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特表2023-541652機械的波動センサを搭載した機能化オブジェクト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】機械的波動センサを搭載した機能化オブジェクト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 1/00 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G01H1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516842
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 FR2021051559
(87)【国際公開番号】W WO2022053771
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】2009290
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523091682
【氏名又は名称】ワームセンシング
(71)【出願人】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラミーヌ ベナイサ
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル デギルメンシオグル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-セバスチアン ムレ
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
(57)【要約】
本開示は、振動及び変形検出能力を物体に与える少なくとも1つの機械的波動センサ10を備えた機能化オブジェクト100に関する。機械的波動センサ10は、50μm以下の厚さを有し、単結晶または多結晶の圧電材料からなる活性層1及び活性層と接触し、感受性セルの第1の表面でアクセスできる2つの電極2、3からなる感受性セル11と、感受性セル11の第2の表面に固定されて物体100に固定される支持層とからなる。機能化されたオブジェクト100は、感受性セル11の第1の表面上及びオブジェクトの表面100a上に配置された少なくとも2つの電気伝導性ストリップ20を備え、各ストリップは電極を電気コンタクトパッド30に接続する。本開示はまた、このような機能化された物体を製造するための方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1Hzから40kHzの範囲の周波数範囲において0.6未満の吸音係数を有する材料から構成され、振動及び変形検出能力を有するオブジェクトを提供する少なくとも1つの機械的波動センサ(10)を備える機能化オブジェクト(100)であって、
前記機械的波動センサ(10)は、
― 50μm以下の厚さを有する感受性セル(11)であって、単結晶性または多結晶性の圧電性材料で作られた活性層(1)、及び前記活性層(1)と接触し、前記感受性セル(11)の第1の表面(11a)でアクセス可能な2つの電極(2、3)を含む前記感受性セル(11)と、
― 前記機能化オブジェクト(100)を構成する前記材料と同一のまたは接着可能な材料から構成され、前記感受性セル(11)の第2の表面(11b)に固定され、前記オブジェクト(100)に固定され、前記オブジェクト(100)の前記材料に統合されている支持層(12)と、を含み、
前記機能化オブジェクト(100)は、前記感受性セル(11)の前記第1の表面(11a)上と前記機能化オブジェクト(100)の表面(100a)上に配置された少なくとも2つの電気伝導性ストリップ(20)を含み、前記電気伝導性ストリップ(20)の各々は、電極(2、3)を電気接続パッド(30)に接続することを特徴とする、機能化オブジェクト(100)。
【請求項2】
前記圧電性材料は、チタノジルコン酸鉛(PZT)、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸鉛マグネシウムチタン(PMN-PT)、石英、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項3】
前記活性層(1)は、少なくとも前記第1の表面(11a)の側面上で、しわの形態の表面起伏を有することを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項4】
熱可塑性ポリマーのようなプラスチック、金属、カーボン繊維基盤、ガラス繊維、アラミド生地、高分子量ポリプロピレン、自然繊維、玄武岩繊維及び他の複合材料から選択される少なくとも1つの材料で構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項5】
前記支持層(12)は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルスチレン(SAN)、アセタール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホンポリエチレンエーテル(PPE)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(フェニレン硫化物)(PPS)、炭素繊維マトリックスから選択される材料で形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項6】
前記支持層(12)は、10μmから1mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項7】
複数の機械的波動センサ(10)を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項8】
前記複数の機械的波動センサ(10)は、同一の支持層(12)を共有することを特徴とする、請求項7に記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項9】
車両または建物の構造要素、エンジン部品、自転車フレーム、または産業用または家庭用機器カバーを形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の機能化オブジェクト(100)の製造方法であって、前記製造方法は、以下のステップを含む、
a)機械的波動センサ(10)を供給することであって、前記機械的波動センサ(10)は、
― 50μm以下の厚さを有する感受性セル(11)であって、単結晶性または多結晶性の圧電性材料で作られた活性層(1)、及び前記活性層(1)と接触し、前記感受性セル(11)の第1の表面(11a)でアクセス可能な2つの電極(2、3)を含む感受性セル(11)と、
― 前面(12a)及び後面(12b)を有する支持層(12)であって、前記前面(12a)が前記感受性セル(11)の第2の表面(11b)に固定される支持層(12)と、を含むことと、
b)成形により、注入により、または三次元プリントにより固体材料中にオブジェクトを形成することと、
c)ステップb)の間に、支持層(12)の後面(12b)がオブジェクトを形成する材料と少なくとも接触するか、またはそれらに統合されるように、及びオブジェクトが形成されたときに電極(2、3)がアクセス可能なままであるように、前記機械的波動センサ(10)を位置決めすることによって、前記機械的波動センサ(10)を前記オブジェクトに固定することと、
d)前記感受性セル(11)の前記第1の表面(11a)上と前記機能化オブジェクト(100)の表面(100a)上に2つの電気伝導性ストリップ(20)を堆積することであって、前記電気伝導性ストリップ(20)の各々は、電極(2、3)を前記表面(100a)に配置された電気接続パッド(30)に接続することと、を含むことを特徴とする、機能化オブジェクトの製造方法。
【請求項11】
- ステップa)において提供される機械的波動センサ(10)は、前記支持層(12)の後面(12b)上に配置された一時的なハンドリング層(13)を備え、
- 前記ハンドリング層(13)は、ステップc)の前記機能化オブジェクト(100)に複数の前記機械的波動センサ(10)を固定することの前に取り除かれる、ことを特徴とする請求項10に記載の機能化オブジェクトの製造方法。
【請求項12】
- ステップa)は、前記同一の支持層(12)を共有する複数の機械的波動センサ(10)を提供することを含み、
- ステップc)は、複数の前記機械的波動センサ(10)を、同時に前記機能化オブジェクト(100)に固定することを含む、ことを特徴とする、請求項10及び11のいずれか1つに記載の機能化オブジェクトの製造方法。
【請求項13】
ステップd)は、スクリーン印刷、噴霧、電解成長、または金属の直接的なレーザー焼結によって実行されることを特徴とする、請求項10から12のいずれか1つに記載の機能化オブジェクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械的に波動を検出することが可能な機能化オブジェクトの分野に関する。この開示は、オブジェクトの表面に機械的な波動センサを搭載したことによって機能化されたオブジェクトに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な波動の検出と測定は、機器の予防保守、開発、監督、校正、監視(安全性を確保するため)等、多くの分野で不可欠である。応用分野は、消費者機器、ツール、産業機器(ポンプ等)、及び陸上または航空機に拡張することができる。
【0003】
機械的波動は、物質の輸送なしに物質媒体内で外乱が伝播する現象であることを想起するべきである。この外乱は、材料媒体の点の機械的特性(速度、位置、エネルギー等)の変化に対応し、振動及び変形を含む。
【0004】
すべての産業または輸送に関する応用では、振動または変形の正確な測定は、機器の稼働時間を最大限にし、メンテナンスコストを最小限に抑え、緊急修理を回避することにより、大きな利点を構成する。
【0005】
今日、振動の測定は、機能化されるオブジェクト(機器または機器の一部)の後方に固定された個別のデバイスを通して行われる。特にネジ留めによって行われる固定は、コネクタ(接続ワイヤ)に特別な注意を払い、操作中に振動しないようにする、そうでなければ、振動測定はエラーによって非常に汚損される。
【0006】
機械的な波動の測定の妥協は、したがって、機能×統合×コストの調和によって支配される。検出範囲(周波数)、精度(信号対雑音比)及び環境との適合性を含む性能レベルは十分でなければならない。測定装置の体積及び質量は、前述の装置の統合がシステムまたはターゲット装置に悪影響を及ぼさないように十分に小さくなければならない。最後に、アセンブリ及び信号処理コストは、検出ソリューションの広範な展開を促進するためにリーズナブルである必要がある。
【0007】
振動や変形を検出するための装置は、一般的に圧電材料から作られている。後者は、例えば、チタノジルコン酸鉛(PZT)等の固体セラミックス、または特にポリビニリデンジフルオリドトリフルオロエチレン(PVDF-TrFE)等のポリマーから構成してもよい。
【0008】
セラミックの利点は、時間と温度を通しての安定性、及びセンサに付与される高い性能であり、欠点は、センサの固有の周波数を排除するためにバランスウェイトを必要とするセンサの質量と、統合パラメーターに悪影響を及ぼすかさばる保護パッケージを必要とするその脆弱性である。さらに、そのようなセンサは、セラミックの厚い層(150μmから数mmの厚さ)に基づいており、柔らかくて柔軟な部品に統合する可能性を広げない。
【0009】
圧電ポリマーに基づくセンサは、非常に薄いポリマー層(数μmから数十μm)が達成可能であるから、本質的には柔軟性があるが、性能レベルと耐熱性はセラミックスに比べて大きく低下する。圧電ポリマーは、また、経時的にその信頼性に影響を与える偏光不安定性を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2015/055788
【特許文献2】WO2015/055783
【特許文献3】WO2015/055786
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T. Dufay, R. Seveno, B. Guiffard,J.-C. Thomas, “New process for transferring PZT thin film onto polymer substrate,” 2016 Joint IEEE International Symposium on the Applications of Ferroelectrics, European Conference on Application of Polar Dielectrics, and Piezoelectric Force Microscopy Workshop (ISAF/ECAPD/PFM), (2016)
【0012】
開示の主題
本開示は、技術の現状に代わる解決策に関し、その解決策を広く使用するために必要な性能、統合、及びコストの目標を満たすことを目的とする。前述の開示は、特に、オブジェクトの表面に機械式の波動センサを搭載したことによって機能化されたオブジェクトに関する。
【0013】
開示の簡単な説明
本開示は、振動及び変形の検出能力を有するオブジェクトを提供する少なくとも1つの機械的波動センサを備えた機能化オブジェクトに関し、機能化オブジェクトは、
- 50μm以下の厚さを有し、単結晶性または多結晶性圧電性材料で作られた活性層と、前記活性層と接触し、前記感受性セルの第1の表面でアクセス可能な2つの電極とを含む感受性セルと、
― 前記感受性セルの第2の表面に固定され、前記オブジェクトに固定された支持層と、を含む波動センサを含む。
【0014】
前記機能化オブジェクトは、前記感受性セルの前記第1の表面上及び、前記オブジェクトの表面上に配置された少なくとも2つの導電性ストリップをさらに含み、各ストリップは、電極を電気コンタクトパッドに接続する。
【0015】
本発明の有利な特徴によれば、単独でまたは任意の実行可能な組み合わせがとられる:
・前記支持層は、前記オブジェクトを構成する材料と同一であるか、または接着可能な材料で構成され、
・前記支持層の全部または一部は、前記オブジェクトの材料と一体化されているか、またはその中に統合されており、
・前記圧電材料は、チタノジルコン酸鉛(PZT)、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸鉛マグネシウムチタン(PMN-PT)、石英、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)から選択され、
・前記活性層は、少なくとも前記第1の面の側に皺形状の表面起伏を有し、
・前記機能化オブジェクトは、熱可塑性ポリマー、金属、炭素繊維マトリックスその他の複合材料等のプラスチックであって、1Hzから40kHzの周波数範囲において0.6を超える吸音係数を有する材料を除く、プラスチックから選択される少なくとも1つの材料で構成され、
・前記支持層は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルスチレン(SAN)、アセタール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホンポリエチレンエーテル(PPE)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(フェニレン硫化物)(PPS)、炭素繊維マトリックスから選択される材料から選択される材料で形成され、
・前記支持層は、10μmから1mmの厚さを有し、
・前記機能化オブジェクトは、複数の機械的波動センサを備え、
・前記複数の機械的波動センサが同一の支持層を共有し、
・前記感受性セルは、その第1及び第2の表面において、500μmから20cmの横方向寸法を有し、
・前記機能化オブジェクトは、車両または建物の構造要素、エンジン部品、自転車フレーム、産業用または家庭用機器カバー等を形成する。
【0016】
前述の本開示は、また、上記のような機能化オブジェクトを製造するための方法に関し、製造方法は、以下のステップを含む、
a)機械的波動センサを供給することであって、前記機械的波動センサは、
- 50μm以下の厚さを有し、単結晶性または多結晶性圧電性材料で作られた活性層と、前記活性層と接触し、前記感受性セルの第1の表面でアクセス可能な2つの電極とを含む感受性セルと、
- 前面及び後面を有し、その前面が前記感受性セルの第2の表面に固定されている支持層と、
b)固体材料中で、成形により、注入により、または三次元プリントによりオブジェクトを形成すること、
c)前記機械的波動センサを前記オブジェクトに固定することであって、
- ステップb)の間に、前記支持層の後面が前記オブジェクトを形成する材料と少なくとも接触するか、またはそれらに統合されるように、かつ前記オブジェクトが形成されたときに電極がアクセス可能なままであるように、前記センサを位置決めすることにより、
- またはステップb)の後に、接着によって前記形成されたオブジェクトの表面上に前記支持層の後面を固定することにより、
d)前記感受性セルの前記第1の表面上及び前記オブジェクトの表面上に2つの電気伝導性ストリップを堆積させ、各ストリップは、電極を前記表面上に配置された電気コンタクトパッドに接続する。
【0017】
本開示の有利な特徴によれば、単独でまたは任意の実行可能な組み合わせがとられ、
・ステップa)で提供される機械的波動センサは、前記指示層の背面に堆積された一時的なハンドリング層を含み、このハンドリング層は、オブジェクト上の前記機械的波動センサをオブジェクト上に固定するステップc)の前に除去される。
・ステップa)は、同一の前記支持層に共有される複数の機械的波動センサを提供することを含み、ステップc)は、前記複数の機械的波動センサを同時に固定することを含み、
・ステップd)は、スクリーン印刷、噴霧、電解成長、または金属の直接レーザー焼結によって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示の特徴及び優位性は、添付図面を参照する以下の詳細な説明により明らかになり、図面は、
図1図1は、本開示に係る機能化オブジェクトに統合されることを意図した機械的波動センサの感受性セルの変形例を示す図である。
図2図2は、本開示に係る機能化オブジェクトに統合されることを意図した機械的波動センサの変形例を示す図である。
図3a図3aは、本開示に係る機能化オブジェクトに統合されることを意図した機械的波動センサの変形例を示す図である。
図3b図3bは、本開示に係る機能化オブジェクトに統合されることを意図した機械的波動センサの変形例を示す図である。
図4】本開示に係る機能化オブジェクトに統合されることを意図した機械的波動センサの変形例を示す図である。
図5a図5aは、本開示に係る機能化オブジェクトを示す図である。
図5b図5bは、本開示に係る機能化オブジェクトを示す図である。
図6図6は、本開示の第1の実施形態の機能化オブジェクトを製造するための方法のステップを示す図である。
図7】本開示の機能化オブジェクトを製造するための方法のステップを示す図である。
【0019】
これらの図は、概略図であり、分かりやすくするために、縮尺どおりでない。図中の同じ参照符号は、同じタイプの要素に使用され得る。
【0020】
様々な可能性(以下の説明で例示及び/または詳細に説明される変形例及び実施形態)は、相互に排他的ではなく、互いに組み合わせることができると理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本開示は、機能化オブジェクト100に振動及び変形検出能力を提供する少なくとも1つの機械的波動センサ10を備えた機能化オブジェクト100に関する。前述のように、振動及び変形の検出及び測定は、特に特定の機械部品の劣化を予測するために、様々な分野で重要であることが証明され得て、例えば、これらの部品に亀裂または他の構造的欠陥が現れると、音波の周波数特性が変化し、部品の破損または他の重大な故障の出現前に警告を与え得る。この網羅的なリストを形成することなく、機能化オブジェクト100は、特に以下を含み、
- 例えば,飛行機翼、車両シャーシ、自転車フレーム等の全部または一部といった乗り物構造。
- 例えば、キャブレターカバー、タービン要素、シャフト、ベアリング等のエンジン部品。
- 建物構造要素。
- 例えば、ポンプ等の工業用または家庭用の機器等。
- 一般に、疲労や破壊のモデリングが複雑な複合材料で作られた部品で、その構造における欠陥の出現を予測するために機械的波動センサの存在が非常に有益であると考えられるもの。
【0022】
本開示に関する機能化オブジェクト100は、オブジェクト100に固定された支持層12に固定された感受性セル11を含む機械的波動センサ10を組み込む。
【0023】
感受性セル11は、一般に、ラベルの形態であり、主表面11a、11b(以降、第1の表面11a及び第2の表面11bと呼ぶ)は、図1の平面(x,y)内に延在する。その平面(x,y)の横方向の寸法は0.2mmから数cm、典型的には0.5mmから5cmである。センサ10の感受性セル11はまた、50μm以下、有利には30μm以下の総合的な厚さ(図中のz軸に沿う)を有する。それは、セラミック形圧電材料の活性層1と、活性層1と接触し、感受性セル11の第1の表面11aにアクセス可能な2つの電極2、3とを含む。前述の圧電材料は、例えば、チタノジルコン酸鉛(PZT)、窒化アルミニウム(AIN)、酸化亜鉛(ZnO)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸鉛マグネシウムチタン(PMN-PT)、石英、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)から選択される単結晶または多結晶である。
【0024】
活性層1は、典型的には500nmから40μmで構成される厚さを有する。
【0025】
本開示の有利な実施形態に関し、活性層1は、少なくとも感受性セル11の第1の表面11aの側面上で、しわ形態の表面起伏を有する。そのような表面起伏を形成するための方法は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されており、例えば、本発明の感受性セル11の製造に適用される。
【0026】
感受性セル11の電極2、3は、金属材料でできており、活性層1と密接に接触し、活性層1の変形中に圧電効果によって生成された電荷を収集する。活性層1の変形は、特に後者が機械的波動にさらされるときに現れる。電極2、3の端子で生成される電気信号は、機械的波動にリンクされた変形の強度及び周波数を表し得る。
【0027】
図1に示すように、2つの電極2、3は、セル11の第1の表面11aにアクセスし得る。通常、電極2、3は、活性層1の全厚にわたる圧電効果の恩恵を受けるために、活性層1のいずれかの側、すなわち、感受性セル11の第1の表面11aの側、及び第2の表面11bの側に配置される。したがって、図1の構成(a)において、電極3は、第2の表面11bの下部3’、活性層1の縁に配置された横方向部分3’’、及び感受性セル11の第1の表面11aの上部を含む。図1の構成(b)において、導電性ビア3’’は、電極3の下部3’及び上部と電気的に接続する。これら2つの構成では、2つの電極2、3は、感受性セル11の第1の表面11aにアクセスし得る。
【0028】
電極2、3は、典型的には50nmから25μmの厚さ(z軸に沿う)を有する。これらは、アルミニウム、金、チタン、銀、タングステン、銅、ニッケルまたは導電性金属合金から選択される導電性材料を含んでもよく、拡散バリアタイプの他の層(窒化チタンTiN、窒化タンタルTaN、窒化タングステンWN)を含んでもよい。
【0029】
機械的波動センサ10は、また、支持層12を含み、その前面12aは、感受性セル11の第2の面11bに固定される(図2)。支持層12は、典型的には、10μmから1mm、例えば200μmの厚さを有する。
【0030】
有利には、支持層12は、機能化オブジェクト100を構成する材料と同一の材料、またはこの材料に接着し得る材料で構成される。実際、本開示の製造方法の実施形態を参照して以下に説明するように、支持層12は、例えば、成形、注入、または3次元プリントのステップ中に、オブジェクト100の材料に統合することができ、したがって、これが支持層12の材料が対象物100の材料と適合し、機能化オブジェクト100の材料への統合の信頼性及び品質を許容するものであることが重要である。
【0031】
これが限定されない限り、機能化オブジェクトは、熱可塑性ポリマー、金属、炭素繊維マトリックス、ガラス繊維、アラミド織物、高分子量ポリプロピレン、天然繊維、玄武岩繊維、及び他の複合材料等のプラスチックから選択される少なくとも1つの材料で構成されてもよく、1Hzから40kHzの周波数範囲で0.6を超える吸音係数を有する材料を除外する。過度に高い吸音係数を有する材料が、本開示により統合された機械的波動センサ10による測定の原理と互換性がないことは理解できる。したがって、機能化オブジェクト100は、音響波の十分な伝搬を可能にする1つ(または複数)の材料から形成される。
【0032】
例として、支持層12は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルスチレン(SAN)、アセタール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホンポリエチレンエーテル(PPE)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(フェニレン硫化物)(PPS)、炭素繊維マトリックスから選択される材料で形成される。
【0033】
第1の変形例に関し、支持層12は、感受性セル11(図2)と実質的に同じ横方向の寸法(平面(x,y)における)を有する。
【0034】
第2の変形例に係り、支持層12は、図3a(断面図)及び3b(平面図)に示されるように、セル11のものよりも大きい寸法を有し、感受性セル11は、例えば、支持層12として機能する大きい寸法のシート上に配置されたラベルを示す。そのような構成は、機能化オブジェクト100に取り付け中の感受性セル11の位置決めを容易にすることができ、これは、本開示の主題である製造方法を参照して説明される。なお、第2の変形例において、同一の支持層12上にいくつかの感受性セル11を有し得る(図3b)。これにより、特に、複数の機械的波動センサ10を同一のオブジェクト100上に備え、このセンサ10は同一の支持層12を共有する。この変形例は、また、平坦または湾曲したオブジェクト100上のアセンブリ(センサ10)の統合に先立って、平坦な支持層12上の感受性セル11を容易かつ正確に位置決めし得る。
【0035】
最後に、第3の変形例に関し、機械的波動センサ10は、支持層12の後面12bに一時的に取り付けられたハンドリング層13を備える(図4)。このハンドリング層13は、その総合的な厚さがが小さい、特に50μm、または20μm未満であるときにセンサ10を取り扱うことを可能にし得る。例として、それは、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作られた自己接着性プラスチックフィルムで構成されてもよい。ハンドリング層13は一時的なものであり、センサ10をオブジェクト100に固定する前に取り外すことが意図されている。
【0036】
したがって、変形例が考慮されるものが何であれ、支持層12の後面12bは、例えば図5aに示されるように、オブジェクト100に固定される。
【0037】
本開示によれば、機能化オブジェクト100は、感受性セル11の第1の表面11aの上及びオブジェクト100の表面100a上に配置された少なくとも2つの電気伝導性のストリップ20をさらに備える(図5a)。各ストリップ20は、電極2、3を電気コンタクトパッド30に電気的に接続する。ストリップ20は、銀、銅、アルミニウム、または炭素系ペーストから選択される材料で作ってもよい。
【0038】
したがって、センサ10によって生成された電気信号は、コンタクトパッド30で回収され、信号を処理及び解釈することができるコントローラまたは電子ユニットに送信されることが意図される。
【0039】
ストリップは、機能化オブジェクト100の表面100a上に堆積され、固定される。これにより、機械的波動センサ10のコネクタの振動の問題を解消することができ、これは、誤差によって前述のセンサの測定値を汚損する可能性がある。
【0040】
場合によっては、絶縁フィルム40は、導電性ストリップ20上、機械的波動センサ10上、及びオブジェクト100の表面100aの一部に配置されてもよく、このため、アセンブリを絶縁及び保護する(図5b)
【0041】
図5a及び5bの例において、機能化オブジェクト100は、その表現を容易にするために、平坦なカバーの形態をとる。もちろん、対象となる領域やアプリケーションに応じて、平坦、湾曲、またはより複雑な形状のいずれをもとり得る。
【0042】
本開示に係る機能化オブジェクト100は、前述の機械的波動センサ10の統合のために、オブジェクト内で発達する機械的波動(振動または変形)を正確に検出し得る。結晶性圧電材料に基づく感受性セル11は、優れた感度と高い測定信頼性を有している。さらに、感受性セル11の小さい厚さは、活性層1の結晶の固有周波数について対策する必要を避ける。オブジェクト100の表面100aに直接堆積された伝導性のストリップ20は、効果的な接続性を許容し、これは、センサ10の測定にノイズを寄与させない。さらに、その伝導性ストリップ20を備えた機械的波動センサ10は、その寸法及びその組成のために、機能化オブジェクト100に非常に小さな追加の質量しか寄与しない。
【0043】
最後に、機械的波動センサ10は、特に、その支持層12のために、オブジェクト100に統合することが特に容易であり、支持層12を前述のオブジェクト100または前述のオブジェクト100の材料に固定することは、1つまたは複数の感受性層10をオブジェクト100にとって重大な領域に容易かつ正確に配置することを可能にする。
【0044】
本開示は、また、上述のような機能化オブジェクト100の製造方法に関する。製造方法は、機械的波動センサ10を供給する第1のステップa)を含む。後者は、支持層12に固定された感受性セル11を含む。感受性セル11及び支持層12の特性は、前述のものであるため、ここでは繰り返さない。
【0045】
感受性セル11は、接着剤結合の既知の技術によって支持層12上に組み立てられてもよい。あるいは、支持層12は、例えば、遠心コーティング(「スピンコーティング」)またはストリップ鋳造、浸漬(「ディップコーティング」)、噴霧堆積(「スプレーコーティング」)またはスクリーン印刷によって感受性セル11の第2の表面上に堆積され得る(非特許文献1参照)。
【0046】
プロセスのステップa)において、1つまたは複数の感受性セル11(それぞれ1つまたは複数の機械的波動センサ10を形成する)は、支持層12に固定されており、既知の技術(例えば、「ピックアンドプレース」)によって後者に正確に配置され得る。
【0047】
次いで、この方法は、固体材料中で、機能化されることを意図したオブジェクト100を形成するステップb)を含む。このステップは、技術水準から知られている成形、熱成形、注入、または三次元プリントに基づいている。
【0048】
オブジェクト100は、例えば、プラスチック(熱可塑性ポリマー等)、金属、炭素繊維マトリックス、ガラス繊維、アラミド織物、高分子量ポリプロピレン、天然繊維、玄武岩繊維、及び他の複合材料または前述の材料の組み合わせから選択される少なくとも1つの材料で構成されてもよい。本開示によれば、オブジェクト100は、1Hzから40kHzの周波数範囲で0.6以下の吸音係数を有する1つ以上の材料(複数であってもよい)から構成され、それにより、この材料(複数であってもよい)内の機械的波動の伝播が許容される。
【0049】
製造方法はまた、機械的波動センサ10をオブジェクト100に固定するステップc)を含む。このステップは、異なる実施形態に従って実行され得る。
【0050】
第1の実施形態によれば、この固定ステップは、ステップb)中に行われ、支持層12の後面12bが少なくともオブジェクト100を形成する材料と接触するか、またはそれに統合されるように、及びオブジェクト100が形成されたときに電極2、3がアクセス可能なままであるように、前述のセンサ10を配置することによって行われる。
【0051】
図6に示される例において、センサ10(複数であってもよい)は、典型的には真空把持システムによって、モールド200内に保持され、電極2、3は、モールド200の側面に配置される(図6(a))。オブジェクト100を形成することを意図した材料、例えば、熱可塑性材料または上記の複合材料は、モールドに導入され、物体100の成形を許容する温度及び圧力条件にさらされる(図6(b))。あるいは、センサ10(複数であってもよい)は、アセンブリがモールド200に導入される前に、オブジェクト100を形成することを意図した材料と組み合わされる。
【0052】
オブジェクト100がモールド200から取り外されると、機械的波動センサ(複数であってもよい)10は、オブジェクト100の材料中に統合される。この統合は、支持層12の材料がオブジェクト100の材料と同一であるように選択された場合、または接着の観点から後者及びオブジェクト100を形成するための技術と互換性がある場合、ますます信頼性が高くなり、支持層12の材料の全部または一部は、オブジェクト100の材料と混合され得るか、または相互拡散し得る。結晶及び金属材料で作られた感受性セル11は、オブジェクト100を形成するための記載された技術を容易に支持する。
【0053】
第2の実施形態によれば、機械的波動センサ10は、オブジェクト100の表面100a上に接着することによって支持層12の後面12bに固定することにより、ステップb)の後に固定される。接着性は、例えば、シアノアクリレートまたはアクリル接着剤等の接着剤によって、熱圧縮によって、または溶解によって得てもよい。
【0054】
1つまたは他の実施形態によれば、ステップa)は、図3bを参照して言及されるように、同一の支持層12を共有する、または共有しない複数の機械的波動センサ10を供給することを含み得る。この場合、ステップc)は、複数の機械的波動センサ10をオブジェクト100に同時に固定することを含む。センサ10が同一の支持層12を共有する特定の場合、後者は、センサ10をモールド200内に正確に配置するため、またはセンサ10を統合または組み立てる必要があるオブジェクト100に対向するように適合した特定の形状及び/または寸法を有すると想像することができる。また、オブジェクト100の形状を知った上で、予め感受性セル11を支持層12に分散させておき、モールド200内での支持層12の適切な位置決めによって、オブジェクト100のアクセス困難な領域(例えば、コーナー)にセンサ10を提供することも容易である。
【0055】
変形例によれば、前述の第1及び第2の実施形態とも互換性があり、ステップa)で提供される機械的波動センサ10は、支持層12の後面12bに配置された一時的なハンドリング層13を含む。そのような層13は、機械的波動センサ10をオブジェクト100に固定するステップc)の前に除去される。
【0056】
オブジェクト100の表面100aに機械的波動センサを固定した後(Fig7(a))、本開示による製造方法は、センサ10の感受性セル11の第1の表面11a上及びオブジェクト100の表面100a上に2つの電気伝導性ストリップ20を堆積させるステップd)を含む(図7(b))。各伝導性ストリップ20は、電極2、3を前記表面100aに配置された電気コンタクトパッド30に電気的に接続する。コンタクトパッド30の表面及び/または電極2、3の表面に適用される脱酸処理(例えば、希釈酸に基づく)は、ストリップ20との電気的なコンタクトを保証するために実施されてもよい。
【0057】
実施において、工程d)は、スクリーン印刷、噴霧、電解成長、または金属の直接レーザー焼結によって行われてもよい。
【0058】
有利には、伝導性ストリップ20の形成後、絶縁層40は、アセンブリを絶縁及び保護するために、センサ10、ストリップ20及びオブジェクト100の表面100aの一部に堆積される。
【0059】
絶縁層40は、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、またはシリコーン(例えば、低温加硫可能なシリコーンエラストマー、または「室温加硫」のためのRTV)で作られ、スクリーン印刷、コーティング、噴霧等によって堆積されてもよい。
【0060】
もちろん、本開示は、記載された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態を追加すること可能である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7
【国際調査報告】