(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スマートコーナ切断のための方法、コンピュータプログラムおよびレーザ切断システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20230922BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023522988
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021078616
(87)【国際公開番号】W WO2022079240
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルト ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハース ティタス
(72)【発明者】
【氏名】ボーラ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】インゴールド エリオ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB00
4E168DA32
4E168JA02
4E168JA03
(57)【要約】
一態様では、本発明は、変換アルゴリズムを実行するコンピューティングユニット(RE)であって、第1の切断パラメータデータセット(1SP)を取得するインターフェース(UI)と、移動プロファイルオブジェクト(bpo)を抽出するように設計されているとともに、取得された第1の切断パラメータデータセット(1SP)から第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算および提供するために、ロードおよび/または実行され得るように電子コンピューティングユニット(RE)のメモリに記憶される変換アルゴリズムを実行するようにも設計されているプロセッサ(P)であって、前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、抽出された移動プロファイルオブジェクト(bpo)の関数として計算される、プロセッサ(P)と、を有する、コンピューティングユニット(RE)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素(WS)のレーザ切断中にレーザ切断機(L)のレーザ切断プロセスを制御および/または調整するための第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算する方法であって、電子コンピューティングユニット(RE)で実行される以下の方法ステップ、すなわち
第1の切断パラメータデータセット(1SP)を取得するステップ(S1)と、
移動プロファイルオブジェクト(bpo)を抽出するステップ(S2)と、
取得された前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)から前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算および提供するために、前記電子コンピューティングユニットのメモリにロード可能および/または実行可能に記憶された変換アルゴリズムを実行するステップ(S4)であって、前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、前記抽出された移動プロファイルオブジェクト(bpo)の関数として計算される、実行するステップ(S4)と、
を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、切断される前記構成要素(WS)の材料特性、特に板金厚さおよび/または材料タイプを取得するステップ(S3)をさらに含み、
前記第2の切断パラメータデータセットを計算する前記変換アルゴリズムは、取得された前記材料特性、特に前記板金厚さおよび/または前記材料タイプを考慮する、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)および/または前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、動的切断パラメータ、すなわち、特に切断速度、焦点位置、パルスパターン、ノズル距離、ガス圧、レーザ出力、ビームパラメータ積/BPPおよび/または焦点直径を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記移動プロファイルオブジェクト(bpo)は、速度、加速度および/もしくはジャークについての値、ならびに/または、切断幾何形状におけるある箇所についての曲率もしくは経時的な上述した変数の推移を示す、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、メモリ(MEM)に記憶された関数セットから前記動的切断パラメータのそれぞれについての専用関数を計算する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記関数セットはパラメータ化され得る、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、提供された前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、前記レーザ切断プロセスを制御および/または調整するための前記レーザ切断機(L)における制御装置(C)に直接送信される、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、事前設定可能な変更条件が満たされる場合に、特に、前記移動プロファイルオブジェクト(bpo)が所定の限界値を超えるかまたは前記所定の限界値を下回る場合にのみ実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、線形関数または三角関数として実施される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、各箇所についてまたは軌道の断面について動的に前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算する、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムにおける入力変数として機能する加速度および/またはジャークプロファイルが計算される、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムがコンピュータ、電子エンティティおよび/またはコンピューティングユニット(RE)で実行される場合に、前述の請求の範囲に記載された方法の方法ステップをすべて行う、コンピュータプログラムコードを有する、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
第1の切断パラメータデータセット(1SP)を取得するインターフェース(UI)と、
移動プロファイルオブジェクト(bpo)を抽出するように設計されているとともに、取得された前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)から前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算および提供するために前記電子コンピューティングユニット(RE)のメモリにロード可能および/または実行可能に記憶される変換アルゴリズムを実行するようにさらに設計されているプロセッサ(P)であって、前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、抽出された前記動きプロファイルオブジェクト(bpo)の関数として計算される、プロセッサ(P)と、
を有する、ことを特徴とする変換アルゴリズムを実行する電子コンピューティングユニット(RE)。
【請求項14】
請求項13に記載の電子コンピューティングユニット(RE)と、
制御装置(C、RE)によって制御および/または調整されるレーザ切断機(L)と、
を有する、ことを特徴とするレーザ切断システム。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザ切断システムであって、前記電子コンピューティングユニット(RE)は、前記制御装置(C)で実施される、ことを特徴とするレーザ切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断技術の分野にあり、特に、切断される部品のレーザ切断中にレーザ切断機のレーザ切断プロセスを制御および/または調整するための切断パラメータを計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に金属シートおよび/または管を切断するための、略2kW以上の出力を有するレーザシステムは、非常に複雑なシステムであり、特定の特性(材料タイプ、厚さなど)を有する切断されるそれぞれの部品またはワークピースについてのノズル距離、焦点位置、ガス圧に関する制御コマンドのような、適切な制御コマンドを介して電子制御される複数の物理的な部品および構成要素を備える。そのようなレーザシステムは、低ダイナミクス、中間ダイナミクス、また高ダイナミクスも有する、レーザ切断機とすることができる。切断プロセスの一部として、所望の品質まで切断プロセスを行うことができるように一連の設定点値を決定せねばならない。これらの設定点値は、対応するモジュールおよび/またはアクチュエータを制御するレーザ機における制御部に送信される。一方で、品質に関して、他方で、供給源(例えば、切断ガス)の性能および消費に関して、補正切断パラメータの決定が非常に重要である。他方で、切断パラメータが、高ダイナミクスおよび中間または低ダイナミクスの両方を有するレーザ切断機に好都合であることも望ましい。しかしながら、設定点値の決定は、これらの設定点値が、レーザヘッドを軌道上で移動させる速度および/または加速度の関数でもある場合があるため、複雑なタスクである。
【0003】
現在使用されているレーザ機の場合、切断部/端切断部についての、コーナおよびアールにおけるその時点の速度の関数として、レーザ出力を適合することが知られている。切断品質は、正確に測定されたレーザ出力によってだけでなく、部分的にかなりの程度まで、他の動的切断パラメータ(例えば、焦点位置など)によっても、影響を及ぼされ、これまで、速度依存的に補正または適合されておらず、場合によっては品質の損失をもたらす可能性がある。
【0004】
切断パラメータは、静的および動的切断パラメータである2つの範疇に分割することができる。拡大(magnification)、ノズルタイプ、ノズル直径などの静的切断パラメータは、切断中に変更することができない。動的切断パラメータは、動的限界を維持しつつ、切断中に変更することができる。動的切断パラメータは、焦点位置、ガス圧、レーザ出力、パルス幅、パルス周波数およびノズル距離、ならびに、当然ながら、送り速度(最大の切断速度)および設定点速度(機械/軸ダイナミクスの関数として)を含む。送り速度は、必要であれば、直線切断により達成することができる最大切断速度を規定する。設定点速度は、幾何形状(例えば、曲率)の関数としての目標速度として計算される。切断は通常、速度「v=0」で開始し、可能であれば、曲率/アールの関数として、ゼロから送り速度に加速される。換言すると、設定点速度は、例えばアールの場合、送り速度を下回る。
【0005】
上記で説明したように、切断された部品の品質、特にバリ高さは主として、用いられる切断パラメータによって決まる。直線切断部についての動的切断パラメータがコーナ/アールにおける切断部についてとは異なるように選択される場合、より高い品質を達成することができることが経験から知られている。今日用いられている機械のアーキテクチャは、動的切断パラメータ(焦点位置、ガス圧など)のいかなる適合もほとんど可能にしない。したがって、今日用いられている切断パラメータは、直線切断部とコーナ/アールの2つの最適条件間の妥協設定である。この結果、以下の不利点となる。
1)直線切断部の場合、より高い送り速度は、コーナおよびアールについての他の動的切断パラメータを速度依存的に調整され得る場合に達成され得る。
2)品質は、直線切断部においておよび/またはコーナ/アールの場合のいずれかで不十分である。
3)不十分なコーナ/アールに挑むために輪郭全体にわたって切断ガス量を増加させる。これは切断ガスのより高い消費を引き起こす。
【0006】
従来技術において、例えば、欧州特許第2883647(B1)号において、切断パラメータの設定を改善するための、特に、第2の切断パラメータが変更される場合に第1の切断パラメータを適合または再調整するための方法が知られている。しかしながら、この方法はさらに改善することができる。切断される部品の幾何形状が切断パラメータを決定する際に動的に考慮され得る場合が特に望ましい。
【0007】
さらに、独国特許出願公開第102018216873(A1)号が、レーザ切断機によりワークピースを処理する方法および装置を示している。材料パラメータ、特に、材料厚、および、レーザ切断機のタイプに関する機械パラメータ、および、特に、所望の切断縁品質が、入力ユニットを介して制御システムに指定される。これらから、コンピュータユニットはアルゴリズムを用いて、ワークピースを加工するための、改善された、好ましくは最適な、プロセスパラメータを決定する。
【0008】
米国特許出願公開第2019/0375051(A1)号は、ワークピースにおける切断プロセスを監視または制御することを開示している。集束素子がワークピースにおける高エネルギービームを集束する。カメラが、ワークピースとの高エネルギービームの相互作用領域を記録する。制御ユニットが、検出された相互作用領域に基づいて、切断プロセスの、特に、切断プロセス時に形成される切断ギャップの、少なくとも1つの特性変数を決定する。
【0009】
米国特許出願公開第2017/0275197(A1)号は、ガラス材料のためのレーザ切断方法、および切断縁の考えられ得る最も高い品質を達成するためのレーザパラメータの最適化または調整を開示している。
【0010】
金属シートおよび管を切断する適用領域におけるレーザ切断プロセスの品質、有効性(性能)および供給源要件(例えば、切断ガス消費)を改善するために、複数の切断パラメータ、特に、動的切断パラメータを、切断輪郭の断面を横断するとともに種々の輪郭推移(曲率)に適合させることができる種々の速度および/または加速度に適合させる解決策の必要性がある。例えば、高い曲率度を有する箇所またはコーナにおいて十分に迅速に経路を横断することができないため、プロセス送り速度を減少せねばならない場合、これに応じて動的切断パラメータは自動的に適合すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、考えられ得る最も高い生産性を確実にしつつ、レーザ切断プロセスの品質を改善するという目的を設定している。さらに、切断ガスの必要性が減ることになる。特に、小さいアールを有するコーナまたは断面は、レーザ出力に加え、例えば直線切断部以外の動的プロセス値により加工されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、(構造的)部品またはワークピース、特にプレート状の金属シートのレーザ切断中にレーザ切断機のレーザ切断プロセスを制御および/または調整するための第2の切断パラメータデータセットを計算する(コンピュータ実装)方法であって、上記(構造的)部品またはワークピースから、切断計画に従って、電子コンピューティングユニットで実行される以下の方法ステップ、すなわち
第1の切断パラメータデータセットを取得するステップと、
動きプロファイルオブジェクトを抽出するステップと、
取得された第1の切断パラメータデータセットから第2の切断パラメータデータセットを計算および提供する、電子コンピューティングユニットのメモリにロード可能および/または実行可能に記憶された変換アルゴリズムを実行するステップと、
により、部品が切り取られ、
第2の切断パラメータデータセットは、抽出された移動プロファイルオブジェクトの関数として計算され、計算された第2の切断パラメータデータセットは好ましくは、例えば速度依存的に焦点位置を変更するために、レーザ切断機に直接もたらされ得る、
方法に関する。
【0013】
概して、方法はレーザ切断中に行われる。アルゴリズムのための所要の入力データは、例えば切断計画から読み取ることができる。機械制御は、機械(レーザ)を制御するために用いられることになる第1の切断パラメータデータセットを指定する。これは、適用に応じて、ここで記載の方法によって変更することができ、そのため、機械は、本来意図されたように、もはや第1の切断パラメータデータセットによるのではなく、計算された第2の切断パラメータデータセットにより変更することができる。本発明の好ましい実施形態では、方法は、第2の切断パラメータデータセットを計算し、次いで機械を制御するために用いられる方法である。切断中に行われる(カメラからなどの)測定値またはセンサデータのフィードバックは任意選択的であり、絶対的に必要ではない。切断パラメータ(焦点位置、ガス圧...)は、その時点の切断速度および/または加速度および/または曲率に基づいて動的に適合され、これについて関数リストを用いることができる。本発明のより単純な代替的な変形例では、方法はレーザ切断前に行われることもできる。
【0014】
レーザ切断は特に、2kW以上の出力を有するレーザによる金属シートまたは管の切断に関する。
【0015】
「移動プロファイルオブジェクト」という語は、レーザ切断ヘッドによって行われる移動に関するデータ、および/または、切断される幾何形状に関するデータ、特に、切断される輪郭の曲率および/またはアールに関するデータが記憶される、電子オブジェクト、例えば、ファイルまたは記憶素子(例えば、データベースにおけるストレージ)として理解されるべきである。移動プロファイルオブジェクトは、制御部(例えば、CNC)からで読み込まれる。移動プロファイルオブジェクトは特に、例えば切断計画から抽出され得る、曲率データ、および/または、切断されるあらゆるアールに関するデータを示す。移動プロファイルオブジェクトにおいて記憶または使用されるデータは、第1の切断パラメータデータセットの一部とすることができ、および/またはそこから計算することができる。代替的または累積的に、移動プロファイルオブジェクトにおいて記憶されたデータは、切断計画から計算することができる。移動プロファイルオブジェクトは、移動および/または幾何形状に関する絶対的な情報または対応する進捗情報を経時的に(例えば、移動プロファイルとして)含むことができる。移動プロファイルオブジェクトは、0.01ms~10ms、好ましくは0.05ms~5ms、理想的には0.5ms~1.5msの範囲のサイクル率または更新率により生成することができる。
【0016】
単純な実施形態では、移動プロファイルオブジェクトはしたがって、(設定点値または設定値として、したがって絶対的な形態の)加速度値、速度値、幾何形状/軌道の曲率を示す曲率値などの、移動変数の絶対値のみを表すこともできる。
【0017】
曲率は、切断計画から計算する、および/または制御部によって指定することができる。曲率は、湾曲/幾何形状のパラメトリック導関数、すなわち
【数1】
によって示され、式中、「r」はアールであり、「r’」は第1のパラメトリックであり、「r’’」は湾曲の第2のパラメトリック導関数である。
【0018】
移動プロファイルオブジェクトに基づく変換アルゴリズムを用いる計算から生じる技術的利点は、選択可能な動的切断パラメータが選択可能な移動または幾何形状データに基づいて計算されることである。したがって、構成段階では、ユーザは、それぞれの適用にその仕様を作成するオプションを有する。第1の場合では、焦点位置を切断速度に応じて適合させることができ、第2の場合では、ガス圧または別の動的切断パラメータを加速度に応じて適合させることができる。これにより、適合方法の柔軟性を改善することができる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、移動プロファイルオブジェクトは、経時的な速度、加速度および/もしくはジャークならびに/または曲率の推移を含む。原則的に、変換アルゴリズムは、設定点値の速度依存性の変化に限定されるだけでなく、加速度値、切断経路の曲率、および/または他の変数に依存することもできる。
【0020】
第1および第2の切断パラメータデータセットは、事前設定可能な動的切断パラメータのセットを特徴とする。このことは、レーザ出力を速度に適合させることができるだけでなく、他の動的切断パラメータが種々の輪郭要件の場合であってもより優れた品質を提供することを可能にすることもできるという技術的利点を有する。好ましくは、複数の切断パラメータを補正または適合することができる(したがって、切断パラメータデータという用語は、たった1つ(これまでのように、レーザ出力)ではなく種々のパラメータのセットを扱うことを明確にすることを示す)。したがって、本発明の有利な実施形態では、第1および/または第2の切断パラメータデータセットは、動的切断パラメータのセット、すなわち、特に焦点位置、パルスパターン(パルス幅、パルス周波数)、ノズル距離、ガス圧、レーザ出力、ビームパラメータ積/BPPおよび/または焦点直径を含む。当然のことながら、切断速度は、切断される幾何形状に応じて、幾何形状に適合された制御システムによって既に決定された動的切断パラメータのうちの1つでもあり、そのため、直線切断部はより速いものとなり、例えば、小さな角度およびアールなどの細かい輪郭はより遅いものとなる。本発明によれば、上述した他の切断パラメータもこれらの領域において自動的に適合される。
【0021】
コンピューティングユニットは、データ処理のための電子モジュールである。電子コンピューティングユニットは、第1の切断パラメータデータセットの取得を実行するための、移動プロファイルオブジェクトを抽出するための、また、変換アルゴリズムを実行するためのモノリシックユニットとして設計することができる。代替的に、コンピューティングユニットはまた、種々のコンピュータベースのエンティティ間に分散するように設計することができる。このことは、上述したステップの第1の部分を第1のユニットで実行することができ、第2の部分を第2のユニットで実行することができ、したがって、方法は、よりモジュール式となることができるという利点を有する。特に、(例えば、第1の切断パラメータデータセットを計算するために、好ましくは、レーザ切断ヘッドを移動させる軸駆動部の駆動速度を計算するために)カスタマに自由に利用可能な関数が実行される第1の制御部(例えば、CNCカーネル)を実施することができ、また、例えば、関数リストのうち、比較的高い展開コストに関連付けられているために主として専有し続けられる関数へのアクセスにより、変換アルゴリズムが実行される第2の制御部(例えば、PLC、プログラム可能な論理制御ユニット)を実施することができる。有利には、関数リストの関数はまた、積の送達(delivery)後にさらに展開し、更新プロセスに付すことができる。この実施形態では、プロセス論理制御構成要素は、速度、加速度および/または曲率の関数として、調整されたガス圧および/または焦点位置の計算などの、関数リストへのアクセスによる変換アルゴリズムによって、第2の制御装置、例えばPLCにおいて実施される。代替的または累積的に、両方の制御部は、1つのユニット内にあるままとすることができる。代替的または累積的に、第2の分離した別個のメモリを形成することができる。第1の設定点値データセットを計算するソフトウェア構成要素を、第1のメモリに記憶し、補正値(第2の設定点値データセット)を計算するソフトウェア構成要素を、第2のメモリに記憶することができる。関数リストの関数および/またはそれら関数をパラメータ化するパラメータは、第2のメモリに記憶することができる。最適化された切断パラメータ、すなわち、第2の切断パラメータデータセットのパラメータはまた、計算されたオフラインとすることもできる。(例えば、外部エンティティに関して)この計算の結果は、いわゆるMコマンドで表され、例えば、NCコードに書き込まれて、次いでレーザ機でそれを実行または処理することができる。このことは、速度がCNC制御部によって再び計算され、NCコードにおけるMコマンドとして記憶される最適切断パラメータが、PLC制御部に送信されることを意味する。したがって、この実施形態では、(レーザ機に対して局在および外部の)種々のエンティティに関して形成され得る2つの種々の制御部が形成され、種々の制御および計算タスクが委ねられる。このことは、計算のための専門的知識を、関係しているエンティティに非常に不定に分配することができることを意味する。
【0022】
変換アルゴリズムは、例えば制御装置(例えばCNC)によって読み取ることができる第1の切断パラメータセットを、横断される幾何形状の幾何形状データ(曲率、アール)を考慮する、第2の切断パラメータセットに変換するコンピュータ実装方法である。このため、外部または内部メモリに記憶することができる関数リストに基づく変換規則が使用される。前者は、方法が行われている間であっても、依然として関数リストを変更、特にパラメータ化することができるという利点を有する。このように、特定の定数を式に設定し、次いで変換に用いることができる。変換アルゴリズムは、第2の切断パラメータデータセットの形態の結果を計算する場合、移動プロファイルオブジェクトのデータを考慮する。幾何形状データ(特に、曲率、アール)が動きプロファイルオブジェクトに記憶される。
【0023】
関数のリストは、第1の切断パラメータセットから第2の切断パラメータセットまたはそのサブセットへの以下の変換を行うことができる:
【数2】
式中、
v
c:コマンドされた速度
F:送り速度
A:加速度
κ:切断される輪郭の曲率
D:材料厚
z
0:焦点位置
p
H:ガス圧
P
L:レーザ出力
z
N:ノズル距離
P
W:レーザのパルス幅
P
F:レーザのパルス周波数
BPP:ビームパラメータ積。
【0024】
変換アルゴリズムは、速度、すなわち、送り速度および設定点速度の2つの特性に基づく。
【0025】
変換アルゴリズムは好ましくは、切断中に実行され、本来意図された切断パラメータを動的に調整するために用いられる。次いでこの調整が、計算された第2の切断パラメータ(データ)セットとして制御目的のために機械の制御装置に送信される。
【0026】
概して、関数リストは以下、すなわち
u
*=f(x)
として表すことができ、
式中、u
*は、最適化された切断パラメータを表すベクトルである。ベクトルは、局所的に適合された焦点位置、ガス圧、レーザ出力、パルス幅、パルス周波数およびノズル距離からな構成される。実際、通常は焦点位置のみが調整される。最適化された切断パラメータは、関数f()およびその入力xに基づいて計算される。このことは、最適化された切断パラメータが局所的に、送り速度、切断速度および板金厚さなどの様々な入力に応じて決まることを意味する。各切断パラメータに関して、表現を単純にするためにf(x)として指定された別個の関数がある。f(x)は、以下の個々の関数、すなわち
【数3】
からなるベクトルである。
各周期(ミリ秒周期)において、関数f(x)は、最適化された切断パラメータu
*を得るために呼び出される。
【0027】
送り速度は、レーザ切断ヘッドを移動させることができる最大の達成可能な速度を表す。送り速度は主として、材料依存性(特に、切断される材料の厚さおよび/または種類)であり、レーザシステムの内蔵モータおよびドライブならびに機械的構成要素にも応じて決まる。送り速度は通常、ユーザインターフェースのフィールドを介してユーザによって入力されるか、またはアルゴリズム的に(例えばモデルベースで)自動計算される。送り速度はまた、制御ユニットによって指定することができる。
【0028】
送り速度とは対照的に、設定点速度は、幾何形状依存性である。設定点速度は、例えばCNC制御部によって計算することができる。定義上、設定点速度は送り速度以下である。設定点速度値は、特に曲率または角度の場合に送り速度値を下回る。値がこれを下回る場合、また、送り速度値の場合、第1の設定点値データセットの動的設定点値が補正されるべきである。しかしながら、本発明は、速度依存性の設定点値補正に限定されず、その理由はこの設定点値はまた、加速度、ジャークおよび/または軌道/幾何形状に応じて補正され得るからである。
【0029】
第2の切断パラメータデータセットを計算するそれぞれの機能の出力は、
u
*=[z
*
0,p
*
H,P
*
L,P
*
W,P
*
F,z
*
N]
であり、ここで、
*付き変数は、移動プロファイルオブジェクト適合された焦点位置、レーザ出力、ガス圧、パルス幅、パルス周波数、およびノズル距離である。したがって、本発明によれば、コーナ品質に関して最適化された切断パラメータと、切断幾何形状とを計算することができる:
【数4】
【0030】
各出力に関して、入力xに依存する、別個の関数がある。
【数5】
関数は線形関数または三角関数とすることができる。例えば、これにより結果として、底および指数ε
z0=2として正弦関数、すなわち
【数6】
を有する、速度依存性の焦点位置が得られる。
例えば、加速度に線形従属である焦点位置に関して、結果は以下、すなわち
【数7】
であり、式中、A
maxは、変更が適用されるべき最大の加速度である。より高い加速度は、いかなるさらなる変更ももたらさない。A
minは、変更が適用されることになる加速度を示す。より低い加速度はいかなるさらなる変更ももたらさない。
【0031】
動的設定点値、ここでは例えば焦点位置の適合または補正は、加速度に応じて行うこともできる。例えば、底および指数tε
z0=4として正弦関数による加速度依存性の焦点位置に関して、以下である。
【数8】
【0032】
ここに提示された方法により、著しい利点を達成することができる。このように、特に、その時点のプロセス条件(機械/幾何形状)を考慮することで、切断された部品の品質を増加させることができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、方法は、
切断される構成要素の材料特性、特に、板金厚さおよび/または材料タイプを取得することをさらに含み、
第2の切断パラメータデータセットを計算する変換アルゴリズムは、取得された材料特性、特に板金厚さおよび/または材料タイプを考慮する。
材料タイプは、構造用鋼、アルミニウムなどのような材料タイプを識別する。板金厚さは、切断パラメータの最大変化に影響を与える。例えば、速度v=0における鋼についての焦点位置の最大変化は、板金厚さDによって定められる、すなわち
【数9】
である。
【0034】
3mm鋼が切断される場合、(速度0における)最大変化は2.25mmである。同様に、構成段階では、例えば、別の定数を有する他の関係を定めることができ、したがって、式は、以下、すなわち
【数10】
である。
【0035】
したがって、切断パラメータの最大変化(上記式において、例えば
【数11】
のような)は、板金厚さDおよびさらなる調整可能なパラメータまたは前因子α
z0の係数である。材料のタイプおよび品質に応じて、この前因子α
z0を別様に選択することができる。しかしながら、切断パラメータの最大変化と板金厚さDとの間の関係は、非線形とすることもでき、そのため、例えば、以下の式、すなわち
【数12】
を用いることができる。
【0036】
レーザ出力は典型的に、0~約30kワットの範囲内である。ガス圧は、溶断時において1~25barの範囲内、ガス切断中に約0.5barである。焦点位置は、-100~+100mmの範囲内とすることができ、焦点直径は通常、100~600マイクロメートルの範囲内である。BPPは、1~5mm*mradの範囲内とすることができ、ノズル距離は、例えば0.1mm~数ミリメートルとすることができる。第1の切断パラメータデータセットについての補正値は、(適合または補正された切断パラメータを有する)第2の切断パラメータデータセットが依然としてこれらの上述した事前設定可能な目標範囲内にあるように選択される。
【0037】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、移動プロファイルオブジェクトは、切断幾何形状におけるある箇所に関する速度、加速度および/もしくはジャークについての値、ならびに/または、切断幾何形状のある位置における曲率についての値、または、例えば、経時的な速度プロファイル、加速度、もしくはジャークのような、経時的な上述した変数の推移を示す。
【0038】
本発明のさらなる有利な実施態様によれば、変換アルゴリズムは、メモリに記憶された関数セットから動的切断パラメータのそれぞれについての専用関数を計算することができる。
【0039】
別の有利な実施形態では、(関数リストの)関数セットはパラメータ化可能であるものとすることができる。このことは、方法が、新たな展開に連続的に適合されるとともに関数を単にパラメータ化することによって連続的に改善され得ることを意味する。
【0040】
別の有利な実施形態では、提供された第2の切断パラメータデータセットは、レーザ切断プロセスを制御および/または調整するためのレーザ切断機における制御装置に直接送信することができる。これによりオートメーション度が増す。
【0041】
別の有利な実施形態では、事前設定可能な変更条件が満たされた場合にのみ変換アルゴリズムが実行されることが提供されるとともに構成段階において設定され得る。変更条件は、(例えば、設定点速度が送り速度値よりも低い値xだけ下がる場合、または加速度が値yに達する場合、または曲率が値zなどを超える場合)、例えば、移動プロファイルオブジェクトの選択された値についての限界値を指定することによって、定めることができる。したがって、方法の適合性を高めることができる。
【0042】
別の有利な実施形態では、線形関数または三角関数を変換アルゴリズムにおいて実施することができる。関数は、f(x)=u*として最も一般的な形態で規定することができる。さらなる有利な実施形態では、変換アルゴリズムは、(追従される)軌道の各地点または断面について動的に第2の切断パラメータデータセットを計算することができる。このことは、種々の移動パターンを有する場合でも品質を確保することができることを意味する。さらなる有利な実施形態では、変換アルゴリズムについての入力変数として機能する、加速度および/またはジャークプロファイルを計算することができる。変換アルゴリズムによって計算される第2の設定点値データセットは、軌道に関して場所依存性および時間依存性である。したがって、第2の設定点値データセットは、軌道の各位置および各時点に関して動的に生成される。
【0043】
方法を用いての目的の達成を上記に記載した。このようにして述べた特徴、利点、または代替的な実施形態はまた、他の特許請求の範囲に記載の目的にも移行され、その逆もあるものとする。換言すると、該当する請求項(例えば、レーザ切断システムまたはコンピューティングユニットに関する)は、方法に関して説明および/または特許請求の範囲に記載された特徴を有してさらに展開されることもできる。それにより、方法の対応する機能的特徴は、対応する主題のモジュールによって、特に、システムまたはコンピュータ製品のハードウェアモジュールまたはマイクロプロセッサモジュールによって形成され、その逆もまた同じである。
【0044】
さらなる態様によれば、本発明は、変換アルゴリズムを実行する電子コンピューティングユニットであって、
第1の切断パラメータデータセット(例えば、ユーザインターフェース)を取得するインターフェースと、
移動プロファイルオブジェクトを抽出するように設計されているとともに、取得された第1の切断パラメータデータセットから第2の切断パラメータデータセットを計算および提供するために電子コンピューティングユニットのメモリにロード可能および/または実行可能に記憶される変換アルゴリズムを実行するようにさらに設計されているプロセッサであって、第2の切断パラメータデータセットは、抽出された移動プロファイルオブジェクトの関数として計算される、プロセッサと、
を有する、電子コンピューティングユニットに関する。
【0045】
電子コンピューティングユニットは、切断計画に読み取るインターフェースをさらに含むことができ、この切断計画から、例えば、第1の切断パラメータデータセットを計算することができ、次いで、切断計画が変換アルゴリズムによって認証または補正される。
さらなる態様によれば、本発明は、
制御装置で実施することができる、上記で説明したような電子コンピューティングユニットと、
制御装置によって制御および/または調整されるレーザ切断機と、
を有する、レーザ切断システムに関する。
【0046】
レーザ切断プロセスを動作させる設定点値に対する補正を計算する方法は好ましくは、コンピュータ実装される。すべてまたは選択された方法ステップは、プロセッサ(CPU、GPUなど)により1つまたは複数のコンピュータユニットで1つまたは複数のコンピュータプログラムによって実行することができる。方法は、種々のタイプの適したセンサ(光学、聴覚および/または他のタイプのセンサ)によってセンサデータ(例えば、その時点で測定された送り速度)を測定することを含むことができる。測定された信号のタイプに応じて、A/Dコンバータを用いてアナログ信号をデジタル信号に変換することができる。したがって、センサデータの測定はまた、デジタル信号に読み取ることを含む。
【0047】
目的に対する別の解決は、コンピュータプログラムがコンピュータで実行される場合に上記でより詳細に説明した方法の方法ステップをすべて行うコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体で記憶されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】コンピューティングユニットによって制御されるレーザ切断機の概略的な概観を示す図である。
【
図2】種々の実施形態における第2の切断パラメータセットを計算する方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の好ましい実施形態によるアーキテクチャの概略図である。
【
図4】本発明の第2の好ましい実施形態による代替的なアーキテクチャの概略図である。
【
図5】切断パラメータとしての加速度に線形従属である焦点位置の補正の一例を示す図である。
【
図6】別の例において、底および指数としての正弦関数による切断パラメータとしての焦点位置の加速度依存性の補正を示す図である。
【
図7】切断パラメータとしてのガス圧の、速度ベースの補正のさらなる例を示す図である。
【
図8a】従来技術による切断パラメータの補正のない切断結果を示す図である。
【
図8b】計算方法を用いることによる本発明による切断パラメータの補正を有する切断結果を示す図である。
【
図9】焦点位置の、速度依存性の変化のグラフ図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、典型的には2kW超の出力で動作するレーザ機Lのための切断パラメータを補正するコンピュータ実装方法に関する。本発明は、特に金属シートおよび管を切断するために用いることができる。
【0050】
本発明による方法は、特に、十分な切断品質を保証することができるようにレーザ切断ヘッドの設定点速度を減少せねばならない、小さなアールおよびコーナを切断する場合に、品質を高めるために切断パラメータを補正または適合するインテリジェント変換アルゴリズムを実施する。
【0051】
本出願人により試験シリーズにおいて本発明による方法の有利な技術的効果を試験した。非適合または非補正切断パラメータ、特に第1の切断パラメータデータセット1SPを用いて切断されたワークピースWSを、
図8Aに示す。
図8Aに見てとることができるように、切断部は、コーナおよびアールならびに切り口に溶融領域を有した。これとは対照的に、
図8Bでは、本発明による方法を用い、切断パラメータを補正し、ワークピースWSを、変換アルゴリズムによって計算された第2の切断パラメータデータセット2SPを用いて切断した。見てとることができるように、コーナおよびアールならび最初および最後の切断部において品質もまた優れている。本発明によれば、この品質は、一貫したまたはさらに向上した性能(部品を切断する時間)により確保することができる。
【0052】
図1は、例えば、ワークピースWSとも呼ばれるプレート状板金または金属管を切断するように設計された、ノズルDを有するレーザ切断機Lを示す。レーザ機Lの特定の構造は、本発明の実施とって重要ではない。通常、例えばフォトダイオード4の形態の複数のセンサをレーザヘッドに組み込んで、例えば、そのレーザヘッドに基づく切断結果の品質を評価することができるように切断ギャップを撮像することができる。レーザ機Lは、外部命令、場合によってはパラメータ化された命令を実施するように、また、レーザ切断プロセスを制御または調整するように設計された制御装置C(
図1に図示さず)を含むことができる。本例の場合、コンピューティングユニットREを、外部命令の少なくともいくつかを計算および提供するとともに実行のためにそれら外部命令を制御装置Cに送信するように設計することができる。コンピューティングユニットREは、ネットワークにおけるノードとして提供される電子エンティティである。コンピューティングユニットREは例えば、クラウドベースのサーバの一部とすることができる。電子コンピューティングユニットRE(以下、略してコンピューティングユニットREも呼ばれる)は、プロセッサPを備える。
図1により詳細に示すように、コンピューティングユニットREは、手順、機能、特に変換アルゴリズムを実行するプロセッサPを備える。コンピューティングユニットREは、他のエンティティとデータ交換する。特に、切断パラメータおよびそれぞれの機能を適合させるために機能のパラメータ化のためのパラメータを呼び出すためにコンピューティングユニットREがアクセスする外部メモリMEMを設けることができる。それぞれの、好ましくはパラメータ化された機能は次いで、コンピューティングユニットREにロードされ、そこで実行のために利用可能である。さらに、コンピューティングユニットREは、さらなるデータセットを受信するように設計されている。したがって、コンピューティングユニットREは、ユーザが入力を行うことができるユーザインターフェースUIを備えることができる。例えば、第1の切断パラメータデータセット1SPは、ユーザインターフェースUIで取得することができる。代替的に、第1の切断パラメータデータセット1DSを、例えば、標準パラメータデータセット(例えば、テーブル状データ構造)としてメモリから読み出すこともできる。コンピューティングユニットREはまた、特に切断計画spおよび/または切断計画関連データを受信するようにさらなる制御ユニットCNCとデータ交換することもできる。「切計画関連データ」は、切断計画spに含まれるかまたは切断計画から推定することができるかのいずれかであるデータである。切断計画関連データは例えば、送り速度、加速度、切断される幾何形状の曲率比などを含む。
【0053】
本発明の第1の変形例では、コンピューティングユニットREは、受信データから、特に切断計画spから、移動プロファイルオブジェクトbpo、および、場合によっては標準化された予め設定された切断パラメータを抽出または計算するように設計することができる。幾何形状(切断される部品の周)に関する特定の位置についてのレーザヘッドの駆動軸の速度、加速度および/またはジャーク(経時的導出)を、動きプロファイルオブジェクトbpoに記憶することができる。移動プロファイルオブジェクトbpoにおいて、切断幾何形状におけるある箇所についての曲率に関する値を、累積的または代替的に記憶することもできる。一変形例では、列挙した経時的な変数(速度、加速度、ジャーク、曲率)の推移もまた、移動プロファイルオブジェクトbpoに記憶することができる。
【0054】
本発明の第2の変形例では、移動プロファイルオブジェクトbpoは既に、例えばCNC制御時に、コンピューティングユニットの外部のエンティティで抽出されているものとすることができる。この例では、移動プロファイルオブジェクトbpoは、コンピューティングユニットREで計算される必要はなく、インターフェースを介して処理形態で既に読み取られ、直接処理され得る。
【0055】
第1の切断パラメータデータセット1SPおよび抽出された移動プロファイルオブジェクトbpoを取得した後、コンピューティングユニットREは、パラメータ化された関数リストの関数を用いる変換アルゴリズムを用いて、第1の切断パラメータデータセット1SPを第2の切断パラメータデータセット2SPに変換することができる。第2の切断パラメータデータセット2SPは、いわゆる変更されたCNCコードとして機能し、レーザ切断機L(またはその複数の軸/軸駆動部)を制御するレーザ切断機Lの内部制御装置Cに直接送信される。したがって、レーザ切断機Lは、これまでのように、CNC制御部の仕様により動作されるのではなく、第2の切断パラメータデータセット2SPに符号化される補正された設定値を含む変更コードにより動作される。
【0056】
図2は、種々の実施形態における(図に点線丸で表す)本発明による計算方法のシーケンスを示す。
方法の開始後、第1の切断パラメータデータセット1SPをステップS1において取得する。ステップS2において、移動プロファイルオブジェクトbpoが抽出される。本発明の第1の変形例では、次いで、変換アルゴリズムをステップS4において実行することができる。次いで、方法を終了することができる。本発明の第2の変形例では、切断される材料の材料特性を、ステップS3において任意選択的に取得することができる。この方法ステップでは、例えば、切断される材料(例えば板金)がどの程度の厚さであるのか、また、どんな種類の材料(例えば、アルミニウムまたは鋼等)であるのかを指定することができる。次いで、材料特性に関するこれらの上述した変数を、第2の切断パラメータデータセット2SPを計算する変換アルゴリズムによって考慮することができる。したがって、補正または適合された切断パラメータデータセット、すなわち第2の切断パラメータデータセット2SPを、それぞれの用途にさらに良好に一致させることができる。
【0057】
原則として、第1の切断パラメータデータセットの取得S1、材料特性の抽出S2および取得S3である方法ステップのシーケンスは、固定されておらず、方法ステップが種々のシーケンス(例えばS2、S3、S1)でまたはさらには並行して実行することができるように様々であるものとすることができる。
【0058】
好ましい実施形態では、計算された第2の切断パラメータデータセット2SPを、ステップS5において、制御および/または調整のためにレーザ切断機Lの制御装置Cに直接に自動的に送信することが行われる。しかしながら、このステップは任意選択的であり、したがって、
図2において点線で示されている。しかしながら、本発明の一変形例では、計算された第2の切断パラメータデータセット2SPが、ユーザインターフェースUIで出力され、認証時、補正された切断パラメータデータセットの認証を示す認証信号がユーザインターフェースUIで取得されるという点で認証プロセスに送られることを行うことができる。この場合、第2の切断パラメータデータセット2SPはもっぱら、認証信号が取得された後で制御装置Cに送信され、そのため、補正方法のセキュリティを増大させることができる。
【0059】
レーザ切断システムの考えられ得る構造設計が
図3に示されている。この変形例では、電子コンピューティングユニットREは、データ接続を介して外部エンティティとしてレーザ切断機Lに接続される。コンピューティングユニットREは、例えば、インターネット接続を介してレーザ切断機Lに接続されるクラウドベースのサーバ(
図3における「クラウド」)で展開することができる。これに関して、
図3に示す実施形態は、
図1においてより詳細に記載された実施形態と一致する。電子コンピューティングユニットREは、記載のように、第2の切断パラメータデータセット2SPを計算するように機能し、第2の切断パラメータデータセット2SPがデータ接続を介してレーザ切断機Lの制御装置Cに直接送信される。この場合、コンピューティングユニットREは、いわば、CNC制御部CNCとレーザ機の内部の制御装置Cとの間で実装することができる。代替的に、制御部CNCでコンピューティングユニットREを実施することも可能である。
【0060】
図3と比較すると、
図4は、代替的な実施形態を示す。この場合、コンピューティングユニットREは、レーザ切断機Lの制御装置Cに直接設置される。コンピューティングユニットREおよび/または制御装置Cは任意選択的に、特に制御データを受信するために、外部制御部CNCとデータ交換することができる。
既に上述したように、変換アルゴリズムは、関数リストの関数に基づいている。関数は線形関数または三角関数とすることができる。本発明の他の実施形態では、他のタイプの関数を選択することができる。例えば、変換アルゴリズムは、以下のように、底および指数ε
z0=2として正弦関数、すなわち
【数13】
を用いて、速度依存性の焦点位置を求めることができる。
【0061】
加速度に線形従属である焦点位置に関して、変換アルゴリズムは、関数リストの以下の関数、すなわち
【数14】
にアクセスすることができ、式中、A
maxである加速度は、変更が適用されるべき最大の加速度であり、より高い加速度は、いかなるさらなる変更ももたらさない。A
minは、
図5に示すような、変更が適用されることになる加速度を示す。より低い加速度はいかなるさらなる変更ももたらさない。例は、
【数15】
を有する。
線形関係が
図5に一例としてグラフで示されており、加速度が横座標に、適合された焦点位置f
z0(x)が縦座標に示されている。
焦点位置の加速度依存性の補正に関して、変換アルゴリズムは、例えば、以下のように、底および指数ε
z0=4として正弦関数、すなわち
【数16】
用いて、計算することができる。
図6は、焦点位置f
z0(x)と、Amax=4・(m/s
2)およびAmin=2・(m/s
2)との速度ベースの適合の一例を示す。この例では、「4」が正弦関数の指数として選択されており、代替的に、正弦二次関数を用いることができる。
ガス圧における速度依存性の変化に関して、変換アルゴリズムは、例えば、以下のように、底および指数ε
ph=3として正弦関数、すなわち
【数17】
を用いて、計算することができる。
一例が
図7にグラフで示されており、切断速度v
cが横座標に、切断速度の関数として最適化または適合された焦点位置が縦座標にプロットされている。
対応するグラフは、ガス圧が変換アルゴリズムによって加速度または速度に応じて調整される場合の結果である。
本発明のさらなる実施形態では、以下の、すなわち
【数18】
である、より複雑な関数と、速度、加速度、および、曲率依存性の調整の組み合わせとを用いることができ、ここで、曲率のアールは、切断計画spから読み取られ得る。指数は、ここでは例として「2」および「12」を有することができる。原則的に、関数の指数は、材料に応じて、また、パラメータ依存性に応じて、異なるように設定することができる。したがって、好ましくは指数をパラメータ化することができる。
図9もまた、(他の動的切断パラメータも表す)焦点位置の例を用いて切断パラメータの適合または補正が実行される状況を示す。変換アルゴリズムは好ましくは、材料および板金厚さに応じてスケーリングすることができる。
図9は、最大送り速度に対するその時点の送り速度の比がゼロであるかまたは非常に低い場合、すなわち、軌道断面を送り速度による最大可能よりもはるかに低速で移動することができる場合、焦点位置が最大に補正されることを示す。切断速度v
cが最大送り速度v
c=F
maxに対応する場合、焦点位置は適合されない、すなわち、Δz0/z0maxがゼロである。
【0062】
最後に、本発明および例示的な実施形態の説明は、本発明の特定の物理的実現に関する限定として理解すべきでないことに留意すべきである。本発明の個々の実施形態に関して説明および図示された特徴のすべては、それらの特徴の有利な効果を同時に実現するために、本発明による主題において、異なる組み合わせで提供することができる。
【0063】
本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、説明に示された特徴または図に示された特徴によって限定されない。
【0064】
本発明は、焦点位置などの特定のプロセスパラメータの設定についてだけでなく、例えば、ガス圧の調整または補正などの他のプロセスパラメータについても用いられ得ることが当業者には特に明らかである。さらに、デバイスまたはコンピューティングユニットの構成要素は、複数の物理的製品にわたって分散するように生産することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素(WS)のレーザ切断中にレーザ切断機(L)の
金属シートを切断するレーザ切断プロセスを制御および/または調整するための第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算する
コンピュータ実装方法であって、電子コンピューティングユニット(RE)で実行される以下の方法ステップ、すなわち
第1の切断パラメータデータセット(1SP)を取得するステップ(S1)と、
レーザ切断ヘッドによって行われる移動に関するデータおよび/または切断される幾何形状に関するデータ、特に、切断される輪郭の曲率および/またはアールに関するデータを有する移動プロファイルオブジェクト(bpo)を抽出するステップ(S2)と、
切断パラメータを動的に調整するために切断中に変換アルゴリズムを実行するステップ(S4)であって、
前記変換アルゴリズムは、
外部または内部メモリに記憶され得る関数リストに基づいた変換規則を用いることによって、取得された前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)から前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算および提供するために、前記電子コンピューティングユニットのメモリ
(MEM)にロード可能および/または実行可能に記憶され、前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、前記抽出された移動プロファイルオブジェクト(bpo)の関数として計算される、実行するステップ(S4)と、
を有し、
前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)および/または第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、動的切断パラメータ、すなわち、特に切断速度、焦点位置、パルスパターン、ノズル距離、ガス圧、レーザ出力、ビームパラメータ積/BPPおよび/または焦点直径を含み、
前記変換アルゴリズムは、前記メモリ(MEM)に記憶された関数セットから動的切断パラメータのそれぞれについて専用関数を計算する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、切断される前記構成要素(WS)の材料特性、特に板金厚さおよび/または材料タイプを取得するステップ(S3)をさらに含み、
前記第2の切断パラメータデータセットを計算する前記変換アルゴリズムは、取得された前記材料特性、特に前記板金厚さおよび/または前記材料タイプを考慮する、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載の方法であって、前記移動プロファイルオブジェクト(bpo)は、速度、加速度および/もしくはジャークについての値、ならびに/または、切断幾何形状におけるある箇所についての曲率もしくは経時的な上述した変数の推移を示す、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記関数セットはパラメータ化され得る、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、提供された前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、前記レーザ切断プロセスを制御および/または調整するための前記レーザ切断機(L)における制御装置(C)に直接送信される、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、事前設定可能な変更条件が満たされる場合に、特に、前記移動プロファイルオブジェクト(bpo)が所定の限界値を超えるかまたは前記所定の限界値を下回る場合にのみ実行される、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、線形関数または三角関数として実施される、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムは、各箇所についてまたは軌道の断面について動的に前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算する、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記変換アルゴリズムにおける入力変数として機能する加速度および/またはジャークプロファイルが計算される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムがコンピュータ、電子エンティティおよび/またはコンピューティングユニット(RE)で実行される場合に、請求項1から9のいずれか1項に記載された方法の方法ステップをすべて行う、コンピュータプログラムコードを有する、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
構成要素(WS)のレーザ切断中にレーザ切断機(L)の金属シートを切断するレーザ切断プロセスを制御および/または調整するための第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算する電子コンピューティングユニット(RE)であって、
第1の切断パラメータデータセット(1SP)を取得するインターフェース(UI)と、
プロセッサ(P)であって、
レーザ切断ヘッドによって行われる移動に関するデータおよび/または切断される幾何形状に関するデータ、特に、切断される輪郭の曲率および/またはアールに関するデータを有する移動プロファイルオブジェクト(bpo)を抽出するように設計され、
前記切断パラメータを調整するために切断中に変換アルゴリズムを実行するように設計され、
前記変換アルゴリズムは、
外部または内部メモリに記憶され得る関数リストに基づいた変換規則を用いることによって、取得された前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)から前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)を計算および提供するために、前記電子コンピューティングユニット(RE)のメモリ
(MEM)にロード可能および/または実行可能に記憶され、前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、前記抽出された動きプロファイルオブジェクト(bpo)の関数として計算され、また、
前記メモリ(MEM)に記憶された関数セットから動的切断パラメータのそれぞれについて専用関数を計算する変換アルゴリズムを実行するように設計され、
前記第1の切断パラメータデータセット(1SP)および/または前記第2の切断パラメータデータセット(2SP)は、動的切断パラメータ、すなわち、特に切断速度、焦点位置、パルスパターン、ノズル距離、ガス圧、レーザ出力、ビームパラメータ積/BPPおよび/または焦点直径を含む、プロセッサ(P)と、
を有する、ことを特徴とする電子コンピューティングユニット(RE)。
【請求項12】
請求項11に記載の電子コンピューティングユニット(RE)と、
制御装置(C、RE)によって制御および/または調整されるレーザ切断機(L)と、
を有する、ことを特徴とするレーザ切断システム。
【請求項13】
請求項12に記載のレーザ切断システムであって、前記電子コンピューティングユニット(RE)は、前記制御装置(C)で実施される、ことを特徴とするレーザ切断システム。
【国際調査報告】