(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】目の治療のための刺激方法
(51)【国際特許分類】
A61H 39/08 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
A61H39/08 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514908
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 IB2021055371
(87)【国際公開番号】W WO2022058802
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511167906
【氏名又は名称】了▲徳▼寺 健二
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】了▲徳▼寺 健二
【テーマコード(参考)】
4C101
【Fターム(参考)】
4C101DA01
4C101DA03
4C101DA11
4C101DB01
4C101DB15
4C101DB16
4C101EB04
4C101EB12
(57)【要約】
目の治療のための方法は、以下のステップを含む:(1)内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位、(2)左目又は右目の瞳孔、(3)左脚又は右脚のST36点、及び(4)SP点を含む、対象者の特定部位にガイド素子を提供するステップと;ガイド素子の温度を40~50±5℃の範囲になるように制御し、それにより、それぞれの特定部位に温熱刺激を与えて、血流を60%以上増加させて、対象者の成長ホルモンの分泌を促すステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激付与装置を用いて対象者の特定部位に刺激を与えることによる目の治療のための方法であって:
(1)内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位、(2)左目又は右目の瞳孔、(3)左脚又は右脚のST36点、並びに(4)瞳孔の中心から延びる垂直線と、鼻の最下部と上唇の最高部との間の真ん中の高さに延びる水平線と、が交わるSP点を含む、前記特定部位に、2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子をそれぞれ提供すること;及び
前記ガイド素子の温度を40~50±5℃の範囲となるように制御することであって、それにより、温熱刺激パターンに従って前記特定部位に温熱刺激を与えて、前記温熱刺激を与えることによって、前記対象者の血流を60%以上だけ増加させるようにすること
を含む、方法。
【請求項2】
前記瞳孔の前記刺激は、以下のステップ:
前記瞳孔を閉じ、前記瞳孔の前記中心にテープを取り付けて、前記ガイド素子を、前記瞳孔の前記中心の位置の前記テープの表面に取り付け、そして、電気出力を前記ガイド素子に加え、それにより、前記ガイド素子の前記温度を上昇させる、ステップによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガイド素子には、さらに、前記ガイド素子から赤外光が照射されるセラミックを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激は、熱刺激、光刺激及び振動刺激のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記目の治療が実行されるとともに、前記目の水晶体の代謝が加速される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記目の治療は、加齢と共に成長ホルモンの分泌が低下した対象者の前記ホルモンの分泌を促進するとともに、前記目の水晶体の外膜を刺激する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記目の治療は、白内障、老眼、近視及び乱視のうちの少なくとも1つの治療である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに:
記憶装置に温熱刺激パターンを記憶すること;
前記特定部位(1)~(4)のうちの少なくとも2つの異なる特定部位に前記2つ以上のガイド素子をそれぞれ配置すること;
前記記憶装置から前記温熱刺激パターンを読み出すこと;
前記2つ以上のガイド素子の温度を40~50±5℃の範囲となるように制御すること;及び
前記2つ以上のガイド素子に前記温熱刺激パターンを出力すること、それにより、前記温熱刺激パターンに従って前記それぞれの特定部位に前記温熱刺激を同時に与えて、前記温熱刺激を与えることによって、前記血流を60%以上増加させること
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な状態、疾患、障害、又は症状を治療するための刺激付与装置(stimulus applying apparatus)及び刺激方法に関し、より具体的には、対象者の体表面上の特定部位に温熱刺激などの刺激を与えることによって、対象者の成長ホルモンの分泌を促すための刺激付与装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,950,635号明細書には、例えばストレスなどの不安を軽減するための、特定の鍼治療に従う点表面刺激方法が開示されている。この特許では、LR3、HT3、及びPC6が患者の刺激点として特定されていることが開示されている。電極をこれら3つの刺激点とそれぞれ接触させ、それにより、電極に電流を通す。ここで、LR3は、足の甲の、第1趾及び第2趾の縁から2cm近位に位置する。
【0003】
HT3は、各肘の内側の、肘が十分に曲げられているときの、肘のしわの内側端と上腕骨の内側上顆との間の中間に位置する。PC6は、各手首の、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱との間の手首のしわの中間点の2cm近位に位置する。この特許では、少なくとも1つの皮質下源、具体的には、網様体賦活系のコリン性アーム(cholinergic arm)である脚橋被蓋核(PPN:pedunculopontine nucleus)に関するP1電位に焦点を当てている。すなわち、この特許には、上述の刺激点(LR3、HT3、及びPC6)が針で刺激されると、P1電位が低下して、不安が軽減されていることが開示されている。さらに、刺激点LR3、HT3、及びPC6以外に、針によって刺激されるべき刺激点は開示されていない。しかしながら、この特許には、脚橋被蓋核(PPN)に焦点を当てて、P1電位の低下ゆえに不安が軽減されていることが開示されている。しかしながら、不安の軽減ゆえに、血圧の正常化、ストレスの減少、体温の上昇、中性脂肪の減少、コレステロールの減少、及びインスリン抵抗性の軽減による血糖値の改善などの効果を達成することが可能であることは開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱心な研究活動によって、本願発明者は、ストレスに起因する糖尿病、及び肥満や高血圧などの生活習慣病を含む様々な状態、疾患、障害、又は症状が、体表面の刺激されるべき特定領域に対する鍼灸針(acupuncture needles)による刺激又は加熱により、精神的なストレスをなくすことによって、改善され得る、刺激されるべき特定領域を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、刺激付与装置を用いて対象者の特定部位に刺激を与えることによる目の治療方法は、(1)内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位、(2)左目又は右目の瞳孔、(3)左脚又は右脚のST36点、及び(4)瞳孔の中心から延びる垂直線と、鼻の最下部と上唇の最高部との間の真ん中の高さに延びる水平線とが交わるSP点を含む、特定部位に、2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子をそれぞれ提供するステップ;及びガイド素子の温度を40~50±5℃の範囲となるように制御するステップであって、それにより、温熱刺激パターンに従って特定部位に温熱刺激を与えて、刺激を与えることによって、対象者の血流を60%以上増加させるステップを含む。
【0006】
瞳孔の刺激は、目を閉じている間に、ガイド素子のうちの1つを、テープを用いて、瞳孔の中心の皮膚上に取り付けることによって、実施され得る。刺激は、熱刺激、光刺激及び振動刺激のうちの少なくとも1つとし得る。目の治療は、目の水晶体の代謝を加速させるために実施され得る。目の治療は、加齢と共にホルモンの分泌が低下した対象者の成長ホルモンの分泌を促進するとともに、目の水晶体の外膜を刺激し得る。目の治療は、白内障、老眼、近視及び乱視のうちの少なくとも1つの治療とし得る。
【0007】
本発明の別の態様では、方法は、記憶装置に温熱刺激パターンを記憶するステップ;特定部位(1)~(4)のうちの少なくとも2つの異なる特定部位に、2つ以上のガイド素子をそれぞれ配置するステップ;記憶装置から温熱刺激パターンを読み出すステップ;2つ以上のガイド素子の温度を40~50±5℃の範囲になるように制御するステップ;及び2つ以上のガイド素子に温熱刺激パターンを出力するステップであって、それにより、温熱刺激パターンに従ってそれぞれの特定部位に温熱刺激を同時に与えて、温熱刺激を与えることによって、血流を60%以上増加させるステップを含んでよい。
【0008】
一実施形態では、上述のような成長ホルモンの分泌を促進する方法は、さらに、レーザードップラー組織血流計によって血流量を測定するステップを含む。
【0009】
本発明では、電気式加熱装置を制御することによって形成される、温熱刺激パターンの刺激は、非同時に及び独立して、病状に従って選択された少なくとも1つの領域に与えられ、それにより、精神的なストレスの軽減、コア体温(core body temperature)の上昇、中性脂肪の減少、コレステロールの低下、インスリン抵抗性の軽減による血糖値の改善、及び動脈硬化の抑制を達成する。
【0010】
ストレスを解消するための本刺激方法、及び刺激方法によるストレスフリー(stress-free medical treatment method)治療方法の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、次の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に使用される電気式加熱装置の概略図である。
【0012】
【0013】
【
図3】電気式加熱装置を制御することによって得られる温熱刺激波形の概略図である。
【0014】
【
図4】刺激されるべき足底の領域の概略図であり、ここで、「x」は、第1中足骨と第2中足骨との骨間(os metatarsale primam 1 and 2 interosseous)を示し、「y」は、第2中足骨と第3中足骨との骨間(os metatarsale primam 2 and 3 interosseous)を示し、並びに「z」は、第1中足骨及び第2中足骨(os metatarsale primam 1 and 2)の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分を示す。
【0015】
【0016】
【
図6】刺激されるべき甲状腺の近くの領域の概略図である。
【0017】
【
図7】刺激されるべき足の指の領域の概略図である。
【0018】
【
図8】刺激されるべき刺激特定領域として部位(L)、(K)、(M)を示す。
【0019】
【
図9】目の上方から見た右目の眼窩下動脈、並びに目及び眼窩下の神経管(nerves tube)の上壁が開いている図を示す。
【0020】
【
図10】より多くの刺激部位を示す対象者の顔の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る刺激治療方法は、血流の60%以上、好ましくは、100%以上の増加率をもたらすために、刺激付与装置によって、体表面にある刺激されるべき特定領域に刺激を与えることによって治療を行うための刺激治療方法である。ここでは、血流は、手首関節の内側の中心部に取り付けられたレーザードップラー組織血流計によって測定される。
【0022】
特定領域は、第1中足骨と第2中足骨との骨間、第2中足骨と第3中足骨との骨間、並びに左右の足底の第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分からなる群から選択される少なくとも1つの領域である。別の特定領域は、甲状腺付近(near glandula thyreoidea)の領域である。別の特定領域は、外皮と、左右の足底の母趾末節骨底(hallux distal phalanx bottom)と基節骨頭との内側境界部の水平線との間の領域である。
【0023】
刺激は、非同時に及び独立して、病状に従って選択された少なくとも1つの領域に与えられる。
【0024】
刺激付与装置は加熱刺激付与装置であり、加熱刺激付与装置は温熱刺激パターン(warm temperature stimulus pattern)を形成する。ここで、刺激パターンは、温熱刺激波形と間隔とで構成され、温熱刺激波形は、加熱によって、ピーク温度である50±5℃まで昇温して得られる加熱波形と、ピーク温度に達したときに加熱を停止することによって形成される放熱波形とを含む。
【0025】
刺激は、鍼灸針刺激、温熱刺激、光刺激、磁気刺激、及び超音波刺激から選択される。
【0026】
ストレスフリー治療方法は刺激方法を含む。
【0027】
刺激評価方法は刺激方法を含み、血流の増加率は、刺激評価の指標として使用される。
【0028】
概して、生物にストレスが加えられる場合、2つの系が活性化される。系の一方は、青斑核(青斑)で始まる交感神経系である。ここで、ノルアドレナリンは神経末端から分泌され、アドレナリンは副腎皮質から分泌される。
【0029】
他方の系は、HPA系(視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamus pituitary adrenal axis))を含み、ここで、視床下部(室傍核)から分泌されるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が下垂体に作用する。そして、下垂体前葉(腺下垂体)から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が副腎皮質に作用し、それにより、最終的に、グルココルチコイド(コルチゾール)が副腎皮質から分泌される。コルチゾールは、精神的/身体的なストレスの指標と考えられており、唾液から測定され得る。この刺激では、唾液アミラーゼ、ACTH、及びコルチゾールが低下した。ストレス反応系のホルモンの正常化が起こっていることが明らかであろう。
【0030】
コルチゾールは、炭水化物、脂肪、及びタンパク質の代謝を制御し、且つ生物の必須ホルモンである。血圧及び血糖値は、ストレスによって分泌されるその量次第で上昇し、そして免疫系(炎症抑制)などの、生物の様々な機能に影響を及ぼす、すなわち、例えば、免疫機能、血管系、及び代謝系(糖の再生(sugar rebirth))(糖新生)の低下の原因となる。さらに、視床下部、海馬、及び下垂体にはコルチゾールの受容体があるため、コルチゾールの分泌量が増加すると、CRH又はACTHの合成量が低下する。その結果、コルチゾール分泌が抑制される。さらに、近年、指標として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者の脳のMRIなどに基づいて、過度のストレスによってコルチゾールがそのように大量に分泌されると、海馬を委縮させるという報告があった。このように、コルチゾールは、中心系(認知力、記憶力、感情)にも影響を及ぼすため、鍼灸針刺激に使用することにより認知症などの予防が期待され得る。
【0031】
コルチゾールと一緒に注目を集める物質は、DHEAである。DHEAは、コルチゾールと同様に、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンである。作用はコルチゾールとは反対であると報告されている。例えば、コルチゾールはTh1免疫活性(NK細胞、キラーT細胞)を抑制し、Th2免疫活性(B細胞)を促進するが、DHEAは、反対に、Th1免疫活性を促進する。さらに、うつ病の患者は、コルチゾールレベルが高く、DHEAレベルが低いため、その比率(コルチゾール/DHEA比)が重要であると考えられている。DHEAは、コルチゾールの作用を上手く調整するホルモンであると考えられている。
【0032】
さらに、DHEA硫酸塩(硫酸基結合DHEA:DHEAS)(硫酸基結合形態)も重要であると考えられている。コルチゾールとは異なり、DHEAに関しては負のフィードバックがなく、分泌される場合、DHEASに変化して、比較的短時間蓄積する。DHEAS自体はホルモンとしての活性はないが、DHEASは、標的の役割を果たす器官内でDHEAに変化し、標的器官に作用する。DHEASは、DHEAの安定状態を示す指標であると考えられている。DHEA及びDHEASは、ストレスと関係すると考えられている。
【0033】
そのような刺激によって、血管拡張に起因するメカニズム、及び交感神経に対する影響下にあるメカニズムがあると考えられている。血管の拡張の働きは、刺激によってカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生を増加させると考えられている。刺激によって、神経などが刺激されると筋血流量が増加するため、CGRPなどの放出が増加されると考えられている。すなわち、遠心性自律神経又は運動神経は、脊髄後根(dorsal spinal nerve root)に含まれない。求心性神経などの刺激に起因して軸索反射メカニズムが生じ、そしてその末端からCGRPが放出され、そしてこれは、支配されている領域の血管が拡張されるメカニズムに基づくと考えられている。
【0034】
さらに、血管を支配する自律神経の活性への影響も、想定されている。筋肉の血管は、アドレナリン作用性交感神経及びコリン作用性交感神経によって支配されている。前者は、アルファ受容体による血管収縮神経であり、そして、後者は、アセチルコリンによる血管拡張神経である。安静時でも、前者は常に、筋肉の血管のためにその緊張状態において働いているため、血管は、常に、ある程度収縮状態に維持されると言われている。他方で、後者に関して、血管の平滑筋は、神経の末端から放出されるアセチルコリンに応答して弛緩するため、血流量が増加すると考えられている。
【0035】
鍼灸針又は温熱加熱による刺激によって、副交感神経が優位な状態を維持するとき、長期の交感神経亢進状態が改善されるため、腎臓内でのRA系の抑制が促進される可能性があるとも考えられている。これは、高血圧の患者のQOLを改善する。
【0036】
さらに、鍼灸針及び温熱加熱などの継続的な刺激治療は、インスリンの低下の傾向を示した。これは、一時的なインスリン分泌の増加ではなく、インスリン抵抗性の継続的な改善に基づくと考えられている。さらに、肥満は、IGTの最も重要な危険因子のうちの1つである。Harris他等が、肥満度及び体重の増加がDMの発症に大きな役割を果たすとして、IGT及びDMと肥満との関係を疫学的に示している。それゆえ、肥満の問題の改善が、DMや高血圧の予防につながると考えられている。問診において、平均約2kg/月の減量を確認した。
【0037】
さらに、コア体温の上昇及び血圧の変化などを考慮して、鍼灸針、温熱加熱などの刺激は、全身血圧及び自律神経による各器官の血流を調整すると考えられている。体血圧に及ぼされる鍼灸針の効果があり、鍼灸針刺激は、交感神経による身体性(systemicity)に対する反応を生じると考えられている。
【0038】
レーザードップラー組織血流計ALF21D(Adovans製)が使用されて、生体組織の血流を測定する。レーザードップラー組織血流計ALF21Dでは、生体組織が半導体レーザー光(波長は780nmである)で照射されると、組織で反射した光は、電気信号に変換され、そして電気信号が処理され、それにより、血流の情報が得られる。
【0039】
レーザードップラー組織血流計のC型レーザープローブ(直径10mm、厚さ3mm、レーザー照射面積2mm2、及び測定深さ1mm)が、手首関節の水平線の中心部に取り付けられ、刺激後に15分間休んで、測定された。温熱加熱プローブは、第2中手骨の骨頭と第3中手骨の骨頭との間に取り付けられる。そして、血流の測定値から、血流の増加率が計算された。
【0040】
レーザードップラー組織血流の原理に関して、レーザー光は、血管内を流れている赤血球にぶつかるため、分散を受けると生じるドップラーシフト(周波数変化)が使用される。この測定方法は、非侵襲的でリアルタイムの反応性、及び連続測定能力によって特徴づけられる。さらに、今回使用されたALF21Dは、血流をml/min/100gのスケールで表示できた。これは、Bonner他等の理論に基づいて信号処理が実施されるためである。
【0041】
以下に、ストレスフリー治療における血流の増加のメカニズムを説明する。生体への精神的なストレスは、大脳辺縁系及び視床下部下垂体を介して交感神経を刺激し、それにより、血管を収縮させて、生体の臓器を含む微小循環系を害する。血流減少応答に応答する「ストレスフリー治療」では、3mm及び5mmの距離での周辺の皮下部(peripheral subcutaneous part)の体温の上昇、並びに、ストレスホルモン(アミラーゼ、コルチゾール、及びACTH)の分泌制御が確認されている。
【0042】
さらに、生体活性ホルモンである血管作動性腸管ペプチド(VIP)が、腸蠕動運動を加速させ、消化管、膵臓、及び視床下部から分泌され、そして消化管などの血流を含む、血流を増加させる。さらに、微小血管の血管透過性及び血管新生が、血管内皮増殖因子(VEGF)によって加速される。VIP及びVEGFは、「ストレスフリー治療」によって著しく増加するため、VIPの作用及びVEGFの作用の双方とも誘発されて、臓器及び抹消血流の血流が増加されたと考えられている。
【0043】
これらの結果から、生体に対するストレス刺激による自律神経を介した交感神経の活性、及び視床下部下垂体刺激ホルモンの過剰反応に関して、甲状腺刺激による「ストレスフリー治療」が、視床下部の支配力(ascendence)に、上行性(ascending manner)に作用し、そしてストレスホルモンの放出を抑制しながら、VIP及びVEGFによって血流が増加されたと考えられている。
【0044】
さらに、ストレス及び痛みなどの有害な刺激が生体に加えられると、指先の皮膚の血流が減少して、交感神経性皮膚血流反応(SFR)が現れる。この反応は、有害な刺激に対する交感神経系による反応として、抹消血流に基づく指標によって評価される。ストレスフリー治療では、レーザードップラー組織血流計による手首関節の水平線の中心部における血流は増加するため、ストレスによる交感神経性皮膚血流反応(SFR)を介する血流の低下が、ストレスホルモンの抑制効果と共に、「ストレスフリー治療」によってVIP及びVEGFにより血流を増加させるように見えるであろう。
【0045】
図1は、本発明に使用される電気式温熱加熱装置(electric type warm temperature heating apparatus)の概略図である。
図2は、電気式温熱加熱装置の回路図の概略図である。
【0046】
電気式温熱加熱装置は、装置10と、リード線12によって装置10に接続される、温熱刺激用のガイド素子(guide element)14とを含む。
【0047】
図示の通り、装置10は、温熱刺激パターンが記憶される記憶装置16と、記憶装置16から温熱刺激パターンを読み出す制御装置(CPU)18と、温熱刺激用のガイド素子14に温熱刺激パターンを供給する出力装置20とを含む。温熱刺激は、温熱刺激パターンに従って、刺激されるべき部分に与えられる。
【0048】
制御装置(CPU)18は記憶装置16に接続される。もぐさの燃焼から得られるものと等価の刺激状態を得るための温熱刺激パターンが、記憶装置16に記憶されている。制御装置(CPU)18は、記憶装置16から温熱刺激パターンを読み出し、温度センサー22の検出に基づいて、1つ又は複数の加熱素子(a heating element(s))への出力を制御し、そして温熱刺激用の1つ又は複数のガイド素子へ温熱刺激パターンを出力する。
【0049】
装置10は、刺激されるべき少なくとも2つの異なる領域へ温熱刺激パターンを供給するために、温熱刺激用の2つ以上のガイド素子へ接続される。このようにして、温熱刺激パターンは、温熱刺激用のガイド素子によって、刺激されるべき領域に応用される。
【0050】
温度センサー22が、加熱素子の近くの影響を受ける領域の温度と相関する位置に設けられる。温熱刺激用のガイド素子は、下記で説明する構造を有する。温熱刺激用のガイド素子14は、装置10のケースと、ケース内に設けられ及び温熱刺激を与えるための温熱加熱源として使用される加熱器と、ケースの下面に設けられ及び加熱器の熱を患者の皮膚へ伝導する熱伝導基板と、ケースの上面に設けられたシール基板とを含む。
【0051】
2つの異なる領域に配置される温熱刺激用のガイド素子の熱伝導基板は、望ましくは、少なくとも2つの異なる種類の金属で構成される。この実施形態では、アルミニウム及び鋼が使用される。
【0052】
温度センサーは、ハウジングの予め決められた位置に設けられ、それは、人体の一部に接触しており、そしてその位置の温度を検出して、センサーアンプに検出信号を送信する。制御装置(CPU)は、電力発生回路の出力を制御して、人体接触の皮膚表面と接触している部分の温度が、予め決められた温度を上回ることがないようにする。温熱加熱装置では、温熱刺激用のガイド素子の表面温度は、40~50±5℃の範囲内となるように制御される。
【0053】
温度センサーによって検出される加熱素子の加熱温度が、基準温度以下であるとき、温度センサーの出力に従って、パルス信号のプラス側の期間は長くなるように制御され、そしてパルス信号のマイナス側の期間は短くなるように制御される。それとは反対に、基準温度の状態にあるとき、プラス側の期間は短くなるように制御され、及びそのマイナス側の期間は長くなるように制御される。
【0054】
図3は、電気式温熱加熱装置を制御することによって得られる、望ましい温熱刺激波形を示す。温熱刺激波形は、予め決められたピーク温度、例えば、50±5℃まで加熱することによって得られる加熱波形2と、ピーク温度に達した後に加熱を停止することによって形成される放熱波形3と含む。
【0055】
加熱波形は、凸形状の加熱波形、上方に傾斜する線形状の加熱波形、又は凹形状の加熱波形であってよい。さらに、加熱波形は、上述の加熱波形に限定されない。鋸歯状の波形、及び凸凹の波形であってもよい。さらに、加熱波形及び放熱波形は、正弦波形として形成されてもよい。
【0056】
温熱刺激の周期パターンは、温熱加熱波形と放熱波形とで構成される温熱刺激波形、及び次の温熱加熱曲線の前の間隔を含む。温熱刺激の1つの周期パターンは、望ましくは、温熱刺激領域が1秒~30秒とし得、そして加熱領域間のインターバルが1秒~10秒とし得るように、設定される。
【0057】
温熱刺激のパターンは、望ましくは、独立した温熱刺激波形を含み、その位相は、温熱刺激のパターンが実質的に互いに重なり合わないようにシフトされる。すなわち、図に示すように、温熱刺激のパターンは、温熱刺激領域と次の温熱刺激領域との間のインターバルを含む第1の温熱刺激パターン、並びに、第1の温熱刺激パターンのインターバルの一定期間の間の温熱刺激領域と、第1の温熱刺激領域の間のインターバルとを含む第2の温熱刺激パターンを含む。
【0058】
温熱刺激の周期パターンは、望ましくは、10分~30分間繰り返される。そして、温熱刺激の周期パターンは、望ましくは、再度繰り返される。
【0059】
さらに、刺激として、鍼灸針刺激及び温熱加熱刺激の他に、光刺激、磁気刺激、超音波刺激、低周波刺激などを用いてもよい。
【0060】
第1実施形態
被験者は成人の男女であった。熱傷が考慮されたため、電気式温熱加熱装置、MXA-8000(SO-257)が温熱加熱刺激に使用された。そのプローブは、直径10mmであり、そしてピークが50±5℃の温熱の加熱刺激が断続的に15分間施された。プローブは、体表面の刺激されるべき特定領域への以下の温熱加熱のために取り付けられ、そして特定領域は40~50℃に加熱された。
【0061】
ここで、刺激されるべき特定領域は、第1中足骨と第2中足骨との骨間、第2中足骨と第3中足骨との骨間、又は左右の足底の第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分(
図4参照)からなる群から選択される少なくとも1つである。
図4では、「x」は、第1中足骨と第2中足骨との骨間を示し、「y」は、第2中足骨と第3中足骨との骨間を示し、並びに「z」は、第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分を示す。
【0062】
そして、温熱加熱刺激が、望ましくは、病状次第で、非同時に及び独立して、少なくとも1つの刺激されるべき特定領域に与えられる。
【0063】
表1は、レーザードップラー組織血流計を使用することによる、手首関節の水平線の中心領域の、刺激の前後に測定された血流量並びに血流の増加率の結果を示す。ここで、温熱加熱刺激が、刺激されるべき特定領域として、第1中足骨と第2中足骨との骨間、第2中足骨と第3中足骨との骨間、又は左右の足底の第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分からなる群から選択される少なくとも1つに与えられる。
【0064】
【0065】
表1に示すように、血流の増加率が60%以上、及び好ましくは100%以上であったとき、治療の効果は並外れていた。互いに異なる少なくとも1つの刺激されるべき特定領域が、選択されている。血流の増加率は、刺激の指標として用いられる。血流の増加率は、60%以上、好ましくは100%以上とし得る。また、血流の増加率は、刺激の評価の際の指標として用いられる。
【0066】
自律神経による精神的なストレスに対する影響を考慮して、被験者を20分間、仰臥位の状態で安静に保った後、血圧、コア体温、唾液アミラーゼ、及びHEARTRATER(動脈年齢)が測定され、そして温熱刺激が15分間施され、それら数値が再度の刺激直後に測定される。
【0067】
温熱刺激のプロトコルが
図5に示されている。治療が一度行われて、上述の測定は、治療の前後及びその翌日に実施された。自律神経系によって支配される抹消循環(precapillary circulation)が、深部体温計(深部体温モニター、TERUMO CORP.製のCORE TEMP CM-210)によって測定され、そして、精神的なストレスが、DAEKI AMY(NIPRO製の唾液アミラーゼモニター)によって測定された。さらに、動脈硬化の指標及び血管年齢が、HEARTRATERによって定量化される。
【0068】
血液が2回、すなわち、刺激前、及び刺激の翌日の同時刻に採取され、そして被験者は、試験の前日の9:00PM以降及び試験当日は水以外のいずれの食物や液体の摂取も控える。
【0069】
さらに、試験前24時間から試験の翌日までは激しい運動を控えるように、前もって説明が行われ、そして、可能であれば、試験日の朝は自宅から研究室まで車を使用して、激しい活動を避け、最小限の活動で移動するように指示される。
【0070】
刺激されるべき領域の温度上昇が観察された。特に、第2中足骨と第3中足骨との骨間に刺激が与えられたときに、温度の上昇が観察されたことに留意されたい。唾液アミラーゼに関して、第2中足骨と第3中足骨との骨間に刺激が与えられたときに、増加傾向が示された。唾液アミラーゼは増加する(+34.25)。さらに、コルチゾールは、第1中足骨と第2中足骨との骨間において低下し(-3.33)、並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分において低下する(-6.33)。
【0071】
第1中足骨と第2中足骨との骨間に刺激が与えられたとき、収縮期動脈圧が顕著に低下した(-13.00)。
【0072】
第1中足骨と第2中足骨との骨間に刺激が与えられたとき、総コレステロールは顕著に低下する(-10.33)。第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分において、中性脂肪も低下する(-24.67)。A.I.(動脈硬化指数)に関して、第1中足骨と第2中足骨との骨間に刺激が与えられたとき、A.I.は低下する(-0.10)。
【0073】
第1中足骨と第2中足骨との骨間;又は第2中足骨と第3中足骨との骨間に位置する領域に刺激が与えられたとき、血糖値が低下する(-5.33又は5.25)。さらに、第2中足骨と第3中足骨との骨間に刺激が与えられたとき、ヘモグロビンA1cも低下する(-0.13)。
【0074】
第2中足骨と第3中足骨との骨間、又は第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分に刺激が与えられたとき、消化管ホルモンであるガストリンの分泌量は顕著に増加する(19.33又は48.67)。これは、消化吸収及び腸の蠕動運動などが増加することを示唆する。
【0075】
第1中足骨と第2中足骨との骨間に刺激が与えられたとき、アディポネクチンが増加する(+1.5)。アディポネクチンは、長寿に関連する遺伝子の1つであるサーチュイン遺伝子を活性化させる物質の1つであると考えられているため、足底部の2つの領域への2つの刺激によって、長寿に関連する遺伝子をONにすることが示唆された。
【0076】
第1中足骨と第2中足骨との骨間、又は第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分に刺激が与えられると、レプチンが低下する(-0.57又は-0.20)。レプチンは「飢餓ホルモン」と呼ばれ、そして体は、もともと体内に脂肪を蓄えることができる。現代においては、肥満の原因の95%が、過剰のレプチンに起因する「レプチン抵抗性」であるとであると言われている。この物質の分泌量を調整することによって、Dayez効果が期待されると考えられている。
【0077】
自律神経のバランスは、Heartレギュレータ(Heart regulator)によって測定される。第1中足骨と第2中足骨との骨間において自律神経の活性度が増加する(+28.33)。第1中足骨と第2中足骨との骨間(+14.67)、又は第2中足骨と第3中足骨との骨間(+12.25)において、自律神経の抵抗度が増加する。第1中足骨と第2中足骨との骨間において、ストレス指数が低下する(-17.00)。第1中足骨と第2中足骨との骨間において、疲労度が低下する(-30.00)。
【0078】
第2実施形態
本実施形態では、刺激されるべき特定領域として甲状腺の近くの領域に鍼灸針刺激を与える例を示す(
図6参照)。甲状腺は、体表面から浅い位置に位置し、そして、およそ5mm~30mmの範囲の深さに観察される臓器である。それゆえ、概して、超音波検査において高周波表面プローブ(high frequency superficial probe)を使用することによって、検査が行われる。甲状腺の長さ方向の直径はおよそ40~50mmであり、その厚さはおよそ12~18mmであり、その幅方向の直径はおよそ15~25mmであり、及びその峡部の厚さはおよそ2~4mmである。
【0079】
高血圧と診断された、20~60歳の合計10名の男女に鍼治療を行った。自律神経によってもたらされる精神的なストレスに対して影響作用を期待して、使い捨ての鍼灸針(ステンレス鋼製であり、長さ40mm、及び太さ0.18mmであった)を、前頸部に、深さ2~3cmで挿入した。検査対象の被験者を仰臥位の状態で15分間安静に保った後、その血圧、コア体温、及び唾液アミラーゼを測定した。その後、被験者に鍼灸針刺激を15分間与え、そして針を抜いた直後に再度測定した。治療は7回、すなわち、初日、その3日後、7日後、10日後、14日後、17日後、21日後に行った。
【0080】
第2実施形態では、血流は、レーザードップラー組織血流計を使用することによって、手首関節の水平線の中心領域において、刺激の前及び後に測定され得る。そして、第1実施形態の表1と同じ結果が得られ得る。
【0081】
効果
唾液アミラーゼ、最高及び最低血圧の値は、鍼灸針刺激によって顕著に低下したことを示した。他方で、3mm及び5mmの距離のコア体温も、顕著な上昇を示した。
【0082】
唾液アミラーゼに関しては、増加が+35で観察された。高血圧の被験者の中には常に精神的なストレスが高い被験者がいたため、それを取り除くことによって、血圧を低下させたと考えられている。鍼治療を継続すると、被験者の収縮期動脈圧及び拡張期血圧が低下する(-13)傾向があった。降圧薬が投与されていない被験者は、鍼治療の直後に血圧の上昇が観察された。3mm及び5mmの距離でコア体温が低い被験者は、深部コア体温が非常に上昇し(+2)、そしてコア体温は、全体として正常な体温に収束したことが観察された。さらに、鍼治療を継続すると、鍼治療前のコア体温が高くなった傾向があった。
【0083】
鍼治療を継続すると、0日の鍼灸針治療が実施された直後、コルチゾールとさらにそのもとのACTHの分泌量)が著しく低下し、その後、なだらかに上昇した後、低下したことが観察された。全ての被験者のコルチゾール及びACTHは、鍼灸針治療の実施直後、一時的に低下し、その後、徐々に増加する傾向が示されたが、治療を継続すると、低下する傾向があったことが観察された。
【0084】
T-CHOL、HDL-CHOL、及びLDL-CHOLがなだらかに低下する傾向があったことが示された。
【0085】
第3実施形態
この実施形態では、刺激されるべき特定領域として、外皮と、左足及び/又は右足の母趾末節骨底と左右の足底の基節骨との内側境界部上の水平線との間の領域に、灸が施された。
【0086】
図7において、シンボル「○」は、外皮と、母趾末節骨底と基節骨頭との内側境界部の水平線との間にある刺激されるべき、及び刺激を与える、特定領域を示す。
【0087】
もぐさは、予め巻かれたもぐさを使用することによって、被験者に応用された。灸療法は、外皮と、母趾末節骨底と基節骨頭との内側境界部の水平線との間にある領域に、5回連続的に実施され、刺激を与えた。
【0088】
1回の灸療法当たりのもぐさの量は、0.002gであり、及び燃焼温度は、最大で80±5℃であった。週の初め及び週の終わりに実施された2セットの治療が、3回繰り返された、すなわち、治療は、合計6回実施された。
【0089】
外皮と、母趾末節骨底と基節骨頭との内側境界部の水平線との間の領域に、刺激を与えることによって、甲状腺ホルモンの分泌が活性化されたことが、臨床データから確認され、刺激を与える。
【0090】
第3実施形態では、レーザードップラー組織血流計を使用することによって、手首関節の水平線の中心領域において、刺激の前後に血流が測定され得る。そして、第1実施形態の表1と同じ結果が得られ得る。
【0091】
それにより、コア体温の上昇、並びに肥満、糖尿病などの予防及び改善が達成される。それゆえ、治療は、糖尿病及び肥満などの生活習慣病に対する治療手段の効果的な方法のうちの1つであると考えられている。特に、下記で、顕著な効果が示されたコア体温の上昇、糖尿病及び肥満の臨床データに関して説明する。
【0092】
糖尿病、肥満及び高血圧と診断された、20~60歳の合計9名の男女に実施された。刺激は、灸療法によって、外皮と、左足及び/又は右足の母趾末節骨底と基節骨との内側境界の水平線との間の部分に与えられた。
【0093】
上述の通り、コア体温の上昇、中性脂肪の減少、コレステロールの低下、インスリンの低下、及び動脈硬化の抑制の効果がある。
【0094】
第1実施形態又は第2実施形態の群から選択された、刺激されるべき特定領域のうちの少なくとも1つに刺激治療を施すことが好ましい。
【0095】
前述の説明は、ストレスを解消するための本刺激方法、及び刺激方法によるストレスフリー治療方法の例示的な実施形態の解説及び説明のためにのみ提示された。包括的であること、又は本発明を開示の何らかの正確な形式に限定することは意図していない。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ること、及びその要素の等価物が代わりとなり得ることが理解される。さらに、本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示の特定の状況又は材料に適応するために、多くの修正がなされ得る。それゆえ、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の態様であると開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことを意図する。本発明は、その趣旨又は範囲から逸脱することなく、具体的に説明及び解説したもの以外で実施されてもよい。
【0096】
第4実施形態
血管(動脈)及び神経を刺激するための部位(刺激されるべき特定領域)は、以下の通りである。
図8は、刺激されるべき刺激特定領域として、部位(L)、(K)、(M)を示す。そして、
図9は、目の上方から見た右目の眼窩下動脈、並びに目及び眼窩下の神経管(nerves tube)の上壁が開いている図を示す。刺激されるべき特定領域は、刺激を与えることによって、血流を60%以上増加させる部位である。
【0097】
(L)眼窩上孔部位;
・ 眼窩高から1cm上方に位置する外眼角の部位。
・ 顔の眼窩上動脈、静脈、及び眼窩上神経枝の部位。
・ 血管(動脈)及び視神経を刺激する部位。
(K)部位
・ 目の内眼角と(L)部位とをつなぐ線と、目の外眼角に垂直な線の交点に位置する部位。
・ 目の動脈の血流が増幅する部位。
・ 目の末梢神経を刺激する部位。
(M)部位
・ 左右の眉の内側末端を接続する線の中心から、水平にした指1本分上方に位置する外眼角の部位。
・ 目の滑車神経を刺激する部位。
(F)部位(上述)
・ 足底の第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部位
刺激するための部位(L)、(K)、(M)、(F)における刺激は、選択的に与えられる。
【0098】
刺激するための部位(L)、(K)、(M)、(F)における刺激は、選択的に与えられる。刺激付与部位の1つの組み合わせは、以下のものを含む。
パターン1;(R)L-(L)L-(R)F
パターン2;(L)L-K-(R)F
パターン3;L(R)-M-(R/L)F
ここでは、(R)は右側、(L)は左側である。
刺激付与部位の組み合わせは、この組み合わせに限定されない。刺激する部位(F)を常に備えることが好ましい。
【0099】
刺激は、熱、光、音波、振動、又は押圧を使用することによって、複数の部位に与えられる。
熱刺激は、
図1及び
図2で述べたような熱刺激装置を使用することによって、与えられる。
【0100】
実施形態5
図10は、顔100、頭102、目104、瞳孔103(EY)、鼻105、口106及び耳107を含む、被験者の顔の概略正面図である。
【0101】
例示的な刺激付与部位は、以下の部位を含む:
(1):(F)内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位、
(2):(L)眼窩上孔、
(3):ST36点、及び
(4):SP点。
前述の通り、部位(F)は、
図4に示されている部分であり、この図では、「x」は、第1中足骨と第2中足骨との骨間を示し、「y」は、第2中足骨と第3中足骨との骨間を示し、並びに「z」は、第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分を示し、並びに部位(L)は、
図8に示すように、目の上方に位置する部分である。「ST点」は、世界保健機関(WHO)によって定められた経絡点のうちの1つであり、その中で、胃の点36番は、経絡点の36番目の胃の点である。この部位は、膝蓋骨の底部から、脛骨の外側縁に沿って指4本分下に位置する、「足三里(Zu San Li)」(ST36)として知られている。「SP点」は、
図10に示すように、左目及び/又は右目の中心(瞳孔の中心)から延びる垂直線「a」と、鼻の最下部と上唇の最高部との間の真ん中の高さに延びる水平線「b」とが交わる部位である。垂直線「a」は、左目及び右目の一方に設定されてもよいし、又は2つのSP点を設定するために各目に設定されてもよい。
【0102】
被験者において成長ホルモンの分泌を促す方法では、本出願で開示する刺激付与装置を用いることによって、上述の特定部位(1)~(4)に温熱刺激及び/又は押圧刺激が与えられる。好ましくは、刺激は、特定部位(1)~(4)に同時に与えられる。
【0103】
刺激付与装置は、2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子を有する。ガイド素子は、特定部位に取り付けられる。その後、ガイド素子は、40~50±5℃の温度まで加熱されるため、温熱刺激が部位のそれぞれに与えられる。
【0104】
刺激付与装置は、上述のような制御方法を用いた制御式の電気式温熱加熱装置であってよい。効果を高めるために、方法は、記憶装置に温熱刺激パターンを記憶するステップ、2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子を、それぞれ、体表面の少なくとも2つの異なる部位に配置するステップ、記憶装置から温熱刺激パターンを読み出して、2つ以上のガイド素子に温熱刺激パターンを出力するステップ、及び40~50±5℃の範囲になるようにガイド素子の温度を制御して、温熱刺激を与えることによって、血流量を60%以上増加させるために、温熱刺激パターンに従って複数の部位に温熱刺激を与えるステップを含んでもよい。そのような方法は、本出願で開示された任意の形態又はステップを使用し得る。
【0105】
上述の刺激プロセスを通して、特定部位(1)~(4)に刺激を与える。好ましくは、特定部位のそれぞれに同時に刺激を与えて被験者の成長ホルモンの分泌を優位に増加することができる。これは、被験者に、睡眠の質の改善、コレステロール、中性脂肪、体内の皮下脂肪及び/又は内臓脂肪量の低下、並びに血糖値の安定を含め、多くの効果をもたらす。
【0106】
実施形態6
本明細書において開示した方法及び装置は、アイケア、例えば白内障、老眼(presbyopia/aged eyes)、近視(myopia/ nearsighted eyes)、乱視(astigma/distorted vision)などを含む、目の治療に使用され得る。目の治療のための例示的な刺激付与部位は、
図10に示すように、以下の部位を含む:
(1):(F)左足及び右足における内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位;
(2):左目又は右目104の瞳孔103(EY);
(3):左脚又は右脚のST36点
(4):SP点;
及び上述の部位のうちの2つ、3つ又は4つの任意の組み合わせ。
前述の通り、部位(F)は、
図4に示す部分であり、この図では、「x」は、第1中足骨と第2中足骨との骨間を示し、「y」は、第2中足骨と第3中足骨との骨間を示し、並びに「z」は、第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線上の、内果の垂直線と交わる部分を示し、並びに部位(L)は、
図8に示すような目の上方に位置する部分である。「ST点」は、世界保健機関(WHO)によって定められた経絡点のうちの1つであり、その中の胃の点36番は、経絡点の36番目の胃の点である。この部位は、膝蓋骨の底部から、脛骨の外側縁に沿って指4本分下に位置する、「足三里」(ST36)として知られている。「SP点」は、
図10に示すように、左目又は右目の瞳孔の中心から延びる垂直線「a」と、鼻の最下部と上唇の最高部との間の真ん中の高さに延びる水平線「b」とが交わる部位である。垂直線「a」は、左目及び右目の一方に設定されても、又は2つのSP点を設定するために各目に設定されてもよい。
【0107】
この実施形態では、刺激付与装置は、熱刺激、光刺激、音波刺激、振動刺激、押圧刺激などの刺激を、上述の部位に付与するために使用される。この方法は、加齢と共にホルモンの分泌が低下した被験者において成長ホルモンの分泌を促し得る一方で、水晶体の外膜を同時に刺激し得る。
【0108】
目の治療では、刺激が、(1):(F)左足及び右足における内果の垂直線並びに第1中足骨及び第2中足骨の内側縁の延長線と交わる部位、(2):左目又は右目104の瞳孔103(EY);(3):左脚又は右脚のST36点;及び(4):SP点の部位に、同時に、約30~45分間、与えられることが好ましい。
【0109】
目の治療のための刺激付与装置は、2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子を有する。ガイド素子は、刺激されるべきそれぞれの特定部位に提供され、そして約40~50±5℃の温度となるように加熱され、それにより、皮膚表面又は上述の刺激部位に、直接又は間接的に、温熱刺激をもたらす。ガイド素子は、望ましくは、少なくとも2つの異なる種類の金属及び/又はセラミック、例えばアルミニウム及び鋼で構成される。ガイド素子の1つ以上は、セラミックを含んでよい。例えば、瞳孔は閉じられ、テープが瞳孔の中心に取り付けられ、そして瞳孔の中心の位置で、ガイド素子(電極)がテープの表面に取り付けられ、その後、ガイド素子に電気出力が加えられ、電流が金属を含むガイド素子を流れ、それにより、約30~45分間かけて、その温度を高くする一方で、セラミックを含むガイド素子が、赤外光を照射することを可能にする。
【0110】
本出願で開示される電気式温熱加熱装置及び装置の制御方法は、目の治療に使用され得る。
【0111】
好ましくは、加齢と共にホルモンの分泌が低下した被験者において成長ホルモンの分泌を促すのに効果的な方法及び量で、熱刺激、光刺激、振動刺激など及びそれらの任意の組み合わせが、上述の刺激付与部位に同時に与えられ、同時に、水晶体の外膜を刺激して、水晶体の代謝を加速することができる。
【0112】
上述のような熱刺激付与装置を用いた目の治療の方法において、40~50±5℃の範囲の温熱刺激を刺激部位に付与することができ、血流を60%以上増加させて、被験者の成長ホルモンの分泌を促すことができる。
【0113】
本発明による目の治療の方法はまた、以下の方法で実施され得る。予め決められた温熱刺激パターンが記憶装置に記憶される。2つの異なる種類の金属からなる2つ以上のガイド素子が、それぞれ、部位(1)~(4)を含む少なくとも2つの異なる特定部位、好ましくは、部位(1)~(4)上の全てに配置される。記憶装置から温熱刺激パターンが読み出され、そして2つ以上のガイド素子に出力され、2つ以上のガイド素子の温度は40~50±5℃の範囲となるように加熱され、それにより、同時に、温熱刺激パターンに従ってそれぞれの特定部位に温熱刺激を与え、温熱刺激の付与によって、血流を60%以上だけ増加させる。
【国際調査報告】