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特表2023-541453非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法
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  • 特表-非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-02
(54)【発明の名称】非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20230925BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01W1/10 P
G01W1/10 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516714
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2020014261
(87)【国際公開番号】W WO2022055014
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117464
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522158203
【氏名又は名称】ナショナル インスティテュート オブ メテオロロジカル サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,キ-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,サンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ジュ ワン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チョルキュ
(57)【要約】
本発明は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができ,観測資料と比較した気象調節実験の数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を確立し,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができる,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法に関する発明である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,
前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング領域を設定する非シーディング領域設定ステップ(S30)と,
前記シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,
前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含むことを特徴とする非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項2】
前記分析時間決定ステップ(S10)は,自然降水の影響が小さい場合,前記シーディング物質が影響を与える全時間を考慮して,前記分析時間を決定するのに対して,自然降水の影響が大きい場合,累積降水の過大化を防止するために,前記分析時間をさらに小さく決定することを特徴とする請求項1記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項3】
前記シーディング影響領域設定ステップ(S20)は,前記シーディング物質の拡散影響程度に応じて,前記シーディング影響領域が決定されることを特徴とする請求項1記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項4】
前記非シーディング領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,前記シーディング物質の拡散影響を受けない地域として,前記非シーディング領域が決定されることを特徴とする請求項1記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項5】
前記非シーディング領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング物質が全体的に拡散して,前記シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合,前記シーディング領域と同じ領域として前記非シーディング領域を設定するが,前記シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降水場の資料を分析することを特徴とする請求項4記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項6】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,前記シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所未満である場合,前記目標地域の各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を利用するが,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合に限って適用することを特徴とする請求項1記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項7】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,地形効果の影響を排除するために,各シーディング影響領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外することを特徴とする請求項6記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項8】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)は,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均との差が正で示されると,前記シーディング影響領域において増雨が発生したと判断するのに対して,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均との差が負で示されると,前記シーディング影響領域において減雨が発生したと判断することを特徴とする請求項6記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項9】
前記総人工降水量算出ステップ(S50)において,総人工降水量は,式2の通りであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項記載の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
このとき,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1kg/m3と仮定して算定し,前記雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して有効降水面積を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法に係り,さらに詳しくは,目標地域の人工降水のために,実験領域にシーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水をもって降水量不足現象を積極的に解消することができるようにするとともに,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させながら,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができる,実験事例別の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近,気候変化による異常気温現象により,台風,集中豪雨,大雪,日照り等の様々な異常気象が発生しており,これは,直・間接的に物質的,経済的な損失を引き起こしている。
【0003】
韓国は,年間平均降水量が足りないだけでなく,夏季に集中する傾向があり,降水の地域的・季節的な偏差が大きく,秋と春には,降水量の不足による多くの問題点が発生している。
【0004】
自然からの水資源が制限されている状況で,代替水資源確保の方案として,ダムの建設,川辺濾過水,海水淡水化,海洋深層水,人工増雨,人工増雪等が考えられ得る。
【0005】
この中で,人工増雨や人工増雪,すなわち人工増雨(雪)は,開発による環境問題を最小化し,比較的少ない費用で水資源を確保し,日照りの被害を減らす方案として好ましい。
【0006】
人工増雨は,雲層が形成されて,降水の可能性があるが,予想降水量が少ない場合,人工の気象種まき(Cloud Seeding,以下,シーディングという。)により,雲の発達と降水凝結を活性化させて,さらに多くの降水を降らせるか,他の地域に降水を予め降らせる技術であり,人工増雪は,低い気温によって雨の代わりに雪を降らせることに相当する。
【0007】
このような人工増雨(雪)実験は,大いに航空実験と地上実験に分けられ,その中で,航空実験がさらに効果的である。
【0008】
人工増雨(雪)の航空実験において,最も重要なことは,シーディングラインを設定して決めることである。シーディングラインは,雲の液体含水量(cloud liquid water content;雲含水量)が最も多い地点及び高度に位置することが効果的である。
【0009】
これについての先行技術文献として,大韓民国登録特許公報第2008698号を紹介することができる。
【0010】
先行技術文献による雲液体含水量を考慮した航空実験用の人工増雨シーディングラインの算出方法は,図1に示すように,対象領域に対する数値予報モデル資料算出ステップと,前記数値予報モデル資料による目標地域の時間帯別の平均総雲液体含水量(LWP)算出ステップと,前記雲液体含水量(LWP)の最大値が示される時間帯を導出するシーディング時刻設定ステップと,前記目標地域でのシーディングラインの中間地点及び両端点の緯度と経度を算出するシーディング地点設定ステップと,前記シーディングラインの中間地点から左側,右側,上側,下側方向に,所定距離の領域において,雲の最大液体含水量(LWC)を算出するLWC算出ステップと,前記最大液体含水量(LWC)が0よりも大きいと判断されると,最大液体含水量(LWC)が示される高度層に,シーディングライン及び前記シーディングラインの高度を選定して,シーディングライン及びシーディン高度表出ステップと,を含む方法を提案している。
【0011】
本願の出願人は,先行技術文献を参照して,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を,本発明において提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにする,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0013】
本発明の目的は,気象現象のうち,降水発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給することができる,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は,気象調節実験後,降水増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができる,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定することができる,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0016】
本発明の目的は,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようになる技術を確保することができるようにする,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0017】
本発明の目的は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができる,実験事例別の非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0018】
本発明の目的は,観測資料と比較した気象調節実験数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を確立し,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができる,非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するための本発明は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング領域を設定する非シーディング領域設定ステップ(S30)と,前記シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含むことを,その技術的構成上の基本特徴とする。
【0020】
本発明によって,前記分析時間決定ステップ(S10)は,自然降水の影響が小さい場合,前記シーディング物質が影響を与える全時間を考慮して,前記分析時間を決定するのに対して,自然降水の影響が大きい場合,累積降水の過大化を防止するために,前記分析時間をさらに小さく決定してもよい。
【0021】
本発明によって,前記シーディング影響領域設定ステップ(S20)は,前記シーディング物質の拡散影響程度に応じて,前記シーディング影響領域が決定してもよい。
【0022】
本発明によって,前記非シーディング領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,前記シーディング物質の拡散影響を受けない地域として,前記非シーディング領域が決定されてもよい。
【0023】
本発明によって,前記非シーディング領域設定ステップ(S30)において,若し,前記シーディング物質が全体的に拡散して,前記シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合,前記シーディング領域と同じ領域として前記非シーディング領域を設定するが,前記シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降水場の資料を分析してもよい。
【0024】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,前記シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所未満である場合,前記目標地域の各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を利用するが,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合に限って適用してもよい。
【0025】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,地形効果の影響を排除するために,各シーディング影響領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外してもよい。
【0026】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)は,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均との差が正で示されると,前記シーディング影響領域において増雨が発生したと判断するのに対して,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均との差が負で示されると,前記シーディング影響領域において減雨が発生したと判断してもよい。
【0027】
本発明によって,前記総人工降水量算出ステップ(S50)において,総人工降水量は,下記式2の通りでもよい。
【0028】
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
【0029】
このとき,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1kg/m3と仮定して算定し,前記雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して有効降水面積を決定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにするという効果がある。
【0031】
本発明は,気象現象のうち,降水の発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給することができるという効果がある。
【0032】
本発明は,気象調節実験後,降水の増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができるという効果がある。
【0033】
本発明は,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定することができるという効果がある。
【0034】
本発明は,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようになる技術を確保することができるようにするという効果がある。
【0035】
本発明は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができるという効果がある。
【0036】
本発明は,観測資料と比較した気象調節実験数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を確立し,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を示すフローチャートである。
図2】本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のレーダー反射度(HSR)を示す映像である。
図3】本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のシーディング物質の拡散を示す映像である。
図4】本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための地上,数値モデル累積降水(左側),及びレーダー累積降水(右側)の変化を示す映像である。
図5】本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するためのシーディング-非シーディング領域の地上及びレーダー累積降水の変化表である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施のための最善の形態は,
目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,
前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング領域を設定する非シーディング領域設定ステップ(S30)と,
前記シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,
前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含むことを特徴とする。
【0039】
発明の実施形態
本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法の好適な実施例について,図面を参照して説明し,その実施例は多数個存在してもよく,このような実施例によって,本発明の目的,特徴及び利点をさらに正しく理解することができるようになる。
【0040】
図1は,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を示すフローチャートである。
【0041】
本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,図1に示すように,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにする。
【0042】
最近になって,日照り被害の低減,山火事の予防,霧の低減等を目的として,気象庁国立気象科学院を中心として,気象調節(Weather Modification)実験が韓国内で活発に行われている。
【0043】
これは,気象現象のうち,降水発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給するためである。
【0044】
気象調節は,シーディング物質として,冷たい雲(0℃以下)を対象としては,氷晶核物質であるヨウ化銀(AgI)を使用し,暖かい雲(0℃以上)に対しては,吸湿性物質である塩化カルシウム(CaCl2)を使用して,自然的に分布した雲粒子の衝突と併合過程を調整して,降水雲を成長させる一連の過程を示す。
【0045】
普遍的に,降水量を増加させる過程を人工増雨,降雪量を増加させる過程を人工増雪の実験に分類する。
【0046】
国立気象科学院は,気象航空機を用いて,層雲から中規模水準の雲まで,多様な形状の雲システムに塩化カルシウム(CaCl2)またはヨウ化銀(AgI)のようなシーディング物質を撒布して,シーディング実験を行ってきた。
【0047】
また,シーディング物質が降水増加に及ぼす影響を検証するために,地上観測網を構築して運営してきた。
【0048】
基本的に,数値モデルの降水変化謀議結果を基準として,シーディング効果が予想される地域の降水変化を分析している。しかしながら,シーディング雲に自然降水が流入するか,シーディング物質がどの方向に移動したかを追跡し難いので,増加された降水量または増加された降雪量,すなわち人工降水量を定量的に決定することは簡単でないという限界があった。
【0049】
したがって,観測資料と比較して,論理的にシーディング効果を推定することができる方法が必要であることが分かった。
【0050】
よって,本発明では,気象調節実験後,降水増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができるようにした。
【0051】
これは,シーディング地域に分布した自然降水システムにおいて,シーディングで増加した降水量を分離することができる接近法を提示し,数値謀議結果と観測値を比較して,モデルの性能を評価することができるようにする。併せて,シーディング影響領域の人工降水量を用いると,気象調節実験によって確保できる可能水資源量も算定することができて好ましい。
【0052】
本発明は,人工降水航空実験後,増加された総人工降水量を算定するために,拡散及び非拡散資料,地上降水,レーダー降水,気象条件,地形条件等を用いて,シーディング影響領域と非シーディング領域とを区分可能にする。
【0053】
また,本発明は,シーディング物質による降水増加量を定量的に決定する方法であり,人工降水実験で用水量を確保して,日照りへの対策を講じる技術を確保することができるようにする。
【0054】
本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を行うための諸元は,次の通りである。
【0055】
-レーダー反射度:時間別HSR資料(シーディング前,シーディング後の7時間)/(.png)ファイル
※HSR(Hybrid Surface Rainfall):レーダー最低高度角の観測資料
-レーダー累積降水:解像度(1km*1km),分析時間(拡散影響時間)/(.txt)ファイル
※反射度(Z)-降雨強度(R)の関係:Z=148R1.59
-地上累積降水:雨量計または積雪計/(.dat)ファイル
-拡散及び非拡散の結果:数値モデルの1時間間隔イメージ/(.png)ファイル
-数値モデル累積降水:降水変化(シーディング-非シーディング)/(.png)ファイル
-地形条件:韓半島DEM資料/(.dbf)ファイル
【0056】
具体的に,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,シーディング物質の拡散場,数値モデル累積降水の変化,気象条件,地上累積降水,レーダー累積降水の資料等を用いて,シーディング影響領域と非シーディング領域を分類し,気象調節実験によって確保できる総人工降水量を定量的に算出する。
【0057】
これは,下記のように,大いに,分析時間決定ステップ(S10),シーディング影響領域設定ステップ(S20),非シーディング領域設定ステップ(S30),人工増減水量決定ステップ(S40),総人工降水量(可能水資源量)算出ステップ(S50)の過程に分けられる。
【0058】
具体的に,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,実験領域にシーディングしたシーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,実験領域にシーディングしたシーディング物質の拡散によって,目標地域への人工降水が雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング領域を設定する非シーディング領域設定ステップ(S30)と,シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,からなり,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定し,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようにする。
【0059】
さらに具体的に,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法について説明すると,次の通りである。
【0060】
●分析時間決定ステップ(S10)
分析時間は,拡散場において,シーディング物質が,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯と決定する。これは,シーディング物質の影響を受けて降雨が増加すると予想される総累積時間を決定する過程であって,数値モデル上の拡散及び累積降水の増減時間により決める。例えば,自然降水の影響が小さい事例は,目標地域にシーディング物質が影響を与える全時間を考慮することができるが,自然降水の影響が大きい場合,累積降水量の過大化を防止するために,分析時間をさらに小さく設定してもよい。
【0061】
●シーディング影響領域設定ステップ(S20)
拡散範囲において,地上降水が現れた雨量計や積雪計のうち,シーディング物質の影響を最も多く受ける地点を基準として決める。シーディング影響領域は,基準地点を含めて,シーディング物質が拡散する範囲を全て考慮して決定する。したがって,拡散地域に応じて,シーディング影響領域が決定される。
【0062】
●非シーディング領域設定ステップ(S30)
非シーディング領域は,シーディング領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,シーディング物質の拡散影響を受けない地域に設定する。若し,同じシステムの全体にシーディング物質が拡散されて,シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合は,シーディング領域と同じ領域に非シーディング領域を設定するが,シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降雨場の資料を分析する(但し,分析時間は,等しく設定する)。
【0063】
●人工増減水量決定ステップ(S40)
[1]シーディング影響領域と非シーディング領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点の降水資料のみを用いて,平均を算定する。若し,当該条件の地点が二つ未満である場合は,各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を用いる(ただし,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合にのみ適用する)。ここで,レーダー降水は,面積平均降水であるが,雨量計や積雪計の資料を用いて算定した値も,各領域を代表する面積平均降水と仮定して算出する。併せて,地形効果の影響を排除するために,各領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外する。
【0064】
[2]シーディング効果を検証するための人工増水量は,シーディング影響領域と非シーディング領域において算定した各面積平均累積降水量の差(シーディング影響領域-非シーディング領域)で示す。値の差が正で示されると,シーディング影響領域において,増雨増雪,すなわち増水が発生したと,負で示されると,減雨が発生したと判断する。
【0065】
●総人工降水量(可能水資源量)の決定(S50)
[1]シーディング影響領域において,増水が発生すると,これを用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量である総人工降水量(トン)を決定する。このためには,累積降水模擬結果において,降水発生地域に対する有効面積を決定しなければならない。有効降水面積は,数値モデルに示された降水量のうち,累積増水が0.1mm以上であると予想される地域の面積を適用する。また,雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して,有効降水面積を決定する。
【0066】
[2]総人工降水量は,下記の式のように,有効降水面積に,上記で算定した面積平均累積降水量である人工増水量と降水密度を掛けて算出する。
【0067】
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
【0068】
ここで,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1kg/m3と仮定して算定する。算出された値は,シーディングによって確保できる可能水資源量を示すものであって,気象調節実験に対する定量的なシーディング効果を示す。
【0069】
<実施例>
2020年3月27日に行われた人工降水実験事例について提示したアルゴリズムを適用して,確保できる可能水資源量を算定した。対象事例は,日照りの低減のために,西海付近のボリョンダム地域において気象調節実験を行った事例である。
【0070】
シーディング効果を分析するために,先ず,使った資料を例示として示すと,図2乃至図5の通りである。
【0071】
図2は,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のレーダー反射度(HSR)の映像であって,シーディング後,シーディング物質と自然降水システムとの混合の有無を示し,図3は,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のシーディング物質拡散の映像であって,数値モデルの拡散場に,シーディング物質が影響を与えた地域と,そうではない地域とを区分可能にし,図4は,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための地上,数値モデル累積降水(左側),及びレーダー累積降水(右側)の変化を示す映像であって,地上降水とレーダーの累積変化で数値モデルの降水変化を検証することができる資料である。
【0072】
また,図5は,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するためのシーディング-非シーディング領域の地上及びレーダー累積降水の変化表である。
【0073】
具体的に,資料によって,自然降水にシーディング物質が混合されたことを確認することができ,アルゴリズムによって,目標地域である江原道の川を,その周辺を中心として拡散範囲を考慮して,分析時間は6時間に設定し,日程領域をシーディング影響領域と決定した。また,東海岸に沿って連続的に分布した降水システムについて,拡散影響がないシーディング領域の北地域を非シーディング領域と決定した。併せて,江原道地域の山地地形の影響を排除するために,各領域において海岸線に分布した観測所の資料を分析した。
【0074】
シーディング影響領域と非シーディング領域に対する地上とレーダー累積降水の基本統計量を,図5の表のように示し,アルゴリズムによって,シーディング影響領域と非シーディング領域の差で人工増雨量を算定した。
【0075】
図5の表において,6時間の地上累積降水に対する面積平均人工増雨量は,約2.1mm,レーダーは,約1.0mmであり,レーダー累積降水が相対的に過小推定されたことが分かる。このような場合は,資料に対する信頼度を確保するために,地上累積降水資料で推定した値を人工増水量と決定する。
【0076】
人工増水量が決定されると,降水面積と降水密度を掛けて,総人工降水量を算定することができる。降水面積は,数値モデルにおいて,累積増雨が0.1mm以上現れた面積であり,図4では,2,731km2として現れた。降雨密度は,1kg/m3であるので,総人工降水量は,下記の式のように算定することができる。
【0077】
2,731,000,000m2×0.0021m=5,735,100t
【0078】
したがって,日照りの克服のために,気象調節実験を行った対象事例では,約573.5万トン程度の水資源を確保することができると予想される。これは,多量の用水量ではないが,気象調節実験に対する効果を定量的に推定したものと判断され,今後,シーディング量を増やして,水資源をさらに確保することができるという点で意義が大きい。
【0079】
結果において,本発明による非シーディング領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法により期待される効果は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができることである。
【0080】
また,観測資料と比較した気象調節実験の数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させることができ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を樹立することができ,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は,気象条件を活用して,人工増雨や人工増雪を実験することができる産業分野に用いられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,
前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング影響領域を設定する非シーディング影響領域設定ステップ(S30)と,
前記シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,
前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含み,
前記分析時間決定ステップ(S10)は,自然降水の影響が小さい場合,前記シーディング物質が影響を与える全時間を考慮して,前記分析時間を決定するのに対して,自然降水の影響が大きい場合,累積降水の過大化を防止するために,前記分析時間をさらに小さく決定することを特徴とする非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項2】
前記シーディング影響領域設定ステップ(S20)は,前記シーディング物質の拡散影響程度に応じて,前記シーディング影響領域が決定されることを特徴とする請求項1記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項3】
前記非シーディング影響領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング影響領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,前記シーディング物質の拡散影響を受けない地域として,前記非シーディング影響領域が決定されることを特徴とする請求項1記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項4】
前記非シーディング影響領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング物質が全体的に拡散して,前記シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合,前記シーディング影響領域と同じ領域として前記非シーディング影響領域を設定するが,前記シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降水場の資料を分析することを特徴とする請求項記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項5】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,前記シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所未満である場合,前記目標地域の各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を利用するが,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合に限って適用することを特徴とする請求項1記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項6】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,地形効果の影響を排除するために,各シーディング影響領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外することを特徴とする請求項記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項7】
前記人工増減水量分析ステップ(S40)は,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均との差が正で示されると,前記シーディング影響領域において増雨が発生したと判断するのに対して,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均との差が負で示されると,前記シーディング影響領域において減雨が発生したと判断することを特徴とする請求項記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
【請求項8】
前記総人工降水量算出ステップ(S50)において,総人工降水量は,式2の通りであることを特徴とする請求項1乃至請求項のうちいずれか一項記載の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法。
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
このとき,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1/cm 3 と仮定して算定し,前記雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して有効降水面積を決定する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法に係り,さらに詳しくは,目標地域の人工降水のために,実験領域にシーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水をもって降水量不足現象を積極的に解消することができるようにするとともに,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させながら,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができる,実験事例別の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近,気候変化による異常気温現象により,台風,集中豪雨,大雪,日照り等の様々な異常気象が発生しており,これは,直・間接的に物質的,経済的な損失を引き起こしている。
【0003】
韓国は,年間平均降水量が足りないだけでなく,夏季に集中する傾向があり,降水の地域的・季節的な偏差が大きく,秋と春には,降水量の不足による多くの問題点が発生している。
【0004】
自然からの水資源が制限されている状況で,代替水資源確保の方案として,ダムの建設,川辺濾過水,海水淡水化,海洋深層水,人工増雨,人工増雪等が考えられ得る。
【0005】
この中で,人工増雨や人工増雪,すなわち人工増雨(雪)は,開発による環境問題を最小化し,比較的少ない費用で水資源を確保し,日照りの被害を減らす方案として好ましい。
【0006】
人工増雨は,雲層が形成されて,降水の可能性があるが,予想降水量が少ない場合,人工の気象種まき(Cloud Seeding,以下,シーディングという。)により,雲の発達と降水凝結を活性化させて,さらに多くの降水を降らせるか,他の地域に降水を予め降らせる技術であり,人工増雪は,低い気温によって雨の代わりに雪を降らせることに相当する
【0007】
このような人工増雨(雪)実験は,大いに航空実験と地上実験に分けられ,その中で,航空実験がさらに効果的である。
【0008】
人工増雨(雪)の航空実験において,最も重要なことは,シーディングラインを設定して決めることである。シーディングラインは,雲の液体含水量(cloud liquid water content;雲含水量)が最も多い地点及び高度に位置することが効果的である。
【0009】
これについての先行技術文献として,大韓民国登録特許公報第2008698号を紹介することができる。
【0010】
先行技術文献による雲液体含水量を考慮した航空実験用の人工増雨シーディングラインの算出方法は,対象領域に対する数値予報モデル資料算出ステップと,前記数値予報モデル資料による目標地域の時間帯別の平均総雲液体含水量(LWP)算出ステップと,前記雲液体含水量(LWP)の最大値が示される時間帯を導出するシーディング時刻設定ステップと,前記目標地域でのシーディングラインの中間地点及び両端点の緯度と経度を算出するシーディング地点設定ステップと,前記シーディングラインの中間地点から左側,右側,上側,下側方向に,所定距離の領域において,雲の最大液体含水量(LWC)を算出するLWC算出ステップと,前記最大液体含水量(LWC)が0よりも大きいと判断されると,最大液体含水量(LWC)が示される高度層に,シーディングライン及び前記シーディングラインの高度を選定して,シーディングライン及びシーディン高度表出ステップと,を含む方法を提案している。
【0011】
本願の出願人は,先行技術文献を参照して,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を,本発明において提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにする,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0013】
本発明の目的は,気象現象のうち,降水発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給することができる,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は,気象調節実験後,降水増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができる,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定することができる,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0016】
本発明の目的は,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようになる技術を確保することができるようにする,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0017】
本発明の目的は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができる,実験事例別の非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【0018】
本発明の目的は,観測資料と比較した気象調節実験数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を確立し,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができる,非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するための本発明は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング影響領域を設定する非シーディング影響領域設定ステップ(S30)と,前記シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含むことを,その技術的構成上の基本特徴とする。
【0020】
本発明によって,前記分析時間決定ステップ(S10)は,自然降水の影響が小さい場合,前記シーディング物質が影響を与える全時間を考慮して,前記分析時間を決定するのに対して,自然降水の影響が大きい場合,累積降水の過大化を防止するために,前記分析時間をさらに小さく決定してもよい。
【0021】
本発明によって,前記シーディング影響領域設定ステップ(S20)は,前記シーディング物質の拡散影響程度に応じて,前記シーディング影響領域が決定してもよい。
【0022】
本発明によって,前記非シーディング影響領域設定ステップ(S30)は,前記シーディング影響領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,前記シーディング物質の拡散影響を受けない地域として,前記非シーディング影響領域が決定されてもよい。
【0023】
本発明によって,前記非シーディング影響領域設定ステップ(S30)において,若し,前記シーディング物質が全体的に拡散して,前記シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合,前記シーディング影響領域と同じ領域として前記非シーディング影響領域を設定するが,前記シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降水場の資料を分析してもよい。
【0024】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,前記シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所未満である場合,前記目標地域の各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を利用するが,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合に限って適用してもよい。
【0025】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)において,地形効果の影響を排除するために,各シーディング影響領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外してもよい。
【0026】
本発明によって,前記人工増減水量分析ステップ(S40)は,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均との差が正で示されると,前記シーディング影響領域において増雨が発生したと判断するのに対して,前記シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均との差が負で示されると,前記シーディング影響領域において減雨が発生したと判断してもよい。
【0027】
本発明によって,前記総人工降水量算出ステップ(S50)において,総人工降水量は,下記式2の通りでもよい。
【0028】
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
【0029】
このとき,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1/cm 3 と仮定して算定し,前記雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して有効降水面積を決定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにするという効果がある。
【0031】
本発明は,気象現象のうち,降水の発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給することができるという効果がある。
【0032】
本発明は,気象調節実験後,降水の増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができるという効果がある。
【0033】
本発明は,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定することができるという効果がある。
【0034】
本発明は,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようになる技術を確保することができるようにするという効果がある。
【0035】
本発明は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができるという効果がある。
【0036】
本発明は,観測資料と比較した気象調節実験数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を確立し,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を示すフローチャートである。
図2】本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のレーダー反射度(HSR)を示す映像である。
図3】本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のシーディング物質の拡散を示す映像である。
図4】本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための地上,数値モデル累積降水(左側),及びレーダー累積降水(右側)の変化を示す映像である。
図5】本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するためのシーディング-非シーディング影響領域の地上及びレーダー累積降水の変化表である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施のための最善の形態は,
目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,前記シーディング物質の影響を受けない領域対比前記シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出する非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法において,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,
前記実験領域にシーディングした前記シーディング物質の拡散によって,前記目標地域への人工降水が前記雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,前記シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,
前記シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング影響領域を設定する非シーディング影響領域設定ステップ(S30)と,
前記シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,
前記シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,を含むことを特徴とする。
【0039】
発明の実施形態
本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法の好適な実施例について,図面を参照して説明し,その実施例は多数個存在してもよく,このような実施例によって,本発明の目的,特徴及び利点をさらに正しく理解することができるようになる。
【0040】
図1は,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を示すフローチャートである。
【0041】
本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,図1に示すように,目標地域の人工降水のために,実験領域に,シーディング物質をシーディングした後,シーディング物質の影響を受けない領域対比シーディング物質の影響を受ける領域の総人工降水量を算出して,シーディング物質による人工降水として,降水量不足現象を積極的に解消することができるようにする。
【0042】
最近になって,日照り被害の低減,山火事の予防,霧の低減等を目的として,気象庁国立気象科学院を中心として,気象調節(Weather Modification)実験が韓国内で活発に行われている。
【0043】
これは,気象現象のうち,降水発生を制御して,各種災害に備え,水資源を安定的に供給するためである。
【0044】
気象調節は,シーディング物質として,冷たい雲(0℃以下)を対象としては,氷晶核物質であるヨウ化銀(AgI)を使用し,暖かい雲(0℃以上)に対しては,吸湿性物質である塩化カルシウム(CaCl2)を使用して,自然的に分布した雲粒子の衝突と併合過程を調整して,降水雲を成長させる一連の過程を示す。
【0045】
普遍的に,降水量を増加させる過程を人工増雨,降雪量を増加させる過程を人工増雪の実験に分類する。
【0046】
国立気象科学院は,気象航空機を用いて,層雲から中規模水準の雲まで,多様な形状の雲システムに塩化カルシウム(CaCl2)またはヨウ化銀(AgI)のようなシーディング物質を撒布して,シーディング実験を行ってきた。
【0047】
また,シーディング物質が降水増加に及ぼす影響を検証するために,地上観測網を構築して運営してきた。
【0048】
基本的に,数値モデルの降水変化謀議結果を基準として,シーディング効果が予想される地域の降水変化を分析している。しかしながら,シーディング雲に自然降水が流入するか,シーディング物質がどの方向に移動したかを追跡し難いので,増加された降水量または増加された降雪量,すなわち人工降水量を定量的に決定することは簡単でないという限界があった。
【0049】
したがって,観測資料と比較して,論理的にシーディング効果を推定することができる方法が必要であることが分かった。
【0050】
よって,本発明では,気象調節実験後,降水増加に対するシーディング影響を検証するために,シーディング物質の影響を受ける地域と,そうではない地域とを分類して,定量的な人工降水増加量を算出することができるようにした。
【0051】
これは,シーディング地域に分布した自然降水システムにおいて,シーディングで増加した降水量を分離することができる接近法を提示し,数値謀議結果と観測値を比較して,モデルの性能を評価することができるようにする。併せて,シーディング影響領域の人工降水量を用いると,気象調節実験によって確保できる可能水資源量も算定することができて好ましい。
【0052】
本発明は,人工降水航空実験後,増加された総人工降水量を算定するために,拡散及び非拡散資料,地上降水,レーダー降水,気象条件,地形条件等を用いて,シーディング影響領域と非シーディング影響領域とを区分可能にする。
【0053】
また,本発明は,シーディング物質による降水増加量を定量的に決定する方法であり,人工降水実験で用水量を確保して,日照りへの対策を講じる技術を確保することができるようにする。
【0054】
本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を行うための諸元は,次の通りである。
【0055】
-レーダー反射度:時間別HSR資料(シーディング前,シーディング後の7時間)/(.png)ファイル
※HSR(Hybrid Surface Rainfall):レーダー最低高度角の観測資料
-レーダー累積降水:解像度(1km*1km),分析時間(拡散影響時間)/(.txt)ファイル
※反射度(Z)-降雨強度(R)の関係:Z=148R1.59
-地上累積降水:雨量計または積雪計/(.dat)ファイル
-拡散及び非拡散の結果:数値モデルの1時間間隔イメージ/(.png)ファイル
-数値モデル累積降水:降水変化(シーディング-非シーディング)/(.png)ファイル
-地形条件:韓半島DEM資料/(.dbf)ファイル
【0056】
具体的に,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,シーディング物質の拡散場,数値モデル累積降水の変化,気象条件,地上累積降水,レーダー累積降水の資料等を用いて,シーディング影響領域と非シーディング影響領域を分類し,気象調節実験によって確保できる総人工降水量を定量的に算出する。
【0057】
これは,下記のように,大いに,分析時間決定ステップ(S10),シーディング影響領域設定ステップ(S20),非シーディング影響領域設定ステップ(S30),人工増減水量決定ステップ(S40),総人工降水量(可能水資源量)算出ステップ(S50)の過程に分けられる。
【0058】
具体的に,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法は,実験領域にシーディングしたシーディング物質が拡散されながら,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯を設定する分析時間決定ステップ(S10)と,実験領域にシーディングしたシーディング物質の拡散によって,目標地域への人工降水が雨量計や積雪計に最も多く現れる地点を設定しながら,シーディング物質の拡散範囲まで含むシーディング影響領域設定ステップ(S20)と,シーディング影響領域と同じ条件の非シーディング影響領域を設定する非シーディング影響領域設定ステップ(S30)と,シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点が二カ所以上である場合,その二カ所の降水資料を用いて平均を算出した後,シーディング影響領域の降水量の平均と非シーディング影響領域の降水量の平均の差として,人工増減水量を分析する人工増減水量分析ステップ(S40)と,シーディング影響領域において増水が発生する場合,累積増水が0.1mm以上になる地域の面積を有効面積と決定して,総人工降水量を算出する総人工降水量算出ステップ(S50)と,からなり,シーディング影響領域の人工降水量を用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量を算定し,人工降水実験によって用水量を確保して,日照りへの対策を講じるようにする。
【0059】
さらに具体的に,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法について説明すると,次の通りである。
【0060】
●分析時間決定ステップ(S10)
分析時間は,拡散場において,シーディング物質が,目標地域の雨量計や積雪計に影響を与える時間帯と決定する。これは,シーディング物質の影響を受けて降雨が増加すると予想される総累積時間を決定する過程であって,数値モデル上の拡散及び累積降水の増減時間により決める。例えば,自然降水の影響が小さい事例は,目標地域にシーディング物質が影響を与える全時間を考慮することができるが,自然降水の影響が大きい場合,累積降水量の過大化を防止するために,分析時間をさらに小さく設定してもよい。
【0061】
●シーディング影響領域設定ステップ(S20)
拡散範囲において,地上降水が現れた雨量計や積雪計のうち,シーディング物質の影響を最も多く受ける地点を基準として決める。シーディング影響領域は,基準地点を含めて,シーディング物質が拡散する範囲を全て考慮して決定する。したがって,拡散地域に応じて,シーディング影響領域が決定される。
【0062】
●非シーディング影響領域設定ステップ(S30)
非シーディング影響領域は,シーディング影響領域に分布した降雨システムと類似した気象条件及び地形条件(観測高度)において,シーディング物質の拡散影響を受けない地域に設定する。若し,同じシステムの全体にシーディング物質が拡散されて,シーディング物質の影響を受けない地域がないか,類似した気象及び地形条件が探せない場合は,シーディング影響領域と同じ領域に非シーディング影響領域を設定するが,シーディング物質が影響を受けない以前時間帯の累積降雨場の資料を分析する(但し,分析時間は,等しく設定する)。
【0063】
●人工増減水量決定ステップ(S40)
[1]シーディング影響領域と非シーディング影響領域に分布した雨量計や積雪計のうち,累積降水が0.1mm以上になる地点の降水資料のみを用いて,平均を算定する。若し,当該条件の地点が二つ未満である場合は,各観測所位置のHSRレーダー反射度に,Z=148R1.59の関係式(式1)で推定したレーダー累積降水を用いる(ただし,レーダー推定降水は,雨量計と比べて,正確性が60%以上である場合にのみ適用する)。ここで,レーダー降水は,面積平均降水であるが,雨量計や積雪計の資料を用いて算定した値も,各領域を代表する面積平均降水と仮定して算出する。併せて,地形効果の影響を排除するために,各領域において,山岳地域に分布した雨量計や積雪計の位置の観測値は,平均値の計算から除外する。
【0064】
[2]シーディング効果を検証するための人工増水量は,シーディング影響領域と非シーディング領域において算定した各面積平均累積降水量の差(シーディング影響領域-非シーディング影響領域)で示す。値の差が正で示されると,シーディング影響領域において,増雨増雪,すなわち増水が発生したと,負で示されると,減雨が発生したと判断する。
【0065】
●総人工降水量(可能水資源量)の決定(S50)
[1]シーディング影響領域において,増水が発生すると,これを用いて,気象調節実験によって確保できる可能水資源量である総人工降水量(トン)を決定する。このためには,累積降水模擬結果において,降水発生地域に対する有効面積を決定しなければならない。有効降水面積は,数値モデルに示された降水量のうち,累積増水が0.1mm以上であると予想される地域の面積を適用する。また,雨量計や積雪計が分布した陸地部分の面積のみを考慮して,有効降水面積を決定する。
【0066】
[2]総人工降水量は,下記の式のように,有効降水面積に,上記で算定した面積平均累積降水量である人工増水量と降水密度を掛けて算出する。
【0067】
総人工降水量(トン)=有効降水面積×人工増水量×降水密度 -式2
【0068】
ここで,降水面積はm3,面積平均累積降水量はmmであるので,単位換算が必要であり,降水密度は1/cm 3 と仮定して算定する。算出された値は,シーディングによって確保できる可能水資源量を示すものであって,気象調節実験に対する定量的なシーディング効果を示す。
【0069】
<実施例>
2020年3月27日に行われた人工降水実験事例について提示したアルゴリズムを適用して,確保できる可能水資源量を算定した。対象事例は,山火事の防止のために,韓国の北東側の江原道地域において実験を行った事例である。
【0070】
シーディング効果を分析するために,先ず,使った資料を例示として示すと,図2乃至図5の通りである。
【0071】
図2は,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のレーダー反射度(HSR)の映像であって,シーディング後,シーディング物質と自然降水システムとの混合の有無を示し,図3は,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための時間別のシーディング物質拡散の映像であって,数値モデルの拡散場に,シーディング物質が影響を与えた地域と,そうではない地域とを区分可能にし,図4は,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するための地上,数値モデル累積降水(左側),及びレーダー累積降水(右側)の変化を示す映像であって,地上降水とレーダーの累積変化で数値モデルの降水変化を検証することができる資料である。
【0072】
また,図5は,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法を説明するためのシーディング-非シーディング領域の地上及びレーダー累積降水の変化表である。
【0073】
具体的に,資料によって,自然降水にシーディング物質が混合されたことを確認することができ,アルゴリズムによって,目標地域である江原道の川を,その周辺を中心として拡散範囲を考慮して,分析時間は6時間に設定し,日程領域をシーディング影響領域と決定した。また,東海岸に沿って連続的に分布した降水システムについて,拡散影響がないシーディング領域の北地域を非シーディング影響領域と決定した。併せて,江原道地域の山地地形の影響を排除するために,各領域において海岸線に分布した観測所の資料を分析した。
【0074】
シーディング影響領域と非シーディング影響領域に対する地上とレーダー累積降水の基本統計量を,図5の表のように示し,アルゴリズムによって,シーディング影響領域と非シーディング影響領域の差で人工増雨量を算定した。
【0075】
図5の表において,6時間の地上累積降水に対する面積平均人工増雨量は,約2.1mm,レーダーは,約1.0mmであり,レーダー累積降水が相対的に過小推定されたことが分かる。このような場合は,資料に対する信頼度を確保するために,地上累積降水資料で推定した値を人工増水量と決定する。
【0076】
人工増水量が決定されると,降水面積と降水密度を掛けて,総人工降水量を算定することができる。降水面積は,数値モデルにおいて,累積増雨が0.1mm以上現れた面積であり,図4では,2,731km2として現れた。降雨密度は,1/cm 3 であるので,総人工降水量は,下記の式のように算定することができる。
【0077】
2,731,000,000m2×0.0021m×1,000kg/m 3 =5,735,100t
【0078】
したがって,日照りの克服のために,気象調節実験を行った対象事例では,約573.5万トン程度の水資源を確保することができると予想される。これは,多量の用水量ではないが,気象調節実験に対する効果を定量的に推定したものと判断され,今後,シーディング量を増やして,水資源をさらに確保することができるという点で意義が大きい。
【0079】
結果において,本発明による非シーディング影響領域対比シーディング影響領域の総人工降水量の算出方法により期待される効果は,短期的に人工降水実験によるシーディング効果の定量的な決定,及び観測資料と数値モデル予測資料の信頼度を増加させ,長期的に気象調節実験による不足な水資源量の拡充及び様々な人工降雨実験の目的(日照りの低減,山火事の予防,粒子状物質の低減,霧の低減,雹の抑制等)の達成と関連成果をつくり出すことができることである。
【0080】
また,観測資料と比較した気象調節実験の数値モデルの補正及び予測の正確性を向上させることができ,気象調節実験のシーディング効率の改善のための実験及び観測戦略を樹立することができ,シーディング後,雲の発達及び雲の微細物理変化研究分野の発展が期待され,人工降雨実験に対する経済性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は,気象条件を活用して,人工増雨や人工増雪を実験することができる産業分野に用いられ得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】