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特表2023-541097ガラス容器における亀裂変向および防護用の応力特徴
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ガラス容器における亀裂変向および防護用の応力特徴
(51)【国際特許分類】
   C03B 27/04 20060101AFI20230921BHJP
   C03B 23/09 20060101ALI20230921BHJP
   B65D 1/40 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C03B27/04
C03B23/09
B65D1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503441
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021041207
(87)【国際公開番号】W WO2022020120
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/053,860
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デマルティーノ,スティーヴン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ドーミー,ジェフリー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ウィリアム ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ティモンズ,クリストファー リー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,ディヴィッド インショ
【テーマコード(参考)】
3E033
4G015
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA01
3E033CA20
3E033DA08
3E033DB01
3E033DC10
3E033DD01
3E033EA12
4G015BA05
4G015BB02
4G015BB05
4G015CA02
4G015CA04
4G015CA10
(57)【要約】
ガラス容器は、ガラス本体であって、ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、圧縮深さからガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、第2の領域は引張応力下にある、ガラス本体を備える。ガラス容器は、また、表面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域を含む。局所的な圧縮深さは、第1の領域の圧縮深さを超えている。ガラス容器は、また、所定の伝播方向に延在する亀裂変向領域を含み、亀裂変向領域は、亀裂変向領域のサブ領域での第2の領域の引張応力よりも大きな引張応力を有し、サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さによって分離された第1の表面と第2の表面とを有するガラス容器を作製する方法であって、
前記ガラス容器の前記第1の表面において圧縮応力下の第1の領域を形成するステップであって、前記第1の領域は、前記第1の表面から前記ガラス容器における圧縮深さまで延在している、第1の領域を形成するステップと、
内部引張応力下の第2の領域を形成するステップであって、前記第2の領域は、前記圧縮深さから前記厚さ内に延在しており、前記内部引張応力は、前記第1の表面での亀裂の発生点から前記亀裂を自己伝播させるのに十分である、第2の領域を形成するステップと、
前記第1の表面に亀裂変向領域を形成するステップであって、
前記亀裂変向領域は、前記亀裂の所定の伝播方向に延在しており、
前記亀裂変向領域は、前記所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向にガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を含み、これにより、前記亀裂が伝播して前記亀裂変向領域に到達すると、前記亀裂は、前記所定の伝播方向に沿って変向させられる、
亀裂変向領域を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ガラス容器は、内面と外面とを有する本体を備え、前記内面は、軸線を有する内容積を規定しており、前記所定の伝播方向は、前記軸線に対して実質的に垂直である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス容器の前記厚さは、前記亀裂変向領域内で変化しており、これにより、前記亀裂変向領域は、前記軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、前記肉薄領域では、前記厚さは、前記亀裂変向領域内の前記ガラス容器の平均厚さ未満である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の領域および前記第2の領域を形成するステップは、
前記ガラス容器をガラス組成物から形成するステップと、
前記ガラス容器の前記第1の表面を化学的な焼戻しに供することによって、前記第1の領域および前記第2の領域を形成するステップと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス物品を前記ガラス組成物から形成するステップは、
前記ガラス組成物を含むガラス管を形成するステップと、
前記ガラス管を前記ガラス容器に変換するステップと
を含み、
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス容器への前記ガラス管の変換中に行われる、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス容器への前記ガラス管の変換中、前記ガラス管を前記ガラス組成物の軟化温度まで加熱しながら、パルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、該ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、前記圧縮深さから前記ガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、前記第2の領域は、亀裂の発生点から伝播方向に前記亀裂を自己伝播させるのに十分な引張応力下にある、ガラス本体と、
前記ガラス本体の前記表面上の亀裂変向領域であって、前記亀裂変向領域は、前記亀裂の所定の伝播方向に延在しており、前記亀裂変向領域は、前記亀裂変向領域のサブ領域での前記第2の領域の引張応力よりも大きな引張応力を含み、前記サブ領域は、前記所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在しており、これにより、前記亀裂が前記亀裂変向領域に伝播すると、前記亀裂は、前記所定の伝播方向に沿って変向させられる、亀裂変向領域と
を備える、ガラス容器。
【請求項8】
前記ガラス容器は、ボトル、バイアル、アンプル、シリンジ、またはカートリッジのうちの1つを含む、請求項7記載のガラス容器。
【請求項9】
前記所定の伝播方向は、前記ガラス容器の軸線に対して実質的に垂直な周方向である、請求項7記載のガラス容器。
【請求項10】
前記厚さは、前記亀裂変向領域内で変化しており、これにより、前記亀裂変向領域の前記サブ領域は、前記軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、前記肉薄領域では、前記厚さは、前記ガラス物品の平均厚さ未満である、請求項9記載のガラス容器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、米国特許法第119条のもと、2020年7月20日に出願された米国仮出願第63/053,860号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス容器、例えば、医薬組成物を保管するためのガラス容器に関する。
【背景技術】
【0003】
食品や薬品の製造業者の関心事は、輸送中および使用までの保管中にパッケージの内容物の無菌性をその欠如に対して維持することである。ガラス容器は多くの代替材料よりも優れているが、ガラス容器は壊れないわけではなく、取扱い中および輸送中に時折破損を被ることがある。内容物の無菌性が損なわれるものの、パッケージの著しい欠陥には至らない、壁厚さを貫通する亀裂が形成されることがある。ガラス容器の付加的な特徴、例えば接着ラベルにより、使用者はこのような亀裂に気づきにくく、ひいては、無菌性が損なわれているにもかかわらず、使用し続けてしまうことがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の態様は、厚さによって分離された第1の表面と第2の表面とを有するガラス容器を作製する方法であって、ガラス容器の第1の表面において圧縮応力下の第1の領域を形成するステップであって、第1の領域は、第1の表面からガラス容器における圧縮深さまで延在している、第1の領域を形成するステップと、内部引張応力下の第2の領域を形成するステップであって、第2の領域は、圧縮深さから厚さ内に延在しており、内部引張応力は、第1の表面での亀裂の発生点から亀裂を自己伝播させるのに十分である、第2の領域を形成するステップと、第1の表面に亀裂変向領域を形成するステップであって、亀裂変向領域は、亀裂の所定の伝播方向に延在しており、所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向にガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を含み、これにより、亀裂が伝播して亀裂変向領域に到達すると、亀裂は、所定の伝播方向に沿って変向させられる、亀裂変向領域を形成するステップとを含む、方法を含む。
【0005】
本開示の第2の態様は、ガラス容器は、内面と外面とを有する本体を備え、内面は、軸線を有する内容積を規定しており、所定の伝播方向は、軸線に対して実質的に垂直である、第1の態様を含んでよい。
【0006】
本開示の第3の態様は、ガラス容器の厚さは、亀裂変向領域内で変化しており、これにより、亀裂変向領域は、軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、肉薄領域では、厚さは、亀裂変向領域内のガラス容器の平均厚さ未満である、第1の態様または第2の態様を含んでよい。
【0007】
本開示の第4の態様は、亀裂変向領域は、ガラス容器の外周の少なくとも一部の周りに延在している、第1から第3までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0008】
本開示の第5の態様は、亀裂変向領域でのガラス物品の厚さは、軸線に対して平行に正弦的に変化している、第1から第4までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0009】
本開示の第6の態様は、亀裂変向領域は、ガラス容器の外周全体の周りに延在している、第1から第5までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0010】
本開示の第7の態様は、第1の表面は、ガラス容器の外面である、第1から第6までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0011】
本開示の第8の態様は、第1の表面は、ガラス容器の内面である、第1から第7までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0012】
本開示の第9の態様は、第1の領域および第2の領域を形成するステップは、ガラス容器をガラス組成物から形成するステップと、ガラス容器の第1の表面を化学的な焼戻しに供することによって、第1の領域および第2の領域を形成するステップとを含む、第1から第8までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0013】
本開示の第10の態様は、ガラス組成物は、アルミノケイ酸ガラス組成物を含む、第1から第9までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0014】
本開示の第11の態様は、ガラス物品をガラス組成物から形成するステップは、ガラス組成物を含むガラス管を形成するステップと、ガラス管をガラス容器に変換するステップとを含み、亀裂変向領域を形成するステップは、ガラス容器へのガラス管の変換中に行われる、第1から第10までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0015】
本開示の第12の態様は、亀裂変向領域を形成するステップは、ガラス容器へのガラス管の変換中、ガラス管をガラス組成物の軟化温度まで加熱しながら、パルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、第1から第11までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0016】
本開示の第13の態様は、亀裂変向領域を有するガラス容器を形成する方法であって、ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、素材を、内面と外面との間に延在し、内容積を規定する本体を有するガラス物品に成形するステップと、ガラス物品に圧縮応力層を形成するステップであって、圧縮応力層は、内面および外面のうちの少なくとも一方から本体の厚さの圧縮深さまで延在している、圧縮応力層を形成するステップと、ガラス物品内に亀裂変向領域を形成するステップであって、亀裂変向領域は、ガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を有するサブ領域を備え、サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向に延在している、亀裂変向領域を形成するステップとを含む、方法を含んでよい。
【0017】
本開示の第14の態様は、素材は、ガラス管状物を含み、方法は、ガラス管状物をガラス物品に変換するステップをさらに含み、亀裂変向領域を形成するステップは、ガラス物品へのガラス管状物の変換中に亀裂変向領域のサブ領域を形成するステップを含み、サブ領域の厚さは、本体の平均厚さ未満である、第13の態様を含んでよい。
【0018】
本開示の第15の態様は、サブ領域を形成するステップは、ガラス物品上でパルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、第13から第14までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0019】
本開示の第16の態様は、サブ領域を形成するステップは、ガラス物品へのガラス管状物の変換中にガラス管状物を成形要素に接触させるステップを含む、第13から第15までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0020】
本開示の第17の態様は、ガラス容器であって、ガラス本体であって、ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、圧縮深さからガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、第2の領域は、亀裂の発生点から伝播方向に亀裂を自己伝播させるのに十分な引張応力下にある、ガラス本体と、ガラス本体の表面上の亀裂変向領域であって、亀裂変向領域は、亀裂の所定の伝播方向に延在している、亀裂変向領域とを備える、ガラス容器を含んでよい。亀裂変向領域は、亀裂変向領域のサブ領域での第2の領域の引張応力よりも大きな引張応力を含む。サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在しており、これにより、亀裂が亀裂変向領域に伝播すると、亀裂は、所定の伝播方向に沿って変向させられる。
【0021】
本開示の第18の態様は、ガラス容器は、ボトル、バイアル、アンプル、シリンジ、またはカートリッジのうちの1つを含む、第17の態様を含んでよい。
【0022】
本開示の第19の態様は、所定の伝播方向は、ガラス容器の軸線に対して実質的に垂直な周方向である、第17から第18までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0023】
本開示の第20の態様は、厚さは、亀裂変向領域内で変化しており、これにより、亀裂変向領域のサブ領域は、軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、肉薄領域では、厚さは、ガラス物品の平均厚さ未満である、第17から第19までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0024】
本開示の第21の態様は、ガラス容器であって、ガラス組成物を含む本体であって、本体は、内面と、外面と、内面と外面との間に延在する壁厚さとを有し、本体は、外面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域を備える、本体を備え、局所的な圧縮応力領域は、局所的な圧縮応力領域に隣接するいずれの圧縮応力領域よりもさらに本体内に延在している、ガラス容器を含む。
【0025】
本開示の第22の態様は、ガラス容器は、医薬品容器を含む、第21の態様を含んでよい。
【0026】
本開示の第23の態様は、局所的な圧縮深さは、壁厚さの2%以上25%以下で延在している、第21から第22までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0027】
本開示の第24の態様は、局所的な圧縮深さは、壁厚さの20%以上25%以下で延在している、第21から第23までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0028】
本開示の第25の態様は、局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、第21から第24までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0029】
本開示の第26の態様は、局所的な圧縮応力領域は、75MPa以上の表面圧縮応力を含む、第21から第25までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0030】
本開示の第27の態様は、表面圧縮応力は、100MPa以上である、第21から第26までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0031】
本開示の第28の態様は、局所的な圧縮応力領域は、ガラス容器の圧縮応力下の圧縮応力層と重畳しており、これにより、局所的な圧縮応力領域内に、本体は、第1の圧縮深さまでの圧縮応力層の圧縮応力と、第1の圧縮深さから局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを含む、第21から第27までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0032】
本開示の第29の態様は、ガラス組成物は、アルミノケイ酸ガラス組成物を含む、第21から第28までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0033】
本開示の第30の態様は、ガラス容器は、基部と、基部にヒールを介して接続されたバレルと、バレルから延在するショルダと、ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、局所的な圧縮応力領域は、ネック、ヒール、およびバレルのうちの少なくとも1つに配置されている、第21から第29までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0034】
本開示の第31の態様は、局所的な圧縮応力領域は、ヒールに配置されている、第21から第30までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0035】
本開示の第32の態様は、内面から本体内の付加的な局所的な圧縮深さまで延在する付加的な局所的な圧縮応力を有する付加的な局所的な圧縮応力領域をさらに備える、第21から第31までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0036】
本開示の第33の態様は、局所的な圧縮応力領域と付加的な局所的な圧縮応力領域とは、互いに対向して、局所的な圧縮応力領域と付加的な局所的な圧縮応力領域との間に内部引張応力領域を形成しており、内部引張応力領域は、壁厚さを貫通して伝播する亀裂の分岐を促進して、ガラス容器を使用不可にする、第21から第32までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0037】
本開示の第34の態様は、ガラス容器であって、ガラス本体であって、ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、圧縮深さからガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、第2の領域は、引張応力下にある、ガラス本体と、表面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域とを備え、局所的な圧縮深さは、本体の壁厚さの2%以上25%以下であり、局所的な圧縮深さは、第1の領域の圧縮深さを超えている、ガラス容器を含む。
【0038】
本開示の第35の態様は、局所的な圧縮応力領域は、第1の領域と重畳しており、これにより、局所的な圧縮応力領域内に、ガラス本体は、第1の圧縮深さまでの第1の領域の圧縮応力と、第1の圧縮深さから局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを有する、第34の態様を含んでよい。
【0039】
本開示の第36の態様は、局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、第34から第35までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0040】
本開示の第37の態様は、ガラス本体の表面は、ガラス容器の外面である、第34から第36までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0041】
本開示の第38の態様は、局所的な圧縮応力領域を有するガラス容器を形成する方法であって、ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、素材を、内面と外面との間に延在する厚さを有する本体を有するガラス物品へと成形するステップであって、本体は、内容積を規定している、ガラス物品へと成形するステップと、ガラス物品に局所的な圧縮応力領域を形成するステップであって、局所的な圧縮応力領域は、外面または内面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有し、局所的な圧縮深さは、厚さの2%以上25%以下であり、局所的な圧縮応力領域を形成するステップは、局所的な圧縮応力領域が、局所的な圧縮応力領域に隣接するいずれの圧縮応力領域よりもさらに本体内に延在するように、ガラス物品が、ガラス組成物の軟化温度を超える開始温度まで加熱されるときに、ガラス物品の所定の部分に冷媒を局所的に適用するステップを含む、局所的な圧縮応力領域を形成するステップとを含む、方法を含んでよい。
【0042】
本開示の第39の態様は、局所的な圧縮応力領域を形成するステップの後に、外面にいて圧縮応力下の第1の領域を形成するために、ガラス物品をイオン交換強化に供するステップであって、第1の領域は、外面から、局所的な圧縮深さ未満である圧縮深さまで延在している、イオン交換強化に供するステップをさらに含む、第38の態様を含んでよい。
【0043】
本開示の第40の態様は、ガラス物品の部分に冷媒を局所的に適用するステップは、厚さの中央部分に、中央部分に形成されたあらゆる亀裂の伝播を誘発する瞬時の引張応力を誘発する、第38から第39までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0044】
本開示の第41の態様は、局所的な圧縮応力領域を形成するステップの前に、素材をガラス物品へと成形するステップによって誘発される変換傷を排除するために、外面全体を火炎浄化するステップをさらに含む、第38から第40までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0045】
本開示の第42の態様は、ガラス物品の部分に冷媒を局所的に適用するステップは、ガラス物品が開始温度まで加熱されるときに、ガラス物品の部分に近接してカラーを位置決めするステップであって、カラーは、冷媒用の少なくとも1つの供給部を含み、カラーは、ガラス物品の部分に対応するように成形されており、カラーは、ガラス物品の部分に接触して、カラーの流体マニホールドとガラス物品の部分との間の間隙を制御する接触点を含む、カラーを位置決めするステップと、局所的な圧縮応力領域を形成するために、ガラス物品の部分に冷媒を提供するステップとを含む、第38から第41までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0046】
本開示の第43の態様は、ガラス物品は、局所的な圧縮応力領域の形成後に焼なまし熱処理に供されない、第38から第42までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0047】
本開示の第44の態様は、ガラス容器は、基部と、基部にヒールを介して接続されたバレルと、バレルから延在するショルダと、ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、冷媒が適用されるガラス物品の部分は、ネックおよびヒールのうちの少なくとも一方を備える、第38から第43までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0048】
本開示の第45の態様は、ガラス容器であって、ガラス本体であって、ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、圧縮深さからガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、第2の領域は、引張応力下にある、ガラス本体と、表面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域であって、局所的な圧縮深さは、第1の領域の圧縮深さを超えている、局所的な圧縮応力領域と、ガラス本体における亀裂変向領域であって、亀裂変向領域は、所定の伝播方向に延在しており、亀裂変向領域は、亀裂変向領域のサブ領域での第2の領域の引張応力よりも高い引張応力を有し、サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在している、亀裂変向領域とを備える、ガラス容器を含んでよい。
【0049】
本開示の第46の態様は、亀裂変向領域のサブ領域は、ガラス本体の表面における厚さの変化を含む、第45の態様を含んでよい。
【0050】
本開示の第47の態様は、ガラス本体の表面は、ガラス容器の外面を含む、第45から第46までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0051】
本開示の第48の態様は、亀裂変向領域は、局所的な圧縮応力領域と重畳領域で重畳している、第45から第47までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0052】
本開示の第49の態様は、局所的な圧縮応力領域は、第1の領域と重畳しており、これにより、局所的な圧縮応力領域内に、ガラス本体は、第1の圧縮深さまでの第1の領域の圧縮応力と、第1の圧縮深さから局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを有する、第45から第48までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0053】
本開示の第50の態様は、局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、第45から第49までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0054】
本開示の第51の態様は、ガラス本体は、アルミノケイ酸ガラス組成物から形成されている、第45から第50までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0055】
本開示の第52の態様は、ガラス容器は、基部と、基部にヒールを介して接続されたバレルと、バレルから延在するショルダと、ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備える、第45から第51までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0056】
本開示の第53の態様は、亀裂変向領域は、バレル内でヒールおよびショルダのうちの少なくとも一方に近接して配置されている、第45から第51までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0057】
本開示の第54の態様は、局所的な圧縮応力領域は、ネックおよびヒールのうちの少なくとも一方に配置されている、第45から第53までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0058】
本開示の第55の態様は、ガラス容器を形成する方法であって、ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、素材を、内面と外面との間に延在する本体を有するガラス物品へと成形するステップであって、本体は、内容積を規定している、ガラス物品へと成形するステップと、ガラス物品内に亀裂変向領域を形成するステップであって、亀裂変向領域は、ガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を有するサブ領域を備え、サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向に延在している、亀裂変向領域を形成するステップと、ガラス物品に局所的な圧縮応力領域を形成するステップであって、局所的な圧縮応力領域は、内面または外面から本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有し、局所的な圧縮深さは、本体の厚さの2%以上25%以下であり、局所的な圧縮応力領域を形成するステップは、ガラス物品が、ガラス組成物の軟化温度を超える開始温度まで加熱されるときに、ガラス物品の所定の部分に冷媒を局所的に適用するステップを含む、局所的な圧縮応力領域を形成するステップとを含む、方法を含んでもよい。
【0059】
本開示の第56の態様は、ガラス物品に圧縮応力層を形成するステップをさらに含み、圧縮応力層は、内面および外面のうちの少なくとも一方から圧縮深さまで本体の厚さ内に延在している、第55の態様を含んでもよい。
【0060】
本開示の第57の態様は、圧縮応力層を形成するステップは、局所的な圧縮応力領域を形成するステップの後に、外面において圧縮応力下の第1の領域を形成するために、ガラス物品をイオン交換強化に供するステップを含み、第1の領域は、外面から圧縮深さまで延在しており、圧縮深さは、局所的な圧縮深さ未満である、第55から第56までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0061】
本開示の第58の態様は、局所的な圧縮応力領域は、外面上の第1の領域と重畳している、第55から第57までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0062】
本開示の第59の態様は、亀裂変向領域は、外面上の局所的な圧縮応力領域と重畳している、第55から第58までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0063】
本開示の第60の態様は、局所的な圧縮応力領域を形成するステップの前に、素材をガラス物品へと成形するステップによって誘発される変換傷を排除するために、外面全体を火炎浄化するステップをさらに含む、第55から第59までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0064】
本開示の第61の態様は、ガラス物品の部分に冷媒を局所的に適用するステップは、ガラス物品が開始温度まで加熱されるときに、ガラス物品の部分に近接してカラーを位置決めするステップであって、カラーは、冷媒用の少なくとも1つの供給部を含み、カラーは、ガラス物品の部分に対応するように成形されている、カラーを位置決めするステップと、局所的な圧縮応力領域を形成するために、ガラス物品の部分に冷媒を供給するステップとを含む、第55から第60までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0065】
本開示の第62の態様は、カラーは、ガラス物品の部分に接触して、カラーの流体マニホールドとガラス物品の部分との間の間隙を制御する接触点を含む、第55から第61までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0066】
本開示の第63の態様は、ガラス容器は、基部と、基部にヒールを介して接続されたバレルと、バレルから延在するショルダと、ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、冷媒が適用されるガラス物品の部分は、ネックおよびヒールのうちの少なくとも一方を備える、第55から第62までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0067】
本開示の第64の態様は、亀裂変向領域を形成するステップは、ガラス物品への素材の成形中に亀裂変向領域のサブ領域を形成するステップを含み、サブ領域の厚さは、本体の平均厚さ未満である、第55から第63までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0068】
本開示の第65の態様は、サブ領域を形成するステップは、ガラス物品上でパルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、第55から第64までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0069】
本開示の第66の態様は、サブ領域を形成するステップは、ガラス物品への素材の成形中に素材を、サブ領域の所定の形状に対応する形状を有する成形要素に接触させるステップを含む、第55から第65までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0070】
本開示の第67の態様は、亀裂変向領域の一部の厚さは、本体の平均厚さよりも大きい、第55から第66までのいずれか1つの態様を含んでよい。
【0071】
本明細書に記載されたプロセスおよびシステムの付加的な特徴および利点は、以下に続く詳細な説明に記載されており、部分的には、詳細な説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下に続く詳細な説明、請求項、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるはずである。
【0072】
前述の全般的な説明と以下の詳細な説明との両方が、様々な実施形態を説明しており、特許請求された主題の性質と特徴とを理解するための概要またはフレームワークを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書で説明する様々な実施形態を示しており、詳細な説明とともに、特許請求された主題の原理および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図面に示された実施形態は、本質的に概略的かつ例示的であり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図していない。概略的な実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照符号で示されている以下の図面と併せて読むと理解することができる。
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、亀裂変向領域と局所的な圧縮応力領域とを含むガラス容器の概略的な断面図である。
図2図1のガラス容器の側壁の一部での圧縮応力層を概略的に示す図である。
図3】積層ガラスから形成されたガラス容器の側壁の一部を概略的に示す図である。
図4A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図1の亀裂変向領域の概略的な断面図である。
図4B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図1の亀裂変向領域の概略的な断面図である。
図4C】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図1の亀裂変向領域の概略的な断面図である。
図5】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図1の代替的な亀裂変向領域の概略的な断面図である。
図6A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、亀裂変向領域を含むガラス容器を概略的に示す図である。
図6B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6C】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6D】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6E】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6F】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6G】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図6H】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、別の亀裂変向領域を含む図6Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図7】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、亀裂変向領域を含むガラス容器を概略的に示す図である。
図8A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第1の方向に延在する第1の亀裂変向領域を含むガラス容器を概略的に示す図である。
図8B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第1の螺旋パターンで延在する第2の亀裂変向領域を含む図8Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図8C】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第2の螺旋パターンで延在する第2の亀裂変向領域を含む図8Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図8D】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第1の方向に対して垂直な第2の方向に延在する第2の亀裂変向領域を含む、図8Aのガラス容器を概略的に示す図である。
図9】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ガラス管状物をガラス容器に変換する変換器を概略的に示す図である。
図10】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図9に示す変換器の加工ステーションを概略的に示す図である。
図11】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、図1に示すガラス容器の局所的な圧縮応力領域を概略的に示す図である。
図12A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な圧縮応力領域での圧縮応力を、ガラス組成物の開始温度と熱伝達係数との関数として、グラフで示した図である。
図12B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な圧縮応力領域に近接している内部引張応力を、図12Aのガラス組成の開始温度と熱伝達係数との関数として、グラフで示した図である。
図12C】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な圧縮応力領域での瞬時の引張応力を、図12Aのガラス組成の開始温度と熱伝達係数との関数として、グラフで示した図である。
図12D】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な圧縮応力領域での圧縮応力を、図12Aのガラス組成の開始温度と厚さとの関数として、グラフで示した図である。
図12E】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な圧縮応力領域に近接している引張応力を、図12Aのガラス組成の開始温度と厚さとの関数として、グラフで示した図である。
図13A】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な熱強化処理をガラス容器に行うための冷却装置を概略的に示す図である。
図13B】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、局所的な熱強化処理をガラス容器に行うための冷却装置を概略的に示す図である。
図14】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ガラス組成物の素材を、亀裂変向領域および局所的な圧縮応力領域のうちの少なくとも1つを含むガラス容器に変換する方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0074】
ここで、亀裂が、ガラス容器の内部に配置された物品(例えば、医薬品)の無菌性を損なう可能性のある形でガラス容器に発生し、ガラス容器を貫通して伝播することを防止する特徴を有するガラス容器の実施形態について詳細に言及する。例えば、本明細書に記載されたガラス容器の特徴により、初期の表面傷が目立たないかまたは観察できない形でガラス容器に形成されるかまたはガラス容器を貫通して伝播することが防止され、ガラス容器内に配置された物品が目立たない程度に損なわれることを防止することができる。このような表面傷は、形成、輸送、充填、および取扱いの際に他の表面に接触することによってガラス容器に生じる可能性がある。張力が加えられた条件下の亀裂は、発生点から伝播する可能性がある。例えば、残留内部引張応力を有するガラス容器に形成された亀裂は、ガラス容器内の応力場に左右される方向に伝播する可能性がある。ガラス容器が軸線方向の応力よりも高い周方向の応力を有する場合、例えば、亀裂は周方向ではなく軸線方向に伝播する可能性がある。このような軸線方向の亀裂は、接着ラベルまたは他のカバーを有するガラス容器の本体を貫通して伝播する場合、接着ラベルによって隠れてしまい、一般にガラス容器の取扱い者が気づきにくいものとなってしまう。本開示の様々な実施形態は、ガラス容器に発生する可能性のある亀裂の、ガラス容器のより目立つ部分および/または観察可能な部分への変向を促進させるかまたは亀裂変向の結果としてガラス容器を使用不可にさせる内部引張応力分布をガラス容器に導入する。例えば、ガラス容器は、周方向の内部引張応力よりも大きい軸線方向の内部引張応力を有する亀裂変向領域を含むことができ、ガラス容器の所望の領域(例えば、典型的に、接着ラベルによって隠れないガラス容器の一部)での周方向の亀裂の伝播が促進される。
【0075】
実施形態では、本明細書に記載のガラス容器はまた、ガラス容器の耐久性を内部で高める局所的な圧縮応力領域を含むことができる。局所的な圧縮応力領域は、特に、外部要素(例えば、成形装置、輸送中の他のガラス容器、キャッピング装置など)と頻繁に接触するガラス容器の領域に位置決めすることができる。有益なことに、本明細書に記載の局所的な圧縮応力領域は、従来技術のガラス容器に見られる圧縮深さを超える圧縮深さを有する。そのようなより深い圧縮深さは、表面傷が、ガラス容器のコア領域に存在する可能性のある内部引張応力領域に到達することを有利に防止し、ひいては表面傷がガラス容器を貫通して伝播して、容器の完全性が損なわれることを防止する。本開示によれば、そのような局所的な圧縮応力領域は、ガラス容器の選択領域を局所的な熱強化処理に供することによって形成することができる。そのような熱強化処理は、ガラス容器に瞬時の引張応力を誘発して、ガラス容器の形成プロセスから生じる表面傷が比較的深いガラス容器を特定することを支援するなどの付加的な利点を有することができる。局所的な熱的な焼戻しにより、ガラス容器の母集団から欠陥のあるガラス容器を特定し、排除することができる。
【0076】
実施形態では、本明細書に記載のガラス容器は、相乗効果を提供するために、亀裂変向領域と、局所的な圧縮応力領域との両方を含むことができる。例えば、実施形態は、ガラス容器の外面で局所的な圧縮応力領域と重畳する、内部引張応力の高められた亀裂変向領域を含むことができ、重畳する領域において改善された耐損傷性(例えば、表面傷がガラス容器の厚さ内の内部引張応力領域に到達することに対する耐性)と亀裂変向との両方が提供される。実施形態では、亀裂変向領域は、ガラス容器に含まれる局所的な圧縮応力領域に基づいて位置決めすることができ、その結果、亀裂変向領域は、亀裂変向領域と局所的な圧縮応力領域との間に配置されたガラス容器における特定の位置で発生する亀裂を変向させる。
【0077】
本明細書に記載のガラス容器の実施形態では、ガラス容器を形成するガラス組成物の構成成分(例えば、SiO、Al、Bなど)の濃度は、別段の指定がない限り、酸化物基準のモルパーセント(mol%)で指定される。
【0078】
「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物中の特定の構成成分の濃度および/または不在を説明するために使用される場合、その構成成分がガラス組成物に意図的に付加されていないことを意味する。しかしながら、ガラス組成物は、0.05モル%未満の量で混入物質または浮遊物質として微量の構成成分を含む可能性がある。
【0079】
本明細書で使用される「化学的な耐久性」という用語は、ガラス組成物が特定の化学条件に曝された際の劣化に抵抗する能力を指す。具体的には、本明細書に記載のガラス組成物の化学的な耐久性は、確立された4種の材料試験規格、すなわち、2001年3月付けの「Testing of glass - Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid - Method of test and classification」と題されたDIN12116、「Glass -- Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali -- Method of test and classification」と題されたISO695:1991、「Glass -- Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C -- Method of test and classification」と題されたISO720:1985、および「Glass -- Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C -- Method of test and classification」と題されたISO719:1985に従って評価された。各規格および各規格における分類について、本明細書でさらに詳細に説明する。代替的に、ガラス組成物の化学的な耐久性は、「Surface Glass Test」と題されたUSP<660>、および/またはガラスの表面の耐久性を評価する「Glass Containers For Pharmaceutical Use」と題されたEuropean Pharmacopeia 3.2.1に従って評価することができる。
【0080】
本明細書で使用される「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズ(0.1×107.6Pa・s)である温度を指す。
【0081】
本明細書で使用される「CTE」という用語は、約室温(RT)から約300℃までの温度範囲にわたるガラス組成物の熱膨張係数を指す。
【0082】
本明細書で使用される、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、およびその他の量および特性が正確ではなく、正確である必要もないことを意味するが、必要に応じて、公差、変換係数、丸め、測定誤差、および当業者に知られている他の要因などを反映して、おおよその値および/またはより大きい値もしくはより小さい値であってよい。値または範囲の端点を記述する際に「約」という用語が使用される場合、言及される特定の値または端点が含まれる。明細書中の数値または範囲の端点が「約」を示しているか否かにかかわらず、「約」によって修飾されたものと、「約」によって修飾されていないものとの2つの実施形態が記載されている。範囲の各々の端点は、他の端点に関する場合と、他の端点とは独立している場合との双方で重要であることをさらに理解されたい。
【0083】
本明細書で使用される方向に関する用語、例えば、上、下、右、左、前、後、頂、底などは、図示された図を基準としているにすぎず、絶対的な配向を意味することを意図しない。
【0084】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a」の構成要素への言及は、文脈が明確に別の指示をしない限り、2つ以上のそのような構成要素を有する態様を含む。
【0085】
ここで図1を参照すると、医薬製剤を保管するためのガラス容器100の一実施形態が断面図で概略的に示されている。ガラス容器100は、一般に、本体102を備える。本体102は、内面104と外面106との間に延在し、中心軸線Aを含み、概して内容積108を取り囲んでいる。図1に示されたガラス容器100の実施形態では、本体102は、一般に、壁部分110と、底部分112とを備える。壁部分110は、底部分112にヒール部分114を介して移行する。図示の実施形態では、ガラス容器100は、フランジ126と、フランジ126から延在するネック領域124と、バレル118と、ネック領域124とバレル118との間に延在するショルダ領域116とを含む。底部分112は、バレル118にヒール部分114を介して結合される。実施形態では、ガラス容器100は、中心軸線Aに関して対称であり、バレル118、ネック領域124、およびフランジ126の各々が実質的に円筒形状である。本体102は、図1に示されたように、内面104と外面106との間に延在する壁厚さTを有する。
【0086】
実施形態では、ガラス容器100は、USP<660>の下でのタイプ1Bのホウケイ酸ガラス組成物などのホウケイ酸ガラス組成物を含む、USP<660>で定義されるようなタイプI、タイプII、またはタイプIIIのガラスから形成することができる。代替的に、ガラス容器100は、その内容全体を参照により本明細書に援用する米国特許第8551898号明細書に開示されているようなアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物、またはその内容全体を参照により本明細書に援用する米国特許第9145329号明細書に記載されているようなアルカリ土類アルミノケイ酸ガラスから形成することができる。実施形態では、ガラス容器100は、ソーダ石灰ガラス組成物から構成することができる。
【0087】
ガラス容器100は、特定のフォームファクタ(すなわちバイアル)を有するものとして図1に示されているが、ガラス容器100は、Vacutainers(登録商標)、カートリッジ、シリンジ、アンプル、ボトル、フラスコ、バイアル、管、ビーカーなどを含むがこれらに限定されない他のフォームファクタを有してもよいことを理解されたい。さらに、本明細書に記載のガラス容器は、医薬品パッケージ、飲料容器などを含むがこれらに限定されない様々な用途に使用することができることを理解されたい。
【0088】
ガラス容器100の壁厚さTは、実現形態に応じて変化してよい。実施形態では、ガラス容器100の壁厚さTは、6ミリメートル(mm)以下、例えば、4mm以下、2mm以下、1.5mm以下または1mm以下であってよい。幾つかの実施形態では、壁厚さTは、0.1mm以上6mm以下、0.3mm以上4mm以下、0.5mm以上4mm以下、0.5mm以上2mm以下、または0.5mm以上1.5mm以下であってよい。実施形態では、壁厚さTは、0.9mm以上1.8mm以下であってよい。
【0089】
ガラス容器100の様々な部分は、ガラス容器100の形成、輸送、および使用の際に、表面傷または亀裂を形成しやすい可能性がある。形成中、例えば、ガラス管は、ガラス管を成形して切断し、強化してガラス容器100を形成する変換プロセスに供することができる。変換プロセスは、様々な装置(例えば、成形装置、穿孔装置など)が内面104および外面106に接触して潜在的に欠陥を生じさせる可能性がある様々な加工ステーションを含むことができる。別の例では、ガラス容器100が医薬品容器である実施形態では、金属製の充填装置がネック領域124(例えば、回転金属ディスククリンプ)またはヒール領域114に接触し、外面106に表面傷120を生じさせる可能性がある。別の例では、ガラス容器100の輸送中に、バレル118の外面106が別のガラス容器に接触し、表面傷122を生じさせる可能性がある。
【0090】
ガラス容器100の様々な態様は、ガラス容器100の機能性に対する、表面傷120,122などの傷の影響を防止または低減するように設計することができる。例えば、図2を参照すると、実施形態では、本体102は、本体102の少なくとも外面106から壁厚さT内に、本体102の外面106から圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層202を含む。圧縮応力層202は、一般に、ガラス容器100の強度を高め、ガラス容器100の耐損傷性も改善する。具体的には、圧縮応力層202を有するガラス容器は、一般に、強化されていないガラス容器に比べて、引掻き傷、欠け等のより大きな程度の表面の損傷に対して欠陥なしに耐えることが可能である。なぜなら、圧縮応力層202が、圧縮応力層202の表面の損傷からの亀裂の伝播を緩和するからである。
【0091】
幾つかの異なる技術を利用して、圧縮応力層202をガラス容器100の本体102に形成することができる。例えば、本体102がイオン交換可能なガラスから形成される実施形態では、圧縮応力層202は、イオン交換によって本体102内に形成することができる。これらの実施形態では、圧縮応力層202は、ガラス容器を溶融塩の浴に配置して、溶融塩中の相対的に大きいイオンとガラス中の相対的に小さいイオンとの交換を容易にすることによって形成される。幾つかの異なる交換反応を利用して、圧縮応力層202を実現することができる。一実施形態では、浴は溶融KNO塩を含むことができる一方で、ガラス容器100を形成するガラスは、リチウムおよび/またはナトリウムイオンを含む。この実施形態では、浴中のカリウムイオンは、ガラス中の相対的に小さいリチウムイオンおよび/またはナトリウムイオンと交換され、それによって圧縮応力層202が形成される。別の実施形態では、浴はNaNO塩を含むことができ、ガラス容器100を形成するガラスはリチウムイオンを含む。この実施形態では、浴中のナトリウムイオンがガラス中の相対的に小さいリチウムイオンと交換され、それによって圧縮応力層202が形成される。
【0092】
1つの特定の実施形態では、圧縮応力層202は、ガラス容器を100%のKNOの溶融塩浴中、または代替的にKNOとNaNOとの混合物の溶融塩浴中に浸漬することによって形成することができる。例えば、一実施形態では、溶融塩浴は、約10%までのNaNOを含むKNOを含むことができる。この実施形態では、容器を形成するガラスは、ナトリウムイオンおよび/またはリチウムイオンを含むことができる。溶融塩浴の温度は、350℃以上500℃以下であってよい。幾つかの実施形態では、溶融塩浴の温度は、400℃以上500℃以下であってよい。さらに他の実施形態では、溶融塩浴の温度は、450℃以上475℃以下であってよい。ガラス容器は、塩浴中の相対的に大きいイオンとガラス中の相対的に小さいイオンとの交換を容易にし、ひいては所望の表面圧縮応力と層の深さとを実現するのに十分な時間、溶融塩浴中に保持されてよい。例えば、ガラスは、所望の層の深さと表面圧縮応力とを実現するために、0.05時間以上約20時間以下の時間、溶融塩浴中に保持されてよい。幾つかの実施形態では、ガラス容器は、4時間以上約12時間以下の時間、溶融塩浴中に保持されてよい。他の実施形態では、ガラス容器は、約5時間以上約8時間以下の時間、溶融塩浴中に保持されてよい。一実施形態では、ガラス容器は、100%のKNOを含む溶融塩浴中で約400℃以上約500℃以下の温度で、約5時間以上約8時間以下の時間、イオン交換されてよい。
【0093】
典型的に、イオン交換プロセスは、ガラスの歪み点(Tstrain)よりも低い150℃超の温度で実施されて、高温による応力緩和が最小限に抑えられる。しかしながら、幾つかの実施形態では、圧縮応力層202は、ガラスの歪み点を超える温度の溶融塩浴中で形成される。この種類のイオン交換強化は、本明細書では「高温イオン交換強化」と呼ばれる。高温イオン交換強化では、ガラス中の相対的に小さいイオンが、本明細書に記載されているように、溶融塩浴からの相対的に大きいイオンと交換される。歪み点を超える温度で、相対的に小さいイオンが相対的に大きいイオンと交換されると、結果として生じる応力が解放または「緩和」される。しかしながら、ガラス内のより小さいイオンをより大きいイオンで交換すると、ガラスの残りの部分よりも熱膨張係数(CTE)が低い表面層がガラス内に生成される。ガラスが冷えるにつれて、ガラスの表面とガラスの残りの部分との間のCTEの差により、圧縮応力層202が生成される。この高温イオン交換技術は、複雑な幾何学的形状を有するガラス容器などのガラス物品の強化に特によく適し、典型的なイオン交換プロセスに比べて強化プロセスの時間を典型的に短縮し、より深い層の深さも可能にする。
【0094】
図3を参照すると、実施形態では、ガラス容器100は、本体102の少なくとも外面106における圧縮応力層202の形成を促進する積層ガラスから形成することができる。積層ガラスは、一般に、ガラスコア層204と、少なくとも1つのガラスクラッド層206aとを備える。図3に示されたガラス容器100の実施形態では、積層ガラスは、一対のガラスクラッド層206a,206bを含む。この実施形態では、ガラスコア層204は、一般に、第1の表面205aと、第1の表面205aに対向する第2の表面205bとを備える。第1のガラスクラッド層206aは、ガラスコア層204の第1の表面205aに融着され、第2のガラスクラッド層206bは、ガラスコア層204の第2の表面205bに融着される。ガラスクラッド層206a,206bは、ガラスコア層204とガラスクラッド層206a,206bとの間に配置される接着剤、コーティング層などの任意の付加的な材料を使用することなく、ガラスコア層204に融着される。
【0095】
図3に示す実施形態では、ガラスコア層204は、平均コア熱膨張係数CTEcoreを有する第1のガラス組成物から形成されており、ガラスクラッド層206a,206bは、平均熱膨張係数CTEcladを有する第2の異なるガラス組成物から形成されている。本明細書に記載の実施形態では、CTEcoreはCTEcladと等しくなく、その結果、圧縮応力層がコア層またはクラッド層の少なくとも一方に存在する。幾つかの実施形態では、CTEcoreはCTEcladより大きいため、ガラスクラッド層206a,206bは、イオン交換または熱的に焼戻しすることなく圧縮応力を受ける。そのような実施形態では、クラッド層206a,206bのうちの1つは、図2に示された圧縮応力層202を備えることができる。積層ガラスが単一のコア層と単一のクラッド層とを備える場合などの幾つかの他の実施形態では、CTEcladはCTEcoreよりも大きくてよく、それにより、ガラスコア層はイオン交換または熱的に焼戻しすることなく圧縮応力を受ける。積層ガラスは、参照により本明細書に援用する米国特許第10450214号明細書に記載されている融着積層プロセスなどのプロセスによって形成することができる。積層ガラスを使用して容器が形成される場合、これらの圧縮応力層は、ガラス容器100の外面106から壁厚さT内に、かつガラス容器の内面104から壁厚さT内に延在する。
【0096】
図2を参照すると、圧縮応力層202が壁厚さT内に延在するDOCは、圧縮応力層202を形成するために使用される方法に左右される可能性がある。実現形態に応じて、圧縮応力層202は、ガラス容器の本体の外面106から壁厚さT内に、約1μm以上ないし壁厚さTの約90%以下であるDOCまで延在することができる。圧縮応力層202が積層ガラスの副層として形成される実施形態では、圧縮応力層202は、ガラス容器の本体102の外面106から壁厚さT内に、約1μm以上ないし壁厚さTの約33%以下であるDOCまで延在することができる。圧縮応力層202が、ガラス容器100をイオン交換プロセスに供することにより形成される実施形態では、圧縮応力層202は、ガラス容器100の本体102の外面106から壁厚さT内に、約1μm以上ないし壁厚さTの約10%以下であるDOCまで延在することができる。
【0097】
実施形態では、圧縮応力層202(例えば、外側クラッド層206a,206bの両方)は、50メガパスカル(MPa)以上、75MPa以上、100MPa以上、またはさらに150MPa以上の圧縮応力下にあってよい。例えば、実施形態では、圧縮応力層202は、50MPa以上700MPa以下、50MPa以上500MPa以下、50MPa以上400MPa以下、75MPa以上750MPa以下、75MPa以上500MPa以下、75MPa以上400MPa以下、100MPa以上700MPa以下、100MPa以上500MPa以下、またはさらに100MPa以上400MPa以下の圧縮応力下にあってよい。
【0098】
実施形態では、圧縮応力層202の外側のガラス容器100の残りの部分(例えば、図3に関して説明したコア層204)は、圧縮応力層202の圧縮応力と釣り合う内部引張応力下にある。例えば、実施形態では、外側クラッド層206a,206b間のCTEの不一致の結果として、コア層204は、10MPa以上50MPa以下、10MPa以上40MPa以下、10MPa以上30MPa以下、15MPa以上50MPa以下、15MPa以上40MPa以下、または15MPa以上30MPa以下の内部引張応力または引張応力を示すことができる。実施形態(例えば、圧縮応力層202が、ガラス容器100をイオン交換に供することにより形成される場合)では、コア層204は、10~15MPaの内部引張応力を示すことができる。
【0099】
ガラス容器100に蓄えられた内部引張応力が閾値量(例えば、10MPa)を超える図1を参照すると、内部引張応力まで延在するガラス容器100の表面傷120,122は、それらの発生点から伝播する亀裂を形成する可能性がある。表面傷120,122から生じる亀裂の伝播方向は、ガラス容器100内の残留応力場の配向に左右される可能性がある。例えば、一実施形態では、壁厚さTは、バレル118全体にわたって実質的に一定(例えば、約1.5mm)であり、バレル118における軸線方向(例えば、軸線Aに対して平行)の残留引張応力は、(例えば、中心軸線Aと外面106とに対して垂直にバレル118内で延在する)周方向の残留引張応力より小さい。このような場合、表面傷122は、より高い残留引張応力を有する方向に対して垂直な方向に伝播する可能性がある。この例では、表面傷122は軸線方向に伝播する可能性がある。ガラス容器100は、表面傷122に起因する亀裂がガラス容器100全体を貫通して軸線方向に延在したとしても、ガラス容器の全体構造を維持する(例えば無傷のままである)のに必要な強度を有する可能性がある。
【0100】
これらの状況下では、ガラス容器100の使用者は、軸線方向に伝播するそのような亀裂に気づかない場合がある。さらに、使用中、ガラス容器100は、外面106上に配置された任意の数のラベル(例えば、接着ラベル)を含むことがある。そのような接着ラベルは、表面傷120,122などの表面傷から生じる亀裂を隠してしまう可能性がある。ガラス容器100を貫通して伝播する亀裂はまた、複数の亀裂に分岐して、最も大きい残留引張応力の方向に対して垂直な方向に一般に延在する可能性がある。そのような亀裂は、ガラス容器100内に収容される物品の無菌性を損なう可能性がある。これを考慮すると、亀裂が表面傷120,122から伝播することを防止することが有利である。さらに、そのような亀裂が引張応力下でガラス容器100の領域に入った場合、そのような亀裂が目立つように伝播することを確保し、欠陥のあるガラス容器100を迅速に識別して廃棄することが有益である。
【0101】
上記を考慮して、実施形態では、ガラス容器100は、亀裂変向領域130と、局所的な圧縮応力領域140とを含む。局所的な圧縮応力領域140は、外面106および内面104のうちの少なくとも1つから延在する圧縮応力下にあるガラス容器100の領域である。図示の実施形態では、局所的な圧縮応力領域140は、圧縮応力領域140に隣接するガラス容器100の圧縮応力の領域よりも大きい量だけ、外面106から壁厚さT内に延在する。例えば、図2に関して説明したように、ガラス容器が圧縮応力層202を含む実施形態では、局所的な圧縮応力領域140は、圧縮応力層のDOCを超える局所的な圧縮深さDOCまで圧縮応力下にあってよい。局所的な圧縮応力領域140内の圧縮応力のより深い圧縮深さは、表面傷がガラス容器100内の残留引張応力に到達し、ガラス容器100内で伝播することを有益に防止する。
【0102】
図1に示された実施形態は、単一の局所的な圧縮応力領域140をヒール領域114に含むが、より多数の局所的な圧縮応力領域を含む実施形態および/またはガラス容器100上の(例えば、ネック領域124、バレル118、ショルダ領域116、またはガラス容器100上の任意の他の位置内などの)代替的な位置にある局所的な圧縮応力領域を含む実施形態が想定されることを理解されたい。実施形態では、局所的な圧縮応力領域140は、ガラス容器を特定の温度まで加熱するステップ(例えば、ガラス容器100を形成するガラス組成物を軟化点まで加熱するステップ)と、続いて内面104および外面106のうちの少なくとも1つに冷媒を適用することによって内面104および外面106のうちの少なくとも1つが冷却される急速冷却ステップとを含む局所的な熱強化処理をガラス容器100に適用することによって形成される。局所的な圧縮応力領域140を形成する様々な方法が、本明細書においてより詳細に説明される。
【0103】
図1を引き続き参照すると、亀裂変向領域130は、ガラス容器100の残りの部分(例えば、亀裂変向領域130以外のガラス容器の部分)と比較して、修正された残留応力場を含む。応力場は修正されて、亀裂変向領域130内の残留引張応力が、亀裂の所望の伝播方向に対して実質的に垂直な方向で大きくなるようにすることができる。例えば、実施形態では、最初に底部分112に向かって表面傷122から(例えば、軸線Aに対して実質的に平行な)軸線方向に伝播する亀裂を変向させて、代わりにガラス容器100の目立つ部分(例えば、ガラス容器100の接着ラベルによって覆われていない領域)に周方向に伝播させることが望まれる場合がある。そのような実施形態では、亀裂変向領域130は、周方向よりも軸線方向に延在するより高い引張応力を有する残留引張応力領域を有することができ、亀裂が所望の方向に変向させられる。
【0104】
亀裂変向領域130内の残留応力場は、ガラス容器100の残りの部分と比較して、様々な異なる様式で方向的に修正することができる。図1に示す実施形態では、例えば、亀裂変向領域130は、壁厚さTが減少した肉薄領域である。このような厚さの減少は、ガラス容器が強化されるときに、亀裂変向領域130内の内部引張応力を増大させることができる。例えば、(例えば、イオン交換プロセスを通じて形成される)圧縮応力層202は、ガラス容器100の他の領域よりも壁厚さTの大きな部分を通って延在していてよく、それにより、圧縮応力層202の外側のガラス容器100の領域は、圧縮応力に釣り合うようにより大きな内部引張応力を有する。亀裂変向領域130は、任意の様式で配置された任意の数のそのような肉薄領域を含むことができ、所望の方向性が亀裂変向領域130内の残留引張応力場に生成される。
【0105】
ガラス容器100は、様々な異なる構造を有する任意の数の亀裂変向領域を含むことができる。実施形態では、亀裂変向領域は、典型的には接着ラベルなどによって覆われていないガラス容器100の部分を貫通して亀裂を変向させるように位置決めされており、比較的よく見られる発生点から生じる、ガラス容器100を貫通して伝播する亀裂の視認性が高められる。様々な異なる亀裂変向領域およびそれを形成する方法が、本明細書でより詳細に説明される。
【0106】
図1を引き続き参照すると、亀裂変向領域130と局所的な圧縮応力領域140との両方が外面106上に延在するように示されているが、代替的な実施形態では、亀裂変向領域130および局所的な圧縮応力領域140のうちの少なくとも1つが内面104上に位置してよいことを理解されたい。さらに、特定の実施形態は、複数の亀裂変向領域または局所的な圧縮応力領域を含むことができる。実施形態では、外面106と内面104との両方が、少なくとも1つの、局所的な圧縮応力領域と亀裂変向領域とを含む。
【0107】
実施形態では、亀裂変向領域130は、局所的な圧縮応力領域140と重畳することができる。そのような構成は、亀裂を所望の方法で変向させる亀裂変向領域130を形成するためにガラス容器100が修正される範囲を、有利に減少させることができる。局所的な圧縮応力領域140内で、壁厚さT内により深く延在する圧縮応力下の層を有することに加えて、ガラス容器100はまた、圧縮応力の相対的に深い層と重畳する、より大きな内部引張応力領域を有することができる。例えば、図1に示された実施形態は、局所的な圧縮応力領域140と亀裂変向領域130との間の重畳領域150を示す。すなわち、重畳領域150は、亀裂変向領域130と局所的な圧縮応力領域140との両方を含む(すなわち、重畳領域150は、本明細書に記載の亀裂変向領域130と圧縮応力領域140との両方を形成するためのプロセスに供される)。局所的な圧縮応力領域140を形成するために使用される局所的な熱強化処理から生じる、重畳領域150に近接する内部引張応力の増大は、例えば、亀裂変向領域130内のガラス容器の厚さを変更する必要性を減少させることができ、残留応力場の所望の修正が実現される。換言すれば、重畳領域150内でのより大きな壁厚さTが可能になり、同じ亀裂変向効果が実現され、その結果、亀裂変向領域130が局所的な圧縮応力領域140と重畳しない場合よりも強いガラス物品をもたらしながら、同じ亀裂変向能力が提供される。
【0108】
ここで図4Aを参照すると、図1のI-I線における亀裂変向領域130の一実施形態の断面図が示されている。図4Aは、亀裂変向領域130でのガラス容器100の周部分を示す。亀裂変向領域130は、凹部400を含み、凹部400内のガラス容器100の厚さは、バレル118の残り全体にわたる壁厚さT未満である。実施形態では、ガラス容器100は、凹部400内に最小の壁厚さTminを有する。最小の壁厚さTminは、ガラス容器100の全体的なサイズおよび組成に基づいて決定することができる。実施形態では、亀裂変向領域130は、上下に(例えば、図4Aのページへと軸線方向Aに)複数の凹部400を含み、これらの凹部400によって、周方向よりも軸線方向に増大する応力場が生成されて、ガラス容器100を貫通して伝播する亀裂が変向させられる。
【0109】
例えば、図4Bおよび図4Cは、図1のII-II線での亀裂変向領域130の実施形態の断面図を示している。図示のように、亀裂変向領域130は、軸線方向402に延在する複数の凹部400を含む。複数の凹部400は、ピーク404によって分離されており、ガラス容器100の厚さが亀裂変向領域130内の正弦曲線に従って変化する。亀裂変向領域130内で、ガラス容器100は、各凹部400内のトラフ406で最小の厚さTminを有し、凹部400同士の間のピークで最大の厚さTmaxを有する。実施形態では、Tmaxは、ガラス容器100の残りの壁厚さTに等しい。実施形態では、Tminは、ガラス容器100の残りの壁厚さTに等しい。実施形態では、亀裂変向領域130内のガラス容器100の平均厚さは、ガラス容器100の残りの壁厚さTに等しい。
【0110】
図4Bは、亀裂変向領域130内のガラス容器100の(例えば、軸線方向に延在する)軸線方向の応力プロファイルを示す。図4Cは、亀裂変向領域130内のガラス容器100の(例えば、周方向に延在する)周方向の応力プロファイルを示す。図4Bに示すように、亀裂変向領域130内で、軸線方向の応力プロファイルは、(図示の例では厚さがTminに等しい、ガラス容器100の厚さの極小値に対応する)トラフ406で、最も大きい軸線方向の応力の領域を含む。図4Cに示すように、亀裂変向領域130内では、周方向の応力プロファイルは、図示の例では、厚さがTmaxに等しい(ガラス容器100の厚さの極大値に対応する)ピーク404で、最も大きい周方向の応力の領域を含む。実施形態では、実質的に一定の壁厚さTを有するガラス容器100の残りの部分とは異なり、トラフ406での軸線方向の応力は、亀裂変向領域130内のピーク404での周方向の応力よりも大きくすることができる。したがって、トラフ406のそれぞれにおける最も大きい軸線方向の応力の複数の点は、軸線方向に引張応力を加えて、亀裂変向領域130を貫通して伝播する亀裂が周方向に変向させられる。
【0111】
亀裂変向領域130の様々な態様は、図4A図4B、および図4Cに示す実施形態に従って変化してよく、特定の亀裂変向効果の応力場が変化する。例えば、正弦曲線の振幅(例えば、TmaxとTminとの間の差)または正弦曲線の周期Pを変化させることにより、応力の方向の差に影響を与えることができ、ガラス容器100上の様々な発生点から伝播する亀裂の伝播経路が変更される(例えば、周期Pを小さくすることにより、軸線方向の引張応力を増大させることができる)。亀裂変向領域130内の厚さの変化は、特定の実施形態では正弦曲線として変化しなくてもよいが、異なる最小の厚さと最大の厚さとを有する厚さの変化の任意の分布を含むことを理解されたい。
【0112】
図5を参照すると、実施形態では、亀裂変向領域130はまた、ガラス容器100の周の周りに(例えば、内面104に対して接線方向に延在する)周方向に延在することができ、その結果、ガラス容器100の任意の周部分から生じる亀裂は、亀裂変向領域130を介して変向させることができる。図5に示すように、亀裂変向領域130は、周方向に正弦曲線として延在する、図4A図4B、および図4Cに関して本明細書で説明したものと同様の複数の凹部400を含む。実施形態では、亀裂変向領域130は、ガラス容器100の周全体の周りに周方向に延在する。そのような亀裂変向領域130に遭遇する(例えば、軸線方向に、または図5のページに出入りするように延在する)軸線方向の亀裂は、変向させられてガラス容器100を分離させ、ガラス容器100をその意図された目的のために使用不可にすることができる。実施形態では、ガラス容器100全体の周りに延在する単一の亀裂変向領域130ではなく、ガラス容器100は、複数の別個の亀裂変向領域を含み、各亀裂変向領域が、ガラス容器100の一部の周りにのみ延在してもよい。
【0113】
ガラス容器上の異なる位置を有し、本明細書に記載の亀裂変向領域130とは異なる構造を有する亀裂変向領域が考えられ、可能である。例えば、図6A図6Hは、ネック領域602と、ネック領域602の複数の異なる亀裂変向領域とを有するガラス容器600の断面図を示している。例えば、図6Aは、ネック領域602に切欠きを含む亀裂変向領域608を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。ガラス容器600は、亀裂変向領域608で減少した厚さを有し、軸線方向の内部引張応力の差が生成されて、軸線方向の亀裂が周方向に変向させられる。
【0114】
図6Bは、ネック領域602の内面606と外面604との両方に複数の溝を含む亀裂変向領域610を含む、ガラス容器600の実施形態を示している。内面606と外面604との両方に溝を含むことにより、軸線方向の応力に付加的なピークが生じ、亀裂変向領域610を貫通して伝播する亀裂が周方向に変向させられる可能性が高まる。内面606と外面604との両方に溝を含むことにより、亀裂変向領域610内のガラス容器600の全体の厚さも減少し、それにより軸線方向および周方向の残留引張応力の差を増大させることができる。
【0115】
図6Cは、ガラス容器600のネック領域602とショルダ領域614との間の移行領域で、内面606と外面604とに溝を含む亀裂変向領域612を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。溝のそのような位置決めにより、ネック領域602の基部に最小の厚さのセグメントを位置決めすることができ、その結果、ネック領域602を貫通して伝播する亀裂が生じた場合に、ネック領域602はガラス容器600の残りの部分から分離することができる。図6Dは、ネック領域602とフランジ618との間の移行領域で、内面606と外面604とに溝を含む亀裂変向領域616を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。溝のそのような位置決めにより、フランジ618の基部に最小の厚さのセグメントを位置決めすることができ、その結果、ネック領域602またはフランジ618を貫通して伝播する亀裂が生じた場合に、フランジ618はガラス容器600の残りの部分から分離することができる。
【0116】
図6Eは、内面606と外面604との両方から突出するリムを含む亀裂変向領域620を含む、ガラス容器600の実施形態を示している。このようなリムの組込みにより、ガラス容器のイオン交換プロセス中に応力を集中させ、ひいては引張応力の軸線方向の差を誘発することができる。このような実現形態は、厚さを薄くした領域を必要としないことによってネック領域602の構造強度を維持することができるという点で有益である可能性がある。図6Fは、ネック領域602の内面606と外面604との両方に緩やかな凹面を含む亀裂変向領域622を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。
【0117】
図6Gは、ショルダ領域614内の外面604に凹面を含む亀裂変向領域624を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。亀裂変向領域624のそのような位置決めにより、ガラス容器のバレル部分626を貫通して軸線方向に伝播する亀裂が生じた場合に、ショルダ領域614でガラス容器600の分離を生じさせることができる。図6Hは、ネック領域602に開口を含む亀裂変向領域628を含む、ガラス容器600の実施形態を示す。開口は、亀裂変向領域628内に最小の厚さの2つの領域(例えば、内面606と開口との間の第1の領域、および外面604と開口との間の第2の領域)を生成し、複数の軸線方向のピークが、それらの領域の残留引張応力に生成される。実施形態では、開口は、開口に接触するガラス組成よりも低いCTEを有する材料を含むことができ、引張応力がさらに高められる。
【0118】
図6G図6Hに関して説明された亀裂変向領域のいずれも、内面606、外面604、または内面606と外面604との両方に特徴を含むことができることを理解されたい。さらに、図6G図6Hに関して説明された亀裂変向領域のいずれも、ガラス容器600の任意の位置(例えば、バレル部分626、ヒール部分など)に位置決めすることができる。
【0119】
実施形態では、本明細書に記載の亀裂変向領域は、ガラス容器の厚さの変化を含まなくてもよいが、ガラス容器内の残留応力場を変更する他の特徴を含むことができる。例えば、実施形態では、亀裂変向領域は、イオン交換強化中のイオン(例えば、カリウムイオン)の表面遮断によって形成することができ、軸線方向の残留引張応力の変化が生成されて、亀裂変向が誘発される。別の例では、ガラス容器内の密度の変化を使用して、亀裂変向領域が形成されてよい。ガラス容器内の密度の低下した領域は、イオン交換強化の結果として圧縮層の増大した深さをもたらすことができ、引張応力の増大した領域が形成される。実施形態では、亀裂変向領域は、ガラス容器の選択された領域を域差焼なましまたは冷却に供することによって形成することができる。例えば、特定の実施形態では、亀裂変向領域は、(例えば、ガラス容器の初期形成後の)焼なまし熱処理中にガラス容器の領域を遮蔽することによって、素材(例えば、管)のガラス容器への変換中に、またはガラス容器のバルク焼なまし後の後加熱/冷却処理中に、ガラス容器の所望の領域を冷却ツールに接触させることによって、形成することができる。ガラス容器の所望の領域に方向性の残留引張応力を形成することができる任意の技術を使用して、本明細書に記載の亀裂変向領域が形成されてよい。実施形態では、亀裂変向領域は、火炎処理またはレーザ処理を介した仮想温度の局所的な修正によって形成することができる。実施形態では、エネルギー源(例えば、火炎、レーザなど)からのエネルギーが、局所的な加熱のために亀裂変向領域の所望の位置に入射されてよい。所望の位置のその後の冷却により、ガラス容器の局所的な密度の変化をもたらすことができ、その結果、亀裂変向領域でガラス容器に異なる応力プロファイルが生じる。ガラス容器の亀裂変向領域と他の領域との間のこのような応力プロファイルの差は、その後の(例えば、イオン交換による)化学的な強化によって増大させることができ、所望の亀裂変向効果が提供される。
【0120】
本明細書に記載の亀裂変向領域に関する前述の議論は、主に、ガラス容器の軸線方向に延在する残留引張応力のより高い領域を生成するために使用されるガラス容器内の局所的な特徴について説明した。そのような局所的な特徴は、任意の方向に延在し、任意の所望の亀裂変向効果を有することができる。
【0121】
例えば、図7は、ガラス容器700を貫通して軸線方向に伝播する亀裂702を含むガラス容器700の斜視図を示す。ガラス容器700は、一般にガラス容器700のネック領域706の周りで周方向に延在する、亀裂変向領域704を含む。亀裂変向領域704は、任意の特徴(例えば、凹部、溝、密度が減少した領域)を含むことができる。しかしながら、図示の実施形態では、亀裂変向領域704は、周方向に直接的に延在するのではなく、ジグザグ経路に沿って延在する。例えば、亀裂変向領域704は、(例えば、ガラス容器700の厚さがジグザグパターンに沿った正弦曲線に従って変化するように)ジグザグパターンに配置された複数の溝を含むことができる。このようなパターンは、軸線方向に延在する亀裂702が亀裂変向特徴と90°の角度で交差しないという点で有益である。したがって、亀裂変向領域704に沿って延在させるために亀裂702を転換させる必要のある角度量は、亀裂変向領域が周方向に沿って直線で延在する実施形態よりも小さい。必要な転換量のそのような減少により、亀裂の転換をより良好に促進することができる。
【0122】
図8A図8Dは、第1の亀裂変向特徴802を含むガラス容器800の実施形態を示している。第1の亀裂変向特徴802は、本明細書に記載されるように、ガラス容器800のネック領域の周りに周方向に延在して軸線方向の亀裂を周方向に変向させる複数の特徴(例えば、凹部)を含むことができる。実施形態では、付加的な亀裂変向特徴が亀裂変向領域802に付加されてよく、様々な異なる方向に延在する亀裂が変向させられる。
【0123】
例えば、図8Bは、第1の螺旋パターンで延在する亀裂変向領域804を含む、ガラス容器800の一実施形態を示す。実施形態では、亀裂変向領域804は、亀裂変向領域804に沿って延在する複数の特徴(例えば、溝、窪み、凹面)を含む。第1の螺旋パターンは、相対的にきつくすることができ、その結果、亀裂変向領域804が、ガラス容器の底部分810と亀裂変向領域802との間のガラス容器の周全体の周りに少なくとも一回り延在する。このようなパターンは、ガラス容器800内の任意の軸線方向の位置で生じた亀裂が、90°未満の角度で亀裂変向領域804に遭遇することを容易にし、これにより、顕著な様式で亀裂変向が促進され、ガラス容器800が欠陥品の場合にガラス容器800を廃棄することができる。
【0124】
図8Cは、第2の螺旋パターンで延在する亀裂変向領域806を含む、ガラス容器800の一実施形態を示す。図8Bに関して説明した第1の螺旋パターンと比較して、第2の螺旋パターンは、軸線方向に対してより小さい角度で延在し、一般に、軸線方向に伝播する亀裂変向を促進する。図8Dは、ガラス容器800の一実施形態を示し、これは、軸線方向に延在する亀裂変向領域808を含み、これにより、ガラス容器の周りで周方向に伝播する亀裂の変向が軸線方向に促進される。亀裂変向領域808は、ガラス容器800の外面に配置された接着ラベルによって隠されている亀裂を露出させることができる。
【0125】
実施形態では、本明細書に記載の亀裂変向領域は、素材(例えば、ガラス管状物)をガラス容器に変換するプロセス中に形成することができる。そのような変換プロセスは、図9に関して本明細書でより詳細に説明される。図9は、図1に関して本明細書で説明されるガラス容器100などのガラス物品をガラス管状物から生成するために使用することができる変換器900を示す。図示された変換器900は単なる例示であり、限定を意図するものではないことを理解されたい。本明細書に記載のガラス容器は、任意の種類の変換プロセスによって形成することができる。変換器900は、複数の加工ステーション904を有する基部902と、基部902の上方に位置決めされて、中心軸線A周りに基部902に対して回転可能なメインタレット906と、メインタレット906の上方に位置決めされて、メインタレット906にガラス管状物910を供給するガラス管ローディングタレット908と、を含む。また、変換器900は、基部902上に設けられた複数の二次加工ステーション912と、基部902に対して回転可能に設けられた二次タレット914とを含むことができる。
【0126】
複数の加工ステーション904は、互いに離隔して、メインサーキット916に配置される。1つ以上の実施形態では、メインサーキット916は、円形であってよく、メインタレット906は、中心軸線A周りのメインタレット906の回転によって、複数の加工ステーション904を通してガラス管状物910を割り出しすることができる。代替的に、他の実施形態では、メインサーキット916は線形であってもよい。加工ステーション904の円形レイアウトを参照して本明細書に記載されているが、本明細書に開示された主題は、加工ステーション904の他の配置を有する変換器にも同様に適用することができることが理解される。複数の加工ステーション904は、実現形態に応じて任意の数の加工ステーションを含むことができる。加工ステーション904は、限定するものではないが、例として、ガラス物品をガラス管状物910から製造するための1つ以上の加熱、成形、研磨、冷却、分離、穿孔、再被覆、トリミング、測定、供給、もしくは排出するための、ステーション、または他の加工ステーションを含むことができる。ガラス管状物910から製造されるべき物品の種類および/または形状はまた、変換器900の加工ステーション904の種類および/または加工ステーション904の順序に影響を与えることができる。
【0127】
メインタレット906は、各ガラス管状物910をメインタレット906に取外し可能に固定するように構成された複数のホルダ918を含む。ホルダ918は、クランプ、チャック、または他の保持装置、または保持装置の組み合わせであってよい。ホルダ918は、ガラス管状物910がメインタレット906の中心軸線Aに対してほぼ平行になるように、ガラス管状物910の各片を配向することができる。ガラス管ローディングタレット908は、円形サーキットに配置された複数のローディングチャネル920であって、ガラス管状物910の長さを保持するように構成された複数のローディングチャネル920を含むことができる。ガラス管ローディングタレット908は、ローディングチャネル920の1つを、変換器900のメインサーキット916の加工ステーション904と、メインサーキット916の加工ステーション904を通して割り出しされるメインタレット906上の対応するホルダ918とに上下方向に(すなわち、メインタレット906の中心軸線Aに対して平行にかつ/または図9のZ軸に対して平行に)位置合わせして配向するように位置決めすることができる。
【0128】
ここで図10を参照すると、加工ステーション1000が概略的に示されている。実施形態では、加工ステーション1000は、図9に関して本明細書で説明される変換器900の加工ステーション904のうちの1つである。例えば、実施形態では、加工ステーション1000は、加工ステーション904のうちの加熱ステーションである第1の加工ステーションと加工ステーション904のうちの成形ステーションである第2の加工ステーションとの後に、メインサーキット916内に位置決めすることができる。図10に示されたように、部分的に形成されたガラス容器1002は、(例えば、図9に関して本明細書で説明されるホルダ918の1つに対応する)ホルダ1004に固定される。実施形態では、加工ステーション904のうちの加熱ステーションである第1の加工ステーションは、最初に、ガラス管状物が塑性変形可能になり、ガラスに亀裂が入ったりガラスが粉々になったりすることなく効果的に成形することができる目標温度(例えば、軟化点または作業点)までガラス管状物を予熱することができる。ガラス管状物が予熱された後、加工ステーション904のうちの成形ステーション(または分離ステーションに加えて複数の成形ステーション)である第2の加工ステーションは、ガラス管状物を部分的に成形されたガラス容器1002に成形することができる。
【0129】
ガラス管状物が部分的に形成されたガラス容器1002に形成された後、部分的に形成されたガラス容器1002は、付加的な加工ステーション904に供することができ、容器が再加熱される。実施形態では、ガラス管状物が部分的に形成されたガラス容器1002に形成された後、部分的に形成されたガラス容器1002は、加工ステーション1000に移送することができ、亀裂変向領域が形成される。
【0130】
図10に示すように、加工ステーション1000は、第1のレーザビーム1008を放出する第1のレーザビーム源1006と、第2のレーザビーム1012を放出する第2のレーザビーム源1010とを含む。加工ステーション1000を変換器900内に有利に位置決めして、部分的に形成されたガラス容器1002が加工ステーション1000に到達したとき、部分的に形成されたガラス容器1002が(例えば、部分的に形成されたガラス容器1002を構成するガラス組成物の軟化点を上回る)高温になるようにすることができる。そのような高温は、第1のレーザビーム源1006および第2のレーザビーム源1010のための比較的低出力のレーザビーム源の使用を容易にする。実施形態では、第1のレーザビーム源1006および第2のレーザビーム源1010は、パルスレーザビーム1008,1012を放出するCOレーザ源である。パルスレーザビーム1008,1012は、形成が望まれる亀裂変向領域の特性に応じて、様々な異なるパルス長とスポットサイズとを有することができる。例えば、第1のレーザビーム源1006および第2のレーザビーム源1010の、パルス長および/または出力は、亀裂変向領域内のガラス容器の所望の最小の厚さ(例えば、図4A図4B、および図4Cに関して説明したTminの値)に基づいて調整することができる。パルスレーザビーム1008,1012のスポットサイズは、亀裂変向領域内の厚みの変化の所望のサイズ(例えば、図4Cに関して説明した周期P)に基づいて(例えば、レーザビーム源1006,1010の間に位置決めされた図示されていない光学系を使用して)調整することができる。
【0131】
第2のレーザビーム1012は、部分的に形成されたガラス容器1002の外面1014に向けられる。したがって、第2のレーザビーム源1010を使用して、外面1014上に凹部(例えば、図4A図4B、および図4Cに関して本明細書で説明される凹部400)が形成されてよい。実施形態では、部分的に形成されたガラス容器1002および第2のレーザビーム1012は、(例えば、第2のレーザビーム源1010と部分的に形成されたガラス容器1002との間に位置決めされた、図示されていない走査要素を介して)互いに相対的に移動することができ、外面1014上に所望の凹部のパターンが形成される。実施形態では、ホルダ1004は、部分的に形成されたガラス容器1002が加工ステーション1000内にある間に回転し、その結果、凹部の任意のパターンを、部分的に形成されたガラス容器1002の周全体の周りに形成することができる。実施形態では、部分的に形成されたガラス容器1002と第2のレーザビーム1012との間の相対的な位置決めは、軸線方向に(例えば、走査要素を介して、軸線方向に並進するホルダ1004を介して)調整することができ、亀裂変向特徴が、外面1014上の任意の軸線方向の位置に形成される。凹部は、同様の方法で、第1のレーザビーム1008を介して、部分的に形成されたガラス容器1002の内面1016に形成することができる。
【0132】
図10を引き続き参照すると、加工ステーション1000は、実現形態に応じて任意の数のレーザビーム源を含むことができることを理解されたい。例えば、実施形態では、加工ステーション1000は、部分的に形成されたガラス容器1002の様々な軸線方向の位置に位置決めされた複数のレーザビーム源を含むことができ、外面1014および内面1016上に複数の亀裂変向領域が同時に形成される。実施形態では、単一のレーザビーム源を使用して、亀裂変向領域が内面1016と外面1014との両方に形成されてよい。
【0133】
変換プロセス中に本明細書に記載の亀裂変向領域を形成するための代替的な加工ステーションも想定される。例えば、1つの加工ステーションは、部分的に形成されたガラス容器1002が高温にある間に、部分的に形成されたガラス容器1002の表面(例えば、外面1014および内面1016)に機械的に接触する成形要素または形成要素を含むことができる。形成要素は、部分的に形成されたガラス容器1002の表面(例えば、外面1014)に適合する第1の部分と、亀裂変向領域の特徴の所望のプロファイル(例えば、凹部、リム)に対応するように成形された第2の部分とを含む表面を有することができる。形成要素は、部分的に形成されたガラス容器1002の様々な位置に圧入することができ、本明細書に記載の亀裂変向領域が形成される。別の代替的な加工ステーションは、局所的な熱源(例えば、レーザビーム、火炎)を含むことができ、部分的に形成されたガラス容器1002の領域内の仮想温度が局所的に変更され、亀裂変向領域が形成される。
【0134】
前述の例では、ガラス管状物をガラス容器に変換するための変換プロセス中に本明細書の亀裂変向領域を形成することを説明しているが、本明細書に記載の亀裂変向特徴は、異なる時点で形成されてもよいことを理解されたい。例えば、亀裂変向特徴のいずれも、変換プロセス後の完成したガラス容器が加熱されるステップ中に形成されてもよい。
【0135】
ここで図11Aを参照すると、図1に関して説明したガラス容器100の領域1100が、例示的な実施形態に従って概略的に示されている。領域1100は、局所的な圧縮応力領域140を含む。図示の実施形態では、ガラス容器100は、領域1100全体に広がる圧縮応力層1104を含む。実施形態では、圧縮応力層1104は、図2に示された圧縮応力層202に関して本明細書で説明される方法のいずれかによって形成することができる。実施形態では、ガラス容器100は、圧縮応力層1104を含まなくてよい。例えば、ガラス容器が(例えば、20ml以上50ml以下の内容積を規定するような)比較的大きい実施形態では、ガラス容器100は、イオン交換によって化学的に強化されなくてよく、かつ圧縮応力層1104を含まなくてよいが、局所的な圧縮応力領域がガラス容器のよく接触する領域(例えば、ヒール領域114、ネック領域124、ショルダ領域116)に位置することを条件とする。すなわち、本明細書に記載の局所的な圧縮応力領域は、特定のガラス容器をイオン交換する必要性を排除し、加工価格を削減することができる。
【0136】
図11Aに示された実施形態では、圧縮応力層1104は、外面106からガラス容器100の壁厚さ内に第1の圧縮深さDOCまで延在する。実施形態では、ガラス容器100は、外面106で最大圧縮応力CSmax下にある。最大圧縮応力CSmaxの値は、圧縮応力層1104が形成される方法およびガラス容器100の組成に応じて変化することができる。例えば、実施形態では、最大圧縮応力CSmaxは、50MPa~750MPa(例えば、750MPa、700MPa、500MPa、400MPa、300MPa、200MPa、100MPa、50MPa、またはそれらの間の値のいずれか)の範囲であってよい。
【0137】
図11Aに示された線Aにおいて、ガラス容器100の残留応力プロファイルは、第1の圧縮深さDOCで張力に変わる。すなわち、圧縮応力層1104は、外面106から壁厚さT内に第1の圧縮深さDOCまで延在する。第1の圧縮深さDOCは、実現形態に応じて異なってよい。例えば、圧縮応力層1104がイオン交換によって形成される実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、約3μm以上とすることができる。幾つかの実施形態では、層の深さは、約25μm以上、または約30μm以上でさえあってよい。例えば、幾つかの実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、約10μm以上、および約200μm以上であってもよい。幾つかの他の実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、約30μm以上約150μm以下であってよい。さらに他の実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、約30μm以上約80μm以下であってよい。幾つかの他の実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、約35μm以上約50μm以下であってよい。実施形態では、圧縮応力層1104は、積層ガラスのクラッド層内に形成することができる。そのような実施形態では、クラッド層はまた、イオン交換強化に供することができ、重畳した圧縮応力プロファイルが圧縮応力層1104内に生成される。
【0138】
実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、外面106からガラス容器100の壁厚さT内に25%以下で延在してよい。実施形態では、第1の圧縮深さDOCは、壁厚さTの2%以下、壁厚さTの3%以下、壁厚さTの5%以下、壁厚さTの10%以下、壁厚さTの15%以下、壁厚さTの20%以下、壁厚さTの25%以下、またはそれらの間の値のいずれかであってよい。
【0139】
図11Aに示すように、局所的な圧縮応力領域140内で、ガラス容器100は、圧縮応力層1104の第1の圧縮深さDOCを超える第2の圧縮深さDOCまで圧縮応力下にある。したがって、局所的な圧縮応力領域140内では、残留圧縮応力は、局所的な圧縮応力領域140の外側の(または隣接する)ガラス容器100の領域よりも、壁厚さT内により深く延在する。外面106に付与された表面傷が引張応力下で分岐し、伝播する可能性があることを考慮すると、局所的な圧縮応力領域140内の圧縮応力のそのようなより深い深さは、ガラス容器100の破損抵抗を増大させることができる。すなわち、局所的な圧縮応力領域140内のより深い圧縮応力深さは、ガラス容器100の破損を生じさせるのに必要な損傷の閾値量を効果的に増大させる。このように、局所的な圧縮応力領域140はガラス容器100のヒール領域114に近接して位置決めされるので(図1参照)、ガラス容器100は、ヒール領域114内の外部物品(例えば、ホルダ、他のガラス容器など)との接触に対して効果的により耐久性があるようにされる。
【0140】
実施形態では、局所的な圧縮応力領域140は、ガラス容器100の一部に局所的な熱強化処理を適用することによって形成される。例えば、ガラス容器100は、目標温度まで(例えば、軟化点まで)加熱され、その後、制御された様式で(例えば、外面106を気体または液体などの冷媒に曝すなどして)急速に冷却されてよい。このような急速な冷却により、冷媒に曝されたガラス容器100の表面層が硬化し、ガラス容器100の内部がより軟らかい状態になる。冷却された表面層は、冷却時にガラス容器100の内部が収縮して冷媒に曝された表面層の圧縮状態に対向する張力領域を生じさせることを防止する剛性構造を形成する。そのような局所的な熱強化処理は、イオン交換などの化学的な強化技術によって実現することができる圧縮応力深さを超える圧縮応力深さをもたらすことができる。
【0141】
実施形態では、局所的な圧縮応力領域内の圧縮応力の応力プロファイルは、局所的な圧縮応力領域140に適用される局所的な熱強化処理の結果として、局所的な圧縮応力領域140の外部にある圧縮応力の応力プロファイルとは異ならせることができる。実施形態では、局所的な圧縮応力領域140内の圧縮応力は、形状が実質的に放物線であり、壁厚さTの約20%の距離で圧縮性である。実施形態では、第2の圧縮深さDOCは、局所的な圧縮応力領域140の外側の第1の圧縮深さDOCを超えている。示された例では、圧縮応力層1104は、局所的な圧縮応力領域140に重畳する(またはそれを通って延在する)。このような構造は、ガラス容器100が(例えば、図9に関して説明した変換器900の冷却加工ステーションで)局所的な熱強化処理に供されて局所的な圧縮応力領域140が形成された後にイオン交換による化学的な強化に供されるプロセスからもたらすことができる。結果として、局所的な圧縮応力領域140での外面106は、熱強化処理とイオン交換とに曝されてよい。実施形態では、イオン交換と熱強化処理との両方へ曝すことにより、外面106での最大圧縮応力は、局所的な圧縮応力領域140の外部よりも局所的な圧縮応力領域140内でより大きくすることができる。
【0142】
前述の例は、圧縮応力層1104と、局所的な圧縮応力領域140とを含むが、様々な代替的な実施形態が想定されることを理解されたい。例えば、特定の実施形態は、ガラス容器100全体に延在する圧縮応力層1104を含まなくてよい。局所的な圧縮応力領域140はまた、局所的な化学的な強化によって形成することができ、特定の実施形態では、第2の圧縮深さDOCは、図11Bに示された圧縮深さ未満であってよい。例えば、局所的なイオン交換処理を使用して局所的な圧縮応力領域140が形成される実施形態では、第2の圧縮深さDOCは、壁厚さTの3%未満(例えば、1%、2%、2.5%)であってよい。第2の圧縮深さDOCは、局所的な圧縮応力領域140を形成するために使用される方法に左右され、実現形態に応じて、壁厚さTの2%以上25%以下まで変化してよい。
【0143】
付加的に、本明細書に記載のガラス容器は、様々な異なる位置に多数の異なる局所的な圧縮応力領域を含むことができることを理解されたい。ガラス容器100の特定の実施形態は、局所的な圧縮応力領域を内面104上に含むことができる。付加的に、本明細書に記載の亀裂変向領域は、局所的な圧縮応力領域と重畳してよい。このような構造は、局所的な圧縮応力領域を形成するために使用される局所的な熱強化処理が、亀裂変向領域の構造的な変化と協調して機能することができ、引張応力の差が所望の伝播方向に対して垂直な方向に生成されるという点で有益である。重畳する亀裂変向領域と局所的な圧縮応力領域との結果としてのこのような引張応力の差により、亀裂変向領域内で構造(例えば、厚さ)が修正される量が低減して、ガラス容器100の構造強度を維持することができ、同様の亀裂変向効果が提供される。
【0144】
本明細書で説明するように、本明細書で説明する局所的な圧縮応力領域は、熱強化処理をガラス容器100に局所的に適用することによって形成することができる。このような処理は通常、ガラス容器には適用されない。なぜなら、複雑な形状のガラスを均一に冷却することは一般に困難だからである。熱強化処理は、ガラスを均一に冷却して実現するために、加熱されたガラス表面へのガス冷媒の適用に依存する場合がある。図1を参照すると、ガラス容器100は、そのような冷媒をガラス容器100に適用することを困難にする複雑な形状(例えば、フランジ126、ショルダ領域116、ヒール領域114)を含む。したがって、ガラス容器100全体を熱強化する場合、必要な熱伝達率を実現することは困難である。付加的に、熱強化処理は、熱膨張係数(CTE)が高いガラス組成物においてより効果的とすることができる。従来技術のガラス容器は、熱強化技術と相容れない組成物(例えばアルカリホウケイ酸ガラス)から構成されている可能性がある。特定のガラス容器はまた、0.6mm以上3mm以下の壁厚さTを有することができる。また、従来の熱強化技術は、熱伝達率が低下するため、このような厚さには適合しない。
【0145】
これを考慮して、本明細書に記載のガラス容器は、従来技術のガラス容器の組成物よりも熱強化処理に適しているガラス組成物から構成することができる。実施形態では、本明細書に記載のガラス容器は、5×10-6-1以上のCTEを有するガラス組成物から構成される。本明細書に記載の局所的な圧縮応力領域内で、所望の圧縮深さを実現するために必要な熱伝達率を提供することに関して、本開示は幾つかのアプローチを利用する。第一に、ガラス容器100の特定の領域のみに熱強化処理を施すことにより、ガラス容器100の幾何学的な複雑性に起因する問題を回避することができる。付加的に、冷媒がガラス容器に適用されて、熱伝達率が高められてよい。
【0146】
図12A図12B図12C、および図12Dは、本明細書に記載のガラス容器に対する熱強化の有効性に影響を与える様々な態様をグラフで示している。図12Aは、ガラス容器が熱強化中に加熱される開始温度に対する(例えば、外面106での)表面圧縮応力をグラフで示す。各曲線は、ガラスの冷却中の伝達係数(cal/(cm・s・K))を示している。示された実施形態では、ガラス容器100は、一般に、SiOと、NaOおよび/またはKOなどの1つ以上のアルカリ酸化物との組み合わせを含むアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物から構成される。ガラス組成物はまた、Alおよび少なくとも1つのアルカリ土類酸化物を含むことができる。ガラス容器100は、図示の例では、1.1mmの壁厚さTを有する。図示の例では、ガラス容器100はイオン交換で強化されていない。
【0147】
図12Aに示すように、熱伝達係数および開始温度が高くなるほど、局所的な圧縮応力領域140内の外面106での圧縮応力のレベルが高くなる。0.2cal/(cm・s・K)の熱伝達係数は、外面106で約225MPaの圧縮応力を提供する。対照的に、0.001cal/(cm・s・K)の熱伝達係数は、外面で約30MPaの圧縮応力を提供する。実施形態では、局所的な圧縮応力領域140内で所望の量の耐損傷性を実現するために、外面106での圧縮応力(例えば、図11Bに関して説明したCSmax)は、50MPa以上(例えば、75MPa以上、100MPa以上、125MPa以上、150MPa以上、または200MPa以上)であってよい。したがって、図示のアルカリアルミノケイ酸組成物については、約750℃以上の開始温度を使用することができる。付加的に、0.01cal/(cm・s・K)以上の熱伝達係数が、少なくとも約750℃の開始温度まで加熱された後のガラス容器を冷却するために使用されてよい。
【0148】
図12Bは、ガラス容器100を図12Aに関して説明した熱強化処理からもたらす(例えば、図11Aに関して説明した隣接する領域1110での)内部引張応力の様々な曲線をグラフで示している。図示のように、外面106で所望の量の圧縮応力を実現するための熱的な焼戻しは、約30MPa以上の内部引張応力も提供する。そのような内部引張応力は、表面傷が局所的な圧縮応力領域140をどうにか貫通した場合、亀裂の分岐と伝播とを促進することができる。図12Cは、図12Aに関して説明した熱強化処理中に生じる最大表面引張応力の様々な曲線をグラフで示している。すなわち、本明細書に記載の熱強化処理は、外面106に瞬時の引張応力をもたらす。そのような瞬時の引張応力は、変換プロセス中にガラス容器に付与された表面傷を分離することができ、欠陥のある容器が排除される。図示のように、外面106で所望の量の圧縮応力を実現するための熱的な焼戻しはまた、約40MPa以上の表面引張応力をもたらし、これは、変換中にガラス容器100に表面傷が付与された場合に、ガラス容器100を使用に適さないものにするのに十分である。
【0149】
図12Dは、0.06cal/(cm・s・K)の熱伝達率を想定して、様々な厚さを有するガラス容器100の局所的な圧縮応力領域140内の外面106での圧縮応力を示している。図示のように、より厚いガラス容器100は、一般に、外面106でのより高い圧縮応力をもたらす。図12Eは、図12Dで説明した厚さを有するガラス容器の局所的な圧縮応力領域140内の内部引張応力を示す。図示のように、(例えば、図11Aに関して説明した隣接する領域1110において)厚さが大きくなるほど、内部引張応力が大きくなる。
【0150】
局所的な圧縮応力領域140内のガラス容器100内で所望の量および深さの圧縮応力を実現するために、様々な冷媒が、局所的な圧縮応力領域140でガラス容器100に適用されてよい。実施形態では、ヘリウム、空気、エンジンオイル、および蒸発蒸気は、相対的に高い熱伝達係数を有しており、それらが本明細書に記載の熱強化処理での潜在的な使用に適するようにされている。実施形態では、冷媒は、局所的な圧縮応力領域140が配置されるガラス容器100上の領域用に特別に設計されたツールを介して、特定の温度で局所的な圧縮応力領域140に送達することができる。
【0151】
図13Aおよび図13Bは、本明細書に記載の局所的な熱強化処理を実施するための冷却装置1400を概略的に示す。実施形態では、冷却装置1400は、変換器(例えば、図9に関して本明細書で説明される変換器900)の加工ステーションに組み込むことができ、ガラス管状物をガラス容器100に変換するプロセス中にガラス容器100が熱的に強化される。本明細書で説明するように、変換器900は、ガラス管状物を成形に適した温度(例えば、870℃以上の温度)まで加熱する加熱ステーションを含むことができる。そのような温度は、開始温度(例えば、750℃以上)よりも高く、アルカリアルミノケイ酸ガラス容器内で所望のレベルの圧縮応力が実現される。したがって、冷却装置1400を変換器900内に位置決めすることにより、効率性をもたらすことができ、ガラス組成物はすでに必要な開始温度まで加熱されているので、冷却装置1400は、変換器900から分離されて、完全に変換されたガラス容器100の、続く加熱ステップの後に使用することができることを理解されたい。
【0152】
図示された実施形態では、冷却装置1400は、冷媒を適用するように設計されており、ガラス容器1402のネック領域1404が特異的に冷却される。冷却装置1400は、ネック領域1404の外面1410に接触するようにサイズ決定された冷媒マニホールド1408を含む。冷媒マニホールド1408は、本体1412から延在する。冷媒マニホールド1408は、ガラス容器1402上に配置される局所的な圧縮応力領域の所望のサイズに対応する(例えば、ガラス容器1402の軸線方向の、および周方向の)サイズを有することができる。
【0153】
図13Bに示されたように、本体1412は、第1の部分1414と第2の部分1416とを含む。図13Bでは、第1の部分1414と第2の部分1416とは、(例えば、変換器900上の加工ステーション内で)互いに分離されて、ガラス容器1402(またはガラス管状物または部分的に形成されたガラス容器)をその間に挿入するためのクリアランスが提供される。第1の部分1414および第2の部分1416はそれぞれ、ガラス容器1402の軸線に対して垂直に延在する軸線1418に沿った並進を容易にするアクチュエータに結合することができる。例えば、(冷却装置1400が、局所的な圧縮応力領域を組み込むことが望まれるガラス容器1402の領域に軸線方向で重畳するように)ガラス容器1402が所望の軸線方向の位置に配置されると、第1の部分1414および第2の部分1416は、互いに向かって並進することができ、その後、冷却装置1400の内面1420,1422が、外面1410から所望の最小分離距離だけ分離される。図13Bに示された実施形態では、冷却装置1400は、ガラス容器1402を取り囲むことができ、ネック領域1404内のガラス容器1402全体の周りに延在する局所的な圧縮応力領域が付与される。
【0154】
実施形態では、図13Aに示すように、冷却装置は、冷却装置1400と外面1410との間の最小分離距離の精度を制御する、接触点1424と接触点1426とを含む。実施形態では、接触点1424および接触点1426は、加圧ガス(例えば、冷媒供給部1430から到来する冷媒、他のガス)の点を含むことができる。実施形態では、接触点1424および接触点1426は、ホイールまたは他の回転可能な部材を備えることができ、ガラス容器1402上での冷却装置1400の位置決めが容易になる。実施形態では、接触点1424および接触点1426は、冷媒マニホールド1408から延在するリム(例えば、本体1412と同じ材料または本体1412とは異なる材料で構築されている)を含むことができ、制御された最小分離距離が提供される。第1の部分1414および第2の部分1416が互いに向かって並進すると、接触点1424および接触点1426は外面1410に接触することができ、冷媒マニホールド1408と外面1410との間に配置された冷媒キャビティ1428が生成される。本体1412は、本体1412を通って延在する冷媒供給部1430を含む。実施形態では、冷媒供給部1430は、冷媒キャビティ1428を冷媒源(図示せず)に流体結合する。冷媒源からの冷媒(例えば、水蒸気、ヘリウム、空気、油)は、冷媒供給部1430を通して冷媒キャビティ1428内に提供することができ、その結果、冷媒がガラス容器1402に接触することができ、冷却装置1400を介して実現される熱伝達係数が増大する。
【0155】
本体1412は、本体1412を通って延在する流体チャネル1432も含む。流体チャネル1432は、流体源(図示せず)から冷却流体を受け取ることができ、冷却装置1400の温度が下げられる。ガラス容器1402上の特定の領域に対応する様式で冷却装置1400の様々な構成要素(例えば、冷媒マニホールド1408、本体1412)のサイズを決定することによって、ガラス容器1402と冷却装置1400との間の密接な接触を実現することができ、ガラス容器1402内に圧縮応力を誘発するのに十分に高い熱伝達係数が提供される。すなわち、容器のサブ領域の熱強化処理プロセスを特別に設計することにより、サブ領域への密接な接触および冷媒の適用は、局所的な圧縮応力領域での効果的な熱強化のための相対的に高い熱伝達率を提供する。
【0156】
図13Aおよび図13Bに関して説明した前述の例は、ガラス容器1402のネック領域に合わせて調整されている。強化されるガラス容器の種類に応じて、他の様々な場所について同様のサイズ決定および構成が可能であることを理解されたい。局所的な圧縮応力領域を組み込むことが望ましいと思われる幾つかの他の領域は、これらに限定されないが、バイアルのヒール領域(例えば、図1に関して本明細書に記載したヒール領域114)、カートリッジのフット領域、シリンジのネック領域、シリンジのフランジ、またはガラス容器内の他の任意の場所を含む。実施形態では、ガラス容器は、複数の局所的な圧縮応力領域を含むことができる。そのような実施形態では、複数の局所的な圧縮応力領域は、単一の処理ステップ(例えば、単一の冷却装置が複数の軸線方向部分を含んでよく、各部分が容器のサブ領域と密接に接触するように設計されている)または別個の処理ステップにおいて形成することができる。例えば、各処理ステップは、ガラス容器の別個の領域と密接に接触するように設計された、図13Aおよび図13Bに関して説明した冷却装置1400と同様の冷却装置を含むことができる。実施形態では、各局所的な圧縮応力領域を形成するための別個の処理ステップは、ガラス容器を熱強化処理のための所望の開始温度に再加熱する加熱ステップによって分離することができる。
【0157】
図13Aおよび図13Bに示す冷却装置以外の代替的な方法を、本明細書に記載の局所的な熱強化処理に使用することができる。例えば、ガラス容器の特定の領域への冷媒の対象を絞った適用を使用して、局所的な圧縮応力領域が生成されてよい。そのような実施形態は、ガラス容器に接触しない冷媒アプリケータであるが、冷媒を所望のパターンでガラス容器に適用して所望の冷却効果をもたらす冷媒アプリケータを含むことができる。例えば、冷媒は、様々な領域(例えば、ガラス容器の内面と外面との両方)に制御可能に適用することができる凝縮冷媒(例えば、雪)などを含むことができる。このような実施形態では、水、蒸気、空気、油、およびその他の様々な潜在的な冷媒を使用することができる。実施形態では、ガラス容器に接触するように循環される冷媒の量(例えば、冷媒供給を制御することによって決定される量)および/またはガラス容器に接触する際の冷媒の蒸発量(例えば、使用される冷媒の種類によって決定される量)により、熱伝達率を制御することができる。実施形態では、熱強化のためのガラス容器の制御された冷却は、変換プロセスの他の態様と組み合わせることができ、更なる処理効率が提供される。例えば、実施形態では、(例えば、ガラス容器を成形するために成形温度でガラス容器に接触する形状を有する)成形装置は、統合された冷媒供給部を有することができ、その結果、形成された領域が、形成された領域を熱的に強化するために成形されている間、冷媒が形成された領域に供給される。このような実施形態では、油が使用されて、成形装置とガラス容器との間に接触面が確立されてよく、その結果、ガラス容器の接触面が成形と冷却とを同時に行う。
【0158】
また、本明細書に記載される局所的な圧縮応力領域は、外側容器の内面にも位置することができることを理解されたい。例えば、ガラス容器が図13Aおよび図13Bに関して説明した冷却装置1400を介して熱強化に供されている間、ガラス容器1402(図13B参照)の内面1434は、冷却装置1400が組み込まれた加工ステーションを通って流れる空気によって対流冷却されてよく、ある程度の熱的な焼戻しがもたらされる。実施形態では、内面1434は、外面1410とは異なる方法を介して冷却されてよい。例えば、実施形態では、外面1410の領域は、冷却装置1400によって熱強化される一方、内面1434の領域は、制御可能な冷媒(例えば、雪)の適用を介して熱強化される。実施形態では、外面1410と内面1434との強化された領域は、重畳する(例えば、互いに対向する)ことができ、均衡のとれた圧縮応力プロファイルと増大した内部引張応力とを提供し、表面傷が閾値を超えてガラス容器1402を損傷した場合に、亀裂の分岐が促進される。例えば、容器の底部は、外部と内部とで冷却することができ、そのような均衡のとれた応力プロファイルが提供され、底部に表面傷が生じた場合に、分離が確実になされる。
【0159】
ここで図15を参照すると、亀裂変向領域または局所的な圧縮応力領域のうちの少なくとも1つを含むガラス容器を形成する方法1500の流れ図が示されている。方法1500は、図1に関して本明細書で説明されるガラス容器100を形成するために使用することができる。方法1500の実施により、ガラス容器を、伝播する可能性のある傷を受けやすいガラス容器の所望の領域において、本明細書に記載の局所的な熱強化処理によって局所的に強化することができる。付加的に、方法1500の実施からもたらされるガラス容器は、使用者にとって気づくのが難しい容器の部分を貫通して伝播する亀裂を変向させることができ、その結果、使用者は、そのような亀裂に気づき、亀裂のある容器を廃棄することができる。
【0160】
ステップ1502では、ガラス組成物から形成された素材が提供される。ガラス物品の組成は、実現形態に応じて変化してよい。本明細書で説明するように、亀裂変向領域を組み込んだガラス容器は、イオン交換強化によるCTEの一致しない組み合わせから生じる内部引張応力の増大した領域を提供することができる。したがって、亀裂変向領域を組み込んだ実施形態は、イオン交換による化学的な強化が可能なガラス組成物から形成することができる。実施形態では、ガラス組成物は、一般に、SiOと、NaOおよび/またはKOなどの1つ以上のアルカリ酸化物との組み合わせを含むアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物である。ガラス組成物はまた、Alおよび少なくとも1つのアルカリ土類酸化物を含むことができる。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物または他のアルミノケイ酸組成物を使用することができる。実施形態では、ガラス組成物から形成された素材は、ガラス組成物から形成されたガラス管状物を含むことができる。ガラス管状物は、米国特許第4023953号明細書に記載されているプロセスなどのベロプロセスを使用して製造することができる。例えばダナープロセスなどの他のプロセスを使用して、ガラス管状物を製造することができる。
【0161】
ステップ1504では、素材は、本体を有するガラス容器に成形される。理解されるように、ガラス容器を形成するために行われる処理ステップは、素材および素材を形成するガラス容器の形状に左右される可能性がある。例えば、実施形態では、素材は、ボトル、バイアル、シリンジ、アンプル、カートリッジ、および製薬用途のための他のガラス物品など、複数の異なる形状を有するガラス容器に変換することができる。素材は、例えば食品包装など、医薬品用途以外で使用するガラス容器に変換することもできる。実施形態では、成形ステップは、図9に関して本明細書で説明される変換器900などの変換器で行うことができる。本明細書で説明するように、変換器900は、例えば、ガラス物品をガラス管状物から製造するための1つ以上の加熱、成形、研磨、冷却、分離、穿孔、再被覆、トリミング、測定、供給、または排出するための、ステーションまたは他の加工ステーションを含む、複数の加工ステーション904を含む。実施形態では、素材は、複数の加工ステーション904の加熱ステーションを介して、ガラス組成物の軟化点を超える成形温度まで加熱される。加熱後、素材は複数の異なる成形ステーションに供することができ、素材が所望のガラス容器に成形される。例えば、ガラス容器が図1に示されたバイアルである場合、様々な成形ステーションが使用されて、ガラス容器100のフランジ126、ネック領域124、ショルダ領域116、バレル118、およびヒール領域114が成形されてよい。成形ステップおよびその後の付加的なステップ(例えば、測定、研磨、コーティング)の後、形成されたガラス容器は、分離(例えば、切り込み)ステーションを介して素材から分離することができる。
【0162】
ステップ1506で、ガラス容器内に亀裂変向領域が形成される。本明細書で説明するように、亀裂変向領域は、素材をガラス容器に変換するプロセス内の様々な時点で、または代替的に変換プロセスが完了した後に、形成することができる。例えば、実施形態では、変換器900は、素材がガラス組成物の成形温度を超えて加熱されている間に、ガラス容器内に少なくとも1つの亀裂変向領域を形成する成形ステーションを含む。例えば、実施形態では、変換器900は、図10に関して本明細書で説明される加工ステーション1000を含むことができる。第1のレーザビーム源1006および第2のレーザビーム源1010の少なくとも一方は、レーザビーム(例えば、パルスCOレーザビーム)を素材の表面にわたって走査させることができ、複数の凹部が素材の表面に形成され、その結果、変換プロセスから得られるガラス容器が、亀裂変向領域の外側のガラス容器の壁厚さT未満である最小の厚さTminを有する複数の凹部を含む。
【0163】
実施形態では、亀裂変向領域は、局所的な圧縮応力領域の形成と同時に、または形成後に形成することができる。例えば、本明細書で説明するように、亀裂変向領域は、亀裂変向領域をガラス容器の残りの部分とは異なる熱処理に曝して、ガラス容器内に低密度領域を形成することによって形成することができる。したがって、実施形態では、亀裂変向領域は、図11A図14Bに関して本明細書で説明したものと同様の熱強化ステップによって形成することができる。例えば、冷却装置は、所定のパターンで素材に接触することができ、任意の所望の伝播方向(例えば、軸線方向、周方向、またはそれらの任意の組み合わせ)に対して実質的に垂直に延在する引張応力の差が生成される。別の例では、ガラス容器の形成後の焼なましステップ中(例えば、ステップ1510中)にガラス容器を遮蔽することによって、低密度領域を形成することができる。
【0164】
実施形態では、亀裂変向領域は、ガラス容器の化学的な強化中(例えば、本明細書に記載のステップ1512中)に形成することができる。例えば、変換プロセス中に、1つ以上の特徴を素材の表面に生成することに加えて、イオン交換プロセスは亀裂変向領域内の様々な部分で阻止されてよく、亀裂を変向させるための複雑な内部引張応力プロファイルが生成される。実施形態では、特徴および特徴を形成する方法の任意の組み合わせが使用されてよく、任意の数の亀裂変向領域がガラス容器上に形成される。
【0165】
ステップ1508では、ガラス容器内に局所的な圧縮応力領域が形成される。実施形態では、局所的な圧縮応力領域は、素材をガラス容器に変換するプロセス中に、形成される。例えば、実施形態では、変換器900の加熱ステーションに供され、開始温度まで加熱された後、素材は、図13Aおよび図13Bに関して本明細書で説明される冷却装置1400を含む熱強化ステーションに挿入することができる。冷却装置1400は、素材の外面に対応する表面を有するように特別に設計することができ、局所的な圧縮応力領域の所望の位置で外面との間の密接な接触が提供され、熱伝達率が高められる。付加的に、冷却装置1400は、冷媒供給部1430を介して、素材の表面の冷媒キャビティ1428に冷媒を提供することができ、素材が速い速度で制御的に冷却され、局所的な圧縮応力領域に隣接する素材の任意の領域を超える圧縮深さを有する局所的な圧縮応力領域が形成される。素材を冷却するための代替的な方法を使用することができる。例えば、異なる冷媒(例えば、油、雪など)が素材の一部に適用されてよく、局所的な圧縮応力領域がガラス容器上の所望の位置に形成される。実施形態では、局所的な圧縮応力領域は、ガラス容器の形成後に形成することができ、形成されたままのガラス容器は、続いて、所望の開始温度まで加熱され、本明細書に記載の方法のいずれかによって急速に冷却される。
【0166】
実施形態では、亀裂変向領域と局所的な圧縮応力領域とは互いに重畳することができる。例えば、複数の凹部を備える亀裂変向領域は、続いて、本明細書に記載の局所的な熱強化処理に供されてよい。そのような実現形態は、局所的な圧縮応力領域が亀裂変向領域と重畳しない実施形態よりも亀裂変向領域内の内部引張応力を増大させ、ひいては亀裂変向領域の亀裂変向能力を高めることができる。付加的に、ガラス容器は、内面、外面、または内面と外面との両方に、任意の数の、亀裂変向領域と局所的な圧縮応力領域とを含むことができる。
【0167】
ステップ1510では、ガラス容器に付加的な熱処理部が形成される。例えば、ガラス容器の形成後、ガラス容器は焼なましステップに供されてよい。このような焼なましステップは、変換プロセス中に誘発された熱的な焼戻しから生じるガラス容器内の残留応力を除去することができる。局所的な圧縮応力領域をそのような残留応力を含むガラス容器の領域に組み込む実施形態では、そのような焼なましステップはガラス容器には必要ない可能性がある。なぜなら最も損傷を受けやすいガラス容器の領域は、損傷からの防護が改善されている可能性があるからである。付加的に、図12Cに関して本明細書で説明するように、本明細書で説明する熱強化処理は、局所的な圧縮応力領域の形成中に局所的な圧縮応力領域内に瞬時の引張応力を誘発することができる。このような瞬時の引張応力は、欠陥のあるガラス容器の破損を生じさせることができる。すなわち、傷のない相対的に強いガラス容器のみが熱強化処理に耐えることができ、焼なまし工程の必要性が低減される。
【0168】
実施形態では、ガラス容器は、変換プロセスの後に火炎浄化に供されてよい。このような火炎浄化ステップは、変換プロセスから生じるガラス容器の表面傷を除去または低減することができる。実施形態では、そのような火炎浄化ステップは、ステップ1508で局所的な圧縮応力領域を形成する前に実施することができ、局所的な圧縮応力領域を形成するために使用される熱強化処理によって生じる瞬時の引張応力の結果として伝播する可能性のある欠陥が除去される。
【0169】
ステップ1512では、ガラス容器は化学的な強化処理に供することができる。実施形態では、ガラス容器は、溶融塩浴中に浸漬されている間にイオン交換強化に供することができる。このようなイオン交換強化は、ガラス容器全体に圧縮応力層(例えば、図2に関して本明細書で説明される圧縮応力層202)を形成することができる。本明細書に記載の亀裂変向領域は、化学的な強化ステップの後、化学的な強化ステップによって誘発された圧縮応力と釣り合う引張応力分布を有することができ、引張応力分布は、所望の伝播方向に対して垂直な方向に応力の差を有する。局所的な圧縮応力領域を組み込んだ実施形態では、化学的な強化ステップを排除することができる。なぜなら、局所的な圧縮応力領域の結果として、ガラス容器は使用するのに十分な耐久性を有することができるからである。
【0170】
前述の説明を考慮して、亀裂変向領域および局所的な圧縮応力領域のうちの少なくとも1つをガラス容器に組み込むことは、ガラス容器の耐久性を有利に改善し、かつ/またはガラス容器を貫通して伝播する亀裂の可視性を改善することを理解されたい。亀裂変向領域は、容器の表面傷のよく見られる位置から発生した亀裂を、ガラス容器の視認障害物(例えば、接着ラベルなど)を含まない領域に向けさせて、その結果、ガラス容器の使用者は、亀裂に気づくことができ、ガラス容器に収容されている製品が汚染される前に、欠陥のあるガラス容器を廃棄することができる。局所的な圧縮応力領域は、外部要素(例えば、充填装置、他のガラス容器、キャリア)と常に接触する領域で、ガラス容器を貫通して伝播する表面傷の損傷閾値を有益に高め、かつガラス容器の耐久性を有益に高める。したがって、本明細書に記載のガラス容器は、既存のガラス容器よりも耐久性が向上しており、ガラス容器を貫通して亀裂が伝播した場合、そのような亀裂は、既存のガラス容器を貫通して伝播する亀裂よりも迅速に気づくことができる容器の一部に変向させられる。
【0171】
特に明示されない限り、本明細書に記載されたいかなる方法も、そのステップが特定の順序で実施されることを要求すると解釈されること、およびいかなる装置においても特定の配向を要求することは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項がそのステップに従うべき順序を実際に言及していない場合、または装置の請求項が個々の構成要素に対する順序もしくは配向を実際に言及していない場合、またはステップが特定の順序に限定されることが請求項もしくは詳細な説明において他に明確に述べられていない場合、または装置の構成要素に対する特定の順序もしくは配向が言及されていない場合、いかなる点においても、順序または配向が暗示されていることは意図していない。これは、ステップの配置、操作の流れ、構成要素の順序、または構成要素の配向に関する論理の問題、文法的構成もしくは句読点から得られる明白な意味、および明細書に記載された実施形態の数もしくは種類を含む、解釈に関するあらゆる非表現的な根拠の可能性について当てはまる。
【0172】
特許請求された主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に対して様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかである。したがって、本明細書は、本明細書に記載された様々な実施形態の修正および変形をカバーすることが意図されており、そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある。
【0173】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0174】
実施形態1
厚さによって分離された第1の表面と第2の表面とを有するガラス容器を作製する方法であって、
前記ガラス容器の前記第1の表面において圧縮応力下の第1の領域を形成するステップであって、前記第1の領域は、前記第1の表面から前記ガラス容器における圧縮深さまで延在している、第1の領域を形成するステップと、
内部引張応力下の第2の領域を形成するステップであって、前記第2の領域は、前記圧縮深さから前記厚さ内に延在しており、前記内部引張応力は、前記第1の表面での亀裂の発生点から前記亀裂を自己伝播させるのに十分である、第2の領域を形成するステップと、
前記第1の表面に亀裂変向領域を形成するステップであって、
前記亀裂変向領域は、前記亀裂の所定の伝播方向に延在しており、
前記亀裂変向領域は、前記所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向にガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を含み、これにより、前記亀裂が伝播して前記亀裂変向領域に到達すると、前記亀裂は、前記所定の伝播方向に沿って変向させられる、
亀裂変向領域を形成するステップと
を含む、方法。
【0175】
実施形態2
前記ガラス容器は、内面と外面とを有する本体を備え、前記内面は、軸線を有する内容積を規定しており、前記所定の伝播方向は、前記軸線に対して実質的に垂直である、実施形態1記載の方法。
【0176】
実施形態3
前記ガラス容器の前記厚さは、前記亀裂変向領域内で変化しており、これにより、前記亀裂変向領域は、前記軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、前記肉薄領域では、前記厚さは、前記亀裂変向領域内の前記ガラス容器の平均厚さ未満である、実施形態2記載の方法。
【0177】
実施形態4
前記亀裂変向領域は、前記ガラス容器の外周の少なくとも一部の周りに延在している、実施形態3記載の方法。
【0178】
実施形態5
前記亀裂変向領域での前記ガラス物品の前記厚さは、前記軸線に対して平行に正弦的に変化している、実施形態4記載の方法。
【0179】
実施形態6
前記亀裂変向領域は、前記ガラス容器の前記外周全体の周りに延在している、実施形態4記載の方法。
【0180】
実施形態7
前記第1の表面は、前記ガラス容器の前記外面である、実施形態2記載の方法。
【0181】
実施形態8
前記第1の表面は、前記ガラス容器の前記内面である、実施形態2記載の方法。
【0182】
実施形態9
前記第1の領域および前記第2の領域を形成するステップは、
前記ガラス容器をガラス組成物から形成するステップと、
前記ガラス容器の前記第1の表面を化学的な焼戻しに供することによって、前記第1の領域および前記第2の領域を形成するステップと
を含む、実施形態1記載の方法。
【0183】
実施形態10
前記ガラス組成物は、アルミノケイ酸ガラス組成物を含む、実施形態9記載の方法。
【0184】
実施形態11
前記ガラス物品を前記ガラス組成物から形成するステップは、
前記ガラス組成物を含むガラス管を形成するステップと、
前記ガラス管を前記ガラス容器に変換するステップと
を含み、
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス容器への前記ガラス管の変換中に行われる、
実施形態9記載の方法。
【0185】
実施形態12
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス容器への前記ガラス管の変換中、前記ガラス管を前記ガラス組成物の軟化温度まで加熱しながら、パルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、実施形態11記載の方法。
【0186】
実施形態13
亀裂変向領域を有するガラス容器を形成する方法であって、
ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、
前記素材を、内面と外面との間に延在し、内容積を規定する本体を有するガラス物品に成形するステップと、
前記ガラス物品に圧縮応力層を形成するステップであって、前記圧縮応力層は、前記内面および前記外面のうちの少なくとも一方から前記本体の厚さの圧縮深さまで延在している、圧縮応力層を形成するステップと、
前記ガラス物品内に前記亀裂変向領域を形成するステップであって、前記亀裂変向領域は、前記ガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を有するサブ領域を備え、前記サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向に延在している、亀裂変向領域を形成するステップと
を含む、方法。
【0187】
実施形態14
前記素材は、ガラス管状物を含み、
前記方法は、前記ガラス管状物を前記ガラス物品に変換するステップをさらに含み、
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス物品への前記ガラス管状物の変換中に前記亀裂変向領域の前記サブ領域を形成するステップを含み、前記サブ領域の厚さは、前記本体の平均厚さ未満である、
実施形態13記載の方法。
【0188】
実施形態15
前記サブ領域を形成するステップは、前記ガラス物品上でパルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、実施形態14記載の方法。
【0189】
実施形態16
前記サブ領域を形成するステップは、前記ガラス物品への前記ガラス管状物の変換中に前記ガラス管状物を成形要素に接触させるステップを含む、実施形態14記載の方法。
【0190】
実施形態17
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、該ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、前記圧縮深さから前記ガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、前記第2の領域は、亀裂の発生点から伝播方向に前記亀裂を自己伝播させるのに十分な引張応力下にある、ガラス本体と、
前記ガラス本体の前記表面上の亀裂変向領域であって、前記亀裂変向領域は、前記亀裂の所定の伝播方向に延在しており、前記亀裂変向領域は、前記亀裂変向領域のサブ領域での前記第2の領域の引張応力よりも大きな引張応力を含み、前記サブ領域は、前記所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在しており、これにより、前記亀裂が前記亀裂変向領域に伝播すると、前記亀裂は、前記所定の伝播方向に沿って変向させられる、亀裂変向領域と
を備える、ガラス容器。
【0191】
実施形態18
前記ガラス容器は、ボトル、バイアル、アンプル、シリンジ、またはカートリッジのうちの1つを含む、実施形態17記載のガラス容器。
【0192】
実施形態19
前記所定の伝播方向は、前記ガラス容器の軸線に対して実質的に垂直な周方向である、実施形態17記載のガラス容器。
【0193】
実施形態20
前記厚さは、前記亀裂変向領域内で変化しており、これにより、前記亀裂変向領域の前記サブ領域は、前記軸線に対して実質的に平行に延在する肉薄領域を備え、前記肉薄領域では、前記厚さは、前記ガラス物品の平均厚さ未満である、実施形態19記載のガラス容器。
【0194】
実施形態21
ガラス容器であって、
ガラス組成物を含む本体であって、前記本体は、内面と、外面と、前記内面と前記外面との間に延在する壁厚さとを有し、前記本体は、前記外面から前記本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域を備える、本体を備え、
前記局所的な圧縮応力領域は、前記局所的な圧縮応力領域に隣接するいずれの圧縮応力領域よりもさらに前記本体内に延在している、
ガラス容器。
【0195】
実施形態22
前記ガラス容器は、医薬品容器を含む、実施形態21記載のガラス容器。
【0196】
実施形態23
前記局所的な圧縮深さは、前記壁厚さの2%以上25%以下で延在している、実施形態21記載のガラス容器。
【0197】
実施形態24
前記局所的な圧縮深さは、前記壁厚さの20%以上25%以下で延在している、実施形態23記載のガラス容器。
【0198】
実施形態25
前記局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、実施形態21記載のガラス容器。
【0199】
実施形態26
前記局所的な圧縮応力領域は、75MPa以上の表面圧縮応力を含む、実施形態22記載のガラス容器。
【0200】
実施形態27
前記表面圧縮応力は、100MPa以上である、実施形態23記載のガラス容器。
【0201】
実施形態28
前記局所的な圧縮応力領域は、前記ガラス容器の圧縮応力下の圧縮応力層と重畳しており、これにより、前記局所的な圧縮応力領域内に、前記本体は、第1の圧縮深さまでの前記圧縮応力層の圧縮応力と、前記第1の圧縮深さから前記局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを含む、実施形態21記載のガラス容器。
【0202】
実施形態29
前記ガラス組成物は、アルミノケイ酸ガラス組成物を含む、実施形態21記載のガラス容器。
【0203】
実施形態30
前記ガラス容器は、基部と、前記基部にヒールを介して接続されたバレルと、前記バレルから延在するショルダと、前記ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、前記局所的な圧縮応力領域は、前記ネック、前記ヒール、および前記バレルのうちの少なくとも1つに配置されている、実施形態21記載のガラス容器。
【0204】
実施形態31
前記局所的な圧縮応力領域は、前記ヒールに配置されている、実施形態30記載のガラス容器。
【0205】
実施形態32
前記内面から前記本体内の付加的な局所的な圧縮深さまで延在する付加的な局所的な圧縮応力を有する付加的な局所的な圧縮応力領域をさらに備える、実施形態21記載のガラス容器。
【0206】
実施形態33
局所的な圧縮応力領域と前記付加的な局所的な圧縮応力領域とは、互いに対向して、前記局所的な圧縮応力領域と前記付加的な局所的な圧縮応力領域との間に内部引張応力領域を形成しており、前記内部引張応力領域は、前記壁厚さを貫通して伝播する亀裂の分岐を促進して、前記ガラス容器を使用不可にする、実施形態32記載のガラス容器。
【0207】
実施形態34
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、該ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、前記圧縮深さから前記ガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、前記第2の領域は、引張応力下にある、ガラス本体と、
前記表面から前記本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域と
を備え、
前記局所的な圧縮深さは、前記本体の壁厚さの2%以上25%以下であり、
前記局所的な圧縮深さは、前記第1の領域の前記圧縮深さを超えている、
ガラス容器。
【0208】
実施形態35
前記局所的な圧縮応力領域は、前記第1の領域と重畳しており、これにより、前記局所的な圧縮応力領域内に、前記ガラス本体は、第1の圧縮深さまでの前記第1の領域の圧縮応力と、前記第1の圧縮深さから前記局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを有する、実施形態34記載のガラス容器。
【0209】
実施形態36
前記局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、実施形態34記載のガラス容器。
【0210】
実施形態37
前記ガラス本体の前記表面は、前記ガラス容器の外面である、実施形態34記載のガラス容器。
【0211】
実施形態38
局所的な圧縮応力領域を有するガラス容器を形成する方法であって、
ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、
前記素材を、内面と外面との間に延在する厚さを有する本体を有するガラス物品へと成形するステップであって、前記本体は、内容積を規定している、ガラス物品へと成形するステップと、
前記ガラス物品に局所的な圧縮応力領域を形成するステップであって、前記局所的な圧縮応力領域は、前記外面または前記内面から前記本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有し、前記局所的な圧縮深さは、前記厚さの2%以上25%以下であり、前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップは、前記局所的な圧縮応力領域が、前記局所的な圧縮応力領域に隣接するいずれの圧縮応力領域よりもさらに前記本体内に延在するように、前記ガラス物品が、前記ガラス組成物の軟化温度を超える開始温度まで加熱されるときに、前記ガラス物品の所定の部分に冷媒を局所的に適用するステップを含む、局所的な圧縮応力領域を形成するステップと
を含む、方法。
【0212】
実施形態39
前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップの後に、前記外面において圧縮応力下の第1の領域を形成するために、前記ガラス物品をイオン交換強化に供するステップであって、前記第1の領域は、前記外面から、前記局所的な圧縮深さ未満である圧縮深さまで延在している、イオン交換強化に供するステップをさらに含む、実施形態38記載の方法。
【0213】
実施形態40
前記ガラス物品の前記部分に前記冷媒を局所的に適用するステップは、前記厚さの中央部分に、前記中央部分に形成されたあらゆる亀裂の伝播を誘発する瞬時の引張応力を誘発する、実施形態38記載の方法。
【0214】
実施形態41
前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップの前に、前記素材を前記ガラス物品へと成形するステップによって誘発される変換傷を排除するために、前記外面全体を火炎浄化するステップをさらに含む、実施形態38記載の方法。
【0215】
実施形態42
前記ガラス物品の前記部分に前記冷媒を局所的に適用するステップは、
前記ガラス物品が前記開始温度まで加熱されるときに、前記ガラス物品の前記部分に近接してカラーを位置決めするステップであって、前記カラーは、前記冷媒用の少なくとも1つの供給部を含み、前記カラーは、前記ガラス物品の前記部分に対応するように成形されており、前記カラーは、前記ガラス物品の前記部分に接触して、前記カラーの流体マニホールドと前記ガラス物品の前記部分との間の間隙を制御する接触点を含む、カラーを位置決めするステップと、
前記局所的な圧縮応力領域を形成するために、前記ガラス物品の前記部分に前記冷媒を提供するステップと
を含む、実施形態38記載の方法。
【0216】
実施形態43
前記ガラス物品は、前記局所的な圧縮応力領域の形成後に焼なまし熱処理に供されない、実施形態38記載の方法。
【0217】
実施形態44
前記ガラス容器は、基部と、前記基部にヒールを介して接続されたバレルと、前記バレルから延在するショルダと、前記ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、前記冷媒が適用される前記ガラス物品の前記部分は、前記ネックおよび前記ヒールのうちの少なくとも一方を備える、実施形態38記載の方法。
【0218】
実施形態45
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、該ガラス本体の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力下の第1の領域と、前記圧縮深さから前記ガラス本体の厚さ内に延在する第2の領域とを備え、前記第2の領域は、引張応力下にある、ガラス本体と、
前記表面から前記本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有する局所的な圧縮応力領域であって、
前記局所的な圧縮深さは、前記第1の領域の前記圧縮深さを超えている、
局所的な圧縮応力領域と、
前記ガラス本体における亀裂変向領域であって、前記亀裂変向領域は、所定の伝播方向に延在しており、前記亀裂変向領域は、前記亀裂変向領域のサブ領域での前記第2の領域の引張応力よりも高い引張応力を有し、前記サブ領域は、前記所定の伝播方向に対して実質的に垂直に延在している、亀裂変向領域と
を備える、ガラス容器。
【0219】
実施形態46
前記亀裂変向領域の前記サブ領域は、前記ガラス本体の前記表面における厚さの変化を含む、実施形態45記載のガラス容器。
【0220】
実施形態47
前記ガラス本体の前記表面は、前記ガラス容器の外面を含む、実施形態46記載のガラス容器。
【0221】
実施形態48
前記亀裂変向領域は、前記局所的な圧縮応力領域と重畳領域で重畳している、実施形態46記載のガラス容器。
【0222】
実施形態49
前記局所的な圧縮応力領域は、前記第1の領域と重畳しており、これにより、前記局所的な圧縮応力領域内に、前記ガラス本体は、第1の圧縮深さまでの前記第1の領域の圧縮応力と、前記第1の圧縮深さから前記局所的な圧縮深さまでの局所的な応力深さとを有する、実施形態45記載のガラス容器。
【0223】
実施形態50
前記局所的な圧縮応力領域は、50MPa以上の圧縮応力を含む、実施形態45記載のガラス容器。
【0224】
実施形態51
前記ガラス本体は、アルミノケイ酸ガラス組成物から形成されている、実施形態45記載のガラス容器。
【0225】
実施形態52
前記ガラス容器は、基部と、前記基部にヒールを介して接続されたバレルと、前記バレルから延在するショルダと、前記ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備える、実施形態45記載のガラス容器。
【0226】
実施形態53
前記亀裂変向領域は、前記バレル内で前記ヒールおよび前記ショルダのうちの少なくとも一方に近接して配置されている、実施形態52記載のガラス容器。
【0227】
実施形態54
前記局所的な圧縮応力領域は、前記ネックおよび前記ヒールのうちの少なくとも一方に配置されている、実施形態53記載のガラス容器。
【0228】
実施形態55
ガラス容器を形成する方法であって、
ガラス組成物から形成された素材を提供するステップと、
前記素材を、内面と外面との間に延在する本体を有するガラス物品へと成形するステップであって、前記本体は、内容積を規定している、ガラス物品へと成形するステップと、
前記ガラス物品内に亀裂変向領域を形成するステップであって、前記亀裂変向領域は、前記ガラス物品の残りの部分よりも高い内部引張応力を有するサブ領域を備え、前記サブ領域は、所定の伝播方向に対して実質的に垂直な方向に延在している、亀裂変向領域を形成するステップと、
前記ガラス物品に局所的な圧縮応力領域を形成するステップであって、前記局所的な圧縮応力領域は、前記内面または前記外面から前記本体内の局所的な圧縮深さまで延在する局所的な圧縮応力を有し、前記局所的な圧縮深さは、前記本体の厚さの2%以上25%以下であり、前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップは、前記ガラス物品が、前記ガラス組成物の軟化温度を超える開始温度まで加熱されるときに、前記ガラス物品の所定の部分に冷媒を局所的に適用するステップを含む、局所的な圧縮応力領域を形成するステップと
を含む、方法。
【0229】
実施形態56
前記ガラス物品に圧縮応力層を形成するステップをさらに含み、前記圧縮応力層は、前記内面および前記外面のうちの少なくとも一方から前記圧縮深さまで前記本体の厚さ内に延在している、実施形態55記載の方法。
【0230】
実施形態57
前記圧縮応力層を形成するステップは、前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップの後に、前記外面において圧縮応力下の第1の領域を形成するために、前記ガラス物品をイオン交換強化に供するステップを含み、前記第1の領域は、前記外面から前記圧縮深さまで延在しており、前記圧縮深さは、前記局所的な圧縮深さ未満である、実施形態56記載の方法。
【0231】
実施形態58
前記局所的な圧縮応力領域は、前記外面上の前記第1の領域と重畳している、実施形態57記載の方法。
【0232】
実施形態59
前記亀裂変向領域は、前記外面上の前記局所的な圧縮応力領域と重畳している、実施形態58記載の方法。
【0233】
実施形態60
前記局所的な圧縮応力領域を形成するステップの前に、前記素材を前記ガラス物品へと成形するステップによって誘発される変換傷を排除するために、前記外面全体を火炎浄化するステップをさらに含む、実施形態55記載の方法。
【0234】
実施形態61
前記ガラス物品の前記部分に前記冷媒を局所的に適用するステップは、
前記ガラス物品が前記開始温度まで加熱されるときに、前記ガラス物品の前記部分に近接してカラーを位置決めするステップであって、前記カラーは、前記冷媒用の少なくとも1つの供給部を含み、前記カラーは、前記ガラス物品の前記部分に対応するように成形されている、カラーを位置決めするステップと、
前記局所的な圧縮応力領域を形成するために、前記ガラス物品の前記部分に前記冷媒を供給するステップと
を含む、実現形態55記載の方法。
【0235】
実施形態62
前記カラーは、前記ガラス物品の前記部分に接触して、前記カラーの流体マニホールドと前記ガラス物品の前記部分との間の間隙を制御する接触点を含む、実施形態61記載の方法。
【0236】
実施形態63
前記ガラス容器は、基部と、前記基部にヒールを介して接続されたバレルと、前記バレルから延在するショルダと、前記ショルダから延在するネックとを有するバイアルを備え、前記冷媒が適用される前記ガラス物品の前記部分は、前記ネックおよび前記ヒールのうちの少なくとも一方を備える、実施形態62記載の方法。
【0237】
実施形態64
前記亀裂変向領域を形成するステップは、前記ガラス物品への前記素材の成形中に前記亀裂変向領域の前記サブ領域を形成するステップを含み、前記サブ領域の厚さは、前記本体の平均厚さ未満である、実施形態55記載の方法。
【0238】
実施形態65
前記サブ領域を形成するステップは、前記ガラス物品上でパルスレーザビームを所定のパターンで走査するステップを含む、実施形態64記載の方法。
【0239】
実施形態66
前記サブ領域を形成するステップは、前記ガラス物品への前記素材の成形中に前記素材を、前記サブ領域の所定の形状に対応する形状を有する成形要素に接触させるステップを含む、実施形態64記載の方法。
【0240】
実施形態67
前記亀裂変向領域の一部の厚さは、前記本体の平均厚さよりも大きい、実施形態55記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図14
【国際調査報告】