(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】房室弁修復リング
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20230921BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20230921BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20230921BHJP
A61L 27/14 20060101ALI20230921BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230921BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20230921BHJP
A61L 27/06 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61F2/24
A61L27/40
A61L27/04
A61L27/14
A61L27/16
A61L27/56
A61L27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516059
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 US2021050084
(87)【国際公開番号】W WO2022056391
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148204
【氏名又は名称】ザ メディカル カレッジ オブ ウィスコンシン インク
【氏名又は名称原語表記】THE MEDICAL COLLEGE OF WISCONSIN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン ポール ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB17
4C081CA02
4C081CG03
4C081DA03
4C081DB03
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC05
4C097CC12
4C097CC18
4C097DD10
4C097EE06
4C097FF12
4C097SB09
(57)【要約】
房室弁修復リングは環状その他弧状の形状のリングを備えており、リングは、一部又は全部がシースに包囲されたコアを備えている。リングの内側容積にバリアが張られている。バリアはフィラメントを織り合わせたもの、メッシュスクリーン、多孔質シート等から成ることができる。房室弁修復リングは、患者の心臓内で展開したときに房室弁の弁輪を画定する。バリアに血液を通過させつつ、脱出するいかなる弁葉部分も適切な接合平面内に収める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングと、バリアとを備えた房室弁リングであって、
前記リングは、
前記リングの内側容積を画定する弧状のコアと、
前記コアの少なくとも一部を包囲するシースと、
を備えており、
前記バリアは前記シースに結合されて前記リングの内側容積に張られ、
前記バリアは血液を通過させると共に、房室弁葉が当該バリアを越えて通過することを防ぐ構造である
ことを特徴とする房室弁リング。
【請求項2】
前記コアは環状であり、前記リングの連続した周を形成する、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項3】
前記コアは楕円環状である、
請求項2記載の房室弁修復リング。
【請求項4】
前記コアは、前記リングの不連続な周を形成する、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項5】
前記コアは形状記憶材料から成る、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項6】
前記コアは形状記憶合金から成る、
請求項5記載の房室弁修復リング。
【請求項7】
前記コアはニチノールから成る、
請求項6記載の房室弁修復リング。
【請求項8】
前記コアは形状記憶ポリマーから成る、
請求項5記載の房室弁修復リング。
【請求項9】
前記シースは繊維材料から成る、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項10】
前記繊維材料はポリマー系繊維材料である、
請求項9記載の房室弁修復リング。
【請求項11】
前記ポリマー系繊維材料は延伸テトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、
請求項10記載の房室弁修復リング。
【請求項12】
前記シースは前記コアを完全に包囲する、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項13】
前記バリアは複数のフィラメントを含む、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項14】
前記複数のフィラメントは織り合わされてメッシュを形成する、
請求項13記載の房室弁修復リング。
【請求項15】
前記メッシュを形成する際、前記複数のフィラメントのうち少なくとも一部が、前記複数のフィラメントのうち他のフィラメントを囲むループとなる、
請求項14記載の房室弁修復リング。
【請求項16】
前記複数のフィラメントは、対称的な織りパターンを用いて織り合わされている、
請求項14記載の房室弁修復リング。
【請求項17】
前記複数のフィラメントは、非対称的な織りパターンを用いて織り合わされている、
請求項14記載の房室弁修復リング。
【請求項18】
前記バリアの一部の前記フィラメントの密度が当該バリアの他の部分より高くなるように、前記複数のフィラメントは前記リングの内側容積内に非対称的に分布している、
請求項13記載の房室弁修復リング。
【請求項19】
前記複数のフィラメントは、前記シースに縫い付けられることにより当該シースに結合されている、
請求項13記載の房室弁修復リング。
【請求項20】
前記複数のフィラメントは延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成る、
請求項13記載の房室弁修復リング。
【請求項21】
前記バリアはメッシュスクリーンを含む、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項22】
前記メッシュスクリーンは、スクリーン材料の孔の規則的な間隔のグリッドを含む、
請求項21記載の房室弁修復リング。
【請求項23】
前記スクリーン材料は生体適合性ポリマーから成る、
請求項22記載の房室弁修復リング。
【請求項24】
前記メッシュスクリーンの一部の孔の密度が当該メッシュスクリーンの他の部分の孔の密度より高くなるように、前記メッシュスクリーンのスクリーン材料の孔は非対称的に分布している、
請求項21記載の房室弁修復リング。
【請求項25】
非対称的に分布した前記孔は、患者固有の解剖学的構造を考慮したパターンに分布している、
請求項24記載の房室弁修復リング。
【請求項26】
前記バリアは多孔質シートを含む、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項27】
外科的処置中に前記リングの配置を容易にするために前記リングに結合された少なくとも1つのマーカをさらに備えている、
請求項1記載の房室弁修復リング。
【請求項28】
前記少なくとも1つのマーカは、X線不透過性材料から成る、
請求項27記載の房室弁修復リング。
【請求項29】
前記少なくとも1つのマーカは、前記シースの外表面の周囲に分布した複数のマーカを含む、
請求項27記載の房室弁修復リング。
【請求項30】
フレームと、当該フレームに結合されたバリアと、を備えた房室弁修復機器であって、
前記フレームは前記バリアの少なくとも一部を包囲し、
前記バリアは、血液を受け取る1つ又は複数の孔を有し、
前記房室弁修復機器は、心房の収縮時に当該心房から血液を前記バリアの1つ又は複数の孔と房室弁とに通過させて心室に送るように構成されており、
前記バリアは、前記心室の収縮時に前記房室弁の1つ又は複数の弁葉の前進が前記心室から前記心房内にさらに及ぶことをブロックするように構成されている
ことを特徴とする房室弁修復機器。
【請求項31】
前記フレームは第1の端部と、当該第1の端部とは反対側の第2の端部と、を有し、
前記バリアは第1の端部と、反対側の第2の端部と、を有し、
前記バリアの前記第1の端部は前記フレームの前記第1の端部に結合されており、
前記バリアの前記第2の端部は前記フレームの前記第2の端部に結合されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項32】
前記フレームは前記心房の心房壁の少なくとも一部と係合するように構成されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項33】
前記フレームの一部は、前記心房の前記心房壁の湾曲に沿うように構成されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項34】
前記フレームは、
コアと、
前記コアの少なくとも一部を包囲するシースと、
を備えており、
前記シースは、前記コアの材料とは異なる材料により形成されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項35】
前記バリアは、前記コア又は前記シースのうち少なくとも1つに結合されている、
請求項34記載の房室弁修復機器。
【請求項36】
前記バリアは複数のフィラメントを含み、
パターンに従って前記各フィラメントが隣のフィラメントと重なり合い、
隣り合う前記フィラメントが合わさって前記バリアの孔を画定する、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項37】
前記各フィラメントは、前記フレームの引張強度より高い引張強度を有する、
請求項36記載の房室弁修復機器。
【請求項38】
前記各フィラメントは引張荷重をかけられており、
前記各フィラメントの引張荷重は、前記フレームの引張荷重より大きい、
請求項37記載の房室弁修復機器。
【請求項39】
前記フレームは引張荷重をかけられていない、
請求項38記載の房室弁修復機器。
【請求項40】
前記各フィラメントの断面は、前記フレームの断面より小さい、
請求項38記載の房室弁修復機器。
【請求項41】
前記各フィラメントの断面は当該フィラメントの長さにおいて一様であり、
前記フレームの断面は当該フレームの全周長において一様である、
請求項36記載の房室弁修復機器。
【請求項42】
前記各フィラメントの一端は前記フレームの一端に結合されており、前記各フィラメントの他端は前記フレームの反対側の他端に結合されている、
請求項36記載の房室弁修復機器。
【請求項43】
前記フレームは、第1の構成から第2の構成に圧縮するように構成されており、
前記フレームは、前記第2の構成から前記第1の構成に拡張して前記心房の心房壁に係合するように構成されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【請求項44】
前記房室弁修復機器は前記心房内において前記房室弁の第1の側に配置されるように構成されており、前記心室から前記第1の側までの距離は、前記心室から前記房室弁における当該第1の側と反対側の第2の側までの距離より遠く、
前記房室弁修復機器は前記心臓の壁に結合されるように構成されている、
請求項30記載の房室弁修復機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、米国特許出願第63/077,180号(出願日:2020年9月11日、発明の名称:房室弁修復リング)に係る優先権を主張するものであり、同特許出願の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
なし。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁逆流は、弁葉の脱出を伴う粘液腫疾患を原因として生じることが多く、弁輪拡張を引き起こす。僧帽弁修復は死亡率が低く、耐久期間が長いという優れた結果をもたらすことができるが、現在のところ、外科的技術は再現が困難であり、特に、外科医が多数の症例数にアクセスできないセンターにおいて再現が困難である。
【発明の概要】
【0004】
本願開示は、リングと、当該リングの内側容積に張られたバリアと、を備えた房室弁修復リングを提供することにより、上述の欠点に対処するものである。リングはコアとシースとを備えている。コアは、リングの内側容積を画定する弧状の形状を有する。シースは、コアの少なくとも一部を包囲する。バリアはシースに結合されてリングの内側容積に張られ、バリアは血液を通過させると共に、房室弁葉が当該バリアを越えて通過することを防ぐ構造である。
【0005】
一部の実施形態では、コアは環状とすることができ、また、リングの連続した周を形成することができる。
【0006】
一部の実施形態では、コアは楕円環状とすることができる。
【0007】
一部の実施形態では、コアはリングの不連続な周を形成することができる。
【0008】
一部の実施形態では、コアは形状記憶材料から成ることができる。
【0009】
一部の実施形態では、コアは形状記憶合金から成ることができる。
【0010】
一部の実施形態では、コアはニチノールから成ることができる。
【0011】
一部の実施形態では、コアは形状記憶ポリマーから成ることができる。
【0012】
一部の実施形態では、シースは繊維材料から成ることができる。
【0013】
一部の実施形態では、繊維材料はポリマー系繊維材料とすることができる。
【0014】
一部の実施形態では、ポリマー系繊維材料は延伸テトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができる。
【0015】
一部の実施形態では、シースはコアを完全に包囲することができる。
【0016】
一部の実施形態では、バリアは複数のフィラメントを含むことができる。
【0017】
一部の実施形態では、複数のフィラメントは織り合わされてメッシュを形成することができる。
【0018】
一部の実施形態では、メッシュを形成する際、複数のフィラメントのうち少なくとも一部が、前記複数のフィラメントのうち他のフィラメントを囲むループとなることができる。
【0019】
一部の実施形態では、複数のフィラメントは、対称的な織りパターンを用いて織り合わされることができる。
【0020】
一部の実施形態では、複数のフィラメントは、非対称的な織りパターンを用いて織り合わされることができる。
【0021】
一部の実施形態では、バリアの一部のフィラメントの密度が当該バリアの他の部分より高くなるように、複数のフィラメントはリングの内側容積内に非対称的に分布することができる。
【0022】
一部の実施形態では、複数のフィラメントは、シースに縫い付けられることにより当該シースに結合されることができる。
【0023】
一部の実施形態では、複数のフィラメントは延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成ることができる。
【0024】
一部の実施形態では、バリアはメッシュスクリーンを含むことができる。
【0025】
一部の実施形態では、メッシュスクリーンは、スクリーン材料の孔の規則的な間隔のグリッドを含むことができる。
【0026】
一部の実施形態では、スクリーン材料は生体適合性ポリマーから成ることができる。
【0027】
一部の実施形態では、メッシュスクリーンの一部の孔の密度が当該メッシュスクリーンの他の部分の孔の密度より高くなるように、前記メッシュスクリーンのスクリーン材料の孔は非対称的に分布することができる。
【0028】
一部の実施形態では、非対称的に分布した孔は、患者固有の解剖学的構造を考慮したパターンに分布することができる。
【0029】
一部の実施形態では、バリアは多孔質シートを含むことができる。
【0030】
一部の実施形態では、房室弁修復リングは、外科的処置中にリングの配置を容易にするために前記リングに結合された少なくとも1つのマーカをさらに備えることができる。
【0031】
一部の実施形態では、少なくとも1つのマーカはX線不透過性材料から成ることができる。
【0032】
一部の実施形態では、少なくとも1つのマーカは、シースの外表面の周囲に分布した複数のマーカを含むことができる。
【0033】
本願開示の一部の実施形態は、房室弁修復機器を提供する。当該機器は、フレームと、当該フレームに結合されたバリアと、を備えることができる。前記フレームは当該フレームの少なくとも一部を包囲することができる。前記バリアは1つ又は複数の孔を有することができ、この孔は血液を受け取るように構成することができる。前記機器は、心房の収縮時に当該心房から血液を前記バリアの1つ又は複数の孔と房室弁とに通過させて心室に送るように構成されることができる。前記バリアは、前記心室の収縮時に前記房室弁の1つ又は複数の弁葉の前進が前記心室から前記心房内にさらに及ぶことをブロックするように構成されることができる。
【0034】
フレームは第1の端部と、当該第1の端部とは反対側の第2の端部と、を有することができる。バリアは第1の端部と、反対側の第2の端部と、を有することができる。前記バリアの前記第1の端部は前記フレームの前記第1の端部に結合されることができる。前記バリアの前記第2の端部は前記フレームの前記第2の端部に結合されることができる。
【0035】
一部の実施形態は、フレームは心房の心房壁の少なくとも一部と係合するように構成されることができる。
【0036】
一部の実施形態では、フレームの一部は、心房の心房壁の湾曲に沿うように構成されることができる。
【0037】
一部の実施形態では、フレームはコアと、前記コアの少なくとも一部を包囲するシースと、を備えることができる。前記シースは、前記コアの材料とは異なる材料により形成されることができる。
【0038】
一部の実施形態では、バリアは、コア又はシースのうち少なくとも1つに結合されることができる。
【0039】
一部の実施形態では、バリアは複数のフィラメントを含み、パターンに従って各フィラメントが隣のフィラメントと重なり合うことができる。隣り合うフィラメントが合わさって前記バリアの孔を画定することができる。
【0040】
一部の実施形態では、各フィラメントは、フレームの引張強度より高い引張強度を有することができる。
【0041】
一部の実施形態では、各フィラメントは引張荷重をかけられておくことができる。前記各フィラメントの引張荷重は、前記フレームの引張荷重より大きくことができる。
【0042】
一部の実施形態では、フレームは引張荷重をかけられていない。
【0043】
一部の実施形態では、各フィラメントの断面は、前記フレームの断面より小さくすることができる。
【0044】
一部の実施形態では、各フィラメントの断面は当該フィラメントの長さにおいて一様とすることができる。フレームの断面は当該フレームの全周長において一様とすることができる。
【0045】
一部の実施形態では、各フィラメントの一端をフレームの一端に結合することができる。各フィラメントの他端はフレームの反対側の他端に結合することができる。
【0046】
一部の実施形態では、フレームは、第1の構成から第2の構成に圧縮するように構成することができる。前記フレームは、前記第2の構成から前記第1の構成に拡張して心房の心房壁に係合するように構成することができる。
【0047】
一部の実施形態では、房室弁修復機器は心房内において房室弁の第1の側に配置されるように構成され、心室から第1の側までの距離は、心室から房室弁における当該第1の側と反対側の第2の側までの距離より遠くすることができる。前記房室弁修復機器は心臓の壁に結合されるように構成することができる。
【0048】
本願開示の一部の実施形態は、患者の房室弁を修復するための方法を提供する。前記方法は、房室弁修復機器を患者内に配置することと、前記機器が前記患者の心房内において前記房室弁の第1の側に位置するまで前記機器を前進させることと、ただし、心室から前記第1の側までの距離は、前記心室から前記房室弁の第2の側までの距離より遠く、前記機器を前記患者の心臓に係合することと、前記心房の収縮時に血液を前記機器に通過させるように、前記機器を前記患者の心臓に結合することと、前記心室の収縮時の前記心室から前記心房内への血液の逆流を緩和することと、を含むことができる。
【0049】
一部の実施形態では前記方法は、前記バリアは、心室の収縮時に房室弁の1つ又は複数の弁葉の前進が心室から心房内にさらに及ぶことをブロックして血液の逆流を緩和することを含むことができる。
【0050】
一部の実施形態では前記方法は、房室弁の1つ又は複数の弁葉がさらに伸長することをブロックするように、房室弁修復機器のバリアを房室弁の1つ又は複数の弁葉に接触させることを含むことができる。
【0051】
一部の実施形態では前記方法は、心房の収縮時に当該心房から血液を房室弁修復機器のバリアの1つ又は複数の孔と房室弁とに通過させて心室に送ることを含むことができる。前記1つ又は複数の孔は、前記房室弁の弁葉より小さくすることができる。
【0052】
一部の実施形態では、房室弁を改変することなく逆流を緩和することができる。
【0053】
一部の実施形態では、心臓の壁に向かう方向に房室弁の1つ又は複数の弁葉を径方向に圧縮することなく逆流を緩和することができる。
【0054】
以下の説明を読めば、本願開示の上記及び他の側面及び利点が明らかである。以下の説明では添付の図面を参照し、この図面は以下の説明の一部を構成し、図面中には好適な実施形態が例示されている。しかし、この実施形態は必ずしも本発明の全範囲を示すものではないので、本発明の範囲の解釈に際しては、特許請求の範囲を参酌する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本願開示に記載の一部の実施形態の、連続的な周と、複数のフィラメントから成るバリアとを備えた一例の房室弁修復リングの平面図である。
【
図2】本願開示に記載の一部の実施形態の、不連続的な周と、複数のフィラメントから成るバリアとを備えた一例の房室弁修復リングの平面図である。
【
図3】房室弁修復リングの内側容積に張られた一例のフィラメントを示す図であり、当該フィラメントは、房室弁修復リングのコアを包囲するシース内に縫い付けること等により、当該シースに結合されている。
【
図5】フレームが第1の構成のときと、当該フレームが第2の構成のときの、
図1の機器の上面図である。
【
図7】本願開示に記載の一部の実施形態の、バリアを構成する際に1つのフィラメントを囲うように他のフィラメントをループ状にする一例を示す図である。
【
図8】第1の構成と第2の構成であるときの他の房室弁修復機器の一例を示す図である。
【
図9】本願開示に記載の一部の実施形態の、連続的な周と、メッシュスクリーンから成るバリアとを備えた一例の房室弁修復リングの平面図である。
【
図10】本願開示に記載の一部の実施形態の、連続的な周と、多孔質シートから成るバリアとを備えた一例の房室弁修復リングの平面図である。
【
図11】患者の心臓内で展開した状態の、本願開示に記載の一部の実施形態の一例の房室弁修復リングを示す図である。
【
図12】房室弁を修復するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
ここでは房室弁修復リングについて説明する。この房室弁修復リングは、患者の心臓内で展開したときに房室弁(例えば僧帽弁又は三尖弁等)の弁葉が心室(例えば左心室又は右心室等)から脱出するのを緩和(又は防止)できるものである。本願明細書に記載されている房室弁修復リングは、外科的修復の耐久性上の利点を維持しつつ、房室弁修復の容易性を向上するという利点を奏する。
【0057】
図1に示すように、一般に本願開示に記載されている種々の実施形態の房室弁修復リング(又は機器)は、内側容積を画定するリング(又はリング状構造)を備えている。患者の心臓内にリングが、例えば房室弁の流入側(すなわち心房側)において房室弁の弁輪の周囲等に展開したときに、バリアに血液を通過させつつ、脱出するいかなる弁葉部分もバリアが適切な接合平面内に収めるように、バリアが内側容積に張られている。バリアはこのようにして、弁葉切除、索移動/新しい索、その他の複雑な外科的修復技術を要することなく、房室逆流を無くす。さらに、リングは弁輪形成バンドに似た構造とすることができ、これにより弁輪を安定化して標準的な房室弁修復の耐久性を維持することができる。
【0058】
図1は、本願開示に記載の一部の実施形態の房室弁修復機器10(特定の実施態様では「リング」10とも称される)の平面図である。機器10はフレーム11を備えることができ、フレーム11は、実質的に(すなわち偏差が10%未満の)環状の形状を有するコア12と、コア12を覆うシース14と、を備えることができる。機器10はまた、房室弁修復リング10の内側容積に張られたバリア16も備えることができ、これにより、当該バリア16に血液を通過させつつ、房室弁葉が心房内に脱出することを低減する(例えば防ぐ等)ことができる。以下説明するように、バリア16(及びここで記載されている他のバリア)は、複数のフィラメント、メッシュスクリーン、又は付加製造メッシュ(例えば3Dプリントメッシュ等)等を含めた種々の形態を有することができるが、これらに限定されない。よって、バリア16は一般に、有孔その他透過性のバリア16であって、当該バリア16の構造を越えて房室弁葉が運動することを緩和(例えば阻止等)しつつ、当該バリア16の細孔、孔その他開口に血流を通過させることができるバリア16である。例えばバリア16は、織り合わされたフィラメントの網又はネットの構造であり、開口がフィラメント間のスペースである場合のように、開口を形成することができる。他の一例として、バリア16は、メッシュスクリーン又は孔が形成された3Dプリント構造として形成された場合のように、孔を形成することができる。さらに他の一例として、バリア16は、多孔質シートとして形成された場合のように、細孔を形成することもできる。コア12、シース14、及びバリア16は、生体適合性材料、例えば下記にて説明する材料例等から成ることができる。
【0059】
一部の実施形態では、バリア16は当該バリア16を貫通する1つ又は複数の孔(例えば1つ、2つ、3つ、4つ等)を有することができ、この孔は、機器10の上端と当該機器10の下端との間に流体連通を提供するものである。例えば、各孔が(例えば機器10の上端から下端に向かう方向に)血液を受け取るように構成することができ、また、各孔を房室弁の弁葉より小さく(例えば、房室弁の自由端より小さく)することができる。このようにして、(例えば、房室弁の1つ又は複数の弁葉がバリア16に接触して、当該1つ又は複数の弁葉がバリア16を越えて心房内にさらに前進するのを防ぎ、これにより弁葉の脱出を緩和することにより)心室から房室弁を通って心房内へ血液が逆流するのを低減しつつ、各孔は心臓内の自然な血流路に従って(例えば、心房から機器10のバリア16を通って心室内へ)血液を流すことができる。一部の事例では、バリア16の各孔は弁葉の自由端が各孔を通過するのを防ぐように構成することができる。一部の構成では、バリア16の1つ又は複数の孔は(例えば心室が収縮中のときに)房室弁の弁葉の一部を受け入れるが、各弁葉の脱出を防ぐことができる。
【0060】
一般にコア12は弧状の形状を有することができ、一部の事例では、この弧状の形状が房室弁修復リング10の実質的に環状の形状を画定することができる。一例として、コア12は円環状のリングとすることができる。他の一例として、コア12は楕円環状のリングとすることができる。さらに他の例では、コア12は他の環状形状を有することができる。コア12は、
図1に示されているように房室弁修復リング10の連続した周を形成し、又は、
図2に示されているように房室弁修復リング10の不連続な周を形成することができる。
【0061】
コア12ひいては房室弁修復リング10は、房室弁修復リング10の中心軸に対して垂直な平面内に概ね配置される。例えば、平面視で見たときに中心軸は房室弁修復リング10の重心を概ね通って延在する。この配置では、房室弁を通過する血液の平均的な流入方向は上記の中心軸に対して概ね平行となる。本願開示にて記載されている房室弁修復リング10は一般に三次元構造であるが、房室弁修復リング10の部分は血流軸に対して垂直な平面内に収まる。
【0062】
一部の実施形態では、コア12は可撓性材料により作製され、例えば可撓性の弾性材料により作製されている。非限定的な一例として、コア12はニチノール等の形状記憶合金から成ることができる。他の事例では、コア12はポリマーから成ることができ、このポリマーは一部の事例では形状記憶ポリマーとすることができる。このようにして、コア12は患者に埋め込まれる前の第1の形状(例えば、コア12が略37℃等の体温未満の第1の温度であるときの形状等)を有し、対象に埋め込まれた後、第2の形状(例えば、コア12が第1の温度より高い第2の温度になったときの形状等)に自然に移行することができる。一部の事例では、第2の形状の少なくとも一部が患者の心房の周形状(例えば、患者の心房のアキシャル断面を基準とした周形状等)と一致することができる。例えば、コア12の全周(又はその一部)が、心房の周(心房のアキシャル断面における周)の壁の一区間(又は全区間)の湾曲に沿うことができる。
【0063】
一部の他の実施形態では、コア12は代替的に剛性又は半剛性の材料により作製することができる。例えば、剛性であるコア12は、無荷重状態(例えば大気環境下に置かれたときの状態等)からの形状の偏差が10パーセント未満となるように形成することができる。具体的な一例として、コア12が剛性である場合、無荷重状態においてコア12の境界により画定される内側容積と荷重時(例えば、機器が対象に埋め込まれた後等)の内側容積との偏差は、10パーセント未満とすることができる。他の構成では、半剛性(又は換言すると半可撓性)であるコア12の形状は、無負荷状態との偏差が10パーセント超となることができる。一部の事例では、コア12の境界によって画定される内側容積は、荷重時の内側容積からの偏差が10パーセント超とすることができる。一部の構成では、コア12を心房の壁に係合する前に圧縮することができ、コア12の一部(又は全部)が後退してフレーム11を心房の壁に押し付け、これにより機器10を定位置に(例えばバネ様に)押し込むことができる。一部の構成では、コア12を剛性、半剛性、可撓性等として記載したが、当該コア12を備えたフレーム11も剛性、半剛性、可撓性等とすることができ、これをコア12と同様に画定することができる。
【0064】
一部の構成では、機器10のフレーム11の周は、(例えばフレーム11が荷重状態から無荷重状態に移行したとき等)患者の心房の壁の周(例えばアキシャル面における周等)の一部(又は全部)に一致することができる。かかる構成により、フレーム11は心房の壁に向かって後退し、機器10を定位置に一層固定することができる。他の事例では、フレーム11の周の形状は無荷重状態のとき(例えば患者に埋め込まれる前等)、心房の壁の形状に一致することができる。かかる構成により、フレーム11は後退する必要が無く、心房の壁に当接して、これにより、(例えば弱っている心臓組織の場合等)心房の壁に力を加えることなく心房に機器10を固定する。
【0065】
図4は、心臓20のアキシャル断面図を示す。
図4に示されているように、心臓20は右心房22と左心房24と三尖弁26(例えば、1つ又は複数の弁葉が脱出している)と僧帽弁28(例えば、1つ又は複数の弁葉が脱出している)とを有する。第1のアキシャル軸30は水平面(あるいはアキシャル面)に対して垂直であり、右心房から右心室内に延在する。第2のアキシャル軸32も同様に水平面に対して垂直であり、左心房から左心室内に延在する。
【0066】
図5は、フレーム11が第1の構成のとき、例えば患者に埋め込まれる前の、機器10の上面図である。第1の構成では、フレーム11の周形状は
図5に示されているように弧状(例えば円形状等)の第1の周形状とすることができるが、第1の構成のときのフレーム11は他の形状(例えば正方形、方形、卵形、楕円形等)とすることができる。その後、機器10は第1の構成(
図5の左側部分)から、第1の構成とは異なる第2の構成(
図5の右側部分)に移行することができる。第2の構成では、フレーム11の周形状は第1の周形状と異なる第2の周形状とすることができる。とりわけ、第2の周形状の一部(又は全部)が、心房のアキシャル面(例えば
図4のアキシャル面等)内における当該心房の壁の周形状と一致することができる。例えば、機器10の周形状の一部(又は全部)が、右心房22のアキシャル面(例えば、二尖弁26付近にあるアキシャル面等)内においてアキシャル軸30まわりに定義される当該右心房22の壁の周形状と一致することができる。他の一例として、機器10の周形状の一部(又は全部)が、左心房24のアキシャル面(例えば、僧帽弁28付近にあるアキシャル面等)内においてアキシャル軸32まわりに定義される当該左心房24の壁の周形状と一致することができる。一部の構成では、機器10のフレーム11は(例えば機器10の温度が調整されたときに)第1の構成から第2の構成に自然に移行することができ、又は、第1の構成から第2の構成に移行するように(例えばフレーム11を圧縮すること等によって)荷重されることができる。構成如何にかかわらず、フレーム11は患者の心房内に配されたとき、第1の構成から第2の構成に移行することによって心房壁に向かって後退することができ、これによって機器10を心房壁により良好に固定することができ、種々の心房解剖学的構造(例えば種々の患者等)に合わせることができる。
【0067】
図6は房室弁修復機器15の上面図であり、この房室弁修復機器15は、上記にて説明した房室弁修復機器10と同様に埋め込むことができる。よって、房室弁修復機器10は房室弁修復機器15にも関係する。
図6に示されているように、機器15はフレーム17を備えることができ、このフレーム17の周形状の一部(又は全部)は心房壁の周形状(例えば、当該心房のアキシャル面内において当該心房壁を含む心房のアキシャル軸まわりに定義される周形状等)に一致することができる。一部の事例では、機器15のフレーム17は第1の周形状を有する第1の構成から、第2の周形状を有する第2の構成に移行せず、フレーム17の荷重如何にかかわらずフレーム17の周形状は実質的に維持される。例えばフレーム17の周形状は、機器が患者に埋め込まれる前と機器15が患者に埋め込まれた後とで実質的に同じとすることができる。他の事例では、患者の心房の湾曲を実質的に模した周形状を有するフレーム17が、第1の構成(例えば
図6に示されている構成等)から、異なる周形状を有する第2の構成に移行することができる。例えば、第2の構成における(例えば患者の心房に埋め込まれ又は係合した後等)フレーム17の周形状の湾曲が、当該患者の心房の湾曲と実質的に同じになるように、フレーム17と心房壁との間の湾曲の偏差に当該フレーム17を合わせることができる。一部の構成では、フレーム17は剛性、半剛性、又は可撓性とすることができる。
【0068】
一部の実施形態では、心房壁と係合する前のフレーム17によって画定される断面積(例えば、フレーム17によって画定される面積等)は、機器15と係合した(例えば埋め込まれた等)心房のアキシャル断面積より大きくすることができる。換言すると、機器15と接触状態にある心房のアキシャル断面は、フレーム17が心房と係合する前にフレーム17によって定義される断面積より小さくすることができる。このようにして心房壁はフレーム17の周囲に後退することができ、これにより機器15が安定して、当該機器15が外れるのを防ぐことができる。
【0069】
図1~3を再度参照すると、コア12の全部又は一部がシース14に包囲されるように、シース14はコア12の周囲に配置されている。シース14は、ポリマー系繊維材料その他の繊維材料を編組し/織ることにより、当該シース14を形成することができる。非限定的な一例として、シース14はゴアテックス(登録商標、W. L. Gore & Associates, Inc.、米国デラウェア州ニューアーク)等の延伸ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)材料から成ることができる。他の事例では、シース14はダクロン(登録商標、インビスタ社、米国カンザス州ウィチタ)等のポリエチレンテレフタレート(「PETE」)材料から成ることができる。他の実施形態では、シース14は他の延伸性材料、例えばエラストマ膜等から成ることができる。
【0070】
一部の実施形態では、フレーム11は当該フレーム11の全周長において一様な断面を有することができる。よって、コア12及びシース14はそれぞれ、フレーム11の全周長において一様な断面を有することができる。他の構成では、フレーム11の断面はフレーム11の全周長において非一様とすることができる(例えば、一端から他端に向かって断面が拡大することができ、又はその逆とすることができる)。よって、コア12の断面をフレーム11の全周長において非一様とすると共に、シース14の断面をフレーム11の全周長において非一様とすることができ、その広がりは、コア12に沿った断面の推移の仕方とは異なることができる。
【0071】
既に述べたように、房室弁修復リング10の内側容積、例えばフレーム11(例えばコア12及びシース14等)の内周によって画定される内側容積にバリア16が張られている。例えば、フレーム11の(例えばシース14又はコア12等の)両端、例えばフレーム11の両内側端部25,27(例えば、フレーム11の内表面の両側に画定される両内側端部等)等に、バリア16を結合することができる。
図1及び
図2に示された実施形態等の一部の実施形態では、バリア16は複数のフィラメント18により構成され、これらのフィラメント18は、房室弁修復リング10のコア12を包囲するシース14に結合される。例えば、フィラメント18は
図3に示されているようにシース14の内周に織り込むことができる。他の構成では、バリア16をコア12に結合することができる。例えば、バリア16の一部をコア12に巻き付け、例えばコア12の両端に巻き付けることができる。具体的な一例として、各フィラメント18をコア12に巻き付け、例えばコア12の両端に巻き付けることができる。このようにしてシース14はコア12の少なくとも一部とバリア16の少なくとも一部とを包囲することができ、バリア16はコア12に固定されるので(例えば、コア12はシース14より強い材質とすることができる)、バリア16がフレーム11から外れる(例えばシース14から外れることにより外れる)可能性を小さくすることができる。
【0072】
一部の実施形態では、各フィラメント18の断面を当該各フィラメント18の長さにおいて実質的に一様とすることができ、また、各フィラメント18の断面をフレーム11の断面より小さくすることができる。例えば、各フィラメント18の断面をコア12の断面又はシース14の断面より小さくすることができる。一部の構成では、各フィラメント18はフレーム11に(例えばフレーム11の両側に)結合されたときに、(例えば各フィラメント18を延伸することによって)引張荷重をかけられることができ、これにより、房室弁の1つ又は複数の弁葉がさらに前進するのをブロックすることができる。
【0073】
一例として、フィラメント18はPTFEから成ることができる。例えばバリア16は、6-0PTFEフィラメント18を織り合わせて全体的にメッシュとしたものから成ることができ、このメッシュは、血液を通過させつつ、房室弁葉部分を適切な接合平面内に収めることにより、房室逆流を無くすものである。
【0074】
フィラメント18を織り合わせることにより、バリア16の構造安定性を向上することができる。一部の構成では、フィラメント18を上下パターンで織り合わせることができ、かかる上下パターンは対称的又は非対称的な上下パターンを含むことができる。一例として、対称的な上下パターンは「1回上、1回下」パターン、「2回上、2回下」パターン等を含むことができる。非対称的な上下パターンも同様に「1回上、2回下」パターン、「2回上、1回下」パターン等を含むことができる。
【0075】
一部の他の構成では、一方向に張られたフィラメント(例えば
図7におけるフィラメント18a等)が、垂直その他非平行な方向に張られたフィラメント(例えば
図7におけるフィラメント18b)に通され、次いで、
図7に示されているようにフィラメント18aのうち1本が他のフィラメント18bまわりにループ状となり、及び/又は他のフィラメント18bに巻きつけられるように、フィラメント18を織り合わせることができる。この構成により、バリア16の安定性をさらに高くすることができる。
【0076】
外科的処置中に房室弁修復リング10の配置を容易にするため、1つ又は複数のマーカ28(例えば1つ、2つ、3つ、4つ等のマーカ)を房室弁修復リング10に結合し、又は他の態様で房室弁修復リング10に配置することができる。非限定的な一例として、
図1では上述のマーカ28が3つ、房室弁修復リング10に結合され、又は他の態様で房室弁修復リング10に配置されている。マーカ28は例えば、フレーム11に結合され又は他の態様で配置された(例えば、房室弁修復リング10のコア12を包囲するシース14に配置された)X線不透過性のマーカとすることができる。マーカ28は、房室弁修復リング10の周まわりに対称的又は非対称的に配置することができる。
図1に示されている例では、マーカ28は房室弁修復リング10の中心軸を基準として互いに120°離隔している。房室弁修復リング10に設けられるマーカ28の数を3未満又は3超とすることも可能であることが明らかである。
【0077】
再度
図1を参照すると、一例の構成では房室弁修復リング10は、連続した周を形成するコア12を備えることができる。本例では、バリア16は複数のフィラメント18によって構成され、これらのフィラメント18はそれぞれコア12の内側容積に張られている。各フィラメント18はそれぞれ、コア12を包囲するシース14に結合されている。一部の構成では、バリア16(及び各フィラメント18)は、フレーム11の両アキシャル端部(例えば、機器10の中心軸に対して平行なアキシャル軸を基準として定義される両アキシャル端部等)間に配置することができる。他の構成では、バリア16がフレーム11の第1のアキシャル端部の上方と、当該フレーム11の第1のアキシャル端部とは反対側の第2のアキシャル端部の上方とに(又は当該第2のアキシャル端部に)配置されるように、バリア16をフレーム11の一方のアキシャル端部に結合することができる。一部の事例では、バリア16をフレーム11に結合して当該フレーム11の両アキシャル端部間に配置すると、バリア16が構造的により良好となり得る。
【0078】
フィラメント18は等間隔に配置することができ、又は代替的に、房室弁修復リング10の内側容積内に非対称に配置することができる。例えば、より高いサポートが望まれる領域においてフィラメント18の密度が高くなるように、フィラメント18を配置することができる。各フィラメント18は、房室弁修復リング10の一方の側を起点として当該房室弁修復リング10の反対側の一点まで延在することにより、当該房室弁修復リング10の内側容積に張ることができる。一部の事例ではフィラメント18は、房室弁修復リング10によって定義される円形又は楕円形の断面の幾何学的な弦として当該房室弁修復リング10の内側容積に張ることができる。
【0079】
図2を参照すると、他の一例の構成では、房室弁修復リング10は不連続な周を形成するフレーム11(例えばコア12も)備えることができる。本例では、バリア16は複数のフィラメント18によって構成され、これらのフィラメント18はそれぞれコア12の内側容積に張られている。各フィラメント18はそれぞれ、コア12を包囲するシース14に結合されている。
【0080】
上記にて説明したように、フィラメント18は等間隔に配置することができ、又は代替的に、房室弁修復リング10の内側容積内に非対称に配置することができる。例えば、より高いサポートが望まれる領域においてフィラメント18の密度が高くなるように、フィラメント18を配置することができる。特に、
図3に示すように、バリア16はフレーム11の重心32に近い位置にある中央領域31を有することができ、この中央領域31のフィラメント18の密度は機器10の他の部分(例えば、バリア16におけるフレーム11に近い位置の領域等)より高くすることができる(あるいは、例えばバリア16の中央領域31の孔の数は、機器10の他の部分より少ない)。このようにしてバリア16は、より中心に位置する弁葉の自由端に対する追加の構造的サポートを提供することができ、かかる弁葉はより大きなサポートを要し得る。
【0081】
図8は、第1の構成と第2の構成(例えば第1の構成とは異なる構成)であるときの一例の房室弁修復機器40の一例を示す図である。機器40は、本願にて記載されている他の機器と同様に実装することができる(また、その逆も可能である)。
図8に示されているように、機器40も
図2の機器10と同様、不連続な周を有することができる。例えば機器40は、第1のセクション44と第2のセクション46とを有するフレーム42を備えることができ、第2のセクション46は第1のセクション44から切り離されている(すなわち、両セクション44,46は互いに結合していない)。機器40はバリア48も備えることができ、このバリア48は1つ又は複数のフィラメント50を含むことができる。バリア48の第1の端部はセクション44に結合すると共に、バリア48の反対側の端部はセクション46に結合することができる。特に、各フィラメント50の第1の端部をセクション44に結合すると共に、各フィラメント50の反対側の第2の端部をセクション46に結合することができる。
図8の機器40の第1の構成(例えば左側のイメージ)において示されているように、無荷重状態では両セクション44,46間の距離52にバリア48を収めることができる。例えば、機器40が第1の構成にあるとき、各フィラメント50を無荷重状態とすることができる。
【0082】
一部の実施形態では、機器40を第1の構成から第2の構成(例えば右側のイメージ)に移行させる(例えば荷重する)ことができる。機器40が第2の構成にあるとき、両セクション44,46間の距離54は上記の距離52より大きくなることができる。このようにして、拡大した距離54によってバリア48に引張荷重をかけることができ、これによって房室弁の1つ又は複数の弁葉の運動をさらに低減することができる(例えば、引張荷重をかけられたバリア48が1つ又は複数の弁葉の運動を生じ難くする等)。例えば、セクション44,46が互いに離されると(例えば第2の構成に達するまで離された場合)、各フィラメント50が伸長して引張荷重が生じ、接合平面への出入り運動がよりし難くなる。
【0083】
図9を参照すると、他の一例の構成では、房室弁修復リング10はコア12を備えることができ、このコア12は連続した周を形成することができる。本例ではバリア16は、房室弁修復リング10の内側容積に張られたメッシュスクリーン56により構成されている。メッシュスクリーン56は、PTFE等の生体適合性ポリマー材料から成ることができる。
【0084】
メッシュスクリーン56は、対称的に分布した複数の孔、例えば規則的な間隔のグリッドに配置された孔等を有することができる。他の実施形態では、メッシュスクリーン56は非対称的に分布した複数の孔を有することができ、これにより、バリア16の強度を向上させることが望まれる領域において孔の密度が高くなるように(また、これによってスクリーン材料の密度が高くなるように)することができる。一部の事例では、メッシュスクリーンは患者固有の解剖学的構造を考慮した患者固有の構成を有することができる。
【0085】
図10を参照すると、さらに他の一例の構成では房室弁修復リング10は、連続した周を形成できるコア12を備えることができる。本例ではバリア16は、房室弁修復リング10の内側容積に張られた多孔質シート58として構成されている。多孔質シート58は生体適合膜として構成することができ、この生体適合膜の細孔は、血液を当該多孔質シート58に通過させるが房室弁葉部分を適切な接合平面内に収めるものであり、これにより房室逆流を低減する(又は無くす)。
【0086】
患者の心臓内に展開された房室弁修復リング10の一例を
図11に示す。房室弁修復リング10は房室弁の外周まわり(例えば房室弁の弁輪等)において当該房室弁の流入側(すなわち、僧帽弁の場合には左心房内、又は三尖弁の場合には右心房内)に展開される。上記にて説明したように、房室弁修復リング10のバリア16が、各心房内への房室弁の弁葉の脱出を緩和し(例えば防ぎ)、これにより、弁葉切除、索移動/新しい索、その他の複雑な外科的修復技術等の外科的修復を要することなく、房室逆流を低減する(又は無くす)ことができるという利点が奏される。
【0087】
有利には、本願開示にて記載されている房室弁修復リングは、経心尖アプローチ及び/又は経中隔アプローチによって設置することができる。経心尖アプローチの一例では、テンダイン(TENDYNE、登録商標)弁(アボット・ラボラトリーズ社、米国イリノイ州アボットパーク)のデリバリに類似するメカニズムを用いて房室弁修復リングを設置することができる。例えば、房室弁修復リングをカテーテルデリバリシステムに圧着し、これを拍動中の心臓の心尖に挿入することができる。左心室の心尖の周囲にプレジェット付き二重巾着縫合糸を配置することができ、これは、経心尖部経カテーテル的大動脈弁置換術(「TAVR」)処置の際に行われるものと類似するもの。その際には、X線透視誘導下でワイヤを房室弁輪の一端から他端まで通過させることができる。拍動中の心臓の左心室にシースを配置することができる。房室弁修復リングの展開は、経食道心エコー(「TEE」)誘導下で、当該リングの向きを適正な方向に固定して行うことができる。自動縫合器によって、機器を定位置に固定することができる。
【0088】
経中隔アプローチの一例では、マイトラクリップ(MITRACLIP、登録商標)システム(アボット・ラボラトリーズ社、米国イリノイ州アボットパーク)に類するデリバリシステムを用いることができる。例えば、心房中隔にワイヤを通過させて左心室内に入れることができる。その際には、同種のシステムを用いて房室弁修復リングを固定及び位置決めすることにより、大腿静脈又は内頸静脈から当該機器を完全に設置することが可能である。
【0089】
図12は、房室弁(例えば三尖弁、僧帽弁等)を修復するための方法100のフローチャートであり、この方法100は、上記の任意の房室弁修復機器(例えば機器10,15,40等)を用いて実施することができる。一部の構成では本方法100は、修復対象の房室弁のいかなる弁葉も改変することなく実施することができる。例えば、修復対象の房室弁の各弁葉を外科的に切開、切断、縫合、移植、その他の構造改変を行うことなく、本方法100を実施することができる。「房室弁の各弁葉の構造改変を行うことなく」とは例えば、房室弁の1つ又は複数の弁葉を心臓の壁に向かう方向に径方向に圧縮しないことを含むことができる。
【0090】
本方法100は、102において、房室弁修復機器(例えば房室弁修復機器10等)を患者内に配置する前に位置決めすることを含むことができる。この位置決めは例えば、房室弁修復機器をコンパクトな構造に圧縮することを含むことができる。一部の事例では上記位置決めは、房室弁修復機器をカテーテルシステムに取り付けること(これは、房室弁修復機器のフレームの一部又は全部が当該房室弁修復機器の中心軸に向かって移動する(例えば、フレームの周まわりが中心軸に向かって圧縮する等)ように、房室弁修復機器を(径方向に)圧縮することを含むことができる)、(例えば、フレームをガイドワイヤの周囲に同軸に配置するように)房室弁修復機器にガイドワイヤを挿通すること、シースを房室弁修復機器の周囲に同軸に配置するように当該シースを房室弁修復機器の周囲に配置すること(例えば、房室弁修復機器を圧縮しながら配置すること等)、を含むことができる。
【0091】
本方法100は104において、房室弁修復機器を患者内に配置することを含むことができる。この配置は例えば、経心尖アプローチ、経心房アプローチ等を用いて房室弁修復機器を設置することを含むことができる。具体的な一例として、経心尖アプローチでは、房室弁修復機器を(例えば、カテーテルシステムにおけるガイドワイヤを含む部分を含む)を患者の動脈(例えば、経大腿アプローチを用いる場合には患者の大腿動脈)に(経皮的に)挿入し、心臓に達するまで動脈に沿って房室弁修復機器を進めることができる。一部の事例では上記配置は、心臓の心室壁を貫通する経心尖穿刺部(あるいは換言すると切開部)を形成することを含むことができる。本方法100はその後、房室弁修復機器をこの経心尖穿刺部から心室内に進め、房室弁(例えば修復対象の房室弁)に通して心房内(例えば、上記の経心尖穿刺部を有する心室に対応する心房内)に入れることを含むことができる。一部の事例では、カテーテルシステム(又はガイドワイヤシステム)を用いて房室弁修復機器を設置する場合、房室弁修復機器を挿入する前にガイドワイヤを経心尖穿刺部から心室内に挿入し、房室弁に通して心房に入れることができる。これにより、房室弁修復機器を進めたときに、これをガイドワイヤに沿って誘導することができる。
【0092】
他の具体的な一例として、経心房アプローチでは、房室弁修復機器を(例えば、カテーテルシステムにおけるガイドワイヤを含む部分を含む)を患者の動脈(例えば、経大腿アプローチを用いる場合には患者の大腿動脈)に(経皮的に)挿入し、心臓に達するまで動脈に沿って房室弁修復機器を進めることができる。一部の事例では上記配置は、心臓の心房壁を貫通する経心房穿刺部(あるいは換言すると切開部)を形成することを含むことができる。本方法100はその後、房室弁修復機器をこの経心房穿刺部から心房内に進めることを含むことができる。一部の事例では、カテーテルシステム(又はガイドワイヤシステム)を用いて房室弁修復機器を設置する場合、房室弁修復機器を挿入する前にガイドワイヤを経心房尖穿刺部から心房内に挿入することができる。これにより、房室弁修復機器を進めたときに、これをガイドワイヤに沿って誘導することができる。
【0093】
一部の実施形態では、構成如何にかかわらず、本方法100は房室弁修復機器を患者の心房内の房室弁付近(例えば修復対象の房室弁付近)に配置することを含むことができる。例えばこの配置は、房室弁における心室から遠い第1の側に房室弁修復機器を配置するように当該房室弁修復機器を心室内に位置決めすることを含むことができる。
【0094】
本方法100は106において、房室弁修復機器を患者の心臓と係合すること(例えば患者の心臓内に係合すること)を含むことができる。この係合は、房室弁修復機器が患者の心臓の壁と接触するまで当該房室弁修復機器を拡張することを含むことができる。これは例えば、フレームの一部(又は全部)が心臓の壁(例えば心臓の心房壁等)に接触するまで、(例えば房室弁修復機器がコンパクトになっている状態から)房室弁修復機器のフレームを拡張することを含むことができる。他の事例では、上記係合は房室弁修復機器のフレームの一部を心臓壁に係合させることを含むことができる(例えば、房室弁修復機器の断面が心房の断面より小さい場合等)。
【0095】
一部の事例では、方法100のブロック106は、房室弁修復機器のフレームを患者の心臓壁(例えば心房壁等)に結合することを含むことができる。例えばこの結合は、房室弁修復機器のフレームの周囲に1つ又は複数の縫合糸を配置し、心臓の壁(例えば心室壁等)と係合状態にすることを含むことができる。一部の事例では上記係合は、(例えば縫合糸を配置すること等によって)房室弁修復機器のフレームと患者の心房壁との係合を強化することを含むことができる。
【0096】
一部の構成では、房室弁修復機器が房室弁修復機器40である場合、方法100は房室弁修復機器のフレームの第1のセクション(例えばセクション44等)と心房壁(又は心室壁)の第1の側とを結合することを含むことができる(この結合は例えば、1つ又は複数の縫合糸を配置することによって行われる)。その後、第1のセクションを配置した状態で、フレームの第2のセクションを当該フレームの第1のセクションから離すことにより、房室弁修復機器のバリア(例えば1つ又は複数のフィラメント等)に引張荷重をかけることを含むことができる。その後、バリアに引張荷重がかかっている状態で、(例えば1つ又は複数の縫合糸を配置することにより)フレームの第2のセクションを心房壁(又は心室壁)の反対側に結合することを含むことができる。このように、バリアに引張荷重がかかっている状態で、房室弁の1つ又は複数の弁葉が(例えば心室から離れて)心房に向かって戻る運動がさらに緩和される。
【0097】
本方法100は108において、房室弁修復機器の配置を確認することを含むことができる。例えば房室弁修復機器が1つ又は複数のマーカを備えている場合、方法100は、(例えば当該マーカに対応するイメージングシステム等を使用して)患者の心臓内に留置された房室弁修復機器の1つ又は複数の画像を取得することを含むことができる。例えば上記の画像取得は、房室弁修復機器の配置を確認するために1つ又は複数のX線不透過性マーカを備えた房室弁修復機器の1つ又は複数のX線透視画像を取得することを含むことができる。
【0098】
方法100は110において、(機器が配置された状態で)房室弁修復機器に血液を通過させることを含むことができる。例えばこれは、患者の心臓の心房から房室弁修復機器と房室弁(例えば修復された房室弁)とを通って心室内(例えば当該心房に対応する心室内)に血液を流すことを含むことができる。一部の事例では、(心房が収縮する際には心房から)房室弁修復機器のバリア(例えばバリアの1つ又は複数の孔等)と房室弁とを通って心室内に血液を流すことを含むことができる。
【0099】
本方法100は112において、(機器が配置された状態で)房室弁修復機器を用いて(例えば心室の収縮時に)心室から房室弁を通って心房内へ流れる血液の逆流を緩和することを含むことができる。例えばこれは、房室弁修復機器によって房室弁の1つ又は複数の弁葉の運動をブロックし、これにより血液の逆流を緩和することを含むことができる。具体的な一例として、上記緩和は、(例えば心室が収縮する際に)房室弁の1つ又は複数の弁葉(例えば2つ、3つ等)が房室弁修復機器のバリアと接触し、これにより当該1つ又は複数の弁葉が心房内にさらに前進するのをブロックすることを含むことができる。
【0100】
1つ又は複数の好適な実施形態を参照して本願開示を説明したが、明示的に記載された実施形態の他にも数多くの均等態様、代替態様、変形態様及び改良態様が可能であり、また本発明の範囲に属することが明らかである。
【0101】
本願開示はその適用において、上記の説明に記載され又は添付の図面に示された構造及び構成要素の配置に限定されるものではないと解すべきである。本願開示は他の実施形態が可能であり、また種々の態様で実施できるものである。また、本願にて用いられている文言や用語用法は説明を目的としたものであり、本発明を限定するものと解すべきものではない。本願明細書において「含む」、「備える」又は「有する」及びこれらの変形を使用した場合、これらはその後に列挙された事項と、その均等物と、他の追加の事項とを含むと解される。別段の指定又は限定が無い限り、「取り付ける」、「接続」、「支持」及び「結合」との用語並びにその変形は広義に用いられるものであり、直接的及び間接的な取り付け、接続、支持及び結合を含む。また、「接続」及び「結合」は物理的又は機械的な接続又は結合に限定されるものではない。
【0102】
本願における特定の方向の説明は、別段の限定又は定義が無い限り、あくまで特定の実施形態又は関連する説明に関して例示として設けたものであある。例えば「上」、「前」又は「後」の構成の説明は一般的にあくまで、特定の例又は説明の基準フレームを基準とした当該構成の向きを説明することを意図したものに過ぎない。よって、例えば「上」の構成は一部の配置又は実施形態では「下」の構成より下に配すること(等)があり得る。また、特定の回転運動その他の運動(例えば反時計回りの回転等)についての言及は一般に、あくまで、説明の特定の例の基準フレームを基準とした運動の説明を意図したに過ぎない。
【0103】
本願開示の方法、又は当該方法を実行するシステムの特定の動作は、図面その他の記載箇所において概略的に表現されている場合があり得る。別段の指定又は限定が無い限り、図面中における特定の動作の特定の空間的順序での表現は、常にこの特定の空間的順序に相当する特定のシーケンスで当該動作を実施しなければならないことを意味するものではない。よって、図面その他の記載箇所において示されている特定の動作は、本願開示の特定の実施形態に合わせて適宜、明示的に図示又は説明されたものとは異なる順序で実行することができる。 また、一部の実施形態では、特定の動作を並行して実行することができ、この並行実行は、専用の並行処理装置によって、又は上位システムの一部として相互動作するように構成された別々の計算機によって行うことができる。
【0104】
一部の実装では、本願開示の各側面を具現化する方法を用いて、本願にて記載されている機器又はシステムを用いる又は設置することができる。よって、機器又はシステムの特定の構成、能力又は意図した目的についての本願の説明は一般に、当該意図した目的のための当該構成の使用方法、当該能力を実装する方法、及び、当該目的又は能力をサポートするために、本願にて開示された構成要素(その他公知の構成要素)を設置する方法を内在的に含むことを意図したものである。また、別段の示唆又は限定が無い限り、機器又はシステムの設置を含めた特定の機器又はシステムの製造方法又は使用方法についての本願の説明も同様に、かかる機器又はシステムの利用される構成及び実装された能力の本願開示の実施形態として内在的に開示することを含むことを意図している。
【0105】
本願にて使用されている序数は、別段の定義又は限定が無い場合において、本願開示の関連する部分について特定の構成要素を示す順序に概ね基づく参照のしやすさのために用いられているものである。この点において、例えば「第1」、「第2」等の表示は一般に、関連する構成要素を説明のために紹介する順序を示したに過ぎず、一般に、特定の空間的配置、機能上又は構造的な優先度又は順序を示したり要件とするものではない。
【0106】
本願において使用されている方向に関する用語は、別段の定義又は限定が無い限り、特定の図面又は事例を説明するために参照しやすくするために用いられるものである。例えば、下方向(若しくはその他の方向)又は上位置(若しくはその他の位置)といった場合、これは特定の事例又は図の側面を説明するためのものである場合があり、全ての設置や構成における同様の方向又は幾何学的態様を常に要件とするものではない。
【0107】
本願の説明は、当業者が本願開示の実施形態を生産又は使用できるようにするために提示されたものである。本願にて示されている事例については、当業者であれば種々の改良を容易に導き出すことができ、また、本願にて開示されている原理から逸脱することなく、本願の一般原理を他の事例や用途に適用することができる。よって、本願開示の実施形態は、示されている実施形態に限定されることを意図したものではなく、本願開示の原理及び構成並びに添付の特許請求の範囲と一致する最も広い範囲と一致すべきものである。上記の詳細な説明は図面を参照して読むものであり、図面中、異なる図において同様の要素には同様の符号を付している。各図は必ずしも実寸の比率通りではなく、選択した事例を示しており、本願開示の範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、本願にて提示されている実施形態例は有用な代替態様を有し、本願開示の範囲に属することを認識することができる。
【0108】
1つ又は複数の好適な実施形態を参照して本願開示を説明したが、明示的に記載された実施形態の他にも数多くの均等態様、代替態様、変形態様及び改良態様が可能であり、また本発明の範囲に属することが明らかである。
【0109】
添付の特許請求の範囲に、本願開示の種々の特徴及び利点が記載されている。
【国際調査報告】