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特表2023-540968燃料電池のためのガス拡散層を製造するためのグリーンペーパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】燃料電池のためのガス拡散層を製造するためのグリーンペーパー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230920BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20230920BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230920BHJP
   D21H 27/02 20060101ALI20230920BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20230920BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230920BHJP
   C25B 11/032 20210101ALI20230920BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20230920BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20230920BHJP
   D21H 27/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 K
H01M4/92
H01M8/10 101
D21H27/02 Z
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/081
D21H27/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514853
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2021025327
(87)【国際公開番号】W WO2022048794
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】102020005480.3
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518041917
【氏名又は名称】ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Giesecke+Devrient Currency Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinzregentenstrasse 161, 81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】タンチャー、アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
4L055
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA12
4K011AA14
4K011AA31
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB16
4K021DB18
4L055AF02
4L055AG03
4L055AH01
4L055AJ01
4L055AJ05
4L055BD17
4L055CD13
4L055CD25
4L055CD27
4L055EA08
4L055EA16
4L055FA30
4L055GA01
5H018AA06
5H018BB08
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE02
5H018EE03
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
本発明は、燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーに関する。本発明は、燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーを製造する方法にも関する。本発明では、グリーンペーパーは、少なくとも1つの第1の透かし付きペーパーウェブを含む。この透かしは、グリーンペーパーから製造されるガス拡散層(GDL)の流動場又はガス分配構造のためのパターニングを形成する。第1のペーパーウェブは、非常に好ましくは、金属粉末及び/又は金属繊維と混合される。最終的なGDLは、バインダー除去、焼結、コーティング、原子層の堆積(ALD-原子層堆積)及び場合によりさらなる操作工程後に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーにおいて、少なくとも1つの透かしが作られた少なくとも1つの第1のペーパーウェブを有し、前記透かしは、前記グリーンペーパーから製造される前記ガス拡散層(GDL)の流動場のためのパターニングを形成することを特徴とするグリーンペーパー。
【請求項2】
前記透かしは、前記ペーパーの厚さが変化するが、前記ペーパーの密度が変化しない真の透かしであること、及び/又は前記透かしは、前記ペーパーの厚さが減少するが、同時に前記ペーパーの密度が増加する疑似透かしであることを特徴とする、請求項1に記載のグリーンペーパー。
【請求項3】
第1のペーパーウェブ及び少なくとも1つの第2のペーパーウェブを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のグリーンペーパー。
【請求項4】
前記透かしは、少なくとも1つのチャネルの形態のくぼみとして構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリーンペーパー。
【請求項5】
前記透かしは、前記GDL中にレジストレーションマーク、位置合わせ補助、センタリング補助又は通路の出発点を生成するために、パターニングをほとんど有さないか又は実質的に有さないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のグリーンペーパー。
【請求項6】
前記燃料電池のアノード側及びカソード側の前記透かしのパターンは、同一ではないが、代わりに面積及び材料の厚さ方向において正確に鏡面対称であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のグリーンペーパー。
【請求項7】
燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーを製造する方法において、好ましくは金属粉末及び/又は金属繊維と混合された少なくとも1つの第1のペーパーウェブは、前記グリーンペーパーから製造される前記ガス拡散層(GDL)の流動場のためのパターニングを形成するために生成され、少なくとも1つの透かしは、前記ペーパーウェブ内に作られることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記透かしは、前記ペーパーの厚さが変化するが、前記ペーパーの密度が変化しない真の透かしによって形成されること、及び/又は前記透かしは、前記ペーパーの厚さが減少するが、同時に前記ペーパーの密度が増加する疑似透かしによって形成されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1のペーパーウェブ(20)が形成され、及び第2のペーパーウェブ(30)が形成され、濡れたままの状態の前記ウェブ(30)は、前記第1のペーパーウェブ(20)と一緒にされ、且つそれに固く接合され、前記第1のペーパーウェブ(20)と前記第2のペーパーウェブ(30)とは、前記GDLのためのグリーンペーパーを一緒に形成することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のペーパーウェブ(20)及び/又は第2のペーパーウェブ(30)は、円網抄紙機(12、14)内で生成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のペーパーウェブ(20)及び/又は第2のペーパーウェブ(30)は、製紙原料がノズルを介して円筒形ワイヤ(44)に塗布されるショートフォーマー(40)内で生成されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のペーパーウェブ(20)は、前記第2のペーパーウェブ(30)よりも高い密度を有し、前記第1のペーパーウェブは、例えば、3g/cm~10g/cmの密度を有し、及び前記第2のペーパーウェブは、1g/cm~5g/cmの密度を有することを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のペーパーウェブ(20)は、前記第2のペーパーウェブ(30)よりも微細な紙繊維スラリーによって形成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のペーパーウェブ(20)は、前記グリーンペーパーから製造される前記ガス拡散層(GDL)中において、触媒金属、好ましくは白金でコーティングされた膜(CL)のための拡散層を形成し、及び前記第2のペーパーウェブ(30)は、前記グリーンペーパーから製造される前記ガス拡散層(GDL)中において、流動場を有する分配層を形成することを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ガス/電力/反応物の分配のために、対応して多孔質の伝導性材料を必要とするプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、プロトン交換膜電解槽セル(PEMEC)、電解槽セル又は別の電力変換技術における、請求項1~14のいずれか一項に記載のグリーンペーパーから製造されるガス拡散層(GDL)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパー(green paper)に関する。本発明は、燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーを製造する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池とも呼ばれるプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)形の燃料電池の場合、バイポーラプレート(BPP)及びガス拡散層(GDL)により、触媒の白金でコーティングされた膜(CL又は触媒層とも呼ばれる)までガスが分配される。2つのバイポーラプレート間の全体的な構成は、膜-電極接合体(MEA)とも呼ばれる。
【0003】
水素と酸素との接触酸化の下、燃料電池は、電力、水蒸気及び熱を発生させる。
【0004】
自動車部門では、現在、繊維材料、例えば炭素繊維から製造されるGDL及びコーティングされた鋼製のBPPが確立されている。ここで、繊維材料は、織布/編布又は製紙技術によって製造された繊維マットとして実現され得る。このマットは、例えば、特許文献1から公知である。この材料はまた、CLに隣接する微細なプライと、BPP及び流動場に隣接するより粗いプライとの2つのプライからなり得る。
【0005】
製紙技術によって製造された繊維マットは、グリーンペーパー又は焼結紙と呼ばれ、その後の作業工程の1つにおいて、バインダー除去及び/又は焼結され、それによりGDLまでさらに加工される。
【0006】
炭素繊維をベースとするGDLを製造する場合の特定の短所は、炭素繊維及びまたそのさらなる加工に比較的高いコストが伴うことである。さらに、炭素繊維は、圧力の影響を受けやすく、これにより繊維が破壊される場合がある。これは、したがって、場合によりCL/PEMを損傷させることがある。さらに、炭素繊維は、屈曲又は膨潤し、その際、BPPのチャネルを貫通し、そのため、ガス及び水の一時的な流れを減少させ、燃料電池の効率を損なう場合がある。さらに、GDLの多孔度の調節能力には制限がある。粗い多孔度と微細な多孔度との組み合わせを有する2層GDLの場合、少なくとも2つのさらなる作業工程が必要である。
【0007】
最後に、従来技術から公知のGDLは、パターニングの可能性をもたらさない。そのため、流動場は、全体的にBPPによって形成される必要がある。この目的のため、ガス分配構造又は流動場のためのパターニングを実現するためにBPPのエンボス加工が必要となるか、又はグリーンペーパーの加工が必要となる。これは、一般に、独立した費用のかかる不便な手順である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第10 2008 042 415 B3号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の基礎となる目的は、従来技術の短所がなくなるような方法において、燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するための汎用的なグリーンペーパー及びまた燃料電池のためのガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーを製造する汎用的な方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴によって実現される。本発明の発展形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明では、グリーンペーパーは、少なくとも1つの透かしが作られた少なくとも1つの第1のペーパーウェブを有する。この透かしは、グリーンペーパーから製造されるガス拡散層(GDL)の流動場又はガス分配構造のためのパターニングを形成する。特に好ましくは、第1のペーパーウェブは、金属粉末及び/又は金属繊維と混合される。最終的なGDLは、バインダー除去、焼結、コーティング、原子層の堆積(ALD-原子層堆積)及び任意選択的にさらなる操作工程後に形成される。
【0012】
本発明は、ガス拡散層(GDL)を製造するためのグリーンペーパーを製造する方法にさらに関し、ここで、好ましくは金属粉末及び/又は金属繊維と混合された少なくとも1つの第1のペーパーウェブが生成され、その中に少なくとも1つの透かしが作られる。続いて、このペーパーウェブをバインダー除去、焼結、コーティング、熱ALDプロセスによる原子層の堆積(ALD-原子層堆積)及び任意選択的にさらなる操作工程によって加工して、最終的なGDLを形成する。
【0013】
焼結後、グリーンペーパーのすべての有機成分は、熱分解するため、GDL中にもはや存在しない。このGDLは、ほぼ金属フレームワークのみからなる。金属フレームワークの多孔度は、現在の見解によると、特にペーパーウェブの繊維密度、金属粉末及び/又は金属繊維並びに添加された添加剤の(粒子)サイズに依存する。
【0014】
驚くべきことに、費用がかかる不便なBPPのエンボス加工又はグリーンペーパー若しくはグリーンペーパーから製造されたGDLの後処理が不要になるか、又は少なくともより簡単に実現できるような方法において、グリーンペーパーのペーパーウェブ中に透かしを導入することにより、製紙によって製造されたグリーンペーパーをパターニングし得ることが明らかになった。
【0015】
本発明では、続いて、抄紙機の円筒形ワイヤ上の透かしプライ中に対応する透かしを組み込むことにより、別個の作業操作を行うことなく、グリーンペーパー中に流動場が組み込まれる。この場合、特別なコスト又は複雑さなしに、紙の関連する厚さ調節を行いながら、透かしスクリーンの設計に依存するパターニングにより、流動場チャネルの任意の所望の形状及び段階的変化を実現することができる。パターニングの解像度を増加させるために、例えば欧州特許出願公開第1432868 A1号明細書又は国際公開第2014/040706 A1号パンフレットから公知の高解像度又は多段階の透かしを用いることも可能である。
【0016】
本発明の意味での透かしは、紙の厚さが変化するが、紙の密度が変化しない真の透かし(true watermark)である。この場合の紙は、隣接する領域よりも厚い及び/又は薄い領域を有する。紙の密度は、すべての領域で同じである。一方で、例えば、円筒形ワイヤ中に凹部又は凸部を導入して、パルプからの紙の作成中にこれらの凹部又は凸部における紙繊維の蓄積量が多くなるか又は少なくなることにより、製紙中のペーパーウェブにこの種類の透かしを作ることができる。代替的に、例えば、粉砕又はレーザー加工によって機械的に紙の一部を除去することにより、後にペーパーウェブ中に透かしを作ることができる。
【0017】
代替的に、疑似透かし(false watermark)も可能である。この場合、例えばペーパーウェブが円筒形ワイヤから取り外された後、濡れたままのペーパーウェブがエンボス加工手順によってエンボス加工される。この種類の透かしは、ダンディロール透かしとも呼ばれる。エンボス加工により、紙の厚さが減少するが、同時に紙の密度が増加する。したがって、紙繊維の緻密化又は圧縮が起こる。この緻密化の利点は、チャネルの主要な領域でも、触媒層(CL)の方向にGDLを通過する過剰なガスの拡散が防止され、したがってより均一なガスの分配が保証されることである。
【0018】
特に好ましくは、例えば真の透かしによって透かしの一部を形成し、疑似透かしによって他の部分を形成することにより、真の透かしと疑似透かしとを互いに組み合わせることができる。
【0019】
さらなる好ましい一実施形態によると、グリーンペーパーは、第1のペーパーウェブ及び少なくとも1つの第2のペーパーウェブからなる。この場合のグリーンペーパーは、第1のペーパーウェブ及び少なくとも1つの第2のペーパーウェブから形成される。濡れたままの状態の第2のペーパーウェブを第1のペーパーウェブと一緒にし、且つそれに固く接合する。この場合、第2及び/又は任意のさらなるペーパーウェブも透かしを有し得る。
【0020】
ここで、第1及び/又は少なくとも1つの第2のペーパーウェブは、円網抄紙機内で生成され得る。代替的に、第1及び/又は少なくとも1つの第2のペーパーウェブは、製紙原料がノズルを介して円筒形ワイヤに塗布されるショートフォーマー内でも生成され得る。これらの製造方法は、機密文書又は銀行券などの有価証券又は身分証明書の製造について国際公開第2006/099971 A2号パンフレットから公知であり、少なくとも1つのペーパーウェブからGDLを製造するための、本発明における好ましい方法でもある。
【0021】
したがって、ある作業操作では、金属粉末及び/又は金属繊維が高度に充填されたグリーンペーパーが形成され、独国特許第10 2008 042 415 B3号明細書に従い、少なくとも2つの異なる処方を用いて加工されて、異なる性質を有する複合グリーンペーパーをもたらす。燃料電池の場合、これらは、例えば、微細な細孔を有する薄いプライ及びより粗い細孔を有するより厚いプライである。多孔度も2つのペーパーウェブ間で異なり得る。
【0022】
さらに、グリーンペーパーが2つのペーパーウェブからなる場合、それぞれが透かしを有し、第1のペーパーウェブの透かしのパターンと、第2のペーパーウェブの透かしのパターンとが同一ではないが、代わりに面積及び材料の厚さ方向において正確に鏡面対称であると特に有利である。別の表現では、第1のペーパーウェブの透かしのパターンは、第2のペーパーウェブの透かしの構造に対して180°位相変化している。これは、第1のペーパーウェブと第2のペーパーウェブとを、それらの透かしによるパターニングされた面で組み合わせると、第1のペーパーウェブの凸部が第2のペーパーウェブの凹部と重なることを意味する。この実施形態の特定の利点の1つは、焼結後、第1及び第2のペーパーウェブが異なる多孔度を有し得ることである。例えば、膜に面する第1のペーパーウェブは、焼結後に20%~75%のより低い多孔度を有する。第2のペーパーウェブは、焼結後に30%~90%のより高い多孔度を有する。その結果、第2のペーパーウェブは、ガスに対して抵抗する機能がほとんどなく、バイポーラプレートに対するスペーサーとしてのみ機能する。このようにして、最適なガスの分散を、最適な積層性及びPEM膜全体にわたる機械的圧力の最適に均一な分配と組み合わせることができる。特に有利には、第1のペーパーウェブと膜との間に微孔質層(MPL)が配置される。この層は、第1及び第2のペーパーウェブよりも粗さが小さく、細孔が小さい微細な表面を有する。
【0023】
好ましい一実施形態によると、第1のペーパーウェブは、第2のペーパーウェブよりも高い密度を有する。第1のペーパーウェブは、例えば、3g/cm~10g/cmの密度を有する。第2のペーパーウェブは、1g/cm~5g/cmの密度を有する。ここで、特に好ましくは、第1のペーパーウェブは、第2のペーパーウェブよりも微細な紙繊維スラリーによって形成される。対応して、より微細な細孔が焼結紙のこの小領域で得られる。
【0024】
第1のペーパーウェブの厚さは、好ましくは、5μm~50μm、より好ましくは10μm~20μmである。第2のペーパーウェブの厚さは、50μm~400μm、より好ましくは80μm~200μmである。
【0025】
さらなる好ましい一実施形態によると、透かしは、少なくとも1つのチャネルの形態の凹部として構成される。このチャネルは、ガス、すなわち燃料又は酸素を輸送する役割を果たす。このチャネルは、好ましくは、ペーパーウェブの領域にわたって蛇行形態で実現される。別の可能性は、弓形の連結チャネルを有する、格子形態又は放射状形態の複数のチャネルを含む。
【0026】
1つ以上の紙プライにおいて、前述の方法の1つにより、水の輸送のために作られた追加のチャネルも存在し得る。これらのチャネルは、バランスのとれた水の輸送を保証し、PEMセルが、水があふれるか又は乾燥することがないという特定の利点を有する。その理由は、これらの両方がセルの効率に対して悪影響を及ぼすからである。他方で、水のチャネルは、セルの冷却を持続させるために用いることもできる。
【0027】
さらなる好ましい一実施形態によると、透かしに加えて、グリーンペーパー又は焼結グリーンペーパーの表面にレーザー加工によってパターニングが作られる。この利点は、レーザービームにより、例えばより深いパターン若しくはより急勾配の側壁を有するパターンの作成が可能になること、又は既にあるパターンが深くされるか若しくはより急勾配の側壁を設けられ得ることである。さらに、透かしと、元のプライ(former ply)との間の中間層にパターニング又はチャネルを導入し、それによりガスの分配をさらに改善するために、1つ以上の元のプライでレーザー加工を行うこともできる。
【0028】
さらなる好ましい一実施形態によると、ガスは、バイポーラプレートの中央部(バイポーラプレートの平面図に基づく)のGDL中に連結され、次にGDLの種々の透かしパターン及び/又はチャネルによって外側に向かって又はGDLの外縁に向かって分配される。これらの透かしパターン及び/又はチャネルは、例えば、GDLの中央部から始まって、放射状形態又はらせん形態で外側に通じることができる。これらは、同心の環状の透かしパターン及び/又はチャネルによって補うことができる。
【0029】
GDLは、システム及び機能に応じて、典型的には300cm~350cmの面積を有し、100μm~300μmの厚さである。流動場の機能もGDLに統合される場合、GDLは、さらに厚くてもよい。チャネルの深さは、最大350μmである。GDLは、特定の圧縮性を有する必要もあり、同時に個別のセル間で電力を伝導する必要がある。そのため、元のプライと円筒形ワイヤプライ(cylindrical wire ply)とを有するGDLは、100μm~400μmの厚さを有する。BPPは、75μm以下の厚さを有する平坦な板として実現されるべきである。典型的には、BPPは、燃料電池の冷却機能も備える。そのため、その場合のBPPは、冷却剤のための多孔質又はチャネル状の流路を有する複合サンドイッチ構造として実現することもできる。代替的に、冷却用チャネルは、GDL又はMEA中に組み込むこともできる。
【0030】
さらなる好ましい一実施形態によると、BPPは、単純な流動場パターンを有する。さらに、部分的な流動場がGDL中に生成される。この場合の元のプライは、広すぎる空間を取らないように薄い実施形態を有する。
【0031】
自動車用途の120kWの燃料電池の場合、約400個のセルが互いに積み重ねられる。そのため、セルの間隔は、好ましくは、0.8mm~1mmである。微細な元のプライは、好ましくは、5μm~50μmの厚さを有する。元のプライは、好ましくは、GDL全体の2%~40%の割合を有する。
【0032】
さらなる好ましい一実施形態によると、レジストレーションマーク、位置合わせ補助、センタリング補助及び通路の出発点を生成するために、高解像度又は多段階の透かしが用いられる。これにより、有利には、燃料電池スタックを形成するためのGDLのさらなる処理が簡略化される。その理由は、BPP又はCLなどの別の構成要素に対するGDLの正確な位置合わせが、例えば、透過光/反射光の画像処理システムによって可能になるからである。
【0033】
さらなる好ましい一実施形態によると、アノード側及びカソード側のGDLのパターンは、同一ではないが、代わりに面積及び材料の厚さ方向において正確に鏡面対称である。別の表現では、アノード側のGDLのパターンは、カソード側のGDLのパターンに対して180°位相変化している。これは、アノードGDLがカソードGDLの流動場側の上の流動場側の近くに配置される場合、一方のGDLの凸部が他方のGDLの凹部に正確に重なることを意味する。したがって、互いに配置することで、3D鏡面対称の2つのアノード/カソードGDLの組み合わせにより、グリーンペーパーの厳密に平面状の部品が得られる。この実施形態は、グリーンペーパーが、そのチャネルパターンを失うことなく、任意の機械的圧力で緻密化可能であるという利点を有する。この理由は、透かしによって生成され、且つ流動場チャネルを形成する、グリーンペーパー中の凸部及び凹部が後のプレス及び別の機械的負荷によって損傷されるか、押し戻されるか又は平坦になることがなく、そのため、チャネルが有効なままとなり得るからである。この実施形態は、アノードGDL及びカソードGDLが異なる多孔度を有し得るというさらなる利点も有する。アノードGDL及びカソードGDLの交互構造の代わりに、スタック内のすべての別のアノード/カソードの組又はすべての別のスタックに3D鏡面対称のGDLを設けることもできる。
【0034】
特に好ましくは、燃料電池は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)である。好ましい一実施形態によると、この場合の第1のペーパーウェブは、グリーンペーパーから製造されるガス拡散層中において、触媒金属、好ましくは白金でコーティングされた膜(CL)のための拡散層を形成する。第2のペーパーウェブは、グリーンペーパーから製造されるガス拡散層中において、流動場を有する分配層を形成する。しかし、本発明のグリーンペーパーから製造されるGDLは、ガスの分配のための多孔質伝導性層を必要とする別の種類の燃料電池、例えばプロトン交換膜電解槽セル(PEMEC)、電解槽セル又は別の電力変換技術に使用することもできる。
【0035】
ペーパーウェブの成分は、好ましくは、例えば銀行券に用いられるようなセルロース繊維又は綿繊維から得られる紙を含むか、或いは別の天然繊維若しくは合成繊維又は天然繊維と合成繊維との混合物から得られる紙を含む。さらに好ましくは、ペーパーウェブは、互いに配列され、互いに接続された混成物である少なくとも2つの異なる基材の組み合わせからなる。用いられるペーパーウェブの重量に関するデータは、例えば、独国特許出願公開第102 43 653 A9号明細書に報告されており、その中の関連する所見は、全体として本特許出願に援用される。金属が充填されたグリーンペーパーは、100g/m~1200g/mの坪量を有し得る。
【0036】
焼結紙に用いられる充填材料は、マイクロスケールの任意の金属粉末及び金属繊維であり得る。例は、独国特許第10 2008 042 415 B3号明細書から公知の種類のチタン、銅、亜鉛又は防錆ステンレス鋼である。ここで、紙プライ中で異なる多孔度を実現するために、元のプライ及び円筒形ワイヤプライに異なる混合物が使用されることが重要である。ここで、元のプライは、円筒形ワイヤプライよりも微細となるように製造されるべきである。元のプライ中にナノ粉末を用いることも可能である。
【0037】
最小の細孔中に入った金属を腐食から保護し、通常望ましい疎水性を、好ましくは触媒に面する側でもたらすために、さらなる好ましい一実施形態によると、(熱)ALDコーティング又は別のコーティング方法が、引き続く操作工程の1つで用いられる。好ましくは、バインダー除去及び焼結後且つGDLのスタンピング及び変換前である。ここで、切れ目は、腐食の危険性がある領域の外側にあるか、又は切れ目は、完成セルのさらなる操作工程で追加のシーリングを与えられる。別の方法では、打ち抜き及びALDを用いた変換などの後、GDLにコーティングする可能性も存在する。
【0038】
請求項の保護の範囲によって包含される限り、上記の特徴及び以下に説明される特徴は、指定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない別の組み合わせにも用いられ得ることが認識されるであろう。
【0039】
本発明の利点は、以下の代表的な実施形態及び補助的な図を参照して説明される。代表的な実施形態は、好ましい実施形態を構成するが、それらに本発明を限定することを意図するものではない。さらに、より容易な理解のため、図中の表現は、非常に概略化されており、実際の状況を反映していない。特に、図に示される比率は、現実に存在する条件に一致せず、より明確にする役割を果たすにすぎない。さらに、以下の代表的な実施形態に記載される実施形態は、より容易な理解のため、本質的に重要な情報まで縮小されている。実際の実施では、実質的にさらに複雑な設計又は画像を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明のグリーンペーパーを製造するための二重円網抄紙機を示す。
図2】円網抄紙機及びショートフォーマーを概略図で示す。
図3】透かしによって形作られた蛇行チャネルを有する2プライGDLを、左側の平面図及び右側の断面A-Bに沿った断面図に示す。
図4】レジストレーションマーク、位置合わせ補助及びセンタリング補助をさらに有する、図3の2プライGDLを示す。
図5】2つの3D鏡面対称のアノード及びカソードGDLの組み合わせを、それぞれの場合に左側の平面図及び右側の断面A-Bに沿った断面図に示す。
図6a】透かしによって形作られたチャネルを有するGDLを示す。このチャネルは、GDLの中央部から外側に通じ、放射型のチャネルを有する。
図6b】透かしによって形作られたチャネルを有するGDLを示す。このチャネルは、GDLの中央部から外側に通じ、放射型且つ同心のチャネルを有する。
図6c】透かしによって形作られたチャネルを有するGDLを示す。このチャネルは、GDLの中央部から外側に通じ、らせん型のチャネルを有する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、例えば、証券用紙の製造について国際公開第2006/099971A2号パンフレットから公知の二重円網抄紙機10の概略図を示す。この抄紙機10は、2つの円網抄紙機12及び14を含む。これらは、移送フェルト16によって互いに接続されている。
【0042】
第1の抄紙機12内において、円筒形ワイヤ18上にペーパーウェブ20が形成される。これに並行して、第2の抄紙機14内において、第2の均一なペーパーウェブ30が製造され、円筒形ワイヤ34から移送フェルト16によって取り出され、第1の抄紙機12に通される。そこで、これは、第1のペーパーウェブ20とピンチローラー36の領域内で接合する。互いに接合したペーパーウェブ38は、GDLを形成し、さらなる処理ステーションに通される。
【0043】
図2に示されるように、製紙原料がヘッドボックスノズル42により円筒形ワイヤ44の表面に塗布されるショートフォーマー40を用いて、第2のペーパーウェブ30を生成することもできる。この種類のショートフォーマーを用いることで、例えば15~25g/m2の坪量を有する特に薄い紙プライを生成することができる。
【0044】
示される抄紙機12、14、40を用いて、同様に3つ以上のペーパーウェブを生成し、且つ一緒にすることもできることが認識されるであろう。
【0045】
図3は、透かしによって形作られた蛇行チャネル2を有する2プライGDL1を、左側の平面図及び右側の断面A-Bに沿った断面図に概略的に示す。
【0046】
断面A-Bにおいて、黒色領域3は、パターニングされた透かしをチャネル2として有する円筒形ワイヤプライを示す。影付き領域4は、微細細孔構造を有する元のプライを示す。構成に依存して、個別のプライ3及び4は、異なる基本厚さを有し得る。上記の例におけるチャネル2の蛇行パターンに沿って明らかなものは、透かしによって形作られた断面プロファイルである。これは、図面において半円形状を有する円筒形ワイヤプライによる厚さ変化として明らかである。原理上、ここでは、アンダーカットを有さず、壁の角度が80°未満となる任意の想定可能なプロファイル形状が可能である。大きい矢印は、ガス入口/出口を示す。したがって、GDL周囲のガスケットを設計する必要がある。
【0047】
図4は、レジストレーションマーク、位置合わせ補助及びセンタリング補助をさらに有する、図3の2プライGDLを概略的に示す。
【0048】
ハイライト透かしにより、燃料電池スタックを形成するためのGDLのさらなる処理を簡略化するために、レジストレーションマーク、位置合わせ補助、センタリング補助及び通路の出発点を組み込むことができる。このような組み込みにより、例えば透過光/反射光の画像処理システムを用いて、BPP又はCLなどの別の構成要素に対するGDLの正確な位置合わせが可能であることが保証される。
【0049】
線5は、GDLの切断マークを表すことを意図し、例えばハイライト透かしとして実現される。円6は、センタリング/位置合わせ補助を表すことを意図する。当然のことながら、これらは、任意の所望の形態で作られ得る。HD透かしレーザースクリーンを用いることもできる。
【0050】
図5は、アノードGDL7.1と、前記アノードに対して3D鏡面対称で形成されたカソードGDL7.2との組み合わせを概略的に示す。この図は、左上にアノードGDL7.1の表面の平面図を示し、左下にカソードGDL7.2の表面の平面図を示し、右側にそれぞれの場合の断面A-Bに沿った断面図を示す。
【0051】
透かしによって生成され、且つ流動場チャネル8.1及び8.2を形成する、グリーンペーパー及び完成GDLにおける凸部及び凹部は、プレス及び別の機械的負荷によって再び損傷するか、押し戻されるか又はさらに平坦になることがある。これは、チャネル8.1及び8.2がもはや十分に有効とならない場合があることを意味する。
【0052】
この問題は、同一ではないが、代わりに面積だけでなく、材料の厚さ方向においても正確に鏡面対称である、アノード側及びカソード側のGDL中の透かしによって生成されたパターンによって解消することができる。これは、アノードGDL7.1がカソードGDL7.2の流動場側の上の流動場側の近くに配置される場合、平行に配列されたチャネル8.1及び8.2の凸部及び凹部が互いに正確に打ち消されることを意味する。ここで、3D鏡面対称の2つのアノード/カソードGDLの組み合わせにより、焼結紙の平面状の断片が得られる。これは、そのチャネルパターンを失うことなく、任意の圧力で緻密化することができる。
【0053】
さらに、アノードGDL7.1及びカソードGDL7.2は、異なる多孔度を有し得る。例えば、アノードGDL7.1は、20%~75%の多孔度を有し得る。カソードGDL7.2は、30%~90%の多孔度を有し得る。したがって、カソードGDL7.2は、ガスに対して抵抗する機能がほとんどなく、代わりにバイポーラプレートに対するスペーサーとしてのみ機能する。
【0054】
図6は、図6a、6b及び6cの平面図において、ガスがバイポーラプレート(図示せず)の中央部のGDL中に連結され、次にGDL中の種々の透かしパターン及び/又はチャネルによって外側に向かって又はGDLの外縁に向かって分配される3つの実施形態を示す。
【0055】
図6aによると、透かしパターンのチャネルは、GDLの中央部から始まる放射型設計を有する。ガスは、GDLの中央部の円形開口部を介して供給される。黒色で示される領域は、GDLの厚さが小さく、チャネルを形成する白色で示される領域よりもGDLの厚さが大きい透かしの領域を構成する。
【0056】
図6bは、透かしパターンの半径方向チャネルが同心の環状チャネルで補われ、それにより蜘蛛の巣に似たパターンを生成する代表的な一実施形態を示す。ガスは、GDLの中央部の円形開口部を介して供給される。黒色で示される領域は、GDLの厚さが小さく、チャネルを形成する白色で示される領域よりもGDLの厚さが大きい透かしの領域を構成する。
【0057】
図6cは、透かしパターンのチャネルが、GDLの中央部から始まるらせん型設計を有する代表的な一実施形態を示す。ガスは、GDLの中央部の円形開口部を介して供給される。黒色で示される領域は、GDLの厚さが小さく、チャネルを形成する白色で示される領域よりもGDLの厚さが大きい透かしの領域を構成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
【国際調査報告】