(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】血液スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/80 20060101AFI20230922BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230922BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230922BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230922BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230922BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230922BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230922BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20230922BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
G01N33/80
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61K45/00
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/13
C12N5/078
C12N9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515788
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021049763
(87)【国際公開番号】W WO2022056193
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523084488
【氏名又は名称】キャシ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズキウスキ アレキサンダー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ウェストホフ コニー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA25
4B065CA46
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、治療として抗CD38抗体を受けている癌患者に適した供血者血液を特定する方法に関する。特に、本発明は、患者血液が当該技術分野の交差適合法と干渉する抗CD38抗体を含む場合の患者血液と供血者血液との交差適合試験に関連する問題に対処する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)前記患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、前記供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)前記供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含む、患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記患者血液試料又は前記供血者血液試料と、前記1つ以上の供血者赤血球の表面上に存在する膜結合型CD38への前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質とを接触させる工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の供血者赤血球の表面上に存在する膜結合型CD38への前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質は、可溶性CD38抗原、抗CD38イディオタイプ抗体、又は抗原ストリッピング剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原ストリッピング剤は、レドックス試薬、任意にDTT、又は酵素、任意にプロテアーゼである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロテアーゼは、トリプシン、α-キモトリプシン、パパイン、及びフィシンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38のエピトープに特異的に結合し、ここで、前記エピトープは、配列番号29(ヒトCD38)のアミノ酸65~アミノ酸79に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3、又は、
b)配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号22、配列番号25、及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
b)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号24のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
e)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
f)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
g)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号27のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
h)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、一本鎖抗体(scAb)、アプタマー、又はナノボディである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG抗体、任意にIgG1抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者抗体は、同種抗体であり、及び/又は前記患者抗体は、前記患者の赤血球によって発現される任意の赤血球抗原以外の赤血球抗原に特異的に結合し、及び/又は前記患者抗体は、臨床的意義のある患者抗体であり、及び/又は前記患者抗体は、IgG抗体及び/又はIgM抗体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者は、癌を有するか、若しくは癌に罹患しており、又は前記患者は、癌の治療を受けている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、細胞表面上にCD38を発現する固形腫瘍であり、又は前記癌は、細胞表面上にCD38を発現する血液悪性腫瘍である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌は、T細胞若しくはB細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫、又は多発性骨髄腫である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記供血者赤血球の表面上に発現された前記1つ以上の赤血球抗原は、Ab、ABO、Cromer、Diego、Duffy、Gerbich、GLOB、Indian、Kell、Kidd、Knops、Lewis、Lutheran、LW、MNS、P1、Rh、XK、Xg、及びYtからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記供血者赤血球の表面上に発現された前記1つ以上の赤血球抗原は、Ab、Rh、MNS、P1、Lewis、Kell、Duffy、KIDD、Lutheran、及びXgからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者には、前記患者から試料を得る1年未満前に、前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
a)患者から得られる血液試料を準備することと、
b)供血者から得られる血液試料を準備することと、
ここで、前記供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)前記患者血液試料と、前記供血者血液試料からの1つ以上の供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)前記患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、前記患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、前記1つ以上の供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
e)任意に、存在するならば、任意の1つ以上の患者同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、前記患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、任意に、前記分離する工程は遠心分離を含む;
f)前記1つ以上の供血者赤血球上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する前記患者血液試料中の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
を含み、
任意に、前記患者血液/供血者赤血球の混合物を遠心分離することを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者血液試料中に存在する任意の抗体を互いに特異的に結合する凝集剤を加える工程を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者血液試料中の1つ以上の患者抗体を互いに特異的に結合する前記凝集剤は、抗ヒトグロブリン試薬である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の前に、赤血球パネルに対して前記患者血液試料をスクリーニングして、前記赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に存在する任意の赤血球抗原に特異的に結合する前記患者血液試料中の任意の患者抗体の存在又は不存在を決定する工程を更に含み、ここで、任意に、前記供血者血液試料中の前記供血者赤血球は、前記赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に発現された任意の赤血球抗原に特異的に結合すると特定された患者抗体のいずれかによって特異的に結合され得る赤血球抗原を一切発現しない、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
患者における癌を治療する方法であって、前記患者からの血液試料を準備することと、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法に従って前記血液試料をスクリーニングすることとを含む、方法。
【請求項23】
前記患者には、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
a)前記患者に抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することと、
b)前記抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの投与後に前記患者からの血液試料を得ることと、
c)請求項1~21のいずれか一項に記載の方法に従って前記患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌は、細胞表面上にCD38を発現する固形腫瘍である、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記癌は、細胞表面上にCD38を発現する血液悪性腫瘍である、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記癌は、T細胞若しくはB細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫、又は多発性骨髄腫である、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記供血者が前記患者と適合性であることが判明した場合に、前記供血者からの血液又は赤血球を投与する工程を更に含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療として抗CD38抗体を受けている癌患者に適した供血者血液を特定する方法に関する。特に、本発明は、患者血液が当該技術分野の交差適合法と干渉する抗CD38抗体を含む場合の患者血液と供血者血液との交差適合試験に関連する問題に対処する。
【背景技術】
【0002】
CD38は、特にニコチンアミドアデニンジヌクレオチドから環状アデノシン二リン酸リボース(cADPR)を生成する重要なADP-リボシルシクラーゼとしての酵素活性を有するII型膜受容体糖タンパク質である。CD38は、Tリンパ球及びBリンパ球並びにNK細胞等のエフェクター細胞だけでなく、制御性T細胞及び制御性B細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、又は腫瘍関連マクロファージ等の免疫抑制細胞も含む免疫学的応答に関与する多くの細胞型(略して免疫細胞と呼ばれる)の表面上に見られる(非特許文献1)。CD38は赤血球(RBC)の表面上にも発現している。
【0003】
CD38は、あらゆる病期の多発性骨髄腫患者及び予後不良の慢性リンパ性白血病(CLL)患者における癌細胞によって高度に発現されている。抗CD38モノクローナル抗体療法は、CD38発現腫瘍細胞の標的化された直接的な殺傷のために開発された。ダラツムマブ及びイサツキシマブは両者とも、多発性骨髄腫の治療用に承認された抗CD38モノクローナル抗体である。しかしながら、そのような抗CD38抗体は、RBCの表面上に発現されたCD38にも結合することから、赤血球輸血を受ける前に患者の血液をスクリーニングして適合を見るのに血液バンクによって行われる様々な血液学的検査に干渉を引き起こすことが知られている。赤血球輸血は、支持療法の一環として頻繁なRBC輸血を必要とする多発性骨髄腫患者にとって特に重要である。
【0004】
ダラツムマブ及びイサツキシマブ等の抗CD38抗体は、間接抗グロブリン試験(IAT)、抗体検出(スクリーニング)試験、抗体同定パネル、及び抗ヒトグロブリン(AHG)交差適合試験に干渉を引き起こすことが知られている(非特許文献2)。患者が抗CD38抗体で治療されている場合に、患者の血清中の抗CD38抗体によって引き起こされる干渉は、患者の血清に臨床的意義のある抗体、すなわち輸血された場合に供血者の赤血球の破壊(溶血性輸血反応として知られている)を引き起こす抗体が含まれているという誤った指摘をもたらす可能性がある。患者血清中の抗CD38抗体は、適合性の供血者RBCと患者RBCの適合を見るプロセスである血液交差適合試験にも干渉を引き起こす。交差適合試験の前にダラツムマブ又はイサツキシマブで患者を治療すると、適合性の交差適合が不適合性に見える場合がある。したがって、抗CD38抗体によって引き起こされる干渉は、輸血に適した供血者赤血球の特定に遅れをもたらし、患者の血清中の臨床的意義のある抗体の存在を覆い隠す可能性があり、それにより溶血性輸血反応のリスクが高まる。さらに、干渉は、抗CD38抗体による治療を中止した後、最大6ヶ月間持続する可能性がある(Darzalex(商標)の添付文書、非特許文献3、非特許文献4)。
【0005】
抗CD38抗体によって引き起こされる干渉を最小限に抑えるのに現在利用することができる方略としては、ジチオトレイトール(DTT)、トリプシン、又はα-キモトリプシン等のCD38を除去する抗原ストリッピング剤(antigen stripping agents)で供血者RBC又は試薬RBCを処理することが挙げられる。さらに、ダラツムマブの開始前に、患者RBCに対してRBCの表現型判定又は遺伝子型判定を行うことができる。これにより、血液バンクは、輸血を緊急に要する場合、又はダラツムマブの干渉を別の方法によって直ちに解決することができない場合に、表現型又は遺伝子型が適合したRBCを提供することが可能となる。しかしながら、遺伝子型判定法及び表現型判定法は時間がかかり高価であり、供血者RBCとの適合を保証しない場合がある。DTT及びトリプシンはまた、一部のRBC抗原、特にKell系抗原を変性し、その反応性を弱めることから、正確な交差適合試験を行うことが困難になる場合がある。抗CD38の干渉を解決する更なる方略は、例えば、血漿試料又は血清試料を可溶性CD38抗原で処理することによって患者の血漿中の抗CD38抗体を中和することである。しかしながら、このようなアプローチは高価であり、日常的に利用することはできない。したがって、交差適合試験等の血液学的検査に干渉を引き起こさず、癌、特に多発性骨髄腫を伴う患者の治療に活用することができる抗CD38抗体が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chevrier S et al. 2017
【非特許文献2】Regan & Markowitz; 2016
【非特許文献3】Janssen Biotech, 2015
【非特許文献4】Oostendorp et al. 2015
【発明の概要】
【0007】
第1の態様においては、本発明は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者からの患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含む、患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、方法を提供する。
【0008】
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは一般に、患者血液(例えば、患者の血清又は血漿)及び供血者赤血球の混合物中に存在する場合、かつ患者血液(例えば、患者の血清又は血漿)及び供血者赤血球の混合物が、供血者赤血球上に発現された赤血球抗原に結合する患者由来の抗体を一切含まない場合に、凝集剤(抗ヒトグロブリン抗体等)を混合物に加えたときに供血者赤血球の凝集を引き起こさない抗CD38抗体である。幾つかの実施の形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号29(ヒトCD38)のアミノ酸65~アミノ酸79を含むエピトープに結合する。
【0009】
患者抗体は同種抗体であり得る。例えば、幾つかの実施の形態においては、抗体は同種抗体、特に赤血球抗原に特異的に結合する同種抗体である。抗体は同種抗体であるため、これらは、患者の赤血球によって発現される任意の赤血球抗原以外の赤血球抗原に特異的に結合する。
【0010】
幾つかの実施の形態においては、方法は、
(a)患者から血液試料を準備することと、
(b)供血者から血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
(c)患者血液試料と、供血者血液試料からの1つ以上の供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
(d)任意に、患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、1つ以上の供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
(e)任意に、存在するならば、任意の1つ以上の患者同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
(f)1つ以上の供血者赤血球上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
を含む。
【0011】
第2の態様においては、本発明は、患者における癌を治療する方法であって、患者からの血液試料を準備することと、本発明のスクリーニング方法に従って血液試料をスクリーニングすることとを含む、方法を提供する。幾つかの実施の形態においては、患者には、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている(すなわち、患者は、より早期の時点で抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを既に受けている)。他の実施の形態においては、上記方法は、患者への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの一連の投与を含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、患者から試料を取得する工程を代替的又は追加的に含み得る。
【0012】
第3の態様においては、本発明は、本発明による患者における癌を治療する方法において使用される、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Daudi細胞へのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。Daudi細胞を様々な濃度の抗CD38抗体CID103又はダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートし、Alexa-647コンジュゲートF(ab’)2二次抗体を用いて結合を検出した。アイソタイプコントロールのヒトIgG1モノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。各データ点は3連の平均値として表され、エラーバーはSEMを表す。
【
図2】Raji細胞へのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。Raji細胞を様々な濃度の抗CD38抗体CID103又はダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートし、Alexa-647コンジュゲートF(ab’)2二次抗体を用いて結合を検出した。アイソタイプコントロールのヒトIgG1モノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。各データ点は3連の平均値として表され、エラーバーはSEMを表す。
【
図3】Ramos細胞へのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。Ramos細胞を様々な濃度の抗CD38抗体CID103又はダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートし、Alexa-647コンジュゲートF(ab’)2二次抗体を用いて結合を検出した。アイソタイプコントロールのヒトIgG1モノクローナル抗体をネガティブコントロールとして使用した。各データ点は3連の平均値として表され、エラーバーはSEMを表す。
【
図4A】供血者1のRBCへのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者1からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度の抗CD38抗体CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートした。アイソタイプコントロールのヒトIgG1抗体をネガティブコントロールとして使用した。
図4Aは、RBCへの抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図4B】供血者1のRBCへの抗CD47の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者1からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度のAlexa Fluor 647コンジュゲート抗CD47抗体とともにインキュベートした。抗CD47抗体をポジティブコントロールとして使用して、赤血球への特異的結合を実証した。
図4Bは、RBCへのコントロール抗CD47抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図5A】供血者2のRBCへのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者2からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度の抗CD38抗体CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートした。アイソタイプコントロールのヒトIgG1抗体をネガティブコントロールとして使用した。
図5Aは、RBCへの抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図5B】供血者2のRBCへの抗CD47の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者2からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度のAlexa Fluor 647コンジュゲート抗CD47抗体とともにインキュベートした。抗CD47抗体をポジティブコントロールとして使用して、赤血球への特異的結合を実証した。
図5Bは、RBCへのコントロール抗CD47抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図6A】供血者3のRBCへのCID103(aCD38-b-348)の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者3からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度の抗CD38抗体CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブ(Darzalex)とともにインキュベートした。アイソタイプコントロールのヒトIgG1抗体をネガティブコントロールとして使用した。
図6Aは、RBCへの抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図6B】供血者3のRBCへの抗CD47の結合の用量応答曲線を示す図である。供血者3からの血液基質(PBS中5%のRBC懸濁液)を、様々な濃度のAlexa Fluor 647コンジュゲート抗CD47抗体とともにインキュベートした。抗CD47抗体をポジティブコントロールとして使用して、赤血球への特異的結合を実証した。
図5Bは、RBCへのコントロール抗CD47抗体の結合についての用量応答曲線を示す。各データ点は3連の平均値として表される。
【
図7】Rh陽性のRBC及びRh陰性のRBCを用いた試験に対するダラツムマブの干渉を示すIgGゲルカードを示す図である。供血者RBC(Rh表現型:R1R1(
図7A)、R2R2(
図7B)、rr(
図7C))を、不活性AB血漿中の様々な濃度のダラツムマブ(DARA)とともにインキュベートし、IgGゲルカードアッセイ(Ortho MTS)を使用して干渉(すなわち、試料中に臨床的意義のある同種抗体が存在しないにもかかわらず凝集反応が存在すること)についてアッセイした。
図7A~
図7Cは、試験された各濃度での各Rh表現型についての結果を示す。ダラツムマブ濃度は各マイクロチューブの上部に示され、Φは薬物が存在しないことを示している。Rh表現型は各ウェルの下部に示されている。IgGゲルカードは、観察された凝集の程度に従って熟練者によって採点された。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て凝集反応の存在を示している。0又は0?の評定は、凝集なし、又は疑わしい凝集を示している。凝集の評定は各ウェルの下部に示されている。
【
図8】Rh陽性のRBC及びRh陰性のRBCを用いたCID103(aCD38-b-348)のIgGゲルカード試験を示す図である。供血者RBC(Rh表現型:R1R1(
図8A)、R2R2(
図8B)、rr(
図8C、
図8D))を、不活性AB血漿中の様々な濃度のCID103(aCD38-b-348)とともにインキュベートし、IgGゲルカードアッセイ(Ortho MTS)を使用して干渉(すなわち、試料中に臨床的意義のある同種抗体が存在しないにもかかわらず凝集反応が存在すること)についてアッセイした。
図8A~
図8Dは、試験された各濃度での各Rh表現型についての結果を示す。ダラツムマブ濃度は各マイクロチューブの上部に示され、Φは薬物が存在しないことを示している。Rh表現型は各マイクロチューブの下部に示されている。IgGゲルカードは、観察された凝集の程度に従って熟練者によって採点された。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て凝集反応の存在を示している。0又は0?の評定は、凝集なし、又は疑わしい凝集を示している。凝集の評定は各マイクロチューブの下部に示されている。
【
図9】未処理のRBC及び前処理されたRBCを用いたダラツムマブ及びCID103(aCD38-b-348)のIgGゲルカード試験を示す図である。RhD陰性(rr)のRBCを処理せずに、又はパパイン、トリプシン、若しくはフィシンで処理した後に、様々な濃度のCID103(aCD38-b-348)又はダラツムマブ(DARA)とともにインキュベートした。試料を、IgGゲルカードアッセイ(Ortho MTS)を使用して干渉(すなわち、試料中に臨床的意義のある同種抗体が存在しないにもかかわらず凝集反応が存在すること)についてアッセイした。
図9A~
図9Dは、試験された各濃度での各RBC処理条件についての結果を示す。RBC処理は各マイクロチューブの上部に示されている。IgGゲルカードは、観察された凝集の程度に従って熟練者によって採点された。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て凝集反応の存在を示している。0又は+/-の評定は、凝集なし、又は疑わしい凝集を示している。凝集の評定は各マイクロチューブの下部に示されている。
【
図10】自動式プラットフォームIH-1000での未処理のRBCを用いたCID103(aCD38-b-348)のスクリーニングを示す図である。未処理のRBCを、不活性AB血漿中の250μg/mlのCID103(aCD38-b-348)とともにインキュベートし、自動式IH-1000プラットフォーム(BioRad)を使用して干渉(すなわち、試料中に臨床的意義のある同種抗体が存在しないにもかかわらず凝集反応が存在すること)についてアッセイした。
図10は結果の画像を示す。IH-1000は「解釈不能」という結果を返した。熟練者による評価に従って、結果は凝集を有しないと判断された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、患者が抗CD38抗体(本明細書においてはCD38調節抗体剤とも呼ばれる)で治療されていても、標準的な技術を使用して患者血液試料を試験することを初めて可能にする。殆どの治療用抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ及びイサツキシマブを含む)は、供血者赤血球上の抗原に結合する抗体が患者の血液中に存在するおかげで溶血の可能性があるため所与の供血者血液を不適なものにし得る患者の血液中の抗体(すなわち、臨床的意義のある抗体)を特定する試験と干渉する。干渉が起こるのは、治療用抗CD38抗体が供血者赤血球の表面上に発現されたCD38に結合し、その後、これが抗ヒトグロビン試薬又は類似物を加えたときに凝集するためである。この試薬は通常、供血者赤血球上の任意の抗原に結合した患者の血清中の任意の臨床的意義のある同種抗体を互いに結合させ、凝集を引き起こすこととなる。しかしながら、患者血清中に抗CD38抗体が存在すると、臨床的意義のある同種抗体が一切存在しなくても凝集が起こるため、偽陽性の結果が生ずる。
【0015】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、殆どの治療用抗体がこの干渉を引き起こすが、或る特定の抗CD38抗体では干渉が起こらないことを発見した。理論により縛られることを望むものではないが、本発明者らは、抗CD38の特定のエピトープに結合する抗体は干渉を引き起こさず、したがって、抗原ストリッピング剤又は同等物を必要とせずに、標準的な技術で血液型判定及び交差適合試験を行うことを可能にすることを見出した。
【0016】
本発明の方法は、患者血液試料中の臨床的意義のある患者抗体の存在又は不存在を検出する。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、患者における同種抗体(例えば、臨床的意義のある同種抗体)の存在又は不存在を検出する。本明細書において使用される場合に、「同種抗体」という用語は、被験体自身の赤血球上に存在しない赤血球抗原に特異的に結合する抗体を指す。したがって、同種抗体は、抗赤血球抗原同種抗体である。同種抗体は、被験体自身の赤血球上に存在する抗原に特異的に結合する抗体を指す「自己抗体」と区別することができる。同種抗体及び自己抗体の両者を、本発明の方法によって検出することができる。同種抗体の発生には、個体は非自己RBC抗原に曝露されねばならず、非自己抗原の一部を提示することができるHLA結合モチーフを有さねばならない(Tormey & Hendrickson, 2019)。非自己抗原への曝露は、例えば、妊娠、輸血、又は移植によって起こり得る。同種抗体を形成する過程は、「同種免疫化」と呼ばれる。同種抗体は、臨床的意義のある抗体である場合があり、母親が赤ん坊の赤血球上の抗原に対する同種抗体を保有する場合には、輸血されたRBCの破壊(溶血)又は胎児若しくは新生児への害のいずれかをもたらす。実際、同種免疫化は、輸血関連死亡の直接的な原因となり得る。同種免疫化はまた、輸血の遅れ、高度に同種免疫化された個体について適合性の血液を突き止めることの困難性、及び遅延した又は急性の溶血性輸血反応等の患者の治療における更なる問題を引き起こす。同種免疫化は、支持療法の一環として頻繁に輸血を受けている同種抗体を発生するリスクがより大きい腫瘍患者にとって特に臨床的に重要である(Hendrickson & Tormey, 2016)。したがって、患者試料を同種抗体の存在について正確かつ迅速にスクリーニングすることができることが重要である。ダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体で治療された患者は、それらの血清中に抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが存在し、それがRBC上のCD38に結合し、同種抗体が存在すると誤って示されるため、同種抗体についてのスクリーニングに時間がかかる場合がある。同種抗体の検出に使用される抗体スクリーニング試験及び血液交差適合試験を変更して、抗CD38抗体によるこの干渉を回避する工程を組み込むことができる。例えば、RBCを抗原ストリッピング剤(DTT等)で処理するか、又は患者試料を抗CD38中和剤(可溶性CD38等)で処理することができる。しかしながら、そのような追加の試薬は追加の費用をもたらし、広く利用可能ではなく、余分な方法工程は時間がかかり、抗体スクリーニングに遅延をもたらす。本発明の方法は、RBC又は患者血液試料の追加処理を必要とせずに、患者試料中の同種抗体の検出を可能にする。本発明の方法を使用すると、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体スクリーニング又は交差適合試験において干渉(例えば、臨床的意義のある同種抗体の不存在下での凝集)をもたらさず、それによって費用が最小限に抑えられ、輸血に適合性の血液製剤を特定することの遅れが避けられる。
【0017】
定義
本明細書において使用される用語、技術的手段、及び実施形態の或る特定の定義を下記に示すが、その多く又は大部分は当業者の共通の理解を追認するものである。
【0018】
投与:
本明細書において使用される場合に、「投与」という用語は、被験体への組成物の投与を指す。動物被験体(例えば、ヒト)への投与は、あらゆる適切な経路によるものであり得る。例えば、幾つかの実施形態においては、投与は、気管支(気管支点滴注入によるものを含む)、バッカル、腸内、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、特定の器官又は組織内(例えば、肝臓内、腫瘍内、腫瘍周囲等)、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内点滴注入によるものを含む)、経皮、膣内、及び硝子体内であり得る。投与は間欠投薬を含み得る。代替的には、投与は、少なくとも選択された期間にわたる持続投薬(例えば、灌流)を含み得る。当該技術分野において知られているように、抗体療法薬は一般に、例えば、静脈内注射、皮下注射、又は腫瘍内注射(例えば、特に腫瘍内で高用量が望まれる場合)によって非経口投与される。
【0019】
膜結合型CD38への抗CD38抗体の結合を阻害する作用物質:
既に記載したように、ダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントによる患者の治療は、血液抗体スクリーニング及び交差適合試験等の血液スクリーニングにおいて不正確な結果をもたらす可能性がある。例えば、ダラツムマブ又はイサツキシマブは、患者試料中に存在する場合に、間接抗グロブリン試験(IAT)においてRBCとともにインキュベートされたときに凝集反応を起こすことから、患者試料中に臨床的意義のある抗体が存在することが誤って示される。この問題を克服するために、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの膜結合型CD38への結合を阻害する対策を講じなければならない。これは、供血者又はパネルのRBCを、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの膜結合型CD38への結合を阻害する作用物質で処理することを含み得る。そのような作用物質は、「抗CD38中和剤」又は「CD38中和剤」と呼ばれる場合がある。CD38中和剤の例としては、抗原ストリッピング剤が挙げられる。本明細書において使用される場合に、「抗原ストリッピング剤」という用語は、RBCの表面から抗原を除去するのに使用されるあらゆる作用物質を指し得る。特に、RBCからCD38を除去するのに、抗原ストリッピング剤を使用することができる。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はレドックス試薬又は酵素である。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤は、ジチオトレイトール(DTT)である。DTTはチオール還元剤であり、これは、分子の細胞外ドメインにおけるジスルフィド結合を破壊することによりRBC表面のCD38を変性させるため、抗CD38がRBCに結合するのを防ぐ。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤は酵素である。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はプロテアーゼである。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はトリプシンである。トリプシンはタンパク質分解酵素であり、これは、細胞表面CD38の切断ではDTT処理よりも効率が低い。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はα-キモトリプシンである。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はパパインである。幾つかの実施形態においては、抗原ストリッピング剤はフィシンである。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの膜結合型CD38への結合を阻害する作用物質でRBCを処理する工程を含まず、例えば、本発明の方法は、反応混合物を、抗原ストリッピング剤等のCD38中和剤と接触させる工程を含まない。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、RBCを抗原ストリッピング剤で処理する工程を含まない。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、RBCからCD38を除去する工程を含まない。
【0020】
血清試料又は血漿試料等の患者試料を「抗CD38中和剤」で処理することもできる。本明細書において使用される場合に、抗CD38中和剤は、患者試料中の抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを結合により又は他の方法で中和するのに使用されるあらゆる物質である。抗CD38中和剤を使用して、血液スクリーニングの前に、患者からの血清又は血漿又は全血試料中の抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントに結合させることができる。幾つかの実施形態においては、抗CD38中和剤は、可溶性CD38抗原であり得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38中和剤は、抗CD38イディオタイプ抗体であり得る。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、患者からの試料を抗CD38中和剤で処理する工程を含まない。幾つかの実施形態においては、本発明の方法は、膜結合型CD38への抗CD38の結合を阻害する作用物質で患者からの試料を処理する工程を含まない。
【0021】
本明細書において開示される抗CD38抗体(ダラツムマブ又はイサツキシマブではなく、むしろaCD38-b-348抗体若しくはaCD38-b-329抗体又はそれらから誘導される抗体(他の場所に記載される変異体等))の使用を含む本発明の方法は、有利には、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの膜結合型CD38への結合を阻害する作用物質(抗CD38中和剤又はCD38中和剤のいずれか)の使用を一切必要としない。
【0022】
凝集:
本明細書において使用される場合に、「凝集」又は「赤血球凝集」という用語は、多数のRBCが1つ以上の抗体によって結合され、互いに凝集するあらゆる過程を指す。凝集は、1)抗体が赤血球抗原に付着するときの感作、及び2)感作された赤血球が互いに橋かけされて格子を形成するときの凝集の2段階で起こると考えられる可逆的な化学反応である。患者試料が供血者RBC上に存在するRBC抗原に特異的な抗体を含む場合に、患者試料と供血者RBCとが混合されると、抗体はRBC抗原に結合することになる(感作)。IgM抗体等の一部の抗体は、互いに結合することによって直接凝集を引き起こし得る。IgG抗体等の他の抗体は、結合した抗体を互いに橋かけし又は接続して凝集を生じさせるのに、凝集剤の添加を必要とする場合がある。患者血液試料中に存在する任意の抗体を互いに結合する凝集剤。特に、凝集剤は、任意の患者由来の抗体及び/又は任意の抗CD38抗体を互いに結合し得る。凝集される患者由来の抗体及び/又は抗CD38抗体が赤血球に結合している場合に、凝集剤がまたRBCの凝集を引き起こすことになる。
【0023】
本発明の方法は、抗ヒトグロブリン剤等の或る特定の凝集剤を使用することができる。RBC抗原に特異的に結合する患者由来の抗体は通常IgG抗体であるため、抗ヒトグロブリン剤は抗ヒトIgG抗体であり得る。しかしながら、抗ヒトグロブリン剤は、代替的又は追加的に抗C3抗体を含み得る。一般に、凝集剤は、ヒト定常領域(特にヒトIgG定常領域)を含む任意の抗体を互いに結合させる作用物質である。本明細書において記載される抗CD38抗体(すなわち、aCD38-b-348及びaCD38-b-329、又はそれらから誘導される抗体)は、ヒト定常領域を含み得るにもかかわらず(例えば、これらはヒトIgGアイソタイプのものであり得る)、凝集剤の存在は、驚くべきことに、抗CD38抗体において、スクリーニング工程との干渉を引き起こすような凝集を引き起こさない。
【0024】
凝集剤(例えば、抗ヒトグロブリン試薬)は、供血者RBCに結合される患者抗体を互いに結合させる。抗体に結合されたRBCは、例えば、チューブ内で行われる間接抗グロブリン試験(IAT)において、遠心分離されると目に見えるペレットに縮小され得る。凝集は0~4+のスケールで評価される。ここで、0は凝集がないことを表し、4+は非常に強い凝集反応を示す。凝集は、供血者赤血球試料が患者の血液試料と適合性であるかどうか、したがって供血者RBCが輸血に適しているかどうかを判断する大部分の試験の基礎となる。凝集の発生は、患者試料に、供血者のRBC上のRBC抗原に結合する同種抗体(臨床的意義のある抗体)が含まれているため、患者赤血球と供血者赤血球との間の適合が不適合性であることを示し得る。1+、2+、3+、及び4+の凝集結果は、患者RBCと供血者RBCとの間の適合が不適合性であり、供血者RBCを患者に輸血すべきではないことを示し得る。0又は0?の凝集結果は、患者RBCと供血者RBCとの間の適合が適合性であり、供血者RBCを患者に安全に輸血することができることを示し得る。
【0025】
凝集は、患者試料に或る特定の抗CD38抗体が含まれている場合、例えば、患者がダラツムマブ又はイサツキシマブで治療されている場合に起こる場合もある。患者試料を供血者RBCとともにインキュベートすると、患者試料中に存在する抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、供血者RBCの表面上に発現されたCD38に結合し得る。凝集剤(例えば、抗ヒトグロブリン試薬)が患者試料/供血者RBCの混合物に添加されると、凝集が起こる場合がある。患者試料中に抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが存在することと、凝集剤との組合せによって引き起こされる凝集は、供血者RBC上のRBC抗原に対する患者試料中の臨床的意義のある患者抗体の存在にかかわらず起こり得る。このように、患者試料中のダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの存在は、患者が供血者RBC抗原に対する同種抗体を有しないとしても、血液交差適合試験に干渉を引き起こすため、供血者RBCが患者への輸血に不適合性であるように見える場合がある。本明細書において記載される抗CD38抗体(すなわち、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329、又はそれらから誘導される抗体)を使用すると、この問題は回避される。
【0026】
抗体:
本明細書において使用される場合に、「抗体」という用語は、CD38、特にヒトCD38及びヒトCD38細胞外ドメイン等の特定の標的抗原に対する特異的結合をもたらすのに十分な標準的な免疫グロブリン配列エレメントを含むポリペプチドを指す。当該技術分野で既知のように、自然に産生される無傷抗体は、互いに会合して「Y字」構造と一般に称されるものとなる2つの同一の重鎖ポリペプチド(各々約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各々約25kD)で構成される、およそ150kDの四量体物質である。各重鎖は、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)に続く3つの定常ドメイン:CH1、CH2及びカルボキシ末端CH3(Yのステムの基部に位置する)の少なくとも4つのドメイン(各々約110アミノ酸長)で構成される。「スイッチ」として知られる短い領域が重鎖の可変領域と定常領域とを接続する。「ヒンジ」によりCH2及びCH3ドメインが抗体の残りの部分に接続される。このヒンジ領域中の2つのジスルフィド結合が無傷抗体において2つの重鎖ポリペプチドを互いに接続する。各軽鎖は、別の「スイッチ」によって互いに分離したアミノ末端可変(VL)ドメインに続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインの2つのドメインで構成される。無傷抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、重鎖及び軽鎖は、単一のジスルフィド結合によって互いに連結され、他の2つのジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに接続することで、二量体が互いに接続して、四量体が形成される。また、自然に産生される抗体は、通例CH2ドメインでグリコシル化され、各ドメインは、圧縮逆平行βバレルにおいて互いに充填された2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖又は5本鎖のシート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」を特徴とする構造を有する。各可変ドメインは、「相補性(complement)決定領域」(CDR1、CDR2及びCDR3;当該技術分野で理解されるように、例えばKabatナンバリングスキームに従って決定される)として知られる3つの超可変ループ及び4つのやや一定の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)を有する。天然抗体が折り畳まれる場合、FR領域によりドメインに構造的フレームワークをもたらすβシートが形成され、重鎖及び軽鎖の両方のCDRループ領域が三次元空間で集まることで、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位が生じる。自然発生抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、例えば細胞傷害を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。当該技術分野で既知のように、Fc受容体に対するFc領域の親和性及び/又は他の結合属性は、グリコシル化、又は抗体の開発可能性(developability)を改善することができる他の修飾によって調節することができる(Jarasch A et al., 2015)。
【0027】
幾つかの実施形態においては、本発明に従って作製及び/又は利用される抗体には、かかるグリコシル化が修飾又は操作されたFcドメインを含む、グリコシル化Fcドメインが含まれる。本発明の目的上、或る特定の実施形態においては、天然抗体に見られるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチド又はポリペプチドの複合体は、かかるポリペプチドが自然に産生されるか(例えば、抗原に反応する生物によって生成する)、又は組換え操作、化学合成、若しくは他の人工システム若しくは方法論によって作製されるかに関わらず、「抗体」と称し、及び/又は「抗体」として使用することができる。幾つかの実施形態においては、抗体は、各々が単一の抗体配列に関連し、抗原内の幾らか異なるエピトープ(異なる参照抗CD38抗体に会合するヒトCD38細胞外ドメイン内の異なるエピトープ等)に結合する抗体のパネルとして生成するポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体である。
【0028】
ポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体は、文献中に記載される医学的用途のための単一の調製物中で提供することができる(Kearns JD et al., 2015)。幾つかの実施形態においては、抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施形態においては、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類又はヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。幾つかの実施形態においては、抗体配列エレメントは、当該技術分野で既知のようにヒト化、霊長類化(primatized)、キメラ等である。さらに、「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合に、適切な実施形態においては(特に明記されないか又は文脈から明らかでない限り)、抗体の構造的及び機能的特徴を代替的な提示で、例えば下記に規定される抗原結合フラグメントとして利用するための当該技術分野で既知の又は開発された構築物又はフォーマットのいずれかを指す場合がある。例えば、本発明に従って利用される抗体は、無傷IgG、IgE及びIgM、二重特異性若しくは多重特異性抗体(例えば、Zybodies(商標)等)、一本鎖可変ドメイン(scFv)、ポリペプチド-Fc融合体、Fab、ラクダ様(cameloid)抗体、重鎖サメ抗体(IgNAR)、マスク(masked)抗体(例えば、Probodies(商標))、又は(モノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与するために使用される人工T細胞受容体を得るための構築物内のscFvのように)細胞表面上での発現及び露出を可能にするポリペプチドとの融合タンパク質から選択されるフォーマットであるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、抗体は、自然に産生された場合にそれが有し得る共有結合修飾(例えば、グリカンの付着)を欠いていてもよい。代替的には、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカン、ペイロード(例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分等)又は他のペンダント基(例えば、ポリエチレングリコール等)の付着)を有していてもよい。
【0029】
抗体スクリーニング:
本明細書において使用される場合に、「抗体スクリーニング」という用語は、赤血球のパネルを使用して、1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者からの試料中の抗体の存在又は不存在を検出するのに行われるあらゆる試験を指す。抗体スクリーニングで検出された抗体は、臨床的意義のある抗体であり得て、例えば、抗体が特異的に結合し得る抗原を発現するRBCの輸血を患者が受けると、溶血性輸血反応を引き起こし得る。抗体スクリーニングで検出される抗体は、同種抗体、すなわち被験体自身のRBC上に存在しない抗原に特異的に結合する抗体、又は自己抗体、すなわち被験体自身のRBC上に存在する抗原に特異的に結合する抗体であり得る。抗体スクリーニングは、事前の輸血の結果として同種免疫化された可能性が高い患者、例えば、血液癌の治療を受けている患者に特に有用である。抗体スクリーニングを、本明細書において記載される方法のいずれかに従って実施することができる。抗体を、間接抗グロブリン試験(IAT)を使用して検出することができる。抗体スクリーニングを、カラム凝集アッセイ、チューブアッセイ、又は固相アッセイを使用して実施することができる。
【0030】
抗体スクリーニングを赤血球のパネルを使用して行うことができ、ここで、パネル中の赤血球は特定の血液群抗原を発現することが分かっている。赤血球パネルは、本明細書において記載される血液群抗原のいずれかを発現するRBCを含み得る。赤血球パネルは、Ab群、ABO群、Cromer群、Diego群、Duffy群、Gerbich群、GLOB群、Indian群、Kell群、Kidd群、Knops群、Lewis群、Lutheran群、LW群、MNS群、P1群、Rh群、XK群、Xg群、又はYt群の抗原からなる群から選択される血液群抗原のいずれかを発現するRBCを含み得る。特に、赤血球パネルは、Kell群抗原、Duffy群抗原、Kidd群抗原、Lewis群抗原、P群抗原、MNS群抗原、Lutheran群抗原、及びXg群抗原を発現するRBCを含み得る。赤血球パネルに対する患者試料のスクリーニングは、一般的な臨床的に関連する患者抗体の検出を可能にする。抗体スクリーニングを実施した後に、特定の供血者からの供血者RBCに対して患者試料を交差適合試験することができる。抗体スクリーニングは、抗体スクリーニングで特定されたRBC抗原を発現しない供血者RBCの選択を可能にするため、血液交差適合試験において適合性の供血者を特定する可能性が向上する。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記方法は、赤血球のパネルに対する抗体スクリーニングの工程を含む。本発明の幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者血液試料を候補となる供血者赤血球試料と交差適合試験することを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、最初に赤血球のパネルを使用して抗体スクリーニング工程を実施し、続いて(同じ患者からの)患者血液試料を候補となる供血者赤血球試料と交差適合試験することを含み、ここで、供血者赤血球は、抗体スクリーニング工程において患者由来の抗体によって見出されると特定された赤血球抗原を一切発現しない。
【0032】
抗CD38抗体:
「抗CD38抗体」(本明細書においては「CD38調節抗体剤」とも呼ばれる)という用語は、本明細書において記載される特定の特性を示す抗CD38抗体を指すのに本明細書において使用される。本明細書における抗CD38抗体への言及は、文脈上別段の指示がない限り、その抗原結合フラグメントを含む。幾つかの実施形態においては、使用される抗CD38抗体のどの抗原結合フラグメントも、Fc部分、例えばヒトIgG定常領域を含み得る。
【0033】
多くの実施形態においては、本明細書において記載される望ましい抗CD38抗体は、それらが免疫エフェクター細胞を刺激し、及び/又は免疫細胞機能を改変し、免疫抑制細胞若しくは腫瘍細胞(例えば、それぞれの場合に、それらの表面上にCD38を発現する)等のCD38発現細胞(例えば、高いレベルのCD38を発現する)に対して細胞傷害性であるか、又はその食作用を誘導することを特徴とする。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、免疫細胞(例えば、免疫細胞、特にCD38を発現する免疫細胞と接触したとき)及び腫瘍細胞に関して、aCD38-b-348又はaCD38-b-329の活性と合理的に同等な活性(例えば、レベル及び/又は種類)によって特徴付けられる。幾つかの実施形態においては、関連する活性は、ADCP、CDCの不存在下でのADCC、直接的な殺傷、或る特定のCD38発現細胞(例えば、高発現細胞)の枯渇、エフェクター免疫細胞の活性化、T細胞、B細胞、又はNK細胞の増殖の促進、免疫細胞の活動の調節(例えば、抑制性マクロファージの炎症性マクロファージへの再分極化)、T細胞レパートリーの偏り等、及びそれらの組合せであるか、又はそれらを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、存在又はレベルがCD38のレベル及び/又は活性、及び/又はCD38活性に特徴的な1つ以上の特徴又は結果と相関する実体又は部分である。幾つかの実施形態においては、レベル及び/又は活性の増加は、実体(複数の場合もある)又は部分(複数の場合もある)の不存在下でその他は同等の条件下で観察されるものと比較して評価され又は決定される。代替的又は追加的に、幾つかの実施形態においては、レベル及び/又は活性の増加は、参照抗CD38抗体(多くの実施形態においては、IB4等のCD38アゴニスト抗体である)が存在する場合に、同等の条件下で観察されるものと同等又はそれよりも大きい。多くの実施形態においては、本開示に従って使用される抗CD38抗体は、CD38、典型的にはその細胞外ドメインに直接的又は間接的に結合する実体又は部分であるか、又はそれらを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、本明細書において開示される抗CD38抗体、その抗原結合フラグメント(例えば、1つ以上のCDR、全ての重鎖CDR、全ての軽鎖CDR、全てのCDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む)、それらの親和性成熟変異体(又はそれらの抗原結合フラグメント)、又は上述のいずれかのあらゆる代替的な形式(例えば、キメラ、ヒト化、多重特異性、代替アイソタイプ(alternate isotype)等)であるか、それらを含むか、又はそれらによるCD38への結合に競合する。代替的又は追加的に、幾つかの実施形態においては、本明細書において開示される抗CD38抗体は、スクリーニング、製造、(前)臨床試験について、及び/又はaCD38-b-epとして特定された配列等のヒトCD38内での関連するエピトープの特定について、及び/又は本明細書において開示される特定の状況における(例えば、癌療法の場合の)製剤化、投与、及び/又は有効性について有利な特徴であり得る1つ以上の特徴によって特徴付けられ得る。
【0034】
抗原:
「抗原」という用語は、本明細書において使用される場合に、免疫応答を誘発し、及び/又はT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)及び/又はB細胞受容体に結合する作用物質を指す。液性応答を誘発する抗原は、抗原特異抗体の産生を伴うか、又はCD38細胞外ドメインについて実施例に示されるように、抗体ライブラリーのスクリーニング及び更に特性評価すべき候補抗体配列の特定に使用することができる。
【0035】
抗原結合フラグメント:
本明細書において使用される場合に、「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体が標的とする抗原に特異的に結合する能力を抗原結合フラグメントに与えるのに十分な本明細書に記載される抗体の1つ以上の部分を含む(include or comprise)作用物質を包含する。例えば、幾つかの実施形態においては、この用語は、特異的結合をもたらすのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチド又はポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗原結合フラグメントとしては、小モジュール免疫薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals;「SMIPs(商標)」)、一本鎖抗体、ラクダ様抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体)、一本鎖若しくはタンデムダイアボディ(TandAb(商標))、VHH、Anticalins(商標)、Nanobodies(商標)、ミニボディ(minibodies)、BiTE(商標)、アンキリンリピートタンパク質、すなわちDARPINs(商標)、Avimers(商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(商標)、Affilins(商標)、Trans-bodies(商標)、Affibodies(商標)、TrimerX(商標)、MicroProteins、Centyrins(商標)、CoVX bodies、BiCyclicペプチド、Kunitzドメイン由来の抗体構築物、又は所望の生物活性を示す限りにおいて任意の他の抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、この用語は、ステープルペプチド、抗体様結合ペプチド模倣薬、抗体様結合足場タンパク質、モノボディ(monobodies)、及び/又は例えば文献(Vazquez-Lombardi R et al., 2015)中で概説される他の非抗体タンパク質足場等の他のタンパク質構造を包含する。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が当業者によって相補性決定領域(CDR)と認められる1つ以上の構造要素を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が、本明細書に記載される抗CD38抗体(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329のアミノ酸配列エレメント)に見られるものと実質的に同一である、少なくとも1つの参照CDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)、特に少なくとも1つの重鎖CDR、例えばHCDR3(例えばaCD38-b-348又はaCD38-b-329のHCDR3配列)を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列が、配列が同一であるか、又はかかる参照CDRと比べて僅かに(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ)多いアミノ酸変化(例えば、置換、付加又は欠失;多くの場合、置換)を有するが、参照CDRが得られた抗体(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329)の標的への結合を維持する、少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/又は少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、参照抗体の重鎖又は軽鎖(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329)に由来する3つの全てのCDR(又は幾つかの実施形態においては、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、参照抗体(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329)に由来する6つ全てのCDR(又は幾つかの実施形態においては、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、抗原結合フラグメントは、参照抗体(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329)の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメイン(又は幾つかの実施形態においては、それに実質的に同一の配列)を含むポリペプチド又はその複合体であるか又はそれを含む。幾つかの実施形態においては、「抗原結合フラグメント」という用語は、核酸アプタマー、例えばRNAアプタマー及びDNAアプタマー等の非ペプチド及び非タンパク質構造を包含する。アプタマーは、ポリペプチド等の特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、又はその類似体若しくは誘導体)である。アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸、更には細胞及び組織等の様々な分子標的に特異的に結合する短い合成一本鎖オリゴヌクレオチドである。これらの小核酸分子は、タンパク質又は他の細胞標的に特異的に結合することが可能であり、本質的に抗体の化学的同等物である二次及び三次構造を形成することができる。アプタマーは、高度に特異的であり、サイズが比較的小さく、非免疫原性である。アプタマーは概して、SELEX(指数的濃縮によるリガンドの系統的進化;Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment))として知られるバイオパニング法によって選択される(例えば、Ellington et al. Nature. 1990; 346(6287): 818-822、Tuerk et al., Science. 1990; 249(4968):505-510、Ni et al., Curr Med Che 2011; 18(27):4206-14を参照されたい)。任意の所与の標的に対するアプタマーを生成する方法は、当該技術分野で既知である。アフィマーを含むペプチドアプタマーも包含される。アフィマーは、特定の標的タンパク質に対する高親和性結合表面をもたらすペプチドループを示すように操作された、小さな高度に安定したタンパク質である。アフィマーは、シスタチンのシステインプロテアーゼ阻害剤ファミリーに由来する12kDa~14kDaと低分子量のタンパク質である。アフィマータンパク質は、シスタチンタンパク質フォールドをベースとする安定したタンパク質である足場から構成される。アフィマータンパク質は、抗体と同様の高い親和性及び特異性で異なる標的タンパク質に結合するように無作為化することができる2つのペプチドループ及びN末端配列を示す。タンパク質足場に対するペプチドの安定化は、ペプチドがとることができる可能な立体配座を制約し、それにより遊離ペプチドライブラリーと比較して結合親和性及び特異性を増大させる。
【0036】
製品及びキット:
本発明の幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される抗CD38抗体は、別個の製品において提供される。本発明の幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体を含む製品は、ラベルを備えた容器において又はその容器とともに提供される。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、及び試験チューブを挙げることができる。幾つかの実施形態においては、容器は、ガラス又はプラスチック等のあらゆる又は様々な材料から形成され得る。幾つかの実施形態においては、容器は、特定の疾患、障害、若しくは病態、又はそれらの病期若しくは型を治療するのに有効な組成物を収容する。幾つかの実施形態においては、容器は滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能な栓を有するバイアルであり得る)。例えば、幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される抗CD38抗体を含む組成物は、ゴム栓及びアルミニウムシールを備えた澄明なガラスバイアルにおいて包装される。容器上の又は容器に付属したラベルは、組成物が選択される病態の治療に使用されることを示す。
【0037】
幾つかの実施形態においては、製品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能なバッファーが入った別個の容器を更に含み得て、及び/又は他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、注射器、及び使用説明を含む添付文書を含む、商業的観点及び利用者観点から望ましい他の材料を更に含み得る。例えば、幾つかの実施形態においては、製品は、適切な希釈剤及びバッファーを用いて0.1mg/ml、1mg/ml、10mg/mlの最終濃度、又はより高濃度で製剤化された、合計2mg、5mg、10mg、20mg、50mg、又はそれより多くを含む滅菌水溶液として静脈内製剤において各作用物質を提供することを可能にし得る。
【0038】
幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される抗CD38抗体を、キットとともに提供される若しくは提供されないあらゆる適切な水溶液を用いて再構成される凍結乾燥形態において、又はあらゆる適合性の医薬担体を使用した他の種類の投薬単位においてパーツのキット(kits-of-parts)内で提供することができる。抗CD38抗体の1つ以上の単位剤形をパック又はディスペンサー装置内で提供することができる。そのようなパック又は装置は、例えばブリスターパックのように金属箔又はプラスチック箔を含み得る。そのようなキット・オブ・パーツを正確に使用するために、これは、バッファー、希釈剤、フィルター、針、注射器、及び癌の治療における使用説明を含む添付文書を更に含み得る。
【0039】
幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される製品又はキットに付属する説明書は、製品内及び/又はキット内の作用物質、製剤、及び他の材料の正しい使用及び/又は考え得る効果の監視についての情報を与えるのに使用することができるラベル、リーフレット、文書、記録、図表、又はあらゆる他の手段の形であり得る。説明書を、製品とともに及び/又はキット内に提供することができる。
【0040】
自動化試験:
本明細書において使用される場合に、「自動化試験」、「自動式プラットフォーム」、及び「自動化アッセイ」という用語は、患者又は受血者の血液試料と供血者血液試料又は試薬RBCとの間の抗原-抗体反応を検出するあらゆる自動システムを指し得る。自動式プラットフォームの例としては、Tango(BioRad)及びIH-1000(BioRad)が挙げられる。自動化試験を、固相アッセイ、カラム凝集アッセイ、チューブアッセイ、及び/又はその他のアッセイ型に使用することができる。本明細書において記載される方法は、自動化試験を使用して適切に実施され得る。
【0041】
生体試料:
本明細書において使用される場合に、「生体試料」又は「試料」(区別なく使用される)という用語は、典型的には、本明細書において説明されるように、対象となる生物学的供給源(例えば、組織又は生物又は細胞培養物)から得られる又は誘導される試料を指す。対象となる供給源は、動物又はヒト等の生物であり得る。生体試料は、生体組織又は生体液を含み得る。本明細書において記載される方法は、患者から得られた血液試料のスクリーニングに関する。幾つかの実施形態においては、患者血液試料は全血試料である。幾つかの実施形態においては、患者血液試料は赤血球試料である。幾つかの実施形態においては、患者血液試料は血漿試料である。幾つかの実施形態においては、患者血液試料は血清試料である。幾つかの実施形態においては、患者試料は、患者自身の赤血球を一切含まない。
【0042】
幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される方法は、供血者からの血液試料を準備する工程を含む。幾つかの実施形態においては、供血者血液試料は全血試料である。幾つかの実施形態においては、供血者血液試料は赤血球試料である。幾つかの実施形態においては、供血者血液試料は血漿試料である。幾つかの実施形態においては、供血者血液試料は血清試料である。幾つかの実施形態においては、患者試料は、患者自身の赤血球を一切含まない。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態においては、スクリーニング方法は、より早期の時点で患者から得られた試料に対して実施される。本発明の他の実施形態においては、上記方法は、あらゆる適切な方法を使用して、患者から試料を得る工程を含み得る。
【0044】
本発明の方法を、同じ患者からの多数の試料に対して実施することができる。例えば、RBCパネルスクリーニング及び交差適合アッセイの両者を含む方法においては、RBCパネルスクリーニングを患者からの第1の試料に対して実施し、交差適合アッセイを同じ患者からの第2の異なる試料に対して実施することができる。この目的のために(又は同じ患者に対して同じアッセイを多数回実行するのに)患者から単一の試料を得て、多数の部分試料に分けるか、又は同じ患者から多数の異なる試料を得ることができる。
【0045】
患者試料を処理した後に、供血者赤血球と混合し、例えば、患者試料から患者RBCを除去することができる。バッファーを使用した患者試料の希釈等の他の処理工程を更に使用することができる。
【0046】
一般に、患者には事前に抗CD38抗体が投与されているため、患者試料は抗CD38抗体を含む。
【0047】
癌:
「癌」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍("tumor", "tumour")」、及び「癌腫」という用語は、本明細書においては、相対的に異常な、制御不能な、及び/又は自律的な成長を示すため、細胞増殖の制御の顕著な喪失によって特徴付けられる異常な成長の表現型を示す細胞を指すのに区別なく使用される。概して、本願における検出又は治療の対象となる細胞としては、前癌性(例えば、良性)細胞、悪性細胞、前転移性細胞、転移性細胞、及び非転移性細胞が挙げられる。本開示の教示は、あらゆる全ての癌に関連し得る。幾つかの非限定的な例を挙げると、幾つかの実施形態においては、本開示の教示は、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、骨髄腫、及び骨髄増殖性障害を含む造血器癌;肉腫、黒色腫、腺腫、固形組織の癌腫、口腔、咽喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、肝臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、子宮癌、及び子宮内膜癌等の泌尿生殖器癌、並びに腎細胞癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、皮膚黒色腫又は眼内黒色腫、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、頭頸部癌、乳癌、消化管癌、及び神経系癌、乳頭腫等の良性病変等のような1つ以上の癌に適用される。
【0048】
幾つかの実施形態においては、癌は、細胞表面上にCD38を発現する細胞を含む癌、すなわちCD38発現癌である。幾つかの実施形態においては、癌は、細胞表面上にCD38を発現する固形腫瘍等の固形腫瘍であり得る。幾つかの実施形態においては、癌は、CD38発現血液系腫瘍等の血液系腫瘍であり得る。幾つかの実施形態においては、癌は、T細胞又はB細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択され得る。
【0049】
カラム凝集技術:
本明細書において使用される場合に、「カラム凝集アッセイ」又は「カラム凝集技術」という用語は、供血者RBC又は試薬RBC(すなわち、赤血球パネル中の赤血球)上に発現された抗原に結合する患者試料中の患者由来の抗体(同種抗体、特に臨床的意義のある同種抗体等)を特定するのに使用される技術を指す。カラム凝集技術を使用して、IATを実施することができる。カラム凝集技術は、抗ヒトグロブリン(抗IgG及び/又は抗C3等)ゲル等の凝集剤が入ったマイクロチューブ又はカラムを使用し、マイクロチューブの上のウェルを使用して、供血者細胞を患者の血漿又は血清とともにインキュベートすることを可能にする。次いで、抗ヒトグロブリン、例えば抗ヒトIgGが入ったカラムを通して試料を遠心分離する。インキュベーションの間に、患者の血漿又は血清中に存在する任意の関連する患者由来の抗体は、供血者RBC上に発現された抗原に結合し得る。抗体が結合した供血者RBCは、「感作」RBCと呼ばれる場合がある。RBCに結合される患者由来の抗体はIgG抗体であり得る。遠心分離の間に、供血者RBCに結合された患者由来の抗体はゲル中に存在する抗ヒトグロブリン試薬と反応することから、結合されたRBCがマイクロチューブ又はカラムを通り抜けるのが妨げられたり又は遅れたりする。強く陽性な凝集反応は、ゲルの上部に重層されたRBCの線を生ずる。陽性反応は、ゲル中に懸濁された様々な程度の目に見える赤血球凝集体を伴うことになる。それに対して、患者由来の抗体が結合していない供血者RBCは、遠心分離の間にゲルを容易に通り抜け、マイクロチューブ又はカラムの底部にペレットを形成することになる。カラム凝集技術を使用して、間接抗グロブリン試験(IAT)を実施することができる。カラム凝集技術を使用して実施されたアッセイの結果を、Tango(BioRad)又はIH-1000(BioRad)等の自動式プラットフォームによって読み取ることができる。
【0050】
併用療法:
本明細書において使用される場合に、「併用療法」という用語は、被験体が2つ以上の治療レジメン(例えば、2つ以上の療法剤)に同時に曝される状況を指す。幾つかの実施形態においては、2つ以上の作用物質を同時に投与することができる。代替的には、そのような作用物質を逐次投与することができ、その他に、そのような作用物質を重なり合う投薬レジメンで投与する。
【0051】
同等の:
本明細書において使用される場合に、「同等の(comparable)」という用語は、互いに同一ではない場合があるが、観察された相違点又は類似点に基づいて合理的に結論を導き出すことができるように(例えば、レベル及び/又は活性による)比較を可能にするのに十分に類似している2つ以上の作用物質、実体、状況、効果、条件のセット等を指す。条件、効果、状況、個体、又は集団のそのような同等のセットは、複数の実質的に同一の特徴及び1つ又は少数の様々な特徴によって特徴付けられる。当業者は、文脈において、2つ以上のそのような作用物質、実体、状況、条件のセット、効果、又は集団等を同等と見なすには、任意の所与の状況においてどの程度の同一性が必要とされるかを理解するであろう。
【0052】
含む:
1つ以上の指定された要素又は工程を「含む(comprising)」として本明細書において記載される組成物又は方法は、非限定的(open-ended)であり、これは、指定された要素又は工程は必須であるが、他の要素又は工程を組成物又は方法の範囲内で加え得ることを意味する。1つ以上の指定された要素又は工程を「含む」("comprising" (or which "comprises"))として記載されるどの組成物又は方法も、同じ指定された要素又は工程「から本質的になる」("consisting essentially of" (or which "consists essentially of"))対応する、より限定的な組成物又は方法を記載するものとも理解され、これは、組成物又は方法が指定された必須の要素又は工程を含み、組成物又は方法の基本的な新規の特徴(複数の場合もある)に実質的な影響を及ぼさない追加の要素又は工程も含み得ることを意味する。
【0053】
交差適合試験:
本明細書において使用される場合に、「交差適合試験」という用語は、患者血液試料と供血者血液試料との間の適合性のあらゆる試験を指す。交差適合試験は、受血者又は患者の血清又は血漿との適合性について供血者赤血球を試験することを指すことができ、これはまた、主交差適合試験としても知られる。交差適合試験を使用して、患者又は輸血受血者からの試料(例えば、血漿試料又は血清試料)中の臨床的意義のある抗体の存在を特定することができる。臨床的意義のある抗体は、供血者血液を受血者に輸血した後に、溶血性輸血反応等の有害な副作用を引き起こす可能性が高いあらゆる抗体である。臨床的意義のある抗体としては、輸血受血者又は患者自身の赤血球上に発現されていない抗原に特異的に結合する同種抗体を挙げることができる。臨床的意義のある抗体としては、輸血受血者又は患者自身の赤血球上に発現された抗原に特異的に結合する自己抗体を挙げることができる。幾つかの実施形態においては、患者血液試料と供血者血液試料との間の不適合性は、試料を混ぜたときの凝集によって示される。幾つかの実施形態においては、患者血液試料と供血者血液試料との間の適合性は、試料を混ぜたときに凝集が見られないことによって示される。幾つかの実施形態においては、患者血液試料と供血者血液試料との間の不適合性は、試料を混ぜたときの溶血によって示される。幾つかの実施形態においては、患者血液試料と供血者血液試料との間の適合性は、試料を混ぜたときに溶血が見られないことによって示される。交差適合試験を、本明細書において記載される方法のいずれかに従って行うことができる。交差適合試験を、カラム凝集アッセイ、間接抗グロブリン試験(IAT)チューブアッセイ、又は固相アッセイを使用して実施することができる。
【0054】
ダラツムマブ:
本明細書において使用される場合に、「ダラツムマブ」という用語は、国際公開第2006/099875号において公開されたVH配列及びVL配列を有し、ヒトIgG1モノクローナル抗体である抗体を含む。例えば、以下に示される配列を含む可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を有する:
重鎖:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号31)
軽鎖:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号32)
【0055】
剤形:
本明細書において使用される場合に、「剤形」という用語は、被験体に投与される活性剤(例えば、治療剤又は診断剤)の物理的に分離した単位を指す。各単位は、予め決められた量の活性剤を含有する。幾つかの実施形態においては、そのような量は、関連する集団に投与した場合に所望の又は有益な転帰と相関すると判断された投薬レジメン(すなわち、治療的投薬レジメン)に従う投与に適切な単位投薬量(又はその分量全体)である。当業者には、特定の被験体に投与される治療用組成物又は作用物質の総量は、1人以上の主治医によって決定され、多数の剤形の投与を伴い得ることが理解される。
【0056】
投薬及び投与:
本発明に従って使用される、本明細書に記載される抗CD38抗体(例えばaCD38-b-348又はaCD38-b-329のHCDR3のアミノ酸配列を含む、例えば抗CD38又はその抗原結合フラグメント)を含む医薬組成物は、当業者に既知の及び/又は利用可能な様々な技法及び/又は技術のいずれかを用いて貯蔵及び/又は送達のために調製することができる。幾つかの実施形態においては、開示される抗CD38抗体は、例えば関連適応症についてアメリカ食品医薬品局(FDA)及び/又は欧州医薬品庁(EMA)等の規制当局に認可された投薬レジメンに従って投与される。幾つかの実施形態においては、開示される抗CD38抗体は、それ自体が、例えば関連適応症についてアメリカ食品医薬品局(FDA)及び/又は欧州医薬品庁(EMA)等の規制当局に認可された投薬レジメンに従って投与され得る1つ以上の他の作用物質又は療法と組み合わせて投与される。しかしながら、幾つかの実施形態においては、開示される抗CD38抗体の使用により、抗CD38抗体療法と組み合わせて使用される、認可された作用物質又は療法の投薬の低減(例えば、1回以上の投与でより少量の活性剤、より少ない投与回数、及び/又は投与頻度の低下)が可能となり得る。幾つかの実施形態においては、投薬及び/又は投与は、同様に投与される他の薬物、患者の状態、及び/又は抗CD38抗体のフォーマット(例えば、免疫複合体、ナノボディ又は二重特異性抗体として改変される)に適合することができる。
【0057】
さらに、幾つかの実施形態においては、特定の細胞型、特定の腫瘍若しくはそのタイプ、又は特定の患者集団(例えば、遺伝子マーカーを保有する)のいずれかについて投薬レジメンを調整し、特にタイミング及び/又はCD38の閾値発現レベルに基づいて連続投薬レジメンを設計することが望ましい場合がある。一部のかかる実施形態においては、治療的投薬レジメンは、療法前及び/又は療法中に1つ以上の誘導性マーカーの発現又は他の基準を評価する検出方法と組み合わせるか、又はそれを考慮して調整することができる。
【0058】
幾つかの実施形態においては、本発明による投薬及び投与では、所望の程度の純度を有する活性剤を1つ以上の生理学的に許容可能な担体、添加剤又は安定化剤と組み合わせて任意の又は様々な形態で利用する。これらの形態としては、例えば液体、半固体及び固体の剤形、例えば液体溶液(例えば、注射溶液及び注入溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与方法及び/又は治療用途によって異なるが、通例、抗体によるヒト被験体の治療に使用されるものと同様の組成物等の注射溶液又は注入溶液の形態であり得る。
【0059】
幾つかの実施形態においては、成分(複数の場合もある)は、埋め込み注射剤、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように作用物質(複数の場合もある)を急速な放出及び/又は分解から保護する担体を用いて調製することができる。ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。概して、各活性剤は、適切な医療行為と適合し、関連作用物質(複数の場合もある)(例えば、抗体等の作用物質)に適切な医薬組成物及び投薬レジメンを用いて治療有効量で配合、投薬及び投与される。活性剤を含有する医薬組成物は、限定されるものではないが、経口投与、粘膜投与、吸入投与、局所投与、バッカル投与、経鼻投与、直腸投与又は非経口投与(例えば、静脈内、点滴、腫瘍内、節内(intranodal)、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、又は被験体の組織の物理的切開(physical breaching)及びかかる切開部を介した医薬組成物の投与を伴う他の種類の投与)を含む当該技術分野で既知の任意の適切な方法によって投与することができる。
【0060】
幾つかの実施形態においては、特定の活性剤の投薬レジメンは、例えば被験体の対象の1つ以上の組織又は体液において特定の所望の薬物動態プロファイル又は他の曝露パターンを達成するための間欠又は持続(例えば、灌流又は徐放システムによる)投与を含み得る。幾つかの実施形態においては、組み合わせて投与される異なる作用物質を、異なる送達経路により及び/又は異なるスケジュールに従って投与することができる。代替的又は付加的には、幾つかの実施形態においては、1つ以上の用量の第1の活性剤を1つ以上の他の活性剤と実質的に同時に、幾つかの実施形態においては共通の経路により及び/又は単一の組成物の一部として投与する。
【0061】
経路及び/又は投薬スケジュールを所与の治療レジメンに最適化する場合に考慮すべき因子は、例えば治療される特定の癌(例えば、タイプ、ステージ、位置等)、被験体の臨床状態(例えば、年齢、健康全般、体重等)、作用物質の送達部位、作用物質(例えば、抗体又は他のタンパク質ベースの化合物)の性質、作用物質の投与方法及び/又は投与経路、併用療法の有無、並びに医師に知られている他の因子を含み得る。
【0062】
当業者には、例えば特定の送達経路が用量に影響する可能性があり、及び/又は必要とされる用量が送達経路に影響する可能性があることが理解される。例えば、特定の部位又は位置(例えば、組織又は器官内)において特に高濃度の作用物質を目的とする場合、集中的な送達(例えば、腫瘍内送達)が所望される及び/又は有用である可能性がある。幾つかの実施形態においては、特定の医薬組成物及び/又は利用される投薬レジメンの1つ以上の特徴は、例えば所望の治療効果又は応答(例えば、本明細書に記載される抗CD38抗体の機能的特徴に関連する治療的又は生物学的応答)を最適化するために、時間とともに修正することができる(例えば、任意の個々の投与における活性剤量の増減、投与間の時間間隔の増減等)。概して、本発明に従う活性剤の投薬のタイプ、量及び頻度は、関連作用物質(複数の場合もある)を哺乳動物、好ましくはヒトに投与する場合に適用される安全性及び有効性の要件に左右される。概して、かかる投薬の特徴は、療法がない場合に観察されるものと比較して特定の通例検出可能な治療応答をもたらすように選択される。本発明の状況下で、例示的な望ましい治療応答は、腫瘍成長、腫瘍サイズ、転移、腫瘍と関連する症状及び副作用の1つ以上の阻害及び/又は減少、並びに癌細胞のアポトーシスの増加、1つ以上の細胞マーカー又は循環マーカーの治療的に関連する減少又は増加等を含み得るが、これらに限定されない。かかる基準は、文献に開示される様々な免疫学的方法、細胞学的方法及び他の方法のいずれかによって容易に評価することができる。例えば、単独での又は更なる作用物質と組み合わせた抗CD38抗体の治療有効量は、実施例に記載されるように癌細胞の殺傷を増強するのに十分であるとして決定され得る。
【0063】
活性剤又はかかる作用物質を含む組成物としての抗CD38抗体の治療有効量は、例えば治療される疾患又は病態、疾患のステージ、治療される哺乳動物の年齢及び健康及び体調、疾患の重症度、投与される特定の化合物等の1つ以上の因子を考慮することを含む、当該技術分野で利用可能な技法を用いて容易に決定することができる。
【0064】
幾つかの実施形態においては、治療的有効量は、少なくとも約0.01μg/kg(体重)、少なくとも約0.05μg/kg(体重)、少なくとも約0.1μg/kg(体重)、少なくとも約1μg/kg(体重)、少なくとも約5μg/kg(体重)、少なくとも約10μg/kg(体重)、少なくとも約15μg/kg(体重)、少なくとも約20μg/kg(体重)、少なくとも約25μg/kg(体重)以上(例えば、約100μg/kg(体重))であり得る活性剤の有効用量(及び/又は単位用量)である。幾つかの実施形態においては、治療的有効量は、少なくとも約0.01mg/kg(体重)、少なくとも約0.05mg/kg(体重)、少なくとも約0.1mg/kg(体重)、少なくとも約1mg/kg(体重)、少なくとも約5mg/kg(体重)、少なくとも約10mg/kg(体重)、少なくとも約15mg/kg(体重)、少なくとも約20mg/kg(体重)、少なくとも約25mg/kg(体重)以上(例えば、約100mg/kg(体重))であり得る活性剤の有効用量(及び/又は単位用量)である。幾つかの実施形態においては、そのような指針が活性剤の分子量に合わせて調整され得ることは、当業者によって理解されるであろう。投与経路、治療サイクルにつき、又はaCD38-b-348若しくはaCD38-b-329のHCDR3のアミノ酸配列を含む単離された抗体又はその抗原結合フラグメントの漸増用量での投与に関連して最大耐用量及び用量規定毒性(あるならば)を決定するのに使用することができる用量漸増プロトコルに従って、投薬量を変更することもできる。
【0065】
治療用組成物は通例、滅菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定したものとする。組成物は溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則構造として配合することができる。滅菌注射溶液は、必要量の抗体を上記に列挙した成分の1つ又は組合せとともに適切な溶媒に組み入れ、続いて濾過減菌(filtered sterilization)を行うことによって調製することができる。概して、分散液は、基本的な分散媒及び上記に列挙したものからの他の必要とされる成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過した溶液から有効成分及び任意の付加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適当な流動性は、例えばコーティング剤の使用、分散液の場合の必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、組成物に吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを加えることによってもたらすことができる。
【0066】
各作用物質の製剤は、望ましくは滅菌濾過膜を通した濾過によって達成され得るように滅菌であり、その後ボーラス投与又は持続投与に適した形態でパッケージング又は販売されるものとする。注射用製剤は、単位剤形、例えば保存料の入ったアンプル又は複数回投与用容器内で調製、パッケージング又は販売することができる。非経口投与用の製剤としては、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、及び本明細書で論考されるような埋め込み可能な徐放性又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。滅菌注射製剤は、水又は1,3-ブタンジオール等の非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒を用いて調製することができる。他の有用な非経口投与可能な製剤としては、微結晶形態で、リポソーム製剤中で、又は生分解性ポリマー系の構成成分として有効成分を含むものが挙げられる。徐放又は移植のための組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は塩等の薬学的に許容可能なポリマー材料又は疎水性材料を含み得る。
【0067】
本発明に従って使用される各医薬組成物は、用いられる投与量及び濃度で被験体に対して非毒性である薬学的に許容可能な分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、等張剤、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、担体、添加剤、塩又は安定化剤を含み得る。かかる付加的な薬学的に許容可能な化合物の包括的でないリストには、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩(酢酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩等);保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;塩化ナトリウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0068】
2つ以上の活性剤を本発明に従って利用する幾つかの実施形態においては、かかる作用物質は、同時又は順次に投与することができる。幾つかの実施形態においては、或る作用物質の投与を、別の作用物質の投与に対して特別にタイミングを合わせる。幾つかの実施形態においては、組合せで投与される作用物質の所望の相対的投薬レジメンを、例えばex vivo、in vivo及び/又はin vitroモデルを用いて評価するか又は経験的に決定することができる。幾つかの実施形態においては、かかる評価又は経験的決定は、in vivoで特定の患者又は患者集団(例えば、相関が得られるように)において行われる。
【0069】
幾つかの実施形態においては、本発明の実施に際して利用される1つ以上の活性剤を、少なくとも2回のサイクルを含む間欠投薬レジメンに従って投与する。2つ以上の作用物質を組み合わせて、各々かかる間欠サイクルレジメンによって投与する場合、個々の用量の異なる作用物質を互いに組み合わせることができる。幾つかの実施形態においては、1つ以上の用量の第2の作用物質を本明細書に記載される抗CD38抗体の投与の一定時間後に投与する。幾つかの実施形態においては、各用量の第2の作用物質を本明細書に記載される抗CD38抗体の投与の一定時間後に投与する。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される抗CD38抗体は、1週間、2週間、4週間又はそれ以上にわたる1回以上の治療サイクルにおいて同じ経路による後続の投与だけでなく、皮下(又は筋肉内)投与及び腫瘍内投与等の代替(alternating)投与経路による後続の投与を含むレジメンで投与し、かかるサイクルを患者応答に応じて同じレジメンで(又は投与間の間隔を長くして)繰り返すこともできる。また、幾つかの実施形態においては、従う正確なレジメン(例えば、投与回数、投与間隔(例えば、互いに対する又は別の療法の実施等の別の事象)、投与量等は、1回以上のサイクルで1つ以上の他のサイクルと比較して異なっていてもよい。
【0070】
本明細書に記載される投与経路、投与量及び/又はレジメンのいずれかを用いることで、本明細書に記載される抗CD38抗体を、例えば患者において生検、血液サンプルを用いて測定される1つ以上の基準、及び/又は他の臨床基準を考慮に入れて特定、特性評価及び/又は検証することができる。幾つかの実施形態においては、腫瘍サイズ及び/又は転移の直接評価の代わりに又はそれに加えて、本明細書に記載される抗CD38抗体の治療有効性を、以下の1つ以上の異なる一般基準を評価する方法において決定することができる:癌細胞に対する直接細胞傷害(癌細胞のアポトーシス及びネクローシス)、腫瘍浸潤免疫細胞(CD4陽性及び/又はCD8陽性腫瘍浸潤T細胞等)の増加、血中を循環する免疫細胞(リンパ球、NK細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞等の全集団又は特定の亜集団)の増加、及び/又は応答患者又は非応答患者のいずれかのみにおける治療前対治療後の幾らかの差次的発現の提示(RNAシークエンシング、マスフローサイトメトリー及び/又は他のマスシークエンシングアプローチによって決定される)。代替的又は付加的に、幾つかの実施形態においては、かかる特定、特性評価及び/又は検証は、mRNA及び/又は1つ以上の特定のタンパク質又はタンパク質のセットのタンパク質発現をスクリーニングすることによる分子レベルでの追跡を含み得る。幾つかの実施形態においては、1つ以上のかかる技法により、例えば腫瘍内の(又は近くの)及び/又は血中を循環する特定の細胞集団についての組織分布及び/又はマーカーと関連し得る、本明細書に記載される抗CD38抗体に対する応答を評価するための関連情報の特定が可能となり得る。
【0071】
かかるアプローチ及び免疫生物学的データは、1つ以上の有効性及び/又は安全性パラメーター又は特性の決定を可能とし得るだけでなく、幾つかの実施形態においては、例えば単独で及び/又は更なる治療効果をもたらし得る他の薬物、標準治療プロトコル又は免疫療法と組み合わせて、所与の適応症についての1つ以上の臨床試験において利用することができる特定の用量、経路又は投薬レジメンを選ぶ論理的根拠をもたらし得る。このため、本発明の一連の更なる実施形態においては、本明細書に記載される抗CD38抗体は、かかる製剤での治療後又は治療前にRNA及び/又はタンパク質レベルで患者の細胞又は組織(腫瘍、血液サンプル又は血液画分等)における1つ以上の遺伝子の発現の存在(及び/又は非存在)の組合せを決定した後に、疾患(癌等)を患う患者を治療するか又は疾患(癌等)を予防する方法に使用される。したがって、かかる方法は、望ましい抗CD38抗体の治療有効量に関連した1つ以上のバイオマーカー若しくはより複雑な遺伝子発現シグネチャー(又は細胞集団分布)、被験体が本明細書に記載される抗CD38抗体での治療後に抗腫瘍若しくは抗感染応答を有し得ることを予測する治療的に関連するバイオマーカー(複数の場合もある)、又は被験体が抗CD38抗体での治療後に化合物での治療に応答し得ることを予測する治療的に関連するバイオマーカー(複数の場合もある)の既定を可能にし得る。
【0072】
代替的又は付加的に、幾つかの実施形態においては、本明細書において開示される特定の抗CD38抗体の投薬及び投与は、ヒト癌及び/又は他のヒト組織におけるCD38発現を考慮して、例えば間質サブセット、及び/又は様々な癌、組織及び/又は患者の免疫サブセットにおけるCD38分布に関するデータを集めることによって事前に確立し、及び/又は後に評価することができる。かかるデータは、様々な免疫及び非免疫亜集団におけるCD38発現の関係、及び/又は癌細胞又は免疫細胞のサブセットと関連する細胞浸潤の尺度及び/又は癌関連マーカー(Foxp3及びPD-1/PD-L1等)との関係を特定するために、一般的な癌型及び/又は組織(中枢神経系、食道、胃、肝臓、結腸、直腸、肺、膀胱、心臓、腎臓、甲状腺、膵臓、子宮、皮膚、乳房、卵巣、前立腺及び精巣)にわたって一般的な技術(フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、免疫組織化学又はmRNA発現ライブラリー等)を用いて生成することができる。CD38発現は、腫瘍組織(例えばNK細胞、及び他のエフェクター又は制御性免疫細胞)の免疫サブセットに限定することができ(又は限定しない)、CD38発現と免疫チェックポイント阻害剤との相関を、陽性である場合に決定することができ、これにより、かかる免疫チェックポイント阻害剤を標的とする化合物と組み合わせた抗CD38抗体の適切な用途が示唆される。
【0073】
投薬レジメン:
本明細書において使用される場合に、「投薬レジメン」という用語は、通例は時間を空けて被験体に個別に投与される単位用量(通例、2つ以上)のセットを指す。幾つかの実施形態においては、所与の治療剤は、1回以上の投与を含み得る、推奨される投薬レジメンを有する。幾つかの実施形態においては、投薬レジメンは、各々同じ長さの時間を空けた複数回の投与を含む。代替的には、投薬レジメンは複数回の投与を含み、個々の投与は少なくとも2つの異なる時間で隔てられる。幾つかの実施形態においては、投薬レジメン内の全ての投与が同じ単位用量である。代替的には、投薬レジメン内の異なる投与は、異なる量である。幾つかの実施形態においては、投薬レジメンは、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量とは異なる第2の用量での1回以上の付加的な投与を含む。投薬レジメンは、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量と同じ第2の用量での1回以上の付加的な投与を含んでいてもよい。幾つかの実施形態においては、投薬レジメンは、関連集団にわたって実施した場合に所望の又は有益な転帰と相関する(すなわち、治療的投薬レジメンである)。
【0074】
エピトープ:
本明細書において使用される場合に、「エピトープ」という用語は、抗体又は抗原結合フラグメントが結合する抗原の一部分を指す。幾つかの実施形態においては、抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、抗原中では共有結合的に連続しないが、抗原が関連の立体配座にある場合に三次元空間内で互いに近接する抗原の部分で構成される立体配座エピトープである。例えば、CD38については、立体配座エピトープは、CD38細胞外ドメインにおいて連続しないアミノ酸残基で構成されるエピトープであり、線状エピトープは、CD38細胞外ドメインにおいて連続したアミノ酸残基で構成されるエピトープである。幾つかの実施形態においては、本発明に従って利用されるエピトープは、本明細書において開示される抗CD38抗体(例えば、aCD38-b-348又はaCD38-b-329及びaCD38-b-epとして定義される)が結合するエピトープを参照することによって提供される。aCD38-b-348又はaCD38-b-329のエピトープの正確な配列及び/又は特定のアミノ酸残基を決定する手段は、文献及び実施例において既知であり、抗原配列に由来するペプチドとの競合、異なる種に由来するCD38配列への結合、切断、及び/又は突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング又は他の部位特異的突然変異誘発による)、ファージディスプレイベースのスクリーニング、又は(共)結晶構造解析法が挙げられる。
【0075】
間接抗グロブリン試験(IAT):
本明細書において使用される場合に、「間接抗グロブリン試験」又は「IAT」という用語は、供血者血液試料中の供血者赤血球によって発現される赤血球抗原に特異的に結合するあらゆる患者由来の抗体について試験する方法を指し得る。患者血液試料は、全血、血漿、又は血清を含み得る。供血者血液試料は、全血又は赤血球を含み得る。間接抗グロブリン試験を、カラム凝集アッセイ、チューブアッセイ、又は固相アッセイを使用して実施することができる。IATは、以下の工程を含み得る。赤血球懸濁液を、患者からの血漿若しくは血清の試料、又は血液型判定試薬若しくはコントロールとともにインキュベートすることができる。赤血球懸濁液を供血者血液試料から得ることができる。インキュベーションを室温(約15℃~約25℃)で行うことができる。代替的に、インキュベーションを約37℃で行うことができる。インキュベーションを、製造業者の指示に従って決定された期間にわたって行うことができる。インキュベーション工程の間に、患者由来の抗赤血球抗原抗体が患者試料中に存在し、その特異抗原がRBC上にも存在する場合に、赤血球抗原への患者由来の抗体の結合が起こり得る。患者由来の抗体が赤血球抗原へ結合する工程は、感作と呼ばれる場合がある。感作に続いて、洗浄工程を実施して、抗体が結合されたRBCから溶液中の未結合の抗体を分離することができる。抗ヒトグロブリン試薬等の凝集剤を、RBC及び任意の結合された抗体(存在するならば)を含む溶液に加える。抗ヒトグロブリン試薬は、抗ヒトIgG抗体を含み、抗C3を更に含み得る。本発明においては、あらゆる抗ヒトグロブリン試薬を使用することができる。患者由来の抗体がRBCに結合される場合に、抗ヒトグロブリン試薬はRBC上の患者由来の抗体に結合し、RBCの凝集を引き起こすことになる。凝集されたRBCを残りの溶液から分離するのに、分離工程を含むことができる。分離工程は、遠心分離を含み得る。遠心分離は、使用される特定の機器、又は凝集されたRBCを残りの溶液から分離するのに十分なあらゆる条件に従って決定される速度及び時間で実施され得る。通常の試験条件下では、IAT試験での凝集反応は、患者の試料中にRBC抗原に対する患者由来の抗体(臨床的意義のある抗体)が存在することの指標である。通常の試験条件下では、IAT試験での凝集反応は、供血者RBCと患者の血清及び/又は血漿との間の適合が不適合性であることの指標である。IAT試験で溶血(赤血球の破壊)が観察される場合もあり、これも供血者RBCと患者の血清及び/又は血漿との間の適合が不適合性であることの指標である。患者がダラツムマブ又はイサツキシマブで治療されている場合に、患者の試料が任意のRBC抗原に対する同種抗体を含むかどうかにかかわらず、IAT試験でRBCの凝集が起こり得る。それというのも、抗ヒトグロブリンは、抗CD38抗体のダラツムマブ又はイサツキシマブを凝集させ、更にこれにより、抗CD38抗体が結合される赤血球の凝集が引き起こされるからであり、これは視覚的に(肉眼により)検出され得る。本発明の方法は、患者試料が本明細書において記載される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(すなわち、ダラツムマブ又はイサツキシマブではない)を含む場合に、抗CD38抗体の存在が、驚くべきことに、IAT試験でRBC凝集を引き起こさないことを特徴とする。これは、抗CD38抗体が、例えばIgG抗体であり、抗ヒトグロブリンが抗ヒトIgGを含む場合であっても当てはまる。
【0076】
干渉:
本明細書において使用される場合に、「干渉」という用語は、血液抗体スクリーニング又は血液交差適合試験で得られるあらゆる種類の偽陽性又は偽陰性の結果を指し得る。例えば、干渉は、患者試料中に臨床的意義のある同種抗体が一切存在しない場合のIAT試験における凝集反応の発生を指し得る。干渉により、患者の血清又は血漿と供血者RBCとの間の不適合性が誤って示される可能性がある。干渉により、供血者RBC抗原に特異的に結合する患者の血清試料又は血漿試料中の同種抗体の存在が誤って示される可能性がある。例えば、殆どの抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ及びイサツキシマブ)は、血液抗体スクリーニング及び血液交差適合試験に干渉を引き起こすことが知られている。患者の血漿試料又は血清試料中に存在する場合に、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブは、患者試料と供血者試料とを混ぜたときに、供血者RBC上のCD38に結合し得る。抗ヒトグロブリン試薬を、供血者RBCに結合されたダラツムマブ又はイサツキシマブを含む混合物(患者血清由来)に加えると凝集が起こる。凝集は通常、患者と供血者との間の適合が不適合性であることを示すが、患者がダラツムマブ又はイサツキシマブで治療されている場合に、患者血液試料に臨床的意義のある抗体、例えば、供血者RBC上に存在する任意の赤血球抗原に結合する同種抗体が含まれていなくても凝集が起こる場合がある。本明細書において記載される抗CD38抗体(すなわち、aCD38-b-348及びaCD38-b-329、並びにそれらから誘導される抗体)は、血液抗体スクリーニング又は血液交差適合試験に干渉を引き起こさない。幾つかの実施形態においては、患者の血清試料又は血漿試料中の本明細書において記載される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの存在は、ダラツムマブと比較して及び/又はイサツキシマブと比較して、より少なくしか血液抗体スクリーニング又は血液交差適合試験への干渉を引き起こさない。幾つかの実施形態においては、患者の血清試料又は血漿試料中の本明細書において記載される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの存在は、ダラツムマブと比較して及び/又はイサツキシマブと比較して、より少なくしか血液抗体スクリーニング又は血液交差適合試験での凝集を引き起こさない。幾つかの実施形態においては、本明細書において記載される抗CD38抗体による患者の治療は、血液抗体スクリーニング又は血液交差適合試験において凝集を生じない。
【0077】
イサツキシマブ:
イサツキシマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗CD38抗体である。イサツキシマブは、血液抗体スクリーニング及び血液交差適合試験に干渉(すなわち、赤血球抗原に特異的に結合する臨床的意義のある患者抗体が存在しない場合の凝集反応)を引き起こすことが知られている。イサツキシマブは、以下の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を含み得る:
重鎖:
QVQLVQSGAEVAKPGTSVKLSCKASGYTFTYWMQWVKQRPGQGLEWIGTIYPGDGDTGYAQKFQGKATLTADKSSKTVYMHLSSLASEDSAVYYCARGDYYGSNSLDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号33)
軽鎖:
DIVMTQSHLSMSTSLGDPVSITCKASQDVSTVVAWYQQKPGQSPRRLIYSASYRYIGVPDRFTGSGAGTDFTFTISSVQAEDLAVYYCQQHYSPPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号34)
【0078】
患者:
本明細書において使用される場合に、「患者」又は「被験体」という用語は、提供される組成物を例えば実験、診断、予防、美容及び/又は治療目的で投与する又は投与することができる任意の生物を指す。典型的な患者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類及び/又はヒト等の哺乳動物)が挙げられる。幾つかの実施形態においては、患者はヒトである。幾つかの実施形態においては、患者は、1つ以上の障害又は病態を患っているか又はその影響を受けやすい。患者は、障害若しくは病態の1つ以上の症状を示していても、又は1つ以上の障害若しくは病態(癌、又は1つ以上の腫瘍の存在等)であると診断されていてもよい。幾つかの実施形態においては、患者は、かかる疾患、障害又は病態の診断及び/又は治療のために或る特定の療法を受けている又は受けた。好ましい実施形態においては、患者はヒト癌患者、例えば多発性骨髄腫患者である。
【0079】
パーセント(%)の配列同一性:
2つの配列間のパーセント(%)の「配列同一性」は、当該技術分野において知られる方法を使用して決定され得る。ペプチド配列、ポリペプチド配列、又は抗体配列に関する配列同一性は、必要に応じて最大パーセントの配列同一性を達成するために、配列をアラインメントさせ、ギャップを導入した後に、配列同一性の一部として保存的置換を一切考慮せずに、特定のペプチド配列又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義され得る。パーセントのアミノ酸配列同一性を決定することを目的とするアラインメントは、当該技術分野における技能の範囲内の様々な方式で、例えば、BLAST、ギャップBLAST及びBLASTp(タンパク質用)(Altschul SF et al (1997))を含むBLAST-2、又はFASTA等の公共利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、デフォルトパラメーターを用いて達成され得る。
【0080】
患者抗体:
本明細書において使用される場合に、本明細書において使用される「患者抗体("patient antibody" or "patient antibodies")」という用語は、患者自身によってin vivoで作られる抗体を指す。したがって、患者抗体は患者由来の抗体である。したがって、患者抗体は抗CD38抗体とは区別される。それというのも、これらは治療用抗体(治療レジメン、例えば、CD38発現癌の治療の一部として患者に投与される外因性抗体)であるからである。患者抗体は同種抗体又は自己抗体であり得る。一般に、本発明の方法は、患者血液試料中の臨床的意義のある患者抗体の存在又は不存在を決定する。「臨床的意義のある」とは、患者に供血者赤血球が投与された場合に有害反応を引き起こすように患者抗体が供血者赤血球に反応する能力を指す。有害反応としては、供血者赤血球の破壊(溶血)を挙げることができる。有害反応としては、急性若しくは遅発性の溶血性輸血反応、又は胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)を挙げることができる。
【0081】
通常、1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者由来の抗体は、ヒトIgG抗体である。
【0082】
「同種抗体」は、被験体自身の赤血球上に存在しない赤血球抗原に特異的に結合する抗体を指す。したがって、同種抗体は、抗赤血球抗原同種抗体である。同種抗体は、被験体自身の赤血球上に存在する抗原に特異的に結合する抗体を指す「自己抗体」と区別することができる。同種抗体及び自己抗体の両者を、本発明の方法によって検出することができる。同種抗体の発生には、個体は非自己RBC抗原に曝露されねばならず、非自己抗原の一部を提示することができるHLA結合モチーフを有さねばならない(Tormey & Hendrickson, 2019)。非自己抗原への曝露は、妊娠、輸血、又は移植によって起こり得る。同種抗体を形成する過程は、「同種免疫化」と呼ばれる。同種抗体は、臨床的意義のある抗体である場合があり、母親が赤ん坊の赤血球上の抗原に対する同種抗体を保有する場合には、輸血されたRBCの破壊(溶血)又は胎児若しくは新生児への害のいずれかをもたらす。実際、同種免疫化は、輸血関連死亡の直接的な原因となり得る。同種免疫化はまた、輸血の遅れ、高度に同種免疫化された個体について適合性の血液を突き止めることの困難性、及び遅延した又は急性の溶血性輸血反応等の患者の治療における更なる問題を引き起こす。同種免疫化は、支持療法の一環として頻繁に輸血を受けている同種抗体を発生するリスクがより大きい腫瘍患者にとって特に臨床的に重要である(Hendrickson & Tormey, 2016)。したがって、患者試料を同種抗体の存在について正確かつ迅速にスクリーニングすることができることが重要である。ダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体で治療された患者は、それらの血清中に抗CD38抗体が存在し、それがRBC上のCD38に結合し、同種抗体が存在すると誤って示されるため、同種抗体についてのスクリーニングに時間がかかる場合がある。同種抗体の検出に使用される抗体スクリーニング試験及び血液交差適合試験を変更して、抗CD38抗体によるこの干渉を回避する工程を組み込むことができる。例えば、RBCを抗原ストリッピング剤(DTT等)で処理するか、又は患者試料を抗CD38中和剤(可溶性CD38等)で処理することができる。しかしながら、そのような追加の試薬は追加の費用をもたらし、広く利用可能ではなく、余分な方法工程は時間がかかり、抗体スクリーニングに遅延をもたらす。本発明の方法は、RBC又は患者血液試料の追加処理を必要とせずに、患者試料中の同種抗体の検出を可能にする。本発明の方法を使用すると、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体スクリーニング又は交差適合試験において干渉(例えば、臨床的意義のある同種抗体の不存在下での凝集)をもたらさず、それによって費用が最小限に抑えられ、輸血に適合性の血液製剤を特定することの遅れが避けられる。
【0083】
患者抗体(例えば、患者同種抗体)はCD38に特異的に結合しない。
【0084】
薬学的に許容可能な:
本明細書において使用される場合に、本明細書において開示される組成物の配合に使用される担体、希釈剤又は添加剤に適用される「薬学的に許容可能な」という用語は、担体、希釈剤又は添加剤が組成物の他の成分に適合し、その受容者に有害でない必要があることを意味する。
【0085】
医薬組成物:
本明細書において使用される場合に、「医薬組成物」という用語は、活性剤が1つ以上の薬学的に許容可能な担体とともに配合された組成物を指す。幾つかの実施形態においては、活性剤は、関連集団に投与した場合に所定の治療効果を達成する統計的に有意な可能性を示す治療レジメンでの投与に適切な単位用量で存在する。医薬組成物は、以下に適合したものを含む固体又は液体形態での投与のために配合することができる:経口投与、例えば水薬(drenches)(水性又は非水性の溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば口腔、舌下及び全身性吸収を対象とする錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト;例えば滅菌溶液若しくは懸濁液、又は徐放性製剤としての皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内又は硬膜外注射による非経口投与;例えば皮膚、肺又は口腔に適用されるクリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての局所適用;膣内、直腸内、舌下、眼内、経皮、経鼻、経肺、及び他の粘膜表面への適用。
【0086】
血漿:
本明細書において使用される場合に、「血漿」という用語は、赤血球及び白血球並びに血小板が殆どない血液の液体成分を指す。血漿は、フィブリノーゲン及びその他の凝固因子だけでなく、アルブミンも含み得る。本発明において使用される血漿は、あらゆる適切な又は標準的な調製プロトコルを使用して全血から調製され得る。本発明において、血漿は、輸血を受ける予定の患者によって提供され得るか、又はその患者に由来し得る。使用される血漿を調製するのに、全血を抗凝固剤で処理されたチューブに収集することができる。赤血球及び血小板を遠心分離によって除去又は分離し、得られた上清が血漿と呼ばれる。本発明において使用される血漿試料は、例えば、約10μl~約3mlの容量を含み得る。例えば、約100μl、150μl、160μl、200μl、250μl、又は300μlの血漿を使用することができる。本発明の方法において使用される血漿及び/又は血清は、使用前に適切なバッファー又は希釈剤で希釈され得る。血漿及び/又は血清を1:1希釈、1:2希釈、1:3希釈、1:4希釈、1:5希釈、1:6希釈、1:7希釈、1:8希釈、1:9希釈、又は1:10希釈として調製して使用することができる。適切な希釈剤としては、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び/又は低イオン強度溶液(LISS)を挙げることができる。
【0087】
赤血球:
本明細書において使用される「赤血球(red blood cells)」、「RBC」、又は「赤血球(erythrocytes)」という用語は、酸素を輸送することができる血球を指す。本発明において使用される赤血球、すなわち供血者赤血球を、あらゆる適切な又は標準的な調製プロトコルを使用して全血のあらゆる適切な供給源から得ることができる。本発明において、使用が意図される、例えば患者への輸血において使用される供血者血液の供給源から赤血球を得ることができる。したがって、供血者赤血球は一般にヒト供血者由来である。供血者血液を、フレキシブルなプラスチックバッグに収集し、貯蔵することができる。バッグには、血液が凝固するのを防ぎ、貯蔵を容易にする化合物及び化学物質(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸塩、デキストロース、及び時にはアデニン)が入っている場合がある。血液を貯蔵バッグに通すチューブを、収集後に分割して、少ない容量の血液が入った「ピッグテール(pigtail)」区画を提供することができる。これらの少ない「ピッグテール」容量の供血者血液は、本発明のアッセイを含む交差適合アッセイにおいて使用するのに適している。本発明のアッセイにおいて使用される赤血球の供給源として、少ない容量の全血を提供することができる。例えば、約1μl~約500μlの供血者赤血球を使用することができる。本発明の方法は、約10μl、約20μl、約30μl、約40μl、約50μl、約60μl、約70μl、約80μl、約90μl、約100μl、約150μl、又は約200μl(例えば、約10μl~約200μl)の供血者全血を使用することができる。使用前に、赤血球をあらゆる適切な希釈剤又はバッファーで希釈することができる。本発明の方法は、約10μl、約20μl、約30μl、約40μl、約50μl、約60μl、約70μl、約80μl、約90μl、約100μl、約150μl、又は約200μl(例えば、約10μl~約200μl)の適切な希釈剤又はバッファー中で調製された供血者赤血球を使用することができる。
【0088】
血清:
本明細書において使用される場合に、「血清」という用語は、凝固因子、血小板、及び血球が殆どない血液の液体成分を指す。本発明において使用される血清は、あらゆる適切な又は標準的な調製プロトコルを使用して全血から調製され得る。本発明において、血清は、輸血を受ける予定の患者によって提供され得るか、又はその患者に由来し得る。使用される血清を調製するには、全血を収集し、一定期間凝固させる。赤血球及び血小板を遠心分離によって除去することができ、得られた上清が血清と呼ばれる。本発明の方法において使用される血漿及び/又は血清は、使用前に適切なバッファー又は希釈剤で希釈され得る。血漿及び/又は血清を1:1希釈、1:2希釈、1:3希釈、1:4希釈、1:5希釈、1:6希釈、1:7希釈、1:8希釈、1:9希釈、又は1:10希釈として調製して使用することができる。適切な希釈剤としては、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び/又は低イオン強度溶液(LISS)を挙げることができる。
【0089】
固相アッセイ:
本明細書において使用される場合に、「固相試験」、「固相アッセイ」、又は「固相法」という用語は、患者試料中の赤血球抗原に特異的に結合する患者由来の抗体(同種抗体、特に臨床的意義のある同種抗体等)の検出に適した、特に血液交差適合試験又はRBCパネル抗体スクリーニングにおける方法を指す。ImmucorのCapture-R Select等の固相システムを抗体スクリーニングにおいて使用して、患者由来の抗体の存在を検出することができる。固相試験は、マイクロプレートウェル等の固体表面へのRBCの結合を含み得る。RBCは、患者由来の抗体が一般的に形成される赤血球抗原の既知の発現に基づいて選択される。次いで、固体表面に付着したRBCを患者の血漿試料又は血清試料とともにインキュベートし、続いて洗浄工程を行い、インジケーター細胞(例えば、抗IgGでコーティングされた細胞)を加える。患者試料からの患者由来の抗体が固体表面上の固定化RBCに結合した場合に、インジケーター細胞上の抗IgGは、固定化RBCに結合された患者抗体に結合することにもなる。インジケーター細胞は、抗ヒトグロブリン(例えば、抗IgG及び/又は抗C3)等の凝集剤でコーティングされた赤血球であり得る。患者試料中の関連する患者由来の抗体の存在は、インジケーターRBCが結合した固体表面をぼやっと覆う赤い色によって示される。関連する患者由来の抗体が患者試料中で検出されない陰性固相アッセイは、ウェルの底部にあるインジケーター細胞のペレットによって示される。
【0090】
固相試験を、血液交差適合試験(適合性試験)に使用することもできる。固相交差適合試験においては、抗ヒトグロブリン(例えば、抗IgG及び/又は抗C3)等の凝集剤が、固体表面に直接取り付けられ又は付着されている。患者からの血清又は血漿と、試験される供血者RBCとを一緒にインキュベートし、凝集剤が取り付けられた固体表面に接触させる。供血者RBCに結合している患者試料からの全ての抗体は、固体表面上の凝集剤に付着することになる。したがって、ウェルの固体表面を覆うぼやっとした赤い色は、供血者RBC上の抗原に特異的に結合する患者試料中の患者由来の抗体の存在により、患者と供血者との間の適合が不適合性であることを示している。
【0091】
固形腫瘍:
本明細書において使用される場合に、「固形腫瘍」という用語は、通常は嚢胞又は液体領域を有しない異常な組織塊を指す。固形腫瘍は、良性又は悪性であり得る。固形腫瘍の種々のタイプは、固形腫瘍を形成する細胞のタイプから名付けられる。固形腫瘍の例は、肉腫(海綿骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、血管組織、造血組織又は線維性結合組織等の組織中の間葉起源の形質転換細胞から生じる癌を含む)、癌腫(上皮細胞から生じる腫瘍を含む)、黒色腫、リンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等である。固形腫瘍を伴う癌としては、限定されるものではないが、脳癌、肺癌、胃癌、十二指腸癌、食道癌、乳癌、結腸癌及び直腸癌、腎癌、膀胱癌、腎臓癌、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、黒色腫、口腔癌、肉腫、眼癌、甲状腺癌、尿道癌、膣癌、頸部癌、リンパ腫等が挙げられる。
【0092】
治療有効量:
本明細書において使用される場合に、「治療有効量」という用語は、疾患及び/又は病態を患っているか又はその影響を受けやすい集団に治療的投薬レジメンに従って投与した場合に、かかる疾患及び/又は病態を治療するのに十分な(例えば、作用物質又は医薬組成物の)量を意味する。治療有効量は、疾患、障害及び/又は病態の1つ以上の症状の発生率及び/又は重症度を低減する、安定させる、及び/又は発症を遅らせる量である。当業者には、「治療有効量」が特定の被験体において実際に治療の成功が達成されることを必要としないことが理解される。
【0093】
治療:
本明細書において使用される場合に、「治療」という用語(「治療する」("treat" or "treating")も)は、1つ以上の症状を部分的又は完全に軽減する、改善する、緩和する、阻害する、その発症を遅らせる、その重症度を低減する、及び/又はその発生率を低減する物質(例えば、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329によって例示される、開示される抗CD38抗体、又は任意の他の作用物質)の任意の投与を指す。幾つかの実施形態においては、治療は、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329等の抗CD38抗体の直接投与(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内又は腫瘍周囲注射に使用される薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又はアジュバントを任意に含む注射用水性組成物としての)、又は細胞を被験体から得ることと(例えば、マーカーの発現の存在又は非存在に基づく選択を伴い又は伴わずに、血液、組織又は腫瘍から)、上記細胞とaCD38-b-348又はaCD38-b-329等の抗CD38抗体とをex vivoで接触させることと、かかる細胞を被験体に投与することと(マーカーの発現の存在又は非存在に基づく選択を伴う又は伴わない)を含むレジメンを用いた投与を含み得る。
【0094】
チューブアッセイ:
本明細書において使用される場合に、「チューブアッセイ」又は「チューブ法」という用語は、試験チューブ等のチューブ内で間接抗グロブリン試験(IAT)を実施する方法を指す。チューブアッセイを使用して、血清試料又は血漿試料等の患者試料中の赤血球抗原に特異的に結合する患者由来の抗体(同種抗体、特に臨床的意義のある同種抗体等)を、RBCパネルに対する抗体スクリーニング又は供血者RBCとの交差適合試験の部分として検出することができる。チューブアッセイは、一般的に以下の工程を含む。RBCを、適切な溶液、例えば、等張生理食塩水(NISS)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ポリエチレングリコール(PEG)溶液、又は低イオン強度生理食塩水(LISS)中に懸濁することができる。患者試料、例えば血清試料又は血漿試料をチューブに加え、続いてRBC懸濁液を加えることができる。患者試料及びRBC懸濁液を、供血者RBC上に発現された任意のRBC抗原への任意の患者抗体の結合を可能にするのに十分な条件下でインキュベートすることができる。例えば、インキュベーションを少なくとも約5分間行うことができる。インキュベーションを、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約30分間、少なくとも約40分間、少なくとも約50分間、少なくとも約1時間、少なくとも約90分、又は少なくとも約2時間実施することができる。インキュベーションの期間は、使用される試薬によって異なる場合があり、例えば、LISSを使用すると、反応時間がより短くなり、必要とされるインキュベーション時間がより短くなり得る。インキュベーションを、約37℃で行うことができる。インキュベーションをほぼ室温(約15℃~約25℃)で行うことができる。インキュベーション後に、洗浄工程を実施して、未結合の患者抗体を除去することができる。チューブアッセイは、患者血液試料中に存在する任意の患者由来の抗体を互いに特異的に結合する作用物質を加える工程を更に含み得る。患者血液試料中に存在する任意の抗体を互いに特異的に結合する作用物質は、抗グロブリン、例えば抗ヒトIgG(及び/又は抗C3)であり得る。患者由来の抗体が供血者RBC上のRBC抗原に結合されると、抗グロブリン試薬は患者由来の抗体を互いに結合して、患者抗体に結合されたRBCの凝集を引き起こす。チューブアッセイにおけるRBCの凝集は、供血者RBC上のRBC抗原に特異的に結合する患者由来の抗体の存在を示している。チューブアッセイにおけるRBCの凝集は、供血者RBCが患者と不適合性であることを示し得る。
【0095】
スクリーニング方法
本発明の第1の態様においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含む、患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、方法が提供される。
【0096】
有利には、本発明の方法は一般に、患者血液試料又は供血者血液試料と、供血者赤血球の表面上に存在し得る(つまり、供血者赤血球によって発現され得る)膜結合型CD38への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質とを接触させる工程を含まない。従来技術の方法、特に抗CD38抗体(本明細書において開示される抗CD38抗体以外)が投与された患者からの血液をスクリーニングする方法においては、他の治療用抗CD38抗体が、供血者赤血球の表面上に発現される赤血球抗原に結合し得る患者抗体についての患者試料のスクリーニングと干渉するのを妨げる追加の方法工程が必要とされる。特に、供血者赤血球の表面上に存在する膜結合型CD38への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質を加える工程は、スクリーニングアッセイにおける偽陽性を防ぐのに必要とされる。膜結合型CD38への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質は、例えば、可溶性CD38抗原、抗CD38イディオタイプ抗体、又は抗原ストリッピング剤であり得る。
【0097】
患者は一般に、患者から血液試料を得る前に、本明細書において開示される抗CD38抗体(とりわけ、aCD38-b-348抗体若しくはaCD38-b-329抗体、又はそれらから誘導される抗体若しくは抗原結合フラグメント)等のスクリーニングアッセイと干渉しない抗CD38抗体以外に、抗CD38抗体(及び任意に抗赤血球抗原抗体)が少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年間投与されていない患者である。aCD38-b-348又はaCD38-b-329から誘導される抗体としては、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329、又はそれらの変異体のaCD38-b-348-m1、aCD38-b-348-m2-、aCD38-b-348-m3、aCD38-b-348-m5、aCD38-b-329-m6、若しくはaCD38-b-329-m7のいずれか、又はaCD38-b-348若しくはaCD38-b-329と同じエピトープに結合するあらゆる抗CD38抗体のCDRの少なくとも1つ、しかしながら好ましくは6つ全てを含む抗体が挙げられる。幾つかの実施形態においては、患者は、患者から血液試料を得る前に、ダラツムマブ又はイサツキシマブが6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年間投与されていない患者である。当然ながら、特に、本明細書に開示される抗CD38抗体が、患者が生涯に受けた最初の抗CD38抗体治療(又は抗赤血球抗原抗体治療)であれば、患者には、本明細書において開示される抗CD38抗体等のスクリーニングアッセイと干渉しない抗CD38抗体以外に抗CD38抗体が一度も投与されたことがない(かつ任意に抗赤血球抗原抗体が一度も投与されたことがない)可能性がある。
【0098】
幾つかの実施形態においては、工程(b)のスクリーニングは、カラム凝集アッセイ、間接抗グロブリン試験(IAT)チューブアッセイ、及び固相アッセイからなる群から選択されるアッセイを使用して実施される。これらを別の場所でより詳細に説明する。
【0099】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、工程(b)のスクリーニングの前に、患者血液試料を供血者血液試料からの供血者赤血球と接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することを含む。次いで、上記方法は、例えば、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成するのを可能にするのに十分な条件下で、患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートする工程を更に含み得る。任意に、上記方法は、任意の1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、存在するならば、患者血液/供血者赤血球の混合物から、例えば患者血液/供血者赤血球の混合物を遠心分離することによって分離する工程を更に含み得る。患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体が(例えば、患者血液試料が供血者RBC上の任意のRBC抗原に特異的に結合する患者抗体を一切含まなかったため)形成しない場合でさえも、「分離工程」(例えば、遠心分離工程)を、なおも患者試料と供血者赤血球とを混ぜた後に行うことができる。しかしながら、これは分離工程(例えば、遠心分離)を行った後まで明らかにならない場合がある。
【0100】
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、患者血液試料を供血者赤血球と交差適合試験するとき、又は任意の抗体RBCパネルアッセイを実施するときに干渉を引き起こさないものである。抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ダラツムマブ又はイサツキシマブではない。
【0101】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329であり得るか、又は上記抗体から誘導され得る。例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖相補性決定領域3(HCDR3)としての配列番号3又は配列番号19のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又は抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列エレメント、例えば、
a)可変重鎖相補性決定領域1(HCDR1)としての配列番号1又は配列番号17のアミノ酸配列、及び/又は、
b)可変重鎖相補性決定領域2(HCDR2)としての配列番号2又は配列番号18のアミノ酸配列、
を更に含み得る。
【0102】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)可変軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)としての配列番号4又は配列番号20のアミノ酸配列、
b)可変軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)としての配列番号5又は配列番号21のアミノ酸配列、並びに、
c)可変軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)としての配列番号6、配列番号22、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号25、及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列、
を更に含み得る。
【0103】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7又は配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。好ましくは、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号24、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を更に含む。
【0104】
以下でより詳細に論じられるように、或る特定のパーセントの同一性及び/又は1つ以上のアミノ酸置換を有する変異体等の変異体抗体のその抗原結合フラグメントを使用することもできる。
【0105】
抗CD38抗体の或る特定の特徴
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又は抗原結合フラグメントは、CD38の1つ以上の特徴を調節する。すなわち、幾つかの実施形態においては、CD38のレベル及び/又は活性、及び/又はそれらの1つ以上の下流効果は、提供される抗体が存在する場合に、それが存在しない場合と比較して検出可能に変化する。代替的に又は追加的に、幾つかの実施形態においては、CD38のレベル及び/又は活性、及び/又はそれらの1つ以上の下流効果は、提供される抗体が存在する場合に、参照抗CD38抗体(既知の所望の特質、例えばCD38の1つ以上の特徴をアゴナイズする既知の能力を有するIB-4等)の場合の同等の条件下で観察されるものと同等又はそれより大きいものである。
【0106】
多くの実施形態においては、CD38の1つ以上の特徴は、本発明において使用される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが存在する場合に増強される。例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの存在は、免疫細胞の活性化の増加及び/又は増殖と相関する。したがって、抗CD38抗体は、本明細書においてはしばしば「アゴニスト」と呼ばれる。しかしながら、当業者は、本開示の教示が、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントの特定の作用機序によって限定されないことを理解するであろう。提供される抗体の関連する構造的特徴及び/又は機能的特徴は、本明細書において記載されており、自ずと明らかである。
【0107】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、或る特定の免疫エフェクター細胞(例えば、NK細胞及び/又はT細胞)に対する効果によって特徴付けられ得る。代替的に又は追加的に、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、免疫抑制細胞に対する効果によって特徴付けられ得る。例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、NK細胞及びT細胞等の免疫エフェクター細胞に関して活性化特性を示し、免疫抑制細胞等のCD38高発現細胞に対して細胞傷害特性を示す。代替的に又は追加的に、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38細胞外ドメイン中の特定のエピトープへの結合に関連する、及び/又はそれらを特に医薬的使用及び/又は医薬製造に適したものにする1つ以上の特徴によって特徴付けられる。特に、抗CD38抗体は、RBC輸血を必要とし得る或る特定の疾患についての療法を受けている患者(癌患者、特に多発性骨髄腫患者を含む)を含む、患者とRBC供血者との間の交差適合試験を含む血液スクリーニングの方法において特に有用である。
【0108】
幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、10-8Mの範囲又はそれ未満(10-9Mの範囲)のKdでヒトCD38に結合し、好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、10-8M~10-11Mの範囲のKdでヒトCD38に結合する。幾つかの実施形態においては、Kdは約10-8~約10-11である。幾つかの実施形態においては、Kdは10-8~10-9である。幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、10-8M~10-11Mの範囲のKd値で、ヒト及びカニクイザルのCD38(例えば、ヒト及びカニクイザルのCD38上の細胞外エピトープ)にも結合し得る。抗体又はその抗原結合フラグメントの結合親和性を評価するKdを、Biacore分析又はForte BioのOctet Systemsを使用する分析等の表面プラズモン共鳴(SPR)を含む標準的な方法論によって得ることができる。
【0109】
本明細書において使用される抗体(及び/又はその抗原結合フラグメント)は、医療において(例えば、療法及び/又は予防において、例えば癌の治療において)、及び/又はヒトCD38細胞外ドメイン内のaCD38-b-epとして特定されるもの等のエピトープを標的化することを必要とする又はそれを含む方法に関して使用するのに特に有用であり得る。提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、最も適切なアイソタイプ、特にIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアイソタイプ抗体からなる群からのヒトアイソタイプ、より具体的にはヒトIgG1を示すように調製され得る。
【0110】
抗体は、様々な形式で提供され得る。例えば、幾つかの実施形態においては、適切な形式は、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、一本鎖抗体(scAb)、アプタマー、又はナノボディであり得るか、又はそれらを含み得る。幾つかの実施形態においては、抗体又はその抗原結合フラグメント(及び特にモノクローナル抗体)は、ウサギ抗体、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体、又はそれらの抗原結合フラグメントであり得る。幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、所与の使用に最も適切であり得るため、IgG、IgA、IgE、又はIgMのアイソタイプのもの(好ましくはヒトのもの)であり得る。幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプ、より具体的にはIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプ(好ましくはヒトIgG1)である。幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、更なる結合部分及び/又は機能部分を会合させることが望ましい場合に、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又は当該技術分野において利用可能であり得る他の多重特異性の形式に含まれ得る単離された抗体又は抗原結合等の多重特異性結合因子(binding agent)の一部として提供される。
【0111】
幾つかの実施形態においては、抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、脱フコシル化され得る。抗体(例えば、モノクローナル抗体、組換え抗体、及び/又は他の操作された若しくは単離された抗体)のグリコシル化が抗体の活性、薬物動態、及び薬力学に影響を及ぼし得ることはよく知られており、Fc融合タンパク質及び特定の技術を活用して、所望のグリコシル化プロファイルを有する抗体を得ることができる(Liu L, 2015)。本発明に従って使用される抗体の細胞傷害性を支持するエフェクター機能を、抗体のフコシル化レベルを低下させる方法を使用して増強することができる。このような特性を示す特定のaCD38-b-348配列エレメント又はaCD38-b-329配列エレメントを含む抗体を、例えば、フコシル化能力がない若しくはフコシル化能力が低下した抗体を産生し得る遺伝子操作細胞系統のための技術を使用して、aCD38-b-348配列若しくはaCD38-b-329配列を発現させることによって(その一部はPotelligent(Lonza)、GlyMAXX(ProBiogen)のように商業的に利用可能である)、又は製造方法を操作することによって、例えば浸透圧を制御することによって、及び/又は酵素阻害剤を使用することによって(例えば、欧州特許第2480671号に記載される方法も参照)作製することができる。
【0112】
本発明において使用される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、本明細書において記載される望ましい特性を有する提供される抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、aCD38-b-348抗体若しくはaCD38-b-329抗体、又はそれらの抗原結合フラグメント、及びそれらの変異体若しくはそれらから誘導される他の抗体)を含む組成物(例えば、医薬組成物)の形で提供され得る。幾つかの実施形態においては、そのような組成物は、治療用途、診断用途、又は予防用途等の医療用途が意図され、及び/又はそれらの用途において使用される。幾つかの実施形態においては、そのような組成物は、薬学的に許容可能な担体又は添加剤を更に含み得て、及び/又は癌の治療において使用され得る。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、当該技術分野において知られるように1つ以上の担体、添加剤、塩、緩衝剤等を用いて製剤化され得る。当業者は、所与の投与方法及び/又は投与部位、例えば非経口投与(例えば、皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注射)、粘膜投与、腫瘍内投与、腫瘍周囲投与、経口投与、又は局所投与に特に所望及び/又は有用であり得るものを含む様々な製剤化技術を認識し、容易に利用することができるであろう。多くの実施形態において、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を含む提供される医薬組成物は、非経口送達(例えば、注射及び/又は注入による)用に製剤化される。幾つかの実施形態においては、そのような医薬組成物は、例えば、事前装填された注射器又はバイアルの形式において提供され得る。幾つかの実施形態においては、そのような医薬組成物は、例えば、乾燥(例えば、凍結乾燥)形態において提供及び/又は利用され得る。代替的に、幾つかの実施形態においては、そのような医薬組成物は、液体形態(例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルション等)において、ゲル形態等において提供及び/又は利用され得る。
【0113】
抗CD38抗体の機能的特徴
本発明の幾つかの実施形態においては、抗体(及び突然変異させてDGモチーフを除去した変異体等の本明細書において記載されるその変異体)は、有利な活性プロファイルを有し得る。例えば、一実施形態においては、抗体又はその抗原結合フラグメント(及びそれらの変異体)は、
CD38+標的細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を示し得て、
補体依存性細胞傷害(CDC)を示し得て、
抗体依存性細胞食作用(ADCP)を示し得て、及び/又は、
免疫エフェクター細胞の活性化を誘導し得る。
【0114】
好ましくは、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329、又はそれらの抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、同じ条件又は実質的に同じ条件下で、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブと比較してCD38+標的細胞に対するCDC活性の低下を示す。
【0115】
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を、in vitroで、例えば、標的細胞としてのCD38+Daudi細胞及びエフェクター細胞としてのヒトPBMC細胞を使用して決定することができ、ここで、標的細胞対エフェクター細胞の比率は約50対1~約25対1である。
【0116】
CD38+標的細胞に対する補体依存性細胞傷害(CDC)活性を、in vitroで、例えば、10%の補体の存在下でCD38+Daudi細胞及び/又はRaji細胞を使用して決定することができる。CDC活性を、ヒト補体の存在下で抗体の10μg/mlまでの漸増濃度で標的細胞を処理することによって決定することができる。幾つかの実施形態においては、CDC活性を、10%の補体の存在下でCD38+細胞、すなわちCD38+Daudi細胞の細胞溶解の最大パーセンテージを測定することによって決定することができる。所与の抗体についての最大溶解は、実験間で異なる場合がある。したがって、例えば、EC50値及び/又は参照抗体(ダラツムマブ等)と比較した最大%溶解及び/又はEC50における倍数差を含むCDC活性を測定する他の測定基準を考慮することが役立つ。したがって、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブと比較してより低いCDC活性の決定は、最大%溶解、EC50、及び/又はいずれかの値のダラツムマブと比較した倍数変化に関係する場合がある。
【0117】
本発明の好ましい一実施形態においては、抗CD38抗体は、
a)ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブよりも少なくとも0.5倍分高い(又はより好ましくは少なくとも1倍分高い)EC50で、又は、
b)ダラツムマブによって示されるものの半分以下である10%の補体の存在下でRaji細胞及び/又はDaudi細胞において測定される最大%溶解で、
例えば、特に、抗CD38抗体が、aCD38-b-348、又はそれから誘導される抗体若しくはそれらの変異体である場合にCDCを示し得る。
【0118】
本発明の好ましい一実施形態においては、CD38調節抗体剤は、
a)ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブよりも少なくとも0.5倍分高い(又はより好ましくは少なくとも1倍分高い)EC50で、又は、
b)ダラツムマブによって示されるものの半分以下である10%の補体の存在下でRaji細胞及び/又はDaudi細胞において測定される最大%溶解で、
例えば、特に、抗CD38抗体が、aCD38-b-329、又はそれから誘導される抗体若しくはそれらの変異体である場合にCDCを示し得る。
【0119】
当然ながら、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブのCDCは、比較のために同じ条件又は実質的に同じ条件で決定される。CDC活性を、最大約10μg/mLの抗体濃度を使用して決定することができる。当業者によれば理解されるように、細胞の最大溶解を決定する場合に、10μg/mLの濃度は必ずしも必要とされない。それというのも、必要に応じて10μg/mLが使用され得るものの、最大細胞溶解はより低い抗体濃度で起こり得るからである。
【0120】
幾つかの実施形態においては、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブと比較したCDC活性の低下は、抗体又はその抗体結合フラグメントのEC50が、同じ条件又は実質的に同じ条件下でのダラツムマブのEC50よりも少なくとも約0.5倍分大きい(すなわち、少なくとも約1.5倍大きい)、又は好ましくは少なくとも約1倍分大きい(すなわち、少なくとも約2倍大きい)ものである。例えば、抗体又はその抗体結合フラグメントのEC50は、10%の補体の存在下でのDaudi細胞及び/又はRajiに対するダラツムマブのEC50よりも少なくとも約0.5倍分大きい、又は好ましくは約1倍分大きい。
【0121】
幾つかの実施形態においては、抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD38+のDaudi細胞及び/又はRaji細胞に対して少なくとも約0.05μg/mLのEC50でCDCを誘導する(任意に、CDCによってそのようなCD38+発現細胞の60%未満の溶解を引き起こす)。幾つかの実施形態においては、抗体又はそのフラグメントは、CD38+のDaudi細胞及び/又はRaji細胞に対して少なくとも約0.05μg/mL、少なくとも約0.10μg/mL、又は少なくとも約0.15μg/mLのEC50でCDCを誘導する(任意に、最大約10μg/mlの抗体濃度でCDCによってそのようなCD38+発現細胞の60%未満の溶解を引き起こす)。
【0122】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD38発現細胞に対して抗体依存性細胞食作用(ADCP)を示し得る。ADCP活性を、FcgRIIaを発現するエフェクター細胞としてのJurkat細胞におけるFcgRIIa結合を測定するレポーター細胞アッセイによって決定することができる。エフェクター細胞は、NFAT誘導性ルシフェラーゼも発現する。アッセイにおける標的細胞はCD38発現Raji細胞であり得る。NFATシグナル伝達を測定して、活性を決定することができる。
【0123】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、in vitroで作製されたTreg細胞に対してADCPを誘導し得る。
【0124】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、同じ条件又は実質的に同じ条件下でダラツムマブと比較してより多くの量でT細胞活性化を誘導し得る。幾つかの実施形態においては、T細胞活性化を、lucレポーターJurkat細胞においてNFATシグナル伝達を測定することによって決定することができる。幾つかの実施形態においては、lucレポーターJurkat細胞において測定される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントによって誘導されるNFATシグナル伝達は、同じ条件又は実質的に同じ条件下で測定されるダラツムマブのNFATシグナル伝達よりも少なくとも約10%高い。幾つかの実施形態においては、NFATシグナル伝達は、同じ条件又は実質的に同じ条件下で測定されるダラツムマブのNFATシグナル伝達よりも少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%高い。
【0125】
Jurkat細胞におけるNFATのlucレポーターアッセイでは、NFATシグナル伝達を、可溶性CD3モノクローナル抗体の存在下で相対発光単位(RLU)において測定することができる。CD3モノクローナル抗体は1μg/mlの濃度であり得て、Jurkat細胞は、約5μg/ml~約40μg/ml(例えば、10μg/ml)の濃度の抗CD38抗体で刺激され得る。そのようなアッセイを使用すると、CD3のみの刺激のRLUがベースラインとして使用される場合に、NFATシグナル伝達は、同じ条件又は実質的に同じ条件下で測定されたダラツムマブのNFATシグナル伝達よりも少なくとも約30%高くなり得る。
【0126】
T細胞活性化を、T細胞増殖の増加、及び/又はサイトカイン分泌の増加によって更に特徴付けることができ、ここで、サイトカインは、IL-2、TNF-α、IFN-γ、IL-10、及びGM-CSFからなる群から選択され得る。
【0127】
T細胞増殖を、実施例でのように、例えば、72時間のインキュベーション後に、0.1μg/ml又は0.5μg/mlの抗CD3抗体の存在下で10μg/mlの抗体濃度で決定して測定することができる。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、CD4+細胞及び/又はCD8+細胞のT細胞増殖を未処理の細胞と比較して少なくとも約20%増加させる。幾つかの実施形態においては、T細胞増殖は、未処理細胞と比較して、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、又は少なくとも約40%増加する。
【0128】
好ましくは、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD4+細胞及び/又はCD8+細胞におけるT細胞増殖を、同じ条件又は実質的に同じ条件(例えば、同じ抗体濃度での72時間のインキュベーション)において、ヒトIgG1で処理された細胞と比較して少なくとも約0.5倍分(すなわち、少なくとも1.5倍)又は少なくとも1倍分(すなわち、少なくとも2倍)又は少なくとも2倍分(すなわち、少なくとも3倍)又は少なくとも3倍分(すなわち、少なくとも4倍)増加させる。
【0129】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD4+細胞及び/又はCD8+細胞において、同じ条件又は実質的に同じ条件下でダラツムマブによって誘導されるよりも多くの量でIL-2、TNF-α、IFN-γ、IL-10、及び/又はGM-CSFからなる群から選択されるサイトカインの分泌を誘導する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ダラツムマブと比較してGM-CSFの分泌を増加させる。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ダラツムマブと比較してIL-2の分泌を増加させる。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ダラツムマブと比較してIL-2、TNF-α、IFN-γ、IL-10、及びGM-CSFの分泌を増加させる。サイトカイン分泌を、実施例において示されるように、例えば、72時間のインキュベーション後に10μg/mlの抗体濃度で決定して測定することができる。
【0130】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、NK細胞活性化を誘導し得る。NK細胞活性化は、NK細胞増殖の増加によって特徴付けられ得る。NK細胞活性化を、代替的に又は追加的に、見られる細胞内IFNg産生の増加によって、及び/又は脱顆粒マーカーCD107aの発現の増加として決定することができる。
【0131】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、シクラーゼ活性及び/又はNADアーゼ活性に影響を及ぼし得る。CD38のNADアーゼ活性に対する効果を、例えば、Jurkat細胞におけるE-NAD+の5’-eAMPへの転化を測定することによって測定することができる。CD38のシクラーゼ活性に対する効果を、例えば、Jurkat細胞におけるNGD+のcGDPRへの転化を測定することによって測定することができる。
【0132】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD38シクラーゼ活性に対する阻害効果を有する。CD38のシクラーゼ活性に対する阻害効果を、例えば、Jurkat細胞におけるNGD+のcGDPRへの転化を測定することによって測定することができる。CD38シクラーゼ活性に対する阻害効果は、Jurkat細胞におけるNGD+のcGDPRへの転化によって測定されて、IgG非結合性コントロール抗体の存在下でのCD38シクラーゼ活性と比較して少なくとも10%低いCD38活性をもたらし得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、同じ条件又は実質的に同じ条件において、CD38シクラーゼ活性に対するダラツムマブの阻害効果よりも小さいCD38シクラーゼに対する阻害効果を有する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、Jurkat細胞におけるNGD+のcGDPRへの転化によって測定されて、IgG非結合性コントロール抗体の存在下でのCD38シクラーゼ活性の約25%以上までCD38シクラーゼ活性を低下させる。好ましくは、抗体は、IgG非結合性コントロール抗体の存在下でのCD38シクラーゼ活性の約30%以上、約40%以上、又は約50%以上までCD38シクラーゼ活性を低下させる。好ましくは、抗体は、IgG非結合性コントロール抗体の存在下でのCD38シクラーゼ活性の25%から95%の間、約30%から90%の間、又は約50%から90%の間までCD38シクラーゼ活性を低下させる。これは、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの存在下で、CD38シクラーゼ活性が依然としてJurkat細胞において存在するが、IgG非結合性コントロール抗体の存在下と比較して低下した量で存在することを意味する。
【0133】
ダラツムマブは、シクラーゼ活性を阻害し、NADアーゼ活性を刺激することが分かっている。それに対して、本発明の抗体は、同じ条件又は実質的に同じ条件において、CD38シクラーゼ活性に対するダラツムマブの阻害効果よりも小さいCD38シクラーゼに対する阻害効果を有し得る。
【0134】
したがって、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(又はそれらの変異体)は、CD38+標的細胞に対して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を示し、同じ条件又は実質的に同じ条件下で、ダラツムマブ及び/又はイサツキシマブと比較してCD38+標的細胞に対するCDC活性の低下を示し(例えば、本明細書において記載されるように測定されたEC50値は、ダラツムマブのEC50値の少なくとも2倍であり得る)、免疫エフェクター細胞の活性化を誘導し、T細胞増殖を誘導し、IL-2、IFNγ、TNFα、GM-CSF、及びIL-10を含むサイトカイン分泌の増加を誘導し、かつNK細胞活性化を誘導する。このような抗体は、CD38シクラーゼ活性に対して僅かな阻害効果を示す場合もある。
【0135】
エピトープ
選択された抗CD38抗体が交差適合試験と干渉しないことを考えると、抗CD38の特定のエピトープに結合する抗CD38抗体は、本発明において特に有用であり得る。
【0136】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、aCD38-b-348又はaCD38-b-329により結合されるヒトCD38上のエピトープに結合する。幾つかの実施形態においては、このような抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38細胞外ドメインに結合する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、aCD38-b-ep(タンパク質配列ARCVKYTEIHPEMRH(配列番号30);Uniprot配列P28907(配列番号29)におけるアミノ酸65~アミノ酸79)として特定されるエピトープに結合し得る。
【0137】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含むヒトCD38のエピトープに特異的に結合する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79を含む又はそれらからなるヒトCD38のエピトープに特異的に結合する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79のエピトープ内に結合する。本明細書におけるどの範囲に関する「~内(within)」への言及も、範囲の端を含む。例えば、この場合には、「配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79のエピトープ内」は、残基65及び残基79を含み、したがって、エピトープはそれらの残基を含み得る。
【0138】
好ましくは、エピトープは、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも6個のアミノ酸、少なくとも7個のアミノ酸、少なくとも8個のアミノ酸、少なくとも9個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも11個のアミノ酸、少なくとも12個のアミノ酸、少なくとも13個のアミノ酸、又は少なくとも14個以上のアミノ酸を含み、ここで、このエピトープは、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79に含まれる1つ以上のアミノ酸を含む。エピトープは、線状又は構造的、すなわち不連続のいずれかであり得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79に含まれる少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、又は少なくとも14個以上のアミノ酸残基を含むヒトCD38のエピトープに特異的に結合する。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又は抗原結合フラグメントは、配列番号29のアミノ酸65~アミノ酸79を含むエピトープに結合する。
【0139】
幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、(非突然変異ヒトCD38(配列番号29)と比較して)突然変異ヒトCD38に結合し、ここで、突然変異ヒトCD38においては、位置274のセリン残基は、フェニルアラニンで置換されている。
【0140】
幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、(非突然変異ヒトCD38(配列番号29)と比較して)突然変異ヒトCD38に結合し、ここで、突然変異ヒトCD38においては、位置202のアスパラギン酸残基は、グリシン残基で置換されている。
【0141】
幾つかの実施形態においては、提供される抗体又はその抗原結合フラグメントは、(非突然変異ヒトCD38(配列番号29)と比較して)突然変異ヒトCD38に結合し、ここで、突然変異ヒトCD38においては、位置274のセリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、かつ位置202のアスパラギン酸残基は、グリシン残基で置換されている。
【0142】
aCD38-b-348及び抗体並びにそれらから誘導される抗原結合フラグメント
抗CD38抗体は、抗CD38抗体のaCD38-b-348、例えば、国際公開第2018/224683号に開示されるaCD38-b-348抗体であり得る。aCD38-b-348抗体は、CID-103としても知られている。抗CD38抗体は、そのような抗体に基づくか又はそのような抗体から誘導されるあらゆる抗体又はその抗原結合フラグメントであり得る。抗CD38抗体の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、Kabatナンバリングスキームに従って決定される。
【0143】
例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号1のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号2のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号3のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号4のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号5のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号6のアミノ酸配列(aCD38-b-348中と同様)、
を含み得る。
【0144】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-348中と同様)を含む。
【0145】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体の可変重鎖配列は、aCD38-b-348の可変重鎖配列、すなわち、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号7)を含み、かつ抗CD38抗体の可変軽鎖配列は、aCD38-b-348の可変軽鎖配列、すなわち、
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDGNVYTFGGGTKVEIK(配列番号8)を含む。
【0146】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、aCD38-b-348の変異体であり得る。そのような変異体は、抗体のaCD38-b-348-m1、aCD38-b-348-m2、aCD38-b-348-m3、又はaCD38-b-348-m4であり得る。
【0147】
例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号1のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号2のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号3のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号4のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号5のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号9のアミノ酸配列(aCD38-b-348-m1中と同様)、
を含み得る。
【0148】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号1のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号2のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号3のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号4のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号5のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号10のアミノ酸配列(aCD38-b-348-m2中と同様)、
を含み得る。
【0149】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号1のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号2のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号3のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号4のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号5のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号11のアミノ酸配列(aCD38-b-348-m3中と同様)、
を含み得る。
【0150】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号1のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号2のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号3のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号4のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号5のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号12のアミノ酸配列(aCD38-b-348-m4中と同様)、
を含み得る。
【0151】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号13のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-348-m1中と同様)、
b)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-348-m2中と同様)、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号15のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-348-m3中と同様)、又は、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-348-m4中と同様)、
を含む。
【0152】
したがって、変異体抗体のaCD38-b-348-m1は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号7)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQEANVYTFGGGTKVEIK(配列番号13)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0153】
変異体抗体のaCD38-b-348-m2は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号7)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDSNVYTFGGGTKVEIK(配列番号14)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0154】
変異体抗体のaCD38-b-348-m3は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号7)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDANVYTFGGGTKVEIK(配列番号15)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0155】
変異体抗体のaCD38-b-348-m4は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号7)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQEGNVYTFGGGTKVEIK(配列番号16)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0156】
本発明はまた、aCD38-b-348のCDR配列又は重鎖可変配列及び/又は軽鎖可変配列等の参照配列に対して或る特定の%の同一性を有する変異体抗体及びその抗原結合フラグメントを使用し得る。
【0157】
例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。
【0158】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して配列同一性のある可変軽鎖を含む。
【0159】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。
【0160】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。
【0161】
そのような変異体抗体及びその抗原結合フラグメント(すなわち、或る特定のパーセントの同一性を有するもの)は、例えば、aCD38-b-348と同じエピトープに結合する、本明細書においてaCD38-b-348について開示された重鎖可変配列及び軽鎖可変配列を有する抗体及びその抗原結合フラグメントについて記載されたのと同じ(又は実質的に同じ)機能的特性及び薬理学的特性を保持し又は示し得る。
【0162】
幾つかの実施形態においては、特に、参照配列に対して特定の配列同一性を有する配列に言及するあらゆる実施形態について、%配列同一性は、特定された重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の6つの全てのCDRの配列を含めずに計算され得る。そのような実施形態においては、配列の変化(あるならば)は、フレームワーク領域においてのみ発生する。
【0163】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、上記で定義されたaCD38-b-348のアミノ酸配列エレメント(又は変異体m1~変異体m4のもの)に対する幾つかの置換によって代替的又は追加的に定義される抗CD38抗体であり得る。
【0164】
例えば、そのような抗体は、可変重鎖相補性決定領域3(HCDR3)として、aCD38-b-348-HCDR3(配列番号3)内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得る。更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖相補性決定領域1、可変重鎖相補性決定領域2、及び可変重鎖相補性決定領域3(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)として、それぞれ配列番号1、配列番号2、及び配列番号3内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖相補性決定領域1、可変軽鎖相補性決定領域2、及び可変軽鎖相補性決定領域3(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)として、それぞれ配列番号4、配列番号5、並びに配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択される配列内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得る。
【0165】
更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖配列として、配列番号7内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、可変重鎖配列として、配列番号7の可変重鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列の可変軽鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。
【0166】
更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖配列として、配列番号7内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号8内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、可変重鎖配列として、配列番号7の可変重鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号8のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。
【0167】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号7の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号7の可変重鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0168】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号7の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号7の可変重鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号8の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号8の可変軽鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0169】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号7の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号7の可変重鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0170】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号7の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号7の可変重鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号8の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号8の可変軽鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0171】
アミノ酸置換は、好ましくは、抗体の機能的特性に悪影響を及ぼさないか、又は実質的に悪影響を及ぼさない。したがって、置換は保存的アミノ酸置換と見なすことができる。好ましくは、アミノ酸置換が存在する場合に、これらは、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域の全長が変化しないように1:1の比率で存在する。
【0172】
幾つかの実施形態においては、フレームワーク領域内にのみ任意のアミノ酸置換(保存的アミノ酸置換等)が存在し得る。そのような実施形態においては、CDR配列は不変のままである。
【0173】
そのようなアミノ酸配列及び任意の置換を示す抗体は、aCD38-b-348、及び概して抗CD38抗体の結合特性及び/又は機能的特性(同じエピトープへの結合又は開示された抗CD38抗体について本明細書において記載されている機能的特徴のいずれか等)を依然として示し得る。
【0174】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体の軽鎖又は重鎖におけるDGモチーフが、例えばアスパラギン酸異性化に対する感受性を低下させるように改変されている場合があり、及び/又はこの抗体の軽鎖又は重鎖における任意のメチオニンが、例えばメチオニン酸化を減少させるように改変されている場合がある、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、DGモチーフは、モチーフ中のアミノ酸の一方又は両方を異なるアミノ酸で置換するように改変されている場合がある。例えば、そのようなモチーフは、EG、DQ、又はDAに突然変異されている場合がある。メチオニン残基は、それを異なるアミノ酸、例えば、ロイシン又はフェニルアラニンと置き換えるように改変されている場合がある。
【0175】
したがって、幾つかの実施形態においては、アスパラギン酸異性化に対する感受性を低下させるのに当該技術分野において標準的であるように、本明細書において提供される抗体又はそのフラグメントは、DGモチーフ、特にCDR領域に現れるDGモチーフを除去又は改変するように突然変異されている場合がある。このように改変されたそのような抗体は、最終配列に至る前に更なる改変(例えば、親和性成熟)を受けることが必要となる場合がある。
【0176】
本発明の一実施形態においては、本明細書において開示される抗体のCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列(例えば、aCD38-b-348のCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列)、又は本明細書において開示される任意の抗体の可変重鎖及び可変軽鎖(例えば、aCD38-b-348の可変重鎖及び可変軽鎖)を有するが、CDR中の少なくとも1つのDGモチーフ(存在するならば)が異なるモチーフに変更された特定される配列とは異なる変異体抗体が提供される。開示される変異体をaCD38-b-348について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0177】
例えば、aCD38-b-348は、そのLCDR3配列においてDGモチーフを含む。幾つかの実施形態においては、DGモチーフのアスパラギン酸を異なるアミノ酸に変更することができ、及び/又はDGモチーフのグリシンを異なるアミノ酸に変更することができる。そのような実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えばaCD38-b-348であり得るか、又はaCD38-b-348から誘導され得る。幾つかの実施形態においては、変異体抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12のいずれか1つのVL CDR3配列を有する。例えば、変異体LCDR3配列(例えば、配列番号9中と同様のaCD38-b-348-m1変異体LCDR3配列、配列番号10中と同様のaCD38-b-348-m2変異体LCDR3配列、配列番号11中と同様のaCD38-b-348-m3変異体LCDR3配列、又は配列番号12中と同様のaCD38-b-348-m4変異体LCDR3配列)を、aCD38-b-348のLCDR1配列及び/又はLCDR2配列を含む抗体に組み込むことができる。一実施形態においては、変異体LCDR3配列(例えば、配列番号9中と同様のaCD38-b-348-m1変異体LCDR3配列、配列番号10中と同様のaCD38-b-348-m2変異体LCDR3配列、配列番号11中と同様のaCD38-b-348-m3変異体LCDR3配列、又は配列番号12中と同様のaCD38-b-348-m4変異体LCDR3配列)を、aCD38-b-348のLCDR1配列、LCDR2配列、HCDR1配列、HCDR2配列、及びHCDR3配列を含む抗体に組み込むことができる。幾つかの実施形態においては、変異体抗体又はその抗体結合フラグメントは、aCD38-b-348の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列とともに、しかしながら突然変異させてDGモチーフを除去したLCDR3配列を含み得る(例えば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12が、代わりにLCDR3として存在し得る)。変異体抗CD38抗体は、親aCD38-b-348のあらゆる、恐らく全ての結合特性及び機能的特性(例えば、同じエピトープへの結合又は開示された抗CD38抗体について本明細書において記載されている機能的特徴のいずれか)を有する更なる抗体を提供する。開示される変異体をaCD38-b-348について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0178】
本発明は、他の又は更なる親和性成熟抗体、例えば、本明細書において開示される抗体のいずれかから誘導される親和性成熟変異体を使用することもできる。一実施形態においては、親和性成熟抗体は、改変されたDGモチーフ及び/又はNGモチーフを有する、及び/又は任意のメチオニン残基を除去若しくは突然変異するように改変された親和性成熟抗体である。開示される親和性成熟変異体をaCD38-b-348について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0179】
幾つかの実施形態においては、本発明は、抗CD38抗体を調製する方法であって、本明細書において記載される抗体(例えば、aCD38-b-348又はその抗原結合フラグメント若しくは変異体)を準備することと、抗体を親和性成熟に供することとを含み、ここで、生成された抗体が、親抗体よりも高い親和性でCD38に結合する、方法を提供する。好ましくは、生成された抗体は、例えばKdによって測定されて、親抗体がCD38に結合するよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%高い親和性でCD38に結合する。親和性を測定する方法は当該技術分野において知られており、以下の実施例に記載されている。そのような方法によって生成される親和性成熟抗体を、他の抗CD38抗体剤について本明細書において記載されるように製剤化し、使用することができる。
【0180】
aCD38-b-329及び抗体並びにそれらから誘導される抗原結合フラグメント
抗CD38抗体は、抗CD38抗体のaCD38-b-329、例えば、国際公開第2018/224685号に開示されるaCD38-b-329抗体であり得る。抗CD38抗体は、そのような抗体に基づくか又はそのような抗体から誘導されるあらゆる抗体又はその抗原結合フラグメントであり得る。
【0181】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号17のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号18のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号19のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号20のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号21のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号22のアミノ酸配列(aCD38-b-329中と同様)、
を含み得る。
【0182】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号24のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-329中と同様)を含む。
【0183】
幾つかの実施形態においては、aCD38-b-329の可変重鎖配列は、配列:
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号23)を含み、かつaCD38-b-329の可変軽鎖配列は、配列:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDGAVFTFGGGTKVEIK(配列番号24)を含む。
【0184】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、aCD38-b-329の変異体であり得る。そのような変異体は、抗体のaCD38-b-329-m6、又はaCD38-b-329-m7であり得る。
【0185】
例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号17のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号18のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号19のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号20のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号21のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号25のアミノ酸配列(aCD38-b-329-m6中と同様)、
を含み得る。
【0186】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)HCDR1としての配列番号17のアミノ酸配列、
b)HCDR2としての配列番号18のアミノ酸配列、
c)HCDR3としての配列番号19のアミノ酸配列、
d)LCDR1としての配列番号20のアミノ酸配列、
e)LCDR2としての配列番号21のアミノ酸配列、及び、
f)LCDR3としての配列番号26のアミノ酸配列(aCD38-b-329-m7中と同様)、
を含み得る。
【0187】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号27のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-329-m6中と同様)、又は、
b)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/又は配列番号28のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(aCD38-b-329-m7中と同様)、
を含む。
【0188】
したがって、変異体抗体のaCD38-b-329-m6は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号23)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDEAVFTFGGGTKVEIK(配列番号27)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0189】
変異体抗体のaCD38-b-329-m7は、
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSDYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGQYSSGWYAYPFDMWGQGTMVTVSS(配列番号23)の配列を含む重鎖可変領域と、
配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVRSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQDSAVFTFGGGTKVEIK(配列番号28)を含む可変軽鎖と、
を含むものと特徴付けられ得る。
【0190】
本発明はまた、aCD38-b-329のCDR配列又は重鎖可変配列及び/又は軽鎖可変配列等の参照配列に対して或る特定の%の同一性を有する変異体抗体及びその抗原結合フラグメントを使用し得る。
【0191】
例えば、幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。
【0192】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して配列同一性のある可変軽鎖を含む。
【0193】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。
【0194】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列を含む可変重鎖配列と、配列番号24のアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列とを含む。
【0195】
そのような変異体抗体及びその抗原結合フラグメント(すなわち、或る特定のパーセントの同一性を有するもの)は、例えば、aCD38-b-329と同じエピトープに結合する、本明細書においてaCD38-b-329について開示された重鎖可変配列及び軽鎖可変配列を有する抗体及びその抗原結合フラグメントについて記載されたのと同じ(又は実質的に同じ)機能的特性及び薬理学的特性、又は開示された抗CD38抗体について本明細書において記載されている機能的特徴のいずれかを保持し又は示し得る。
【0196】
幾つかの実施形態においては、特に、参照配列に対して特定の配列同一性を有する配列に言及するあらゆる実施形態について、%配列同一性は、特定された重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の6つの全てのCDRの配列を含めずに計算され得る。そのような実施形態においては、配列の変化(あるならば)は、フレームワーク領域においてのみ発生する。
【0197】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、上記で定義されたaCD38-b-329のアミノ酸配列エレメント(又は変異体m6又は変異体m7のもの)に対する幾つかの置換によって代替的又は追加的に定義される抗CD38抗体であり得る。
【0198】
例えば、そのような抗体は、可変重鎖相補性決定領域3(HCDR3)として、aCD38-b-329-HCDR3(配列番号19)内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得る。更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖相補性決定領域1、可変重鎖相補性決定領域2、及び可変重鎖相補性決定領域3(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)として、それぞれ配列番号17、配列番号18、及び配列番号19内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖相補性決定領域1、可変軽鎖相補性決定領域2、及び可変軽鎖相補性決定領域3(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)として、それぞれ配列番号20、配列番号21、並びに配列番号22、配列番号25、及び配列番号26からなる群から選択される配列内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得る。
【0199】
更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖配列として、配列番号23内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、可変重鎖配列として、配列番号23の可変重鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列の可変軽鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。
【0200】
更なる実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、可変重鎖配列として、配列番号23内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号24内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体は、可変重鎖配列として、配列番号23の可変重鎖配列のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含む配列を含み得て、及び/又は可変軽鎖配列として、配列番号24のフレームワーク領域内に最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸置換を含み得る。
【0201】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号23の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号23の可変重鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0202】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号23の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号23の可変重鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号24の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号24の可変軽鎖領域配列と比較して最大5個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0203】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号23の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号23の可変重鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号24、配列番号27、及び配列番号28からなる群から選択される配列の可変軽鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0204】
幾つかの実施形態においては、抗CD38抗体(すなわち、本明細書において記載される抗体又はその抗原結合フラグメント及びそれらの変異体、例えば、突然変異させてDGモチーフを除去した変異体)は、
a)配列番号23の可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号23の可変重鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、及び/又は、
b)配列番号24の可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、又は配列番号24の可変軽鎖領域配列と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列(又はその親和性成熟変異体等のその変異体)、
を含み得る。
【0205】
アミノ酸置換は、好ましくは、抗体の機能的特性に悪影響を及ぼさないか、又は実質的に悪影響を及ぼさない。したがって、置換は保存的アミノ酸置換と見なすことができる。好ましくは、アミノ酸置換が存在する場合に、これらは、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域の全長が変化しないように1:1の比率で存在する。
【0206】
幾つかの実施形態においては、フレームワーク領域内にのみ任意のアミノ酸置換(保存的アミノ酸置換等)が存在し得る。そのような実施形態においては、CDR配列は不変のままである。
【0207】
そのようなアミノ酸配列及び任意の置換を示す抗体は、aCD38-b-329、及び概して抗CD38抗体の結合特性及び/又は機能的特性(同じエピトープへの結合又は開示された抗CD38抗体について本明細書において記載されている機能的特徴のいずれか等)を依然として示し得る。
【0208】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体の軽鎖又は重鎖におけるDGモチーフが、例えばアスパラギン酸異性化に対する感受性を低下させるように改変されている場合があり、及び/又はこの抗体の軽鎖又は重鎖における任意のメチオニンが、例えばメチオニン酸化を減少させるように改変されている場合がある、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、DGモチーフは、モチーフ中のアミノ酸の一方又は両方を異なるアミノ酸で置換するように改変されている場合がある。例えば、そのようなモチーフは、EG、DQ、又はDAに突然変異されている場合がある。メチオニン残基は、それを異なるアミノ酸、例えば、ロイシン又はフェニルアラニンと置き換えるように改変されている場合がある。
【0209】
したがって、幾つかの実施形態においては、アスパラギン酸異性化に対する感受性を低下させるのに当該技術分野において標準的であるように、本明細書において提供される抗体又はそのフラグメントは、DGモチーフ、特にCDR領域に現れるDGモチーフを除去又は改変するように突然変異されている場合がある。このように改変されたそのような抗体は、最終配列に至る前に更なる改変(例えば、親和性成熟)を受けることが必要となる場合がある。
【0210】
本発明の一実施形態においては、本明細書において開示される抗体のCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列(例えば、aCD38-b-329のCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列)、又は本明細書において開示される任意の抗体の可変重鎖及び可変軽鎖(例えば、aCD38-b-329の可変重鎖及び可変軽鎖)を有するが、CDR中の少なくとも1つのDGモチーフ(存在するならば)が異なるモチーフに変更された特定される配列とは異なる変異体抗体が提供される。開示される変異体をaCD38-b-329について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0211】
例えば、aCD38-b-329は、そのLCDR3配列においてDGモチーフを含む。幾つかの実施形態においては、DGモチーフのアスパラギン酸を異なるアミノ酸に変更することができ、及び/又はDGモチーフのグリシンを異なるアミノ酸に変更することができる。そのような実施形態においては、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えばaCD38-b-329であり得るか、又はaCD38-b-329から誘導され得る。幾つかの実施形態においては、変異体抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号25又は配列番号26のいずれか1つのVL CDR3配列を有する。例えば、変異体LCDR3配列(例えば、配列番号25中と同様のaCD38-b-329-m6変異体LCDR3配列、又は配列番号26中と同様のaCD38-b-329-m7変異体LCDR3配列)を、aCD38-b-329のLCDR1配列及び/又はLCDR2配列を含む抗体に組み込むことができる。一実施形態においては、変異体LCDR3配列(例えば、配列番号25中と同様のaCD38-b-329-m6変異体LCDR3配列、又は配列番号26中と同様のaCD38-b-329-m7変異体LCDR3配列)を、aCD38-b-329のLCDR1配列、LCDR2配列、HCDR1配列、HCDR2配列、及びHCDR3配列を含む抗体に組み込むことができる。幾つかの実施形態においては、変異体抗体又はその抗体結合フラグメントは、aCD38-b-329の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列とともに、しかしながら突然変異させてDGモチーフを除去したLCDR3配列を含み得る(例えば、配列番号25又は配列番号26が、代わりにLCDR3として存在し得る)。変異体抗CD38抗体は、親aCD38-b-329のあらゆる、恐らく全ての結合特性及び機能的特性(例えば、同じエピトープへの結合又は開示された抗CD38抗体について本明細書において記載されている機能的特徴のいずれか)を有する更なる抗体を提供する。開示される変異体をaCD38-b-329について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0212】
本発明において使用され得る更なる抗体
本発明は、親和性成熟抗体、例えば、本明細書において開示される抗体のいずれかから誘導される親和性成熟変異体を使用することもできる。一実施形態においては、親和性成熟抗体は、改変されたDGモチーフ及び/又はNGモチーフを有する、及び/又は任意のメチオニン残基を除去若しくは突然変異するように改変された親和性成熟抗体である。開示される親和性成熟変異体をaCD38-b-348又はaCD38-b-329について記載されたように使用し、製剤化することができる。
【0213】
幾つかの実施形態においては、本発明は、抗CD38抗体を調製する方法であって、本明細書において記載される抗体(例えば、aCD38-b-329又はその抗原結合フラグメント若しくは変異体)を準備することと、抗体を親和性成熟に供することとを含み、ここで、生成された抗体が、親抗体よりも高い親和性でCD38に結合する、方法を提供する。好ましくは、生成された抗体は、例えばKdによって測定されて、親抗体がCD38に結合するよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%高い親和性でCD38に結合する。親和性を測定する方法は当該技術分野において知られており、以下の実施例に記載されている。そのような方法によって生成される親和性成熟抗体を、他の抗CD38抗体剤について本明細書において記載されるように製剤化し、使用することができる。
【0214】
親和性成熟を、当業者に知られるあらゆる適切な方法に従って行うことができる。例えば、in vitro抗体ディスプレイシステムは、高い親和性を有する特異的抗体の作製に広く使用されている。これらのシステムにおいては、表現型(すなわち、抗体フラグメント)が遺伝子型(すなわち、抗体遺伝子)と結びつけられていることから、抗体の配列の直接的な決定が可能となる。抗体レパートリーのディスプレイを達成してその後の結合体(binder)の選択を可能にする幾つかのシステムが開発されており、選択のストリンジェンシーを高めることにより、ますます高い親和性変異体の選択が可能となる。抗体フラグメントを、酵母、リボソーム、ファージディスプレイ粒子において、又はDNAへの直接的なカップリングによって発現させることができる。
【0215】
本抗体親和性成熟方法は、確率的及び非確率的という2つの突然変異誘発のカテゴリーに属する。エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ミューテーター細菌株、及び飽和突然変異誘発は、確率的突然変異誘発法の典型的な例である。非確率的な技術は、しばしば、アラニンスキャニング又は部位特異的突然変異誘発を使用して、特定の変異体の限られたコレクションを生成する。さらに、親抗体のシャッフルされた変異体を取得するシャフリングアプローチを使用して、抗体の親和性を更に向上させることもできる。
【0216】
したがって、本発明の一実施形態においては、親和性成熟の方法は、確率的な突然変異誘発(例えば、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ミューテーター細菌株、又は飽和突然変異誘発)、非確率的な突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング又は部位特異的突然変異誘発)、シャフリング(例えば、DNAシャフリング、鎖シャフリング、又はCDRシャフリング)、及び修飾を導入するCRISPR-Cas9システムの使用からなる群から選択される。
【0217】
親和性成熟法は、例えば、Rajpal et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2005, 102(24):8466-71、Steinwand et al., MAbs, 2014, 6(1):204-18だけでなく、Handbook of Therapeutic Antibodies, Wiley, 2014, チャプター6, Antibody Affinity(第115頁~第140頁)にも記載されている。
【0218】
本発明はまた、CD38に結合させるのに、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329又はそれらの誘導される任意の変異体等の開示された抗体のいずれかと競合する抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、特定されたCDR若しくは可変鎖配列の一部を含む若しくは全てを含まないフラグメント、又は或る特定のパーセントの同一性及び/又はアミノ酸置換を有する変異体)を使用することもできる。
【0219】
抗CD38抗体の投与
幾つかの実施形態においては、上記方法は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが事前に投与された患者からの試料(言い換えれば、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが以前の時点で投与された患者から提供された又は得られた場合の試料)を得ることを含む。他の実施形態においては、本明細書において記載される方法は、抗CD38抗体を患者に投与した後に、患者から試料を得る工程を更に含む。全ての場合において、抗CD38抗体を投与した後に、患者から血液試料を得るため、血液試料は、投与された抗CD38抗体を含む(それというのも、抗CD38抗体は一般に、静脈内投与又は皮下投与されており、患者の血流中を循環するからである)。
【0220】
一般に、患者には、患者から得られた血液試料が治療用抗CD38抗体分子の一部を含むことを意図する時間枠内に抗CD38抗体が投与されているべきである。幾つかの実施形態においては、患者には、患者から試料を得る1年未満前、6ヶ月未満前、3ヶ月未満前、2ヶ月未満前、又は1ヶ月未満前に、抗CD38抗体が投与されている。幾つかの実施形態においては、患者には、患者から試料を得る8週間未満前、7週間未満前、6週間未満前、5週間未満前、4週間未満前、3週間未満前、2週間未満前、又は1週間未満前に、抗CD38抗体が投与されている。幾つかの実施形態においては、患者には、患者から試料を得る10日未満前、9日未満前、8日未満前、7日未満前、6日未満前、5日未満前、4日未満前、3日未満前、2日未満前、又は1日未満前に、抗CD38抗体が投与されている。幾つかの実施形態においては、患者には、患者から試料を得る48時間未満前、24時間未満前、12時間未満前、6時間未満前、5時間未満前、4時間未満前、3時間未満前、2時間未満前、又は1時間未満前に、抗CD38抗体が投与されている。
【0221】
好ましい実施形態においては、患者には、患者から試料を得る2ヶ月未満前に、抗CD38抗体が投与されている。
【0222】
抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを投与する工程を含む実施形態においては、投与する工程は、患者から試料を得る任意の工程の前に行われる。患者の正確な治療レジメンに応じて、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの投与と患者からの試料の取得との間に遅れがある場合がある。一般に、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを患者に投与してから2ヶ月未満後に試料を得ることになる。
【0223】
試料の収集前に患者に投与される抗CD38抗体は、患者血液試料を供血者赤血球と交差適合試験するとき、又は任意の抗体RBCパネルアッセイを実施するときに干渉を引き起こさない抗CD38抗体である。したがって、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、(例えば)ダラツムマブ又はイサツキシマブではない。本発明と適合性の抗CD38抗体は、「抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント」という見出しの下で別の場所で論じられている。
【0224】
アッセイ型
本明細書において記載される方法は、患者からの血液試料をスクリーニングする工程を含む。スクリーニングは、患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含み得る。幾つかの実施形態においては、スクリーニングは、カラム凝集アッセイ、間接抗グロブリン試験(IAT)チューブアッセイ、及び固相アッセイからなる群から選択されるアッセイを使用して実施される。幾つかの実施形態においては、スクリーニングは、カラム凝集アッセイを使用して実施される。幾つかの実施形態においては、スクリーニングは、間接抗グロブリン試験(IAT)チューブアッセイを使用して実施される。幾つかの実施形態においては、スクリーニングは、固相アッセイを使用して実施される。これらは、上記で示される定義において更に詳細に説明されている。
【0225】
赤血球抗原:
「赤血球抗原」という用語は、赤血球の表面に見られるか、又は赤血球によって発現されるあらゆる抗原を指す。RBC抗原は、それらが見出される部分に従って分類され得る。例えば、「K」及び「k」RBC抗原は、「Kell」糖タンパク質上に見出され、RBC抗原の「Kell群」に属する。抗原の群は、「血液群」又は「血液群系」、例えば「Kell血液群」と呼ばれ得る。各血液群は、幾つかの異なる抗原、時には50種以上の多さの抗原を含む場合がある。1個体からのRBCは、同じ血液群内の異なる抗原に対して陽性又は陰性である場合がある。
【0226】
RBC抗原は、炭水化物、例えばABO群抗原であり得るか、又はタンパク質、例えばアカゲザル(Rh)群抗原であり得る。患者がRBC抗原に曝露されると、患者はその抗原に対する抗体、例えばIgGサブタイプ又はIgMサブタイプの同種抗体を産生し得る。患者抗体がin vivoでRBC抗原に結合すると、RBCの破壊(溶血)がもたらされる場合がある。この潜在的に有害な効果のため、輸血を受ける患者をスクリーニングして、RBC抗原に特異的に結合する患者の血漿又は血清中の任意の抗体を特定する。臨床的意義のある患者抗体が生じ得るRBC抗原としては、Ab群、ABO群、Cromer群、Diego群、Duffy群、Gerbich群、GLOB群、Indian群、Kell群、Kidd群、Knops群、Lewis群、Lutheran群、LW群、MNS群、P1群、Rh群、XK群、Xg群、及びYt群が挙げられる。例示的な血液群抗原を以下でより詳細に説明する。
【0227】
ABO血液群抗原は、全ての血液群系の中で最も免疫原性が高く、血液バンクにおける日常的な血液型判定の基礎を成している。ABO血液群抗原はRBC膜結合型であり、RBC表面の上に突出するオリゴ糖鎖に付着している。この群は、A、B、AB、及びA1の4つの抗原からなる。ABO群抗原に対する天然に存在する抗体は、血清中に頻繁に見られ、例えば、A型血液群を有する患者は、その血清中に抗B抗体を有する。ABO血液群抗原に特異的に結合する患者抗体は天然に存在し(すなわち、これらの抗体は、例えば、輸血によって非自己抗原に曝露されることなく生じる)、非常に一般的であるため、全ての患者をスクリーニングして、それらのABO状態を決定する。ABO群抗原に対する抗体は、IgG又はIgMであり得る。ABO群抗原に対する抗体は、不適合性のRBCが輸血された場合に、重大な急性溶血性輸血反応を引き起こす可能性がある。ABO型判定は、患者の血液中にダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体が存在することによって影響されない。
【0228】
Rh血液群は、少なくとも50種の既知の抗原を含む最も複雑な血液群の1つであり、その中で、D、C、E、c、及びeが最も臨床的意義のあるものである。Rh群抗原は免疫原性が高い。Rh群抗原は、どちらも膜貫通型RBCタンパク質であるタンパク質のRhD及びRhCE上に見られる。Rh表現型判定は、患者が輸血を受ける前に日常的に行われており、一般的に、RBC上に存在する任意のRh群抗原に結合するモノクローナル又はポリクローナルの抗D試薬、抗C試薬、抗E試薬、抗c試薬、及び抗e試薬を使用する。したがって、日常的なRh表現型判定は、典型的には、患者の血液中にダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体が存在することによって影響されない。Rh血液群抗原、特にRhDに対する患者抗体が、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)の主な原因である。
【0229】
Kell血液群系は、Kell抗原を有する膜貫通型RBCタンパク質であるKell糖タンパク質から生ずる。Kell血液群系は複雑であり、30種を超える抗原からなり、その多くは免疫原性が高い。2つの主要なKell群抗原はK及びkであり、ここで、Kは免疫原性が最も高い。Kell群抗原に対する抗体は、典型的には、IgG抗体クラスの抗体であり、IgM抗体はあまり一般的ではない。有害反応(輸血反応又はHDFN等)を引き起こすことが知られている抗Kell群抗体としては、抗K、抗k、抗Kpa、及び抗Jsbが挙げられる。Kell群抗原は、DTT又は類似物等の抗原ストリッピング剤でRBCを処理することによって変性される抗原に含まれる。これにより、ダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体で治療され、抗CD38抗体の存在によって引き起こされる凝集を防ぐためにDTT又は類似物を使用してRBCからCD38が除去されている患者において、Kell群抗原に対する患者抗体を正確に特定することは特に困難となる。
【0230】
Kidd血液群系は、赤血球細胞膜を横切って尿素を輸送するRBC上に発現される膜貫通型糖タンパク質であるKidd(JK)糖タンパク質から生ずる。3種類の既知のKidd抗原(Jk1(Jka)、Jk2(Jkb)、及びJk3)がある。抗Kidd患者抗体、特に抗Jkaは、遅発性溶血性輸血反応を引き起こすことが知られている。胎児Kidd抗原はまた、母親の同種免疫化を引き起こす可能性がある。
【0231】
Duffy血液群としては、DARC(Duffy抗原/ケモカイン受容体)としても知られる、RBC上に発現されるDuffy膜貫通型糖タンパク質上に存在する6種の既知の抗原が挙げられる。6種の既知のDuffy抗原としては、Fya、Fyb、Fy3、Fy4、Fy5、及びFy6が挙げられる。Duffy抗原に対する患者抗体は主にIgGサブクラスの抗体である一方で、IgMサブクラスの患者抗体は稀である。Duffy抗原に対する患者抗体、特にDuffy抗原のFya及びFybに対する患者抗体は、溶血性輸血反応及びHDFNの両方を引き起こすことが知られている。
【0232】
Diego血液群系は、RBC上に発現される膜貫通型タンパク質であるDiegoタンパク質から生ずる。Diego血液群系には21種の抗原が含まれており、その中で最も重要であるのがDia、Dib、及びWraである。Diego血液群抗原に対する患者抗体は、IgG抗体及び/又はIgM抗体であり得る。Diego血液群抗原に対する患者抗体は、溶血性輸血反応及びHDFNの両方を引き起こすことが知られている。
【0233】
Lutheran血液群系には、24種の既知の抗原が含まれている。これらは、RBC膜上に発現される2種のLutheran糖タンパク質アイソフォームから形成される。Lutheran群抗原に対する患者抗体は、IgG抗体及び/又はIgM抗体であり得る。Lutheran群抗原に対する患者抗体は、溶血性輸血反応又はHDFNを引き起こし得るが、これらは稀であり、典型的には軽度である。Lutheran群抗原は、DTT又は類似物等の抗原ストリッピング剤でRBCを処理することによって変性される抗原に含まれる。これにより、ダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体で治療され、抗CD38抗体の存在によって引き起こされる凝集を防ぐためにDTT又は類似物を使用してRBCからCD38が除去されている患者において、Lutheran群抗原に対する患者抗体を正確に特定することは特に困難となる。
【0234】
MNS血液群系は、抗原を有するタンパク質であるグリコフォリンA及びグリコフォリンBから生じ、どちらもRBC膜上に発現されるグリコフォリンタンパク質である。MNS血液群系には、少なくとも43種の抗原が含まれていることが知られており、その多くはHDFNに関係がある。MNS血液群抗原に対する患者抗体も、軽度から重度まで様々な溶血性輸血反応を引き起こすことが知られている。MNS血液群抗原に対する患者抗体は、IgG抗体及び/又はIgM抗体であり得る。
【0235】
Cromer群、Gerbich群、GLOB群、Indian群、Knops群、Lewis群、LW群、P1群、XX群、Xg群、及びYt群の抗原等の他の血液群抗原がRBC上に発現されている場合もあり、これらの抗原を有するRBCが、群内の抗原のいずれかに特異的に結合する抗体を有する患者に輸血された場合に、溶血性輸血反応又はHDFNを引き起こす可能性がある。
【0236】
上記の血液群抗原のいずれかに対する患者試料中の患者抗体の存在は、血液バンクにおいて日常的に評価されており、患者の血液中のダラツムマブ又はイサツキシマブ等の抗CD38抗体の存在によって影響されることが知られている。それに対して、本発明の方法は、患者が抗CD38抗体で治療されている場合に、正確な抗体スクリーニング及び患者試料の血液交差適合試験を可能にし、RBC上に発現されたCD38(膜結合型CD38)への抗CD38抗体の結合を阻害する追加の工程を必要としない。
【0237】
したがって、幾つかの実施形態においては、RBC抗原は、Ab群抗原、ABO群抗原、Cromer群抗原、Diego群抗原、Duffy群抗原、Gerbich群抗原、GLOB群抗原、Indian群抗原、Kell群抗原、Kidd群抗原、Knops群抗原、Lewis群抗原、Lutheran群抗原、LW群抗原、MNS群抗原、P1群抗原、Rh群抗原、XK群抗原、Xg群抗原、及びYt群抗原からなる群から選択され得る。
【0238】
RBC抗原はRBCによって発現される。これは、RBC抗原がRBCの表面上に存在することを意味する。RBC抗原は、少なくとも一部がRBCの表面上に露出した状態でRBC膜中に組み込まれているため、膜結合型と呼ばれる場合もある。
【0239】
本発明のより具体的な方法
本発明は、少なくとも以下の方法を含む。
【0240】
本発明は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)患者血液試料と供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
e)患者血液/供血者赤血球の混合物に、患者血液/供血者赤血球の混合物中に存在する任意の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を互いに特異的に結合する作用物質、例えば抗ヒトグロブリン等の凝集剤を加えることと、
f)任意に、存在するならば、任意の1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、更に任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
g)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
を含む、方法を提供する。
【0241】
本発明はまた、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
ここで、患者血液試料は、1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する1つ以上の患者抗体を含み、この患者抗体は、患者の赤血球によって発現されるどの赤血球抗原にも特異的に結合しない;
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)患者血液試料と供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の1つ以上の患者抗体を供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
e)患者血液/供血者赤血球の混合物に、患者血液/供血者赤血球の混合物中に存在する患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を互いに特異的に結合する作用物質、例えば抗ヒトグロブリン等の凝集剤を加えることと、
f)任意に、任意の1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、更に任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
g)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在を決定することと、
を含み、ここで、供血者血液試料からの1つ以上の赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体の存在は、供血者血液試料が患者と不適合性であることを示す、方法を含む。
【0242】
本発明はまた、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
ここで、患者血液試料は、任意の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体を一切含まない;
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)患者血液試料と供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)患者血液/供血者赤血球の混合物に凝集剤、例えば抗ヒトグロブリンを加えることと、
e)任意に、患者血液/供血者赤血球の混合物から供血者赤血球を単離することと、
ここで、任意に、単離する工程は遠心分離を含む;
f)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の不存在を決定することと、
を含み、ここで、供血者血液試料からの1つ以上の赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体の不存在は、供血者血液試料が患者と適合性であることを示す、方法を含む。
【0243】
本発明はまた、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)赤血球パネルに対して患者血液試料をスクリーニングして、赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に存在する任意の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の任意の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
c)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は、供血者赤血球を含み、かつ供血者血液試料中の供血者赤血球は、工程(b)において赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に発現された任意の赤血球抗原に特異的に結合すると特定された患者抗体のいずれかによって特異的に結合され得る赤血球抗原を一切発現しない;
d)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含む、患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、方法を含む。工程(c)は、本明細書において開示されるあらゆる適切なスクリーニング方法に従って実施され得る。
【0244】
本発明はまた、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの1つ以上の血液試料を準備することと、
b)赤血球パネルに対して工程(a)において準備された患者血液試料をスクリーニングして、赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に存在する任意の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の任意の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
c)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は、供血者赤血球を含み、かつ供血者血液試料中の供血者赤血球は、工程(b)において赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に発現された任意の赤血球抗原に特異的に結合すると特定された患者抗体のいずれかによって特異的に結合され得る赤血球抗原を一切発現しない;
d)工程(a)において準備された患者血液試料と供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
e)患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成するのを可能にすることと、
f)患者血液/供血者赤血球の混合物に、患者血液/供血者赤血球の混合物中に存在する任意の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を互いに特異的に結合する作用物質、例えば抗ヒトグロブリン等の凝集剤を加えることと、
g)任意に、存在するならば、任意の1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、更に任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
h)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
を含む、方法を含む。
【0245】
上記の方法のいずれも、本明細書において記載される本開示のより詳細な又は好ましい実施形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0246】
本明細書において記載される方法のいずれかのインキュベーション工程は、任意の患者抗体(存在するならば)が供血者血液試料の赤血球上に存在する任意の赤血球抗原、又は赤血球パネルの赤血球上に存在する任意の赤血球抗原に結合することを可能にするのに十分な条件下で実施され得る。インキュベーションを、約5分間~約2時間行うことができる。インキュベーションを、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約30分間、少なくとも約40分間、少なくとも約50分間、少なくとも約1時間、少なくとも約90分間、又は少なくとも約2時間行うことができる。インキュベーションを、約37℃で行うことができる。インキュベーションをほぼ室温(例えば、約15℃~約25℃)で行うことができる。幾つかの実施形態においては、インキュベーション工程は、約15℃~約40℃の温度で少なくとも約5分間インキュベートすることを含む。
【0247】
治療方法及び医学的使用
本発明は、患者における癌を治療する方法であって、患者からの血液試料を準備することと、本発明の方法に従って血液試料をスクリーニングすることとを含む、方法を提供する。幾つかの実施形態においては、患者には、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている(すなわち、患者は、より早期の時点で抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを既に受けている)。他の実施形態においては、上記方法は、患者への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの一連の投与を含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者から試料を取得する工程を代替的又は追加的に含み得る。試料は血液試料であり、当業者に知られるあらゆる適切な方法(例えば、単純な採血)に従って得ることができる。試料を処理した後にスクリーニングする場合があり、例えば、試料を希釈する場合があり、又は別の場所で論じられているような他の処理工程を実施する場合がある。
【0248】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、
a)患者に抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することと、
b)抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの投与後に患者からの血液試料を得ることと、
c)請求項1~Xのいずれか一項に記載の方法に従って患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む。
【0249】
本発明の方法は、患者血液試料中の患者抗体の存在又は不存在、及び/又は患者に血液又は赤血球の献血を提供する供血者の適性を示すレポートを作成することを含み得る。
【0250】
治療方法は、供血者が患者と適合性であることが判明した場合に、例えば輸血によって、供血者からの血液又は赤血球を投与する工程を含み得る。
【0251】
したがって、本発明の方法は、患者に輸血を施す方法であって、適合性の供血者血液又は供血者赤血球が患者に投与され、ここで、供血者血液又は供血者赤血球は、本発明のスクリーニング方法のいずれかに従って患者と適合性であると判断されている、方法にまで及ぶ。したがって、供血者血液は患者と交差適合試験されており、血液が適合性であることが判明した場合にのみ患者に投与される。例えば、幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者に輸血を施す方法であって、
a)供血者血液又は供血者赤血球を準備することと、
ここで、供血者血液又は供血者赤血球は、本発明の任意のスクリーニング方法に従って患者と適合性であると判断されている;
b)適合性の供血者血液又は適合性の供血者赤血球を患者に投与することと、
を含む、方法である。
【0252】
患者は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが早期の時点で、とりわけ、患者から血液試料を得て、供血者血液又は供血者赤血球の患者との適合性を判断する前に投与されている患者である。
【0253】
患者に輸血を施す方法は、患者との適合性について供血者血液又は供血者赤血球をスクリーニングする工程(すなわち交差適合試験)を含み得る。
【0254】
幾つかの実施形態においては、本発明は、B細胞悪性腫瘍、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄腫)、骨髄増殖性障害、固形腫瘍(乳癌、扁平上皮癌、結腸癌、頭頸部癌、肺癌、泌尿生殖器癌、直腸癌、胃癌、肉腫、黒色腫、食道癌、肝臓癌、精巣癌、子宮頸癌、肥満細胞腫、血管腫、眼癌、喉頭癌、口腔癌、中皮腫、皮膚癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、腎癌、胃癌、非小細胞肺癌、及び卵巣癌等)等の癌の治療を含む。癌は、CD20、HER2、PD-1、PD-L1、SLAM7F、CD47、CD137、CD134、TIM3、CD25、GITR、CD38、EGFR等の特定の腫瘍関連マーカー及び抗原の存在に基づいて定義される場合もあり、又はマイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)若しくはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)と呼ばれるバイオマーカーを有すると特定された癌であり得る。さらに、そのような病態は、上皮内癌、くすぶり型骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、子宮頸部上皮内新生物、MALTomas/GALTomes、及び様々なリンパ増殖性障害等の上記癌の前癌性の非侵襲性の状態を定義する場合と見なされ得る。好ましくは、幾つかの実施形態においては、治療される被験体は固形腫瘍を有する。一実施形態においては、被験体は、血液癌を有する。幾つかの実施形態においては、被験体はCD38陽性腫瘍を有する。
【0255】
本発明の方法及び使用は、患者が1回以上の輸血を必要とし得る場合に特に有用であり得る。例えば、幾つかの実施形態においては、治療される疾患は癌、例えば多発性骨髄腫である。多発性骨髄腫の治療として抗CD38抗体を受けている患者は、患者と適合性である供血者を特定するのに、血液スクリーニング(特に供血者との交差適合試験)を必要とする1回以上の輸血を必要とする場合がある。
【0256】
したがって、幾つかの実施形態においては、本発明は、被験体における癌を治療する方法であって、本明細書において記載される抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、aCD38-b-348若しくはaCD38-b-329又はそれらから誘導される抗体)を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、方法を提供する。幾つかの実施形態においては、提供される方法は、被験体に少なくとも1つの追加の作用物質又は療法を同時に又は任意の順序で逐次的に(すなわち、被験体が併用療法を受けるように)施すことを更に含み得る。幾つかの実施形態においては、そのような少なくとも1つの追加の作用物質又は療法は、抗癌薬(例えば、化学療法剤)、放射線療法(外部から身体に照射を当てることによって、又は放射線コンジュゲート化合物(radio-conjugated compounds)を投与することによって)、抗腫瘍抗原若しくはマーカー抗体(抗原又はマーカーは、例えば、CD4、CD25、CA125、PSMA、c-MET、VEGF、CD137、VEGFR2、CD20、HER2、HER3、SLAMF7、CD326、CAIX、CD40、CD47、又はEGF受容体である)、チェックポイント阻害剤若しくは免疫調節抗体(例えば、PD-1、PD-L1、TIM3、CD25、GITR、CD134、CD134L、CD137L、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、B7RP1、LAG3、ICOS、TIM3、GAL9、CD28、AP2M1、SHP-2、OX-40等を標的とする抗体)、ワクチン、アジュバント、使用基準プロトコル、癌細胞を標的とする若しくは癌細胞に対する免疫応答を刺激する1つ以上の他の化合物、又はそれらのあらゆる組合せであり得るか、又はそれらを含み得る。或る特定の実施形態においては、そのような少なくとも1つの追加の作用物質又は療法が抗体であるか又はそれを含む場合に、そのような抗体の形式及び/又はそのような抗体によって標的とされる抗原は、文献に列記されるものから選択され、恐らく所与の癌に適合され得る(Sliwkowski M & Mellman I, 2013、Redman JM et al., 2015、Kijanka M et al., 2015)。
【0257】
他の方法の中でも、本発明は、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者との適合性について供血者血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者から得られる血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)患者血液試料と供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)患者血液/供血者赤血球の混合物を約15℃~約40℃の温度で少なくとも5分間インキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者IgG同種抗体を、存在するならば、供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者IgG同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
e)患者血液/供血者赤血球の混合物に抗ヒトIgG抗体を加えて、患者血液/供血者赤血球の混合物中に存在する任意の患者IgG同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を凝集させることと、
f)存在するならば、任意の1つ以上の患者IgG同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
g)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者IgG同種抗体の存在又は不存在を決定することと、
ここで、工程(e)における患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体の凝集は、供血者血液が患者と不適合性であることを示し、かつ工程(e)における患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体の凝集の不存在は、供血者血液が患者と適合性であることを示す;
を含み、更に、
患者血液試料は血漿試料又は血清試料であり、
抗CD38抗体は、aCD38-b-348又はそれから誘導される抗体若しくはそれらの変異体であり、
抗CD38抗体はIgGアイソタイプの抗体であり、
工程(e)において抗ヒトIgG抗体を加えた場合に、抗CD38抗体は赤血球の凝集を引き起こさず、かつ、
患者には、患者から血液試料を得る2ヶ月以下前に抗CD38抗体が投与されている、方法を提供する。
【0258】
「含む(comprising)」という用語を用いて本明細書において記載される態様及び実施形態は、その範囲内の他の特徴又は工程を含み得る。「含む(comprising)」と記載された態様及び実施形態は、「含む(comprising)」という用語が「~から本質的になる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」という用語に置き換えられた態様及び実施形態も記載していることも理解される。
【0259】
「~を含む群から選択される(selected from the group comprising)」という語句は、これらが本明細書において存在する場合は、「~からなる群から選択される(selected from the group consisting of)」という語句で置き換えることができ、その逆もまた同様である。
【0260】
また、本願は、文脈上別段の要求がない限り、上記の態様及び上記の実施形態のいずれかの全ての互いの組合せを開示していることも理解される。同様に、本願は、文脈上別段の要求がない限り、好ましい特徴及び/又は任意の特徴の全ての組合せを単独で又は他の態様のいずれかと一緒に開示している。
【0261】
ここで、本発明を、以下の実施例によって、図面を参照して更に説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのを助けることに役立てることを意図しており、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0262】
実施例1:CD-38発現悪性細胞系統へのCID103(aCD38-b-348)の結合
材料及び方法
使用される細胞系統/初代細胞型。CID103(aCD38-b-348)のヒトCD38への結合を、CD38を内因的に発現する多数のヒト細胞系統(Daudi(ATCC CCL-213)、Raji(ATCC CCL-86)、及びRamos(ATCC CRL-1596))を使用するフローサイトメトリーによって調べた。実験前に、Daudi、Raji、Ramos及び細胞を、10%のFCS、2mMのL-グルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び1mMのピルビン酸ナトリウム(全てThermoFisher製)が補充されたRPMI-1640培地(ATCC 30-2001)中で対数期において、自動式セルカウンター(Countess II FL自動式セルカウンター;ThermoFisher;カタログ番号AMQAF1000)によって測定して85%超の生存率にて培養した。
【0263】
細胞染色及びフローサイトメトリー。全ての実験を96ウェルプレートの形式を使用して3連で行った。50000個の細胞を96ウェル丸底組織培養処理プレートの各ウェルに播種した。FACS細胞染色バッファー(0.2%のBSA、0.02%のNaN3;BioLegend、カタログ番号420201)による洗浄工程に続いて、細胞をCID103(aCD38-b-348)、ダラツムマブ、又はヒトIgG1アイソタイプコントロールの7点の3倍希釈列(0.03μg/ml、0.08μg/ml、0.24μg/ml、0.74μg/ml、2.2μg/ml、6.6μg/ml、及び20μg/ml)において氷上で30分間インキュベートした。FACS細胞染色バッファーでの洗浄工程に続いて、細胞を二次抗体(Alexa Fluor 647で標識されたウサギ抗ヒトFcγ F(ab’)2;Jackson ImmunoResearch カタログ番号309-606-008)とともに5μg/mlで氷上暗所にて30分間インキュベートした。細胞をFACS細胞染色バッファーでもう一度洗浄し、BD BiosciencesのFACSCaliburフローサイトメーター(カリフォルニア州サンノゼ)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。FSC対SSCゲーティングを使用して、対象となる細胞を特定した。各試料について合計3000個の生単一細胞を記録し、対応する蛍光シグナル強度ヒストグラムを分析した。平均蛍光強度(MFI)を、各抗体濃度についてFlowJo分析ソフトウェア(オレゴン州アシュランド)を使用して計算した。
【0264】
EC50の計算。EC50値を計算するのに、MFIを抗体濃度に対してプロットし(片対数グラフ)、GraphPad Prism 8ソフトウェア(カリフォルニア州ラホヤ)を使用してデータを非線形回帰曲線にフィッティングした。
【0265】
結果
CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブのDaudi細胞系統、Raji細胞系統、及びRamos細胞系統への結合についてのEC50及び最大MFI値を以下の表1に示す。IgG1アイソタイプコントロール(ネガティブコントロール)についてのEC50及び最大MFI値も含まれている。
【0266】
【0267】
Daudi細胞系統、Raji細胞系統、及びRamos細胞系統への結合についての用量応答曲線を、それぞれ
図1、
図2、及び
図3に示す。
【0268】
ダラツムマブは、Daudi細胞、Raji細胞、及びRamos細胞に対して典型的な用量応答結合曲線を示した。CID103(aCD38-b-348)は、3つの全ての細胞系統と同様の可飽和の濃度依存性結合を示す。CID103のEC50値は382ng/ml(Daudi細胞)、373ng/ml(Raji細胞)、及び412ng/ml(Ramos細胞)であり、ダラツムマブのEC50値(166ng/ml~199ng/ml)より僅かに高い。試験細胞へのCID103(aCD38-b-348)の最大結合は、(Raji細胞の場合に)ダラツムマブの結合と同様であった、又は(Daudi細胞及びRamos細胞の場合に)ダラツムマブの結合より僅かに高かった。IgG1アイソタイプコントロールは、試験細胞系統のいずれにも結合を示さなかった。
【0269】
実施例2:供血者RBCへのCID-103の結合
材料及び方法
使用される初代細胞型。ヒト赤血球へのCID103(aCD38-b-348)の結合を、三(3)人の正常な健康な供血者からの新鮮なヒト全血を使用するフローサイトメトリーによって調べた。新鮮なヘパリン化全血を、ヒト被験者についての治験審査委員会(Institutional Review Board for Human Participants)(IRB)によって承認された施設からin vitroの研究目的での組織の収集のために入手した。全血を、実験前に溶血について視覚的に検査した。
【0270】
供血者RBCの調製。全血を遠心分離し、1×PBSで3回洗浄した後に使用した。洗浄した全血を1:20に希釈して、PBSで5%の赤血球(erythrocytes)懸濁液を作製した(以下、血液基質と呼ぶ)。血液基質を、調製から3時間以内にアッセイに使用した。
【0271】
細胞染色及びフローサイトメトリー。96ウェルの丸底組織培養処理プレート上に1ウェル当たりに100μlのFACSバッファーと混合した100μlの血液基質を播種し、7点の3倍希釈列(0.03μg/ml、0.08μg/ml、0.24μg/ml、0.74μg/ml、2.2μg/ml、6.6μg/ml、及び20μg/ml)のCID103(aCD38-b-348)、ヒトIgG1アイソタイプコントロール抗体(BioXcell;カタログ番号BE0297)、ダラツムマブ(Darzalex)、又はAlexa Fluor 647で標識されたCD47抗体(BioLegend;カタログ番号323118)のいずれかとともに氷上で30分間インキュベートした。各条件を3連で実施した。FACSバッファーでの洗浄工程に続いて、試料をAlexa Fluor 647で標識されたヤギ抗ヒトFcγ F(ab’)2二次抗体(Jackson ImmunoResearch;カタログ番号109-606-170)とともに5μg/mlで氷上暗所にて30分間インキュベートした。試料をFACSバッファーでもう一度洗浄して、未結合の二次抗体を除去し、Intellicytのフローサイトメーターを使用するフローサイトメトリーにより分析した。Alexa Fluor 647で標識されたCD47抗体とともにインキュベートした試料を、二次抗体とともにインキュベートせずにフローサイトメトリー分析用に処理した。FSC対SSCゲーティングを使用して、赤血球を特定した。各試料について少なくとも3000個の生赤血球を収集し、対応する蛍光シグナル強度ヒストグラムを分析した。平均蛍光強度(MFI)を、各抗体濃度についてForeCyt分析ソフトウェアを使用して決定した。
【0272】
EC50の計算。EC50値を計算するのに、MFIを抗体濃度に対してプロットし(片対数グラフ)、GraphPad Prism 8ソフトウェア(カリフォルニア州ラホヤ)を使用してデータを非線形回帰曲線にフィッティングした。
【0273】
結果
3人の供血者のそれぞれからのRBCへのCID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブの結合についてのEC50及び最大MFI値を以下の表2に示す。IgG1アイソタイプコントロール(ネガティブコントロール)及び抗ヒトCD47(ポジティブコントロール)についてのEC50及び最大MFI値も含まれている。
【0274】
【0275】
3人の供血者のそれぞれからのRBCへの結合についての用量応答曲線を、
図4、
図5、及び
図6に示す。
【0276】
まとめ。ダラツムマブは、3人の全ての供血者からのRBCとの結合において用量依存的な増加を示した。CID103(aCD38-b-348)は、3人の全ての供血者からのRBCとの結合において用量依存的な増加を示したが、全体的なMFI値はダラツムマブと比較してより低かった。IgG1アイソタイプコントロールは、試験された最高濃度を除いて、3人のどの供血者からのRBCへも結合を示さなかった。ポジティブコントロールであるAF647コンジュゲート抗ヒトCD47は、3人の全ての供血者からのRBCとの用量応答結合曲線を示した。
【0277】
実施例3:IATチューブ法によるCID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブの輸血前試験
材料及び方法
試料の調製。CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブを、不活性AB血漿中で250μg/ml及び1000μg/mlの濃度にて調製した。AB血漿のみの試料をコントロールとして使用した。
【0278】
RBC。以下のRh表現型を有するRBCを使用した:RhD陽性(R1R1、R2R2)及びRhD陰性(rr)。標準的なプロトコルに従って、全血試料からRBCを調製した。
【0279】
IATチューブ法のプロトコル。RBCを、抗ヒトグロブリン(Ortho Diagnostics)及びCID103(aCD38-b-348)、ダラツムマブ、又はコントロール血漿を含むポリエチレングリコール(PEG)増強培地中で標準的なプロトコルに従ってインキュベートした。
【0280】
データ分析。インキュベーション後に、New York Blood Centerで熟練者がチューブを視覚的に評価し、観察された反応性のレベルについて4+から0までのスケールで採点した。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て反応性を示し、0又は0?は反応性なし、又は疑わしい反応性を示している。実験のいずれかで観察された反応性は、試料中に存在する抗CD38抗体との干渉を示している。
【0281】
結果
結果を表3に示す。
【0282】
【0283】
まとめ。ダラツムマブは、試験された全てのRBC表現型について1+の読み取り値を示したが、CID103(aCD38-b-348)は1000μg/mlの高濃度でさえ検出可能な干渉を一切起こさなかった。血液バンクの状況では、+1の読み取り値は、供血者と受血者との間の適合が不適合性であることを示すこととなる。したがって、ダラツムマブによる患者の治療は、受血者RBCと供血者RBCとの間の不適合性を誤って示す可能性があるが、CID103(aCD38-b-348)での患者の治療は、そのような干渉を引き起こすことは予想されない。
【0284】
実施例4:カラム凝集技術を使用する未処理のRBCに対するCID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブの輸血前試験
材料及び方法
試料の調製。CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブを、不活性AB血漿中で1μg/ml、10μg/ml、100μg/ml、及び250μg/mlの濃度で調製した。CID103(aCD38-b-348)の追加の試料を、不活性AB血漿中で625μg/ml及び1000μg/mlの濃度で調製した。不活性AB血漿のみの試料をコントロールとして使用した。
【0285】
RBC。以下のRh表現型を有するRBCを使用した:RhD陽性(R1R1、R2R2)及びRhD陰性(rr)。標準的なプロトコルに従って、全血試料からRBCを調製した。
【0286】
カラム凝集技術。Ortho MTSからIgGゲルカードを入手した。製造業者の指示に従って、RBCをCID103(aCD38-b-348)、ダラツムマブ、又はコントロール血漿とともにインキュベートした。インキュベーション後に、製造業者の指示に従って、試料を900rpmで10分間遠心分離した。
【0287】
データ分析。遠心分離後に、New York Blood Centerで熟練者がチューブを視覚的に評価し、観察された反応性のレベルについて4+から0までのスケールで採点した。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て反応性を示し、0又は0?は反応性なし、又は疑わしい反応性を示している。Φは、試料中に薬物が存在しないことを示している(血漿コントロール)。実験のいずれかで観察された反応性は、試料中に存在する抗CD38抗体との干渉を示している。
【0288】
結果
試験された各濃度でのCID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブについてのゲルカードの結果を
図7A~
図7C及び
図8A~
図8Dに示す。
【0289】
図7A~
図7Cから分かるように、ダラツムマブは、1μg/lの低濃度でさえ、1+と2+との間で確実に干渉を引き起こした。ダラツムマブの場合に、試験された全てのRBC Rh表現型について干渉が見られた。それに対して、
図8A~
図8Dから分かるように、CID103(aCD38-b-348)は最小限の干渉しか引き起こさず、試験されたRh陽性のRBCにおいて100μg/ml及び250μg/mlのより高い濃度では疑わしい干渉しか検出されなかった。625μg/ml及び1000μg/mlという非常に高い濃度でさえ、Rh陰性のRBCについて干渉は全く観察されなかった(
図8D)。
【0290】
実施例5:カラム凝集技術を使用する酵素処理又はDTT処理されたRBCに対するCID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブの輸血前試験
材料及び方法
試料の調製。CID103(aCD38-b-348)及びダラツムマブを、不活性AB血漿中で10μg/ml及び250μg/mlの濃度で調製した。不活性AB血漿のみの試料をコントロールとして使用した。
【0291】
RBC。RhD陰性(rr)の表現型を有するRBCを使用した。標準的なプロトコルに従って、全血試料からRBCを調製した。未処理の及び前処理された両方のRBCを使用した。前処理されたRBCについては、RBCを製造業者の指示に従って商業的に調製されたフィシンで処理するか、又はJudd, Johnson & Storry (2008) Judd's Methods in Immunohematology 3rd Edによって記載されるようにインハウスで調製されたパパイン、トリプシン、若しくは0.2MのDTTで処理した。
【0292】
カラム凝集技術。Ortho MTSからIgGゲルカードを入手した。製造業者の指示に従って、RBCをCID103(aCD38-b-348)、ダラツムマブ、又はコントロール血漿とともにインキュベートした。インキュベーション後に、製造業者の指示に従って、試料を900rpmで10分間遠心分離した。
【0293】
データ分析。遠心分離後に、New York Blood Centerで熟練者がチューブを視覚的に評価し、観察された反応性のレベルについて4+から0までのスケールで採点した。ここで、4+、3+、2+、及び1+は全て反応性を示し、0又は±は反応性なし、又は疑わしい反応性を示している。Φは、試料中に薬物が存在しないことを示している(血漿コントロール)。実験のいずれかで観察された反応性は、試料中に存在する抗CD38抗体との干渉を示している。
【0294】
結果
ダラツムマブ又はCID103(aCD38-b-348)を含む血漿についての未処理のRBC、又はパパイン、トリプシン、若しくはフィシンで処理されたRBCに関するゲルカードの結果を
図9に示す。
【0295】
未処理のRBCの場合に、以前に実証されたように、ダラツムマブは10μg/ml及び250μg/mlの両方で2+の確実な干渉を引き起こすが、CID103(aCD38-b-348)は試験された両方の濃度で最小限の干渉しか起こさなかった。パパイン及びフィシンでのRBCの処理は、観察されるダラツムマブの干渉をどちらの濃度でも解決しない。パパイン及びフィシンでRBCを処理すると、CID103(aCD38-b-348)試料において干渉が観察される。トリプシンでのRBCの処理は、10μg/ml及び250μg/mlのダラツムマブの両方で見られる干渉を解決する。トリプシン処理されたRBCにおいては、CID103(aCD38-b-348)との干渉は観察されなかった。
【0296】
DTTでのRBCの処理も、10μg/ml及び250μg/mlのダラツムマブの両方で見られる干渉を解決した。DTT処理されたRBCにおいては、CID103(aCD38-b-348)との干渉は観察されなかった。
【0297】
実施例6:自動式プラットフォームを使用するCID103(aCD38-b-348)の輸血前試験
材料及び方法
CID103(aCD38-b-348)を、不活性AB血漿中で250μg/mlの濃度で調製した。標準的なプロトコルに従って、全血試料からRBCを調製した。IH-1000(BioRad)及びTango(BioRad)の2つの異なる自動式分析装置において、製造業者の指示に従って、試料を流した。
【0298】
結果
Tango(BioRad)自動式プラットフォームにおいて250μg/mlのCID103(aCD38-b-348)を使用したところ、反応性は検出されなかった。
図10で分かるように、IH-1000プラットフォーム(BioRad)は不確定の結果を返した。この結果は、熟練者により標準的なプロトコルに従って評価され、非反応性と報告された。
【0299】
実施例7:アミノ酸配列
本開示は、以下の多くの異なるアミノ酸配列について言及する:
【0300】
【0301】
均等物及び範囲
当業者には、本発明が実施例又は本明細書に含まれる或る特定の実施形態の他の記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解される。
【0302】
同様に、文脈上他に明らかに指示されない限り、数量を特定していない単数形(the singular forms "a", "an", and "the")は概して、複数の指示対象を含む。
【0303】
上記で他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することもできる。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して用いられる命名法及びその技法は、当該技術分野で既知であり、一般に使用されるか、又は製造業者の仕様書に従うものである。
【0304】
本明細書で言及される全ての刊行物は、それによって引用される刊行物と関連して上記方法及び/又は材料を開示及び説明するため引用することにより本明細書の一部をなす。
【0305】
参考文献
Chevrier S et al. 2017. Cell. 169:736-749
Darzalex package insert. Horsham PA: Janssen Biotech, 2015
Ellington et al. Nature. 1990; 346(6287): 818-822
Handbook of Therapeutic Antibodies, Wiley, 2014, Chapter 6, Antibody Affinity (pages 115-140)
Hendrickson & Tormey, 2016, Hematol Oncol Clin N Am, 30:635-651
Jarasch A et al., 2015. J Pharm Sci. 104:1885-1898
Judd, Johnson & Storry (2008) Judd’s Methods in Immunohematology 3rd Ed.
Kearns JD et al., 2015. Mol Cancer Ther. 14:1625-36
Kijanka M et al., 2015. Nanomedicine. 10:161-174.
Liu L, 2015. J Pharm Sci. 104:1866-84.
Ni et al., Curr Med Che 2011; 18(27):4206-14
Oostendorp et al. 2015, Transfusion, 55:1555-62
Rajpal et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2005, 102(24):8466-71
Redman JM et al., 2015. Mol Immunol. 67: 28-45.
Regan & Markowitz, 2016, American Association of Blood Banks, Bulletin #16-02
Sliwkowski M & Mellman I, 2013. Science. 341:1192-8.
Steinwand et al., MAbs, 2014, 6(1):204-18
Tormey & Hendrickson, 2019, Blood, 133:1821-1830
Tuerk et al., Science. 1990; 249(4968):505-510
Vazquez-Lombardi R et al., 2015. Drug Discov Today. 20:1271-83
【0306】
項目
本発明は、少なくとも以下の番号付き項目を含む:
【0307】
1.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与された患者から得られた血液試料をスクリーニングする方法であって、
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の1つ以上の患者抗体の存在又は不存在を決定することを含む、患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、方法。
【0308】
2.方法は、患者血液試料又は供血者血液試料と、1つ以上の供血者赤血球の表面上に存在する膜結合型CD38への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質とを接触させる工程を含まない、項目1の方法。
【0309】
3.1つ以上の供血者赤血球の表面上に存在する膜結合型CD38への抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの結合を阻害する作用物質は、可溶性CD38抗原、抗CD38イディオタイプ抗体、又は抗原ストリッピング剤である、項目2の方法。
【0310】
4.抗原ストリッピング剤はレドックス試薬又は酵素である、項目3の方法。
【0311】
5.レドックス試薬はDTTである、項目4の方法。
【0312】
6.酵素はプロテアーゼである、項目4の方法。
【0313】
7.プロテアーゼは、トリプシン、α-キモトリプシン、パパイン、及びフィシンからなる群から選択される、項目6の方法。
【0314】
8.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38のエピトープに特異的に結合し、ここで、エピトープは、配列番号29(ヒトCD38)のアミノ酸65~アミノ酸79に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0315】
9.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38のエピトープに特異的に結合し、ここで、エピトープは、配列番号29(ヒトCD38)のアミノ酸65~アミノ酸79を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0316】
10.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号3又は配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0317】
11.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3、又は、
b)配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号22、配列番号25、及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3、
を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0318】
12.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は、
b)配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR2、並びに、
配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR3、
を含む、上記の項目いずれかの方法。
【0319】
13.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号8に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
b)配列番号23に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号24に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
c)配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号13に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
d)配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号14に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
e)配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
f)配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号16に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
g)配列番号23に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号27に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
h)配列番号23に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び/又は配列番号28に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、
を含む、上記の請求項のいずれかの方法。
【0320】
14.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号8と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
b)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号23と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号24のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号24と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号13と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号14と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
e)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号15と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
f)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号16と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
g)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号23と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号27のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号27と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、又は、
h)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖若しくは配列番号23と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変軽鎖領域配列、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む可変重鎖若しくは配列番号8と比較して最大2個のアミノ酸置換を有する可変重鎖領域配列、
を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0321】
15.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
b)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号24のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
e)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
f)配列番号7のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
g)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号27のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又は、
h)配列番号23のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む可変重鎖、
を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0322】
16.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、scFv-Fcフラグメント、一本鎖抗体(scAb)、アプタマー、又はナノボディである、上記の項目のいずれかの方法。
【0323】
17.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ウサギ抗体、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗原結合抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0324】
18.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0325】
19.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1アイソタイプ抗体、IgG2アイソタイプ抗体、IgG3アイソタイプ抗体、及びIgG4アイソタイプ抗体からなる群から選択される、上記の項目のいずれかの方法。
【0326】
20.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0327】
21.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又は治療剤若しくは診断剤を更に含む免疫コンジュゲート中に含まれている、上記の項目のいずれかの方法。
【0328】
22.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトCD38の細胞外ドメインに結合する、上記の項目のいずれかの方法。
【0329】
23.患者血液試料は、全血試料、血漿試料、及び血清試料からなる群から選択される、上記の項目のいずれかの方法。
【0330】
24.患者血液試料は全血試料であり、かつ方法は患者血液試料から患者赤血球を除去する工程を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0331】
25.抗体は同種抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0332】
26.患者抗体は、患者の赤血球によって発現される任意の赤血球抗原以外の赤血球抗原に特異的に結合する、上記の項目のいずれかの方法。
【0333】
27.患者抗体は臨床的意義のある患者抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0334】
28.供血者血液試料からの1つ以上の赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体の存在は、凝集又は溶血によって示される、上記の項目のいずれかの方法。
【0335】
29.供血者血液試料からの1つ以上の赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体の存在は、供血者血液試料が患者と不適合性であることを示す、上記の項目のいずれかの方法。
【0336】
30.供血者血液試料からの1つ以上の赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者抗体の不存在は、供血者血液試料が患者と適合性であることを示す、上記の項目のいずれかの方法。
【0337】
31.患者抗体はIgG抗体及び/又はIgM抗体である、上記の項目のいずれかの方法。
【0338】
32.患者はヒトである、上記の項目のいずれかの方法。
【0339】
33.患者は、癌を有するか、若しくは癌に罹患しており、又は患者は、癌の治療を受けている、上記の項目のいずれかの方法。
【0340】
34.癌は、細胞表面上にCD38を発現する固形腫瘍である、項目33の方法。
【0341】
35.癌は、細胞表面上にCD38を発現する血液悪性腫瘍である、項目33の方法。
【0342】
36.癌は、T細胞若しくはB細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫、又は多発性骨髄腫である、項目33~35のいずれか一項の方法。
【0343】
37.供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原は、Ab、ABO、Cromer、Diego、Duffy、Gerbich、GLOB、Indian、Kell、Kidd、Knops、Lewis、Lutheran、LW、MNS、P1、Rh、XK、Xg、及びYtからなる群から選択される、上記の項目のいずれかの方法。
【0344】
38.供血者赤血球の表面上に発現された1つ以上の赤血球抗原は、Ab、Rh、MNS、P1、Lewis、Kell、Duffy、KIDD、Lutheran、及びXgからなる群から選択される、上記の項目のいずれかの方法。
【0345】
39.抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを工程(a)の前に患者に投与する工程を更に含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0346】
40.患者には、患者から試料を得る1年未満前、6ヶ月未満前、3ヶ月未満前、2ヶ月未満前、1ヶ月未満前、4週間未満前、3週間未満前、2週間未満前、又は1週間未満前に、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている、上記の項目のいずれかの方法。
【0347】
41.工程(b)のスクリーニングは、カラム凝集アッセイ、間接抗グロブリン試験(IAT)チューブアッセイ、及び固相アッセイからなる群から選択されるアッセイを使用して実施される、上記の項目のいずれかの方法。
【0348】
42.工程(c)のスクリーニングの前に、患者血液試料と、供血者血液試料からの供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することを更に含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0349】
43.患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にする工程を更に含む、項目42の方法。
【0350】
44.存在するならば、任意の1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離する工程を更に含み、ここで、任意に、分離する工程は遠心分離を含む、項目42又は43の方法。
【0351】
45.患者血液/供血者赤血球の混合物を遠心分離することを更に含む、項目42~44のいずれか一項の方法。
【0352】
46.
a)患者からの血液試料を準備することと、
b)供血者からの血液試料を準備することと、
ここで、供血者血液試料は供血者赤血球を含む;
c)患者血液試料と、供血者血液試料からの1つ以上の供血者赤血球とを接触させて、患者血液/供血者赤血球の混合物を準備することと、
d)患者血液/供血者赤血球の混合物をインキュベートして、患者血液試料中の任意の1つ以上の患者抗体を、存在するならば、1つ以上の供血者赤血球上に存在する1つ以上の赤血球抗原に結合させて、1つ以上の患者抗体/供血者赤血球抗原の複合体を形成することを可能にすることと、
e)任意に、存在するならば、任意の1つ以上の患者同種抗体/供血者赤血球抗原の複合体を、患者血液/供血者赤血球の混合物から分離することと、
ここで、任意に、分離する工程は遠心分離を含む;
f)1つ以上の供血者赤血球上に発現された1つ以上の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の患者抗体の存在又は不存在を決定することと、
を含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0353】
47.患者血液/供血者赤血球の混合物を遠心分離することを更に含む、項目46の方法。
【0354】
48.患者血液試料中に存在する任意の抗体を互いに特異的に結合する凝集剤を加える工程を更に含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0355】
49.患者血液試料中の1つ以上の患者抗体を互いに特異的に結合する凝集剤は、抗ヒトグロブリン試薬である、項目48の方法。
【0356】
50.患者血液試料中の患者抗体の存在又は不存在、及び/又は患者に血液又は赤血球の献血を提供する供血者の適性を示すレポートを作成することを更に含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0357】
51.工程(b)の前に、赤血球パネルに対して患者血液試料をスクリーニングして、赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に存在する任意の赤血球抗原に特異的に結合する患者血液試料中の任意の患者抗体の存在又は不存在を決定する工程を更に含む、上記の項目のいずれかの方法。
【0358】
52.供血者血液試料中の供血者赤血球は、赤血球パネル中の任意の赤血球の表面上に発現された任意の赤血球抗原に特異的に結合すると特定された患者抗体のいずれかによって特異的に結合され得る赤血球抗原を一切発現しない、項目51の方法。
【0359】
53.患者における癌を治療する方法であって、患者からの血液試料を準備することと、項目1~52のいずれかの方法に従って血液試料をスクリーニングすることとを含む、方法。
【0360】
54.患者には、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントが投与されている、項目53の方法。
【0361】
55.上記方法は、患者から試料を得る工程を含む、項目53又は54の方法。
【0362】
56.方法は、
a)患者に抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することと、
b)抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメントの投与後に患者からの血液試料を得ることと、
c)項目1~52のいずれか一項の方法に従って患者血液試料をスクリーニングすることと、
を含む、項目53の方法。
【0363】
57.癌は、細胞表面上にCD38を発現する固形腫瘍である、項目53~56のいずれか一項の方法。
【0364】
58.癌は、細胞表面上にCD38を発現する血液悪性腫瘍である、項目53~56のいずれか一項の方法。
【0365】
59.癌は、T細胞若しくはB細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫、又は多発性骨髄腫である、項目53~58のいずれか一項の方法。
【0366】
60.供血者が患者と適合性であることが判明した場合に、供血者からの血液又は赤血球を投与する工程を更に含む、項目53~59のいずれか一項の方法。
【0367】
61.項目53~60のいずれか一項の方法を含む、患者における癌を治療する方法において使用される、抗CD38抗体又はその抗原結合フラグメント。
【配列表】
【国際調査報告】