(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】使い捨て先端部および角膜シールドを備えたドライアイ治療システム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/009 20060101AFI20230922BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20230922BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20230922BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61F9/009
A61F9/007 200Z
G02C7/04
G02C11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515804
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2021058217
(87)【国際公開番号】W WO2022053980
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521434148
【氏名又は名称】ルミナス ビーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumenis Be Ltd.
【住所又は居所原語表記】Yokneam Industrial Park, 6 Hakidma Street, Yokneam,2069204, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クラインマン ベン ツビ,メイ
(72)【発明者】
【氏名】バーマン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン,ハーナン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB00
2H006CA00
(57)【要約】
光源に基づくドライアイ症候群の治療のためのシステム。本システムは、眼瞼を治療するための使い捨て先端部を備える。角膜シールドを使用して患者の眼を保護する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギー源の方向に面して配置されるように構成された外面(61)およびヒトの角膜(8)の形状に成形され、かつ患者の角膜の上に配置されるように構成された内面(62)を有する本体を備え、
少なくとも部分的に光吸収材料で作られた可撓性の生体適合性材料からなる、
光治療中に眼およびその周囲組織を光エネルギー源から保護するために患者の眼の上に配置するための角膜シールド。
【請求項2】
前記生体適合性材料はシリコンまたは熱可塑性エラストマーのうちの1つである、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項3】
前記材料はTiO
2(酸化チタン(II))でドープされている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項4】
前記角膜シールド(6)材料は約20%のTiO
2でドープされている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項5】
前記角膜シールド(6)材料は、5~20J/cm
2の範囲の前記光エネルギー源から前記シールドへの光エネルギーに対して30%未満の光エネルギーを伝達するように構成されてたTiO
2(酸化チタン(II))でドープされている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項6】
前記角膜シールド(6)は生体適合性顔料の1つ以上の層でコーティングされたコーティング付き強膜コンタクトレンズである、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項7】
前記角膜シールド(6)は、前記患者の眼瞼の内側に接触した状態で配置されるように構成された前記シールドの表面に施される1つ以上のコーティング層でコーティングされている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項8】
前記角膜シールド(6)は治療光を遮断するための1種以上の材料からなるコンタクトレンズである、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項9】
前記角膜シールド(6)は一般に17~22mmの範囲の直径を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項10】
前記角膜シールドは前記シールドの前記外層(61)がコーティングされた強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項11】
前記角膜シールド(6)は暗色顔料の2つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項12】
前記角膜シールド(6)は青色顔料の2つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項13】
前記角膜シールド(6)は、光の反射を最大化するためにTiO
2のドーピングをさらに含む明色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項14】
前記角膜シールド(6)は白色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項15】
前記角膜シールド(6)は白色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態であり、ここでは前記層はTiO
2でドープされている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項16】
前記角膜シールド(6)は暗色顔料の2つ以上のコーティング層および明色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項17】
前記角膜シールド(6)は前記患者の眼の中への前記コンタクトレンズの適切な挿入の可視指示を与える異なる向きの複数の着色されたコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項18】
前記角膜シールド(6)は前記患者の眼の周囲組織に到達する光を増加させる1つ以上の反射コーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項19】
光源(1)と、
真空もしくは負圧源と、
光の放射と、前記光源(1)および前記真空もしくは負圧源に接続された前記真空もしくは負圧源とを制御するように構成された制御装置(2)と、
前記光源(1)にその近位端で接続されているか接続可能であるファイバー束(4)と、
前記患者の眼の眼瞼の外面に接触するための、前記ファイバー束(4)の遠位端に接続可能な開口された使い捨て先端部(5)と、
光源(2)と前記患者の眼との間に配置される、前記患者の眼(8)を保護するための内面(62)および外面(61)を有する角膜シールド(6)と、
前記使い捨て先端部(5)にそこを通して前記真空もしくは負圧源と流体連通している導管と
を備える、患者のドライアイ症候群の治療のための治療システム(10)。
【請求項20】
前記制御装置に接続されたスイッチ(3)をさらに備え、前記スイッチは閉じられた場合に、前記制御装置(2)を作動させて
(1)前記真空もしくは負圧源を起動させ、それにより前記使い捨て先端部が眼瞼に係合し、かつそれを前記患者の角膜との接触から引き離し、かつ
(2)前記光源を起動させて光を前記光源から前記ファイバー束を通り、かつ前記開口された先端部を通って伝達させて眼瞼に当てる
ように構成されている、請求項19に記載の治療システム(10)。
【請求項21】
前記制御装置(2)は前記光源(1)を制御して、一般にそれぞれ6msのパルス持続期間および一般に50msの光パルス間の遅延で一連の3パルスおよび遅延を放射することを特徴とする、請求項19に記載の治療システム(10)。
【請求項22】
前記システム(10)は前記ファイバー束を多機能審美治療プラットフォームのハンドピースに接続するためのアダプタをさらに備えることを特徴とする、請求項19に記載の治療システム(10)。
【請求項23】
前記ファイバー束(4)は前記ファイバー束の前記遠位端(41)に取り付けられたペン型のハンドピース(11)に接続されており、前記ペン型のハンドピースは、閉じられた場合に前記治療プロセスを開始する前記制御装置(2)に接続されたスイッチ(3)を有する、請求項19に記載の治療システム(10)。
【請求項24】
前記角膜シールド(6)は光エネルギーが患者の眼(8)に損傷を与えるのを防止するように構成されており、前記シールド(6)は、
前記光エネルギーの方向に面するように構成された外面(61)と前記角膜(8)の形状に適合された内面(62)と
をさらに備える、請求項19に記載の治療システム(10)。
【請求項25】
前記外面(61)および前記内面(62)を通る1つ以上の通気孔(64)をさらに備える、請求項1に記載の角膜シールド(6)。
【請求項26】
前記角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために前記外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備える、請求項1に記載の角膜シールド(6)。
【請求項27】
前記角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために前記外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備え、前記ハンドル(63)は前記外面(61)から前記内面(62)まで前記ハンドル(63)を通る1つ以上の通気孔(64)を有する、請求項1に記載の角膜シールド(6)。
【請求項28】
前記角膜シールド(6)は前記角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために前記外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備え、前記ハンドル(63)は前記外面(61)から前記内面(62)まで前記ハンドル(63)を通る1つ以上の通気スリット(65)を有し、前記スリット(65)の1つの縁部に配置された通気孔(64)をさらに備える、請求項1に記載の角膜シールド(10)。
【請求項29】
前記角膜シールド(6)は前記角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために前記外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備え、前記ハンドル(63)は、前記外面(61)および前記内面(61)にある出口(66)よりも前記ハンドル内に大きい面積を有する1つ以上の通気孔(64)および/またはスリット(65)を有する、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項30】
前記角膜シールド(6)は、前記外面(61)にある前記出口(66)よりも前記内面(62)にある前記出口(66)において大きい断面積を有する前記内面(62)から前記外面(61)までの通気孔(64)および/またはスリット(65)をさらに備える、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項31】
前記角膜シールド(6)はほぼドーム形状を有し、前記開放端は前記患者の眼の上に配置されるように構成されている、請求項1に記載の角膜シールド。
【請求項32】
前記使い捨て/取外し可能な先端部(5)は、眼瞼に接触するように構成された生体適合性材料で作られた接触面を備え、凹状の形状を有する遠位端を有する先端部をさらに含む、請求項19に記載の治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月10日に出願された「使い捨て先端部および角膜シールドを備えたドライアイ治療システム」という発明の名称の米国仮出願第63/076485号に関し、その優先権を主張するものであり、その内容は具体的に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、使い捨て/取外し可能な先端部、角膜シールドおよび光源を用いてドライアイを治療するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ドライアイの主な理由の1つは眼瞼炎、すなわち眼瞼辺縁の慢性炎症である。例えばIPL(インテンス・パルス・ライト)光線療法による治療またはその他は、持続的効果を有し、かつ細菌および皮膚ダニが上手く除去されることが分かっている。光源の使用は、マイボーム腺の領域を加熱するために熱を発生させ、かつフォトモジュレーションを引き起こすという目的のためである。従って、光以外の他の熱発生源を使用してもよい。
【0004】
治療過程において、いくつかの光パルスを患者の眼瞼に送達させる場合がある。角膜に直接光が入ることを回避し、睫毛をエネルギーに曝露することを回避して脱毛を回避するために注意を払う場合がある。また角膜および他の眼表面の直接加熱を回避しなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的の1つは、上で考察した問題を排除するか少なくとも軽減することにある。
【0006】
本発明は、患者のドライアイ症候群の治療のためのシステムに関する。本発明は、光源と、光の放射を制御するための制御装置と、治療プロセスを開始するためのスイッチと、光源に接続されているか接続可能であるファイバー束と、ファイバー束に接続可能な使い捨て先端部と、患者の眼を保護するための角膜シールドとを備える。
【0007】
本発明の別の態様は、上記治療システムに使用するための角膜シールドである。角膜シールドは、光エネルギーが患者の眼に損傷を与えるのを防止するように構成されている。当該シールドは光の方向に面するように構成された外面と、角膜に面し、かつその形状に一致するように適合された内面とを備える。当該シールドは、角膜への外傷または圧迫感を生じさせるのを防止するために可撓性の材料からなる。それは生体適合性でもあり、かつ光エネルギーを少なくとも部分的に吸収する。
【0008】
本発明の別の態様は、上記治療システムに使用するために構成された使い捨て/取外し可能な先端部に関する。先端部は眼瞼に接触する生体適合性材料で作られた接触面を備える。先端部は凹状の形状を有する遠位端を有していてもよい。
【0009】
一態様では、光治療中に眼およびその周囲組織を光エネルギー源から保護するために患者の眼の上に配置するための角膜シールドは、光エネルギー源の方向に面して配置されるように構成された外面(61)と、ヒトの角膜(8)の形状に成形され、かつ患者の角膜の上に配置されるように構成された内面(62)とを有する本体を備え、ここでは当該シールドは少なくとも部分的に光吸収材料で作られた可撓性の生体適合性材料からなる。生体適合性材料はシリコンまたは熱可塑性エラストマーのうちの1つであってもよく、当該材料はTiO2(酸化チタン(II))でドープされていてもよい。角膜シールド(6)は約20%のTiO2でドープされていてもよい。
【0010】
別の態様では、角膜シールド材料は、5~20J/cm2の範囲の光エネルギー源から当該シールドへの光エネルギーに対して30%未満の光エネルギーを伝達するように構成されたTiO2(酸化チタン(II))でドープされている。角膜シールド(6)は、生体適合性顔料の1つ以上の層でコーティングされたコーティング付き強膜コンタクトレンズであってもよい。さらに角膜シールドは、患者の眼瞼の内側に接触した状態で配置されるように構成された当該シールドの表面に施される1つ以上のコーティング層でコーティングされていてもよい。
【0011】
さらに別の態様では、角膜シールド(6)は治療光を遮断するための1種以上の材料からなるコンタクトレンズであってもよい。さらに角膜シールド(6)は、一般に17~22mmの範囲の直径を有する強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。角膜シールドは当該シールドの外層(61)がコーティングされた強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。角膜シールド(6)は暗色顔料の2つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。当該コンタクトレンズは青色顔料の2つ以上のコーティング層を有していてもよい。また角膜シールド(6)は、光の反射を最大化するためにTiO2のドーピングをさらに含む明色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。さらに角膜シールド(6)は、白色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。角膜シールド(6)は、TiO2でドープされている白色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態であってもよい。
【0012】
一態様では、角膜シールド(6)は暗色顔料の2つ以上のコーティング層および明色顔料の1つ以上のコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である。さらに角膜シールド(6)は患者の眼の中への当該コンタクトレンズの適切な挿入の可視指示を与える異なる向きの複数の着色されたコーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である。角膜シールド(6)は患者の眼の周囲組織に到達する光を増加させる1つ以上の反射コーティング層を有する強膜コンタクトレンズの形態である。
【0013】
一態様では、患者のドライアイ症候群の治療のための治療システム(10)は、光源(1)と、真空もしくは負圧源と、光の放射と光源(1)および真空もしくは負圧源に接続された真空もしくは負圧源とを制御するように構成された制御装置(2)と、光源(1)にその近位端で接続されているか接続可能であるファイバー束(4)と、患者の眼の眼瞼の外面に接触するための、ファイバー束(4)の遠位端に接続可能な開口された使い捨て先端部(5)と、光源(2)と患者の眼との間に配置される、患者の眼(8)を保護するための内面(62)および外面(61)を有する角膜シールド(6)と、使い捨て先端部(5)までであってそこを通る真空もしくは負圧源と流体連通している導管を備える。
【0014】
別の態様では、治療システム(10)は制御装置に接続されたスイッチ(3)をさらに備え、スイッチは閉じられた場合に制御装置(2)を作動させて(1)真空もしくは負圧源を起動させ、それにより使い捨て先端部が眼瞼に係合し、かつそれを患者の角膜との接触から引き離し、かつ(2)光源を起動させて、光を光源からファイバー束を通り、かつ開口された先端部を通って伝達させて眼瞼に当てるように構成されている。
【0015】
さらなる態様では、治療システム(10)は、制御装置(2)が光源(1)を制御して、一般にそれぞれ6msのパルス持続期間および一般に50msの光パルス間の遅延で一連の3パルスおよび遅延を放射することを特徴とする。さらに本システム(10)はファイバー束を多機能審美治療プラットフォームのハンドピースに接続するためのアダプタをさらに備えることを特徴とする。さらにファイバー束(4)は、ファイバー束の遠位端(41)に取り付けられたペン型のハンドピース(11)と結合されており、前記ペン型のハンドピースは、閉じられた場合に本治療プロセスを開始する制御装置(2)に接続されたスイッチ(3)を有する。
【0016】
なおさらなる態様では、角膜シールド(6)は光エネルギーが患者の眼(8)に損傷を与えるのを防止するように構成されており、当該シールド(6)は光エネルギーの方向に面するように構成された外面(61)と、角膜(8)の形状に適合された内面(62)とをさらに備える。さらに角膜シールド(6)は、外面(61)および内面(62)を通る1つ以上の通気孔(64)をさらに備える。角膜シールド(6)は、角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備えていてもよい。
【0017】
一態様では、角膜シールド(6)は角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備え、前記ハンドル(63)は外面(61)から内面(62)までハンドル(63)を通る1つ以上の通気孔(64)を有する。角膜シールド(6)は、角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備えていてもよく、前記ハンドル(63)は外面(61)から内面(62)までハンドル(63)を通る1つ以上の通気スリット(65)を有し、スリット(65)の1つの縁部に配置された通気孔(64)をさらに備える。
【0018】
別の態様では、角膜シールド(6)は、角膜シールド(6)の手動での取り扱いのために外面(61)から突出しているハンドル(63)をさらに備えていてもよく、前記ハンドル(63)は、外面(61)および内面(61)にある出口(66)よりもハンドル内に大きい面積を有する1つ以上の通気孔(64)および/またはスリット(65)を有する。角膜シールド(6)は、外面(61)にある出口(66)よりも内面(62)にある出口(66)に大きい断面積を有する、内面(62)から外面(61)への通気孔(64)および/またはスリット(65)をさらに備えていてもよい。角膜シールド(6)はほぼドーム形状を有していてもよく、開放端は患者の眼の上に配置されるように構成されている。
【0019】
さらなる態様では、本治療システムにおいて使い捨て/取外し可能な先端部(5)は、眼瞼に接触するように構成された生体適合性材料で作られた接触面を備えていてもよく、凹状の形状を有する遠位端を有する先端部をさらに含む。
【0020】
以下では単なる一例として、添付の図を参照しながらいくつかの実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ドライアイ症候群のための本治療システムの好ましい実施形態を示す。
【
図2】ファイバー束、ハンドピースおよび使い捨て先端部の組立体を示す。
【
図3B】ハンドルを通る通気孔を備えた角膜シールドの断面図を示す。
【
図3C】ハンドルを通る通気孔を備えた角膜シールドの上面図を示す。
【
図3D】ハンドルを通る通気孔を備えた角膜シールドの底面図を示す。
【
図3E】ハンドルを通る通気スリットを備えた角膜シールドを示す。
【
図4】治療中の使い捨て先端部および角膜シールドの配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら様々な実施形態についてより完全に説明する。
【0023】
図1は、患者のドライアイ症候群の原因の光源1による治療のための治療システム10を示す。光源1は、インテンス・パルス・ライト(IPL)、レーザー光または1つ以上のLEDからの光などの別の種類の光を放射するように構成されている。光の放射を制御するために実装されている制御装置2は、光源1によって放射される光の周波数または変調などの光の物理的パラメータを決定する。これは光源1を制御することにより、あるいは例えば光源1からの光を濾過することによって定常放射光を中断または変化させることにより行うことができる。
【0024】
好ましい実施形態によれば、制御装置2は光源にいくつかの光パルス(パルスシーケンス)を提供させるように構成されている。1つのパルスシーケンスは例えば一連の3パルスからなっていてもよい。パルスの持続期間(オン時間)は6ms+/-20%であることが好ましく、遅延(オフ時間)は好ましくは50ms+/-20%であることが分かった。さらに、5~7個のスポットによる各眼瞼7の治療により特に良好な結果が得られ、当該治療が理想的には2回の実行で各眼ごとに各眼瞼のために2回繰り返される場合になおさらそうであることが分かった。従って、1回の治療ごとに約40~50パルスとなる。
【0025】
スキンタイプに応じて(フィッツパトリック尺度に従って)、これらのパラメータを最適化してもよい。皮膚を傷つけることのないエネルギーの(最大)フルエンスはスキンタイプによって決まる。スキンタイプが濃くなるほどフルエンスは低くなる。より濃いスキンタイプでは、安全性を理由に遅延は50msから100msに増加させてもよい。
【0026】
以下のデータセットは、J/cm2でのOptima module LG plus使い捨て先端部のディスプレイから得られたフルエンス値のために有用であることが証明された。
・スキンタイプIは、14J/cm2のフルエンス、OPTタイプのフィルタ(590nm)、6msのパルス持続期間および50msのパルス遅延による3パルスで治療することができる
・スキンタイプIIは13J/cm2のフルエンス、OPTのフィルタ型(590nm)、6msのパルス持続期間および50msのパルス遅延による3パルスで治療することができる
・スキンタイプIIIは12J/cm2のフルエンス、OPTのフィルタ型(590nm)、6msのパルス持続期間および50msのパルス遅延による3パルスで治療することができる
・スキンタイプIVは11J/cm2のフルエンス、OPTのフィルタ型(590nm)、6msのパルス持続期間および50msのパルス遅延による3パルスで治療することができる
・スキンタイプVは10J/cm2のフルエンス、OPTのフィルタ型(590nm)、6msのパルス持続期間および100msのパルス遅延による3パルスで治療することができる
【0027】
治療プロセスを開始するための任意のスイッチ3は、光が治療領域すなわち眼瞼7に送られるか否かを決定する。スイッチ3はオペレータまたは医師によって起動されてもよい。またスイッチ3は任意の種類の制御手段、例えばグラフィカルユーザインタフェースであってもよい。
【0028】
治療中に光は、片側において光源1に取り外し可能に接続されたファイバー束4を介して送られる。
【0029】
使い捨て先端部5はファイバー束4の遠位端に取り外し可能に接続されている。本実施形態に示されている使い捨て先端部5の種類は、眼瞼7をブラケット内に保持する締付型であってもよい。また代わりとして
図2に示されている真っ直ぐな先端部5を使用してもよい。本システムに使用するために他の種類も可能である。
【0030】
患者の眼8を保護するための角膜シールド6は角膜上に位置決めされる。締付型角膜シールドが使用される一実施形態によれば、角膜シールドは使い捨て先端部5の遠位端と角膜との間に位置決めされる。しかし真っ直ぐな先端部が使用される一実施形態によれば、角膜シールドは眼瞼の裏と角膜との間に位置決めされる。
【0031】
図2は、ファイバー束4をファイバー束の遠位端41においてペン型のハンドピース11に取り付ける方法を示す。上述のように真っ直ぐな先端部は、その外面のみからエネルギーを方向づけることにより眼瞼に照射するために使用することができる。ハンドピース11は治療プロセスを開始するためにスイッチ3も備えていてもよい。代わりとしてスイッチ3は、手を使わないスイッチの切り換えを提供するために足で起動されるように設計することができる。
【0032】
使い捨て先端部5はファイバー束4の遠位端において取り付けられているので、ハンドピースに対する「遠位端41」という用語の定義は、「遠位端41にあるかそこに近い」ことを意味する。
【0033】
図3A~
図3Eは、角膜シールド6の異なる実施形態を示す。角膜シールドの目的は治療処置中に光エネルギーが患者の眼8に損傷を与えるのを防止することである。
【0034】
シールド6は、眼瞼7に面する外面61と眼8に面する内面62とを備えたドーム型の形態を有する。
【0035】
当該シールドは眼/角膜の形状8に適合可能である。異なる患者の眼8は形状が異なるため、ドーム型の形態または少なくとも内面62はそれに応じて患者の眼の寸法に適合されている。特定の患者の個々の眼8に十分に適合させるために、シールド6の材料は好ましくは生体適合性であり、かつ角膜への損傷または圧迫感を引き起こすのを防止するために可撓性である。さらに当該材料はオートクレーブ可能であってもよく、あるいはシールド6は使い捨てすなわち1回のみの使用のためのものであってもよい。
【0036】
当該材料の可撓性により、シールド6を患者の眼8の上に配置し、かつそこから取り外すことが可能になるか単純化される。
【0037】
角膜シールド6は、眼瞼によって吸収されず、かつ保護がない場合に敏感な眼組織を透過して傷つける照射された光エネルギーから眼を保護するように構成されている。先行技術において公知の金属または固体の角膜シールドは完全に不透明であり、潜在的に有害な照射を遮断することができる。しかしそのような固体の角膜シールドは吸収された光エネルギーにより加熱しやすい。次いでこれが角膜に熱的損傷を引き起こす場合がある。本開示において本発明の態様として開示されている可撓性の角膜シールドは、その光エネルギー吸収係数と、不透明度と、光吸収により角膜シールド材料において発生する熱エネルギーとの間で最適化するように構成されていてもよい。光エネルギーは角膜シールド6によって少なくとも部分的に吸収される。角膜シールドの理想的な吸収量は2つの因子、すなわち(角膜シールドによって吸収されない場合に)眼を損傷し得る光エネルギーの量と、角膜シールドを介して伝達され、かつシールド6による光エネルギーの吸収によって発生する熱の量とに基づいていることが分かった。
【0038】
驚くべきことに、半透明すなわち少なくとも完全に不透明でない角膜シールドは当該治療のために最も良く機能し、局所的な潜在的に有害な熱ピークを防止するということが分かった。
【0039】
シールド6の材料はシリコンエラストマー(例えば80ショアA)、あるいは代わりとして熱可塑性エラストマーを含むからそれからなっていてもよい。特に好ましくは、当該シールドの材料はTiO2(酸化チタン(II))、例えば10~30%のTiO2、特に20%のTiO2でドープされている。
【0040】
TiO2によるドーピングは、光エネルギーを部分的に吸収し、かつ眼を保護するための発色団として使用される。発色団によるドーピングを使用しない場合、エラストマーまたは他の材料は使用される光の波長範囲において低い吸収係数しか有しないため、それは熱くならず、眼8を危険に曝さない。レーザーに適用可能な安全性要求はレーザー光の可干渉性により、むしろ絶対不透明度に対するものである。しかしIPLを用いた場合、それはコヒーレント光ではないため、若干のエネルギーが損傷を引き起こすことなくなお眼に到達することができる。
【0041】
一実施形態では、ドーピングは5~20J/cm2の入力される光エネルギー範囲に基づいて、当該エネルギーの10~30%を伝達するように構成されている。
【0042】
図3aは、角膜シールド6を取り扱うという目的のために外面61から突出しているハンドル63を有する角膜シールド6の一実施形態を示す。取り扱いは手動であることが意図されているが、機械により配置されるシールド6のためのハンドル63が可能である。
【0043】
少なくとも1つの通気孔64は外面61と内面62とを接続する。通気孔64は丸い形状の形態を有していてもよく、すなわち穴または開口部であってもよい。
図3aのシールド6は、ハンドル63の各側に2つの合計4つの通気孔64を備える。通気孔64間の距離は、同等に分散される通気を与えて治療プロセスの終了後にシールド6を眼8から取り外すのを難しくさせる意図しない吸引効果を防止するために等距離であってもよい。シールド6を取り外す間に、空気が通気孔64を通り抜けて当該シールドの容易な取り外しを可能にし、このようにして眼8に加えられる潜在的に有害な力を防止するか少なくとも最小限に抑える。
【0044】
図3b、
図3cおよび
図3dは角膜シールド6の他の実施形態を示す。
図3aは、通気孔64が
図3aの実施形態に示されているようにドームを貫通している代わりにハンドルを通って外面から内面に通じている断面図である。これにより、より中心に向けられた通気を可能にし、空気流を手動で遮断および遮断解除することができる。
【0045】
空気流の封鎖を防止するために、3つの通気孔64または穴が
図3cに示すようにハンドルを貫通していてもよい。
【0046】
図3eは、角膜シールド6の別の実施形態を示す。通気スリット65が外面61から内面62までハンドル63を貫通している。これは、ハンドル63内でのより大きい空気体積の通過を可能にする。この実施形態により、先の実施形態において提案されているような小さい穴を用いた場合よりもさらに多くの空気を押し出すことが可能になる。
【0047】
図示のとおり、通気孔64はスリット65の各側または各縁部に位置している。この断面形態は、ハンドルが保持されている場合であっても角膜に向かう周囲空気の開放通路を維持するように構成されている。これにより通気の意図しない遮断を防止する。この実施形態のハンドルを押し潰した場合、真っ直ぐなスリット65の2つの対向壁は接触するが、スリット65の縁部にある2つの穴64はスリット65よりも直径が大きく、従ってその通路はなお開放されたままであり、自由な空気流および圧力の均等化が可能になる。
【0048】
角膜シールドの有用性をさらに拡大させるために、ハンドル63内の通気孔64および/またはスリット65の断面積は外面61および/または内面61の開口部66の断面積よりも大きい。従って、先の実施形態と比較してさらなる空気貯蔵が提供される。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、通気孔64および/またはスリット65は外面61よりも内面62において大きい断面積66を含む。これにより、ハンドル63を押し潰した場合、すなわち指がハンドル63を保持して押圧した場合に、眼に向かってより多くの空気の送り込みが可能になる。
【0050】
角膜シールド6を眼8から取り外すために、シールド6を眼8から引き離す直前にハンドル63を押し潰して吸引効果をなくす。断面積の設計に加えて他の対策、例えばハンドル63が指によって圧縮された場合により多くの空気流を対向側ではなく角膜8に向かわせる傾向のある幾何学形状を採用してもよい。
【0051】
別の実施形態では、通気孔64および/またはスリット65は内面62よりも外面61に大きい断面積を提供する。これにより、ハンドル63を押し潰した場合に空気を送り込んで眼から離すことが可能になる。これにより、シールド6を眼8に施用し、かつ両方を接着させる場合に吸引効果の起動が可能になる。
【0052】
組み合わせられた実施形態では、一緒に一方側を押圧することで吸引効果を生じさせ、他方側を押圧することで解放効果を生じさせる。
【0053】
上記は主にコーティングされた角膜シールドに関連しているが、別の実施形態では生体適合性顔料の1つ以上の層でコーティングされた強膜使い捨てコンタクトレンズを実施できることも考えられる。
【0054】
一般的な強膜コンタクトレンズの幾何学形状は強膜レンズのものと同様であってもよい。しかしその外径は強膜の上の装着領域を含む17~22mmの範囲において、角膜レンズと比較した場合(約12~14mmの直径の典型的な角膜レンズと比較した場合)に比較的大きくてもよい。これは、眼球運動中であっても確実に角膜全体を覆ってIPL光を遮断するためである。またこれにより、IPL照射中に眼瞼を押圧している間も当該シールドと患者の角膜との接触を減少させることが可能になる。
【0055】
いくつかのコーティング層(2~5個の範囲)は、吸収により光の遮断を最大化するために暗色顔料(青色)をベースとしている。
【0056】
さらなるコーティング層(1~2個の範囲)は、光の反射を最大化させるためにTiO2のドーピングを含むより明るい色(白色)である。
【0057】
この組み合わせにより、シールド損傷および/または眼の熱的損傷を回避するために当該シールドの過熱を減少させながらも最大の遮断が可能になる。
【0058】
また反射コーティングは、IPL光の一部が眼瞼の下からマイボーム腺に向かって戻るのを可能にする。標的器官は非常に短い距離から到達され、かつマイボーム腺は眼瞼内の奥深く、すなわち後方に眼の結膜に向かって位置しているので、これは潜在的に治療の有効性を高める。
【0059】
コーティング層は当該シールドの外面、すなわち患者の眼瞼の内側に接触する表面に施してもよい。当該シールドの内面はコーティングされていない。この内面は眼/強膜に直接接触する。それはコーティングされていないので、患者の眼と当該シールドとの界面は摩擦、生体適合性などの点で通常の強膜コンタクトレンズと同一であり、安全であることが証明されている。
【0060】
2つの異なるコーティング顔料の使用により、当該シールドの向き(内側/外側)は医師または治療を行っている他の人には明らかに認識可能であるため、当該シールドを誤って裏返して眼の上に誤配置する可能性が、完全になくならないとは言わないまでも最小限に抑えられる。
【0061】
当該シールドは使い捨てであってもよい。一実施形態は1回使用のコンタクトレンズのために典型的な材料を使用する。当該シールド好ましくは無菌包装で入荷されてもよく、この場合当該シールドは使用されるまでその可撓性および無菌性を維持するために、緩衝液(生理食塩水/水)中に含められている。典型的な貯蔵寿命は1~3年の範囲であってもよい。
【0062】
図4は、治療設定中にファイバー束4に接続されている使い捨て/取外し可能な先端部5が角膜シールド6と相互作用する方法を示す。先端部5の接触面は生体適合性材料で作られており、これにより眼瞼7との接触が可能になる。シールド6は眼8を保護する。
【0063】
空間および快適さを理由に、先端部5およびシールド6の形状は相互作用するものでなければならない。従って先端部5は遠位端において、角膜シールド6の凸状の外面61と相互作用/適合する凹状の形状を含んでもよい。
【0064】
符号
1 光源
2 制御装置
3 スイッチ
4 ファイバー(束)
5 使い捨て先端部(DT)
6 角膜シールド
7 眼瞼
8 眼/角膜
10 治療システム
11 ハンドピース
41 (ファイバー束の)遠位端
61 外面
62 内面
63 ハンドル
64 通気孔
65 通気スリット
66 出口/開口部
【国際調査報告】