(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】添加剤の安定化
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20230922BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20230922BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08L83/06
C08L83/04
C08J3/20 D CFH
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518948
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 US2021051177
(87)【国際公開番号】W WO2022072164
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モーリー、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、トッド
(72)【発明者】
【氏名】コートニス、アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ドエデ、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】デブラ、エブ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA60
4F070AC12
4F070AC16
4F070AC43
4F070AC45
4F070AC66
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4J002DE237
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
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4J002EX018
4J002EX038
4J002EZ049
4J002FD017
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD096
4J002FD130
4J002FD148
4J002FD159
4J002FD180
4J002GH00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するためのジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマー中に1つ以上の添加剤を含むか又はそれからなる、添加剤濃縮物を安定化させる方法が提供される。添加剤濃縮物を組み込んだ縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を製造する方法、並びに縮合硬化オルガノシロキサン組成物中での、安定化された添加剤濃縮物の使用もまた、記載される。使用される安定剤は、一般式:R3
3-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R3
3(式中、R2はアルキル基又はフェニル基であり、各R3基は同じであっても異なっていてもよく、R2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)を有する、組成物の0.5重量%~5重量%の量の、ポリジアルキルシロキサンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するのに好適な安定化された添加剤濃縮物を調製する方法であって、
(i)組成物の25重量%~80重量%の量の固体添加剤と、
(ii)組成物の20重量%~75重量%の量のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを含む液体キャリアと、
(iii)組成物の0.5重量%~5重量%の量の、一般式:
R
3
3-Si-O-((R
2)
2SiO)
d-Si-R
3
3
(式中、R
2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R
3基は、同じであっても異なっていてもよく、R
2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)
を有する、ポリジアルキルシロキサンを含むか又はそれからなる安定剤と
を混合することによる、方法。
【請求項2】
固体添加剤(i)が、非補強性充填剤、導電性充填剤、熱伝導性充填剤、顔料、共触媒;熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、殺真菌剤及び/又は殺生物剤、並びにカプセル化殺真菌剤及び/又は殺生物剤から選択される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で利用される固体添加剤から選択される、請求項1に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項3】
固体添加剤(i)が、水に溶解したときに酸性溶液を生成する、請求項1に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項4】
前記安定化された添加剤濃縮物が、1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項5】
前記1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物が、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、酸化バナジウムビスマス;酸化亜鉛、酸化セリウム、水酸化セリウム及び/又はそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項6】
前記1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物が、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、及び/又は黒色酸化鉄から選択される、請求項5に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項7】
液体キャリア(ii)が、構造:
HO(R
2)Si-O(R
1
vSiO
(4-v)/2)
w-Si-(R
2)OH (2)
(式中、各Rは、アルキル、アルケニル又はアリール基であり;各R
1は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、加水分解性基、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であり、
vは0、1又は2であり、wは、前記ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンが25℃で5,000mPa.s~50,000mPa.sの粘度を有するような整数である)
を有するジアルキルシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項8】
安定剤(ii)におけるdの平均値が、7~15である、請求項1から7のいずれか一項に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、安定化された添加剤濃縮物。
【請求項10】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を調製する方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物(e)を調製すること並びに、前記少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)を、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤、
(c)縮合硬化触媒、及び
(d)1つ以上の補強性充填剤又は非補強性充填剤
と混合することによる、方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物(e)を調製すること、並びに前記少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)を、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤、
(c)縮合硬化触媒、及び
(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤
と混合することによって得られるか又は得ることができる、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物。
【請求項12】
利用する前に2つ以上の部に分けて貯蔵される、請求項11に記載の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物。
【請求項13】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中での、請求項1から8のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物の使用。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物(e)を含む縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の、コーティング、コーキング、シーリング、鋳型製造、又はカプセル化材料としての、使用。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物(e)を含む縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の、ソーラー用途、自動車用途、電子機器用途、建築用途及び/又は構造グレージング用途及び/又は絶縁グレージング用途における、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するためのジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマー中に1つ以上の添加剤を含むか又はそれからなる添加剤濃縮物を安定化するための方法;添加剤濃縮物を組み込んだ縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を製造する方法、並びに縮合硬化オルガノシロキサン組成物中での、安定化された添加剤濃縮物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化してエラストマー固形化する縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、周知である。典型的には、そのような組成物は、必須成分:
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤、例えばアセトキシシラン又はオキシモシランと、
(c)縮合硬化触媒と
を含有する。
通常、それらはまた、(d)1つ以上の補強性又は半補強性充填剤も含む。
【0003】
それらの縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、特に、そのような組成物から硬化されたエラストマー材料が、それらの機械的性能及び耐薬品性のために過酷な条件に耐えることができることが当該技術分野において周知であるので、多種多様な用途に使用される。エラストマー材料が、それらが設計される用途に必要な性能を提供することができることを確実にするために、組成物の多くは、組成物中に含まれる1つ以上の添加剤を必要とする。そのような添加剤は、通常、組成物が硬化されたときに製造されるエラストマー製品の最終用途に応じて、他の充填剤、例えば非補強性充填剤、導電性充填剤、及び熱伝導性充填剤、又はそれらの任意の組み合せを含む。
【0004】
同様に、多くの他の添加剤が、最終用途に応じて所望の特性を提供するために含まれる。これらは、例えば、顔料、染料、共触媒;スカベンジャー、レオロジー調整剤;接着促進剤、熱安定剤、可塑剤、増量剤(加工助剤と呼ばれることもある)、難燃剤、UV安定剤、殺真菌剤、及び/又は殺生物剤などのうちの1つ以上を含み得る。これらの添加剤の多くは、固体、すなわち本質的に微粒子であるか、又は殺真菌剤及び/又は殺生物剤の場合には、例えば、米国特許出願公開第2010/0099793号明細書及び米国特許出願公開第2008/0033074号明細書に記載されているようなカプセル化された固体及び/又は液体であってもよい。
【0005】
このような縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用される、反応性末端基、例えばヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンは、多くの場合、比較的高い粘度、例えば25℃で30,000mPa.s超の粘度を有し、いくつかの例では、25℃で1,000,000mPa.s超の粘度を有するガムであり、したがって、固体、例えば粉末及び/又は微粒子をそのような高粘度流体に直接導入して完全に混合することは、非常に困難であり、時間がかかり、労働集約的であり得る。したがって、このような組成物中で使用される固体添加剤の多くは、添加剤濃縮物(マスターバッチと呼ばれることもある)の形態で使用者に提供される。添加剤濃縮物とは、問題の固体添加剤が、固体形態の場合よりも縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に導入するのがはるかに容易な形態であるように、液体キャリア中で使用者に提供されることを意味する。
【0006】
これらの添加剤濃縮物を目的に適合させるために、前述の液体キャリアは、それらが導入される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の成分と相溶性でなければならず、そのような好ましいキャリアとしては、硬化プロセスに関与することができるジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマー、又は非反応性シリコーン、及び/又は添加剤とそれらが導入される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物のポリマーとの両方と相溶性のある相溶性有機材料、例えば可塑剤又は増量剤が挙げられる。液体キャリアがジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーである場合、それは、それが添加される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用されるポリマーと同じであってもよく、あるいは、類似の構造であるがより低い粘度を有してもよい。キャリア液体は、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中のポリマーよりも高い粘度を有し得るが、これは好ましくない。
【0007】
ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを液体キャリアとして使用する場合、配合物のシロキサン系成分が酸性又は塩基性環境に感受性であることが知られているので、添加剤のpHが液体キャリアを不安定にする可能性があることが確認されている。キャリア液体が不安定化される場合、不安定化は、結果的に、それが添加される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、したがって、形成される最終エラストマーの性能が悪影響を受ける可能性があることもまた、確認されている。
【0008】
したがって、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するための添加剤濃縮物中のキャリア液体として使用される場合に、ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを安定化する手段を特定する必要がある。
【0009】
本明細書では、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するのに好適な添加剤濃縮物を安定化する方法であって、
(i)組成物の25重量%~80重量%(wt.%)の量の固体添加剤と、
(ii)組成物の20重量%~75重量%の量のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを含む液体キャリアと、
(iii)組成物の0.5重量%~5重量%の量の、一般式:
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R3
3 (1)
(式中、R2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R3基は同じであっても異なっていてもよく、R2、アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)を有する、ポリジアルキルシロキサンを含むか又はそれからなる安定剤と
を混合することによる、方法を提供する。
【0010】
また、
(i)組成物の25重量%~80重量%の量の固体添加剤と、
(ii)組成物の20重量%~75重量%の量のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを含む液体キャリアと、
(iii)組成物の0.5重量%~5重量%の量の、一般式:
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R3
3
(式中、R2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R3基は、同じであっても異なっていてもよく、R2、アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)を有する、ポリジアルキルシロキサンを含むか又はそれからなる安定剤と
を混合することによって得られるか又は得ることができる縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するのに好適な安定化された添加剤濃縮物が提供される。
【0011】
また、本明細書では、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を調製する方法であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤と、
(c)縮合硬化触媒と、
(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤と、
(e)上記の方法に従って調製された少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物と
を混合することによる、方法も提供される。
【0012】
本明細書では、
(a)1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤と、
(c)縮合硬化触媒と、
(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤と、
(e)上記の方法に従って調製された少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物と
を混合することによって得られるか又は得ることができる、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物が提供される。
【0013】
更に、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中の成分としての上記の安定化された添加剤濃縮物の使用が提供される。
【0014】
安定化された添加剤濃縮物の固体添加剤(i)は、以下で更に議論される前述の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用される成分(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤以外の、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で利用される任意の固体添加剤から選択されてもよい。例えば、非補強性充填剤、導電性充填剤、熱伝導性充填剤、顔料、共触媒;熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、殺真菌剤及び/又は殺生物剤、並びにカプセル化殺真菌剤及び/又は殺生物剤などのカプセル化液体。一実施形態では、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で利用される固体添加剤は、顔料及び/又は熱安定剤である。
【0015】
一実施形態では、添加剤(i)は、それが添加される溶液が、一般的知識に従って、水溶液中で標準デジタルpH計を使用して、及び/又は供給業者データから測定して、酸性pH、すなわち7未満のpH、あるいは、6以下のpH、あるいは6未満のpHを有するようにする。
【0016】
非補強性充填剤としては、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、タルクなどの非補強性充填剤を挙げることができる。単独で、又は上記の充填剤に加えて使用することができる他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム(水滑石)、黒鉛、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアナイトが挙げられる。
【0017】
その他の非補強性充填剤としては、酸化アルミニウム;かんらん石族;ざくろ石族;アルミノシリケート;環状シリケート;鎖状シリケート;及び層状シリケートからなる群からのシリケートが挙げられる。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMg2SiO4を含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;Mg3Al2Si3O12;緑ざくろ石;及びCa2Al2Si3O12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩は、ケイ線石;Al2SiO5;ムライト;3Al2O3.2SiO2;カイヤナイト;及びAl2SiO5などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。
【0018】
環状ケイ酸塩族は、コージェライト及びAl3(Mg、Fe)2[Si4AlO18]などのケイ酸塩鉱石を含むが、これらに限定されない。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO3]を含むが、これらに限定されない。
【0019】
層状ケイ酸塩族は、雲母;K2AI14[Si6Al2O20](OH)4;葉蝋石;Al4[Si8O20](OH)4;タルク;Mg6[Si8O20](OH)4;蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al4[Si4O10](OH)8;及びバーミキュライトなどのケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。任意選択的な非補強性充填剤は、存在する場合、安定化された添加剤濃縮物組成物の最大20重量%の量で存在する。
【0020】
所望であれば、非補強性充填剤を、例えば、脂肪酸、若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルを用いて、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールを用いて疎水性処理して、充填剤を疎水性にし、これにより、他のシーラント成分との均質混合物の取り扱い及び入手を容易にすることができる。
【0021】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、1つ以上の導電性充填剤であってもよい。導電性充填剤の例には、金属粒子、金属酸化物粒子、金属コーティング金属粒子(銀メッキニッケルなど)、金属コーティング非金属コア粒子(銀コーティングタルク、又はマイカ、又は石英など)及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属粒子は、粉末、フレーク又はフィラメントの形態であってもよく、それらの混合物又は誘導体であってもよい。
【0022】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、1つ以上の熱伝導性充填剤であってもよい。熱導電性充填剤の例には、窒化ホウ素、アルミナ、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなど)、グラファイト、ダイヤモンド、及びそれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0023】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、1つ以上の顔料であってもよい。顔料は必要に応じて利用され、組成物を着色する。組成物と適合性がある限り、任意の好適な顔料を利用することができる。これらには、酸化鉄、例えば黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄;カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、及びこれらの混合物又は誘導体を挙げることができる。
【0024】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、1つ以上の好適な熱安定剤であってもよい。これらには、酸化鉄、例えば黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄;酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム及び/又は二酸化チタンを挙げることができる。
【0025】
非補強性充填剤、顔料及び熱安定剤の下に列挙される添加剤のうちのいくつかは、2つ以上のリストに現れ、十分な量で存在する場合、3つ全てとして機能することが理解されるであろう。そのような添加剤、例えばカーボンブラック又は酸化鉄は、安定化された添加剤濃縮物組成物の1重量%~30重量%、あるいは安定化された添加剤濃縮物組成物の1重量%~20重量%の範囲で存在してもよい。それらが単に顔料として機能することが望まれる場合には、それらは安定化された添加剤濃厚物組成物の約1重量%~5重量%の量で組成物中に存在する必要があるだけであるが、それらが非補強性充填剤及び/又は熱安定剤としてもまた機能することが望まれる場合には、それらは、通常、安定化された添加剤濃縮物組成物の10重量%~30重量%のような、より多い量で存在する。
【0026】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、アルミニウム三水和物、ヘキサブロモシクロドデカン、リン酸トリフェニル、及びそれらの混合物又は誘導体などの固体難燃剤を含んでもよい。
【0027】
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、ベンゾトリアゾールなどの固体又はカプセル化されたUV安定剤を含んでもよい。
【0028】
更に、添加剤は、固体殺真菌剤及び/又は殺生物剤、並びにカプセル化殺真菌剤及び/又は殺生物剤などのカプセル化液体を含むことができる。
安定化された添加剤濃縮物の添加剤(i)は、代替的に又は追加的に、固体又はカプセル化された殺生物剤を含んでいてもよく、必要に応じて組成物中で追加的に利用することができる。用語「殺生物剤」は、殺菌剤、殺真菌剤、及び殺藻剤などを包含するものであるこが意図される。本明細書に記載の組成物中で利用することができる、有用な殺生物剤の好適な例としては、例えば:
カルバメート、例えば、メチル-N-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(カルベンダジム)及び他の好適なカルバメート、10,10’-オキシビスフェノキサシン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、ジヨードメチルp-トリルスルホン、UV安定剤との組み合わせに適切な場合、例えば2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(iodo-propinyl butylcarbamate、IPBC)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド、トリアゾリル化合物及びイソチアゾリノン、例えば4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(n-オクチル)4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、及びn-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(butyl-benzisothiazolin、BIT)が挙げられる。他の殺生物剤としては、例えば、亜鉛ピリジンチオン、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール及び/又は1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾールを挙げることができる。液体殺生物剤は、米国特許出願公開第2010/0099793号明細書及び米国特許出願公開第2008/0033074号明細書に記載されているように、カプセル化された形態で好適に存在し得る。
【0029】
本明細書に記載の安定化された添加剤濃縮物の液体キャリア(ii)は、ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーであり、構造:
HO(R2)Si-O(R1
vSiO(4-v)/2)w-Si-(R2)OH (2)
(式中、各Rは、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり;各R1は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、加水分解性基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり;
vは、0、1又は2であり、wは、ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンが、スピンドルLV-4(1,000mPa.s~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計された)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計を使用して測定して、ポリマー粘度に応じて速度を適合させて、25℃で5,000mPa.s~50,000mPa.s、あるいは25℃で5,000mPa.s~30,000mPa.s、あるいは25℃で5,000mPa.s~25,000mPa.sの粘度を有するような整数である)
を有し得る。
【0030】
用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基は、式-OT(式中、Tは、メチル、エチル、イソプロピル、オクタデシルなどのアルキル基、アリル、ヘキセニルなどのアルケニル基、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、β-フェニルエチルなどの環状基;2-メトキシエチル、2-エトキシイソプロピル、2-ブトキシイソブチル、p-メトキシフェニル、又は-(CH2CH2O)2CH3などの炭化水素エーテル基である)の基を含む。
【0031】
最も好ましい加水分解性基は、アルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、オクタデシルオキシ、及び2-エチルヘキソキシ;メトキシメトキシ又はエトキシメトキシなどのジアルコキシ基、及びエトキシフェノキシなどのアルコキシアリールオキシである。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ又はエトキシである。
【0032】
各Rは、独立して、アルキル基、あるいは1個~10個の炭素原子、あるいは1個~6個の炭素原子、あるいは1個~4個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはメチル又はエチル基;アルケニル基、あるいは2個~10個の炭素原子、あるいは2個~6個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル基;芳香族基、あるいは6個~20個の炭素原子を有する芳香族基、例えばフェニルである。
【0033】
各R1は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、加水分解性基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である。いくつかのR1基が、ポリマー主鎖からの、シロキサン分岐であり得、その分岐は、先に記載されたような末端基を有し得ることが可能である。最も好ましいR1は、メチル、フェニル、又はメチルとフェニルとの混合物である。
【0034】
安定化された添加剤濃縮物の液体キャリア(ii)は、式(2)によって表される単一のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンであってもよく、又は前述の式によって表されるオルガノポリシロキサンポリマーの混合物であってもよい。したがって、液体キャリア(ii)に関する「シロキサンポリマー混合物」という用語は、任意の個々のジアルキルシラノール末端ポリジオルタノシロキサン、又はジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンの混合物を含むことを意味する。
【0035】
重合度(Degree of Polymerization、DP)(すなわち、上記式中、実質的に下付き文字w)は、通常、シリコーンの巨大分子又はポリマー若しくはオリゴマー分子中の、モノマー単位の数として定義される。合成ポリマーは、異なる重合度を有する巨大分子種、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物から本質的になる。異なるタイプの平均ポリマー分子量が存在し、それらは異なる実験で測定することができる。最重要の2つは、数平均分子量(number average molecular weight、Mn)及び重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)である。シリコーンポリマーのMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)によって、約10%~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的であり、Mw、Mn、及び多分散指数(polydispersity index、PI)が得られる。重合度(DP)=Mn/Mu(式中、MnはGPC測定からの数平均分子量であり、Muはモノマー単位の分子量である)である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによりポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度は高くなる。
【0036】
液体キャリア(ii)は、安定化された添加剤濃縮組成物中に、組成物の20重量%~75重量%、組成物の20重量%~60重量%、あるいは組成物の20重量%~55重量%、あるいは20重量%~50重量%の量で存在する。
【0037】
安定化された添加剤濃縮物の安定剤(iii)は、組成物の0.5重量%~5重量%にあり、一般式:
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R3
3 (1)
(式中、R2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R3基は、同じであっても異なっていてもよく、R2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)
を有する、1つ以上のポリジオルガノシロキサンを含むか又はそれからなる。
【0038】
1つの代替実施形態では、R2は、アルキル基、あるいは1個~10個の炭素原子、あるいは1個~6個の炭素原子、あるいは1個~4個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはメチル基又はエチル基である。各R3基は、同じであっても異なっていてもよく、R2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、R3がアルケニル基である場合、アルケニル基は、2個~10個の炭素原子、あるいは2個~6個の炭素原子を有してもよく、例えばビニル、アリル及びヘキセニル基である。好ましくは、各R2は、アルキル基、例えばメチル又はエチルであり、各R3は、アルキル基、例えばメチル若しくはエチル、又はフェニル基、あるいはメチル基である。安定剤(iii)の1つ以上のポリジオルガノシロキサン中、好ましくは、上記のポリジオルガノシロキサン一般式のdの平均値は7~20、あるいは7~15である。
【0039】
本明細書における添加剤濃縮物の具体例は、酸化鉄、例えば赤色酸化鉄が添加剤(i)であり、熱安定剤及び顔料として利用されている場合である。異なるタイプの酸化鉄が、多くのポリマー系において顔料として使用されている。それらは、黄色、オレンジ色、赤色、茶色、黒色、更には青色の着色を提供し得る。典型的には、顔料として使用される場合、それらは、組成物中に、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の10重量%までの量で存在してよい。より多い量で、例えば、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の10重量%~25重量%の量で提供される場合、酸化鉄は、顔料としてだけでなく、熱安定剤としても機能する。しかしながら、酸化鉄の酸性度は、使用されるタイプ及びそれらの製造に使用される製造方法に応じて多様であり得る。酸化鉄が6未満のpHを示す場合、ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサン成分中の添加剤濃縮物として、例えば分散液の形態で供給されると、ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサン成分は、添加剤濃縮物として縮合硬化性オルガノシロキサン組成物に導入される前に、貯蔵中に分解又は縮合する可能性があることが確認されている。
【0040】
1重量%~5重量%の上記安定剤(iii)を、そうでなければ成分(i)として6未満のpHを有する酸化鉄及び液体キャリア(ii)を含有する添加剤濃縮物中に導入する場合、上記液体キャリア(ii)は安定化され、酸性酸化鉄は、高充填量であっても、液体キャリア(ii)又は最終的には最終エラストマー性能にいかなる有害な影響も有していないようであることが確認された。多くの場合、多量の安定剤(iii)を可塑剤として縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に導入することができるが、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中への導入前に少量の安定剤(iii)を添加剤濃縮物中に導入しない限り、安定化効果が生じないので、これは驚くべきことである。安定剤(iii)を含まない酸化鉄添加剤濃縮物を縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に導入することは、安定剤(iii)の量が可塑剤として縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に別々に導入された場合であっても、驚くべきことに安定化効果をもたらさない。
【0041】
実際、酸化鉄のpHが6未満である場合、添加剤濃縮物のキャリア液体(ii)は、安定剤(iii)が導入されない場合に不安定化された。また、そのような場合、最終エラストマーは、例えば最終エラストマーの許容できない軟化によって悪影響を受け、所望の高温用途での使用に適さなくなることもまた、注目された。
【0042】
先に論じたように、本開示はまた、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を製造する方法であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤と、
(c)縮合硬化触媒と、
(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤と
を、前述のように調製された少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)と一緒に混合することによる、方法も開示している。
【0043】
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)は、式:
X3-nR4
nSi-(Z)d-(O)q-(R5
ySiO(4-y)/2)z-(SiR5
2-Z)d-Si-R4
nX3-n(3)
(式中、各Xは、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R4は、アルキル、アルケニル、又はアリール基であり、各R5は、X基、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であり、Zは二価有機基であり、
dは0又は1であり、qは0又は1であり、d+q=1であり;nは0、1、2又は3であり、yは0、1又は2であり、zは1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)が、スピンドルLV-4(1,000mPa.s~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計された)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計を使用して測定して、ポリマー粘度に応じて速度を適合させて、25℃で10,000mPa.s~75,000mPa.s、あるいは25℃で10,000mPa.s~60,000mPa.sの粘度を有するような整数である)
によって表すことができる。
【0044】
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)の各X基は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基又は縮合性若しくは加水分解性基であり得る。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Xには、式-OT(式中、Tも前述の通りである)の基が含まれる。
【0045】
最も好ましいX基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、オクタデシルオキシ、及び2-エチルヘキソキシ;メトキシメトキシ又はエトキシメトキシなどのジアルコキシ基、及びエトキシフェノキシなどのアルコキシアリールオキシである。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ又はエトキシである。
【0046】
各R4は、独立して、アルキル基、あるいは1個~10個の炭素原子、あるいは1個~6個の炭素原子、あるいは1個~4個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはメチル基又はエチル基;アルケニル基、あるいは2個~10個の炭素原子、あるいは2個~6個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル基;芳香族基、あるいは6個~20個の炭素原子を有する芳香族基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの置換脂肪族有機基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、及び/又はエポキシアルキル基から選択される。
【0047】
各R5は、独立して、X又はRからなる群から選択されるが、但し、1分子当たり累積で少なくとも2個のX基及び/又はR1基は、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。いくつかのR5基は、ポリマー主鎖からの、シロキサン分岐であり得、その分岐は、先に記載されたような末端基を有し得ることが可能である。最も好ましいR5は、メチルである。
【0048】
各Zは、独立して、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。一代替形態では、各Zは、独立して、2個~6個の炭素原子を有するアルキレン基から選択され;更なる代替実施例では、各Zは、独立して、2個~4個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。各アルキレン基は、例えば、独立して、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、及び/又はヘキシレン基から選択され得る。
【0049】
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)は、25℃で10,000mPa.s~75,000mPa.s、あるいは25℃で10,000mPa.s~60,000mPa.sの粘度を有し、したがってzは、そのような粘度を可能にする整数であり、あるいはzは、300~5000の整数である。yは0、1、又は2であるが、実質的にy=2であり、例えば、R4
ySiO(4-y)/2基のうちの少なくとも90%、あるいは95%が、y=2で特徴付けられる。
【0050】
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)は、式(3)によって表される単一のシロキサンであってもよく、又は前述の式によって表されるオルガノポリシロキサンポリマーの混合物であってもよい。したがって、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)に関する「シロキサンポリマー混合物」という用語は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有する任意の個々のポリジオルガノシロキサン(a)、又は1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)の混合物を含むことを意味する。
【0051】
重合度(Degree of Polymerization、DP)(すなわち、実質的にzである、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)の上記式における)は、通常、シリコーンの巨大分子又はポリマー若しくはオリゴマー分子中のモノマー単位の数として定義される。合成ポリマーは、異なる重合度を有する巨大分子種の混合物、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物から本質的になる。異なるタイプの平均ポリマー分子量が存在し、それらは異なる実験で測定することができる。最重要の2つは、数平均分子量(number average molecular weight、Mn)及び重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)である。シリコーンポリマーのMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)によって、約10%~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的であり、Mw、Mn、及び多分散指数(polydispersity index、PI)が得られる。重合度(DP)=Mn/Muであり、式中、MnはGPC測定からの数平均分子量であり、Muはモノマー単位の分子量である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによりポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度は高くなる。
【0052】
dが0であり、qが1であり、nが1又は2であり、あるいはnが2であり、各Xがヒドロキシル基である場合、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)が、以下の構造:
HO(R4
2)Si-O(R1
ySiO(4-y)/2)z-Si-(R4
2)OH
(式中、R、R4、R5、Z、y、及びzは、上述の通りである)
を有することが理解される。そのような場合、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)及び上述の液体キャリア(ii)は、同じ化学構造を有してもよいが、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)の重合度及びzの値は、通常、液体キャリア中の重合度及びwの値以上である。
【0053】
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)は、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物に、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の10重量%~60重量%、あるいは10重量%~55重量%、あるいは20重量%~55重量%の量で存在する。
【0054】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物はまた、架橋剤(b)を含む。1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)のヒドロキシル基又は加水分解性基と反応可能である、1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の基を有する任意の好適な架橋剤を利用することができる。典型的に、架橋剤(b)は、ケイ素結合加水分解性基、例えばアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ及びイソブチルケトキシミノ);アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソブトキシ及びプロポキシ)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ)を含有する、1つ以上のシラン又はシロキサンを含む。
【0055】
架橋剤(b)は、直鎖、分岐、又は環状分子構造を有するシロキサン系架橋剤を含んでもよい。
【0056】
架橋剤(b)は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)中のヒドロキル基及び/又は加水分解性基と反応性である、1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個又は4個のヒドロキル基及び/又は加水分解性基を有する。架橋剤(b)が添加されることを必要とされる場合、架橋剤(b)は代替的にシランであり、そのシランが1分子当たり合計3つのケイ素結合ヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する場合、第4の基は、好適には非加水分解性ケイ素結合有機基である。それらのケイ素結合有機基は、好適には、フッ素及び塩素などのハロゲンによって任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である。そのような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシル);アルケニル基(例えば、ビニル及びアリル);アリール基(例えば、フェニル、及びトリル);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られる基が挙げられる。但し、好ましくは、第4のケイ素結合有機基は、メチルである。
【0057】
架橋剤(b)として使用することができるシラン及びシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane、MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン;イソブチルトリメトキシシラン(isobutyltrimethoxysilane、IBTM)が挙げられる。他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン、アルケニルトリオキシモシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ-ブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオンオキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニル-トリス-メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、及び/又はジメチルテトラアセトキシジシロキサンが挙げられる。架橋剤(b)は、あるいは、上記の2つ以上の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0058】
あるいは、架橋剤(b)は、2つ以上のシリル基を含有するシリル官能性分子を含んでもよく、各シリル基は、少なくとも1個の-OH基又は加水分解性基を含有し、架橋剤1分子当たりの-OH基及び/又は加水分解性基の数の合計は、少なくとも3である。したがって、ジシリル官能性分子は、各々少なくとも1個の加水分解性基を有する2個のケイ素原子を含み、これらのケイ素原子は、有機又はシロキサンスペーサーによって分離されている。典型的には、ジシリル官能性分子上のシリル基は、末端基であってもよい。スペーサーは、シロキサン又は有機ポリマー主鎖を有するポリマー鎖であってもよい。そのようなシロキサン又は有機系架橋剤(b)の場合、分子構造は、直鎖、分岐、環式、又は巨大分子であることができる。シロキサン系ポリマーの場合、架橋剤(b)の粘度は、スピンドルLV-4(1,000mPa.s~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計されたもの)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計、又はスピンドルLV-1(15mPa.s~20,000mPa.sの範囲の粘度用に設計されたもの)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計のいずれかを使用して、1000mPa.s未満の粘度に対して、ポリマー粘度に従って速度を適合させて、25℃で15mPa.s~80,000mPa.sの範囲内となる。
【0059】
例えば、添加されることが必要とされる場合、架橋剤(b)は、ジシリル官能性ポリマー、すなわち、例えば、式:
R4
nSi(X1)3-n-Z4-Si(X1)3-nR4
n
(式中、各R4及びnは、先に上述したように独立して選択され得る)
によって説明される、各々が少なくとも1つの加水分解性基を有する2つのシリル基を含有するポリマーであってもよい。Z4は、アルキレン(二価炭化水素基)、あるいは1個~10個の炭素原子、若しくは更にあるいは1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、又は二価炭化水素基と二価シロキサン基との組み合わせである。
【0060】
各X1基は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、又は縮合性基若しくは加水分解性基であってもよい)によって記載される少なくとも1個の加水分解性基を有する2個のシリル基を含有するポリマーであってもよい。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基X1は、式-OT1(式中、T1は、メチル、エチル、イソプロピル、オクタデシルなどのアルキル基;アリル、ヘキセニルなどのアルケニル基;シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ベータ-フェニルエチルなどの環状基;2-メトキシエチル、2-エトキシイソプロピル、2-ブトキシイソブチル、p-メトキシフェニル、又は-(CH2CH2O)2CH3などの炭化水素エーテル基である)の基を含む。最も好ましいX1基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、オクタデシルオキシ、及び2-エチルヘキソキシ;メトキシメトキシ又はエトキシメトキシなどのジアルコキシ基、及びエトキシフェノキシなどのアルコキシアリールオキシである。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ又はエトキシである。
【0061】
好ましいジシリル官能性ポリマー架橋剤(b)は、n=0又は1、X1=OMeを有し、Z4は、4個~6個の炭素を有するアルキレン基(例えば-(CH2)4-)である。
【0062】
アルコキシ官能性末端基を有するシリコーン又は有機ポリマー鎖を有するジシリルポリマー架橋剤(b)の例としては、少なくとも1つのトリアルコキシ末端を有するポリジメチルシロキサンが挙げられ、その場合、アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい。例としては、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサ-n-プロポキシジシロキサン、ヘキサ-n-ブトキシジシロキサン、オクタエトキシトリシロキサン、オクタ-n-ブトキシトリシロキサン、及びデカエトキシテトラシロキサンを挙げることができる。一実施形態では、架橋剤(b)は、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン及び/又はビニルメチルジメトキシシランのうちの1つ以上であってよい。
【0063】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、好適には、上述の1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)と比較して、少なくとも化学量論量の架橋剤(b)を含有する。したがって、存在する量はまた、利用される架橋剤(b)の特定の性質、特に選択される分子の分子量にも依存する。したがって、架橋剤(b)は、典型的には、組成物中に、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在するが、潜在的には、より多くの量で存在してもよい。
【0064】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物はまた、縮合硬化触媒も含む。縮合硬化触媒は、スズ系触媒であってもよい。任意の好適なスズ触媒を利用してもよい。スズ触媒は、スズトリフレート、有機スズ金属触媒、例えば、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテネート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、及びジオルガノスズ塩、特に、ジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate、DBTDL)、ジオクチルスズジラウレート(dioctyltin dilaurate、DOTDL)、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート(dibutyltin diacetate、DBTDA)、ジブチルススビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート(dimethyltin dineodecanoate、DMTDN)、ジオクチルスズジネオデカノエート(dioctyltin dineodecanoate、DOTDN)、及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。
【0065】
代替的に又は追加的に、縮合硬化触媒(c)は、一般式Ti[OR22]4又はZr[OR22]4(式中、各R22は、同じでも異なっていてもよく、1個~10個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐であり得る一価の、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す)によるチタネート及び/又はジルコネート系触媒を含むことができる。任意選択的に、チタネート及び/又はジルコネートは、部分不飽和基を含有してもよい。R22の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、及び分岐第二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、各R22が同じである場合、R22は、イソプロピル基、分岐第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に、第三級ブチルである。一代替実施例では、触媒はチタネートである。好適なチタネートの例としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、チタンテトラブトキシド、及びテトライソプロピルチタネートが挙げられる。好適なジルコネートの例としては、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート及びジルコニウムジエチルシトレートが挙げられる。
【0066】
あるいは、チタネート及び/又はジルコネートは、キレート化されていてもよい。キレート化は、アルキルアセチルアセトネート、例えばメチル又はエチルアセチルアセトネートなどの、任意の好適なキレート剤によってもよい。あるいは、チタネートは、例えば2-プロパノラト、トリスイソオクタデカノアトチタネート、又はジイソプロピル-ビスエチルアセトアセタトチタネートなどの3つのキレート剤を有するモノアルコキシチタネートであってよい。
【0067】
縮合硬化触媒(c)は、典型的には、組成物中に、組成物の0.25重量%~4.0重量%の量で、あるいは縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の0.25重量%~3重量%の量で、あるいは組成物の0.3重量%~2.5重量%の量で存在する。
【0068】
1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤(d)は、補強性充填剤及び/又は半補強性充填剤、例えばヒュームドシリカ、コロイドシリカ及び/又は沈降シリカのうちの1つ以上を含んでいてもよく、好ましくは微細に分割された形態で提供され、及び/又は所望の他の充填剤、例えば沈降炭酸カルシウム及び粉砕炭酸カルシウム、カオリン及び/又は珪灰石を含んでいてもよい。典型的には、充填剤(d)の表面積は、ISO9277:2010に準拠してBET法に従って測定して、沈降炭酸カルシウムの場合、少なくとも15m2/g、あるいは15m2/g~50m2/g、あるいは15m2/g~25m2/gである。シリカ補強性充填剤は、少なくとも50m2/gの典型的な表面積を有する。一実施形態では、充填剤(d)は、沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカであり;あるいは沈降炭酸カルシウムである。高表面積ヒュームドシリカ及び/又は高表面積沈降シリカの場合、これらは、ISO9277:2010に準拠してBET法を用いて測定して、75m2/g~400m2/gの表面積を有することができ、あるいはISO9277:2010に準拠してBET法を用いて100m2/g~300m2/gの表面積を有することができる。
【0069】
典型的には、補強性充填剤(d)は、組成物中に、選択された充填剤に応じて、組成物の約5重量%~45重量%、あるいは組成物の約5重量%~30重量%、あるいは組成物の約5重量%~25重量%の量で存在する。
【0070】
充填剤(d)は、例えば、1つ以上の脂肪族の酸、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルを用いて、又は、オルガノシラン、オルガノシロキサン若しくはオルガノシラザン、例えばヘキサアルキルジシラザン、又は短鎖シロキサンジオールを用いて疎水性処理させて充填剤(d)を疎水性にし、したがって、他の接着剤成分との均質混合物を取り扱うこと及び得ることをより容易にし得る。充填剤の表面処理は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)によって充填剤を容易に湿潤させる。これらの表面改質充填剤は凝集せず、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)中に均一に組み込まれ得る。これにより、未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。充填剤は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン(a)と混合されるときに、前処理されてもよく、又はその場で処理されてもよい。
【0071】
前述の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)を導入することによって調製されなければならない。各添加剤濃縮物(e)は、上記のように
(i)組成物の25重量%~80重量%の量の添加剤を、
(ii)組成物の20重量%~75重量%の量のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを含む液体キャリアと、
(iii)組成物の0.5重量%~5重量%の量の、一般式:
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R3
3
(式中、R2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R3基は、同じであっても異なっていてもよく、R2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)
を有する、ポリジアルキルシロキサンを含むか又はそれからなる安定剤の存在下で混合することによって調製された添加剤濃縮物を含む。
【0072】
所望であれば、液体添加剤又は他の固体添加剤を、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に添加してもよい。これらは、例えば、顔料、染料、共触媒;スカベンジャー、レオロジー調整剤;接着促進剤、熱安定剤、可塑剤、増量剤(加工助剤と呼ばれることもある)、難燃剤、UV安定剤、殺真菌剤及び/又は殺生物剤などのうちの1つ以上を含み得る。これらは、先に記載された添加剤並びに他の添加剤を含む。他の添加剤としては、液体、及び/又は液体濃縮物(e)の形態での添加に適していない他の添加剤が挙げられる。他の添加剤としては、液体濃縮物の形態では通常導入されない液体、染料、レオロジー改質剤;鎖延長剤、接着促進剤、可塑剤、増量剤(加工助剤と呼ばれることもある)、並びに/又は殺生物剤及び/若しくは殺真菌剤を挙げることができる。
【0073】
本発明による縮合硬化性組成物中に組み込むことができるレオロジー調整剤としては、シリコーン有機コポリマー、例えばポリエーテル又はポリエステルのポリオールに基づく欧州特許第0802233号に記載されているもの;ワックス、例えばポリアミドワックス;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、コポリマー若しくはエチレンオキシド及びプロピレンオキシド、並びにシリコーンポリエーテルコポリマーからなる群から選択される非イオン性界面活性剤;並びにシリコーングリコールが挙げられる。いくつかの系について、それらのレオロジー調整剤、特に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、及びシリコーンポリエーテルコポリマーが、基材、特に可塑性基材に対する接着を増強することができる。
【0074】
更に、所望であれば、上記の方法の前に、又はそれと同時に、鎖延長剤を導入してポリマー鎖の長さを延長することができる。鎖延長剤は、例えば、二官能性シランであってもよい。二官能性シランは、以下の構造:
(R11)2-Si-(R12)2
(式中、各R11は、同じであっても異なっていてもよく、直鎖、分岐又は環状であってもよいが、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の-OH基又は加水分解性基と非反応性であるという点で、非官能性基である)
を有し得る。したがって、各R11基は、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はフェニルなどのアリール基から選択される。一代替形態では、R11基は、アルキル基又はアルケニル基のいずれかであり、あるいは1分子当たり1個のアルキル基及び1個のアルケニル基が存在し得る。アルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、及びヘキセニル基などの直鎖又は分岐状アルケニル基から選択され得、アルキル基は、1個~10個の炭素原子を有し、例えばメチル、エチル、又はイソプロピルである。更なる代替形態では、R11は、環状であり、2つの場所でSi原子に結合するR111によって置き換えられてもよい。
【0075】
各R12基は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基又は加水分解性基と反応性である。R12基の例としては、アルコキシ、アセトキシ、オキシム、ヒドロキシ、及び/又はアセトアミド基が挙げられる。あるいは、各R12は、アルコキシ基又はアセトアミド基のいずれかである。R12がアルコキシ基である場合、1個~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロプロキシ、ブトキシ、及びt-ブトキシ基。好適な鎖延長剤の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシランなどのアルケニルアルキルジアルコキシシラン;ビニルメチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシラン、ビニルメチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシランなどのアルケニルアルキルジオキシモシラン;ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシランなどのアルケニルアルキルジアセトキシシラン;並びにビニルメチルジヒドロキシシラン、ビニルエチルジヒドロキシシラン、ビニルメチルジヒドロキシシラン、及びビニルエチルジヒドロキシシランなどのアルケニルアルキルジヒドロキシシランが挙げられる。
【0076】
R12がアセトアミドである場合、ジシランは、ジアルキルジアセトアミドシラン又はアルキルアルケニルジアセトアミドシランであってもよい。そのようなジアセトアミドシランは、例えば、米国特許第5017628号及び同第3996184号に記載されているような低弾性率シーラント配合物のための公知の鎖延長材料である。ジアセトアミドシランは、例えば、構造:
CH3-C(=O)-NR13-Si(R14)2-NR13-C(=O)-CH3
(式中、各R13は、同じであっても異なっていてもよく、上記で定義されるようなRと同じであってもよく、あるいは、各R13は、同じであっても異なっていてもよく、1個~6個の炭素、あるいは1個~4個の炭素を有するアルキル基を含んでもよい。各R14はまた、同じであっても異なっていてもよく、また、上記で定義されるようなRと同じであってもよく、1個~6個の炭素、あるいは1個~4個の炭素を有するアルキル基、又は2個~6個の炭素、あるいは2個~4個の炭素を有するアルケニル基、あるいはビニルを含んでもよい)
を有し得る。
【0077】
使用において、ジアセトアミドシランは、以下のうちの1つ以上から選択され得る:
N,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]
N,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(ジエチルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]
N,N’-(ジエチルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-プロピルアセトアミド]
N,N’-(ジエチルシリレン)ビス[N-プロピルアセトアミド]
N,N’-(ジプロピルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]
N,N’-(ジプロピルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(メチルビニルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(エチルビニルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(プロピルビニルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]
N,N’-(メチルビニルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]
N,N’-(エチルビニルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]、及び/又は
N,N’-(プロピルビニルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]。
あるいは、ジアルキルジアセトアミドシランは、N,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]及び/又はN,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-メチルアセトアミド]から選択されるジアルキルジアセトアミドシランであり得る。あるいは、ジアルキルジアセトアミドシランは、N,N’-(ジメチルシリレン)ビス[N-エチルアセトアミド]である。
【0078】
存在する場合、鎖延長剤は、組成物の0.01重量%~5重量%、あるいは0.05重量%~1重量%の量で存在する。
【0079】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で利用され得る更なる液体添加剤は、接着促進剤である。好適な接着促進剤は、式R14
hSi(OR15)(4-h)(式中、下付き文字hは、1、2、又は3であり、あるいはhは3である。各R14は、独立して、一価の有機官能基である。R14は、グリシドキシプロピル若しくは(エポキシシクロヘキシル)エチルなどのエポキシ官能基;アミノエチルアミノプロピル若しくはアミノプロピルなどのアミノ官能基;メタクリルオキシプロピル;メルカプトプロピルなどのメルカプト官能基、又は不飽和有機基であり得る。各R15は、独立して、少なくとも1個の炭素原子を有する非置換飽和炭化水素基である。R15は、1個~4個の炭素原子、あるいは1個~2個の炭素原子を有してよい。R15の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソプロピルが挙げられる)のアルコキシシランを含んでもよい。
【0080】
あるいは、接着促進剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又は上記の2つ以上を反応させることによって得られる多機能材料であってよい。例えば、アルキルアルコキシシリコーンの反応生成物、例えばトリメトキシメチルシラン;アミノアルコキシシラン、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシランと、エポキシアルコキシシラン、例えばグリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、(i):(ii):(iii)の重量比0.1~6:0.1~5:1で反応させることによって得られる多機能材料であってもよい。
【0081】
好適な接着促進剤の例としてはまた、構造:
(R’O)3Si(CH2)gN(H)-(CH2)qNH2
(式中、各R’は、同じであっても異なっていてもよく、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、gは2~10であり、qは2~10である)
の分子も含んでもよい。
【0082】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、存在する場合、組成物の重量に基づいて、0.01重量%~2重量%、あるいは0.05重量%~2重量%、あるいは0.1重量%~1重量%の接着促進剤を含んでもよい。好ましくは、生成物ネットワークへの組み込みよりも基材への分子の拡散に有利となるように、接着促進剤の加水分解速度は、架橋剤の加水分解速度よりも遅くするべきである。
【0083】
任意の好適な-OH(水分/水/アルコール)スカベンジャーは、例えば、オルトギ酸エステル、モレキュラーシーブ、シラザン、例えばオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン、例えばヘキサメチルジシラザン、及び/又は構造:
R20
jSi(OR21)4-j
(式中、各R21は同じであっても異なっていてもよく、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり;
jは、1又は0であり;
R20は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である)の1つ以上のシランを、必要に応じて縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用してもよい。存在する場合、スカベンジャーは、典型的には、組成物の総重量%の0.5重量%~3.0重量%の範囲の量で縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に導入されるが、その量はより多くてもよい。そのようなスカベンジャーは、ポリマーがエンドキャッピング加水分解性基、例えばアルコキシ基を有する場合に、生成されるアルコール副生成物の量及びそれらを生成するために使用される方法に応じて、貯蔵中にポリマー及び縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を安定化するために使用される傾向がある。
【0084】
可塑剤及び/又は増量剤(加工助剤として特定されることもある)
所望であれば、任意の好適な可塑剤又は増量剤を使用することができる。それらは、参照により本明細書に組み込まれるGB2445821において特定される可塑剤又は増量剤のいずれであってもよい。使用される場合、可塑剤又は増量剤は、ポリマーの調製前、調製後又は調製中に添加することができる。しかし、これが重合プロセスに助長又は関与することはない。
【0085】
可塑剤又は増量剤の例としては、ケイ素含有液体、例えばヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、及び他の短鎖直鎖シロキサン、例えばオクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン、環状シロキサン、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン;任意選択的に、0.5mPa.s~1000mPa.sについてはガラス毛細管粘度計(ASTM D-445、IP71)、及び1000mPa.s超の粘度についての、スピンドルLV-1(15mPa.s~20,000mPa.sの範囲の粘度用に設計された)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計を使用して、ポリマー粘度に従って速度を適合させて、25℃で測定して0.5mPa.s~12,500mPa.sの粘度を有するアリール官能性シロキサンを含む、更なるポリジオルガノシロキサンが挙げられる。
【0086】
上記の添加剤濃縮物の安定剤(iii)が、可塑剤として縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に直接添加される短鎖線状シロキサンと同じであってもよいことが理解されるであろう。したがって、添加剤濃縮物の安定剤(iii)は、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で可塑剤として部分的に機能し得るが、前述のように、驚くべきことに、添加剤濃縮物中に直接添加された場合にのみ添加剤濃縮物を安定化させることが理解されるであろう。典型的には、本発明の組成物において可塑剤として機能するために短鎖シロキサンが必要とされる場合、安定剤(iii)に加えて、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中に直接添加される短鎖線状シロキサンが存在する。
【0087】
あるいは、可塑剤又は増強剤としては、有機液体、例えば酢酸ブチル、アルカン、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、又は構成成分の材料のいずれかに悪影響を及ぼすことなく組成物を希釈することができる、任意の他の材料を挙げることができる。炭化水素としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、Isopar(商標)L(C11~C13)、Isopar(商標)H(C11~C12)、水素添加ポリデセン、鉱油、特に水素添加鉱油若しくは白色油、液状ポリイソブテン、イソパラフィン系油、又は石油ゼリーが挙げられる。エーテル及びエステルとしては、イソデシルネオペンタノエート、ネオペンチルグリコールヘプタノエート、グリコールジステアレート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネート、プロピレングリコール n ブチルエーテル、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propylene glycol methylether acetate、PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(propylene glycol methylether、PGME)、オクチルドデシルネオペンタノエート、ジイソブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、及びオクチルパルミテートが挙げられる。更なる有機希釈剤としては、脂肪、油、脂肪酸、及び脂肪アルコールが挙げられる。希釈剤の混合物もまた、使用することができる。
【0088】
上記の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、使用前に、1部型組成物又は複数部型、典型的には2部型組成物で貯蔵されてもよい。一般に、1部型組成物は、チタネート又はジルコネート触媒を使用して触媒され、2部型組成物は、他の触媒、典型的にはスズ系触媒が利用される場合に調製される。ジルコネート及び特にチタネート触媒は、スキンにおける、又は拡散硬化した1部型縮合硬化型シリコーンエラストマーにおけるそれらの使用について、広く記載されている。これらの配合物は、典型的には、15mmより薄い層で適用される1部型パッケージで入手可能である。スキン又は拡散硬化(例えば、水分/凝縮)は、シーラント/封入剤が基材表面に塗布された後に組成物/空気界面において硬化スキンが形成されることによって初期硬化プロセスが起こるときに起こる。表面スキンの形成の後、硬化速度は、シーラント/封入材と空気との界面からの内部(又はコア)への水分の拡散速度、並びに、材料の内部(又はコア)から外部(又は表面)への縮合反応副生成物/排出物の拡散、及び時間の経過による外部/表面から内部/コアへの硬化スキンの漸進的増粘に依存する。1部型組成物の場合、組成物の全ての成分は、貯蔵前に一緒に混合され、必要に応じて好適な標的上にシーラントを適用することによって直ちに使用することができる。
【0089】
製品のバルク内で縮合硬化を活性化するように設計された多成分組成物は、一般に、他の金属触媒、主にスズ系触媒を使用する。2つ以上の部で使用前に貯蔵されるシリコーン組成物において、1部は、製品のバルク内で縮合硬化を活性化するのに必要な水分を典型的に含有する充填剤を含有する。前述の拡散硬化1部型系とは異なり、2部型縮合硬化系は、一緒に混合すると、深さが15mmより深い部においてであってもバルク硬化を可能にする。この場合、組成物は、(混合後に)材料バルク全体にわたって硬化する。
【0090】
重要にも、貯蔵中の予備硬化を回避するために、
1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有する成分(a)ポリジオルガノシロキサンと、
ポリジオルガノシロキサンの少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の成分(b)1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤と、
成分(c)縮合硬化触媒とは、全てが同じ部の中に貯蔵されるわけではない。
【0091】
2部型組成物の場合、それらは通常、A部(時にはベース部と呼ばれる)及びB部(時には触媒パッケージと呼ばれる)と称されることが多い2つの部に分割される。
【0092】
通常、A部は、主に、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(d)1つ以上の補強性充填剤及び/又は半補強性充填剤と
からなる。
【0093】
A部はまた、(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤を含んでもよいが、成分(a)がB部組成物の部の中に存在しない場合、架橋剤(b)は代わりにB部組成物中に存在してもよい。A部は、通常、その中に存在する主成分のうちの1つの有効性に影響を及ぼす可能性がない限り、添加剤の大部分を含有する。したがって、2部型組成物成分(e)の場合、添加剤濃縮物は、A部組成物に添加される可能性が最も高いが、所望であれば、B部組成物に添加されてもよい。
【0094】
B部は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基を有する成分(a)ポリジオルガノシロキサン、及び成分(c)縮合硬化触媒を含むことができ、成分(b)架橋剤は含まない。しかしながら、代替的に成分(a)が存在しない場合には、B部又は触媒パッケージ組成物は、架橋剤(b)、触媒(c)、及び任意選択的に、前述のように添加剤濃縮物(e)の成分(iii)と同じであってもよい前述のような非反応性シリコーン可塑剤を含んでもよい。
【0095】
2部型シーラント組成物の場合、各部の成分を、上記で得られた範囲内の量で一緒に混合した後、A部組成物とB部組成物とを、所定の重量比、例えば、15:1~1:1で相互混合する。A部:B部の意図された混合比が15:1以上である場合、充填剤はB部中では一般に利用されない。しかしながら、A部:B部の意図された混合比が15:1未満である場合、意図された比が1:1である場合、増加する量の充填剤が、B部の最大約50重量%まで触媒パッケージ中で利用される。縮合硬化性組成物は、任意の好適な混合装置を使用して、成分を混合することにより調製することができる。
【0096】
得られた組成物は、多様な用途、例えばガラス、アルミニウム、ステンレス鋼、塗装された金属、粉末コーティングされた金属などの基材とともに使用するための、コーティング、コーキング、鋳型製造、及びカプセル化材料において用いることができる。具体的には、これらは、構造物並びに/又は構造体グレージング及び/若しくは遮断グレージング用途に使用するためのものである。例えば、各々の場合に上記のようなシリコーンシーラント組成物で封止された、遮断ガラスユニット及び/又は建物の外装要素、例えば、陳列ケース及び/又は構造体グレージングユニット及び/又はガス充填遮断構造物パネルである。他の見込みがある用途としては、ソーラー用途、自動車用途、電子機器用途、並びに産業用アセンブリ及び保全用途が挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下の実施例において、別段の指定がない限り、言及される全ての粘度は、1000mPa.s未満の粘度のためであって、スピンドルLV-4(1,000mPa.s~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計された)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計、又はスピンドルLV-1(15mPa.s~20,000mPa.sの範囲の粘度用に設計された)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計のいずれかを用いて、ポリマー粘度に従って速度を適合させて、25℃で測定した。
【0098】
5.3のpHを有する55重量%の赤色酸化鉄を添加剤(i)として利用し、25℃で2000mPa.sの粘度を有する45重量%のジメチルシラノール末端ポリジメチルシロキサン(液体キャリア(ii))と混合した、3つの添加剤濃縮物を比較する第1の一連の実験を行った。完全に混合したら、比較例1には安定剤を添加せず;酸化マグネシウムを、比較例2中の添加剤(i)と液体キャリア(ii)との総重量の1重量%に等しい量で、かつ平均構造:
Me3-Si-O-((Me)2SiO)9-Si-Me3
のトリメチル末端ポリジメチルシロキサン安定剤として添加し、
すなわち、11の平均重合度(DP)を安定剤として、実施例1における添加剤(i)及び液体キャリア(ii)の総重量の1重量%に等しい量で添加した。比較例1、比較例2及び実施例1のそれぞれのサンプルの粘度を、エージングなしで決定したか、又はその加速させたエージング研究において様々な期間にわたってエージングして決定した。これらの試験についての全ての粘度測定は、20mmのスチールプレートを備えたTA Instruments(New Castle,DE,USA)によって市販されているAR 2000 EXレオメーターを使用して実施し、測定は10秒-1の剪断速度で50℃のプレート温度で行った。結果を以下の表1に提供する。
【0099】
【0100】
上記の加速エージング試験から、実施例1における酸化鉄(i)とキャリア流体(ii)との混合物へのトリメチル末端ポリジメチルシロキサン(iii)の添加が、比較例1(安定剤なし)又は比較例2(安定剤として添加される公知の酸受容体MgO)のいずれかよりも、はるかに遅い、エージングに伴う粘度の増加をもたらしたことが注目され得る。これは、トリメチル末端ポリジメチルシロキサンが配合物中に含まれる場合、酸性酸化鉄の存在下でキャリア流体が凝縮しにくいことを示した。したがって、トリメチル末端ポリジメチルシロキサンは、この縮合反応(粘度を増加させることが知られている)を阻害し、溶液をより高度に安定化することを、示している。
【0101】
これは、キャリア流体ポリマーの縮合が粘度を増加させ、加工性を低下させるだけでなく、その結果、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の硬化中に利用可能な架橋部位の数を減少させて、より柔らかい(より低いデュロメータ)材料を生成するそれらのそれぞれのエラストマーにするという考えのために、重要な効果であると考えられる。これは、以下のエラストマー研究によって更に評価した。
【0102】
配合したA部
次いで、比較例1、比較例2及び実施例1の添加濃縮物のエージングしていないサンプルを、それぞれの2部型の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の調製において使用した。それぞれの添加剤濃縮物を、以下の表2aに示す組成物を使用してA部組成物中に混合した。
【0103】
【0104】
Celite(登録商標)Super Floss(登録商標)E珪藻土は、World Materials Inc.から市販されている。
【0105】
同じB部組成物を各実施例中で使用し、これを以下の表2bに示す。
【0106】
【0107】
比較例3、比較例4、及び実施例2のA部組成物を、それぞれ、2400rpmで30秒間、高速ミキサー中で、10:1重量部の比で、B部組成物と混合した。次いで、得られたブレンドを型に注ぎ、室温で48時間硬化させた後、試験片を切断し、測定した。
【0108】
更なるA部サンプルを調製し、50℃のオーブンにそれぞれ7日間及び14日間入れて、加速エージングプロトコルをシミュレートした後、室温まで冷却した。室温になったら、それらを上記の方法でB部組成物と混合し、同じ方法で硬化させた。得られたエラストマーを、それぞれ表2c、2d及び2e中の比較例3、比較例4及び実施例2について、硬度、引張強度、伸び、及びMDR(S’Max)について試験した。
【0109】
【0110】
【表5】
N/A=実験の終了により測定されなかった
【0111】
【0112】
デュロメータの結果は、ショアAに関するものであり、ASTM C661-15に従って測定した。引張強度の結果は、Die Cを使用してASTM D412-98a(2002)e1に従って測定した。移動ダイレオメータ(MDR)(S’Max)の結果は、Monsanto製のMonsanto MDR2000移動ダイレオメータを使用して測定し、最初にA部組成物とB部組成物とを混合して、得られた混合物を248℃で14分間底板に加え、材料が硬化したときにS’Max(最大トルク)値を記録した。
【0113】
安定剤として酸化マグネシウム(MgO)を使用した比較例2及び比較例4の比較添加剤濃縮物は、粘度成長の適度な遅延を示したが、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物に導入すると、不完全な硬化を引き起こし、5という低いデュロメータ値を有する非常に軟質のエラストマー材料及び不完全に硬化した粘着性サンプルプレートをもたらした。
【0114】
A部が安定剤として1%の追加のトリメチル末端ポリジメチルシロキサンを有する添加剤濃縮物を含有する本発明の実施例2は、デュロメータ、引張強度、伸び、及び移動ダイレオメータで測定した最大トルクについての維持された値によって示される持続した性能を呈する。
【0115】
安定剤を含まない添加剤濃縮物を使用する比較例3は、伸びの増加を示す一方で、デュロメータ及び最大トルクの臨界値の減少を示す。
【0116】
比較例3の組成物を使用して製造したエラストマーについてのこれらの結果は、硬化エラストマー材料が、我々の見解では、配合物中に含有される25℃で2000mPa.sの粘度を有するジメチルシラノール末端ポリジメチルシロキサンの予備縮合による最終架橋の数の減少、及び本明細書に記載される好適な安定剤の欠如のために、適切に硬化しなかったことを示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で使用するのに好適な安定化された添加剤濃縮物を調製する方法であって、
(i)組成物の25重量%~80重量%の量の固体添加剤と、
(ii)組成物の20重量%~75重量%の量のジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンポリマーを含む液体キャリアと、
(iii)組成物の0.5重量%~5重量%の量の、一般式:
R33-Si-O-((R2)2SiO)d-Si-R33
(式中、R2は、アルキル基又はフェニル基であり、各R3基は、同じであっても異なっていてもよく、R2アルケニル基又はアルキニル基から選択され、dの平均値は7~20である)
を有する、ポリジアルキルシロキサンを含むか又はそれからなる安定剤と
を混合することによる、方法。
【請求項2】
固体添加剤(i)が、非補強性充填剤、導電性充填剤、熱伝導性充填剤、顔料、共触媒;熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、殺真菌剤及び/又は殺生物剤、並びにカプセル化殺真菌剤及び/又は殺生物剤から選択される縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中で利用される固体添加剤から選択される、請求項1に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項3】
固体添加剤(i)が、水に溶解したときに酸性溶液を生成する、請求項1に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項4】
前記安定化された添加剤濃縮物が、1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項5】
前記1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物が、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、酸化バナジウムビスマス;酸化亜鉛、酸化セリウム、水酸化セリウム及び/又はそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項6】
前記1つ以上の顔料若しくは熱安定剤、又はそれらの混合物が、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、及び/又は黒色酸化鉄から選択される、請求項5に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項7】
液体キャリア(ii)が、構造:
HO(R2)Si-O(R1vSiO(4-v)/2)w-Si-(R2)OH (2)
(式中、各Rは、アルキル、アルケニル又はアリール基であり;各R1は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、加水分解性基、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であり、
vは0、1又は2であり、wは、前記ジアルキルシラノール末端ポリジオルガノシロキサンが25℃で5,000mPa.s~50,000mPa.sの粘度を有するような整数である)
を有するジアルキルシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれか一項に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項8】
安定剤(ii)におけるdの平均値が、7~15である、請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれか一項に記載の安定化された添加剤濃縮物を調製する方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、安定化された添加剤濃縮物。
【請求項10】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物を調製する方法であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物(e)を調製すること並びに、前記少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)を、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤、
(c)縮合硬化触媒、及び
(d)1つ以上の補強性充填剤又は非補強性充填剤
と混合することによる、方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの安定化された添加剤濃縮物(e)を調製すること、並びに前記少なくとも1つの添加剤濃縮物(e)を、
(a)1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサン、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)の少なくとも2個のヒドロキシ基又は加水分解性基と反応性の1つ以上のシラン又はシロキサン架橋剤、
(c)縮合硬化触媒、及び
(d)1つ以上の補強性充填剤又は半補強性充填剤
と混合することによって得られるか又は得ることができる、縮合硬化性オルガノシロキサン組成物。
【請求項12】
利用する前に2つ以上の部に分けて貯蔵される、請求項11に記載の縮合硬化性オルガノシロキサン組成物。
【請求項13】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物中での、請求項1から6のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物の使用。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物(e)を含む縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の、コーティング、コーキング、シーリング、鋳型製造、又はカプセル化材料としての、使用。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に従って調製される安定化された添加剤濃縮物(e)を含む縮合硬化性オルガノシロキサン組成物の、ソーラー用途、自動車用途、電子機器用途、建築用途及び/又は構造グレージング用途及び/又は絶縁グレージング用途における、使用。
【国際調査報告】