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特表2023-541356オレフィン系ニトリルをヒドロシリル化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-02
(54)【発明の名称】オレフィン系ニトリルをヒドロシリル化するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230925BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
C07F7/18 P
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023511902
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2021044116
(87)【国際公開番号】W WO2022046360
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/071,388
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バーグマン、エバン
(72)【発明者】
【氏名】ハサン、トウヒド
(72)【発明者】
【氏名】ペイズリー、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】パナー、レーザ
(72)【発明者】
【氏名】ライシュ、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン、クリス
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H039CA92
4H039CF90
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ41
4H049VR22
4H049VR42
4H049VS19
4H049VT17
4H049VV02
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】
シアノアルキル官能性シランを調製するための方法が開示される。この方法は、オレフィン系ニトリルからシアン化物不純物を除去した後、ヒドリドシランでオレフィン系ニトリルをヒドロシリル化することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
1)シアン化物不純物を含む、A’)オレフィン系ニトリルを提供することと、
2)A’)前記オレフィン系ニトリルから前記シアン化物不純物の全部又は一部分を除去し、それによってA)精製オレフィン系ニトリルを生成することと、
3)20℃~150℃の温度で、
A)前記精製オレフィン系ニトリル、
B)式R HSiX(3-x)(式中、下付き文字xは、0、1、又は2であり、各Rは、独立して選択される1~18個の炭素原子の一価炭化水素基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子及び式ORのアルコキシ基からなる群から選択される)を有するヒドリドシラン、並びに
C)出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて5ppm~<200ppmのPtを提供するのに十分な量の白金ヒドロシリル化反応触媒
を含む、出発物質を合わせることと、
を含む、方法。
【請求項2】
A’)前記オレフィン系ニトリルが、3-ブテンニトリル及び2-メチル-3-ブテンニトリルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A’)において、前記シアン化物不純物が、25ppm~125ppmのH-C≡Nを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
B’前記ヒドリドシランが、0又は1であるx、アルキル基であるR、及びアルコキシ基であるXを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
x=1であり、Rがメチル基であり、各Xがメトキシ基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記白金ヒドロシリル化反応触媒が、塩化白金酸、Karstedt触媒、又は炭素、シリカ、若しくはアルミナから選択される担体上の白金を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程2)が、A’)前記オレフィン系ニトリルと、銅、鉄、銀、又はニッケルからなる群から選択される単体金属とを合わせることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程2)が、A’)前記オレフィン系ニトリルと、活性炭及びモレキュラーシーブからなる群から選択される吸着剤とを合わせることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程2)が、A’)前記オレフィン系ニトリルを、銅、鉄、銀、若しくはニッケル、又はこれらの金属の酸化物からなる群から選択される金属に合わせ、その後、生成物と吸着剤とを合わせて、A)前記精製オレフィン系ニトリルを形成することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程2)が、ストリッピング、蒸留、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程2)で生成されたA)前記精製オレフィン系ニトリルが、0ppmのシアン化物不純物から、工程1)で提供されたA’)前記オレフィン系ニトリルよりも少なくとも10ppm少ないシアン化物不純物までを含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
A)前記精製オレフィン系ニトリルが、5ppm~40ppmのシアン化物不純物を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程3)の際及び/又は後にD)促進剤を添加することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
溶媒中で1つ以上の出発物質を送達することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式R SiX(3-x)(式中、下付き文字x及びRは、上で定義された通りであり、Rは、式N≡C-D-の基であり、Dは、二価炭化水素基である)の化合物を含む生成物を生成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年8月28日に出願された米国仮特許出願63/071,388号の利益を主張するものである。米国仮特許出願第63/071,388号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、オレフィン系ニトリル及びヒドリドシランをヒドロシリル化するための改良された方法に関する。より具体的には、本発明は、2-メチル-3-ブテンニトリル及びメチルジメトキシシランの白金触媒ヒドロシリル化によって3-シアノブチル-メチルジメトキシシランを調製するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3-シアノブチル-メチルジメトキシシランは、2-メチル-3-ブテンニトリル(市販されているオレフィン系ニトリル)及びメチルジメトキシシランから白金触媒ヒドロシリル化によって調製されている。典型的な触媒充填では、十分な反応物質転化率を達成するために、(2-メチル-3-ブテンニトリル及びメチルジメトキシシランの合計重量に基づいて)200ppmを超える白金を反応混合物に提供するのに十分な量を必要とする。白金触媒は高価であり、次第に不足してきている。
【0004】
【化1】
【発明の概要】
【0005】
方法は、
1)シアン化物不純物を含む、A’)オレフィン系ニトリルを提供することと、
2)A’)当該オレフィン系ニトリルからシアン化物不純物の全部又は一部分を除去し、それによってA)精製オレフィン系ニトリルを生成することと、
3)20℃~150℃の温度で、
A)当該精製オレフィン系ニトリル、
B)式R HSiX(3-x)(式中、下付き文字xは、0、1、又は2であり、各Rは、独立して選択される1~18個の炭素原子の一価炭化水素基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子及び式ORのアルコキシ基からなる群から選択される)を有するヒドリドシラン、並びに
C)出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて5ppm~<200ppmのPtを提供するのに十分な量の白金ヒドロシリル化反応触媒
を含む、出発物質を合わせることと、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
オレフィン系ニトリルは、当該技術分野において既知であり、市販されている。好適なオレフィン系ニトリルは、商業的供給源、例えば、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri,USA);INVISTA North America S.ar.l.;TCI America,Inc.;又は東京化成工業(東京)によって提供され得る。オレフィン系ニトリルは、式R-C≡N(式中、Rは、ビニル、アリル、メチルプロペニル、ブテニル、メチルブテニル、及びペンテニルによって例示されるアルケニル基などの脂肪族不飽和一価炭化水素基を表す)を有し得る。オレフィン系ニトリルは、アクリロニトリル(CH=CHC≡N)、2-ブテンニトリル(CH-CH=CH-C≡N)、3-ブテンニトリル(CH=CH-CH-C≡N)、2-メチル-3-ブテンニトリル(上に示す、CAS番号16529-56-9)、及び2-ペンテンニトリル(CH-CH-CH=CH-C≡N)によって例示される。あるいは、オレフィン系ニトリルは、3-ブテンニトリル及び2-メチル-3-ブテンニトリルからなる群から選択されてもよい。あるいは、オレフィン系ニトリルは、2-メチル-3-ブテンニトリルであってもよい。
【0007】
オレフィン系ニトリルは、上に提供したように、典型的には、シアン化物不純物を含有し、当該シアン化物不純物は、式X’-C≡N(式中、X’は、水素、ナトリウム、又はカリウムである)の化合物を指す。あるいは、シアン化物不純物は、式H-C≡Nのシアン化水素であってもよい。シアン化物不純物は、提供されるオレフィン系ニトリルの重量に基づいて、25ppm以上の量で存在してよい。あるいは、シアン化物不純物は、同じ基準で30ppm以上、あるいは35ppm以上、あるいは40ppm以上、あるいは45ppm以上の量で存在してもよい。同時に、シアン化物不純物は、同じ基準で最高200ppm、あるいは最高175ppm、あるいは150ppm、あるいは125ppmの量で存在してよい。あるいは、シアン化物不純物は、提供されるオレフィン系ニトリルの重量に基づいて、>25ppm~200ppm、あるいは>25ppm~125ppm、あるいは45~125ppmの量で存在してもよい。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、シアン化物不純物がオレフィン系ニトリルのヒドリドシランとのヒドロシリル化反応を阻害し得ることを見出した。理論に束縛されるものではないが、H-C≡N含量は、白金触媒充填量が減少するにつれて触媒活性が失われることに関連している可能性があると考えられる。理論に束縛されるものではないが、オレフィン系ニトリルからシアン化物不純物の全て又は一部分を除去した後、オレフィン系ニトリル及びヒドリドシランをヒドロシリル化することにより、収率を改善することが可能になり、高価な白金触媒の使用量の低減を実現することが可能になり、又はこれらの両方が可能になると考えられる。更に、ヒドロシリル化反応が、より予測可能に進行し、反応物質の滞留の影響を受けにくい、及び/又は副生成物のSiH含量を最小化する場合、プロセスも安全性も改善され得る。
【0009】
上記方法の工程2)において、精製オレフィン系ニトリルは、シアン化物不純物の全て又は一部分を除去することによって調製され得る。シアン化物不純物を除去するための方法は、オレフィン系ニトリルを活性炭又はモレキュラーシーブなどの吸着剤と接触させることを含む。活性炭は、木質、ヤシ殻、又は亜炭ベースであってよく、様々な方法によって処理することができ、接触のための適切な表面積を提供する大きさにすることができる。例えば、本明細書で使用するための1つの好適な種類の活性炭は、1mmの平均粒径を与える12×40のメッシュサイズで酸洗浄亜炭系活性炭を含む。工程2)におけるオレフィン系ニトリルと吸着剤との接触は、不活性雰囲気下で行ってよい。接触のための圧力は、例えば、0~50psigで変更し得る。温度は、例えば、20~60℃で変更し得る。接触時間は、例えば、1~24時間、あるいは1~8時間で変更し得る。吸着剤の量は、吸着剤とオレフィン系ニトリルとの合計重量に基づいて1重量%~10重量%、あるいは3重量%~5重量%であってよい。吸着剤の粒径は、例えば、1mm~2mmであってよい。
【0010】
あるいは、工程2)は、オレフィン系ニトリルを、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される金属を粉末、粒子、又は基材上の金属として含む金属吸収剤と接触させることを含んでいてもよい。金属吸収剤は、単体のFe、Cu、Ag、又はNiであってよい。あるいは、金属吸収剤は、単体のFe、Cu、及びAgからなる群から選択されてもよい。あるいは、金属吸収剤は、炭素又はシリカなどの基材に結合している上述の金属であってもよい。金属吸収剤は、不活性条件などの金属の酸化を回避又は最小化する条件下で使用してよい。接触は、0~50psigなどの広範囲の圧力下で行ってよい。接触は、様々な温度下で行ってよく、例えば20~60℃が好ましい。接触は、0~50psigなどの広範囲の圧力下で行ってよい。接触は、20~60℃などの様々な温度下で行ってよい。接触は、ある時間、例えば、1~24時間、あるいは1~8時間にわたって行ってよい。金属吸収剤の量は、金属吸収剤とオレフィン系ニトリルとの合計重量に基づいて1重量%~10重量%、あるいは3重量%~5重量%であってよい。金属吸収剤の粒径は、例えば、1mm~2mmであってよい。理論に束縛されるものではないが、金属は、金属とシアン化物不純物との錯体を形成することができ、これは、次いで、上述のように、濾過によって及び/又は活性炭などの吸着剤と接触させることによって除去することができると考えられる。理論に束縛されるものではないが、オレフィン系ニトリルを金属吸収剤と接触させることにより、シアン化物-金属錯体を形成することができ、次いで、上記のように、吸着剤と接触させることによって(例えば、金属が可溶性である場合)及び/又は濾過によって(例えば、基材に結合している金属を使用する場合、又は吸着剤と接触させた後)、シアン化物-金属錯体を除去することができると考えられる。
【0011】
あるいは、工程2)は、オレフィン系ニトリルを、Fe、Cu、Ag、又はNiの酸化物からなる群から選択される金属酸化物吸収剤と接触させることを含んでいてもよい。接触は、0~50psigなどの広範囲の圧力下で行ってよい。接触は、様々な温度下で行ってよく、例えば20~60℃が好ましい。工程2)における接触は、不活性雰囲気下で行ってよい。接触は、0~50psigなどの広範囲の圧力下で行ってよい。接触は、20~60℃などの様々な温度下で行ってよい。接触は、ある時間、例えば、1~24時間、あるいは1~8時間にわたって行ってよい。吸着剤の量は、金属酸化物とオレフィン系ニトリルとの合計重量に基づいて1重量%~10重量%、あるいは3重量%~5重量%であってよい。金属酸化物の粒径は、例えば、1mm~2mmであってよい。理論に束縛されるものではないが、金属酸化物中の金属は、金属とシアン化物不純物との錯体を形成することができ、次いで、この錯体は、濾過によって除去することができると考えられる。
【0012】
あるいは、オレフィン系ニトリルを、ストリッピング若しくは蒸留してもよい、及び/又は窒素若しくはアルゴンなどの別の不活性ガスでスパージしてもよい。シアン化物不純物は、最初の「初」留分(“heads”cut)で除去され、精製オレフィン系ニトリルをポットに残すことができる。これは、初留分の除去を達成するのに必要な温度を制限するために、大気圧付近で行ってよい。不活性ガスでスパージする場合、ガスは窒素であってよい。
【0013】
あるいは、上記の方法のうちの2つ以上を使用してもよく、例えば、オレフィン系ニトリルを金属吸収剤及び吸着剤と同時に又は逐次接触させてもよい(例えば、オレフィン系ニトリルを金属吸収剤と接触させ、濾過し、その後、活性炭などの吸着剤と接触させてもよい)。工程2)では、工程1)で提供されたA’)オレフィン系ニトリル中に存在するシアン化物不純物の量と比較して、A)オレフィン系ニトリル中のシアン化物不純物の量を低減する。例えば、精製オレフィン系ニトリルは、0ppmのシアン化物不純物を含有し得る。あるいは、精製有機ニトリルは、工程1)で提供されたA’)オレフィン系ニトリルと比較して、工程2)の後に少なくとも10ppm少ないシアン化物不純物を含有し得る。
【0014】
上記のように調製されたA)精製オレフィン系ニトリル、B)ヒドリドシラン、及びC)白金ヒドロシリル化反応触媒を含む、出発物質は、上記の方法の工程3)において合わせられる。任意選択で加熱しながら、混合などの任意の好都合な手段によって合わせてよい。例えば、工程3)は、不活性雰囲気下で、20℃~150℃、好ましくは60~100℃の温度で行ってよい。工程3)は、不活性雰囲気下で行ってよい。圧力は重要ではなく、例えば、0~50psigであってよく、あるいは、利便性のため周囲圧力を使用してもよい。工程3)は、反応の進行を管理するために加熱又は冷却しながら、バッチ式、半バッチ式、又は連続式で行ってよい。
【0015】
出発物質B)、ヒドリドシランは、式R HSiX(3-x)(式中、下付き文字xは、0、1、又は2であり、各Rは、独立して選択される1~18個の炭素原子の一価炭化水素基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子及び式ORのアルコキシ基からなる群から選択される)を有し得る。あるいは、ヒドリドシランは、アルコキシシランであってもよい。出発物質B)のためのアルコキシシランの例としては、メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、トリエトキシシラン、エチルジエトキシシランが挙げられる。好適なヒドリドシランは、当該技術分野において公知であり、例えばDow Silicones Corporation(Midland,MI,USA)から市販されている。出発物質A)及びB)は、1:1のモル当量のA)とB)とを提供するのに十分な量で使用され得る。あるいは、モル過剰のA)又はB)を使用してもよい。例えば、出発物質A)とB)とのモル比(A/B比)は、10/1~1/10、あるいは2/1~1/2、あるいは1/1.5~1.5/1、あるいは1/1~1.1:1、あるいは1.1/1~1/1であってよい。
【0016】
出発物質C)は、白金ヒドロシリル化反応触媒である。白金ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において公知であり、市販されている。白金ヒドロシリル化反応触媒は、白金金属を含んでいてよく、これは、任意選択で、シリカ、アルミナ、又は活性炭などの担体上に沈着していてもよい。あるいは、白金ヒドロシリル化反応触媒は、白金の化合物、例えば、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物、又は二塩化白金であってもよい。あるいは、白金ヒドロシリル化反応触媒は、このような化合物と、例えば低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedt触媒)が挙げられる。あるいは、白金ヒドロシリル化反応触媒は、マトリックス又はコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された上記の白金化合物又は白金錯体であってもよく、例えば、当該化合物又は錯体は、樹脂マトリックス中でマイクロカプセル化されてもよい。あるいは、白金ヒドロシリル化反応触媒は、塩化白金酸、Karstedt触媒、又は炭素、シリカ、若しくはアルミナから選択される担体上の白金を含んでいてもよい。例示的な白金ヒドロシリル化反応触媒は、例えば、Speierの米国特許第2,823,218号;Ashbyの米国特許第3,159,601号;Lamoreauxの米国特許第3,220,972号;Willingの米国特許第3,419,593号;Modicの米国特許第3,516,946号;Karstedtの米国特許第3,814,730号;Leeらの米国特許第3,989,668号;Leeらの米国特許第4,766,176号;Leeらの米国特許第4,784,879号;Togashiの米国特許第5,017,654号;Chungらの米国特許第5,036,117号;及びBrownらの米国特許第5,175,325号;並びにTogashiの欧州特許出願公開第0 347 895(A)号に記載されている。白金ヒドロシリル化反応触媒は、市販されており、例えば、SYS-OFF(商標)4000触媒及びSYL-OFF(商標)2700が、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。白金ヒドロシリル化反応触媒は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、5ppm~200ppm、あるいは5ppm~<200ppm、あるいは5ppm~100ppm、あるいは35ppm~70ppmの白金を提供するのに十分な量で使用してよい。
【0017】
上記の方法は、任意選択で、工程3)の際及び/又は後に出発物質D)、促進剤を添加することを更に含んでいてもよい。ヒドロシリル化反応促進剤は、当該技術分野において公知であり、オレフィン系ニトリルの反応を改善するために適用することもできる。
【0018】
様々なカルボン酸を、本明細書に記載の方法において促進剤として使用することができる。例えば、ネオデカン酸を促進剤として使用してよい。存在する場合、カルボン酸は、>0:1~1:1、あるいは0.005:1~0.02:1のカルボン酸:(ヒドリドシラン+オレフィン系ニトリル)を提供するのに十分な量で添加してよく、これは以下の理由による:0.005:1未満の成分比では、生成物の選択性及び生成物の収率に関する効果が不十分になる場合があるが、0.02:1を超える比では、依然として本発明の有利な効果を生じさせる一方、過剰に材料が失われる場合がある。
【0019】
上記の方法は、任意選択で、E)溶媒中で上記の出発物質のうちの1つ以上を送達することを更に含んでもよい。例えば、出発物質C)ヒドロシリル化反応触媒を溶媒中で送達してもよい。好適な溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルキルハロゲン化物、及び芳香族ハロゲン化物によって例示される有機液体が挙げられるが、これらに限定されない。炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ヘキサデカン、イソパラフィン、例えばIsopar L(C11~C13)、Isopar H(C11~C12)、水添ポリデセンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ポリアルキルシロキサン及び芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。好適な蒸気圧を有するポリアルキルシロキサンを溶媒として使用してもよく、これらとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサンペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。0.5~1.5cStのポリジメチルシロキサンなどの低分子量ポリアルキルシロキサンは、当該技術分野において既知であり、Dow Silicones Corporationから市販されているDOWSIL(商標)200 Fluids及びDOWSIL(商標)OS FLUIDSとして市販されている。
【0020】
溶媒の量は、出発物質A)、B)、及びC)、並びに存在する場合はD)の各々の種類及び量、並びに互いの相対的な適合性、並びにそれらを合わせるために使用される機器の種類を含む、様々な要因に応じて異なる。しかしながら、溶媒の量は、出発物質C)の重量に基づいて、0重量%~95重量%であってよい。
【0021】
上記の方法では、式R SiX(3-x)(式中、下付き文字x及びRは、上記で定義されたとおりであり、Rは、式N≡C-D-の基であり、Dは、二価炭化水素基(例えば、N≡C-CH(CH)-CH-CH-)である)の化合物を含む、生成物を生成する。化合物は、シアノアルキル官能性アルコキシシランであってもよい(すなわち、XがORである場合)。(3-シアノブチル)メチルジメトキシシランなどのシアノアルキル官能性アルコキシシランは、例えば、米国特許第8,656,586号に記載されているように、電気ケーブルを処理するのに有用である。
【0022】
生成物は、未反応の出発物質、触媒、促進剤、及び使用される場合は溶媒を更に含んでいる場合がある。したがって、方法は、任意選択で、生成物から化合物を回収することを更に含んでもよい。回収は、ストリッピング及び/又は蒸留などの任意の好都合な手段によって行ってよい。
【実施例
【0023】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明することを意図しており、本特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈するべきではない。これらの実施例で使用した出発物質を表1に記載する。
【0024】
【表1】
【0025】
この比較例1では、2M3BN及びメチルジメトキシシランを以下の条件下でヒドロシリル化した。各々長さ19.7cm(7.75インチ)及び直径1.9cm(3/4インチ)の寸法のガラス管型反応器内で、1.17mLのメチルジメトキシシラン、1.19mLの2M3BN(メチルジメトキシシランに対して25%モル過剰)、及び35μLのネオデカン酸を用いて、反応混合物を調製した。各管型反応器をドライアイス上で冷却し、次いで、以下の表2にまとめたとおり、異なる管型反応器内において反応混合物中の様々なPt濃度を目標として、1重量%の白金を含有している得られた触媒溶液が添加されるように、Karstedt触媒の溶液をトルエン中に溶解させた。2M3BN中のシアン化物不純物濃度は45ppmであると測定され、これは10molの2M3BN当たり140.4molのシアン化物不純物のモル濃度に換算される。異なる量のPt触媒(Karstedt触媒を希釈するためにトルエン溶媒を使用して1重量%Pt溶液を作製し、次いで、様々な量の1重量%Pt溶液を添加した)を使用して、100℃において1時間の反応時間で、ヒドロシリル化反応を完了した。溶出液をGCによって分析し、限定試薬の転化率を表2に示す。この比較例は、Pt濃度が低下するにつれて転化が著しく妨げられることを示した。
【0026】
この実施例2では、2M3BNを精製した後ヒドロシリル化したことを除いて、比較例1のヒドロシリル化を繰り返した。比較例1で使用したものと同じ2M3BNを、Cu床、続いて、亜炭系活性炭(AC)に通すことによって精製して、シアン化物不純物含量を減少させた。Cu及びACの、処理された2M3BNに対する質量比は3%であった。処理後の2M3BNのシアン化物不純物濃度は7.3ppmであると測定され、これは10molの2M3BN当たり22.8molのシアン化物不純物のモル濃度に換算され、83.8%減少していた。表2は、Pt濃度が低下した際、限定試薬の高い転化率が維持されたことを示す。
【0027】
この実施例3では、Cu及びACの床を再利用したことを除いて、実施例2のヒドロシリル化を繰り返した。2M3BNは、比較例1で使用したものと同じであった。この実施例3で使用した精製2M3BNは、各々3%のCu/ACの2M3BNに対する質量比で、実施例2に記載した床に通した材料の第4のアリコートとして得られた。表2は、Pt濃度が低下した際、転化率が維持されたことを示す。この実施例3は、床を再利用できることを示す。
【0028】
この比較例4では、1.19mLの2M3BNの代わりに0.97mLの3BNを使用したことを除いて、比較例1の反応を繰り返した。3BN中のシアン化物不純物濃度は25.6ppmであると測定され、これは10^6molの3BN当たり68molのシアン化物のモル濃度に換算される。
【0029】
この実施例5では、使用前に3BNを精製してシアン化物不純物の含量を減少させたことを除いて、比較例4の反応を繰り返した。3BNをCu及びACの床に通すことによって、精製を行った。Cu及びACの、処理された3BNに対する質量比は3%であった。処理後のシアン化物不純物濃度は5.2ppmであると測定され、これは10モルの3BN当たり13.8モルのシアン化物のモル濃度に換算され、79.6%減少していた。この実施例5は、Pt濃度が低下した際であっても、転化率が維持されたことを示した。
【0030】
【表2】
【0031】
この参考例6では、2M3BNのサンプルを得、シアン化物不純物濃度を低下させるための精製の前後に分析した。金属処理は、使用した場合、活性炭処理と同時に又はその前に行った。金属処理を最初に行った場合、これは、以下の表3において「段階的」と記される。Cu粉末又はAg粉末(表3に示す量)を未処理の新たな2M3BNに添加することによって、金属処理を行った。サンプルを1日間激しく振盪し、次いで、0.45μmシリンジフィルターで濾過した。活性炭処理を行った場合、濾過した2M3BNのサンプルに、粉砕した又は粉砕していない、酸性、塩基性、又は中性の木質系活性炭を添加し、サンプルを1日間振盪した。次いで、別の0.45μmシリンジフィルターを通してサンプルを濾過した。処理の前後にイオン選択性電極を用いてCN-イオン含量を測定して、濃度の低下を求めた。サンプルを以下の表3にまとめる。
【0032】
【表3】
【0033】
この参考例7では、上記表3の最終行に従って調製された精製2M3BN及び比較用の未精製2M3BNを、以下のヒドロシリル化反応において使用した。窒素の管ヘッドスペースをこれらの実験に使用した。2.5mLのメチルジメトキシシラン、2.5mLの精製2M3BN、及び44μLのネオデカン酸を、各々長さ19.7cm(7.75インチ)及び直径1.9cm(3/4インチ)の寸法のガラス管型反応器に添加した。各々の管型反応器をドライアイスで冷却し、次いで、反応混合物中50ppmのPtを目標として20μLの触媒溶液を添加した後、管を80℃のヒーターブロック上に置いた。触媒溶液は、得られる触媒溶液が1重量%のPtを含有するようにキシレンで希釈されたKarstedt触媒であった。管をヒーターブロック上に1時間放置し、次いで、GCを用いて反応の進行を測定した。以下の表4に示す結果は、試験した条件下で、段階的処理によって有益な結果が得られたことを示す。
【0034】
【表4】
【0035】
この参考例8では、様々な吸着剤を用いて2M3BNを精製した後、ヒドロシリル化反応で使用した。精製は以下のとおり行った:液面が吸着剤の高さの直上になるように、吸着剤を5mLの2M3BNに添加した。得られた混合物を、定期的に振盪しながら5日間浸漬した。その後、0.2μmのフィルターを用いて吸着剤から液体をシリンジ濾過した。表5に、調製された2M3BNサンプルをまとめる。
【0036】
【表5】
【0037】
次いで、表5の2M3BNサンプルを以下のとおりヒドロシリル化反応に使用した:窒素の管ヘッドスペースをこれらの実験に使用した。比較例1と同寸法のガラス管に、1.75mLのメチルジメトキシシラン、1.35mLの2M3BN、及び28μLのネオデカン酸を添加した。各管をドライアイスで冷却し、次いで、反応混合物中250ppmのPtを目標として75μLの触媒溶液を添加した後、管を80℃のヒーターブロック上に置いた。触媒溶液は、溶液が1%のPtを含有するようにキシレンで希釈したKarstedt触媒であった。5時間後、GC分析を行って反応の進行を測定した。結果を以下の表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
この参考例8は、銀で2M3BNを精製するとヒドロシリル化合成の収率が改善したことを示した。活性炭及びモレキュラーシーブで2M3BNを処理すると、ヒドロシリル化の収率が適度改善された。理論に束縛されるものではないが、8cにおける否定的な結果は、金属酸化物及び/又は金属酸化物とシアン化物不純物との錯体による反応の阻害に起因するものであったと考えられる。したがって、シアン化物不純物を除去するために金属酸化物を使用する場合、例えば濾過を介して任意の金属酸化物及び/又はその錯体を除去した後、本明細書に記載の方法の工程3)とすべきであると更に考えられる。
【0040】
この実施例9では、バッチ蒸留とそれに続くヒドロシリル化を介して、2M3BNからシアン化物不純物を除去した。バッチ蒸留は、1Lの3つ口フラスコ及び10段トレイガラスカラムを用いて行った。水凝縮器を使用して材料を凝縮させ、それを50mL受け器で回収した。加熱マントルを使用してフラスコに入熱注入し、撹拌子で混合した。450グラムの2M3BNをフラスコに充填した。フラスコを加熱し、30.1グラムの材料を1:1の還流比でオーバーヘッド蒸留した。フラスコに残った精製2M3BNは、シアン化物不純物が53μg/mLから8μg/mLに減少していることが見出された。
【0041】
出発2M3BN及び精製2M3BNの両方を、比較のためにヒドロシリル化反応に使用した。ヒドロシリル化反応は半バッチ式で行った。270gの2M3BN、13.6gのネオデカン酸、及び0.42gのKarstedt触媒(24%Pt)を3つ口フラスコに充填した。333.7gのメチルジメトキシシランをシリンジポンプに充填した。30gの2M3BNを13.6gのネオデカン酸と混合し、第2のシリンジポンプに添加した。シリンジポンプの内容物を6時間にわたって計量注入した。反応器内容物の液体温度は80~85℃で維持した。GCを使用して、反応の程度を測定した。
【0042】
比較サンプル9-1では、53μg/mLのシアン化物不純物を含有する対照2M3BNを用いて反応を行った結果、メチルジメトキシシランの転化率は97.98%になった。8μg/mLのシアン化物不純物を含有する精製2M3BNを用いて反応を行った結果、メチルジメトキシシランの転化率は99.99%になった。
【0043】
蒸留による2M3BNの精製は、シアン化物不純物濃度を低下させるのに有効であった。精製2M3BNは、改善されたヒドロシリル化反応性能を有し、残留SiHが対照よりも99.5%多く減少した。精製2M3BNを使用した場合の反応粗製物中のSiHがわずか0.4ppmであるのに対して、対照2M3BNを使用した場合、サンプルは反応粗製物中に96ppmの残留SiHを有していた。低レベルのSiHを達成することは、廃棄物を安全に廃棄するために重要である。
【0044】
この実施例10では、シアン化物不純物含量を減少させ、ヒドロシリル化性能を改善するために、2M3BNの蒸留を以下のように行った。250mLの3つ口フラスコ及び10段トレイガラスカラムを用いたバッチ蒸留を使用した。水凝縮器を使用して材料を凝縮させ、それを50mL受け器で回収した。加熱マントルを使用して3つ口フラスコに熱注入し、撹拌子で混合した。148.8gのTCI製2M3BNをフラスコに充填した。フラスコを122℃に加熱し、カラムを1時間全還流下に置いた。次いで、様々な塔頂留分を回収した。
【0045】
様々な蒸留留分を用いてヒドロシリル化反応を行った。窒素の管ヘッドスペースをこれらの実験に使用した。1.0mLのメチルジメトキシシラン、0.8mLの2M3BNを、比較例1の寸法のガラス管に添加した。管をドライアイス上で冷却し、次いで、反応混合物中100ppmのPtを目標として触媒溶液を添加した。管を100℃のヒーターブロック上に2時間置き、次いで、GCを使用して反応の進行を測定した。結果を、以下の表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
理論に束縛されるものではないが、この実施例9は、2M3BNを蒸留してヒドロシリル化反応性を改善できることを示したと考えられる。より多量の(より低沸点の)シアン化物不純物を含有していた蒸留の初期の留分は、ヒドロシリル化反応において性能が非常に劣っており、対照よりも更に劣っていた。一方、蒸留の後期の2M3BN留分(例えば、留分4~8)は、より少ないシアン化物不純物を含有しており、ヒドロシリル化反応において対照(未蒸留2M3BNを使用)よりも性能がはるかに良好であった。
【0048】
産業上の利用可能性
本発明者らは、驚くべきことに、シアン化物不純物がオレフィン系ニトリル及びヒドリドシランのヒドロシリル化に対する阻害剤として作用し得ることを見出した。具体的には、シアン化物不純物含量は、白金触媒の活性損失に直接関連することが見出された。オレフィン系ニトリル中のシアン化物不純物の量をわずか10ppm減少させただけで、同じ又はより少ない白金金属含量で限定試薬の転化率が上昇することが見出された。
【0049】
用語の使用
発明の概要及び要約は、参照により本明細書に組み込まれる。全ての量、比、及び百分率は、明細書の文脈により別途指示のない限り、重量によるものである。明細書の文脈により別途指定がない限り、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ1つ以上を指す。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、>0.3~0.8の範囲の開示には、>0.3~0.8の範囲だけでなく、個別に0.4、0.55、0.6、0.7、0.78、及び0.8、並びにその範囲に包括される任意の他の数値も含まれる。更に、例えば、>0.3~0.8の範囲の開示には、例えば0.4~0.6、0.35~0.78、0.41~0.75、0.78~0.8、0.32~0.41、0.35~0.5、及びその範囲に包括される任意の他のサブセットも含まれる。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、ビニル、アリル、又はヘキセニルのマーカッシュ群の開示は、個別にそのメンバーであるビニル;サブグループのビニル及びヘキセニル;並びにそれに包含される任意の他の個々のメンバー及びサブグループを包含する。
【0050】
本明細書で使用する略語は、以下の表8のとおり定義される。
【0051】
【表8】
【0052】
サンプルは、以下の条件下でGCによって分析した:
使用したガスクロマトグラフは、水素炎イオン化検出器(FID)においてRTX-1カラム(30m×250μm×1.00μm公称)を使用してChemstation OpenLab CDS Revision C.01.07を実行するAgilent 7890Aであった。サンプル注入にはオートサンプラーを使用した。方法のパラメータは以下のとおりであった:
・開始:50℃-1分保持
・勾配:15℃/分
・終了:260℃-5分保持
・注入ポート:250℃
・検出器:300℃
・ヘリウム流量-2.1mL/分
・スプリット50:1
・注入体積:1.0μL
【0053】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、シアノアルキル官能性シランを調製するための方法は、
1)≧40ppmの量のシアン化物不純物を含む、A’)オレフィン系ニトリルを提供することと、
2)A’)当該オレフィン系ニトリルから当該シアン化物不純物の全部又は一部分を除去し、それによってA)精製オレフィン系ニトリルを生成することと、
3)20℃~150℃の温度で、
A)当該精製オレフィン系ニトリル、
B)式R HSiX(3-x)(式中、下付き文字xは、0、1、又は2であり、各Rは、独立して選択される1~18個の炭素原子の一価炭化水素基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子及び式ORのアルコキシ基からなる群から選択される)を有するヒドリドシラン、並びに
C)出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて5ppm~<200ppmのPtを提供するのに十分な量の白金ヒドロシリル化反応触媒
を含む、出発物質を合わせることと、
を含む。
【0054】
第2の実施形態では、A’)オレフィン系ニトリルは、3-ブテンニトリル及び2-メチル-3-ブテンニトリルからなる群から選択される。
【0055】
第3の実施形態では、シアン化物不純物は、H-C≡Nを含む。
【0056】
第4の実施形態では、シアン化物不純物は、A’)オレフィン系ニトリルの重量に基づいて40ppm~200ppmで存在する。
【0057】
第5の実施形態では、ヒドリドシランにおいて、xは0又は1であり、Rはアルキル基であり、Xはアルコキシ基である。
【0058】
第6の実施形態では、第5の実施形態に記載のヒドリドシランは、x=1を有し、Rはメチル基であり、各Xはメトキシ基である。
【0059】
第7の実施形態では、ヒドリドシランは、メチルトリメトキシシラン及びメチルジメトキシシランからなる群から選択される。
【0060】
第8の実施形態では、白金ヒドロシリル化反応触媒は、塩化白金酸、Karstedt触媒、又は炭素、シリカ、若しくはアルミナから選択される担体上の白金を含む。
【0061】
第9の実施形態では、工程2)は、オレフィン系ニトリルを、銅、鉄、銀、又はニッケルからなる群から選択される単体金属と合わせることを含む。
【0062】
第10の実施形態では、第9の実施形態に記載の方法は、オレフィン系ニトリルを単体金属と合わせた後に、当該オレフィン系ニトリルを吸着剤と合わせることを更に含む。
【0063】
第11の実施形態では、第9又は第10の実施形態に記載の方法では、金属は銅である。
【0064】
第12の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法の工程2)は、オレフィン系ニトリルを、活性炭及びモレキュラーシーブからなる群から選択される吸着剤と接触させることを含む。
【0065】
第13の実施形態では、第1~第8の実施形態のいずれか1つに記載の方法は、オレフィン系ニトリルを、銅、鉄、銀、及びニッケルからなる群から選択される金属の酸化物と接触させることを含む。
【0066】
第14の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法は、工程2)において濾過し、精製オレフィン系ニトリルを調製することを更に含む。
【0067】
第15の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法の工程2)は、ストリッピング、蒸留、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0068】
第16の実施形態では、工程2)で生成された精製オレフィン系ニトリルは、0ppmのシアン化物不純物を含有する。
【0069】
第17の実施形態では、工程2)で生成された精製オレフィン系ニトリルは、5~40ppmのシアン化物不純物を含有し、但し、当該精製オレフィン系ニトリルは、工程1)で提供されたオレフィン系ニトリルよりも少ないシアン化物不純物を含有する。
【0070】
第18の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法は、工程3)の際及び/又は後にD)促進剤を添加することを更に含む。
【0071】
第19の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法は、溶媒中で1つ以上の出発物質を送達することを更に含む。
【0072】
第20の実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法は、式R SiX(3-x)(式中、下付き文字x及びRは、上で定義されたとおりであり、Rは、式N≡C-D-の基であり、Dは、二価炭化水素基である)の化合物を含む、生成物を生成する。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
1)式X’-C≡N(式中、X’は、水素、ナトリウム、又はカリウムである)のシアン化物不純物を含む、A’)オレフィン系ニトリルを提供することと、
2)A’)前記オレフィン系ニトリルから前記シアン化物不純物の全部又は一部分を除去し、それによってA)精製オレフィン系ニトリルを生成することであって、工程2)が、
A’)前記オレフィン系ニトリルと、銅、鉄、銀、若しくはニッケルからなる群から選択される単体金属とを合わせること、又は
A’)前記オレフィン系ニトリルと、活性炭及びモレキュラーシーブからなる群から選択される吸着剤とを合わせること、又は
A’)前記オレフィン系ニトリルを、銅、鉄、銀、若しくはニッケル、又はこれらの金属の酸化物からなる群から選択される金属に合わせ、その後、生成物と吸着剤とを合わせて、A)前記精製オレフィン系ニトリルを形成すること
のうちの1つ以上を含む、生成することと、
3)20℃~150℃の温度で、
A)前記精製オレフィン系ニトリル、
B)式R HSiX(3-x)(式中、下付き文字xは、0、1、又は2であり、各Rは、独立して選択される1~18個の炭素原子の一価炭化水素基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子及び式ORのアルコキシ基からなる群から選択される)を有するヒドリドシラン、並びに
C)出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて5ppm~<200ppmのPtを提供するのに十分な量の白金ヒドロシリル化反応触媒
を含む、出発物質を合わせることと、
を含む、方法。
【請求項2】
A’)前記オレフィン系ニトリルが、3-ブテンニトリル及び2-メチル-3-ブテンニトリルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A’)において、前記シアン化物不純物が、25ppm~125ppmのH-C≡Nを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
B’前記ヒドリドシランが、0又は1であるx、アルキル基であるR、及びアルコキシ基であるXを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
x=1であり、Rがメチル基であり、各Xがメトキシ基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記白金ヒドロシリル化反応触媒が、塩化白金酸、Karstedt触媒、又は炭素、シリカ、若しくはアルミナから選択される担体上の白金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程2)が、ストリッピング、蒸留、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程2)で生成されたA)前記精製オレフィン系ニトリルが、0ppmのシアン化物不純物から、工程1)で提供されたA’)前記オレフィン系ニトリルよりも少なくとも10ppm少ないシアン化物不純物までを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
A)前記精製オレフィン系ニトリルが、5ppm~40ppmのシアン化物不純物を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項10】
工程3)の際及び/又は後にD)促進剤を添加することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶媒中で1つ以上の出発物質を送達することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式R SiX(3-x)(式中、下付き文字x及びRは、上で定義された通りであり、Rは、式N≡C-D-の基であり、Dは、二価炭化水素基である)の化合物を含む生成物を生成する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】