(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】プラズマ強化化学気相堆積のための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/458 20060101AFI20230926BHJP
C23C 16/503 20060101ALI20230926BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C23C16/458
C23C16/503
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516664
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 DE2021100759
(87)【国際公開番号】W WO2022057978
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】102020124030.9
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519090826
【氏名又は名称】セントロサーム インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】centrotherm international AG
【住所又は居所原語表記】Wuerttemberger Str.31, 89143 Blaubeuren, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】フックス・イェンス=ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】トレーラー・ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ライツェ・ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒトル・ローランド
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA07
4K030AA08
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA44
4K030CA04
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4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
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4K030GA12
4K030KA23
4K030KA37
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA08
5F045AC01
5F045AC08
5F045BB02
5F045DP03
5F045EF02
5F045EK07
5F045EK21
5F045EK24
(57)【要約】
本発明は、プラズマ強化化学気相堆積のための装置(1)、システム(50)及び方法(100)に関する。プロセスチャンバ(2)は、少なくとも1つのワークキャリア(30)を受容するように構成される。本発明によると、装置(1)は、プロセスチャンバ(2)によって受容され得る少なくとも1つのワークキャリア(30)を用いてプロセスチャンバ(2)を加熱するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのワークキャリア(30)を受容するためのプロセスチャンバ(2)を有するプラズマ強化化学気相堆積のための装置(1)であって、
前記プロセスチャンバ(2)に受容可能な少なくとも1つのワークキャリア(30)を用いて前記プロセスチャンバ(2)を加熱するように構成された装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの受容可能なワークキャリア(30)を少なくとも1つの加熱電圧源(25)又はプラズマ電圧源(24)に選択的に接続するように構成された切換ユニット(22)を備える請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記切換ユニット(22)は、ワークキャリア(30)が接続可能な電源接続部(5)への前記少なくとも1つの加熱電圧源(25)及び前記プラズマ電圧源(24)の導電接続を中断するように構成された少なくとも2つのスイッチアセンブリ(23a、23b)を有する、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの受容可能なワークキャリア(30)を電気的に接触するための少なくとも4個のコンタクトピン(7)を有する電源接続部(5)を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記コンタクトピン(7)が、前記プロセスチャンバ(2)の後部壁(6)の領域に配置された、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記プロセスチャンバ(2)が、2つのワークキャリア(30)を受容するように構成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記プロセスチャンバ(2)は、前記少なくとも1つのワークキャリア(30)を前記プロセスチャンバ(2)内に挿入するために相互に隣接して配置された2つの閉塞可能な開口部(17)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記プロセスチャンバ(2)は、少なくとも1つの受容可能なワークキャリア(30)から放射された電磁照射を前記ワークキャリア(30)に対して反射するように構成された少なくとも1つの反射ユニット(20)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記プロセスチャンバ(2)は3個の反射ユニット(20)を有し、該3個の反射ユニット(20)は、ワークキャリア(30)が前記プロセスチャンバ(2)に受容された状態で前記3個の反射ユニット(20)が前記ワークキャリア(30)の上部に及び2つの対向する長手方向の辺に沿って位置決めされるように、相互に対して略直角に配置されている、請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
プロセスガスを前記プロセスチャンバ(2)に供給するためのガス供給システム(3)を備え、該ガス供給システム(3)は、受容されたワークキャリア(30)に対して該ワークキャリア(30)の上部にプロセスガスを供給するように前記プロセスチャンバ(2)の天井部(15)の領域に配置された複数の噴射器(14)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
プロセスガスを前記プロセスチャンバ内に供給するためのガス供給システム(3)を備え、該ガス供給システム(3)は、プロセスガスの指向的噴射のためのノズルとして設計された複数の噴射器(14)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
ノズルとして設計された前記噴射器(14)は、前記少なくとも1つの受容可能なワークキャリア(30)の平行に配置された複数の電極(32a、32b)の間にプロセスガスが吹付け可能となるように配置されている、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記プロセスチャンバ(2)内に真空を生成するためのガス排出システム(4)を備え、該ガス排出システム(4)は、ワークキャリア(30)が受容された場合にガスを引き出すために前記ワークキャリア(30)の下部の、前記プロセスチャンバ(2)の底部(12)の領域に配置された複数のガス排出口(11)を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の装置(1)と、ワークキャリア(30)であって該ワークキャリア(30)によって前記装置(1)のプロセスチャンバ(2)が加熱可能となるワークキャリア(30)と、を有するプラズマ強化化学気相堆積のためのシステム(50)。
【請求項15】
プラズマ強化化学気相堆積のための方法(100)であって、プロセスチャンバ(2)が、該プロセスチャンバ(2)に受容可能な少なくとも1つのワーク又はワークキャリア(30)を用いて加熱される(S3)、方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ強化化学気相堆積のための装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板をコーティングする化学気相堆積(CVD)の方法が知られている。堆積される物質を含有する少なくとも1つのガスが供給される。その物質は、例えば、温度によって推進可能な化学反応を実行することによって基板上に堆積される。化学気相堆積を用いて、例えば、微細電子部品又は光ファイバが製造可能となる。
【0003】
堆積速度は、ガスに基づいてプラズマを発生させることによってさらに上昇し得る。さらに、堆積反応は、このように、より低温においても既に効果的に推進可能とされている。この化学気相堆積の変形を、通常はプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)という。
【0004】
必要なプロセス温度に到達するために、基板、例えば、半導体ウエハを搬送するためのワークキャリアが、通常、加熱可能な壁を有する反応チャンバに挿入される。この反応チャンバを、ホットウォール反応器ともいうことがある。加熱は、通常は、プロセスチャンバ壁上又は壁内に設置された抵抗加熱要素によって行われる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、プラズマ強化化学気相堆積をさらに改良して、特にその効率を高めることである。
【0006】
この課題は、請求項1、14及び15に記載されるプラズマ強化化学気相堆積のための装置、システム及び方法によって達成される。
【0007】
プラズマ強化化学気相堆積のための本発明の第1の態様に係る装置は、少なくとも1つのワークキャリアを受容するためのプロセスチャンバを有する。本発明によると、装置は、プロセスチャンバによって受容可能な少なくとも1つのワークキャリアを用いてプロセスチャンバを、好ましくは化学気相堆積のためのプロセス温度まで加熱するように構成される。
【0008】
本発明の意味における加熱は、少なくとも1つの構成要素が加熱に特化して用いられる能動的な加熱である。加熱は、ここでは一時的のみの加熱も含む。少なくとも1つの受容されたワークキャリアを用いてプロセスチャンバの加熱中に、ワークキャリアは、結果として、例えば、加熱ユニットとして動作可能となる。これに対して、例えば、廃熱による受動的な加熱は、本発明の意味において加熱ではない。したがって、プラズマ発生の結果としてワークキャリアの電極の加熱に起因するプロセスチャンバの暖機は、特に、本発明の意味における加熱ではない。
【0009】
本発明の一態様は、少なくとも1つのワークキャリアを受容するためのプロセスチャンバが少なくとも1つの受容可能なワークキャリアを専ら介して能動的に加熱可能となるように、プラズマ強化化学気相堆積のための装置を設計するアプローチに基づく。装置は、ここでは、特に、プロセスチャンバに導入されたプロセスガス及び/又はプロセスチャンバ内で生成された真空とは独立してワークキャリアを用いてプロセスチャンバが加熱可能となるように、設計され得る。
【0010】
真空は、本発明の意味では、装置に作用する気圧以下の圧力によって特徴付けられる。言い換えると、本発明の意味における真空は、装置の周囲に関連するプロセスチャンバ内の負圧、例えば、実質的に1バール以下の圧力を指す。
【0011】
したがって、装置は、例えば、ワークキャリアを加熱ユニットとして動作させるように構成可能である。そこに収容されるワークキャリアを用いてプロセスチャンバを加熱することができることに起因して、例えば、プロセスチャンバ又は加熱カートリッジの領域に設置された加熱要素の形態の、装置のための別個の加熱システムが省略可能となる。したがって、装置は、より簡素に構成され、より高いコスト効率で製造され得る。さらに、プロセスチャンバは、いわゆる「コールドウォール反応器」として動作可能とされ、それに起因して動作の安全性が高まり得る。またさらに、別個の加熱システムを省略することによって、ワークキャリアが挿入されていない場合の不注意でのプロセスチャンバの加熱を回避することができ、又はワークキャリアが受容される場合にのみ加熱を可能とする対応する複雑な安全機構を省略することができる。
【0012】
さらに、受容可能なワークキャリアを用いてプロセスチャンバを加熱するために構成された装置を用いてプロセスチャンバ内の設置空間が節約可能となり、したがってプロセスチャンバはより小型化可能となる。したがって、そこに位置する加熱されるべき体積及び加熱されるべき質量が減少し得る。これにより、同じ加熱電力でプロセス温度に達するまでに要する時間を短縮することができる。したがって、装置が高いエネルギー効率で動作され得るだけでなく、ワークの処理も加速され、それに従ってスループットも増加し得る。
【0013】
装置は、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアを用いてプロセスチャンバの加熱を制御するように構成された制御ユニットを適宜有する。制御ユニットは、特に、少なくとも1つの受容されたワークキャリアを加熱ユニットとして動作させるように構成され得る。制御ユニットは、例えば、加熱電流がワークキャリアの少なくとも一部を通るように、電流及び/又は電圧源によってワークキャリアの相互接続を確立するように構成され得る。加熱電流は、この目的のためには低周波交流電流、例えば、1kHz未満、好ましくは約50Hzの周波数の交流電流であり得る。ワークキャリアの一部、例えば、直列接続された複数の電極が、ここでは加熱抵抗として使用可能である。
【0014】
本発明の好適な実施形態及びそれらの改良形態を以下に説明する。それらの各々は、明示的に除外されない限り、任意に相互に及び後述する本発明の態様に組み合わせられてもよい。
【0015】
好適な一実施形態では、装置は、プロセスチャンバによって受容された少なくとも1つのワークキャリアを少なくとも1つの加熱電圧源又はプラズマ電圧源に選択的に接続するように構成された切換ユニットを有する。加熱電圧源はプロセスチャンバを加熱するための低周波AC電圧を供給するように適宜構成され、プラズマ電圧源は高周波AC電圧を供給してプラズマを発生させるように適宜構成される。低周波AC電圧は、この場合、1kHz以下、例えば50Hzの周波数を有し、高周波AC電圧は、1kHz以上、例えば、40kHzの周波数を有する。切換ユニットは、好ましくは、プロセスチャンバに受容されたワークキャリアを、高周波交流電流を通電するためのプラズマ回路又は低周波交流電流を通電するための少なくとも1つの加熱回路に選択的に統合するように構成される。切換ユニットは、特に、プラズマユニットとしての動作のためのプロセスチャンバによって受容されたワークキャリアを、低周波交流電流を通電するための少なくとも2つの、好ましくは並列加熱回路における高周波交流電流を通電するための及び加熱ユニットとしての動作のための単一のプラズマ回路に選択的に統合するように構成され得る。したがって、少なくとも1つの受容されたワークキャリアの種々の動作モードが、切換ユニットを用いて実施可能となる。
【0016】
加熱電圧源は、例えば、145Vの有効電圧、及び90Aより高い、例えば120Aの有効アンペア数で低周波AC電圧を供給するように構成される。プラズマ電圧源は、例えば、800V~1000Vの有効電圧、及び90A未満、例えば75Aの有効アンペア数の高周波AC電圧を供給するように構成される。
【0017】
さらに好適な実施形態では、切換ユニットは、ワークキャリアが接続可能な電源接続部への少なくとも1つの加熱電圧源及びプラズマ電圧源の導電接続を中断するように構成された少なくとも2つのスイッチアセンブリを有する。スイッチアセンブリは、特に、少なくとも1つの加熱電圧源又はプラズマ電圧源から電源接続部のコンタクトピンまでの電気ラインを中断するように構成され、電流ランスと呼ばれることもある。スイッチアセンブリの各々は、ここではラインの1つに統合された少なくとも1つのスイッチを有し得る。したがって、少なくとも1つの加熱電圧源及びプラズマ電圧源は、相互に独立して少なくとも1つの受容可能なワークキャリアに接続され得る。
【0018】
少なくとも1つの受容可能なワークキャリアを用いてプロセスチャンバの加熱を制御するための制御ユニットは、好ましくは切換ユニットの一部である。制御ユニットは、少なくとも2つのスイッチアセンブリを制御するように適宜構成される。制御ユニットは、例えば、スイッチアセンブリを開閉するために構成可能である。特に、制御ユニットは、切換信号の存在に応じて、スイッチアセンブリの適切な作動によって加熱電圧源をワークキャリアから切り離すとともにプラズマ電圧源をワークキャリアに接続するように構成され得る。切換信号は、例えば、ユーザによって生成されてユーザインターフェースを介して供給された切換信号であり得る。代替的又は追加的に、切換信号は、例えば、ワークキャリア又はその周辺の温度がプロセス温度に達し又はそれを超えた場合に、制御ユニットによって生成されてもよい。この目的のため、制御ユニットは、ワークキャリア温度又は周囲温度を特定し又は少なくとも推定するように構成された温度センサに接続され得る。
【0019】
さらに好適な実施形態では、装置は、プロセスチャンバに受容可能なワークキャリアが接続可能な電源接続部を有する。電源接続部は、好ましくは、プロセスチャンバに受容可能なワークキャリアを電気的に接触するための少なくとも4個のコンタクトピンを備える。したがって、ワークキャリアの少なくとも2つの回路には、相互に独立して、電流及び/又は電圧が供給可能である。
【0020】
コンタクトピンは、例えば、プロセスチャンバの壁から突出していてもよく、ワークキャリアがプロセスチャンバによって受容されると、ワークキャリア上の電気接続のために設けられた接点にコンタクトピンが接触するように配置され得る。特に、コンタクトピンが、ワークキャリア上の対応の、好ましくは円錐状のボアホールに係合するように設計されることが考えられる。したがって、コンタクトピンは、プロセスチャンバへのワークキャリアの挿入に応じて、スライドしてボアホールに入ることになり、コンタクトピンがここでは所与の位置に案内され得る。したがって、装置に対するワークキャリアの特に確実な電気接続が、実現可能である。少なくとも1つのワークキャリアがプロセスチャンバに受容される際のコンタクトピンの最小接触圧力を確保可能とするために、コンタクトピンがプロセスチャンバ内にバネ装填されることも考えられる。
【0021】
さらに好適な実施形態では、コンタクトピンは、プロセスチャンバの後部壁の領域に配置される。後部壁は、ここではワークキャリアをプロセスチャンバに挿入するための少なくとも1つの開口部とは反対側の、プロセスチャンバの壁として理解されるべきである。コンタクトピンは、好ましくは、少なくとも1つのワークキャリアがプロセスチャンバに受容される際にコンタクトピンが少なくとも1つのワークキャリアに自動的に接触するように配置される。コンタクトピンは、例えば、プロセスチャンバへの少なくとも1つのワークキャリアの挿入の終了時にコンタクトピンがワークキャリアの対応する接点に接触するように配置され得る。したがって、装置の動作が容易化され得る。一方、プロセスチャンバに受容可能な少なくとも1つのワークキャリアが装置と能動的に相互接続されることを要する追加の接触ステップが省略可能となる。一方で、ワークキャリアの正しい相互接続は、明示的に確保されなくてもよい。むしろ、これは、専らプロセスチャンバへのワークキャリアの完全な挿入によってもたらされ得る。
【0022】
さらに好適な実施形態では、プロセスチャンバは、特に、相互に隣接して2つのワークキャリアを受容するように構成される。プロセスチャンバは、この目的のために適切に広く、すなわち、単一のワークキャリアの少なくとも2倍広く適宜形成される。プロセスチャンバは、これに従って各ワークキャリアを別個に接続するための2つの電源接続部も有し得る。2つのワークキャリアを受容するためのプロセスチャンバの寸法取りによって、スループットを高めることができる。
【0023】
さらに好適な実施形態では、プロセスチャンバは、少なくとも1つのワークキャリアをプロセスチャンバ内に挿入するために相互に隣接して配置された2つの閉塞可能な開口部を有する。2つの開口部は、好ましくは、例えば、開口部を閉じるためのドア又はフラップがそこで制止し得る制止ウェブによって相互から分離される。したがって、2つのワークキャリアは、相互に独立してプロセスチャンバに挿入され又はプロセスチャンバから除去され得る。
【0024】
さらに好適な実施形態では、プロセスチャンバは、略矩形とされ、略矩形の断面を有する少なくとも1つのワークキャリアを受容するように構成される。したがって、プロセスチャンバの体積は、ワークキャリアのプロファイルに最適に適合される。特に、プロセスチャンバのデッドボリュームが最小化され得る。これにより、プロセスチャンバ内に真空を生成するためのガス排出システムの、特に真空ポンプの最適な設計が可能となり、プロセスチャンバ内に供給されるプロセスガスの消費の低減が可能となる。
【0025】
さらに好適な実施形態では、プロセスチャンバは、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアによって放射される電磁照射、特に電磁スペクトルの赤外域における熱照射をワークキャリアに対して反射するように構成された少なくとも1つの反射ユニットを有する。少なくとも1つの反射ユニットは、例えば、この目的のために、複数の、好ましくは矩形のプレートを有し得る。少なくとも1つの反射ユニットは、より一層効率的な装置の動作を可能とする。特に、プロセスチャンバが所定のプロセス温度に達するまでの期間が少なくとも1つの反射ユニットを用いて短縮され得るので、スループットが増加可能となる。したがって、エネルギーも同時に節約可能となる。
【0026】
複数のプレートが積層体を適宜形成し、それを用いて電磁照射が特に効果的に反射される。プレートは、ここでは、各々が特定の波長を反射するのに特に適した種々の材料から製造され得る。このようなプレートを積層して反射ユニットを構成することによって、電磁照射は広い波長域にわたって効果的に反射可能ともなる。
【0027】
さらに好適な実施形態では、プロセスチャンバは少なくとも3個の反射ユニットを有し、それらは、ワークキャリアがプロセスチャンバに受容された状態で、反射ユニットがワークキャリアの上部に及び2つの対向する長手方向の辺に沿って位置決めされるように、相互に対して略直角に配置される。したがって、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアによって放射された電磁照射の少なくとも大部分が、反射可能となる。したがって、特に、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアの周りの、より大きな角度範囲が、反射ユニットを用いて覆われることになる。反射ユニットの上記構成は、エネルギー効率の増加及び加熱プロセスの加速に加えて、プロセスチャンバの壁温度の確実な制限も可能とする。
【0028】
さらに好適な実施形態では、装置は、プロセスガスをプロセスチャンバに供給するためのガス供給システムを有する。
【0029】
ガス供給システムは、好ましくは、複数の噴射器を備える。噴射器は、ワークキャリアが受容された場合にプロセスガスをワークキャリア上に供給するようにプロセスチャンバの天井部の領域に適宜配置され、それにより、プロセスガスが上部から適宜供給可能となる。噴射器は、この目的のため、例えば、プロセスチャンバの天井部に設置され得る。プロセスチャンバを、例えば、少なくとも1列のガス供給ラインに流体接続する複数の噴射器を設けることによって、プロセスチャンバに供給されるプロセスガスの特に均一な分布が可能となる。したがって、ワークキャリアによって搬送されるワークも、特に均一に処理可能となる。
【0030】
複数の噴射器は、好ましくは、ここでは例えば、噴射器アレイの形態でプロセスチャンバの天井部に沿って分散される。複数の噴射器は、特に、少なくとも1つのワークキャリアがプロセスチャンバ内に挿入可能な挿入方向に沿って配置され得る。特に、挿入方向に前後に配置された噴射器の列が、プロセスチャンバに受容可能な各ワークキャリアに対して設けられ得る。2つの異なるプロセスガスを導入可能とするために、前後に配置された平行な2列のそのような噴射器も、場合によっては考えられる。各列の噴射器は、いずれもここでは2列のプロセスガス供給ラインの一方に適宜流体接続され、及び/又は2つの異なるプロセスガスの均一分散を可能とするためにそれぞれの他の系列の噴射器に対として隣接配置される。
【0031】
噴射器は、好ましくは、プロセスガスの指向的噴射のためにノズル状に設計される。プロセスチャンバに排出する排出口の開口部の領域では、噴射器の各々は、例えば、プロセスガスがジェットの形態で、すなわち、わずかな拡散のみを有して実質的に直線的にプロセスチャンバ内に吹付け可能となるような形状とされ得る。したがって、プロセスガスは、特に、ワークキャリアによって搬送されるワークの表面にプロセスガスの少なくとも1つの成分が堆積される領域、例えば少なくとも1つの受容されたワークキャリアの電極間に供給され得る。一方、供給されたプロセスガスは、結果として、特に効率的に使用可能であり、それに従ってプロセスガスの消費が低減可能となる。
【0032】
さらに好適な実施形態では、ノズル状に設計された噴射器は、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアの平行に配置された複数の電極間にプロセスガスが吹付け可能となるように配置される。これは、電極間のプラズマの発生を促進可能とし、又は少量の供給ガスを用いて既にプラズマの発生を可能としている。したがって、供給ガスは、前もって(不要に)プロセスチャンバ内に分散されることなく、特にワークキャリアの電極間を通過し、少なくとも1つの受容可能なワークキャリアの下部で引き出され得る。
【0033】
さらに好適な実施形態では、装置は、ガス排出システムを有する。
【0034】
ガス排出システムは、好ましくは、ワークキャリアが受容されると、ワークキャリアの下部でガスを引き出すようにプロセスチャンバの底部の領域に配置された複数のガス排出口を備える。ガス排出口は、例えば、プロセスチャンバの底部の開口部として形成され得る。複数のガス排出口は、好ましくは、例えばガス排出口アレイの形態でプロセスチャンバの底部に沿って分散される。複数のガス排出口は、特に挿入方向に沿って配置され得る。1つのガス排出口は、好ましくは、ここでは各噴射器に対して、特に平行な2列の噴射器による各噴射器対に対して設けられる。したがって、プロセスガスは、プロセスチャンバから均質に引き出され得る。これは、望ましくない濃度差が回避可能となるので、特に複数の噴射器を介した均質なガス供給の場合に有利である。
【0035】
プラズマ強化化学気相堆積のための本発明の第2の態様に係るシステムは、プラズマ強化化学気相堆積のための本発明の第1の態様に係る装置と、ワークキャリアであってそれによって装置のプロセスチャンバが加熱可能となるワークキャリアと、を有する。ワークキャリアは、好ましくは、装置のプロセスチャンバに挿入可能となるように、特にプロセスチャンバに受容可能となるように設計される。ワークキャリアは、加熱ユニットとして装置によって動作されるように適宜設計される。この目的のため、加熱ユニットは、例えば、ワークキャリアの電極によって形成される複数の加熱回路を有し得る。電極は、好ましくは、ここでは、低周波AC電圧が印加され得る加熱抵抗として用いられる。特に好適な態様では、ワークキャリアは、ここではプラズマユニットとして装置によって動作されるようにも設計され、それを用いてプラズマがプロセスチャンバ内で発生可能となる。この目的のため、例えば、加熱回路の少なくとも2つは、相互に隔離されて相互に隣接する電極を有していてもよく、それにより、高周波AC電圧が隣接電極間に印加可能となる。
【0036】
プラズマ強化化学気相堆積のための本発明の第3の態様に係る方法では、プロセスチャンバは、プロセスチャンバに受容可能な少なくとも1つのワーク又はワークキャリアを用いて本発明によって加熱される。言い換えると、プロセスチャンバは、ワーク又はワークキャリアによって能動的に加熱され得る。
【0037】
低周波交流の形態の加熱電流がワーク又はワークキャリアに適宜通電され、その点において例えば、対応するAC電圧がワーク又はワークキャリアに印加される。例えば、AC電圧は、1kHz未満、例えば50Hzの周波数で電極アセンブリに、特に電気的に直列接続された電極アセンブリの複数の電極に印加され得る。電極は、ここでは加熱抵抗として適宜用いられる。一方、ワークが加熱抵抗として用いられることも考えられる。本発明に係る方法により、プロセスチャンバの領域内に配置された従来の加熱システムは、プロセスチャンバを加熱するために使用される必要はない。例えば、別個の加熱ユニットが省略され、結果として、より小型のプロセスチャンバを有する装置が使用可能となる。これは、気相堆積のために与えられるプロセス温度に達するのに要する期間の短縮も可能とする。同時に、方法の複雑さが、本発明に係る方法を用いて減少し得る。個々の用途の場合において、より高い堆積速度も可能となり得る。
【0038】
プロセスチャンバの加熱前に、ワークキャリア又はワークは、例えば、プロセスチャンバ内に配置されたローラを介してプロセスチャンバ内に挿入されてもよい。ワークキャリアは、装置の切換ユニットに、特に自動的に、好ましくは電気的に相互接続される。例えば、ワークキャリアは、ワークキャリア上の接点がプロセスチャンバの後部壁の領域に配置された装置の電源接続部のコンタクトピンに接触するまで、プロセスチャンバ内に挿入され得る。
【0039】
ワーク又はワークキャリアは、プラズマユニットとして加熱後に適宜動作される。この目的のため、1kHz以上、例えば40kHzの周波数の高周波AC電圧が、ワーク又はワークキャリア、特に電極に印加され得る。したがって、ワーク又はワークキャリアは、特に効率的に使用され得る。
【0040】
以下に、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。適切な場合、ここでは、同一に作用する要素には同一の符号が与えられる。本発明は、図面に示す例示実施形態に、機能的特徴に関しても、限定されない。前述の説明及び図面の以下の説明は、複合的なものとして組み合わせられることもある従属請求項に反映される多数の特徴を含む。上記及び図面の以下の説明に開示した他の全ての特徴など、これらの特徴は、当業者によって個々にも検討され、かつ合理的な更なる組合せを構成するように組合せられるものである。特に、上記全ての特徴の各々は、個々に、並びに本発明の第1の態様に係る装置、本発明の第2の態様に係るシステム、及び本発明の第3の態様に係る方法との任意の適切な組合せにおいて組合せ可能である。
【0041】
図面では、それらは少なくとも部分的に模式的である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、プラズマ強化気相堆積のための装置の例を側面図で示す。
【
図2】
図2は、プラズマ強化気相堆積のためのシステムの例を示す。
【
図3】
図3は、プラズマ強化気相堆積のためのシステムの例を示す。
【
図4】
図4は、プラズマ強化気相堆積のための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、プラズマ強化気相堆積のための装置1の例を側面図で示す。装置1は、少なくとも1つのワークキャリアを閉塞可能な開口部17を介して受容するためのプロセスチャンバ2、少なくとも1つのプロセスガスをプロセスチャンバ2に供給するためのガス供給システム3、及びプロセスチャンバ2内に真空を生成するためのガス排出システム4を有する。装置1は、ここでは、プロセスチャンバ2に受容される少なくとも1つのワークキャリアを用いてプロセスチャンバ2を加熱するように構成される。
【0044】
この目的のため、装置1は、ワークキャリアを装置1に電気的に接続するための電源接続部5を備える。電源接続部5は、好ましくは、ここではプロセスチャンバ2の内部に、特にプロセスチャンバ2の後部壁6の領域に配置される。電源接続部5は、好ましくは、複数のコンタクトピン7を有し、これらを電源ランスということもある。コンタクトピン7は、好ましくは、プロセスチャンバ2内に挿入されるワークキャリアが後部壁6のコンタクトピン7と接触するように配置される。
【0045】
電源接続部5は、好ましくは装置1の切換ユニット(
図3参照)の一部であり、切換ユニットは、プロセスチャンバ2の加熱のためのプロセスチャンバ2に受容可能な少なくとも1つのワークキャリアを、低周波交流電流を通電するための少なくとも1つの加熱回路に、電源接続部5を介して統合するように構成される。さらに、切換ユニットは、受容可能なワークキャリアを、プロセスチャンバ2内にプラズマを発生させるために高周波交流電流を通電するためのプラズマ回路に、電源接続部5を介して統合するようにも構成され得る。
【0046】
ローラ8は、好ましくは、少なくとも1つのワークキャリアをプロセスチャンバ2内に挿入するためにプロセスチャンバ2内に配置される。ローラ8は、例えば、ワークキャリアの走行レールが案内される凹状走行面(
図2参照)を有し得る。ローラ8は、ここでは、少なくとも1つのワークキャリアがプロセスチャンバ2内に挿入可能な挿入方向Eに沿って配置される。ローラ8はまた、プロセスチャンバ2への少なくとも1つのワークキャリアの容易な挿入に加えて、プロセスチャンバ2内でのワークキャリアの正確なアライメントを可能とする。したがって、コンタクトピン7は、プロセスチャンバ2に受容可能なワークキャリアの、電源接続部5に面する端部の所定の接点に確実に接触することが保証され得る。明瞭化の理由のため、ローラ8の1つのみに符号が付されている。
【0047】
少なくとも1つのワークキャリアがローラ8によってプロセスチャンバ2内に挿入され、プロセスチャンバ2の開口部17が、例えば、ドア又はフラップ(
図2参照)を用いて封止された後に、プロセスチャンバ2内にあるガスはガス排出システム4によって引出し可能となる。ガス排出システム4は、この目的のために少なくとも1つの真空ポンプ9を適宜有し、これは、例えば、ガス排気ライン10を介してプロセスチャンバ2に接続される。ガス排出システム4は、好ましくは複数のガス排出口11をさらに有し、これらはプロセスチャンバ2の底部12から始まり、ガス排気ライン10に出る。複数のガス排出口11が多数であることにより、プロセスチャンバ2内にあるガスは均一に引き出され得る。均一な引出しは、ガス排出口11がプロセスチャンバ2の底部12にわたって、例えば
図1に示すように、挿入方向Eに平行に連続して分散配置されることで、さらに一層向上可能となる。明瞭化の理由のため、ガス排出口11の1つのみに符号が付されている。
【0048】
プロセスチャンバ2に受容可能な少なくとも1つのワークキャリアを用いてプロセスチャンバが気相堆積のためのプロセス温度まで加熱されると、少なくとも1つのガスがガス供給システム3を用いてプロセスチャンバ2内に導入され得る。ガス供給システム3は、この目的のため、図示する例では、2本のガス供給ライン13を有し、これらの各々は、プロセスガス供給源、例えば、プロセスガスタンク又はプロセスガス供給源ラインに接続可能である。ガス供給システム3は、好ましくは、複数の噴射器14をさらに有し、それらは、ガス供給ライン13によって案内されたプロセスガスをプロセスチャンバ2内に吹き込むことができる。プロセスチャンバ2の内部に、特にプロセスチャンバ2の天井部15の領域に適宜配置された噴射器14は、ここでは、例えば、噴射器供給ライン16を介してガス供給ライン13に接続可能である。明瞭化の理由のため、噴射器14の1つのみ及び噴射器供給ライン16の1つのみに符号が付されている。
【0049】
複数の噴射器14は、好ましくは、ノズル状に設計され、2本のガス供給ライン13によって案内されるプロセスガスがプロセスチャンバ2内に指向的な態様で、特にプロセスチャンバ2によって受容されたワークキャリアの方向に吹付け可能となるように配置される。噴射器14は、特に、挿入方向Eにガス排出口11と同様に配列され得る。1本のガス供給ライン13及び結果として1つのプロセスガスに割り当てられた全ての噴射器14は、好ましくは、この場合のように列を構成する。
【0050】
ここに図示する例に示すように、プロセスチャンバ2の天井部15の噴射器14及びプロセスチャンバ2の底部12におけるガス排出口11の開口部が相互に対向する場合、これはプロセスチャンバ2内の導入されたプロセスガスの均質な濃度の維持を大幅に促進し得る。したがって、結果として得られる均質な処理条件は、同時に処理されるワークが均一な特性を有することを確実にし得る。
【0051】
プロセスチャンバの加熱に応じて生成される熱を最適に使用することを可能とするために、装置1は、好ましくは、電磁照射、特に電磁スペクトルの赤外域からの熱照射を反射するための少なくとも1つの反射ユニット20を有する。少なくとも1つの反射ユニット20は、好ましくは、積層プレートによって構成される。積層体の複数のプレートは、ここでは、例えば、広い波長域にわたって熱照射を効率的に反射可能とするために、異なる波長を有する照射を反射するための異なる材料から製造され得る。
【0052】
図示する例では、1つの反射ユニット20はプロセスチャンバ2の天井部15に、特に天井部15に平行に配置され、それにより、プロセスチャンバ2に受容されるワークキャリアから放射された天井部15の方向への電磁照射がワークキャリアに対して反射される。したがって、プロセスチャンバ2は、より速く加熱し得る。
【0053】
プロセスチャンバ2へのプロセスガスの供給を阻害しないようにするため、反射ユニット20は、好ましくは、噴射器14が貫通する通路の形態のボアホールを有する。ここに図示する例とは対照的に、噴射器14は反射ユニット20と面一で終端することもここでは考えられる。
【0054】
図2は、プラズマ強化気相堆積のためのシステム50を示す。システム50は、少なくとも1つのワークキャリア30が受容可能なプロセスチャンバ2を有するプラズマ強化気相堆積のための装置1、及び少なくとも1つのワークキャリア30を有する。装置1は、
図1では正面図で示され、少なくとも1つの受容されたワークキャリア30を用いてプロセスチャンバ2を加熱するように構成される。
【0055】
ここに図示する装置1は、
図1に示す装置1と同様に設計される。ただし、ガス排出システムの図示は、明瞭化の理由のために省略されている。他の構成要素又はアセンブリに隠れる構成要素又はアセンブリは、この場合では破線で示される。
【0056】
本例では、プロセスチャンバ2は、相互に隣接する2つのワークキャリア30、すなわち、挿入方向(
図1参照)に横断して配列された2つのワークキャリア30を受容するように構成される。プロセスチャンバ2は相互に隣接して配置された2つの開口部17を適宜有し、これらは、ワークキャリア30の挿入のためにドア18を用いて閉塞可能である。図示する例では、
図2において左側ドア18のみが図示され、したがって開口部17の一方を隠している。
図2における右側ドア18は、透明なものとして図示されている。
【0057】
2つの開口部17は、好ましくは、ドア18のための制止ウェブ19によって相互に離間される。プロセスチャンバ2は、制止ウェブ19の背後に延在するが、両開口部17の背後に適宜延在する。すなわち、ワークキャリア30がプロセスチャンバ2によって受容される2つの領域間にガス分離は存在しない。
【0058】
装置1には、好ましくは、ワークキャリア30の挿入を容易化するために、プロセスチャンバ2内に配置されたローラ8が設けられる。ワークキャリア30は、好ましくは、ローラ8の凹状走行面によって案内可能な対応の走行レール33をここでは有する。あるいは、一方で、プロセスチャンバ2内のワークキャリア30を案内するための他のガイドシステムも考えられる。例えば、ワークキャリア30には、プロセスチャンバ2内の走行レール上を転動可能なローラが設けられてもよい。他の変形例では、ローラを有する変形例に関連して、設置空間を節約するように摺動要素が設けられてもよい。
【0059】
図2においても非常に明確であるように、プロセスチャンバ2は、好ましくは矩形とされる。したがって、矩形のワークキャリア30が効率的に受容可能となり、すなわち、プロセスチャンバ2内のデッドボリュームともいう未使用空間が回避可能となり、又は少なくとも減少可能となる。これも同様に、プロセスチャンバ2における真空の生成を促進し、プロセスガスの消費を減少させることができる。
【0060】
ガス供給システム3の2本のガス供給ライン13は、図示する例におけるプロセスチャンバ2の上部に延在する。噴射器供給ライン16は、2つの対向する側に、好ましくは対として、各ガス供給ライン13から適宜始まる。これにより、プロセスチャンバ2によって受容される2つのワークキャリア30の各々に対する特に均一なプロセスガスの供給が可能となる。噴射器供給ライン16に接続された噴射器14は、好ましくは、いずれも、受容されたワークキャリア30の一方に対して異なるプロセスガスを吹き込むための2つの噴射器14が相互に隣接するように、プロセスチャンバ2の天井部15の領域にここでは配置される。結果として、例えば、トリメチルアミン(TMA)が少なくとも1つの噴射器14によって供給され、モノシラン(SiH4)、アンモニア(NH3)、亜酸化窒素(N2O)又はメタン(CH4)が少なくとも1つの他の噴射器14によって供給され得る。
【0061】
あるいは、一方で、同時に他のプロセスガスを供給することを可能とするために、他の噴射器への対応する噴射器供給ラインを有する3本以上のガス供給ライン13も考えられる。このような他のプロセスガスとして、モノホスファン(PH3)、ジボラン(B2H6)及び酸素(O2)からなる群からの少なくとも1つの化合物が有利に供給され得る。
【0062】
プロセスチャンバ2に配置された4個の反射ユニット20も、
図2に示される。その反射ユニット20のうちの2個が、受容されたワークキャリア30に対して、プロセスチャンバ2の天井部15の領域に、特にワークキャリア30の上部に配置される。2つの他の反射ユニット20は、受容されたワークキャリア30に対して、プロセスチャンバ2の側壁21の領域に、特にいずれもワークキャリア30の側方面に沿って配置される。したがって、プロセスチャンバ2の加熱に応じて、ワークキャリア30によって放射された電磁照射が、ワークキャリア30に対して反射可能となる。
【0063】
天井部15の領域の2つの反射ユニット20の代わりに、プロセスチャンバ2の実質的に幅全体にわたって延在する1つの反射ユニット20のみが設けられる場合にも、同じ効果が達成され得る。したがって、少なくとも3個の反射ユニット20を有する実施形態も、既に有利である。
【0064】
図3は、切換ユニット22の例を示す。切換ユニット22は、好ましくは、プラズマ強化気相堆積のための装置のプロセスチャンバに受容可能なワークキャリア30を、プロセスチャンバを加熱するための加熱ユニットとして、第1の動作モードで動作させ、ワークキャリア30を、プロセスチャンバ内に供給された少なくとも1つのプロセスガスからプラズマを発生させるためのプラズマユニットとして、第2の動作モードで動作させるように構成される。
【0065】
切換ユニット22は、この目的のため、複数のスイッチアセンブリ23a、23b、高周波AC電圧を供給してプラズマを発生可能とするためのプラズマ電圧源24、及び低周波AC電圧を供給してプロセスチャンバを加熱可能とするための少なくとも1つの加熱電圧源25を適宜備える。
【0066】
切換ユニット22は、好ましくは、プロセスチャンバによるワークキャリア30の受容に応じてワークキャリア30が電気的に接触するように設計される。したがって、切換ユニット22は、プラズマ電圧源24又は少なくとも1つの加熱電圧源25とワークキャリア30との間の電気接続を選択的に確立することができる。切換ユニット22は、この目的のため、例えば、プロセスチャンバ内に配置された複数のコンタクトピン7を有する電源接続部を有し得る。コンタクトピン7を用いて、例えば、ワークキャリア30の対応の接点31が接触可能となる。明瞭化の理由のため、接点31の1つのみ及びコンタクトピン7の1つのみに符号が付されている。
【0067】
切換ユニット22は、好ましくは、まず、例えば、第1のスイッチアセンブリ23aを閉成することによって少なくとも1つの加熱電圧源25をプロセスチャンバに受容可能なワークキャリア30に電気的に接続するように構成される。切換ユニット22は、特に、この電気接続を確立することによってワークキャリア30を少なくとも1つの加熱回路に統合するように構成され得る。
【0068】
切換ユニット22は、例えば、第1のスイッチアセンブリ23aの閉成に応じて(i)低周波交流電流が、プロセスチャンバに受容可能なワークキャリア30の電極アセンブリの第1群の電極32aを通じて少なくとも1つの加熱電圧源25の2つのポール25a、25b間に流れ、(ii)低周波交流電流が、電極アセンブリの第2群の電極32bを通じて少なくとも1つの加熱電圧源25の2つの他のポール25c、25d間に流れるように、設計され得る。
図3から分かるように、1つの群の電極32a、32bの各々は、電気的に直列接続される。この場合、4個の加熱回路が、例に示す相互接続を用いて、2つのポール54a及び54cが設けられることによって実装される。
【0069】
第1のスイッチアセンブリ23aが閉成された場合に電極32a、32bが加熱抵抗として作用し得るので、したがってワークキャリア30は第1の動作モードで加熱ユニットとして動作可能となる。
【0070】
切換ユニット22は、好ましくはさらに、例えば第1のスイッチアセンブリ23aを開放するとともに第2のスイッチアセンブリ23bを閉成することによって、プロセスチャンバに受容可能なワークキャリア30から加熱電圧源25を切り離し、代わりにワークキャリア30にプラズマ電圧源24を電気的に接続するように構成される。切換ユニット22は、特に、この電気接続を確立することによってワークキャリア30をプラズマ回路に統合するように構成され得る。
【0071】
切換ユニット22は、例えば、第2のスイッチアセンブリ23bの閉成に応じて、高周波AC電圧が第1群の電極32aと第2群の電極32bとの間に印加されるように設計され得る。この目的のため、切換ユニット22は、特に、第2のスイッチアセンブリ23bの閉成に応じて、プラズマ電圧源24の第1のポール24aが第1群の電極32aに接続可能となり、第2のポール24bが第2群の電極32bに接続可能となるように設計され得る。
【0072】
第1群の電極32a及び第2群の電極32bは、好ましくは
図3に示すように交互に配置され、第2のスイッチアセンブリ23bが閉成されると、結果として高周波電界が生成されてプラズマを発生させることができるので、したがってワークキャリア30は第2の動作モードでプラズマユニットとして動作可能となる。
【0073】
スイッチアセンブリ23a、23bの対応する制御は、制御ユニットによって実行可能である。ただし、制御ユニットは、
図3では明瞭化の理由のために図示されていない。
【0074】
図4は、プラズマ強化化学気相堆積のための方法100の例を示す。
【0075】
好ましくは、方法ステップS1において、少なくとも1つのワークキャリアが、プラズマ強化化学気相堆積のための装置のプロセスチャンバ内に挿入される。この目的のため、ワークキャリアは、例えば、プロセスチャンバの開口部を通して、ガイドシステム、例えば、プロセスチャンバ内に配置されたローラによって挿入され得る。ワークキャリアは、同時に、装置の切換ユニットに好適な態様で電気的に相互接続される。例えば、ワークキャリアは、ワークキャリア上の接点がプロセスチャンバの後部壁の領域に配置された装置の電源接続部のコンタクトピンに接触するまで、プロセスチャンバ内に挿入され得る。
【0076】
少なくとも1つのワークキャリアが更なる方法ステップS2においてプロセスチャンバによって受容され、すなわち、完全に挿入されると、好ましくは真空がプロセスチャンバ内に生成される。プロセスチャンバ内にあるガスは、ここでは、ガス排出システムを用いて、特にプロセスチャンバ内の複数のガス排出口を介して引き出され得る。複数のガス排出口を設けることによって、特にガス排出口をプロセスチャンバの底部にわたって分散させることによって、プロセスチャンバの特に効率的な真空排気が可能となる。
【0077】
更なる方法ステップS3において、プロセスチャンバは、少なくとも1つの受容されたワークキャリアを用いて加熱される。この目的のため、ワークキャリアは、低周波交流電流を通電するための少なくとも1つの加熱回路に切換ユニットによって統合され得る。ワークキャリアは、好ましくは、ここでは少なくとも1つの加熱電圧源に接続されて低周波AC電圧を供給する。したがって、ワークキャリアが少なくとも部分的に加熱するように、低周波交流電流が、ワークキャリアの少なくとも一部を介して、例えば、直列接続された複数の電極を介して通電され得る。
【0078】
プロセスチャンバ内の温度、特にワークキャリアの温度が所定のプロセス温度に達し又はそれを超えた場合、更なる方法ステップS4において、少なくとも1つのプロセスガス、例えば、SiH4、トリメチルシランなどのシラン及び/又は亜酸化窒素ガスN2Oがプロセスチャンバ内に供給され得る。少なくとも1つのプロセスガスは、特に、好ましくはプロセスチャンバの天井部の領域に配置される複数の噴射器を介して、プロセスチャンバ内に均質に分散して吹き付けられ得る。
【0079】
更なる方法ステップS5において、少なくとも1つの加熱電圧源は、好ましくは、少なくとも1つの受容されたワークキャリアから切り離される。代わりに、ワークキャリアは、高周波交流電流を通電するためのプラズマ回路に切換ユニットによって統合され得る。ワークキャリアは、好ましくは、この場合、プラズマ電圧源に接続されて高周波AC電圧を供給する。したがって、2つの構成要素又は構成要素群、特に2つの異なる電極群に2つの異なる電位が印加可能となり、それにより、高周波交流電界が電極間に形成されて少なくとも1つの供給プロセスガスからプラズマが発生する。
【0080】
方法ステップS2~S5の上述の順序は、ここでは要求されない。むしろ、
図4に示すように、方法ステップS2及びS3は、少なくとも一時的に同時に実行される。方法ステップS4及びS5も、同時に実行されてもよい。方法ステップS2は、好ましくは、ワークキャリアによって搬送されるワーク上に所望の堆積が達成されるまで実行され、すなわち、生成された真空は維持される。
【符号の説明】
【0081】
1 装置
2 プロセスチャンバ
3 ガス供給システム
4 ガス排出システム
5 電源接続部
6 後部壁
7 コンタクトピン
8 ローラ
9 真空ポンプ
10 ガス排気ライン
11 ガス排出口
12 底部
13 ガス供給ライン
14 噴射器
15 天井部
16 噴射器供給ライン
17 開口部
18 ドア
19 制止ウェブ
20 反射ユニット
21 側壁
22 切換ユニット
23a、23b スイッチアセンブリ
24 プラズマ電圧源
24a、24b ポール
25 加熱電圧源
25a~d ポール
30 ワークキャリア
31 接点
32a、32b 電極
50 システム
100 方法
S1~S5 方法ステップ
【国際調査報告】