(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】発酵用泡制御剤
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20230926BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20230926BHJP
C12P 7/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N1/00 E
B01D19/04 B
C12P7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515003
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 US2021049332
(87)【国際公開番号】W WO2022055906
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】デ サンティ ウンガラト、ラファエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ワンリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4D011
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064CA06
4B064CC30
4B065AA72X
4B065BB05
4B065BC19
4B065CA06
4D011CB05
(57)【要約】
発酵方法は、酵母、水、及び糖を有するブロスを形成する工程と、泡制御剤を、ブロス、ブロス上に形成された泡、又はそれらの両方と接触させる工程と、を含み、泡制御剤は、構造(I)を有し、式中、Rは、4~18個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であり、mは、1~10であり、nは、9~15であり、oは、15~25であり、o/nは、1.00~2.00である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵方法であって、
酵母、水、及び糖を含むブロスを形成する工程と、
泡制御剤を、前記ブロス、前記ブロス上に形成された泡、又はそれらの両方と接触させる工程と、を含み、前記泡制御剤が、構造(I)を有し、
【化1】
式中、Rが、4~18個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であり、mが、1~10であり、nが、9~15であり、oが、15~25であり、o/nが、1.00~2.00である、発酵方法。
【請求項2】
前記ブロスを発酵させて、エタノールを形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造(I)のo/n比が、1.00よりも大きい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
構造(I)のMが、3~7である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
構造(I)のRが、分岐状アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
構造(I)のRが、2-エチルヘキシル部分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記泡制御剤を接触させる工程が、前記泡制御剤を前記ブロスに直接接触させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記泡制御剤の前記接触が、前記泡制御剤を前記泡に直接接触させることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分散剤を前記泡に直接添加する工程を更に含み、前記分散剤が、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含むグリセロール開始ポリマー又はジオール開始ポリマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散剤と前記泡制御剤との重量比が、0.2~2.5である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、泡制御剤に関し、より具体的には、発酵プロセスにおいて有用な泡制御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
エタノール生成は、酵母、水、及び糖のブロスを発酵容器中で発酵させることによって実施される。発酵中の泡の形成は周知の問題である。両親媒性物質として作用するタンパク質の存在及び発酵中に放出される大量のCO2が、泡発生の原因である。典型的には、ブロス-空気界面での泡は性質が弾性であり、したがって、表面に上昇するCO2を容易に捕捉する。泡は溶解に対して抵抗性であるので、発酵が続くにつれて泡は蓄積する。厳密に制御されない限り、泡は発酵容器のオーバーフローを引き起こす可能性があり、これはブロスの損失及び/又はエタノールの損失をもたらす可能性がある。
【0003】
ポリグリコールは、多くの場合、泡制御剤として使用される。発酵システムにおける泡の制御には、消泡剤及び脱泡剤を含む2つの従来のアプローチが存在する。消泡剤は、典型的には、発酵開始前にブロスに直接添加される。消泡剤は、ブロス-空気界面で作用して、泡の形成及び蓄積を防止する。脱泡剤は、典型的には、既に形成された泡に直接適用されて、泡を分解する。泡の防止及び低減は関連する目標であるが、消泡剤及び脱泡剤は非常に異なる環境で作用する。例えば、消泡剤は、高濃度の酵母、水、エタノール、及び糖が存在する液体ブロス中で作用するのに対して、脱泡剤は、高濃度のタンパク質及び空気が存在する泡に作用する。
【0004】
消泡剤及び脱泡剤の両方である泡制御剤を作製する試みが行われてきた。例えば、米国特許第8,357,823(B2)号は、アルキレンオキシドでキャップされた二級アルコールエトキシレートを発酵泡制御剤として提供している。二級アルコールエトキシレートは、消泡剤及び脱泡剤の両方として有効であるが、比較的より高価な二級アルコールに依存する。更に、二級アルコール泡制御剤は、一級アルコール泡制御剤と比較して、液体から新たに形成された界面(例えば、泡)への二級アルコールの移動性が大きいので、一級アルコール泡制御剤に対して有利である。
【0005】
一級アルコール系界面活性剤は、低発泡洗浄用途で知られている。例えば、米国特許第10,150,936(B2)号(「’936特許」)は、洗浄用途で使用するための分岐状生分解性低発泡非イオン性界面活性剤を開示している。’936特許は、PO-EO-POトリブロック中にエチレンオキシド(「ethylene oxide、EO」)及びプロピレンオキシド(「propylene oxide、PO」)を含む界面活性剤を提供する。’936特許は、最適な脱泡性能を達成するために、EO単位と末端PO単位との比が、望ましくは1以下であることを説明している。’936特許の界面活性剤は、自動食器洗浄環境(例えば、48℃~65℃の温度の水性環境)で使用するために設計されている。
【0006】
界面活性剤/泡制御剤の構造に基づく特性の周知の予測不可能性を考慮し、また上記で概説した各環境のために設計された非常に異なる構造を鑑みて、発酵プロセスのための消泡剤及び脱泡剤の両方として機能し得る、1.00~2.00の末端PO対EO比を有するPO-EO-POトリブロック構造を有する一級アルコール界面活性剤から構成される泡制御剤を発見することは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0007】
本出願の発明者らは、1.0~2.00の末端PO対EO比を有するPO-EO-POトリブロック構造を有する一級アルコール界面活性剤であって、発酵プロセスのための消泡剤及び脱泡剤の両方として機能することができる一級アルコール界面活性剤を驚くべきことに発見した。泡制御剤は、構造(I)を有し、
【化1】
式中、Rは、4~18個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基であり、mは、1~10であり、nは、9~15であり、oは、15~25であり、o/nは、1.00~2.00である。本発明の泡制御剤は、ブロスに添加されたときに泡の蓄積を減少させることによって消泡剤として機能するのに有効であり、泡が発生した後に泡を消散させる脱泡剤としても有効である。
【0008】
本開示の第1の特徴によれば、発酵方法は、酵母、水、及び糖を含むブロスを形成する工程と、泡制御剤を、ブロス、ブロス上に形成された泡、又はそれらの両方と接触させる工程と、を含み、泡制御剤は、構造(I)を有する。
【0009】
本開示の第2の特徴によれば、方法は、ブロスを発酵させて、エタノールを形成する工程を更に含む。
【0010】
本開示の第3の特徴によれば、構造(I)のo/n比は、1.00よりも大きい。
【0011】
本開示の第4の特徴によれば、構造(I)のMは、3~7である。
【0012】
本開示の第5の特徴によれば、構造(I)のRは、分岐状アルキルである。
【0013】
本開示の第6の特徴によれば、構造(I)のRは、2-エチルヘキシル部分である。
【0014】
本開示の第7の特徴によれば、泡制御剤を接触させる工程は、泡制御剤をブロスに直接接触させることを含む。
【0015】
本開示の第8の特徴によれば、泡制御剤を接触させる工程は、泡制御剤を泡に直接接触させることを含む。
【0016】
本開示の第9の特徴によれば、方法は、分散剤を泡に直接添加する工程を更に含み、分散剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含むグリセロール開始ポリマー又はジオール開始ポリマーを含む。
【0017】
本開示の第10の特徴によれば、分散剤と泡制御剤との重量比は、0.2~2.5である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0019】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0020】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号は、本文書の優先日の時点でその登録番号に指定された最新の化学物質又は化学組成物を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が、ポリマー組成物の総重量に占める重量パーセンテージを示す。モルパーセント(「mol%」)という用語は、成分が存在するアイテムの総モル数に対する成分のモル百分率を示している。
【0022】
「ポリマー」は、同じであるか異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される高分子化合物を意味する。総称的な用語「ポリマー」は、ホモポリマー、インターポリマー、及びコポリマーを包含する。
【0023】
方法
本開示は、発酵方法を対象とする。発酵方法は、酵母、水、及び糖を含むブロスを形成する工程と、泡制御剤を、ブロス、ブロス上に形成された泡、又はそれらの両方と接触させる工程と、を含む。発酵方法はまた、ブロスを発酵させて、エタノールを形成する工程を含んでもよい。更に、本方法はまた、泡に分散剤を添加する工程を含んでもよい。
【0024】
ブロス
上述したように、本方法は、酵母、水、及び糖を含むブロスを形成する工程を含む。ブロスの形成に使用される糖は、グルコース、フルクトース、及び/又はスクロースであってよい。糖は、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシ、及び/又はテンサイ由来であってもよい。ブロスの形成において、ブロスは、ブロスの総重量に基づいて、5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上である一方で、同時に、25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下の糖を含み得る。酵母は、サッカロミセス・パストリアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、及びサッカロミセス・バヤヌスのうちの1つ以上を含み得る。ブロスは、ブロスの総重量を基準に、1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、一方で同時に、10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下の酵母を含み得る。
【0025】
上記で説明したように、ブロスは、エタノールを形成するために発酵され得る。発酵中、酵母は、ブロス中に存在する糖をエタノール及びCO2に変換する。発酵は、25℃~36℃の温度で8時間~168時間の期間で実施することができる。CO2が発酵の副生成物として放出されると、ブロス-空気界面でブロスの上部に泡が形成され得る。泡は、液体フィルム領域によって分離された多分散気泡の群によって特徴付けられる。ブロス中に存在するタンパク質及び他の両親媒性物質に起因して、泡は、ブロスへの自然溶解に抵抗し得る。発酵が進行するにつれて、CO2の継続的な生成は、泡の蓄積をもたらし得る。
【0026】
泡制御剤
発酵方法は、泡制御剤を用いる。泡制御剤は、構造(I)を有する。
【化2】
【0027】
変数「m」及び「o」は、構造(I)で利用されるポリプロピレンオキシドの平均モル単位を表し、変数「n」は、構造(I)でのエチレンオキシドの平均モル単位を表す。構造(I)中のRは、4~18個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基である。本明細書で定義されるように、R、m、n、及びo値は、プロトン核磁気共鳴分光法及びカーボン-13核磁気共鳴分光法によって試験及び決定される。構造(I)では、mは1~10であり、nは9~15であり、oは15~25であり、o/nは1.00~2.00である。構造(I)のm値は、1以上、又は2以上、又は3以上、又は4以上、又は5以上、又は6以上、又は7以上、又は8以上、又は9以上である一方、同時に、10以下、又は9以下、又は8以下、又は7以下、又は6以下、又は5以下、又は4以下、又は3以下、又は2以下である。例えば、mは、1~10、又は4~9、又は3~7、又は5~9、又は5~8、又は5~7、又は4~6であり得る。構造(I)のn値は、9以上、又は10以上、又は11以上、又は12以上、又は13以上、又は14以上である一方、同時に、15以下、又は14以下、又は13以下、又は12以下、又は11以下、又は10以下である。構造(I)のo値は、15以上、又は16以上、又は17以上、又は18以上、又は19以上、又は20以上、又は21以上、又は22以上、又は23以上、又は24以上である一方、同時に、25以下、又は24以下、又は23以下、又は22以下、又は21以下、又は20以下、又は19以下、又は18以下、又は17以下、又は16以下である。構造(I)の第1の特定の例では、mは、5であり、nは、15であり、oは、25である。構造(I)の第2の特定の例では、mは、5であり、nは、9であり、oは、15である。構造(I)の第3の特定の例では、mは、5であり、nは、14であり、oは、20である。
【0028】
構造(I)のo/n比は、1.00~2.00であり得る。構造(I)のo/n比は、1.00超~2.00であり得る。例えば、o/n比は、1.00以上、又は1.05以上、又は1.10以上、又は1.15以上、又は1.20以上、又は1.25以上、又は1.30以上、又は1.35以上、又は1.40以上、又は1.45以上、又は1.50以上、又は1.55以上、又は1.60以上、又は1.65以上、又は1.70以上、又は1.75以上、又は1.80以上、又は1.85以上、又は1.90以上、又は1.95以上であり得る一方、同時に、2.00以下、又は1.95以下、1.90以下、1.85以下、又は1.80以下、又は1.75以下、又は1.70以下、又は1.65以下、又は1.60以下、又は1.55以下、又は1.50以下、又は1.45以下、又は1.40以下、又は1.35以下、又は1.30以下、又は1.25以下、又は1.20以下、又は1.15以下、又は1.10以下、又は1.05以下であり得る。o/n比は、平均n値で割った平均o値を取ることによって計算される。
【0029】
上記で説明したように、構造(I)中のRは、4~18個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル基である。例えば、Rは、4個以上の炭素、又は5個以上の炭素、又は6個以上の炭素、又は7個以上の炭素、又は8個以上の炭素、又は9個以上の炭素、又は10個以上の炭素、又は11個以上の炭素、又は12個以上の炭素、又は13個以上の炭素、又は14個以上の炭素、又は15個以上の炭素、又は16個以上の炭素、又は17個以上の炭素を含み得る一方、同時に、18個以下、又は17個以下、又は16個以下、又は15個以下、又は14個以下、又は13個以下、又は12個以下、又は11個以下、又は10個以下、又は9個以下、又は8個以下、又は7個以下、又は6個以下、又は5個以下の炭素を含み得る。様々な例によれば、Rは、分岐状アルキルである。特定の例において、Rは、2-エチルヘキシル(「2-ethylhexyl、2EH」)部分である。2EH末端基部分は、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロックが重合される開始剤として2-エチルヘキサノールを使用することによって、構造(I)に導入することができる。泡制御剤の構造(I)は、生分解性である。
【0030】
泡制御剤は、消泡剤及び脱泡剤の両方として有効である。したがって、泡制御剤は、ブロス及びブロス上に形成された泡のうちの少なくとも1つに泡制御剤を接触させることによって、発酵方法において利用され得る。言い換えれば、泡制御剤は、ブロス、ブロス上に形成された泡、又はそれらの両方と接触させることができる。消泡剤として機能する場合、泡制御剤を接触させる工程は、泡制御剤をブロスに直接接触させることを含む。本明細書で使用される場合、「ブロスに直接」という用語は、ブロスが形成される際に泡制御剤をブロスに添加又は接触させること(すなわち、泡制御剤を酵母、水、糖のうちの1つ以上と混合し、他の成分を添加すること)、及び/又は発酵が始まる前若しくは後に、形成されたブロスに泡制御剤を添加することを含む。脱泡剤として機能する場合、泡制御剤は、泡に直接接触させてもよい。本明細書で使用される場合、「泡に直接」という用語は、ブロスの上部に形成された泡への泡制御剤の注入、噴霧、又は適用を含む。泡制御剤は、本明細書に提供される教示から逸脱することなく、未希釈の若しくは純粋な成分として利用されてもよく、又は水及び/若しくは他の化合物(例えば、油、シリコーン、他の添加剤)と組み合わされてもよいことが理解されるであろう。上記で説明したように、泡制御剤は、消泡剤及び脱泡剤の両方として使用することができる。したがって、泡制御剤は、発酵前又は発酵中にブロス中に含まれてもよく、次いで発酵の結果として形成される泡に直接適用されてもよい。
【0031】
分散剤
本方法は、泡に分散剤を直接添加する工程を更に含んでもよい。分散剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含むグリセロール開始ポリマー又はジオール開始ポリマーを含む。分散剤を開始するために使用されるジオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び/又はポリブチレングリコールなどのアルカリ性グリコールであってもよい。
【0032】
分散剤は、5重量%以上、若しくは10重量%以上、若しくは15重量%以上、若しくは20重量%以上、若しくは25重量%以上、若しくは30重量%以上、若しくは35重量%以上、若しくは40重量%以上、若しくは45重量%以上、若しくは50重量%以上、若しくは55重量%以上、若しくは60重量%以上、若しくは65重量%以上、若しくは70重量%以上、若しくは715重量%以上、若しくは80重量%以上、若しくは85重量%以上、若しくは90重量%以上、若しくは95重量%以上のエチレンオキシド及び/若しくはプロピレンオキシド、一方で、同時に、100重量%以下、若しくは95重量%以下、若しくは90重量%以下、若しくは85重量%以下、若しくは80重量%以下、若しくは75重量%以下、若しくは70重量%以下、若しくは65重量%以下、若しくは60重量%以下、若しくは55重量%以下、若しくは50重量%以下、若しくは45重量%以下、若しくは40重量%以下、若しくは35重量%以下、若しくは30重量%以下、若しくは25重量%以下、若しくは20重量%以下、若しくは15重量%以下、若しくは10重量%以下、若しくは5重量%以下のエチレンオキシド及び/若しくはプロピレンオキシドを含み得る。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの量は、プロトン核磁気共鳴分光法及びカーボン-13核磁気共鳴分光法によって試験及び決定される。
【0033】
分散剤は、ゲル浸透クロマトグラフィに準じて測定する場合、1000g/mol(「g/mol」)以上、又は1500g/mol以上、又は2000g/mol以上、又は2500g/mol以上、又は3000g/mol以上、又は3500g/mol以上、又は4000g/mol以上、又は4500g/mol以上、又は5000g/mol以上、又は5500g/mol以上、又は6000g/mol以上、又は6500g/mol以上、又は7000g/mol以上、又は7500g/mol以上である一方で、同時に、8000g/mol以下、又は7500g/mol以下、又は7000g/mol以下、又は6500g/mol以下、又は6000g/mol以下、又は5500g/mol以下、又は5000g/mol以下、又は4500g/mol以下、又は4000g/mol以下、又は3500g/mol以下、又は3000g/mol以下、又は2500g/mol以下、又は2000g/mol以下、又は1500g/mol以下の重量平均分子量を有し得る。
【0034】
分散剤は、分散剤の重量を泡制御剤の重量で割ることによって測定される、分散剤と泡制御剤との重量比が0.2~2.5であるように、泡に添加され得る。分散剤/泡制御剤の重量比は、0.2以上、又は0.4以上、又は0.6以上、又は0.8以上、又は1.0以上、又は1.2以上、又は1.4以上、又は1.6以上、又は1.8以上、又は2.0以上、又は2.2以上、又は2.4以上である一方で、同時に、2.5以下、又は2.4以下、又は2.2以下、又は2.0以下、又は1.8以下、又は1.6以下、又は1.4以下、又は1.2以下、又は1.0以下、又は0.8以下、又は0.6以下、又は0.4以下であり得る。
【0035】
泡制御剤とともに分散剤を使用することは、いずれかの剤が単独で生成するよりも大きな脱泡結果を有利に提供し得る。
【実施例】
【0036】
材料
酵母1は、脱水形態のサッカロミセス・セレビシエ種であり、Fermentec,Sao Paulo,Brazil製の商品名FERMEL(商標)で入手可能である。
【0037】
酵母2は、脱水形態のサッカロミセス・セレビシエ種であり、ACH Foods、Oakbrook Terrace,IL製の商品名FLEISCHMANN’S YEAST(商標)で入手可能である。
【0038】
糖は、精製された白色スクロースである。
【0039】
表1は、実施例において使用される泡制御剤(「foam control agent、FCA」)及び分散剤(「dispersing agent、DA」)の組成を提供する。FCA及びDAの各々は、The Dow Chemical Company,Midland,MIから入手することができる。表3において、エチレンオキシド(「EO」)及びプロピレンオキシド(「PO」)は、重量パーセントで提供され、使用されるジオール開始剤は、1800g/mol~2000g/molの重量平均分子量を有するプロピレングリコールである。提供される分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィによって決定される重量平均分子量である。
【表1】
【0040】
試料調製
試験した酵母を、水及び酵母の総重量に基づいて10重量%で水道水で水和して、酵母分散液を形成した。糖溶液は、水道水、並びに20重量%の糖(水道水及び糖の総重量に基づいて)から形成した。ブロスを生成するために、300グラム(g)の酵母分散液及び600gの糖溶液を混合した。
【0041】
消泡試験試料については、0.135gの示された泡制御剤をブロスに添加して消泡試料を得た。脱泡試験試料については、0.270gのDA2をブロスに添加して、脱泡試料を形成した。
【0042】
試験方法
消泡試験:消泡試料の総質量を、Tecnal製のFERMENTEST(商標)発酵試験キット上に固定された円筒容器に移した。円筒容器の底から多孔板を通して7.0リットル/分の空気流を注入し、試料中に泡を発生させた。泡が高さ25センチメートル(「centimeter、cm」)に達するのに必要な時間を、試料の発泡性及び泡安定性の尺度として記録した。25cmの泡の高さに達する時間が長いほど、泡制御剤がより良好に働いている。300秒後、試料の泡の高さが25cmに達しなかった場合、実験を停止し、時間を300秒として報告した。泡の高さは、容器の側面に存在するスケールバーを視覚的に観察することによって測定した。各実験を2回繰り返し、結果の平均を表2に報告する。
【0043】
脱泡試験:脱泡試料の総質量を、Tecnal製のFERMENTEST(商標)発酵試験キット上に固定された円筒容器に移した。円筒容器の底から多孔板を通して7.0リットル/分の空気流を注入し、試料中に泡を発生させた。泡が円筒容器内で20cmの高さに達したとき、0.27gの泡制御剤及び/又は分散剤をピペットを介して添加して、泡を破壊した。泡制御剤及び/又は分散剤の添加後の泡の最小高さ、並びに最小高さに達するのにかかった時間を記録した。各実験を2回繰り返し、結果の平均を表3に報告する。
【0044】
消泡結果
表2は、発明の実施例(「inventive example、IE」)IE1~IE6及び比較例(「comparative example、CE」)CE1~CE12の消泡結果を報告する。
【表2】
【0045】
泡制御剤のうちの3つ:FCA3、FCA4、及びFCA6は、泡の成長が25cmの高さに達するのを妨げた。表1の組成物情報を参照すると、これら3つの泡制御剤は全て、構造(I)に関して、9~15のn値、15~25のo値、及び1.00~2.00のo/n値を有することを見ることができる。CE1~CE10の各々は、300秒未満で25cmの泡の高さに達した。比較例の泡制御剤を調べると、これらの材料のo/n値は、1.00未満であり、他の点では構造(I)のm、n、及びo値から逸脱していた。構造(I)に関して、9~15のn値、15~25のo値、及び1.00~2.00のo/n値を有する泡制御剤は、消泡剤として効果的に作用することができる一方で、異なるm、n、o、及びn/o値を有する同じ構造は、消泡剤として効果的に機能することができないことは驚くべきことである。
【0046】
脱泡結果
表3は、IE7及びIE8並びにCE13及びCE14の消泡結果を報告する。
【表3】
【0047】
表3から理解することができるように、FCA5は、泡が泡制御剤の導入時の20cmから導入後5分後の30cmまで上昇し続けたので、脱泡剤として機能することができなかった。したがって、FCA5(R=2EH、m=5、n=6、o=3)の構造は、消泡剤又は脱泡剤のいずれとしても機能することができなかった。対照的に、FCA6は、泡を壊すことができ、消泡剤に加えて脱泡剤として機能することができた。FCA6は、構造(I)に関して、9~15のn値、15~25のo値、及び1.00~2.00のo/n値を有していたので、FCA6は、消泡剤及び脱泡剤の両方として機能することができたと考えられる。9~15のn値、15~25のo値、及び1.00~2.00のo/n値を有する他の泡制御剤(すなわち、FCA3及びFCA4)は、FCA6と同様の脱泡結果を提供するであろうと考えられる。DA3は、泡を破壊することができるが、脱泡剤としてはFCA6ほど有効ではなかった。驚くべきことに、50:50重量比のDA3及びFCA6は、FCA6及びDA3のいずれか単独よりも大きい結果をもたらすことができた。
【国際調査報告】