(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】多環芳香族基を有する添加剤を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20230920BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230920BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/013
H01B1/24 A
H01B1/24 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515746
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 US2021050170
(87)【国際公開番号】W WO2022060692
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マカロー, リン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブズオウェイ, ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, デイビッド ダレル
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ, クレイグ エー.
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA021
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC021
4J002BD051
4J002BE021
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG071
4J002CD001
4J002CF001
4J002CF061
4J002CG001
4J002CK021
4J002CL001
4J002CP031
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002FD116
4J002GQ02
5G301DA18
5G301DA42
5G301DA48
5G301DD01
5G301DD08
(57)【要約】
充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、多環芳香族基を含む添加剤とを含む分散組成物。分散組成物は、装置の電極、導電層、密封層、ポリマー部品および接着フィルムとして用いられるポリマーフィルムを作製するために使用され得る。別の局面において、本発明は、上記分散組成物の硬化によって形成されるポリマーフィルムを提供する。ポリマーフィルムは、導電性フィルム、バリアフィルム、電極、密封層、カプセル封入された電気光学媒体層用結合剤、端部シールまたは接着層であり得る。別の局面において、本発明は、上記分散組成物を硬化させることによって形成されるポリマー部品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散組成物であって、
粒子を含む充填剤と;
重合性モノマーまたはオリゴマーと;
式I
R1-(CH
2)
n-Y-Z
式I
[式中
R1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、前記芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり;
Yは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり、Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
Zは、反応性官能基を含む基であり、前記反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択され、前記反応性官能基は、前記重合性モノマーまたはオリゴマーの重合反応に関与することができる]
によって表される添加剤と;
を含む、分散組成物。
【請求項2】
Yが-O-C(O)-または-O-C(O)-NH-であり、Zがアクリラート メタクリラート、スチレンまたはメチルスチレンを含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
前記充填剤(filer)が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、カーボンブラックおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項4】
前記充填剤が導電性である、請求項1に記載の分散物。
【請求項5】
水性キャリア、非水性キャリアおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される液体キャリアをさらに含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項6】
前記多環芳香族基R1が、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フェナレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、キサンテン、チオキサンテン、ベンゾ[c]フルオレン、ベンゾ[a]アントラセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]アセフェナントリレン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ペリレン、コロネン、コランヌレン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、インデノ[1,2,2-c,d]ピレンおよびポルフィリンからなる群から選択される芳香族系を含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項7】
前記添加剤の前記多環芳香族基R1の置換基が、1-(アクリロイルオキシ)メチル、1-(メタクリロイルオキシ)メチル、2-(アクリロイルオキシ)エチル、2-(メタクリロイルオキシ)エチル、3-(アクリロイルオキシ)プロピル、3-(メタクリロイルオキシ)プロピル、4-(アクリロイルオキシ)ブチルおよび4-(メタクリロイルオキシ)ブチルからなる群から選択される、請求項2に記載の分散物。
【請求項8】
前記多環芳香族基R1が、前記添加剤の芳香環に直接結合した別の置換基R8をさらに含み、前記R8は、アルキル基、ハロゲン置換されたアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニルおよびハロゲンからなる群から選択され、前記アルキル、前記ハロゲン置換されたアルキル、前記ヒドロキシアルキルおよび前記アルケニル基は1~8個の炭素原子を含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項9】
前記重合性モノマーまたはオリゴマーが、アクリラート、メタクリラート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ビニルアクリラート、ビニルメタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシド、イソシアナート、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シラン、アルコール、チオール、アミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項10】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の分散組成物を硬化させることによって形成されたポリマーフィルム。
【請求項12】
前記ポリマーフィルムが、導電性フィルム、バリアフィルム、電極、密封層、端部シールまたは接着層である、請求項11に記載のポリマーフィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の分散組成物を硬化させることによって形成されたポリマー部品。
【請求項14】
電気光学装置であって、
第1の電極層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
複数の画素電極を含む第2の電極層と;
を備え、
前記電気光学材料層は、前記第1および第2の電極層の間に配置されており;前記第1の接着層は、請求項4に記載の分散組成物により形成されている、電気光学装置。
【請求項15】
前記第1の接着層が、前記電気光学材料層と前記第1の電極層の間に配置されている、請求項14に記載の電気光学装置。
【請求項16】
前記第1の接着層が、前記電気光学材料層と前記第2の電極層の間に配置されている、請求項14に記載の電気光学装置。
【請求項17】
前記導電性充填剤の粒子が、前記接着層内において、前記第1の接着層の面に垂直なz方向に整列されており、前記接着層が、前記第1の接着層のxおよびy方向の導電率と比較して前記第1の接着層の前記z方向により高い導電率を有する異方性導電率を示し、xおよびy方向は前記z方向に直交する、請求項16に記載の電気光学装置。
【請求項18】
ポリマーフィルムを製造する方法であって、
(a)カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンおよびカーボンブラックからなる群から選択される充填剤と;(b)重合性モノマーまたはオリゴマーと;(c)式I
R1-(CH
2)
n-Y-Z 式I
[式中、R1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、前記芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり;Yは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり;Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびにZは、反応性官能基を含む基であり、前記反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される]
によって表される添加剤とを含む組成物を混合する工程と;
前記組成物を湿潤フィルムとして基材上に塗布する工程と;
前記重合性モノマーまたはオリゴマーを前記添加剤とともに重合させるために、前記塗布された組成物を硬化させる工程と;
を含む、方法。
【請求項19】
前記硬化工程より前に、前記塗布された湿潤フィルムの面に垂直なz方向に前記湿潤フィルム中の充填剤粒子を整列させるために、前記湿潤フィルムにわたって電界が印加される、請求項18に記載のポリマーフィルムを製造する方法。
【請求項20】
前記硬化が、熱的にまたは紫外光への曝露を介して行われる、請求項18に記載のポリマーフィルムを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、本明細書に開示されるすべての他の特許および特許出願と共に、その全体が参照により組み入れられる2020年9月15日に出願された米国仮特許出願第63/078,476号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、多環芳香族基を有する添加剤とを含む分散組成物に関する。本発明はまた、分散組成物を使用して調製することができるポリマーフィルムまたはポリマー部品、およびポリマーフィルムまたはポリマー部品を製造する方法に関する。ポリマーフィルムは、装置または物品の電極、導電層、接着層、カプセル封入された電気光学媒体層用結合剤、密封層、端部シールおよびバリアフィルムとして使用することができる。ポリマーフィルムは、異方性導電率を有し得る。ポリマー部品は、ポリマー部品を備える任意の製品、例えば、有色のプラスチック固体部品を備える製品に使用することができる。
【0003】
「電気光学」という用語は、材料または機器またはディスプレイまたは組立品に適用される場合、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で本明細書において使用され、前記材料は、前記材料への電界の印加によってその第1の表示状態から第2の表示状態に変化する。光学特性は、典型的には人間の目に知覚可能な色であるが、光の透過、反射率、発光、または機械読み取りを目的としたディスプレイの場合には、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化という意味での擬似カラーなどの別の光学特性であり得る。「電気光学機器」 および「電気光学ディスプレイ」という用語は、本明細書では同義と見なされる。本明細書で使用される「電気光学組立品」という用語は、電気光学機器であり得る。電気光学組立品は、電気光学機器の構築のために使用される多層構成要素でもあり得る。したがって、例えば、後述するフロントプレーン積層体(front plane laminate)も電気光学組立品と見なされる。
【0004】
「灰色状態」という用語は、本明細書では、画素の2つの極端な表示状態の中間状態を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で使用され、これらの2つの極端な状態の間での黒白遷移を必ずしも含意しない。例えば、以下に言及されるE Ink特許および公開された出願のいくつかは、極端な状態が白色および藍色である電気泳動ディスプレイを記載しているので、中間の「灰色状態」は実際には淡青色である。実際、既に述べたように、表示状態の変化は、全くもって色の変化ではない場合がある。「黒」および「白」という用語は、ディスプレイの2つの極端な表示状態を指すために以下で使用され得、厳密には黒と白ではない極端な表示状態、例えば前述の白および藍色の状態を通常含むものとして理解されるべきである。「モノクローム」という用語は、以下では、介在する灰色状態なしに画素をそれらの2つの極端な表示状態のみに動作させる動作スキームを表すために使用され得る。
【0005】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外面を有するという意味で固体であるが、材料は、液体または気体で満たされた内部空間を有してもよく、有していることが多い。固体の電気光学材料を用いたこのようなディスプレイを、以下では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と呼ぶ場合がある。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という用語には、回転二色性部材ディスプレイ、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイおよびカプセルに封入された液晶ディスプレイが含まれる。
【0006】
「双安定」および「双安定性」という用語は、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示素子を備えるディスプレイであって、有限な持続時間のアドレス指定パルスによって、任意の所与の素子を、その第1または第2の表示状態のいずれかをとるように動作させた後、アドレス指定パルスが終了した後に、前記表示素子の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍、その状態が持続するようなディスプレイを指すために当技術分野におけるそれらの通常の意味で本明細書において使用される。米国特許第7,170,670号では、灰色スケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極端な黒色状態および白色状態だけでなく、それらの中間の灰色状態においても安定であり、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイについても同じことが該当することが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、双安定ディスプレイと多安定ディスプレイの両方を包含するために、便宜上、本明細書では「双安定」という用語が使用され得る。
【0007】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが公知である。電気光学ディスプレイの1つのタイプは、例えば、米国特許第5,808,783号;同第5,777,782号;同第5,760,761号;同第6,054,071 同第6,055,091号;同第6,097,531号;同第6,128,124号;同第6,137,467号;および同第6,147,791号に記載されているような回転二色性部材タイプである。このタイプのディスプレイは「回転二色性ボール」ディスプレイと呼ばれることが多いが、上記特許のいくつかでは回転部材が球形ではないので、「回転二色性部材」という用語がより正確なものとして好ましい。このようなディスプレイは、異なる光学的特徴を有する2またはそれを超える部分を有する多数の小物体(典型的には、球形または円筒形)と、内部双極子とを使用する。これらの物体は、マトリックス内の液体で満たされた液胞内に懸濁され、液胞は、物体が自由に回転するように液体で満たされている。ディスプレイに電界を印加し、それによって物体を様々な位置に回転させ、物体のどの部分が画面を通じて見られるかを変動させることによって、ディスプレイの外観が変化する。このタイプの電気光学媒体は、典型的には双安定である。
【0008】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、半導電性金属酸化物から少なくとも部分的に形成された電極と、電極に取り付けられた可逆的色変化が可能な複数の色素分子とを含むナノクロミックフィルムの形態のエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737;およびWood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)を参照のこと。Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、同第6,870,657号および同第6,950,220号にも記載されている。このタイプの媒体も、典型的には双安定である。
【0009】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)に記載されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号には、このようなエレクトロウェッティングディスプレイを双安定にすることができることが示されている。
【0010】
長年にわたり鋭意研究開発されてきた電気光学ディスプレイの1つのタイプは、複数の荷電粒子が電界の影響下で流体を通じて移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較すると、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定性ならびに低消費電力という属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画質に伴う問題が、これらのディスプレイの広範な使用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈降する傾向があり、その結果、これらのディスプレイの耐用年数は不十分になる。
【0011】
上記のように、電気泳動媒体は流体の存在を必要とする。ほとんどの先行技術の電気泳動媒体では、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は気体流体を使用して製造することができる。例えば、Kitamura,T.ら、‘‘Electrical toner movement for electronic paper-like display’’,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1およびYamaguchi,Y.ら、‘‘Toner display using insulative particles charged triboelectrically’’,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4)を参照されたい。米国特許第7,321,459号および同第7,236,291号も参照されたい。このような気体をベースとする電気泳動媒体は、媒体がそのような沈降を許容する配向で、例えば媒体が垂直面に配置される標識において使用される場合に、液体をベースとする電気泳動媒体と同じ種類の粒子沈降に起因する問題を受けやすいようである。実際、液体懸濁流体と比べて気体懸濁流体の粘度がより低いことによって、電気泳動粒子のより迅速な沈降が可能になるので、粒子沈降は、液体ベースの電気泳動媒体より気体ベースの電気泳動媒体においてより深刻な問題であるようである。
【0012】
マサチューセッツ工科大学(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLCおよび関連企業に譲渡されたまたはそれらの名義での多数の特許および出願は、カプセルに封入されたマイクロセル電気泳動媒体およびその他の電気光学媒体において使用される様々な技術を記載している。カプセルに封入された電気泳動媒体は、多数の小さなカプセルを含み、その各々自体は、流体媒体中に電気泳動的に移動可能な粒子を含有する内相と、内相を取り囲むカプセル壁とを含む。典型的には、カプセル自体がポリマー結合剤内に保持されて、2つの電極間に配置されたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体はマイクロカプセル内に封入されず、代わりにキャリア媒体、典型的にはポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。以下、「マイクロキャビティ電気泳動ディスプレイ」という用語は、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイとマイクロセル電気泳動ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。これらの特許および出願に記載されている技術には、以下のものが含まれる。
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤;例えば、米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照されたい。
(b)カプセル、結合剤およびカプセル化の方法;例えば、米国特許第6,922,276号、同第7,184,197号および同第7,411,719号を参照されたい。
(c)マイクロセル構造体、壁材料およびマイクロセルを形成する方法;例えば、米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照されたい。
(d)マイクロセルを充填し、密封するための方法;例えば、米国特許第7,144,942号および同第7,715,088号を参照されたい。
(e)電気光学材料を含有するフィルムおよびサブアセンブリ;例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照されたい。
(f)ディスプレイにおいて使用されるバックプレーン、接着層およびその他の補助層および方法;例えば、米国特許第7,116,318号 同第7,535,624号、同第7,012,735号および同第7,173,752号を参照されたい。
(g)色形成および色調整;例えば、米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照されたい。
(h)ディスプレイを動作させるための方法;例えば、米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照されたい。
(i)ディスプレイの用途;例えば、米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照されたい。
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されているような非電気泳動ディスプレイ;ディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の用途;例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号を参照されたい。
【0013】
前述の特許および出願の多くは、カプセルに封入された電気泳動媒体中の離散した(discrete)マイクロカプセルを取り囲む壁は連続相によって置き換えることができ、したがっていわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを製造できることを認識している。このようなディスプレイでは、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の離散した液滴と、ポリマー材料の連続相とを含む。このようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散した液滴は、離散したカプセル膜がそれぞれの各液滴に付随していなくても、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得る。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。したがって、本出願において、このようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセルに封入された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0014】
電気泳動媒体は、(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するので)しばしば、不透明であり、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つの表示状態が実質的に不透明であり、1つが光透過性である、いわゆる「シャッターモード」で動作するようにすることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、同第6,130,774号、同第6,144,361号、同第6,172,798号、同第6,271,823号、同第6,225,971号および同第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電界強度の変動に依存し、類似のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッターモードで動作することが可能であり得る。シャッターモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイ用の多層構造において有用であり得、このような構造では、画面からより遠い第2の層を露出するまたは隠すために、ディスプレイの画面に隣接する少なくとも1つの層はシャッターモードで動作する。
【0015】
カプセルに封入された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来の電気泳動機器のクラスタリングおよび沈降故障モードに悩まされず、多種多様な柔軟かつ堅固な基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力などのさらなる利点を提供する。「印刷」という用語の使用は、パッチダイ(patch die)コーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティングなどの予め計量されたコーティング;ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティングなどのロールコーティング;グラビアコーティング;ディップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;刷毛塗り;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷法;静電印刷法;感熱印刷法;インクジェット印刷法;電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照);ならびに他の類似の技術を含むがこれらに限定されない、印刷およびコーティングの全ての形態を含むことが意図される。したがって、得られるディスプレイは柔軟であり得る。さらに、様々な方法を用いて印刷することができるので、ディスプレイ媒体を安価に製造することができる。
【0016】
本発明では、他のタイプの電気光学材料も使用され得る。特に興味深いことに、双安定強誘電性液晶ディスプレイ(FLC)が当技術分野において公知である。
【0017】
電気泳動ディスプレイは、典型的には、電気光学材料層に加えて、電気光学材料層の反対側に配置された少なくとも2つの他の層を含む。これらの層の1つは電極層である。ほとんどの電気光学機器では、これらの層はいずれも電極層であり、少なくとも1つの電極層は、機器の画素を画定するようにパターン化される。例えば、1つの電極層を細長い行電極にパターン化することができ、他方を行電極に対して直角に走行する細長い列電極にパターン化することができ、画素は行電極と列電極の交差部によって画定される。あるいは、より一般的には、1つの電極層は光透過性の単一の連続する電極の形態を有し、他の電極層は画素電極のマトリックスへとパターン化され、これらの各々がディスプレイの1つの画素を画定する。すなわち、層の一方は、典型的には導電性光透過性層であり、他方の層は、典型的にはバックプレーン基材と呼ばれ、導電性光透過性層と画素電極の間に電位を印加するように構成された複数の画素電極を備える。タッチペン、印字ヘッドまたはディスプレイから分離した同様の可動電極とともに使用することが意図される別のタイプの電気光学機器では、電気光学層に隣接する層の1つのみが電極を備え、電気光学層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気光学材料層を損傷するのを防止することが意図される保護層である。
【0018】
3層電気光学ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかには、プラスチックフィルム上にインジウムスズ酸化物(ITO)または同様の導電性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極として作用する)を含む柔軟な基材上に、結合剤中にカプセルを含むカプセル封入された電気泳動媒体がコーティングされており、カプセル/結合剤コーティングが乾燥されて、基材にしっかりと接着された電気泳動媒体のコヒーレント層を形成する、カプセル封入された電気泳動ディスプレイを製造するための方法が記載されている。別個に、多数の画素電極と、画素電極をドライブ回路に接続するための導体の適切な配置とを含有するバックプレーンが準備される。最終ディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層をその上に有する基材は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される。プラスチックフィルムなどの、タッチペンまたはその他の可動電極がその上を滑らかに動くことができる単純な保護層でバックプレーンを置き換えることによって、タッチペンまたは類似の可動電極とともに使用可能な電気泳動ディスプレイを調製するために、非常に類似した方法を使用することができる。このような方法の1つの好ましい形態では、バックプレーン自体が柔軟であり、プラスチックフィルムまたは他の柔軟な基材上に画素電極および導体を印刷することによって調製される。この方法によるディスプレイの大量生産のための明白な積層技術は、積層接着剤を用いたロール積層である。同様の製造技術を、他のタイプの電気光学ディスプレイとともに使用することができる。例えば、マイクロセル電気泳動媒体または回転二色性部材媒体は、カプセルに封入された電気泳動媒体と実質的に同じようにバックプレーンに積層され得る。
【0019】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産によく適合された固体電気光学ディスプレイ(カプセルに封入された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を記載している。本質的に、この特許は、光透過性導電性層と、固体電気光学媒体の層と、接着層と、剥離シートとを順に備える、いわゆる「フロントプレーン積層体」(「FPL」)を記載している。典型的には、光透過性導電性層は、基材が永久変形することなく(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周りに手動で巻き付けることができるという意味で、好ましくは柔軟である光透過性基材上に担持される。「光透過性」という用語は、そのように指定された層が、その層を通して見る観察者が、通常は導電性層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られる電気光学媒体の表示状態の変化を観察することを可能にするのに十分な光を透過することを意味するために、本特許および本明細書において使用され、電気光学媒体が非可視波長での反射率の変化を示す場合には、「光透過性」という用語は、当然、関連する非可視波長の透過を指すと解釈されるべきである。基材は、典型的にはポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚さを有する。導電層は、都合よく、例えばアルミニウムもしくはITOの薄い金属もしくは金属酸化物層であり、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタラート)(PET)フィルムは、例えば、E.I.du Pont de Nemours&Company、Wilmington DEから「aluminized Mylar」(「Mylar」は登録商標である)として市販されており、このような市販材料を使用すると、フロントプレーン積層体において良好な結果が得られ得る。
【0020】
このようなフロントプレーン積層体を使用した電気光学ディスプレイの組み立ては、フロントプレーン積層体から剥離シートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で接着層をバックプレーンと接触させ、それによって接着層、電気光学媒体の層および導電性層をバックプレーンに固定することによって達成され得る。フロントプレーン積層体は、典型的にはロール・ツー・ロールコーティング技術を使用して大量生産され、次いで特定のバックプレーンとともに使用するために必要とされる任意のサイズの小片に切断され得るので、この方法は大量生産によく適合している。
【0021】
米国特許第7,561,324号は、本質的に前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層体の簡略版である、いわゆる「二重剥離シート」を記載している。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着層の間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含み、接着層の一方または両方が剥離シートによって覆われている。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含む。二重剥離フィルムの両形態は、既に記載したフロントプレーン積層体から電気光学ディスプレイを組み立てる方法と概ね同様の方法において使用することが意図されているが、2つの別個の積層を含み、典型的には、第1の積層では、二重剥離シートは前部電極に積層されて前部サブアセンブリを形成し、次いで、第2の積層では、前部サブアセンブリはバックプレーンに積層されて最終ディスプレイを形成するが、これら2つの積層の順序は所望であれば逆にすることができる。
【0022】
代替的な構成として、米国特許第7,839,564号は、米国特許第6,982,178号に記載されているフロントプレーン積層体の変形形態である、いわゆる「反転フロントプレーン積層体」を記載する。この反転フロントプレーン積層体は、順に、光透過性保護層および光透過性導電性層の少なくとも1つと、接着層と、固体電気光学媒体の層と、剥離シートとを備える。この反転フロントプレーン積層体は、電気光学層と前部電極または前部基材との間に積層接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために使用され、第2の典型的には薄い接着剤の層は、電気光学層とバックプレーンの間に存在してもよく、また、存在しなくてもよい。
【0023】
電気光学材料層と電極層の間に位置する電気光学ディスプレイ(desplays)の積層接着層は、対応する電気光学ディスプレイの性能に著しく影響し得る。具体的には、接着層の面に垂直な方向(z方向)での接着層の導電率が低いと、積層接着層内で積層接着層にわたる大幅な電圧降下が生じる。これは、所望の画像を形成するために電極層にわたる印加電圧の増加を必要とし、このことは、ディスプレイを動作させるための電力消費を増加させる。他方、接着層の面の方向での接着層の導電率(横方向導電率、またはxおよびy方向の導電率とも呼ばれる)が高いと、隣接する画素電極間でクロストークが発生し、ディスプレイの解像度が低下し、画質の低下をもたらす。この現象はブルーミングと呼ばれる。したがって、ブルーミングとは、画素電極への電圧の印加が、画素電極の物理的サイズよりも大きい領域にわたって電気光学媒体の光学的状態の変化を引き起こす傾向を指す。ほとんどの材料の導電率は温度の上昇と共に急速に減少するので、ブルーミング現象はより高い温度でより顕著になる。逆に、低温では、その結果生じる低下した導電率は、画像間の切り替えの速度を低下させ得るか、または電圧降下およびエネルギー消費を増加させ得る。
【0024】
接着層または他のポリマーフィルムの導電率を制御するために導電性充填剤が使用される場合、大きな凝集体を破壊するために、導電性充填剤は、典型的には、液体キャリア中に前分散され、導電性充填剤の有効性および効率を増大させる。典型的には、脱凝集過程を促進するために、液体キャリア中には界面活性剤が含まれる。しかしながら、接着層中での界面活性剤分子の高い移動性のために、接着層中での界面活性剤分子の存在は、接着層の横方向導電率(xおよびy方向の導電率)を著しく増加させ得、これはブルーミングを増加させる。
【0025】
本発明は、この問題を回避する。具体的には、本発明の分散組成物において使用される添加剤は、導電性充填剤の脱凝集を促進する手段としての界面活性剤を置き換える(またはその量を低減させる)。硬化された接着層の段階で、添加剤は、層のポリマーマトリクスの一部になることによって、接着層のポリマーマトリクス中に固定化される。さらに、硬化された接着層は、硬化された接着層が異方性導電率を示すように形成され得る。すなわち、硬化された接着層は、z方向に対して直交するxおよびy方向の導電率に比べて、z方向(接着層の面に垂直)により高い導電率を有する。上述したように、xおよびy方向の高い導電率はクロストークを引き起こし、ブルーミングをもたらす。したがって、上述のような異方性導電率を有する接着層はブルーミングを緩和し、同時に装置の経済的な動作を可能にする。したがって、本発明の技術は、低いブルーミングにより低電力消費に寄与することができる。
本発明は、優れたバリアおよび機械的特性を示すポリマーフィルムおよびポリマー部品にも有用である。高い比表面積を有する充填剤は、ポリマーフィルムおよびポリマー部品のバリアおよび機械的特性を改善することが周知である。また、高い比表面積の状態(小さな粒子)を達成するためには、充填剤粒子を脱凝集させなければならないことも周知である。界面活性剤は、脱凝集過程のために不可欠である。しかしながら、界面活性剤分子の存在は、ポリマーフィルムおよびポリマー部品におけるバリアおよび機械的特性に対して有害でもあり得る。本発明は、充填剤粒子の脱凝集のために使用される材料をポリマーマトリクス中に組み込むことによって硬化されたポリマーフィルムまたは硬化されたポリマー部品中に界面活性剤分子が存在しないことを可能にすることによって、ポリマーフィルムおよびポリマー部品のバリアおよび機械的特性を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第5,808,783号明細書
【特許文献3】米国特許第5,777,782号明細書
【特許文献4】米国特許第5,760,761号明細書
【特許文献5】米国特許第6,054,071号明細書
【特許文献6】米国特許第6,055,091号明細書
【特許文献7】米国特許第6,097,531号明細書
【特許文献8】米国特許第6,128,124号明細書
【特許文献9】米国特許第6,137,467号明細書
【特許文献10】米国特許第6,147,791号明細書
【特許文献11】米国特許第6,301,038号明細書
【特許文献12】米国特許第6,870,657号明細書
【特許文献13】米国特許第6,950,220号明細書
【特許文献14】米国特許第7,420,549号明細書
【特許文献15】米国特許第7,321,459号明細書
【特許文献16】米国特許第7,236,291号明細書
【特許文献17】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献18】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献19】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献20】米国特許第7,184,197号明細書
【特許文献21】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献22】米国特許第7,072,095号明細書
【特許文献23】米国特許第9,279,906号明細書
【特許文献24】米国特許第7,144,942号明細書
【特許文献25】米国特許第7,715,088号明細書
【特許文献26】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献27】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献28】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献29】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献30】米国特許第7,012,735号明細書
【特許文献31】米国特許第7,173,752号明細書
【特許文献32】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献33】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献34】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献35】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献36】米国特許第8,009,348号明細書
【特許文献37】米国特許第6,241,921号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2015/0277160号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2015/0005720号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2016/0012710号明細書
【特許文献41】米国特許第6,866,760号明細書
【特許文献42】米国特許第5,872,552号明細書
【特許文献43】米国特許第6,130,774号明細書
【特許文献44】米国特許第6,144,361号明細書
【特許文献45】米国特許第6,172,798号明細書
【特許文献46】米国特許第6,271,823号明細書
【特許文献47】米国特許第6,225,971号明細書
【特許文献48】米国特許第6,184,856号明細書
【特許文献49】米国特許第4,418,346号明細書
【特許文献50】米国特許第7,339,715号明細書
【特許文献51】米国特許第7,561,324号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737
【非特許文献2】Wood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)
【非特許文献3】Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845
【非特許文献4】Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)
【非特許文献5】Kitamura,T.ら、‘‘Electrical toner movement for electronic paper-like display’’,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1
【非特許文献6】Yamaguchi,Y.ら、‘‘Toner display using insulative particles charged triboelectrically’’,IDW Japan,2001,Paper AMD 4-4)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の概要
本発明の局面は、(a)粒子を含む充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、多環芳香族基を含む添加剤とを含む分散組成物;(b)分散組成物によって形成されたポリマーフィルム;(c)ポリマーフィルムを備える電気光学装置、および(d)分散組成物を使用してポリマーフィルムを製造する方法に関する。
一局面において、本発明は、粒子を含む充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、式Iによって表される添加剤とを含む分散組成物を提供する。
R1-(CH2)n-Y-Z 式I
式IのR1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8である。式IのYは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり、Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;式IのZは、反応性官能基を含む基であり、反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される。反応性官能基は、重合性モノマーまたはオリゴマーの重合反応に関与することができる。官能基Yは-O-C(O)-または-O-C(O)-NH-であり得、Zはアクリラート、メタクリラート、スチレンまたはメチルスチレンを含み得る。
【0029】
充填剤は、導電性であり得る。充填剤は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、カーボンブラックおよびこれらの混合物からなる群から選択され得る。分散物は、水性キャリア、非水性キャリアおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される液体キャリアをさらに含み得る。全ての芳香族原子は、炭素原子であり得る。重合性モノマーまたはオリゴマーは、アクリラート、メタクリラート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ビニルアクリラート、ビニルメタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシド、イソシアナート、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シラン、アルコール、チオール、アミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料であり得る。
【0030】
別の局面において、本発明は、上記分散組成物の硬化によって形成されるポリマーフィルムを提供する。ポリマーフィルムは、導電性フィルム、バリアフィルム、電極、密封層、カプセル封入された電気光学媒体層用結合剤、端部シールまたは接着層であり得る。別の局面において、本発明は、上記分散組成物を硬化させることによって形成されるポリマー部品を提供する。
【0031】
別の局面において、本発明は、第1の電極層と、電気光学材料層と、第1の接着層と、複数の画素電極を含む第2の電極層とを備える電気光学装置を提供する。電気光学材料層は、第1および第2の電極層の間に配置される。第1の接着層は、導電性粒子を含む充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、式Iによって表される添加剤とを含む分散組成物によって形成される。式IのR1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8である。式IのYは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり、Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式IのZは、反応性官能基を含む基であり、反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される。反応性官能基は、重合性モノマーまたはオリゴマーの重合反応に関与することができる。導電性充填剤の粒子は、第1の接着層の面に垂直なz方向で接着層中で整列され得る。その結果、接着層は異方性導電率を示し得る。z方向の導電率は、z方向に直交する他の2つの方向xおよびyの導電率よりも高くてもよい。
【0032】
別の局面において、本発明は、ポリマーフィルムを製造する方法であって、(1)(a)カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンおよびカーボンブラックからなる群から選択される充填剤と;(b)重合性モノマーまたはオリゴマーと;(c)式Iによって表される添加剤であって、式中、R1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、前記芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり;Yは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり;Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびにZは、反応性官能基を含む基であり、前記反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される、添加剤とを含む分散組成物を混合する工程と;(2)前記組成物を湿潤フィルムとして基材上に塗布する工程と;(3)前記重合性モノマーまたはオリゴマーを前記添加剤とともに重合させるために、前記塗布された組成物を硬化させる工程と;を含む、方法を提供する。硬化は、熱的にまたは紫外光への曝露を介して行われ得る。硬化工程より前に、塗布された湿潤フィルムの面に垂直なz方向に湿潤フィルム中の充填剤粒子を整列させるために、塗布された湿潤フィルムにわたって電界が印加され得る。分散組成物は、液体キャリアをさらに含み得る。
【0033】
本発明の他の態様および様々な非限定的な実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。本明細書および参照により組み込まれる文書が矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合には、本明細書が優先されるものとする。参照により組み込まれる2またはそれを超える文書が、互いに矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合、より遅い有効日を有する文書が優先されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本出願の様々な態様および実施形態は、以下の図を参照しながら説明される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0035】
【
図1】
図1は、接着層(またはポリマーフィルム)のz方向ならびにxおよびy方向の導電率を示す。
【0036】
【
図2】
図2Aは、1つの接着層を備える電気光学装置の概略図である。
【0037】
図2Bは、2つの接着層を備える電気光学装置の概略図である。
【0038】
【
図3】
図3は、1つの接着層と、電気泳動媒体を有する電気光学層とを備える電気光学装置の概略図である。
【0039】
【
図4】
図4は、各々が2つの接着層と、電気泳動媒体を有する電気光学層とを備える電気光学装置の概略図である。
【
図5】
図5は、各々が2つの接着層と、電気泳動媒体を有する電気光学層とを備える電気光学装置の概略図である。
【0040】
【
図6】
図6は、接着層および剥離シートを備えるフロントプレーン積層体である電気光学組立品の概略図である。
【0041】
【
図7】
図7は、2つの接着層および2つの剥離シートを備える二重剥離シートである電気光学組立品の概略図である。
【0042】
【
図8】
図8A、
図8Bおよび
図8Cは、分散組成物および対応するポリマーフィルムの製造方法の一例の工程の概略図である。
【0043】
【
図9】
図9は、本発明の分散組成物の添加剤の一例である4-(1-ピレニル)ブチルアクリラートの調製のための反応を表す。
【0044】
【
図10】
図10は、1-ピレンメタノールと3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアナートの反応を表す。生成物は、本発明の分散組成物の添加剤の一例である。
【0045】
【
図11】
図11は、比較の分散物(充填剤が沈降)と比較した本発明の分散物(安定)の写真を示す。
【0046】
本発明の他の態様、実施形態および特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
「分散物」は、固体粒子とキャリアを含む混合物である。キャリアは液体であり得る。
【0048】
「界面活性剤」または「表面活性剤」は、親水性官能基および親油性(または疎水性)官能基の両方を有する分子構造を有する材料である。
【0049】
キャリア中の固体粒子に関する「前分散」という用語は、ミル粉砕による、高速混合による、または任意の他の過程による調製の過程を意味する。典型的には固体粒子の含量がより低く、コーティング、フィルムまたは部品を作製するために実際に使用することができるより複雑な分散物を調製するために、前分散物は、通常、追加の成分と組み合わされる。前分散物を調製するために、溶解機、動静翼、ボールミル、メディアミルおよび押出機を含む様々な種類の装置が使用され得る。典型的には、前分散物は、粒子の効率的な脱凝集および分散物の長期安定性のために必要とされる、キャリアによる固体粒子表面の湿潤を可能にする界面活性剤分子を含む。固体粒子に関する「前分散された」という用語は、粒子が「前分散」過程に曝されたことを意味する。「前分散」および「分散」過程という用語は、互換的に使用されることがある。分散しやすい粒子については、前分散過程が必要でないことがあり得る。しかしながら、所望される比表面積が高い(小さい粒径に相当する)粒子(顔料、充填剤など)については、積極的な高エネルギー過程を使用する前分散過程が必要である。高い比表面積を有する固体粒子を含む分散物は、固体粒子を湿潤および安定化するのに十分な含有量の界面活性剤または界面活性剤の組み合わせも必要とする。
【0050】
「充填剤」は、特定の特性を改善するために組成物中に添加される固体粒子を含む材料である。「導電性充填剤」と呼ばれるある種の充填剤は、ポリマーフィルムの導電率を増加させる。他の充填剤、特に高い比表面積を有する充填剤は、ポリマーフィルムの機械的、熱的およびバリア特性を改善するために使用される。「ポリマーフィルム」は、ポリマーを含むフィルムである。ポリマーフィルムの用途の非限定的な例には、電極層、導電層、接着層、密封層、電気光学材料層の結合剤層、端部シールおよびバリアフィルムが含まれる。バリアフィルムの例は、例えば酸素および水分に敏感な食品および他の物品を包装するために使用される包装フィルムである。ポリマーフィルムは、0.1μm~5mmの厚さを有する。ポリマー部品は、物品または装置の構造的または機能的構成要素として使用することができる固体部品である。ポリマー部品は、5mmより大きい厚さを有する。ポリマー部品の非限定的な例には、包装、家具、エンジン、車両、ボートならびにその他の物品および装置の構成要素が含まれる。ポリマー部品は、射出成形、ブロー成形、3D印刷などによって製造され得る。ポリマー部品は、熱可塑性または熱硬化性ポリマーを含み得る。
【0051】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語には、当技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられ、上記アルキルと、長さおよび可能な置換が同様であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を含有する不飽和脂肪族基を表す。
【0052】
固体粒子の「比表面積」は、質量単位当たりの材料の総表面積である。固体粒子の比表面積(surface are)は、BET法による粉末材料への気体吸着(例えば、窒素)により測定することができる。固体粒子の比表面積は、典型的には、m2/gの単位で表される。
【0053】
粒子の「アスペクト比」は、その長寸法と短寸法の比として定義される。
【0054】
「硬化」という用語は、反応性モノマーまたはオリゴマーを含む組成物の液相から固相または半固相への転移を指す。「モノマー」という用語には、マクロモノマーも含まれる。マクロモノマーは、マクロモノマーが重合性モノマーとして作用することを可能にする少なくとも1つの官能基を含む高分子である。本発明の文脈において、硬化は、分散組成物を熱エネルギーまたは光エネルギーに曝露することによって達成され得る。分散組成物は、熱エネルギーまたは光エネルギーへの曝露より前に表面上に塗布され得る。塗布は、任意のコーティングまたは印刷過程によって達成され得る。分散組成物はまた、熱エネルギーまたは光エネルギーへの曝露より前に、鋳型の中に含まれ得る。あるいは、分散組成物は、押出機またはミキサー中で混合される際に熱エネルギーまたは光エネルギーに曝露され得る。モノマーまたはオリゴマーは、硬化過程中に重合される。光エネルギーは、電磁放射線の紫外領域中に存在し得る。硬化過程中に起こる重合反応は、付加重合を含み得る。硬化過程中に起こる重合反応はまた、縮合重合を含み得る。
【0055】
「架橋」は、あるポリマー鎖を別のポリマー鎖に連結する結合である。架橋は、2またはそれを超えるポリマー鎖と反応または相互作用することができる材料である「架橋剤」を使用することによって達成される。
【0056】
「鎖伸長」は、オリゴマーまたはポリマーと分子を反応させて、別のオリゴマーまたはポリマーと反応してその分子量を増加させることができる反応性ポリマー中間体を形成する過程である。反応性分子は「鎖伸長試薬」と呼ばれる。
【0057】
材料の「体積抵抗率」は、「体積導電率」の逆数である。材料の体積導電率は、電流を伝導する材料の能力を表す。体積導電率は、ジーメンス/メートル(S/m)またはジーメンス/cm(S/cm)で測定される。体積抵抗率は、オーム・mまたはオーム・cmで測定される。固体材料の体積抵抗率は、標準的な方法ASTM D257によって測定される。
【0058】
本明細書で使用される「多環芳香族基」という用語は、添加剤分子の置換基を指す。すなわち、本発明の組成物において使用される添加剤は、多環芳香族基を含む化合物である。「多環芳香族基」という用語は、当技術分野で公知である「多環芳香族炭化水素」または「PAH」という用語よりも広い。本発明の文脈における添加剤の「多環芳香族基」は、芳香族炭素原子を有し、酸素、硫黄および窒素などの炭素以外の芳香族原子(ヘテロ原子)も有する多環芳香族基を含有し得る。多環芳香族基は、2またはそれを超える縮合芳香環を含み得る。
【0059】
本明細書で使用される「導電率」という用語は、特に明記しない限り、電気伝導率を指す。接着層またはポリマーフィルムのz方向の導電率は、層またはフィルムの面に垂直な方向の導電率である。層またはフィルムに関する「面」という用語は、層(またはフィルム)の上面によって規定される面、または層(またはフィルム)の上面によって規定される面に平行な任意の面である。接着層またはポリマーフィルムのxおよびy方向の導電率は、z方向と直交する方向の導電率である。xおよびy方向の導電率は、層またはフィルムの横方向導電率とも呼ばれる。
図1は、層またはフィルム130のz方向ならびにxおよびy方向の導電率を示す。
【0060】
本発明は、充填剤と、重合性モノマーまたはオリゴマーと、多環芳香族基を含む添加剤とを含む分散組成物を提供する。
【0061】
重合性モノマーまたはオリゴマーは、アクリラート、メタクリラート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ビニルアクリラート、ビニルメタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、ヒドロキシ、チオール、アミン、シランおよびこれらの混合物などの少なくとも1つの重合可能な基を含む。
【0062】
分散組成物の充填剤は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、カーボンブラックおよびこれらの混合物であり得る。このような充填剤は、ポリマーフィルムまたはポリマー部品中に存在する場合、対応するポリマーフィルムまたはポリマー部品の導電率、機械的強度を増加させることができる。このような充填剤はまた、対応するポリマーフィルムまたはポリマー部品のバリア特性を改善し得る、すなわち、酸素、水または水分およびその他の分子がポリマーフィルムまたはポリマー部品に浸透するのを防止する。分散組成物中の充填剤の含有量は、分散組成物の0.001重量%~20重量%、または分散組成物の0.01重量%~15重量%、または0.1重量%~10重量%、または0.2重量%~5重量%であり得る。
【0063】
カーボンブラック充填剤は、用途および所望される利点に応じて、導電型または非導電型のものであり得る。導電性カーボンブラック材料は、典型的には、接続された粒子構造のネットワークを形成する高比表面積固体粒子である。カーボンブラック粒子中の細孔率も導電率を向上させる。導電性カーボンブラック粒子の比表面積は、BET法(粒子表面への窒素吸着)によって測定して、120m2/gより大きく、または250m2/gより大きく、または800m2/gより大きい。非導電性カーボンブラック充填剤は、典型的には、ポリマーフィルムおよびポリマー部品を着色するために使用される。しかしながら、粒子比表面積が十分に高い場合、対応するポリマーフィルムおよびポリマー部品は、改善された機械的強度およびバリア特性を示し得る。改善された機械的強度およびバリア特性を提供するために、充填剤の高い比表面積およびポリマー中の充填剤の高品質分散が好ましい。高い機械的強度および/または優れたバリア特性を有するポリマーフィルムおよびポリマー部品の場合、カーボンブラックの比表面積は、BET法(粒子表面への窒素吸着)によって測定して、250m2/gより大きく、または800m2/gより大きい。
【0064】
カーボンナノチューブ充填剤は、100nm未満の典型的な直径を有する円筒状粒子である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であり得る。カーボンナノチューブ充填剤は、高い比表面積を有する導電性充填剤である。ポリマーフィルムおよびポリマー部品中の十分に分散されたカーボンナノチューブは、このようなポリマーフィルムおよびポリマー部品の導電率を増大させ得る。ポリマーフィルムおよびポリマー部品中の十分に分散されたカーボンナノチューブはまた、このようなポリマーフィルムおよびポリマー部品の機械的強度およびバリア特性の両方を改善し得る。
【0065】
黒鉛繊維とも呼ばれるカーボンナノファイバーは、典型的には5~10μmの直径および極めて大きなアスペクト比を有する。カーボンブラックおよびカーボンナノチューブと同様に、カーボンナノファイバー充填剤は、ポリマーフィルムおよびポリマー部品の導電率を増大させることができ、ポリマーフィルムおよびポリマー部品のバリア特性および機械的強度を改善することができる。
【0066】
グラフェンは、二次元シートとして存在する炭素の同素体である。このシートは炭素原子の単層である。ポリマーフィルムおよびポリマー部品中の充填剤として、グラフェンは、ポリマーフィルムおよびポリマー部品の導電率を増大させることができ、バリア特性ならびに剛度および剛性などの機械的特性を向上させることができる。グラフェンの比表面積は、300m2/s~2600m2/sであり得る。
【0067】
本発明の分散組成物の添加剤は、多環芳香族基を含む。添加剤は、式Iによって表される。
R1-(CH2)n-Y-Z 式I
式Iにおいて、R1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8である。式Iにおいて、Yは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり、Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。式Iにおいて、Zは、反応性官能基を含む基であり、反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される。反応性官能基は、重合性モノマーまたはオリゴマーの重合反応に関与することができる。
【0068】
多環芳香族基は、10個~14個の芳香族原子、または10個~16個の芳香族原子、または10個~18個の芳香族原子、または12個~14個の芳香族原子、または12個~16個の芳香族原子、または12個~18個の芳香族(atromatic)原子、または16個~22個の芳香族原子、または16個~24個の芳香族原子、または19個~24個の芳香族原子を含み得る。多環芳香族基の芳香族原子は全て炭素原子であり得る。多環芳香族基はまた、酸素、硫黄または窒素芳香族原子などのヘテロ原子を含み得る。
【0069】
多環芳香族基は、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、フェナレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン(fluoroanthene)、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、キサンテン、チオキサンテン、ベンゾ[c]フルオレン、ベンゾ[a]アントラセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]アセフェナントリレン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ペリレン、コロネン、コランヌレン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、インデノ[1,2,2-c,d]ピレンおよびポルフィリンからなる群から選択される芳香族系であり得る。
【0070】
添加剤はまた、多環芳香族基に加えて、以下の基:1-(アクリロイルオキシ)メチル、1-(メタクリロイルオキシ)メチル、2-(アクリロイルオキシ)エチル、2-(メタクリロイルオキシ)エチル、3-(アクリロイルオキシ)プロピル、3-(メタクリロイルオキシ)プロピル、4-(アクリロイルオキシ)ブチルおよび4-(メタクリロイルオキシ)ブチルを含み得る。これらの基は、式II~IXの構造によって表される。
【化1】
【化2】
【0071】
また、多環芳香族化合物の置換基は、アクリラート、メタクリラート、5-(アクリロイルオキシ)ペンチル、5-(メタクリロイルオキシ)ペンチルであり得る。
【0072】
多環芳香族基は、多環芳香族化合物の芳香環に直接結合した別の置換基R8を含み得る。置換基R8は、アルキル基、ハロゲン置換されたアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニルおよびハロゲンであり得、アルキル、ハロゲン置換されたアルキル、ヒドロキシアルキルおよびアルケニル基は、1~8個の炭素原子を含む。置換基R3の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、クロロ、フルオロ、ブロモ、クロロメチル、1-クロロエチル、2-クロロエチル、1-クロロプロピル、2-クロロプロピル、3-クロロプロピル、1-クロロブチル、2-クロロブチル、3-クロロブチル、4-クロロブチル、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチルおよび4-ヒドロキシブチルである。
【0073】
添加剤の非限定的な例、本発明の分散組成物は、1-ピレニルアクリラート、1-ピレニルメタクリラート、2-ピレニルアクリラート、2-ピレニルメタクリラート、1-ピレニルメチルアクリラート、1-ピレニルメチルメタクリラート、2-ピレニルメチルアクリラート、2-ピレニルメチルメタクリラート、2-(1-ピレニル)エチルアクリラート、2-(1-ピレニル)エチルメタクリラート、2-(2-ピレニル)エチルアクリラート、2-(2-ピレニル)エチルメタクリラート、3-(1-ピレニル)プロピルアクリラート、3-(1-ピレニル)プロピルメタクリラート、3-(2-ピレニル)プロピルアクリラート、3-(2-ピレニル)プロピルメタクリラート、4-(1-ピレニル)ブチルアクリラート、4-(1-ピレニル)ブチルメタクリラート、4-(2-ピレニル)ブチルアクリラート、4-(2-ピレニル)ブチルメタクリラート、5-(1-ピレニル)ペンチルアクリラート、5-(1-ピレニル)ペンチルメタクリラート、5-(2-ピレニル)ペンチルアクリラートおよび4-(2-ピレニル)ペンチルメタクリラートを含む。1-ピレン誘導体に対応する化合物の例は、以下の式XおよびXIによって表される。これらの式において、nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり得る。
【化3】
【0074】
本発明の分散組成物の添加剤の他の非限定的な例としては、11-ナフタレニル2-プロペノアート、1-ナフタレニル2-メチル2-プロペノアート、2-ナフタレニル2-プロペノアート、2-ナフタレニル2-メチル2-プロペノアート、1-ナフチルメチルアクリラート、1-ナフチルメチルメタクリラート、2-ナフチルメチルアクリラート、2-ナフチルメチルメタクリラート、2-(1-ナフチル)エチルアクリラート、2-(1-ナフチル)エチルメタクリラート、2-(2-ナフチル)エチルアクリラート、2-(2-ナフチル)エチルメタクリラート、3-(1-ナフチル)プロピルアクリラート、3-(1-ナフチル)プロピルメタクリラート、3-(2-ナフチル)プロピルアクリラート、3-(2-ナフチル)プロピルメタクリラート、4-(1-ナフチル)ブチルアクリラート、4-(1-ナフチル)ブチルメタクリラート、4-(2-ナフチル)ブチルアクリラート、4-(2-ナフチル)ブチルメタクリラート、5-(1-ナフチル)ペンチルアクリラート、5-(1-ナフチル)ペンチルメタクリラート、5-(2-ナフチル)ペンチルアクリラートおよび4-(2-ナフチル)ペンチルメタクリラートが挙げられる。
【0075】
本発明の分散組成物の添加剤の他の非限定的な例としては、1-アントラセニル2-プロペノアート、1-アントラセニル2-メチル2-プロペノアート、2-アントラセニル2-プロペノアート、2-アントラセニル2-メチル2-プロペノアート、9-アントラセニル2-プロペノアート、9-アントラセニル2-メチル2-プロペノアート、1-アントラセニルメチルアクリラート、1-アントラセニルメチルメタクリラート、2-アントラセニルメチルアクリラート、21-アントラセニルメチルメタクリラート、9-アントラセニルメチルアクリラート、9-アントラセニルメチルメタクリラート、2-(1-アントラセニル)エチルアクリラート、2-(1-アントラセニル)エチルメタクリラート、2-(2-アントラセニル)エチルアクリラート、2-(2-アントラセニル)エチルメタクリラート、2-(9-アントラセニル)エチルアクリラート、2-(9-アントラセニル)エチルメタクリラート、3-(1-アントラセニル)プロピルアクリラート、3-(1-アントラセニル)プロピルメタクリラート、3-(2-アントラセニル)プロピルアクリラート、3-(2-アントラセニル)プロピルメタクリラート、3-(9-アントラセニル)プロピルアクリラート、3-(9-アントラセニル)プロピルメタクリラート、4-(1-アントラセニル)ブチルアクリラート、4-(1-アントラセニル)ブチルメタクリラート、4-(2-アントラセニル)ブチルアクリラート、4-(2-アントラセニル)ブチルメタクリラート、4-(9-アントラセニル)ブチルlアクリラート、4-(9-アントラセニル)ブチルメタクリラート、5-(1-アントラセニル)ペンチルアクリラート、5-(1-アントラセニル)ペンチルメタクリラート、5-(2-アントラセニル)ペンチルアクリラート、5-(2-アントラセニル)ペンチルメタクリラート、5-(9-アントラセニル)ペンチルアクリラート、5-(9-アントラセニル)ペンチルメタクリラートが挙げられる。
【0076】
本発明の分散組成物の添加剤の他の非限定的な例としては、(1-フェナントリル)メチルアクリラート、(1-フェナントリル)メチルメタクリラート、(2-フェナントリル)メチルメタクリラート、(2-フェナントリル)メチルアクリラート、(3-フェナントリル)メチルメタクリラート、(3-フェナントリル)メチルアクリラート、(4-フェナントリル)メチルメタクリラート、(4-フェナントリル)メチルアクリラート、(5-フェナントリル)メチルメタクリラート、(5-フェナントリル)メチルアクリラートが挙げられる。
【0077】
本発明の分散組成物において使用することができる添加剤を合成するための潜在的な合成経路は、多環芳香族基と、多環芳香族原子に直接結合した反応性官能基A、例えばヒドロキシ、チオールまたはアミン官能基とを含む分子構造を有する出発物質を含む。官能基Aは、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、イソシアナート、エポキシおよびシランでもあり得る。このような出発物質の例としては、1-ナフトール、2-ナフトール、2-ヒドロキシアントラセン、アントラセノール、アントラノール、1-アミノアントラセン(1-aminonthracene)、1-ピレノール、2-ピレノールおよび類似の化合物が挙げられる。他の適切な出発物質としては、多環芳香族基と、芳香族原子に結合したアルキルヒドロキシ、アルキルアミノまたはアルキルチオ置換基とを含む化合物が挙げられる。このような置換基の非限定的な例としては、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2SH、-CH2CH2SH、-CH2CH2CH2SH、-CH2CH2CH2CH2SH、-CH2CH2CH2CH2CH2SH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2SH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2SH、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH2などが挙げられる。次いで、多環芳香族出発物質は、(a)多環芳香族出発物質の官能基Aと反応することができる反応することができる官能基Bと、(b)重合可能な官能基Cとを有する試薬と反応し得る。官能基Bの非限定的な例としては、酸ハロゲン化物、イソシアナート、エポキシド、シラン、カルボン酸、アミン、ヒドロキシおよびチオールが挙げられる。表1には、官能基AとBの様々な組み合わせおよび官能基AとBの間での反応から形成される基の例が含まれる。
【0078】
【0079】
エポキシの構造は、式XIIによって表され得る。
【化4】
【0080】
分散組成物の重合性モノマーまたはオリゴマーは、硬化機構を介して重合することができる化合物である。硬化過程は、重合性モノマーまたはオリゴマー、架橋剤、鎖伸長試薬および開始剤を含む様々な硬化種を含み得る。分散組成物の重合性モノマーまたはオリゴマーは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み得る。本発明においては、添加剤も硬化過程に関与する。具体的には、添加剤の反応性官能基は、1またはそれを超える硬化種、例えば重合性モノマーまたはオリゴマー、架橋試薬および鎖伸長試薬と反応する。いくつかの実施形態において、添加剤の反応性官能基は、硬化種と反応して、得られるポリマー中に架橋、熱可塑性結合、2種類の重合性モノマーまたはオリゴマー間での結合などの硬化された部分を形成する。ある特定の実施形態において、添加剤の反応性官能基は、架橋試薬などの硬化種の反応性官能基と反応して架橋を形成する。いくつかの事例では、添加剤の反応性官能基は、特定の一連の条件下で、例えば特定の温度範囲でまたは紫外光下で硬化種の反応性官能基と反応するように構成され得る。いくつかの実施形態において、添加剤の反応性官能基は、組成物が熱可塑性乾燥を受けるようなある特定の条件下で反応し得る。反応性官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、カルボキシラート、アミン、イミン、イミド、アジド、エーテル、エステル、スルフヒドリル(チオール)、シラン、ニトリル、カルバマート、イミダゾール、ピロリドン、カーボナート、ビニル、アクリラート、アルケニルおよびアルキニルが挙げられる。他の反応性官能基も可能であり、当業者は、本明細書の教示に基づいて、二重硬化組成物と共に使用するための適切な反応性官能基を選択することができるであろう。
【0081】
いくつかの実施形態において、添加剤の反応性官能基は、電磁放射線(例えば、可視光、UV光など)、電子ビーム、(例えば、溶媒抽出または縮合反応中に利用されるなどの)高温、化学化合物(例えば、チオレン)および/または架橋剤などの刺激の存在下で硬化種と反応する。例えば、ビニルアクリラートモノマーまたはオリゴマーを含む分散組成物は、光開始剤の存在下でUV照射を介して基材上で重合され得る。本発明の添加剤は、ビニルアクリラートモノマーまたはオリゴマーと共に重合に関与し、得られるポリマーの一部となる。
【0082】
分散組成物の重合性モノマーまたはオリゴマーによって形成される一般的な種類のポリマーの非限定的な例としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、PET、PVC、ポリビニルアルコール、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリビニルアクリラート、ポリビニルメタクリラートおよびそれらのコポリマーが挙げられる。ポリアクリラートおよびポリメタクリラートはまた、アクリル化されたエポキシ、メタクリル化されたエポキシ、アクリル化されたポリエステル、メタクリル化されたポリエステル、アクリル化されたウレタン、メタクリル化されたウレタン、アクリル化されたシリコーン、メタクリル化されたシリコーンなどから形成され得る。
【0083】
分散組成物中の重合性モノマーまたはオリゴマーの含有量は、分散組成物の0.5重量%~99重量%、または分散組成物の1重量%~95重量%、または2重量%~90重量%、または5重量%~85重量%であり得る。
【0084】
分散組成物は、水性または非水性キャリアであり得る液体キャリアをさらに含み得る。液体キャリアは、組成物が液体であることを可能にする。液体キャリアの非存在下では、重合性モノマーまたはオリゴマーがこの役割を果たし得る。水性キャリアは水を含む。水性キャリアは、水混和性共溶媒および/または界面活性剤をさらに含み得る。水混和性溶媒の非限定的な例は、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、2,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールおよびこれらの混合物である。非水性キャリアは、任意の有機溶媒または他の有機液体であり得る。非水性キャリアはまた、シリコーン溶媒またはシリコーン流体であり得る。液体キャリアは、重合性モノマーまたはオリゴマーと同一であり得る。分散組成物中の液体キャリアの含有量は、分散組成物の0.5重量%~99重量%、または分散組成物の1重量%~95重量%、または2重量%~90重量%、または5重量%~85重量%であり得る。
【0085】
本発明の分散組成物は、ポリマーフィルムを形成するために使用することができる。ポリマーフィルムは、導電性フィルム、バリアフィルム、電極、カプセル封入された電気光学媒体層用結合剤層、密封層、端部シールまたは接着層であり得る。
【0086】
本発明の分散組成物は、接着接着層を形成するために使用することができる。積層構造用の接着剤組成物は一般に公知である。接着剤組成物は、積層構造の異なる層を互いに接着する接着層を形成するために使用される。このような接着剤組成物は、例えば、ポリウレタン系接着剤などのホットメルト型接着剤および/またはウェットコート接着剤を含み得る。
【0087】
電気光学組立品は積層構造であり、接着層を含み得る。電気光学組立品の接着層は、その機械的、熱的および電気的特性に関するある特定の要件を満たさなければならない。電気光学ディスプレイにおいて使用するための積層接着剤の選択は、ある種の問題を呈する。積層接着剤は通常、電気光学媒体の電気的状態を変化させるために必要とされる電界を印加する電極間に配置されるので、接着剤の導電特性は、ディスプレイの電気光学性能に著しく影響を及ぼし得る。
【0088】
積層接着剤の体積抵抗率は、電気光学媒体にわたる全体的な電圧降下に影響を及ぼし、これは媒体の性能における重要な要因である。電気光学媒体にわたる電圧降下は、電極にわたる電圧降下から積層接着剤にわたる電圧降下を差し引いたものに等しい。一方、接着剤層の体積抵抗率が高すぎると、接着層内で大幅な電圧降下が発生し、電気光学媒体において実用的な電圧降下を生成するために電極間により高い電圧が必要となる。このように電極間の電圧を増加させることは、電力消費を増加させ、増加した電圧を生成して切り替えるためにより複雑で高価な制御回路の使用を必要とし得るので望ましくない。他方、接着層の体積抵抗率が低すぎると、隣接する電極(すなわち、アクティブマトリクス電極)間で望ましくないクロストークが発生し、または機器が単にショートし得る。さらに、ほとんどの材料の体積抵抗率は温度の上昇と共に急速に減少するため、接着剤の体積抵抗率が低すぎると、ディスプレイの性能は、室温より実質的に高い温度で大きく変化する。
【0089】
これらの理由のため、ほとんどの電気光学媒体との使用に関して接着層の体積抵抗率値の最適な範囲が存在し、この範囲は電気光学媒体の体積抵抗率とともに変化する。カプセルに封入された電気泳動媒体の体積抵抗率は、典型的には約1010オーム・cmであり、他の電気光学媒体の体積抵抗率は、通常、同じ桁の大きさである。したがって、良好な電気光学性能のために、積層接着剤の体積抵抗率は、約20℃のディスプレイの動作温度で、好ましくは約108オーム・cm~約1012オーム・cm、または約109オーム・cm~約1011オーム・cmの範囲である。好ましくは、積層接着剤は、電気光学媒体自体と同様の、温度に伴う体積抵抗率の変化も有する。値は、25℃および50%相対湿度で1週間条件に馴化させた後の測定値に対応する。電気的特性に加えて、積層接着剤は、接着剤の強度、柔軟性、積層温度で耐える能力および流動する能力などを含むいくつかの機械的およびレオロジー的基準を満たさなければならない。
【0090】
上述の電圧降下を緩和するための1つの方法は、イオン性液体を含む、無機塩または有機塩などのイオン性ドーパントを接着剤組成物中に添加することである。ドーパントは、電気光学層中にも添加され得、低温性能も高めることができる。例えば、市販のポリウレタン接着剤組成物の性能を改善するために、組成物に塩または他の材料をドープすることができる。このようなドーパントの例は、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムである。しかしながら、経験により、このようなドーパントを配合されたいくつかの接着剤組成物は、アクティブマトリクスバックプレーン、特に有機半導体から作製されたトランジスタを含むアクティブマトリクスバックプレーンを損傷し得ることが発見された。さらに、上述したように、このようなドーパントの移動性は、特に高温で、ブルーミングを増加させることによって装置の電気光学性能に悪影響を及ぼし得る。導電性充填剤も、対応する接着層の体積抵抗率を制御するために接着剤組成物中で使用され得る。しかしながら、効果的であるためには、導電性充填剤は、分散された形態で接着層中に存在しなければならない。したがって、それらは前分散される。典型的には、前分散物の調製は、前分散キャリア中の導電性充填剤粒子を湿らせ、安定化させる界面活性剤の使用を必要とする。このような界面活性剤は、接着層中でも移動可能であるため、増加したブルーミングという問題を引き起こし得る。この問題は、導電性充填剤と添加剤を含む本発明の分散組成物を使用することによって解決することができる。この場合には、前分散物の調製中に使用される添加剤は、最終的に接着層のポリマーマトリクスの一部になる。したがって、添加剤はポリマーマトリクス中で移動可能でない。添加剤の存在は、従来の界面活性剤の必要性をなくし得るか、または少なくとも、導電性充填剤を含む前分散物の調製および安定化のための従来の界面活性剤の必要量を低減し得る。
【0091】
電気光学装置のエネルギー消費に著しく影響を及ぼすことなく電気光学装置のブルーミングを緩和するための技術は、異方性導電率を有する接着層を形成することによる。すなわち、xおよびy方向の導電率よりも高いz方向の導電率を示す接着層を作製することによる。上で定義され、
図1に示されるように、層のz方向は、接着層の面に垂直な方向である。xおよびy方向は、z方向と直交する。xおよびy方向(層の面の方向)の導電率は、横方向導電率と呼ばれる。対応する接着層の高い横方向導電率は、増加したブルーミングを引き起こす。層の異方性導電率は、層の硬化前に導電性充填剤粒子を適切に整列させることによって作出され得る。この技術の様々な局面は、当技術分野において、例えば、米国特許出願公開第2015/0176147号、米国特許第7,535,624号、米国特許第7,843,626号、米国特許第10,613,407号、米国特許第10,090,076号および米国特許第9,780,354号、国際出願第2012/081992号に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。異方性導電率を有する層を形成する過程の一例は、(a)導電性充填剤粒子および重合性モノマーまたはオリゴマーを含む分散組成物を調製する工程と、(b)分散組成物の湿潤フィルムを基材上に塗布する工程と、(c)導電性充填剤粒子を整列させるために湿潤フィルムにわたって電界を印加する工程と、(d)分散組成物を硬化させる工程とを含む。(z方向に)異方性導電率を有する層を効果的に形成するためには、層中の導電性充填剤の濃度は浸透限界よりも低くすべきである。ポリマーマトリクス中の充填剤の浸透限界は、その後にマトリクスの電気的特性に有意な変化が存在しないポリマーマトリクス中の最小充填剤濃度として定義される。導電性充填剤粒子は、磁気特性も有し得る。この場合には、導電性充填剤粒子は、硬化工程の前に、湿潤フィルムにわたる磁場を印加すると、湿潤フィルム内で整列され得る。導電性粒子はポリマーマトリクスにおいて整列された配置で固定化されているので、導電性充填剤粒子の整列とその後の層の硬化は、z方向での層の異方性導電率をもたらす。
【0092】
本発明の分散組成物は、ポリマーフィルムを製造するために異なる機構によって硬化され得る。ポリマーフィルムは、接着層として機能し得る。硬化機構の例としては、熱的、化学的および/または光活性化が挙げられる。硬化機構に応じて、分散組成物は、重合性モノマーまたはオリゴマー、充填剤および添加剤に加えて、他の材料を含み得る。
【0093】
本発明の分散組成物は、例えば電気光学材料層の結合剤などの電気光学組立品の他の部品においても使用され得る。本発明の分散組成物は、電気光学組立品の電気光学材料層の接着層および/または結合剤を形成するために使用される場合、改善された電気光学性能を提供することができる。
【0094】
本発明の分散組成物は、ポリウレタンをさらに含み得る。ポリウレタンは、水性または非水性媒体中のポリウレタン溶液またはポリウレタン分散物の形態で存在し得る。一般に、ポリウレタンは、ジイソシアナートおよびポリオールまたはジオールを含む重合過程によって調製される。
【0095】
本発明の分散組成物は、重合性モノマーまたはオリゴマーのブレンドを含み得る。重合性モノマーまたはオリゴマーのブレンドは、可溶性材料(分子形態)もしくは不溶性材料(粒子または液滴)、または可溶性材料と不溶性材料の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、得られたポリマーフィルムまたはポリマー部品は合成重合過程によって分散組成物から形成され得、1つの構成要素が第2のポリマー性構成要素の存在下で重合され、または両ポリマーが同時に形成され得る。いくつかの事例では、分散組成物は、乳化重合性モノマーまたはオリゴマーを含み得る。
【0096】
分散組成物の重合性モノマーまたはオリゴマーは、2またはそれを超える反応性官能基を含み得る。反応性官能基は、末端基として、骨格に沿って、または骨格から伸長した鎖に沿って、配置され得る。
【0097】
反応性官能基は、一般に、1またはそれを超える硬化種、例えば架橋試薬、鎖延長試薬などと反応するように構成された官能基を指す。いくつかの実施形態において、反応性官能基は、硬化種と反応して、架橋、熱可塑性結合、2種類のポリマー材料間の結合などの硬化された部分を形成する。ある特定の実施形態において、反応性官能基は、架橋試薬などの硬化種と反応して架橋を形成し得る。いくつかの事例では、反応性官能基は、特定の一連の条件下で、例えば特定の温度の範囲で別の反応性官能基と反応するように構成され得る。いくつかの実施形態において、反応性官能基は、接着性材料が熱可塑性乾燥を受けるような特定の条件下で反応し得る。反応性官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、カルボキシラート、アミン、イミン、イミド、アジド、エーテル、エステル、スルフヒドリル(チオール)、シラン、ニトリル、カルバマート、イミダゾール、ピロリドン、カーボナート、アクリラート、アルケニルおよびアルキニルが挙げられる。他の反応性官能基も可能であり、当業者は、本明細書の教示に基づいて、二重硬化接着剤とともに使用するのに適した反応性官能基を選択することができるであろう。当業者は、本明細書に記載されている硬化工程が、一般的に、接着材料の形成、例えばポリウレタン骨格などの接着性骨格の重合を指すのではなく、接着剤が機械的特性、粘度および/または接着性の実質的な変化を受けるように、接着材料が架橋を形成し、熱可塑性乾燥などを受けるような接着性材料のさらなる反応を指すことも理解するであろう。
【0098】
いくつかの実施形態において、官能性反応性基は、電磁放射線(例えば、可視光、UV光など)、電子ビーム、(例えば、溶媒抽出または縮合反応中に利用されるなどの)高温、化学化合物(例えば、チオレン)および/または架橋剤などの刺激の存在下で硬化種と反応する。例えば、ビニルアクリラートモノマーまたはオリゴマーを含む接着剤組成物は、光開始剤の存在下でUV照射を介して基材上で重合され得る。組成物の添加剤は、ビニルアクリラートモノマーまたはオリゴマーと共に重合され得、同じポリマーの一部であり得る。
【0099】
別の態様において、分散組成物は架橋剤も含み得る。架橋剤は、イソシアナート、エポキシ、ヒドロキシル、アジリジン、アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含み得る。架橋剤の非限定的な例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NGDE)、O,O,O-トリグリシジルグリセロール(TGG)、グリシジルメタクリラートのホモポリマーおよびコポリマーならびにN,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。いくつかの実施形態において、架橋剤を含む接着剤は、架橋剤の活性化温度に曝露されると架橋され得る。架橋剤は、分散組成物の重量で約100ppm~約15,000ppmの濃度で分散組成物中に存在し得る。
【0100】
充填剤、重合性モノマーまたはオリゴマー、および式Iによって表される添加剤を含む本発明の分散組成物は、電気光学組立品において接着層を形成するために使用することができる。電気光学組立品は、(a)第1の電極層、(b)電気光学材料層、(c)第1の接着層、および(d)剥離シートを順に備えるフロントプレーン積層体であり得る。フロントプレーン積層体は、剥離シートを除去し、露出した第1の接着層上に第2の電極層を接続することによって、電気光学装置に変換することができる。第1の電極層は、光透過性導電層を含み得る。
【0101】
本発明の分散組成物は、電気光学組立品中に接着層を形成するために使用することができ、電気光学組立品は、逆位のフロントプレーン積層体である。逆位のフロントプレーン積層体は、(i)第1の電極層、(ii)第1の接着層、(iii)電気光学材料層、および(iv)剥離シートを順に備える。逆位のフロントプレーン積層体はまた、電気光学材料層と電気光学材料層との間に第2の接着層を備え得る。逆位のフロントプレーン積層体は、剥離シートを除去し、露出した電気光学材料層上に(または第2の接着層上に)第2の電極層を接続することによって、電気光学装置に変換することができる。第1の接着層は、本発明の分散組成物によって形成され得る。第2の接着層も、本発明の分散組成物によって形成され得る。
【0102】
本発明の分散組成物は、ポリマー部品またはポリマーフィルムを形成するために使用することができる。ポリマーおよび高表面積充填剤を含む複合材料は、良好な機械的強度および/または良好なバリア特性を有するポリマー部品およびポリマーフィルムを形成することが公知である。例えば、ポリプロピレン中に0.1~0.5重量%の含有量のカーボンナノチューブを含むポリマー複合材料は、充填剤を含まない対応するポリマーと比較して良好な剛度(ヤング率として測定される)を示す。これらの複合材は、強度が向上し、軽量である(金属に比べて密度が低い)ため、エンジン用部品、建築用構造部品、家具等として非常に魅力的である。ポリマーは、熱可塑性、熱硬化性またはエラストマーであり得る。しかしながら、カーボンナノチューブおよび他の高表面積充填剤をポリマー中に分散させることは困難である。より低い品質の分散は、はるかに低い効率の機械的強度の利益をもたらす。低分子量ポリマー、界面活性剤またはこれらの組み合わせ中でのカーボンナノチューブの前分散物(マスターバッチ)の調製によって、良好な分散が改善される。典型的な過程は、低分子キャリアおよび/または界面活性剤もしくは分散剤中で、高濃度の充填剤として前分散物を最初に調製することを含む。しかしながら、最終ポリマー部品中のこのような低分子キャリアおよび/または界面活性剤もしくは分散剤材料の割合がわずかであっても、ポリマー部品またはポリマーフィルムの機械的強度に対して有害である。ポリマー部品またはポリマーフィルムは、典型的には、前分散物をポリマー材料と混合し、ポリマー前分散物の混合物を成形することによって形成される。マスターバッチは、固体の場合、混練機または二軸式押出機で調製され得る。あるいは、液体前分散物は、それが液体であれば、メディアミルで調製され得る。本発明の分散組成物は、ポリマー部品のための前分散物を作製するための低分子量ポリマーおよび/または界面活性剤の低減を可能にすることができ、または排除さえ可能にすることができる。
【0103】
図2Aに示されるように、いくつかの実施形態において、電気光学装置101は、第1の電極層110、電気光学材料層120および第2の電極層140を備える。組立品の異なる層は、分散組成物によって形成された接着層によって結合される。
図2Aにおいて、第2の電極層140は、第1の接着層130によって電気光学材料層に接着されている。いくつかの実施形態において、
図2Bに示されるように、1を超える接着層が電気光学装置102内に存在する。具体的には、この例では、第2の電極層140は、第1の接着層130によって電気光学材料層120に接着されており、第1の電極110は、第1の接着層130と同じまたは異なる材料を含み得る第2の接着層135によって電気光学材料層120に接着されている。
図3の電気光学装置103に示されるように、電気光学材料層125は、カプセル150および結合剤160を含み得る。カプセル150は、電気光学材料層125にわたる電界の印加によってカプセルの中を進ませることができる1またはそれを超える種類の粒子を封入し得る。いくつかの実施形態において、第1の電極層110は電気光学材料層125に直接隣接し得、第2の電極層140は第1の接着層130によって電気光学材料層に接着されている。例示的な実施形態において、
図4の電気光学組立品104に示されるように、第2の電極層140は、第1の接着層130によって電気光学材料層125に接着され得、第1の電極層110は、第2の接着層135によって電気光学材料層125に接着され得る。別の例示的な実施形態において、
図5の電気光学組立品105に示されるように、第1の電極層110は、第2の接着層130によって電気光学材料層125に接着され得、第2の電極140は、第1の接着層130によって電気光学材料層125に接着され得る。この事例では、第1および第2の接着層を形成する分散組成物は同一である。
【0104】
本発明の分散組成物によって形成される接着層は、フロントプレーン積層体および二重剥離シートなどの電気光学組立品に使用され得る。
図6に示されるように、いくつかの実施形態においては、フロントプレーン積層体600は、第1の電極層610、電気光学材料層625、および第1の剥離シート680を備える。剥離シート680は、第1の接着層630によって電気光学材料層に接着されている。別の実施形態においては、
図7に示されるように、二重剥離シート700は、2つの接着層を含む。具体的には、この例では、第1の剥離シート785は、第1の接着層730を用いて電気光学材料層725に取り付けられている。第2の剥離シート780は、第2の接着層735を用いて電気光学材料層725に取り付けられている。
【0105】
接着層は、任意の種類および数の層を組立品内の1またはそれを超える他の層に接着するために使用され得、組立品は、図面に示されていない1またはそれを超える追加の層を含み得ることを理解されたい。さらに、
図3、
図4および
図5はカプセルに封入された電気光学媒体を示しているが、接着層は、液晶、減衰内部反射および発光ダイオード組立品などの様々な電気光学組立品において有用である。
【0106】
いくつかの実施形態において、接着剤の体積抵抗率は、(例えば、約200℃の組立品の動作温度で)約108オーム・cm~約1012オーム・cm、または約109オーム・cm~約1011オーム・cmの範囲であり得る。体積抵抗率の他の範囲も可能である。値は、25℃および50%相対湿度で1週間条件に馴化させた後の測定値に対応する。形成された接着層(硬化後)は、特定の平均コート重量を有し得る。例えば、接着層は、2g/m2~25g/m2の範囲の平均コート重量を有し得る。いくつかの実施形態において、接着層は、少なくとも2g/m2、少なくとも4g/m2、少なくとも約5g/m2、少なくとも約8g/m2、少なくとも10g/m2、少なくとも15g/m2、または少なくとも20g/m2の平均コート重量を有する。ある特定の実施形態において、接着層は、25g/m2未満もしくはそれに等しい、20g/m2未満もしくはそれに等しい、15g/m2未満もしくはそれに等しい、10g/m2未満もしくはそれに等しい、8g/m2未満もしくはそれに等しい、5g/m2未満もしくはそれに等しい、または4g/m2未満もしくはそれに等しい平均コート重量を有する。上に表記された範囲の組み合わせ(例えば、約2g/m2~約25g/m2、4g/m2~10g/m2、5g/m2~20g/m2、8g/m2~25g/m2)も可能である。他の範囲も可能である。硬化前の接着層は、特定の平均ウェットコート厚さ(例えば、接着剤が電気光学組立品の電気的および/または光学的特性を著しく変化させないような)を有し得る。例えば、接着層は、1ミクロン~100ミクロン、1ミクロン~50ミクロン、または5ミクロン~25ミクロンの範囲の平均ウェットコート厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、接着層は、25ミクロン未満、20ミクロン未満、15ミクロン未満、または12ミクロン未満、10ミクロン未満、または5ミクロン未満の平均ウェットコート厚さを有し得る。いくつかの実施形態において(例えば、接着剤が電気光学材料に向けてウェットコーティングされている実施形態において)、接着層は、1ミクロン~50ミクロン、または5ミクロン~25ミクロン、または5ミクロン~15ミクロンの平均ウェットコート厚さを有し得る。いくつかの実施形態において(例えば、接着剤が層上にコーティングされ、次いで電気光学材料に積層される実施形態において)、接着層は、15ミクロン~30ミクロン、または20ミクロン~25ミクロンの平均ウェットコート厚さを有し得る。他のウェットコート厚さも可能である。
【0107】
接着層は下部層全体を覆い得る、または接着層は下部層の一部のみを覆い得ることを理解されたい。
【0108】
さらに、接着層は、通常はより厚い接着層を作る積層体として塗布され得、または通常は積層体より薄い層を作るオーバーコートとして塗布され得る。オーバーコート層は、接着剤が電気光学材料表面(または別の表面)上にコーティングされ得、第2の硬化がオーバーコーティング後に材料を硬化させるように、オーバーコートの前に第1の硬化が起こる二重硬化システムを利用し得る。オーバーコート層は、その下に存在する表面が粗く、薄い層のみが塗布される場合には粗くてもよく、またはオーバーコート層は、その下に存在する粗い表面を平坦化するために使用してもよい。平坦化は、粗い表面を平坦化するためにオーバーコート層が塗布される、例えば、任意の空隙を充填し、表面を滑らかにし、全体の厚さを最小限に増加させるのに十分な接着剤を添加する、単一の工程で行われ得る。あるいは、平坦化は2段階で行われ得る。オーバーコート層は粗い表面を最小限にコーティングするために塗布され、第2のコーティングは平坦化するために塗布される。別の選択肢では、オーバーコート層は滑らかな表面に塗布され得る。
【0109】
再び
図3、
図4および
図5を参照すると、いくつかの実施形態においては、電気光学組立品は、電気光学材料層125、カプセル150および結合剤160を含む。ある特定の実施形態において、結合剤は、上述のように接着剤でもあり得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、第1の電極層および/または第2の電極層は、ディスプレイの画素を画定するようにパターン化された1またはそれを超える電極の組を含む。例えば、1つの組の電極を細長い行電極にパターン化することができ、別の組の電極を行電極に対して直角に走行する細長い列電極にパターン化することができ、画素は行電極と列電極の交差部によって画定される。あるいは、いくつかの実施形態において、1つの電極層は単一の連続する電極の形態を有し、第2の電極層は画素電極のマトリクスへとパターン化され、これらの各々がディスプレイの1つの画素を画定する。タッチペン、印字ヘッドまたはディスプレイから分離した同様の可動電極とともに使用することが意図される別のタイプの電気光学ディスプレイでは、電気光学層に隣接する層の1つのみが電極を備え、電気光学層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気光学層を損傷するのを防止することが意図される保護層である。
【0111】
再び
図2A、
図2B、
図3、
図3、
図4および
図5を参照すると、第1の電極層110は、ポリマー性フィルムまたは同様の支持層(例えば、比較的薄い光透過性電極を支持することができ、比較的脆弱な電極を機械的損傷から保護する)を含むことができ、第2の電極層140は、支持部分および複数の画素電極(例えば、ディスプレイの個々の画素を画定する)を含む。いくつかの事例では、第2の電極層140は、ディスプレイを動作するために必要とされる電位を画素電極上に生じさせるために(例えば、ディスプレイ上に所望の画像を与えるのに必要な表示状態に様々な画素を切り替えるために)使用される、非線形機器(例えば、薄膜トランジスタ)および/またはその他の回路をさらに備え得る。
【0112】
本発明の分散組成物は、(a)充填剤前分散物を作製するために充填剤、液状キャリアおよび添加剤の組成物を分散させること;(b)重合性モノマーまたはオリゴマーを添加すること;(c)組成物を基材上に塗布すること;および(d)塗布された組成物を硬化させることにより調製され得る。分散過程は、ボールミル、メディアミル、押出機などの市販の装置を使用して達成され得る。液体キャリアは、水性または非水性キャリアであり得る。
【0113】
あるいは、重合性モノマーまたはオリゴマーは前分散物の一部である。すなわち、本発明の分散組成物は、(1)(a)カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンおよびカーボンブラックからなる群から選択される充填剤と;(b)重合性モノマーまたはオリゴマーと;(c)液体キャリアと;(d)式Iで表される添加剤であって、式中、R1は、10~24個の芳香族原子を含む多環芳香族基であり、前記芳香族原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択され;nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり;Yは、エステル、チオエステル、アミド、尿素、チオ尿素、カルバマート、S-チオカルバマート、ベータヒドロキシエステル、-Q-CR2R3-CR4(OH)-および-Q-SiR5R6-からなる群から選択される官能基であり;Qは、O、NHまたはSであり;R2、R3、R4は、独立して、水素、または1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基であり;R5、R6は、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびにZは、反応性官能基を含む基であり、前記反応性官能基は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、エポキシ、イソシアナート、ヒドロキシ、チオール、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、シランおよびアミンからなる群から選択される添加剤と、を含む組成物を混合すること;(2)前記組成物を湿潤フィルムとして基材上に塗布すること;ならびに(3)前記重合性モノマーまたはオリゴマーを前記添加剤とともに重合させるために、前記塗布された組成物を硬化させることによって調製され得る。この過程では、重合性モノマーまたはオリゴマーは、分散工程に曝された組成物の一部である。
【0114】
本発明の分散組成物の調製の過程の一例を
図8A~8Cに示す。前分散物の調製を
図8Aに記載する。金属ボール825を含む撹拌されたボールミル820中に、液体キャリア805、充填剤粒子810および添加剤815を添加する。分散され、脱凝集された安定な充填剤粒子を含む前分散物830が生成されるまで混合物を粉砕する。前分散物830中に、重合性モノマーまたはオリゴマー864を添加し、混合して、分散組成物850を調製する。分散組成物は、硬化されていない膜860として基材870上にコーティングされ、これがUV光890を使用して紫外線に曝される。この工程の間に、硬化されたポリマーフィルム865が調製される。
【0115】
あるいは、重合性モノマーまたはオリゴマーが前分散物中に含められ得る。すなわち、液体キャリア805、充填剤粒子810、添加剤815および重合性モノマーまたはオリゴマー864の混合物は、分散され、脱凝集された安定な充填剤粒子を含む前分散物が生成されるまで粉砕される。対応する分散組成物を基材上に塗布し(または鋳型中に挿入し)、硬化させてポリマーフィルムまたはポリマー部品を製造する。
【実施例】
【0116】
実施例1
【0117】
図9に示されるように、1-ピレンブタノール(1-pyrenebutnol)と塩化アクリロイルの間での反応によって、ピレン基をアクリル酸官能基に結合させた。この反応の生成物である4-(1-ピレニル)ブチルアクリラートは、本発明の分散組成物中でそのまま使用することができ、またはその使用前にオリゴマー化もしくはポリマー化することができる。あるいは、4-(1-ピレニル)ブチルアクリラートは、その使用前に他のアクリルまたはメタクリルモノマーとオリゴマー化またはポリマー化することができる。
【0118】
実施例2
【0119】
0.6505g(2.80mmol)の量の1-ピレンメタノールを10mLのシンチレーションバイアル中に添加し、続いて3.20gのテトラヒドロフランを添加した。固体を溶媒に溶解した後、0.538グラム(2.67mmol)の量の3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアナートを添加し、続いて0.0084g(0.013mmol)のジブチルスズジラウラートを添加した。バイアルに窒素をパージし、周囲条件下で24時間反応させた。赤外分光法によってイソシアナート官能基の完全な消費を確認し(約2250cm
-1に-N=C=O伸縮が存在しない)、
図10の反応スキームに示されるように所望のカルバマートを得た。
【0120】
実施例3
【0121】
1.1934gの量の実施例2で調製した溶液をシンチレーションバイアルに添加し、続いて0.10gの多層カーボンナノチューブ(Sigmaによって供給;659258)および8gのトルエンを添加した。超音波処理機(Q Sonica Model Q700、50%振幅)によって混合物を5分間超音波処理した。調製された分散物は、「本発明の実施例3」と表記されている
図11の写真に示されるように、少なくとも7日間沈降に対して安定であった。
【0122】
比較例4
【0123】
0.10gの量の多層カーボンナノチューブ(Sigmaによって供給;659258)および8gのトルエン。超音波処理機(Q Sonica Model Q700、50%振幅)によって混合物を5分間超音波処理した。調製された分散物は、「比較例4」と表記されている
図11の写真に示されるように、2時間以内に沈降した。
【0124】
実施例3および4の分散物の比較の結果は、多環芳香族基を有する添加剤を含む分散組成物が沈降に対して安定であることを示している。これは、添加剤を含まない対応する分散物と比較して、色または導電率または機械的特性に関して改善された性能を有する一貫したポリマー性フィルムを形成するために本分散物を容易に使用することができることを意味する。
【0125】
実施例5
【0126】
実施例3から得られた組成物は、異方性接着層を形成するために使用され得る。必要であれば、開始剤とともに、重合性モノマーまたはオリゴマーが分散組成物中に添加され得る。次いで、湿潤フィルムを形成するために、重合性モノマーまたはオリゴマーを含む分散組成物が基材上に塗布され得る。充填剤粒子をフィルムのz方向に整列させるために、湿潤フィルムにわたって電界が印加される。整列は、0.2kV/cm、1kHzの電界の印加によって行われる。最終工程は、異方性導電率を有する層を形成するための、熱の適用またはUV放射への曝露によるポリマーマトリクスの硬化である。接着層の導電率は、層のz方向(層の面に垂直)において、xおよびy方向の導電率(横方向導電率)と比較してより高い。
【国際調査報告】