(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】血栓除去術のための拡張可能な多層電極要素
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515307
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 IB2021058330
(87)【国際公開番号】W WO2022058873
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523081166
【氏名又は名称】マグネト スロムベクトミー ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】タフ ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】トルジマン アサフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160KL03
4C160MM36
4C160NN01
(57)【要約】
装置(20)は、被検体の身体内のシース(22)を通過するように構成された1又は2以上の長手方向要素(28a、28b、30、60)と、長手方向要素に結合された1又は2以上の拡張可能な多層電極要素(24)とを含む。電極要素は、シースの内部で潰されながら体内の血栓に前進し、血栓への前進に続いてシースに遠位方向で拡張するように構成されている。電極要素の各々は、1又は2以上の参照電極(34)と、電極要素の拡張に続いて、活性電極と参照電極との間に電圧を印加したときに、血栓を引き付けるように構成された1又は2以上の活性電極(36)と、を含む。他の実施形態も記載されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
被検体の身体内のシースを通過するように構成された1又は2以上の長手方向要素と、
前記長手方向要素に結合された1又は2以上の拡張可能な多層電極要素であって、前記シース内部で潰されながら前記身体内の血栓まで前進して、前記血栓への前進に続いて前記シースに遠位方向に拡張するように構成された1又は2以上の拡張可能な多層電極要素と、
を備え、
前記電極要素の各々は、
1又は2以上の参照電極と、
1又は2以上の活性電極であって、前記電極要素の拡張に続いて、前記活性電極と前記参照電極との間に電圧を印加したときに、前記血栓を引き付けるように構成された1又は2以上の活性電極と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記シースを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記長手方向要素が、前記電極要素のそれぞれの近位端に結合された近位結合長手方向要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記長手方向要素が、前記電極要素のそれぞれの遠位端に結合された遠位結合長手方向要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記遠位結合長手方向要素が、
長手方向要素活性電極と、
前記長手方向要素活性電極の内側に配置された長手方向要素参照電極と、
前記長手方向要素参照電極と前記長手方向要素活性電極との間に配置された電気絶縁要素と、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記遠位結合長手方向要素が、前記電極要素に対して遠位方向に延びる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記電極要素が、1又は2以上のループを定めるように拡張するよう構成されている、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記ループのそれぞれの遠位端に配置された遠位電極要素を更に備え、
前記遠位電極要素が、
遠位活性電極と、
前記遠位活性電極の内側に配置された遠位参照電極と、
前記遠位参照電極と前記遠位活性電極との間に配置された遠位電気絶縁要素と、
を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ループが、
1又は2以上の近位ループの近位セットと、
前記近位ループのそれぞれの遠位端に結合された1又は2以上の遠位ループの遠位セットであって、前記近位セットの最大幅よりも小さい最大幅を有する遠位セットと、
を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記電極要素の少なくとも1つは、拡張されたときに正弦波形状を有する、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記電極要素の少なくとも1つは、拡張されたときに螺旋形状を有する、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記電極要素が、形状の遠位部分に沿って遠位方向に移動するにつれて減少する幅を有する形状を定めるように拡張するよう構成される、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記電極要素の各々が、多層ストリップを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記ストリップの参照層が、参照電極を含み、
前記ストリップの1又は2以上の活性層が活性電極を含み、
前記ストリップが更に、前記参照層を前記活性層から電気的に絶縁する1又は2以上の絶縁層を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記活性層が単一の活性層からなり、前記絶縁層が、前記参照層と前記活性層との間に配置された単一の絶縁層からなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記活性層が、前記参照層の両側に配置された第1の活性層及び第2の活性層を含み、前記絶縁層が、
前記第1の活性層と前記参照層との間に配置された第1の絶縁層と、
前記第2の活性層と前記参照層との間に配置された第2の絶縁層と、
を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記活性層の各々は、1又は2以上の外側ギャップを定めるような形状にされ、前記絶縁層の各々は、前記外側ギャップと整列した1又は2以上の内側ギャップを定めるような形状にされる、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記絶縁層の少なくとも1つが、(i)前記参照層、又は(ii)前記活性層のうちの隣接する1つよりも幅が狭い、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記ストリップが、
基板層と、
前記基板層に取り付けられた1又は2以上の電極層と、
を含み、
前記電極層の各々が、前記参照電極のそれぞれの1つと前記活性電極のそれぞれの1つとを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記参照電極のそれぞれの1つと前記活性電極のそれぞれの1つが、互いに突出している、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記電極要素の各々は、
前記参照電極を含むコアと、
前記コアの周囲に巻かれた電気絶縁層と、
前記活性電極を含み、前記電気絶縁層の周りに巻かれた活性層と、
を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記活性層が、1又は2以上の外側ギャップを定めるような形状にされ、前記電気絶縁層が、前記外側ギャップと少なくとも部分的に整列した1又は2以上の内側ギャップを定めるような形状にされる、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
装置であって、
被検体の身体内のシース内に潰されながら前記身体内の血栓まで前進し、前記シースに遠位方向に拡張して前記血栓まで前進した後に1又は2以上のループを定めるように構成された1又は2以上の拡張可能な電極要素と、
前記電極要素のそれぞれの遠位端に結合され且つ前記シースを通過するように構成された導電性長手方向要素と、
を備え、
前記電極要素の各々が1又は2以上の活性電極を含み、前記活性電極は、前記電極要素の拡張に続いて、前記活性電極と前記長手方向要素との間に電圧を印加したときに、前記血栓を引き付けるように構成されている、装置。
【請求項24】
方法であって、
被検体の身体内にシースを挿入するステップと、
1又は2以上の拡張可能な多層電極要素をシース内で潰しながら前記身体内の血栓に前進させるステップであって、前記電極要素の各々が1又は2以上の参照電極及び1又は2以上の活性電極を含む、ステップと、
前記血栓への前進に続いて、前記電極要素を前記シースに遠位方向で拡張させるステップと、
前記活性電極と前記参照電極との間に電圧を印加することにより、前記電極要素の拡張に続いて、前記活性電極に前記血栓を引き付けさせるステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記電極要素の拡張に続いて、前記電極要素に結合され且つ前記シースを通過する1又は2以上の長手方向要素を回転させることによって、前記血栓の周りで前記電極要素を捩るステップを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記長手方向要素が、前記電極要素のそれぞれの遠位端に結合され、
前記長手方向要素は、
長手方向要素活性電極と、
前記長手方向要素活性電極の内側に配置された長手方向要素参照電極と、
を含み、
前記方法が更に、前記長手方向要素活性電極と前記長手方向要素参照電極との間に電圧を印加するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記電極要素を拡張させるステップが、1又は2以上のループを定めるように前記電極要素を拡張させるステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記遠位電極要素が、前記ループのそれぞれの遠位端に配置され、
前記遠位電極要素は、
遠位活性電極と、
前記遠位活性電極の内側に配置された遠位参照電極と、
を含み、
前記方法が更に、前記遠位活性電極と前記遠位参照電極との間に電圧を印加するステップを含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電極要素の各々が多層ストリップを含む、請求項24~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ストリップの参照層が、前記参照電極を含み、前記ストリップの1又は2以上の活性層が前記活性電極を含み、前記ストリップが更に、前記参照層を前記活性層から電気的に絶縁する1又は2以上の絶縁層を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ストリップが、
基板層と、
前記基板層に取り付けられた1又は2以上の電極層と、
を含み、
前記電極層の各々は、前記参照電極のそれぞれの1つ及び前記活性電極のそれぞれの1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記電極要素の各々が、
前記参照電極を含むコアと、
前記コアの周りに巻かれた電気絶縁層と、
前記活性電極を含み且つ前記電気絶縁層に巻かれた活性層と、
を含む、請求項24~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
方法であって、
被検体の身体内にシースを挿入するステップと、
1又は2以上の拡張可能な電極要素を前記シース内で潰しながら前記身体内の血栓に前進させるステップと、
を含み、
前記各電極要素が1又は2以上の活性電極を含み、前記電極要素のそれぞれの遠位端に導電性長手方向要素が結合されており、
前記方法が更に、
前記血栓への前進に続いて、1又は2以上のループを定めるように前記電極要素をシースに遠位方向で拡張させるステップと、
前記活性電極と前記長手方向要素との間に電圧を印加することにより、前記電極要素の拡張に続いて、前記活性電極に前記血栓を引き付けさせるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2020年9月16日に出願された「Expandable electrode elements for thrombectomy procedures」と題する米国仮出願第63/078,920号の利益を主張し、その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医療デバイスの分野、特に血栓除去術のためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Orionに対する米国特許第10,028,782号では、身体通路に導入され、そこから流体を引き出すか又は流体を導入することができる可撓性のカテーテルデバイスが記載されている。このデバイスは、血栓溶解及び/又は血栓除去を行うために身体通路内で電気信号を印加するように構成された電極を含み、ここで前記電極の1つは、血栓材料に接触してこれを除去又は溶解するように設計されており、電気電圧信号は、単極パルス性電圧信号である。
【0004】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Taffらに対する米国特許出願公開第2018/0116717号では、被検体の身体から血栓を除去するための装置を記載している。この装置は、第1の導電性金属で作られた第1の電極と、第1の導電性金属とは異なる第2の導電性金属で作られた第2の電極と、第1の電極が血栓と接触している間及び第2の電極が被検体の身体内にある間、第1の電極と第2の電極との間に正の単極性電圧を印加するよう構成された電圧源と、を含む。
【0005】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Taffらに対する米国特許出願公開第2019/0262069号では、1又は2以上の小孔を定めるような形状にされた周壁を有する遠位端を含み且つ被検体の身体内に挿入するように構成された電気絶縁性チューブと、電気絶縁性チューブの遠位端の上に配置され、電気絶縁性チューブが身体内にあるときに少なくとも一部血栓内に位置するように構成された外側電極と、外側電極が少なくとも一部血栓内に位置する一方で小孔の反対側でチューブ内に位置するように構成された内側電極と、含む装置が記載されている。外側電極と内側電極との間に正の電圧が印加されて電流が小孔を通って流れるようにされると、外側電極が少なくとも一部が血栓内にあり、内側電極が小孔と反対側にある間、外側電極は血栓を引き付けるように構成される。
【0006】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Taffらに対する米国特許出願公開第2021/0186540号では、チューブを含む装置が記載されている。チューブは、閉塞部に前進するように構成され、閉塞部へのチューブの前進に続いて、吸引印加デバイスによって生成された吸引力がチューブを介して閉塞部に加えられるように、吸引印加デバイスに接続するように構成された近接ハブを含む。この装置は更に、チューブを通過するように構成された第1及び第2の導電性円周部分を含む制御要素を含む。この装置は更に、第1及び第2の導電性円周部分を電源のそれぞれの端子に接続するように構成された、第1及び第2の導電性要素を含む。第1の導電性円周部分は、電源によって、第1及び第2の導電性要素を介して、第1及び第2の導電性円周部分の間に電圧が印加されると、閉塞部を引き付けるように構成され、閉塞部に吸引力が加わっている間、閉塞部が制御要素に固定されるように構成されている。
【0007】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Taffらに対する国際特許出願公開WO/2019/243992では、被検体の身体から閉塞部を除去するための装置が記載されている。この装置は、身体への挿入のために構成された参照電極と、参照電極を覆い、参照電極の一部を露出させるギャップを定めるような形状にされた電気絶縁性要素と、電気絶縁性要素を覆う活性電極と、参照電極を通り、活性電極に電気的に接続された導電性要素であって、導電性要素は、活性電極を電源に電気的に接続して、電源による活性電極と参照電極の間の電圧の印加によって活性電極を閉塞部に引き付けるようにするよう構成されている、導電性要素とを備える。
【0008】
その開示が引用により本明細書に組み込まれる、Taffらに対する国際特許出願公開WO/2020/174326では、被検体の身体内の閉塞を治療するための装置を記載しており、体内への挿入用に構成され且つ第1のルーメン及び遠位開口を有する第2のルーメンを定めるような形状にされたチューブを含む。本装置は、電極間の電圧印加時に閉塞部に電流を印加するように構成された電極のペアを更に含み、該電極のペアは、チューブの周りに巻き付けられた外側電極と、第1のルーメンを通過するように構成された内側電極とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第10,028,782号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0116717号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0262069号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2021/0186540号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開WO/2019/243992公報
【特許文献6】国際特許出願公開WO/2020/174326公報
【発明の概要】
【0010】
本発明の幾つかの実施形態によれば、被検体の身体内のシースを通過するように構成された1又は2以上の長手方向要素と、長手方向要素に結合された1又は2以上の拡張可能な多層電極要素とを含む装置が提供される。電極要素は、シースの内部で潰されながら身体内の血栓まで前進して、血栓への前進に続いてシースに遠位方向で拡張するように構成される。電極要素の各々は、1又は2以上の参照電極と、電極要素の拡張に続いて、活性電極と参照電極との間に電圧を印加したときに、血栓を引き付けるように構成された1又は2以上の活性電極と、を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、本装置は、シースを更に含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、長手方向要素は、電極要素のそれぞれの近位端に結合された近位結合型長手方向要素を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、長手方向要素は、電極要素のそれぞれの遠位端に結合された遠位結合長手方向要素を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、遠位結合長手方向要素は、長手方向要素活性電極と、長手方向要素活性電極の内側に配置された長手方向要素参照電極と、前記長手方向要素参照電極と前記長手方向要素活性電極との間に配置された電気絶縁要素とを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、遠位結合長手方向要素は、電極要素に対して遠位方向に延びる。
【0016】
幾つかの実施形態では、電極要素は、1又は2以上のループを定めるように拡張するようにされる。
【0017】
幾つかの実施形態において、本装置は、ループのそれぞれの遠位端に配置された遠位電極要素を更に含み、遠位電極要素が、遠位活性電極と、遠位活性電極の内側に配置された遠位参照電極と、遠位参照電極と遠位活性電極との間に配置された遠位電気絶縁要素とを含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、ループは、1又は2以上の近位ループの近位セットと、近位ループのそれぞれの遠位端に結合された1又は2以上の遠位ループの遠位セットであって、遠位セットは近位セットのものよりも小さい最大幅を有する、遠位セットと、を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、電極要素の少なくとも1つは、拡張されたときに正弦波形状を有する。
【0020】
幾つかの実施形態において、電極要素の少なくとも1つは、拡張されたときに、螺旋形状を有する。
【0021】
幾つかの実施形態では、電極要素は、形状の遠位部分に沿って遠位方向に移動するについれて減少する幅を有する形状を定めるように拡張するよう構成される。
【0022】
幾つかの実施形態では、電極要素の各々は、多層ストリップを含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、ストリップの参照層は、参照電極を含み。ストリップの1又は2以上の活性層は活性電極を含み、ストリップは、参照層を活性層から電気的に絶縁する1又は2以上の絶縁層を更に含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、活性層は単一の活性層からなり、絶縁層は参照層と活性層との間に配置された単一の絶縁層からなる。
【0025】
幾つかの実施形態において、活性層は、参照層の反対側に配置された第1の活性層及び第2の活性層を含み、絶縁層は、第1の活性層と参照層との間に配置された第1の絶縁層と、第2の活性層と参照層との間に配置された第2絶縁層とを含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、活性層の各々は、1又は2以上の外側ギャップを定めるような形状にされ、絶縁層の各々は、外側ギャップと整列された1又は2以上の内側ギャップを定めるような形状にされる。
【0027】
幾つかの実施形態において、絶縁層の少なくとも1つは、(i)参照層、又は(ii)活性層の隣接する1つよりも幅が狭い。
【0028】
幾つかの実施形態において、ストリップは、基板層と、基板層に取り付けられた1又は2以上の電極層とを含み、電極層の各々は、参照電極のそれぞれの1つ及び活性電極のそれぞれの1つを含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、参照電極のそれぞれの1つ及び活性電極のそれぞれの1つは、互いに突出している。
【0030】
幾つかの実施形態において、電極要素の各々は、参照電極を含むコアと、コアの周りに巻かれている電気絶縁層と、電気絶縁層の周りに巻かれた活性層と、を含む。
【0031】
幾つかの実施形態では、活性層は、1又は2以上の外側ギャップを定めるような形状にされ、電気絶縁層は、外側ギャップと少なくとも部分的に整列した1又は2以上の内側ギャップを定めるような形状にされる。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態によれば、身体内のシース内に潰されながら被検体の身体内の血栓に前進し、血栓への前進に続いて1又は2以上のループを定めるようにシースに対して遠位方向に拡張するように構成された1又は2以上の拡張可能な電極要素を含む装置が更に提供される。本装置は、電極要素のそれぞれの遠位端に結合され、シースを通過するように構成された導電性長手方向要素を更に含む。電極要素の各々は、電極要素の拡張に続いて、活性電極と長手方向要素との間に電圧を印加したときに、血栓を引き付けるように構成された1又は2以上の活性電極を含む。
【0033】
更に、本発明の幾つかの実施形態によれば、シースを被検体の身体内に挿入するステップと、1又は2以上の拡張可能な多層電極要素をシース内部で潰しながら身体内の血栓に前進させるステップであって、電極要素の各々は、1又は2以上の参照電極及び1又は2以上の活性電極を含む、ステップと、血栓への前進に続いて電極要素をシースに遠位方向で拡張させるステップと、電極要素の拡張に続いて、活性電極と参照電極との間に電圧を印加することにより、活性電極に血栓を引き付けさせるステップと、を含む方法が提供される。
【0034】
幾つかの実施形態において、本方法は、電極要素の拡張に続いて、電極要素に結合されシースを通過する1又は2以上の長手方向要素を回転させることによって、電極要素を血栓の周りに捩るステップを更に含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、長手方向要素は、電極要素のそれぞれの遠位端に結合され、該長手方向要素は、長手方向要素活性電極と、長手方向要素活性電極の内側に配置された長手方向要素参照電極と、を含み、上記方法は、長手方向素子活性電極と長手方向素子参照電極との間に電圧を印加するステップを更に含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、遠位電極要素は、ループのそれぞれの遠位端に配置され、遠位電極要素が、遠位活性電極と、遠位活性電極の内側に配置された遠位参照電極と、を含み、上記方法は、遠位活性電極と遠位参照電極との間に電圧を印加するステップを更に含む。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態によれば、被検体の身体内にシースを挿入するステップを含む方法が更に提供される。本方法は、拡張可能な電極要素がシース内部で潰されながら、1又は2以上の拡張可能な電極要素を身体内の血栓に前進させるステップを更に含み、電極要素の各々は、1又は2以上の活性電極を含み、導電性長手方向要素は、電極要素のそれぞれの遠位端に結合される。本方法は更に、血栓への前進に続いて1又は2以上のループを定めるように電極要素をシースに対して遠位方向に拡張させるステップと、電極要素の拡張に続いて、活性電極と長手方向要素との間に電圧を印加することにより、活性電極に血栓を引き付けるステップとを含む。
【0038】
本発明は、図面と併用される実施形態に関する以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の幾つかの実施形態による、被検体の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図2A】本発明の異なる実施形態による、電極要素を通る横断面図である。
【
図2B】本発明の異なる実施形態による、電極要素を通る横断面図である。
【
図2C】本発明の異なる実施形態による、電極要素を通る横断面図である。
【
図2D】本発明の異なる実施形態による、電極要素を通る横断面図である。
【
図2E】本発明の幾つかの実施形態による、多層ストリップを含む電極要素の概略図である。
【
図2F】本発明の幾つかの実施形態による、電極要素を通る概略横断面図である。
【
図3】本発明の異なるそれぞれの実施形態による、被検体の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図4】本発明の異なるそれぞれの実施形態による、被検体の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【
図5】本発明の異なるそれぞれの実施形態による、被検体の身体から血栓を除去するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(概要)
幾つかの血栓除去技術によれば、被検体の身体内の血栓に接触するか、又は少なくとも隣接する活性電極と、参照電極との間に正電圧が印加される。この電圧により、負電荷を帯びた血栓が正電荷を帯びた活性電極に付着する。血栓が活性電極に付着した後、電極は血栓と共に体内から引き抜かれる。
【0041】
これらの技術を実行するときの課題は、印加電圧から生じる電流、ひいては活性電極と血栓との間の引力が、血栓の長さにわたって比較的不均一に分布する可能性があることである。
【0042】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、拡張可能な多層電極要素を含む装置を提供する。電極要素の1つの層は、参照電極として機能し、一方、1又は2以上の他の層は、活性電極として機能する。電極要素は、血栓の長さのほとんど又は全てに沿って、血栓を通過するように、及び/又は血栓を取り囲むように拡張される。その後、活性電極と参照電極の間に電圧を印加する。電極が血栓の長さのほとんど又は全てにわたって延びることにより、結果として生じる電流は、血栓の長さにわたって比較的均等に分配される。
【0043】
幾つかの実施形態において、拡張可能な電極要素は、多層ストリップを備える。例えば、拡張可能な電極要素は、活性電極層、参照電極層、及び活性電極層と参照電極層との間の中間絶縁層の3つの層を備えることができる。或いは、拡張性電極要素は、2つの活性電極層と2つの絶縁層とを含む5つの層を備えることができる。
【0044】
任意選択で、多層ストリップの追加の特徴は、活性電極層と参照電極層との間の電流のより大きな流れを促進することができる。このような特徴は、絶縁層のギャップ、及び/又は減少した幅を含むことができる。
【0045】
他の実施形態では、拡張可能な電極要素は、参照電極コアと、コアの周りに巻き付けられた電気絶縁層と、電気絶縁層の周りに巻き付けられた活性電極層とを備える。電気絶縁層のギャップは、活性電極層と参照電極コアとの間の電流の流れを促進することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、装置は、血栓を捕捉することができる1又は2以上のループを定めるように拡張するよう構成された1又は2以上の電極要素を備える。ループの遠位端は、シースを通過する長手方向要素に結合されてもよく、これにより、電極要素に対する制御を容易にすることに加えて、追加の電極要素として機能することができる。代替的に又は追加的に、遠位電極要素は、ループの遠位端に配置することができる。
【0047】
他の実施形態では、電極要素は、正弦曲線又は螺旋形状のような別の形状を定めるように拡張する。
【0048】
(装置説明)
本発明の幾つかの実施形態による、被検体の身体から血栓を除去するための装置20の概略図である
図1を最初に参照する。
【0049】
装置20は、典型的には被検体の大腿静脈、頸静脈、頸動脈、又は橈骨静脈を介して、身体への挿入のために構成されたシース22を含む。シース22の挿入に続いて、シースは、典型的には被検体の血管の内部に位置する血栓までナビゲートされる。例えば、血栓は、被検体の肺動脈、頸動脈、大腿動脈、膝窩動脈、脛骨動脈、又は腓骨静脈の内部に位置することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、シース22は放射線不透過性であり、シースは、蛍光透視下でナビゲートされる。代替的又は追加的に、シースは、ガイドワイヤ上及び/又は送達カテーテルを通してナビゲートすることができる。
【0051】
典型的には、シースは、可撓性ポリマーを含む。幾つかの実施形態において、シースの長さは、30~150cmである。
【0052】
装置20は、シース22の内部で潰されながら血栓に進むように構成された1又は2以上の拡張可能な多層電極要素24を更に含む。例えば、血栓へのシース22のナビゲーションに続いて、電極要素24は、シースを通して進めることができる。或いは、シース内で折りたたまれた状態で、電極要素をシースと共に血栓まで進めることができる。
【0053】
電極要素24は、血栓への前進に続いて、シースに遠位方向で拡張するように更に構成される。例えば、電極要素は、シースから出るときに所定の形状を定めるように拡張するように構成された形状記憶材料(例えば、ニチノール)を備えることができる。代替的又は追加的に、
図3を参照して以下に更に説明するように、電極要素に結合された長手方向要素のペアが、電極要素を拡張するために使用することができる。典型的には、電極要素は、電極要素の拡張の前に、血栓に留置されるか、又は血栓と並んだ位置に移動される(任意選択的に、電極要素が血栓に接触するように)。
【0054】
幾つかの実施形態において、電極要素24は、1又は2以上の円形又は楕円形のループ26を定めるように拡張するように構成される。例えば、拡張されたとき、電極要素24は、同一平面上に横たわる外側ループ26o及び内側ループ26iを定めることができる。或いは、電極要素は、互いに垂直な平面など、異なるそれぞれの平面に横たわる2つのループを定めることができる。有利には、ループ26は、血栓を捕捉することができる。
【0055】
典型的には、最も広いループ26の最大幅w0は、2mmより大きく及び/又は30mm未満、例えば2mmと30mmとの間、例えば3~20mmである。
【0056】
典型的には、装置20が複数のループ26を含む実施形態については、ループは、近位接合部32p(
図1においてシース22の内部に位置する)及び遠位接合部32dにおいて互いに(例えば、任意の適切な接着剤を介して)結合される。
【0057】
幾つかの実施形態において、各ループ26は、単一の電極要素を含む(すなわち、単一の電極要素がループを定める)。他の実施形態では、少なくとも1つのループは、電極のペア要素のような、複数の電極要素を含む。例えば、外側ループ26oは、近位接合部32p及び遠位接合部32dで互いに結合される第1電極要素24a及び第2電極要素24bを備えることができる。
【0058】
典型的には、電極要素が拡張されたとき、電極要素の近位端から電極要素の遠位端までの距離(例えば、近位接合部32pから遠位接合部32dまでの距離)は、10~100mm、例えば20~80mmなど、少なくとも10mm及び/又は100mm未満である。
【0059】
図2A~Fを参照して以下に更に説明するように、各電極要素24は、1又は2以上の参照電極34と1又は2以上の活性電極36とを含む。活性電極36は、電極要素の拡張に続いて、電源38によって、活性電極36と参照電極34との間に電圧を印加すると、血栓を引き付けるように構成される。(典型的には、活性電極と参照電極の間の電圧は、正に帯電した活性電極が負に帯電した血栓を引き付けるように、正の電圧である)。活性電極への血栓の付着に続いて、装置20は、血栓と共に、身体から除去される。
【0060】
典型的には、電源38は、典型的には0.1~10mA、例えば、1~5mAに電流調節されている。他の実施形態では、電源は、典型的には、0.1~50V、例えば、1~40Vに電圧調節されている。印加される電圧は、一定であってもパルス状であってもよい。典型的には、電圧は、1秒と10分との間、例えば、5秒と5分との間、例えば、10秒と2分との間の持続時間にわたって印加される。
【0061】
装置20は、電極要素に結合され、シースを通過するように構成された1又は2以上の長手方向要素を更に備える。長手方向要素の各々は、電極要素の制御を容易にし、及び/又は、血栓の吸引を容易にすることができる。
【0062】
例えば、装置20は、電極要素のそれぞれの近位端に(例えば、接合部32pに)結合された近位結合長手方向要素30(例えば、可撓性中空管、可撓性固体ワイヤ、又は可撓性固体シャフトを含む)を備えることができる。電極要素をシースから前進させるために、長手方向要素30に反力を加えながらシースを引き出してもよいし、シースに反力を加えながら長手方向要素30を押込んでもよい。(上記の各場合において、反力は単に移動を抑制するものであってもよいし、反対方向への移動を引き起こすのに十分なものであってもよい)。
【0063】
代替的又は追加的に、
図3に示すように、装置20は、電極要素のそれぞれの遠位端に結合された遠位結合長手方向要素60(例えば、可撓性中空管、可撓性固体ワイヤ、又は可撓性固体シャフトを含む)を備えることができる。遠位結合長手方向要素60は、近位結合長手方向要素30について上述したように、シースから電極要素を前進させるために使用することができる。
【0064】
(特許請求の範囲を含む本願の文脈では、各電極要素の「近位端」は、電極要素が拡張されたときの電極要素の近位端である。同様に、各電極要素の「遠位端」とは、電極要素を展開したときの電極要素の遠位端のことである)
【0065】
代替的又は追加的に、装置20は、参照電極34に遠位接続(例えば、はんだ付け)されている第1の長手方向ワイヤ(又は「リード」)28aと、活性電極36に遠位接続(例えば、はんだ付け)されている第2の長手方向ワイヤ(又は「リード」)28bと、を備えることができる。第1のワイヤ28a及び第2のワイヤ28bは、電源38の異なるそれぞれの端子に接続するように構成され、電源が第1及び第2のワイヤ間に電圧を印加することにより、電極間に電圧を印加することができるようになっている。
【0066】
代替的に、装置20は、複数の第1ワイヤ28aを備えることができ、その各々が参照電極の異なるそれぞれのサブセットに接続される。(このような実施形態において、参照電極の1つのサブセットは、参照電極の別のサブセットを活性化することなく、電源によって活性化されてもよい)。代替的に又は追加的に、装置20は、複数の第2ワイヤ28bを備えることができ、その各々が活性電極の異なるそれぞれのサブセットに接続される。(このような実施形態において、活性電極の1つのサブセットは、活性電極の別のサブセットを活性化することなく、電源によって活性化されてもよい)。
【0067】
近位結合長手方向要素30又は遠位結合長手方向要素60が中空である実施形態については、第1のワイヤ28a及び/又は第2のワイヤ28bは、近接結合又は遠位結合長手方向要素を通過することができる。或いは、第1のワイヤ28a及び第2のワイヤ28bは、他の長手方向要素と並走することができる。
【0068】
他の実施形態では、近位結合長手方向要素30及び/又は遠位結合長手方向要素60は、電源38に接続され、電圧は、これらの長手方向要素の一方又は両方を介して電極に印加される。例えば、近位結合長手方向要素は、電極の1つのセット(例えば、活性電極)を電源の1つの端子に接続し、遠位結合長手方向要素は、電極の他のセット(例えば、参照電極)を他の端子に接続してもよい。或いは、近接結合型又は遠位結合型の長手方向要素の何れかが、1つのセットの電極を電源の1つの端子に接続し、ワイヤが、他のセットの電極を他方の端子に接続してもよい。
【0069】
図1は、電極要素24を通る横断面40を示す。様々な異なる実施形態に係る横断面40は、
図2A~Dに示されており、次に、これを参照する。
【0070】
幾つかの実施形態では、電極要素の各々は、多層ストリップ42を含む。ストリップ42の層は、任意の適切な接着剤を用いて互いに付着させることができる。
【0071】
例えば、ストリップの参照層44rは参照電極34を含むことができ、ストリップの1又は2以上の活性層44aは活性電極36を含むことができ、ストリップ42は参照層44rを活性層44aから電気的に絶縁する1又は2以上の絶縁層44iを更に含むことができる。電圧の印加により、電流46が活性層と参照層との間に流れる。
【0072】
典型的には、(
図2Aに示されるように)ストリップ42の幅wsは、0.1mmと2mmの間、例えば0.2~1mmの間など、少なくとも0.1mm及び/又は2mm未満である。
【0073】
典型的には、ストリップ42の各層の厚さは、0.1mm未満など、0.2mm未満である。代替的又は追加的に、ストリップ42の総厚みt(
図2Aに示す)は、ストリップの層数にかかわらず、0.5mm未満など、1mm未満とすることができる。
【0074】
図2Aにおいて、活性層44aは単一の活性層からなり、絶縁層44iは参照層と活性層との間に配置された単一の絶縁層からなる。(従って、ストリップ42は全部で3つの層を含む)。幾つかの実施形態では、活性層は、ループ26(
図1)内部の血栓をより良好に捕捉するように、内側(すなわち、装置20の長手方向軸の方)に向いている。
【0075】
図2Bにおいて、活性層44aは、参照層44rの反対側に配置された第1の活性層44a_1と第2の活性層44a_2とを含む。絶縁層44_iは、第1の活性層44a_1と参照層44rとの間に配置された第1絶縁層44i_1と、第2の活性層44a_2と参照層44rとの間に配置された第2絶縁層44i_2とを含む(従って、ストリップ42は合計5層を含む)。かかる実施形態の利点は、電流46が増加し活性電極の面積が増加するため血栓の捕捉性が良好であることである。
【0076】
図2Cにおいて、活性層の各々は、1又は2以上の外側ギャップ48oを定めるような形状にされ、絶縁層の各々は、外側ギャップ48oと少なくとも部分的に整列した1又は2以上の内側ギャップ48iを定めるような形状にされる。このような実施形態の利点は、追加の電流46がギャップを介して流れる可能性があることである。(図示を容易にするために、この追加の電流は、全てのギャップに示されていない)。
図2Bの5層ストリップと同様に、
図2Aの3層ストリップは、外側ギャップ48o及び内側ギャップ48iを定めるように形成することができる。
【0077】
各ギャップは、任意の適切な長さを有してよいことに留意されたい。例えば、ギャップは、ギャップがストリップの層を複数の切断されたセグメントに分割するように、ストリップの長さ全体にわたって延びてもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、追加の電流の流れを容易にするために、少なくとも1つの絶縁層44iは、参照層44r又は絶縁層に隣接する活性層44aよりも狭い(例えば、5~30%狭い)。
図2Aの3層ストリップと
図2Bの5層ストリップの両方が、この特徴を備えることができる。この特徴は、
図2Cのギャップと組み合わせることができる。
【0079】
例えば、
図2Dにおいて、絶縁層は、参照層44rよりも狭い。任意選択的に、
図2Dに示すように、活性層は、絶縁層と同じ幅を有してもよい。
【0080】
或いは、絶縁層は、活性層よりも幅が狭くてもよい。任意選択で、参照層は、絶縁層と同じ幅を有してもよい。
【0081】
次に、本発明の幾つかの実施形態による、多層ストリップ42を含む電極要素24の概略図である
図2Eを参照する。電極要素を通る横断面を示す
図2A~Dとは対照的に、
図2Eは、電極要素をその長さに沿って示している。
【0082】
幾つかの実施形態では、ストリップ42は、典型的にはポリイミドなどのポリマーを含む基板層50を含む。1又は2以上の電極層52は、例えば、任意の適切な接着剤を介して、基板層50に取り付けられる。各電極層52は、それぞれの参照電極34とそれぞれの活性電極36とを含む。例えば、
図2Eに示されるように、ストリップ42は、単一の電極層52を含むことができる。或いは、ストリップ42は、それぞれが基板層50の異なるそれぞれの側に取り付けられる、2つの電極層52を含むことができる。
【0083】
このような実施形態において、各活性電極は、典型的には、活性層44aについて、
図2A~Dを参照して、上で指定した材料のうちの1つ以上を含む。同様に、各参照電極は、典型的には、参照層44rについて上記で指定された材料のうちの1又は2以上を含む。
【0084】
幾つかの実施形態では、電極層52は、活性電極と参照電極の間に配置された電気絶縁要素54を更に備える。典型的には、電流の流れを促進するために、電気絶縁要素54は、0.01mm未満など、0.05mm未満である厚さを有する。他の実施形態では、エアギャップが2つの電極を互いから分離する。
【0085】
典型的には、電極間の界面の長さを増加させ、従って電流46の量を増加させるために、参照電極及び活性電極は互いに突出している。例えば、
図2Eに示すように、電極は、互いに組み合わされる矩形波エッジを備えることができる。或いは、例えば、電極は、互いに組み合わされる正弦波エッジを備えることができる。
【0086】
次に、本発明の幾つかの実施形態による、電極要素を通る別の横断面40の概略図である
図2Fを参照する。
【0087】
幾つかの実施形態において、各電極要素は、参照電極34を含む固体又は中空のコア56を含む。例えば、コア56は、参照電極として機能する導電性ワイヤを備えることができる。各電極要素は、コアの周りに巻かれた電気絶縁層58iと、活性電極36からなり、電気絶縁層58iの周りに巻かれた活性層58aとを更に備える。
【0088】
典型的には、このような実施形態において、活性層58aは、1又は2以上の外側ギャップ48oを定めるような形状にされ、電気絶縁層58iは、外側ギャップ48oと少なくとも部分的に整列した1又は2以上の内側ギャップ48iを定めるような形状にされる。従って、電流は、ギャップを介して電極の間に流れることができる。
【0089】
例えば、活性層58aは、活性電極36として機能する導電性の有孔管を備えることができ、電気絶縁層58iは、活性層58aのものと少なくとも部分的に整列した小孔を有する別の有孔管を備えることができる。或いは、活性層58aは、活性電極36として機能する導電性コイルを含み、電気絶縁層58iは、その巻線が活性層58aのものと少なくとも部分的に整列している別のコイルを含むことができる。或いは、何れかの層がコイルを含むことができ、他の層が、コイルの巻線の間に少なくとも部分的に横たわる小孔を有する有孔管を含むことができる。更に別の選択肢として、活性層58aは、活性電極36として機能する一連の切断された導電性チューブセグメントを備えることができ、電気絶縁層58iは、活性層58aのものと少なくとも部分的に整列した別の一連の切断されたチューブセグメントを備えることができる。
【0090】
次に、本発明の幾つかの実施形態による、装置20の概略図である
図3を参照する。(図示を容易にするために、第1ワイヤ28a及び第2ワイヤ28bは、
図3から省略されている)。
【0091】
図1を参照して上述したように、幾つかの実施形態において、装置20は、電極要素のそれぞれの遠位端に(例えば、遠位接合部28dに)結合された遠位結合長手方向要素60を備える。近位結合長手方向要素30が中空である実施形態については、遠位結合長手方向要素60は、近位結合長手方向要素30を通過してよい。
【0092】
遠位結合長手方向要素60は、近位結合長手方向要素30と共に、ループ26のそれぞれの長さ及び幅を調節するために使用することができる。例えば、シース22の近位端から突出する遠位結合長手方向要素60及び近位結合長手方向要素30の近位端を把持するユーザは、2つの長手方向要素を互いに相対的にスライドさせることができる。例えば、ループを長くし、狭くするために、ユーザは、近位結合長手方向要素30に反力を加えながら、遠位結合長手方向要素60を押してもよい。逆に、ループを短くしたり広げたりするために、ユーザは、遠位結合長手方向要素60に反力を加えながら、近位結合長手方向要素30を押してもよい(上記の各場合は、ループを短くしたり広げたりするために、ユーザは、遠位結合長手方向要素60に反力を加えながら、近位結合長手方向要素30を押してもよい。(上記の各場合において、反力は単に動きを抑制してもよいし、反対方向への動きを引き起こすのに十分であってもよい)。
【0093】
代替的又は追加的に、装置20がループ26を含むかどうかにかかわらず、遠位結合長手方向要素60は、近位結合長手方向要素30と共に、電極要素を拡張するために使用することができる。例えば、ユーザは、近位結合長手方向要素30に反力を加えながら、遠位結合長手方向要素60を押してもよい。
【0094】
代替的又は追加的に、装置20がループ26を含んでいるかどうかにかかわらず、電極要素と血栓との間の接触を増加させるように、電極要素の拡張に続いて(そして典型的には、電圧の適用に先立って)血栓の周りで電極要素を捩るために、遠位結合長手方向要素60が近位結合長手方向要素30と共に使用することができる。言い換えれば、遠位結合長手方向要素60に反力が加えられている間、近位結合長手方向要素30がその長手方向軸を中心に回転されてもよく、又は近位結合長手方向要素30に反力が加えられている間、遠位結合長手方向要素60が回転されてもよい(上記の各場合、近位結合長手方向要素30と遠位結合長手方向要素60は、近位結合長手方向要素30が回転されている間、近位結合長手方向要素が回転されている。(上記の各場合において、反力は、単に回転を抑制してもよいし、反対方向への回転を引き起こすのに十分であってもよい)。
【0095】
幾つかの実施形態では、遠位結合長手方向要素60-特に、ループが拡張されたときにループの近位端と遠位端との間に配置される遠位結合長手方向要素60の少なくとも遠位部分60d-は、長手方向要素活性電極と、長手方向要素活性電極の内部に配置された長手方向要素参照電極と、長手方向要素参照電極と長手方向要素活性電極との間に配置された電気絶縁要素とを備える。従って、遠位結合長手方向要素60は、血栓に追加の吸引力を適用することができる。典型的には、このような実施形態において、遠位結合長手方向要素60は、長手方向要素活性電極と長手方向要素参照電極との間の電流の流れを促進するように、長手方向要素活性電極と電気絶縁要素とを通るギャップを定める形状である。
【0096】
遠位結合長手方向要素60に代替的に又は追加的に、装置20は、ループのそれぞれの遠位端に配置された遠位電極要素70を備えることができる。遠位電極要素70は、遠位活性電極と、遠位活性電極の内部に配置された遠位参照電極と、遠位参照電極と遠位活性電極との間に配置された遠位電気絶縁要素とを備える。従って、遠位電極要素は、血栓に追加の吸引力を適用することができる。典型的には、このような実施形態において、遠位電極要素は、遠位活性電極と遠位参照電極との間の電流の流れを促進するように、遠位活性電極と電気絶縁要素とを通るギャップを定めるように形成されている。
【0097】
典型的には、遠位電極要素の長さは、10~100mmの間、例えば、20~80mmなど、少なくとも10mm及び/又は100mm未満である。典型的には、遠位電極要素70は、肺動脈などの遠位狭窄血管(すなわち、遠位方向に減少する直径を有する血管)から血栓を除去することを容易にするように、w0(
図1)よりも狭い。幾つかの実施形態において、遠位電極要素70は、円筒形であり、1mmと3mmの間など、典型的には0.5mmと4mmの間である外径を有する。
【0098】
幾つかの実施形態では、
図3に示すように、遠位電極要素は、電極要素24に対して完全に遠位である。他の実施形態では、遠位電極要素は、電極要素24に対して部分的にのみ遠位である。例えば、遠位電極要素70の近位端は、ループ26の内側に配置することができる。
【0099】
幾つかの実施形態では、
図3に示すように、遠位結合長手方向要素60の横断面62、及び/又は遠位電極要素70の横断面72は、
図2Fに示す横断面40に類似しているように見える。例えば、遠位結合長手方向要素60及び/又は遠位電極要素は、(i)参照電極として機能する導電性コアワイヤ64、(ii)コアワイヤ64を覆う電気絶縁性有孔管66、及び(iii)有孔管66を覆い、有孔管66のものと少なくとも一部整列した孔を有し、作用電極として機能する、導電性有孔管68を備えることができる。代替的に又は追加的に、遠位結合長手方向要素60及び/又は遠位電極要素は、コアワイヤ64の上にギャップ付き層の任意の他の適切なペアを備えることができ、各層におけるギャップは、他の層におけるギャップと少なくとも部分的に整列されている。層は、例えば、
図2Fを参照して上述したように、コイルのペア、有孔管及びコイル、又は2つの一連の切断された管セグメントを備えることができる。
【0100】
幾つかの実施形態において、遠位結合長手方向要素60(例えば、そのコアワイヤ64)及び/又は遠位電極要素70(例えば、そのコアワイヤ64)は、中空である。このような実施形態では、ガイドワイヤが、遠位結合長手方向要素60を通り、及び/又は遠位電極要素を通り、通過することができる。
【0101】
幾つかの実施形態において、遠位電極要素70は、ループ26の遠位端、例えば、遠位接合部28dに結合される。代替的に又は追加的に、遠位電極要素は、遠位結合長手方向要素60に結合することができる。例えば、単一のコアワイヤ64は、遠位結合長手方向要素60及び遠位電極要素の両方を通って延びてもよい。或いは、遠位方向に結合された長手方向要素60は、遠位電極要素を通過していてもよい。(上記から、遠位結合長手方向要素60は、遠位電極要素を介して、間接的に電極要素24に結合されてもよいことが分かる)。
【0102】
幾つかの実施形態において、遠位結合長手方向要素60は、電極要素に対して遠位方向に延びる。このような実施形態では、遠位結合長手方向要素60の遠位延在は、装置20が必ずしも遠位電極要素70を含んでいる必要はないように、上述した遠位電極要素70の特徴を有していてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態では、遠位結合長手方向要素60及び遠位電極要素70に属する任意の参照電極は、電極要素24に属する参照電極と同じ第1ワイヤ28a(
図1)に接続される。同様に、遠位結合長手方向要素60及び遠位電極要素70に属する任意の活性電極は、電極要素24に属する活性電極と同じ第2のワイヤ28b(
図1)に接続される。他の実施形態では、遠位結合長手方向要素60及び/又は遠位電極要素70に属する活性電極及び/又は参照電極は、電極要素24に属する電極とは別に接続され、従って活性化される。
【0104】
代替の実施形態では、各ループは、必ずしも参照電極を含まずに、1又は2以上の活性電極を含み、遠位結合長手方向要素60は、必ずしも活性電極を含まずに、1又は2以上の参照電極を含む。活性電極と参照電極との間に電圧を印加すると、電流が活性電極と参照電極との間に流れ、従って、活性電極が血栓を引き付ける。
【0105】
例えば、各電極要素は、追加の層なしで、活性電極として機能するワイヤを含むことができる。同様に、遠位結合長手方向要素60は、追加的な層なしに、参照電極として機能するコアワイヤ64を備えることができる。
【0106】
次に、本発明の幾つかの実施形態による、装置20の概略図である
図4を参照する。(近接結合された長手方向要素30は、図示を容易にするために、
図4~5から省略されている)。
【0107】
幾つかの実施形態において、電極要素24は、1又は2以上の近位ループ26pの近位セットと、1又は2以上の遠位ループ26dの遠位セットとを定める。例えば、近位ループ26pは、同一平面上に横たわる外側近位ループ26p_o及び内側近位ループ26p_iを備えることができ、遠位ループ26dは、同様に、近位ループと同一平面上に横たわる外側遠位ループ26d_o及び内側遠位ループ26d_iを備えることができる。或いは、ループは、任意の他の適切な構成を有してもよく、例えば、遠位ループ26dは、近位ループ26pが横たわる平面と垂直な平面に位置していてもよい。
【0108】
遠位ループ26dは、近位ループ26pのそれぞれの遠位端に結合される。例えば、遠位ループの近位端は、ループ間接合部74において互いに結合され、近位ループの遠位端に結合することができる。
【0109】
典型的には、遠位セットは、近位セットの最大幅w1よりも小さい最大幅w2を有する。(各セットの最大幅は、セット内の最も幅の広いループの最大幅である。典型的には、w1は、2mmと30mmの間、例えば、3~20mmなど、2mmより大きく及び/又は30mmより小さい)。有利には、この特徴は、遠位狭窄血管から血栓を除去することを容易にする。
【0110】
装置20は、遠位ループ26dの遠位方向に、任意の数の追加のループのセット(典型的には、徐々に小さい最大幅を有する)を備えることができる。
【0111】
幾つかの実施形態では、装置20は、最遠位ループの遠位端に結合されている遠位結合長手方向要素60、及び/又は最遠位ループの遠位端に配置されている遠位電極要素70を更に備える。
【0112】
電極要素24は、
図2A~Fを参照して上述した構成の何れかなど、任意の適切な多層構成を有してもよい。或いは、
図3を参照して上述したように、各電極要素は、任意の追加層なしで活性電極を構成してもよく、電極要素と遠位結合長手方向要素60との間で電流が流れることができる。
【0113】
次に、本発明の幾つかの実施形態による、装置20の概略図である
図5を参照する。
【0114】
幾つかの実施形態において、
図5に示すように、少なくとも1つの電極要素24は、拡張されたときに正弦波形状を有する。代替的に又は追加的に、少なくとも1つの電極要素は、拡張されたときに螺旋形状を有していてもよい。このような電極要素は、
図2A~Fを参照して上述した構成の何れかなど、任意の適切な多層構成を有してもよい。更に、このような電極要素は、遠位結合長手方向要素60(
図3)のような、先の図を参照して上述した特徴の何れかと組み合わせることができる。
【0115】
一般に、遠位狭窄血管からの血栓の除去を容易にするために、電極要素は、形状の遠位部分、例えば形状の遠位ほぼ50%、30%、又は10%に沿った遠位方向に移動して減少する幅を有する任意の形状を定めるように拡張するように構成することができる。このような形状の例には、ループ(
図1、
図3、及び
図4に示すような)及び
図5の正弦波形状が含まれ、この後者の形状の「幅」は、正弦波の包絡線の幅となる。
【0116】
典型的には、本明細書に記載の活性電極の各々は、金、白金、及び/又は白金とイリジウムとの合金を含む。典型的には、本明細書に記載される参照電極の各々は、ステンレス鋼、ニチノール、及び/又はチタンを含む。(
図1を参照して上述したように、ニチノールのような形状記憶材料は、電極要素の拡張を促進し得る)。典型的には、本明細書に記載の絶縁要素の各々は、ポリエーテルブロックアミド、ポリイミド、又はポリウレタンなどの1又は2以上の生体適合性ポリマーを含む。
【0117】
本発明は、本明細書で特に示し、説明したものに限定されないことは、当業者には理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書に記載された様々な特徴の組み合わせ及び下位組み合わせの両方、並びに、前述の説明を読んで当業者に思い浮かぶであろう、従来技術にはないその変形及び修正を含む。
【符号の説明】
【0118】
20 装置
22 シース
24 多層電極要素
26 ループ
32p 近位接合部
32d 遠位接合部
【国際調査報告】