(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-02
(54)【発明の名称】薬物を口の中へ連続的に押し出すためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230925BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20230925BHJP
A61K 31/198 20060101ALN20230925BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230925BHJP
A61P 1/00 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61K9/00
A61M5/142 500
A61K31/198
A61P43/00 121
A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516700
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021050555
(87)【国際公開番号】W WO2022060909
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516131728
【氏名又は名称】シンアジャル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー, アダム
(72)【発明者】
【氏名】スピリディグリオッジ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディアーニ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ドレイパー, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハワード, ジョン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD02
4C066EE01
4C066EE15
4C066FF01
4C066GG01
4C066GG05
4C076AA06
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD41
4C076DD47
4C076DD49
4C076EE23
4C076FF68
4C206FA56
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA48
4C206NA10
4C206ZC75
(57)【要約】
患者の口内に存在するデバイスから患者の口内に薬物含有流体を連続的に押し出すためのデバイス及び方法が開示される。また、そのような押し出しによって疾患を治療する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)ポンプであって、
(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、及び
(b)前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために前記薬物リザーバと流体連通している可逆的に圧縮可能な多層送達チューブであって、前記圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度が10%未満だけ上昇又は低下するように圧縮後にその形状を回復するように構成された可逆的に圧縮可能な多層送達チューブ
を含むポンプと
を含む、薬物送達デバイス。
【請求項2】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)ポンプであって、
(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、及び
(b)前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために、前記薬物リザーバと流体連通している送達チューブ
を含むポンプと、
(iii)前記患者による最初の使用の前に前記送達チューブを気密式にシールするためのエラストマーポリマーを含む取り外し可能なプラグであって、前記取り外し可能なプラグの取り外し後、前記口腔内投与のために前記デバイスを前記患者の口の中に挿入することができる状態になる、取り外し可能なプラグと
を含む、薬物送達デバイス。
【請求項3】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプと
を含み、
前記留め具が、前記患者の上顎臼歯の頬側に前記薬物送達デバイスを固定するために前記留め具の一体部分として作製されるポケットを含み、前記ポケットが、前記薬物送達デバイスを前記臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成されている、薬物送達デバイス。
【請求項4】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプと
を含み、
前記薬物リザーバは、口腔粘膜と生体適合性があり前記医薬組成物と適合性があるフルオロカーボンエラストマーを含むエラストマープラグで気密式にシールされた、前記薬物リザーバを前記医薬組成物により充填するためのポートを有する、剛性ハウジングを含む、薬物送達デバイス。
【請求項5】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプと
を含み、
前記薬物送達デバイスは、前記薬物リザーバに流体的に接続された2つの流量制限器を備え、第1の流量制限器は6~12mmの長さと0.0100~0.0120インチの内径とを有し、第2の流量制限器は14~24mmの長さと0.0130~0.0145インチの内径とを有する、薬物送達デバイス。
【請求項6】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)ポンプであって、
(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、
(b)前記薬物リザーバと流体連通する流量制限器、及び
(c)前記患者の口に前記医薬組成物を送達するために前記薬物リザーバと流体連通する可逆的に圧縮可能な送達チューブ
を含むポンプとを含み、
前記流量制限器及び/又は前記送達チューブが、接着剤により前記薬物リザーバに直接又は間接的に気密式に接合される、薬物送達デバイス。
【請求項7】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)前記医薬組成物を含み容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含む、推進剤駆動式ポンプと
を含み、
前記推進剤駆動式ポンプは、剛性ハウジングと、アイレットと、気密シールを形成するために前記アイレットに嵌め込まれた推進剤装填用の圧縮可能なエラストマーセプタムとを備える、薬物送達デバイス。
【請求項8】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、
(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、
(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムと
を含み、
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、気密シールを形成するために接着剤によって接合されている、薬物送達デバイス。
【請求項9】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、
(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、
(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムと
を含み、
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、圧着によりシールされている、薬物送達デバイス。
【請求項10】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、
(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、
(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムと
を含み、
前記第1のチャンバは第1の剛性ハウジングを備え、前記第2のチャンバは第2の剛性ハウジングを備え、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバがそれぞれ、接着接合面積を増加させるために、段差を有するリムを含む、薬物送達デバイス。
【請求項11】
患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、
(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、
(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプと
を含み、
前記留め具は、前記留め具が前記患者の口の表面に取り付けられているときに、前記患者の口腔解剖学的構造が前記留め具からの前記薬物送達デバイスの取り外しを機械的に妨害し、防止し得るように構成される、薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記送達チューブが、圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度が10%未満だけ上昇又は低下するように、前記圧縮後にその形状を回復するように構成された、可逆的に圧縮可能な多層送達チューブである、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバと流体連通する可逆的に圧縮可能な多層送達チューブをさらに含み、前記多層送達チューブが、圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度が10%未満だけ上昇又は低下するように、前記圧縮後にその形状を回復するように構成される、請求項3~11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記送達チューブを圧縮することによって、前記薬物送達デバイスが使用されているときに前記医薬組成物の投与を一時的に停止することができる、請求項1、12又は13のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記送達チューブが、積層ポリマーを含む外層と内層とを含み、前記外層が、口腔粘膜と生体適合性があるポリマーを含む、請求項1又は12~14のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記外層が、ポリウレタン、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、又は乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を含む、請求項15に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記外層がポリウレタンを含む、請求項16に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記外層の厚さが、0.05mm~0.2mmの間である、請求項15~17のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
前記内層が、前記医薬組成物と適合性があり、半径方向に強度を与え、前記送達チューブを介した水の透過を低減する、ポリマーを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記内層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリマー性フッ化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記内層がPETを含む、請求項20に記載の薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記内層の厚さが0.025mm~0.075mmの間である、請求項15~21のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記送達チューブが、圧縮後にその内径を実質的に取り戻す、請求項1又は12~22のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記薬物送達デバイスが、前記患者による最初の使用の前に前記送達チューブを気密式にシールするためのエラストマーポリマーを含む取り外し可能なプラグをさらに含み、前記取り外し可能なプラグの取り外し後、前記デバイスが、前記口腔内投与のために患者の口の中に挿入される準備ができている、請求項1又は12~23のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項25】
前記取り外し可能なプラグが、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の押し出しを防止する、請求項2又は24に記載の薬物送達デバイス。
【請求項26】
前記エラストマーポリマーが、前記医薬組成物と適合性がある、請求項2、24又は25のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項27】
前記取り外し可能なプラグがフルオロポリマーを含む、請求項2又は24~26のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項28】
前記取り外し可能なプラグが、前記薬物送達デバイスからの取り外しを容易にするために熱収縮チューブに包まれる、請求項2又は24~27のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項29】
前記熱収縮チューブがフルオロポリマーを含む、請求項28に記載の薬物送達デバイス。
【請求項30】
前記取り外し可能なプラグと、前記送達チューブの全部又は一部とが、前記患者による前記薬物送達デバイスの最初の使用の前にポリマーシースに包まれる、請求項2又は24~27のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項31】
前記熱収縮チューブが、前記患者による前記薬物送達デバイスの最初の使用の前にポリマーシースに包まれる、請求項28~30のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項32】
前記ポリマーシースがフルオロポリマーを含む、請求項30又は31に記載の薬物送達デバイス。
【請求項33】
前記ポリマーシースが水蒸気の透過を遅らせ、それによって、前記送達チューブ内の前記医薬組成物の乾燥を低減する又は防止する、請求項30~32のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項34】
前記医薬組成物が前記送達チューブ内で乾燥しないように、前記送達チューブは前記ポリマーシースによって包まれているときに水不透過性である、請求項30~33のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項35】
前記ポリマーシースがスリットテールを含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項36】
前記ポリマーシースが、前記薬物送達デバイスを前記患者の口に挿入する前に取り外されるように構成される、請求項30~35のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項37】
前記取り外し可能なプラグが、前記薬物送達デバイスを前記患者の口に挿入する前に取り外されるように構成される、請求項2又は24~36のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項38】
前記薬物送達デバイスが、前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定するための留め具をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項39】
前記留め具が、前記患者の上顎臼歯の頬側に前記薬物送達デバイスを固定するために前記留め具の一体部分として作製されるポケットを含み、前記ポケットは、前記薬物送達デバイスを臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される、請求項1、2、4~7又は11~38のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項40】
前記ポケットが、前記薬物送達デバイスを第1又は第2大臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される、請求項3又は39に記載の薬物送達デバイス。
【請求項41】
前記ポケットが、ウィルソン平面上に設置されるように前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される、請求項3、39又は40のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項42】
前記留め具が小臼歯及び大臼歯の上に装着される、請求項1~7又は11~41のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項43】
前記留め具がプラスチックで作られている、請求項1~7又は11~42のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項44】
前記プラスチックが、アクリレート含有ポリマー又は熱可塑性ポリオレフィンである、請求項43に記載の薬物送達デバイス。
【請求項45】
前記ポケットが、前記医薬組成物が前記患者の歯の舌側で前記送達チューブから放出されるように前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される、請求項3又は39~44のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項46】
前記ポケットが、前記留め具が前記患者の口の表面に取り付けられているときに、前記患者の口腔解剖学的構造が前記ポケットからの前記薬物送達デバイスの取り外しを機械的に妨害し、防止し得るように構成される、請求項3又は39~45のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項47】
前記ポケットが、前記口への挿入中に又は前記医薬組成物の投与中に前記薬物送達デバイスが前記ポケットから外れることを防止するように、前記薬物送達デバイスとの摩擦嵌めを有するように構成される、請求項3又は39~46のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項48】
前記薬物送達デバイスが、前記デバイスを押すことによって前記ポケットから取り外され得る、請求項3又は39~47のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項49】
前記留め具が保持具である、請求項1~7又は11~48のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項50】
前記薬物リザーバ又は前記第1のチャンバが、口腔粘膜と生体適合性があり前記医薬組成物と適合性があるフルオロカーボンエラストマーを含むエラストマープラグで気密式にシールされた、前記薬物リザーバ又はチャンバを前記薬物組成物により充填するためのポートを有する、剛性ハウジングを含む、請求項1、2、3又は5~49のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項51】
前記エラストマープラグが射出成形エラストマープラグである、請求項4又は50に記載の薬物送達デバイス。
【請求項52】
前記エラストマープラグでシールされた前記ポートが、前記ハウジングの壁が約0.015インチの厚さを有する場合に、約12バールの圧力を維持することができる、請求項4、50又は51のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項53】
前記薬物送達デバイスが、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに流体接続された2つの流量制限器を含み、第1の流量制限器が6~12mmの長さと0.0100~0.0120インチの内径とを有し、第2の流量制限器が14~24mmの長さと0.0130~0.0145インチの内径とを有する、請求項1~4又は6~52のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項54】
前記2つの流量制限器が表3に記載された構成の寸法を有する、請求項5又は53に記載の薬物送達デバイス。
【請求項55】
前記薬物送達デバイスが、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバと流体連通する流量制限器を含み、前記流量制限器及び/又は前記送達チューブが、接着剤によって前記薬物リザーバに直接又は間接的に気密式に接合される、請求項1、2及び11~54のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項56】
前記流量制限器がカップリングアダプタに接合され、このアダプタが次に、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに気密式に接合される、請求項6又は55に記載の薬物送達デバイス。
【請求項57】
前記送達チューブが前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに気密式に接合される、請求項6、55又は56のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項58】
前記ポンプが推進剤駆動式ポンプである、請求項1~6又は11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項59】
前記第2のチャンバ又は前記推進剤駆動式ポンプが、剛性ハウジングと、アイレットと、気密シールを形成するために前記アイレットに嵌め込まれた推進剤装填用の圧縮可能なエラストマーセプタムとを含む、請求項8~58のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項60】
前記セプタムが、口腔粘膜と生体適合性があり、推進剤と適合性がある、請求項7又は59に記載の薬物送達デバイス。
【請求項61】
前記セプタムがニトリルゴムを含む、請求項7、59又は60のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項62】
前記セプタムが、前記推進剤チャンバ内の圧力下で前記デバイスからの排出を防止するためにフレア状である、請求項7又は59~61のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項63】
前記ポンプが推進剤駆動式ポンプであり、前記デバイスが、
(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバ、
(ii)推進剤を含む第2のチャンバ、及び
(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラム
を含む、請求項1~7又は11~62のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項64】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムが、気密シールを形成するために接着剤によって接合される、請求項9、10又は63のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項65】
前記第1のチャンバが第1の剛性ハウジングを有し、前記第2のチャンバが第2の剛性ハウジングを有し、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバがそれぞれ、接着剤接合面積を増大させるための段差を有するリムを含む、請求項8、63又は64のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項66】
前記接着剤が、アクリレート、ガム、エポキシ、又はシーラントである、請求項6、8又は55~65のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項67】
前記エポキシ接着剤が2つの成分、すなわち、2つ以上のエポキシド官能基を有する化合物を含む第1の成分、及び2つ以上のアミン官能基を有する化合物を含む第2の成分を含む、請求項66に記載の薬物送達デバイス。
【請求項68】
硬化した接着剤が、前記推進剤及び前記薬物含有流体の成分の両方と適合性がある、請求項6、8又は55~67のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項69】
前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングが前記ダイヤフラムを挟む、請求項8~10又は63~68のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項70】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムが、圧着によってシールされる、請求項8、10又は63~69のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項71】
前記第1のチャンバが第1の剛性ハウジングを備え、前記第2のチャンバが第2の剛性ハウジングを備え、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバがそれぞれ、段差を有するリムを備え、前記第1のハウジング又は前記第2のハウジングのいずれかの前記リムの前記段差が圧着タブを備える、請求項9又は70に記載の薬物送達デバイス。
【請求項72】
前記第2のチャンバが、37℃で約4気圧以上の蒸気圧を有する推進剤を含む、請求項8~10又は63~71のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項73】
前記剛性ハウジングのそれぞれが、0.25mm~0.5mmの間の壁厚を有する、請求項4、8~10又は13~72のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項74】
前記ダイヤフラムが、0.025mm~0.25mmの厚さである、請求項8~10又は13~73のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項75】
前記医薬組成物が、薬物及び1種又は複数種の賦形剤を含み、前記薬物送達デバイスが1年間非凍結状態で保存されたときに、前記薬物と前記賦形剤のそれぞれとの約3%未満が前記送達チューブによって吸収されるか、又は前記送達チューブを通って搬送される、請求項1、2又は12~74のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項76】
前記ポンプが、前記医薬組成物に対して約2バール以上の内圧を維持する、請求項1~75のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項77】
前記ポンプがバッテリ駆動式ポンプ、機械駆動式ポンプ又は浸透圧ポンプを含む、請求項1~6、11~57、75又は76のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項78】
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記ダイヤフラム、前記流量制限器、及び/又は前記送達チューブのいずれかに接着剤を適用し、前記接着剤を硬化させて気密シールを形成することを含む、請求項8~77のいずれか一項に記載の薬物送達デバイスを製造する方法。
【請求項79】
薬物送達デバイスからの医薬組成物の押し出しを一時的に停止するための保管ケースであって、前記保管ケースの対向する内面上に、前記保管ケースが閉じられたときに薬物送達デバイスの可逆的に圧縮可能なチューブを挟み、又はよじり、それによって前記薬物送達デバイスからの押し出しを一時的に停止するように構成された対になる構成要素を含む保管ケース。
【請求項80】
前記薬物送達デバイスが、前記薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された留め具に取り付けられていながら、前記保管ケースが前記薬物送達デバイスからの押し出しを一時的に停止するように構成される、請求項79に記載の保管ケース。
【請求項81】
前記薬物送達デバイスが、前記薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された留め具に取り付けられていないが、前記保管ケースが、前記薬物送達デバイスからの押し出しを一時的に停止するように構成される、請求項79に記載の保管ケース。
【請求項82】
前記対になる構成要素がエラストマーパッドと金属ピンとを含む、請求項79~81のいずれか一項に記載の保管ケース。
【請求項83】
前記薬物送達デバイスを前記保管ケース内に位置合わせするためのホルダをさらに含む、請求項79~82のいずれか一項に記載の保管ケース。
【請求項84】
前記ケースが微生物の成長を助長しない材料を含む、請求項79~83のいずれか一項に記載の保管ケース。
【請求項85】
前記薬物送達デバイスが請求項1~75のいずれか一項に記載のデバイスである、請求項79~84のいずれか一項に記載の保管ケース。
【請求項86】
前記薬物送達デバイスを請求項79~85のいずれか一項に記載の保管ケースに挿入すること、及び、前記保管ケースの蓋を閉じることを含む、請求項1~77のいずれか一項に記載の薬物送達デバイスからの医薬組成物の押し出しを一時的に停止する方法。
【請求項87】
患者の口に医薬組成物を投与する方法であって、
(i)請求項1~77のいずれか一項に記載の薬物送達デバイスを前記患者の口に挿入すること、
(ii)前記患者に前記医薬組成物を投与すること、及び
(iii)前記患者の口から前記デバイスを取り外すこと
を含む方法。
【請求項88】
送達チューブを挟む又はよじることによって、前記医薬組成物の投与を一時的に停止することをさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記チューブが、前記薬物送達デバイスを請求項79~85のいずれか一項に記載の保管ケースに挿入し、蓋を閉じることによって挟まれる、又はよじられる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された前記留め具に、前記医薬組成物の送達用のポンプを最初に挿入することをさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
実質的に酸素を含まない雰囲気でガス不透過性である気密式にシールされたパウチを含む、薬物送達デバイスの長期保管のための包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物を連続的に投与するために口の中に固定される薬物送達デバイス及び前記デバイスを使用する方法を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、経口経路を介した連続的又は半連続的な薬物投与のためのデバイス及び方法に関する。本発明の目的は、生理的半減期が短い薬物(例えば、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分又は10分より短い)及び/又は現在1日に複数回投薬されている薬物の狭い治療窓に関するいくつかの問題を解決することである:1日に複数回又は夜間に投薬しなければならない薬物を服用することは不便であり、薬物の薬物動態及び効力は最適ではない可能性があり、副作用はその頻度及び/又は深刻度を増大し得る。連続投与又は半連続投与は、半減期(例えば、血漿中)が短く、及び/又は薬物の生理学的効果の持続性が短く、及び/又は治療窓が狭い、以下のものなどの薬物に特に有益であり得る。レボドパ(LD)、筋弛緩剤(例えば、痙縮を管理するためのバクロフェン)、抗てんかん薬(例えば、オクスカルバゼピン、トピラマート、ラモトリギン、ガバペンチン、カルバマゼピン、バルブロ酸、レベチラセタム、プレガバリン)、副交感神経作動薬(例えば、ピリドスチグミン)及び睡眠薬(例えば、ザレプロン)。口の中で連続的又は半連続的に注入することにより、臓器又は流体、例えば血液又は血漿中の薬物の濃度の変動を減らすことができる。便利な薬物の自動投与により、特に夜間に薬を服用しなければならない患者や認知症の患者に関して、患者の服薬コンプライアンスを向上させることもできる。
【0003】
連続的に経口投与される薬物によって管理される病状には、パーキンソン病、痙性、筋力低下、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、寄生虫による疾患、癌、疼痛、臓器移植、睡眠障害、てんかん及び発作、不安、気分障害、心的外傷後ストレス障害、不整脈、高血圧症、心臓不全、認知症、アレルギー、糖尿病性腎臓障害などがある。
【0004】
経口投与を意図した薬物の多くは、1日に1回又は複数回投与される固形物(例えば、錠剤、タブレット)、溶液、又は懸濁液として処方されている。このような薬物は、連続的又は半連続的な、一定速度の口腔内投与の要件を満たすように処方されていない。例えば、多くの懸濁液や溶液は、その機能、特に発話を妨げることなく口の中に収まらない、比較的大量の1日量で処方されており、及び/又は体温下に1日の間に物理的又は化学的に不安定である製剤で処方されており、錠剤やタブレットは、1日を通して頻繁に服薬するのに適した単位及び服薬量で処方されることはほとんどない。
【0005】
病気によっては、治療のために大量の薬剤を投与する必要がある。例えば、進行したパーキンソン病の患者には、1日1,000mgのレボドパが投与されるのが一般的である。このような大量の薬物を、何時間も口内に快適に収まる流体量(通常5mL未満)で口内に連続的に投与するためには、薬物の濃縮された、しばしば粘性のある液剤を採用することが必要になることがある。粘性流体の使用は、本発明の薬物及び方法に望まれる少量、高濃度、均一な薬物分散、保存安定性、及び操作安定性を提供することができる。その結果、粘性流体を圧送するのに必要な圧力を提供するように調整された小型化されたポンプを採用することがしばしば必要である。本発明の薬物デバイス及び製剤は、このような未解決のニーズに対応するものである。
【0006】
具体的な例として、パーキンソン病(PD)は、黒質のドーパミン作動性ニューロンが神経伝達物質であるドーパミンを生成できないことを特徴とする。PDは、運動能力、認知プロセス、自律神経機能、及び睡眠を損なう。運動症状としては、振戦、硬直、動作緩慢(運動緩徐)、動作開始能力の低下(アキネジア)(総称して「オフ」状態)などがある。PDの非運動性症状には、認知症、嚥下障害(飲み込み困難)、不明瞭な言語、起立性低血圧、脂漏性皮膚炎、尿失禁、便秘、気分変化、性機能障害、睡眠問題(例えば、日中の傾眠、不眠)などがある。
【0007】
レボドパ(LD)療法は、40年を超える臨床使用の後、PDを管理するための最も効果的な方法であり、運動機能に最も大きな改善をもたらす。その結果、LD投与はPDの主要な治療法である。LDは通常、経口投与される。経口投与されたLDは血液に入り、血液中のLDの一部は血液脳関門を通過する。LDは脳内で一部代謝され、ドーパミンとなり、PDの運動症状を一時的に軽減させる。PDの基礎となる神経変性が進行すると、患者が必要とするLDの量は増え、脳内ドーパミンレベルの変動も大きくなる。LDが脳に運ばれすぎると、ジスキネジア(身悶え、痙攣、震えなどの制御不能な運動)が起こり、運ばれる量が少なすぎると、患者は再びオフ状態になる。さらに、PDの進行に伴い、LDの口腔製剤の治療窓が狭くなり、運動合併症を誘発することなくPDの運動症状を制御することがますます困難になる。さらに、ほとんどのPD患者は、服薬終了時の効果が減耗し、突然のオン/オフ、オンまでの時間の遅延、及び応答障害など、間欠的な口腔LD療法に対する応答変動を発現する。
【0008】
特に、半減期が短く(例えば、血漿中)、薬物の生理学的効果の持続性が短く、治療窓が狭い薬物について、治療の有効性及び/又は安全性を改善するために、信頼できる安定した薬物動態性能をもたらすために、被験者への薬物の連続又は半連続投与を可能にする方法及びデバイスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医薬組成物を口腔内に連続的に投与するための薬物送達デバイス、前記薬物送達デバイスのための保管ケース、及び患者に薬物を投与するために薬物送達デバイスを使用する方法を特徴とする。
【0010】
第1の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)ポンプであって、(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、及び(b)前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために前記薬物リザーバと流体連通している可逆的に圧縮可能な多層送達チューブであって、前記圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度が10%未満(例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満)だけ上昇又は低下するように圧縮後にその形状を回復するように構成された可逆的に圧縮可能な多層送達チューブを含むポンプとを含む薬物送達デバイスを提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)ポンプであって、(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、及び(b)前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために、前記薬物リザーバと流体連通している送達チューブを含むポンプと、(iii)前記患者による最初の使用の前に前記送達チューブを気密式にシールするためのエラストマーポリマーを含む取り外し可能なプラグであって、前記取り外し可能なプラグの取り外し後、前記口腔内投与のために前記デバイスを前記患者の口の中に挿入することができる状態になる、取り外し可能なプラグとを含む薬物送達デバイスを提供する。いくつかの実施形態において、送達チューブは、前記圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度が10%未満(例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満)だけ上昇又は低下するように、圧縮後にその形状を回復するように構成された可逆的に圧縮可能な多層送達チューブである。
【0012】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプとを含み、前記留め具が、前記患者の上顎臼歯の頬側に前記薬物送達デバイスを固定するために前記留め具の一体部分として作製されるポケットを含み、前記ポケットが、前記薬物送達デバイスを前記臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成されている、薬物送達デバイスを提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプとを含み、前記薬物リザーバは、口腔粘膜と生体適合性があり前記医薬組成物と適合性があるフルオロカーボンエラストマーを含むエラストマープラグで気密式にシールされた、前記薬物リザーバを前記医薬組成物により充填するためのポートを有する、剛性ハウジングを含む、薬物送達デバイスを提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプとを含み、前記薬物送達デバイスは、前記薬物リザーバに流体的に接続された2つの流量制限器を備え、第1の流量制限器は6~12mmの長さと0.0100~0.0120インチの内径とを有し、第2の流量制限器は14~24mmの長さと0.0130~0.0145インチの内径とを有する、薬物送達デバイスを提供する。いくつかの実施形態において、前記2つの流量制限器は、表3に記載された構成の寸法を有する。
【0015】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)ポンプであって、(a)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバ、(b)前記薬物リザーバと流体連通する流量制限器、及び(c)前記患者の口に前記医薬組成物を送達するために前記薬物リザーバと流体連通する可逆的に圧縮可能な送達チューブを含むポンプとを含み、前記流量制限器及び/又は前記送達チューブが、接着剤により前記薬物リザーバに直接又は間接的に気密式に接合される、薬物送達デバイスを提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含む推進剤駆動式ポンプとを含み、前記推進剤駆動式ポンプは、剛性ハウジングと、アイレット(例えば、前記ハウジングに接合されたアイレット)と、気密シールを形成するために前記アイレットに嵌め込まれた推進剤装填用の圧縮可能なエラストマーセプタムとを備える、薬物送達デバイスを提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムとを含み、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、気密シールを形成するために接着剤によって接合されている、薬物送達デバイスを提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムとを含み、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、圧着により部分的に又は完全に結合又はシールされている、薬物送達デバイスを提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバと、(ii)推進剤を含む第2のチャンバと、(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムとを含み、前記第1のチャンバは第1の剛性ハウジングを備え、前記第2のチャンバは第2の剛性ハウジングを備え、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバがそれぞれ、段差を有するリムを含み、(例えば、接着接合面積を増加させることによって)前記2つのチャンバの前記リムの間の接合、又はそれら接合時に形成される結合を強化する、薬物送達デバイスを提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプとを含み、前記留め具は、前記留め具が前記患者の口の表面に取り付けられているときに、前記患者の口腔解剖学的構造が前記留め具からの前記薬物送達デバイスの取り外しを機械的に妨害し防止し得るように構成される、薬物送達デバイスを提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物を含む医薬組成物を連続的又は半連続的に口腔内に投与するように構成された薬物送達デバイスであって、(i)前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定する留め具と、(ii)前記医薬組成物を含み、容量が0.1mL~5mLである薬物リザーバを含むポンプとを含み、前記留め具は、前記薬物送達デバイスとの摩擦嵌めを有し、それによって、口への挿入中又は前記医薬組成物の投与中に前記薬物送達デバイスが前記留め具から外れることを防止するように構成される、薬物送達デバイスを提供する。或いは、薬物送達デバイスは、デテント、溝、スナップ、又はロックを用いて前記留め具内に可逆的に固定される。
【0022】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、患者の上顎臼歯の頬側に薬物送達デバイスを固定し、薬物送達デバイスを臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、薬物送達デバイスを第1又は第2大臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、薬物送達デバイスを第1及び第2臼歯のみにまたがるように位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、薬物送達デバイスの後端が患者の最後部の臼歯の中線と後部との間にあるように、薬物送達デバイスを位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、薬物送達デバイスをウィルソン平面上に設定されるように位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、留め具は、患者の上顎臼歯の頬側に薬物送達デバイスを固定するために留め具の一体部分として作製されるポケットを含む。
【0023】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記デバイスは、前記患者の口への前記医薬組成物の送達のために、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバと流体連通する可逆的に圧縮可能な多層送達チューブをさらに含み、前記多層送達チューブは、前記圧縮が解除された後、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の定常投与速度は10%未満(例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満)だけ上昇又は低下するように、圧縮後に形状を回復するように構成される。
【0024】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記送達チューブを圧縮することによって、前記薬物送達デバイスが使用されているときに、前記医薬組成物の投与を一時的に停止することができる。
【0025】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記送達チューブは、積層ポリマーを含む外層と内層とを含み、前記外層は、口腔粘膜と生体適合性があるエラストマーポリマーを含む。いくつかの実施形態において、前記外層は、ポリウレタン、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、又は乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)を含む。いくつかの実施形態において、前記外層はポリウレタンを含む。いくつかの実施形態において、前記外層の厚さは、0.05mm~0.2mmの間である。いくつかの実施形態において、前記内層は、医薬組成物と適合性があり、半径方向の強度を提供し、水の透過を低減するポリマーを含む。いくつかの実施形態において、前記内層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリマー性フッ化エチレンプロピレン(FEP)を含む。いくつかの実施形態において、前記内層はPETを含む。いくつかの実施形態において、前記内層の厚さは、0.025mm~0.075mmの間である。いくつかの実施形態において、前記送達チューブは、圧縮後にその内径を実質的に取り戻す。いくつかの実施形態において、前記送達チューブは、前記送達チューブ内にあるときに前記医薬組成物からの水の損失を低減し、それによって前記医薬組成物の乾燥を低減する。いくつかの実施形態において、前記送達チューブは、0.5cm~5cmの長さを有する。いくつかの実施形態において、前記送達チューブは、0.010インチ~0.080インチの内径を有する。
【0026】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物送達デバイスは、患者による最初の使用の前に前記送達チューブを気密式にシールするためのエラストマーポリマーを含む取り外し可能なプラグをさらに含み、前記取り外し可能なプラグの取り外し後、前記デバイスは、前記口腔内投与のために患者の口の中に挿入される準備ができている。
【0027】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、前記薬物送達デバイスからの前記医薬組成物の押し出しを防止する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記エラストマーポリマーは、前記医薬組成物と適合性がある。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、フルオロポリマーを含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、パーフルオロエラストマー(例えば、FFKM)、フルオロエラストマー(例えば、FKM又はFEPM)、ポリブタジエン(BR)、ポリクロロプレン(CR)、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)又はエチレン酢酸ビニルゴム(EVA)を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、Viton(商標)を含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、前記薬物送達デバイスからの取り外しを容易にするために、熱収縮チューブに包まれる。いくつかの実施形態において、前記熱収縮チューブは、フルオロポリマーを含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグと前記送達チューブの全部又は一部とは、患者による前記薬物送達デバイスの最初の使用の前にポリマーシースに包まれる。いくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグ及び前記送達チューブの全長が、患者による前記薬物送達デバイスの最初の使用の前に、ポリマーシースに包まれる。いくつかの実施形態において、前記熱収縮チューブは、患者による前記薬物送達デバイスの最初の使用の前に、ポリマーシースに包まれる(例えば、前記ポリマーシースは、前記取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリを包む)。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースはフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースは、水蒸気の透過を遅らせ、それによって、前記送達チューブ内の前記医薬組成物の乾燥を低減する又は防止する(例えば、前記ポリマーシースによって包まれない送達チューブ内の乾燥と比較して)。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースは、前記送達チューブを通る酸素透過を遅らせる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物が送達チューブ内で乾燥しないように、前記ポリマーシースによって包まれたとき、前記送達チューブは水不透過性である。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースは、スリットテールを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースの尾部は、前記取り外し可能なプラグ(又は前記取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ)を越えて延在し、前記取り外し可能なプラグを前記送達チューブ内に維持するための保持力を加える。いくつかの実施形態において、前記ポリマーシースは、前記薬物送達デバイスを患者の口に挿入する前に取り外されるように構成される。いくつかの実施形態において、前記取り外し可能なプラグは、患者の口内に前記薬物送達デバイスを挿入する前に(例えば、前記熱収縮チューブの取り外しによって)取り外されるように構成される。
【0028】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物送達デバイスは、前記薬物送達デバイスを前記患者の口の表面に取り外し可能に固定するための留め具をさらに含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は、前記留め具が前記患者の口の表面に取り付けられたときに、前記患者の口腔解剖学的構造が前記留め具からの前記薬物送達デバイスの取り外しを機械的に妨害し妨げ得るように構成される。
【0029】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は、前記患者の上顎臼歯の頬側に前記薬物送達デバイスを固定するために前記留め具の一体部分として作製されるポケットを含み、前記ポケットは、前記薬物送達デバイスを臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される。
【0030】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記薬物送達デバイスを第1又は第2大臼歯の咬合面と同一平面に位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記薬物送達デバイスが第1及び第2大臼歯にのみまたがるように位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記薬物送達デバイスの後端が患者の最後部の臼歯の中線と後部との間にあるように、前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、ウィルソン平面上に設置されるように前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される。
【0031】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は、小臼歯及び大臼歯の上に装着される。いくつかの実施形態において、前記留め具は、硬口蓋及び軟口蓋のほぼ半分にまたがる位置にある、例えば、硬口蓋の約半分及び軟口蓋の半分が前記留め具によって覆われている)。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は、プラスチックで作られている。いくつかの実施形態において、プラスチックは、アクリレート含有ポリマー又はオレフィン含有ポリマーである。例えば、前記留め具は、ポリプロピレンなどの熱可塑性ポリオレフィンで作られてもよい。プラスチックは、Essix(登録商標)PLUS(商標)プラスチック、Essix A+(登録商標)プラスチック、Essix C+(登録商標)プラスチック、Essix ACE(登録商標)プラスチック、Essix(登録商標) デュアルラミネートプラスチック、Essix(登録商標) ナイトガードラミネートプラスチック、Essix(登録商標) スポーツマウスガードマテリアル、Essix(登録商標)ラミネーテッドスポーツマウスガードマテリアル、Essix(登録商標)ブリーチトレイ及びモデル複製マテリアル、Essixトレイライト(登録商標)プラスチック、Dreve Drufosoft(登録商標)プロプラスチック、Dreveコンビプラストプラスチック、Dreveバイオロンプラスチック、又はDreve Drufosoft(登録商標)スポーツマウスガードマテリアルであり得る。
【0032】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記医薬組成物が患者の歯の舌側で前記送達チューブから放出されるように前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記送達チューブが患者の最後部の歯に巻き付くように前記薬物送達デバイスを位置決めするように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記留め具が患者の口に挿入される前に前記薬物送達デバイスを前記ポケットに押し込むことができるように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記患者の口の表面に配置されている間、又は口の中での使用中に、前記薬物送達デバイスが前記ポケットから外れることができないように構成されている。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、口への挿入中に又は前記医薬組成物の投与中に前記薬物送達デバイスが前記ポケットから外れることを防止するように、前記薬物送達デバイスとの摩擦嵌めを有するように構成される。或いは、前記薬物送達デバイスは、デテント、溝、スナップ、又はロックを用いて前記ポケット内に可逆的に固定される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポケットは、前記留め具が患者の口の表面に取り付けられているときに、患者の口腔解剖学的構造が前記ポケットからの前記薬物送達デバイスの取り外しを機械的に妨害し、防止し得るように構成される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物送達デバイスは、前記デバイスを押すことによって前記ポケットから取り外され得る(例えば、前記デバイスが患者の口の外側にあるとき)。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は、患者の歯列に適合される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記留め具は保持具である。
【0034】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバは、口腔粘膜と生体適合性があり前記医薬組成物と適合性があるフルオロカーボンエラストマーを含むエラストマープラグで気密式にシールされた、前記薬物リザーバ又はチャンバを前記薬物組成物により充填するためのポートを有する、剛性ハウジングを含む。いくつかの実施形態において、前記エラストマープラグは、射出成形エラストマープラグである。いくつかの実施形態において、前記エラストマープラグは、圧縮可能である。いくつかの実施形態において、前記エラストマープラグでシールされた前記ポートは、ハウジング壁が約0.015インチの厚さを有する場合に、約12バールの圧力を維持することができる。
【0035】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物送達デバイスは、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに流体的に接続された2つの流量制限器を含み、第1の流量制限器は6~12mmの長さと0.0100~0.0120インチの内径とを有し、第2の流量制限器は14~24mmの長さと0.0130~0.0145インチの内径とを有する。いくつかの実施形態において、前記2つの流量制限器は、表3に記載された構成の寸法を有する。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、ほぼ同じ速度で両方の流量制限器を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、異なる速度で両方の流量制限器を通って流れる。いくつかの実施形態において、第1の流量制限器に入る医薬組成物は、前記薬物送達デバイス又は第1のチャンバの第1の領域から入り、第2の流量制限器に入る医薬組成物は、前記薬物送達デバイス又は第1のチャンバの第2の領域から入る。いくつかの実施形態において、前記2つの流量制限器は、低い水透過性を有する化学的に不活性なポリマーで作られる。いくつかの実施形態において、前記2つの流量制限器はPETで作られる。
【0036】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記薬物送達デバイスは、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバと流体連通する流量制限器を含み、前記流量制限器及び/又は前記送達チューブは、接着剤によって前記薬物リザーバに直接又は間接的に気密式に接合される。いくつかの実施形態において、前記流量制限器は、カップリングアダプタに接合され、このアダプタは、次に、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに気密式に接合される(例えば、流量制限器は、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに間接的に接合される)。いくつかの実施形態において、前記送達チューブは、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに気密的に接合される(例えば、前記送達チューブは、前記薬物リザーバ又は第1のチャンバに直接接合される)。
【0037】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポンプは機械式ポンプ、例えば推進剤駆動型ポンプである。別の実施形態において、前記ポンプは浸透圧ポンプである。いくつかの実施形態において、前記ポンプはバッテリ駆動式ポンプである。
【0038】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第2のチャンバ又は前記推進剤駆動式ポンプは、剛性ハウジングと、アイレット(例えば、前記ハウジングに接合されたアイレット)と、気密シールを形成するために前記アイレットに嵌め込まれた推進剤装填用の圧縮可能なエラストマーセプタムとを含む。いくつかの実施形態において、前記セプタムは、口腔粘膜と生体適合性があり、推進剤と適合性がある。いくつかの実施形態において、前記セプタムはニトリルゴムを含む。いくつかの実施形態において、前記セプタムは、推進剤注入針が前記セプタムから引き抜かれた後、気密シールを形成する。いくつかの実施形態において、前記セプタムの直径は、圧縮時に減少する。いくつかの実施形態において、前記セプタムは前記アイレットを越えて延在する。いくつかの実施形態において、前記セプタムは、前記推進剤チャンバ内の圧力下で前記デバイスからの排出を防止するためにフレア状である。いくつかの実施形態において、前記アイレットは、前記推進剤注入針を案内するための切り欠きを含む。いくつかの実施形態において、前記アイレットは、注入に対する抵抗を増加させるために内部リブを含む。
【0039】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポンプは、推進剤駆動式ポンプであり、前記デバイスは(i)前記医薬組成物を含む第1のチャンバ、(ii)推進剤を含む第2のチャンバ、及び(iii)前記第1のチャンバを前記第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムを含む。
【0040】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、気密シールを形成するために接着剤によって接合される。
【0041】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第1のチャンバは第1の剛性ハウジングを有し、前記第2のチャンバは第2の剛性ハウジングを有し、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバはそれぞれ、接着剤接合面積を増大させるための段差を有するリムを含む(例えば、前記2つのチャンバのリムの間の接合部、又はそれらの接合時に形成されるジョイント部を強化することによって)。いくつかの実施形態において、絶対推進剤圧力は、前記デバイスが体温で口の中にあるとき、2バール~12バールの間である。
【0042】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記接着剤は、アクリレート、ガム、エポキシ、又はシーラントである。いくつかの実施形態において、前記接着剤はエポキシである。いくつかの実施形態において、前記エポキシ接着剤は、2つの成分、すなわち、2つ以上のエポキシド官能基を有する化合物を含む第1の成分、及び2つ以上のアミン官能基を有する化合物を含む第2の成分を含む。いくつかの実施形態において、硬化した接着剤は、前記推進剤及び前記薬物含有流体の成分の両方と適合性がある。いくつかの実施形態において、前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングは、前記ダイヤフラムを挟む。
【0043】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び任意選択的に前記ダイヤフラムは、圧着によって部分的又は完全に接合又はシールされる。
【0044】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第1のチャンバは第1の剛性ハウジングを備え、前記第2のチャンバは第2の剛性ハウジングを備え、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバはそれぞれ、段差を有するリムを備え、前記第1のハウジング又は前記第2のハウジングのいずれかのリム(例えば、前記第2のハウジングのリム)の段差が圧着タブを備える。
【0045】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記第2のチャンバは、37℃で約4気圧以上の蒸気圧を有する推進剤を含む。
【0046】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記剛性ハウジングは金属製である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記剛性ハウジングのそれぞれは、0.25mm~0.5mmの間の壁厚を有する。
【0047】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ダイヤフラムは金属製である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ダイヤフラムは、0.025mm~0.25mmの厚さである。
【0048】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、薬物及び1種又は複数種の賦形剤を含み、前記薬物送達デバイスが1年間非凍結状態で保存されたときに、前記薬物と前記賦形剤のそれぞれとの約3%未満が前記送達チューブによって吸収されるか、又は前記送達チューブを通って搬送される。いくつかの実施形態において、前記賦形剤は水、油、及び界面活性剤を含む。
【0049】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記デバイスは、前記患者の歯の頬側に位置決めされる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記送達チューブは、前記患者の歯の舌側に前記医薬組成物を投与するように構成される。
【0050】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記ポンプは、前記医薬組成物に対して約2バール以上の内圧を維持する。
【0051】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、100cPを超える、例えば、10,000cP、50,000cP、100,000cP、500,000cP、又は1,000,000cPを超える37℃での動的粘度を有する。
【0052】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、固体薬物粒子及び/又は固体賦形剤粒子を含む。
【0053】
別の態様において、本発明は、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記ダイヤフラム、前記流量制限器、及び/又は前記送達チューブのいずれかに接着剤を適用し、前記接着剤を硬化させて気密シールを形成することにより、本発明の薬物送達デバイスを製造する方法を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、薬物送達デバイスからの医薬組成物の押し出しを一時的に停止するための保管ケースであって、前記保管ケースの対向する内面上に、前記保管ケースが閉じられたときに薬物送達デバイスの可逆的に圧縮可能なチューブを挟み、又はよじり、それによって前記薬物送達デバイスからの押し出しを停止するように構成された対になる構成要素を含む保管ケースを提供する。いくつかの実施形態において、前記対になる構成要素は、エラストマーパッドと金属ピンとを含む。いくつかの実施形態において、前記保管ケースは、前記保管ケース内で前記薬物送達デバイスを位置合わせするためのホルダをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記保管ケースは、本発明の薬物送達デバイスからの医薬組成物の押し出しを停止する。いくつかの実施形態において、前記ケースは、微生物の成長を助長しない材料を含む。いくつかの実施形態において、前記保管ケースは、前記薬物送達デバイスが、前記薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された留め具に取り付けられていながら、前記薬物送達デバイスからの押し出しを一時的に停止するように構成される。代替実施形態において、前記保管ケースは、前記薬物送達デバイスが、前記薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された留め具に取り付けられていないが、前記薬物送達デバイスからの押し出しを一時的に停止するように構成される。
【0055】
別の態様において、本発明は、薬物送達デバイスを本発明の保管ケースに挿入し、前記保管ケースの蓋を閉じることによって、本発明の前記薬物送達デバイスからの医薬組成物の押し出しを一時的に停止する方法を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、(i)本発明の薬物送達デバイスを前記患者の口に挿入すること、(ii)前記患者に前記医薬組成物を投与すること、及び(iii)前記患者の口から前記デバイスを取り外すことによって、患者の口に医薬組成物を投与する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、前記送達チューブを挟む又はよじることによって、前記医薬組成物の投与を一時的に停止することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記チューブは、前記薬物送達デバイスを本発明の保管ケースに挿入し、蓋を閉じることによって挟まれる、又はよじられる。
【0057】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、本方法は、前記薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するように構成された前記留め具に(例えば、前記留め具の前記ポケットに)前記医薬組成物の送達用のポンプを最初に挿入する(例えば、口への挿入前又は前記保管ケースへの挿入前に)ことをさらに含む。
【0058】
別の態様において、本発明は、実質的に酸素を含まない雰囲気でガス不透過性である気密式にシールされたパウチを含む、薬物送達デバイスの長期保管のための包装材料を提供する。いくつかの実施形態において、パウチは不活性ガスで満たされている。いくつかの実施形態において、不活性ガスは、窒素、アルゴン、又は二酸化炭素である。いくつかの実施形態において、パウチの壁は、金属フィルムとポリマーの積層体を含む。いくつかの実施形態において、パウチは、加湿多孔質インサートを含む。いくつかの実施形態において、パウチは、本明細書に記載される薬物デバイスを含んでいる。
【0059】
いくつかの実施形態において、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物の連続的又は半連続的な口腔内投与のために構成された薬物送達デバイスは、剛性ハウジングを含む推進剤駆動式ポンプを含み、剛性ハウジングは、薬物含有流体を含む第1のチャンバの壁と推進剤を含む第2のチャンバの壁とを含む。デバイスは、第1のチャンバを第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能な推進剤不透過性ダイヤフラムを含むことができる。ダイヤフラムは、第1のチャンバの壁と第2のチャンバの壁とを含むことができる。特定の実施形態において、推進剤不透過性ダイヤフラムを含む又は構成する金属の密度は、25℃で2.0g/cm3より高くすることができる。ダイヤフラムは、金属(例えば、スズ又は銀又はアルミニウム又は鉄又はマグネシウム又は銅又はチタン又は鋼、或いはスズ又は銀又はアルミニウム又は鉄又はマグネシウム又は銅又はチタンの合金)であることができる。任意選択的に、金属ダイヤフラムは、銀又は銀の合金、或いは鉄又は鉄の合金を含み得る。ダイヤフラムは、第1のチャンバの内部ハウジング壁及び/又は第2のチャンバの内部ハウジング壁に実質的に適合する形状にすることができる。ダイヤフラムは、10μm~250μmの間の厚さ、例えば、20μm~125μmの間の厚さ、例えば、25μm~75μmの間の厚さであり得る。特定の実施形態では、ダイヤフラムの厚さは、ハウジングの内部を横切って±25%未満、又は±10%未満変化し得る。他の実施形態では、ダイヤフラムは、ダイヤフラムの中心よりも厚いリムを含む(例えば、リムの厚さは、ダイヤフラムの中心の厚さの少なくとも1.5倍であり得、リムの厚さは、ダイヤフラムの中心の厚さの1.5倍から2倍の間であり得、リムの厚さは、ダイヤフラムの中心の厚さの2倍から3倍の間であり得、又はリムの厚さは、ダイヤフラムの中心の厚さの3倍以上であり得る)。ダイヤフラムは、平面状、折り畳み状、プリーツ状、又は刻み目を付けることができる。デバイスは、薬物充填又は薬物送達のための1つ又は複数のオリフィスを除いて、気密式にシールされ得る。任意選択的に、薬物充填又は薬物送達のための1つ又は複数のオリフィスは、気密式に又は非気密式にシールされ得る。任意選択的に、薬物充填又は薬物送達のための1つ又は複数のオリフィスは、気密式にシールされる。特定の実施形態では、推進剤チャンバは、気密式にシールされることができ、推進剤を充填するための気密式にシールされたオリフィスを含むことができる。特定の実施形態では、薬物チャンバは、薬物を充填するため、又は薬物送達のための2つ、3つ、又はそれ以上の気密式にシール可能な又はシールされたオリフィスを含むことができる。さらに他の実施形態では、剛性ハウジング及びダイヤフラムは、気密的にシールされた溶接部によって結合され得る。例えば、気密シール溶接部は、空気及び水蒸気の流入又は水蒸気、薬物又は推進剤の流出を防止し、又は空気又は酸素の流入を防止し、又はヘリウムの流入又は流出を防止し得る。特定の実施形態では、デバイスの剛性ハウジングは、金属、セラミック、又は繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は金属繊維)によって補強されたポリマーの複合体を含むことができる。剛性ハウジングは、25±3℃で100MPaを超える降伏強度を有する材料、及び/又は25±3℃で100MPaを超える引張降伏強度を有する材料、及び/又は25±3℃で30GPaを超える弾性率を有する材料、及び/又は25±3℃で200MPaを超えるブリネル硬度を有する材料、及び/又は25±3℃で2.5g/cm3を超える、例えば3.5g/cm3を超える、例えば4.5g/cm3を超える、又は5.5g/cm3に等しいかそれを超える密度を有する材料を含み得る。剛性ハウジングは、チタン若しくは鉄若しくはアルミニウム若しくはモリブデン若しくはタングステン、又はチタン若しくは鉄若しくはアルミニウム若しくはモリブデン若しくはタングステンの合金からなる群から選択される金属を含み得る。いくつかの実施形態において、剛性ハウジングは、ステンレス鋼などの鋼で形成される。特定の実施形態では、剛性ハウジングは、チタン又はチタンの合金を含むことができ、金属ダイヤフラム(ハウジング内のチャンバを分離することができる)は、チタン又はチタンの合金を含む剛性ハウジングに溶接することができる。特定の実施形態では、ダイヤフラムは、銀又は銀の合金を含むことができ、又はそれは、任意選択的に、鉄又は鉄の合金を含むことができる。いくつかの実施形態において、ダイヤフラムは、鉄若しくはスズ若しくは銀若しくはチタン、又は鉄若しくはスズ若しくは銀若しくはチタンの合金を含むことができる。いくつかの実施形態において、ダイヤフラムは、ステンレス鋼などの鋼を含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物の連続的又は半連続的な口腔内投与のために構成された薬物送達デバイスは、薬物含有流体を含む第1のチャンバ、推進剤を含む第2のチャンバ、及び第1のチャンバを第2のチャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムを含み、少なくとも4、8、16又は24時間の期間にわたって、送達速度が±20%、±15%、±10%又は±5%未満で変動し得る間に薬物含有流体の75%~85%、86%~95%又は>95%が分注されることができる。ポンプは、液体推進剤を含むことができ、液体推進剤は、海抜大気圧で37℃未満の沸点を有する。特定の実施形態では、液体推進剤は、炭化水素、ハロカーボン、ヒドロフルオロアルカン、エステル、又はエーテルであり得る(例えば、液体推進剤は、2-メチルプロパン、イソペンタン、トリフルオロクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、1-フルオロブタン、2-フルオロブタン、1,2ジフルオロエタン、ジメチルエーテル、2-ブテン、n-ブタン、1-フルオロプロパン、1-ブテン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロエタン、シクロプロペン、プロパン、又はジエチルエーテルであり得る)。特定の実施形態において、液体推進剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、オクタフルオロシクロブタン又はイソペンタンである。推進剤は、37℃で1.5バール超及び20バール未満の蒸気圧、例えば、37℃で2.0バール超及び15バール未満の蒸気圧、又は37℃で3.0バール超及び10バール未満の蒸気圧を有することができる。薬物送達デバイスは、本明細書に記載の任意の医薬組成物を含むリザーバを含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように、及び薬物の連続的又は半連続的な口腔内投与のために構成された薬物送達デバイスは、(i)薬物送達デバイスを患者の口の表面に取り外し可能に固定するための留め具、(ii)機械式ポンプ、及び(iii)本発明の医薬組成物のいずれかを含む薬物リザーバを含み、薬物リザーバの容量は、0.1mLから5mL(例えば、0.1mLから4mL、0.1mLから3mL、0.1mLから2mL、0.1mLから1mL、0.1mLから0.5mL、0.1mLから0.25mL、0.2mLから5mL、0.3mLから5mL、0.5mLから5mL、1mLから5mL、2mLから5mL、4mLから5mL、0.5mLから1mL、0.5mLから2mL、1mLから2mL、2mLから3mL)である。
【0062】
本発明の薬物送達デバイスは、患者の1つ又は複数の歯に取り外し可能に固定することができる。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスを1つ又は複数の歯に取り外し可能に固定する留め具は、バンド、ブラケット、クラスプ、スプリント、又は保持器を含む。例えば、留め具は、5本未満の歯に取り付け可能な透明保持器又は部分保持器を含み得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の薬物送達デバイスは、1つ、2つ、又はそれ以上の流量制限器(例えば、チューブ又はオリフィス)をさらに含む。流量制限器は、1mm又は2mm未満及び0.05mmを超える内径と、0.25cm~10cmの間の長さとを有することができる。特定の実施形態では、流量制限器は、0.7mm未満及び0.2mmを超える内径を有することができる。好ましい内径は、0.1~2mm(0.1~0.7mm、0.2~0.5mm、0.5~0.75mm、0.75~1.0mm、1.0~1.5mm、又は1.5~2.0mm)であり、好ましい長さは0.25~5cm(1~2.5cm、1~5cm、0.25~0.5cm、0.5~0.75cm、0.75~1cm、1~2cm、2~3cm、3~4cm、又は4~5cmなど)である。流量制限器は、エンジニアリングプラスチックなどのプラスチックで作ることができる。特定の実施形態では、エンジニアリングプラスチックは、ポリアミド又はポリエステル、又はポリカーボネート、又はポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルケトン、又はポリイミド、又はポリオキシメチレン、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリフェニレンオキシド、又はポリスルホン、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリビニリデンジフルオリド、又は超高分子量ポリエチレン、又は強力なエラストマーを含む。
【0064】
本発明の薬物送達デバイスのいずれも、約37℃及び約1.013バールの一定圧力で、約4時間から約168時間の期間にわたって約0.015mL/時間から約1.25mL/時間の平均時間当たり量を送達するように構成され、ここで平均時間当たり量は4時間以上(例えば、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、168時間、又はそれ以上)の期間にわたって時間当たり±20%未満又は±10%未満で変化する。
【0065】
本発明の薬物送達デバイスのいずれも、0.001mL/時間から1.25mL/時間の間の速度で患者の口内に医薬組成物を連続的又は半連続的に投与するように構成され得る
【0066】
別の態様において、本発明は、患者に医薬組成物を投与する方法を特徴とし、この方法は、本発明の薬物送達デバイスを患者の口腔内表面に取り外し可能に取り付けることを含む。特定の実施形態において、本方法はさらに、口腔内表面からデバイスを取り外すこと、及び/又は、約4時間以上及び約7日以下の送達期間、患者に薬物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、ある量の薬物を含む薬物リザーバを含み、方法は、送達期間中、1時間当たり15μLから1時間当たり約1.25mLの範囲の速度での(例えば、本明細書に記載されるような)経口投与をさらに含む。例えば、本方法は、約0.015mL/時間から約0.25mL/時間、約0.25mL/時間から約0.5mL/時間、約0.5mL/時間から約0.75mL/時間、又は約0.75mL/時間から約1.0mL/時間の範囲の速度での経口投与を含み得る。特定の実施形態では、薬物の変動指数は、送達期間中に2.0、1.5、1.0、0.75、0.50、0.25、又は0.15以下に低減する。特定の実施形態では、医薬組成物は、約4時間以上(例えば、4、8、10、12、14、16、18、20、24、又はそれ以上の時間)の送達期間にわたって患者に投与され得る。
【0067】
特定の実施形態において、患者に医薬組成物を投与する方法は、患者における疾患を治療することをさらに含み、ここで疾患は、痙性、筋力低下、粘膜炎、アレルギー、免疫疾患、無感覚症、細菌感染、癌、疼痛、臓器移植、睡眠障害、てんかん又は発作、不安、気分障害、外傷後ストレス障害、不整脈、高血圧症、心臓不全、又は糖尿病性腎臓障害である。
【0068】
上記方法のいずれかの1つの特定の実施形態において、方法は、患者における疾患を治療することをさらに含み、ここで疾患は、多発性硬化症、脳性麻痺、痙性、神経原性起立性低血圧、ウィルソン病、シスチン尿症、関節リウマチ、アルツハイマー病、重症筋無力症、1型ゴーシェ病、C型ニーマンピック病、好酸球性胃腸炎、慢性肥満細胞症、潰瘍性大腸炎、胃食道逆流症、胃腸炎、妊娠悪阻、多形膠芽腫、未分化星状細胞種、肺高血圧症、冠動脈心疾患、鬱血性心不全、狭心症、2型糖尿病、COPD、ぜんそく、過敏性腸症候群、過活動膀胱又は切迫尿失禁である。1つの特定の実施形態において、方法は、重症筋無力症を治療することを含み、医薬組成物は、ピリドスチグミン、又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0069】
患者における疾患を治療する1つの特定の実施形態において、本方法はパーキンソン病を治療することを含み、医薬組成物はレボドパ又はレボドパプロドラッグを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、カルビドパ又はカルビドパプロドラッグ及び/又はベンセラジドをさらに含む。
【0070】
本発明のデバイス又は方法のいずれかにおいて、医薬組成物は、レボドパ又はレボドパプロドラッグ、バクロフェン又はバクロフェンプロドラッグ、ピリドスチグミン又はピリドスチグミンプロドラッグ、ピロカルピン又はピロカルピンプロドラッグ、フロセミド又はフロセミドプロドラッグ、メチルフェニデート、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トレプロスチニル、ベラプロスト、ニモジピン、及びテストステロンの1つ又は複数を含み得る。
【0071】
上記のデバイス及び方法の先行する実施形態のいずれかにおいて、医薬組成物は、粘膜付着性ポリマー、及び任意選択的に浸透促進剤(例えば、舌下粘膜又は頬粘膜を横切る搬送を補助するため)を含み得る。
【0072】
患者における疾患を治療する特定の実施形態において:(a)患者はパーキンソン病を患い、(b)薬物リザーバはレボドパ又はレボドパプロドラッグを含み、(c)方法は、30mg/時間~150mg/時間の範囲の時間速度で少なくとも4時間の期間、患者の口内にレボドパ又はレボドパプロドラッグを投与することを含む。本方法は、1,200ng/mLを超え2,500ng/mL未満の循環血漿レボドパ濃度が、投与中の少なくとも4時間の期間にわたって連続的に維持されるような口腔内投与を含み得る。特定の実施形態において、対象は、ホーン・ヤール(Hoehn and Yahr)スケールで4及び5のスコアを有する。
【0073】
患者のパーキンソン病を治療する方法において、レボドパの変動指数は、投与中の少なくとも4時間(例えば、少なくとも6時間、少なくとも8時間、又はそれ以上)の期間、2.0、1.5、1.0、0.75、0.50、0.25、又は0.15以下であり得る。いくつかの実施形態において、投与中、循環レボドパ血漿濃度は、少なくとも1時間(例えば、2時間、3時間、4時間、又はそれ以上の時間)の期間、その平均から±20%未満又は±10%未満変化する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、患者においてパーキンソン病を治療するための方法を特徴とし、この方法は、本明細書に記載の薬物送達デバイスを使用してレボドパ又はレボドパプロドラッグを含む医薬組成物を、約4時間~約168時間の期間(例えば、本明細書に記載のように)、約10mg/時間~200mg/時間(例えば、30mg/時間~150mg/時間又は50mg/時間~125mg/時間など、本明細書に記載のように)の速度で連続又は半連続的に患者へ投与することを含む。
【0075】
パーキンソン病を治療する方法のいくつかの実施形態において、患者は、振戦、アキネジア、運動緩徐、ジスキネジア、ジストニア、認知障害、又は睡眠障害を含む合併症など、パーキンソン病の運動又は非運動合併症を患う。特定の実施形態において、パーキンソン病を治療する方法は、パーキンソン病の運動又は非運動合併症を治療することを含む。
【0076】
疾患を治療する特定の実施形態において、方法は、それを必要とする対象において痙性を治療することを含み、医薬組成物は、バクロフェン又はバクロフェンプロドラッグを含む。いくつかの実施形態において、対象は、多発性硬化症又は脊髄損傷を患う。
【0077】
疾患を治療する特定の実施形態において、方法は、それを必要とする対象において重症筋無力症を治療することを含み、医薬組成物は、ピリドスチグミン又はピリドスチグミンプロドラッグを含む。
【0078】
疾患を治療する特定の実施形態において、方法は、それを必要とする対象においてドライマウスを治療することを含み、医薬組成物は、ピロカルピン又はピロカルピンプロドラッグを含む。いくつかの実施形態において、ドライマウスは、シェーグレン症候群又は放射線療法に関連しているか、又はそれによって引き起こされる。
【0079】
疾患を治療する特定の実施形態において、方法は、それを必要とする対象において高血圧(高血圧症)又は浮腫を治療することを含み、医薬組成物は、フロセミド又はフロセミドプロドラッグを含む。いくつかの実施形態において、浮腫は、心不全(例えば、うっ血性心不全)、腎臓病、又は肝臓病(例えば、肝硬変又は肝線維症)に関連しているか、又はそれによって引き起こされる。
【0080】
上記方法のいずれかの1つの実施形態において、投与中、循環薬物血漿濃度は、少なくとも1時間、2時間、又は4時間の期間、その平均から±20%未満又は±10%未満変化する。
【0081】
さらに他の実施形態において、薬物リザーバは、(i)レボドパ及び/又はカルビドパ、又はそれらの塩を含む35%~70%(w/w)の薬物粒子、(ii)19%~30%(w/w)の1つ又は複数の水非混和性化合物(例えば、油)、(iii)2%~16%(w/w)の水、及び(iv)1%~8%(w/w)の界面活性剤を含む薬物粒子含有エマルジョンである懸濁液を含む組成物を含む。懸濁液は、50%(w/w)を超える薬物粒子を含む連続親水性相を含むことができる。
【0082】
上記のデバイス、方法、及び医薬組成物のいずれかの実施形態において、薬物は、鎮痛剤(例えば、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、クロロプロカイン、プリロカイン、プロカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、塩酸ジクロニン、塩酸プラモキシン、ベンゾカイン、プロパラカイン、及びそれらの医薬的に許容できる塩)又は疼痛の治療のために投与されるオピオイド(例えば、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシモルフォンコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びそれらの薬学的に許容される塩)である。
【0083】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者の口内に薬物を連続的又は半連続的に投与するように構成された薬物送達デバイスは、以下を含む:37℃で100ポイズより高く100,000ポイズより低い粘度を有し、薬物を含むペースト、溶液又は懸濁液を含む医薬組成物、及び、流量制限器を含む機械式ポンプであって、流量制限器は0.05mmと3.00mmの間の内径と0.25cmと20cmの間の長さを含み、0.001mL/時間~1.25mL/時間の間の速度で医薬組成物を投与するように構成及び配置された機械式ポンプ。機械式ポンプは、推進剤を含むことができる。特定の実施形態では、推進剤は、約37℃での蒸気圧が2バールより大きく50バール未満である。医薬組成物は固体薬物粒子を含み、及び/又は賦形剤粒子は、粒子が非溶媒中に分散された状態で光散乱によって測定したときに、0.1μmと200μmの間のD90及び0.1μmと50μmの間のD50を有することができる。の薬物送達デバイスは、以下のように構成され得る:(i)投与速度が0.03mL/時間を超え、0.5mL/時間未満である、(ii)粘度が200ポイズを超え、100,000ポイズ未満である、(iii)流量制限器が0.1mmから0.7mmの間の内径及び1cmから5cmの間の長さを有する、及び(iv)推進剤が約37℃での蒸気圧が2.5バールより大きく15バールより小さい。特定の実施形態において、固体薬物粒子及び/又は賦形剤粒子は、粒子を非溶媒中に分散させた状態で光散乱により測定したときに、1μmと50μmの間のD90及び0.5μmと30μmの間のD50を有する。の薬物送達デバイスは、以下のように構成され得る:(i)投与速度が0.05mL/時間を超え、0.2mL/時間未満である、(ii)粘度が500ポイズを超え、100,000ポイズ未満である、(iii)流量制限器が0.2mmから0.5mmの間の内径及び1cmから2.5cmまでの長さを有する、及び(iv)推進剤が約37℃における蒸気圧が4バールより大きく10バールより小さい。特定の実施形態において、固体薬物粒子及び/又は賦形剤粒子は、粒子が非溶媒中に分散された状態で光散乱によって測定したときに、3μm~30μmの間のD90及び2μm~20μmの間のD50を有する。
【0084】
定義
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、温度の値である場合を除き、この用語が先行する値の±10%である数値を指す。温度の場合、「約」は±3℃を意味する。
【0085】
「投与」又は「投与する」という用語は、LD及び/又はカルビドパ(CD)などの治療薬の用量を患者に与える方法を指す。薬物は、粘性懸濁液などの流体として製剤化されてもよい。流体は注入されてもよい。本発明の剤形は、好ましくは口又は鼻腔に、任意選択的に注入ポンプなどの薬物送達デバイスを用いて投与され、薬物は飲み込まれてもよいし、及び/又は口内のどこからでも又は胃を介して吸収されてもよい。単一のデバイス又は薬物リザーバからの典型的な投与期間は、1日あたり4、8、12、又は16時間を超え、1日あたり最大24時間(それを含む)である。投与はまた、単一のデバイス又は薬物リザーバから複数日にわたって行われてもよく、例えば、2日以上、4日以上、又は7日以上にわたる薬物の投与が可能である。
【0086】
「CD」という用語は、カルビドパを指す。
【0087】
「適合性」という用語は、医薬組成物に接触する材料が、医薬組成物の化学的、物理的、又は薬理学的特性を実質的に変化させないことを意味する。
【0088】
本明細書で使用する場合、「共投与」又は「共注入」とは、2種類以上の薬学的に活性な薬剤が、一緒に又は別々に処方され、同時に又は互いに60分、30分、15分、又は5分未満以内に口内に投与又は注入されることを指す。
【0089】
「COMT」という用語は、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼを指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「連続投与」又は「連続注入」は、固体又は流体の形態の薬物の中断されない投与又は注入を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「D50」という用語は、粒子の体積分布(質量、数、又は表面分布とは対照的)の中央値として定義される。粒度は、当業者によく知られた従来の粒度測定技術によって測定することができる。このような技術には、例えば、光学顕微鏡、電子顕微鏡、沈降、フィールドフロー分画、光子相関分光法、光散乱(例えば、Microtrac UPA 150、Malvern Mastersizerを用いる)、レーザー回折、及び遠心分離が含まれる。D50値は、一般的に、非溶媒中に懸濁した粒子の粒度分布、光散乱によって測定された分布から導かれる。
【0092】
「DDC」という用語は、DOPAデカルボキシラーゼを指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「薬物粒子」という用語は、薬物を含む固体粒子を指す。薬物粒子は、本発明の医薬組成物に含まれ得る。例えば、医薬組成物は、LD、LD塩、CD、又はCD塩を含む、又はそれらから形成される微粒子を含むことができる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「エンジニアリングプラスチック」という用語は、用語「エンジニアードプラスチック」、「エンジニアードポリマー」、及び「エンジニアリングポリマー」と同義である。この用語は、その優れた機械的特性、又はその優れた耐薬品性、又はその水又は油による濡れにくさ、又はその水又は油中での膨潤の少なさにおいて、最も広く用いられているポリマーと異なるポリマーを意味する。例示的なエンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン6、ナイロン6-6及び他のナイロンなどのポリアミド、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアセタール又はポリホルマルデヒドなどのポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、超高分子量ポリエチレン、及び高架橋アクリロニトリルブタジエンスチレンなどの強力エラストマー及びそれらのコポリマーが挙げられる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「留め具」という用語は、本発明のデバイス、又はその構成要素を口の表面(例えば、歯)に取り付けるための要素を指す。例示的な取り付け方法は、1本、2本又はそれ以上の歯に縛られた、接着された、セメントで固定された又は糊付けされた留め具、歯科器具、スプリント、透明保持器、金属ワイヤHawley保持器、口の片側の部分保持器(例えば、3、4又は5本の歯に取り付けられる)、典型的にポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの材料を含み、典型的には0.020インチ又は0.030インチの厚さの熱成形又は真空成形されたEssix保持器、ポリウレタンを含む熱成形されたZendura保持器、下歯又は上歯の舌側に接合された受動ワイヤを含む接合(固定)保持器、口腔粘膜組織に付着してゆっくりと侵食する粘接着剤、及び歯ぎしり及び睡眠無呼吸の治療に用いられるデンタルスプリントと同様に患者の歯又は軟組織にフィットするように適合又は成形される留め具である。同様に、本発明の薬物送達デバイス、薬物ポンプ、薬物リザーバ及び他のデバイスは、取り外し可能な義歯、人工歯冠、歯科ブリッジ、モラルバンド、ブラケット、マウスガード、又は歯科インプラントに直接的又は間接的に取り付けることができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「変動指数」という用語は、平均血漿濃度に対する血漿中の薬物レベルの上昇及び下降の大きさを指し、[Cmax-Cmin]/Cavgとして定義される。変動指数は、特定の期間にわたって測定される。この期間は、例えば、薬物の血漿濃度が定常状態に達した後、又は定常状態濃度の90%に達した後、又は本発明の薬物送達デバイスのいずれかが口内に挿入されて薬物の送達を開始してから30、60、又は120分後に開始することができる。期間は、例えば、薬物送達デバイスの使用説明書に指定された使用期間の終了時、薬物リザーバが90%枯渇又は実質的に枯渇した時、又は期間の開始後約4、8、16、24、72、又は168時間後に終了することができる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、ポンピング送給又は押し出しが可能なあらゆる薬物含有液体、ゲル、又は非注入懸濁液を包含する。流体は、ニュートン流体又は非ニュートン流体であることができ、変形しやすい固体又は軟質ペーストであることができ、これは滑り流れを経由してプラグとして移動し得る。それは、例えば、粘性のあるニュートン又は非ニュートンの懸濁液であり得る。この用語は、例えば、真性溶液、コロイド溶液、エマルジョン、ペースト、懸濁液、及び口の中に押し出されるのに十分な圧力の下で変形する高密度半固体歯磨き粉様懸濁液を包含する。注入される流体は、水性、非水性、単相、二相、三相又は多相であり得る。エマルジョンは、例えば、水中油型又は油中水型であり得、ミセル及び/又はリポソームを含むことができる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「注入された」又は「注入」は、身体の任意の部分への注入を含み、好ましくは、口又は鼻腔への注入である。それは口への押し出しによって例示される。
【0099】
「LD」という用語は、L-DOPAとしても知られるレボドパ、又はその塩を指す。
【0100】
「MAO-B」という用語は、モノアミンオキシダーゼ-Bを指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「機械式ポンプ」とは、動力源が電気、磁気、及び重力ではないあらゆる薬物送達デバイスを意味する。機械式ポンプの例としては、ばね、エラストマー、圧縮ガス、又は推進剤の力又は圧力によって薬物が送達される薬物送達デバイスが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「口」は、唇、頬、歯肉、歯、舌、口蓋、硬口蓋、軟口蓋、扁桃、口蓋垂、及び腺に隣接する口腔の領域を含む、口腔の領域を含む。
【0103】
略号「M」は、1リットルあたりのモル数を意味する。この用語の使用は、化学でよくあるように、薬物が溶解されていることを暗示するものではない。本明細書で使用される場合、1Mは、1リットルの量が、溶解していない(しばしば固体)及び/又は溶解した薬物の組み合わせの1モルを含むことを意味する。例えば、1MのLDは、1mL中に197mgの固体(未溶解)及び溶解したLDが存在することを意味する。
【0104】
「PD」という用語は、パーキンソン病を指す。
【0105】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば血液中の加水分解により、インビボで親化合物に急速に変換される化合物を表す。プロドラッグは、従来のエステルであり得る。プロドラッグとして利用されてきたいくつかの一般的なエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C8-C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カルバメート、及びアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含む化合物は、そのプロドラッグの形態において、この位置でアシル化されることがある。徹底的な考察は、T.Higuchi and V.Stella,Pro-drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,Edward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987,and Judkins et al,Synthetic Communications 26:4351-4367,1996に提供されており、これらのそれぞれは参照によりここに組み込まれる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「ポンプ」は、4時間以上の期間にわたって流体配合薬物製品を投与することができる任意の機構を指す。ポンプの例としては、バッテリ作動式ポンプ(例えば、シリンジポンプ、圧電ポンプ、蠕動ポンプ、又はダイヤフラムポンプ)、バッテリ作動式でない可動部を有する又は有しない機械式デバイス(例えば、液化推進剤駆動式ポンプ、ガス駆動式ポンプ、ばね駆動式ポンプ、形状記憶合金駆動式ポンプ、及びエラストマーポンプ)、浸透圧ポンプ、及びバッテリ作動式電気浸透ポンプ(可動部を有する又は有しない)が挙げられる。
【0107】
本明細書で互換的に使用される「半連続投与」及び「頻回投与」という用語は、少なくとも120分に1回、好ましくは少なくとも90分、60分、30分、15分、又は5分ごとの頻度で固体又は流体の形態の薬物を投与(例えば、注入)することを指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「保存寿命」という用語は、消費者による使用のために販売される製品としての形態で、本発明的デバイスによって送達される薬物(例えば、LD又はCD)の保存寿命を意味し、その期間中、製品は患者によって使用するのに適している。本発明のデバイスによって投与される薬物(例えば、LD又はCD)の保存寿命は、3、6、12、18、又は好ましくは24ヶ月を超えることができる。保存寿命は、製品が凍結保存(例えば、約-18℃)、冷蔵保存(5±3℃、例えば、4±2℃)、又は室温保存(例えば、約25℃)される場合に達成され得る。消費者に販売される薬物(例えば、LD又はCD)製品は、薬物含有懸濁液、例えば、注入準備が整った懸濁液であってもよく、又はその成分であってもよい。
【0109】
本明細書で使用される場合、「安定した」は、本発明のデバイスによって投与される薬物のいずれかの安定した製剤を指す。安定した製剤は、患者への投与前に、物理的安定性(上記で定義した通り)及び化学変化(例えば、酸化)に対する感受性の低減を示す。安定した薬物製剤は、約5℃及び/又は約25℃において、3、6、12、18、又は24ヶ月に等しいかそれ以上の保存寿命、及び8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、又は7日を超えるかそれに等しい動作寿命を有する。 LD及び/又はCDを含む製剤の文脈では、「安定した」とは、化学的に安定し、且つ物理的に安定した製剤を指す。化学的に安定した製剤とは、3、6、12、18、又は24ヶ月の期間保存したときに、LD及び/又はCDの20%未満(例えば、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満)が化学的に変換する(例えば、酸化する)保存寿命を有するものである。懸濁液や薬物粒子含有エマルジョンなどの製剤については、「安定した」という用語は、物理的に安定した製剤も指す。LD及びCDの文脈では、「安定した」とは、「酸化的に安定した」製剤を指す。LD及びCDの安定した製剤は、3、6、12、18、又は24ヶ月の期間保存したときに、LD及びCDの10%未満(例えば、5%、4%、3%、2%又は1%未満)が酸化される保存寿命を有するものである。LD及びCDの安定した製剤は、8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、又は7日の期間にわたってLD及びCDの10%未満(例えば、本明細書に記載の通り)が酸化される動作寿命を有する。化学的に安定した製剤は、約5℃及び/又は約25℃で3、6、12、18、又は24ヶ月の期間保存した場合、CDのmgあたり1μg未満のヒドラジンを含み得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「実質的に酸素を含まない」とは、保存向け又は使用向け容器に包装された組成物を指し、ここで、包装された組成物は、酸素ガスをほとんど含まない(例えば、組成物と接触しているガスの10%未満、又は5%未満が酸素ガスである)、又は酸素の分圧が15トル、10トル又は5トル未満である。これは、例えば、容器内の周囲空気の一部又は全部を、窒素、二酸化炭素、アルゴン、又はネオンなどの不活性ガスで置き換えることによって達成することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「連続的又は頻繁な間欠的口腔内送達に適した」という用語は、口腔内送達時に有効かつ安全である本発明の薬物粒子懸濁液を指す。例えば、懸濁液の連続的又は頻繁な間欠的口腔内投与によって生じる口内又は口付近の局所的な有害事象(もしあれば)は、許容できる又は軽度のものである。
【0112】
本明細書で使用される場合、「懸濁液」という用語は、液体及び少なくとも1種類の固体の粒子を含む混合物を指す。液体は、水性又は非水性又はエマルジョンであり得る。非水性液体は食用油であることができ、エマルジョンは食用油を含むことができる。懸濁液は、例えば、流れる懸濁液、又は押し出される、すなわちプラグとして滑る(例えば、流れ制御オリフィス、ノズル、又はチューブを通る)懸濁液であり得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、予防的及び/又は治療的な目的のために医薬組成物を投与することを指す。「病気を予防する」とは、まだ病気ではないが、特定の病気にかかりやすい、又はその危険性がある患者の予防的治療を指す。「病気を治療する」又は「治療的治療」の使用は、既に病気に罹患している患者に治療を施し、病気を改善し、患者の状態を向上させることを指す。「治療する」という用語はまた、病気又はその症状の進行を遅らせるために患者を治療することも含む。したがって、特許請求の範囲及び実施形態において、治療することは、治療目的又は予防目的のいずれかのために患者に投与することである。
【0114】
本明細書で使用される際「粘度」は、低せん断速度で測定される、せん断粘度としても知られる動的な粘度を意味する。
【0115】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】
図1は、薬物含有流体を口の中に一定速度で連続的に押し出すためのデバイスの構成要素の分解図を示す図面である。
図1に示す構成要素は、推進剤ハウジング1及び薬物ハウジング3(これらはいずれも金属製又は金属を含むことができる)と、ダイヤフラム2(金属製又は金属フィルムを含むことができる)とを含む。セプタムアイレット4が、推進剤ハウジング1に挿入され、金属、典型的にはチタン又はチタン合金で作ることができる。セプタム5は、セプタムアイレット4に挿入することができ、任意選択的にニトリルゴムなどのゴムを含有し得る。エラストマープラグ6は、薬物ハウジング3に挿入して薬物チャンバをシールすることができる。遠位の長い流量制限器7aは、カップリングアダプタ8に取り付けられ、薬物を送達チューブ9及び10(2層の送達チューブであることを示すために2つの数字でラベル付けされる)に送達する。送達チューブ9及び10は、取り外し可能なプラグ12を含むことができ、このプラグは、薬物送達デバイスが使用前に保管されるときに、送達チューブをシールし、薬物含有流体の押し出しを防止することができる。取り外し可能なプラグ12は、熱収縮チューブ13に包まれている。送達チューブ9、10及び熱収縮チューブ13に包まれた取り外し可能なプラグ12は、ポリマーシース11によって包まれ、送達チューブを通る酸素及び水の透過を低減し、送達チューブ内に取り外し可能なプラグを維持する。
【
図2】
図2は、薬物含有流体を口の中に一定速度で連続的に押し出すためのアセンブリの部品を示す図面である。
図2は、異なる長さの2つの流量制限器7を含む
図1のデバイスの実施形態を示し、ここで一方は他方よりも実質的に短い(例えば、一方の流量制限器は他方よりも薬物チャンバ内にさらに延在する)。
【
図3-1】
図3A-3Bは、送達チューブアセンブリの図を示す一連の図である。
図3Aは、送達チューブアセンブリの破断図(上)と、無傷の送達チューブアセンブリの図(下)であり、それぞれ、積層送達チューブ、取り外し可能なプラグ、熱収縮チューブ、及びポリマーシースを含む。
図3Bは、
図3Aの送達チューブの破断図の拡大図を示す(拡大された領域は、右上の概略図に円で示されている)。
【
図4】
図4は、多層構造の送達チューブの断面図を示す図面である。送達チューブは、生体適合性及び弾性のために選択される外層14と、半径方向の強度を提供し、水の透過を低減する能力のために選択される内層15とを含む。内層15はまた、デバイスを用いて送達される医薬組成物の成分との適合性のために選択され得る。層は、積層されたポリマー層であり得る。いくつかの実施形態において、外側ポリマー層はポリウレタン層であり、内層はPET層である。
【
図5】
図5は、送達チューブに挿入された流れ止め用の取り外し可能なプラグを有する送達チューブを示す図面であり、流れ止め用の取り外し可能なプラグは熱収縮チューブで包まれ、送達チューブ、取り外し可能なプラグ、及び熱収縮チューブはポリマーシースによって包まれる。取り外し可能なプラグは送達チューブをシールし、使用前に薬物含有流体がデバイスから押し出されるのを防ぐ。熱収縮チューブは、使用前(例えば、ポリマーシースを取り除いた後)に、取り外し可能なプラグを送達チューブから取り外すことを容易にする。ポリマーシースは水の透過を遅らせ、長期保管中に送達チューブ内の薬物含有流体が乾燥することを低減又は防止する。
図5に示すように、ポリマーシースの尾部は、患者による使用の直前に取り除くためにポリマーシースを剥離することを容易にするスリットを含むことができる。シースが剥がされた後、取り外し可能なプラグの一部(例えば、熱収縮チューブに包まれた取り外し可能なプラグ)が露出される。その後、取り外し可能なプラグを送達チューブから引き出して(例えば、取り外し可能なプラグを含む熱収縮チューブを引っ張ることによって)、薬物含有流体の流れを開始させることができる。
【
図6】
図6A-6Dは、デバイスの初期使用前に、ポリマーシースを薬物送達デバイスから取り外す(例えば、スリットテールを引き離すことによって取り外し可能なプラグ(熱収縮チューブに包まれている)及び送達チューブから剥がす)ことができる方法を示す一連の図面である。患者又は介護者は、ポリマーシースのスリットテールの両端を握り(
図6A)、ポリマーシース全体が取り除かれるまで(
図6D)、スリットテールの両端を引き離し(
図6B及び6C)、それによって送達チューブ及び取り外し可能なプラグを包む熱収縮チューブを露出することができる。
【
図7】
図7A-7Bは、薬物含有流体の流れを開始するためのデバイスの初期使用の前に、取り外し可能なプラグを薬物送達デバイスから取り外す(例えば、取り外し可能なプラグを包む熱収縮チューブを把持して送達チューブから引き出す)方法を示す一連の図面である。送達チューブを一方の手で静かに保持し(
図7A)、取り外し可能なプラグを包む熱収縮チューブを他方の手で把持して送達チューブから引き出して(
図7B)、送達チューブからプラグを取り外し、患者による使用のためにデバイスを準備することができる。
【
図8】
図8は、患者の歯の舌側に薬物含有流体を送達する保持器に取り付けられた例示的な薬物送達デバイスを示す図面である。送達チューブは、患者の最も後ろの歯の周りに巻き付けられる。
【
図9】
図9は、保持器ポケット内に位置決めされた例示的な薬物送達デバイスの近接図を示す図面である。
【
図10】
図10は、保持器ポケット内に位置決めされた例示的な薬物送達デバイスの代替図を示す図面である。
【
図11】
図11は、発話への干渉を防止又は低減するように、頬前庭に薬物送達デバイスを位置付ける例示的な保持器を示す図面である。
【
図12】
図12は、薬物送達デバイスを保持するための保持器ポケットを含む例示的な保持器を上方から見た図を示す図面である。
【
図13】
図13A-13Cは、薬物送達デバイスを保持器の保持器ポケットに挿入する方法(
図13A及び13B)と、薬物送達デバイスを交換する必要があるときに保持器の保持器ポケットから薬物送達デバイスを取り出す方法(
図13C)とを実証する一連の図面である。薬物送達デバイスを受け取るための保持器ポケットを含む保持器を保持するために他方の手を使用しながら、デバイスを一方の手で保持器ポケットに挿入することができる。
【
図14】
図14A-14Bは、保持器を取り付けた薬物送達デバイスが患者の口の中に挿入される様子(
図14A)、及び保持器が適切に位置決めされた後の口の中の薬物送達デバイスの位置(
図14B)を示す一連の図面である。
図14Aに示すように、薬物送達デバイスは、保持器が口の中に挿入される前に保持器ポケットに挿入することができる。
【
図15】
図15A-15Cは、薬物送達デバイスが、最後部の2つの臼歯の咬合面に関して最適な快適さのために、口の中でどこに位置決めされ得るかを示す一連の画像である。薬物送達デバイスは、第1大臼歯又は第2大臼歯などの大臼歯の咬合面に対して平行に位置決めすることができる。
【
図16】
図16A-16Cは、最適な快適さのために薬物送達デバイスが口の中でどこに位置決めされ得るかを示す一連の図面である。
図16Aは、デバイスが第1及び第2大臼歯のみにまたがっていることを示し、
図16Bは、ポンプの中線が大臼歯の咬合面上にあることを示し、
図16Cは、最後部の大臼歯の前及び後における薬物送達デバイスの最適位置決め範囲を示す。
【
図17】
図17は、接着剤で接合された口腔内薬物送達デバイスを示す画像である。このデバイスでは、ハウジングの両方が、段差を有するリムを有する。段差は、接着剤接合面積を増加させる役割を果たし、薬物リザーバ(例えば、薬物含有流体を含む薬物チャンバ)に伝達されるポンプの圧力(例えば、推進剤駆動式ポンプにおける推進剤チャンバの力)に関連する力を受ける接着接合の破損を防止することができる。両ハウジングのフランジ特徴部を嵌合させることで、接着剤で埋めることができる中空矢印で示す隙間を設けることができる。隙間を接着剤で充填することにより、デバイスを気密にシールすることができる。
【
図18】
図18は、
図1及び2の推進剤ハウジング1などの推進剤ハウジングのフランジ(リム)の典型的な寸法と、接着剤接合面積を増やすために使用できるその段差を示す図面である。
【
図19】
図19は、
図1及び2の薬物ハウジング3などの薬物ハウジングのフランジ(リム)の典型的な寸法と、任意に接着接合することができる、ジョイント部を強化するための、その段差を示す一連の図面である。
【
図20】
図20は、金属製ハウジングを有する組み立てられた薬物送達デバイスを示す図面であり、ハウジングは、タブが既に圧着されている圧着用タブを有する。タブを圧着することにより、薬物送達デバイスを強化することができる。それはまた、気密式にシールされたジョイント部であることができるジョイント部を形成することができる。
【
図21】
図21は、圧着用のタブ(矢印で示す)を有する組み立てられた薬物送達デバイスを示す図面である。タブは、このデバイスにおいて既に圧着されている。
【
図22】
図22は、圧着用のタブを有する薬物送達デバイスのハウジングを示す一連の図面である。
【
図23】
図23は、推進剤チャンバに推進剤を充填するためのセプタムの構成要素(推進剤チャンバ1、セプタムアイレット4、及びセプタム5)を示す図面である。
【
図24】
図24は、推進剤チャンバに推進剤を充填するためのセプタムのアイレットを示す一連の図面である。アイレットの内部リブは、針の挿入及び除去に対する抵抗を増大させることができる。
【
図25】
図25は、薬物チャンバ内の薬物含有流体をシールするためのエラストマープラグを示す一連の図面である。
【
図26】
図26は、例示的な金属壁の薬物ハウジングの図面であり、その寸法と、薬物含有流体の充填に用いられるそのポートの寸法とを示している。
【
図27】
図27は、デバイスがケース内にあり、保管ケースの蓋が閉じられているときに薬物送達デバイスからの薬物含有流体の押し出しを停止することができるが、蓋が開いているときに薬物送達デバイスから薬物含有流体が押し出されることを許容する、例示的な保管ケースの図面である。矢印は、ケース内のデバイス(例えば、留め具取り付け型薬物送達デバイス)の位置合わせに使用できるホルダを示す。このデバイスには、患者が保管ケース内でデバイスを位置決めするためのガイダンスとして使用できる図が含まれている。
【
図28】
図28は、デバイスがケース内にあり、保管ケースの蓋が閉じられているときに薬物送達デバイスからの薬物含有流体の押し出しを停止するために使用することができるが、蓋が開いているときに薬物送達デバイスから薬物含有流体が押し出されることを許容する例示的な保管ケースの図面である。矢印は、保管ケースが閉じられているときに薬物含有流体の押し出しを停止するために送達チューブを挟むか、又はよじる保管ケースの構成要素を示す。
【
図29】
図29は、保持器取り付け型薬物送達デバイスを収納した保管ケースの一連の画像である。薬物送達デバイスの送達チューブは、保管ケースが閉じられているときにケースの構成要素によって挟まれるように位置決めされる。
【
図30】
図30A-30Cは、保持器取り付け型薬物送達デバイスの保管ケースへの挿入を示す一連の図面である。患者は、保管ケースの底部内面に示されたガイド画像に基づいて、保持器取り付け型薬物送達デバイスを挿入することができる(
図30A)。薬物送達デバイスは、適所にスライドさせることでホルダに挿入することができる(
図30B)。薬物送達デバイスが保管ケース内に適切に位置決めされると、送達チューブは、保管ケースが閉じられたときにチューブを可逆的に圧縮して薬物含有流体の押し出しを一時的に停止させるケース内側の対向構成要素によって挟まれるように位置決めされる(
図30Cは、保管ケースが閉じられたときに薬物送達チューブを挟むか又はよじるために保管ケースの蓋の金属ピンと連携するエラストマーパッド上の薬物送達チューブの近接を示す)。
【
図31】
図31は、保管ケースを閉じたときの送達チューブのよじれの様子を示す画像である(よじり機構を観察できるように保管ケースの一部は示されていない)。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明のデバイス、組成物、及び方法は、医薬品の連続的又は半連続的な経口送達に有用である。
【0118】
口の外にある注射器、薬物リザーバ及びポンプは、空間が通常利用可能であるため大きくすることができるが、薬物送達デバイスのための口の中の空間は限られており、薬物送達デバイスが話す、飲み込む、飲む、又は食べることを妨げないほど小さい場合には特に制限される。その結果、送達される薬物、そのリザーバ、及びその送達デバイスは、小さな容積を占めなければならない。パーキンソン病の例示的な管理では、本発明の経口注入されるLD及び/又はCDを含む流体の濃度は、典型的には1M超、例えば1.5M、2M、2.5M、3M、3.5M、4M又は4.5M超になり得る。これらは空腸又は十二指腸注入のために市販されているデュオドパ(別名デュオパ(商標))ゲルのLD濃度 0.1Mよりかなり高濃度である。本発明の薬物送達デバイスに含まれる濃縮薬物懸濁液は粘性があり、例えば37℃におけるその動的粘度は100cPよりはるかに高く、例えば10,000cP、100,000cP、又は1,000,000cPより高いことが可能である。懸濁液は、例えば、歯磨き粉と同等又はそれ以上の粘度を有することができ、その粘度は、約20,000cPより大きく、例えば、50,000cPより大きく、例えば、500,000cPより大きい。鼻胃、空腸、又は十二指腸注入に使用されるものなど、典型的には50cmより長い、長いチューブを通して粘性流体を注入する以前の実践では、その内径が大きく、及び/又はポンプ圧が高いことが必要であった。さらに、先の懸濁液をより長いチューブを通して注入する場合、懸濁LD粒子のクラスター化による流れの閉塞の可能性が高まり、閉塞を低減するために半透明で非常に細かい粒子のコロイドが使用された。対照的に、本明細書に開示された経口注入される、よりはるかに濃縮された懸濁液は、可視波長光を散乱する大きな固体粒子を含み得るので、典型的には不透明である。はるかにより濃縮され、はるかにより粘性の経口注入される懸濁液は、1μm、5μm、10μm、又はさらに50μmを超える粒度に富み得る。懸濁液は、例えば、2mm、1mm、又は0.5mmより狭いリザーバ内のオリフィスなどの流量制限器、及び/又は5cmより短く、例えば、4cm、3cm、2cm又は1cmより短くできるプラスチックチューブ又はノズルなどの流量制限器を介して経口注入することができる。
【0119】
本明細書に記載されるデバイスは、口内に存在し、ポンプ、薬物含有流体を含む薬物リザーバ、及び可逆的に圧縮可能な送達チューブ(例えば、圧縮することができ、圧縮が終了した後、その形状を回復する送達チューブ)を含む、取り外し可能な口腔内薬物送達デバイスを含む。可逆的に圧縮可能なチューブは多層であることができ、エラストマー性であり且つ内側粘膜と生体適合性がある(例えば、生体組織と適合性があり、例えば、材料は口腔粘膜の感受性又は刺激を起こさず、全身毒性又は細胞毒性を起こさない)外層と、薬物含有流体と適合性があり、半径方向の強度を提供し水の透過を低減する内層とを含む。デバイスを使用する患者が口からデバイスを取り外す際に、送達チューブからの薬物含有流体の押し出しを一時的に停止させるためにチューブを挟んだり、よじることができる。本発明はまた、保管ケースを閉じた際に、送達チューブを挟み又はよじり、薬物含有流体の流出を一時的に中断する機構を有する保管ケースを特徴とする。患者が初めてデバイスを使用する前に、送達チューブは、熱収縮チューブとポリマーシースで任意選択的に包まれた取り外し可能なプラグを使用してシールされ、これは患者がデバイスを使用する準備ができたときに取り外すことができる。デバイスを使用するために、患者は、デバイスを保持器に取り付けられたポケットに挿入することができ、保持器は大臼歯の咬合面上の患者の歯の頬側の所定の位置にデバイスを保持し、薬物送達チューブは最後部の大臼歯に巻き付いて歯の舌側に薬物含有流体を送達することができる。薬物送達デバイスはまた、デバイスを強化するため、及び/又はデバイスを気密式にシールするために、接着接合及び/又は圧着用タブを特徴とし得る。使用前、デバイスは実質的に酸素を含まない雰囲気を有する気密式にシールされたパウチ内で少なくとも6ヶ月間保管することができる。
【0120】
本発明のデバイス及び方法を用いて、薬物を口腔内(すなわち、任意の口腔内の唾液又は粘膜表面、例えば、唇、頬、歯肉、歯、舌、口蓋、硬口蓋、軟口蓋、口蓋垂、及び腺上又はその近く)に投与することができる。口腔内に投与された薬剤は、典型的には、患者の唾液とともに、患者によって飲み込まれる。薬物は、患者の唾液によって希釈することができ、任意選択的に唾液に一部又は全部を溶解させることができる。薬物は、患者の胃腸管、例えば、小腸又は大腸で吸収され得る。
【0121】
本発明のデバイス及び方法は、信頼できる安定した薬物動態性能をもたらすために、被験者への薬物の連続又は半連続投与を可能にし、特に半減期が短い(例えば、血漿中)、及び/又は薬物の生理的効果の持続が短い、及び/又は治療窓が狭い薬物について、治療の有効性及び/又は安全性を改善するために必要とされる。
【0122】
治療
本発明のデバイス及び方法は、半減期が短く、且つ/又は治療レンジが狭い様々な薬物の投与に好適である。補完的な薬物は、これらの薬物と共投与又は共注入することができる。このような補完的な薬物は、主要な薬物の薬物動態を改善し、有効性を向上させ、及び/又は副作用を低減し得る。
【0123】
胃不全麻痺、すなわち胃排出の遅延は、PDの人に共通に見られる。胃不全麻痺の治療のための薬物は、本発明のデバイス及び方法を用いて送達され得る。一実施形態では、胃不全麻痺の治療のための薬物は、本発明の薬物送達デバイス及び方法を用いて、LD又はCDと共投与される。別の実施形態では、胃不全麻痺の治療のための薬物は、LD又はCDが口腔内に注入される間、当該技術分野で知られている薬物送達の他の方法を用いて投与される(すなわち、それらは連続的又は頻繁な口腔内送達を介して投与されるわけではない)。胃不全麻痺の治療のための薬物の例は、メトクロプラミド、シサプリド、エリスロマイシン、ドンペリドン、クエン酸シルデナフィル、ミルタザピン、ニザチジン、アコチアミド、グレリン、レボスルピリド、テガセロド、ブスピロン、クロニジン、レラモレリン、セロトニン5-HT4アゴニスト及びドーパミンD2又はD3拮抗薬である。
【0124】
投与は口内であるため、投与に選択される薬物は、大多数の患者が知覚するように、味が中性又は快いものであることが好ましい。患者の大多数が知覚するような不快な味を持つ薬物の製剤には、味をマスキング又は修飾する賦形剤を添加することができる。
【0125】
本発明に従って有用に送達され得る他の薬物には、メチルフェニデート、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トレプロスチニル、ベラプロスト、ニモジピン、ピリドスチグミン又はピリドスチグミンプロドラッグ、ピロカルピン又はピロカルピンプロドラッグ、レボドパ又はレボドパプロドラッグ、バクロフェン又はバクロフェンプロドラッグ、フロセミド又はフロセミドプロドラッグ、及びテストステロンが含まれる。レボドパプロドラッグ製剤は、米国特許第5,607,969号明細書、及び特許出願国際公開第2012/079072号パンフレット及び同第2013/184646号パンフレットに提供されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。口内に投与するための好ましいLDプロドラッグには、高溶解性レボドパアミド、レボドパエステル、レボドパカルボキサミド、レボドパスルホンアミド、レボドパリン酸プロドラッグ(例えば、フォスレボドパ、これはレボドパ4’-モノリン酸とも呼ばれ、例えば、Hutersら、J Org.Chem.2021及びRosebraughら、Ann Neurol.90:52-61、2021参照のこと)、レボドパエチルエステル、レボドパメチルエステル、及びそれらの塩が含まれる。例示的なバクロフェンプロドラッグは、アルバクロフェンプラカルビルである。例示的なピロカルピンプロドラッグには、ピロカルピン酸のアルキル及びアラルキルエステル、ピロカルピン酸ジエステル、及び他のピロカルピン酸誘導体、例えばBundgaardら、J Pharm Sci 75:36-43、1986、Bundgaardら、J Pharm Sci 75:775-83、1986及び米国特許第4742073A号明細書に記載されているものが含まれ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。例示的なフロセミドプロドラッグには、フロセミドエステル、例えば、Morkら、International Journal of Pharmaceutics 60:163-169、1990に記載の中性アルキルエステル、アミノ基含有アルキルエステル、グリコールアミドエステル及びO-アシロキシメチルエステル、Prandiら、Farmaco 47:249-63、1992及びPrandiら、Farmaco 47:1225-34、1992に記載のフロセミドのアシロキシメチルエステル、並びに国際公開第2014039454A2号パンフレットに記載のフロセミド類似体及びプロドラッグが含まれ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
1日4回投薬されるように処方されることが多い薬物の例として以下のものが含まれる:
・ アモキシシリン-感染症
・ セファレキシン(ケフレックス)-感染症
・ クロルプロマジン(ソラジン)-片頭痛の神経弛緩剤
・ ジアゼパム(バリウム)-不安及び睡眠
・ ジクロフェナク(ボルタレン)-関節炎
・ ジルチアゼム-カルシウム拮抗薬
・ エリスロマイシン-感染症
・ ハロペリドール(ハルドール)-片頭痛の神経弛緩薬
・ インプラミン-向精神薬
・ イプラトロピウム(アトロベント)-抗コリン作用
・ メトクロプラミド(レグラン)-胃食道逆流症、片頭痛
・ ニフェジピン-カルシウム拮抗薬
・ オランザピン(ジプレキサ)-片頭痛の神経弛緩剤
・ プロクロルペラジン(コンパジン)-片頭痛の神経弛緩剤
・ プロメタジン(フェナーガン)-片頭痛の神経弛緩薬
・ サルブタモール-喘息
・ テトラサイクリン-感染症
・ テオフィリン(セオレア)-COPD、喘息
・ トラゾドン-向精神薬
・ ワクチン-免疫療法
・ ザレプロン-不眠症、睡眠障害
・ ゾルピデム-不眠症、睡眠障害
【0127】
固体として送達される薬物は、崩壊又は分散を向上させるために賦形剤と配合することができる。
【0128】
多くの種類の薬物が、本発明に従って送達され得る。本発明に従って原則的に治療に使用することができる薬物は、任意の既知の薬物であり、ここで、薬物は、本発明による形態でそのまま、又は活性成分の形態で、任意選択的に活性成分の薬学的に許容できる塩の形態で、又は活性薬物に迅速に変換されるプロドラッグの形態で存在し得る。本発明に従って送達され得る薬物としては、限定されないが、鎮痛剤及び抗炎症剤(例えば、アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック)、駆虫薬(例えば、アルベンダゾール、ベフェニウムヒドロキシナフトエート、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イベルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オックスフェンダゾール、オキサンテルエンボネート、プラジカンテル、ピランテルエンボネート、シアベンダゾール)、抗不整脈剤(例えば、アミオダロンHCl、ジソピラミド、フレカニド酢酸、キニジン硫酸、抗菌剤(例えば、ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシンHCl、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、イミペネム、ナリディキシン酸、ニトロフラントイン、リファンピシン、スピラマイシン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセトアミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリム)、抗凝固剤(例えば、ジクマロール、ジピリダモール、ニコマロン、フェニンディオン)、抗うつ剤(例えば、アモキサピン、マプロチリンHCl、ミアンセリンHCl、ノルトリプチリンHCl、トラゾドンHCl、トリミプラミンマレアート)、抗糖尿病剤(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド)、抗てんかん薬(例えば、ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、メトイン、メトスクシミド、メチルフェノバルビトン(メチルフェノバルビタル)、オクスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェノバルビトン、フェニトイン、フェンスキシミド、プリミドン、スルチアメ、バルブロ酸、トピラマート、ラモトリギン、ガバペンチン、レベチラセタム、プレガバリン)、抗真菌剤(例えば、アンフォテリシン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、テルビナフィンHCl、テルコナゾール、チオコナゾール、ウンデセン酸)、防風剤(例えば、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン)、降圧剤(例えば、アムロジピン、ベニジピン、ダロジピン、ジルチアゼムHCl、ジアゾキシド、フェロジピン、酢酸グアナベンツ、イズラジピン、ミノキシジル、ニカルジピンHCl、ニフェジピン、ニモジピン、フェノキシベンザミンHCl、プラゾシンHCl、レセルピン、テラゾシンHCl)、抗マラリア(例えば、アモディアキン、クロロキン、クロルプログアニルHCl、ハロファントリンHCl、メフロキンHCl、プログアニルHCl、ピリメタミン、硫酸キニーネ)、抗偏頭痛剤(例えば、ジヒドロエルゴタミンメシレート、エルゴタミン酒石酸塩、メチルセルギドマレイン酸塩、ピゾチフェンマレイン酸塩、スマトリプタンサクシネート)、抗ムスカリン剤(例えば、アトロピン、ベンゼキソールHCl、ビペリデン、エトプロパジンHCl、ヒヨスチアミン、メペンゾレートブロミド、オキシフェンシクリミンHCl、トロピカミド)、抗新生物剤及び免疫抑制剤(例えば、アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ブスルファン、クロラムブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エストラムスチン、エトポシド、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトタン、ミトキサントロン(ミトザントロン)、プロカルバジンHCl、タモキシフェンクエン酸、テストラクトン)、抗プロトラゾン薬(例えば、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキネート、ジヨードヒドロキシキノリン、ジロキサニドフロエート、ジニトルマイド、フラゾリドン、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾール、チニダゾール)、抗甲状腺剤(例えば、カルビマゾール、プロピルチオウラシル)、不安神経症、鎮静薬、催眠薬及び神経遮断剤(例えば、アルプラゾラム、アモバルビタール(アミロバルビトン)、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマル、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルアニソン、フルニトラゼパム、フルオプロマジン、フルペンチキソール(flupentixol)(フルペンチキソール(flupenthixol))デカン酸塩、フルフェナジンデカン酸塩、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メタカロン、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビトン、ペルフェナジンピモジド、プロクロルペラジン、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾピクロン)、β-ブロッカー(例えば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール)、心臓強心剤(例えば、アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドC、メジゴキシン)、コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、酢酸コルチゾン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ハイドロコルチゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン、プレドニソン、トリアムシノロン)、利尿剤(例えば、アセタゾラミド、アミロライド、ベンドロフルアジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フロセミド(フルセミド)、メトラゾン、スピロノラクトン、トリアムテレン)、抗パーキンソン薬(例えば、ブロモクリプチンメシレート、リスリド(リスライド)マレイン酸塩)、胃腸薬(例えば、ビサコジル、シメチジン、シサプリド、ジフェノキシレートHCl、ドンペリドン、ファモチジン、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、オンダンセトロンHCl、ラニチジンHCl、サルファサラジン)、ヒスタミンH,-レセプターアンタゴニスト(例えば、アクリバスチン、アステミゾール、シナリジン、シクリジン、シプロヘプタジンHCl、ジメンヒドリナート、フルナリジンHCl、ロラタジン、メクロジンHCl、オキサトミド、テルフェナジン)、脂質調整剤(例えば、ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、プロブコール)、硝酸塩及び他の抗狭心症剤(例えば、硝酸アミル、三硝酸グリセリル、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール)、オピオイド鎮痛剤(例えば、コデイン、デキストロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシン)、性ホルモン(例えば、クロミフェンクエン酸塩、ダナゾール、エチニルエストラジオール、メドロキシプロゲステロンアセテート、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、共役エストロゲン、プロゲステロン、スタノゾロール、スチルベステロール、テストステロン、チボロン)及び精神刺激薬(例えば、アンフェタミン、デクサムフェタミン、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、マジンドル)が含まれる。
【0129】
上記化合物は、それらの国際一般名(INN:international nonproprietary name)によって主に記載され、当業者に知られている。さらなる詳細は、例えば、世界保健機関(WHO)の「医薬品物質の国際一般名(International Nonproprietary Names(INN)for Pharmaceutical Substances)」を参照することによって見出すことができる。
【0130】
胃不全麻痺、胃排出の遅延又は不規則性、及び胃、腸、幽門、空腸、十二指腸の他の異常又は疾患は、胃から十二指腸へ、そして小腸及び大腸を通る食物及び薬物の搬送に影響を与える。このようなGI管の状態は、パーキンソン病、糖尿病、自律神経失調症、癌治療を含む様々な病気や状態によって一般的に引き起こされ、又はそれに関連付けられる。胃から十二指腸へ、そして小腸や大腸を通る医薬品の搬送が減少、遅延、又は不規則になると、レボドパを含む多くの薬物の効果や効能が低下する。空腸内投与はPEGチューブの外科的埋め込みを必要とし、PEGチューブ関連の合併症の発生率が高いが、Duopa(商標)(Duodopa(商標)としても知られている)LD/CD送達システムがLD/CD懸濁液を空腸又は十二指腸に注入するのはこのためである。本発明者らは、L-DOPAとカルビドパの水溶液を約6~12回/時間の頻度で経口摂取することにより、L-DOPAの血漿濃度が同様に安定化し、PD患者のオフ時間を約43%短縮することを発見した。理論やモデルによって本発明の範囲を限定することなく、本発明者らは、薬物が連続的に経口注入され、溶解している場合、報告されている薬物の胃内遅延が必ずしもあてはまらないことを観察した。したがって、口腔内で分泌される体液中の固体薬物粒子の溶解速度と同等又はそれより遅い速度で患者の口内に固体薬物粒子を含む懸濁液又はペーストを注入することが有利であり得、それにより食道から胃に通過する薬物があらかじめ実質的に溶解され、それにより残りの固体薬物粒子が胃で分泌される体液内で実質的に溶解され、及び/又は、それによりまだ残っている薬物粒子が十二指腸で分泌される流体内で実質的に溶解され、次に、固体薬物粒子がまだ残っている場合、これらは空腸で分泌される流体内で実質的に溶解され、次に、まだ存在していれば、回腸で分泌される流体内で実質的に溶解され、最終的にまだ存在している場合、大腸で分泌される流体内で実質的に溶解される。固体薬物が溶解し得る分泌体液は、例えば、主に覚醒時に口内(例えば、顎下腺及び耳下腺)で分泌される唾液であり得る。健康な人の場合、分泌速度は約50mL/時間~約100mL/時間であり得る。LDの溶解度が約50mg/mLであることを考慮する、また、患者が1時間に200mgのLDを必要とする場合でも、わずか約4mL/時間の唾液で経口送達された固体LDを溶解させることが可能であることを考慮する。薬物は溶解され得るだけでなく、健康な人よりも唾液の分泌が少ない患者(例えば、PDや口腔乾燥症の患者)であっても、胃に到達する前にその溶液が希釈される可能性がある。唾液中での迅速な溶解のためには、そのサイズが小さい(例えば、典型的には平均直径約100μm未満、例えば平均直径50μm未満、例えば平均直径20μm未満、例えば平均直径10μm未満)可能性がある薬物粒子を分散すること(例えば、それらの界面活性剤を含有する懸濁液を投与することによって)が有利であり得る。
【0131】
LDよりも少ない1日量で投与されるバクロフェン又はピリドスチグミンなどの他の薬物は、チロシンのようなアミノ酸などの固体賦形剤の小粒子に吸着され得る。連続経口送達の場合、薬物含有賦形剤のペーストを口内に押し出し、排泄された唾液が、吸着した薬物と、存在する場合には固体薬物粒子を溶解させることができる。
【0132】
薬物送達デバイスは、治療上有効な量の薬物を患者に経口投与するために使用することができる。例えば、PD、粘膜炎、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、寄生虫による疾患、癌、疼痛、臓器移植、睡眠障害、てんかん及び発作、不安、気分障害、心的外傷後ストレス障害、癌、不整脈、高血圧症、心不全、痙性、糖尿病腎症、及びアレルギーなどの疾患の症状を予防、遅延、軽減、又は除去する量が投与される。それらはまた、例えばピーナッツに対するアレルギーを管理するために使用することができ、例えば、分画又は全体のアレルギー原因抗原などの薬剤を舌下免疫療法用に送達し、それにより送達された薬剤が口の粘膜又は組織と接触するようにする。薬物送達デバイスを用いて、治療すべき与えられた疾患の治療に適切な薬物を、本明細書に記載の方法、組成物、及びデバイスを用いて配合し、投与することができる。
【0133】
狭い治療指数を有する多くの薬物は、小さな変動指数をもたらす薬物送達デバイス及び方法から利益を得る。例えば、表1は、様々な研究で報告された抗てんかん薬の徐放性錠剤製剤の変動指数をまとめたものである(“Extended-release antiepileptic drugs:A comparison of pharmacokinetic parameters relative to original immediate-release formulations”,Ilo E.Leppik and Collin A.Hovinga,Epilepsia,54(1):28-35,2013)。
【0134】
【0135】
本発明は、本明細書に開示されたデバイス、薬物、製剤、及び方法のいずれかを用いて疾患又は病状を治療する方法を含み、変動指数は2.0、1.5、1.0、0.75、0.50、0.25、又は0.15以下である。例えば、治療すべき疾患又は病状は、パーキンソン病、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、癌、疼痛、臓器移植、睡眠障害、てんかん及び発作、不安、気分障害、心的外傷後ストレス障害、癌、不整脈、高血圧症、心不全、痙性、認知症、糖尿病腎症、口腔乾燥、及び認知症であり得る。
【0136】
本発明の方法を用いて投与される薬物用量は、従来の不定期投薬レジメンを用いて投与される用量よりも高くても低くてもよい。連続的又は半連続的な投与により、薬物の定常状態の循環血漿濃度の谷が減少し、高いピーク濃度を必要とせずに薬物の血漿濃度を最小有効血漿濃度より上に維持することができる場合、有効性を損なうことなく、より低い1日の用量が可能である。連続的又は半連続的な投与が薬物の定常状態循環血漿濃度のピークを減少させ、高いピーク濃度を必要とせずに薬物の平均血漿濃度の上昇を可能にする場合、副作用を増加させずに、より高い1日の用量が可能である。
【0137】
本発明のデバイス及び方法は、ピーク血漿濃度(すなわち、経口単位剤形の特徴であるCmax)に関連する有害事象が排除されるため、改善された安全性プロファイルを有する投薬レジメンを提供する。したがって、本発明のデバイス及び方法は、治療される患者集団(すなわち、標準的な治療レジメンに不応の患者)において、狭い治療窓を有する薬物を送達するために使用することができる。PDの治療について以下に提供される詳細は、他の疾患の治療のための薬物の配合及び投与に適用可能である。
【0138】
PDの治療のために、典型的な投与量の範囲は、1日当たりLD又はLDプロドラッグの約20μモル/kg~約200μモル/kgである。任意選択的に共投与されるDDC阻害剤の典型的な1日用量は、約5μモル/kg~約50μモル/kgの間である。例えば、体重75kgの患者の典型的な1日用量は、LD又はLDプロドラッグの約1.5ミリモルから約15ミリモルである。任意選択的に、LD又はLDプロドラッグのモル量の約10%~約40%の間、例えば15%~30%の間のDDC阻害剤のモル量を添加することができる。任意選択的に、エンタカポン、トルカポン、又はオピカポンなどのCOMT阻害剤を、本発明のデバイスを使用して投与することができる。先行技術の例示的なLDプロドラッグ製剤は、米国特許第5,607,969号明細書、及び特許出願国際公開第2012/079072号パンフレット及び同第2013/184646号パンフレットに提供されており、そのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。口内に投与するための好ましいプロドラッグには、高溶解性レボドパアミド、レボドパエステル、レボドパカルボキサミド、レボドパスルホンアミド、レボドパリン酸プロドラッグ(例えば、レボドパ4’-モノリン酸としても知られるフォスレボドパ、例えば、Hutersら、J Org.Chem.2021及びRosebraughら、Ann Neurol.90:52-61,2021参照)、レボドパエチルエステル、レボドパメチルエステル、及びそれらの塩が含まれ、それらは体内で、典型的には酵素触媒反応において、急速に加水分解されてLDを形成することができ、しかも意図する投与期間の間、例えば少なくとも8時間、16時間、24時間、48時間、72時間、薬物送達デバイスのリザーバ内に保存することができる。LDエステルプロドラッグ、LDアミドプロドラッグ、LDダイマーアミドプロドラッグ、キャリア媒介プロドラッグ、ペプチド輸送媒介プロドラッグ、及び環状プロドラッグを含むレボドパプロドラッグの追加の例は、Haddadら、Molecules 23:40,2018に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
固体又は流体を含む薬物の好ましい投与様式は、口内に取り外し可能に固定され、少なくとも4時間の期間にわたって薬物を口内に投与する薬物送達デバイスを介するものである。薬物は可変速度で投与することができるが、一定速度の投与が好ましい。投与は、好ましくは連続的又は半連続的である。
【0140】
口内への投与は、毎日24時間であってもよいし、覚醒期間、典型的には約16時間に限定することもできる。覚醒期間に限定する場合、一定速度の投与よりもLDの血漿濃度をより迅速に上昇させるために、朝の大量瞬時投与を投与することが有利であり得る。朝の大量瞬時投与は、例えば、LDとDDC阻害剤の錠剤を経口により服用するか、本発明の薬物デバイスを用いて固体又は流体の薬物を口内に投与することにより、送達することができる。或いは、薬物送達デバイスの外側は、デバイスが最初に口の中に挿入されたときに、薬物の大量瞬時投与が口の中に送達されるように、薬物を含み得る。
【0141】
本発明は、0.1~10mLの薬物(例えば、0.1~1.0mL、1.0~2.0mL、2.0~3.0mL、3.0~4.0mL、4.0~5.0mL)の総量を含む口腔内に存在する1つ又は複数の薬物リザーバから1種又は複数種の薬物(例えばLD及びCD)を口内に投与する方法を含む。本発明は、1種又は複数種の薬物(固体又は流体のいずれかの形態)を、0.03~1.25mL/時間の範囲内(例えば、0.03~0.10mL/時間、0.10~0.20mL/時間、0.20~0.30mL/時間、0.30~0.40mL/時間、0.40~0.50mL/時間、0.50~0.60mL/時間、0.60~0.70mL/時間、0.70~0.80mL/時間、0.80~0.90mL/時間、0.90~1.0mL/時間、1.0~1.1mL/時間、又は1.1~1.25mL/時間)の速度で投与する方法を含む。本発明は、1mg未満/時間、1~10mg/時間、10~25mg/時間、25~50mg/時間、50~75mg/時間、75~100mg/時間、100~125mg/時間、又は125mg/時間超の平均速度で1種又は複数種の薬物を投与する方法を含む。本発明は、連続的及び/又は半連続的な投与を介して1種又は複数種の薬物を投与する方法を含む。好ましい実施形態では、この方法は、日中の4時間、8時間、12時間、16時間、又は24時間の期間、平均投与速度を一定又はほぼ一定に保つことを含む。例えば、1時間ごとに投与される量は、注入期間中の1時間ごとの平均投与速度から、1時間あたり±10%若しくは±20%未満、又は15分あたり±10%若しくは±20%だけ変化し得る。本発明は、本明細書に記載の薬物送達デバイスのいずれかを用いて、1種又は複数種の薬物を口内に投与する方法を含む。
【0142】
本発明の薬物送達デバイス及び製剤を用いた連続的又は半連続的な投与は、体液中、例えば血液、血漿又は血清中の治療薬の濃度変動を低減することができる。それは、例えば、治療薬のピーク濃度と最下濃度との差が、薬物が投与される期間を通じての平均濃度の±70%未満であり、例えばそれは、4時間以上(例えば、8、12、16、又は24時間)の期間にわたって時間平均した濃度の±50%未満、±30%未満、±20%未満、又は±10%未満であり得る血漿濃度プロファイルを提供することができる。
【0143】
本発明は、患者の疾患を治療する方法を特徴とし、方法は:(a)薬物送達デバイスを患者の口に挿入すること、(b)デバイスから薬物投与を開始すること、(c)1種又は複数種の薬物を、連続又は半連続投与を用いて、4時間から7日の期間、0.015~1.25mL/時間又は1~125mg/時間の範囲の時間速度で、患者の口に投与すること、及び(d)薬物送達デバイスを口から取り除くことを含み、ここで、薬物送達デバイスは、0.1~5mL容量(例えば、0.1~1mL、0.5~3mL、又は3~5mL)の薬物リザーバを含み、リザーバは、固体又は流体を含む薬物を含む。任意選択的に、本方法はまた、(e)デバイスからの薬物送達を停止する、というステップを含む。本発明はさらに、ステップa、b、c、d及びeが、4時間~7日の期間にわたって少なくとも2回実行される方法を含む。薬物は、合計1ミリモルを超えるLDを含み得る。
【0144】
本発明は、患者の疾患を治療する方法を特徴とし、方法は:(a)薬物送達デバイスを患者の口に挿入すること、(b)デバイスから薬物投与を開始すること、(c)1種又は複数種の薬物を、連続又は半連続投与を用いて、4時間から7日の期間、0.015~1.25mL/時間又は1~125mg/時間の範囲の時間速度で、患者の口の中に投与すること、及び(d)薬物送達デバイスを口から取り除くことを含み、ここで(1)薬物送達デバイスは、0.1~5mL容量(例えば、0.1~1mL、0.5~3mL、又は3~5mL)のリザーバを含み、リザーバは、固体又は流体を含む薬物を含み、(2)ステップa、b、c及びdは、4時間~7日の期間にわたって少なくとも2回実行される。薬物は、合計1ミリモルを超えるLDを含み得る。
【0145】
本発明の方法は、患者(ホーン・ヤール(Hoehn and Yahr)スケールで4及び5のスコアを有する患者を含む)においてパーキンソン病を治療することをさらに含み得、この方法は以下を含む:(a)本発明の薬物送達デバイスを患者の口内に取り外し可能に挿入することであって、薬物送達デバイスは0.1~5mL容量(例えば、0.1~1mL、0.5~3mL、又は3~5mL)のリザーバを含み、リザーバは合計1ミリモルを超えるLDを含む固体又は流体を含む、挿入すること、(b)少なくとも8時間の期間、0.03~1.25mL/時間又は30~150mg/時間の範囲の時間速度で、固体又は流体を患者の口内に投与することであって、その結果、投与中に400ng/mLを超え7,500ng/mL未満の循環血漿LD濃度が少なくとも8時間の期間継続して維持されるようにする、投与すること、及び(c)患者の口から薬物送達デバイスを取り除くこと。特定の実施形態では、LD懸濁液は、800ng/mL、1,200ng/mL、1,600ng/mL、又は2,000ng/mLを超える循環血漿LD濃度(例えば、患者の状態に応じて、800から1,500、1,000から2,000、1,600から2,500、又は1,500から3,000ng/mL)が、投与中に少なくとも2時間、3時間、4時間、8時間、16時間、又は24時間の期間にわたって継続的に維持される速度で、口内に投与される。特定の実施形態では、LD懸濁液は、400ng/mL、800ng/mL、1,200ng/mL、1,600ng/mL、又は2,000を超える循環血漿LD濃度が注入開始の60分以内に達成されるような速度で口内に投与される。LD懸濁液は、7,500ng/mL、5,000ng/mL、3,500ng/mL、3,000ng/mL、2,500ng/mL、又は2,000ng/mL未満の循環血漿LD濃度が投与中に少なくとも8時間の期間継続して維持される速度で口内に投与され得る。特定の実施形態では、患者は、10mL、7.5mL、5mL、3mL、又は2mL未満のLD懸濁液の平均1日用量を受ける。LD懸濁液は、循環LD血漿濃度が、少なくとも1時間、2時間、3時間、又は4時間の期間、その平均から±20%、±15%、又は±10%未満変化するような速度で口内に投与され得る。
【0146】
本方法は、ベンセラジド、カルビドパ又はカルビドパプロドラッグなどのDDC阻害剤の有効量の共投与をさらに含み得る。カルビドパは、固体、懸濁液若しくは乳剤として、又はカルビドパエチルエステル塩酸塩、カルビドパメチルエステル塩酸塩、カルビドパアミド塩酸塩、又はカルビドパリン酸プロドラッグ(例えば、カルビドパ4’-モノホスフェートとしても知られるフォスカルビドパ、例えば、Hutersら、J Org.Chem.2021及びRosebraughら、Ann Neurol.90:52-61,2021参照)によって例示されるその高水溶性プロドラッグ塩のうちの1つの溶液として共投与することができる。共投与されるDDC阻害剤のモル量は、LDのモル量の10分の1~2分の1、好ましくはLDのモル量の4分の1±8分の1程度であり得る。LD脱炭酸酵素阻害剤であると認識されるカルビドパプロドラッグの調製物は、例えば、米国特許第3,895,052号明細書及び同第7,101,912号明細書、並びに特許公開物DE第2062285A号明細書及びFR第2052983A1号明細書に記載されている。1つの特定の実施形態において、LD懸濁液は、0.5Mを超えるLDを含む(例えば、0.5±0.1、0.6±0.1、0.7±0.1、0.8±0.2、1.0±0.3、1.5±0.5、2.0±0.5、0.6±0.3、0.75±0.25、1.0±0.5、1.5±0.5、2.0±0.5、2.5±0.5、3.0±0.5、3.5±0.5、1.5超、2超、2.5超、又は3.5超モル/リットル)。特定の実施形態において、LD及びDDC阻害剤は、別々に共投与されるか、又は単一の固体若しくは流体に含まれ、患者に投与される。
【0147】
本方法は、パーキンソン病に罹患した患者における運動性又は非運動性の合併症、例えば、振戦、アキネジア、運動緩徐、ジスキネジア、ジストニア、認知障害、及び睡眠障害を緩和し得る。
【0148】
薬物送達デバイス
本発明の薬物送達デバイスは、患者又は介護者によって口内に挿入され、薬物を投与している間は口内に存在し、患者又は介護者によって口から取り出すことができるデバイスに対する要件に対処するために設計されている。好ましい薬物送達デバイスは、薬物リザーバを含む。
【0149】
薬物送達デバイスは、典型的には、約10mL未満、好ましくは7.5、5.0、又は3.0mL未満の総容量を有する。患者の咀嚼、嚥下及び発話への干渉を最小限にするために、薬物送達デバイスの好ましい容量は0.5~3.0mLである。
【0150】
誤って気管に飲み込まれたり吸引されたりするのを防ぐために、本発明の薬物送達デバイスは、口の中で固定されるか、又は気管に飲み込まれたり吸引されたりすることができない形状及び大きさである。それらは、1つ又は複数の歯、口蓋、歯肉、患者の口の中の唇又は頬など、口の中の任意の内面に固定され得る。確実で快適なフィット感を得るために、デバイスは、歯又は口蓋などの患者の口の中の表面にフィットする、又は取り付けられるように成形されるか、又はそれらは少なくとも一方の頬に適合し得る。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、歯の上、頬の上、歯肉と頬の間、歯肉と唇の間、又は口蓋に位置決めされるように固定される。或いは、薬物送達デバイスは、飲み込むことができない形状及び大きさを含む。例としては、歯肉と頬及び唇の間に配置することができる、湾曲した形状で長さが4cmを超える(例えば、5、6又は7cmを超える)湾曲した細長い形状、又は両頬に隣接して位置決めされてブリッジで接続され、任意選択的に左及び右部分の両方と流体接触を形成する薬物送達デバイスが挙げられる。
【0151】
典型的な薬物送達デバイスのハウジングは、金属又はセラミックなどの強度のある材料であり得るが、ハウジングは、いくつかの実施形態において、ポリイミドなどの強度のあるポリマーを含む剛性プラスチックを含み得る。プラスチックは、任意選択的に繊維強化されていてもよく、すなわち、例えば、炭素繊維、金属繊維、又はガラス繊維によって強化されていてもよい。金属製ハウジングは、オーステナイト系ステンレス鋼などのステンレス鋼であってもよいし、チタン又はチタンの合金であってもよい。
【0152】
薬物送達デバイスは、留め具によって歯又は口の他の内面に取り付けることができる。留め具、1つ又は複数のポンプ、及び1つ又は複数の薬物リザーバは、単一のユニットを含み得、又はそれらは別々の構成要素を含み得、1つ又は複数のポンプ又は1つ又は複数のリザーバが取り外されたときに留め具は口内に残る。一実施形態では、ポンプと薬物リザーバは、留め具に取り付けることができる単一の取り外し可能な構成要素を含む。薬物は、1つ又は複数の流量制限器及び/又は送達チューブを介して口内に送達され得る。別の実施形態では、使い捨てのポンプ及び薬物リザーバが、留め具に取り付けられた再利用可能なハウジングに挿入され得る。留め具、1つ又は複数の薬物ポンプ、及び1つ又は複数の薬物リザーバは、磁石、クリップ、留め金、クランプ、フランジ、ラッチ、保持リング、スナップ留め具、ねじマウント、又は当技術分野で知られている他のアタッチメント機構を用いて互いに取り外し可能に取り付けられ得る。好ましい実施形態では、留め具は、半透明又は透明であり得るプラスチック製保持器を含む。それは、口の片側の部分保持器であり得る(例えば、2、3、4、又は5本の歯に取り付けられる)。
【0153】
いくつかの実施形態において、ポンプ及び/又は薬物リザーバは、透明保持器を使用して上歯又は下歯のいずれかに固定される。1つ、2つ又はそれ以上のポンプ及び/又は1つ又は複数の薬物リザーバは、透明保持器の頬側に固定され得る。1つ、2つ、又はそれ以上の薬物ポンプ及び/又は薬物リザーバは、右側又は左側のいずれかに片側に固定され、頬前庭に、又は代替的に歯の舌側に位置決めされることができる。薬物ポンプ及びリザーバは、プラスチック製保持器に一体化されたプラスチック製レセプタクルに取り外し可能に挿入することができる。薬物は、実質的にそのフラックスを制限しない送達チューブを介して口内に送達することができ、流量は、より狭い内径の1つ又は複数の流量制限器によって主に制御される。送達チューブは、薬物を歯の頬側から舌側へ運ぶ役割を果たし、そこで薬物はより容易に飲み込まれ得る。チューブはポンプに取り付けられてもよいし、再利用可能な保持器の中に成形されてもよい。
【0154】
LD又はCDなどのいくつかの薬物の送達のために、薬物を含む固体又は流体を、歯の頬側ではなく歯の舌側に投与することが望ましい場合があり、これは、口内での薬物の滞留時間を最小化し、それによって頬側前庭における薬物の潜在的蓄積を避け、頬側組織が薬物に刺激的にさらされる可能性を最小化することを目的としている。好ましい実施形態では、ポンプは、薬物を含む流体を口内に搬送するための送達チューブを含む。送達チューブは、歯の頬側に位置する薬物リザーバから歯の舌側へ薬物を含む流体を運ぶ。送達チューブは、例えば、歯の咬合面を横切らないように、下顎弓の上方で、後臼歯の後方を通過することができる。
【0155】
留め具又はハウジングなどのその構成要素は、熱成形、射出成形、圧力成形、及び積層などの当技術分野で既知の方法を使用して製造することができる。
【0156】
薬物送達デバイスは、単一のユニットであってもよいし、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の構成要素を有していてもよい。薬物送達デバイスは、固体又は流体の薬物製剤が含有される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の薬物リザーバを有してもよい。これらの1つ又は複数のリザーバは、単一の構成要素を形成してもよいし、複数の構成要素を形成してもよい。
【0157】
薬物送達デバイスは、再利用可能であってもよいし、使い捨てであってもよいし、1つ又は複数の再利用可能な構成要素と1つ又は複数の使い捨ての構成要素とを有していてもよい。好ましい実施形態では、留め具は再利用可能であり、7日、30日、60日、180日、又は1年、2年に等しいかそれ以上の期間、再利用することができる。別の好ましい実施形態では、1つ又は複数の薬物リザーバは、単回使用の使い捨て構成要素である。ポンプは、典型的には使い捨てであるが、再利用可能であってもよい。流量制限器は、典型的には使い捨てを意味する単回使用であるが、いくつかの実施形態において再利用可能であることができる。
【0158】
薬物リザーバは、典型的には単回使用であるが、固体又は流体の薬物製剤で再充填可能であってもよい。好ましい実施形態では、薬物リザーバは、単回使用の使い捨てである。薬物リザーバは、使用者、介護者、又は薬剤師によって充填され得る。好ましい実施形態では、薬物リザーバは予め充填される。
【0159】
薬物送達デバイスは、デバイスから口内に薬物を放出するための1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のオリフィスをさらに含み得る。
【0160】
単一の薬物送達デバイス又は薬物リザーバからの投与の持続時間は、典型的には、1日あたり4、8、12、又は16時間を超え、1日あたり24時間まで及びそれを含む。投与はまた、単一のデバイス又は薬物リザーバから複数日にわたって行われ、例えば、2日以上、4日以上、又は7日以上の薬物の投与が可能である。デバイスは、患者が覚醒しているとき又は眠っているときに装着することができるように設計することができる。
【0161】
患者が、例えば、食事をするため、歯を磨くため、又は患者が薬を望まない又は必要としないとき(例えば、夜間)に、薬物送達デバイスを一時的に口から取り外すことができることが望ましい。その結果、薬物送達デバイス及び/又はその構成要素のいくつか(ポンプ及び/又は薬物リザーバなど)は、一時的に取り外し可能にすることができる。しかしながら、留め具などのいくつかの構成要素は、これらが患者の活動を妨げないのであれば、口の中に留まることが許容される。例えば、バンド、1つ又は複数の歯にセメント又は接着された留め具、保持器、又は口腔粘膜に接着され、ポンプ及び/又は薬物リザーバを所定の位置に保持する粘着パッチは、ポンプ及び/又は薬物リザーバが取り外されても口内に留まることができる。
【0162】
薬物送達デバイスは、以下の指標を含むことが好ましい:1種又は複数種の薬物の残量、空になるまでの残りの注入時間、及び/又は薬物リザーバの1つ又は複数が空であり、交換すべきであること。
【0163】
薬物送達デバイスは、1種又は複数種の固体又は流体の薬物製剤を、0.1~10mL、例えば、0.1~1.0、1.0~2.0、2.0~3.0、3.0~4.0、4.0~5.0、5.0~6.0、6.0~7.0、7.0~8.0、8.0~9.0、又は9.0~10mLの薬物の総量を含む1つ又は複数の薬物リザーバから投与するように構成及び配置されることができる。それらは、1種又は複数種の固体又は流体の薬物製剤を、0.03~1.25mL/時間、例えば0.03~0.10、0.10~0.20、0.20~0.30、0.30~0.40、0.40~0.50、0.50~0.60、0.60~0.70、0.70~0.80、0.80~0.90、0.90~1.0、1.0~1.1、又は1.1~1.25mL/時間の範囲の速度で投与するように構成及び配置される。いくつかの実施形態において、それらは、0.01~1mg/時間、1~10mg/時間、10~100mg/時間、又は100mg/時間を超える平均速度で薬物(すなわち、医薬活性成分)を投与するように構成及び配置される。他の実施形態では、薬物製品(すなわち、医薬活性成分プラス賦形剤)は、0.01~1mg/時間、1~10mg/時間、10~100mg/時間、又は100mg/時間を超える平均速度で送達される。
【0164】
好ましい実施形態では、薬物送達デバイスは、連続的及び/又は頻繁な投与、例えば注入、を介して、1種又は複数種の固体又は流体の薬物製剤を投与する。好ましい実施形態では、固体又は流体の薬物の投与速度は、日中4、8、12、16又は24時間の期間、一定又はほぼ一定に保たれる。例えば、投与量は、4時間、8時間、12時間、16時間又は24時間の期間にわたって、1時間あたり±10%又は±20%未満、又は15分あたり±10%又は±20%変動し得る。別の実施形態では、固体又は流体の薬物の投与速度は、1日の覚醒時間の間、ほぼ一定に保たれる。別の実施形態では、固体又は流体の薬物製剤の投与速度は、眠っている時間の間ほぼ一定に保たれる。別の実施形態では、固体又は流体の薬物製剤の投与速度は、目覚めた頃の大量瞬時投与の送達を除いて、1日の覚醒時間中にほぼ一定に保たれる。一実施形態では、投与速度は、患者又は介護者によって口内に挿入される前に設定することができる。別の実施形態では、投与は半連続的であり、注入間の期間は、薬物の生物学的半減期t1/2未満であり、例えばそれは、t1/2の1/2未満、t1/2の1/3未満、又はt1/2の1/4未満、又はt1/2の1/10未満とすることができる。
【0165】
薬物送達デバイスの留め具への位置決め
いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、保持器などの留め具を使用して歯(例えば上歯)に固定される。留め具は、薬物リザーバ、ポンプ、又は両方の構成要素を含むアセンブリ(例えば、
図1及び2に示すアセンブリなど、ポンプと薬物リザーバ又は薬物チャンバの両方を含むアセンブリ)を患者の歯に固定するために使用することができ、アクリレート含有ポリマー又はオレフィン含有ポリマーなどのプラスチックで作ることができる。例えば、留め具は、ポリプロピレンなどの熱可塑性ポリオレフィンで作ることができる。プラスチックは、Essix(登録商標)PLUS(商標)プラスチック、Essix A+(登録商標)プラスチック、Essix C+(登録商標)プラスチック、Essix ACE(登録商標)プラスチック、Essix(登録商標)デュアルラミネートプラスチック、Essix(登録商標)ナイトガードラミネートプラスチック、Essix(登録商標)スポーツマウスガードマテリアル、Essix(登録商標)ラミネーテッドスポーツマウスガードマテリアル、Essix(登録商標)ブリーチトレイ及びモデル複製マテリアル、Essix Tray Rite(登録商標)プラスチック、Dreve Drufosoft(登録商標)プロプラスチック、Dreveコンビプラストプラスチック、Dreveバイオロンプラスチック、又はDreve Drufosoft(登録商標)スポーツマウスガードマテリアルであり得る。留め具は、薬物送達デバイスを保持するための、ポケットを意味するレセプタクルを含むことができ、これは、例えば、成形によって留め具の一体的な部分として作製することができ、それは、デバイスの取り扱い中の不意の取り外しを防ぐことができる。さらに、留め具は、快適な装着のために、また、発話や飲み込みと干渉しないように、患者の歯の解剖学的構造にパーソナライズすることができる。留め具は口蓋の近くに位置決めされることができ、この際そのポケットは薬物送達デバイスを歯の頬側で保持し、快適さのためにデバイスを頬のポケットに位置決めする。ポケットはまた、留め具の挿入中又は装着中にデバイスが外れるのを防止することができ、薬物含有流体を口内に投与するために適切な向きにあるようにデバイスを位置付けることができる。いくつかの実施形態において、ポケットは、デバイスが外れるのを防ぐために、摩擦によって薬物送達デバイスとの干渉嵌め(摩擦嵌めとしても知られている)を維持する特徴を有するように設計されている。例えば、干渉嵌めは、薬物送達デバイスが留め具のポケットに押し込まれた後に摩擦によって一緒に保持されるジョイント部を生成する嵌合部品(例えば、留め具のポケットと薬物送達デバイスのハウジング)の間の締まり嵌めによって生成され得る。或いは、薬物送達デバイスは、デテント、溝、スナップ、又はロックを用いてポケット内に可逆的に固定することができる。薬物送達デバイスは、薬物含有流体(例えば、薬物含有懸濁液、乳濁液、又はペースト)がアセンブリから出る、出口チューブとも呼ばれる送達チューブの出口が歯の舌側にあるようにポケット内に位置決めすることができ、これは、頬ポケット、又は頬側ポケットに存在するデバイスからの薬物含有流体が、唾液腺近くの、歯の唾液が多い舌側に送達されることを意味している。好ましい実施形態では、留め具のポケットは、上顎臼歯の頬側に位置し、薬物送達デバイスの送達チューブが患者の最後部の歯に巻き付き、歯の舌側に薬物を送達するように、薬物送達デバイスを保持する。テスト中、軟口蓋の被覆が快適さと発話に影響することが判明したので、快適さを改善し、発話の乱れを最小限にするために、留め具(例えば、保持器)は、硬口蓋と軟口蓋のほぼ半分にまたがるように位置決めされ得る(例えば、硬口蓋と軟口蓋のほぼ半分が留め具によって被覆される)。硬口蓋は、発話が影響を受けないように留め具によって部分的にのみ覆われ、軟口蓋は、不快感及び/又は咽頭反射を防ぐために留め具によって部分的にのみ覆われる。
【0166】
保持器である例示的な留め具が、
図8~12に示されている。保持器は、アクリレート含有ポリマーなどのプラスチックで作ることができる。いくつかの実施形態において、保持器は、Essix(登録商標)PLUS(商標)プラスチックで作られる。
図8~12に示すように、保持器は、歯の頬側(例えば、上顎臼歯の横)に薬物送達デバイスを保持するためのポケットを含み、保持器ポケットは保持器の一体部分である。
図8及び9に示すように、保持器ポケットは、送達チューブが患者の最後部の臼歯に巻き付き、薬物送達チューブの出口が歯の舌側に薬物を放出するように薬物送達デバイスを位置決めする。
図13A~13Bは、薬物送達デバイスを保持器ポケットに挿入することができる方法を示す(例えば、薬物送達デバイスをポケットの中に最後まで押し込んで、投与のための適切な位置に固定することによって)。薬物送達デバイスは、必要なときに(例えば、4時間以上連続して使用された薬物送達デバイスを新しい薬物送達デバイスと交換するため、例えば、第1の薬物送達デバイス内の薬物含有流体の半分超が送達されたとき)、保持器から取り外すことができる。
図13Cは、薬物送達デバイスを保持器ポケットから押し出すことによってデバイスを取り外すことができることを示す。
図14A~14Bは、保持器に取り付けられた薬物送達デバイスがどのように口の中に挿入され得るか(
図14A)、及び保持器が挿入された後に保持器に取り付けられた薬物送達デバイスがどこに存在するかを示す(
図14B)。
【0167】
薬物送達デバイスは、
図15A~15Cに示すように、第2大臼歯又は第1大臼歯などの大臼歯の咬合面と同一平面上に位置決めすることができる。保持器は、小臼歯及び大臼歯の上に装着することができ、その中線が大臼歯の咬合面(例えば、第1又は第2大臼歯の咬合面)上にあり、その後端が、
図16Cに示すように、最後部(第1又は第2)大臼歯の中線と後部との間にある状態で、第1及び第2大臼歯のみにまたがるように薬物送達デバイスを位置決めすることができる。薬物送達デバイスはまた、ウィルソン平面上に設定されるように留め具内(例えば、保持器ポケット内)に位置決めすることができる。デバイスを頬前庭の上方に位置決めしすぎると不快感や痛みを引き起こす可能性があるため、この一連の制約により、デバイスが快適であることが保証される。薬物送達デバイスを第1大臼歯と第2大臼歯に位置決めすることで、デバイスが2本の歯だけで平面を保つことが保証され、頬の外側への突出が制限される。また、薬物送達デバイスをこの位置に配置することにより、第3大臼歯のない患者において、送達チューブが最後部の臼歯に巻き付くことができ、送達チューブを噛まれないように位置決めできることが保証される。留め具や薬物送達デバイスは、患者の歯列に合わせることができる。第3大臼歯がある場合は、第3大臼歯のない反対側の口内に位置決めすることができる。
【0168】
ポンプ
薬物送達デバイス用のポンプは、口の中で安全かつ快適に担持される小型デバイスに適している。任意の適切なポンプを使用することができる。ポンプと薬物リザーバは別々であってもよい。小型ポンプは、口の中に配置するのに有利である。例えば、薬物を含む押し出された流体は、薬物送達デバイスの総容積の33%、50%、66%、又は75%超を占める場合がある。
【0169】
バッテリを必要としないポンプは、バッテリを必要とする電気ポンプよりも小型で、可動部分が少ないことがある。非電気式使い捨てポンプの一群は、流量制限器による流路内の機械的制限によって加圧流体の流量を決定できるという物理的原理に基づくものである。流れの制限は、オリフィス(例えば、薬物リザーバ内の)、細い穴のチューブ(金属、ガラス又はプラスチックパイプなど)、又はチャネル、又は毛細管、又は流量制御ノズルによって提供され得る。任意選択的に、流量制御ノズル、チャネル、又はチューブは、エンジニアリングプラスチックなどのプラスチック製、又は金属製、又はガラスなどのセラミック製とすることができる。流量制限器は、1mm又は2mmより小さく0.05mmより大きい内径と、0.25cm~10cmの間の長さを有することができる。特定の実施形態では、流量制限器は、0.7mmより小さく、0.2mmより大きい内径を有することができる。好ましい内径は、0.1~2mm(0.1~0.7mm、0.2~0.5mm、0.5~0.75mm、0.75~1.0mm、1.0~1.5mm、又は1.5~2.0mm)であり、好ましい長さは0.25~5cm(1~2.5cm、1~5cm、0.25~0.5cm、0.5~0.75cm、0.75~1cm、1~2cm、2~3cm、3~4cm、又は4~5cmなど)である。
【0170】
流量は、流量制限器を横切る圧力勾配と流体の粘性によって影響を受ける可能性がある。既存のポンプ製品における不正確さの重大な原因は、粘性が温度の影響を強く受けることである。薬物送達デバイスを口内に担持することの重要な利点は、温度が約37℃でほぼ一定に保たれ、それによってレオロジー特性(粘度やスリップ率など)、したがって注入速度の変動を最小限に抑えることができることである。また、約37℃のほぼ一定は、液体推進剤由来などのガスがポンプを駆動するために使用される場合に、安定したポンプ圧を維持するのに有利である。
【0171】
本発明のデバイス及び方法において使用される製剤は、粘性のある懸濁液であり得る。粘性懸濁液の使用は、本発明の薬物及び方法に望まれる少量、高濃度、均一な薬物分散、保存安定性、及び操作安定性を達成するためにしばしば望まれる。その結果、粘性流体を圧送するのに必要な圧力を提供できるポンプ機構を採用することが望まれることが多い。
【0172】
粘性流体、典型的にはペーストを押し出すのに必要な圧力差は、2~20バールの間、例えば3~12バールの間、又は例えば4~8バールの間であり得る。加圧ガスは、通常、液化した推進剤と平衡状態にある。
【0173】
ガス駆動式注入ポンプ
一実施形態では、ガス駆動式薬物送達デバイスは、2つ以上のコンパートメントを含み、少なくとも1つのコンパートメントに加圧ガスが入っており、少なくとも1つの別の薬物リザーバに、投与される懸濁液が入っている。加圧ガスは駆動力を提供する。2つのコンパートメントは、ガスコンパートメントから懸濁液に力を伝達する可動部材(可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムなど)によって分離されている。
【0174】
2つのコンパートメントを含むハウジングは、典型的には、薬物が分注され、加圧ガスを含むコンパートメントの内部圧力が低下しても大きく変化しない一定の容積を有するように構成される。
【0175】
好ましい実施形態では、薬物送達デバイスは、1つのコンパートメントに単一成分の推進剤を含み、第2のコンパートメントに薬物を含み、推進剤は、海抜大気圧で約37℃未満の温度で沸騰する。この温度において、液化した推進剤の蒸気圧は、通常、2バールを超える圧力である。その蒸発時に液体推進剤の体積が大きく増加するため、推進剤コンパートメントの体積は、薬物を含む流体の体積に対して小さく、典型的には薬物を含む流体(例えば、ペースト)体積の1/4、1/5、又は1/8未満である。この実施形態では、推進剤駆動式薬物送達デバイスは、加圧された揮発性の推進剤液体と、注入される薬物を含む流体とが異なるコンパートメントに存在するように、薬物送達デバイス内に、圧力液化推進剤を有する薬物リザーバ、すなわち、推進剤含有コンパートメントを含み得る。
【0176】
好ましい実施形態では、推進剤と固体又は流体の薬物は、例えばチタン又はチタン合金又は鉄合金又はステンレス鋼の、推進剤の圧力で大きく変形しない剛性の金属壁ハウジング内に含有される。ハウジングは薬物リザーバを含む。推進剤と薬物は、変形可能なダイヤフラムによってハウジング内で分離され、推進剤の蒸気の圧力を、薬物を含む流体、典型的には変形可能な半剛性ペーストに伝達する。ダイヤフラムは、ピンホールのない延性金属箔、例えば銀箔、又はオーステナイト系ステンレス鋼の箔を含み、典型的には10μmから250μmの間、例えば20μmから125μmの間、例えば25μmから75μmの間の厚さであり得る。気密性のために、推進剤ハウジングのリムと金属ダイヤフラムを溶接し、溶接部に残留するピンホールがあれば、溶接部の外側にシーラントを塗布してシールすることができる。シーラントは、ポリマー性、例えばポリシロキサンを含むものであってもよい。
【0177】
或いは、コンパートメントを分離する変形可能ダイヤフラムは、3層ポリマー-アルミニウム-ポリマーなど、金属化ポリマーを含むことができる。それは、エポキシ、ポリウレタン又はポリアクリレート接着剤などの接着剤を使用して、推進剤コンパートメントのリム及び/又は薬物を含む流体のコンパートメントのリムに接着させることができる。
【0178】
連続的に皮下に薬物を注入する圧縮空気又はFreon(商標)加圧ポンプの例としては、米国特許第4,265,241号明細書、同第4,373,527号明細書、同第4,781,688号明細書、同第4,931,050号明細書、同第4,978,338号明細書、同第5,061,242号明細書、同第5,067,943号明細書、同第5,176,641号明細書、同第6,740,059号明細書、及び同第7,250,037号明細書に記載されているものがあり、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。リザーバが再充填可能であり、ポンピングが加圧によるものである場合、リザーバは、その再充填時に加圧され得る。
【0179】
推進剤駆動式の植込み型薬物注入ポンプの例は、米国特許第7,905,878号明細書、欧州特許第EP2177792 B1号明細書及び同第EP1527794 B1号明細書に記載されているCodmanポンプであり、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
異なる患者に異なる投薬速度を提供するために、異なる薬物濃度を有する流体をリザーバに配置することができ、それにより、薬物送達デバイス又は流速の改変を必要としない。或いは、リザーバ内の薬物濃度を一定に保ち、流速は、例えば、流量制限器の直径又は長さを変更することによって変更することが可能である。
【0181】
デバイス内で使用するための例示的な揮発性推進剤化合物は、炭化水素(例えば、2-メチルプロパン、ペンタン、1-ペンテン、トランス-2-ペンテン、トランス-ジメチルシクロプロパン、エチルシクロプロパン、1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、及びメチル-1-ブタン、2-ブチン)、ハロカーボン(例えば、トリクロロフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、1-フルオロブタン、2-フルオロブタン、パーフルオロペンタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1-クロロプロペン、及び2-クロロプロペン)、エステル(例えば、ギ酸メチル)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル)、及びヒドロフルオロアルカンを含む。好ましい推進剤は、薬物吸入器で使用するためにFDAによって承認されたものであり、例えば、1,1,1,2テトラフルオロエタン(R-134a)、及びR-227eaとして販売されている1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパンである。また、1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロパン(R-236faとして販売)など、局所適用向けにFDAによって承認されている推進剤、及びオクタフルオロシクロブタン又はイソペンタンなど、食品及び市販の抗カリウム医薬品での使用が承認されている推進剤も好ましい。
【0182】
例示的な加圧液体推進剤及びそれらの37℃での蒸気圧を表2に示す。
【0183】
【0184】
推進剤駆動式ポンプ
以下のセクションでは、LD/CDペーストを含む医薬組成物を送達するための推進剤駆動式ポンプの設計及び製造プロセスに関する追加の詳細を説明する。同様の設計及び製造プロセスが、他のポンプ及び薬物製剤と共に使用され得ることが認識されるであろう。
【0185】
デバイスは、任意選択的に金属ダイヤフラムによって分離された薬物コンパートメント及び推進剤コンパートメントを有する、推進剤ポンプ式の、剛性の壁を持つ、口腔内、連続薬物送達デバイスであり得る。一実施形態では、連続的又は半連続的な口腔内薬物投与のためのデバイスは、患者の口内に取り外し可能に挿入されるように構成される。薬物送達デバイスは、推進剤を含むチャンバと、ペーストなどの薬物を含む流体を含むチャンバと、推進剤チャンバを薬物チャンバから分離する可撓性及び/又は変形可能なダイヤフラムとを含む。デバイスのハウジングは剛性であることができ、気体及び液体不透過性、例えば、気体及び液体推進剤、空気、水蒸気、液体水、唾液及び/又は気体ヘリウムに対して不透過性とすることができる。好ましい実施形態では、剛性ハウジングは、薬物含有流体を含むチャンバの壁と推進剤を含むチャンバの壁とを形成し、2つのチャンバは、ダイヤフラムによって分離されている。分離ダイヤフラムは金属を含み、すなわち、ダイヤフラムは金属であることができ、又はそれは金属化ポリマーを含むことができる。デバイスは、チャンバ内の薬物含有流体(例えばペースト)の重量の少なくとも50%(例えば、50%~99%、60%~95%、75%~95%、51%~60%、61%~70%、71%~80%、81%~90%、91%~95%、又は95%~99%)を分配し、好ましくはこの間、薬物送達速度(流速又は押出速度を意味する)は、4、8、16、又は24時間以上の期間にわたって、±20%未満(例えば、±15%未満、±10%未満、又は±5%未満)変動する。
【0186】
薬物及び推進剤を含むチャンバの剛性壁(これはハウジングの一部を構成し得る)は、頑丈で、緻密であり得、それは金属性であり得る。好ましい実施形態では、剛性ハウジングは、薬物含有チャンバの壁及び/又は推進剤含有チャンバの壁を形成する。チャンバ壁の剛性ハウジングは、頑丈であり得、金属、セラミック、又は繊維で強化されたポリマーの複合体を含む。ポリマーを補強する繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は金属繊維を含むことができる。ハウジングは、約25±3℃で、200MPa、300MPa、400MPa、又は500MPaを超えるなど、100MPaを超える引張降伏強度を有する材料を含むことができ、及び/又は、ハウジングは、25±3℃で、50GPa、75GPa、又は100GPaを超えるなど、30GPaを超える弾性率(ヤング率)を有する材料を含むことができ、及び/又は、ハウジングは、25±3℃で、400MPa又は600MPaを超えるなど、200MPaを超えるブリネル硬度を有する材料を含むことができ、及び/又は、ハウジングは、25±3℃で、例えば3.5g/cm3を超える、例えば4.5g/cm3、5.5g/cm3、6.5g/cm3、又は7.5g/cm3とほぼ同じかそれを超える、2.5g/cm3を超える密度を有する材料を含むことができる。金属の場合、ハウジングの金属は、チタン、鉄、アルミニウム、モリブデン、若しくはタングステン、又はチタン、鉄、モリブデン、若しくはタングステンの合金のグループから選択することができ、それは、例えば、チタン若しくはチタンの合金、又はオーステナイト系ステンレス鋼などのステンレス鋼で形成することができる。
【0187】
薬物含有流体を含むチャンバと推進剤を含むチャンバとを分離するダイヤフラムは、変形可能な金属箔とすることができ、又は可撓性及び/又は変形可能な金属箔を含むことができる。好ましい実施形態では、薬物含有流体を含むチャンバを、推進剤を含むチャンバから分離するダイヤフラムは、金属性であることができ、又は金属層を含むことができる。それは、変形可能でピンホールのない金属箔であることができ、又はそれは金属層を含むことができる。ダイヤフラム金属の密度は、25℃で2.0g/cm3を超えることができる。それは、例えば、25℃で2.5g/cm3を超え、例えば4.0g/cm3、7.0g/cm3、又は10.0g/cm3を超えることができる。任意選択的に、ダイヤフラム材料の引張強度は25MPaを超えることができ、例えばそれは25±3℃で50MPa、75MPa、又は100MPaを超えることができ、及び/又はその弾性率は約20GPaを超え、例えば30GPa、40GPa、又は50GPaを超えることができる。金属ダイヤフラムは、例えば、銀又は銀の合金の箔を含むことができ、又はアルミニウム又はアルミニウムの合金の層を含むことができ、又はマグネシウム又はマグネシウムの合金の層を含むことができ、又はチタン又はチタンの合金の層を含むことができ、又はステンレス鋼の箔を含むことができる。金属箔(例えば、銀又はステンレス鋼)のダイヤフラムは、ピンホールがないものであることができ、金属層(例えば、チタン、アルミニウム又はマグネシウムの)は、ポリマー層と接触したときに、任意選択的にその両面にピンホールがあることができる。いくつかの実施形態において、例えばハウジング壁とダイヤフラムの両方がステンレス鋼などの類似の金属である場合、ダイヤフラムのリムは、溶接によって推進剤及び薬物ハウジングのいずれか又は両方のリムに取り付けることができる。ダイヤフラムが金属とポリマー層を含む場合、そのリムは、2液型エポキシ、ポリアクリレート、ポリウレタンなどの接着剤を使用してハウジングのそれに接着することができる。
【0188】
ポンプは、例えば針を用いて、推進剤を注入するためのシール可能なポートをさらに含むことができる。
【0189】
ハウジングは、一緒に接合された2つ以上の部品で作ることができる。部品は、溶接(任意選択的にダイヤフラムと一緒に)によって、又は接着剤の使用によって、一緒に接合され得る。
【0190】
推進剤チャンバの内部ハウジング壁及び薬物チャンバの内部ハウジング壁は、実質的に互いの鏡像であり得る(これはそれらが中心面に関して実質的に対称であり得ることを意味する)が、それらのポートが異なること、及び薬物チャンバの内部ハウジング壁が溝又は同様の流れを良くする特徴を有する一方で推進剤チャンバの鏡像内部ハウジング壁は溝又は同様の流れを良くする特徴を有しないことを除く。
【0191】
好ましい実施形態では、薬物チャンバのハウジング壁は、医薬組成物の導入を可能にするシール可能なポートを含むことができる。ポートは、充填プロセスの前又は後に、例えばプラグ、グロメット、又はセプタムによって一時的又は恒久的にシールされ得る。ポートはまた、例えば、プラグ付きの薬物送達チューブを取り付けることによって、デバイスの動作中に薬物の送達のために使用され得る。
【0192】
任意選択的に、流量制限器(例えば、ノズル、チャネル、又はチューブ)は、エンジニアリングプラスチックなどのプラスチックで作ることができる。流量制限器は、1mm又は2mmより小さく0.05mmより大きい内径と、0.25cm~10cmの間の長さを有することができる。特定の実施形態では、流量制限器は、0.7mmより小さく、0.2mmより大きい内径を有することができる。好ましい内径は、0.1~2mm(0.1~0.7mm、0.2~0.5mm、0.5~0.75mm、0.75~1.0mm、1.0~1.5mm、又は1.5~2.0mm)であり、好ましい長さは0.25~5cm(1~2.5cm、1~5cm、0.25~0.5cm、0.5~0.75cm、0.75~1cm、1~2cm、2~3cm、3~4cm、又は4~5cmなど)である。
【0193】
推進剤チャンバのハウジング壁は、推進剤チャンバを推進剤で充填するためのシール可能なポート(例えば、グロメット、セプタム、又は同様の再シール可能な部材を含む)を含むことができる。推進剤送達ノズルは、セプタムに挿入することができ、推進剤チャンバは充填される。好ましくは、薬物チャンバが最初に充填され、その後、推進剤チャンバが充填される。
【0194】
患者のコンプライアンスは、薬物送達デバイス及び保持器が口内に装着されたときに快適であるかどうかに依存する。好ましくは、システムは、装着者の外観に実質的に影響を与えず、発話を妨げず、又は嚥下及び飲み込みを妨げない。快適さのため、及び装着者の顔の外観の実質的な変化を避けるために、口腔ポンプは、実質的にオブラウンド型を有し得る。口の中のポンプの例示的な位置は、上顎の位置である。一般に、ポンプ及び/又はその薬物出口は、頬前庭に薬物が過剰に蓄積する可能性が回避されるように配置することが好ましい。組織への刺激を避けるために、ポンプの表面は滑らかである。例えば、頬の組織に接触するポンプの表面は、約100μm未満、例えば、約30μm未満、10μm未満、5μm未満、又は1μm未満の突起を有し得る。
【0195】
ポンプは、約0.1mLと約2mLの間、例えば約0.2mLと約1.2mLの間、例えば約0.6mLと約1mLの間の薬物含有流体を含み得る。0.8mLの薬物リザーバを有する例示的なポンプは、約1.25g/mLの密度の組成物を約1g含む。いくつかの組成物では、医薬組成物を含む大部分が固体の1250mg/mLが存在し得、固体は大部分が固体の薬物自体又は大部分が固体の賦形剤である。固体がLD又はCDなどの約1.5g/mLの密度の薬物である場合、0.8mLリザーバは約0.64gの大部分固体の薬物を含むことができる。
【0196】
ポンプは、例えば、実質的にオブラウンド型とすることができ、又は実質的に平らにした涙滴型とすることができる。実質的にオブラウンド型のポンプの寸法は、歯の前庭面から外側に測定した幅、歯の萌出方向に測定した高さ、及び一連の歯(典型的には臼歯を含む)の方向に沿って測定した長さである。ポンプハウジングの幅(外寸、OD)は、約3mmと約10mmの間であり得、その高さ(OD)は、約5mmと約18mmの間であり得、その長さ(OD)は、約10mmと約30mmの間であり得る。好ましくは、ポンプハウジングの長さは、ポンプハウジングが1つ又は2つの歯にまたがるが、3つの歯にまたがらないようなものであり得る。剛性ハウジングの壁の厚さは、約0.2mmと約2mmの間、例えば、約0.3mmと約1.0mmの間とすることができる。
【0197】
実質的に平坦化された涙滴型ポンプの幅、その長さ、及び壁のハウジングの厚さは、オブラウンド型ポンプのものと同様とすることができる。頬前庭に存在するときのその前側の高さは、その後側の高さよりも低くすることができる。後側は、例えば、前側の1.1倍~2倍の間の高さ、例えば、1.3倍~1.8倍の間の高さ、例えば、1.4倍~1.6倍の間の高さとすることができる。
【0198】
一実施形態では、金属ダイヤフラムはほぼ均一な厚さであり、それはピンホールのないものである。ピンホールのない金属製ダイヤフラムの厚さは、約10μm~約1mmの間とすることができる。ダイヤフラムは、例えば、約10μm~250μmの間、例えば、20μm~125μmの間、例えば、25μm~75μmの間とすることができる。ダイヤフラムの厚さ及び関連する剛性(応力下での形状変化に対する抵抗力を意味する)は、ダイヤフラム全体で±25%未満、例えば±10%未満で変化し得る。いくつかの実施形態において、ダイヤフラムのリムは、シールを容易にするために、ほぼ均一な厚さの中央部よりも厚くなっている。ほぼ均一な厚さの中央部は、ダイヤフラムの面積の約80%以上を構成することができ、より厚いリムは典型的にダイヤフラムの面積の約20%未満を構成する。ダイヤフラムのリムは、その中心の1.5倍を超える厚さ、例えば、中心の1.5~2倍の厚さ、又は2~3倍、又は3倍を超える厚さとすることができる。
【0199】
ダイヤフラムの周辺リムは、典型的にオブラウンド型又は平坦な涙滴型のハウジングの中央断面平面の周辺リムに一致する形状及び大きさである。ダイヤフラムは、例えば、0.02mm~0.10mmの間の厚さのアニールされたほぼ純銀箔などの金属シートを型に押し込むことによって作ることができる。或いは、ダイヤフラムは、典型的には0.02mm~0.10mmの間の厚さの成形可能な金属箔又はシートをスタンピングすることによって作ることができる。成形性に影響を与え得るパラメータには、金属の歪み(加工硬化)指数(n値と呼ばれる)、及び、幅方向と厚み方向の歪み比(r値と呼ばれる)が含まれる。ダイヤフラムの素材である銀の典型的なr値は0.75~1.0であり、典型的なn値は0.2~0.4である。スタンピング加工された金属製の、任意選択的にオブラウンド型のカップ型ダイヤフラムの高さ(ハウジングの幅とほぼ一致)は約3mm~約10mmとすることができ、その幅(ハウジングの高さと一致)は約5mm~約18mmの間とすることができ、その長さは約10mm~約30mmの間とすることができる。任意選択的にオブラウンド型のダイヤフラムは、平面状、折り畳み状、プリーツ状、又は刻み目を付けることができる。それは、例えば、ハイドロフォーミングによって、又はスタンピングによって、任意選択的にホットスタンピングによる加熱を伴って、又は深絞りによって、任意選択的に加熱を伴って、形成することができる。
【0200】
任意選択的に、薬物チャンバと推進剤チャンバを分離する可撓性及び/又は変形可能な金属ダイヤフラムのリムは、推進剤チャンバの充填ポート及び薬物を含むチャンバの充填及び送達ポートが気密に閉じられた後に、気密にシールされた推進剤チャンバ及び気密にシールされた薬物チャンバを形成すべくハウジングのリムに溶接することができる。
【0201】
薬物含有チャンバのハウジング壁は、充填用及び薬物送達用の1つ又は複数のシール可能な又はシールされたポートを含むことができる。推進剤含有チャンバは、気密的にシールされることができ、推進剤を充填するための気密的にシール可能な又はシールされたポートを含むことができる。
【0202】
保管時、ポンプは気密式にシールされることができる。使用時、薬物は、1つ、2つ、又はそれ以上の薬物送達ポートを介して流れるか、又は押し出されることができる。
【0203】
気密式の閉鎖のために、薬物チャンバ、推進剤チャンバ、及びダイヤフラムは気密シール溶接によって接合することができ、気密シール溶接は、例えば、水、唾液、空気、又は水蒸気の流入、又は水蒸気の流出、又は薬物チャンバからの薬物含有組成物のあらゆる成分の流出、並びに推進剤チャンバからの推進剤の流出を、3ヶ月よりも長い、例えば6、12、18、又は24ヶ月よりも長い可能性があるデバイスの公称保存寿命の間、防止する。任意選択的に、溶接は、薬物含有チャンバへのヘリウムの流入及び/又は薬物含有チャンバからの及び/又は推進剤含有チャンバからの又は両方のチャンバからのヘリウムの流出を低減又は防止し得る。溶接は、金属製ハウジングのリム間及び/又はハウジング及び金属製ダイヤフラムのリム間の溶接であることができ、溶接された金属はほぼ同様の熱膨張係数を有する。溶接は、例えば、鉄合金ハウジングのリム間、及び/又は鉄合金ハウジングのリムと鉄合金ダイヤフラムのリムの間であることができ、鋼溶接される鉄合金は、ステンレス鋼、例えばオーステナイト系ステンレス鋼で例示される。溶接方法は、例えば、アーク溶接、抵抗溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接であることができる。得られた溶接が多孔質である場合、これに高分子シーラント、例えばポリシロキサン含有シーラントを塗布することにより、気密シール性にすることができる。
【0204】
薬物含有流体を一定速度で連続的に口腔内に送達するための例示的な薬物送達デバイスが、
図1及び2に示されている。デバイスの構成要素は、推進剤ハウジング1及び薬物ハウジング3を含み、これらの両方は、チタン、鉄、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属、又はチタン、鉄、モリブデン、若しくはタングステンの合金、又はステンレス鋼などの鋼、特に304、308又は316Lステンレス鋼のような延性ステンレス鋼で作ることができる。推進剤ハウジング1及び薬物ハウジング3のそれぞれは、0.25mm~0.5mmの間(例えば、0.25mm~0.3mm、0.25mm~0.35mm、0.25mm~0.4mm、0.25mm~0.45mm、0.3mm~0.5mm、0.35mm~0.5mm、0.4mm~0.5mm又は0.45mm~0.5mm)の壁厚を有する。デバイスはまたダイヤフラム2を含み、これは金属製であり得る、又は金属層を含み得る。例えば、金属ダイヤフラム2は、アニールされた銀の箔、又はアニールされたオーステナイト系ステンレス鋼、例えば304、308又は316Lステンレス鋼の箔であり得る。金属箔ダイヤフラム2は、0.025mm~0.25mm厚(例えば、0.025mm~0.05mm、0.05mm~0.075mm、0.025mm~0.035mm、0.025mm~0.05mm、0.025mm~0.75mm、0.025mm~0.1mm、0.025mm~0.125mm、0.025mm~0.15、0.025mm~0.175mm、0.025mm~0.2mm、0.025~0.225mm)であり得る。
【0205】
セプタムアイレット4は、推進剤ハウジング1に挿入され、金属、典型的にはチタン又はチタン合金で作ることができる。セプタムアイレット4の厚さは、典型的には0.25mm~0.5mm(例えば、0.25mm~0.3mm、0.25mm~0.35mm、0.25mm~0.4mm、0.25mm~0.45mm、0.3mm~0.5mm、0.35mm~0.5mm、0.4mm~0.5mm又は0.45mm~0.5mm)である。セプタム5は、セプタムアイレット4に挿入することができ、任意選択的にニトリルゴムなどのゴムを含み得る。エラストマープラグ6は、薬物ハウジング3に挿入することができ、Viton(商標)プラグによって例示されるエラストマーフルオロポリマープラグであり得る。薬物送達デバイスは、1つ又は複数の(例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上)の流量制限器を含み得る。
図2は、異なる長さの2つの流量制限器7を含むデバイスの実施形態を示し、この場合、一方は他方より実質的に短い(例えば、一方の流量制限器は他方より薬物チャンバ内にさらに延在する)。流量制限器は、薬物含有流体のフラックスを調節し(例えば、投与速度を制御し)、送達チューブ9に接続されるカップリングアダプタ8に取り付けられる。2つ以上の流量制限器を含むデバイスにおいて、流量制限器は、同じ長さであっても、異なる長さであってもよく、同じ内径を有していても、異なる内径を有していてもよい。流量制限器は、金属、ガラス、又はプラスチックで作られてもよく、デバイスが2つ以上の流量制限器を含む実施形態では、流量制限器は、同じ材料で作られてもよく、異なる材料で作られてもよい。好ましくは、薬物送達デバイスが2つ以上の流量制限器を含む実施形態では、流量制限器のすべてが同じ材料で作られる。流量制限器は、低い水透過性を有し、化学的に不活性である任意のポリマーで作られ得る。いくつかの実施形態において、流量制限器は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド(ナイロン)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、又はポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性ポリマーから作られる。いくつかの実施形態において、流量制限器は、熱硬化性ポリマーで作られる。いくつかの実施形態において、流量制限器は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンフラノエート(PEF)などの熱可塑性ポリエステルで作られる。いくつかの実施形態において、流量制限器はPETで作られる。
図1は、遠位の長い流量制限器7a及びそのカップリングアダプタ8を示す。薬物送達デバイスが2つ以上の流量制限器を含む実施形態では、2つ以上の流量制限器を通るフラックス(例えば、流速又は投与速度)は、ほぼ同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、薬物送達デバイスが2つ以上の流量制限器を含む実施形態では、各流量制限器を通るフラックス(例えば、流速)は、ほぼ同じになるであろう。異なる長さの2つ以上の流量制限器(例えば、薬物チャンバの異なる領域に延在する異なる長さの2つの流量制限器)がデバイスに含まれる場合、各流量制限器は、薬物チャンバの異なる部分から薬物含有流体を送達することができる。デバイスが2つ以上の流量制限器(例えば、2つの流量制限器)を含む場合、流量制限器の長さは、各流量制限器が一端において薬物チャンバの異なる場所を目標(例えば、終端)とし、他端において送達チューブの屈曲部に延在しないようなものである。2つ以上の流量制限器の内径は、所望の流速を達成するように選択することができ、各流量制限器の内径は、薬物チャンバの異なる領域が異なる速度で空になることを防ぐために(例えば、2つ以上の流量制限器が終端する薬物チャンバの領域がほぼ同じ速度で空になるように)2つ以上の流量制限器間の流速ができるだけ密接に一致する(例えば、各流量制限器を通る流速はほぼ同一である)ようにサイズ設定することができる。ポンプは、薬物リザーバに流体的に接続された2つの流量制限器を含むことができ、この場合、第1の流量制限器は、6~12mm(例えば、6~11mm、6~10mm、6~9mm、6~8mm、6~7mm、7~11mm、7~10mm、7~9mm、又は7~8mm)の長さと0.0100~0.0120インチ(例えば、0.0115インチ)の内径を有し、第2の流量制限器は、14~24mm(例えば、16~22mm、16~20mm、16~18mm、16~17mm、17~22mm、17~20mm、17~22mm、18~20mm、又は18~22mm)の長さと0.0130~0.0145インチ(例えば、0.0130又は0.0135インチ)の内径を有する。本明細書に記載のデバイスで使用できる流量制限器の組の流量制限器寸法の例示的な組み合わせは、以下の表3に提供され、ここでIDは内径を意味する。
【0206】
【0207】
出口チューブとも呼ばれる送達チューブ9及び10は、0.5cm~5cmの長さ(例えば、0.5cm~1.0cm、0.5cm~1.5cm、0.5cm~2.0cm、0.5cm~2.5cm、0.5cm~3.0cm、0.5cm~3.5cm、0.5cm~4.0cm、0.5cm~4.5cm、1.0cm~5.0cm、1.5cm~5.0cm、2.0cm~5.0cm、2.5cm~5.0cm、3.0cm~5.0cm、3.5cm~5.0cm、4.0cm~5.0cm又は4.5cm~5.0cm)及び0.010インチ~0.08インチの内径(例えば、0.010インチ~0.075インチ、0.010インチ~0.070インチ、0.010インチ~0.065インチ、0.010インチ~0.060インチ、0.010インチ~0.055インチ、0.010インデックス~0.050インデックス、0.010インチ~0.045インチ、0.010インチ~0.040インチ、0.010インチ~0.035インチ、0.010インチ~0.030インチ、0.010インチ~0.025インチ、0.010インチ~0.020インチ、0.015インチ~0.080インチ、0.020インチ~0.080インチ、0.025インチ~0.080インチ、0.030インチ~0.080インチ、0.035インチ~0.080インチ、0.040インチ~0.080インチ、0.045インチ~0.080インチ、0.050インチ~0.080インチ、0.055インチ~0.080インチ、0.060インチ~0.080インチ、0.065インチ~0.080インチ、又は0.070インチ~0.080インチ)を有し得る。送達チューブは多層にすることができる。例えば、送達チューブは、積層されたPET/ポリウレタンチューブで作ることができる。典型的な送達チューブは、
図1及び2に示されている。出口チューブ9及び10は、外側の生体適合性ポリマー(例えば、生体組織と適合性があり、例えば、その材料は口腔粘膜の感受性又は刺激を引き起こさず、全身毒性又は細胞毒性を引き起こさない)及び出口チューブ内の流体医薬組成物からの水の実質的な損失、つまり乾燥を防止できる内側のポリマーを含み得る。チューブは、可逆的に圧縮可能であり、患者が噛んだ後、又は挟まれたりよじれたりした後に、ほぼ元の形状に戻ることができる。出口チューブは、柔軟で、発話を妨げることなく快適に装着でき、保管中の流体医薬組成物の押し出しを止めるためによじられたり押されたりした後にその内径を取り戻すことができる。送達チューブが噛まれたり、挟まれたり、よじれたり、又はその他の方法で圧縮された場合、薬物送達速度は、噛まれ、挟まれ、よじれ、又は圧縮が終わった後、10%未満(例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満)だけ変化し得る(例えば、例えば圧縮前の投与速度と比較した、送達チューブが圧縮から回復した後の投与速度)。多層送達チューブ、特に外側エラストマー層を含む多層送達チューブは、よじれた状態からより良く回復できることが判明した。
【0208】
送達チューブは、以下の2つの積層ポリマー層を含むことができる:典型的にはポリウレタン又は架橋ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート又は乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)などのエラストマー生体適合性ポリマーで作られた外層、及び水の透過を低減し薬物含有流体の成分(例えば、その水、油、及び界面活性剤)と適合性のある、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリマー性フッ化エチレンプロピレン(FEP)である、内側の機械的に強化されたポリマー層。いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、Pellethane(登録商標)などの熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。例示的な送達チューブは、
図1~4に示される。
図4は、送達チューブの断面図であり、以下の積層ポリマー層の眺めを示している:生体適合性及び弾性のために選択されたポリウレタン層であり得る外側ポリマー層14、及び、PET層であり得、半径方向の強度を与え、水の透過を低減する内側ポリマー層15。内側ポリマー層15は、油、水、界面活性剤などの薬物含有流体の成分にも適合性がある。外層14の厚さは、0.05mm~0.2mmの間(例えば、0.05mm~0.075mm、0.05mm~0.1mm、0.05mm~0.125mm、0.05mm~0.15mm、0.05mm~0.175mm、0.075mm~0.2mm、0.1mm~0.2mm、0.125mm~0.2mm、0.15mm~0.2mm、又は0.175mm~0.2mm)であり得、内層16の厚さは、0.025mm~0.075mmの間(例えば、0.025mm~0.05mm、又は0.05mm~0.075mm)であり得る。いくつかの実施形態において、送達チューブの外層(例えば、ポリウレタン層)の厚さは、0.005インチである。
【0209】
薬物送達デバイスは、デバイスに推進剤及び薬物含有流体(例えば、懸濁液、乳濁液、又はペースト)を装填するためのセプタ、すなわち、推進剤を推進剤チャンバに装填するための少なくとも1つのセプタム、及び薬物リザーバに薬物含有流体を充填するための少なくとも第2のセプタムを含み得る。これらのセプタはいずれも、生体適合性試験に加えて、FDA及びEU規格の抽出物及び溶出物試験に合格している。
図1及び2に示す例示的な薬物送達デバイスにおいて、セプタム5は、推進剤チャンバ(ダイヤフラム2と推進剤ハウジング1との間のチャンバ)に推進剤を充填するために使用することができ、エラストマープラグ6は、薬物チャンバ(ダイヤフラム2と薬物ハウジング3との間のチャンバに相当する薬物リザーバ)に薬物含有流体を充填した後、薬物チャンバをシールするために使用することができる。推進剤チャンバを充填するためのセプタムの構成要素が、
図23に示されている。これらには、推進剤ハウジング1に付着されるアイレット4と、エラストマーであり且つ圧縮可能なセプタム5とが含まれる。セプタム5の直径は、圧縮時に、例えば、0.063インチから0.052インチに縮小することができ、これによりアイレット4に圧入して気密シールを形成することができる。セプタム5を作るために使用されるエラストマー材料は、生体適合性(例えば、生体組織との適合性、例えば、その材料は口腔粘膜の感受性又は刺激を引き起こさず、全身毒性又は細胞毒性を引き起こさない)及び液体推進剤との適合性(例えば、推進剤と反応しない)の両方を有することができる。それは、例えば、ニトリルゴムであり得る。推進剤チャンバは、1,1,1,2-テトラフルオロエタンなどの推進剤を注入するための針でセプタム5を貫通することによって推進剤で充填することができる。針が引き抜かれると、エラストマープラグ(セプタム5)は推進剤コンパートメントを気密式にシールする。例えば、約100mgの1,1,1,2-テトラフルオロエタンを注入した後、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの蒸気圧が約5バールである約23±3℃でのその漏出は、24時間で0.2mgを超えて重量損失を引き起こさない可能性がある。プラグ(セプタム5)は、例えば、約0.085インチの長さであり得、わずかにより短いアイレットを越えて延在し得、それはフレアアウトし(例えば、セプタムはフレア状であってもよい)、推進剤チャンバ内の圧力下でその排出を防止する。
図24に実線の矢印で示されたアイレット4の切り込みは、推進剤注入針を案内することができ、この針は、ダイヤフラム2を貫通しないように斜めに挿入されることができる。アイレットに設けられた内部リブは、注入に対する抵抗を増大させることができる。
【0210】
エラストマープラグ6は、薬物含有流体で充填された後、薬物チャンバをシールするために使用することができる。薬物チャンバをシールするためのエラストマープラグの例示的な図面が、
図25に示されている。プラグの直径は約0.094インチであり得、その長さは約0.105インチであり得る。
図1及び2の薬物ハウジング3は、
図26の図面に示すように、薬物含有流体を充填するための例示的なポートを含むことができ、これは
図25の例示的なエラストマープラグでシールされ得る。エラストマープラグは、射出成形エラストマーであり得る。エラストマーは、生体適合性(例えば、生体組織との適合性、例えば、その材料は口腔粘膜の感受性又は刺激を引き起こさず、全身毒性又は細胞毒性を引き起こさない)、及び油、界面活性剤、及び水などの薬物含有流体のすべての成分との適合性(例えば、薬物含有流体の成分のいずれとも反応しない)の両方を有することができる。エラストマープラグは、例えば、Viton(商標)などのフルオロカーボンエラストマーで作ることができる。例示的な直径0.094インチのプラグは、チャンバが薬物含有流体(例えば、懸濁液、エマルジョン、又はペースト)で充填された後、ポートへのその押込みを可能にするために、約0.0715インチに圧縮することができる。約0.015インチのチャンバ壁厚と組み合わせて、栓で塞がれたポートは、約12バールの圧力を維持することができる。推進剤駆動式ポンプを含むデバイスで例示されているが、エラストマープラグは、薬物リザーバが薬物含有流体で充填された後、本明細書に記載の薬物送達デバイスのいずれかの薬物リザーバのシールに使用することができる。
【0211】
好ましい実施形態では、4時間以上(例えば、8時間、16時間、又は24時間以上)の期間にわたって送達速度が±20%未満(例えば、±15%未満、±10%未満、又は±5%未満)変動しながら、薬物含有流体の60%超(例えば、75%~85%、86%~95%、又は95%超)が分注され得る。
【0212】
典型的には、ハウジングの金属とダイヤフラムの金属を電気的に短絡させ、約23±3℃で約pH4の実質的に脱酸素された0.1Mクエン酸緩衝液に浸漬すると、3ヶ月後に剛性ハウジングの金属もダイヤフラムの金属も目に見えて腐食しないことがある。脱酸素された溶液は、窒素下に保たれた溶液であることができる。典型的には、ハウジングの金属とダイヤフラムの金属が電気的に短絡され、約23±3℃で約pH4.0の空気暴露された0.1Mクエン酸緩衝液に浸漬されている間、3ヶ月後に剛性ハウジングとダイヤフラムの金属のいずれも目に見えて腐食することはない。剛性ハウジングの金属の一方とダイヤフラムの金属の他方のほぼ等しい面積の電気的に短絡した2つの電極間を流れる電流の密度は、電極を23±3℃の実質的に脱酸素した約pH4の0.1Mクエン酸緩衝液に24時間以上浸漬したときに、0.5μAcm-2未満など2μAcm-2未満、例えば0.1μAcm-2未満となり得る。
【0213】
流量制限器(例えば、ノズル)を詰まらせることなく医薬組成物の所望の送達速度を得るために、医薬組成物の見かけの粘度及び粒度、蒸気圧、並びに流量制限器の直径及び長さが同時に制御される。表4は、本発明の口腔内薬物送達デバイス及び製剤に関する、これらの同時に制御されるパラメータの例示的な範囲を示す。
【0214】
【0215】
口腔内デバイスは、半固形の薬物含有組成物を連続的又は半連続的に口内に押し出すことができ、組成物は圧力下で変形する。それはまた、例えば、ばね、加圧ガス、又は推進剤を含む機械的ポンプを備えることができる。デバイスは、ノズル、チャネル、チューブ、又はその他の流れ又は押し出しを制限する構成要素などの流量制限器を備えることができる。ノズルを通る押し出し速度は、その内径、その長さ、及び液化推進剤の蒸気圧に依存し得る。
【0216】
口腔内デバイスは、0.001mL/時間~1.25mL/時間(例えば、0.015~1.25mL/時間)であり得る速度で口内に押し出される、半固形の変形可能な薬物を含むペーストを含み得る。ペースト、溶液又は懸濁液の粘度は、約37℃で100ポイズより大きく、50,000ポイズ未満であることができる。デバイスは、約37℃における蒸気圧が2バールより大きく50バール未満(例えば、3~10バール)である推進剤を含むことができる。薬物粒子及び/又は賦形剤粒子を含むペーストを口内に押し出す場合、光散乱によって(例えば、ペーストを液体非溶媒に分散させた後、Malvern Mastersizerを使用して)測定した粒度分布は、200μm未満のD90及び約0.5μmと約30μmの間のD50を有することができる。
【0217】
典型的なデバイスは、0.03mL/時間~0.5mL/時間の間であり得る速度で口内に押し出されるか注入される、粘性の薬物含有ペースト、又は粘性の経口注入される薬物含有溶液、又は粘性の経口注入される薬物含有懸濁液を含み得る。ペースト、溶液又は懸濁液の典型的な粘度は、約37℃で200ポイズより大きく100,000ポイズ未満であり、その押出速度又は流速は、0.1mm~0.7mmの間の内径を有し、1cm~5cmの間の長さであり得る流量制限器(例えば、ノズル)により主に制御することができ、その典型的なデバイスはまた、機械的ポンプを備えることができる。半剛性の変形可能な薬物含有ペーストは、0.001mL/時間~1.25mL/時間の間の押出速度で投与することができ、ペーストは、低せん断速度で2,000ポイズより大きく50,000ポイズ未満の粘度を有することができ、押出速度又は流速は主に流量制限器又は流量制限器の対により制御することができ、押出又は注入は、機械的ポンプにより駆動可能である。機械的ポンプは推進剤を含むことができ、推進剤は約37℃における蒸気圧が2バールより大きく50バール未満であることができる。ペースト又は懸濁液又は溶液は、粒度分布が(非溶媒中に分散され、光散乱によって測定されたとき)200μm未満のD90及び0.1μm~50μmの間のD50を有することができる固体薬物及び/又は賦形剤粒子を含むことができる。
【0218】
本明細書に記載の薬物送達デバイスのいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016-0278899A1号明細書及び同第2017-0172961A1号明細書に記載の薬物リザーバを含むことができる。
【0219】
送達チューブ
本発明の薬物送達デバイスは、デバイス内(例えば、薬物リザーバ内)に含まれる薬物含有流体を、薬物リザーバに流体的に接続されている送達チューブを介して口内に放出する。送達チューブは、0.5cm~5cmの長さ(例えば、0.5cm~1.0cm、0.5cm~1.5cm、0.5cm~2.0cm、0.5cm~2.5cm、0.5cm~3.0cm、0.5cm~3.5cm、0.5cm~4.0cm、0.5cm~4.5cm、1.0cm~5.0cm、1.5cm~5.0cm、2.0cm~5.0cm、2.5cm~5.0cm、3.0cm~5.0cm、3.5cm~5.0cm、4.0cm~5.0cm又は4.5cm~5.0cm)及び0.010インチ~0.08インチの内径(例えば、0.010インチ~0.075インチ、0.010インチ~0.070インチ、0.010インチ~0.065インチ、0.010インチ~0.060インチ、0.010インチ~0.055インチ、0.010インチ~0.050インチ、0.010インチ~0.045インチ、0.010インチ~0.040インチ、0.010インチ~0.035インチ、0.010インチ~0.030インチ、0.010インチ~0.025インチ、0.010インチ~0.020インチ、0.015インチ~0.080インチ、0.020インチ~0.080インチ、0.025インチ~0.080インチ、0.030インチ~0.080インチ、0.035インチ~0.080インチ、0.040インチ~0.080インチ、0.045インチ~0.080インチ、0.050インチ~0.080インチ、0.055インチ~0.080インチ、0.060インチ~0.080インチ、0.065インチ~0.080インチ、又は0.070インチ~0.080インチ)を有し得る。送達チューブは多層にすることができる。例えば、送達チューブは、積層されたPET/ポリウレタンチューブで作ることができる。典型的な送達チューブは、
図1及び2に示されている。チューブは、発話を妨げないように口の中に成形され配置される。薬物送達デバイスが頬ポケットに位置し、本明細書では薬物リザーバとも呼ばれる薬物チャンバ内に薬物を含む流体医薬組成物(例えば、懸濁液、乳濁液、又はペースト)を含む場合、薬物含有流体は、出口チューブを通して歯の舌側で唾液の出る口腔内に押し出され、頬ポケット又は近くの頬領域での薬物含有流体の蓄積を回避する。送達チューブは、薬物含有流体の成分が、保管中(例えば、使用前の保存期間中)、チューブに吸収されることも、チューブの壁を通して拡散することもないように設計されている。送達チューブの壁は、流体医薬組成物が出口チューブ内にあるときに、流体医薬組成物から相当量の水が失われること、及び乾燥することを防止することができる。チューブは、可逆的に圧縮可能であり、患者が噛んだ後、又は挟まれたりよじれたりした後(例えば、挿入中又は使用中に患者によって挟まれたりよじれたりした後)、ほぼ元の形状に戻ることができる。また、チューブは、後述するように、保管ケースに保管する際に圧縮することができる。出口チューブは、柔軟性があり、発話を妨げることなく快適に装着でき、保管中に流体医薬組成物の押し出しを止めるためによじられたり押されたりした後にその内径又は十分に大きな内径を取り戻すことが可能である。送達チューブが噛まれたり、挟まれたり、よじられたり、その他の方法で圧縮された場合、薬物送達速度は、噛まれ、挟まれ、よじれ、又は圧縮が終わった後、10%未満(例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満)だけ変化し得る(例えば、送達チューブが圧縮から回復した後の流速は圧縮前の流速に比べて著しく低下しない)。多層送達チューブ、特に外側エラストマー層を含む多層送達チューブは、よじれた状態からより良好に回復できることが判明した。
【0220】
送達チューブは、以下の2つの積層ポリマー層を含むことができる:典型的にはポリウレタン又は架橋ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート又は乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)などのエラストマー生体適合性ポリマーで作られた外層、及び水の透過を低減し薬物含有流体の成分(例えば、その水、油、及び界面活性剤)と適合性のある、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリマー性フッ化エチレンプロピレン(FEP)である、内側の機械的に強化されたポリマー層。いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、Pellethane(登録商標)などの熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。例示的な送達チューブは、
図1~4に示される。
図4は、送達チューブの断面図であり、積層ポリマー層:外側ポリマー層14及び内側ポリマー層15の眺めを示している。外側ポリマー層は、生体適合性及び弾性のために選択され、内側ポリマー層は、半径方向の強度を提供し、水の透過を低減するように意図されている。内側ポリマー層はまた、油、水、界面活性剤などの薬物含有流体の成分にも適合性があり得る。いくつかの実施形態において、外側ポリマー層はポリウレタン層であり、内側ポリマー層はPETである。外層の厚さは、0.05mm~0.2mmの間(例えば、0.05mm~0.075mm、0.05mm~0.1mm、0.05mm~0.125mm、0.05mm~0.15mm、0.05mm~0.175mm、0.075mm~0.2mm、0.1mm~0.2mm、0.125mm~0.2mm、0.15mm~0.2mm、又は0.175mm~0.2mm)であり得、内層の厚さは、0.025mm~0.075mmの間(例えば、0.025mm~0.05mm、又は0.05mm~0.075mm)であり得る。いくつかの実施形態において、送達チューブの外層(例えば、ポリウレタン層)の厚さは、0.005インチである。本明細書に記載の多層可逆圧縮性送達チューブは、デバイスに含まれるポンプのタイプにかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016-0278899A1号明細書及び同第2017-0172961A1号明細書に記載の薬物送達デバイスを含む、任意の薬物送達デバイスに含めることができる。
【0221】
デバイスの強化
溶接が困難な場合、例えば、溶接される金属部品の熱膨張係数が著しく不一致であるため、又は溶接部のアニールの条件の結果として生じ得る脆化のため、又は、格子欠陥及び相変化の結果としての溶接部の過度の腐食のため、溶接が困難な場合、構成要素は接着剤を使用してジョイントすることができる。薬物送達デバイスの構成要素(例えば、薬物リザーバ及び/又はポンプのハウジングを構成する構成要素、任意選択的にダイヤフラムを含む)は、接着剤を使用して一緒にジョイントすることができる。接着剤を使用してデバイスの構成要素をジョイントする実施形態では、デバイスの構成要素は、接着剤で接合された領域を増加させ、それによってデバイスの接着接合を強化する段差などの特徴を有するリム(例えば、フランジ)を含むことができる。このアプローチは、デバイスのサイズもデバイスが口内で必要とするスペースの量も増加させることなく、接着表面積を増加させることができる。例えば、
図1及び2に示すように、推進剤チャンバ及び薬物チャンバを有する推進剤駆動式ポンプを含む薬物送達デバイスの実施形態では、推進剤ハウジング1及び薬物ハウジング3はそれぞれ、
図17に示すように、段差などの特徴を有するリムを有して、接着接合面積を増加させることができる。接着接合面積の増加は、推進剤チャンバ内の圧力に関連し、
図1及び2のダイヤフラム2によって、薬物含有流体を含む薬物チャンバに伝達される力にさらされる接着接合の破壊を防止し得る。デバイスが体温下に口の中にあるとき、絶対圧力は8バールから12バールの間であり得、海抜での7バールから11バールの間の圧力差に対応する。デバイスを強化するために、アクリレートタイプ、ガムタイプ、エポキシタイプ、又はシーラントなど、様々な接着剤を使用することができる。アクリレートタイプの接着剤は、アクリル酸ポリマー及びそのエチル又はメチルエステル及びそれらのコポリマー、メタクリル酸及びそのエチル又はメチルエステル及びそれらのコポリマー、又は高分子2-エチルヘキシルアクリレート及びそのコポリマーなどを含み得る。エポキシ接着剤は、2つの成分を含み得、一方は2つ以上のエポキシド官能基を有する化合物を含み、他方は2つ以上のアミン官能基を有する化合物を含む。いくつかの実施形態において、使用される接着剤は、2液性接着剤エポキシである。硬化したエポキシ接着剤は、推進剤、及び水、油、界面活性剤などの薬物含有流体の成分の両方と適合性があり得る。接着剤(例えば、エポキシ接着剤)はまた、生体適合性であり得る(例えば、生体組織と適合性がある、例えば、接着剤は口腔粘膜の感受性又は刺激を引き起こさず、全身毒性又は細胞毒性を引き起こさない)。金属製であってもよい
図1及び2の接着された嵌合部品である推進剤ハウジング1及び薬物ハウジング3は、ダイヤフラム2を挟むことができる。両ハウジングの嵌合フランジ特徴は、
図17の中空矢印で示される、接着剤で埋めることができる隙間を提供することができる。隙間を接着剤で隙間を埋めることで、デバイスを気密式にシールすることができる。
図1及び2に示すポンプなどの推進剤駆動式ポンプでは、薬物送達デバイスを気密にシールすることにより、推進剤及び薬物含有流体が高圧下でそれぞれのチャンバから漏出するのを防止することができる。接着剤によって以下の3つの継ぎ目をシールすることができる:推進剤ハウジング1と薬物ハウジング3との間の継ぎ目、推進剤ハウジング1とダイヤフラム2との間の継ぎ目、及び薬物ハウジング3とダイヤフラム2との間の継ぎ目。
図18は、
図1及び2の推進剤ハウジング1などの推進剤ハウジングにおける接着接合を強化するためのフランジ(リム)及びその段差の典型的な寸法を示す。
図19は、
図1及び2の薬物ハウジング3などの薬物ハウジングにおける接着接合を強化するためのフランジ(リム)及びその段差の典型的な寸法を示す。
【0222】
薬物送達デバイスは、圧着可能なタブをデバイスのハウジングに(例えば、金属製ハウジングに)組み込むことによっても強化することができる。組み立て中にタブを圧着することにより、強度、安全性、及び接着剤の硬化中及び硬化後の完全性を保証することができる。また、圧着は接着接合の強度を高め、接着不良が発生した場合にポンプを一緒に保持する追加の安全機能として機能することができる。圧着可能なタブは、上述したように、構成要素が接着剤を用いてジョイントされる薬物送達デバイス、又は構成要素が他の手段を用いてジョイントされる薬物送達デバイスに含めることができる。2つのハウジング(例えば、薬物チャンバ用のハウジングと推進剤チャンバ用のハウジング)を含む薬物送達デバイスでは、圧着可能なタブは、2つのハウジングのうちの1つに含まれる。一例として、
図1及び2の薬物ハウジング3は、組み立て中に圧着可能なタブを含むことができる。
図20及び21はそれぞれ、タブが圧着された組み立てられた薬物送達デバイスを示す。
図22は、圧着可能なタブの例示的な寸法を示す一組の工学図面である。
【0223】
薬物送達デバイスの使用前の薬物含有流体の押し出しの防止
薬物送達デバイスは、製造後、使用前に保管することができる。この間、取り外し可能なプラグを送達チューブ内又は送達チューブの端部に位置決めして、送達チューブを気密式にシールし、使用前の薬物含有流体(例えば、懸濁液、乳剤、又はペースト)の押し出しを防止することができる。薬物送達チューブが気密式にシールされていない場合、薬物含有流体は送達チューブから漏れ出し、送達チューブ-取り外し可能なプラグの界面に沿って上昇する可能性がある。その結果、水分が失われ、薬物送達デバイスの使用時の流速が変化し、又は送達チューブ内の薬物含有流体が乾燥し、目詰まりを起こす可能性がある。送達チューブを気密式にシールする取り外し可能なプラグを使用することで、これらの潜在的な問題を最小限に抑えることができる。取り外し可能なプラグ(例えば、細長い複合プラグ)は、薬物含有流体(例えば、ペースト)が送達チューブのプラグで塞がれた部分へ侵入することを防止し、水が透過する薬物含有流体接触表面積の面積を減らし、近位の薬物含有流体の最終的な乾燥を遅らせ、これは、薬物含有流体の乾燥は(例えば、薬物送達デバイスが使用中の場合)流体(例えばペースト)押し出しの速度を減じるので有益である。そのプラグで塞がれたゾーンを含む送達チューブの一部の被覆は、水蒸気の流出をさらに低減する。細長いプラグは、さらに、デバイスの使用前に患者又は介護者によるその取り外しを容易にするように設計することができる。取り外し可能なプラグは、送達チューブから取り外しにくい場合があるので、取り外し可能なプラグを熱収縮チューブ(例えば、取り外し可能なプラグ上に熱収縮され、送達チューブから離れる方に取り外し可能なプラグを越えて延在し、把持するチューブの長さを提供するチューブ)に包んで、取り外しやすくすることができる。取り外し可能なプラグは、ロッド(例えば、長いロッド)の形態であってもよく、ロッドは、エラストマーポリマーで作られていてもよい。プラグの材料、例えばロッドのポリマーは、薬物含有流体の成分、例えば水、油、及び界面活性剤と適合性があり得る。いくつかの実施形態において、取り外し可能なプラグは、Viton(商標)ロッドなどのエラストマーフルオロポリマーロッドである。取り外し可能なプラグに適した追加の材料としては、パーフルオロエラストマー(FFKM)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM)、ポリブタジエン(BR)、ポリクロロプレン(CR)、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム、(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、及びエチレンビニルアセテートゴム(EVA)などの高分子エラストマーが挙げられる。エラストマーポリマーは、任意選択的に、カーボンブラック又はアモルファス(非晶質)シリカなどの非毒性フィラーで充填されることができる。取り外し可能なプラグが熱収縮チューブによって包まれる実施形態では、チューブは、熱収縮性、生体適合性(例えば、生体組織と適合性があり、例えば、材料は口腔粘膜の感受性又は刺激を引き起こさず、全身毒性又は細胞毒性を引き起こさない)、及び化学的に不活性の材料、例えばフッ化エチレンプロピレン(FEP)で作られてもよい。取り外し可能なプラグ(例えば、エラストマーポリマーロッド)及び送達チューブの一部又は全部(例えば、取り外し可能なプラグを含む送達チューブの一部又は送達チューブの全長)の両方は、ポリマーシースで被覆することができる。取り外し可能なプラグが熱収縮チューブによって包まれている実施形態では、ポリマーシースは、取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブのアセンブリも覆う。ポリマーシースは、水の透過(例えば、送達チューブの壁を通る水の透過)を遅らせる役割を果たし、薬物送達チューブ内の薬物含有流体が乾燥するのを防止することができる。さらに、ポリマーシースは、酸素の透過(例えば、送達チューブの壁を通る酸素の透過)を遅らせることができる。ポリマーシースはまた、熱収縮性、生体適合性、及び化学的に不活性な材料で作ることができ、疎水性及び低酸素透過性を提供することができる。ポリマーシース(例えば、水の透過を遅らせるポリマーシース)は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)のシースなどのフルオロポリマーシースとすることができ、これは送達チューブの壁を通る水の損失を減らすのに役立つ。その低い水透過率のために、FEPシースは、長期保存中の送達チューブ内の薬物含有流体の乾燥を防止又は低減することができる。ポリマーシース(例えば、FEPシース)は、取り外し可能なプラグ(例えば、エラストマーポリマーロッド、取り外し可能なプラグが熱収縮チューブによって包まれている場合には、取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリを含む)及び送達チューブの一部又は全部の上に熱収縮されることができ、プラグを通り越して(例えば、プラグを通り越して、又は取り外し可能なプラグが熱収縮チューブによって包まれている場合には取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリを通り越して)送達チューブの中に延在し、それによって送達チューブと取り外し可能なプラグの間の機械的シールを維持することができる。ポリマーシースは、取り外し可能なプラグを越えて(例えば、エラストマーポリマーロッド、又は取り外し可能なプラグが熱収縮チューブに包まれている場合、取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリを越えて)両方向に延在することができる、つまり、シースの尾部は、送達チューブと反対の方向に取り外し可能なプラグ(又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ)を越えて延在することができ、シースの頭部は、プラグが延在しない送達チューブの全部又は一部を覆うように取り外し可能なプラグ(又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ)を越えて延在することができる。いくつかの実施形態において、シースの尾部は、取り外し可能なプラグ(又は、取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ)を越えて延在する。いくつかの実施形態において、シースの頭部及び尾部の両方は、取り外し可能なプラグ(又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ)を越えて延在する。いくつかの実施形態において、ポリマーシースは、送達チューブの全長及び取り外し可能なプラグ(又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリ、例えば、送達チューブの全長にわたって疎水性及び低酸素透過性を提供するために)全体を覆う。いくつかの実施形態において、ポリマーシースは、送達チューブの全長及び取り外し可能なプラグ全体を覆い、送達チューブと反対の方向に取り外し可能なプラグを越えて延在する(例えば、ポリマーシースの尾部は、取り外し可能なプラグを送達チューブ内に維持するために追加の保持力を加えるために、取り外し可能なプラグ又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリを越えて延在する)。ポリマーシースの尾部はスリットを含むことができ、そのスリットテールを引き離すことによって、シースを剥がす(例えば、取り外し可能なプラグ及び送達チューブから取り外す)ことができる。シースが剥がされた後、取り外し可能なプラグ又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリの一部が露出する(例えば、取り外し可能なプラグ又は取り外し可能なプラグ/熱収縮チューブアセンブリの、送達チューブの端部を越えて延在する部分)。その後、取り外し可能なプラグを送達チューブから引き抜いて(例えば、熱収縮チューブを引っ張ることによって)、薬物含有流体の流れを開始させることができる。ポリマーシースの例示的な寸法には、約105mmの長さ、約0.114インチの内径、及び約0.008インチの厚さが含まれる。
【0224】
取り外し可能なプラグは、
図1、3A~3B、5、6A~6B、及び7A~7Bに例示されている。
図1の薬物送達デバイスでは、取り外し可能なプラグ12を送達チューブ9及び10に挿入して、送達チューブをシールし、薬物含有流体の流れを停止又は阻止することができる(例えば、使用前)。取り外し可能なプラグ12は、熱収縮チューブ13によって包むことができる。取り外し可能なプラグ、熱収縮チューブ、及び送達チューブの全部又は一部は、FEPシースなどの熱収縮ポリマーシースで被覆されることができる。
図1の取り外し可能なプラグ12及び送達チューブ9及び10は、ポリマーシースで被覆することができ、これにより水蒸気の透過が遅くなり、送達チューブ9及び10内の薬物含有流体の乾燥が防止される。例えば、
図1は、送達チューブ9及び10の全長、取り外し可能なプラグ12、及び熱収縮チューブ13がポリマーシース11によって被覆された実施形態を示す。例示的な保管されたアセンブリの一部の断面図が
図5に示されている。
図5は、送達チューブに挿入され、熱収縮チューブで包まれ、取り外し可能なプラグを越えて延在するポリマーシースで包まれている取り外し可能なプラグを示す。シースのスリットテールは、
図5の右側に示されている。
図6A~6Dに示すように、シースのスリットテールを引き離して、シースの剥離を容易にし、デバイスを患者の口に挿入する前に取り外し可能なプラグにアクセスして取り外すことができるようにすることができる。
図6A~6Dにおいて、取り外し可能なプラグは熱収縮チューブに包まれており、ポリマーシースは、取り外し可能なプラグ、熱収縮チューブ、及び送達チューブの全長を包み込んでいる。ポリマーシースの全体が取り除かれる。
図7A~7Bは、熱収縮チューブに包まれた取り外し可能なプラグが、薬物含有流体の流れを開始するために送達チューブから取り外される方法を示す。
【0225】
取り外し可能なプラグ、熱収縮チューブ、及び/又はシースは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第第2016-0278899A1号明細書及び同第2017-0172961A1号明細書に記載のポンプを含めて、デバイスに含まれるポンプのタイプにかかわらず、本明細書に記載の多層可逆圧縮性送達チューブを含む任意の薬物送達デバイスと共に使用することができる。
【0226】
薬物送達デバイスの使用中の薬物含有流体の押し出しの一時停止
本明細書に記載の薬物送達デバイスを使用する患者は、食事中や歯磨き中など、使用中にデバイス(例えば、留め具取り付け型薬物送達デバイス)を口から取り出すことを望む場合がある。デバイスが口から取り出されると、薬物含有流体の押し出しが一時的に停止され得る。薬物含有流体の押し出しが一時停止されない場合、薬物含有流体は留め具(例えば、保持具)上に押し出され続け、実際の用量に関する混乱及び留め具(押し出されたペーストで覆われている)が口内に再挿入されたときの大量瞬時投与の送達の可能性につながる可能性がある。
【0227】
一実施形態では、薬物含有流体の押し出しは、保管ケースを使用して一時停止することができる。保管ケースは、薬物送達デバイスが留め具から分離されているときに薬物送達デバイスを保管するために使用することができ、又は薬物送達デバイスが留め具(例えば、保持具)に装着されているか、又は取り付けられている間に薬物送達デバイスを保管するために使用することができる。保管ケースは、保管ケースが閉じられたときに、ケースの構成要素が薬物送達デバイスの送達チューブを挟むか、又はよじり、それによって薬物含有流体の押し出しを停止するように構成されている。したがって、留め具取り付け型(例えば、保持具取り付け型)の薬物送達デバイスなどの薬物送達デバイスを保管ケースに入れ、ケースを閉じる(例えば、ケースの蓋を閉める)ことにより、患者は薬物含有流体の押し出しを一時停止することができる。保管ケースを閉じると薬物含有流体の押し出しが停止し、ケースを開ける(例えば、保管ケースの蓋を持ち上げる)と薬物含有流体の流れが再開される。ケースを閉じたときに交わる(例えば、一緒になる)ケース内の対向する構成要素(例えば、ケースの対向する内面上の構成要素)は、薬物送達チューブを挟むか又はよじるために使用することができる。保管ケースが閉じられたときに送達チューブを挟む又はよじるための例示的な機構は、ピン(例えば、金属ピン)及びエラストマーパッドを含む。送達チューブは、エラストマーパッド上に位置決めすることができ、金属ピンは、保管ケースが閉じられたときに、送達チューブをエラストマーパッド上で圧縮し、チューブが挟まれる又はよじられる間にエラストマーパッドをへこませることができる。
【0228】
保管ケースは、水による拭き取りとすすぎによって洗浄できる材料で、任意選択的に、微生物の増殖を防止する、又は助長しない材料で作ることができる。患者、又は介護者は、ケースを洗浄又は滅菌するための指示書を提供されることができる。任意選択的に、ケースは、320nmに等しいかそれより短い波長、例えば260nm~320nmの間、又は275nm~290nmの間の波長で発光する紫外線光源など、微生物の成長を低減又は排除する紫外線光源を含むことができる。光源は、1つ又は複数の発光ダイオードを含むことができ、ケースは、光源に電力を供給するための、リチウム含有バッテリなどのバッテリを含むことができる。任意選択的に、ケースの表面(例えば、ケースの内面)は、銀粒子又は銀化合物を含み、殺菌活性をより長い波長、例えば300nm~450nm、例えば400~450nm、350~400nm、又は300~400nmの間の範囲の波長に拡張することができる。
【0229】
保管ケースは、ケース内で薬物送達デバイス及び/又は留め具(例えば、薬物送達デバイスが取り付けられる保持器などの留め具)を位置合わせする1つ又は複数の構成要素も含むことができ、患者の保持器の右側又は左側に取り付けられた薬物送達デバイスを収容するように構成されることができる。薬物送達デバイスの位置合わせに使用できる例示的な構成要素は、
図27に示す保管ケース内に矢印で示されるホルダである。ホルダは、薬物送達デバイスが保持具に取り付けられたときに薬物送達デバイスの位置合わせに使用することができ、保管ケースが閉じられたときに挟まれたりよじれたりしないように送達チューブを適切に位置決めすることができる。
【0230】
例示的な保管ケースは、
図27及び28に示されている。このケースは、ケースが閉じられたときに薬物送達デバイスの送達チューブが挟まれ、デバイスからの薬物含有流体の押し出しを停止するように、保持具を薬物送達デバイス(例えば、保持具取り付け型薬物送達デバイス)と共に保持するように構成される。ケースから取り出すと、送達チューブはもはや挟まれず、薬物含有流体の押し出しが再開される。保管ケースの対向する内面にある、保管ケースが閉じられたときに送達チューブを挟んだり、よじったりする構成要素は、
図28に矢印で示されている(「流れ遮断機構」と記載)。また、保管ケースは、患者又は介護者が正しい向きで薬物送達デバイスを挿入するように指示するために、ケースの底部内面に薬物デバイスの写真を含む。
図29は、保管ケース内の保持器及び薬物送達デバイスの位置を例示し、
図30A~30Cは、薬物送達デバイスが保持器に挿入される方法を含む、薬物送達デバイスが保管ケースに挿入される方法を示す。
図31は、ケースが閉じられたときの送達チューブのよじれ又は挟み込みの概略図を提供する。薬物送達デバイスが保管容器に挿入され、薬物の押し出しを一時停止するためにケースが閉じられると、室温で最大5時間まで保存することができる。
【0231】
薬物含有流体の押し出しを一時的に停止するために使用できる保管ケースは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016-0278899A1号明細書及び同第2017-0172961A1号明細書に記載のポンプを含めて、デバイスに含まれるポンプのタイプにかかわらず、本明細書に記載の多層可逆圧縮性送達チューブを含む任意の薬物送達デバイスと共に使用することができる。
【0232】
薬物送達デバイスの長期保存のための包装
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、窒素、アルゴン、又は二酸化炭素雰囲気などの実質的に酸素を含まない雰囲気を有する気密式にシールされたパウチ内で、約10℃~約-2℃の間の温度、例えば5℃~8℃の間の温度で少なくとも6カ月間保管することができる。パウチ壁は、金属フィルムと、金属化ポリマーなどのポリマーとのラミネートを含むことができる。包装は、デバイスへの酸素の拡散を最小限に抑えるために使用することができる。任意選択的に、シールされたパウチは、多孔質紙やガーゼなどの加湿多孔質インサートを含むことができ、インサートは水、又は水性溶液で濡らされ、溶液は特定の温度で純水よりも低い水蒸気圧を有し、それによりパウチ内の相対湿度をほぼ100%、しかしそれ未満に維持することができる。
【0233】
薬物製剤
薬物送達デバイスを介して送達される薬物(LD、LDプロドラッグ、DDC阻害剤、及び本明細書に記載の任意の他の薬物など)の製剤は、水などの非毒性の水性又は非水性キャリア液体、及び植物油、脂質、トリグリセリド、パラフィン油などの食用油、及びそれらの混合物を含み得る。送達可能な製剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017-0172961A1号明細書に記載のものが含まれる。
【実施例】
【0234】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。これらは、本発明をいかなる形でも限定することを意味しない。
【0235】
実施例1.連続的経口レボドパの研究
DopaFuse送達システムは、PD患者のために制御された速度でLD/CDを連続的に送達する、新規の口腔内システムである。DopaFuseシステムは、口腔内保持具、そのケース、及び治験薬であるLD/CDペーストを口の奥で連続的に放出する単回使用型の薬物送達デバイスから構成される。
【0236】
DopaFuse送達システムは、外科的処置(例えば十二指腸注入)やそれに伴う副作用を必要とせずにLD/CDを連続的に送達するという利点を提供するために開発された。DopaFuseは、歯に装着される保持具に固定され、LD/CDペーストを一定の速度で放出する容器を介して連続的な経口レボドパを提供する。連続的経口レボドパ治療法(5~10分間隔で経口LD/CD懸濁液を少しずつ使用)の概念実証試験において、連続的経口レボドパ治療法は高い耐用性を示し、血漿レボドパ変動及びオフタイムが標準的な経口LD/CD錠剤と比較して著しく減少することが実証された。次のステップとして、本試験は、本システムの薬物動態、安全性、有効性及び耐用性を評価するように設計された。
【0237】
本試験の目的は、参加者の標準的な間欠投与の経口LD/CD錠剤(バックグラウンド治療)と比較して、DopaFuseシステムが血漿レボドパレベルの変動を低減できるかどうかを評価することである。また、本システムが安全で耐用性が高く、運動症状を緩和できるかどうかも評価される。
【0238】
参加者
合計24名と推定される参加者を確保するために約30~35名の参加者をスクリーニングする。患者はパーキンソン病を患い、安定したLD/CD治療を受けており、1日2時間以上のオフタイムを経験している。患者はCOMT阻害剤の服用を中止することを要請される。
【0239】
投薬
DopaFuseは、微粉末化されたレボドパ及びカルビドパの懸濁粒子を含む経口ペーストである。2種類の注入速度:(i)1時間あたり50mgLD/13mgCD、及び(ii)1時間あたり68mgLD/17mgCDで投与される。治療レジメンは、参加者の通常の投薬量及び投薬時間に密接に沿うように個別に設定される。15日間のアクティブな試験期間中、各参加者はDopaFuse治療を3日間入院観察の下で受け、11日間在宅使用により受ける。1日目、参加者は通常の経口即時放出型LD/CDレジメンに従う。2日目、参加者はDopaFuseを単独で受ける。3日目から15日目、参加者は通常通り午前中の早い時間にLD/CDの投薬を受け、その後、1日の残りの時間、連続的DopaFuseを受ける。試験の概要は表5に示すとおりである。
【0240】
【0241】
DopaFuse送達システム
参加者には、再使用可能なカスタムメイドの歯科用保持具とその保管ケース、及び上記のLD/CDペースト(LD:CDが4:1の割合)がプレフィルドされた単回使用型の薬物送達デバイスが与えられる。保持具は、Essix(登録商標)PLUS(商標)と呼ばれる歯科用熱成形材料で作られた再使用可能なカスタムメイドの熱成形保持具である。保持具は、単回使用型の薬物送達デバイスを保持するために片側に成形されたポケットを有し、薬物送達デバイスを第1大臼歯又は第2大臼歯の咬合面と同一平面上で上顎臼歯の頬側に位置決めする。保持具は小臼歯と大臼歯の上に装着されるが、薬物送達デバイスは第1及び第2大臼歯のみにまたがり、薬物送達デバイスの送達チューブが参加者の最後部の大臼歯に巻き付くようにポケット内に位置決めされる。保持具は、
図10及び12に示されている。
図13A~13C及び14は、容器が保持具ポケットに挿入され、そこから取り外される方法と、薬物送達デバイスを含む保持具が口の中に挿入される方法を示す。
【0242】
薬物送達デバイスは、
図9及び21に示すように構成された使い捨てのプレフィルド式単回使用容器である。薬物送達デバイスは、変形可能な金属ダイヤフラムによって分離された推進剤チャンバ及び薬物チャンバを含む。推進剤チャンバと薬物チャンバはチタン製ハウジングを有し、2液性接着剤エポキシ(LOCTITE(登録商標))を用いて気密式にシールされている。接着接合は、各ハウジングのリムに含まれ接着接合面積を増加させる段差によって強化される(
図17~19参照)。薬物送達デバイスは、ハウジングの圧着可能なタブの使用によりさらに強化される(
図20及び21を参照)。LD/CDペーストは、可逆的に圧縮可能な多層の送達チューブに押し出される前に、表3に記載されているような異なる長さの2つの流量制限器を通って薬物送達デバイスを出る。この送達チューブは、外側のポリウレタン層と内側のPET層の2つの積層されたポリマー層を含み、患者が噛んだ後、又は挟まれたり、よじられたりした後に、ほぼ元の形状に戻ることができる。また、送達チューブが噛まれたり、挟まれたり、よじられたり、又は別の方法で圧縮された場合、薬物送達速度は、噛まれ、挟まれ、よじられ、又は圧縮の終了後、10%未満だけ変化する。推進剤チャンバはニトリルゴム製のセプタムで気密式にシールされ、薬物チャンバはエラストマー製のViton(商標)プラグを用いて気密式にシールされる。使用前に、送達チューブは取り外し可能なViton(商標)プラグで気密式にシールされ、取り外し可能なViton(商標)プラグはFEP熱収縮チューブで包まれ、取り外し可能なプラグ、熱収縮チューブ、薬物送達チューブはFEPシースで包まれる。取り外し可能なプラグは、薬物送達デバイスの使用前にLD/CDペーストが押し出されるのを防ぎ、FEP熱収縮チューブは、デバイスが患者の口に挿入される前に取り外し可能なプラグを送達チューブから取り外しやすくし、FEPシースは、長期保管中、送達チューブ内のLD/CDペーストの乾燥を防止又は低減し、送達チューブと取り外し可能なプラグの間の機械的シールを維持することができる。FEPシースは、
図6A~6D及び
図7A~7Bに示すように、そのスリットテールを引き離して剥がすことができ、熱収縮チューブを用いて取り外し可能なプラグを送達チューブから引き抜いてLD/CDペーストの流れを開始させることができる。その後、薬物送達デバイスを保持具のポケットに押し込み、保持具を口腔内に挿入して使用することができる(
図8~10、13A~13B、及び14A~14Bを参照)。薬物送達デバイスは、保管中に冷蔵(2~8℃)されなければならない実質的に酸素を含まない雰囲気のホイルパウチ内にシールされた非滅菌プラスチックトレイに包装されている。薬物送達デバイスに含まれるLD/CDペーストの組成は、以下の表5に示されている。
【0243】
【0244】
参加者には、保持具と薬物送達デバイスの保管ケースも提供される。DopaFuseケースは、保管中に保持具を物理的に保護するように機能し、保持具取り付け型薬物送達デバイスをケースに入れ、ケースを閉じると薬物送達デバイスからのLD/CDペーストの流れを一時停止する機構を備えている。保管ケースを開けて保持具/薬物容器を取り出すと、ペーストの流れが再開される。食事中や歯磨き中など、保持具/薬物容器を口から取り出した際に、保管ケースを使用して送達チューブからのLD/CDペーストの押し出しを一時的に停止することができる。LD/CDペーストの流れを一時停止する機構は、金属ピンとエラストマーパッドを含む。送達チューブはエラストマーパッド上に位置決めされることができ、保管ケースが閉じられると金属ピンがエラストマーパッド上の送達チューブを圧縮し、それによって送達チューブを挟み、ペーストの流れを停止させることができる。また、保管ケースは、参加者又は介護者に薬物送達デバイスを正しい向きで挿入するように指示するために、ケースの底部内面に薬物デバイスの写真を含み、保持器取り付け型薬物送達デバイスを正しく位置合わせするためのホルダを含んでいる。保管ケースは、水拭きや水洗いで洗浄可能で、微生物の繁殖を助長しない材料で作られている。
図27~31は、保管容器とその使用方法のイメージを示したものである。
【0245】
薬物動態解析
PK試験の主要評価項目は、1日目(経口レボドパ)と2日目(DopaFuse単独)のレボドパ変動指数(FI、C最大-C最小)/C平均)の差である。レボドパの定常濃度は、連続経口投与の最初の4時間では達成されないと予想されるため、変動指数は4時間から12時間の間に評価される。統計解析は、連続データについては両側t検定、非連続データについてはWilcoxonの符号順位検定を用いて実行される。感度解析は、Per Protocol集団の変動指標を含む。また、追加の感度解析として、1時間ごとに変動指数を評価する。
【0246】
結果
本試験は、薬物を連続的又は半連続的に口腔内に注入するための保持具取り付け型薬物送達デバイスを使用することがPK性能に重要であることを実証することができる。保持具取り付け型薬物送達デバイスを使用して薬物の連続又は半連続口腔内注入を実現することにより、同じ薬物を1日に少なくとも4回投与する場合と比較して、優れた結果を達成できると考えられる。
【0247】
その他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関連して記載してきたが、本発明はさらなる変更が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原理に従い、本発明が関係する技術分野において既知又は慣用的な実用の範囲内にあり、ここで先に規定した必須の特徴に適用できるような本発明からの逸脱を含む、本発明の変形、使用、又は適応を網羅することを意図し、請求項の範囲に従うことが理解される。他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】