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特表2023-541237FGF23活性を阻害するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】FGF23活性を阻害するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230922BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20230922BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230922BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230922BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230922BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230922BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230922BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230922BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230922BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/50 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K47/60
A61P3/00
A61P19/08
A61K38/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514785
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021048915
(87)【国際公開番号】W WO2022051536
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,267
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】503469393
【氏名又は名称】イエール ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シュレッシンガー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スズキ ヨシヒサ
(72)【発明者】
【氏名】ラックス イリット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB01
4C076BB21
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB31
4C076BB40
4C076CC41
4C076CC50
4C076EE59
4C084BA02
4C084DB54
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZC211
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、FGF23のR2領域を含む構築物を提供する。他の態様において、構築物は、αクロトーに対するFGF23結合およびFGFR活性化を介した細胞シグナル伝達を阻止することによって、FGF23アンタゴニストとして機能する。さらに他の態様において、構築物は、FGFR活性化を防止する。さらに他の態様において、本開示の構築物は、これに限定されるわけではないがリン酸代謝障害のような、FGF23の調節不全および/または過剰発現に関連する疾患または障害を処置するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、非天然可溶性構築物。
【請求項2】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片を含む、請求項1記載の構築物。
【請求項3】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239を含む、請求項2記載の構築物。
【請求項4】
安定性増強ドメインに融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載の構築物。
【請求項5】
前記安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および/または抗体のFc領域のうちの少なくとも1つを含む、請求項4記載の構築物。
【請求項6】
前記Fc領域がIgG Fcである、請求項5記載の構築物。
【請求項7】
前記Fc領域が、ヒト免疫グロブリン1(IgG1)、ヒト免疫グロブリン2(IgG2)、ヒト免疫グロブリン3(IgG3)、および/またはヒト免疫グロブリン4(IgG4)のFcドメインである、請求項6記載の構築物。
【請求項8】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのN末端と融合されている、請求項4~7のいずれか一項記載の構築物。
【請求項9】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのC末端と融合されている、請求項4~7のいずれか一項記載の構築物。
【請求項10】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドに直接融合されている、請求項4~9のいずれか一項記載の構築物。
【請求項11】
前記安定性増強ドメインが、リンカーを介してポリペプチドに融合されている、請求項4~10のいずれか一項記載の構築物。
【請求項12】
前記リンカーが、約1~18個のアミノ酸ならびに/または1~20個の(エチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコール)単位を含む、請求項11記載の構築物。
【請求項13】
ポリペプチドのN末端に融合されたリンカーのC末端が、以下:
のうちの1つではない、請求項11または12記載の構築物。
【請求項14】
ポリペプチドのC末端に融合されたリンカーのN末端が、以下:
のうちの1つではない、請求項11または12記載の構築物。
【請求項15】
ペグ化されている、少なくとも部分的にメチル化されている、かつ/またはC末端アミド化されている、請求項1~14のいずれか一項記載の構築物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項記載の構築物をコードする、核酸配列。
【請求項17】
請求項16記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項18】
発現ベクターである、請求項17記載のベクター。
【請求項19】
自己複製性哺乳動物細胞ベクターまたは組込み型哺乳動物細胞ベクターである、請求項17または18記載のベクター。
【請求項20】
請求項16記載の核酸または請求項17~19のいずれか一項記載のベクターを含む、1つの細胞、複数の細胞、または多数の細胞。
【請求項21】
哺乳動物において内分泌型FGFに関連した疾患または障害を処置する、寛解させる、および/または防止する方法であって、請求項1~15のいずれか一項記載の構築物の治療的有効量を、該哺乳動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項22】
前記構築物が、哺乳動物細胞の表面上のαクロトーに対するFGF23の結合を防止または最小化する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記疾患または前記障害が、低リン酸血症および/または腫瘍誘導性骨軟化症を含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記構築物が、吸入、経口、直腸内、膣内、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによって投与される、請求項21~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
請求項1~15のいずれか一項記載の構築物またはその前駆体が、コードされたベクター上で送達され、ここで、該ベクターが該構築物またはその前駆体をコードし、該ベクターの該対象への投与時に、該構築物が該ベクターから転写および翻訳される、請求項21~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物が、前記疾患および/または前記障害を処置または防止する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される、請求項21~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、同時投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、共製剤化(co-formulated)される、請求項27または28記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書中に組み入れられる2020年9月3日に出願された米国特許仮出願第63/074,267号に基づく、35 U.S.C.§119(e)による優先権を主張する。
【0002】
配列表
41.5キロバイトを含む、2021年9月2日に作成された「047162-7298WO1(01447)_Seq Listing_ST25」という名称のASCIIテキストファイルは、これによってその全体が参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
線維芽細胞増殖因子(FGF)の大きなファミリーは、胚発生中の重要な細胞過程および正常組織のホメオスタシスの調節において、重要な役割を有する。FGFの大多数は、固有のチロシンキナーゼ活性を備えた細胞表面受容体(FGFR)に結合することによってその多面的な細胞過程を媒介する、サイトカインまたはホルモン様タンパク質として作用する。ほとんどの受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は、nMよりも下の範囲の解離定数を有し、その同族RTKの細胞外ドメインに高い親和性で結合する、単一のリガンド分子によって活性化される。対照的に、FGFRに対するFGFの結合親和性は、少なくとも1000~10,000倍弱く、μMよりも下の範囲の解離定数を有する。古典的FGFと称されるFGF分子の最大サブファミリーのFGFRに対する弱い結合親和性は、細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との相互作用によって埋め合わされている。生化学的研究および構造的研究の両方により、ヘパリンまたはHSPGとFGFおよびFGFRの両方との間の複数の相互作用がいかに、堅牢な受容体二量体化およびチロシンキナーゼ活性化を可能にする堅固な会合を媒介するかが明らかになった。
【0004】
内分泌型FGFの3つのメンバー(FGF19、FGF21、およびFGF23)は、FGF分子の付加的なサブファミリーに相当する。内分泌型FGFは、様々な代謝過程の制御において必須の役割を果たす、循環ホルモンとして機能する。全てのFGFリガンドにおいて見出される保存されたFGFドメインに加えて、内分泌型FGFは、表面受容体のクロトーファミリーの2つのメンバーに対する特異的かつ高親和性のリガンドとして役立つアミノ酸である、46アミノ酸(FGF19)、34アミノ酸(FGF21)、および89アミノ酸(FGF23)から構成される独特のC末端テールを含有する。αクロトーは、FGF23に対する高親和性受容体として役立ち、βクロトーは、FGF19およびFGF21の両方に対する高親和性表面受容体として機能する。遊離のおよびリガンドに占有されたクロトータンパク質の構造解析により、内分泌型FGFに対するαクロトーおよびβクロトーの特異性および高親和性の基礎となる分子基盤が明らかになった。クロトータンパク質は、内分泌型FGFに対する主要な受容体として機能するのに対して、FGFRは、そのチロシンキナーゼドメインを介して細胞シグナル伝達を媒介する触媒サブユニットとして機能する。したがって、内分泌型FGFは、クロトータンパク質およびFGFRと三元複合体を形成して、受容体二量化、チロシンキナーゼ活性化、および細胞シグナル伝達を誘導することによって、その細胞応答を刺激する。遍在的に発現されるFGFRとは異なり、αクロトーおよびβクロトーの発現パターンは、特定の組織および器官に制限されており、したがって、特定の細胞および組織においてその生理学的応答を刺激するための内分泌型FGFの特異的なターゲティングを可能にする。内分泌型FGFの循環する能力は、古典的FGFの機能に必須である保存されたヘパリン結合部位の喪失に起因する。
【0005】
FGF23は、主に骨において骨芽細胞および骨細胞によって産生される32-kDaの糖タンパク質であり、リン酸ホメオスタシス、ビタミンDおよびカルシウムの代謝を調節する、キーとなるホルモンとして役立つ。生理学的に活性を有するFGF23の循環レベルは、その独特のC末端テールが欠如したFGF23分子を産生するタンパク質分解性切断によって調節される。FGF23の不活性化をもたらす切断は、FGF23/FGFR/αクロトーシグナル伝達複合体の集合を防止し、結果としてFGF23の不活性化をもたらす。付加的に、FGF23のプロセシングには、その安定性およびタンパク質分解に対する感受性に影響を及ぼす、いくつかの翻訳後修飾が含まれる。分泌されたFGF23は、タンパク質をC末端切断から保護するために、そのC末端切断部位でO-グリコシル化されていることが示された。切断部位が露出されるために、FGF23は、最初にこの領域がリン酸化されなければならない。リン酸化は、グリコシル化を防止し、切断部位をタンパク質分解に曝す。
【0006】
αクロトーの機能および作用、ならびにこれに限定されるわけではないがFGF23のような、内分泌型FGFによって活性化されるFGF受容体およびシグナル伝達経路の活性をモジュレートする(例えば、阻害または刺激する)ために使用され得る組成物および方法を同定することが、当技術分野において必要とされている。ある種の態様において、これらの組成物および方法は、これに限定されるわけではないがFGF23のような、内分泌型FGFに関連した(これに限定されるわけではないが、代謝疾患および/または癌のような)疾患の処置、寛解、および/または防止において有用である。本発明は、これらの必要を満たす。
【発明の概要】
【0007】
概要
いくつかの態様において、本明細書は、以下に限定されるわけではないが、以下に関する:
態様1は、SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、非天然可溶性構築物を提供する。
態様2は、SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片を含む、態様1の構築物を提供する。
態様3は、SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239を含む、態様1または2の構築物を提供する。
態様4は、安定性増強ドメインに融合されている、態様1~3のいずれか一つの構築物を提供する。
態様5は、前記安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および/または抗体のFc領域のうちの少なくとも1つを含む、態様4の構築物を提供する。
態様6は、前記Fc領域がIgG Fcである、態様5の構築物を提供する。
態様7は、前記Fc領域が、ヒト免疫グロブリン1(IgG1)、ヒト免疫グロブリン2(IgG2)、ヒト免疫グロブリン3(IgG3)、および/またはヒト免疫グロブリン4(IgG4)のFcドメインである、態様6の構築物を提供する。
態様8は、前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのN末端と融合されている、態様4~7のいずれか一つの構築物を提供する。
態様9は、前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのC末端と融合されている、態様4~7のいずれか一つの構築物を提供する。
態様10は、前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドに直接融合されている、態様4~9のいずれか一つの構築物を提供する。
態様11は、前記安定性増強ドメインが、リンカーを介してポリペプチドに融合されている、態様4~10のいずれか一つの構築物を提供する。
態様12は、前記リンカーが、約1~18個のアミノ酸ならびに/または1~20個の(エチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコール)単位を含む、態様11の構築物を提供する。
態様13は、ポリペプチドのN末端に融合されたリンカーのC末端が、以下:
のうちの1つではない、態様11または12の構築物を提供する。
態様14は、ポリペプチドのC末端に融合されたリンカーのN末端が、以下:
のうちの1つではない、態様11または12の構築物を提供する。
態様15は、ペグ化されている、少なくとも部分的にメチル化されている、かつ/またはC末端アミド化されている、態様1~14のいずれか一つの構築物を提供する。
態様16は、態様1~15のいずれか一つの構築物をコードする、核酸配列を提供する。
態様17は、態様16の核酸配列を含む、ベクターを提供する。
態様18は、発現ベクターである、態様17のベクターを提供する。
態様19は、自己複製性哺乳動物細胞ベクターまたは組込み型哺乳動物細胞ベクターである、態様17または18のベクターを提供する。
態様20は、態様16の核酸または態様17~19のいずれか一つのベクターを含む、1つの細胞、複数の細胞、または多数の細胞を提供する。
態様21は、哺乳動物において内分泌型FGFに関連した疾患または障害を処置する、寛解させる、および/または防止する方法であって、態様1~15のいずれか一つの構築物の治療的有効量を、該哺乳動物に投与する工程を含む、前記方法を提供する。
態様22は、前記構築物が、哺乳動物細胞の表面上のαクロトーに対するFGF23の結合を防止または最小化する、態様21の方法を提供する。
態様23は、前記疾患または前記障害が、低リン酸血症および/または腫瘍誘導性骨軟化症を含む、態様21または22の方法を提供する。
態様24は、前記哺乳動物がヒトである、態様21~23のいずれか一つの方法を提供する。
態様25は、前記構築物が、吸入、経口、直腸内、膣内、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによって投与される、態様21~24のいずれか一つの方法を提供する。
態様26は、態様1~15のいずれか一つの構築物またはその前駆体が、コードされたベクター上で送達され、ここで、該ベクターが該構築物またはその前駆体をコードし、該ベクターの該対象への投与時に、該構築物が該ベクターから転写および翻訳される、態様21~24のいずれか一つの方法を提供する。
態様27は、前記哺乳動物が、前記疾患および/または前記障害を処置または防止する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される、態様21~26のいずれか一つの方法を提供する。
態様28は、前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、同時投与される、態様27の方法を提供する。
態様29は、前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、共製剤化(co-formulated)される、態様27または28の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明を例示するため、本発明のある種の態様が、図面に示される。しかしながら、本発明は、図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されない。
図1A】FGF23のC末端テールが、αクロトーに特異的に結合する2つの異なる領域を含有するという知見を示す。図1A:FGF19、FGF21、FGF23、およびFGF1の模式図である。シグナルペプチド(SP)は、第1のセクションであり、FGFR結合ドメインは、第2のセクションであり、FGF19およびFGF21のC末端テール中のβクロトー結合領域は、最後のセクションであり、FGF23のC末端テール中のタンデムリピートは、それぞれR1およびR2と表示される。
図1B】FGF23のC末端テールが、αクロトーに特異的に結合する2つの異なる領域を含有するという知見を示す。図1B:ヒトFGF19およびFGF21のC末端テールと、ヒトFGF23 C末端テールの第1のリピート(R1)および第2のリピート(R2)との配列アライメントおよび比較である。αクロトーおよびβクロトーのD1に結合するのに重要な、FGF19、FGF21、およびFGF23のDPLモチーフは、左側の強調された残基であり、βクロトーのD2中の偽基質結合ポケットに結合するのに重要な、FGF19およびFGF21中のSPS糖模倣モチーフは、右側の強調されたセクションである。
図1C】FGF23のC末端テールが、αクロトーに特異的に結合する2つの異なる領域を含有するという知見を示す。図1C:FGF23のC末端テールのGST融合体(GST-FL)、R1のGST融合体(GST-R1)、およびR2のGST融合体(GST-R2)のsKLAに対する結合を示す、代表的なBLIセンサーグラムである。抗GST抗体でコーティングされたバイオセンサーを用いて、GST融合FGF23ペプチド断片を捕捉し、一連の濃度のsKLA(6.25、12.5、25、50、100、および200 nM)を含有する溶液中に浸漬した。センサーグラムを、1:1のリガンド:受容体結合モデルとフィットさせて、解離定数および動態パラメータを計算した。
図1D】FGF23のC末端テールが、αクロトーに特異的に結合する2つの異なる領域を含有するという知見を示す。図1D:BLI測定の動態パラメータおよび解離定数の要約である。データは、3回の独立した実験からの平均値±S.D.として提示される。
図2A】FGF23-WTおよびR1またはR2のいずれかを有するFGF23バリアントが、類似した細胞応答を誘導するという知見を示す。図2A:細胞刺激に使用したFGF23バリアントのC末端テールの模式図である。R1およびR2が表示される。αクロトーに対する結合を消失させる、FGF23 CテールのR1および/またはR2中の変異が記される。
図2B】FGF23-WTおよびR1またはR2のいずれかを有するFGF23バリアントが、類似した細胞応答を誘導するという知見を示す。図2B~2H:FGF23-WTまたはFGF23バリアントにより誘導されるFRS2αのチロシンリン酸化およびMAPK応答の比較である。αクロトーと共にFGFR1cを安定に発現するHEK293細胞を、刺激せずに放置したか、または示されるように増加する濃度のFGF23またはFGF23バリアントで10分間、37℃で刺激した。細胞溶解物を、SDS-PAGEに供し、それぞれpFRS2、pMAPKに対する抗体および対照としての抗MAPKでのイムノブロッティングによって、FRS2αのチロシンリン酸化およびMAPK活性化について解析した。
図2C図2Bの説明を参照のこと。
図2D図2Bの説明を参照のこと。
図2E図2Bの説明を参照のこと。
図2F図2Bの説明を参照のこと。
図2G図2Bの説明を参照のこと。
図2H図2Bの説明を参照のこと。
図3A】細胞がFc-R2で処理された場合、または細胞がFc-FLもしくはFc-R1で処理された場合に、細胞のFGF23誘導性刺激の類似した阻害が起こる;さらに、FGF23 Cテール中のR2に隣接したシステイン残基は、分子内ジスルフィド架橋を形成するという知見を示す。図3A~3B:Fc-FL、Fc-R1、またはFc-R2の模式図(図3A)および還元条件(R)下または非還元条件(NR)下でのSDS-PAGE解析(図3B)である。Fc部分、R1、およびR2が表示される。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図3C】細胞がFc-R2で処理された場合、または細胞がFc-FLもしくはFc-R1で処理された場合に、細胞のFGF23誘導性刺激の類似した阻害が起こる;さらに、FGF23 Cテール中のR2に隣接したシステイン残基は、分子内ジスルフィド架橋を形成するという知見を示す。図3C~3E:FGFR1cおよびαクロトーを安定に発現するHEK 293細胞を、(示されるように)増加する濃度のFc-FGF23全長テール(Fc-FL)、Fc-R1、またはFc-R2と45分間、37℃でインキュベートした。次いで、細胞を、FGF23-WTでさらに10分間刺激し、細胞溶解物を、SDS-PAGEに供し、抗pMAPK抗体でのイムノブロッティングによって、MAPK刺激について解析した。抗FGFR1抗体および抗MAPK抗体を、タンパク質ローディングについての対照として使用した。
図3D図3Cの説明を参照のこと。
図3E図3Cの説明を参照のこと。
図3F】細胞がFc-R2で処理された場合、または細胞がFc-FLもしくはFc-R1で処理された場合に、細胞のFGF23誘導性刺激の類似した阻害が起こる;さらに、FGF23 Cテール中のR2に隣接したシステイン残基は、分子内ジスルフィド架橋を形成するという知見を示す。図3F:FGF23-WTおよびFGF23-CSのC末端テールの模式図である。R1およびR2が示される。システイン残基(C)およびセリン残基(S)が強調されている。
図3G】細胞がFc-R2で処理された場合、または細胞がFc-FLもしくはFc-R1で処理された場合に、細胞のFGF23誘導性刺激の類似した阻害が起こる;さらに、FGF23 Cテール中のR2に隣接したシステイン残基は、分子内ジスルフィド架橋を形成するという知見を示す。図3G:還元条件(R)下および非還元条件(NR)下での、大腸菌(E.coli)において発現させたFGF23-WTおよびFGF23-CS変異体のSDS-PAGE解析である。FGF23-WTおよびFGF23-CSは、本明細書中の他の場所に記載されるように発現させて精製した。FGF23-CSは、SDS-PAGE上で、還元条件下および非還元条件下の両方で、単一バンドとして移動するが、FGF23-WTは、非還元条件下で2つの異なるバンド(2つのアスタリスクによって表示される)として移動する。両方のタンパク質を、ゲルから切り出して、質量分析に供した。図3H:還元条件(R)下および非還元条件(NR)下での、Expi293F細胞において発現させたFGF23-WTまたはFGF23-CS変異体のSDS-PAGE解析である。大腸菌産生FGF23とは異なり、哺乳動物産生FGF23は、O-結合型グリコシル化されている。還元条件(R)下で、上のバンド(左上のアスタリスク)および下のバンド(左上のアスタリスク)は、それぞれ、FGF23のO-結合型グリコシル化形態および非グリコシル化形態または低グリコシル化形態を提示する(図7Bも参照すること)。非還元条件(NR)下で、グリコシル化FGF23(右上のアスタリスク)および非グリコシル化FGF23(右下のアスタリスク)は両方とも、分子内ジスルフィド架橋の形成のために、SDS-PAGE上で還元タンパク質よりも速く移動する。還元条件下および非還元条件下の両方でのSDS-PAGE上でのFGF23-WTまたはFGF23-CS(Expi293F細胞において発現)の移動は、類似しており、上のバンドおよび下のバンドは、それぞれ、リガンドのO結合型グリコシル化形態および非グリコシル化形態を表す。
図3H図3Gの説明を参照のこと。
図4A】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4A:αクロトー-FGFR1cキメラ受容体を安定に発現するL6細胞を、刺激せずに放置したか、またはExpi293F細胞において発現させたFGF23-WTもしくはFGF23-R1(左パネル)、または大腸菌において発現させたFGF23-WTおよびFGF23-R1(右パネル)、Nb85-FC融合(左パネル)、もしくはFc-R1(右パネル)で10分間、37℃で刺激した。刺激されていない細胞またはリガンド刺激された細胞の細胞溶解物を、SDS-PAGEに供し、それぞれ、抗pFRS2抗体および抗pMAPK抗体での、ならびに対照としての抗MAPKでのイムノブロッティングによって、FRS2αリン酸化およびMAPKの活性化について解析した。
図4B】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4B:TIRFMによってイメージングされた、生存L6細胞の表面上の単一のHaloTag-αクロトー粒子の拡大図である。αクロトーの細胞外側のHaloTagは、細胞不透過性のAlexa488 HaloTagリガンドで標識した。粒子密度は、0.21粒子/μm2である。10-Hz記録の開始時の単一フレーム(100-ms露光)が示される。スケールバー、5μm。
図4C】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4C:10-s記録期間中の動くHaloTag-αクロトー粒子の自動化検出および追跡。単一粒子追跡を、材料および方法に記載されるように行った。挿入図、高倍率。
図4D】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4D:HaloTag-αクロトー粒子の代表的な単一段階光退色である。HaloTag-αクロトー粒子を取り囲む直径0.55μmの領域内の平均蛍光強度を、局所バックグラウンド減算(それぞれ、0.55および1.1μmの内径および外径を有する同心環状領域を使用)で測定し、時間に対してプロットした。退色前の粒子の類似した強度に注意すること(水平線によって強調)。
図4E】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4E:刺激せずに放置された細胞(上のパネル)またはFGF23-WTで約10分間刺激された細胞(下のパネル)におけるHaloTag-αクロトーの代表的な強度分布である。粒子密度は、それぞれ、刺激されていない条件および刺激された条件について、0.26および0.05粒子/μm2であった。強度は、粒子の蛍光の2Dガウスフィット下の体積を表す。強度を、各記録の始まり(3フレーム)から取得し、その分布を、混合ガウスモデルとフィットさせた。黒破線、混合フィット。実線、個々の成分。
図4F】FGF23-WTが、細胞膜上に発現した2つのαクロトー分子に同時に結合するという知見を示す。図4F:刺激されていない細胞(18細胞、5トランスフェクション)、ならびにFGF23-WTで刺激された細胞(16細胞、4トランスフェクション)、FGF23-R1で刺激された細胞(14細胞、3トランスフェクション)、FGF23-R2で刺激された細胞(16細胞、3トランスフェクション)、およびNb85-Fcで刺激された細胞(16細胞、3トランスフェクション)における、その平均二乗変位から計算されたHaloTag-αクロトー粒子の拡散係数である。エラーバーは平均±SEを示し、***はスチューデントのt検定によるP<0.0001を示す。
図5A図5Aは、様々な哺乳動物の種由来のFGF23のC末端テールのアミノ酸配列アライメントを示す(H.サピエンス(H. Sapiens)(ヒト)、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基180~251、M.ムラッタ(M. mulatta)(アカゲザル(rhesus monkey))、SEQ ID NO:8、E.キャバルス(E. caballus)(ウマ)、SEQ ID NO:9、L.アフリカーナ(L. africana)(ゾウ)、SEQ ID NO:10、B.タウルス(B. Taurus)(ウシ)、SEQ ID NO:11、C.ループスファミリアリス(C. lupus familiaris)(イヌ)、SEQ ID NO:12、M.ムスクルス(M. musculus)(マウス)、SEQ ID NO:13、R.ノルベギクス(R. norvegicus)(ラット)、SEQ ID NO:14、M.アウラツス(M. auratus)(ハムスター)、SEQ ID NO:15、G.ギャルス(G. gallus)(ニワトリ)、SEQ ID NO:16、A.ミシシッピエンシス(A. mississippiensis)(ワニ)、SEQ ID NO:17、X.ラエビス(X. laevis)(カエル)、SEQ ID NO:18、D.レリオ(D. rerio)(ゼブラフィッシュ)、SEQ ID NO:19)。リピート1(R1)およびリピート2(R2)が表示され、保存されたシステイン残基が強調されている。クロトー結合に重要である保存されたDPLモチーフが、同様に強調されている。図5Bは、他の脊椎動物の種由来のFGF23のC末端テールのアミノ酸配列アラインメントを示す。哺乳動物以外の脊椎動物においては、DPLモチーフの2個のアミノ酸(DP)のみが保存されており、それらが強調されている。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図6】GST-FL、GST-R1、GST-R2、およびGSTのSDS-PAGE解析を示す。
図7A図7Aは、Cys206-Cys244ジスルフィド結合を含有する、大腸菌において発現させたFGF23の消化断片を直接同定した、MS/MS断片化スペクトルを示す。ジスルフィド連結ペプチドを形成する2つのペプチドのそれぞれのフラグメントイオンに対応するbおよびyイオンのマッピングを、強調した。
図7B図7Bは、PRM測定によって提示された、様々なFGF23試料における架橋されたCys206およびCys244対架橋されていないCys206およびCys244の相対量を示す。高分解能の独特のMS2イオン(異なるトレース)を、Skyline可視化で、手動で検査した。
図8A図8Aは、Cys206-Cys244ジスルフィド結合を含有する、Expi293F細胞において発現させたFGF23(mFGF23-WT)の断片を直接同定した、MS/MS断片化スペクトルを示す。ジスルフィド連結ペプチドを形成する2つのペプチドのそれぞれのフラグメントイオンに対応するbおよびyイオンのマッピングを、強調した。
図8B図8Bは、O-グリコシダーゼおよびα-(2→3,6,8,9)-ノイラミニダーゼで処理された、精製されたmFGF23-WT、mFGF23-CS(C206S/C244S変異体)、およびmFGF23-R1(C末端残基C206-I251が欠如したバリアント)のSDS-PAGE解析を示す。全てのFGF23バリアントを、Expi293細胞において発現させた。
図9】示されるような様々なプロテアーゼでの限定プロテアーゼ消化に供した、Expi293細胞から発現および精製されたFGF23-WTおよびFGF23-CSのSDS-PAGE解析を示す。
図10A】FGF23-WTおよびFGF23-CSが、類似した親和性でαクロトーに結合し、類似した程度まで細胞シグナル伝達を活性化するという知見を示す。図10A:FGF23-WT、FGF23-CS、FGF23 D188A、およびFGF23-CS D188AのsKLAに対する結合のBLIセンサーグラムである。抗マウスFc抗体でコーティングされたバイオセンサーを用いて、抗Flag抗体を固定化し、続いて、Flagタグ付きFGF23-WTまたはFGF23-CSを捕捉した。次いで、バイオセンサーを、一連の濃度のsKLA(200、100、50、25、12.5、および6.25 nM)を含有する溶液中に浸漬した。結果として生じたセンサーグラムを、1:1のリガンド:受容体結合モデルとフィットさせて、動態パラメータおよび解離定数を計算した。
図10B】FGF23-WTおよびFGF23-CSが、類似した親和性でαクロトーに結合し、類似した程度まで細胞シグナル伝達を活性化するという知見を示す。図10B~10C:αクロトーと共にFGFR1cを安定に発現するHEK293細胞を、刺激せずに放置したか、または示されるように増加する濃度のFGF23-WTまたはFGF23-CS変異体で10分間、37℃で刺激した。細胞溶解物を、SDS-PAGEに供し、それぞれ、抗FGFR1-pS、抗pFRS2、および抗pMAPK抗体での、ならびに対照としての抗MAPKでのイムノブロッティングによって、FGFR1のセリンリン酸化、FRS2のチロシンリン酸化について、およびMAPK活性化について解析した。
図10C】FGF23-WTおよびFGF23-CSが、類似した親和性でαクロトーに結合し、類似した程度まで細胞シグナル伝達を活性化するという知見を示す。図10B~10C:αクロトーと共にFGFR1cを安定に発現するHEK293細胞を、刺激せずに放置したか、または示されるように増加する濃度のFGF23-WTまたはFGF23-CS変異体で10分間、37℃で刺激した。細胞溶解物を、SDS-PAGEに供し、それぞれ、抗FGFR1-pS、抗pFRS2、および抗pMAPK抗体での、ならびに対照としての抗MAPKでのイムノブロッティングによって、FGFR1のセリンリン酸化、FRS2のチロシンリン酸化について、およびMAPK活性化について解析した。
図10D】FGF23-WTおよびFGF23-CSが、類似した親和性でαクロトーに結合し、類似した程度まで細胞シグナル伝達を活性化するという知見を示す。図10D:αクロトーに結合するFGF23のC末端テールの二価性を示す模式図である。
図11A】TIRFMによる遊離Alexa488 HaloTagリガンドの単一分子の非限定的な検出を示す。図11A:ガラス上にスポットされたAlexa488 HaloTagリガンドのTIRFMイメージである。スケールバー、2.5μm。
図11B】TIRFMによる遊離Alexa488 HaloTagリガンドの単一分子の非限定的な検出を示す。図11B:Alexa488 HaloTagリガンド粒子の代表的な単一段階光退色である。粒子を取り囲む直径0.55μmの領域内の平均蛍光強度を、局所バックグラウンド減算(同心環を使用)で測定し、時間に対してプロットした。退色前および退色後の3つの例の類似した強度に注意すること(水平線)。
図11C】TIRFMによる遊離Alexa488 HaloTagリガンドの単一分子の非限定的な検出を示す。図11C:Alexa488 HaloTagリガンド粒子の強度分布である。分布は、単一ガウスと最も良くフィットした(実線の曲線)。強度分布解析のために、強度を、粒子の蛍光を2Dガウス関数とフィットさせ、フィット下の体積を取ることによって計算した。
図12】可逆的な二量体形成に適合するHaloTag-αクロトー粒子の個々の軌跡の強度変化の例を示す。矢印は、粒子強度の急激な倍加を強調する。粒子の強度分布に基づいて、開始強度は、単一分子の強度に対応する可能性が高い(図4E)。
図13】一過性に合体するHaloTag-αクロトー粒子の非限定的な例を示す。2つの単量体(矢じり)が互いに向かって拡散し、合体し、次いで解離して単量体に戻ることを示す、連続したフレームのイメージシーケンスである。カラールックアップテーブル(下)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
FGF23は、腎Pi排出の重要な生理学的調節因子としてふるまう、骨由来のホルモンである。FGF23を過剰発現するトランスジェニックマウスは、低リン酸血症を発症するのに対して、FGF23ノックアウトマウスは、高リン酸血症を発症し、これは、ヒトFGF23の全身注射によって逆転させることができる。
【0010】
重要なことに、FGF23のこれらのインビボ作用は、αクロトーの存在を必要とする。αクロトーノックアウトマウスまたはFGF23/αクロトーダブルノックアウトマウス中へのFGF23の注射は、血清リン酸レベルに影響を及ぼさなかった。他の内分泌型FGFと同様に、FGF23は、FGFRに対してアイソフォーム特異性を示し、FGFR1およびFGFR3のIIIcアイソフォーム、ならびに単一のアイソフォームのみを示すFGFR4に結合して活性化する。
【0011】
FGF23は、リン酸代謝の調節不全に関連する、多数のヒト疾患に関連している。X連鎖性低リン酸血症(XLH)は、PHEX(X染色体上に位置するエンドペプチダーゼに対して相同性を有するリン酸調節遺伝子(phosphate regulating gene with homologies to endopeptidases located on the X chromosome))が機能喪失変異を含有し、この変異の結果が循環FGF23の上昇である、遺伝性障害である。同様に、FGF23のレベルの増加が、それぞれ、DMP-1またはENPP-1中に変異を有する、常染色体劣性低リン酸血症性くる病1(ARHR1)または常染色体劣性低リン酸血症性くる病2(ARHR2)患者において観察された。常染色体優性低リン酸血症性くる病(ADHR)においては、(これらに限定されるわけではないが、R176Qおよび/またはR179Qのような)FGF23における機能獲得変異が、FGF23の2つの不活性断片を作る、これらの部位での天然のタンパク質分解性切断を防止する。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、そのような切断は、下方調節の機序を表すことができる。高レベルのFGF23を産生する腫瘍を保有する癌は、腫瘍誘導性骨軟化症(TIO)をもたらし、これは、高いFGF23レベルを分泌する腫瘍の外科的除去によって逆転させることができる。FGF23の活性の増加が、上述の障害を有する患者において観察され、FGF23の活性の低下がまた、高リン酸血症性家族性腫瘍性石灰沈着症(HFTC)の患者において見出されている。KLAにおけるホモ接合性機能喪失変異であるH193Rがまた、HFTC患者において見出された。
【0012】
本開示は、一部、FGF23のC末端テールが2つのタンデムリピートを含有し、その各々が高い親和性でαクロトーに結合するという発見に関する。これは、そのC末端テールがβクロトーに対する単一の結合部位を含有する、FGF19およびFGF21とは対照的である。2つのリピートの各々または両方のリピートを含有する操作されたFGF23バリアントは、αクロトーに特異的に結合し、類似した程度まで細胞シグナル伝達を刺激する。さらに、本研究は、第2のC末端リピートに隣接する2個のシステイン残基が、哺乳動物細胞によって分泌されるFGF23においてジスルフィド架橋を形成することを示す。しかしながら、FGF23の酸化型または還元型は両方とも、類似したαクロトー結合特性、および類似した細胞刺激活性を示す。さらに、FGF23 WTは、キメラαクロトー-FGFRタンパク質を発現する細胞においてMAPK活性化を誘導し、細胞表面上の個々のαクロトー分子のTIRFMイメージングにより、FGF23が2つのαクロトー分子に同時に結合する能力を有することが実証される。これらの洞察により、FGF23調節の複雑さ、およびFGF23/FGFR/αクロトーシグナル伝達複合体の集合におけるその役割が明らかになる。
【0013】
ある種の態様において、本発明は、FGF23のR2領域(SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239)を含む構築物を提供する。他の態様において、構築物は、αクロトーに対するFGF23結合およびFGFR活性化を介した細胞シグナル伝達を阻止することによって、FGF23アンタゴニストとして機能する。さらに他の態様において、構築物は、FGFR活性化を防止する。さらに他の態様において、本開示の構築物は、これに限定されるわけではないがリン酸代謝障害のような、FGF23の調節不全および/または過剰発現に関連する疾患または障害を処置するために使用することができる。本発明はさらに、それを必要とする哺乳動物において内分泌型FGFに関連した疾患または障害を処置する、寛解させる、および/または、および/または防止する方法を提供する。
【0014】
定義
本明細書中で使用されるように、以下の用語の各々は、このセクションにおいてそれに関連している意味を有する。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、一般に、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書中で使用される命名法、ならびに動物薬理学、薬学、分離科学、および有機化学における実験手法は、当技術分野において周知であって、一般的に利用されているものである。工程の順番またはある種の動作を行うための順番は、本教示が実施可能なままである限り、重要ではないことが理解されるべきである。セクションの見出しの任意の使用は、文書の読解を助けることを意図しており、限定として解釈されるべきではない;セクションの見出しに関連する情報は、その特定のセクション内にまたはその外に存在し得る。本文書において参照される全ての刊行物、特許、および特許文書は、あたかも個別に参照により組み入れられるように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
本願において、要素または成分が、列挙された要素または成分のリストに含まれる、および/またはそこから選択されると言われる場合、その要素または成分は、列挙された要素または成分のうちのいずれか1つであることができ、かつ列挙された要素または成分のうちの2つ以上からなる群より選択され得ることが、理解されるべきである。
【0016】
本明細書中に記載される方法において、行為は、時間的または操作的なシーケンスが明示的に列挙される場合を除いて、任意の順序で実施することができる。さらに、指定された行為は、明示的な請求項の文言が、それらが別々に実施されることを列挙しない限り、同時に実施することができる。例えば、特許請求されるXを行う行為および特許請求されるYを行う行為は、単一の操作内で同時に実施することができ、結果として生じる過程は、特許請求される過程の文字通りの範囲内に入ることになる。
【0017】
本文書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」という用語は、文脈が明らかにそうでないと規定しない限り、1つまたは1つよりも多くを含むように使用される。「または」という用語は、他に指示されない限り、非排他的な「または」をさすように使用される。「AおよびBのうちの少なくとも1つ」または「AまたはBのうちの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。
【0018】
本明細書中で使用されるように、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈によって、ある程度、変動するであろう。本明細書中で使用されるように、量、時間の長さ等のような測定可能な値をさす場合、「約」という用語には、指定された値からの±20%または±10%、±5%、±1%、または±0.1%の変動が包含されるものとするが、それは、そのような変動が、開示された方法を実施するのに適切であるためである。
【0019】
本明細書中で使用されるように、「ALB」または「アルブミン」という用語は、血清アルブミンタンパク質をさす。ある種の態様において、アルブミンは、ヒト血清アルブミンをさす。ウシ血清アルブミン、ウマ血清アルブミン、およびブタ血清アルブミンのような他のアルブミンの使用もまた、本発明内で企図される。
【0020】
本明細書中で使用されるように、「αクロトー」または「KLA」という用語は、SEQ ID NO:1(UniProtKB: Q9UEF7):
のアミノ配列のタンパク質をさす。
【0021】
本明細書中で使用されるように、「βクロトー」または「KLB」という用語は、SEQ ID NO:2(UniProtKB: Q86Z14):
のアミノ配列のタンパク質をさす。
【0022】
「アプリケーター」という用語は、その用語が本明細書中で使用されるように、本発明の化合物および組成物を投与するための、皮下注射器、ピペット等を含むが、これらに限定されるわけではない、任意のデバイスを意味する。
【0023】
遺伝子の「コード領域」は、それぞれ、遺伝子の転写によって産生されるmRNA分子のコード領域と相同であるかまたは相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基、および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなる。mRNA分子の「コード領域」も、mRNA分子の翻訳中にトランスファーRNA分子のアンチコドン領域とマッチするか、または終止コドンをコードするmRNA分子のヌクレオチド残基からなる。したがって、コード領域には、mRNA分子によってコードされた成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質エクスポートシグナル配列のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基が含まれ得る。
【0024】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞の大部分のまたは全ての生理学的条件の下で、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0025】
本明細書中で使用されるように、「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持することができず、疾患が寛解しない場合、動物の健康が悪化し続ける動物の健康状態である。
【0026】
本明細書中で使用されるように、動物における「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持することができるが、動物の健康状態が、障害が存在しない場合より不利である健康状態である。未処置のままにされた場合、障害は、動物の健康状態のさらなる減少を必ずしも引き起こさない。
【0027】
本明細書中で使用されるように、化合物の「有効量」または「治療的有効量」または「薬学的有効量」という用語は、化合物が投与された対象に有益な効果を提供するために十分な化合物の量をさすため、交換可能に使用される。
【0028】
本明細書中で使用されるように、「コードする」とは、ヌクレオチド(即ち、rRNA、tRNA、およびmRNA)の定義された配列、またはアミノ酸の定義された配列のいずれか、ならびにそれらに由来する生物学的特性を有する、生物学的過程における他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列の固有の特性をさす。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞またはその他の生物学的な系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、一般的に、配列表に提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードすると呼ばれ得る。
【0029】
本明細書中で使用されるように、「内在性」とは、生物、細胞、組織、もしくは系に由来するか、またはそれらの内部で産生された任意の材料をさす。本明細書中で使用されるように、「外来性」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系の外部から導入されたか、または外部で産生された任意の材料をさす。
【0030】
「発現」という用語は、本明細書中で使用されるように、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0031】
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをさす。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性要素を含み;発現のための他の要素は、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されてもよい。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドが組み入れられる、コスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソームに含有されているもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような当技術分野において公知の全てのものが含まれる。
【0032】
本明細書中で使用されるように、「Fc」という用語は、ヒトIgG(免疫グロブリン)Fcドメインをさす。IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のようなIgGのサブタイプが、Fcドメインとしての使用について企図される。
【0033】
本明細書中で使用されるように、「Fc領域」とは、IgG分子のパパイン消化によって入手される結晶化可能な断片に対応する、IgG分子の一部分である。Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結されているIgG分子の2つの重鎖のC末端半分を含む。これは、いかなる抗原結合活性も有しないが、炭水化物部分、ならびに補体およびFcRn受容体を含むFc受容体に対する結合部位を含有する。Fc断片は、第2の定常ドメインCH2(Kabatナンバリングシステムによる、ヒトIgG1の残基231~340)および第3の定常ドメインCH3(残基341~447)の全体を含有する。「IgGヒンジ-Fc領域」または「ヒンジ-Fc断片」という用語は、Fc領域(残基231~447)およびFc領域のN末端から延びるヒンジ領域(残基216~230)からなるIgG分子の領域をさす。「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する免疫グロブリンの他の一部分である可変ドメインと比べて、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の一部分をさす。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、およびCH3ドメイン、ならびに軽鎖のCHLドメインを含有する。
【0034】
本明細書中で使用されるように、「FcRn受容体」という用語は、ヒトにおいてFCGRT遺伝子によってコードされるタンパク質である、ブランベル(Brambell)受容体としても知られる新生児Fc受容体(FcRn)をさす。FcRnは、抗体のFcドメインに特異的に結合する。FcRnは、内皮細胞におけるリソソーム分解を低下させることによって、IgGおよび血清アルブミンの半減期を延長する。IgG、血清アルブミン、およびその他の血清タンパク質は、ピノサイトーシスを介して連続的に内部移行される。一般に、血清タンパク質は、エンドソームからリソソームへ輸送され、そこで分解される。FcRnは、酸性pH(<6.5)でIgGに結合するが、中性以上のpHでは結合しないため、上皮細胞にわたってIgGのFcRn媒介性トランスサイトーシスが可能である。IgGおよび血清アルブミンは、わずかに酸性のpH(<6.5)でFcRnに結合し、細胞表面にリサイクルされ、そこで、血液の中性pH(>7.0)で放出される。このようにして、IgGおよび血清アルブミンは、リソソーム分解を回避する。
【0035】
IgG分子のFc部分は、重鎖の定常領域、特にCH2ドメインに位置する。Fc領域は、B細胞の表面受容体であるFc受容体(FcRn)、およびまた補体系のタンパク質に結合する。IgG分子のFc領域のFcRnに対する結合は、受容体を有する細胞を活性化し、したがって免疫系を活性化する。マウスFc-マウスFcRnおよびヒトFc-ヒトFcRnの相互作用に重要なFc残基が、同定されている(Dall'Acqua et al., 2002, J. Immunol. 169(9):5171-80)。FcRn結合ドメインは、IgG分子のCH2ドメイン(またはそのFcRn結合部分)を含む。
【0036】
本明細書中で使用されるように、核酸に適用される場合の「断片」という用語は、より大きな核酸の部分配列をさす。核酸の「断片」は、少なくとも約5、10、15、50~100、100~500、500~1000、1000~1500ヌクレオチド、1500~2500、または2500ヌクレオチド(およびその間の任意の整数値)であることができる。本明細書中で使用されるように、タンパク質またはペプチドに適用される場合の「断片」という用語は、より大きなタンパク質またはペプチドの部分配列をさし、少なくとも約5、10、20、50、100、200、300、または400アミノ酸長(およびその間の任意の整数値)であることができる。
【0037】
本明細書中で使用されるように、「FGF19」という用語は、SEQ ID NO:3(UniProtKB: O95750):
のアミノ配列のポリペプチドをさす。
【0038】
本明細書中で使用されるように、「FGF21」という用語は、SEQ ID NO:4(UniProtKB: Q9NSA1):
のアミノ配列のポリペプチドをさす。
【0039】
本明細書中で使用されるように、「FGF23」という用語は、SEQ ID NO:5(UniProtKB: Q9GZV9):
のアミノ配列のポリペプチドをさす。
【0040】
ある種の態様において、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基1~24は、FGF23のシグナルペプチドに対応する。ある種の態様において、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基25~162は、FGF23のFGFドメインに対応する。ある種の態様において、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基180~205は、FGF23のR1領域に対応する。ある種の態様において、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基212~239は、FGF23のR2領域に対応する。
【0041】
「遺伝子移入」および「遺伝子送達」とは、特定の核酸配列を標的細胞中に確実に挿入するための方法または系をさす。
【0042】
本明細書中で使用されるように、本開示内で企図される構築物についての「インビボ半減期」という用語は、動物に投与された量の半分が、動物中の循環および/またはその他の組織から除去されるのに必要とされる時間をさす。構築物のクリアランス曲線が時間の関数として構築される場合、曲線は通常、急速なα相(血管内空間と血管外空間との間の投与された分子の平衡を表し、一部、分子のサイズによって決定される)およびより長いβ相(血管内空間における分子の異化を表す)を有する、二相性である。ある種の態様において、「インビボ半減期」という用語は、実際には、β相における分子の半減期に対応する。
【0043】
「相同」とは、本明細書中で使用されるように、2個のポリマー分子の間、例えば、2個のDNA分子もしくは2個のRNA分子のような2個の核酸分子の間、または2個のポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性をさす。2個の分子の両方において、あるサブユニット位置が、同一のモノマーサブユニットによって占拠されている場合;例えば、2個のDNA分子の各々において、ある位置がアデニンによって占拠されている場合、それらは、その位置において相同である。2個の配列の間の相同性は、一致するかまたは相同である位置の数の直接関数であり;例えば、2個の配列の位置の半分(例えば、10サブユニット長ポリマーにおいて5個の位置)が相同である場合、それらの2個の配列は50%相同であり;位置の90%(例えば、10個中9個)が一致するかまたは相同である場合、それらの2個の配列は90%相同である。例えば、DNA配列5'-ATTGCC-3'および5'-TATGGC-3'は、50%の相同性を共有する。
【0044】
本明細書中で使用されるように、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスとして定義される。タンパク質のこのクラスに含まれる5種のメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌液、ならびに気道および尿生殖器の分泌粘液のような身体の分泌液中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、大部分の哺乳動物において、一次免疫応答において産生される主な免疫グロブリンである。それは、凝集、補体結合、およびその他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであって、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。IgDは、公知の抗体機能を有していないが、抗原受容体として役立つことができる免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲン曝露時に、マスト細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって、即時型過敏を媒介する免疫グロブリンである。
【0045】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的に、プロモーターに対応する誘導剤が細胞に存在する場合にのみ、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0046】
「阻害する」および「拮抗する」という用語は、本明細書中で使用されるように、分子、反応、相互作用、遺伝子、mRNA、および/またはタンパク質の発現、安定性、機能、または活性を、測定可能な量だけ低下させるか、または完全に防止することを意味する。阻害剤は、例えば、部分的にまたは完全に、タンパク質、遺伝子、およびmRNAの安定性、発現、機能、および活性の刺激を阻止するか、減少させるか、防止するか、活性化を遅延させるか、不活化するか、脱感作するか、またはダウンレギュレートする化合物、例えば、アンタゴニストである。
【0047】
「説明材料」には、その用語が本明細書中で使用されるように、キット内の本発明の組成物および/または化合物の有用性を伝えるために使用され得る刊行物、記録、図、またはその他の表現媒体が含まれる。キットの説明材料は、例えば、本発明の化合物および/もしくは組成物を含有している容器に添付されてもよいし、または化合物および/もしくは組成物を含有している容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明材料は、受取人が説明材料および化合物を協力的に使用することを意図して、容器と別に出荷されてもよい。説明材料の送達は、例えば、キットの有用性を伝える刊行物またはその他の表現媒体の物理的送達によってもよいし、あるいは電子的伝達、例えば、電子メールまたはウェブサイトからのダウンロードのように、コンピューターによって達成されてもよい。
【0048】
「単離された」とは、天然の状態から変更されているかまたは除去されていることを意味する。例えば、生存している動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然の状態の共存する材料から部分的にまたは完全に分離された同一の核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してもよいし、または、例えば、宿主細胞のような非ネイティブの環境に存在してもよい。
【0049】
「単離された核酸」とは、天然に存在する状態において隣接している配列から分離された核酸のセグメントまたは断片、即ち、その断片に通常隣接している配列、即ち、天然に存在するゲノムにおいてその断片に隣接している配列から除去されたDNA断片をさす。その用語は、核酸に天然に付随する他の成分、即ち、細胞内で天然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも当てはまる。したがって、その用語には、例えば、ベクター、自律複製性のプラスミドもしくはウイルス、もしくは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへ組み入れられた組換えDNA、または他の配列と無関係の別の分子として(即ち、cDNAとして、もしくはPCRもしくは制限酵素消化によって作製されたゲノムもしくはcDNAの断片として)存在する組換えDNAが含まれる。それには、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0050】
本明細書中で使用されるように、「モジュレートする」という用語は、生物学的状態の変化、即ち、増加、減少等をさすものである。例えば、「モジュレートする」という用語は、標的タンパク質mRNAの転写、標的タンパク質mRNAの安定性、標的タンパク質mRNAの翻訳、標的タンパク質の安定性、標的タンパク質の翻訳後修飾、標的タンパク質の活性、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるわけではない、標的タンパク質の発現、安定性、または活性を正にまたは負に調節する能力をさすものと解釈される。さらに、モジュレートする、という用語は、標的タンパク質の活性を含むが、これに限定されるわけではない活性の増加、減少、遮断、変更、無効化、または回復をさすために使用され得る。
【0051】
「天然に存在する」とは、物質に適用されるように、その物質が自然界に見出され得るという事実をさす。例えば、自然界の起源から単離され得、人間によって故意に修飾されていない、(ウイルスを含む)生物に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列は、天然に存在する配列である。
【0052】
他に特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互の縮重バージョンであり、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、いくつかのバージョンにおいて、イントロンを含有していてもよいという程度に、イントロンも含まれ得る。
【0053】
「機能的に連結された」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結をさす。例えば、第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、その第1の核酸配列は、その第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターが、コード配列の転写または発現に影響する場合、そのプロモーターは、そのコード配列と機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は、連続しており、2個のタンパク質コード領域を接合する必要がある場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0054】
組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)注射、静脈内(i.v.)注射、筋肉内(i.m.)注射、もしくは胸骨内注射、または注入技術が含まれる。
【0055】
本明細書中で使用されるように、「薬学的組成物」という用語は、本発明において有用な少なくとも1種の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤のような他の化学的成分との混合物をさす。薬学的組成物は、化合物の生物への投与を容易にする。静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼内、肺内、頭蓋内、および局所投与を含むが、これらに限定されるわけではない、化合物を投与する複数の技術が、当技術分野において存在する。
【0056】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される」という用語は、組成物の生物学的活性または特性を抑止せず、比較的無毒である担体または希釈剤のような材料をさし、即ち、その材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、それが含有されている組成物の成分のいずれかと有害に相互作用することもなく、個体へ投与され得る。
【0057】
「薬学的に許容される担体」には、その意図された機能を実施することができるよう、対象においてまたは対象へ本発明の化合物を保持するかまたは輸送することに関与する、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル材料のような、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物、または担体が含まれる。典型的には、そのような化合物は、ある器官または身体の一部分から、別の器官または身体の一部分へ、保持されるかまたは輸送される。塩または担体は、各々、製剤の他の成分と適合性であって、対象に対して有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、乳糖、ブドウ糖、およびショ糖のような糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンのようなデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースのようなその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐薬ロウのような賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;希釈剤;造粒剤;滑沢剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;風味剤;芳香剤;保存剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;凝固剤;懸濁化剤;界面活性剤;湿潤剤;担体;安定剤;ならびに薬学的製剤において利用されるその他の無毒の適合性物質、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される担体」には、化合物の活性と適合性であって、対象にとって生理学的に許容される、全ての任意のコーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、および吸収遅延剤等も含まれる。補足的な活性化合物が、組成物へ組み入れられてもよい。
【0058】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される塩」という言語は、無機酸、有機酸を含む、薬学的に許容される無毒の酸から調製された、投与される化合物の塩、それらの溶媒和化合物、水和物、または包接化合物をさす。適当な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製され得る。
【0059】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して連結された、アミノ酸残基、その関連する天然に存在する構造的バリアント、および合成の天然に存在しない類似体から構成されたポリマーをさす。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を使用して合成され得る。「タンパク質」という用語は、典型的には、大きいポリペプチドをさす。「ペプチド」という用語は、典型的には、短いポリペプチドをさす。
【0060】
ポリペプチド配列を描写するための従来の記法が、本明細書中で使用され:ポリペプチド配列の左端がアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端がカルボキシル末端である。本明細書中で使用されるように、「ペプチド模倣体」とは、親ペプチドの生物学的作用を模倣することができる非ペプチドの構造要素を含有している化合物である。ペプチド模倣体は、ペプチド結合を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。
【0061】
本明細書中で使用されるように、「防止する」または「防止」という用語は、まだ起こっていない場合には、障害もしくは疾患の発症が起こらないこと、または障害もしくは疾患の発症が既に存在する場合には、さらなる障害もしくは疾患の発症が起こらないことを意味する。障害または疾患に関連した症状のいくつかまたは全てを防止する能力も、考慮される。疾患および障害は、本明細書中で交換可能に使用される。
【0062】
「プロモーター」という用語は、本明細書中で使用されるように、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0063】
本明細書中で使用されるように、「プロモーター/調節配列」という用語は、そのプロモーター/調節配列と機能的に連結された遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの事例において、この配列は、コアプロモーター配列であってよく、他の事例において、この配列は、遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサー配列およびその他の調節要素も含んでいてよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0064】
「組換えDNA」という用語は、本明細書中で使用されるように、異なる起源に由来するDNA片を接合することによって作製されたDNAとして定義される。「組換えポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用されるように、組換えDNA法を使用することによって作製されたポリペプチドとして定義される。
【0065】
「RNA」という用語は、本明細書中で使用されるように、リボ核酸として定義される。
【0066】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使用されるように、第1の分子(例えば、抗体)が、第2の分子(例えば、特定の抗原性エピトープ)と優先的に結合するが、必ずしもその第2の分子とのみ結合しなくてもよいことを意味する。
【0067】
本明細書中で使用されるように、「対象」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物をさす。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウス哺乳動物のような家畜およびペットが含まれる。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0068】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子によってコードされたまたは指定されたポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的に、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0069】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書中で使用されるように、外来性の核酸が宿主細胞へ移入されるかまたは導入される過程をさす。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外来性核酸によってトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入されたものである。細胞には、最初の主細胞およびその子孫が含まれる。
【0070】
本明細書中で使用されるように、「処置」または「処置すること」という用語は、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害を発症する可能性の治療、治癒、緩和、軽減、変更、矯正、寛解、改善、または影響を目的とした、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害を発症する可能性を有する対象への、治療剤、即ち、本発明において有用な組成物(単独もしくは別の薬学的薬剤との組み合わせ)の適用もしくは投与、または(例えば、診断もしくはエクスビボ適用のための)対象から単離された組織もしくは細胞株への、治療剤の適用もしくは投与として定義される。そのような処置は、薬理ゲノミクスの領域から入手された知識に基づき、具体的に個別化または修飾され得る。個々の症例における適切な治療量は、ルーチンの実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0071】
「転写制御下」または「機能的に連結された」という語句は、本明細書中で使用されるように、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するため、ポリヌクレオチドに対して正確な位置および方向にあることを意味する。
【0072】
「バリアント」とは、その用語が本明細書中で使用されるように、それぞれ、参照の核酸配列またはペプチド配列と配列が異なるが、参照分子の必須の特性を保持している核酸配列またはペプチド配列である。核酸バリアントの配列の変化は、参照核酸によってコードされたペプチドのアミノ酸配列を変更しなくてもよいし、またはアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および短縮をもたらしてもよい。ペプチドバリアントの配列の変化は、典型的には、限定的または保存的であるため、参照ペプチドおよびバリアントの配列は、全体的に非常に類似しており、多くの領域において、同一である。バリアントおよび参照ペプチドは、1個または複数の置換、付加、または欠失の任意の組み合わせによってアミノ酸配列が異なっていてよい。核酸またはペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントのような天然に存在するものであってもよいし、または天然に存在することが未知のバリアントであってもよい。核酸およびペプチドの天然に存在しないバリアントは、変異誘発技術によって、または直接合成によって作成され得る。
【0073】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部へ送達するために使用され得る構成物である。直鎖状のポリヌクレオチド、イオン性化合物または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含むが、これらに限定されるわけではない、多数のベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語には、自律複製性のプラスミドまたはウイルスが含まれる。その用語には、例えば、ポリリシン化合物、リポソーム等のような、核酸の細胞への移入を容易にする非プラスミド非ウイルス化合物も含まれると解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0074】
本明細書中で使用されるように、「野生型」という用語は、天然に存在する起源から単離された遺伝子または遺伝子産物をさす。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察され、したがって、任意に遺伝子の「正常」または「野生型」形態が設計される。対照的に、「修飾された」または「変異体」という用語は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能的特性において修飾(即ち、変更された特徴)を示す、遺伝子または遺伝子産物をさす。天然に存在する変異体を単離することができ;これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、変更された特徴(変更された核酸配列を含む)を有するという事実によって同定される。
【0075】
本明細書中で使用される略語には、以下のものが含まれる:FGF、線維芽細胞増殖因子;FGFR、線維芽細胞増殖因子受容体;HSPG、ヘパラン硫酸プロテオグリカン;RTK、受容体型チロシンキナーゼ;sKLA、αクロトーの細胞外ドメイン;sKLB、βクロトーの細胞外ドメイン。
【0076】
本開示の全体にわたって、本発明の様々な局面が、範囲フォーマットで提示され得る。範囲フォーマットでの記載は、便宜および簡潔のためのものに過ぎず、本発明の範囲に関する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことが、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、その範囲内の1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲、ならびに個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0077】
開示
本発明の時点での有力なモデルは、FGF23結合が、FGFRおよびαクロトー受容体から構成される細胞膜上のシグナル伝達複合体の集合を促進するというものであった。FGF23のFGFドメインは、FGFRの細胞外ドメインに結合し、C末端テールは、αクロトーの細胞外ドメインに結合する。生化学的解析および構造解析により、FGF19およびFGF21の類似した作用機序が明らかになり、即ち、FGF19またはFGF21のFGF部分は、FGFRの細胞外ドメインに結合し、それらのC末端領域は、βクロトーの細胞外ドメインに結合する。有力な考えは、クロトータンパク質が、古典的FGFによる細胞シグナル伝達においてHSPGが果たす役割に類似して、内分泌型FGFの共受容体として機能するというものであった。しかしながら、内分泌型FGFのC末端テールのクロトー受容体に対する結合親和性は、それらのFGF部分のFGFRに対する結合親和性よりも1000~10,000倍強いため、クロトータンパク質は、内分泌型FGFに対する主要な表面受容体として機能することができ、一方、FGFRは、集合した活性化シグナル伝達複合体の触媒サブユニットとして機能する。ある種の非限定的な態様において、細胞膜上のHSPG分子は、三元FGF23/αクロトー/FGFR複合体の、刺激されたチロシンキナーゼ活性を有するFGF23/αクロトー/FGFR六量体への変換を容易にすることができる。
【0078】
本明細書中で実証されるように、αクロトー結合を担う領域であるFGF23のC末端テールは、αクロトーに対する2つの異なるリガンドとして機能する、2つのタンデムリピートであるR1およびR2を含有する。単一のαクロトー結合部位を有するFGF23バリアントである、FGF23-R1、FGF23-R2、またはR1およびR2の両方を有するFGF23-WTは、類似した結合親和性でαクロトーに結合し、チロシンリン酸化およびMAPK応答を刺激する。R2には、FGF23-WTにおいてジスルフィド架橋を形成する2個のシステインが隣接し;FGF23-WTにおけるジスルフィド架橋形成は、αクロトー結合およびFGFRを介した細胞シグナル伝達に不必要である。さらに、FGF23-WTは、FGFRの細胞質ドメインに融合されたαクロトーの細胞外ドメインから構成されるキメラ受容体分子の二量体化および活性化を刺激し、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡法を用いて、細胞表面上の個々のαクロトー分子を可視化する。これらの実験により、FGF23-WTが、細胞膜においてαクロトーの二価リガンドとして作用し得ることが実証される。ある種の態様において、(これに限定されるわけではないが、Fc-R2のような)操作されたR2含有構築物は、過剰なFGF23の存在量または活性によって引き起こされる疾患を処置するための新しい薬理学的介入を提供する、FGF23-アンタゴニストとして作用する。
【0079】
図10Dに提示される模式図は、内分泌型FGF分子、FGFR、およびクロトータンパク質の間の相互作用を示す。3つの別々の結合事象が特定された。FGFR1cとβクロトーとのヘテロ二量体化についての解離定数K1、FGF21のFGF部分のFGFR1cに対する結合についての解離定数K2、およびFGF21のC末端テールのβクロトーに対する結合についての解離定数K3。各個々の会合の結合測定により、K1は約1μM、K2は約100μM、およびK3は約20 nMの範囲であることが明らかになった。本研究により、FGF23のC末端テールは、以前に特定されたαクロトー結合部位(R1)に加えて、R2と称されるαクロトーに対する第2の異なる結合部位を含有することが実証された。単一のαクロトー結合部位を含有する操作されたFGF23である、FGF23-R1またはFGF23-R2、ならびにFGF23-WT(R1およびR2の両方を有する)は、類似した解離定数でsKLAに結合し、αクロトーと共にFGFR1cを発現する細胞において、類似したFRS2αのチロシンリン酸化およびMAPK応答を刺激する。本研究によりさらに、全長C末端テールの状況で不活性のR1を有するFGF23バリアントは、αクロトー結合およびFGFR活性化による細胞シグナル伝達の刺激のために、R2を利用することが実証された。
【0080】
一つの局面において、FGF23-WTは、ある種の態様ではFGFR1の細胞質ドメインに融合されたαクロトーの細胞外ドメインから構成されるキメラ受容体の二量体化および活性化、ならびにFGF23刺激の前および後のTIRF顕微鏡法を用いた細胞表面上の個々のαクロトー分子の可視化に基づいて、αクロトーの二価リガンドとして作用することができる。図10Dに提示される模式図は、FGF23、FGFR1c、およびαクロトーの間で起こる相互作用を示す。FGF23によって媒介される相互作用とFGF21(またはFGF19)によって媒介される相互作用との違いは、FGF23のC末端テールが、αクロトーに対する異なる高親和性リガンドとして機能する、R1およびR2と称されるタンデムリピートを含有することである。しかし、FGF23-R1、FGF23-R2、およびFGF23-WTは、類似した解離定数でsKLAに結合し、類似したFGFR1c活性化および細胞シグナル伝達を誘導することができるため、ある種の非限定的な態様では、単一のR1またはR2リガンドが、αクロトー結合および細胞刺激に十分である。さらに、二価のFGF23-WTでさえ、αクロトー結合のためおよび細胞活性化のために、単一のR1またはR2を利用する。さらに、マウスをFGF23-WTまたは短縮型FGF23-R1様バリアントのいずれかで処置すると、類似した血清リン酸濃度の調節が結果としてもたらされ、単一のαクロトー結合部位を有するFGF23分子が、インビボ生理学的応答を刺激できることが実証された。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、αクロトーに対するFGF23の二価性は、αクロトーおよびFGFRから構成される細胞膜上のシグナル伝達複合体の効率的な集合を容易にし得る。FGFRに対するαクロトー結合について約1μMのK1の解離定数で、二価FGF23分子は、既存のαクロトー/FGFRヘテロ二量体の集団と、遊離αクロトー分子または別の対の既存のαクロトー/FGFRヘテロ二量体のいずれかとの間の二量体化を刺激し得る。遊離αクロトーに対するR1およびR2の結合親和性は、互いに非常に類似しているが、FGFR1c/αクロトーに対するFGF23-WT結合は、R1との相互作用により制約され、限定され得ること、およびR2リガンドの好みは、遊離αクロトー分子をシグナル伝達複合体に引き合わせることであることが、考えられ得る。したがって、FGFR1c/αクロトーヘテロ二量体の構造は、第1のリピートR1との相互作用を優先的に許容し得るが、ジスルフィド架橋によって接続された2個のシステインが隣接した第2のリピートR2は、遊離αクロトー分子に結合し得、またはその逆も同じである。
【0081】
ある種の態様において、本発明は、FGF23のR2領域(SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239)を含む構築物を提供する。他の態様において、構築物は、αクロトー結合およびFGFR活性化を介した細胞シグナル伝達を阻止することによって、FGF23-アンタゴニストとして機能する。さらに他の態様において、本開示の構築物は、これに限定されるわけではないがリン酸代謝障害のような、FGF23の調節不全および/または過剰発現に関連する疾患または障害を処置するために使用することができる。
【0082】
化合物および組成物
ある種の態様において、本発明は、FGF23のR2領域に対応するポリペプチド、またはその生物学的活性断片を含む構築物を提供する。FGF23のR2領域は、SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239、即ちSAEDN SPMAS DPLGV VRGGR VNTHA GGTに対応する。ある種の態様において、構築物は、SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239に対して少なくとも約90%(例えば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0083】
ある種の態様において、構築物は可溶性である。ある種の態様において、構築物は組換えである。ポリペプチドは、これに限定されるわけではないが(ポリ)ポリペプチドのような、別の分子と融合され得る。ある種の態様において、構築物は、ポリペプチドに融合されている、安定性増強ドメインまたはその生物学的活性断片をさらに含む。ある種の態様において、安定性増強ドメインまたはその生物学的活性断片の存在は、ポリペプチドの半減期を改善し、溶解性を改善し、免疫原性を低下させ、かつ/または活性を増加させる。ある種の態様において、安定性増強ドメインは、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および/または抗体のFc領域のうちの少なくとも1つを含む。ある種の態様において、Fc領域は、IgG Fcである。ある種の態様において、Fc領域は、ヒト免疫グロブリン1(IgG1)、ヒト免疫グロブリン2(IgG2)、ヒト免疫グロブリン3(IgG3)、および/またはヒト免疫グロブリン4(IgG4)のFcドメインである。
【0084】
ある種の態様において、安定性増強ドメインは、ポリペプチドのN末端と融合されている。ある種の態様において、安定性増強ドメインは、ポリペプチドのC末端と融合されている。
【0085】
ある種の態様において、安定性増強ドメインは、ポリペプチドに直接(即ち、リンカーを伴わずに)融合されている。ある種の態様において、安定性増強ドメインは、リンカーを介してポリペプチドに融合されている。ある種の態様において、リンカーは、約1~18個のアミノ酸ならびに/または1~20個のエチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコール単位を含む。ある種の態様において、ポリペプチドと安定性増強ドメインとは、約1~18アミノ酸、1~17アミノ酸、1~16アミノ酸、1~15アミノ酸、1~14アミノ酸、1~13アミノ酸、1~12アミノ酸、1~11アミノ酸、1~10アミノ酸、1~9アミノ酸、1~8アミノ酸、1~7アミノ酸、1~6アミノ酸、1~5アミノ酸、1~4アミノ酸、1~3アミノ酸、1~2アミノ酸、または単一アミノ酸を含むリンカーを介して連結される。
【0086】
ある種の態様において、ポリペプチドのN末端に融合されたリンカーのC末端は、以下:
のうちの1つではない。
【0087】
ある種の態様において、ポリペプチドのC末端に融合されたリンカーのN末端は、以下:
のうちの1つではない。
【0088】
ある種の態様において、構築物はさらに、ペグ化されている(ポリ(エチレングリコール)鎖と融合されている)。ある種の態様において、構築物はさらに、少なくとも部分的にメチル化されている。ある種の態様において、構築物はさらに、C末端アミド化されている。
【0089】
また、本開示の構築物のいずれか1つをコードする核酸も、本明細書中に提供される。本開示はさらに、そのような核酸を含む発現ベクターのような、ベクターを提供する。また、本明細書中に記載される核酸、ベクター、または発現ベクターのいずれか1つを含む、1つの細胞、複数の細胞、または多数の細胞(例えば、哺乳動物細胞)が提供される。また、本開示の構築物を作製するための方法が提供され、該方法は、ある種の態様において、1つの細胞、複数の細胞、または多数の細胞を、核酸、ベクター、または発現ベクターからの1つまたは複数の細胞による構築物の発現のために適当な条件下で培養する工程を含む。方法はまた、1つの細胞、複数の細胞、もしくは多数の細胞から、または1つの細胞、複数の細胞、もしくは多数の細胞が培養された培地から、構築物を精製する工程を含むことができる。さらに、本開示は、任意のそのような方法によって精製された構築物を提供する。
【0090】
本開示はさらに、本開示の構築物をコードする組換え核酸を含む、自己複製性哺乳動物細胞ベクターまたは組込み型哺乳動物細胞ベクターを提供する。ある種の態様において、ベクターは、プラスミドまたはウイルスを含む。他の態様において、ベクターは、哺乳動物細胞発現ベクターを含む。さらに他の態様において、ベクターは、構築物の発現を指示および/または制御する少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。さらに他の態様において、組換え核酸は、本開示の構築物およびシグナルペプチドを含むポリペプチドをコードし、該ポリペプチドは、細胞からの分泌時にタンパク質分解的にプロセシングされて、本開示の構築物を生じる。
【0091】
さらに別の局面において、本開示は、本開示のベクターを含む、単離された宿主細胞を提供する。ある種の態様において、細胞は、非ヒト細胞である。他の態様において、細胞は、哺乳動物である。さらに他の態様において、本開示のベクターは、本開示の構築物およびシグナルペプチドを含むポリペプチドをコードする、組換え核酸を含む。さらに他の態様において、ポリペプチドは、細胞からの分泌時にタンパク質分解的にプロセシングされて、本開示の構築物を生じる。
【0092】
遺伝子治療
本開示内で有用なポリペプチドをコードする核酸は、本明細書中で企図される疾患または障害の処置のための遺伝子治療プロトコルにおいて使用されてもよい。ポリペプチドをコードする改善された構築物を、関心対象の疾患または障害を処置または防止するために、適切な遺伝子治療ベクター中に挿入して、患者に投与することができる。
【0093】
ウイルスベクターのようなベクターは、先行技術において、多種多様の異なる標的細胞中に遺伝子を導入するために使用されてきた。典型的には、ベクターは、所望のポリペプチド(例えば、受容体)の発現から有用な治療効果または予防効果を提供するのに十分な割合の細胞において形質転換が起こり得るように、標的細胞に曝露される。トランスフェクトされた核酸は、標的細胞の各々のゲノム中に永久的に組み込まれ、長く続く効果を提供してもよく、あるいは、処置が、定期的に繰り返されなければならなくてもよい。ある種の態様において、(ウイルス)ベクターは、本開示のポリペプチドをコードする遺伝物質を、インビボで肝臓細胞にトランスフェクトする。
【0094】
ウイルスベクターおよびプラスミドベクターの両方の、多様なベクターが、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,252,479号およびWO 93/07282を参照すること)。特に、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス、ならびにレトロウイルスを含む、多数のウイルスが、遺伝子移入ベクターとして使用されてきた。先行技術における多くの遺伝子治療プロトコルは、無能にされたマウスレトロウイルスを用いている。いくつかの最近発行された特許は、遺伝子治療を行うための方法および組成物に関する(例えば、米国特許第6,168,916号;第6,135,976号;第5,965,541号および第6,129,705号を参照すること)。前述の特許の各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0095】
AAV媒介性遺伝子治療:
ディペンドウィルス属に属するパルボウィルスであるAAVは、それを遺伝子治療応用に特に良く適するようにさせる、いくつかの特色を有する。例えば、AAVは、非分裂細胞を含む、広範囲の宿主細胞に感染することができる。さらに、AAVは、多様な種由来の細胞に感染することができる。重要なことに、AAVは、いかなるヒトまたは動物の疾患にも関連しておらず、組込み時に宿主細胞の生理学的特性を変更するようには見られない。最後に、AAVは、広範囲の物理的条件および化学的条件で安定であり、これにより、生産、保管、および輸送の要件に向いている。
【0096】
AAVゲノムは、約4,700ヌクレオチド(AAV-2ゲノムは4,681ヌクレオチド、AAV-4ゲノムは4,767ヌクレオチドからなる)を含有する直鎖状の一本鎖DNA分子であり、一般に、各端に逆位末端反復(ITR)が隣接した内部非反復セグメントを含む。ITRは、約145ヌクレオチド長であり(AAV-1は143ヌクレオチドのITRを有する)、複製起点として、およびウイルスゲノムのパッケージングシグナルとして役立つことを含む、複数の機能を有する。
【0097】
ゲノムの内部非反復部分は、AAV複製(rep)およびキャプシド(cap)領域として知られる、2つの大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。これらのORFは、完全なAAVビリオンの複製、集合、およびパッケージングを可能にする、複製およびキャプシド遺伝子産物をコードする。より具体的には、少なくとも4つのウイルスタンパク質のファミリー:Rep 78、Rep 68、Rep 52、およびRep 40が、AAV rep領域から発現され、これらの全ては、その見かけの分子量にちなんで命名されている。AAV cap領域は、少なくとも3つのタンパク質:VP1、VP2、およびVP3をコードする。
【0098】
AAVは、ヘルパー依存性ウイルスであり、即ち、機能的に完全なAAVビリオンを形成するために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルス)との同時感染を必要とする。ヘルパーウイルスとの同時感染がない場合には、AAVは、ウイルスゲノムが宿主細胞染色体中に挿入するかまたはエピソーム形態で存在する、潜伏状態を確立するが、感染性ビリオンは産生されない。ヘルパーウイルスによるその後の感染は、組み込まれたゲノムを「レスキュー」し、それが複製されてウイルスキャプシド中にパッケージングされることを可能にし、それによって、感染性ビリオンを再構成する。AAVは、異なる種由来の細胞に感染することができるが、ヘルパーウイルスは、宿主細胞と同じ種のものでなければならない。したがって、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスに同時感染させたイヌ細胞において複製する。
【0099】
異種核酸配列を含有する感染性組換えAAV(rAAV)を作製するために、適当な宿主細胞株に、異種核酸配列を含有するが、AAVヘルパー機能遺伝子であるrepおよびcapが欠如しているAAVベクターをトランスフェクトすることができる。次いで、AAVヘルパー機能遺伝子を、別のベクター上で提供することができる。また、(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアのような)複製可能なヘルパーウイルスを提供するのではなく、AAV産生に必要なヘルパーウイルス遺伝子(即ち、アクセサリー機能遺伝子)のみを、ベクター上で提供することができる。
【0100】
集合的に、AAVヘルパー機能遺伝子(即ち、repおよびcap)ならびにアクセサリー機能遺伝子を、1つまたは複数のベクター上で提供することができる。次いで、ヘルパー機能遺伝子産物およびアクセサリー機能遺伝子産物を、宿主細胞において発現させることができ、そこでそれらは、異種核酸配列を含有するrAAVベクターに対してトランスで作用する。次いで、異種核酸配列を含有するrAAVベクターは、あたかも野生型(wt)AAVゲノムであるかのように複製されてパッケージングされ、組換えビリオンを形成する。患者の細胞に、結果として生じたrAAVビリオンが感染すると、異種核酸配列が、患者の細胞に入って発現される。患者の細胞は、repおよびcap遺伝子、ならびにアクセサリー機能遺伝子が欠如しているため、rAAVは、そのゲノムをさらに複製してパッケージングすることができない。さらに、repおよびcap遺伝子の供給源がないと、wtAAVは、患者の細胞において形成されることができない。
【0101】
AAV-1からAAV-11までの、11種類の既知のAAV血清型がある(Mori, et al., 2004, Virology 330(2):375-83)。AAV-2は、ヒト集団において最も蔓延している血清型であり;ある研究により、一般集団の少なくとも80%がwt AAV-2に感染していると推定された(Berns and Linden, 1995, Bioessays 17:237-245)。AAV-3およびAAV-5もまた、ヒト集団において蔓延しており、感染率は最大で60%である(Georg-Fries, et al., 1984, Virology 134:64-71)。AAV-1およびAAV-4は、サル単離株であるが、両方の血清型は、ヒト細胞に形質導入することができる(Chiorini, et al., 1997, J Virol 71:6823-6833;Chou, et al., 2000, Mol Ther 2:619-623)。6種類の既知の血清型のうち、AAV-2が、最も良く特徴決定されている。例えば、AAV-2は、数多くの色々なインビボ形質導入実験において使用されており、以下を含む多くの異なる組織型に形質導入することが示されている:マウス(米国特許第5,858,351号;米国特許第6,093,392号)、イヌ筋肉;マウス肝臓(Couto, et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12725-12730;Couto, et al., 1997, J. Virol. 73:5438-5447;Nakai, et al., 1999, J. Virol. 73:5438-5447;およびSnyder, et al., 1997, Nat. Genet. 16:270-276);マウス心臓(Su, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13801-13806);ウサギ肺(Flotte, et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10613-10617);およびげっ歯類光受容体(Flannery et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:6916-6921)。
【0102】
AAV-2の幅広い組織指向性は、組織特異的な導入遺伝子を送達するために活用され得る。例えば、AAV-2ベクターは、以下の遺伝子を送達するために使用されている:ウサギ肺に対する嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子遺伝子(Flotte, et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10613-10617);マウス肝臓、イヌ、およびマウス筋肉(米国特許第6,093,392号)に対するNIII因子遺伝子(Burton, et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12725-12730)および第IX因子遺伝子(Nakai, et al., 1999, J. Virol. 73:5438-5447;Snyder, et al., 1997, Nat. Genet. 16:270-276;米国特許第6,093,392号);マウス筋肉に対するエリスロポエチン遺伝子(米国特許第5,858,351号);マウス心臓に対する血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子(Su, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13801-13806);ならびにサルニューロンに対する芳香族1-アミノ酸デカルボキシラーゼ遺伝子。ある種のrAAVにより送達された導入遺伝子の発現は、実験動物において治療効果を有する;例えば、第IX因子の発現は、血友病Bのイヌモデルにおいて表現型の正常性を回復したことが報告された(米国特許第6,093,392号)。さらに、マウス心筋に対するrAAVにより送達されたNEGFの発現は、新生血管形成をもたらし(Su, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13801-13806) 、パーキンソン病のサルの脳に対するrAAVにより送達されたAADCの発現は、ドーパミン作動性機能の回復をもたらした。
【0103】
哺乳動物の細胞に対する関心対象のタンパク質の送達は、最初に関心対象のタンパク質をコードするDNAを含むAAVベクターを生成すること、および、次いでベクターを哺乳動物に投与することによって達成される。したがって、本開示は、関心対象のポリペプチドをコードするDNAを含むAAVベクターを含むと解釈されるべきである。一度本開示で武装すると、この/これらのポリペプチドをコードするDNAを含むAAVベクターの生成は、当業者にとって明白であろう。
【0104】
ある種の態様において、本開示のrAAVベクターは、いくつかの必須DNA要素を含む。ある種の態様において、これらのDNA要素は、少なくとも2コピーのAAV ITR配列、プロモーター/エンハンサー要素、転写終結シグナル、関心対象のタンパク質またはその生物学的活性断片をコードするDNAに隣接する任意の必要な5'または3'非翻訳領域を含む。本開示のrAAVベクターはまた、関心対象のタンパク質のイントロンの一部分も含み得る。また、任意で、本開示のrAAVベクターは、変異した関心対象のポリペプチドをコードするDNAを含む。
【0105】
ある種の態様において、ベクターは、異種遺伝子の発現を多くの異なる細胞型において高レベルまで駆動することができる無差別(promiscuous)プロモーターを含む、プロモーター/調節配列を含む。そのようなプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルスプロモーター/エンハンサー配列等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ある種の態様において、本開示のrAAVベクターにおけるプロモーター/調節配列は、CMV最初期プロモーター/エンハンサーである。しかしながら、異種遺伝子の発現を駆動するために使用されるプロモーター配列はまた、誘導性プロモーター、例えば、これに限定されるわけではないが、ステロイド誘導性プロモーターであってもよく、または、これに限定されるわけではないが、筋肉組織特異的である骨格α-アクチンプロモーター、および筋肉クレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサー等のような、組織特異的プロモーターであってもよい。
【0106】
ある種の態様において、本開示のrAAVベクターは、転写終結シグナルを含む。任意の転写終結シグナルが、本開示のベクターに含まれ得るが、ある種の態様において、転写終結シグナルは、SV40転写終結シグナルである。
【0107】
ある種の態様において、本開示のrAAVベクターは、関心対象のポリペプチド、または関心対象のポリペプチドの生物学的活性断片をコードする、単離されたDNAを含む。本開示は、既知または未知のいずれかである、関心対象のポリペプチドの任意の哺乳動物配列を含むと解釈されるべきである。したがって、本開示は、ポリペプチドがヒトポリペプチドと実質的に類似した様式で機能する、ヒト以外の哺乳動物由来の遺伝子を含むと解釈されるべきである。好ましくは、関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子を含むヌクレオチド配列は、関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子と約50%相同、より好ましくは約70%相同、さらにより好ましくは約80%相同、および最も好ましくは約90%相同である。
【0108】
さらに、本開示は、野生型タンパク質配列の天然に存在するバリアントまたは組換えで派生した変異体を含むと解釈されるべきであり、該バリアントまたは変異体は、それによってコードされるポリペプチドを、本開示の遺伝子治療法において全長ポリペプチドと同じように治療的に有効に、または全長ポリペプチドよりもさらに治療的に有効にする。
【0109】
本開示はまた、ポリペプチドの生物学的活性を保持するバリアントをコードするDNAを含むと解釈されるべきである。そのようなバリアントは、タンパク質またはポリペプチドが、本明細書中に記載される方法における使用のためのその適性を増強する付加的な特性を保有するように、組換えDNA技術を用いて改変されているか、または改変され得るタンパク質またはポリペプチドを含み、例えば、これに限定されるわけではないが、血漿中のタンパク質に対する増強された安定性およびタンパク質の増強された特異的活性を付与するバリアントである。類似体は、保存的なアミノ酸配列の違いによって、または配列に影響を及ぼさない修飾によって、またはその両方によって、天然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なり得る。例えば、タンパク質またはペプチドの一次配列を変更するが、通常はその機能を変更しない、保存的なアミノ酸交換が行われてもよい。
【0110】
本開示は、実験例において例示される特定のrAAVベクターに限定されず;むしろ、本開示は、これらに限定されるわけではないが、AAV-1、AAV-3、AAV-4、およびAAV-6に基づくベクター等を含む、任意の適当なAAVベクターを含むと解釈されるべきである。
【0111】
また、疾患または障害を有する哺乳動物を、治療効果を提供するのに有効な量で処置する方法が、本開示に含まれる。方法は、関心対象のポリペプチドをコードするrAAVベクターを哺乳動物に投与する工程を含む。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0112】
典型的には、単一の注射において投与されるウイルスベクターゲノムの数/哺乳動物は、約1×108~約5×1016の範囲である。好ましくは、単一の注射において投与されるウイルスベクターゲノムの数/哺乳動物は、約1×1010~約1×1015であり;より好ましくは、単一の注射において投与されるウイルスベクターゲノムの数/哺乳動物は、約5×1010~約5×1015であり;および最も好ましくは、単一の注射において哺乳動物に投与されるウイルスベクターゲノムの数は、約5×1011~約5×1014である。
【0113】
本開示の方法が、複数部位同時注射、または数時間の期間(例えば、約1時間未満から約2もしくは3時間)にわたる異なる部位中への注射を含むいくつかの複数部位注射を含む場合、投与されるウイルスベクターゲノムの総数は、単一部位注射法において列挙されたものと同一、またはその分数もしくはその倍数であってもよい。
【0114】
単一部位注射における本開示のrAAVベクターの投与のために、ある種の態様において、ウイルスを含む組成物は、(これに限定されるわけではないが、対象の肝臓のような)対象の器官中に直接注射される。
【0115】
哺乳動物への投与のために、rAAVベクターは、薬学的に許容される担体、例えば、約7.8のpHのHEPES緩衝生理食塩水に懸濁され得る。その他の有用な薬学的に許容される担体には、グリセロール、水、生理食塩水、エタノール、ならびにリン酸塩および有機酸の塩のようなその他の薬学的に許容される塩溶液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらのおよびその他の薬学的に許容される担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1991, Mack Publication Co., New Jersey)に記載されている。
【0116】
本開示のrAAVベクターはまた、キットの形態で提供されてもよく、該キットは、例えば、乾燥塩製剤中のベクターの凍結乾燥調製物、ベクター/塩組成物の懸濁用の滅菌水、ならびにベクターの懸濁およびその哺乳動物への投与のための説明書を含む。
【0117】
方法
一つの局面において、本発明は、それを必要とする対象において疾患または障害を処置または防止する方法を含む。
【0118】
ある種の態様において、構築物は、αクロトー結合およびFGFR活性化を介した細胞シグナル伝達を阻止することによって、FGF23アンタゴニストとして機能する。さらに他の態様において、構築物は、FGFR活性化を防止する。さらに他の態様において、構築物は、これに限定されるわけではないがリン酸代謝障害のような、FGF23の調節不全および/または過剰発現に関連する疾患または障害を処置するために使用することができる。本発明はさらに、それを必要とする哺乳動物において内分泌型FGFに関連した疾患または障害を処置する、寛解させる、および/または、および/または防止する方法を提供する。
【0119】
ある種の態様において、方法は、本開示の構築物の治療的有効量を対象に投与する工程を含む。方法によって処置または防止される疾患または障害の非限定的な例には、これらに限定されるわけではないが、X連鎖性低リン酸血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病1(ARHR1)、低リン酸血症性くる病2(ARHR2)、および常染色体優性低リン酸血症性くる病(ADHR)のような、様々なタイプの低リン酸血症が含まれる。方法によって処置または防止される疾患または障害のさらなる非限定的な例には、腫瘍誘導性骨軟化症(TIO)が含まれる。FGF23のレベルは、慢性腎臓疾患(CKD)を患う患者において非常に増加しているため、αクロトーまたはFGF23の阻害剤はまた、CKD患者の処置に使用することもできる。
【0120】
ある種の態様において、疾患または障害には、低リン酸血症および/または腫瘍誘導性骨軟化症が含まれる。
【0121】
ある種の態様において、対象は、哺乳動物である。他の態様において、哺乳動物は、ヒトである。さらに他の態様において、構築物は、吸入、経口、直腸内、膣内、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによって投与される。ある種の態様において、構築物またはその前駆体は、コードされたベクター上で送達され、ここで、該ベクターは、構築物またはその前駆体をコードし、それは、ベクターの対象への投与時にベクターから転写および翻訳される。
【0122】
ある種の態様において、構築物は、吸入、経口、直腸内、膣内、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによる投与のために製剤化される。
【0123】
ある種の態様において、対象は、疾患および/または障害を処置する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される。他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、同時投与される。さらに他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、共製剤化(co-formulated)される。
【0124】
本明細書中で詳述される方法を含む本開示で武装すると、本発明は、一度確立されている疾患または障害の処置に限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。特に、疾患または障害の症状は、対象に有害といってもよい程度まで顕在化している必要はなく;実際に、疾患または障害は、処置が施される前に対象において検出される必要はない。即ち、本発明が恩恵を提供し得る前に、疾患または障害由来の有意な病状が存在しなくてもよい。
【0125】
組み合わせ治療
本明細書中に記載された方法を使用して同定された化合物および組成物は、本明細書中で企図された疾患または障害を処置するために有用な1種または複数種の付加的な化合物と組み合わせられて、本発明の方法において有用である。これらの付加的な化合物には、本明細書中で同定された化合物、または本明細書中で企図された疾患または障害の症状を処置するか、防止するか、もしくは低下させることが公知の化合物、例えば、市販の化合物が含まれる。
【0126】
相乗効果は、例えば、S字形Emax方程式(Holford & Scheiner,19981,Clin.Pharmacokinet.6:429-453)、Loewe相加性の方程式(Loewe & Muischnek,1926,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326)、およびメジアン効果方程式(Chou & Talalay,1984,Adv.Enzyme Regul.22:27-55)のような適当な方法を使用して、例えば、計算され得る。薬物の組み合わせの効果の査定を助ける対応するグラフを生成するため、上述の各方程式を、実験データに適用することができる。上述の方程式に関連した対応するグラフは、それぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線、および組み合わせインデックス曲線である。
【0127】
薬学的組成物および製剤
本発明には、本発明の方法を実施するための本発明の薬学的組成物の使用も包含される。
【0128】
そのような薬学的組成物は、対象への投与のために適当な形態で提供され得、1種または複数種の薬学的に許容される担体、1種または複数種の付加的な成分、またはこれらの何らかの組み合わせを含んでいてよい。本発明の組成物は、当技術分野において周知であるように、生理学的に許容される陽イオンまたは陰イオンと組み合わせられた本発明において企図された化合物のような生理学的に許容される塩を含んでいてよい。
【0129】
ある種の態様において、本発明の方法の実施のために有用な薬学的組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するために投与され得る。他の態様において、本発明の実施のために有用な薬学的組成物は、1ng/kg/日~500mg/kg/日の用量を送達するために投与され得る。
【0130】
本発明の薬学的組成物の中の活性成分、薬学的に許容される担体、および付加的な成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および状態に依り、さらに、組成物が投与されるルートに依って変動するであろう。例えば、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0131】
本発明の方法において有用な薬学的組成物は、吸入、経口、直腸内、膣内、非経口、局所、頭蓋内、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、静脈内、または別の投与ルートのため、適当に開発され得る。他の企図される製剤には、射出ナノ粒子、リポソーム調製物、活性成分を含有している再封鎖赤血球、および免疫学に基づく製剤が含まれる。投与ルートは、当業者に容易に明白であり、処置される疾患の型および重症度、処置される動物またはヒト患者の型および年齢等を含む多数の因子に依るであろう。
【0132】
本明細書中に記載された薬学的組成物の製剤は、薬理学分野において公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製の方法は、活性成分を担体または1種もしくは複数種の他の補助成分と合わせる工程、次いで、必要であるかまたは望ましい場合、産物を所望の単一用量単位または多用量単位へ成形するかまたはパッケージングする工程を含む。
【0133】
本明細書中で使用されるように、「単位用量」とは、予め決定された量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象へ投与される活性成分の投薬量、または、例えば、そのような投薬量の2分の1または3分の1のような、そのような投薬量の便利な画分と等しい。単位剤形は、1日1回の用量または1日複数回(例えば、1日約1~4回もしくはそれ以上)のうちの1回のためのものであり得る。1日複数回が使用される場合、単位剤形は、各回について同一であってもよいしまたは異なっていてもよい。
【0134】
本明細書中に提供される薬学的組成物の説明は、ヒトへの倫理的な投与のために適当な薬学的組成物に主に向けられているが、そのような組成物は、一般に、全ての種類の動物への投与のために適当であることが、当業者によって理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与のために適当なものにするための、ヒトへの投与のために適当な薬学的組成物の修飾は、十分に理解されており、通常の技術を有する獣医薬理学者であれば、実験が必要であるとしても、通常の実験のみによって、そのような修飾を設計し、実施することができる。本発明の薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよびその他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌのような商業的に重要な哺乳動物を含む哺乳動物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0135】
ある種の態様において、本発明の組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を使用して製剤化される。ある種の態様において、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の少なくとも1種の本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む。
【0136】
製剤は、当技術分野において公知の、経口、非経口、鼻、静脈内、皮下、経腸、またはその他の適当な投与モードのために適当な、従来の賦形剤、即ち、薬学的に許容される有機または無機の担体物質と混合されて利用され得る。薬学的調製物は、滅菌され、所望により、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤、風味剤、および/または芳香剤等と混合され得る。それらは、所望により、他の活性薬剤と組み合わせられてもよい。
【0137】
本明細書中で使用されるように、「付加的な成分」には、以下のもののうちの1種または複数種が含まれるが、これらに限定されるわけではない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;風味剤;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性の媒体および溶媒;油性の媒体および溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;ならびに薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料。本発明の薬学的組成物に含まれ得るその他の「付加的な成分」は、当技術分野において公知であり、例えば、参照によって本明細書中に組み入れられるGenaro,ed.(1985,Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記載されている。
【0138】
液体懸濁物は、水性または油性の媒体への活性成分の懸濁を達成するための従来の方法を使用して調製され得る。水性媒体には、例えば、水および等張生理食塩水が含まれる。油性媒体には、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。液体懸濁物は、懸濁化剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、風味剤、着色剤、および甘味剤を含むが、これらに限定されるわけではない、1種または複数種の付加的な成分をさらに含んでいてもよい。油性懸濁物は、さらに増粘剤を含んでいてもよい。公知の懸濁化剤には、ソルビトールシロップ、水素化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、アラビアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の分散剤または湿潤剤には、レシチンのような天然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物、長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、または脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の乳化剤には、レシチンおよびアラビアゴムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の保存剤には、メチルパラヒドロキシ安息香酸、エチルパラヒドロキシ安息香酸、またはn-プロピルパラヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁物の公知の増粘剤には、例えば、ミツロウ、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0139】
本発明の薬学的調製物の粉末状および顆粒状の製剤は、公知の方法を使用して調製され得る。そのような製剤は、対象へ直接投与されてもよいし、例えば、錠剤を形成するため、カプセルに充填するため、または水性もしくは油性の媒体の添加によって水性もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製するため、使用されてもよい。これらの製剤の各々は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および保存剤のうちの1種または複数種をさらに含んでいてもよい。増量剤および甘味剤、風味剤、または着色剤のような付加的な賦形剤も、これらの製剤に含まれていてよい。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液の形態で調製されるか、パッケージングされるか、または販売されてよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、流動パラフィンのような鉱油、またはこれらの組み合わせであり得る。そのような組成物は、アラビアゴムまたはトラガントガムのような天然に存在するゴムのような1種または複数種の乳化剤、ダイズホスファチドまたはレシチンホスファチドのような天然に存在するホスファチド、脂肪酸およびソルビタンモノオレエートのようなヘキシトール無水物の組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなエチレンオキシドとのそのような部分エステルの縮合生成物をさらに含んでいてよい。これらの乳濁液は、例えば、甘味剤または風味剤を含む付加的な成分を含有していてもよい。
【0141】
化学的組成物によって材料を含浸させるかまたはコーティングする方法は、当技術分野において公知であり、化学的組成物を表面に沈着させるかまたは結合させる方法、(即ち、生理学的に分解可能な材料のような)材料の合成中に材料の構造へ化学的組成物を組み入れる方法、および水性または油性の溶液または懸濁物を吸収材料へ吸収させ、その後、乾燥させるかまたは乾燥させない方法を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0142】
投与/投薬
投与の計画は、有効量を構成するものに影響し得る。治療用製剤は、疾患または状態に関連した症状の顕在化の前または後のいずれかに、患者へ投与され得る。さらに、いくつかの分割された投薬量および時差的な投薬量が、毎日もしくは連続的に投与されてもよいし、または用量は、連続注入されてもよいし、もしくはボーラス注射であってもよい。さらに、治療用製剤の投薬量は、治療的または予防的な状況の緊急性によって示されるように、比例して増加させられるかまたは減少させられてもよい。
【0143】
患者、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトへの本発明の組成物の投与は、患者において疾患または状態を処置するために有効な投薬量および期間で、公知の手法を使用して実施され得る。治療効果を達成するために必要な治療用化合物の有効量は、利用される具体的な化合物の活性;投与の時間;化合物の排出の速度;処置の継続時間;化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、または材料;疾患または障害の状態、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態、および過去の病歴等の医学分野において周知の因子によって変動し得る。投薬計画は、最適の治療的応答を提供するために調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の緊急性によって示されるように、比例して用量を低下させてもよい。本発明の治療用化合物の有効な用量範囲の非限定的な例は、約0.01~50mg/kg体重/日である。当業者は、過度の実験なしに、関連要因を研究し、治療用化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
【0144】
化合物は、1日に数回のような頻度で動物へ投与されてもよいし、または1日に1回、週に1回、2週間に1回、月に1回のようなより低い頻度で、または数ヶ月に1回、さらには、1年に1回もしくはそれ以下のようなさらに低い頻度で投与されてもよい。1日に投薬される化合物の量は、非限定的な例において、毎日、隔日、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎に投与されてもよいことが理解される。例えば、隔日投与の場合、1日当たり5mgの用量が月曜日に開始され、1日当たり5mgの1回目の後続用量が水曜日に投与され、1日当たり5mgの2回目の後続用量が金曜日に投与され、その後も同様であり得る。投薬の頻度は、当業者に容易に明白であり、これらに限定されるわけではないが、処置される疾患の型および重症度、動物の型および年齢等のような多数の因子に依るであろう。
【0145】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与のモードについて、所望の治療的応答を達成するために有効な活性成分の量を入手するため、変動し得る。
【0146】
当技術分野における通常の技術を有する医師、例えば、内科医または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、内科医または獣医は、薬学的組成物中に利用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものより低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。
【0147】
具体的な態様において、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬単位形態で化合物を製剤化することは、特に有利である。投薬単位形態とは、本明細書中で使用されるように、処置される患者のための単位投薬量として適した物理的に不連続の単位をさし;各単位は、必要とされる薬学的媒体と共に、所望の治療効果を生じるよう計算された、予め決定された量の治療用化合物を含有している。本発明の投薬単位形態は、(a)治療用化合物の独特の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)患者における癌の処置のためのそのような治療用化合物の調合/製剤化の分野における固有の限界によって指示され、それらに直接依存する。
【0148】
ある種の態様において、本発明の組成物は、1日1~5回またはそれ以上の範囲の投薬量で患者へ投与される。他の態様において、本発明の組成物は、1日に1回、2日に1回、3日に1回~週に1回および2週間に1回を含むが、これらに限定されるわけではない範囲の投薬量で患者へ投与される。本発明の様々な組み合わせ組成物の投与の頻度は、年齢、処置される疾患または障害、性別、全体的な健康、およびその他の因子を含むが、これらに限定されるわけではない多くの因子に依って、対象によって変動することが、当業者には容易に明白であろう。したがって、本発明は、特定の投薬計画に限定されると解釈されるべきでなく、患者へ投与される正確な投薬量および組成物は、患者に関する他の全ての因子を考慮して、主治医によって決定されるであろう。
【0149】
投与のための本発明の化合物は、約1μg~約7,500mg、約20μg~約7,000mg、約40μg~約6,500mg、約80μg~約6,000mg、約100μg~約5,500mg、約200μg~約5,000mg、約400μg~約4,000mg、約800μg~約3,000mg、約1mg~約2,500mg、約2mg~約2,000mg、約5mg~約1,000mg、約10mg~約750mg、約20mg~約600mg、約30mg~約500mg、約40mg~約400mg、約50mg~約300mg、約60mg~約250mg、約70mg~約200mg、約80mg~約150mg、およびそれらの間の完全または部分的な任意の全ての増量であり得る。
【0150】
いくつかの態様において、本発明の化合物の用量は、約0.5μg~約5,000mgである。いくつかの態様において、本明細書中に記載された組成物において使用される本発明の化合物の用量は、約5,000mg未満または約4,000mg未満または約3,000mg未満または約2,000mg未満または約1,000mg未満または約800mg未満または約600mg未満約500mg未満または約200mg未満または約50mg未満である。同様に、いくつかの態様において、本明細書中に記載される第2の化合物の用量は、約1,000mg未満または約800mg未満または約600mg未満または約500mg未満または約400mg未満または約300mg未満または約200mg未満または約100mg未満または約50mg未満または約40mg未満または約30mg未満または約25mg未満または約20mg未満または約15mg未満または約10mg未満または約5mg未満または約2mg未満または約1mg未満または約0.5mg未満、およびそれらの間の完全または部分的な任意の全ての増量である。
【0151】
ある種の態様において、本発明は、単独でまたは第2の薬学的薬剤と組み合わせて治療的有効量の本発明の化合物を保持する容器;および患者における疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するか、防止するか、または低下させるために化合物を使用するための説明書を含むパッケージングされた薬学的組成物に関する。
【0152】
「容器」という用語には、薬学的組成物を保持するための任意の入れ物が含まれる。例えば、ある種の態様において、容器は、薬学的組成物を含有しているパッケージングである。他の態様において、容器は、薬学的組成物を含有しているパッケージングではなく、即ち、容器は、パッケージングされた薬学的組成物またはパッケージングされていない薬学的組成物と、薬学的組成物の使用説明書とを含有しているボックスまたはバイアルのような入れ物である。さらに、パッケージング技術は、当技術分野において周知である。薬学的組成物の使用説明書は、薬学的組成物を含有しているパッケージングに含有されていてもよく、したがって、説明書は、パッケージングされた生成物との増加した機能的関係を形成することが理解されるべきである。しかしながら、説明書は、その意図された機能、例えば、患者における疾患または障害の処置、防止、または低下を実施する化合物の能力に関係する情報を含有していてよいことが、理解されるべきである。
【0153】
投与ルート
本発明の組成物の投与ルートには、吸入、経口、鼻、直腸、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬側、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻腔(内)、ならびに(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、くも膜下腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、頭蓋内、ならびに局所の投与が含まれる。
【0154】
適当な組成物および剤形には、例えば、経鼻投与または経口投与のための錠剤、カプセル、カプレット、丸薬、ゲルカプセル、トローチ、分散物、懸濁物、溶液、シロップ、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、粉末、ペレット、マグマ、ロゼンジ、クリーム、ペースト、膏薬、ローション、ディスク、坐薬、液体スプレー、吸入のための乾燥粉末またはエアロゾル製剤、膀胱内投与のための組成物および製剤等が含まれる。本発明において有用な製剤および組成物は、本明細書中に記載される具体的な製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0155】
経口投与
経口適用のために特に適当であるのは、錠剤、糖衣錠、液体、ドロップ、坐薬、またはカプセル、カプレット、およびゲルカプセルである。経口投与のために適当な他の製剤には、粉末状もしくは顆粒状の製剤、水性もしくは油性の懸濁物、水性もしくは油性の溶液、ペースト、ゲル、歯磨き剤、口内洗浄液、コーティング、含嗽剤、または乳濁液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。経口使用のための組成物は、当技術分野において公知のいずれかの方法によって調製され得、そのような組成物は、錠剤の製造のために適当な不活性の無毒の薬学的賦形剤からなる群より選択される1種または複数種の薬剤を含有していてよい。そのような賦形剤には、例えば、乳糖のような不活性希釈剤;コーンスターチのような造粒剤および崩壊剤;デンプンのような結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤が含まれる。
【0156】
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または対象の胃腸管における崩壊の遅延を達成し、それによって、活性成分の徐放および吸収を提供するため、公知の方法を使用してコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような材料が、錠剤をコーティングするために使用され得る。さらに、例えば、錠剤は、浸透圧性放出制御錠剤を形成するため、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載された方法を使用してコーティングされてもよい。錠剤は、薬学的に上質で快適な調製物を提供するため、甘味剤、風味剤、着色剤、保存剤、またはこれらの何らかの組み合わせをさらに含んでいてよい。
【0157】
活性成分を含む硬カプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成され得る。そのような硬カプセルは、活性成分を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンのような不活性の固体希釈剤を含む付加的な成分をさらに含んでいてもよい。
【0158】
活性成分を含む軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成され得る。そのような軟カプセルは、水、またはピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油のような油性媒体と混合されていてよい活性成分を含む。
【0159】
経口投与のための本発明の化合物は、結合剤;増量剤;滑沢剤;崩壊剤;または湿潤剤のような薬学的に許容される賦形剤と共に、従来の手段によって調製された錠剤またはカプセルの形態であり得る。所望により、錠剤は、適当な方法、ならびにColorcon(West Point,Pa.)から入手可能なOPADRY(商標)フィルムコーティング系(例えば、OPADRY(商標)OY型、OYC型、有機腸溶性OY-P型、水性腸溶性OY-A型、OY-PM型、およびOPADRY(商標)ホワイト、32K18400)のようなコーティング材料を使用してコーティングされていてよい。
【0160】
経口投与のための液体調製物は、溶液、シロップ、または懸濁液の形態であり得る。液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、またはエチルアルコール);および保存剤(例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルもしくはパラヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤を用いて、従来の手段によって調製され得る。経口投与のために適当な本発明の薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態で、または使用前に水もしくは他の適当な媒体によって再生するための乾燥生成物の形態で、調製され、パッケージングされ、販売され得る。
【0161】
例えば、活性成分を含む錠剤は、任意で、1種または複数種の付加的な成分と共に、活性成分を圧縮するかまたは成型することによって作成され得る。圧縮錠は、任意で、結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤、および分散剤のうちの1種または複数種と混合された、粉末状または顆粒状の調製物のような、流動性の形態の活性成分を、適当なデバイスにおいて圧縮することによって調製され得る。成型錠は、活性成分と、薬学的に許容される担体と、混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体との混合物を、適当なデバイスにおいて成形することによって作成され得る。錠剤の製造において使用される薬学的に許容される賦形剤には、不活性の希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、ならびに滑沢剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の造粒剤および崩壊剤には、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の結合剤には、ゼラチン、アラビアゴム、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0162】
活性成分の出発粉末またはその他の微粒子材料を修飾するための造粒技術は、薬学分野において周知である。粉末は、典型的には、結合剤材料と混合され、より大きく永久に流動性の集塊物または顆粒にされ、それが「造粒」と呼ばれる。例えば、溶媒を使用した「湿式」造粒法は、一般に、粉末を結合剤材料と組み合わせ、湿った顆粒状の塊の形成をもたらす条件の下で、水または有機溶媒によって湿らせ、次いで、溶媒をそれから蒸発させなければならないことを特徴とする。
【0163】
一般に、溶融造粒は、本質的に、水またはその他の液体溶媒の添加の非存在下で、粉末またはその他の材料の造粒を促進するための、室温で固体または半固体である(即ち、比較的低い軟化または溶融の範囲を有する)材料の使用からなる。低融点固体は、融点範囲の温度に加熱された場合、液体化されて結合剤または造粒媒体として作用する。液体化された固体は、接触した粉末材料の表面上に広がり、冷却時に、最初の材料が共に結合した固体の顆粒状の塊を形成する。次いで、得られた溶融造粒物は、経口剤形を調製するため、錠剤プレスに供給されてもよいし、またはカプセル化されてもよい。溶融造粒は、固体分散物または固溶体を形成することによって、活性体(即ち、薬物)の溶解速度および生物学的利用能を改善する。
【0164】
米国特許第5,169,645号は、改善された流動特性を有する直接圧縮可能なロウ含有顆粒を開示している。ロウを、ある種の流動改善添加剤と溶融混合し、続いて、混合物を冷却し造粒した場合、顆粒が入手される。ある種の態様において、ロウおよび添加剤の溶融組み合わせの中のロウ自体のみが溶融し、他のケースにおいて、ロウおよび添加剤の両方が溶融する。
【0165】
本発明は、本発明の方法において有用な1種または複数種の化合物の遅延放出を提供する層と、本発明の方法において有用な1種または複数種の化合物の即時放出を提供するさらなる層とを含む多層錠剤も含む。活性成分が捕捉されており、その遅延放出を確実にする胃不溶性組成物を、ロウ/pH感受性ポリマーの混合物を使用して入手することができる。
【0166】
非経口投与
本明細書中で使用されるように、薬学的組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的な突破および組織内の突破口を通した薬学的組成物の投与を特徴とする投与ルートが含まれる。したがって、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開を通した組成物の適用、組織を穿通する非外科的な創傷を通した組成物の適用等による薬学的組成物の投与が含まれるが、これらに限定されるわけではない。具体的には、非経口投与には、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術が含まれるが、これらに限定されるわけではないことが企図される。
【0167】
非経口投与のために適当な薬学的組成物の製剤は、滅菌水または無菌の等張生理食塩水のような薬学的に許容される担体と組み合わせられた活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与のために適当な形態で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。注射可能製剤は、アンプルまたは保存剤を含有している多用量容器のような単位剤形で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。非経口投与用の製剤には、懸濁物、溶液、油性または水性の媒体による乳濁液、ペースト、および植え付け可能な徐放性または生分解性の製剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定剤、または分散剤を含むが、これらに限定されるわけではない1種または複数種の付加的な成分をさらに含んでいてもよい。非経口投与用の製剤の一つの態様において、活性成分は、適当な媒体(例えば、無菌の発熱物質不含水)によって再生した後、再生された組成物を非経口投与するため、乾燥(即ち、粉末状または顆粒状の)形態で提供される。
【0168】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁物または溶液の形態で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。この懸濁物または溶液は、公知の技術によって製剤化され得、活性成分に加えて、本明細書中に記載された分散剤、湿潤剤、または懸濁化剤のような付加的な成分を含み得る。そのような無菌の注射可能製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールのような無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。その他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム水溶液、および合成のモノグリセリドまたはジグリセリドのような不揮発性油が含まれるが、これらに限定されるわけではない。有用であるその他の非経口投与可能製剤には、活性成分を、微晶質の形態で、リポソーム調製物で、または生分解性ポリマー系の成分として含むものが含まれる。徐放または植え込みのための組成物は、乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩のような、薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料を含んでいてよい。
【0169】
付加的な投与形態
本発明の付加的な剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載されるような剤形が含まれる。本発明の付加的な剤形には、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820号に記載される剤形も含まれる。本発明の付加的な剤形には、PCT出願WO 03/35041、WO 03/35040、WO 03/35029、WO 03/35177、WO 03/35039、WO 02/96404、WO 02/32416、WO 01/97783、WO 01/56544、WO 01/32217、WO 98/55107、WO 98/11879、WO 97/47285、WO 93/18755、およびWO 90/11757に記載される剤形も含まれる。
【0170】
放出制御製剤および薬物送達系
本発明の薬学的組成物の放出制御製剤または徐放性製剤は、従来のテクノロジーを使用して作成され得る。いくつかのケースにおいて、使用される剤形は、変動する割合の所望の放出プロファイルを提供するため、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、もしくはマイクロスフェア、またはそれらの組み合わせを使用して、その中の1種または複数種の活性成分の徐放または放出制御として提供され得る。本明細書中に記載されたものを含む、本発明の薬学的組成物と共に使用するために適当な、当業者に公知の放出制御製剤は、容易に選択され得る。したがって、放出制御に適応する錠剤、カプセル、ゲルカプセル、およびカプレットのような経口投与のために適当な単一単位剤形が、本発明に包含される。
【0171】
大部分の放出制御薬学的生成物は、非制御カウンターパートによって達成されるものより薬物治療を改善するという一般的な目標を有する。理想的には、医学的処置における最適に設計された放出制御調製物の使用は、最小の時間量で状態を治療するかまたは管理するため、最小の薬物物質が利用されることを特徴とする。放出制御製剤の利点には、薬物の活性の延長、投薬頻度の低下、および患者コンプライアンスの増加が含まれる。さらに、放出制御製剤は、作用の開始時間、または薬物の血中レベルのようなその他の特徴に影響を与えるために使用され得、したがって、副作用の発生率に影響を与えることができる。
【0172】
大部分の放出制御製剤は、所望の治療効果を迅速に生じる量の薬物を初期に放出し、治療効果のこのレベルを長期間にわたり維持するため、他の量の薬物を徐々に継続的に放出するよう設計される。この一定の体内薬物レベルを維持するため、薬物は、代謝され身体から排出される薬物の量を補充する速度で、剤形から放出されなければならない。
【0173】
活性成分の放出制御は、様々な誘導因子、例えば、pH、温度、酵素、水、もしくはその他の生理学的条件、または化合物によって刺激され得る。「放出制御成分」という用語は、本発明の情況において、活性成分の放出制御を容易にするポリマー、ポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、リポソーム、もしくはマイクロスフェア、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるわけではない化合物として、本明細書中で定義される。
【0174】
ある種の態様において、本発明の製剤は、短期製剤、ラピッドオフセット(rapid-offset)製剤、ならびに放出制御製剤、例えば、徐放性製剤、遅延放出製剤、およびパルス放出製剤であり得るが、これらに限定されるわけではない。
【0175】
徐放という用語は、長期間にわたり薬物の徐々の放出を提供し、必ずではないが、長期間にわたり実質的に一定の血中薬物レベルをもたらし得る薬物製剤をさすため、その従来の意味で使用される。期間は、1ヶ月またはそれ以上のような長さであってよく、ボーラスの形態で投与された同一の量の薬剤より長い放出であるべきである。
【0176】
徐放のための化合物は、徐放特性を化合物に提供する適当なポリマーまたは疎水性材料を用いて製剤化され得る。したがって、本発明の方法において使用するための化合物は、例えば、注射によって、微粒子の形態で投与されてもよいし、または植え込みによってウエハもしくはディスクの形態でされてもよい。
【0177】
本発明の好ましい態様において、本発明の化合物は、徐放性製剤を使用して、単独でまたは別の薬学的薬剤と組み合わせられて、患者へ投与される。
【0178】
遅延放出という用語は、薬物投与後にいくらかの遅延の後に薬物の初期放出を提供し、必ずではないが、約10分~約12時間の遅延を含む薬物製剤をさすため、その従来の意味で、本明細書中で使用される。
【0179】
パルス放出という用語は、薬物投与後に薬物のパルス状の血漿プロファイルを生じるような薬物の放出を提供する薬物製剤をさすため、その従来の意味で、本明細書中で使用される。
【0180】
即時放出という用語は、薬物投与の直後に薬物の放出を提供する薬物製剤をさすため、その従来の意味で使用される。
【0181】
本明細書中で使用されるように、短期とは、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分までの期間、およびそれらの全ての任意の完全または部分的な増量をさす。
【0182】
本明細書中で使用されるように、ラピッドオフセットとは、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分までの期間、およびそれらの全ての任意の完全または部分的な増量をさす。
【0183】
当業者は、ルーチンの実験のみを使用して、本明細書中に記載された具体的な手法、態様、請求項、および例の多数の等価物を認識するか、または確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によってカバーされると見なされた。例えば、当技術分野において認識されている代替法による、ルーチンの実験のみを使用した、反応およびアッセイ条件の修飾は、本願の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0184】
本明細書中に値および範囲が提供される場合には常に、これらの値および範囲に包含される全ての値および範囲が、本発明の範囲内に包含されるものとすることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内にある全ての値、ならびに値の範囲の上限または下限も、本願によって企図される。
【0185】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例示する。しかしながら、それらは、本明細書中に示される本発明の教示または開示を限定するものでは決してない。
【実施例
【0186】
本発明を以下の実施例に関して記載する。これらの実施例は、例示目的で提供されるに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されず、本明細書中に提供される教示の結果として明白である全ての変動を包含する。
【0187】
材料および方法:
他に注記されない限り、全ての出発材料を、商業的な供給元から入手し、精製なしに使用した。
【0188】
プラスミド構築
C末端HAタグを有する全長ヒトαクロトーをコードするcDNAを、PCRによって増幅し、レンチウイルス移入プラスミドであるpLenti CMV Hygro DEST中にサブクローニングした。GST融合タンパク質を生成するために、ヒトFGF23のC末端テールであるFL(aa 180-251)、R1(aa 180-205)、およびR2(aa 212-243)のDNA断片を、PCRによって増幅し、pGEX4T1ベクター(GE Healthcare)中にクローニングした。全長ヒトFGF23(FGF23-WT;aa 25-251)、ならびにFGF23-R1(aa 25-205)およびFGF23-R2(aa 212-243に融合されたaa 25-179)をコードするDNA断片を、PCRによって増幅し、細菌発現プラスミドであるpET-28a中にクローニングした。タンパク質分解性切断を低下させるために、全てのプラスミドにおいてアルギニン179をグルタミンによって置換した(R179Q)。ヒトFGF23のシグナルペプチド、それに続くFLAGタグ(DYKDDDDK)およびヒトFGF23(aa 25-251)をコードするcDNAから構成されるFGF23の哺乳動物発現ベクターを、改変pOptiVecベクター(pCMV)中にサブクローニングした。Cテール領域内に点変異または欠失を保有するFGF23バリアントの発現ベクターは、標準的な部位特異的変異誘発プロトコル(Quick change)に従って生成した。全てのFGF23をコードするプラスミドは、リガンド安定性を増加させるために4つの変異(R140A/R143A/R176Q/R179Q)を保有する。Fc融合タンパク質をコードする発現ベクターは、pCMV中にクローニングされた、FGF23のC末端テールであるFL(aa 180-251)、R1(aa 180-205)、またはR2(aa 212-243)に接続されたマウスIgG1のシグナルペプチド(aa 1-20)およびヒトIgG1(aa 223-449)をコードするcDNA断片を用いて生成した。ヒトFGFR1cの膜貫通領域および細胞内領域(aa 377-822)に融合されたヒトαクロトーの細胞外領域(aa 1-981)から構成されるキメラ受容体のための発現ベクターを、pBabe-Puro系中にクローニングした。6×ヒスチジンタグに融合されたヒトαクロトーの細胞外ドメイン全体(aa 1-980)(sKLA)をコードする発現ベクターを、哺乳動物発現ベクターpCEP4(Thermo Fisher Scientific)中にクローニングした。
【0189】
タンパク質の発現および精製
sKLAの精製:
6×Hisタグに融合されたαクロトーの可溶性細胞外ドメイン(sKLA)(aa 1-980)を、HEK293 EBNA細胞において発現させ、細胞培養培地から精製した。タンパク質精製のために、細胞を、Pro293無血清培地において6日間維持し、採集したした培地を、300×gで遠心分離し、0.45μM膜でろ過して、Ni Sepharose Excel樹脂(GE Healthcare)と1時間、4℃でインキュベートした。次いで、樹脂を、150 mM NaClおよび10 mMイミダゾールを含有する25 mM HEPES(pH 7.5)で洗浄した。sKLAを、300 mMイミダゾールを含有する同じ緩衝液で樹脂から溶出した。溶出されたタンパク質を、20倍の25 mMトリス pH 8.0で希釈して、直線NaCl勾配(0~0.4 M)を伴う陰イオン交換クロマトグラフィ(MonoQ 5/50 GL, GE Healthcare)に供した。sKLAを含有する画分を、濃縮し、150 mM NaClを含有する25 mM HEPES(pH 7.5)で平衡化されたSuperose 6カラム(GE Healthcare)にアプライした。
【0190】
GST融合タンパク質の精製:
GST融合タンパク質(GST-FL、GST-R1、およびGST-R2)をコードするプラスミドを、BL21-Gold(DE3)コンピテントセル(Agilent)において発現させ、以前に記載されたようにタンパク質精製を実施した(Olsen, et al., 2004, Proc Natl Acad Sci U S A. 101:935-940)。
【0191】
大腸菌において発現させたFGF23バリアントの精製:
様々なFGF23バリアントを発現するプラスミドを、大腸菌BL21 DE3細胞において発現させた。リガンドを、封入体から精製し、続いて、以前に記載されたようにリフォールディングさせた(Lin, al., 2007, J. Biol. Chem. 282:27277-27284)。リフォールディングされたFGF23タンパク質を、ヘパリン親和性HiTrapカラム(GE Healthcare)上に捕捉し、直線NaCl勾配(0~2.0 M)を用いて溶出して、pH 7.5の25 mM HEPESおよび150 mM NaClを含有する緩衝液を伴うHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィに供した。
【0192】
FLAGタグ付きFGF23の精製:
FLAGタグ付きFGF23またはそのバリアントの発現のために、製造業者のプロトコルに従って、プラスミドを、Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific)中にトランスフェクトし、Expi293F発現培地中で125 mlフラスコにおいて培養した。細胞を、発現培地において6日間維持し、培地を収集して、抗FLAG M2アガロース親和性ゲル(Millipore Sigma)と1時間、4℃でインキュベートした。ゲルを、20カラム体積の150 mM NaClを含有する25 mM HEPES(pH 7.5)で洗浄し、リガンドを、100 mMグリシン pH 3.0で溶出した。溶出された画分を、直ちに1/10体積の1 Mトリス-HCl(pH 8.0)と混合した。FGF23を含有する画分を、濃縮し、最終精製段階として150 mM NaClを含有する25 mM HEPES緩衝液(pH7.5)で平衡化されたSuperdex S200 Increaseカラム(GE Healthcare)にアプライした。
【0193】
Fc-FGF23 Cテール断片の精製:
IgG1 Fcに融合されたFGF23のC末端テール断片を、(FLAGタグ付きFGF23の発現のための上記の同じプロトコルを用いて)Expi293F細胞において発現させた。タンパク質を、プロテインA-Sepharose(Thermo Fisher Scientific)、それに続くSuperdex S200を用いたサイズ排除クロマトグラフィを使用して精製した。
【0194】
細胞増殖培地:
野生型FGFR1cおよびαクロトーを安定に共発現するHEK293細胞は、10% FBS、100 U/mlペニシリン-ストレプトマイシン、0.1 mg/mlハイグロマイシン、および1μg/mlピューロマイシンを補給したDMEMにおいて増殖させた。
【0195】
sKLAを発現するHEK293 EBNA細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100 U/mLペニシリン-ストレプトマイシン、250μg/mL G-418、および200μg/mLのハイグロマイシンBを含有するDMEM培地において増殖させた。
【0196】
細胞密度が70~80%コンフルエントに到達した後、培地を、100 U/mLペニシリン-ストレプトマイシンを補給したPro293a-CDM(Lonza)に交換した。
【0197】
Expi293F細胞は、Expi293発現培地(Thermo Fisher Scientific)において増殖させた。これらの細胞を、Fc融合FGF23 Cテールタンパク質およびFLAG-FGF23分子の一過性発現に使用した。αクロトー-FGFR1cキメラ受容体を安定に発現するL6細胞は、10% FBS、100 U/mLペニシリン-ストレプトマイシン、および0.5μg/mlピューロマイシンを補給したDMEMにおいて増殖させた。
【0198】
バイオレイヤー干渉法(BLI)測定
様々な形態の全長FGF23またはGSTに融合されたFGF23のC末端断片に対するsKLA結合の動態パラメータおよび解離定数を、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて試験した。抗マウスIgG Fc(AMC)バイオセンサーを装備したOctet RED96システム(Pall ForteBio)を用いて、αクロトーとFLAGタグ付きFGF23との間の相互作用を試験した。バイオセンサーチップに、抗FLAG M2抗体(Millipore Sigma)を5μg/mlで2分間ロードし、BLI緩衝液(25 mM HEPES、150 mM NaCl、pH 7.5、0.002% Tween-20、1 mg/mL BSA)において60秒間洗浄し、次いで、FLAGタグ付きFGF23を5μg/mlで4分間ロードした。あるいは、抗GSTバイオセンサーチップに、5 ug/mlの様々なFGF23 C末端断片と融合されたGSTを15秒間ロードした。その後、リガンドがロードされたセンサーチップを、BLI緩衝液の2倍希釈液における6.25 nMから200 nMの範囲の、様々なsKLA濃度を含有するマイクロプレートウェル中に浸漬した。各結合サイクルの後に、センサーチップを、10 mMグリシン(pH 1.5)で再生させた。収集されたデータを、並行緩衝液対照減算を用いて参照し、センサーグラムを、製造業者によって提供されるForteBio Data Analysis 10.0ソフトウェアを用いて1:1ラングミュア結合モデルに全体的にフィットさせた。
【0199】
哺乳動物細胞において発現させたFGF23の脱グリコシル化
精製されたFGF23バリアントを、製造業者のプロトコルによって指示されるように、O-グリコシダーゼおよびα-(2→3,6,8,9)-ノイラミニダーゼ(New England BioLabs)で4時間、37℃で処理した。
【0200】
ジスルフィド架橋のショットガンプロテオミクス同定
ジスルフィド連結ペプチドマッピングを、公開された方法(Lu, et al., 2015, Nature Methods 12:329-331)に従うことによって行い、pLinkソフトウェアを、これらのペプチドの同定のために使用した(Chen, et al., 2019, Nature Communications 10:3404)。簡潔に述べると、ゲルバンドを、ジスルフィドスクランブルを回避するために10 mM N-エチルマレイミド(NEM)を有するpH 6.5が使用された消化条件の改変を伴う、標準的なゲルベース消化プロトコル(Shevchenko, et al., 2006, Nature Protocols 1:2856-2860)に従うことによって処理した(Lu, et al., 2015, Nature Methods 12:329-331)。トリプシン(Promega)消化を、ゲルバンドに対して10 ng/μL濃度で一晩、Glu-C(New England Biolab)は5 ng/uLで8時間行った。約0.5μgのペプチド消化物を、各LC-MS測定に使用し、以前に記載されたOrbitrap Fusion Lumos Tribrid質量分析計(Thermo Fisher Scientific)の機器上のショットガンモードを使用した(Li, et al., 2019, J Am Soc Mass Spectrom 10.1007/s13361-019-02243-1)。pLink(Chen, et al., 2019, Nature Communications 10:3404)同定のために、GluCとトリプシンとの組み合わせを指定し、最大で3つのミス切断を許可し、その他の設定は全てデフォルトに保った。MS/MSスペクトルに、pLabel(Lu, et al., 2018, Biophys Rep 4:68-81)によって注釈をつけた。
【0201】
ジスルフィド架橋の並行反応モニタリング(PRM)定量化
Cys206-Cys244を含有する標準的な非ミス切断ペプチド(ジスルフィド連結されたMTAPAPSCQEおよびGCRPFAK)についての相対定量化のために、大腸菌産生FGF23のペプチド試料を、注入して、PRMモードによってMS定量応答をモニターした。連結されたペプチドについての理論的なMS1およびMS2 m/z値を、Skyline(MacLean, et al., 2010, Bioinformatics 26:966-968)によって生成し、PRM法にインポートした。分離ウィンドウは、1.4 m/zであるように設定した。PRM用のOrbitrap分解能は30,000、AGCターゲット1.0e5、最大注入時間150msに設定した。2%(28%を中心とする)の段階的なHCD Collisonエネルギーを使用した。結果として得られたPRMデータを、手動検査のためにSkylineにインポートした(MacLean, et al., 2010, Bioinformatics 26:966-968)。
【0202】
限定タンパク質分解
哺乳動物細胞において産生されたFGF23-WTおよびFGF23-CSの限定タンパク質分解を、Proti-Ace Kit(Hampton Research)を用いて、製造業者の推奨下で行った。消化された試料を、SDS-PAGE、それに続くクマシーブルー染色によって解析した。
【0203】
全反射蛍光顕微鏡法
単一分子イメージング実験のために、L6細胞を、35-mmガラス底ディッシュ(MatTek Corporation)上に、1ディッシュ当たり2.5×105細胞の密度でプレーティングし、翌日、Lipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者の説明書に従って、0.25μgのHaloTag-αクロトープラスミドをトランスフェクトした。細胞を、0.25μM Alexa488 HaloTagリガンド(Promega)で15分間、37℃で標識し、次いで、フェノールレッドを含まないDMEM培地(イメージング培地)で3回洗浄した。標識後に、細胞を直ちに、CFI Plan Apochromat Lambda 100×/1.45 Oil TIRF対物レンズおよびPrime95B cMOSカメラ(110-nmピクセルサイズ;Teledyne Photometrics)を用いて、15-mW LU-N4 488レーザーを有する電動Ti-LA-HTIRFモジュールを装備したNikon Eclipse Ti2顕微鏡(Nikon)を収容するケージインキュベーター(OkoLab)において、37℃および5% CO2でイメージングした。イメージを、100%に設定されたレーザーパワーで、10 Hzで100-msの露光時間を用いて取得した。エバネッセント場の侵入深さは、約118 nmであった。
【0204】
自動化単一粒子追跡
粒子を、MatlabソフトウェアGaussStormを用いて、場所を突き止め、追跡した。簡潔に述べると、ノイズを除去するためのバンドパスフィルターの適用、それに続くガウスカーネルでのコンボリューション、および次いで閾値よりも上のピクセルの選択によって、粒子を自動的に検出した。次いで、粒子を、楕円形の二次元ガウス関数とフィットさせ、これは、曲線下体積として表現されるそれらの強度、およびサブピクセル精度でのそれらの位置を生じた。粒子を、連続したフレーム間に8ピクセルの追跡ウィンドウを有する追跡アルゴリズムを用いて、フレームにわたって追跡した。単一粒子の変位の分布を用いて、細胞全体を包含する視野における平均拡散係数を計算した。
【0205】
実施例1:哺乳動物FGF23のC末端テールは、2つの別々のαクロトー結合領域を含有する
細胞外領域βクロトー(KLB)に結合したFGF19またはFGF21のC末端テール(CT)の結晶構造により、βクロトーのグリコシドヒドロラーゼ様ドメインD1およびD2(KL1およびKL2ドメインとも称される)の両方にわたる細長い界面に沿った保存された相互作用が明らかになった(Olsen, et al., 2004, Proc Natl Acad Sci U S A. 101:935-940;Kuzina, et al., 2019, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 116:7819-7824)。46個のC末端アミノ酸が欠如したFGF23欠失変異体は、生物学的に活性を有することが示された(Goetz, et al., 2010, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107:407-412)。この欠失変異体を、αクロトーの細胞外領域(sKLA)、および主にsKLAのD1との保存された相互作用が明らかになったFGFR1c細胞外ドメインを含有する、複合体の構造解析に適用した(Chen, et al., 2018, Nature 553:461-466)。FGF19、FGF21、およびFGF23の一次構造の比較(図1A)により、FGF19および21のC末端テールは、それぞれ、46および34アミノ酸を含有するが、FGF23は、89アミノ酸の長いC末端テールを含有することが示される。一次構造の検査により、FGF19およびFGF21とは異なり、FGF23のC末端テールは、2つの相同なタンデムリピートを含有することが示される(図1B)。各リピートは、D1(KL1)部位に対する結合に必要なコンパクトで強固な構造を維持するのに重大であるDPL/Fモチーフ、およびD2(KL2)部位に結合する塩基性残基のクラスターを含有し、これは、単一のFGF23分子が、αクロトーに対する2つの別々の結合領域を保有し得ることを示す。全ての脊椎動物FGF23タンパク質は、長いC末端テールを有するが、哺乳動物のみが、FGF19、21、および23のクロトー結合領域に相同な第2のリピートを有することは、注目に値する(図1B図5B)。
【0206】
αクロトー結合および受容体活性化における2つのFGF23リピートの各々の重要性を検討するために、バイオレイヤー干渉法(BLI)解析を適用して、sKLAに対するFGF23の各リピート単独またはC末端テール全体の動態パラメータおよび解離定数を測定した。そのために、FGF23の全長(FL)テール(アミノ酸S180~I251)、第1のリピートR1(アミノ酸S180~S205)、または第2のリピートR2(アミノ酸S212~T239)のいずれかを発現するGST融合タンパク質を、大腸菌において産生させ(図6)、BLIセンサー上に固定化した。sKLAは、HEK293 EBNA細胞において産生させ、BLI測定における分析物として使用した(本明細書中の他の場所を参照すること)。
【0207】
BLI測定からの結果(図1C)は、各単一リピートまたは両方のリピートを有するGST融合タンパク質が、類似した動態パラメータおよび15~20 nMの解離定数(Kd)でsKLAに結合することを示し(図1D)、これは、R1およびR2が両方とも、αクロトーの異なる真のリガンドとして機能すること、ならびにFGF23-WTが、αクロトーに対する2つの異なる結合部位を保有することを示す。
【0208】
BLI測定は、FGF23のFLテールならびにR1およびR2が、sKLAと安定な複合体を形成することを明らかに示すため、次に、全長テールを有するFGF23(FGF23-WT)、2つのリピートのうち1つのみを含有するFGF23バリアントであるFGF23-R1およびFGF23-R2、ならびにDPLモチーフ中の点変異(R1中のD188AおよびR2中のD222A)によって一方または両方のリピートが不活性化されたFGF23バリアントを発現させて精製し(図2A)、細胞シグナル伝達を刺激するそれらの能力を検討した。FGFR1cおよびαクロトーを共発現するHEK293細胞を、(図2B~2Hに示されるように)増加する濃度の様々なFGF23バリアントで10分間、37℃で刺激し、刺激されていない細胞またはリガンド刺激された細胞の溶解物を、そのリン酸化をモニターするための抗pFRS2α抗体でのイムノブロッティング、ならびにそれぞれ、MAPK刺激およびMAPK発現をモニターするための抗pMAPK抗体およびMAPK抗体でのイムノブロッティングに供した。
【0209】
図2B~2Dに提示される結果により、FRS2αのチロシンリン酸化およびMAPK応答の活性化によって明らかにされるように、FGF23-WT、FGF23-R1、およびFGF23-R2は、類似した程度まで細胞シグナル伝達を活性化することが示される(それぞれ、0.5~1.0 nMおよび0.1~0.5 nMのリガンド濃度で飽和に到達する)。対照的に、FRS2のチロシンリン酸化およびMAPK応答は、FGF23-R1 D188A変異体で刺激された細胞において検出されなかった(図2F)。興味深いことに、不活性R1および機能的R2を有する変異体であるFGF23 D188Aは、FGF23-WTと同じ程度までFRS2αのチロシンリン酸化およびMAPK応答の活性化を刺激し(図2G)、これは、FGF23が、全長C末端テール(FGF部分から50アミノ酸分離されている)の状況において、αクロトー結合およびFGFR活性化のために第2のリピート(R2)のみを利用できることを示す。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、この知見はまた、三元FGF23-R1/sKLA/FGFR1c複合体の結晶構造が、FGF23とαクロトーとの間の相互作用において不均一性を示さない、過度に単純化された絵を表し得るかどうかの疑問を提起する。最後に、D188A/D222A二重変異によってR1およびR2の両方が不活性化されているFGF23で処理された細胞においては、FRS2αのチロシンリン酸化は完全に消失し、MAPK活性化はほとんど検出不可能である(図2H)。
【0210】
実施例2:FGF23のR2は、FGF23誘導性細胞シグナル伝達のアンタゴニストとして機能する
FGF23のC末端領域は、αクロトーに堅固に結合し、FGFRとは相互作用しないため、αクロトーに対するFGF23結合の競合物として、結果的に、FGF23誘導性細胞シグナル伝達の阻害剤として機能し得る。全長C末端ペプチドおよびR1ペプチドは、インビトロおよびインビボの両方で、FGF23活性化に拮抗することができる(Goetz, et al., 2010, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107:407-412;Agoro, et al., 2018, The FASEB Journal. 32:3752-3764)。
【0211】
R2(S212~T239)がFGF23シグナル伝達に対して類似した拮抗活性を発揮するかどうかを試験するため、およびその効率を全長FGF23 Cテール(S180~I251)またはR1ペプチド(S180~S205)のものと比較するために、これらのペプチドを、Fc-FL、Fc-R1、およびFc-R2と称されるFc融合タンパク質の形態で発現させて精製し(図3A~3B)、αクロトーおよびFGFR1cを共発現するHEK293細胞のFGF23誘導性刺激時のそれらの効果を探索した。細胞を、(図3C~3Eに示されるように)増加する濃度の個々のFc融合タンパク質とインキュベートし、続いて、FGF23-WTで10分間刺激した。刺激されていない細胞またはFGF23刺激された細胞由来の溶解物を、MAPK応答を決定するための抗pMAPK抗体、またはタンパク質ローディングについての対照としてのFGFR1およびMAPKに対する抗体でのイムノブロッティングに供した。図3C~3Eに提示される実験により、Fc-FL、Fc-R1、およびFc-R2は、類似した濃度(100~250 nM)でFGF23誘導性MAPK刺激を完全に阻害できたことが示される。これらの結果により、Fc-R2は、Fc-R1またはFc-FLテールの拮抗活性に類似して、FGF23-WT誘導性MAPK応答に拮抗することが実証される。αクロトー-FGFRシグナル伝達複合体の形成を阻害するFc-R2の能力は、それをFGF23シグナル伝達の増加に起因する疾患の治療法として確立する。
【0212】
実施例3:FGF23のR2に隣接するシステイン残基は、ジスルフィド架橋を形成する
様々な種由来のFGF23のアミノ酸配列アライメント(図5A~5B)により、哺乳動物において、第2のリピート(R2)に2個のシステイン残基、例えば、ヒトFGF23においてはCys206およびCys244が隣接していることが示される(図3F)。これらのシステイン残基がジスルフィド架橋を形成するかどうかを判定するために、FGF23-WTを、大腸菌において発現させ、リフォールディングおよび精製されたタンパク質を、還元条件下および非還元条件下の両方のSDS-PAGEによって、両方のシステインがセリン残基によって置換されている変異体FGF23(FGF23-CS)のものと比較して、解析した。
【0213】
図3Gに提示される実験により、FGF23-WTは、SDS-PAGE上で、還元条件(R)下では明確な単一バンドとして、および非還元条件(NR)下では2つのバンド(2つのアスタリスクで記される)として移動することが示される。他方で、FGF23-CS変異体は、SDS-PAGE上で、還元条件下および非還元条件下の両方で、単一の明確なバンドとして移動する。FGF23-WTの2つのバンドのうちどちらかが、非還元条件下で分子内ジスルフィド結合を含有するかどうかを判定するために、2つのバンドの各々をゲルから切り出し、トリプシンおよびエンドプロテイナーゼGluC消化に供して、ジスルフィド連結されたペプチドを検出するために質量分析によって解析した。質量分析の解析により、下のバンド(図3G、下のアスタリスク、図7A~7B)は、Cys206とCys244との間に分子内ジスルフィド結合を有するペプチドを含有することが明らかになった。これらのペプチドの微量のみが、上のバンドのタンパク質分解性消化物において検出された(図3G、上のアスタリスク、図7B)。細菌において発現させたFGF23-WTの大多数は、リフォールディング中に酸化されて、Cys206とCys244との間にジスルフィド結合を形成するが、2個のシステインは、大腸菌において発現させたリフォールディングされたFGF23分子の亜集団では架橋されない。
【0214】
次に、FLAGタグ付きFGF23-WTおよびそのCS変異体を、Expi293F細胞において発現させ(図3H)、両方のリガンドを、親和性クロマトグラフィ、それに続くサイズ排除クロマトグラフィを用いて精製した(本明細書中の他の場所を参照すること)。図3Hに提示されるSDS-PAGE解析により、哺乳動物細胞において産生されたFGF23-WT(FGF23-WT)は、還元条件下および非還元条件下の両方で、2つの異なるバンドとして移動することが示される。Expi293F細胞において発現させたFGF23は、細菌で発現させたものとは異なり、O-グリコシル化されており、還元条件下および非還元条件下でSDS-PAGEによって可視化される2つの異なるバンドにより、FGF23-WTの異なるグリコシル化形態が明らかになり、これは、O-グリコシダーゼおよびα-(2→3,6,8,9)-ノイラミニダーゼでのインビトロ処理によって確認された(図8B)。Expi293細胞において発現させたFGF23-CS変異体(FGF23-CS)は、SDS-PAGE上で、差次的なグリコシル化のために、還元条件下および非還元条件下の両方で、2つの異なるバンドとして移動した(図8A~8B)。FGF23-CSの上のバンドは、FGF23-WTの対応するバンドよりもスメアであり(図3H)、これは、グリコシル化パターンにおける潜在的な不均一性を示唆する。質量分析の解析により、Expi293F細胞において産生させたFGF23は、Cys206とCys244とを接続するジスルフィド架橋を有するペプチドを含有することが示された。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、O-結合型グリコシル化はFGF23をタンパク質分解から保護することが提唱されたため、Cys206-Cys244ジスルフィド架橋が、タンパク質分解性消化に対するFGF23のアクセス性に影響を及ぼすかどうかが問われた。図9に提示される実験は、FGF23-WTおよびCS変異体での限定されたタンパク質分解実験の結果を示す。(示されるような)様々な酵素での両方のタンパク質の限定タンパク質分解を、Proti-Ace Kit(Hampton Research)を用いて、製造業者のプロトコル下で行った。消化された試料を、SDS-PAGE、それに続くクマシーブルー染色に供して、消化産物を可視化した。SDS-PAGEによって可視化されるようなバンドのパターンに基づいて、FGF23-WTおよびFGF23-CSのプロテアーゼ消化産物は、互いに類似しており、したがって、システインCys206-Cys244ジスルフィド架橋は、タンパク質分解性消化に対するFGF23のアクセス性に大きな影響を及ぼさないことが結論付けられた。
【0215】
可溶性αクロトーへのFGF23結合に対するCys206からCys244へのジスルフィド形成の役割を探索するために、BLI測定を使用して、FGF23-WTの動態パラメータおよび解離定数を、Expi293F細胞において発現させたFGF23-CS、FGF23 D188A、およびFGF23-CS D188Aのものと比較した。図10Aに提示される実験により、4つのFGF23バリアントは全て、類似した結合速度論、および13 nM~18 nMの範囲のsKLAに対する解離定数を示すことが示される(表1)。さらに、αクロトーおよびFGFR1cを発現するHEK293細胞の、増加する濃度のFGF23-WTまたはFGF23-CSでの刺激により、類似したプロファイルのFRS2αのチロシンリン酸化、MAPK応答、および、リガンド刺激の減衰をもたらすフィードバック機構である、活性化MAPKによるFGFR1cの類似したセリンリン酸化が明らかになった(図10B図10C)。これらの結果は、αクロトーおよびFGFR1cとの三元活性複合体を作出する、R2のその酸化型での能力を強調する。
【0216】
(表1)sKLAに対するFGF23バリアントの結合
*いかなる結合も検出されない(BLIシグナルに変化なし)
【0217】
実施例4:FGF23は、細胞膜上に発現したαクロトー分子の二価リガンドとして作用することができる
次に、単一のFGF23-WT分子が、そのC末端テールのR1およびR2領域を介して、2つのαクロトー分子に結合することができるかどうかを検討した。換言すると、この実験の非限定的な目的は、細胞膜上に位置するαクロトー分子の二価リガンドとして機能するFGF23-WTの能力を試験することである。この疑問に取り組むために、FGFR1の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合されたαクロトーの細胞外ドメインから構成されるキメラ受容体分子を構築し、L6細胞において発現させた。ある種の非限定的な態様において、FGF23-WTは、キメラ受容体分子の二量体化を誘導し、それらのチロシンキナーゼ活性およびその後の下流シグナル伝達の活性化を刺激することができる、二価リガンドとして機能し得る。陽性対照として、αクロトーの細胞外ドメインに特異的に結合する二量体Fc-ナノボディおよび二量体Fc-R1融合タンパク質の活性を、これらの細胞においてFRS2のチロシンリン酸化およびMAPK応答を刺激するそれらの能力について解析した。キメラαクロトー-FGFR1c受容体を発現する細胞を、5または25 nMのFGF23-WT、FGF23-R1、二価抗αクロトーナノボディ(Nb85-Fc)、およびFc-R1で10分間、37℃で刺激した。刺激されていない細胞またはリガンド刺激された細胞由来の溶解物を、SDS-PAGE解析、それに続く、そのリン酸化をモニターするための抗pFRS2α抗体、MAPK活性化をモニターするための抗pMAPK抗体または抗MAPK抗体、およびタンパク質ローディングについての対照としての抗FGFR1抗体でのイムノブロッティングに供した。図4Dに提示される実験により、哺乳動物(左パネル)および大腸菌(右パネル)により産生されたFGF23-WTの両方、ならびに二価αクロトーナノボディおよびFc-R1タンパク質は、MAPK応答の堅牢な活性化を誘導することが示される。対照的に、一価FGF23-R1バリアント(大腸菌または哺乳動物細胞において産生)は、MAPK応答を模擬することができなかった。これらの実験により、FGF23-WTは、そのC末端テールを介して、細胞膜上に位置するαクロトー分子の二量体化を刺激できることが実証される(図10D)。
【0218】
次に、αクロトー二量体化のFGF23刺激を、単一分子イメージングアプローチを用いて調査した。細胞膜上のαクロトー分子の可視化を、N末端(細胞外)HaloTagに融合されたαクロトーを細胞不透過性の蛍光HaloTagリガンドAlexa488で標識することによって調査した。低レベルのHaloTag-αクロトーを発現するL6細胞を、Alexa488で短時間(37℃で15分)標識し、個々の蛍光粒子を、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡法を用いてイメージングして、細胞表面上の個々のαクロトー分子を可視化した。図4Bは、受容体二量体化の単一分子イメージング試験において報告された密度(<0.45粒子/μm2)に類似している、0.21粒子/μm2の粒子密度を有する、低発現細胞の代表的なTIRF顕微鏡イメージを示す。粒子を、自動的に検出して追跡し、細胞表面上でのそれらの動きを描写した(図4C)。単一分子を表す粒子と一致して、それらは多くの場合、単一段階において光退色した(図4D)。刺激されていない細胞における粒子の強度分布は、混合ガウスモデルとフィットさせることができ、ガラスに吸収された遊離色素の強度(554±16 a.u.;図11A~11C)に類似した強度(498±16 a.u.)を有する、したがって、単量体HaloTag-αクロトーに対応する可能性が高い主要ピーク、およびおよそ2倍の強度(973±129 a.u)を有する微小ピークを含む。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、この第2のより小さなピークは、時折一過性の倍加を示した、経時的な個々の軌跡の強度に基づく単量体と二量体との間の動的平衡を反映し得る(図12)。記録の目視検査によりまた、粒子の一過性の合体も示された(図13)が、これらの見かけの合体事象は、光の回折限界のために、粒子の会合ではなく、単に粒子の共局在を反映した可能性がある。対照的に、細胞がFGF23-WTで刺激された場合、強度分布は右にシフトし、第2の(即ち、二量体)ピーク(840±57 a.u.)がより顕著に成長し、第3のピークが単量体強度の3倍(1502±89対492±23 a.u.)で形成した。FGF23-WT刺激によって誘導された粒子強度の量子化された増加に加えて、その平均二乗変位(MSD)から計算された粒子の拡散係数により、それらの拡散係数(平均±SE=1.99±0.057×10-9 cm2・s-1)は、FGF23-WT結合によって(1.53±0.050×10-9 cm2・s-1)、および二量体抗αクロトーナノボディNb85-Fcの結合によって(1.49±0.049×10-9 cm2・s-1)、同様に低下した(22~23%、P<0.0001)が、一価のFGF23-R1またはFGF23-R2バリアントによっては低下しなかった(それぞれ、1.95±0.059および1.91±0.065×10-9 cm2・s-1)ことが示された。これらの結果により、FGF23-WTは、生存細胞の表面上でαクロトー分子の二価リガンドとして作用することが直接実証される。
【0219】
本明細書中に引用された特許、特許出願、および公開の各々の全ての開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0220】
具体的な態様に関して本発明が開示されたが、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変動が他の当業者によって考案され得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価な変動を全て含むと解釈されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12
図13
【配列表】
2023541237000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、非天然可溶性構築物。
【請求項2】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239またはその生物学的活性断片を含む、請求項1記載の構築物。
【請求項3】
SEQ ID NO:5のアミノ酸212~239を含む、請求項2記載の構築物。
【請求項4】
安定性増強ドメインに融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載の構築物。
【請求項5】
前記安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および/または抗体のFc領域のうちの少なくとも1つを含む、請求項4記載の構築物。
【請求項6】
前記Fc領域がIgG Fcである、請求項5記載の構築物。
【請求項7】
前記Fc領域が、ヒト免疫グロブリン1(IgG1)、ヒト免疫グロブリン2(IgG2)、ヒト免疫グロブリン3(IgG3)、および/またはヒト免疫グロブリン4(IgG4)のFcドメインである、請求項6記載の構築物。
【請求項8】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのN末端と融合されている、請求項4~7のいずれか一項記載の構築物。
【請求項9】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドのC末端と融合されている、請求項4~7のいずれか一項記載の構築物。
【請求項10】
前記安定性増強ドメインが、ポリペプチドに直接融合されている、請求項4~9のいずれか一項記載の構築物。
【請求項11】
前記安定性増強ドメインが、リンカーを介してポリペプチドに融合されている、請求項4~10のいずれか一項記載の構築物。
【請求項12】
前記リンカーが、約1~18個のアミノ酸ならびに/または1~20個の(エチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコール)単位を含む、請求項11記載の構築物。
【請求項13】
ポリペプチドのN末端に融合されたリンカーのC末端が、以下:
のうちの1つではない、請求項11または12記載の構築物。
【請求項14】
ポリペプチドのC末端に融合されたリンカーのN末端が、以下:
のうちの1つではない、請求項11または12記載の構築物。
【請求項15】
ペグ化されている、少なくとも部分的にメチル化されている、かつ/またはC末端アミド化されている、請求項1~14のいずれか一項記載の構築物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項記載の構築物をコードする、核酸配列。
【請求項17】
請求項16記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項18】
発現ベクターである、請求項17記載のベクター。
【請求項19】
自己複製性哺乳動物細胞ベクターまたは組込み型哺乳動物細胞ベクターである、請求項17または18記載のベクター。
【請求項20】
請求項16記載の核酸または請求項17~19のいずれか一項記載のベクターを含む、1つの細胞、複数の細胞、または多数の細胞。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項記載の構築物の治療的有効量を含む、哺乳動物において内分泌型FGFに関連した疾患または障害を処置する、寛解させる、および/または防止するための医薬
【請求項22】
前記構築物が、哺乳動物細胞の表面上のαクロトーに対するFGF23の結合を防止または最小化する、請求項21記載の医薬
【請求項23】
前記疾患または前記障害が、低リン酸血症および/または腫瘍誘導性骨軟化症を含む、請求項21または22記載の医薬
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21~23のいずれか一項記載の医薬
【請求項25】
入、経口、直腸内、膣内、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺内、鼻腔内、頬側、眼内、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによって投与される、請求項21~24のいずれか一項記載の医薬
【請求項26】
請求項1~15のいずれか一項記載の構築物またはその前駆体が、コードされたベクター上で送達され、ここで、該ベクターが該構築物またはその前駆体をコードし、該ベクターの該対象への投与時に、該構築物が該ベクターから転写および翻訳される、請求項21~24のいずれか一項記載の医薬
【請求項27】
記疾患および/または前記障害を処置または防止する少なくとも1種の付加的な薬物と組み合わせて使用される、請求項21~26のいずれか一項記載の医薬
【請求項28】
前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、同時投与される、請求項27記載の医薬
【請求項29】
前記構築物および前記少なくとも1種の付加的な薬物が、共製剤化(co-formulated)される、請求項27または28記載の医薬
【国際調査報告】