(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】スガマデクスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/724 20060101AFI20230926BHJP
C08B 37/16 20060101ALI20230926BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K31/724
C08B37/16
A61P21/00
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515368
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 US2021049350
(87)【国際公開番号】W WO2022055916
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】521126760
【氏名又は名称】ヴェルテンシュタイン・バイオファーマ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ランベルト,デビッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アバレ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】コーダン,ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ラーペント,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ショエル,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ノイハウス,ジェフリー・エス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086EA25
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA01
4C086ZC37
4C090AA03
4C090BA10
4C090BB54
4C090BB63
4C090BB65
4C090BB93
4C090CA19
4C090DA23
(57)【要約】
本発明は、API結晶化度又は生成した結晶形態と無関係である溶媒規格を満足させるための結晶性スガマデクスの乾燥方法に関する。本発明はさらに、外科手術を受けた成人における臭化レクロニウムによって又は臭化ベクロニウムによって誘発される神経筋遮断の回復でのスガマデクスの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性スガマデクス湿ケーキ:
【化1】
の乾燥方法であって、
1)結晶性スガマデクス、水、及び溶媒の湿ケーキを通して、約15%~約75%の相対湿度を有する高湿ガスを流すこと、
2)スガマデクス製品を単離すること
を含む方法。
【請求項2】
前記高湿ガスが窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒がエタノール若しくはメタノール、又はそれらの混合物である、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記窒素の前記相対湿度が約25%~約60%であり、前記温度を約25℃~約50℃に維持する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記窒素の前記相対湿度が約25%~約60%であり、前記温度を約25℃~約35℃に維持する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記窒素の前記相対湿度が約40%~約45%であり、前記温度を約25℃~約50℃に維持する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素の前記相対湿度が約40%~約45%であり、前記温度を約25℃~約50℃に維持する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スガマデクス製品を単離する前に、乾燥ガス流又は真空を使用することで、前記残留水レベルを任意に低下させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
乾燥窒素流を流すことで前記残留水レベルを低下させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
真空によって前記残留水レベルを低下させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
約25℃~約50℃の温度乾燥窒素流又は真空を用いて、残留水を低下させて、約10重量%未満の水とする、請求項9及び10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
残留水レベルが10重量%以下である乾燥結晶性スガマデクスを提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
残留メタノールレベルが200ppm以下である乾燥結晶性スガマデクスを提供する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
残留エタノールレベルが約5重量%以下である乾燥結晶性スガマデクスを提供する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
残留水、メタノール及びエタノールレベルがそれぞれ≦10重量%、≦200ppm、及び≦5重量%である乾燥結晶性スガマデクスを提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記高湿乾燥プロセス時の圧力を25mmHg~475mmHgに維持する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記圧力が250mmHgである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記高湿乾燥プロセス中、水≦10重量%、メタノール≦200ppm、及びエタノール≦5重量%の残留レベルを単一の段階で達成する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
約30℃~約35℃の温度で、結晶性スガマデクス、水及び溶媒の湿ケーキを通して相対湿度約40%~約45%である高湿窒素を流し、次に乾燥窒素流又は真空で乾燥させることで、水≦10重量%、メタノール≦200ppm、及びエタノール≦5重量%の残留レベルを達成する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも下記の回折角°2θ(+/-0.2°)のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、スガマデクスの結晶形態5型。
【表1】
【請求項21】
少なくとも下記の回折角°2θ(+/-0.2°)のピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、スガマデクスの結晶形態11型。
【表2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品BRIDION(登録商標)(スガマデクス)の製造を改善する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スガマデクスは、下記構造を有する修飾シクロデキストリンである。
【化1】
【0003】
スガマデクスは2008年にEMEAによって承認され、2015年にUSFDAによって、外科手術を受けた成人における臭化レクロニウムと臭化ベクロニウムによって誘発される神経筋遮断の回復に関して承認された。それは、商品名BRIDION(登録商標)で、無菌液剤の形態で静注投与される。スガマデクスは、その合成方法と共に、2001年6月7日に公開されたWO2001/040316に開示されている。スガマデクスの改良された合成が2019年6月3日出願のPCT国際特許出願WO2019/236436に開示されている。他のスガマデクス製造方法も当業界で開示されている。製造されたら、有効成分は代表的には、湿ケーキとして単離され、真空乾燥されて、純度及び残留溶媒の規格を満たす粉末が得られる。次に、その粉末を注射用水に溶解し、pHを調節し、得られた溶液を濾過し、バイアルに充填し、滅菌して、使用のために保存する。当業界においては、スガマデクスの改善された乾燥又は精製方法が依然として必要とされている。本発明は、このニーズに対処するものである。
【0004】
スガマデクスは、全身麻酔で神経筋遮断薬の回復剤として使用される修飾γ-シクロデキストリン医薬品有効成分(API)である。シクロデキストリン分子の開構造は、複数の固体形態を生じるものであり、現在までに12を超える異なる混合メタノール溶媒和物/水和物形態が特性決定されている。スガマデクスの結晶形の例は、本明細書では、結晶形態1型、結晶形態2型、結晶形態3型、結晶形態8型、及び結晶形態9型と称するものとし、全てが2019年9月25日出願のPCT出願PCT/EP19/07582324604に開示されており、該出願はその全体が本明細書に組み込まれる。それらの結晶形は、臭化レクロニウム及び臭化ベクロニウムによって誘発される神経筋遮断の回復に有用である。
【0005】
当初のプロセスでは、動力学的形態(1型)を製造して、熱及び真空のみを使用して固体を良好に乾燥させて、本明細書に記載の残留溶媒の望ましい規格を満たせるようにした。乾燥時にプロセス溶媒を所望のレベルまで除去することができず、その後固体を再処理する必要があるために、それぞれ熱力学的形態及び動力学的形態の2型及び3型の分離は回避されていた。したがって、大規模な最終APIの残留溶媒レベルを満たすための堅牢性を確保する上で、スガマデクス出発材料の結晶化度に依存しない改善された乾燥プロセスが望まれる。本発明は、APIの結晶化度又は生成される結晶形態と無関係である溶媒除去機構であって、結晶構造が無傷のままであるか崩壊しているかとは無関係に、乾燥の奏功によって溶媒が水分子に置換される機構に関するものである。
【0006】
スガマデクスは、メタノール及び水溶媒系から単離されると、いくつかの混合メタノール溶媒和物/水和物形態として存在する結晶固体として単離される。水はスガマデクスの強力な溶媒であるのに対し、メタノールは結晶化プロセス中に貧溶媒として添加される。水およびメタノールに溶解すると、スガマデクスは高レベルの過飽和に達する傾向があり、その後自然核形成が起こる。メタノールをさらに添加すると、動力学的1型形態は容易に核形成する。2型および3型は、単離プロセス全体を通じてより安定した形態であることが認められており、1型と比較して溶解度が低いことを特徴とし、2型は熱力学的形態である。8型および9型は、溶媒を除去するために湿式乾燥を必要としない1型に匹敵する乾燥特性を有することが認められた。シード添加又は長時間のエージングを行わない2型の核形成は、希にしか観察されなかった。2型および3型では溶媒がより強固に結合されていることに加えて、それぞれの粒径が大きいほど、乾燥速度が粒子の厚さの2乗だけ遅くなり得る拡散制御乾燥機構に基づいて乾燥することがより困難になると予想される。
図1は、1型、2型および3型形態の走査型電子顕微鏡写真を示しており、1型は主に凝集したプレートレットとして存在するが、2型および3型は成長速度が速いことを特徴としており、より大きな結晶を形成する傾向がある。2型の形態は、ブロック、ロッド、プレート、又はそれぞれの混合の間で変化することが観察されているが、3型粒子はブロック状又はロッド状の外観を有することができる。
【0007】
初期の製造プロセスでは、1型プレートレットが、形成が容易であり、プロセス溶媒を除去して、<200ppmメタノール、<5重量%エタノール、及び<10重量%として設定された規格を満たすことができることから、標的形態として選択された。一旦形成されたら、固体を濾過し、次いでメタノール変性エタノール及び水の混合物で洗浄した。溶媒と水の正確な化学量論は知られていなかったが、洗浄溶液からのエタノールが結晶格子内のメタノールと部分的に置き換わり得ると考えられていた。したがって、エタノール溶液で洗浄すると、乾燥機に入る固体のメタノール含有量が減少し、それにより、その後の乾燥設備操作中のメタノール除去の負荷が減少した。
【0008】
次に、1型の固体を、熱と真空のみを使用して直ちに規格まで乾燥させた。しかしながら、残留溶媒含有量が高くなったために生産バッチが不首尾となることがあり、固体の再加工が必要となった。調べたところ、バッチの不首尾は、プロセストレイン内の残留固形物による望ましくないシード化と、その後の2型及び/又は3型結晶の形成によるものであると結論付けられた。残留溶媒規格を満たすことができないのは、結晶形態及びより大きな粒径の両方が原因であった。その結果、潜在的なシード源を効果的に排除するために、厳密なバッチ間洗浄プロトコールを実施した。さらに、2型もしくは3型の直接形成、又は、熟成時の1型から2型もしくは3型への変換を避けるために、メタノール添加後の保持時間を制限した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2001/040316
【特許文献2】WO2019/236436
【特許文献3】PCT/EP19/07582324604
【発明の概要】
【0010】
最終的に、スガマデクスに対する最近の需要の増加により、予測される量を満たすために追加のプロセス改善が必要になった。したがって、熱力学的に好ましい2型形態を生成するためのプロセス開発が開始され、それには、この形態の残留溶規格を一貫して満たすための改善された乾燥手順が含まれる。以前の研究では、他の化合物について、加湿乾燥ガスの使用又は乾燥条件の注意深い制御のいずれかによる結晶水和形態の維持が、プロセス溶媒の除去を成功させるために非常に重要であることが示されていた(Lamberto,D. J., et al., Org Process Res Dev 2017, 27, 1828-1834;Khoo, J. Y. et al., Ind Eng Chem Res 2010, 49, 422-427;Adamson, J. et. al., Org Process Res Dev 2016, 20, 51-58)。しかしながら、スガマデクスの場合、結晶形態は溶媒和物及び水和物の両方からなることから、その結晶形態の維持は不可能であった(又は望ましい)。例え水が結晶格子中に維持されていても、乾燥時にどうしてもメタノールが除去されて、最初の形態が失われた。本発明は、溶媒の除去を促進し、結晶を気にすることなく、最終的な乾燥スガマデクス固体においてより低い溶媒レベルを達成できるようにするために、乾燥ガス中の水を使用する溶媒置換による良好な乾燥へのアプローチを提供するものである。過去において乾燥窒素流を使用したり、熱と真空の組み合わせを適用してもできなかったことから、結晶形態2型及び3型を含むすべての形態のスガマデクス固体を乾燥させて、不純物、特に残留溶媒及び水を所望のレベルとすることができるプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、医薬品BRIDION(無菌溶液)製造の改善方法に関する。詳細には、本発明は、スガマデクスの改善された乾燥プロセスを使用することによる医薬品スガマデクスの新規な製造方法に関する。本発明はさらに、結晶性スガマデクスを乾燥させて、APIの結晶化度又は生成結晶形態から独立した溶媒規格を充足する方法に関するものである。
【0012】
1態様において、結晶性スガマデクス湿ケーキ:
【化2】
の乾燥方法であって、
1)結晶性スガマデクス、水、及び溶媒の湿ケーキを通して、約15%~約75%の相対湿度を有する高湿ガスを流すこと、
2)スガマデクス製品を単離すること
を含む方法が提供される。
【0013】
本発明はさらに、本明細書ではスガマデクスの結晶形態5型及びスガマデクスの結晶形態11型と称されるスガマデクスの新規結晶形態、それの医薬組成物、並びに手術を受けた成人における臭化レクロニウム及び臭化ベクロニウムによって誘発される神経筋遮断の回復での使用方法に関するものである。
【0014】
1態様において、本発明は、スガマデクスの新規な結晶形態を提供する。1実施形態において、スガマデクスの結晶形態5型が提供される。別の実施形態において、スガマデクスの結晶形態11型が提供される。
【0015】
別の態様において、本発明は、承認されたラベルに従って、手術を受けた成人での臭化レクロニウム及び臭化ベクロニウムによって誘発される神経菌遮断の回復での使用のための医薬の製造におけるスガマデクスの上記結晶形態のそれぞれの使用方法を提供する。
【0016】
本明細書で提供される例は、本発明についての理解をより深めることができるようにするために例示を目的とするものである。これらの例は、いかなる形でも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(1A)1型凝集プレートレット;(IB)ブロック及び大型プレートの2型混合;及び(1C)3型ブロック状及び棒状プレートの倍率250倍の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】(2A)高高湿窒素流及び(2B)乾燥窒素流を使用した場合の乾燥プロファイルの比較である。質量分析を使用して、乾燥ガス中のエタノール、メタノール及び水をモニタリングした。ラマン分光法を使用して、最終乾燥形態への変換を追跡した。
【
図3】残留溶媒レベルでの乾燥条件及び乾燥時間への影響を模式的に描いた図である。
【
図4】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られたスガマデクス1型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【
図5】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られた、スガマデクス2型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【
図6】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られた、スガマデクス3型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【
図7】DOE実験#8時に収集した乾燥プロファイルである。
【
図8】パイロットプラントバッチ(25kg)の乾燥プロファイルである。
【
図9】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られた、スガマデクス5型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【
図10】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られた、スガマデクス11型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【
図11】本明細書に記載の装置及び方法を用いて得られた、スガマデクス13型結晶形態の粉末X線回折(「PXRD」)パターンのグラフである。このグラフは、度単位の回折角2シータ(2θ)に対する1秒あたりのカウントによって定義されるピークの強度をプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
略称及び定義:
本明細書で使用される用語は、それらの通常の意味を有しており、そのような用語の意味は、その各場合で独立している。そうではあっても、別段の記載がある場合を除き、以下の定義が明細書及び特許請求の範囲全体に適用される。
【0019】
API:医薬品有効成分
℃は、摂氏温度を意味する。
DOE:実験の計画
EtOH:エタノール
図(FIG)(又は図(FIGp)図又は図(Fig.)又は図(Fig)又は図(fig)は、図(Figure)(又は図(figure)を意味し、相当する図面を指す。
gは、グラム(又は複数)を意味する。
H(又はh):時間
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
KF:カールフィッシャー滴定
MeOH:メタノール
min:分
mLは、ミリリットル(ミリリットル(複数))を意味する。
mmHg:水銀柱ミリメートル
PXRD:粉末X線回折
ppm:百万分率
r.t.(又はR.T.):室温
V又はv:容量は関連する制限試薬の量に基づいて使用される溶媒の量として定義される;すなわち、1V(又は1v)=制限試薬の各グラムについて溶媒1mL。
w%=重量パーセント
v/v又は(v:v:v)は、体積基準の液体の混合物を指す。
【0020】
市販されている溶媒及び試薬は入荷時の状態で使用した。市販されていると示されている溶媒及び試薬は全て、例えば、Sigma Aldrich, St. Louis, MO, USAなどの多くの商業的供給業者から入手することができる。
【0021】
結晶性スガマデクスの製造
1態様において、本発明は、結晶性スガマデクス湿ケーキ:
の乾燥方法であって、
【化3】
1)スガマデクス、水、及び溶媒の湿ケーキを通して、約15%~約75%の相対湿度を有する高湿ガスを流すこと、
2)前記スガマデクス製品を単離すること
を含む方法に関するものである。
【0022】
本発明の別の態様において、ガスはアルゴン、ヘリウム、窒素、及び酸素から選択される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、ガスが窒素である場合に実現される。
【0023】
本発明の別の態様において、溶媒はエタノール又はメタノールから選択される。本発明の別の態様において、溶媒はエタノール及びメタノールの混合物から選択される。本発明の1実施形態において、溶媒は実質的にメタノールである。本発明の別の実施形態において、溶媒は実質的にエタノールである。本発明のさらに別の実施形態において、溶媒はメタノール及びエタノールの混合物である。
【0024】
本発明の別の態様において、窒素の相対湿度は約25%~約60%であり、温度は約25℃~約50℃に維持され、好ましくは、温度は約25℃~約35℃に維持される。本発明のこの態様の下位実施形態は、窒素の相対湿度が約25%~約60%であり、温度が約25℃~約35℃に維持されている場合に実現される。
【0025】
本発明の別の態様において、温度は残留溶媒を除去するために約25℃~約50℃に維持される。
【0026】
本発明の別の態様において、高湿ガスは、相対湿度約40%~約45%を有する窒素であり、温度は約25℃~約50℃、好ましくは約25℃~約30℃に維持する。
【0027】
本発明の別の態様において、スガマデクス製品を単離する前に、乾燥ガス流を流すか真空とすることで残留水レベルを下げても良い。この態様の1実施形態は、前記乾燥ガスがアルゴン、ヘリウム、窒素及び酸素から選択される場合に実現される。本発明のこの態様の1実施形態は、前記乾燥ガスが窒素である場合に実現される。本発明の別の態様において、乾燥窒素流を用いて残留水を減らす。本発明の別の態様において、真空を用いて残留水を減らす。本発明の別の態様において、温度約25℃~約50℃で乾燥窒素流又は真空を用いて残留水を減らしても良い。
【0028】
本発明の別の態様において、相対湿度を湿段階で使用されるレベルに維持しながら、乾燥温度を調節することで残留水レベルを低下させても良い。本発明のさらに別の態様において、一定の乾燥温度を維持しながら相対湿度を下げることで、残留水レベルを低下させても良い。
【0029】
さらに、本発明の別の態様において、湿乾燥プロセス時の圧力は、25mmHg~475mmHg、好ましくは250mmHg~350mmHg、より好ましくは250mmHgに維持する。
【0030】
本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留水レベルが20重量%以下であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留水レベルが10重量%以下であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留メタノールレベルが1000ppm未満であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留メタノールレベルが約500ppm以下であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留メタノールレベルが約200ppm以下であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留エタノールレベルが約5重量%以下であるスガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留水、メタノール及びエタノールレベルが水約20重量%以下、メタノール約1000ppm以下、及びエタノール約5重量%以下である結晶性スガマデクスを提供する。本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留水、メタノール及びエタノールレベルが水約10重量%以下、メタノール約500ppm以下、及びエタノール約5重量%以下である結晶性スガマデクスを提供する。さらに、本発明の別の態様において、当該プロセスは、残留水、メタノール及びエタノールレベルが水約10重量%以下、メタノール約200ppm以下、及びエタノール約5重量%以下である結晶性スガマデクスを提供する。
【0031】
本発明のこの態様の別の実施形態は、ガス流が固体を通過して下降し、回るものではない場合に実現される。
【0032】
本明細書に記載の高湿乾燥プロセスを用いて作られるスガマデクスは、下記の手順に従って製造することができる。各手順について、異なる結晶形態、例えば1型、2型、3型、8型、9型などのスガマデクス湿ケーキの開始量を、2001年6月7日公開のZhangらのPCT公開番号WO2001/040316及び2019年6月3日出願のWO2019/236436、及び2019年9月25日出願のPCT出願PCT/EP2019/075823、代理人整理番号24604(これらはいずれも、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のもの、並びに下記に記載のものなどのいずれか好適な合成から得ることができる。
【0033】
Lamberto, et al., Org Process Res Dev 2017, 21, 1828-1834, 2017によって記載されているジャケットを取り付けたガラス容器からなる乾燥流セルを用いて、高湿乾燥実験を行った。その実験中、乾燥ガスをセル上部で導入し、セルの底部にあるフリット上に乗った固体を通って流し、再現性のあるガス-固体接触を確保した。系の温度及び圧力、並びに流入ガス流の流量及び湿度を、独立に、所望の設定値に制御した。実験装置では熱及び物質移動の長さスケールが小さかったため、実験中の撹拌は必要なかった(ジャケット流体の温度変化が、数秒内でケーキ中心部での応答によって観察された)。乾燥ガス流量は、大規模な乾燥エリア又は製品質量では低下させた。すべての乾燥パラメーターの値は、各実験を通じて継続的に記録した。プロセス分析技術(PAT)を用いて、質量分析を使用して出口ガス流中の揮発性成分をモニタリングし、ラマン分光法を使用して乾燥固体の結晶形態を追跡した。或いは、ラマンプローブを熱電対に置き換えて、乾燥時のケーキの温度をモニタリングすることもできると考えられる。
【0034】
使用したプロセス分析技術(PAT)及びオフライン法
この試験中に実行された作業を支援するために使用されたPATツールは、Proline Dycorシステムを使用した質量分析(MS)(Ametek, Pittsburg, PA)、RamanRxn2 Analyzerに接続された光ファイバープローブを使用したラマン分光法(Kaiser Optical Systems, Inc., Ann Arbor, MI)、及びVaisala(Helsinki, Finland)からのHMP60湿度及び温度センサーを使用した湿度及び温度測定であった。
【0035】
固体の溶媒含有量を、J&W DB-624カラム(Agilent, Santa Clara, CA)を搭載したヘッドスペースガスクロマトグラフィー装置を使用して測定し、水分含有量を乾燥機付きのカールフィッシャー電量計(Metrohm, Switzerland)を使用して測定した。
【0036】
PXRD
結晶化度及び形態のレベルを決定するために、Bragg-Brentano構成で構成され、ニッケルフィルターを使用して達成されるKαへの単色化が行われるCu放射線源を搭載したBruker D8 Advance Systemで、粉末X線回折(PXRD)測定を行った。データ取得には、固定スリット光学構成を採用した。データは3~40°2θで刻み幅0.018で取得した。サンプルを浅いキャビティゼロバックグラウンドシリコンホルダーに静かに押し付けることによって、サンプルを準備した。湿ケーキサンプルはKapton(登録商標)(ポリイミドフィルム、DuPont、USA)ホイルで覆って、データ収集全体を通して湿サンプル状態を維持するようにした。
【0037】
同じ化合物の所与の結晶形態についてのPXRDピーク位置の測定値が誤差許容範囲内で変動することは、当業者には明らかであろう。本明細書に記載されているように測定された2シータ値の誤差許容範囲は、代表的には+/-0.2° 2θである。変動性は、システム、方法論、サンプル、及び測定に使用される条件などの要因に依存し得る。熟練した結晶学者であれば理解するように、本明細書の図で報告されている各種ピークの強度は、X線ビームにおける結晶の配向効果、分析される材料の純度、及び/又はサンプルの結晶化度などの多くの因子のために変動し得る。熟練した結晶学者は、異なる波長を使用した測定により、Bragg-Brentanoの式に従って異なるシフトが生じることも理解するであろう。代替波長を用いることによって生成されるそのようなさらなるPXRDパターンは、本発明の結晶材料のPXRDパターンの代替表現であると考えられ、したがって本発明の範囲内である。
【0038】
初期の実験室でのスガマデクスの乾燥実験
これらの固体の乾燥性能を評価するために、一連の実験を実施して、各種の洗浄及び乾燥プロトコールの効果を評価して、所望の規格まで乾燥できるようにした。これらの実験は、湿気のある場合とない場合の両方の乾燥と、標準洗浄手順及び熟成洗浄手順の使用の組み合わせが含んでいた。別断の明記がない限り、標準洗浄手順は、標準的なエタノール洗浄(86:4:10体積%のエタノール:メタノール:水)を使用した2回の3倍量置き換え洗浄からなるものであり、熟成洗浄では、長時間にわたり標準エタノール洗浄より多量への固体の浸漬を行った。洗浄容量の上限は、大規模なフィルター乾燥機の推定能力に基づいて8倍容量に設定した。
【0039】
表Iの実験を、約11重量%のメタノール、25重量%のエタノール、及び12重量%の水を含む2型湿固体を使用して10g規模で実施した。各実験は、ガス流量を100mL/分の標準流量(sccm)で一定に保ちながら、約17時間の一定期間実施した。プロセス終了後のスガマデクス乾燥ケーキの非高湿乾燥の追加段階を行う又は行わない高湿乾燥後の望ましい規格は、(a)残留水分量が20重量%以下、又は15%以下、又は10%以下であり、(b)残留メタノールレベルが1000ppm未満、又は500ppm未満、又は200ppm以下であり、(c)残留エタノールレベルが5重量%未満又は約5重量%のエタノールである。
【0040】
したがって、本発明の1態様は、スガマデクス乾燥ケーキが、高湿乾燥プロセス終了後に、残留水、メタノール、及びエタノールのレベルがそれぞれ15重量%以下、約500重量%以下及び約5重量%以下である規格を満たす場合に実現される。本発明の別の態様は、高湿乾燥プロセス終了後のスガマデクス乾燥ケーキの下限規格が、10重量%以下の残留水、約200ppm以下のメタノール、及び約5重量%以下のエタノールである場合に実現される。これらの乾燥実験で達成された操作条件及び残留溶媒レベルを表Iにまとめてある。
表I.初期スガマデクス乾燥実験のまとめ
【0041】
【0042】
実験1~4は、結晶形態2型固体のより大きいスケールで観察された低い乾燥挙動(*で指定)を首尾よく再現した。最初の2つの実験では、システム出口圧力及びジャケット温度をそれぞれ25mmHg絶対圧及び40℃に制御しながら、相対湿度1%未満を有すると定義される乾燥窒素を固体に通過させた。表Iの第1列及び第2列で見られるように、これらの条件下では、残留プロセス溶媒の不完全な除去が観察され、エタノール及びメタノールの残留レベルはそれぞれ平均7.5重量%及び2503ppmであった。第3列に示すように、より高圧及びより低温で操作した場合にも同様の結果が得られた。三つの実験すべてで溶媒レベルは不首尾であったが、固体における含水量は比較的低かった。窒素を流さずに真空のみを使用して行った乾燥は、溶媒及び水の両方を除去するには効果的ではないことがわかった(第4列)。
【0043】
逆に、乾燥ガス中の水の存在により、プロセス溶媒のより完全な除去が可能となった。実験5aでは、窒素流の湿度を45%に上げたことを除いて、実験1で使用したのと同じ条件下で湿固体を乾燥させた。湿度の増加により、残留溶媒レベルが低下し、エタノールは4.2重量%、メタノールは232ppmで通過した。55%の高湿度でこれらの固体の乾燥を続けると、88ppmという改善されたメタノールレベルとなった(実験5b)。
【0044】
高圧でのスガマデクスの2型形態の乾燥の奏功も、表Iの実験6及び7で示され、実証された。これらの実験では、システム出口圧は250mmHgに制御し、乾燥容器ジャケットの温度を40℃に維持しながら、高湿窒素ガスを流量100sccmで固体に通した。(留意すべき点として、圧が350mmHgから250mmHgまで下がる前に、実験6の最初の70分間中に高圧を用いた。)。どちらの場合も、残留溶媒及び水のレベルはすべて、十分に望ましい規格の範囲内であった。高圧(250対25mmHg)で操作しても溶媒の除去は妨げられず、実際、残留溶媒レベルは、低圧で同じ時間行った実験から得られた値よりも低かった。
【0045】
乾燥窒素による初期乾燥後の湿度
2型固体を用いた表IIの実験は、最初に乾燥窒素流を用いて17時間乾燥させ(1a)、次いで高湿窒素流に繰り返し17時間曝露することにより再水和させた(1b及び1c)。
【0046】
【0047】
表IIの最初の列に示される結果は、乾燥窒素流の使用により、規格を満たさず、比較的低い含水量を有する残留溶媒レベル(*で表されるもの)を有する固体が生成されたことを示している。しかしながら、その後、相対湿度のより高い窒素流に曝露することで、残留溶媒レベルをさらに低下させることができる(第2列)。溶媒含有量の低下は、加湿流への繰り返し曝露によって継続した(第3列)。この溶媒除去は残留水レベルの上昇を伴ったが、表IIの最後の欄に示されるように、PXRDによって決定される結晶化度及び形態のレベルは変化しないままであった。これは、文献の他の場合で報告されているように、結晶化度を維持又は回復することによって溶媒除去が制御されたのではなく、乾燥ガス中の水による溶媒の置換によって制御されたことを示唆している。しかしながら、留意すべき点として、表Iの「真空のみ」乾燥に関する前のセクションで説明したように、高残留水だけでは溶媒除去には不十分である。したがって、乾燥ガスとともに進入する追加の水が、より低い残留溶媒レベルを達成する上で必須であったと結論付けることができる。
【0048】
高湿及び乾燥窒素流を用いる乾燥実験
乾燥ガスの湿度以外は同じ条件下で二つの実験を行ったさらなる実験で、高湿及び乾燥窒素流条件を使用した乾燥実験の残留溶媒及び水含有量も観察した。乾燥実験は25℃及び250mmHgで行ったが、一方は相対湿度40%の窒素を使用し、他方は相対湿度<1%の乾燥窒素を使用した。両方の実験で、固体から出てくる溶媒及び水を質量分析でモニタリングし、形態遷移をラマン分光法で追跡した。
図2は、開始及び終了の溶媒及び水の含有量を使用し、2回の実験のそれぞれの質量分析シグナルを積分して求めた乾燥時間の関数としての、固体中の溶媒及び水の含有量の比較を示している。
【0049】
両方の実験時の挙動が、古典的な一定速度/下降速度の乾燥動力学に似ていたことが容易に観察でき、一定速度期間終了に達するまでの時間は両方の実験で類似しており、メタノール及びエタノールの曲線で示されているように乾燥の1時間点の直前に起こった。しかしながら、
図2(a)に示した高湿窒素流による乾燥は、メタノール及びエタノールの曲線の勾配がより急であることから明らかなように、より効率的であるだけでなく、溶媒の除去も長時間にわたり、かなりの量で続いた。さらに、乾燥プロセス中に高湿窒素を使用した場合、形態変化がより迅速に発生した。反対に、形態変換はよりゆっくりと進行し、右側に示されている乾燥窒素流の場合、溶媒の除去はより少ない程度であった。一定速度型から下降速度型への移行は、開始時の溶媒含有量がより高いにもかかわらず、高湿乾燥ではより低い溶媒で発生しており、これは、水が固体に浸透し、乾燥プロセスのより早い段階で結晶格子から溶媒をより容易に置換したことを示唆している。
【0050】
表IIIに列記した固体のエンドポイント結果を見ると、乾燥ガス中の水が、溶媒除去を促進しただけでなく、乾燥窒素流の使用と比較して、より完全な除去及び全体的により低いレベルを生じさせた。
【0051】
表III.高湿及び乾燥窒素流を用いた乾燥実験における残留溶媒及び水含有量
【表3】
【0052】
溶媒が除去されるにつれて形態変換が起こっていたが、高湿窒素を使用した場合、これは連続的な溶媒除去を妨げるものではなかった。各実験から得られた固体については、結晶化度のレベルに差は認められなかった。これらの結果は、水による溶媒の置換が溶媒の除去を促進しており、結晶化度の維持が乾燥プロセスに必須の機構ではなかったことをさらに裏付けている。注目すべき点として、高湿乾燥を用いた溶媒除去後、乾燥窒素流を用いて、残留水含有量を10重量%以下に容易に低下させることができた(データは示していない)。
【0053】
乾燥温度、圧力及び湿度
追加の試験で、乾燥温度、圧力、及び乾燥ガスの湿度についてさらに調べた。比較的単純だが効果的な3因子の2中心点複製による完全実施要因計画実験(DOE)を行い、測定された一次応答は固体の残留エタノール、メタノール及び水分含有量であった。ケーキ温度、固体全体の圧力低下、純度、結晶化度、及び乾燥固体の形態などの二次応答もモニタリングした。乾燥ガス流量及び乾燥時間の追加の因子は、DOEについては固定しており、後の実験でそれぞれの影響を個別に考慮した。乾燥時間は全ての実験において比較的短く維持して、
図3の模式図で描いた処理条件による乾燥効率における差を強調するようにした。
【0054】
ジャケット温度については、低値と高値をそれぞれ20と50℃に設定し、中心点を35℃に設定し、圧力値は25と475mmHgに設定し、中心点を250mmHgに設定した。入口の相対湿度の低目標と高目標は、それぞれ40%から80%とし、中心点は60%であった。実験室規模でのすべての実験について、80%を達成することは不可能であろうということが最初の試験で示された後、湿度の上限を75%まで低く調節した。乾燥ガス流量及び充填された湿固体質量は、それぞれ100sccm及び約8gに固定した(25mmIDフローセル内の約1.5cmのケーキ)。最後に、乾燥時間は7時間で固定した。この比較的短い時間は、実験条件の違いを強調し、DOE因子の影響を強調するために選択した。場合によっては、乾燥時間を延長すると、残留溶媒レベルが低下することが予想されるであろう。
【0055】
いくつかの2型結晶化バッチを実施し、固体を濾過し、メタノール変性エタノール及び水の混合物(86:4:10体積%エタノール、メタノール、水)で洗浄することで、湿固体の共通ストックを準備した。これらのバッチからの固体を集め、DOE実験に用いた。湿ケーキのサンプルを各実験前に採取し、溶媒含有量を調べて、すべての実験の開始点が一致するようにした(開始時の溶媒含有量は、EtOH約25重量%、MeOH約8重量%、水約13重量%であった)。
【0056】
実験の順序を無作為化し、DOEを行った。全体を通して収集されるPATデータにより、条件をリアルタイムでモニタリングした。オンラインPATから生成されたデータの全スペクトラムを
図7に示しており、その図は、DOE実験8時に生成された乾燥プロファイルを描いたものである。この実験では、乾燥フローセルのジャケット温度を20℃に設定し、出口圧力を25mmHgに制御し、入口乾燥ガスの湿度を40%に調節した。DOE実験中、熱電対をラマンプローブの所定の位置に取り付けて、乾燥中にわたる固体の温度変化をモニタリングした。
【0057】
溶媒の除去を再び質量分析によって再度モニタリングし、固体中の溶媒含有量及び水含有量を積分によって求めた。すべての実験と同様に、結合していない(すなわち、物理的に吸着された)溶媒の除去は、乾燥の開始時には非常に急速であり、格子結合溶媒のみが残ったため遅くなった。ケーキ温度の変化(
図7)は、この乾燥挙動と一致しており、蒸発冷却のため、一定速度の期間中は最低約5℃まで急速に低下し、その後、溶媒除去速度が経時的に低下したことから、ゆっくりとジャケット温度まで上昇した(
図7)。質量分析データは、この実験の速度低下期間への移行が約30分間の乾燥後に始まり、ケーキ温度がジャケット温度に等しくなった2時間点で完全質量移動限界となったことを示唆している。
【0058】
図7において、水の取り込みが終了時と比較して乾燥の開始時に速かったことが、水シグナルの勾配で容易に観察することができる。これは、溶媒除去が高く、固体温度が低かった場合、乾燥プロセスのある時点で、入ってくる水のより多くの部分が固体によって吸収されていたことを示唆している。気相との平衡に近づくにつれ、固体の含水量は増加し続け、溶媒は非常に低レベル(0.8重量%エタノール及び50ppm MeOH)まで除去された。ジャケット温度を超える固体の温度のわずかな上昇は、蒸発冷却がない場合のこの吸水率に起因するものであった。
【0059】
これ及び他のDOE実験からの残留溶媒及び水の結果を、表IVで、乾燥条件及び規格と共にまとめた。所望の規格外の結果は、*で示されている。
【0060】
【0061】
表IVのデータにおける最初の傾向のいくつかは、統計解析を使用する以前に明らかであった。表IVでわかるように、5重量%未満の規格以下までのエタノール除去は問題ではなかったが、ただ一つだけの条件組み合わせ(DOE#2)で規格を満たさない結果となった。メタノールと水は、選択した乾燥条件に対して良好な感度を示し、合格と不合格の両方の結果が混在した。そのデータは、温度が高いほど残留水レベルが低かったことを示している。さらに、水レベルが低くなる条件では、残留メタノール含有量が高くなり(実験6及び7対8及び9)、温度が高く圧力及び湿度が低い極端な場合(実験2)では、メタノール及びエタノールの両方が不合格であった。残留水レベルと溶媒レベルとの間の関係は、溶媒除去が水による置換によって駆動される拡散制御乾燥機構をさらに裏付けるものである。
【0062】
結晶化度のレベルはやはり、残留溶媒含有量とは相関しなかった。粉末X線回折(PXRD)によって測定されたように、新しい水和物(13型)であることが確認された実験5からの固体を除いて、すべての固体は代表的乾燥形態として一貫していた。代表的には、含水量が多いほど残留溶媒レベルは低くなったが、実験3及び5時に観察されたように、潮解や粘着性固形物の形成につながる条件を回避するために注意が必要であった。これらの実験は両方とも低温及び高湿の条件で行ったことから、これは予想外ではなかった。中心点(実験1及び10)では自由流動性の粉末が得られ、他の点(実験2、4、6、及び7)では凝集固体が得られ、それはスパチュラを使用して混合することで崩壊して自由流動性粉末となった。実験8及び9中に生成された固体は、同様の含水量(19~20重量%)を有しており、混合するといくらか流動抵抗が高くなったルースパウダーからなるものであった。
【0063】
1型、2型及び3型の固体を8:1MeOH:水の溶液(エタノールを含まない)で洗浄した後、乾燥及び湿条件下で乾燥させる追加の実験を行った。初期固体及び最終固体の溶媒及び水分含有量、並びに乾燥条件を、下記の表Vに示している。
【0064】
【0065】
1型固体は、室温で3Vの8:1のMeOH:水で2回洗浄すると、2型に変換されることが観察された。これらの固体は、乾燥窒素を使用して乾燥させた後、残留メタノールの規格を満たさなかったが、高湿窒素を使用したら合格した。ブロック状の2型固体は、メタノール溶液による洗浄しても2型の形態を維持し、乾燥窒素流を使用するための残留メタノールについての規格を満たさなかった。870ppmの高湿窒素を使用すると窒素のレベルが改善され、約1/64倍となった。棒状/針状3型固体も、洗浄時に形態を維持する。これらの固体は、乾燥窒素を使用した後には残留メタノールについて不合格であったが、湿条件下での乾燥では合格した。
【0066】
以下の表VIは、3型スガマデクス固体、異なる洗浄体積及び熟成時間を使用した4回の実験の結果を提供しており、35℃、250mmHg、及び60%RHの条件で17時間高湿乾燥した後の結果を示している。出発湿ケーキ及び最終湿乾燥固体の溶媒組成を表VIで提供している。
【0067】
【0068】
最初の実験は4週間かけて行われた。環境条件のベンチトップで4週間熟成させた後、上記の最初の結果セットに示すように、これらの固体を濾過し、規格まで湿式乾燥させた。次の実験中、固体を3容量の洗浄液に浸漬し、4時間熟成させたところ、高湿乾燥後のメタノールの結果は534ppmであった。最後の二つの実験では、残りの大きい3型固体を使用し、それぞれ6容量で24時間及び8容量で4時間の熟成時間を使用して試験を実施した。これらのそれぞれにより、高湿乾燥後に規格に合格する乾燥固体が得られた。必要な熟成時間及び洗浄量をさらに最適化することが可能であるかもしれないが、8容量で4時間の熟成が、乾燥を奏功させる上で必要な最大容量での最短時間であるように思われる。
【0069】
本発明はさらに、スガマデクスの新規な結晶形態に関する。特に、本発明は、本明細書においてスガマデクスの結晶形態5型及びスガマデクスの結晶形態11型と称されるスガマデクスの新規な結晶形態に関する。
【0070】
本明細書に記載のスガマデクスの結晶形態5型及び11型は、以下に記載する手順に従って製造することができる。例えば、真空又は乾燥窒素流を適用することにより、本明細書に記載の湿ケーキの高湿乾燥後に、結晶形態5型及び11型を得ることができる。各手順において、スガマデクスの開始量を、本明細書並びに2001年6月7日公開のZhangらのPCT公開番号WO2001/040316及びWO2019/236436に記載の合成などのいずれか好適な合成から得ることができる。
【0071】
製造例1:スガマデクスの結晶形態1型
スガマデクスの結晶形態1型を次のように製造した。
【0072】
スガマデクス1gを、25℃の10:1体積比のメタノール/水混合物10mLに磁気攪拌しながら加えて、スラリーを得た。スラリーを攪拌しながら、20時間にわたって環境温度に維持した。そのスラリーの小分けサンプルを遠心して湿ペーストとすることで、湿ケーキサンプルを製造した。湿ケーキのPXRD分析により、1型パターンが得られた。上記で記載の装置及び手順を用いて生じたスガマデクスの結晶形態1型のPXRDパターンを
図4に示している。
【0073】
製造例2:スガマデクスの結晶形態2型
スガマデクスの結晶形態2型を次のように製造した。
【0074】
スガマデクス500mgを、40℃の5/1体積比のメタノール/水混合物5mLに磁気攪拌しながら加えて、スラリーを得た。スラリーを攪拌しながら、20時間にわたって40℃に維持した。そのスラリーの小分けサンプルを遠心して湿ペーストとすることで、湿ケーキサンプルを製造した。湿ケーキのPXRD分析により、実質的に
図5に示したような結晶形態2型回折パターンが得られた。
【0075】
製造例3:スガマデクスの結晶形態3型
スガマデクスの結晶形態3型を次のように製造した。
【0076】
スガマデクス1gを、40℃の10/1体積比のメタノール/水混合物10mLに磁気攪拌しながら加えた。得られたスラリーを攪拌しながら、3日間にわたって40℃に維持した。そのスラリーの小分けサンプルを遠心して湿ペーストとすることで、湿ケーキサンプルを製造した。湿ケーキのPXRD分析により、3型パターンが得られた。
【0077】
製造例4:スガマデクスの結晶形態8型
スガマデクスの結晶形態8型を次のように製造した。
【0078】
スガマデクス0.5gを、25℃の水1.5mLに磁気攪拌しながら加えて、透明溶液を得た。次に、メタノール6mLを、ゆっくり磁気攪拌しながら5分間かけて加えたところ、固体が沈澱した。そのスラリーを25℃でさらに1時間攪拌した。そのスラリーの小分けサンプルを遠心して湿ペーストとすることで、湿ケーキサンプルを製造した。
【0079】
製造例5:スガマデクスの結晶形態9型
9型は、3型を生成するために行われたプロセスで中間の準安定形態として出現した。スガマデクスの結晶形態9型を、次のように製造した。
【0080】
スガマデクス30gの精製水90mL中透明溶液を調製した。その溶液を環境条件で200rpmで5分間撹拌し、10分間かけて40℃に加熱し、さらに10分間熟成させた。続いて、次のように、いくつかのメタノール添加及び熟成段階を実施した。すなわち、メタノール350mLを70分間かけて直線的に添加し、スラリーを生成した。スラリーを60分間熟成した後、メタノール20mLを5分間かけて直線的に添加し、続いてメタノール80mLを30分間かけて直線的に添加した。次に、メタノール:水の比率が5:1に達するまで、スラリーを60分間熟成させた。そのスラリーの小分けサンプルを遠心分離して湿ペーストとすることにより、湿ケーキサンプルを製造した。湿ケーキのPXRD分析により、9型のパターンが得られた。
【0081】
特許請求された発明を説明するために、スガマデクス固体の1型、2型、及び3型の形態を本明細書に記載の方法に従って製造し、次いで湿ケーキとして単離した。高湿乾燥処理時間を短縮するために、湿ケーキ固体は、標準的又は熟成洗浄手順を使用して洗浄することができる。当業者には理解されるように、標準的洗浄手順は、結晶形態及び溶媒に応じて変化し得る。例えば、標準的な溶媒置換洗浄は、エタノール、メタノール若しくは水又はそれらの混合物の洗浄溶液3倍量による2回の洗浄からなることができる。熟成洗浄では、長時間にわたる大量の洗浄液への固体の浸漬を行い得る。エタノール、メタノール及び水洗浄液の比率は、所望の規格に応じて変わり得る。洗浄液の例は、メタノール:水、エタノール:水、エタノール:メタノール:水からなることができる。標準的なエタノール洗浄液の1例は、例えば86:4:10体積%の比率でのエタノール:メタノール:水からなることができる。標準的なメタノール洗浄液の1例は、例えば3:1体積比、5:1体積比、8:1体積比、9:1体積比などの比率でメタノール:水からなることができる。洗浄体積数は、大規模なフィルタードライヤーの推定能力に基づいて増減できる。湿ケーキ洗浄液は、下記の製造例6及び実施例7に示されている。
【0082】
製造例6:スガマデクス結晶性2型形態湿ケーキのエタノール:メタノール:水スラリー
シード生成:
乾燥スガマデクス固体758mgを、エタノール及び水の2.25:1体積比溶液(39mL)に加えることで、シード床を調製する。使用されるエタノールは、5体積%メタノールで変性されたエタノールである。得られたスラリーを晶析装置中5℃に調節し、撹拌しながら30分間熟成させる。
【0083】
バッチ濃縮物調製:
粗スガマデクスAPI(3g)を室温で水(9mL)に溶かした。得られたバッチ濃縮溶液のpHを、必要に応じてNaOH及びHClで8~9に調節した。
【0084】
シード添加半連続結晶化:
晶析装置内で5℃を維持しながら、バッチ濃縮溶液(約11mL)及び変性(5体積%メタノール)エタノール(23mL)を約3時間かけて、調製されたシード床に同時に投入した。バッチを30分間熟成させ、エタノール溶液(11mL)を1時間かけて投入して、溶媒:水比を約2.9:1とした。バッチを5℃で30分間熟成させ、次いで1時間かけて昇温させて20℃とし、20℃でさらに1時間熟成させた。得られたスラリーを濾過し、置換洗浄を1回行い、スラリーをエタノール洗浄溶液(86:4:10体積%エタノール:メタノール:水)各3容量で1回洗浄した。洗浄した湿ケーキを真空乾燥機に入れ、窒素掃引を行わずに50℃で真空乾燥して、乾燥結晶生成物を得る。
【0085】
製造例7:スガマデクス結晶性2型形態湿ケーキのメタノール:水スラリー
シード生成:
加湿乾燥スガマデクスAPI固体(750g)を5:1体積比MeOH:H2O(7.5リットル)の溶液に加えた。得られたスラリーを室温で30分間撹拌しながら熟成させた。スラリーサンプルを取り出し、XRPD及びラマン分析によりスラリー結晶が形態2であることを確認した。
【0086】
シード結晶化:
粗スガマデクスAPI(25kg)を室温でH2O(75リットル、3V)に溶かした。溶液を加熱して40℃とした。MeOH(225リットル)を1時間かけて加えた。次に、シードスラリーを加え、そのバッチを40℃で4時間熟成させ、次に6時間冷却して3℃とし、9時間熟成させた。バッチを濾過し、3℃で完全に脱液し、次に86:4:10体積%EtOH:MeOH:H2Oの溶液(75リットル;そのEtOHは細かい(punctilious))により20℃で置換洗浄を行った。次に、86:4:10体積%EtOH:MeOH:H2O(100リットル;そのEtOHは細かい(punctilious))の溶液で、20℃で緩やかに攪拌しながら、4時間の浸漬を行って、湿ケーキを得た。湿ケーキのPXRD分析により、2型パターンが得られた。
【0087】
以下の実施例は、1型、2型、5型、11型及び13型の高湿乾燥を示すものである。
【実施例】
【0088】
実施例1
高湿乾燥段階:溶媒除去-実験室プロセス
1型又は2型のいずれかの固体の乾燥を奏功させると考えられる乾燥条件と、溶媒が除去されたら、必要に応じて水を規格にまで良好に減らすことができる乾燥条件を完全に実証するために、追加の実験を行った。これらの実験では、1型又は2型湿固体の同じ供給源を使用し、乾燥は、17時間の高湿乾燥段階、続いて3.5時間の乾燥窒素段階で段階的に行った。各実験の高湿乾燥段階の条件は、表VIIに示した通りであった。乾燥窒素段階の条件は、すべての実験について同じであり、温度は50℃、出口圧力は50mmHg、乾燥ガスの相対湿度は<1%未満であった。高湿乾燥段階及びその後の乾燥窒素段階の後に採取したサンプルについての残留エタノール、メタノール、及び水のレベルを考察のために提供した。
【0089】
【0090】
表からわかるように、残留エタノールレベルはすべてのケースで規格の範囲内であり、以前のプローブ及びDOE実験からの予測と一致している。高湿乾燥段階では、2型固体がメタノールについて約400ppmである条件下であっても、3.3重量%エタノールの合格値が得られた。乾燥窒素流のみを使用した1型の実験では、3.4重量%というわずかに高い残留エタノール値が得られた(表VIIの最後の列)。この値はまだ合格であったことから、エタノールを規格値まで乾燥させることは、いずれの形態でも問題とは考えられなかった。
【0091】
メタノールについては、1型と2型の両方の最小値が、25℃及び250mmHg、及び相対湿度40%の高湿条件で得られた。予想通り、溶媒除去の容易さに基づいて、メタノール及びエタノールの両方の残留レベルは、同一の高湿乾燥条件下で乾燥させた2型の固体と比較して、1型の固体の方が低かった。
【0092】
表VIIの最後の列を見ると、乾燥窒素のみを使用して1型固体を乾燥させた場合、依然として合格ではあるが、より高い残留溶媒レベルが得られた。高湿窒素流を使用すると、はるかに低いレベルが達成された。これは、1型形態の場合であっても、水による溶媒置換のための乾燥ガスの加湿が有利であることを示している。
【0093】
規格の下限では、温度約25℃~約35℃、圧力約250mmHg、及び相対湿度約40%~約60%の高湿条件下で、1型、2型及び3型のスガマデクス固体において、≦10重量%の水レベル、及びメタノール≦200ppm及びエタノール≦約5重量%の溶媒レベルが観察された。したがって、本発明の1態様は、プロセスの高湿乾燥段階で残留溶媒及び水レベルの規格レベルが達成されたときに実現される。本発明の1態様は、高湿乾燥プロセスの完了後、水分レベルが≦10重量%であり、メタノールレベルが≦200ppmであり、エタノールレベルが≦約5重量%という下限規格をスガマデクス固体が満たす場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、温度約25℃~約35℃、圧力約250mmHg、及び相対湿度約40%~約60%で高湿乾燥を行う場合に実現される。本発明のこの態様の別の実施形態は、高湿条件が温度約30℃~約35℃、圧力250mmHg、及び相対湿度約45%~約60%からなる場合に実現される。
【0094】
乾燥窒素/真空水除去段階
表VIIは、すべての場合において乾燥窒素段階中に水分除去が容易に起こり、代表的には1~2重量%の値になったことを示している。残留水分レベルは、2型及び3型固体と同じ高湿及び乾燥窒素乾燥段階下で処理された1型固体で1重量%強高かった。残留水レベルとメタノール除去の間には重要な相関関係があるため、この観察結果は、2型及び3型と比較して、1型固体で溶媒除去がより容易に起こった理由を説明し得るものである。いずれのケースでも、乾燥窒素段階時に測定可能な溶媒除去は観察されなかった。溶媒レベルのわずかな上昇は、水除去による質量損失によるものであった。真空のみの乾燥も同等に水分除去に有効であることが実証された(データは示していない)。
【0095】
実験室プロセス実証及びDOEモデルからのデータが示すように、残留水含有量はケーキ乾燥温度に強く依存しており、乾燥ガスの相対湿度にはあまり依存していなかった。したがって、乾燥窒素流又は真空のみの乾燥を使用する代わりに、高温乾燥段階の相対湿度レベルを維持しながら乾燥温度を単に調節することで、又は一定の乾燥温度を維持しながら相対湿度を調節することで、固体上の残留水の最終レベルを目標限界(例えば6~8重量%)に制御することができる。
【0096】
実施例2
規模拡大したプロセス
いくつかのバッチについて25kg規模のパイロットプラントで、そして250kg規模の製造所で上記の2段階高湿乾燥プロセスをを良好に実証した。実験室確認実験時に用いた条件から若干変更を加えたパイロットプラントバッチに関して、乾燥プロファイルを
図8に提供した。ここで、高湿乾燥段階は、ジャケット温度30℃、乾燥機出口圧250mmHg及び入口湿度40%で実施した。水除去を遅延及び制限するため、二つの別個の水除去条件を実行した(追加段階である段階3が生じた)。両方とも、ジャケット温度30℃及び乾燥機出口圧250mmHgで実施し、入口湿度は段階2の間は25%に、段階3の間は15%に低下させた。
【0097】
図8でわかる通り、残留溶媒レベル及びサイクル時間は予想された通りであり、乾燥は24時間以内で完了した。残留エタノールレベルは、初期高湿乾燥段階での約6時間処理後で所望の規格内であった。高湿条件を使用したため、段階2の乾燥中に残留メタノールレベルが低下し続け、約12.5時間後に<200ppmに達した。段階3で乾燥を継続すると、水分規格に到達するまでの時間が、乾燥ガス中の湿気を使用したことで延長されたが、約22時間の合計乾燥時間内で<10重量%に達した。
【0098】
実施例3
スガマデクスの結晶形態5型の特性決定
スガマデクスの5型の物理的特性決定
上記の装置及び手順を使用して生成されたスガマデクスの5型のPXRDパターンを
図9に示す。
【0099】
ピークの強度(y軸は1秒あたりのカウント数)を2シータ角度(x軸は2θ度)に対してプロットした。さらに、データは、ステップ当たりの収集時間について正規化した検出器カウントを2θ角度に対してプロットした。これらのプロファイルと一致するピーク位置(2θx軸上)を表1に示している(+/-0.4°2θ)。これらのPXRDピークの位置は、スガマデクスの5型に特徴的である。したがって、別の態様では、スガマデクスの5型は、表VIIIに列挙された各ピーク位置±0.4°2θを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0100】
表VIII:スガマデクスの5型における回折ピーク及び相当するd間隔
【表8】
【0101】
さらなる態様では、スガマデクスの結晶形態5型に最も特徴的な表VIII及び/又は
図9に示されたPXRDピーク位置を選択し、「診断ピークセット」としてグループ化することで、この結晶形態を他のものと簡便に区別することができる。そのような特徴的なピークの選択は、表VIIIで診断ピークセットと表示された欄に示されている。
【0102】
したがって、別の態様では、表VIIIの診断ピークセット1に列挙された各2シータ値±0.2°2θを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられるスガマデクスの結晶形態5型が提供される。
【0103】
実施例4
スガマデクスの結晶形態11型の特性決定
スガマデクスの11型の物理的特性決定
上記の装置及び手順を使用して生成されたスガマデクスの11型のPXRDパターンを
図10に示す。
【0104】
ピークの強度(y軸は1秒あたりのカウント数)を2シータ角度(x軸は2θ度)に対してプロットした。さらに、データは、ステップ当たりの収集時間について正規化した検出器カウントを2θ角度に対してプロットした。これらのプロファイルと一致するピーク位置(2θx軸上)を表2に示している(+/-0.4°2θ)。これらのPXRDピークの位置は、スガマデクスの11型に特徴的である。したがって、別の態様では、スガマデクスの11型は、表IXに列挙された各ピーク位置±0.4°2θを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0105】
表IX:スガマデクスの11型における回折ピーク及び相当するd間隔
【表9】
【0106】
さらなる態様では、スガマデクスの結晶形態11型に最も特徴的な表IX及び/又は
図10に示されたPXRDピーク位置を選択し、「診断ピークセット」としてグループ化することで、この結晶形態を他のものと簡便に区別することができる。そのような特徴的なピークの選択は、表IXで診断ピークセットと表示された欄に示されている。
【0107】
したがって、別の態様では、表IXの診断ピークセット1に列挙された各2シータ値±0.2°2θを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられるスガマデクスの結晶形態11型が提供される。
【0108】
スガマデクスの結晶形態13型
表X:スガマデクスの結晶形態13型における回折ピーク及び相当するd間隔
スガマデクスの結晶形態13型の特性決定
スガマデクスの13型の物理的特性決定
上記の装置及び手順を使用して生成されたスガマデクスの11型のPXRDパターンを
図10に示す。
【0109】
ピークの強度(y軸は1秒あたりのカウント数)を2シータ角度(x軸は2θ度)に対してプロットした。さらに、データは、ステップ当たりの収集時間について正規化した検出器カウントを2θ角度に対してプロットした。これらのプロファイルと一致するピーク位置(2θx軸上)を表1に示している(+/-0.4°2θ)。これらのPXRDピークの位置は、スガマデクスの13型に特徴的である。したがって、別の態様では、スガマデクスの13型は、表VIIIに列挙された各ピーク位置±0.4°2θを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0110】
【表10】
さらなる態様では、スガマデクスの結晶形態13型に最も特徴的な表X及び/又は
図11に示されたPXRDピーク位置を選択し、「診断ピークセット」としてグループ化することで、この結晶形態を他のものと簡便に区別することができる。そのような特徴的なピークの選択は、表Xで診断ピークセットと表示された欄に示されている。
【国際調査報告】