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特表2023-541222近視制御コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】近視制御コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023506500
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 GB2021053337
(87)【国際公開番号】W WO2022129927
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,242
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H006BC07
(57)【要約】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズ(201)、及び、それに関連する方法、が開示される。レンズ(201)は、中央領域(205)を有する光学ゾーン(202)を備え、中央領域(205)は、第1光軸(219)と、ベース屈折力を提供し第1光軸(219)上にある曲率中心を中心とした曲率と、を有している。光学ゾーン(202)は、環状領域(203)をも有しており、環状領域(203)は、中央領域(205)を取り囲んでいる。環状領域(203)は、最大追加屈折力を提供し、第1光軸(210)から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線(203a)を有する。環状領域(203)は、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸(219)から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線(203c)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力を提供し、前記第1光軸上にある曲率中心を中心とした曲率と、を有しており、
前記環状領域は、前記中央領域を取り囲んでおり、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有することを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記環状領域は、前記ベース屈折力を提供し、前記中央領域の前記曲率中心を中心とした前記曲率を有する、少なくとも1つのベース屈折力子午線を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記ベース屈折力、前記最大追加屈折力、及び、前記中間追加屈折力、を提供する複数の前記曲率は、レンズの前面の曲率である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記環状領域は、前記中央領域に対して傾斜されており、
当該レンズは、前記少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の中間点でサジタル屈折力を有し、
当該サジタル屈折力は、前記中央領域が前記中間点まで延長されていたら有するであろう屈折力に合致する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記環状領域は、複数の中間追加屈折力子午線によって分離された複数の最大追加屈折力子午線の周期的配置を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記環状領域の屈折力は、前記環状領域の周に沿って、正弦波状、段階状、三角形状、または、鋸歯状、に変化する
ことを特徴とする請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、2mmと7mmとの間の直径を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記環状領域は、前記中央領域の周縁から半径方向外側に0.5mmと1.5mmとの間で延在する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記ベース屈折力は、0.5ディオプトリと-15.0ディオプトリとの間である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記環状領域の前記最大追加屈折力子午線は、+0.5ディオプトリと+15.0ディオプトリとの間の追加屈折力である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
少なくとも2つの同心の環状領域
を備え、
前記環状領域の各々が、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
当該レンズは、成形コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを製造する方法であって、
中央領域と、環状領域と、を備えたコンタクトレンズを形成する工程
を備え、
前記中央領域は、ベース屈折力を有しており、
前記環状領域は、前記中央領域を取り囲んでおり、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
近視の進行を低減する方法であって、
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、近視の発症または進行を予防するまたは遅らせるように使用されるコンタクトレンズに関する。本開示はまた、そのようなレンズを製造する方法、及び、そのようなレンズを使用する方法に関する。更に、本開示は、改善された視覚的コントラストを提供するための特定のコンタクトレンズ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視は、子供と大人とを含む相当数の人々に影響を与えている。近視の目は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方の位置に焦点合わせする。その結果、光は網膜に向かって発散し、網膜に到達する時には焦点が外れている。近視を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの入射光が目に到達する前に、当該入射光の発散をもたらし、これにより、焦点の位置が網膜上に移動される。
数十年前に、子供や若者の近視の進行は、過小矯正、すなわち、焦点を網膜に近づけるが完全に網膜上にまでは近づけない、によって、遅らせたり予防したりできることが提案された。しかしながら、当該アプローチは、必然的に、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力と比較して、遠方視力の低下をもたらす。更に、近視の進行を制御するのに過小矯正が有効であるというのは、現在では疑わしいと見なされている。より最近のアプローチは、遠方視力の完全な矯正を提供する領域と、過小矯正すなわち意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域と、の両方を有するレンズを提供することである。当該アプローチは、良好な遠方視力を提供しながら、子供や若者の近視の発症または進行を予防または遅らせることができる、と示唆されている。遠方視力の完全な矯正を提供する領域は、通常、ベース屈折力領域と呼ばれ、過小矯正を提供するかまたは意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域は、通常、追加屈折力領域または近視性デフォーカス領域と呼ばれる(屈折力が、遠方領域の屈折力(視度)よりも、より正であるか、より少ない負である)。
【0003】
追加屈折力領域の表面(典型的には前面)は、遠方屈折力領域の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、従って、より正またはより少ない負の屈折力(度数)を目に提供する。追加屈折力領域は、入ってくる平行光(すなわち、遠くからの光)を網膜の前方(すなわち、水晶体により近い)の眼中に集束させるように設計される。遠方屈折力領域は、光を集束させて網膜に像を形成するように設計される(すなわち、水晶体からより通い)。
【0004】
近視の進行を低減する別のタイプのコンタクトレンズは、MISIGHT(CooperVision, Inc.)の名前で入手できる、二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼の視力を改善するように構成された二焦点コンタクトレンズや多焦点コンタクトレンズとは異なり、遠くの物体と近くの物体との両方を見るために、遠方矯正(すなわち、ベース屈折力)の使用を提供できる所定の光学的寸法で構成される。追加屈折力を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠くと近くの両方の視距離で近視性デフォーカスな像を提供する。
【0005】
これらのレンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに有益であることが見出されているが、環状の追加屈折力領域は、不所望の視覚的副作用を引き起こし得る。網膜の前方に環状の追加屈折力領域によって集束される光は、焦点から発散して、網膜にデフォーカスされた(焦点がずれた)輪を形成する。従って、これらのレンズの着用者は、特に街灯や車のヘッドライトなどの小さくて明るい物体の場合、網膜上に形成される像の周囲にリングまたは「ハロー」が見える場合がある。また、近くの物体に焦点を合わせるために、目の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変える目の自然な能力)を使用するのではなく、着用者は環状の追加屈折力領域から生じる網膜の前方の追加の焦点を利用し得てしまう。これは、換言すれば、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。
【0006】
近視の治療に使用され得て、MISIGHT(CooperVision,Inc.)レンズ及び前述の他の同様のレンズにおいて焦点距離画像の周りに観察されるハローを排除するように設計された、更なるレンズが開発された。当該レンズでは、環状の領域が、軸上画像が網膜の前方に形成されないように構成され、それにより、近くの目標に眼が順応することを避けるようにそのような画像が使用されてしまうことを防止する。むしろ、遠方の点光源が、環状の領域によって、近くの追加屈折力焦点面でリング状の焦線に結像され、遠方焦点面の網膜上で、周囲の「ハロー」効果なしに、小さなスポットサイズの光となる。
【0007】
本開示は、近視の悪化を防止または遅らせる、若い対象者に使用するための、改善されたレンズを提供する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、第1の態様によって、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズを提供する。当該レンズは、光学ゾーンを備える。当該光学ゾーンは、中央領域を有し、当該中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力を提供し第1光軸上にある曲率中心を中心とした曲率と、を有している。光学ゾーンは、環状領域をも有しており、環状領域は、中央領域を取り囲んでいる。環状領域は、最大追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を有する。環状領域は、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線を有する。
【0009】
本開示は、第2の態様によって、第1の態様によるコンタクトレンズを製造する方法を提供する。当該方法は、コンタクトレンズを形成する工程を備える。当該コンタクトレンズは、中央領域と、環状領域と、を備え、中央領域は、ベース屈折力を有しており、環状領域は、中央領域を取り囲んでいる。環状領域は、最大追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を有する。環状領域は、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線をも有する。
【0010】
本開示は、第3の態様によって、近視の進行を低減する方法を提供する。当該方法は、第1の態様による多焦点の眼科用レンズを、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程を備える。
【0011】
もちろん、本開示の一態様に関連して説明される特徴が、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが、理解されるであろう。例えば、本開示の方法は、本開示の装置を参照して説明された特徴を組み込み得るし、その逆もまた同様である。
【0012】
ここで、添付の概略図を参照して、例示のみを目的として、実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、近視の進行を低減するために近視性デフォーカス像を提供する治療ゾーンを用いる、コンタクトレンズの概略平面図である。
【0014】
図1B図1Bは、図1Aのコンタクトレンズの側面図である。
【0015】
図2A図2Aは、図1A及び図1Bのレンズの光線図である。
【0016】
図2B図2Bは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0017】
図2C図2Cは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0018】
図3A図3Aは、近視の予防に使用するための、非同軸光学系を有する別のコンタクトレンズの平面図である。
【0019】
図3B図3Bは、図3Aのコンタクトレンズの側面図である。
【0020】
図4A図4Aは、図3A及び図3Bのレンズの光線図である。
【0021】
図4B図4Bは、遠方の点源から形成された、図3A及び図3Bのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0022】
図4C図4Cは、遠方の点源から形成された、図3A及び図3Bのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0023】
図4D図4Dは、図3A及び図3Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(実線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0024】
図5A図5Aは、本開示の一実施形態によるレンズの平面図であり、当該レンズの周りのθの変動の取り決めを示し、最大追加屈折力子午線に沿った線A-Aの位置と、ベース屈折力子午線に沿った線B-Bの位置と、を示している。
【0025】
図5B図5Bは、線A-Aに沿って図5Aのレンズと交差する光線の光線図であり、中央領域の光軸と、最大追加屈折力子午線に沿った前面の曲率中心と、を示している。
【0026】
図5C図5Cは、線B-Bに沿って図5Aのレンズと交差する光線の光線図であり、中央領域の光軸と、ベース屈折力子午線に沿った前面の曲率中心と、を示している。
【0027】
図6A図6Aは、図5Aのレンズの鉛直断面図であり、最大追加屈折力焦点面及び遠位光学焦点面において焦点合わせされた光線を示している。
【0028】
図6B図6Bは、周方向に90度回転された図6Aのレンズを示しており、遠位光学焦点面において焦点合わせされた光線を示している。
【0029】
図7A図7Aは、図5Aのレンズの光線図であり、線A-Aに沿ってレンズと交差する光線を示している。
【0030】
図7B図7Bは、図5Aのレンズの光線図であり、線C-Cに沿ってレンズと交差する光線を示している。
【0031】
図7C図7Cは、図5Aのレンズの光線図であり、線B-Bに沿ってレンズと交差する光線を示している。
【0032】
図8図8は、角度θによる図5Aのレンズの環状領域の追加屈折力の変化を示すプロットである。
【0033】
図9図9は、遠方の点源から形成された、図5Aのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0034】
図10図10は、負のベース屈折力レンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(実線)と環状の追加領域(一点鎖線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0035】
図11A図11Aは、2つの同心の環状領域を含む本開示の一実施形態によるレンズの平面図である。
【0036】
図11B図11Bは、線A-Aに沿った図11Aのレンズの鉛直断面図である。
【0037】
図12図12は、図11A及び図11Bに示されたレンズのサジタルによる及び曲率による屈折力の変化を示すプロットである。
【0038】
図13図13は、異なるθ値の線A-A、線B-B、線C-C及び線D-Dを示す、本開示の一実施形態によるレンズの平面図である。
【0039】
図14図14は、図13に示されたレンズの半径方向位置によるサジタル屈折力の変化を示すプロットである。
【0040】
図15図15は、本開示の一実施形態によるレンズのサジタル屈折力のモデル化を示す2次元プロットである。
【0041】
図16図16は、図15でモデル化されたレンズについて、レンズの中心からの半径距離の関数としてPsを示すプロットである。
【0042】
図17図17は、本開示の一実施形態による、2つの環状領域を有するレンズの平面図である。
【0043】
図18図18は、図17に示されたレンズの、曲率による屈折力の変化を示すプロットである。
【0044】
図19図19は、眼上の、本開示の一実施形態によるレンズを示す。
【0045】
図20A図20Aは、本開示の複数の実施形態によるレンズについて、θによる追加屈折力の段階的(ステップワイズ)な変化を示すプロットである。
【0046】
図20B図20Bは、本開示の複数の実施形態によるレンズについて、θによる追加屈折力の連続的な正弦波状の変化を示すプロットである。
【0047】
図20C図20Cは、本開示の複数の実施形態によるレンズについて、θによる追加屈折力の鋸歯状の変化を示すプロットである。
【0048】
図21A図21Aは、本開示の一実施形態によるレンズの遠位焦点面における、遠方の点源からの光によって形成される光パターンを示す。当該レンズは、180°毎に、最大追加屈折力を有する。
【0049】
図21B図21Bは、本開示の一実施形態によるレンズの遠位焦点面における、遠方の点源からの光によって形成される光パターンを示す。当該レンズは、60°毎に、最大追加屈折力を有する。
【0050】
図21C図21Cは、本開示の一実施形態によるレンズの遠位焦点面における、遠方の点源からの光によって形成される光パターンを示す。当該レンズは、180°に亘る単一の最大追加屈折力子午線(子午線帯)と、ベース屈折力子午線(子午線帯)に対する滑らかな境界を形成する狭い中間追加屈折力子午線と、を有する。
【0051】
図21D図21Dは、本開示の一実施形態によるレンズの遠位焦点面における、遠方の点源からの光によって形成される光パターンを示す。当該レンズは、90°毎に、最大追加屈折力を有する。
【0052】
図22A図22Aは、本開示の一実施形態によるレンズのθによる屈折力の変動を示すプロットであり、レンズは、異なる屈折力を有する2つの最大追加屈折力子午線を有する。
【0053】
図22B図22Bは、本開示の一実施形態によるレンズのθによる屈折力の変動を示すプロットであり、レンズは、非対称のピークプロファイルを有する最大追加屈折力子午線を有する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
第1の態様によって、本開示は、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズを提供する。当該レンズは、中央領域を有する光学ゾーンを備え、当該中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力を提供し第1光軸上にある曲率中心を中心とした曲率と、を有している。光学ゾーンは、環状領域をも有しており、環状領域は、中央領域を取り囲んでいる。環状領域は、最大追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、を有する。
【0055】
本明細書で使用される場合、コンタクトレンズという用語は、眼の前面に配置され得る眼科用レンズを指す。そのようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼上の(on-eye)動きを提供し、人の眼に結合しない、ことが理解されるであろう。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態であり得る。コンタクトレンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであり得る。
【0056】
本開示によるコンタクトレンズは、光学ゾーンを備える。光学ゾーンは、光学的機能を有するレンズ部分を包含する。光学ゾーンは、使用時に眼の瞳孔上に位置決めされるように構成される。本開示によるコンタクトレンズの場合、光学ゾーンは、中央領域と、中央領域を取り囲む環状領域と、を含む。光学ゾーンは、周辺ゾーンによって取り囲まれている。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではないが、レンズが着用される時に光学ゾーンの外側で虹彩の上方に位置し、例えば、レンズのサイズを増大して当該レンズをより扱いやすくしたり、レンズの回転を防止するためのバラストを提供したり、及び/または、レンズ着用者の快適性を改善する形状領域を提供したり、といった機械的機能を提供する。周辺ゾーンは、コンタクトレンズの縁部まで延在し得る。
【0057】
本開示の一実施形態によるコンタクトレンズは、着用者の眼上に位置決めされる時にレンズを方向付けるためのバラストを含み得る。バラストをコンタクトレンズに組み込んだ本開示の実施形態は、着用者の眼上に配置される時、着用者の瞼の作用で所定の安息角まで回転する。例えば、バラストは楔であり得て、回転は、当該楔上の瞼の作用によって生じ得る。コンタクトレンズを方向付けるためにコンタクトレンズをバラストすることは、当該技術分野で良く知られている。例えば、トーリックコンタクトレンズは、当該レンズによって提供される直交円筒矯正が着用者の眼の乱視に対して正確に整列するように、レンズを方向付けるべくバラストされている。本開示のコンタクトレンズは、所与の向きで着用者に特定の利益を提供し得る。例えば、コンタクトレンズは、最大追加屈折力子午線が特定の方向にある時に、着用者に特定の利益を提供し得る。
【0058】
コンタクトレンズは、形状が実質的に円形であり得て、約4mm~約20mmの直径を有し得る。光学ゾーンは、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約10mmの直径を有し得る。幾つかの実施形態では、コンタクトレンズは、13mm~15mmの直径を有し、光学ゾーンは、7mm~9mmまでの直径を有する。
【0059】
第1光軸は、レンズの中心線に沿って存在し得る。中央領域は、遠方の点物体からの光を、第1光軸上で、遠位焦点面で第1光軸上のスポットに、焦点合わせ(集束)させ得る。本明細書で使用される場合、面という用語は、物理的な表面を指すのではなく、遠方の物体からの光が焦点合わせされる点を通って描かれ得る面を指す。このような面は、像面(曲面であり得る)またはイメージシェルとも呼ばれる。目は、曲がった網膜上に光を焦点合わせする。完全に焦点が合った目では、イメージシェルの曲率は、網膜の曲率と一致する。従って、目は、光を平坦な数学上の平面には集束させない。そうでありながら、当該技術分野では、網膜の曲面は、一般に(平)面と呼ばれる。
【0060】
少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を通過する遠方の点源からの光線は、最大追加屈折力焦点面上で、第1光軸から離れて焦点合わせされ得る。中央領域を通過する光線は、最大追加屈折力焦点面で軸上のぼやけ円を形成する。少なくとも1つの最大追加屈折力環状領域を通過する遠方の点源からの光線は、当該ぼやけ円の外側に焦点合わせされ得る。
【0061】
レンズの中央領域は、ベース屈折力を有する。レンズの環状領域は、追加屈折力を有し、当該環状領域の正味の近位用の屈折力は、ベース屈折力と追加屈折力との合計である。
【0062】
レンズのベース屈折力は、正であり得て、少なくとも1つの最大追加屈折力領域は、ベース屈折力よりも更に正である屈折力を有し得る。この場合、最大追加屈折力焦点面は、遠位焦点面よりもレンズに近くなる。軸上の像が、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を通過する光によって、形成されないであろう。従って、レンズの着用者は、近くの物体に焦点を合わせるために、自らの目の自然調節を使用する必要がある。少なくとも1つの最大追加屈折力子午線によって集束される光線は、コンタクトレンズの第1光軸とまったく交差しないか、あるいは、最大追加屈折力焦点面を通過する後までは交差しない、という場合があり得る。
【0063】
レンズのベース屈折力は、負であり得て、少なくとも1つの最大追加屈折力領域は、ベース領域の屈折力より小さな負である屈折力を有し得るか、あるいは、当該追加屈折力領域は、正の屈折力を有し得る。角膜上に位置決めされるレンズを考えると、最大追加屈折力領域の屈折力がベース屈折力より小さな負である場合、最大追加屈折力焦点面は遠位焦点面よりも眼の前方になるであろう。角膜上に位置決めされないレンズを考えると、最大追加屈折力領域の屈折力が正である場合、最大追加屈折力焦点面は、遠位焦点面(それは、レンズの物体側の仮想焦点面であろう)とはレンズの反対側(像側)になるであろうし、最大追加屈折力領域の屈折力が負である場合(ただし、ベース屈折力よりも小さな負である)、仮想の最大追加屈折力焦点面は、仮想の遠位焦点面よりもレンズから遠くなるであろう。
【0064】
少なくとも1つの中間追加屈折力環状子午線を通過する遠方の点源からの光線は、中間追加屈折力焦点面に焦点合わせされ得る。正のベース屈折力と、ベース屈折力よりも更に正である屈折力を有する少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、を有するレンズの場合、中間追加屈折力焦点面は遠位焦点面よりもレンズに近くなるが、最大追加屈折力焦点面よりはレンズから遠いであろう。また、軸上の像が、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線を通過する光によって、形成されないであろう。少なくとも1つの中間追加屈折力子午線によって集束される光線は、コンタクトレンズの第1光軸とまったく交差しないか、あるいは、中間及び最大追加屈折力焦点面を通過する後までは交差しない、という場合があり得る。角膜上に位置決めされるレンズを考えると、当該レンズが負のベース屈折力を有し、少なくとも1つの中間追加屈折力領域がベース屈折力より小さな負の屈折力を有する場合、中間追加屈折力焦点面は遠位焦点面よりもレンズに近くなるが、最大追加屈折力焦点面よりは遠いであろう。角膜上に位置決めされないレンズを考えると、当該レンズが負のベース屈折力を有し、少なくとも1つの中間追加屈折力領域がベース屈折力より小さな負の屈折力を有する場合、仮想の追加屈折力焦点面は、仮想の遠位焦点面よりもレンズから遠くなるが、仮想の最大追加屈折力焦点面よりは近いであろう。
【0065】
正のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの最大追加屈折力領域は、ベース屈折力を提供する曲率よりも大きな曲率を有するであろう。この場合、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の曲率半径は、中央領域の曲率半径よりも小さいであろう。少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の曲率中心は、中央領域の曲率中心よりもレンズに近いであろう。負のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの最大追加屈折力領域は、ベース屈折力を提供する曲率よりも小さい曲率を有し得る。この場合、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の曲率半径は、中央領域の曲率半径よりも大きいであろう。
【0066】
少なくとも1つの中間追加屈折力子午線は、少なくとも1つの最大追加屈折力領域の曲率と中央領域の曲率との間である曲率を有し得る。この場合、少なくとも1つの中間子午線の曲率半径は、中央領域の曲率半径よりも小さく、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の曲率半径よりも大きいであろう。少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の曲率中心は、中央領域の曲率中心よりもレンズに近いであろうが、レンズから少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の曲率中心までよりは遠いであろう。
【0067】
環状領域を通過する遠方の点源からの光線は、網膜の前方の焦点面に単一の焦点合わせされた像を形成しない。環状領域の周に沿って(周方向に)変化する追加屈折力の結果として、環状領域を通過する遠方の点源からの光線は、焦点合わせされた環状の波形を形成する。当該波形は、3次元で変化する。このため、レンズから波形の局所的な焦点までの距離は、レンズの軸を中心にして変化する。これにより、デフォーカスは、レンズの軸を中心に変化する。レンズが目上に提供される時、網膜の様々な部分が、環状領域の変化する追加屈折力の結果として、様々な量のデフォーカス(焦点ぼけ)にさらされるであろう。網膜全体に亘って様々な量のデフォーカス、特には周期的に変化するデフォーカス、をもたらすレンズは、一定の近視性デフォーカスを有するレンズよりも、近視の成長を遅らせるのにより効果的であり得る。
【0068】
中央領域は、遠方の点物体からの光を、遠位焦点面で第1光軸上のスポットに焦点合わせし得る。少なくとも1つの最大追加屈折力子午線及び少なくとも1つの中間屈折力子午線が、遠方の点物体からの光を当該スポットに向けて指向し得る。環状領域を通過する遠方の点物体からの光は、当該環状領域の様々な(変化する)追加屈折力の結果として、遠位焦点面で様々なレベルのぼやけ(blurring)を生じさせ得る。環状領域を通過する遠方の点光源からの光によって、子午線方向(メリディオナル)に変化するぼやけパターンが生成され得て、当該パターンは、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と少なくとも1つの中間追加屈折力子午線とを含む複数の追加屈折力子午線の配置に依存する。環状領域は、例えば光学的ビームストップとして作用することによって、遠位焦点面での軸外光の広がりを制限し得る。これは、当該レンズによって生成される像の光学的コントラストを改善し得る。
【0069】
遠位焦点面での光の広がりを低減することにより、図1に示されるようなレンズ設計と比較して、レンズ着用者によって観察される視覚的コントラストを改善することが可能である。従って、本発明のレンズ及び方法により、近視の進行を低減するのに適した既存のコンタクトレンズと比較して、像コントラスト及び像品質を強化しながら、近視の進行を所望に遅らせることを達成することが可能である。
【0070】
環状領域は、更に、少なくとも1つのベース屈折力子午線を有し得て、それは、ベース屈折力を提供し、中央領域の曲率中心を中心とした曲率を有する。あるいは、環状領域の追加屈折力は、中間追加屈折力と最大追加屈折力との間で変動し得る(すなわち、ベース屈折力子午線は存在しなくてもよい)。環状領域の追加屈折力は、全ての子午線(経線)について、ベース屈折力よりも、更に正であり得るか、あるいは、より小さな負であり得る。
【0071】
少なくとも1つのベース屈折力子午線は、遠方の点物体からの光を、遠位面の第1光軸上のスポットに焦点合わせし得る。当該スポットは、中央領域を通過する光によって形成されるスポットと一致し得る。
【0072】
ベース屈折力、最大追加屈折力、及び、中間追加屈折力を提供する(それぞれの)曲率は、レンズの前面の曲率であり得る。ベース屈折力、最大追加屈折力、及び、中間追加屈折力を提供する(それぞれの)曲率は、レンズの後面の曲率であり得る。ベース屈折力、最大追加屈折力、及び、中間追加屈折力を提供する(それぞれの)曲率は、組み合わされた効果(複合効果)を提供するレンズの前面及び後面の曲率であり得る。
【0073】
レンズの屈折力は、サジタルベース(サジタル依存)またはスロープベース(スロープ依存)の屈折力として定義され得る。スロープベースの屈折力Psは、波面の一次導関数の関数であり、波面のスロープ(勾配)によって変化する。レンズの環状領域は、中央領域に対して傾斜され得る。サジタル屈折力は、レンズ表面の傾斜の関数であるため、中央領域に対する環状領域の傾斜は、環状領域の内縁で前記屈折力よりも更に負で始まって、半径増大に伴って、環状領域の外縁で前記屈折力よりも小さな負の屈折力まで増加する、という傾斜経路であるサジタル屈折力をもたらす。
【0074】
環状領域は、各子午線での環状領域の中間点でのサジタル屈折力を、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう屈折力に合致させるべく、異なる子午線で異なる量だけ、中央領域に対して半径方向に傾斜され得る。レンズは、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線における環状領域の中間点で、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう屈折力と合致するサジタル屈折力を有し得る。レンズは、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線における環状領域の中間点で、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう屈折力と合致するサジタル屈折力を有し得る。
【0075】
環状領域は、中間追加屈折力子午線によって分離された最大追加屈折力子午線の周期的配置を含み得る。環状領域の追加屈折力は、最大追加屈折力子午線と中間追加屈折力子午線との間で、連続的に変化し得る。環状領域の追加屈折力は、全ての子午線(経線)について、ベース屈折力よりも、更に正であり得るか、あるいは、より小さな負であり得る。環状領域は、最大追加屈折力子午線、中間追加屈折力子午線、及び、ベース屈折力子午線、の繰り返し周期配置を含み得る。環状領域の追加屈折力は、最大追加屈折力子午線、中間追加屈折力子午線及びベース屈折力子午線の間で、連続的に変化し得る。レンズの周に沿った(周方向の)位置は、0°と360°との間の角度θによって定義され得て、θ=180°に沿った線がレンズの直径に沿って存在する。環状領域は、θ=0°及びθ=180°と一致する最大追加屈折力子午線を含み得る。環状領域は、θ=0°、90°、180°及び270°、あるいは、任意の他の角度、と一致する最大追加屈折力子午線を含み得る。環状領域は、レンズの周に沿って、10°毎に、20°毎に、または、30°毎に、最大追加屈折力子午線を含み得る。代替的に、環状領域は、レンズの周に沿った複数の最大追加屈折力子午線の非周期的(周期が一定でない)配置を含み得る。複数の最大追加屈折力子午線が存在する場合、それらは、同一の屈折力を有し得るし、あるいは、異なる屈折力を有し得る。複数の最大追加屈折力子午線が存在する場合、それらは、環状領域の周に沿って不規則な間隔で配置され得る。少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の各々は、対称な屈折力プロファイルまたは非対称な屈折力プロファイルを有し得る。環状領域の屈折力プロファイルは、複数の最大追加屈折力子午線の間で、対称であり得るし、あるいは、非対称であり得る。
【0076】
環状領域の屈折力は、当該環状領域の周に沿って正弦波状に変化し得る。環状領域の屈折力は、当該環状領域の周に沿って段階的に変化し得る。環状領域の屈折力は、当該環状領域の周に沿って三角形状または鋸歯状に変化し得る。環状領域の屈折力は、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の屈折力とベース屈折力との間、あるいは、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の屈折力と少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の屈折力との間、で変化し得る。当該変化の周期は、例えば、180°、90°、45°、または、30°、であり得る。
【0077】
中央領域は、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約9mm、好ましくは2~7mm、の直径を有し得る。中央領域は、形状が実質的に楕円形であってもよい。環状領域は、中央領域の周縁から半径方向外側に約0.1mm~約4mmの間、好ましくは約0.5mm~約1.5mmの間、延在し得る。例えば、環状領域の半径方向幅は、約0.1mm~約4mm、好ましくは約0.5mm~約1.5mm、であり得る。中央領域の周縁は、中央領域と環状領域との間の境界を定義(画定)し得て、従って、環状領域は中央領域に隣接(adjacent)し得る。
【0078】
環状領域は、中央領域に隣接(abut)し得る。ブレンディング(混合)領域が、中央領域と環状領域との間に設けられてもよい。ブレンディング領域は、中央領域及び環状領域によって提供される光学系に実質的に影響を与えるべきではなく、当該ブレンディング領域は、0.05mm以下の半径方向幅を有し得る。もっとも、それは、幾つか実施形態では、0.2mm程度の幅であり得るし、あるいは、0.5mm程度の幅であり得る。
【0079】
中央領域は、ベース屈折力を有する。それは、本開示の文脈では、中央領域の平均の絶対屈折力として定義される。任意のベース屈折力子午線もまた、ベース屈折力を有するであろう。ベース屈折力は、コンタクトレンズのパッケージ上に提供されるようなコンタクトレンズのラベル付け屈折力(度数)に対応する(もっとも、実践上は、同一の値を有しない場合もある)。従って、本明細書で与えられるレンズ屈折力は、公称屈折力である。これらの値は、レンズの直接測定によって得られるレンズ屈折力の値とは異なる場合があるが、眼科治療で使用される時に、要求される処方箋の屈折力(度数)を提供するために使用されるレンズ屈折力(度数)を反映するものである。
【0080】
近視の治療に使用されるレンズの場合、ベース屈折力は、負であるか、あるいは、ゼロの近傍であって、中央領域が遠方視力を矯正する。ベース屈折力は、0.5ディオプトリ(D)と-15.0ディオプトリとの間であり得る。ベース屈折力は、-0.25D~-15.0Dであり得る。
【0081】
最大追加屈折力は、非ゼロである。すなわち、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の各々は、中央領域のベース屈折力よりも大きい(すなわち、更に正であるか、あるいは、より小さな負である)レンズ屈折力を有する。最大追加屈折力子午線の屈折力は、最大追加屈折力として説明され得て、これは、ベース屈折力と最大追加屈折力子午線の屈折力との間の差である。最大追加屈折力は、約+0.5~約+20.0D、好ましくは約+0.5~約+10.0D、の間であり得る。正のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より更に正であり得る。負のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より小さな負であり得るか、あるいは、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の各々の屈折力は、正の屈折力であり得る。最大追加屈折力子午線における環状領域の正味の屈折力は、ベース屈折力と最大追加屈折力との合計になる。
【0082】
少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々は、中央領域のベース屈折力よりも大きい(すなわち、更に正であるか、あるいは、より小さな負である)レンズ屈折力を有し得る。中間追加屈折力子午線の屈折力は、中間追加屈折力として説明され得て、これは、ベース屈折力と中間追加屈折力子午線の屈折力との間の差である。中間追加屈折力は、最大追加屈折力よりも小さく、約+0.1~約+10.0D、好ましくは約+0.1~約+3.0D、の間であり得る。正のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より更に正であり得る。負のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より小さな正であり得るか、あるいは、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、正の屈折力であり得る。中間追加屈折力子午線における環状領域の正味の屈折力は、ベース屈折力と中間追加屈折力との合計になる。
【0083】
レンズは、少なくとも2つの同心の環状領域を含み得て、環状領域の各々が、最大追加屈折力を提供し第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し第1光軸から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、を有し得る。
【0084】
環状領域の各々は、前述の特徴のいずれかを組み込んだ環状領域であり得る。各環状領域の最大追加屈折力子午線は、当該環状領域の周に沿った同一のθ値に存在し得て、中間追加屈折力子午線の各々も、環状領域の周に沿った同一のθ値に存在し得る。代替的に、環状領域の各々の最大追加屈折力子午線は、周に沿った異なるθ値に存在してもよい。環状領域の各々の最大追加屈折力子午線は、同一の最大追加屈折力を有し得る。環状領域の各々は、同一の中間追加屈折力を有し得る。代替的に、環状領域の各々の最大追加屈折力子午線は、異なっていてもよい。各環状領域は、複数の最大追加屈折力子午線を有し得て、当該複数の最大追加屈折力子午線の各々は、同一の屈折力を有し得るし、あるいは、異なる屈折力を有し得る。各環状領域の中間追加屈折力は、異なっていてもよい。
【0085】
好ましくは、単数または複数の環状領域は、レンズレット(コンタクトレンズの表面上に設けられ、当該コンタクトレンズの光学ゾーンの直径よりも小径である小レンズ)を含まない、すなわち、単数または複数の環状領域はレンズレットフリーである。環状領域の追加屈折力は、連続するレンズ表面によって提供され得る。当該レンズ表面は、滑らかに変化する追加屈折力を提供し得る。
【0086】
コンタクトレンズは、トーリックコンタクトレンズであり得る。例えば、トーリックコンタクトレンズは、人の乱視を矯正するように成形された光学ゾーンを備え得る。
【0087】
コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの組み合わせ、を含み得る。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、水を平衡状態に保持し、シリコーン含有化合物を含まない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化合物を含むヒドロゲルである。本開示の文脈で説明されるように、ヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%~約90%(wt/wt)の平衡含水率(EWC)を有する。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料またはシリコーンヒドロゲル材料は、約30%~約70%(wt/wt)のEWCを有する。比較すると、本開示の文脈で説明されるように、シリコーンエラストマー材料は、約0%~10%未満(wt/wt)の含水率を有する。典型的には、本方法または本装置で使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%~3%(wt/wt)の含水率を有する。好適なレンズ製剤(組成)の例は、以下の米国一般名(USAN)を有するものを含む:メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)B、オキュフィルコン(ocufilcon)C、オキュフィルコン(ocufilcon)D、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコン(omafilcon)B、コムフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)B、セノフィルコン(senofilcon)C、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)B、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)B、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)A、等。
【0088】
代替的に、レンズは、シリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。例えば、レンズは、3~50のショアA硬度を有するシリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。ショアA硬度は、当業者によって理解されているように、従来方法を使用して(例えば、方法DIN53505を使用して)決定され得る。他のシリコーンエラストマー材料が、例えば、NuSil Technology、または、Dow Chemical Company、から取得され得る。
【0089】
例として、レンズは、13mm~15mmの間のレンズ直径を有するヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み得る。レンズの光学ゾーンは、7mm~9mmの間の直径を有し得る。光学ゾーンの環状領域は、+2D~+20Dの間の最大追加屈折力を有する最大追加屈折力子午線を有し得る。光学ゾーンの環状領域は、+1D~+10Dの間の中間追加屈折力を有する中間追加屈折力子午線を有し得る。
【0090】
第2の態様によって、本開示は、レンズを製造する方法を提供する。当該方法は、中央領域と、環状領域と、を備えたコンタクトレンズを形成する工程を備え得て、中央領域は、ベース屈折力を有しており、環状領域は、中央領域を取り囲んでいる。環状領域は、最大追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を有する。環状領域は、また、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線を有する
【0091】
レンズは、前述の特徴のいずれかを含み得る。
【0092】
当該製造方法は、凹レンズ形成面を有する雌型部材と、凸レンズ形成面を有する雄型部材と、を形成する工程を含み得る。当該方法は、雌型部材と雄型部材との間のギャップをバルクレンズ材料で充填する工程を含み得る。当該方法は、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成する工程を更に含み得る。
【0093】
コンタクトレンズは、成形コンタクトレンズであり得る。レンズは、キャスト成形プロセス、スピンキャスト成形プロセス、または、旋盤加工プロセス、あるいは、それらの組み合わせ、によって形成され得る。当業者によって理解されているように、キャスト成形とは、凹レンズ部材形成面を有する雌型成形部材と凸レンズ部材形成面を有する雄型成形部材との間にレンズ成形材料を入れることでレンズを成形する工程を指す。
【0094】
本開示の第3の態様では、本明細書に記載されたコンタクトレンズを使用する方法も提供される。当該方法は、近視の進行を低減(軽減)するなど、屈折異常の進行を低減するのに効果的であり得る。本レンズが近視の進行を低減するために使用される時、当該方法は、様々な近距離(例えば、約15cm~約40cmの範囲)に対して眼が順応可能である人にコンタクトレンズを提供する工程を備える。当該方法の幾つかの実施形態は、眼用レンズを、約5歳~約25歳である人に提供する工程を備える。当該提供は、眼鏡技師または検眼医などの眼科医によって実行され得る。代替的に、当該提供は、眼科用レンズをレンズ着用者に配送するように手配するレンズ販売業者によって実行され得る。
【0095】
図1Aは、近視の進行を遅らせるために使用するためのレンズの概略平面図を示す(例えば、近視調整)。レンズ1は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン2と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン4と、を備える。周辺ゾーン4は、レンズのサイズを増大して当該レンズ1をより扱いやすくし、当該レンズ1の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ1の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン2は、レンズ1の光学機能を提供し、当該光学ゾーン2は、環状領域3及び中央領域5を含む。このレンズ1は、正のベース屈折力を有し、環状領域3の前面の曲率半径は、中央領域5の前面の曲率半径よりも小さい。(これは、図1B及び対応する図2Aの光線図において、誇張された模式形態で図示されている。)。従って、環状領域3は、中央領域5のベース屈折力よりも大きな屈折力を有する。環状領域3の焦点11は、近位焦点面13上にあり、中央領域5の焦点15は、遠位焦点面17上にあり、それは、レンズ1の後面から更に離れている。環状領域3の焦点11及び中央領域5の焦点15は、共通の光軸19を共有する。図2Cに示されるように、無限遠の点源の場合、中央領域5によって焦点合わせされる光線は、遠位焦点面17において焦点画像(焦点合わせされた像)23を形成する。中央領域5によって焦点合わせされる光線は、また、近位焦点面13において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)ぼやけ(blur)スポット27を生成する。
【0096】
図2Bに示されるように、環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13において焦点画像21を形成する。環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13の後で発散し、当該発散光線は、遠位焦点面17において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)環状(輪状)画像25を生成する。前述のように、焦点が合っていない環状画像25は、レンズ1の着用者が焦点の合った遠方画像の周りに「ハロー」を見る結果となり得る。
【0097】
図3Aは、近視の治療に使用される別の既知のレンズ101の概略図を示し、このレンズは、焦点距離画像の周りで観察されるハローを除去するように設計されている。図1A及び図1Bに示されるレンズ1と同様、レンズ101は、光学ゾーン102と、光学ゾーン102を取り囲む周辺ゾーン104と、を備える。光学ゾーン102は、中央領域105と、中央領域105を取り囲む環状領域103と、を含む。図3B並びに対応する図4A及び図4Dの光線図に示されるように、このレンズ101は、正のベース屈折力レンズであり、環状領域103の前面は、中央領域105の前面よりも大きな曲率を有し、従って、中央領域105のベース屈折力よりも大きな屈折力を提供する。図4Dに示されるように、中央領域105の前面は、より大きな半径109の球の表面の一部を画定する。環状領域103の前面は、より小さい半径106の湾曲環状面を画定する。
【0098】
遠位焦点面117で、中央領域105を通過する光線が焦点合わせ(集束)される。環状領域103は、光学的ビームストップとして作用し、これは、図4Cに示されるように、遠位焦点面117において光の小さなスポットサイズ133をもたらす。
【0099】
近位焦点面113には、単一の像は形成されない。図4Bに示されるように、近位焦点面113では、無限遠の点源に対して、中央領域105を通過する光線は、図1A及び図1B並びに図2A及び図2Bのレンズと同様、ぼやけ(blur)円128を生成する。一方、環状領域103を通過する遠方の点源からの光線は、焦点合わせされた環122を生成し、これは、図4Bに示されるように、ぼやけ円128を取り囲んでいる。図4Bは、遠方の点源に対して生成される光パターンを示している。図1のレンズ1とは対照的に、図3及び図4のレンズ101は、近位物体に目が順応する必要性を回避するために使用され得るであろう、近位焦点面113における単一画像または軸上画像を生成することがない。遠方にある拡張物体の場合、近位焦点面113において形成される焦点画像は、(i)環状領域103の屈折力を有する従来のレンズで得られるであろう当該拡張物体の焦点画像と、(ii)環状領域103の光学効果を表す光学伝達関数と、の畳み込みである。
【0100】
図1及び図2のレンズとは対照的に、環状または「ハロー」効果は、遠位焦点面117において発生しない。
【0101】
図5Aは、本開示の一実施形態によるレンズの概略平面図を示す。レンズの周に沿った位置は、角度θによって示され得る。当該θは、0°~360°の間で変化する。この例では、線A-Aは、θ=0°に沿って存在し、線B-Bは、θ=90°に沿って存在する。図5Bは、線A-Aに沿ってレンズと交差する光線の概略部分光線図を示している。図5Cは、線B-Bに沿ってレンズと交差する光線の概略部分光線図を示している。図1A図1B図3A及び図3Bに示されるレンズ1及び101と同様、レンズ201は、光学ゾーン202と、光学ゾーン202を取り囲む周辺ゾーン204と、を備える。光学ゾーン202は、中央領域205と、中央領域205を取り囲む環状領域203と、を含む。中央領域205は、前面の曲率によって少なくとも部分的に決定されるベース屈折力有する。レンズ205は、正のベース屈折力を有する。
【0102】
環状領域203の前面の曲率は、周に沿った異なる点(位置)において異なる。これは、周方向に変化する環状領域203の追加屈折力をもたらす。環状領域203の追加屈折力は、最大値(図5Bに示される)と、ゼロ追加屈折力(図5Cに示される)と、の間で、周に沿って振動態様で変化する。最大値では、環状領域203aの追加屈折力が図3Aのレンズのために示された環状領域の追加屈折力に匹敵し、ゼロ屈折力では、環状領域203bの追加屈折力が中央領域205のベース屈折力と同等である。図5Aに示されるレンズ201の場合、環状領域203の追加屈折力は、線A-A(θ=0)に沿って最大であり、追加屈折力は、線B-B(θ=90°または270°)に沿って0D(ディオプトリ)である。すなわち、追加屈折力は、180°の周期で変化する。線A-Aと線B-Bとの間では、追加屈折力は中間の値を有する。
【0103】
中央領域205の光軸は、図5B及び図5Cにおいて線219によって示されている。中央領域205の前面の「X」によって示される曲率中心は、当該光軸219上にある。環状領域203は、線A-Aに沿って最大追加屈折力子午線203aを有し、線B-Bに沿ってベース屈折力子午線203bを有する。最大追加屈折力子午線203aの前面は、最大追加屈折力を提供し、X’によって示された曲率中心を中心とする曲率を有する。曲率中心X’は、第1光軸から第1距離(線220によって示されている)にある。線B-Bに沿ったベース屈折力子午線203bの前面は、ベース屈折力を提供し、中央領域205と同一の曲率中心Aを中心とする曲率を有する。
【0104】
図6Aは、本開示の例示的な一実施形態による、線A-Aに沿って(すなわち、最大追加屈折力子午線203aに沿って)レンズ201を通る鉛直断面図を示す。図6Bは、周方向に90°回転された同一のレンズを示しており、断面が線B-Bに沿っている(すなわち、ベース屈折力子午線203bに沿っている)。
【0105】
図7Aは、線A-Aに沿って図5Aのレンズ201と交差する光線の光線図を示している。当該線に沿って、環状領域203aの追加屈折力は最大であり、環状領域203aの前面は、中央領域205の前面よりも大きな曲率を有し、従って、中央領域205のベース屈折力よりも大きな屈折力を提供する。中央領域205の前面は、図4Dに示されたレンズと類似の態様で、第1半径の球の表面の一部を画定し、環状領域203aの前面は、より小さい曲率半径の湾曲環状面を画定する。
【0106】
線A-Aに沿ってレンズ201と交差して中央領域205を通過する光線は、図6A図6B及び図7A乃至7Cに示されるように、遠位焦点面217で焦点合わせ(集束)される。最大追加屈折力焦点面230aでは、線A-Aに沿ってレンズ201と交差して中央領域205を通過する無限遠の点源からの光線は、焦点を形成しないであろう一方で、線A-Aに沿ってレンズ201と交差して最大追加屈折力環状領域203aを通過する遠方の点源からの光線は、中央領域の光軸219から離れて焦点合わせ(集束)されるであろう。
【0107】
図7Cは、線B-Bに沿ってレンズ201と交差する光線の光線図を示す。この線に沿って、環状領域203bの追加屈折力は、ゼロである。環状領域203bの前面は、中央領域205の前面と半径方向に同一の曲率を有する。線B-Bに沿ってレンズ201と交差して中央領域205を通過する光線は、図6A図6B及び図7A乃至7Cに示されるように、遠位焦点面217で焦点合わせ(集束)される。線B-Bに沿ってレンズ201と交差してゼロ追加屈折力の環状領域203bを通過する光線も、遠位焦点面217で焦点合わせ(集束)される。
【0108】
図7Bは、θ=45°に沿った線である線C-Cに沿ってレンズ201と交差する光線の光線図を示す。この線に沿って、環状領域203cの追加屈折力は、線A-Aに沿った環状領域203aの追加屈折力と、線B-Bに沿った環状領域203bの追加屈折力と、の間の中間値である。環状領域203cの前面は、環状領域203bよりも小さい曲率半径であるが、環状領域203aよりも大きい曲率半径の、湾曲環状面を画定している。線C-Cに沿ってレンズ201と交差して中央領域205を通過する光線は、遠位焦点面217で焦点合わせ(集束)される。中間追加屈折力焦点面230cでは、線C-Cに沿ってレンズ201と交差して中央領域205を通過する無限遠の点源からの光線は、焦点を形成しないであろう一方で、線C-Cに沿ってレンズ201と交差して中間屈折力環状領域203cを通過する遠方の点源からの光線は、焦点合わせ(集束)されるであろう。中間焦点面230cは、最大追加屈折力焦点面230aよりも、レンズ201に近い。図8は、図5A乃至図5C図6A及び図6B、並びに、図7A乃至図7C、に示されたレンズ201の環状領域203について、θによる追加屈折力の変化を示す。図5A乃至図7Cに示されたレンズ201については、追加屈折力は、少なくとも部分的に、環状領域203の前面の曲率によって決定される。追加屈折力は、中央領域205のベース屈折力に対して定義されるため、ゼロの追加屈折力とは、環状領域203の前面の半径方向の曲率が中央領域205の曲率と一致することを意味する。図5A乃至図7Cに示されたレンズ201については、環状領域203の前面の半径方向の曲率、すなわち、環状領域203の追加屈折力は、子午線角度θ(0)によって、振動態様で連続的に変化する。
【0109】
レンズ201と交差して環状領域203を通過する遠方の点源からの光線は、遠位焦点面217の前方に単一の画像を形成することはないが、中央領域の光軸219から離れていて、当該光軸219の周りで角度θにより変化するデフォーカスを伴う、焦点合わせされた環状波形を生成するであろう。遠位焦点面217では、子午線方向(メリディオナル)に変化するぼやけ(blur)パターン250が、図9に示されるように、環状領域203を通過してレンズ201と交差する遠方の点源からの光線によって生成される。ぼやけパターン250は、中央領域205を通過する光線によって生成される焦点スポット251を取り囲む。ぼやけは、最大追加屈折力子午線203aと一致する線A-Aに沿って、最大である。
【0110】
従って、当該環を全体として考察し、子午線の周りで移動すると、レンズ201と交差して環状領域を通過する遠方の点源からの光線は、ループする焦線を形成する。それは、0°(12時)での最大追加屈折力焦点面(当該焦線が、目の前方に最も近い)から、網膜に向かって、45°での中間追加屈折力焦点面へ、90°での最小追加屈折力焦点面(3時、当該焦線が網膜に最も近い)へ、そして再び眼の前方に向かって戻るように、135°の中間追加屈折力焦点面を通って、180°(6時)の最大追加屈折力まで、至る。当該サイクルが、180°~360°の間で繰り返す。当該ループは、線A-A及び線B-Bに関して対称である。レンズと交差して中央領域を通過する無限遠の点源からの光線は、遠位焦点面で焦点合わせされる。
【0111】
前述のレンズは、正のベース屈折力を有している。本開示の他の実施形態では、レンズ701のベース屈折力は、負である。図10は、負のベース屈折力のレンズ701の部分光線図を、最大追加屈折力子午線を通る断面について示している。レンズ701の中央領域705は、図10に実線の円によって示されており、負のベース屈折力を有しており、一点鎖線の円によって示される環状領域703は、より小さい負の屈折力を有している。レンズの701の中央領域705は、環状領域703よりも大きい曲率を有し、環状領域703よりも小さい曲率半径を有する。中央領域705の曲率中心は、光軸719上にある。環状領域703の曲率中心は、中央領域の光軸719からオフセットしている(ずれている)。中央領域を通過する光線の仮想の焦点は、仮想の遠位焦点面717上にある。仮想の最大追加屈折力焦点面において、環状領域703を通過する遠方の点源からの光線730は、仮想の焦点合わせされた環を形成する。
【0112】
本開示の実施形態によるレンズの屈折力は、(i)曲率ベースの屈折力Pc、または、(ii)サジタルベース(またはスロープベース)の屈折力Ps、として定義され得る。
【0113】
ある波面Wの場合、当該波面の中心に垂直な線から半径方向距離r(瞳孔半径)の点において、
W(r) = A*r2
ここで、Aは関数である。
【0114】
波面曲率、または、曲率ベースの屈折力Pcは、波面の二次導関数の関数である。波面スロープ、または、スロープベースの屈折力Psは、波面の一次導関数の関数であって、波面のスロープ(勾配)によって変化する。
【0115】
単純な球面レンズの場合、曲率ベースの屈折力Pcは、以下のように定義される。
スロープベースの屈折力Psは、以下のように定義される。
すなわち、近軸(パラキシャル)を仮定した単純なレンズの場合、Pc=Psである。
【0116】
本開示の実施形態によるレンズの場合、Pcは、波面の二次導関数の関数であるため、曲率ベースの屈折力プロファイルは、領域の相対的な向きとは無関係に、当該レンズの環状領域及び中央領域の屈折力を与える。しかしながら、当該レンズにおいて、環状領域は、中央領域に対して半径方向外側または半径方向内側に「傾斜」される。このため、それらのスロープSが「傾斜されていない」値から変化される一方、それらの曲率は変化されず、従って、スロープベースのレンズ屈折力Psは、屈折力Pcと同一の値を与えない。
【0117】
図11A及び図11Bは、本開示の一実施形態によるレンズ301を示す。レンズ301は、図5A乃至図7Cに示されたレンズと同様であるが、第2追加屈折力ゾーンとして作用する、更なる同心の環状領域303’を有する。レンズ301の屈折力プロファイルは、異なるθ値に対して、半径距離の関数として、振動態様で変化する。第2の環状領域303’の追加屈折力は、第1環状領域303と同様に変化する(同一のθ値すなわち子午線において最大値及び最小値を含む)。図12は、線A-A(θ=0°)についての半径の関数としての屈折力を示し、それは、x軸上の0が中央領域305の中心に対応する、最大追加屈折力線である。
【0118】
図12において、実線のグラフ(カーブ、推移線)331が、スロープベースの屈折力Psを示し、破線のグラフ(カーブ、推移線)333が、曲率ベースの屈折力Pcを示す。
【0119】
図11A及び図11Bのレンズは、-0.75ディオプトリ(D)の公称ベース屈折力を有する。図12に示すように、スロープベースの屈折力Ps及び曲率ベースの屈折力Pcは、レンズ305の中央領域に亘って、概ね一定である(及び等しい)。図11A及び図11Bのレンズについては、図4Dに示されたレンズと同様に、環状領域303aの前面の曲率半径を画定する円の中心は、中央領域305の前面の曲率半径を画定する円の中心に対して、シフトされている。Psは、レンズ表面のスロープ(勾配)の関数であるから、中央領域305に対する環状領域303aの傾きと曲率との組み合わせが、サジタル屈折力Psをもたらし、それは、環状領域303aの内縁で遠方屈折力(「負の追加」屈折力)よりも更に負で始まって、半径増大に伴って、環状領域303aの外縁で遠方屈折力(追加屈折力)よりも小さな負の屈折力まで増加する、という傾斜経路である。環状領域303aの傾斜は、環状領域303aの半径方向中間点におけるレンズ301のサジタル屈折力Psが中央領域305の屈折力(特に、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう屈折力、図12に矢印306で示され図11Aに破線306’で示されている)と一致すること、を保証するように選択されている。従って、環状領域303aの傾斜は、屈折力を計算するサジタル法に従って、平均の追加屈折力が(少なくともほぼ)0Dになるように、選択される。
【0120】
第1環状領域303aと第2環状領域303a’との間の距離領域308は、名目上、中央領域305と同一の屈折力を有するが、非球面性の選択及び一般的なレンズ設計慣行に応じて、中央ゾーンに対して同一の負の屈折力を有し得るし、あるいは、幾分多いまたは少ない負の屈折力を有し得る。
【0121】
前述のように、真の屈折力Pcは、レンズの曲率の関数、すなわち、波面の二次導関数の関数であり、環状領域303a/303a’の傾斜によって影響されない。図12で理解され得るように、環状領域303a/303a’の曲率ベースの屈折力は正である。すなわち、当該領域は、それらの幅に亘って追加屈折力を提供し、それは、この例では、レンズ中心からの半径方向距離の増大に伴って、増加する。
【0122】
図13は、公称-0.75Dの屈折力の単一の環状領域403を有する、本開示の一実施形態による更なるレンズ401を示す。図14は、異なるθ値に沿った、当該レンズ401のサジタル屈折力の変化を示す。サジタル屈折力の変化は、図12に示したものと同様の形状を有する。サジタル屈折力は、半径増大に伴って、より小さな負となり、環状領域403を横切る傾斜経路のスロープ(勾配)は、異なるθ値において異なる。破線のグラフ(カーブ、推移線)431は、線A-A(θ=0°)に沿ったサジタル屈折力を示し、これは、最大追加屈折力環状領域403aと交差する。半径増大に伴うサジタル屈折力の増加は、比較的急勾配である。点線のグラフ(カーブ、推移線)433及び実線のグラフ(カーブ、推移線)435は、それぞれ、線C-C及び線D-Dに沿ったサジタル屈折力を示す。線C-Cは、中間追加屈折力領域403cと交差し、サジタル屈折力は、中央領域405と環状領域403cとの間でより浅いスロープ(勾配)を有する。線D-Dは、低い追加屈折力領域403dと交差し、サジタル屈折力は、中央領域405と環状領域403dとの間で更により浅いスロープ(勾配)を有する。線B-B(θ=90°)に沿って、環状領域403bの追加屈折力はゼロであり、屈折力プロファイルは、中央距離領域405の屈折力の滑らかな延長となる。環403の中間点におけるサジタル屈折力の平均値は、全てのθ値で同一である。それは、距離領域が当該点まで延長された場合に有するであろう屈折力に等しい。すなわち、平均のサジタル追加屈折力は、0Dである。しかしながら、距離領域の実際の屈折力、曲率ベースの屈折力は、追加の屈折力を提供することが、前述の議論から理解されるであろう。当該追加の屈折力は、線A-Aに沿って最大であり、線C-Cに沿ってより小さく、線D-Dに沿って更に小さく、線B-Bに沿って0Dである。
【0123】
図15は、本開示の一実施形態によるレンズ901のPsの変動を示す2次元プロットである。環状領域903は、レンズの頂部(θ=0°)において最大追加屈折力子午線903aを有する。最小追加屈折力を伴う中間追加屈折力子午線903bは、レンズの底部(θ=180°)にある。
【0124】
図16は、図15のレンズ901について、レンズの中心からの半径距離の関数としてPsを示している(半径0がレンズ901の中心に対応している)。点線のグラフ(カーブ、推移線)931が、レンズの周に沿って平均化されたPsを示す。Psは、中央領域905に亘っては、ほとんど変化を示していない。図12及び図14と同様に、環状領域において、Psの変動は、環状領域903の内縁で負の追加屈折力から始まって、レンズの中心に対して両側で半径増大に伴って環状領域903の外縁で正の追加屈折力まで増加する、という傾斜経路である。平均のPsグラフ(点線のグラフ(カーブ、推移線)931)は、レンズの中心(半径値0)に関して対称である。実線のグラフ(カーブ、推移線)933は、鉛直線V-V(図15に示される)に沿ったPsを示す。この線は、θ=0°で最大追加屈折力子午線903aと交差し、θ=180°で中間追加屈折力子午線903bを通過する。これらの子午線(経線)は異なる追加屈折力を有するので、実線のグラフ(カーブ、推移線)933は、レンズの中心に関して非対称であり、θ=0°で最大追加屈折力子午線903aに沿ってより大きな傾斜(勾配)を示し、θ=180°でより浅い傾斜(勾配)を示す。図15に示される水平線(H-H)に沿ったグラフは、図16では見られない。なぜなら、それは、平均のPsグラフと一致するからである。
【0125】
図17は、本開示の一実施形態によるレンズ501を示す。レンズ501は、中央領域505と、ベース屈折力を有する更なる領域505’によって分離された2つの環状領域503、503’と、を有し、公称屈折力-7Dである。図18は、2つの異なるθの値に対する、このレンズ501のPcを示す。θ1=0°、破線のグラフ531、及び、最大追加屈折力領域503a/503a’ に対応する線A-Aについて、曲率ベースの屈折力は、環状領域503a及び503a’において有意により小さな負であり、それが、中央領域505と比較して環状領域503a/503a’の追加屈折力効果を示す。線C-Cは、θ2=45°、実線のグラフ533、及び、中間追加屈折力領域503c/503c’に対応する。中央領域505と環状領域503c、503c’との曲率ベースの屈折力の差は、線A-Aに沿ったものよりも小さく、従って、追加屈折力はより小さい。線B-Bは、θ3=90°、破線(薄色線)のグラフ535、及び、環状領域の最小追加屈折力領域503b/503b’に対応する。このレンズについては、最小追加屈折力は、非ゼロである。
【0126】
図5B図5C図6A図6C図7A乃至図7C図10及び図11Bは、平坦な焦点面を示しているが、前述のように、実際には、レンズ601が目661の水晶体659と共に作用する結果として、図19に示されるように、これらの像面は、湾曲したイメージ「シェル」である。遠位焦点面617は、網膜657と実質的に一致する湾曲面である。図19は、線C-Cに沿ってレンズ601と交差する光線を示す。線C-Cは、θ=45°に沿った線であって、レンズ601の中間追加屈折力領域603cに対応する。中間追加屈折力焦点面630cでは、線C-Cに沿ってレンズと交差し、中央領域605を通過する無限遠の点源からの光線は、焦点が合っていない。一方、線C-Cに沿ってレンズと交差し、環状領域603cを通過する遠方の点源からの光線は、焦点が合っている。但し、他の子午線に沿ってレンズと交差し、環状領域603cを通過する光は、焦点が合っていないので、単一の像が中間追加屈折力焦点面630cに形成されることはない。レンズ601の環状領域603aの変化する追加屈折力の結果として、網膜657の異なる領域が、異なるレベルのデフォーカスにさらされる。図19並びに図20A乃至図20Cに関して、線A-A、線B-B及び線C-Cへの言及は、先行する図に示された対応する線に関している(図13及び図17参照)。
【0127】
図面に示された本開示の複数の実施形態では、レンズは、全て、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線、少なくとも1つのベース屈折力子午線、及び、最大追加屈折力子午線とベース屈折力子午線との間の少なくとも1つの中間追加屈折力子午線、を有する。他の実施形態では、レンズは、ベース屈折力子午線を有していなくてもよい。
【0128】
前述の本開示の複数の実施形態では、最大追加屈折力領域はθ=0°に沿った線と一致し、ゼロの追加屈折力領域は、θ=90°に沿った線と一致している。追加屈折力は、図20Bに示されるように、連続的な正弦波状に変化し、従って、線A-Aと線B-Bとの間の中間値を有する。他の実施形態では、追加屈折力は、図20Aに示されるように、段階的態様でθによって変化し得るし、あるいは、図20Bに示されるように、鋸歯状の関数として変化し得る。
【0129】
追加屈折力の変化の周期もまた、変化し得る。例えば、追加屈折力の最大値は、図20A乃至図20Cにおいて、nの異なる整数値に対応して、45°毎に、30°毎に、または、20°毎に、発生し得る。図21A乃至図21Dは、本開示の複数の実施形態によるレンズについて、レンズと交差し、環状領域を通過する遠方の点源からの光線によって遠位焦点面に生成されるぼやけ(blur)パターンを示している。図21Aは、180°毎に最大追加屈折力を有するレンズのぼやけパターンを示している。図21Bは、60°毎に最大追加屈折力を有するレンズのぼやけパターンを示している。図21Cは、180°に亘る最大追加屈折力子午線を有するレンズのぼやけパターンを示している。環状領域の残りの部分はベース屈折力を有しており、狭い中間追加屈折力子午線が、最大追加屈折力子午線とベース屈折力領域との間の境界を滑らかにしている。図21Dは、90°毎に最大追加屈折力子午線を有するレンズのぼやけパターンを示している。
【0130】
前述の本開示の複数の実施形態では、複数の最大追加屈折力子午線が存在する場合、それらは、環状領域の周に沿って規則的な間隔で発生している。他の実施形態では、最大追加屈折力子午線は、レンズの周に沿って不規則に離間されていてもよい。複数の最大追加屈折力子午線の各々は、図22Aに示されるように、異なる屈折力を有し得る。図22Bに示されるように、最大追加屈折力子午線は、非対称の屈折力プロファイルを有し得る。
【0131】
本開示の複数の実施形態は、また、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズを提供する。レンズは、中央領域を含む光学ゾーンを備え、当該中央領域は、第1光軸と、第1光軸上にある焦点に光を焦点合わせするベース屈折力と、を有する。レンズは、環状領域をも含み、当該環状領域は、中央領域を取り囲んでおり、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線を含み、それは、最大追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離にある複数の焦点に光を焦点合わせする。レンズは、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線をも含み、それは、ゼロディオプトリの追加屈折力と最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、第1光軸から第1距離とは異なる距離にある複数の焦点に光を焦点合わせする。
【0132】
前述の説明では、既知の自明または予測可能な等価物を有する完全体(integer)または要素が言及されているが、そのような等価物は、本明細書に個別に記載されているかの如く、本明細書に組み込まれているものである。本開示の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲への参照がなされるべきである。特許請求の範囲は、あらゆるそのような等価物を包含するものと解釈されるべきである。また、有利であったり便利であったり等と説明されている本開示の完全体または特徴が、選択的なものであって、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されるであろう。更に、そのような選択的な完全体または特徴は、本開示の幾つかの実施形態では有益である可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり得て、従って、他の実施形態では存在しない場合がある、ことが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3A
図3B
図4A-4C】
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A-7C】
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A-20C】
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の発症または進行を予防または遅らせるのに使用するためのコンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力を提供し、前記第1光軸上にある曲率中心を中心とした曲率と、を有しており、
前記環状領域は、前記中央領域を取り囲んでおり、前記中央領域に対して傾斜されており、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有し、
前記環状領域の追加屈折力は、前記少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、前記少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、の間で連続的に変化する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記環状領域は、前記ベース屈折力を提供し、前記中央領域の前記曲率中心を中心とした前記曲率を有する、少なくとも1つのベース屈折力子午線を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記ベース屈折力、前記最大追加屈折力、及び、前記中間追加屈折力、を提供する複数の前記曲率は、レンズの前面の曲率である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記環状領域は、前記中央領域に対して傾斜されており、
当該レンズは、前記少なくとも1つの最大追加屈折力子午線の中間点でサジタル屈折力すなわちスロープベースの屈折力を有し、
当該サジタル屈折力は、前記中央領域が前記中間点まで延長されていたら有するであろう屈折力に合致する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記環状領域は、複数の中間追加屈折力子午線によって分離された複数の最大追加屈折力子午線の周期的配置を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記環状領域の屈折力は、前記環状領域の周に沿って、正弦波状、段階状、三角形状、または、鋸歯状、に変化する
ことを特徴とする請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、2mmと7mmとの間の直径を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記環状領域は、前記中央領域の周縁から半径方向外側に0.5mmと1.5mmとの間で延在する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記ベース屈折力は、0.5ディオプトリと-15.0ディオプトリとの間である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記環状領域の前記最大追加屈折力子午線は、+0.5ディオプトリと+15.0ディオプトリとの間の追加屈折力である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
少なくとも2つの同心の環状領域
を備え、
前記環状領域の各々が、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
当該レンズは、成形コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを製造する方法であって、
中央領域と、環状領域と、を備えたコンタクトレンズを形成する工程
を備え、
前記中央領域は、ベース屈折力を有しており、
前記環状領域は、前記中央領域を取り囲んでおり、前記中央領域に対して半径方向に傾斜されており、
最大追加屈折力を提供し、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、
ゼロディオプトリの追加屈折力と前記最大追加屈折力との間の中間追加屈折力を提供し、前記第1光軸から前記第1距離とは異なる距離にある曲率中心を中心とした曲率を有する、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、
を有し、
前記環状領域の追加屈折力は、前記少なくとも1つの最大追加屈折力子午線と、前記少なくとも1つの中間追加屈折力子午線と、の間で連続的に変化する
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
近視の進行を低減する方法であって、
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを、様々な近距離に順応可能な近視の人に提供する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々は、中央領域のベース屈折力よりも大きい(すなわち、更に正であるか、あるいは、より小さな負である)レンズ屈折力を有し得る。中間追加屈折力子午線の屈折力は、中間追加屈折力として説明され得て、これは、ベース屈折力と中間追加屈折力子午線の屈折力との間の差である。中間追加屈折力は、最大追加屈折力よりも小さく、約+0.1~約+10.0D、好ましくは約+0.1~約+3.0D、の間であり得る。正のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より更に正であり得る。負のベース屈折力を有するレンズの場合、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、ベース屈折力より小さな負であり得るか、あるいは、少なくとも1つの中間追加屈折力子午線の各々の屈折力は、正の屈折力であり得る。中間追加屈折力子午線における環状領域の正味の屈折力は、ベース屈折力と中間追加屈折力との合計になる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
図13は、公称-0.75Dの屈折力の単一の環状領域403を有する、本開示の一実施形態による更なるレンズ401を示す。図14は、異なるθ値に沿った、当該レンズ401のサジタル屈折力の変化を示す。サジタル屈折力の変化は、図12に示したものと同様の形状を有する。サジタル屈折力は、半径増大に伴って、より小さな負となり、環状領域403を横切る傾斜経路のスロープ(勾配)は、異なるθ値において異なる。破線のグラフ(カーブ、推移線)431は、線A-A(θ=0°)に沿ったサジタル屈折力を示し、これは、最大追加屈折力環状領域403aと交差する。半径増大に伴うサジタル屈折力の増加は、比較的急勾配である。点線のグラフ(カーブ、推移線)433及び実線のグラフ(カーブ、推移線)435は、それぞれ、線C-C及び線D-Dに沿ったサジタル屈折力を示す。線C-Cは、中間追加屈折力領域403cと交差し、サジタル屈折力は、中央領域405と環状領域403cとの間でより浅いスロープ(勾配)を有する。線D-Dは、低い追加屈折力領域403dと交差し、サジタル屈折力は、中央領域405と環状領域403dとの間で更により浅いスロープ(勾配)を有する。線B-B(θ=90°)に沿って、環状領域403bの追加屈折力はゼロであり、屈折力プロファイルは、中央領域405の屈折力の滑らかな延長となる。環403の中間点におけるサジタル屈折力の平均値は、全てのθ値で同一である。それは、中央領域が当該点まで延長された場合に有するであろう屈折力に等しい。すなわち、平均のサジタル追加屈折力は、0Dである。しかしながら、中央領域の実際の屈折力、曲率ベースの屈折力は、追加の屈折力を提供することが、前述の議論から理解されるであろう。当該追加の屈折力は、線A-Aに沿って最大であり、線C-Cに沿ってより小さく、線D-Dに沿って更に小さく、線B-Bに沿って0Dである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
図16は、図15のレンズ901について、レンズの中心からの半径距離の関数としてPsを示している(半径0がレンズ901の中心に対応している)。実線のグラフ(カーブ、推移線)933が、レンズの周に沿って平均化されたPsを示す。Psは、中央領域905に亘っては、ほとんど変化を示していない。図12及び図14と同様に、環状領域903に亘って、Psの変動は、環状領域903の内縁で負の追加屈折力から始まって、レンズの中心に対して両側で半径増大に伴って環状領域903の外縁で正の追加屈折力まで増加する、という傾斜経路である。平均のPsグラフ(実線のグラフ(カーブ、推移線)933)は、レンズの中心(半径値0)に関して対称である。破線のグラフ(カーブ、推移線)931は、鉛直線V-V(図15に示される)に沿ったPsを示す。この線は、θ=0°で最大追加屈折力子午線903aと交差し、θ=180°で中間追加屈折力子午線903bを通過する。これらの子午線(経線)は異なる追加屈折力を有するので、破線のグラフ(カーブ、推移線)931は、レンズの中心に関して非対称であり、θ=0°で最大追加屈折力子午線903aに沿ってより大きな傾斜(勾配)を示し、θ=180°でより浅い傾斜(勾配)を示す。図15に示される水平線(H-H)に沿ったグラフは、図16では見られない。なぜなら、それは、平均のPsグラフと一致するからである。
【国際調査報告】