(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】マイクロウェルプレートにおける全血または他の生体試料からの免疫細胞の直接的な試料採取のための自動化された方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20230920BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20230920BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20230920BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20230920BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230920BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230920BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230920BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20230920BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N1/40
G01N15/00 B
G01N15/00 C
G01N33/49 A
G01N33/48 B
G01N33/53 Y
G01N33/543 541A
C12N5/078
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514097
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021043530
(87)【国際公開番号】W WO2022051043
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520431409
【氏名又は名称】ザルトリウス バイオアナリティカル インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャオピン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ペレス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ススキ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA02
2G045BA13
2G045BB12
2G045CA11
2G045CA25
2G045FA37
2G052AA30
2G052AB16
2G052AB27
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA24
2G052CA04
2G052GA09
2G052GA29
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA11
2G052JA15
2G052JA16
4B029AA09
4B029BB11
4B029DG08
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4B029FA15
4B029GA08
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4B065AA90X
4B065BA30
4B065BD04
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4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
マイクロウェルプレートのウェルに置かれた全血などの生体液試料からの免疫細胞の自動的な試料採取のための方法である。試料は、赤血球(RBC)と、RBCに結合するように設計される磁気ビーズとを含む。マイクロウェルプレートは、少なくとも1つの磁石を備える磁気アダプタを有する加振器に配置される。磁石は、磁気ビーズに結合されたRBCを、ウェルの壁(例えば、底壁または側壁)へと引き付けさせて移動させ、壁に当てて保持させる。次に、加振器は、ウェdルの領域の中の生体液試料における免疫細胞を実質的に均一または均質に懸濁させるが、ウェルの領域におけるRBCから免疫細胞が実質的に隔離されるように、ウェルの壁へのRBCの保持をなおも保つような手法で、ある時間期間にわたって、マイクロウェルプレートを加振するように動作させられる。加振の間または後に、試料プローブは次に、免疫細胞を含む試料の一部分を引き込むために、ウェルの領域へと下降させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロウェルプレートのウェルに置かれた生体液試料から免疫細胞を自動的に試料採取するための方法であって、
前記ウェルは壁を有し、
前記生体液試料は、(1)赤血球(RBC)と、(2)前記試料において前記RBCに結合するように設計される磁気ビーズと、を含み、
当該方法は、
a)少なくとも1つの磁石を含む磁気アダプタを有する加振器に前記マイクロウェルプレートを配置するステップであって、前記磁石が、前記磁気ビーズに結合させられた前記RBCを前記ウェルの前記壁に当てて保持させる、ステップと、
b)前記ウェルの領域の中の前記生体液試料における前記免疫細胞を実質的に均一に懸濁させるような手法で、ある時間期間にわたって、前記マイクロウェルプレートを前記加振器で加振し、それにより、前記ウェルの前記壁に当てて保持された前記RBCから前記免疫細胞が実質的に隔離されるステップと、
c)試料プローブを前記ウェルの前記領域において前記ウェルへと下降させ、前記免疫細胞を含む前記試料の一部分を前記領域から引き込むステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記磁気アダプタは、前記マイクロウェルプレートの各々のウェルについて1つの、個々の磁石を保持する構造を備え、前記磁気アダプタは、前記加振器の上面に適合し、前記上面と前記マイクロウェルプレートとの間に挟まれるように構成され、前記磁石は、前記RBCを前記ウェルの底壁または側壁に保持させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体液は全血を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体液は、嚢胞液試料、羊水、骨髄試料、脳脊髄液試料、液体生検、または絨毛膜絨毛試料を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料プローブはフローサイトメータの一部であり、
前記方法は、前記免疫細胞を含む前記試料の前記一部分を前記フローサイトメータへと導入するステップd)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加振器は原位置センサをさらに備え、
前記方法は、前記磁石によって作り出される磁場から前記原位置センサを遮蔽するステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加振するステップは、100rpmから1500rpmの間の速度での偏心回転で前記加振器を動作させるステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記磁気ビーズは、免疫細胞ではない前記RBCにおいて発現させられる分子に結合する特定の分子と共役させられる、1nm~50μmの間の推定寸法を伴う磁気ビーズまたは常磁性ビーズを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)およびc)において、前記加振器は加振しない状態にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記磁石を含む前記磁気アダプタは、前記加振器に組み込まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)を実施する前に前記マイクロウェルプレートにわたって穿孔可能シールを配置するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料は、インウェルマーカビーズまたはインウェル計数ビーズをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
多数のウェルを含むプレートを、制御されたプログラム可能な手法で加振するように構成され、頂面を有する加振器と、
前記加振器の前記頂面に取り外し可能に適合されるように前記加振器における構造と協働する磁気アダプタであって、1以上の磁石の配列を保持する構造を備え、前記加振器の前記上面に適合し、前記加振器の前記上面と前記プレートとの間に挟まれるように構成される、磁気アダプタと
を、組み合わせで備える加振器システム。
【請求項14】
前記磁石は、前記プレートが前記磁気アダプタの上面に配置されるとき、前記ウェルの底部分と位置合わせされるように前記磁気アダプタに配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記加振器のための制御システムをさらに備え、前記制御システムは、前記加振器が、前記ウェルの領域の中の生体液試料における免疫細胞を実質的に均一に懸濁させるような手法で、ある時間期間にわたって、前記プレートを加振するように、前記加振器を動作させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御システムは、100rpmから1500rpmの間の速度での偏心回転で前記加振器を動作させるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プレートに対してX方向、Y方向、およびZ方向に移動するようにロボット制御される試料採取プローブをさらに備え、前記試料採取プローブは、免疫細胞を含む試料を前記ウェルから引き込み、前記免疫細胞を分析機器へと導入する、請求項13から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記分析機器はフローサイトメータを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記加振器の前記頂面と前記磁気アダプタとの間に位置付けられる強磁性遮蔽体をさらに備える、請求項13から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記磁気アダプタは、前記プレートの各々のウェルについて1つの個々の磁石の配列を備える、請求項13から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記磁気アダプタは、前記マイクロウェルプレートの前記ウェルの側壁に近接する空間に前記磁石を位置付けるように構成される、請求項13から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
ロボット試料採取プローブと、
頂面を有する加振器と、
前記加振器の前記上面に配置されるように構成される磁気アダプタであって、前記磁気アダプタは、それ自体に配置されたマイクロウェルプレートを保持するための1以上の特徴部を有し、前記マイクロウェルプレートは、生体液試料を伴う複数のウェルを有し、前記磁気アダプタは、前記加振器の前記上面に取り外し可能に適合されるように前記加振器における構造と協働し、1以上の磁石を保持する構造を備え、前記加振器と前記マイクロウェルプレートとの間に挟まれるように構成される、磁気アダプタと、
前記マイクロプレートの前記ウェルの領域の中の免疫細胞を実質的に均一に懸濁させるような手法で、ある時間期間にわたって、前記マイクロウェルプレートを伴う前記加振器を加振するように構成された制御システムであって、前記ウェルの前記領域の中の前記免疫細胞は、前記ウェルの壁に磁気で結合させられる赤血球から実質的に隔離される、制御システムと、
前記マイクロウェルプレートの前記ウェルから引き込まれる免疫細胞において1以上の測定を実施するための分析計装機器であって、前記プローブは、前記免疫細胞を前記ウェルから引き込み、前記免疫細胞を前記機器へと導入する、分析計装機器と
を備えるフローサイトメータ。
【請求項23】
前記生体液試料は全血を含む、請求項22に記載のフローサイトメータ。
【請求項24】
前記生体液試料は、嚢胞液試料、羊水、骨髄試料、脳脊髄液試料、液体生検、または絨毛膜絨毛試料を含む、請求項22または23に記載のフローサイトメータ。
【請求項25】
前記加振器は原位置センサをさらに備え、前記加振器は、前記加振器と前記磁気アダプタとの間に位置付けられ、前記磁石によって作り出される磁場から前記原位置センサを遮蔽する遮蔽体をさらに備える、請求項22から24のいずれか一項に記載のフローサイトメータ。
【請求項26】
前記制御システムは、100rpmから1500rpmの間の速度での偏心回転で前記加振器を動作させる、請求項22から25のいずれか一項に記載のフローサイトメータ。
【請求項27】
前記赤血球は、前記赤血球の細胞表面において発現させられるが、前記免疫細胞の細胞表面においては発現させられない分子に結合する特定の分子と共役させられ、1nm~50μmの間の推定寸法を伴う磁気ビーズに結合させられる、請求項26に記載のフローサイトメータ。
【請求項28】
前記試料採取プローブは、前記マイクロウェルプレートの前記加振の後、前記免疫細胞が前記ウェルの前記領域において実質的に均一に懸濁されている間、前記マイクロウェルプレートの前記ウェルから試料を引き込む、請求項22から27のいずれか一項に記載のフローサイトメータ。
【請求項29】
前記ウェルからの前記試料の前記引き込みは、1つのウェルあたり0.5秒間から5分間の間の試料採取時間で行われる、請求項28に記載のフローサイトメータ。
【請求項30】
前記生体液試料のための1以上の試薬であって、RBCの表面に選択的に結合するように設計される抗体に共役させられる磁気ビーズを含む、1以上の試薬をさらに備える、請求項22から26のいずれか一項に記載のフローサイトメータ。
【請求項31】
赤血球と免疫細胞との混合物を含む液体試料において免疫細胞を試料採取する方法であって、
(A)前記赤血球に結合するように設計される中空粒子を前記液体試料へと導入するステップと、
(B)ステップ(A)の前または後のいずれかにおいて、前記液体試料をマイクロウェルプレートのアッセイウェルへと導入するステップと、
(C)前記アッセイにおける前記液体試料の頂面へと前記赤血球を浮遊させるステップであって、前記頂面は、前記免疫細胞を含む前記アッセイウェルの下方領域および中間領域の上方に位置する、ステップと、
(D)前記アッセイウェルの前記下方領域および/または前記中間領域から、免疫細胞を試料採取プローブで引き込むステップと
を含む方法。
【請求項32】
前記試料採取プローブは、前記アッセイウェルの前記中間層と前記下層との両方から免疫細胞を引き込む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(D)は、第1の試料採取プローブで、免疫細胞を前記アッセイウェルの前記下方領域から引き込むことと、第2の試料採取プローブで、免疫細胞を前記アッセイウェルの前記中間領域から引き込むこととを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記液体試料は全血を含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月1日に出願された米国非仮特許出願第17/009,225号への優先権を主張し、この特許出願は、本明細書において参照により組み込まれている。
【0002】
本開示は、マイクロウェルプレートのウェルに装填される生体液試料からの、免疫細胞(リンパ球、好中球、単球、およびマクロファージ、または、ほとんどの場合では白血球(WBC))などの細胞の直接的な試料採取のための方法に関する。本方法のためのある具体的な適用は、全血試料からの免疫細胞の直接的な試料採取である。本方法は、嚢胞液試料、羊水、骨髄試料、または脳脊髄液試料など、赤血球(RBC)を含み得る他の生体液試料からの免疫細胞の直接的な試料採取にも適している。
【背景技術】
【0003】
「マイクロウェルプレート」という用語は、典型的には、1枚のプレート当たり6個、12個、24個、48個、96個、384個、またはより多くのウェルといった、多くの小さい個別の試料保持ウェルの配列を形成する平坦な板の形態での試験デバイス形式、または、典型的には配列での40本の試験管といった、試験管配列の形態での試験デバイス形式に言及するために使用されている。用語は、技術的に「マイクロタイタプレート」または「マイクロプレート」と称されることがある。
【0004】
このようなマイクロウェルプレートは、典型的には試料処理装置と併せて使用され、試料処理装置は、試料の一部分をウェルのうちの1つから自動的に抽出し、例えばフローサイトメータ、血液分析装置、セルソータ、質量分析計などの分析機器へと試料を自動的に導入し、この分析機器は、抽出された試料の1以上の測定を実施する。
【0005】
白血球(WBC)分析のために血球計算器によって全血を試料採取することは、全血が小さい流路を詰まらせる傾向があるため、困難である。また、WBCおよびRBCの集団は、従来の血球計算器において区別するのが難しいことが知られている。したがって、技術的に、RBCを全血試料から除去するための方法が開発されてきた。赤血球(RBC)溶解のある方法は、白血球への最小の影響でRBCを溶解させる塩化アンモニウムなどの緩衝液を使用する。全血試料の処理のために使用されるマイクロプレート形式での従来のRBC溶解方法の使用は、労働集約的であり、血球計算器フローセルを詰まらせ得るRBCの残骸を作り出し、血球計算器を非常に汚し、ある試料から他の試料への持ち越しを相当に増加させてしまう。さらに、RBC溶解方法は、溶解で使用される低張緩衝液が生理的ではなく、通常の免疫細胞活動に影響を与える可能性があるため、データの完全性の喪失をもたらす可能性がある。
【0006】
他の方法である従来の勾配遠心分離はWBCの浄化のために使用でき、この方法は、試験管形式での試料のために使用されるが、マイクロプレート形式には適用可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、マイクロウェルプレート形式において、RBCを含む試料または他の生体液試料から免疫細胞を自動的に試料採取する方法のための技術への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様において、マイクロウェルプレートのウェルに置かれた生体液試料からの免疫細胞などの細胞の自動的な試料採取のための方法が提供され、そのウェルは壁(つまり、底壁または側壁)を有する。試料は、例えば、(1)RBCと、(2)抗体に共役させられる、または、試料においてRBCに結合するように設計される磁気ビーズとを含む。方法は、a)磁石を含む磁気アダプタを有する加振器にマイクロウェルプレートを配置するステップであって、磁石が、磁気ビーズに結合させられたRBCを、ウェルの壁に引き付けさせ、壁へ移動させ、壁に当てて保持させる、ステップと、b)ウェルの領域の中の生体液試料における免疫細胞を実質的に均一または均質に懸濁させるが、ウェルの領域におけるRBCから免疫細胞が隔離されるように、ウェルの壁へのRBCの保持をなおも保つような手法で、ある時間期間にわたって、マイクロウェルプレートを加振器で加振するステップと、c)試料プローブをウェルの領域においてウェルへと下降させ、免疫細胞を含む試料の一部分を領域から引き込むステップとを含む。
【0009】
他の態様では、加振器システムは、マイクロウェルプレートを制御されたプログラム可能な手法で加振するように構成された頂面を有する加振器の形態で記載されている。加振器は、加振器の頂面に取り外し可能に適合されるように加振器における構造と協働する磁気アダプタを備える。磁気アダプタは、個々の磁石の配列を保持する実質的に平坦な構造の形態であり、磁気アダプタは、加振器の頂面に適合し、加振器の頂面とマイクロウェルプレートとの間に挟まれるように構成される。
【0010】
ある構成において、磁石の配列は、マイクロウェルプレートが磁気アダプタの頂部に配置されるとき、マイクロウェルプレートのウェルの底と位置合わせされるように磁気アダプタに配置される。
【0011】
他の構成では、装置は、加振器のための制御システムを含む。制御システムは、ウェルの領域の中の生体液試料における免疫細胞を実質的に均一または均質に懸濁させるが、ウェルの領域におけるRBCから免疫細胞が実質的に隔離されるように、ウェルの壁への磁気的に結合させられたRBCの保持をなおも保つような手法で、ある時間期間にわたって、加振器がマイクロウェルプレートを加振するように加振器を動作させる。
【0012】
なおも他の態様では、ロボット試料採取プローブと、頂面を有する加振器と、頂面を有する加振器と、加振器の上面に取り外し可能に適合されるように加振器における構造と協働するように設計される磁気アダプタとを備えるフローサイトメータが提供される。さらに、磁気アダプタは、それ自体に配置されたマイクロウェルプレートを保持するための1以上の特徴部を有する。磁気アダプタは、個々の磁石の配列を保持する実質的に平坦な構造の形態を取ることができ、加振器とマイクロウェルプレートとの間に挟まれるように構成される。フローサイトメータは、マイクロウェルプレートのウェルに配置される生体液試料における免疫細胞などの細胞を実質的に均一または均質に懸濁させるような手法で、ある時間期間にわたって、マイクロウェルプレートを加振するように構成される、加振器のための制御システムを備える。免疫細胞は、ウェルの領域におけるRBCから免疫細胞が実質的に隔離されるように、ウェルの領域の中で懸濁されるが、磁石のうちの1以上のため、ウェルの壁への磁気的に結合させられたRBCの保持をなおも保つ。フローサイトメータは、マイクロウェルプレートのウェルから引き込まれる免疫細胞において計数、仕分け、または他の測定を実施するための分析計装機器も備え、プローブは、免疫細胞をウェルから引き込み、免疫細胞を機器へと導入する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】マイクロウェルプレート形式における全血試料といった赤血球を含む生体液試料から免疫細胞などの細胞を自動的に試料採取するためのワークフローまたは方法の、事前のステップにおける図である。
【
図1B】マイクロウェルプレート形式における全血試料といった赤血球を含む生体液試料から免疫細胞などの細胞を自動的に試料採取するためのワークフローまたは方法の、事前のステップにおける図である。
【
図1C】マイクロウェルプレート形式における全血試料といった赤血球を含む生体液試料から免疫細胞などの細胞を自動的に試料採取するためのワークフローまたは方法の、事後のステップにおける図である。
【
図1D】マイクロウェルプレート形式における全血試料といった赤血球を含む生体液試料から免疫細胞などの細胞を自動的に試料採取するためのワークフローまたは方法の、事後のステップにおける図である。
【
図1E】マイクロウェルプレート形式における全血試料といった赤血球を含む生体液試料から免疫細胞などの細胞を自動的に試料採取するためのワークフローまたは方法の、事後のステップにおける図である。
【
図2】前記加振器に固定され、前記加振器と前記マイクロウェルプレートとの間に位置付けられた磁気アダプタを示す、
図1による加振器に対して位置付けられたマイクロウェルプレートの図である。
【
図6】
図1EのステップEに従ってウェルから試料を引き込む、
図2のマイクロウェルプレートのウェルのうちの1つへと挿入される試料採取プローブの図である。
【
図7】磁気アダプタの下面の下方で直に隣接して配置された任意選択の強磁性遮蔽体を示す、
図4の磁気アダプタの分解図である。
【
図9】
図2の加振器および磁気組立体を含む、マイクロウェルプレート形式での全血試料を含む試料を処理するように適合されたフローサイトメータの図であって、フローサイトメータからの分析結果を表示するために使用される関連するワークステーションも示す図である。
【
図10】は、マイクロウェルプレートにおいて実施される様々な処理ステップのための所定位置において、フローサイトメータの内部へと加振器が移動させられている状態での
図9のフローサイトメータの斜視図であって、すべてのウェルを試料採取させることができる三軸ロボット移動システムに連結された試料採取プローブも示す図である。
【
図11】
図1EのステップEに従ってウェルのうちの1つから試料を引き込むための位置に試料プローブがある状態での
図9のフローサイトメータの他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
本開示の一態様において、マイクロウェルプレートのウェルに置かれた赤血球(RBC)を含む生体液試料からの免疫細胞などの細胞の自動的な試料採取のための方法が提供される。以下の記載において、流体試料は全血として記載されているが、上述のように、試料は、赤血球、他の細胞の種類、または対象ではない粒子など、混合した粒子の集団を含む他の生体液であり得る。これらの流体は、例えば、羊水、脳脊髄液などであり得る。
【0015】
方法論は、
図1A~
図1Eに示されており、
図1Aおよび
図1Bに示されている事前ステップと、
図1C、
図1D、および
図1Eに示されている事後ステップとから成る。プロセスは、
図2および
図3と併せてさらに説明されることになる。以下の記載から、マイクロウェルプレート100(
図2)の単一のウェル10について示されたプロセスが、試料12(例えば全血)が装填されたウェルのすべてについて実施されることは、理解されるものである。
【0016】
ステップA(
図1A)において、使用者が指定した処置および/または染色カクテル(試薬)が試料12に加えられる。このような試薬は、少数の白血球(WBC)を伴う試料についてのウェル識別(ウェルID)のためのマーカビーズ、WBC計数を容易にするためのインウェル計数ビーズ、染色試薬、または可能性のある他のものを含み得る。
【0017】
ステップB(
図1B)において、抗体に共役される、または、試料におけるRBC15に結合するように設計される磁気ビーズ14が、試料12に加えられる。このようなビーズの例は、抗ヒトCD235抗体被覆磁気ビーズである。磁気ビーズに被覆された抗体は、CD235分子に対する抗体に限定されず、RBCにおいて特異的に発現させられ、WBCにおいては発現させられない分子に対する他の抗体とすることもできる。さらに、ビーズにおいて被覆された部分分子は、抗体に限定されず、抗体フラグメント、アフィマ、および、RBCのみにおいて発現させられる、WBCにおいては発現させられない分子に特異的に結合し得る抗原など、他の分子とすることもできる。
【0018】
ステップAおよびBは、マイクロウェルプレート100(
図2)の分析機器への挿入の前に、実験台において実施され得る。ステップBの後、マイクロウェルプレート100は、磁気ビーズ14をRBC15に共役させるために、例えば1分間から2時間の間といったある時間の期間にわたって培養させることができ、培養のための期間は柔軟であり、使用者が最適化することができる。
【0019】
ステップC(
図1C)において、試料12におけるWBC17からのRBC15の磁気分離が実施される。具体的には、マイクロウェルプレート100が、BioShake 3000などのマイクロタイタプレート加振器104の頂部に配置され、加振器104は、加振器104の頂部に適合または配置された磁石120を含む磁気アダプタ102を有する。磁石120は、磁気ビーズ14を引き付け、磁気ビーズ14に結合させられたRBC15を、ウェル10の底壁16または側壁19に引き付けさせ、ウェル10の底壁16または側壁19へ移動させ、壁16(または、磁石の場所に応じて、壁19)に当てて保持させる。この作用は、WBC17を、ウェル10の底壁16に結合させられるRBC15の上方の層へと分離する。磁気アダプタ102は、マイクロタイタプレート加振器の頂部に配置され、特別な工具の使用なしで、使用者によって、加振器104の上面から取り外されるように、またはその頂面に挿入されるように、設計されている。したがって、アダプタ102は、加振器104の頂部とマイクロウェルプレート100との間に挟まれる。加振はステップCでは実施されないか、または、任意選択で、非常にわずかな加振だけがステップCにおいて実施でき、これは、磁気ビーズ14をRBC15に結合させることができ、磁石の場所に応じて、磁気ビーズ14にRBC15をウェル10の側壁19および/または底壁16へ引っ張らせることができる。磁石がマイクロウェルプレートの下方に位置付けられている実施形態では、RBCは、
図1Cに示されているように底壁16へと引っ張られる。
【0020】
ステップD(
図1D)では、RBC15が、
図1Dに示されているようにウェル底部16に沈殿した後、加振器104がオンされ、上液体層(ほとんどが血清および血漿)におけるWBC17を実質的に均一または均質に再懸濁のみさせるように、特定の範囲内の指定された速度(1分間あたりの回転数、rpm)で加振する一方で、RBC15は、磁石への共役された磁気ビーズ14の引き付けのおかげで、ウェル底部16にしっかりと付着させられたままとなる。別の言い方をすれば、このステップでは、加振器104は、ウェルの領域(符号18で指示されている)の中の生体液試料における免疫細胞17(WBC)を実質的に均一または均質に懸濁および分配させるが、領域18におけるRBCから免疫細胞17(WBC)が実質的に隔離されるように、ウェル10の底壁16および/または側壁19(
図1C)へのRBCの保持をなおも保つような手法で、ある時間期間にわたって、加振器104がマイクロウェルプレート100を加振する。加振を実施する手法(つまり、速度)は後でいくらか詳細に記載されており、その詳細は、RBC15へのビーズ14の結合の強度、加振器104自体の設計、マイクロウェルプレート100の設計、各々のウェルにおける液体体積に依存して変化する可能性があり、具体的な磁気ビーズおよび所与の加振器について実験的に決定され得る。例えば10秒間といった、いくらかの所定の時間期間の後、加振器104はオフにされる。
【0021】
ステップE(
図1E)では、加振が終えられた直後、または、任意選択で、加振が進行している間、試料採取プローブ200の動作を管理する特定の試料採取プロトコルを伴うソフトウェアが、試料プローブ200の先端を頂部液体層(領域18)へと挿入するために、および、ウェルの底16になおも磁気的に保持されているRBC15の汚染なしで、特定の量のWBC17を取得するために、試料プローブ200を自動的に案内する。この取得は、試料プローブ200の試料採取の高さ位置を制御することで実施される。したがって、このステップでは、試料プローブ200は、WBC17が実質的に均一または均質に懸濁されているウェルの領域18において、ウェル10へと下降させられる。次に、免疫細胞を含む試料の一部分が領域18から引き込まれる。これは
図6に示されている。
【0022】
WBC試料17の引き込みの後、試料は、フローサイトメータなど、プローブ200が属する分析機器において処理させることができる。試料は、試料導入ポートなど、分析機器へと導入させられ、分析機器は、試料への測定を実施するさらなる分析計装機器へと試料を運ぶ。
【0023】
加振器および磁気アダプタの設計
ここで
図2~
図5を参照すると、加振器104は、先に言及された加振器、Qlnstruments、ThermoFisher、SigmaAldrich、Southwest Scienceなどの会社からの加振器、および他のものなど、マイクロウェルプレートを加振または攪拌するように設計された市販のデバイスのいずれかの形態を取ることができる。加振器104は、典型的には、ウェルの中に渦の作用を誘導するために、偏心または軌道の回転で設計され、所定の速度または使用者が特定した速度で回転するようにプログラム可能に制御される。例えば、偏心のオフセットは2mmとでき、回転の最適な速度および期間は、例えば10秒間にわたる250rpmといった、ウェルの底からのRBC15の開放なしで、WBC17の所望の均一な分配がウェルの上方領域18において達成されるように決定される。
【0024】
図3を参照すると、磁気アダプタ102は、マイクロウェルプレート100の各々のウェル10について1つで個々の磁石120を保持して示されているように、実質的に平坦な構造の形態を取ることができる。代替として、アダプタプレート102における磁石120は、1つのウェルあたりに2つ以上の磁石として、1つの磁石あたりに2つ以上のウェルとして、または、磁石のグループとして、構成させることができる。1つのウェルあたりきっちり1つの磁石を有する構成は必要とされず、磁石が実質的に均一な磁場を生成することだけが必要とされる。磁気アダプタ102は、加振器104の上面106に適合し、
図2に示されているように上面106とマイクロウェルプレート100との間に挟まれるように構成されており、この場所で、磁石120はRBC15をウェルの底壁に保持させる。アダプタプレート102は、マイクロウェルプレート100の角116を保持し、プレートが加振の間に加振器104から外れるのを防止するように設計された角特徴部114を備える。また、角特徴部114は、使用者がマイクロウェルプレート100をアダプタ102に配置するとき、マイクロウェルプレート100を正しい場所へと案内するように設計され得る。アダプタ102は、工具の使用なしで、手作業で容易に、加振器104へ取り付けられるように、および、加振器104から取り外せるように、設計されている。これは、例えば、加振器104の前側および後側に設けられている凹所112に嵌まる、アダプタ102から下へ延びる弾性の把持スカート110によって、達成できる。位置決ピン108が、加振器104の上面から突出しており、アダプタプレート102に設けられた対応する凹所に嵌まるように供し、
図2に示されているようにアダプタプレートをぴったりと把持する。実施形態に応じて、位置決ピン108は、アダプタプレート102、マイクロウェルプレート100、またはそれら両方を、所定位置で把持および保持することができる。
【0025】
位置決ピン108は、アダプタプレート102を把持するために、把持位置へと移動するように、および把持位置から移動するように、コンピュータ制御され得る。この特徴は、加振器104が自動モードで使用されるときに重要であり得る。このモードでは、ロボットアームがマイクロウェルプレート100を加振器104から取り外すとき、および/または、新しいマイクロウェルプレートを加振器に置くとき、ソフトウェアが位置決ピン108を自動的に緩めるかまたは締め付けることができる。磁気アダプタの設計が磁気遮蔽体302(
図7および
図8の検討を参照されたい)を含むとき、ある加振器(BioShake 3000など)における既存の把持/位置決ピン108は、マイクロウェルプレートに達してそれを所定位置で保持するだけの長さがない。これに対する1つの解決策は、磁気アダプタにさらなる柔軟な把持特徴部(図示せず)を追加することである。これらの柔軟な把持特徴部は、BioShake 3000の位置決ピン108が閉じるときに柔軟な把持特徴部がマイクロウェルプレートを把持するために押すように、BioShake 3000における既存の把持/位置決ピン108と相互作用する。次に、BioShake 3000の位置決ピン108が緩むとき、磁気アダプタにおける柔軟な把持特徴部も緩み、マイクロウェルプレートは解放される。当然ながら、これらの解決策は他の加振器の設計に適用でき、実際、
図3の磁気アダプタ102の具体的な形状因子および設計は、問題となっている加振器の表面形状、位置決ピン、および把持装置と、マイクロウェルプレート100の具体的な構成とに適合するために、変化することができる。
【0026】
アダプタプレート102および磁石120のある可能な構成が
図7において分解図で示されている。アダプタプレート102は凹んだポケット300の配列を有し、各々のポケット300は、磁石120のうちの1つを受け入れて保持する。ポケット300(延いては、磁石120)の配列の配置は、各々の磁石が標準的な形式のマイクロウェルプレートにおいて試料ウェルの直ぐ下方に位置付けられるように設計されるようになっている。
図7は96個のウェルのプレートを示しているが、同じ設計検討は、384個のウェルのプレートなど、異なる数のウェルを伴うマイクロウェルプレートに適用することになる。代替として、アダプタプレート102における磁石120は、1つのウェルあたりに2つ以上の磁石として、1つの磁石あたりに2つ以上のウェルとして、または、磁石のグループとして、構成させることができる。1つのウェルあたりきっちり1つの磁石を有する構成は必要とされず、磁石が実質的に均一な磁場を生成することだけが必要とされる。
【0027】
加振器104は、典型的には原位置センサを伴って構成され、原位置センサは、例えばホール効果センサの形態を取り得る。加振器104の直ぐ上方のアダプタプレート102における磁石の存在は、加振器における原位置センサの動作と干渉する可能性がある磁場を生成する。これを改善するために、ある任意選択の実施形態では、ステンレス鋼またはミューメタルなどの強磁性材料の薄い平坦な板の形態での強磁性遮蔽体302(
図7、
図8)が、アダプタプレート102および遮蔽体302が加振器104に配置されるときに原位置センサの動作が悪影響を受けないように、
図7および
図8に示されているようにアダプタプレート102の下方に位置付けられる。遮蔽体302は、任意の適切な手法で、磁気アダプタプレート102の底面に装着または固定させることができる。遮蔽体302は、磁力線を再方向付けし、原位置センサの場所における磁場の強さを低下させる。遮蔽体の厚さおよび材料は、遮蔽体が強磁性材料から作られていれば、特に重要ではない。しかしながら、加振器104と磁石120との間の分離の距離を増加させることと、磁石120の下方に遮蔽体302を追加することとは、加振器を正しく動作させることができる。
【0028】
(実施例)
マイクロウェルプレートにおける全血試料からの免疫細胞の直接的な試料採取によるフローサイトメータ(
図1、
図9~
図11)
本方法が実施され得るシステムの例が
図9~
図11に示されている。
図9は、全血試料を含む試料をマイクロウェルプレート形式100において処理するのに適合されているフローサイトメータ400の図であり、マイクロウェルプレート形式100は、
図2の加振器104および磁気アダプタ102の組立体を含む。示されている機器は、本発明の譲受人のiQue(登録商標)3フローサイトメータであるが、この実施例で検討されている原理は、他の分析デバイスまたはフローサイトメータに適用することになる。
図9は、フローサイトメータからの分析結果を表示するために使用される関連するワークステーション410も示している。ワークステーション410は、後で記載されている「全血試料モジュール」を開始するなど、所与のマイクロウェルプレートと、マイクロウェルプレート100に装填された関連する試料とについて実施される特定のワークフローおよび処理ステップを使用者に指定させるために、インターフェースを含み得る。フローサイトメータは、試薬、緩衝液、洗浄溶液など402の供給も含み得る。フローサイトメータ400は、マイクロウェルプレート100が加振器104に配置される装填ステーション404と、フローサイトメータの内部へのアクセスを可能とするために開くヒンジに搭載された透明プラスチック仕切り412と、濯ぎステーション406(
図10)とを備える。
【0029】
図10は、
図9のフローサイトメータ400の斜視図であり、開位置へと移動させられた透明仕切り412を示しており、濯ぎステーション406に隣接するフローサイトメータ400の内部へと移動させられた加振器104を示しており、フローサイトメータ400の内部では、様々な処理ステップがマイクロウェルプレート100において実施され得る。
図10は、三軸ロボット移動システム414に連結された試料採取プローブ200も示している。移動システム414は、X方向、Y方向、およびZ方向において移動するためのプログラム制御下にあり、マイクロウェルプレート100におけるすべてのウェルを、試料採取プローブ200によって試料採取させることができる。
【0030】
フローサイトメータ400は、
図10に示されているフローサイトメータのパネルの後に位置決めされたマイクロウェルプレート100のウェルから引き込まれた免疫細胞にフローサイトメトリを実施するための分析計装機器も備え、これは従来からあり、そのため、簡潔性のために本書では詳細に説明されない。プローブ200は、ウェルから免疫細胞を引き込み、免疫細胞を分析計装機器へと導入する。
【0031】
図11は、
図1Eおよび
図6のステップEに従ってマイクロウェルプレート100におけるウェルのうちの1つから試料を引き込むための位置に試料プローブ200がある状態での
図9のフローサイトメータの他の斜視図である。
【0032】
フローサイトメータ400は、(
図2に示されているように、磁気アダプタ102が加振器104の上面に位置付けられている状態で)使用者がマイクロウェルプレート100を加振器104に配置する場所である装填ステーション404(
図9)を備える。加振器104は、
図10を見ると、加振器104を装填ステーション404(
図9)から透明仕切り412における開放を通じてフローサイトメータの内部へと移動させるモータ駆動電気機械システムに連結されている。
【0033】
図1の方法によれば、
図1Aおよび
図1BのそれぞれのステップAおよびBは、典型的には、実験台においてなど、オフラインで実施される。ステップBの後、
図9を見ると、マイクロウェルプレート100は次に装填ステーション404において加振器104に配置される。加振器104とマイクロウェルプレート100との間に挟まれた磁気アダプタ102のおかげで、RBCは、マイクロウェルプレートが磁気アダプタに配置されるとき、
図1CのステップCに従ってマイクロウェルプレートのウェルの底へと引っ張られる。例えば、期間が30秒間、60秒間、または90秒間であり得るステップCを実施する間またはその直後に、加振器は、
図9の装填ステーション404から、
図10および
図11に示されている位置におけるフローサイトメータの内部へと移動させられる。
【0034】
図1DのステップDにおいて、試料における免疫細胞を領域18(
図1D)におけるウェルの頂部において実質的に均一または均質に懸濁させるために、RBCが底壁および/または側壁に当てて保持されたままである間、加振器104はある時間の期間にわたって作動させられる。この加振のステップは、
図9の装填ステーション404において、または、
図10に示されている試料取得位置において、加振器104によって行うことができる。
【0035】
図1EのステップEにおいて、加振器104は停止させられ、その直後に試料プローブ200が、
図6に従って実質的に免疫細胞だけを含む試料を引き込むために、
図11に示されているように、マイクロウェルプレートの第1のウェルへと下降させられる。試料プローブは、試料を保持するマイクロウェルプレート100のウェルのいずれかおよび/または全部を同じ手法で試料採取するために、ロボット移動システムによって、X方向、Y方向、およびZ方向において動作させられる。試料は、蠕動ポンプまたは真空ポンプ(図示せず)からの力を用いてプローブ200によって取得された後、フローサイトメータ400の中の分析計装機器(図示せず)へと送達され、フローサイトメータ400は従来の手法でフローサイトメトリを実施する。例えば、
図9のフローサイトメータ400は、米国特許第10,048,191号、第9,897,531号、第9,797,917号、および第6,890,487号に記載されている手法で構成される。
【0036】
ソフトウェア動作
図9から
図11のフローサイトメータにおける
図1Dの加振モードおよび
図1Eの試料採取モードの動作は、フローサイトメータ400の中でのソフトウェア動作および処理装置によって管理され、これらは、加振器104、試料プローブ200、および、関連する3軸ロボット移動システム414の動作を制御する。これらの動作は、全血試料を処理するために設計され、以下の記載において「全血試料モジュール」または「全血試料モード」と称されるフローサイトメータのモードまたはモジュールの中においてである。このモードのパラメータは、
図9のワークステーション410によってアクセスされ得、使用者によって構成され得るか、または、使用者が所与のマイクロウェルプレートの処理について全血試料モジュールを選択するときに自動的に実施されるあらかじめ設定された命令であり得る。
【0037】
モジュール検出およびRBC引き下ろし
図10において、試料採取の前に、試料採取ヘッド411(
図10)から延びるプローブ(
図10、符号200)が、磁気アダプタ102と接触するまで下降させられる。プローブ200がデッキ高さの違いを感知すると(加振器の頂部における磁気アダプタ102の存在のため)、フローサイトメータにおけるソフトウェアは、システムが全血試料モジュールまたは全血試料モードで動作していることを使用者に警告するように作動させられる。RBCの引き下げのための所定の待機期間が、このモードでは、
図1CのステップCに自動的に含まれる。使用者が全血試料モジュールを選択し、プローブが磁気アダプタ102を検出しない場合、実行は、使用者にエラー状態を通知する警告を伴って停止することになる。
【0038】
自動最適化加振
フローサイトメータのためのソフトウェアは、特定の試料取得テンプレートを伴う特定の全血試料モジュール(動作モード)を自動的に採用する。そのため、ソフトウェアは次に、ウェルの底壁または側壁に結合されたままになるRBCを懸濁させず、WBCだけを懸濁させるために、特定の加振速度を設定する。
【0039】
加振速度範囲について、WBCを試料ウェルの中の透明な頂部液体に均質に分配されたままにする一方で、RBCの無傷の層を磁気ビーズによって引き下ろしたままにするために、BioShake 3000における加振速度範囲は100rpmから1500rpmの間である。1500rpmを超えると、磁気ビーズが付着させられたRBCが、WBCを含む透明な頂部液体へと上昇させられ始める。この最大速度は、例えば頂部の液体の色の観察によって実験的に決定でき、頂部液体は、速度が増加させられるにつれて、色を黄色から赤色がかった色へと変化させる。例えば、ひとたび1500rpmを上回ると、頂部液体の色は、黄色がかった色から、赤色がかった色または完全な赤色へと変化し始める。
【0040】
さらに、加振速度範囲は、生体液試料に配置された磁気ビーズ材料または常磁性ビーズ材料と、磁場の強さとに関連付けられる。本開示における概念実証のために使用される磁気ビーズを伴う試薬は、20~500nm(直径)の間の推定寸法を伴うナノ磁気ビーズ(Iron oxide、Fe3O4)を有するEasySep RBC枯渇試薬(StemCell Tech、Cat. #18170)であった。磁気ビーズは、人のRBCの細胞表面のみにおいて発現させられたCD235分子に結合するために、抗ヒトCD235抗体と共役させられた。ひとたび磁場がウェルの下方に存在すると(アダプタプレートの磁石のため)、磁気ビーズと結合させられたRBCはウェルの底へと引き下ろされた。
【0041】
概して、最適な加振速度は、加振器自体の偏心または振幅によっても決定され得るため、加振器の回転の最適な速度はこの因子にも依存する可能性がある。
【0042】
自動取得
全血試料モードにおいて動作するフローサイトメータのソフトウェアは、プローブの先端が、WBCが実質的に均一または均質に懸濁させられているウェルの頂部液体層へと、ウェルの底におけるRBCに接触または阻害することなく入るように下降するために、試料採取プローブを案内する。
図6および
図1Eを見ると、試料採取時間および速度は、プローブへのRBC汚染を回避するために、特定の範囲に限定される。試料採取は、1つのウェルあたり試料採取時間が0.5秒間から5分間の間の範囲の試料採取時間で、加振停止の直後、または加振の間に行われる。
【0043】
自動分析
試料プローブ200がマイクロウェルプレートのウェルを試料採取した後、試料は、
図9の機器400の一部であるフローサイトメータ機器自体へと導入される。フローサイトメータ機器へのWBC試料の通過の後、機器のための分析ソフトウェアが自動データ分析を実施する。ある可能な構成では、この分析は、自動化されたビーズに基づく試料ウェル識別と免疫細胞計数正規化とを含む。データ分析の詳細は、本開示にとって特に関連することはなく、技術的に知られており、特許および技術文献に記載されているアルゴリズムを使用することができる。
【0044】
図9~
図11のフローサイトメータおよび試料採取装置におけるさらなる詳細は、米国特許第10,048,191号明細書、第9,897,531号明細書、第9,797,917号明細書、および第6,890,487号明細書に述べられており、それらの内容は本明細書において参照により組み込まれている。
【0045】
追加の任意選択の特徴
全血試料モジュールソフトウェアが、磁気アダプタ102が加振器104に正確に設置されたことを確保し、それが確認されるとき、加振および試料採取のプロトコルを適切な値に固定する。追加の洗浄がソフトウェア試料採取プロトコルにおいて自動化され得る。モジュールは、マーカまたは計数ビーズが存在する場合、特定の自動化された分析も可能にすることができる。さらに、モジュールは、アッセイに伴う潜在的な問題を意味する試料におけるRBC汚染も検出することができる。
【0046】
ある構成では、事故における汚染および溢れ出しを防止することでバイオセーフティを増加させる、マイクロウェルプレートのウェルを覆う穿孔可能シールまたは膜(例えば、Excel Scientific X-Pierceプレートシール)を提供することが可能である。これは、未知の病原体を潜在的に持ち得る血液試料にとって特に重要である。シールは、染料などの試薬、および磁気ビーズが試料に加えられた後であって、プレートが加振器および磁気アダプタに配置される前に、マイクロウェルプレートに適用される。
【0047】
他の構成では、インウェルマーカビーズを提供することが可能である。このようなビーズは、特定の条件のため、少数のWBCを伴う試料についての試料ウェル識別(ウェルID)のために使用され得る。インウェル計数ビーズを提供することも可能である。このようなビーズは、インウェル計数ビーズの計数に基づいてWBC濃度を正確に計算することを可能にする。このようなビーズは、事前ステップAにおいて、机上においてオフラインで加えることができる、または、
図10の濯ぎステーション406に存在し、加振動作(ステップD、
図1D)の直前に導入される試薬の一部とすることができる。
【0048】
特定のアッセイマイクロウェルプレートが、全血試料との使用のために検討されており、具体的には、96個のウェルのプレートについて典型的であるより小さい体積を有するものが検討されている。例えば、通常のウェル面積の約半分のウェル面積を伴う96個のウェルの形式のGreinerのCat #675101からのプレートが使用できる。このウェルの形状は、容易なプローブアクセスのために、同じ体積の試料を伴う頂部層高さを増加させ、試料/試薬の使用を最小限にし、試料におけるRBC汚染の危険性を低減する。
【0049】
代替の実施形態
1.
図1と併せて説明されているように、免疫細胞を分離するための主な方法は、磁気ビーズに結合されたRBCをウェルの底へ磁気で引っ張ることによるRBCのネガティブ選択であり、磁石は、アッセイプレートのウェルの底に近接して位置付けられる。磁石のための代替の場所は、隣接するウェル同士の間の隙間であり、そのため、磁場が、磁気ビーズに結合された細胞をアッセイウェルの側壁(
図1Cにおける符号19)に引っ張ることができる。この構成では、磁気アダプタ102の形態因子および設計は、組み込まれた磁石がウェルの底の代わりにウェルの側壁に近接するように、マイクロウェルプレート100の底に形成された空間へと突出する特徴部を、磁気アダプタが備えるようになっている。
【0050】
2.細胞を分離するための第2の代替の方法は、アッセイウェルにおける液体試料の頂面に任意の特定の細胞集団を結合および浮遊させることができる、抗体またはアフィマなどの対象の分子と共役される中空または浮揚性の粒子を使用することによるものである。例えば、RBCをウェルの頂部に浮遊させること、および、WBCをプローブへと引き込むためにウェルの下方領域または中間領域から試料採取することは、可能であり得る。この設計に従って、赤血球と免疫細胞との混合物を含む液体試料において免疫細胞を試料採取する方法は、(A)RBCに結合するように設計される中空または浮揚性の粒子を試料へと導入するステップと、(B)ステップ(A)の前または後のいずれかにおいて、液体試料をマイクロウェルプレートのアッセイウェルへと導入するステップと、(C)中空または浮揚性の粒子へのRBCの結合のおかげで、アッセイにおける液体試料の頂面へとRBCを浮遊させるステップであって、その頂面は、WBCを含むアッセイウェルの下方領域および中間領域の上方に位置する、ステップと、(D)アッセイウェルの下方領域または中間領域から、WBCを試料採取プローブで引き込むステップとを含み得る。
【0051】
3.マイクロウェルプレートにおいて細胞を分離するための第3の代替の方法は、各々層が異なる細胞集団を含む状態で、複数の液体層をマイクロウェルにおける試料において形成させるための勾配遠心分離を使用することである。
【0052】
4.上記の異なる細胞分離方法のすべてについて、細胞の分離の後、試料採取プローブが、対象の細胞/粒子の集団を含む特定の層へと下降し、試料を取得する。試料採取プローブは、1つだけの層を試料採取するためにウェルの特定の場所まで下降し得る、または、異なる層を試料採取するために、同じウェルにおける複数の場所へと下降し得る。
【0053】
5.試料プローブは、1以上の層を取得するために1以上の場所へと下降する1つだけのプローブであり得る。代替の方法は、1以上の層から試料を取得するために、1以上の場所へと下降する複数のプローブを使用することである。
【0054】
6.本開示の方法は、例えば、血液分析装置、セルソータ、質量分析計、DNA/RNA分析装置といった、任意の検出システムに適用され得る。したがって、
図1A~
図1Eの方法論はフローサイトメータに限定されない。したがって、
図9~
図11に示されている器具は、例を用いて提供されており、限定ではない。
【0055】
さらなる検討
本開示の方法の適用のうちの1つは、小形化された「シャーレにおける臨床試験」の用途であり、免疫学、免疫腫瘍学、免疫毒性、薬物プロファイリング研究、および同様の研究の取り組みのために、小形化された形式で全血試料を直接的に取得/分析するフローサイトメータの能力を拡張する。この開示の方法は、液体生検、脳脊髄液(CSF)、絨毛膜絨毛試料(CVS)、羊水(AF)、嚢胞液試料、骨髄試料など、RBCを含む液体における混合した試料からの対象の1以上の粒子、または、他の対象ではない粒子の任意の試料採取に適用できる。混合した試料は、抗体および他の染料であらかじめ染色されてもよく、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、ホルモン、および他の生物学的な因子または粒子の同時の測定のために、Sartorius/Intellicyt QBeadsなどの異なる機能性ビーズとあらかじめ混合されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 ウェル、12 試料、14 磁気ビーズ、15 RBC、16 底壁、17 WBC、免疫細胞、18 ウェルの領域、19 側壁、100 マイクロウェルプレート形式、102 磁気アダプタプレート、104 マイクロタイタプレート加振器、106 上方面、108 把持/位置決ピン、110 把持スカート、114 角特徴部、116 角、120 磁石、200 試料採取プローブ、試料プローブ、300 ポケット、302 強磁性遮蔽体、400 フローサイトメータ、機器、402 試薬、緩衝液、洗浄溶液、404 装填ステーション、406 濯ぎステーション、410 ワークステーション、411 試料採取ヘッド、412 透明プラスチック仕切り、414 三軸ロボット移動システム
【国際調査報告】