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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】アミロイドーシスを治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230921BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230921BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230921BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230921BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20230921BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
A61P43/00 101
A61P39/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/675
A61K31/69
A61K31/573
A61K31/198
A61K31/454
A61K31/496
A61K35/545
A61P17/00
A61P17/14
A61K9/08
C07K16/42 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516809
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021050316
(87)【国際公開番号】W WO2022056484
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/078,258
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/116,100
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/176,015
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523091051
【氏名又は名称】ケーラム バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スペクター, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ソボロブ-ジェインズ, スーザン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】カーサイ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルビニッキ, アンソニー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラビウォン, ジェシカ ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC09
4C076CC18
4C076DD07F
4C076DD09F
4C076DD23Z
4C076DD38
4C076DD41D
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF61
4C084AA19
4C084MA16
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA921
4C084ZA922
4C084ZC371
4C084ZC372
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085CC21
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086CB05
4C086DA10
4C086DA35
4C086DA43
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZC37
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA16
4C087MA56
4C087MA65
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA05
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZC37
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
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4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA89
4C206ZA92
4C206ZC37
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
対象におけるアミロイドーシス疾患及び障害を治療する方法、並びに臓器におけるアミロイド沈着の量を低減する方法が本明細書に提供される。本明細書に提供される方法は、単独で又は別の療法と組み合わせての抗体の投与を含む。一態様では、本開示は、対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本発明の医薬組成物及び追加療法を対象に施し、それにより対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療することを含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体;
(b)1つ以上の等張剤;
(c)緩衝剤;及び
(d)非イオン性界面活性剤
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体が、カッパ及びラムダミスフォールド軽鎖に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記等張剤が、酢酸ナトリウムであり;前記緩衝剤が、塩化ナトリウムであり;前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約20~40mg/mLの抗体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約15~35mMの酢酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約25~75mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約0.5~5%マンニトールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約0.001~0.1%ポリソルベート80を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
約5~6のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約5.5のpHを有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
30mg/mLの抗体;
約25mMの酢酸ナトリウム;
約50mMの塩化ナトリウム;
約1%マンニトール;及び
約0.01%~0.05%ポリソルベート80
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗体が、天然画分、還元画分、及び/又はグリコシル化若しくは脱グリコシル化画分を含む混合物であって、それぞれが異質な電荷を有する混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記天然画分が、シアリル化種、中性種、並びに/又はガラクトシル化、フコシル化及び/若しくはマンノシル化中性種を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記還元画分が、糖化リジンを有する軽鎖を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗体が、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片及び/又はそれらの凝集体を含む混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ハーフマーが、1つ又は2つの重鎖(HC)及び1つの軽鎖(LC)を含む抗体である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記不完全抗体が、HCのC末端領域が欠損している、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
断片が、C末端リジンを保持するHCを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
対象におけるアミロイド沈着の量を低減する方法であって、約500~1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を前記対象に投与し、それにより前記対象におけるアミロイド沈着の量を低減することを含む、方法。
【請求項20】
前記抗体が、少なくとも2週、3週、又は4週にわたって毎週投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
その後、維持用量の抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
週用量が約1,000mg/mの抗体の投与が、約20~25mg/kgの抗体を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
週用量が約1,000mg/mの前記抗体の投与が、約2,750mgの前記抗体を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体の投与に先立ち、前記対象が、アミロイドーシス疾患又は障害と新規に診断される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体の投与に先立ち、前記対象が、アミロイドーシス疾患又は障害に対して以前に治療されている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記アミロイドーシス疾患又は障害が、軽鎖(AL)アミロイドーシス、自己免疫(AA)アミロイドーシス及び遺伝性(TTR)アミロイドーシスからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体の投与が、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、前記対象に、
(a)請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物;及び
(b)追加療法
を投与し、それにより前記対象における前記アミロイドーシス疾患又は障害を治療することを含む、方法。
【請求項30】
前記抗体の投与量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
週用量が約500mg/mの抗体が、約12.5mg/kgの抗体を含み、週用量が約750mg/mが、約18.75mg/kgの抗体を含み、且つ週用量が約1,000mg/mの抗体が、約25mg/kgの抗体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
約500mg/mの抗体の投与が、約1,375mgの抗体を投与することを含み、約750mg/mの抗体の投与が、約2,065mgの抗体を投与することを含み、且つ約1,000mg/mの抗体の投与が、約2,750mgの抗体を投与することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの投与量が、少なくとも90%の標的受容体の部位占有率を達成する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
その後、維持用量の抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、血液学的疾患を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記血液学的疾患が、障害された遊離軽鎖/障害されていない遊離軽鎖の差(dFLC)>5mg/dL又は異常比でのFLC>5mgによって特徴づけられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記血液学的疾患が、血清タンパク質電気泳動(SPEP)又は尿タンパク質電気泳動(UPEP) m-スパイク>0.5g/dLによって特徴づけられる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が、前記追加療法に対して前、同時又は後に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体が、前記追加療法の前に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記追加療法が、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、静脈内(IV)注入、皮下注射又は筋肉内注射によって投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、前記抗体の投与前、アミロイドーシス疾患又は障害と新規に診断される、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、前記抗体の投与前、アミロイドーシス疾患又は障害に対して以前に治療されている、請求項29に記載の方法。
【請求項47】
前記アミロイドーシス疾患又は障害が、軽鎖(AL)アミロイドーシス、自己免疫(AA)アミロイドーシス及び遺伝性(TTR)アミロイドーシスからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記アミロイド沈着が、λ軽鎖原線維及び/又はκ軽鎖原線維の凝集体を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
前記医薬組成物の投与により、臓器又は組織内に存在するアミロイド沈着物の除去が誘導される、請求項29に記載の方法。
【請求項50】
前記臓器又は組織が、心臓、腎臓、肝臓、肺、胃腸管、神経系、筋骨格系、軟部組織、皮膚及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象における腎臓、胃腸管、肝臓又は心臓を含むアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記アミロイドーシス疾患又は障害を治療することを含む、方法。
【請求項52】
前記抗体用量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記抗体用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
追加療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記追加療法が、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
対象における皮膚を含む、アミロイドーシス疾患又は障害の1つ以上の症状を治療する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記皮膚を治療することを含む、方法。
【請求項60】
抗体用量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記抗体用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記皮膚を含む、前記アミロイドーシス疾患又は障害の前記1つ以上の症状が、毛髪欠損、体毛欠損及び顔毛欠損を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
追加療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記追加療法が、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
対象における軽鎖及びアミロイド線維の凝集を阻害及び/又は低減する方法であって、約500mg/m~1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を前記対象に投与し;それにより前記対象における軽鎖及びアミロイド線維の凝集を阻害及び/又は低減することを含む、方法。
【請求項69】
抗体用量が、約1,000mg/mである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記抗体用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記アミロイドーシス疾患又は障害を治療することを含む、方法。
【請求項75】
前記医薬組成物を投与することにより、前記対象が幹細胞移植に適格となる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記対象における幹細胞移植を実施することをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
抗体用量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記抗体用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
その後、維持用量の前記抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
多発性骨髄腫を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記対象におけるアミロイドーシスを治療することを含む、方法。
【請求項83】
前記抗体が、カッパ及びラムダミスフォールド軽鎖に結合する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記医薬組成物が、
(a)1つ以上の等張剤;
(b)緩衝剤;及び
(c)非イオン性界面活性剤
をさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記等張剤が、酢酸ナトリウムであり;前記緩衝剤が、塩化ナトリウムであり;且つ前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記医薬組成物が、
30mg/mLの抗体;
約25mMの酢酸ナトリウム;
約50mMの塩化ナトリウム;
約1%マンニトール;及び
約0.01%~0.05%ポリソルベート80
を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
前記抗体の投与量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
前記用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
週用量が約500mg/mの抗体が、約12.5mg/kgの抗体を含み、週用量が約750mg/mが、約18.75mg/kgの抗体を含み、且つ週用量が約1,000mg/mの抗体が、約25mg/kgの抗体を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
約500mg/mの抗体の投与が、約1,375mgの抗体を投与することを含み、約750mg/mの抗体の投与が、約2,065mgの抗体を投与することを含み、且つ約1,000mg/mの抗体の投与が、約2,750mgの抗体を投与することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの投与量が、少なくとも90%の標的の部位占有率を達成する、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項93】
その後、維持用量の抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記維持用量が、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記医薬組成物が、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている、請求項82に記載の方法。
【請求項97】
多発性骨髄腫に対する治療が、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
形質細胞疾患を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記形質細胞疾患を治療することを含む、方法。
【請求項99】
前記形質細胞疾患が、低グレードB細胞リンパ腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記抗体の投与量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
その後、維持用量の抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記医薬組成物が、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
前記対象が、前記形質細胞疾患に対して現在又は以前に治療を受けている、請求項100に記載の方法。
【請求項106】
形質細胞疾患に対する治療が、化学療法を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
抗アミロイドーシス治療に対する候補として多発性骨髄腫を有する対象を同定する方法であって、前記対象における軽鎖(AL)アミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着を同定し、それにより前記対象を前記抗アミロイドーシス治療に対する候補として同定することを含み、
前記対象におけるALアミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の前記同定が、前記対象が前記抗アミロイドーシス治療に応答する可能性を意味しており、
前記抗アミロイドーシス治療が、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む、方法。
【請求項108】
前記対象が、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
多発性骨髄腫に対する治療を前記対象に施すことをさらに含む、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
多発性骨髄腫に対する治療が、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項108又は109に記載の方法。
【請求項111】
B細胞リンパ増殖性障害を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を前記対象に投与し、
それにより前記対象における前記アミロイドーシスを治療することを含む、方法。
【請求項112】
前記B細胞リンパ増殖性障害が、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫及びアミロイドーシスに関連するリンパ腫からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記B細胞リンパ増殖性障害が、多発性骨髄腫である、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記抗体の投与量が、約500mg/m~1,000mg/mである、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
前記用量が、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記抗体が、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
その後、維持用量の抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
前記医薬組成物が、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される、請求項114に記載の方法。
【請求項119】
前記対象が、前記B細胞リンパ増殖性障害に対して現在又は以前に治療を受けている、請求項114に記載の方法。
【請求項120】
B細胞リンパ増殖性障害に対する治療が、化学療法を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
抗体の前記用量が、約20mg/kg~31mg/kgである、請求項29、51、59、68、82、107又は111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
抗体の前記用量が、約22mg/kg~28mg/kgである、請求項29、51、59、68、82、107又は111のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年4月16日に出願された米国仮特許出願第63/176,015号、2020年11月19日に出願された米国仮特許出願第63/116,100号及び2020年9月14日に出願された米国仮特許出願第63/078,258号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
配列表の組み込み
添付の配列表内の材料は、ここで本願に参照により組み込まれる。2021年8月24日にCAEL2000_3WO_SL.txtという名称で作成された、添付の配列表のテキストファイルは、10kbである。該ファイルは、Window OSを用いるコンピュータ上のMicrosoft Wordを用いて評価することができる。
【0003】
本発明は、一般に、アミロイドーシス、及びより詳細に、アミロイドーシス疾患及び障害を、ミスフォールド軽鎖に結合する抗体を用いて治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アミロイドーシス、又はアミロイド疾患は、アミロイドが臓器内で形成し、その正常な機能に干渉する場合に生じるまれな疾患である。アミロイドは、通常、身体内に見出されないが、いくつかの異なるタイプのタンパク質から形成され得る。冒されることがある臓器は、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系、皮膚及び消化管を含む。アミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス、AL、又はALA)は、原発性アミロイドーシスとも呼ばれ、米国における全身性アミロイドーシスの最も一般的な形態であり、先進国におけるアミロイドーシスの診断症例の約70%を占める。しかし、「アミロイドーシス」という用語は、一般的特徴、即ち、臓器及び組織における病理学的な不溶性線維性タンパク質の細胞外沈着を共有する疾患のクラスターを指す。ALアミロイドーシスは、臓器及び組織において凝集し、不溶性アミロイド沈着物を形成する異常なタンパク質線維の産生を引き起こす、抗体産生細胞の機能不全に起因する。原発性アミロイドーシスにおいて、線維は、免疫グロブリン軽鎖のインタクトな断片又は軽鎖の断片を含み、二次性アミロイドーシスにおいて、線維は、アミロイドAタンパク質を含む。アミロイドーシスの現代分類は、線維沈着物を形成する血漿タンパク質前駆体の性質に基づく。
【0005】
血漿タンパク質前駆体は、多様であり、関係がない。にもかかわらず、全ての前駆体タンパク質が、直径が7~13nmの線維性形態、βシート二次構造及びコンゴーレッドなどの特定色素によって染色できることによって特徴づけられるアミロイドを産生する。アミロイドーシスの発現における最終ステージは、患者の臓器におけるアミロイド線維の沈着である。アミロイドーシス死亡率は高く、現在の5年生存率は約28%である。
【0006】
ALアミロイドーシスに対する最も有効な治療は、幹細胞救済を伴う自家骨髄移植である。幹細胞移植に不適格な患者の場合、根底の血漿細胞悪液質(PCD)を根絶し、ミスフォールド軽鎖の産生を停止するための標的化化学療法が用いられる。そのような治療は、従来の又は高用量の細胞傷害性化学療法、例えば、多発性骨髄腫において用いられるもの(例えば、メルファラン及びデキサメタゾンの組み合わせ、並びにボルテゾミブ及びデキサメタゾンの組み合わせ)に依存する。しかし、線維性沈着物は、有意な沈着が生じた後まで、無症候性であることが多いため、細胞傷害性化学療法は、有意な沈着物が既に生じている前に実施される見込みはない。加えて、細胞傷害性化学療法は、せいぜい異常なタンパク質前駆体のさらなる産生を停止させることに限り有効であるが、既存の沈着物を除去するのに有効でないことから、アミロイドーシス患者の予後は、病理学的沈着の持続(又は進行)並びに臓器機能障害の改善及び/又は回復の不在に起因し、極めて不良であるままである。
【0007】
B細胞リンパ増殖性障害は、全身性ALアミロイドーシスに関連し得る。リンパ増殖性障害に関連するALアミロイドーシスは、これらの障害において生じる腫瘍性B細胞によって産生されるモノクローナル免疫グロブリン軽鎖に起因するように思われる。全身性アミロイドーシスを有する患者は、高レベルの骨髄腫タンパク質、好発性の心臓障害を伴う多臓器障害、及びネフローゼ症候群を有する。Ig単クローン性免疫グロブリン血症(Ig monoclonal gammopathies)を引き起こすことが記載されているリンパ増殖性障害の中に、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫とも称される)、慢性リンパ性白血病、及びアミロイドーシスに関連する他のリンパ腫(非ホジキンリンパ腫のタイプ)が含まれる。
【0008】
天然抗体は、免疫を抗原に特異的に結合させる抗原結合部位を含有する免疫グロブリン分子である。天然抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)サブグループに割り当てることができる。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMであり得る。キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖の定常領域が1つの種(通常、ヒト又は非ヒト霊長類)に由来し、重鎖及び軽鎖の可変領域が異なる種(典型的に、マウス)に属する場合の遺伝的キメラのヘテロ二量体である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ヒト軽鎖のアミロイド線維と特異的に反応する、マウス-ヒトキメラ免疫グロブリンG1のκアイソタイプであって、そのκ又はλアイソタイプと無関係であるが、特に、カッパ又はラムダ軽鎖の天然形態を伴わないものが開発されている。抗体は、κ及びλミスフォールド軽鎖内で保存される、非天然βシート構造をとる軽鎖タンパク質のN末端で潜在性エピトープに結合することが示されている。アミロイド沈着物の治療標的化及びクリアランスは、医学的関心の強い領域であり、その場合、治療法がいまだ認可されておらず、それ故、満たされていない医学的必要性が顕著である。本明細書で開示される組成物及び方法は、この必要性を満たす。
【0010】
本開示は、本明細書に記載の抗体が、単独で又は追加療法と組み合わせて、形質細胞疾患又は障害を有する患者におけるアミロイドーシス沈着を含むアミロイドーシス疾患及び障害などのアミロイド沈着の治療にとって有効であるという発見に基づく。本発明は、例示されるが、本明細書中の実施例における開示によって限定されない。
【0011】
一実施形態では、本開示は、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖(CAEL101としても公知)に結合する抗体;1つ以上の等張剤、緩衝剤及び非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
一態様では、抗体は、ミスフォールドしたカッパ及びラムダ軽鎖に結合する。別の態様では、組成物は、抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール及びポリソルベート80を含む。いくつかの態様では、抗体は、天然画分、還元画分、及びグリコシル化又は脱グリコシル化画分を含む抗体分子の混合物を含み、それらのいずれかは異質な電荷を有する。他の態様では、抗体は、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片及び/又はそれらの凝集体を含む混合物を含む。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイド沈着の量を低減する方法であって、約1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
一態様では、抗体は、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される。他の態様では、その後、維持用量の抗体が、対象にさらに投与される。様々な態様では、維持用量は、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される。一態様では、対象は、抗体の投与に先立ち、アミロイドーシス疾患又は障害と新規に診断される。他の態様では、対象は、抗体の投与に先立ち、アミロイドーシス疾患に対する治療を以前に受けている。一態様では、アミロイドーシス疾患又は障害は、軽鎖(AL)アミロイドーシス、自己免疫(AA)アミロイドーシス及び遺伝性(TTR)アミロイドーシスからなる群から選択される。
【0015】
さらなる実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本開示の医薬組成物及び追加療法を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0016】
一態様では、抗体の投与量は、約500mg/m~1,000mg/mである。多くの態様では、用量は、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される。一態様では、週用量が約500mg/mの抗体は、約12.5mg/kgの抗体を含み、週用量が約750mg/mの抗体は、約18.75mg/kgの抗体を含み、週用量が1,000mg/mの抗体は、約25mg/kgの抗体を含む。他の態様では、約500mg/mの抗体の投与は、約1,375mgの抗体を投与することを含み、約750mg/mの抗体の投与は、約2,065mgの抗体を投与することを含み、約1,000mg/mの抗体の投与は、約2,750mgの抗体を投与することを含む。一態様では、500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの用量では、少なくとも90%の標的受容体の部位占有率が達成される。
【0017】
一態様では、対象は、血液学的疾患を有する。一態様では、抗体は、追加療法の前に、それと同時に、又はその後に投与される。他の態様では、抗体は、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される。いくつかの態様では、アミロイド沈着は、λ軽鎖原線維及び/又はκ軽鎖原線維の凝集体を含む。多くの態様では、医薬組成物の投与により、臓器又は組織内に存在するアミロイド沈着物の除去が誘導される。様々な態様では、臓器又は組織は、心臓、腎臓、肝臓、肺、胃腸管、神経系、筋骨格系、軟部組織、皮膚及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
別の実施形態では、本開示は、対象における腎臓、胃腸管又は心臓に影響を与えるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0019】
様々な態様では、本方法は、追加療法を対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、追加療法は、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む。
【0020】
別の実施形態では、本開示は、対象における皮膚に影響を与えるアミロイドーシス疾患又は障害の1つ以上の症状を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
一態様では、皮膚に影響を与えるアミロイドーシスの1つ以上の症状は、毛髪欠損、顔毛欠損及び体毛欠損から選択される。
【0022】
さらなる実施形態では、本開示は、対象における軽鎖及びアミロイド線維の凝集を阻害及び/又は低減する方法であって、約1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0023】
一実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
一態様では、医薬組成物の投与により、対象は、幹細胞移植に適格となる。別の態様では、幹細胞移植が対象においてさらに実施される。
【0025】
一実施形態では、本発明は、多発性骨髄腫を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象におけるアミロイドーシスを治療することを含む、方法を提供する。
【0026】
一態様では、抗体は、カッパ及びラムダミスフォールド軽鎖に結合する。別の態様では、医薬組成物は、(a)1つ以上の等張剤;(b)緩衝剤;及び(c)非イオン性界面活性剤をさらに含む。いくつかの態様では、等張剤は、酢酸ナトリウムであり;緩衝剤は、塩化ナトリウムであり;且つ非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80である。他の態様では、医薬組成物は、30mg/mLの抗体;約25mMの酢酸ナトリウム;約50mMの塩化ナトリウム;約1%のマンニトール;及び約0.01%~0.05%のポリソルベート80を含む。いくつかの態様では、抗体の投与量は、約500mg/m~1,000mg/mである。様々な態様では、用量は、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される。いくつかの態様では、週用量が約500mg/mの抗体は、約12.5mg/kgの抗体を含み、週用量が約750mg/mは、約18.75mg/kgの抗体を含み、週用量が約1,000mg/mの抗体は、約25mg/kgの抗体を含む。一態様では、約500mg/mの抗体の投与は、約1,375mgの抗体を投与することを含み、約750mg/mの抗体の投与は、約2,065mgの抗体を投与することを含み、約1,000mg/mの抗体の投与は、約2,750mgの抗体を投与することを含む。別の態様では、500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの用量では、少なくとも90%の標的の部位占有率が達成される。一態様では、抗体は、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される。別の態様では、該方法は、その後、維持用量の抗体を対象に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、維持用量は、最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後、隔週、3週ごと、又は毎月投与される。他の態様では、医薬組成物は、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される。一態様では、対象は、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている。いくつかの態様では、多発性骨髄腫に対する治療は、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
一実施形態では、本発明は、B細胞リンパ増殖性障害を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象における形質細胞疾患を治療することを含む、方法を提供する。
【0028】
一態様では、B細胞リンパ増殖性障害は、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫及びアミロイドーシスに関連するリンパ腫からなる群から選択される。一態様では、B細胞リンパ増殖性障害は、多発性骨髄腫である。別の態様では、対象は、B細胞リンパ増殖性障害に対して現在又は以前に治療を受けている。一態様では、B細胞リンパ増殖性障害に対する治療は、化学療法を含む。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、形質細胞疾患を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象における形質細胞疾患を治療することを含む、方法を提供する。
【0030】
一態様では、形質細胞疾患は、低グレードB細胞リンパ腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。別の態様では、抗体の投与量は、約500mg/m~1,000mg/mである。いくつかの態様では、用量は、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される。他の態様では、抗体は、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される。いくつかの態様では、該方法は、その後、維持用量の抗体を対象に投与することをさらに含む。他の態様では、医薬組成物は、静脈内(IV)注入、皮下注射、又は筋肉内注射によって投与される。いくつかの態様では、対象は、形質細胞疾患に対して現在又は以前に治療を受けている。他の態様では、形質細胞疾患に対する治療は、化学療法を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明は、抗アミロイドーシス治療に対する候補として多発性骨髄腫を有する対象を同定する方法であって、対象における軽鎖(AL)アミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着を同定し、それにより対象を抗アミロイドーシス治療に対する候補として同定することを含み、ここで対象におけるALアミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の同定は、対象が抗アミロイドーシス治療に応答する可能性を意味しており、抗アミロイドーシス治療は、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む、方法を提供する。
【0032】
一態様では、対象は、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている。別の態様では、該方法は、多発性骨髄腫に対する治療を対象に施すことをさらに含む。いくつかの態様では、多発性骨髄腫に対する治療は、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1-1】3つの独立的方法によって評価された抗体の電荷異質性の特徴づけを図示する。図1Aは、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離による抗体の電荷異質性の特徴づけを示す。図1Bは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分離による抗体の電荷異質性の特徴づけを示す。図1Cは、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)による抗体の電荷異質性の特徴づけを示す。
図1-2】同上。
図2-1】第2相試験における個別の抗体濃度の第1b相試験との比較を図示する。図2Aは、患者における抗体濃度を示す折れ線グラフである。図2Bは、患者における抗体濃度を半対数目盛で示す折れ線グラフである。
図2-2】同上。
図3-1】第2相試験における個別の抗体平均濃度の第1b相試験との比較を図示する。図3Aは、患者における抗体平均濃度を線形目盛で示す折れ線グラフである。図3Bは、患者における抗体平均濃度を半対数目盛で示す折れ線グラフである。
図3-2】同上。
図4】第1b相試験からの抗体平均濃度、及びCminの決定を図示する折れ線グラフである。
図5】Cmax/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
図6】Cmin/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
図7】AUCτ/用量についての用量比例性評価を図示する棒グラフである。
図8】CDR領域を含む、抗体の重鎖及び軽鎖の配列を示す。図8Aは、重鎖の配列(配列番号1)を示す。図8Bは、CDR領域を含む軽鎖の配列(配列番号2)を示す。
図9】グローバル縦ひずみ(GLS)のベースラインから12週にかけての%変化を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、本明細書に記載の抗体が、単独で又は追加療法と組み合わせて、形質細胞疾患又は障害を有する患者におけるアミロイドーシス沈着を含むアミロイドーシス疾患及び障害の治療に有効であるという発見に関する。いくつかの態様では、アミロイドーシス疾患は、再発性又は難治性であり得る。
【0035】
本組成物及び方法が記載される前に、本開示が、記載される特定の組成物、方法、及び実験条件に、そのような組成物、方法、及び条件が変化し得ることから限定されないことは理解されるべきである。また、本開示の範囲があくまで添付の特許請求の範囲に限定されることから、本明細書で用いられる用語があくまで特定の実施形態を説明することを目的とし、限定することが意図されないことは理解されるべきである。
【0036】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる通り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「該方法(the method)」への参照は、1つ以上の方法、及び/又は本明細書に記載のタイプのステップを含み、それは本開示の通読などに際して、当業者にとって明白となる。
【0037】
本明細書中で言及される全ての出版物、特許、及び特許出願は、各個別の出版物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれるべく具体的且つ個別に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の場合と類似又は匹敵する任意の方法及び材料が本開示の実施又は試験において使用することができるが、修飾及びバリエーションが本開示の精神及び範囲内に包含されることは理解されるであろう。好ましい方法及び材料が、ここで説明される。
【0039】
一実施形態では、本開示は、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体、1つ以上の等張剤、緩衝剤、並びに非イオン性界面活性剤を含む組成物を提供する。
【0040】
本開示の抗体は、アミロイドーシス疾患及び障害を治療するために使用される。抗体は、4つのポリペプチド:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つのコピーからなる。5タイプの重鎖:IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgE;並びに2つの可能な軽鎖:カッパ(κ)又はラムダ(λ)が存在する。各重鎖は、1つのN末端可変(V)領域及び3つのC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(V若しくはV、又はVλ若しくはVκ)領域及び1つのC末端定常(CL)領域を含む。抗体における軽鎖及び重鎖の各可変ドメインはまた、相補性決定領域(「CDR」)又は超可変領域と称される3つのセグメントを含む。軽鎖内の各CDRは、隣接重鎖内の対応するCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位を形成する。軽鎖及び重鎖の各ペアの可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する一方で、定常領域は、構造的支持体を提供し、抗原結合によって開始される免疫応答を調節する。
【0041】
本明細書に記載の抗体は、下の表1及び図8に示されるようなV領域(配列番号2)及びV領域(配列番号1)を有する。重鎖及び軽鎖におけるCDR配列は、表2及び図8に提供される。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
及びV領域をコードする遺伝子をクローン化し、既知のヒト抗体C及びC配列を用いてキメラ抗体を作製することができる。本開示の抗体が、アミロイドのβプリーツシート立体構造によって発現されるエピトープだけでなく、ALアミロイド線維に結合すると考えられる。
【0045】
開示抗体は、ヒト定常領域及び/又はフレームワーク領域の任意のタイプを含み得る。例えば、本開示のヒト化及びキメラ抗体は、ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、IgA、IgE、IgF、IgH、又はIgMの定常領域及び/又はフレームワーク領域を含み得る。一態様では、開示抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。
【0046】
抗体は、重鎖のそれぞれの破壊を引き起こし、3つの別々の抗体断片を産生する、タンパク質分解酵素パパインで切断することができる。軽鎖及び質量が軽鎖とほぼ等しい重鎖の断片からなる2つの同一ユニットは、Fab断片(即ち、「抗原結合」断片)と呼ばれる。重鎖の2つの等しいセグメントからなる第3のユニットは、Fc断片と呼ばれる。Fc断片は、典型的に、抗原-抗体結合に関与しないが、抗原の身体からの除去に関与する後のプロセスにおいて重要である。「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインの密な非共有会合での二量体からなる。それは、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定する、この立体構造である。集合的に、6つのCDRは、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、たとえ単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)が抗原を認識し、それに結合する能力を有しても、親和性が全結合部位より低い。「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することを可能にする、VH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0047】
いくつかの態様では、開示抗体は、アミロイド線維(例えば、カッパ及び/又はラムダ軽鎖原線維)に結合する能力を維持する限り、1つ以上の置換、挿入、又は欠失を含む。例えば、いくつかの態様では、本開示の抗体は、アミロイド線維に結合する能力を維持する限り、本明細書で開示される対応する重鎖及び軽鎖配列と比較して、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含む。他の態様では、本開示の抗体は、アミロイド線維に結合する能力を維持する限り、本明細書で開示される対応するCDR配列と比較して、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%の同一性を有するCDRを含む。
【0048】
本開示の抗体は、沈着物又は線維をいまだ形成していない有毒な循環アミロイドタンパク質に結合し、それを中和することができ、そしてアミロイド沈着物を溶解することができる。確かに、対応するマウス及びキメラ抗体は、線維に結合し、マウスにおけるヒトアミロイドーマを溶解することが実証された。
【0049】
本開示の組成物及び方法において有用な抗体は、配列番号3~8のCDR配列を含むモノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、アミロイド線維のβプリーツシート立体構造によって提示されたエピトープに結合する。一態様では、本開示の抗体は、ミスフォールドされたカッパ及びラムダ軽鎖に結合する。本明細書で用いられるとき、「ミスフォールド軽鎖に結合する」は、異常な軽鎖(カッパ及びラムダ)を認識し、それに結合するが、(天然の典型的な立体構造で)適切に折り畳まれた非凝集又は遊離軽鎖を認識せず、それに結合しない抗体の結合特異性を指す。天然軽鎖又はその断片は、機能的ペプチドであり、それは通常、タンパク質加水分解を通じて分解される。ミスフォールディング時、ペプチドは、その生理学的構造及び機能を失う可能性があり;立体構造変化は、ペプチドを非機能的でより安定にし、タンパク質加水分解を通じてその分解を阻止する。蓄積されたミスフォールド軽鎖は、互いに凝集し、アミロイド線維を形成することができ、次に互いに又はさらなるミスフォールド軽鎖とともにさらに凝集し得る。アミロイド線維は、細胞によって分解され得ず、細胞周囲のプラークで蓄積し、組織及び臓器の健常機能を破壊する線維性沈着物である。アミロイド沈着は、典型的に、所与の患者において、凝集したミスフォールドカッパ軽鎖、又はミスフォールドラムダ軽鎖を含み;通常、凝集体中にカッパ及びラムダ軽鎖の双方を含まない。本開示の抗体は、カッパ及びラムダ軽鎖の双方をそのミスフォールドされた立体構造において認識し、カッパ鎖又はラムダ鎖をその生理学的立体構造(適切に折り畳まれた軽鎖)において認識しない。凝集体は、抗体による認識対象である、ミスフォールドされたカッパ及びラムダ軽鎖の双方を含むことは必要とされない。
【0050】
組成物は、1つ以上の等張剤を含み得て、例えば、組成物は、1、2、3、4又はそれ以上の等張剤を含み得る。いくつかの態様では、1つ以上の等張剤は、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムから選択される。
【0051】
組成物は、多種多様な化学適用において、組成物のpHをほぼ一定値に保持するため、緩衝剤を含み得る。いくつかの態様では、緩衝剤は、酢酸ナトリウムである。
【0052】
組成物は、表面張力又は界面圧力を低下させるため、非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、組成物は、エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート(狭い範囲のエトキシレート、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルなど)、アルキルフェノールエトキシレート(APE又はAPEO、ノノキシノール及びTriton(登録商標) X-100など)、脂肪酸エトキシレート、特級エトキシル化脂肪酸エステル及び油、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド(ポリエトキシ化獣脂アミン、コカミドモノエタノールアミン、及びコカミドジエタノールアミンなど)、末端ブロック化エトキシレート(ポロクサマーなど)、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル(グリセロールモノステアレート及びグリセロールモノラウレートなど)、ソルビトールの脂肪酸エステル(スパン:ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、及びソルビタントリステアレート;並びにTweens(登録商標)、又はポリソルベート:Tween(登録商標) 20、Tween(登録商標) 40、Tween(登録商標) 60、及びTween(登録商標) 80など)、スクロースの脂肪酸エステル、及びアルキルポリグルコシド(セシルグルコシド、ラウリルグルコシド及びオクチルグルコシドなど)から選択される非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0053】
一態様では、組成物は、本明細書に記載の抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール及びポリソルベート80を含む。
【0054】
一態様では、組成物は、約20~40mg/mLの抗体を含む。別の態様では、組成物は、約15~35mMの酢酸ナトリウムを含む。さらに別の態様では、組成物は、約25~75mMの塩化ナトリウムを含む。一態様では、組成物は、約0.5~5%のマンニトールを含む。別の態様では、組成物は、約0.001~約0.1%のポリソルベート80を含む。さらに別の態様では、組成物は、約5~6のpHを有する。
【0055】
一実施形態では、組成物は、約30mg/mLの抗体;約25mMの酢酸ナトリウム;約50mMの塩化ナトリウム;約1%のマンニトール;約0.01~0.05%のポリソルベート80;及び約5.5のpHを含む。
【0056】
一態様では、組成物は、例えば、バイアル又はアンプル中に、30mg/mlの抗体、約25mMの酢酸ナトリウム、約50mMの塩化ナトリウム、約1%のマンニトール、約0.01~0.05%のポリソルベート80を含み、且つ約5.5のpHを含む。
【0057】
別の態様では、抗体は、天然画分、還元画分、及び異質な電荷を有するグリコシル化又は脱グリコシル化画分を含む、抗体分子の混合物である。抗体分子の混合物は、天然構造(天然画分を規定する)、還元構造(還元画分を規定する)、及びグリコシル化又は脱グリコシル化構造(不定にグリコシル化又は脱グリコシル化された画分を規定する)を有する場合を含み得て、それらのいずれかは異質な電荷を有する。
【0058】
化学的及び酵素的な細胞内及び細胞外機構によって誘導される翻訳後修飾(PTM)は、微小異質性、及び組換え抗体の電荷異質性に影響し得ることで、安定性、溶解性、有効性、安全性、薬力学及び薬物動態などの重要な品質属性に影響し得る。組換え細胞株、培地及びプロセスの設定もまた、これらの品質属性に影響し得る。表面電荷変異体の分布もまた、抗体の異質性の重要な尺度である。
【0059】
タンパク質の電荷変動は、修飾のタイプの中で異なり;一部のPTMがタンパク質の正味電荷を直接的に修飾する一方で、それ以外は立体構造変化及び局所電荷分布の変動を誘導する。生成物の主要画分よりも低い等電点(pI)を有する電荷種は、酸性変異体と定義され、シアリル化、アスパラギン及びグルタミンの脱アミド化、糖化、並びに他の機構によって作製される。糖化は、例えば、還元糖分子、最も一般的にはグルコースが、反応性アミノ基に共有結合的に結合される場合の非酵素的反応である。塩基性変異体は、主要画分より高いpIを有し、重鎖の不完全なC末端リジンクリッピングによって、並びに断片化及び凝集によって生成される種と定義される。ピログルタミン酸を形成するためのN末端グルタミンの環化は、N末端アミンの中性アミドへの転換による抗体の正電荷欠損の別の例である。脱アミド化は、アスパラギン残基をアスパラギン酸及び/又はイソアスパラギン酸残基及び/又はスクシンイミド中間体に非酵素的に修飾し、負電荷の出現をもたらすタンパク質の一般的な分解経路である。他の一部のPTMは、メチオニン酸化又はアスパラギン酸異性化であって、余分なメチル基の骨格タンパク質への挿入をもたらし、イソアスパラギン酸を形成する場合など、タンパク質の正味電荷の修飾を伴わずに局所電荷分布に影響する。電荷特性の修飾は、タンパク質の構造及び生物学的活性に潜在的に影響し得る。本開示の抗体の機能性に影響し得る他のPTMは、フクロース及びマンノースを含み、それぞれ、フコシル化及びマンノシル化抗体又はその断片を産生し得る。
【0060】
本開示の組成物は、いくつかの形態で存在し得、各形態が抗体組成物の画分を規定する、抗体を含む。例えば、抗体は、任意のストレスの不在下での抗体の主要形態であり、主要画分を表す、天然形態で存在し得る。抗体は、還元形態、又は還元及び脱グリコシル化形態であって、それぞれ、還元画分、並びに還元及び脱グリコシル化画分を表すような形態でも存在し得る。
【0061】
一態様では、天然画分は、シアリル化種、中性種、並びに/又はガラクトシル化、フコシル化及び/若しくはマンノシル化中性種を含む。他のグリコシル化形態の場合、フコシル化及び非フコシル化形態、並びに高マンノース型を含んでもよい。インタクトな抗体がヘテロ二量体であり、2つの重鎖分子を含有することから、インタクトな抗体中の各鎖上のグリコシル化は、他方の重鎖の場合と同じであっても又は異なってもよい。別の態様では、還元画分は、糖化リジンを有する軽鎖を含む。本明細書で用いられるとき、「糖化リジンを有する軽鎖」という語句は、リジンの様々なレベルの糖化を含むことを意味する。例えば、軽鎖の、リジンが全く糖化され得ないか、1個のリジン、数個のリジン、又は全てのリジンが糖化され得る。
【0062】
モノクローナル抗体の表面電荷分布の分析により、これらの修飾についての集約された情報が提供される。抗体の電荷異質性を測定するための一般的分析法は、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX)を含む。両方法は、広く用いられるが、塩勾配溶出を用いるIEX法は、標準として認識され、ルーチン的に用いられている。IEXの主な制限は、全ての抗体に適応される必要がある塩緩衝系である。しかし、pH勾配の使用が、生成物に依存しないことが示されたが、抗体の電荷異質性を測定するため、線形pH勾配によるカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)法を用いることもできる。これらの試験では、mAbの電荷変異体に対する、温度上昇又はアルカリ性pHでの強制的なストレス分解の影響が報告されている。そうしたストレス下で認められた分解は、主に、タンパク質の脱アミド化又は酸化反応を反映する、酸性種の増加を引き起こし、電荷異質性は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離によっても測定することができる。
【0063】
一態様では、抗体は、インタクトな抗体、ハーフマー断片、不完全抗体断片、他の断片及び/又はそれらの凝集体を含む混合物である。いくつかの態様では、ハーフマーは、1つ又は2つの重鎖(HC)及び1つの軽鎖(LC)を含む抗体分子である。他の態様では、不完全抗体は、HCのC末端領域が欠損した抗体である。いくつかの態様では、他の断片は、C末端リジンを保持するHCを含む。様々な態様では、抗体凝集体、又は抗体断片は、C末端リジンを保持することもあれば、保持しないこともある。
【0064】
組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、経口、経鼻、肺、眼、膣、又は直腸投与のために製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、リポソーム製剤などにおいて、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与のために製剤化される。
【0065】
様々な剤形に対して薬理学的に許容される担体は、当該技術分野で公知である。例えば、固体製剤のための賦形剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤は、公知であり;液体製剤のための溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、及び無痛化剤は、公知である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、1つ以上の保存剤、抗酸化剤、安定化剤などの1つ以上の追加成分を含む。
【0066】
加えて、本開示の医薬組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として、製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0067】
注射可能な無菌溶液は、適宜、必要量の活性化合物を上で列挙された成分の1つ又は組み合わせを有する適切な溶媒に組み入れ、その後に滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散媒は、活性化合物を、塩基性分散媒及び上で列挙された成分からの必要な他の成分を含有する無菌媒体に組み入れることによって調製される。注射可能な無菌溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末+任意の所望の追加成分を以前に無菌濾過されたその溶液から生成する真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0068】
本開示では、抗体がアミロイドーシス疾患又は障害を患う対象(例えば、ヒト患者)に投与され、患者の臓器に沈着されるようになっており、且つ/又は患者の血流中を循環しているアミロイド線維の少なくとも一部の分解及び除去が促進される。様々な実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗体の投与を含む治療方法を提供する。いくつかの態様では、治療有効量の抗体が投与される。典型的な投与経路は、医学の当業者によって十分に理解されるように、非経口(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)である。当然ながら、他の投与経路は可能である。投与は、以下に考察される通り、単独で又は追加療法と組み合わせて、単回又は複数回用量によってもよい。投与される抗体量、及び投与頻度は、特定の患者に対する医師によって最適化されてもよい。
【0069】
一実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイド沈着の量を低減する方法であって、約1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0070】
炎症性疾患又は長期透析などの外部因子に起因する、遺伝型及び孤発型を含む、多くの異なるタイプのアミロイドーシス疾患及び障害が存在する。アミロイドーシスは、異なる人々における異なる臓器を冒し得るが、異なるタイプのアミロイドが存在する。アミロイドーシスは、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系及び消化管を冒すことが多い。重度アミロイドーシスは、生命を脅かす臓器不全を引き起こし得る。多くのタイプが多臓器を冒す一方で、その他は身体の一部分のみを冒す。アミロイドーシスの徴候及び症状として、限定はされないが、足首及び脚の腫脹;重度の疲労及び脱力;息切れ;手足のしびれ、刺痛若しくは疼痛、特に手首の疼痛(手根管症候群);出血を伴う可能性がある下痢、若しくは便秘;不本意な著しい体重減少;肥大した舌;肥厚若しくは易皮下出血などの皮膚変化、及び眼の周りの紫がかった斑点;不規則な心拍;又は嚥下困難を挙げてもよい。
【0071】
一般に、アミロイドーシスは、ミスフォールド軽鎖タンパク質又はその断片の集積及び凝集に起因する。アミロイドは、任意の組織又は臓器において生成及び沈着され得る。病態、及び罹患臓器の具体的原因は、アミロイドーシスのタイプに依存する。アミロイドーシス又はアミロイド疾患には、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、遺伝性アミロイドーシス、野生型アミロイドーシス、及び局所アミロイドーシスといったいくつかのタイプが存在する。
【0072】
ALアミロイドーシス(免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス)、又は原発性アミロイドーシスは、最も一般的なタイプであり、心臓、腎臓、皮膚、神経及び肝臓を冒し得る。ALアミロイドーシスは、骨髄が破壊され得ない異常な抗体を産生するときに生じる。抗体は、組織又は臓器の正常な機能に干渉する、アミロイドプラークなどの様々な組織内に沈着される。
【0073】
AAアミロイドーシス、又は二次性アミロイドーシスは、一般に腎臓を冒すが、時として、消化管、肝臓、脾臓又は心臓も冒す。それは、関節リウマチ又は炎症性腸疾患などの慢性感染性又は炎症性疾患とともに生じることが多い。重度炎症性病態に対する改善された治療は、先進国におけるAAアミロイドーシスの症例数の急激な減少をもたらしている。
【0074】
遺伝性アミロイドーシス(家族性アミロイドーシス)は、通常は、肝臓、神経、心臓、及び/又は腎臓を冒す遺伝性障害である。出生時に認められる多くの異なるタイプの遺伝子異常は、アミロイド疾患又は遺伝性アミロイドーシスのリスク増加に関連する。アミロイド遺伝子異常のタイプ及び位置は、特定の合併症のリスク、症状が最初に出現する年齢、及び疾患が長期にわたって進行する様式に影響し得る。それは、最も一般的に、肝臓トランスサイレチン(TTR)タンパク質をコードする遺伝子が突然変異を受けるときに生じる。
【0075】
野生型アミロイドーシスは、肝臓によって作られるTTRタンパク質が正常であるが、未知の理由でアミロイドを産生するときに生じるアミロイドーシスサブタイプである。かつて老人性全身性アミロイドーシスとして知られた、野生型アミロイドーシスは、70歳を超える男性を冒す傾向があり、典型的に、心臓を標的にする。それは、手根管症候群も引き起こし得る。
【0076】
局所アミロイドーシス。このタイプのアミロイドーシスは、多臓器系を冒すサブタイプより良好な予後を有することが多い。局所アミロイドーシスにおける典型的部位は、膀胱、皮膚、咽頭又は肺を含む。
【0077】
様々な態様では、本明細書に記載の抗体は、AL、AA、TTR、野生型及び局所アミロイドーシスを含む、任意のミスフォールディングタンパク質障害の治療に使用することができる。一態様では、アミロイドーシスは、軽鎖(AL)アミロイドーシス、自己免疫(AA)アミロイドーシス及び遺伝性(TTR)アミロイドーシスからなる群から選択される。
【0078】
本開示の医薬組成物は、任意のタイプのアミロイドーシスの治療に使用することができる。本明細書で用いられるとき、「アミロイド沈着の量を低減する」という語句は、沈着の量の低減、沈着のサイズの低減、アミロイド線維の活発な脱構築、アミロイド線維を有する軽鎖の凝集の阻害、及び/又は対象における新たなアミロイド沈着の形成の阻害のいずれかを指すことを意味する。
【0079】
アミロイド沈着の量の低減は、一般に、抗体がそのような治療を必要とする対象において投与される場合の特定の薬理学的効果を提供する、即ち、アミロイド線維の量、サイズ、及び凝集能を低減、寛解、又は除去する、対象における抗体用量又は血漿濃度をそれぞれ指す、「治療有効量」の本明細書に記載の抗体の投与に依存する。薬剤の治療有効量又は治療レベルが、たとえそのような用量が当業者によって治療有効量であるとみなされるとしても、本明細書に記載の病態/疾患の治療に常に有効であると限らないことが強調される。治療有効量は、他の要素の中でも、投与経路及び剤形、対象の年齢及び体重、並びに/又は治療開始時のアミロイドーシスのタイプ及びステージを含む対象の病態に基づいて変化し得る。
【0080】
治療有効量は、標準技術によって測定される通り、既存のアミロイド沈着若しくはプラークのサイズ減少、アミロイド沈着の速度低下、又は臓器機能の改善などのアミロイド疾患の少なくとも1つの尺度における改善など、対象における「治療反応」を誘導するのに十分な用量又は量であってもよい。例えば、心臓にアミロイド沈着を有する患者において、臓器機能の改善(即ち、治療反応)は、患者のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベル低下又は患者のニューヨーク心臓病学会(NYHA)の機能分類レベルの低下によって示すことができる。また、心機能の改善は、心筋トロポニンレベルを測定することによって、心臓MRI及び心エコー図を分析することによって評価することができる。腎臓にアミロイド沈着を有する患者では、臓器機能の改善(即ち、治療反応)は、タンパク尿の減少又は尿中へのタンパク質漏出の速度及び推定される糸球体濾過率(eGFR)によって示すことができる。肝臓にアミロイド沈着を有する患者では、臓器の改善は、腹部膨満、肝腫大、腹水症、及び/又は乏尿症の減少によって示すことができる。肝臓の改善は、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル及び/又は血清γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベルの改善によって検出することができる。また、高脂血症、凝固異常、血小板減少症、プロトロンビン時間(PT)、赤血球沈降速度、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、血清アルブミン及び補体断片レベルなどの他の測定基準における改善は、それらのパラメータが、肝アミロイドーシスに対する特異性を欠いているため、あらゆる治療に先立って評価されたとき、肝機能の改善を示し得る。胃腸(GI)管にアミロイド沈着を有する患者では、臓器の改善は、運動性の変化、胃腸出血、吸収不良、体重減少、食欲不振、嘔吐、悪心、血腫、びらん及び潰瘍、又は結節性胃炎などの沈着に起因する症状の減少によって示すことができる。そのような改善は、従来のイメージング(例えば、超音波検査、コンピュータ断層撮影スキャナー、X線、内視鏡検査など)を用いて評価することができる。
【0081】
アミロイド沈着はまた、神経又はその近傍で生じる可能性があり、神経障害性疼痛、しびれ、及び進行症例における脱力の症状によって特徴づけられる、感覚運動多発ニューロパチーなどのアミロイドニューロパチーを引き起こし得る。そのような症状は、足で始まり、最終的に(手掌外側及び指を含む)近位手足に進行する。アミロイドニューロパチーを有する患者では、改善は、神経伝導試験(NCS)、筋電図描画法(EMG)、自律神経機能検査(AFT)、及び定量的軸索反射性発汗試験(QSART)のような電気生理学的検査によって評価することができる。
【0082】
本明細書で用いられるとき、「個体」、「患者」、又は「対象」という用語は、互換可能に用いることができ、本開示の抗体が投与されつつある、個体生物、脊椎動物、哺乳動物(例えば、ウシ、イヌ、ネコ、又はウマ)、又はヒトを指す。好ましい実施形態では、個体、患者、又は対象は、ヒトである。
【0083】
本開示の抗体は、本明細書に記載の抗体の投与に先立ち、以前に受けた何らかの治療がある場合と独立に、アミロイドーシスを有する任意の対象に投与することができる。抗体は、アミロイドーシス疾患又は障害が以前に治療されているか、又は一度も治療されていないかにかかわらず、投与することができる。
【0084】
一態様では、対象は、抗体の投与に先立ち、新たにアミロイドーシス疾患又は障害と診断される。他の態様では、対象は、抗体の投与に先立ち、アミロイドーシス疾患又は障害に対する治療を以前に受けている。
【0085】
一実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本開示の医薬組成物及び追加療法を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0086】
「治療」又は「治療する」という用語は、限定はされないが、アミロイドプラーク又は沈着物のクリアランス又は分解、疾患によって引き起こされる臓器(例えば、心臓、腎臓、肝臓など)の臓器機能の改善、及び患者の寿命又は5年生存率の増加を含む、アミロイドーシスの1つ以上の症状又は効果の低減、寛解又は除去を指す。本明細書で用いられるとき、「アミロイドーシスを治療する」という語句は、組織又は臓器におけるアミロイド沈着の蓄積によって特徴づけられる任意の疾患又は障害の治療を含むことを意味する。そのような治療は、既存のアミロイド沈着物の除去、臓器及び組織からのアミロイド沈着物の除去促進、ミスフォールド軽鎖を有するアミロイド線維の凝集阻害、アミロイド線維凝集の阻止、並びに臓器及び組織における将来のアミロイド沈着の阻止において有効であり得る。
【0087】
「~の投与」及び/又は「投与する」という用語は、本開示の抗体を治療有効量で治療を必要とする対象に提供することを意味すると理解されるべきである。投与経路は、限定はされないが、皮内、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、経皮、経気管、表皮下、アーティキュラーレ内、嚢下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内、経口、舌下頬側、直腸、膣、経鼻、眼投与とともに、注入、吸入、及び噴霧を含む。
【0088】
一態様では、抗体は、静脈内(IV)注入、皮下注射又は筋肉内注射によって投与される。
【0089】
いくつかの態様では、投与は、1つ以上の追加療法と組み合わせることができる。「併用療法」、「~と組み合わせた」などの語句は、応答を増加するための、2つ以上の薬物療法又は治療の同時使用を指す。本開示の医薬組成物であれば、例えば、アミロイドーシスを治療するための使用における他の薬剤又は治療と組み合わせて使用されてもよい。具体的に、本開示の抗体を含有する医薬組成物の対象への投与は、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植、又はそれらの組み合わせなどの形質細胞指向療法と組み合わせることができる。そのような治療法は、本開示の抗体又は抗体組成物の投与に対して前、同時又は後に投与することができる。
【0090】
シクロホスファミドは、免疫系を抑制する化学療法剤である。シクロホスファミドは、低レベルのALDHを有する細胞内のグアニンN-7位で、DNA鎖間及びDNA鎖内の双方でのDNA架橋の形成を誘導し得る。DNA架橋は、不可逆であり、細胞アポトーシスを引き起こす。シクロホスファミドは、適応免疫療法において、特にT調節細胞(CD4+CD25+T細胞)を除去することによって、有利な免疫調節効果を誘導する。
【0091】
ボルテゾミブは、26Sプロテアソームの触媒部位に高い親和性及び特異性で結合する抗がん薬物療法である。ボルテゾミブは、プロテアソームを阻害することによって、プロアポトーシス因子の分解を阻止し、それにより腫瘍細胞におけるプログラム細胞死を誘起する。
【0092】
デキサメタゾンは、リウマチの問題、いくつかの皮膚疾患、重度アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クループ、脳腫脹、眼科手術後の眼痛を含む、多くの病態の治療に使用されるコルチコステロイド薬物療法であり、結核においては抗生物質を伴う。
【0093】
CyBorDは、通常は多発性骨髄腫の治療に使用される、シクロホスファミド、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンの組み合わせである。
【0094】
ダラツムマブは、多発性骨髄腫細胞内で過剰発現される、CD38に特異的なIgG1kモノクローナル抗体である。ダラツムマブは、CD38に結合し、抗体依存性細胞傷害性、補体依存性細胞傷害性又は抗体依存性細胞食作用を介して、アポトーシスを誘導した。
【0095】
メルファランは、多発性骨髄腫、卵巣がん、メラノーマ、及びアミロイドーシスを治療するために使用される化学療法剤である。それは、経口的又は静脈内に投与され、アルキル化を通じて、DNAヌクレオチドグアニンを化学的に改変する。アルキル化は、DNAの鎖間の結合を引き起こし、そこでDNA合成及びRNA合成を阻害し、分割及び非分割腫瘍細胞の双方において細胞傷害性を引き起こす。メルファランの一般的副作用は、アミロイドーシスの治療に有利である骨髄抑制を含む。
【0096】
レナリドミドは、多発性骨髄腫(MM)及び骨髄異形成症候群(MDS)を治療するために使用され、少なくとも1つの他の治療とともに、一般にはデキサメタゾンと一緒に投与することができる。
【0097】
イサツキシマブは、多発性骨髄腫の治療に使用されるモノクローナル抗体である。イサツキシマブは、造血及び多発性骨髄腫細胞の表面で発現されるCD38に選択的に結合し、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)などの免疫エフェクター機構を活性化する。
【0098】
ベネトクラクスは、抗アポトーシスB細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質をブロックし、CLL細胞のプログラム細胞死を引き起こすBH3ミメティックである。
【0099】
本明細書で用いられるとき、「形質細胞指向療法」という語句は、形質細胞(血漿B細胞又は抗体産生細胞)を特異的に阻害するために用いることができる任意の指向又は標的療法を指すことを意味する。形質細胞標的療法として、限定はされないが、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、プロテアソーム阻害剤及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
一態様では、抗体は、追加療法に対して前、同時又は後に投与される。他の態様では、抗体は、追加療法の前に投与される。
【0101】
一実施形態では、本発明は、B細胞リンパ増殖性障害を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象における形質細胞疾患を治療することを含む、方法を提供する。
【0102】
B細胞リンパ増殖性障害は、全身性ALアミロイドーシスに関連し得る。リンパ増殖性障害に関連するALアミロイドーシスは、これらの障害において生じる腫瘍性B細胞によって産生されるモノクローナル免疫グロブリン軽鎖に起因するように思われる。全身性アミロイドーシスを有する患者は、高レベルの骨髄腫タンパク質、心臓障害が好発する多臓器障害、及びネフローゼ症候群を有する。Ig単クローン性免疫グロブリン血症を引き起こすことが記載されているリンパ増殖性障害の中に、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫とも称される)、慢性リンパ性白血病、及びアミロイドーシスに関連する他のリンパ腫(非ホジキンリンパ腫のタイプ)が含まれる。
【0103】
多発性骨髄腫は、正常な造血の抑制、モノクローナル免疫グロブリン又は断片(軽鎖又は重鎖)の産生、免疫抑制、腎症及び神経障害をもたらす、骨髄におけるクローン形質細胞の増殖によって特徴づけられる高分化型Bリンパ球のクローン性悪性腫瘍である。これらの知見は、様々な臓器における免疫グロブリン(重鎖又は軽鎖)の直接的損傷又は蓄積から得られることが多い。しかし、免疫グロブリン沈着に起因する毒性効果及び臓器機能障害は、重症度、臨床症状及び予後が、ALアミロイドーシスにおいて認められるような「アミロイド原性」軽鎖沈着に起因する場合と異なる。
【0104】
骨髄腫及びリンパ腫及び臓器障害との併存状態としての全身性アミロイドーシスの存在は、転帰悪化に関連する。
【0105】
一態様では、B細胞リンパ増殖性障害は、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫及びアミロイドーシスに関連するリンパ腫からなる群から選択される。
【0106】
様々な態様では、B細胞リンパ増殖性障害は、多発性骨髄腫である。
【0107】
別の態様では、対象は、B細胞リンパ増殖性障害に対して現在又は以前に治療を受けている。一態様では、B細胞リンパ増殖性障害に対する治療は、化学療法を含む。
【0108】
一実施形態では、本発明は、多発性骨髄腫を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象におけるアミロイドーシスを治療することを含む、方法を提供する。
【0109】
形質細胞骨髄腫、単に骨髄腫としても知られる多発性骨髄腫(MM)は、通常は抗体を産生する白血球の一種である形質細胞のがんである。MMは、初期に無症候であることが多く、疾患の進行に応じて、骨痛、貧血、腎機能障害、及び感染が生じる。MMの原因は未知であるが、肥満、放射線曝露、家族歴、及び特定化学物質がリスク因子であると考えられる。
【0110】
Bリンパ球は、骨髄で産生され、成熟時にリンパ節に再配置する。Bリンパ球は、進行すると、成熟し、その細胞表面上で異なるタンパク質を提示する。Bリンパ球は、活性化されて抗体を分泌するとき、形質細胞として知られる。多発性骨髄腫は、リンパ節の胚中心を残した後、Bリンパ球内で発現する。MM細胞に最も密接に関連する正常細胞系は、一般に、活性化メモリーB細胞又は形質細胞の前駆体である形質芽細胞のいずれかに解釈される。免疫系は、B細胞の増殖及び抗体の分泌を厳格な管理下で維持する。突然変異又は転座などの遺伝的事象は、MMの発生を引き起こし得るB細胞増殖の重要な調節に関与し得る。
【0111】
多発性骨髄腫は、くすぶり型骨髄腫に進行する、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症から発生する。異常な形質細胞は、異常な抗体及び/又はモノクローナル遊離軽鎖を生成し、腎臓の問題及び濃すぎる血液を引き起こし得る。形質細胞はまた、骨髄又は軟部組織において塊を形成し得る。1つの腫瘍が生じると、それは形質細胞腫と呼ばれ;2つ以上の腫瘍の存在は、名称が多発性骨髄腫となる。多発性骨髄腫は、血液又は尿検査で見出される異常な抗体、骨髄生検で見出される癌性形質細胞、及び医用画像で見出される骨病変に基づいて診断される。別の一般的所見が、高い血中カルシウムレベルである。多くの臓器が骨髄腫によって冒され得ることから、症状及び徴候は大きく変化する。疲労及び骨痛は、診察時の最も一般的な症状である。様々な効果がMMによって誘導されることから、疾患を診断するための方法は様々である。MMは、血液検査、病理組織学、医用画像、又は診断基準の使用を通じて診断され得る。
【0112】
血液検査は、通常、パラプロテイン(モノクローナルタンパク質、又は骨髄腫タンパク質及び/又はモノクローナル遊離軽鎖)の存在;全てのクラスの免疫グロブリン、特に、IgGパラプロテイン、IgA及びIgMのレベル増加;単離された軽鎖及び/又は重鎖(κ軽鎖若しくはλ軽鎖又はα重鎖、γ重鎖、δ重鎖、ε重鎖若しくはμ重鎖の5タイプのいずれか)のレベル増加;カルシウムレベルの上昇(破骨細胞が骨を破壊しながら、それを血中に放出するとき)、及び/又は腎機能低下に起因する血清クレアチニンレベル上昇の検出に依存する。
【0113】
病理組織学を用いて、形質細胞によって占められる骨髄の百分率を、骨髄生検を実施することによって推定することができる。表面タンパク質の発現に基づく特定の細胞型の特徴づけを用いて、細胞質内、場合によって細胞表面上で免疫グロブリンを発現する形質細胞を検出することができる。骨髄腫細胞は、CD56、CD38、CD138、及びCD319陽性、並びにCD19、CD20、及びCD45陰性であることが多い。細胞の形態についても、骨髄腫細胞に特有の特徴として、試験し、用いることができる。
【0114】
多発性骨髄腫が疑われる者の診断検査は、典型的に、骨格検査又はPET-CTを含む。骨格検査又はPET-CTが陰性である場合、骨病変を検出するため、全身MRIが実施される。
【0115】
MMの診断を助けるため、診断基準が開発されている。症候性骨髄腫の診断は、患者が以下の基準:クローン性形質細胞が骨髄生検又は他の組織からの生検で(任意の量で)>10%を占める(形質細胞腫);モノクローナルタンパク質(骨髄腫タンパク質)が血清又は尿のいずれかで検出され、それが3g/dLより高い(真の非分泌性骨髄腫の症例を除く);及び形質細胞障害(関連の臓器又は組織障害、CRAB)に関連する終末臓器障害の証拠が見出されること、の少なくとも1つを満たすとき、確定される。
【0116】
CRAB基準は、多発性骨髄腫の最も一般的な徴候を包含する:
カルシウム:正常上限より>0.25ミリモル/l(>1mg/dl)高い血清カルシウム又は>2.75ミリモル/l(>11mg/dl);
腎不全:クレアチニンクリアランス<40ml/分又は血清クレアチニン>1.77モル/l(>2mg/dl);
貧血:正常下限未満の>2g/dlのヘモグロビン値、又はヘモグロビン値<10g/dl;
骨病変:骨格ラジオグラフィー、CT、PET/CT又はMRIに対する1つ以上の溶骨性病変。
【0117】
多発性骨髄腫において、進行度診断は、予後診断を補助するが、治療決定を導かない。MMは、ステージI~IIIのように分類され得る。ステージI:β2ミクログロブリン(β2M)<3.5mg/L、アルブミン≧3.5g/dL、正常な細胞遺伝学、LDHの上昇なし。ステージII:ステージI又はステージIIIの下で分類されない。ステージIII:β2M≧5.5mg/L及びLDH上昇又は高リスク細胞遺伝学[t(4,14),t(14,16)、及び/又はdel(17p)]のいずれか。
【0118】
骨髄腫タンパク質は、異常な増殖するモノクローナル形質細胞によって過剰に産生される、異常な抗体(免疫グロブリン)又は(より多くは)免疫グロブリン軽鎖などのその断片である。そのようなタンパク質についての他の用語は、骨髄腫タンパク質、M成分、Mスパイク、スパイクタンパク質、モノクローナルタンパク質又はパラプロテインを含む。骨髄腫タンパク質のこの増殖は、免疫機能の障害、異常に高い血液粘度(血液の「厚み」)、及び腎損傷を含む、身体に対するいくつかの有害な効果を有する。
【0119】
骨髄腫は、形質細胞の悪性腫瘍である。形質細胞は、免疫グロブリンを産生し、それぞれは重鎖及び軽鎖の対からなる。多発性骨髄腫において、悪性クローンの変異形質細胞は、制御されない様式で複製し、元の細胞が産生するように作製された、特異抗体の過剰産生をもたらし、正規分布で、Mスパイク(又はモノクローナルスパイク)と呼ばれる、「スパイク」をもたらす。尿中又は血液中のパラプロテインの検出は、最も多くは、多発性骨髄腫において、多発性骨髄腫の前駆体である、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)に関連する。血液中の過剰性は、パラプロテイン血症として知られる。正常な免疫グロブリン抗体と異なり、パラプロテインは、感染と闘うことができない。
【0120】
現在、MM患者は、臓器内のALアミロイドーシス沈着に対して全く利用できない、腫瘍に対する化学療法で治療されるが、彼らの臨床症状及び予後は、それらの臓器アミロイド沈着に関連する。本明細書に記載の抗体は、臓器からアミロイドを除去することが予想される。というのは、これらの併存性のリンパ増殖性障害における全てのアミロイドが、抗体の標的のミスフォールドした免疫グロブリン軽鎖から生じるからである。
【0121】
一態様では、対象は、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている。いくつかの態様では、多発性骨髄腫に対する治療は、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0122】
「化学療法」又は「化学療法剤」という用語は、本明細書で用いられるとき、がんを治療するために使用される任意の治療薬を指す。化学療法剤は、細胞に対して有毒な効果を有し、細胞死又は増殖低下、特にがん細胞死を、それを引き起こす細胞経路と無関係にもたらす、任意の物質又は薬剤を含み得る。多発性骨髄腫の治療に使用可能な化学療法は、メルファラン(多発性骨髄腫、卵巣がん、メラノーマ、及びアミロイドーシスを治療するために使用される化学療法剤)、ビンクリスチン(オンコビン)、シクロホスファミド(Cytoxan、免疫系を抑制する化学療法剤)、エトポシド(vp-16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームドキソルビシン(ドキシル)、又はベンダムスチン(treanda)を含み得る。
【0123】
シクロホスファミドは、低レベルのALDHを有する細胞内のグアニンN-7位で、DNA鎖間及びDNA鎖内の双方でのDNA架橋の形成を誘導し得る。架橋されたDNAは、不可逆的であり、細胞アポトーシスを引き起こす。シクロホスファミドは、適応免疫療法において、特にT調節細胞(CD4+CD25+T細胞)を除去することによって、有利な免疫調節効果を誘導する。
【0124】
メルファランは、経口的又は静脈内に投与され、アルキル化を通じて、DNAヌクレオチドグアニンを化学的に改変する。アルキル化は、DNAの鎖間の結合を引き起こし、そこでDNA合成及びRNA合成を阻害し、分割及び非分割腫瘍細胞の双方において細胞傷害性を引き起こす。メルファランの一般的副作用は、アミロイドーシスの治療に有利である骨髄抑制を含む。
【0125】
コルチコステロイドは、脊椎動物の副腎皮質で産生されるステロイドホルモンのクラス、及びこれらのホルモンの合成類似体である。コルチコステロイド、グルココルチコイド及びミネラルコルチコイドの2つの主なクラスは、ストレス応答、免疫応答、及び炎症の制御、炭水化物代謝、タンパク質異化、血液電解質レベル、及び挙動を含む、広範囲の生理学的過程に関与する。いくつかの一般的な天然に存在するステロイドホルモンは、コルチゾール、コルチコステロン、及びコルチゾンである。コルチコステロイドの他の例として、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、フルニソリド、メチルプレドニソン(methylprendisone)及びヒドロコルチゾンが挙げられる。
【0126】
デキサメタゾン及びプレドニゾンなどのコルチコステロイドは、多発性骨髄腫の治療の重要な部分である。それらは、単独で又は治療の一部として他の薬剤と組み合わせて使用することができる。また、コルチコステロイドを用いて、化学療法が引き起こすかもしれない悪心及び嘔吐の低減が補助される。デキサメタゾンは、リウマチの問題、いくつかの皮膚疾患、重度アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クループ、脳腫脹、眼科手術後の眼痛を含む、多くの病態の治療に使用されるコルチコステロイド薬物療法であり、結核においては抗生物質を伴う。
【0127】
「免疫モジュレーター」又は「免疫調節剤」という用語は、本明細書で用いられるとき、免疫系を調節する任意の治療薬を指す。免疫モジュレーターの例として、エイコサノイド、サイトカイン、プロスタグランジン、インターロイキン、ケモカイン、チェックポイントレギュレーター、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバー及びインターフェロンが挙げられる。免疫モジュレーターの具体例として、PGI2、PGE2、PGF2、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、CXCL13、CXCL-8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL15、IL17、IL17、INF-α、INF-β、INF-ε、INF-γ、G-CSF、TNF-α、CTLA、CD20、PD1、PD1L1、PD1L2、ICOS、CD200、CD52、LTα、LTαβ、LIGHT、CD27L、41BBL、FasL、Ox40L、April、TL1A、CD30L、TRAIL、RANKL、BAFF、TWEAK、CD40L、EDA1、EDA2、APP、NGF、TNFR1、TNFR2、LTβR、HVEM、CD27、4-1BB、Fas、Ox40、AITR、DR3、CD30、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、BAFFR、TACI、BCMA、Fn14、CD40、EDARXEDAR、DR6、DcR3、NGFR-p75、及びTajが挙げられる。免疫モジュレーターの他の例として、トシリズマブ(actemra(登録商標))、CDP870(シムジア(登録商標))、enteracept(エンブレル(登録商標))、アダリムマブ(humira(登録商標))、キネレト(登録商標)、アバタセプト(orencia(登録商標))、インフリキシマブ(レミケード(登録商標))、リツキシマブ(rituzimab)(リツキサン(登録商標))、ゴリムマブ(シンポニー(登録商標))、アボネックス(登録商標)、rebif(登録商標)、recigen(登録商標)、plegridy(登録商標)、betaseron(登録商標)、copaxone(登録商標)、novatrone(登録商標)、ナタリズマブ(tysabri(登録商標))、フィンゴリモド(gilenya(登録商標))、テリフルノミド(aubagio(登録商標))、BG12、テクフィデラ(登録商標)、及びアレムツズマブ(キャンパス(登録商標)、レムトラーダ(登録商標))が挙げられる。
【0128】
多発性骨髄腫を治療するために使用可能である免疫調節性薬剤は、サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミドを含む。
【0129】
サリドマイド(thalomid(登録商標))は、鎮静剤として、また妊婦におけるつわりに対する治療として、数十年前に最初に使用された。それは、先天性欠損を引き起こすことが見出されたとき、市場から撤退されたが、多発性骨髄腫に対する治療として再び利用可能になった。サリドマイドの副作用は、眠気、疲労、重度の便秘、及び有痛性神経障害(ニューロパチー)を含み得る。ニューロパチーは、重度であり得ることで、薬剤の停止後に消失しないかもしれない。また、脚部で開始し、肺に移動し得る重篤な血餠のリスクが増加する。
【0130】
レナリドミド(revlimid(登録商標))は、サリドマイドと類似している。それは多発性骨髄腫の治療において十分に機能する。レナリドミドの最も一般的な副作用は、血小板減少症(低血小板)及び低白血球数である。それは有痛性神経障害も引き起こし得る。血餠のリスクは、サリドマイドで認められる場合ほど高くないとしても、やはり増加する。骨髄腫が幹細胞移植又は初期治療のいずれかの後に寛解状態である場合の患者において、レナリドミドは、寛解を延長するための維持療法として投与されてもよい。
【0131】
ポマリドミド(pomalyst(登録商標))は、サリドマイドにも関連し、多発性骨髄腫を治療するために使用される。いくつかの一般的な副作用は、低赤血球数(貧血)及び低白血球数を含む。神経障害のリスクは、他の免疫調節剤を伴う場合ほど重度でないが、血餠のリスク増加にも関連する。
【0132】
プロテアソーム阻害剤は、細胞内の酵素複合体(プロテアソーム)を、細胞分裂を制御するために重要なタンパク質を破壊することから停止することによって機能する。それらは、正常細胞よりも多くの腫瘍細胞を冒すように思われるが、必ず副作用を伴う。多発性骨髄腫を治療するために使用可能なプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブを含む。
【0133】
ボルテゾミブ(velcade(登録商標))は、このタイプの薬剤で最初に認可されたものであり、多発性骨髄腫を治療するために使用されることが多い。それは、腎臓の問題を有する骨髄腫患者の治療において特に有益であり得る。骨髄腫が幹細胞移植又は初期治療のいずれかの後に寛解状態になった患者において、ボルテゾミブもまた、寛解を延長するための維持療法として投与されてもよい。
【0134】
カルフィルゾミブ(カイプロリス(登録商標))は、機能しなかった他の薬剤で既に治療されている患者における多発性骨髄腫を治療するために使用可能である、より新しいプロテアソーム阻害剤である。注入中、アレルギー性反応のような問題を予防するため、ステロイド薬デキサメタゾンが、最初のサイクルにおける各投与前に投与されることが多い。
【0135】
イキサゾミブ(ninlaro(登録商標))は、典型的に、3週にわたって週1回、口から摂取され、続いて1週休むようなカプセル剤であるプロテアソーム阻害剤である。この薬剤は、通常、他の薬剤が試みられた後に投与される。
【0136】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、どの遺伝子が、細胞内で活性である、又は作動するかに影響し得る薬剤のグループである。それらは、ヒストンと呼ばれる染色体中のタンパク質と相互作用することによってこのように振る舞う。多発性骨髄腫の治療に使用可能であるHDAC阻害剤は、パノビノスタットを含む。パノビノスタット(farydak(登録商標))は、ボルテゾミブ及び免疫調節剤で既に治療されている患者を治療するために使用可能であるHDAC阻害剤である。それは、典型的に、2週にわたって週3回摂取され、続いて1週休むようなカプセル剤である。次に、このサイクルは反復される。
【0137】
「免疫療法」という用語は、免疫系又は免疫応答を調節することを含む治療法の任意のタイプを指す。免疫系の調節は、免疫系を誘導、刺激又は増強するとともに、免疫系を低下させる、抑制する、又は阻害することを含む。免疫療法は、能動的又は受動的であり得る。受動的免疫療法は、除去すべき標的に特異的なモノクローナル抗体の投与に依存する。例えば、腫瘍標的化モノクローナル抗体は、がんを治療するための臨床的有効性を示している。能動的免疫療法は、細胞免疫を誘導し、標的薬剤に対する免疫記憶を確立することを目的とする。能動的免疫療法は、限定はされないが、ワクチン接種及び免疫モジュレーターを含む。多発性骨髄腫の治療に使用可能な免疫療法は、抗CD38抗体及び抗SLAMF7抗体、並びに抗体-薬物コンジュゲートなどのモノクローナル抗体を含む。
【0138】
ダラツムマブ(darzalex(登録商標))は、骨髄腫細胞上で見出される、CD38タンパク質に結合するモノクローナル抗体である。これは、がん細胞を直接的に殺傷するとともに、免疫系がそれらを攻撃することを助けると考えられる。この薬剤は、主に他のタイプの薬剤と組み合わせて使用されるが、骨髄腫に対するいくつか他の治療を既に有している患者において、単独で使用することもできる。ダラツムマブ及びヒアルロニダーゼ(darzalex(登録商標)faspro(登録商標))として知られる、より新しい薬剤の形態は、典型的に腹部領域内への数分にわたる皮下(皮膚下)注射として投与され得る。イサツキシマブ(sarclisa(登録商標))は、骨髄腫細胞上のCD38タンパク質に結合する別のモノクローナル抗体である。これは、がん細胞を直接的に殺傷するとともに、免疫系がそれらを攻撃することを助けると考えられる。この薬剤は、典型的に、少なくとも2つの他の治療が試みられた後に、他のタイプの骨髄腫薬と併せて使用される。
【0139】
エロツズマブ(empliciti(登録商標))は、骨髄腫細胞上で見出される、SLAMF7タンパク質に結合するモノクローナル抗体である。これは、免疫系ががん細胞を攻撃することを助けると考えられる。この薬剤は、主に、骨髄腫に対する他の治療を既に有している患者において使用される。
【0140】
「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、本明細書で用いられるとき、化学療法薬に連結されたモノクローナル抗体を指す。多発性骨髄腫の治療のための抗体-薬物コンジュゲートは、骨髄腫細胞上のBCMAタンパク質を標的にする抗体、及び化学療法剤を含む。ベランタマブマフォドチン-blmf(blenrep(登録商標))は、主に、骨髄腫に対する少なくとも4つの他の治療(プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、及びCD38に対するモノクローナル抗体を含む)を既に有している者における、骨髄腫を治療するために単独で使用可能である抗体-薬物コンジュゲートである。
【0141】
「核外輸送阻害剤」、又は「核外輸送の選択的阻害剤」(SINE)は、細胞核から細胞質への輸送に関与するタンパク質であるエキスポーチン1(XPO1又はCRM1)をブロックする薬剤である。この阻害は、アポトーシスによる細胞周期停止及び細胞死を引き起こし、SINE化合物は、抗がん薬として興味深い。セリネクサー(Xpovio(登録商標))は、多発性骨髄腫の治療における最終手段の薬剤として認可されている。それは通常、デキサメタゾンとともに使用される。
【0142】
「幹細胞移植」又は「骨髄移植」は、本明細書で用いられるとき、高用量化学療法を用いる、患者の全てのその骨髄内の細胞(骨髄腫細胞などのがん細胞を含む)の枯渇、及び新しい健常な造血幹細胞の移植を指す。幹細胞移植は、一般に多発性骨髄腫を治療するために用いられる。移植は、移植前に患者の骨髄若しくは末梢血から取り除かれた患者自身の幹細胞を用いる自家;又は患者の細胞型に一致したドナー(兄弟又は姉妹などの患者の近縁者など)からの造血幹細胞を用いる同種のいずれかであり得る。幹細胞移植は、多発性骨髄腫を有する患者に対する標準治療である。自家移植により、骨髄腫が一時期(数年であっても)除去され得るが、がんは治癒せず、骨髄腫が再発することが多い。
【0143】
放射線は、化学療法及び/又は他の薬剤に応答しておらず、疼痛を引き起こしており、破壊寸前であり得る骨髄腫によって障害された骨の領域を治療するために使用されてもよい。それは孤立性形質細胞腫に対する最も一般的な治療でもある。
【0144】
時として、手術を用いて、単一の形質細胞腫を除去しても、多発性骨髄腫を治療するために用いられることはまれである。脊髄圧迫が麻痺、重度の筋力低下、又はしびれを引き起こすとき、緊急手術が必要とされる場合がある。金属のロッド又はプレートを取り付けるための手術は、弱くなった骨の支持を補助することができ、骨折を予防又は治療するために必要とされ得る。
【0145】
多発性骨髄腫の治療に使用可能である本明細書に記載の全ての追加治療は、単独で又は様々な組み合わせで用いることができる。それらの組み合わせの中、以下の組み合わせ:
-レナリドミド(又はポマリドミド若しくはサリドマイド)及びデキサメタゾン;
-カルフィルゾミブ(又はイキサゾミブ若しくはボルテゾミブ)、レナリドミド、及びデキサメタゾン;
-ボルテゾミブ(又はカルフィルゾミブ)、シクロホスファミド、及びデキサメタゾン;
-エロツズマブ(又はダラツムマブ)、レナリドミド、及びデキサメタゾン;
-ボルテゾミブ、リポソームドキソルビシン、及びデキサメタゾン;
-パノビノスタット、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン;
-エロツズマブ、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾン;
-メルファラン及びプレドニゾン(MP)、サリドマイド又はボルテゾミブの存在下又は不在下;
-ビンクリスチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、及びデキサメタゾン(VADと呼ばれる);
-デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、及びシスプラチン(DCEPと呼ばれる);
-デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、及びエトポシド(DT-PACEと呼ばれる)、ボルテゾミブの存在下又は不在下;
-セリネクサー、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、
-イデカブタゲンビクルユーセル、B細胞成熟抗原特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法
が多発性骨髄腫の治療に使用されることが多い。
【0146】
薬剤療法の選択及び用量は、がんのステージ、患者の年齢及び腎機能、並びに患者がどの程度に虚弱であり得るかを含む多くの要素に依存する。幹細胞移植が計画される場合、ほとんどの医師は、骨髄を損傷し得る、メルファランのような特定の薬剤の使用を回避する。
【0147】
別の実施形態では、本発明は、形質細胞疾患を有する対象におけるアミロイドーシスを治療する方法であって、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む医薬組成物を対象に投与し、それにより対象における形質細胞疾患を治療することを含む、方法を提供する。
【0148】
形質細胞障害は、B細胞の単一クローンの不釣合な増殖、並びに血清、尿、又は両方における構造的且つ電気泳動的に均一な(モノクローナル)免疫グロブリン又はポリペプチドサブユニットの存在によって特徴づけられる、病因が未知の障害の多様な群である。未分化B細胞は、骨髄における発現後、通常、リンパ節、脾臓、及び消化管(例えば、パイエル板)などの末梢リンパ組織に侵入し、そこで成熟細胞に分化し始め、それぞれが、限られた数の抗原に応答し得る。一部のB細胞は、適切な抗原に遭遇後、形質細胞への増殖を経験する。各形質細胞系は、2つの同一重鎖(ガンマ[γ]、ミュー[μ]、アルファ[α]、デルタ[δ]、又はイプシロン[ε])及び2つの同一軽鎖(カッパ[κ]又はラムダ[λ])からなる、1つの特定の免疫グロブリン抗体の合成に関与する。通常は、わずかに過剰な軽鎖が産生され、少量の遊離ポリクローナル軽鎖の尿中排泄(≦40mg/24時間)が正常である。形質細胞障害は、病因が未知であり、1クローンの不釣合な増殖によって特徴づけられる。結果は、重鎖及び軽鎖の両方又は1タイプの鎖のみから構成され得るモノクローナル免疫グロブリンタンパク質(骨髄腫タンパク質)である、その産物の血清レベルでの対応する増加である。
【0149】
形質細胞障害は、2つのカテゴリーに分類することができる:(1)通常は無症候性であり、モノクローナルB又は形質細胞に関連し、慢性炎症性及び感染病態(慢性胆嚢炎、骨髄炎、腎盂腎炎、関節リウマチ、及び結核を含む)を伴う、又は他の障害(家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、カポジ肉腫、苔癬粘液腫、肝障害、重症筋無力症、悪性貧血及び甲状腺機能亢進症を含む)に関連する、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症;並びに(2)(a)くすぶり型多発性骨髄腫、(b)免疫グロブリン及び/又は軽鎖産生に関連する症候性及び活動性の多発性骨髄腫、(c)モノクローナル軽鎖に関連する原発性全身性アミロイドーシス(非遺伝性)、又は重鎖に関連する原発性全身性アミロイドーシス(IgG、IgA、IgM又はIgD重鎖病) (d)モノクローナルタンパク質の産生に関連するB細胞リンパ腫、のいずれかで無症候性であり得る悪性形質細胞障害。
【0150】
最も一般的な形質細胞疾患は、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS、くすぶり型多発性骨髄腫を伴い、患者がもしあれば非常に限られた臓器障害を有することからまだ病んでいない、形質細胞疾患である)、多発性骨髄腫、及び全身性軽鎖(AL)アミロイドーシスを含む。血漿細胞増殖及び骨髄腫タンパク質産生は、(1)高カルシウム血症又は悪性形質細胞によって分泌される毒性軽鎖に起因する、また一部の骨髄腫タンパク質が自己抗原に対する抗体活性を示すという事実に起因する、臓器、特に腎臓への損傷;(2)他の免疫グロブリンの産生低下に起因する、障害性免疫;(3)骨髄腫タンパク質が血小板をコーティングし、凝固因子を不活性化し、そして血液粘度を増加させる能力に起因する、出血傾向;(4)骨髄腫タンパク質及び/又は軽鎖が臓器(最も一般的に、心臓、腎臓及び肝臓)内に線維性沈着物を形成する能力に起因する、アミロイドーシス;並びに(5)骨基質及び/又は骨髄中のモノクローナル形質細胞による破骨細胞の過剰活性化に起因する、骨粗鬆症、高カルシウム血症、貧血、又は汎血球減少を含む、疾患の様々な症状に関連する。
【0151】
一態様では、形質細胞疾患は、低グレードB細胞リンパ腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0152】
いくつかの態様では、対象は、形質細胞疾患に対して現在又は以前に治療を受けている。他の態様では、形質細胞疾患に対する治療は、化学療法を含む。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明は、抗アミロイドーシス治療に対する候補としての多発性骨髄腫を有する対象を同定する方法であって、対象における軽鎖(AL)アミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着を同定し、それにより対象を抗アミロイドーシス治療に対する候補として同定することを含み、ここで対象におけるALアミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の同定は、対象が抗アミロイドーシス治療に応答する可能性を意味しており、抗アミロイドーシス治療は、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有し、且つ軽鎖に結合する抗体を含む。
【0154】
本明細書で用いられるとき、対象におけるALアミロイドーシス線維及び/又はアミロイドタンパク質前駆体の沈着の同定は、当該技術分野で公知のアミロイドーシスを診断する任意の方法を対象に施すことを含み得る。アミロイドーシスは、対象において、臨床検査、生検、及び/又は画像検査を用いて検出することができる。
【0155】
臨床検査は、アミロイドーシスを示し得る異常なタンパク質を検出するための血液及び尿分析を含み得る。徴候及び症状に応じて、さらに甲状腺及び肝機能検査が指示されてもよい。血液及び尿検査は、どの臓器が障害され、それらがどの程度損なわれるかを発見することにも寄与し得る。例えば、尿サンプル中のタンパク質のレベルで観察する24時間尿収集は、腎障害を示し得る、尿中の過剰なタンパク質を示し得る。また、血液検査を用いて、血液中の異常な抗体(免疫グロブリン)タンパク質の存在について検査し、(カッパ及びラムダ軽鎖のレベルを評価する)ことができる。
【0156】
組織生検は、アミロイド沈着の証拠を見出すための組織の小さいサンプルの採取を含む。あらゆる種類の組織又は臓器生検が、「コンゴーレッド染色」で染色し、分析し、アミロイドーシス沈着を検出することができる。浸潤性がより低い生検は、(腹部の皮膚下からの)脂肪パッド生検;口唇唾液腺生検(内唇);及び皮膚又は骨髄を含む。骨髄検査は、骨髄吸引(一部の液体骨髄の除去を含む)及び骨髄生検(1片の骨髄組織の1~2cmのコアの除去を含む)を含み得る。これらのサンプルは、アミロイド産生形質細胞の百分率を決定するために役立つことができ、実験室で検査されるとき、異常な形質細胞がカッパ又はラムダ軽鎖を産生しているか否かを同定することを補助し得る。浸潤性がより高い生検は、通常は、アミロイドーシスが疑われるが、骨髄、脂肪パッド、唇又は皮膚部位の生検が陰性になる場合に実施される、臓器生検を含み得る。そして、症状を示している臓器の外科的生検は、肝臓、腎臓、神経、心臓又は消化管(胃又は腸)において実施することができる。
【0157】
画像検査は、疾患の範囲を確立することを補助するために使用可能である、心エコー図及び他のイメージングを含み得る。心エコー図を使用し、アミロイド沈着は、心臓において、そのサイズ及び形状、並びにアミロイドのあらゆる影響の位置及び範囲を観察しながら検出することができる。他のイメージングは、MRI(磁気共鳴画像法)、及びCMR(心臓磁気共鳴の場合)、ピロリン酸スキャン(異常なタイプの心筋症が認められるか否かを評価するためにも使用される核医学検査)を含み得る。また、対象に注射される放射性トレーサーを使用する核イメージングを用いて、特定タイプのアミロイドーシスに起因する早期の心臓障害を明らかにすることができる。それはまた、異なるタイプのアミロイドーシス間の識別に役立つことができ、治療決定を導くことができる。また、本明細書に記載の抗体は、124Iなどの放射性トレーサーと共役され、標識抗体を作製するとき、イメージングを目的として使用することができる。そのようなイメージング技術は、対象における沈着アミロイド線維の局在化及び範囲の双方を提供し得る。したがって、本開示の標識抗体を用いて、疾患を有することが疑われる患者におけるアミロイド沈着疾患の存在を検出するとともに、治療の有効性を判定することができる。
【0158】
一態様では、対象は、多発性骨髄腫に対して現在又は以前に治療を受けている。
【0159】
別の態様では、該方法は、多発性骨髄腫に対する治療を対象に施すことをさらに含む。いくつかの態様では、多発性骨髄腫に対する治療は、化学療法、コルチコステロイド、免疫調節剤、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDCA)阻害剤、免疫療法、核外輸送阻害剤、幹細胞移植、放射線療法、手術、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0160】
本開示の抗体は、アミロイドーシスを有する任意の対象に、彼らのアミロイドーシスが血液学的に制御されるか否かにかかわらず、投与することができる。本明細書で用いられるとき、ALアミロイドーシスに関する「血液学的に制御されない」という記述は、疾患が完全寛解又は非常に良好な部分寛解のいずれでもないことを意味する。例えば、疾患は、患者が循環(即ち、血清又は尿)中に検出可能なレベルの有毒なアミロイド前駆体タンパク質を有するとき、又は患者の血液中若しくは血清中で障害された遊離軽鎖と障害されていない遊離軽鎖との間の差が>40mg/Lであるとき、血液学的に制御されない。例えば、対象は、血液学的に制御されたアミロイドーシスを有し得て、それ故に血液学的疾患を有しない。対象はまた、血液学的に制御されないアミロイドーシスを有し得て、それ故に血液学的疾患を有する。アミロイドーシス疾患の診断及び監視の双方のため、血清及び尿免疫固定法(それぞれ、SIF及びUIF)とともに、血清及び尿タンパク質電気泳動(それぞれ、SPEP及びUPEP)の双方を用いることができる。例えば、標準治療として、SPEP、UPEP、SIF、及び/又はUIFを3か月ごとに評価することができる。
【0161】
一態様では、対象は、血液学的疾患を有する。血液学的疾患は、例えば、障害された遊離軽鎖/障害されていない遊離軽鎖の差(dFLC)の尺度によって、SPEP又はUPEPのm-スパイクの尺度によって特徴づけることができる。
【0162】
一態様では、血液学的疾患は、障害された遊離軽鎖/障害されていない遊離軽鎖の差(dFLC)>5mg/dL又は異常比でのFLC>5mgによって特徴づけられる。
【0163】
別の態様では、血液学的疾患は、血清タンパク質電気泳動(SPEP)又は尿タンパク質電気泳動(UPEP)のm-スパイク>0.5g/dLによって特徴づけられる。
【0164】
一態様では、本開示は、対象における腎臓、胃腸管、肝臓又は心臓に関与する、アミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0165】
アミロイド疾患は、心臓を冒すと、多くのタイプの合併症を引き起こし得る。アミロイド沈着又はプラークが心拍の間に血液を満たす心臓の能力を低下させることから、心臓障害は、予後不良に関連する。各拍動とともにより少ない血液が送り出され、これが息切れを引き起こすことがある。また、心臓内又はその周辺のアミロイド沈着又はプラークは、臓器不全の中でも特に、不規則な心拍及びうっ血性心不全を引き起こすことがある。
【0166】
本明細書で用いられるとき、「心臓を含むアミロイドーシスを治療する」は、心臓におけるアミロイド線維の沈着に関連する任意の症状又は心臓におけるアミロイド線維の沈着によって影響を受ける任意の心臓機能若しくはパラメータの低減、寛解、改善、逆転などを指す。本明細書で用いられるとき、「心臓障害」は、アミロイド疾患を患っている患者が、心臓においてアミロイド沈着を有することを意味する。心臓におけるアミロイド沈着は、患者の血液中のNT-proBNPの放出及びNT-proBNPレベルの増加をもたらす。本明細書中で、患者は、NT-proBNPが650pg/mLを超える場合、心臓障害を有する。また、患者の心臓障害は、心筋トロポニン(cTn)レベルの上昇によって評価することができる。例えば、患者は、cTnTレベルが0.035g/L未満である場合、心臓障害を有する。
【0167】
心筋機能及びその改善は、心エコーを用いて、Smiseth et al.-Eur Heart J,37:1196に記載のようなグローバル縦ひずみ(GLS)を測定することによって測定可能である。心エコーでは、超音波を用いて、心筋のセグメント内の平均変形が測定され、GLSは、グローバルな左室機能の尺度としてのこれらのセグメントの平均である。アミロイド沈着は、肥厚した左室壁及び右室壁を生じ、硬直していて協調性が低い非拡張心室を生じ、心臓及び脈管構造に対して「ひずみ」をもたらし得る。専門用語の心エコーでは、「ひずみ」という用語を用いて、心筋における変形が説明され、それは、限定はされないが、心筋の局所短縮、肥厚、及び/又は延長を含んでもよい。ひずみは、心室機能の尺度として用いることができる。当該技術分野において通常の技能を有する者は、GLSを決定するための心エコーの使用方法について認知するであろうし、それが様々な方法で計算され得ることを理解するであろう。例えば、ラグランジアン式(ε=(L-L)/L=ΔL/L(式中、L0はベースライン長さであり、Lは得られる長さである))は、無次元尺度として、元の長さに対するひずみを定義し、ここで短縮は陰性となり、且つ延長は陽性となる。それは通常、パーセントで表される。代替的定義として、オイラーひずみは、瞬間長さに対するひずみを定義する:εE=ΔL/L。長期的変化の場合、ラグランジアンひずみは、εL=ΣΔL/Lとなり、オイラーひずみは、εE=Σ(ΔL/L)となる。その用語は、正常な心筋と虚血性心筋との間の変形における領域的差異の説明において、Mirsky and Parmleyによって最初に使用された。
【0168】
それ故、いくつかの態様では、本開示方法の患者は、抗体の投与時、グローバル縦ひずみ(GLS)における前処置GLSレベルと比較した改善を示す。いくつかの態様では、心臓障害を有する患者は、少なくとも650pg/mlのベースラインNT-proBNPを有し得る一方で、他の態様では、心臓障害を有する患者は、少なくとも700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、若しくは2300又はそれ以上のpg/mlのベースラインNT-proBNPを有し得る。
【0169】
いくつかの態様では、GLSの改善は、治療開始から約1週、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、又は約15週以内に生じ得る。いくつかの実施形態では、GLSの改善は、ラグランジアン式による計算として、GLSにおける、ベースラインと比較しての1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又はそれ以上のパーセント減少によって表すことができる。GLSレベルのベースラインと比較しての約2%又はそれ以上の低下は、臨床的に関連するとみなされる。いくつかの態様では、本開示の抗体による治療により、患者のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベルが、抗体の投与前に取得されたベースラインレベルと比較して、少なくとも約30%低下し得る。いくつかの態様では、NT-proBNPの低下は、抗体の投与前に取得されたベースラインレベルと比較して、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%又はそれ以上であり得る。他の態様では、開示抗体による治療により、抗体の投与後、患者のNT-proBNPレベルの約9100ng/L未満への低下がもたらされ得る。他の実施形態では、患者のNT-proBNPレベルは、抗体の投与後、約8000、約7000、約6000、約5000、又は約4000ng/L未満に低下し得る。いくつかの態様では、患者は、最初に、抗体の投与前、ニューヨーク心臓病学会(NYHA)機能分類クラスII又はIIIと分類され得るが、開示抗体による治療後、患者は、NYHA分類スケールでクラスIと分類され得る。しかし、腎機能が、eGFRが例えば30未満であるように低下すると、NT-proBNPは使用されないが、その代わり、BNPが測定される。
【0170】
免疫グロブリンは、4つのタンパク質鎖:カッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖のいずれかの2つの軽鎖、及びいくつかのタイプが存在する場合の2つの重鎖から構成される。ALアミロイドーシスにおいて、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のいずれかは、ミスフォールドされて、アミロイド線維又はプラークを形成し得る。それ故、一部の患者において、カッパ及びラムダ断片の双方がミスフォールドされ得る。サブグループ分析によると、ラムダの心臓障害及びカッパの心臓障害の両方を有する患者が、前処置レベルと比較して低減されたGLSを有することによって改善を示すことが示された。それ故、いくつかの態様では、患者は、軽鎖ラムダアミロイド心臓障害を有するとしてさらに特徴づけられる。他の態様では、患者は、軽鎖カッパアミロイド心臓障害を有するとしてさらに特徴づけられる。
【0171】
開示された治療方法は、本開示抗体が、たとえタンパク質が凝集し、アミロイド沈着を形成する前であっても、循環中の有毒なアミロイド前駆体タンパク質に結合し、それを中和することができると考えられることから、血液学的に制御されない疾患(即ち、完全寛解でも非常に良好な部分寛解でもない状態)を有する患者において特に有利であり得る。完全寛解は、陰性の血清及び尿免疫固定法及び遊離軽鎖(FLC)アッセイにおける正常比と定義される一方で、非常に良好な部分寛解は、<40mg/Lの障害された遊離軽鎖及び障害されていない遊離軽鎖間の差を有すると定義される。
【0172】
心エコーは、非侵襲的であり、心臓障害を有する軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者における心筋機能の改善を監視する、例えば、心臓障害を有するALAと診断された患者における、治療有効量の抗体の前記患者への投与後の約3週以内での心筋機能の改善を観察するため、使用することができる。いくつかの態様では、心筋機能の改善は、抗体の投与後の少なくとも3か月の延長期間にわたって持続する。
【0173】
アミロイド疾患が腎臓を冒すとき、それは腎臓の濾過能力を損なうことが多く、タンパク質を血液から尿へ濾出させること(即ち、タンパク尿)を可能にする。さらに、身体から廃棄生成物を除去する腎臓の能力が低下し、最終的に腎不全を引き起こすことがある。
【0174】
いくつかの態様では、疾患が患者の腎臓におけるアミロイド沈着又はプラークを含むとき、開示抗体による治療により、タンパク尿が、抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して、少なくとも約30%減少し得る。いくつかの態様では、患者の尿中のタンパク質の減少は、抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、患者の尿タンパク質排泄は、抗体の投与後の24時間あたり、約7000mg未満、約6000mg未満、約5000mg未満、約4000mg未満、又は約3000mg未満に減少し得る。
【0175】
本明細書で用いられるとき、「腎臓を含むアミロイドーシスを治療する」は、腎臓におけるアミロイド線維の沈着に関連する任意の症状又は腎臓におけるアミロイド線維の沈着によって影響を受ける任意の腎臓機能若しくはパラメータの低減、寛解、改善、逆転などを指す。
【0176】
アミロイド疾患は、胃腸(GI)管を冒すとき、GI管の栄養分を吸収する能力を損なうことが多くなる。アミロイド沈着に起因するGI管の適切な機能の欠如は、体重減少、下痢、腹痛、吸収不良、食道逆流、及び致死性出血を含む様々な程度の上部及び下部GI出血を引き起こし得る。肝臓症状は、黄疸、脂肪便症、食欲不振、並びに腹水症及び脾腫などの門脈圧亢進症に関連する症状を含む。
【0177】
本明細書で用いられるとき、「胃腸管を含むアミロイドーシスを治療する」は、GI管におけるアミロイド線維の沈着に関連する任意の症状の低減、寛解、改善、逆転などを指す。
【0178】
例えば、アミロイドーシス疾患は、肝臓を冒すとき、腹部膨満、肝腫大、腹水症、及び/又は乏尿症を誘導し得る。他の症状として、限定はされないが、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル及び/又は血清γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベル、高脂血症、凝固異常、血小板減少症、プロトロンビン時間(PT)、赤血球沈降速度、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、血清アルブミン及び補体断片レベルにおける変化を含んでもよい。血液分析及び身体検査と共役された、超音波検査、コンピュータ断層撮影スキャナー、X線、内視鏡検査などの従来のイメージングを用いて、肝臓におけるアミロイド沈着に関連する症状の任意の変化、寛解又は改善を監視することができる。
【0179】
様々な態様では、追加療法が対象にさらに施される。
【0180】
いくつかの態様では、追加療法は、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む。
【0181】
さらなる実施形態では、本開示は、対象における皮膚を含むアミロイドーシス疾患又は障害の1つ以上の症状を治療する方法であって、本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0182】
一態様では、皮膚を含むアミロイドーシス疾患又は障害の1つ以上の症状は、毛髪欠損、顔毛欠損及び体毛欠損を含む。
【0183】
一態様では、追加療法が対象にさらに施される。
【0184】
いくつかの態様では、追加療法は、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン、ダラツムマブ、メルファラン、レナリドミド、イサツキシマブ、ベネトクラクス、幹細胞移植又はそれらの組み合わせを含む。
【0185】
一実施形態では、本開示は、対象における軽鎖及びアミロイド線維の凝集を阻害及び/又は低減する方法であって、約1,000mg/mの、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を有する抗体を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0186】
本明細書で用いられるとき、「軽鎖及びアミロイド線維の凝集を阻害及び/又は低減する」は、互換的に、既存のアミロイド沈着物の除去を促進することと、軽鎖及びアミロイド線維の新規の凝集を通じて新しいものの形成を阻止することの双方を指してもよい。
【0187】
別の実施形態では、本開示は、対象におけるアミロイドーシス疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0188】
一態様では、医薬組成物を投与することにより、対象が幹細胞移植にとって適格になる。
【0189】
幹細胞移植又は骨髄移植は、アミロイドタンパク質を産生する骨髄内の形質細胞が、高用量の化学療法によって最初に破壊され、次いでドナーからの造血幹細胞で置換され、健常な骨髄に発現することから、アミロイドーシス疾患又は障害を患っている患者における最も有効な治療と考えられる。生存は、高用量化学療法及び末梢血幹細胞移植によって有意に改善され得る。しかし、幹細胞移植に適格であるように、対象はいくつかの正常な臓器機能を有しなければならず;それ故、多くの患者が、アミロイドタンパク質の集積が他の臓器の機能を冒していることから、この治療を受けることができない。本開示の抗体は、アミロイド線維が凝集する量、サイズ及び/又は能力を低減することによって、幹細胞移植に対する主な障壁の1つである臓器不全を減少させ、患者を幹細胞移植におけるレシピエント候補であるのに好ましい配置に置くことができる。
【0190】
他の態様では、幹細胞移植が対象においてさらに実施される。
【0191】
前記方法の治療有効量及び投与計画は、当業者によって容易に理解されるように、変更してもよい。投与計画は、最適な所望の応答(例えば、アミロイドプラーククリアランスの治療反応又は沈着アミロイド線維の量の減少)を提供するように調整されてもよい。
【0192】
一態様では、抗体は、少なくとも2週、3週又は4週にわたって毎週投与される。本開示の抗体の投与は、対象に投与される初期用量である、負荷用量が検討される。負荷用量は、例えば、後続する維持用量であり得る。
【0193】
一態様では、その後、維持用量の抗体が、対象にさらに投与される。
【0194】
維持用量は、負荷投与中に従うレジメンに類似するレジメンで投与することができ、又は維持用量は、負荷投与中に従うレジメンと比較して異なるレジメンで投与することができる。例えば、維持用量は、負荷用量よりあまり多くない頻度で投与することができる。
【0195】
いくつかの態様では、維持用量は、毎週投与での最初から2週後、3週後、4週後又はそれ以上の週経過後に、隔週、3週ごと、又は毎月投与される。
【0196】
様々な他の投与レジメンは、本明細書に記載の方法に適し得る。例えば、いくつかの態様では、単回用量の抗体が投与されてもよい一方で、他の態様では、いくつかの分割用量が長期的に投与されてもよく、又は該用量は、状況によって指示される通り、その後の投与において比例的に低減又は増加されてもよい。例えば、いくつかの態様では、開示抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって週1回又は週2回投与されてもよい。いくつかの態様では、開示抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって月1回又は月2回投与されてもよい。いくつかの態様では、開示抗体は、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって年1回又は年2回投与されてもよい。他の態様では、開示抗体又はその抗原結合断片は、患者の状況又は状態が示し得る通り、毎週1回、隔週1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、毎月1回、隔月1回、3か月ごとに1回、4か月ごとに1回、5か月ごとに1回、6か月ごとに1回、7か月ごとに1回、8か月ごとに1回、9か月ごとに1回、10か月ごとに1回、11か月ごとに1回、年2回、又は年1回投与されてもよい。
【0197】
例においてさらに詳述される通り、抗体による治療は、持続的であるだけでなく、迅速である。いくつかの態様では、患者は、治療反応(即ち、アミロイド沈着又はプラークのサイズ減少、プラーク形成の速度低下、又は臓器機能の改善)を、1週以下、2週以下、3週以下、4週以下、5週以下、6週以下、7週以下、8週以下、9週以下、10週以下、11週以下、12週以下、又はそれらの間の任意の時間枠以内に経験し得る。例えば、患者は、用量及び投与計画に応じて、治療反応を約1週以内又は約4.5週以内に経験し得る。
【0198】
患者に投与される抗体の治療有効量は、(単回用量又は複数回用量のいずれで投与されるにかかわらず)患者における沈着アミロイド線維の量を低減するのに十分である必要がある。そのような治療有効量は、患者における症候性変化を評価することによって、又は沈着アミロイド線維の量の変化を評価することによって(例えば、124I標識抗体を使用する沈着アミロイド沈着の放射免疫検出によって)決定することができる。したがって、本開示の標識抗体を用いて、該疾患を有することが疑われる患者におけるアミロイド沈着疾患の存在を検出するとともに、治療の有効性を判定することができる。
【0199】
例示的用量は、治療中の個体のサイズ及び健康、並びに治療中の病態に応じて変化し得る。いくつかの態様では、開示抗体の治療有効量は、約500mg/m~1000mg/mであってもよいが;いくつかの状況では、該用量は、より高くてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、治療有効量は、約1000、約975、約950、約925、約900、約875、約850、約825、約800、約775、約750、約725、約700、約675、約650、約625、約600、約575、約550、約525、又は約500mg/mであってもよい。
【0200】
一態様では、抗体の投与量は、約500mg/m~1,000mg/mである。多くの態様では、抗体の投与量は、約500mg/m、約750mg/m及び約1,000mg/mから選択される。
【0201】
同様に、いくつかの態様では、抗体の有効量は、約2,200mgであるが;いくつかの状況では、該用量は、より高いか又はより低くてもよい。いくつかの実施形態では、治療有効量は、50~5000mgの間、60~4500mgの間、70~4000mgの間、80~3500mgの間、90~3000mgの間、100~2500mgの間、150~2000mgの間、200~1500mgの間、250~1000mgの間、又はそれらの間の任意の用量であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、治療有効量は、約50 約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900、約2000、約2100、約2200、約2300、約2400、約2500、約2600、約2700、約2800、約2900、約3000、約3100、約3200、約3300、約3400、約3500、約3600、約3700、約3800、約3900、約4000、約4100、約4200、約4300、約4400、約4500、約4600、約4700、約4800、約4900、約5000又はそれ以上のmgであってもよい。
【0202】
一態様では、週用量が約1,000mg/mの抗体の投与は、約2,750mgの抗体を投与することを含む。
【0203】
他の態様では、週用量が約500mg/mの抗体の投与は、約1,375mgの抗体を投与することを含み、週用量が約750mg/mの抗体の投与は、約2,065mgの抗体を投与することを含む。
【0204】
同様に、いくつかの態様では、抗体の有効量は、約25mg/kgであるが;いくつかの実施形態では、濃度はより高いか又はより低くてもよい。いくつかの実施形態では、有効量は、約1~50mg/kg、約5~40mg/kg、約10~30mg/kg、又は約15~25mg/kg又はそれらの間の任意の値であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、有効量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、若しくは50又はそれ以上のmg/kgであってもよい。実施例11で示される通り、第3相試験結果は、範囲(最小/最大)及び中央値用量として提供され、例えば、19.8~31.1mg/kgの範囲で、中央値用量は25.6mg/kgであり、患者の大多数が22~28mg/kgの間で投与された(表17を参照)。
【0205】
一態様では、約1,000mg/mの抗体の投与は、約25mg/kgの抗体を投与することを含む。
【0206】
他の態様では、投与量が約500mg/mの抗体は、約12.5mg/kgの抗体を含み、投与量が約750mg/mは、約18.75mg/kgの抗体を含む。
【0207】
開示される治療方法はまた、状況が要求し得るような他の公知の治療方法と組み合わされてもよい。例えば、ALアミロイドーシスに対する現在の標準治療は、一般に自家造血幹細胞移植(ASCT)又は自家骨髄移植を含む。したがって、いくつかの態様では、開示抗体は、他の公知の治療に対して前、後、又は同時に投与されてもよい。いくつかの態様では、開示抗体は、他の治療オプションが失敗した後、又は疾患が進行し続けた後に限り、投与されてもよい。換言すれば、いくつかの実施形態では、開示抗体を用いて、難治性ALアミロイドーシスなどの難治性アミロイド疾患が治療される。
【0208】
上で考察したように、抗体は、追加療法と組み合わせて投与することができる。一態様では、抗体は、追加療法に対して前、同時又は後に投与される。
【0209】
様々な態様では、抗体は、追加療法の前に投与される。
【0210】
本明細書に記載の方法は、本開示の抗体の投与に依存する。様々な態様では、抗体の対象への投与は、抗体、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール、及びポリソルベート80を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0211】
目的の疾患を治療するためのその有効性に加えて、治療薬は、副作用、毒性、又は有害事象を含み得る、そのような疾患の治療に関連しない他の事象に関連し得る。例えば、治療薬は、用量の増加が認められた毒性の増加に関連するとき、治療有効用量の使用を制限又は禁止し得る、用量制限毒性に関連し得る。
【0212】
いくつかの治療法は、治療の開始前に認められなかった、又は治療への曝露後に強度若しくは頻度のいずれかが悪化した、治療中に発生した有害反応(TEAE)に関連し得る。一般的なTEAEとして、限定はされないが、悪心、下痢、尿路感染、疼痛、目まい、頭痛、疲労及び不眠が挙げられる。本明細書で用いられるとき、「重篤有害事象」という用語は、死亡をもたらし、生命を脅かし、入院患者の入院若しくは既存の入院の延長を必要とし、又は持続的若しくは有意な美観の損傷若しくは能力障害をもたらす、有害な医学的事象を意味する。
【0213】
例えば、本開示の抗体は、アミロイドーシスの治療と無関係の事象と関連し得る。
【0214】
一態様では、投与量が500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの抗体は、薬物関連有害事象を誘導しない。
【0215】
別の態様では、用量が500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの抗体は、用量制限毒性を誘導しない。
【0216】
また、アミロイドーシスを治療するための抗体の有効性は、抗体の薬物動態パラメータに基づいて測定することができる。
【0217】
例えば、抗体用量の有効性は、その標的(例えば、アミロイド沈着物)に結合するその能力として測定することができる。アミロイド沈着物は、λ軽鎖原線維及び/又はκ軽鎖原線維の凝集を含み得る。
【0218】
一態様では、500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの投与量は、抗体のアミロイド沈着物への結合を誘導する。
【0219】
抗体用量の有効性は、抗体による標的受容体の部位占有率として測定することができる。その部位占有率の標的受容体は、ある割合のアミロイド沈着物が抗体に結合され、それ故、分解に対して活発に標的にする、抗体の所与の用量について指し示すことができる。
【0220】
本明細書に記載の抗体の投与量は、例えば、標的の少なくとも50%の占有率を誘導するのに十分であり得る。抗体は、対象におけるアミロイド沈着物の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の占有率を誘導し得る。
【0221】
一態様では、投与量が500mg/m、750mg/m及び1,000mg/mの抗体は、少なくとも90%の標的受容体の部位占有率を達成する。
【0222】
抗体用量の有効性は、投与量と比較した、対象における測定時のその濃度として測定することができる。
【0223】
一態様では、対象における抗体の濃度は、投与量とともに増加する。
【0224】
抗体用量の有効性は、対象からアミロイド沈着物を効率的に除去する能力として測定することができる。
【0225】
一態様では、アミロイド沈着物は、λ軽鎖原線維及び/又はκ軽鎖原線維の凝集体を含む。他の態様では、抗体の投与により、臓器又は組織内に存在するアミロイド沈着物の除去が誘導される。様々な態様では、臓器又は組織は、心臓、腎臓、肝臓、肺、胃腸管、神経系、筋骨格系、軟部組織及び皮膚からなる群から選択される。
【0226】
以下の実施例は、本開示を例示するために示される。しかし、本開示がこれらの実施例に記載される特定の条件又は詳細に限定されるべきではないことは理解されるべきである。本明細書で参照される全ての印刷された出版物は、参照により具体的に組み込まれる。
【0227】
単独の又は形質細胞指向療法と組み合わせた、本開示の抗体の高用量の有効性について考察する実施例が以下に提示され、考察された適用について企図される。以下の実施例は、本開示の実施形態をさらに例示するために提供されるが、本開示の範囲を限定することは意図されない。それらが使用してもよい場合に典型的である一方で、当業者に公知の他の手順、方法論、又は技術が代替的に用いられてもよい。
【実施例
【0228】
実施例1
抗体産生及び特徴づけ
本開示の抗体は、宿主細胞にコドン最適化DNA配列をコードするプラスミドをトランスフェクトし、翻訳効率を改善し、且つ転写効率を改善し、抗体のアミノ酸配列を改変しないことによって作製した。
【0229】
細胞を、高い抗体価及び細胞密度に至らせるための条件下で培養した。作製プロセスは、最適な細胞片/収穫性の平衡及び抗体価に至るまでのバイオリアクター内での産生を含んだ。
【0230】
次に、得られた抗体を、様々なストレス条件下で電荷異質性を試験することによって特徴づけた。
【0231】
図1で例示の通り、天然、還元、及び還元+脱グリコシル化画分の分析によると、全ての画分が複雑な混合物であることが示された。全ての天然画分が、予想されたグリコシル化変異体の混合物を含有した。
【0232】
AV4及びAV5画分が、シアリル化種を含有した。主なピーク及びBV1画分が、より小さい中性種(G0及びG0F)に濃縮された。また、より多くの酸画分が、ガラクトシル化中性種(G1F及びG2F)に濃縮され、且つ天然AV5画分が、ハーフマー(HC/LC)、1つのHCのN末端半分が欠損している抗体、及び他の未知の断片に濃縮されることが示された。天然BV1画分が、予想通り、C末端リジンを保持するHCに濃縮され;還元されたAV3-5 LC画分が、糖化リジンに濃縮された。
【0233】
図1に図示の通り、抗体の電荷異質性を、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)分離(図1A)、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分離(図1B)及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX、図1C)によって評価した。結果は、明白な異質性が所与の方法の人為的結果でないことを示した。
【0234】
実施例2
第1A/B相試験
以前に抗形質細胞治療を受けた再発性又は難治性ALアミロイドーシス患者を登録した。患者に、開示抗体を、単回静脈内注入(第1a相)又は4週にわたる一連の毎週注入(第1b相)として投与した。つまり、開示抗体は、ALアミロイドーシスの特徴である、ALアミロイド線維のミスフォールド軽鎖を標的にするIgG1モノクローナル抗体である。開示抗体は、ヒトカッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖のアミロイド線維の双方に提示される立体構造エピトープに特異的に結合する。第1a相及び第1b相の双方において、用量エスカレーション「アップアンドダウン」設計を用いて、その場合、0.5、5、10、50、100、250及び500mg/mの連続用量を投与した。
【0235】
試験の主要目的は、抗体の最大耐用量を確立することであり、副次目的は、(1)冒された臓器肥大の減少及び/又は改善された臓器機能によって証拠づけられる、アミロイド負荷の低減を実証すること;(2)単回静脈内注入(第1a相)又は一連の毎週静脈内注入(第1b相)として投与されるときの抗体の薬物動態を決定すること;並びに(3)用量が250mg/m~500mg/mの間の差を判定することを含んだ。
【0236】
主要な組み入れ基準は、21歳以上であることを含み、患者は、以前に全身療法を受けていて、患者は、形質細胞標的療法を必要とせず、また患者は、3つ以下の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動状態を有した。
【0237】
主要な除外基準は、2.5mmより大きい脳室内隔壁、30cc/分未満のクレアチンクリアランス、施設正常上限より3倍高いアルカリホスファターゼ、及び3.0mg/dLより高いビリルビンを含んだ。
【0238】
第1a相試験において、用量エスカレーションは、「アップアンドダウン設計」に準じた。一旦耐容性を示すと、一連の患者のそれぞれが漸増用量の抗体を受けて、2名の患者を500mg/mの用量で登録した。たとえ500mg/mの用量を受ける患者であっても、用量制限毒性を全く報告しなかった。患者は、0週目に評価し、1週目に抗体を投与し、次に2週目、3週目、4週目、及び8週目に再評価した。
【0239】
第1b相試験において、注入は、0.5mg/mで開始し、4週にわたって週1回与えられる。一旦耐容性を示すと、一連の患者のそれぞれが漸増用量の抗体を受けて、6名の患者を500mg/mの用量で登録した。
【0240】
結果
27名の患者を抗体で治療した。26名の患者が応答について評価可能であった。8名の患者が第1a相を完了し、19名の患者が第1b相における治療を完了した。第1a相及び第1b相における年齢中央値は68歳であった。全ての患者が、第1a相及び第1b相の双方において、mAbの所与の用量及び500mg/mの最高用量レベルまでで耐容性を示した。薬物関連グレード4又は5の有害事象(AE)(グレード5のAEは、限定はされないが薬物関連死を含む)又は用量制限毒性は認められなかった。注入の3~4日後、2名の患者がグレード2の発疹を発現した。1名の患者が、第1a相(用量レベル4)において、また第1b相における再治療時に皮疹を発現した。免疫組織化学的染色を用いる皮膚生検によると、抗体が併発的な好中球浸潤とともにアミロイド線維に結合することが示された。同じ患者及び別の患者が、第1b相において同様の発疹を発現したが、それは抗体が軽鎖アミロイド線維に直接的に結合することの臨床及び相関データをさらに提供する。全体的に、評価可能な患者の63%(8名中5名)が、第1a相における抗体の1回注入後、臓器応答を示した。第1a相における応答までの時間中央値は、治療の完了後の4.5週であった。第1b相において、評価可能な患者の61%(18名中11名)が、治療の開始後の1週の応答までの時間中央値で有意な臓器応答を示し、より高い用量でより迅速な応答の傾向が認められた。さらに、評価可能な患者の67%(8名/12名)で心臓応答が認められ、33%(4名/12名)で腎臓応答が認められた。
【0241】
評価可能な患者のサブセットの患者特徴を下の表3に示す。
【0242】
【表3】
【0243】
第1a相/第1b相試験の終了時、18名の患者が評価可能な応答を有した(N=1は測定可能な疾患を有せず、N=2は治療を完了しなかった)。18名中12名(67%)は、改善された臓器応答を示した。具体的に、第1a相において、測定可能な疾患負荷を有する患者の63%(8名中5名)が、抗体の1回注入後、臓器応答を示した(2名が腎臓、2名が心臓、及び1名がGI)。第1b相試験において、測定可能な疾患負荷を有する患者の70%(10名中7名)が臓器応答を示し:心臓障害での応答について評価した4名中3名の患者が心臓応答を示し;腎臓障害での応答について評価した4名中4名の患者が腎臓応答を示し;GI応答を有する1名の患者を評価し;そして軟部組織応答を有する1名の患者が、°3→4°1にかけての関節炎の改善を示した。
【0244】
心臓応答
8名の患者を心臓応答について評価した。評価された測定基準の中に、NT-proBNP及びNYHAクラス基準を含めた。これらの全患者におけるベースラインレベルは、650pg/mlであった。患者の5名(63%)が、有意に改善された応答(即ち、NT-proBNPにおける≧30%の減少及び/又はNYHAのクラスIIIからクラスIへの変化)を示し、2名の患者が、安定なままであり、そして1名のみが、疾患進行の徴候を全く示さなかった。
【0245】
腎臓応答
8名の患者を腎臓応答について評価したが、タンパク尿は応答性を決定するための主要な測定基準であった。6名の患者(75%)が、有意に改善された応答(即ち、腎臓進行の不在下で、タンパク尿における≧30%の減少又は<0.5g/24時間まで減少)を示し、2名の患者が、安定なままであった。腎疾患進行の徴候(eGFRにおける>25%の悪化)を示す患者は認められなかった。
【0246】
試験結果の概要
抗体による治療は、十分な耐容性を示し、安全であった。薬物関連グレード4又は5の有害事象(AE)又は最大で500mg/mのMTDの用量制限毒性は認められなかった。さらに、抗体は、臨床的に有効である。大部分の患者において、たとえ4週にわたる単回注入又は毎週注入であっても、早期の持続的な臓器応答が認められた。心臓、腎臓、GI、皮膚、及び軟部組織応答を含む組織/臓器にわたって、応答の改善が認められた。確かに、抗体は、患者の67%において、アミロイド分解を安全に促進し、たとえALλ沈着を有する患者であっても、単なる単回用量後に臓器機能の改善をもたらす。抗体に対する患者応答は、迅速且つ持続的であった。確かに、応答時間中央値が第1a相試験において4.5週であり、第1b相試験において単に1週である場合、抗体は、任意の他の公知の治療標的であるアミロイド線維よりも迅速な陽性応答を提供する。抗体によるアミロイド線維の迅速な破壊は、臓器機能を改善する、拡大解釈すれば、この一様に致死性の疾患を有する患者における死亡率を有意に改善することができる。
【0247】
実施例3
グローバル縦ひずみを伴うALアミロイドーシスを有する患者におけるキメラ線維反応性モノクローナル抗体に対する心臓応答:第1B相試験からの結果
本明細書に記載の抗体の非盲検第1b相臨床試験を完了し、有望な結果を得た。この試験を実施し、グローバル縦ひずみ(GLS)を用いて、mAb投与に対する心筋機能の応答を評価した。
【0248】
再発性又は難治性ALアミロイドーシスを有する患者19名を試験に登録した(年齢±標準偏差、63±12;68%が男性)。53%が、軽鎖カッパアミロイドを有し、52%が、>650pg/mlのNTpro-BNPレベルによって定義されるような心臓障害を有した。患者19名のNTpro-BNPスクリーニング及びベースラインレベルを下の表9に示す。これらの心臓患者は、スクリーニング対ベースラインNT-proBNP値の差異に起因する、心臓の評価可能な主要な臨床分析下でない患者2名を含んだ。
【0249】
mAbを、用量エスカレーション設計における0.5、5、10、50、100、250及び500mg/mの逐次用量で、4週にわたって毎週投与した。ベースライン時及び治療後12週の臨床心エコー(ECHO)試験を比較した。左室駆出率(LVEF)(Simpson’s biplane法を用いて計算される)及びグローバル縦ひずみ(GLS)を含む、いくつかの心エコー変数が得られた。GLSを、スペックルトラッキング(TomTec-Arena 1.2,Germany)を用いて測定し、4-、2-、及び3-チャンバーに基づく測定の平均として計算した。対応のあるスチューデントt検定を用いて、心エコー変数をベースライン時及びmAbによる治療後12週で比較した。心エコー図パラメータの分析を下の表4に示す。
【0250】
【表4】
【0251】
新規な抗形質細胞療法は、血液学的応答における改善に伴って登場し続けている。臓器応答は、血液学的応答が確立された後であっても、やはり予測不能である。持続的な臓器機能障害は、血液学的応答と無関係に課題のままである。臓器障害を予防し、逆転させるため、アミロイド線維の除去を標的にする治療法が依然として求められる。
【0252】
全コホートにおけるベースラインから12週の試験にかけて、LVEF間(56.2±8.6%対56.2±9.5%、p=0.985)でもGLS間(-19.04±-5.11%対-19.73±-4.1%、p=0.119)でも有意な変化が認められなかった一方で、心臓障害を有する患者は、GLSにおける改善を示した(前が-15.58±-4.14%、後が-17.37±-3.53%、p=0.004)。抗体による治療前及び抗体による治療後12週目、心臓障害を有する患者の例示的な心エコー図は、治療前、2549pg/mLのNT-proBNP及び-9.58のGLS値のベースラインレベルを有した。mAb治療の12週後、患者は、GLSの-13.39への減少、及びNTproBNPの1485pg/mLへの減少を示した。サブグループ分析によると、ラムダアミロイド心臓障害を有する患者におけるGLSの改善(前の-14.3±-4.38%、後の-16.17±-3.74%、p=0.02)及びカッパアミロイド心臓障害の場合の改善傾向(前の-16.60±-4.10%、後の-18.16±-3.48%、p=0.07)が示された。さらに、試験の臨床分析において定義されるような心臓評価可能集団(スクリーニング値ではなく、ベースラインNT-proBNP値を用いる)についても、GLS%における統計学的に有意な減少をもたらし(P値0.0163)、ECHOグループによって提供される分析(-1.69)と数値的に類似する減少(-1.71)が得られた。下の表5は、心臓患者対心臓評価可能患者及び非心臓患者におけるGLSにおける減少の分析を示す。
【0253】
【表5】
【0254】
結論として、この試験は、ALアミロイド心臓障害を有する対象における、開示抗体の抗線維特異mAbへの曝露後の、GLSの有意な改善を示す。開示抗体の第1相投与は、図9で図示の通り、12週にわたって観察すると、心臓患者におけるGLSの改善をもたらした。心臓障害を有する患者10名中9名が、GLS%で改善した。薬物効果が認められないような帰無仮説下で、9名以上の患者が改善する確率は、約0.0107であり、薬剤が真に有効でない限り、患者10名中9名で改善を認めることが転帰として可能性が非常に低いことが示唆される。
【0255】
実施例4
血液学的に制御されない患者におけるキメラ線維反応性モノクローナル抗体に対する臓器応答
6つの化学療法治療を受けており、臓器応答を伴わずに治療に対して血液学的部分寛解を達成していた患者に、本明細書に記載のアミロイド線維反応性モノクローナル抗体(mAb)を投与した。投与後の3つの継続期間にわたり、抗体投与後、NT-proBNPの一貫した減少が認められ、患者は、臓器応答を達成した。しかし、抗体から離脱されると、遊離軽鎖が増加し、患者の状態が悪化した。次に、試験の完了後、臓器の進行が認められた。この患者の応答パターンにより、治験責任医師は、臓器応答が抗体治療に起因し、化学療法と独立に血液学的応答を誘導すると結論づけた。
【0256】
実施例5
併用のシクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CYBORD)を受けるALアミロイドーシス患者における抗体の耐容性の第2相試験の結果
本開示の抗体は、非盲検用量漸増第1相試験において、安全であり、500mg/mまで許容され、早期臓器応答に関連することが示された場合、単独療法として試験した。用量制限毒性(DLT)は認められず、PK特性は、直線性に達しないことが認められた。開示抗体が、ALアミロイドーシスの疾患経過を、組織内に沈着されたアミロイドの除去を促進することによって変更することが仮定された。
【0257】
MayoステージI、II及びIIIaのALアミロイドーシス患者における抗体の多施設非盲検逐次コホート用量選択試験(3+3)の目的は、27日の治療期間中の標準治療(SOC)の形質細胞悪液質(PCD)療法として、シクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)と組み合わせた抗体の安全性及び耐容性を明らかにし、その後の第3相試験のための推奨用量を決定することであった。
【0258】
試験は、以下の目的を伴う2つのパート:SoC CyBorDと組み合わせた開示抗体の安全性及び耐容性を定義し、開示抗体の推奨される第3相(RP3D)を決定するパートA;Soc CyBorD及びダラツムマブと組み合わせた開示抗体の安全性及び耐容性を評価するパートBに分割した。
【0259】
患者は、
異常比でFLC>5mg/dL、又は
血清タンパク質電気泳動(SPEP)m-スパイク>0.5g/dL
の少なくとも1つによって定義されるような測定可能な血液学的疾患を有した。
【0260】
患者は、4週にわたって毎週、来診し、抗体の2時間のIV注入を受け、安全性及び耐容性の評価を行った。その後、患者は、継続維持用量として、概ね隔週で抗体注入を受けている。
【0261】
実用量を、メートルの2乗での患者体表面積によって決定した。抗体は、同日の投与時、CyBorD化学療法前に最初に投与した。
【0262】
パートA
試験のパートAでは、500mg/mの用量から開始する、3+3用量エスカレーション設計を用いた。患者は、用量制限毒性(DLT)について観察した。第1コホートにおけるDLT観察期間は、初回注入から14日にわたった。それに続くコホートの場合、これは27日にわたった。次のより高用量の抗体を伴う新しいコホートへの登録は、以前のコホートに登録された最終患者におけるDLT観察期間が完了するようになるまで開始せず、さらなる投与コホートは750及び1000mg/mであった。少なくとも3名の患者を、500mg/mでのコホート1(n=4)、750mg/mでのコホート2(n=3)、及び1000mg/mでのコホート3(n=6)といった各投与コホートに登録した(表6を参照されたい)。DLT観察期間は、4週にわたって毎週であった。安全性評価は、バイタルサイン、身体検査、心電図(ECG)、免疫原性評価(ADA)、臨床実験室パラメータ(血液学、血清化学、尿分析)、及びTEAEを含んだ。抗体の薬物動態(PK)特性も評価した。
【0263】
表6に例示の通り、13名の患者は、平均で65.2年(範囲が47.6~79.6年)であった。大半が、男性(76.9%)、白人(84.6%)、及び非ラテンアメリカ系(100%)であった。MayoステージのI(7.7%)、II(69.2%)、及びIII(23.1%)が、登録患者における広範囲の疾患重症度を反映した。全ての患者が、彼らの4回目投与である、患者6名を登録している最高(1000mg/m)コホートを通じて治療奏功した。DLTは認められず、抗体は、全ての患者によって十分に耐容性があった。最も一般的なTEAEは、下痢及び悪心であった(それぞれが30.8%)(表7)。用量正規化されたPK濃度は、線形2区画モデルによって最もよく説明され、終末半減期が28日であった。
【0264】
【表6】
【0265】
この試験は、CyBorDを投与する、用量が最大1000mg/mの本記載の抗体が、ALアミロイドーシス集団において十分に耐容性があることを示した。一方でMayoステージIlla患者、他方でステージIllb患者を登録している、2通りの第3相有効性/安全性試験を開始しており、この第2相試験からの知見に基づき、用量が1000mg/mの抗体を、同試験における治療に使用中である。
【0266】
【表7】
【0267】
パートB
試験のパートBでは、患者(N=2)を、ダラツムマブ(dara)及び1000mg/mの開示抗体と組み合わせたCyBorDで治療した。DLT観察期間は、4週にわたって毎週であり、続いて隔週であった。
【0268】
皮下、1.3mg/mのボルテゾミブ、静脈内、300mg/m(500mgを上限とする用量)のシクロホスファミド及び静脈内、20mgのデキサメタゾン(CyBorD)を、治療を開示抗体に合わせるため、初回サイクルにおける35日サイクルの1日目、8日目、15日目に毎週投与し、次に、最大で6つの全サイクルにわたる28日サイクルの1日目、8日目、15日目に毎週投与した。CyBorDの終了後、開示抗体を隔週で継続した。用量漸増期の間、開示抗体の用量調節を行うことができなかった。毒性に起因するCyBorDの用量調節は、治療医師の自由裁量で行った。推奨される第3相用量が1000mg/mであることが判明した場合、より低い用量レベルの患者は、彼らの用量を1000mg/mに増加させることが認められた。
【0269】
主要な組み入れ及び除外基準は、次の通りであった:新規に診断された再発性患者が許容され;多発性骨髄腫及びALアミロイドーシスを有する患者が除外され;且つMayoステージIIIbが除外された。
【0270】
安全性及び投与の概要
開示抗体は、40~276日の間に投与した(データカットは2020年11月01日)。開示抗体は、進行中のCARES試験における推奨された第3相用量として確立された1000mg/mで、CyBorDと組み合わせて、安全であり、且つ十分な耐容性があることが示された。用量制限毒性又は治療関連中止は認められなかった。1000mg/mに漸増した患者2名の用量を、下痢及び嘔吐が理由で、それぞれ750mg/mに低減した。治療は進行中であり、患者の40%が少なくとも15回の開示抗体の注入を有する。1gの経口アセトアミノフェン及び25mgの経口ジフェンヒドラミンによる前投薬で、注入反応は認められなかった。
【0271】
試験治療薬に少なくとも関連する可能性がある最も一般的なTEAEを表10に示す。最も一般的なTEAEは、開示抗体との関連性に無関係に、第1相と同様、下痢及び悪心であった。1000mg/mから750mg/mへの用量減少を有した患者2名(それぞれが下痢及び嘔吐に対応)が、TEAE、それに続く回復を示した。
【0272】
【表8】
【0273】
試験治療薬に少なくとも関連する可能性がある最も一般的なTEAEを表8に示す。
【0274】
実施例6
抗体の第2相薬物動態分析の予備的結果
予備的第2相薬物動態(PK)データ分析の目的は、(1)500~1000mg/mのPK曝露における用量比例性を評価すること;(2)130μg/mLの標的Ctroughに達するための最低用量数/最小用量数を評価すること;並びに(3)部分的な第2相PKデータを用いて第3相用量及びレジメンの推奨を評価することであった。
【0275】
【表9】
【0276】
本開示の抗体の個別PKを経時的に評価し、第1b相試験のデータと比較した。図2A及び図2Bに図示の通り、第2相試験において、500、750、及び1000mg/mの用量が、それぞれ投与6、4、及び3に対して、完全なピーク(患者の血流中の抗体の最高濃度)及びトラフ(投与前の患者の血流中の最低濃度)のデータを有し)、500から1000mg/mにかけて、PK曝露における増加を示した。これは、濃度がより低く、変動性がより高い場合の第1b相試験からのデータと著しく異なる。
【0277】
図3A及び図3Bにさらに示す通り、抗体の平均PKの試験を経時的に評価し、第1b相試験のデータと比較した。第2相において、500、750、及び1000mg/mの用量が、それぞれ投与6、4、及び3に対して、完全なピーク及びトラフのデータを有し;500から1000mg/mにかけての用量で、PK曝露における増加を示した。これは、特に投与2から投与4の後、濃度がより低く、変動性がより高い場合の第1b相試験からのデータと著しく異なる。
【0278】
抗体の用量によるピーク曝露Cmax(μg/mL)の試験をさらに評価した。表10に示す通り、500mg/mで全体的にピーク曝露は、第2相及び第1b相試験の間で同等であった。投与1及び投与4の後、Cmaxは重複しており、投与3/投与1の蓄積比は、約1.43倍~2倍で類似していた。第2相は、投与2及び投与3の後、第1b相と比較して約50%より高いCmaxを有した。
【0279】
この第2相試験では、低い~中等度の変動性が認められた。1000mg/mで、最終の3データ点が変動性に加わった(より低いPK;ややより重篤な病状)。750mg/mで、最高%CVは、ダラツムマブに切り替えられた心臓でMayoステージ2を有する対象である、データ点1003~0005が原因であった。
【0280】
【表10】
【0281】
図4に図示の通り、抗体の全身曝露量は、0.5~500mg/mの用量範囲にわたって比例的な用量をやや上回ることが見出された(第1b相試験)。第1b相試験において、平均T1/2は、250及び500mg/mに対してそれぞれ10日及び16日であり、QuantPharmを有するモデルは、24日近傍のT1/2を示した。Cminは、3つの数字以下の平均で設定し、130ug/mLであった。NTproBNPは、500mg/mにおけるCminが約100ug/mLに減少していたとき、最終投与(880時間)後1週で増加し始めた(N=7pt)。他のバイオマーカーは、高度に可変であった。
【0282】
アミロイドの最大結合性における最大半量有効濃度(EC50)(インビトロ)は、約157ug/mLであり、ミハエリス-メントン(Menton)(MM)のEC90(計算値)は、約36.5ug/mLであった(95CI 5~134ug/mL)。
【0283】
第1a相/第1b相のモデリング及びシミュレーションは、最小予測定常状態CminSS(分析データセットからの患者中)が、250mg/m QW、750mg/m Q2W、又は1000mg/m Q3Wの投与計画に従い、このレベルを達成することを示した。Q4W投与の場合、たとえ用量が1000mg/mであっても、最低曝露の患者に限り、CminSSで82.7%の標的占有率を達成した。
【0284】
試験抗体の最小曝露Cmin(Ctrough、μg/mL)を、用量によって評価した。表11に示す通り、500mg/mで全体的にトラフ曝露は、第2相及び第1b相の間で重複し、第2相ではより高い傾向があった。第2相及び第1b相の間で、投与3/投与1の蓄積比は、2.3対4.4倍であった。この第2相では、低い~中等度の変動性が認められた。
【0285】
90%の受容体占有率における最小Ctroughが、1000mg/m下での第2週目投与;750mg/m下での第3週目投与;500mg/m下での第6週目投与の後、>130μg/mLで達成された。130μg/mLの目標は、第1a相/第1b相試験に基づいたが、新たな第2相データとともに変化する可能性が高い。
【0286】
【表11】
【0287】
試験抗体AUCτ(μg×時間/mL)を用量によって評価した。表14に示す通り、500mg/mで全体的に累積的曝露は、第2相及び第1b相試験の間で同等であった。投与1及び投与4の後、AUCτ値が重複していた。第2相試験では、投与3/投与1の蓄積比は、第1b相における2倍に対して3.3~4倍であった。
【0288】
この第2相試験では、投与2及び投与3の後、第1b相試験と比較して、約100%より高いAUCτが認められ;変動性は、低い~中等度であった。
【0289】
【表12】
【0290】
max/用量についての用量比例性評価を評価した。図5及び表13に例示の通り、この第2相試験において、Cmaxは、500mg/mから1000mg/mに、ほぼ用量比例的に増加した。これは、特に投与3後の場合であり、750mg/mで標的介在性薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0291】
【表13】
【0292】
さらに、Cmin/用量についての用量比例性評価を評価した。図6及び表14に例示の通り、この第2相試験において、Cminは、500mg/mから1000mg/mに、ほぼ用量比例的に増加した。これは、特に投与1後の場合であり、750mg/mで標的介在性薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0293】
【表14】
【0294】
加えて、AUCτ/用量についての用量比例性評価を評価した。図7及び表15に例示の通り、AUCτは、750mg/mから1000mg/mに、ほぼ用量比例的に増加し、750mg/mで標的介在性薬物動態(TMDD)の飽和が示された。
【0295】
【表15】
【0296】
結論として、本記載の抗体のPK試験の予備データによると、PK曝露が500~1000mg/mの試験用量範囲にわたる用量増加とともに増加し、TMDDがPK曝露における500~750mg/mの間の>用量比例増加及び750~1000mg/mの間のほぼ用量比例増加をもたらすことが示された。その情報は、安全性への懸念なしに最大耐用量を仮定しての1000mg/mの投与、また全ての対象が、2回目投与後、>所望のCmin(即時的、完全、及び持続的な標的飽和)に達することを支持した。したがって、この試験は、第3相試験プロトコルにおける、4QW負荷用量、それに続くQ2W維持;1000mg/mの用量レベルとして定義されるP3D(推奨された第3相用量)を示した。
【0297】
最高用量レベルでのこの第2相におけるPK及びPDデータの完全な収集、第1相及び第2相データを組み込んだPK/PDモデルの更新を用いて、第3相至適投与計画を精査することになり、新しい目標Ctroughを確立することができる。
【0298】
PK、試験材料、及びCyBorDの存在対不在(第1b相における一部の患者は試験前に化学療法で治療された)についてのBAアッセイにおける差が制限された一方で、初回投与(投与1)後の抗体曝露は、2つの試験間で重複したが、第2相試験における後続投与後、約30~100%より高かった。
【0299】
実施例7
抗体製剤及び用量
抗体製剤:
対象への投与のための抗体の製剤は、
30mg/mlの抗体、10ml/バイアル(=300mgの抗体)、
25mMの酢酸ナトリウム、
50mMの塩化ナトリウム、
1%マンニトール、及び
0.01~0.05%ポリソルベート80
を含有するものと定義した。
【0300】
製剤は、pH5.5で維持した。
【0301】
用量範囲評価:
集団薬物動態の試験は、体表面積(BSA)又は体重と相関がないことを示している。BSAによる最良の用量が、1000mg/mであり、2番目に良い選択肢が、ステップダウンとしての使用が求められるかもしれない)750mg/mであることが判定された。
【0302】
250~1375mg/mの間の全ての用量の範囲は、体重による最良の用量が25mg/kgで評価され;2番目に良い選択肢が18.75mg/kgであることを示した。
【0303】
6.25~31.25mg/kgの間の全ての用量の範囲は、標的介在性薬物動態(TMDD、薬剤が高親和性でその薬理学的標的部位に結合する現象)が750mg/m及びそれ以上で生じ;それが全ての患者のアミロイドサブタイプ及び重症度レベルにわたって割り当てられた投与についての決定的な観察であることを示した。
【0304】
意外にも、全ての患者のサブタイプ及び重症度は、潜在的にクリアランス及び飽和曝露における差異を認めることが予想される場合、類似するPK曝露特性を有した。低い/中等度の患者の変動性が、形質細胞指向療法(PCD)に応じた抗体用量、またそれと組み合わせた抗体用量の双方で認められた。
【0305】
一定用量範囲:
体重による一定用量の場合、患者を25mg/kgを受ける3つの用量群に分けた:
40~70kgs-1750mg/用量
71kg~100kg-2500mg/用量
>100kg-2750mg/用量
【0306】
BSAによる一定用量の場合、患者を3つの用量群に分けた:
1.15~1.70BSA-1700mg/用量の一定用量
1.71~2.40BSA-2400mg/用量の一定用量
>2.41BSA-2750mg/用量の一定用量
【0307】
BSAは、表13に例示の通り、複数の方法によって計算した。
【0308】
【表16】
【0309】
負荷投与計画:
troughレベルは、30ug/mL~400ug/mLの範囲であった。
【0310】
それは、肝臓 心臓及び脾臓からの5つのアミロイドサブタイプからの数を結びつけることによって決定した。第1b相からのNTproBNPバイオマーカーデータ(100ug/mL)を、GLSデータ(用量>100mg/mが効果を有した):>30ug/mLとともに使用した。
【0311】
130ug/mLのCtroughを急速に達成する負荷投与が:
1500mg/mにおける1回投与
1000mg/m又は25mg/kgにおける2qw又は3qw投与
750mg/m又は18.75mg/kgにおける4qw投与
500mg/m又は12.5mg/kgにおける6qw投与
によって達成することができ、一定用量を含む全ての用量レベルにおける4qw投与を包含することが確立された。
【0312】
維持投与計画
維持投与計画は、
BSA及び体重に基づくすべての用量におけるq2w投与を包含し、
1375mg/mにおけるq4wを包含し、
1000mg/m又は25mg/kgにおけるq3w及びq4wを包含し、
750mg/m又は18.75mg/kgにおけるq3wを包含する
ように確立した。
【0313】
PCDと組み合わせた投与計画
抗体が曝露に対する影響なしと組み合わせて安全に投与可能であることがさらに確立された。抗体を最初に投与し、正常な好中球及び単球を維持することに基づいて用量を変更することが理想的であることが見出された。
【0314】
この背景にある仮説は、作用機構に基づく抗体及びドキシサイクリンの組み合わせ投与により、より良好な臓器応答を得ることができるというものである。抗体は、毒性軽鎖、プロトフィブリル、線維及びアミロイドを除去し、アミロイドは、細胞外マトリックスを有する臓器内で形成する一方で、ドキシサイクリンは、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害し、細胞外マトリックスを阻止し、抗体のアミロイド及びN末端エピトープへの一層の接近を可能にする。
【0315】
CARES臨床プログラムは、2つの並行二重盲検無作為化イベント主導型グローバル第3相試験から構成され、そこでは、新規に診断され、標準療法(SoC)治療(シクロホスファミド-ボルテゾミブ-デキサメタゾン(CyBorD)化学療法)にナイーブであるALアミロイドーシス患者における抗体の有効性及び安全性を評価している。1つの試験では、約260名のMayoステージIIIa疾患を有する患者を登録しており[抗体+CyBorD(n=178)及びプラセボ+CyBorD(n=89)]、1つの試験では、約110名のMayoステージIIIb疾患を有する患者を登録している[抗体+CyBorD(n=74)及びプラセボ+CyBorD(n=37)]。試験は、北米、イギリス、ヨーロッパ、イスラエル、日本、及びオーストラリアにわたる約70の施設で実施される。各試験において、参加者は、4週にわたって週1回、抗体+SoC又はプラセボ+SoCのいずれかを受けるように、2:1の比で無作為化されている。これに、登録される最終の患者が少なくとも50週の治療を完了するまで、2週ごとに投与される維持用量が後続することになる。患者は、12週ごとにフォローアップ訪問を継続することになる。主要な試験目的は、全生存、並びに抗体の安全性及び耐容性である。主要な副次目的は、6分歩行試験(6MWT)、生活の質尺度(カンザスシティ心筋症質問票全体スコア及びショートフォーム36バージョン2の身体コンポーネントスコア)及び心臓改善(グローバル縦ひずみ、又はGLS)における機能的改善を評価することになる。
【0316】
実施例8
抗体の肝臓効果の予備的結果
開示抗体の投与は、アミロイドの除去及び改善された機能を示す、ALP、ALT、AST、GGT及びビリルビンを含む肝酵素によって測定されるような肝機能の改善、並びに肝臓のサイズ減少を示した。バイオマーカー(肝酵素)における少なくとも50%の変化の減少は、応答及び改善された肝機能に関連した。肝臓に対するそのような効果は、500mg/mを超える抗体用量で認められた。抗体の投与によって誘導される肝機能の改善は、血液学的応答と無関係であることが見出された。
【0317】
実施例9
抗体の臓器応答の予備的結果
開示抗体の投与は、腎機能のいくつかの改善を示した。患者7名が腎臓障害を有し、全員が臓器応答を有した。
【0318】
特に、部分寛解(PR)を有する患者1名が、後に進行し、安定状態(SD)に戻った。これにもかかわらず、患者は、現在、進行中の深刻化する腎臓応答を有し、抗血漿細胞療法における変化を伴わない、24時間タンパク尿の76%の減少を示した。中央値は、臓器応答まで56日であった。
【0319】
開示抗体の投与は、いくつかの心臓応答を示した。3名/8名の評価可能な患者を新規に診断し、彼らのNT-proBNPは、CyBorD療法の最初の3か月以内に増加を示している。患者8名中1名が、NT-proBNP基準で心臓応答を達成した。
【0320】
実施例10
開示抗体の1000mg/mでの投与は、上記の進行中の無作為化二重盲検第3相試験における、CyBorDと組み合わせた推奨投与である。特に腎臓における臓器応答は、再発性患者であっても一般的であった。患者1名のみは、抗血漿細胞療法における変化が必要であることが理由で、もはや試験中でない。たとえ進行中の血液学的(部分寛解)PRを伴わなくても、有意に臓器応答が認められている。
【0321】
実施例11
第3相試験
表17は、さらなる第3相試験の、配列番号1で記載されるような重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号2で記載されるような軽鎖可変ドメイン(VL)を有する本発明の抗体における用量を評価するための人口統計及びベースライン特徴を提供する。結果は、範囲(最小/最大)及び中央値用量を示すが、例えば、中央値用量は、25.6mg/kgであり、範囲は19.8~31.1mg/kgであり、患者の大多数は、22~28mg/kgの間を受けた。
【0322】
【表17】
【0323】
【表18】
【0324】
本開示は、上記実施例を参照して記載されているが、修飾及び変動が本開示の精神及び範囲内に包含されることは理解されるであろう。したがって、本開示は、あくまで以下の特許請求の範囲によって限定される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023541191000001.app
【国際調査報告】