(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-02
(54)【発明の名称】強化されたゲル強度を有するモルタル用の架橋セルロースエーテルを含有するセメント質スキムコート組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20230925BHJP
C04B 14/26 20060101ALI20230925BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20230925BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20230925BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20230925BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20230925BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230925BHJP
B28C 7/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B14/26
C04B14/28
C04B22/08 A
C04B14/06 Z
C04B24/38 D
C04B24/26 C
B28C7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513191
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021048155
(87)【国際公開番号】W WO2022051201
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202011037639
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ、アミット クマール
(72)【発明者】
【氏名】ブレックヴォルト、イェルン
(72)【発明者】
【氏名】ノイバウアー、イェルク
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056CB01
4G056CB19
4G056CB27
4G112PA03
4G112PA04
4G112PB30
4G112PB40
(57)【要約】
本発明は、白色セメントと、15~60ミクロンのふるい平均粒径を有する1つ以上の充填剤と、0.25~0.5重量%の、ポリエーテル基を含有する1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテル、好ましくは、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を有する混合セルロースエーテルと、1~2.5重量%の1つ以上のポリマー再分散性粉末(RDP)と、を含む、セルロースエーテルの用量を低減しながら、改善されたポットライフ及び作業性を有するスキムコートモルタル用の乾燥ミックスを提供する。少なくとも1つのゲル様架橋セルロースエーテルは、1.0(ω)以下の、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が交差し、同一である、振動レオメトリーによって測定されるクロスオーバー点を有する。本発明はまた、乾燥ミックスを使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質スキムコートモルタルの作製に使用するための乾燥ミックス組成物であって、15~33重量%の白色セメントと、65~83重量%の、15~60ミクロンのふるい平均粒径を有し、ドロマイト、カオリナイト、炭酸カルシウム、タルク、ケイ砂、白色ケイ砂、又はアルカリ金属ケイ酸塩から選択される1つ以上の充填剤と、0.15~0.75重量%の、ポリエーテル基を含有する1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルと、0.5~5重量%の1つ以上のポリマー再分散性粉末(RDP)と、を含み、全ての量が前記乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量%であり、全ての割合が合計100%になる、乾燥ミックス組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、架橋の非存在下、20℃及びせん断速度2.55s
-1でHaake(商標)Viscotester(商標)VT550レオメーターを使用して水中の2重量%水溶液として測定された10,000~70,000mPa・sの粘度を有する、架橋セルロースエーテルである、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の前記ゲル様架橋エーテルのうちの少なくとも1つの1.0重量%水溶液が、1.0(ω)以下の、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が交差し、同一である、振動レオメトリーによって測定されるクロスオーバー点(COV)を有し、G’及びG”が、50mm直径を有するプレートと、1°円錐角及び円錐点の0.05mm平坦化を有する円錐と、を備えたUniversal Dynamic Spectrometer(商標)UDS200振動レオメーターを使用して、20℃でパスカルで測定され、ラジアン/秒における角周波数(ω)を、0.5%の歪みを伴う0.1~100の(ω)の範囲で変化させる、請求項2に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つにおける前記ポリエーテル基が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びこれらの組み合わせから選択されるポリオキシアルキレンである、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項5】
前記1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテルである、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、アルキルエーテル基を含有する非混合セルロースエーテルである、請求項5に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の前記ゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、ポリオキシプロピレン基含有ヒドロキシエチルメチルセルロースである、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の前記ゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を有する混合セルロースエーテルである、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項9】
前記1つ以上の前記ゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシエチルメチルセルロースとポリプロピレングリコール(PPG)グリシジルエーテルとの反応生成物である、請求項1に記載の乾燥ミックス組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の乾燥ミックス組成物を使用する方法であって、前記乾燥ミックス組成物を水又は水性液体と組み合わせてモルタルを作製することと、前記モルタルを基材に塗布してスキムコートを形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントと、ポリエーテル基を含有するゲル様架橋セルロースエーテルとを含み、セメント質スキムコートの作製に使用するための、強化された作業性及びポットライフを有する乾燥ミックス組成物、並びに本組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエーテルは、モルタルから吸収基材への水分の損失を制限する保水特性を付与すると共に、モルタルのレオロジーを改善するために、様々な建築用途におけるモルタルに用いられる。例えば、セルロースエーテルは、湿った接着剤をタイルの裏に塗布し、それを基材に接着することによって、セメントベースのタイル接着剤における用途が見出されている。更に、セルロースエーテルは、安定した凝結速度及び高い最終的な機械的強度を可能にする。しかしながら、セルロースエーテルは、70000mPa・s超の粘度レベル(Thermo Fisher Scientific,USAによるHaake(商標)Viscotester(商標)VT550レオメーターによって測定)、2重量%水溶液、20℃で2.55s-1)を有する高粘度セルロースエーテルが、原料(パルプ)の調達及び加工が困難であるため、入手が困難であるという欠点を有する。より容易に入手可能なセルロースエーテルを使用する場合、セルロースエーテルの添加率又は用量は、有用なポットライフを保持するのに十分な保水性を生成するために高いままである(例えば、全固形分に基づいて0.3~0.6重量%)。例えば、スキムコート塗布におけるセルロースエーテルの用量を低減する必要性が依然として存在する。
【0003】
セメント含有スキムコートは、セルロースエーテル、セメント及び微粉砕充填剤と共に配合されるモルタル用の乾燥ミックス組成物を含む。スキムコート塗布のために、乾燥モルタルを水と混合し、その後、例えば、3~4時間の塗布時間にわたって連続層で薄く塗布する。塗布時間において、スキムコートモルタルが良好な手工具での作業性並びに粘着性及び粘稠度のような初期湿潤モルタル特性を保持できない場合、それは廃棄されなければならず、新しいモルタルバッチが作製されなければならない。しかしながら、より高粘度のセルロースエーテルを有するスキムコートの配合によるセルロースエーテル用量レベルの所望の低減によって、塗布時間中、モルタルの必要とされる塗布特性が損なわれる可能性がある。
【0004】
Liによる米国特許公開US2015/0315076A1は、セルロースエーテル及びグルコン酸塩を有するスキムコート組成物を開示しており、セルロースエーテルをグルコン酸塩で置き換えることによって、0.35%の標準用量に基づいて、<18%に制限されたセルロースエーテル用量の低減を可能にする。しかしながら、セルロースエーテルのグルコン酸塩での置換は、凝結時間を遅くし、それによって、スキムコートの連続的な塗布及びスキムコート上に後から建築用コーティングを塗布することが遅れることによって、効率的なスキムコート塗布を妨げる。
【0005】
本発明は、セルロースエーテルの用量を低減しながら、改善されたポットライフ及び作業性を有するモルタルを形成するセルロースエーテルを含む、セメント質スキムコート乾燥ミックス組成物を提供するという問題の解決に努める。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、スキムコートを作製するための乾燥ミックス組成物は、白色セメントなどのセメントと、15~60ミクロンのふるい平均粒径を有する1つ以上の充填剤と、0.15~0.75重量%、又は好ましくは0.20~0.50重量%、又はより好ましくは0.23~0.45重量%の、ポリエーテル基を含有する1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテル、好ましくはヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテルと、0.5~5重量%、又は0.5~3.5重量%、又は好ましくは1~2.5重量%の、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アクリレートコポリマー、又はスチレンアクリレートコポリマーを含有するRDPなどの1つ以上のポリマー再分散性粉末(RDP)と、を含み、全ての量は乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量%である。好ましくは、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を有する混合セルロースエーテルである。乾燥ミックス組成物は、乾燥ミックスの総重量に基づいて、15~33重量%、又は好ましくは18~30重量%の量で、白色セメントなどの乾燥セメントを含み得、乾燥ミックスの残りは、白色充填剤などの1つ以上の充填剤を含む。全ての重量割合は合計100%になる。
【0007】
本発明によれば、乾燥ミックスを使用する方法は、乾燥ミックスを水と混合してモルタルを形成することと、モルタルを基材に塗布してスキムコートを形成することと、を含む。基材は、例えば、コンクリート、繊維セメント板、セメントレンダリング、外断熱仕上げシステム(EIFS)のための補強モルタル、硬化モルタル、又は別の未仕上げ基材を含んでもよい。
【0008】
好ましくは、本発明の組成物又は方法のいずれかにおいて、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つの1.0重量%水溶液は、1.5(ω又はrad/s)以下、例えば、0.2~1.0rad/s、又は0.45~1.0rad/sの、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が交差し、同一である、振動レオメトリーによって測定されるクロスオーバー点(COV)を有し、G’及びG”は、50mm直径を有するプレートと、1°円錐角及び円錐点の0.05mm平坦化を有する円錐とを備えた振動レオメーター(Anton Paar MCR 302,Anton Paar,Graz,AT)を使用して、20℃でパスカルで測定され、ラジアン/秒における角周波数(ω)を、0.5%の歪みを伴う0.1~100rad/sの(ω)の範囲で変化させる。より好ましくは、ゲル様架橋セルロースエーテルのCOVの、架橋のない同じセルロースエーテルのCOVに対する比は、1:15~0.5:1、又は好ましくは0.1:1~0.4:1の範囲である。
【0009】
好ましくは、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、1.5~4.5のヒドロキシアルキル置換MS(HE)度、及び2.0~3.0の置換MS(HE)度を有する。
【0010】
好ましくは、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、セルロースエーテルの全固形分の重量に基づいて、例えば、少なくとも20重量%、又は20%~100%、又は20%~80%の量で、木材パルプに少なくとも部分的に由来する架橋セルロースエーテルを含む。
【0011】
より好ましくは、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシエチルメチルセルロースとポリプロピレングリコール(PPG)グリシジルエーテルとの反応生成物などの、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を含有するヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0012】
好ましくは、本発明による乾燥ミックス組成物は、乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量に基づいて、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つの0.3重量%使用量が、DIN EN1015、パート8の方法に従って厚紙基材上で25℃で試験した場合に、少なくとも94%、又は好ましくは少なくとも95%、又はより好ましくは少なくとも96%、又はより好ましくは少なくとも97%の3時間後の保水性を提供するモルタルを提供する。
【0013】
1.本発明によれば、セメント質スキムコートモルタルの作製に使用するための乾燥ミックス組成物は、アルミン酸塩セメント又は白色ポルトランドセメントなどの15~33重量%、又は好ましくは18~30重量%の白色セメントと、65~83重量%、又は好ましくは68~80重量%の、ドロマイト、カオリナイト、炭酸カルシウム、タルク、ケイ砂、白色ケイ砂、又はケイ酸カルシウム若しくはケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩から選択される1つ以上の充填剤であって、15~60ミクロン、又は好ましくは25~50ミクロンのふるい平均粒径を有する充填剤と、0.15~0.75重量%、又は好ましくは0.20~0.5重量%、又はより好ましくは0.35~0.45重量%の、ポリエーテル基を含有する1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルと、0.5~5重量%、又は好ましくは1~2.5重量%、又はより好ましくは1.4~2重量%の、エチレン-酢酸ビニルRDPなどの1つ以上のポリマー再分散性粉末(RDP)と、を含み、全ての量は乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量%であり、全ての割合は合計100%になる。
【0014】
2.上記項目1の乾燥ミックス組成物によれば、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、架橋の非存在下、20℃及びせん断速度2.55s-1で回転レオメーター(Thermo Fisher Scientific,USAによるHaake(商標)Viscotester(商標)VT550)を使用して水中の2重量%水溶液として測定された10,000~70,000mPa・sの粘度を有し得る、架橋セルロースエーテルの架橋反応生成物である。
【0015】
3.上記項目1又は2のいずれか1つの乾燥ミックス組成物によれば、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、アルキルエーテル基を含有する非混合セルロースエーテル、又はアルキルヒドロキシエチルセルロース、例えば、ヒドロキシアルキルメチルセルロースから選択されるものなどの、ヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテルから選択され、好ましくは、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(MHEHPC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、より好ましくは、HEMCから選択される。
【0016】
4.上記項目1、2、又は3のいずれか1つの乾燥ミックス組成物によれば、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つにおけるポリエーテル基は、2~100個、又は好ましくは2~20個、又はより好ましくは3~15個のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンである。
【0017】
5.上記項目1、2、3、又は4のいずれか1つの乾燥ミックス組成物によれば、1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つにおけるポリエーテル基は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びこれらの組み合わせ、好ましくは、ポリオキシプロピレンから選択されるポリオキシアルキレンである。
【0018】
6.上記項目1、2、3、4、又は5のいずれか1つの乾燥ミックス組成物によれば、ゲル様架橋セルロースエーテルは、ポリオキシプロピレン基含有ヒドロキシエチルメチルセルロース、又は好ましくは、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を含有するヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0019】
7.好ましくは、上記項目1、2、3、4、5、又は6のいずれか1つの本発明の乾燥ミックス組成物によれば、1つ以上のゲル様架橋エーテルのうちの少なくとも1つの1.0重量%水溶液は、1.5(ω)以下の、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が交差し、同一である、振動レオメトリーによって測定されるクロスオーバー点を有し、G’及びG”は、50mm直径を有するプレートと、1°円錐角及び円錐点の0.05mm平坦化を有する円錐とを備えたAnton Paar MCR 302(Anton Paar,Graz,AT)を使用して、20℃でパスカルで測定され、ラジアン/秒における角周波数(ω)を、0.5%の歪みを伴う0.1~100の(ω)の範囲で変化させる。
【0020】
8.上記項目1、2、3、4、5、6、又は7のいずれか1つの本発明の乾燥ミックス組成物によれば、乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量に基づいて、乾燥ミックス中の1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つの0.3重量%使用量が、Helipathスピンドル番号T96を備えたBrookfieldレオメーターRVDV II Pro(DV II)を使用して5rpmで測定して、25℃で380,000~450,000cPs(mPa・s)の粘度まで水と混合した場合に、乾燥ミックスを提供し、DIN EN1015、パート8の方法に従って厚紙基材上で3時間後に25℃で試験した場合に、少なくとも94%、又は好ましくは少なくとも95%、又はより好ましくは少なくとも96%、又は更により好ましくは少なくとも97%の保水性を示す作業可能なモルタルを提供する。
【0021】
9.本発明の別の態様では、本発明は、上記項目1~8のいずれか1つの乾燥ミックス組成物を使用する方法を提供し、乾燥ミックス組成物を、水又は水性液体と組み合わせてモルタルを作製することと、モルタルをコンクリート又はセメントレンダリングなどの未仕上げセメント基材に塗布して平滑表面を形成することと、を含む。
【0022】
10.上記項目9に記載の本発明の方法によれば、本方法は、平滑表面を乾燥させることと、このように乾燥させた平滑表面に塗料などの建築用コーティングを塗布することと、を更に含む。
【0023】
11.上記項目9又は10のいずれか1つに記載の本発明の方法によれば、乾燥ミックスの1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、架橋の非存在下、20℃及びせん断速度2.55s-1でHaake(商標)Viscotester(商標)VT550を使用して水中の2重量%水溶液として測定された10,000~70,000mPa・sの粘度を有し得る、セルロースエーテルの架橋生成物である。
【0024】
好ましくは、本発明の方法によれば、乾燥ミックスは、2~100個、好ましくは2~20個、より好ましくは3~15個のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンであるポリエーテル基を有する少なくとも1つのゲル様架橋セルロースエーテルを含む。より好ましくは、少なくとも1つのゲル様架橋セルロースエーテル中のポリエーテル基は、ポリオキシプロピレンである。より好ましくは、少なくとも1つのゲル様架橋セルロースエーテルは、ポリオキシプロピレンジオキシエチレンエーテル架橋を含有するヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0025】
好ましくは、本発明の方法によれば、乾燥ミックスは、振動レオメトリーによって測定される、1.5ω以下の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)のクロスオーバー点(COV)を示す少なくとも1つのゲル様架橋セルロースエーテルを含む。より好ましくは、ゲル様架橋セルロースエーテルのCOVの、架橋のない同じセルロースエーテルのCOVに対する比は、1:15~0.5:1、又は好ましくは、0.2:1~0.4:1の範囲である。
【0026】
好ましくは、本発明の方法によれば、乾燥ミックスにおいて、乾燥ミックス組成物中の全固形分の重量に基づいて、乾燥ミックス中の1つ以上のゲル様架橋セルロースエーテルのうちの少なくとも1つの0.3重量%使用量が、Helipathスピンドル番号T96を備えたBrookfieldレオメーターRVDV II Pro(DV II)を使用して5rpmで測定して、25℃で380,000~450,000cPs(mPa・s)の粘度まで水と混合した場合に、乾燥ミックスを提供し、DIN EN1015、パート8の方法に従って厚紙基材上で3時間後に25℃で試験した場合に、少なくとも94%、又は好ましくは少なくとも95%、又はより好ましくは少なくとも96%、又は更により好ましくは少なくとも97%の保水性を示す作業可能なモルタルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によれば、ゲル様架橋セルロースエーテルは、低減されたセルロースエーテル用量であっても、同じ又は改善された作業性及びオープンタイムを有するスキムコートの作製に使用するための乾燥ミックス及びモルタルの提供を可能にする。ゲル様セルロースエーテルは、不可逆的に架橋され、振動レオメトリーに応答して低角周波数での貯蔵弾性率の増加を特徴とするゲル様挙動を示す。ゲル様挙動は、例えば、モルタルとしての使用において、保水性の改善につながる。
【0028】
架橋剤中にポリエーテル基を含有する架橋セルロースエーテル、好ましくは、アルキルエーテル及びヒドロキシアルキル基を含有するセルロースエーテルを使用すると、セメント質スキムコート組成物の挙動が大幅に改善されることが見出されている。例えば、スキムコートモルタルは、所定の濃度で、そのように架橋されていない同じセルロースエーテルと比較して、濃化又は粘度の度合いが大きく、より弾性状態であるなどの、強化されたゲル強度特性を有する。加えて、本発明は、スキムコート性能を損なわず、30%を超えるまでのセルロースエーテルの用量の低減を可能にする。例えば、本発明のゲル様架橋セルロースエーテルは、厳しい高温(45℃)塗布条件で、ゲル様CEに対してより低い用量で改善された作業性を示すスキムコート組成物の提供を可能にする。本発明のゲル様架橋セルロースエーテルは、従来の架橋セルロースエーテルよりも大幅に低い添加率で使用することができ、経済的なセメント質スキムコートを作製することができる。
【0029】
別途指示がない限り、全ての温度及び圧力の単位は、室温(19~23℃)及び標準圧力(1atm)である。また、別途指示がない限り、全ての条件は、50%の相対湿度(RH)を含む。
【0030】
文脈上別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示対象を含む。
【0031】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0032】
括弧を含む全ての語句は、含まれる括弧内の事項の片方又は両方及びその非存在を示す。例えば、語句「(ポリ)オキシアルキレン」は、代替的に、ポリオキシアルキレン及びオキシアルキレンを含む。
【0033】
引用された全ての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、0.25~0.5重量%、又は好ましくは、0.35~0.45重量%の開示は、0.25~0.5重量%、又は好ましくは、0.35~0.45重量%、又は0.25~0.35重量%、又は0.25~0.45重量%、又は0.35~0.5重量%、又は0.45~0.5重量%の全てを含む。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「無水グルコース単位」又は「AGU」は、(共)重合形態の単糖を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「水性」は、連続相又は連続媒体が、水であり、媒体の重量に基づいて0~10重量%の水混和性化合物であることを意味する。好ましくは、「水性」は、水を意味する。
【0036】
本明細書で使用するとき、語句「全固形分に基づいて」は、合成ポリマー、セルロースエーテル、酸、消泡剤、水硬セメント、充填剤、他の無機材料、及び他の不揮発性添加剤を含む、所与の組成物中の不揮発性成分の全ての重量を指す。水、アンモニア及び揮発性溶媒は、固形分とは考えられない。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「クロスオーバー点」は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が交差し、同一である、振動レオメトリーによって測定される角周波数(ω)を意味し、G’及びG”は、50mm直径を有するプレートと、1°円錐角及び円錐点の0.05mm平坦化を有する円錐とを備えたAnton Paar MCR 302振動レオメーター(Anton Paar,Graz,AT)を使用して、20℃で角周波数(ω)の関数として振動レオメトリーによってパスカルで測定され、ラジアン/秒における角周波数(ω)を、0.5%の歪みを伴う0.1~100の(ω)の範囲で変化させる。レオメトリーにおいて、分析物セルロースエーテル又は架橋セルロースエーテルは、99.0重量%の水中に、乾燥基準で、せん断下で1.0重量%のセルロースエーテルを、撹拌しながら室温で1分間にわたって水中に分散させ、続いて1000rpmで10分間撹拌し、次いでこの溶液を、蓋でしっかりと密封された丸いガラス容器中に24時間にわたって貯蔵し、24時間全体にわたってその長手方向(水平)軸を中心にゆっくり回転させることによって、水中に溶解される。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「DIN EN」は、Beuth Verlag GmbH,Berlin,DEによって出版されたドイツ材料規格の欧州共通規格版を指す。また、本明細書で使用するとき、用語「DIN」は、同じ材料仕様書のドイツ語版を指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「乾燥ミックス」は、セメント、セルロースエーテル、任意の他のポリマー添加剤、並びに任意の充填剤及び乾燥添加剤を含有する貯蔵に安定した粉末を意味する。乾燥ミックス中に水は存在しないため、貯蔵安定性である。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「DS」は、Zeisel法によって決定されるように、セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのアルキル置換OH基の平均数であり、用語「MS」は、無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルキル置換OH基の平均数である。用語「Zeisel法」は、MS及びDSの決定のためのZeisel開裂手順を指し、G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie,Vol.286(1977,Springer,Berlin,DE),pages 161 to 190を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「低粘度又は中粘度の架橋セルロースエーテル」は、架橋の非存在下、20℃及びせん断速度2.55s-1でHaake Rotovisko(商標)RV100レオメーター(Thermo Fisher Scientific,Karlsruhe,DE)を使用して水中の2重量%水溶液として測定された10,000~40,000mPasの粘度を有し得る、架橋セルロースエーテルを意味する。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「高粘度架橋セルロースエーテル」は、架橋の非存在下、20℃及びせん断速度2.55s-1でHaake Rotovisko(商標)RV100レオメーター(Thermo Fisher Scientific,Karlsruhe,DE)を使用して水中の2重量%水溶液として測定された40,000mPas超の粘度を有し得る、架橋セルロースエーテルを意味する。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「凝結」は、水の存在下で周囲条件下で起こり、モルタルが乾燥するにつれて継続するモルタルの硬化を指す。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「ふるい平均粒径」は、Malvern Panalytical Mastersizer 2000(Malvern,UK)によって決定される平均粒径を意味する。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「全固形分の重量%」は、40℃以下の温度及び大気圧での揮発性によって決定される、所与の組成物の全ての不揮発性成分の重量を意味する。揮発性物質としては、水、塩化メチルのような、周囲温度及び周囲圧力の条件下で蒸発する溶媒が挙げられる。
【0046】
本発明の架橋ポリエーテル基含有セルロースエーテルを作製する方法において使用するための好適なセルロースエーテルとしては、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース若しくはアルキルセルロース、又はそのようなセルロースエーテルの混合物を挙げることができる。本発明での使用に好適なセルロースエーテル化合物の例としては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、疎水性修飾エチルヒドロキシエチルセルロース(hmEHEC)、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(hmHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロース(SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(SEMHPC)、及びスルホエチルヒドロキシエチルセルロース(SEHEC)が挙げられる。好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテル、例えばアルキルヒドロキシエチルセルロース、例えば、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(MHEHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)である。
【0047】
本発明のゲル様架橋セルロースエーテルにおいて、アルキル置換は、用語「DS」によってセルロースエーテル化学において記載される。DSは、無水グルコース単位当たりの置換OH基の平均数である。メチル置換は、例えば、DS(メチル)またはDS(M)として報告され得る。ヒドロキシアルキル置換は、用語「MS」によって記載される。MSは、無水グルコース単位1mol当たりのエーテルとして結合するエーテル化試薬の平均モル数である。エーテル化試薬エチレンオキシドによるエーテル化は、例えば、MS(ヒドロキシエチル)またはMS(HE)として報告される。エーテル化試薬プロピレンオキシドによるエーテル化は、MS(ヒドロキシプロピル)またはMS(HP)として対応して報告される。側基は、Zeisel法を使用して決定される(参照:G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie 286(1977),161-190)。
【0048】
架橋ヒドロキシアルキル基含有セルロースエーテルは、好ましくは1.5~4.5のヒドロキシアルキル置換MS(HE)度、又はより好ましくは2.0~3.0の置換MS(HE)度を有する。
【0049】
好ましくは、メチルセルロースの混合エーテルが架橋に使用される。HEMCの場合、好ましいメチル置換DS(M)値は、1.2~2.1、又はより好ましくは1.3~1.7、又は更により好ましくは1.35~1.65の範囲であり、ヒドロキシアルキル置換MS(HE)値は、0.05~0.75、又はより好ましくは0.10~0.45、又は更により好ましくは0.15~0.40の範囲である。HPMCの場合、好ましくは、DS(M)値は、1.2~2.1、又はより好ましくは1.3~2.0の範囲であり、MS(HP)値は、0.1~1.5、又はより好ましくは0.15~1.2の範囲である。
【0050】
本発明での使用に好適な架橋剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン又はポリアルキレングリコール基、及びセルロースエーテルを架橋する際にセルロースエーテルとエーテル結合を形成する、グリシジル若しくはエポキシ基などの2つ以上、好ましくは、2つの架橋基、又はエチレン性不飽和基、例えば、ビニル基を有する化合物が挙げられ得る。好適な二官能性化合物は、例えば、ジグリシジルポリアルコキシエーテル、ジグリシジルホスホネート、スルホン基を含有するジビニルポリオキシアルキレンから選択され得る。これらの例は、ジグリシジルポリオキシプロピレン及びグリシジル(ポリ)オキシアルキルメタクリレート、好ましくは、ジグリシジルポリアルコキシエーテル、例えば、ジグリシジルポリオキシプロピレン、グリシジル(ポリ)オキシアルキルメタクリレート、ジグリシジルホスホネート、又はスルホン基を含有するジビニルポリオキシアルキレンである。
【0051】
使用される架橋剤の量は、0.0001~0.05当量の範囲であり得、「当量」は、セルロースエーテルの無水グルコース単位(AGU)のモル数に対するそれぞれの架橋剤のモル比を表す。使用される架橋剤の好ましい量は、0.0005~0.01当量であるか、又はより好ましくは、使用される架橋剤の量は、0.001~0.005当量である。本明細書で使用するとき、単位「eq」は、セルロースエーテル中の無水グルコース単位(AGU)のモル数に対するそれぞれの架橋剤のモルのモル比を表し、得られた架橋ポリエーテル基含有セルロースエーテルは、粒状にされ、乾燥される。
【0052】
本発明による乾燥ミックス組成物は、微細に分割されたセメント、例えば水硬セメント粉末、好ましくは白色セメントを更に含む。白色セメントの好適な例は、アルミン酸塩セメント及び白色無機材料を含む白色ポルトランドセメントである。乾燥セメントは、例えば、乾燥ミックスの総重量に基づいて、15~33重量%、又は好ましくは18~30重量%の量で使用され得る。
【0053】
本発明による乾燥ミックス組成物は、65~83重量%、又は好ましくは68~80重量%の充填剤、好ましくは白色充填剤を更に含む。好適な充填剤は、アルカリ炭酸塩及びケイ酸塩、並びにそれらの焼成、焼結又はセラミック形態、例えばドロマイト、カオリナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、ケイ砂、白色ケイ砂、又はアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム又はそれらの混合物から選択され得る。
【0054】
本発明による乾燥ミックス組成物は、水再分散性ポリマー粉末(RDP)を更に含み得る。RDPは、従来の水性乳化重合によって形成されたエマルジョンポリマー結合剤を噴霧乾燥することによって従来の様式で形成され得る。水性エマルジョンポリマーは、例えば、酢酸ビニルポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、アクリルポリマー、スチレン-アクリルポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、及びそれらのブレンドなどの様々な組成物分類から選択され得る。RDP組成物は、粘土などの固化防止剤及びポリ(ビニルアルコール)などのコロイド安定剤を更に含み、これらは噴霧乾燥によって微細に分割された粉末を形成することを可能にする。RDPは、スキムコートモルタルの接着性及び耐久性を改善し得る。
【0055】
ギ酸カルシウムなどの促進剤、追加の有機又は無機増粘剤及び/又は非架橋セルロースエーテルなどの二次保水剤、垂れ防止剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、撥水剤、バイオポリマー、繊維などの乾燥形態の他の成分が、本発明の乾燥ミックス組成物中に含まれてもよい。他の成分の全ては、当該技術分野において既知であり、商業的供給源から入手可能である。
【0056】
セルロースエーテルを架橋して本発明のポリエーテル基含有セルロースエーテルを作製する方法は、セルロースエーテル自体が作製される反応器において、腐食剤又はアルカリの存在下で、セルロースエーテルを架橋することを含んでもよい。したがって、架橋反応は、一般に、セルロースエーテルを作製する工程において行われる。セルロースエーテルを作製する工程は、セルロース上にアルキル又はヒドロキシアルキル基を形成するための反応物の段階的添加を含むため、好ましくは、セルロースエーテルの架橋は、(i)セルロースのアルキルエーテルを形成するためのアルカリの存在下でのハロゲン化アルキル、例えば塩化メチルの1回以上の添加、又は(ii)セルロース上にヒドロキシアルキル基を形成するためのアルカリの存在下でのアルキレンオキシド、又は(iii)(i)及び(ii)の両方によって先行される。
【0057】
セルロース上にアルキル、ヒドロキシアルキル又はエーテル基を形成するための段階的添加における任意の工程は、それがセルロースエーテルの架橋の前、間又は後に起こるかどうかにかかわらず、40~90℃、好ましくは70℃以下、又はより好ましくは65℃以下の温度で行われ得る。
【0058】
セルロースエーテルが加工中に劣化又は分解されないように、架橋反応は、不活性雰囲気中で、室温~90℃以下の温度で、又は好ましくは、実行可能な限り低温度で実行され、例えば、本方法は、好ましくは60℃~90℃、又は好ましくは70℃以上で実行される。
【0059】
本発明のポリエーテル基含有セルロースエーテルが作製された後、それらは粒状にされ、乾燥される。粒状にすることは、必要であれば、過剰水を除去するための脱水又は濾過の後に続いてもよい。
【0060】
スキムコート乾燥ミックス組成物は、本発明の材料の全てを乾燥形態で混合することによって形成される。セメント質スキムコート組成物は、一般に乾燥ミックス粉末として使用される。
【0061】
本発明によれば、乾燥ミックスの使用方法は、乾燥ミックスを水と混合して、スキムコートモルタルを形成し、モルタルを基材に塗布することを含む。スキムコートモルタルは、非常に滑らかな最終コートを形成するために、コンクリート又はセメントレンダリングなどのより粗い基材上に塗布され得る。最終コートは、建築用コーティングのその後の塗布のために滑らかでかつ均質な基材であってもよい。
【0062】
モルタルは、3~4時間の塗布時間枠内で、複数、例えば3層に薄く塗布されてもよい。この時間の間、スキムコートモルタルは、良好な手工具での作業性及び湿潤モルタル特性、特に鮮度/粘着性及び粘稠度を保持する。
【0063】
本発明の組成物は、壁、繊維セメント板、及びセメントレンダリングなどのコンクリート用のセメント質スキムコートとして使用される。
【実施例】
【0064】
以下の実施例により、本発明を例示する。別途指示がない限り、全ての部分及び百分率は、重量によるものであり、全ての温度は℃である。以下の実施例並びに表1、2及び3において、以下の略語を使用した。RDP:再分散性ポリマー粉末、DGE:ジグリシジルエーテル、COV:クロスオーバー値。次の材料を使用した。
【0065】
セメント:CaO2、SiO2及びAl2O3の酸化物を有し、インド規格IS:8042-1989を満たす白色ポルトランドセメント(Birla White(商標)cement Ultra Tech Cement Ltd.,Jodhpur,Rajasthan,IN)。
【0066】
架橋セルロースエーテル1:ヒドロキシエチルメチルセルロースから作製されたDGE架橋セルロースエーテル、DS(メチル)=1.57、MS(ヒドロキシエチル)=0.28、生成物の粘度:12690mPa・s、1%重量%水溶液、せん断速度:2.55s-1、20℃(Haake(商標)Viscotester(商標)VT550)、COV=0.65rad/s(Anton Paar MCR302、Anton Paar)。架橋セルロースエーテル1は、1重量%水溶液としての粘度を有し、Haake(商標)Viscotester(商標)VT550粘度計を使用して、20℃及びせん断速度2.55s-1で、9960mPa・s及びCOV3.3rad/sの、非架橋セルロースエーテルから作製した。架橋セルロースエーテルの、架橋のない同じセルロースエーテルに対するCOV比は、約1:5である。
【0067】
セルロースエーテル2:非常に高粘度のメチルヒドロキシエチルセルロース粉末(TYLOSE MHS 300000 P6、非架橋、粘度8000~11000mPa・s Brookfield RV、20UpM、1.0重量%水溶液、20℃、20°dH、SE Tylose GmbH&Co.KG,Wiesbaden,DE)。
【0068】
セルロースエーテル3:(WALOCEL(商標)MW 60000 PFVヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC、DS(メチル)=1.38、MS(ヒドロキシエチル)=0.21、粘度7830mPa・s、1重量%水溶液、Haake(商標)Viscotester(商標)VT550、せん断速度2.55s-1、20℃(Dow))。
【0069】
架橋剤1:Epilox(商標)M985ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル架橋剤(Leuna-Harze GmbH,Leuna,DE)は、ポリプロピレングリコール(PPG)から作製され、850~1000g/molの分子量を有し、以下の式:
【化1】
(式中、nが、7~12である)を有する直鎖ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテルである。
【0070】
RDP1:DLP2025再分散性ラテックス粉末(Dow,Midland MI)は、固結防止剤及びコロイド安定剤の存在下で水性酢酸ビニルエチレンコポリマー分散液を噴霧乾燥することによって得られる易流動性の白色粉末である。
【0071】
充填剤:ドロマイト、37ミクロン(400メッシュ)ふるい平均粒径。
【0072】
架橋セルロースエーテル合成例:架橋HEMCセルロースエーテルは、Hildらの米国特許第10,150,704B2号(Hild参考文献)の合成例1Aと同じ様式で、架橋の非存在下、20℃及び9960mPa・sのせん断速度2.55s-1でHaake(商標)Viscotester(商標)VT550レオメーターを使用して、約75重量%の木材パルプと25重量%のコットンリンターとのブレンドからセルロースエーテルを形成することによって作製し、Hild参考文献の合成例3に開示される様式で、架橋剤1 0.003mol架橋剤/mol AGU(無水グルコース単位)を用いて40℃で更に処理した。得られたゲル様架橋セルロースエーテルは、12690mPa・sの粘度を有する(1重量%、Haake(商標)Viscotester(商標)VT550、D=2.55s-1、20℃)。
【0073】
セルロースエーテルを、水溶液の形態で、並びに以下の表1及び表2に記載の示された組成を有するスキムコートモルタル中で、以下に考察されるように試験し、特徴付けた。
【表1】
*配合物が、0.4重量%未満のセルロースエーテルを含有する場合、ドロマイトの量は、全ての割合が合計で100%になるように調整される。
【表2】
*比較例を示す
【0074】
乾燥ミックスは、上記表1、2及び3に示した成分を個々の原料として電子はかり上で注意深く秤量し、それらを粉末として乾燥ブレンドし、24時間静置することによって形成した。次いで、乾燥ミックス材料を以下に示すように試験した。
【0075】
水粉末比を決定するための水需要:水需要は、モルタルペーストの粘度によって測定される粘稠度を示す。500gmの示された乾燥ミックスを、予め測定された量(乾燥ミックスの35~40%の範囲)の水(モルタルを作製するために必要とされるよりも約<40%少ない)と、一定速度で25℃においてHobartミキサー中で混合し、380,000~450,000cPs又はMPa・sの所望の粘稠度を保証した。混合を1分間続け、次いで、材料を3分間静置し、次いで、材料を再び1分間混合してペーストを形成した。ペーストを500ml容器に充填し、Helipathスピンドルno T96を備えたBrookfieldレオメーター(DVII)を使用して5rpmで粘度を測定して、目標粘度を達成した。ペーストが、25℃で380,000~450,000cPs(mPa・s)の所望の粘度を達成した場合、水レベルは、配合物の水需要として報告された。それ以外の場合、必要に応じて、更に水を添加して、目標粘度を満たした。
【0076】
作業性:塗布の容易さ、手触り及びレベリングを決定するための視覚試験方法、作業性は、水需要の決定後に示されたペーストから決定した。25℃でフラットエッジスチールこて(20.48cm長)を使用して繊維セメント板(30.72cm×30.72cm)上にスキムコートペーストを塗布することによって、作業性を測定した。9~1の評価は、経験のある実験技術者によって決定された。評価が高いほど、より良好な作業性を意味する。評価は、以下の通りである。
【0077】
9:優、クリーム状の粘稠度を有し、べたつきがなく、レベリングが容易
7:良好、クリーム状の粘稠度を有し、レベリングが容易
5:可、バター状の粘稠度を有し、レベリングの容易さがほとんどなく、少しのべたつき
3:困難、バター状の粘稠度を有し、レベリングが容易ではなく、非常に速乾性があり、剥離しやすい
1:粘稠度が悪く、作業性なし
【0078】
ポットライフ:ポットライフを決定するために、示されたスキムコートペーストの1kgの試料を、25℃でポット中に保持し、1、2及び3時間後にその作業性を上記のようにチェックした。作業性評価に基づいて、示された期間後に試料のポットライフは、記録された。
【0079】
保水性(%):示されたモルタルの保水性を、DIN EN 1015、パート8の方法に従って、厚紙基材上で25℃で試験して、吸収基材を介した毛管水除去後の示されたペースト中に保持された水の量(パーセントで表される)を示した。したがって、保水性は、無機モルタル系における保水剤としてのセルロースエーテルの有効性を示す。指示期間(例えば、60分又は180分)の後、吸収された水の量を測定した。保水性が3時間後に>95%であることが許容可能となる。
【0080】
クロスオーバー点又はクロスオーバー値(COV):このゲル強度試験は、1重量%水溶液として示されるセルロースエーテルを用いて、上で定義されるように、振動レオロジーを介して行われた。示されたセルロースエーテル又は架橋セルロースエーテルを、乾燥基準で1.0重量部のセルロースエーテル及び99.0重量部の水の量で水に溶解した。水溶液を作製するために、セルロースエーテルを、塊の形成を回避するために撹拌しながら室温で水中に1分間にわたって分散させた。その後、混合物を1000rpmで10分間撹拌した。次いで、24時間にわたって、溶液を、蓋でしっかりと密封された丸いガラス容器中に貯蔵し、24時間全体にわたってその長手方向(水平)軸を中心にゆっくりと回転させた。
【0081】
実施例で試験した様々なセルロースエーテル材料及びスキムコートモルタルの特性を、以下の表3に示す。
【表3】
*-比較例を示す。1.低減値は、実施例5(0.4重量%)と比較した場合に使用されたセルロースエーテルの%量の低減を表す。
【0082】
上記の表3に示されるように、本発明の実施例1及び2の本発明の乾燥ミックス組成物は、より低い割合の架橋セルロースエーテルの使用を可能にし、優れた水需要及び作業性/ポットライフを維持する。本発明の組成物は、全ての比較例と比較して、劇的に改善された保水性を示す(実施例1~比較例3及び5と比較、並びに実施例2~比較例4)。本発明の組成物は、驚くべきことに、厳しい高温塗布条件で、ゲル様CEに対してより低い用量で改善された作業性を含む、そのような特性を可能にする。
【国際調査報告】