(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】FRZBタンパク質の「ネトリン様」ドメインに由来するペプチドの治療可能性
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20230921BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20230921BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230921BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230921BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230921BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230921BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C07K7/08
C07K14/00
A61P19/02
A61K38/10
A61K38/16
A61P19/10
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571252
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063109
(87)【国際公開番号】W WO2021233896
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512079439
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ロレーヌ
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】522453393
【氏名又は名称】センター ホスピタリエ リージョナル ユニベルシターレ ドゥ ナンシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイロット,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クローデル,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】シャロン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゾ,ジャン-イブ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA20
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZA96
4C084ZA97
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA20
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、Wnt/β-カテニン及び/又はHippo/YAP/TAZ経路関連疾患、特に変形性関節症の予防又は治療において有用である、FRZBタンパク質のネトリン様ドメインに由来する新規ペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列を有するペプチドを含む、16~50アミノ酸のペプチドであって、
DRX
3GKKVKRWDMKX
14RH(配列番号1)
式中、X
3及びX
14が、互いに独立して、任意のアミノ酸である、ペプチド。
【請求項2】
X
3及びX
14が、互いに独立して、アラニン、ロイシン、イソロイシン、又はセリンである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号2(DRLGKKVKRWDMKLRH)、配列番号3(DRAGKKVKRWDMKARH)、配列番号9(DRIGKKVKRWDMKIRH)、又は配列番号10(DRSGKKVKRWDMKSRH)の配列を含む、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
薬物として使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドと、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項6】
変形性関節症、骨粗鬆症、がんからなる群から選択されるWnt/β-カテニン及び/又はHippo/YAP/TAZ経路関連疾患の予防又は治療において使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記変形性関節症の予防又は治療における、請求項6に記載の使用のためのペプチド又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Wnt/β-カテニン及び/又はHippo/YAP/TAZ経路関連疾患、特に変形性関節症の予防又は治療において有用である、FRZBタンパク質のネトリン様ドメインに由来する新規ペプチドに関する。
【0002】
以下の説明において、角括弧([])の参照は、明細書の終わりにある参照文献のリストを指す。
【背景技術】
【0003】
滑膜関節は、骨を接続し、動きを支持すると同時に、異なる骨格要素間の運動範囲を制限する特殊な構造である。これらの特殊な器官様構造において、骨の支持部は、硝子質の薄層又は関節軟骨で頂部を覆われている。間にある関節腔は、滑膜によって内側を覆われている。これらの異なる組織は、一緒になって、関節面間の非常に低摩擦かつ十分に潤滑な、滑らかな動きを可能にしている。関節のホメオスタシス、特に関節軟骨及び軟骨下骨のホメオスタシスは、関節機能の維持に不可欠であり、同化シグナル伝達経路と異化シグナル伝達経路との間のバランスに決定的に依存する(Lories and Luyten,2011)[1]。ホメオスタシスは、全タンパク質又は切断されたタンパク質のいずれかの形態で、可溶性因子及び細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)によって制御される、関節軟骨を特徴付ける安定した軟骨細胞表現型の維持を必要とする。OAの過程における主要な表現型の変化を、
図1に示す。
【0004】
ホメオスタシスの喪失は、軟骨の質の段階的な劣化及び軟骨下骨の肥厚化、並びに低度~中程度の滑膜炎症をもたらし、変形性関節症(osteoarthritis、OA)につながる。OA疾患は、慢性自己免疫機構の非存在下での関節痛及び機能の喪失を特徴とする障害の群である。OAの有病率は年齢とともに増加し、世界中で数百万人の人々が影響を受けている大きな社会経済的課題を表す(Hunter and Felson,2006)[2]。人口の高齢化及び肥満などのリスク因子のうちのいくつかにおける流行の増加は、OA関連の問題及び障害が社会への影響を増加させるばかりであることを示唆している。今日の薬物療法の選択肢は依然として非常に限定されており、鎮痛剤及び非ステロイド性抗炎症薬が挙げられる。進行したOAにおいては、多くの場合、関節プロテーゼ手術が必要とされる(Hunter and Felson,2006)[2]。
【0005】
疫学データ及び臨床データは、OAが、遺伝的及び後天的又は環境的要因の両方が寄与する複雑な病因を有する疾患であるという見解を支持する(Valdes and Spector,2008)[3]。これらの要因は相互作用し、疾患の発症、進行、及び結果を決定する。OAに関連する遺伝的要因の特定はまた、骨格発達又は成体関節組織におけるホメオスタシスの維持に重要な経路に関する重要な情報を伝達し、関節ホメオスタシスを維持するための治療標的を特定する。感受性遺伝子における多形は、顕性骨格異常を引き起こすことなくOAに関連している。これらの関連には、当初FRZBと名付けられた天然Wntモジュレーターである、分泌型frizzled関連タンパク質(secreted
frizzled-related protein、SFRP)3などの骨格発達におけるそれらの役割から既
知である遺伝子における多型が含まれる。FRZBは、Wntリガンドとの相互作用に関与するシステインリッチドメイン(CRDFRZB)及び、ネトリン様ドメイン(NTNFRZB)の、2つの顕著なドメインを含む。Pr.Loriesの実験室の研究は、異なるマウスモデルにおいてFRZBの欠損がOAにつながることを実証している(Lories et al.,2007)[4]。次いで、この実験室において、FRZBを欠
損したマウスが、それらのトランスクリプトームの有意な修飾を受けて、古典的Wnt経路の活性を増加させたことが示された(Lodewyckx et al.,2012)[5]。更に、Dickopf関連タンパク質-1(Dkk1、Wnt拮抗剤)の濃度の増加は、関節腔狭小化(ヒトOAにおける関節軟骨損失のマーカーとして認められた放射線的兆候である)のリスクの低減と関連付けられている(Lane et al.,2007)[6]。
【0006】
更に、β-カテニン活性化に関与する古典的Wnt経路は、軟骨ホメオスタシスの制御に寄与する。一方で、一部の研究は、β-カテニンが関節軟骨の完全性を維持し得ることを実証した。例えば、ごく近年の研究は、β-カテニンの活性化が成熟関節軟骨におけるヘッジホッグ誘導性軟骨劣化を防止することを実証した(Rockel et al.,2016)[7]。更に、Di Chenのグループは、特に関節軟骨においてβ-カテニン及びT細胞因子(Wnt古典的経路を調節する転写因子)の阻害剤を発現するトランスジェニックマウス(Col2a1プロモーターの制御下)が、対照と比較して有意な軟骨破壊を発症することを示した(Zhu et al.,2008)[8]。一方、いくつかの研究は、その過剰が軟骨劣化をもたらすβ-カテニン活性化の有害な影響に光を当てている(Tamamura et al.,2005)[9]。更に、Di Chenのグループはまた、成人マウス由来の関節軟骨細胞におけるβ-カテニンの構成的活性化(Col2a1プロモーターの制御下での構成的に活性なβ-カテニンのノックイン)が、高MMP-13、X型コラーゲン、及びオステオカルシン発現を含むOA様特徴をもたらすことを示した(Zhu et al.,2009)[10]。
【0007】
別のシグナル伝達経路であるHippo/YAP/TAZ経路もまた、OAの病態生理学に関連している(Gong et al.,2019)[11]。この研究において、siRNAを使用してYAP経路を遮断すること(YAPを標的とすること)が、その病理のマウスモデルにおけるインビボでのOAの進行を軽減させた。ごく近年、YAP阻害剤であるベルテポルフィンの使用が、OAのマウスモデルにおける軟骨ホメオスタシスの維持を可能にした(Zhang et al.,2020)[12]。
【0008】
カルモジュリン-キナーゼII(Calmodulin-Kinase II、CamkII)の活性化は成長板軟骨細胞の肥大化を誘発することが示されたが(Li et al.,2011)[13]、この効果は、β-カテニンの同時活性化を必要とした。更に、CamkII活性化の選択的拮抗作用がマウスモデルにおけるOAの発症及び進行を悪化させることが、2016年の変形性関節症についての世界会議で示された(Nalesso et al.,2016)[14]。最後に、近年、ネトリン様ドメイン(NTNFRZB)のみを含むFRZBの短縮型が、古典的Wnt経路を阻害しながら、(CamKIIの活性化を通じて)非古典的Wnt経路を強力に活性化できることが実証された。これは、骨形成において(Thysen et al.,2014)[15]及び軟骨形成モデルにおいて(Thysen et al.,2014)[16]示され、その両方がWntシグナルによって厳密に制御されており、その場合、初期軟骨形成プロセスの増加をもたらす(II型コラーゲン及びアグリカンが増加する)。
【0009】
非常に興味深いことに、Wnt/β-カテニン(Cui et al.,2018)[17]及びHippo/YAP/TAZ(Zheng et al.,2019)[18]の両方の経路は、がんの発症及び/又は発生に対する重要な要因として広範に記載されている。したがって、そのような経路の阻害剤は、がん治療の分野において潜在的に興味深い手がかりを表し得る。
【0010】
変形性関節症に関与するシグナル伝達経路の調節において有効であることが既に示されている全タンパク質FRZB(並びにそのネトリン様ドメインのみを含む短縮型)のサイ
ズは、34kDaである。サイズが大きいことから、このタンパク質又はその短縮型は、インビボ実験において免疫原性であり得る。これが、免疫系反応のリスクを低減するために、全タンパク質と同じ又は同様の特性(生物学的活性)を有するタンパク質FRZBからペプチドを導出することが興味深い場合がある理由である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、変形性関節症において過剰発現されるWnt/β-カテニン典型的経路の発現を減少させ、変形性関節症の病態生理学に関与するHippo/YAP/TAZ経路の発現を減少させ、かつ関節の保護的役割を有する非古典的CamKII経路の発現を増加させる能力を有する、FRZBタンパク質のネトリン様ドメインに由来する新規ペプチドを予想外に特定している。
【0012】
ペプチドは元来、FRZBタンパク質のネトリン様ドメインの配列において、アルファ螺旋構造化を示す要素が存在し得、当該ドメインの他のタンパク質パートナーとの相互作用を可能にするという考えで設計されている。したがって、ネトリン様ドメインに由来し、かつこの基準に対応する、2つのペプチド配列PEP12(ATQKTYFRNNYN、配列番号4)及びPEP16(DRLGKKVKRWDMKLRH、配列番号2)が試験されている。しかしながら、PEP12は、PEP16のものと同様の二次アルファ螺旋立体配座を有するようにコンピュータ予測によって選択されたものの、PEP16とは異なり、以下に記載の試験されたシステムにおいて完全に無効であることが判明した。その時点では、FRZBタンパク質のネトリン様ドメインから活性ペプチドを導出することは、予想したほど明白ではないように思われた。
【0013】
PEP16は、ペプチドであって、その配列がアルファ螺旋を形成する傾向を有すると予測されており、かつ古典的(Wnt/β-カテニン)及び非古典的(CamKII)Wnt経路の調節において役割を有する(すなわち、変形性関節症において過剰発現される古典的経路の活性化を低下させ、関節の保護的役割を有する非古典的経路の活性化を増加させる)、ペプチドである。加えて、PEP16は、変形性関節症の生理病理学に特に関与する、Hippo/YAP/TAZ経路の活性化を低減することができる。変形性関節症軟骨を特異的に標的化するために、PEP16は、コラーゲン2a1(col2a1)への結合に特異的なアドレス指定配列でベクトル化され得る。
【0014】
アルファ螺旋立体配座がPEP16の活性に不可欠であったことを考慮して、本発明者らは、次いで、このアルファ螺旋立体配座を促進するために、PEP16ペプチドから変異配列を導出した。本発明者らはまた、PEP16の活性に強く関連付けられ得るトリプトファン残基のない変異体配列(結合)を、試験した5つの配列の中に含めている。次いで、この変異体配列は、この配列の立体障害がトリプトファン残基を介したより選択的な結合を構成することができるため、活性の陰性対照を構成し得る。これらの変異体配列において、疎水性アミノ酸のアラニンへの変異は、予測される螺旋形状を尊重することを可能としたが、アラニンはこの構造的特性を有することから螺旋の巻きを好み、ひいては潜在的に螺旋の剛性を高める。更に、リジンのアルギニンへの変換は、ペプチドの電荷の概念及びその包括的な電荷全体を、その一次配列を変更しながら保存することを可能とし、電荷のみに起因し得る可能性のある効果を解明する。5つの変異体配列は、以下のとおりである(PEP16からのバリエーションは太字)。
【表1】
【0015】
そのうちの1つ(PEP16ビス:DRAGKKVKRWDMKARH、配列番号3)は、SuperTOPflash古典的Wnt経路のレポーター系における初期配列PEP16と非常に類似した特性(生物学的活性)を有したことから、特に興味深いものであった。
【0016】
他の変異は、本発明の一部であり、3位及び14位のロイシン残基は、イソロイシン(I)又はセリン(S)残基(PEP16からのバリエーションは太字)に変更された。
【表2】
【0017】
したがって、本発明の目的は、以下の配列を有するペプチドを含む、16~50アミノ酸のペプチドに関し、
DRX3GKKVKRWDMKX14RH(配列番号1)
式中、X3及びX14は、互いに独立して、任意のアミノ酸である。
【0018】
本発明のペプチドの特定の実施形態によれば、X3及びX14は、互いに独立して、アラニン、ロイシン、イソロイシン、又はセリンである。例えば、本発明のペプチドは、配列番号2(DRLGKKVKRWDMKLRH)、配列番号3(DRAGKKVKRWDMKARH)、DRIGKKVKRWDMKIRH(配列番号9)、若しくはDRSGKKVKRWDMKSRH(配列番号10)の配列を含むか、又はそれからなる。
【0019】
本発明の別の目的は、薬物として使用するための本発明のペプチドに関する。
【0020】
本発明の別の目的は、本発明のペプチドと、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物に関する。
【0021】
本発明の別の目的は、変形性関節症、骨粗鬆症、及びがんからなる群から選択されるWnt/β-カテニン及び/又はHippo/YAP/TAZ経路関連疾患の予防又は治療において使用するための、本発明のペプチド又は医薬組成物に関する。好ましくは、変形性関節症の予防又は治療において使用するための、本発明のペプチド又は医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】OAの過程における関節軟骨細胞の表現型の変化を表す。表現型バイオマーカーを細胞の周りに示し、表現型の主なモジュレーターを細胞内に示す。+:刺激効果、-:抑制効果。
【
図2-1】非処理対照(CTL)と比較して、30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)で処理したATDC5マイクロマスにおける、1、7、14、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)ctgf、(D)mmp3、及び(E)mmp13の相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、3つの実験を表す。
【
図2-2】非処理対照(CTL)と比較して、30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)で処理したATDC5マイクロマスにおける、1、7、14、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)ctgf、(D)mmp3、及び(E)mmp13の相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、3つの実験を表す。
【
図2-3】非処理対照(CTL)と比較して、30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)で処理したATDC5マイクロマスにおける、1、7、14、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)ctgf、(D)mmp3、及び(E)mmp13の相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、3つの実験を表す。
【
図3-1】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及びPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおける、1、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)mmp3、(D)mmp13、及び(E)ankrdの相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、2つの実験((E)においては3つの実験)を表す。
【
図3-2】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及びPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおける、1、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)mmp3、(D)mmp13、及び(E)ankrdの相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、2つの実験((E)においては3つの実験)を表す。
【
図3-3】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及びPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおける、1、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)mmp3、(D)mmp13、及び(E)ankrdの相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。結果は、2つの実験((E)においては3つの実験)を表す。
【
図4】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及びPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおけるグリコサミノグリカンの定量化を表す。アルシアンブルー染色は、28日目に実施されている。結果を、生化学的定量化後の吸光度(650nm)で表す。
*P<0.05。結果は、2つの実験を表す。
【
図5-1】(A)300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び同時に100ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)、(B)8X YAP応答要素(8x GTIICレポーター)、又は(C)3、30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P3、P30、P100、及びP300)、及び同時に100ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)の制御下での、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む構築物を使用して評価された、目的のプロモーターの転写活性を表す。データを、チロシンキナーゼプロモーターの制御下でのウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla luciferase under the control of tyrosine kinase promoter、TK-RL)を使用して正規化した。結果を、ホタル/ウミシイタケルシフェラーゼ活性の比として表す。NSC668036(NSC、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の広範な阻害剤)を、Wnt3a拮抗作用の陽性対照として使用した。
*P<0.05。結果は、2つの実験を表す。
【
図5-2】(A)300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び同時に100ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)、(B)8X YAP応答要素(8x GTIICレポーター)、又は(C)3、30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P3、P30、P100、及びP300)、及び同時に100ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)の制御下での、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む構築物を使用して評価された、目的のプロモーターの転写活性を表す。データを、チロシンキナーゼプロモーターの制御下でのウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla luciferase under the control of tyrosine kinase promoter、TK-RL)を使用して正規化した。結果を、ホタル/ウミシイタケルシフェラーゼ活性の比として表す。NSC668036(NSC、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の広範な阻害剤)を、Wnt3a拮抗作用の陽性対照として使用した。
*P<0.05。結果は、2つの実験を表す。
【
図6】非処理対照(CTL)と比較して、30、100、及び300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)で処理し、28日間培養されたATDC5マイクロマスにおける、(A)コンピュータプログラム(青色ピクセル定量化)での、(B)生化学的定量化(グアニジンHCl 6M中の染色の可溶化)での、グリコサミノグリカン定量化を表す。アルシアンブルー染色は、28日目に実施された。
*P<0.05。結果は、3つの実験を表す。
【
図7-1】非処理対照(CT又はCTL)と比較して、100及び300ng/mLのPEP16での処理後1、7、14、及び21日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamkII経路活性化を調査するウェスタンブロットを表す。結果を、総タンパク質形態に対する活性タンパク質形態で表す。結果は、3つの実験を表す。
【
図7-2】非処理対照(CT又はCTL)と比較して、100及び300ng/mLのPEP16での処理後1、7、14、及び21日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamkII経路活性化を調査するウェスタンブロットを表す。結果を、総タンパク質形態に対する活性タンパク質形態で表す。結果は、3つの実験を表す。
【
図8-1】非処理対照(CT又はCTL)と比較して、300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスでの処理後21及び28日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamKII経路活性化を調査するウェスタンブロットを表す。結果を、総タンパク質形態に対する活性タンパク質形態(すなわち、(B)についてはP-CamKII)で表す。結果は、3つの実験を表す。
【
図8-2】非処理対照(CT又はCTL)と比較して、300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスでの処理後21及び28日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamKII経路活性化を調査するウェスタンブロットを表す。結果を、総タンパク質形態に対する活性タンパク質形態(すなわち、(B)についてはP-CamKII)で表す。結果は、3つの実験を表す。
【
図9】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及び/又は100pg/mLのIL1βで24時間処理したマウス関節軟骨細胞の培養上清における、MMP13酵素活性を表す。IL1βを、MMP13活性の陽性対照として使用した。
*P<0.05。
【
図10】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16及び/又は100ng/mLのwnt3aで処理したマウス関節軟骨細胞における、24及び48時間での(A)アグリカン、(B)col2a1の相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。結果は、3つの実験を表す。
【
図11-1】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び/又は100、50、30ng/mLのwnt3aで処理したマウス関節軟骨細胞における、(A、B)mmp3及び(C)ankrdの相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。Mmp3発現を刺激の24時間後にモニタリングし、一方、ankrd発現を刺激の12時間後にモニタリングした。結果は、3つの実験を表す。
【
図11-2】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び/又は100、50、30ng/mLのwnt3aで処理したマウス関節軟骨細胞における、(A、B)mmp3及び(C)ankrdの相対発現レベルを表す。結果を、ハウスキーピング遺伝子ppiaで正規化した。
*P<0.05。Mmp3発現を刺激の24時間後にモニタリングし、一方、ankrd発現を刺激の12時間後にモニタリングした。結果は、3つの実験を表す。
【
図12】非処理対照(CTL)と比較して、300ng/mLのPEP16で7日間処理(7日間で3回刺激)したヒト関節軟骨外植片(人工膝関節全置換手術後の末期変形性関節症の3人の患者由来)の培養上清における、MMP13酵素活性を表す。
*P<0.05。(N=3人の患者)
【
図13-1】骨形成分化に対するPEP16の影響を表す。MC3T3-E1細胞を、異なる濃度のPEP16で21日間刺激し、非処理対照と比較した。結果を、ハウスキーピング遺伝子S29で正規化した。
*P<0.05。(A)オステオカルシン及びオステリックスの相対発現レベルを研究し、同様に(B)Wnt/β-カテニン経路及びCamKII経路活性化を調査するウェスタンブロット、並びに(C)21日間の分化培養後の石灰化レベルを研究した。結果は、3つの実験を表す。
【
図13-2】骨形成分化に対するPEP16の影響を表す。MC3T3-E1細胞を、異なる濃度のPEP16で21日間刺激し、非処理対照と比較した。結果を、ハウスキーピング遺伝子S29で正規化した。
*P<0.05。(A)オステオカルシン及びオステリックスの相対発現レベルを研究し、同様に(B)Wnt/β-カテニン経路及びCamKII経路活性化を調査するウェスタンブロット、並びに(C)21日間の分化培養後の石灰化レベルを研究した。結果は、3つの実験を表す。
【
図13-3】骨形成分化に対するPEP16の影響を表す。MC3T3-E1細胞を、異なる濃度のPEP16で21日間刺激し、非処理対照と比較した。結果を、ハウスキーピング遺伝子S29で正規化した。
*P<0.05。(A)オステオカルシン及びオステリックスの相対発現レベルを研究し、同様に(B)Wnt/β-カテニン経路及びCamKII経路活性化を調査するウェスタンブロット、並びに(C)21日間の分化培養後の石灰化レベルを研究した。結果は、3つの実験を表す。
【
図13-4】骨形成分化に対するPEP16の影響を表す。MC3T3-E1細胞を、異なる濃度のPEP16で21日間刺激し、非処理対照と比較した。結果を、ハウスキーピング遺伝子S29で正規化した。
*P<0.05。(A)オステオカルシン及びオステリックスの相対発現レベルを研究し、同様に(B)Wnt/β-カテニン経路及びCamKII経路活性化を調査するウェスタンブロット、並びに(C)21日間の分化培養後の石灰化レベルを研究した。結果は、3つの実験を表す。
【
図14-1】実施例3:a)CTL、300ng/mlのPEP12、及び1000ng/mlのPEP12についての、細胞外マトリックス石灰化の生化学的定量化(吸光度:405nm)、並びにb)1日目(D1)及び21日目(D21)の、300ng/ml、1000ng/mlの濃度の、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、PEP16及びPEP12についての特定のアルカリホスファターゼ活性(μmolのパラ-ニトロフェノール/分/mgのタンパク質)の結果を表す。
【
図14-2】実施例3:a)CTL、300ng/mlのPEP12、及び1000ng/mlのPEP12についての、細胞外マトリックス石灰化の生化学的定量化(吸光度:405nm)、並びにb)1日目(D1)及び21日目(D21)の、300ng/ml、1000ng/mlの濃度の、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、PEP16及びPEP12についての特定のアルカリホスファターゼ活性(μmolのパラ-ニトロフェノール/分/mgのタンパク質)の結果を表す。
【
図15-1】300ng/mlの濃度のペプチドPEP16、PEP I、又はPEP sでの、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、実施例4に説明するように培養したATDC5細胞における、II型コラーゲン並びにアグリカン、CTGF、及びMMP3についてのD1及びD14に実施したqPCR分析(PPIAハウスキーピング遺伝子に対して正規化)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【
図15-2】300ng/mlの濃度のペプチドPEP16、PEP I、又はPEP sでの、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、実施例4に説明するように培養したATDC5細胞における、II型コラーゲン並びにアグリカン、CTGF、及びMMP3についてのD1及びD14に実施したqPCR分析(PPIAハウスキーピング遺伝子に対して正規化)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【
図15-3】300ng/mlの濃度のペプチドPEP16、PEP I、又はPEP sでの、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、実施例4に説明するように培養したATDC5細胞における、II型コラーゲン並びにアグリカン、CTGF、及びMMP3についてのD1及びD14に実施したqPCR分析(PPIAハウスキーピング遺伝子に対して正規化)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【
図16】実施例4に説明するような、PEP16、PEP I、及びPEP sについての生化学的アルシアンブルー定量化(グアニジンHCl 6M溶解後の650nmでの吸光度読み取り)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示す。
【
図17-1】300ng/mlの濃度のPEP16若しくはPEP50、又は1000ng/ml(PEP50モル条件)での、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、実施例5に説明するように培養したATDC5細胞における、II型コラーゲン並びにアグリカン、CTGF、及びMMP3についてのD1及びD14に実施したqPCR分析(PPIAハウスキーピング遺伝子に対して正規化)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【
図17-2】300ng/mlの濃度のPEP16若しくはPEP50、又は1000ng/ml(PEP50モル条件)での、又はいかなるペプチド刺激も含まない(CTL)、実施例5に説明するように培養したATDC5細胞における、II型コラーゲン並びにアグリカン、CTGF、及びMMP3についてのD1及びD14に実施したqPCR分析(PPIAハウスキーピング遺伝子に対して正規化)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【
図18】PEP16、PEP50、又はPEP50モル濃度条件についての生化学的アルシアンブルー定量化(グアニジンHCl 6M溶解後の650nmでの吸光度読み取り)を表す。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示す。
【
図19】実施例6に説明するような、FRZB暫定生成のウェスタンブロットメンブレン及びSDS PAGEを表す。
【
図20】実施例6に説明するような、NTN暫定生成のウェスタンブロットメンブレン及びSDS PAGEを表す。
【
図21】300ng/mlの濃度のPEP16で処理したMC3T3-E1細胞又はNTN ドメインを安定的に過剰発現するMC3T3-E1細胞における、ANKRD(YAP/TAZ標的遺伝子、経路活性の指標)についてD1及びD14に実施したqPCR分析を表す。処理した細胞及びNTN過剰発現細胞を、対照細胞(CTL)と比較した。
*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【実施例】
【0023】
実施例1:材料及び方法
ATDC5マイクロマス培養
マウス軟骨形成ATDC5細胞(軟骨特異的軟骨形成株)を、1%抗生物質(antibiotic、AB、ペニシリン-ストレプトマイシン、Gibco)、5%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum、FBS)(Gibco)を補充し、10μg/mlのヒトトランスフェリン(Sigma)及び30nM亜セレン酸ナトリウム(Sigma)で富化した1:1のダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、DMEM):Ham’s F-12ミックス(Gibco)を含有する維持培地中で、コンフルエントになるまで培養した。細胞をトリプシン処理し、洗浄し、1倍ITSプレミックス(結果的に10μg/mLのインスリン、10μg/mLのヒトトランスフェリン、及び30nMの亜セレン酸ナトリウムとなる)(Life technologies)で富化した維持培地
からなる軟骨形成培地中で、2.107細胞/mLで再懸濁した。1滴の細胞懸濁液(10μL)を、24ウェルプレートの各ウェルの中心に配置した。細胞を37℃で2時間接着させ、続いて500μLの軟骨形成培地を添加した。培養全体の間、細胞を、異なる濃度(30ng/mL、100ng/mL、及び/又は300ng/mL)のPEP16(配列番号2)及び/又はPEP16ビス(配列番号3)の非存在下又は存在下で培養した。14日後、肥大化分化及び石灰化の誘導を、1%AB、5%FBS、5μg/mlのヒトトランスフェリン、1倍ITSプレミックス、50μg/mlのアスコルビン酸-2-ホスフェート(AA)(Sigma)、及び10mMのβ-グリセロホスフェート(BGP)(Sigma)を含有するα-MEM培地(Gibco)からなる石灰化培地によって誘導した。細胞を、37℃で、5%CO2の加湿雰囲気中で維持した。マイクロマスを、1、7、14、21及び28日の時点で回収した。各時点を、3つの技術的複製で処理した。培地を1日おきに交換した。読み出しは、プロテオグリカン含有量、シグナル伝達経路活性化状態、及び目的の遺伝子の評価を含んだ。目的の遺伝子は、関節軟骨細胞マーカー(アグリカン、2型コラーゲン(col2a1))、YAP/TAZ標的遺伝子(ctgf、ankrd)、及びOAの病態生理学に関与する異化促進酵素(mmp3、mmp13)であった。
【0024】
MC3T3-E1単層培養
マウス骨形成性MC3T3-E1細胞(骨特異的骨形成株)を、1%AB(Gibco)、10%FBS(Gibco)を補充し、1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco)で富化したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)を含有する維持培地中で、コンフルエントになるまで培養した。細胞をトリプシン処理し、洗浄し、次いで6ウェルプレート中に2600細胞/cm2で播種した。その翌日(D1)、MC3T3-E1分化の誘導を、10%FBS、1%AB、1%ピルビン酸ナトリウム、10mMのBGP、及び50μg/mlのAAを補充したα-最小必須培地(α-Minimal Essential medium、α-MEM、Gibco)中で細胞を21日間培養することによって開始した。
【0025】
培養全体の間、細胞を、異なる濃度(100ng/mL、300ng/mL、又は1000ng/ml)のPEP16(配列番号2)の非存在下又は存在下で培養した。細胞を、37℃で、5%CO2の加湿雰囲気中で維持した。細胞を、1、7、14、21日の時点で回収した。各時点を、3つの技術的複製で処理した。培地を2日ごとに交換した。読み出しは、ミネラル含有量、シグナル伝達経路活性化状態、及び目的の遺伝子の評価を含んだ。目的の遺伝子は、骨形成分化マーカー(オステオカルシン、オステリックス)であった。
【0026】
マウス関節軟骨細胞培養
マウス関節軟骨細胞(Mouse articular chondrocyte、MAC)を、全大腿骨頭蓋部の
酵素消化によって大腿骨頭から単離した。試料を1%AB/リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)中で3回洗浄し、100rpmの低速回転で、37℃
で1時間、2mg/mlのプロナーゼ(Roche)/DMEM-F12とともにインキュベートし、続いて37℃で3時間、1.5mg/mlのコラゲナーゼB(Roche)/DMEM-F12とともにインキュベートした。細胞を1×106細胞/75mm2で播種し、1% AB(Gibco)、10% FBS(Gibco)、及び5% L-グルタミン(Thermoscientific)を含有する増殖培地DMEM-F12中で、7~14日間培養した。第一継代細胞を実験に利用した。次いで、MMP13酵素活性アッセイを実施するために、培養上清を回収した。目的の遺伝子の発現の評価は、関節軟骨細胞マーカー(アグリカン、2型コラーゲン(col2a1))、YAP/TAZ標的遺伝子(ankrd)、及びOAの病態生理学に関与する異化促進酵素(mmp3)を含んだ。
【0027】
病変ヒト関節軟骨の外植片の培養
ヒト関節軟骨の外植片を、NancyのCHRUの整形外科部門(Pr.Didier
Mainard)による人工膝関節全置換手術から得た。試料を1% AB/PBS中で3回洗浄し、増殖培地(1% AB(Gibco)、10% FBS(Gibco)、及び5% L-グルタミン(Thermoscientific)を含有するDMEM-F12)中で24時間インキュベートした。次いで、外植片を、300ng/mlの濃度のPEP16で7日間刺激した。次いで、MMP13酵素活性アッセイを実施するために、培養上清を回収した。
【0028】
プロモーター活性化アッセイ
ATDC5細胞を、YAP/TAZホタルルシフェラーゼレポータープラスミド(8x
GTIIC、プラスミド#34615、Addgene)、β-カテニン経路レポータープラスミド(Super 8x TOPFlash、プラスミド#12456、Addgene)又は不活性β-カテニン対照レポータープラスミド(Super 8x TOPFlash、#12457、Addgene)のいずれかでトランスフェクトした。結果を、上記プラスミドの各々をチロシンキナーゼ-ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(Promega)でコトランスフェクトすることによって正規化した。トランスフェクションを、Dharmafect kbトランスフェクション試薬(Fisher Scientific)を使用して実行した。簡潔に述べると、レポータープラスミド及びトランスフェクション試薬を無血清培地中で希釈し、次いで、希釈したDharmafect kbを、室温で10分間のインキュベーション時間にわたってプラスミドに添加した。その間、細胞をPBSですすぎ、新鮮な維持培地中に配置した。インキュベーションが終わると、トランスフェクション試薬-プラスミドの混合物を各ウェル中に分配した。刺激(Wnt3a及び/又はPEP16及び/又はPEP16ビス)を翌日に実行した。
【0029】
RNA抽出、cDNA合成、及び定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Quantitative Real-Time Polymerase Chain Reaction、qRT-PCR)(健常軟骨細胞及び肥大軟骨細胞マーカーの発現を見るために)
全RNAを、製造業者の指示に従って、Nucleospin RNA IIキット(Macherey-Nagel)を使用して単離し、MMLV逆転写酵素(Thermo
Fisher Scientific)を使用して逆転写した。iTaq SYBRグリーンqPCRマスターミックス(BioRad)を使用して、目的の標的遺伝子のmRNA発現を評価した。プライマー配列は、要求に応じて提供することができる。以下のPCR条件を使用した:95℃で1分間、95℃で15秒間の熱変性、続いて60℃で1分間のアニーリング-伸長を40サイクル。融解曲線解析を実施して、特定の生成物の増幅を決定した。結果を、比較閾値法を使用して表し、ATDC5細胞及びMACのハウスキーピング遺伝子PPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA)mRNAレベルに対して
正規化したか、又はMC3T3-E1細胞のハウスキーピング遺伝子S29(リボソームタンパク質S29)mRNAレベルに対して正規化した。Via7リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific)をqRT-PCR測定に使用した。
【0030】
プロテオグリカン形成の定量化
マイクロマスをPBSで洗浄し、染色のために4℃で30分間、95%氷冷エタノールで固定した。蒸留水で洗浄した後、マイクロマスをアルシアンブルー(0.1% Alcian Blue 8GX(Sigma))で染色し、蒸留水で3回洗浄して、非結合染色を除去し、風乾した。染色の定量化を、ImageJソフトウェア(NIH Image、National Institutes of Health、Bethesda,MD,USA)を使用した青色ピクセル定量化によって、次いで、6Mグアニジン-HCl(Sigma)でマイクロマスを溶解することによって、及び分光光度計(Varioskan Flash、Thermo Fisher Scientific)を用いて650nmでの吸光度を測定することによって実施した。
【0031】
石灰化形成の定量化
細胞をPBSで洗浄し、染色のために4℃で30分間、95%氷冷エタノールで固定した。蒸留水で洗浄した後、細胞をアリザリンレッド染色(1% Alizarin Red S(Sigma))で染色し、蒸留水で3回洗浄して、非結合染色を除去し、風乾した。染色の定量化は、灰分を800μlの10%酢酸に30分間溶解することによって実施した。次いで、ウェルを掻き取り、各ウェルの内容物を別個のチューブに回収し、30秒間ボルテックスした。各チューブを85℃で10分間加熱し、次いで氷上に5分間置いた。最後に、チューブを13000rpmで15分間遠心分離し、液相を回収し、100μlの10%水酸化アンモニウムと混合した。吸光度を、分光光度計(Varioskan Flash、Thermo Fisher Scientific)を用いて405nmで測定した。
【0032】
タンパク質抽出及びウェスタンブロット分析(古典的及び非古典的Wnt経路の活性化を見るために)
タンパク質を、1倍Laemmli緩衝液(2%SDS、10%グリセロール、5%2-ベータメルカプトエタノール、0.002%ブロモフェノールブルー、125mMトリスHCl(pH6.8))を使用して、マイクロマスから単離した。試料を95℃で5分間熱変性させ、氷上で冷却し、192mMのグリシン、20mMのトリス塩基、0.1%SDSを含有する移動緩衝液を使用する電気泳動によって、トリス-グリシン伸長勾配ゲル4~20%(Biorad)上で分離した。(Invitrogen)。次いで、タンパク質を、Trans-blotターボシステム(BioRad)を7分間使用して、ポリビニルジフルオリド(polyvinylidine difluoride、PVDF)膜上に移した。室温で
、ブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳を補充したTBS-0.1%Tween(TBST))中で2時間後、膜をTBST中で3回洗浄し、TBST-5%ウシ血清アルブミン中で、活性β-カテニン、総β-カテニン、ホスホCamKII、又は総CamKIIのいずれかに対する1つの一次抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、各ブロットを、ブロッキング緩衝液中の西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートされた抗ウサギ又は抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories
)とともに、室温で1時間インキュベートした。ブロットを、製造元の推奨に従ってClarity Western ECL基質(BioRad)を使用して視覚化した。画像を、ChemiDoc XRS CCDカメラシステム(BioRad)を用いて取得した。密度測定分析を、ImageJソフトウェア(NIH Image、National Institutes of Health、Bethesda,MD,USA)を用いて実施した。結果を、活性(ホスホ)タンパク質形態/総タンパク質形態の比として
表す。
【0033】
MMP13酵素活性アッセイ
MMP13酵素活性を、MMP13蛍光発生基質(Merck Millipore)を使用して評価した。簡潔に述べると、異なる実験の終了時に回収した培養上清を、1.5mMの酢酸4-アミノフェニル水銀と混合し、全てのpro-MMPを活性MMPにするために、37℃で1時間インキュベートした。次いで、蛍光発生基質を添加し、混合物を37℃で3時間インキュベートした。蛍光を、Varioskan Flashデバイス(Thermo Fisher Scientific)上で、以下のパラメータ、励起325nm及び発光393nmを使用して評価した。組換えヒトMMP13を、陽性対照として使用した(Merck Millipore)。陰性対照は、増殖培地に存在する。
【0034】
統計分析
統計分析を、GraphPrism v6.0を使用して実行した。ANOVAを、対照群(Wnt3a、IL1β、又はPEP16の非存在下の細胞)と処理群(Wnt3a単独、IL1β単独、PEP16単独、又はPEP16ビス(配列番号3)単独)との間の、また、Wnt3a処理群とWnt3a+PEP16、Wnt3a+PEP16ビス群との間の違いを評価するために実施した。
【0035】
実施例2:結果
30、100、300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)でのATDC5細胞株の処理
30、100、300ng/mLのPEP16で処理したATDC5マイクロマスにおける、1、7、14、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)ctgf、(D)mmp3、及び(E)mmp13の相対発現レベルの結果を、
図2に示す。
【0036】
30、100、及び300ng/mLのPEP16(それぞれ、P30、P100、及びP300)で処理し、28日間培養されたATDC5マイクロマスにおける、(A)コンピュータプログラム(青色ピクセル定量化)での、(B)生化学的定量化(グアニジンHCl 6M中の染色の可溶化)での、グリコサミノグリカン定量化の結果を
図6に示す。
【0037】
100及び300ng/mLのPEP16での処理後1、7、14、21、及び28日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamkII経路活性化を調査するウェスタンブロットの結果を、
図7に表す。
【0038】
得られた結果は、PEP16が、ATDC5軟骨形成中の健常関節軟骨表現型のマーカー(アグリカン及び2型コラーゲン)の発現の誘導を有意に増強したことを示す。更に、PEP16は、変形性関節症関連MMP、すなわちMMP3及びMMP13の発現、並びにHippo/YAP/TAZ経路の標的遺伝子であるCtgfの発現を効率的に低減させた。加えて、PEP16は、軟骨形成中の細胞外マトリックスにおけるグリコサミノグリカンの蓄積を有意に増加させた。最後に、PEP16は、軟骨形成の予備石灰化段階におけるCamKII経路の活性化を増加させたが(D14)、軟骨形成中のWnt/β-カテニン経路の活性化を低減させた。
【0039】
300ng/mLのPEP16及びPEP16ビスでのATDC5細胞株の処理
300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおける1、21、及び28日目の(A)アグリカン、(B)col2a1、(C)mm
p3、(D)mmp13、及び(E)ankrdの相対発現レベルの結果を、
図3に示す。
【0040】
300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスで処理したATDC5マイクロマスにおける28日目のグリコサミノグリカン定量化の結果を、
図4に示す。
【0041】
(A)300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び10ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)、(B)8X YAP応答要素(8x GTIICレポーター)、又は(C)3、30、100、300ng/mLのPEP16 PEP16(それぞれ、P3、P30、P100、及びP300)、及び100ng/mLのWnt3aでの24時間のトランスフェクションの翌日に処理したATDC5マクロマスにおける7X TCF/LEF応答要素(Super 8x TOPFlashレポーター)の制御下での、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む構築物でトランスフェクトしたATDC5細胞におけるプロモーター活性化アッセイの結果を、
図5に示す。
【0042】
300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスでの処理後21及び28日目のATDC5マクロマスにおける、(A)Wnt/β-カテニン経路活性化(B)CamkII経路活性化を調査するウェスタンブロットの結果を、
図8に示す。
【0043】
得られた結果は、PEP16ビスもまた、ATDC5軟骨形成中の健常関節軟骨表現型のマーカー(アグリカン及び2型コラーゲン)の発現の誘導を支持したことを示す。更に、PEP16ビスは、変形性関節症関連MMP、すなわちMMP3及びMMP13の発現、並びにHippo/YAP/TAZ経路の標的遺伝子であるCtgfの発現を効率的に低減させた。加えて、PEP16ビスは、軟骨形成中の細胞外マトリックスにおけるグリコサミノグリカンの蓄積を有意に増加させた。更に、300ng/mlでのPEP16及びPEP16ビスは、Super TOPFlashルシフェラーゼレポーターシステム(システムを活性化する、レポータープラスミドでトランスフェクトされ、10又は100ng/mLの組換えWnt3aタンパク質で刺激されたATDC5細胞)における古典的経路の活性を有意に低減することができたが、他の4つの配列は、それを低減することができない。同様に、30ng/mlのPEP16は、ルシフェラーゼ型レポーターシステム(プラスチックとの接触に対して自発的に活性化する、YAP経路のレポータープラスミドでトランスフェクトされたATDC5細胞)におけるHippo/YAP/TAZ経路の活性を有意に低減させた。最後に、PEP16ビスは、CamKII経路の活性化を増加させたが、軟骨形成中のWnt/β-カテニン経路の活性化を低減させた。
【0044】
300ng/mLのPEP16又はPEP16ビスでのマウス関節軟骨細胞培養物の処理
300ng/mLのPEP16、及び/又はMMP13活性の陽性対照としての100pg/mLのIL1βで24時間処理したマウス関節軟骨細胞の培養上清におけるMMP13酵素活性の結果を、
図9に示す。
【0045】
300ng/mLのPEP16及び/又は100ng/mLのwnt3aで処理したマウス関節軟骨細胞における、24及び48時間での(A)アグリカン、(B)col2a1の相対発現レベルの結果を、
図10に表す。
【0046】
300ng/mLのPEP16若しくはPEP16ビス、及び/又は100、50、30ng/mLのwnt3aで処理したマウス関節軟骨細胞における、(A、B)mmp3及び(C)ankrdの相対発現レベルの結果を、
図11に示す。
【0047】
得られた結果は、試験中のペプチドの保護的役割を示す。PEP16は、マウス関節軟骨細胞の培養上清において測定されたIL1β誘導性MMP13活性を有意に低減させた。更に、PEP16は、健常関節軟骨表現型のマーカー(アグリカン及び2型コラーゲン)の減少に対する、及びNGF(疼痛、データは示さず)の増加に対する、Wnt3aによるβ-カテニン活性化の有害作用に対抗する傾向を有した。試験中のペプチドはまた、組換えWnt3aの使用によって誘導される有害作用に対抗することができ、特に、PEP16は、MMP3の発現に対するWnt3aの誘起効果に対抗する。加えて、PEP16及びPEP16ビスは、この一次培養系におけるHippo/YAP/TAZ経路の標的遺伝子であるAnkrdの発現を低減することができる。Hippo/YAP/TAZ経路の他の2つの標的遺伝子であるCyr61及びCtgfについても、同様の傾向が観察される。
【0048】
300ng/mLのPEP16での病変ヒト関節軟骨外植片(変形性関節症)の処理
300ng/mLのPEP16で7日間処理(7日間で3回刺激)したヒト関節軟骨外植片(人工膝関節全置換手術後の末期変形性関節症の3人の患者由来)の培養上清におけるMMP13酵素活性の結果を、
図12に示す。
【0049】
得られた結果は、PEP16が、ヒト軟骨外植片の培養上清において測定されたMMP13の酵素活性を低減することができることを示す。
【0050】
PEP16でのMC3T3-E1細胞株の処理
100ng/mL又は300ng/mLのPEP16(それぞれ、P100及びP300)で処理したMC3T3-E1細胞における7、14、及び21日目のオステオカルシン及びオステリックスの相対発現レベルの結果を、
図13Aに示す。300ng/mL又は1000ng/mL(それぞれP300及びP1000)のPEP16での処理後7、14、及び21日目のMC3T3-E1細胞における、Wnt/β-カテニン経路及びCamkII経路活性化を調査するウェスタンブロットの結果を、
図13Bに示す。100ng/mL又は300ng/mLのPEP16で処理したMC3T3-E1細胞における21日目の石灰化定量化の結果を、
図13Cに示す。
【0051】
得られた結果は、PEP16が、MC3T3-E1骨形成分化中の骨形成性マーカー(オステオカルシン及びオステリックス)の発現の誘導を支持したことを示す。更に、PEP16は、初期骨形成段階におけるCamKII経路の活性化を効率的に増加させたが、骨形成中のWnt/β-カテニン経路の活性化を低減させた。加えて、PEP16は、細胞外マトリックスにおける灰分の蓄積を有意に増加させた。これらの結果は、極めて直観に反するものであるが、骨粗鬆症の予防又は治療におけるPEP16の使用を支持するものである。実際、この疾患において、Wnt/β-カテニン経路、特に抗スクレロスチン抗体を促進する試みが通常行われる。
【0052】
実施例3:PEP12はPEP16と比較して生物学的に活性ではない
本出願者らは、MC3T3-E1モデルにおけるPEP12の影響について以下に記載し、PEP16について有するデータセットの一部(アルカリホスファターゼ活性)を追加する。
【0053】
MC3T3-E1細胞を、前述したように21日間分化させた。300ng/mlの濃度の異なるペプチド(PEP12又はPEP16)を使用し、各培養培地の交換時(2日ごと)に導入した。処理した細胞を、いかなるペプチド刺激も含まない細胞(CTL)と比較した。
【0054】
石灰化レベルを、21日間の分化培養後、前述したような生化学アッセイによって評価した。結果は、3つの実験を表す。
【0055】
本出願者らはまた、特定のアルカリホスファターゼ活性(μmolのパラ-ニトロフェノール/分/mgのタンパク質)も評価した。その目的のために、本出願者らは、0.2Mのトリス塩基、1.6mM-のMgCl2(pH8.1)、及び1% Triton
X-100を含有する300μLの緩衝液を使用して、細胞を溶解した。次いで、試料をチューブに入れ、氷上に30分間置いた。この間、30秒間のボルテックスと氷上での5分間を交互にした。次いで、試料を超音波処理し、4℃で、13000gで15分間遠心分離した。上清を回収し、総タンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイを使用して評価した。
【0056】
回収した上清をパラ-ニトロフェニルホスフェート(para-nitrophenyl phosphate、pNPP)溶液中に入れることによって、アルカリホスファターゼ活性を測定した。アルカリホスファターゼは、この基材を切断し、パラ-ニトロフェノール(para-nitrophenol、pNP)を生成する。
【0057】
4mg/mLのpNPPの溶液を、緩衝液A(0.1MのグリシンpH10.5、0.11%(m/v)酢酸亜鉛、及び0.011%塩化マグネシウム(m/v))中に調製する。この溶液を、緩衝液B(緩衝液A中に調製した0.24%(m/v)の塩化コバルト)中に1/2(2mg/mlのpNPP)に希釈した。pNPの標準曲線を、緩衝液A中に1/20(0.5mMのpNP)に希釈した10mMのpNPの市販調製物を使用して、0、0.01、0.02、0.04、0.05、0.075、0.1、及び0.2mMに調製した。
【0058】
50μLの体積の試料を1mLのpNPPに添加し、50μLの超純水を添加した。次いで、試料を37℃で30分間インキュベートした。反応を、0.1mMの100μLのEDTA及び0.04Mの5mLのNaOHを添加することによって停止する。吸光度を、Varioskan Flash装置で410nmで読み取る。アルカリホスファターゼ活性を、標準曲線(式A410=a×量(pNP)+b)に基づいて、以下の式:活性=((A(410nm)-b)×反応体積)/(a×試料体積×反応時間)で計算する。
【0059】
結果は、PEP12については1つの実験、PEP16については2つの実験を表す。
【0060】
概して、PEP12は、骨形成中に細胞外マトリックス石灰化を増加させることができず、かつアルカリホスファターゼ活性を増加させることができなかった。PEP16は、アルカリホスファターゼ活性を増加させる傾向があった(
図14を参照されたい)。
【0061】
実施例4:PEP16への置換:LからIへ及びLからSへの置換
2つの置換を有するPEP16(同様に、2つのL(3位及び14位)がAに変更されたPEP16ビス)のペプチド配列、すなわち、3位及び14位のLがイソロイシン(I)に変更されたPEP i(配列番号9に対応する)、並びに3位及び14位のLがセリン(S)に変更されたPEP s(配列番号10に対応する)を試験した。
【0062】
ATDC5細胞をマイクロマスとして培養し、前述のように ITSを使用して14日間分化させた。300ng/mlの濃度の異なるペプチド(PEP16、PEP I、又はPEP s)を使用し、各培養培地の交換時(毎日)に導入した。処理した細胞を、いかなるペプチド刺激も含まない細胞(CTL)と比較した。RNAを単離し、異なる標的遺伝子、すなわち、II型コラーゲン及びアグリカン(関節軟骨細胞細胞外マトリックス)、CTGF(YAP/TAZ標的遺伝子、経路活性の指標)、並びにMMP3(変形性
関節症中に増加した軟骨分解酵素)についてqPCRを実施した(
図15)。アルシアンブルー染色をマイクロマス培養物に実施し、生化学的定量化を前述のように実施した(
図16)。
【0063】
結果を以下に記載する。*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【0064】
概して、PEP s及びPEP iは、PEP16によって得られたものと比較して非常に類似した結果、すなわち、関節軟骨細胞細胞外マトリックス遺伝子の増加、並びにYAP/TAZ標的遺伝子及びMMP3の有意な減少を提供した。各ペプチドは、対照細胞と比較して、細胞外マトリックスにおけるプロテオグリカン沈着を有意に増加させることができた。
【0065】
実施例5:PEP16対50AA長ペプチド(PEP50)の比較
PEP16と比較してその効力を評価するために、50アミノ酸長ペプチド(PEP50)を試験した。ペプチドがより長いほど、300ng/mlのような濃度のPEP16の使用は、ペプチドのモル濃度の変化をもたらした。300ng/mlで使用したPEP16のモル濃度は約145nMであるが、300ng/mlのPEP50は、約48nMのモル濃度をもたらした。同じモル濃度で細胞を検証するために、本出願者らは、実験条件、すなわちPEP50モル濃度を追加し、ここで、145nMのPEP50を使用した(これは約1000ng/mlに換算される)。したがって、300ng/mlのPEP50又は145nMのPEP50モル濃度を、300ng/ml⇔145nMのPEP16と直接比較することができる。
【0066】
ATDC5細胞をマイクロマスとして培養し、前述のようにITSを使用して14日間分化させた。300ng/mlの濃度のPEP16若しくはPEP50、又は1000ng/ml(PEP50モル濃度条件)を使用し、各培養培地の交換時(毎日)に導入した。処理した細胞を、いかなるペプチド刺激も含まない細胞(CTL)と比較した。RNAを単離し、異なる標的遺伝子、すなわち、II型コラーゲン及びアグリカン(関節軟骨細胞細胞外マトリックス)、CTGF(YAP/TAZ標的遺伝子、経路活性の指標)、並びにMMP3(変形性関節症中に増加した軟骨分解酵素)についてqPCRを実施した(
図17)。アルシアンブルー染色をマイクロマス培養物に実施し、生化学的定量化を前述のように実施した(
図18)。
【0067】
結果を以下に記載する。*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【0068】
概して、PEP50条件は、PEP16を使用して得られたものと比較して非常に類似した結果、すなわち、関節軟骨細胞細胞外マトリックス遺伝子の増加、並びにYAP/TAZ標的遺伝子及びMMP3の有意な減少をもたらした。PEP50モル濃度条件は、PEP16と同じモル濃度で使用される場合、PEP50が関節軟骨細胞細胞外マトリックス遺伝子発現を有意に低減させることを実証した。しかしながら、これは、MMP3及びCTGF発現を有意に低減させる能力を維持した。各ペプチドは、細胞外マトリックスにおけるプロテオグリカン沈着を増加させることができた。
【0069】
実施例6:FRZBのネトリン様(NTN)ドメインの細菌生産の仮説
本出願者らは、細菌におけるFRZB全長タンパク質及びネトリン様ドメイン(NTN)の生成を実施した。これを、欧州特許第3455246(B1)号を使用して実施し、炭水化物認識ドメイン(carbohydrate-recognition domain、CRD)タグ付き組換えタ
ンパク質の生成をもたらした。
【0070】
精製タグCRDに対する抗体を使用して、ウェスタンブロット分析を実施した。
【0071】
本出願者らは、親和性クロマトグラフィー(ラクトース-セファロース)の溶出液中に少量の組換えFRZBを生成することに成功したが(
図19)、いかなる使用可能量の組換えNTNタンパク質も生成することができなかった(
図20)。
【0072】
実施例7:NTNドメインの過剰発現はYAP/TAZ経路の調節においてPEP16を模倣することができない
PEP16がNTNドメインと比較して新規活性をもたらすことができるかどうかを評価するために、本出願者らはMC3T3-E1系を使用し、ここで、PEP16はその有効性を示すことができ、NTNドメインは同様の特性を示した(Thysen et al,Lab Invest,2016[15])。
【0073】
簡潔に述べると、MC3T3-E1細胞を、前述したように14日間分化させた。300ng/mlの濃度のPEP16を使用し、各培養培地の交換時(2日ごと)に導入した。同じ実験において、本出願者らは、NTNドメインを安定的に過剰発現するMC3T3-E1細胞も使用した。処理した細胞及びNTN過剰発現細胞を、対照細胞(CTL)と比較した。
【0074】
RNAを単離し、ANKRD(YAP/TAZ標的遺伝子、経路活性の指標)についてqPCRを実施した(
図21)。
【0075】
結果を以下に記載する。*は、D14対照(CTL)と比較してp値<0.05を示し、£は、D1 CTL(ANOVA)と比較してp値<0.05を示す。
【0076】
概して、NTNは、YAP/TAZ標的遺伝子を有意に減少させることができなかったが、PEP16は、何とかそれを減少させることができた。
【0077】
参照文献のリスト
1.Lories and Luyten,Nat Rev Rheumatol,7(1):p.43-9,2011
2.Hunter and Felson,BMJ,332(7542):p.639-42,2006
3.Valdes and Spector,Rheum Dis Clin North Am,34(3):p.581-603,2008
4.Lories et al.,Arthritis Rheum,56(12):p.4095-103,2007
5.Lodewyckx et al.,Arthritis Res Ther,14(1):R16,2012
6.Lane et al.,Arthritis Rheum,56(10):p.3319-25,2007
7.Rockel et al.,J Clin Invest,126(5):p.1649-63,2016
8.Zhu et al.,Arthritis Rheum,58(7):p.2053-2064,2008
9.Tamamura et al.,J Biol Chem,280(19):p.19185-95,2005
10.Zhu et al.,J Bone Miner Res,24(1):p.12-21,2009
11.Gong et al,J Mol Med,97(1):103-114.doi:10.1007/s00109-018-1705-y,2019
12.Zhang et al,Biomaterials,232:119724.doi:10.1016/j.biomaterials.2019.119724,2020
13.Li et al.,Development,2011;138(2):p.359-70.
14.Nalesso et al.,Osteoarthritis Cartilage,24 Suppl 1:S149,2016
15.Thysen et al.,Lab Invest,96(5):p.570-80,2016
16.Thysen et al.,Ann Rheum Dis,73 Suppl
1:A67-8,2014
17.Cui et al.,Trends Biochem Sci,43(8):p.623-634,2018
18.Zheng and Pan,Dev Cell,50(3):p.264-282,2019
【配列表】
【国際調査報告】