(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】治療用化合物、組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4523 20060101AFI20230926BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230926BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230926BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K31/4523
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517285
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021050623
(87)【国際公開番号】W WO2022060952
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516235565
【氏名又は名称】エクセセーラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘイワード, ニール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポラック, チャールズ ブイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カーズ, マイケル エー.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。別の態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症を予防する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、前記方法が、前記対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化8】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記対象が、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクにある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症を予防する方法であって、前記方法が、前記対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化9】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項4】
ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを低減する方法であって、前記方法が、前記対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化10】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項5】
前記感染が、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸系発疹ウイルスまたはインフルエンザウイルスによって引き起こされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、MERSもしくはSARS、またはそれらの変異形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コロナウイルスがSARS-COV-2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、COVID-19症候群を有すると特定されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、第2の薬剤(例えば、前記ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)の投与前に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、第2の薬剤(例えば、前記ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)と同時に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、第2の薬剤(例えば、前記ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)の投与後に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が静脈内投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が皮下投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が連続静脈内注入として投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物がボーラスとして投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
約0.6mg/kg/時~約1.0mg/kg/時の前記化合物が、前記対象に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記合併症が、肺塞栓、深部静脈血栓または大出血エピソードである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記合併症が血塊である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が、医療手順の前、その間またはその後に、前記対象に投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記医療手順が、i)心肺バイパス、ii)体外式膜式酸素供給による血液の酸素供給およびポンプ輸送、iii)血液の補助ポンプ輸送(体内または体外)、iv)血液の透析、v)血液の体外ろ過、vi)動物またはヒト対象における後で使用するための保存容器への前記対象からの血液の採取、vii)静脈または動脈管腔内カテーテルの使用、viii)診断または介入心臓カテーテル法のためのデバイスの使用、ix)血管内デバイスの使用、x)人工心臓弁の使用、およびxi)人工グラフトの使用のうちの1つまたは複数を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医療手順が、体外式膜式酸素供給(ECMO)による、血液の酸素供給およびポンプ輸送を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ECMOが、静脈静脈ECMOまたは静脈動脈ECMOである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、機械的換気による処置を受けている最中であるか、またはその処置を完了している、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、血小板減少のリスクにある、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、血小板減少を有すると特定されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている、2020年9月17日出願の米国仮特許出願第63/079,746号、および2020年9月17日出願の同第63/079,742号への優先権およびこれらの利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
血液凝血は、損傷後の血液喪失に対する防御の最前線である。血液凝血「カスケード」はいくつかの循環型セリンプロテアーゼチモーゲン、調節性補因子および阻害剤を必要とする。そのチモーゲンから一旦産生された各酵素は、カスケードにおける次のチモーゲンを特異的に切断して、活性プロテアーゼを産生する。この過程は、最終的にトロンビンがフィブリノゲンからフィブリノペプチドを切断して、フィブリンが産生され、このフィブリンが重合して血塊を形成するまで繰り返される。効率的な血塊形成により外傷の部位における血液の喪失が制限されるが、血塊形成はまた、全身性凝血のリスクをもたらし、大きな血栓を生じさせる。正常な状況下では、止血は、凝塊形成(凝血)と凝塊溶解(線維素溶解作用)との間のバランスを維持する。しかし、急性心筋梗塞および不安定狭心症などのある種の疾患状態では、定着したアテローム動脈硬化性プラークの破裂により、冠動脈血管における異常な血栓形成がもたらされる。
【0003】
心筋梗塞、不安定狭心症、心房細動、脳卒中、肺塞栓症および深部静脈血栓症などの血液凝血から生じる疾患は、先進国における主要な死因である。注射可能な非分画(UFH)ヘパリンおよび低分子量(LMW)ヘパリン、ならびに経口投与されるワルファリン(コウマジン)、ならびにトロンビンまたは第X/Xa因子を選択的に阻害する直接的な経口抗凝血剤(DOAC)などの現在の抗凝血療法は、出血エピソードのリスクをもたらし、緊密なモニタリングおよび治療用量の滴定が必要になる、患者間変動を示す。したがって、現在利用可能な薬物の副作用の一部またはすべてが起こらない新規な抗凝血薬の医療的ニーズが大きい。
【0004】
第XIa因子は、これらの疾患に関連する経路に関与する関心の高い治療標的である。第XIa因子のレベルまたは第XIa因子活性の増大が、静脈血栓症(Meijers et al., N. Engl. J. Med. 342:696, 2000)、急性心筋梗塞(Minnema et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:2489, 2000)、急性冠症候群(Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008)、冠動脈疾患(Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008)、慢性閉塞性肺疾患(Jankowski et al., Thromb Res 127:242, 2011)、大動脈弁狭窄症(Blood Coagul Fibrinolysis, 22:473, 2011)、急性脳血管虚血(Undas et al., Eur J Clin Invest, 42:123, 2012)および虚血性心筋症による収縮期心不全(Zabcyk et al., Pol Arch Med Wewn. 120:334, 2010)を含めた、いくつかの血栓塞栓性障害において観察されている。遺伝性第XI因子欠乏症のために第XI因子を欠く患者は、虚血性脳卒中をあるとしてもほとんど示さない(Salomon et al., Blood, 111:4113, 2008)。同時に、凝血を開始する経路の1つを無傷のままにする第XIa因子活性の喪失は、止血を妨害しない。ヒトでは、第XI因子欠乏症は、とりわけ、尿路、鼻、口腔および扁桃腺などの高レベルの局所フィブリン分解活性を有する組織では、軽度から中度の出血障害をもたらし得る。さらに、第XI因子欠損マウスでは、止血はほとんど正常である(Gailani, Blood Coagul Fibrinolysis, 8:134, 1997)。さらに、第XI因子の阻害は、動脈性高血圧、ならび血管炎症を含めたに他の疾患および機能不全を弱めることも見出された(Kossmann et al. Sci. Transl. Med. 2017, Vol. 9, Issue 375, Abstract aah4923)。
したがって、第XIa因子を阻害する化合物は、凝血経路の他の構成成分を阻害する薬物を妨害する副作用および治療的難題を回避すると同時に、幅広い範囲の障害を予防または処置する可能性を有する。さらに、望ましくない血栓症(例えば、深部静脈血栓症、肝静脈血栓症および脳卒中)の阻害のためのいくつかの現在の治療薬の有効性の限界および有害な副作用のために、望ましくない血栓症を予防または処置するための改善された化合物および方法(例えば、第XIa因子に関連するもの)が必要とされている。
別の治療標的は、酵素カリクレインである。ヒト血漿カリクレインは、凝血、ならびに例えば、血圧、炎症および疼痛の制御にとって重要な、いくつかの下流因子(例えば、ブラジキニンおよびプラスミン)の活性化を担うことができるセリンプロアーゼである。カリクレインは、例えば、前立腺、表皮および中枢神経系(CNS)において発現し、例えば、精液の液化、細胞粘着タンパク質の切断およびCNSにおける神経可塑性の調節に関与し得る。さらに、カリクレインは、腫瘍形成、ならびにがんおよび血管浮腫、例えば遺伝性血管浮腫の発症に関与し得る。カリクレイン-キニン経路の過活性化は、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫を含めた、いくつかの障害をもたらし得る(Schneider et al., J. Allergy Clin. Immunol. 120:2, 416, 2007)。現在まで、HAEに対する処置選択肢には限りがある(例えば、国際公開第2003/076458号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Meijers et al., N. Engl. J. Med. 342:696, 2000
【非特許文献2】Minnema et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:2489, 2000
【非特許文献3】Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008
【非特許文献4】Jankowski et al., Thromb Res 127:242, 2011
【非特許文献5】Blood Coagul Fibrinolysis, 22:473, 2011
【非特許文献6】Undas et al., Eur J Clin Invest, 42:123, 2012
【非特許文献7】Zabcyk et al., Pol Arch Med Wewn. 120:334, 2010
【非特許文献8】Salomon et al., Blood, 111:4113, 2008
【非特許文献9】Gailani, Blood Coagul Fibrinolysis, 8:134, 1997
【非特許文献10】Kossmann et al. Sci. Transl. Med. 2017, Vol. 9, Issue 375, Abstract aah4923
【非特許文献11】Schneider et al., J. Allergy Clin. Immunol. 120:2, 416, 2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、対象に、本明細書において開示されている化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または医薬組成物を投与するステップを含む、方法に一部関する。対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクにあり得る。
【0008】
したがって、態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化1】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0009】
別の態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症を予防する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化2】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0010】
別の態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを低減する方法の方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化3】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
定義
本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、対象が指定された疾患、障害または状態を罹患している間に行われる行為であって、疾患、障害もしくは状態の重症度を軽減する、あるいは疾患、障害もしくは状態の進行を遅延または鈍化させる行為を企図する。代替的な実施形態では、本発明は、対象が、指定された疾患、障害または状態に罹患し始める前の予防としての、本発明の化合物の投与を企図する。
【0012】
一般に、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。当業者によって認識されている通り、有効量の本明細書の化合物は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置される疾患、投与様式、ならびに対象の年齢、体重、健康および状態などの因子に応じて様々になり得る。有効量は、治療的処置および予防的処置を包含する。
[0001] 本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害もしくは状態の処置において治療的利益を提供するのに、または疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の症状を遅延もしくは最小にするのに十分な量のことである。化合物の治療有効量は、単独のまたは他の治療法と組み合わせた治療剤の量であって、疾患、障害または状態の処置において治療的利益を提供する治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、療法全体を改善する、疾患もしくは状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療剤の治療的有効性を増強する量を包含し得る。
【0013】
本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、化合物の「予防有効量」は、疾患、障害もしくは状態、または疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の症状を予防する、あるいはその再発を予防するのに十分な量のことである。化合物の予防有効量は、単独のまたは他の薬剤と組み合わせた治療剤の量であって、疾患、障害または状態の予防に予防的利益を提供する治療剤の量を意味する。用語「予防有効量」は、予防全体を改善する、または別の予防剤の予防的有効性を増強する量を包含することができる。
【0014】
疾患、障害および状態は、本明細書において互換的に使用される。
【0015】
投与が企図される「対象」には、以下に限定されないが、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、幼児、小児、青年)または成人対象(例えば、若い成人、中年成人または老人成人))、ならびに/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコおよび/もしくはイヌなどの哺乳動物が含まれる。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。一部の実施形態では、小児対象は、0歳から18歳の間の年齢である。一部の実施形態では、成人対象は、18歳を超えている。企図される対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクにある。一部の実施形態では、対象は、ウイルス性呼吸器感染を有する。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「人工表面」とは、例えば医療手順の間に、対象の血液に接触するようになる任意の非ヒトまたは非動物表面を指す。人工表面は、対象の身体の外部の対象の血液を採取するまたは循環させるための管であり得る。人工表面はまた、ステント、弁、管腔内カテーテル、または血液をポンプ輸送するためのシステムであり得る。非限定例として、このような人工表面は、鋼、任意のタイプのプラスチック、ガラス、シリコーン、ゴムなどであり得る。一部の実施形態では、人工表面は、対象の血液の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%に曝露される。
【0017】
本明細書で使用する場合、人工表面に関する「コンディショニング」または「コンディショニングした」という用語は、プライミング溶液もしくはフラッシング溶液(例えば、血液、生理食塩水溶液、リンゲル液)中に既に存在する、または医療手順の前、その間もしくはその後に、人工表面への別々の投与として、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)または薬学的に許容されるその塩により人工表面(例えば、体外表面)をプライミングもしくはフラッシングすることを指す。
化合物
【0018】
第XIa因子またはカリクレインを阻害する化合物が、本明細書において記載されている。したがって、一態様では、式(I)の化合物:
【化4】
または薬学的に許容されるその塩が本明細書において提供される。
【0019】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、本明細書において、化合物1と称される。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)から塩が形成される。一部の実施形態では、化合物1の薬学的に許容される塩は、化合物1のHCl塩である。
【0021】
本明細書に記載されている化合物は、遊離酸、双性イオンとして、または塩として投与され得る。塩はまた、陽イオンと、本明細書に記載されている化合物上の負の電荷を有する置換基との間で形成され得る。好適な陽イオン性対イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよびアンモニウムイオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウム陽イオン)を含む。正の電荷を有する置換基または塩基性置換基を含む化合物において、陰イオンと、本明細書に記載されている化合物上の正の電荷を有する置換基(例えば、アミノ基)または塩基性置換基(例えば、ピリジル)との間で塩が形成され得る。好適な陰イオンには、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンおよび酢酸イオンが含まれる。
【0022】
本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩(例えば、化合物1の薬学的に許容される塩)はまた、薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含むことができる。好適な酸の塩の例には、酢酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、4-アミノサリチル酸塩、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、ケイ皮酸塩、シクラミン酸塩、デカン酸塩、デカン二酸塩、2,2-ジクロロ酢酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、エタン-1,2-二スルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptanoate)、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルクロン酸塩(glucoronate)、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-1,5-二スルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、2-オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0023】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよび(アルキル)4N+塩が含まれる。本発明はまた、本明細書において開示されている化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定している。水溶性または油溶性または分散性生成物が、このような四級化によって得られ得る。
【0024】
本明細書で使用する場合、化合物1を含む本発明の化合物は、薬学的に許容される誘導体またはそのプロドラッグを含むよう定義される。「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントに投与すると、本発明の化合物をもたらす(直接または間接的に)ことが可能な、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味する。特に、好都合な誘導体およびプドラッグは、このような化合物が哺乳動物に投与されると、(例えば、経口投与された化合物が、より容易に血液に吸収されることを可能にすることによって)本発明の化合物の生体利用率を向上させるもの、または親化学種と比べて、生物学的コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を増強するものである。好ましいプロドラッグは、水溶解度、または腸膜を介する能動輸送を増強する基が、本明細書に記載されている式の構造に結合している誘導体を含む。
【0025】
本明細書に記載されている任意の式または化合物は、化合物の非標識形態および同位体標識形態を表すことも意図されており、同位体標識化合物は、1個または複数個の原子が選択された原子質量または質量数を有する原子により置き換えられていることを除けば、本明細書において示されている式により図示されている構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18F、51P、32P、35S、36Cl、125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が含まれる。本発明は、本明細書において定義されている様々な同位体標識化合物、例えば、その中に3H、13Cおよび14Cなどの放射活性同位体が存在するものを含む。このような同位体標識されている化合物は、代謝試験(14Cを用いる)、反応速度試験(例えば、‘Hまたは3Hを用いる)、ポジトロン断層法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)などの検出またはイメージング技法(薬物または基質組織分布アッセイを含む)、または患者の放射活性処置に有用である。特に、18Fまたは標識化合物は、PETまたはSPECT試験に特に望ましいことがあり、本発明の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識されている試薬に置き換えることによって、以下に記載されている、スキーム中、または実施例および調製中に開示されている手順を実施することによって調製され得る。
【0026】
さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち、2HまたはD)による置換は、より大きな代謝安定性に起因するある種の治療的利点、例えば、in vivo半減期の増大または投与必要量の低下または治療指標の改善をもたらすことがある。本文脈における重水素は、本明細書に記載されている式の化合物の置換基と見なされることが理解される。このようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮係数により定義され得る。用語「同位体濃縮係数」は、本明細書で使用する場合、同位体の存在量と指定した同位体の天然の存在量との間の比を意味する。本発明の化合物中の置換基が、重水素を表す場合、このような化合物は、指定される各重水素原子について、少なくとも3500(指定した各重水素原子において、52.5%の重水素組み込み)、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、少なくとも5000(75%の重水素組み込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素組み込み)、少なくとも6000(90%の重水素組み込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組み込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組み込み)、少なくとも6600(99%の重水素組み込み)または少なくとも8633.3(99.5%の重水素組み込み)の同位体濃縮係数を有する。
【0027】
本明細書に記載されている同位体標識されている化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技法により、または以前に使用された非標識試薬の代わりに、適切な同位体標識試薬を使用する方法によって調製することができる。本発明による薬学的に許容される溶媒和物として、結晶化の溶媒が、同位体として置換され得るもの、例えば、D2O、D6-アセトン、D6-DMSOが挙げられる。本発明の化合物の任意の不斉原子(例えば、炭素など)は、ラセミまたは鏡像異性体に富む、例えば、(R)-(S)-または(RS)-立体配置で存在することができ、ある特定の実施形態では、各不斉原子は、(R)-または(S)-立体配置で、少なくとも50%鏡像異性体過剰率、少なくとも60%鏡像異性体過剰率、少なくとも70%鏡像異性体過剰率、少なくとも80%鏡像異性体過剰率、少なくとも90%鏡像異性体過剰率、少なくとも95%鏡像異性体過剰率または少なくとも99%鏡像異性体過剰率を有する。不飽和結合を有する原子における置換基は、可能な場合、シス-(Z)-またはトランス-(E)-形態で存在することがある。したがって、本明細書で使用する場合、本発明の化合物は、可能な異性体、回転体、アトロプ異性体、互変異性体またはそれらの混合物の1つの形態で、例えば、実質的に純粋な幾何(シスまたはトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(対掌体)、ラセミ体またはそれらの混合物として存在することができる。任意の得られた異性体の混合物は、それらの構成成分の物理化学的差異に基づいて、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶化によって、純粋なまたは実質的に純粋な幾何異性体または光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に分離することができる。
【0028】
任意の得られた最終生成物または中間体のラセミ体は、公知の方法によって、例えば、光学活性な酸または塩基を用いて得られたそのジアステレオマー塩を分離して、光学活性な酸性化合物または塩基性化合物を遊離させることによって、光学対掌体に分割され得る。したがって、酸性部分を使用して、本発明の化合物をその光学対掌体に分割することができ、例えば、光学活性な酸、例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸またはカンファー-10-スルホン酸とともに形成された塩の分別結晶化による。ラセミ生成物はまた、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分割することができる。
【0029】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)はまた、複数の互変異性体で表されることがある。このような例では、本発明は、本明細書に記載されている化合物の互変異性体のすべてを明示的に含む。
処置、予防またはリスクの低減の方法
【0030】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)は、第XIa因子またはカリクレインを阻害することができる。その結果、これらの化合物は、本明細書に記載されている障害の処置、予防、またはそのリスクの低減に有用であり得る。例えば、本明細書において記載されている化合物(例えば、化合物1)は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症を予防する、またはそれらのリスクを低減するのに有用となり得る。
【0031】
例示的な障害には、冠動脈および脳血管疾患、静脈または動脈血栓症、凝血症候群、虚血(例えば、冠動脈虚血)および狭心症(安定および不安定)、深部静脈血栓症(DVT)、肝静脈血栓症、播種性血管内凝血障害、カサバッハ-メリット症候群、肺塞栓症、心筋梗塞(例えば、ST上昇型心筋梗塞または非ST上昇型心筋梗塞(例えば、カテーテル法前の非ST上昇型心筋梗塞)、脳梗塞、脳血栓症、一過性虚血性発作、心房細動(例えば、非弁膜症性心房細動)、脳塞栓、手術(例えば、股関節または膝置換、整形外科手術、心臓手術、肺手術、腹部手術または動脈内膜切除)の血栓塞栓性合併症および末梢動脈閉塞症に関連する血栓性事象を含み、心筋梗塞、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、狭心症およびアテローム動脈硬化性プラークの破裂の他の結果を処置または予防するのにも有用であり得る。第XIa因子またはカリクレイン阻害活性を有する本発明の化合物はまた、化学療法を受けている患者および/またはラクターゼデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの上昇した患者を含めたがん患者における、血栓塞栓性障害、例えば静脈血栓塞栓症の予防、および血管開存性の組織プラスミノーゲン活性化因子をベースとする回復時もしくは機構的回復時、またはこれらの後の血栓塞栓性事象の予防に有用であり得る。第XIa因子またはカリクレイン阻害活性を有する本発明の化合物はまた、全血の調製、保管および分画化の間などの、血液凝血の阻害剤として有用であり得る。さらに、本明細書に記載されている化合物は、患者が血栓塞栓性障害または合併症のリスクにある急性病院環境において、または手術中やその前後において、また凝血状態の高まった患者、例えばがん患者において使用されてもよい。
【0032】
本発明による第XIa因子阻害は、トロンビンまたは第Xa因子などの他の凝血セリンプロテアーゼの阻害と比べて、血栓症を阻害するより効果的かつ安全な方法であり得る。低分子第XIa因子阻害剤の投与は、出血回数に全くまたは実質的に全く影響しないで、および止血の障害がほとんどまたは全くなしに、トロンビン生成および血塊形成を阻害する作用を有するべきである。これらの結果は、出血時間の長期化および抗血栓有効性と出血時間長期化との間がそれほど区別されないことを示す他の「直接作用性」凝血プロテアーゼ阻害剤(例えば、トロンビンおよび第Xa因子の活性部位阻害剤)の結果とは実質的に異なるものである。本発明による好ましい方法は、哺乳動物に少なくとも1つの本発明の化合物を含有する医薬組成物を投与するステップを含む。
【0033】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)は、カリクレインを阻害することができる。その結果、これらの化合物は、浮腫(例えば、脳浮腫、黄斑浮腫および血管浮腫(例えば、遺伝性血管浮腫))などの炎症に関与する疾患の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用であり得る。一部の実施形態では、本発明の化合物は、遺伝性血管浮腫の処置または予防に有用であり得る。本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)、例えば、化合物1は、例えば、脳卒中、虚血(例えば、冠動脈虚血)および周術期の血液喪失の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用であり得る。本発明の方法は、第XIa因子またはカリクレインの作用を含む、そのような状態を処置または予防するのに有用である。したがって、本発明の方法は、血栓状態または血栓形成性状態における凝血カスケードの活性化に関連する心血管疾患を含めたアテローム動脈硬化性プラークの破裂の結果を処置するのに有用である。
【0034】
より詳細には、本発明の方法は、冠動脈疾患、心筋梗塞、不安定狭心症(漸増性狭心症を含む)、虚血(例えば、血管閉塞に起因する虚血)および脳梗塞などの、急性冠症候群の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができる。本発明の方法はさらに、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)および関連の脳血管疾患(脳血管障害、血管性認知症および一過性虚血性発作を含む);静脈血栓症および血栓塞栓症(深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症など);心房細動、心室拡大、拡張型心筋症または心不全に関連する血栓症;末梢動脈疾患および間欠性跛行;アテローム動脈硬化性プラークの形成および移植によるアテローム性動脈硬化;内因的(アテローム動脈硬化性プラークの破裂による)または外因的(血管形成術または頭蓋動脈ステント留置後に起因する血管壁損傷などの侵襲的心臓病理学的手順による)に誘発された動脈損傷後の再狭窄;播種性血管内凝血障害、カサバッハ-メリット症候群、脳血栓症および脳塞栓の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用であり得る。
【0035】
さらに、本発明の方法は、血栓塞栓性結果またはがんに関連する合併症、血栓摘出、手術(例えば、股関節置換、整形外科手術)、動脈内膜切除、人工心臓弁の導入、末梢血管介入(例えば、四肢のもの)、脳血管介入、動脈瘤の処置に使用される大口径介入、脈管グラフト、人工臓器および植え込み術(例えば、経カテーテル的大動脈弁植え込み術)または臓器の移植(例えば、肝臓の移植)、組織または細胞);経皮冠動脈介入;カテーテル除去;血友病治療;血液透析;心筋梗塞、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、肺塞栓症および同様の状態に罹患している患者における投薬(組織プラスミノーゲン活性化因子または類似の薬剤、および血管開存性の外科的修復など);投薬(経口避妊薬、ホルモン置換、および例えばヘパリン誘発性血小板減少症を処置するためのヘパリンなど);敗血症(播種性血管内凝血に関連する敗血症など);妊娠または出産;ならびに別の慢性医療状態の処置、予防(prophylaxis)(例えば、予防(preventing))またはこれらのリスクの低減に使用することができる。本発明の方法は、抑留(例えば、固定、入院、床上安静、または例えば、固定用ギブスによる四肢固定など)による血栓症を処置するために使用されてもよい。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、経皮冠動脈介入に関連する。
【0036】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、血栓塞栓性障害、例えば、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症、または関連合併症の処置、予防、およびそれらのリスクの低減に有用であり得、対象は、人工表面に曝露される。人工表面は、例えば、体外表面として、または埋込みデバイスの表面として対象の血液に接触することができる。このような人工表面には、以下に限定されないが、透析カテーテル、心肺バイパス回路、人工心臓弁、例えば、機械式心臓弁(MHV)、心室補助デバイス、小口径グラフト、中心静脈カテーテル、体外式膜式酸素供給(ECMO)装置の表面が含まれる。さらに、血栓塞栓性障害または関連合併症は、人工表面によって引き起こされ得るし、または人工表面に関連し得る。例えば、機械式心臓弁(MHV)の異物表面および様々な構成成分は、血栓形成促進性であり、凝血の内因性経路を介して、トロンビン産生を促進する。さらに、トロンビンおよびFXa阻害剤は、重症な出血を引き起こさない血漿中レベルで内因性経路を遮断するのに有効ではないので、これらの阻害剤は、血栓塞栓性障害またはMHVなどの人工表面により引き起こされる関連合併症と禁忌となる。したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる、本発明の化合物は、これらの目的に対する代替的治療薬として企図される。
【0037】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物はまた、それを必要とする対象における、心房細動の処置、予防またはそのリスクの低減に有用であり得る。例えば、対象は、心房細動を発症する高いリスクを有し得る。対象はまた、腎臓透析などの透析を必要とし得る。本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、透析前、その間またはその後に投与され得る。あるFXaまたはトロンビン阻害剤などの、現在、上市されている直接的な経口抗凝血剤(DOAC)は、このような状態下では、心房細動に禁忌である。したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる本発明の化合物は、これらの目的に対する代替的治療薬として企図される。さらに、対象は、出血の高いリスクにあり得る。一部の実施形態では、対象は、末期腎疾患を有し得る。他の場合では、対象は、腎臓透析などの透析を必要としていない。さらに、心房細動は、血塊などの別の血栓塞栓性障害に関連し得る。
【0038】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、高血圧、例えば、動脈性高血圧の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができる。一部の実施形態では、高血圧、例えば動脈性高血圧は、アテローム性動脈硬化をもたらし得る。一部の実施形態では、高血圧は、肺動脈性高血圧であり得る。
【0039】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、ヘパリン誘発性血小板減少症、ヘパリン誘発性血小板減少症血栓症または血栓性微小血管症、例えば、溶血性尿毒症症候群(HUS)または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)などの障害の処置、予防またはそれらのリスクの低減に使用することができる。
【0040】
一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)は、ヘパリンの様々な形態の投与による、血小板数の低下の発症である。HITは、血小板を活性化する、異常な抗体の形成により引き起こされる。HITは、特定の血液検査により確認することができる。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。例えば、活性凝血時間(ACT)検査は、ヘパリンに対する感受性または耐性を検査するために対象に行うことができる。ACT検査は、フィブリン形成の存在を検出する凝血の内因性経路の尺度である。標準用量のヘパリンに感受性がある、および/または耐性がある対象は、目標抗凝血時間に到達しない。ヘパリン耐性の共通して相関するものとして、以下に限定されないが、過去のヘパリンおよび/またはニトログリセリンの点滴および抗トロンビンIIIレベルの低下が挙げられる。一部の実施形態では、対象は、以前に、抗凝血剤(例えば、ビバリルジン/Angiomax)を投与されている。
【0041】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、炎症の軽減に使用することができる。一部の実施形態では、炎症は、血管炎症であり得る。一部の実施形態では、血管炎症には、アテローム性動脈硬化を伴い得る。一部の実施形態では、血管炎症には、対象における血栓塞栓性疾患を伴い得る。一部の実施形態では、血管炎症は、アンジオテンシンII誘発性血管炎症であり得る。
【0042】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、末期腎疾患、高血圧関連性腎機能不全、腎線維症および腎臓損傷を含めた、腎障害または機能不全の処置、予防またはそれらのリスクの低減に使用することができる。
【0043】
本発明の方法はまた、例えば、血栓摘出、経管的冠動脈形成術を受けた患者において、またはバイパス移植術、動脈再建、アテレクトミー、脈管グラフト、ステント開存、ならびに臓器、組織または細胞埋め込み、および移植などの血管手術と連携して、血管開存性を維持するために使用することもできる。本発明の方法は、全血の調製、保管、分画または使用に関連する血液凝血を阻害するために使用することができる。例えば、本発明の方法は、分析試験および生物学的試験のため、例えば、ex vivoでの血小板および他の細胞機能の試験、生物学的分析手順、および血液含有構成成分の定量のため、または腎代替法(例えば、血液透析)もしくは手術(例えば、心臓切開手術、例えば、冠動脈バイパス手術)のような体外血液回路を維持するために必要なものなどの、液相での全血または分画化血液の維持に使用することができる。一部の実施形態では、腎代替法は、急性腎臓損傷を有する患者を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、腎代替法は、持続的腎代替療法とすることができる。
【0044】
さらに、本発明の方法は、がんの血栓形成促進性合併症の処置および予防に有用であり得る。本方法は、血管新生を予防するため、およびがん、より詳細には、肺、前立腺、結腸、乳房、卵巣および骨のがんを処置するための化学療法への補助剤として、腫瘍成長の処置に有用であり得る。
体外式膜式酸素供給(ECMO)
【0045】
「体外式膜式酸素供給」(または「ECMO」)とは、本明細書で使用する場合、循環補助の提供、または血液酸素化および必要に応じて二酸化炭素除去を補助するよう適合された血流速度の発生を可能にする、血液ポンプ、酸素供給器および血管アクセスカニューレを備えた体外生命維持装置を指す。静脈静脈ECMOでは、静脈系から抜き取られた血液に体外でのガス交換が行われる。次に、この血液は、静脈系に再注入される。静脈動脈ECMOでは、静脈系から抜き取られた血液にガス交換が行われ、次に、動脈系に直接、注入されて、部分的または完全な循環または心臓補助を提供する。静脈動脈ECMOは、様々な程度の呼吸補助を可能にする。
【0046】
本明細書で使用する場合、「体外式膜式酸素供給」または「ECMO」とは、循環補助を提供するか、または血液酸素供給を補助するのに適切な血流速度を発生させる、体外生命維持装置を指す。一部の実施形態では、ECMOは、対象の血液からの二酸化炭素の除去を含む。一部の実施形態では、ECMOは、血液ポンプ、酸素供給器および血管アクセスカニューレからなる群から選択される、体外装置を使用して行われる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「静脈静脈ECMO(venovenous ECMO)」とは、血液が対象の静脈系から抜き取られてECMO装置に入れられ、ガス交換が施され(血液の酸素供給を含む)、次いで、対象の静脈系に抜き取った血液を再注入する、ECMOのタイプを指す。本明細書で使用する場合、「静脈動脈ECMO(venoarterial ECMO)」とは、血液が対象の静脈系から抜き取られてECMO装置に入れられ、ガス交換が施され(血液の酸素供給を含む)、次いで、対象の動脈系に抜き取った血液を直接注入する、ECMOのタイプを指す。一部の実施形態では、静脈動脈ECMOは、それを必要とする対象への部分的循環補助または心臓補助を提供するように行われる。一部の実施形態では、静脈動脈ECMOは、それを必要とする対象への完全な循環補助または心臓補助を提供するように行われる。
【0048】
本発明の化合物は、それを必要とする対象における、血栓塞栓性障害の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができ、対象は、心臓または肺の不全に応えるレスキュー治療として使用され得る、体外式膜式酸素供給(ECMO)装置(上記を参照)の人工表面などの人工表面に曝露される。対象に直接接触するECMO装置の表面は、静脈血栓塞栓症、例えば、深部静脈血栓症または肺塞栓症などの血栓塞栓性障害をもたらして、ECMOを必要とする患者の処置を困難にすることがある、血栓形成促進性表面であり得る。循環中の血塊は、最も一般的な機械的合併症(19%)である。大きな血塊は、酸素供給器の不具合、および肺または全身性塞栓を引き起こし得る。
【0049】
ECMOは、血塊形成に対処する抗凝血剤としてヘパリンの連続注入で行われることが多い。しかし、カニューレの留置は、多量の内部出血を引き起こす、内部頸静脈への損傷を引き起こし得る。出血は、ECMOを受けている患者の30~40%に起こり、生命を脅かし得る。この重症な出血は、必要な連続ヘパリン注入および血小板の機能不全の両方によるものである。報告されている死亡の約50%は、重症な出血合併症によるものである。Aubron et al. Critical Care, 2013, 17:R73は、ECMOによる転帰に関連する因子に注目した。したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる本発明の化合物は、ECMO治療において、ヘパリンの代替置換として企図される。本発明の化合物は、顕著な出血罹病性なしに、効果的な抗凝血/抗血栓をもたらす血漿中レベルにおいて、内因性経路を遮断する有効な薬剤として企図される。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。
虚血
【0050】
「虚血」または「虚血事象」は、血管閉塞、または組織への血液供給の制限を一般に伴う血管疾患である。虚血は、細胞の代謝に必要な、酸素およびグルコースの欠乏を引き起こし得る。虚血は、組織の損傷または機能不全をもたらす、問題のある血管により一般に引き起こされる。虚血はまた、鬱血(例えば、血管収縮、血栓症または塞栓症)に起因する、身体の所与の部分における血液または酸素の局所喪失を指し得る。原因は、塞栓症、アテローム性動脈硬化動脈の血栓症、外傷、静脈の問題、動脈瘤、心臓状態(例えば、心筋梗塞、僧帽弁疾患、慢性心房細動、心筋症およびプロテーゼ)、外傷または外傷性損傷(例えば、部分的または全体的な血管閉塞を生じる先端に対するもの)、胸郭出口症候群、アテローム性動脈硬化、低血糖、頻脈、低血圧、血管の外側からの圧迫(例えば、腫瘍による)、鎌状赤血球症、局所的な極度の冷え(例えば、凍傷による)、止血帯の施用、グルタミン酸受容体刺激、動静脈奇形、組織または臓器に供給する大きな血管の破裂、および貧血を含む。
【0051】
一過性虚血事象は、急性梗塞(例えば、組織死亡)のない、血液流の喪失(例えば、病巣脳、脊髄または網膜における)により引き起こされる神経学的機能不全の一過性(例えば、長続きしない)エピソードを一般に指す。一部の実施形態では、一過性虚血事象は、72時間、48時間、24時間、12時間、10時間、8時間、4時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、10分間、5分間、4分間、3分間、2分間または1分間未満の間、続く。
血管浮腫
【0052】
血管浮腫は、真皮、皮下組織、粘膜および粘膜下組織の急速な腫れである。血管浮腫は、遺伝性または後天性のどちらか一方として通常、分類される。
【0053】
「後天性血管浮腫」は、免疫学的、非免疫学的または特発性であり得、投薬、例えばACE阻害剤の投薬の副作用として、例えば、アレルギーにより引き起こされる。
【0054】
「遺伝性血管浮腫」または「HAE」は、顔面、四肢、頸、咽喉、咽頭、先端、胃腸管および生殖器を含めた、身体のほぼすべての部分に起こり得る、浮腫(例えば、腫れ)の急性期間をもたらす遺伝性障害を指す。HAEの発作は、しばしば生命を脅かし得、重症度は、罹患領域に依存し、例えば、腹部の発作は、腸閉塞をもたらし得る一方、咽頭および気道上部の腫れは、仮死に至り得る。遺伝性血管浮腫の病因は、カリクレインまたは凝血因子(例えば、第XII因子)の最初の生成による、接触経路の妨害のない活性化に関連し得る。
【0055】
徴候および症状は、例えば、顔面、口腔または咽喉の粘膜、および舌の技量(skill)の腫れを含む。罹患領域における、かゆみ、疼痛、感覚の低下、皮膚掻痒(すなわち、じんましん)、または気道の喘鳴もまた、血管浮腫の徴候であり得る。しかし、例えば、遺伝性血管浮腫では、関連する皮癬も皮膚掻痒もないことがある。HAE対象は、腹痛(例えば、1~5日間続く腹痛、対象の白血球数を増加させる腹部の発作)、嘔吐、虚弱、水様下痢または発疹を経験し得る。ブラジキニンは、血管浮腫、特に遺伝性血管浮腫において重要な役割を果たす。ブラジキニンは、多数の異なる刺激に応答する様々な細胞タイプにより放出され、疼痛メディエーターである。ブラジキニン生成または分解を妨害すると、血管浮腫に至り得る。遺伝性血管浮腫では、酵素カリクレインの連続的な産生が、ブラジキニン形成を促進し得る。カリクレインの阻害は、ブラジキニン産生を妨害することができ、血管浮腫を処置または予防することができる。
ウイルス性呼吸器感染
【0056】
ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、対象に、本明細書において開示されている化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または医薬組成物を投与するステップを含む、方法が本明細書において記載されている。対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクにあり得る。したがって、態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象を処置する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化5】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0057】
一部の実施形態では、対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを有する(例えば、そのリスクを有すると特定されている)。一部の実施形態では、対象は、ウイルス性呼吸器感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染の処置を同時に受けている。一部の実施形態では、対象は、集中治療環境にあるか、または集中治療室への入院/集中治療室での治療が妥当な、症状の重症度および/または一般リスクを有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、病院環境(例えば、病院に入院して、病棟において)にある。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の24時間以内に、1.0μg/mLより高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の72時間以内に、局所ULNの2倍より高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。
【0058】
別の態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症を予防する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化6】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0059】
一部の実施形態では、対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを有する(例えば、そのリスクを有すると特定されている)。一部の実施形態では、対象は、ウイルス性呼吸器感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染の処置を同時に受けている。一部の実施形態では、対象は、集中治療環境にあるか、または集中治療室への入院/集中治療室での治療が妥当な、症状の重症度および/または一般リスクを有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、病院環境(例えば、病棟において、病院に入院する)にある。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の24時間以内に、1.0μg/mLより高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の72時間以内に、局所ULNの2倍より高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。
【0060】
別の態様では、ウイルス性呼吸器感染を有する対象において、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを低減する方法であって、対象に治療有効量の式(I)の化合物:
【化7】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0061】
一部の実施形態では、対象は、血栓塞栓性または血栓炎症性合併症のリスクを有する(例えば、そのリスクを有すると特定されている)。一部の実施形態では、対象は、ウイルス性呼吸器感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染を有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2感染の処置を同時に受けている。一部の実施形態では、対象は、集中治療環境にあるか、または集中治療室への入院/集中治療室での治療が妥当な、症状の重症度および/または一般リスクを有すると特定されている。一部の実施形態では、対象は、病院環境(例えば、病棟において、病院に入院する)にある。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の24時間以内に、1.0μg/mLより高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。一部の実施形態では、対象は、例えば、入院の72時間以内に、局所ULNの2倍より高いまたはこれに等しい、少なくとも1つのDダイマー値を有する。
【0062】
一部の実施形態では、感染は、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸系発疹ウイルスまたはインフルエンザウイルスによって引き起こされる。
【0063】
一部の実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、MERSもしくはSARS、またはそれらの変異形態である。
【0064】
一部の実施形態では、コロナウイルスは、SARS-COV-2である。
【0065】
一部の実施形態では、対象は、COVID-19症候群を有する(例えば、COVID-19症候群を有すると特定されている)。
【0066】
一部の実施形態では、対象は、急性呼吸窮迫症候群を有すると特定されている。
【0067】
一部の実施形態では、対象は、腎代替療法を完了している。
【0068】
一部の実施形態では、対象は、カテーテルまたは体外フィルターの血栓を有する。
【0069】
一部の実施形態では、本化合物は、第2の薬剤(例えば、ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)の投与前に投与される。
【0070】
一部の実施形態では、本化合物は、第2の薬剤(例えば、ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)と同時に投与される。
【0071】
一部の実施形態では、本化合物は、第2の薬剤(例えば、ウイルス性呼吸器感染を処置する、またはこれを管理する薬剤)の投与後に投与される。
【0072】
一部の実施形態では、本化合物は、静脈内投与される。
【0073】
一部の実施形態では、本化合物は、皮下投与される。
【0074】
一部の実施形態では、本化合物は、連続静脈内注入として投与される。
【0075】
一部の実施形態では、本化合物は、ボーラスとして投与される。
【0076】
一部の実施形態では、約0.01mg/kg/時~約10.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.01mg/kg/時~約5.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.01mg/kg/時~約4.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.01mg/kg/時~約3.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.01mg/kg/時~約2.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時~約5.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時~約4.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時~約3.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時~約2.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時~約1.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時~約5.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時~約4.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時~約3.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時~約2.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時~約1.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時~約5.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時~約4.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時~約3.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時~約2.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時~約1.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.6mg/kg/時~約1.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。
【0077】
一部の実施形態では、約0.05mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.1mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.2mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.3mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.4mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.5mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.6mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.7mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.8mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約0.9mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.0mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.1mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.2mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.3mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.4mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.5mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.6mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.7mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.8mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約1.9mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約2mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約3mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約4mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。一部の実施形態では、約5mg/kg/時の化合物が、対象に投与される。
【0078】
一部の実施形態では、合併症は、肺塞栓、深部静脈血栓、大出血エピソード、脳卒中、動脈血栓塞栓症または虚血性脳卒中である。
【0079】
一部の実施形態では、合併症は、肺塞栓、深部静脈血栓または大出血エピソードである。
【0080】
一部の実施形態では、合併症は、血塊である。
【0081】
一部の実施形態では、合併症は、サイトカイン応答または凝血障害である。
【0082】
一部の実施形態では、対象は、本化合物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩)の投与を受けていない対象に比べて、対象への本化合物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩)の投与後に、Dダイマーレベルが低下している。
【0083】
一部の実施形態では、本化合物は、医療手順の前、その間またはその後に、対象に投与される。
【0084】
一部の実施形態では、医療手順は、i)心肺バイパス、ii)体外式膜式酸素供給による血液の酸素供給およびポンプ輸送、iii)血液の補助ポンプ輸送(内部または外部)、iv)血液の透析、v)血液の体外ろ過、vi)動物またはヒト対象において後で使用するための保存容器への対象からの血液の採取、vii)静脈または動脈管腔内カテーテルの使用、viii)診断的または介入的心臓カテーテル法のためのデバイスの使用、ix)血管内デバイスの使用、x)人工心臓弁の使用、およびxi)人工グラフトの使用のうちの1つまたは複数を含む。
【0085】
一部の実施形態では、医療手順は、体外式膜式酸素供給(ECMO)による、血液の酸素供給およびポンプ輸送を含む。例えば、ECMOは、静脈静脈ECMOまたは静脈動脈ECMOである。
【0086】
一部の実施形態では、対象は、機械的換気による処置を現在受けているか、またはその処置を完了している。
医薬組成物
【0087】
本明細書に記載されている組成物は、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)および存在する場合、追加的な治療剤を、疾患または疾患症状(例えば、第XIa因子に関連する疾患など)の処置を提供するために有効な量で含む。
【0088】
本明細書により提供される医薬組成物に使用することができる、薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、以下に限定されないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)(d-β-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、Tween(登録商標)または他の類似したポリマー送達マトリックスなどの、医薬剤形に使用される界面活性剤など)、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。α-、β-およびγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または2-および3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンもしくは他の可溶化誘導体を含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾されている誘導体も、本明細書に記載されている式の化合物の送達を増強するために有利に使用できる。
【0089】
医薬組成物は、非経口投与前に適合性の再構成用希釈剤を添加することにより再構成され得る固体凍結乾燥組成物の形態であってもよいし、または解凍されるように適合されており、所望の場合、非経口投与前に適合性の希釈剤により希釈される凍結組成物の形態であってもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象への静脈内投与に好適な濃度で、単位投与量IVバッグまたはボトルで、水性媒体、例えば生理食塩水溶液に溶解した粉末(例えば、凍結乾燥組成物)を含む。一部の実施形態では、静脈内投与に好適な医薬組成物の成分は、単一容器中で互いに分けられており、例えば、本明細書に記載されている化合物または薬学的に許容されるその塩を含む粉末は、水性媒体、例えば、生理食塩水溶液から分離される。この後の実施例において、成分が互いに接触するよう砕かれて、静脈投与に好適な医薬組成物を形成することができる様々な構成成分は、シールにより分離されている。
投与経路
【0090】
本明細書により提供される医薬組成物は、経口的に、直腸内、または非経口的(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射、吸入、埋め込み)に投与されてもよい。非経口という用語は、本明細書で使用する場合、皮下、皮内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、鼻内、吸入、肺、経皮、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射、または他の注入技法を含む。本明細書により提供される医薬組成物は、任意の慣用的な非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含むことができる。一部の場合、製剤のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液を用いて調整されて、製剤化された化合物またはその送達形態の安定性を強化することができる。
【0091】
医薬組成物は、例えば、滅菌の注射可能な水溶液剤または油性溶液剤または懸濁液剤として、滅菌注射用調製物の形態であることができる。この懸濁液剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween(登録商標)80など)、および懸濁化剤を使用して、当分野で公知の技法に準拠して製剤化することができる。滅菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液剤としての、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液剤または懸濁液剤であり得る。使用することができる、許容されるビヒクルおよび溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、とりわけそのポリオキシエチレン化型のオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液剤または懸濁液剤はまた、エマルション剤および/または懸濁液剤などの薬学的に許容される剤形の製剤に一般に使用される、長鎖アルコール希釈剤、または分散剤、またはカルボキシメチルセルロース、または類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造において一般に使用される、Tween(登録商標)、またはSpan(登録商標)または他の類似の乳化剤、または生体利用率向上剤などの、他の一般に使用される界面活性剤もまた、製剤化の目的に使用されてもよい。
【0092】
本明細書により提供される医薬組成物は、以下に限定されないが、カプセル剤、錠剤、エマルション剤および水性懸濁液剤、分散液剤および溶液剤を含めた、任意の経口により許容される剤形で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、通常、添加される。カプセル剤形態での経口投与の場合、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液剤またはエマルション剤が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤もしくは懸濁化剤と一緒に懸濁されてもよく、または油相に溶解されてもよい。所望の場合、ある種の甘味剤、または着香剤、または着色剤、または味感マスキング剤が添加されてもよい。
【0093】
本明細書に記載されている化合物は、体重あたり約0.5~約100mg/kgの範囲の投与量で、代替として、1mg~1000mg/用量の投与量で、4~120時間毎に、または具体的な薬物の要件に準拠して、例えば、注射により、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、動脈内、真皮下、腹腔内、経筋肉もしくは皮下;または経口的、口内、鼻腔、経粘膜、局所的に投与され得る。本明細書における方法は、所望のまたは明記した効果を実現するために、有効量の化合物または化合物組成物の投与を企図する。通常、本明細書により提供される医薬組成物は、1日あたり約1~約6回(例えば、静脈内ボーラス注射による)、または代替として、連続注入として投与される。このような投与は、長期間または短期間治療として使用され得る。担体物質と組み合わせて単一投与量形態を生成することができる活性成分の量は、処置される宿主および具体的な投与様式に応じて様々である。典型的な調製物は、約5%~約95%の活性化合物(w/w)を含む。代替的に、このような調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含む。
【0094】
一部の実施形態では、経口投与、皮下投与または静脈内投与向けに製剤化される医薬組成物は、対象に1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化される医薬組成物は、対象に、約3~9か月間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化される医薬組成物は、対象に、約1年間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化される医薬組成物は、対象に、その生涯の残りの間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回または1日あたり4回)、投与される。
【0095】
一部の実施形態では、化合物または医薬組成物は、対象に静脈内投与される。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物は、対象に皮下投与される。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物は、対象に連続静脈内注入として投与される。一部の実施形態では、化合物は、対象にボーラスとして投与される。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物は、対象にボーラスとして、次いで連続静脈内注入として投与される。
組合せ
【0096】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)を互いに組み合わせて、および抗血栓剤または抗凝血剤、血圧降下剤、抗虚血剤、抗不整脈剤、血小板機能阻害剤などの、治療的利益を実現するための1種または複数種の他の薬剤と組み合わせて投与することが望ましいことがある。例えば、本発明の方法は、低分子第XIa因子阻害剤を、低分子第XIa因子阻害剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。より詳細には、本発明の方法は、低分子第XIa因子阻害剤を、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはCS-747、ワルファリン、低分子量ヘパリン(LOVENOXなど)、GPIIb/GPIIIa遮断剤、PAI-1阻害剤(XR-330およびT-686、P2Y1およびP2Y12受容体アンタゴニストなど);トロンボキサン受容体アンタゴニスト(イフェトロバンなど)、プロスタサイクリン模倣薬、トロンボキサンAシンテターゼ阻害剤(ピコタミドなど)、セロトニン-2-受容体アンタゴニスト(ケタンセリンなど);FVII、FVIII、FIX、FX、プロトロンビン、TAFIおよびフィブリノゲン、またはFXIもしくはカリクレインを阻害する他の化合物などの他の凝血因子を阻害する化合物;線維素溶解薬(TPA、ストレプトキナーゼなど)、PAI-1阻害剤、および□-2-抗プラスミンの阻害剤(抗□-2-抗プラスミン抗体フィブリノゲン受容体アンタゴニストなど)、□-1-抗トリプシンの阻害剤、脂質低下剤(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、AZ4522およびイタバスタチン)など)およびミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害剤(米国特許第5,739,135号、同第5,712,279号および同第5,760,246号に開示されているものなど);血圧降下剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、リシノプリルまたはホシノプリル)など);アンジオテンシン-II受容体アンタゴニスト(例えば、イルベサルタン、ロサルタンまたはバルサルタン);ACE/NEP阻害剤(例えば、オマパトリラトおよびゲモパトリラト);または□-遮断薬(プロプラノロール、ナドロールおよびカルベジロールなど)と組み合わせて投与することによって行われ得る。本発明の方法は、低分子第XIa因子阻害剤を、心房細動の場合、例えば、アミオダロンまたはドフェチリドなどの抗不整脈剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。本発明の方法はまた、例えば、急性腎臓損傷を処置するための持続的腎代替療法と組み合わせて行われ得る。
【0097】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物(第XIa因子阻害剤)を、治療的利益のために、細胞におけるcAMPまたはcGMPのレベルを増大させる薬剤と組み合わせて投与することが望ましいことがある。例えば、本発明の化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害剤(PDE1阻害剤(Journal of Medicinal Chemistry, Vol. 40, pp. 2196-2210 [1997]に記載されているものなど)、PDE2阻害剤、PDE3阻害剤(レビジノン、ピモベンダンまたはオルプリノンなど)、PDE4阻害剤(ロリプラム、シロミラストまたはピクラミラストなど)、PDE7阻害剤または他のPDE阻害剤(ジピリダモール、シロスタゾール、シルデナフィル、デンブチリン、テオフィリン(1,2-ジメチルキサンチン)、ARIFLOT(商標)(すなわち、cis-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸)、アロフィリン(arofyline)、ロフルミラスト、C-11294A、CDC-801、BAY-19-8004、シパムフィリン、SCH351591、YM-976、PD-189659、メシオプラム(mesiopram)、プマフェントリン(pumafentrine)、CDC-998、IC-485およびKW-4490を含む)と組み合わせて使用すると、有利な効果を有することができる。
【0098】
本発明の方法は、本発明の化合物を、組織プラスミノーゲン活性化因子(天然または組換え)、ストレプトキナーゼ、レテプラーゼ、アクチベース、ラノテプラーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アニソール化ストレプトキナーゼプラスミノーゲン活性化因子複合体(ASPAC)、動物の唾液腺プラスミノーゲン活性化因子などの血栓溶解促進剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。
【0099】
本発明の方法は、本発明の化合物を、β-アドレナリン作動薬(アルブテロール、テルブタリン、ホルモテロール、サルメテロール、ビトルテロール、ピルブテロールまたはフェノテロールなど);抗コリン作用薬(臭化イプラトロピウムなど);抗炎症コルチコステロイド(cortiocosteroid)(ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、フルニゾリドまたはデキサメタゾンなど);および抗炎症剤(クロモリン、ネドクロミル、テオフィリン、ジレウトン、ザフィルルカスト、モンテルカスト(monteleukast)およびプランルカスト(pranleukast)など)と組み合わせて投与することによって行われ得る。
【0100】
低分子第XIa因子阻害剤は、上記の薬剤の1つまたは複数と相乗的に作用することができる。したがって、用量の少ない血栓溶解剤を使用することができ、したがって、潜在的な出血性副作用および他の副作用を最小化すると同時に、これらの化合物を投与することの利益が得られる。
処置の経過
【0101】
本明細書に記載されている組成物は、治療的利益を達成するための抗血栓剤または抗凝血剤、血圧降下剤、抗虚血剤、抗不整脈剤、血小板機能阻害剤などの1種または複数種の他の薬剤(例えば、追加的な治療剤)と組み合わせて、有効量の本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)を含む。
【0102】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)の投与後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)を投与して、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、18時間、24時間、48時間、72時間後に、またはそれより後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、医療施設(例えば、病院)からの退院後に投与(例えば、経口による)される。
【0103】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)、および追加的な治療剤が、単一組成物または投与量に共製剤化される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)、および追加的な治療剤が、個別に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)、および追加的な治療剤が、逐次に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)、および追加的な治療剤が、個別におよび逐次に投与される。一般に、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)の少なくとも1つ、および追加的な治療剤は、非経口(例えば、経鼻、経筋肉、口内、吸入、埋め込み、経皮、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、皮下、皮内、鼻内、肺内、経皮、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射または他の注入技法);経口的に;または直腸内に、例えば、筋肉内注射または静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射))に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物は、非経口(例えば、経鼻、口内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)または経筋肉)投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、経口投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、非経口(例えば、経鼻、口内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)または経筋肉)投与され、追加的な治療剤は経口投与される。
【0104】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、1日あたり1回または複数回、投与されてもよい。処置期間は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7日間またはそれより長い期間、1日1回、続いてもよい。一部の実施形態では、処置は、長期間(例えば、終身)である。一部の実施形態では、個々の投与量単位の形態の単回用量、またはいくつかのより少ない投与量単位、またはある間隔での分割投与量の多回投与によるもののいずれかが投与される。例えば、投与量単位は、損傷後、約0時間~約1時間、約1時間~約24時間、約1~約72時間、約1~約120時間または約24時間~少なくとも約120時間、投与され得る。代替的に、投与量単位は、損傷後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、40、48、72、96、120時間またはそれより長い間、投与され得る。後の投与量単位は、治療効果が実現されるよう、初回投与後、任意の時間に投与され得る。一部の実施形態では、最初の用量は経口投与される。一部の実施形態では、最初の用量に続く用量は、非経口(例えば、経鼻、経筋肉、口内、吸入、埋め込み、経皮、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、皮下、皮内、鼻内、肺内、経皮、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射または他の注入技法);経口;または直腸内に投与される。
【0105】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、例えば、約5分間~約1週間;約30分間~約24時間、約1時間~約12時間、約2時間~約12時間、約4時間~約12時間、約6時間~約12時間、約6時間~約10時間;約5分間~約1時間、約5分間~約30分間;約12時間~約1週間、約24時間~約1週間、約2日間~約5日間、または約3日間~約5日間、服用のための液体または固形剤形として経口投与される。一実施形態では、化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、液体剤形として経口投与される。別の実施形態では、組成物は、固形剤形として経口投与される。
【0106】
治療を受けている対象が、部分奏功、または治療の最初のサイクルの完了後の再発を示す場合、治療のその後の経過は、部分的または完全な治療的奏功(例えば、長期間処置、例えば、終身)を実現するために必要とされ得る。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、例えば、静脈内注入または静脈内ボーラス注射として、約5分間~約1週間;約30分間~約24時間、約1時間~約12時間、約2時間~約12時間、約4時間~約12時間、約6時間~約12時間、約6時間~約10時間;約5分間~約1時間、約5分間~約30分間;約12時間~約1週間、約24時間~約1週間、約2日間~約5日間または約3日間~約5日間、静脈内投与される。一実施形態では、本明細書に記載されている化合物(例えば、第XIa因子阻害剤)は、静脈内注入として、約5、10、15、30、45もしくは60分間またはそれより長い間;約1、2、4、6、8、10、12、16もしくは24時間またはそれより長い間;約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日間またはそれより長い間、投与される。
投与量および投与レジメン
【0108】
本発明により投与される、有効量の低分子第XIa因子阻害剤は、当業者によって決定されてもよい。任意の特定の対象に対して、投与量の指定用量レベルおよび頻度は様々となり得、使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、対象の人種、年齢、体重、一般的な健康、性別および食事、投与様式および時機、排出速度、薬物組合せ、および具体的な状態の重症度を含めた様々な因子に依存する。
【0109】
患者の状態の改善時に、維持用量の本明細書により提供される化合物、組成物または組合せ物が、必要に応じて投与されてもよい。続いて、症状が所望のレベルまで軽減されると、投与量もしくは投与頻度、またはそれらの両方が、症状に応じて、状態の改善が保持されるレベルまで低減されてもよい。しかし、患者は、疾患症状のなんらかの再発時に、長期的な断続処置を必要とすることがある。
【実施例】
【0110】
本明細書に記載されている発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例を説明する。以下の実施例に記載されている出発材料および様々な中間体は、市販の供給源から得ることができる、市販の有機化合物から調製することができる、または公知の合成法を使用して調製することができる。本出願に記載されている実施例は、本明細書において提供されている化合物を例示するために提示されており、その範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
(実施例1)
SARS-CoV-2重病患者における、血栓塞栓性合併症を予防するための化合物1
【0111】
この試験では、化合物1を、COVID-19症候群のため、集中治療室(ICU)で管理されている患者において、血栓性および出血性合併症の予防に対して検討する。患者は、例えば、インデックス入院の期間の間、0.6mg/kg/時または1.0mg/kg/時の連続静脈内注入として、化合物1の投与を受ける。この試験における患者は、SARS-CoV-2ウイルス感染(COVID-19症候群)に関して、陽性(例えば、PCRにより確認済み)であると特定されている。さらに、この試験における患者は、集中治療環境で(例えば、集中治療室(ICU)において)処置を受けている。さらに、この試験における患者は、入院の24時間以内に、≧1.0μg/mLとなる1つのDダイマー値、または入院の72時間以内に、局所ULNの≧2倍となる1つのDダイマー値、ならびに治験薬の開始の24時間以内に、ICU入院が妥当な臨床状態(例えば、症状の重症度および/または一般リスクによる)を有し得る。この試験の一次目的は、例えば、施設標準治療である血栓予防レジメンにより管理されている患者と比べた、入院の全期間および退院後(例えば、退院後30日間)の、COVID-19患者の管理の際の血栓塞栓症の予防における、化合物1の安全性および耐容性を実証する化合物1の適切な用量を特定することである。
【0112】
一次エンドポイントは、インデックス退院まで起こる、ISTHにより定義されている大出血エピソードである。追加的なエンドポイントは、単一エンドポイントとしての患者の全死因死亡率、単一エンドポイントとして静脈血栓塞栓症(VTE)、単一エンドポイントとして肺塞栓(PE)、単一エンドポイントとして深部静脈血栓症(DVT)、単一エンドポイントとして脳卒中に直接起因し得る死亡率、凝固状態の評価を狙いとする診断または予後検査試験のいずれかの結果、VTEまたは脳卒中の可能性を評価する診断的イメージング試験の結果、臨床的に重要な非大出血の出現率、濃厚赤血球輸血を受けた患者の数、FFP、PCC、クリオプレシピテートまたはトラネキサム酸の投与を受けた患者の数を含む。他のエンドポイントは、インデックス退院時に評価した、施設標準血栓予防と比較した、化合物1を用いた場合の血栓事象または血栓塞栓事象に対する、時間によって測定される比較有効性(この場合、「事象」は、インデックス退院まで起こる、(1)死亡、(2)診断された症候性肺塞栓、(3)診断された症候性深部静脈血栓、(4)診断された症候性動脈血栓塞栓症、または(5)症候性虚血性脳卒中を含むと定義される)、ICUでの日数、入院の長さ、Dダイマーレベルの傾向、ヘモグロビンの最低値、血小板数の最低値、COVID-19の他の一次炎症マーカー(LDH、フェリチン、C反応性タンパク質(CRP)およびインターロイキン-6(IL-6)を含む)の連続レベル、医療財源消費(HEOR)の尺度、退院後の抗血栓治療により層別化されたインデックス退院と30日間との間の有効性事象(上で定義)までの時間、および退院後の抗血栓治療により層別化された、インデックス退院と30日間との間の安全性事象(上で定義)までの時間を含むことができる。
【0113】
インデックス入院の期間に、登録された最初の30名の患者の場合の化合物1の投与を、0.6mg/kg/時のIV(n=15)または1.0mg/kg/時のIV(n=15)に1:1で無作為化する。登録は、これらの30名の患者の処置後に中断し、この時点で、選任DSMBが、インデックス退院後の7日目まで収集した安全性データのすべてを評価する。1.0mg/kg/時の用量の場合に、有害な安全性前兆が特定されない場合、登録を再開し、COVID-19を有するICU患者において、化合物1の試験用量を、1.0mg/kg/時または血栓予防のための施設標準治療に2:1で無作為化する。安全性懸念が、より多い用量の場合に特定され、より少ない用量の場合に特定されない場合、血栓予防に関する非盲検無作為化登録対施設標準治療を、0.6mg/kg/時の用量の化合物1を用いて続ける。
【0114】
第XIa因子の阻害は、COVID-19による、サイトカイン応答および凝血障害を含めた血栓炎症性合併症を安全に予防および処置し、関連死亡率を低下させる、固有の標的となり得る。
参照による組み込み
【0115】
国際特許出願公開WO2015/120062号、同WO2020/092594号および同WO2020/159824号の全開示、ならびに本明細書において言及されている特許書類および科学論文の各々が、すべての目的のため、参照により組み込まれている。
均等物および範囲
【0116】
特許請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、特に反対のことが示されていない限り、または特に文脈から明白ではない限り、1つまたは1つより多くを意味することができる。ある群の1つまたは複数のメンバーの間の「または」を含む特許請求の範囲または記載は、特に反対のことが示されていない限り、または特に文脈から明白ではない限り、この群のメンバーの1つ、1つより多く、またはすべてが、所与の生成物または方法に存在する、これらに使用される、またはそうではない場合、これらに関連する場合に満たされていると見なされる。本発明は、その群の正確に1つのメンバーが、所与の生成物または方法に存在する、それらに使用される、またはそうでない場合、それらに関連している実施形態を含む。本発明は、その群のメンバーの1つより多くまたはすべてが、所与の生成物または方法に存在する、それらに使用される、またはそうでない場合、それらに関連する実施形態を含む。
【0117】
さらに、本発明は、すべての改変、組合せおよび変形を包含し、この場合、列挙されている請求項の1つまたは複数からの1つまたは複数の限定、要素、項および記述用語が、別の請求項に導入される。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項が、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見いだされる1つまたは複数の限定を含むように改変され得る。要素が一覧表示として、例えばマーカッシュ群の形式で提示されている場合、これらの要素の部分群の各々も開示されており、任意の要素がこの群から除かれ得る。一般に、本発明、または本発明の態様が、特定の要素および/または特徴を含むと称される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、このような要素および/もしくは特徴からなる、またはこれらから実質的になることを理解すべきである。単純にする目的で、そのような実施形態は、本明細書において正確な言葉で具体的に説明されていない。用語「含むこと」および「含有すること」は、オープンであることが意図されており、さらなる要素またはステップを含むことを許容することにも留意されたい。範囲が示されている場合、エンドポイントが含まれる。さらに、特に示さない限り、または特に文脈および当業者の理解から明白ではない限り、範囲として表されている値は、その文脈が明確に別段の指定をしない限り、本発明の様々な実施形態において明記されている範囲内の具体的な任意の値または部分範囲を、その範囲の下限値の単位の10分の1まで想定することができる。
【0118】
本出願は、様々な交付された特許、公開特許出願、学術論文、および他の刊行物を参照しており、これらのすべてが、参照により本明細書に組み込まれている。組み込まれている参照文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。さらに、先行技術内に収まる本発明の任意の特定の実施形態は、特許請求の範囲のうちのいずれか1つまたは複数から明示的に除外されてもよい。このような実施形態は、当業者に公知であると見なされているので、それらの実施形態は、この除外が本明細書において明示的に説明されていない場合でさえも除外されてもよい。本発明の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連するか否かに関わらず、任意の理由のために、任意の請求項から除外され得る。
【0119】
当業者であれば、型通りの実験のみを使用して、本明細書に記載されている特定の実施形態に対する多数の均等物を理解するか、または確かめることができる。本明細書に記載されている本発明の実施形態の範囲は、上記の詳細な説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲において説明されている通りである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲において定義されている、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この説明への様々な変更および改変を行うことができることを認識しているであろう。
【国際調査報告】