(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】腎臓を保護しながらがんを治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/295 20060101AFI20230926BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230926BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230926BHJP
A61K 49/04 20060101ALI20230926BHJP
A61K 31/409 20060101ALI20230926BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230926BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K31/295
A61P13/12
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/7068
A61K33/24
A61K49/04 210
A61K31/409
A61K39/395 T
B82Y5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516137
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 US2021050064
(87)【国際公開番号】W WO2022056378
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520457096
【氏名又は名称】レニバス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ギエム,アルバロ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーガー,リチャード
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA07
4C084ZB26
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C085HH05
4C085KB08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB04
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4C086HA28
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA07
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB11
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA07
4C206ZA81
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、化学療法剤の細胞毒性から患者の腎臓を保護するのに十分な量の鉄スクロース及び/又はスズプロトポルフィリンなどのプロトポルフィリンの同時投与を含むがんの治療のための新規方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん化学療法の間に腎臓を保護するための方法であって、
化学療法剤及びある量の鉄組成物をヒト患者に投与するステップであって、その量の鉄組成物が、化学療法剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与するステップを含む、方法。
【請求項2】
化学療法剤が、ベバシズマブ、ゲムシタビン、IFN療法、シスプラチン、イホスファミド、ペメトレキセド、セツキシマブ若しくはメトトレキセート又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学療法剤が、シスプラチンである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
鉄組成物が、鉄スクロース組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
鉄スクロース組成物が、重炭酸塩を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
鉄スクロース組成物が、およそ1~10%のFe2+/Fe3+比、5~19mg/mlの全鉄含有量、4~11%の有機炭素含有量、1100~1600mOsm/Kgの浸透圧、約1~3nmの鉄コアサイズ、0.8%~3%のNa含有量及び10,000~30,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
鉄スクロース組成物が、およそ3~4%のFe2+/Fe3+比、10~15mg/mlの全鉄含有量、6~9%の有機炭素含有量、1400~1580mOsm/Kgの浸透圧、約2~2.8nmの鉄コアサイズ、1%~2%のNa含有量及び20,000~25,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
鉄スクロース組成物が、およそ約3.4%のFe2+/Fe3+比、約12mg/mlの全鉄含有量、約7.7%の有機炭素含有量、約1540mOsm/Kgの浸透圧、約2.39nmの鉄コアサイズ、約1.26%のNa含有量及び約23,881ダルトンの平均分子量を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
放射線造影画像化の間に腎臓を保護するための方法であって、
造影剤及びある量の鉄組成物をヒト患者に投与するステップであって、その量の鉄スクロースが、造影剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与する、ステップを含む、方法。
【請求項11】
造影剤が、ヨウ素含有造影剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
造影剤が、ジアトリゾエート、メトリゾエート、イオン性イオタラメート、イオン性イオキサグレート、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオジキサノール、イオベルソール、ガドペンテテート、ガドベネート、ガドジアミド、ガドテレート、ガドテリドール、ガドブトロール若しくはガドキセテート又はそれらの組合せである、請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
鉄組成物が、鉄スクロース組成物を含む、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
鉄スクロース組成物が、重炭酸塩を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
鉄スクロース組成物が、およそ1~10%のFe2+/Fe3+比、5~19mg/mlの全鉄含有量、4~11%の有機炭素含有量、1100~1600mOsm/Kgの浸透圧、約1~3nmの鉄コアサイズ、0.8%~3%のNa含有量及び10,000~30,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
鉄スクロース組成物が、およそ3~4%のFe2+/Fe3+比、10~15mg/mlの全鉄含有量、6~9%の有機炭素含有量、1400~1580mOsm/Kgの浸透圧、約2~2.8nmの鉄コアサイズ、1%~2%のNa含有量及び20,000~25,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
鉄スクロース組成物が、およそ約3.4%のFe2+/Fe3+比、約12mg/mlの全鉄含有量、約7.7%の有機炭素含有量、約1540mOsm/Kgの浸透圧、約2.39nmの鉄コアサイズ、約1.26%のNa含有量及び約23,881ダルトンの平均分子量を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
がん化学療法の間に腎臓を保護するための方法であって、
化学療法剤及びある量のプロトポルフィリンをヒト患者に投与するステップであって、その量のプロトポルフィリンが、化学療法剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与する、ステップを含む、方法。
【請求項20】
化学療法剤が、ベバシズマブ、ゲムシタビン、IFN療法、シスプラチン、イホスファミド、ペメトレキセド、セツキシマブ若しくはメトトレキセート又はそれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化学療法剤が、シスプラチンである、請求項19又は20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
プロトポルフィリンが、金属プロトポルフィリンである、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
金属プロトポルフィリンが、スズプロトポルフィリンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
放射線造影画像化の間に腎臓を保護するための方法であって、
造影剤及びある量のプロトポルフィリンをヒト患者に投与するステップであって、その量のプロトポルフィリンが、造影剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与する、ステップを含む、方法。
【請求項26】
造影剤が、ヨウ素含有造影剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
造影剤が、ジアトリゾエート、メトリゾエート、イオン性イオタラメート、イオン性イオキサグレート、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオジキサノール、イオベルソール、ガドペンテテート、ガドベネート、ガドジアミド、ガドテレート、ガドテリドール、ガドブトロール若しくはガドキセテート又はそれらの組合せである、請求項25又は26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項25~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
プロトポルフィリンが、金属プロトポルフィリンである、請求項25~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
金属プロトポルフィリンが、スズプロトポルフィリンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
がん化学療法の間に腎臓を保護するための方法であって、
化学療法剤及びある量のプロトポルフィリン及びある量の鉄組成物をヒト患者に投与するステップであって、その量のプロトポルフィリン及びその量の鉄組成物が、化学療法剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与する、ステップを含む、方法。
【請求項32】
化学療法剤が、ベバシズマブ、ゲムシタビン、IFN療法、シスプラチン、イホスファミド、ペメトレキセド、セツキシマブ若しくはメトトレキセート又はそれらの組合せである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
化学療法剤が、シスプラチンである、請求項31又は32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
プロトポルフィリンが、金属プロトポルフィリンである、請求項31~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
金属プロトポルフィリンが、スズプロトポルフィリンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
鉄組成物が、鉄スクロース組成物である、請求項31~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
鉄スクロースが、重炭酸塩を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
鉄スクロース組成物が、およそ1~10%のFe2+/Fe3+比、5~19mg/mlの全鉄含有量、4~11%の有機炭素含有量、1100~1600mOsm/Kgの浸透圧、約1~3nmの鉄コアサイズ、0.8%~3%のNa含有量及び10,000~30,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
鉄スクロース組成物が、およそ3~4%のFe2+/Fe3+比、10~15mg/mlの全鉄含有量、6~9%の有機炭素含有量、1400~1580mOsm/Kgの浸透圧、約2~2.8nmの鉄コアサイズ、1%~2%のNa含有量及び20,000~25,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
鉄スクロース組成物が、およそ約3.4%のFe2+/Fe3+比、約12mg/mlの全鉄含有量、約7.7%の有機炭素含有量、約1540mOsm/Kgの浸透圧、約2.39nmの鉄コアサイズ、約1.26%のNa含有量及び約23,881ダルトンの平均分子量を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
放射線造影画像化の間に腎臓を保護するための方法であって、
造影剤及びある量のプロトポルフィリン及びある量の鉄組成物をヒト患者に投与するステップであって、その量のプロトポルフィリン及びその量の鉄組成物が、造影剤の細胞毒性効果から患者の腎臓の保護を付与する、ステップを含む、方法。
【請求項43】
造影剤が、ヨウ素含有造影剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
造影剤が、ジアトリゾエート、メトリゾエート、イオン性イオタラメート、イオン性イオキサグレート、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオジキサノール、イオベルソール、ガドペンテテート、ガドベネート、ガドジアミド、ガドテレート、ガドテリドール、ガドブトロール若しくはガドキセテート又はそれらの組合せである、請求項42又は43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
ヒト患者においてヘプシジンの増加を誘導する、請求項42~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
プロトポルフィリンが、金属プロトポルフィリンである、請求項42~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
金属プロトポルフィリンが、スズプロトポルフィリンである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
鉄組成物が、鉄スクロース組成物である、請求項42~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
鉄スクロース組成物が、重炭酸塩を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
鉄スクロース組成物が、およそ1~10%のFe2+/Fe3+比、5~19mg/mlの全鉄含有量、4~11%の有機炭素含有量、1100~1600mOsm/Kgの浸透圧、約1~3nmの鉄コアサイズ、0.8%~3%のNa含有量及び10,000~30,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
鉄スクロース組成物が、およそ3~4%のFe2+/Fe3+比、10~15mg/mlの全鉄含有量、6~9%の有機炭素含有量、1400~1580mOsm/Kgの浸透圧、約2~2.8nmの鉄コアサイズ、1%~2%のNa含有量及び20,000~25,000ダルトンの平均分子量を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
鉄スクロース組成物が、およそ約3.4%のFe2+/Fe3+比、約12mg/mlの全鉄含有量、約7.7%の有機炭素含有量、約1540mOsm/Kgの浸透圧、約2.39nmの鉄コアサイズ、約1.26%のNa含有量及び約23,881ダルトンの平均分子量を含む、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
シスプラチンは、50年よりも前にその抗がん作用が発見されて以来、よく使用されている化学療法剤である。現在、cis-ジアンミンジクロロ白金II(シスプラチン)は、精巣がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん及び非小細胞肺がんに対する抗がん剤として臨床的に広く使用されている。しかし、シスプラチンは腎臓に集中的に蓄積し、腎臓に損傷を与え、重大な毒性副作用をもたらすため、使用が制限されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【発明の概要】
【0003】
腎臓の保護は、以前にFeS及びSnPPの投与により確認されている。Zagerらへの米国特許第9,844,563号を参照されたい。しかし、化学療法中の腎損傷から効果的に保護するためには、保護剤が腫瘍細胞への化学療法剤の効果を損なわない選択的な保護が必要となる。化学療法中に使用するための効果的な保護剤を開発するために、さらなる研究が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】RBT-3(360mg)が、ヒト対象において血漿ヘプシジンレベルの急速かつ著しい増加を誘導することを示す図である。
【
図2】RBT-3(240mg)が、血漿ヘプシジンレベルの急速かつ著しい増加を誘導することを示す図である。
【
図3】RBT-3(120mg)が、健康なボランティア(HV)及びCKD対象の両方において血漿ヘプシジンの増加を誘導することを示す図である。
【
図4】ベースライン値を超える血漿ヘプシジンレベルの増加を示す図である。
【
図5】Nrf2経路が、CD-1マウスにおいてRBT-3注射により活性化されることを示す図である。
【
図6A】免疫組織化学により評価した結果、RBT-3が、マウス近位尿細管におけるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の発現の顕著な増加を誘導することを示す図である。
【
図6B】免疫組織化学により評価した結果、RBT-3が、マウス近位尿細管におけるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の発現の顕著な増加を誘導することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、がん細胞に対して、腎臓及び/又は肝臓を選択的に保護する腎保護剤の使用、及びそのような腎保護剤を使用した化学療法剤を使用したがんを治療する方法又は造影剤を使用したがんを検査する方法に関する。一態様では、腎保護剤は、鉄スクロース(FeS)などの鉄組成物である。別の態様では、腎保護剤は、プロトポルフィリン(例えば、スズプロトポルフィリン、SnPP)である。別の態様では、本発明は、がん化学療法又は放射線造影画像化の間に鉄組成物とプロトポルフィリンの組合せを投与することを含む。例えば、化学療法剤と一緒に鉄スクロース及びスズプロトポルフィリンを投与することである。
【0006】
本発明は、2020年2月20日出願の米国特許出願第16/805,223号、表題「NOVEL IRON COMPOSITIONS AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME」に記載されているRBT-3などの鉄スクロースなどの鉄組成物を利用し、2019年2月20日出願の米国仮特許出願第62/812,028号に対する優先権を主張し、その開示はその全体が本明細書に組み込まれる。プロトポルフィリンは、スズプロトポルフィリン(SnPP)などの金属ポルフィリンを含む。鉄プロトポルフィリンIXの複数の合成アナログが知られている。これらの化合物は市販されている及び/又は既知の方法により容易に合成することができる。これらは、例えば、白金、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、銀、マンガン、クロム、及びスズのプロトポルフィリンIXを含む。便宜上これらの化合物は、総称的にMe-プロトポルフィリン又はMePPと呼ばれ、Meは金属を表し、具体的には、クロム、スズ、亜鉛のプロトポルフィリン化合物の場合は、それぞれCr-プロトポルフィリン(CrPP)、Sn-プロトポルフィリン(SnPP)、Zn-プロトポルフィリン(ZnPP)などの金属の化学記号を用いて呼ばれる場合がある。
【0007】
本発明に関連して使用できる化学療法剤は、シスプラチン、並びにカルボプラチン、エロキサチン又はオキサリプラチンを含む白金アナログのクラスの化合物を含む。
【0008】
化学療法中の鉄組成物の腎保護効果
ヘプシジンは、マクロファージ鉄レベル及び炎症促進性状態に応じて主に肝細胞で産生される、よく認識されている鉄調節タンパク質である。Coffey R、Ganz T、Iron homeostasis:An anthropocentric perspective、J Biol Chem.、2017;292:12727~12734。当初は抗菌特性があると考えられていたが、Michels K、Nemeth E、Ganz T、Mehrad B、Hepcidin and host defense against infectious diseases、PLoS Pathog、2015;11(8):e1004998、近年では、急性腎臓保護効果を有することが証明されている。Van Swelm RP、Wetzels JF、Verweij VG、ら、Renal handling of circulating and renal-synthesized hepcidin and Its protective effects against hemoglobin-mediated kidney Injury、J Am Soc Nephrol、2016;27:2720~2732;Swaminathan S、Iron homeostasis pathways as therapeutic targets in acute kidney injury、Nephron、2018;140:156~159;Scindia Y、Wlazlo E、Leeds J、ら、Protective role of hepcidin in polymicrobial sepsis and acute kidney injury、Front Pharmacol、2019;10:615、2019年6月6日発行、doi:10.3389/fphar.2019.00615;Scindia Y、Dey P、Thirunagari A、Liping H、Rosin DL、Floris M、Mark D.Okusa MD、Swaminathan S、Hepcidin mitigates renal ischemia-reperfusion Injury by modulating systemic iron homeostasis、J Am Soc Nephrol、2015;26:2800~2814;Wang X、Zheng X、Zhang J、Zhao S、Wang Z、Wang F、Shang W、Barasch J、Qiu A、Physiological functions of ferroportin in the regulation of renal iron recycling and ischemic acute kidney injury、Am J Physiol、2018;315:F1042~F1057。例えば、組換えヘプシジン投与は、実験的虚血性AKIを緩和することが示されている。
【0009】
逆に、ヘプシジン欠損マウスは、虚血性腎損傷に対して非常に影響を受けやすい(6)。ヘプシジンがその保護作用を発揮するメカニズムは、不確かなままである。しかし、ほとんどの関心は、以下の潜在的な経路に集中している(6、7):i)ヘプシジンは、その小さなサイズ(25kDa)から、急速な糸球体ろ過を受け、次いで近位尿細管のエンドサイトーシスによる取込みを受ける、ii)ヘプシジンは、鉄エクスポーターフェロポーチンに結合し、その細胞再分布及びその後のタンパク質分解性の破壊を引き起こす、iii)フェロポーチンの損失は、細胞内の触媒的鉄レベルを増加させ得る、及びiv)サイトゾルの鉄の上昇は、フェリチンの合成を刺激し、そのよく知られた細胞保護/抗酸化効果を付与することができる。Johnson AC、Gooley T、Guillem Keyser JA、Rasmussen H、Singh B、Zager RA、Parenteral iron sucrose-induced renal preconditioning:differential ferritin heavy and light chain expression in plasma,urine,and internal organs、Am J Physiol、2019;317:F1563~F1571;Zarjou A、Bolisetty S、Joseph R、ら、Proximal tubule H-ferritin mediates iron trafficking in acute kidney injury、J Clin Invest、2013;123:4423~4434。しかし、追加の保護メカニズムも機能している可能性がある。単なる一例として、ヘプシジンと細胞保護性Nrf2経路との相互作用が存在する可能性がある(10~13)。Lim PJ、Duarte TL、Arezes J、ら、Nrf2 controls iron homeostasis in haemochromatosis and thalassaemia via Bmp6 and hepcidin、Nat Metab、2019;1:519~531;Bayele HK、Balesaria S、Srai SK、Phytoestrogens modulate hepcidin expression by Nrf2:Implications for dietary control of iron absorption、Free Radic Biol Med、2015;89:1192~1202;Tanaka Y、Ikeda T、 Yamamoto K、Ogawa H、Kamisako T、Dysregulated expression of fatty acid oxidation enzymes and iron-regulatory genes in livers of Nrf2-null mice、J Gastroenterol Hepatol、2012;27:1711~1717;Harada N、Kanayama M、Maruyama A、ら、Nrf2 regulates ferroportin 1-mediated iron efflux and counteracts lipopolysaccharide-induced ferroportin 1 mRNA suppression in macrophages、Arch Biochem Biophys、2011;508:101~109。
【0010】
組換えヘプシジンがAKIからの腎臓保護を付与することができるという急激に進んでいる証拠があることから、本発明者は、腎臓への安全性が証明されている、新たに開発された新規IV鉄スクロース製剤(RBT-3)が、健康なボランティア及びCKD患者に投与されたとき、ヘプシジン産生を強く刺激して、その結果腎臓ヘプシジンレベルを増加させるか否か疑問に思った。RBT-3は、2020年2月20日出願の米国特許出願第16/805,223号、表題「NOVEL IRON COMPOSITIONS AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME」、に記載されており、2019年2月20日出願の米国仮特許出願第62/812,028号に対する優先権を主張し、その開示はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0011】
これらの可能性を探索するために、本発明者は、異なる用量のRBT3を健康なボランティア(HV)及びステージ3~4CKDの対象に投与し、血漿ヘプシジン濃度を72時間の期間にわたり測定した。尿中ヘプシジンレベルも、腎臓ヘプシジン送達を確認するために測定した。補完的なマウス実験では、肝臓及び腎臓皮質ヘプシジン産生の両方へのRBT-3の潜在的な効果を探った。ヘプシジン-Nrf2相互作用に現在関心が集まっていることから、Nrf2活性へのRBT-3の影響を評価した。最後に、RBT-3が、臨床的に関連するAKIモデルであるシスプラチン腎毒性からの保護を付与する能力、及び潜在的な作用メカニズムを試験した。これらの補完的な臨床研究及び実験研究の結果は、本報告の基礎を形成する。
【0012】
本発明者は、化学療法剤の腎臓への細胞毒性効果が、化学療法と鉄組成物の同時投与により軽減され得ることを見出した。また、造影剤と鉄組成物の同時投与は、造影剤の細胞毒性効果を軽減する可能性がある。鉄組成物は、好ましくは鉄スクロース組成物である。鉄スクロース組成物は、好ましくは重炭酸塩を含む鉄スクロース組成物である。一実施形態では、鉄スクロース組成物は、RBT-3である。鉄組成物は、以下の特性のうちの1つ以上を含むことがあり、およそ1~10%、2~5%、3~4%又は約3.4%のFe2+/Fe3+比、5~19mg/ml、8~18mg/ml、10~15mg/ml又は約12mg/mlの全鉄含有量及び4~11%、6~9%又は約7.7%の有機炭素含有量、1100~1600mOsm/Kg、1400~1580mOsm/Kg又は約1540mOsm/Kgの浸透圧、約1~3nm、2~2.8nm又は約2.39nmの鉄コアサイズ、0.8%~3%、1~2%又は約1.26%のNa含有量及び10,000~30,000ダルトン、20,000~25,000ダルトン又は約23,881ダルトンの平均分子量などである。
【0013】
ヘプシジンは、全身性及び細胞内鉄恒常性の重要な調節因子であり、近年、腎尿細管細胞保護効果を有することが指摘されている。前述のように、組換えヘプシジン投与後、腎臓ろ過、近位尿細管の取込み及びその後のフェロポーチンの分解が起こる。フェロポーチンは、唯一知られている鉄の細胞エクスポーター(cellular exporter)であるため、その分解は近位尿細管の鉄含有量を増やし、それからフェリチン産生を刺激すると考えられている。フェリチンは強力な抗酸化剤であることから、ヘプシジンの細胞保護効果の重要な決定者である可能性がある。
【0014】
以前に報告された2つのマウス研究において、本発明者の研究室は、Venofer FeS投与から18~24時間以内に、多様な形態のAKI(グリセロール、マレエート又は虚血再灌流)から腎臓を保護することを実証した。Johnson ACM、Zager RA、Mechanisms and consequences of oxidant-induced renal preconditioning:an Nrf2-dependent,P21-independent,anti-senescence pathway、Nephrol Dial Transplant、2018;33:1927~1941;Johnson AC、Becker K、Zager RA、Parenteral iron formulations differentially affect MCP-1,HO-1,and NGAL gene expression and renal responses to injury、Am J Physiol 2010;299:F426~F435。
【0015】
本発明者は、これは、FeSによって促進される近位尿細管フェリチン含有量の増加が一因であることを示唆した。Johnson AC、Gooley T、Guillem Keyser JA、Rasmussen H、Singh B、Zager RA、Parenteral iron sucrose-induced renal preconditioning:differential ferritin heavy and light chain expression in plasma,urine,and internal organs、Am J Physiol、2019;317:F1563~F1571。しかし、Venofer FeSは、最小限の近位尿細管管腔へのアクセスを実現する。Zager RA、Johnson AC、Hanson SY、Parenteral iron nephrotoxicity:potential mechanisms and consequences、Kidney Int、2004;66:144~156。これは、FeSによって促進されるフェリチンの増加の代替の可能性:FeSが肝臓のヘプシジン合成を刺激し、それが次に上述の経路により腎臓のフェリチン産生を引き起こす可能性があることを示唆している。しかし、FeSが、本発明者が以前に記述したFeSによって誘導されるプレコンディショニング状態に寄与するのに必要とされるなどの、急速で持続的なヘプシジン産生(すなわち、24時間以内)を引き起こすことが可能か否かに関しては、不明のままであった。
【0016】
この問題に取り組むために、本発明者は、健康なヒト対象及び進行したCKDの患者におけるヘプシジン産生への新規FeS「RBT-3」の影響を評価した。本発明者は、RBT-3が等モルのVenoferよりも強固な細胞保護作用を誘導するという本発明者の研究室からの予備的な証拠に基づいて、この鉄製剤を研究のために選択した。さらなる洞察を得るために、正常のマウスにおけるヘプシジン発現へのRBT-3の効果を評価した。
図1~3に示されるように、健康なヒト及びCKD対象の両方において、急速で用量依存的な血漿ヘプシジンの増加がRBT-3注射後に観察された。この反応は24時間でピークとなり、両方の対象群が240又は360mgのRBT-3注射に反応して約15倍の血漿ヘプシジンの増加を明示した。ベースラインでは、血漿ヘプシジンレベルは、健康なボランティアと比較してCKD対象において上昇しており、CKDの炎症促進性状態を反映しているとみられる。Honda H、Hosaka N、Ganz T、Shibata T、Iron metabolism in chronic kidney disease patients、Contrib Nephrol、2019;198:103~111;Weiss G、Ganz T、Goodnough LT、Anemia of inflammation、Blood、2019;133:40~50。
【0017】
これは、CKD患者において、ヘプシジンの増加はすでに最大限であり、RBT-3を介したヘプシジンのさらなる増加を妨げているという理論的可能性を提起した。しかし、ベースライン値を超える絶対的なヘプシジン上昇がHV及びCKD研究群では視覚的に同一であったと考えると(
図4)、これは明らかに事実とは異なった。興味深いことに、24時間のピーク値は、RBT-3注射後48~72時間以内に約50%低下した。これは、急速な腎臓のヘプシジン取込み及び尿中のヘプシジン排出と協調してヘプシジン産生の減少を反映したものと推定される。実際、急速な尿中のヘプシジン排出は、RBT-3注射後24時間に、CKD及び健康なボランティア群の両方において尿中ヘプシジン濃度が約4倍増加したことにより証明された。
【0018】
鉄負荷に反応した肝臓のヘプシジン産生は、ホロトランスフェリンのその肝臓受容体(Tfr1、Trf2)への結合により開始される遺伝子転写の増加によってのみ生じると考えられている。その後のBMP-SMAD経路の活性化は、次にHAMP1遺伝子の転写を上方制御する。この経路がRBT-3注射により活性化されたことを確認するため、本発明者は、RBT-3投与後24時間に、マウスの肝臓及び腎臓の両方においてHAMP1 mRNAを測定した。驚くべきことに、HAMP1 mRNAの著しい増加が両臓器で観察されたのに対し、腎臓では10倍を超える反応が観察された。本発明者の知る限り、Feに反応して、肝臓に対して腎臓に優先的にHAMP1が誘導されることは、これまで報告されていない。これは、FeS/RBT-3が非直接的(肝臓での産生)及び直接的(腎臓由来)なメカニズムの両方により腎臓ヘプシジン負荷を引き起こし得るという興味深い可能性を提起する。
【0019】
FeS/RBT-3の保護作用の範囲の本発明者の理解を拡大するために、今回本発明者は、それが実験的なシスプラチン誘導ARFに対して発現され得るか否かを試験した。このモデルは、以下の4つの検討事項を踏まえて、研究のために選択された。第1に、本発明者が以前に試験したAKIモデル(虚血、マレエート、グリセロール誘導横紋筋変性)が約24時間以内に完全に明らかになるのとは異なり、シスプラチン腎毒性はゆっくりと進行し、腎不全の完全な発現には少なくとも3日を要する。したがって、FeS/RBT-3を介した保護効果がこの長期間にわたり発現され得るか否かに関しては不明であった。第2に、シスプラチン付加物は、早期の顕著なDNA損傷(例えば、DNA架橋結合)を誘導し、アポトーシス性又は壊死性細胞死に至る。Miller RP、Tadagavadi RK、Ramesh G、Reeves WB、Mechanisms of cisplatin toxicity、Toxins、2010;11:2490~2518。
【0020】
この独特の損傷開始事象を考慮すると、RBT-3が依然として保護効果を付与するか否かは不明であった。第3に、シスプラチンは依然として広く使用されている化学療法剤であり、臨床的AKI率は25~30%である。Latcha S、Jaimes EA、Patil S、Glezerman IG、Mehta S、Flombaum CD、Long-term renal outcomes after cisplatin treatment、Clin J Am Soc Nephrol、2016;11:1173~1179。したがって、シスプラチンの毒性を緩和する保護メカニズムを特定することは、現在満たされていない医療ニーズを満たすことができ、第4に、シスプラチン投与は予定された臨床事象である。したがって、RBT-3は、シスプラチン注入の約18~24時間前に投与することで、FeSを介した細胞抵抗性状態(cytoresistant state)の完全な発現に必要となる時間を与えることができる。実際、RBT-3をシスプラチン注射の18時間前にマウスに投与したとき、BUN、血漿クレアチニン及び血漿NAG濃度の急激な減少から明らかなように(表3)、著しい腎臓保護が観察された。したがって、これらの知見は、FeS/RBT-3プレコンディショニングが、広範囲にわたる、潜在的に臨床的に適用可能な腎保護効果を発揮することができるという概念にさらなる支持を与える。
【0021】
第4に、完全に予想外であったが、RBT-3プレコンディショニングにより引き起こされた保護作用は、腎臓のシスプラチン取込みの劇的な抑制であった。シスプラチン腎毒性は、近位尿細管細胞の取込みに大きく依存するため、観察された腎臓皮質シスプラチンレベルの40%の低下は、RBT-3の保護作用に支配的な役割を果たしたに違いない。近位尿細管細胞のシスプラチン取込みは、側底膜に位置する有機カチオントランスポーター(例えば、OCT2、MATE1)により仲介される。OCT2輸送は、近位尿細管のシスプラチン取込みの主要な決定要素であるが、MATE1(「多剤及び毒素排出タンパク質1(multidrug and toxin extrusion protein 1)」)も管腔シスプラチン排出を引き起こすことが、近年示唆されている(24)。RBT-3が、これらの細胞取込み及び排出経路にどのように影響するかは、未だ不明である。しかし、ヘプシジン-MATE-1相互作用が近位尿細管のシスプラチン排出を増加させる可能性を推測する人もいるかもしれない。Spreckelmeyer S、van der Zee M、Bertrand B、Bodio E、Sturup S、Casini A、Relevance of copper and organic cation transporters in the activity and transport mechanisms of an anticancer cyclometallated gold(III) compound in comparison to cisplatin、Front Chem、2018;6:377;Nieskens TTG、Peters JGP、Dabaghie D、ら、Expression of organic anion transporter 1 or 3 in human kidney proximal tubule cells reduces cisplatin sensitivity、Drug Metab Dispos、2018;46:592~599。
【0022】
以前の複数の論文では、本発明者の研究室は、鉄デキストラン、グルコン酸鉄、ヴェノファー及びフェルモキシトールを含む様々な非経口鉄製剤に対する腎臓の生物学的反応の明らかな違いを実証してきた。これらの違いは、様々な毒性の程度、酸化ストレスの重大性及び潜在的炎症促進性効果を含む。最も注目すべきは、FeS(Venofer及び今回のRBT-3の両方)だけが、腎臓のプレコンディショニング効果を誘導することが示されていることである。実際、未発表の研究において、本発明者は、Venofer及びRBT3の両方がそれぞれグリセロールAKIモデルを緩和するが、RBT-3はおよそ35%大きな腎保護効果を付与することを発見した。本発明者は今回、RBT-3が、Venoferに対して5倍大きいRBT-3への腎臓HAMP1反応を誘導することを実証する。さらに、RBT3は、Venoferに対して2倍の腎臓HO-1 mRNA反応を誘導した。このように、VenoferとRBT3は、量的に異なる腎臓の細胞保護タンパク質反応を明らかに発揮する。これらの違いを説明するVenoferとRBT-3の物理化学的な違いが何であるかは未だ不明である。しかし、これらのデータは、すべてのFe調合剤が同様ではないことを明らかに示し、現時点では、RBT3が最大の細胞保護的影響を与えると思われる。
【0023】
本発明者は、腎臓ヘプシジン負荷が、IV RBT-3注射により著しく(15×)、急速に(24時間未満)誘導されることを実証した。しかし、ヘプシジンへのその影響に加えて、RBT-3は、組換えヘプシジン注射により再現することができない追加の保護作用を発揮することは、注目すべきである。最も見込みのある2つは、1)本研究で初めて実証された近位尿細管内のNrf2経路活性化及び2)少なくともシスプラチンの場合において、細管のネフロトキシン取込み(又は蓄積)を鈍らせるRBT-3の能力である。これらの考察から、RBT-3誘導プレコンディショニングは、ヘプシジン負荷に加えて、多数の細胞経路により仲介されることが明らかであるように思われる。FeSが、ヒトにおいて優れた臨床的安全性プロファイルを有することが示唆されていることは、腎保護/プレコンディショニング剤としての潜在的な臨床価値をさらに示唆している。最後に、データは、すべてのFeスクロース調合剤が同じ生物学的効果を発揮するのではないことを裏付ける。今までに集められたデータから、RBT3は、腎臓のプレコンディショニング状態を誘導するのに最も見込みがあると思われる。
【0024】
臨床研究
9人の健康なボランティア(HV、eGFR>70ml/分/1.73m2)及びステージ3~4CKDの9人の患者(15~59ml/分/1.73m2)が、この調査のために募集された。今回の研究の基礎を形成した対象は、重鎖及び軽鎖フェリチン発現へのFeSの特異的効果を評価した以前の研究(8)の基礎でもある。本研究は、Advarra IRB、Columbia、MDからIRBの承認を受け、各対象からインフォームドコンセントを得た。本研究は、ヘルシンキ宣言に準拠した。除外基準は、妊娠、CKDの存在以外の重大な医学的疾患、過去30日間の鉄投与又は500ng/mlを超える血漿フェリチン濃度を含む。2つの研究群の具体的な人口統計データ、eGFRの検査(CKD-EPI式)、BUN、血清クレアチニン及び血圧は、表1にまとめられる。より詳細な情報は、以前に紹介されている。Johnson AC、Gooley T、Guillem Keyser JA、Rasmussen H、Singh B、Zager RA、Parenteral iron sucrose-induced renal preconditioning:differential ferritin heavy and light chain expression in plasma,urine,and internal organs、Am J Physiol、2019;317:F1563~F1571。本治験は、Clinicialtrials.gov(NCT04072432)に登録された。
【0025】
本研究の目的のために、Cascade Custom Chemistry;Portland、ORにより製造された新規FeS製剤「RBT-3」を用いた。RBT-3と、広く使用されているFeS調合剤「Venofer」との間には、複数の物理化学的な違いが存在する(未発表データ)。これらは、以下を含む(それぞれ、RBT3対Venofer):低いFe2+/Fe3+比、3.4%対15.8%;低い全Fe含有量、12mg/ml対20mg/ml;低い有機炭素含有量、7.7%対12.14%;低い浸透圧1540対1681mOsm/Kg;小さい鉄コアサイズ2.39対3.88nm;高いNa含有量1.26%対0.5%;及び低い平均分子量、23,881対31,335ダルトン。これらの構造的な違いに加え、RBT-3及びVenoferに対する生物学的反応を選択する際の量的な違いも指摘されている(考察参照)。
【0026】
HV群及びCKD群をそれぞれ3つの等しいコホートに分け(n、それぞれ3)、各コホートはRBT-3(12mg/ml原液)120、240又は360mgを受けた。RBT-3用量(原液10、20又は30ml)を生理的食塩水100mlと共に2時間かけてIV注入した。対象は、潜在的な有害事象を検査するために研究場所(Riverside Clinical Research、Edgewater、FL)に一晩とどまった。ベースライン時(0)並びに4、12、24及び72時間にタイミングを合わせて、ヘパリン化血漿試料が回収された。「スポット」尿試料が、ベースライン時及びRBT-3注入後24時間に得られた。試料は、市販のELISA(R&D Systems、Minneapolis、MN、キット#DY8307)を使用して、ヘプシジンについて二重でアッセイされた。尿ヘプシジン値は、尿クレアチニン濃度によって算出された。ELISA標準曲線試料は、製造業者から提供された。
【0027】
マウス実験
1.マウスにおけるRBT-3誘導ヘプシジン発現。オスのCD-1マウス(35~40グラム、Charles River Labs、Wilmington、MA)が、施設のIACUCにより承認されたすべての動物研究で使用された。マウスに尾静脈から1mgのRBT-3又はビヒクルのいずれかを注射した(n、それぞれ5)。18時間後、それらをペントバルビタール(40~50mg/Kg)で深く麻酔し、腹腔を開き、血液試料を大静脈から得てから腎臓及び肝臓を素早く切除し、氷で冷やし、全RNA及びタンパク質を抽出した(14)。腎臓皮質及び肝臓のヘプシジン(HAMP1)mRNAレベルは、以下のプライマーペアを使用した競合的RT-PCRにより測定された:左、cagcagaacagaaggcatga;右、agatgcagatggggaagttg。mRNA値は、同時に決定されたGAPDH産物によって算出された(14)。血漿、肝臓及び腎臓皮質のヘプシジンレベルも、ELISAにより決定された(14)。
【0028】
2.マウス腎臓Nrf2発現へのRBT-3の効果。ヘプシジンへのその効果に加えて、RBT-3がNrf2経路を活性化するか否かを評価するために、5匹の対照マウス及び5匹のRBT-3処理マウスの腎臓試料を注射後4時間に回収した。全mRNAを抽出し、4つのNrf2活性化遺伝子:1)ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)、2)NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO1)、3)スルフィレドキシン-1(SRXN1)及び4)グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)について、以前記載されたように(15)RT-PCRによりアッセイした。さらに、Nrf2核移行は、この研究室が以前行ったように(15)、核タンパク質を抽出しELISAによりNrf2についてアッセイすることにより評価された。
【0029】
3.近位尿細管HO-1発現へのRBT-3の効果の免疫組織化学分析。RBT3を介したNrf2活性化が近位尿細管細胞においてNrf2感受性タンパク質レベルの増加をもたらしたことを確認するため、HO-1タンパク質発現を、RBT-3又はビヒクル注射から18時間後に得られた腎臓で評価した。ホルマリン固定パラフィン包埋組織を、正に荷電したスライドに4ミクロンで切り出し、60℃で1時間焼成した。スライドは次に、Leica BOND Rx染色装置(Leica、Buffalo Grove、IL)で、脱脂用(Dewax Solution)、抗原賦活化用(Epitope Retrieval Solution 2)のLeica Bond試薬を使用して脱脂し、染色し、各ステップの後にすすいだ(Bond Wash Solution)。抗原賦活化は、100℃で20分間行い、他のステップはすべて周囲温度で行った。内因性のペルオキシダーゼを3%H2O2で5分間ブロックした後、TCTバッファー(0.05M Tris、0.15M NaCl、0.25%カゼイン、0.1% Tween 20、0.05% ProClin300 pH 7.6)で10分間タンパク質ブロッキングを行った。一次抗体HO-1(Abcam ab189491)を60分間塗布し、その後Leica抗ウサギHRPポリマーを10分間塗布し、三次TSA増幅試薬(PerkinElmer OPAL 650、1:100)を10分間塗布した。スライドを染色装置から取り出し、DAPIで5分間染色し、すすぎ、Prolong Gold Antifade試薬(Invitrogen/Life Technologies、Grand Island、NY)でカバーガラスをかけた(cover slipped)。
【0030】
4.シスプラチン腎毒性及び腎臓のシスプラチン取込みへのRBT-3プレコンディショニングの影響。マウスに1mgのRBT-3又は生理的食塩水ビヒクルを尾静脈から注射した(n、それぞれ5)。18時間後、すべてのマウスにシスプラチン(15mg/Kg、IP)を注射した。初めから終わりまで、餌及び水が自由に与えられた。注射から3日後、マウスをペントバルビタール(50mg/Kg IP)で深く麻酔し、血液試料を、BUN及びクレアチニン濃度のために下大静脈から得た。近位尿細管酵素、N-アセチルグルコサミダーゼ(「NAG」)の血漿レベルも評価した(BioAssay Systems #DNAG-100、Hayward、CA)。さらに、腎臓皮質抽出物を蒸留水で調製し、シスプラチン濃度を製造業者の指示に従って決定した(ProFoldin、Goettingen、Germany)。
【0031】
5.RBT3とVenoferの比較。構造的な違いに加え、RBT3とVenoferの機能的な違いを実証するため、本発明者は、2つの鉄スクロース調合剤間でヘプシジンmRNAとHO-1mRNAの反応を比較した。6匹のマウスにRBT3又はVenoferのいずれか1mgを投与し、24時間後に肝臓及び腎臓のmRNA試料を得た。6つの正常試料は対照値を提供した。
【0032】
統計。各試料は二重でアッセイされ、平均値がデータの表示及び分析に使用された。ヒトヘプシジンデータは、平均値±1SDで表示されている。HV群及びCKD群のベースライン血漿ヘプシジン値を、対応のないStudentのt検定により比較した。ヘプシジンレベルの経時的な比較は、反復測定のANOVAにより分析し、95%信頼区間を提示した。ベースラインの人口統計データは、対応のないStudentのt検定により比較した。マウスのデータは、平均値±1SEMとして与えられている。有意性は、p値<0.05で判断した。
【0033】
ベースラインの対象情報。研究対象集団の選択された人口統計は、以前に詳細が示されている。表1に概要を示す。
【0034】
【0035】
表1説明文。今回の研究の基礎を形成した、9人の健康なボランティア(HV)及びステージ3~4CKDの9人の対象のベースライン特性。平均値及び95%信頼区間の範囲=平均値±括弧内の数字。P値は、対応のないStudentのt検定により導いた。
【0036】
CKD対象は、HVより有意に年齢が高く、HV群と比較してCKD男性は少なかった。CKD群の平均eGFRは、38±8ml/分/1.73m2(HV群の>70ml/分.1.73m2の約半分)であった。CKD対象のeGFRが低いことは、HVで見られるものに対して、ベースライン及び血漿クレアチニン濃度が上昇することにより明示された。
【0037】
HV及びCKD対象におけるベースライン及びRBT-3後の血漿ヘプシジン濃度。文献と一致して(16、17)、CKD対象は、HVに対して、ベースライン血漿ヘプシジンレベルが高かった。(それぞれ、26±25ng/ml対4±5ng/ml、p=0.001)。これは、CKDに伴う炎症促進性状態及び場合によりCKDに伴うGFRの低下による腎臓ヘプシジンクリアランスの減少を反映したものと推定される。
【0038】
すべての対象が、RBT-3注射に反応して、劇的で用量依存的な血漿ヘプシジンの増加を明示した(
図1~3)。増加は、RBT-3注射から4時間後に早くも観察され、24時間でピーク値に達した(
図1~3)。240及び360mgの投与量では、24時間血漿ヘプシジンレベルは、そのベースライン値よりおよそ15倍高かった。24時間後、血漿ヘプシジンの急速な減少が観察された。しかし、最終評価時点(72時間)では、ベースライン値に対して約2~4倍の血漿ヘプシジンの増加が依然として観察された(全群、p<0.001)。
【0039】
CKDがベースラインヘプシジンレベルの増加を伴っていたという事実にも関わらず、これらの増加は、RBT-3が引き起こす血漿ヘプシジンの増加の程度に影響を与えなかった。例えば、基底値を超える24時間の増加は、対象が120、240又は360mgのいずれのRBT-3投与量を受けても、HV群及びCKD群でほとんど同じであった(
図4)。
【0040】
結果
RBT-3注射に反応するヒト尿中ヘプシジン濃度。ベースラインでは、尿中ヘプシジン濃度は、HV群とCKD群とで有意差はなかった(それぞれ、47±36対51±72ng/mg尿クレアチニン)。RBT-3注射から24時間後までに、両群は、ベースライン値に対して約4倍の尿中ヘプシジンの増加を示した(HV、219±104、p=0.04対ベースライン;CKD 176±93、p=0.014対ベースライン)。したがって、これらの尿中の増加は、循環するヘプシジンのろ過レベルの増加又は場合により細管からのヘプシジン排出と一致している。
【0041】
マウス実験
1.マウスHAMP1遺伝子発現;RBT-3に対する血漿、腎臓、肝臓ヘプシジン反応。
【0042】
ベースラインのマウス肝臓HAMP1 mRNA発現(表2)は、腎皮質で観察されるものよりもおよそ25倍多く、肝臓がヘプシジン産生の主要な部位であることと一致している(1)。肝臓及び腎臓の両方がそれぞれRBT-3注射に反応し、HAMP1 mRNAが増加したが、HAMP1 mRNAの増加の程度は、肝臓に対して腎臓で劇的に大きかった(10倍)。しかし、ベースライン及びRBT-3後のヘプシジンタンパク質レベルは、2つの臓器で同等であった(ベースライン値に対して約5倍上昇、表2参照)。これらの増加は、RBT-3によって誘導されたおよそ3倍の血漿ヘプシジンレベルの増加に対応した(表2)。
【0043】
【0044】
表2説明文。2群は、1群につき5匹のマウスで構成された。HAMP1 mRNAは、GAPDHによって算出される。値は、平均値±1SEMである。P値は、対応のないStudentの検定により導いた。
【0045】
2.RBT-3に反応するマウス腎臓皮質Nrf2遺伝子活性化。試験した4つのNrf2応答性遺伝子のそれぞれが、RBT-3注射後、それらのmRNAの有意な増加を明示した(
図5参照)。対照レベルに対してHO-1 mRNAが約20倍増加したことから、最も応答性の高い遺伝子はHO-1であるように思われた。さらに、RBT-3処理群では、対照と比較して、核内Nrf2タンパク質レベルの有意な増加が観察された(p=0.017)。
【0046】
3.HO-1免疫蛍光法。局所的な近位尿細管HO-1染色が、対照腎臓組織で観察された(
図6)。HO-1染色の範囲及び強度は、RBT-3注射後18時間に大きく増加した。この増加は、主に近位尿細管細胞に限定されているように思われ、それは非常に強い細胞質染色を明示した。糸球体又は髄質のHO-1染色の明らかな増加は、RBT-3注射に反応して観察されなかった。
【0047】
4.シスプラチン腎毒性へのRBT-3の効果。シスプラチン注射から3日後までに、BUN及び血漿クレアチニンの著しい上昇により示されるように(表3)、重度の腎損傷が対照マウスで明らかとなった。RBT-3プレコンディショニングは、BUN及びクレアチニンレベルで評価した場合、シスプラチン誘導損傷をおよそ50%減少させた。この保護が近位尿細管損傷の減少を反映していることは、体循環へのNAG放出がほぼ完全に遮断されたことで示された(表3)。興味深いことに、RBT-3を介した保護は、腎臓皮質シスプラチン濃度の40%減少と関連していた(少なくとも部分的には、そのためとみられる)(表3)。
【0048】
【0049】
表3説明文。値は、平均値±1SEMで表示されている。BUN及びクレアチニンの値は、mg/dLである。血漿NAGの値は、活性単位/リットルである。シスプラチンの値は、μg/グラム組織湿重量である。統計的比較は、対応のないStudentのt検定により行われた。
【0050】
5.VenoferとRBT3 FeS調合剤の比較。肝臓及び腎臓の両方が、RBT-3の注射後にHAMP1 mRNA値の有意な増加を示した。しかし、腎臓HAMP1 mRNAの増加は、RBT3ではるかに大きかった(RBT-3で11倍に対しVenoferで2倍の増加(p=0.015、表4)。対照的に、両鉄がヘプシジンmRNAを上昇させた一方で、Venofer対RBT-3で肝臓で観察されたヘプシジンタンパク質濃度に差はなかった。これは、腎臓に特異的なHAMP1増加反応を示している。腎臓試料においてHO-1 mRNAも調査したところ、RBT3対Venofer処理で増加は2倍であった。これらのデータは、2つのFeS調合剤間の生物学的反応の違いを明らかに実証した。
【0051】
【0052】
表4説明文。マウスに1mfのVenofer FeS又はRBT-3 FeSを注射し、続いて24後にHAMP1 mRNA及びHO-1 mRNAを評価した。RBT-3は、HAMP1(ヘプシジン)mRNAの11倍の増加を誘導したのに対し、Venoferは2.2倍の増加を誘導した。RBT-3は、Venoferと比較して、HO-1 mRNAの倍増も誘導した。10を底とする対数データ変換後P=0.015。非変換、p=0.037。
【0053】
図1。RBT-3(360mg)は、ヒト対象において血漿ヘプシジンレベルの急速かつ著しい増加を誘導する。RBT-3注射(360mg)の4時間以内に、血漿ヘプシジンの増加が観察され、24時間でピークとなった(ベースラインの約15倍)。ほぼ同じ反応が、健康なボランティア(HV)及びCKDのコホートで観察された。HV群及びCKD群の95%信頼区間(±)は、図の下部の表に与えられている。反復測定のANOVAから導かれたP値。HV=健康なボランティア、CKD=慢性腎疾患。
【0054】
図2。RBT-3(240mg)は、血漿ヘプシジンレベルの急速かつ著しい増加を誘導する。360mg用量の場合と同様に、ヘプシジンの増加は、4時間で観察され、24時間の時点でピークとなった。CKD群と健康なボランティア(HV)群とで有意差は観察されなかった。健康なボランティア(HV)群及びCKD群の95%信頼区間(±)は、図の下部の表に与えられている。反復測定のANOVAから導かれたP値。
【0055】
図3。RBT-3(120mg)は、健康なボランティア(HV)及びCKD対象の両方において血漿ヘプシジンの増加を誘導する。CKD対象は、72時間の期間を通して、HVと比較して血漿ヘプシジンレベルが高かった。これは、CKD群におけるより高いベースライン(開始)ヘプシジンレベルを反映していると推定される(本文参照)。これは、360mg、240mg及び120mgのRBT-3処理群全体に当てはまることであった(本文及び
図4の右側パネル参照)。
【0056】
図4。ベースライン値を超える血漿ヘプシジンレベルの増加。ベースライン血漿ヘプシジンレベルが、健康なボランティア(HV、右側パネル参照)と比較してCKDコホートでは上昇していたため、これらのベースライン値を超えるRBT-3によって誘導された増加を計算した(24時間ピーク値-ベースライン値)。これは、CKDと健康なボランティアのヘプシジン反応の比較を可能にした。明らかなように、HV群及びCKD群は、各鉄投与に伴い、非常に同等のヘプシジンの増加を明示した。値は、平均値±95%信頼区間である。240mg及び360mgのRBT-3用量は、同等のヘプシジンの増加を誘導し、その両方が、120mgのRBT-3用量群で観察されたものより大きかった。
【0057】
図5。Nrf2経路は、CD-1マウスにおいてRBT-3注射により活性化される。マウスへのRBT-3注射後4時間で、試験した4つのNrf2応答性遺伝子のmRNAそれぞれの有意な増加が観察された(同時に調査した対照マウスと比較して)。Nrf2経路活性化のさらなる証拠は、核タンパク質抽出物において、核Nrf2タンパク質結合の増加が見られたことであった。ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)、NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO1)、スルフィレドキシン-1(SRXN1)及びグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)。
【0058】
図6。免疫組織化学により評価した結果、RBT-3は、マウス近位尿細管におけるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の発現の顕著な増加を誘導する。左側パネルに示される対照腎臓は、近位尿細管セグメントの多様な細胞質染色を実証している。対照的に、FeS注射から18時間後に摘出された腎臓(右側パネル)は、顕著な、ほぼコンフルエントの近位尿細管HO-1の増加を示した。一方、アスタリスクで表される糸球体では、HO-1染色の増加は明白ではなかった。したがって、これらの知見は、
図5に表されたHO-1 mRNAの変化が、i)HO-1タンパク質レベルの増加及びii)これらの増加が近位尿細管内で起こったこと、に反映されたことを確認した。
【0059】
化学療法中のプロトポルフィリンの腎保護効果
SnPP(1μモル)又はビヒクル(V)を0日目に与え、シスプラチン15mg/kgを1日目に与え、シスプラチン注射から3日後に、BUN、クレアチニン、腎臓皮質LDH、並びにNGAL、MCP-1、IL-6、HO-1及びp21のmRNAを測定した。SnPPは、すべてのシスプラチン処理マウスにおいて、シスプラチン単独と比較して、統計的に有意な保護を付与したP<0.01)。
【0060】
【0061】
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【国際調査報告】