(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】試料採取デバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/32 20060101AFI20230926BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230926BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20230926BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230926BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230926BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12M1/32
G01N1/00 101G
G01N35/10 K
G01N37/00 101
C12M1/00 D
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501382
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021040841
(87)【国際公開番号】W WO2022011114
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523007856
【氏名又は名称】ルマサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハート ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘバート コリン
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052AD29
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA19
2G052ED01
2G052FC04
2G052FD01
2G052GA11
2G052GA24
2G052GA27
2G052GA29
2G052JA07
2G058BA01
2G058DA07
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB01
4B029FA01
4B029GB02
4B029GB05
4B029HA05
4B029HA07
4B029HA09
(57)【要約】
本明細書においては、評価のために生物学的試料の手動および自動化試料採取および調製を可能にするデバイス、システム、ならびにそれらの使用方法が提供される。試料は、ナノ/マイクロ/ミリ流体量を含む、任意の量で取得され得る。試料は、懸濁状態にあるかまたはマイクロキャリアなどの基材上で増殖する細胞および/または他の生物学的粒子を含み、1つまたは複数のコンテナ、たとえばシングルウェルプレート、バイアル、フラスコ、またはバイオリアクタから取得され得る。試料が移される機器は、任意の分析機器、たとえば光学力またはレーザフォース細胞診機器を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析のために生物学的試料を調製するためのシステムであって、
a. 容器から試料を得る工程、
b. 該試料を処理する工程、および
c. 該試料を分析機器に輸送する工程
を含み、該システムが、
容器から試料を抽出するための手段、
1つまたは複数の制御弁、
1つまたは複数の試薬添加、希釈、または濃縮の機構、
1つまたは複数の混合機構、および
分析機器インタフェース
を含む、システム。
【請求項2】
生物学的試料が、細胞、細胞断片、細胞成分、ウイルス、細菌、微生物、病原体、高分子、糖、遺伝物質、核酸、DNA、RNA、転写因子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂質、酵素、代謝産物、抗体、または受容体を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
容器が、バイオリアクタ、フラスコ、ボトル、試験管、スライド、バッグ、マイクロタイタープレート、マイクロタイターディッシュ、マルチウェルプレート、培養皿、または透過性支持体を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
分析機器が、レーザフォース分析機器、シーケンス解析機器、PCR分析装置、高速ガスもしくは液体クロマトグラフィー(HPLC)、または質量分析(MS)機を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
分析機器がRADIANCE(登録商標)機器を含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
試料抽出装置が無菌ディップチューブを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
マイクロキャリア分離デバイスをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
マイクロキャリア分離デバイスが、流体的、酵素的、生物学的、化学的、電気的、磁気的、熱的、光学的、機械的、または重力的方法の使用を含め、マイクロキャリアから生物学的粒子を分離することができる、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
試料を処理する工程が、他の試料成分からの生物学的粒子の分離、精製、濃縮、および化学修飾を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
デコンタミネーションの工程をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
圧力または真空駆動の流れ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、またはダイアフラムポンプを介するポンピングを使用して、試料が容器から分析機器に輸送される、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
流れの方向が、弁構成および管系によってさらに決まる、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
試料採取が連続的である、または試料採取がセグメント的である、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
1つよりも多いバイオリアクタから試料を得る試料採取システムを含む多重システムである、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
希釈、混合、およびインタフェースが同じデバイス中で起こる、請求項2記載のシステム。
【請求項16】
制御システムを使用するプロセス制御のためにフィードバックを用いるモニタリングを可能にする1つまたは複数の特徴をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
マイクロ流体チャネルを用いるマイクロ流体T字混合および希釈デバイスをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
ベースT字、オフセットT字、並列のT字、複数の別々のインプットを有するT字、1つに合わさる多重インプットを有するT字を含む、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
オートサンプラ(およびバリエーション)への試料採取マニホールドチップ/カップおよびインタフェースをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
マイクロキャリアが水平チャネル中で重力によって生物学的粒子から分離される、請求項8記載のシステム。
【請求項21】
マイクロキャリアが、様々な密度の流体を使用して、細胞間の密度差によって生物学的粒子から分離される、請求項8記載のシステム。
【請求項22】
マイクロキャリアが、様々な出口位置を有する垂直チャネル中で作用力を使用して生物学的粒子から分離される、請求項8記載のシステム。
【請求項23】
マイクロキャリアが、様々な出口位置を有する水平チャネル中で作用力を使用して生物学的粒子から分離される、請求項8記載のシステム。
【請求項24】
マイクロキャリアが、メッシュ、アングルメッシュ、ピラー、または他の構造を使用して、サイズに基づいて生物学的粒子から分離され、流れが連続的または拍動的である、請求項8記載のシステム。
【請求項25】
マイクロキャリアが、慣性流体力または慣性力に加えて分離の効率を改善するための他の力(たとえば光学的または電気的)を使用して、サイズに基づいて生物学的粒子から分離される、請求項8記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示の態様は、ナノ/マイクロ/ミリ流体試料採取を含む、任意の量の手動および自動化試料採取を可能にするデバイス、システム、ならびにそれらの使用方法に関する。試料は、1つまたは複数のコンテナから得られ、評価のために調製され、分析のために別個の機器に移される。コンテナは、単一のウェルまたはバイアルからフラスコ、バイオリアクタまたは他の容器にまで及ぶ容器を含み得る。試料は、懸濁状態にあり得るかまたはマイクロキャリアなどの基材上で増殖し得る細胞および/または他の生物学的粒子を含み得る。試料が移される機器は、任意の分析機器、たとえば光学力またはレーザフォース細胞診機器を含み得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バイオ医薬品分析において、生物学的試料の組成は複雑であり得る。生体マトリックスの多様性に起因して、これらの試料中の標的物質の分析は、試料処理に対して重大な課題を呈する。試料は、多くの場合、分析対象物の他に、多数の干渉物質、たとえば内因性物質、代謝産物、および混入物を含有する。理想的な試料前処理技術は、干渉物質を最大限に除去し、広い範囲の試料に適し、広い範囲の分析機との使用に適するべきである。大部分の試料は、分析機器、とりわけレーザフォース細胞診(LFC)分析機器、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析(MS)機の要件を満たすために、分離、精製、濃縮、および化学修飾のために正しく処理されなければならない。現在使用されている方法は複雑であり、労働集約的であり、誤差をこうむりやすく、状況によっては、環境にとって有害または技術者にとって危険である場合さえある。現在の方法は、多数の試薬の必要性、高額な検査費をはじめとする他多くの欠点を抱え、低い回収率および標準未満の精度のせいでさらに複雑である。加えて、これらの方法は、オンライン処理および自動化の助けにはならない。
【0003】
したがって、必要とされるものは、生物学的試料を得、そのような試料を分析機器との使用のために処理し、調製するための効率的なデバイス、システムおよび方法である。好ましくは、そのようなデバイス、システム、および方法は、実装しやすく、低コストであり、効率的であり、信頼性が高く、レーザフォース細胞診機器などの機器と適合性であるべきである。
【発明の概要】
【0004】
容器から試料を得ること、試料を処理すること、および試料を分析機器に輸送することを含む、分析のために試料を調製するためのシステム、方法、およびデバイスであって、システムが、試料抽出装置、1つまたは複数の制御弁、1つまたは複数の希釈装置、1つまたは複数の混合装置および分析機器インタフェースを含むシステム、方法、およびデバイスが、本明細書において提供される。ある態様において、分析機器はRADIANCE(登録商標)機を含む。
【0005】
特定の態様において、本発明はさらに、マイクロキャリア分離デバイスを含み、マイクロキャリア分離デバイスは、酵素的、化学的、熱的、または機械的方法の使用を含め、マイクロキャリアから生物学的粒子を分離することができる。本発明のさらなる特徴は、生物学的粒子を他の試料成分から分離し、精製し、濃縮し、化学修飾し、デコンタミネーションすることによって試料を処理することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の新規な試料採取システム:試料を収容する容器(たとえばバイオリアクタ、100)、試料抽出チューブ(たとえば滅菌ディップチューブ、102)、制御弁(104A)、希釈装置(110)、機器インタフェース(115)(すなわち、マイクロ流体もしくはミリ流体チップまたは流体マニホールド)および分析機器(113)を含む一般的なセットアップを示す模式図を提供する。また、廃棄物収集のための容器(112)が示されている。リザーバ/コンテナ(106B)が
図1に含まれ、このリザーバ/コンテナは、多様な目的、たとえば処理(すなわち希釈または洗浄)のための溶液を保持する目的に役立ち得る。特定の態様において、分析機器(113)はRADIANCE(登録商標)機(LumaCyte, LLC. Virginia USA)である。
【
図2】本発明の新規な試料採取システムを含み、マイクロキャリア分離デバイス(119)をさらに含む一般的なセットアップを示す模式図を提供する。任意で、コンテナ(117)がマイクロキャリア酵素/化学溶液を収容する。
【
図3A】セグメント流を用いる本発明の新規な試料採取システムを含む一般的なセットアップを示す模式図を提供する。
図3Aは、セグメント流のための一般的な構成を示し、具体的には、試料採取工程を示し;
図3Bは、デコンタミネーション工程を組み入れた構成を提供し、
図3Cは、洗浄液が別個の容器(106B)からシステムに導入される特徴を組み入れた構成を提供する。
【
図4】試料が2つのバイオリアクタ(100(i)および100(ii))から得られる試料採取システムを含む多重システムを提供する。
【
図5】制御システム(たとえばモニタリングシステム)を使用するプロセス制御のためにフィードバックを用いるモニタリングを可能にする1つまたは複数の特徴を含む本発明の新規な試料採取システムの態様を提供する。
【
図6】連続生産を例示する内蔵デュアルバイオリアクタシステムを含む本発明の新規な試料採取システムの態様を提供する。
【
図7】一体化希釈装置・機器インタフェースを含む本発明の新規な試料採取システムの態様を提供する。
【
図8】非セグメント連続流および高速試料調製を可能にする一体化希釈装置・機器インタフェースを含む本発明の新規な試料採取システムの態様を提供する。
図8は、具体的に、4つのオール・イン・ワン型チャンバを使用するセットアップを提供する。
【
図9】切り離された希釈装置および機器インタフェースを含む本発明の新規な試料採取システムの態様を提供する。
【
図10】マイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体T字混合および希釈デバイスを提供する。
【
図11】混合交差点で緩衝液チャネルが互いからずれているマイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体T字混合および希釈デバイスを提供する。
【
図12】マイクロ流体マルチプレクサチップである希釈装置の態様の模式図を提供する。
【
図13A】機器インタフェースの態様およびその使用のための工程の順序を提供する。
図13Aは、具体的に、試料採取マニホールドがウェルプレート中に分注する代表的な模式図を提供する。
図13Aは、希釈済み試料が希釈装置から一連の3つの弁(真ん中の弁は分注マニホールド内に収容されている)を通って移動する様子を示し(試料採取マニホールドがウェルプレート中に分注する)、
図13Bは、希釈装置からの流体流が、分析機器に導入される細胞を含む態様を示し、
図13Cは、ウェルプレートが注入位置に移動する様子と、モーションプラットフォームが垂直運動のための機構を組み込むこととを示す。
図13Dは、複数のマニホールドからの複数の試料が直列的に(一度に1つの試料を1つのマニホールドからウェルプレート中に)または並列的に(複数の試料を同時に複数のマニホールドから1つまたは複数のウェルプレート中に)充填されることを可能にするために複数のマニホールドを配置する方法を例示する平面図を示し、
図13Eは、注入チューブが、分注マニホールドと注入マニホールドの両方を通過するのに十分なほど小さく、その結果、ウェルプレートから分析機器への直接流路を形成する態様を示し、
図13Fは、一体化分注マニホールド・注入マニホールドを使用して、マイクロキャリアから剥離された細胞を分析機器に導入する手順を例示する態様を示し、
図13Gは、剥離された細胞とマイクロキャリアとの混合物からRADIANCE(登録商標)Laser Force Cytology機器上に収集された代表的なデータを示す。
【
図14】細胞からマイクロキャリアを取り除くためのデバイスの態様の模式図を提供する。
【
図15A】細胞からマイクロキャリアを取り除くためのデバイスの態様の模式図を提供する。
図15Aは、一体化マイクロキャリア除去デバイスの態様を提供し、デバイスのインプットが、バイオリアクタまたは他の供給源からの細胞または他のバイオ生成物が付着したマイクロキャリアを含み、マイクロキャリアが、除去チャンバに入り、そこで剥離および抗接着のために使用される物質が別個のインプットを介して導入され、マイクロキャリアが反応ゾーンを通過し、ここでバイオ生成物がマイクロキャリアから分離する。
図15Bは、マイクロキャリアおよび細胞の沈降を示し、
図15Cは、沈降速度の差に基づいて分離する複数の細胞タイプを示す態様を提供する。
【
図16】細胞からマイクロキャリアを除去するための、垂直デザインを有するデバイスの態様の模式図を提供する。
【
図17】細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの態様の模式図を提供する。
【
図18】レーザを使用してマイクロキャリアを下に指向させることを含む、細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの態様の模式図を提供する。
【
図19】細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの態様の模式図を提供する。特定の態様においては、マイクロキャリアから細胞(または生物学的粒子)を剥離させるために、概して
図19に示すような剥離・分離機構を用いることができる。流体(または密度および位相)を分離するように密度勾配を加減し、カスタマイズし得る。
【
図20】細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの態様の模式図を提供する。特定の態様において、図示するような2層間の密度および位相の差により、高密度水性「プラグ」またはポケットが形成され、それにより細胞はその中に落ち込むことができるが、マイクロキャリアは落ちることがないように、デバイスが設計され、カスタマイズされる。
【
図21】細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの態様の模式図を提供する。
【
図22】マイクロキャリア(304)から遊離細胞(306)を分離するために使用され得る非らせん集束法を例示する態様の模式図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本発明は、様々な特徴を有する具体的な態様を参照して説明される。当業者には、本発明の範囲または精神を逸脱することなく、本発明の実施において様々な改変および変更を加えることができることが明らかであろう。当業者は、所与の用途または設計の要件および仕様に基づいて、これらの特徴を単独で、または任意の組み合わせで使用し得ることを理解するであろう。当業者は、本発明の態様のシステムおよびデバイスを本発明の方法のいずれかとともに使用することができること、ならびに本発明のシステムおよびデバイスのいずれかを使用して本発明の任意の方法を実行することができることを理解するであろう。様々な特徴を含む態様はまた、それら様々な特徴のみからなるものでもよいし、それら様々な特徴から本質的になるものでもよい。本発明の他の態様が、明細書の考察および発明の実施から、当業者には明らかであろう。提供される発明の説明は、単に例示的な性質であり、したがって、本発明の本質を逸脱しないバリエーションは、本発明の範囲内にあることを意図したものである。
【0008】
本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記される、または図面に示される構造の詳細および構成部品の配置へのその適用に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の態様に処されること、または様々な方法で実施もしくは実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる術語および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定的とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0009】
別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語は、この技術および方法論に包含される技術分野の当業者によって一般的に理解または使用されるものと同じ意味を有する。
【0010】
本明細書において挙げられる文書および参考文献は、2017年12月23日に出願され、2019年6月27日にWO2019/125502A1として公開されたPCT/US2017/068373、2019年3月20日に出願され、2019年9月26日にWO2019/183199A1として公開されたPCT/US2019/023130、2019年4月8日に出願され、2019年10月10日にWO2019/195836A1として公開されたPCT/US2019/026335、2019年9月9日に出願された米国特許仮出願第62/897,437号および2020年7月8日に出願された米国特許仮出願第63/049,499号をはじめとして、全体として本明細書に組み入れられる。
【0011】
本明細書において提供される新規な発明は、レーザフォース分析機器などの分析機による評価のために生物学的試料の手動および自動化調達および調製を可能にするデバイス、システム、およびそれらの使用方法を含む。試料は、バイオリアクタをはじめとする任意のコンテナから調達され得、さらに、ナノ/マイクロ/ミリ流体量を含む任意の量で調達され得る。
【0012】
本明細書において提供される新規なデバイスおよびシステムは、試料が1つまたは複数のバイオリアクタまたは他の容器から採取されたのち分析機器に導入される、1つまたは複数のマイクロ流体試料採取デバイスを含む。本明細書において使用される「バイオリアクタ」という用語は、「容器」という用語と交換可能に使用され、細胞を保存または処理する(細胞を培養することを含む)ために使用される任意のコンテナ、たとえばフラスコ、ボトル、試験管、スライド、バッグ、マイクロタイタープレート、マイクロタイターディッシュ、マルチウェルプレート、培養皿、透過性支持体などを含むものと理解することができる。システムは、任意で、分析のために試料の調製を可能にする多様な特徴および能力を含み得る。1つの態様において、システムは、バイオリアクタからの細胞を特定の緩衝液または流体で希釈して所望の濃度を達成する能力を提供する。システムはまた、任意で、マイクロキャリアまたは他の適当な基材上で増殖する接着細胞を剥離させ、その後、懸濁した細胞をマイクロキャリアから分離したのち、分析機器に導入する能力を含み得る。
【0013】
本明細書において考慮されるデバイスおよびシステムは、ある場所から別の場所への試料の流れを可能にするプロセスを支援する特徴を含む。本明細書において説明されるすべての形態の態様におけるすべての流体は、圧力または真空駆動の流れ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプを介するポンピングなどにより、ある場所から別の場所へと移動され得、それにより、流れの方向は、そのような力、弁構成、および含まれる管系によって決まる。
【0014】
図1はシステムの1つの態様を提供する。システムが試料にアクセスするために、試料を調達するための抽出デバイス、たとえば無菌ディップチューブ(102)がバイオリアクタ(100)中に配置されている。試料採取中、バイオリアクタからの流体がディップチューブ(102)中に吸い上げられ、その後、弁(104A)を通過したのち希釈装置(110)に流れ込む。細胞を所望の目標濃度に希釈するために、希釈または試薬添加に使用される溶液(106B)(必要ならば)が弁(116)を通過し、希釈装置(110)に流れ込む。(106B)の流量は、一定範囲の目標濃度を達成するために、当業者に公知の方法にしたがって調節し、カスタマイズすることができる。次いで、試料は機器インタフェース(115)に移動し、この機器インタフェースは、分析機器(114)への容易かつ確実な導入を可能にする手段で試料を提示するように設計されている。
図1中、(110)と(115)との間に示すように、システムは、試薬、緩衝液、および洗浄液を複数の方向に移動させる能力を有する。希釈装置(110)および機器インタフェース(115)は、
図1に示すように別々のデバイスであってもよいし、両方の機能を遂行する単一の一体化デバイスへと結合されてもよいことに留意することが重要である。廃棄物(112)を、
図1に示すように希釈装置(110)から排出することもできるし、必要に応じて機器インタフェース(115)から排出することもできる。
【0015】
図2は、接着細胞がバイオリアクタ内のマイクロキャリア上で増殖している場合に使用されるデバイスの任意の追加を示す。この態様においては、マイクロキャリアに付着した細胞を含有する試料がバイオリアクタ(100)から取り出され、まず、マイクロキャリア分離デバイス(109)に導入されると、このデバイスが、マイクロキャリアから細胞を剥離させ、懸濁した細胞とマイクロキャリアとを異なる流体流へと分離する。マイクロキャリア分離デバイス(剥離工程をも実行するわけではない)は当業者に公知であり、本明細書において使用される場合、細胞を他のデバイスから分離し、細胞が分析目的に利用可能になるように細胞の分離を可能にするようなすべてのデバイスを含む。例は、HARVESTAINER(商標)システム(Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)および剥離後のマイクロキャリアからの細胞の大規模バルク分離のために設計された他のフィルタベースのシステムを含む。処理後、剥離された細胞は希釈装置(110)へと進み、その間、マイクロキャリアは装置を出て廃棄物(119)に入る。細胞は、酵素的、化学的、熱的、または機械的方法を含むいくつかの方法によってマイクロキャリアから分離され得る。化学的および酵素的方法は、トリプシン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または他の適当な酵素もしく薬品などの溶液(117)を、マイクロキャリア分離デバイス(109)に添加することを必要とし得る。細胞がマイクロキャリアから剥離され、分離されたならば、システムの残りの部分が上記のように機能して、試料は希釈装置(110)を通過し、次いで機器インタフェース(115)を通過したのち、分析機器(114)に入る。マイクロキャリア分離デバイス(109)、希釈装置(110)、廃棄物回収(112)、および機器インタフェース(115)は、
図2に示すように別々のデバイスであってもよいし、3つの機能すべてを遂行する1つの一体化デバイスまたは一緒に使用されると3つの機能すべてを遂行する2つのデバイスへと結合されてもよいことに留意することが重要である。
【0016】
図1および2に提示する態様は、連続的な試料採取を可能にする。これは、逆流および汚染を防止するために、システムがバイオリアクタ(100)から試料を絶えず取り出していることを意味する。取り出される量は、プロセス全体に悪影響を及ぼさないような十分に低い量であり、必要に応じて、細胞濃度、プロセス設計および試料採取形態に依存して調整することができる。弁(104A)は、必要に応じて閉じることができるアクティブ制御弁または逆流および汚染をさらに防止するために、バイオリアクタからの流出のみを可能にするパッシブ一方向逆止め弁である。
図1および
図2の態様には1つの弁しか示されていないが、必要に応じて、マルチポート/マルチウェイ弁を含む1つまたは複数のタイプの複数の弁を、流体システム全体における任意の地点に用い得ることが予想される。弁は、手動で制御されてもよいし、電子またはコンピュータ化機構を介して自動化されてもよい。
【0017】
図3A、3B、および3Cには、セグメント化(連続的とは逆)試料採取形態が提供されている。試料採取工程において、バイオリアクタからの試料が上述の力によって引き上げられ、一連の弁(104Aおよび104B)を通過する。最初の弁はデコンタミネーション液(108)を試料ラインに接続して、試料分析後の洗浄を可能にする。
図3A中、弁は試料を通過させるために開いているが、デコンタミネーション液に対しては閉じており、デコンタミネーション液が試料と混ざらないことを保証する。次いで、試料は弁104Bを通過し、ここで、試料は、希釈に使用される溶液(106A)と接触する。バイオリアクタから採取される試料の量を最小限にし、チューブライン中の試料沈降を避けるために、106Aの希釈溶液は、試料を希釈装置(110)に速やかに送り込むためのものである。ここで、希釈に使用される、より多量の溶液(1つまたは複数のタイプ)(106B)を導入して、分析機器(114)への導入の前に、機器インタフェース(115)に入る前の試料を適切な濃度まで速やかに希釈してもよい。試料調製後に廃棄物が希釈装置を出る(112)。
図3A~3Cには示されていないが、
図2に示すような、マイクロキャリア分離デバイス(109)をも含むであろうマイクロキャリアシステムとともにセグメント化試料採取形態を使用することもできる。
【0018】
図3Bは、試料分析後のデコンタミネーション工程の構成を示す。第一の三方弁(104A)は、デコンタミネーション液に対して開いているが、試料に対して閉じている。第二の三方弁(104B)は、溶液(106A)に対して閉じているが、ラインを通して希釈装置(110)へのデコンタミネーションを可能にするために開いている。弁(116)もまた、希釈装置中のデコンタミネーション液の希釈を防止するために閉じている。デコンタミネーション液は、機器インタフェース(115)を通って分析機器(114)の注入ポートの中へ流れ続ける。このシステムにおいては、試料ごとにライン全体が洗浄され、それにより、試料の無菌性を保証し、汚染を防止する。ライン全体が洗浄されると、廃棄物(112)が希釈装置(110)または機器インタフェース(115)を出る。
【0019】
図3Cは、
図3Bに続く洗浄工程を示す。デコンタミネーション液(108)をラインから取り出し、ラインを次の試料のために準備するために、希釈液がライン全体を洗浄する。弁104Aは、試料に対して閉じたままであり、デコンタミネーション液に対して閉じている。弁104Bは開かれて、106Aからの溶液がラインに導入され、希釈装置(110)に入るようになっている。弁116もまた開いており、106Bからの溶液が希釈装置に入って、次の試料に備えて希釈装置を徹底的に洗浄することを可能にする。次いで、緩衝液(106B)が機器インタフェース(115)を通過し、分析機器(114)の注入に達して、廃棄物(112)への排出の前にラインを洗浄する。
【0020】
複数のバイオリアクタから試料採取するように設計された態様は、先に
図1、2、3A、3B、および3Cに記載した概念を使用して実装することもできることに留意すべきである。試料が2つの別々のバイオリアクタ(100(i)および100(ii))から得られ、分析機器(114)に導入される1つの態様が
図4に示されている。図示する態様において、別々のリアクタそれぞれからの試料は、別々の異なる希釈装置(110(i)および110(ii))に流れたのち、多重機器インタフェース(125)へと合流する。多重機器インタフェース(125)は複数のインプットからの流れを受け入れ、これらの流れは順次、アウトプットを通して分析機器(114)の中へ送られる。試料は、別々のバイオリアクタ(110)それぞれからの正確な試料採取を可能にするために、別個のままである。これを達成するための具体的な設計は後で説明する。適切な物理的分離または洗浄工程を用いて、試料を別個かつ分離された状態に維持する。
図4には2つのリアクタが示されているが、多数のリアクタを接続することもできる。
【0021】
本発明のさらなる特徴は、
図5に示すような連続フィードバックモニタリングシステムにおける前記態様および手順を含む。1つの態様において、バイオリアクタ(100)の状態は、インプット1(118)およびインプット2(120)の様々な導入によって維持または調整されるが、代替態様においては、任意の数のインプットを使用することができる。動作中、分析機器(114)は、バイオリアクタ内の条件を調整するためにバイオリアクタの状態をモニタし、それは、インプット1(118)および/またはインプット2(120)からのインプット流を調整することを含むことができる。1つの態様において、分析機器からの測定値は、その後、制御システム(122)に送られ、この制御システムが、必要に応じてバイオリアクタ(100)に変更を指示する。制御システムは、1つまたは複数のデバイスから収集されたデータに基づいてバイオリアクタへの、またはバイオリアクタ内の変更の手動または自動化調整を可能にする、コンピュータなどのモニタリング部品を含む。これらの変更としては、栄養を導入するための試薬もしくは他の溶液の導入、pHの調整、細胞培養条件の変更または細胞状態の変更ならびにガス濃度もしくは散布速度、温度または混合速度の変更があるが、これらに限定されない。この局面が、リアルタイムの生産ラインモニタリングおよび調整を可能にして、バイオリアクタがより正確なやり方で作動して、生産時間、効率、品質、またはそれらの任意の組み合わせを高めることを可能にする。複数のバイオ生成物を導入することができ、複数のバイオリアクタをこのセットアップ中で使用することができる。このセットアップはまた、バッチ、フェッドバッチまたは連続動作モードで作動させることもできる。
【0022】
さらなる態様において、デバイスおよびシステムはさらに、内蔵デュアルバイオリアクタシステムを含む。第一のバイオリアクタ(124)が、分析機器(114)が接続されている第二のバイオリアクタ(92)へのインプットとして働く1つの態様が
図6に示されている。動作中、分析機器(114)は、バイオリアクタ(92)内の状態および発生する任意の変化をモニタする。次いで、測定値および情報を、互いの相互作用を調整するために、バイオリアクタと通信するコンピュータ(122)に送ることができる。分析機器は、それぞれが1つのソースバイオリアクタ(124)に接続するか、またはそれぞれがそれ自体の別個のソースバイオリアクタに接続する、複数のバイオリアクタとペアにされてもよい。試料採取、デコンタミネーションおよび洗浄の手順は、先に詳細に説明した工程に類似している。このセットアップはまた、バッチ、フェッドバッチ、または連続動作モードで作動させることもできる。
【0023】
図7は、一体化希釈装置(110)・機器インタフェース(115)の1つの態様を提示する。これは、チャンバの底部に3つポートを有するオール・イン・ワン型チャンバ(128)である。希釈ポート(144)は、速やかな希釈のために、(106B)からの流体が二方弁(116)を通ってチャンバを満たすことを可能にする。廃棄物ポート(148)は、チャンバ中の流体がチャンバを出て廃棄物(112)に達することを可能にする。注入ポート(146)は、バイオリアクタからの試料(102)と(必要ならば)急速移動緩衝液(106A)とが弁104Bで合流し、チャンバに入ることを可能にする。試料採取工程中、廃棄物弁(126)は閉じて、流体がチャンバから出るのを防ぐ。試料および希釈液はそれぞれのポートから入り、適した濃度に達するまでチャンバを満たす。適した濃度に達したならば、流体は分析機器(114)に入り、そこで、その時点のバイオリアクタ状態に関して試料が分析される。試料の分析後、廃棄物弁(126)は開き、残りの流体を廃棄物へと抜くことを可能にする。その後、廃棄弁は、緩衝液からの弁(
図3A~C、106AおよびB)と同様、再び閉じられる。デコンタミネーション液(108)がオール・イン・ワン型チャンバに引き込まれてチャンバを満たし、次いで分析機器に引き込まれて、次のランに備えてラインを洗浄し、滅菌する。チャンバ中の残ったデコンタミネーション液は、弁(126)の開放によって廃棄物(112)へと排出される。次に、弁(126)が再び閉じ、緩衝液への弁が開かれ、オール・イン・ワン型チャンバは緩衝液で満たされてデコンタミネーション液を洗い流す。次いで、緩衝液は、一定期間、分析機器に流れたのち、廃棄物(112)を介してオール・イン・ワン型チャンバから排出される。オール・イン・ワン型チャンバ(128)は、それが適した量の流体を収容することができ、希釈済み試料がチャンバを出て分析機器(114)に入ることができる限り、様々な方法で成形することができる。
【0024】
複数のバイオリアクタを使用する構成においては、対応する数のオール・イン・ワン型チャンバ(128)があり、それらは、すべてを同じ材料に収容することもでき、必要に応じて、互いから切り離すこともできる。各オール・イン・ワン型チャンバは、すべてのバイオリアクタ、弁、希釈装置、および管系が1つの分析機器に到達するように、対応する回数だけ
図3Aを反復するようなやり方でそれ自体のバイオリアクタに接続する。各バイオリアクタは、無菌性および流体移動の効率を保証するためにそれ自体の流体のセット(106A、106B、108)を有する。オール・イン・ワン型チャンバにおいては、各緩衝液ポート(144)がそれ自体の緩衝液(106B)に接続し、各注入ポート(146)がそれ自体の三方弁(104B)を介してそれ自体のバイオリアクタディップチューブ(102)および急速移動緩衝液(106A)に接続し、各廃棄物ポート(148)が共用の廃棄物(112)に通じる。このような構成は、非セグメント連続流および速やかな試料調製を可能にして、待ち時間を防ぐ。
図8は、4つのオール・イン・ワン型チャンバを使用するそのようなセットアップの1つの態様を提供する。図示する描写において、オール・イン・ワン型チャンバ(128-2)は、特定のチャンバからの試料が測定のために分析機器(114)に入る試料採取工程で示されている。オール・イン・ワン型チャンバ(128-1)は、(128-2)中の試料の直前に処理された試料を表す。オール・イン・ワン型チャンバ(128-1)は、上述し、
図3Bに示すようなデコンタミネーションおよび洗浄手順を受けている。オール・イン・ワン型チャンバ(128-3)は、次の試料の分析に備えている。廃棄物弁(126-3)は閉じられ、緩衝液(106A-3および106B-3)がバイオリアクタ3からの試料(102B-3)とともにオール・イン・ワン型チャンバに入る。(128-2)からの試料が終了すると分析機器がすぐに(128-3)からの測定を開始することができるよう、直前の試料が処理されている間に適した希釈が起こる。オール・イン・ワン型チャンバ(128-n)は、システム中の他すべてのオール・イン・ワン型チャンバを表す。廃棄物(112-n)は、緩衝液(106A-n)および(106B-n)のための弁と同じく開いており、オール・イン・ワン型チャンバを通過する一定流量を可能にする。この一定流量手順は、オール・イン・ワン型チャンバ(128-n)を通して1~n個のバイオリアクタに対して実施することができ、流体流の途切れをなくすことで、試料が移動するのに許容可能な環境を維持する。緩衝液の一定流量はまた、特定のバイオリアクタからの各試料後のデコンタミネーション液の使用を任意選択にして、試料採取速度を高め、試料と過酷な環境との接触を減らす。デコンタミネーション液(108)は、バイオリアクタ稼働の終了時に、システムをデコンタミネーションするために使用することができる。試料は、管系などの接続機構によって各試料採取チャンバから分析機器へと輸送される。特定の態様においては、マルチポート弁の使用を通して接続が容易になる。
【0025】
緩衝液を常に流し、最後までデコンタミネーション液を使用しないことを選択するシステムにおいては、バイオリアクタ(100)からの試料を、その特定のオール・イン・ワン型チャンバ(128)に常に引き込むこともできる。試料を常に引き込み、弁(104A)および(104B)を開放状態に維持することは、特定のバイオリアクタの測定間で、ディップチューブ(102)から引き出された試料がバイオリアクタに戻り、それによってリアクタ全体を汚染することがないことを保証する。上記の流体力を使用すると、その時点で分析機器によって試料採取されていないオール・イン・ワン型チャンバへの試料および緩衝液の流量を最小限にして、リソースを浪費しないようにすることができる。すべての流体流量は、高精度かつ高正確度のリアルタイム調整を実施して試料採取の完全性を保証するために、変更可能であり得る。
【0026】
図7および8に記載する態様はまた、一体化希釈装置(110)・機器インタフェース(115)とは違って、希釈装置(110)として使用してもよいことに留意することが重要である。希釈装置として使用される場合、試料は、希釈装置(110)を出て、別個の機器インタフェース(115)に入ったのち、分析機器(114)に導入される。このインタフェースは、液滴またはプラグを使用して試料を分割すること、または分析機器と正しくインタフェースするために必要に応じて他の操作を実行することを含め、試料に対して他の操作を実行するために使用されてもよい。この1つの態様が
図9に示されている。
【0027】
希釈装置(110)の別の態様が
図10に示されている。
図10は、適した試料濃度への適した希釈に必要な任意のマイクロサイズおよび形状のマイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体T字混合および希釈デバイスを示す模式図である。この図においては、ディップチューブ(102)からの試料が試料導入チャネル(134)を通ってマイクロ流体T字ミキサに入る。必要に応じて、速やかな試料移動および希釈のために使用される緩衝液(106Aまたは106B)が、デバイス(136)の両側の緩衝液チャネルによって入り、混合交差点(160)で、試料とは(ほぼ)垂直に、かつ互いとは直線的に衝突する。大量の緩衝液とより少量の試料との直角での衝突は、層流経路を乱し、混ざり合い、試料を所望の濃度へと希釈する。次いで、試料は、分析機器(114)に直接流入する、または機器インタフェース(115)に入ったのち分析機器(114)に流入する。デコンタミネーション液(108)は、上記デコンタミネーション手順中にデコンタミネーション液がマイクロ流体T字ミキサに入って洗浄する方法を例示するために、緩衝液チャネル(136)の1つのための任意選択の供給源としてリストされている。
【0028】
複数のバイオリアクタの場合、複数のマイクロ流体T字ミキサ(
図10)を並列に使用してもよいし、マイクロ流体T字ミキサが、複数の混合交差点(160)で複数の緩衝液チャネル(136)と交差する複数の試料導入チャネル(134)を有することもできる。
【0029】
図11は、希釈装置(110)の別の態様を示す。このマイクロ流体オフセットT字ミキサは
図10のものに類似するが、緩衝液チャネルが、混合交差点(162)で、試料が急速な衝突を経験して層流ラインを乱すのに十分な近さの任意の距離だけ互いからずれている。この構成は、試料が分析機器(114)に入る前に、潜在的により高い効率で混合および希釈を保証することができる。本発明の他の構成と同じく、
図11に示すチャネルは、評価される試料の性質に依存して、また、他の考慮事項、たとえば評価される流れ、分析パラメータおよび特性に依存して、サイズ、形状、および配置が変更されてもよい。
【0030】
複数のバイオリアクタの場合、複数のマイクロ流体オフセットT字ミキサ(10)を並列に使用してもよいし、マイクロ流体オフセットT字ミキサが、複数のオフセット混合交差点(162)で複数のオフセット緩衝液チャネル(136)と交差する複数の試料導入チャネル(134)を有することもできる。
【0031】
図12は、マイクロ流体マルチプレクサチップである、希釈装置(110)の別の態様を示す。この態様において、複数のバイオリアクタからの試料は、すべてが1つの混合・希釈位置(142)に集束する複数の試料導入チャネル(134)を介してマルチプレクサチップに入る。試料、緩衝液(106A)、およびデコンタミネーション液(108)は、すべて弁(104B)を介してチップに到達するため、試料導入チャネルの供給源は弁(104B)によって表される。その時点で試料採取していないバイオリアクタの場合、対応するチップ導入弁(140)は閉じられて、別の試料が逆流し、他のラインを汚染するのを防ぐ。1つのバイオリアクタからの試料は、緩衝液106Aによってチップ上に押し出され、混合・希釈位置(142)に達し、そこで、(106B)からの緩衝液が、ポートまたは緩衝液チャネルを通って速やかに入り、試料を希釈し、混合する。次いで、希釈済み試料はマルチプレクサチップを出て、測定のために直接分析機器(114)に入るか、または、まず機器インタフェース(115)に入ったのち、分析機器(114)に入る。上記試料分析ののち、デコンタミネーションおよび洗浄手順が、適した流体を導入チャネル(134)に通すことにより、次の試料のためにマルチプレクサチップを洗浄し、準備する。
【0032】
機器インタフェース(115)の1つの態様が、その使用の一連の工程を例示する
図13A~Dに示されている。
図13Aに示す1つの態様において、希釈装置(110)からの希釈済み試料は3つの弁(202A、204、および202B)を通って移動する。真ん中の弁は分注マニホールド(206)内に収容されている。試料採取していない間、希釈装置(110)からの流体流は、一定流量のプロセスの間、廃棄物(112)に達する。分注マニホールドは分注針またはチューブ(208)を有し、通常、分注針またはチューブは、その流れが三方弁(204)によって封鎖されている。(110)からの流体流は、デバイスを通る流体の一定流量を維持する、または直前の試料を洗い流すために、主に希釈液であり得る。試料採取中、(110)からの流体流は、分析機器(114)に導入される細胞を含む。これの1つの態様が
図13Bに示されている。弁(204)が分注針(208)に対して開き、その間、廃棄物への弁(202B)が閉じて、希釈装置(110)からの希釈済み試料をウェルプレート(212)の中に分注する。1つの態様において、分注マニホールド(206)は、それ自体のポンピングシステム、たとえば圧力駆動流またはシリンジ、蠕動もしくはダイアフラムポンプを含んでもよく、またはそれらを取り付けられていてもよい。ウェルプレート(212)は、任意の数のウェル、たとえば384個、192個、96個、48個、24個、12個、または6個のウェルを有することができ、カスタムまたは標準的な形状寸法であり得る。ウェルプレート(212)は、三次元運動軸を可能にするモーションプラットフォーム(218)上に配置され、それによって保持されるであろう。指定された量の希釈試料が希釈マニホールド(206)から個々のウェルの中に分注されたならば、ウェルプレートは、モーションプラットフォームを介して、経路(222)に沿って、分析機器(114)の底部または下に位置する注入マニホールド(214)まで移動して、注射針(216)がその特定の試料中に沈められることになる。
図13Cは、ウェルプレートが注入位置へと移動する様子およびモーションプラットフォームが垂直移動のための機構(220)を組み込んでいることを示す。次いで、試料は、測定のために分析機器(114)の中に進む。試料をウェルプレートに充填したのち、弁(204)が分注針に対して閉じ、弁(202B)が廃棄物に対して開いて、一定流量プロセスを再開する。後続の試料は、同様のやり方で、ウェルプレート内の位置のいずれかに分注することができる。モーションプラットフォーム(218)は、プレート中のウェルのいずれか1つを分注マニホールド(206)と注入マニホールド(214)の両方に近づけることを可能にする。
【0033】
複数のバイオリアクタを有する構成においては(たとえば、バイオリアクタの数はNである)、対応する数の分注マニホールド(206)が存在する(たとえば、分注マニホールドの数はMである)(Mは、構成およびセットアップに依存して、Nと同じ数またはNとは異なる数である)。
図13Dは、複数のマニホールドからの複数の試料を直列的に(一度に1つの試料を1つのマニホールドからウェルプレートに)または並列的に(複数の試料を同時に複数のマニホールドから1つまたは複数のウェルプレートに)充填することを可能にするために複数のマニホールドを配置する方法を例示する平面図を示す。
図13Dはまた、モーションプラットフォーム(218)による、分注マニホールドと注入マニホールド(214)との間のウェルプレート(212)の移動経路(222)の平面図を示す。
【0034】
図13A~Dに示す態様はまた、複数のウェルプレートの使用を含み得る。本態様はまた、連続マイクロ流体試料採取デバイスの適した機能および形態のために必要であるような、各種マニホールド、ウェルプレート、ならびに注入針および分注針などの任意の部品の動きの使用を含む。
【0035】
図13A~Dに示す態様は、分注マニホールド(206)および注入マニホールド(214)のための2つの別々の位置を示す。しかし、代替態様は、
図13Eに示すように、それらを分析機器内(または外)の単一の接続された位置へと合わせるであろう。この場合、試料は、バイオリアクタから分注マニホールドを通してウェルプレートの中に引き込まれるであろう。注入経路またはチューブ(380)は、分析機器から分注マニホールドと注入マニホールドの両方を通って延びている。
図13Eに示すように、注入チューブが、分注マニホールド(206)と注入マニホールド(214)の両方を通過するのに十分なほど小さく、その結果、ウェルプレートから分析機器への直接流路が得られる1つの態様が存在する。換言するならば、分注マニホールドの側方から(弁202Aおよび202Bを通って)来る流体は、注入チューブ中の流体と接触しないであろう。これは、2つの異なる流路を維持し、試料が分析機器に入るための注入流路を途絶させることなくウェルからの試薬の分注または除去を可能にするため、きわめて重要である。封止または別々の流れを生成するために、必要に応じて、気密継手またはポート(390)を取り付けることもできる。
図13Eの態様は、図示する態様においてはマニホールドの上部および底部を通って延びている注入チューブ(380)の他に、試薬または試料が入るための2つのポート(左右に示す)を示す。しかし、注入チューブの他に1つのポートしか有しないかまたは注入チューブの他に2つよりも多いポートを有するさらなる態様が存在してもよく、または注入ポートもしくはさらなるポートの位置を調整してもよい。
【0036】
図13Fは、
図13Eに示す態様と同様に、一体化された分注マニホールド(206)および注入マニホールド(214)を使用して、マイクロキャリアから剥離された細胞を分析機器に導入するためのシーケンスを示す。第一の工程において、細胞(312)が付着したマイクロキャリアを、バイオリアクタ(100)または他の外部供給源から分注マニホールドを介してウェルプレート(212)の中に分注する。続いて、細胞が付着したマイクロキャリアを沈降させたのち、上澄み液を除去する。次いで、異なる溶液を、分注マニホールドを介してウェルプレートの中に加える。
図13Fの双方向矢印によって示すように、必要に応じて、任意の回数の吸引および分注サイクルを実行することができる。これらのサイクルが完了したのち、細胞を剥離させるように設計された試薬をウェルプレートに加え、一定期間インキュベートする。このインキュベート中、必要に応じて混合を実施することもできる。インキュベーション期間の終了時、細胞(306)は、その時にはコーティングのない/裸のマイクロキャリア(304)から剥離する。続いて、合わせた溶液を混合することができる。短い沈降期間ののち、マイクロキャリアはウェルプレートの底に位置するが、2つの種の間で沈降速度に大きな差があるため、細胞はよく混ざる。これは、注射針(216)が細胞を優先的に採取することを可能にするが、マイクロキャリアを採取することは可能にしない。
図13Fには弁が示されているが、
図13Eに記載されたマニホールドなどの他の設計または構造を使用して、試料採取容器からウェルプレートの中へと、およびウェルプレートから分析機器へと移動する様々な流れを優先的に指向および/または隔離させることができる。
【0037】
図13Gは、剥離された細胞とマイクロキャリアとの混合物からRADIANCE(登録商標)Laser Force Cytology機器上に収集された代表的なデータを示す。Vero細胞を、無血清培地または血清含有培地のいずれかの中の、マイクロキャリア上で増殖させた。回収時、細胞をマイクロキャリアから手動で剥離させ、次いで、細胞とマイクロキャリアとの混合物を、RADIANCE(登録商標)による分析のために、96ウェルプレートにロードした。
図13Gi~ivは、速度、サイズおよび偏心度を含むいくつかのRADIANCE(登録商標)測定における両培地条件の場合の複数のウェルの全母集団的平均と、細胞300個の目標カウントに到達するための平均捕捉時間とを示す。
図13Gvは、両培地条件の場合の代表的なサイズ対速度の散布図を示す。各記号が単一細胞からのデータを表す。
【0038】
バイオリアクタ試料取り扱い手順の一部として、本発明はまた、細胞からのマイクロキャリア除去に必要なデバイス(109)を含み、1つのそのような態様の模式図が
図14に示されている。このデバイスは、本明細書において記載される試料採取システムの態様のいずれかとともに使用することもできるし、バイオリアクタまたは精製中の試料のバイオ生成物分析においてユーザーを支援するためのスタンドアローンデバイスとして使用することもできる。デバイスの2つの態様の模式図が示されている(
図14Aおよび
図14B)。両態様において、デバイスへのインプットは、マイクロキャリアに付着した細胞からなるが、第一のデバイスにおいて、マイクロキャリアからの細胞の剥離は、剥離した細胞および空のマイクロキャリアの物理的に別々の流れへの物理的分離からは、別個のサブデバイス(220)中で起こる。したがって、剥離デバイス(220)のアウトプットは、マイクロキャリアが散在する遊離細胞の1つの流れである。次いで、剥離サブデバイス(220)のアウトプットが分離サブデバイス(230)のインプットとなり、そのアウトプットは、1つのチャネルまたはチューブ中の細胞と、別のチャネルまたはチューブ中のマイクロキャリアである。デバイスの第二の態様において、剥離と分離とが同じデバイス(240)中で起こり、そのアウトプットは、1つのチャネルまたはチューブ中の細胞と、別のチャネルまたはチューブ中のマイクロキャリアである。任意のマイクロキャリア除去デバイス態様において、マイクロキャリアからの細胞の剥離の形態は、化学的、生化学的(たとえば、トリプシンまたは同様に機能的なプロテアーゼなどの酵素を用いる)、機械的、熱的、光学的、電気的、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。さらに、剥離された細胞をマイクロキャリアから物理的に分離する分離力は、光学的、重力的、電気的、磁気的、流体的、機械的、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。試料採取に使用される1つの態様において、細胞のアウトプット流は最終的に分析機器(114)に導入されるであろう。しかし、代替態様は、細胞流またはマイクロキャリア流のいずれかを任意の数の分析、精製、または収集のデバイス/機器に送ることもできる。加えて、同じマイクロキャリア上で共培養されたまたは異なるマイクロキャリア上で培養された、複数の細胞タイプを含めることもできる。この状況においては、剥離された細胞を、サイズ、密度、誘電電位、光学的、磁気的、または他の手段に基づいて分離するためのさらなる要素が導入されてもよい。
【0039】
一体化マイクロキャリア除去デバイスの1つの具体的な態様が、
図15Aに示されている。デバイスのインプットは、バイオリアクタ(100)または他の供給源からの、細胞または他のバイオ生成物が付着したマイクロキャリア(312)を含む。マイクロキャリア(312)は、大きな導入チャネル(314)を介して除去チャンバに入り、その中で、任意で、トリプシンまたは剥離および/または抗接着に使用される任意の物質が別個のインプット(302)を介して導入される。次いで、マイクロキャリアは、バイオ生成物がマイクロキャリアから分離する反応ゾーン(308)を通過する。反応ゾーン(308)は、
図15に表すものよりも相対的に長くても短くてもよく、波線はそれを示すことを意図したものである。反応ゾーン(308)の長さおよび寸法は、時間、チャネル長、慣性集束、またはそれらの任意の組み合わせに相関させてもよい。
図15には水平に示されているが、反応ゾーンは、細胞の効率的な剥離を促進するために、
図16に示すように垂直(重力の方向と平行)であることもできるし、重力に対して斜めであることもできる。反応ゾーン(308)の終了までに、細胞/バイオ生成物(306)の全部ではないにしても大部分がマイクロキャリア(304)から剥離し、同じチャネル中を一緒に流れている。それらが分離チャンバ(320)に入ると、マイクロキャリア(304)は、それらのより大きなサイズのせいで、細胞(306)から離れる。チャンバ(320)の寸法は、マイクロキャリアはそれらのより速い沈降速度の結果として廃棄物チャネル(119)に落ち込むが、遊離細胞は希釈装置(110)または別個のデバイス上に移動するような寸法である。
【0040】
図15Bは、細胞が沈降し、希釈装置(110)または細胞が入った位置よりも低い位置にある別個のデバイスに移動しているため、細胞を少ししか、またはほとんど含まないさらなる水平チャネル(307)を含むデバイスの別の態様を示す。
【0041】
図15Cは、(306)とは特徴が異なるさらなる細胞タイプ(305)が(306)とともにマイクロキャリア上で増殖する別の態様を示す。
図15Cは、同じマイクロキャリア上で一緒に増殖した細胞を示すが、それらを全く別々のマイクロキャリア上で増殖させ、かつデバイスが同様の様式で機能することも可能である。細胞タイプ(305)はまた、目標産物の生産増加またはバイオリアクタ中の生存率改善など、何らかの望ましいやり方で様々な特徴を有する(306)の部分集団であってもよい。この態様においては、沈降速度の差に基づいて複数の細胞タイプおよび集団を分離するために、1つまたは複数のさらなる細胞チャネル(309)が含まれる。
【0042】
垂直反応ゾーン(308)を含むさらなる態様が
図16に示されている。この態様において、分離チャンバ(320)はなおも水平であり、マイクロキャリア(304)が細胞(306)とは別個の流れに落ち込むように構築されており、これが、マイクロキャリアが、異なる出口チャネル(この態様においては、マイクロキャリア廃棄物(119))および希釈装置(110)へと分離されることを可能にする。
【0043】
図17は、反応ゾーン(308)は垂直であるが、分離される細胞(306)およびマイクロキャリア(304)が分離ゾーン(320)に入るとき、加えられる力(325)を使用してマイクロキャリア(304)が優先的に別個の流体流および廃棄物(119)へと押し込まれ、遊離細胞が希釈装置(110)または別個のデバイス上に移動する、デバイスの別の態様を示す。この分離は、細胞(306)およびマイクロキャリア(304)が力相互作用ゾーン(330)を通過し、力の差を受けるときに起こる。図示する態様は、ビームの形状に基づいて力相互作用ゾーン(330)を生成する光学力を示す。しかし、力はまた、電気的、磁気的、流体的、機械的、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。図示するように、力(325)は水平方向に作用し、細胞(306)およびマイクロキャリア(304)が分離ゾーン(320)に入るときそれらの流体流に対向する。しかし、力はまた、これらの種が垂直流から水平流へと移行する前または移行するときに、これらの種に対して作用することもでき、たとえば、力(325)は、直交方向または斜めに作用することになる。
【0044】
力(325)が流れの方向に対して斜め、かつその方向に作用してマイクロキャリア(304)を下流体流の中へ押し下げ、その後、チャンバの底部から出して廃棄物(119)の中に入れる、この別の態様が
図18に示されている。この態様においては、分離効率を最大化するために、必要に応じて角度を変えることができる。
【0045】
マイクロキャリア分離デバイスの別の態様が
図19に示されている。前記のように水平または垂直のいずれであってもよい反応ゾーン(308)ののち、遊離細胞(306)およびマイクロキャリア(304)は分離ゾーン(320)に入り、ここで、より高密度の流体(350)が下方のチャネルから導入され、この下方のチャネルは、細胞(306)およびマイクロキャリア(304)を運ぶ上方のチャネルと合流する。(350)の密度は、細胞(306)およびマイクロキャリア(304)が移動するところの流体の密度よりも高く、2つの間の密度差により、より高密度の種(図示では細胞であるが、実際には、細胞またはマイクロキャリアのいずれであることもできる)が密度勾配(360)よりも下に落ち、より低密度の種がチャネルの上部に残る。分離が起こることを可能にする指定されたチャネル長ののち、より高密度の種は下方のチャネルを通って出、より低密度の種は上方のチャネルを通って出る。図示するように、より低密度のマイクロキャリアは119まで移動し、より高密度の細胞は希釈装置(110)または別個のデバイスへと移動する。明確な界面として示されているが、密度勾配はまた、流体の組成ならびにデバイス内の形状寸法および動作条件に依存して、離散的であるよりも連続的であってもよい。
【0046】
図19に示すデバイスと同様に機能する別の態様が
図20に示されている。しかし、より高密度の流体(350)は、別個の相の高密度液、たとえば油または水溶性二相系(ATPS)中を移動することによって離散的なプラグまたは液滴(365)へと分割される。デバイスの上方のチャネルと下方のチャネルが合流すると、密度差と位相差の両方により、より高密度の流体は離散的部分中に残り、細胞(306)は流体プラグまたは液滴(365)の中に落ち込むことができるが、位相差のせいで、(355)に入ることを阻止される。プラグまたは液滴(365)のサイズはまた、サイズ排除によってマイクロキャリア(304)が落下するのを防ぐのに十分なほど小さくチューニングすることもできる。
【0047】
細胞からマイクロキャリアを除去するためのデバイスの別の態様が
図21に示されている。前記のように水平または垂直のいずれであってもよい反応ゾーン(308)ののち、遊離細胞(306)およびマイクロキャリア(304)はチャネルに流入し、サイズ除外に基づいて細胞のみを通過させる選択的バリア(370)に遭遇する。このバリアは、細胞(306)を通過させるのに適当なサイズの穴を有するメッシュまたは膜であってもよく、または細胞(306)のみを通過させるようなやり方で間隔をあけた一連のピラーまたは他の物理的バリアであってもよい。マイクロキャリア(304)は、そのはるかに大きなサイズのせいでバリアを通り抜けることができず、代わりに、沈降によってバリアを滑り落ち、廃棄物チャネル(119)を通って装置を出る。細胞(306)はバリア(370)を通過して希釈装置(110)または別個のデバイスに移動する。デバイスを通過する流れは、バリア(370)に付着したマイクロキャリア(304)を除去するために、連続的または拍動的であり得る。
【0048】
遊離細胞(306)をマイクロキャリア(304)から分離するために使用することができる別の態様が
図22に示されている。前記のように水平または垂直のいずれであってもよい反応ゾーン(308)ののち、遊離細胞(306)およびマイクロキャリア(304)は、チャネルの湾曲および/またはチャネル断面の形状の結果として発生する慣性力に基づいて細胞を分離するように設計されたチャネルまたは一連のチャネルに流入する。チャネルが曲がるとき、マイクロキャリア(304)は、異なる流体層の中へと移動し、したがって、廃棄物(119)に流れることができる別個のチャネルの中へと分離することができる。細胞(306)は別個の層の中に残り、希釈装置(110)または別個のデバイスへと移動する。慣性力はまた、慣性分離の効率を改善し、慣性分離がより多様な流動条件下で作用することを可能にするための方法で配置された別個の力、たとえば、チャネル(325)に重なるビームを出すレーザ(320)の使用による光学力、機械的、磁気的、または電気的力と合わせることもできる。
【0049】
本明細書において、容器から試料を得る工程、試料を処理する工程、および試料を分析機器に輸送する工程を含む、分析のために生物学的試料を調製するための新規なシステムおよび方法が提供される。システムは、容器から試料を抽出するための手段、1つまたは複数の制御弁、1つまたは複数の試薬添加、希釈、または濃縮の機構、1つまたは複数の混合機構および分析機器インタフェースを含む。
【0050】
新規なシステムおよび方法は、細胞、細胞断片、細胞成分、ウイルス、細菌、微生物、病原体、高分子、糖、遺伝物質、核酸、DNA、RNA、転写因子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂質、酵素、代謝産物、抗体、または受容体をはじめとする生物学的試料の評価に使用され得る。本明細書において考慮されるように、生物学的試料が取り出されるところの容器は、当業者には公知であり、バイオリアクタ、フラスコ、ボトル、試験管、スライド、バッグ、マイクロタイタープレート、マイクロタイターディッシュ、マルチウェルプレート、培養皿、透過性支持体などを含む。様々な態様において、分析機器は、レーザフォース分析機器、シーケンス解析機器、PCR分析機器、高速ガスもしくは液体クロマトグラフィー(HPLC)、または質量分析(MS)機を含み得;特定の具体的な態様において、分析機器はRADIANCE(登録商標)機(LumaCyte, LLC. Virginia USA)を含む。システムのさらなる特徴は、無菌ディップチューブおよび/またはマイクロキャリア分離デバイスを含む試料抽出装置を含む。当業者には公知であるように、マイクロキャリアとは、バイオリアクタ中で接着細胞/生物学的粒子の増殖を可能にする支持マトリックスであり;本明細書において記載されるシステムは、流体的、酵素的、生物学的、化学的、電気的、磁気的、熱的、光学的、機械的、または重力的方法の使用を含め、マイクロキャリアからの接着細胞/生物学的粒子の分離を可能にする。特定の態様において、マイクロキャリアは、水平チャネル中の重力的な方法、様々な密度の流体を使用する細胞間の密度差による方法、様々な出口位置を有する垂直チャネル中の作用力を使用する方法、様々な出口位置を有する水平チャネル中の作用力を使用する方法、メッシュ、アングルメッシュ、ピラー、もしくは他の構造物を使用する、流れが連続的または拍動的である、サイズに基づく方法、ならびに/または慣性流体力もしくは慣性力に加えて分離の効率を改善するための他の力(たとえば光学的または電気的)を使用するサイズに基づく方法を含む、様々な方法によって生物学的粒子から分離されるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書において考慮されるシステムおよび方法は、他の試料成分からの生物学的粒子の処理を許して、精製、デコンタミネーション、濃縮、および化学修飾を可能にする。
【0052】
本明細書において考慮されるように、生物学的試料は、圧力または真空駆動の流れ、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、またはダイアフラムポンプを介するポンピングを使用して、容器から分析機器に輸送され、流れの方向は、当業者に公知の機構、たとえば弁構成および管系によって決まり得る。
【0053】
試料採取は連続的でもセグメント的でもよく、特定の態様において、システムは、1つよりも多いバイオリアクタから試料を得る試料採取システムからなる多重システムを含み得る。
【0054】
特定の態様において、希釈、混合、およびインタフェースは同じデバイス中で起こる。
【0055】
特定の態様において、本明細書において考慮されるシステムおよび方法は、制御システムを使用するプロセス制御のためにフィードバックを用いるモニタリングを可能にする1つまたは複数の特徴を含む。
【0056】
特定の態様のさらなる特徴は、マイクロ流体チャネルを用いるマイクロ流体T字混合および希釈デバイスを含み、そのような態様はさらに、ベースT字、オフセットT字、並列のT字、複数の別々のインプットを有するT字、1つに合わさる多重インプットを有するT字の構成を含み得る。
【0057】
特定の態様において、システムおよび方法はさらに、オートサンプラ(およびバリエーション)への試料採取マニホールドチップ/カップおよびインタフェースを含む。
【0058】
本明細書において使用される生物学的粒子という用語は、細胞、細胞断片、細胞成分、ウイルス、細菌、微生物、病原体、高分子、糖、遺伝物質、核酸、DNA、RNA、転写因子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂質、酵素、代謝産物、抗体、受容体、分析対象物などを含むが、それらに限定されない。生物学的試料としては、生きた生物由来の標本、たとえば非限定的に、血液、尿、組織、臓器、唾液、DNA/RNA、毛髪、切り落とした爪、または任意の他の細胞もしくは体液(研究目的に収集されたか、診断、治療、または外科的処置からの残留標本として収集されたかは問わない)がある。
【0059】
本明細書において使用される「マイクロ流体チャネル」という用語は、装置中の開口部、オリフィス、間隙、導管、通路、チャンバ、または溝を含み、マイクロ流体チャネルは、1つまたは複数の生物学的粒子の通過または分析を可能にするのに十分な寸法を有する。
【0060】
本明細書において使用される、本発明との使用に適した試薬および溶液としては、生物学的試料の分析および処理に必要である任意の物質がある。そのような試薬および溶液の例は、酵素、フルオロフォア、オリゴヌクレオチド、プライマ、バーコード、緩衝液、デオキシヌクレオチド三リン酸、洗浄剤、溶解剤、還元剤、キレート剤、酸化剤、ナノ粒子、抗体、酵素、温度感受性酵素、pH感受性酵素、光感受性酵素、逆転写酵素、プロテアーゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ、制限酵素、トランスポザーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、およびヌクレアーゼ阻害剤を含む。
【0061】
理解されるように、本明細書において記載されるチャネルおよび/または接続セグメントは、リザーバ、管材、マニホールドまたは他のシステムの流体部品を含む、多種多様な流体供給源または受け入れ部品のいずれかに結合され得る。加えて、チャネル構造は様々な形状寸法を有し得る。たとえば、マイクロ流体チャネル構造は、1つよりも多いチャネル接合部を有することができ、マイクロ流体チャネル構造は、2つ、3つ、4つ、または5つ(またはより多く)のチャネルセグメントを有することができる。さらに、流体は、1つまたは複数の流体フローユニットを介して1つまたは複数のチャネルまたはリザーバに沿う指向性流であり得る。流体フローユニットは、流体の流れを制御するために、コンプレッサ(たとえば、正圧を提供する)、ポンプ(たとえば、負圧を提供する)、アクチュエータなどを含むことができる。流体はまた、加えられる圧力差、遠心力、動電ポンピング、真空、毛管、または重力流などを介して、他のやり方で制御されてもよい。
【国際調査報告】