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特表2023-541204廃棄物、生物由来の廃棄物、およびバイオマスから水素を生産するための方法、プロセス、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(54)【発明の名称】廃棄物、生物由来の廃棄物、およびバイオマスから水素を生産するための方法、プロセス、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/20 20060101AFI20230921BHJP
   C10J 3/18 20060101ALI20230921BHJP
   C10J 3/02 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C10J3/20
C10J3/18
C10J3/02 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517324
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021050244
(87)【国際公開番号】W WO2022056456
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,894
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523092520
【氏名又は名称】エスジー ユーエス ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー、ロバート ティー
(72)【発明者】
【氏名】モティクカ、シルヴァイン アンドレ ルク
(57)【要約】
本明細書には、生物由来の炭化水素廃棄材料のプラズマ促進されたガス化を可能にする新規のデバイス、システム、およびそれらを使用する方法が提供され、当該デバイスは、装置の下部セクションの周りに配されたガス入口システムと共に、バイオチャー炭素触媒床を有する幾何学的に設計された反応器を備え、一体化された酸素吸収システムによって生成された酸化剤ガスを供給し、中で生産された合成ガス中の水素生産の量および質を最適化するために、一体化された酸素吸収システムによって部分的に作り出された酸化反応によって生成された発熱を使用した生物由来の炭化水素廃棄材料の装置への部分酸化を促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来の炭化水素廃棄材料の一段階のプラズマガス化装置であって、前記装置が、
(a)上部プレナムセクションおよび下部二重床セクションを有する幾何学的設計の形状の反応器であって、前記下部二重床セクションが、円錐台状の移行部によって第2の幅狭部分に接続された第1の幅広部分を含み、バイオチャー炭素触媒床を受け入れるのに適しており、
(b)前記上部プレナムセクションが、少なくとも1つまたは複数のガス出口ポートを有する、反応器と、
(c)前記生物由来の炭化水素廃棄材料を前記下部二重床セクションの上部部分に導入するための、前記下部二重床セクションの前記上部部分に配置された、複数の方向からの前記生物由来の炭化水素廃棄材料用の複数の入口と、
(d)酸素吸収システムによって生成された酸化ガス剤を、1つまたは複数の取り込みポートを通して前記下部セクションへと提供するために前記下部セクションの周りに配されたガス導入システムと、
(e)複数の入口または羽口であって、プラズマアークトーチが、前記下部セクションに取り付けられて、前記バイオチャー炭素触媒床および前記生物由来の炭化水素廃棄材料から生成された酸化熱を高め、摂氏3000~5000度の動作温度を作り出す、複数の入口または羽口と、を備え、
一体化された前記酸素吸収システムが、大気圧酸素富化空気、酸素または蒸気の形態で酸化剤を提供して、前記生物由来の炭化水素廃棄材料の自己熱型の発熱酸化を発生させる、装置。
【請求項2】
前記材料を前記複数の取り込みポートを通して前記反応器に提供するための材料送達システムをさらに備え、前記送達システムが、前記材料を受け入れる受容部と、前記受容部から前記材料を受け入れ、前記材料を細断および圧縮するように配された、細断および圧縮用のユニットと、細断および圧縮された前記材料を前記反応器に送達するための移送ユニットと、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記材料が、バイオマス材料および生物由来の炭化水素廃棄材料を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
バイオマス材料および生物由来の炭化水素廃棄材料が、プラントの産物、副産物、および残留物、都市固形廃棄物、農業廃棄物、林業廃棄物に由来する化石化されていない生分解性の有機物を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バイオチャー炭素触媒床の高さが、約0.5~10メートル、1~5メートル、または1メートルである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記バイオチャー炭素触媒床の高さ、前記材料の床高さ、前記反応器の温度、前記反応器内のガスの流量、および前記反応器から排気ポートを通して排出されるガスの温度、のうちの1つまたは複数を感知するための、前記反応器の全体に配された複数のセンサをさらに備える、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記下部二重床セクションが、シリカおよび酸化カルシウムを含むフラックス材料と混合された供給原料内の不活性材料によって作成された溶岩を取り出すために、その底部に1つまたは複数の流出口を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
一段階の大気圧プラズマ促進されたガス化による有機物の変換のための方法であって、前記方法が、請求項1に記載の装置の使用を含み、
高密度の固体炭素および灰を含むバイオチャー材料で主に構成された触媒床を反応器の下部セクションに提供する工程と、
複数の方向から反応器の下部二重床セクションの上部部分へと1つまたは複数の連続する量の生物由来の炭化水素廃棄材料を提供する工程であって、上部プレナムセクションが、誘導ファンに接続された少なくとも1つのガス出口ポートを有し、前記材料が、バイオチャー炭素触媒床の上に床を形成する、生物由来の炭化水素廃棄材料を提供する工程と、
前記下部二重床セクションに取り付けられた複数のプラズマアークトーチを使用して前記バイオチャー炭素触媒床および前記生物由来の炭化水素廃棄材料の促進された加熱を提供する工程と、
一体化された酸素吸収システムによって生成されたガス状オキシダントを前記下部二重床セクションに導入する工程と、を含む方法。
【請求項9】
前記バイオチャー炭素触媒床が、特有の密度および多孔性の特性を有するバイオチャー炭素材料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸素吸収装置によって生成された前記ガス状オキシダントが、酸素富化空気、または酸素もしくは蒸気を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記酸素富化空気が、少なくとも約80%(v/v)の酸素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸素富化空気が、少なくとも約95%(v/v)の酸素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記下部セクションにおける前記バイオチャー炭素触媒床の温度が、3000℃を超える、実施形態8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本出願は、2020年9月14日に出願された米国仮特許出願第63/077,894号に対する優先権およびそのすべての利益を主張し、その全体が引用により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、バイオマス廃棄物から高純度水素を製造するための方法、プロセス、およびシステムに関する。本明細書には、生物由来の炭化水素廃棄物などのバイオマス廃棄物がガス化装置に導入され、ガス化装置が酸素富化空気を生産するための一体化された酸素吸収システムを備える、方法、プロセス、およびシステムが含まれる。酸素富化空気は、生物由来の炭化水素と結合して発熱酸化プロセス下で熱を生成し、これは、その後、プラズマアークトーチによって生成された外部熱源で促進されて、高純度のグリーン再生可能な水素を生産する。
【背景技術】
【0003】
国連(UN)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、および環境保護庁(EPA)、ならびに他の公的機関からの研究は、人口増加および工業化が原因で消費が驚くべき速さで増加しているため、世界規模のエネルギー必要量が深刻かつ重要な問題になりつつあることを確認している。残念なことに、世界のエネルギーのほとんどは、石炭、石油、または天然ガスの燃焼から生産され、これは、温室効果ガスの驚くべき増加、それに続く地球温暖化、および気候変動を結果としてもたらすことが証明されている。
【0004】
上記の課題に対する明確かつ疑う余地のない解決策の1つは、グリーンで再生可能なエネルギー源の開発である。このような解決策の必要性によって、結果として、世界中で風力および太陽エネルギーの技術開発が急速に発展している。しかし、風力および太陽エネルギーに依存することの少なくとも1つの欠点は、これらのエネルギー源が本質的に断続的であることに加えて、地理的におよび天候に依存することである。重要なことに、それらは、限定されないが、輸送/移動のためのエネルギー使用量の40%、電力網の不均衡および不安定性の発生、大量の電力の貯蔵に関連する問題、一貫性のない季節的な発電への取り組みの失敗、インフラ(天然ガスパイプラインなど)の脱炭素化への貢献の欠如、およびセメントまたは製鋼所などの大規模産業で必要とされる高熱を生成することができないということを含む、いくつかの他の主要な複雑な課題を生み出している。
【0005】
移動および輸送産業は、ガソリン、ディーゼル、およびケロシンなどの石油ベースの液体燃料にほとんど依存しており、そのような燃料に対する需要は、人口増加および移動増加により急速に増加している。一体となった世界経済の発展に伴い、特に航空および海運業界の燃料需要は指数関数的に増加している。バイオエタノールやバイオディーゼルなどの農業ベースのバイオ燃料は、温室効果ガス(GHG)の削減に測定可能な変化をもたらすことができておらず、食料対燃料に基づく矛盾の一因となってきた。
【0006】
電気車両の商業化の成功により、電気モータの開発が著しく進歩している。電気は、バッテリーを使用して車両に供給され、貯蔵された電力を車両に提供することができるが、バッテリーは、典型的に、大きくて重く、(主に再生不可能な電源からの)充電に時間がかかり、範囲が限られている(1回の充電で200マイル未満)という事実を含む、さまざまな理由で最適ではない。電気バッテリー用車両(EBV)は、トラック、バス、電車、および船舶などの長距離車両の要件を満たすことが困難である。燃料電池システムの進歩および商用化により、電気は、水素を介して車両に供給され、燃料電池システムを介して貯蔵されて電気に変換される。水素燃料電池電気車両(FCEV)は、コンパクトかつ軽量な水素タンク/燃料電池スタックにより、主要な自動車メーカーが選択するゼロエミッション車になりつつあり、これは、数分で瞬時に充電または燃料補給することができ、ガソリン/ディーゼル燃料車と同様に、最大500マイルの範囲で十分な電力を供給する能力を有している。
【0007】
世界のエネルギー需要および問題に対処するためのグリーン水素および水素利用という概念は、米国の生化学エンジニアである、Patrick Kenji Takahashiによって「簡単な解決策」として紹介された。水素は、周期表で最も単純な元素であり、宇宙で最も豊富に存在する。これは、常に他の元素と結合して発見され、エネルギー担体としての使用のために、炭化水素(たとえば、メタンCH4)または水(H2O)から分離されなければならない。太陽光、風力、および地熱などの再生可能エネルギー源からエネルギーが生成される場合、電気は生産されると消費される。電気分解では、水(H2O)に電流を流し、水素(H)と酸素(O)に分解させる。このプロセスは、エネルギー供給網を介してまたはオンサイトで実行することができる。分離された水素は、その後、将来の使用のために加圧タンクに貯蔵されてもよい。貯蔵された水素は、続いて燃料電池に送られ、そこで酸素と再結合され、熱生成や燃料輸送などの、さまざまな用途に使用可能な電力源に変換される。再生可能な電力を使用することで、化石燃料への依存を減らし、配電網の範囲を超えて風力および太陽光発電の範囲を広げることができる。
【0008】
再生可能な水素は、現在および将来のエネルギー問題に対する実行可能かつ重要な解決策である。これは、石油ベースの液体燃料の代わりに、輸送/移動部門の電化で使用される電力を供給することができるゼロ炭素の再生可能エネルギー源である。再生可能な水素は、天然ガスパイプラインに注入されることで、天然ガス配管網および下流の発電所を脱炭素化し、工場(石炭およびコークスの使用量を削減するセメントプラントなど)で必要とされる高品質の熱を提供し、高純度の鉄を生産するために製鉄所で還元剤として使用される。さらに、再生可能な水素は、かさばって非効率なバッテリーとは異なり、再生可能エネルギー源として容易に大量に貯蔵することができる。
【0009】
必要とされているのは、効率的かつ最小限の温室効果ガス排出で達成することができる再生可能なグリーン水素の大規模生産である。上述したように、100%再生可能電力を使用して再生可能な水素を生産するための現在の方法には、水の電気分解が含まれる。しかし、このプロセスはさまざまな理由で最適ではない。重要なことは、このプロセスは、再生可能電力に依存している(断続的であることが多い)ため、および大量の電力が必要とされる(1kgのH2を生成するのにおよそ62kWh)ため、大規模に実行する場合に非常に高価になる。加えて、脱イオン水の使用に関連してかなりのコストがかかり、1kgのH2を生産するのに、およそ8ガロンの脱イオン水が必要とされる。さらに、現在利用可能な電解槽の容量は、小規模生産にのみ有用であるため、不十分である。大規模な洋上風力発電所の建設に伴って、電気分解によるH2生産の価格が経時的に低下する可能性があり、これには、大規模なシステムが開発された時および場合に電解槽のコストの低下が伴うかもしれない。しかし、当面は、低コストのグリーン水素に対する現在および将来の需要を満たすための即時の解決策が必要であり、理想的には、そのような解決策は、費用対効果が高く、実装が容易であり、必要とされる新しいインフラの開発への投資が最小限である必要がある。
【0010】
経済的観点と技術的観点の両方から見ると、豊富に入手可能なバイオマスおよび廃棄材料をガス化して再生可能な水素を生産することは、FCEV(燃料電池電気車両)およびいくつかの他の用途に必要とされる水素を供給する費用対効果の高い方法であり得ることが認識されるべきである。実際、水素をFCEVによって必要とされる電気エネルギーに変換することの全体的な熱効率は、現在使用されている内燃エンジン車に電力を供給するための液体燃料の燃焼より3倍高い。このように水素を利用することは、世界規模のエネルギー安全保障に大きく貢献し得る。
【0011】
世界的に、都市バイオマスまたは産業バイオマスに関わらず、バイオマス、農業廃棄物または産業副産物などの量は増加しており、これらは、大気中にメタンを放出しながら、投棄されるか未利用のままである。EPAによると、環境へのメタンの影響は、100年以上にわたって二酸化炭素の28~36倍有害であると推定されている。さらに、汚染するエネルギーの生産技術(石炭燃焼など)に伴う過去数十年間の不十分な廃棄物管理方法が原因で、二酸化炭素および温室効果ガスの排出量が継続的に増加しており、その結果、世界的なライフサイクル評価が悪化している。
【0012】
廃棄物を含むバイオマスも一般的な焼却炉で燃焼され、低温燃焼の産物である、半揮発性有機化合物(SVOC)、ダイオキシン、フランなどの発癌性物質を含む汚染物質の排出を生み出している。過去20数年間、米国、日本、ヨーロッパ諸国などの先進国は、混合プラスチックおよび混合紙を年間合計1億トン以上リサイクルしており、そのほとんどは、その後、より低い価値の製品で再利用するために中国に輸出されている。この慣行は2018年1月1日の時点で中国政府によって一旦停止され、その結果、何百万もの再生材が貯蔵され、および/または埋め立て地に送り返されている。
【0013】
さまざまな形態の廃棄物、バイオマス、ならびに混合プラスチックおよび混合紙などの再生材を取り扱って処理する他に、これらの原料を再生可能な合成ガスに変換して、容易に再生可能な電気エネルギー源として機能するデバイスおよび装置を含むシステムおよびプロセスに対する必要性は、Camachoによる特許査定を受けた米国特許第5,544,597号および第5,634,414号に開示され請求された装置およびプロセスによって部分的に満たされている。これらの特許文献は、バイオマスまたは他の有機物が、圧縮されて空気を除去し、炉床を有する反応器に連続量で送達されるシステムを開示している。その後、プラズマトーチを熱源として使用して、有機成分を熱分解する一方で、無機成分をガラス化したスラグとして除去する。
【0014】
より最近では、有機物の熱分解、ガス化、およびガラス化のための上記特許文献の装置およびプロセスに対する改良が、Doらによる米国特許第6,987,792号に開示された。この特許文献は、プロセスの効率をさらに高めるだけでなく、システムの柔軟性を高め、マテリアルハンドリングシステムの使いやすさを向上させ、およびガス化装置がより多様で可変な材料ストリームを受け取ることを可能にするために、改良された材料供給システムを提供する。
【0015】
米国特許第6,987,792号の装置およびプロセスは、プラズマトーチを触媒床と組み合わせて使用することによって床ゾーンで高温が維持されることを確かなものとする。加えて、当該特許文献は、準化学量論的状態を観察しながら、ガス化装置の全体的な断面に沿った高温および効率的で完全なガス化状態を維持するために、たとえば、反応器の側面からその中心に酸素富化空気を注入するための床のさまざまな高さに設計され、配置された羽口のいくつかのリングを開示している。米国特許第6,987,792号で利用される酸素は、二次供給源によって供給され、システム内およびシステムによって一体的に生産されるわけではない。
【0016】
前述のシステムおよびプロセスは、有用ではあるが、再生可能な水素の生産ではなく、むしろ再生可能な電力および再生可能な液体燃料の生産を目的としたバイオマスのガス化の初期の試みが典型となっている。上記のように、現在のエネルギー需要および燃料ベースの産業では、グリーン再生可能な水素および再生可能エネルギーに、ますます費用対効果かつ時間効率の高い方法でアクセスする必要がある。
【0017】
したがって、水素が、使用可能、輸送可能、および他の産業用途に利用可能となるように、バイオマスをガス化して再生可能なグリーン水素を生産するための効率的なシステム、プロセス、および方法が必要とされている。好ましくは、そのようなシステム、プロセス、および方法は、実装が容易であり、費用対効果が高く、効率的であり、信頼性が高く、現代世界のエネルギー需要に適合する必要がある。
【発明の概要】
【0018】
本明細書には、新規のガス化ユニットおよびシステムの使用を含む、生物由来の炭化水素廃棄材料の一段階のプラズマ促進されたガス化のための方法、デバイス、およびシステムが提供される。本明細書で企図されるように、本発明のガス化ユニットおよびシステムは、上部プレナムセクションおよび下部二重床セクションを有する特有の幾何学的設計の形状の反応器であって、下部二重床セクションが、円錐台状の移行部によって第2の幅狭部分に接続された第1の幅広部分を含み、バイオチャー炭素触媒床を受け入れるのに適しており、上部プレナムセクションが、少なくとも1つまたは複数のガス出口ポートを有し、酸素吸収システム(低コスト酸素(LCO)吸収システムなど)によって生成された酸化ガス剤を、1つまたは複数の取り込みポートを通して下部二重床セクションへと提供するために、下部二重床セクションの周りにガス導入システムが配された、特有の幾何学的設計の形状の反応器と、複数の入口または羽口であって、プラズマアークトーチが、下部二重床セクションに取り付けられて、バイオチャー炭素触媒床および生物由来の炭化水素廃棄材料から生成された酸化熱を高め、摂氏3000~5000度の動作温度を作り出す、複数の入口または羽口と、を備える。一体化された酸素吸収システムは、大気圧酸素富化空気、酸素または蒸気の形態で酸化剤を提供して、反応器に導入された生物由来の炭化水素廃棄材料の自己熱型の発熱酸化を発生するように設計されている。
【0019】
米国特許第6,987,792号に記載されるようなガス化装置のシステムの以前の実施形態では、酸素は、オーバー・ザ・フェンスのサプライヤー(over the fence supplier)などの二次供給源から非常に高いコストで提供された。特定の以前の実施形態では、酸素が、極低温技術を使用する専用の空気分離ユニットによって提供されたが、この方法論も、かなりのコストがかかり、結果として、エネルギー消費が高くなった。概して、酸素を供給する工程はプロセス全体から分離されていたため、酸素の調達、システムへの導入、このプロセスの運用面の監視および管理に必要とされる追加の工程が、結果として、非効率性に加えてコストの上昇ももたらした。前述の欠点を解消するための努力、および効率化され、費用対効果が高い、操作上優れたシステムおよびプロセスを作成するための努力において、本明細書に記載されるような新規の発明は、ガス化装置への酸素吸収機構の一体化を含む特有の特徴を提供する。
【0020】
酸素を別の供給源/場所からプラズマガス化システムに導入する工程は、以前の特許および公報に記載され、類似のデバイスで日常的に実施された工程である。しかし、実際に酸素吸収システムを直接ガス化装置に一体化する特徴を開示または示唆した先行技術の参考文献またはシステムは存在しない。酸素吸収システムを一体化するという概念は、本明細書で論じられるような本発明の作成まで構想も実現もされていなかった。このように、本明細書に記載される特徴は新規であり、自明ではない。
【0021】
上記したように、酸素吸収システムを上記のプラズマベースのガス化装置に一体化することによって有意な利点が達成される。まず、一体化された特徴は、酸素を低圧で生産することを可能にし、最小限の手動または運用上のインタラクションを必要とするだけであり、したがって、結果として最終的により低いコストで一貫した出力が得られる。さらに、本発明による酸素吸収システムは、高純度の再生可能な水素を生産するために酸素富化空気とともに注入することができる蒸気を生成するように構成することができる。
【0022】
本明細書で提供される新規の実施形態は、主に水素および一酸化炭素を含む出口合成ガスを生産するプラズマトーチ(外熱プロセス(allothermal process))によって生成された外部熱源によって増強された再生可能な水素を生産するための酸素吹き込みプロセスを含む。水素および一酸化炭素は、高温で最も安定した2つの分子化合物であり、したがって、最も高い温度が、最低の酸化ゾーンで見られ、上部プレナム領域まで上昇する、ガス化装置内で生成された高温勾配の結果として、これらの分子化合物は、すべての残留炭化水素鎖が、出る前にガス化装置の上部近くでさらに熱分解されている、プレナム領域で見られる。本発明の特定の実施形態では、高い温度勾配は、およそ5つのゾーンを生成する。
【0023】
本明細書に記載される方法によれば、合成ガスは、さまざまな有機炭化水素の供給原料から確実に生産され、タールまたは多環芳香族炭化水素(通常、低温自己熱ガス化システムによって生成される)を実質的に含まない。ガス化装置において大気圧下で生成されたバイオマス由来の合成ガスは、続いて、高圧蒸気を生成するプロセスにおいて、送風機システムで引き出され、不純物および酸性ガスがこすり落とされ、その後、低温に冷却される。高圧蒸気の熱は、その後、摂氏約450度から摂氏550度で動作する一体化された酸素吸収システムの温度を維持するために使用される。吸収プロセスは発熱プロセスであり、一方で、酸素の脱離プロセスは吸熱プロセスであるため、当該プロセスは、ガス化反応器からの大幅な熱伝達の増加を必要とせずに平衡状態で実行される。結果として生じる、こすり落とされ、洗浄され、冷却された(約65vol.%よりも多いH2と約35vol.%より少ないCOとからなる)合成ガスは、その後、圧縮され、加圧された水蒸気と一緒に水性ガスシフトシステムに供給されて、COおよびH2Oの大部分を追加のH2およびCO2に変換する。水性ガスシフト反応器のオフガスは(典型的な効率が85%である1段階シフト反応で行われる場合)、大部分が水素ガスであり、はるかに少量のCOおよびCO2を含み、H2Sなどの硫化水素および硫化カルボニル(COS)などの、硫黄含有化合物、ならびに他の不純物を依然として含み、圧力スイング吸着(PSA装置)で処理される前にさらに圧縮される。PSAは、工業規模で水素を精製するための業界標準のプロセス技術である。PSA装置では、水素は、供給圧力に近い圧力で回収および精製され、一方で、圧力を下げることによって吸着された不純物が除去される。以下の理論に拘束されることは望まないが、当該技術は、圧力下でガスを分離させるためにガスの吸着特性の違いに依存しており、非常に純粋な水素(最大99.9999vol.%の純度)を生産する効果的な方法である。当該プロセス全体は、自動化されており、水素の回収および生産に最適化された特許取得済みのサイクルを有する市場で最も先進的な吸着剤を利用する。PSA装置は、慣例的に、屋外および無人操作用に作られ、コンパクトであるかつ完全にスキッドを取り付けるように設計されている。不純物を含むPSA排ガスは、その後、一連の小型ガスエンジンまたはマイクロタービンで電力を生成するための燃料ガスとしての使用のための排ガス圧縮機がなくても、燃料システムに送り返すことができる。PSAオフガスからガスエンジンによって生成された電力は、プラントのプラズマトーチ、圧縮機、およびポンプを含む施設の寄生電力需要を提供するために使用される。実質的に純粋なH2の生産を結果としてもたらす自動PSAプロセスは、高分子電解質膜(PEM)燃料電池システム(輸送車両で使用されるものなど)での使用に適合している。一実施形態では、PSAシステムを介して生産された再生可能な水素は、その後、550バールの圧力までさらに圧縮され、水素用にカスタムに設計された貯蔵タンカーに貯蔵され、水素燃料補給ステーションなどの水素ユーティリティへの輸送の準備が整えられる。プロセスから生成された二酸化炭素は生物由来であり、隔離のために、食品グレードの二酸化炭素としての販売のための副産物として回収することもできる(または代替的に、生物由来の炭素であるため、炭素ペナルティなしで大気中に放出されてもよい)。
【0024】
先行技術および以前の特許の欠点に対する有意な解決策は、「低コスト酸素」(LCO)システムなどの酸素吸収システムをガス化装置のシステムに一体化して、バイオマス供給原料の処理に必要な酸素富化空気を提供しながら、運用コストも削減することである。特有の吸収システムを一体化して低圧の酸素富化処理空気を生産し、出口ガス熱を使用して等温吸収システムの温度をおよそ550°Cに維持することで、空気分離ユニット(ASU)システムで送達された高圧酸素と比較して、酸素生成の運用コストが大幅に削減されるだけでなく、ガス化装置の必要な動作温度を生成するために必要とされるプラズマトーチ出力も大幅に削減され、一方で、高純度水素の生産を最適化する。
【0025】
プラズマガス化システムと記述され呼ばれる装置は、下部セクションに1つまたは複数の取り込みポートを含み、ここで、空気、90%から95%の酸素を含む富化空気、または蒸気などの酸化剤がガス導入システムに注入される。酸化剤投与のモードおよび量は、供給原料の組成、供給原料の量、生産される水素の所望の量、および設計され、ガス化装置のデジタル制御システム(DCS)にインストールされる独自の操作パラメータに従って判定される。ガス導入システムは低コストの酸素吸収システムと一体化されて、酸素富化空気のみを提供するか、または蒸気と組み合わせて、供給原料の酸化および部分酸化を支援し、合成ガス出力で生産された水素の量を増加させる。複数のプラズマアークトーチが下部セクションに取り付けられて、バイオチャー材料で作られた触媒床を加熱し、それにより、処理されているバイオチャー材料は上部に送達されて、供給原料材料の別個の床を作成する。触媒床は、装置の断面全体に均一に熱を分配するのを助けて、上部の供給原料材料の固定床内でのチャネリングまたはブリッジングを防ぐ。
【0026】
本開示の別の態様は、廃棄物、バイオマス、または他の炭素質材料を含む材料をプラズマ熱触媒ガス化によって再生可能な水素に変換するための方法に関し、ここで、当該方法は、反応器の酸化ゾーンセクションで冶金用コークス材料または石油コークス材料を使用する代わりに、触媒床として機能する炭素質バイオチャー材料を提供する工程を含む。バイオチャー材料は、(限定されないが、ヤシ殻を含む)木質バイオマスの熱分解から作られた、および固定炭素分率が非常に高いため、ガス化されるバイオマス供給原料よりも密度が高く、消費速度がはるかに遅いチャー製品にさらに圧縮された、高密度の炭素チャー材料を含む。バイオチャー触媒は、供給原料をサポートし、反応器の断面全体にプラズマ熱を分配する消費床としての役割を果たすだけでなく、供給原料の熱含有量を増加させる他に、触媒床の多孔性を介して溶融不活性材料の流れを可能にする方法も提供する。本明細書に記載されるプラズマガス化システムに必要とされる仕様を満たすバイオチャーの生産には、化石燃料から生産された標準的なコークス触媒とは異なる、特有かつ新規な独自のプロセスを含む。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の説明を読めば、よりよく理解されるため、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】先行技術の装置の立面図である。
図2】本開示の一実施形態で使用されるガス化装置の立面図である。
図3】本開示に従って利用される供給原料の直径サイズに対する圧力低下のグラフである。
図4】代表的な圧力センサおよび温度センサを例示する本開示の一実施形態で使用されるガス化装置の部分立面図である。
図5A】代表的な圧力センサおよび温度センサの位置を例示する図4の断面図である。
図5B】代表的な圧力センサおよび温度センサの位置を例示する図4の断面図である。
図5C】代表的な圧力センサおよび温度センサの位置を例示する図4の断面図である。
図5D】プロセス接続位置(Process Connection Location)(計器および角度)を例示する。[注:すべての寸法はノズルの中心線に対する度数であり、各タイプの計器ノズルはSPGRの周囲に等間隔で配置されており、示されている計器ノズルの数は例示目的のみで存在する。]
図6】酸素生産モジュールの一実施形態の特定のコンポーネントを示す概略図である。
図7】レシプロエンジンを備えたIGCC用の一体化した酸素生産およびCO2捕捉を示す概略図である。前に図6に概略的に示したような酸素生産モジュール(LCO)は、合成ガスの「冷却器」に浸されている。
図8】鉄鋼産業において本明細書に記載される方法によって生産された再生可能な水素の役割を実証するフロー図を提供する。
図9】セメントのための本発明のプラズマガス化プロセスの推奨構成を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、さまざまな特徴を有する特定の実施形態を参照して説明される。本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の実施においてさまざまな修正および変更を行うことができることが当業者に明らかになるであろう。当業者は、所与の用途または設計の要件および仕様に基づいて、これらの特徴が、単独で、または任意の組み合わせで使用され得ることを理解するであろう。当業者は、本発明の実施形態のシステムおよびデバイスが、本発明の方法のいずれかと共に使用することができること、および本発明のシステムおよびデバイスのいずれかを使用して本発明の任意の方法を実施することができることを理解するであろう。さまざまな特徴を含む実施形態はまた、これらのさまざまな特徴からなり得るか、またはそれらのさまざまな特徴から本質的になり得る。本発明の他の実施形態は、明細書および本発明の実施を考慮することで、当業者に明らかになるであろう。提供される本発明の説明は、本質的に例示にすぎず、したがって、本発明の本質から逸脱しない変形は、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0030】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、以下の説明に明記されるまたは図面に例示される構造の詳細およびコンポーネントの配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であるか、またはさまざまな方法で実施または実行することも可能である。また、本明細書で利用される表現法および用語法が、説明目的のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、この技術および方法論に包含される当該技術の当業者によって一般的に理解または使用されるものと同じ意味を有する。
【0032】
米国特許第5,544,597号、米国特許第5,634,414号、米国特許第6,987,792号、国際出願第PCT/US14/15734号、米国特許出願第13/765,192号、PCT出願された国際出願第PCT/US14/15792号、および米国特許第9,206,360号を含む、本明細書で言及されるテキストおよび参考文献は、それら全体が組み込まれる。
【0033】
本明細書で提供される新規の発明は、バイオマスなどの材料をガス化して水素ガスを生産することを可能にするデバイス、システム、およびそれらを使用する方法を含む。本明細書で企図されるように、バイオマスという用語は、任意の生体材料を包含することを意図されており、供給原料という用語と交換可能に使用される。特定の実施形態では、バイオマスは、限定されないが、廃棄物、リサイクル紙、有機廃棄物、故意に栽培されたエネルギー作物、木材または森林残渣、食用作物、園芸、食品加工、畜産からの廃棄物、下水処理場から人間が出す廃棄物、または産業廃棄物を含み得る。
【0034】
本発明の少なくとも1つの利点は、バイオマスの使用が、再生可能な水素および生物由来の二酸化炭素の生産ためのバイオマス由来の合成ガス(バイオ合成ガス)を生産することによって温室効果ガスおよびカーボンフットプリントの両方を削減することの恩恵をもたらすことである。生産された再生可能な水素および生物由来の合成ガスは、当業者に知られているさまざまな方法、および限定されないが、水素燃料セル電池、プロトン交換膜燃料電池(PEM FC)または固体酸化物燃料電池(SOFC)を含む、さまざまな装置を介して、再生可能な電力を生産するようにさらに処理することができ、エネルギーを必要とする施設、車両などに、完全なオフグリッド分散再生可能電力システムを提供する。本明細書で生産された再生可能な水素および生物由来の二酸化炭素は、機械化プロセスを通じて再結合されて、天然ガスの代わりにガスパイプラインでの使用のための再生可能なメタンガスを生産することもできる。最後に、再生可能な水素および/または生物由来の一酸化炭素は、供給ガスとして使用されて、アンモニア、再生可能な天然ガス(RNG)とも呼ばれる合成メタン、再生可能なメタノール、合成パラフィン系ケロシン、および再生可能な液体燃料などの、輸送燃料を作成し、輸送部門でガソリンおよびディーゼルと置き換えることができる。さらに、本明細書に記載される方法およびプロセスは、任意の有機炭化水素含有廃棄材を用いて機能し得る。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って生成された水素は、圧縮水素ガスとして圧力下でトラックまたはパイプラインによって燃料供給所に送達され、適切な条件で(最も典型的には1つまたは複数の地下貯蔵タンクに)貯蔵され得る。その後、水素は、(1つまたは複数の)貯蔵タンクから連続的にまたは要求に応じて取り出され、必要に応じて燃料電池車が必要とする所望の圧力に再圧縮される。
【0036】
ガス化装置
本発明に従って使用されるLCO(LOW COST OXYGEN 低コスト酸素)吸収システムと一体化された典型的な一段大気圧熱触媒プラズマガス化装置は、1時間当たり5~20メートルトンの有機廃棄物および/またはバイオマスの混合源を処理するように構成され得るが、より大きなまたは小さなサイズのガス化装置が使用されてもよい。正確なスループットは、供給材料の組成および発電プラントの所望の全体的なスループットに依存する。本開示のガス化装置は、LCO酸素吸収システムなどの酸素吸収システムと一体化されているという事実によって、他のプラズマガス化反応器と区別することができ、両方のシステムは、ほぼ大気圧でまたは大気圧よりわずかに低く、高い温度(出口ガス温度は1,200℃を超える)で作動して、合成ガス製品にタールなどの未変換の炭化水素分子が存在しないことを確かなものとする。LCO酸素吸収システムと一体化された新規の一段階外熱プラズマガス化処理システムは、他のバイオマスガス化システムとは対照的に、実質的にタールも含まない高水素体積濃度の合成ガスを生産するという点で特有であり、結果として、合成ガスは、(低温自己熱ガス化装置に典型的である)二次合成ガス分解チャンバでの追加の処理を行わない。
【0037】
本発明の追加の新規な特徴は、ガス化装置が特有のバイオチャー触媒床(Biochar catalytic bed)を含む実施形態を含む。熱触媒プラズマガス化プロセスには、特有のバイオチャー触媒床組成物の寸法(つまり高さ)を継続的に制御および監視する能力が含まれる。一実施形態では、バイオチャーは、バイオマスの熱分解から生成されたチャーに由来する炭素を主に含む。(典型的には石灰岩の形態で)シリカおよび酸化カルシウムを含むフラックス材料などの追加の材料が、バイオチャーと混合されてガス化装置に入れられる。バイオチャーの組成は、特定のガス化/ガラス化プロセスの動作条件に合わせてカスタマイズされる。
【0038】
一実施形態では、バイオチャー炭素触媒床は、供給原料(バイオマスおよび廃棄材料)の高い揮発性物質含有量とは対照的に、その高い固定炭素含有量の結果として、反応器の断面全体の一貫したプラズマ熱分布を確かなものとするように設計されている。現在利用可能な固定床ガス化装置とは対照的に、バイオチャー炭素触媒の均一な熱分布は、供給原料床を介した熱のチャネリングおよび固定床ガス化装置で典型的に発生する供給原料内の溶融凍結プラグ(死体プラグ)の形成を防ぐ助けとなる。さらに、バイオチャー炭素触媒は、上部の供給原料充填床を支持する、および溶融フラックス、スラグ、および金属などの無機物が下方に流れ、灰が上方に流れるための隙間空間を提供する、消費床として機能する。(石灰岩の形態での)シリカおよび酸化カルシウムが、反応器から取り出される前に、溶岩プールの化学的性質および粘度を判定する適切なpHを維持するために使用される。バイオチャー触媒は、フラックス材料とともに、炭素対シリカ対酸化カルシウム比(C:SiO:CaO)がガス化動作条件を最適化するような方法で、特定の供給システムを介してガス化反応器に送達される前に供給原料と一緒に連続的に供給される。
【0039】
図2に示されるように、ガス化装置10は、好ましくは高級鋼で構成される。ガス化装置は、その内殻全体に耐火ライニング12を有する。特定の実施形態では、ガス化装置の上部から3分の2は、耐火物の1~10層まで、好ましくは3層でライニングされ、各層の厚さは、約1~20インチ、約4~6インチ、または約10~14インチの範囲である。具体的には、プレナム領域のドームは、高アルミナ質不定形耐火物で覆われている。プレナムゾーンは、高温対向層(hot face layer)において高アルミナれんがでライニングされ、バッキング層においても高アルミナれんがでライニングされている。供給原料床およびバイオチャー触媒床の中間領域は、高温対向層において高クロムれんがでライニングされ、バッキング層においても高アルミナれんがでライニングされている。典型的に、ガス化装置の下部から3分の1は、耐火れんがの1~10層、好ましくは3層でライニングされ、全体の厚さは約20~30インチである。溶岩スラグ単独は、高温対向層において高クロムれんがでライニングされ、バッキング層において炭化ケイ素れんがでライニングされている。用途に応じて、他の耐火構成が使用されてもよい。両方のセクションで、反応器産業の当業者に知られている典型的な市販の耐火物が利用されている。
【0040】
ガス化装置10は、ガス化装置内のガスの空塔速度に従って設計されている、その垂直方向の長さ全体にわたって特定の幾何学的形状を有する。下部酸化ゾーンおよびガス入口から上昇する高温ガスの空塔速度が、特定のメートル/秒の閾値未満に留まることを確かなものとするために、独自の計算が、反応器および耐火ライニングの形状の生成に使用される。具体的に計算されたガスの空塔速度によって、供給原料材料が、反応器の下部ガス化ゾーンに下降し、続いて合成ガス出口ダクトへの詰まりや凝集を引き起こしかねない未処理の出口ガスへの浄化または吹き飛ばしがなくなることを確かなものとする。ガス化装置の上部から3分の1の幅の部分は、熱分解プレナムゾーン16と呼ばれ、出口ガスが完全に熱分解されるのに十分な滞留時間を可能にするようにサイズ合わせされている。典型的に、高温の合成ガスは、プレナムゾーン16の上部の中心にある単一の出口30を通ってガス化装置を出る。代替的に、ゾーン16の上部の周りに複数のガス出口が設けられてもよい。
【0041】
二重床ゾーンとも呼ばれるガス化装置の中間セクション18は、プレナムゾーン16の周長よりも小さい周長を有する側壁20によって画定される。セクション18の上部分および触媒床の上方には、2つの対向する供給バイオマス投入部32および34があるが、ガス化装置は追加のバイオマス投入部を用いて設計されてもよい。典型的に、投入部32および34は、セクション18の上部50%、より典型的には上部20%に位置する。また、投入部32および34は、典型的に、ガス化装置10の垂直軸に対して約45度から約90度の角度を成し、より典型的には約60度から約85度の角度を成す。セクション18はまた、一体化された酸素吸収システムに接続されている2つまたはそれより多くのガス状オキシダント環(gaseous oxidant rings)(図示せず)に取り囲まれており、それによって、独自のパーセンテージで空気、酸素富化空気、または蒸気の組み合わせが反応器に注入される。各環は、LCO羽口39および41と呼ばれる、等間隔に配置された入口を介して、(バイオマス組成に応じて予め判定された)床ゾーンに、たとえば、酸素富化空気および/または酸素を注入する。加えて、一体化されたLCO酸素吸収システムはまた、36および42として参照される一次プラズマトーチ羽口に接続され、それによって、酸素富化空気を含む酸化剤は、トーチからのプラズマプルームの焼成と同時に注入されて、バイオチャー炭素触媒床の完全な発火を確かなものとし、反応器底部の断面全体での一貫した加熱床を維持する。未転送のプラズマアークトーチを収容する一次羽口の数は、典型的に、2~6の範囲である。ガス羽口の数は、典型的に、ガス化装置のサイズおよびシステムのスループットに応じて、6~10の範囲であり得るが、より大きいまたは小さい数が使用されてもよい。
【0042】
ガス状オキシダント環の数は、典型的に、触媒およびバイオマス床(biomass bed)高さに応じて、1~20、1~15、1~10、または2~3の範囲であり得るが、より大きいまたは小さい数が使用されてもよい。酸化剤に関して、窒素は、合成ガス中の不活性分子と見なされるため、化学合成または発電を含む、ガス化反応器の下流にあるプロセスには寄与しない。さらに、合成ガス中の窒素が多いほど、または不活性度が高いほど、後続のシステムで処理する合成ガスの量が多くなる。結果として、合成ガスから窒素を除去する市販のシステムがないため、合成ガスを取り扱うために、一段階熱触媒ガス化反応器の下流にある大規模なシステムが必要とされ、それゆえ、施設の資本支出が増加する。
【0043】
空気は主に窒素(79%v/v)とそれより少ない程度の酸素(21%v/v)で構成されるため、本開示の目的が合成ガス内の窒素含有量を減少させることであることが原因で、空気自体は好ましい酸化剤ではない。同様に、富化空気は、実行可能な酸化剤として適格であるのに十分に高い酸素含有量(典型的には少なくとも約80%、より典型的には少なくとも約95%)を有する。下の表は、2つの異なるレベルの空気富化に対する合成ガスの組成と量の比較を提供している。
【0044】
【表1】
【0045】
予想通り、合成ガスの量は著しく減少する。この特定の例では、これは、富化空気中の酸素純度のレベルが50%から99%に増加する場合、20%減少する。加えて、合成ガスの発熱量は、酸素富化のレベルとともに増加する。この特定の例では、発熱量は40%増加する。本明細書で論じられるように、(低コストの大気酸素富化空気を提供するための)一体化されたLCO酸素吸収装置を提供する本開示はさらに、合成ガス中の過剰窒素の下流での処理のコストを削減する他に、プラズマトーチの特定のエネルギー要件も削減して、再生可能な水素の生産を最適化する。概して、95%v/v以上の酸素純度レベルが好ましい。
【0046】
ガス化装置の底部から3分の1はガラス化ゾーン19であり、これは、ゾーン18の周長よりも小さい周長を有する側壁22によって画定される。側壁20および22は、円錐台部分24によって接続されている。ガラス化ゾーン19は、1つまたは2つ以上の流出口を収容しており、ここで、溶融スラグ液が、典型的には耐火物でライニングされた高温の樋に連続的に投入される。高温の樋は低温の樋に排出され、ここで、スラグは、スラグクエンチタンクに流入する前に冷水スプレーとの直接接触によってクエンチされる。クエンチされたスラグは、クエンチタンク内の傾斜コンベアを介して収集され、計量スキップ(weigh skips)に直接排出され、ここで、専用の貯蔵エリアに移動する前に収集および貯蔵される。クエンチタンクからの水は、高レベルを経由して、水再循環/スプレーポンプを供給する沈降タンクに流れ込む。当該システムの意図は、スラグ流出口を通るスラグの継続的な流れである。スラグの流出動作中に放出され得る合成ガスを燃焼するために、専用の流出口バーナーが各流出口に隣接して配置される。不活性スラグ材は構成材料としての再利用に適している。このスラグに使用され得る構成材料には、タイル、屋根用の砂粒(roofing granules)、およびれんがが含まれる。溶融スラグを含むガス化装置のこの下部セクションは、特定の構成において、フランジ付き継手を介してガス化装置に取り付けられ得ることで、耐火物の交換または修理の場合にこのセクションの迅速な交換が可能になる。
【0047】
一次羽口39および41に差し込まれた各々の未転送のプラズマアークトーチには、概して、適切な供給源(図示せず)から供給導管を介して電力、冷却された脱イオン水、およびプラズマガスが供給される。トーチおよび一次羽口の数、各トーチの電力定格、バイオマス供給システムの容量、バイオチャー炭素触媒の組成および量、触媒の量、酸化剤の酸素純度、酸化剤の量、ガス化装置のサイズおよび形状、合成ガスの冷却、洗浄、圧縮、および調整のシステムのサイズおよび容量はすべて、システムによって処理されるバイオマスの種類および量に応じて評価される変数である。反応器10の周囲に、典型的には少なくとも3つ、より典型的には少なくとも4つのプラズマトーチがある。
【0048】
ガス化装置は、典型的に、約3フィート以下の間隔でそのシャフト全体にわたって、ガス化装置内の圧力および温度を検出するためのセンサの他に、ガス化プロセス監視するためのガス化装置内の戦略的位置にあるガスサンプリングポートおよび適切なガス分析装置を含む。このようなセンサおよびガス分析装置の使用は、当技術分野でよく理解されている。代表的な圧力センサP3、P4、およびP11、ならびに温度センサT1、T2、TT4、T5、T6、T8、T9、およびT10を例示する、ガス化装置10の部分立面図である、図4を参照されたい。また、代表的な圧力センサP3、P7、およびP11、ならびに温度センサT1、T2、TT4、T5、T6、T8、T9、およびT10の位置を例示する、図4の断面図である図5A~5Cを参照されたい。センサのノズルは、ガス化装置の周囲に等距離に配置されている。示されているセンサのノズルの数およびセンサの種類は、例示目的のみのためのものである。
【0049】
バイオマスおよびバイオマス供給システム
上記のSolena Fuels Corporationの特許に以前に記載され開示されたように、床ゾーンの上部に供給する前に、バイオマスの量を減少させ、バイオマス中の空気および水を除去するように油圧シリンダおよび/またはネジを介して動作する圧縮バイオマス送達システムを利用することができる。
【0050】
バイオマスおよびバイオマス残渣(UNFCC.sup.1によるその定義によると、RDF(ごみ固形燃料)、緩い都市固形廃棄物(MSW)、工業用バイオマス、および鋼製またはプラスチック製のドラム缶、袋、および缶などの容器に貯蔵されたバイオマスなどの複数の混合源からの有機再生可能供給原料バイオマス)を収容するために、非常にロバストな供給システムを使用することができる。バイオマスは、選別することなく、およびその容器を取り外すことなく、その元の形態で採取され、直接供給システムへと供給され得る。このような操作が可能なバイオマスシュレッダおよびコンパクタは、マテリアルハンドリングの分野の当業者に知られている。バイオマス供給物は、断続的にサンプリングされて、処理前にその組成を判定し得る。.sup.1
https://cdm.unfccc.int/Reference/Guidelarif/mclbiocarbon.pdf
【0051】
バイオマスには、限定されないが、植物、動物、および微生物に由来する化石化されていない生分解性の有機物が含まれる。これには、農業、林業、および関連産業からの産物、副産物、残留物、および廃棄物の他に、産業廃棄物および都市廃棄物の化石化されていない生分解性の有機画分も含まれるものとする。バイオマスには、化石化されていない生分解性の有機物の分解から回収された気体および液体も含まれる。(b)バイオマス残渣は、農業、林業、および関連産業からのバイオマスの副産物、残渣および廃棄物流を意味する。
【0052】
米国特許第6,987,792号では、圧縮システムが窒素パージされることとすることが言及されている。空気の代わりに窒素でパージされたシステムを有する理由の1つは、反応器に向かって供給原料を運ぶ際にスクリューが逆火するのを避けるためである。必ずしも窒素ではなくても、システムが不活性ガスでパージされることが重要である。窒素を使用する利点は、製造コストが高くないことである。一方で、主な欠点は、合成ガス中の窒素量が増加することである(他の窒素源は、プラズマトーチシステムを通過する空気および供給原料に含まれる窒素である)。
【0053】
本開示によれば、パージ剤としての窒素の代替物は、二酸化炭素である。合成ガス中のCO2の量は必然的に増加するが、レクチゾール、セレクソール、またはアミン単位などの、窒素とは異なる合成ガスから二酸化炭素を抽出するために、既製のシステムが市販されている。この代替物は、合成ガス中の不活性成分を減少させるための安価な代替手段をここで提供するため、任意のケースでCO2除去装置が使用される必要があるシナリオに特に関連している。
【0054】
任意に収容される容器を含むすべてのバイオマスおよび有機物は、システム(図示せず)によって破砕され、細断され、混合され、圧縮され、廃棄物の連続ブロックとしてプラズマ反応器に押し込まれる。バイオマスは、ガス化装置の最適な性能を確保するために予め設定されたサイズに粉砕することができる。ガス化装置の最適な性能を確かなものとするために、供給速度を予め設定することもできる。
【0055】
典型的に、反応器に注入された有機物は、圧力低下の影響を避けるために直径約2cm以上の物理的サイズを有する。同様に、そのサイズは、典型的に、床高さが指定された最大値を超えないことを確かなものとし、したがって反応器のシャフトの高さを制限するために、直径が5cmを超えない。
【0056】
たとえば、粒子サイズが直径1cmである場合、床全体の圧力低下は約900Pa/mであり、一方で、直径5cmの粒子サイズではわずか10Pa/mである。しかし、床高さは粒子サイズに応じて変化し、粒子サイズが直径1cmである場合、床高さは約0.5mであり、一方で、直径5cmの粒子サイズでは2.5mである。したがって、全体的な圧力低下は、それぞれ、400Paおよび25Paになる。
【0057】
したがって、粒子サイズおよびさらには圧力低下は、合成ガスを抽出するために反応器の下流に配置された誘引通風装置の設計、およびしたがってコストに重大な影響を与える。その結果、粒子サイズが大きいほど、発生する圧力低下は少なくなるが、床高さは高くなる。図3に示されるように、最適な粒子サイズが直径約3cm~約5cmであることが本開示に従って判定された。直径が5cmを超える粒子サイズによって、結果として反応器のシャフトの高さが確実に高くなる。
【0058】
バイオマスのブロックは、ガス化装置のゾーン18の複数の位置から連続的にガス化装置に送達され、消費可能なバイオチャー炭素触媒床の上で特定のバイオマスの床高さが達成されるまで、ガス化装置内の均一な分布さえも確かなものとなる。バイオマスの2つのブロックが、ガス化装置10の正反対側に設けられた入力シュートに同時に供給され得る。追加のブロックを受け入れるために、2つを超えるシュートが設けられ得る。ガス化装置のゾーン18内のいずれか1つの場所でのバイオマスの不均一な蓄積を回避する限り、任意の配置が適切となる。
【0059】
ガス化装置の上部セクション16の代わりに床ゾーン18の上部分に有機供給原料を注入することによって、耐火物の寿命、およびしたがって反応器の動作条件も強化される。耐火物をさらに保護するために、一度ガス化された発明者の独自のバイオチャー炭素触媒の使用は、炭素バイオチャーの内部層を提供して、二重床ゾーンの耐火物の高温面をさらに保護する。
【0060】
加えて、信頼性目的で、反応器は、典型的に、バイオマス供給原料用の少なくとも2つの供給システムおよびバイオチャー炭素触媒材料用の少なくとも1つの供給システムを収容する必要がある。これは、密度が異なるために触媒材料をバイオマス材料とともに圧縮することができないという事実によるものであり、バイオチャー炭素触媒床で必要である多孔性を可能にするために、バイオチャー炭素触媒に対して特定のサイズを維持したいためである。
【0061】
床高さを測定し、バイオマスの供給速度を制御するために、ガス化装置に沿った圧力センサおよび温度センサに加えて、ガス化装置の上部にあるマイクロ波センサを使用することができる。バックアップとして、ガス化装置内の活動を確認するために、特定の場所にサイトポートが設けられてもよい。センサからのすべての情報は、プラント全体の性能の動作を調整するデジタル制御システム(DCS)に供給される。ガス化装置のプロセス制御の一部としてのセンサおよびDCSの使用による供給システムの調整および監視は、通常のプロトコルであり、当業者に容易に明らかとなる。
【0062】
供給システムの代替の構成が、さまざまな材料に使用され得る。たとえば、微粉末または液体バイオマスが、ガス化装置に直接注入され得る。ガス輸送は、おがくずを含むバイオマス微粉などの微細固体の他に、バイオガス、再生可能なメタン、または水素の生産用などの天然ガスなどのガス製品の直接注入に使用され得る。液体には標準のポンプが使用され得る。このようなシステムは、マテリアルハンドリングの実務家に周知である。本明細書で提供されるプラズマ酸素吹き込みガス化装置のシステムの少なくとも1つの重要な利点には、業界で一般的な標準的な自己熱加圧および流動床ガス化装置と比較して、ガス化装置の大気圧条件による供給システムの容易さが含まれる。
【0063】
SPGV反応器の動作
細断され圧縮されたバイオマス材料58は、供給システムによって連続的にガス化装置10に供給される。簡潔性のために、ガス化装置の対向する両側からの連続的な供給によって、ガス化装置の断面全体にわたるバイオマス供給物の均一な分布が確かなものとなる。バイオマス床を形成する際のバイオマス供給物の分布の均一性によって、プラズマ加熱されたバイオチャー炭素触媒床からの高温ガスの均一な上向きの流れが確かなものとなる。プラズマガス化装置の底部に向かうバイオチャー炭素触媒床は、加熱されたガスおよび供給原料粒子をガス化装置の断面全体にわたって上向きに均一に分布する複数のプラズマトーチプルームによって絶えず加熱される。熱および高温ガスは、上向きに均一に分布されると、下向きに流れるバイオマス供給物を加熱および乾燥し、ガス化プロセスを効率的に行うことができる。上向きの均一な熱分布およびバイオチャー炭素触媒床の存在によって、熱のチャネリングも回避され、続いて他の固定床熱バイオマス処理プロセスで発生する典型的な問題であるバイオマス供給物のブリッジングが防止される。
【0064】
ガス化装置の特定の幾何学的漏斗形状および(トーチおよび他のガス入口からの)上昇するガス供給速度は、上昇する高温ガスの最低かつ特定の空塔速度を確かなものとするように設計されている。この低い空塔速度によって、流入するバイオマス供給物がバイオマス床に完全に下降することが可能になり、未処理のバイオマスまたは微粒子のキャリオーバとして押し上げられたり、出るガスへと浄化されることはない。加えて、ガス化装置のプレナム分解ゾーン16は、すべての炭化水素材料が、ガス化装置を出る前に2~3秒を超える滞留時間で高温にさらされることを確かなものとするように機能する。このゾーンでは、熱分解プロセスを完了し、完全なガス化とCOおよびH2へのタールなどの高級炭化水素の変換を保証する。
【0065】
低温廃棄供給物が、プラズマ熱触媒ガス化装置に連続的に供給され、ガス化装置の底部にある消費可能なバイオチャー炭素触媒の事前に加熱された床の上にバイオマス床を形成すると、消費可能な触媒床からの下降する低温廃棄物および上昇する加熱されたガスは逆向きの流れを生成し、これは、酸化から、脱揮発への部分酸化までの反応の完全な段階を可能にし、反応器を横切って均一な、およびその垂直ゾーンにわたって均一な、バイオマスの乾燥ゾーンを可能にする。
【0066】
このプロセスで適用および使用される消費可能なバイオチャー炭素触媒床は、典型的な冶金の溶鉱炉で使用されるものと同じであり、ガス化プロセスへのその包含は、少なくとも以下のいくつかの機能を果たす:(1)均一にプラズマガス化装置全体にプラズマ生成熱を分布させることが可能であり、したがって、プラズマトーチなどの強力な焦点熱源が利用される場合に通常発生する耐火物の過度の摩損を防ぐ;(2)出口ガスの重要な成分、つまり、出口上部ガスの発熱量に寄与するCO(一酸化炭素)を提供することによって、ガス化反応を開始する;(3)ガス化装置の底部に多孔質であるが固体の支持フレームワークを提供し、その上にバイオマス床を堆積させることができる;(4)高温の気体分子が均一にバイオマス床へとおよびそれを通って上向きに移動することを可能にする一方で、金属および鉄などのバイオマス内の無機材料が溶融され、ガス化装置の底部で溶融プールへと下流に流れることを可能にする;および(5)最も内側の耐火物層の内部に保護層を提供し、したがって、耐火物の寿命を延ばしながらガス化装置内の熱損失を減少させる。本開示は、触媒として使用される独自のバイオチャー炭素製品の特有の利用を含み、したがって、CO、H2、CO2からのすべての気体生成物が本質的に生物由来であり、気体生成物が完全に再生可能で環境に優しいことも保証する。
【0067】
加えて、目的が複数あるバイオチャー炭素触媒床の組成および高さは、継続的に制御および監視される。まず、その成分は、典型的に、主に炭素であり、特定のガス化/ガラス化プロセスの動作条件に対処するための少量の灰である。高いバイオチャー炭素含有量は、バイオマスの高い揮発性物質含有量とは対照的に、その固定炭素含有量が高いため、反応器の断面全体にわたるプラズマ熱分布を確かなものとするために使用される。まとめてフラックスと呼ばれるシリカおよび酸化カルシウムも加えられ、これらは、反応器から取り出される前に、適切かつ十分な溶岩プールの化学的性質を維持するために使用される。これらの触媒は、バイオチャー炭素対シリカ対酸化カルシウム比(C:SiO.sub.2:CaO)がガス化動作条件を最適化するような方法で、特定の供給システムを介してガス化反応器に注入される前に一緒に連続的に混合される。
【0068】
バイオチャー炭素触媒床は、バイオマス重量率の典型的に約2%から約10%、より典型的には約3%から約5%の割合で触媒を注入することによって維持される。これは、バイオマスよりも固定炭素含有量の密度が高く、融解温度が高く、硬い物理的性質であるため、絶えずバイオマス床よりもゆっくりとした速度で消費される。消費可能なバイオチャー炭素触媒床の高さは、バイオマス床のように、ガス化装置の周囲およびシャフトに沿ったさまざまな高さに配置された温度センサおよび圧力センサによって絶えず監視される。当該プロセス中にバイオマス床およびバイオチャー炭素触媒床70が消費されると、センサは、ガス化装置全体の温度および圧力勾配を検出し、水素の最適な生産を維持するために、自動的に供給システムに定常状態の動作で床高さを上昇または低下させる。
【0069】
炭素触媒床と溶融材料との相互作用は、十分に理解されている現象である。鋳造工場のキューポラメルタ(cupola melters)の場合のように、溶融金属が高温のコークスの上を流れる場合に、溶融鉄は、高温の床に付着しないが、その上を流れる。同じ現象が、非金属材料の溶融、すなわちスラグのガラス化中に観察される。金属溶融とは異なり、スラグのガラス化は、コークスから溶融スラグへの炭素の溶解度が無視できるものであるため、炭素の溶解を伴わない。本発明と先行技術との間の少なくとも1つの重要な相違点は、冶金炉および溶鉱炉で使用される冶金用コークスまたは石油コークスを使用する代わりに機能するバイオチャー炭素材料を使用することであり、これによって、再生可能な水素の生産のための化石燃料の使用を防止および回避する。
【0070】
バイオマスの炭化水素部分は、酸素が減少した(CO2への炭素の完全な酸化に関する)環境でガス化装置の部分酸化雰囲気下においてガス化される。したがって、ガス化装置で燃焼プロセスが生じて、発癌性化合物である、半揮発性有機化合物(SVOC)、ダイオキシン、およびフランなどの、焼却炉からの通常予想される汚染物質を生み出すことはない。
【0071】
一体化されたLCO酸素吸収システムによって生成され、プラズマアークトーチによって生成された熱によって促進される、酸素および/または酸素富化空気および/または蒸気のガス化装置への制御された導入によって、ガス化装置の底部内を最大で摂氏4000度にすることができることで、ガス化の制御された部分酸化反応を生成し、より高い熱量、より高い水素量で、最適な出口上部の合成ガスを生成する一方で、特定のエネルギー要件、すなわち、バイオマスをガス化するためにプラズマトーチによって消費されるエネルギーを削減する。その結果として、水素の生産のための有機バイオマスのガス化からの正味効率がより向上する。
【0072】
バイオマス床は、消費可能なバイオチャー触媒床から上昇する高温ガスによって連続的に減少し、床高さを維持するために供給システムによって連続的に補充される。このシーケンスの結果として、ガス化装置の底部での少なくとも摂氏約4000度から合成ガス出口での少なくとも摂氏約1200度までの温度勾配が生じる。このように確立された上昇向流システムは、入ってくるバイオマスを乾燥させ、したがって、他の熱燃焼システムのようにシャットダウンを引き起こすことなく高水分バイオマスが使用される場合に、当該システムが最大90%の水分含有量でバイオマス流を処理することを可能にするように機能する。当然のことながら、バイオマス供給物の水分含有量が高いことで、結果として、バイオマス供給物の炭化水素含有量が低いことが原因で、合成ガスの発熱量がより低くなり、水素生産がより少なくなる。
【0073】
ガス化装置は、出口ガスが、たとえば誘導ファン(IDファン)または送風機(図示せず)によってガス化装置から絶えず抽出されることが原因で、典型的にほぼ大気圧、またはより典型的には大気圧よりわずかに低い圧力で動作する。前述のように、ガス化装置の条件は本質的に部分酸化に縮小されており、ガス化プロセスに適した酸素条件はほとんどが制限されている。プロセスの独立した制御変数は、(1)バイオマス供給速度、(2)消費可能なバイオチャー炭素触媒床の高さ、(3)トーチ出力、(4)LCO酸素吸収システムによって生成される酸化剤のガス流量、および(5)プロセスで考慮されるバイオチャー炭素触媒材料とフラックス材料のC:SiO2:CaO混合比である。
【0074】
ガス化装置10の底部にある無機材料の溶融プールは、1つまたは複数のスラグタップ37を介してガス化装置から連続的に取り出されて、耐火物でライニングされたサンドボックスに入れられ、減容を最大化するために大きなブロックに鋳造されるか、またはオペレータが望むように粒状のスラグ材料を生成するために水でクエンチされた樋に鋳造される。
【0075】
スラグの流れが均一に一定であることを確かなものとし、スラグ流出口37の詰まりを防止するために、ガス化装置の底部熱電対システムの温度に反映されるスラグの温度に加えて、スラグの粘度は、プラズマトーチ出力および石灰石などのフラックス材料の量によって既知の関係性を介して追加される最適なC:SiO2:CaO比を有するように独立して制御され得る。溶岩プールの高さも、熱センサの使用によって測定される。
【0076】
温度、圧力、ガス組成、およびガスと溶融材料の流量に関するすべてのこれらの監視パラメータは、入力としてコンピュータ化されたDCSシステムに供給され、続いて、トーチ出力、空気/ガスの流れ、バイオマスおよび触媒の供給速度などの独立変数のプロセス制御に適合される。
【0077】
以前に分析された廃棄供給物に応じて、特定のガス化およびガラス化条件が予め判定され、DCS制御システムによってパラメータが予め設定される。実際のバイオマス材料がシステムに供給されるときの操作の起動の間に、追加の最適化条件が生成されて調整され、これらは、再生可能な水素の生産、およびその下流の適用に継続的に適応および最適化するために特有のコンピュータ化された(人工知能)プログラムで実行される。
【0078】
動作原理
概して、本明細書に記載されるプラズマガス化-ガラス化装置およびプロセスは、いくつかの主な原理に従って機能および動作する。
【0079】
バイオマス供給物における変動は、プロセスの結果に影響を及ぼし、独立した制御変数の調整を必要とする。たとえば、一定した材料供給速度を想定すると、バイオマス供給物の水分含有量がより高くなることで、出口上部の合成ガスの温度が低下し、出口合成ガスの温度を設定値まで上昇させるために、プラズマトーチ出力を増加させる必要がある。また、バイオマスのより低い炭化水素含有量の結果として、出口ガスの一酸化炭素および水素含有量の減少がもたらされ、結果として出口上部の合成ガスのより低い高発熱量(HHV)につながり、所望のHHV設定点に加えて、所望の水素量を達成するために、入口ガスの富化係数および/またはプラズマトーチ出力を増加させる必要がある。加えて、バイオマスのより高い無機含有量の結果として、生産されるスラグの量が増加し、その結果、スラグの流れが増加し、溶融スラグ内の温度が低下し、スラグ温度がその目標設定値になるようにトーチ出力を増加させる必要がある。したがって、さまざまな独立変数を調整することによって、ガス化装置は、さまざまな制御因子に対する所望の設定値を維持しながら、入ってくる材料供給物の変動に対応することができる。本開示は、上記のプロセスアルゴリズムが人工知能(AI)を備えたDCSシステムを介して制御され、プロセスの自動調整および最適化を可能にして、再生可能な水素の生産、および合成メタンまたは合成液体燃料の生成を含む、その下流の適用を最大化する、独自の態様をさらに含む。
【0080】
起動
定義された起動手順の目標は、耐火物およびガス化装置の機器を保護し、それらの寿命を延ばすためにプラズマガス化装置を徐々に加熱することに加えて、バイオマス供給材料を受けるようにガス化装置を調製することである。ガス化装置の起動は、任意の複雑な高温処理システムの起動に類似しており、本開示を認識すれば熱処理業界の当業者には明らかであろう。主な工程は次のとおりである:(1)天然ガスまたはバイオガスに対してガスタービンを始動させて電力を生成するか、または電力網からの再生可能な電力を使用する;(2)再生可能なガスまたはバイオガスバーナーを使用することによってガス化装置を徐々に加熱し(これは主に、熱衝撃を最小限に抑えることによって耐火物の寿命を最大化するために行われる)、適切な内部温度に達するとプラズマトーチに切り替える;および(3)誘引通風機を最初に起動して合成ガス浄化システムを起動する。その後、床が形成されるように材料を加えることによって、消費可能な触媒床70が作成される。床は、最初にガス化装置の底部で形成され始めるが、トーチに最も近い、その初期のバイオチャー触媒が消費されると、床は、最終的に、ガス化装置の円錐台部分24でまたはその近くでプラズマトーチの上の層として形成される。
【0081】
その後、バイオマスまたは他の供給材料を加えることができる。安全上の理由から、好ましい操作モードは、適切なバイオマス床が形成されるまでバイオマスの含水量を5%未満に制限することである。消費可能な触媒床と動作するバイオマス床の両方の高さは、ガス化装置のサイズ、供給材料の物理化学的特性、操作設定点、および所望の処理速度に依存する。しかし、上述したように、好ましい実施形態は、消費可能な触媒床をプラズマトーチ入口のレベルより上に維持する。
【0082】
定常状態操作
バイオマス床と触媒床の両方が所望の高さに達すると、システムは定常運転の準備が整ったと見なされる。この時点で、オペレータは、混合廃棄供給物をプラントから、予め判定されたスループットレートに設定されている供給システムに積載し始めることができる。独立変数はまた、バイオマス供給物の組成に基づいて、予め判定されたレベルに設定される。SPGVガス化装置の操作における独立変数は、典型的に、次のとおりである:
A.プラズマトーチ出力
B.ガス流量
C.ガス流分布
D.バイオマスおよび触媒の床高さ
E.バイオマスの供給速度
F.触媒の供給速度
【0083】
定常状態の間、オペレータは、典型的に、以下を含む、システムの従属パラメータを監視する:
A.(ガス出口で測定された)出口上部のガス温度
B.(上記した出口でガスサンプリングおよび流量計によって測定された)出口上部のガス組成および流量
C.スラグ溶融温度および流量
D.スラグ溶出性
E.スラグ粘度
【0084】
操作中、上記した原理に基づいて、オペレータは、従属変数の変動に基づいて独立変数を調整し得る。このプロセスは、プラズマガス化装置のDCSシステムとプラント全体にプログラムされたガス化装置の制御モニタの入力および出力に基づいて、予め設定された調整で完全に自動化することができる。予め設定されたレベルは、通常、実際のバイオマス供給物がシステムに積載されるときのプラントの試運転期間中に最適化され、結果として得られる出口上部のガスおよびスラグの挙動が測定および記録される。DCSは、定常状態で動作して、指定されたバイオマス供給速度で特定の出口ガス条件およびスラグ条件を生成するように設定される。供給バイオマス組成の変動は、結果として、監視された従属パラメータの変動をもたらし、DCSおよび/またはオペレータは、独立変数の対応する調整を行い、定常状態を維持する。プラントの継続的な性能を最適化し、将来の問題を回避するためにガス化装置の標準動作条件に採用する異常条件を含む、ガス化システムの動作中に収集されたデータおよび情報を収集して利用するために、人工知能ベースのアルゴリズムがDCSシステムに導入される。
【0085】
プラズマガス化装置からの出口上部のガスの冷却および洗浄
上述のように、SPEGシステムの動作の1つの目的は、限定されないが、再生可能な電気エネルギーの生産のためのガスタービン、輸送用液体燃料の生産のためのフィッシャー・トロプシュ合成、再生可能な合成メタンの生産、セメントキルンのための高品質の熱の生産のための熱と電力システムの組み合わせ、燃料電池車用の高純度水素としての使用、天然ガスパイプラインまたは天然ガス発電所を脱炭素化するための再生可能なグリーン水素としての混合、製鉄所での直接還元製鉄用の還元剤としての再生可能な水素の使用、および最終的にはグリッドを短期または長期の季節貯蔵の両方でバランスをとるための再生可能エネルギー貯蔵としての使用のための再生可能な水素の大規模貯蔵を含む、複数の産業用途に供給するのに適した特定の条件(すなわち、再生可能な水素の組成、発熱量、体積、および純度と圧力)で合成ガスを生産することである。
【0086】
合成ガスは、本明細書に記載されるプロセスによる有機バイオマス材料のガス化によって生成されるため、これらのシステムの通常の安全な操作に適していない一定量のバイオマス不純物、微粒子、および/または酸性ガスが存在する。出口ガスを浄化する手順は、上述のSolenaの特許に記載されている。
【0087】
本開示の例示的な実施形態は、以下を含む。
【0088】
実施形態1
生物由来の炭化水素廃棄材料を変換するためにLCO酸素吸収システムと一体化されたプラズマガス化反応器(PLASMA ENHANCED GASIFICATION REACTOR)であって、プラズマガス化反応器が、プレナムセクションおよび下部二重床セクションを有する独自に設計された幾何学的設計の反応器であって、上記下部二重床セクションが、円錐台状の移行部によって第2の幅狭部分に接続された第1の幅広部分を含み、独自のバイオチャー炭素触媒床を受け入れるのに適しており、上部セクションが1つまたは複数のガス出口ポートを有する、反応器と、上記生物由来の炭化水素廃棄材料を上記下部二重床セクションの上部部分に導入するための、上記下部二重床セクションの上部分に配置された複数の方向からの上記生物由来の炭化水素廃棄材料用の複数の入口と、一体化されたLCO酸素吸収システムによって生成された酸化ガスを1つまたは複数の取り込みポートを通して上記下部二重床セクションへと提供するために上記下部二重床セクションの周りに配されたガス導入システムと、上記下部二重床セクションに取り付けられ、上記バイオチャー炭素触媒床および上記生物由来の炭化水素廃棄材料を加熱する、複数のプラズマアークトーチと、を備える、プラズマガス化反応器。
【0089】
実施形態2
上記材料を上記複数の取り込みポートを通して上記反応器に供給するための材料送達システムをさらに備え、上記材料送達システムは、上記材料を受ける受容部と、上記受容部から上記材料を受け入れ、上記材料を細断および圧縮するように配された、細断および圧縮用のユニットと、細断および圧縮された上記材料を上記反応器に送達するための移送ユニットと、を含む、実施形態1記載のプラズマガス化反応器。
【0090】
実施形態3
生物由来の炭化水素供給原料を供給するシステムとは別の、反応器にバイオチャー炭素触媒材料を供給する別の供給システムをさらに備える、実施形態2記載の装置。
【0091】
実施形態4
有機物は、複数の用途における使用のために再生可能なグリーン水素に変換するための、すべてが生物由来の炭化水素を含む、プラントの産物、副産物、および残留物、都市固形廃棄物、農業廃棄物、林業廃棄物、ならびにそれらの関連産業に由来する化石化されていない生分解性の有機物を含む、実施形態3記載の装置。
【0092】
実施形態5
上記バイオチャー炭素触媒床の高さが約1メートルである、実施形態3または4に記載の装置。
【0093】
実施形態6
上記バイオチャー炭素触媒床の高さ、上記生物由来の炭化水素廃棄材料の床高さ、上記反応器の温度、上記反応器内のガスの流量、および上記反応器から排気ポートに通して排出される合成ガスの温度、のうちの1つまたは複数を感知するための、上記反応器の全体に配された複数のセンサをさらに備える、実施形態2~5のいずれか1つに記載の装置。
【0094】
実施形態7
上記下部二重床セクションが、その底部に1つまたは複数の流出口を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の装置。
【0095】
実施形態8
LCO酸素吸収装置と一体化されたプラズマガス化反応器による、生物由来の炭化水素廃棄材料の、再生可能なグリーン水素への変換、およびその複数の下流の用途のための方法であって、反応器の下部セクションにバイオチャー炭素触媒床を提供する工程と、複数の方向から反応器の下部二重床セクションの上部部分へと1つまたは複数の連続する量の生物由来の炭化水素廃棄材料を提供する工程であって、上部プレナムセクションが、ファンに接続された少なくとも1つのガス排気ポートを有し、上記生物由来の炭化水素廃棄材料が、上記バイオチャー炭素触媒床の上に床を形成する、生物由来の炭化水素廃棄材料を提供する工程と、上記下部セクションに取り付けられた複数のプラズマアークトーチを使用して上記バイオチャー炭素触媒床およびバイオマス材料床を加熱する工程と、一体化されたLCO酸素吸収システムによって生成されたガス状オキシダントを上記下部セクションに導入する工程と、を含む方法。
【0096】
実施形態9
上記バイオチャー炭素触媒床が、固体炭素分および灰分を含む、特有の特性を有する、独自のバイオチャー炭素材料を含み、実施形態1~8に記載のプラズマガス化反応器の機能的操作のために取得された密度および多孔性を有する、実施形態8記載の方法。
【0097】
実施形態10
上記ガス状オキシダントが、一体化型LCO酸素吸収システムからプラズマガス化反応器まで大気圧で生成された酸素富化空気または酸素もしくは蒸気を含む、実施形態8または9に記載の方法。
【0098】
実施形態11
上記酸素富化空気が、一体化されたLCO酸素吸収システムによって生成された、少なくとも約80~95%(v/v)の酸素を含む、実施形態10記載の方法。
【0099】
実施形態12
下部セクションにおけるバイオチャー炭素触媒床の温度が、摂氏3000度を超える、実施形態8~14のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
本明細書で使用されるような「備える(comprising)」という用語(およびその文法上の変形)は、「有する(having)」または「含む(including)」という包括的な意味で使用され、「のみからなる(consisting only of)」という排他的な意味では使用されない。本明細書で使用されるような「a」および「the」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。本明細書で使用されるような「大気圧(atmospheric pressure)」という用語は、大気圧(約101325Pa)および大気圧より低い圧力を指し、ここで、わずかに低いとは、典型的には大気圧より約500Paまで低いことであり、より典型的には大気圧より約200Paから約500Pa低いことである。
【0101】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明されるが、本発明がそのような実施例に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明を実施するための現在の最良の形態を説明する本開示に照らして、当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく多くの修正および変形が想到される。請求項の同等性の意味および範囲内のすべての変更、修正、および変形は、それらの範囲内にあると見なされるべきである。
【実施例
【0102】
実施例1
鉄鋼産業を脱炭素化するための再生可能な水素の使用
鉄鉱は、石炭の精製形態であるコークスと共に加熱されることによって伝統的な溶鉱炉で精製される。コークスは、鉄鉱から酸素を吸収する一酸化炭素を放出し、銑鉄および二酸化炭素を作成する。効率性を導入し、環境規制に準拠するために、世界中の鉄鋼メーカーは、鉄鋼業界において再生可能な水素を結合剤として使用することを検討している。再生可能な電力によって生産された水素は、炉の燃焼に使用され得る。リサイクル鋼の使用を増やすことは、エネルギー集約度がはるかに低いため、排出量を削減するために重要であると見られている。
【0103】
鉄鋼の世界的な需要は、都市の成長に伴い、2019年から2050年の間に50%増加すると予想されている。国際エネルギー機関(IEA)は、所与の量の生産に必要なエネルギーである、鉄鋼の炭素強度が、2030年まで毎年1.9%低下する必要があると述べているが、2010年から2016年までの平均低下率は1.4%であった。再生可能エネルギー、特に再生可能な水素の使用は、IEAが設定した目標を達成する上で重要な解決策と見なされている。
【0104】
水素は、化学産業の副産物として入手可能である場合に、または特定の産業が、熱と共に(燃料電池によって提供されるような)無停電電源装置を必要とする場合に、明らかに利点がある。水素は、水素バーナーで燃焼したり、燃料電池で使用したりすることができるため、加熱のためのゼロエミッションの代替手段となる。加えて、400℃を超える高品位の熱は脱炭素しにくいが、水素バーナーは電気加熱を補完して高品位の熱を生成することができることが知られている。さらに、請求された技術の別の利点は、水素ベースの化学的性質が、炭素吸収源として機能し、石油化学のバリューチェーンの一部を補完または脱炭素化することができることである。
【0105】
図8は、効率性を導入し、鉄鋼産業を脱炭素化するように再生可能な水素を利用するための代表的なアプローチを実証するフロー図を提供する。
【0106】
実施例2
市営バスおよび商用トラック部門を脱炭素化するための再生可能な水素の使用
燃料電池電気車両(FCEV)は、輸送の脱炭素化において重要な役割を果たす。今日、世界の輸送ニーズを満たす燃料混合は油が占めている。ガソリンとディーゼルは、総燃料消費量の96%を占め、世界の炭素排出量の21%を占めている。輸送を完全に脱炭素化するには、水素を動力とするFCEVおよび蓄電池車両(BEV)、またはそれらのハイブリッドの組み合わせなどの、ゼロエミッション車の配備が必要とされる。FCEVは、いくつかの有意な恩恵をもたらす。それらは、燃料を補給する必要なく長距離を走行することができ(既に500kmを超えている)、これは消費者によって高く評価されている特徴である。それらは、現在のガソリン/ディーゼル車と同様に、燃料補給が迅速であり(3~10分)、これにより消費者の利便性が向上する。水素貯蔵システムのエネルギー密度が(バッテリーと比較して)はるかにより高いため、貯蔵されるエネルギー量(kWh)に対するFCEVパワートレインのコストおよび重量の感度は低い。これによって、その魅力が高まり、大量のエネルギー貯蔵(たとえば、高負荷容量および/または長距離使用/多用)を必要とする車両の採用の可能性が高まっている。FCEVのインフラストラクチャは、既存のガソリン流通および小売インフラストラクチャに構築することができ、コスト上の利点が生まれ、地域の雇用および資本資産が保護される。都市および地方自治体は、バス車両をディーゼルから電動車両に移行することを検討しているため、バスの走行距離および充電/燃料補給時間は重要な検討事項である。最良の状態では、バッテリーバスは、燃料電池電気バスよりも走行距離が短く、登坂性能も低くなる。
【0107】
水素は、少なくとも以下の理由で好ましい燃料源と考えられる:
水素は、わずかな重量で標準的なバスバッテリーのエネルギーの2倍を貯蔵する。
低炭素燃料を貯蔵および輸送する手段として、水素は配電網の有効な代替手段である。
再生可能エネルギーから生産される場合、水素は、配電網を平衡化するかつ大規模で長期的なエネルギー貯蔵も可能にする真のゼロエミッション燃料である。
燃料電池電気バスは、オペレータに妥協のないゼロエミッション輸送を提供する:
燃料補給までの最大300マイルの走行距離
デューティサイクル中の一貫した電力供給
(CNGのような)デポガス補給は、路側充電のインフラストラクチャの必要性を排除する。
燃料補給が迅速であり、10分未満の燃料補給で18時間の連続サービスをもたらす。
デポでのコンパクトな中心燃料供給のインフラストラクチャ
運転と燃料補給は、ディーゼルおよびCNGバスに匹敵する1対1である
燃料電池電気バスは、ハイブリッド電池-燃料電池のパワートレインを備えた100%電気バスである。
燃料電池システムは、水素を高密度エネルギー源として使用して、車載バッテリー充電器として機能する。
【0108】
本明細書に記載される再生可能な水素の生産の方法論は、水素を生産し、圧縮し、水素燃料供給ステーションに輸送するために使用され得る。一実施形態では、水素生産施設を供給原料の供給源(処分場、埋め立て地、農業廃棄化合物など)に近接して配置することによって、さらなる効率性が実現され得る。一実施形態では、交通機関に近い戦略的に配置された生産施設で水素が生産されるように、トランジットデポの燃料供給現場のクラスターをサポートすることができる調整された方法で、水素の生産および流通が設計され得る。その後、水素は複数の燃料供給場所に高圧トレーラーで比較的短い距離を輸送され、満杯のトレーラーは空のトレーラーと簡単に交換される。生産現場では、複数のトレーラーを同時に充填することができ、同様に、燃料供給現場では、複数のトレーラーをトレーラーベイに位置づけて、物流に柔軟性を持たせることができる。
【0109】
再生可能な水素の使用はまた、商用トラック輸送のための高性能オプションであると考えられている。貨物輸送は2050年までに40%増加すると予想されているため、政府の規制および消費者の圧力によって、よりクリーンなトラック輸送への動きが加速しており、一部のメーカーは多額の投資を行っている。重量輸送用途では、最適なパワートレインは水素燃料電池電気であるというコンセンサスが高まっている。燃料電池は、商用トラック輸送に必要な走行距離、ペイロード容量、燃料補給時間、全天候性能をもたらす。
【0110】
実施例3
セメント産業を脱炭素化するための再生可能な水素の使用
【0111】
セメントは、水および骨材と混合されるとコンクリートを生成する人工粉末である。セメント製造プロセスは、(1)原料の調製、(2)摂氏1,450度の温度でのキルンにおけるクリンカーの製造、および(3)他の鉱物とのクリンカーの粉砕という、3つの基本的な工程に要約して、セメントを生産することができる。
【0112】
水素および天然ガスの燃焼の性質はかなり類似している。メタン(CH4、天然ガス)は、他の化石燃料と比べて結合が少ないため、水素に最も近い炭素質燃料である。主な違いは、水素炎の放射特性、および水素燃焼がより小さい炎サイズである。
【0113】
それにもかかわらず、水素が燃焼される場合、燃焼プロセスおよび熱形成は依然として異なる。技術的には、その可燃性が高いため、水素の使用から生じ得る危険を回避するために、安全対策を講じる必要がある。他のガスでの希釈が解決策となり得る。
【0114】
プラズマガス化装置から生産された合成ガスの主成分は、一酸化炭素と水素である。合成ガスをキルン/予備か焼装置で燃焼させることは理論的には実現可能であるが、水素の市場価値が高いため、水素を分離して販売する方がはるかに魅力的である。これによって、主に一酸化炭素、一部の二酸化炭素、および少量の水素を含む合成ガスは、キルン/予備か焼装置での焼成に使用される。セメントのための本発明のプラズマガス化プロセスの推奨構成が図9に示される。
【0115】
主な相乗効果は次のとおりである:ほとんどのセメントプラントは、適切な代替燃料の供給およびロジスティクスを適所に有しており、利用可能なチップ料金から利点を得ることができる;(2)生産された一酸化炭素/水素合成ガスは、化石燃料に取って代わってキルン/予備か焼装置で燃焼させることができ、バイオマス要素からのCO2排出量の削減がセメントプラントによって請求される;(3)この合成ガスは、予備か焼装置でのNOx除去に有益であり得る可能性がある;(4)生産された廃棄スラグは、原料としてまたはセメントで使用され得る;(5)プラズマトーチ用に十分な電力供給が既に利用可能である;(6)操作および保守のための熟練労働者の利用可能性;(7)スペースの利用が、通常、セメントプラントで良好である;(8)使用されなくなった工業開発地の立地によって、許可プロセスが容易になり得る;(9)少量のアンモニア水が、NOx除去に利用され得る;(10)セメントプラントでは、ガス化プロセスに適したコークス/木炭および石灰が供給され得る。
【0116】
実施例4
天然ガスシステムを脱炭素化するための再生可能な水素の使用
本明細書に記載されるような新規の水素を生産する方法論の追加の用途は、天然ガスシステムの脱炭素化である。一実施形態では、再生可能資源からの水素(H2)が天然ガスネットワークに注入される。このアプローチによって、既存のインフラストラクチャ、特に地下貯蔵施設および高圧パイプラインの非常に大きな輸送および貯蔵の能力を天然ガスシステムの脱炭素化に使用することが可能になる。さまざまな研究は、天然ガスシステムのほとんどの部分が、有害作用なしで、最大10%の水素添加に対応することができることを示している。
【0117】
本明細書で引用されたすべての公報、特許および特許出願は、あたかも個々の公報、特許または特許出願が引用により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、あらゆる目的のために、引用により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示が優先される。
【0118】
開示の前述の説明は、本開示を例示し、説明するものである。加えて、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明しているが、上述したように、本開示が、さまざまな他の組み合わせ、修正、および環境で使用することができ、上記の教示および/または関連技術のスキルまたは知識に見合った、本明細書で表現されるような概念の範囲内で変更または修正することができることが理解されるべきである。
【0119】
上記の実施形態はさらに、それを実施する既知の最良のモードを説明し、他の当業者が、そのような実施形態または他の実施形態で、特定の用途または使用によって必要とされるさまざまな修正を伴って開示を利用することを可能にするように意図されている。したがって、その説明は、本明細書に開示された形態に限定することを意図されていない。また、添付の請求項が、代替の実施形態を含むと解釈されることが意図されている。請求項のそれぞれは、侵害目的で請求項において指定されたさまざまな要素または制限に対する均等物を含むものとして認識される別個の発明を定義する。
【0120】
さまざまな用語が上で定義されている。請求項で使用される用語が上記で定義されていな場合、少なくとも1つの印刷された公報または発行された特許に反映されているように、関連技術の専門家がその用語に与えた最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願で引用されているすべての特許、試験手順、および他の文書は、そのような開示が本出願と矛盾しない範囲で引用により完全に組み込まれ、これは、そのような組み込みが許可されているすべての法域に対するものである。
図1
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図5A
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図5D
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図9
【国際調査報告】