード表面を不動態化するZnO層の厚さの増加、及び、カソードの表面積の減少につながるAgO/Ag2O粒子の粗化に起因して起こり得る。このような挙動は、充電及び放電の程度を正確に制御して、不可逆的な電極の形状変化が起こるのを制限することによって、効果的に軽減することができる。開示される技術による最適化された充電-放電アルゴリズムは、セルが最大容量の40%から90%の間でサイクル動作するように決定され、図15に示される通り、より大きな範囲では、より少ないサイクル寿命をもたらした。
【0073】
図15は、相異なる容量範囲における電池のサイクル動作を示す。図15プロット(A)は、電池を40%から90%の間の充電率(50%)でサイクル動作させることを示す。図15プロット(B)は、電池を25%から90%の間の充電率(65%)でサイクル動作させることを示す。図15プロット(C)は、電池を10%から90%の間の充電率(80%)でサイクル動作させることを示す。36.5%の濃度を有する電解質を使用し、セルを0.2Cのレートでサイクル動作させた。
【0074】
戻って図14を参照すると、プロット(A)は、開示される技術の一実施例実施形態による、2層電極を用いた約16mAh/cm2の最大容量を有する電池のサイクル動作を示している。最初に、0.1Cのレートで10mAh/cm2(最大面積容量の60%)を放電する形成サイクルを実行して、電極を、ゆっくりと緩和させ、表面積が増加し、インピーダンスが低減した好ましいモルフォロジーにする。次いで、電池を0.2Cのレートで2Vに達するまで充電し、Cレートが0.04C未満に低下するまで、又は容量が8mAh/cm2(最大面積容量の50%)に達するまで、一定電圧において充電した。次いで、100%のクーロン効率又は1.35Vの電圧に達するまで、電池を0.2Cで放電した。充電-放電過程全体は、初期サイクルにおいては容量によって正確に制御され、セルが最大容量の40%から90%の間でサイクル動作することが確保される。図14プロット(C)に示される通り、0.2Cのレートにおける数回のサイクルの後、一次セルの挙動に類似した高プラトーと低プラトーとの比で、セルが容量制御放電から電圧制御放電にゆっくりと緩和した。このような充電-放電アルゴリズムを使用することで、不安定なAgO酸化状態のサイクル寿命を制御することができ、有意に上昇したサイクル寿命を得ることができる。図14のプロット(A)及び(B)に示される通り、放電中のアノード及びカソードの両方の過飽和-沈殿反応機構に起因して、セルは、容量及びクーロン効率における一切の損失を伴わずに、最大1Cという高いCレートで放電することができる。図16に示される通り、より高いCレートでの再充電も可能であるが、これにはより高いキャッピング電圧を要し、充電性が低減し、カソード上での酸素発生のリスクが上昇するため、好ましくなかった。
【0075】
図16は、0.5CのCレートにおける、開示される技術の一実施例実施形態による電池のサイクル動作を示す。36.5%の濃度を有する電解質及び50%の容量範囲を使用した。
【0076】
開示される技術による可撓性電池のインピーダンス測定は、サイクル動作全体にわたって、比較的低いインピーダンスを示した。電池のインピーダンスは、直流内部抵抗(DCIR)法を使用してセル全体のサイクル動作中に決定するか、又は3電極構成を使用し、参照としての役割を果たすZnホイルを用いて、別々のアノード及びカソード半電池のサイクル動作中に決定するかのいずれかで決定した。DCIR分析は、電池の内部抵抗における変化を測るための端的で単純な方法を提供する。図14プロット(D)に示される通り、0.2Cにおける電池のサイクル動作について、各充電及び放電の前に、充電及び放電の電流の両方を用いて2電極DCIR分析を実行し、電池は、サイクル全体にわたって低内部抵抗を維持することができたが、これは、サイクル全体にわたって、電池の電極の表面上に高インピーダンスの不動態層を形成していないことを示唆している。各サイクル中の各電極のインピーダンスにおける変化に関する詳細な情報を得るために、0.2Cでサイクル動作している電池において、複数の3電極EIS分析を実行し、電池の放電深度(DOD)に対してプロットする。図14プロット(E)に提示される通り、アノード半電池は1~4Ωの低インピーダンスにおいて開始し、2つの押し潰された半円は、Zn粒子界面における高速の電荷移動、及び多孔質ネットワーク内のより低速の水酸化物イオン(OH-)の拡散に帰せられた。放電によって、OH-の移動を妨げ、二重層の静電容量を増加させるZnO種の形成及び成長に起因して、低周波数の半円がゆっくりと拡大する。充電時には、式1~3における反応から酸素種が遊離してOH-イオンを形成し、これはアノードから容易に拡散する。これは、充電開始時に、アノードからOH-イオンの高速の物質移動、及び最終的に初期レベルまで回復する、急速なインピーダンスの低下をもたらし、したがって、アノード上でのZnの除去及び堆積の可逆性を示している。図14プロット(F)に示されるカソード半電池EISの場合、放電の開始時(0%DOD)には、およそ45°の角度の低周波数インピーダンスの尾(tail)を有する、Ag2O形成の物質移動抵抗及び静電容量に対応する単一の半円が観察され、OH-の標準的なWarburg拡散を示唆している。セルが放電するにつれて、全体的なインピーダンスが減少し、低周波数ドメイン付近に第2の半円が現れるが、これは、Ag2OからのAg形成の電荷移動抵抗及び静電容量に帰することができる。充電時には、すべてのAgが酸化してAg2O及び最終的にAgOを形成すると、この第2の低周波数の半円が消失する。
【0077】
総じて、3電極インピーダンスの結果は、電池のサイクル寿命及び性能の改善において、反応及び可能な経路への深い洞察を提供する。これらのデータは、AgOカソードのインピーダンスが、セルインピーダンスの大部分を担うことを示している。添加剤の組み込みによって、カソードの電気伝導度を上昇させて、高電流用途における性能を改善することができる。アノードについては、サイクル寿命の延長に向けて、EISを介したZnO形成のモニタリングをトポロジー特性評価方法と組み合わせて、Zn電極の変換を制御することができる。
【0078】
図17は、直列に接続した、開示される技術の一実施例実施形態による、2つの8層2×2cm2電池の0.05Cのレートにおけるサイクル動作を示す。
【0079】
図18は、カソード(パネルA)及びアノード(パネルB)のEISフィッティングに使用した等価回路を示す。
【0080】
図19は、5回目のサイクル中のカソードの放電(パネルA)及び充電(パネルB)、並びに対応するアノードの充電(パネルC)及び放電(パネルD)のナイキストプロット並びにEISフィッティングを示す。
【0081】
図20は、様々な力学的変形下、開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Znセルの性能の特性評価の実施例の結果を描いた画像、略図及びプロットを示す。図20におけるプロット(A)及び(B)は、180°及び360°曲げ変形(プロット(A))、並びに360°ひねり変形(プロット(B))を受けている、一実施例実施形態による2層装填1×5cm2電池のイラストレーション及び対応する画像を示す。図20におけるプロット(C)は、100サイクルの、180°外向き曲げ(パネルi)、180°内向き曲げ(パネルii)、360°内向き曲げ(パネルiii)、1cmの曲げ直径を有する360°外向き曲げ(パネルiv)及び360°先端対終端ひねり(パネルv)を受けながら1mA放電時の電池の、対応する電圧プロファイルを示す。図20におけるプロット(D)は、反復的な曲げ及びひねりのサイクルの後、1cmの直径に巻いた1×5cm2セル全体のマイクロCT画像を示し、図20におけるプロット(E)は、電極の1cmの直径に巻いた断面(左)及びズームイン図(右)を示し、反復的な力学的変形後のセルの構造的損傷又は層間剥離がないことを実証している。プロット(F)図20は、リニアステージによって制御された、15秒/サイクルの速度における反復180°曲げサイクルのもとの電池のイラストレーションを示し、図20におけるプロット(G)は、約2500回の曲げの反復中の、対応する電池の充電(曲線2010)及び放電(曲線2020)の電圧-時間プロットを示す。
【0082】
コインセル、円柱状又は角柱状セルと比較して、開示される技術による印刷可撓性電池は、構造的故障を生じることなく、曲げ、屈曲及びひねりが可能であるという独特の利点を有する。このような力学的復元力を与えるために、開示される技術による印刷AgO-Zn電池は、可撓性且つ延伸適性のポリマー-粒子複合体層から構成され、非常に弾性のバインダを使用している。これらの可撓性及び延伸適性によって、電池の層が変形して層間歪みを解除することができ、したがって、非常に厚い電極を使用する場合でさえ、層間の剥離も又は疲労の増大も伴わずに、電池が大きな変形に耐えることができる。過酷な歪みのもとでの電池の性能を試験するため、2層1×5cm2セル(電池とも称する)を、開示される技術の一実施例実施形態によって組み立て、反復的な曲げ及びひねりの変形をかけながら1mAの電流で放電させた。図20プロット(A)及び(B)に図示される通り、0.5cmの曲げ半径を有する両方向における180°及び360°曲げ、並びに両方向における先端から終端までの180°ひねりを用いて、セルを試験した。図20プロット(C)に示される通り、100サイクル(1サイクル当たり1秒)の変形中の対応する電圧変化を記録した。一般に、セルは、両方向における曲げ及びひねり中に安定な性能を呈し、180°曲げサイクル中には無視できる程度の電圧の増減であり、180°曲げ及びひねりサイクル中にはほぼ10mVの増減であった。内向き曲げは一般にわずかに大きな変動を示すが、これは、アノード側のより軟質なAg集電体が、曲げの際に外側でより大きな延伸を受けることによって生じることが疑われる。セルの力学的安定性を確保するために、マイクロCTを使用して、反復的変形後のセルを特性評価した。図20プロット(D)及び(E)に示される通り、セル全体を高解像度でスキャンして、変形下でのセルの微視的構造を反映した3次元(3D)画像を得ることができる。電池の断面のズームイン図はさらに、反復変形サイクル後に亀裂も又は層間剥離もないことを示し、電池の堅牢な力学的復元力を反映している。図20プロット(F)及び(G)に示される通り、セルの充電性も反復的変形によって妨害されず、約2500サイクルの180°曲げを受けながら、電池を正常に充電及び放電することができる。総じて、優れた電気化学的及び力学的性能を兼ね備えるため、ここで開示される技術による印刷薄膜AgO-Zn電池は、様々なウェアラブル及び可撓性の電子機器に、確実且つ持続的に電力供給するのに相当に適していることが証明される。
【0083】
図21は、電池を100サイクルの10%の長手方向の延伸にかけながら1mAの放電時に収集される、開示される技術の一実施例実施形態による1×5cm2電池の電圧プロファイルを示す。電池が小さな半径の曲げに耐え、外側層の歪みを吸収するために、ある特定の量の延伸適性も要求される。曲げ変形下の電池の3Dイラストレーションは、図3に見出すことができる。
【0084】
図22は、この特許文献に開示される技術の一実施例実施形態による実施例の、可撓性AgO-Zn電池による、可撓性Eインクディスプレイシステムの電力供給を描いた画像及びプロットを示す。図22におけるパネル(A)は、可撓性Eインクディスプレイ、及びディスプレイの裏に直列に接続された、ここで開示される技術による2つの2層装填2×2cm2電池の配置の画像を示す。図22におけるプロット(B)は、内蔵型ブルートゥース(BT)及びマイクロコントローラユニット(MCU)モジュールを有するEインクディスプレイシステムの、BT接続中(追跡2210)、接続を確立後(追跡2220)並びに能動的(active)データ伝送中(追跡2230)の、電力消費を示す。図22プロット(C)は、変動するパルス及びベースラインを用いた模擬放電電流プロファイル(上)、並びに対応する電池の電圧応答(下)を示す。図22プロット(D)は、模擬放電プロファイルを実施している、直列に接続された2つのセルの完全な放電プロファイルを示す。
【0085】
典型的な可撓性電子機器に電力供給する、開示される技術による電池の性能を実証するため、ブルートゥース(BT)通信モジュールを加えたArduinoタイプマイクロコントローラユニットによって制御される可撓性Eインクディスプレイシステム(図22プロット(A)及び図23)を設計した。システムは、直列に接続された、開示される技術の一実施例実施形態による2層電極を有する2つの2×2cm2電池によって電力供給され、システムを起動するのに十分な電圧(3V超)を供給することができる。モバイル装置、例えばスマートフォンを接続して、データ及び命令をBTモジュールに伝送することができ、それはEインクディスプレイを更新するマイクロコントローラによって処理される。まず、3.6Vで稼動する相異なる稼動モードのもとで、システムのエネルギー消費を測定した。図22におけるプロット(B)は、(1)システムが接続を探すためのブロードキャストをしており、20mA前後の電流ピークの短いバーストを含有する場合(図22プロット(B)における追跡2210)、(2)システムがモバイル装置(携帯電話)に接続され、9mAの平均電流を有する場合(追跡2220)、並びに(3)システムが携帯電話及びディスプレイの間で能動的にデータを伝送しており、8.5mAの高いベースラインと13mAのピークとの間、及び4mAの低いベースラインと10mAのピークとの間で電流交番している場合(追跡2230)の電流の流れを表示している。電池はこのように、10秒のBTブロードキャスティング、接続確立後の10秒のアイドル、10秒の能動的データ伝送、続いて30秒の休止(電力供給オフ)による反復的な離散的セッションにおいて動作する、可撓性Eインクディスプレイシステムの電力消費を模したスクリプトを使用して放電する(図22プロット(C))。図22プロット(D)に図示される通り、直列の2つの電池は、3.6V~2.4V窓におけるパルス状高電流放電を持続して、12時間超の間、システムに電力を絶えず送り出すことができ、一定の低電流1mA放電から得られる容量と同様に、約60mAhの容量を維持することができた。開示される技術による高面積容量の可撓性AgO-Zn電池と組み合わせることによって、可撓性Eインクディスプレイは、曲げ変形を受けながら稼動することができた。比較として、同様の定格容量を有する市販のリチウムコインセルは、高電流パルス状放電を持続することができず、同じスクリプトを使用して放電した場合、容量に有意な損失が生じた。そのため、この特許文献において開示される技術による低インピーダンス且つ高エネルギー密度の電池は、可撓性電子システムの典型的なプロトタイプの電力供給について、顕著な電気化学的性能及び力学的性能の両方を有することが証明される。このような全印刷電池は、性能が非可撓性の市販のコインセル対応物を上回ってさえいるため、実際の用途に向けたカスタマイズ性及び可撓性に起因して、極めて魅力的であると考えることができる。様々な力学的変形を加えながら、電池を使用してLEDバルブを点灯するという典型的な用途も試験したところ、電池を曲げ、折りたたみ、ひねり、延伸したとき、光の強度は変化しなかった。
【0086】
図23は、組み付けた可撓性Eインクディスプレイシステム2300の略図を示す。システム2300は、直列に接続された、開示される技術による2つのAgO-Zn可撓性電池(2310)を含む。システム2300は、ブルートゥース低エネルギー(BLE)装置2320(例えばAdafruit Feather mRF52 Bluefruit)をさらに含む。電池2310は、装置2320の外部電源コネクタに電気的に接続される。システム2300はまた、SPI直列接続を介して装置2320に連結された、可撓性eインクディスプレイ2330(例えばWaveshareの2.9インチのもの)を含む。装置2320は、ディスプレイ2330に表示されるコンテンツを変更することができる、Bluefruit Connect appを実行するスマートフォン2340に、ブルートゥース接続を介して通信可能に接続される。
【0087】
開示される技術による可撓性且つ高性能な薄膜AgO-Zn電池は、充電可能な変換化学に基づく。延伸適性エラストマー性バインダを用いて特別に調合されたインク、及び熱可塑性エラストマー性基材を使用することで、開示される技術による電池は、例えば低コスト、高スループットのスクリーン印刷技法を使用してレイヤーバイレイヤーで印刷し、例えば、熱封止及び真空封止の方法によって組み付けることができる。加工容易性を維持しながら装置の低実装面積を得るために、積み重ねサンドイッチ構成を可能にする、印刷可能な可撓性セパレータ及び固相KOH-PVAヒドロゲルを開発した。ここで開示される技術による印刷可能な電池は、様々なセルサイズ及び面積装填量に適合性があり、一次用途のための反復多層印刷と結びつけて、例えば54mAh/cm2という大きな面積容量に至る。電池は充電式でもあり、(例えば、上に記載した容量制御サイクル動作アルゴリズムを実施すると、)容量及びクーロン効率における損失を伴わずに、変動する放電Cレートによって70サイクルを超える高サイクル寿命を有する。電池は、各放電-充電サイクル内で低インピーダンスを呈しながら、複数のサイクル全体を通じて低内部抵抗を維持したが、これは、電極の酸化還元反応時の、安定且つ可逆的な電極のモルフォロジー的変化を示唆している。様々な可撓性ウェアラブル電子機器に電力供給するための可撓性エネルギー貯蔵ユニットとして、開示される技術の一実施例実施形態による電池の性能を、厳格な力学的試験下で評価し、反復的に大きく変形する曲げ及びひねりサイクルに対して、電池が著しい復元力を提供することを実証した。組み立てた電池を、BT接続能力を有するカスタマイズされた可撓性Eインクディスプレイシステムの電力供給に使用し、電子機器に要求される高電流パルス状放電レジームのもと、市販のコインセルを上回る顕著な性能を発揮した。実施例の実施は、非常に望ましい電気化学的及び力学的性能、並びに次世代電子機器の電力供給のための新規なエネルギー貯蔵装置の開発に向けた大きな影響を有する、可撓性薄膜AgO-Zn電池の拡張性のある組み立てを実証している。
【0088】
図24は、開示される耐薬品性の可撓性エラストマーバインダ材料を使用した、実施例の製造技法及び製品のイラストレーションを示す。図24におけるイラストレーションは、実施例の、高面積密度(例えば約54mAh/cm2)を有する電池のポリマー系印刷組み立てを示す。電池は可撓性、充電式、低インピーダンス、カスタマイズ可能であり、低装置実装面積を有する。実施例の電池は、パルス状高電流放電モードにおける優れた電池性能を実証している。
【0089】
Bi2O3、Ca(OH)2、KOH(ペレット、85%以上)、LiOH、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、セルロース(微結晶粉末、20μm)、Triton-X 114、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)(MW 600,000)及びPVA (MW=89000~98000、99+%加水分解)は、Sigma Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入した。Zn、AgO及びTiO2は、Zpower LLC(Camarillo、CA、USA)から入手した。フルオロコポリマー(GBR-6005、ポリ(フッ化ビニル-コ-2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン))は、Daikin US Corporation(New York、NY、USA)から入手した。SEBS(G1645)は、Kraton(Houston、TX、USA)から入手した。グラファイト粉末は、Acros Organics(USA)から購入した。Super-Pカーボンブラックは、MTI Corporation(Richmond、CA、USA)から購入した。すべての試薬は、さらに精製することなく使用した。
【0090】
電極樹脂は、10gのMIBK溶媒中に5gのフッ素ゴムを加え、混合物が均一になるまで振盪テーブル上で放置することによって調製した。SEBS樹脂は、100mLのトルエン中に40gのSEMBを加え、混合物が均一になるまで振盪テーブル上で放置することによって調製した。
【0091】
銀集電体インクは、Agフレーク、SEBS樹脂及びトルエンを4:2:1の重量比で組み合わせ、遊星型ミキサー(Flaktak Speedmixer(商標) DAC 150.1 FV)において、1800回転毎分(RPM)で5分間混合することによって調合した。炭素集電体インクは、まず、グラファイト、Super-P及びPTFE粉末を84:14:2の重量比で、一対の乳棒及び乳鉢を用いて混合することによって調合した。混合粉末を、SEBS樹脂及びトルエンと10:12:3の重量比で、ミキサーを使用して2250RPMで10分間混合して、印刷用インクを得た。
【0092】
Znアノードインクは、まず、Zn及びBi2O3粉末を9:1の比で、一対の乳棒及び乳鉢を用いて、Zn粒子がBi2O3粉末によって満遍なく覆われるまで混合することによって調合した。次いで、満遍なく混合された粉末を、電極樹脂及びMIBKと20:4:1の重量比で、ミキサーを使用して1800RPMで5分間混合して、印刷用インクを得た。AgOカソードインクは、まず、AgO及びSuper-P粉末を95:5の重量比で、一対の乳棒及び乳鉢を使用して、均一になるまで混合することによって調合した。次いで、粉末を電極樹脂及びMIBKと5:5:2の重量比で、ミキサーを使用して2250RPMで5分間混合して、印刷用インクを得た。
【0093】
TiO2セパレータインクは、まず、TiO2及びセルロース粉末を2:1の比で、一対の乳棒及び乳鉢を使用して混合することによって調製した。次いで、混合粉末にSEBS樹脂、トルエン及びTriton-Xを、50:55:75:3の重量比で加え、ミキサーを用いて2250RPMで10分間混合して、印刷用インクを得た。セルロースセパレータインクは、まず、TiO2及びセルロース粉末を26:9の比で、一対の乳棒及び乳鉢を使用して混合することによって調製した。次いで、混合粉末に電極樹脂及びMIBKを8:7:4の重量比で加え、ミキサーを用いて2250RPMで10分間混合して、印刷用インクを得た。
【0094】
トルエン中に溶解した40.8重量%のSEBSを有する樹脂を調製し、リニアシェーカー(Scilogex、SK-L180-E)上に一晩、又は混合物が透明且つ均一になるまで放置した。ワックスペーパーを一時的なキャスティング基材として使用し、1000umの間隙を有するフィルム流延機を使用して、SEBS樹脂をワックスペーパー上にキャストした。キャストした樹脂は、過剰の溶媒を除去するため、まず周囲環境において1時間乾燥させた後、従来型オーブン中で80℃で1時間硬化させた。硬化後にはワックスペーパーから容易に剥離することができる、透明で一様なSEBSフィルムを、後続の電池印刷のための基材として使用した。
【0095】
集電体、電極及びセパレータを印刷するためのステンシルは、AutoCADソフトウェア(Autodesk、San Rafael、CA、USA)を使用して設計し、Metal Etch Services(San Marcos、CA)によって、12インチ×12インチの寸法で生産した。ステンシルの厚さは、炭素及び銀集電体については100μm、TiO2セパレータ及びZnアノードについては300μm、セルロースセパレータ及びAgOカソードについては500μmに設計した。アノードを印刷するため、まず銀インクをSEBS基材上に印刷し、従来型オーブン中で80℃で10分間硬化させた。次いで、Znインクを銀集電体上に印刷し、80℃で30分間硬化させた。最後に、TiO2インクをアノード上に印刷し、80℃で10分間硬化させた。カソードを印刷するため、まずカーボンインクをSEBS基材上に印刷し、80℃で10分間硬化させた。コンピュータ制御された裁断機(Cricut Maker(登録商標)、Cricut, Inc.、South Jordan、UT、USA)を使用してPETシートを裁断して、印刷炭素電極を曝露するマスクとし、マスクされた炭素集電体に約400nmのAu、及びCrの接着中間層を、それぞれ100W及び200WのDC電力、並びに16SCCMのArガス流速において、Denton Discovery 635 Sputter System(Denton Discovery 635 Sputter System、Denton Vacuum, LLC、Moorestown、NJ、USA)を使用してスパッタした。次いで、AgOインクをスパッタ集電体上に印刷し、50℃で60分間硬化させた。最後に、セルロースインクをカソード上に印刷し、50℃で60分間硬化させた。複数層の電極又はセパレータを印刷するため、さらにAgOの各層については65μm、Znの各層については100μmだけステンシルを相殺して、電極の厚さを補償した。
【0096】
図25は、ここで開示される技術による実施例の、印刷AgO-Zn電池の段階的バッチ組み立ての画像を示す。図25におけるパネル(A)は、調製したSEBS基材を示す。図25におけるパネル(B)は、ここで開示される技術の一実施例実施形態によるAgO-Zn電池のAgOカソード(左)及びZnアノード(右)の、開示される技術による方法の一実施例実施形態によるレイヤーバイレイヤー印刷方法を示す。図25におけるパネル(C)は、カソード側を、ヒドロゲル電解質を間にして、アノード側の上に置くことを図示している。図25におけるパネル(D)は、電池の熱封止及び真空封止の方法を図示している。バッチ全体が真空封止された後にさらに熱封止することによって、各セルを分離した。
【0097】
図26は、対応するステンシルを使用して印刷された、(A)アノード及び(B)カソードの厚さ較正の実施例の結果を示す。平均値及び標準偏差値を得るために、各データ点について5つのサンプルを取得した。
【0098】
開示される技術による電池のいくつかの実施例実施形態に使用されるヒドロゲルは、PVA溶液及び水酸化物溶液を混合してゲル前駆体とし、所望の重量に達するまでデシケータ中で乾燥させることによって合成される。いくつかの実施例実施形態において使用される36.5%水酸化物ゲルを合成するために、以下の調合物を使用した。水酸化物溶液は、9.426gのKOH及び0.342gのLiOHを、50mLの脱イオン(DI)水中に溶解させることによって調製した。次いで、0.5gのCa(OH)2を溶液中に加え、密閉容器において室温下で1時間撹拌して、溶液をCa(OH)2で飽和させ、次いで、過剰のCa(OH)2を溶液から除去した。PVA溶液は、4.033gのPVA及び0.056gのPEOを50mLのDI水中に溶解させ、90℃に加熱することによって調製した。前駆体溶液は、水酸化物溶液及びPVA溶液を、13.677:10の重量比で混合することによって調製し、0.2g/cm2の重量で、平らなペトリ皿中に注いだ。前駆体を真空デシケータ中に放置して、重量が前駆体重量の26.12%に減少するまで乾燥させて、苛性材料が苛性材料及び含水量の合計の36.5%を占める、軟質の半透明ヒドロゲルを得た。異なる水酸化物濃度についてのさらなる重量及び伝導率の情報は、表1に見出すことができる。次いで、ヒドロゲルを所望のサイズに裁断して、直接使用すること、又は同じ重量比の水酸化物を有するがPVAを有しない水酸化物溶液中で貯蔵することができる。36.5% KOH-PVAゲルのための貯蔵溶液は、水酸化物溶液と同様に調製し、ここでは、10.777gのKOH、0.391gのLiOH及び0.5gのCa(OH)2を15mLのDI水中に溶解させ、過剰のCa(OH)2を除去した。
【0099】
図27は、開示される技術による実施例の、組み立て方法の一実施例実施形態によるKOH-PVA電解質ゲルの組み立て中に撮影した画像を示す。図27における画像(A)は、真空デシケータにおける前駆体溶液の所望の濃度への乾燥を図示している。図27における画像(B)は、乾燥後の架橋36.5%ヒドロゲルを図示している。図27における画像(C)は、所望のサイズに裁断後のヒドロゲルピースの貯蔵を図示している。図27における画像(D)は、曲げた2×2cm2ヒドロゲルピースを図示している。
【0100】
集電体、セパレータ及び活物質電極のモルフォロジー分析を、SEM及びマイクロCTによって実行した。SEM画像は、15keVの電子ビームエネルギー、3のスポットサイズ及び10μ秒の滞留時間を用いるFEI Quanta FEG 250機器を使用して撮影した。マイクロCT実験は、ZEISS Xradia 510 Versaを使用して実施した。個々のフィルムの分析のために、2mm半径のディスクを打ち抜き、隣接するフィルムディスク同士の間を隔離するために、これらをPTFE円筒管内にPTFEフィルムと交互に積み重ねることによって、マイクロCTサンプルを調製した。全体且つ封止されたセルの曲げのマイクロCTのために、1×5cm2Zn-AgO電池を曲げ、又は1cmの直径を有するポリエチレン(PE)円筒管の周りに巻いた。
【0101】
活物質電極のマイクロCTについて、重い金属、例えばZn及びAgでは、印刷ポリマーセパレータフィルムよりも高いX線エネルギーが保証された。したがって、140keV且つ71.26μAの電流におけるスキャンは、Zn及びAgOフィルムに対して、高エネルギーフィルタ及び4×の倍率を用いて、それぞれ2.5μm及び0.75μmのボクセルサイズ並びに2秒及び18秒の曝露時間で実行した。ポリマーセパレータについては、87.63μA電流による80keVスキャンを使用し、4×の倍率において低エネルギーフィルタを用い、印刷されたアノード及びカソードセパレータについては、それぞれ、0.75μm及び1.1μmのボクセル解像度、並びに8秒及び1秒の曝露時間であった。セル全体の曲げのスキャンのためには、140keVの電圧及び71.26μAの電流で、4×の倍率を用いて実行し、それぞれの場合について、以下のボクセル解像度及び曝露時間を用いた:低解像度曲げスキャンについては18.35μm且つ2秒、高解像度曲げスキャンについては3.54μm且つ5秒、及び巻いたセルのスキャンについては7.55μm且つ2秒。実施したすべてのマイクロCTスキャンについて、360°回転全体の間に1801枚の撮影を取得し、データ再構築中にビームハードニング及び中央シフト定数を実装した。測定後の画像化及び分析は、ソフトウェアによって提供されるデータの鮮明化及びフィルタ処理のために、Amira-Avizoによって、Despeckle、Deblur、Median Filter、Non-local Means Filter、Unsharp Mask及びDelineateモジュールを使用して実行した。
【0102】
3電極半電池のCV特性評価は、作用電極として印刷電極、対電極として白金ホイル、参照電極としてZn金属ホイル、及び電解質として2ピースのKOH-PVAヒドロゲルを用いて組み付けた、開示される技術の一実施例実施形態によるセルにおいて実行した。3電極セル全体のCV特性評価は、参照電極として追加のZn金属ホイルを用いて組み付けた、開示される技術の一実施例実施形態によるセルにおいて、1.35Vから2Vの間で実行した。両セルの構造は、図10A及び10Bに図示されている。CVは、Autolab PGSTAT128Nポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して、加えてpX-1000モジュールを用いて実行した。3電極セル全体のCVにおいて、AgOカソードを作用電極プローブに接続し、Znアノードを対極プローブ及び参照電極プローブに接続し、pX-1000モジュールを使用して、カソード及び参照Znホイルの間の電位をモニタリングした。アノード対Znの電位は、セル全体の電位からカソード対Znの電位を減算することによって得た。すべてのCV試験について、10mV/秒の掃引速度を使用した。
【0103】
次の手順によって、一次用途の場合の、開示される技術の一実施例実施形態による電池の定電流完全放電を実行した。まず、組み付けた真空封止電池をアイドル状態で1時間放置して、電解質を十分に電極に浸透させた。次いで、電池を電池試験システム(Landt Instruments CT2001A)を使用して、1.35Vのより低いカットオフ電圧に達するまで所望の電流で放電した。
【0104】
電池の二次用途を可能にするため、電池の電位及びDODの正確な制御に依拠したサイクル動作プロトコルを確立した。組み立てた電池における充電-放電サイクル動作を実行するため、まず、サイクル動作可能な容量及びプロトコルのCレートを決定するための基準として、低電流完全放電によって推定される、最大容量の50%を決定した。まず、電池を0.1CのCレートで、100%から40%のDODに放電した。次いで、2Vに達するまでは0.2CのCレートで、次いで2Vで、90%のDOD又は0.05CのCレートに達するまで、電池を再充電した。このとき、電池を1.35V及び2Vの間で、DODを最大値の40%及び90%の間に維持して、所望のCレートで放電及び再充電することができた。別段の指定がない限り、すべてのサイクル動作データは、1×1cm2形態要素を有し、2層の電極活物質を有するセルを使用して実行した。直列に接続した8層の電極厚さを有する2つのセルについての、実施例のサイクル動作データを図17に示す。
【0105】
図28は、パルス状放電プロファイルの詳細を示す。パルス状放電プロトコルは、内蔵型BT機能を有する典型的なMCU制御ウェアラブル装置の電力供給における電池の性能を模するように設計した。高速クロノ法を実装したAutolab PGSTAT128Nポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して、電池を放電した。
【0106】
3電極構成においてBiologic SP-150を用いて、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定を実行した。例えば図10Bに示されるように、Zn参照ワイヤを、追加のヒドロゲル電解質の層及び当初の電解質層の間に配置して、開示される技術の一実施例実施形態によるZn-AgO 3電極セルを組み立てた。次いで、Zn参照ワイヤを、電解質の脱水を妨げるために真空封止して完全なセルの封止を確保した、Auスパッタした熱封止性SEBS系印刷炭素タブに接続した。作用電極(WE)及び対極(CE)を、それぞれAgOカソード及びZnアノードに接続した。
【0107】
2つの半電池及びセル全体のインピーダンスを、充電及び放電中にin situでモニタリングし、定電流EIS(GEIS)測定を用いて、実用的なサイクル動作条件に最も密接に関係するインピーダンス変化を分析した。それに応じて、DC系電流を充電/放電工程の電流に設定し、一方でAC振幅を、サイクル動作電流のおよそ1/5である300μAに設定した。周波数掃引は、1MHzから1Hzの間で、1ディケード当たり(per decade)10点、且つ1周波数当たり(per frequency)8回の測定の平均とした。GEISを用いて実施したサイクル動作スクリプトは、印可される電圧の限定が、充電及び放電について、アノードの代わりに参照に対してそれぞれ1.95V及び1.4Vであることを除いて、容量限定電気化学的サイクル動作プロトコルのものと同様である。各充電及び放電の工程について、15の完全なサイクルについて10のGEISを測定し、合計870の別々のナイキストプロット(29工程×10測定×3セル構成)を生じた。分析を単純化するため、5回目のサイクルの放電及び充電のみを分析した。
【0108】
5回目のサイクルの放電及び充電工程について両方の半電池ナイキストプロットを、Mathworks製のオープンソースコードとして利用可能なZfit機能のわずかに改造したバージョンを使用して、等価回路に適合させた。Zfitは、別のMathworksのオープンソースコードであるfminsearchbndを利用して、現実的なパラメータの境界条件のもと、インピーダンスパラメータ(例えば、抵抗値、定位相要素値等)を変化させることによって、実験値を用いた模擬インピーダンスの誤差を最小化する。このコードの利用によって、多くの連続的なナイキストを流線形にフィッティングすることができ、フィッティングしたパラメータにおいて観測可能なトレンドにおける洞察が提供される。EIS測定のさらなるデータは、図12、18及び19に見出すことができる。
【0109】
ゲル電解質のイオン伝導率は、0.54Ωの内部インピーダンスを有する、カスタマイズした2電極(ステンレス鋼316L)伝導度セルによって測定した。セル定数は、しばしば、OAKTON標準伝導率溶液を使用して、0.447、1.5、15及び80mS・cm-1においてそれぞれ較正される。一定厚さのスペーサを、2つの電極の間に配置して、複数回の測定の間に距離の変化がないことを確保した。電解質の伝導率値は、次の式:σ=KR-Q[式中、Rは試験するインピーダンス(Ω)であり、Kはセル定数(cm-1)であり、Qはフィッティングパラメータである]を使用して電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって与えられる最小位相角(phase angle minima)によって決定される周波数において、浮動(フローティング)AC信号を用いて得た。データ取得及び出力のすべては、ESPEC BTX-475プログラミング温度チャンバを制御して、セルを30分間隔で設定温度に維持するためにも使用される、LabViewソフトウェアによって行った。
【0110】
電池の曲げ変形は、1×5cm2電池を、1cmの直径を有するシリンダの周りに、人力で曲げることによって実施した。変形は、曲げ及び緩和状態の間で、1秒/サイクルの速度で100サイクルにわたってサイクル動作させた。同様に、電池のひねり変形は、電池の一端を固定し、他端を180°時計回り及び反時計回りに100サイクルにわたってひねることによって、1秒/サイクルで、人力で実行した。
【0111】
図29は、電池の人力による曲げ及びひねりを図示した実施例画像を示す。図29におけるパネル(A)は、円形の1周半にわたって(for half and one entire round)電池を曲げるために使用した、1cmの直径を有する管を示す。図29におけるパネル(B)は、反時計回りに180°及び時計回りに180°(これは、足して合計360°となる)ひねった、ここで開示される技術の一実施例実施形態による電池の実施例を示す。
【0112】
可撓性電子機器に電力供給する電池の能力を実証するために、Waveshare 2.9インチeペーパー可撓性ディスプレイに、開示される技術による2つの直列のZn-AgO電池によって、電力供給した。ディスプレイモジュールをAdafruit Feather nRF52 Bluefruit Low Energy (LE)チップに接続し、Arduino及びCを使用してプログラムした。
【0113】
図30は、実施例の組み付けシステムの画像を示す。MATLABコードを使用して、画像を16進法フォーマットに変換し、ボード及びディスプレイにアップロードした。BluefruitConnect IOS appを使用して、Adafruitチップをブルートゥースを介して接続し、表示情報を変更した。Eインクディスプレイシステムのシステム略図は、図23に示す。ブルートゥースチップ及びディスプレイに電力供給するために必要なパルス状電流プロファイルは、オシロスコープを使用して、回路配線(circuitry)に直列に接続された10Ω抵抗体の両端の電圧を測定することによって決定した。次いで、モデルパルス状プロファイルを抽出して、さらなる試験について可撓性電池に適用した。
【実施例
【0114】
本技術の複数の態様を、以下の実施例に説明する。本技術の複数の態様は、組成物、複合材料、印刷用インク、可撓性電子装置若しくはシステム、及び/又は方法を対象とした実施例において説明されるが、本技術のこれらの態様はいずれも、ここで記載される他の実施形態における組成物、複合材料、印刷用インク、可撓性電子装置及び/若しくはシステム、並びに/又は方法のいずれかを対象とする実施例において、同様に説明することができる。
【0115】
本技術(実施例1)に従ったいくつかの実施形態では、電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体は、複数の粒子、及びフッ素を含むポリマーを含み、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0116】
実施例2は、ポリマーがコポリマーである、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0117】
実施例3は、コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、実施例2又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0118】
実施例4は、コポリマーが塩素を含む、実施例2又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0119】
実施例5は、コポリマーが臭素を含む、実施例2又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0120】
実施例6は、コポリマーがヨウ素を含む、実施例2又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0121】
実施例7は、ポリマーが有機溶媒に可溶性である、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0122】
実施例8は、ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0123】
実施例9は、ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0124】
実施例10は、複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0125】
実施例11は、複数の粒子における粒子がコーティング材料のコーティング層を含む、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0126】
実施例12は、コーティング材料が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、実施例11又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0127】
実施例13は、炭素質材料が、炭素(カーボン)、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0128】
実施例14は、金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0129】
実施例15は、金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0130】
実施例16は、金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物(塩)、オキシ水酸化物(塩)又はスルホン酸塩の1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0131】
実施例17は、ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0132】
実施例18は、界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0133】
実施例19は、糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、実施例10若しくは12のいずれか、又は実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0134】
実施例20は、ポリマーの耐薬品性が、pH10超、pH4未満又は塩度2M超への耐性を含む、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0135】
実施例21は、ポリマーの耐薬品性が、pH14超、pH1未満又は塩度5M超への耐性を含む、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0136】
実施例22は、複合体が、力学的に自立型であるように構造化されている、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0137】
実施例23は、複合体が、電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている、実施例1から24のいずれかの複合体を含む。
【0138】
実施例24は、電気化学装置及び/又は電子装置が、燃料電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、電気化学的センサ、回路の相互接続装置、トランジスタ、電池、太陽電池又はタッチスクリーンの1つである、実施例1から23のいずれかの複合体を含む。
【0139】
本技術(実施例25)に従ったいくつかの実施形態では、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクは、有機溶媒とフッ素を含むポリマーとを含むマトリックス、ここで、ポリマーは有機溶媒中に溶解しており、ポリマーはエラストマーである、及びマトリックス内に含有されている複数の粒子を含み、ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、ポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0140】
実施例26は、ポリマーがコポリマーである、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0141】
実施例27は、コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、実施例26又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0142】
実施例28は、コポリマーが塩素を含む、実施例26又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0143】
実施例29は、コポリマーが臭素を含む、実施例26又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0144】
実施例30は、コポリマーがヨウ素を含む、実施例26又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0145】
実施例31は、有機溶媒がケトンを含む、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0146】
実施例32は、ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン又はベンゾフェノンの1つである、実施例31又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0147】
実施例33は、有機溶媒がエステルを含む、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0148】
実施例34は、エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸イソプロピル又は安息香酸エチルの1つである、実施例33又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0149】
実施例35は、ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0150】
実施例36は、ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0151】
実施例37は、複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0152】
実施例38は、インクが、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0153】
実施例39は、炭素質材料が、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0154】
実施例40は、金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0155】
実施例41は、金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0156】
実施例42は、金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物(塩)、オキシ水酸化物(塩)又はスルホン酸塩の1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0157】
実施例43は、ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0158】
実施例44は、界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0159】
実施例45は、糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、実施例37若しくは38のいずれか、又は実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0160】
実施例46は、インクが、印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーである、実施例25から47のいずれかの印刷用インクを含む。
【0161】
実施例47は、インクが、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、3D印刷、射出成形、スタンピング、転写印刷、又は水転写印刷の1つを介して堆積させるように構成されている、実施例46又は実施例25から46のいずれかの印刷用インクを含む。
【0162】
本技術(実施例48)に従ったいくつかの実施形態では、電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体は、複数の粒子、及びハロゲン元素の原子を含むコポリマーを含み、ここで、コポリマーはエラストマーであり、コポリマーは、コポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、コポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0163】
本技術(実施例49)に従ったいくつかの実施形態では、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクは、有機溶媒と構造内にハロゲン化学元素を含むコポリマーとを含むマトリックス、ここで、コポリマーは有機溶媒中に溶解しており、コポリマーはエラストマーである、及びマトリックス内に含有されている複数の粒子を含み、ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、コポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0164】
本技術(実施例50)に従ったいくつかの実施形態では、可撓性電池は、複数の粒子及びフッ素を含むポリマーを含む複合材料を含み、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0165】
本技術(実施例51)に従ったいくつかの実施形態では、可撓性電池は、複数のZn粒子を含む第1の弾性複合材料の第1の層、及び第1の層内に複数のZn粒子を閉じ込めている第1のフッ素含有ポリマーを含むアノード、複数のAgO粒子を含む第2の弾性複合材料の第2の層、及び第2の層内に複数のAgO粒子を閉じ込めている第2のフッ素組み込みポリマーを含むカソード、並びにアノード及びカソードの間に配置されたヒドロゲル電解質の層を含む。
【0166】
実施例52は、第1のフッ素含有ポリマー及び第2のフッ素含有ポリマーが、同じフッ素含有ポリマーである、実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0167】
実施例53は、Zn粒子がBi2O3粉末によって覆われている、実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0168】
実施例54は、アノード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第1のセパレータ材料の層を含む、実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0169】
実施例55は、第1のセパレータ材料がTiO2を含む、実施例54又は実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0170】
実施例56は、カソード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第2のセパレータ材料の層を含む、実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0171】
実施例57は、第2のセパレータ材料がセルロースを含む、実施例56又は実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0172】
実施例58は、ヒドロゲルが水酸化カリウム-ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲル(KOH-PVAヒドロゲル)である、実施例51から58のいずれかの電池を含む。
【0173】
本技術(実施例P1)に従ったいくつかの実施形態では、高pH耐性エラストマーバインダは、複数の粒子と、複数の粒子の少なくともいくつかを固定し、弾性ポリマー-粒子複合体を形成する、フッ素組み込みエラストマー性コポリマーとを含む。
【0174】
実施例P2は、ポリマーが、有機溶媒中に可溶性であり、様々なタイプの材料と混合して、可撓性高pH耐性複合体を形成することができる、実施例P1のバインダを含む。
【0175】
実施例P3は、溶解したポリマー及び粒子が、印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーを形成する、実施例P2のバインダを含む。
【0176】
実施例P4は、ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はポリエチレンオキシドの1つ以上を含む、先行又は後続の実施例P1からP8のいずれかのバインダを含む。
【0177】
実施例P5は、フッ素組み込みエラストマー性コポリマーが、相異なる架橋度及びフッ素化度による、0~4個のフッ素原子によってフッ素化されたエチレン又は0~6個のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンの組み合わせを含む、先行又は後続の実施例P1からP8のいずれかのバインダを含む。
【0178】
実施例P6は、複数の粒子が、グラファイト、カーボンブラック、亜鉛、銀、銅、ビスマス、金属の酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化チタン(IV)又は他の固体有機材料粉末、例えば、セルロース、メチルセルロース及び/若しくはスクロースの1つ以上を含む、先行又は後続の実施例P1からP8のいずれかのバインダを含む。
【0179】
実施例P7は、バインダが、印刷された電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている、先行又は後続の実施例P1からP8のいずれかのバインダを含む。
【0180】
実施例P8は、印刷された電気化学装置及び/又は電子装置が、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、センサ、回路の相互接続、薄膜トランジスタ、電池又はタッチスクリーンを含む、実施例P7のいずれか、又は先行若しくは後続の実施例P1からP7のいずれかのバインダを含む。
【0181】
開示される実施形態の一態様は、電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体に関し、ここで、該複合体は、複数の粒子とフッ素を含むポリマーとを含み、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0182】
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体のいくつかの実施例実施形態では、ポリマーはコポリマーである。いくつかの実施例実施形態によれば、コポリマーはバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである。ある特定の実施例実施形態では、コポリマーは塩素を含む。ある実施例実施形態では、コポリマーは臭素を含む。別の実施例実施形態では、コポリマーはヨウ素を含む。なおも別の実施例実施形態では、ポリマーは有機溶媒中に可溶性である。ある特定の実施例実施形態によれば、ポリマーは、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである。いくつかの実施例実施形態では、ポリマーのモノマーは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例実施形態によれば、複数の粒子は、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む。ある特定の実施例実施形態では、複数の粒子における粒子はコーティング材料のコーティング層を含む。いくつかの実施例実施形態によれば、コーティング材料は、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む。ある特定の実施例実施形態によれば、炭素質材料は、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである。いくつかの実施例実施形態では、金属は、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである。ある特定の実施例実施形態では、金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである。いくつかの実施例実施形態によれば、金属塩は、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩(a carbonate persulfate)、過マンガン酸塩、水酸化物(塩)、オキシ水酸化物(塩)又はスルホン酸塩の1つである。いくつかの実施例実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである。ある特定の実施例実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである。いくつかの実施例実施形態によれば、糖類又は糖類誘導体は、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである。いくつかの実施例実施形態では、ポリマーの耐薬品性は、pH10超、pH4未満又は塩度2M超への耐性を含む。ある特定の実施例実施形態では、ポリマーの耐薬品性は、pH14超、pH1未満又は塩度5M超への耐性を含む。いくつかの実施例実施形態によれば、複合体は力学的に自立型であるように構造化されている。いくつかの実施例実施形態では、複合体は、電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている。ある特定の実施例実施形態では、電気化学装置及び/又は電子装置は、燃料電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、電気化学的センサ、回路の相互接続装置、トランジスタ、電池、太陽電池又はタッチスクリーンの1つである。
【0183】
開示される実施形態の別の態様は、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクに関し、該インクは、有機溶媒とフッ素を含むポリマーとを含むマトリックス、ここで、ポリマーは有機溶媒中に溶解しており、ポリマーはエラストマーである、及びマトリックス内に含有されている複数の粒子を含み、ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、ポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0184】
耐薬品性可撓性電子機器部品のためのインクのいくつかの実施例実施形態では、ポリマーはコポリマーである。いくつかの実施例実施形態によれば、コポリマーはバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである。ある実施例実施形態では、コポリマーは塩素を含む。別の実施例実施形態では、コポリマーは臭素を含む。なおも別の実施例実施形態では、コポリマーはヨウ素を含む。いくつかの実施例実施形態では、有機溶媒はケトンを含む。ある特定の実施例実施形態では、ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン又はベンゾフェノンの1つである。いくつかの実施例実施形態によれば、有機溶媒はエステルを含む。いくつかの実施例実施形態では、エステルは、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸イソプロピル又は安息香酸エチルの1つである。ある特定の実施例実施形態によれば、ポリマーは、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである。いくつかの実施例実施形態では、ポリマーのモノマーは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例実施形態によれば、複数の粒子は、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む。いくつかの実施例実施形態では、インクは、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む。ある特定の実施例実施形態では、炭素質材料は、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである。ある特定の実施例実施形態によれば、金属は、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである。いくつかの実施例実施形態では、金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである。いくつかの実施例実施形態によれば、金属塩は、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物(塩)、オキシ水酸化物(塩)又はスルホン酸塩の1つである。いくつかの実施例実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである。ある特定の実施例実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである。いくつかの実施例実施形態では、糖類又は糖類誘導体は、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである。いくつかの実施例実施形態によれば、インクは印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーである。いくつかの実施例実施形態では、インクは、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、3D印刷、射出成形、スタンピング、転写印刷、又は水転写印刷の1つを介して堆積させるように構成されている。
【0185】
開示される実施形態のなおも別の態様は、電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体に関し、当該複合体は、複数の粒子とハロゲン元素の原子を含むコポリマーとを含み、ここで、コポリマーはエラストマーであり、コポリマーは、コポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、コポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0186】
開示される実施形態の一態様は、耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクに関し、当該インクは、有機溶媒と構造内にハロゲン化学元素を含むコポリマーとを含むマトリックス、ここで、コポリマーは有機溶媒中に溶解しており、コポリマーはエラストマーである、及びマトリックス内に含有されている複数の粒子を含み、ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、コポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている。
【0187】
開示される実施形態の別の態様は、可撓性電池に関し、当該電池は、複数の粒子とフッ素を含むポリマーとを含む複合材料を含み、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されており、ポリマー及び複数の粒子は弾性ポリマー-粒子複合体を形成している。
【0188】
開示される実施形態のなおも別の態様は、複数のZn粒子を含む第1の弾性複合材料の第1の層、及び第1の層内に複数のZn粒子を閉じ込めている第1のフッ素含有ポリマーを含むアノード、複数のAgO粒子を含む第2の弾性複合材料の第2の層、及び第2の層内に複数のAgO粒子を閉じ込めている第2のフッ素組み込みポリマーを含むカソード、並びにアノード及びカソードの間に配置されたヒドロゲル電解質の層を含む、可撓性電池に関する。
【0189】
可撓性電池のいくつかの実施例実施形態では、第1のフッ素含有ポリマー及び第2のフッ素含有ポリマーは、同じフッ素含有ポリマーである。いくつかの実施例実施形態によれば、Zn粒子はBi2O3粉末によって覆われている。ある特定の実施例実施形態では、可撓性電池は、アノード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第1のセパレータ材料の層を含む。いくつかの実施例実施形態では、第1のセパレータ材料はTiO2を含む。ある特定の実施例実施形態によれば、可撓性電池は、カソード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第2のセパレータ材料の層を含む。いくつかの実施例実施形態では、第2のセパレータ材料はセルロースを含む。いくつかの実施例実施形態によれば、ヒドロゲルは水酸化カリウム-ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲル(KOH-PVAヒドロゲル)である。
【0190】
この特許文献に記載される主題事項及び機能動作の実施は、この明細書に開示される構造及びその構造的均等物を含む、様々なシステム、デジタル電子回路配線において、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア若しくはハードウェアにおいて、又はこれらの1つ以上の組み合わせにおいて実施することができる。この明細書に記載される主題事項の実施は、1つ以上のコンピュータプログラム製品、すなわち、有形であり、非一時的なコンピュータ可読媒体上に実行のために符号化された、データ処理機による、又はその動作を制御するための、コンピュータプログラムの指示の1つ以上のモジュールとして実施することができる。コンピュータ可読媒体は、機械可読保存装置、機械可読保存基材、記憶装置、機械可読伝搬信号を生じる物体の合成物又はこれらの1つ以上の組み合わせとすることができる。「データ処理ユニット」又は「データ処理機」という用語は、例としてプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータを含む、データを処理するためのすべての機器、装置及び機械を包含する。機器には、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベースマネジメントシステム、オペレーティングシステム又はこれらの1つ以上の組み合わせを構成するコードを含むことができる。
【0191】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとしても知られる)は、コンパイル型又はインタプリタ型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアローンプログラムとして、又はモジュール、構成要素、サブルーチン若しくは演算環境における使用に好適な他のユニットとしてのものを含む任意の形態で配備することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム中のファイルに対応しない。プログラムは、他のプログラム若しくはデータを保有するファイルの一部(例えば、マークアップ言語ドキュメントに保存された1つ以上のスクリプト)に、問題のプログラムに割り当てられた単一のファイルに、又は複数の連携ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム若しくはコードの一部を保存するファイル)に保存することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ、又は1箇所に設置された若しくは複数箇所に分散し、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータにおいて実行されるように配備することができる。
【0192】
この明細書に記載される処理(方法)及び論理フローは、データが入力されると動作して出力を生じることによって機能を果たすための1つ以上のコンピュータプログラムを実行する、1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって行うことができる。処理及び論理フローはまた、特殊な目的の論理回路(logic circuitry)、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって行うこともでき、機器をこれらとして実装することもできる。
【0193】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしては、例として、一般及び特殊目的の両方のマイクロプロセッサ、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般に、プロセッサは、リードオンリーメモリ又はランダムアクセスメモリ、又は両方からの指示及びデータを受け取ることになる。コンピュータの必須の要素は、指示を行うためのプロセッサ、並びに指示及びデータを保存するための1つ以上の記憶装置である。一般に、コンピュータは、データを保存するための1つ以上の大容量装置、例えば、磁気、光磁気ディスク又は光学ディスクを含む、又は動作可能に連結され、大容量装置からデータを受け取る、又は大容量装置にデータを伝送する、又はその両方を行うことになる。しかしながら、コンピュータがこのような装置を有する必要はない。コンピュータプログラムの指示及びデータを保存するのに好適なコンピュータ可読媒体としては、例として、半導体記憶装置、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリ装置を含む、すべての形態の不揮発性メモリ、媒体及び記憶装置が挙げられる。プロセッサ及びメモリは、特殊な目的の論理回路によって補うこと、又はこれに組み込むことができる。
【0194】
明細書は、図面とともに、例示としてのみ考慮されることが意図され、ここで、例示とは実施例を意味する。ここで使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、文脈が明白に別段の指示をしない限り、複数形を同様に含むことが意図される。加えて、「又は」の使用は、文脈が明白に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むことが意図される。
【0195】
この特許文献は多くの細目を含有するが、これらは、一切の発明の範囲又は特許請求され得る範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態に特有であり得る特色の記載として解釈されるべきである。別々の実施形態の文脈でこの特許文献に記載されたある特定の特色は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の実施形態の文脈において記載される様々な特色は、複数の実施形態で別々に実施することも、又は任意の好適な下位の組み合わせにおいて実施することもできる。さらに、特色は、ある特定の組み合わせにおいて作用するものとして上で記載され得、且つさらには当初はそのように特許請求され得るが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特色は、いくつかの場合、組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせは、下位の組み合わせ又は下位の組み合わせの変形形態を対象とし得る。
【0196】
同様に、動作は特定の順序において図面に描かれるが、これは、所望の結果を達成するために、このような動作が示された特定の順序において、若しくは一連の順序において実行されること、又はすべての図示された動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。さらに、この特許文献に記載される実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態におけるこのような分離を要求するものとして理解されるべきではない。
【0197】
少数の実施及び実施例のみが記載されており、この特許文献における記載及び図示されることに基づいて、他の実施、強化形態及び変形形態を作製することもできる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体であって、
複数の粒子、及び
フッ素を含むポリマー、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含み、
ポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
耐薬品性可撓性複合体。
【請求項2】
ポリマーがコポリマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
コポリマーが塩素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
コポリマーが臭素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
コポリマーがヨウ素を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項6】
ポリマーが有機溶媒中に可溶性である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
複数の粒子における粒子がコーティング材料のコーティング層を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
コーティング材料が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
ポリマーの耐薬品性が、pH10超、pH4未満又は塩度2M超への耐性を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
ポリマーの耐薬品性が、pH14超、pH1未満又は塩度5M超への耐性を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項14】
複合体が、電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている、請求項1に記載の複合体。
【請求項15】
電気化学装置及び/又は電子装置が、燃料電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、電気化学的センサ、回路の相互接続装置、トランジスタ、電池、太陽電池又はタッチスクリーンの1つである、請求項14に記載の複合体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0197
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0197】
少数の実施及び実施例のみが記載されており、この特許文献における記載及び図示されることに基づいて、他の実施、強化形態及び変形形態を作製することもできる。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体であって、
複数の粒子、及び
フッ素を含むポリマー、ここで、ポリマーはエラストマーであり、ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含み、
ポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
耐薬品性可撓性複合体。
項2
ポリマーがコポリマーである、項1に記載の複合体。
項3
コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、項2に記載の複合体。
項4
コポリマーが塩素を含む、項2に記載の複合体。
項5
コポリマーが臭素を含む、項2に記載の複合体。
項6
コポリマーがヨウ素を含む、項2に記載の複合体。
項7
ポリマーが有機溶媒中に可溶性である、項1に記載の複合体。
項8
ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、項1に記載の複合体。
項9
ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、項1に記載の複合体。
項10
複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、項1に記載の複合体。
項11
複数の粒子における粒子がコーティング材料のコーティング層を含む、項1に記載の複合体。
項12
コーティング材料が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、項11に記載の複合体。
項13
炭素質材料が、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、項10又は12に記載の複合体。
項14
金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、項10又は12に記載の複合体。
項15
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、項10又は12に記載の複合体。
項16
金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物又はスルホン酸塩の1つである、項10又は12に記載の複合体。
項17
ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、項10又は12に記載の複合体。
項18
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、項10又は12に記載の複合体。
項19
糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、項10又は12に記載の複合体。
項20
ポリマーの耐薬品性が、pH10超、pH4未満又は塩度2M超への耐性を含む、項1に記載の複合体。
項21
ポリマーの耐薬品性が、pH14超、pH1未満又は塩度5M超への耐性を含む、項1に記載の複合体。
項22
複合体が、力学的に自立型であるように構造化されている、項1に記載の複合体。
項23
複合体が、電気化学装置及び/又は電子装置中に含まれている、項1に記載の複合体。
項24
電気化学装置及び/又は電子装置が、燃料電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックセル、電気化学的センサ、回路の相互接続装置、トランジスタ、電池、太陽電池又はタッチスクリーンの1つである、項23に記載の複合体。
項25
耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクであって、
有機溶媒及びフッ素を含むポリマーを含むマトリックス、ここで、ポリマーは有機溶媒中に溶解しており、ポリマーはエラストマーである、並びに
マトリックス内に含有されている複数の粒子
を含み、
ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、ポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
印刷用インク。
項26
ポリマーがコポリマーである、項25に記載のインク。
項27
コポリマーがバイポリマー、ターポリマー又はクオーターポリマーの1つである、項26に記載のインク。
項28
コポリマーが塩素を含む、項26に記載のインク。
項29
コポリマーが臭素を含む、項26に記載のインク。
項30
コポリマーがヨウ素を含む、項26に記載のインク。
項31
有機溶媒がケトンを含む、項25に記載のインク。
項32
ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン又はベンゾフェノンの1つである、項31に記載のインク。
項33
有機溶媒がエステルを含む、項25に記載のインク。
項34
エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸イソプロピル又は安息香酸エチルの1つである、項33に記載のインク。
項35
ポリマーが、0から4個の間のフッ素原子によってフッ素化されたエチレンモノマー、及び/又は0から6個の間のフッ素原子によってフッ素化されたプロピレンモノマーの組み合わせを含むコポリマーである、項25に記載のインク。
項36
ポリマーのモノマーが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン又はペルフルオロメチルビニルエーテルの少なくとも1つを含む、項25に記載のインク。
項37
複数の粒子が、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、金属フレーク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、粉末、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、項25に記載のインク。
項38
インクが、炭素質材料、金属、金属酸化物、金属塩、ポリマー、界面活性剤、糖類又は糖類誘導体の少なくとも1つを含む、項25に記載のインク。
項39
炭素質材料が、炭素、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブの1つである、項37又は38に記載のインク。
項40
金属が、白金、金、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、銅、ビスマス、インジウム、リチウム、ナトリウム、鉛又はチタンの1つである、項37又は38に記載のインク。
項41
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化銀(I)、酸化銀(I、III)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(IV)、酸化ビスマス(III)、酸化鉛(II)、酸化鉛(II、IV)、酸化チタン(IV)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム(I)、酸化マグネシウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化インジウム(III)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)の1つである、項37又は38に記載のインク。
項42
金属塩が、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物又はスルホン酸塩の1つである、項37又は38に記載のインク。
項43
ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン又はポリプロピレンオキシドの1つである、項37又は38に記載のインク。
項44
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はペルフルオロオクタンスルホネートの1つである、項37又は38に記載のインク。
項45
糖類又は糖類誘導体が、グルコース、スクロース、セルロース、メチルセルロース、マルトデキストリンメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの1つである、項37又は38に記載のインク。
項46
インクが、印刷用又はキャスティング適合性のインク又はスラリーである、項25に記載のインク。
項47
インクが、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップキャスティング、3D印刷、射出成形、スタンピング、転写印刷、又は水転写印刷の1つを介して堆積させるように構成されている、項46に記載のインク。
項48
電気化学セルのための耐薬品性可撓性複合体であって、
複数の粒子、及び
ハロゲン元素の原子を含むコポリマー、ここで、コポリマーはエラストマーであり、コポリマーは、コポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含み、
コポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
耐薬品性可撓性複合体。
項49
耐薬品性可撓性電子機器部品のための印刷用インクであって、
有機溶媒、及び構造内にハロゲン化学元素を含むコポリマーを含むマトリックス、ここで、コポリマーは有機溶媒中に溶解しており、コポリマーはエラストマーである、並びに
マトリックス内に含有されている複数の粒子
を含み、
ここで、有機溶媒の少なくとも一部が印刷用インクから除去されると、印刷用インクが弾性ポリマー-粒子複合体を形成するように、有機溶媒をマトリックスから蒸発させることができ、コポリマーは、形成された複合体内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
印刷用インク。
項50
可撓性電池であって、
複数の粒子、及び
フッ素を含むポリマー、
ここで、ポリマーはエラストマーであり、
ポリマーは、ポリマーによって形成された構造内に複数の粒子を閉じ込めるように構成されている、
を含む複合材料
を含み、
ポリマー及び複数の粒子が弾性ポリマー-粒子複合体を形成している、
可撓性電池。
項51
複数のZn粒子を含む第1の弾性複合材料の第1の層、及び第1の層内に複数のZn粒子を閉じ込めている第1のフッ素含有ポリマーを含むアノード、
複数のAgO粒子を含む第2の弾性複合材料の第2の層、及び第2の層内に複数のAgO粒子を閉じ込めている第2のフッ素組み込みポリマーを含むカソード、並びに
アノード及びカソードの間に配置されたヒドロゲル電解質の層
を含む、可撓性電池。
項52
第1のフッ素含有ポリマー及び第2のフッ素含有ポリマーが、同じフッ素含有ポリマーである、項51に記載の電池。
項53
Zn粒子がBi 2 O 3 粉末によって覆われている、項51に記載の電池。
項54
アノード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第1のセパレータ材料の層を含む、項51に記載の電池。
項55
第1のセパレータ材料がTiO 2 を含む、項54に記載の電池。
項56
カソード及びヒドロゲル電解質の層の間に配置された第2のセパレータ材料の層を含む、項51に記載の電池。
項57
第2のセパレータ材料がセルロースを含む、項56に記載の電池。
項58
ヒドロゲルが水酸化カリウム-ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲル(KOH-PVAヒドロゲル)である、項51に記載の電池。
【国際調査報告】