(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電力を超音波トランスデューサに供給するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230926BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20230926BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20230926BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H04R3/00 330
H04R1/40 330
A61B8/00
A61N7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506185
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021070955
(87)【国際公開番号】W WO2022023316
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ラセル,ニコラ
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C160JJ17
4C160JJ25
4C601EE10
4C601HH01
4C601HH05
4C601HH06
5D019AA07
5D019FF04
(57)【要約】
本発明は、超音波トランスデューサ(302)に供給を行うための装置(100)であって、供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を前記超音波トランスデューサ(302)に提供するように構成された電力インターフェース(106)を備え、駆動信号と呼ばれる正弦波信号のデルタシグマ変調器を発生させ、制御信号と呼ばれるデジタル信号を提供して前記電力インターフェース(106)を制御するように構成されたデルタシグマ変調器(104)をさらに備えることを特徴とする、装置(100)に関する。
本発明はまた、そのような供給装置によって電力供給される超音波装置(300)、そのような超音波装置を備える超音波ヘッド、およびそのような超音波ヘッドを備える超音波システムに関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサ(302)に供給を行うための装置(100)であって、供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を前記超音波トランスデューサ(302)に提供するように構成された電力インターフェース(106)を備え、
駆動信号と呼ばれる正弦波信号のデルタシグマ変調を発生させ、制御信号と呼ばれるデジタル信号を提供して前記電力インターフェース(106)を制御するように構成されたデルタシグマ変調器(104)をさらに備えることを特徴とする、
装置(100)。
【請求項2】
デルタシグマ変調器(104)は、前記制御信号が1ビットにわたって変調されるように単一ビット出力量子化器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記デルタシグマ変調器(104)は、前記制御信号が数ビットにわたって変調されるようにマルチビット出力量子化器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記駆動信号は、デジタル正弦波信号であり、前記装置(100)は、以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数、
前記駆動信号の振幅、
前記駆動信号の位相
の少なくとも1つの任意の組み合わせに従って、前記駆動信号を生成するように構成されたデジタル発生器(102)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数、
前記駆動信号の振幅、
前記駆動信号の位相
の少なくとも1つの任意の組み合わせを提供するデジタル制御インターフェース(108;108
1~108
n)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
部分的にまたは全体的に、少なくとも1つのデジタル構成要素に統合されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(302)と、
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサ(302)に供給を行うための、請求項1~6のいずれか一項に記載の供給装置(100)と
を備える、超音波装置(300)。
【請求項8】
並列に、請求項7に記載のいくつかの超音波装置(300
1~300
n)を備える、超音波ヘッド(400)。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波ヘッド(400;602)と、
前記超音波ヘッド(400)の前記超音波装置(300
1~300
n;604
1、604
n)用の少なくとも1つのデジタル制御装置(502)と
を備える、超音波システム(500;600)。
【請求項10】
医療撮像システム、または治療システムであることを特徴とする、請求項9に記載のシステム(500;600)。
【請求項11】
医療撮像のための請求項9または10のいずれか一項に記載のシステム(500;600)の使用。
【請求項12】
供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を超音波トランスデューサ(302)に供給するための方法であって、
駆動信号と呼ばれる正弦波信号をデルタシグマ変調し、制御信号と呼ばれる信号を提供するステップと、
前記デルタシグマ変調制御信号により電力インターフェースを制御し、前記供給信号を提供するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに供給を行うための装置および方法に関する。本発明はまた、そのような供給装置を備える超音波装置、およびそのような超音波装置を備える超音波システムに関する。
【0002】
本発明の分野は、超音波装置の分野、特に超音波トランスデューサ、特に医療用の超音波トランスデューサに供給を行う分野である。
【背景技術】
【0003】
超音波トランスデューサは、医療分野において、特に医療撮像、例えば超音波検査のためだけでなく、医療治療のためにも広く使用されている。これを行うために、トランスデューサは、典型的には、撮像または処置される領域において集束超音波および高電力超音波を送信するために、「超音波ヘッド」とも呼ばれるマトリックスに配置される。各超音波トランスデューサは、所与の周波数の超音波信号を生成するように、前記周波数における正弦波信号によって供給が行われる。
【0004】
一般に、超音波ヘッドは、各超音波トランスデューサに対して、個々の制御チェーンを備える。この制御チェーンは、各トランスデューサごとに、前記トランスデューサによって送信される超音波信号の振幅だけでなく、その周波数およびその位相も変更することを可能にする。したがって、マトリックスの各トランスデューサによって送信される超音波の特性は、変更することができる。
【0005】
しかし、超音波トランスデューサについて知られている制御チェーンは、性能が劣化している。さらに、既知の制御チェーンによって提供される正弦波制御信号は、超音波信号が劣化するような低品質のものである。最後に、既知の制御チェーンは、一般に嵩高い。
【0006】
本発明の1つの目的は、上述の欠点の少なくとも1つを解決することである。
【0007】
本発明の別の目的は、性能の点でより効率的である、超音波トランスデューサに供給を行うための装置を提案することである。
【0008】
本発明の別の目的は、より良好な品質の正弦波供給信号を提供する、超音波トランスデューサに供給を行うための装置を提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、嵩高くない、超音波トランスデューサに供給を行うための装置を提案することである。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、超音波トランスデューサに供給を行うための装置であって、供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を前記超音波トランスデューサに提供するように構成された電力インターフェースを備え、駆動信号と呼ばれる正弦波信号のデルタシグマ変調を発生させ、制御信号と呼ばれるデジタル信号を提供して前記電力インターフェースを制御するように構成されたデルタシグマ変調器をさらに備えることを特徴とする、装置によってこれらの目的の少なくとも1つを達成することを可能にする。
【0011】
言い換えれば、本発明は、デルタシグマ変調正弦波信号を通してデルタシグマ変調器によって正弦波供給信号を超音波トランスデューサに供給する電力インターフェースを制御することを提案する。
【0012】
したがって、本発明による装置は、既知の制御チェーンと比較してより良好な品質の供給信号および改善された性能を超音波トランスデューサに供給することを可能にする。実際、デルタシグマ変調器は、より低コストで単純な電力インターフェースを制御するためのデルタシグマ変調正弦波信号を提供することを可能にする。結果として、トランスデューサの供給信号は、その帯域幅外の高周波数に位置する高調波を含む。
【0013】
さらに、デルタシグマ変調器は、供給装置が現在知られているアナログ制御チェーンと比較して扱いやすくなるように、デジタル構成要素の形態で作製することができる。加えて、デルタシグマ変調器を使用することにより、高調波除去専用のフィルタの使用を回避することが可能になり、本発明による供給装置のサイズをさらに縮小する。
【0014】
本発明による供給装置のサイズを縮小することで、現在の超音波ヘッドと比較して超音波ヘッドのサイズを縮小したり、一定のサイズを有する超音波ヘッドのトランスデューサの数を増加させたりすることが可能になる。
【0015】
デルタシグマ変調器は、任意の次数のものであってもよい。
【0016】
例えば、デルタシグマ変調器は、4次変調器であってもよい。
【0017】
一実施形態によれば、デルタシグマ変調器は、制御信号が1ビットにわたって変調されるように単一ビット出力量子化器を備えてもよい。
【0018】
この場合、電力インターフェースは、例えば、デルタシグマ変調制御信号によって制御されるハーフHブリッジであってもよい。
【0019】
一実施形態によれば、デルタシグマ変調器は、制御信号が数ビットにわたって変調されるようにマルチビット出力量子化器を備えてもよい。
【0020】
この場合、電力インターフェースは、例えば、各々がデルタシグマ変調制御信号によって制御される特定の固定電圧に接続されるスイッチのグループとすることができる。特に、制御信号が2ビットを超える場合、4つのスイッチおよびその電圧源が必要となる。一般に、電力インターフェースは、制御信号のビット数に適合される。
【0021】
有利には、駆動信号は、デジタル正弦波信号、すなわち、デジタル形式の正弦波信号、言い換えれば、2進数を補完する「n」ビットとして従来符号化されているデジタル形式で表される正弦波信号とすることができる。
【0022】
この場合、本発明による供給装置は、以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数、
前記駆動信号の振幅、
前記駆動信号の位相
の少なくとも1つの任意の組み合わせに従って、前記駆動信号を生成するように構成されたデジタル発生器をさらに備えてもよい。
【0023】
そのような発生器は、電子チップ、またはデジタル形式で、列挙されたパラメータの少なくとも1つを表す入力データに基づいてアナログ信号を生成するようにプログラムされた任意の他のデジタル構成要素とすることができる。
【0024】
1つの有利な特徴によれば、本発明による供給装置は、以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数に関するデータ項目、
前記駆動信号の振幅に関するデータ項目、
前記駆動信号の位相に関するデータ項目
の少なくとも1つの任意の組み合わせを提供するデジタル制御インターフェースを備えてもよい。
【0025】
そのようなデジタル制御インターフェースは、外部制御装置から、列挙されたパラメータの少なくとも1つを表すデータを受け取るように意図されたデジタル通信インターフェースであってもよく、またはそれを備えてもよい。
【0026】
あるいは、そのようなデジタル制御インターフェースは、例えば電力データ、焦点距離など、提供される他のデータの関数として列挙されたパラメータの少なくとも1つを推定することを可能にする計算インテリジェンスであってもよく、またはそれを備えてもよい。
【0027】
デジタル制御インターフェースは、外部制御装置と無線通信を実施するために設けられてもよい。
【0028】
代替的または追加的に、デジタル制御インターフェースは、デジタル通信バスを介して外部制御装置と有線通信を実施するために設けられてもよい。
【0029】
本発明による供給装置は、部分的にまたは全体的に、特にプログラム可能な電子チップまたはプロセッサなどの少なくとも1つのデジタル構成要素に統合されてもよい。
【0030】
特に、電力インターフェースを除く本発明による供給装置のすべての要素は、特にプログラム可能な電子チップまたはプロセッサなどのデジタル構成要素に統合されてもよい。
【0031】
1つの有利な特徴によれば、デルタシグマ変調器は、デジタル信号発生器および/またはデジタル制御インターフェースを用いて、特にプログラム可能な電子チップまたはプロセッサなどのデジタル構成要素に統合されてもよい。
【0032】
本発明の別の態様によれば、
少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサに供給を行うための、本発明による供給装置と
を備える、超音波装置が提案される。
【0033】
超音波トランスデューサは、任意のタイプのトランスデューサであってもよい。
【0034】
特に、超音波トランスデューサは、医療用途、特に超音波検査などの医療撮像、または生態療法などの医療処置、またはさらには審美的用途に使用される超音波トランスデューサであってもよい。
【0035】
本発明の別の態様によれば、並列に、本発明によるいくつかの超音波装置を備える、超音波ヘッドが提案される。
【0036】
本発明による超音波ヘッドでは、各超音波トランスデューサは、各超音波トランスデューサを個々に制御することができるように、専用の供給装置に関連付けられている。したがって、本発明による超音波ヘッドの各超音波トランスデューサによって生成される超音波の特性は、個々に変更することができる。
【0037】
特に、超音波ヘッドの各超音波トランスデューサによって送信される超音波の振幅、周波数、および位相は、個々に各超音波トランスデューサに対して変更することができる。
【0038】
本発明による超音波ヘッドは、医療撮像、特に超音波撮像に使用することができる。
【0039】
代替的または追加的に、本発明による超音波ヘッドは、医療治療に使用することができる。
【0040】
代替的または追加的に、本発明による超音波ヘッドは、審美的処置に使用することができる。
【0041】
本発明の別の態様によれば、
本発明による超音波ヘッドと、
前記超音波ヘッドの超音波装置用の少なくとも1つのデジタル制御装置と
を備える、超音波システムが提案される。
【0042】
一実施形態によれば、本発明による超音波システムは、超音波ヘッドの少なくとも1つの、特に各々の超音波装置に対して、前記超音波装置専用の個々のデジタル制御装置を備えてもよい。
【0043】
この場合、超音波ヘッドの各超音波装置は、専用のデジタル制御装置から生成される超音波に関するデータを受け取る。
【0044】
別の実施形態によれば、本発明による超音波システムは、いくつかの、特にすべての超音波装置に共通のデジタル制御装置を備えてもよい。
【0045】
したがって、各超音波装置は、前記共通のデジタル制御装置から生成させる超音波に関するデータを受け取る。
【0046】
共通のデジタル制御装置は、有線デジタル通信バスによって超音波装置に接続されてもよい。
【0047】
あるいは、前記共通のデジタル制御装置は、無線接続、例えばWi-FiまたはBluetoothタイプ、より一般的には無線周波数接続によって前記超音波装置に接続されてもよい。
【0048】
あるいは、前記共通のデジタル制御装置は、光接続によって前記超音波装置に接続することができる。
【0049】
すべての場合において、各超音波装置によって生成される超音波を定義するデータは、前記超音波装置のデジタル制御インターフェースに送信されてもよい。
【0050】
本発明によるシステムは、医療撮像システムであってもよい。
【0051】
本発明によるシステムは、超音波撮像システムであってもよい。この場合、システムは、既知の方式で、超音波を処理して少なくとも1つの超音波画像を生成するための手段を備えてもよい。
【0052】
本発明によるシステムは、医療治療システムであってもよい。
【0053】
特に、本発明によるシステムは、生態療法システムであってもよい。
【0054】
本発明によるシステムは、審美的処置システムであってもよい。
【0055】
本発明の別の態様によれば、本発明によるシステムの使用が医療撮像のために提案される。
【0056】
本発明の別の態様によれば、人間または動物の身体の少なくとも1つのゾーンの審美的処置のために、本発明によるシステムの使用が提案される。
【0057】
本発明の別の態様によれば、供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を超音波トランスデューサに供給するための方法であって、
駆動信号と呼ばれる正弦波信号をデルタシグマ変調し、制御信号と呼ばれる信号を提供するステップと、
前記デルタシグマ変調制御信号により電力インターフェースを制御し、前記供給信号を提供するステップと
を含むことを特徴とする、方法が提案される。
【0058】
当然のことながら、本発明による方法は、方法に関して、上述した少なくとも1つの特徴の任意の組み合わせを含むことができ、これは簡潔にするためにここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
他の利点および特徴は、完全に非限定的な実施形態の詳細な説明を検討することで、および添付の図面から明らかになるであろう。
【
図1】超音波トランスデューサ用の供給装置の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】
図1の装置における信号の例の非限定的な例の概略図である。
【
図3】本発明による超音波装置の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図4】本発明による超音波ヘッドの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図5】本発明による超音波システムの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図6】本発明による超音波システムの別の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に説明される実施形態は、決して限定的ではないことが明確に理解される。特に、この特徴の選択が技術的利点を与えるのに、または先行技術に関して本発明を区別するのに十分である場合、開示される他の特徴とは別に、以下に開示される特徴の選択のみを含む本発明の変形を想像することが可能である。この選択は、その部分だけで技術的利点を与えるのに、または先行技術に関して本発明を区別するのに十分である場合、構造上の詳細のない、または構造上の詳細の一部のみを有する、少なくとも1つの、好ましくは機能的な特徴を含む。
【0061】
図では、いくつかの図に共通する要素について同じ参照符号が使用されている。
【0062】
図1は、本発明による供給装置の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【0063】
図1に示す装置100は、例えば、医療用の超音波ヘッドの超音波トランスデューサにおける超音波トランスデューサに供給を行うために設けられる。
【0064】
供給装置100は、デジタル正弦波信号、すなわち、デジタル形式で表され、以下では駆動信号と呼ばれる正弦波信号を生成するデジタル正弦波信号発生器102を備える。このデジタル発生器102は、生成される正弦波信号に関するパラメータの関数として、正弦波駆動信号をデジタル形式で送達するようにプログラムまたは設計された任意のデジタル電子構成要素とすることができる。例えば、デジタル発生器102に入力されるパラメータは、
生成される正弦波信号の
周波数F、および/または
位相φ、および/または
振幅A
を含むことができる。
【0065】
したがって、デジタル発生器102は、正弦波信号を表し、駆動信号と呼ばれるデジタル信号を提供する。駆動信号の位相および周波数は、生成される超音波の周波数および位相にそれぞれ対応する。
【0066】
当然のことながら、本発明による装置におけるそのようなデジタル発生器の使用は任意選択であり、駆動信号は外部装置によって提供されてもよい。
【0067】
装置100は、以下ではDS変換器とも呼ばれるデルタシグマ変換器104をさらに備える。DS変換器104は、駆動信号を受け取り、前記駆動信号のデルタシグマ変換を実施して制御信号と呼ばれる信号を提供する。言い換えれば、DS変換器104によって提供される制御信号は、それ自体が正弦波信号を表すデジタル信号である駆動信号のデルタシグマ表現である。
【0068】
DS変換器104は、任意の次数のものであってもよい。
【0069】
DS変換器104は、単一ビットまたはマルチビット出力量子化器を備えることができる。
【0070】
供給装置100は、超音波トランスデューサに供給される供給信号を送達するように設計された電力インターフェース106を備える。電力インターフェース106によって送達される供給信号は、例えば10V~100Vの高電圧正弦波信号であり、数ワットの電力を有する。超音波トランスデューサは、この供給信号を、その周波数が供給信号の周波数に等しい超音波に変換する。
【0071】
電力インターフェース106は、DS変換器104によって供給される制御信号によって制御される。言い換えれば、制御信号106は、電力インターフェース106が供給信号を供給するように電力インターフェース106の動作を調整する。電力インターフェース106は、DS変換器によって供給される制御信号によって制御されるハーフHブリッジまたはHブリッジ、あるいはスイッチのグループであってもよい。この場合、電力インターフェース106は、既知の方式で、DC電圧源を備えるか、または外部源からDC電圧を受け取る。DS変換器104によって供給される制御信号は、出力において、DS変調正弦波供給電圧を提供する電力インターフェース106の動作を制御する。
【0072】
図示の例では、供給装置100は、デジタル発生器102の上流に制御インターフェース108を備える。制御インターフェースは、生成される正弦波信号の特徴、すなわち周波数F、および/または位相φ、および/または振幅Aをデジタル発生器102に提供するように配置される。
【0073】
制御インターフェース108は、通信している外部装置からこれらの特徴の少なくとも1つを受け取るように設けられてもよい。
【0074】
あるいは、制御インターフェース108は、例えば、生成される超音波の焦点距離、または生成される超音波の電力値などの他のデータに基づいてこれらの特徴の少なくとも1つを推定するようにプログラムすることができる。
【0075】
当然のことながら、そのような制御インターフェースの使用は任意選択であり、正弦波信号の特徴はデジタル発生器102に直接伝達されてもよい。
【0076】
モジュール102~108の各々は、デジタル的に製造されてもよい。特に、少なくともDS変換器104は、デジタル的に製造される。
【0077】
図1では、モジュール102~108の各々は、個々に表されている。当然のことながら、これらのモジュールの少なくとも2つは、チップまたはプロセッサなどの単一のデジタル構成要素に統合されてもよい。特に、DS変換器104およびデジタル発生器102は、同じデジタル構成要素に統合されてもよい。
【0078】
図2は、
図1の装置における信号の非限定的な例の概略図である。
【0079】
したがって、
図2では、
信号202は、発生器102によってDS変調器に供給されるデジタル信号を表す曲線に対応し、
信号204は、信号202によって、この例では単一ビット出力を有するDS変換器104によって発生されるデルタシグマ変調制御信号に対応し、
信号206は、トランスデューサに供給を行うインターフェース106によって発生される信号のスペクトルに対応する。この信号は、この例では、4番目の単一ビット次数のDS変調器によって発生される。
【0080】
図3は、本発明による超音波装置の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【0081】
図3に図示される超音波装置300は、本発明による供給装置、特に
図1の供給装置100によって電力供給される超音波トランスデューサ302を備える。
【0082】
図4は、本発明による超音波ヘッドの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【0083】
図4の超音波ヘッド400は、並列に配置され、マトリックスを形成する「n」個の超音波装置300
1~300
nを備える。
【0084】
超音波装置3001~300nの少なくとも2つは、同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
各超音波装置300
iは、
図3の超音波装置300と同一であってもよく、接尾辞として「i」によって補足された同じ参照符号を有する装置300のすべての要素を備える。
【0086】
図5は、本発明による超音波システムの非限定的な例示的な概略図である。
【0087】
図5の超音波システム500は、例えば
図4の超音波ヘッド400などの本発明による超音波ヘッドを備える。
【0088】
超音波システム500は、超音波ヘッド400の各超音波装置300i、特に前記超音波装置の制御インターフェース108iに接続された、コンピュータまたはタブレットなどの制御装置502、より一般的には任意のコンピュータ装置をさらに備える。
【0089】
図示の例では、制御装置502は、デジタルおよび有線504である通信バス504を介して各制御インターフェース108iに接続される。あるいは、各制御インターフェース108iは、無線リンクを通して制御装置502と通信してもよい。
【0090】
制御装置502は、他の超音波装置300iとは個々に独立して各超音波装置300iを制御し、各超音波装置300iによって発せられる超音波の周波数、位相、および/または振幅を変化させることを可能にする。これにより、各超音波装置300iによって発せられる各超音波の振幅、周波数、および位相を、簡単で動的かつ反応的に調整することが可能になる。したがって、超音波装置3001~300nによって発せられる超音波の焦点および振幅を簡単で柔軟かつ反応的に調整することが可能である。
【0091】
したがって、本発明が医療撮像装置に実装される場合、移動部材を追跡することが可能である。
【0092】
図6は、本発明による超音波システムの別の非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【0093】
図6は、
図5の変形を示しており、
図6に示すシステム600は、複数の「n」個の複合超音波装置604
1~604
nから構成されるヘッド602を有する。これらの複合超音波装置604
iの各々において、同じ共通のインターフェース108
iが、各々が唯一のトランスデューサに供給を行う複数の供給装置を制御する。例えば、超音波装置604
1内では、同じ共通のインターフェース108
1が、各々が唯一のトランスデューサ302
11~302
1kに供給を行う複数の「k」個の供給装置100
11~100
1kを制御する。同様に、ブロック604
nは、それぞれトランスデューサ302
n1~302
nmの「m」個の供給装置100
n1~100
nmを直接駆動する単一のデジタルインターフェース108
nを備える。
【0094】
これにより、各々がマトリックスのいくつかのトランスデューサのグループを直接駆動することが可能なデジタルインターフェースブロック1081~108nをもたらすことが可能になる。
【0095】
次いで、マトリックスは、同一または異なる数のトランスデューサを備える「n」個のグループに関連付けられた複数のトランスデューサからなる。一般に、所与のグループ内のトランスデューサの数は少なく、例えば2~16の数である。
【0096】
したがって、例えば、ヘッド内のデジタルインターフェースのレベルにおけるコンパクトさおよび構成要素の数を改善することが可能である。デジタルインターフェースおよびいくつかのトランスデューサを含むコンパクトで標準的なサブアセンブリを工業的に製造することも可能であり、この標準的なサブアセンブリは、異なるタイプのヘッドを製造するために異なる構成で使用されてもよい。
【0097】
当然のことながら、本発明は、上に詳述した例に限定されない。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサ(302)に供給を行うための装置(100)であって、供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を前記超音波トランスデューサ(302)に提供するように構成された電力インターフェース(106)を備え、
駆動信号と呼ばれる正弦波信号のデルタシグマ変調を発生させ、制御信号と呼ばれるデジタル信号を提供して前記電力インターフェース(106)を制御するように構成されたデルタシグマ変調器(104)をさらに備えることを特徴とする、
装置(100)。
【請求項2】
前記デルタシグマ変調器(104)は、前記制御信号が1ビットにわたって変調されるように単一ビット出力量子化器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記デルタシグマ変調器(104)は、前記制御信号が数ビットにわたって変調されるようにマルチビット出力量子化器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記駆動信号は、デジタル正弦波信号であり、前記装置(100)は、以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数、
前記駆動信号の振幅、
前記駆動信号の位相
の少なくとも1つの任意の組み合わせに従って、前記駆動信号を生成するように構成されたデジタル発生器(102)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
以下のパラメータ:
前記駆動信号の周波数、
前記駆動信号の振幅、
前記駆動信号の位相
の少なくとも1つの任意の組み合わせを提供するデジタル制御インターフェース(108;108
1~108
n)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
部分的にまたは全体的に、少なくとも1つのデジタル構成要素に統合されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(302)と、
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサ(302)に供給を行うための、請求項1~6のいずれか一項に記載の供給装置(100)と
を備える、超音波装置(300)。
【請求項8】
並列に、請求項7に記載のいくつかの超音波装置(300
1~300
n)を備える、超音波ヘッド(400)。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波ヘッド(400;602)と、
前記超音波ヘッド(400)の前記超音波装置(300
1~300
n;604
1
~604
n)用の少なくとも1つのデジタル制御装置(502)と
を備える、超音波システム(500;600)。
【請求項10】
医療撮像システム、または治療システムであることを特徴とする、請求項9に記載のシステム(500;600)。
【請求項11】
医療撮像のための請求項9または10のいずれか一項に記載のシステム(500;600)の使用。
【請求項12】
供給信号と呼ばれるアナログ電力信号を超音波トランスデューサ(302)に供給するための方法であって、
駆動信号と呼ばれる正弦波信号をデルタシグマ変調し、制御信号と呼ばれる信号を提供するステップと、
前記デルタシグマ変調制御信号により電力インターフェースを制御し、前記供給信号を提供するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】