IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エシロール・アンテルナシオナルの特許一覧

特表2023-541173視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス
<>
  • 特表-視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス 図1
  • 特表-視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス 図2
  • 特表-視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス 図3
  • 特表-視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス 図4
  • 特表-視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20230921BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230921BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20230921BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20230921BHJP
   A61B 3/103 20060101ALI20230921BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20230921BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20230921BHJP
【FI】
A61B3/028
A61B5/16 200
A61B3/113
A61B3/11
A61B3/103
G02C13/00
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516575
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021073823
(87)【国際公開番号】W WO2022053342
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】20306024.9
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シュピーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ドローブ
【テーマコード(参考)】
2H006
4C038
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
2H006DA05
4C038PP01
4C038PR01
4C038PS00
4C038PS07
4C316AA13
4C316AA15
4C316AA16
4C316AA21
4C316AA28
4C316AA30
4C316FA19
4C316FA20
4C316FC14
4C316FC21
5L099AA15
(57)【要約】
任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するこのコンピュータ実装方法は、対象者に関する複数の入力データを疲労状態変化予測モデルに提供することであって、複数の入力データが、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は、対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は、少なくとも1つの他の対象者関連データを含む、提供することと、モデルを実装するプロセッサによって、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するコンピュータ実装方法であって、
前記対象者に関する複数の入力データを疲労状態変化予測モデルに提供することであって、前記複数の入力データが、前記対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は、前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は、少なくとも1つの他の対象者関連データを含む、提供することと、
前記モデルを実装するプロセッサによって、前記対象者の前記疲労状態の変化のレベルを表す値を取得することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの主観的測定値が、前記対象者の視覚に関する少なくとも1つの質問に対する前記対象者による少なくとも1つの回答を表すデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疲労状態が視覚疲労状態である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの客観的測定値が、前記対象者に対して行われた少なくとも1つの瞳孔及び/又は注視測定値を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の入力データが、前記対象者に関連する少なくとも1つの主観的及び/又は客観的検眼測定値を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記モデルをクラウドに格納し、前記取得することを前記クラウドで実行することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象者に抗疲労光学物品の個別処方を提供する方法であって、
任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する前記対象者の疲労状態の変化の自動予測を取得することと、
前記対象者に関する複数の入力データを疲労状態変化予測モデルに提供することであって、前記複数の入力データが、前記対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は、前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は、少なくとも1つの他の対象者関連データを含む、提供することと、
前記モデルを実装するプロセッサによって、前記対象者の前記疲労状態の変化のレベルを表す値を取得することと、
前記対象者の前記疲労状態の前記変化のレベルを表す前記値に適合した処方を実装する抗疲労光学物品を前記対象者に提供することと、
を含む方法。
【請求項8】
任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するためデバイスであって、
前記対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値を含む測定値入力データを提供するように適合された測定ユニットと、
前記測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを使用する疲労状態変化予測モデルを実装して、前記対象者の前記疲労状態の変化のレベルを表す値を取得するように適合された処理ユニットと、
前記測定ユニットから前記測定値入力データを取得するように適合され、及び/又は前記少なくとも1つの他の対象者関連データを取得するように適合されたデータ入力ユニットであって、前記処理ユニットに、前記測定値入力データ及び/又は前記少なくとも1つの他の対象者関連データを入力して前記処理ユニットに前記モデルを実装させるように適合された、データ入力ユニットと、
前記対象者の前記疲労状態の前記変化のレベルを表す前記値を出力するように適合されたデータ出力ユニットと、
を備えるデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの主観的測定値が、前記対象者の視覚に関する少なくとも1つの質問に対する前記対象者による少なくとも1つの回答を表すデータを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記疲労状態が視覚疲労状態である、請求項8又は9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの客観的測定値が、前記対象者に対して行われた少なくとも1つの瞳孔及び/又は注視測定値を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記測定値入力データが、前記対象者に関連する少なくとも1つの主観的及び/又は客観的検眼測定値を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
検眼機であって、前記検眼機は任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための少なくとも1つのデバイスを備え、前記少なくとも1つのデバイスは、
前記対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値を含む測定値入力データを提供するように適合された測定ユニットと、
前記測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを使用する疲労状態変化予測モデルを実装して、前記対象者の前記疲労状態の変化のレベルを表す値を取得するように適合された処理ユニットと、
前記測定ユニットから前記測定値入力データを取得するように適合され、及び/又は前記少なくとも1つの他の対象者関連データを取得するように適合されたデータ入力ユニットであって、前記処理ユニットに、前記測定値入力データ及び/又は前記少なくとも1つの他の対象者関連データを入力して前記処理ユニットに前記モデルを実装させるように適合された、データ入力ユニットと、
前記対象者の前記疲労状態の前記変化のレベルを表す前記値を出力するように適合されたデータ出力ユニットと、
を備える検眼機。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、疲労状態変化予測モデルを使用することによって、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を、前記対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は前記モデルへの入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて取得させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
プロセッサとデータ記憶ユニットとを備えるモバイル端末であって、前記データ記憶ユニットは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、疲労状態変化予測モデルを使用することによって、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は前記対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は前記モデルへの入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する前記対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得させる命令を含む、モバイル端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する方法及びデバイスに関する。
【0002】
本開示はまた、関連する検眼機、コンピュータプログラム製品、及びモバイル端末、並びに、対象者に抗疲労光学物品の個別処方を提供する対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
視覚疲労並びに「コンピュータ視覚症候群」及び「デジタル眼精疲労」という用語は、コンピュータ、タブレット、携帯電話、電子書籍リーダなどのデジタルデバイスでの長時間の近視覚作業に起因する複雑な眼及び視覚関連の問題を説明するために、同じ意味で使用されることが多い。
【0004】
より一般的には、長時間の視作業から、他のタイプの以下の疲労:
-認知疲労、すなわち、例えば、注意レベル又は読書速度の変化によって表される脳疲労、
-一般的な疲労、例えば眠気や一般的な疲労感、
-筋肉疲労、例えば長時間同じ姿勢を保つことによる首の痛み、
-ドライバーの疲労、
なども生じる可能性がある。
【0005】
現代のライフスタイルにより、デジタルデバイスの使用とそのようなタイプの疲労の蔓延は、過去20年間で非常に大幅に劇的に増加している。
【0006】
視覚疲労に関して、2つの公式な定義を以下に示す。
-世界保健機関は、視覚疲労を主観的視覚障害と定義しており(ICD-10,H53.1)、典型的には長時間の視覚活動の後に生じる高度の視覚的不快感によって示され、疲労、目の周りの痛み、かすみ目、頭痛により特徴付けられている。
-米国検眼協会は、視覚疲労を前述のコンピュータ視覚症候群によって定義しており、これはコンピュータ、タブレット、電子書籍リーダ、及び携帯電話の長時間の使用に起因する目及び視覚関連の問題のグループを説明している。
【0007】
視覚疲労の症状、評価手法、及び管理戦略は、研究及び医学界で大きな注目を集めている。症状は、不十分な照明、デジタル画面のまぶしさ、不適切な視聴距離、長時間労働、警告レベル、光スペクトル、コントラストの低下、小さなフォント、未矯正の視覚障害などによって引き起こされる可能性がある。
【0008】
視覚疲労の評価方法は、主観的又は客観的に分類される。
【0009】
主観的な評価のために、アンケートを使用することができる。一般的に使用されるアンケートのほとんどは症状ベースのアンケートであり、例えば、視覚不快感尺度(Conlon,Lovegrove,Chekaluk & Pattison,1999、https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/135062899394885で入手可能)、10項目視覚疲労アンケート(Hayes,Sheedy,Stelmack & Heaney,2007、https://www.researchgate.net/publication/6140024_Computer_Use_Symptoms_and_Quality_of_Lifeで入手可能)、及び収束不全症状調査(CISS)(https://wowvision.net/wp-content/uploads/2014/08/CI-Screening-and-symptom-survey.pdfで入手可能))がある。
【0010】
客観的な評価のために、調節の微小変動を監視することもあり、なぜならそれが長時間の視作業の後に増加することが見つかることがあるからである。いくつかの研究では、視覚的な不快感を誘発した後の調節反応又は調節の遅れを評価したが、長時間の視作業の後、これらのパラメータに一貫した変化は見られなかった。よせ運動ダイナミクス、関連する斜位、及び輻輳近点は、近距離コンピュータ作業後に変化することがわかった。まばたきパターンは、まばたき率の低下、まばたき時間の増加、及び不完全なまばたきの増加を示すことがわかった。瞳孔径の変化、瞳孔の微小変動の増加、瞳孔反射の増加も、視覚疲労の潜在的な指標として特定された。臨界フリッカー融合頻度(Critical Flicker Fusion Frequency、CFFF)は、作業負荷とともに減少することがわかった。
【0011】
しかしながら、CFFFは様々な要因(年齢、屈折異常、活動、絶食、概日リズムなど)の影響を受け、ディスプレイのタイプ、作業、照明、作動距離によって異なる。したがって、CFFFを視覚疲労の絶対的な指標として扱うことはできない。
【0012】
加えて、上記のパラメータの多くは、一般的な疲労及び/又は認知疲労によっても影響を受ける。
【0013】
したがって、視覚疲労自体を客観的且つ正確に測定及び評価することが難しいだけでなく、更に、その分野で一般的に合意されている視覚疲労の信頼できる客観的な測定基準や指標は知られていない。
【0014】
また、視覚疲労を引き起こすには、例えば1時間以上の長い時間がかかる。
【0015】
したがって、店舗内などの「現実世界」のシナリオでは、視覚疲労を誘発して測定するためのツールを構築することは適切ではない。
【0016】
更に、視覚疲労レベルを計算及び予測するための最も知られている方法は、立体画像、ビデオ、又は仮想現実コンテンツの視聴に関するものであるが、特定のタイプの視覚コンテンツに限定されており、すべての種類の視作業に適しているわけではない。他の既知の方法は、単に目の画像(開眼又は閉眼)に基づいている。それらの方法では他の入力データは考慮されない。
【0017】
中国特許第107468206A号明細書は、瞳孔径に基づく立体コンテンツ視聴視覚疲労予測方法を開示している。次の2つのモデルについて説明されている。1つは主観的な視覚疲労レベルを予測するもので、もう1つは立体視コンテンツを見た後に瞳孔径のみに基づいて(つまり、瞳孔径を予測している)客観的な視覚疲労を予測するものである。どちらのモデルも重回帰アルゴリズムを使用する。要因には、最大視差、リフレッシュレート、環境の明るさ、見る角度、及び観察者の年齢が含まれる。主観的モデルの出力は、視覚疲労アンケートの結果である。客観的モデルの出力は瞳孔径である。
【0018】
このようなソリューションは、立体的なコンテンツの視聴に限定される。更に、入力データには、コンテンツと環境のパラメータ、及び対象者の年齢が含まれるが、瞳孔測定などの客観的なパラメータは考慮されない。瞳孔径は出力として使用されるが、客観的モデルの入力としては使用されない。更に、客観的予測と主観的予測が別々のモデルにあるため、ソリューションが複雑になる。
【0019】
更に、従来技術のソリューションは、単に視覚症候群の予測及び/又は評価に焦点を当てているにすぎない。それらは視覚疲労の変化、例えばその増加を予測することを可能にしない。
【0020】
したがって、それ自体が視覚疲労を引き起こすことなく、あらゆる種類の視作業について、変化、例えば視覚疲労のレベルの増加を迅速且つ容易に予測できるツールの必要性が満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本開示の目的は、先行技術の上述の制限の少なくともいくつかを克服し、上述の必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
その目的のために、本開示は、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するコンピュータ実装方法を提供し、
前記対象者に関する複数の入力データを疲労状態変化予測モデルに提供することであって、複数の入力データが、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は、対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は、少なくとも1つの他の対象者関連データを含む、提供することと、
モデルを実装するプロセッサによって、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得することと、
を含む。
【0023】
したがって、おそらく主観的測定と客観的測定の両方を含む様々なタイプのデータが考慮され、一般的なデジタル近作業であれ、任意の他の視作業であれ、視覚疲労レベルの変化を予測する。
【0024】
加えて、この方法は簡単且つ迅速であり、例えば、対象となる個人の疲労状態変化レベルを表す値を取得するのに5分もかからないものであり得る。
【0025】
本開示による方法は、時間を節約し、予測の精度を高め、プロセスを非常に簡単にするだけでなく、多くの種類の予防及び緩和機能も可能にする。
【0026】
更に、提案されたモデルは、実際に視覚疲労を誘発するために長時間の作業を行うことなく、人がどのくらい疲れやすいかを予測することを可能にする。
【0027】
モデル入力データは、店舗で行うことができる測定値であり、1~2分など、非常に短時間で済む。
【0028】
加えて、対象となる個人の疲労状態の変化のレベルを表すモデルの出力が即座に生成され、様々なレベルの「疲労者」に人々を分類できる。これにより、個人が適合した抗疲労製品を購入するように勧めることができる。
【0029】
すなわち、同じ目的のために、本開示はまた、対象者に抗疲労光学物品の個別処方を提供する方法を提案し、この方法は、
任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を取得することと、
対象者に関する複数の入力データを疲労状態変化予測モデルに提供することであって、複数の入力データが、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は、対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又は、少なくとも1つの他の対象者関連データを含む、提供することと、
モデルを実装するプロセッサによって、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得することと、
対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値に適合した処方を実装する抗疲労光学物品を対象者に提供することと、
を含む。
【0030】
同じ目的のために、本開示はまた、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するためのデバイスであって、
対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値を含む測定値入力データを提供するように適合された測定ユニットと、
測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを使用する疲労状態変化予測モデルを実装して、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得するように適合された処理ユニットと、
測定ユニットから測定値入力データを取得するように適合され、及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを取得するように適合されたデータ入力ユニットであって、処理ユニットに、測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを入力して処理ユニットにモデルを実装させるように適合された、データ入力ユニットと、
対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を出力するように適合されたデータ出力ユニットと、
を備える、デバイスを提供する。
【0031】
同じ目的のために、本開示は更に、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための少なくとも1つのデバイスを備える検眼機を提供し、少なくとも1つのデバイスは、
対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値を含む測定値入力データを提供するように適合された測定ユニットと、
測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを使用する疲労状態変化予測モデルを実装して、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得するように適合された処理ユニットと、
測定ユニットから測定値入力データを取得するように適合され、及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを取得するように適合されたデータ入力ユニットであって、処理ユニットに、測定値入力データ及び/又は少なくとも1つの他の対象者関連データを入力して処理ユニットにモデルを実装させるように適合された、データ入力ユニットと、
対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を出力するように適合されたデータ出力ユニットと、
を備える。
【0032】
同じ目的のために、本開示は更に、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、疲労状態変化予測モデルを使用することによって、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又はモデルへの入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて取得させる命令を含む、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0033】
同じ目的のために、本開示は更に、プロセッサとデータ記憶ユニットとを備えるモバイル端末を提供し、データ記憶ユニットは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、疲労状態変化予測モデルを使用することによって、対象者に関する少なくとも1つの主観的測定値、及び/又は対象者に関する少なくとも1つの客観的測定値、及び/又はモデルへの入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得させる命令を含む。
【0034】
上記で簡潔に説明した方法、デバイス、機械、コンピュータプログラム製品、又はモバイル端末のいずれかの組み合わせ又は単独で使用できる特定の可能な機能によれば、
少なくとも1つの主観的測定値は、対象者の視力に関連する少なくとも1つの質問に対する対象者による少なくとも1つの回答を表すデータを含んでもよく、
疲労の状態は、視覚疲労の状態であってもよく、
少なくとも1つの客観的測定値は、対象者に対して行われた少なくとも1つの瞳孔及び/又は注視測定値を含んでもよく、
それぞれ測定値入力データである複数の入力データは、対象者に関連する少なくとも1つの主観的及び/又は客観的検眼測定値を含んでもよく、
モデルはクラウドに格納されてもよく、モデルを実装するプロセッサによって、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値を取得するステップは、クラウドで実行されてもよく、
プロセッサはクラウドに配置されていてもよく、
予測モデルは機械学習を使用してもよく、
予測モデルは分類アルゴリズムを使用してもよく、及び/又は疲労状態の変化のレベルを表す値は離散値であってもよく、
予測モデルは回帰アルゴリズムを使用してもよく、及び/又は疲労状態の変化のレベルを表す値は連続値であってもよく、
予測モデルは、機械学習ベースの予測モデルであってもよい。
【0035】
対象者に抗疲労光学物品の個別処方を提供する方法、並びに対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するデバイスとして、上で簡潔に説明した検眼機、コンピュータプログラム製品及びモバイル端末は、対象者の疲労の変化の自動予測を提供する方法と同じ利点を有するが、それらの利点はここでは繰り返さない。
【0036】
本明細書で提供される説明及びその利点をより詳細に理解するために、添付の図面及び詳細な説明に関連してここで以下の簡単な説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】特定の実施形態における、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供する本開示による方法のステップを示す流れ図である。
図2】特定の実施形態における、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための本開示によるデバイスの概略図である。
図3】特定の実施形態における、本発明による検眼機の概略図である。
図4】特定の実施形態における、本開示による方法を実装するモバイルアプリケーションの概略図である。
図5】特定の実施形態における、対象者に抗疲労光学物品の個別処方を提供する本開示による方法の簡略化された流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明では、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、特定の特徴は、明瞭さ及び簡潔さのために又は情報提供の目的のために、一般化された又は概略的な形式で示される場合がある。加えて、様々な実施形態の作成及び使用が以下で詳細に論じられるが、本明細書に記載されるように、多様な状況で具体化され得る多くの発明の概念が提供されることを理解されたい。本明細書で論じられる実施形態は、単に代表的なものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。当業者には、プロセスに関連して定義されるすべての技術的特徴が個別に又は組み合わせてデバイスに置き換えることができ、逆にデバイスに関連するすべての技術的特徴が個別に又は組み合わせてプロセスに置き換えることができ、異なる実施形態の技術的特徴が、他の実施形態の特徴と交換又は組み合わせることができることも明らかであろう。
【0039】
用語「備える(comprise)」(並びに「備える(comprises)」及び「備える(comprising)」などのそのいずれかの文法的変形形態)、「有する(have)」(並びに「有する(has)」及び「有する(having)」などのそのいずれかの文法的変形形態)、「含有する(contain)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(containing)」などのそのいずれかの文法的変形形態)並びに「含む(include)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(including)」などのそのいずれかの文法的変形形態)は、オープンエンドの連結動詞である。これらは、述べられる特徴、整数、工程若しくは構成要素、又はこれらのグループの存在を規定するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素、又はこれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。結果として、1つ以上の工程又は要素を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含有する(contains)」又は「含む(includes)」方法又は方法における工程は、それらの1つ以上の工程又は要素を有するが、それらの1つ以上の工程又は要素のみを有することに限定されない。
【0040】
本開示による光学物品は、少なくとも1つの眼科用レンズ又は光学フィルタ又は光学ガラス又は人間の視覚に適した光学材料、例えば、少なくとも1つの眼科用レンズ、又は光学フィルタ、又は基材上に固定されることが意図された光学フィルム又はパッチ、又は光学ガラス、又は例えば対象者の視力及び/又は屈折を決定するための眼科器具での使用を意図した光学材料、又は保護デバイス、例えば安全レンズやマスク、シールドなどの、個人の目に面することを意図した安全ガラス又は安全壁を含む任意の種類の安全デバイスを備える。
【0041】
光学物品は、1つ以上の眼科用レンズを少なくとも部分的に取り囲むフレームを有するアイウェア機器として実装され得る。非限定的な例として、光学物品は、眼鏡、サングラス、安全ゴーグル、スポーツゴーグル、コンタクトレンズ、眼内インプラント、偏光レンズなどの振幅変調を有する、又はオートフォーカスレンズなどの位相変調を有する、アクティブレンズであり得る。
【0042】
人間の視覚に適した少なくとも1つの眼科用レンズ又は光学ガラス又は光学材料は、ユーザ、すなわちレンズの装着者に光学機能を提供することができる。
【0043】
それは、例えば、近視、遠視、乱視及び/又は老眼を治療するための矯正レンズ、すなわち屈折異常のユーザのための球面、円柱及び/又は加入度タイプの屈折力レンズであり得る。レンズは、一定の屈折力を有し得るため、単焦点レンズが提供するのと同じように屈折力を提供するか、又は可変屈折力を有する累進レンズであり得る。
【0044】
本開示において、「視覚疲労性」という表現は、本開示において「対象者」又は「個人」又は「ユーザ」又は「装着者」とも呼ばれる人に、その人がデジタルデバイスを使用するとき、又はより一般的には、任意の種類の視作業を実行するときに起こり得る、視覚疲労のレベルの変化を意味する。
【0045】
図1は、特定の実施形態において、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための、本発明による方法及び機能面でのデバイスの両方の3つの主要部分を示す。
【0046】
非限定的な例として、疲労状態は視覚疲労状態であってもよい。それにもかかわらず、代わりに、上記で説明したように、それは別のタイプ類の疲労(認知、全身、筋肉、ドライバーの疲労など)であってもよい。
【0047】
視作業は、任意の種類の視覚コンテンツに関わることができ、例えばそれは、画面に表示される視覚コンテンツ、紙で利用可能な視覚コンテンツ、又は対象者が見る環境で他の方法で利用できる視覚コンテンツである。
【0048】
図1に示すように、この方法は、複数の入力データ12を疲労状態変化予測モデル14に提供するステップ10を含む。
【0049】
入力データ12は、対象者、すなわち、疲労状態の変化の自動予測を提供することが望まれる人に関する。入力データには、次のものがあり得る。
-対象者に関する1つ以上の主観的測定値16、及び/又は、
-対象者に関する1つ以上の客観的測定値18、及び/又は、
-対象者に関する1つ以上の他のデータ20。
【0050】
主観的測定値16は、測定方法によって客観的測定値18とは異なる。
【0051】
したがって、同じタイプのパラメータ(輻輳近点、調節近点、プリズム融像範囲など)は、取得方法次第で主観的又は客観的になる可能性がある。
【0052】
主観的測定値16は、対象者の応答に少なくとも部分的に依存する任意の結果であり、例えば機械又は眼科専門家によって測定され得る。
【0053】
したがって、主観的測定値16は、対象者の視覚に関する1つ又は複数の質問に対してそれぞれ対象者によってなされた1つ又は複数の回答を表すデータを含むことができる。非限定的な例として、質問は、対象者による視覚疲労の認識、現在及び一般的な視覚疲労レベルなどに関するものであり得る。一般的な視覚疲労アンケートとして、上記のCISSが使用され得る。任意の適切な現在の視覚疲労アンケートを使用することができる。
【0054】
客観的測定値18は、例えば、機械又は眼科専門家による質問に対する対象者の回答を利用せずに、機械又は眼科専門家によって得られた任意の結果である。
【0055】
したがって、客観的測定値18は、それ自体既知の任意の適切な手段によって対象者に対して行われた1つ以上の瞳孔測定値又は任意の他の眼科測定値を含み得る。
【0056】
瞳孔データには、例えば、瞳孔サイズ、瞳孔の微小変動、並びにそれらの変化が含まれる。
【0057】
眼科測定は、検眼医が店舗で行うことができる一般的な測定であり、非限定的な例として、視力、球面等価性、輻輳近点、調節近点、プリズム融像範囲及び調節輻輳/調節比が含まれる。
【0058】
客観的測定値18は、それ自体既知の任意の適切な手段によって対象者に対して行われた注視測定値を含むことができる。例えば、注視測定値には、注視の安定性と固視ずれ、並びにまばたき関連の測定値が含まれる。それらは数分で取得でき、それ自体が知られている任意のアイトラッキングデバイスで計算できる。
【0059】
注視測定値は、瞳孔測定値の代わりに、又は瞳孔測定値に加えて使用することができる。
【0060】
主観的及び客観的な測定値は、同時に取得することも、しないこともできる。それらが同時に取得されるとき、この方法はそれらが別々に取得されるときより速く実行される。
【0061】
対象者に関する他のデータ20は、測定値以外の対象者関連データ、例えば、人口統計データ、性別、年齢、民族データなどである。
【0062】
複数の入力データ12は、対象者に関連する1つ以上の主観的検眼測定値、例えば、主観的屈折、調節近点、輻輳近点を測定する主観的方法、プリズム融像範囲などを含むことができる。より一般的には、測定プロセスにおいて、対象者に何かがはっきりと見えるかどうかを報告するよう求めることに関わる測定値は、主観的な検眼測定値と見なされる。
【0063】
複数の入力データ12は、対象者に関連する1つ以上の客観的な検眼測定値を含むことができる。
【0064】
任意の客観的測定値の任意の組み合わせ、並びに、任意の主観的測定値の任意の組み合わせ、又は任意の客観的測定値と任意の主観的測定値の任意の組み合わせが可能である。
【0065】
モデルのパフォーマンスを改善し、この方法を使用するシナリオを拡張するために、テスト時間、コンテンツの表示、又は姿勢などの他のタイプのデータを追加することができる。
【0066】
加えて、複数の入力データ12を提供するステップ10の間に、1つ以上の主観的測定値16及び1つ以上の客観的測定値18を同時に又は別々に得ることができる。
【0067】
上記のすべてのタイプの測定値と対象者関連データを使用すると、更に正確で強力な予測モデル14が得られる。ただし、これらの測定値とデータのタイプをそれぞれすべて使用することは必須ではない。実際は、逆に、より少ないデータのタイプを使用する場合があり、これはより実用的であり得るが、パフォーマンスは低下する。例えば、瞳孔測定ツールにアクセスできないユーザでも、主観的なデータと眼科データだけで視覚疲労レベルの変化について予測することができる。予測モデル14の信頼性とパフォーマンスは、すべての可能な入力データを使用した完全なモデルに比べて低下するが、チャンスレベルよりは高いままである。
【0068】
非限定的な例として、ステップ10に関わる入力データは、以下のように収集され得る。上記のアンケートがコンピュータ画面上で実行され、同時にアイトラッキング測定値が得られる。このような質問は短時間、例えば、3分以内で済む。
【0069】
アイトラッキングデータから、まばたき率、瞳孔サイズの微小変動、注視固視ずれの微小変動、及び注視の安定性を含む瞳孔パラメータが計算される。分析の次のステップでは、アンケート回答中のこれらの各パラメータの変化を表す勾配が計算される。アンケート結果及び最初に行われた眼科測定値とともに、現在の主観的視覚疲労レベルのアンケート結果の変化を予測する予測モデル14が構築される。
【0070】
入力データを予測モデル14に提供するステップ10の後に、予測モデル14を実装するプロセッサによって、対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値Vを取得するステップ11が続く。
【0071】
プロセッサは、予測モデル14を実装するために機械学習を使用する可能性があるが、必ず使用する必要はない。
【0072】
予測モデル14は、分類アルゴリズムを使用することができ、及び/又は値Vは、所与の最低値から所与の最高値までの範囲の離散値とすることができる。
【0073】
変形例として、予測モデル14は回帰アルゴリズムを使用することができ、及び/又は値Vは連続値とすることができる。例えば、重回帰を使用することができる。
【0074】
値Vは、任意のユーザを、低視覚疲労性から高視覚疲労性までの所定数のカテゴリ、例えば3~5のカテゴリに分類することを可能にする。
【0075】
回帰アルゴリズムを使用する上記の変形例では、値Vは、例えば、値Vをデータベースに格納された値と比較することによって、異なるレベルの視覚疲労性に従って任意のユーザを分類することを可能にする。
【0076】
分類アルゴリズムを使用する上述の実施形態では、視覚疲労性の異なるレベルによるユーザの分類が、アルゴリズムの結果として直接得られる。したがって、本開示による方法は、視覚疲労性のレベルのカテゴリを直接提供することができる。
【0077】
機械学習が使用されない実施形態では、予測モデル14は、例えば単純な線形回帰を使用することができる。
【0078】
適切な重み(回帰機械学習ベースのアルゴリズムの場合)又はその他の種類の係数を各有意因子に有利に適用して、データの全変動性の最大部分を表す最良のパラメータセットを得ることができる。
【0079】
予測モデル14はまた、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシン、ニューラルネットワーク、周知のオープンソースソフトウェアライブラリXGBoostなどに基づいていてもよい。非限定的な例として、XGBoost分類器を使用して視覚疲労変化を高低に分類して、入力サンプルの総数に対する正しい予測の数の比率として定義される達成された全体的な精度は、73.91%であった。
【0080】
一実施形態では、疲労状態の変化の自動予測を提供する方法は、予測モデル14をクラウドに格納するステップと、対象者の疲労状態変化レベルを表す値を取得するステップ11をクラウドで実行するステップとを更に含むことができる。
【0081】
本開示による方法は、数分、例えば約3分程度の速さであり得る。
【0082】
これは実際に視覚疲労やその増加を誘発又は引き起こすことなく、視覚疲労のレベルの変化を予測する。
【0083】
図2は、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための、本開示によるデバイス21の特定の実施形態を示す。
【0084】
上述の方法のように、非限定的な例として、デバイス21によって考慮される疲労の状態は、視覚疲労の状態であってもよい。それにもかかわらず、代わりに、上記で説明したように、それは別のタイプ類の疲労(認知、全身、筋肉、ドライバーの疲労など)であってもよい。
【0085】
上述の方法と同様に、デバイス21によって考慮される視作業は、任意の種類の視覚的コンテンツに関わることができ、例えばそれは、画面上に表示される視覚コンテンツ、紙で利用可能な視覚コンテンツ、又は対象者が見る環境で他の方法で利用可能な視覚コンテンツであり得る。
【0086】
図2に示すように、デバイス21は、測定値入力データを提供するように適合された測定ユニット22を備える。
【0087】
測定値入力データは、対象者に関する主観的測定値16及び/又は対象者に関する客観的測定値18を含む。
【0088】
デバイス21は更に処理ユニット26を含んでいる。
【0089】
処理ユニット26は、対象者に関する測定値入力データ及び/又は他のデータ(単数/複数)20を使用する疲労状態変化予測モデル14を実装して対象者の疲労状態の変化のレベルを表す値Vを得るように適合される。処理ユニット26はまた、後述するデータ出力ユニット28にその値を提供するように適合される。
【0090】
上記の方法のように:
-測定ユニット22によって提供される主観的測定値16は、対象者の視覚に関する1つ又は複数の質問に対してそれぞれ対象者によってなされた1つ又は複数の回答を表すデータを含むことができる。
-測定ユニット22によって提供される客観的測定値18は、それ自体既知であり、測定ユニット22に含まれる、任意の適切な手段によって対象者に対して行われた1つ以上の瞳孔測定値を含むことができる。
-測定ユニット22によって提供される客観的測定値18は、それ自体既知であり、測定ユニット22に含まれる、任意の適切な手段によって対象者に対して行われた注視測定値を含むことができる。
-注視測定値は、瞳孔測定値の代わりに、又は瞳孔測定値に加えて使用できる。
-測定値入力データ12は、対象者に関する1つ以上の主観的検眼測定値を含むことができる。
-測定値入力データ12は、対象者に関連する1つ以上の客観的検眼測定値を含むことができる。
-任意の客観的測定値の任意の組み合わせ、並びに、任意の主観的測定値の任意の組み合わせ、又は任意の客観的測定値と任意の主観的測定値の任意の組み合わせが可能である。
-処理ユニット26は、予測モデル14を実装するために機械学習を使用する可能性があるが、必ず使用する必要はない。
-予測モデル14は、分類アルゴリズムを使用することができ、及び/又は値Vは離散値とすることができる。
-変形例として、予測モデル14は回帰アルゴリズムを使用することができ、及び/又は値Vは連続値とすることができる。
【0091】
デバイス21は、データ入力ユニット24を更に備える。
【0092】
データ入力ユニット24は、測定ユニット22から測定値入力データを取得するように適合され、及び/又は対象者に関する他のデータ(単数/複数)20を取得するように適合される。データ入力ユニット24はまた、処理ユニット26に複数の入力データ12、すなわち測定値入力データ16、18及び/又は対象者に関する他のデータ(単数/複数)20を入力して、処理ユニット26に疲労状態変化予測モデル14を実装させるように適合される。
【0093】
デバイス21は、対象者の疲労状態変化レベルを表す値Vを出力するように適合された上述のデータ出力ユニット28を更に備える。
【0094】
一実施形態では、処理ユニット26はクラウド内に配置することができ、したがって予測モデル14はクラウド内に実装される。
【0095】
そのような実施形態では、デバイス21は、クラウドと通信するように適合された通信ユニット(図2には図示せず)を更に備える。例えば、上記の値Vは、通信ユニットを介してクラウドから受信される。
【0096】
本発明による方法又はそれぞれデバイスは、上述の少なくとも1つのデバイスを備える多機能検眼機にそれぞれ統合されて実装されてもよい。
【0097】
図3は、本開示によるそのような検眼機の実施形態を示す。
【0098】
図3に示される特定の実施形態では、予測モデル14は、多機能眼科機械30に実装される。
【0099】
機械30は、アンケート応答、内蔵アイトラッカーによる瞳孔データ、並びに他の眼科パラメータを含む、3つのタイプの入力データの測定を行う。
【0100】
機械30には以下が含まれる。
-視覚疲労アンケートを表示し、テスト結果を提示するための、例えばデジタル画面であるディスプレイユニット32。
-アンケート及び一般情報に対するユーザの応答を記録するデータ入力ユニット34。
-ユーザの瞳孔及び注視パラメータを測定するアイトラッキングユニット36。
-データ記憶ユニット38。
-機械30にプリロードされた予測モデル14を用いて視覚疲労性を計算し、すべての機能を管理する中央処理装置(CPU)ユニット40。
-クラウドにデータをアップロードし、クラウドから視覚疲労性に関する結果を受信するオプションのデータ通信/送信ユニット42。
-他の検眼パラメータを収集するユニットのセット44。
【0101】
検眼機30の実用的な使用の非限定的な例示的なシナリオは、以下のとおりである。
【0102】
顧客が眼鏡店にやって来る。次の利用可能な検眼医又は販売員のサービスを待っている間、又は会話の中で、顧客が視覚疲労に関する懸念、苦情、又は関心を示した場合、又はその顧客のプロファイルが「ヘビーデジタルユーザ/ワーカ」にあてはまる場合、検眼機30で視覚疲労性のテストを行うように顧客をガイドすることができる。
【0103】
このテストは通常3分未満で終了し、主観的な視覚疲労アンケートへの応答、並びに内蔵アイトラッカーによる瞳孔測定に関するデータを収集する。機械30は、他の眼科測定を行うためにも使用される。
【0104】
次いで、CPU40は、予測モデル14を使用して、ローカルで計算を行うか、又は、通信ユニット42がデータをクラウドにアップロードした後リモートで計算を行い、クラウドから計算結果を受信する。
【0105】
ほぼ瞬時に、視覚疲労性テストの結果がディスプレイユニット32に表示される。
【0106】
非限定的な例として、結果は、顧客が低、中、高、又は非常に高い疲労性を有すると判断する。それぞれの疲労性のレベルに応じて、抗疲労製品が推奨される。
【0107】
このように、視覚疲労性テストは、顧客と開業医の両方に、デジタル近作業を行うときに顧客がどの程度視覚疲労になり易いか、及び顧客が状況を軽減するための抗疲労製品やその他の予防措置を必要としているかどうかについての知識を提供する。
【0108】
別の非限定的な例示的なシナリオ(図示せず)として、予測モデル14を実装するスタンドアロンの視覚疲労性ツールボックスを提供することができる。
【0109】
それは、ユニットのセット44を除いて、機械30について上述したのと同じユニットを含むことができる。
【0110】
このような場合、開業医は、ツールボックスのデータ入力ユニット34でデータを入力する前に、別個の機械及びルーチンで眼科測定を行う必要がある。そのような場合、開業医は、例えば、テストの前又は後にシステムに眼科測定値を入力することができる。
【0111】
本開示による方法は、モバイル端末にインストールされたモバイルアプリケーションに組み込むことができる。
【0112】
そのような実施形態では、
-測定値はモバイル端末によって取得できる。
-データ入力は、モバイル端末のインタフェース、例えば、キーボード、画面、又はその他の入力手段若しくは表示手段を使用することができる。
-処理は、計算と予測を実行するモバイル端末の中央処理装置(CPU)によって行われ得る。
-モバイル端末の表示手段は、結果及び推奨事項をユーザに示すために使用することができる。
【0113】
予測モデル14は、モバイル端末に事前にロードするか、クラウドに格納することができる。それにしたがって、計算はモバイル端末でローカルに行うことも、クラウドでリモートで行うこともできる。
【0114】
図4は、更に別の非限定的な例を示しており、視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための本開示による方法が、モバイルアプリケーションに実装され、それが予測モデル14を実装するデジタルデバイス上で実行され得る。
【0115】
モバイルアプリケーションの機能単位又はフローには、次のものが含まれる。
-ブロック46:デバイス画面に視覚疲労アンケートを提示する。
-ブロック48:同時に、デバイスのカメラで瞳孔を記録し、瞳孔/目の画像49を提供する。
-ブロック50:一般情報及び検眼測定値に関する質問を提示する。これは最初から行うこともできる。
-ブロック52:デバイスのキーボード又はタッチスクリーンを使用して回答/入力を行う。
-ブロック54:デバイスのCPUを使用して、モバイルアプリケーションにプリロードされた予測モデル14を使用して、瞳孔パラメータ及び視覚疲労性予測を含む計算を行うか、又は変形例として、データをクラウドにアップロードし、モバイルデバイスの通信ユニットを用いてクラウドから視覚疲労性に関する結果を受信する。
-ブロック56:デバイスの画面上に予測値Vを提示する。
【0116】
開業医は、自分のモバイルデバイスでモバイルアプリケーションを使用し、一般的な情報並びに検眼データをモバイルアプリケーションに入力することができる。
【0117】
本開示による方法の使用の更に別の例として、例えば予測モデル14の単純化されたバージョンを使用して、視覚疲労性に関するウェブサイトをユーザが利用できるようにすることができ、ユーザは視覚疲労アンケートに容易に回答して一般情報及び検眼データを入力することができる。
【0118】
これは、以前の例のデバイス又はモバイルアプリケーションに対するダウングレードバージョンであり、アイトラッキング機能を備えた検眼機又はデバイス、又は自分のモバイルデバイスのカメラに必ずしもアクセスできないが、それらのモバイルデバイスを瞳孔測定用に使用する可能性がある開業医向けである。
【0119】
このウェブサイトは、ユーザによって入力されたデータを取得し、単純化された視覚疲労性レベルの計算を実行し、前の例と同様に視覚疲労性レベルと推奨事項に関する結果を表示する。
【0120】
更に別の例として、単純化された視覚疲労性モデルを使用して、視覚疲労性を対象とするウェブサイトをユーザが利用できるようにすることができ、このモデルでは、ユーザは視覚疲労アンケートに回答し、一般情報と、視力、球面等価性などの基本的な検眼データを入力できる。
【0121】
これは、以前の例のデバイス又はモバイルアプリケーションに対するダウングレードバージョンであり、アイトラッキング機能を備えた検眼機又はデバイス、又は自分のモバイルデバイスのカメラにアクセスできない一般消費者又は一般大衆向けであり、それにもかかわらず、これを瞳孔測定に使用することができる。
【0122】
この最後の例では、このウェブサイトはユーザによって入力されたデータを取得し、視覚疲労性モデルの更に単純化されたバージョンを使用して計算を実行し、前の例と同様に視覚疲労性レベルと推奨事項に関する結果を表示する。
【0123】
したがって、本開示による方法は、消費者の日常生活で使用して、消費者の一般的な視覚疲労性レベルを監視し、最近の視覚疲労性の増加について警告を送信することができ、抗疲労の実践及び製品を推奨できる可能性がある。
【0124】
瞳孔測定値のモニタリング機能を追加することで、視覚疲労の増加について実際に開始する前に警告することもできるため、ユーザに休憩を取るように促すことができる。
【0125】
更に、眼科医が視覚疲労性の高い患者を特定し、その状態を改善するための診療と製品を処方するのに役立ち得る。
【0126】
その上、近視が進行している時間帯にいる子供やティーンエイジャーの間で使用して、視覚疲労や過度のデジタルデバイスの使用/近作業について警告し、近視のコントロールを支援することができる。
【0127】
更に、調整されたバージョンのモデルをドライバーに使用して、疲労レベルの増加を実際に開始する前に予測し、ドライバーに警告することで、運転による疲労を軽減し、交通安全を向上させることができる。そのような調整されたバージョンは、例えば、ドライバーの瞳孔及び注視行動を絶えず、又は少なくとも定期的且つ頻繁に監視する方法を含むことができる。
【0128】
同様に、本開示による方法は、特に安全要件が高く、疲労レベルに関連する工場又はその他の作業環境で使用することができる。
【0129】
加えて、本開示による方法は、科学研究又は消費者研究のために対象者をフィルタリングするためのツールとして使用することができ、高レベルの視覚疲労性を示す特定の対象者を選択又は除外し、特定の研究目的に従って集団の研究の質を改善するために使用することができる。
【0130】
図5に示されるように、抗疲労光学物品の個別処方を対象者に提供するための本開示による方法は、対象者の疲労状態の変化の自動予測を提供するための本開示による方法の上記のステップを実行することによって、任意の種類の視覚コンテンツに関わる視作業を実行する対象者の疲労状態の変化の自動予測を取得するステップ58と、値Vに適合した処方を実装する抗疲労光学物品を対象者に提供するステップ60とを含む。
【0131】
例えば、処方を値Vに適合させることは、値Vを抗疲労レンズの近加入度のレベルに関連付けることを含むことができ、例えば、値Vが高いほど、近加入度が高くなる。
【0132】
非限定的な例として、抗疲労物品は、眼鏡及び/又はコンタクトレンズ及び/又は点眼薬及び/又は行動訓練及び/又は整形外科セッションであり得、及び/又は任意の他の適切な形態を取り得る。
【0133】
本開示によるコンピュータプログラム製品は、上述のように動作し得るプロセッサによって実行されると、対象者に関連する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は対象者に関連する少なくとも1つの客観的測定値及び/又は予測モデル14への入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて、予測モデル14を使用することによって、プロセッサに値Vを取得させる命令を含む。
【0134】
本開示によるモバイル端末は、上述のように動作できるプロセッサと、データ記憶ユニットとを備える。データ記憶ユニットは、プロセッサによって実行されると、対象者に関連する少なくとも1つの主観的測定値及び/又は対象者に関連する少なくとも1つの客観的測定値及び/又は予測モデル14への入力データとして提供される少なくとも1つの他の対象者関連データに基づいて、予測モデル14を使用することによって、プロセッサに値Vを取得させる命令を含む。
【0135】
代表的な方法及びデバイスが本明細書で詳細に説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって説明及び定義されているものの範囲から逸脱することなく、様々な置換形態及び修正形態がなされてもよいことを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】