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特表2023-541230廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法
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  • 特表-廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C03C21/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511967
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021044582
(87)【国際公開番号】W WO2022039932
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,470
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-モウアー,シニュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャロッシュ,カイ トッド ポール
(72)【発明者】
【氏名】セヴム,マシュー アンドリューズ
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059AC30
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
(57)【要約】
本開示の実施形態は、第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするための方法であって、廃イオン交換材料を粉砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するステップと、複数の廃イオン交換粒子を再生して、廃イオン交換材料の第1のアルカリ金属塩の濃度よりも高い第1のアルカリ金属塩の濃度を有する複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、を含む方法に関する。さらに、第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムも開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするための方法であって、
前記廃イオン交換材料を粉砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するステップと、
前記複数の廃イオン交換粒子を再生して、前記廃イオン交換材料の前記第1のアルカリ金属塩の濃度よりも高い前記第1のアルカリ金属塩の濃度を有する複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%以下の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で4質量%以上の前記第2のアルカリ金属塩を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記廃イオン交換材料を粉砕するステップが、前記廃イオン交換材料を破砕するように動作可能な粉砕ユニットに前記廃イオン交換材料を取り込むステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の廃イオン交換粒子を再生するステップが、
前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液と接触させて再生イオン交換スラリーを形成するステップと、
前記再生イオン交換スラリーを分解して、リサイクル水溶液及び前記複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の廃イオン交換粒子が、20℃未満の温度で、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に接触する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】

前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液と接触させるステップが、前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に接触させるように動作可能な再生ユニットに、前記複数の廃イオン交換粒子を移動するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記再生イオン交換スラリーを分解するステップが、液体の前記リサイクル水溶液から固体粒子の前記再生イオン交換粒子を分離するように動作可能な分離ユニットに前記再生イオン交換スラリーを移動するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の再生イオン交換粒子を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リサイクルイオン交換材料をイオン交換温度まで加熱して、溶融塩を形成するステップと、
前記溶融塩の中にガラス物品を浸漬させて、前記溶融塩と前記ガラス物品とのイオン交換を行うステップと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムであって、
前記廃イオン交換材料を破砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するように動作可能な粉砕ユニットと、

前記粉砕ユニットの下流側にある再生ユニットであって、前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触させて、該接触により前記第2のアルカリ金属塩の少なくとも一部を前記廃イオン交換粒子から拡散させて、再生イオン交換スラリーを生成するように動作可能な再生ユニットと、
前記再生ユニットの下流側にある分離ユニットであって、前記再生イオン交換スラリーを分解して、複数の再生イオン交換粒子及びリサイクル水溶液を生成するように動作可能な分離ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記再生ユニットが、1.0時間~2.0時間の時間にわたり、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に、前記複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記再生ユニットが、20℃未満の温度で、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に、前記複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記分離ユニットの下流側にある乾燥ユニットであって、前記再生イオン交換粒子を加熱して、リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で1質量%未満の水を含むリサイクルイオン交換材料を生成するように動作可能な乾燥ユニットをさらに備え、
前記リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年8月17日を出願日とする米国仮特許出願第63/066470号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、イオン交換プロセスによるガラス物品の化学強化に関し、より詳細には、廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
強化ガラス(tempered glass,strengthened glass)は、さまざまな用途で使用することができる。強化ガラスは、物理的な耐久性や破損耐性が高いため、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの消費者向け電子デバイス、医薬包装、自動車などに使用することができる。しかし、従来のイオン交換プロセスなどの従来の強化プロセスは、深刻な非効率性を抱えるものであった。例えば、イオン交換プロセスで使用した後に廃棄される廃イオン交換材料には、使用に適した状態の材料が95%程度も残されていた。この原因の少なくとも一部が、かかる廃イオン交換材料のリサイクル方法が適切でない、又は実用的でないことにあると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、これに代わる、廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするための方法は、廃イオン交換材料を粉砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するステップと、複数の廃イオン交換粒子を再生して、廃イオン交換材料の第1のアルカリ金属塩の濃度よりも高い第1のアルカリ金属塩の濃度を有する複数の再生イオン交換材料を生成するステップと、を含む。
【0006】
第2の態様は、廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%以下の第1のアルカリ金属塩を含んでいる、第1の態様に記載の方法を含む。
【0007】
第3の態様は、廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で4質量%以上の第2のアルカリ金属塩を含んでいる、第1の態様又は第2の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0008】
第4の態様は、廃イオン交換材料を粉砕するステップが、廃イオン交換材料を破砕するように動作可能な粉砕ユニットに廃イオン交換材料を取り込むステップを含む、第1~第3の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0009】
第5の態様は、複数の廃イオン交換粒子を再生するステップが、複数の廃イオン交換粒子を第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液と接触させて再生イオン交換スラリーを形成するステップと、再生イオン交換スラリーを分解して、リサイクル水溶液及び複数の再生イオン交換材料を生成するステップと、を含む、第1~第4の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0010】
第6の態様は、複数の廃イオン交換粒子が、0.5時間~24時間の時間にわたり、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触する、第5の態様に記載の方法を含む。
【0011】
第7の態様は、複数の廃イオン交換粒子が、20℃未満の温度で、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触する、第5又は第6の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0012】
第8の態様は、複数の廃イオン交換粒子を第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液と接触させるステップが、複数の廃イオン交換粒子を第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触させるように動作可能な再生ユニットに、複数の廃イオン交換粒子を移動するステップを含む、第5~第7の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0013】
第9の態様は、再生イオン交換スラリーを分解するステップが、液体のリサイクル水溶液から固体粒子の再生イオン交換材料を分離するように動作可能な分離ユニットに再生イオン交換スラリーを移動するステップを含む、第5~第8の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0014】
第10の態様は、複数の再生イオン交換材料を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料を生成することをさらに含む、第1~第9の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0015】
第11の態様は、リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で、1質量%未満の水を含んでいる、第10の態様に記載の方法を含む。
【0016】
第12の態様は、リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の第1のアルカリ金属塩を含んでいる、第10又は第11の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0017】
第13の態様は、リサイクルイオン交換材料が、0.10mm~5.0mmの粒径を有している、第10~第12の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0018】
第14の態様は、複数の再生イオン交換材料を乾燥させるステップが、複数の再生イオン交換材料を加熱するように動作可能な乾燥ユニットに複数の再生イオン交換材料を移動するステップを含む、第10~第13の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0019】
第15の態様は、リサイクルイオン交換材料をイオン交換温度まで加熱して、溶融塩を形成するステップと、溶融塩の中にガラス物品を浸漬させて、溶融塩とガラス物品とのイオン交換を行うステップと、をさらに含む、第10~第14の態様のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0020】
第16の態様によれば、第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムは、廃イオン交換材料を破砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するように動作可能な粉砕ユニットと、粉砕ユニットの下流側にある再生ユニットであって、複数の廃イオン交換粒子を第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触させて、該接触により第2のアルカリ金属塩の少なくとも一部を廃イオン交換粒子から拡散させて、再生イオン交換スラリーを生成するように動作可能な再生ユニットと、再生ユニットの下流側にある分離ユニットであって、再生イオン交換スラリーを分解して、複数の再生イオン交換材料及びリサイクル水溶液を生成するように動作可能な分離ユニットと、を備える。
【0021】
第17の態様は、再生ユニットが、1.0時間~2.0時間の時間にわたり、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に、複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、第16の態様に記載のシステムを含む。
【0022】
第18の態様は、再生ユニットが、20℃未満の温度で、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に、複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、第16又は第17の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0023】
第19の態様は、分離ユニットの下流側にある乾燥ユニットであって、再生イオン交換材料を加熱して、リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で1質量%未満の水を含むリサイクルイオン交換材料を生成するように動作可能な乾燥ユニットをさらに備える、第16~第18の態様のいずれか1つに記載のシステムを含む。
【0024】
第20の態様は、リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の第1のアルカリ金属塩を含んでいる、第19の態様に記載のシステムを含む。
【0025】
上述の概略的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、種々の実施形態を説明するものであり、特許請求する主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解のために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と合わせて、特許請求する主題の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、イオン交換プロセスの一部を示す模式図
図1B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、イオン交換プロセスの一部を示す模式図
図2】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムの主なフローを示す模式図
図3】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、様々な粒径を有するリサイクルイオン交換材料について、硝酸ナトリウム濃度(質量%、y軸)を再生時間(時間、x軸)の関数でプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2の簡略模式図は、バルブ、温度センサ、電子制御装置などの、使用され得るが当業者に公知である多くの構成要素を含めずに記載したものである。しかし、当業者であれば、これらの構成要素が本開示の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0028】
さらに、図2の簡略模式図における矢印は、材料の移送又は流れを示している。ただし、これは、かかる材料を2つ以上のシステムコンポーネント間で移送し得る移送ラインを矢印が指すことと等価である。1つ以上のシステムコンポーネントに接続している矢印は、図示のシステムコンポーネントへの出入りを表しており、1つのシステムコンポーネントのみに接続する矢印は、図示のシステムから出ること又は図示のシステムへ入ることを表している。矢印の方向は、材料の主な移動方向又は矢印が表す物理的な移送ライン内の材料の主な方向に概ね対応している。
【0029】
さらに、図2の簡略模式図における矢印は、或るシステムコンポーネントから他のシステムコンポーネントへ材料を輸送する処理ステップを指すこともできる。例えば、第1のシステムコンポーネントから第2のシステムコンポーネントを指す矢印は、第1のシステムコンポーネントから第2のシステムコンポーネントへの材料の「移動(pass)」を表すことができ、この「移動」には、材料が第1のシステムコンポーネントから「出(exit)」て又は「除去(remove)」されて、当該材料を第2のシステムコンポーネントに「取り込む(introduce)」ことが含まれ得る。
【0030】
本明細書に記載の実施形態は、廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法に係るものである。本開示に係る廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムは、主に、粉砕(size reduction)ユニットと、粉砕ユニットの下流側にある再生ユニットと、再生ユニットの下流側にある分離ユニットと、分離ユニットの下流側にある乾燥ユニットと、を備えることができる。実施に際しては、本開示に係る廃イオン交換材料をリサイクルするための方法は、主に、廃イオン交換材料を粉砕して複数の廃イオン交換粒子を生成するステップと、複数の廃イオン交換粒子を再生して複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、複数の再生イオン交換粒子を乾燥させて複数のリサイクルイオン交換粒子を生成するステップと、を含むことができる。以下、添付の図面を詳細に参照しながら、本開示のシステム及び方法の種々の実施形態を説明する。
【0031】
本開示において、本開示の要素に用いられる不定冠詞「a」及び「an」は、これらの要素が少なくとも1つ存在することを意味するものである。通常、不定冠詞「a」及び「an」は、それが導く名詞が単数名詞であることを表すために使用されるものであるが、本開示においては、特に断りのない限り、不定冠詞「a」及び「an」は、それが複数あることをも包摂する。同様に、本開示においては、特に断りのない限り、定冠詞「the」は、それが導く名詞が単数でも複数でもあり得ることを意味している。
【0032】
本開示において、「又は(or)」という用語は包括的に用いられ、特に、「A又はB」という表現は、「A、又はB、又はA及びB」を指している。また、「A又はBのいずれか」又は「A又はBのうちの一方」など、本開示において明示的に指定している場合にのみ、「又は」という用語は、排他的な意味で用いられ得る。
【0033】
本開示において、「直接(directly)」という用語は、材料の組成又は特性を変化させるように動作可能な介在的コンポーネントへの移動を介することなく、システムの第1のコンポーネントからシステムの第2のコンポーネントに廃イオン交換粒子などの材料を移動することを意味する。同様に、「直接」という用語は、材料の組成又は特性を変化させるように動作可能な予備的コンポーネントへの移動を介することなく、システムのコンポーネントに直接、廃イオン交換材料などの材料を取り込むことも意味する。材料の組成又は特性を変化させるように動作可能な介在的又は予備的コンポーネント又はシステムとしては、炉、分離器などを挙げることができる。ただし、一般に、バルブ、ポンプ、センサ、又はシステムの一般的な動作に必要な他の補助コンポーネントをこれらに含むことは、意図していない。
【0034】
本開示において、用語「下流(downstream)」及び「上流(upstream)」は、システムを通過する材料の流れ方向を基準としたシステムコンポーネントの位置を指す。例えば、システムを流れる材料がシステムの第1のコンポーネントに遭遇した後に当該システムの第2のコンポーネントに遭遇する場合、第2のコンポーネントは第1のコンポーネントの「下流」側にあると見なすことができる。同様に、システムを流れる材料がシステムの第1のコンポーネントに遭遇した後に当該システムの第2のコンポーネントに遭遇する場合、第1のコンポーネントは第2のコンポーネントの「上流」側にあると見なすことができる。
【0035】
なお、材料流の名称は、材料流に含まれる成分により表しており、材料流の名称に用いる成分は、材料流の主成分(例えば、材料流の50質量%~100質量%、70質量%~100質量%、90質量%~100質量%、95質量%~100質量%、99質量%~100質量%、99.5質量%~100質量%、又は99.9質量%~100質量%を占める成分)とすることができることを理解されたい。例えば、第1のシステムコンポーネントから第2のシステムコンポーネントに至る材料流が、50質量%~100質量%の廃イオン交換粒子を含み得る場合、当該材料流を「廃イオン交換粒子」という名称で表すことができる。また、本開示において、何らかの成分を含む材料流が或るシステムコンポーネントから他のシステムコンポーネントへ移動している場合には、それらのシステムコンポーネント間で当該成分の移動が行われることを開示するものでもあることを理解されたい。例えば、第1のシステムコンポーネントから第2のシステムコンポーネントに至る廃イオン交換粒子流を開示している場合、第1のシステムコンポーネントから第2のシステムコンポーネントに廃イオン交換粒子を移動することを開示しているのと等価であると理解すべきである。
【0036】
特に断りのない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではなく、また、いかなる装置に関しても、特定の向きを要請することを意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合、及び、装置クレームにおいて個々の構成要素の並び順や向きを実際に記載している場合を除き、又は、その他、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲若しくは発明の詳細な説明において明確になされている場合、及び、装置の構成要素の特定の並び順や特定の向きを記載している場合を除き、順序(並び順)や向きが推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの並び、操作の流れ、構成要素の並び順、又は構成要素の向きについての論法の問題、文法的な構成又は句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数又は種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0037】
まず、図1A及び図1Bを参照すると、通常のイオン交換プロセスが模式的に示されている。イオン交換プロセスは、塩浴100にガラス物品105を浸漬する工程を含んでいる。ガラス物品105は、比較的小さいカチオン130を含有することができ、例えば、Li及び/又はNaカチオンなどのアルカリ金属カチオンを含有することができる。塩浴100は、比較的(すなわち、ガラス物品のカチオン130に比べて)大きいカチオン120を含有する溶融塩101を含み得る。つまり、カチオン120は、カチオン130の原子半径よりも大きい原子半径を有し得る。カチオン120としては、例えば、カリウム(K)カチオンなどのアルカリ金属カチオンを挙げることができる。この大きいカチオン120は、塩浴100に存在するアルカリ金属硝酸塩などの塩から解離した状態となっていると考えられる。この解離は、溶融塩101を生成するために塩浴100中の塩を高温に加熱した時に起こり得る。ガラス物品105を塩浴100に浸漬すると、ガラス物品105内のカチオン130は、ガラス物品105から溶融塩101内に拡散し得る。ここで図1Bを参照すると、かかる拡散の後に、溶融塩101のカチオン120が、ガラス物品105中のカチオン130に置き換わり得る。このように、ガラス物品105中の小さいカチオンを大きいカチオンと置換することにより、ガラス物品105の表面において、圧縮深さ(depth of compression:DOC)まで延在する表面圧縮応力(surface compressive stress:表面CS)が作られ、これにより、ガラス物品105の機械的強度を高め、ガラス物品105の破損耐性を向上させることができる。
【0038】
一般に、イオン交換プロセスの効率を高めるため、浸漬は、複数のガラス物品を1つの塩浴にまとめて浸漬するバッチ式で行われ得る。しかし、同じ塩浴で強化ガラス物品のバッチ式製造を続けると、イオン交換プロセスにより、当然、溶融塩中の小さいカチオンの濃度が上昇し、大きいカチオンの濃度が低下する。そして、溶融塩中の小さいカチオンの濃度が上昇すると、温度と浸漬時間を一定とした場合の塩浴の効能が低下する恐れがある。かかる効能低下が続けば、最終的には、ガラス物品に生成される圧縮応力及び圧縮深さが所定の閾値を下回ってしまうこともあり得る。例えば、塩浴を利用してガラス物品中に存在するナトリウムカチオンを溶融塩中のカリウムカチオンと交換する場合、溶融塩浴中のナトリウムカチオンの濃度が1.5質量%以上(すなわち、硝酸ナトリウムの濃度が約5質量%以上)になると、塩浴の効能が失われたと見なすことができる。塩浴の効能が失われれば、塩浴は処分され得る。そのため、処分される材料に95質量%もの有用なアルカリ金属塩が含まれているということが起こり得る。したがって、廃イオン交換材料をリサイクルして再利用することができれば、大幅なコストダウンが図れる可能性がある。
【0039】
廃イオン交換材料をリサイクルする1つの手法として、分別再結晶法が考えられる。一般に、分別再結晶法とは、物質の溶解度の差を利用して2つの物質を分離する方法である。分別再結晶プロセスでは、第1の塩と第2の塩とからなる廃イオン交換材料を、水などの溶媒に高温で溶解し、飽和溶液又はほぼ飽和した溶液をつくる。次に、この溶液を冷却する。第1の塩と第2の塩とが逆方向の溶解度を有しているため、これにより、一方の塩のみが析出する。例えば、硝酸カリウムは硝酸ナトリウムに比べて、比較的温かい温度の水への溶解度が高く、硝酸ナトリウムは硝酸カリウムに比べて、比較的冷たい温度の水への溶解度が高い。したがって、これらの2つの塩を含む溶液を冷却すると、冷却後の温度で飽和するほど硝酸ナトリウムの濃度が高くない限り、硝酸カリウムのみが析出することになる。
【0040】
しかし、分別再結晶法は、廃イオン交換材料のリサイクルを可能にするものではあるが、その一方で、多くの欠点も有している。例えば、分別再結晶法は2つの物質の溶解度の差を利用することに頼るものであるため、分別再結晶法が奏功するためには、両物質の溶解度に差があること、特に、両物質の溶解度が逆方向の関係を有していることが必要とされる。さらに、分別再結晶の効果は、飽和溶液の加熱温度と冷却後の析出温度との差が大きいほど高くなると考えられる。しかし、このように溶液を強く加熱・冷却するためには、大量のエネルギーが必要となる上、分離により得られる塩の粒径の制御も比較的難しい。
【0041】
廃イオン交換材料をリサイクルする2つ目の手法として、分別溶融法も考えられる。一般に、分別溶融法とは、物質の融点の差を利用して2つの物質を分離する方法である。分別溶融プロセスでは、第1の塩と第2の塩とからなる廃イオン交換材料を、第1の塩の融点超且つ第2の塩の融点未満の温度まで加熱する。例えば、分別溶融プロセスでは、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムを、308℃(すなわち硝酸ナトリウムの融点)と334℃(すなわち硝酸カリウムの融点)の間の温度まで加熱した後、液化した硝酸ナトリウムを固体の硝酸カリウムから分離することによって、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを分離することができる。しかし、分別溶融法は、廃イオン交換材料のリサイクルを可能にするものではあるが、その一方で、分別溶融法で適切に分離を行うためには、通常、大量のエネルギーを消費する加熱サイクルが必要となる。
【0042】
廃イオン交換材料をリサイクルする3つ目の手法として、イオン交換分離法も考えられる。一般に、イオン交換分離法とは、イオン交換プロセスにより2つの物質を分離する方法である。イオン交換分離法では、第1の塩と第2の塩とからなる廃イオン交換材料を、水などの溶媒に溶かして溶液をつくる。この溶液を、一方の塩のカチオンを他方の塩のカチオンに交換するイオン交換媒体に曝露し、さらに冷却して、所望の塩を析出させる。例えば、イオン交換分離法では、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとを含む溶液をイオン交換媒体に曝露し、溶液中のナトリウムイオンをイオン交換媒体中のカリウムイオンと交換することによって、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを分離することができる。そして次に、イオン交換処理を経た溶液を冷却して、硝酸カリウムを析出させることができる。しかし、イオン交換分離法は、廃イオン交換材料のリサイクルを可能にするものではあるが、その一方で、イオン交換分離法は未だ実施成功例がない方法である上、廃イオン交換材料を溶解させるために、大量のエネルギーを消費する加熱工程が必要となる。
【0043】
廃イオン交換材料をリサイクルする4つ目の手法として、共通イオン(co-ion)効果を利用する方法も考えられる。共通イオン効果法は、上述の方法のうちの1つ以上と組み合わせることで使用することができるものである。かかるプロセスでは、第1の塩と第2の塩を含む溶液に、共通イオンを添加して、一方の塩のカチオンで過飽和させ、これにより、析出される固体において、他方の塩のカチオンが共通イオンで置換された状態となるようにする。例えば、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを含む溶液に、炭酸カリウム(すなわち、KCO)を添加することができる。これにより、溶液はカリウムカチオンで過飽和した状態となり、溶液の冷却により析出する硝酸塩がすべて硝酸カリウムとなる。しかし、共通イオン効果法は、廃イオン交換材料のリサイクルを可能にするものではあるが、その一方で、上述したように、共通イオン効果法は、分別再結晶法などの少なくとも1つの他のプロセスと組み合わせて使用する必要がある方法である上、析出により得られる塩が炭酸カリウムの炭酸イオンなどの共通イオンの対アニオンで汚染される恐れがある。
【0044】
本開示は、上述の方法の欠点の1つ以上に対処する、廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステム及び方法に係るものである。特に、本開示のシステム及び方法は、「低温除去(cold extraction)」プロセスを利用して廃イオン交換材料のリサイクルを行うものである。かかる低温除去プロセスは、一般に、室温未満(すなわち、20℃未満)の温度で、所望の塩で飽和した溶液に、固体の廃イオン交換材料を接触させることにより、廃イオン交換材料を再生する工程を含む。このプロセスは、1回以上のイオン交換プロセスで再利用することが可能な、適切な純度のリサイクルイオン交換粒子を生成する能力を有するものである。さらに、このプロセスでは、廃イオン交換材料を高温で溶解する必要がない上、リサイクルイオン交換粒子の粒径の高度な制御を可能にするものである。
【0045】
ここで図2を参照すると、廃イオン交換材料202をリサイクルするためのシステム200が模式的に示されている。システム200は、粉砕ユニット210と、粉砕ユニット210の下流側にある再生ユニット220と、再生ユニット220の下流側にある分離ユニット230と、分離ユニット230の下流側にある乾燥ユニット240と、を備えることができる。
【0046】
廃イオン交換材料202は、主に、1つ以上のガラス(又はガラスセラミック)物品とのイオン交換プロセスを行うために有効利用した結果、効能が失われたと見なされるに至った溶融塩の含有成分を冷却及び/又は固化したものを含むことができる。本開示において、「溶融塩(molten salt)」という用語は、「イオン交換浴(ion exchange bath)」又は「塩浴(salt bath)」と称する場合があるものであり、1つ以上のガラス(又は、ガラスセラミック)物品とのイオン交換プロセスにより、当該ガラス物品の表面内にあるカチオンを溶融塩中に存在するカチオンに置換(交換)するために有効利用される溶液又は媒体を指す。未使用の溶融塩(すなわち、まだいかなるイオン交換プロセスにおいても有効利用されていない溶融塩)は、硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、及び/又は硝酸リチウム(LiNO)などの1つ以上のアルカリ金属塩を含み得る。上述したように、イオン交換プロセスの結果、溶融塩中に1つ以上の追加のアルカリ金属塩が形成されるとともに、未使用の溶融塩中に存在していた1つ以上のアルカリ金属塩の濃度が低下すると考えられる。溶融塩は、未使用の溶融塩に存在していた1つ以上のアルカリ金属塩の濃度が、溶融塩に対して95質量%以下となった場合に、効能が失われたと見なすことができる。例えば、未使用の溶融塩が硝酸カリウムを100質量%含む場合、硝酸カリウムの濃度が95質量%以下になると、効能が失われたと見なされることになる。同様に、未使用の溶融塩が硝酸カリウムと硝酸リチウムを100質量%含む場合、硝酸カリウムと硝酸リチウムの濃度の合計が95質量%以下になると、効能が失われたと見なされることになる。
【0047】
複数の実施形態において、廃イオン交換材料202は、廃イオン交換材料202の総質量に基づいた質量%で95質量%以下の、硝酸カリウムなどの第1のアルカリ金属塩を含むことができる。例えば、廃イオン交換材料202は、第1のアルカリ金属塩を、廃イオン交換材料202の総質量に基づいた質量%で、5質量%~95質量%、5質量%~85質量%、5質量%~75質量%、5質量%~65質量%、5質量%~55質量%、5質量%~45質量%、5質量%~35質量%、5質量%~25質量%、5質量%~15質量%、15質量%~95質量%、15質量%~85質量%、15質量%~75質量%、15質量%~65質量%、15質量%~55質量%、15質量%~45質量%、15質量%~35質量%、15質量%~25質量%、25質量%~95質量%、25質量%~85質量%、25質量%~75質量%、25質量%~65質量%、25質量%~55質量%、25質量%~45質量%、25質量%~35質量%、35質量%~95質量%、35質量%~85質量%、35質量%~75質量%、35質量%~65質量%、35質量%~55質量%、35質量%~45質量%、45質量%~95質量%、45質量%~85質量%、45質量%~75質量%、45質量%~65質量%、45質量%~55質量%、55質量%~95質量%、55質量%~85質量%、55質量%~75質量%、55質量%~65質量%、65質量%~95質量%、65質量%~85質量%、65質量%~75質量%、75質量%~95質量%、75質量%~85質量%、又は85質量%~95質量%含むことができる。
【0048】
廃イオン交換材料202は、第2のアルカリ金属塩をさらに含むことができる。第2のアルカリ金属塩は、溶融塩中でイオン交換を行ったガラス物品から拡散したアルカリ金属カチオンに概ね対応するものである。例えば、溶融塩を使用して、ガラス物品のナトリウムカチオンを拡散させた場合であれば、第2のアルカリ金属塩は、硝酸ナトリウムを含むことができる。廃イオン交換材料202は、廃イオン交換材料202の総質量に基づいた質量%で4質量%以上の、硝酸ナトリウムなどの第2のアルカリ金属塩をさらに含むことができる。例えば、廃イオン交換材料202は、さらに第2のアルカリ金属塩を、廃イオン交換材料202の総質量に基づいた質量%で、4質量%~95質量%、4質量%~85質量%、4質量%~75質量%、4質量%~65質量%、4質量%~55質量%、4質量%~45質量%、4質量%~35質量%、4質量%~25質量%、4質量%~15質量%、15質量%~95質量%、15質量%~85質量%、15質量%~75質量%、15質量%~65質量%、15質量%~55質量%、15質量%~45質量%、15質量%~35質量%、15質量%~25質量%、25質量%~95質量%、25質量%~85質量%、25質量%~75質量%、25質量%~65質量%、25質量%~55質量%、25質量%~45質量%、25質量%~35質量%、35質量%~95質量%、35質量%~85質量%、35質量%~75質量%、35質量%~65質量%、35質量%~55質量%、35質量%~45質量%、45質量%~95質量%、45質量%~85質量%、45質量%~75質量%、45質量%~65質量%、45質量%~55質量%、55質量%~95質量%、55質量%~85質量%、55質量%~75質量%、55質量%~65質量%、65質量%~95質量%、65質量%~85質量%、65質量%~75質量%、75質量%~95質量%、75質量%~85質量%、又は85質量%~95質量%含むことができる。
【0049】
廃イオン交換材料202は、粉砕ユニット210に直接取り込むことができる。粉砕ユニット210は、廃イオン交換材料202を粉砕して廃イオン交換粒子212を生成するように動作可能とすることができる。本開示において、粒子は、真球形状、不規則球状(すなわち、非真球形状)、薄片状、針状、円柱状、正方形状、他のカットされたプリズム形状、又はそれらの組み合わせであり得る。(Warren L. McCabe et al著、「Unit Operations in Chemical Engineering(化学工学における単位操作)」749-758(第4版,1985年)に記載されるように)粒子は、相当径、又は公称径、又は「粒径(particle size)」と呼ばれる特性寸法によって特徴付けられ得る。この特性寸法は、粒子の形状(真球度)に依存し得るものである。本明細書において、粒子の真球度は、1つの粒子の体積を当該粒子の相当径又は公称径と当該粒子の表面積との積で割った値の6倍と定義することができる。例えば、真球の特性寸法は直径であり、真球度は1となる。真球に近い規則的な形状の場合、特性寸法は、この規則的な形状と同じ体積を有する真球の直径となる。例えば、直径より長さが長い円柱や薄片などの、或る寸法が他の寸法に比べて大幅に長い形状の場合、一般に、特性寸法は2番目に大きい寸法とされる。薄片の場合は、薄片の厚さ平均値又は厚さ中央値が特性寸法となり、円柱の場合は円柱の直径が特性寸法となる。粒径及び粒径分布は、光学測定法、ふるい分け法、空気分級法、光遮蔽法、光散乱法などの当技術分野において公知の方法を用いて直接測定することができる。粉砕ユニット210は、廃イオン交換材料202を、イオン交換プロセス用の溶融塩を生成する原材料として使用するのに十分な粒径まで粉砕するように動作可能とすることができる。粉砕ユニット210は、廃イオン交換材料202を、0.10mm~5.0mmの粒径まで粉砕するように動作可能とすることができる。
【0050】
粉砕ユニット210は、廃イオン交換材料202を粉砕して廃イオン交換粒子212を生成するように動作可能な任意のユニットを備えることができる。例えば、粉砕ユニット210は、廃イオン交換材料202を破砕(crush)、切断(cut)、又は微粉化(pulverize)して、イオン交換プロセス用の溶融塩を生成する原材料として使用するのに十分な粒径を有する小粒子とするように動作可能な1つ以上のユニットを備えることができる。粉砕ユニット210として使用するのに適したユニットとしては、ジョークラッシャ、ジャイレトリクラッシャ、バーミル、インパクタ、ローラミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどの当技術分野において公知の装置、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0051】
廃イオン交換粒子212は、粉砕ユニット210から再生ユニット220に直接移動することができる。再生ユニット220は、廃イオン交換粒子212を再生して、再生イオン交換スラリー222を生成するように動作可能とすることができる。再生ユニット220は、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させて再生イオン交換スラリー222を生成することにより、廃イオン交換粒子212を再生するように動作可能とすることができる。複数の実施形態において、水溶液は、フィード水溶液214、リサイクル水溶液234、又はその両方を含むことができる。例えば、システム200の初期起動時には、水溶液は、フィード水溶液214のみを含み得る。しかし、システム200の定常運転時には、水溶液は、リサイクル水溶液234のみを含み得る。ただし、水溶液の飽和状態を維持するために、必要に応じて、システム200の定常運転中にもフィード水溶液214を投入することができる。複数の実施形態において、フィード水溶液214は、イオン交換プロセス後のガラス物品の洗浄に使用した使用済リンス洗浄水などの1つ以上の原料を含み得る。使用済リンス洗浄水を使用することにより、イオン交換プロセスにより発生する廃棄物の増加を抑制し、結果としてイオン交換プロセスの効率を向上させることができる。
【0052】
特定の理論に束縛されるものではないが、廃イオン交換粒子212が第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触することにより、廃イオン交換粒子212の第2のアルカリ金属塩のカチオンとの交換を促進させることができると考えられる。分別再結晶プロセス時などの場合のように、廃イオン交換粒子212を水溶液に溶解させてはいないが、廃イオン交換粒子212の一部が、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触すると急速に再構築されて、これにより、廃イオン交換粒子212の結晶構造からの第2のアルカリ金属塩のカチオンの放出を可能にしていると考えられることを理解されたい。
【0053】
複数の実施形態において、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させることにより、廃イオン交換粒子212中の第1のアルカリ金属塩の濃度を適切な範囲(すなわち、95質量%超)まで上昇させて、再生イオン交換スラリー222を生成することができる。すなわち、再生ユニット220は、廃イオン交換粒子212中の第1のアルカリ金属塩の濃度を、廃イオン交換粒子212の総質量に基づいた質量%で95質量%超とするように動作可能とすることができる。
【0054】
複数の実施形態において、再生ユニット220は、再生イオン交換スラリー222を生成するのに十分な時間にわたり、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させるように動作可能とすることができる。したがって、再生ユニット220は、0.5時間~24時間の時間にわたり、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させるように動作可能とすることができる。接触時間は、廃イオン交換粒子212及び第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液が再生ユニット220に入る流量と、再生イオン交換スラリー222が再生ユニット220から出る流量とを共に調節することによって制御することができる。
【0055】
複数の実施形態において、再生ユニット220は、室温未満(すなわち、20℃未満)の温度で、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させるように動作可能とすることができる。なお、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液と廃イオン交換粒子212との混合物の冷却は、エチレングリコールと水の混液などの適切な冷媒を、再生ユニット220の外面に取り付けたジャケット内又は再生ユニット220の内部に存在するコイル内に循環させることにより行うことができる。さらに、上述の混合物は、再生ユニット220から取り出して、外部の熱交換器を通過するように循環させて、再生ユニット220に戻すこともできる。廃イオン交換粒子212を処理した後、第1のアルカリ金属塩で飽和した溶液は、廃イオン交換粒子212から分離して、熱交換器を通過させて室温未満の温度に冷却してから再生ユニット220に戻すことができる。特定の理論に束縛されるものではないが、室温未満の温度で廃イオン交換粒子212を再生することにより、システム200が電源喪失などによって動作不能となった場合に、システム200が「完全フリーズ(freeze up)」状態に陥る可能性を防ぐことができると考えられている。すなわち、システム200が動作不能になったとしても、フィード水溶液214などのシステム200の材料の加温が起こるに過ぎない。その結果として、各種塩の溶解度の上昇が起こるのであって、塩の析出やシステム200の1つ以上の構成要素への塩の望ましくない堆積が生じる恐れがある溶解度の低下は起こらない。一方、室温を上回る温度で行うプロセスの場合には、動作不能時に各種塩の溶解度の低下が起こり、システム内で塩の析出が生じる恐れがある。
【0056】
再生ユニット220は、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させて再生イオン交換スラリー222を生成するように動作可能な、当技術分野において公知の任意のユニットを備えることができる。例えば、粉砕ユニット210は、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を撹拌及び/又は混合するように動作可能な、インペラ搭載槽などの1つ以上の撹拌槽を備えることができる。
【0057】
再生イオン交換スラリー222は、再生ユニット220から分離ユニット230に直接移動することができる。分離ユニット230は、再生イオン交換スラリー222を分解して、再生イオン交換材料232及びリサイクル水溶液234を生成するように動作可能とすることができる。分離ユニット230は、リサイクル水溶液234から再生イオン交換材料232を分離するように動作可能な、当技術分野において公知の任意のユニットを備えることができる。例えば、分離ユニット230は、液体のリサイクル水溶液234から固体粒子の再生イオン交換材料232を分離するように動作可能な1つ以上の固体/流体分離器を備えることができる。かかる固体/流体分離器としては、例えば、沈殿槽、遠心分離器、濾過デバイス、膜、又はこれらの組み合わせが挙げられる。リサイクル水溶液234の少なくとも一部は、リサイクル水溶液234単独で又はフィード水溶液214と混合して、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液として使用するために、再生ユニット220に移動及び/又はリサイクル処理することができる。複数の実施形態において、リサイクル水溶液234の一部は、パージ液236としてシステム200から除去及び/又は滲出させることができる。システム200から除去及び/又は滲出させるリサイクル水溶液234の量は、リサイクル水溶液234の塩含有量に従って、第1のアルカリ金属塩の飽和を維持するように決定することができる。
【0058】
再生イオン交換材料232は、分離ユニット230から乾燥ユニット240に直接移動することができる。乾燥ユニット240は、再生イオン交換材料232を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料242を生成するように動作可能とすることができる。複数の実施形態において、乾燥ユニット240は、再生イオン交換材料232を乾燥させて、再生イオン交換材料232中の水のすべて又は大部分を除去し、実質的に水を含まないリサイクルイオン交換材料242を生成するように動作可能とすることができる。なお、本開示において、或る化合物を「実質的に含まない(substantially free)」という表現は、リサイクルイオン交換材料242などの特定の材料に含まれる当該化合物の量が1質量%未満であることを指している。
【0059】
乾燥ユニット240は、再生イオン交換材料232を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料242を生成するように動作可能な任意のユニットを備えることができる。例えば、乾燥ユニット240は、再生イオン交換材料232が実質的に水を含まない状態となるまで再生イオン交換材料232を加熱して、リサイクルイオン交換材料242を生成するように動作可能な1つ以上の炉を備えることができる。乾燥ユニット240として使用するのに適したユニットとしては、ベルト乾燥機、箱型棚式乾燥機、流動床乾燥機などの当技術分野において公知の適切なユニット、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0060】
図2をさらに参照して、本開示のシステム200を使用する廃イオン交換材料のリサイクル方法を実施することができる。
【0061】
本方法は、廃イオン交換材料202を粉砕して、廃イオン交換粒子212を生成するステップを含むことができる。上述したように、システム200の粉砕ユニット210で廃イオン交換材料202を粉砕して、廃イオン交換粒子212を生成することができる。廃イオン交換粒子212は、イオン交換プロセス用の溶融塩を生成する原材料として使用するのに十分な粒径を有することができる。廃イオン交換粒子212の平均粒径は、0.25mm~1.0mmとすることができる。つまり、廃イオン交換粒子212の50質量%超(すなわち、廃イオン交換粒子212の60質量%超、70質量%超、80質量%超、又は90質量%超)の平均粒径を、0.25mm~1.0mmとすることができる。例えば、廃イオン交換粒子212の平均粒径は、0.25mm~0.95mm、0.25mm~0.85mm、0.25mm~0.75mm、0.25mm~0.65mm、0.25mm~0.55mm、0.25mm~0.45mm、0.25mm~0.35mm、0.35mm~1.0mm、0.35mm~0.95mm、0.35mm~0.85mm、0.35mm~0.75mm、0.35mm~0.65mm、0.35mm~0.55mm、0.35mm~0.45mm、0.45mm~1.0mm、0.45mm~0.95mm、0.45mm~0.85mm、0.45mm~0.75mm、0.45mm~0.65mm、0.45mm~0.55mm、0.55mm~1.0mm、0.55mm~0.95mm、0.55mm~0.85mm、0.55mm~0.75mm、0.55mm~0.65mm、0.65mm~1.0mm、0.65mm~0.95mm、0.65mm~0.85mm、0.65mm~0.75mm、0.75mm~1.0mm、0.75mm~0.95mm、0.75mm~0.85mm、0.85mm~1.0mm、0.85mm~0.95mm、又は0.95mm~1.0mmとすることができる。
【0062】
本方法は、廃イオン交換粒子212を再生して、再生イオン交換スラリー222を生成するステップをさらに含むことができる。上述したように、システム200の再生ユニット220で廃イオン交換粒子212を再生して、再生イオン交換スラリー222を生成することができる。例えば、第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を混合して再生イオン交換スラリー222を生成することができる。第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に廃イオン交換粒子212を接触させることにより、廃イオン交換粒子212中の第1のアルカリ金属塩の濃度を適切な範囲(すなわち、95質量%超)まで上昇させて、再生イオン交換スラリー222を生成することができる。
【0063】
廃イオン交換粒子212の再生は、廃イオン交換粒子212中の第1のアルカリ金属塩の濃度を適切な範囲(すなわち、95質量%超)まで上昇させて、再生イオン交換スラリー222を生成するのに十分な時間にわたり行うことができる。複数の実施形態において、廃イオン交換粒子212の再生は、1.0時間~2.0時間の時間にわたり行うことができる。例えば、廃イオン交換粒子212の再生は、1.0時間~1.75時間、1.0時間~1.5時間、1.0時間~1.25時間、1.25時間~2.0時間、1.25時間~1.75時間、1.25時間~1.5時間、1.5時間~2.0時間、1.5時間~1.75時間、又は1.75時間~2.0時間の時間にわたり行うことができる。
【0064】
また、廃イオン交換粒子212の再生は、室温(すなわち、20℃)未満の温度で行うことができる。例えば、廃イオン交換粒子212の再生は、18℃未満、16℃未満、14℃未満、12℃未満、10℃未満、8℃未満、6℃未満、4℃未満、2℃未満、又は0℃未満の温度で行うことができる。上述したように、室温未満の温度で廃イオン交換粒子212を再生することにより、システム200が電源喪失などによって動作不能となった場合に、システム200が「完全フリーズ(freeze up)」状態に陥る可能性を防ぐことができると考えられている。
【0065】
本方法は、再生イオン交換スラリー222を分解して、再生イオン交換材料232及びリサイクル水溶液234を生成するステップをさらに含むことができる。上述したように、システム200の分離ユニット230で再生イオン交換スラリー222を分解して、再生イオン交換材料232及びリサイクル水溶液234を生成することができる。本方法は、再生イオン交換材料232を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料242を生成するステップをさらに含むことができる。上述したように、システム200の乾燥ユニット240で再生イオン交換材料232を乾燥して、リサイクルイオン交換材料242を生成することができる。乾燥後のリサイクルイオン交換材料242は、再生イオン交換スラリー222を分解してもなお残る残留水などの水を実質的に含まない状態とすることができる。なお、本開示において、或る化合物を「実質的に含まない」という表現は、リサイクルイオン交換材料242などの特定の材料に含まれる当該化合物の量が1質量%未満であることを指している。例えば、実質的に水を含まない状態とすることができるリサイクルイオン交換材料242が含む水の量は、リサイクルイオン交換材料242の総質量に基づいた質量%で、1質量%未満、0.9質量%未満、0.8質量%未満、0.7質量%未満、0.6質量%未満、0.5質量%未満、0.4質量%未満、0.3質量%未満、0.2質量%未満、又は0.1質量%未満とすることができる。
【0066】
上述したように、廃イオン交換粒子212の再生により、廃イオン交換粒子212中の第1のアルカリ金属塩の濃度を、イオン交換プロセスで使用するのに適した量(すなわち、95質量%超の量)まで上昇させることができる。したがって、リサイクルイオン交換材料242の第1のアルカリ金属の濃度は、廃イオン交換材料202の第1のアルカリ金属の濃度よりも高い状態となり得る。複数の実施形態において、リサイクルイオン交換材料242の第1のアルカリ金属の濃度は、リサイクルイオン交換材料242の総質量に基づいた質量%で、95質量%超とすることができる。例えば、リサイクルイオン交換材料242の第1のアルカリ金属の濃度は、リサイクルイオン交換材料242の総質量に基づいた質量%で、95質量%~100質量%、95質量%~99.9質量%、95質量%~99.5質量%、95質量%~99質量%、95質量%~98質量%、95質量%~97質量%、95質量%~96質量%、96質量%~100質量%、96質量%~99.9質量%、96質量%~99.5質量%、96質量%~99質量%、96質量%~98質量%、96質量%~97質量%、97質量%~100質量%、97質量%~99.9質量%、97質量%~99.5質量%、97質量%~99質量%、97質量%~98質量%、98質量%~100質量%、98質量%~99.9質量%、98質量%~99.5質量%、98質量%~99質量%、99質量%~100質量%、99質量%~99.9質量%、99質量%~99.5質量%、99.5質量%~100質量%、99.5質量%~99.9質量%、又は99.9質量%~100質量%とすることができる。
【0067】
上述したように、この廃イオン交換粒子212の再生処理は、廃イオン交換粒子212を溶解させる工程を含まないが、廃イオン交換粒子212を急速に再構築することにより、廃イオン交換粒子212からの望ましくないアルカリ金属カチオンの除去を促進するものであると考えられる。よって、廃イオン交換粒子212の再生処理が、得られる再生イオン交換材料232の粒径に影響を与えることは実質的にないと考えられる。つまり、再生イオン交換材料232は、廃イオン交換粒子212の粒径と同一又は実質的に同様の粒径を有することができる。したがって、リサイクルイオン交換材料242の粒径は、0.10mm~5.0mmとすることができる。例えば、リサイクルイオン交換材料242の粒径は、0.10mm~4.3mm、0.10mm~3.6mm、0.10mm~2.9mm、0.10mm~2.2mm、0.10mm~1.5mm、0.10mm~0.80mm、0.80mm~5.0mm、0.80mm~4.3mm、0.80mm~3.6mm、0.80mm~2.9mm、0.80mm~2.2mm、0.80mm~1.5mm、1.5mm~5.0mm、1.5mm~4.3mm、1.5mm~3.6mm、1.5mm~2.9mm、1.5mm~2.2mm、2.2mm~5.0mm、2.2mm~4.3mm、2.2mm~3.6mm、2.2mm~2.9mm、2.9mm~5.0mm、2.9mm~4.3mm、2.9mm~3.6mm、3.6mm~5.0mm、3.6mm~4.3mm、又は4.3mm~5.0mmとすることができる。
【0068】
リサイクルイオン交換材料242は、ガラス物品のイオン交換プロセスで使用するのに適した状態となっていると考えられる。つまり、リサイクルイオン交換材料242は、溶融することによりガラス物品のイオンと溶融塩浴のイオンとのイオン交換を行うのに適した溶融塩浴を形成することができる状態となった、完全リサイクル廃イオン交換材料となっていると考えられる。なお、上記では、方法に対する説明を、第1のアルカリ金属塩と第2のアルカリ金属塩とを含む廃イオン交換材料からの第2のアルカリ金属塩の除去に関連して行った。しかし、当然ながら、本方法は、3つ以上のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料にも適用することができる。例えば、第1のアルカリ金属塩、第2のアルカリ金属塩、及び第3のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料を、上述と同様に、第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩の両方で飽和した水溶液に接触させることにより、廃イオン交換材料から第3のアルカリ金属塩を除去することができる。
【実施例
【0069】
以下の実施例は、本開示の1つ以上の特徴を説明するものである。以下の実施例が、本開示又は添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0070】
実施例1
実施例1では、様々な濃度の硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムを有する試料を用いて、本開示の方法を再現した。まず、1グラムに近い質量の硝酸ナトリウムと硝酸カリウム19グラムを混合して複数の試料を調製した。次に、この混合塩を380℃の温度で1時間かけて溶融させた。次に、この溶融混合塩を室温まで冷却し、粒子状に破砕した。この粒子をふるいにかけ、粒径1.0mm超の粒子群、粒径0.5mm~1.0mmの粒子群、粒径0.25mm~0.5mmの粒子群、粒径0.25mm未満の粒子群という合計4つの群に分けた。各群から約0.5グラムずつ採集して、その塩濃度を調べた。またこれとは別に、各群から2.0グラムずつ採集したものを、硝酸カリウム50グラムと水100ミリリットルを混合して調製した硝酸カリウムの過飽和溶液4ミリリットルに混合した。混合後、スラリーを10回転倒させ、その後10分間保持した。この転倒後に保持を行う処理は3回繰り返した。次に、スラリーを真空濾過で分離し、固体成分を50℃のオーブンで一晩乾燥させた。次に、乾燥させた固体の塩濃度を炎イオン化分光法で測定した。実施例1の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例2
実施例2では、実施例1に記載したやり方と同様にして粒子群を調製した。次に、各群(すなわち、粒径1.0mm超の粒子群、粒径0.5mm~1.0mmの粒子群、粒径0.25mm~0.5mmの粒子群、及び粒径0.25mm未満の粒子群)を分量に分けて、それぞれの分量を異なる時間(すなわち、0.5時間、2.0時間、及び24時間)にわたり、硝酸カリウムの過飽和溶液に接触させた。所定時間にわたり過飽和溶液と接触させた後、得られたスラリーを真空濾過で分離し、固体成分を50℃のオーブンで一晩乾燥させた。次に、乾燥させた固体の塩濃度を炎イオン化分光法で測定した。実施例2の結果を、図3のグラフに示す。
【0073】
図3に示すように、すべての試料群で、過飽和溶液にわずか0.5時間接触させただけで、硝酸ナトリウム濃度の十分な低下が見られた。さらに、すべての試料群で、接触時間を長くすると硝酸ナトリウム濃度がさらに低下したが、2.0時間接触後の硝酸ナトリウム濃度と24時間接触後の硝酸ナトリウム濃度の差がわずか約0.2質量%に止まるなど、接触時間が2.0時間を超えると硝酸ナトリウム減少効果の逓減が認められた。さらに、図3によれば、比較的大きい粒径の試料(すなわち、粒径1.0mm超の粒子)では、硝酸ナトリウムの減少効果が小さかったが、他の試料では、硝酸ナトリウムの減少効果と試料の粒径との相関は見られなかった。
【0074】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に記載の実施形態に種々の変形及び変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態の変形及び変更が添付の特許請求の範囲及びその均等物を逸脱しない場合に、そのような変形及び変更も本明細書の範囲に含むことが意図されている。
【0075】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0076】
実施形態1
第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするための方法であって、
前記廃イオン交換材料を粉砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するステップと、
前記複数の廃イオン交換粒子を再生して、前記廃イオン交換材料の前記第1のアルカリ金属塩の濃度よりも高い前記第1のアルカリ金属塩の濃度を有する複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、
を含む方法。
【0077】
実施形態2
前記廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%以下の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、実施形態1に記載の方法。
【0078】
実施形態3
前記廃イオン交換材料が、該廃イオン交換材料の総質量に基づいた質量%で4質量%以上の前記第2のアルカリ金属塩を含んでいる、実施形態1に記載の方法。
【0079】
実施形態4
前記廃イオン交換材料を粉砕するステップが、前記廃イオン交換材料を破砕するように動作可能な粉砕ユニットに前記廃イオン交換材料を取り込むステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0080】
実施形態5
前記複数の廃イオン交換粒子を再生するステップが、
前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液と接触させて再生イオン交換スラリーを形成するステップと、
前記再生イオン交換スラリーを分解して、リサイクル水溶液及び前記複数の再生イオン交換粒子を生成するステップと、を含む、実施形態1に記載の方法。
【0081】
実施形態6
前記複数の廃イオン交換粒子が、0.5時間~24時間の時間にわたり、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に接触する、実施形態5に記載の方法。
【0082】
実施形態7
前記複数の廃イオン交換粒子が、20℃未満の温度で、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に接触する、実施形態5に記載の方法。
【0083】
実施形態8
前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液と接触させるステップが、前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に接触させるように動作可能な再生ユニットに、前記複数の廃イオン交換粒子を移動するステップを含む、実施形態5に記載の方法。
【0084】
実施形態9
前記再生イオン交換スラリーを分解するステップが、液体の前記リサイクル水溶液から固体粒子の前記再生イオン交換粒子を分離するように動作可能な分離ユニットに前記再生イオン交換スラリーを移動するステップを含む、実施形態5に記載の方法。
【0085】
実施形態10
前記複数の再生イオン交換粒子を乾燥させて、リサイクルイオン交換材料を生成するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0086】
実施形態11
前記リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で、1質量%未満の水を含んでいる、実施形態10に記載の方法。
【0087】
実施形態12
前記リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、実施形態10に記載の方法。
【0088】
実施形態13
前記リサイクルイオン交換材料が、0.10mm~5.0mmの粒径を有している、実施形態10に記載の方法。
【0089】
実施形態14
前記複数の再生イオン交換粒子を乾燥させるステップが、前記複数の再生イオン交換粒子を加熱するように動作可能な乾燥ユニットに前記複数の再生イオン交換粒子を移動するステップを含む、実施形態10に記載の方法。
【0090】
実施形態15
前記リサイクルイオン交換材料をイオン交換温度まで加熱して、溶融塩を形成するステップと、
前記溶融塩の中にガラス物品を浸漬させて、前記溶融塩と前記ガラス物品とのイオン交換を行うステップと、をさらに含む、実施形態10に記載の方法。
【0091】
実施形態16
第1のアルカリ金属塩及び第2のアルカリ金属塩を含む廃イオン交換材料をリサイクルするためのシステムであって、
前記廃イオン交換材料を破砕して、0.10mm~5.0mmの粒径を有する複数の廃イオン交換粒子を生成するように動作可能な粉砕ユニットと、
前記粉砕ユニットの下流側にある再生ユニットであって、前記複数の廃イオン交換粒子を前記第1のアルカリ金属塩で飽和した水溶液に接触させて、該接触により前記第2のアルカリ金属塩の少なくとも一部を前記廃イオン交換粒子から拡散させて、再生イオン交換スラリーを生成するように動作可能な再生ユニットと、
前記再生ユニットの下流側にある分離ユニットであって、前記再生イオン交換スラリーを分解して、複数の再生イオン交換粒子及びリサイクル水溶液を生成するように動作可能な分離ユニットと、
を備えるシステム。
【0092】
実施形態17
前記再生ユニットが、1.0時間~2.0時間の時間にわたり、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に、前記複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、実施形態16に記載のシステム。
【0093】
実施形態18
前記再生ユニットが、20℃未満の温度で、前記第1のアルカリ金属塩で飽和した前記水溶液に、前記複数の廃イオン交換粒子を接触させるように動作可能である、実施形態16に記載のシステム。
【0094】
実施形態19
前記分離ユニットの下流側にある乾燥ユニットであって、前記再生イオン交換粒子を加熱して、リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で1質量%未満の水を含むリサイクルイオン交換材料を生成するように動作可能な乾燥ユニットをさらに備える、実施形態16に記載のシステム。
【0095】
実施形態20
前記リサイクルイオン交換材料が、該リサイクルイオン交換材料の総質量に基づいた質量%で95質量%超の前記第1のアルカリ金属塩を含んでいる、実施形態19に記載のシステム。
【符号の説明】
【0096】
100 塩浴
101 溶融塩
105 ガラス物品
120 大きいカチオン
130 小さいカチオン
200 システム
202 廃イオン交換材料
210 粉砕ユニット
212 廃イオン交換粒子
214 フィード水溶液
220 再生ユニット
230 分離ユニット
232 再生イオン交換材料
234 リサイクル水溶液
236 パージ液
240 乾燥ユニット
242 リサイクルイオン交換材料
図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】