(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】オープンタイム添加剤
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230921BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230921BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230921BHJP
C09D 171/02 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/65
C09D5/02
C09D171/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516827
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021050171
(87)【国際公開番号】W WO2022056433
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521143228
【氏名又は名称】アークサーダ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード,ロシェル
(72)【発明者】
【氏名】ニーリィ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】フラハーティ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヤナク,ケビン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CD021
4J038CG121
4J038DF012
4J038GA01
4J038GA08
4J038KA02
4J038KA06
4J038MA10
4J038NA25
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
本開示は一般に、化合物I、その塩、又はその両方の構造を有するオープンタイム添加剤を含む建築塗料に向けられる。化合物Iは以下の式(I):
(化合物I)
を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と;
ラテックスバインダーと;
化合物I、その塩、又はその両方の構造を有する、オープンタイム添加剤と
を含む、建築塗料組成物であって、化合物Iが以下の式:
【化1】
(式中、mが0以上及び100以下の整数であり、nが0以上及び100以下の整数であり、R1及びR2が独立に、1個以上及び40個以下の炭素原子を有する分岐又は直鎖の炭素鎖であり、
R1及びR2の各炭素原子が独立に、1つ若しくは複数の水素原子、1つ若しくは複数のヒドロキシル基、前記分岐若しくは直鎖の炭素鎖内の1つ若しくは複数の他の炭素原子、アリール基、又はそれらの組み合わせにより置換されており、
R3及びR4の各々が独立に、水素原子又はエステル基である)を有する、
建築塗料組成物。
【請求項2】
前記エステル基が以下の式:
【化2】
を有するオレエート基である、請求項1に記載の建築塗料組成物。
【請求項3】
前記ラテックスバインダーがアクリレートを含む、請求項1又は2のいずれかに記載の建築塗料組成物。
【請求項4】
前記溶媒が水である、請求項1から3のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項5】
前記建築塗料組成物中の前記オープンタイム添加剤の濃度が、前記建築塗料組成物の総重量を基準として約10分の1パーセント以上及び約5パーセント以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項6】
mが5以上及び100以下の整数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項7】
nが0である、請求項1から6のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項8】
nが10以下であり、mが10以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項9】
R3、R4、又はその両方が前記オレエート基である、請求項1から8のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項10】
前記建築塗料組成物の総重量を基準として約10パーセント以上及び約70パーセント以下の固体含量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項11】
前記オープンタイム添加剤及び前記ラテックスバインダーが、前記オープンタイム添加剤の総重量対前記ラテックスバインダーの総重量に基づいて、1:999~約100:900の重量比を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項12】
R1及びR2が共にメチル基である、請求項1から11のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項13】
ベースラインの建築塗料において示されるベースラインのオープンタイムと比較して、10パーセント以上のオープンタイムを示し、
前記ベースラインの建築塗料が前記オープンタイム添加剤を含まず、前記建築塗料組成物中に含まれる他の成分についておよそ同じである相対的組成を有し、前記オープンタイムがOTA試験、ASTM D7488-11「Standard Test Method for Open Time of LatexPaints」に準拠して決定される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項14】
前記建築塗料組成物の総重量を基準として1000分の1パーセント未満の揮発性有機化合物VOCの含量を有し、VOC含量がEPA法24に準拠して決定される、請求項1から13のいずれか一項に記載の建築塗料組成物。
【請求項15】
オープンタイム添加剤を含む水性ラテックス塗料を形成するステップを含む、水性ラテックス塗料のオープンタイムを増加させる方法であって、前記オープンタイム添加剤が、化合物I、その塩、又はその両方の構造を有し、
化合物Iが、以下の式:
【化3】
(式中、mが0以上及び100以下の整数であり、nが0以上及び100以下の整数であり、R1及びR2が独立に、1個以上及び40個以下の炭素原子を有する分岐又は直鎖の炭素鎖であり、
R1及びR2の各炭素原子が独立に、1つ若しくは複数の水素原子、1つ若しくは複数のヒドロキシル基、前記分岐若しくは直鎖の炭素鎖内の1つ若しくは複数の他の炭素原子、アリール基、又はそれらの組み合わせにより置換されており、
R3及びR4の各々が独立に、水素原子又はエステル基である)を有する、
方法。
【請求項16】
前記エステル基が、以下の式:
【化4】
を有するオレエート基である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オープンタイム添加剤を含む前記水性ラテックス塗料を形成するステップが、前記オープンタイム添加剤を添加しながら前記水性ラテックス塗料を均質化するステップを含む、請求項15又は16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記水性ラテックス塗料の固体含量を決定するステップをさらに含む方法であって、前記オープンタイム添加剤を含む前記水性ラテックス塗料を形成するステップが、決定された前記固体含量に少なくとも部分的に基づいて一定量の化合物Iを添加するステップを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
mが5以上及び100以下である、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
nが0である、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
nが10以下であり、mが10以下である、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
R3、R4、又はその両方が前記オレエート基である、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
m、n、又はその両方を選択して前記水性ラテックス塗料の前記オープンタイムを調整するステップをさらに含む、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項15から23のいずれか一項に記載の方法に従って作製される、水性ラテックス塗料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]塗料は多くの産業にわたって広く使用され、一般には顔料を含む担体を包含すると理解され得る。しかし、この一般的な見方は、塗料、特に建築塗料が、保護バリヤ又はカバーをも表面に与えるということを軽視している。建築塗料は、塗料がまだ乾燥せずさらに広げることができる(例えば、ブラシ又はローラーを使用して)改善された作業性(例えば、オープンタイム)から恩恵を受ける。そのように、塗料組成物は用途に応じて大きく異なる場合がある。
【0002】
[0002]オープンタイムはいくつかの方法で定義され得るが、この用語は一般に、塗膜がその後適用される塗料の滑らかな一体化を可能にする時間、及び/又はコーティングが硬化前に作業可能な湿ったままである時間を示すために使用される。既に論じたように、オープンタイムはコーティング欠陥の重なりの低減、人件費の低減、及び/又は欠陥を修正するための材料費の低減をもたらすことが可能であるので、オープンタイムは塗料の特徴づけにおいて重要な態様となり得る。
【0003】
[0003]オープンタイムを調整するためのいくつかの既知の選択肢としては、水含量の増加、グリコール若しくはグリセリンエステルの使用、又は添加剤の使用を挙げることができ、これは費用を大幅に増大させる可能性がある。これらの解決法のほとんどは、少しの/わずかなオープンタイムの延長しかもたらさず、塗料の性能の他の態様に対して有害な影響を与えることがある。地域によっては、既知の選択肢は厳しい世界的な監視下にある揮発性有機化合物(VOC)として挙げられることもある。
【0004】
[0004]建築コーティングを塗装、修復、又は被覆するのに十分な時間を与えることは、特に乾燥した環境において課題となり続ける。さらに、高固体含量などの、顔料容積濃度(PVC)が低い塗料、及び厳しいVOC規制のある地域は、課題を悪化させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]様々な条件下で作業性を維持するように有効量のオープンタイム添加剤を含む建築塗料が依然として当技術分野において必要とされている。さらに、環境条件(例えば湿度)の変動のために、作業性を調整するように改変され得るオープンタイム添加剤を含む塗料は、製造業者及び消費者にさらなる有益性をもたらし得る。例えば、オープンタイム添加剤を調整することによる塗料配合物のカスタマイズは、特に大規模な建設プロジェクトにおいて、コスト削減につながることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一般に、本開示はオープンタイム添加剤を含む建築塗料組成物に向けられる。建築塗料が表面及び/又は材料を被覆するためのコーティングを提供するという点で、建築塗料は他の塗料、色素、又は顔料を含む組成物とは異なると考えられ得る。したがって、一般に、建築塗料がそれらの適用される表面及び/又は材料を改質することなく、建築塗料は使用され得る。対照的に、色素又は他の顔料組成物は、色素又は色素の一部(例えば、顔料/着色剤)を材料に組み込むように使用され得る。少なくとも部分的にはこれらの違いに起因して、建築塗料は、建築塗料のオープンタイムを長くするように作用することができる添加剤から恩恵を受けることができる。対照的に、染料又は他の顔料組成物のオープンタイムを長くすることは、望ましくないブリージングにつながることがある。本開示の例となる実施は、化合物I:
【0007】
【0008】
[0007](式中、mが0以上及び100以下の整数であり、nが0以上及び100以下の整数であり、R1及びR2が独立に、1個以上及び40個以下の炭素原子を有する分岐又は直鎖の炭素鎖であり、
[0008]R1及びR2の各炭素原子が独立に、1つ若しくは複数の水素原子、1つ若しくは複数のヒドロキシル基、分岐若しくは直鎖の炭素鎖内の1つ若しくは複数の他の炭素原子、アリール基、又はそれらの組み合わせにより置換されており、
[0009]R3及びR4の各々が独立に、水素原子又はエステル基、例えばオレエート基などである)の式を有する少なくとも1つのオープンタイム添加剤を含む建築塗料組成物を含んでもよい。
【0009】
[0010]第1の例の態様において、オレエート基は
【0010】
【0011】
の式を有してもよい。
【0012】
[0011]第2の例の態様において、ラテックスバインダーはアクリレートを含んでもよい。
【0013】
[0012]第3の例の態様において、溶媒は水であってもよい。
【0014】
[0013]第4の例の態様において、建築塗料組成物中のオープンタイム添加剤の濃度は、建築塗料組成物の総重量を基準として約10分の1パーセント以上及び約5パーセント以下であってもよい。
【0015】
[0014]第5の例の態様において、mは5以上及び100以下の整数であってもよい。
【0016】
[0015]第6の例の態様において、nは0であってもよい。
【0017】
[0016]第6の例の態様において、nは10以下であってもよく、mは10以下であってもよい。
【0018】
[0017]第6の例の態様において、R3、R4、又はその両方は、エステル基、例えばオレエート基などであってもよい。
【0019】
[0018]第6の例の態様において、建築塗料は、建築塗料組成物の総重量を基準として約10パーセント以上及び約70パーセント以下の固体含量を有してもよい。
【0020】
[0019]第7の例の態様において、オープンタイム添加剤及びラテックスバインダーは、オープンタイム添加剤の総重量対ラテックスバインダーの総重量に基づいて、1:999~約100:900の重量比を有してもよい。
【0021】
[0020]第8の例の態様において、R1及びR2は共にメチル基であってもよい。
【0022】
[0021]第9の例の態様において、建築塗料は、ベースラインの建築塗料において示されるベースラインのオープンタイムと比較して、10パーセント以上のオープンタイムの増加を示し得る。
【0023】
[0022]第10の例の態様において、ベースラインの建築塗料はオープンタイム添加剤を含まなくてもよく、建築塗料中に含まれる他の成分についておよそ同じである相対的組成を有し、オープンタイムはOTA試験、ASTM D7488-11「Standard Test Method for Open Time of Latex Paints」に準拠して決定されてもよい。
【0024】
[0023]第11の例の態様において、建築塗料は、建築塗料の総重量を基準として1000分の1パーセント未満の揮発性有機化合物VOCの含量を有してもよく、VOC含量はEPA法24に準拠して決定されてもよい。
【0025】
[0024]本開示の第12の例の態様は、化合物Iの構造を有するオープンタイム添加剤を含む水性ラテックス塗料を形成することにより建築塗料のオープンタイムを改変する方法を含んでもよい。
【0026】
[0025]上記で列挙された例の態様の各々は、特定の実施形態において、上記で列挙された他の例の態様の1つ又は複数と組み合わされてもよい。例えば、上記で列挙された12個の例の態様のすべては、いくつかの実施形態において互いに組み合わされてもよい。別の例として、上記で列挙された12個の例の態様のうち2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれを超える任意の組み合わせは他の実施形態において組み合わされてもよい。したがって、上記で列挙された例の態様は、いくつかの例となる実施形態において互いに組み合わせて利用され得る。あるいは、上記で列挙された例の態様は、他の例となる実施形態において個々に実施されてもよい。したがって、上記で列挙された例の態様を利用して様々な例となる実施形態が実現され得ることが理解されるであろう。
【0027】
[0026]本開示の他の特色及び態様は以下でより詳細に論じられる。
【0028】
[0027]本開示の完全で実施可能な説明が、添付の図への参照を含め、明細書の残りの部分においてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】[0028]
図1は、ウェットエッジライン及びオープンタイムなどの、塗料の例としての特性を示す、表面に適用された塗料の写真である。
【
図2】[0029]
図2は、耐擦性などの塗料の例としての特性を示す、研磨力を与えた後の塗料コーティングの例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0030]本明細書及び図面における参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同じ又は類似の特色又は要素を表すことが意図される。
【0031】
[0031]本開示は単に例示的な実施形態の説明であり、本開示のより広い態様を限定するものとして意図されないことを当業者は理解するであろう。
【0032】
[0032]本開示は一般に、化合物I、その塩、又はその両方の構造を有するオープンタイム添加剤を含む、建築塗料に向けられる。化合物Iは以下の式:
【0033】
【0034】
[0033](式中、mが0以上及び100以下の整数であり、nが0以上及び100以下の整数であり、R1及びR2が独立に、1個以上及び40個以下の炭素原子を有する分岐又は直鎖の炭素鎖であり、R1及びR2の各炭素原子が独立に、1つ若しくは複数の水素原子、1つ若しくは複数のヒドロキシル基、分岐若しくは直鎖の炭素鎖内の1つ若しくは複数の他の炭素原子、アリール基、又はそれらの組み合わせにより置換されており、R3及びR4の各々が独立に、水素原子又はエステル基である)を有する。
【0035】
[0034]エステル基は、以下の式:
【0036】
【0037】
を有するオレエート基であってもよい。特定の例となる実施形態において、エステル基は、飽和又は不飽和C6~C22エステル基、例えばステアレート(C18、飽和)、オレエート(C18、不飽和)、リノレート(C18、不飽和)、パルミテート(C16、飽和)、ラウレート(C12飽和)、デカノエート(C10、飽和)、又はオクタノエート(C8、飽和)などであってもよい。
【0038】
[0035]1つの例となる実施において、建築塗料は、溶媒、ラテックスバインダー(例えば、1つ又は複数のアクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル、及び/又はスチレンブタジエンモノマーを含むポリマー)、及びオープンタイム添加剤を含む。場合により、建築塗料は、建築塗料全体にわたるラテックスバインダーの分布を改善するための分散剤及び/又は界面活性剤をさらに含んでもよい。このように、分散剤及び/又は界面活性剤は使用され、建築塗料のより平らなコーティングを実現できる、より均質な混合物を製造することができる。場合により、建築塗料は、建築塗料の粘度を調整してアプリケーター(例えば、ブラシ又はローラー)への湿った塗料の接着性を改善するための増粘剤を含んでもよい。場合により、建築塗料は、建築塗料に色を与えるための1つ又は複数の顔料(例えば、TiO2)を含んでもよい。場合により、建築塗料は、建築塗料の成分の溶解性を改善することができる共溶媒(例えば、エチレングリコール)を含んでもよい。
【0039】
[0036]本開示による実施の例の態様は、低含量の揮発性有機化合物(VOC)を含んでもよい。高VOCは、限定された空間及び/又は換気されない空間で働く塗装工に対する人的危険を示すだけでなく、環境危険因子として認識されている。これらの空間において、VOCは空気中にたまる可能性があり、これは塗装工の呼吸の問題及び潜在的な健康上の懸念を引き起こし得る。塗料のオープンタイムを改変するのに使用される多くの既知の塗料添加剤は、高いVOCで知られており、課題をもたらしてきた。不十分なオープンタイム性能は、塗料組成物に固有のストリーキング(streaking)などのミスを修正するための作業時間の増加を必要とする可能性がある。したがって、オープンタイムを改善し同時にVOC含量も軽減することは、塗装プロジェクトの費用及び効率並びに塗装工の健康において大きな利点をもたらし得る。
【0040】
[0037]例となる実施の別の態様は、ある種のラテックスバインダーを含んでもよい。ラテックスバインダーは、ホモポリマー又はコポリマーとして形成され得る、アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)などの、建築塗料に適した様々なポリマーを含んでもよい。例えば、コポリマーは、別のモノマー(例えば、ブタジエンスチレン)の組み込みを含んでもよい。いくつかの実施において、アクリレートは、1つ又は複数のニトリル基を含むように修飾され得る。したがって、ラテックスバインダーは、様々なアクリレート、アクリレートブタジエンスチレンコポリマー、及びアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマーを含んでもよい。さらに、これらのラテックスバインダーは、例示の目的で示され、さらなるラテックスバインダーが単独で又は本開示の実施と組み合わせて使用されてもよい。
【0041】
[0038]例証として、本開示の実施は、アクリレートを有するラテックスバインダーを含む建築塗料を含んでもよい。アクリレートは、1種又は複数のアクリレートモノマーを含むポリマー又はコポリマーを含んでもよい。アクリレートポリマー又はコポリマーの例の態様は、ある質量分率のアクリレートモノマーを含んでもよい。例えば、アクリレートは、アクリレートモノマー(例えば、メチルメタクリレート)及び第2のモノマー(例えば、ブタジエンスチレン)を含むコポリマーを含んでもよい。コポリマーの総重量に対するアクリレートモノマーの質量分率は、質量分率を定義し得る。いくつかのアクリレートにおいて、コポリマーの総重量に対するアクリレートモノマーの質量分率は、約20wt%以上及び約100wt%以下、例えば約30wt%以上及び約80wt%以下、約40wt%以上及び約70wt%以下、又は約45wt%以上及び約60wt%以下など(例えば、100wt%、95wt%、90wt%、85wt%、80wt%、75wt%、70wt%、65wt%、60wt%、55wt%、又は50wt%)であってもよい。特に、特定の実施は、50wt%を超える、アクリレートの総重量に対するアクリレートモノマーの質量分率を有するアクリレートを含んでもよい。
【0042】
[0039]本開示の特定の例となる実施について、オープンタイム添加剤は、1,3-ビス(2-(ヒドロキシポリエトキシ)エチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン、1,3-ビス(2-(ヒドロキシポリエトキシ)エチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオンモノエステル、及び1,3-ビス(2-(ヒドロキシポリエトキシ)エチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオンジエステルのうち1つ又は複数を含んでもよい。これらの化合物の各々は、それぞれ:nは1以上及び100以下であり、mは1以上及び100以下であり、R1及びR2は各々が、3個の水素原子で置換された1個の炭素原子(例えば、メチル基)を含む直鎖の炭素鎖である化合物I;R1及びR2は各々が、3個の水素原子で置換された1個の炭素原子(例えば、メチル基)を含む直鎖の炭素鎖であり、R4又はR3はエステル基である化合物I;並びにR1及びR2は各々が、3個の水素原子で置換された1個の炭素原子(例えば、メチル基)を含む直鎖の炭素鎖であり、R4及びR3は共にエステル基である化合物Iの式から得ることができる。
【0043】
[0040]オープンタイム添加剤がオレエート基を含む実施において、オレエート基は、カルボニル炭素が末端酸素に連結されて(R3及び/又はR4において)エステルを形成するように結合されていることを理解するべきである。したがって、オレエート基は、カルボニル炭素に結合された脂肪酸炭素鎖(17個の炭素、モノ不飽和基)、及びオレエート基への化合物Iの結合位置を示すための第2の結合を示すように図示される。
【0044】
[0041]さらに、本開示の実施において、化合物Iに基づくオープンタイム添加剤では重合度n及びmは異なっていてもよく(例えば、nが4、mが5などのようにn及びmは異なる値を有してもよい)、又は同じであってもよい(例えば、nが4でありmが4である)ことを理解するべきである。さらに、特定の実施は、1,3-ビス(2-(ヒドロキシポリエトキシ)エチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン、及び1,3-ビス(2-(ヒドロキシポリエトキシ)エチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオンモノオレエートの両方を含む建築塗料などの、化合物Iに基づくオープンタイム添加剤の組み合わせを含んでもよい。
【0045】
[0042]本開示に従って配合される、例となる実施は、低VOC建築塗料の配合においてさらなる有益性をもたらし得る。特に、例となる実施は、低VOC又はVOC無しと考えられ得る溶媒を含んでもよい。例えば、水は有機化合物ではなく、そのため、好ましくは本開示の建築塗料に組み込まれる。水の他に、共溶媒は建築塗料の成分(例えば、オープンタイム添加剤、界面活性剤、顔料など)の溶解性を改善するために含まれてもよい。例となる共溶媒はVOC免除対象物(例えば、アセトン、炭酸ジメチル、酢酸メチル、パラクロロベンゾトリフルオリド、酢酸tert-ブチル、及び炭酸プロピレン)であってもよく、又は建築塗料のVOC濃度を制限するために低濃度(例えば、低重量パーセント)で加えられてもよい。
【0046】
[0043]例えば、本開示の特定の実施は、建築塗料の総重量を基準として1000分の1パーセント未満(<0.001%)のVOC含量を有する建築塗料を含んでもよい。VOC含量は様々な方法を使用して決定され得、好ましくは例となる実施は、表面コーティングのためのEPA法24に準拠して決定される特定のVOC含量を含んでもよい。
【0047】
[0044]VOC含量を決定するための代替法は、いくつかの例となる実施においてVOC含量を決定するために使用され得る。例えば、ASTM D6886-14は、化学的特性に基づいて何がVOC成分を構成しているかを具体的に明らかにするのではなく、むしろ、ガスクロマトグラム中のピークを作る任意の成分がVOC(免除又は非免除)と考えられることを暗に示す。さらに、IOS 11890-2は、あらかじめ定義された沸点限界に基づいてVOC含量を決定するために使用され得る。一例として、沸点が沸点限界を下回る化合物について「VOC」という用語が使用されている場合、既知の純度及び定義される最大値の±3℃以内の沸点(BP)を有するマーカー化合物が使用される。したがって、VOCに関するEUの定義が採用される場合(すなわち250℃未満の沸点を有する任意の化合物がVOCとして分類される)、テトラデカン(252.6℃のBPを有する)又は同様の沸点の非極性化合物が非極性系のマーカー化合物として使用され得、一方ジエチルアジペート(251℃のBPを有する)が極性系において使用され得る。
【0048】
[0045]本開示による例となる実施は、本明細書で開示される方法(例えば、EPA法24)の1つを使用して決定される、100000分の1パーセント(0.00001%)以上及び1000分の1パーセント(0.001%)以下のVOC含量、例えば100000分の5パーセント(0.00005%)以上及び10000分の8パーセント(0.0008%)以下、又は10000分の1パーセント(0.0001%)以上及び10000分の5パーセント(0.0005%)以下のVOC含量などを含んでもよい。いくつかの実施において、VOC含量は、例えばVOC含量を決定するのに使用される分析手段(例えば、ガスクロマトグラフ)に基づく実質的に検出不可能な量のVOCを含め、実質的にゼロであってもよい。
【0049】
[0046]例となる実施において、オープンタイム添加剤は建築塗料に有効量で加えられ、低湿度を有する環境であってもストリーキング(streaking)の低減をもたらすことができる。例えば、建築塗料の総重量に対するオープンタイム添加剤の重量に基づいて約10分の1パーセント(0.1%)以上及び約5パーセント(5%)以下、例えば約2分の1パーセント(0.5%)以上及び約4と2分の1パーセント(4.5%)以下、約1パーセント(1.0%)以上及び約4パーセント(4.0%)以下、約1と10分の2パーセント(1.2%)以上及び以下約3と2分の1パーセント(3.5%)以下、並びに約2パーセント(2%)以上及び約3パーセント(3%)以下などの濃度で、オープンタイム添加剤が含まれ得る。
【0050】
[0047]オープンタイム添加剤の例の態様としては、化合物Iの基礎構造を含んでもよい。いくつかの例の基礎構造としては、mが5以上及び100以下である化合物を挙げることができる。別の例の基礎構造としては、nが0である化合物を挙げることができる。さらなる例の基礎構造としては、nが10以下でありmが10以下である化合物を挙げることができる。さらに又は代わりに、さらなる例の基礎構造としては、R3及び/又はR4がオレエート基である化合物を挙げることができる。
【0051】
[0048]本開示によるいくつかの実施の別の態様は、ラテックスバインダーの総重量に対するオープンタイム添加剤の総重量に基づいて、5パーセント(5%)以上及び70パーセント(70%)以下、例えば8パーセント(8%)以上及び50パーセント(50%)以下、又は10パーセント(10%)以上及び30パーセント以下(30%)など[例えば、12パーセント(12%)、14パーセント(14%)、15パーセント(15%)、16パーセント(16%)、又は18パーセント(18%)]の固体含量を含んでもよい。
【0052】
[0049]本開示のいくつかの実施の態様は、オープンタイム添加剤対ラテックスバインダーの重量比を含んでもよい。有利には、オープンタイム添加剤対ラテックスバインダーの重量比は、1:999以下及び1:9以上、例えば1:900以下及び1:9以上、1:800以下及び1:9以上、1:800以下及び1:90以上、又は1:800以下及び1:200以上など(例えば、1:900、1:800、1:700、1:600、1:500、1:400、1:300、1:200、又は1:100)である。
【0053】
[0050]本明細書で使用する、オープンタイム添加剤対ラテックスバインダーの重量比は、オープンタイム添加剤に基づいて理解されるべきである。このように、1:999以下とは、オープンタイム添加剤の1重量単位当たりについて、999重量単位以下のラテックスバインダーが存在すると読み取られるべきである。別の例証として、1:9以上とは、オープンタイム添加剤の1重量単位当たりについて、9重量単位以上のラテックスバインダーが存在すると読み取られるべきである。
【0054】
[0051]本開示の実施において、建築塗料は一定量の顔料を含んでもよく、又は一定量の含量を含むように配合されていてもよい。例えば、特定の例の建築塗料は顔料を含んでもよく、顔料は建築塗料の総重量を基準として15wt%以上のTiO2及び60wt%以下のTiO2の濃度で二酸化チタン(TiO2)を含む。TiO2は例の実施に白色度及び/又は不透明度を与えるために使用され得、粘度を増強するために含まれ得る。一般に、例の実施は、15wt%以上及び60wt%以下のTiO2、例えば18wt%以上及び55wt%以下のTiO2、20wt%以上及び50wt%以下のTiO2、又は25wt%以上及び45wt%以下のTiO2などを含んでもよい。
【0055】
[0052]特定の実施の1つの例の態様としては、塗料組成物へのオープンタイム添加剤の添加から得るオープンタイムの増加を挙げることができる。オープンタイムの増加を決定するために、有効量のオープンタイム添加剤をベース塗料へ加えることにより、オープンタイム添加剤を含まない組成物を有するベース塗料は建築塗料を製造するために改変され得る。いくつかの実施について、ベース塗料への有効量のオープンタイム添加剤の添加は、ベース塗料のみと比較して、10パーセント(10%)以上、例えば20パーセント(20%)以上などの、建築塗料について決定されるオープンタイムの増加をもたらし得る。オープンタイムは様々な方法を使用して決定され得、好ましくは本開示による実施は、OTA試験ASTM D7488-11「Standard Test Method for Open Time of Latex Paints」に準拠してオープンタイムを決定することができる。
【0056】
[0053]代わりに又はさらに、特定の実施の別の例の態様としては、塗料組成物へのオープンタイム添加剤の添加から得る耐擦性の増加を挙げることができる。耐擦性の増加を決定するために、ASTM D 2486などの試験法が、擦った回数と、何回か擦った後の基材材料の不具合及び/又は露出を比較するために使用され得る。例えば、ベース塗料を使用して第1のコーティングが基材材料に適用され得、建築塗料を使用して第2のコーティングが基材材料に適用され得、建築塗料は有効量のオープンタイム添加剤をベース塗料に添加することにより配合されている。研磨力(例えば、擦ること)をコーティングに加えた後、少なくとも部分的にはコーティングの剥がれ及び/又は基材材料の露出を基準にした耐擦性が決定され得る。いくつかの実施において、有効量のオープンタイム添加剤の添加は、4分の1パーセント(0.25%)以上及び60パーセント(60%)以下、例えば10パーセント(10%)以上及び50パーセント(50%)以下、12パーセント(12%)以上及び40(40%)以下、又は15(15%)以上及び30(30%)以下などの、耐擦性の増加(ベース塗料と比較した)をもたらし得る。
【0057】
[0054]本開示の実施は、ベース塗料(例えば、水性ラテックス塗料)のオープンタインを調整するための方法も含んでもよい。この方法は、化合物Iの構造又は本明細書に記載の化合物Iの基礎構造を有するオープンタイム添加剤を含む、水性ラテックス塗料(例えば、水性アクリラート)を形成するステップを含んでもよい。
【0058】
[0055]オープンタイム添加剤を含む水性ラテックス塗料を形成する1つの例の態様は、オープンタイム添加剤を添加しながら水性ラテックス塗料を均質化するステップを含んでもよい。均質化は、水性ラテックス塗料によるオープンタイム添加剤の取り込みを促進するための混合の様々な形態を含んでもよい。例えば、均質化は、指定の毎分回転数(RPM)で水性ラテックス塗料を混合するステップ、指定の周波数で水性ラテックス塗料を超音波処理するステップ、及び/又は水性ラテックス塗料をボルテックスするステップを含んでもよい。このように、オープンタイム添加剤は水性ラテックス塗料の全体にわたって取り入れられ、本開示の例となる実施による建築塗料を製造することができる。したがって、例の実施は、本開示の例としての方法を使用して、本開示の例としての建築塗料などの建築塗料を製造する方法をさらに含んでもよい。
【0059】
[0056]建築塗料を製造する方法の別の態様は、ベース塗料(例えば、水性ラテックス塗料)の固体含量を決定するステップと、少なくとも部分的には固体含量を基準にして、一定量の化合物Iをベース塗料へ添加するステップとを含んでもよい。特に、固体含量は、有効量のオープンタイム添加剤を加えるための基準を決定することが可能である。例えば、ラテックスバインダーの量は固体含量を基準として決定され得、有効量のオープンタイム添加剤は、本明細書における例となる実施に開示される、オープンタイム添加剤対ラテックスバインダーの比に従って決定することができる。
【0060】
[0057]本開示による建築塗料を製造する特定の方法は、重合の程度を調整する(例えば、m及び/又はnを選択することにより)ことにより化合物Iを改変して水性ラテックス塗料のオープンタイムを改変するステップをさらに含んでもよい。
【0061】
[0058]前述の説明は本来例示的なものであり、本開示の範囲、適用性、又は構成を限定することを決して意図されない。本開示の範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に対する様々な変更は本明細書に記載の要素の機能及び配置において行われてもよい。
【0062】
[0059]この明細書及び特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別途明確に指示されない限り複数形を含む。さらに、「含む(includes)」という用語は「含む(comprises)」を意味する。本開示の方法及び組成物は、それらの成分を含め、本明細書に記載の実施形態の必須の要素及び制限、並びに本明細書に記載されるあるいはその逆で栄養組成物において有用である任意の追加若しくは任意選択の原料、成分、又は制限を含むか、それらかなるか、又はそれらから本質的になっていてもよい。
【0063】
[0060]別段の指定がない限り、本明細書又は特許請求の範囲で使用される、原料の量、特性を表すあらゆる数、例えば分子量、パーセンテージなどは、「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。したがって、暗に又は明確に別段の指定がない限り、示される数値パラメーターは求められる所望の特性、及び/又は標準的試験条件/方法のもとでの検出限界によって決まり得る見積もり値である。実施形態と述べられた先行技術とを直接及び明確に区別する場合、実施形態の数は「約」という語が列挙されない限り近似ではない。
【0064】
[0061]本明細書で使用する、「任意選択の」又は「任意選択により」とは、続いて記載される材料、事象、又は環境が、存在若しくは発生してもよく、又はしなくてもよいこと、その記述が、材料、事象、又は環境が存在若しくは発生する事例と、存在若しくは発生しない事例とを含むことを意味する。本明細書で使用する、「wt%」及び「w/w%」は、総重量のパーセンテージとしての重量又は組成物中の別の成分に対する重量を意味する。
【0065】
[0062]「約」という用語は、およそ、ほぼ、大体、又はくらいを意味することが意図される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、これは示される数値の上下に境界を広げることにより範囲を修正する。別段の指定がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲において示される数値パラメーターが見積もり値であることが理解されるべきである。最後に、特許請求の範囲の均等物の原理の適用を制限しようとするのではないが、数値パラメーターは、報告される有効数字の数及び通常の端数処理の適用を考慮して読み取られるべきである。
【0066】
[0063]「有効量」という言い回しは、特定の病気若しくは疾患、又は病気若しくは疾患の特定の症状への応答を推進、改善、刺激する、又は働きかける化合物の量を意味する。
【0067】
[0064]本開示は、以下の実施例を参照してさらに良く理解され得る。
【実施例】
【0068】
[0065]本開示に従って様々な配合物を作製し、ウェットエッジ対オープンタイム比(WE/OT);オープンタイム(OT)、及び指触乾燥(DTT)について試験した。40%の顔料容積濃度(PVC)の固体を有する標準塗料を比較試験用に使用した。ブランク塗料へ、2パーセント(2%)の量の本開示によるオープンタイム添加剤(DS 7034、DS 7035、又はDS 7036)、又は市販の添加剤(Optifilm OT-1200又はRhodoline OTE-600)を組み込んだ。OTA試験ASTM D7488-11「Standard Test Method for Open Time of Latex Paints」を使用してこれらの配合物の各々を特性決定し、収集した結果を表1に示す。DS 7034は、長鎖エステル、すなわちオレエート基を有する、本開示によるオープンタイム添加剤とし;DS 7035は、非置換の短鎖エステルを有する本開示によるオープンタイム添加剤とし、すなわちR3及びR4は水素でありn及びmは0であり;DS 7036は、中間鎖エステル、すなわちDS 7034のオレエート基よりも短いエステルを有する、本開示によるオープンタイム添加剤とした。Optifilm OT-1200は、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水酸化アンモニウムと組み合わせた、メタクリレートDHDMを含有するスチレン修飾アクリル樹脂と考えられる専売の混合物であり、Rhodoline OTE-600は、ポリアルカリングリコール種と考えられる専売のブレンドである。
【0069】
[0066]
【0070】
【0071】
[0067]
図1は、ウェットエッジ及びオープンタイムを決定するための例としての方法の写真を示す。図示されるように、ウェットエッジラインは塗料表面のエッジ付近で目視で確認され得、値は塗料のエッジをもはや塗料の本体に取り込むことができなくなる時間から再適用の時間を引いたものに少なくとも部分的に基づいて決定される。さらに、オープンタイムはストリーキング(streaking)により目視で確認され得、値は塗装サイクル後にXが見える時間から修復時間を引いたものを基準として決定される。標準的な塗装時間を改変するために使用されるオープンタイム添加剤の物理特性、並びにオープンタイム添加剤の効果が表2に示される。示されるように、本開示の例の態様によるすべてのオープンタイム添加剤は、標準塗料と比較してオープンタイムを約2分~約4分延長させた。
【0072】
[0068]
【0073】
【0074】
[0069]例えば表2に示されるような、VOC含量を決定するために、例としての方法ISO 11890-2、ASTM D6886-14、及びEPA法24を行って、実施例のオープンタイム添加剤(OTA)DS 7034、DS 7035、及びDS 7036について各方法の結果を比較した。結果を表3にまとめ、これは融点及び沸点などの熱的特性も含む。沸点は、動的走査熱量測定(DSC)分析を使用して観測される大きい吸熱現象の開始温度、及び熱重量分析(TGA)スキャンにおいて生じた著しい重量減少を基準として決定された。EPA法24では、VOCの基準は110℃のオーブンで1時間後の重量減少(水含量について補正された)を基準とした。
【0075】
【0076】
[0070]耐擦性に対するオープンタイム添加剤の影響を決定するために実施例のオープンタイム添加剤をまた試験した。耐擦性を決定するために、標準的方法であるASTM D 2486を使用して、ブランク塗料(すなわち、オープンタイム添加剤を含まない塗料)に対しての耐擦性の増加を決定した。予想外に、オープンタイム添加剤は耐擦性(例えば、表面からの建築塗料の剥がれ)の増加をもたらすことが明らかにされた。オープンタイム添加剤の影響を理解するために、3種の異なる市販の塗料(高プレミアム、中プレミアム、及び低プレミアム)を試験した。新たに配合した塗料又は50℃で8日間保存した塗料を使用して、市販の塗料のみを含むブランク試料及び2%のオープンタイム添加剤DS 7034を含む試験試料を比較した。実施例の結果を表4に示し、これはブランク塗料に対しての耐擦性の増加を実証する。
【0077】
[0071]
【0078】
【0079】
[0072]
図2は、ASTM D 2486を使用して決定された実施例の耐擦性データを図示する6枚の写真を示す。ブランク塗料又は2%のオープンタイム添加剤(例えば、DS 7034)を含む塗料のコーティングを暗色基材に適用した。同様の研磨プロセスを各コーティングに施した後、基材の外観を基準にした塗料の損失を決定した。新しく配合された塗料(新しい塗料)及び50℃で8日間保存された配合塗料の両方について試験を行った。
【0080】
[0073]耐擦性をさらに実証する実施例のデータが表5に示され、これは不具合に達するまでブランク塗料(ブランク)コーティング及び2%のオープンタイム添加剤(2% DS 7034)を含む塗料の両方が擦られた回数を含む。各コーティングについて2回の別々の試行(試行1及び試行2)を行って、ブランクに対しての平均の増加を決定した。
【0081】
[0074]
【0082】
【0083】
[0075]添付の特許請求の範囲により詳細に示される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら並びに本開示の他の修正形態及び変形形態は当業者により実施されうる。さらに、様々な実施形態の態様が全体的に又は部分的の両方で交換されてもよいことが理解されるべきである。さらに、当業者は、前述の説明が単に例としてのものであり、かかる添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を限定することが意図されないことを理解するであろう。
【国際調査報告】