IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブレインスペース, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図1
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図2
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図3A
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図3B
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図4
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図5
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図6
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図7
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図8
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図9A
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図9B
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図10
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図11
  • 特表-患者ケアのための体液管理システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】患者ケアのための体液管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230920BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230920BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230920BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20230920BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61B5/00 101P
A61B5/11
A61B5/107 300
A61B5/0215 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515029
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 US2021049118
(87)【国際公開番号】W WO2022051653
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,223
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523076542
【氏名又は名称】ブレインスペース, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モールス, スティーブン エー.
(72)【発明者】
【氏名】モールス, ケイトリン ディー.シー.
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C077
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA20
4C017AB06
4C017AC01
4C017BC11
4C038VA04
4C038VB01
4C038VC20
4C077AA16
4C077EE04
4C077HH06
4C077HH13
4C077HH21
4C077JJ05
4C077JJ08
4C077JJ16
4C077JJ24
4C077KK27
4C117XD03
4C117XE04
4C117XE15
4C117XE27
4C117XG17
4C117XJ45
(57)【要約】
患者ケアのための体液管理システムであって、流体流動検出及び制御サブアセンブリを備える制御システムアセンブリと、ユーザデータインターフェースと、解剖学的マーカーに近接する患者に直接取り付けるための上記体液の経路内に圧力センサを有する装着可能な圧力センササブアセンブリと、脳脊髄液、血液、又は尿などの体液の圧力及び/又は流量をモニタ及び/又は制御するための方向センサとを備える患者のインターフェースアセンブリと、を操作可能な組み合わせで含む、患者ケアのための体液管理システムを提供する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液管理システムであって、
a.体液圧をリアルタイムでモニタリングし、体液排出を統合的に制御するための制御システムアセンブリと、
b.患者の解剖学的マーカーに近接して取り付けるための装着可能な圧力センササブアセンブリを備える患者のインターフェースアセンブリであって、前記装着可能な圧力センササブアセンブリは、前記体液の経路における圧力センサと、方向センサと、を備え、
前記制御システムアセンブリは、前記患者インターフェースアセンブリからの入力に基づいて体液圧力、患者の動き、又は患者の方向の変化を検出するように構成され、及び
前記制御システムアセンブリは、ユーザが選択した操作モード及びユーザが定義した設定に基づいて、データを表示する、体液排出の流量に修正調整を行う、又はアラームをアサートするためのアルゴリズムを有するように構成される、患者インターフェースアセンブリと、
を備える、体液管理システム。
【請求項2】
前記制御システムアセンブリは、グラフィカルユーザインターフェースを含むユーザインターフェースサブアセンブリと操作可能に通信する流体流動検出と、制御サブアセンブリと、を備える、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項3】
前記グラフィカルユーザインターフェースは、圧力波形を表示するように構成される、請求項2に記載の体液管理システム。
【請求項4】
前記流体流動検出及び制御サブアセンブリが、操作可能な通信において、流量制御アクチュエータと、流動遮断アクチュエータと、体液流動検出器と、を備える、請求項2に記載の体液管理システム。
【請求項5】
前記装着可能な圧力センササブアセンブリは、前記体液経路に複数の圧力センサを備え、前記複数の圧力センサは、一定の間隔距離で第1の圧力センサと、第2の圧力センサと、を備え、及び前記複数の圧力センサ及び前記方向センサは、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の予想差圧と第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の実際の差圧との差違に基づいて前記複数の圧力センサの1つ以上のドリフトを検出するために剛性部材上に構成される、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項6】
前記患者のインターフェースアセンブリが、体液滴下室と、前記制御システムアセンブリに接続するための体液排液カートリッジと、体液排出用の排液チューブと、前記装着可能な圧力センササブアセンブリから前記体液排出カートリッジへ信号を渡すための電気ケーブルと、をさらに備える、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項7】
前記体液が脳脊髄液(CSF)であり、及び前記制御システムアセンブリが、頭蓋内圧(ICP)のリアルタイムモニタリングとCSF排出の統合制御とを行うように構成される、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項8】
前記体液が脳脊髄液(CSF)であり、及び前記制御システムアセンブリが、腰部圧力のリアルタイムモニタリングとCSF排液の統合制御とを行うように構成される、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項9】
前記装着可能な圧力センササブアセンブリは、患者の外耳道(EAM)に近接して取り付けるように構成される、請求項7に記載の体液管理システム。
【請求項10】
前記患者のインターフェースアセンブリは、輸液源に接続するためのインターフェースと、双方向輸液と、排液チューブと、をさらに備え、前記制御システムアセンブリは、前記輸液源から体腔に液体を圧送するためのポンプを備える、請求項1に記載の体液管理システム。
【請求項11】
前記制御システムアセンブリが、腹腔内圧をリアルタイムでモニタリングするように構成され、及び前記患者のインターフェースアセンブリが、近位端で尿道カテーテルに接続するように構成された排液チューブを備える、請求項10に記載の体液管理システム。
【請求項12】
前記体腔が膀胱である、請求項11に記載の体液管理システム。
【請求項13】
灌流圧に応じて体液を管理するためのシステムであって、前記システムは、
a.体液圧のリアルタイムモニタリング及び身体のコンパートメントからの体液排出の統合制御のための制御システムアセンブリであって、前記制御システムアセンブリが、グラフィカルユーザインターフェースを含むユーザインターフェースサブアセンブリと操作可能な通信で流体流動検出及び制御サブアセンブリを備え、前記グラフィカルユーザインターフェースが、圧力波形を表示するように構成され、及び前記制御システムが、輸液源から流体を圧送するためのポンプと、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリ及び第2の装着可能な圧力センササブアセンブリからの信号に応答して、体液排出の流量に修正調整を行うか、又はユーザが定義した設定に基づいてアラームをアサートするアルゴリズムと、で構成される、制御システムアセンブリと、
b.患者のインターフェースアセンブリであって、
i.その近位端が前記体液コンパートメントに挿入されたカテーテルに接続するために構成され、及びその遠位端で着脱可能な流体排液リザーバに接続するために構成される、1次流体ラインと、
ii.前記体液コンパートメントのための解剖学的マーカーに近接して取り付けるための第1の装着可能な圧力センササブアセンブリであって、前記第1の装着可能な圧力センササブアセンブリが、前記体液の経路における第1の圧力センサと、体液圧力及び患者の動きと方向における変化を検出し、それらの変化を前記制御システムアセンブリにシグナリングするように構成される方向センサと、を備える、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリと、
iii.その近位端で動脈カテーテルに接続するように構成され、その遠位端で前記輸液源に接続するように構成される、2次流体ラインと、
iv.血圧をモニタリングするために解剖学的マーカーに近接して取り付けるための第2の装着可能な圧力センササブアセンブリであって、前記第2の装着可能な圧力センササブアセンブリが、前記血液の経路における第2の圧力センサと、血圧及び患者の動き及び方向の変化を検出し、それらの変化を前記制御システムアセンブリにシグナリングするように構成される方向センサと、を備え、
灌流圧が、測定した血圧及び体液コンパートメント圧に基づいて計算される、第2の装着可能な圧力センササブアセンブリを、を備える、患者のインターフェースアセンブリと、
を備える、システム。
【請求項14】
前記流体流動検出及び制御サブアセンブリが、操作可能な通信で、流量制御アクチュエータと、流動遮断アクチュエータと、体液流動検出器と、を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1及び第2の装着可能な圧力センササブアセンブリはそれぞれ、前記体液経路において第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを備え、前記第1及び第2の圧力センサは一定の間隔距離にあり、及び前記第1及び第2の圧力センサ及び前記方向センサは、前記第1及び第2の圧力センサ間の予想差圧と前記第1及び第2の圧力センサ間の実際の差圧との間の差違に基づく前記第1の圧力センサ又は前記第2の圧力センサにおけるドリフトを検出するために剛性部材上に構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記患者のインターフェースアセンブリが、体液滴下室と、前記制御システムアセンブリに接続するための体液排出カートリッジと、体液排出用の排液チューブと、前記装着可能な圧力センササブアセンブリから前記体液排出カートリッジへ信号を渡すための電気ケーブルと、をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記体液は脳脊髄液(CSF)であり、及び前記制御システムアセンブリは、頭蓋内圧(ICP)及び平均動脈血圧(MAP)をリアルタイムでモニタリングして脳灌流圧(CPP)を導き出し、CSF排液を統合制御するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
患者の解剖学的マーカーに近接して取り付けるように構成された装着可能な圧力センササブアセンブリであって、体液の経路における複数の圧力センサと、方向センサと、を備え、前記複数の圧力センサ及び前記方向センサは、体液圧力、患者の動き、又は患者の方向の変化を検出するように構成される、装着可能な圧力センササブアセンブリ。
【請求項19】
前記複数の圧力センサが、一定の間隔距離の第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを備え、及び前記複数の圧力センサ及び前記方向センサが、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとの間の予想差圧と前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとの間の実際の差圧との間の差違に基づき、前記第1の圧力センサ及び前記第2の圧力センサにおけるドリフトを検出するために剛性部材上に構成される、請求項18記載の装着可能な圧力センササブアセンブリ。
【請求項20】
前記患者の解剖学的マーカーが外耳道(EAM)であり、及び前記複数の圧力センサ及び前記方向センサが頭蓋内圧(ICP)の変化を検出するように構成される、請求項19に記載の装着可能な圧力センササブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本PCT特許出願は、2021年9月3日にPCT特許出願番号PCT/US21/49118として出願され、2020年9月3日に出願された米国仮特許出願番号63/074,223の利益を主張する。米国仮特許出願番号63/074,223の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、医療分野、特に、体液圧、排出流量、及び患者の動きをモニタリング及び/又は制御するための医療装置及び関連する手順に関する。本明細書中に開示するのは、ヒト及び動物用の体液管理システムであり、これは、非定常患者の方向及び/又は動きの頻繁な変化に対応する体液圧及び体液排出流量のリアルタイムかつ統合された制御を提供する。
【0003】
様々な臨床シナリオにおける体液のモニタリング及び制御された排液を通じて体液圧を管理することの医学的利益は、医学文献に記載されている。これは、異常な変位、血管壁コンプライアンスの変化、過剰生産、又は自然排液路の障害が、単一の臓器又は身体のコンパートメント内で体液の蓄積を引き起こし得る場合に特に関連する。単一の身体のコンパートメント内の過剰な体液は、特に低コンプライアンス条件下で、圧力の上昇を引き起こし得る。コンパートメント症候群とは、循環を障害するレベルまでコンパートメント間の圧力が上昇することであり、その結果、酸素化された血液の供給が不十分となり、不可逆的な組織虚血及び壊死につながる。例えば、Garner,HSS J 10(2):143(2014);Keddissi,Can.J.Respir.Ther.55(2018);Marik,Chest 134:172-178(2008);Trinooson,AANA J 81(5):357-368(2013);Frazee,Kidney Dis.2:64-71(2016);Bhave,J Am Soc Nephrol 22:2166-2181(2011);Bruce,J Neuroophthalmol.34(3):288-294(2014);van der Jagt,Critical Care 20:126(2016);及びLee,Neuro-Ophthalmol.34:278-283(2014)を参照されたい。
【0004】
解剖学的コンパートメントによる急性コンパートメント症候群の明確な原因に関連する危険因子が医学文献で同定されている。四肢においては、骨折が最も一般的な原因であることが判明しており、筋肉及び神経が最もリスクが高い。脳においては、外傷性脳損傷、脳卒中、感染、腫瘍、先天性水頭症など、多くの原因が同定されている。これは、血液、脳脊髄液及び間質液を含む脳組織を、頭部の圧力を駆動する主要変数として確立するモンロー・ケリーの法則によって説明される。腹腔の場合、最も実証されている危険因子は、患者が重篤であることである。50%もの重症患者において腹腔内圧(IAP)が上昇しており、腹部臓器灌流が低下し、臓器不全の可能性があるというリスクがあることが明らかにされている。腹腔内高血圧(IAH)も臨床現場で肺機能に影響を及ぼすことが判明している。その結果、治療に関連するモニタリング機能に加えて、コンパートメント症候群のリスクがある患者のモニタリングが採用されている。Garner,HSS J 10(2):143(2014);Hunt,J.Trauma Manag.Outcomes 8:2(2014);及びMokri,Neurology 56(12):1746(2001)を参照されたい。
【0005】
上昇した体圧の治療として含まれる体液の重力ベースとしての排液は、何世紀にもわたって実施されてきており、時間の経過とともに先行技術において有意な改善がなされてきた。尿道カテーテルのような無制限ドレーンは、体液を身体のコンパートメントから完全に排出することが意図されており、3500年間使用されている。脳への圧迫を軽減するための脳脊髄液の制御された部分的排出は、1744年にクロード-ニコラス・ル・キャット氏によって最初に文書化され、1890年にウィリアム・ウィリアムズ・キーン氏によってその技術が取り入れられた。Feneley、JME&T 39(8):459(2015)及びSrinivasan,J Neurosurgery 120:228(2014)を参照されたい。
【0006】
この技術は1927年に、圧力計の導入により体液排出に流体圧測定が加えられたことでさらに進歩した。圧力計は、圧力を測定するために流体の柱の高さの差を利用する。医療状況で使用される場合、ポールに取り付けられた圧力計は、測定されるコンパートメント圧力に対する、実証された臨床的な近似がある外部解剖学的マーカーの高さに調整される。頭蓋内圧の場合、患者が仰臥位にあるときには、脳内のモンロー孔に近づけるには、耳の外耳道又は耳珠が使用される。動脈圧を測定する場合、心臓に近づけるには、一般的に第4肋間の中腋窩線が使用される。次に、装置を大気の圧力に開放してシステムを「ゼロ」気圧にし、システム内の差圧を決定する圧力計のベースラインレベルを設定する。Srinivasan,J Neurosurgery 120:228(2014)及びMuralidharan,Surg Neurol Int 6(Supp 6):S271(2015)を参照されたい。
【0007】
当技術分野におけるさらなる進歩により、単一の目標値を上回る又は下回る患者の圧力に基づいて脳脊髄液(CSF)の排液を制御するための単一のブール変数として圧力計を使用することが可能になった。この場合、入口端を腰椎又は脳室カテーテルに取り付けた状態で、出口端を目標頭蓋内圧(ICP)の高さまで上昇させる。頭蓋骨や脊柱などの目標とするコンパートメント内の圧力が、出口端の水柱の高さによって生じる背圧を超えると、バランスが回復するまで脳脊髄液が流れる。このようにして、このアナログ式システムは、システムが目標圧力に達するまで体液を排出することができる。Srinivasan,J Neurosurgery 120:228(2014)及びMuralidharan、Surg Neurol Int 6(Supp 6):S271(2015)を参照されたい。
【0008】
このバイナリ方式でCSF排液を制御するために圧力計を使用することは依然として一般的な慣行であるが、現在では、外圧トランスデューサアセンブリが、ストップコックを介して圧力計流体ラインの出口端に連結されることが多い。侵襲性動脈血圧モニタリングに使用されるような圧力モニタリング機器に連結された場合、この製品の組み合わせは、ICP値の間欠測定及びICP波形の視覚化を可能にする。これは、臨床現場のユーザが手動で排出を一時停止し、ストップコックを使用して流体を圧力モニタリングシステムに機械的にリダイレクトすることによって達成される。
【0009】
過去100年間にわたる技術の進歩にもかかわらず、既存のシステムに存在する制限及びリスクは、体液管理システムの技術において満たされていないニーズを表している。圧力計は、解剖学的基準に対するポールに取り付けられた流体柱の高さの調整に依存するので、これらのシステムは、静止した患者に依存する。患者の解剖学的構造の高さに対する低圧柱の高さを考慮すると、圧力計は患者の位置及び動きに非常に反応する。頭部を回転させたり、褥瘡を減らすために患者を調整したり、ベッドの頭の位置を変更したりするなど、患者の位置をわずかに変更しただけでも、急速なオーバー/アンダー排出が生じ、障害や死亡につながる可能性がある。その結果、これらのシステムは、患者の動きを安定させるために常に維持され、調整されなければならない。多くの場合、患者を鎮静状態にすることの方が論理的により容易であるが、それは、患者、家族及び医療提供者に多くの医学的リスク及び他の障害をもたらす。たとえそうであっても、リスクを受け継ぐ圧力計を用いた排出では、常に臨床的監視を必要とする。医学出版物は、脳卒中後の早期の可動性を可能とする転帰の改善と、それを行うための既存の技術的限界を回避する方法を指摘した。これは、患者の動きをより助長する発明が、長期障害の発生率の低下に寄与し得ることを示す。例えば、Azuh、Am J Med 129(8):866(2016)及びMulkey、J Neuroscience 46(3):153(2014)を参照されたい。
【0010】
より広義には、圧力計は、ユーザが所望の流量を選択する能力に欠けており、現在の実務には、所望の流量が間接的に達成されるように近似されるまで、目標圧力を上下に手動で調整することが含まれる。圧力計は、排出量をモニタしたり、閉ループ動作を提供したりはしない。それらは、自動化された定量的なモニタリング及び報告よりもむしろ、臨床現場のユーザによる排出量の目測及び手動による注釈付けを必要とする。臨床用途において、これは、ユーザの技術に依存する様々なレベルの精度をもたらすことが知られている。さらに、圧力計排出システムは、流れに対する抵抗が非常に変化しやすく、一貫性のない信頼性の低い排出を引き起こすという問題がある。この現象は、このような装置の公開トレーニング資料によく記録されている。これらのシステムにおいて、圧力計への入口圧力が圧力計内の水柱の高さによって生じる背圧を超えるときはいつでも、排出が開始されるはずである。
【0011】
例えば、患者が10cmH2Oで、平衡状態で維持されていた場合で、その後ICPが突然15cmH2Oに急上昇した場合、圧力計はオーバーフローし、排出を開始して圧力平衡を10cmH2O設定点に回復するはずである。しかし、排液管路内の流れを開始(又は維持)するためには、流体は、排液管路の全長に沿って流れに対する抵抗に打ち勝たなければならない。流れに対する抵抗は、組織の小片、排液管路内の空隙又は大きな気泡、排液管路の内壁に付着した微小気泡、構成部品及び組立作業における製造上の差異(公差、結合作業中の接着剤の押し出しなど)、及び様々な他の要因によって強く影響され得るので、排出は、ICPが所望の設定点を大幅に超えて増加した後まで開始されない可能性があり、設定点平衡が回復するかなり前に停止する可能性がある。ICP値は絶対的には非常に小さいので、流れに対する抵抗は、臨床的に有意なICP変化に対して非常に大きくなり得る。観測された信頼性の低い一貫性のない排出は、圧力計ベースの排出の物理的性質のために、ほとんど避けられない。
【0012】
圧力計及び外部圧力トランスデューサは、(臨床的にしばしば行われるように)、流体圧力モニタリング並びに流体排出を提供する流体管理システムを構築するために対になり得るが、そのような流体管理システムは、流体排出を制御しながら流体圧力を同時に測定するために使用することはできない。その結果、このペアリングは、継続的なモニタリング及び排出を提供する能力を欠いており、合併症が適時に検出されないリスクを増大させる。
【0013】
既存の技術は、圧力トランスデューサアセンブリを排出圧力計と並列にカテーテルへ連結して連続的なモニタリングを可能にする、新しいより複雑なカテーテルの最近の追加を含む。このアプローチでは、統合されたシステムではなく、ユーザに表示される非通信の並行活動を作り出す。このアプローチは、圧力計内の限界を含むブール閾値に基づいて排出を制御するために、圧力計に依然として依存している。
【0014】
既存の外圧モニタリング技術はドリフトに悩まされており、その結果、圧力が小さな数値で表される解剖学的コンパートメントに特に関連する精度の欠如が生じ、狭い範囲内のわずかな変化でさえ臨床的に深刻である。ほとんどの哺乳類において、これにはICP、CVP、及びIAPなどの様々なコンパートメント圧が含まれるであろう。これらの値は、水銀柱ミリメートル(mmHg)又は水柱センチメートル(cmH20)で測定される。例えば、ヒトのICPを考慮すると、乳児の正常はしばしば<5mmHgと表されるが、仰臥位の成人は患者によって典型的には7~15mmHgである。IAPの場合、成人の正常値は5~7mmHgであり、小児では通常0~5mmHgである。これは、60~120mmHgのはるかに広い範囲の動脈圧値と比較される。臨床現場では、センサドリフトのために、実際の使用で±2mmHg程度の典型的な精度を有する。しかし、興味深い様々な圧力パラメータ(ICP、CVP、IAPなど)における臨床的に有意な偏差は、数cmH20程度である。したがって、これらのセンサから導出された結果は、患者がさらに悪化するまで臨床使用が遅れ、最悪の場合には誤解を招く。急性疾患からの回復だけでなく、患者の長期的な生活の質にとって脳、心臓及び他の臓器機能が重要であることを考えると、値の真の変化を早期に検出することは、先行技術よりも有意な改善となるであろう。
【0015】
臨床的に関連する精度を得るために近年導入されたダイアフラム型トランスデューサは、一般に、より低い固有共振周波数を有し、心拍などの生理学的機能によって誘発される望ましくない振動を受ける可能性がある。
【0016】
これらすべてのシステムがセンサのドリフト又は故障を検出することができないため、そのようなシステムは、既存の臨床的利益を提供するために必要とされる正確さ及び精度を一時的に達成するために、複雑なスキーム、カスタムセンサ構成、又は一定の手動再校正に必然的に依存する。これらの労働集約的な適応は、それらがもたらすリスクとともに、中核的な体液排出技術のより広範な採用を抑制してきた。
【0017】
既存の発明の別の欠点は、灌流圧(すなわち、循環系又はリンパ系を通って臓器又は組織(一般的に解剖学的コンパートメント)に入る流体の正味圧力)の分野にある。灌流圧には、脳への脳血流(脳灌流)を引き起こす正味の圧力勾配である脳灌流圧(CPP)が含まれる。これは、圧力が低すぎると脳組織が虚血(血流が不十分になる)を引き起こし、圧力が高すぎると頭蓋内圧(ICP)を上昇させる可能性あるため、狭い範囲内に維持する必要がある。
【0018】
灌流圧の測定は、コンパートメント圧を管理し、身体の解剖学的コンパートメントの1つ内の圧力の上昇がその空間内の組織への不十分な血液供給をもたらすコンパートメント症候群を予防することに臨床的に関連している。Peitzman,The Trauma Manual:Trauma and acute Care Surgery(Lippincott Williams&Wilkins,2012)を参照されたい。個々の流体圧は、しばしば灌流圧の臨床管理への入力であり、灌流圧を計算するための数式(すなわち、髄液灌流圧=MAP-腰椎圧)において使用される。複数のシステム及び人間による分析を使用して看護師などの臨床医によって現在実行されている活動及び計算の自動化が、当技術分野において依然として必要とされている。
【0019】
灌流圧を計算するとき、MAP値は、典型的には、中腋窩線及び第4肋間腔が心臓の位置のための解剖学的マーカーであるので、これらと整列するように看護師が訓練された侵襲的動脈血圧モニタから得られる。患者が仰臥位にある間、圧力を駆動する流体柱の高さは、水平面にわたってかなり一定になる。しかしながら、患者はしばしばベッド頭部側挙上角度30度の体位に調整される。この位置では、コンパートメント液の解剖学的マーカーと心臓の解剖学的マーカーを比較すると、異なるMAP値が算出される。診療における不一致及び看護師教育者間の不一致さえも、患者の位置により計算されたCPP値の変動性を作り出す。これは有害な結果につながり、医療の革新を妨げる可能性がある。
【0020】
さらに、灌流圧は、複数のデバイスがディスプレイに対して一方向に並列に値を提供する結果として、患者モニタによって計算される。このモニタリング及び通信機能は、排液とは完全に独立して発生している。既存の技術は、統合されたマルチモーダル分析及び管理をサポートしていない。それには、これらの計算された灌流圧値に基づいて排液を制御する能力はない。
【0021】
臨床状況において灌流圧を考慮すると、先行技術において患者の動きを感知又は特徴付けることができないことは、リアルタイム排液精度を超える改善のための予期せぬ機会をもたらす。例えば、現在のシステムは、コンパートメント圧の臨床的に示される変化と、患者の位置又は動きの変化による予想される予測可能な変化とを区別することができない。これは現在、使用されている場合、アラームに対する即時の看護応答を必要とし、アラーム疲労を引き起こす。また、傾向情報が患者の状態を評価するのに有用であるためには、患者データに手動で注釈を付ける必要がある。それは、コンパートメント圧に対する患者の動き又は位置の影響をマッピングするための効率的な方法を提供しない。最後に、それは、さもなければ、体液管理又はより広範な医学的理解の観点において、技術を進歩させる可能性のある他の有用なデータセットを不明瞭にする。
【0022】
体液排出の主な目的が特定の圧力値を達成することではない場合、体液を排出する際に使用するための他のアナログ式デバイスが利用可能である。手動流体サンプリングで使用されるシリンジの使用を除いて、既存のシステムはまた重力ベースであり、容量制限ドレーン及び無制限ドレーンであると記述することができる。容量制限ドレーンは、排液を停止するためにフルバルブの機械的制約に依存する完全に使い捨てのアナログ式カテーテルである。500mlを超える液体を保持することができる排液バッグに典型的に連結される圧力計と比較して、容量制限カテーテルは、30mlの容量しか有さず、30mlの排液が完了したときに除去される。尿道カテーテル、外科用ドレーン、又は創部管理デバイスなどの無制限ドレーンもまた、体液を身体のコンパートメントから完全に排出することを目的としたアナログ式カテーテルである。それらは、留置することもあれば、間欠的に使用することもある。容量制限ドレーンも無制限ドレーンも、圧力を測定するために使用することができず、目標圧力に基づいて流体を排出することもできない。両者ともまた、排液の速度が、臨床医が患者の状態によって制御することを好むだろう有意な変数であることにもかかわらず、ユーザが所望の流速を指定する能力に欠けている。これらの様々なアナログ式排液システムはまた、排液された容量の定量的な計算及び報告を欠いているため、排液バッグ上のマーキングを使用して排液された容量の視覚的な推定を必要とする。
【0023】
既存の体液管理システムは、特に複数のデバイスが組み合わせて使用される場合に、いくつかの臨床的利益を提供するが、継続的な医学的監視又は介入を必要とすることなく患者が動くことを可能にする、リアルタイムの流体圧力モニタリング及び流体排出の制御のための統合システムの必要性が残っている。したがって、非定常患者における体液圧のモニタリング及び管理を可能にする体液管理システムに対する当技術分野における満たされていないニーズが残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示は、患者の動きを可能にする、又は把握しながら、体液圧又は排液流量のリアルタイムモニタリング及び制御を許容するデジタル技術を使用する体液管理システムを提供することによって、当技術分野における満たされていないニーズを満たし、及び既存の技術に対するさらなる関連する利点を促進する。様々な感知様式を組み合わせて使用することにより、従来技術において説明されたシステムに対して、精度、制御、データ捕捉、患者の安全性、及び患者の可動性を改善することが可能になる。さらに、排液制御及び多流体圧モニタリングを単一システムに統合することにより、当技術分野では前例のない、灌流圧などの導出された生理学的パラメータに基づく自動化された治療介入が可能になる。
【0025】
したがって、特定の実施形態において、本開示は、体液圧のリアルタイムモニタリング及び体液排出の統合制御のための制御システムアセンブリと、患者解剖学的マーカーに近接して取り付けるための装着可能な圧力センササブアセンブリを備える患者のインターフェースアセンブリと、を備える体液管理システムを提供し、上記装着可能な圧力センササブアセンブリは、上記体液の経路内の圧力センサと方向センサとを備える。いくつかの態様では、制御システムアセンブリは、患者のインターフェースアセンブリからの入力に基づいて、体液圧、患者の動き、又は患者の方向の変化を検出するように構成される。他の態様では、制御システムアセンブリは、体液排出の流量に対して補正調整を行うか、又はユーザ定義の設定に基づいてアラームをアサートするアルゴリズムを用いて構成される。
【0026】
これらの実施形態の特定の態様では、体液管理システムは、圧力波形を表示するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースなどのグラフィカルユーザインターフェースを含むユーザインターフェースサブアセンブリと操作可能に通信する流体流動検出及び制御サブアセンブリを有する制御システムアセンブリを備える。関連する態様では、流体流動検出及び制御サブアセンブリは、操作可能な通信において、流量制御アクチュエータと、流動遮断アクチュエータと、体液流動検出器と、を備える。
【0027】
これらの実施形態の他の態様では、体液管理システムは、体液経路内に複数の圧力センサを有する装着可能な圧力センササブアセンブリを備え、複数の圧力センサは、一定の間隔距離にある第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを備え、複数の圧力センサ及び上記方向センサは、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の予想差圧と、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の実際の差圧との間の差違に基づいて、上記複数の圧力センサのうちの1つ以上のドリフトを検出するための剛性部材上に構成される。
【0028】
これらの実施形態の関連する態様では、体液管理システムは、体液滴下室を有する患者のインターフェースアセンブリと、上記制御システムアセンブリに連結するための流体排出カートリッジと、体液排出のための排液チューブと、上記装着可能な圧力センササブアセンブリから上記流体排出カートリッジに信号を伝えるための電気ケーブルと、を備える。
【0029】
本明細書中に開示する体液管理システムのいくつかでは、体液は脳脊髄液(CSF)であり、制御システムアセンブリは、頭蓋内圧(ICP)のリアルタイムモニタリング及びCSF排液の統合制御のために構成される。関連する態様では、患者のインターフェースアセンブリは、その近位端が脳室カテーテルに接続するように連結された排液チューブと、患者の外耳道(EAM)に近接して取り付けるように構成された装着可能な圧力センササブアセンブリと、を備える。
【0030】
関連する実施形態では、本明細書中に開示する体液管理システムは、双方向輸液及び排液チューブを介して制御システムアセンブリに連結するように構成された輸液源をさらに備え、制御システムアセンブリは、輸液源から体腔に液体を圧送するためのポンプを備える。これらの実施形態の特定の態様では、制御システムアセンブリは、腹腔内圧をリアルタイムでモニタリングするように構成され、患者のインターフェースアセンブリは、その近位端で尿道カテーテルに接続するように構成された排液チューブを備える。他の態様では、体腔は膀胱である。
【0031】
本開示のさらなる実施形態では、灌流圧を決定するためのシステムであって、体液圧のリアルタイムモニタリング及び身体のコンパートメントからの体液排出の統合制御のための制御システムアセンブリを備え、制御システムアセンブリは、輸液源から後述の2次流体ライン内に流体を圧送するためのポンプと、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリ及び第2の装着可能な圧力センササブアセンブリからの信号に応答して、体液排出の流量に補正調整を行うか、又はユーザ定義の設定に基づいてアラームをアサートするアルゴリズムとで構成される、システムが提供される。
【0032】
これらの実施形態による灌流圧を決定するためのシステムは、その近位端が上記体液コンパートメント内に挿入されたカテーテルに連結し、その遠位端が取り外し可能な流体排出リザーバに連結するように構成された1次流体ラインと、体液コンパートメントのための解剖学的マーカーに近接して取り付けるための第1の装着可能な圧力センササブアセンブリであって、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリが、体液経路内の第1の圧力センサと、体液圧及び患者の動き及び方向の変化を検出し、それらの変化を上記制御システムアセンブリにシグナリングするように構成された方向センサと、を備える、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリと、その近位端が動脈カテーテルに接続し、その遠位端が上記輸液源に接続するように構成された2次流体ラインと、血圧をモニタリングするための解剖学的マーカーに近接して取り付けるための第2の装着可能な圧力センササブアセンブリであって、上記第2の装着可能な圧力センササブアセンブリが、上記血液の経路内の第2の圧力センサと、血圧及び患者の動き及び方向の変化を検出し、それらの変化を上記制御システムアセンブリにシグナリングするように構成された方向センサと、を備え、灌流圧が、測定された血圧及び身体のコンパートメント流体圧に基づいて計算される、第2の装着可能な圧力センササブアセンブリと、を有する患者のインターフェースアセンブリを備える。
【0033】
これらの実施形態の特定の態様において、制御システムアセンブリは、圧力波形を表示するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースなどのグラフィカルユーザインターフェースを含むユーザインターフェースサブアセンブリとともに操作可能に通信する流体流動検出及び制御サブアセンブリを備える。関連する態様では、流体流動検出及び制御サブアセンブリは、操作可能な通信において、流量制御アクチュエータと、流動遮断アクチュエータと、体液流動検出器と、を備える。
【0034】
これらの実施形態の他の態様において、第1の装着可能な圧力センササブアセンブリは、体液経路内に第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを備え、第1及び第2の圧力センサは、一定の間隔距離にあり、第1及び第2の圧力センサ及び方向センサは、第1及び第2の圧力センサ間の予想差圧と第1及び第2の圧力センサ間の実際の差圧との間の差違に基づいて、第1の圧力センサ又は第2の圧力センサ内のドリフトを検出するための剛性部材上に構成される。
【0035】
これらの実施形態のさらなる態様において、第2の装着可能な圧力センササブアセンブリは、血液経路内に第3の圧力センサ及び第4の圧力センサを備え、第3及び第4の圧力センサは、一定の間隔距離にあり、第3及び第4の圧力センサ及び方向センサは、第3及び第4の圧力センサ間の予想差圧と、第3及び第4の圧力センサ間の実際の差圧との間の差違に基づいて、第3の圧力センサ又は第4の圧力センサにおけるドリフトを検出するための剛性部材上に構成される。
【0036】
関連する態様において、患者のインターフェースアセンブリは、体液滴下室と、制御システムアセンブリに連結するための流体排出カートリッジと、体液排出のための排液チューブと、装着可能な圧力センササブアセンブリから流体排出カートリッジに信号を伝えるための電気ケーブルと、を備える。
【0037】
他の態様において、体液は脳脊髄液(CSF)であり、制御システムアセンブリは、頭蓋内圧(ICP)のリアルタイムモニタリング及びCSF排出の統合制御のために構成され、患者のインターフェースアセンブリは、その近位端が脳室カテーテルに連結するように構成された排液チューブを備え、装着可能な圧力センササブアセンブリは、患者の外耳道(EAM)に近接して取り付けるために構成される。
【0038】
さらなる態様において、これらの実施形態によるシステムは、輸液源、双方向輸液及び排液チューブのための連結を備え、制御システムアセンブリは、輸液源から体腔に液体を圧送するためのポンプを備える。関連する態様では、制御システムアセンブリは、腹腔内圧をリアルタイムでモニタリングするように構成され、患者のインターフェースアセンブリは、その近位端が尿道カテーテルに連結するように構成された排液チューブを備える。他の態様では、体腔は膀胱である。
【0039】
本開示はまた、体液の経路内の複数の圧力センサ及び方向センサを備える装着可能な圧力センササブアセンブリを提供し、上記複数の圧力センサ及び方向センサは、体液圧、患者の動き、又は患者の方向の変化を検出するように構成される。特定の態様では、装着可能な圧力センササブアセンブリは、患者の解剖学的マーカーに近接して取り付けるように構成される。他の態様では、複数の圧力センサは、一定の間隔距離にある第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを備え、複数の圧力センサ及び方向センサは、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の予想差圧と、第1の圧力センサと第2の圧力センサとの間の実際の差圧との間の差違に基づいて第1の圧力センサ及び第2の圧力センサにおけるドリフトを検出するための剛性部材上に構成される。
【0040】
これらの実施形態のさらなる態様において、着用可能な圧力センササブアセンブリは、患者の外耳道(EAM)に取り付けるように構成され、複数の圧力センサ及び方向センサは、頭蓋内圧(ICP)の変化を検出するように構成される。
【0041】
本明細書中に開示する様々な流体管理システムは、可動患者における体液圧力及び流量のモニタリング及び制御に対して特定の利点を提供し、ここで、体液圧力のリアルタイムモニタリング及び体液排出流量の統合制御は、現在当技術分野で利用可能な流体圧力管理システムに必要とされるような、自動化の強化、患者の可動性のためのより大きな機会、及び継続的な流体圧力モニタリング及びシステム較正のための医療専門家への依存度の低減を通じて、改善された患者ケアをもたらす。
【0042】
本開示のこれら及び他の関連する態様は、様々な実施形態の特定の態様を例示する以下の図面及び詳細な説明を考慮すると、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本開示の特定の態様は、限定ではなく例示のために提示された図面を参照すると、より明らかになるであろう。
図1図1は、本開示の体液管理システムの特定の実施形態による制御システムアセンブリの正面斜視図を示す線図である。これらの実施形態による制御システムアセンブリは、(図4に示され、本明細書中でさらに説明するような)患者のインターフェースアセンブリとの操作可能な組み合わせで使用するように構成される。
図2図2は、本開示の体液管理システムの特定の実施形態による制御システムアセンブリの背面斜視図を示す線図である。
図3図3図3A及び図3B)は、本開示の体液管理システムの特定の実施形態による、制御システムアセンブリで使用するための例示的な流量制御アクチュエータの斜視図を示す線図である。図3Aに示す流量制御アクチュエータは、親ねじに固定して取付られたピンチヘッドを使用している。図3Bに示す流量制御アクチュエータは、ばね仕掛けのピンチヘッドを使用している。
図4図4は、体液圧力及び排液流量を管理するための、本開示のポータブルシステムの一実施形態による患者のインターフェースアセンブリの斜視図を示す線図である。図4に示すように、患者のインターフェースアセンブリは、例えば図1及び図2に示すような制御システムアセンブリなどの制御システムアセンブリへの取り外し可能な挿入及び制御システムアセンブリとの操作可能な組み合わせのために構成される。
図5図5は、患者の解剖学的構造に関連する患者のインターフェースアセンブリの一実施形態を示す線図であり、圧力センサアセンブリは、既知の解剖学的マーカーに実質的に近接する患者の頭部の皮膚に直接縫合される。
図6図6は、圧力センサアセンブリを装着可能な器具を用いて解剖学的マーカーの近くに拘束する代替の実施形態を示す。
図7図7は、圧力センサアセンブリを装着可能な器具を用いて解剖学的マーカーの近くに拘束する代替の実施形態を示す。
図8図8は、本明細書中に開示する患者のインターフェースアセンブリの特定の実施形態において使用するための例示的な装着可能な圧力センササブアセンブリの線図である。
図9図9図9A及び図9B)は、本開示の特定の実施形態による装着可能な圧力センササブアセンブリの概略図である。
図10図10は、頭蓋内圧(ICP)及び脳脊髄液(CSF)の排液を管理するように構成された、本開示の体液管理システムの1つの実施形態を示し、患者のインターフェースアセンブリが、排液チューブの近位端で脳室カテーテルに連結されている。
図11図11は、本開示の体液管理システムの一実施形態を示し、患者のインターフェースアセンブリは、留置尿道カテーテルに連結するように構成され、制御システムアセンブリは、ポンピング機構を作動させて、膀胱及び尿道カテーテルを定期的に洗い流すように構成される。
図12図12は、リアルタイムCPPを計算するために必要な入力を得るように構成された、本開示の体液管理システムの1つの実施形態を示し、システムは、複数の装着可能なセンサアセンブリを含み、第1の装着可能なセンサアセンブリは、ICPをモニタリングするために適切な解剖学的マーカーに実質的に近接して患者に固定され、第2の装着可能なセンサアセンブリは、血圧をモニタリングするために適切な解剖学的マーカーに実質的に近接して患者に固定される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、患者の動きを可能にするか又は考慮しながら、体液圧力又は排液流量のリアルタイムモニタリング及び制御を可能にするためのデジタル技術を使用する体液管理システムを提供する。特定の実施形態では、本開示によるポータブルシステムは、操作可能な組み合わせで、(1)制御システムアセンブリと(2)患者のインターフェースアセンブリとを備える。本明細書中に開示する体液管理システムは、生体内での流体圧力及び流量をモニタリング及び管理するために当技術分野で現在利用可能なデバイス及び技術に対して、予期せぬ驚くべき利点を示す。
定義
【0045】
本開示は、以下の定義を考慮してよりよく理解されるであろう。これらの定義は、明確化のために提供され、本明細書中に開示する主題の範囲を限定することを意図しない。
【0046】
本明細書で特に定義されていない限り、本開示で使用される各用語は、関連する技術の当業者が使用するのと同じ意味を有する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「体液」という用語は、一般に、人体の細胞外コンパートメント内の液体(すなわち、細胞外液(ECF))を指し、これには、血管内に含まれない間質液及び血管内に含まれる血管内液(静脈液及び動脈液など)の両方が含まれる。本明細書中で使用される場合、「体液」は、経細胞コンパートメント内の流体(例えば、気管気管支樹、胃腸管、及び膀胱中の流体)を含み、脳脊髄液及び眼の眼房水内の流体を含む。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「脳脊髄液」又は「CSF」という用語は、脳及び脊髄のナトリウムに富み、カリウムに乏しい組織液を指す。CSFは栄養素を供給し、老廃物を除去し、中枢神経系への機械的衝撃を吸収するクッションを提供する。CSFは通常では水様、透明、無色であり、細胞はほぼ完全に存在しない。正常な成人のヒトは、脳及び脊椎の脳室系内を循環する約125~150mLのCSFを有する。CSFの大部分は2つの側脳室の内部から産生される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「体液圧」という用語は、一般に、細胞外コンパートメント内に含まれる「体液」によって発揮される圧力を指し、例えば、頭蓋内圧、動脈圧、中心静脈圧、及び腹腔内圧/膀胱圧を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「身体コンパートメント圧」という用語は、一般に、細胞外コンパートメント内の圧力を指し、例えば、頭部内(頭蓋内圧)、腹部内(腹腔内圧)及び四肢内の圧力を含む。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「コンパートメント症候群」及び「コンパートメント高血圧症」という用語は、身体のコンパートメント内の異常に上昇した圧力を指し、「コンパートメント高血圧症」は、「コンパートメント症候群」と比較してより低い疾患閾値によって特徴付けられる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「頭蓋内圧」又は「ICP」という用語は、頭蓋内及び脳組織上の脳脊髄液(CSF)によってかけられる圧力を指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「動脈圧」という用語は、動脈血管系における血圧を指す。この用語は、一般に、関連する用語「平均動脈圧」(MAP)と同義であり、これは、単一の心周期にわたる個体の平均血圧を指す。MAPは、MAP=DP+(SP-DP)/3の式に従って、心臓の膨張/収縮中の収縮期血圧(SP)ピーク及び膨張/拍動間の心臓弛緩中の拡張期血圧(DP)低を使用して計算される。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「中心静脈圧」又は「CVP」という用語は、心臓の右心房付近の大静脈における血圧を指す。
【0055】
本明細書中で使用される場合「加速度計」という用語は、質量の慣性力及びニュートンの第2法則に従って、1つ以上の軸方向の加速度を定量化し、上記加速度に比例するデジタル電気信号(SPI、I2Cなど)を生成することができる一種の「方向センサ」を指す。このような装置は、(重力による静的加速度を測定することによって)方向を決定し、(動的加速度を分析することによって)動きを検出するのに有用である。
【0056】
本明細書中で使用される「圧力センサ」という用語は、流体(空気、水、生理食塩水、体液など)中の圧力(及び圧力の変化)を定量化し、上記圧力(又は圧力の変化)に比例する電気信号を生成することができる装置を指す。本明細書中で使用される場合、「圧力センサ」は、ゲージ圧又は絶対圧を測定するように構成されたデバイスを指し得る。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「解剖学的マーカー」という用語は、例えば、頭蓋計測ランドマーク、関節、又は肋間腔などの非侵襲的に識別可能な生理学的属性又は特徴を指し、内部位置に対して臨床的有意性があり得る。その実施例としては、ICPの計算に良く用いられる脳中枢又はモンロー孔のための解剖学的マーカーとしての外耳道(EAM)や眉間、及び心臓の位置のための解剖学的マーカーとしての中腋窩線の第4肋間などがある。
【0058】
単数形又は複数形を使用する単語及び句はまた、それぞれ複数形及び単数形を含む。例えば、「a」又は「an」などの用語、及び「少なくとも1つ」及び「1つ以上」などの句は、単数形及び複数形の両方を含む。「非限定」であることが意図された用語(例えば、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、及び「有する」及び「有している」などの語を含む)は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包含的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含む」という用語は、「含むが限定されない」と解釈されるべきであり、「含んでいる」という用語は、「含んでいるが限定されない」と解釈されるべきであり、「有している」という用語は、「少なくとも有している」と解釈されるべきである。
【0059】
特許請求の範囲及び支持文書における「又は」という用語の使用について、本開示においては、代替案のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持するが、代替案のみを指すか、又は代替案が相互に排他的であると明示的に示されていない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。
【0060】
さらに、「本明細書中」、「上記」及び「下記」という用語、及び類似の意味を有する用語は、本出願において使用される場合、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではない。
【0061】
本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群を単位として記載されている場合、本開示はまた、マーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素のサブグループを単位として記載されることが意図されることがさらに理解されるであろう。同様に、本明細書中に開示する全ての範囲はまた、全ての可能なサブ範囲及びサブ範囲の組み合わせを網羅し、「~の間」、「~まで」、「少なくとも」、「より大きい」、及び「より小さい」などの文体は、範囲内に記載された数を含み、且つ個々の要素を含む。
【0062】
米国、PCT、又は米国外の海外の特許、特許出願、及び特許刊行物を含むがこれらに限定されない、本明細書中に引用する全ての参考文献、並びに全ての技術的、医学的、及び/又は科学的刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
体液管理システム
本明細書中に記載されるのは、デジタル技術を使用して、患者の動きを可能にするか又は把握しながら、体液圧力又は排液流量のリアルタイム統合モニタリング及び制御を可能にする体液管理システムである。
【0064】
本明細書中において開示された例示的な体液管理システムを、特定の体液(複数可)の管理に関連して説明する。しかしながら、本開示の体液管理システムは、脳脊髄液、血液、尿、創傷滲出液、粘液、及び精液を含むがこれらに限定されない様々な細胞外及び間質性体液のモニタリング及び管理において有用性を見出すことが理解されるであろう。さらに、本開示の体液管理システムは、頭蓋内腔、腹腔、及び四肢を含むがこれらに限定されない様々な身体のコンパートメントのモニタリング及び管理において有用性を見出すことが理解されるであろう。
【0065】
特定の実施形態では、本開示による体液管理システムは、操作可能な組み合わせで、(1)制御システムアセンブリと(2)患者のインターフェースアセンブリとを備える。
【0066】
これらの実施形態の特定の態様では、制御システムアセンブリは耐久性があっても良く、患者のインターフェースアセンブリは使い捨てであっても良い。他の態様では、本明細書中において開示された体液管理システムは、洗浄可能又は再滅菌可能な患者のインターフェースアセンブリであって、完全に耐久性があっても良く、又はそのようなシステムは完全に使い捨てであっても良い。
【0067】
本明細書中に開示された体液管理システムは、圧力制御モード(例えば、圧力設定点を利用することによって)、流量制御モード(例えば、排液流量設定点を利用することによって)、又はユーザ設定可能なアラーム閾値に応答した圧力データ収集又はユーザ通知(例えば、アラーム)のためのモニタリング専用モードにおいて選択的に操作可能であっても良い。
【0068】
流量制御モード及び圧力制御モードは両方とも、関連する体液の排出を制御することによって、同じ方法で達成されても良い。これは、制御システムアセンブリ内の流量制御アクチュエータによって可変的に又は間欠的に圧縮される患者のインターフェースアセンブリ内の軟質可撓性チューブを用いて達成されても良い。アルゴリズムを利用して、システム内の様々なセンサからの入力に基づいて流量制御アクチュエータの閉ループ制御を提供しても良い。
【0069】
排液流は、実質的に流体で満たされ、その入口よりも低い出口を有する排液ラインを使用することによって維持されても良く、それによってサイフォン作用が維持される。
【0070】
排液流量測定は、チャンバ(滴下室、キュベットなど)内の流体の落下する液滴を検出することによって達成されても良い。ここで、液滴は実質的に既知の容積である。そのような配置において、システムは、液滴を計数し、関係する時間スパン(例えば、mL/時間)にわたる液滴の数に基づいて流量を計算し得る。排液流量測定は、超音波センサ、質量流量センサ、又は流れを直接的又は間接的に測定することができる任意の同様のセンサを用いて達成しても良い。
【0071】
圧力測定は、患者の解剖学的マーカーに実質的に近接して配置された2つ以上の使い捨て可能な圧力センサによって達成されても良く、圧力センサは、患者の体液と直接連絡して排液流路内に配置され;圧力センサは、患者の皮膚に固定された筐体内に共配置され;圧力センサは、2つのセンサの測定値の差がセンサの不具合(ドリフト、センサ故障、菅閉塞、ファウリングなど)を検出するために計算され得るように、一定の間隔で堅固に取り付けられ;、排液流路の方向は、方向センサによって検出され、それによって、2つの圧力センサ間の予想差圧(流体濃度及びセンサ間隔の垂直成分に基づく)が計算され、及び圧力センサの不具合検出を増強させるために使用され;安定(平均)圧力は、独自のアルゴリズムを介して(ICP波形、収縮期血圧/拡張期血圧の急上昇などから観察され得るような)可変圧力測定値から導出される。
【0072】
特定の実施形態では、システムは、単一の流体(CSF、血液、尿など)の圧力又は流量をモニタ及び/又は制御するように構成されても良い。他の実施形態では、システムは、2つ以上の流体又は解剖学的サブシステム(CSF及び血液;膀胱圧及び腹腔内圧など)をモニタ及び/又は制御するように構成されても良い。特定の実施形態では、システムは、灌流圧(CPP、APP、SCPPなど)などの導出パラメータの計算を含んでも良く、及び上記導出パラメータに基づいて単一の流体又は身体のコンパートメントの圧力又は流量をモニタ及び/又は制御しても良い。特定の実施形態では、システムは、周期的な洗流目的、背圧(動脈ラインの場合であり得る)などの、標的体液以外の流体(生理食塩水、人工CSFなど)を制御するための蠕動又は同様のポンピング機構を含んでも良い。
【0073】
1.制御システムアセンブリ
本明細書中に開示する制御システムアセンブリは、特定の実施形態において、体液圧及び排液のリアルタイムモニタリング及び制御を達成するために、(2)ユーザインターフェースサブアセンブリと操作可能に通信する(1)流体流動検出及び制御サブアセンブリを備える。これらの制御システムアセンブリの特定の態様では、流体流動検出及び制御サブアセンブリは、操作可能に通信する1次流量制御アクチュエータと、2次流動遮断アクチュエータと、体液流量センサと、を備える。
【0074】
図1及び図2は、本開示の体液管理システムの特定の実施形態による、患者のインターフェースアセンブリ50(図4に示され、本明細書中の他の箇所で説明されるような)との操作可能な組み合わせで使用するように構成された例示的な制御システムアセンブリ10の斜視図を示す線図である。
【0075】
図1に示すように、制御システムアセンブリ10は、ユーザインターフェースサブアセンブリ40と操作可能に組み合わせた流体流動検出及び制御サブアセンブリ20を備え、ユーザによる入力(設定、患者情報など)を受信し、システム設定及び出力(設定点、アラーム閾値、患者情報、現在又は過去の圧力又は流量データ、アラーム、通知、波形など)を表示するためのユーザインターフェース42を含む。特定の実施形態では、ユーザインターフェース42は、グラフィカルディスプレイ(LCD、OLEDなど)、タッチスクリーン(抵抗型、静電容量型、投影静電容量型など)、ボタンキーパッド(プラスチック製又はエラストマ製ボタン、メンブレンスイッチなど)、LEDアレイ(7セグメント、個々のインジケータなど)、又はユーザによる入力の登録並びにシステム設定及び出力の表示に適した任意の同様の要素を備えても良い。
【0076】
図2に示すように、制御システムアセンブリ10は、点滴用ポール11、ベッドの横板、又は他の同様の病室備品に固定するための調節可能なクランプ機構14を備える。他の実施形態では、制御システムアセンブリ10は、カートに取り付けられるか、壁に取り付けられるか、又は独立型であるように構成されても良い
【0077】
他の態様では、制御システムアセンブリ10は、外部電源(AC主電源、DCネットワークなど)に連結するためのレセプタクル12を備え、及び任意選択的に内部電源(再充電可能バッテリ)を含んでも良い。
【0078】
さらなる態様では、制御システムアセンブリ10は、DC電力分配及び患者のインターフェースアセンブリ50との電気信号通信のための電気インターフェース(コネクタ/ソケット、ポゴピン/ばね仕掛けのコンタクトアレイなど)を含んでも良い。他の実施形態では、そのような通信又は電力分配は、ワイヤレスで達成されても良い。
【0079】
特定の実施形態では、流体流動検出及び制御サブアセンブリ20及びユーザデータインターフェースサブアセンブリ40は、それぞれ、一式の硬質(プラスチック、金属など)筐体に封入されても良く、及びサブアセンブリが互いに対して旋回して開閉できるように旋回機構48(ヒンジ、4バーリンクなど)によって結合されても良い。特定の実施形態では、旋回機構48は、流体排液カートリッジ60の取り付け/取り外しを支援するための1つ以上の好ましい位置(閉位置、全開位置など)を提供する特徴(オーバーセンター、カムなど)を含んでも良い。図1に示すように、ハンドグリップ44及びハンドクリアランス特徴24は、旋回機構48の動作を容易にするために含まれても良い。代替的な実施形態では、制御システム10は、ヒンジ48、ハンドグリップ24、及び他の関連する機能が排除されるように、流体流動検出及び制御アセンブリ20とユーザインターフェースサブアセンブリ40の両方を封入する単一の剛性筐体一式を備えても良い。そのような実施形態では、患者のインターフェースアセンブリ50の流体排液カートリッジ60を受け入れるための凹部32は、グラフィカルユーザインターフェース42に隣接して配置されても良い。
【0080】
他の態様では、流体流動検出及び制御サブアセンブリ20は、流体排液カートリッジ60及び患者のインターフェースアセンブリ50の関連する排液チューブ68(図4に示す)を受け入れるための凹部32と、排液チューブ入口34と、排液チューブ出口26とを含む。
【0081】
図1に示す他の態様では、流体流動検出及び制御サブアセンブリ20は、操作可能な組み合わせで、体液の流量を制御するための1次流量制御アクチュエータ22と、電力損失又はシステム故障の場合に排液流を自動的に遮断するための2次流動遮断アクチュエータ30と、排液流量を検出するための体液流量検出器28とを含む。
【0082】
特定の実施形態では、体液流量検出器28は、(滴下室、キュベット、又は同様のエンクロージャを通って落下する液滴のような)落下する流体液滴を検出するための光学センサ、質量流量センサ、超音波流量センサ、又は臨床的に許容可能な精度及び正確さで体液の流量を検出することができる任意の他の同様のセンサであっても良い。
【0083】
特定の実施形態では、2次流動遮断アクチュエータ30は、エンコーダ及び親ネジを有するDCモータ、親ネジを有するステッパモータ、サーボモータ、ソレノイド、リニアアクチュエータ、電磁ラッチ、又は電力損失又はシステム故障の場合に流れを遮断するのに十分に迅速に作動させることができる任意の他の同様のアクチュエータ又はラッチ機構であっても良い。
【0084】
特定の実施形態では、1次流量制御アクチュエータ22は、エンコーダ及び親ネジを有するDCモータ、親ネジを有するステッパモータ、サーボモータ、ソレノイド、リニアアクチュエータ、又は(エンコーダ、ステッパ、又はサーボを有するモータの場合のように)実質的に一定の流量に対して正確な位置決めを提供するか、又は(ソレノイドの場合のように)間欠的な流れに対してオン/オフ状態の間で迅速に作動させることができる任意の他の同様のアクチュエータであっても良い。
【0085】
図3A及び図3Bは、本開示の体液管理システムの特定の実施形態による制御システムアセンブリ10内で有利に使用できる例示的な1次流量制御アクチュエータ22を示す。図3Aに示すように、1次流量制御アクチュエータ22は、一体型親ネジ96を備えたステッパモータ92と、回転運動を直線運動へと移す固定親ネジナット94から成る。ピンチヘッド先端100を含むピンチヘッド98は、(図4に示す)患者のインターフェースアセンブリ50内の排液チューブ68との境目に含まれても良い。他の実施形態において、ピンチヘッド98は、図3Bに示すようにバネ仕掛けのピンチヘッド102と置き換えて流動制御の精度を向上させたり、1次流動制御アクチュエータのいかなるオーバートラベルに関わらず完全につままれた状態で実質的に一定力を提供したりしても良い。
【0086】
他の実施形態において、流動制御又は遮断は、制御アセンブリ10内のロータリーアクチュエータ(サーボやステッパモータ、ロータリーソレノイドなど)によって可変回転している患者のインターフェースアセンブリ50に内臓のロータリーバルブ(栓やニードル弁など)によって達成されても良い。
【0087】
2.患者のインターフェースアセンブリ
本明細書に開示された体液管理システム内での使用のための患者のインターフェースアセンブリは、様々な操作可能な組み合わせで、(1)体液測定インターフェースと、(2)流量制御アクチュエータインターフェース、(3)流動遮断アクチュエータインターフェース、(4)電気インターフェース、(5)流体排出カートリッジ、(6)排液チューブ、及び(7)装着可能な圧力センササブアセンブリと、を備える。患者のインターフェースアセンブリの特定の態様において、装着可能な圧力センササブアセンブリは、操作可能に通信する、(1)方向センサと、(2)複数の圧力センサ、(3)一体型流路、及び(4)剛性又は半剛性センサエンクロージャと、を備える。
【0088】
図4は、本開示の体液管理システムの一実施形態による患者のインターフェースアセンブリ50の斜視図を示す線画であり、患者のインターフェースアセンブリ50は着脱可能な制御システムアセンブリ10への挿入用及び制御システムアセンブリ10との操作可能な組み合わせのために構成される。特定の実施形態において、患者のインターフェースアセンブリ50の(主に、ABSやナイロン、ポリカーボネートなどの剛性プラスチックエンクロージャから成る)流体排出カートリッジ60は、制御システムアセンブリ10内の、図1に示す凹部32のような対応凹部に取り付けても良い。
【0089】
図4に示すように、患者のインターフェースアセンブリ50は、制御アセンブリ10の流動測定検出器28に接する流動測定インターフェース52(滴下室やキュベット、チューブなど)と、制御システムアセンブリ10内の1次流量制御アクチュエータ22のピンチヘッド100に接する流量制御アクチュエータインターフェース56(シリコンやポリウレタン、ポリプロピレン系エラストマなどの柔軟なチューブ)と、制御アセンブリ10の2次流動遮断アクチュエータ30に接する流動遮断アクチュエータインターフェース58(バネ仕掛けのボタンやストップコック、ピンチ弁など)と、を含む。流体排出カートリッジ60は、入口端で取り外し可能な、植込み型脳室カテーテルに接するフィッティング66(ルアーフィッティングやニューロフィッティングなど)と連結され、出口端で取り外し可能な、体液を採取する排液バッグ64(ポリエチレンやPVCなど)と連結される排液チューブ68(シリコンやポリウレタン、ポリプロピレン系エラストマなど)と、をさらに備えても良い。
【0090】
患者のインターフェースアセンブリ50はまた、装着可能な圧力センササブアセンブリ80と流体排出カートリッジ60との間に電気ケーブル70、及び流体排出カートリッジ60上の、電気信号やデータ、電力を伝えるむき出しの導電パッド一式54(金、銅、炭素、銀インクなど)を患者のインターフェースアセンブリ50と制御システムアセンブリ10との間に、さらに備えても良い。そのような実施形態では、制御システムアセンブリ10内の対応するスプリングコンタクト一式(ポゴピン、バッテリ型コンタクト等)は、患者のインターフェースアセンブリ内で上記導電パッドと接しても良い。流体排出カートリッジ60の他の実施形態は、代替形態として、制御システムアセンブリ10内の対応レセプタクルに、ユーザにより手動で挿入される従来の電気コネクタを備えても良い。ただし、他の実施形態は、患者のインターフェースアセンブリ50と制御システムアセンブリ10との間で、又は患者のインターフェースアセンブリ50とリモート制御システム(クラウドベースのシステムやオンサイトサーバ又はオフサイトサーバ、スマートフォンやタブレットベースのアプリケーションなど)との間の無線通信(Bluetooth(登録商標)やWi-Fiなど)の実施によって物理的な電気インターフェースを完全に置き換えても良い。そのような配置では、装着可能な圧力センササブアセンブリ80は電池や同様の動力源で給電されても良い。
【0091】
図5は、患者のインターフェースアセンブリ50が患者の解剖学的構造に関連するため、患者のインターフェースアセンブリ50の一様態を示す線画であり、排液チューブ68の近位端が取り外し可能フィッティング66を通じて個別に植込み型脳室カテーテル206と連結され、装着可能な圧力センササブアセンブリ80が既知の解剖学的マーカー(外耳道など)に近接する患者の皮膚に縫合120によって直接固定される。他の実施形態において、装着可能な圧力センサアセンブリの直接的な固定は裏側が剥がれる貼付剤(アクリル系など)によって、又は、患者の皮膚と装着可能な圧力センサアセンブリ筐体との間に塗布される別の液状接着剤(シアノアクリレートなど)によって達成されても良い。患者への固定機能は、分離可能な構成要素が患者に固定(縫合、接着など)された後、装着可能な圧力センサアセンブリが上記分離可能な固定構成要素に/の中に固定(はめ込み、締め付け、面ファスナなど)されるように、代替的に分離不可能な構成要素上にあっても良い。
【0092】
図6及び図7は、装着可能な圧力センササブアセンブリ80をヘッドバンドや帽子(ビーニーやスカルキャップなど)といった装着可能なデバイスを用いて解剖学的マーカーの近くに拘束する代替実施形態を示す。そのような装着可能な器具は、発泡材やシリコン、織物、面ファスナ、網、ガーゼなどから構成されても良い。
【0093】
図8は、(図4に示すように)患者のインターフェースアセンブリ50の装着可能な圧力センササブアセンブリ80の一実施形態を示し、圧力センササブアセンブリ80が、単一の体液圧(ICPや血圧、膀胱圧など)を測定する二つ以上の圧力センサ126及び128のセンサアレイと、流路130の方向を検出する方向センサ122(加速度計や傾斜センサなど)と、を備える。装着可能な圧力センササブアセンブリ80は、(粘着や機械的締結、オーバーモールドなどによって)剛性(プラスチックや金属など)又は判剛性(シリコン、ポリウレタンなど)エンクロージャ132に含まれても良く、排液チューブ68に完全に固定(UV粘着や溶剤系粘着、エポキシなど)されている入口及び出口を備える一体型流路130と、解剖学的マーカー(EAMや中腋窩など)に近接して患者を取り付けるための一点以上の縫合ポイント120と、が含まれる。様々な実施形態において、装着可能な圧力センササブアセンブリ80のセンサアレイは、公知の技術である従来の電子機器製造の方法によって適切な基板(ポリイミドやポリエステル、FR-4など)の上に構成されても良い。様々な他の実施形態において、センサは、インモールドプリンテッド・エレクトロニクスや導電性インク/エポキシなどの公知の技術である様々な他の方法を利用して直接エンクロージャ132上に搭載されても良い。他の形態において、圧力センサ126及び128又は方向センサ122は、公知の技術である標準通信プロトコル(SPIやI2C、UARTなど)を利用してデジタル電気信号、又はアナログ-デジタル変換器によってデジタル信号に変換されるアナログ信号を作っても良い。
【0094】
いくつかの実施形態において、装着可能な圧力センササブアセンブリ80は、付加的に接触板、静電容量型スイッチ又はアセンブリが皮膚に接触しているか検出する同様のセンス素子を含んでも良い。そのような機能は、圧力センサアセンブリが患者から外れて、的確な圧力値が読み取れていないかもしれないといった特定の異常検出に有用である。
【0095】
図9A及び図9Bは、本開示の特定の実施形態による装着可能な圧力センササブアセンブリ80の概略図であり、方向センサ(A)及び複数の圧力センサ(Pl及びP2)が一定距離の間隔で剛性又は判剛性部材(B)上に取り付けられている。図9Aは、重力ベクトル(g)に対して横方向にある装着可能な圧力センササブアセンブリ80を示す。図9Bは、重力ベクトル(g)に対して縦方向にある装着可能な圧力センササブアセンブリ80を示す。
【0096】
本実施形態の特定の形態において、方向センサは装着可能な圧力センササブアセンブリ80の方向を検出することで、式(式1):
ΔPanticipated=ρ(Δh)
によって見込まれる圧力差ΔPの計算を容易にし、ここで、ρは流体密度(例えば、CSFや生理食塩水、血液、尿などの密度)であり、Δhは重力ベクトルに対する圧力センサP2及びPlの高低差である。
【0097】
図9Aに示すように、装着可能な圧力センササブアセンブリ80が重力ベクトル(g)に対して横方向にあるとき、複数の圧力センサ(Pl及びP2)の圧力の測定値は、ふたつの圧力センサ(Pl及びP2)間の高低差(Δh)がゼロ(例えば、Δh=0であるためΔPanticipated=0)であるため実質的に同等である。
【0098】
図9Bに示すように、装着可能な圧力センササブアセンブリ80が重力ベクトル(g)に対して縦方向にあるとき、複数の圧力センサ(Pl及びP2)の圧力差は、ふたつの圧力センサ(Pl及びP2)間の高低差(Δh)も最大(例えば、Δh=dであるためΔPanticipated=ρd)であるため最大である。
【0099】
圧力センサの方向が横方向や縦方向以外にある場合、複数の圧力センサ(Pl及びP2)間の高低差は、重力ベクトル(g)に対して圧力センサ方向の垂直成分に基づいて0とdとの間で変動する。対応の見込まれる圧力差は、ΔPanticipated=0からΔPanticipated=ρdまで及ぶ。
【0100】
制御システムアルゴリズムの特定の実施形態において、実際の液体圧力測定値を調べるために、ひとつ又は両方の圧力センサが使われても良いが、ΔPanticipated(前述したように)とΔPactual(圧力センサ測定値を通して直接取得)との間の実質的な任意の偏差は、圧力センサ異常(電気的欠陥、センサ精度のドリフト、生物付着など)を検出するシステムに使用されても良い。
【0101】
本開示が、Pl及びP2に使用されたセンサの種類、又はゲージ圧力計算用流体経路(例えば、制御システムアセンブリ内)の外側の別の大気圧センサの包含によってゲージ圧力又は絶対圧力の測定の一方が達成されるため、ゲージ圧力又は絶対圧力の測定に適用可能であることは当業者には明らかである。
【0102】
開示された方法は二層の重複を提供する。まず、装着可能な圧力センササブアセンブリ80内の各圧力センサが対象体液の解剖学的マーカーに近接して配置されているため、第2の圧力センサは、一方のセンサが正常に機能していないと判断された場合にもシステムが引き続き動作することを可能にし得る直接「バックアップ」を提供する。次に、システムは装着可能な圧力センサアセンブリの精度に非常に少量のドリフトを検出し、そのようなエラーが臨床的に関わってくる前に適切な処理(ユーザへの通知など)を行う。
【0103】
開示された方法は、ひとつのセンサが対象の流体ラインにおける圧力を測定し、もうひとつのセンサは別の基準ラインにおける圧力を測定し、ここで、両方の圧力センサが関連する解剖学的マーカー(例えばポールに取り付けられたコンソールや臀部着用ウェアラブル)以外の場所に配置される、既存のふたつのセンサシステムとは異なる。そのようなシステムにおいて、対象流体の真の圧力(例えば、真のICP)は、排液ラインにおける圧力と別の基準ラインにおける圧力との間の差異として算定される。
【0104】
前述されたふたつのセンサの配置は重複を全く提供しなく、エラー確認のための限定的な機会だけを提供して、患者をセンサのドリフトや同様の異常に脆弱な状態で放置する。本開示で記載するように、ふたつの圧力センサ及び方向センサが該当の解剖学的マーカーに近接して共存することで、従来とは異なるレベルでの測定精度及び臨床安全性が提供される。
【0105】
装着可能な圧力センサアセンブリ80が、特定の解剖学的マーカー(頭部に位置するEAMなど)への装着を容易にし、実用性を達成するために十分小型で軽量である必要があることは理解されたい。そのため、体液との長時間に及ぶ接触に適当であり、臨床的有用性を可能にする十分な精度と正確さの十分小型な圧力センサの使用は、開示された実施形態を達成するために非常に重要である。さらに、アセンブリの全体的配置面積を好適なものにすることを容易にするようセンサの距離間隔は十分に小さい必要があり、これは、本明細書の別の箇所に記載の、有用なドリフトの検出を可能にする上記圧力センサの精度にさらなる制約を加える。例えば、数センチメートル程度の距離間隔は、圧力センサが、水(mmH20)の数ミリメートル程度の圧力差を分析可能な場合にのみ有用である。そのような圧力センサは最近まで未知の技術であり、そのような実施形態は非実用的であると表現された。しかし、近年の技術における技術開発により、±lmmH20程度の精度を備えた非常に小型の(2~3mm幅)圧力センサの使用により、1~2cmの範囲内の距離間隔(d)が可能となり、2~5cmの範囲内の全体配置面積を有する、本明細書中に記載の特徴を持った装着可能な圧力センサアセンブリの実用的な実施形態が可能となった。
【0106】
3.用途と構成
図10図11、及び図12は、開示された体液管理システムのいくつかの実施形態を示し、これらは、様々な臨床使用例のために構成される。
【0107】
図10は、頭蓋内圧(ICP)及び脳脊髄液(CSF)の排液を管理するために構成された、現在開示されている体液管理システムの一実施形態を描き、患者のインターフェースアセンブリ50は、近位端で脳室カテーテルに、遠位端で排液収集リザーバ64に、排液チューブ68を介して接続される。図10のシステムは、モンロー孔のための解剖学的マーカー(EAM)に近接して取り付けられた装着可能な圧力センササブアセンブリ80によって設定点を超えるICPが検出された時に、1次流量制御アクチュエータ22を起動し、それによってCSFの排液を可能にするようにユーザ制御設定点を通じて構成され得る。図10によって表される実施形態は、(この用途に適切な解剖学的マーカーの近くに装着可能な圧力センサアセンブリ80を貼付することによって)腰部圧力の管理、及び様々な身体のコンパートメント内の他の体液及び圧力の管理における有用性も見いだすことができる。
【0108】
他の実施形態では、開示されたシステムは、蠕動(又は同様の)ポンプ機構と、着脱可能な輸液源(輸液バッグ、輸液ボトルなど)への接続とを追加的に含むことができる。ポンプ機構は、定期的な輸液操作を行うために輸液源を引き込むように構成されても良いし、又は特定のモニタリング操作のために連続的又は断続的に背圧を提供するように構成されても良い。このような実施形態は、背圧や定期的なフラッシングが有効な様々な臨床応用に有用であると考えられる。そのような配置の一実施例は図11に描かれており、患者のインターフェースアセンブリ50は、近位端で留置尿道カテーテル201に、遠位端で輸液源203及び排液収集リザーバ64に、双方向注入及び排液チューブ69を介して接続するように構成される。図11のシステムは、ポンプ機構を起動させて、膀胱及び尿道カテーテルを一定量の生理食塩水で定期的に洗浄するように、ユーザ制御設定点を介して構成されても良い。代替的に、システムは、膀胱に実質的に近接して配置された装着可能な圧力センサアセンブリ80によって一定の上限圧力閾値が検出されるまでポンプ機構が生理食塩水を圧送し、その時点でポンプ機構が非活性化されて膀胱排液を可能にするように構成されても良い。どちらの場合も、結果として生じる洗浄行為は、尿の流れが悪くなるのを防ぎ、体内の自然な排尿サイクルを模倣することができる。さらに、その箇所を繰り返し洗浄することで、定着し始めた細菌単位を実質的に希釈することができる。このような調整をすることで、現在の臨床診療において、重症患者の管理でよく行われる無秩序な排尿や長時間の尿道カテーテルに伴う膀胱及び尿路感染症の発生を控えるのに有用である。
【0109】
図11に描かれた実施形態は、空洞への圧力変換器の直接的な移植よりも侵襲性の低い方法で、コンパートメント症候群のための様々な体腔圧力をモニタリングすることにも有用性を見いだすことができる。例えば、腹腔内圧モニタリングの場合、システムコントローラは、輸液源とポンプ機構を利用して、少量の生理食塩水(又は同様の流体)で患者の膀胱をわずかに膨らませ、膀胱の解剖学的マーカーに実質的に近接して配置された装着可能な圧力センサアセンブリの手段によって腹腔から生じる圧力応答を測定することができる。このような配置の膀胱圧は、腹腔内圧の低侵襲な指標として使用することができる。システム制御アセンブリは、適切な排尿が維持されるように膀胱の実質的に完全な排液を可能にするために腹腔内圧モニタリングを定期的に一時停止し、その後膀胱を再膨張させて腹腔内圧モニタリングを再開するようにさらに構成されても良い。
【0110】
他の類似の実施形態において、患者のインターフェースアセンブリは、移植された静脈カテーテル(中心ライン)又は移植された動脈カテーテル(動脈ライン)に接続するように構成されても良く、及び制御システムアセンブリは、ポンプ機構を起動させて血液接続ラインを生理食塩水で定期的又は連続的に流すように構成されても良い。このような仕組みにより、常に臨床的な監視やメンテナンスを行うことなく動脈又は中心静脈ラインの開存性を確保し、ライン内に配置された圧力センサ(複数可)が血液成分や凝固した血液で汚れないようにすることで、臨床診療を自動化し改善することができる。
【0111】
特定の実施形態では、1つ以上の追加の圧力センサ(複数可)が、追加の冗長性のために装着可能な圧力センササブアセンブリ80内に、関心のある第2の解剖学的マーカーに、複数の流体(例えば、血液及びCSFを同時に)の測定用に別の流体ライン上に、又は1つ以上の流体ライン(気泡が最も蓄積しやすい流体ラインの高所など)に沿った戦略的場所に配置されても良い。このような取り決めは、患者の安全性の向上、診断やエラーチェックの追加、及び/又は臨床上の利益や洞察の追加のために、特定のアプリケーションにおいて保証されるかもしれない。
【0112】
図12は、患者のインターフェースアセンブリ50が、その近位端に移植された心室カテーテル206に接続するための1次流体ライン68と、その遠位端に取り外し可能な流体排液リザーバ64とを備える、現在開示されている流体管理システムのさらに別の実施形態を描く。他の態様では、患者のインターフェースアセンブリ50は、その近位端で移植された動脈カテーテル207に接続するための2次流体ライン205と、その遠位端で輸液源203とを更に備える。他の態様では、患者のインターフェースアセンブリは、ICP(EAM)をモニタリングするのに適した解剖学的マーカーに実質的に近接して患者に貼り付けられる第1の装着可能な圧力センサアセンブリ80aと、血圧(第4左肋間など)をモニタリングするのに適した解剖学的マーカーに実質的に近接して患者に貼り付けられる第2の装着可能な圧力センサアセンブリ80bと、をさらに備える。
【0113】
第1及び第2の装着可能な圧力センサアセンブリの各々は、本明細書の他の箇所に記載されるように、患者の動き/姿勢をモニタリングし、圧力センサの測定値をエラーチェックするための方向センサを含むことができる。複数の方向センサを搭載することで、患者の姿勢をより詳細に追跡する(例えば、頭の方向とは別に体幹の向きを追跡することで、脊柱と関連するCSF圧を3D空間でより正確にリアルタイムにモデル化する)ことを容易にする。このような情報は、システム制御アセンブリによって、解剖学的関心点における特定のパラメータの真の値をより正確に反映するように表示値を自動的に調整するため、又は、時間の経過とともに患者の動きを追跡するため(例えば、圧迫損傷を防ぐために十分な頻度で患者が動かされることを確実にするため、又は昏睡又は鎮静状態から目覚めつつある患者をモニタリングするため)に利用されることが可能である。
【0114】
いくつかの実施形態では、第1の装着可能な圧力センサアセンブリは、ICPのみをモニタしても良く、一方、第2の装着可能な圧力センサアセンブリは、ICP及び血圧の両方をモニタしても良い。このような配置により、CPPを正確に計算するために、血圧基準と同じ標高で正規化されたICPの圧力基準を提供する。代替の実施形態において、第2の装着可能な圧力センサアセンブリは、血圧のみをモニタしても良い。
【0115】
いくつかの実施形態では、患者のインターフェースアセンブリは、単一の統合アセンブリで構成されても良いが、他の実施形態では、1次、2次、及び3次ライン、及びそれらの関連する構成要素は、別々の患者のインターフェースアセンブリであっても良い。いくつかの実施形態では、図11及び図12に描かれたポンプ機構202の様々な態様は、患者のインターフェースアセンブリ50と制御システムアセンブリ10との間で分割されても良い。他の実施形態では、システムは、2つの体液を独立してモニタ又は制御する(例えば、図11に記載されるように、第1の流体ライン上の留置尿道カテーテルへの接続を介して腹腔内圧をモニタし、図10に記載されるように、第2の流体ライン上のICPを独立してモニタしてCSFの制御排液を提供する)ように構成されても良い。
【0116】
図12に描かれるような開示された流体管理システムの実施形態は、2つの装着可能な圧力センサアセンブリからのデータを組み合わせて使用して、派生パラメータに基づいて流体圧力又は排液流量を管理するようにさらに構成されても良い。例えば、システムは、CPP目標設定値及びアラーム閾値に従ってCSF排液を管理するように構成されても良く、瞬時CPPは、第1及び第2の装着可能な圧力センサアセンブリによってそれぞれ提供されるICP及びMAP値を使用してリアルタイムで計算される。他の実施形態では、開示されたシステムは、同様に、他の派生パラメータ(脊髄灌流圧、腹部灌流圧など)に基づいて他の体液の圧力又は排液流量を管理するように構成されても良い。流体圧力及び排液流量を(CPPなどの)派生パラメータに基づいて自動的に管理するシステムは、先行技術に対して大きな進歩をもたらし、既存の技術では不可能又は実用的でない、刺激的で有用な臨床応用を可能にするものである。
【0117】
開示された体液管理システムは、したがって、開示の精神から逸脱することなく、臨床で有用であると考えられるように、様々な流体又は解剖学的サブシステムをモニタリング又は管理するために様々な方法で構成することができることが理解されるだろう。
【0118】
したがって、本開示の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の請求項によって示され、請求項の意味及び同等性の範囲内に入るすべての変更は、本明細書に包含されることを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
【国際調査報告】