(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】安定なフルクトオリゴ糖組成物、フルクトオリゴ糖組成物の製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12P 19/18 20060101AFI20230922BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C12P19/18
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514440
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021075543
(87)【国際公開番号】W WO2022058460
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522482267
【氏名又は名称】べネオ-オラフティ ソシエテアノニム
【氏名又は名称原語表記】BENEO-ORAFTI SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーテンス,リンダ
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF04
4B064CA21
4B064CB30
4B064CC30
4B064CE10
4B064DA10
4B064DA11
(57)【要約】
本発明は、安定なフルクトオリゴ糖(FOS)組成物を製造するための方法であって、
a)スクロースを含有する原材料を提供する工程と、
b)原材料と酵素との水性混合物を形成し、それによって酵素がフルクトシルトランスフェラーゼ活性を少なくとも有する工程と、
c)形成された水性混合物を混合物中の非FOS炭水化物の量が混合物中の炭水化物の総量の最大で50重量%を占めるまでFOS形成が行われる条件に暴露する工程と、
d)酵素を任意選択的に失活させる工程と、
e)樹脂を使用して非FOS炭水化物を水性混合物からクロマトグラフにより分離して、水性混合物中の炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOSを含有するFOSが豊富なストリームと非FOS炭水化物が豊富なストリームとを生じ、それによってFOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む工程と、
f)水性混合物を蒸発させて少なくとも65°Bxのシロップ状FOS組成物を生じる工程とを含む方法において、
有機酸及びイオンの少なくとも一部又は本質的に全てが工程c)~f)のいずれか一つの間にin situ形成される方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定なフルクトオリゴ糖(FOS)組成物を製造するための方法であって、
a)スクロースを含有する原材料を提供する工程と、
b)前記原材料と酵素との水性混合物を形成し、それによって前記酵素がフルクトシルトランスフェラーゼ活性を少なくとも有する工程と、
c)前記形成された水性混合物をフルクトース、グルコース及びスクロースなど、前記混合物中の非FOS炭水化物の量が前記混合物中の炭水化物の総量の最大で50重量%を占めるまでFOS形成が行われる条件に暴露する工程と、
d)前記酵素を任意選択的に失活させる工程と、
e)樹脂を使用して前記非FOS炭水化物を前記水性混合物からクロマトグラフにより分離して、前記水性混合物中の炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOSを含有するFOSが豊富なストリームと非FOS炭水化物が豊富なストリームとを生じ、それによって前記FOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む工程と、
f)前記FOSが豊富なストリームを蒸発させて少なくとも65°Bxのシロップ状FOS組成物を生じる工程とを含む方法において、
前記有機酸及びイオンの少なくとも一部又は本質的に全てが工程c)~f)のいずれか一つの間にin situ形成される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記有機酸及びイオンが工程e)の間にin situ形成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、工程e)において前記FOSが豊富なストリームが6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む前記FOSが豊富なストリームを形成することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか一項に記載の方法において、非FOS炭水化物が豊富な前記ストリームの一部分が6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、その後に前記FOSが豊富なストリームと再結合されて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む前記FOSが豊富なストリームを形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか一項に記載の方法において、前記pHが10分~8時間の滞留時間の範囲内に保持されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記FOSが豊富なストリームの前記pH及び/又は前記シロップ状FOS組成物の前記pHが、工程e)又は工程f)の後に8.0未満、より好ましくは6.0~8.0の範囲内にされることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記FOSが豊富なストリーム内の前記有機酸及びイオンの量は少なくとも200mg/kg°Bx、より好ましくは少なくとも300mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも400mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも500mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも1000mg/kg°Bxを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記FOSが豊富なストリームが前記有機酸及びイオン1~10g/kg°Bx、より好ましくは1.2~8g/kg°Bx、及び最も好ましくは1.5~5g/kg°Bxを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法において、工程e)において前記樹脂がカチオン性樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法において、前記カチオン性樹脂が前記有機酸及びイオンの少なくとも一部を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法において、前記有機酸及びイオンの一部が工程e)の後、工程f)の間又は工程f)の後に前記水性混合物に添加されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、前記有機酸がピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法において、前記イオンがナトリウム及びカリウムの少なくとも1つを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法において、FOS形成が行われ得る前記条件が40℃~75℃の温度及び40°Bx~70°Bx、より好ましくは45~70°Bx、より好ましくは50~70°Bxにある固形分を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、温度が50℃~65℃にあり、且つ前記固形分が50°Bx~65°Bxにあることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において、前記FOSが豊富なストリームを活性炭で処理して、前記FOSが豊富なストリーム中の有機酸及びイオンの最小量100mg/kg°Bxに実質的に影響を与えずに前記水性混合物中に存在している着色成分の少なくとも一部を取り除く工程g)を工程e)の後且つ工程f)の前に更に含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOSを含み、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むことを特徴とする、フルクトオリゴ糖(FOS)組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のFOS組成物において、前記有機酸がピロリドンカルボン酸(PCA)、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つを含むことを特徴とするFOS組成物。
【請求項19】
請求項17又は18のいずれか一項に記載のFOS組成物において、前記イオンが、少なくともカリウムを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含むことを特徴とするFOS組成物。
【請求項20】
食品、ペットフード、又は飼料における請求項17~19のいずれか一項に記載のFOS組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定なフルクトオリゴ糖(FOS)組成物を製造するための方法及びその使用に関する。フルクトオリゴ糖(FOS)組成物はそれ自体としては公知であり、とりわけ食品における使用の増加がある。それらは、品質改良剤として、及び/又はそれらの前生物的特性のために非スクロース甘味を供給するために便利に使用することができる。また、本発明は、それ自体としては安定なフルクトオリゴ糖(FOS)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルクトオリゴ糖(FOS)化合物は本質的に、低い重合度(DP)を有するイヌリン化合物であり、それによって「低い」は3~約10の範囲のDPを意味する。鎖長スペクトルの短い側の端にFOSを生じることが以前から知られている。これらのいわゆる「短鎖フルクトオリゴ糖」又はscFOSは典型的に、3~約5又は6のDPを有する。それにもかかわらず、FOS及びscFOSという用語は、本発明の文脈においても、しばしば互いに交換可能に用いられる。
【0003】
英国特許第2072679号明細書は例えば、出発原料としてスクロース(砂糖)を使用するscFOSを製造するための酵素法を開示する。スクロースは本質的に、一緒に結合したグルコース(G)及びフルクトース(F)から構成される二糖類であり、したがって「GF」と書くことができる。酵素法は、GFへのF部分の転移からなり、形成された化合物の大部分はGFF(3のDPを有する)、GFFF(DP4)及びGFFFF(DP5)である。英国特許第2072679号明細書の方法において、scFOS組成物の触媒還元によってグルコース及びフルクトースをソルビトール及びマンニトールに変換することによって遊離グルコースG及びフルクトースFが放出されて取り除かれる。
【0004】
また、FOS組成物を製造する公知の方法は、鉱物質除去、精錬、ポリッシング等と称される精製工程を含み得る。公知の最終生成物は通常、水溶液の形態である。これらの水性生成物の形態はpHの自己還元への傾向があることが知られており、それは、FOS化合物の加水分解をもたらすので、望ましくない。
【0005】
安定なscFOS組成物を提供することが本発明の目的である。安定なscFOS組成物は、少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも2ヶ月間、更により好ましくは少なくとも6ヶ月間貯蔵した時にpHの実質的な変化、特に減少を示さない。実質的な変化は、10%超、より好ましくは5%超、更により好ましくは4%超、更により好ましくは3%超、更により好ましくは2%超、及び最も好ましくは1%超の変化、特に減少である。
【発明の概要】
【0006】
上記の及びその他の目的は、請求項1に記載の安定な短鎖フルクトオリゴ糖(scFOS)組成物を製造するための方法を提供することによって達成される。方法は、
a)スクロースを含有する原材料を提供する工程と、
b)原材料と酵素との水性混合物を形成し、それによって酵素がフルクトシルトランスフェラーゼ活性を少なくとも有する工程と、
c)形成された水性混合物をフルクトース、グルコース及びスクロースなど、混合物中の非FOS炭水化物の量が混合物中の炭水化物の総量の最大で50重量%を占めるまでFOS形成が行われる条件に暴露する工程と、
d)酵素を任意選択的に失活させる工程と、
e)樹脂、好ましくはカチオン性樹脂を使用して非FOS炭水化物を水性混合物からクロマトグラフにより分離して、水性混合物中の炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のscFOSを含有するFOSが豊富なストリームと非FOS炭水化物が豊富なストリームとを生じ、それによってFOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む工程と、
f)工程e)の後にFOSが豊富なストリームを蒸発させて少なくとも65°Bxのシロップ状FOS組成物を生じる工程とを含む方法において、
有機酸及びイオンの少なくとも一部又は本質的に全てが工程c)~f)のいずれか一つの間にin situ形成される。
【0007】
本発明による方法の利点は、方法の余分の別個の工程において安定剤の添加を必要としないということである。
【0008】
フルクトオリゴ糖(FOS)は、イヌリンとして公知の化合物に属する。イヌリンは、任意選択的にグルコース出発部分と共に、ss(2→1)型フルクトシル-フルクトース結合によって結合したフルクトース部分から主になる炭水化物材料を意味する総称である。イヌリンは通常多分散性であり、すなわちそれによって個々の化合物の重合度(DP)が2~100以上の範囲であり得る様々な鎖長の化合物の混合物である。-FOSとして略される-フルクトオリゴ糖という用語は、したがって単分散性又は多分散性のどちらかの、イヌリン材料の特定の形態を示し、それによって個々の化合物のDPは2~10、実際にはしばしば2~9、又は2~8又は2~7の範囲である。市販のscFOSは通常、約2~4の数平均重合度(DP)を有する多分散性材料である。実際には、FOSはまた、オリゴフルクトースと称される。本明細書中で用いられるとき、フルクトオリゴ糖とオリゴフルクトースという用語は、同義語であると考えられている。
【0009】
本発明に従って、安定なFOS組成物が形成される。本明細書において理解されるように、FOS組成物は、最も大きい乾燥物質成分として-単分散性又は多分散性のどちらかの-FOSを含有し且つ他の化合物を更に含有し得る組成物を意味する。このような他の化合物の例は、水、スクロース、フルクトース、グルコース、FOS以外のイヌリン化合物、マルトース、有機塩、及び無機塩である。しかしながら、本発明の文脈で使用されるとき及びFOS組成物が人間又は動物による消費向けである場合、FOS組成物という用語は、食品それ自体としてではなく食品のための成分とみなされるべきであることが指摘される。したがって食品を作り出すことは付加的な工程であり、それによってFOS組成物は、食物成分としての役割を果たす。
【0010】
本発明による方法は工業規模で容易に実施される。本明細書中で用いられるとき、工業規模という用語は、少なくとも500kgの原材料/24時間の作業、好ましくは少なくとも1,000kg/24時間から1,000,000kg/24時間まで、及び更にもっと多く加工することができる方法が設置において実施することができることを意味する。研究所での発見を大規模な実施に移し変えることによって、スケーリング、濁り、発泡、微生物病原菌による汚染、及び精製工程の必要などの多くの問題を伴なう場合がある。全てのこれらの問題は、製造されたFOS組成物の安定性に重大な影響を与え得る。本発明の方法は、工業規模を含めて、任意の規模で安定なFOS組成物をもたらす。
【0011】
本発明による方法の工程a)において、原材料が提供される。この原材料は、スクロースを含有するのがよく、又は好ましくは本質的にスクロースからなる。スクロースは(精製された)ビート糖として提供することができるか、又は例えば(精製された)蔗糖として提供することができる。
【0012】
「本質的に~からなる(consist(ing)essentially of)」という用語及び同等物は、組成物の本質的特性がそれらの存在によって著しく影響されないならば、必須の化合物に加えて他の化合物もまた存在することができるという点で、組成物の文脈の通常の意味を有する。
【0013】
本発明による方法の工程b)において、原材料、水及び酵素から本質的になる水性混合物が形成される。スクロースからのFOSの形成を触媒する酵素が提供され、その目的は、少なくともフルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を選択することによって達成することができる。このような酵素は、例えば酵素カテゴリー番号EC2.4.1.99又はEC2.4.1.9として分類されるとき、それ自体としては公知である。更に、いくつかのss-フルクトフラノシダーゼ、すなわちEC3.2.1.26として分類される酵素も、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有し得ることが公知である。したがってこれらはまた、本発明による方法において適し得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
エンド-イヌリナーゼ活性を有する酵素など、他の適した酵素を混合物に添加することができる。EC3.2.1.7として分類されるこのような酵素は、スクロースの存在下であり得、少なくともフルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、FOSの形成をもたらす。
【0015】
本発明の工程b)において使用するために適した酵素は、Novozymesによって供給されるNovozyme960と、同様にNovozymesによって供給されるPectinex Ultra SP-Lとを含む。少なくとも1つがフルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する2つ以上の酵素の組合せを用いることができる。酵素を固定化形態で部分的に又は完全に使用することができ、次にそれを数回再利用することができる。しかしながらまた、酵素を非固定化形態で部分的に又は完全に提供することもできる。
【0016】
本発明による方法において使用される酵素の量は、方法の工程b)及びc)における温度、原材料の量、pH、時間、及び所望の変換速度などの様々な要因に基づいて当業者によって選択され得る。これらの及びその他の関連要因は、本技術分野において一般的に容認された手順の後に当業者によって決定され得る。
【0017】
混合物を形成するとき、水が混合物中で連続相になるように水が存在しているか又は添加されることが好ましい。必要ならば、水はまた、後続の工程c)において添加され得る。
【0018】
本発明の工程c)において、工程b)の水性混合物は、FOSの所望の量が形成された時間量の間FOS形成が行われる条件に暴露される。実施形態において、病原菌が混合物中に含有されるか又は残存するのを防ぐために混合物を60°~100℃の温度での熱処理に供することは役立ち得る。本発明に従って、フルクトース、グルコース及びスクロースなど、混合物中の非FOS炭水化物の量が混合物中の炭水化物の総量の最大で50重量%を占めるまで、より好ましくは混合物中の炭水化物の総量の最大で45、40、又は35重量%を占めるまでFOS形成が行われる。特定の量の遊離グルコースが方法において典型的に形成される状況のために、混合物中に得ることができるFOSの最大量に限度が存在することができる。したがって、方法の工程c)の終わりに混合物中のFOSの量は好ましくは炭水化物の総量の最大で65重量%である。
【0019】
方法の工程c)においてFOS形成が行われるように水性混合物を供することができる条件はそれ自体としては知られており、当業者は正しい条件の調整に全く困難を伴わない。方法の実施形態において、このような条件には、好ましくは40℃~75℃の温度及び40°Bx~70°Bx、より好ましくは45~70°Bx、より好ましくは50~70°Bxにある固形分が含まれる。
【0020】
範囲の端点「~(の間)」という表現は、範囲の端点を包含すると解釈される。
【0021】
より好ましい実施形態において、温度は50℃~65℃の範囲であり、固形分は50°Bx~65°Bxにある。
【0022】
公知であるように、単位「°Bx」は「ブリックス度」を意味し、その屈折率から誘導される、糖溶液の固形分を示すために糖産業において広範囲に使用される。本明細書中で用いられるとき、スクロース及びFOS組成物の試料に関して同じ方法が使用される。°Bxの数値は一般的に、重量百分率に非常に近いか、又はこれと本質的に同じであり、したがって本発明の代替的表現において本説明及び請求の範囲において言及される全ての°Bx値は、乾燥物質の重量百分率として読取ることができる。
【0023】
56℃より低い場合工程c)における水性混合物の温度は、いくつかの混合物組成物の微生物汚染リスクに有利であり得ることが見出された。それと対照して、混合物の固形分を60°Bx超又は65°Bx超に増加させることは、いくつかの混合物組成物の望ましくない微生物の成長を抑制する条件に有利であり得る。
【0024】
本発明の方法において使用される酵素又は酵素の組合せを部分的に又は完全に固定化形態において提供することができる。また、方法は、工程c)において酵素が固定化されない場合特に効率的な方法で実施され得る。当業者は、固定化又は可動化形態で酵素を提供する方法を知っている。
【0025】
方法の工程c)における酵素作用はFOSの形成をもたらし、典型的には、特に遊離グルコースなどの非FOS炭水化物の形成をもたらす。方法の好ましい実施形態において、工程c)を実施する間のpHは、予め決定された範囲内で制御される。pHの正確な範囲は、当業者は知っているように、特に、使用される酵素の選択及び特性などのいくつかの要因に依存している。pHの制御は、それ自体としては当業者に公知である手段によって実施され得る。
【0026】
工程c)の時間は一般的に、望ましいFOSの量の関数として選択され得る。この目的のための適した時間はしばしば、1~72時間、より好ましくは5~50時間、更により好ましくは12~36時間で選択される。
【0027】
本発明の工程c)の終了時に、酵素が失活されることを確実にすることが望ましいことがある。したがって酵素失活工程d)は任意選択的に実施され得る。酵素の失活は、使用される酵素が固定化されない時に、又は部分的にそうである時に好ましいことがある。酵素の失活はそれ自体としては公知である方法によって達成され得、各々の特定のタイプの酵素について異なり得る。典型的な失活は、温度を80、85又は90℃のレベルに上昇させることと、その後に、前記上昇した温度での典型的に5~30分間の滞留時間とを含む。また、細菌の存在をこのような温度で実質的に低減させることができる。別の方法において、反応混合物のpHを例えば8超に上昇させて酵素活性を停止させる。
【0028】
工程c)、及び任意選択的に工程d)の終了後、非FOS炭水化物の部分は、工程e)において樹脂、好ましくはカチオン性樹脂を用いて水性混合物からクロマトグラフにより分離され、炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85、90、又は更に95重量%のFOSを含有するFOSが豊富なストリームを生じ、それによってFOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含み、ここで、有機酸及びイオンの少なくとも一部又は本質的に全てが工程c)~f)のいずれか一つの間にin situ形成される。
【0029】
有機酸及びイオンの量は、mg/kg°Bxで定義され、それは、mg/kg乾燥物質の量を意味する。
【0030】
請求された量の有機酸及びイオンの混合物の存在は、安定なシロップ状FOS組成物をもたらし得ることが分かった。
【0031】
異なった供給源によって有機酸及びイオンの混合物をFOS組成物中に提供することができる。好ましい方法において、有機酸及びイオンが工程e)の間にin situ形成される。特に安定なFOS組成物をこのように得ることができることが見出され、クロマトグラフィーの樹脂、好ましくはカチオン性樹脂は、有機酸及びイオンの少なくとも一部、より好ましくは有機酸及びイオンの少なくとも半分、及び最も好ましくは有機酸及びイオンの実質的に全ての形成を提供又は促進することができると考えられる。
【0032】
本発明の別の実施形態において、工程e)においてFOSが豊富なストリームが6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むFOSが豊富なストリームを形成する方法が提供される。
【0033】
更に別の実施形態において、非FOS炭水化物が豊富なストリームの一部分が6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、その後にFOSが豊富なストリームと再結合されて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むFOSが豊富なストリームを形成する。非FOS炭水化物が豊富なストリームの前記一部分は例えば、非FOS炭水化物が豊富なストリームの5~50%であり得る。
【0034】
pH変化の時間は、広い範囲内で選択することができる。pHが10分~8時間の滞留時間の範囲内に保持される方法の実施形態が好ましく、より好ましくは30分~8時間及び更により好ましくは1時間~6時間である。
【0035】
非FOS炭水化物が豊富なストリームをFOSが豊富なストリームと再結合することによって、非FOS炭水化物とFOSとの相対量に依存して、FOSが豊富なストリームのpHをある程度変化させることができる。実施形態による更なる改良された方法は、工程e)又は工程f)の後に、FOSが豊富なストリーム及び/又はシロップ状FOS組成物のpHを8.0未満、より好ましくは6.0~8.0の範囲内にする工程を含む。これは、例えばICUMSA色の望ましくない増加などの望ましくない副作用を最小にすることができる。
【0036】
FOSが豊富なストリーム内の有機酸及びイオンの量が少なくとも100mg/kg°Bxであるときに所望の安定性が観察された。安定性は、FOSが豊富なストリーム内の有機酸及びイオンの量が少なくとも200mg/kg°Bx、より好ましくは少なくとも300mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも400mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも500mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも1000mg/kg°Bxを含む方法の実施形態において、更に高めることができる。
【0037】
望ましい安定性はまた、シロップ状FOS組成物が有機酸及びイオン1~10g/kg°Bx、より好ましくは1.2~8g/kg°Bx、及び最も好ましくは1.5~5g/kg°Bxを含む方法の実施形態において観察される。これらの実施形態は、工程e)の間又は後、工程f)の間又は工程f)の後に有機酸及びイオンの一部を水性混合物に添加することを必要とし得る。
【0038】
方法の工程f)は、水性混合物を蒸発させて少なくとも65°Bxのシロップ状FOS組成物を生じることを必要とする。水を水性混合物から蒸発させることは、例えば85℃とFOS組成物の沸点、又は更に高い温度との間のどこかで選択される温度に加熱することによって便利に実施することができる。蒸発は好ましくは、少なくとも65°Bx及び最大で80°Bxのシロップ状FOS組成物を得るまで実施されるのがよい。
【0039】
更にもっと改良される安定性は、水性混合物を蒸発させる工程f)を実施して、少なくとも67°Bx、より好ましくは少なくとも70°Bx、及び最も好ましくは少なくとも72°Bxのシロップ状FOS組成物を生じる方法の実施形態において得ることができる。
【0040】
本発明による方法のいくつかの工程は、必要ならばスケーリング防止剤、消泡剤、殺菌剤、殺生剤、及び凝集剤を添加することを必要とし得る。
【0041】
FOS組成物の調製方法を実施するとき、当業者は、方法及び得られたFOS組成物を最適化するために変化させることができる多数のパラメーターを自身の裁量で有する。これらの中でパラメーターは、合成反応が行われる温度、工程b)及びc)における混合物の固形分、酵素反応の時間、及び添加される酵素の量を位置付ける。方法は、フルクトオリゴ糖の総量に対して比較的高量のFOS並びに3の重合度(DP)、及び/又はフルクトオリゴ糖の総量に対して比較的低量のFOS並びに7以上のDPを有するFOS組成物を製造することができる。好ましくは、FOS組成物中の炭水化物の最大で3重量%、より好ましくは最大で2、1、又は更に0.50、0.40、0.30又は0.20重量%が7以上のDPを有するオリゴ糖からなる。
【0042】
FOS中に存在している有機酸及びイオンの特定の混合物は驚くべきことに、方法の工程e)の後に、特に方法の工程f)の後に安定なFOS組成物を生じる。
【0043】
方法の好ましい実施形態において、有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の少なくとも2つを含む。より好ましくは有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも2つ、更により好ましくは少なくとも3つ又は更に全てを含む。更により好ましくは有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の少なくとも3つ、又は更にピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の少なくとも4つ、及び最も好ましくはピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩を含む。
【0044】
ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の総計は、FOS組成物又はシロップ状scFOS組成物中の全ての有機酸の少なくとも25重量%を占めることが好ましい。より好ましくはピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の総計は、FOS組成物又はシロップ状scFOS組成物中の全ての有機酸の少なくとも40、50、60、70、又は更に少なくとも80又は90重量%を占める。
【0045】
少なくとも酢酸塩、好ましくは少なくとも乳酸塩及び酢酸塩を別個の方法工程において水性混合物に添加しない本発明の実施形態による方法が好ましい。しかしながらそれらは、例えば上記のようなin situ方法によるなど、別の供給源によって混合物中に存在することができる。
【0046】
他の実施形態において、イオン及び/又は有機酸を別個の方法工程において水性混合物に添加しない。
【0047】
イオンがナトリウム及びカリウムの少なくとも1つを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含む方法の実施形態は、特に上に開示された有機酸と組み合わせて、FOS組成物の良い安定性を得るのに役立ち得ることが更に見出された。
【0048】
方法の好ましい実施形態において、イオンは、ナトリウム及び/又はカリウムを含むカチオンを含む。方法の別の好ましい実施形態において、アニオンは塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも2つを含み、更により好ましくは、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩を含む。
【0049】
工程e)における樹脂は好ましくはカチオン性樹脂であり、その場合、有効なカチオン性樹脂の広い範囲で選択され得る。カチオン性樹脂は、イオン交換樹脂、すなわち、反対の電荷のイオンを周囲溶液から引きつけることができる正又は負の電荷をもつ部位を含有する、合成重合された有機化合物の群に属する。酸基を含有するポリマーは、水素及び金属イオンなど、正の電荷をもつイオンを交換するので、酸、又はカチオン交換樹脂として分類される。アンモニウム基を含有するポリマーは、負の電荷をもつイオン、通常水酸化物イオン又はハロゲン化物イオンを交換するので、塩基性、又はアニオン交換樹脂であると考えられる。適したカチオン性樹脂には、例えばメタクリル酸ジビニルベンゼン及びスチレンジビニルベンゼンコポリマー、並びにフェノール-ホルムアルデヒドポリマーが含まれるがそれらに限定されない。カチオン性樹脂がスチレンジビニルベンゼンコポリマーを含む方法の実施形態が特に好ましい。カチオン性樹脂における電荷をもつ基は、スルホン酸及び/又はカルボン酸塩を含み得る。
【0050】
本発明による方法によって製造されるFOS組成物は、固有の色とフレーバーをもたらすFOS以外の化合物を含有することができる。更に、FOS組成物を製造するための方法はそれ自体、FOS以外の化合物を、着色をもたらすFOS組成物中に導入することができる。
【0051】
上に言及された要因の結果として、フルクトオリゴ糖(FOS)組成物が1,000~3,000Icumsa単位の色を有する方法の実施形態は安定なFOS組成物を生じ得ることが見出された。
【0052】
方法の別の実施形態において、200~2,000μS/cmの導電率を有するFOS組成物が製造される。
【0053】
色の指標としてのIcumsa単位はスクロース製造産業において広範囲に使用され、本質において420nmの波長におけるスクロースの水溶液の吸収の測定である、方法GS2/3-9(2005)によってIcumsa色を便利に測定することができる。測定された吸収は、Icumsa値に再計算される。低いIcumsa値は、無色/白色を示し、他方、より高いIcumsa値は黄色~茶色がかった範囲の色を有する製品を示している。また、方法GS2/3-9(2005)は、製造されたFOS組成物の色の決定のためにここで使用されるが、以下のコメント/改良点がある:
- pHは6に調節される(標準におけるように7にではない);
- 試料のIcumsa色を決定するための式は:
Icumsa色 =(100000×A)/(°Bx×ρ×b)
(式中、Aは420nmにおける吸収であり、°Bxはブリックス度での固形分であり、ρは試料の密度であり、bは吸収光路長であり、×は「によって乗ずる」を意味する)である。
【0054】
FOS組成物の導電率は、28°Bxの固形分を有する水性FOS組成物について決定され、マイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)で表される。
【0055】
実施形態による更なる改良された方法は、水性混合物を活性炭で処理して、FOS中の有機酸及びイオンの最小量100mg/kg°Bxに実質的に影響を与えずに水性混合物中に存在している着色成分の少なくとも一部を取り除く工程g)を工程e)の後且つ工程f)の前に更に含む。
【0056】
このような実施形態は、FOS組成物の色に影響を与えることができ、ここで、好ましい実施形態において、水性混合物を活性炭で処理して、50~750Icumsa単位、より好ましくは100~500Icumsa単位、及び最も好ましくは150~400Icumsa単位の色をもたらす。
【0057】
本発明の方法は上に説明された以外の他の工程を必要とし得るが、方法の好ましい実施形態は、工程f)又は工程g)の後に任意の更なる工程を含まない。
【0058】
本発明の別の態様は、フルクトオリゴ糖(FOS)組成物それ自体に関する。FOS組成物は、炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOS、炭水化物の総量に対して好ましくは少なくとも80、85、90、又は更に95重量%のFOSを含む。FOS組成物は有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む。より好ましい実施形態において、FOS組成物は、有機酸及びイオン少なくとも200mg/kg°Bxを含み、より好ましくは有機酸及びイオン少なくとも300mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも400mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも500mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも1000mg/kg°Bxを含む。他の実施形態において、FOS組成物は、有機酸及びイオン1~10g/kg°Bx、より好ましくは1.2~8g/kg°Bx、及び最も好ましくは1.5~5g/kg°Bxを含む。FOS組成物は、上に説明された実施形態によって例示されるように、本発明による方法によって得ることができる。FOS組成物は固体形態であるか、又は-好ましくは水性の-スラリー、分散体又は溶液の形態であり得る。FOS組成物はscFOS組成物であり得る。
【0059】
本発明によるFOS組成物の有用な実施形態において、有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも1つを含む。FOS組成物の好ましい実施形態において、有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは全てを含む。FOS組成物の更なる好ましい実施形態において、有機酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも2つ、更により好ましくは少なくとも3つを含む。しかしながら、好ましい実施形態において、FOS組成物は、クエン酸塩、乳酸塩及び酢酸塩の少なくとも1つを含まない。
【0060】
ピロリドンカルボン酸(PCA)、任意選択的に乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及び任意選択的にクエン酸塩の総計は、FOS組成物中の全ての有機酸の少なくとも25重量%を占めることが好ましい。より好ましくはピロリドンカルボン酸(PCA)、任意選択的に乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及び任意選択的にクエン酸塩の総計は、FOS組成物中の全ての有機酸の少なくとも40、50、60、70、又は更に少なくとも80又は90重量%を占める。
【0061】
別の有用な実施形態において、FOS組成物中のイオンは、少なくともカリウムを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含む。
【0062】
FOS組成物の別の好ましい実施形態において、アニオンは、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも2つを含み、更により好ましくは、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩を含む。
【0063】
更に別の実施形態において、FOS組成物は、組成物中のフルクトオリゴ糖の少なくとも35又は40重量%がHPLCにおいて測定される時に3のDPを有することを特徴としている。
【0064】
別の実施形態において、FOS組成物は、1,000~3,000Icumsa単位の色と、より好ましくは200~2,000μS/cmの導電率とを有する。
【0065】
FOS組成物は、必要ならば鉱物、ビタミン、アミノ酸又はタンパク質を含有することができる。これらの化合物をFOS組成物に添加することができるか、又はそれらを、FOS組成物を調製するために使用される原材料にあらかじめ一体に含有させることができる。
【0066】
それ自体としては、又は本発明の方法によって得ることができるFOS組成物は、食品における、又はペットフード又は飼料における食物成分として便利に使用することができる。
【0067】
本発明はここで以下の実施例によって説明されるが、しかしながらそれに限定されない。
【実施例】
【0068】
実施例1
精糖由来のTiense Suikerraffinaderijによって供給されるスクロースを水及び酵素と組み合わせて、水性混合物を形成する。可溶化した後、固形分は60°Bxであった。使用される酵素は、Novozyme 960、非固定化形態のエンド-イヌリナーゼ酵素であった。Novozyme960酵素の活性は、306U/グラムであった。エンド-イヌリナーゼ酵素の1単位Uは、イヌリン試料から1μmol還元糖/分を放出することができる酵素の量に相当する。混合物中の使用されるNovozyme960酵素の量は、0.425U/グラム原材料乾燥物質であった。
【0069】
混合物は、H2SO4及び/又はNaOHを水性混合物に添加することによって6.2のpHにされた。メッシュサイズ3mmを有する篩で濾過して大きめの不純物を取り除いた後、混合物を80℃の温度で再可溶化し、57~61℃の温度に低下させ、約20時間反応させておいた。前記約20時間の後、pHを8.5超の値に増加させて酵素活性を停止することによって反応を終了した。前記反応の後、約58~60重量%のFOSが混合物中に形成され、残りの40~42重量%はスクロース及びグルコースのような他の炭水化物であった。
【0070】
後続の工程において、FOS及びその他の炭水化物を含有する水性混合物をクロマトグラフ分離工程に供し、ここでカチオン性樹脂、特に、Novasepから得られるApplexion XA 2004/32 K、スチレンジビニルベンゼンコポリマーを使用して非FOS炭水化物の一部分を水性混合物から分離した。水を溶離剤として使用した。
【0071】
クロマトグラフ分離工程は、約6~8時間の滞留時間、8~9の範囲内のpHにおいて70℃の温度で行われた。非FOS炭水化物分子の一部分を水性混合物から分離するクロマトグラフの後、水性混合物中の炭水化物の総量に対して約85重量%のFOSを有するFOSが豊富なストリーム及び組成物が得られた。固形分は約15°Bxであった。
【0072】
最終工程において、水性混合物のFOSが豊富なストリームを蒸発させて、本実施例における少なくとも72°Bxのシロップ状FOS組成物を生じた。
【0073】
得られたFOS組成物をHPLCによって分析した。結果を以下の表1に要約する。
【0074】
表1において、様々な化合物の量は、全乾燥炭水化物物質の重量百分率で与えられる。更に、DP2、DP3、DP4及びDP5という用語は、それぞれ、2、3、4及び5の重合度を有するFOS化合物を示す。FOS組成物は、過半量のDP3及びDP4化合物を含むことが見られる。また、このようなFOSは短鎖FOS又はscFOSと称される。
【0075】
シロップ状FOS組成物は、2800IcumsaのIcumsa色及び600μS/cmの導電率を有した。
【0076】
請求の範囲の方法によって調製されるシロップ状FOS組成物は、有機酸及びイオンの混合物少なくとも1g/kg°Bxを含むことが分かった。表2はこの混合物を要約する。
【0077】
本発明のシロップ状FOS組成物を最初に10~20℃の範囲の温度で1年間貯蔵した。次に、シロップ状FOS組成物の安定性を決定するため、その後それを25℃で貯蔵し、そのpH及び色を25℃で経時的に、すなわち1年の初期貯蔵時間の後で測定した。結果を以下の表3に示す:
【0078】
結果は、1年と87日後でも、驚くべきことに一定のpHを示す。色はそれと分かるほど変化しなかった。1年と87日後にFOS化合物の分解はほとんどなかった(0.5g/100gBx未満)。これは全て、高度に安定なFOS生成物の証拠である。
【0079】
比較実験A
実施例1におけるのと同じ°Bx及び本質的に同じプロファイルのFOS化合物を有する-わずかにより低いFOS含有量を有するが-公知の商用のscFOS生成物に特徴的であるような低含有量の有機酸及びイオンを有する水性FOS組成物が提供された。カチオン、アニオン及び有機酸の総計を測定すると17mg/kgBxであった。
【0080】
FOS組成物の安定性を決定するため、それを25℃で貯蔵し、そのpH及びFOS含有量を25℃で経時的に測定した。結果を以下の表4に示す。
【0081】
結果は、139日後に約20%のpHの比較的強い減少を示す。結果はまた、FOS組成物中のFOSは分解(おそらく加水分解)されやすく、139日後に85.4°Bxから81.2°Bxに減少することを示す。これは、明らかに不安定なFOS生成物の証拠である。
【0082】
本発明は特に、以下の一連の実施形態i)~xxviii)に関する:
i)安定なフルクトオリゴ糖(FOS)組成物を製造するための方法であって、
a)スクロースを含有する原材料を提供する工程と、
b)原材料と酵素との水性混合物を形成し、それによって酵素がフルクトシルトランスフェラーゼ活性を少なくとも有する工程と、
c)形成された水性混合物をフルクトース、グルコース及びスクロースなど、混合物中の非FOS炭水化物の量が混合物中の炭水化物の総量の最大で50重量%を占めるまでFOS形成が行われる条件に暴露する工程と、
d)酵素を任意選択的に失活させる工程と、
e)樹脂を使用して非FOS炭水化物を水性混合物からクロマトグラフにより分離して、水性混合物中の炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOSを含有するFOSが豊富なストリームと非FOS炭水化物が豊富なストリームとを生じ、それによってFOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含む工程と、
f)FOSが豊富なストリームを蒸発させて少なくとも65°Bxのシロップ状FOS組成物を生じる工程とを含む方法において、有機酸及びイオンの少なくとも一部又は本質的に全てが工程c)~f)のいずれか一つの間にin situ形成される方法。
【0083】
ii)有機酸及びイオンが工程e)の間にin situ形成される、実施形態i)による方法。
【0084】
iii)工程e)においてFOSが豊富なストリームが6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むFOSが豊富なストリームを形成する、実施形態ii)による方法。
【0085】
iv)非FOS炭水化物が豊富なストリームの一部分が6.0~11.0、好ましくは8.0~10.0の範囲内のpHにされて、その後にFOSが豊富なストリームと再結合されて、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むFOSが豊富なストリームを形成する、実施形態ii)及びiii)による方法。
【0086】
v)pHが10分~8時間の滞留時間の範囲内に保持される、実施形態iii)及びiv)による方法。
【0087】
vi)FOSが豊富なストリームのpH及び/又はシロップ状FOS組成物のpHが、工程e)又は工程f)の後に8.0未満、より好ましくは6.0~8.0の範囲内にされる、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0088】
vii)FOSが豊富なストリーム内の有機酸及びイオンの量が少なくとも200mg/kg°Bx、より好ましくは少なくとも300mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも400mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも500mg/kg°Bx、更により好ましくは少なくとも1000mg/kg°Bxを含む、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0089】
viii)FOSが豊富なストリームが有機酸及びイオン1~10g/kg°Bx、より好ましくは1.2~8g/kg°Bx、及び最も好ましくは1.5~5g/kg°Bxを含む、実施形態vii)による方法。
【0090】
ix)工程e)において樹脂がカチオン性樹脂である、実施形態i)~viii)のいずれか一つに記載の方法。
【0091】
x)カチオン性樹脂が有機酸及びイオンの少なくとも一部を含む、実施形態i)~ix)のいずれか一つに記載の方法。
【0092】
xi)有機酸及びイオンの少なくとも一部が工程e)の後、工程f)の間又は工程f)の後に水性混合物に添加される、実施形態i)~x)のいずれか一つに記載の方法。
【0093】
xii)有機酸がピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも1つを含む、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0094】
xiii)有機酸がクエン酸塩を含む、実施形態xii)による方法。
【0095】
xiv)少なくとも酢酸塩が水性混合物に添加されない、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0096】
xv)イオンが、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1つを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含む、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
xvi)カチオン性樹脂がスチレンジビニルベンゼンコポリマーを含む、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0098】
xvii)FOS形成が行われ得る条件が40℃~75℃の温度及び40°Bx~70°Bx、より好ましくは45~70°Bx、より好ましくは50~70°Bxにある固形分を含む、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0099】
xviii)温度が50℃~65℃にあり、且つ固形分が50°Bx~65°Bxにある、実施形態xvii)による方法。
【0100】
xix)フルクトオリゴ糖(FOS)組成物が1,000~3,000Icumsa単位の色を有する、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0101】
xx)FOSが豊富なストリームを活性炭で処理して、FOS中の有機酸及びイオンの最小量1g/kg°Bxに実質的に影響を与えずにFOSが豊富なストリーム中に存在している着色成分の少なくとも一部を取り除く工程g)を工程e)の後且つ工程f)の前に更に含む、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0102】
xxi)水性混合物を活性炭で処理して、50~750Icumsa単位、より好ましくは100~500Icumsa単位、及び最も好ましくは150~400Icumsa単位の色をもたらす、実施形態xx)による方法。
【0103】
xxii)工程f)又は工程g)の後に任意の更なる工程を含まない、先行の実施形態のいずれか一つに記載の方法。
【0104】
xxiii)炭水化物の総量に対して少なくとも75重量%のFOSを含み、有機酸及びイオン少なくとも100mg/kg°Bxを含むフルクトオリゴ糖(FOS)組成物。
【0105】
xxiv)有機酸がピロリドンカルボン酸(PCA)、酢酸塩、及び蟻酸塩の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つを含む、実施形態xxiv)によるFOS組成物。
【0106】
xxv)クエン酸塩及び酢酸塩の少なくとも1つを含まない、実施形態xxiii)又はxxiv)によるFOS組成物。
【0107】
xxvi)イオンが、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1つを含むカチオンと、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩の少なくとも1つを含むアニオンとを含む、実施形態xxiii)~xxv)のいずれか一つに記載のFOS組成物。
【0108】
xxvii)組成物中のフルクトオリゴ糖の少なくとも35重量%が、HPLCにおいて測定される時に3のDPを有する、実施形態xxiii)~xxvi)のいずれか一つに記載のFOS組成物。
【0109】
xxviii)1,000~3,000Icumsa単位の色を有する、実施形態xxiii)~xxvii)のいずれか一つに記載のFOS組成物。
【0110】
xxix)200~2,000μS/cmの導電率を有する、実施形態xxiii)~xxviii)のいずれか一つに記載のFOS組成物。
【0111】
xxx)scFOS組成物である、実施形態xxiii)~xxix)のいずれか一つに記載のFOS組成物。
【0112】
xxxi)食品、ペットフードにおける、又は飼料における、実施形態xxiii)~xxx)のいずれか一つに記載のFOS組成物の使用。
【0113】
xxxii)ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、及びクエン酸塩の総計が、FOS組成物又はシロップ状scFOS組成物中の全ての有機酸の少なくとも50重量%を占める、実施形態xxiii)~xxx)のいずれか一つに記載のFOS組成物又は実施形態i)~xxii)のいずれか一つに従って得ることができるシロップ状scFOS組成物。
【国際調査報告】