(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール誘導体、それを含む組成物、及びそれを利用した生理活性ポリペプチド結合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/32 20060101AFI20230921BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230921BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230921BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230921BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230921BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230921BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230921BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
C08G65/32
C07K16/00
A61K38/17
A61K47/60
A61K47/68
A61P7/00
A61P3/10
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515392
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2021012717
(87)【国際公開番号】W WO2022060131
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119259
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517095722
【氏名又は名称】ハンミ・ファイン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANMI FINE CHEMICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン、チ ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨン チョン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ヒョン チョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】オム、テ イン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ イム
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チ ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ソン ア
(72)【発明者】
【氏名】ユ、オク チョル
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ポム
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チェ ホン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
4J005
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC14
4C076CC21
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF65
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084CA59
4C084DA19
4C084NA03
4C084NA12
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA30
4H045FA50
4H045FA52
4H045FA57
4H045GA26
4J005AA04
4J005BD00
(57)【要約】
一態様によるポリエチレングリコール誘導体化合物は、明細書内の化学式1で表される。該化学式1で、nは、30ないし115の自然数であり、R1とR2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC1-C5アルキルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、ポリエチレングリコール誘導体化合物:
化学式1
【化1】
前記化学式1で、nは、30ないし115の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
【請求項2】
前記C
1-C
5アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである、請求項1に記載のポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項3】
前記R
1及び前記R
2は、エチルである、請求項1に記載のポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項4】
nは、50ないし100の自然数である、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
nは、67ないし83の自然数である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
ポリエチレングリコール誘導体組成物であり、
下記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体と、を含み、
化学式1A
【化2】
化学式2
【化3】
化学式3
【化4】
前記組成物において、
数平均分子量2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、少なくとも70面積%と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、15面積%以下と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、10面積%以下と示される、ポリエチレングリコール誘導体組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、2,950~3,650の範囲にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、3,000~3,200の範囲にある、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(a)下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体を生理活性ポリペプチドと反応させ、下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド炭素に、前記生理活性ポリペプチドが共有結合で連結された連結体を生成させるペギル化(pegylation)段階と、
(b)前記連結体を酸性の水性条件で処理し、連結体加水分解物を生成する加水分解段階と、
(c)前記連結体加水分解物を免疫グロブリンFc切片またはその誘導体に反応させ、結合体を生成する連結(conjugation)段階と、を含み、
前記結合体は、前記連結体加水分解物内の下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体が共有結合で連結されている構造である、生理活性ポリペプチド結合体の製造方法:
化学式1
【化5】
前記化学式1で、nは、50ないし100の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
【請求項10】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液凝固因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体からなる群のうちから選択される、請求項9に記載の生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項11】
(a)段階の反応は、還元的アミン化であり、
前記連結体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端窒素、またはリシンのε-アミノ基窒素の原子が、前記化学式1の化合物のアルデヒド炭素原子に共有結合で連結された物質である、請求項9に記載の生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項12】
(a)段階のペギル化反応は、pH3.0~9.0の範囲でなされる、請求項11に記載の結合体の製造方法。
【請求項13】
(b)段階の加水分解は、pH1.0~5.0の範囲でなされる、請求項11に記載の結合体の製造方法。
【請求項14】
(c)段階の連結反応は、還元的アミン化である、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項15】
前記還元的アミン化は、pH5.0~8.5の範囲でなされる、請求項14に記載の結合体の製造方法。
【請求項16】
前記Fc切片またはその誘導体の配列は、N末端がプロリンである、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項17】
前記結合体は、前記アセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体のN末端プロリンの窒素の原子が、共有結合で連結されている、請求項16に記載の結合体の製造方法。
【請求項18】
前記Fc切片またはその誘導体は、配列番号2である、請求項17に記載の結合体の製造方法。
【請求項19】
R
1とR
2は、エチルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項20】
nは、67ないし83の自然数である、請求項9に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール誘導体、それを含む組成物、及びそのようなポリエチレングリコール誘導体を利用した生理活性ポリペプチド結合体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド医薬品は、2以上のアミノ酸が、一定化学結合形態で連結された物質であり、主に、化学的な合成を介して生産される医薬品を言う。該ペプチド医薬品は、「生体親和的」、「生体内特異性」という特性を有し、副作用は、少ないとも、少量でも強力な薬理作用及び活性を示しうると知られている。従って、該ペプチド医薬品は、合成医薬品とタンパク質医薬品との短所を補完すると期待されている。
【0003】
しかしながら、ペプチド医薬品は、消化管において、タンパク質酵素により、アミノ酸に分解されやすいので、経口投与が困難であり、注射を介して伝達されなければならず、血中半減期が短いために、生体利用率が低く、反復的な投与が必要である。また、タンパク質医薬品よりも小サイズであることにより、薬物投与時、標的まで逹することができず、腎臓を介し、体内でいち早く消失してしまうという限界を有する。
【0004】
そのような問題を解決するために、ペプチド薬物の生体膜透過度を上昇させ、口腔または鼻腔を介する吸入でもってペプチド薬物を体内に伝達させる方法、ペプチドのタンパク質加水分解酵素による分解を抑制するために、タンパク質加水分解酵素に敏感な特定アミノ酸配列を変更する方法、組み換え融合技術を利用した生理活性ポリペプチドと、ヒト血清アルブミンまたはヒト免疫グロブリン切片(Fc)との融合タンパク質製造、及び溶解度が高い非ペプチド性重合体をペプチド表面に化学的に付加させる方法のようなところが研究されてきた。
【0005】
非ペプチド性重合体であるポリエチレングリコール(PEG)は、非イオン性、非毒性、生体適合性、及び高い親水性を有する重合体である。該PEGは、化学的に容易に変形が可能であるので、ペプチドやタンパク質薬物に共有結合で付着し、当該薬物の分子量を増大させることにより、腎臓による消失を抑制し、タンパク質分解酵素から薬物を保護することができる。該PEGは、特別な副作用も起こさないので、最近、ペプチド薬物の血中半減期を延長させるための方法として活発に研究されている。
【0006】
PEGは、アメリカ食品医薬局により、「一般的に安全なものであると認定(GRAS)」される物質として承認を受けた。国際特許公開WO06/076471号は、鬱血性心不全症(congestive heart failure)治療剤として使用されるB型ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP:B-type natriuretic peptide)にPEGを結合し、生理活性を持続させることについて記述している。米国特許第6,924,264号は、エクセンディン-4(exendin-4)のリシン(lysine)残基にPEGを結合させ、生体内持続時間を延長させる方法を記述している。
【0007】
改質または変形されていないPEGであるエチレングリコールのホモポリマーには、両方または一方の末端に、ヒドロキシ基がある。薬物と結合させるための用途のために、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体を使用することもできるが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の一末端または両末端のヒドロキシ基を、反応性が高い作用基に変換させたポリエチレングリコール(PEG)誘導体を使用することもできる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体として、PEG-アルデヒド、PEG-アセトアルデヒド、PEG-プロピオンアルデヒドなどを使用することができる。そのようなアルデヒドポリエチレングリコール(PEG)誘導体は、末端に存在するアルデヒド基が、タンパク質のアミノ酸一端と選択的に反応し、ペプチド薬物と化学結合を形成しても連結される。
【0008】
しかしながら、薬物結合に、両末端がいずれもアルデヒド基であるポリエチレングリコール(PEG)誘導体を使用する場合、双方アルデヒド基が、いずれも反応に参与しうるので、所望しない付加生成物の生成や、PEGの過量使用などをもたらし、結果として、収率と純度とに望ましくない影響を及ぼしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、ペプチド医薬品製造に使用されうるポリエチレングリコール誘導体、及びそれを含む組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の一目的は、前述のポリエチレングリコール誘導体を利用する生理活性ポリペプチド結合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によるポリエチレングリコール誘導体化合物は、下記化学式1で表される:
【0012】
化学式1
【化1】
前記化学式1で、nは、30ないし115の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
前記C
1-C
5アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルでもある。
前記R
1及びR
2は、エチルでもある。
nは、50ないし100の自然数でもある。
nは、67ないし83の自然数でもある。
【0013】
一態様によるポリエチレングリコール誘導体組成物は、
下記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体と、を含む:
【0014】
【0015】
【0016】
化学式3
【化4】
nは、30ないし115の自然数でもある。
【0017】
前記組成物において、
数平均分子量2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、少なくとも70面積%と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、15面積%以下と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、10面積%以下と示される。
【0018】
前記組成物において、前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、2,950~3,650の範囲内である。
前記組成物において、前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、3,000~3,200の範囲内である。
【0019】
一態様による生理活性ポリペプチド結合体の製造方法は、
(a)下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体を生理活性ポリペプチドと反応させ、下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド炭素に、前記生理活性ポリペプチドが共有結合で連結された連結体を生成させるペギル化(pegylation)段階と、
(b)前記連結体を酸性の水性条件で処理し、連結体加水分解物を生成する加水分解段階と、
(c)前記連結体加水分解物を免疫グロブリンFc切片またはその誘導体に反応させ、結合体を生成する連結(conjugation)段階と、を含む:
【0020】
化学式1
【化5】
前記化学式1で、nは、50ないし100の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
前記結合体は、前記連結体加水分解物内の前記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体が共有結合で連結されている構造である。
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液凝固因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群のうちからも選択される。
【0021】
前記(a)段階の反応は、還元的アミン化であり、
前記連結体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端窒素、またはリシンのε-アミノ基窒素の原子が、前記化学式1の化合物のアルデヒド炭素原子に共有結合で連結された物質でもある。
前記(a)段階のペギル化反応は、pH3.0~9.0の範囲においてもなされる。
前記(b)段階の加水分解は、pH1.0~5.0の範囲においてもなされる。
前記(c)段階の連結反応は、還元的アミン化でもある。
前記還元的アミン化は、pH5.0~8.5の範囲においてもなされる。
【0022】
前記Fc切片またはその誘導体の配列は、N末端がプロリンでもある。
前記結合体は、前記アセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体のN末端プロリンの窒素の原子が、共有結合で連結されてもいる。
前記Fc切片またはその誘導体は、配列番号2のアミノ酸配列を有しうる。
前記R1と前記R2は、エチルでもある。
nは、67ないし83の自然数でもある。
【発明の効果】
【0023】
一端には、反応性アルデヒド基を有し、他端には、非反応性アセタール基を有するポリエチレングリコール誘導体に、生理活性ポリペプチド、及びFc切片またはその誘導体を結合させることにより、生理活性ポリペプチド結合体を高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一態様による生理活性ポリペプチド結合体の製造方法について説明するフローチャートである。
【
図2A】試験例2で製造されたALD-PEG-DEPのMALDI-TOF質量分析グラフである。
【
図2B】商用のALD-PEG-ALDのMALDI-TOF質量分析グラフである。
【
図3A】試験例2のALD-PEG-DEPの核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルのグラフである。
【
図3B】商用のALD-PEG-ALDの核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルのグラフである。
【
図3C】試験例2のALD-PEG-DEPの核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルのグラフである。
【
図3D】商用のALD-PEG-ALDの核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルのグラフである。
【
図4A】試験例2のALD-PEG-DEPのFT-IRスペクトルである。
【
図4B】商用のALD-PEG-ALDのFT-IRスペクトルである。
【
図5】実施例1の連結体加水分解物と、比較例1の連結体とのアルデヒド基活性度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される全ての技術用語は、取り立てて定義されない以上、本発明の関連分野の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似していたり、同等であったりするものも、本発明の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示されていなくとも、「約」の意味を含むと見なされる。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。
【0026】
本発明の一態様によるポリエチレングリコール誘導体について説明する。
前記ポリエチレングリコール誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)の一端に、アルデヒド基(ALD)を有し、他端に、アセタール基(ACT)を有するポリエチレングリコール誘導体である。前記ポリエチレングリコール誘導体は、下記式1によっても表示される:
【0027】
<式1>
ALD-PEG-ACT
式1で、ALDは、アルデヒド作用基であり、PEGは、ポリエチレングリコール部位であり、ACTは、アセタール基である。
【0028】
式1で、前記ポリエチレングリコール(PEG)部位は、(-O-C2H4)n-O-で示され、このとき、nは、30ないし115、または50ないし100でもある。さらに具体的な例において、nは、67ないし83の範囲でもある。前記ポリエチレングリコール(PEG)は、生理活性ポリペプチド、及びFc切片またはその誘導体と結合し、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増大させ、該生理活性ポリペプチドを体内に運搬する役割を行うことができる。
【0029】
前記アルデヒド基(ALD)は、反応性作用基であり、アルキルアルデヒド、例えば、C2-C6アルキルアルデヒドでもある。前記アルデヒド基(ALD)は、具体的には、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基などでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。前記アルデヒド基(ALD)は、生理活性ポリペプチドと反応し、該生理活性ポリペプチドを、ポリエチレングリコール(PEG)に結合させることができる。または、前記アルデヒド基(ALD)は、Fc切片またはその誘導体と反応し、Fc切片またはその誘導体を、ポリエチレングリコール(PEG)に結合させることができる。
【0030】
前記アセタール基(ACT)は、非反応性作用基であり、生理活性ポリペプチド、あるいはFc切片またはその誘導体と反応しない。従って、アルデヒド基(ALD)の反応を介し、ポリエチレングリコール(PEG)の一端が、生理活性ポリペプチド、あるいはFc切片またはその誘導体に結合される間、ポリエチレングリコール(PEG)の他端は、非反応性であるアセタール基(ACT)によっても保護される。
【0031】
前記アセタール基(ACT)は、-R1CH(OR2)(OR3)によって示され、R1ないしR3は、互いに独立して、C2-C6アルキル基でもある。前記アセタール基(ACT)は、具体的には、1,1-ジエトキシプロピル基、1,1-ジエトキシブチル基などでもあるが、特別にそれら制限されるものではない。
【0032】
一方、前記アセタール基(ACT)は、アルデヒド基に加水分解され、第2のアルデヒド基(ALD)を形成しうる。該第2のアルデヒド基(ALD)は、生理活性ポリペプチド、あるいはFc切片またはその誘導体と反応し、該生理活性ポリペプチド、あるいは該Fc切片またはその誘導体を、ポリエチレングリコール(PEG)の他端に結合させることができる。
【0033】
前記式1のポリエチレングリコール誘導体の具体的な一例は、下記化学式1によっても表示される:
【0034】
化学式1
【化6】
前記化学式1で、R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキル基でもある。このとき、C
1-C
5アルキル基は、線状、分枝状または環状のアルキル基を含むものでもある。該C
1-C
5アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチルでもある。R
1及びR
2は、例えば、エチル基でもある。
【0035】
nは、30ないし115、例えば、50ないし100、例えば、67ないし83の範囲でもある。前記化学式1のアセタール基は、生理活性ペプチド結合体形成過程において加水分解され、第2のアルデヒド基にも変換される。
【0036】
具体的には、化学式1のポリエチレングリコール誘導体は、下記化学式1Aによっても表示される:
【0037】
化学式1A
【化7】
nは、化学式1のnを参照する。
【0038】
本発明の他の一態様によるポリエチレングリコール誘導体組成物について説明する。
前述のポリエチレングリコール誘導体は、不純物を含む組成物を形成しうる。前記不純物は、ポリエチレングリコールの両端がいずれもアセタール基であるポリエチレングリコール誘導体、及び/またはポリエチレングリコールの両端がいずれもアルデヒド基であるポリエチレングリコール誘導体を含むものでもある。前記組成物のうち一端は、アルデヒド基を有し、他端は、アセタール基を有するポリエチレングリコール誘導体の含量比につき、一端は、アルデヒド基を有し、他端は、アセタール基を有するポリエチレングリコール誘導体の純度と見ることができる。そのような不純物の含量は、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で測定された当該ピークの面積%としても計算される。
【0039】
例えば、ポリエチレングリコール誘導体組成物は、
下記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体と、を含むものでもある:
【0040】
【0041】
【0042】
化学式3
【化10】
化学式1A、化学式2及び化学式3でnは、30ないし115の自然数でもある。
【0043】
前記組成物において、
前記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体は、2,950ないし3,650の範囲内にある数平均分子量を有し、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、少なくとも75面積%と示される含量比を有しうる。
前記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体は、2,950ないし3,650の範囲内にある数平均分子量を有し、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、15面積%以下と示される含量比を有しうる。
前記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体は、2,950ないし3,650の範囲内にある数平均分子量を有し、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、10面積%以下と示される含量比を有しうる。
【0044】
前記組成物において、前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定された値でもある。
前記組成物において、前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、3,000~3,200の範囲内でもある。
化合物の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィによっても測定される。
【0045】
本発明の他の一態様による生理活性ポリペプチド結合体の製造方法について説明する。
図1は、一態様による生理活性ポリペプチド結合体の製造方法について説明するフローチャートである。
図1を参照すれば、前記生理活性ポリペプチド結合体の製造方法は、まず、一端に、アルデヒド作用基を有し、他端に、アセタール作用基を有するポリエチレングリコール(PEG)を含むポリエチレングリコール誘導体を提供する(S110)。前記ポリエチレングリコール誘導体は、前述の前述の式1、化学式1または化学式1Aによって示される化合物であり、前述の式1、化学式1または化学式1Aの化合物に係わる説明を参照する。
【0046】
次に、前記ポリエチレングリコール誘導体を生理活性ポリペプチドと反応させる(S120)。前記反応により、ポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド炭素に、前記生理活性ポリペプチドが共有結合で連結された連結体を形成しうる。そのような連結体形成反応は、ペギル化反応(pegylation reaction)でもある。該ペギル化反応は、還元的アミン化反応でもある。前記ペギル化反応は、pH3.0~9.0の範囲、例えば、pH5.0~9.0の範囲においてもなされる。
【0047】
前記生理活性ポリペプチドは、例えば、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液凝固因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体を含むものでもある。例えば、該生理活性ポリペプチドは、エクセンディン-4またはイミダゾ-アセチルエクセンディン-4(imidazoacetyl exendin-4)でもある。例えば、前記連結体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端窒素、またはリシンのε-アミノ基窒素の原子が、前記化学式1の化合物のアルデヒド炭素原子に共有結合で連結された物質でもある。
【0048】
次に、一端が、前記生理活性ポリペプチドと結合された前記ポリエチレングリコール誘導体の他端の前記アセタール基を、アルデヒド基に変換させることができる(S130)。
例えば、加水分解により、アセタール基をアルデヒド基に変換させることができる。このとき、該加水分解は、例えば、酸性の水性条件においてもなされる。前記加水分解は、pH1.0~5.0の範囲、例えば、pH2.0~5.0の範囲においてもなされる。前記化学式1のアセタール基のR1及び/またはR2がプロピル基である場合、加水分解されて生成されるアルデヒド基は、プロピオンアルデヒド基でもある。
【0049】
次に、前記ポリエチレングリコール誘導体の変換されたアルデヒド基を、Fc切片またはその誘導体と反応させることができる(S140)。前記反応により、前記ポリエチレングリコール誘導体の他端が、Fc切片またはその誘導体と連結(conjugation)されうる。このとき、該Fc切片またはその誘導体は、アセタール基の炭素に由来する炭素原子に共有結合によっても連結される。
【0050】
例えば、ポリエチレングリコール誘導体が、前記化学式1で表されるポリエチレングリコール誘導体である場合、該ポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド基を、まず、生理活性ポリペプチドと反応させ、該ポリエチレングリコール誘導体の一端に、生理活性ポリペプチドを結合させることができる。このとき、該生理活性ポリペプチドが、アルデヒド基とペギル化反応されうる。該ペギル化反応には、例えば、還元的アミン化反応を利用することができる。次に、そのようにして得られたポリエチレングリコール誘導体・生理活性ポリペプチド連結体において、反応せずに残っていた作用基のアセタール基(ACT)を加水分解し、反応性を有する第2のアルデヒド基に変換させることができる。該ポリエチレングリコール誘導体・生理活性ポリペプチド連結体の変換された第2のアルデヒド基を、Fc切片またはその誘導体と反応させることができる。該反応は、連結反応(conjugation reaction)であり、例えば、還元的アミン化反応を利用することができる。前記還元的アミン化は、pH5.0~8.5の範囲においてもなされる。該反応により、ポリエチレングリコール誘導体・生理活性ポリペプチド連結体の他端に、Fc切片またはその誘導体を結合させることができる。そのような過程により、ポリエチレングリコール誘導体の一端は、生理活性ポリペプチドと連結され、他端は、Fc切片またはその誘導体と連結された生理活性ポリペプチド結合体を形成しうる。前記結合体は、例えば、ポリエチレングリコール誘導体のアセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体のN末端プロリンの窒素の原子が、共有結合で連結されている結合体でもある。アセチル炭素は、アセチル基において、-OR基が連結された炭素である。
【0051】
本発明の具現例によるポリエチレングリコール誘導体を利用した生理活性ポリペプチド結合体の製造方法は、不純物または類縁物質(related substance)の発生を抑制する一方、収率が高いという長所がある。
末端に作用基を含むポリエチレングリコール誘導体に、生理活性ポリペプチドを連結させる段階(ペギル化)において、副産物として、1単位の生理活性ポリペプチドに、2単位以上のポリエチレングリコール誘導体が連結された類縁物質中間体が不可避的に生成されてしまう。該ポリエチレングリコール誘導体の分子量が大きくなければ、一般的なクロマトグラフィ方法だけでは、そのような類縁物質中間体を、後続連結反応段階に入る前に、完璧に精製して濾し出すことが容易ではない。
【0052】
両末端がいずれもアルデヒド作用基を有する従来技術のポリエチレングリコール誘導体を使用する場合、そのように残留する類縁物質中間体が、後続連結段階において、Fc切片と反応し、多重体(二量体、三量体など)形態の不純物を発生させてしまう。また、従来技術のポリエチレングリコール誘導体を利用した製造においては、ペギル化段階において、生理活性ポリペプチド・ポリエチレングリコール誘導体・生理活性ポリペプチドのようなサンドイッチ構造のポリエチレングリコール連結体も生成され、そのような反応副産物により、収率が低下するという短所があった。
【0053】
両末端がいずれもアルデヒド作用基を有する従来技術のポリエチレングリコール誘導体を使用する場合もまた、アルデヒド基の高い反応性のために、アルデヒド基が反応標的以外の物質とまず反応して消失されていまう。また、該ポリエチレングリコール誘導体の製造過程において、末端基の変質された不純物が生成され、該ポリエチレングリコール誘導体自体が、不純物をある程度含むものでもある。そのようなアルデヒド基の活性消失や変質により、一端のアルデヒド基がヒドロキシ基やエーテル基などに変換され、単一アルデヒド基を有する類縁物質がペギル化反応を行う場合、それに対応する構造のポリエチレングリコール連結体が生成されてしまう。そのようなポリエチレングリコール連結体には、後続連結反応により、Fc切片またはその誘導体と反応することができるアルデヒド基がないために、最終結合体に至らない。従って、そのような単一アルデヒド基を有する類縁物質の発生は、従来技術の結合体の製造方法において、不純物を生じさせ、収率を落とす原因にもなる。
【0054】
本発明の具現例によるポリエチレングリコール誘導体を、生理活性ポリペプチド結合体の製造に使用する場合、そのような不純物発生を基本的に予防することができる。従来技術のポリエチレングリコール誘導体と異なり、本発明の具現例によるポリエチレングリコール誘導体は、一端にだけアルデヒド基を含むので、基本的に多重体を形成することができない。また、本発明の具現例によるポリエチレングリコール誘導体を利用した製造方法においては、ペギル化前、アルデヒド基が消失したり、類縁物質に変わったりすることになれば、ペギル化生成物である生理活性ポリペプチド・ポリエチレングリコール連結体を始めから生成することができない。従って、類縁物質発生を抑制することができ、精製が簡便になり、それは、ペギル化段階の収率向上につながる。さらには、後述するように、ペギル化後の連結反応段階の効率も、従来技術より高く、精製工程における純度も、改善されるという効果がある。
【0055】
前述の利点と係わり、本発明の製法と従来技術の製法との収率を概括的に比較する。まず、本発明の具体的な実施形態においては、一般的に、ペギル化産物である生理活性ポリペプチド・ポリエチレングリコール連結体のアルデヒド活性度(アルデヒド基が連結反応直前まで維持される程度)が80~95%レベルである。それは、従来技術のポリエチレングリコール誘導体を利用した連結体のアルデヒド活性度である60~75%と比較し、はるかに高い。また、本発明の製造方法においては、連結段階の収率も向上されるために、本発明の具体的な実施形態として、生理活性ポリペプチド結合体の最終収率は、一般的に、従来技術の製造方法の約1.2倍ないし約1.7倍のレベルで向上される。
【0056】
以下において、本発明の生理活性ポリペプチド結合体の製造方法につき、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0057】
まず、エチレングリコール反復部の両末端を、それぞれプロピルアルデヒド基と3-ジエトキシプロピル基とで改質されたポリエチレングリコール誘導体(ALD-PEG-DEP)を製造した。
【0058】
●試験例1:ALD-PEG-DEPの製造1
(a)PEG-Msの製造
【化11】
【0059】
窒素大気下の反応器において、ポリエチレングリコール(PEG)(数平均分子量3,400)100gを、ジクロロメタン(CH2Cl2)300mLに溶解させた溶液を、5℃に冷却させた。該溶液に、トリエチルアミン(TEA)23.0mLを加え、5℃を維持し、メタンスルホニルクロリド(MsCl)12.6mLを加えた。この反応液を、5℃で2.5時間撹拌した後、蒸溜水300mLを加え、10分間撹拌した後、有機層が分離させた。
【0060】
水層にジクロロメタン300mLを加え、有機層をさらに抽出した後、すでに分離させた有機層に合わせた。合わせられた有機層を蒸溜水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した。濾液を減圧濃縮した後、その濃縮液をジクロロメタン100mLに溶解させ、メチルt-ブチルエーテル1,500mLに30分間滴加した。反応液を室温で1時間撹拌した後、固体を濾過し、メチルt-ブチルエーテルで固体を洗浄した後、室温で窒素乾燥させ、目的化合物であるPEG-Ms(mesylate)97g(収率:92.6%)を得た。
【0061】
(b)PEG-DEPの製造
【化12】
窒素大気下において、第1反応器に、3,3-ジエトキシ-1-プロパノール1.8mLとトルエン40mLとを投入した。カリウムt-ブトキシド(t-BuOK)1.4gを投入し、50℃に昇温させて1時間撹拌し、反応液を室温に冷却させた。
【0062】
窒素大気下において、第2反応器に、前述のように製造されたPEG-Ms 10gと、トルエン40mLとを投入した。そこに、活性化された第1反応器の溶液を、1時間徐々に滴加した。室温で2時間撹拌し、反応が完結された後、反応物に、飽和された塩化アンモニウム水溶液を添加した。該反応物を5分間撹拌した後、ジクロロメタンを添加し、有機層を抽出した。水層にジクロロメタンを添加し、有機層をさらに抽出した。該有機層を集めて減圧濃縮し、ジクロロメタン10mLに完全に溶かした後、メチルt-ブチルエーテルを滴加して結晶化させた。室温で2時間撹拌した後、結晶を濾過し、メチルt-ブチルエーテルで洗浄した。該結晶を室温で窒素乾燥させ、目的化合物であるPEG-ジエチルアセタル(PEG-DEP)9.3g(収率:90.0%)を得た。
【0063】
(c)ALD-PEG-DEPの製造
【化13】
反応器に、0.1N酢酸360mLとPEG-DEP 60gとを投入して溶解させた後、20℃で4時間撹拌した。その溶液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液と蒸溜水とを投入した後、5分間撹拌した。その反応液に、ジクロロメタンとヘキサンとを投入し、10分間撹拌した後、水層が分離させた。該水層に、ジクロロメタンとヘキサンとを投入し、10分間撹拌した後、有機層が分離させた。該有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した後、減圧濃縮した。その濃縮液に、ジクロロメタンを加えて溶解させた後、メチルt-ブチルエーテルを滴加して結晶化させた。室温で30分間撹拌した後、結晶を濾過し、メチルt-ブチルエーテルで洗浄した。該結晶を室温で窒素乾燥させ、目的化合物を得た。該目的化合物は、3.4kDaエチレングリコール反復部の両末端が、それぞれプロピルアルデヒド基と3-ジエトキシプロピル基とで改質されたポリエチレングリコール誘導体である3.4kDa ALD-PEG-DEPであり、生成量は、16.0g(収率:26.7%)であった。ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した数、平均分子量は、3,111であった。
【0064】
●試験例2:ALD-PEG-DEPの製造2
【化14】
(a)PEG-Msの製造
試験例1のPEG-Msの製造方法と同一方法で、PEG-Msを製造した。
【0065】
(b)ALD-PEG-DEPの製造
窒素大気下において、第1反応器に、3,3-ジエトキシ-1-プロパノール45mLとトルエン400mLとを投入した。カリウムt-ペントキシド(t-PeOK)15.7gを投入し、50℃に昇温させ、1時間撹拌した。反応液を室温に冷却させた。
窒素大気下において、第2反応器に、前述のように製造されたPEG-Ms 100gと、トルエン400mLとを投入した。そこに、活性化された第1反応器の溶液を、1時間徐々に滴加した。室温で2.5時間撹拌し、反応が完結された後、反応物に蒸溜水を添加した。該反応物を5分間撹拌した後、水層が分離させた。該水層に、ジクロロメタン、トルエンを添加して有機層を抽出した。該有機層に蒸溜水を添加し、5分間撹拌した後、水層をさらに分離させた。
【0066】
分離された水層に酢酸13mLを投入し、常温で2.5時間撹拌した。そこに、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を投入した後、5分間撹拌した。第3反応器に、ジクロロメタンとヘキサンとを混合させた後、前述の反応液を添加した。その混合液を10分撹拌した後、水層が分離させた。分離された水層に、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、5分間撹拌した。第3反応器に、ジクロロメタンとヘキサンとを混合させた後、前述の反応液を添加し、10分撹拌した後、有機層が分離させた。分離された有機層に蒸溜水を投入して撹拌した後、有機層が分離させた。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した後、減圧濃縮した。その濃縮液にジクロロメタンを加えて溶解させた後、メチルt-ブチルエーテルを滴加して結晶化させた。室温で30分間撹拌した後、結晶を濾過し、メチルt-ブチルエーテルで洗浄した。該結晶を室温で窒素乾燥させ、目的化合物である3.4kDa ALD-PEG-DEP 10.1g(収率:10.1%)を得た。ゲル透過クロマトグラフィで測定した数平均分子量は、3,163であった。
【0067】
●分析例:ALD-PEG-DEPとALD-PEG-ALDとの特性比較
本発明の具現例による方法によって製造されたポリエチレングリコール誘導体であるALD-PEG-DEPと、両末端がプロピルアルデヒド基で改質された、商用のポリエチレングリコール誘導体であるALD-PEG-ALD(韓国・韓米精密化学社製)(、エチレングリコール反復部の化学式量が3.4kDaである)の特性を測定して比較した。そのために、MALDI-TOF質量分析、核磁気共鳴分析(1H NMR、13C NMR)及びフーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)を遂行した。
【0068】
図2A及び
図2Bは、それぞれ試験例2で製造されたALD-PEG-DEP、及び商用のALD-PEG-ALDのMALDI-TOF質量分析グラフである。以下の表1は、得られた、試験例2で製造されたALD-PEG-DEP、及び商用のALD-PEG-ALDの分子量を比較した表である。
【0069】
【0070】
図2A、
図2B及び表1を参照すれば、試験例2のALD-PEG-DEPと、市販中のALD-PEG-ALDとの間に、有意な分子量差がないことが分かる。
図3A及び
図3Bは、それぞれ試験例2のALD-PEG-DEP、及び商用のALD-PEG-ALDの核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルのグラフである。
図3A及び
図3Bの
1H NMRスペクトルにおいて、ジエトキシ基と符合するピーク(三重線である4.6ppm近辺の(b)、及び1.2ppm近辺の(i)、多重線である1.8ppm近辺の(h)を介し、試験例のALD-PEG-DEPが、アセタール末端基を有するということを確認することができる。なお、
図2Bの
1H NMRスペクトルにおいては、ジエトキシ基と符合するピークが示されていない。
【0071】
図3C及び
図3Dは、それぞれ試験例2のALD-PEG-DEP、及び商用のALD-PEG-ALDの核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルのグラフである。
図3Cの
13C NMRスペクトルにおいて、δ 15ppm(i),62ppm(f)において、エチル基と符合するピークと、δ 101ppm(b)において、二次炭素のピークとが観察された。
図3Cのグラフにおいては、分子構造上、非対称である構造を有するALD-PEG-DEPのピークが観察され、それと対比し、
図3Dのグラフにおいては、分子構造上対称である構造をなすALD-PEG-ALDのピークが観察された(ALD-PEG-DEPの(e),(f)ピーク対ALD-PEG-ALD(c)ピーク、ALD-PEG-DEPの(h),(i)ピーク対ALD-PEG-ALDの(d)ピーク)。
【0072】
図4A及び
図4Bは、それぞれ試験例2のALD-PEG-DEP、及び商用のALD-PEG-ALDのFT-IRスペクトルである。
図4A及び
図4BのFT-IRスペクトルが、類似したピークパターンを有することから、試験例2のALD-PEG-DEPと、商用のALD-PEG-ALDとが類似した高分子骨格を有していることが分かる。
【0073】
ALD-PEG-DEPを含む該ポリエチレングリコール誘導体組成物の純度を把握するために、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析した。カラムとしては、オクチルシリル化シリカゲルで充填されたカラム(内径4.6mm×長さ250mm(5.0μm))を使用し、精製水及びアセト二トリルを移動相にし、逆相クロマトグラフィ法を利用して分析した。ポリエチレングリコール誘導体の含量比を、高性能液体クロマトグラフィで測定された当該ピークの面積の比率として計算した。
【0074】
●実施例1:ALD-PEG-DEPを利用したCA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化15】
【0075】
生理活性ポリペプチドとして、ヒトグルカゴン類似ペプチド-2(GLP-2)の誘導体である配列番号1のポリペプチドCA GLP-2(RK)を使用し、生理活性ポリペプチド結合体を製造した。
配列番号1のポリペプチドCA GLP-2(RK)のアミノ酸配列は、以下の通りである:
(4-imidazoacetyl-Gly-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Arg-Ile-Thr-Asp-Lys)
【0076】
(1)CA GLP-2(RK)-PEG-DEP結合体の製造
3.4kDa ALD-PEG-DEPのアルデヒド末端に、CA GLP-2(RK)の34番リシン残基を連結させ、CA GLP-2(RK)-PEG-DEPを製造した。このとき、CA GLP-2(RK)とALD-PEG-ALDとのモル比を1:8にし、CA GLP-2(RK)ペプチドの濃度を10mg/mLにし、常温で約25時間反応させた。このとき、反応液としては、50mMトリエタノールアミン(pH8.0)に、還元剤として100mMシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)を含む溶液を使用した。反応終結後、反応混合物を、20mMビストリス(Bis-Tris)緩衝液(pH6.2)と、NaCl濃度勾配を利用した陰イオン交換クロマトグラフィとを利用して精製することにより、CA GLP-2(RK)-PEG-DEPを分離させた。精製収率は、59.6%であり、SE-HPLCとRP-HPLCと分析結果純度は、それぞれ99%、99%であった。
【0077】
(2)CA GLP-2(RK)-PEG-ALD結合体の製造
精製されたCA GLP-2(RK)-PEG-DEPのジエトキシ作用基(DEP)を加水分解し、アルデヒド基(ALD)に変換するために、20mMクエン酸ナトリウム(pH2.0)緩衝液を利用し、pHを低くした後、次の工程のために、20mMビストリス(pH6.5)緩衝液を利用し、緩衝液を交換し、CA GLP-2(RK)-PEG-ALDを得た。
【0078】
(3)CA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
次に、そのようにして得られたCA GLP-2(RK)-PEG-ALDと、免疫グロブリンFc切片(配列番号2)のモル比を1:2にし、全体タンパク質(CA GLP-2(RK)及び免疫グロブリンFc切片)の濃度を30mg/mLにし、室温で14~16時間連結反応(conjugation)を進めた。このとき、反応液に、20mMビストリス(pH6.2)及びエタノール、還元剤として、30mM NaBH3CNを添加した。反応が終結された後、その反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)と陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、CA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFcを精製した。精製収率は、70.2%であり、SE-HPLCとRP-HPLCとの分析結果純度は、それぞれ98.1%、97%であった。
【0079】
配列番号2の免疫グロブリンFcのアミノ酸配列は、以下の通りである:
(Pro-Ser-Cys-Pro-Ala-Pro-Glu-Phe-Leu-Gly-Gly-Pro-Ser-Val-Phe-Leu-Phe-Pro-Pro-Lys-Pro-Lys-Asp-Thr-Leu-Met-Ile-Ser-Arg-Thr-Pro-Glu-Val-Thr-Cys-Val-Val-Val-Asp-Val-Ser-Gln-Glu-Asp-Pro-Glu-Val-Gln-Phe-Asn-Trp-Tyr-Val-Asp-Gly-Val-Glu-Val-His-Asn-Ala-Lys-Thr-Lys-Pro-Arg-Glu-Glu-Gln-Phe-Asn-Ser-Thr-Tyr-Arg-Val-Val-Ser-Val-Leu-Thr-Val-Leu-His-Gln-Asp-Trp-Leu-Asn-Gly-Lys-Glu-Tyr-Lys-Cys-Lys-Val-Ser-Asn-Lys-Gly-Leu-Pro-Ser-Ser-Ile-Glu-Lys-Thr-Ile-Ser-Lys-Ala-Lys-Gly-Gln-Pro-Arg-Glu-Pro-Gln-Val-Tyr-Thr-Leu-Pro-Pro-Ser-Gln-Glu-Glu-Met-Thr-Lys-Asn-Gln-Val-Ser-Leu-Thr-Cys-Leu-Val-Lys-Gly-Phe-Tyr-Pro-Ser-Asp-Ile-Ala-Val-Glu-Trp-Glu-Ser-Asn-Gly-Gln-Pro-Glu-Asn-Asn-Tyr-Lys-Thr-Thr-Pro-Pro-Val-Leu-Asp-Ser-Asp-Gly-Ser-Phe-Phe-Leu-Tyr-Ser-Arg-Leu-Thr-Val-Asp-Lys-Ser-Arg-Trp-Gln-Glu-Gly-Asn-Val-Phe-Ser-Cys-Ser-Val-Met-His-Glu-Ala-Leu-His-Asn-His-Tyr-Thr-Gln-Lys-Ser-Leu-Ser-Leu-Ser-Leu-Gly-Lys)
【0080】
●比較例1:ALD-PEG-ALDを利用したCA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化16】
(1)CA GLP-2(RK)-PEG-ALD結合体の製造
3.4kDa ALD-PEG-ALD(PGA(韓国・韓米精密化学社製))を、CA GLP-2(RK)の34番リシン残基にペギル化させるために、CA GLP-2(RK)と3.4kDa ALD-PEG-ALDとのモル比を1:8にし、CA GLP-2(RK)の濃度を12mg/mLにし、常温で約2~4時間反応させた。このとき、反応液としての、50mMトリエタノールアミン(pH8.0)及びイソプロパノールに、還元剤として、200mM 2-ピコリンボラン複合体を添加した。反応終結後、反応液を20mMビストリス(pH6.2)緩衝液と、塩化ナトリウム濃度勾配を利用した陰イオン交換カラムとに適用し、CA GLP-2(RK)-PEG-ALDを精製した。精製収率は、55.3%であり、SE-HPLCとRP-HPLCとの分析結果純度は、それぞれ90%、87%であった(表1)。
【0081】
(2)CA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
次に、CA GLP-2(RK)-PEG-ALDと免疫グロブリンFc切片(配列番号2)とのモル比を1:2にし、免疫グロブリンFc切片濃度を30mg/mLにし、室温で14~16時間反応させた。このとき、反応液としての、20mMビストリス(pH6.2)とイソプロパノールとに、還元剤として、20mM2-ピコリンボラン複合体を含む溶液を使用した。反応終結後、その反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)と陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、CA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFcを精製した。精製収率は、67.7%であり、SE-HPLCとRP-HPLCとの分析結果純度は、それぞれ98.6%と96.1%とであった。
【0082】
●分析例:ポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド基活性油脂
生理活性ポリペプチド結合体製造方法において、Fc切片との連結反応段階直前まで、アルデヒド基が残留する程度(活性度)につき、本発明のポリエチレングリコール誘導体を利用した実施例と、従来技術の、両末端アルデヒド基ポリエチレングリコール(PEG)誘導体を利用した比較例とを比較した。
【0083】
実施例1の結合体製造工程で使用した生理活性ポリペプチドであるGLP-2誘導体につき、実施例1に記載されたペギル化、クロマトグラフィ精製及び加水分解の段階まで遂行し、連結体加水分解物を得た。同じ生理活性ポリペプチドにつき、比較例1に記載されたペギル化及びクロマトグラフィ精製まで遂行し、対応する連結体を得た。
【0084】
次に、前記連結体加水分解物及び前記連結体を試薬と反応させ、誘導体を形成し、誘導体生成程度を、紫外線・可視光線分光光度法によって定量することにより、アルデヒド基の活性度を測定し、それを
図5に示した。
図5を参照すれば、本発明によるALD-PEG-DEPを利用して得られた連結体加水分解物のアルデヒド基活性度は、87.2%であり、従来のALD-PEG-ALDを利用して得られた連結体のアルデヒド基活性度69.8%に比べ、かなり高い比率でもって、アルデヒド基が維持されていることを確認した。
【0085】
そのように、本発明の実施例によるポリエチレングリコール誘導体化合物を利用した生理活性ポリペプチド結合体の製造方法において、アルデヒド末端の活性をさらに高く維持することができる。さらには、その後工程において、従来技術の製法と同一精製工程を使用しても、本発明の製造方法の連結(conjugation)反応段階の製造収率が、従来技術より向上された。本発明の実施例の場合、連結反応製造収率は、50.8%であり、従来のALD-PEG-ALD使用時の40.5%より25%以上上昇された。
CA GLP-2(RK)-PEG-免疫グロブリンFc結合体製造において、本発明の実施例1における全体的収率は、30.3%であり、従来技術の比較例1の22.4%に比べ、約35%向上された結果を示した。
【0086】
●実施例2:ALD-PEG-DEPを利用したCA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化17】
(1)CA EXD4-PEG-DEP結合体の製造
生理活性ポリペプチドとして、エクセンディン-4の誘導体であるイミダゾアセチル-エクセンディン-4(imidazoacetyl-exendin-4(韓国・韓米精密化学社製)(以下、CA EXD4と表示(配列番号3))を使用し、生理活性ポリペプチド結合体を製造した。
配列番号3のCA EXD4のアミノ酸配列は、以下の通りである:
(4-imidazoacetyl-Gly -Glu -Gly -Thr -Phe -Thr -Ser -Asp -Leu -Ser -Lys -Gln -Met -Glu -Glu -Glu -Ala -Val -Arg -Leu -Phe -Ile -Glu -Trp -Leu -Lys -Asn -Gly -Gly -Pro -Ser -Ser -Gly -Ala -Pro -Pro -Pro -Ser -NH
2)
【0087】
試験例1で製造された3.4kDa ALD-PEG-DEPを、CA EXD4のリシン27(Lys27)位置にペギル化させるために、CA EXD4:ALD-PEG-DEPのモル比を1:3にし、CA EXD4の濃度を12g/Lにし、8±2℃で約16時間反応させた。具体的には、該反応は、0.1Mビス-トリス(pH7.9)、45%(v/v)イソプロパノール下でなされ、還元剤として、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(SCB:sodium cyanoborohydride(NaCNBH3))を50mMになるように添加し、反応させた。
【0088】
反応終結後、クエン酸ナトリウムとエタノールとが含まれた緩衝溶液と、KCl線形濃度勾配とを適用し、SOURCE 15Sカラム(Cytiva)を使用し、反応液からCA EXD4(Lys27)-PEG-DEP結合体を分離させて精製した。
投入されたCA EXD4対比で、CA EXD4(Lys27)-PEG-DEPの収率は、50%ほどと確認された。
【0089】
(2)CA EXD4-PEG-ALD結合体の製造
CA EXD4(Lys27)-PEG-DEP結合体のジエトキシプロピル(DEP)作用基を、プロピルアルデヒド基(ALD)に加水分解させるために、酸性溶液で緩衝液交換を行った。具体的には、CA EXD4(Lys27)-PEG-DEPを水に希釈させた後、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)方法を介し、25mM塩酸でもって、緩衝液交換及び濃縮を行い、最終回収濃度が約0.8g/L以上になるように、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体を分離させた。末端作用基の変換程度を、RP-HPLC分析法を利用して分析した結果、ジエトキシプロピル基がプロピルアルデヒド基に95%以上変換されたことを確認した。
【0090】
(3)CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体を製造するために、(2)で得られたCA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体と、免疫グロブリンFc(配列番号2)とを連結させた。このとき、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体と免疫グロブリンFcとのモール比が1:2になるようにし、全体タンパク質(CA EXD4及び免疫グロブリンFc)の濃度を10g/Lにし、室温で2時間反応させた。このとき、反応溶液としては、ビス-トリスと、還元剤であるSCBとを含む溶液を使用した。
【0091】
反応が終結された後、該反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィと陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体を得た。
投入されたCA EXD4生理活性ポリペプチド対比で、CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の収率は、50%ないし60%ほどと確認された。
【0092】
●比較例2:ALD-PEG-ALDを利用したCA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化18】
(1)CA EXD4-PEG-ALD結合体の製造
3.4kDa ALD-PEG-ALD(韓国・韓米精密化学社製)を、エクセンディン-4の誘導体であるCA EXD4のLys27位置にペギル化させるために、CA EXD4:PEGのモル比を1:5にし、CA EXD4の濃度を18g/Lにし、8±2℃で約4時間反応させた。このとき、該反応は、0.1M HEPES緩衝溶液(pH7.5)、45%イソプロパノールによってなり、還元剤として、SCB(NaCNBH
3)を、50mMになるように添加して反応させた。
【0093】
反応が終結された後、クエン酸ナトリウム、エタノールが含まれた緩衝液と、KCl線形濃度勾配とを適用し、SOURCE 15Sカラム(Cytiva)を使用し、反応液から、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体を分離させて精製した。
その後、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体の精製液を水に希釈させた後、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)方法を介し、10mMリン酸カリウム溶液でもって、緩衝液交換及び濃縮し、最終回収濃度が約0.6g/L以上になるようにした。
【0094】
投入されたCA EXD4生理活性ポリペプチド対比で、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体の収率は、35%ないし43%と確認された。
【0095】
(2)CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体を製造するために、(1)で得られたCA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体と、免疫グロブリンFc(配列番号2)とを連結させた。このとき、CA EXD4(Lys27)-PEG-ALD結合体と免疫グロブリンFcとのモル比が1:2になるようにし、全体タンパク質(CA EXD4及び免疫グロブリンFc)の濃度を10g/Lにし、室温で16時間反応させた。このとき、反応液としては、HEPESと、エタノール還元剤としてのSCBとを含む溶液を使用した。
反応が終結された後、該反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィと陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、CA EXD4(Lys27)-PEG-免疫グロブリンFc結合体を得た。投入生理活性ポリペプチド対比で、収率は、35%ないし40%と確認された。
CA -EXD4-PEG-免疫グロブリンFc製造の全体的収率を比較したとき、実施例2の収率は、比較例2の収率より向上された結果を示した。
【0096】
●実施例3:ALD-PEG-DEPを利用したGCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化19】
(1)GCSF-PEG-DEPの製造
生理活性ポリペプチドとしてヒト顆粒球コロニー成長因子(GCSF:granulocyte colony stimulating factor)の誘導体(配列番号4)を利用し、生理活性ポリペプチド結合体を製造した。
配列番号4のGCSF誘導体のアミノ酸配列は、以下の通りである:
(TPLGPASSLP QSFLLKSLEQ VRKIQGDGAA LQEKLCATYK LCHPEELVLL GHSLGIPWAP LSSCSSQALQ LAGCLSQLHS GLFLYQGLLQ ALEGISPELG PTLDTLQLDV ADFATTIWQQ MEELGMAPAL QPTQGAMPAF ASAFQRRAGG VLVASHLQSF LEVSYRVLRH LAQP)
試験例1で製造された3.4kDa ALD-PEG-DEPを、前記GCSF誘導体のN末端のスレオニン位置にペギル化させるために、GCSF誘導体:ALD-PEG-DEPのモル比を1:4にし、GCSF誘導体の濃度を8g/Lにし、6±4℃で8時間反応させた。具体的には、該反応は、0.1Mリン酸カリウム(pH6.0)下でなされ、還元剤として、SCBを50mMになるように添加して反応させた。
【0097】
結合反応以後、GCSF誘導体-PEG-DEPを、SP-HPカラム(陽イオン交換クロマトグラフィ)(Cytiva)を利用して精製した。このとき、酢酸ナトリウム緩衝液を使用し、塩化ナトリウム濃度勾配を利用して精製した。
投入されたGCSF誘導体対比で、GCSF-PEG-DEPの収率は、61.2%と確認された。
【0098】
(2)DEP作用基の加水分解
GCSF誘導体-PEG-DEPのジエトキシプロピル(DEP)作用基を、プロピルアルデヒド基(ALD)に加水分解させるために、酸性溶液で緩衝液交換を行った。具体的には、精製されたGCSF-PEG-DEPを、分離膜限外/透析濾過(UF/DF)方法を介し、緩衝液のpHを2.0に低くさせた後、常温で16時間保管した。
【0099】
(3)GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
GCSF-PEG-免疫グロブリンFc結合体を製造するために、(2)で得られたGCSF誘導体-PEG-ALDと、免疫グロブリンFc(配列番号2)とを連結させた。このとき、GCSF誘導体-PEG-ALD連結体と免疫グロブリンFcとのモル比が1:4になるようにし、全体タンパク質(GCSF及び免疫グロブリンFc)の濃度を50g/Lにし、6±4℃で16時間反応させた。具体的には、該反応は、0.1Mリン酸カリウム(pH6.0)下でなされ、還元剤として、SCBを20mMになるように添加して反応させた。
反応が終結された後、該反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィと陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体を得た。
投入されたGCSF誘導体-PEG-DEP対比で、GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体の収率は、50.2%と確認された。
【0100】
●比較例3:ALD-PEG-ALDを利用したGCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
【化20】
(1)GCSF-PEG-ALDの製造
3.4kDa ALD-PEG-ALD(NOF)を、GCSF誘導体(配列番号4)のN末端スレオニン位置にペギル化させるために、GCSF誘導体:ALD-PEG-ALDのモル比を1:10にし、GCSF誘導体の濃度を5g/Lにし、6±4℃で1.5時間反応させた。具体的には、該反応は、0.1Mリン酸カリウム(pH6.0)下でなされ、還元剤として、SCBを20mMになるように添加して反応させた。
結合反応以後、GCSF誘導体-PEG-ALD連結体を、SP-HPカラム(Cytiva、陽イオン交換クロマトグラフィ)を利用して精製した。このとき、酢酸ナトリウム緩衝液を使用し、塩化ナトリウム濃度勾配を利用して精製した。
投入GCSF誘導体対比で、GCSF誘導体-PEG-ALD連結体の収率は、56.5%と確認された。
【0101】
(2)GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体の製造
GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体を製造するために、GCSF誘導体-PEG-ALDと免疫グロブリンFc(配列番号2)とを連結させた。このとき、GCSF-PEG-ALD連結体と免疫グロブリンFcとのモール比が1:4になるようにし、全体タンパク質(GCSF誘導体及び免疫グロブリンFc)の濃度を50g/Lにし、6±4℃で16時間反応させた。具体的には、該反応は、0.1Mリン酸カリウム(pH6.0)下でなされ、還元剤として、SCBを20mMになるように添加して反応させた。
反応が終結された後、該反応混合物から、疎水性相互作用クロマトグラフィと陰イオン交換クロマトグラフィとを利用し、GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体を得た。
投入されたGCSF誘導体対比で、GCSF誘導体-PEG-DEP結合体の収率は、39.9%と確認された。
GCSF誘導体-PEG-免疫グロブリンFc結合体製造の全体的収率を比較したとき、本発明製法による実施例3は、従来技術の比較例3より1.36倍向上された結果を示した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、ポリエチレングリコール誘導体化合物:
化学式1
【化1】
前記化学式1で、nは、30ないし115の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
【請求項2】
前記C
1-C
5アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである、請求項1に記載のポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項3】
前記R
1及び前記R
2は、エチルである、請求項1に記載のポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項4】
nは、50ないし100の自然数である、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の
ポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項5】
nは、67ないし83の自然数である、請求項4に記載の
ポリエチレングリコール誘導体化合物。
【請求項6】
ポリエチレングリコール誘導体組成物であり、
下記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体と、
下記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体と、を含み、
化学式1A
【化2】
化学式2
【化3】
化学式3
【化4】
前記組成物において、
数平均分子量2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式1Aで表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、少なくとも70面積%と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式2で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、15面積%以下と示され、
数平均分子量範囲2,950ないし3,650の範囲内にある前記化学式3で表されるポリエチレングリコール誘導体の含量比が、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)基準で、10面積%以下と示される、ポリエチレングリコール誘導体組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、2,950~3,650の範囲にある、請求項6に記載の
ポリエチレングリコール誘導体組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定したとき、3,000~3,200の範囲にある、請求項7に記載の
ポリエチレングリコール誘導体組成物。
【請求項9】
(a)下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体を生理活性ポリペプチドと反応させ、下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアルデヒド炭素に、前記生理活性ポリペプチドが共有結合で連結された連結体を生成させるペギル化(pegylation)段階と、
(b)前記連結体を酸性の水性条件で処理し、連結体加水分解物を生成する加水分解段階と、
(c)前記連結体加水分解物を免疫グロブリンFc切片またはその誘導体に反応させ、結合体を生成する連結(conjugation)段階と、を含み、
前記結合体は、前記連結体加水分解物内の下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体のアセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体が共有結合で連結されている構造である、生理活性ポリペプチド結合体の製造方法:
化学式1
【化5】
前記化学式1で、nは、50ないし100の自然数であり、
R
1とR
2は、互いに同じであるか、あるいは異なるC
1-C
5アルキルである。
【請求項10】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液凝固因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体からなる群のうちから選択される、請求項9に記載の生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項11】
(a)段階の反応は、還元的アミン化であり、
前記連結体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端窒素、またはリシンのε-アミノ基窒素の原子が、前記化学式1の化合物のアルデヒド炭素原子に共有結合で連結された物質である、請求項9に記載の生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項12】
(a)段階のペギル化反応は、pH3.0~9.0の範囲でなされる、請求項11に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項13】
(b)段階の加水分解は、pH1.0~5.0の範囲でなされる、請求項11に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項14】
(c)段階の連結反応は、還元的アミン化である、請求項9に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項15】
前記還元的アミン化は、pH5.0~8.5の範囲でなされる、請求項14に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項16】
前記Fc切片またはその誘導体の配列は、N末端がプロリンである、請求項9に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項17】
前記結合体は、前記アセタール炭素に由来する炭素原子に、Fc切片またはその誘導体のN末端プロリンの窒素の原子が、共有結合で連結されている、請求項16に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項18】
前記Fc切片またはその誘導体は、配列番号2である、請求項17に記載の
生理活性ポリペプチド結合体の製造方法。
【請求項19】
R
1とR
2は、エチルである、請求項9に記載の
生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項20】
nは、67ないし83の自然数である、請求項9に記載の
生理活性ポリペプチドの製造方法。
【国際調査報告】