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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】地下構造を探査する方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20230926BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20230926BHJP
   G01S 13/38 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
G01S13/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502912
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020070361
(87)【国際公開番号】W WO2022012760
(87)【国際公開日】2022-01-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503003234
【氏名又は名称】プロセク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ザームエル レーナー
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ カバレロ
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105CC02
2G105DD02
2G105EE02
2G105LL02
2G105LL03
2G105LL04
2G105LL05
2G105LL06
5J070AB17
5J070AC01
5J070AD01
5J070AD02
5J070AE11
5J070AF03
5J070AF06
5J070AH35
5J070AH40
5J070AK22
(57)【要約】
本発明は、地下構造を探査するための方法及び装置に関する。本方法は、電磁波を地下構造内に送信するステップと、地下構造から電磁波のエコーを受信するステップと、地下構造の内部特徴を導出するためにエコーを処理するステップとを備える。電磁波を地下構造内に送信するステップは、異なる周波数スペクトルを有する複数の電磁プローブ信号を地下構造内に続いて送信することを備える。各プローブ信号は、少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分を備える。エコーを受信するステップは、各プローブ信号に対してエコー信号を受信することを備える。エコーを処理するステップは、各エコー信号に対して少なくとも一つの振幅及び位相を決定することを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造を探査するための方法において、
前記方法は、
電磁波を前記地下構造内に送信するステップと、
前記地下構造から前記電磁波のエコーを受信するステップと、
前記地下構造の内部特徴を導出するために前記エコーを処理するステップとを備え、
前記地下構造内に前記電磁波を送信するステップが、周波数スペクトルが異なる複数の電磁プローブ信号を前記地下構造内に続いて送信するステップを備え、
各プローブ信号が少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分を備え、
前記エコーを受信するステップが、各プローブ信号に対するエコー信号を受信するステップを備え、
前記エコーを処理するステップが、各エコー信号に対する少なくとも1つの振幅及び位相を決定することを備える、方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分は、異なる副搬送波周波数を有する同時副搬送波信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペクトル成分が、重ならない周波数帯域内に位置する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つのスペクトル成分は互いに直交しており、特に、隣接する副搬送波周波数は、副搬送波間隔によって互いに異なり、特に、前記副搬送波間隔は、直交性条件を満たし、かつ/又は、特に、副搬送波間隔は、1MHz~20MHz、特に4MHzである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブ信号の前記周波数スペクトルが、10MHz~8000MHz、特に40Hz~3440MHzに位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
続いて送信される前記複数のプローブ信号の全周波数スペクトルは、少なくとも500MHz、特に少なくとも1000MHz、より具体的には少なくとも2000MHzの幅を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分の内の少なくとも2つは、非ゼロ初期位相シフトを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つのスペクトル成分の前記初期位相シフトは、前記プローブ信号の最大振幅が、前記スペクトル成分が同じであるが前記スペクトル成分の初期位相シフトがゼロである、仮想プローブ信号の最大振幅よりも小さく、特に少なくとも10%、少なくとも25%、又は少なくとも50%小さくなるようなものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各プローブ信号が、3~20の間、特に5~15の間、特に10の非ゼロスペクトル成分を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、少なくとも1つの搬送信号で異なる変調周波数の少なくとも2つの変調信号を周波数変換することによって前記プローブ信号を生成するステップをさらに備え、
特に、前記プローブ信号を生成するステップは、後のプローブ信号同士の間の搬送信号の搬送波周波数を変更することを備え、かつ/又は、
特に、前記変調周波数が全てのプローブ信号に対して同じである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブ信号を生成するステップが、少なくとも2つのデジタル変調信号を生成することを備え、
特に、前記プローブ信号を生成するステップが、少なくとも1つのアナログ搬送信号を生成することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのデジタル変調信号の内の前記少なくとも2つは、非ゼロ初期位相シフトを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変調周波数は100MHz未満であり、特に、前記変調周波数が40MHz~80MHzの範囲であり、かつ/又は、特に、前記変調周波数が、前記副搬送波間隔によって異なる、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記搬送信号の搬送波周波数が、少なくとも100MHzである、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブ信号を生成するステップが、前記少なくとも2つのデジタル変調信号をデジタルからアナログに変換することによって少なくとも2つのアナログ変調信号を得ることと、少なくとも1つのアナログミキサ(24、27)によって少なくとも1つのアナログ発振器(23、26)からの少なくとも1つの混合信号と前記少なくとも2つのアナログ変調信号を混合することとを備え、
特に、前記プローブ信号を生成するステップが、複数のアナログミキサ(24、27)によって前記少なくとも2つのアナログ変調信号を複数のアナログ発振器(23、26)からの混合信号と次々に混合することを備え、かつ/又は、
特に、前記プローブ信号を生成するステップが、前記アナログ変調信号にアップコンバージョンを適用すること、特に、アップコンバージョン及びその後のダウンコンバージョンを適用することを備える、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記デジタル変調信号を生成するステップは、規定の変調信号をスイッチオフすることを備える、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1の前記プローブ信号が、第2の前記プローブ信号とは異なる数の非ゼロスペクトル成分を備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
各プローブ信号の全持続時間が2μsを超えない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
各プローブ信号に対する包絡線が、非ゼロ持続時間の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を有し、特に、前記包絡線がガウス関数として具体化される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記地下構造に前記電磁波を送信するステップが、アンテナによって、特に、より高い周波数の副アンテナ及びより低い周波数の副アンテナによって実行される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法
【請求項21】
前記エコー信号を処理するステップは、少なくとも1つのアナログミキサ(33、35)によって前記少なくとも1つのアナログ発振器(23、26)からの前記少なくとも1つの混合信号と前記エコー信号を混合することによって混合エコー信号を得ることを備え、
特に、前記エコー信号を処理するステップは、複数のアナログミキサ(33、35)によって前記複数のアナログ発振器(23、26)からの前記混合信号と前記エコー信号を次々に混合することを備え、かつ/又は、
特に、前記エコー信号を処理するステップは、前記エコー信号にダウンコンバージョンを適用すること、特に、アップコンバージョン及びその後のダウンコンバージョンを適用することを備える、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記エコー信号を処理するステップは、前記混合エコー信号をデジタルエコー信号にアナログデジタル変換することを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エコー信号を処理するステップは、前記少なくとも2つのスペクトル成分の前記初期位相シフトに対して前記デジタルエコー信号を補正することを備える、請求項7及び22に記載の方法。
【請求項24】
前記エコー信号を処理するステップは、特に前記デジタルエコー信号を用いて、前記少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分をシリアライズすることによって、シリアライズされたエコー信号を得ることを備える、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記エコーを処理するステップが、前記エコー信号と前記プローブ信号との間の振幅の差及び/又は位相の差から前記地下構造の少なくとも1つの特性を導出することを備える、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
地下構造を探査するための装置において、
前記装置は、
アンテナ(29)と、
前記アンテナによって前記地下構造に送信される電磁プローブ信号を生成するためのプローブ信号発生器と、
前記アンテナによって前記地下構造から受信されるエコー信号を処理するためのエコー信号処理装置と、
前記プローブ信号発生器及び前記エコー信号処理装置を制御するための制御部(48)とを備え、
前記装置は、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、地下構造を探査するための装置。
【請求項27】
前記装置は、
前記電磁プローブ信号を前記地下構造に送信するように構成された第1のアンテナ(29)と、
前記地下構造から受信した前記エコー信号を受信するように構成された第2のアンテナ(30)とを備え、
特に、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナの両方が、より低い周波副アンテナ及びより高い周波副アンテナを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プローブ信号発生器は、
少なくとも2つのデジタル変調信号を生成するように構成されたデジタル信号発生器(1)と、
前記少なくとも2つのデジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するように構成されたデジタルアナログ変換器(20)と、
少なくとも1つの搬送信号を生成するように構成された少なくとも1つのアナログ信号発生器(23、26)と、
前記少なくとも2つのアナログ変調信号を前記少なくとも1つの搬送信号と混合することによって前記電磁プローブ信号を生成するように構成された少なくとも1つのアナログミキサ(24、28)とを備える、請求項26又は27に記載の装置。
【請求項29】
前記エコー信号処理装置は、
前記エコー信号を前記少なくとも1つのアナログ信号発生器(23、26)からの前記少なくとも1つの搬送信号と混合することによって混合エコー信号を生成するように構成された少なくとも1つのさらなるアナログミキサ(33、35)と、
前記混合エコー信号をデジタルエコー信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換器(37)と、
前記デジタルエコー信号から少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分を導出するように構成されたデジタル処理装置(1)とを備える、請求項28に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて地下構造を探査する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工構造物や地下などの地下構造物の探査のために電磁波が日常的に使用されている。地中探査レーダ(GPR)は、通常10MHz~2.6GHzの範囲の電磁波を使用する、例えばコンクリート構造物などの、地球物理調査又は非破壊試験にしばしば適用される技術である。
【0003】
GPRデータ取得についての公知の方法は、ステップ周波数連続波(SFCW)である。SFCWは、単一の広帯域パルスを送信する代わりに、時間を経て又は後のプローブ信号との間で変化する、一定の周波数の連続波プローブ信号を用いる。上記の方法及び適切な装置の例は、特許文献1(国際公開第2018/161183号)に記載されている。
【0004】
このSFCW方法は、データ品質、ひいては地下構造の結果としての画像の品質、特に信号対ノイズ比(SNR)と解像度の点で有利である。一方、このような方法の取得速度は制限されており、これは、GPR装置が従来、例えば時速10km~20kmオーダーである最大取得速度よりも地下に対してより速く移動しない場合にのみ、例えば2cmの規定の解像度のGPR測定値が取得され得ることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/161183号
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の一般的な目的は、より高速のデータ取得を可能にし、特に、地下構造を探査するための装置のより高速のデータ取得を可能にしつつ、取得されたデータの高い解像度を維持する、地下構造を探査するための方法及び装置を提供することである。
【0007】
本方法に関して以下に説明する特徴は、本装置にも関連するものであり、逆も同様である。さらに、説明される特徴は、互いに独立して開示され、かつ合理的な場合には組み合わせて開示されることを意味する。
【0008】
地下構造を探査するための方法
以下の説明においてより容易に明らかになる、本発明の上記の目的及びさらに別の目的を実施するために、例えば人工構造又は地下などの地下構造を探査する方法は、電磁波を地下構造内に送信するステップを備える。電磁波は、偏波され、例えば直線偏波されうる。電磁波を地下構造内に送信するステップは、特に、アンテナによって実行される。
また、上記方法は、地下構造からの電磁波のエコーを受信するステップを備える。有利的には、地下構造内に送信された電磁波の一部は、地下構造の内部特徴によって反射され、その内部特徴は、電気的特性の変化、例えば誘電率の変化によって特徴付けられる。電磁波の反射部分は、地下構造からのエコーとして、すなわち反射電磁波として受信されうる。
また、上記方法は、地下構造の内部特徴を導出するためのエコーを処理するステップを備える。内部特徴は、例えば、地下構造内の内部境界の位置及び/又は勾配、散乱体又は反射体の特性評価、地下構造内の特定の位置などにおける、例えば誘電率などの電気的特性の変化量としうる。
【0009】
電磁波を地下構造内に送信するステップは、異なる周波数スペクトルを有する複数の電磁プローブ信号を地下構造内に続いて送信することを備える。特に、プローブ信号の周波数スペクトルはそのフーリエ変換によって与えられる。各プローブ信号は、少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分を備える。特に、これは、各プローブ信号が1つのスペクトル成分のみを有し、一度に1つの周波数のみが送信されることを意味する、従来のSFCWとの差である。
【0010】
一実施形態において、各プローブ信号は、2つよりも多い非ゼロスペクトル成分、特に3~20の間、特に5~15の間、特に10の非ゼロスペクトル成分を備える。極端な場合には、各プローブ信号は、規定の周波数スペクトルにわたってノイズ、例えばホワイトノイズを備え、前記周波数スペクトルは有利的には少なくとも1000MHzの幅を有しうる。
【0011】
エコーを受信するステップは、各プローブ信号に対するエコー信号を受信することを備える。特に、これらエコー信号は続いて受信される。
【0012】
エコーを処理するステップは、各エコー信号に対して少なくとも1つの振幅及び位相を決定し、有利的には、複数のスペクトル成分に対して、特に各非ゼロスペクトル成分に対して、1つのエコー及び位相を決定することを備える。
【0013】
記載されたような地下構造を探査する方法は、複数のスペクトル成分、特に少なくとも2つのスペクトル成分が、同時期にすなわち同時に地下構造内に送信されるという利点を有する。従来のSFCWと比較して、本方法は、各プローブ信号内のスペクトル成分の数に等しい倍だけデータ取得の高速化をもたらし得る。これは、地下構造を探査するためのそれぞれの装置が、同じ解像度を維持しながら、より高速で、特に、各プローブ信号内のスペクトル成分の数に等しい倍数だけより高速で移動し得ることを意味する。これにより、例えば車又は空中のドローンに装置を取り付け、より広い領域及び/又は接近不能な位置にわたってデータ取得を行うことが容易となる。
【0014】
一方、説明したような方法は、課題もあり、さらなる利点を有し、これについては、以下の有利な実施形態を考慮して説明する。
【0015】
直交スペクトル成分
有利な一実施形態では、複数のスペクトル成分は、異なる副搬送波周波数を有する同時副搬送信号である。特に、これらスペクトル成分は重ならない周波数帯に位置する。電気通信の分野では、同様の方法が完全に異なる内容で周波数分割多重化(FDM)として知られている。この重ならない周波数帯域により、低出力発光器でも広いスペクトル範囲を対象とすることができる。
【0016】
さらなる有利な実施形態では、少なくとも2つのスペクトル成分は互いに直交する。「直交」とは、特に、それらが一般的にその内積として定義される直交条件を満たすこと、又は、時間間隔にわたってそれらの積の積分がゼロであることを意味する。特に、第1の副搬送波信号f(t)及び第2の副搬送波信号g(t)は、それらの積の時間積分
【数1】
が有限閾値よりもより小さい、例えば、
【数2】
よりもかなりより小さい場合、特にこの式の10%よりも小さい場合には、本文脈において「直交する」と言われる。特に、時間積分は、f(t)及び/又はg(t)の周期性を表す時間間隔にわたって計算される。直交副搬送波信号についての例は、sin(mx)とsin(nx)の形式の関数であり、ここでmとnは等しくない正の整数である。電気通信の分野において、同様の用途が直交周波数分割多重化(OFDM)として知られている。
【0017】
特に、隣接する副搬送波周波数は、正則な副搬送波間隔、すなわち、隣接する副搬送波周波数の全ての対に対して同じとしうる副搬送波間隔によって互いに異なる。有利的には、副搬送波間隔は、例えば、副搬送波周波数が副搬送波間隔の整数倍であるという点で、直交性条件を満たす。特に、副搬送波間隔は、1MHz~10MHzの間、特に、約4MHzとすることができる。
【0018】
一実施形態によると、プローブ信号の周波数スペクトルは、10MHz~8000MHzの間、特に40MHz~3440MHzの間に位置する。有利的には、続いて送信される複数のプローブ信号の全周波数スペクトルは、少なくとも500MHzの幅、特に少なくとも1000MHzの幅、より特定的には少なくとも2000MHzの幅を有する。このような全周波数スペクトルを用いれば、本方法は、例えば2cm以下の高解像度に到達すると共に、地下構造の電気的特性に応じて、例えば5m以上の大きな侵入深さに到達することができる。
【0019】
非ゼロの初期位相シフト
複数の直交副搬送波信号を備えるプローブ信号を、さらなる対策なしに送信することは、高いピーク送信電力につながり得る。これは、一定の時間に、初期位相シフトがゼロである直交関数のピークが建設的に加算され、したがって高い累積信号を生成するという事実による。「初期位相シフト(initial phase shift)」は、より低い周波数関数のゼロ位相とより高い周波数関数の最も近いゼロ位相との間の位相差として定義することができる。地下構造を探査するための装置において、前端、すなわち、アンテナと受信信号を処理するためのアナログ構成要素、並びに、プローブ信号を生成するためのプローブ信号発生器、及び、エコー信号を処理するためのエコー信号処理装置は、ピーク送信電力を処理するように適合されなければならない。従って、信号対ノイズ比及び低い相互変調の理由から、平均送信電力よりはるかに大きい高いピーク送信電力を有することは望ましくない。
【0020】
従って、有利な一実施形態では、少なくとも2つのスペクトル成分の内の少なくとも2つは、非ゼロ初期位相シフトを有する。特に、少なくとも2つのスペクトル成分の初期位相シフトは、プローブ信号の最大振幅が、スペクトル成分が同じであるがスペクトル成分の初期位相シフトがゼロである、仮想プローブ信号の最大振幅よりも小さく、特に少なくとも10%、少なくとも25%、又は少なくとも50%小さくなるようなものである。これにより、ピーク送信電力を低く抑えることができ、特に、平均送信電力よりも例えば2倍又は3倍だけわずかに大きく抑えることができる。従って、良好な信号対ノイズ比及び低い相互変調を達成することができる。
【0021】
実際には、与えられた数の副搬送波信号に対する上記条件を満たす初期位相シフトは、例えば数値シミュレーションなどの経験的手法によって得ることができ、この副搬送波信号は、ランダムな初期位相シフトで加算され、したがって、テストプローブ信号を生成する。次いで、テストプローブ信号の平均に対するテストプローブ信号の最大の比が導出される。これらの2つのステップは、異なるランダムな初期位相シフトで反復され、従って、一組のテストプローブ信号を形成する。地下構造の探査における実際の用途では、最小比のテストプローブ信号を選択される。このアプローチでは、初期位相シフトは乱数ジェネレータから得られる場合があるが、この用途では変更されない。特に、少なくとも2つのスペクトル成分の初期位相シフトは、各プローブ信号に対して一定、すなわち同一としうる。
【0022】
プローブ信号の生成
有利な一実施形態では、本方法は、少なくとも1つの搬送信号で異なる変調周波数の少なくとも2つの変調信号を周波数変換することによって、プローブ信号を生成するステップをさらに備える。特に、プローブ信号を生成するステップは、後のプローブ信号同士の間で搬送信号の搬送波周波数を変更することを備える。このようにして、変調周波数は、全てのプローブ信号に対して同じとしうる。
【0023】
有利的には、プローブ信号を生成するステップ及び/又はエコー信号を処理するステップは、部分的にはデジタル領域で、部分的にはアナログ領域で実行され、それによって、両領域の利益を利用し、例えば、既存のデジタルデータ処理ルーチンを有する信号に関する精密な制御、及び、アナログ構成要素の単純性及び速度を利用する。一実施形態において、プローブ信号を生成するステップは、少なくとも2つのデジタル変調信号を生成することを備える。また、プローブ信号を生成するステップは、少なくとも1つのアナログ搬送信号を生成することを備えうる。上記の説明によれば、少なくとも2つのデジタル変調信号の内の少なくとも2つは、有利的には、非ゼロ初期位相シフトを有する。
【0024】
標準的な変調周波数は、100MHz未満、特に40MHz~80MHzの範囲内にある。有利的には、変調周波数は副搬送波間隔によって異なる。さらに、搬送信号の搬送波周波数は、少なくとも100MHzとしうる。
【0025】
一実施形態において、プローブ信号を生成するステップは、少なくとも2つのデジタル変調信号をデジタルアナログ変換することによって、少なくとも2つのアナログ変調信号を得ることと、少なくとも1つのアナログミキサによって、少なくとも1つのアナログ発振器からの少なくとも1つの混合信号と少なくとも2つのアナログ変調信号を混合することとを備える。さらに、プローブ信号を生成するステップは、複数のアナログミキサによって、少なくとも2つのアナログ変調信号を、複数のアナログ発振器からの混合信号と次々に混合することを備えうる。
【0026】
有利的には、プローブ信号を生成するステップは、アナログ変調信号にアップコンバージョンを適用すること、特にアップコンバージョン及びその後のダウンコンバージョンを適用することを備える。直接アップコンバージョンは、典型的には、制限された画像抑圧、局部発振器(LO)の漏洩及び複雑なフィルタ段階などのいくつかの制限をもたらす、画像除去ミキサを必要とする。最初に信号をアップコンバートすることで、フィルタによって画像とLOの漏洩を減衰できる。ダウンコンバージョン段階のLOは常に所望の出力信号より高いので、LOの漏洩は無視することができる。このようにして、複雑なフィルタ段階を回避することができる。
【0027】
さらなる実施形態では、デジタル変調信号を生成するステップは、規定の変調信号をスイッチオフにすることを備える。これは、例えば、スイッチング段階を適用することによって、依然としてデジタル領域で実行され得る。規定の変調信号をスイッチオフにすると、対応するプローブ信号の変調周波数の数が変わる。これにより、ピーク電圧を変更させる。次に、ピーク電圧を一定に特に意図されたレベルで保つために、変調信号に動的補正を適用することができる。
【0028】
さらに、第1のプローブ信号が、第2のプローブ信号とは異なる数の非ゼロスペクトル成分を備えることが有用である場合がある。例えば、より高い周波数のプローブ信号は、より低い周波数のプローブ信号よりも少ない数、例えば半分のスペクトル成分を備えうる。この場合、より高い周波数のプローブ信号の副搬送波間隔は、より低い周波数のプローブ信号の副搬送波間隔よりも大きく、例えば2倍としうる。これは、処理されかつ最終的に記憶されて送信される必要があるデータを最小化するために、特に合理的である。より高い周波数のプローブ信号における副搬送波間隔を拡大することにより、侵入深さに関してそれほど失われることはなく、一方、より低い周波数のプローブ信号におけるより小さな副搬送波間隔が、高い侵入深さに対して必要とされる可能性がある。ここでも、特定の副搬送波信号を削除することが、依然としてデジタル領域内にあるそれぞれの変調信号に対して実行することができる。
【0029】
一実施形態において、各プローブ信号の全持続時間は2μsを超えない。各プローブ信号のこのような短い持続時間により、過剰な電磁波エネルギーが環境に送られ、潜在的に電気通信信号を劣化させたり、生物に影響を及ぼしたりすることを防止する。
【0030】
さらに、各プローブ信号に対する包絡線は、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を有してもよく、非ゼロ持続時間の両方、特に、0.5μsより大きく、かつ/又は、各プローブ信号の持続時間の10%より大きい。特に2つのステップ機能からなる、「ハードウィンドウ(hard window)」と比較して、このような「滑らかな(smooth)」プローブ信号は、エコーを処理するステップにおいて共鳴効果を回避する利点を有する。そのため、包絡線は、特に、ガウス関数又は他の既知の滑らかな窓関数として形成され得る。
【0031】
エコー信号の処理
プローブ信号を生成するステップと同様に、エコー信号を有利に処理するステップも、部分的にアナログ領域で、部分的にデジタル領域で実行され、したがって、上述のように、両方の利点を組み合わせる。
【0032】
一実施形態において、エコー信号を処理するステップは、少なくとも1つのアナログミキサによって、少なくとも1つのアナログ発振器からの少なくとも1つの混合信号とエコー信号とを混合することによって、混合エコー信号を得ることを備える。特に、エコー信号を処理するステップは、複数のアナログミキサによって複数のアナログ発振器からの複数の混合信号とエコー信号を次々に混合することを備えうる。エコー信号を処理するステップは、エコー信号にダウンコンバージョンを適用すること、特にアップコンバージョンとその後のダウンコンバージョンを適用することを備えることが有用である場合がある。
【0033】
更に、エコー信号を処理するステップは、混合エコー信号をデジタルエコー信号にアナログデジタル変換することを備えうる。
【0034】
上記と類似して、エコー信号を処理するステップは、少なくとも2つのスペクトル成分の初期位相シフトに対してデジタルエコー信号を補正することを備えることが有利である。特に、初期位相シフトは、プローブ信号毎に、ひいては対応するエコー信号毎に知られ、それゆえ、補正することができる。
【0035】
また、エコー信号を処理するステップが、特にデジタルエコー信号を用いて、少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分をシリアライズすることにより、シリアライズされたエコー信号を得ることを備えることが望ましい場合がある。特に「シリアライズ(Serializing)」とは、エコー信号内の非ゼロスペクトル成分、例えばエコー信号から取り出された変調信号が、時間的に次々に共にストリング(string)されることを意味する。このようにして、シリアライズされたエコー信号は、従来のSFCW方法によって取得された信号に似ている。これにより、さらなる処理のために、例えば、A走査を組み立てて処理するために、又は、移動アルゴリズムを適用するために、既知のデータ処理方法の使用が可能となる。
【0036】
結局、前記エコーを処理するステップは、前記地下構造の少なくとも1つの特性を、前記エコー信号と前記プローブ信号との間の振幅の差及び/又は位相の差から導出することを備えうる。振幅の差及び/又は位相の差は、材料の特性に直接的に関連し、特に、材料の特性、特に電気的特性と、アンテナから構造内に進みかつ戻ってくるその移動経路上の電磁波が遭遇する材料分布とによって生じる。
【0037】
地下構造を探査するための装置
本発明の第2の態様は、地下構造を探査するための装置に関する。
この装置は、上述の方法を実施するように構成されており、この装置は、一実施形態では、プローブ信号の送信、並びに、エコー信号の受信のために同一のアンテナを用いることができる、アンテナであって、別の実施形態では、アンテナは、プローブ信号を地下構造に送信するように構成された第1のアンテナと、地下構造から受信したエコー信号を受信するように構成された第2のアンテナとを備えることができ、両方の実施形態において、アンテナ、又は、それぞれ、第1のアンテナ及び第2のアンテナは、例えば中心周波数が350MHzのより低い周波数の副アンテナと、例えば中心周波数が1500MHzのより高い周波数の副アンテナを備え、そのような副アンテナは、特にその中心周波数の周りの、より高い周波数とより低い周波数において、プローブ信号と、それぞれエコー信号を、より効果的に送受信する利点を有する、アンテナと、
アンテナによって地下構造に送られるための電磁プローブ信号を生成するためのプローブ信号発生器であって、有利な実施形態では、少なくとも2つのデジタル変調信号を生成するように構成されたデジタル信号発生器と、デジタル変調信号をアナログ変調信号に変換するように構成されたデジタルアナログ変換器と、少なくとも1つの搬送信号を生成するように構成された少なくとも1つのアナログ信号発生器と、少なくとも2つのアナログ変調信号を少なくとも1つの搬送信号と混合することによってプローブ信号を生成するように構成された少なくとも1つのアナログミキサとを備える、プローブ信号発生器と、
アンテナによって地下構造から受信されたエコー信号を処理するためのエコー信号処理装置であって、有利な実施形態では、エコー信号処理装置は、エコー信号を少なくとも1つのアナログ信号発生器からの少なくとも1つの搬送信号と混合することによって混合エコー信号を生成するように構成された少なくとも1つのさらなるアナログミキサと、混合エコー信号をデジタルエコー信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換器と、デジタルエコー信号から少なくとも2つの非ゼロスペクトル成分を導出するように構成されたデジタル処理装置とを備える、エコー信号処理装置と、
プローブ信号発生器及びエコー信号処理装置を制御するための制御部であって、特に、制御部は、本技術の方法のステップを実行するように構成されている、制御部と、
選択的に、例えば、処理されたエコー信号を遠隔演算部又は表示部に送信するように構成されたWi-Fi(登録商標)モジュールなどの通信モジュールとを備える。
【0038】
本発明はより良く理解され、以下の詳細な説明に考慮を払うと、上記以外の目的も明らかになる。そのような説明は、付属の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、先行技術の方法による、続いて送信されたプローブ信号のスペクトル成分を有する模式的な周波数スペクトルを示す。
図2図2は、本発明の一実施形態による方法における、続いて送信されたプローブ信号のスペクトル成分を有する模式的な周波数スペクトルを示す。
図3図3は、本発明の一実施形態による地下構造を探査するための装置のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
従来技術の例
従来のSFCW GPRでは、複数のプローブ信号が次々に地下構造に送信される。各プローブ信号は、従来、1つのスペクトル成分のみから構成されており、これは、各プローブ信号が、1つの単一周波数、例えば、一定の持続時間の単一正弦信号を有することを意味する。これは、全てのプローブ信号の模式的な全周波数スペクトルを示す図1に示されている。第1のステップでは、例えば30MHzの第1のより低い周波数のプローブ信号が、地下構造内に送信される。その後、第2のステップで、わずかに高い周波数、例えば34MHzの第2のプローブ信号が送信される。周波数を増加させながらプローブ信号を送信するこれらのステップは、例えば4030MHzのより高い周波数のプローブ信号が送信される最後のステップまで繰り返される。全てのプローブ信号は、全帯域幅、例えば本例では30MHz~4030MHzに及ぶ掃引を形成する。より低い周波数及びより高い周波数を採用することにより、侵入深さ、すなわち、地下構造を探査することができる深さと、解像度、すなわち、解像することができる最小特徴のサイズに関して、地下構造の結果として得られる画像が改善される。
【0041】
正しいデータの取得と正しい画像化のためには、全掃引が地下構造に送信され、アンテナが解像よりも遠くに(速く)移動していない間にそのエコーが受信されることが必要である。明らかに、この条件は、取得速度、すなわち、地下構造に対してアンテナが移動する速度に上限を設定する。
【0042】
上記の例では、4MHzの周波数ステップで掃引の4000MHzの全帯域幅を対象とするには、数千のステップが必要である。各プローブ信号が、2μsの滞留時間とも呼ばれる持続時間を有し、5μsのロック時間とも呼ばれる持続時間の中断がある場合を仮定すると、全体の掃引に必要な合計時間は7000μsとなる。例えば20mmの所望の解像度では、アンテナは、時速約10kmより速く、特に歩行速度より速く移動しないことがある。
【0043】
一方、取得は、今日では、アンテナを車又はドローンに搭載して都合よく行うことができる。その場合、時速100km程度の取得速度が望ましい場合がある。このような速度は、従来技術の方法で到達可能な速度より10倍高い。言い換えれば、1回の掃引の合計時間は、他のパラメータ、特に、解像度、侵入深さ、滞留時間及びロック時間(lock time)を固定したままで、10倍低くする必要があるであろう。
【0044】
例示的な方法
取得速度が制限されるという課題は、図2の模式的な周波数スペクトルに示されている、本発明の一実施形態による方法によって解決される。ここでも、1つのプローブ信号が、第1のステップから最後のステップまで次々にステップ毎に送信される。しかし、ここでは、各プローブ信号は、複数の、例えば、少なくとも10個のスペクトル成分を備える。隣接するスペクトル成分同士の間の周波数ステップは、上述と同じ侵入深さ及び解像度を維持するために、例えば4MHzに再び固定される。10個のスペクトル成分を一度に、すなわち同じプローブ信号内に送信することによって、掃引の合計時間は10倍減少する。したがって、与えられた解像度に対する最大取得速度は10倍に増加する。上記の例では、最大取得速度は現在時速約100kmであり、例えば車やドローンなどの大規模な調査に適している。
【0045】
一般に、各プローブ信号において副搬送波信号とも呼ばれる複数のスペクトル成分を同時に送信すると、スペクトル成分の数に等しい倍数だけ最大取得速度が増加する。このような副搬送波信号の同時送信が、例えば、信号対ノイズ比及び低相互変調に関して、従来のSFCWに匹敵する構造のデータ又は画像を最終的に導くために、副搬送波信号は、特定の条件を満たす。これらの条件は、上記の「直交スペクトル成分」及び「非ゼロの初期位相シフト」の欄で上述した。
【0046】
例示的な装置
図3は、地下構造を探査するための例示的な装置のブロック回路図を示す。この装置は、本発明の一実施形態による方法を実行するように構成されている。したがって、以下において、本装置及び本方法に関する態様を説明する。
【0047】
本装置は、デジタル処理装置1とアナログ処理装置2とを備える。デジタル処理装置1では、複数の変調信号、例えば10個の変調信号が、以下で詳述するデジタル構成要素11~15によって生成されて処理される。クロック・ソース21を備えたデジタルアナログ変換器(DAC)20では、デジタル変調信号がアナログ領域に変換され、次に、アナログ構成要素22~28によってさらに処理される。特に、複数の、例えば10個の副搬送波信号を備えるプローブ信号は、アナログ発振器23及び26からの異なる搬送波信号と変調信号を、混合、すなわち周波数変換することによって生成される。次に、プローブ信号は、送信アンテナ29によって、地下構造に送信される。上記の構成要素11~28は、プローブ信号発生器として組み込まれうる。
【0048】
エコー信号は、地下構造から戻って受信アンテナ30によって受信される。一般に、受信アンテナ30及び送信アンテナ29は、例えばモノスタティックレーダにおいて一致することができる。エコー信号はアナログ構成要素32~36で処理される。特に、エコー信号は、アナログ発振器23及び26からの異なる搬送信号と再び混合されるか、言い換えれば周波数変換される。周波数変換されたエコー信号は、アナログデジタル変換器(ADC)37によってデジタル領域に変換される。そして、エコー信号は、アナログ構成要素40~47によってさらに処理される。構成要素32~47は、エコー信号処理装置として組み込まれうる。
【0049】
本装置は、プローブ信号発生器及びエコー信号処理装置を制御するように構成された制御部48をさらに備える。有利的には、本装置は、通信部49、例えば、Wi-Fi(登録商標)モジュールも備える。通信部49は、処理されたエコー信号を遠隔演算装置又は表示装置に送信するように構成されている。処理されたエコー信号の送信は、構成要素43~47のいずれかの出力信号、特に構成要素44で実行することができ、これは、さらなる処理ステップが遠隔演算装置によって実行されることを意味する。さらに、通信部49は、例えばデータ取得を開始又は終了するための、あるいは、続いて送信されるプローブ信号の全周波数範囲における、下限、上限、又は、周波数ステップなどのパラメータ値、又は、以下に明らかになる他のパラメータを設定するための、遠隔演算装置からの制御コマンドを受信するように構成されうる。
【0050】
プローブ信号生成
図3の例の装置では、変調信号は、発振器部11内の複数の数値制御発振器(NCO)によって生成される。あるいは、NCOを、離散逆フーリエ変換(IDFT)で置換し、構成要素11、12及び13を置換しうる。
【0051】
入力として、NCOは、周波数ω、周波数オフセットθ、及び、初期位相シフトαを受信する。なお、n=1、2、…、Nであり、Nは、変調信号の数、従って、各々のプローブ信号における副搬送波信号の数、例えば10である。変調周波数ωは、隣接する変調周波数同士の間において4MHzの周波数ステップで、40MHz~80MHzの間の範囲の値とすることができる。発振器部11は、典型的には、
【数3】
すなわち正弦信号及び/又は余弦信号の形態のデジタル変調信号を生成する。あるいは、変調信号の離散値又は離散値の合計は、変調信号がデータ取得中に変更されない場合には、予め計算されて装置の内蔵メモリのテーブルに記憶されうる。
【0052】
有利的には、最初の位相シフトαは非ゼロであり、少なくともいくつか、特に全ての異なったnにおいて異なる。これは、最大プローブ信号振幅と平均プローブ信号振幅との比を時間を経て低く保つことができるという利点を有する。従って、高い信号対ノイズ比及び低い相互変調を維持しながら、装置の送信電力を低く保つことができる。
【0053】
最初の位相シフトαの実現可能な選択肢が、間隔0~2でαをランダムに生成することによって得られることが分かっている。与えられたNに対して、乱数αを生成し、上記の低い最大振幅の基準を前もって確認することができる。次いで、αの数値をテーブルとして装置の内蔵メモリに記憶し、プローブ信号を生成するために用いることができる。
【0054】
同様に、変調周波数ωは、周波数オフセットθによってオフセットされうる。異なったθを異なった周波数ωに適用することによって、隣接する変調周波数同士の間の一定の周波数ステップΔωの事例において、プローブ信号の全サイクルタイム、すなわち全周期性を減少させることができる。しかしながら、周波数オフセットθは、隣接する変調周波数と重ならないようにするために、例えば間隔(-0.5、+0.5)×Δωによって境界付けられるように、大きすぎるべきではない。特に、先に定義した直交性基準を維持するために、周波数オフセットを400kHzとすることができる。特に、全ての周波数オフセットθは同じとしうる、すなわち、θ=θである。
【0055】
有利的には、周波数オフセットθは、1つのプローブ信号内の全ての変調信号に対して同じである。さらに、有利的には、周波数オフセットθは、1つのサイクル内の全てのプローブ信号について同じである。全サイクルタイムを短縮するために、様々なθを様々なサイクルに適用することができる。
【0056】
一般に、変調周波数ω、周波数オフセットθ、及び、初期位相シフトαに関するプローブ信号生成のための入力値は、エコー信号、特にデジタルミキサ41において、続いて処理するために、少なくとも一時的に記憶される又は既知であることが必要である。
【0057】
次のステップでは、スイッチマトリクス12がデジタル変調信号に適用される。スイッチマトリクス12を適用することにより、ある変調周波数の変調信号をオフに切り替えることができる。これは、掃引の一定のプローブ信号における副搬送波信号の数を減少させるために有用であり、例えば、N=10から5へ、又は、プローブ信号当たりわずか1つの副搬送波信号であり、一方で、Nにおいて同じ掃引の他のプローブ信号における副搬送波信号の数を維持する。このようにして、ピーク電力を低下させ得る。また、必要とされる処理能力がより少なく、例えば通信部49、例えばシリアライザ42の後のWi-Fi(登録商標)部によって、末端において送信する必要があるデータがより少なくなる。例えば、例えば40MHz~1500MHzの間のより低い周波数プローブ信号に対しては、Δω=4MHzの周波数ステップを用い、例えば1500MHzを超えるより高い周波数プローブ信号に対しては、Δω=8MHzの周波数ステップを使用することが有用であり得る。この場合、スイッチマトリクス12は、1500MHzを超えるプローブ信号に対して変調信号を供給するときに、各第2変調信号をゼロにする。
【0058】
そして、バンドコンバイナ13は、全デジタル変調信号の加算を行う。続いて、上述した結合された信号に対して動的振幅補正14を実行することができる。
【0059】
さらに、結合された信号にゲート15が依然としてデジタル領域で加えられる。ゲートによって、滑らかな時間窓関数を結合された信号に有利に適用する。時間窓は、例えばガウス関数とすることができ、これにより、信号の急激なスイッチオン又はスイッチングなどのハードウィンドウを適用することから典型的に生じるアーチファクトを減少させる。
【0060】
ここで、結合された変調信号は、クロック発振器21からクロック周波数を有するクロック信号を受信する、DAC20によってアナログ領域に変換される。図3の例示的な装置において、クロック周波数は200MHzであり、アナログ信号に導かれ、そのアナログ信号は、次いで、120MHz~160MHzの周波数範囲で、フィルタ22によって帯域通過フィルタリングされる。
【0061】
次に、この信号は、アナログ発振器23によって生成された第1の搬送波周波数の第1の搬送信号と混合される。この混合、この場合においてアップコンバージョンは、アナログミキサ24によって行う。この混合処理は「ヘテロダイング(heterodyning)」とも呼ばれ、特に「上側ヘテロダイン」のみ、すなわち、第1の搬送波周波数と変調周波数との合計に等しい周波数が使用されるのに対して、「下側ヘテロダイン」、すなわち、第1の搬送波周波数と変調周波数との差に等しい周波数は、切り捨てられ、例えばフィルタ除去される。一般に、高い周波数に向かう信号の混合は「アップコンバージョン」と呼ばれ、低い周波数に向かう信号の混合は「ダウンコンバージョン」と呼ばれる。
【0062】
この例の装置では、第1の搬送波周波数は3600MHzであり、第1の混合信号に導かれ、次に、この第1の混合信号は、3720MHz~3760MHzの周波数範囲で、フィルタ25によって帯域通過フィルタリングされる。次に、第1の混合信号はアナログミキサ27によってダウンコンバートされる。その目的のために、アナログミキサ27はアナログ発振器26から第2の搬送信号を受信する。アナログ発振器26は、3800MHz~7200MHzの第2の搬送波周波数を有する第2の搬送信号を生成するように構成された、可変周波数発振器である。このアナログ発振器26は制御部48によって制御されることが有利である。特に、第2の搬送波周波数は、後のプローブ信号同士の間において40MHzのステップで、すなわち1つのプローブ信号の帯域幅において、全体的に3800MHz~7200MHzに変更される。これにより、第2の混合信号が生成される。この第2の混合信号は、特に、40MHzの帯域幅を有し、Δω=4MHzの副搬送波周波数を備える。掃引の後の第2の混合信号は、フィルタ28により低域通過フィルタ処理される。フィルタ28は、3440MHzのカットオフ周波数を有することが有利である。実際のプローブ信号を構成する、フィルタリングされた第2の混合信号は、40MHz~3440MHzの周波数範囲の周波数を有する。次に、プローブ信号は送信アンテナ29によって送信される。
【0063】
例の装置の代替として、アナログ変調信号のプローブ信号への混合、すなわち変調は、唯一のアナログミキサによって実行されうる。1つのステップにおけるアップコンバージョンは、高調波を信号から除去する必要があるので、より多くのフィルタリングを必要とする。対照的に、図3の例の装置では、例えば上側ヘテロダインの「ミラー周波数」は、いくつかの混合ステップを次々に適用することによって自動的に切り捨てられる。
【0064】
エコー信号処理
地下構造からのエコーは、アナログエコー信号として受信アンテナ30によって受信され、低域通過フィルタ32によって、特にプローブ信号の周波数範囲、特に、3440MHzのカットオフ周波数でフィルタリングされる。
【0065】
アナログ処理装置2におけるエコー信号のさらなる処理は、上述したようにプローブ信号発生からミラーリングされる。一般に、プローブ信号は、変調信号の周波数範囲、特に40MHz~80MHzの範囲にダウンコンバートされる。これは、1つのステップで、又は、図3の例示的な装置のように、いくつかのステップで行うことができる。
【0066】
この例の装置では、エコー信号は、混合され、特に周波数変換され、ミキサ33によって第2のアナログ発振器26からの第2の搬送波信号と混合される。これは、エコー信号の第1の混合エコー信号へのアップコンバージョンを意味し、この第1の混合エコー信号は、次に、3720MHz~3760MHzの間の周波数範囲で、バンドパスフィルタ34によってフィルタリングされる。次に、この第1の混合エコー信号は、ミキサ35によって第1の発振器23からの第1の搬送信号と混合することによってダウンコンバートされる。結果として生じる第2の混合エコー信号は、120MHz~160MHzの間の周波数範囲でバンドパスフィルタ36によってフィルタリングされる。次に、第2の混合エコー信号は、クロック発振器21からクロック周波数のクロック信号を受信する、ADC37によってデジタル領域に変換される。
【0067】
デジタル処理装置1では、時間における重み付け40がエコー信号に適用される。特に、これは、後の離散フーリエ変換(DFT)のスペクトル漏洩を低減するために用いられる。次に、エコー信号は、デジタルミキサ41に入力され、有利的には、エコー信号は、例えばDFTを加えることによって、周波数領域に変換される。変調信号の周波数に対応するエコー信号の異なるスペクトル成分、例えばN=10の場合には10個が分離され、最初の位相シフトαに対して補正される。
【0068】
更に、各スペクトル成分におけるオフセット又は平均を除去することができる。混合段階の後の平均は、各帯域に対して信号を1つの複素係数に減少させることである。また、それは、受信信号の持続時間とゲート15の形状及び重み付け40によって与えられるシステムの等価ノイズ帯域幅(ENBW)を定義する。
【0069】
従来の、即ち、多重化されていない、SFCW方法のエコー信号に匹敵する、処理されたエコー信号を得るためには、異なるスペクトル成分を「シリアライズ」し、即ち、時間的に順番に入れる必要がある。これは、シリアライズ42によって、例えば、N個のスペクトル成分のそれぞれについてタイムシフトΔtを備える遅延マトリックスを適用することによって行われる。シリアライズ42の結果として、エコー信号は、連続する信号の掃引の形態を有し、後の各信号は、1つのスペクトル成分のみからなり、以前の信号とは周波数ステップΔωだけ周波数が異なる。
【0070】
エコー信号のさらなる処理は、有利的には、装置応答のためにエコー信号を補正すること、すなわち、装置の構成要素に起因する振幅及び/又は位相の変化の補正を備える。このため、較正信号31は、例えばプローブ信号の各掃引の前に、送信アンテナ29と受信アンテナ30との間で測定され得る。較正信号31は、較正43においてエコー信号を補正するために使用することができる。特に、信号のドリフト又は時間を経た装置応答は、現在の較正信号31、並びに、例えば装置の製造者によって記録され得る履歴較正信号を使用することによって補正され得る。
【0071】
さらに、エコー信号に対して空間的平均化44を適用することができる。この空間的平均化によって、信号対ノイズ比を増し、データ量を減少させる。エコー信号は、例えば通信部49によって記憶又は送信されることになるので、空間的平均化44は、データの送信前に有利に適用される。
【0072】
エコー信号に、重み付け45、ゼロ詰め46及び逆フーリエ変換47の少なくとも1つなどの、更なる信号処理ステップを適用することが、一般的な慣行である。これらのステップは、遠隔演算装置上で行うことが有利である。逆フーリエ変換47の結果として、エコー信号は、GPRの分野ではA走査とも呼ばれる時間領域波形に変換される。
【0073】
一般に、アナログ処理装置2だけでなくデジタル処理装置1にも専用のハードウェアを使用することは有利である。デジタル処理装置1は、説明した処理ステップの内の1つ以上を実行するように構成された、1つ以上のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)であることが有利である。FPGAの使用によって、効率的なプローブ信号生成、及び/又は、エコー信号処理、特にリアルタイム処理が容易となる。
【0074】
本発明の現在好適な実施形態が示されて説明されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、他の方法で種々具体化され、以下の特許請求の技術的範囲内で実施されることを明確に理解されたい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】