(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】IL1RAPに結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20230926BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230926BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230926BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230926BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230926BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20230926BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230926BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230926BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230926BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230926BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230926BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230926BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230926BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230926BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230926BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230926BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230926BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230926BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61P17/00
A61P1/18
A61P27/02
A61P11/00
A61P37/08
A61P21/02
A61P11/02
A61P19/02
A61P35/00
A61P27/06
A61P37/06
A61P9/04
A61P13/12
A61P25/00
A61P19/10
A61P21/00
A61P25/04
A61P25/16
A61P17/06
A61P31/04
A61P1/02
A61P11/06
A61P37/02
A61P25/20
A61P3/10
A61P9/10
C12N15/13
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516693
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2021075235
(87)【国際公開番号】W WO2022053715
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523089863
【氏名又は名称】イシュノス サイエンシズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー マコワン
(72)【発明者】
【氏名】アメリー クロゼ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ロヨー
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー モネイ
(72)【発明者】
【氏名】ラミン ムボウ
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アニエス ドゥセイ
(72)【発明者】
【氏名】バレンティーナ ラバンカ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR77
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4B063QS35
4B065AA90X
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4C085AA14
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4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、特異的に、ヒトIL1RAPに結合し、カニクイザル及び/又はマウスIL1RAPにも結合し得る抗体に関する。本発明は、ヒト疾患を診断及び治療するためのかかる抗体の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重鎖CDR領域(CDR-H1)、第2の重鎖CDR領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖CDR領域(CDR-H3)を含む、抗IL1 RAP抗体であって、前記領域は、
(a)CDR-H1が、アミノ酸配列GFXXXXXXXX(配列番号265)を含み、3位のXが、アミノ酸I、T、Pのうちのいずれか1つであり得、4位のXが、アミノ酸L、F、Yのうちのいずれか1つであり得、5位のXが、アミノ酸A、S、P、E、Dのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、G、T、H、Q、E、N、Dのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸F、A、S、Yのうちのいずれか1つであり得、8位のXが、アミノ酸A、G、S、Pのうちのいずれか1つであり得、9位のXが、アミノ酸L、M、Aのうちのいずれか1つであり得、10位のXが、アミノ酸G、T、S、Nのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H1、
(b)CDR-H2が、アミノ酸配列AISYDGEGTL(配列番号266)を含む、CDR-H2、
(c)CDR-H3が、アミノ酸配列ARFXYXXAFDY(配列番号267)を含み、4位のXが、アミノ酸R、Hのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸Y、Rのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸T、Sのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H3、
又は
(d)CDR-H1が、アミノ酸配列GXXXXXXAIX(配列番号262)を含み、2位のXが、アミノ酸V、G、S、P、Eのうちのいずれか1つであり得、3位のXが、I、L、A、G、T、S、P、H、K、Rのうちのいずれか1つであり得、4位のXが、L、F、A、S、W、H、N、Rのうちのいずれか1つであり得、5位のXが、G、T、S、Y、P、H、E、N、Rのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、A、S、P、Q、N、Dのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸Y、Hのうちのいずれか1つであり得、10位のXが、アミノ酸H、Qのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H1、
(e)CDR-H2が、アミノ酸配列YIIPXXGXXD(配列番号263)を含み、5位のXが、アミノ酸T、Sのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、Lのうちのいずれか1つであり得、8位のXが、アミノ酸G、Qのうちのいずれか1つであり得、9位のXが、アミノ酸F、Yのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H2、
(f)CDR-H3が、アミノ酸配列ARGQTLYXXGRQFDI(配列番号264)を含み、8位のXが、アミノ酸A、E、Dのうちのいずれか1つであり得、および9位のXが、アミノ酸A、T、Sのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H3、からなる群から選択され、前記抗IL1 RAP抗体が、配列番号268を含む軽鎖可変領域を含む、抗IL1 RAP抗体。
【請求項2】
(a)CDR-H1が、アミノ酸配列配列番号128を含み、
(b)CDR-H2が、アミノ酸配列配列番号188を含み、
(c)CDR-H3が、アミノ酸配列配列番号248を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、1×10
8M以下、1×10
9M以下、1×10
10M以下、又は1×10
11M以下の結合親和性でヒトIL1 RAPに結合し、任意選択で、前記結合親和性が、配列番号1又は6のヒトIL1RAPポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、IL-1刺激シグナル、IL-33刺激シグナル、及び/又はIL-36刺激シグナルを、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させ、前記シグナルの減少が、細胞ベースのブロッキングアッセイによって測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、配列番号2のカニクイザルIL1 RAPポリペプチドと交差反応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号261のマウスIL1 RAPポリペプチドと交差反応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、クラスIgGの全長抗体であり、特に、前記クラスIgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3及び、IgG4から選択されるアイソタイプを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、多重特異性抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープに特異的に結合する、抗IL1 RAP抗体。
【請求項11】
抗IL1 RAPであって、前記抗体が、IL1 RAPのドメイン2内の1つ以上のアミノ酸残基に特異的に結合する、抗IL1 RAP。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
IL1RAP媒介性疾患を治療するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
ざ瘡、膵臓炎、加齢黄斑変性症(AMD)、気道過敏性、気道炎症、アレルギー性結膜炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アレルギー性鼻炎、アレルギー、アルツハイマー病/認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、好中球性皮膚症、化膿性汗腺炎、魚鱗癬、アナフィラキシー、関節炎、喘息/アトピー/鼻ポリープ、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、自己免疫/自己炎症性血管炎(巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、川崎病を含むが、これらに限定されない)、ベーチェット病(神経ベーチェット病を含む)、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、悪液質/拒食症、軟骨炎症、脳虚血、慢性疲労症候群、慢性閉塞性肺疾患、クロストリジウム関連疾患、結腸がん、うっ血性心不全、結膜炎、冠動脈炎症、冠動脈再狭窄、糖尿病、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、ドライアイ疾患、子宮内膜症、好酸球性消化管疾患、好酸球性食道炎、家族性寒冷自己炎症症候群、家族性地中海熱、線維筋痛症、線維性障害、食物アレルギー、汎発型膿疱性乾癬、緑内障、糸球体腎炎、痛風性関節炎、移植片対宿主病、蠕虫感染症、出血性ショック、汗腺膿瘍、痛覚過敏、高IgD症候群、高尿酸血症、特発性肺線維症(IPF)、がん性疼痛、感染、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含むが、これらに限定されない)、挫傷から生じる炎症状態、角膜移植に関連する炎症性眼疾患、炎症性疼痛、インフルエンザ関連後遺症、腸がん、虚血、若年性関節炎、川崎病、腎臓がん、レーバー先天性黒内障、肝臓がん、肝疾患、肺がん、マクロファージ活性化症候群(MAS)、黄斑変性、マックル・ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、多発性硬化症、筋骨格系疼痛、骨髄性白血病及び他の白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、心筋機能障害、筋疾患、鼻ポリープ、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、神経毒性、好中球性皮膚疾患(掌蹠膿疱症を含む、壊疽性膿皮症、乾癬、スウィート症候群、非感染性結膜炎、非感染性ぶどう膜炎、非小細胞肺がん、整形外科手術、変形性関節症、骨粗鬆症、疼痛、膵臓がん、パーキンソン病、歯周病、末梢動脈疾患、リウマチ性多発筋痛症、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、子癇前症又は子癇、早期陣痛、前立腺がん、原虫性感染症、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、虚血再灌流障害、虚血再灌流障害(RSV)、特に、血管形成術及びステント植え込み術後の再狭窄、網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症(ROP)、関節リウマチ、強皮症、好酸球性筋膜炎、敗血症性ショック、鎌状赤血球貧血症、放射線療法による副作用、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨増殖症及び骨炎)症候群、副鼻腔炎、皮膚がん、睡眠障害、捻挫による炎症、スティル病、胃がん、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎を含む)、顎関節疾患、TNF受容体関連周期性症候群及び他の遺伝性発熱性症候群、移植片拒絶反応、外傷、外傷性眼球損傷、2型糖尿病、並びに白斑を含む群から選択される疾患を治療することにおける使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトIL1RAPに特異的に結合する抗体及び誘導体に関する。本発明は、ヒト疾患を診断及び治療するためのかかる抗体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(Interleukin-1 receptor accessory protein、IL1RAP又はIL1-Rap)は、インターロイキン1応答性遺伝子の活性化をもたらすシグナル伝達事象を開始させるインターロイキン1受容体複合体の成分である。この遺伝子の選択的スプライシングは、C末端が異なる膜結合型アイソフォーム及び可溶性アイソフォームをもたらす。可溶性形態対膜結合形態の比率は、急性期誘導又はストレス中に増加する。
【0003】
サイトカインリガンド及び受容体のインターロイキン-1(interleukin-1、IL-1)ファミリーは、炎症、自己免疫、免疫調節、細胞増殖、及び宿主防御に関連し、炎症性、自己免疫、免疫調節、変性、細胞増殖(例えば、がん)疾患及び障害の病理に寄与し、そのサイトカイン及び受容体は、かかる疾患及び障害の病原性メディエーターとして機能する。例えば、Garlanda et al.,Immunity,39:1003-1018(2013)を参照されたい。
【0004】
サイトカインのIL-1ファミリーには、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-33、インターロイキン36α、インターロイキン-36β及びインターロイキン-36γが含まれる。これらのサイトカインの各々は、特定の細胞の表面上に発現される特異的なIL-1ファミリー細胞膜レセプターに結合し得るリガンドとして機能する。IL-1ファミリーサイトカインのその同族受容体への結合時に、共受容体が動員されて、サイトカイン、その同族膜受容体、及びその共受容体を含む三元複合体が形成される。もたらされた複合体は、細胞内シグナル伝達並びにNF-κB及びAP-1並びに分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼを含む転写因子のセットの活性化を促進し、これは、多数のサイトカイン、ケモカイン、酵素、及び接着分子の産生を含む炎症応答及び免疫応答のカスケードを誘発する。
【0005】
IL1RAPは、インターロイキン-1受容体1、インターロイキン-1受容体様1としても知られるST2、及びインターロイキン-1受容体様2(interleukin-1 receptor-like 2、IL1RL2)を含む、IL-1ファミリーにおけるいくつかの受容体についての共通の細胞膜共受容体として機能する。IL1RAPは、上記のIL-1ファミリーサイトカインの1つ、サイトカインの特異的同族受容体、及びIL1RAP共受容体によって形成される三元シグナル伝達複合体の必要な成分である。したがって、IL1RAPは、IL-1ファミリーサイトカインIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γによって刺激される特定の下流シグナル伝達経路を容易にするために必要とされるので、IL1RAPは、IL-1ファミリーシグナル伝達経路において重要な機能を果たす。
【0006】
国際公開第2012/098407(A1)号は、IL1RAPを発現する固形腫瘍に関連する細胞死の誘導並びに/又は細胞の成長及び/若しくは増殖の阻害における使用のための、IL1RAPについての特異性を有する抗体などの結合部分を含む薬剤に関する。国際公開第2012/098407(A1)号は、ヒトIL1RAPに対するマウスIgG2aモノクローナル抗体「mAb 81.2」を開示しており、これはインビボで投与されると、黒色腫マウスモデルにおいて腫瘍増殖の統計的に有意な遅延をもたらした。
【0007】
国際公開第2015/132602(A1)号は、ヒトIL1RAPに対する特異性を有する抗体及び固形腫瘍の治療のためのそれらの使用に関する。国際公開第2015/132602(A1)号は、200pMのKDでヒトIL1RAPのドメイン2に特異的に結合し、カニクイザルIL1RAPと交差反応し、1つ以上のがん細胞株(CMLなど)においてADCCを誘導することができ、IL-1α、IL-1β、及びIL-33刺激シグナル伝達に対していくらかの阻害効果を有する、特異的マウス由来抗体「CAN04」を開示している。
【0008】
国際公開第2016/020502(A1)号は、それぞれ、1.4nM及び0.9nMのKDでヒトIL1RAPのドメイン3に特異的に結合し、カニクイザルIL1RAPと交差反応し、1つ以上のがん細胞株(CMLなど)においてADCCを誘導することができる2つの特異的マウス由来抗体「CAN01」及び「CAN03」を開示している。CAN03は、IL-1α、IL-1β、及びIL-33刺激シグナル伝達に対していくらかの阻害効果を有することが決定されたが、CAN01は、IL-1α、IL-1β、及びIL-33シグナル伝達に対してかなりの阻害作用を欠くことが見出された。
【0009】
国際公開第2016/207304(A1)号は、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合し、IL-1α、IL-1β、IL-33、及び/又はIL-36βによって刺激されるNFκB活性に対していくらかの阻害効果を有するウサギ由来抗体に関する。
【0010】
国際公開第2017/191325(A9)号は、ヒトIL-1R3に特異的に結合し、IL-1α、IL-1β、IL-33、及び/又はIL-36βによって刺激されるNFkB活性に対していくらかの阻害効果を有するヒト化IgG1抗体に関する。
【0011】
国際公開第2020/037154(A1)号は、ヒトIL-1Rapに特異的に結合し、限定されたインビトロモデルにおいていくらかの阻害効果を有するヒト化抗体に関する。
【0012】
サイトカインリガンド及び受容体のIL-1ファミリーを介した不適切なシグナル伝達に関連する炎症性、自己免疫、免疫調節、変性、及び細胞増殖性の疾患又は障害を治療、改善、又は予防する療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、高い親和性でヒトIL1RAPに特異的に結合する抗体を提供する。抗体は、以下のアゴニスト:IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36のうちの1つ以上の結合によって刺激されるシグナル伝達を含む、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36γシグナル伝達経路を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断することができる。本開示は、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達の阻害に応答する疾患及び状態を治療する方法も提供する。
【0014】
自己免疫疾患は、しばしば複数の原因を有し、いくつかのシグナル伝達経路の不適切な相互作用から生じ得る。したがって、本発明は、3つ全てのIL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路を阻害する抗IL1RAP抗体に関する。
【0015】
特許請求される本発明による抗体は、例えば線維芽細胞及びPBMCにおいて、IL1RAPによって媒介される3つ全てのサイトカインシグナル伝達経路の遮断を引き起こす。
【0016】
3つ全ての経路を遮断することによって、これは、IL1R、IL33R及びIL36Rを含む炎症性サイトカインのIL1ファミリーの複数の疾患ドライバーを排除し、ISB 880を、単一サイトカイン遮断療法、又は3つ全てのシグナル伝達経路にアンタゴナイズしない初期の抗IL1RAP抗体と区別する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、第1の重鎖CDR領域(CDR-H1)、第2の重鎖CDR領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖CDR領域(CDR-H3)を含む抗IL1RAP抗体を含む抗IL1RAP抗体であって、領域は、
(a)CDR-H1が、アミノ酸配列GFXXXXXXXX(配列番号265)を含み、3位のXが、アミノ酸I、T、Pのうちのいずれか1つであり得、4位のXが、アミノ酸L、F、Yのうちのいずれか1つであり得、5位のXが、アミノ酸A、S、P、E、Dのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、G、T、H、Q、E、N、Dのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸F、A、S、Yのうちのいずれか1つであり得、8位のXが、アミノ酸A、G、S、Pのうちのいずれか1つであり得、9位のXが、アミノ酸L、M、Aのうちのいずれか1つであり得、10位のXが、アミノ酸G、T、S、Nのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H1、
(b)CDR-H2が、アミノ酸配列AISYDGEGTL(配列番号266)を含む、CDR-H2、
(c)CDR-H3が、アミノ酸配列ARFXYXXAFDY(配列番号267)を含み、4位のXが、アミノ酸R、Hのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸Y、Rのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸T、Sのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H3、
又は
(d)CDR-H1が、アミノ酸配列GXXXXXXAIX(配列番号262)を含み、2位のXが、アミノ酸V、G、S、P、Eのうちのいずれか1つであり得、3位のXが、I、L、A、G、T、S、P、H、K、Rのうちのいずれか1つであり得、4位のXが、L、F、A、S、W、H、N、Rのうちのいずれか1つであり得、5位のXが、G、T、S、Y、P、H、E、N、Rのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、A、S、P、Q、N、Dのうちのいずれか1つであり得、7位のXが、アミノ酸Y、Hのうちのいずれか1つであり得、10位のXが、アミノ酸H、Qのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H1、
(e)CDR-H2が、アミノ酸配列YIIPXXGXXD(配列番号263)を含み、5位のXが、アミノ酸T、Sのうちのいずれか1つであり得、6位のXが、アミノ酸V、Lのうちのいずれか1つであり得、8位のXが、アミノ酸G、Qのうちのいずれか1つであり得、9位のXが、アミノ酸F、Yのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H2、
(f)CDR-H3が、アミノ酸配列ARGQTLYXXGRQFDI(配列番号264)を含み、8位のXが、アミノ酸A、E、Dのうちのいずれか1つであり得る。9位のXが、アミノ酸A、T、Sのうちのいずれか1つであり得る、CDR-H3、からなる群から選択され、
当該抗IL1 RAP抗体が、配列番号268を含む軽鎖可変領域を含む、抗IL1RAP抗体を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)第1の重鎖CDR領域(CDR-H1)、第2の重鎖CDR領域(CDR-L2)、及び第3の重鎖CDR領域(CDR-L3)を含む抗IL1RAP抗体であって、(a)CDR-H1が、配列番号81~140から選択されるアミノ酸配列を含み、(b)CDR-H2が、配列番号141~200から選択されるアミノ酸配列を含み、(c)CDR-H3が、配列番号201~260から選択されるアミノ酸配列を含む、抗IL1RAP抗体を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、配列番号8~51、60~70から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明は、配列番号128、188及び248の重鎖CDRを含む抗IL1RAP抗体に関する。
【0021】
本開示によって提供される抗IL1RAP抗体の様々な実施形態では、抗体は、以下の特性:
(a)抗体が、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でヒトIL1RAPに結合し、任意選択で、結合親和性が、配列番号1又は配列番号6のIL1RAPポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定される、
(b)抗体が、IL-1刺激シグナル、IL-33刺激シグナル、及び/又はIL-36刺激シグナルを、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させ、任意選択で、シグナルの減少が、細胞ベースのブロッキングアッセイによって測定され、任意選択で、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36刺激シグナルが、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γから選択されるアゴニストによって刺激される。
(c)抗体が、その同族受容体に結合するIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γアゴニストのうちの1つ以上によって開始される細胞内シグナルを、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させ、任意選択で、細胞内シグナルの減少が、細胞ベースのブロッキングアッセイによって測定される、
(d)抗体が、初代HaCaTケラチノサイト細胞株由来のIL8の、IL-1α、IL-1β、及び/又はIL-36βにより刺激された放出を阻害する、
(e)抗体が、初代ヒト単核細胞由来のIL8の、IL-1βにより刺激された放出を阻害する、
(f)抗体が、初代ヒト単核細胞由来のIFN-γの、IL-33により刺激された放出を阻害する、
(g)抗体が、IL-1β及びIL-36γによる刺激後のHaCaT馴化培地でのインキュベ-ション時に好中球活性化を阻害する、
(h)抗体が、ヒトIL1RAPのドメイン2内のアミノ酸残基に結合する、
(i)抗体が、配列番号7のカニクイザルIL1RAPポリペプチドと交差反応する、及び/又は
(j)抗体が、配列番号261のマウスIL1RAPポリペプチドと交差反応する、のうちの1つ以上を特徴とする。
【0022】
本開示は、抗IL1RAP抗体であって、(i)抗体が、モノクローナル抗体であり、(ii)抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であり、(iii)抗体が、クラスIgGの全長抗体であり、任意選択で、クラスIgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるアイソタイプを有し、(iv)抗体が、Fc領域バリアント、任意選択で、エフェクター機能を改変するFc領域バリアント(例えば、エフェクター機能の増加又は減少をもたらすバリアント)、減少したCDC活性、ADCC活性、及び/又はADCP活性を示すFc領域変異体、ヒト単球、好中球、及び/又はJurkat細胞に対する減少した細胞傷害活性を示すFc領域バリアント、又は抗体半減期を改変するFc領域バリアントであり、(v)抗体が、任意選択で、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、単一ドメイン抗体(VHH)、及びscFvからなる群から選択される抗体断片であり、(vi)抗体が免疫複合体であり、任意選択で、免疫複合体が、IL1RAP媒介性疾患若しくは状態の治療のための治療剤を含み、(vii)抗体が、多重特異性抗体、任意選択で、二重特異性抗体であり、(viii)抗体が、合成抗体であり、CDRが、免疫グロブリン足場又はフレームワーク以外の足場又はフレームワークに、任意選択で、代替タンパク質足場及び人工ポリマー足場から選択される足場にグラフトされている、抗IL1RAP抗体の実施形態も提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体をコードする核酸を含む宿主細胞も提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体をコードする核酸を含む宿主細胞も提供する。
【0025】
本開示は、抗IL1RAP抗体を産生する方法であって、抗体が産生されるように、抗IL1RAP抗体をコードする核酸(又はベクター)を含む宿主細胞を培養することを含む、方法も提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、IL-1、IL-33、IL-36、及び/又はIL1RAP媒介性疾患若しくは状態の治療のための治療剤を更に含み、任意選択で、治療剤は、化学療法剤である。
【0027】
本開示は、対象におけるIL1RAP媒介性疾患を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体、又は治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体の医薬製剤を投与することを含む、方法も提供する。
【0028】
本開示は、対象におけるIL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達によって媒介される疾患を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体、又は治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体の医薬組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0029】
本開示は、対象におけるIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γ刺激シグナル伝達によって媒介される疾患を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体、又は治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体の医薬組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0030】
本明細書に開示される治療方法の様々な実施形態では、IL1RAP媒介性疾患及び状態、又はIL-1、IL-33、及び/若しくはIL-36シグナル伝達によって媒介される疾患には、炎症性疾患、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、呼吸器疾患、代謝障害、感染症、及びがんが含まれる。いくつかの実施形態では、IL1RAP媒介性疾患及び状態は、ざ瘡、膵臓炎、加齢黄斑変症(age-related macular degeneration、AMD)、気道過敏性、気道炎症、アレルギー性結膜炎、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、アレルギー性鼻炎、アレルギー、アルツハイマー病/認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、好中球性皮膚症、化膿性汗腺炎、魚鱗癬、アナフィラキシー、関節炎、喘息/アトピー/鼻ポリープ、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、自己免疫/自己炎症性血管炎(巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、川崎病を含むが、これらに限定されない)、ベーチェット病(神経ベーチェット病を含む)、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、悪液質/拒食症、軟骨炎症、脳虚血、慢性疲労症候群、慢性閉塞性肺疾患、クロストリジウム関連疾患、結腸がん、うっ血性心不全、結膜炎、冠動脈炎症、冠動脈再狭窄、糖尿病、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、ドライアイ疾患、子宮内膜症、好酸球性消化管疾患、好酸球性食道炎、家族性寒冷自己炎症症候群、家族性地中海熱、線維筋痛症、線維性障害、食物アレルギー、汎発型膿疱性乾癬、緑内障、糸球体腎炎、痛風性関節炎、移植片対宿主病、蠕虫感染症、出血性ショック、汗腺膿瘍、痛覚過敏、高IgD症候群、高尿酸血症、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)、がん性疼痛、感染、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含むが、これらに限定されない)、挫傷から生じる炎症状態、角膜移植に関連する炎症性眼疾患、炎症性疼痛、インフルエンザ関連後遺症、腸がん、虚血、若年性関節炎、川崎病、腎臓がん、レーバー先天性黒内障、肝臓がん、肝疾患、肺がん、マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome、MAS)、黄斑変性、マックル・ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、多発性硬化症、筋骨格系疼痛、骨髄性白血病及び他の白血病、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、心筋機能障害、筋疾患、鼻ポリープ、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、神経毒性、好中球性皮膚疾患(掌蹠膿疱症を含む、壊疽性膿皮症、乾癬、スウィート症候群、非感染性結膜炎、非感染性ぶどう膜炎、非小細胞肺がん、整形外科手術、変形性関節症、骨粗鬆症、疼痛、膵臓がん、パーキンソン病、歯周病、末梢動脈疾患、リウマチ性多発筋痛症、ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy、PCV)、子癇前症又は子癇、早期陣痛、前立腺がん、原虫性感染症、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、虚血再灌流障害、虚血再灌流障害(respiratory syncytial virus、RSV)、特に、血管形成術及びステント植え込み術後の再狭窄、網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity、ROP)、関節リウマチ、強皮症、好酸球性筋膜炎、敗血症性ショック、鎌状赤血球貧血症、放射線療法による副作用、SAPHO(滑膜炎(synovitis)、ざ瘡、膿疱症(pustulosis)、骨増殖症(hyperostosis)、及び骨炎(osteitis))症候群、副鼻腔炎、皮膚がん、睡眠障害、捻挫による炎症、スティル病、胃がん、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、顎関節疾患、TNF受容体関連周期性症候群及び他の遺伝性発熱性症候群、移植片拒絶反応、外傷、外傷性眼球損傷、2型糖尿病、並びに白斑を含む群から選択され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体の抗体、又は治療有効量の本明細書に開示される抗IL1RAP抗体の医薬製剤を投与することを含む、方法も提供する。実施形態では、がんは、乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん、膵臓がんから選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的試料におけるIL1RAPのレベルを検出するための方法であって、試料を本明細書に開示される抗IL1RAP抗体と接触させるステップを含む、方法も提供する。本開示の抗IL1RAP抗体は、IL1RAPの検出及び定量化のために、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイ及び酵素結合免疫吸着アッセイ(EEISA)(sola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158,CRC Press,Inc.を参照されたい)などの任意の公知のアッセイ方法で用いられ得る。抗体は、広範囲のアッセイに適した高い親和性でヒトIL1RAPポリペプチド(配列番号1又は6)に結合する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】表面プラズモン共鳴によって評価された、抗IL-1RAP-C8 Fab及び抗IL-1RAP-C3 FabのヒトIL-1RAPへの結合時のヒトIL-1RAP/IL-1R1/IL-1β共受容体/受容体/サイトカイン複合体形成の遮断。組換えヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質を、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。Fab断片を、HBS-EP+緩衝液中に300nMで注入して、固定化ヒトIL-1RAPの飽和に到達させた後、HBS-EP+緩衝液中に50nMのIL-1R1、100nMのIL-1β及び300nMのFab断片の予混合溶液の第2の注入を行った。抗IL-1RAP-E1 Fabを非ブロッカー対照として使用した。プロットは、共鳴単位(略してRU、Y軸)の数対時間(X軸)として表されるデータを示す。曲線は、Fabクローン名を飽和させることによって標識される。
【
図2A】表面プラズモン共鳴を用いた、ヒト-ニワトリIL-1RAPキメラに対する抗IL-1RAP-C8クローン及び抗IL-1RAP-C3クローンのドメインマッピング。抗IL-1RAP-C8 IgG1 LALA(A)又は抗IL-1RAP-C3 IgG1 LALA(B)を、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。ヒト-ニワトリIL-1RAPキメラを、HBS-EP+緩衝液中50nMの固定化抗IL-1RAP IgG1 LALA上に注入し、続いてHBS-EP+緩衝液中で解離させ、「hs」はヒトドメインを表し、「gg」はニワトリドメインを表す。次いで、ヒト-ニワトリキメラは、連続した順序でそれらのそれぞれのヒトドメイン又はニワトリドメインによって記述され、例えば、hs-gg-gg IL-1RAPは、ヒトドメイン1、ニワトリドメイン2及びニワトリドメイン3を有するIL-1RAPを表す。プロットは、共鳴単位(略してRU、Y軸)の数対時間(X軸)として表されるデータを示す。
【
図2B】表面プラズモン共鳴を用いた、ヒト-ニワトリIL-1RAPキメラに対する抗IL-1RAP-C8クローン及び抗IL-1RAP-C3クローンのドメインマッピング。抗IL-1RAP-C8 IgG1 LALA(A)又は抗IL-1RAP-C3 IgG1 LALA(B)を、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。ヒト-ニワトリIL-1RAPキメラを、HBS-EP+緩衝液中50nMの固定化抗IL-1RAP IgG1 LALA上に注入し、続いてHBS-EP+緩衝液中で解離させ、「hs」はヒトドメインを表し、「gg」はニワトリドメインを表す。次いで、ヒト-ニワトリキメラは、連続した順序でそれらのそれぞれのヒトドメイン又はニワトリドメインによって記述され、例えば、hs-gg-gg IL-1RAPは、ヒトドメイン1、ニワトリドメイン2及びニワトリドメイン3を有するIL-1RAPを表す。プロットは、共鳴単位(略してRU、Y軸)の数対時間(X軸)として表されるデータを示す。
【
図3】Octet Biolayer Interferometryを用いた、ヒトIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C8クローン及び抗IL-1RAP-C3クローンのエピトープビニング。ビオチン化ヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質をストレプトアビジンSAバイオセンサー上にロードした。抗IL-1RAP-C8 Fabを、動態緩衝液中200nMの固定化ヒトIL-1RAP上に注入して、表面の飽和に到達させた。次いで、抗IL-1RAP-C3 Fab及び抗IL-1RAP-C8 Fabの予め混合した溶液を各々、200nMの最終濃度で飽和表面上に注入した。同じ実験手順を、非競合対照として、抗IL-1RAP-C3 Fabの代わりに抗IL-1RAP-E1 Fabを使用して実行した。プロットは、波長シフト(nm、Y軸)対時間(X軸)としてのシフトセンサーチップへの結合を示す。曲線は、競合Fabクローン名によって標識されている。
【
図4A】ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C8-ReCC-ES IgG1 LALAの表面プラズモン共鳴測定。抗IL-1RAP-C8-ReCC-ES IgG1 LALAを、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。ヒトIL-1RAP-avi-his又はカニクイザルIL-1RAP-avi-hisを、HBS-EP+緩衝液中の濃度系列における固定化IgG1 LALA上に注入した。(A)ヒトIL-1RAP及び(B)カニクイザルIL-1RAPについての1つの代表的な複製を示す。プロットは、共鳴単位の数(略してRU、Y軸)対時間(s、X軸)として表されるデータを示す。点線は測定データを表し、実線はシミュレートされた適合を表す。KD:平衡解離定数;Ka:会合定数;Kd:解離定数。
【
図4B】ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C8-ReCC-ES IgG1 LALAの表面プラズモン共鳴測定。抗IL-1RAP-C8-ReCC-ES IgG1 LALAを、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。ヒトIL-1RAP-avi-his又はカニクイザルIL-1RAP-avi-hisを、HBS-EP+緩衝液中の濃度系列における固定化IgG1 LALA上に注入した。(A)ヒトIL-1RAP及び(B)カニクイザルIL-1RAPについての1つの代表的な複製を示す。プロットは、共鳴単位の数(略してRU、Y軸)対時間(s、X軸)として表されるデータを示す。点線は測定データを表し、実線はシミュレートされた適合を表す。KD:平衡解離定数;Ka:会合定数;Kd:解離定数。
【
図5】マウスIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C3-A3マウスIgG2a LALAの表面プラズモン共鳴測定。抗IL-1RAP-C3-A3マウスIgG2a LALAを、抗マウスIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーCHIP上に固定化した。マウスIL-1RAP-hisを、HBS-EP+緩衝液中の濃度系列における固定化IgG2a LALA上に注入した。1つの代表的な複製を提示する。プロットは、共鳴単位の数(略してRU、Y軸)対時間(s、X軸)として表されるデータを示す。点線は測定データを表し、実線はシミュレートされた適合を表す。KD:平衡解離定数;Ka:会合定数;Kd:解離定数。
【
図6A】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって実行した(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験;ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー;ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー;カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図6B】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって実行した(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験;ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー;ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー;カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図6C】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって実行した(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験;ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー;ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー;カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図6D】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって実行した(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験;ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー;ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー;カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図6E】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって実行した(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験;ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー;ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー;カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図7A】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、HaCaT刺激アッセイにおいて、IL-1及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)の用量反応を、IL-1β又はIL-3副刺激HaCaT野生型細胞株とインキュベートした。グラフは、刺激(IL-1β又はIL-36γ)毎の非線形シグモイド回帰阻害曲線を示す。各データポイントは、独立した実験の測定値である。2つの独立した実験を実行した。
【
図7B】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、HaCaT刺激アッセイにおいて、IL-1及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)の用量反応を、IL-1β又はIL-3副刺激HaCaT野生型細胞株とインキュベートした。グラフは、刺激(IL-1β又はIL-36γ)毎の非線形シグモイド回帰阻害曲線を示す。各データポイントは、独立した実験の測定値である。2つの独立した実験を実行した。
【
図8A】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)刺激アッセイにおいてIL-33誘導性サイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)の用量反応を、IL-1β又はIL-12+IL-33刺激hPBMCとインキュベートした。グラフは、刺激(IL-1β又はIL-12+IL-33)毎の非線形シグモイド回帰阻害オーバーレイ曲線を示す。各曲線は、3人のドナーのオーバーレイを表す。2つの独立した実験を行った。
【
図8B】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)刺激アッセイにおいてIL-33誘導性サイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)の用量反応を、IL-1β又はIL-12+IL-33刺激hPBMCとインキュベートした。グラフは、刺激(IL-1β又はIL-12+IL-33)毎の非線形シグモイド回帰阻害オーバーレイ曲線を示す。各曲線は、3人のドナーのオーバーレイを表す。2つの独立した実験を行った。
【
図9A】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、組み合わされたサイトカイン刺激の際に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)を、ヒト全血中でIL-1α、IL-1β、IL-12、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γの組み合わせとインキュベートした。グラフは、サイトカイン及びケモカイン放出に対する組み合わせの影響、並びに可溶性マーカー放出(A、B、C)及び正規化阻害データ(D)のいずれかに対する各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の効果を示す。各ポイントは、1人のドナーについての測定値である。8つの独立した実験を行った。NSは、有意でないこと(Not significant)を表す。
*0,01<p<0,05の場合、
**0,001<p<0,01の場合。
*p<0,001の場合。
【
図9B】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、組み合わされたサイトカイン刺激の際に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)を、ヒト全血中でIL-1α、IL-1β、IL-12、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γの組み合わせとインキュベートした。グラフは、サイトカイン及びケモカイン放出に対する組み合わせの影響、並びに可溶性マーカー放出(A、B、C)及び正規化阻害データ(D)のいずれかに対する各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の効果を示す。各ポイントは、1人のドナーについての測定値である。8つの独立した実験を行った。NSは、有意でないこと(Not significant)を表す。
*0,01<p<0,05の場合、
**0,001<p<0,01の場合。
*p<0,001の場合。
【
図9C】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、組み合わされたサイトカイン刺激の際に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)を、ヒト全血中でIL-1α、IL-1β、IL-12、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γの組み合わせとインキュベートした。グラフは、サイトカイン及びケモカイン放出に対する組み合わせの影響、並びに可溶性マーカー放出(A、B、C)及び正規化阻害データ(D)のいずれかに対する各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の効果を示す。各ポイントは、1人のドナーについての測定値である。8つの独立した実験を行った。NSは、有意でないこと(Not significant)を表す。
*0,01<p<0,05の場合、
**0,001<p<0,01の場合。
*p<0,001の場合。
【
図9D】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、組み合わされたサイトカイン刺激の際に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)を、ヒト全血中でIL-1α、IL-1β、IL-12、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γの組み合わせとインキュベートした。グラフは、サイトカイン及びケモカイン放出に対する組み合わせの影響、並びに可溶性マーカー放出(A、B、C)及び正規化阻害データ(D)のいずれかに対する各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の効果を示す。各ポイントは、1人のドナーについての測定値である。8つの独立した実験を行った。NSは、有意でないこと(Not significant)を表す。
*0,01<p<0,05の場合、
**0,001<p<0,01の場合。
*p<0,001の場合。
【
図10】抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、IL-1β及びIL-36γによる刺激後のHACAT馴化培地を伴うインキュベーション時に好中球活性化を阻害する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)を、IL-1β及びIL-3副刺激HaCaT野生型細胞株とインキュベートした。刺激の24時間後の馴化培地を、回収し、新たに単離した好中球とインキュベートした。グラフは、活性化好中球のパーセンテージに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の効果を示す。各ポイントは、1人のドナーについての測定値である。3つの独立した実験を、合計9人のドナーで行った。NSは、有意でないこと(Not significant)を表す。
**0,01<p<0,05の場合、
****0,001<p<0,01の場合、
**p<0,001の場合。
【
図11】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、マウスIL-1RAPに特異的に結合する。抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_3(■)の用量反応を、様々な細胞株及び細胞型とインキュベートした。結合した抗体を、モノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体で検出した。グラフは、細胞株毎の非線形シグモイド回帰結合曲線(相対幾何平均蛍光強度)を示す。各データポイントは、所与の細胞株についての測定値である。複数の独立した実験を、数人のドナーにわたって行った(HaCaT及びHaCaT IL-1RAP KO:4及び3つの独立した実験、ヒト皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計5人のドナー、ヒト好中球:2つの実験-合計6人のドナー、カニクイザル皮膚線維芽細胞:2つの独立した実験-合計4人のドナー)。
【
図12A】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、NIH-3T3刺激アッセイにおいてIL-33及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する。マウスIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_2(■)の用量反応を、mIL-1β、hIL-33、又はmIL-36s刺激NIH-3T3とインキュベートした。グラフは、刺激毎の非線形シグモイド回帰阻害曲線を示す。各データポイントは、測定値を表す。
【
図12B】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、NIH-3T3刺激アッセイにおいてIL-33及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する。マウスIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_2(■)の用量反応を、mIL-1β、hIL-33、又はmIL-36s刺激NIH-3T3とインキュベートした。グラフは、刺激毎の非線形シグモイド回帰阻害曲線を示す。各データポイントは、測定値を表す。
【
図12C】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、NIH-3T3刺激アッセイにおいてIL-33及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する。マウスIL-1RAP_候補_1(●)又は対照アイソタイプ_2(■)の用量反応を、mIL-1β、hIL-33、又はmIL-36s刺激NIH-3T3とインキュベートした。グラフは、刺激毎の非線形シグモイド回帰阻害曲線を示す。各データポイントは、測定値を表す。
【
図13】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、インターロイキン注射の24時間後にマウス血清中のIL-5放出を阻害する。C57BL/6JRjマウスに、0日目に異なる処理物を腹腔内注射した。処理物注射の2時間後に、マウスにインターロイキン(マウスIL-1β、ヒトIL-33並びにマウスIL36α、β及びγ)の混合物を腹腔内注射した。最初の処理物注射の24時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清を、Luminex分析のために採取した。IL-5放出の定量化。Bely_4研究からのデータ。
【
図14】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、インターロイキン注射の72時間後にマウス血清中のIL-5放出を阻害する。C57BL/6JRjマウスに、0日目、1日目及び2日目に異なる処理物を腹腔内注射した。処理物注射の2時間後、マウスにインターロイキン(マウスIL-1β、ヒトIL-33並びにマウスIL36α、β及びγ)の混合物を腹腔内注射した。最初の処理物注射の72時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清を、Luminex分析のために採取した。IL-5放出の定量化。 Bely_5試験からのデータ。
【
図15】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、インターロイキン注射の72時間後にマウス血清中のGro-α放出を阻害する。C57BL/6JRjマウスに、0日目、1日目及び2日目に異なる処理物を腹腔内注射した。処理物注射の2時間後に、マウスにインターロイキン(マウスIL-1β、ヒトIL-33並びにマウスIL36α、β及びγ)の混合物を腹腔内注射した。最初の処理物注射の72時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清を、Luminex分析のために採取した。Gro-α放出の定量化。Bely_5研究からのデータ。
【
図16】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、乾癬様皮膚炎症モデルにおいて落屑及び病変スコアの有意な減少を誘導した。剃毛したマウスの背中及び両耳に、5%IMQクリーム(Aldara(登録商標))を毎日局所塗布して、7~14日間連続してIMQを投与した。局所塗布を保護する手段として、IMQ処理皮膚領域をTegaderm(商標)滅菌不透明包帯で覆った。全ての分子の場合、処理物を、3日に1回腹腔内経路を介してマウスに投与し、アナキンラのみ、毎日腹腔内経路を介して注射した。マウスを毎日物理的に検査し、PASI(乾癬面積及び重症度指数)スコアを以下のように適用した:紅斑(皮膚の刺激/発赤)及び焼痂(かさぶた)形成(1~4スコア)/落屑及び病変重症度スケール(1~4スコア)。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図17】抗マウスIL-1RAP_候補_1は、乾癬様皮膚炎症マウスモデルにおいて好中球浸潤を阻害する。剃毛したマウスの背中及び両耳に、5%IMQクリーム(Aldara(登録商標))を毎日局所塗布して、12日間連続してIMQを投与した。局所塗布を保護する手段として、IMQ処理皮膚領域をTegaderm(商標)滅菌不透明包帯で覆った。全ての分子の場合、処理物を、3日に1回腹腔内経路を介してマウスに投与し、アナキンラのみ、毎日腹腔内経路を介して注射した。マウスを毎日物理的に検査し、PASI(乾癬面積及び重症度指数)スコアを以下のように適用した:紅斑(皮膚の刺激/発赤)及び焼痂(かさぶた)形成(1~4スコア)/落屑及び病変重症度スケール(1~4スコア)。本研究の最後に、IHCを背側皮膚に行った。表皮肥厚の定量化は、マウス1匹当たりスライド1枚当たり4つの皮膚試料/スライド1枚当たり10枚の写真に関して行った。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18A】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18B】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18C】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18D】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18E】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18F】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図18G】マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真。マウスを、イミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP候補1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)又は未処理マウス(G)で処理した。IMQ_s2研究からのデータ。
【
図19A】(A)抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は最大用量のアイソタイプ対照_4(■)の用量反応を、5ng/mlのIL-1α又は5ng/mlのIL-1βとともにヒト全血中でインキュベートした。グラフは、各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の阻害効果を示す。各ポイントは、ベースラインと比較して3倍を超える刺激指数(SI>3)を示したドナーについての阻害パーセンテージ±信頼区間の平均である。3つの独立した実験を、試験した合計15人のドナーで行った。B)表は、試験した15人のドナーのうち、刺激及び読み出し毎のグラフに含まれる応答者ドナー(ベースラインと比較してSI>3)の数を示す。
【
図19B】(A)抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又は最大用量のアイソタイプ対照_4(■)の用量反応を、5ng/mlのIL-1α又は5ng/mlのIL-1βとともにヒト全血中でインキュベートした。グラフは、各読み出しに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の阻害効果を示す。各ポイントは、ベースラインと比較して3倍を超える刺激指数(SI>3)を示したドナーについての阻害パーセンテージ±信頼区間の平均である。3つの独立した実験を、試験した合計15人のドナーで行った。B)表は、試験した15人のドナーのうち、刺激及び読み出し毎のグラフに含まれる応答者ドナー(ベースラインと比較してSI>3)の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、高い親和性でヒトIL1RAPに特異的に結合するヒト化抗体を含む抗体を提供する。開示される抗IL1RAP抗体は、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路を含むIL1RAP媒介性経路による細胞内シグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断することができる。より具体的には、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体は、以下のアゴニスト:IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36Γのうちの1つ以上の結合によって刺激されるシグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断することができる。本開示は、様々ながん(例えば、乳がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、膵臓がん)、並びに炎症性疾患、感染性疾患、及び自己免疫疾患を含むが、これらに限定されない、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達の阻害に応答する疾患及び状態を含む、IL1RAP媒介性疾患を治療する方法における抗IL1RAP抗体の使用も提供する。
【0035】
用語及び技術の概要
本明細書の説明及び添付の特許請求の範囲について、単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」への言及は、2つ以上のタンパク質を含み、「化合物(a compound)」への言及は、2つ以上の化合物を指す。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」の使用は、互換可能であり、限定することを意図しない。様々な実施形態の説明が、「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例において、ある実施形態が「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」という言語を使用して代替的に説明され得ることを理解するであろうことが、更に理解されるべきである。
【0036】
値の範囲が提供される場合、文脈が他を明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の値の各介在整数、及び文脈が他に明確に指示しない限り、その値の各介在整数の各10分の1、並びにその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従う本発明内に包含される。記載された範囲がこれらの限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界の(i)いずれか又は(ii)両方を除外した範囲も、本発明に含まれる。例えば、「1~50」は、「2~25」、「5~20」、「25~50」、「1~10」などを含む。
【0037】
一般に、本明細書で使用される命名法並びに本明細書で説明される技術及び手順は、Sambrook et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual(2nd Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989(以下「Sambrook」);分子生物学におけるカレント・プロトコル、F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との間の共同事業(2011年まで補足)(以下「Ausubel」);抗体エンジニアリング、Vols.1 and 2,R.Kontermann and S.Dubel,eds.,Springer-Verlag,Berlin and Heidelberg(2010);モノクローナル抗体:方法及びプロトコル、Methods and Protocols,V.Ossipow and N.Fischer,eds.,2 nd Ed.,Humana Press(2014);治療抗体:From Bench to Clinic,Z.An,ed.,J.Wiley&Sons,Hoboken,N.J.(2009);及びファージディスプレイ、Tim Clackson and Henry B.Lowman,eds.,Oxford University Press,United Kingdom(2004)に記載されている一般的な技術及び方法論などの当業者により十分に理解されかつ一般的に用いられるもの含む。
【0038】
本開示において参照される全ての刊行物、特許、特許出願、及び他の文書は、各個別の刊行物、特許、特許出願又は他の文書が、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれるように個別に示されるのと同程度に、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示を解釈する目的で、用語の以下の説明が適用され、適切な場合、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様である。
【0040】
「IL1RAP」とは、インターロイキン-1受容体1(IL1R1)、ST2(インターロイキン-1受容体様1又はIL1RL1としても知られる)、及びインターロイキン-1受容体様タンパク質2(IL1RL2)を含む、IL-1ファミリーにおけるいくつかの受容体についての細胞膜共受容体であるインターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質を指す。インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質、又はIL1RAPは、当該技術分野において「IL-1RAP」、「IL-1RAcP」、「IL1RAcP」又は「IL-1R3」と呼ばれることがあることに留意されたい。「IL1RAP」、「IL-1Rap」及び「IL1RAPタンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0041】
「IL1RAP媒介性状態」又は「IL1RAP媒介性疾患」は、本明細書で使用される場合、IL-1ファミリーサイトカインIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β及びIL-36Γによって刺激される下流シグナル伝達経路を含むが、これらに限定されない、共受容体として作用するIL1RAPとともにサイトカインのIL-1ファミリーによって媒介されるシグナル伝達経路の異常な機能に関連する任意の医学的状態を包含する。例えば、IL1RAP媒介性疾患としては、がん、炎症性、感染性、及び自己免疫疾患を含む、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路のアンタゴニスト又は阻害剤によって媒介される及び/又はそれらに応答する疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。より詳細には、IL1RAP媒介性疾患は、ざ瘡、急性重症潰瘍性大腸炎、成人発症スティル病、アレルギー性鼻炎、痛風性関節炎、若年性関節炎、変形性関節症、関節リウマチ、全身性強皮症、関節痛、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性湿疹、ベーチェット病、悪液質、乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、慢性閉塞性肺疾患、ドライアイ症候群、家族性寒冷自己炎症性症候群、家族性地中海熱、食物アレルギー、汎発性膿疱性乾癬、化膿性汗腺炎、高lgD症候群、高尿酸血症、マックル・ウェルズ症候群、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、筋骨格系疼痛、掌蹠膿疱症、末梢血管疾患、リウマチ性多発筋痛症、鼻ポリープ、乾癬、壊疽性膿皮症、再狭窄、鎌状赤血球貧血症、静脈洞炎、TNF受容体関連周期性症候群、2型糖尿病、及び潰瘍性結腸炎を含み得るが、これらに限定されない。
【0042】
「IL-1刺激シグナル」は、本明細書で使用される場合、IL-1α又はIL-1βなどのIL-1サイトカインの、その同族細胞表面受容体IL1R1への結合によって開始される細胞内シグナルを指す。例示的なIL-1刺激シグナルとしては、本明細書の実施例に開示されるものなどの細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して測定可能なものが挙げられる。
【0043】
「IL-33刺激シグナル」は、本明細書で使用される場合、IL-33などのIL-33サイトカインの、その同族細胞表面受容体IL1RL1(ST2としても知られる)への結合によって開始される細胞内シグナルを指す。例示的なIL-33刺激シグナルとしては、本明細書の実施例に開示されるものなどの細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して測定可能なものが挙げられる。
【0044】
「IL-36刺激シグナル」は、本明細書で使用される場合、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γなどのIL-36サイトカインの、その同族細胞表面受容体IL1RL2への結合によって開始される細胞内シグナルを指す。例示的なIL-36刺激シグナルとしては、本明細書の実施例に開示されるものなどの、代理細胞ベースのブロッキングアッセイによって測定されるものが挙げられる。
【0045】
「細胞ベースのブロッキングアッセイ」とは、抗体が結合する抗原の生物学的活性を阻害又は減少させる抗体の能力を測定することができるアッセイを指す。例えば、細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して、IL-1、IL-33、及びIL-36シグナル伝達経路を介したIL1RAP媒介性細胞内シグナル伝達などの特定の生物学的又は生化学的機能を阻害するのに必要な抗体の濃度を測定することができる。一部の実施形態では、抗体(例えば、本開示の抗IL1RAP抗体)の半最大阻害濃度(IC50)及び/又は90%阻害濃度(IC90)は、細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態では、細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して、抗体がアゴニスト(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、IL-36γ)とその同族受容体との間の相互作用を遮断するかを決定する。本開示の抗体で有用な細胞ベースのブロッキングアッセイは、初代細胞アッセイ(例えば、HaCaT細胞)並びにレポーター又はセンサー細胞アッセイを含み得る。IL-1、IL-33、及びIL-36シグナル伝達経路についての例示的な細胞ベースのブロッキングアッセイ、例えば、本明細書に提供される実施例に記載されるもの。
【0046】
「抗体」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原に特異的に結合するか、又は特定の抗原と免疫学的に反応性である1つ以上のポリペプチド鎖を含む分子を指す。本開示の例示的な抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多重特異性(又はヘテロコンジュゲート)抗体(例えば、二重特異性抗体)、一価抗体(例えば、シングルアーム抗体)、多価抗体、抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG、及びscFv断片)、抗体融合体、並びに合成抗体(又は抗体模倣物)が挙げられる。
【0047】
「抗IL1RAP抗体」又は「IL1RAPに結合する抗体」は、抗体がIL1RAPの標的化において診断剤及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でIL1RAPに結合する抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体の非関連non-IL1RAP抗原への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のIL1RAPへの結合の約10%未満である。いくつかの実施形態では、IL1RAPに結合する抗体は、<1pM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<1pM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。
【0048】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、又は「全抗体」は、本明細書で互換的に使用されて、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書において定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0049】
「抗体断片」は、全長抗体と同じ抗原に結合することができる全長抗体の一部分を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一価又はシングルアーム抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分類される。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びaと呼ばれる。
【0051】
「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般に、類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(CDR)を含む(例えば、Kindt et al.,Ruby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,91ページを参照されたい)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングする抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを使用して単離され得る(例えば、Portolano et al.,J.Immunol.,150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature,352:624-628(1991)を参照されたい)。
【0052】
「超可変領域」又は「CDR」は、本明細書で使用される場合、配列が超可変であり、かつ/又は構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然抗体は、6つのCDR、重鎖可変ドメインにおける3つ、VH(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、軽鎖可変ドメインにおける3つ、VL(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を有する4つの鎖を含む。CDRは、一般に、超可変ループ由来の及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。別段の指示がない限り、可変ドメイン内のCDR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に従って番号付けされる。
【0053】
「相補性決定領域」又は「CDR」は、本明細書で使用される場合、最も高い配列可変性を有し、かつ/又は抗原認識に関与する可変ドメインのCDR内の領域を指す。一般に、天然抗体は、6つのCDR、重鎖可変ドメインにおける3つ、VH(H1、H2、H3)、軽鎖可変ドメインにおける3つ、VL(L1、L2、L3)を有する4つの鎖を含む。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2のアミノ酸残基50~56、L3のアミノ酸残基89~97、H1のアミノ酸残基26~35又は31~35、H2のアミノ酸残基50~65又は50~65、及びH3のアミノ酸残基93~102又は95~102に存在する。(Kabatら、前出)。免疫グロブリンスーパーファミリーの異なるメンバーの配列を収集し、整列させたKabatら(前出)の代替方法は、Chothiaら(Chothia-J Mol Biol.1987 Aug 20;196(4):901-17 and Nature.1989 Dec 21-28;342(6252):877-83.)及びLefrancら(IMGT-Nucleic Acids Res.1999 Jan 1;27(1):209-12.)によって提案され、彼らは、免疫グロブリン可変ドメイン生殖系列配列についての統一番号付けスキームを提案した。全てのかかる代替的定義は、本発明によって包含され、本明細書に提供される配列が、配列表に提供されるCDR配列の一部分のみを含み得る代替的に定義されたCDR配列を除外するように意図されない。具体的には、ChothiaらによるCDR配列は、H1のアミノ酸残基26~31、H2のアミノ酸残基52~65、及びH3のアミノ酸残基95~102に存在する。
【0054】
具体的には、LeFrancらによるCDR配列は、H1のアミノ酸残基27~38、H2のアミノ酸残基56~65、及びH3のアミノ酸残基105~117に存在する。
【0055】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(CDR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般に、VH(又はVL)において以下の配列に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0056】
「天然抗体」は、天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(Λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0057】
「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体を指す、すなわち、可能なバリアント抗体(例えば、バリアント抗体は、天然に生じるか、又はモノクローナル抗体の産生中に生じ、一般に少量で存在する変異を含む)を除いて、集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられるものである。したがって、「モノクローナル」という用語は、抗体の実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技術によって作製され得、かかる方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0058】
「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の供給源又は種に由来する抗体を指し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0059】
「ヒト化抗体」は、非ヒトCDR由来のアミノ酸配列及びヒトFR由来のアミノ酸配列を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0060】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0061】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。一実施形態では、VLについて、サブグループは、Kabatら(上記)にあるようなサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについて、サブグループは、Kabatら(上記)にあるようなサブグループIIIである。
【0062】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、又はそれはアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0063】
「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を指し、C末端ポリペプチド配列は、インタクトな抗体のパパイン消化によって得ることができるものである。Fc領域は、天然又はバリアントFc配列を含み得る。免疫グロブリン重鎖のFc配列の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc配列は、通常、およそCys226位のアミノ酸残基から、又はおよそPro230位から、Lys447のFc配列のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。しかしながら、Fc配列のC末端リジン(Lys447)は、組換え産生(例えば、CHO細胞における産生)のために使用される細胞培養系において起こり得る酵素的切断に起因して、組換え抗体のFc領域に存在しても存在しなくてもよい。免疫グロブリンのFc配列は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択で、CH4ドメインを含む。
【0064】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。いくつかの実施形態では、FcRは、天然ヒトFcRである。いくつかの実施形態では、FcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子多型及び選択的スプライシングフォームを含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif、ITIM)を含む(例えば、Daeron,Annu.Rev.Immunol.,15:203-234(1997)を参照されたい)。FcRには、本明細書で使用される場合、胎児への母体IgGの移動(Guyer et al.,J.Immunol.,1 17:587(1976)及びKim et al.,Eur.J.Immunol.,24:2429-2434(1994))及び免疫グロブリンの恒常性の調節を担う新生児受容体FcRnも含まれる。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol,9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41(1995)でレビューされている。
【0065】
「多価抗体」は、本明細書で使用される場合、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体である。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般的に、天然配列IgM又はIgA抗体ではない。
【0066】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる結合部位を有し、各部位が異なる結合特異性を有する抗体である。多重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片であり得、異なる結合部位が各々異なる抗原に結合してもよく、又は異なる結合部位が同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合してもよい。
【0067】
「Fv断片」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む抗体断片を指す。この領域は、強固に会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなり、これは、例えば、scFvにおいて、本質的に共有結合であり得る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのCDR又はそのサブセットは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、通常は結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0068】
「Fab断片」は、軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメイン並びに重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。「F(ab’)2断片」は、それらの間のヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端付近で一般的に共有結合される一対のFab断片を含む。抗体断片の他の化学的カップリングもまた、当該技術分野で公知である。
【0069】
「抗原結合アーム」は、本明細書で使用される目的場合、目的の標的分子に特異的に結合する能力を有する抗体の構成要素を指す。典型的には、抗原結合アームは、免疫グロブリンポリペプチド配列、例えば、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のCDR及び/又は可変ドメイン配列の複合体である。
【0070】
「一本鎖Fv」又は「scFv」は、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが所望の抗原結合構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間に更に含む。
【0071】
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH及びVL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を生成する。
【0072】
「直鎖状抗体」は、Zapata et al.Protein Eng.,8(10):1057-1062(1995)に記載されている抗体を指す。簡潔に説明すると、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドとともに、一対の抗原結合領域を形成する重鎖断片の縦列反復(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0073】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
【0074】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原との)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、平衡解離定数(KD)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野で公知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための特定の説明のためのかつ例示的な実施形態を以下に記載する。
【0075】
「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、約1×10-7M以下の親和性値での抗体の抗原への結合を指す。
【0076】
「親和性成熟」抗体は、かかる改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上のCDRに1つ以上の改変を有する抗体を指し、かかる改変は、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす。
【0077】
抗体の「機能的抗原結合部位」は、標的抗原に結合することができるものである。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が由来する親抗体ほど強力である必要はないが、抗原に結合する能力は、抗原への抗体結合を評価するための公知の種々の方法のいずれか1つを使用して測定可能でなければならない。
【0078】
「単離された抗体」は、その自然環境の構成要素から分離された抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(isoelectric focusing、IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって決定されるように、95%又は99%の純度を超えるまで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B Analyt.Technol Biomed Life Sci,848:79-87を参照されたい。
【0079】
「実質的に類似」又は「実質的に同じ」は、本明細書で使用される場合、2つの数値(例えば、一方は試験抗体に関連し、他方は参照抗体に関連する)間の十分に高い程度の類似性を指し、その結果、当業者は、2つの値間の差異が、当該値(例えば、KD値)によって測定される生物学的特徴の文脈内で、生物学的及び/又は統計的有意性が殆ど又は全くないと考えるであろう。
【0080】
「実質的に異なる」とは、本明細書で使用される場合、2つの数値(一般に、一方は分子に関連し、他方は参照分子に関連する)間の十分に高い程度の差を指し、その結果、当業者は、2つの値間の差が、当該値(例えば、KD値)によって測定される生物学的特徴の文脈内で統計的に有意であると考えるであろう。
【0081】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因するその生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が含まれる。
【0082】
「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子にコンジュゲートされた抗体を指す。
【0083】
「治療」、「治療する」、又は「治療すること」は、治療されている個体における障害の自然経過を変化させる試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過中のいずれかで行われ得る。治療の所望の結果としては、障害の発生又は再発の予防、症状の緩和、障害の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、進行速度の減少、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、治療は、抗IL1RAP抗体を含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与して、IL1RAPによって媒介される疾患又は状態の発症を遅延させるか、又はその進行を遅らせることを含み得る。
【0084】
「医薬製剤」は、活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にし、製剤が投与される対象に対して毒性である追加の成分を含まない形態の調製物を指す。
【0085】
「薬学的に許容される担体」は、それが投与される対象に対して非毒性である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
「治療有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するための、例えば、対象における疾患、障害、又は状態を治療又は予防するための、活性成分又は薬剤(例えば、医薬製剤)の量を指す。IL1RAP媒介性疾患又は状態の場合、治療剤の治療有効量は、疾患、障害、又は状態に関連する症状のうちの1つ以上をある程度まで軽減、予防、抑制、及び/又は緩和する量である。喘息治療の場合、インビボでの有効性は、例えば、症状の持続期間、重症度、及び/若しくは再発、応答率(response rate、RR)、応答の持続期間、並びに/又は生活の質を評価することによって測定され得る。
【0087】
「同時に」は、本明細書で使用される場合、投与の少なくとも一部が時間的に重複する、2つ以上の治療剤の投与を指す。したがって、同時投与は、1つ以上の他の薬剤の投与を中断した後に1つ以上の薬剤の投与が継続する場合の投薬レジメンを含む。
【0088】
「個体」又は「対象」は、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、並びに齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。
【0089】
抗IL1RAP抗体の結合親和性及び細胞シグナル伝達阻害
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗IL1RAP抗体は、ヒトIL1RAPへの結合について、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば、10-8M以下、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の平衡解離定数(KD)を有する。より具体的には、いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でヒトIL1RAPに結合する。いくつかの実施形態では、結合親和性は、ヒトIL1RAPポリペプチド(配列番号1又は6)への結合についての平衡解離定数(KD)として測定される。一般に、リガンドのその受容体に対する結合親和性は、種々のアッセイのいずれかを使用して決定され得、かつ種々の定量値に関して表され得る。抗体の親和性を決定することにおいて有用な特異的IL1RAP結合アッセイは、本明細書の実施例に開示されている。更に、抗原結合アッセイは当該技術分野で公知であり、かつ本明細書で使用され得、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay、ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイ(例えば、国際公開第2005/012359号に記載されるBIAcoreアッセイ)、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する任意の直接的又は競合的結合アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態では、結合親和性は、KD値として表され、固有の結合親和性(例えば、最小化されたアビディティー効果を有する)を反映する。本開示の抗IL1RAP抗体は、ヒトIL1RAPポリペプチド(配列番号1又は6)に対して強い結合親和性を示し、例えば、10nM~1pMのKD値を示す。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗IL1RAP抗体は、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路を含むIL1RAP媒介性経路による細胞内シグナル伝達、より具体的には、以下のアゴニスト:IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36Γの1つ以上の結合により刺激されるシグナル伝達経路を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断する。これらのIL1RAP媒介性シグナル伝達経路を阻害する抗体の能力は、本開示の実施例に記載されるレポーター細胞アッセイ及び初代細胞ベースのブロッキングアッセイを含む公知の細胞ベースのブロッキングアッセイを使用してインビトロでアッセイされ得る。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断する抗体の能力は、およそEC50の濃度でアゴニストIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γとともにレポーター細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して、抗体のIC50として決定される。アゴニストEC50は、多くの場合、アッセイ前にのみ推定することができ、アッセイがデータの非線形回帰分析を使用して完了した後に決定される。かかるアッセイにおいて、およそEC50の値は、典型的には、EC40~45~EC55~60の範囲にある。
【0092】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のIL1RAP抗体は、IL1RAP媒介性経路による細胞内シグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は完全に遮断する能力に基づく以下の機能的特性のうちの1つ以上を特徴とする。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、IL-1刺激シグナル、IL-33刺激シグナル、及び/又はIL-36刺激シグナルを少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させる。いくつかの実施形態では、シグナルの減少は、レポーター細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して測定され得る。当業者は、IL-1刺激経路、IL-33刺激経路、及び/又はIL-36刺激経路における細胞シグナル伝達の阻害を決定する際の使用のために公知のレポーター細胞アッセイのいずれかを選択することができる。一般に、本開示の抗IL1RAP抗体は、10nM以下、5nM以下、又は1nMの抗体についてIC50値で、およそEC50(例えば、EC40~EC60)の濃度のアゴニストの結合によって開始されるIL1RAP媒介性細胞内シグナルを減少させる。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、IL-1刺激シグナル、IL-33刺激シグナル、及びIL-36刺激シグナルを少なくとも95%、又は少なくとも99%減少させ、任意選択で、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36刺激シグナルは、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γから選択されるアゴニストによって刺激され、任意選択で、およそEC50のアゴニスト濃度で、抗体は、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下のIC50を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、その同族受容体に結合するアゴニストによって、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36γのうちの1つ以上によって開始される細胞内シグナルを少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させる。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、初代ヒト肺線維芽細胞(primary human lung fibroblast、PHLF)由来のIL8のIL-1α、IL-1β、及び/又はIL-36β刺激放出を阻害し、任意選択で、およそEC50のIL-1α、IL-1β、及び/又はIL-36β濃度で、抗体は、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、初代ヒト単球由来のIL6のIL-1β刺激放出を阻害し、任意選択で、およそEC50のIL-1β濃度で、抗体は、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、ヒトナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞由来のINF-γのIL-33刺激放出を阻害し、任意選択で、およそEC50のIL-33濃度で、抗体は、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト表皮ケラチノサイト(HEKn)由来のIL8のIL-36β刺激放出を阻害し、任意選択で、およそEC60のIL-36β濃度で、抗体は、10nM以下、5nM以下、又は2nM以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、好塩基球におけるIL-33刺激リン酸化を阻害し、任意選択で、およそEC56のIL-33濃度で、抗体は、75nM以下、50nM以下、又は45nM以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD4+T細胞由来のINF-γのIL-33刺激放出を阻害し、任意選択で、およそEC34のIL-33濃度で、抗体は、75nM以下、50nM以下、又は45nM以下のIC50を有する。
【0096】
抗体断片
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、抗体フラグメントであり得る。本開示の結合決定基を有する有用な抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一価、一アーム(又は単一アーム)抗体、scFv断片、並びに本明細書に記載されかつ当該技術分野で公知の他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。様々な抗体断片の概説については、例えば、Hudson et al.,Nat.Med.,9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、国際公開第93/16185号、並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。他の一価抗体形態は、例えば、国際公開第2007/048037号、国際公開第2008/145137号、国際公開第2008/145138号、及び国際公開第2007/059782号に記載されている。一価のシングルアーム抗体は、例えば、国際公開第2005/063816号に記載されている。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である(例えば、欧州特許第0404097号、国際公開第93/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.,9:129-134(2003)、及びHolliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体断片は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.;例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0098】
抗体断片は、本明細書に記載される場合、インタクトな抗体のタンパク質分解消化並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含むが、これらに限定されない様々な技術によって作製され得る。
【0099】
本開示の抗IL1RAP抗体のいずれかは、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される方法及び技術を使用して、抗体断片として調製され得ることが企図される。例えば、本開示の様々な抗IL1RAP抗体のFabバージョンの調製及び分析は、実施例8に記載されている。
【0100】
キメラ抗体及びヒト化抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、キメラ抗体であり得る。(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に記載されるキメラ抗体を参照されたい)。一実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含み得ることが企図される。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、CDR、例えば、CDR(又はその一部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、抗体特異性又は親和性を回復又は改善する非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0102】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci,13:1619-1633(2008)に概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods,36:25-34(2005)(SDR(α-CDR)グラフティングを記載)、Padlan,Mol.Immunol.,28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記載)、Dall’Acqua et al.,Methods,36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載)、及びOsbourn et al.,Methods,36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)FRシャッフリングへの「ガイドされた選択」アプローチを記載)に更に記載されている。
【0103】
ヒト化に有用なヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法(例えば、Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993)を参照されたい)を用いて選択されるフレームワーク領域、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.,J.Immunol,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、及びスクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.,271:22611-22618(1996)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本開示の抗IL1RAP抗体のいずれかは、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される方法及び技術を使用してヒト化抗体として調製され得ることが企図される。例えば、本開示の抗IL1RAP抗体のヒト化バージョンの調製及び分析は、実施例に記載されている。
【0105】
ヒト抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Chem.Biol.,5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.,20:450-459(2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。かかるトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号におけるXENOMOUSE(商標)技術、米国特許第5,770,429号におけるHUMAB(登録商標)技術、米国特許第7,041,870号におけるK-M MOUSE(登録商標)技術、及び米国特許出願公開第2007/0061900号におけるVELOCIMOUSE(登録商標)技術を参照されたい。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変され得る。
【0106】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。例えば、Kozbor,J.Immunol,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体は、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(すなわち、トリオーマ技術)は、例えば、Vollmers et al.,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers et al.,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0107】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成される場合もある。次いで、かかる可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0108】
本開示の抗IL1RAP抗体のうちのいずれかは、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される方法及び技術を使用して、ヒト抗体として調製され得ることが企図される。
【0109】
ライブラリー由来抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、所望の活性又は複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が,当該技術分野で公知である。本開示の抗IL1RAP抗体のヒト化バージョンの親和性成熟バリアントの調製のためのファージディスプレイの使用は、本明細書に開示される実施例に記載されている。かかるライブラリー由来抗体を産生するための他の方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology,178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Antibody Phage Display,Humana Press,Totowa,N.J.,2001)、McCafferty et al.,Nature,348:552-554、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology,248:161-175(Lo,ed.,Antibody Engineering,Humana Press,Totowa,N.J.,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.,338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.,340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods,284(1-2):119-132(2004)において見出され得る。
【0110】
コンビナトリアルライブラリースクリーニングを使用して、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載の方法及び技術を使用して、本開示の抗IL1RAP抗体のバリアントを作製することができることが企図される。例えば、本開示のヒト化抗IL1RAP抗体の広範囲の親和性成熟バリアントを調製するファージディスプレイライブラリー生成及びスクリーニングの使用は、実施例1に記載されている。
【0111】
多重特異性抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる結合部位を有するモノクローナル抗体であり、各々が異なる抗原に対する結合特異性を有し、そのうちの少なくとも1つがIL1RAPに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合部位のうちの少なくとも1つは、細胞傷害性薬剤に特異的に結合する。例示的な実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、二重特異性抗体であり、IL1RAPを発現する細胞に細胞毒性薬剤を局在化させるように使用され得る。
【0112】
多重特異性抗体を作製するための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、国際公開第2012/131555号を参照されたい)。
【0113】
多重特異性抗体は、ホモ二量体ではなくFc-ヘテロ二量体抗体分子の形成に有利に働く「静電ステアリング」効果を操作すること(国際公開第2009/089004(A1)号)、2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)、単鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい)、又は三重特異性抗体(例えば、Tutt et al.,J.Immunol.,147:60(1991)を参照されたい)によって作製され得る。
【0114】
本開示の抗IL1RAP抗体のいずれかは、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載される方法及び技術を使用して、多重特異性抗体として調製され得ることが企図される。
【0115】
抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体のバリアントも企図される。例えば、抗体の改善された結合親和性及び/又は他の生物学的特性を有する抗体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はその中への挿入、及び/又はその置換が含まれる。最終構築物がIL1RAP抗原結合の所望の特徴を有するという条件で、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせを行って、最終構築物に到達することができる。本開示の抗IL1RAP抗体の広範なバリアントは、当該技術分野で公知であり、かつ/又は本明細書に記載されている方法及び技術を使用して調製され得ることが企図され、これには、(i)アミノ酸置換、挿入及び/又は欠失バリアント、(ii)グリコシル化バリアント、(iii)Fc領域バリアント、(iv)システイン操作バリアント、及び(v)誘導体化バリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
置換、挿入、及び欠失バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるものに加えて1つ以上のアミノ酸置換を有する抗IL1RAP抗体バリアントが提供される。変異誘発のための部位は、CDR及びFRを含み得る。典型的な「保存的」アミノ酸置換及び/又は共通の側鎖クラス若しくは特性に基づく置換は、当該技術分野で周知であり、本開示の実施形態で使用され得る。本開示は、アミノ酸側鎖クラスのうちの1つのメンバーが別のクラス由来のアミノ酸と交換される非保存的アミノ酸置換に基づくバリアントも企図する。
【0117】
アミノ酸側鎖は、典型的には、以下のクラス又は共通の特性に従って分類される:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、ノルロイシン;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向の影響:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0118】
抗体へのアミノ酸置換、及び所望の機能、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについてのその後のスクリーニングのための技術は、当該技術分野で周知である。
【0119】
アミノ酸置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを含み得る。一般に、更なる研究のために選択された得られたバリアントは、親抗体と比較して、特定の生物学的特性の改変(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、かつ/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持している。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書の実施例に記載されるものなどのファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して、好都合に生成され得る。簡潔に説明すると、1つ以上のCDR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0120】
変異誘発のために標的化され得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」である(例えば、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085を参照されたい)。この方法において、標的残基の残基又は基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの帯電残基)を同定し、中性又は負帯電アミノ酸(例えば、Ala又はポリアラニン)で置換して、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるかを決定する。更なる置換を、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置で導入してもよい。あるいは、又は更に、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造を決定することができる。かかる接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的化また又は排除され得る。バリアントは、それらが所望の特性を含むかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0121】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1つの残基から100個以上の残基を含むポリペプチドにまで及ぶアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一若しくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体の血清半減期を増加させる酵素又はポリペプチドに対する抗体のN又はC末端への融合が含まれる。
【0122】
抗体親和性を改善するために、CDRにおいて置換を行うことができる。かかる改変は、「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.,Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)で行われ得、結果として生じるバリアントVH又はVLが、結合親和性について試験される。一実施形態では、二次ライブラリーを構築し、そこから再選択することによって、親和性成熟を実行することができる(例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology,178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Antibody Phage Display,Humana Press,Totowa,N.J.,(2001)を参照されたい)。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化される、CDR指向型アプローチを伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して特異的に同定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的化される。
【0123】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のCDR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、CDRにおいて行われ得る。かかる改変は、CDR「ホットスポット」の外側にあり得る。上記に提供されるバリアントVH及びVE配列のいくつかの実施形態では、各CDRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。
【0124】
グリコシル化バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって実行することができる。
【0125】
抗体がFc領域を含む実施形態では、Fc領域に付着した炭水化物を改変することができる。典型的には、哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって付着した分岐した二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wright et al.,TIBTECH,15:26-32(1997)を参照されたい)。オリゴ糖は、マンノース、N-アセチルグルコサミン(N-acetyl glucosamine、GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸などの様々な炭水化物、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付着したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体のFc領域のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有するバリアントを作成することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、親抗体のバリアントであり得、バリアントは、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着したフコースを欠く炭水化物構造を含む。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、約1%~約80%、約1%~約65%、約5%~約65%、又は約20%~約40%であり得る。フコースの量は、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付着した全ての糖構造(例えば、複合、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって、決定することができる(例えば、国際公開第2008/077546号を参照されたい)。Asn297は、Fc領域内のおよそ297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す。しかしながら、Asn297は、抗体内の軽微な配列バリエーションに起因して、約±3個のアミノ酸で297位の上流又は下流、すなわち、294位と300位との間に位置する場合もある。
【0127】
いくつかの実施形態では、フコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号又は同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化された」又は「フコース欠乏」抗体及びそれらを調製するための関連する方法の例は、例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、国際公開第2000/61739号、同第2001/29246号、同第2003/085119号、同第2003/084570号、同第2005/035586号、同第2005/035778号、同第2005/053742号、同第2002/031140号、Okazaki et al.,J.Mol.Biol.,336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)に開示されている。
【0128】
脱フコシル化された抗体を産生するために有用な細胞株としては、タンパク質フコシル化が欠乏しているLed 3 CHO細胞(例えば、Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys,249:533-545(1986)、米国特許出願公開第2003/0157108号及び国際公開第2004/056312号を参照されたい)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)が含まれる。
【0129】
Fc領域バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、Fc領域内に1つ以上のアミノ酸改変(すなわち、Fc領域バリアント)を含むことができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸残基位置にアミノ酸置換を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。本開示の抗IL1RAP抗体とともに有用である、当該技術分野で公知の広範囲のFc領域バリアントを以下に記載する。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体は、改変されたエフェクター機能を有するFc領域バリアントである。いくつかの実施形態では、改変されたエフェクター機能を有する抗体は、親抗体のエフェクター機能のうちの(全てではないが)いくつかを保有するか、減少したエフェクター機能を保有するか、又はいずれのエフェクター機能も保有していない(例えば、エフェクターレスである)。エフェクターレスFc領域バリアントは、エフェクター機能(ADCCなど)が不必要若しくは有害であり、かつ/又は抗体のインビボ半減期が重要である、特定の用途のためにより望ましい。
【0131】
低減したエフェクター機能を有するか、又はエフェクターレスであるFc領域バリアント抗体は、以下のFc領域位置:238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上にアミノ酸置換を含むことができる。(例えば、米国特許第6,737,056号を参照されたい)。かかるFc領域バリアントは、位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上にアミノ酸置換を含むことができる。かかるFc領域バリアントは、残基265及び297の両方のアラニンへの置換を含むこともできる(例えば、米国特許第7,332,581号を参照されたい)。実施例及び本明細書の他の箇所に開示されるように、いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、エフェクターレスFc領域バリアントである。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体のエフェクターレスFc領域バリアントは、アミノ酸置換N297Gを含む。
【0132】
改善又は減退したFcRへの結合を有するFc領域バリアントは、例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312号、及びShields et al.,J.Biol.Chem.,276(9):6591-6604(2001)に開示されている。改善されたADCCを有するFc領域バリアントは、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/又は334位(EU番号付けに基づく)に1つ以上のアミノ酸置換を含むことができる。改変された(すなわち、改善若しくは減退した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を有するFc領域バリアントは、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.,J.Immunol.,164:4178-4184(2000)に記載されている。増加した半減期及び改善された新生児Fc受容体(FcRn)への結合を有するFc領域バリアントは、例えば、米国特許出願公開第2005/0014934(A1)号(Hinton et al.)に開示されている。かかるFc領域バリアントは、位置:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、及び434のうちの1つ以上にアミノ酸置換を含む。増加した半減期を有する他のFc領域バリアントは、例えば、米国特許第7,658,921(B2)号(Dall’Acqua et al.)に記載されている、252位、254位、及び256位におけるYTE変異のセット(すなわち、M252Y/S254T/T256E)を含む。実施例及び本明細書の他の箇所に開示されるように、いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、YTE変異のセットを含むFc領域バリアントである。Fc領域バリアントの他の例は、例えば、米国特許第5,648,260号及び同第5,624,821号、並びに国際公開第94/29351号に見出され得る。
【0133】
本明細書の他の箇所に記載されるように、天然に存在する抗体のFc領域は、典型的には、447位にC末端リジン(Lys447)を含む。しかしながら、このC末端リジンは、しばしば、酵素的切断(例えば、CHO細胞における産生)に起因して、細胞培養における組換え抗体の産生中にFc領域から切断される。したがって、C末端リジンを有するFc領域を含むものとして本明細書に記載される抗IL1RAP抗体のうちのいずれかは、C末端リジンがないことを除いてFc領域を含む同一の抗IL1RAP抗体も含むことが意図される。同様に、C末端リジンがないFc領域を含むものとして本明細書に記載される抗IL1RAP抗体のうちのいずれかは、C末端リジンを有することを除いてFc領域を含む同一の抗IL1RAP抗体も含むことが意図される。
【0134】
一般的に、インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害アッセイを実行して、Fc領域バリアントにおけるCDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,83:7059-7063(1986)を参照されたい)及びHellstrom,et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,82:1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.,166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ方法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,Calif.、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega、Madison,Wis.)を参照されたい)。かかるアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、又は加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,95:652-656(1998)に開示されているものなどの動物モデルにおいて評価され得る。抗体がC1qに結合することができず、したがって、CDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイも実行され得る。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1997)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101,1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood,103:2738-2743(2004)を参照されたい)。当該技術分野で公知の方法を使用して、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定を実施することができる(例えば、Petkova,et al.,Inti.Immunol.,18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0135】
システイン操作バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗IL1RAP抗体は、反応性チオール基を作成するように、具体的な非CDR位置においてシステイン残基で置換され得ることが企図される。かかる操作された「チオMAb」は、本明細書の他の箇所に記載されるように、抗体を、例えば、薬物部分又はリンカー・薬物部分にコンジュゲートし、それによって、免疫複合体を作成するために使用することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成することができる。いくつかの実施形態では、以下の抗体残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちのいずれか1つ以上を、システインで置換することができる。
【0136】
誘導体化バリアント
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、非タンパク質性部分で更に修飾(すなわち、誘導体化)され得る。抗体の誘導体化に好適な非タンパク質性部分としては、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸ホモポリマー又はランダムコポリマー、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、メトキシ-ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドを使用して、抗体の修飾を実行することができる。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐又は非分岐であり得る。抗体に付着したポリマーの数は、変化し得、1つより多いポリマーが付着している場合、それらは、同じ又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、抗体の特定の特性又は機能、例えば、抗体誘導体が定義された条件下で治療法において使用されるかを含むが、これらに限定されない、考慮事項に基づいて決定することができる。
【0137】
免疫複合体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、免疫複合体とすることもでき、免疫複合体は、1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗IL1RAP抗体を含む。本開示によって企図される好適な細胞毒性剤には、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体が含まれる。
【0138】
いくつかの実施形態では、免疫複合体は、本明細書に記載される抗IL1RAP抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate、ADC)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫複合体は、IL-1、IL-33、IL-36、及び/又はIL1RAP媒介性疾患若しくは状態の治療のための薬物又は治療剤にコンジュゲートされた本明細書に記載される抗IL1RAP抗体を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗IL1RAP抗体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質、ツルレイシ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むが、これらに限定されない、酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートされ得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫複合体は、放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗IL1RAP抗体(すなわち、放射性複合体)を含む。様々な放射性同位体が、かかる放射性複合体の産生のために利用可能である。例としては、211At、1311、1251、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、及びLuの放射性同位体が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、シンチグラフィー検出のための放射性同位体、又はNMR検出若しくはMRIのためのスピン標識を含み得る。適切な放射性同位体又はスピン標識には、1231、1311、11In、130、19F、15N、170、Gd、Mn、及びFeの様々な同位体が含まれ得る。
【0142】
タンパク質にコンジュゲートするために好適な様々な周知の二官能性試薬及び化学物質を使用して、抗IL1RAP抗体及び細胞毒性剤の免疫複合体を作製することができる。かかる試薬には、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionate、SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(succinimidyl-4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate、SMCC)、イミノチオラン(iminothiolane、IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジポイミド酸ジメチルHQ)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス-(p-アジドベンゾイル)-ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
本開示の免疫複合体を調製するための試薬には、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)などの市販の「架橋」試薬も含まれ得る(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aを参照されたい)。
【0144】
合成抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体は、代替タンパク質足場又は人工ポリマー足場などの免疫グロブリン足場又はフレームワーク以外の足場又はフレームワークにグラフトされた抗IL1RAP免疫グロブリン(例えば、CDR-L1など)由来のCDRのセットを含む、合成抗体であり得る。
【0145】
本開示の合成抗体の調製のために企図される例示的な代替タンパク質足場には、フィブロネクチン、ネオカルジノスタチンCBM4-2、リポカリン、T細胞受容体、プロテインAドメイン(プロテインZ)、Im9、TPRタンパク質、ジンクフィンガードメイン、pVIII、トリ膵臓ポリペプチド、GCN4、WWドメインSrc相同ドメイン3、PDZドメイン、TEM-1β-ラクタマーゼ、チオレドキシン、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、PHD-フィンガードメイン、CL-2、BPTI、APPI、HPSTI、エコチン、LACI-D1、EDTI、MTI-II、サソリ毒素、昆虫ディフェンシン-Aペプチド、EETI-II、Min-23、CBD、PBP、シトクロムb-562、Edi受容体ドメイン、γ-クリスタリン、ユビキチン、トランスフェリン、及び/又はC型レクチン様ドメインが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0146】
合成抗体に有用な例示的な人工ポリマー(非タンパク質)足場は、例えば、Fiedler et al.,(2014)「Non-Antibody Scaffolds as Alternative Therapeutic Agents,」in Handbook of Therapeutic Antibodies(eds.S.DObel and J.M.Reichert),Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.;Gebauer et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,13:245-255(2009)、Binz et al.,Nat.Biotech.,23(10):1257-1268(2005)に記載されている。
【0147】
組換え方法及び組成物
抗体産生の分野で周知の組換え方法及び材料を使用して、本開示の抗IL1RAP抗体を産生することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、抗IL1RAP抗体をコードする単離された核酸を提供する。核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体をコードする核酸配列を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAP抗体をコードする核酸配列を含む宿主細胞が提供される。一実施形態では、宿主細胞は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む、ベクターで形質転換されている。別の実施形態では、宿主細胞は、抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターで形質転換されている。
【0148】
組換え方法のいくつかの実施形態では、使用される宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary、CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、YO、NSO、Sp20)などの真核細胞である。一実施形態では、抗IL1RAP抗体を作製する方法が提供され、本方法は、抗体の発現に好適な条件下で、上記に提供される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択で、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することとを含む。
【0149】
簡潔に説明すると、抗IL1RAP抗体の組換え産生は、(例えば、本明細書に記載される)抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために、この核酸を1つ以上のベクターに挿入することによって実行される。かかる核酸は、当該技術分野で周知の従来の手順を使用して(例えば、所望の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定される。抗体をコードするベクターをクローニング又は発現するための好適な宿主細胞及び培養方法は、当該技術分野で周知であり、原核細胞又は真核細胞を含む。典型的には、発現後、抗体は、可溶性画分中の細胞ペーストから単離され、更に精製され得る。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌及び酵母株を含む、抗体をコードするベクターのための好適なクローニング又は発現宿主である(例えば、Gerngross,Nat.Biotech.,22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.,24:210-215(2006)を参照されたい)。
【0150】
本開示のグリコシル化された抗IL1RAP抗体の発現のための好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来し得る。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる(例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、及び同第7,125,978号を参照されたい。
【0151】
本開示の抗IL1RAP抗体の産生に有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980)を参照されたい)、YO、NSO及びSp2/0などの骨髄腫細胞株、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVI系(COS-7)、ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59(1977)に記載されている293又は293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(baby hamster kidney cell、BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎細胞(CVI)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.,Annals N Y.Acad.Sci.,383:44-68(1982))、MRC5細胞、及びFS4細胞が挙げられる。抗体産生に好適である有用な哺乳動物宿主細胞株の一般論評については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Antibody Engineering,Humana Press,Totowa,N.J.),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0152】
抗IL1RAP抗体の医薬組成物及び製剤
本開示は、抗IL1RAP抗体を含む医薬組成物及び医薬製剤も提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬製剤を提供する。かかる医薬製剤は、所望の純度を有する抗IL1RAP抗体を、1つ以上の薬学的に許容される担体と混合することによって、調製することができる。典型的には、かかる抗体製剤は、水溶液(例えば、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号を参照されたい)として、又は凍結乾燥製剤(例えば、米国特許第6,267,958号を参照されたい)として調製することができる。
【0153】
本明細書に開示される抗IL1RAP抗体を含む組成物及び製剤は、製剤が投与される対象において治療されている特定の適応症に有用である、抗IL1RAPに加えた他の活性成分(すなわち、治療剤)を更に含み得ることも企図される。好ましくは、任意の追加の治療剤は、抗IL1RAP抗体活性を補完する活性を有し、活性は、互いに悪影響を及ぼさない。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供し、IL-1、IL-33、IL-36、及び/又はIL1RAP媒介性疾患若しくは状態の治療に有用な治療剤を更に含む。いくつかの実施形態では、例えば、適応疾患ががんである場合、治療剤は、特定のがんに適切な化学療法剤である。いくつかの実施形態では、組成物中の更なる治療剤は、IL-1、IL-33、IL-36シグナル伝達経路のアンタゴニストである。
【0154】
薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントにとって非毒性である。広範なかかる薬学的に許容される担体が、当該技術分野で周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照されたい)。本開示の製剤において有用な例示的な薬学的に許容される担体には、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメソニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0155】
本開示の製剤において有用な薬学的に許容される担体は、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(例えば、rHuPH20又はHYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などの可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(soluble neutral-active hyaluronidase glycoprotein、sHASEGP)(例えば、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号を参照されたい)などの間質薬物分散剤を含むこともできる。
【0156】
更なる治療剤及び活性成分が、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、製剤は、抗体及び/又は他の活性成分の徐放性調製物であり得る。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられ、これらのマトリクスは、成形された物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0158】
典型的には、対象に投与される本開示の製剤は、無菌である。無菌製剤は、周知の技術を使用して、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって、容易に調製され得る。
【0159】
治療の使用及び方法
本開示の抗IL1RAP抗体を含む組成物又は製剤のうちのいずれかは、IL1RAPに特異的に結合する、及び/又はIL1RAPの活性を遮断する、具体的には、IL-1ファミリーサイトカイン、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β及び/又はIL-36Γによる細胞内シグナル伝達を媒介するIL1RAPの能力を遮断する能力を利用する、治療方法などにおける任意の方法又は使用のために使用され得ることが企図される。IL1RAPによって媒介される細胞内シグナル伝達経路は、IL-1、IL-33、及びIL-36経路を含み、より具体的には、少なくとも、サイトカインアゴニストIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γによって刺激されるシグナル伝達経路を含む。IL1RAP媒介性シグナル伝達経路の阻害は、本開示の実施例に記載されるレポーター細胞アッセイ及び初代細胞ベースのブロッキングアッセイを含む公知の細胞ベースのブロッキングアッセイを使用して、インビトロでアッセイされ得る。
【0160】
IL1RAP媒介性疾患には、IL1RAPがシグナル伝達の媒介において共受容体として作用するIL-1ファミリーのサイトカイン:IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γの体液又は組織中の上昇したレベルに関連する任意の疾患又は状態が含まれ得る。IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γの上昇したレベルは、例えば、特定の細胞若しくは組織で通常見出されるレベルを超えるレベルを含むことができるか、又はこれらのサイトカインを通常発現しない細胞若しくは組織中の任意の検出可能なレベルであり得る。
【0161】
典型的には、IL RAP媒介性状態又は疾患は、以下の特徴を示す:(1)状態又は疾患に関連する病理は、IL-la、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36Γの投与によって、並びに/若しくはIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36Γの発現のアップレギュレーションによって、動物において実験的に誘導され得る、(2)実験動物モデルにおいて生成された状態又は疾患に関連する病理は、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36Γの作用を阻害することが知られている薬剤によって阻害され得る。
【0162】
IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36Γは、炎症性サイトカインであることが知られているが、共受容体としてIL RAPによって媒介されるこれらのサイトカインによって刺激されるIL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路の異常機能は、一般に、炎症性疾患、自己免疫疾患、呼吸器疾患、代謝障害、感染症、及びがんを含むが、これらに限定されない、広範囲の疾患及び状態に関連することが知られている。
【0163】
例えば、IL-33シグナル伝達の異常機能に関連し、その結果として、IL1RAPの共受容体活性によっても媒介される、広範囲の状態及び疾患には、限定されないが、以下が含まれ、媒介性障害は、炎症状態(例えば、喘息、気道過敏性、気道炎症、敗血症、敗血症性ショック、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、関節リウマチ、又は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD))、免疫障害(例えば、喘息、関節リウマチ、アレルギー、アトピー性アレルギー、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎、乾癬、全身性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、糖尿病、又は肝疾患)、線維性障害(例えば、特発性肺線維症(IPF))、好酸球性疾患(例えば、好酸球性食道炎などの好酸球関連胃腸障害)、感染症(例えば、蠕虫、リーシュマニアなどの原生動物、又はRSV若しくはインフルエンザなどのウイルス感染症)、疼痛(例えば、炎症性疼痛)、中枢神経系障害(例えば、アルツハイマー病)、固形腫瘍(例えば、乳房腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、腎臓腫瘍、肝臓腫瘍、膵臓腫瘍、胃腫瘍、腸腫瘍、脳腫瘍、骨腫瘍、又は皮膚腫瘍)、又は眼科障害であり得る。Il-33によって媒介される具体的な眼科障害には、滲出型加齢黄斑変性症(AMD)、萎縮型AMD、中間型AMD、進行型AMD、及び地図状萎縮(geographic atrophy、GA))を含む、AMD、網膜症(例えば、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy、DR)、未熟児網膜症(ROP)、及び高地DR)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、糖尿病黄斑浮腫、ドライアイ疾患、ベーチェット病、網膜剥離、緑内障、ぶどう膜炎(例えば、感染性及び非感染性ぶどう膜炎)、網膜色素変性、レーバー先天性黒内障、スタルガルト病、外傷性眼球損傷、並びに結膜炎(例えば、感染性結膜炎、非感染性結膜炎、及びアレルギー性結膜炎)が含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
同様に、IL-1の異常機能に関連し、その結果として、IL1RAPの共受容体活性によっても媒介される、広範囲の状態及び疾患には、急性膵炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、AID誘発型悪液質を含む悪液質/拒食症、喘息及び他の肺疾患、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性血管炎、慢性疲労症候群、クロストリジウム関連下痢を含むクロストリジウム関連疾患、うっ血性心不全、冠動脈再狭窄、心筋梗塞、心筋機能障害(例えば、敗血症に関連する)、及び冠動脈バイパス移植を含む、冠動脈の状態及び適応症、多発性骨髄腫並びに骨髄性白血病(例えば、AML又はCML)及び他の白血病などのがん、並びに腫瘍転移、糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病)、子宮内膜症、発熱、線維筋痛症、糸球体腎炎、移植片対宿主病/移植片拒絶反応、出血性ショック、痛覚過敏、炎症性腸疾患、変形性関節症、乾癬性関節炎、及び関節リウマチを含む、関節の炎症状態、例えば、角膜移植に関連し得るような炎症性眼疾患、脳虚血(例えば、各々神経変性につながり得る、外傷、てんかん、出血、又は脳卒中の結果としての脳損傷)を含む虚血、川崎病、学習障害、肺疾患(例えば、ARDS)、多発性硬化症、ミオパシー(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝)、神経毒性(例えば、HIVによって誘導される)、骨粗鬆症、がん関連疼痛を含む疼痛、パーキンソン病、歯周病、早期陣痛、乾癬、再灌流傷害、敗血症性ショック、放射線療法からの副作用、一時的下顎関節疾患、睡眠障害、ぶどう膜炎、又は挫傷、捻挫、軟骨損傷、外傷、整形外科手術、感染若しくは他の疾患過程から生じる炎症状態が含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路のアンタゴニスト又は阻害剤として作用する薬剤は、限定されないが以下を含む、一連の疾患及び状態:ざ瘡、急性重症潰瘍性大腸炎、成人発症スティル病、アレルギー性鼻炎、全身性硬化症、関節炎(痛風性、若年性、変形性、及びリウマチを含む)、関節炎痛、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性湿疹、ベーチェット病、悪液質、がん(乳がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、及び膵臓がんを含む)、慢性閉鎖性肺疾患、ドライアイ症候群、家族性寒冷自己炎症症候群、家族性地中海熱、食物アレルギー、汎発性膿疱性乾癬、汗腺膿瘍、高lgD症候群、高尿酸血症、マックル・ウェルズ症候群、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、筋骨格系疼痛、掌蹠膿疱症、末梢血管疾患、リウマチ性多発筋痛症、鼻ポリープ、乾癬、壊疸性膿皮症、再狭窄、鎌状赤血球貧血症、静脈洞炎、TNF受容体関連周期性症候群、2型糖尿病、及び潰瘍性結腸炎の治療のために臨床開発中である。
【0166】
本開示の抗IL1RAP抗体を含む組成物又は製剤のうちのいずれかは、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路の異常機能に関連し、したがって、IL1RAPの共受容体活性によって媒介される、上記に列挙される疾患又は状態のうちのいずれかの治療のための方法又は使用において使用され得ることが企図される。一般に、これらの状態及び疾患には、炎症性疾患、自己免疫疾患、呼吸器疾患、代謝障害、感染症、及びがんが含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の抗IL1RAPを含む組成物又は製剤は、ざ瘡、急性膵炎、急性重症潰瘍性結腸炎、成人発症スティル病、加齢黄斑変性症(AMD)、気道過敏性、気道炎症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アナフィラキシー、関節炎痛、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、自己免疫性血管炎、ベーチェット病、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、悪液質/拒食症、軟骨損傷、脳虚血、慢性疲労症候群、慢性閉鎖性肺疾患、クロストリジウム関連疾患、結腸がん、うっ血性心不全、結膜炎、冠動脈バイパス移植、冠動脈再狭窄、クローン病、糖尿病、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、ドライアイ疾患、子宮内膜症、好酸球性消化管疾患、好酸球性食道炎、家族性寒冷自己炎症症候群、家族性地中海熱、発熱、線維筋痛症、線維性障害、食物アレルギー、汎発型膿疱性乾癬、緑内障、糸球体腎炎、痛風性関節炎、移植片対宿主病、蠕虫感染症、出血性ショック、汗腺膿瘍、痛覚過敏、高IgD症候群、高尿酸血症、特発性肺線維症(IPF)、がん関連疼痛、感染症、炎症性腸疾患(IBD)、挫傷から生じる炎症状態、角膜移植に関連する炎症性眼疾患、炎症性疼痛、インフルエンザ、腸がん、虚血、若年性関節炎、川崎病、腎臓がん、レーバー先天性黒内障、肝臓がん、肝疾患、肺がん、マックル・ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、多発性硬化症、筋骨格系疼痛、骨髄性白血病及び他の白血病、心筋機能障害、筋疾患、鼻ポリープ、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、神経毒性、非感染性結膜炎、非小細胞肺がん、整形外科手術、変形性関節症、骨粗鬆症、疼痛、掌蹠膿疱症、膵臓がん、パーキンソン病、歯周病、末梢血管疾患、リウマチ性多発筋痛症、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、早期陣痛、前立腺がん、原虫感染症、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、再灌流傷害、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、再狭窄、網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症(ROP)、関節リウマチ、敗血症性ショック、鎌状赤血球貧血症、放射線療法からの副作用、静脈洞炎、皮膚がん、睡眠障害、挫傷、スタルガルト病、胃がん、一時的下顎関節疾患、TNF受容体関連周期性症候群、移植片拒絶反応、外傷、外傷性眼球損傷、2型糖尿病、潰瘍性結腸炎、及びぶどう膜炎から選択される状態又は疾患の治療で使用するための方法、治療法、薬剤、診断、又は使用において使用することができる。
【0168】
以下の実施例を含む本明細書に開示されるように、本開示の抗IL1RAP抗体は、IL-1、IL-33、及びIL-36シグナル伝達経路を含む、IL1RAPによって媒介される細胞内シグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は遮断する能力を有する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるIL1RAP媒介性疾患又は状態を治療する方法であって、対象に治療有効量の本開示の抗IL1RAP抗体を投与すること、又は治療を必要とする対象に、本開示の抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0169】
本明細書の他の箇所に開示されるように、本開示の抗IL1RAP抗体は、IL-1、IL-33、及びIL-36シグナル伝達経路を減少させる、阻害する、及び/又は遮断する能力を有する。したがって、本開示は、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路の減少、阻害、及び/又は遮断に応答する疾患及び状態を治療する方法も提供する。
【0170】
加えて、本開示の抗IL1RAP抗体は、アゴニストIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36Γによって刺激される細胞内シグナル伝達を減少させる、阻害する、及び/又は遮断する能力を有する。したがって、本開示は、アゴニストIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/又はIL-36γによって刺激される細胞内シグナル伝達の減少、阻害、及び/又は遮断に応答する疾患及び状態を治療する方法も提供する。
【0171】
IL1RAP媒介経路でもある、IL-1シグナル伝達経路は、多くの形態のがんと関連付けられている。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の本開示の抗IL1RAP抗体を投与すること、又は対象に、本開示の抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0172】
IL1RAP媒介経路でもある、IL-1、IL-33、及び/又はIL-36シグナル伝達経路の3つ全ては、喘息と関連付けられている。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、対象における喘息を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の本開示の抗IL1RAP抗体を投与すること、又は対象に、本開示の抗IL1RAP抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0173】
いくつかの実施形態では、本開示は、IL1RAP媒介性疾患、IL-1、IL-33、及びIL-36シグナル伝達経路媒介性疾患、並びに/又はアゴニストIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36α、IL-36β、及び/若しくはIL-36γによって刺激される細胞内シグナル伝達によって媒介される疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。かかる治療方法の実施形態では、方法は、治療を必要とする対象に、治療有効量の抗IL1RAP抗体、又は本明細書に記載される抗IL1RAP抗体を含む組成物若しくは医薬製剤を投与することを含む。
【0174】
本治療方法に従う抗体、組成物、又は医薬製剤の投与は、対象におけるIL1RAP媒介性疾患から対象を保護する、及び/又はその進行を治療する抗体誘導性治療効果を提供する。いくつかの実施形態では、本治療方法は、IL1RAP媒介性疾患又は状態を予防及び/又は治療するための、当業者に公知である1つ以上の追加の治療剤又は治療の投与を更に含むことができる。1つ以上の追加の薬剤の投与を含むかかる方法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じ又は別個の製剤に含まれる)及び別個の投与を包含することができ、その場合、抗体組成物又は製剤の投与は、追加の治療剤の投与の前に、それと同時に、及び/又はその後に起こり得る。
【0175】
本開示の治療方法のいくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体又は抗IL1RAP抗体を含む医薬製剤は、薬剤を全身又は所望の標的組織に送達する任意の投与様式によって対象に投与される。全身投与は、一般に、抗体又はその製剤が対象の循環系に進入し、したがって、代謝及び他の同様のプロセスを受けるように、所望の標的部位、組織、又は臓器内への直接投与以外の部位における対象への抗体の任意の投与様式を指す。
【0176】
したがって、本開示の治療方法において有用な投与様式には、注射、注入、点滴、及び吸入が含まれ得るが、これらに限定されない。注射による投与には、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、髄腔内、及び胸骨内注射並びに注入が含まれ得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体の医薬製剤は、抗体が腸内の不活性化から保護されるように製剤化される。したがって、本治療方法は、製剤の経口投与を含むことができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、薬剤としての本開示の抗IL1RAP抗体を含む組成物又は製剤の使用も提供される。加えて、いくつかの実施形態では、本開示は、薬剤、具体的には、IL1RAP媒介性疾患を治療、予防、又は抑制するための薬剤の製造又は調製における抗IL1RAP抗体を含む組成物又は製剤の使用も提供する。更なる実施形態では、薬剤は、IL1RAP媒介性疾患を有する個体に有効量の薬剤を投与することを含む、IL1RAP媒介性疾患を治療、予防、又は抑制するための方法で使用するためのものである。特定の実施形態では、薬剤は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は治療を更に含む。
【0179】
更なる実施形態では、薬剤は、IL1RAP媒介性疾患を治療、抑制、又は予防するために、有効量の薬剤を対象に投与することを含む、対象におけるIL1RAP媒介性疾患を治療、抑制、又は予防する際に使用するためのものである。
【0180】
IL1RAP媒介性疾患又は状態の予防又は治療のために、(単独で、又は1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用されるときの)本開示の組成物及び製剤に含まれる抗IL1RAP抗体の適切な投薬量は、治療されている具体的な疾患又は状態、疾患の重症度及び経過、抗体が予防又は治療目的のために投与されるか、患者に投与された以前の治療法、患者の病歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存するであろう。本明細書に記載される組成物及び製剤に含まれる抗IL1RAP抗体は、一度に、又は一連の治療にわたって患者に好適に投与することができる。単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書で企図される。
【0181】
疾患のタイプ及び重症度に応じて、本開示の製剤中の約1pg/kg~15mg/kgの抗IL1RAP抗体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続注入によるかにかかわらず、ヒト対象への投与のための初期候補投薬量である。一般に、抗体の投与される投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。いくつかの実施形態では、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10 mg/kg(若しくはそれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量が、患者に投与され得る。
【0182】
投薬量投与は、対象の状態に応じて、数日以上にわたって維持することができ、例えば、投与は、当該技術分野で公知の方法によって決定されるように、IL1RAP媒介性疾患が十分に治療されるまで継続することができる。いくつかの実施形態では、初期高負荷用量が投与され、続いて、1回以上の低用量が投与され得る。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であり得る。投薬量投与の治療効果の進行は、従来の技法及びアッセイによって監視することができる。
【0183】
したがって、本開示の方法のいくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体の投与は、約1mg/kg~約100mg/kgの1日投薬量を含む。いくつかの実施形態では、抗IL1RAP抗体の投薬量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約30mg/kgの1日投薬量を含む。
【0184】
加えて、本開示の抗IL1RAP抗体は、IL1RAPの検出のためのアッセイ方法で使用され得る。高親和性でヒトIL1RAPに結合するそれらの能力に起因して、本明細書に開示される抗IL1RAP抗体は、広範囲のアッセイ方法及びフォーマットに適切である。抗IL1RAP抗体が、IL1RAPの検出及び定量のための競合結合アッセイ、直接及び間接的サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイ、並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)(Sola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158,CRC Press,Inc.を参照されたい)などの任意の公知のアッセイ方法で用いられ得ることが企図される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、生体試料中のIL1RAPのレベルを検出するための方法であって、試料を本明細書に開示される抗IL1RAP抗体と接触させるステップを含む、方法を提供する。更に、いくつかの実施形態では、生体試料中のIL1RAPのレベルを検出する方法は、例えば、ヒト対象由来の生体試料中のIE 1 RAP媒介性状態又は疾患を検出及び/又は診断するために使用され得ることが企図される。
【実施例】
【0185】
実施例1:抗IL-1RAP抗体の生成
方法
組換え標的抗原
全長ヒトIL-1RAP(UniProt受託番号:Q9NPH3、配列番号6)及び全長カニクイザルIL-1RAP(受託番号P59822、配列番号7)をコードするヒトコドン最適化配列が、Twist Biosciences(San Francisco,USA)によって合成された。ヒトIL-1RAP(残基21~359、配列番号1)及びカニクイザルIL-1RAP(残基21~359、配列番号2)の可溶性細胞外領域が、修飾pcDNA(商標)3.1プラスミド(ThermoFisher Scientific、カタログ番号V79020)においてクローニングされ、C末端Avitag(商標)(Avidity LLC)、続いて、2つのタグ(ヒトIL-1RAP-ECD-Avi-His及びカニクイザルIL-1RAP-ECD-Avi-Hisと略称される)の間にGly3リンカー配列を有する10-Hisタグを用いて、タンパク質を生成した。
【0186】
発現ベクターは、生成物分泌を駆動するためのマウスVJ2Cリーダーペプチド並びにOriP配列を担持していた。タンパク質発現のために、ヒトIL-1RAP-ECD-Avi-His及びカニクイザルIL-1RAP-ECD-Avi-His(残基21~359、それぞれ、配列番号1及び配列番号2)をコードするプラスミド、及び非コードプラスミドが、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine、PEI、Polysciences)を使用して、懸濁適応HEK293-EBNA細胞(ATCC-LGL standards、Teddington,UK、カタログ番号CRL-10852)に同時トランスフェクトされた。簡潔に説明すると、細胞を、0.1%Pluronic F-68(Gibco)を補充したRPMI 1640(Biowest)中、800万細胞/mLで調製した。次いで、細胞にDNA-PEI混合物を37℃でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、フェノールレッド及び4mMのL-グルタミンを補充したEX-CELL(登録商標)293(Sigma Aldrich)中で1:1に希釈し、37℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら5日間インキュベートした。発現後、清澄化した上清を遠心分離及び濾過によって調製し、1M水酸化ナトリウムを使用して、pHを7.4(4℃)に調整した。Ni-Sepharose Excellビーズ(GE Healthcare)を、清澄化した上清に添加し、穏やかに撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。次に、混合物を、重力流精製のためにEcono-Column(Bio-Rad Laboratories)上に装填した。ビーズを、最初にpH7.4の1X PBS(1×10CV)で洗浄し、次いで、20mMイミダゾール(2×10CV)を補充した1X PBSで洗浄し、40mM(10×1CV)、80mM(15×1CV)、250mM(4×2CV)、及び500mM(2×2CV)イミダゾールを補充したpH7.4の1X PBSを順次使用して、段階溶出プロトコルに従ってタンパク質を溶出した。画分をSDS-PAGE上で分析し、見かけの純度に基づいて選択した。次いで、目的の画分をプールし、4℃でpH7.4の1X PBSに対して透析した。SDS-PAGE、SE-HPLC及びエンドトキシン測定によって、タンパク質の品質を評価した。簡潔に説明すると、Waters 2998 PDA検出器(Waters)を備えたWaters Alliance 2695 HPLCシステム上で、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、1mL/分の流速における溶離液としてpH6.8の0.15M塩化ナトリウムとともに、室温でTosoh Bioscience TSKgel G3000SWxlカラム(カタログ番号08541、Tosoh Bioscience)を使用して、SE-HPLCを実施し、214nm及び280nmで監視した。カブトガニ血球抽出物(Limulus amebocyte lysate、LAL)ベースのアッセイを利用したCharles RiverからのMulti-Cartridge System Endosafe-MCSを使用して、0.5EU/mgを下回る細菌内毒素レベルを確認した。本明細書に記載されるヒト及びカニクイザルIL-1RAP-ECD-Avi-Hisタグ付き融合タンパク質は、それぞれ、配列番号1及び2を有する。
【0187】
ニワトリIL-1RAP(受託番号XP_422719.4、配列番号3)及びニワトリ/ヒトキメラ(配列番号4及び5)の細胞外ドメインをコードするヒトコドン最適化配列が、Eurofins(Ebersberg,Germany)によって合成された。ニワトリIL-1RAP(残基139~478、配列番号3)及びニワトリ/ヒトIL-1RAPキメラ(IL-1RAP-ECD(ggD1(S139-P246)-hsD2(V132-V233)-hsD3(V234-E359))-Avi-His及びIL-1RAP-ECD(ggD1(S139-H260)-ggD2(S261-V349)-hsD3(V243-E359))-Avi-His、それぞれ、配列番号4及び5)の可溶性細胞外領域が、修飾pcDNA(商標)3.1プラスミド(ThermoFisher Scientific、カタログ番号V79020)においてクローニングされ、C末端Avitag(商標)(Avidity LLC)、続いて、2つのタグ(ggIL-1RAP-ECD-Avi-His、IL-1RAP-ECD(ggDl(S139-P246)-hsD2(V132-V233)-hsD3(V234-E359))-Avi-His、及びIL-1RAP-ECD(ggD1(S139-H260)-ggD2(S261-V349)-hsD3(V243-E359))-Avi-Hisと略称される)の間にGly3リンカー配列を有する10-Hisタグを用いて、タンパク質を生成した。発現ベクターは、生成物分泌を駆動するためのマウスVJ2Cリーダーペプチド並びにOriP配列も担持していた。タンパク質発現のために、前述のプラスミド及び非コードプラスミドが、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine、PEI、Polysciences)を使用して、懸濁適応HEK293-EBNA細胞(ATCC-LGL standards、Teddington,UK、カタログ番号CRL-10852)に同時トランスフェクトされた。簡潔に説明すると、細胞を、0.1%Pluronic F-68(Gibco)を補充したRPMI 1640(Biowest)中、800万細胞/mLで調製した。次いで、細胞にDNA-PEI混合物を37℃でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、フェノールレッド及び4mMのE-グルタミンを補充したEX-CELL(登録商標)293(Sigma Aldrich)中で1:1に希釈し、37℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら5日間インキュベートした。組換えタンパク質の精製は、500mMイミダゾールを補充した1X PBSで実施された溶出ステップを除いて、上記に記載されるものと同じステップに従った。上記に記載されるように、SDS-PAGE、SE-HPLC及びエンドトキシン測定によって、タンパク質の品質を評価した。本明細書に記載されるニワトリIL-1RAP-ECD-Avi-His、IL-1RAP-ECD(ggDl(S139-P246)-hsD2(V132-V233)-hsD3(V234-E359))-Avi-His及びIL-1RAP-ECD(ggD1(S139-H260)-ggD2(S261-V349)-hsD3(V243-E359))-Avi-Hisは、それぞれ、配列番号3、4及び5を有する。
【0188】
組換え細胞株
全長ヒトIL-1RAP(UniProt配列番号Q9NPH3、残基1~570、配列番号6)又は全長カニクイザルIL-1RAP(UniProt配列番号P59822、残基1~570、配列番号7)のいずれかのヒトコドン最適化配列を、修飾pcDNA(商標)3.1プラスミド(ThermoFisher Scientific、カタログ番号V79020)においてクローニングした。ベクターは、強化緑色蛍光タンパク質(enhanced Green Fluorescent Protein、eGFP)及びプロマイシン耐性遺伝子(介在リボソーム間進入部位(intercalated intraribosomal entry site、IRES)エレメントを有する)も含んだ。タンパク質発現のために、前述のプラスミドが、ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences)を使用して、CHO-S細胞(cGMPバンク保存、Invitrogen、カタログ番号A1136401)にトランスフェクトされた。簡潔に説明すると、細胞を、CD CHO(Gibco)中、200万細胞/mLで調製した。次いで、細胞にDNA-PEI混合物を37℃でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、4mMのE-グルタミンを補充したPowerCHO 2(Lonza)で1:1に希釈し、37℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら5日間インキュベートした。ヒト又はカニクイザルIL-1RAPの発現を、蛍光顕微鏡を用いてeGFPレポータータンパク質発現を監視することによって評価した。本明細書に記載されるヒト及びカニクイザルIL-1RAP-ECD-Avi-Hisタグ付き融合タンパク質は、それぞれ、配列番号6及び7を有する。
【0189】
ライブラリー生成
本明細書で使用されるライブラリーは、重鎖(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)に制限された多様性及び固定されたVκ3-15/Jκ1軽鎖を有する合成起源に由来した。ライブラリーは、VH1-69、VH3-23、VH3-15及びVH3-53抗体生殖系列に基づく4つの異なるサブライブラリーを含んでいた。CDRは、三量体オリゴヌクレオチドを使用してランダム化されている。CDR-H1及びCDR-H2を多様化するために使用されるプライマーは、各サブライブラリーについて設計され、それぞれ、Kabat残基27~35及び50~58において生殖系列特異的な天然に存在する多様性をコードした。CDR-H3は、15個のCDR-H3の長さ(6~20)及びKabat残基95~102における長さ特異的な天然に存在する多様性をコードするオリゴヌクレオチドのプールを使用して、ランダム化されている。多様化されたscFv断片は、天然のCDR-H3の長さ分布を模倣するようにプールされ、pNGLEN(自社修飾pUC119ファジミドベクター)にクローニングされており、結果として生じる連結反応物は、E.coliTG1細胞に電気穿孔されている。各サブライブラリーは、1.2×1010~1.7×1010の多様性を有し、4つのサブライブラリーは、5.6×1010の全多様性に達した。
【0190】
ライブラリー選択
各サブライブラリーからの精製されたファージ粒子を、プールし(2.5×1011個のプラーク形成単位/サブライブラリー)、3%(w/v)脱脂乳(3%MPBS)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて室温(room temperature、RT)で1時間ブロックした。Magnetic Dynabeads(登録商標)プロテインGビーズ(Invitrogen、カタログ番号10003D)及び200nMのヒトIgG1を、3%MPBS中で混合し、室温で1時間インキュベートした。ブロックされたファージを、IgG1でコーティングされたビーズに対して室温で1時間選択解除した。次いで、ファージを、50nMの組換えヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号ILP-H5256)と室温で2時間インキュベートした。抗原結合ファージを、プロテインGビーズ上に室温で30分間捕捉し、ビーズを、0.1%(v/v)Tweenを含有するPBS(PBS-Tween 0.1%)で5回、PBSで2回洗浄した。ファージを、100mMトリエチルアミンを用いて室温で10分間溶出し、pH8のTris-HCl 1Mを使用して中和した。溶出されたファージが、10mLの指数関数的に増殖するE.coliTG1細胞を感染させるために使用された。感染した細胞を、2YT培地内で、37℃及び100回転/分(rotation per minute、RPM)で1時間増殖させ、次いで、2YTAG(100pg/mLのアンピシリン及び2%グルコースを補充した2TY培地)寒天プレート上に広げ、30℃で一晩(overnight、ON)インキュベートした。コロニーをプレートから掻き取って10mLの2YTに入れ、-80℃で保存するために15%グリセロール(v/v)を添加した。600nmでのODが0.5に達するまで、グリセロールストックからのTG1細胞を、2YTAG培地内で37℃及び240RPMで増殖させた。次いで、37℃及び100RPMで1時間、10の感染多重度(multiplicity of infection、MOI)を使用して、細胞をM13K07ヘルパーファージに重複感染させた。次いで、培養培地を2YTAK(100pg/mLのアンピシリン及び50pg/mLのカナマイシンを補充した2YT培地)に交換し、細胞を30℃及び280RPMで更に一晩培養した。翌日、10μLのファージ含有無細胞上清を、後続回の選択に使用した。同じ実験設定を使用して、合計3回の選択を実行した。
【0191】
SPRによるscFvスクリーニング
表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)分析を使用して、scFvクローンの特異的結合活性を確認した。測定を、室温でBiacore 2000 Control Software v3.2を使用してBiacore 2000機器(Biacore、GE Healthcare)上で行い、同じ製造業者からのBiacore T200 Evaluation Software(v3.1)を用いて分析した。組換えヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号ILP-H5256)及び組換えマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質(Sino Biologicals、カタログ番号52657-M02H)を、個別に、pH4.5の酢酸緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100350)中で200nMの最終濃度に希釈し、その後、製造業者の推奨に従ってアミンカップリングキットを使用して、それぞれ、Fc2及びFc4上で、CM5センサーチップ(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100012)上で約1000共鳴単位(resonance unit、RUと略称される)のレベルまで固定化した。HBS-EP(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100188)を泳動緩衝液として使用した。濾過したペリプラズム抽出物を、共有結合したヒトIL-1RAP Fc及びマウスIL-1RAP Fc CM5センサーチップ上に直接注入した。試料を、流路1、2、3及び4(流路1及び3が基準として使用される)上に30μL/分の流速で3分間注入し、その後に、泳動緩衝液中で5分の解離時間が続いた。各結合事象後、表面を、30μL/分で1分間注入されたpH1.5の10mMグリシン溶液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100354)で再生した。各測定は、それぞれ、参照及び特異性のために、0濃度試料並びに無関係なscFvペリプラズム抽出物を含んだ。
【0192】
フローサイトメトリーによるscFvスクリーニング
ヒトIL-1RAPタンパク質(配列番号6)又はカニクイザルIL-1RAPタンパク質(配列番号7)を一過性に発現するCHO細胞へのscFvクローンの結合を、フローサイトメトリーによって評価した。3回目の選択からの個々のE.coliを採取し、96ウェルディープウェルプレート内の100pg/mLのアンピシリン及び0.1%グルコースを補充した2TY培地中で増殖させた。0.02mMのIPTGの添加、並びに30℃及び250RPMにおける一晩のインキュベーションによって、scFv発現を誘導した。細胞を遠心分離し、細菌ペレットをTES緩衝液(50mMのTris-HCl pH8、1mMのEDTA pH8、20%スクロース)中に再懸濁し、続いて、氷上で30分間インキュベートすることによって、ペリプラズム抽出物を得た。細胞破片を遠心分離によって除去し、scFv含有上清をフローサイトメトリー実験に使用した。IL-1RAP発現及び非トランスフェクトCHO細胞を、105細胞/ウェルの密度でマイクロタイタープレート内に播種した。次に、プレートを遠心分離して細胞上清を除去し、3%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有するPBS(PBS-BSA 3%)中で事前に1:1に希釈された100μLのペリプラズム抽出物を各ウェルに添加し、プレートを4℃で30分間更にインキュベートした。次いで、細胞をPBS-BSA 3%で洗浄し、PBS-BSA 3%中で1:200に希釈されたビオチン-ニワトリ抗c-Myc抗体(Gallus Immunotechカタログ番号ACMYC-B)と4℃で30分間インキュベートした。次に、細胞をPBS-BSA 3%で洗浄し、PBS-BSA 3%中で1:100に希釈されたストレプトアビジンAPC(eBioscience、カタログ番号17-4317)と4℃で30分間インキュベートした。最後に、FACSCaliburフローサイトメーター(BD biosciences)を使用して細胞蛍光を測定した。
【0193】
ELISAによるscFv競合
抗IL-1RAP抗体と競合するscFvクローンの能力をELISAによって評価した。ヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号ILP-H5256)を、PBS中1.5μg/mLで96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートをPBS-Tween 0.05%で3回洗浄し、PBS-BSA 3%を用いて室温で1時間ブロックした。ブロック及び洗浄した後、10ug/mLにおける50μLのFabをプレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。洗浄することなく、50μLのペリプラズム抽出物を添加し、プレートを室温で30分間更にインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、PBS-BSA 3%中で1:5000に希釈された50μLのビオチン-ニワトリ抗c-Myc抗体(Gallus Immunotechカタログ番号ACMYC-B)を室温で1時間添加した。洗浄した後、ストレプトアビジンHRPをPBS-BSA 0.3%中で1/8000に希釈し、室温で30分間プレートに添加した。次いで、プレートを洗浄し、TMB(Sigma)を使用して、アッセイを室温で5分間発現させた。H2SO4(Sigma)との反応を停止させた後、分光光度計を使用して、450nmでの吸光度を測定した。
【0194】
Fab及びIgG1 LALA発現
異なる抗体定常領域をコードするcDNAが、GENEART AG(Regensburg,Germany)によって遺伝子合成され、標準的な分子生物学技法を使用して修飾された。PCR産物を、適切なDNA制限酵素で消化し、精製し、CMVプロモーター及びウシホルモンポリアデニル化(ポリ(A))を担持する修飾pcDNA3.1プラスミド(Invitrogen)において連結した。発現ベクターは、エプスタイン-バーウイルスのプラスミド複製の起点であるoriP、及びコードされたポリペプチド鎖の分泌のためのマウスVJ2Cリーダーペプチドも担持した。scFvライブラリークローンをヒトIgG1 Fab断片又はヒトIgG1 LALA(L234A及びL235A置換を有するヒトIgG1、EU番号付け)に再フォーマットするために、そのファージライブラリーベクター中の各scFvクローンを使用して、その個々のVH cDNAをPCRによって増幅し、次に、VH PCR産物を、ヒトIgG1重鎖CHIドメインをコードするcDNAの上流又はヒトIgG1重鎖CHI、ヒンジ、CH2(L234A/L235A)及びCH3ドメインをコードするcDNAの上流で、上記に記載される修飾pcDNA 3.1ベクターにおいてクローニングした一方で、固定されたVκ3-15/Jκ1軽鎖(配列番号71)を、ヒトカッパ定常軽鎖ドメインをコードするcDNAの上流で、上記に記載される修飾pcDNA 3.1ベクターにおいてクローニングした。
【0195】
Fab及びIgG1 LALA発現のために、PELを使用して、等量の重鎖及び軽鎖ベクターを懸濁適合HEK293-EBNA細胞(ATCC、カタログ番号CRL-10852)に同時トランスフェクトした。典型的には、細胞を、0.1%Pluronic F-68を補充したRPMI中、800万細胞/mLで調製した。次いで、細胞をDNA-PEI混合物でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、フェノールレッド及び4mMのL-グルタミンを補充したEX-CELL(登録商標)293中で1:1に希釈し、37℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら5日間インキュベートした。組換えタンパク質を含有する無細胞培養上清を、遠心分離、続いて濾過によって調製し、更なる精製に使用した。Capture Select(商標)IgG-CHl親和性マトリクス(ThermoScientific、カタログ番号ThermoScientific、カタログ番号194320050)を使用して、Fabタンパク質を精製し、CaptivA(登録商標)プロテインA親和性樹脂(Repligen、カタログ番号CA-PRI-0100)を使用して、IgG1 LALAタンパク質を精製した。両方について、親和性樹脂を濾過した培養上清に添加し、穏やかに混合しながら4℃でインキュベートした。翌日、樹脂ビーズをPoly-Prepカラム(Bio-Rad Laboratories)内に回収し、PBSで洗浄し、組換えタンパク質を酸性緩衝液(典型的にはグリシン0.1M、pH3)で溶出した。1/10容量のpH8のTris-HClを用いた中和後、調製物をPBSに緩衝液交換した。
【0196】
IL-RAPに対するFab結合親和性
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、ヒト、カニクイザル及び/又はマウスIL-1RAPに対するFab断片の結合親和性を測定した。親和性を、Biacore T200機器(Biacore、GE Healthcare)上で25℃で測定し、Biacore T200 Evaluation Software(v3.1)を用いて分析した。測定を、市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗ヒトIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)と結合したSeries S CM5センサーチップ(Biacore T200、Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で、又はSeries S BiotinCAPtureチップ(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号28920234)上で行った。SPR測定を、市販の組換えヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号ILP-H5256)及び組換えマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質(Sino Biologicals、カタログ番号52657-M02H)を用いて、又は自社で産生されたビオチン化組換えカニクイザルIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号2)を用いて行った。
【0197】
IL-1RAPを固定化し、分析物としてFab断片を使用することによって、ヒト、カニクイザル及びマウスIL-1RAPに対する親和性を評価した。約100RUのヒト又はマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質を、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーチップのfc2上で捕捉し、約150RUのビオチン化カニクイザルIL-1RAPタンパク質を、Series S BiotinCAPtureチップのfc2上で捕捉した。Fab断片を、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)上で30μL/分の流速で3分間、HBS-EP+緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100669)中で7.8~500nMに及ぶ異なる濃度において単一サイクル動態で注入した。解離を5分間監視した。各サイクル後、表面を、それぞれ、抗ヒトIgG Fc捕捉キット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)又はBiotinCAPtureキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号28920234)とともに提供された60μLの再生溶液で再生した。1:1ラングミュア動態適合モデルを使用して、実験データを処理した。測定は、参照用の0濃度試料を含んだ。Chi2、U、及び残余値を使用して、実験データと個々の結合モデルとの間の適合の質を評価した。
【0198】
IL-1R1/IL-1β//IL-1RAPブロッキングアッセイ
IL-1RAPとIL-1R1/IL-1β受容体/サイトカイン複合体との間の相互作用を遮断するFab断片の能力を、SPRによって評価した。約50RUのヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号ILP-H5256)を、市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗ヒトIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)で事前にコーティングされたSeries S CM5センサーチップのfc2上で固定化した。Fab断片を、固定化されたヒトIL-1RAPの飽和に達するように、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)にわたってHBS-EP+中の300nMで4分間注入して、その後、HBS-EP+緩衝液中の50nMにおけるIL-1R1(R&D Systems、カタログ番号296-IR-100)、l00nMにおけるIL-1β(Peprotech、カタログ番号200-0IB)、及び300nMにおけるFab断片の2分間の第2の注入が続いた。各サイクル後、表面を、抗ヒトIgG Fc捕捉キット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)とともに提供された60μLの再生溶液で再生した。
【0199】
ドメインマッピング
IgG1 LALAクローンによって標的化されたIL-1RAPのドメインを、SPR結合アッセイによって同定した。約150RUのIgG1 LALAを、市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗ヒトIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)で事前にコーティングされたSeries S CM5センサーチップのfc2上で固定化した。ヒトIL-1RAP-avi-his、ニワトリIL-1RAP-avi-his、IL-1RAPのヒトドメイン2及び3に融合したIL-RAPのニワトリドメイン1を含むキメラタンパク質(gg-hs-hs-IL-1RAP-ECD-avi-his)、並びにIL-1RAPのヒトドメイン3に融合したIL-1RAPのニワトリドメイン1及び2を含むキメラタンパク質(gg-gg-hs-IL-1RAP-avi-his)を、個別に、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)にわたってHBS-EP+中で50nMにおいて3分間注入し、続いて、HBS-EP+緩衝液中で5分間解離した。各結合事象後、表面を、抗ヒトIgG Fc捕捉キット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)とともに提供された60μLの再生溶液で再生した。
【0200】
エピトープビニング
バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry、BLI)を使用して、ヒトIL-1RAP上のFab断片のエピトープビニングを評価した。測定を、OctetRED96e機器(ForteBio)上で行い、Data Analyis HTバージョン11.1ソフトウェア(Octet、ForteBio)を使用して分析した。自社で産生されたビオチン化ヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号1)を、ストレプトアビジンSAバイオセンサー(ForteBio、カタログ番号15-5019)上に、動態緩衝液(ForteBio、カタログ番号18-1105)中1pg/mLで5分間装填した。ビオチン化ヒトIL-1RAP抗原で固定化されたストレプトアビジンバイオセンサーを、200nMのFab 1(飽和Fab)の溶液に10分間浸漬し、続いて、200nMのFab 1及び200nMのFab 2(競合Fab)の混合溶液に連続的に5分間浸漬した。全てのステップを、25℃及び1000RPMの振盪で実施した。新鮮なストレプトアビジンバイオセンサーを、各サイクルの前にビオチン化ヒトIL-1RAPで固定化した。
【0201】
結果:
SPRによるヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質への特異的結合並びにヒト及びカニクイザルIL-1RAP CHO細胞の両方への特異的結合を示すが、SPRによるマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質への結合を示さない、scFvクローンを配列決定し、更なる特性評価のために、独自の配列をFab断片に再フォーマットした。SPRによるヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質及びマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質の両方への特異的結合を示すとともに、ヒト及びカニクイザルIL-1RAP CHO細胞の両方への特異的結合を示し、IL-1RAPと受容体/サイトカイン複合体IL-1R1/IL-Pとの間の相互作用を遮断することが知られている抗IL-1RAP抗体と競合する、scFvクローンを配列決定し、更なる特性評価のために、独自の配列もFab断片に再フォーマットした。生化学的特性評価は、結合親和性の評価を含み、IL-1R1/IL-1β/IL-1RAPブロッキングアッセイを使用して、機能評価を実施し、ドメインマッピング及びエピトープビニングアッセイを使用して、エピトープ標的化を決定した。
【0202】
IL-RAPに対するFab結合親和性
24個のFabクローンが、SPRによって決定される1μM未満の平衡解離定数(KD)とともにヒトIL-1RAPに対する結合親和性を示した。以後、抗IL-1RAP-C8とも称される、クローン抗IL-1RAP-UCP02-C8は、ヒトIL-1RAP(2.2nM)及びカニクイザルIL-1RAP(2.2nM)の両方に対する最も高い親和性を示したが、マウスIL-1RAPには結合しなかった。以後、抗IL-1RAP-C3とも称される、クローン抗IL-1RAP-UCP02-C3は、マウスIL-1RAPに対する高い親和性(0.63nM)、及びヒトIL-1RAPに対するクローン抗IL-1RAP-C8と同様の親和性(それぞれ、2.8nM及び2.2nM)を示した。しかしながら、抗IL-1RAP-C3は、ヒトIL-1RAP(2.8nM)に対するよりもカニクイザルIL-1RAP(110nM)に対して約40倍低い親和性を示した。前述のクローンの重鎖配列識別番号及び結合親和性を表1に報告する。
【0203】
【0204】
IL-1RAP/IL-1R1/IL-1β ブロッキングアッセイ
Octetバイオレイヤー干渉法を使用して、ヒトIL-1RAP/IL-1R1/IL-1β複合体形成を遮断することにおいて、SPRによって測定される100nM未満のヒトIL-1RAP Fc融合タンパク質に対するKDを有するFab断片を試験した。全ての試験したFab断片は、ヒトIL-1RAPとIL-1R1/IL-1β受容体/サイトカイン複合体との間の相互作用を遮断することが確認された。クローン抗IL-1RAP-C8及び抗IL-1RAP-C3を用いたヒトIL-1RAPとIL-1R1/IL-1β受容体/サイトカイン複合体との間の相互作用の遮断が、
図1に例証されている。以後、抗IL-1RAP-Elとも称される、クローン抗IL-1RAP-UCP05-Elを、非遮断薬対照として使用した。
【0205】
ドメインマッピング
抗IL-1RAP-C8の作用機序への洞察を得て、エピトープに関して抗IL-1RAP-C3クローンを関連マウス代理として検証するために、両方の抗体によって標的化されるIL-1RAPのドメインを研究した。表1に記載されるように、抗IL-1RAP-C3 Fabは、抗IL-1RAP-C8 Fabと同様の親和性でヒトIL-1RAPに結合する。ヒト-ニワトリIL-1RAPキメラを使用して両方の抗体のエピトープを比較するために、この結合特性を使用した。
図2に示されるように、抗IL-1RAP-C8及び抗IL-1RAP-C3の両方は、IL-1、IL-33、及びIL-36、それらのそれぞれの受容体とIL-1RAPとの間の相互作用に関与することが知られている、IL-1RAPのドメイン2を標的としている。この実験は、そのマウス代理としての抗IL-1RAP-C8及び抗IL-1RAP-C3の遮断効力への洞察を提供する。
【0206】
エピトープビニング
抗IL-1RAP-C3を抗IL-1RAP-C8の関連マウス代理として更に検証するために、ヒトIL-1RAPを使用して、両方の抗体を互いに競合させた。この実験は、
図3に提示され、両方の抗体が互いに競合し、IL-1RAP上の重複するエピトープを認識することを示す。抗IL-1RAP-Elを非競合対照として使用した。
【0207】
実施例2:抗IL-1RAP-C8クローンの最適化
組換え標的抗原
以後、組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質とも称される、組換えヒトIL-1RAP-ECD(S21-E359)-avi-hisタンパク質(配列番号1)、及び以後、組換えカニクイザルIL-1RAP-avi-hisタンパク質とも称される、組換えカニクイザルIL-1RAP-ECD(S21-E359)-avi-hisタンパク質(配列番号2)を、実施例1に記載されるように自社で産生した。
【0208】
ライブラリー生成及び選択
CDRの重鎖に多様性を導入することによって、5つの親和性成熟ライブラリーを生成した。それぞれ、Kabat残基27~35、50~58、95~101マイナス2における縮重NNKコドンオリゴヌクレオチド(Nが、4つのデオキシリボヌクレオチドのうちのいずれかであり、Kが、G又はTである)を使用して、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3をランダム化した。5つの連続縮重コドンを含む重複オリゴヌクレオチドのプールを使用して、各ライブラリーを生成した。それぞれ、Kabat 27~35位及び50~58位における三量体オリゴヌクレオチドを使用して、CDR-H1及びCDR-H2も多様化した。結果として生じる5つのライブラリーPCR産物を、pNGLEN(自社修飾pUC119ファジミドベクター)にクローニングし、結果として生じる連結反応物を、E.coli TG1細胞に電気穿孔した。形質転換細胞を2YTAGプレート上に広げ、30℃で一晩インキュベートした。コロニーをプレートから掻き取って10mLの2YTに入れ、-80℃で保存するために15%グリセロール(最終濃度)を添加した。ファージを産生し、3分の1v/vの20%PEG-6000、2.5MのNaClを用いた2回の沈殿ステップによって精製し、PBSに再懸濁した。
【0209】
ファージディスプレイ選択を、以下の修正を加えて実施例1に記載されるように実施した。各親和性成熟ライブラリーを独立して選択した。精製されたファージ粒子(1012プラーク形成単位)及び磁気Dynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンC1ビーズ(Invitrogen、カタログ番号65002)を、3%MPBSを用いて室温で1時間ブロックした。ファージを、事前にブロックされたビーズに対して室温で1時間選択解除した。選択解除されたファージを、それぞれ、1回目、2回目、及び3回目について、自社で産生された5nM、0.5nM、及び0.1nMのビオチン化組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号1)とインキュベートした。1時間のインキュベーション後、自社で産生された1pMの組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(非ビオチン化、配列番号1)を、2回目及び3回目の間に室温で3時間添加した。抗原結合ファージを、ストレプトアビジンビーズ上に室温で30分間捕捉し、ビーズをPBS-Tween 0.1%で5回、PBSで2回洗浄した。
【0210】
SPRによる親和性スクリーニング
SPR分析を使用して、新しいscFvクローンの特異的結合活性を確認し、それらの結合プロファイルに従って陽性クローンをランク付けした。測定を、Biacore T200 Control Software v2.0を使用してBiacore T200機器(Biacore、GE Healthcare)上で、25℃で行い、同じ製造業者からのBiacore T200 Evaluation Software(v3.1)を用いて分析した。自社で産生された組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号1)又は自社で産生された組換えカニクイザルIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号2)を、pH4.5の酢酸緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号奨BR-1003-50)中で200nMの最終濃度に希釈し、その後、製造業者の推奨に従ってアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、それぞれ、Fc2及びFc4上で、Series S CM5センサーチップ(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で約1000共鳴単位(RUと略称される)のレベルまで固定化した。HBS-EP+(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BRI00669)を泳動緩衝液として使用した。濾過したペリプラズム抽出物を、共有結合したヒトIL-1RAP及びカニクイザルIL-1RAP CM5センサーチップ上に直接注入した。試料を、流路1、2、3及び4(流路1及び3が基準として使用される)上に30μL/分の流速で3分間注入し、その後に、泳動緩衝液中で5分の解離時間が続いた。各結合事象後、表面を、30μL/分で1分間注入されたpH1.5の10mMグリシン(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100354)で再生した。各測定は、それぞれ、参照及び特異性のために、0濃度試料並びに無関係なscFvペリプラズム抽出物を含んだ。次いで、最良の結合プロファイルを示すscFvクローンを、実施例1に記載されるようにFab断片に再フォーマットした。ヒトIL-1RAP及びカニクイザルIL-1RAPに対するFabの親和性を、修正されたFab注入濃度範囲(0.08nM~50nM)を用いて、実施例1に記載されるように測定した。
【0211】
ヒトIgG1 LALA発現
CDR組換え後にヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する最も高い親和性を示す抗IL-1RAPクローンを、実施例1に記載されるようにヒトIgG1 LALAフォーマットで発現させた。クローン抗IL-1RAP-C8-RecC(配列番号54)のCDRH3(Kabat)中の既知の潜在的異性化部位(DS)を除去するために、D100及びS100a(Kabat)残基を、それぞれ、AA、AS、DA、ES又はETによって、5つの追加のIgG1 LALA重鎖(配列番号55~59)内に置き換えた。実施例1に記載されるように、抗IL-1RAP-C8-RecC-AA、抗IL-1RAP-C8-RecC-AS、抗IL-1RAP-C8-RecC-DA、抗IL-1RAP-C8-RecC-ES、及び抗IL-1RAP-C8-RecC-ETの異なる抗体可変重鎖をコードするcDNAを、標準的な分子技法を使用した部位特異的変異誘発によって構築し、ヒトIgG1鎖のCH1、CH2(L234A/L235A)、及びCH3ドメインをコードするcDNAの上流の修飾pcDNA 3.1ベクターにおいてクローニングした。ヒトIgG1 LALA分子を発現させ、実施例1に記載されるように、又は以下のように精製した。抗IL1-RAP-C8-RecC-ES-IgG1-LALA(配列番号71及び72)の発現のために、等量の各操作された鎖ベクター及びエプスタイン-バーウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)核抗原-1(nuclear antigen-1、EBNA-1)をコードするベクターが、ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences)を使用して、CHO-S細胞(cGMPバンク保存、Invitrogen、カタログ番号A1136401)に同時トランスフェクトされた。典型的には、細胞を、CD-CHO培地(Gibco)中800万細胞/mLで調製した。次いで、細胞にDNA-PEI混合物を37℃でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、4mMのL-グルタミンを補充したPowerCHO(商標)2(Lonza)で1:1に希釈し、32℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら14日間インキュベートした。組換えタンパク質を含有する清澄化した無細胞培養上清を、遠心分離、続いて濾過によって調製し、更なる精製に使用した。室温でKANEKA KanCapA(商標)樹脂(Kaneka)を使用する重力流モードによって、抗体を精製した。KANEKA KanCapA(商標)ビーズを清澄化した上清に添加し、穏やかに撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。次に、混合物を、重力流精製のためにPoly-Prepカラム(Bio-Rad Laboratories)上に装填した。ビーズを最初にpH7.4の1X PBS(1×10CV)で洗浄し、タンパク質を以下に記載されるように溶出した。抗IL1-RAP-C8-RecC-ES-IgG1-LALA(配列番号71及び72)について、pH4.3、pH4.1、pH3.9、及びpH3.5の50mM酢酸ナトリウムを連続的に使用した段階溶出プロトコルを使用して、タンパク質を溶出した。回収した画分をSDS-PAGE上で分析し、見かけの純度に基づいて選択した。次いで、目的の画分をプールし、4℃でpH7.4の1X PBSに対して透析した。精製された抗体を、0.2μmフィルター上の滅菌濾過後に-80℃で保存した。それらを、還元及び非還元条件下で、SDS-PAGE(NuPAGE Bis-Tris 4~12%アクリルアミド、Invitrogen AG、Basel,Switzerland)及びProteomeLab PA 800(Beckman Coulter International S.A.,Nyon,Switzerland)上のcGEによって更に分析して、純度を評価した。単量体及び凝集形態の含量を決定するために、SE-HPLCによってタンパク質を分析した。簡潔に説明すると、Waters 2998 PDA検出器(Waters)を備えたWaters Alliance 2695 HPLCシステム上で、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、1mL/分の流速での溶離液としてpH6.8の0.15M塩化ナトリウムとともに、室温でTosoh Bioscience TSRgel G3000SWxlカラム(カタログ番号08541、Tosoh Bioscience)を使用して、SE-HPLCを実施し、214nm及び280nmで監視した。カブトガニ血球抽出物(Limulus amebocyte lysate、LAL)ベースのアッセイを利用したCharles RiverからのMulti-Cartridge System Endosafe-MCSを使用して、0.5EU/mgを下回る細菌内毒素レベルを確認した。典型的には、精製された抗体について、凝集形態の含量は。5%よりも低く、SE-HPLCによって測定された純度は、95%を上回った。
【0212】
ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対するヒトIgG1 LALA結合親和性
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対するヒトIgG1 LALA分子の結合親和性を測定した。親和性を、Biacore T200機器(Biacore、GE Healthcare)上で25℃で測定し、Biacore T200 Evaluation Software(v3.1)を用いて分析した。市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗ヒトIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)と結合したSeries S CM5センサーチップ(Biacore T200、Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で、測定を実施した。自社で産生された組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号1)及び自社で産生された組換えカニクイザルIL-1RAP-avi-hisタンパク質(配列番号2)を用いて、SPR測定を実施した。抗IL-1RAP IgG1 LALA分子を固定化し、分析物としてIL-1RAPタンパク質を使用することによって、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する親和性を評価した。約150RUのヒトIgG1 LALAを、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーチップのfc2上に捕捉した。組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質又は組換えカニクイザルIL-1RAP-avi-hisタンパク質を、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)上で30μL/分の流速で3分間、HBS-EP+緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100669)中で0.14~100nMに及ぶ異なる濃度において複数サイクル動態で注入した。解離を12分間監視した。各サイクル後、表面を、抗ヒトIgG Fc捕捉キット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)とともに提供された60μLの再生溶液で再生した。1:1ラングミュア動態適合モデルを使用して、実験データを処理した。測定は、参照用の0濃度試料を含んだ。Chi2、U、及び残余値を使用して、実験データと個々の結合モデルとの間の適合の質を評価した。
【0213】
結果:
抗IL-1RAP-C8クローン(重鎖配列番号14)の親和性成熟は、5つの個々のライブラリーにおけるCDR-H1(Kabat位置27~35)、CDR-H2(Kabat位置50~58)、及びCDR-H3(Kabat位置95~101マイナス2)の多様化を伴った。SPRによって測定される親抗IL-1RAP-C8クローンより遅いオフレートを有するscFvクローンを単離した。scFvクローンを再フォーマットし、Fab断片として発現させ、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する親和性を実施例1に記載されるように測定した。この評価から、CDR-H1及びCDR-H2ライブラリーに由来する選択された変異を、更なるオフレート改善のために組み合わせた。Fabクローン抗IL-1RAP-C8-RecCと称される1つのクローンは、ヒトIL-1RAPに対する最も高い親和性を有していた。前述のクローンの重鎖配列識別番号及びヒトIL-1RAPに対する結合親和性を表2に報告する。
【0214】
【0215】
クローン抗IL-1RAP-C8-RecCの一連の5つの変異バージョンを、ヒトIgG1 LALA骨格において発現させて、CDRH3(Kabat)内の潜在的異性化部位(DS)の除去を評価した。クローン抗IL-1RAP-C8-RecC-ESは、親クローン抗IL-1RAP-C8-RecCと同様のヒトIL-1RAP及びカニクイザルIL-1RAPに対する親和性を示し、更に特性評価された。重鎖配列識別番号、並びに記述されたクローンのヒトIL-1 RAP及びカニクイザルIL-1 RAPに対する少なくとも2つの独立した実験(適用可能である場合)から計算された平均結合速度定数及び標準偏差を表3aに報告する。前述のクローンのCDR配列を表3bに提供する。ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C8-RecC-ES IgG1 LALAのSPR結合センサーグラムの代表例が、
図4に示されている。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
実施例3:抗IL-1RAP-C3クローンの最適化
組換え標的抗原
組換えヒトIL-1RAP-ECD(S21-E359)-avi-hisタンパク質(配列番号1)(以後、組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質と称する)を、実施例1に記載したように自社で産生した。
【0221】
ライブラリー生成及び選択
抗IL-1RAP-C3クローンの親和性成熟を、以下の修正を加えて実施例2に記載したように行った。精製したファージ粒子(1012プラーク形成単位)及び磁気Dynabeads(登録商標)プロテインGビーズ(Novex、Life technologies)を、3%MPBSを用いて室温で1時間ブロックした。200nMのヒトIgG1を、ブロッキングしたプロテインGビーズ上に室温で30分間捕捉した。次に、ブロックしたファージをIgG1被覆ビーズに対して室温で1時間選択解除した。次いで、選択解除したファージを、それぞれ、1回目、2回目、及び3回目について、1nM、0.5nM、及び0.1nMのマウスIL-1RAP-Fc(Sino Biological、カタログ番号52657-M02H)とインキュベートした。1時間のインキュベーション後、自社で産生した1pMの組換えヒトIL-1RAP-avi-hisタンパク質(非ビオチン化、配列番号1)を、2回目及び3回目の間に室温で3時間添加した。抗原結合ファージを、プロテインGビーズ上に室温で30分間捕捉し、ビーズをPBS-Tween 0.1%で5回、PBSで2回洗浄した。
【0222】
SPRによる親和性スクリーニング
SPR分析を使用して、新しいscFvクローンの特異的結合活性を確認し、それらの結合プロファイルに従って陽性クローンをランク付けした。測定を、以下の修正を加えて実施例2に記載されるように行った。組換えマウスIL-1RAP-Fc(Sino Biological、カタログ番号52657-M02H)を、酢酸緩衝液pH4.5(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100350)中で200nMの最終濃度に希釈し、その後、製造業者の推奨に従ってアミンカップリングキットを使用して、Series S CM5センサーチップ(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で、fc2上に約1500RUのレベルまで固定化した。濾過したペリプラズム抽出物を、流路1及び流路2(流路1を参照として使用する)上の共有結合したマウスIL-1RAP CM5センサーチップ上に直接注入した。最良の結合プロファイルを示すscFvクローンを、実施例1に記載されるようにFab断片に再フォーマットした。
【0223】
マウスIL-1RAPに対するFab断片の親和性を、以下の修正を加えて実施例1に記載されるように測定した。測定を、市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗ヒトIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100839)と結合したシリーズS CM5センサーチップ(Biacore T200、Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で行った。SPR測定を、市販の組換えマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質(Sino Biologicals、カタログ番号52657-M02H)を用いて行った。マウスIL-1RAPに対する親和性を、マウスIL-1RAP-Fcを固定化し、かつ分析物としてFab断片を使用することによって評価した。約60RUのマウスIL-1RAP Fc融合タンパク質を、抗ヒトIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーチップのfc2上に捕捉した。Fab断片を、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)上で30μL/分の流速で3分間、HBS-EP+緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100669)中で0.04~5nMに及ぶ異なる濃度において単一サイクル動態で注入した。解離を10分間監視した。
【0224】
マウスIgG2a LALA発現
抗IL-1RAP-C3-A3-mmIgG2a-LALA(配列番号73及び74)の発現のために、等量の各操作された鎖ベクターを、ポリエチレンイミン(PEI、Poly sciences)を使用して、懸濁適合HEK293-EBNA細胞(ATCC-LGL標準、Teddington,UK、カタログ番号:CRL-10852)に同時トランスフェクトした。典型的には、細胞を、0.1%Pluronic F-68(Gibco)を補充したRPMI 1640(Biowest)中、800万細胞/mLで調製した。次いで、細胞にDNA-PEI混合物を37℃でトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、細胞培養物を、フェノールレッド又はBalanCD HEK293(Irvine Scientific)及び4 mMのL-グルタミンを補充したEX-CELL(登録商標)293中で1:1に希釈し、37℃、5%C02、及び80%湿度で軌道振盪しながら5日間インキュベートした。組換えタンパク質を含有する無細胞培養上清を、遠心分離、続いて濾過によって調製し、更なる精製に使用した。抗体を、以下の修正を加えて実施例2に抗ILl-RAP-C8-RecC-ES-IgG1-LALAについて記載したように精製した。抗IL-1RAP-C3-A3-mmIgG2a-LALA(配列番号73及び74)の場合、タンパク質を酸性緩衝液(典型的にはグリシン0.1M pH3.5)で溶出した。回収した画分をSDS-PAGE上で分析し、見かけの純度に基づいて選択した。次いで、目的の画分をプールし、4℃でpH7.4の1X PBSに対して透析した。精製した抗体を0.2μmフィルター上で滅菌濾過した後に-80℃で保存し、実施例2に抗IL1-RAP-C8-RecC-ES-IgG1-LALAについて記載したように更に分析した。
【0225】
マウスIL-1RAPに対するマウスIgG2a LALA結合親和性
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、マウスIL-1RAPに対するマウスIgG2a LALA分子の結合親和性を測定した。親和性を、Biacore T200機器(Biacore、GE Healthcare)を用いて25℃で測定し、Biacore T200 Evaluation Software(v3.1)で分析した。測定を、市販のアミンカップリングキット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100050)を使用して、抗マウスIgG Fc(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100838)と結合したシリーズS CM5センサーチップ(Biacore T200、Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100530)上で行った。SPR測定を、市販の組換えマウスIL-1RAP-his(Sino Biologicals、カタログ番号52657-M08H)を用いて行った。マウスIL-1RAPに対する親和性を、抗マウスIL-1RAPマウスIgG2a LALA分子を固定化し、かつ分析物としてマウスIL-1RAPタンパク質を使用することによって評価した。約150RUのマウスIgG2a LALAを、抗マウスIgG Fcと結合したSeries S CM5センサーチップのfc2上に捕捉した。マウスIL-1RAP-hisを、fc1及びfc2(fc1が基準として使用される)上で30μL/分の流速で3分間、HBS-EP+緩衝液(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BRI00669)中で0.14~100nMに及ぶ異なる濃度において単一サイクル動態で注入した。解離を15分間監視した。各サイクル後、表面を、抗マウスIgG Fc捕捉キット(Biacore、GE Healthcare、カタログ番号BR100838)とともに提供された60μLの再生溶液で再生した。1:1ラングミュア動態適合モデルを使用して、実験データを処理した。測定は、参照用の0濃度試料を含んだ。Chi2、U、及び残余値を使用して、実験データと個々の結合モデルとの間の適合の質を評価した。
【0226】
結果:
抗IL-1RAP-C3クローン(配列番号12)の親和性成熟は、5つの個々のライブラリーにおけるCDR-H1(Kabat位置27~-35)、CDR-H2(Kabat位置50~53及び55~58)、及びCDR-H3(Kabat位置95~101マイナス2)の多様化を伴った。SPRによって測定される親抗IL-1RAP-C3クローンより遅いオフレートを有するscFvクローンを単離した。選択したscFvクローンを再フォーマットし、Fab断片として発現させ、ヒト及びカニクイザルIL-1RAPに対する親和性を実施例1に記載されるように測定した。Fabクローン抗IL-1RAP-C3-A3と称される1つのクローンは、マウスIL-1RAPに対して最も高い親和性を有していた。前述のクローンの重鎖配列識別番号及び結合親和性を表4に報告する。
【0227】
【0228】
抗IL-1RAP-C3-A3を、抗ヒトIL-1RAP候補の潜在的なマウス代理として選択し、マウスにおけるヒトIgG1 LALAアイソタイプと同等のマウスIgG2a LALA骨格において発現させた。配列識別番号、並びに前述のクローンのヒトIL-1RAP又はマウスIL-1RAPに対する少なくとも2つの独立した実験から計算された平均結合速度定数及び標準偏差を表5に報告する。抗IL-1RAP-C3-A3クローンは、SPRによってカニクイザルIL-1RAPへの検出可能な結合を示さなかった(データ示さず)。配列識別番号、並びに前述のクローンのマウスIL-1RAPに対する3つの独立した実験から計算された平均結合速度定数及び標準偏差を表5に報告する。マウスIL-1RAPに対する抗IL-1RAP-C3-A3 mmIgG2a LALAのSPR結合センサーグラムの1つの代表的な例を
図5に示す。
【0229】
【0230】
実施例4:抗ヒトIL-1RAP候補1のインビトロ生物学的特徴付け
4.1抗ヒトIL-1RAP候補1は、ヒトIL-1RAPに特異的に結合する
膜結合型ヒトIL-1RAP上の抗ヒトIL-1RAP_候補_1(本明細書で抗IL1RAP-C8-RecCと称され、重鎖CDR配列番号128、188、及び248、並びに軽鎖配列配列番号71を含む)の結合を、HaCaTケラチノサイト細胞株(AddexBio、T0020001)などの複数のヒト細胞株及びヒト細胞型のみならず、ヒト初代細胞(ヒト好中球及び線維芽細胞)も使用してフローサイトメトリーによって評価した。
【0231】
簡単に説明すると、細胞を採取し、計数し、96ウェル丸底プレートに50’000細胞/ウェルでプレーティングした。プレートを350gで3分間遠心分離し、細胞を、様々な濃度(50~0.00003pg/mLの範囲)の抗ヒトIL-1RAP_候補_1抗体又はアイソタイプ対照_5抗体のいずれかを含有する50μLのFACS緩衝液(PBS(1X)+2.5%FCS+2mM EDTA+0.05%NaN
3)中に再懸濁した。染色した細胞を4℃で30分間インキュベートし、350gで3分間、FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液で1/200に希釈した100μLのモノクローナル抗ヒトIgG PE-Cyanine7二次抗体(Biolegend、409316)中に再懸濁した。次いで、細胞を2回洗浄し、SYTOX Green死細胞染色(ThermoFisher Scientific、S34860)を含有する200μLのFACS緩衝液中に再懸濁し、試料をCytoFlex機器(Beckman Coulter)で取得した。細胞を、FSC対SSCでサイズに基づいてゲートし、FlowJoソフトウェアを使用してPE-Cyanine7-幾何平均(幾何平均)蛍光強度について分析した。最後に、相対幾何平均蛍光強度を、アイソタイプ対照_5の蛍光当たりの抗ヒトIL-1RAP_候補_1の蛍光を差し引くことによって計算した。
図6に示すように、抗ヒトIL-1RAP_候補_1抗体は、HaCaT細胞株及び全ての初代細胞上で発現した膜結合型IL-1RAPを認識する。複数の独立した実験を、複数のドナーを用いて行った。会合KD値を表6に要約する。
【0232】
【0233】
表6は、抗ヒトIL-1RAP候補1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)(
図6)を様々な細胞株及び細胞型とインキュベートしたフローサイトメトリー実験から決定したKD値を示す。KD値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な適合度(R
2>0.7)を示す曲線を要約表に含めた。
【0234】
抗ヒトIL-1RAP_候補_1のIL-1RAPへの選択的結合を更に実証するために、同じ手順を、以前に生成され、かつ内部で特徴付けられたIL-1RAP遺伝子をノックアウトしたHaCaT細胞株に行った。実験を上記と同じプロトコルに従って行った。
図6からの結果は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1抗体がHaCaT IL-1RAPノックアウト細胞株に結合しないため、膜結合型IL-1RAPに選択的に結合することを示す。
【0235】
4.2抗ヒトIL-1RAP候補1は、初代サル細胞上のカニクイザルIL-1RAPに結合する
カニクイザルIL-1RAPに対する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の交差反応性を評価するために、サル線維芽細胞を使用して上記と同じ手順を行った。このアッセイでは、抗ヒトIL-1RAP候補1は、カニクイザルIL-1RAP発現線維芽細胞に結合する(
図6)。試験した細胞型のKD値を表6に要約する。
【0236】
4.3抗ヒトIL-1RAP候補1は、HaCaT刺激アッセイにおいてIL-1誘導性サイトカイン放出及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する
抗ヒトIL-1RAP_候補_1がIL-1経路、IL-33経路、及びIL-36経路を阻害する可能性を評価するために、異なる細胞系を使用していくつかのアッセイを開発した。ケラチノサイト細胞株HaCaTが、IL-6及びIL-8(CXCL8)などの下流メディエーターの産生によって測定されるように、IL-1サイトカイン及びIL-36サイトカインに対して感受性であるが、IL-33サイトカインに対して感受性ではないため、この特定の細胞株を使用して、IL-1経路及びIL-36経路の阻害を試験した。
【0237】
簡潔に説明すると、HaCaT細胞を採取し、計数し、完全DMEM培地(DMEM+10%FBS+1%グルタミン+1%Pen/Strp+1%NEAA+1%NaPyr)中に0.05×106細胞/mLで再懸濁した。100μLの細胞を96ウェル平底プレートに分配し、37℃、5%CO2で16時間インキュベートした。翌日、細胞を、アッセイ培地(完全DMEM培地)中で連続希釈した50μLの抗ヒトIL-1RAP_候補_1(50~0.000005pg/mLの範囲)又はアイソタイプ対照_5(50pg/mLの固有用量)のいずれかと30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、50μLのヒトIL-1β又はIL-36Γ(いずれもPeprotech製)を適切なウェルに供給した。37℃、5%CO2で24時間インキュベートした後、100μLの上清を96ウェル丸底プレートに移し、サイトカイン/ケモカインの定量化まで-80℃の冷凍庫に保存した。培養上清中のIL-6及びIL-8産生を、ProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、EPX01A-10213-901及びEPX01A-10204-901)を製造業者の指示に従って使用してLuminexで測定した。
【0238】
図7に示すように、抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、HaCaT細胞のIL-1β又はIL-36γ刺激時にIL-6サイトカイン及びIL-8ケモカインの両方の放出を阻害する。この効果は、両方の経路に用量依存的であり、IL-36/IL-36R/IL-1RAP三量体複合体形成をもたらす相互作用が、IL-l/IL-1R/IL-1RAP複合体形成を調節する相互作用よりも弱いため、IL-36γに対して更により強力である。組み入れ基準を確立し、全てのアッセイに適用して、阻害パーセンテージを決定するために十分な刺激ウィンドウ又は刺激指数(SI)を得た。刺激指数を以下の式で計算した。
【0239】
【数1】
-Xは、考慮されるサイトカイン(IL-6又はIL-8)である。
-「サイトカインのみ」は、細胞を刺激物質(IL-1β又はIL-36γ)のみとインキュベートした条件である。
-「細胞のみ」は、細胞を培地とインキュベートした条件である。
【0240】
2つの独立した実験を行い、阻害のEC50値を表7に要約する。
【0241】
【0242】
この表は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)(
図7)をIL-1β又はIL-36γ刺激HaCaTとインキュベートした刺激アッセイから決定したEC20、EC50、EC80、及び最大阻害値を示す。ECx値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な刺激条件(刺激指数>1.8)及び十分な適合度(R
2>0.7)を示す曲線を要約表に含めた。
【0243】
4.4抗ヒトIL-1RAP候補1は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)刺激アッセイにおいてIL-33誘導性サイトカイン放出を阻害する
ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を使用して、IL-12共刺激アッセイにおけるIL-33経路の阻害を試験した。IL-12のみ又はIL-33のみではhPBMCからのIFN-g産生を全く又は最小限にしか誘発しないが、IL-33及びIL-12での併用処理により、IFN-gの相乗的産生がもたらされたことが文献に報告されている(Smithgall et al.,2008、Ochayon et al.,2019)。
【0244】
簡単に説明すると、hPMBCを、ficoll密度勾配単離を使用してLa Chaux-de-Fonds(Switzerland)輸血センターから得たハフィーコートから採取した。細胞を計数し、完全RPMI培地(RPMI+10%FBS+1%グルタミン+1%Pen/Strep)中に1×106細胞/mLで再懸濁した。100μLのhPBMCを96ウェル丸底プレートに分配した。細胞を50μLのヒトIL-12及びIL-33(いずれもPeprotech製)と15分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、アッセイ培地(完全RPMI培地)中で連続希釈した50μLのいずれかの抗ヒトIL-1RAP_候補_1(50~0.000005μg/mLの範囲)を適切なウェルに添加した。アイソタイプ対照_5抗体を、50μg/mLの固有用量で試験した。37℃、5%CO2で48時間インキュベートした後、100μLの上清を96ウェル丸底プレートに移し、サイトカインレベルの定量化まで-80℃の冷凍庫に保存した。培養上清中のIFN-g産生を、ProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、EPX01A-10228-901)を製造業者の指示に従って使用してLuminexで測定した。IL-33+IL-12の代わりにIL-1β刺激を使用して同じ手順を行い、IL-8放出を引き起こした。
【0245】
図8(灰色の曲線、下の図)に示すように、抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、PBMCのIL-12及びIL-33の同時刺激時にIFN-gサイトカインの放出を阻害する。この効果は用量依存的である。
【0246】
更に、IL-1RAPがおよそ300ng/mLに達する濃度を有する末梢血中の可溶性分子として検出することができたことが報告されている。抗ヒトIL-1RAP_候補_1が可溶性IL-1RAPの存在下でIL-1/IL-33経路を阻害することができるかを評価するために、可溶性IL-1RAPをIL-1β又はIL-12+IL-33サイトカイン混合物に添加して、上記と同じ実験手順を行った。結果を
図8に示し、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が可溶性IL-1RAPと競合することができ、ヒトPBMCのIL-1b及びIL-33での刺激時にサイトカイン放出をブロックする能力を保持することができることを実証する。
【0247】
2つの独立した実験を、合計6人のドナーを使用して行った。阻害のEC50値を表8に要約する。
【0248】
【0249】
表8は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_3(■)(
図8)をIL-1β又はIL-12+IL-33刺激PBMCとインキュベートした刺激アッセイから決定したEC
20、EC
50、EC
80、及び最大阻害値を示す。EC
x値を非線形シグモイド回帰から抽出した。
【0250】
十分な刺激条件(刺激指数>1.8)及び十分な適合度(R2>0.7)を示す曲線を要約表に含めた。
【0251】
まとめると、これらのデータは、疾患関連ヒト細胞アッセイを使用して、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が全ての個々の経路を効率的に阻害していることを強調する。
【0252】
4.5抗ヒトIL-1RAP候補1は、組み合わせサイトカイン刺激時に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を阻害する
先のアッセイは、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が個々の経路を阻害する能力を評価することを可能にしたが、全血アッセイを使用して、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が、IL-1刺激経路、IL-33刺激経路、及びIL-36刺激経路の組み合わせを阻害する能力を評価した。健常ドナー由来の新たに採取したヒト血液(クエン酸チューブ)を15mLのチューブに分配し、培地のみ(RPMI)、抗ヒトIL-1RAP_候補_1又はアイソタイプ対照_5(飽和用量)のいずれかと30分間プレインキュベートした後、IL-1α、IL-1β、IL-12、IL-33、IL-36α、IL-36β、及びIL-36Γの組み合わせで刺激して、最終体積0.6mLにした。
【0253】
37℃、5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を回収した。培養上清中の様々なサイトカイン及びケモカインの産生を、複数のProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、21プレックスキット)を製造業者の指示に従って使用してLuminexで測定した。統計分析を試験した26人のドナーにわたって8つの個々の実験から行った。抗ヒトIL-1RAP_候補_1又はアイソタイプ対照_5間の差を各ドナー及び各分析物内で計算して、全てのデータを対にし、次いで、平均検定(t検定)を使用して分析した。この場合、H0又は帰無仮説は、「差の平均が0に等しい」である。t検定のp値が0,05未満である場合、H0は拒絶される、つまり、アイソタイプ対照_5に対する統計的有意差を意味する。
【0254】
図9に示す結果は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が、アイソタイプ対照_5と比較して、大部分のサイトカイン及びケモカインの放出を統計的に有意に阻害することを示す。
【0255】
4.6抗ヒトIL-1RAP候補1は、IL-1B及びIL-36Γでの刺激後にHaCaT馴化培地とインキュベートした際に好中球活性化を阻害する
IL-1サイトカインファミリーメンバーは、疾患病態生理学に関連する重要な炎症プロセスに関与する(Migliorini et al.,2020))。抗ヒトIL-1RAP候補1の特性を更に特定するために、インビトロアッセイを行い、好中球と皮膚細胞との間の細胞クロストークを阻害するその潜在的能力を評価した。
【0256】
好中球を、EasySep Direct Human Neutrophil Isolation kit(Stemcell、19666)を製造業者の指示に従って使用して、健常ドナーから新たに採取したヒト血液(EDTAチューブ)から単離した。
【0257】
単離した好中球の純度を、好中球に対する特異的マーカーとしてCD15を使用してフローサイトメトリーによって評価した。
【0258】
HaCaT馴化培地を、HaCaT細胞を培地、抗ヒトIL-1RAP_候補_1又はアイソタイプ対照_5(飽和用量)と37℃、5%CO2で30分間インキュベートすることによって調製した。インキュベーションの最後に、簡易培地又はヒトIL-1βサイトカイン及びIL-36γサイトカイン(いずれもPeprotech製)を適切なウェルに添加した。37℃、5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を96ウェルディーププレートに移し、サイトカイン/ケモカインの定量化まで-80℃の冷凍庫に保存した。培養上清中のIL-8、MCP-1、GRO-a産生を、ProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、EPX01A-10204-901、EPX01B-10281-901、及びEPX01A-12122-901)を製造業者の指示に従って使用してLuminexによって測定した。
【0259】
単離直後に、ヒト好中球を、先に調製した馴化培地と37℃、5%CO2で3時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を回収し、様々な表面マーカーCD45、CD15、CD66b、CD62L、CD11b、CD54(ThermoFisher Scientific)を標的とする標識抗体で20分間染色した。
【0260】
3時間のインキュベーション後、活性化好中球を、以下の表現型:CD45+CD15+CD66b+CD54-CD62L-によって特徴付けた。上記と同じ方法を使用して、刺激指数及び阻害パーセンテージを好中球ドナー毎に計算した。
【0261】
【0262】
抗ヒトIL-1RAP_候補_1又はアイソタイプ対照_5間の差を各ドナー内で計算して、全てのデータを対にし、次いで、平均検定(t検定)を使用して分析した。この場合、H0又は帰無仮説は、「差の平均が0に等しい」である。t検定のp値が0,05未満である場合、H0は拒絶される、つまり、アイソタイプ対照_5に対する統計的有意差を意味する。
【0263】
図10に示す結果は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が、アイソタイプ対照_5と比較して、刺激したHaCaT細胞によって放出されるケモカインによって媒介される好中球の活性化を阻害することを示す。
【0264】
実施例5:抗マウスIL-1RAP候補1のインビトロ生物学的特徴付け
5.1.1抗マウスIL-1RAP候補1は、マウスIL-1RAPに特異的に結合する
膜結合型マウスIL-1RAP上の抗マウスIL-1RAP_候補_1(重鎖CDR配列番号265、266、267、及び軽鎖配列配列番号74を含む)の結合を、マウス線維芽細胞NIH-3T3細胞株(ATCC、CRL-1658)などの関連細胞株を使用してフローサイトメトリーによって評価した。
【0265】
簡単に説明すると、細胞を採取し、計数し、96ウェル丸底プレートに50’000細胞/ウェルでプレーティングした。プレートを350gで3分間遠心分離し、細胞を、様々な濃度(20~0.0001 pg/mLの範囲)の抗マウスIL-1RAP_候補_1抗体又はアイソタイプ対照_2抗体のいずれかを含有する50μLのFACS緩衝液(PBS(1X)+2.5%FCS+2mM EDTA+0.05%NaN
3)中に再懸濁した。染色した細胞を4℃で30分間インキュベートし、350gで3分間、FACS緩衝液で2回洗浄し、FACS緩衝液で1/200に希釈した100μLのモノクローナル抗マウスIgG PE-Cyanine7二次抗体(Biolegend、407114)中に再懸濁した。次いで、細胞を2回洗浄し、SYTOX Green死細胞染色(ThermoFisher Scientific、S34860)を含有する200μLのFACS緩衝液中に再懸濁し、試料をCytoFlex機器(Beckman Coulter)で取得した。細胞を、FSC対SSCでサイズに基づいてゲートし、FlowJoソフトウェアを使用してPE-Cyanine7-幾何平均(幾何平均)蛍光強度について分析した。最後に、相対幾何平均蛍光強度を、アイソタイプ対照_2の蛍光当たりの抗マウスIL-1RAP_候補_1の蛍光を差し引くことによって計算した。
図11に示すように、抗マウスIL-1RAP_候補_1抗体は、NIH-3T3細胞株上で発現した膜結合型IL-1RAPを認識する。複数の独立した実験を行った。会合K
d値を表9に要約する。
【0266】
【0267】
この表は、抗マウスIL-1RAP候補1(●)又は対照アイソタイプ_2(■)(
図11)をNIH-3T3細胞株とインキュベートしたフローサイトメトリー実験から決定したKD値を示す。KD値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な適合度(R
2>0.7)を示す曲線を要約表に含めた。
【0268】
5.1.2抗マウスIL-1RAP候補1は、NIH-3T3刺激アッセイにおいてIL-33誘導性サイトカイン放出及びIL-36誘導性サイトカイン放出の両方を阻害する
IL-1経路、IL-33経路、及びIL-36経路を阻害する抗マウスIL-1RAP_候補_1の能力を、HaCaT細胞株について上記した方法と同じ方法を使用して、マウス線維芽細胞株NIH-3T3(ATCC、CRL-1658)を用いて試験した。
【0269】
簡潔に説明すると、細胞を採取し、計数し、完全DMEM培地(DMEM+10%FBS+1%グルタミン+1%Pen/Strp+1%HEPES+0.1%β-メルカプトエタノール)中に0.05×106細胞/mLで再懸濁した。100μLの細胞を96ウェル平底プレートに分配し、37℃、5%CO2で16時間インキュベートした。翌日、細胞を、アッセイ培地(完全DMEM培地)中で連続希釈した50μLの抗マウスIL-1RAP_候補_1(50~0.000005pg/mLの範囲)又はアイソタイプ対照_2(50pg/mLの固有用量)のいずれかと30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、50μLのマウスIL-1β若しくはヒトIL-33又はマウスIL-36α、P、若しくはyの組み合わせ(全てPeprotech製であり、mIL-36サイトカインのみR&D Systems製)のいずれかを適切なウェルに供給した。37℃、5%CO2で24時間~48時間インキュベートした後、100μLの上清を96ウェル丸底プレートに移し、サイトカイン/ケモカインの定量化まで-80℃の冷凍庫に保存した。培養上清中のIL-6及びCXCL-1/GRO-α産生を、ProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、EPX01A-20603-901及びEPX01A-26031-901)を製造業者の指示に従って使用してLuminexで測定した。
【0270】
図12に示すように、抗マウスIL-1RAP_候補_1は、NIH-3T3細胞のマウスIL-1β、ヒトIL-33、又はマウスIL-36s刺激時にIL-6サイトカイン及びCXCL-1/GRO-αケモカインの両方の放出を阻害する。マウスIL-1βに対する抗マウスIL-1RAP_候補_1の効果は、これらの細胞がマウスIL-1β刺激に対して感受性が低く、結果として刺激ウィンドウが非常に小さくなるため、非常に弱い。この効果は、IL-33経路及びIL-36経路に対して用量依存的である。組み入れ基準を確立し、全てのアッセイに適用して、阻害パーセンテージを決定するために十分な刺激ウィンドウ又は刺激指数(SI)を得た。
【0271】
抗マウスIL-1RAP_候補_1のFc部分バリアントを用いて複数の実験を行い、最終実験は先の所見と一致しており、
図12に示し、阻害のEC
50値を表10に要約する。
【0272】
【0273】
この表は、抗マウスIL-1RAP_候補_1(●)又はアイソタイプ対照_2(■)(
図12)をmIL-1β、hIL-33、又はmIL-36sで刺激したNIH-3T3とインキュベートした刺激アッセイから決定したEC
50及び最大阻害値を示す。EC
x値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な刺激条件(刺激指数>1.8)及び十分な適合度(R
2>0.7)を示す曲線を要約表に含めた。
【0274】
実施例6:インビボ急性炎症誘導マウスモデルにおける抗マウスIL-1RAP候補1の有効性
材料及び方法
畜産
インビボ実験を、JANVIER EABSからの6~7週齢の免疫適格性雌C57BL/6JRjマウスで行った。全てのマウスを齧歯類ケージ内の標準化環境条件下(室温20±1℃、相対湿度50±10%、12時間の明暗サイクル)で維持した。マウスに、放射線照射した食品及び寝床並びに0.22μmの濾過飲料水を与えた。
【0275】
インビボ急性炎症誘導マウスモデル
2つの実験を行い、それぞれ、Bely_4研究及びBely_5研究と名付けた。
【0276】
Bely_4研究。C57BL/6JRjマウスに、0日目に異なる処理物を腹腔内注射した。処理物注射の2時間後に、マウスにインターロイキンの混合物(マウスIL-1β、ヒトIL-33、並びにマウスIL36α、β、及びγ)を腹腔内注射した。最初の処理物注射の24時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清、脾細胞、及び腹腔内洗浄液をエクスビボ分析のために採取した。Luminexをマウス血清で行った。FACS分析を脾細胞及び腹腔内洗浄液で行った。
【0277】
Bely_5研究。C57BL/6JRjマウスに、0日目、1日目、及び2日目に異なる処理物を腹腔内注射した。処理物注射の2時間後に、マウスにインターロイキンの混合物(マウスIL-1β、ヒトIL-33、並びにマウスIL36α、β、及びγ)を腹腔内注射した。最初の処理物注射の24時間及び/又は72時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清、脾細胞、及び腹腔内洗浄液をエクスビボ分析のために採取した。Luminexをマウス血清で行った。FACS分析を脾細胞及び腹腔内洗浄液で行った。
【0278】
フローサイトメトリーのためのマウス試料調製。
脾細胞の場合、脾臓を採取し、機械的に解離させた。細胞懸濁液を濾過し、遠心分離した。次いで、細胞を計数し、免疫細胞プロファイリングのために染色した。完全抗体パネルでの染色及び相対的対照をFACS緩衝液中で調製した。試料をNorthern Lights機器(CYTEK)で分析した。データを、Kaluza及びGraphPad Prism 8を使用して分析した。
【0279】
腹腔内洗浄液の場合、PBSを腹腔内に注射した。腹膜を穏やかにマッサージして細胞を剥離し、次いで、腹膜を切開することによって腹水を回収した。細胞懸濁液を濾過し、遠心分離した。次いで、細胞を計数し、免疫細胞プロファイリングのために染色した。完全抗体パネルでの染色及び相対的対照をFACS緩衝液中で調製した。試料をNorthern Lights機器(CYTEK)で分析した。データを、Kaluza及びGraphPad Prism 8を使用して分析した。
【0280】
Luminexアッセイのためのマウス試料調製。
血清試料を、製造業者の指示に従ってMultiplex Luminex定量化によって評価した。ビーズ、インビボ試料、及び/又は上清、並びにキットによって提供される希釈標準をプレートに添加し、一晩インキュベートした。検出抗体をプレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-PEを添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、読み取り緩衝液を添加し、室温でインキュベートした後、Luminex 200機器で読み取った。Luminexデータを、ProcartaPlex 1.0 Analystソフトウェアを使用して分析した。サイトカイン濃度を定量化の上限値(ULOQ)及び下限値(LLOQ)に対して正規化した。LLOQ未満の全てのデータを標準曲線の最低点に設定し、分析不可能とみなした(GraphPad Prism分析の場合、0は許可されていない)。データを、Excel及びGraphPad Prism 8を使用して分析した。
【0281】
統計分析
データを、Graphpad Prism 8ソフトウェアを使用して分析した。行った統計分析:一元配置分散分析(ANOVA)、続いてダネット多重比較。P<0.05を統計的に有意とみなした。有意水準をアスタリスクで表す。(0.0001未満の場合は****であり、0.0001の場合は***であり、0.001の場合は**であり、0.01の場合は*である)。
【0282】
結果及び結論
抗マウスIL-1RAP_候補1(配列番号73及び配列番号74を含む)の有効性を、2つの独立したインビボ急性炎症誘導マウスモデルで試験した。C57BL/6JRjマウスに、第1の研究の場合は0日目に、第2の研究の場合は0日目、1日目、及び2日目に、異なる処理物を腹腔内注射した。各処理物注射の2時間後に、マウスにインターロイキンの混合物(マウスIL-1β、ヒトIL-33、並びにマウスIL36α、β、及びγ)を腹腔内注射した。第1の研究の場合は最初の処理物注射の24時間後に、第2の研究の場合は最初の処理物注射の72時間後に、マウスを安楽死させた。マウス血清、脾細胞、及び腹腔内洗浄液をエクスビボ分析のために採取した。
【0283】
最初の注射の24時間後、抗マウスIL-1RAP_候補_1は、対照群と比較してIL-5の有意な下方調節を示した(
図1)(p値=0.0018)。ベンチマークであるアナキンラ(p値=0.1611)及びmIL36Ra(p値=0.4719)によって誘導されたIL-5の有意な下方調節はなかった。
【0284】
【0285】
最初の注射の72時間後、抗マウスIL-1RAP_候補_1は、対照群と比較してIL-5(
図14)及びGro-α(
図3)の有意な下方調節を示した(それぞれ、p値=0.0356及びp値=0.0009)。ベンチマークであるアナキンラ(p値=0.5413)及びmIL36Ra(p値=0.1337)によって誘導されたIL-5の有意な下方調節はなかった。有意な下方調節は、アナキンラ(p値=0.0162)によって誘導されるが、mIL36Ra(p値=0.933)によっては誘導されない。
【0286】
【0287】
【0288】
抗マウスIL-1RAP_候補_1は、インターロイキン注射の24時間後及び72時間後にマウス血清中のIL-5放出を阻害し、インターロイキン注射の72時間後にマウス血清中のGro-α放出を阻害する。これらのデータにより、ベンチマークと比較して、IL-1RAPを標的とすることにより、インビボでのIL-36、IL-33、及びIL1シグナル伝達経路の遮断が可能になることが確認された。
【0289】
実施例7:インビボ慢性炎症誘導マウスモデルにおける抗マウスIL-1RAP候補1の有効性
材料及び方法
畜産
インビボ実験を、Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)によって開発された8~9週齢免疫適格性雌C57BL/6Jマウス(JR番号00664)近交系に行った。全てのマウスを齧歯類ケージ内の標準化環境条件下(室温20±1℃、相対湿度50±10%、12時間の明暗サイクル)で維持した。マウスに、放射線照射した食品及び寝床並びに0.22μmの濾過飲料水を与えた。
【0290】
乾癬様マウスモデル
生存中の観察及び手順。マウスを、本研究の開始の3日前及び生涯にわたって秤量した。IMQ適用の48時間前にマウスを剃毛した。剃毛したマウスの背中及び両耳に、5%IMQクリーム(Aldara(登録商標))を毎日局所塗布した。局所塗布を保護する手段として、IMQ処理皮膚領域をTegaderm(商標)滅菌不透明包帯で覆った。全ての分子の場合、処理物を、3日に1回腹腔内経路を介してマウスに投与し、アナキンラのみ、毎日腹腔内経路を介して注射した。マウスを毎日物理的に検査し、PASI(乾癬面積及び重症度指数)スコアを以下のように適用した:紅斑(皮膚の刺激/発赤)及び焼痂(かさぶた)形成(1~4スコア)/落屑及び病変重症度スケール(1~4スコア)。本研究の最後に、背側皮膚をエクスビボ分析のために採取した。組織学的検査を背側皮膚で行った。
【0291】
エクスビボ実験のためのマウス試料調製
4%ホルマリンに固定する前に、背側皮膚の左側を1cm幅の細片(横断切片)に切断した。
【0292】
組織学アッセイ
背側皮膚(スライド1枚当たり4つの試料)をヘマトキシリンで染色した。スライドを、CellSens標準ソフトウェアを使用して分析した。乳頭間突起形成定量化(表皮肥厚と呼ばれる)を、マウス1匹当たりスライド1枚当たり4つの皮膚試料/スライド1枚当たり10枚の写真/1群当たり6匹のマウスで行った。二重スコアリングを行った。データを、Excel及びGraphPad Prism 8を使用して分析した。
【0293】
統計分析
データを、Graphpad Prism 8ソフトウェアを使用して分析した。行った統計分析:一元配置分散分析(ANOVA)、続いて多重比較のためのダネット多重比較検定。P<0.05を統計的に有意とみなした。有意水準をアスタリスクで表す(0.0001未満の場合は****であり、0.0001の場合は***であり、0.001の場合は**であり、0.01の場合は*である)。
【0294】
結果及び結論
乾癬は、表皮細胞代謝回転の加速を伴う炎症性皮膚疾患である。循環好中球は乾癬病変に移動し、呼吸バースト、脱顆粒、及び好中球細胞外トラップの形成を誘導し、それにより、T細胞不均衡、ケラチノサイト増殖、血管新生、及び自己抗原形成を含む乾癬の免疫病因に寄与する。皮膚における好中球の蓄積は、乾癬の組織学的特徴のうちの1つである。高レベルで産生及び分泌されるIL-36は、イミキモドによって誘導される乾癬型皮膚疾患において重要な役割を果たす。IL-36は、好中球動員を促進し得る。IL-36とIL-1が協働して、相互調節を介して乾癬形態の皮膚炎症を駆動する。抗マウスIL-1RAP_候補1の有効性を、インビボ慢性炎症誘導マウスモデル:乾癬様皮膚炎症マウスモデルにおいて試験した。
【0295】
剃毛したマウスの背中及び両耳に、5%IMQクリーム(Aldara(登録商標))を毎日局所塗布した。局所塗布を保護する手段として、IMQ処理皮膚領域をTegaderm(商標)滅菌不透明包帯で覆った。全ての分子の場合、処理物を、3日に1回腹腔内経路を介してマウスに投与、アナキンラのみ、毎日腹腔内経路を介して注射した。マウスを毎日物理的に検査し、PASI(乾癬面積及び重症度指数)スコアを以下のように適用した:紅斑(皮膚の刺激/発赤)及び焼痂(かさぶた)形成(1~4スコア)/落屑及び病変重症度スケール(1~4スコア)。
【0296】
10日目に、抗マウスIL-1RAP_候補_1は、対照群と比較して、乾癬様皮膚炎症モデルにおいて落屑及び病変スコアの有意な減少を誘導した(1mgでp値=0.0141及び250ugでp値=0.0025)(
図16)。
【0297】
【0298】
組織学データは、抗マウスIL-1RAP_候補_1が、対照群及びアイソタイプ群と比較して、乾癬様皮膚炎症モデルにおいて表皮肥厚とも呼ばれる乳頭間突起の形成を阻害することができることを実証した(p値=0.0001)(
図17及び
図18)。mIL36Raでは表皮肥厚形成が有意に減少した(p値=0.0006)が、アナキンラでは減少しなかった(p値=0.0702)。
【0299】
マウスの背側皮膚に対して行った組織学の写真を
図18に示す。簡潔に説明すると、マウスをイミキモド及びPBS(A)、アイソタイプ対照_3(B)、1mgの抗マウスIL-1RAP_候補_1(C)、250ugの抗マウスIL-1RAP_候補_1(D)、アナキンラ(E)、mIL36Ra(F)、又は未処理マウス(G)で処理した。抗マウスIL-1RAP候補1の投与は、乾癬様皮膚炎症マウスモデルにおいて好中球浸潤を阻害した。
【0300】
IMQ_s2研究からのデータ。
【0301】
【0302】
抗マウスIL-1RAP_候補_1は、乾癬様皮膚炎症マウスモデルにおいて好中球浸潤を阻害する。これらのデータにより、ベンチマークと比較して、IL-1RAPを標的とすることにより、インビボでのIL-36、IL-33、及びIL1シグナル伝達経路の遮断が可能になることが確認された。
【0303】
実施例8:抗ヒトIL-1RAP_候補_1のインビトロ生物学的特徴付け
抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、IL-1刺激時に全血再刺激アッセイにおいてサイトカイン放出を用量依存的に阻害する。
【0304】
先のアッセイは、全血アッセイとの関連でIL1RAPによって媒介される組み合わせ経路を阻害する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の能力の評価を可能にしたが、ここでは、分離したIL-1α又はIL-1βを使用して、IL-1刺激経路を阻害する抗ヒトIL-1RAP_候補_1の能力を評価し、阻害の半最大有効濃度(又はEC50)を決定した。
【0305】
材料及び方法
健常ドナー由来の新たに採取したヒト血液(クエン酸塩チューブ)を15mLのチューブに分配し、培地のみ(RPMI)、25ug/mL~0.00032pg/mLの範囲の抗ヒトIL-1RAP_候補_1の連続希釈物、又はアイソタイプ対照_4(25ug/mL)のいずれかと30分間プレインキュベートした後、5ng/mLのIL-1α又は5ng/mLのIL-1βで刺激して、最終体積0.6mLにした。37℃、5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を回収した。培養上清中の様々なサイトカイン及びケモカインの産生を、複数のProcartaPlexキット(ThermoFisher Scientific、9プレックスキット)を製造者の指示に従って使用してLuminexで測定した。分析物の定量化を刺激指数に対して正規化した。
刺激指数(試料)、[SI]_X=([サイトカイン放出]_X(試料))/([平均サイトカイン放出]_X(未刺激血液))
【0306】
3(ベースラインと比較して3倍)未満の刺激指数(刺激/未刺激血液)を、阻害パーセンテージの決定のために除外した。
阻害%(試料)=(1-([SI]_X(試料)-[SI]_X平均(未刺激血液))/([平均SI]_X(刺激)-[平均SI]_X(未刺激血液)))×100
【0307】
「X」が考慮されるサイトカイン/ケモカインである場合、「刺激血液」は、アイソタイプ対照、次いでサイトカインXとプレインキュベートした全血について得た値に対応し、「未刺激血液」は、刺激なしの全血について得た値に対応する。各計算はドナー及びサイトカイン特異的である。
【0308】
半最大有効濃度(EC50)値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な刺激条件(刺激指数>3)及び十分な適合度を示す曲線(R2>0.7及びスパン>50%)を要約表に含めた。
【0309】
3つの独立した実験を、試験した合計15人のドナーで行った。
図18の表Bは、十分な刺激条件(刺激指数>3)を示す組み入れたドナーの数を記載している。
【0310】
図18及び表16に示す結果は、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が、ヒト全血再刺激アッセイにおけるIL-1α又はIL-1βでの刺激後に、IL-6、IL-8、MCP-1、MIP-1α、及びMIP-1β放出の濃度依存的阻害を示し、平均EC50はIL-1α及びIL-1βのいずれでもナノモル範囲であった。
【0311】
【0312】
抗ヒトIL-1RAP_候補_1又は最大用量のアイソタイプ対照_4の用量応答を、5ng/mLのIL-1α又は5ng/mLのIL-1βとヒト全血中でインキュベートした。
【0313】
表16は、刺激及び読み出し毎の全ての組み入れたドナーについての阻害のEC50を示す。ECx値を非線形シグモイド回帰から抽出した。十分な刺激条件(刺激指数>3)及び十分な適合度を示す曲線(R2>0.7及びスパン>50%)を要約表に含めた。3つの独立した実験を、試験した合計15人のドナーで行った。X/Yは、IL-1刺激に応答したドナー数Yのうち、抗ヒトIL-1RAP_候補_1が阻害を示すドナー数Xを表す。
【0314】
自己免疫障害において、抗ヒトIL-1RAP_候補_1は、病原性サイトカイン産生を増幅し、かつ疾患病態生理を悪化させるIL-1駆動型炎症反応を下方調節することができた。
【0315】
データを、刺激物質としてIL-12/IL-33及びIL-36α/IL-36β/IL-36γを使用して生成し、サイトカイン及びケモカイン放出の用量依存的調節を示す(データ示さず)。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重鎖CDR領域(CDR-H1)、第2の重鎖CDR領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖CDR領域(CDR-H3)を含む、抗IL1RAP抗体であって、前記領域は、
(a)CDR-H1が、アミノ酸配列配列番号128を含み、
(b)CDR-H2が、アミノ酸配列配列番号188を含み、
(c)CDR-H3が、アミノ酸配列配列番号248を含み、
前記抗IL1RAP抗体が、配列番号268を含む軽鎖可変領域を含む、抗IL1RAP抗体。
【請求項2】
前記抗体が、配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項
1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、1×10
8M以下、1×10
9M以下、1×10
10M以下、又は1×10
11M以下の結合親和性でヒトIL1RAPに結合し、任意選択で、前記結合親和性が、配列番号1又は6のヒトIL1RAPポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定される、請求項
1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、IL-1刺激シグナル、IL-33刺激シグナル、及び/又はIL-36刺激シグナルを、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%減少させ、前記シグナルの減少が、細胞ベースのブロッキングアッセイによって測定される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号2のカニクイザルIL1RAPポリペプチドと交差反応する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、配列番号261のマウスIL1RAPポリペプチドと交差反応する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、クラスIgGの全長抗体であり、特に、前記クラスIgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるアイソタイプを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、多重特異性抗体である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープに特異的に結合する、抗IL1RAP抗体。
【請求項10】
抗IL1RAP
抗体であって、前記抗体が、IL1RAPのドメイン2内の1つ以上のアミノ酸残基に特異的に結合する、抗IL1RAP
抗体。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の抗体
と、薬学的に許容される担体
と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
IL1RAP媒介性疾患を治療するための、請求項1~
11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
ざ瘡、膵臓炎、加齢黄斑変性症(AMD)、気道過敏性、気道炎症、アレルギー性結膜炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アレルギー性鼻炎、アレルギー、アルツハイマー病/認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、好中球性皮膚症、化膿性汗腺炎、魚鱗癬、アナフィラキシー、関節炎、喘息/アトピー/鼻ポリープ、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、自己免疫/自己炎症性血管炎(巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、川崎病を含むが、これらに限定されない)、ベーチェット病(神経ベーチェット病を含む)、骨肉腫、脳腫瘍、乳がん、悪液質/拒食症、軟骨炎症、脳虚血、慢性疲労症候群、慢性閉塞性肺疾患、クロストリジウム関連疾患、結腸がん、うっ血性心不全、結膜炎、冠動脈炎症、冠動脈再狭窄、糖尿病、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、ドライアイ疾患、子宮内膜症、好酸球性消化管疾患、好酸球性食道炎、家族性寒冷自己炎症症候群、家族性地中海熱、線維筋痛症、線維性障害、食物アレルギー、汎発型膿疱性乾癬、緑内障、糸球体腎炎、痛風性関節炎、移植片対宿主病、蠕虫感染症、出血性ショック、汗腺膿瘍、痛覚過敏、高IgD症候群、高尿酸血症、特発性肺線維症(IPF)、がん性疼痛、感染、炎症性腸疾患(IBD、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含むが、これらに限定されない)、挫傷から生じる炎症状態、角膜移植に関連する炎症性眼疾患、炎症性疼痛、インフルエンザ関連後遺症、腸がん、虚血、若年性関節炎、川崎病、腎臓がん、レーバー先天性黒内障、肝臓がん、肝疾患、肺がん、マクロファージ活性化症候群(MAS)、黄斑変性、マックル・ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、多発性硬化症、筋骨格系疼痛、骨髄性白血病及び他の白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、心筋機能障害、筋疾患、鼻ポリープ、新生児期発症多臓器系炎症性疾患、神経毒性、好中球性皮膚疾患(掌蹠膿疱症を含む、壊疽性膿皮症、乾癬、スウィート症候群、非感染性結膜炎、非感染性ぶどう膜炎、非小細胞肺がん、整形外科手術、変形性関節症、骨粗鬆症、疼痛、膵臓がん、パーキンソン病、歯周病、末梢動脈疾患、リウマチ性多発筋痛症、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、子癇前症又は子癇、早期陣痛、前立腺がん、原虫性感染症、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、虚血再灌流障害、虚血再灌流障害(RSV)、特に、血管形成術及びステント植え込み術後の再狭窄、網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症(ROP)、関節リウマチ、強皮症、好酸球性筋膜炎、敗血症性ショック、鎌状赤血球貧血症、放射線療法による副作用、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨増殖症及び骨炎)症候群、副鼻腔炎、皮膚がん、睡眠障害、捻挫による炎症、スティル病、胃がん、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎を含む)、顎関節疾患、TNF受容体関連周期性症候群及び他の遺伝性発熱性症候群、移植片拒絶反応、外傷、外傷性眼球損傷、2型糖尿病、並びに白斑を含む群から選択される疾患を治療することにおける使用のための、請求項1~
11のいずれか一項に記載の抗体。
【国際調査報告】