(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】プラスチック由来の合成原料のための低温流動性添加剤
(51)【国際特許分類】
C10L 1/196 20060101AFI20230921BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20230921BHJP
C10L 10/16 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C10L1/196
C10G1/10
C10L10/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509546
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021049790
(87)【国際公開番号】W WO2022056212
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】セオドア シー.アーンスト
(72)【発明者】
【氏名】カリナ ユーレステ
(72)【発明者】
【氏名】タンノン ウッドソン
【テーマコード(参考)】
4H013
4H129
【Fターム(参考)】
4H013CC01
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC12
4H129BC37
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
【課題】プラスチックからの合成原料の低温流動性を改善すること。
【解決手段】プラスチックに由来する合成原料の低温流動性を達成するための組成物及び方法に使用される流動点降下剤が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック由来の合成原料組成物の低温流動性を改善する方法であって、流動点降下剤をプラスチック由来の合成原料組成物に添加することを含み、前記流動点降下剤が、ビニルカルボン酸エステルポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項2】
前記合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワックスが、C16~C36の炭素を含む、請求項1又は2に記載の方法
。
【請求項4】
前記合成原料組成物が、他の流動点降下剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、安定剤、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動点降下剤が、前記合成原料組成物に約50ppm~5000ppm添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記流動点降下剤が、前記合成原料組成物の流動点を3℃~42℃低下させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
流動点降下剤を含む前記合成原料組成物が、-24℃未満の流動点を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
合成原料を得る方法であって、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)前記熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)前記合成原料を回収することと、
(d)前記合成原料に流動点降下剤を添加して、流動点を低下させることと、を含む、方法。
【請求項11】
前記プラスチックが、廃プラスチックを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱が、触媒の存在下又は非存在下である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチックが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びそれらの組み合わせを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワックスが、C16~C36の炭素を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項16】
前記流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせである、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸ポリマーである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
プラスチックに由来する合成原料と、ビニルカルボン酸エステルポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む流動点降下剤と、を含む、組成物。
【請求項19】
前記流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、請求項18又は19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月14日に出願された米国仮特許出願第63/078,111号の利益を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、プラスチックからの合成原料の低温流動性を改善することを対象とする。
【背景技術】
【0003】
プラスチックは最も急速に増加している廃棄物であり、深刻な環境問題を引き起こしている。廃プラスチックを、原油、又はスチームクラッカー内でのオレフィンの生成のための原料などの有用で価値の高い生成物に変換することにより、プラスチック廃棄物問題に対処する機会が提供される。
【0004】
プラスチックは、主に、ポリエチレン及びポリプロピレンで構成されている。熱分解などの様々なプロセスを通じて、プラスチックの炭素-炭素結合及び炭素-水素結合は、より短い(オリゴマー)鎖に分解される。そのようなプロセスから得られる生成物は、パラフィン及びオレフィンなどのワックス分子と立体配座的に類似し得るプラスチックの分解から種々の量のオリゴマー鎖を含有し得る。
【0005】
温度が下降したとき、例えば0℃を下回るとき、これらのワックス様構造の存在が固化又は沈殿をもたらし得る。追加のワックスが沈殿すると、結晶が成長し、最終的に、温度が十分に低下した場合、結晶が一緒に成長して、燃料又は油を固定化する三次元ネットワークを形成する。この固化プロセスは、ゲル化と称されることもある。ワックスの沈殿は、合成原料の回収、輸送、貯蔵、又は使用中に問題を生じさせる場合がある。沈殿したワックス様物質は、フィルタ、ポンプ、パイプライン、及び他の設備を塞ぐか、又はタンク内に堆積する場合があり、したがって、追加の洗浄が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、より低い温度で合成原料(例えば、燃料又は油)の流動性を維持するために流動点を降下又は低下させることができる添加剤が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、プラスチックからの合成原料の流動点を低減又は低下させるなどの、低温流動性を改善するための組成物及び方法が記載される。
【0008】
一態様では、プラスチック由来の合成原料組成物の低温流動性を改善する方法であって、
流動点降下剤をプラスチック由来の合成原料組成物に添加することを含む、方法である。
【0009】
別の態様では、合成原料を得る方法であって、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)加熱された熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)合成原料に流動点降下剤を添加して、流動点を低下させることと、を含む、方法である。
【0010】
別の態様では、プラスチックに由来する合成原料及び流動点降下剤を含む組成物である。
【0011】
なお別の態様では、流動点降下剤及び合成原料を含む組成物であって、流動点降下剤が、合成原料に添加されるポリマーであり、合成原料が、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)加熱された熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、を含む、方法によって提供される、組成物である。
【0012】
流動点降下剤は、合成原料の回収、輸送、貯蔵、又は使用中に、プラスチックに由来する合成原料の流動点の温度を低下させるために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0014】
【
図2】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、様々な実施形態への言及を提供するが、当業者は、本出願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更がなされ得ることを認識するであろう。様々な実施形態が、図面を参照して詳述される。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。更に、本出願に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に記載するものである。
【0016】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。本明細書で説明されるものと同様又は同等の方法及び材料が、本出願の実施又は試験に使用され得るが、方法及び材料を以下で説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0017】
「コポリマー」、「共重合する」という用語は、2つのモノマー残基を含むポリマー、及び2つの異なるモノマーの重合をそれぞれ含むだけでなく、2つより多いモノマー残基を含むコポリマー、及び2つより多い又はより多い他のモノマーを一緒に重合することを含む。したがって、コポリマーという用語は、例えば、ターポリマー、クアドラポリマー、並びに4つより多い異なるモノマーから作製されたポリマー、及び/又は2つの異なるモノマー残基を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になるポリマーを含む。
【0018】
「流動点」という用語は、特定の組の条件下で、液体が流動する又は流れる最低温度である。例示的な流動点標準としては、ASTM D97-11、D585311、及びD5949-10が挙げられる。
【0019】
「流動点降下剤」又は「PPD」という用語は、プラスチックに由来する原料などの原料におけるワックス結晶形成を低減又は抑制するポリマーであり、より低い流動点、及び改善された低い又は冷たい温度での流動性能をもたらす。
【0020】
「合成原料」という用語は、プラスチックの処理又はプロセスから得られる炭化水素を指す。例えば、プラスチックは、例えば熱分解油又は熱分解物に熱的に変換することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含有する(contain(s))」、及びそれらの変形は、追加の作用又は構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、又は単語であることが意図される。単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態又は要素を「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「任意選択の」又は「任意選択に」は、その後に記載された事象、又は状況が発生する可能性があるが発生する必要はなく、並びにその説明に事象又は状況が生じる事例及び生じない事例が含まれることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用配合物を作製するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質若しくは成分の製造、供給源、又は純度の違いにより、及び同様の近似考慮事項により生じ得る数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する配合物の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する配合物を混合又は加工することに起因して異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されている場合、添付の特許請求の範囲は、これらの量と同等のものを含む。更に、「約」が値の範囲を説明するために使用される場合、文脈によって特に限定されない限り、例えば「約1~5」は、「1~5」及び「約1~約5」及び「1~約5」及び「約1~5」を意味する。
【0024】
本明細書で使用される用語「実質的に(substantially)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」を意味し、「からなる(consisting of)」を含む。「から本質的になる」及び「からなる」は、米国特許法においてと同様に解釈される。例えば、特定の化合物又は材料を「実質的に含まない」溶液は、その化合物又は材料を含まなくてもよいか、あるいは意図しない汚染、副反応、若しくは不完全な精製などによって存在する少量のその化合物又は材料を有してもよい。「少量」は、微量、測定不可能な量、価値若しくは特性を妨げない量、又は文脈で提供されるようないくつかの他の量であり得る。提供された成分のリスト「のみ実質的に」有する組成物は、それらの成分のみからなるか、又は存在する微量のいくつかの他の成分を有するか、又は組成物の特性に物質的に影響を及ぼさない1つ以上の更なる成分を有し得る。更に、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分のタイプ若しくは量、特性、測定可能な量、方法、値、又は範囲を修飾する「実質的に」とは、意図された組成物、特性、量、方法、値、又は範囲を無効にする様式で、記載された組成物、特性、量、方法、値、又はその範囲に全体的に影響を及ぼさない変動を指す。用語「実質的に」で修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、この定義による等価物を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内の全ての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。例示的な例として、本明細書における1~5の範囲の開示は、次の範囲、すなわち1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、及び4~5のうちのいずれに対する特許請求の範囲も支持するようにみなされよう。
【0026】
プラスチックからの合成原料の低温流動性を改善する組成物及び方法が説明されている。低温流動性は、ワックス様構造の形成を阻止し、合成原料が固化する温度を低下させる添加剤によって改善することができる。この添加により、合成原料の途切れのない流れが保証される。そのような添加剤は、流動点降下剤又は流動性向上剤と称される。
【0027】
プラスチック(例えば、廃プラスチック)をより低い分子量の炭化水素材料、特に炭化水素燃料材料に変換するいくつかのプロセスが知られている。例えば、米国特許第6,150,577号、同第9,200,207号、及び同第9,624,439号を参照されたい。これらの刊行物の各々は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
広く説明されているそのようなプロセスは、酸素が制限されているか又は酸素がなく、かつ大気圧を上回る、熱分解-高熱(例えば、400℃~850℃)によって長鎖プラスチックポリマーを破壊することを含む。得られた熱分解流出物は、蒸留され、次いで凝縮される。
図1に示されるように、熱分解プロセスの実施形態は、廃プラスチックの供給器12、反応器14、及び凝縮器システム18を含む。ポリマー含有材料は、供給器内の入口10から供給され、反応器14に熱が加えられる。凝縮器システム18からの出口20は、生成物が出ることを可能にする。
【0029】
この熱分解反応を実現するための熱クラッキング反応器は、いくつかの特許、例えば、米国特許第9,624,439号、同第10,131,847号、同第10,208,253号、及びPCT国際特許出願公開第WO2013/123377A1号に詳細に記載されており、これらの刊行物の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)加熱された熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、触媒の存在下又は非存在下である。いくつかの実施形態では、凝縮後、流出物は、任意選択的に蒸留される。いくつかの実施形態では、合成原料を回収することは、合成原料を得るために、熱分解流出物を分離すること若しくは急冷すること、又は分離すること及び急冷することの両方に関する。
【0032】
熱分解反応により、ガス(温度10℃~50℃及び0.5~1.5の大気圧であり、5個以下の炭素を有する)、適度な沸点の液体(ガソリン(40~200℃)又はディーゼル燃料180~360℃のような)、より高い沸点(例えば250~475℃)の液体(油及びワックス)、及び一般的にチャーと称されるいくらかの固体残留物からの多様な炭化水素生成物が生成される。チャーは、熱分解プロセスが完了して燃料が回収された後に残る材料である。チャーは、原料の一部としてシステムに入る添加物及び汚染物質を含有する。チャーは、重油成分を有するスラッジに似た粉末状の残留物又は物質であり得る。ガラス、金属、炭酸カルシウム/酸化カルシウム、粘土、及びカーボンブラックは、変換プロセスが完了した後に残り、チャーの一部になるほんのわずかな汚染物質及び添加物である。
【0033】
熱可塑性及び熱硬化性廃プラスチックなどの様々なプラスチックタイプを、上記のプロセスで使用することができる。廃プラスチック原料において一般的に遭遇するプラスチックのタイプとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態では、熱分解反応(例えば、熱分解流出物)は、2~30%のガス(C1~C4炭化水素)、(2)10~50%の油(C5~C15炭化水素)、(3)10~40%のワックス(≧C16炭化水素)、並びに(4)1~5%のチャー及びタールをもたらす。熱分解プロセスの完了後、熱分解物又は熱分解油は、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)の範囲であり得る。
【0035】
廃プラスチックの熱分解に由来する炭化水素は、アルカン、アルケン、オレフィン、及びジオレフィンの混合物であり、オレフィン基は、一般にC1とC2との間、すなわちアルファ-オレフィンであるが、いくらかのアルク-2-エンも生成され、ジエンは、一般にアルファ及びオメガ位にある、すなわちアルク-α,ω-ジエンであるか、又はジエンは、共役ジエンである。いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、パラフィン化合物、イソパラフィン、オレフィン、ジオレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物を生成する。
【0036】
いくつかの実施形態では、熱分解流出物中の1-オレフィンのパーセンテージは、25~75重量%、40~60重量%である。熱分解条件は、約400~850℃、約500~700℃、又は約600~700℃の温度を含む。
【0037】
処理条件に依存して、石油源からの原油と同様の特徴を有する合成原料であるが、異なる範囲の灰及びワックスを有し得る。いくつかの実施形態では、廃プラスチックに由来する合成原料は、C16~C36、C16~C20、C21~C29、又はC30~C36のワックス状炭化水素を含有する。他の実施形態では、廃プラスチックに由来する合成原料は、ワックス分子の50~60%に相当するC16~C20画分、ワックス分子の約40~50%であるC21~C29画分、及びワックス画分の2%未満であるC30+画分を有するワックス状炭化水素を含有し、ワックス状画分は、回収された合成原料画分の約10~20%である。なお他の実施形態では、合成原料は、15~20重量%のC9~C16、75~87%のC16~C29、2~5%のC30+を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。他の実施形態では、合成原料は、10重量%の<C12、25重量%のC12~C20、30重量%のC21~C40、及び35重量%の>C41を有し、炭素鎖は、主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。
【0038】
プラスチックに由来する合成原料とは異なり、流動点の問題を抱えている従来の原油は、幅広い範囲の炭化水素種を有しており、非ワックス状成分がこれらの厄介な原油のワックス状性質のいくらかを埋め合わせるのに役立ち得る。従来のワックス状原油では、ワックス状成分は、C16~C80+の範囲である。原油の一例では、C22~C40の炭素鎖範囲を有するワックス状分子は、おおまかなガウス分布を示し、ワックス状分子の大部分は、C28~C36の範囲にあった。原油の別の例では、ワックス状炭素鎖長がC15~C110の範囲であり、分布は、二峰性であり、ワックス状分子の大部分は、C24~C28又はC36~C52の範囲にある。
【0039】
溶媒除去、又は接触脱ろう若しくは異性化のいずれかによる、ワックス状供給物を低減するための既知の脱ろう方法があるが、これらのプロセスのほとんどは高価である。本明細書には、プラスチック(例えば、廃プラスチック)に由来する合成原料の流動点を低下させる流動点降下剤が開示される。
【0040】
いくつかの実施形態では、合成原料組成物は、その所望の又は意図された貯蔵、輸送、又は使用の温度よりも高い温度で合成原料組成物から沈殿し得るワックス状構成物を有する。いくつかの実施形態では、合成原料組成物は、1重量パーセント超、5重量パーセント超、又は10重量パーセント超のワックス含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、合成原料中のワックス含有量は、5~95重量パーセント、15~95重量パーセント、20~65重量パーセント、5~40重量パーセント、5~30重量パーセント、10~25重量パーセント、15~20重量パーセント、10~20重量パーセント、又は10~30重量パーセントである。
【0041】
いくつかの実施形態では、合成原料の流動点を低下又は降下させるための組成物及び方法に使用される化合物は、ポリマー(例えば、合成)である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ビニルカルボン酸エステルポリマーである。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸ポリマー、又はそれらの組み合わせなどのポリマーである。
【0042】
いくつかの実施形態では、流動降下剤は、エチレンのコポリマーである。いくつかの実施形態では、エチレンのコポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであり、エチレン性不飽和モノマーは、ビニルカルボン酸エステルである。
【0043】
いくつかの実施形態では、ビニルカルボン酸エステルは、2~20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルであり、この炭化水素ラジカルは、線状又は分岐であり得る。分岐炭化水素ラジカルを有するカルボン酸のうち、いくつかは、分岐がカルボキシル基に対してα位にあるものであり、α炭素原子は特に好ましくは三級であり、すなわちカルボン酸はいわゆるネオカルボン酸である。いくつかの実施形態では、カルボン酸の炭化水素ラジカルは、線状である。
【0044】
好適なビニルカルボン酸エステルの例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ネオペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニルである。他の実施形態では、エチレンコポリマーは、アクリロニトリル、又はオクタン、ブタン、プロピレン、アルキル側鎖、例えばメタクリレートエステルコポリマー、マレイン酸-オレフィンエステルコポリマー、及びマレイン酸-オレフィンアミドコポリマーを有するコームポリマーなどのアルファ-オレフィン、並びにアルキルフェノール-ホルムアルデヒドコポリマー、ポリエチレンイミンなどのアルキル側鎖を有する分岐コポリマーである。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン酢酸ビニルコポリマーである。
【0045】
2つ以上の相互に異なるアルケニルカルボン酸エステルを共重合形態で含有するコポリマーも好適であり、これらは、アルケニル官能基又はカルボン酸基が異なる。また、アルケニルカルボン酸エステルに加えて、少なくとも1つのオレフィン又は少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルを共重合形態で含有するコポリマーも好適である。
【0046】
好適なオレフィンは、例えば、3~10個の炭素原子を有し、1~3個、1個若しくは2個を有するか、又は1個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンである。1個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンの場合には、炭素-炭素二重結合は、両方の末端(α-オレフィン)、内部、又はこれらの両方に配置することができる。いくつかの実施形態では、α-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、及び1-ヘキセンなどの3~6個の炭素原子を有する。
【0047】
好適な(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸の、C1~C10-アルカノールとの、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、及びデカノールとのエステルである。
【0048】
いくつかの実施形態では、エチレン酢酸ビニルコポリマー中の酢酸ビニルは、全コポリマーの5~60重量%、又は10~25重量%、10~20重量%、10~50重量%、25~40重量%、25~50重量%、又は15~25重量%である。
【0049】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、800~13,000g/mol、900~12,000g/mol、又は900~10,000g/molの分子量を有する。いくつかの実施形態では、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、プラスチックに由来する合成原料に対する流動点降下剤として使用されるエチレン酢酸ビニルコポリマーは、相乗剤の有無にかかわらず存在する。いくつかの実施形態では、相乗剤は、アルファオレフィン無水マレイン酸である。なお他の実施形態では、エチレン酢酸ビニルは、約900~12,000の分子量で溶媒とともに提供され、10~50パーセントの酢酸ビニル含有量、及び20~70パーセントの活性物質を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーであり、エチレン性不飽和モノマーは、ビニルカルボン酸エステルである。
【0052】
いくつかの実施形態では、ビニルカルボン酸エステルは、2~20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルであり、この炭化水素ラジカルは、線状又は分岐であり得る。分岐炭化水素ラジカルを有するカルボン酸のうち、いくつかは、分岐がカルボキシル基に対してα位にあるものであり、α炭素原子は特に三級であり、すなわちカルボン酸はいわゆるネオカルボン酸である。いくつかの実施形態では、カルボン酸の炭化水素ラジカルは、線状である。
【0053】
好適なビニルカルボン酸エステルの例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ネオペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニルである。いくつかの実施形態では、ビニルカルボン酸エステルは、アクリレートと共重合される。
【0054】
いくつかの実施形態では、アクリレートは、アクリレートエステルである。いくつかの実施形態では、アクリレートエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ネオオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ネオノニルアクリレート、デシルアクリレート、ネオデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、パルミチルアクリレート、及びステアリルアクリレートなどの、C1~C20アルカノールのアクリレートエステルであり、また、対応するメタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、及びイソクロトン酸エステルも使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、酢酸ビニル-アクリレートコポリマーである。
【0056】
いくつかの実施形態では、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー中の酢酸ビニルは、全コポリマーの5~30重量%、8~20重量%、10~25重量%、又は10~20重量%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、800~13,000g/mol、900~12,000g/mol、又は900~10,000g/mol、又は900~9300g/molの分子量を有する。いくつかの実施形態では、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、酢酸ビニル-アクリレートコポリマーは、プラスチックに由来する合成原料に対する流動点降下剤として使用される。いくつかの実施形態では、酢酸ビニル-アクリレートは、約900~12,000の分子量で溶媒とともに提供され、8~20パーセントの酢酸ビニル含有量、及び20~70パーセントの活性物質を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、流動降下剤は、アルファ-オレフィンモノマーの、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸若しくはイタコン酸、マレイミド並びにN-アルキル、N-アリール、及びN-アルカリルマレイミド、無水シトラコン酸、シトラコンイミド並びにN-アルキル、N-アリール、及びN-アルカリールシトラコンイミドなどの置換部分、又はそれらの組み合わせなどのエチレン性不飽和カルボン酸モノマー又はその誘導体とのコポリマーである。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸又はその誘導体は、酸若しくは無水物、又はその誘導体であり得る。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、式(I)を有する無水マレイン酸モノマーであり、
【化1】
R
5及びR
6が、水素又はC1~C30アルキルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、無水マレイン酸残基は、無水物の当量当たり約0.01~2.0当量のC12~C60アルカノール又はアミンと更に反応する。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(II)を有する1つ以上のアルファオレフィンモノマーであって、
【化2】
R
1、R
2、R
3、及びR
4が、水素及びC5~C40アルキルから独立して選択される、モノマー。
【0061】
いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、15~40個の炭素原子、又は18~36個、又は20~35個の炭素原子を含有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、オレフィンは、線状であり、及び/又は二重結合に付着したアルキル鎖又はアルカリール鎖などの線状炭化水素鎖を含有し、次いで、オレフィンのコポリマーを含むオレフィンのポリマーは、ペンダント側鎖を有する。例えば、14個以上の炭素原子を有する線状アルファオレフィンのポリマーは、重合及び/又は共重合されたとき、得られるポリマーに12個以上の炭素原子の線状側鎖を付与する。二重結合が1位にない長鎖アルケンは、重合するときに、得られるアルケンモノマーのポリマーが少なくとも12個の炭素原子の線状側鎖を有するため、好適である。二重結合の片側に12個以上の炭素原子、二重結合の反対側に12個以上の炭素原子を有する長鎖アルケンのポリマーは、重合及び/又は共重合されたときにブラシポリマーを形成する。そのようなブラシポリマーは、対向するペンダント側鎖の組を有する。ブラシポリマー及びコームポリマーの両方が、開示された実施形態において有用である。
【0063】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、アルファオレフィン-無水マレイン酸コポリマー(OMAC)である。いくつかの実施形態では、式(I)及び式(II)のコポリマーは、無水マレイン酸残基を介して1つ以上のアルカノール又はアミン化合物と更に反応して、対応するカルボキシレート又はアミド官能基を形成する。いくつかのそのような実施形態では、無水マレイン酸残基は、無水物の当量当たり約0.5~2.0当量のアルカノール又はアミンと反応する。アルカノール又はアミン化合物は、約12~60個の炭素を有する線状、分岐、芳香族、又は脂肪芳香族の化合物である。
【0064】
いくつかの実施形態では、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマーは、10,00~70,000g/mol、10,00~55,000g/mol、20,00~50,000g/mol、20,00~70,000g/mol、又は15,000~35,000g/molである。いくつかの実施形態では、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、プラスチックに由来する合成原料に対する流動点降下剤として使用されるアルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマーは、約20,00~70,000g/molの分子量で溶媒とともに提供され、20~90パーセントの活性物質を有する。
【0066】
流動点降下剤ポリマーの調製は、フリーラジカル開始の溶液重合、又はオートクレーブ又は好適な反応器内で実施され得る高圧重合などの、当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。例えば、エチレン系不飽和カルボン酸(例えば、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー)を用いたアルファ-オレフィンの調製は、当技術分野で知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5441545号を参照されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、水、アルコール、芳香族化合物、ナフテン化合物、脂肪族化合物、及び非ポリマーエステル化合物(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国出願第15/399,025号(米国特許出願公開第2017/0190949号))、及びそれらの組み合わせなどの溶媒とともに配合される。いくつかの実施形態では、溶媒は、重質芳香族ナフサ溶媒又は軽質芳香族ナフサ溶媒である。
【0068】
いくつかの実施形態では、溶媒は、流動点降下剤の10重量%~99重量%、流動点降下剤の10~25重量%、20~50重量%、30~75重量%、50~75%、75~100重量%である。
【0069】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、20~99%の活性、50~75%、60~70%、75~99%の活性、20~90%、20~70%、30~70%、20~50%、又は20~30%の活性である。
【0070】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、未希釈で(つまり、溶媒なしで)提供される。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、濃縮物として提供される。いくつかの実施形態では、流動点降下剤濃縮物は、1重量%~20重量%の流動点降下剤(PPD)、又は約3重量%~20重量%、若しくは約5重量%~20重量%、若しくは約7重量%~20重量%、若しくは約10重量%~20重量%のPPDを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、1つ以上の追加の成分、例えば、他の流動点降下剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤(例えば、アミン中和剤)、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、安定剤など、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0072】
ワックス分散剤は、形成されたパラフィン結晶を安定化し、沈降を阻止する。使用されるワックス分散剤は、例えば、アルキルフェノール、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、又はドデシルベンゼンスルホン酸であり得る。
【0073】
流動点降下剤を合成原料に適用する方法は特に限定されない。当業者は、流動点降下剤などの合成原料添加剤が、例えば、パイプ、ミキサ、ポンプ、タンク、注入ポートなどを含む利用可能な設備を使用することによって従来通りに添加されることを理解するであろう。
【0074】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、プラスチックから得られる合成原料の中に添加される。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン酢酸ビニルコポリマーである。他の実施形態では、流動点降下剤は、ワックスを含有する合成原料に添加される。なお他の実施形態では、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせが、ワックス、チャー、及びタールを含有する合成原料に添加される。いくつかの実施形態では、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせが、C16~C36を有するワックスを含有する合成原料に添加される。いくつかの実施形態では、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせは、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)、若しくは35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)、又は15~20重量%のC9~C16、75~87%のC16~C29、2~5%のC30+を有する合成原料に好適な流動点であり、炭素鎖は、主に、アルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である。なお他の実施形態では、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせは、10重量%の<C12、25重量%のC12~C20、30重量%のC21~C40、及び35重量%の>C41を有する合成原料に好適な流動点であり、炭素鎖は、主に、アルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合である。
【0075】
使用される流動点降下剤の有効量は、局所的な動作条件、加工されるプラスチックのタイプから得られる合成原料のタイプ、温度、及びプロセスの他の特徴などのいくつかの要因に依存するが、いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、合成原料中に、50ppm~10,000ppm、50ppm~5,000ppm、550ppm~5,000ppm、250ppm~1000ppm、50ppm~1,000ppm、150~450ppm、50ppm~500ppm使用される。
【0076】
合成原料の流動性は、任意の既知の方法又は試験によって評価することができる。例えば、流動点は、ASTM D97に従って測定することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤を有する合成原料は、-24℃未満、-20℃未満、-10℃未満、-5℃未満の流動点(ASTM D97下で測定)を有する。そのような合成原料は、流れ続け、それにより、例えば-40℃~20℃の温度での流動、ポンプ輸送、又は移送が可能になる。いくつかの実施形態では、流動点降下剤を含有する組成物は流動し、したがって、-40℃、又は-40℃~20℃、~-40℃、又は-5℃~-40℃、又は-10℃~-40℃、又は-15℃~-40℃、又は-20℃~-40℃、又は-25℃~-40℃、又は-30℃~-40℃の低温で流動可能又はポンプ輸送可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、流動点を3~42℃、3~30℃、3~20℃、10~20℃、3℃~20℃、3℃~15℃、3℃~10℃、又は3℃~5℃低減する。
【0079】
いくつかの実施形態では、250~450ppmの流動点降下剤は、流動点を3~42℃、3~30℃、3~20℃、10~20℃、3℃~20℃、3℃~15℃、3℃~10℃、又は3℃~5℃低減する。
【0080】
いくつかの実施形態では、組成物は、合成原料中に、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマー、又はそれらの組み合わせを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。そのような実施形態では、プラスチックに由来する合成原料に50ppm~10,000ppm添加されたとき、流動点は、3~42℃低減する。
【0081】
本出願は、追加の非限定的な実施形態とともに以下で更に説明される。
1.プラスチック由来の合成原料組成物の低温流動性を改善する方法であって、
流動点降下剤をプラスチック由来の合成原料組成物に添加することを含む、方法。
2.合成原料組成物が、他の流動点分散剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、安定剤、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、実施形態1に記載の方法。
3.合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
4.ワックスが、C16~C36を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.流動点降下剤が、ポリマーである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.流動点降下剤が、合成ポリマーである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.ポリマーが、カルボン酸ビニルを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.流動点降下剤が、合成原料組成物に約50ppm~5000ppm添加される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.流動点降下剤が、合成原料組成物の流動点を3℃~42℃低下させる、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.流動点降下剤を含む合成原料組成物が、-24℃未満の流動点を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.合成原料を得る方法であって、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)流動点降下剤を合成原料の中に添加することと、を含む、方法。
14.プラスチックが、廃プラスチックを含む、実施形態13に記載の方法。
15.加熱が、触媒の存在下又は非存在下である、実施形態13又は14に記載の方法。
16.プラスチックが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びそれらの組み合わせを含む、実施形態13~15のいずれか1つに記載の方法。
17.合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、実施形態13~16のいずれか1つに記載の方法。
18.ワックスが、C16~C36を含む、実施形態13~17のいずれか1つに記載の方法。
流動点降下剤が、ポリマーである、実施形態13~18のいずれか1つに記載の方法。
19.流動点降下剤が、合成ポリマーである、実施形態13~19のいずれか1つに記載の方法。
20.ポリマーが、カルボン酸ビニルを含む、実施形態13~20のいずれか1つに記載の方法。
21.流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせである、実施形態13~21のいずれか1つに記載の方法。
22.流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸である、実施形態13~22のいずれか1つに記載の方法。
23.流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマーである、実施形態13~23のいずれか1つに記載の方法。
24.流動点降下剤が、合成原料に約50ppm~5000ppm添加される、実施形態13~24のいずれか1つに記載の方法。
25.流動点降下剤が、合成原料の流動点を3℃~42℃低下させる、実施形態13~25のいずれか1つに記載の方法。
26.流動点降下剤を含む合成原料が、-24℃未満の流動点を有する、実施形態13~26のいずれか1つに記載の方法。
27.プラスチックに由来する合成原料、及び流動点降下剤を含む、組成物。
28.合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、実施形態27に記載の組成物。
29.ワックスが、C16~C36を含む、実施形態27又は28に記載の組成物。
30.流動点降下剤が、ポリマーを含む、実施形態27~29のいずれか1つに記載の組成物。
31.流動点降下剤が、合成ポリマーを含む、実施形態27~30のいずれか1つに記載の組成物。
32.流動点降下剤が、カルボン酸ビニルを含む、実施形態27~31のいずれか1つに記載の組成物。
33.流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせである、実施形態27~32のいずれか1つに記載の組成物。
34.流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸である、実施形態27~33のいずれか1つに記載の組成物。
35.流動点降下剤が、合成原料に約50ppm~5000ppm添加される、実施形態27~34のいずれか1つに記載の組成物。
36.流動点降下剤が、合成原料の流動点を3℃~42℃低下させる、実施形態27~35のいずれか1つに記載の組成物。
37.流動点降下剤を含む合成原料が、-24℃未満の流動点を有する、実施形態27~36のいずれか1つに記載の組成物。
38.流動点降下剤及び合成原料を含む組成物であって、流動点降下剤が、合成原料に添加されるポリマーであり、合成原料が、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、を含む、方法によって提供される、組成物。
39.合成原料が、20~85%の油(C5~C15)及び15~95%のワックス(≧C16)を含むか、又は35~80%の油(C5~C15)及び20~65%のワックス(≧C16)を含む、実施形態38に記載の組成物。
40.ワックスが、C16~C36を含む、実施形態38又は39に記載の組成物。
41.流動点降下剤が、ポリマーを含む、実施形態38~40のいずれか1つに記載の組成物。
42.流動点降下剤が、合成ポリマーを含む、実施形態38~41のいずれか1つに記載の組成物。
43.流動点降下剤が、カルボン酸ビニルを含む、実施形態38~42のいずれか1つに記載の組成物。
44.流動点降下剤が、エチレン酢酸ビニルコポリマー若しくは酢酸ビニル-アクリレートコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態38~43のいずれか1つに記載の組成物。
45.流動点降下剤が、アルファオレフィン無水マレイン酸を含む、実施形態38~44のいずれか1つに記載の組成物。
46.流動点降下剤が、合成原料に約50ppm~5000ppm添加される、実施形態38~45のいずれか1つに記載の組成物。
47.流動点降下剤が、合成原料の流動点を3℃~42℃低下させる、実施形態38~46のいずれか1つに記載の組成物。
48.流動点降下剤を含む合成原料が、-24℃未満の流動点を有する、実施形態38~47のいずれか1つに記載の組成物。
49.プラスチックに由来する合成原料の流動点を低下させるための、実施形態1~48のいずれか1つに記載の流動点降下剤の使用。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本出願の異なる態様及び実施形態を例示することを意図しており、その範囲を限定するものとみなされるべきではない。本出願の範囲及び特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更がなされ得ることが認識されるであろう。
【0083】
実施例1 プラスチックに由来する合成原料中の低温流動性添加剤
様々な流動点降下剤を有するプラスチックに由来する合成原料の流動点を、ASTM D97に従って決定した。以下の炭素鎖を有する合成原料を使用した:試料1:15~20重量%のC9~C16、75~87%のC16~C29、2~5%のC30+(炭素鎖は主にアルカン、アルケン、及びジオレフィンの混合物である)、並びに試料2 10重量%の<C12、25重量%のC12~C20、30重量%のC21~C40、及び35重量%の>C41。
【0084】
使用した様々な流動点降下剤の化学物質を以下の表1に示す。
【表1】
【0085】
表2は、試料1において種々の投与量で試験した流動点降下剤の異なるカテゴリーを示す。
【表2】
【表3】
【0086】
表2は、試料1において試験した流動点降下剤の4つの全てのカテゴリーが有望な流動点降下を示したが、エチレン-酢酸ビニルコポリマーがより低い投与量範囲で最も効果的であることを示した。
【0087】
表3は、試料2において種々の投与量で試験した流動点降下剤の異なるカテゴリーを示す。
【表4】
【0088】
表3は、試料2において試験した流動点降下剤の全てのカテゴリーが有望な流動点降下を示したが、アルファ-オレフィン-無水マレイン酸系のコポリマー、及び酢酸ビニル-アクリレートコポリマーが、より低い投与量範囲で最も効果的であることを示した。
【国際調査報告】