(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】セラミック基複合材製造のためのケイ素から炭化ケイ素への転化
(51)【国際特許分類】
C04B 35/573 20060101AFI20230920BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20230920BHJP
C04B 35/577 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C04B35/573
C04B35/80 600
C04B35/577
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515722
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021028497
(87)【国際公開番号】W WO2022055556
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591235304
【氏名又は名称】ゼネラル・アトミックス
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ATOMICS
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ジーピン
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】オッパーマン,ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】ジャコブセン,ジョージ
(57)【要約】
炭化水素から炭化ケイ素及びセラミック基複合材を製造するための技術及び方法が開示される。一態様では、この方法は、チャンバ内に配置された炭化ケイ素繊維を使用して形状を予備形成するステップと、チャンバを排気して、ケイ素及びポリマースラリーをチャンバに引き込むステップと、チャンバを加圧して、ケイ素及びポリマースラリーを炭化ケイ素繊維に浸透させるステップとを含む。この方法は、チャンバを加熱して、チャンバ内に通過させたポリマー及び炭化水素を、炭素及び水素ガスに熱分解するステップを含む。熱分解されたポリマー及び炭化水素からの炭素は、ケイ素及びポリマースラリー中のケイ素上に炭素の被覆を提供する。この方法は、チャンバをさらなる高温に加熱して、ケイ素を溶融させ、炭素と反応させて炭化ケイ素を形成するステップを含む。形成された炭化ケイ素及び炭化ケイ素繊維は、セラミック基複合材を形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基複合材を製造する方法であって、
炭化ケイ素プリフォームをチャンバ内に配置するステップと、
真空を使用してチャンバを排気して、チャンバ内にケイ素粒子及びポリマーのスラリー混合物を導入して、炭化ケイ素プリフォームに接触させるステップと、
チャンバを加圧して、ケイ素粒子及びポリマースラリーを炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間に浸透させるステップと、
チャンバを第1の高温に加熱して、ポリマーを炭素及び水素ガスに熱分解して、炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間のケイ素粒子を高密度化するステップと、
炭化水素をチャンバ内に通過させるステップであり、加熱されたチャンバが、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解させ、熱分解されたポリマーからの炭素及び熱分解された炭化水素からの炭素を、炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間のケイ素粒子上に被覆させるステップと、
ケイ素:炭素の所望のモル比に達した場合に炭化水素の通過を停止するステップと、
チャンバを第2のさらなる高温に加熱して、ケイ素粒子を溶融させ、炭素と反応させて炭化ケイ素を形成して、形成された炭化ケイ素及び炭化ケイ素繊維がSiCセラミック基複合材を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
第1の温度が、約1000℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の温度が、約1414℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ケイ素及びポリマースラリー中において、20ナノメートル(nm)から25ミクロンの間の粒子サイズを有するケイ素粒子を使用すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
チャンバを第2の温度に加熱すると、溶融したケイ素と炭素の間で、
Si
(l)+C
(s)→SiC
(s)
と表される反応が引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炭化水素の通過を停止した後に、アルゴンガスをチャンバ内に通過させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炭化水素が、メタン(CH
4)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
炭化水素が、ディーゼル、ガソリン、JP8、灯油、天然ガス、プロパン、エタン、ブタン、又は別の炭化水素ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
炭化ケイ素複合材のための炭素被覆ケイ素粒子を生成する方法であって、
炭化水素を、ケイ素粉末を含有するチャンバ内に通過させるステップと、
チャンバを第1の温度に加熱して、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解するステップであり、炭化水素からの炭素が、ケイ素粉末上に炭素の被覆を提供するステップと、
ケイ素:炭素の所望のモル比に達した場合に炭化水素の通過を停止するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
炭素被覆ケイ素粒子及びポリマーを含むスラリーを調製するステップと、
チャンバを加圧して、スラリーをチャンバ内の炭化ケイ素繊維に浸透させるステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チャンバを第2の温度に加熱して、ケイ素粒子を溶融させるステップであり、溶融したケイ素粒子が炭素と反応して炭化ケイ素を形成し、形成された炭化ケイ素及び炭化ケイ素繊維がセラミック基複合材を形成するステップ
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
加圧の前に、炭化ケイ素繊維を予備形成された形状に配設するステップであり、この形状が、チャンバ内に配置されているステップ
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
停止後、チャンバを1100℃に加熱して、ケイ素粉末及び炭素を炭化ケイ素に転化させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
炭化水素が、メタン(CH
4)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素が、ディーゼル、ガソリン、JP8、灯油、天然ガス、プロパン、エタン、ブタン、又は別の炭化水素ガスである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
炭化ケイ素を製造するための装置であって、
中空内部を含むように構成されたチャンバであり、ケイ素粒子がこの中空内部にあるチャンバと、
水素及び炭素に分解され得る第1の流体を含む、気体及び/又は液体を含む選択された流体をチャンバ内に制御可能に供給するように、チャンバに連結された流体供給システムと、
チャンバの内部の温度を制御可能に決定するように、チャンバに連結された加熱システムと、
チャンバ内への選択された流体の供給を制御するように、流体供給システムに連結された制御システムであり、流体供給システムを制御して、第1の流体をチャンバに通過させ、それによって第1の流体を生成された水素ガス及び炭素に分解させ、ケイ素粒子上に堆積させて炭素被覆ケイ素粒子を生成する制御システムと
を含む、装置。
【請求項17】
チャンバの内部の温度を感知するための1つ以上の温度センサをさらに含み、
流体供給システムが、
第1の流体の流れを制御するバルブを含み、
制御システムが、実行可能な命令を含むプロセッサ及びメモリを含み、実行可能な命令が、バルブを含む流体供給システム及び加熱システムを少なくとも制御して、炭素被覆ケイ素粒子を生成するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第1の流体がメタンであり、チャンバからの熱が、メタンを炭素及び水素ガスに分解させる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
第1の流体が、ディーゼル、ガソリン、JP8、灯油、天然ガス、プロパン、エタン、ブタン、又は別の炭化水素ガスである、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許文書は、米国特許商標庁に2020年9月11日に出願された米国特許出願第17/018,921号の利益及び優先権を主張する。前述の特許出願の全内容は、本出願の開示の一部として参照により組み込まれる。
【0002】
本特許文書は、様々な用途のための炭化ケイ素及びセラミック基複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素は、自動車用クラッチ、セラミック板、防弾チョッキ、発光ダイオード、半導体検出器、核燃料被覆(nuclear cladding)、及び他の多くの用途を含む多種多様な用途で使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化ケイ素の様々な既存の製造方法は、遅い過程である傾向があり、場合によっては炭化ケイ素物品を製造するのに1000時間超を要する。炭化ケイ素を産業、科学、及び軍事的使用により実用的な材料にするために、炭化ケイ素及びセラミック基複合材をより迅速に製造するための新しい技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本特許文書は、炭化水素から炭化ケイ素及びセラミック基複合材を製造するための技術及び方法を開示している。
【0006】
一態様では、セラミック基複合材を製造する方法が提供され、この方法は、炭化ケイ素プリフォームをチャンバ内に配置するステップと、真空を使用してチャンバを排気して、チャンバ内にケイ素粒子及びポリマーのスラリー混合物を導入して、炭化ケイ素プリフォームに接触させるステップと、チャンバを加圧して、ケイ素粒子及びポリマースラリーを炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間に浸透させるステップと、チャンバを第1の高温に加熱して、ポリマーを炭素及び水素ガスに熱分解して、炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間のケイ素粒子を高密度化するステップと、炭化水素をチャンバ内に通過させるステップであり、加熱されたチャンバが、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解させ、熱分解されたポリマーからの炭素及び熱分解された炭化水素からの炭素を、炭化ケイ素プリフォームの炭化ケイ素繊維間のケイ素粒子上に被覆させるステップと、ケイ素:炭素の所望のモル比に達した場合に炭化水素の通過を停止するステップと、チャンバを第2のさらなる高温に加熱して、ケイ素粒子を溶融させ、炭素と反応させて炭化ケイ素を形成して、形成された炭化ケイ素及び炭化ケイ素繊維がSiCセラミック基複合材を形成するステップとを含む。
【0007】
別の態様では、炭化ケイ素複合材のための炭素被覆ケイ素粒子を生成する方法が開示されている。この方法は、炭化水素を、ケイ素粉末を含有するチャンバ内に通過させるステップと、チャンバを第1の温度に加熱して、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解するステップであり、炭化水素からの炭素が、ケイ素粉末上に炭素の被覆を提供するステップと、ケイ素:炭素のモル比が1:1に達した場合に炭化水素の通過を停止するステップとを含む。
【0008】
別の態様では、炭化ケイ素を製造するための装置が開示される。この装置は、中空内部を含むように構成されたチャンバであり、ケイ素粒子が中空内部にあるチャンバを含む。この装置は、水素及び炭素に分解され得る第1の流体を含む、気体及び/又は液体を含む選択された流体をチャンバ内に制御可能に供給するように、チャンバに連結された流体供給システムをさらに含む。この装置は、チャンバの内部の温度を制御可能に決定するように、チャンバに連結された加熱システムを含む。この装置は、チャンバ内への選択された流体の供給を制御するように、流体供給システムに連結された制御システムをさらに含み、この制御システムは流体供給システムを制御して、第1の流体をチャンバに通過させ、それによって第1の流体を生成された水素ガス及び炭素に分解させ、これをケイ素粒子上に堆積させて炭素被覆ケイ素粒子を生成する。
【0009】
上記及び他の態様並びにそれらの実施は、図面、明細書及び特許請求の範囲においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】いくつかの例示的実施形態による、ケイ素(Si)粉末を炭化ケイ素(SiC)粉末に転化する方法を示す図である。
【
図1B】メタン(CH
4)を1000℃で1時間流した後、元素のSiが存在し、SiCが存在しないこと、及び1100℃でさらに3時間加熱した後、SiCが存在し、元素のSiが存在しないことを示すX線回折測定の例を示すグラフである。
【
図2A】いくつかの例示的実施形態による、別の方法を示す図である。
【
図2B】いくつかの例示的実施形態による、SiC複合材を製造する方法を示す図である。
【
図2C】いくつかの例示的実施形態による、Si/SiC複合材を予備形成及び高密度化する方法を示す図である。
【
図2D】いくつかの例示的実施形態による、Si/SiC複合材を予備形成及び高密度化する別の方法を示す図である。
【
図3】様々な出口ガスの温度の関数としての、残留ガス分析器からのイオン電流の例示的プロットを示すグラフである。
【
図4】1100℃で3時間後のケイ素、炭素、及び炭化ケイ素を示す材料のX線回折プロットの一例を示す図である。
【
図5】いくつかの例示的実施形態による、セラミック基複合材を製造する方法を示す図である。
【
図6】いくつかの例示的実施形態による、炭素被覆ケイ素粒子を生成する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
炭化ケイ素(SiC)を製造するための技術及び方法が開示される。
【0012】
図1Aは、いくつかの例示的実施形態による、ケイ素(Si)粉末粒子120をSiC粉末粒子140に転化する方法100の一例を示す。
図1Aでは、Si粉末は高温でメタン(CH
4)に曝され、分解されたメタンからの炭素をSi粉末粒子表面に、例えば約1000℃で被覆させる。ケイ素粉末は、例えば、100ナノメートル(nm)未満から数ミクロンまでの範囲を含む様々な範囲の粒子サイズを有し得る。炭化水素材料110、例えばCH
4は、Si粉末粒子130を含有するチャンバ又は炉に高温で流れるように導かれて、炭化水素材料110を炭素及び水素に分解させ、その結果、Si粉末粒子130が炭素及び水素に曝される。チャンバ又は炉内の高温は、炭化水素材料110を分解し、Si粉末粒子130上に炭素被覆を生じさせるように設定されるが(例えば1000℃)、被覆されたC及びSi粉末粒子130のSiCへの顕著な転化が起こるほど十分に高くは設定されない。この方法は、CをSi粉末中に浸透させ、Si粉末粒子130の表面に被覆させるのに十分な長い期間(例えば、約1時間)にわたって起こるように制御することができる。炭素被覆が十分になると、CH
4の流れが終了し、不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)がチャンバ又は炉に導かれ、チャンバ又は炉の温度が1000℃超の第2のさらなる高温、例えば1100℃に上昇して、被覆された炭素をSi粉末粒子130のSiと反応させる。この転化方法は、十分に長い時間、例えば3時間に設定することができ、この方法は、炭素被覆Siをβ-SiC140に転化する。150では、上記の被覆及び転化方法前のSi粉末の一例の写真が示され、160では、転化されたSiC粉末の一例の写真が示されている。
【0013】
図1Bは、170で、CH
4を1000℃で1時間Si粉末に流した後、チャンバ内に元素のSiのみが存在し、顕著なSiCは検出されなかったことを示すX線回折測定の例を示す。
図1Bはさらに、180で、CH
4流の終了後、Arガス中で、1100℃でさらに3時間加熱した後、チャンバ内に元素のSiが顕著に存在することなく、SiCがチャンバ内に存在したことを示す。
【0014】
上記の方法は、
図1Aの方法に基づいてSiCを生成するために様々なSiC構造体を使用して実施することができる。
図2Aから2Dは、いくつかの例を示す。
【0015】
図2Aは、いくつかの例示的実施形態による、Si粉末を使用してSiをSiCに転化する方法の一例を示す。
図2Aでは、Si粉末210は、Si粉末表面をメタン(CH
4)の熱分解(分解ともいう)からのC227で、1000℃で被覆されている。また、水素ガス(H
2)225がCH
4の分解で生成されている。ケイ素粉末210は、25ミクロン未満の粒子サイズを有することができる。いくつかの実施では、ケイ素粒子は、サイズが100ナノメートル(nm)未満であってもよい。他のいくつかの実施では、ケイ素及びポリマースラリー中のケイ素粒子は、20ナノメートル(nm)から25ミクロンの間のサイズを有するように構成され得る。次いで、C被覆Si215をSiの融点である1414℃に加熱してSiを溶融させる。溶融したSiは、C被覆と反応してSiCを形成して、分離されたSiC粒子の代わりにSiC220の凝集体を生成する。前述のSiCの生成は、次式で表すことができる。
Si
(l)+C
(S)→SiC
(s) 式1。
【0016】
図2Bは、
図2Aの方法を使用することによるいくつかの例示的実施形態による、SiC繊維230のアレイ、マトリックス又は束の間の隙間に充填されたSi粉末粒子210を使用することによって、SiC複合材を製造する方法の一例を示す。240で、Si粉末210は、SiC繊維230の間の空間に充填されて、プリフォームを生成する。SiC繊維230は、転化後の最終的なSiC材料又は構造体のプリフォームとして様々な構成で配設することができる。例えば、SiC繊維230は、SiC繊維230の層として配設してもよく、Si粉末を層間に充填し、所定の形状を保持した型又は他の構造体にプレスして、Si粉末粒子が炉内でSiC繊維と接触するようにできる。250では、Si被覆方法は、炉を約1000℃に加熱しながら、CH
4をSi粉末粒子及びSiC繊維中に流れさせて、CH
4をC及びH
2に分解し、Si粉末粒子の表面をC215で被覆することにより実施する。CH
4の流れは、SiとCの間の所望の比、例えば1:1のSi:Cの比を生成するように制御される。1000℃では、SiCはSi粉末及びC被覆から顕著に形成されない。260では、C被覆Si及びSiC繊維を、1000℃超のより高温に加熱して、Si及びCをSiCに転化させ、SiC粒子を、例えばSiの融点である1414℃で固結させる。C被覆は、式1によって示されるように、溶融したSiと反応してSiCを生成する。この転化方法は、SiC繊維間のC被覆Si粉末粒子をSiCに転化するのに十分長い期間(例えば、数時間)維持され、転化されたSiCは、SiC繊維と融合してSiCセラミック基複合材(CMC)を形成する。
【0017】
図2Cは、
図1Aの方法に基づくいくつかの例示的実施形態による、Si/SiC複合材を予備形成及び高密度化する一例示的方法を示す。
【0018】
252で、炭化ケイ素繊維230及びケイ素粉末粒子210のプリフォームは、真空213を、バルブ271を介してチャンバ212に接続し、次いでバルブ271を閉じることによってチャンバ212から空気を抜き出すことによって形成される。チャンバ212の排気により、Si及びポリマースラリー270は、チャンバ212に引き込まれる。ポリマースラリー中のポリマーの例としては、以下が挙げられる。1)残留物を生成せずに、高温で気体に分解することができるQPAC40、すなわちポリ(プロピレンカーボネート)。QPAC40は、炭素がポリマーではなくCH4の熱分解に由来するため、炭素被覆の量を容易に制御できる。例えば、QPAC40(本特許文書に参照により組み込まれる、https://empowermaterials.com/wp-content/uploads/2014/11/QPAC-40-Technical-Data-Sheet.pdf)を参照されたい。2)高温で分解してケイ素表面を被覆する炭素を生成するPVA、すなわちポリ(ビニルアルコール)であり、これは、CH4由来の炭素をより少ない量でしか要しないので、処理時間を短縮する。次に、加圧された不活性ガス211は、チャンバ212に導かれて、Si粉末及びスラリーをSiC繊維に押し込み、Si/SiCを乾燥させてプリフォームを生成する。
【0019】
254では、チャンバ212は約1000℃に加熱されて、ポリマーのガス及び炭素への熱分解を引き起こす。CH4 275又は別の炭化水素は、バルブ273を開くことによって添加され得、1000℃に加熱された場合C及びH2に分解する。ポリマーの熱分解及び炭化水素の分解は、Si粒子を被覆するCを提供する。炭化水素の流れは、Si:C比が1:1に達すると停止し得る。
【0020】
256では、チャンバ212を1414℃以上の温度に加熱することにより、Si/SiCを高密度化する。プリフォームは、機械的手段によって、又は予備形成ステップなどで高圧ガスによって共にさらにプレスされてもよい。C被覆Si215中のSiは、溶融し、Cと反応してSiCを形成し、このSiCはSiC繊維230に付着してCMCを形成する。
【0021】
図2Dは、いくつかの例示的実施形態による、SiC複合材を予備形成及び高密度化する別の方法を示す。
【0022】
282では、Si粉末を含有するチャンバ285が、約1000℃に加熱される。CH4 275又は別の炭化水素は、バルブ273を開くことによって添加される。例えば、CH4 275を添加してもよく、CH4 275は、1000℃の温度でC及びH2に分解する。炭化水素の分解は、Si粒子を被覆してC被覆Si粒子215を生成するCを提供する。炭化水素の流れは、Si:C比が1:1に達すると停止し得る。また、C被覆Si215を生成する他の方法を使用することができる。
【0023】
286では、282で生成されたC被覆Si粉末215をポリマーに添加して、スラリー290を作製する。スラリー290は、1)真空213を、バルブ271を介してチャンバ285に接続し、次いでバルブ271を閉じることによってチャンバ285に真空を引き、2)チャンバ285の排気により、スラリー290がチャンバ285に引き込まれ、3)加圧された不活性ガス211をチャンバ285に接続して、Si粉末及びスラリーを繊維内に押し込み、4)Si/SiC複合材を乾燥させてプリフォームを生成することによって、炭化ケイ素繊維230で予備形成される。
【0024】
288では、チャンバ285を1414℃以上の温度に加熱することにより、Si/SiC複合材を高密度化する。プリフォームは、機械的手段によって、又は高圧ガスによって共にさらにプレスされてもよい。スラリー290中のポリマーは、C及びH2に分解する。C被覆Si215中のSiは、溶融し、被覆及びポリマーの分解からのCと反応して、SiCを形成し、このSiCはSiC繊維230に付着してCMCを形成する。
【0025】
図3は、様々な出口ガスの温度の関数としての、残留ガス分析器からのイオン電流の例示的プロットを示す。
図3は、CH
4 310が1000℃超できれいに分解して炭素及び水素305を形成し、且つ1000℃未満で分解するメタンはほとんどないことを示す。炭素はケイ素表面を優先的に被覆し、試料表面を含む系をきれいに保ち、且つチャンバ212/285をきれいに保つ。メタンは試料内を流れ、チャンバ内にSi粉末の均一な炭素被覆を生じさせる。また、300では、低い割合のC
2H
2 315、C
2H
6 320、及びC
3H
6 325を含む他の出口ガスが示されている。
【0026】
本開示の技術及び方法を使用して、従来の化学蒸気浸透(CVI)処理技術を使用する実行可能な最大厚さよりも厚い部品及び構成要素を製造することができる。本開示の技術は、例えば、小分子であるCH4などの炭化水素を使用して、CH4、したがってCが、構造体の内部深くまで浸透することを可能にし、より厚い部品の製造を容易にする。CH4は小孔に浸透し、CH4の流れを停止させない。CH4の別の利点は、Cが所望されるSi表面でのみ分解し、他の場所では分解しないことである。ケイ素が薄い炭素被覆を有すると、C被覆の速度は遅くなる。すでに被覆されたSi表面にCを添加するのではなく、CH4が分解し、したがってCは別の裸のケイ素表面に堆積する。
【0027】
CH4は、炭素及び水素に分解する。H2は、CH4よりもさらに小さい分子であるため、H2はCH4よりもさらに高い移動度を有する。したがって、H2はケイ素複合部品から迅速に流出するため、分解によって部品内部で圧力が高まることはない。
【0028】
現在、SiC CMC製造に使用される方法には、化学蒸気浸透(CVI)、ケイ素溶融浸透(MI)、ポリマー浸透方法(PIP)が含まれる。前述の方法の各々は、本開示の技術と比較して不利益を有する。例えば、CVIは、最大1000時間の処理時間を有するが、本開示の技術では10時間以下しか要しない。CVIは、約1~2mmの厚さの部品を製造するためのみに使用できるが、本開示の技術では、約1cmの厚さ(又はそれ以上)の部品を製造することができる。本開示の技術は、CVIを使用して製造された部品よりも、製造された部品の密度においてより良好な均一性を有する。また、CVIはHClガスを生成するが、本開示の技術では生成しない。溶融ケイ素が炭素プリフォームと反応する従来のMIは、1414℃でも残留した未反応のSiを残す傾向があるが、本開示の技術は、すべてのSiの反応を可能にする。PIPは体積密度が低く、非晶質SiCを避けるために多くの熱サイクル及び長い高温熱処理が必要である。
【0029】
SiC複合材を製造する際の課題の1つは、完成部品の密度を制限するSiCへの転化中の収縮により、完成部品の密度が所望の密度よりも低くなる可能性があることである。SiCは3.1g/ccの密度を有し、これは2.35g/ccの密度を有するSi及び2.4g/ccの密度を有するCよりも高い。SiC製品の密度の増加は、SiC形成後の体積を成分Si及びCの体積の約76%に収縮させる。典型的な33%の繊維体積の場合、全体的な複合材の体積密度は約84%になる。
【0030】
本開示の技術は、90%超の密度を有するより高密度な複合材を可能にする。ケイ素を溶融する場合に、プレートでプレスするなどのプレス可能な部品を設計することで、ほぼ100%固体の部品になる。SiC粉末をSi粉末に混合すると、SiC体積の初期割合が増加し、完成部品の密度が増加する。また、SiC繊維を使用すると、完成部品の密度が増加する。後のサイクルにおいて、より小さなSi粒子サイズを有するSi粉末を用いて、複数のサイクルを実施することができる。また、MTS CVI又はポリマー浸透熱分解は、さらに高密度化するために最初のサイクルの後に場合によっては使用され得る。
【0031】
図4は、1100℃で3時間加熱後のケイ素、炭素、及び炭化ケイ素を示す材料のX線回折プロットの一例を示す。いくつかの例示的実施形態では、Si粉末は、Cで予備被覆されていてもよい。1100℃で、SiはCで迅速に被覆され、炭化水素、例えば、CH
4が存在する場合、SiCは形成されない。例えば、被覆は、2:1のC:Si質量比(又は5:1のモル比)を使用して、CH
4を用いて3時間の被覆時間で生じる。いくつかの例示的実施形態では、30分後に1:1のSi:C比を達成することができる。予備被覆されたSiは、次いで様々な方法で使用され、SiCに転化できる。例えば、炭素被覆粉末は、プリフォームに充填することができる。次いで、1414℃以上の温度に加熱することにより、Siは溶融し、SiC又はCMCに転化する。他のガスは必要ではない。前述の方法は、プレス可能な部品に対して特に良好である。
【0032】
本開示の技術及び方法は、副生成物として腐食性ガス、例えば、MTSガス及び/又はHClを生成しないため、本開示の技術は、繊維、例えば、SiCをマトリックスとする金属又はセラミック繊維を使用して他の炭化物複合材を製造するために使用できる。この技術は、金属と炭素の間で適切な反応条件が満たされる場合に、他の炭化物マトリックス材料に使用することができる。例えば、ケイ素粒子を使用する代わりに、ジルコニウム金属粉末を使用して炭化ジルコニウムマトリックスを形成してもよい。
【0033】
図5は、いくつかの例示的実施形態による、セラミック基複合材を製造する方法を示す。510で、この方法は、炭化ケイ素繊維を使用して形状を予備形成するステップを含む。例えば、この形状は、システム又は装置のための機械的又は構造的な部品であってもよい。予備形成された部品は、チャンバ内に配置されている。520で、この方法は、真空を使用してチャンバを排気するステップを含む。チャンバから圧力を除去することにより、ケイ素及びポリマーを含むスラリーがチャンバ内に引き込まれる。530で、この方法は、チャンバを加圧して、ケイ素及びポリマースラリーを炭化ケイ素繊維に浸透させるステップを含む。540で、この方法は、チャンバを第1の温度に加熱して、ポリマーを炭素及び水素ガスに熱分解するステップを含む。例えば、第1の温度は、約1000℃であってもよい。550で、この方法は、炭化水素をチャンバ内に通過させるステップを含む。加熱されたチャンバは、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解させる。熱分解されたポリマーからの炭素及び熱分解された炭化水素からの炭素は、炭素の層によってスラリーからのケイ素を被覆する。560で、この方法は、ケイ素と炭素とのモル比が1:1に達した場合に、炭化水素の通過を停止するステップを含む。570で、この方法は、チャンバを第2の温度に加熱して、ケイ素を溶融させるステップを含む。例えば、第2の温度は、ケイ素の融点である約1414℃であってもよい。溶融したケイ素は、炭素と反応して炭化ケイ素を形成し、形成された炭化ケイ素及び炭化ケイ素繊維は、セラミック基複合材を形成する。
【0034】
図6は、いくつかの例示的実施形態による、炭素被覆ケイ素粒子を生成する方法を示す。610で、この方法は、炭化水素を、ケイ素粉末を含有するチャンバ内に通過させるステップを含む。620で、この方法は、チャンバを第1の温度に加熱して、炭化水素を炭素及び水素ガスに熱分解するステップであり、炭化水素からの炭素が、ケイ素粉末上に炭素の被覆を提供するステップを含む。630で、この方法は、ケイ素:炭素のモル比が1:1に達した場合に、炭化水素の通過を停止するステップを含む。
【0035】
本特許文書は、多くの詳細を含むが、これらは、任意の発明の範囲又は請求され得るものの範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態との関連で本特許文書に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の実施形態との関連で記載されている様々な特徴を、複数の実施形態において別々に、又は任意の好適な部分的組合せで実施することもできる。さらに、特徴は特定の組合せで作用するものとして上記で説明され得、最初にそのように請求されることもあるが、請求された組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては組合せから削除することができ、請求された組合せは、部分的組合せ又は部分的組合せの変形を対象としてもよい。
【0036】
同様に、作用は図面中に特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような作用が示された特定の順序で、若しくは逐次的に実施されること、又は図示されたすべての作用が実施されることを要求するものとして理解されるべきではない。さらに、本特許文書に記載の実施形態における様々な成分の分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではない。
【0037】
少数の実施及び例のみが記載されているに過ぎず、他の実施の改良及び変形は、本特許文書に記載及び図示されているものに基づいて行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
110:炭化水素材料,120:ケイ素(Si)粉末粒子,130:Si粉末粒子,140:β-SiC,150:転化方法前のSi粉末,160:転化されたSiC粉末
【国際調査報告】