(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】AK3287製剤及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20230920BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230920BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230920BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230920BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K9/107
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/14
A61P17/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514920
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2021116114
(87)【国際公開番号】W WO2022048580
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202010916364.X
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521299961
【氏名又は名称】スージョウ アーク バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ペン チェン
(72)【発明者】
【氏名】リー ユーピン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ チュンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ガン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ハイチン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チェン ジム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC19
4C076DD09F
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD37R
4C076DD39N
4C076EE23F
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4C076FF34
4C076FF39
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4C076GG41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
AK3287製剤及びその製造方法並びに使用であって、前記製剤は、質量百分率で、AK3287 0.05~20%と、吸収促進剤0~30%と、油相物質5~99.95%と、乳化剤0~25%と、防腐剤0~5%と、水0~70%とを含み、AK3287の構造は、図示のとおりである。前記製剤中のAK3287分子は皮膚における曝露量が高く、前記製剤は、瘢痕部の皮膚の厚さ、及び瘢痕部の皮膚の最大厚さと正常な皮膚の厚さの比を低減するとともに、皮膚におけるTGF-β及びI型コラーゲンの相対密度を低減することができる。
【化1】
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、AK3287 0.05~20%と、吸収促進剤0~30%と、油相物質5~99.95%と、乳化剤0~25%と、防腐剤0~5%と、水0~70%とを含み、AK3287の構造は
【化1】
であることを特徴とするAK3287製剤。
【請求項2】
AK3287 0.1~20%と、吸収促進剤2~30%と、油相物質10~35%と、乳化剤5~25%と、防腐剤0.1~5%と、水30~70%とを含み、
好ましくは、AK3287 0.5~15%と、吸収促進剤5~15%と、油相物質10~30%と、乳化剤8~20%と、防腐剤0.75~2%と、水40~60%とを含み、
又は、AK3287 0.5~15%と、吸収促進剤5~15%と、油相物質15~30%と、乳化剤10~20%と、防腐剤0.2~2%と、水40~60%とを含むことを特徴とする請求項1に記載のAK3287製剤。
【請求項3】
AK3287 2~10%と、吸収促進剤6~12%と、油相物質12~22%と、乳化剤10~16%と、防腐剤0.5~1.5%と、水45~55%とを含み、
又は、AK3287 2~8%と、吸収促進剤6~10%と、油相物質15~25%と、乳化剤12~16%と、防腐剤0.2~1%と、水45~55%とを含むことを特徴とする請求項1に記載のAK3287製剤。
【請求項4】
前記吸収促進剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド及びラウロカプラムから選ばれ、好ましくは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAK3287製剤。
【請求項5】
前記油相物質は、流動パラフィン、オクタデカノール、ヘキサデカノール、ワセリン、シリコーン、ジメチコン及びミツロウのうちの1つ以上であり、好ましくは、前記油相物質は、流動パラフィンとオクタデカノールの組み合わせであり、前記流動パラフィンとオクタデカノールの質量比は、1.5~3:1であり、好ましくは、2~3:1であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAK3287製剤。
【請求項6】
前記乳化剤は、ポリエチレングリコール-7ステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、セテアリルグルコシド及びポリソルベート-80のうちの1つ以上であり、好ましくは、ポリエチレングリコール-7ステアレートであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAK3287製剤。
【請求項7】
前記防腐剤は、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及びクロレトンのうちの1つ以上であり、好ましくは、ベンジルアルコールであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAK3287製剤。
【請求項8】
前記製剤は、エマルションであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のAK3287製剤。
【請求項9】
水及び吸収促進剤を量り取り、均一に混合し、60~85℃に、好ましくは、60~70℃に加熱し、均質化速度を1000~10000rpmに、好ましくは2000~6000rpmに設定し、AK3287を加え、3~10分間均質化して、薬物含有水相溶液を得るステップ(1)と、
油相物質及び乳化剤を量り取り、60~80℃に加熱し、均一に混合して、油相溶液を得るステップ(2)と、
均質化速度を1500~5000rpm、好ましくは、4000~5000rpmに設定し、ステップ(2)で得られた油相溶液を、ステップ(1)で得られた薬物含有水相溶液に加え、5~20分間、好ましくは、5~10分間均質化し、加熱を停止し、撹拌速度を50~500rpmに、好ましくは、200~500rpm設定して持続的に撹拌し、材料温度が40~60℃に下がる時に防腐剤を加え、材料が室温に冷却するまで持続的に撹拌して、AK3287製剤を得るステップ(3)とを含む請求項1~8のいずれか1項に記載のAK3287製剤の製造方法。
【請求項10】
肥厚性瘢痕又はケロイドを予防又は治療するための薬物の製造における請求項1~8のいずれか1項に記載のAK3287製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2020年9月3日に中国で提出された、名称が「AK3287製剤及びその製造方法並びに使用」で、出願番号が202010916364.Xである発明特許出願の優先権を主張し、当該特許出願を全体として参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、薬物製剤に関し、具体的には、肥厚性瘢痕を予防又は治療するためのAK3287製剤及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0003】
線維症は、いろんな組織(肝臓(例えば、非アルコール性脂肪肝炎、糖原病IX型、肝硬変)、肺(例えば、慢性間質性肺疾患、塵肺症、珪肺症、肺気腫、肺線維症、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎)、脈管系(例えば、びまん性間質性線維症、アテローム性動脈硬化)、心臓(例えば、心臓線維症(cardiac fibrosis)、心房線維症、心内膜心筋線維症)、皮膚(例えば、ケロイド、腎性全身性線維症、強皮症)、関節及び間質性組織(例えば、関節線維症、デュピュイトラン拘縮(Dupuytren’s disease)、膵臓(例えば、膵炎)、口(例えば、口腔の線維増殖性変化)、腸(例えば、クローン病関連の線維化狭窄)、脳(グリア瘢痕、細菌性髄膜炎関連の軟膜線維症)を含む)の多くの病状に関係する病原性マーカーである。線維症は、環境的傷害又は様々な損傷、例えば、電離放射線への曝露(例えば、がん治療期間中)、乳腺における嚢胞性破裂(乳腺組織の中で触知可能な病変を引き起こす)、及び、一般に創傷又は組織損傷後(例えば、損傷又は手術後)のコラーゲンの過剰な沈着によって引き起こされる。従来の抗線維化治療薬はピルフェニドン(pirfenidone)、ニンテダニブ(nintedanib)を含み、しかし、様々な線維症の不可逆という特性及び従来の治療法の治療効果が限られていることで、このような病状には新たな治療薬又は他の治療方法がなおも必要である。
【0004】
肥厚性瘢痕(Hypertrophic Scar、HS)は、深刻な皮膚の線維性疾患であり、その形成は異常な創傷癒合によって引き起こされ、病理学的なプロセスである。肥厚性瘢痕は主に手術、皮膚外傷、炎症などの回復後に形成され、一般的な瘢痕の1つである。肥厚性瘢痕の中では線維芽細胞が異常に活発しており、大量に増殖することで、コラーゲンが過剰に合成され、細胞外基質の中に沈着され、線維芽細胞の移動は患者の患部に耐え難い痒みと痛みを引き起こす。不完全な統計によると、世界中に、瘢痕の影響を受けている者は毎年8000万人を超えている。米国だけでも、毎年400万以上の人は深刻な外傷を受け、200万以上の人は火傷を負わされる。火傷後肥厚性瘢痕の発生率は約92%であり、肥厚性瘢痕は患者の損傷部の皮膚隆起、赤み、痒み、痛みを引き起こし、ひいては腱拘縮又は関節脱臼が生じることで、運動機能障害と精神障害を引き起こして、患者の容貌、筋肉機能及びメンタルヘルスに深刻な影響を与えるため、患者の生活の質に影響を与える最大の要因の1つであり、家庭と社会に重い負担をもたらす。現在、臨床では、予防的療法及び治療的療法を含め様々な方法による単独又は併用治療が行われているが、効果がまだ優れない。予防的療法は、主に圧迫療法、フラボン療法を含む。圧迫療法では、患者の患部に包帯を巻き付けるため、患者に苦しみを与える。フラボン療法では、体内のホルモン分泌障害を引き起こす可能性があり、治療的療法は、ステロイドホルモンの注射、瘢痕の手術切除、凍結、照射、及びレーザー治療などを含む。そのうち、ホルモン療法は、患者のホルモン分泌を取り乱し、手術切除、凍結は、患者に二次的な痛みを与え、これらの治療法には、色素沈着性変化、毛細血管拡張、局所皮膚の萎縮壊死などの他の副作用もある。したがって、肥厚性瘢痕を予防又は治療することができる薬物又は治療方法を開発することは急遽必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記技術的課題を解決するために、瘢痕の外観を著しく改善し、瘢痕の形成を減少することができ、皮膚の肥厚性瘢痕線維症に有意な治療効果がある、AK3287低分子を含有する製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記技術的課題を解決するために、質量百分率で、AK3287 0.05~20%と、吸収促進剤0~30%と、油相物質5~99.95%と、乳化剤0~25%と、防腐剤0~5%と、水0~70%とを含み、AK3287の構造は
【化1】
であることを特徴とするAK3287製剤を提供する。
【0007】
好ましくは、前記製剤は、AK3287 0.1~20%と、吸収促進剤2~30%と、油相物質10~35%と、乳化剤5~25%と、防腐剤0.1~5%と、水30~70%とを含む。
【0008】
より好ましくは、前記製剤は、AK3287 0.5~15%と、吸収促進剤5~15%と、油相物質10~30%と、乳化剤8~20%と、防腐剤0.75~2%と、水40~60%とを含む。
【0009】
又は、より好ましくは、前記製剤は、AK3287 0.5~15%と、吸収促進剤5~15%と、油相物質15~30%と、乳化剤10~20%と、防腐剤0.2~2%と、水40~60%とを含む。
【0010】
さらに好ましくは、前記製剤は、AK3287 2~10%と、吸収促進剤6~12%と、油相物質12~22%と、乳化剤10~16%と、防腐剤0.5~1.5%と、水45~55%とを含む。
【0011】
又は、さらに好ましくは、前記製剤は、AK3287 2~8%と、吸収促進剤6~10%と、油相物質15~25%と、乳化剤12~16%と、防腐剤0.2~1%と、水45~55%とを含む。
【0012】
好ましくは、前記吸収促進剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド及びラウロカプラムから選ばれ、好ましくは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0013】
好ましくは、前記油相物質は、流動パラフィン、オクタデカノール、ヘキサデカノール、ワセリン、シリコーン、ジメチコン及びミツロウのうちの1つ以上である。より好ましくは、前記油相物質は、流動パラフィンとオクタデカノールの組み合わせであり、前記流動パラフィンとオクタデカノールの質量比は、1.5~3:1であり、好ましくは、2~3:1である。
【0014】
好ましくは、前記乳化剤は、ポリエチレングリコール-7ステアレート(すなわち、ステアリン酸PEG-7)、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、セテアリルグルコシド及びポリソルベート-80のうちの1つ以上である。より好ましくは、ポリエチレングリコール-7ステアレートである。
【0015】
好ましくは、前記防腐剤は、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及びクロレトンのうちの1つ以上である。より好ましくは、ベンジルアルコールである。
【0016】
好ましくは、前記製剤は、エマルションである。
【0017】
本発明は、さらに、前記いずれかのAK3287製剤の製造方法を提供し、前記方法は、
水及び吸収促進剤を量り取り、均一に混合し、60~85℃(好ましくは、60~70℃)に加熱し、均質化速度を1000~10000rpm(好ましくは、2000~6000rpm)に設定し、AK3287を加え、3~10分間均質化して、薬物含有水相溶液を得るステップ(1)と、
油相物質及び乳化剤を量り取り、60~80℃に加熱し、均一に混合して、油相溶液を得るステップ(2)と、
均質化速度を1500~5000rpm(好ましくは、4000~5000rpm)に設定し、ステップ(2)で得られた油相溶液を、ステップ(1)で得られた薬物含有水相溶液に加え、5~20分間(好ましくは、5~10分間)均質化し、加熱を停止し、撹拌速度を50~500rpm(好ましくは、200~500rpm)に設定して持続的に撹拌し、材料温度が40~60℃に下がる時に防腐剤(好ましくは、ベンジルアルコール)を加え、材料が室温に冷却するまで持続的に撹拌して、AK3287製剤を得るステップ(3)とを含む。
【0018】
本発明は、さらに、肥厚性瘢痕又はケロイドを予防又は治療するための薬物の製造における前記いずれかのAK3287製剤の使用を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって提供されるAK3287低分子を含有する製剤では、AK3287の皮膚における曝露量が高く、瘢痕部の皮膚の厚さ、及び瘢痕部の皮膚の最大厚さと正常な皮膚の厚さの比を有意に低減することができ、瘢痕の外観を著しく改善し、瘢痕の形成を減少することができる。また、本発明のAK3287製剤は、皮膚におけるTGF-β及びI型コラーゲンの相対密度を有意に低減することができ、皮膚の肥厚性瘢痕線維症に有意な治療効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】AK3287の血漿におけるPK分析を示す。
【
図3】AK3287の皮膚におけるPK分析を示す。
【
図4】デュロック種ブタの瘢痕部の皮膚の厚さの百分率の変化を示す。
【
図5】瘢痕部の皮膚の最大厚さと正常な皮膚の厚さの比を示す。
【
図7】皮膚におけるI型コラーゲンの相対密度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、質量百分率で、AK3287 0.05~20%と、吸収促進剤0~30%と、油相物質5~99.95%と、乳化剤0~25%と、防腐剤0~5%と、水0~70%とを含むAK3287製剤を提供する。
【0022】
好ましい一実施形態において、前記製剤は、質量百分率で、AK3287 0.1~20%と、吸収促進剤2~30%と、油相物質10~35%と、乳化剤5~25%と、防腐剤0.1~5%と、水30~70%とを含む。
【0023】
好ましい一実施形態において、前記AK3287の質量百分率での含有量は、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、4%、5%、8%、10%、15%、18%又は20%であり、好ましくは、0.2%、0.5%、1%、2%、4%、5%、8%、10%又は15%である。より好ましくは、0.5%、1%、2%、4%、5%、8%又は10%であり、さらに好ましくは、2%、4%、5%又は8%である。
【0024】
好ましい一実施形態において、前記吸収促進剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド又はラウロカプラムであってもよく、好ましくは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルであり、吸収促進剤の質量百分率での含有量は、0%、0.5%、1%、2%、5%、8%、10%、15%、20%、25%又は30%であり、好ましくは、2%、5%、6%、8%、10%、12%、15%又は20%である。より好ましくは、5%、6%、8%、10%又は12%である。
【0025】
好ましい一実施形態において、前記油相物質は、流動パラフィン、オクタデカノール、ヘキサデカノール、ワセリン、シリコーン、ジメチコン及びミツロウのうちの1つ以上であってもよく、前記油相物質の質量百分率での含有量は、5%、10%、12%、15%、18%、20%、22%、25%、30%、35%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%又は99.95%であり、好ましくは、12%、15%、18%、20%、22%、25%、30%又は35%である。より好ましくは、12%、15%、18%、22%又は25%であり、そのうち、流動パラフィンは、パラフィン油とも呼ばれ、鉱油の一つであり、原油から分留された無色無臭の混合物であり、主成分はC、Hで、化学元素表示はCxHyである。オクタデカノールは、1-オクタデカノール又はステアリルアルコールとも呼ばれる。好ましくは、前記油相物質は、流動パラフィンとオクタデカノールの組み合わせであり、前記流動パラフィンとオクタデカノールの質量比は、1.5~3:1であり、好ましくは、2~3:1である。
【0026】
前記乳化剤は、ポリエチレングリコール-7ステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、セテアリルグルコシド及びポリソルベート-80のうちの1つ以上であってもよく、好ましくは、ポリエチレングリコール-7ステアレートであり、前記乳化剤の質量百分率での含有量は、0%、1%、2%、5%、8%、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%又は25%であり、好ましくは、5%、8%、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%又は25%である。より好ましくは、10%、12%、14%、15%、16%、18%又は20%である。
【0027】
好ましい一実施形態において、前記水の質量百分率での含有量は、0%、10%、20%、30%、40%、45%、50%、51.5%、53.5%、55%、60%、65%又は70%であり、好ましくは、45%、50%、51.5%、53.5%、55%又は60%である。
【0028】
好ましい一実施形態において、前記防腐剤は、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及びクロレトンのうちの1つ以上であってもよく、好ましくは、ベンジルアルコールであり、前記ベンジルアルコールの質量百分率での含有量は、0%、0.1%、0.2%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2%又は5%であり、好ましくは、0.1%、0.2%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2%又は5%であり、より好ましくは0.75%、0.2%、0.5%、1%、1.5%又は2%である。
【0029】
好ましい一実施形態において、前記製剤は、エマルションである。
【0030】
本発明は、さらに、前記いずれかのAK3287製剤の製造方法を提供し、前記方法は、
水及び吸収促進剤を量り取り、均一に混合し、60~85℃(好ましくは、60~70℃)に加熱し、均質化速度を1000~10000rpm(好ましくは、2000~6000rpm)に設定し、AK3287を加え、3~10分間均質化して、薬物含有水相溶液を得るステップ(1)、
油相物質及び乳化剤を量り取り、60~80℃に加熱し、均一に混合して、油相溶液を得るステップ(2)、
均質化速度を1500~5000rpm(好ましくは、4000~5000rpm)に設定し、ステップ(2)で得られた油相溶液を、ステップ(1)で得られた薬物含有水相溶液に加え、5~20分間(好ましくは、5~10分間)均質化し、加熱を停止し、撹拌速度を50~500rpm(好ましくは、200~500rpm)に設定して持続的に撹拌し、材料温度が40~60℃に下がる時に防腐剤を加え、材料が室温に冷却するまで持続的に撹拌してAK3287製剤を得るステップ(3)とを含む。
【0031】
最後に、本発明は、さらに、肥厚性瘢痕又はケロイドを予防又は治療するための薬物の製造における前記いずれかのAK3287製剤の使用を提供する。
【実施例】
【0032】
下記のいくつかの実施例は、例を挙げて説明するためのものに過ぎず、ここで提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0033】
(実施例1~3)
AK3287を異なる比率で含有するエマルションであって、実施例1~3の具体的な配合は、それぞれ、以下の表1~表3に示すとおりである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0034】
実施例1~3のAK3287含有エマルションの製造方法であって、具体的には、以下のステップを含む。
1.薬物含有水相溶液の調製
実施例1~3の配合比率で、それぞれ、適量の水及びジエチレングリコールモノエチルエーテルを量り取り、均一に混合し、60~70℃に加熱し、均質化速度を2000~6000rpmに設定し、配合量のAK3287を加えながら均質化し、均質化は3~10分間である。
2.油相溶液の調製
配合量の流動パラフィン/オクタデカノール/ポリエチレングリコール-7ステアレートを量り取り、70℃に加熱し、材料が溶解した後、均一に混合する。
3.乳化成形
均質化速度を4000~5000rpmに設定し、油相を薬物含有水相にゆっくりと加え、5~10分間均質化し、加熱を停止し、撹拌速度を300rpmに設定して持続的に撹拌し、材料温度が50℃に下がる時に配合量のベンジルアルコールを加えて、材料が室温に冷却するまで持続的に撹拌する。
【0035】
(実施例4)
動物モデル:肥厚性瘢痕のあるデュロック種ブタモデル
1.赤デュロック種ブタの割り付けと全層皮膚切除創傷モデルの作成
約20kgの雌デュロック種ブタ12匹を、4つの群に分け、割り付け情報は表4に示すとおりである。7日間飼育して適応させた後、いずれも明らかな異常が観察されないため、実験に組み入れる。
【0036】
採皮刀を用いてデュロック種ブタの背骨の左右両側に4cm×4cmの正方形の創傷面を各3箇所作り、左右両側において採皮刀で切開する深さは、それぞれ、0.045インチ、0.060インチである。各創傷面間の間隔は4cm以上である。
【0037】
2.投与方式と用量
表4通りに創傷面毎に1mLのAK3287エマルション又は溶媒を与え、創傷に均一に塗布する。前記投与処理は1日1回である。薬物処理時間は、3日目から開始し、21日目に終了する。
【表4】
【0038】
3.PKサンプルと分析
それぞれ、4日目、9日目、15日目、21日目(初回投与後1日目、6日目、12日目、18日目)に薬物を塗布する前に、動物を麻酔した後、皮膚生検装置(10mm)を用いて前記4つの時点でそれぞれ手術により円形の皮膚を切り落とし、頸静脈から採血して血漿を調製する。皮膚サンプルは合計48個であり、血漿サンプルは合計で48個であり、LC/MS法でPK分析を行う。
【0039】
4.研究指標とサンプルの収集
1)2週毎に動物の体重を秤量する。
【0040】
2)0日目、1日目、3日目、5日目、7日目、14日目、21日目、28日目、42日目、56日目、84日目、112日目、140日目に創傷を撮影し、ソフトウェア描画で潰瘍創傷の面積を測定し、創傷の癒合所要時間を記録する。
【0041】
3)動物を安楽死させた後、創傷部の皮膚を採取し、被測定皮膚をホルマリンに入れて、HE染色で癒合状況を評価する。
【0042】
4)免疫組織化学染色でトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)及びI型コラーゲンの発現を評価する。
【0043】
5.結果
1)全ての投与群のブタは体重が溶媒群と有意差がなく(
図1)、行動は正常である。
【0044】
2)PK分析は、AK3287が少量で血液に入るが(
図2)、殆どが皮膚組織に保持されており(
図3)、且つ高用量群は皮膚における曝露量がより高いことを示す。
【0045】
3)0.06インチの創傷面では、溶媒群と比べて、8% AK3287エマルションは、瘢痕部の皮膚の厚さの百分率変化(
図4)及び最大厚さと正常な皮膚の厚さの比を有意に低減することができ、それぞれ、24.4%、25.0%低減している(
図5)。
【0046】
4)0.06インチの創傷面では、溶媒群と比べて、8% AK3287エマルションは、皮膚におけるTGF-β及びI型コラーゲンの相対密度を有意に低減することができ、それぞれ、43.5%、54.1%低減している(
図6、
図7)。
【0047】
前記各図でいずれもp<0.05は有意差があることを表し、*はp<0.05を、**はp<001を、***はp<0.001を表す。
【国際調査報告】