(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】超疎水性複合材料およびその多機能的応用品
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20230920BHJP
C07F 9/38 20060101ALI20230920BHJP
C01B 25/37 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C09K3/18 101
C07F9/38 Z
C01B25/37 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514872
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 IN2021050878
(87)【国際公開番号】W WO2022054087
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】202011038721
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596020691
【氏名又は名称】カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【氏名又は名称】小野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】スリージス、 シャンカール プーパナル
(72)【発明者】
【氏名】アンジャリ、 ニルマラー
(72)【発明者】
【氏名】ハリーシュ、 ウニクリシュナン ナーイル サラスワティ
(72)【発明者】
【氏名】アジャヤゴシュ、 アヤパンピライ
【テーマコード(参考)】
4H020
4H050
【Fターム(参考)】
4H020BA03
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB03
4H050AB80
4H050AB99
(57)【要約】
任意表面の水和性を制御することで、それと水との相互作用が基本的に決定される。これに関連して、人工的な高撥水性表面が特に興味を引くものとなっている。本発明は、非湿潤性、多基材適合性、添加剤適合性、且つ、抗菌性の、150°を超える高い水接触角を有するコーティングを与える超疎水性材をもたらす、ランタニド/希土類系列のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含むセラミック複合材料の合成および適用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料であって、
前記リン酸塩はランタンもしくはセリウムのリン酸塩またはその混合物であり、前記有機ホスホン酸はアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基は一般式C
nH
2n+1のC
2~C
25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基はフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基は所望によりハロゲン、OH、-CN、OR
1~30、NH
1~2R
0~30、N(R
1~30)
2、COOH、COOR
1~30で置換されており、RはC
1~30アルキル基であり;
前記元素のリン酸塩と前記有機ホスホン酸は20:1~4:1(w/w)の範囲内の比である、
複合材料。
【請求項2】
前記元素のリン酸塩と前記有機ホスホン酸とが10:1(w/w)の比である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記元素のリン酸塩と前記有機ホスホン酸とが4:1(w/w)の比である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩を酸処理により活性化させることで活性化リン酸塩を得ること;
(b)有機溶剤中、工程(a)で得られた前記活性化リン酸塩を、有機ホスホン酸と、20:1~4:1(w/w)の範囲内の比で混合することで混合物を得ること;
(c)工程(b)で得られた混合物を25~28℃で72時間撹拌し、その後、5000rpmで10分間の遠心分離を2回行い、熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記複合材料を得ること、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の複合材料を作製する方法であって、前記元素のリン酸塩の前記酸処理が以下を含む工程によって実施される、方法:
i.鉱酸および前記元素のリン酸塩を水に添加し、110℃で12時間還流させることで、懸濁液を得ること;
ii.前記懸濁液を室温に冷却し、5000rpmで10分間遠心すること;
iii.水に再分散させ、5000rpmで10分間、2回遠心すること;
iv.アルコールに再分散させ、5000rpmで10分間遠心することで、固体粉末を得ること;並びに
v.前記固体粉末を熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記元素の活性化リン酸塩を得ること。
【請求項6】
前記ランタニド系列由来の元素がランタンおよびセリウムから選択される、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機ホスホン酸がアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基が一般式C
nH
2n+1のC
2~C
25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基がフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基が所望によりハロゲン、OH、-CN、OR
1~30、NH
1~2R
0~30、N(R
1~30)
2、COOH、COOR
1~30で置換されており、RがC
1~30アルキル基である、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶剤がテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、およびエーテルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記鉱酸がオルトリン酸であり、前記アルコールがプロパノールおよびイソプロパノールから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、前記有機溶剤がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテル、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、組成物。
【請求項11】
ポリスチレンから選択される結合剤を所望により含み、結合剤の複合材料に対する比が1:20(w/w)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
色素およびインクから選択される着色剤を所望により含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
多層カーボンナノチューブから選択される導電性添加剤を所望により含み、多層カーボンナノチューブの複合材料に対する比が1:25~1:10(w/w)の範囲内である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
有機蛍光添加剤または無機蛍光添加剤を所望により含み、蛍光添加剤の複合材料に対する比が1:50~1:10(w/w)の範囲内である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の組成物でコーティングされた基材を含む撥水性表面であって、前記基材がガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙からなる群から選択される、撥水性表面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非湿潤性、多基材適合性、添加剤適合性、且つ、抗菌性の、150°を超える高い水接触角を有するコーティングを与える超疎水性材をもたらす、ランタニド/希土類系列のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料の合成および適用に関する。
【背景技術】
【0002】
任意表面の水和性を制御することで、それと水との相互作用が基本的には決定される。地球は「水の惑星(Planet Water)」と呼ばれることも多く、表面の疎水性/親水性を制御できる可能性がある技術は、この「水の世界」を文字通り変化させる無類の可能性を秘めている(J.T Simpson、S.R.HunterおよびT.Aytug、Rep.Prog.Phys.、2015年、78巻、086501)。これに関連して、人工的な高撥水性表面が特に興味を引くものとなっている(J.T Simpson、S.R.HunterおよびT.Aytug、Rep.Prog.Phys.、2015年、78巻、086501;G.Wen、Z.GuoおよびW.Liu、Nanoscale、2017年、9巻、pp3338~3366;Q.Wen、Z.Guo、Chem.Lett.、2016年、45巻、pp1134~1149;X.-M Li、D.Reinhoudt、およびM.Crego-Calama、Chem.Soc.Rev.、2007年、36巻、pp1350~1368)。正しい界面化学と適切な表面粗さの組み合わせが利用されることで、様々な用途の超疎水性表面が設計されている(X.Zhang、F.Shi、J.Niu、Y.JiangおよびZ.Wang、J.Mat.Chem.、2008年、18巻、pp621~633;A.J.Meuler、G.H.McKinleyおよびR.E.Cohen、ACS Nano、2010年、4巻、pp7048~7052;Y.SiおよびZ.Guo、Nanoscale、2015年、7巻、pp5922~5946;M.Agrawal、S.GuptaおよびM.Stamm、J.Mat.Chem.、2011年、21巻、pp615~627)。低表面エネルギー材料と組み合わせた、明確なトポグラフィックなナノスケール構造を有する階層構造的特徴に関する研究によって、実験室規模で、疎水性表面および超疎水性表面の範囲および適用可能性が明らかにされた(A.J.Meuler、G.H.McKinleyおよびR.E.Cohen、ACS Nano、2010年、4巻、pp7048~7052;C.Yang、U.Tartaglino、およびB.N.J.Persson、Phys.Rev.Lett.、2006年、97巻、116103;M.Nosonovsky、およびB.Bhushan、J.Phys.:Condens.Matter.、2008年、20巻、225009;S.Alexander、J.Eastoe、A.M.Lord、F.GuittardおよびA.R.Barron、ACS Appl.Mater.Interfaces、2016年、8巻、pp660~666;H.Mertaniemi、A.Laukkanen、J.E.Teirfolk、O.IkkalaおよびR.H.A.Ras、RSC Adv.、2012年、2巻、pp2882~2886)。超疎水性材料は、それらの自浄化、防食、防氷、および防汚用途並びに油水分離の観点から広く研究されている(J.Zhu、C.-M.Hsu、Z.Yu、S.FanおよびY.Cui、Nano Lett.、2010年、10巻、pp1979~1984;S.J.Choi、およびS.Y.Huh、Macromol.Rapid Commun.、2010年、31巻、pp539~544;A.Nakajima、K.HashimotoおよびT.Watanabe、Langmuir、2000年、16巻、pp7044~7047;B.Bhushan、Y.C.JungおよびK.Koch、Langmuir、2009年、25巻、pp3240~3248;E.Vazirinasab、R.JafariおよびG.Momen、Surface&Coatings Technology、2018年、341巻、pp40~56;G.MomenおよびM.Farzaneh、Appl.Surf.Sci.、2014年、299巻、pp41~46;R.Jafari、R.MeniniおよびM.Farzaneh、Appl.Surf.Sci.、2010年、257巻、pp1540~1543;J.-L.Wang、K.-F.Ren、H.Chang、S.-M.Zhang、L.-J.JinおよびJ.Ji、Phys.Chem.Chem.Phys.、2014年、16巻、pp2936~2943;C.R.Crick、J.A.GibbinsおよびI.P.Parkin、J.Mat.Chem.A、2013年、1巻、pp5943~5948;K.Li、X.Zeng、H.LiaおよびX.Lai、RSC Adv.、2014年、4巻、pp23861~23868;Z.Chu、Y.FengおよびS.Seeger、Angew.Chem.Int.Ed.、2015年、54巻、pp2328~2338;J.Zhang、W.HuangおよびY.Han、Macromol.Rapid Commun.、2006年、27巻、pp804~808;C.-W.Tu、C.-H.Tsai、C.-F.Wang、S.-W.KuoおよびF.-C.Chang、Macromol.Rapid Commun.、2007年、28巻、pp2262~2266;A.K.Kota、G.Kwon、W.Choi、J.M.MabryおよびA.Tuteja、Nature Commun.、2012年、3巻、p1025;L.Hu、S.Gao、X.Ding、D.Wang、J.Jiang、J.JinおよびL.Jiang、ACS Nano、2015年、9巻、pp4835~4842;C.-H.Xue、S.-T.Jia、J.ZhangおよびJ.-Z.Ma、Sci Technol Adv Mater.、2010年、11巻、033002)。
【0003】
超疎水性表面を作製するために、リソグラフィー、プラズマ法、電気化学的方法、化学蒸着などを含むいくつかの方法が用いられている(T.M.Henderson(編)、Superhydrophobic Surfaces and Coatings: Investigations and Insights、2017年、ノバ・サイエンス・パブリッシャー社(Nova Science Publishers,Inc.)、米国;D.OnerおよびT.J.McCarthy、Langmuir、2000年、16巻、pp7777~7782;T.Nakanishi、T.Michinobu、K.Yoshida、N.Shirahata、K.Ariga、H.MohwaldおよびD.G.Kurth、Adv.Mater.、2008年、20巻、pp443~446;Y.Jiang、P.Wan、M.Smet、Z.WangおよびX.Zhang、Adv.Mater.、2008年、20巻、1972~1977;X.Zhang、F.Shi、X.Yu、H.Liu、Y.Fu、Z.Wang、L.JiangおよびX.Li、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、pp3064~3065;J.T.Han、D.H.Lee、C.Y.RyuおよびK.Cho、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、pp4796~4797)。しかし、これらの戦略の適用は、特に大面積コーティングに関しては、これらの基材の大きさ、種類、および形状による制限を受ける。
【0004】
いくつかの特許から、超疎水性の材料、配合物、およびコーティングの開発は教示を受けた。米国特許第9675994B2号(Schoenfischら)では、超疎水性コーティングを実現するための、メチルトリメトキシシランおよびフッ素化アルカンを含むフッ素化粒子の使用が開示された。米国特許出願公開第20180044541号(Jianら)には、撥水性コーティングとしての特定の基材上の、フッ素を含まない疎水性ポリオレフィンポリマー、フィラーとしての二酸化チタンナノ粒子、および水を含む非フッ素化組成物が記載された。接着促進基と低表面エネルギー基を含有するシルセスキオキサンの疎水性ナノ粒子を含む超疎水性コーティングが、米国特許出願公開第2011/0177252号(Kanagasbapathyら)で開示された。欧州特許出願公開第2951252A1号(Sunderら)には、シリカまたはチタンの有機修飾ナノ粒子およびポリウレタンからなる、複数の基材に適用するための、蓮の葉効果が組み込まれた超疎水性コーティングが記載された。米国特許出願公開第2011/0206925号(Kisselら)には、3工程で作製されたポリマーエアロゲルベースの疎水性コーティングが記載され、150℃で焼鈍した際には140°の接触角が得られた。国際出願第PCT/IN08/00538号におけるAjayaghoshら、および米国特許出願公開第12/678546号は、超疎水性材料として機能的有機分子を含む炭素同素体ベースのハイブリッド材料の使用を開示した(T.Nakanishi、T.Michinobu、K.Yoshida、N.Shirahata、K.Ariga、H.Mohwald、およびD.G.Kurth、Adv.Mater.、2008年、20巻、pp443~446;Z.Han、B.Tay、C.Tan、M.Shakerzadeh、およびK.Ostrikov、ACS Nano、2009年、3巻、pp3031~3036;S.C.Tan、F.Yan、L.I.Crouch、J.Robertson、M.R.Jones、およびM.E.Welland、Adv.Funct.Mater.、2013年、23巻、pp5556~5563;L.H.Li、Y.Y.Bai、L.L.Li、S.Q.Wang、およびT.Zhang、Adv.Mater.、2017年、29巻、1702517;Y.Lin、G.J.Ehlert、C.Bukowsky、およびH.A.Sodano、ACS Appl.Mater.Interfaces、2011年、3巻、pp2200~2203)。表面に抗湿潤性を付与するための、限定はされないがケイ素、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム、およびジルコニウムなどの金属の酸化物、並びに、限定はされないが金、銀、およびパラジウムなどの金属のナノ粒子の使用に関する、いくつかの特許および報告が見つかっている。
【0005】
中国特許第108976995号(Zang)は、枝編み細工品用にリン酸ランタン/水ベースの塗料を使用する手順を教示している。元のリン酸ランタンが固有の超疎水性を有することはまだ示されていない。希土類元素リン酸塩ベースの非反応性且つ非湿潤性の表面が、欧州特許第3197829A2号(Sasidharanら)に記載されているが、この発明は疎水性だけに限定されたものであり、特に、鋳造産業における用途のための亜鉛およびアルミニウムのような溶融金属の場合の反応性表面上では、100°台の水接触角が得られた(S.Sasidharan B.N.Nair、T.Suzuki、G.M.Anilkumar、M.Padmanabhan、U.S.Hareesh、およびK.G.Warrier、Sci Rep、2016年、6巻、22732)。複数の基材に適合し、水接触角が100°を超える、多機能超疎水性が、これらの材料クラスで達成されることはまれであった。
【0006】
以上から、当該技術分野では、複数の基材と適合し、水接触角が100°を超える、超疎水性を有する複合材料が必要とされている。
本発明の目的
【0007】
本発明の主な目的は、ランタンおよびセリウムから選択される希土類金属のリン酸塩と、有機ホスホン酸とを含む、複合材料を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、複数の基材上で150°を超える水接触角を有する撥水性表面を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、150°を超える水接触角を失うことなく、表面が、光照射に際し放射性となるような、または、選択された添加剤の制御添加を介して導電性となるような、撥水性表面を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、複合材料と接触した、またはそれでコーティングされた表面が、着氷を無視できる抗菌性表面へのアクセスを与えながら、水接触角が150°超を保持するような、疎氷性および抗菌活性を有する複合材料を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様は、ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料であって、
前記リン酸塩はランタンもしくはセリウムのリン酸塩またはその混合物であり、前記有機ホスホン酸はアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基は一般式CnH2n+1のC2~C25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基はフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基は所望によりハロゲン、OH、-CN、OR1~30、NH1~2R0~30、N(R1~30)2、COOH、COOR1~30で置換されており、RはC1~30アルキル基であり;
前記元素のリン酸塩と前記有機ホスホン酸は20:1~4:1(w/w)の範囲内の比である、
複合材料を提供するものである。
【0012】
本発明の別の態様は、前記複合材料を作製する方法であって、
(a)ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩を酸処理により活性化させることで活性化リン酸塩を得ること;
(b)有機溶剤中、工程(a)で得られた前記活性化リン酸塩を、有機ホスホン酸と、20:1~4:1(w/w)の範囲内の比で混合することで混合物を得ること;
(c)工程(b)で得られた混合物を25~28℃で72時間撹拌し、その後、5000rpmで10分間の遠心分離を2回行い、熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記複合材料を得ること、
を含む、方法を提供するものである。
【0013】
本発明の態様において、前記元素のリン酸塩の酸処理が以下を含む工程によって実施される、前記複合材料を作製する方法が提供される:
i.鉱酸および前記元素のリン酸塩を水に添加し、110℃で12時間還流させることで、懸濁液を得ること;
ii.前記懸濁液を室温に冷却し、5000rpmで10分間遠心すること;
iii.水に再分散させ、5000rpmで10分間、2回遠心すること;
iv.アルコールに再分散させ、5000rpmで10分間遠心することで、固体粉末を得ること;並びに
v.前記固体粉末を熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記元素の活性化リン酸塩を得ること。
【0014】
本発明の別の態様において、前記ランタニド系列由来の元素がランタンおよびセリウムから選択される、複合材料を作製する方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様において、前記複合材料を作製する方法であって、
前記有機ホスホン酸がアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基が一般式CnH2n+1のC2~C25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基がフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基が所望によりハロゲン、OH、-CN、OR1~30、NH1~2R0~30、N(R1~30)2、COOH、COOR1~30で置換されており、RがC1~30アルキル基である、
方法が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様において、前記有機溶剤がテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、およびエーテルからなる群から選択される、前記複合材料を作製する方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様において、前記鉱酸がオルトリン酸であり、前記アルコールがプロパノールおよびイソプロパノールから選択される、前記複合材料を作製する方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、前記有機溶剤がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテル、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、組成物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様において、所望によりポリスチレンから選択される結合剤を含む、組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の態様において、所望により色素およびインクから選択される着色剤を含む、組成物が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の態様において、所望により多層カーボンナノチューブから選択される導電性添加剤を含む組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、前記組成物でコーティングされた基材を含む撥水性表面であって、前記基材がガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙からなる群から選択される、撥水性表面を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料のX線光電子スペクトルを示している。
【
図2】
図2は、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸を含む複合材料(4:1、w/w、実線)、並びに活性化LaPO
4(破線)の熱重量分析データを示している。
【
図3】
図3は、元のLaPO
4(左)、活性化LaPO
4(中央)、およびLaPO
4-オクタデシルホスホン酸複合材料(右)のナノロッド様形態を示す、TEM画像を示している。
【
図4】
図4は、焼鈍なしの、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO4およびオクチルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約134°)を示している。
【
図5】
図5は、60℃で2時間焼鈍された、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO
4およびオクチルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約140°)を示している。
【
図6】
図6は、焼鈍なしの、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO
4およびテトラデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約143°)を示している。
【
図7】
図7は、60℃で2時間焼鈍された、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO4およびテトラデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約145°)を示している。
【
図8】
図8は、焼鈍なしの、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約152°)を示している。
【
図9】
図9は、60℃で2時間焼鈍された、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約156°)を示している。
【
図10】
図10は、60℃で2時間焼鈍された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料でコーティングされたガラス基材上の、水滴の写真を示している。分かりやすさのために、着色された水が使用されている。
【
図11】
図11は、広域コーティング(7.5cm×11cm):(A)水接触角(約153°)、並びに、60℃で2時間焼鈍された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)の複合材料 コーティングされた、(B)スライド、並びに(C)ガラス基材上の水滴の各写真を示している。
【
図12】
図12は、60℃で2時間焼鈍された、洗浄されたガラス基材上の、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)、および5%ポリスチレンを含む複合材料の水接触角(約153°)を示している。
【
図13】
図13は、PDMS接着剤を用いて洗浄されたガラス基材上に固定され、80℃で2時間硬化された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角(約154°)を示している。
【
図14】
図14は、PDMS接着剤を用いて異なる基材上に固定され、80℃で2時間硬化された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角を示している。
【
図15】
図15は、PDMS接着剤を用いて基材上に固定され、80℃で2時間硬化された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)の複合材料 コーティングされた異なる基材上の水滴の写真を示している。
【
図16】
図16は、安定性の確認を行う、5回のスコッチテープ試験後の、PDMS接着剤を用いて洗浄されたガラス基材上に固定され、80℃で2時間硬化された、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料の水接触角における変化を示している。
【
図17】
図17は、PDMS接着剤を用いて木製基材上に固定され、80℃で2時間硬化させた、周囲環境条件に90日間暴露した後の、活性化LaPO
4およびオクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含む複合材料コーティングの、安定性および耐久性を示しており、水接触角は約154°である。
【
図18】
図18は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)、および緑色着色剤を含む複合材料でコーティングされ、60℃で2時間焼鈍されたガラス基材の、水滴の写真(左)および対応する水接触角(右、約155°)を示している。
【
図19】
図19は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)、および青色着色剤を含む複合材料でコーティングされ、60℃で2時間焼鈍されたガラス基材の、水滴の写真(左)および対応する水接触角(右、約153°)を示している。
【
図20】
図20は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸を含む複合材料(4:1、w/w、左)で、および、前記複合材料にピレンを添加(1:10、w/w)することで得られるシアン発光超疎水性コーティングで、コーティングされたガラス基材を、共に60℃で2時間焼鈍したものの、昼光下の写真(上段)および紫外光下の写真(365nm、下段)を示している。
【
図21】
図21は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含み、添加剤(1(ピレン):10(複合材料)、w/w)を含有する、複合材料でコーティングされ、60℃で2時間焼鈍されたガラス基材の、シアン発光超疎水性コーティング上の水滴のUV光下の写真(365nm、左)、および、対応する水接触角(右、約153°)を示している。
【
図22】
図22は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸を含む複合材料(4:1、w/w、左)で、および、前記複合材料にMWCNTを添加(1:4、w/w)することで得られる導電性超疎水性コーティングで、コーティングされたガラス基材を、共に60℃で2時間焼鈍したものの、写真を示している。
【
図23】
図23は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含み、添加剤(1(MWCNT):10(複合材料)、w/w)を含有する、複合材料でコーティングされ、60℃で2時間焼鈍されたガラス基材の、導電性超疎水性コーティング上の水滴の写真、および、対応する水接触角(右、約157°)を示している。
【
図24】
図24は、活性化LaPO
4、オクタデシルホスホン酸(4:1、w/w)を含み、添加剤(1(MWCNT):4(複合材料)、w/w)を含有する、複合材料を用いた、60℃で2時間焼鈍されたガラス基材上の、導電性超疎水性コーティングの場合の、電流対電位プロットを示している。推定伝導率=1.24S/cm
【
図25】
図25は、金属基材上のLaPO
4-オクタデシル(cotadecyl)ホスホン酸複合材料コーティングの滑り性を呈する(slippery)超疎水性を示している。ステージ1は衝突直前の水滴を示しており、ステージ2は衝突直後の水滴を示しており、ステージ3~8は弾んで転がり落ちているのを示しており、ステージ9~10は基材の未コーティング部位の粘着性を示しており、これはコーティングの疎氷性を裏付けるものである。線は最初の衝突地点を表している。
【
図26】
図26は、LaPO
4-オクタデシル(cotadecyl)ホスホン酸複合材料の抗菌性を示す表、および、大腸菌に対する抗菌活性(90%を超える阻害)(4時間のインキュベーション時間)を示す写真(対照:左、および実際のサンプル:右)を示している。
【0024】
使用された略語
PDMS:ポリジメチルシロキサン
wt%:重量パーセント
cm:センチメートル
nm:ナノメートル
MWCNT:多層カーボンナノチューブ
S/cm:ジーメンス毎センチメートル
Rpm:回転毎分
mg:ミリグラム
mL:ミリリットル
【発明を実施するための形態】
【0025】
本節は好ましい実施形態の本発明を詳細に説明するものである。
【0026】
本発明は、ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料であって、
前記リン酸塩はランタンもしくはセリウムのリン酸塩またはその混合物であり、前記有機ホスホン酸はアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基は一般式CnH2n+1のC2~C25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基はフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基は所望によりハロゲン、OH、-CN、OR1~30、NH1~2R0~30、N(R1~30)2、COOH、COOR1~30で置換されており、RはC1~30アルキル基であり;
前記元素のリン酸塩と前記有機ホスホン酸は20:1~4:1(w/w)の範囲内の比である、
複合材料に向けられたものである。
【0027】
本発明の実施形態において、ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料であって、前記元素のリン酸塩および前記有機ホスホン酸が10:1(w/w)の範囲の比である、複合材料が提供される。
【0028】
本発明の別の実施形態において、ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩と有機ホスホン酸とを含む複合材料であって、前記元素のリン酸塩および前記有機ホスホン酸が4:1(w/w)の範囲の比である、複合材料が提供される。
【0029】
本発明はまた、前記複合材料を作製する方法であって、
(a)ランタニド系列から選択される元素のリン酸塩を酸処理により活性化させることで活性化リン酸塩を得ること;
(b)有機溶剤中、工程(a)で得られた前記活性化リン酸塩を、有機ホスホン酸と、20:1~4:1(w/w)の範囲内の比で混合することで混合物を得ること;
(c)工程(b)で得られた混合物を25~28℃で72時間撹拌し、その後、5000rpmで10分間の遠心分離を2回行い、熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記複合材料を得ること、
を含む、方法に向けられたものである。
【0030】
本発明の実施形態において、前記元素のリン酸塩の酸処理が以下を含む工程によって実施される、前記複合材料を作製する方法が提供される:
i.鉱酸および前記元素のリン酸塩を水に添加し、110℃で12時間還流させることで、懸濁液を得ること;
ii.前記懸濁液を室温に冷却し、5000rpmで10分間遠心すること;
iii.水に再分散させ、5000rpmで10分間、2回遠心すること;
iv.アルコールに再分散させ、5000rpmで10分間遠心することで、固体粉末を得ること;並びに
v.前記固体粉末を熱風炉において70℃で12時間乾燥させることで、前記元素の活性化リン酸塩を得ること。
【0031】
本発明の別の実施形態において、前記ランタニド系列由来の元素がランタンおよびセリウムから選択される、複合材料を作製する方法が提供される。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態において、前記複合材料を作製する方法であって、
前記有機ホスホン酸がアルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、
前記アルキル基が一般式CnH2n+1のC2~C25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基がフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基が所望によりハロゲン、OH、-CN、OR1~30、NH1~2R0~30、N(R1~30)2、COOH、COOR1~30で置換されており、RがC1~30アルキル基である、
方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態において、前記有機溶剤がテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、およびエーテルからなる群から選択される、前記複合材料を作製する方法が提供される。
【0034】
本発明の実施形態において、前記鉱酸がオルトリン酸であり、前記アルコールがプロパノールおよびイソプロパノールから選択される、前記複合材料を作製する方法が提供される。
【0035】
本発明の実施形態は、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、前記有機溶剤がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテル、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される、組成物が提供される。
【0036】
本発明の実施形態において、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、所望によりポリスチレンから選択される結合剤を含み、結合剤の複合材料に対する比が1:20(w/w)である、組成物が提供される。
【0037】
本発明の別の実施形態において、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、所望により色素およびインクから選択される着色剤を含む、組成物が提供される。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、所望により多層カーボンナノチューブから選択される導電性添加剤を含み、多層カーボンナノチューブの複合材料に対する比が1:25~1:10(w/w)の範囲内である、組成物が提供される。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、前記複合材料と有機溶剤とを含む組成物であって、所望により有機蛍光添加剤または無機蛍光添加剤を含み、蛍光添加剤の複合材料に対する比が1:50~1:10(w/w)の範囲内である、組成物が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態は、前記組成物でコーティングされた基材を含む撥水性表面であって、前記基材がガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙からなる群から選択される、撥水性表面を提供するものである。
【0041】
撥水性コーティングに関する広範な検討の末、本発明の発明者らは、明確なナノスケール形態を有する、ランタンおよびセリウムから選択される希土類金属のリン酸塩と、有機ホスホン酸とを含む、セラミック材料の表面の有機的な修飾によって、当該複合材料と接触した、またはそれでコーティングされた当該表面に、これまでになく高い、150°を超える水接触角が付与されることを発見した。
【0042】
1つの実施形態において、本発明は、希土類金属のリン酸塩、好ましくはランタンリン酸塩および/もしくはセリウムリン酸塩またはそれらの1:10~10:1比の混合物の活性化と、前記活性化リン酸塩を有機ホスホン酸と接触させることとを含む、二段階法を介した、超疎水性セラミック複合材料を作製する方法に向けられたものである。前記ホスホン酸は、アルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から独立して選択される。好ましいリン酸塩は、明確なナノスケール形態を有する、200~250℃でか焼されたリン酸ランタンである。前記リン酸塩は、オルトリン酸から選択される鉱酸を用いた酸処理によって活性化される。前記鉱酸は、1mL/25mLの水/1グラムのLnPO4という濃度である。前記リン酸塩は、鉱酸により110℃で12時間処理し、冷却し、5000rpmで10分間遠心し、水に再分散させて5000rpmで10分間遠心し(2回)、その後アルコールに再分散させ、5000rpmで10分間遠心し、70℃で12時間乾燥させる。使用されるアルコールはプロパノール、より好ましくはイソプロパノールである。
【0043】
本発明は、LnPO4と有機ホスホン酸とを20未満:1比、好ましくは10:1比、より好ましくは4:1比で含む複合材料であって、Lnは独立してLa3+およびCe3+またはその混合物から選択され、Ln/Ce比は0:10~10:0であり、好ましくはLaPO4は200~250℃でか焼されるその前駆物質から得られ、明確なナノスケール形態を有する、複合材料に向けられたものである。前記ホスホン酸は、独立して、アルキルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびアリールホスホン酸からなる群から選択され、前記アルキル基は一般式CnH2n+1のC2~C25アルキル鎖、分岐アルキル、または不飽和アルキルを含み、前記アリール基はフェニル、ベンジル、またはピリジルもしくはターピリジニルを含むヘテロアリールを含み、前記アリール基は所望によりハロゲン、OH、-CN、OR1~30、NH1~2R0~30、N(R1~30)2、COOH、COOR1~30で置換されており、RがC1~30アルキル基である。
【0044】
本発明はまた、有機溶剤中のその分散液から作製される、前記複合材料の薄膜コーティングに向けられたものであり前記有機溶剤の非限定例としては、1wt%溶媒の最小組成から、99wt%溶媒の最大組成までの、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールからなる群から選択されるアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテル、およびテトラヒドロフランからなる群から選択される炭化水素が挙げられる。前記複合材料の前記溶媒に対する補正(weighted)組成は、50mg/mL、好ましくは30mg/mL、より好ましくは20mg/mLであり、固体基材上にドロップキャストまたはスピンキャストされる。
【0045】
ある実施形態では、前記固体基材は、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、-リン酸塩、硫化物などを含有する、または含有しない、限定はされないが、ポリマー、生地、または紙などの有機材料(最低50%の有機組成物)、限定はされないが、金属材料および合金などの無機材料(最低50%の有機組成物)、並びに、限定はされないが、炭素、半導体、ガラス、およびセラミックスなどの非金属材料から構成される。ある特定の実施形態において、前記基材は、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙からなる群から選択される。この基材を、複合材料を含む組成物と接触させる、またはそれでコーティングし、乾燥させ、60℃で2時間焼鈍すると、水接触角が150°を超える撥水性を示す。
【0046】
本発明の別の実施形態は、ポリスチレン、好ましくは分子量35,000のポリスチレンである結合剤を1:20(結合剤:複合材料、w/w)の比で含む、テトラヒドロフランから選択される溶媒に分散された複合材料の、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、またはドロップコーティングが可能な配合物を含む。さらに、複合材料の安定なフィルムが、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙からなる群から選択される基材上にコーティングされ、接着剤が好適な硬化剤を10:1(w/w)の補正組成で含有するポリジメチルシロキサン(PDMS)のドクターブレード法による薄膜であり、粉末が基材上に接着剤により固定される前記複合材料である、「パウダー・オン・グルー」法を介して形成される。過剰な粉末が吸引器で除去された後、80℃で3時間硬化される。これらの戦略により、水接触角が150°を超える高い撥水性がもたらされる。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、複合材料または修飾された基材の貯蔵寿命によって表される、前記複合材料および接触またはコーティングされた基材の安定性および耐久性に関する。修飾された基材のスコッチテープ試験、および、1週間、好ましくは1か月間、より好ましくは1年間の、好ましくは80%の性能維持、より好ましくは90%の性能維持を伴う、環境条件への暴露が実施された。実験室条件下での複合材料およびコーティングされた基材の貯蔵寿命は1年を超えると推定された。5回の後のスコッチテープ試験では、150°を超える接触角が得られ、1か月間を超える環境条件への暴露では、修飾された基材の撥水性の90%超が保持された。
【0048】
本発明の別の実施形態は、複合材料によって誘導された基材の滑り性を呈する疎水性質を介して、複合材料で修飾された表面上の凝結または氷の形成を低減する方法を提供する。複合材料と接触させられた、またはそれでコーティングされた基材は、水滴を付着させず、当該コーティングはこのようにして防氷性を基材に付与することで、転がり角度が5°未満の、好ましくは3°未満の、より好ましくは2°未満の疎氷性表面が得られ、滑り性を呈する超疎水性を有する好適な基材上に高い撥水性と150°を超える水接触角を有する複合材料、コーティングまたは配合物が得られる。
【0049】
本発明の別の実施形態において、有機溶剤中の複合材料の配合物であって、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールからなる群から選択されるアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルからなる群から選択される炭化水素、およびテトラヒドロフランが挙げられ、好ましくはテトラヒドロフランであり、配合物のテトラヒドロフランに可溶性のインクおよび色素から選択される好適な着色料を含有する、配合物は、溶媒に対する複合材料が50:1~1:1(w/v)であり、好ましくは、1mLのテトラヒドロフラン中の20mgの複合材料であって、0.1~2.0mgの着色料、好ましくは0.5~1.0mgの着色料を含有させることで、150°を超える水接触角を失わずに、その着色された超疎水性非湿潤性表面が得られる。
【0050】
本発明の別の態様は、LaPO4複合材料として1:50(w/w)の補正組成での、好ましくは1:25(w/w)の補正組成での、より好ましくは1:10(w/w)の補正組成での、有機蛍光添加剤または無機蛍光添加剤の制御添加を介した、および、LaPO4複合材料として1:25(w/w)の補正組成での、好ましくは1:10(w/w)の補正組成での、より好ましくは1:4(w/w)の補正組成での、導電性添加剤、好ましくは導電性炭素同素体、より好ましくは直径100nm超の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の制御添加を介した、非湿潤性発光蛍光コーティングを含むがこれに限定はされない、誘導された多機能特性であって、前記コーティングが1.2S/cmを超える導電性を有し、MWCNTを含有しないコーティングが10-9S/cm未満の導電性を有することにより、非湿潤性導電性表面の伝導率において最低109倍の増加を誘導し、上記のそれぞれにおける前記コーティングは、150°を超える水接触角の値によって判断される水和性に検出可能な差異がない、誘導された多機能特性に向けられたものである。
【0051】
特に、複合材料、配合物、およびコーティングが、滑り性を呈する超疎水性、疎氷性、抗湿潤性、および一般的な病原菌に対する広域抗菌作用を有するような実施形態は、グラム陽性菌株およびグラム陰性菌株の両方から選択される微生物の接着および生存を70%、好ましくは80%、より好ましくは90%減少させる。ある特定の実施形態において、菌種は、大腸菌(E.coli) スメグマ菌(M.smegmatis)、および黄色ブドウ球菌(S.aureus)から選択される。しかし、好ましくは最大5wt%の、機能的な殺生物性成分の添加によって、前記材料またはコーティングの抗菌活性を、コーティングされた表面に非常に近い、またはそれと接触している、細菌、真菌、ウイルス、昆虫などを含むがこれらに限定はされない1または複数の望ましくない生物の、増殖およびカバレッジ(coverage)の、部分的な阻害、防止、低減、または排除に向けて調整することができる。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は例示であり、限定を目的とするものではない。
【0053】
実施例1:希土類金属のリン酸塩の活性化
LnPO4(Lnは独立してLa3+およびCe3+またはLn3+およびCe3+の混合物から選択され、0:10~10:0の任意のLn/Ce比である)、好ましくは200~250℃でか焼されたLaPO4を、酸処理法によって表面活性化した。1mL/25mLの水/1gのLnPO4の濃度の、水中の鉱酸、好ましくはオルトリン酸を添加し、110℃で12時間還流させた。この懸濁液をその後、室温まで冷却し、5000rpmで10分間遠心し、水に再分散させて5000rpmで10分間遠心し(2回)、その後アルコール、好ましくはプロパノールに再分散させ、5000rpmで10分間遠心した。このようにして得られた固体粉末を、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0054】
実施例2:LaPO4-アルキル/シクロアルキル/アリルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4と対応するアルキルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0055】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。
【0056】
実施例2.1:LaPO4-ヘキシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とヘキシルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0057】
実施例2.2:LaPO4-オクチルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とオクチルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0058】
実施例2.3:LaPO4-デシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とデシルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0059】
実施例2.4:LaPO4-ドデシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とドデシルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0060】
実施例2.5:LaPO4-テトラデシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とテトラデシルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0061】
実施例2.6:LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とオクチルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0062】
実施例2.7:LaPO4-シクロヘキシルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とシクロヘキシルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0063】
実施例2.8:LaPO4-アリルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とアリルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0064】
実施例3:LaPO4-アリールホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4と対応するアリールホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0065】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。
【0066】
実施例3.1:LaPO4-フェニルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とフェニルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0067】
実施例3.2:LaPO4-ベンジルホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とベンジルホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0068】
実施例3.3:LaPO4-p-(4-[2,2’:6’,2”-ターピリジン]-4’-イルフェニル)ホスホン酸ホスホン酸複合材料の合成
明確な棒状形態を有する活性化LaPO4とp-(4-[2,2’:6’,2”-ターピリジン]-4’-イルフェニル)ホスホン酸とを4:1(w/w)比で有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で混合し、50mgのホスホン酸/200mgの活性化LaPO4/25mLのテトラヒドロフランという最終組成を得た。この混合物を25~28℃で72時間撹拌した後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥させた。
【0069】
実施例4:CePO4-アルキル/シクロアルキルアリルホスホン酸複合材料の合成
実施例3で詳述された実験手順を、以下のように、希少なランタニド系列の他の金属リン酸塩に拡張した:THF中、活性化CePO4+対応するアルキルホスホン酸(4:1、w/w)(最終組成は、50mgのホスホン酸/200mgの活性化CePO4/25mLのテトラヒドロフラン)、25~28℃で72時間撹拌、その後5000rpmで10分間遠心(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥。
【0070】
実施例5:LaPO4-CePO4混合物-アルキル/シクロアルキル/アリル/アリールホスホン酸複合材料の合成
実施例3で詳述された実験手順を、以下のように、希少なランタニド系列の金属リン酸塩混合物に拡張した:THF中、0:10~10:0の任意比のLaPO4-CePO4+対応するアルキルホスホン酸(4:1、w/w)を活性化(混合)し(最終組成は、50mgのホスホン酸/200mgの活性化(混合)されたLaPO4-CePO4/25mLのテトラヒドロフラン)、25~28℃で72時間撹拌後、5000rpmで10分間遠心し(2回)、熱風炉内の70℃で12時間乾燥した。
【0071】
実施例6:固体基材上の複合材料の薄膜コーティングの作製および多基材適合性
LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料(20mg)を、有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン(1.0mL)に20mg/mLの組成で分散させた。この混合物を一晩撹拌することで、安定な分散液を得た。この分散液を、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材上にドロップキャストまたはスピンキャストし、室温で乾燥させ、所望により60℃で2時間焼鈍したところ、水接触角が150°を超える撥水性を示す表面修飾基材が得られ、基材非依存性または多基材適合性の抗湿潤性が確認された。
【0072】
オクタデシルホスホン酸の場合の手順と全く同じ手順に従って他のホスホン酸を用いても、好適な基材上のコーティングが得られた。
【0073】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。
【0074】
実施例7:ポリスチレン結合剤を含む複合材料の配合
スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、またはドロップコーティングが可能な前記複合材料の配合物を、有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフランを用いて作製した。LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料(20mg)を、テトラヒドロフラン(1.0mL)に20mg/mLの組成で分散させた。ポリスチレン(1mg、分子量35,000)を1:20(結合剤:複合材料、w/w)の組成で結合剤として添加し、室温で一晩撹拌することで、安定な分散液を得た。この分散液を、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材上にドロップキャストまたはスピンキャストし、室温で乾燥させ、所望により60℃で2時間焼鈍したところ、水接触角が150°を超える撥水性を示す表面修飾基材が得られ、基材非依存性または多基材適合性の抗湿潤性が確認された。
【0075】
オクタデシルホスホン酸の場合の手順と全く同じ手順に従って他のホスホン酸を用いても、好適な基材上のコーティングが得られた。
【0076】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。
【0077】
実施例8:「パウダー・オン・グルー(Powder-on-Glue)」法を用いた複合材料からなる安定なフィルム
「パウダー・オン・グルー」法により形成された、好適な基材上の、LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料からなる安定なフィルム。10:1(w/w)の補正(weighted)組成で好適な硬化剤を含有するポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるドクターブレード法による薄膜フィルムを接着剤として使用し、複合材料を粉末として使用した。典型的な手順で、PDMSおよび硬化剤(100μL)の超薄膜を、ガラス基材(2cm×2cm)上に配置した。PDMS接着剤の薄膜を、ドクターブレード法によって得た。LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料の乾燥微粉末20mgを、前記接着剤上に振りまき、過剰な粉末を吸引器により除去した後、80℃で3時間硬化させて、ガラス上に前記複合材料からなる安定フィルムを得た。
【0078】
ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材を用いて、基材非依存性および多基材適合性が示された。
【0079】
実施例9:コーティングの安定性測定および環境内(Ambient)耐久性のためのスコーチテープ試験
実施例9で説明されたように、「パウダー・オン・グルー」法により、ガラス上のLaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料の安定なフィルムを形成した。修飾後基材の水接触角を実験により求めた。市販のスコッチテープをコーティングされた基材上に貼り付け、急激に剥がした。得られたコーティングの水接触角を測定した。このスコッチテープ試験を5回繰り返し、これらの5回のスコッチテープ試験に対応する水接触角をその後に求めた。どの場合でも150°を超える水接触角が得られ、コーティングの安定性が確認された。
【0080】
複合材料の耐久性および貯蔵寿命を、その作製の1年後に、複合材料でコーティングされたガラス基材の水接触角を比較することにより、試験した。150°を超える水接触角が認められ、複合材料の貯蔵寿命が最低1年間あることが確認された。実験室条件下で維持されたドロップキャストされたスライドガラスを、その作製の1年後に、水接触角測定に供した。150°を超える水接触角により、コーティングの耐久性が確認された。「パウダー・オン・グルー」法を用いて複合材料でコーティングされた木製基材を、周囲環境に数週間暴露したところ、4週間後の水接触角は約154°であり、これにより、周囲条件下のコーティングの耐久性がさらに確認された。
【0081】
実施例10:滑り性のある疎水性および疎氷性
実施例9で説明されたように、「パウダー・オン・グルー」法により、ガラス上のLaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料の安定なフィルムを形成した。修飾後基材の水接触角を実験により求めた。基材の滑り性疎水性の実証を通じて、複合材料で修飾された表面上での凝結または氷形成の減少が確認された。複合材料コーティングは、水滴を表面に付着させず、金属基材上では2°、木製基材上では0°という小さい角度で水滴を転げ落ちさせた。修飾基材をさらに、市販の冷凍庫内に12時間配置しても、着氷は認められなかった。
【0082】
実施例11:着色コーティングの作製
スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、またはドロップコーティングが可能なLaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料を、有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフランを用いて作製した。この複合材料(20mg)を、テトラヒドロフラン(1.0mL)に20mg/mLの濃度で分散させた。市販の緑色または青色インクを着色料として添加し(1.0mg)、室温で一晩撹拌して、安定な分散液を得た。この分散液を、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材上にドロップキャストまたはスピンキャストし、室温で乾燥させ、所望により60℃で2時間焼鈍することで、水接触角が150°を超える撥水性を示す、緑がかったまたは青みがかった色の表面修飾基材が得られ、着色された超疎水性非湿潤性表面が得られた。
【0083】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。さらに、この溶媒に可溶性のいかなる色のいかなる色素も、着色された非湿潤性コーティングを作製するために使用することができる。
【0084】
実施例12:発光コーティングの作製
スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、またはドロップコーティングが可能なLaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料を、有機溶剤、好ましくはテトラヒドロフランを用いて作製した。この複合材料(20mg)を、テトラヒドロフラン(1.0mL)に20mg/mLの濃度で分散させた。市販の蛍光性化合物(compount)(この場合はピレン、2.0mg、濃度1:10(w/w))を添加し、室温で一晩撹拌して、安定な分散液を得た。この分散液を、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材上にドロップキャストまたはスピンキャストし、室温で乾燥させ、所望により60℃で2時間焼鈍することで、UV照明(365nm)下での発光性(この場合はシアン発光)を有し、水接触角が150°を超える撥水性を示す、表面修飾基材が得られ、放出性超疎水性非湿潤性表面が得られた。
【0085】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。さらに、この溶媒に可溶性のいかなる有機または無機の蛍光物質も、放出性非湿潤性コーティングを作製するために使用することができる。
【0086】
実施例13:導電性コーティングの作製
市販の導電性添加剤(この場合、直径が100nmを超える多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、5.0mg)を、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuram)(1.0mL)に、30分間の超音波処理を介して分散させた。次に、LaPO4-オクタデシルホスホン酸複合材料(20mg)を、この超音波処理されたテトラヒドロフラン(1.0mL)中分散液に、最終濃度が20mg/mLであり、MWCNT/複合材料が1:4(w/w)となるように、添加した。この混合物を室温で一晩撹拌することで、安定な分散液を得た。この分散液を、ガラス、木材、プラスチック、金属、布、および紙から独立して選択される基材上にドロップキャストまたはスピンキャストし、室温で乾燥させ、所望により60℃で2時間焼鈍することで、水接触角が150°を超える撥水性を示す、表面修飾導電性基材が得られ、導電性超疎水性非湿潤性表面が得られた。測定された伝導率は1.2S/cmであり、MWCNTなしのコーティングの場合の伝導率は10-9S/cm未満であったことから、伝導率の最低109倍の増加が確認された。伝導率は、添加するMWCNTの量を変化させることで、さらに調整することができる。
【0087】
テトラヒドロフランが好ましい溶媒であったが、溶媒の非限定例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、エーテルなどの炭化水素が挙げられる。さらに、この溶媒に分散可能ないかなる有機または無機の導電性添加剤も、放出性非湿潤性コーティングを作製するために使用することができる。
【0088】
実施例14:抗菌活性
栄養寒天平板から対応する細菌の単一コロニーを、それぞれ、10mLの普通ブイヨン培地に移し、37℃で24時間増殖させた。LaPO4-オクタデシルホスホン酸を、滅菌蒸留水に25mg/mLの濃度で懸濁させた。この液から100μL、および20μLの細菌を、5mLの栄養ブイヨンに添加し、暗所で2時間インキュベートした。対照は、化合物液の代わりに100μLの滅菌水を用いて維持した。インキュベーション後、この液からの100μLを10-4まで連続希釈し、栄養寒天平板上に播種し、37℃で24時間のインキュベーションを経て形成されたコロニーをコロニー形成単位(CFU)としてカウントした。この実験をトリプリケートで実施し、データの記録を行った。
【0089】
抗菌性の結果を
図26に示す。大腸菌は、超疎水性複合材料で処理された場合、90%を超える増殖減少を示した。
【0090】
本発明の利点
精製を必要としない単純な合成手順
出発物質を調製するためのノウハウ/商業的入手性
フッ素/フッ化物を含まない組成物
白色、複数の色が可能であること
拡張性があり対費用効果が高い
水接触角が高い(152±5°)
調整可能な粘着性または滑り性の超疎水性
容易な加工性(ドロップキャスト、ディップキャスト、スピンキャスト、またはスプレーキャスト)
多基材適合性(ガラス、金属、プラスチック、木材、布、紙)
多機能性の非湿潤性コーティング
疎氷性、多色、蛍光性、導電性の超疎水性コーティング
複数の用途に向けて調整可能
【国際調査報告】