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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】化学組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6841 20180101AFI20230926BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230926BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20230926BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20230926BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
G01N33/53 M
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517348
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021050642
(87)【国際公開番号】W WO2022060967
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/078,965
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322707
【氏名又は名称】ナノストリング テクノロジーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】シャンシャン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ドウェイン エル.ダナウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル リー
(72)【発明者】
【氏名】テ キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ビーチェム
(72)【発明者】
【氏名】リダン ウ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA11
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR56
4B063QR66
4B063QS32
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、蛍光プロープを使って組織試料内の標的核酸を検出および同定するための組成物および方法であって、前記プローブが標的結合ドメインとバーコードドメインとを含むことを特徴とする組成物および方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法であって、ここで生体試料が、
i)装着された生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることにより、生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させ、ここで前記溶液は、少なくとも2種のISHプローブを含み、
前記少なくとも1種のISHプローブが、前記少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合するユニークな標的結合ドメインと、前記標的分析物に特異的なユニークなバーコードドメインとを含み、前記バーコードドメインが少なくとも1つの付着位置を含んでおり;
ii)前記生体試料を洗浄する
ことにより調製され、
該方法が、
a)調製された生体試料を、複数のレポータープローブと接触させ、ここで各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによって、レポータープローブを、前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズした少なくとも1種のISHプローブのバーコードドメインの付着領域にハイブリダイズさせる工程;
b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程;
c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程;
d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程;そして
e)前記生体試料中の標的分析物にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着位置が、前記少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズするまで、工程(a)~(d)を繰り返し;
それにより、検出可能標識が記録された配列に基づいて、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する工程、
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの標的分析物が標的核酸分子であり、そして
前記標的結合ドメインが、標的核酸に相補的な核酸配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり;
前記標的結合ドメインが約35~約40ヌクレオチド長であり、そして前記標的結合ドメインはD-DNAを含み、そして
前記バーコードドメインが、少なくとも1つの付着領域を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、
ここで前記各々の付着領域は約1つの付着配列を含み、その付着配列の各々が約14ヌクレオチド長であり、
そして前記付着配列の各々の配列が異なっており、そして
前記バーコードドメインがL-DNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの標的分析物が、標的タンパク質分子であり、そして
前記標的結合ドメインが、前記標的タンパク質分子に特異的に結合するタンパク質(好ましくは該タンパク質が抗体である)または抗原結合フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バーコードドメインが、
i)少なくとも2個、
ii)少なくとも3個、
iii)少なくとも4個、または
iv)少なくとも5個
の付着領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、前記生体試料中の任意の標的分析物に特異的に結合しないように設計された少なくとも1種の陰性ISHプローブを含み、好ましくは、前記ISHプローブが、少なくとも1つの外部RNA標準コンソーシアム(ERCC)評価配列またはその相補体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記陰性ISHプローブが、生体試料中のバックグラウンドノイズのレベルを決定するために用いられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記レポータープローブがL-DNAを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レポータープローブが、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含む、第1の核酸分子を含んでおり、
ここで、前記第1の核酸分子の第2ドメインが、約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズし、
前記第2の核酸分子の各々が、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含み、
ここで前記第2の核酸分子の各々の第1ドメインは、前記第1の核酸分子の第2ドメインにハイブリダイズし、
前記第2の核酸分子の各々の第2ドメインは、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズし、
前記第3の核酸分子の各々は、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、そして
前記第1の核酸分子、前記第2の核酸分子、および前記第3の核酸分子は、L-DNAを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、蛍光部分である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、工程(a)の前に、
i)スルホ-NHSアセテートブロッキング溶液中で生体試料を約15分間インキュベートし;
ii)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄し;
iii)前記生体試料を自家蛍光抑制緩衝液中でインキュベートしそして/または前記生体試料を青色光および/またはUV光で照射し、それにより光退色を介して試料の自家蛍光を消光し;そして
iv)前記生体試料を、レポーター洗浄緩衝液で洗浄する
ことにより生体試料を前処理する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(a)が、生体試料を、DEPC処理水中の5 nMの濃度のレポータープローブ、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20、0.1%RNアーゼ阻害剤を含む溶液と共に、少なくとも約15分間インキュベートすることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(b)が、生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)が、
i)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること;そして
ii)生体試料をイメージングして、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録すること
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(d)が:
i)生体試料に、ハイブリダイズしたレポータープローブ中の光開裂性リンカー部分を開裂させるのに十分なUV光を照射することと、
生体試料とストリップ洗浄緩衝液で洗浄すること
の少なくとも一方または両方を実施することを含み;
そして任意選択的に、前記工程(d)が
ii)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること;
iii)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること;そして
iv)検出可能標識が残っていないことを確証するために前記試料をイメージングすること
をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記生体試料の形態スキャンを実行して、1つ以上の関心領域を決定することをさらに含み、ここで前記形態スキャンが:
i)前記生体試料を膜特異的蛍光染色液で染色し、そして前記生体試料をイメージングして前記試料内の細胞膜の空間的配置を特定すること;
ii)前記生体試料を核特異的蛍光染色液で染色し、そして前記生体試料をイメージングして前記試料内の細胞核の空間的配置を特定すること;そして
iii)細胞のセグメント化を実施すること
をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる前に、
aa)前記生体試料を、機能化された顕微鏡スライド上に装着して、装着された生体試料を作製する工程であって、ここで前記生体試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ミクロトーム切片であり;
bb)前記装着された生体試料を焼成する工程;
cc)前記装着された生体試料を脱パラフィンする工程;
dd)前記装着された生体試料に対して標的賦活化反応を行う工程;
ee)前記装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程;
ff)前記装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを適用する工程;そして
gg)前記装着された生体試料を固定する工程
により、前記生体試料がさらに調製される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(ii)の後に、装着された生体試料をフローセルに組み立てることをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記機能化された顕微鏡スライドが、正に帯電した顕微鏡スライドであり、好ましくは、前記機能化された顕微鏡スライドが(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で機能化された顕微鏡スライドである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料が、ヒト組織試料のFFPEミクロトーム切片である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(bb)が、装着された生体試料を約60℃で約1時間焼成することを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(cc)が、
i)前記装着された生体試料をキシレンの第1溶液中で約5分間インキュベートすること;
ii)前記装着された生体試料をキシレンの第2溶液中で約5分間インキュベートすること;
iii)前記装着された生体試料を第1の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること;
iv)前記装着された生体試料を第2の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること;そして
v)前記装着された生体試料を約60℃で約5分間乾燥させること
を含んでなる、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(dd)が、
i)前記装着された生体試料を標的賦活化溶液中で約100℃にてインキュベートすること;
ii)前記装着された生体試料を、DEPC処理水中で約15秒間インキュベートすること;
iii)前記装着された生体試料を、100%エタノール溶液中で約3分間インキュベートすること;
iv)前記装着された生体試料を乾燥させること
を含んでなる、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記装着された生体試料が、表1に記載された時間の間、前記標的賦活化溶液中でインキュベートされる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的賦活化溶液が、TRISおよびEDTA溶液を含み、かつ約9のpHを有する、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記工程(ee)が、
i)前記装着された生体試料を、プロテイナーゼ溶液中で約40℃にてインキュベートすること、ここで前記プロテイナーゼ溶液がプロテアーゼKを含み;
ii)前記生体試料を第1アリコートのDEPC処理水で洗浄すること;そして
iii)前記生体試料を第2アリコートのDEPC処理水で洗浄すること
を含んでなる、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記装着された生体試料が、表2に記載された時間の間、プロテイナーゼK溶液中でインキュベートされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記工程(ff)が、
i)前記装着された生体試料を、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で、約5分間インキュベートすることであって、ここで前記少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液が、2×SSCT溶液中約0.0005%~約0.003%の濃度の赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含む溶液であり;そして
ii)前記装着された生体試料を1×PBSで洗浄すること、
を含んで成る、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記工程(gg)が、
i)前記装着された生体試料を10%NBF中で約1分間インキュベートすること;
ii)前記装着された生体試料を第1のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートすること;
iii)前記装着された生体試料を第2のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートすること;そして
iv)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすること
を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記工程(gg)の後に、前記装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートし、ここで前記装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程が、
i)前記装着された生体試料を、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中で約15分間インキュベートし、前記スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液が、約100 mMリンサンナトリウム pH 8中に約100 mMスルホ-NHS-酢酸エステルおよび約0.5%Tween20 を含んでいる工程;そして
ii)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートする工程
を含んでなる、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記装着された生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートする工程が、
前記生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共に37℃で約16~18時間インキュベートし、それによって少なくとも1つのISHプローブを前記生体試料中の標的分析物にハイブリダイズさせることを含んでなる、上記請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記生体試料を洗浄する工程が、
i)前記装着された生体試料を第1の2×SSC溶液とインキュベートし;
ii)前記装着された生体試料を第1のホルムアミド溶液中でインキュベートし;
iii)前記装着された生体試料を第2のホルムアミド溶液中でインキュベートし;
iv)前記装着された生体試料を第2の2×SSC溶液とインキュベートし;そして
v)前記装着された生体試料を第3の2×SSC溶液とインキュベートする
ことを含んでなる、上記請求項16~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2020年9月16日に出願の米国仮特許出願第63/078,965号に対する優先権を主張し、その恩恵を主張するものである。上記特許出願の内容は、あらゆる目的で、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
生体試料中の核酸およびタンパク質を検出するための様々な方法が現存するが、生体試料中の標的核酸およびタンパク質の、改善された、正確で、迅速で、かつ高感度の多重化検出、同定、および定量の必要性は残っている。具体的には、その本来の形態を維持している組織試料中の特定の核酸および標的タンパク質の存在量と空間的配置を検出する能力が必要とされている。本開示は、このニーズに対処する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法を提供し、ここで、前記生体試料は、i)生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることによって、前記生体試料を少なくとも1種の核酸プローブと接触させ、ここで前記溶液は、少なくとも2種のISHプローブを含み、前記ISHプローブの少なくとも1種は、少なくとも2つの標的分析物のうちの1つに結合するユニークな標的結合ドメインと、該標的分析物に特異的なユニークなバーコードドメインとを含み、前記バーコードドメインは少なくとも1つの付着位置を含んでおり、そしてii)前記生体試料を洗浄する、ことにより調製され;該方法は、
a)調製された生体試料を複数のレポータープローブと接触させる工程であって、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それにより生体試料中の標的分析物にハイブリダイズした少なくとも1種のISHプローブのバーコード領域の付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、およびe)標的分析物にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着位置が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、それによって、検出可能な標識が記録された配列(線形順序)に基づいて、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する工程を含んで成る。
【0004】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも2つの標的分析物が標的核酸分子であり、標的結合ドメインはその標的核酸に相補的な核酸配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、標的結合ドメインは約35~約40ヌクレオチド長であり、標的結合ドメインはD-DNAを含み、そして前記バーコードドメインは、少なくとも1つの付着領域を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、前記各付着領域は約1個の付着配列を含み、前記付着配列の各々が約14ヌクレオチド長であり、前記付着配列の各々の配列は異なるものであり、そして前記バーコードドメインは、L-DNAを含む。
【0005】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも2つの標的分析物が標的タンパク質分子であり、該標的結合ドメインはタンパク質を含み、好ましくは前記タンパク質は、標的タンパク質分子に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。
【0006】
本開示の方法のいくつかの態様では、バーコードドメインは、i)少なくとも2つ、ii)少なくとも3つ、iii)少なくとも4つ、またはiv)少なくとも5つの付着領域を含む。
【0007】
本開示の方法のいくつかの態様では、前記溶液は、生体試料中の任意の標的分析物に特異的に結合しないように設計された少なくとも1つの陰性ISHプローブを含み、好ましくは、ISHプローブは、外来RNA標準コンソーシアム(External RNA Control Consorsium;ERCC)評価配列またはその相補体の少なくとも1つを含む。本開示の方法のいくつかの態様では、陰性ISHプローブは、生体試料中のバックグラウンドノイズのレベルを決定するために使用される。
【0008】
本開示の方法のいくつかの態様では、レポータープローブは、L-DNAを含む。
【0009】
本開示の方法のいくつかの態様では、レポータープローブは、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に配置された光開裂性リンカーとを含む第1の核酸分子を含んでおり、ここで前記第1の核酸分子の第2ドメインが約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズし、各々の第2の核酸分子が第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインの間に配置された光開裂性リンカーとを含み、ここで第2の核酸分子の各々の第1ドメインは、前記第1の核酸分子の第2ドメインにハイブリダイズし、前記第2の核酸分子の各々の第2ドメインは、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズし、ここで、前記第3の核酸分子の各々は、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、そして前記第1の核酸分子、前記第2の核酸分子、および前記第3の核酸分子は、L-DNAを含む。
【0010】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも1つの検出可能な標識は蛍光部分である。
【0011】
本開示の方法のいくつかの態様では、当該方法は、工程(a)の前に、i)生体試料を、スルホ-NHS酢酸エステルブロッキング溶液中で約15分間インキュベートすること;ii)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること;iii)生体試料を自家蛍光抑制緩衝液中でインキュベートし、そして/または生体試料に青色光および/またはUV光を照射し、それによって該試料の自家蛍光を光退色を介してクエンチすること;およびiv)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを更に含む。
【0012】
本発明の方法のいくつかの態様では、工程(a)は、DEPC処理水中、5 nMの濃度のレポータープローブ、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween(商標)-20、および随意に0.1%RNアーゼ阻害剤を含む溶液と共に、少なくとも約15分間、生体試料をインキュベートすることを含む。
【0013】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(b)は、生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含む。
【0014】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(c)は、i)生体試料をイメージング緩衝液に浸漬すること、およびii)生体試料をイメージングして、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録することを含む。
【0015】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(d)は、i)ハイブリダイズしたレポータープローブ中の光開裂性リンカー部分を開裂させるのに十分なUV光を生体試料に照射することと、生体試料をストリップ緩衝液で洗浄することとの少なくとも一方または両方を実施することを含み、任意選択的に、工程(d)は、iii)生体試料をイメージング緩衝液に浸漬すること、iv)検出可能な標識が残っていないのを確証するために試料をイメージングすることをさらに含む。
【0016】
本開示の方法のいくつかの態様では、本方法は、生体試料の形態スキャンを実行して1つ以上の関心領域を決定することをさらに含み、好ましくは、前記形態スキャンを実行することは、i)生体試料を膜特異的蛍光染色溶液で染色し、前記生体試料をイメージングして該試料内の細胞膜の空間的配置を特定すること、ii)前記生体試料を核特異的蛍光染色溶液で染色し、前記生体試料をイメージングして、前記試料中の細胞核の空間的配置を特定すること、およびiii)細胞セグメンテーションを実行することを含む。
【0017】
本開示の方法のいくつかの態様では、生体試料は、該生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる前に、aa)生体試料を、機能化された顕微鏡スライド上に装着し、それによって装着された生体試料を調製し、ここで生体試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ミクロトーム切片であり、bb)前記装着された生体試料を焼成し、cc)前記装着された生体試料を脱パラフィンし、dd)前記装着された生体試料に対して標的賦活化反応を実行し、ee)前記装着された生体試料を透過処理(透徹)し、ff)前記装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを適用し、そしてgg)前記装着された生体試料を固定すること、によってさらに調製される。
【0018】
本開示の方法のいくつかの態様では、当該方法は、工程(ii)の後に、装着された生体試料をフローセルに組み立てる(assembly)ことをさらに含む。
【0019】
本開示の方法のいくつかの態様では、機能化された顕微鏡スライドは、正に帯電した顕微鏡スライドであり、好ましくは、前記機能化された顕微鏡スライドが(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で機能化された顕微鏡スライドである。
【0020】
本開示の方法のいくつかの態様では、生体試料が、ヒト組織試料のFFPEミクロトーム切片である。
【0021】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(bb)は、装着された生体試料を約60℃で約1時間焼成することを含む。
【0022】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(cc)は、i)装着された生体試料を第1のキシレン溶液中で約5分間インキュベートすること、ii)装着された生体試料を第2のキシレン溶液中で約5分間インキュベートすること、iii)装着された生体試料を第1の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること、iv)装着された生体試料を第2の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること、およびv)装着された生体試料を約60℃で約5分間乾燥させることを含む。
【0023】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(dd)は、i)装着された生体試料を標的賦活化溶液中で約100℃でインキュベートすること、ii)装着された生体試料をDEPC処理水中で約15秒間インキュベートすること、iii)装着された生体試料を100%エタノール溶液中で約3分間インキュベートすること、およびiv)装着された生体試料を乾燥させることを含む。
【0024】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料は、表1に記載された時間の間、標的賦活化溶液(Target Retrieval Solution)中でインキュベートされる。
【0025】
本開示の方法のいくつかの態様では、標的賦活化溶液は、トリス(TRIS)およびEDTA溶液を含み、かつ約9のpHを有する。
【0026】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(ee)は、i)装着された生体試料をプロテイナーゼ溶液中で約40℃でインキュベートし、ここで前記プロテイナーゼ溶液はプロテアーゼKを含み、ii)生体試料を第1アリコートのDEPC処理水で洗浄し、そしてiii)生体試料を第2アリコートのDEPC処理水で洗浄することを含む。
【0027】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を、表2に記載された時間の間、プロテイナーゼK溶液中でインキュベートする。
【0028】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(ff)は、i)装着された生体試料を少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で、約室温にて約5分間インキュベートし、ここで、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、2×SSCT溶液中約0.0005%~約0.003%の濃度で赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含む溶液であり、そしてii)装着された生体試料を1×PBSで洗浄することを含む。
【0029】
本開示の方法のいくつかの態様では、工程(gg)は、i)装着された生体試料を10%NBF中で約1分間インキュベートし、ii)前記装着された生体試料を第1のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートし、iii)前記装着された生体試料を第2のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートし、そしてiv)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含む。
【0030】
本開示の方法のいくつかの態様では、当該方法は、工程(gg)の後に、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートすることをさらに含み、ここで前記装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートすることが、i)装着された生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20(商標)溶液中で約15分間インキュベートし、ここで、前記スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液が、約100 mMリン酸ナトリウム pH 8.0中の約100 mMスルホ-NHS-酢酸エステル、約0.5%Tween20を含み、そしてii)装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含む。
【0031】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることが、装着された生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液と共に約37℃で約16~約18時間インキュベートし、それによって少なくとも1つのISHプローブを生体試料中の標的分析物にハイブリダイズさせることを含む。
【0032】
本開示の方法のいくつかの態様では、生体試料を洗浄することが、i)装着された生体試料を第1の2×SSC溶液と共にインキュベートすること、ii)装着された生体試料を第1のホルムアミド溶液中でインキュベートすること、iii)装着された生体試料を第2のホルムアミド溶液と共にインキュベートすること、iv)装着された生体試料を第2の2×SSC溶液と共にインキュベートすること、およびv)装着された生体試料を第3の2×SSC溶液と共にインキュベートすることを含む。
【0033】
上記態様または本明細書に記載の態様のいずれも、任意の他の態様と組み合わせることが可能である。
【0034】
別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において、単数形は、文脈が明らかにそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含み、例として、用語「a」、「an」、および「the」は、単数または複数であるとして解釈され、用語「or(または)」は包括的であるとして解釈される。例として、「要素(an element)」は、1つまたは複数の要素を意味するものである。本明細書の全体を通して、「含んでいる(comprising)」またはその変形、例えば「含む(comprises)」または「含むもの(comprising)」は、言及された要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を包含することを意味するが、任意の別の要素、整数もしくは工程の群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。「約」という語句は、言及された数値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内であると理解することができる。文脈からそうでないことが明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、「約」という用語によって修飾される。
【0035】
本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料は、本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が以下に記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で引用された参考文献は、特許請求の範囲に記載の発明に対する先行技術であるとは認められない。矛盾がある場合、定義をはじめとして本明細書が支配するであろう。加えて、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
上記およびさらなる特徴は、添付の図面と併せると以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【0037】
図1図1は、本開示の例示的なin situハイブリダイゼーション(ISH)プローブの概略図である。
図2図2は、本開示の例示的なレポータープローブの概略図である。
図3図3A、3B、3C、3D、3E、3Fおよび3Hは、生体試料中の複数の標的核酸の存在量および空間的配置を検出する方法の工程の例示的な概略図である。
図4図4は、本開示の方法および標準的なRNA-seq法を使用して測定された様々な細胞におけるRNA標的分析物の存在量を比較する一連のグラフを示す。
図5図5は、本開示の方法を使用してMDA-MB-468細胞を含む生体試料中で検出された個々の標的分析物の画像を示す。また、図5には、分析した1細胞当たりの転写産物の数の定量も示される。
図6A図6Aは、本開示の方法を使用してメラノーマFFPE組織試料(検体)中で検出された個々の標的分析物の画像を示す。
図6B図6Bは、本開示の方法を使用して収集された空間的存在量データを使用して実行され得る、細胞型決定(セルタイピング)の分析結果を示す。
図6C図6Cは、本開示の方法を使用して収集された空間的存在量データを使用して実行され得る、細胞相互作用で誘導される差次的発現解析の結果を示す。
図6D図6Dは、本開示の方法を使用してメラノーマFFPE組織試料中で検出された個々の標的分析物の画像を示す。
図6E図6Eは、本開示の方法を使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)FFPE組織試料中で検出された、個々の標的分析物の画像を示す。
図6F図6Fは、本開示の方法を使用して、腎細胞癌FFPE組織試料中で検出された、個々の標的分析物の画像を示す。
図6G図6Gは、本開示の方法を使用して、結腸直腸癌(CRC)および扁桃腺FFPE組織試料中で検出された、個々の標的分析物の画像を示す。
【発明の詳細な説明】
【0038】
本開示は、蛍光イメージング用の生体試料を調製するための方法を提供する。本開示はまた、本開示の方法で使用するためのin situハイブリダイゼーション(ISH)プローブおよびレポータープローブ、並びにこれらのISHプローブとレポータープローブとを含んでなるキットも提供する。本開示はまた、生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法も提供する。
【0039】
試料の処理方法
【0040】
いくつかの態様では、本開示は、a)生体試料を、機能化された顕微鏡スライドに装着し、それによって装着された生体試料を作製する工程であって、前記生体試料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ミクロトーム切片である工程、b)前記装着された生体試料を焼成する工程、c)前記装着された生体試料を脱パラフィンする工程、d)前記装着された生体試料に対して標的賦活化反応を行う工程、e)前記装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程、f)前記装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを適用する工程、g)前記装着された生体試料を固定する工程、h)前記装着された生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる工程、およびi)前記装着された生体試料を洗浄する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0041】
いくつかの態様では、前述の方法は、任意選択的に、j)装着された生体試料を脱水する工程をさらに含むことができる。
【0042】
いくつかの態様では、前述の方法は、工程(i)の後または工程(j)の後に、装着された生体試料をフローセルに組み立てることをさらに含むことができる。
【0043】
いくつかの態様では、前述の方法は、工程(g)の後および工程(h)の前に、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートすることをさらに含むことができる。
【0044】
いくつかの態様では、前述の方法は、いずれかの工程の前または後に、生体試料に青色光および/またはUV光を照射し、それによって光退色を介して試料の自家蛍光を消光する(クエンチする)ことをさらに含むことができる。いくつかの態様では、UV照射と読み出しチャネル照射との任意組み合わせを使用して、光退色を介して試料の自家蛍光を消光することができる。いくつかの態様では、照射は、工程(h)をはじめとする上記工程のいずれかと同時に行うことができ、工程(h)に限定されない。いくつかの態様では、照射は、長時間にわたる低線量照射を使用して実施することができる。
【0045】
いくつかの態様では、機能化された顕微鏡スライドは、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で機能化された顕微鏡スライドとすることができる。いくつかの態様では、a)プラズマ機器を使用して顕微鏡スライドを清浄化すること、b)顕微鏡スライドを、浸漬用0.5%APTMS溶液中で約1分間インキュベートすること、c)顕微鏡スライドを、0.5%APTMS溶液中で約10秒間、超音波処理すること、d)顕微鏡スライドが0.5%APTMS溶液に約3.5分間浸漬されるように工程(b)と(c)を2回繰り返すこと、e)顕微鏡スライドを水で少なくとも3回すすぐこと、f)窒素下で顕微鏡スライドを乾燥させることとを含む方法を用いて、APTMSで機能化された顕微鏡スライドを調製することができる。
【0046】
いくつかの態様では、機能化された顕微鏡スライドは、任意の正に帯電した顕微鏡スライドとすることができる。当業者に理解されるように、市販の正に帯電した顕微鏡スライドの非限定的例には、ポリ-L-リジンでコーティングされたガラススライド、ライカ社製BOND Plus(商標)スライド、およびFisherbrand (商標)SuperFrost (商標)Plusスライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本開示の方法のいくつかの態様では、生体試料を、機能化された顕微鏡スライドに装着する工程は、生体試料を機能化された顕微鏡スライドに装着し、そして装着された生体試料を少なくとも約12時間、または少なくとも約13時間、または少なくとも約14時間、または少なくとも約15時間、または少なくとも約16時間、または少なくとも約17時間、または少なくとも約18時間、室温で乾燥させることを含みうる。
【0048】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を焼成する工程は、装着された生体試料を少なくとも約50℃、または少なくとも約55℃、または少なくとも約60℃、または少なくとも約65℃、または少なくとも約70℃、または少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃で焼成することを含みうる。いくつかの態様では、装着された生体試料を焼成する工程は、装置された生体試料を約60℃で焼成することを含みうる。
【0049】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を焼成する工程は、装着された生体試料を少なくとも約0.5時間、または少なくとも約1時間、または少なくとも約1.5時間、または少なくとも約2時間焼成することを含みうる。いくつかの態様では、装着された生体試料を焼成する工程は、装着された生体試料を約1時間焼成することを含みうる。
【0050】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を焼成する工程は、装着された生体試料を約60℃で約1時間焼成することを含みうる。
【0051】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を脱パラフィンする工程は、a)装着された生体試料を第1のキシレン溶液中で約5分間インキュベートすること;b)装着された生体試料を第2のキシレン溶液中で約5分間インキュベートすること;c)装着された生体試料を第1の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること;d)装着された生体試料を第2の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること;e)装着された生体試料を約60℃で約5分間乾燥させることを含む。いくつかの態様では、第1のキシレン溶液および/または第2のキシレン溶液中でのインキュベーションは、例えば、前記溶液中で生体試料を上下に振盪することによって、装着された生体試料をキシレン溶液中で攪拌することを含むことができる。
【0052】
理論に束縛されるものではないが、FFPE試料は、互いに架橋されたDNA分子、並びにRNAおよびタンパク質分子に架橋結合されたDNA分子を含むため、これらの架橋の破壊は、その後の精製のためのDNAの遊離を容易にすることができる。これらの架橋の破壊は、FFPE試料のような生体試料に対して標的賦活化(または抗原賦活化)反応を行うことによって達成することができる。標的賦活化反応では、FFPE試料などの生体試料を、標的賦活化溶液と共にインキュベートすることができ、ここで前記標的賦活化溶液は、生体試料中のDNA、RNAおよびタンパク質間の架橋を除去するのに適しており、それによって分析可能な生体分子の回収を可能にするものである。
【0053】
いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、約8.0~約10.0のpHを有することができる。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は約8.5~約9.5のpHを有することができる。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は約9.0のpHを有することができる。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は緩衝剤を含むことができる。いくつかの態様では、緩衝剤はトリス(TRIS)であり得る。
【0054】
いくつかの態様では、標的賦活化溶液はキレート化剤を含むことができる。いくつかの態様では、キレート化剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり得る。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、約0.1~約2 mMのEDTAを含むことができる。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、約0.5~約1.5 mMのEDTAを含むことができる。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、約1.0 mM EDTAを含むことができる。
【0055】
いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、トリス(TRIS)およびEDTA溶液であり得る。いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、pH 9.0の約10 mM TRISおよび約1 mM EDTAの溶液とすることができる。
【0056】
いくつかの態様では、標的賦活化溶液は、RNAscope(登録商標)標的賦活化溶液(Target Retrieval Solution; ACD社)であり得る。
【0057】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料に対して標的賦活化反応を実行する工程は、装着された生体試料を約100℃の標的賦活化溶液中でインキュベートすることを含むことができ、ここで装着された生体試料は、装着された生体試料のタイプに特異的な時間にわたり、標的賦活化溶液中で約100℃にてインキュベートされる。装着された生体試料がヒト乳癌試料である非限定的な例では、装着された生体試料は、約100℃で約15分間、標的賦活化溶液中でインキュベートすることができる。様々な試料タイプのインキュベーション時間を表1に示す。いくつかの態様では、標的賦活化反応を実行する工程は、装着された生体試料を標的賦活化溶液中でインキュベートした後、装着された生体試料を少なくとも約15秒間、水中でインキュベートすること;装着された生体試料を100%エタノールの溶液中で少なくとも約3分間インキュベートすること;および装着された生体試料を乾燥させることをさらに含むことができる。いくつかの態様では、水はジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水であり得る。
【0058】
したがって、装着された生体試料に対して標的賦活化反応を実行する工程は、a)表1に記載されるような時間の間、装着された生体試料を標的賦活化溶液中で約100℃でインキュベートすること、b)装着された生体試料を約15秒間、DEPC処理水中でインキュベートすること、c)装着された生体試料を100%エタノール溶液中で約3分間インキュベートすること、およびd)装着された生体試料を乾燥させること、を含むことができる。
【表1】
【0059】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、装着された生体試料をプロテイナーゼK溶液中でインキュベートすることを含みうる。
【0060】
いくつかの態様では、プロテイナーゼK溶液は、プロテイナーゼKの濃度が少なくとも約0.1μg/mL、または少なくとも約0.25μg/mL、または少なくとも約0.5μg/mL、または少なくとも約0.75μg/mL、または少なくとも1μg/mL、または少なくとも約1.25μg/mL、または少なくとも約1.5μg/mL、または少なくとも約1.75μg/mL、または少なくとも約2μg/mL、または少なくとも約2.25μg/mL、または少なくとも約2.5μg/mL、または少なくとも約2.75μg/mL、または少なくとも約3μg/mL、または少なくとも約3.25μg/mL、または少なくとも約3.5μg/mL、または少なくとも約3.75μg/mL、または少なくとも約4μg/mL、または少なくとも約4.25μg/mL、または少なくとも約4.5μg/mL、または少なくとも4.75μg/mL、または少なくとも約5μg/mLである溶液である。いくつかの態様では、プロテイナーゼK溶液は、プロテイナーゼKの濃度が約1μg/mLである溶液である。いくつかの態様では、プロテイナーゼK溶液は、プロテイナーゼKをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈した溶液である。いくつかの態様では、プロテイナーゼK溶液は、プロテイナーゼKを、ACD Protease Plus(商標)を含むがそれに限定されない、プロテアーゼカクテルに希釈した溶液である。
【0061】
いくつかの態様では、PBSは、NaCl、KCl、Na2HPO4およびKH2PO4の組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、PBSは、pH 7.4において137 mM NaCl、2.7 mM KC1、8 mM Na2HPO4、および2 mM KH2PO4の溶液を含むことができる。したがって、いくつかの態様では、プロテイナーゼK溶液は、プロテイナーゼKの濃度がPBS中約1μg/mLである溶液であり、ここでPBSはpH 7.4で137 mM NaCl、2.7 mM KCl、8 mM Na2HPO4 および2 mM KH2PO4を含む。
【0062】
いくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、いくつかの態様では、装着された生体試料を、プロテイナーゼK溶液中で約40℃にてインキュベートすることを含むことができる。装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、装着された生体試料のタイプに特有の時間にわたり、約40℃にてプロテイナーゼK溶液中で、装着された生体試料をインキュベートすることを含みうる。装着された生体試料がヒト乳癌試料である非限定的例では、装着された生体試料を、約40℃で約30分間、プロテイナーゼK溶液中でインキュベートすることができる。様々な試料タイプのインキュベーション時間を表2に示す。
【0063】
いくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、装着された生体試料を、プロテイナーゼ溶液中で約40℃にてインキュベートすることを含みうる。いくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)することは、装着された生体試料のタイプに特有の時間量にわたり、装着された生体試料をプロテイナーゼ溶液中で約40℃にてインキュベートすることを含むことができる。装着された生体試料がヒト乳癌試料である非限定的例では、装着された生体試料を、プロテイナーゼ溶液中で約40℃にて約30分間インキュベートすることができる。様々な試料タイプのインキュベーション時間を表2に示す。
【0064】
いくつかの態様では、プロテイナーゼ溶液は、約0.1~約5.0μg/mLの濃度のプロテアーゼKの溶液、または0.1~5.0μg/mLのプロテアーゼKの溶液を含むことができる。いくつかの態様では、プロテイナーゼ溶液は、約0.1~約5.0μg/mLの濃度のプロテアーゼKの溶液、またはPBS中0.1~5.0μg/mLの濃度のプロテアーゼKの溶液を含むことができる。いくつかの態様では、プロテイナーゼ溶液は、プロテアーゼカクテル(例えば、ACD社製のProtease Plus溶液)中に約0.1~約5.0μg/mL、または0.1~5.0μg/mLの濃度でプロテアーゼK溶液を含むことができる。いくつかの態様では、プロテイナーゼ溶液は、当技術分野で知られているプロテアーゼカクテル、例えばACD 社製のProtease Plus溶液を含むことができる。
【表2】
【0065】
いくつかの態様では、装着された生体試料をプロテイナーゼK溶液中でインキュベートすることは、例えば、PAPペンで、装着された生体試料の周囲に疎水性障壁を描画することをさらに含むことができる。
【0066】
いくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、DEPC処理水で湿らせた紙(例えばキムワイプまたは適当な代替品)が中に敷かれておりかつ約40℃に予熱された容器内で、生体試料をプロテイナーゼK溶液中で少なくとも約30分間インキュベートすることを含みうる。
【0067】
いくつかの態様では、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、装着された生体試料をプロテイナーゼK溶液中でインキュベートした後、装着された生体試料を水で洗浄することをさらに含むことができる。水は、DEPC処理水とすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を水で洗浄することは、第1アリコートのDEPC処理水で、装着された生体試料を洗浄し、次いで、第2アリコートのDEPC処理水で、装着された生体試料を洗浄することを含むことができる。
【0068】
したがって、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、a)装着された生体試料を、プロテイナーゼK溶液中で約40℃にて表2に記載の時間の間インキュベートし、ここでプロテイナーゼK溶液中のプロテイナーゼKの濃度が約1μg/mLであり、b)前記生体試料を第1アリコートのDEPC処理水で洗浄し、そしてc)前記生体試料を第2アリコートのDEPC処理水で洗浄することを含むことができる。
【0069】
したがって、装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程は、a)装着された生体試料を、プロテイナーゼ溶液中で約40℃にて表2に記載の時間の間インキュベートし、ここで前記プロテイナーゼ溶液が約0.1~約5.0μg/mLの濃度、または0.1~5.0μg/mLの濃度のプロテイナーゼK溶液を含み、b)前記生体試料を第1アリコートのDEPC処理水で洗浄し、そしてc)前記生体試料を第2アリコートのDEPC処理水で洗浄することを含むことができる。
【0070】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを適用する工程は、装着された生体試料を、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中でインキュベートすることを含むことができる。当業者に理解されるように、少なくとも1つの基準マーカーは、蛍光イメージングに有用であることが当技術分野で知られている任意の基準マーカーであることができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーは、2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)溶液で希釈することができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーは、2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム-Tween(登録商標)(SSCG)溶液で希釈することができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、少なくとも約1分間、または少なくとも約2分間、または少なくとも約3分間、または少なくとも約4分間、または少なくとも約5分間、または少なくとも約6分間、または少なくとも約7分間、または少なくとも約8分間、または少なくとも約9分間、または少なくとも約10分間、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中でインキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で約5分間インキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、約室温で少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中でインキュベートすることができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液と共にインキュベートした後、装着された生体試料を、例えば、リン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄することができる。いくつかの態様では、装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液を適用する前に、該溶液を少なくとも30秒間撹拌(例えばボルテックス攪拌)することができる。
【0071】
本開示の方法のいくつかの態様では、2×SSC緩衝液は、約300 mM NaClと約30 mMクエン酸ナトリウムを含むことができる。本開示の方法のいくつかの態様では、2×SSC緩衝剤は、300 mM NaClと30 mMクエン酸ナトリウムを含むことができる。
【0072】
本開示の方法のいくつかの態様では、2×SSCT緩衝液は、約0.1%Tween20、約300 mM NaClおよび約30 mMクエン酸ナトリウムを含むことができる。本開示の方法のいくつかの態様では、2×SSCT緩衝液は、0.1%Tween20、300 mM NaClおよび30 mMクエン酸ナトリウムを含むことができる。
【0073】
いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーは、赤色、青色、黄色および/または緑色の200 nmのカルボキシル化微小球とすることができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、少なくとも約0.00025%、または少なくとも約0.0005%、または少なくとも約0.00075%、または少なくとも約0.001%、または少なくとも約0.00125%、または少なくとも約0.0015%、または少なくとも約0.00175%、または少なくとも約0.002%、または少なくとも約0.005%、または少なくとも約0.01%の濃度で、赤色、青色および/または緑色に染色された200 nmカルボキシル化微小球を含むことができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.001%の濃度で、赤色、青色および/または緑色に染色された200 nmカルボキシル化微小球を含むことができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーは、赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球(例えば200 nmのカルボキシル化微小球)であることができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.00025%、または少なくとも約0.0005%、または少なくとも約0.00075%、または少なくとも約0.001%、または少なくとも約0.00125%、または少なくとも約0.0015%、または少なくとも約0.00175%、または少なくとも約0.002%、または少なくとも約0.005%、または少なくとも約0.01%の濃度で赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含むことができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.001%の濃度で赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含むことができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.0005%~約0.003%、または0.0005%~0.003%の濃度で赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含むことができる。
【0074】
いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーは、蛍光ナノダイヤモンド(FND)であり得る。いくつかの態様では、FNDは非カルボキシル化FNDであり得る。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、少なくとも約0.0001%、または少なくとも約0.00015%、または少なくとも約0.0002%、または少なくとも約0.00025%、または少なくとも約0.0003%、または少なくとも約0.00035%、または少なくとも約0.0004%、または少なくとも約0.00045%、または少なくとも約0.0005%、または少なくとも約0.00055%、または少なくとも約0.001%の濃度でFNDを含みうる。いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.00045%の濃度でFNDを含むことができる。
【0075】
いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、少なくとも2つの基準マーカーの組み合わせを含むことができる。非限定的例では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、赤色、青色および/または緑色の200 nmカルボキシル化微小球および非カルボキシル化FNDを含むことができる。非限定的例では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.001%の濃度の赤色、青色および/または緑色の200 nmカルボキシル化微小球と、約0.00045%の濃度の非カルボキシル化FNDとを含むことができる。
【0076】
いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、少なくとも2つの基準マーカーの組み合わせを含むことができる。非限定的例では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球と、非カルボキシル化FNDとを含むことができる。非限定的例では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.0005%~約0.003%、または0.0005%~0.003%の濃度の赤色、青色および/または緑色に染色されたnmカルボキシル化微小球と、約0.00045%の濃度の非カルボキシル化FNDとを含むことができる。
【0077】
いくつかの態様では、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、2×SSC溶液を含むがそれに限定されない適当な緩衝液中に、少なくとも1つの基準マーカーを希釈し、次いで該溶液を約1分間撹拌(例えばボルテックス攪拌)した後、該溶液を約2分間超音波処理し、次いで該溶液を約1分間再攪拌し、そして該溶液を再び約2分間超音波処理することによって調製することができる。
【0078】
いくつかの態様において、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、2×SSCT溶液を含むがそれに限定されない適切な緩衝液中に、少なくとも1つの基準マーカーを希釈し、該溶液を約1分間攪拌(例えばボルテックス攪拌)した後、約1分間超音波処理し、約1分間再攪拌した後、再び約2分間超音波処理することによって調製することができる。
【0079】
したがって、少なくとも1つの基準マーカーを、装着された生体試料に適用する工程は、a)装着された生体試料を、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で、約室温で約5分間インキュベートし、ここで、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、2×SSC溶液中に、約0.001%濃度の赤色、青色および/または緑色のカルボキシル化微小球と、約0.00045%濃度の非カルボキシル化FNDとを含む溶液であり、そしてb)前記装着された生体試料を1×PBSで洗浄することを含みうる。
【0080】
したがって、少なくとも1つの基準マーカーを、装着された生体試料に適用する工程は、装着された生体試料を、a)少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で、約室温で約5分間インキュベートし、ここで少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、約0.0005%~約0.003%、または0.0005%~0.003%の濃度で、赤色、黄色、青色および/または緑色に染色されたカルボキシル化微小球を含む溶液であり、そしてb)前記装着された生体試料を1×PBSで洗浄することを含むことができる。
【0081】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を固定する工程は、装着された生体試料を、中性緩衝化ホルマリン(NBF)溶液中でインキュベートし、次いで装着された生体試料をトリス-グリシン緩衝液中でインキュベートし、次いで装着された生体試料を1×PBS中でインキュベートすることを含みうる。いくつかの態様では、NBF溶液中のNBFの濃度は、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%であり得る。いくつかの態様では、NBF溶液中のNBFの濃度は、約10%であり得る。いくつかの態様では、装着された生体試料の固定におけるインキュベーション工程のいずれも、少なくとも約1分間、または少なくとも約2分間、または少なくとも約3分間、または少なくとも約4分間、または少なくとも約5分間、または少なくとも約6分間、または少なくとも約7分間、または少なくとも約8分間、または少なくとも約9分間、または少なくとも約10分間であり得る。いくつかの態様では、装着された生体試料の固定におけるインキュベーション工程のいずれも、約1分間、または約2分間、または約3分間、または約4分間、または約5分間、または約6分間、または約7分間、または約8分間、または約9分間、または約10分間であり得る。いくつかの態様では、インキュベーション工程のいずれも、約5分間とすることができる。いくつかの態様では、インキュベーション工程のいずれも、約1分間とすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料をトリス-グリシン緩衝液中でインキュベートすることは、装着された生体試料を第1のトリス-グリシン緩衝液中でインキュベートした後、前記装着された生体試料を第2のトリス-グリシン緩衝液中でインキュベートすることを含みうる。
【0082】
装着された生体試料を固定する工程は、a)装着された生体試料を10%NBF中で約5分間インキュベートし;b)前記装着された生体試料を第1のトリス-グリシン緩衝液中で約5分間インキュベートし;c)前記装着された生体試料を第2のトリス-グリシン緩衝液中で約5分間インキュベートし;そしてd)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含むことができる。
【0083】
したがって、装着された生体試料を固定する工程は、a)前記装着された生体試料を10%NBF中で約1分間インキュベートし;b)前記装着された生体試料を第1のトリス-グリシン緩衝液中で約5分間インキュベートし;c)前記装着された生体試料を第2のトリス-グリシン緩衝液中で約5分間インキュベートし;そしてd)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含むことができる。
【0084】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程は、装着された生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステル/Tween(登録商標)20溶液中でインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液は、約100 mMリン酸ナトリウムpH 8中に約100 mMスルホ-NHS-酢酸エステルと約0.5%Tween 20を含むことができる。いくつかの態様では、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液は、約100 mMリン酸ナトリウム pH 8中に100 mMスルホ-NHS-酢酸エステルおよび0.5%Tween20を含みうる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、少なくとも約5分間、または少なくとも約10分間、または少なくとも約15分間、または少なくとも約20分間、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中でインキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中で、約5分間、または約10分間、または約15分間、または約20分間インキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中で約15分間インキュベートすることができる。
【0085】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程は、スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20中で前記試料をインキュベートした後、前記装着された生体試料を1×PBS中で少なくとも約1分間、または少なくとも約2分間、または少なくとも約3分間、または少なくとも約4分間、または少なくとも約5分間、または少なくとも約6分間、または少なくとも約7分間、または少なくとも約8分間、または少なくとも約9分間、または少なくとも約10分間インキュベートすることを含みうる。本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程は、装着された生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中インキュベートした後、前記装着された生体試料を1×PBS中で約1分間、または約2分間、または約3分間、または約4分間、または約5分間、または約6分間、または約7分間、または約8分間、または約9分間、または約10分間インキュベートすることを含むことができる。本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程は、前記装着された生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中でインキュベートした後、前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含みうる。
【0086】
したがって、装着された生体試料をブロッキング溶液中でインキュベートする工程は、i)装着された生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液中で約15分間インキュベートし、ここで、前記スルホ-NHS-酢酸エステル/Tween20溶液は、約100 mMリン酸ナトリウムpH 8中に約100 mMスルホ-NHS-酢酸エステルおよび約0.5%Tween20を含み、そしてii)前記装着された生体試料を1×PBS中で約5分間インキュベートすることを含みうる。
【0087】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させることは、装着された生体試料を、本開示の複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、少なくとも約12時間、または少なくとも約13時間、または少なくとも約14時間、または少なくとも約15時間、または少なくとも約16時間、または少なくとも約17時間、または少なくとも約18時間、または少なくとも約19時間、または少なくとも約20時間、または少なくとも約21時間、または少なくとも約22時間、または少なくとも約23時間、または少なくとも約24時間、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、約16時間~約18時間、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることができる。
【0088】
いくつかの態様では、装着された生体試料は、少なくとも約35℃、または少なくとも約36℃、または少なくとも約37℃、または少なくとも約38℃、または少なくとも約39℃または少なくとも約40℃の温度で、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、約35℃の温度で、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることができる。
【0089】
いくつかの態様では、本開示の複数のISHプローブを含む溶液は、単一種のISHプローブを含むことができる。いくつかの態様では、本開示の複数のISHプローブを含む溶液は、少なくとも約2、または少なくとも約3、または少なくとも約4、または少なくとも約5、または少なくとも約6、または少なくとも約7、または少なくとも約8、または少なくとも約9、または少なくとも約10、または少なくとも約25、または少なくとも約50、または少なくとも約75、または少なくとも約100、または少なくとも約250、または少なくとも約500、または少なくとも約750、または少なくとも約1000、または少なくとも約5,000、または少なくとも約10,000、または少なくとも15,000、または少なくとも約20,000、または少なくとも約50,000、または少なくとも約100,000、または少なくとも約500,000、または少なくとも約1,000,000種の異なるISHプローブを含むことができる。
【0090】
いくつかの態様では、複数のISHプローブ中の少なくとも1種のISHプローブの濃度は、少なくとも約0.01 nM、または少なくとも約0.1 nM、または少なくとも約1 nM、または少なくとも約5 nM、または少なくとも約10 nM、または少なくとも約25 nM、または少なくとも約50 nM、または少なくとも約75 nM、または少なくとも約100 nM、または少なくとも約125 nM、または少なくとも約150 nM、または少なくとも約175 nM、少なくとも約200 nM、または少なくとも約300 nM、または少なくとも約400 nM、または少なくとも約500 nMでありうる。いくつかの態様では、複数のISHプローブ中の少なくとも1種のISHプローブの濃度は、約0.01 nM、または約0.1 nM、または約1 nM、または約5 nM、または約10 nM、または約25 nM、または約50 nM、または約75 nM、または約100 nM、または約125 nM、または約150 nM、または約175 nM、または約200 nM、または約300 nM、または約400 nM、または約500 nMであり得る。いくつかの態様では、複数のISHプローブ中の少なくとも1種のISHプローブの濃度は、約200 nMであり得る。いくつかの態様では、複数のISHプローブ中の少なくとも1種のISHプローブの濃度は、約1 nMであり得る。
【0091】
いくつかの態様では、複数のISHプローブの各種のISHプローブ濃度は、少なくとも約0.01 nM、または少なくとも約0.1 nM、または少なくとも約1 nM、または少なくとも約5 nM、または少なくとも約10 nM、または少なくとも約25 nM、または少なくとも約50 nM、または少なくとも約75 nM、または少なくとも約100 nM、または少なくとも約125 nM、または少なくとも約150 nM、または少なくとも約175 nM、または少なくとも約200 nM、または少なくとも約300 nM、または少なくとも約400 nM、または少なくとも約500 nMであり得る。いくつかの態様では、複数のISHプローブの各種ISHプローブ濃度は、約0.01 nM、または約0.1 nM、または約1 nM、または約5 nM、または約10 nM、または約25 nM、または約50 nM、または約75 nM、または約100 nM、または約125 nM、または約150 nM、または約175 nM、または約200 nM、または約300 nM、または約400 nM、または約500 nMであり得る。いくつかの態様では、複数のISHプローブの各種の濃度は、約200 nMであり得る。いくつかの態様では、複数のISHプローブの各種の濃度は、約1 nMであり得る。
【0092】
いくつかの態様では、複数のISHプローブを含む溶液は、生体試料中の任意の標的分析物(例えば、標的核酸分子および/または標的タンパク質分子)に特異的に結合しないように設計された標的結合ドメインを含む、少なくとも1種のISHプローブを含むことができる。いくつかの態様では、複数のISHプローブを含む溶液は、生体試料中の任意の標的分析物(例えば標的核酸分子および/または標的タンパク質分子)に特異的に結合しないように設計された標的結合ドメインを含む、少なくとも1種、または少なくとも2種、または少なくとも3種、または少なくとも4種、または少なくとも5種、または少なくとも6種、または少なくとも7種、または少なくとも8種、または少なくとも9種、または少なくとも10種、または少なくとも50種、または少なくとも100種、または少なくとも1000種のISHプローブを含むことができる。いずれかの標的分析物に特異的に結合しないように設計された標的結合ドメインを含むこれらのISHプローブは、本明細書では「陰性(negative)ISHプローブ」と呼ばれる。陰性ISHプローブの非限定的例は、一本鎖核酸である標的結合ドメインを含むISHプローブであり、ここで前記一本鎖核酸の配列は、分析対象の生体試料に特異的ないかなる既知の配列および/または地球上に存在するいかなる既知の配列とも相補的でないように設計されている。当業者に理解されるように、そのような配列の例には、外来RNAコンソーシアム(External RNA Control Consosium;ERCC)評価によって公表されたものが含まれる。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示の方法におけるこれらの陰性ISHプローブの使用は、当業者が、生体試料からの結果におけるバックグラウンドノイズのレベルを決定できるようにすることが可能である。当業者に理解されるように、陰性ISHプローブはいかなる標的分析物にも結合しないはずであるので、記録される陰性ISHプローブに由来する任意のシグナルは、試料中のISHプローブの非特異的結合(すなわち、バックグラウンドノイズ)を表す。いくつかの態様では、当業者は、陰性ISHプローブによって検出されたバックグラウンドノイズのレベルを利用して、生体試料内の標的分析物の絶対存在量をより正確に決定することができる。
【0093】
いくつかの態様では、複数のISHプローブを含む溶液は、バッファーR(Retriever用バッファー)で希釈されたISHプローブを含むことができる。
【0094】
いくつかの態様では、バッファーRは、デキストラン硫酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、一本鎖DNA(ssDNA)、生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)およびホルムアミドのうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの態様では、バッファーRは、デキストラン硫酸、BSA、ssDNA、SSCおよびホルムアミドの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、一本鎖DNAはサケ精子DNAを含むことができる。
【0095】
いくつかの態様では、ISHプローブは、デキストラン硫酸の最終濃度が約0.5%~約4.5%、または約1.5%~約3.5%となるように、バッファーRで希釈することができる。いくつかの態様では、ISHプローブは、デキストラン硫酸の最終濃度が約2.5%となるように、バッファーRで希釈することができる。
【0096】
いくつかの態様では、ISHプローブは、BSAの最終濃度が約0.01%~約2%、または約0.1%~約1%となるように、バッファーRで希釈することができ、いくつかの態様では、ISHプローブは、BSAの最終濃度が約0.2%となるようにバッファーRで希釈することができる。
【0097】
いくつかの態様では、ISHプローブは、ssDNAの最終濃度が約0.01 mg/ml~約1 mg/ml、または約0.05 mg/ml~約0.5 mg/mlとなるように、バッファーRで希釈することができる。いくつかの態様では、ISHプローブは、ssDNAの最終濃度が約0.1 mg/mlとなるように、バッファーR中に希釈することができる。
【0098】
いくつかの態様では、ISHプローブは、SSCの最終濃度が約0.5×(倍)~約3.5×または約1×~約3×となるように、バッファーRで希釈することができる。いくつかの態様では、ISHプローブは、SSCの最終濃度が約2×となるように、バッファーRで希釈することができる。
【0099】
いくつかの態様では、ISHプローブは、ホルムアミドの最終濃度が約20%~約60%、または約30%~約50%となるように、バッファーRで希釈することができる。いくつかの態様では、ISHプローブは、ホルムアミドの最終濃度が約40%となるように、バッファーRで希釈することができる。
【0100】
いくつかの態様では、ISHプローブは、デキストラン硫酸の最終濃度が約2.5%、BSAの最終濃度が約0.2%、ssDNAの最終濃度が約0.1 mg/mL、SSCの最終濃度が約2×、そしてホルムアミドの最終濃度が約40%となるように、バッファーRで希釈することができる。
【0101】
いくつかの態様では、複数のISHプローブを含む溶液は、限定されないが、SUPERase-In(商標)RNアーゼ阻害剤をはじめとするRNアーゼ阻害剤をさらに含むことができる。RNアーゼの濃度は約0.1単位/μLでありうる。
【0102】
いくつかの態様では、装着された生体試料を、複数のISHプローブを含む溶液とインキュベートする前に、ISHプローブをまず約95℃で約2分間インキュベートし、次いで、ISHプローブを直ちに氷上で約1分間冷却することによって、ISHプローブを最初に変性させることができる。
【0103】
いくつかの態様では、装着された生体試料を、RNアーゼ阻害剤溶液ですすぎ、DEPC処理水で湿らせた紙(例えば、キムワイプまたは適切な代替物)が内側に敷かれた容器内で、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることができる。
【0104】
したがって、装着された生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる工程は、a)装着された生体試料を、約37℃にて約16~約18時間、本開示の複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートすることを含み、ここで該溶液は、少なくとも1種のISHプローブを含み、複数のISHプローブのうちの少なくとも1種は、約200 nMの濃度で存在する。
【0105】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を洗浄する工程は、a)装着された生体試料を第1の2×SSC溶液とインキュベートし、b)前記装着された生体試料を第1のホルムアミド溶液中でインキュベートし、c)前記装着された生体試料を第2のホルムアミド溶液中でインキュベートし、d)前記装着された生体試料を第2の2×SSC溶液と共にインキュベートし、そしてe)前記装着された生体試料を第3の2×SSC溶液と共にインキュベートすることを含むことができる。
【0106】
いくつかの態様では、ホルムアミド溶液は、2×SSC溶液中のホルムアミドでありうる。いくつかの態様では、ホルムアミドの濃度は、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%であり得る。いくつかの態様では、ホルムアミドの濃度は、約50%であり得る。いくつかの態様では、装着された生体試料は、第1のホルムアミド溶液および/または第2のホルムアミド溶液と共に、少なくとも約15分間、または少なくとも約20分間、または少なくとも約25分間、または少なくとも約30分間、または少なくとも約35分間、または少なくとも約40分間インキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料を、第1のホルムアミド溶液および/または第2のホルムアミド溶液と共に約25分間インキュベートすることができる。
【0107】
いくつかの態様では、装着された生体試料は、第2の2×SSC溶液および/または第3の2×SSC溶液と共に、少なくとも約0.5分間、または少なくとも約1分間、または少なくとも約1.5分間、または少なくとも約2.0分間、または少なくとも約2.5分間、または少なくとも3.0分間、少なくとも約3.5分間、または少なくとも約4.0分間、または少なくとも約4.5分間、または少なくとも約5分間インキュベートすることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、第2の2×SSC溶液および/または第3の2×SSC溶液と共に約2分間インキュベートすることができる。
【0108】
したがって、装着された生体試料を洗浄する工程は、a)装着された生体試料を第1の2×SSC溶液と共にインキュベートすること、b)前記装着された生体試料を2×SSC溶液中の第1の50%ホルムアミド中で約25分間インキュベートすること、c)前記装着された生体試料を2×SSC溶液中の第2の50%ホルムアミドと共に約25分間インキュベートすること、d)前記装着された生体試料を第2の2×SSC溶液と共に約2分間インキュベートすること、e)前記装着された生体試料を第3の2×SSC溶液と共に約2分間インキュベートすることを含むことができる。
【0109】
本開示の方法のいくつかの態様では、装着された生体試料を脱水する工程は、当業者によって理解されるように、装着された生体試料をエタノール勾配のもとでインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、装着された生体試料をエタノール勾配のもとでインキュベートすることは、a)装着された生体試料を70%エタノール溶液中で約3分間インキュベートし、b)装着された生体試料を85%エタノール溶液中で約3分間インキュベートし、そしてc)装着された生体試料を100%エタノール溶液中で約3分間インキュベートすることを含みうる。
【0110】
いくつかの態様では、生体試料は、少なくとも約1μm、または少なくとも約2μm、または少なくとも約3μm、または少なくとも約4μm、または少なくとも約5μm、または少なくとも約6μm、または少なくとも約7μm、または少なくとも約8μm、または少なくとも約9μm、または少なくとも約10μmの厚さであるFFPEミクロトーム切片であることができる。いくつかの態様では、生体試料は、約5μmの厚さであるFFPEミクロトーム切片である。
【0111】
いくつかの態様では、生体試料は、任意の臓器からの組織試料であり得る。いくつかの態様では、生体試料は、腸、胚、脳、脾臓、眼、網膜、肝臓、腎臓、乳房、咽喉、結腸、肺、前立腺、リンパ節、扁桃腺、膵臓、子宮頸、頭部、頸部、肝臓、皮膚、神経、胎盤または任意の他の臓器からの組織試料である。
【0112】
いくつかの態様では、生体試料は、非癌性細胞を含むことができる。いくつかの態様では、生体試料は癌細胞を含むことができる。いくつかの態様では、生体試料は、非癌性細胞と癌細胞の両組み合わせを含むことができる。癌細胞は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病および生殖細胞腫であり得る。癌細胞は、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、乳房浸潤癌、子宮頸扁平上皮癌、子宮頸管腺癌、胆管癌、結腸腺癌、リンパ球悪性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道癌、多形膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、腎臓嫌色素性細胞、腎臓腎透明細胞癌、腎臓腎乳頭細胞癌、急性骨髄性白血病、脳低級グリオーマ、肝臓肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、中皮腫、卵巣漿液性のう疱腺癌、膵臓腺癌、褐色細胞腫、傍神経節腫、前立腺腺癌、直腸腺癌、肉腫、皮膚メラノーマ、胃腺癌、精巣生殖細胞腫瘍、甲状腺癌、胸腺癌、子宮癌肉腫、ぶどう膜メラノーマ由来であることができる。他の例としては、乳癌、肺癌、リンパ腫、メラノーマ、肝癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌または胃癌が挙げられる。癌のさらなる例としては、神経内分泌癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、胆道癌、食道癌、肛門癌、唾液腺癌、外陰癌、子宮頸癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎腫瘍、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨肉腫、大腸癌、脳腫瘍、乳癌、原発不明癌(CUP)、骨に転移した癌、脳に転移した癌、肝臓に転移した癌、肺に転移した癌、癌腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、耳癌、子宮内膜癌、眼球癌、卵胞樹状細胞肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃食道接合部癌、生殖細胞腫瘍、妊婦栄養芽球性疾患(GIT))、毛髪細胞白血病、頭頸癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、形成性胃線維炎、肝癌、肺癌、リンパ腫、悪性シュワン細胞癌、中間生殖細胞腫瘍、メラノーマ皮膚癌、男性の癌、メルケル細胞皮膚癌、中皮腫、モル妊娠、口および口腔咽頭癌、骨髄腫、鼻および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫(NHL)、食道癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、持続栄養芽球性疾患および絨毛癌、褐色細胞腫、前立腺癌、腹膜偽粘液腫、網膜癌、網膜芽腫、唾液腺癌、二次癌、印環細胞癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織肉腫、胃癌、T細胞小児非ホジキンリンパ腫(NHL)、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、舌癌、扁桃腺癌、副腎の腫瘍、子宮癌、膣癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍、子宮癌および婦人科癌が挙げられるが、それらに限定されない。癌の例には、血液悪性腫瘍、リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、胆道癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、膀胱癌、皮膚癌、悪性黒色腫、メルケル細胞癌、ぶどう膜メラノーマまたは多形膠芽腫が含まれるが、それらに限定されない。
【0113】
生体試料は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウサギ、ウシ、ヤギまたは任意の他の種を含むが、これらに限定されない、任意の種から誘導することができる。
【0114】
本開示のIn situハイブリダイゼーション(ISH)プローブ
【0115】
標的結合ドメイン
【0116】
本開示は、本開示の方法で使用するためのin situハイブリダイゼーション(ISH)プローブを提供する。
【0117】
ISHプローブは、標的結合ドメインとバーコードドメインとを含むことができる。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、バーコードドメインに作用可能に連結される。
【0118】
いくつかの態様では、標的結合ドメインは、生体試料中の標的分析物に特異的に結合するタンパク質、ペプチド、アプタマー、またはペプトイドを含むことができる。いくつかの態様では、タンパク質は、抗体、またはその抗原結合フラグメントであり得る。いくつかの態様では、タンパク質はレクチンタンパク質であり得る。いくつかの態様では、タンパク質は、当技術分野で知られている任意の糖結合性タンパク質であり得る。
【0119】
いくつかの態様では、標的結合ドメインは、一本鎖ポリヌクレオチドであり得る。標的結合ドメインは、本開示の方法を用いて識別される目的の標的核酸に相補的な配列を含むことができる。
【0120】
いくつかの態様では、標的結合ドメインは、少なくとも約35ヌクレオチドから少なくとも約40ヌクレオチドまでの長さを有することができる。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、約35ヌクレオチド~約40ヌクレオチド長であり得る。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、約20ヌクレオチド、または約21ヌクレオチド、または約22ヌクレオチド、または約23ヌクレオチド、または約24ヌクレオチド、または約25ヌクレオチド、または約26ヌクレオチド、または約27ヌクレオチド、または約28ヌクレオチド、または約29ヌクレオチド、または約30ヌクレオチド、または約31ヌクレオチド、または約32ヌクレオチド、または約33ヌクレオチド、または約34ヌクレオチド、または約35ヌクレオチド、または約36ヌクレオチド、または約37ヌクレオチド、または約38ヌクレオチド、または約39ヌクレオチド、または約40ヌクレオチド、または約41ヌクレオチド、または約42ヌクレオチド、または約43ヌクレオチド、または約45ヌクレオチド長を有しうる。
【0121】
いくつかの態様では、標的結合ドメインは、D-DNAを含む。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、D-DNAから成る。
【0122】
いくつかの態様では、標的結合ドメインは、約35ヌクレオチド~約40ヌクレオチド長であることができ、D-DNAを含む。いくつかの態様では、標的結合ドメインは、約35ヌクレオチド~約40ヌクレオチド長であることができ、D-DNAから成る。
【0123】
バーコードドメイン
【0124】
いくつかの態様では、バーコードドメインは一本鎖ポリヌクレオチドでありうる。
【0125】
バーコードドメインは、少なくとも1つの付着領域を含むことができる。いくつかの態様では、バーコードドメインは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個の付着領域を含むことができる。
【0126】
幾つかの態様では、バーコードドメインは、約4個の付着領域を含むことができる。
【0127】
付着領域は、本開示のレポータープローブを介して可逆的に結合することができる少なくとも1つの核酸配列を含むことができる。本明細書では、本開示のレポータープローブを介して可逆的に結合することができる核酸配列を、付着配列と称することにする。したがって、バーコードドメインの付着領域は、少なくとも1つの付着配列を含むことができる。いくつかの態様では、1つの付着領域内の(複数の)付着配列は同一であることができ、そのため、その1つの付着領域内に結合するレポータープローブは同一であろう。いくつかの態様では、1つの付着領域内の複数の付着配列は異なることができ、この場合、その1つの付着領域内に結合するレポータープローブは異なるだろう。
【0128】
いくつかの態様では、バーコードドメインは、複数の付着領域を含み、異なる付着領域内の各付着配列は異なることができ、この場合、異なるレポータープローブが、バーコードドメイン内の各付着領域に結合するだろう。
【0129】
いくつかの態様では、付着配列は、約5ヌクレオチド、または約6ヌクレオチド、または約7ヌクレオチド、または約8ヌクレオチド、または約9ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド、または約11ヌクレオチド、または約12ヌクレオチド、または約13ヌクレオチド、または約14ヌクレオチド、または約15ヌクレオチド、または約16ヌクレオチド、または約17ヌクレオチド、または約18ヌクレオチド、または約19ヌクレオチド、または約20ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、付着配列は、約14ヌクレオチド長であり得る。
【0130】
いくつかの態様では、バーコードドメインは、L-DNAを含む。いくつかの態様では、バーコードドメインは、L-DNAから成る。
【0131】
いくつかの態様では、バーコードドメインは、約4個の付着領域を含むことができ、各付着領域は約1個の付着配列を含み、その各付着配列は約14ヌクレオチド長であり、バーコードドメインは約56ヌクレオチド長であり、付着配列の各々の核酸配列は異なるものであり、バーコードドメインはL-DNAを含んでいる。いくつかの態様では、バーコードドメインは、約4個の付着領域を含むことができ、各付着領域は約1個の付着配列を含み、各付着配列は約14ヌクレオチド長であり、その結果バーコードドメインは約56ヌクレオチドの長さとなり、付着配列の各々の核酸配列は異なるものであり、バーコードドメインはL-DNAから成る。
【0132】
したがって、本開示は、標的結合ドメインとバーコードドメインとを含むISHプローブであって、前記標的結合ドメインが、標的核酸に相補的な核酸配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、標的結合ドメインが約35~約40ヌクレオチド長であり、標的結合ドメインがD-DNAを含んでおり、そして前記バーコードドメインが、約4個の付着領域を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、ここで各付着領域は約1個の付着配列を含み、各付着配列は約14ヌクレオチド長であり、各付着配列の配列は異なるものであり、バーコードドメインがL-DNAを含んでいる、ISHプローブを提供する。この例示的なISHプローブの概略図を図1に示す。
【0133】
したがって、本開示は、標的結合ドメインとバーコードドメインとを含むISHプローブであって、前記標的結合ドメインが、標的核酸に相補的な核酸配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、前記標的結合ドメインが約35~約40ヌクレオチド長であり、該標的結合ドメインがD-DNAから成り、前記バーコードドメインが約4個の付着領域を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、各付着領域が約1個の付着配列を含み、各付着配列が約14ヌクレオチド長であり、各付着配列の配列が異なっており、バーコードドメインがL-DNAから成る、ISHプローブを提供する。
【0134】
本開示のレポータープローブ
【0135】
本開示は、本開示の方法で使用するためのレポータープローブを提供する。本開示のレポータープローブは、本開示のISHプローブのバーコードドメインの付着領域内の付着配列に結合する。レポータープローブは、本開示の方法においてそれらを検出可能にする、少なくとも1つの検出可能な標識、例えば蛍光部分を含む。
【0136】
レポータープローブは、少なくとも2つのドメインを含むことができ、第1ドメインは付着配列にハイブリダイズし、第2ドメインは少なくとも1つの検出可能な標識を含む。
【0137】
いくつかの態様では、レポータープローブは、少なくとも約10、または少なくとも約15、または少なくとも約20、または少なくとも約25、または少なくとも約30、または少なくとも約35、または少なくとも約40、または少なくとも約45、または少なくとも約50の検出可能な標識を含むことができる。いくつかの態様では、レポータープローブは、約10、または約15、または約20、または約25、または約30、または約35、または約40、または約45、または約50の検出可能な標識を含むことができる。
【0138】
いくつかの態様では、レポータープローブは、生体試料と接触せしめられる前に、事前に組み立てる(assembly)することができる。
【0139】
いくつかの態様では、レポータープローブは、第1の核酸分子を含むことができる。第1の核酸分子は一本鎖ポリヌクレオチドであり得る。いくつかの態様では、第1の核酸分子は、L-DNAを含むことができる。いくつかの態様では、第1の核酸分子は、L-DNAから成ることができる。
【0140】
第1の核酸分子は、少なくとも2つのドメインを含むことができる。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第1ドメインは、本開示のISHプローブのバーコードドメインの付着領域内の付着配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第2ドメインは、少なくとも1つの検出可能な標識を含む。
【0141】
いくつかの態様では、第1の核酸分子の第2ドメインは、少なくとも1つの第2の核酸分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第1の核酸分子は、少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約9個、または少なくとも約10個の第2の核酸分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第1の核酸分子は、約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズすることができる。
【0142】
いくつかの態様では、第1の核酸分子は、開裂性リンカー部分をさらに含むことができる。いくつかの態様では、開裂性リンカー部分は、第1ドメインと第2ドメインとの間に配置され、その結果、開裂性リンカー部分が開裂されると、第1ドメインと第2ドメインとが分離される。好ましい態様では、開裂性リンカー部分は、光開裂性リンカー部分である。
【0143】
いくつかの態様では、第1の核酸分子の第1ドメインは、約5ヌクレオチド、または約6ヌクレオチド、または約7ヌクレオチド、または約8ヌクレオチド、または約9ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド、または約11ヌクレオチド、または約12ヌクレオチド、または約13ヌクレオチド、または約14ヌクレオチド、または約15ヌクレオチド、または約16ヌクレオチド、または約17ヌクレオチド、または約18ヌクレオチド、または約19ヌクレオチド、または約20ヌクレオチド長であり得る。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第1ドメインは、約14ヌクレオチド長であり得る。
【0144】
いくつかの態様では、第1の核酸分子の第2ドメインは、約75ヌクレオチド、または約76ヌクレオチド、または約77ヌクレオチド、または約78ヌクレオチド、または約79ヌクレオチド、または約80ヌクレオチド、または約81ヌクレオチド、または約82ヌクレオチド、または約83ヌクレオチド、または約84ヌクレオチド、または約85ヌクレオチド、または約86ヌクレオチド、または約87ヌクレオチド、または約88ヌクレオチド、または約89ヌクレオチド、または約90ヌクレオチド長であり得る。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第2ドメインは、約84ヌクレオチド長であり得る。
【0145】
いくつかの態様では、第1の核酸分子は、約90ヌクレオチド、または約91ヌクレオチド、または約92ヌクレオチド、または約93ヌクレオチド、または約94ヌクレオチド、または約95ヌクレオチド、または約96ヌクレオチド、または約97ヌクレオチド、または約98ヌクレオチド、または約99ヌクレオチド、または約100ヌクレオチド、または約101ヌクレオチド、または約102ヌクレオチド、または約103ヌクレオチド、または約104ヌクレオチド、または約105ヌクレオチド、または約106ヌクレオチド、または約107ヌクレオチド、または約108ヌクレオチド、または約109ヌクレオチド、または約110ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、第1の核酸分子は、約98ヌクレオチド長であり得る。
【0146】
いくつかの態様では、レポータープローブは、少なくとも1つの第2の核酸分子を含むことができる。いくつかの態様では、レポータープローブは、少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約9個、または少なくとも約10個の第2の核酸分子を含むことができる。いくつかの態様では、レポータープローブは、約6個の第2の核酸分子を含むことができる。第2の核酸分子は、一本鎖ポリヌクレオチドであり得る。いくつかの態様では、第2の核酸分子は、L-DNAを含むことができる。いくつかの態様では、第2の核酸分子は、L-DNAから成ることができる。
【0147】
第2の核酸分子は、少なくとも2つのドメインを含むことができる。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第1ドメインは、第1の核酸分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、少なくとも1つの検出可能な標識を含むことができる。
【0148】
いくつかの態様では、第2の核酸分子は、開裂性リンカー部分をさらに含むことができる。いくつかの態様では、開裂性リンカー部分は、第1ドメインと第2ドメインとの間に配置することができ、その結果、開裂性リンカー部分が開裂されると、第2の核酸分子の第1ドメインと第2ドメインとが分離される。好ましい態様では、開裂性リンカー部分は、光開裂性リンカー部分である。
【0149】
いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、少なくとも1つの第3の核酸分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約9個、または少なくとも約10個の第3の核酸分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズすることができる。
【0150】
いくつかの態様では、第2の核酸分子の第1ドメインは、約5ヌクレオチド、または約6ヌクレオチド、または約7ヌクレオチド、または約8ヌクレオチド、または約9ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド、または約11ヌクレオチド、または約12ヌクレオチド、または約13ヌクレオチド、または約14ヌクレオチド、または約15ヌクレオチド、または約16ヌクレオチド、または約17ヌクレオチド、または約18ヌクレオチド、または約19ヌクレオチド、または約20ヌクレオチド長であり得る。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第1ドメインは、約14ヌクレオチド長であり得る。
【0151】
いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、約65ヌクレオチド、または約66ヌクレオチド、または約67ヌクレオチド、または約68ヌクレオチド、または約69ヌクレオチド、または約70ヌクレオチド、または約71ヌクレオチド、または約72ヌクレオチド、または約73ヌクレオチド、または約74ヌクレオチド、または約75ヌクレオチド、または約76ヌクレオチド、または約77ヌクレオチド、または約78ヌクレオチド、または約79ヌクレオチド、または約80ヌクレオチド、または約81ヌクレオチド、または約82ヌクレオチド、または約83ヌクレオチド、または約84ヌクレオチド、または約85ヌクレオチド長であり得る。いくつかの態様では、第2の核酸分子の第2ドメインは、約75ヌクレオチド長であり得る。
【0152】
いくつかの態様では、レポータープローブは、少なくとも1つの第3の核酸分子を含むことができる。いくつかの態様では、レポータープローブは、少なくとも約20、または少なくとも約21、または少なくとも約22、または少なくとも約23、または少なくとも約24、または少なくとも約25、または少なくとも約26、または少なくとも約27、または少なくとも約28、または少なくとも約29、または少なくとも約30、少なくとも約31、少なくとも約32、少なくとも約33、または少なくとも約34、または少なくとも約35、または少なくとも約36、または少なくとも約37、または少なくとも約38、または少なくとも約39、または少なくとも約40個の第3の核酸分子を含むことができる。いくつかの態様では、レポータープローブは、約30個の第3の核酸分子を含むことができる。
【0153】
いくつかの態様では、第3の核酸分子は、第2の核酸分子にハイブリダイズするドメインを含むことができる。
【0154】
いくつかの態様では、第3の核酸分子は、少なくとも1つの検出可能な標識を含むことができる。
【0155】
いくつかの態様では、第3の核酸分子は、約5ヌクレオチド、または約6ヌクレオチド、または約7ヌクレオチド、または約8ヌクレオチド、または約9ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド、または約11ヌクレオチド、または約12ヌクレオチド、または約13ヌクレオチド、または約14ヌクレオチド、または約15ヌクレオチド、または約16ヌクレオチド、または約17ヌクレオチド、または約18ヌクレオチド、または約19ヌクレオチド、または約20ヌクレオチド、または約21ヌクレオチド、または約22ヌクレオチド、または約23ヌクレオチド、または約24ヌクレオチド、または約25ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、第3の核酸分子は、約15ヌクレオチド長であり得る。
【0156】
レポータープローブが複数の(2以上の)検出可能な標識を含むようないくつかの態様では、レポータープローブの検出可能な標識の全てが同じ発光スペクトルを有することができる。検出可能な標識が蛍光標識である態様では、検出可能な標識の全てが同じ発光スペクトルを有するレポータープローブを、「単色」レポータープローブと称することができる。
【0157】
レポータープローブが複数の(2以上の)検出可能な標識を含むようないくつかの態様では、レポータープローブは、各々が異なる発光スペクトルを有する2以上の検出可能な標識を有することができる。検出可能な標識が蛍光標識である態様では、各々が異なる発光スペクトルを有する2つ以上の検出可能な標識を有するレポータープローブを、「多色」レポータープローブと称することができる。
【0158】
本開示は、レポータープローブであって、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に配置された光開裂性リンカーとを含む、第1の核酸分子を含み、前記第1の核酸分子の第2ドメインは、約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズし、ここで前記第2の核酸分子の各々は、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に配置された光開裂性リンカーとを含み、前記第2の核酸分子の各々の第1ドメインは、第1の核酸分子の第2ドメインにハイブリダイズし、第2の核酸分子の各々の第2ドメインは、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズし、ここで、第3の核酸分子の各々は、少なくとも1つの検出可能な標識を含んでいる、レポータープローブを提供する。前記第1の核酸分子、前記第2の核酸分子、および前記第3の核酸分子は、L-DNAを含む。この例示的なレポータープローブの概略は、図2に示されている。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第1ドメインは約14ヌクレオチド長であり、第1の核酸分子の第2ドメインは約84ヌクレオチド長であり、第2の核酸分子の第1ドメインは約14ヌクレオチド長であり、第2の核酸分子の第2ドメインは約75ヌクレオチド長であり、そして第3の核酸分子の各々は約15ヌクレオチド長である。
【0159】
本開示は、レポータープローブであって、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含む第1の核酸分子を含み、前記第1の核酸分子の第2ドメインは、約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズし、前記第2の核酸分子の各々は、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含み、前記第2の核酸分子の各々の第1ドメインは、第1の核酸分子の第2ドメインにハイブリダイズし、第2の核酸分子の各々の第2ドメインは、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズし、前記第3の核酸分子の各々は少なくとも1つの検出可能な標識を含み、そして第1の核酸分子、第2の核酸分子および第3の核酸分子がL-DNAから成る、レポータープローブを提供する。いくつかの態様では、第1の核酸分子の第1ドメインは約14ヌクレオチド長であり、第1の核酸分子の第2ドメインは約84ヌクレオチド長であり、第2の核酸分子の第1ドメインは約14ヌクレオチド長であり、前記第2の核酸分子の第2ドメインは約75ヌクレオチド長であり、そして第3の核酸分子の各々は約15ヌクレオチド長である。
【0160】
いくつかの態様では、光開裂性部分は、UV光に曝露されると開裂され得る。光は、アークランプ、レーザ、集束UV光源、および発光ダイオードから成る群より選択される光源によって提供することができる。
【0161】
開裂性リンカー部分は、下記:
【化1】
またはその立体異性体もしくは塩であることができる。
【0162】
開裂性リンカー部分は、
【化2】
またはその立体異性体もしくは塩であることができる。
【0163】
開裂性リンカー部分は、
【化3】
であることができる。
【0164】
開裂性リンカー部分は、
【化4】
であることができる。
【0165】
開裂性リンカー部分は、
【化5】
であることができる。
【0166】
好ましい態様において、検出可能な標識は、蛍光成分または蛍光標識であることができる。当業者は、核酸を標識することに向けられた参考文献を参照することができる。蛍光成分の例としては、限定されないが、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、シアニン類、ダンシルクロリド、フィコシアニン、フィコエリスリン等が挙げられる。
【0167】
蛍光標識並びにヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドへのそれらの付着は、Haugland著、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第9版(Molecular Probes, Inc.、Eugene、2002);KellerおよびManak著、DNA Probes、第2版(Stockton Press、New York、1993);Eckstein編、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach (IRL Press、Oxford、1991);およびWetmur著、Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology、26:227-259 (1991)を含む、多くの概説に記載されている。本開示に適用できる特定の方法論が以下の参考文献の例の中に開示されている:米国特許第4,757,141号、同第5,151,507号および同第5,091,519号明細書。例えば、米国特許第5,188,934号(4,7-ジクロロフルオレセイン色素)、同第5,366,860号(スペクトル分割できるローダミン色素)、同第5,847,162号(4,7-ジクロロローダミン色素)、同第4,318,846号(エーテル置換フルオレセイン色素)、同第5,800,996号(エネルギー転移色素)、Lee他、第5,066,580号(キサンチン色素)、第5,688,648号(エネルギー転移色素)等。標識化は、以下の特許および特許刊行物に開示されているように、量子ドットを使って実施することもできる:米国特許第6,322,901号、同第6,576,291号、同第6,423,551号、同第6,251,303号、同第6,319,426号、同第6,426,513号、同第6,444,143号、同第5,990,479号、同第6,207,392号、同第2002/0045045号、および同第2003/0017264号。本明細書で使用する場合、「蛍光標識」という用語は、1または複数の分子の蛍光吸収および/または発光特性を介して情報を伝達するシグナル伝達部分を包含する。このような蛍光特性には、蛍光強度、蛍光寿命、発光スペクトル特性、エネルギー転移などが含まれる。
【0168】
ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列に容易に組み込まれる市販の蛍光ヌクレオチド類似体としては、Cy3-dCTP、Cy3-dUTP、Cy5-dCTP、Cy5-dUTP(Amersham Biosciences社、米国ニュージャージー州Piscataway)、フルオレセイン-12-dUTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、テキサスレッド(TEXAS RED)(商標)-5-dUTP、カスケードブルー(CASCADE BLUE)(商標)-7-dUTP、BODIPY TMFL-14-dUTP、BODIPY TMR-14-dUTP、BODIPY TMTR-14-dUTP、ローダミングリーン(RHODAMINE GREEN)(商標)-5-dUTP、オレゴングリーン(OREGON GREEN)(商標)488-5-dUTP、テキサスレッド(TEXAS RED)(商標)-12-dUTP、BODIPY TM 630/650-14-dUTP、BODIPY TM 650/665-14-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)488-5-dUTP、ALEXA FLUOR(商標)532-5-dUTP、フルオレセイン-12-UTP、テトラメチルローダミン-6-UTP、mCherry、カスケードブルー(CASCADE BLUE)TM-7-UTP、BODIPY TM FL-14-UTP、BODIPY TMR-14-UTP、BODIPY TMTR-14-UTP、ローダミングリーンTM(商標)-5-UTP、ALEXA FLUORTM(商標)488-5-UTP、ALEXA FLUORTM(商標)546-14-UTP、ALEXA FLUOR(商標)594-5-UTP、ALEXA FLUOR(商標)546-14-dUTP (Molecular Probes, Inc., 米国オレゴン州Eugene)等が挙げられる。あるいは、上記蛍光色素(フルオロフォア)および本明細書に記載されたものは、例えばホスホロアミダイトまたはNHS化学を用いたオリゴヌクレオチド合成中に添加することができる。他の蛍光色素(フルオロフォア)を有するヌクレオチドのカスタム合成のためのプロトコルは当技術分野で知られている(Henegariu他 (2000) Nature Biotechnol. 18:345参照)。2-アミノプリンは、合成中にオリゴヌクレオチド配列に直接組み込むことができる蛍光性塩基である。核酸は、DAPI、YOYO-1、臭化エチジウム、シアニン色素(例えばSYBR Green)などのインターカレート色素を用いて、先験的に(a priori)染色することもできる。
【0169】
合成後の付着に利用可能な他の蛍光色素(フルオロフォア)は、ALEXA FLUOR (商標)350、ALEXA FLUORTM 405、ALEXA FLUORTM 430、ALEXA FLUORTM 532、ALEXA FLUORTM 546、ALEXA FLUORTM 568、ALEXA FLUORTM 594、ALEXA FLUORTM 647、BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、カスケードブルー、カスケードイエロー、ダンシル、リサミンローダミンB、マリナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、パシフィックオレンジ、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、テキサスレッド(Molecular Probes, Inc., Eugene, オレゴン州より入手可能)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Biosciences, Piscataway, ニュージャージー州)等を含むが、それらに限定されない。FRETタンデム蛍光色素、例えば限定されるものでないが、PerCP-Cy5.5、PE-Cy5、PE-Cy5.5、PE-Cy7、PE-テキサスレッド、APC-Cy7、PE-Alexa色素(610、647、680)、APC-Alexa色素などを含むFRETタンデム蛍光色素も使用することができる。
【0170】
金属銀または金粒子は、蛍光標識ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド配列からのシグナルを増強するために使用することができる(Lakowicz他(2003)BioTechniques 34:62)。
【0171】
オリゴヌクレオチド配列のための他の適切な標識は、フルオレセイン(FAM、FITC)、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ダンシル、ビオチン、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、ヘキサヒスチジン(6xHis)、ホルホルアミノ酸(例えば、P-tyr、P-ser、P-thr)等を含み得る。以下のハプテン/抗体ペアを検出に用いることができ、各抗体は、検出可能な標識:ビオチン/a-ビオチン、ジゴキシゲニン/a-ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)/a-DNP、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)/a-FAMで誘導体化される。
【0172】
本明細書に記載の検出可能な標識は、スペクトル分解可能である。複数の蛍光標識に関して用いる「スペクトル分解可能な」とは、標識の蛍光放出帯域が十分に異なること、すなわち十分に重ならないこと、例えば米国特許第4,230,558号明細書、同第4,811,218号明細書等に、またはWheeless他、21-76頁、Flow Cytometry: Instrumentation and Data Analysis (Academic Press、New York、1985)に記載されたシステムにより例示されるように、各々の標識が取り付けられている分子タグを、標準的な光検出システムによって、例えばバンドパスフィルターと光増幅管等を使用して、各標識により生成される蛍光シグナルに基づいて識別することができることを意味する。スペクトル分解可能な有機色素、例えばフルオレセイン、ローダミンなどは、最大発光波長が少なくとも20 nm離れて位置しており、別の態様では、少なくとも40 nm離れて位置している。キレート化ランタニド化合物、量子ドットなどについては、スペクトル分解可能とは、最大発光波長が少なくとも10 nm離れているか、または少なくとも15 nm離れていることを意味する。
【0173】
イメージング方法
【0174】
本開示は、本開示のISHプローブおよびレポータープローブを使用して、生体試料中の複数種(2種以上)の標的分析物の存在量および空間的配置を検出する方法を提供する。
【0175】
いくつかの態様では、標的分析物は、核酸(すなわち、標的核酸または標的核酸分子)であり得る。したがって、本開示は、本開示のISHプローブおよびレポータープローブを使用して、生体試料中の複数種(2種以上)の標的核酸の存在量および空間的配置を検出する方法を提供する。
【0176】
いくつかの態様では、標的分析物は、タンパク質(すなわち、標的タンパク質または標的タンパク質分子)であり得る。したがって、本開示は、本開示のISHプローブおよびレポータープローブを使用して、生体試料中の複数種(2種以上)の標的タンパク質の存在および空間的配置を検出する方法を提供する。
【0177】
いくつかの態様では、標的分析物は、炭水化物分子(例えば、糖部分、特定のグリコシル化モチーフなど)であり得る。したがって、本開示は、複数種(2種以上)の標的炭水化物分子の存在および空間的配置を検出する方法を提供する。
【0178】
標的核酸は、本開示のISHプローブがハイブリダイズし得る任意の核酸であることができる。標的核酸は、DNAまたはRNAであり得る。好ましい態様では、標的核酸がmRNAである。
【0179】
要するに、生体試料中の検出すべき標的核酸の各種には、a)標的核酸のその特定の種に相補的である標的結合ドメイン(すなわち、それがその特定の種の標的核酸に対してのみハイブリダイズするように設計された標的結合ドメイン);およびb)前記種の標的核酸に特異的であるユニークな核酸配列を含むユニークなバーコードドメイン、を含む既定のユニークなISHプローブが割り当てられる。バーコードドメインのユニークな核酸配列は、本開示のレポータープローブの特異的配列が、バーコードドメイン内の異なる付着領域に連続的に結合し、それによって前記種の標的核酸に特異的である「検出可能な標識の線形順序」を構築するように設計される。
【0180】
標的タンパク質は、本開示のISHプローブが結合できる任意タンパク質であることができる。
【0181】
要するに、生体試料中で検出すべき各種の標的タンパク質は、a)その特定の種の標的タンパク質に結合する(すなわち、その特定の種のタンパク質にのみ結合するように設計されている)標的結合ドメイン;およびb)前記種のタンパク質に特異的であるユニークな核酸配列を含むユニークなバーコードドメイン、を含む既定のユニークなISHプローブが割り当てられる。バーコードドメインのユニークな核酸配列は、本開示のレポータープローブの特異的配列が、バーコードドメイン内の異なる付着領域に連続的に結合し、それによって前記種の標的タンパク質に特異的である「検出可能な標識の線形順序」を構築するように設計される。
【0182】
標的炭水化物分子(糖質分子)は、本開示のISHプローブが結合し得る任意の炭水化物分子であることができる。いくつかの態様では、標的炭水化物分子は、特定のグリコシル化モチーフの一部であり得る。いくつかの態様では、標的炭水化物は、検出されるべき特定の脂質の一部であり得る。
【0183】
要するに、生体試料中の検出すべき標的炭水化物の各種には、a)前記標的炭水化物の特定の種に結合する(すなわち、その特定の種の炭水化物にのみ結合するように設計されている)標的結合ドメイン;およびb)前記種の炭水化物に特異的であるユニーク核酸配列を含むユニークなバーコードドメインを含む、既定のユニークなISHプローブが割り当てられる。バーコードドメインのユニーク核酸配列は、本開示のレポータープローブの特異的配列が、バーコードドメイン内の異なる付着領域に連続的に結合し、それによって、前記種の標的炭水化物に特異的である「検出可能な標識の線形順序」を構築するように設計される。
【0184】
これらの方法の非限定的例の概略は図3A~3Hに示され、それらの図は、本開示のISHプローブおよび本開示のレポータープローブを使用した生体試料中の2つの異なる標的核酸の検出を示している。この方法は、図3A中の2コピーの標的核酸#1(1つは試料の左上部分、もう1つは試料の右下部分)および1コピーの標的核酸#2(生体試料の右上部分)を含む生体試料で始まる。この方法の第1工程では、生体試料を本開示の複数のISHプローブと接触させる。標的核酸#1(ISHプローブ型#1)と相補的である標的結合ドメインを有するISHプローブは、標的核酸#1にハイブリダイズし、そして標的核酸#2(ISHプローブ型#2)と相補的である標的結合ドメインを有するISHプローブは、標的核酸#2にハイブリダイズする。第3の型の標的核酸に相補的である標的結合ドメインを有する第3の型のプローブ(ISHプローブ型#3)は、生体試料がその第3の型の標的核酸を含まないため、生体試料内でハイブリダイズしない。
【0185】
第2工程では、ハイブリダイズしなかったISHプローブを生体試料から洗い出す。
【0186】
図3Bに示される第3工程では、生体試料を、検出可能な標識を含む複数のレポータープローブと接触させる。この非限定的例では、検出可能な標識が蛍光標識である。ISHプローブ型#1のバーコードドメインは、第1の付着領域が赤色蛍光標識を有するレポータープローブにハイブリダイズするように設計されており、そしてISHプローブ型#2のバーコードドメインは、第1の付着領域が緑色蛍光標識を有するレポータープローブにハイブリダイズするように設計されている。
【0187】
図3Cに示す第4工程では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性と空間的配置とが記録される。したがって、1回目のイメージングの間、赤色標識が「位置1」に検出され、緑色標識が「位置2」に検出され、そして赤色標識が「位置3」に検出された。
【0188】
図3Dに示す第5工程では、ハイブリダイズしたレポータープローブから検出可能な標識が除去される。この非限定的例では、レポータープローブは、UV光で照射することによって開裂できる光開裂性部分を含み、これが検出可能な標識を放出し、続いて洗浄されて除去される。
【0189】
図3Eに示す第6工程では、生体試料を、検出可能な標識を含む第2の複数のレポータープローブと接触させる。ISHプローブ型#1のバーコードドメインは、第2の付着領域が黄色蛍光標識を有するレポータープローブにハイブリダイズするように設計されており、そしてISHプローブ型#2は、第2の付着領域が赤色蛍光標識を有するレポータープローブにハイブリダイズするように設計されている。
【0190】
図3Fに示す第7工程では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性と空間的配置とが記録される。したがって、2回目のイメージングの間、黄色標識が位置1で検出され、赤色標識が位置2で検出され、黄色標識が位置3で検出された。
【0191】
図3Gに示す第8工程では、検出可能な標識が、レポータープローブ内の光開裂性部分のUV誘導開裂によって、ハイブリダイズしたレポータープローブから除去される。
【0192】
これらの工程は、各ISHプローブ内の各付着領域がレポータープローブによってすべて結合されている状態まで繰り返され、そして該レポータープローブの検出可能な標識の属性(identity)が順次記録されていく。したがって、この方法の終了時には、「検出可能な標識の線形順序」が、各関心位置のところに記録されているだろう。図3Hに示すように、この非限定的例では、位置1と位置3における検出可能な標識の線形の順序は、赤-黄-緑-赤であり、位置2における検出可能な標識の線形順序は、緑-赤-黄-黄であった。したがって、赤-黄-緑-赤は、標的核酸#1に特異的であり、緑-赤-黄-黄は標的核酸#2に特異的であることから、本方法は、生体試料中の標的核酸#1の2つのコピー間の識別を可能にし、1つのコピーが位置1に存在し、もう1つのコピーが位置3に存在し、そして標的核酸#2の1コピーの識別が位置2のところで可能になる。
【0193】
上記の方法は、生体試料を用いて、任意の数の標的核酸および/または標的タンパク質を任意の数の位置で検出するために、多重化(マルチプレックス化)することができる。いくつかの態様では、本開示の方法は、生体試料中の少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または少なくとも約40、または少なくとも約50、または少なくとも約60、または少なくとも約70、少なくとも約80、または少なくとも約90、または少なくとも約100、または少なくとも約110、または少なくとも約120、または少なくとも約130、または少なくとも約140、または少なくとも約150、または少なくとも約160、または少なくとも約170、または少なくとも約180、または少なくとも約190、または少なくとも約200、または少なくとも約210、または少なくとも約220、または少なくとも約240、または少なくとも約250、または少なくとも約260、または少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、または少なくとも約300、または少なくとも約500、または少なくとも約1,000、または少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000、または少なくとも約1,000,000種の異なる標的核酸および/または標的タンパク質の空間的存在量を決定するために使用することができる。
【0194】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載された試料調製方法に従って調製した生体試料を、複数の本開示のレポータープローブと接触させ、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによって該レポータープローブを、生体試料中の標的分析物に結合された少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にハイブリダイズさせ、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去し、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録し、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去し、そしてe)前記生体試料中の標的分析物に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、それによって、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、生体試料中の少なくとも1つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定することを含んでなる方法を提供する。
【0195】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それにより生体試料中の標的タンパク質分子に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコード領域の付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)生体試料中の標的タンパク質分子に結合されたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、生体試料中の少なくとも1つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する工程を含んでなる方法を提供する。
【0196】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それにより生体試料中の標的核酸分子にハイブリダイズした少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列(シーケンス)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも1つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0197】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによりレポータープローブを、前記生体試料中の標的分析物に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にハイブリダイズさせる工程、b)ハイブリダイズしなかったレポータープローブを生体試料から除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、およびe)前記生体試料中の標的分析物に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズし、それによって検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、生体試料中の少なくとも1つの標的分析物の存在量と空間的配置を決定する工程を含んでなる方法を提供する。
【0198】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、ここで各レポータープローブは少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それにより生体試料中の標的タンパク質分子に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、およびe)前記生体試料中の標的タンパク質分子に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、その結果、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも1つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0199】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも1つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含む工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または、少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、その結果、検出可能な標識が記録された配列(シーケンス)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも1つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0200】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含む工程、b)前記生体試料中の標的分析物に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメイン内の付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、そしてe)前記生体試料中の標的分析物に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、それによって検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する工程を含んで成る方法を提供する。
【0201】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブは少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによって生体試料中の標的タンパク質分子に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、およびe)少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブに、前記生体試料中の標的タンパク質分子に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域がハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列に基づいて、前記生体試料中の少なくとも2つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0202】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含む工程、b)前記生体試料中の標的核酸分子にハイブリダイズした少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズされている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0203】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含む工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、およびe)前記生体試料中の標的分析物に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズした状態まで、工程(a)~(b)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0204】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含む工程、b)前記生体試料中の標的タンパク質分子に結合した少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にレポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)前記生体試料中の標的タンパク質分子に結合したISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブとすべてハイブリダイズしている状態まで、工程(a)~(b)を繰り返すことにより、検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも2つの標的タンパク質分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0205】
したがって、本開示は、生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、a)本明細書に記載の試料調製方法に従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程であって、各レポータープローブが少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それにより前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズした少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域に、レポータープローブをハイブリダイズさせる工程、b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程、c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程、d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程、e)前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個の付着領域の各付着領域が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにすべてハイブリダイズしている状態まで、工程(a)~(d)を繰り返し、それによって検出可能な標識が記録された配列(順序)に基づいて、前記生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する工程、を含んで成る方法を提供する。
【0206】
上述の方法のいくつかの態様では、(1または複数)の標的分析物の存在量および空間的配置を決定する工程は、前記標的分析物の存在量および空間的配置を利用して、生体試料内の1つ以上の関心領域の輪郭を規定する(define)ことを含むことができる。いくつかの態様では、組織試料内の1つ以上の関心領域を規定した後、標的分析物に結合した核酸プローブ(すなわちISHプローブ)を生体試料から除去することができ、前記生体試料を少なくとも1つの核酸プローブ(すなわちISHプローブ)と再接触させることができ、そして前記生体試料内の規定された1つ以上の関心領域においてのみ、上述のイメージング方法を繰り返すことができる。理論に束縛されることを望むものではないが、生体試料内の1つ以上の関心領域を規定することによって、組織試料全体とは対照的に、組織試料の特定領域のみを検索して抽出する(インターロゲートする)ことだけが必要であるため、その後のイメージング工程をより迅速に実行することができる。非限定的例では、標的分析物の存在量および空間的配置を決定して1つ以上の関心領域を規定することは、当業者が上述の方法を実施して生体試料の腫瘍部を規定できるようにし、かつ生体試料のそれらの腫瘍部をその後のイメージングサイクルにおいてさらに解析可能にすることができる。この1以上の関心領域のこの規定方法は、本明細書中では形態スキャンと呼ばれる。
【0207】
上述の方法のいくつかの態様では、生体試料(検体)は、本明細書に記載の試料処理方法に従って調製された、装着された生体試料であることができる。いくつかの態様では、装着された生体試料は、本明細書に記載の試料処理方法を使って調製されたフローセル内に存在する。
【0208】
本明細書に記載の試料調製方法の任意の工程を、本明細書に記載のイメージング方法のいずれかの工程と組み合わせることができる。
【0209】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、工程(a)の前に、生体試料を前処理することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、スルホ-NHS-酢酸エステルブロッキング溶液中で生体試料をインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、レポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、自家蛍光抑制緩衝液中で生体試料をインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、生体試料を青色光および/またはUV光で照射し、それによって光退色を介して試料の自家蛍光をクエンチ(消光)することを含むことができる。いくつかの態様では、UV照射と読み出しチャネル照射の任意組み合わせを使用して、光退色を介して試料の自家蛍光をクエンチすることができる。
【0210】
いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、i)生体試料をスルホ-NHS-酢酸エステルブロッキング溶液中で約15分間インキュベートし、そしてii)レポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、i)生体試料を約15分間インキュベートし、そしてii)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄し、iii)生体試料を自家蛍光抑制剤緩衝液中でインキュベートし、そしてiv)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること、を含んで成る。いくつかの態様では、生体試料を前処理することが、i)生体試料を約15分間インキュベートし、ii)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄し、iii)前記生体試料を自家蛍光抑制緩衝液中でインキュベートし、そして/または生体試料を青色光および/またはUV光で照射し、それによって光退色を介して試料の自家蛍光をクエンチ(消光)し、そしてiv)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含んで成ることができる。
【0211】
いくつかの態様では、生体試料を洗浄する工程は、少なくとも約1000 mLのレポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することを含むことができる。
【0212】
いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝液は、1×SSPE溶液中の0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。
【0213】
いくつかの態様では、自家蛍光抑制緩衝液は、当業者により理解されるように、組織試料の自家蛍光を減衰させる任意の緩衝液を含むことができる。自家蛍光抑制緩衝液の非限定的例は、TrueBlack(商標)バックグラウンド抑制剤溶液(Biotium, Inc. Fremont、米国カリフォルニア州から入手可能)である。
【0214】
当業者に理解されるように、20×SSPE緩衝液は、0.2 Mリン酸緩衝液pH 7.4中に0.02 M EDTAおよび2.98 M NaCLを含む。
【0215】
いくつかの態様では、スルホ-NHS-酢酸エステルブロッキング溶液は、100 mMのスルホ-NHS-酢酸エステルおよび100 mMリン酸ナトリウムpH 8.0の溶液を含むことができる。
【0216】
前の方法のいくつかの態様では、本開示の複数のレポータープローブと生体試料とを接触させる工程は、生体試料を或る一定の溶液と共に少なくとも約15分間インキュベートすることを含み、ここで、該溶液は、DEPC処理水中に5 nMの濃度の少なくとも1種のレポータープローブ、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20および0.1%RNアーゼ阻害剤を含む。いくつかの態様では、本開示の複数のレポータープローブと生体試料とを接触させる工程が、生体試料をある一定の溶液と共に15分間インキュベートすることを含み、ここで該溶液には、5 nMの濃度で少なくとも1種のレポータープローブが存在し、溶液はさらに、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20および0.1%RNアーゼ阻害剤を含む。
【0217】
上述の方法のいくつかの態様では、生体試料を本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程は、生体試料を溶液と共に少なくとも約15分間インキュベートすることを含むことができ、ここで該溶液は、DEPC処理水中5 nMの濃度の少なくとも1種のレポータープローブ、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20、および任意選択的に、0.1%RNアーゼ阻害剤を含む。上述の方法のいくつかの態様では、生体試料を本開示の複数のレポータープローブと接触させる工程は、生体試料を或る一定の溶液と共に約15分間インキュベートすることを含むことができ、ここで該溶液は複数種のレポータープローブを含み、少なくとも1種のレポータープローブが5 nMの濃度で存在し、そして該溶液がさらに8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20、および随意に0.1%RNアーゼ阻害剤を含んでいる。
【0218】
上述の方法のいくつかの態様では、生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程は、生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程は、少なくとも約2000 mLのレポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することを含みうる。
【0219】
上述の方法のいくつかの態様では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識について、生体試料内の属性および空間的配置を記録する工程は、i)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬し、そしてii)生体試料をイメージングして、前記ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録することを含むことができる。
【0220】
いくつかの態様では、イメージング緩衝液は、水の屈折率と一致することができ、蛍光シグナルの退色または減衰を伴わずに、基準プローブおよびレポータープローブのイメージングを可能にすることができる。非限定的例では、イメージング緩衝液は、蛍光シグナルを退色または減衰させることなく、組織上の位置ごとに4000回までのイメージングを可能にすることができる。
【0221】
本開示のイメージング緩衝液は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:ピラノースオキシダーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(BME)、p-フェニレンジアミン(PPD)、没食子酸n-プロピル(NPG)、1,4-ジアゾビシクロ[2.2.2]-オクタン(DABCO)、アスコルビン酸、3-カルボキシ-PROXYL、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、N-tert-ブチル-α-フェニルニトロン、N-tert-ブチル-α-(2-スルホフェニル)ニトロン、5,5-ジメチル-1-ピロリンN-オキシド、4,4,4-トリフルオロ酪酸エチル、4-ヒドラゾノメチル-1-ヒドロキシ-2,2,5,5-テトラメチル-3-イミダゾリン-3-オキシド、α-(4-ピリジルN-オキシド)-N-tert-ブチルニトロン、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物、3,3,5,5-テトラメチル-1-ピロリン-N-オキシド、1,3,5-トリ-tert-ブチル-2-ニトロソベンゼン、2-(5,5-ジメチル-2-オキソ-2λ5-[1,3,2]ジオキサホスフィナン-2-イル)-2-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピロール1-オキシド(CYPMPO)、ビタミンE、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(トロロックス;Trolox)、N-アセチル-L-システイン、4-アミノベンゾヒドラジド(ミエロペルオキシダーゼ阻害剤-I)、バルサラジド二ナトリウム塩水和物、ビリルビン、N-tert-ブチル-α-フェニルニトロン、カフェ酸、β-カロテン、没食子酸カテキン、クロロゲン酸、クロロフィリンナトリウム、p-クマル酸、塩化デルフィジン、5-O-(トランス-3,4-ジヒドロキシシンナモイル)-D-キニン酸、DL-α-リポ酸、エラグ酸、2,4-ジヒドロ-5-メチル-2-フェニル-3H-ピラゾール-3-オン(MCI-186)、(-)-エピカテキン、没食子酸(-)-エピカテキン、EUK-8、trans-フェルリン酸、4-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)ブタンアミド、MPO阻害剤II(ミエロペルオキシダーゼ阻害剤-II)、Fe(III)テトラキス(1-メチル-4-ピリジル)ポルフィリンペンタクロリドポルフィリン五塩化物、Fe(III)5,10,15,20-テトラキス(4-スルフォナートフェニル)ポリフィリナートクロリド、フコキサンチンカロテノイド抗酸化剤、没食子酸、(-)-ガロカテキン、ギンコライド(ginkgolide)、グルタチオンモノエチルエステル、グルタチオン遊離酸、ヘスペリジン、3-ヒドロキシチロゾール、7-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)クロメン-4-オン(ホルモネチン;formonetin)、ケンペロール、リノレイン酸、(±)-α-リポ酸、ルテオリン、リコピン、L-リジン、塩化Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)、メソ-テトラ(N-メチル-4-ピリジル)ポルフィンテトラトシレート塩(TMPyP)、オレイン酸、レスベラトロール、ルチン水和物、セレノ-L-メチオニン、Se-(メチル)セレノシステイン、亜セレン酸ナトリウム、タキシフォリン水和物、(+)-α-トコフェロール、およびキサントフィル。
【0222】
いくつかの態様では、イメージング緩衝液は、98%低塩濃度イメージング緩衝液、1%プロトカテク酸(PCA)および1%プロトカテク酸ジオキシゲナーゼ(PCD)の溶液を含むことができる。いくつかの態様では、低塩濃度イメージング緩衝液は、DEPC処理水中の1 M Tris-HCL pH 7.5、5 M塩化ナトリウム、および0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。
【0223】
上述の方法のいくつかの態様では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程は、i)ハイブリダイズしたレポータープローブ内の光開裂性リンカー部分を開裂するのに十分なUV光を生体試料に照射し、そしてii)レポーター洗浄緩衝液を用いて前記生体試料を洗浄する、ことを含むことができる。上述の方法のいくつかの態様では、ハイブリダイズしたレポータープローブ中の検出可能な標識を除去することが、i)ハイブリダイズしたレポータープローブ内の光開裂性リンカー部分を開裂するのに十分なUV光を生体試料に照射し、ii)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄し、iii)前記生体試料をイメージング緩衝液に浸漬し、そしてiv)前記試料をイメージングして、検出可能な標識が残っていないことを確実にする、ことを含むことができる。いくつかの態様では、生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することが、生体試料を少なくとも約2000 mLのレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含むことができる。
【0224】
上述の方法のいくつかの態様では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去することが、i)ハイブリダイズしたレポータープローブ内の光開裂性リンカー部分を開裂させるのに十分なUV光を生体試料に照射し、そしてii)前記生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄することを含むことができる。上述の方法のいくつかの態様では、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去することが、i)ハイブリダイズしたレポータープローブ内の光開裂性リンカー部分を開裂させるのに十分なUV光を生体試料に照射し、ii)前記生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄し、iii)前記生体試料をイメージング緩衝液に浸漬し、そしてiv)前記試料をイメージングして、検出可能な標識が残っていないことを確実にする、ことを含むことができる。いくつかの態様では、税仏学的試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄することが、前記生体試料を少なくとも約2000 mLのストリップ洗浄緩衝液で洗浄することを含むことができる。
【0225】
理論に束縛されるものではないが、ハイブリダイズしたレポータープローブ中の光開裂性リンカー部分を開裂するのに十分なUV光を生体試料に照射することと、前記生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄することとの組み合わせが、予想外にも、全ての蛍光標識の一層効率的でかつ完全な除去をもたらし、それによってその後のイメージングサイクルからの起こりうる蛍光の混入(contamination)を除去する。
【0226】
いくつかの態様では、生体試料をレポーター洗浄緩衝液(Reporter Wash Buffer)で洗浄することが、約0.20 ml/分~約0.55 ml/分、または約0.60 ml/分~約0.90 ml/分、または約0.65 ml/分~約0.85 ml/分、または約0.70 ml/分~約0.85 ml/分、または約0.75 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することが、約0.75 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝剤を用いて生体試料を洗浄することは、0.20 ml/分~0.55 ml/分、0.60 ml/分~0.90 ml/分、または0.65 ml/分~0.85 ml/分、または0.70 ml/分~0.85 ml/分、または0.75 ml/分~0.85 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、0.75 ml/分の流量で洗浄することを含みうる。
【0227】
いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝剤を用いて生体試料を洗浄することは、約0.01 dyn/cm2~約20 dyn/cm2、または約0.01 dyn/cm2~約100 dyn/cm2、または約8.89 dyn/cm2、または約9 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝剤を用いて生体試料を洗浄することは、約8.89 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝剤を用いて生体試料を洗浄することは、0.01 dyn/cm2~20 dyn/cm2、または0.01 dyn/cm2~100 dyn/cm2、または8.89 dyn/cm2、または9 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、レポーター洗浄緩衝剤を用いて生体試料を洗浄することは、8.89 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含むことができる。
【0228】
いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、約0.25 ml/分~約0.55 ml/分、または約0.3 ml/分~約0.5 ml/分、または約0.35 ml/分~約0.45 ml/分、または約0.4 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、約0.4 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、0.25 ml/分~0.55 ml/分、または0.3 ml/分~0.5 ml/分、または0.35 ml/分~0.45 ml/分、または0.4 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、0.4 ml/分の流量で洗浄することを含むことができる。
【0229】
いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、約0.01 dyn/cm2~約20 dyn/cm2、または約0.01 dyn/cm2~約100 dyn/cm2、または約8.89 dyn/cm2、または約9 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含みうる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、約8.89 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含みうる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、0.01 dyn/cm2~20 dyn/cm2、または0.01 dyn/cm2~100 dyn/cm2、または8.89 dyn/cm2、または9 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含みうる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液を用いて生体試料を洗浄することは、8.89 dyn/cm2の試料平面でのせん断応力があるように洗浄することを含みうる。
【0230】
いくつかの態様では、本開示の方法のいずれかがは、生体試料の形態スキャンをさらに含むことができる。いくつかの態様では、形態スキャンを使用して、イメージングすべき1つ以上の関心領域を決定することができる。いくつかの態様では、形態スキャンを使用して、生体試料の独特な特性を決定することができる(例えば、腫瘍性細胞、健康細胞、腫瘍切除マージン、細胞膜、細胞核、1つ以上の細胞小器官、脈管構造、または当業者によって既知の任意の他の特性)。いくつかの態様では、生体試料の独特な特性は、本開示の方法を使用して測定された標的分析物の存在量および空間的配置と相関しうる。いくつかの態様では、形態スキャンを使用して、生体試料内の個々の細胞の輪郭を定めることができる。個々の細胞の輪郭の決定は、本明細書では細胞のセグメント化(segmentation)と呼ばれる。
【0231】
前記方法のいくつかの態様では、前記方法は、前記生体試料を膜特異的蛍光染色液で染色することと、前記生体試料をイメージングして、試料中の細胞膜の空間的配置を特定することをさらに含むことができる。この染色は、プロトコルの任意工程において実施でき、例えば装着した生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる前に、本明細書に記載の試料調製方法に従って調製した生体試料を本開示の複数のレポータープローブと接触させる前に、工程(e)の後に、など、任意工程において実施することができる。
【0232】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、生体試料を核特異的蛍光染色液で染色し、そして該生体試料をイメージングして、該試料中の細胞核の空間的配置を規定することをさらに含むことができる。この染色は、プロトコルの任意の工程で、例えば、装着した生体試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させる前、本明細書に記載の試料調製方法に従って調製した生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させる前、工程(e)の後、など、任意の工程で実施することができる。
【0233】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、工程(e)の後、生体試料を膜特異的蛍光染色液で染色し、そして生体試料をイメージングして、試料内の細胞膜の空間的配置を特定することをさらに含むことができる。
【0234】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、工程(e)の後、生体試料を核特異的蛍光染色液で染色し、そして生体試料をイメージングして、試料内の細胞核の空間的配置を特定することをさらに含むことができる。
【0235】
いくつかの態様では、膜および/または核染色は、生体試料上で形態スキャンを実行するために使用される。したがって、生体試料を少なくとも1つの核酸プローブまたは複数のレポータープローブと接触させる前に、膜および/または核染色が実施される態様では、膜および/または核染色は、標的分析物(例えば標的核酸分子、標的タンパク質分子など)の存在量と空間的配置の決定の最中に、イメージングすべき1つ以上の関心領域を定めるために用いることができる。理論に縛られることを望まずに、生体試料のイメージングされる領域が大きくなるほど実験の合計実施時間が増加するので、膜および/または核染色を用いてイメージングすべき領域を特定することによって、特定の関心領域のみをイメージングすることで、イメージング実験の合計実行時間を短縮することができる。膜および/または核染色を用いる形態スキャンは、本開示のいずれかの方法の任意の工程の前後どちらにも実施することができ、そして複数回繰り返すこともできる。
【0236】
いくつかの態様では、生体試料に対して形態スキャンを実施する工程が、生体試料を免疫染色ブロッキング緩衝液と共にインキュベートすることを含みうる。いくつかの態様では、免疫染色ブロッキング緩衝液はバッファーWを含みうる。いくつかの態様では、免疫染色ブロッキング緩衝液は、約8.75×SSPE中に約2%~約5%BSA/BCSおよび約0.5%Tween20を含むことができる。いくつかの態様では、免疫染色ブロッキング緩衝液は、8.75×SSPE中に2%~5%BSA/BCSおよび0.5%Tween20を含むことができる。
【0237】
いくつかの態様では、生体試料に対して形態スキャンを実施する工程は、生体試料を少なくとも1つのプローブと接触させることを含みうる。いくつかの態様では、前記少なくとも1つのプローブが、本開示のISHプローブでありうる。いくつかの態様では、前記少なくとも1つのプローブが、本明細書中に開示されたバーコードドメインにコンジュゲート(連結)された抗体でありうる。いくつかの態様では、前記少なくとも1つのプローブが、本明細書中に開示されたバーコードドメインにコンジュゲート(連結)されたレクチン標的指向形態タンパク質でありうる。
【0238】
いくつかの態様では、生体試料を少なくとも1つのプローブと接触させた後、該生体試料をPBSで洗浄して、いずれの未結合のプローブも除去することにより、形態スキャンを続けることができる。
【0239】
いくつかの態様では、生体試料をPBSで洗浄して全ての未結合プローブを除去した後、形態スキャンは、(例えば、1つ以上のレポータープローブのバーコードドメインへの結合を介して)それらのプローブを可視化し続けることができる。プローブを可視化することは、i)生体試料を、ISHプローブのバーコードドメインにハイブリダイズする本明細書に記載のレポータープローブと接触させ、ii)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄し、iii)前記生体試料をイメージング緩衝液と共にインキュベートし、iv)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録することを含んで成ることができる。プローブを可視化することは、本明細書に記載の同様な工程を使用して、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去し、そしてバーコードドメイン内の各付着位置がレポータープローブにハイブリダイズした状態になるまで、工程(i)~(iv)を繰り返すことをさらに含むことができる。
【0240】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、工程(e)の後に、f)生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄する工程、g)生体試料をイメージング緩衝液に浸漬し、h)生体試料をイメージングして、検出可能標識が残っていないことを確証する工程、j)生体試料を膜染色ブロッキング溶液と共にインキュベートする工程、k)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄する工程、1)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬する工程、m)生体試料をイメージングして生体液(biological solution)中の細胞膜の空間的配置を記録する工程、n)前記試料を核染色溶液と共にインキュベートする工程、o)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄する工程、p)前記試料をイメージング緩衝液中に浸漬する工程、およびq)生体試料をイメージングして前記試料中の細胞核の空間的配置を記録する工程、をさらに含むことができる。
【0241】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、工程(e)の後に、f)生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄する工程、g)生体試料をイメージング緩衝液に浸漬する工程、h)生体試料をイメージングし、検出可能な標識が残っていないことを確証する工程、i)前記試料を核染色溶液と共にインキュベートする工程、j)前記試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄する工程、k)前記試料をイメージング緩衝液中に浸漬する工程、1)生体試料をイメージングして該試料中の細胞核の空間的配置を記録する工程、m)生体試料を膜染色ブロッキング溶液と共にインキュベートする工程、n)生体試料を膜染色溶液と共にインキュベートする工程、o)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄する工程、p)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬する工程、およびq)生体試料をイメージングして生体液で中の細胞膜の空間的配置を記録する工程、をさらに含むことができる。
【0242】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、任意の工程の前または後に、i)生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄すること、ii)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、iii)生体試料をイメージングして、検出可能標識が残っていないことを確証すること、iv)生体試料を膜染色ブロッキング溶液と共にインキュベートすること、v)生体試料を膜染色溶液と共にインキュベートすること、vi)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること、vii)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、viii)生体試料をイメージングして生体液中での細胞膜の空間的配置を記録すること、ix)前記試料を核染色液と共にインキュベートすること、x)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること、xi)前記試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、そしてxii)生体試料をイメージングして前記試料中での細胞核の空間的配置を記録すること、をさらに含むことができる。
【0243】
上述の方法のいくつかの態様では、該方法は、任意の工程の前または後に、i)生体試料をストリップ洗浄緩衝液で洗浄すること、ii)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、iii)生体試料をイメージングして、検出可能な標識が残っていないことを確証すること、iv)前記試料を核染色溶液と共にインキュベートすること、v)前記試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること、vi)前記試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、vii)生体試料をイメージングして前記試料中の細胞核の空間的配置を記録すること、viii)生体試料を膜染色ブロッキング溶液と共にインキュベートすること、ix)生体試料を膜染色溶液と共にインキュベートすること、x)生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること、xi)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること、そしてxii)生体試料をイメージングして生体液中での細胞膜の空間的配置を記録すること、をさらに含むことができる。
【0244】
いくつかの態様では、生体試料を、少なくとも約30分間、膜染色ブロッキング溶液と共にインキュベートすることができる。
【0245】
いくつかの態様では、生体試料を、少なくとも約60分間、膜染色液と共にインキュベートすることができる。
【0246】
いくつかの態様では、生体試料を、少なくとも約5分間、核染色液と共にインキュベートすることができる。いくつかの態様では、核染色液は、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)またはDAPIジラクテートを含むことができる。いくつかの態様では。核染色液は、PBS中に希釈された約100 nM~約500 nMのDAPIを含むことができる。いくつかの態様では、核染色液は、PBS中に希釈された約300 nMのDAPIを含むことができる。
【0247】
いくつかの態様では、膜染色液は、バッファーW中の5%NaN3および1%DAPIの溶液を含むことができ、さらに蛍光標識抗CD298抗体、蛍光標識抗CD3抗体、蛍光標識抗CD20抗体、および蛍光標識抗PanCK抗体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0248】
いくつかの態様では、膜染色液は、さらに蛍光標識抗CD298抗体、蛍光標識抗B2M抗体、蛍光標識抗CD3抗体、蛍光標識抗CD20抗体、蛍光標識抗PanCK抗体、蛍光標識抗CD3抗体、蛍光標識抗ヒストンH3抗体、蛍光標識小麦胚芽アグルチニンタンパク質、および蛍光標識コンカナバリンAタンパク質のうちの少なくとも1つをさらに含む、膜染色ブロッキング溶液中の溶液を含むことができる。
【0249】
いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液は、0.0033×SSPE緩衝液および0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液は、約0.0033×SSPE緩衝液および約0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。
【0250】
いくつかの態様では。ストリップ洗浄緩衝液は、0.0033×SSPE緩衝液、0.1%ProClin 950および0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。いくつかの態様では、ストリップ洗浄緩衝液は、約0.0033×SSPE緩衝液、約0.1%ProClin 950および約0.5%Tween-20の溶液を含むことができる。
【0251】
いくつかの態様では、膜染色ブロッキング溶液は、バッファーW中の0.5%NaN3および1%の4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の溶液を含むことができる。いくつかの態様では、膜染色ブロッキング溶液は、バッファーW中の約0.5%NaN3および約1%の4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の溶液を含むことができる。
【0252】
いくつかの態様では、膜染色ブロッキング溶液は、バッファーW中の0.5%NaN3および2μg/mLの4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の溶液を含むことができる。いくつかの態様では、膜染色ブロッキング溶液は、バッファーW中の約0.5%NaN3および約2μg/mLの4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の溶液を含むことができる。
【0253】
いくつかの態様では、バッファーWは、ウシ胎児血清(BCS)、アジ化ナトリウム(NaN3)、デキストラン硫酸およびssDNAのうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの態様では、バッファーWは、BCS、NaN3、デキストラン硫酸およびssDNAの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、バッファーW中のデキストラン硫酸の濃度は、約0.001%~約0.1%、または約0.005%~約0.05%であり得る。いくつかの態様では、バッファーW中のデキストラン硫酸の濃度は、約0.01%であり得る。いくつかの態様では、バッファーW中のssDNAの濃度は、約0.01 mg/ml~約1 mg/ml、または約0.05 mg/ml~約0.5 mg/mlであり得る。いくつかの態様では、バッファーW中のssDNAの濃度は、約0.1 mg/mlであり得る。
【0254】
いくつかの態様では、生体試料に対して形態スキャンを実行する工程は、i)生体試料を少なくとも1つのISHプローブと接触させ、ここで少なくとも1つのISHプローブは、生体試料中の標的分析物に結合するユニークな標的結合ドメインと、標的分析物に特異的なユニークなバーコードドメインとを含み、前記バーコードドメインは少なくとも1つの付着位置を含み、ii)調製された生体試料を複数のレポータープローブと接触させ、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによって、前記レポータープローブを、生体試料中の標的分析物にハイブリダイズした少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にハイブリダイズさせ、iii)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去し、iv)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録し、v)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去し、そして任意に、vi)生体試料中の標的分析物にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の各付着位置が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズし終わるまで、工程(ii)~(v)を繰り返し、それによって、検出可能標識が記録された配列に基づいて、生体試料中の少なくとも2つの標的分析物の存在量および/または空間的配置を決定し、それにより1つ以上の関心領域を決定することを含みうる。上述の方法のいくつかの態様では、前記標的結合ドメインは抗体を含むことができる。上述の方法のいくつかの態様では、前記標的結合ドメインはレクチンタンパク質を含むことができる。上述の方法のいくつかの態様では、前記バーコードドメインは1つの付着位置を含む。
【0255】
上述の方法のいくつかの態様では、当業者に理解されるように、生体試料に付加された基準マーカーを使用して、当該技術分野において標準的な方法を使用して生体試料をフォーカスすることができる。具体的には、基準マーカーを使用して、生体試料内の特定の位置をイメージングするための最良のz位置を決定することができる。また、
【0256】
キット
【0257】
本開示は、本開示の方法で使用するためのキットを提供する。
【0258】
いくつかの態様では、本開示のキットは、本明細書に記載の緩衝液および/または溶液のいずれも含むことができる。
【0259】
いくつかの態様では、本開示のキットは、本開示の複数のISHプローブを含むことができる。
【0260】
いくつかの態様では、本開示のキットは、本開示の複数のレポータープローブを含むことができる。
【0261】
いくつかの態様では、本開示のキットは、本開示の方法で使用するのに適した装置を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0262】
[実施形態1]蛍光イメージング用の生体試料を調製する方法であって:
a)生体試料を、機能化された顕微鏡スライド上に装着して、装着された生体試料を調製する工程であって、ここで、前記生体試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ミクロトーム切片である工程;
b)装着された生体試料を焼成する工程;
c)装着された生体試料を脱パラフィンする工程;
d)装着された生体試料に対して標的賦活化反応を実施する工程;
e)装着された生体試料を透過処理(透徹)する工程;
f)装着された生体試料に少なくとも1つの基準マーカーを適用する工程;
g)装着された生体試料を固定する工程;
h)装着された生体試料と少なくとも1つの核酸プローブとを接触させる工程;および
i)装着された生体試料を洗浄する工程
を含んでなる方法。
【0263】
[実施形態2]工程(j)の後に、装着された生体試料をフローセルへと組み立てることをさらに含む、実施形態1の方法。
【0264】
[実施形態3]前記機能化された顕微鏡スライドが、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で機能化された顕微鏡スライドである、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0265】
[実施形態4]前記生体試料が、ヒト組織試料のFFPEミクロトーム切片である、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0266】
[実施形態5]前記工程(b)が、装着された生体試料を約60℃で約1時間焼成することを含む、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0267】
[実施形態6]前記工程(c)が:
i)装着された生体試料をキシレンの第1溶液中で約5分間インキュベートすること;
ii)装着された生体試料をキシレンの第2溶液中で約5分間インキュベートすること;
iii)装着された生体試料を、第1の100%エタノール溶液中で約5分間インキュベートすること;
iv)装着された生体試料を、第2の100%エタノール溶液中で約2分間インキュベートすること;そして
v)装着された生体試料を、約60℃で約5分間乾燥させること
を含んで成る、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0268】
[実施形態7]前記工程(d)が:
i)装着された生体試料を、標的賦活化溶液中で約100℃でインキュベートすること;
ii)装着された生体試料を、DEPC処理水中で約15秒間インキュベートすること;
iii)装着された生体試料を、100%エタノール溶液中で約3分間インキュベートすること;そして
iv)装着された生体試料を乾燥させること
を含んで成る、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0269】
[実施形態8]前記装着された生体試料が、表1に記載された時間の間、標的賦活化溶液中でインキュベートされる、実施形態7の方法。
【0270】
[実施形態9]前記標的賦活化溶液が、TRISおよびEDTA溶液を含み、かつ約9のpHを有する、実施形態7または実施形態8の方法。
【0271】
[実施形態10]前記工程(e)が:
i)装着された生体試料を、プロテイナーゼK溶液中で約40℃でインキュベートすること、ここでプロテイナーゼK溶液中のプロテイナーゼKの濃度は約1μg/mLであり;
ii)前記生体試料を、第1アリコートのDEPC処理水で洗浄すること;そして
iii)前記生体試料を、第2アリコートのDEPC処理水で洗浄すること
を含んで成る、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0272】
[実施形態11]前記装着された生体試料を、プロテイナーゼK溶液中で、表2に記載の時間の間インキュベートすることを含む、実施形態11の方法。
【0273】
[実施形態12]前記工程(f)が:
i)装着された生体試料を、少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液中で、約5分間インキュベートすることであって、ここで、前記少なくとも1つの基準マーカーを含む溶液は、2×SSC溶液中の約0.001%の濃度のカルボキシル化微小球と約0.00045%の濃度の非カルボキシル化FNDとを含む溶液であり;そして
ii)前記装着された試料を1×PBSで洗浄すること
を含んで成る、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0274】
[実施形態13]前記工程(g)が、
i)装着された生体試料を10%NBFと共に約5分間インキュベートすること;
ii)装着された生体試料を、第1のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートすること;
iii)装着された生体試料を、第2のトリス-グリシン緩衝溶液中で約5分間インキュベートすること;そして
iv)装着された生体試料を、1×PBS中で約5分間インキュベートすること
ことを含む、上述の実施形態のいずれかの方法。
【0275】
[実施形態14]前記工程(h)が:
装着された生体試料を、約37℃で約16~約18時間、複数のISHプローブを含む溶液と共にインキュベートし、それによって、前記生体試料中の標的核酸に前記少なくとも1つのISHプローブをハイブリダイズさせることを含み、
ここで前記溶液は少なくとも2種のISHプローブを含んでおり、その少なくとも1種のISHプローブが約200 nMの濃度で存在し、
前記少なくとも1種のISHプローブが、少なくとも2つの標的核酸のうちの1つにハイブリダイズするユニークな標的結合ドメインと、該標的核酸に特異的なユニークなバーコードドメインとを含み、前記バーコードドメインが少なくとも4つの付着部位を含んでいる、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0276】
[実施形態15]前記標的結合ドメインが、標的核酸に相補的な核酸配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、
前記標的結合ドメインが約35~約40ヌクレオチド長であり、前記標的結合ドメインがD-DNAを含み、そして
前記バーコードドメインが、少なくとも4つの付着領域を含む一本鎖ポリヌクレオチドであり、
ここで前記各々の付着領域は約1つの付着配列を含み、その付着配列の各々が約14ヌクレオチド長であり、
そして前記付着配列の各々の配列が異なっており、そして
前記バーコードドメインがL-DNAを含んでいる、上述の実施形態のいずれかの方法。
【0277】
[実施形態16]前記工程(i)が:
i)装着された生体試料を、第1の2×SSC溶液と共にインキュベートすること;
ii)装着された生体試料を、第1のホルムアミド溶液中でインキュベートすること;
iii)装着された生体試料を、第2のホルムアミド溶液と共にインキュベートすること;
iv)装着された生体試料を、第2の2×SSC溶液と共にインキュベートすること;そして
v)装着された生体試料を、第3の2×SSC溶液と共にインキュベートすること
を含んで成る、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0278】
[実施形態17]生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する方法であって、
a)上述の実施形態のいずれか1つに従って調製された生体試料を、本開示の複数のレポータープローブと接触させ、ここで各レポータープローブは、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、それによって、前記レポータープローブを、生体試料中の標的核酸にハイブリダイズした少なくとも1つのISHプローブのバーコードドメインの付着領域にハイブリダイズさせる工程;
b)前記生体試料からハイブリダイズしなかったレポータープローブを除去する工程;
c)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録する工程;
d)ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識を除去する工程;
e)前記生体試料中の標的核酸にハイブリダイズしたISHプローブのバーコードドメイン内の少なくとも4つの付着位置の各付着位置が、少なくとも1つの検出可能な標識を含むレポータープローブにハイブリダイズし終わるまで、工程(a)~(d)を繰り返し;
それにより、検出可能な標識が記録された配列(シーケンス)に基づいて、生体試料中の少なくとも2つの標的核酸分子の存在量および空間的配置を決定する工程
を含む、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0279】
[実施形態18]前記レポータープローブが:
第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含む、第1の核酸分子を含み、
前記第1の核酸分子の第2ドメインが、約6個の第2の核酸分子にハイブリダイズし、
前記第2の核酸分子の各々が、第1ドメインと、第2ドメインと、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に置かれた光開裂性リンカーとを含み、
前記第2の核酸分子の各々の第1ドメインは、前記第1の核酸分子の第2ドメインにハイブリダイズし、
前記第2の核酸分子の各々の第2ドメインが、約5個の第3の核酸分子にハイブリダイズし、
前記第3の核酸分子の各々は、少なくとも1つの検出可能な標識を含み、そして
前記第1の核酸分子、前記第2の核酸分子、および前記第3の核酸分子は、L-DNAを含む、
実施形態17の方法。
【0280】
[実施形態19]前記少なくとも1つの検出可能な標識が蛍光部分である、実施形態17または18の方法。
【0281】
[実施形態20]前記方法が、工程(a)の前に、
i)スルホ-NHS酢酸エステルブロッキング液中で生体試料を約15分間インキュベートすること;
ii)前記生体試料を、レポーター洗浄緩衝液で洗浄すること;
iii)前記生体試料を、自家蛍光抑制緩衝液中でインキュベートすること;そして
iv)前記生体試料を、レポーター洗浄緩衝液で洗浄すること
をさらに含む、実施形態17、18または19のいずれか1つの方法。
【0282】
[実施形態21]前記工程(a)が、生体試料を、DEPC処理水中の5 nMの濃度のレポータープローブ、8.75×SSPE溶液、0.5%Tween-20および0.1%RNアーゼ阻害剤を含む溶液と共に、少なくとも約15分間インキュベートすることを含む、実施形態17、18、19または20のいずれか1つの方法。
【0283】
[実施形態22]前記工程(b)が、生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄することを含む、実施形態17、18、19、20または21のいずれか1つの方法。
【0284】
[実施形態23]前記工程(c)が、i)生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること;そしてii)生体試料をイメージングして、ハイブリダイズしたレポータープローブの検出可能な標識の属性および空間的配置を記録することを含む、実施形態17、18、19、20、21または22のいずれか1つの方法。
【0285】
[実施形態24]前記工程(d)が:
i)ハイブリダイズしたレポータープローブ中の光開裂性リンカー部分を開裂させるのに十分なUV光を生体試料に照射すること;
ii)前記生体試料をレポーター洗浄緩衝液で洗浄すること;
iii)前記生体試料をイメージング緩衝液中に浸漬すること;そして
iv)前記試料をイメージングして、検出可能標識が残っていないことを確証すること
を含む、実施形態17、18、19、20、21、22または23のいずれか1つの方法。
【0286】
[実施形態25]前記方法が、工程(e)の後に、生体試料を膜特異的蛍光染色液で染色し、そして前記生体試料をイメージングして前記試料内の細胞膜の空間的配置を特定することをさらに含む、実施形態17、18、19、20、21、22、23または24のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
[実施形態26]前記方法が、工程(e)の後に、生体試料を核異的蛍光染色液で染色し、そして前記生体試料をイメージングして前記試料中の細胞核の空間的配置を特定することをさらに含む、実施形態17、18、19、20、21、22、23、24または25のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0288】
実施例1a
【0289】
以下の非限定的例には、本開示の方法で使用するための試料調製プロトコルが記載される。
【0290】
まず、組織の5μm FFPEミクロトーム切片を、0.5%の(3-アミノプロピル)トリメトキシシランで機能化された第1の顕微鏡スライド上に装着した。当業者に理解されるように、第1の顕微鏡スライドは、当業界で標準的な方法を用いて機能化した。試料調製の一部として、第1の顕微鏡スライドは、後で組み立てる予定のフローセルの1つの表面として機能するだろう。
【0291】
次いで、スライドを60℃のオーブンで1時間焼成した。焼成後、キシレンを用いてスライド上のパラフィンを除去した。次に、標的賦活化溶液(例えば、pH 9.0での10 mM Tris、1 mM EDTA)中で100℃で8分間スライドを加熱することによって、パラホルムアルデヒドでのプレ固定を取り外した。加熱の長さは、異なる試料タイプ(例えば組織、細胞ペレットなど)に合わせて調整することができる。非限定的例では、スライドは、細胞ペレットの場合、8分間加熱することができる。
【0292】
加熱後、赤色、青色および緑色の0.001%の200 nmカルボキシル化微小球基準と、0.00045%の非カルボキシル化蛍光ナノダイヤモンド(FND)との混合物を組織に適用し、5分間インキュベートした後、1×リン酸塩緩衝溶液(PBS)で洗浄した。
【0293】
理論に束縛されようとすることなく、基準品とFNDとの混合物は、オートフォーカスと画像登録のための後続のイメージング工程において使用される。
【0294】
基準品とFNDの添加に続いて、組織試料を10%中性緩衝化ホルマリン(NBF)中で5分間ポスト固定した。理論に束縛されようとすることなく、このポスト固定工程は、組織試料の形態を保存するために使用される。次いで、当該NBFをトリス-グリシン緩衝液で10分間中和し、次いで1×PBSで洗浄した。
【0295】
次いで、本開示のin-situハイブリダイゼーション(ISH)プローブを95℃で2分間変性させ、氷冷した後、バッファーR溶液(原液:3.125%デキストラン硫酸、0.25%BSA、0.125 mg/mL ssDNA、2.5×SSC、50%ホルムアミド;使用濃度:2.5%デキストラン硫酸、0.2%BSA、0.1 mg/mL ssDNA、2×SSC、40%ホルムアミド)およびRNアーゼ阻害剤を含有するハイブリダイゼーション混合物において、プローブあたり0.5 nM濃度で組織試料に適用した。組織試料を、37℃で16~18時間、ISHプローブと共にインキュベートした。
【0296】
ISHプローブとのインキュベーションに続いて、スライドを、0.1%Tween-20溶液を含む2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)中に手短に浸漬し、次いで50%ホルムアミドと2×SSC溶液を2回交換して少なくとも50分間インキュベートし、過剰の未結合のISHプローブを洗い流した。次いで、当業者に理解されるように、任意選択的に、当業界の標準法を用いてエタノール勾配によりスライドを脱水した。脱水後、もしあれば、組織試料を後の使用のために4℃で保存するか、または後続のイメージング工程のために即座にフローセルへと組み立てることができる。
【0297】
実施例1b
【0298】
以下の非限定的例において、本開示の方法で使用するための試料調製プロトコルを記載する。
【0299】
まず、0.5%の(3-アミノプロピル)トリメトキシシランで機能化された第1の顕微鏡スライド上に、組織の5 μm FFPEミクロトーム切片を装着した。その第1の顕微鏡スライドを、当業者により理解されるように、当技術分野で標準的な方法を用いて機能化した。試料調製の一部として、第1の顕微鏡スライドは、その後組み立てられるフローセルの1表面として機能するだろう。
【0300】
次いで、スライドを60℃のオーブン中で1時間焼成した。焼成後、キシレンを用いてスライド上のパラフィンを除去した。次に、パラホルムアルデヒドでのプレ固定を、標的賦活化溶液(例えば、pH 9.0の10m mM Tris、1 mM EDTA)中で100℃にて8分間加熱することによって取り外した(undo)。加熱の長さは、異なる試料タイプ(例えば、組織、細胞ペレットなど)に合わせて調整することができる。非限定的例では、細胞ペレットの場合、スライドを8分間加熱することができる。
【0301】
加熱後、赤色、黄色、青色および緑色に染色された0.0005%~0.003%の200 nmカルボキシル化微小球基準の溶液を組織に適用し、5分間インキュベートした後、1×リン酸塩緩衝溶液(PBS)で洗浄した。
【0302】
理論に束縛されようとせずに、基準品とFNDとの混合物は、オートフォーカスと画像登録のための後続のイメージング工程において使用される。
【0303】
基準品の添加に続いて、組織試料を10%中性緩衝化ホルマリン(NBF)中で5分間ポスト固定した。理論に束縛されようとせずに、このポスト固定工程は、組織試料の形態を保存するために使用される。次いで、当該NBFをトリス-グリシン緩衝液で中和し、そして1×PBSで洗浄した。
【0304】
次いで、本開示のin-situハイブリダイゼーション(ISH)プローブを95℃で2分間変性させ、氷冷した後、バッファーR溶液(原液:3.125%デキストラン硫酸、0.25%BSA、0.125 mg/mL ssDNA、2.5×SSC、50%ホルムアミド;使用濃度:2.5%デキストラン硫酸、0.2%BSA、0.1 mg/mL ssDNA、2×SSC、40%ホルムアミド)およびRNアーゼ(RNase)阻害剤を含有するハイブリダイゼーション混合物において、プローブあたり0.5 nM濃度で組織試料に適用した。組織試料を、37℃で16~18時間、ISHプローブと共にインキュベートした。
【0305】
ISHプローブとのインキュベーションに続いて、スライドを、0.1%Tween-20溶液を含む2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)中に手短に浸漬し、次いで50%ホルムアミドと2×SSCの溶液中で2回交換して少なくとも50分間インキュベートし、過剰の未結合のISHプローブを洗い流した。次いで、当業者に理解されるように、任意選択的に、当業界の標準法を用いてエタノール勾配によりスライドを脱水した。脱水後、もしあれば、組織試料を後の使用のために4℃で保存するか、または後続のイメージング工程のために即座にフローセルへと組み立てることができる。
【0306】
実施例2
【0307】
以下の非限定的例において、本開示の方法で使用するための試料調製プロトコルを記載する。
【0308】
第0日―試料調製プロトコルの前に、顕微鏡スライドを以下のプロトコルを使用して機能化することができる。最初に、当業者に理解されるように、顕微鏡スライドを、当技術分野で標準的な方法を使用してプラズマ装置を使って洗浄した。洗浄後、スライドを0.5%の(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン溶液に入れて1分間浸漬した。浸漬後、スライドを0.5%の(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン溶液中で10秒間超音波処理した。スライドが0.5%の(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン溶液中で費やす合計時間が約3.5分間となるように、浸漬と超音波処理を2回繰り返した。次いでスライドを少なくとも3~4回水ですすいだ。最後に、スライドを窒素下で乾燥させた。
【0309】
試料調製の前に、本開示の方法で使用するために、生体試料(例えば組織試料)を切片化することができる。生体試料を、5μmのFFPEミクロトーム切片に切断し、機能化されたスライド上に装着した(上記参照)。次いで、装着されたミクロトーム切片を有するスライドを、室温で一晩乾燥させた。乾燥後、スライドをすぐに処理する予定がない場合、それらを4℃で保存しておいた。
【0310】
第1日―ミクロトーム切片が装着されたスライド(上記参照)を、まず60℃で1時間焼成した。
【0311】
脱パラフィン
【0312】
焼成後、スライドを直ちにキシレンの溶液に移し、撹拌しながら5分間インキュベートした。次いで、スライドをキシレンの新鮮な溶液に移し、撹拌しながらさらに5分間インキュベートした。次いで、スライドを100%エタノール溶液に移し、2分間インキュベートした。次いで、スライドを100%エタノールの新鮮な溶液に移し、別の2分間インキュベートした。このインキュベーションの後、スライドを60℃のオーブン中で平坦にして2分間乾燥させた。
【0313】
標的賦活化
【0314】
次いで、1×標的賦活化溶液〔ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水を使用して調製されたもの〕を100℃に予熱した。例えば圧力調理器を使用して、該溶液を予熱することができる。1×標的賦活化溶液は、15分間以上沸騰させてはならない。1×標的賦活化溶液が100℃に達したら、スライドを、処理する試料のタイプに対応する一定期間にわたり、前記1×標的賦活化溶液中でインキュベートした。異なる試料タイプについてのインキュベーション時間は表1に示されている。100℃でのインキュベーション後、スライドを即座にDEPC処理水に移し、攪拌しながら15秒間インキュベートした。次いでスライドを100%エタノール溶液に移し、3分間インキュベートした。次いでスライドをエタノール溶液から取り出し、5分間乾燥させておいた。
【0315】
組織の透過処理(透徹)および基準品/FNDの適用
【0316】
標的賦活化工程の後、例えば、PAPペンを使用して、スライド上に装着された試料の周囲に疎水性バリアを描いた。バリアが確実に組織に近すぎないようにするために、注意が払われた。
【0317】
疎水性バリアのマーキング後、PBS中の1μg/mLのプロテイナーゼK溶液を調製した。次いで、スライドを、DEPC水で湿らせた紙が敷かれている湿潤トレーに置き、そして40℃にて少なくとも30分間加熱した。スライドを湿潤トレーに置いたら、該スライド上に装着された生体試料に、プロテイナーゼK溶液を適用した。スライドを40℃のオーブンに入れ、生体試料のタイプに従ってインキュベートした。異なる試料タイプのインキュベーション時間は表2に示されている。インキュベーション後、生体試料からプロテイナーゼK溶液を除去した。次いで、スライドを攪拌しながらDEPC処理水で3~6回洗浄した。少なくとも最後の洗浄工程には新鮮なDEPC処理水を使用した。
【0318】
スライドの洗浄後、スライド上の生体試料に、30秒間ボルテックス攪拌した基準/FND混合物を適用した。例示的な基準品/FND混合物は、赤、青および緑色に染色された0.001%の200 nmカルボキシル化微小球基準品を、2×生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)溶液中に0.001%に希釈し、そして非カルボキシル化蛍光ナノダイヤモンド(FND)を同溶液中0.00045%に希釈することによって、調製することができる。次いで、この溶液を1分間ボルテックス攪拌した後、2分間超音波処理し、再び1分間ボルテックス攪拌し、次いで再び2分間超音波処理した。基準品/FND混合物を生体試料と共に室温で5分間インキュベートした。次いで、スライドを1×PBSで洗浄した。
【0319】
ポスト固定
【0320】
組織の透過処理(透徹)および基準品/FND適用に続いて、スライドを10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で5分間インキュベートした。次いで、該スライドをトリス-グリシン緩衝液中で5分間インキュベートした。次いで、該スライドをトリス-グリシン緩衝液の新鮮なバッチで5分間インキュベートした。最後に、スライドを1×PBS中で5分間インキュベートした。
【0321】
本開示のISHプローブのハイブリダイゼーション
【0322】
次いで、本開示のin-situハイブリダイゼーション(ISH)プローブを、95℃で2分間変性させ、バッファーR溶液(原液)を含むハイブリダイゼーション混合物において、組織試料に1分間適用した後、1分間氷上で1分間冷却した;3.125%デキストラン硫酸、0.25%BSA、0.125 mg/mL ssDNA、2.5×SSC、50%ホルムアミド、使用濃度:2.5%デキストラン硫酸、0.2%BSA、0.1 mg/mL ssDNA、2×SSC、40%ホルムアミド)、およびRNアーゼ阻害剤組織試料を、16~18時間、ISHプローブと共にインキュベートした。RNアーゼ阻害剤で予備洗浄し、2×SSC溶液で湿らせた紙が敷かれた容器中、37℃でインキュベートした。
【0323】
ストリンジェントな洗浄
【0324】
ISHプローブのハイブリダイゼーションの後、スライドをオーブンから取り出し、2×SSC溶液中に手短に浸漬した。次いで、スライドを、2×SSC溶液中50%ホルムアミド(ホルミアミドは37℃に予熱しておいた)と共に25分間インキュベートし、ホルムアミドを37℃に予熱した後、スライドを2×SSC溶液中の50%ホルムアミドの新鮮なアリコート中で25分間インキュベートした。次いで、スライドを2×SSC溶液中で2分間インキュベートした。最後に、別の2分間、スライドを2×SSC溶液の新鮮なアリコート中でインキュベートした。
【0325】
任意の脱水
【0326】
スライドのストリンジェントな洗浄の後、任意選択的に、スライドをエタノール勾配で脱水した。最初にスライドを70%エタノール溶液中で3分間インキュベートし、次いで85%エタノール溶液中で3分間インキュベートし、最後に100%エタノール溶液中で3分間インキュベートした。
【0327】
脱水後、もしあれば、スライドは、本開示のイメージング方法で使用されるフローセルへと直ちに組み立てられるか、または後の使用のために4℃で貯蔵される。
【0328】
実施例3
【0329】
以下の非限定的例は、本開示の方法で使用するための、実施例1または実施例2で調製されたスライドを使用するフローセル組立プロトコルを説明する。
【0330】
まず、厚さ300μmのカバーガラスをイソプロパノールで洗浄し、塵埃、デブリおよび/または水を除去した。次いで、厚さ75μmのフローセル接着剤をカバーガラスに塗布した。次いで、生体試料を含むスライド(実施例1または実施例2で説明したように調製したもの)をイソプロパノールで洗浄した。イソプロパノールは、スライドに装着された生体試料の周囲をワイプで拭って塵埃および/または水を除去するために使用される。試料が脱水されていない場合、スライドが液体を含まない状態になるまで、キムワイプまたは適切な代替物が、装着された生体試料の周りを拭き取るために使用される。生体試料が完全に乾いているように見える場合、適当な緩衝液を適用することをはじめとして、生体試料が確実に湿った状態であるように注意を払った。次いで、接着剤付きカバーガラスを、装着された生体試料を用いて、例えば、250 psiの圧力で少なくとも30秒間、油圧プレスによってスライドさせてフローセルを作製した。次いで、カバーガラスをイソプロパノールで洗浄した。
【0331】
実施例4
【0332】
以下の非限定的例は、本開示の方法で使用することができる様々な溶液を説明する。
【0333】
スルホ-NHS酢酸エステルブロッキング溶液:100 mMリン酸ナトリウムpH 8.0中の100 mMスルホ-NHS酢酸エステル。
【0334】
レポータープローブ溶液:DEPC処理水中の本開示の5 nMレポータープローブ、8.75×SSPE緩衝液、0.5%Tween-20、0.1%RNアーゼ阻害剤。
【0335】
低塩イメージング緩衝液:DEPC処理水中の1 M Tris-HCL pH 7.5、5 M塩化ナトリウムおよび0.5%Tween-20。
【0336】
イメージング緩衝液:98%低塩濃度イメージング緩衝液、1%プロトカテク酸(PCA)および1%プロトカテク酸ジオキシゲナーゼ(PCD)。
【0337】
膜染色ブロッキング溶液:バッファーW中の0.5%NaN3、1%4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)。
【0338】
膜染色液:蛍光標識抗CD298抗体、蛍光標識抗CD3抗体、蛍光標識抗CD20抗体、および蛍光標識抗Panck抗体のうちの少なくとも1つを含む、バッファーW中の5%NaN3および1%DAPI。
【0339】
レポーター洗浄緩衝液:1×SSPE溶液中の0.5%Tween-20。
【0340】
ストリップ洗浄緩衝液:0.0033×SSPE緩衝液および0.5%Tween-20。
【0341】
実施例5
【0342】
以下は、本開示の試料調製方法およびイメージング方法を用いた、生体試料の分析の非限定的例である。
【0343】
CCRF-CEM細胞、SUDHL4細胞、MDA-MB-468細胞、HS578T細胞、EKVK細胞、HCT116細胞、HOP92細胞、およびCOLO205細胞などの様々な細胞株を含む試料、並びに種々のFFPE試料をはじめとする生体試料は、上記の実施例に記載したとおりに調製した。次いで、生体試料中の標的分析物に結合したISHプローブにレポータープローブを順次結合させることによって、本明細書に記載のイメージング方法を使用して標的分析物を分析した。
【0344】
対照として、本開示の方法を使用して得られた存在量測定値を、標準RNA-Seqシーケンシング技術を使用して、収集された公知の存在量データと比較した。図4に示すように、本開示の方法を用いて測定された核酸存在量データは、検出限界〔癌細胞百科事典データベース(Cancer Cell Encyclopedia Database)では>1 FPKM発現レベルとして定義される〕より上の遺伝子について、標準RNA-Seqデータとの高い一致度を示し、このことは標準RNA-Seq技術のものに匹敵する感度および特異性を証明する。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの結果は、標準RNA-Seqとは異なり、本開示の方法が、標的分析物の空間的様相が保存され記録されるという利点を付加しつつ、本開示の方法が標的分析物の存在量を正確に測定することを実証している。
【0345】
図5は、特定の標的分析物EEF1Al、MALAT1、H4C3といった、MDA-MB-468細胞を含む生体試料中で検出された個々の標的分析物の画像を示す。陰性プローブ(NegPrb 6)から記録されたシグナルも含まれる。図5のグラフおよび表は、特定数の転写産物が本開示の方法を使用して検出された細胞の数も示している。図5に示すように、97%より多くの細胞で、少なくとも100の転写産物が検出され、細胞あたりのメジアン転写産物数は1265であった。さらに、図5は、本開示の方法が、分析した生体試料中の3257個の細胞を個別的にセグメント化できたことを示している。理論に束縛されることを望まずに、図5に示された結果は、非常に豊富な標的分析物(例えば、図5中のEEF1A1)、中程度に豊富な標的分析物(図5中MALAT1)および希少な転写産物(例えば図5中のH4C2)をはじめとして、本開示の方法が細胞下レベルの分解能(subcellular resolution)によって生体試料中の個々の標的分析物の存在量および空間的配置を決定することができることを実証している。
【0346】
図6Aは、本開示の方法に従って分析した、FFPEメラノーマ組織試料のイメージを示す。この実験では、1,000種の異なる標的分析物を測定し、細胞下レベルの分解能で空間的に検出した。具体的には、理論に縛られることを望むことなく、特定の標的核酸を標的とした22種の陰性プローブおよび997種のISHプローブを使用した。標的組織試料中の1000個の標的分析物の空間的存在量を決定するための本開示の方法の能力は、図面に示されるように、細胞型決定(セルタイピング)およびマッピング、細胞状態の特定、細胞機能の特定、相互作用分析、差次的発現解析およびホルモン活性分析を含む、組織試料に関する包括的な空間的シングルセル解析を可能にする。図6Bおよび6Cでは、本開示の方法を使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)FFPE試料、腎細胞癌FFPE試料、結腸直腸癌(CRC)FFPE試料および扁桃腺FFPE試料を含む、追加のFFPE試料に対して実施された。組織片にマッピングされた細胞型決定結果は、図6D~6Gに示されている。
【0347】
この実施例に記載された結果は、本開示の方法が、組織試料などの生体試料中の数千に及ぶ標的分析物に対する空間的存在量の同時定量化を可能にし、それによって、当業者が単一細胞(シングルセル)レベルで多種多様な生物学的分析を実施できるようにすることを実証している。
【0348】
均等論
【0349】
以上の説明は、例示の目的のためにのみ提示され、開示された正確な形態に本開示を限定することは意図されていない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、上記の添付の説明に記載されている。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料について記載している。本開示の他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数形も含む。本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、別に定義されない限り、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用されたすべての特許および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図4
図5
図6A
図6B
図6C-1】
図6C-2】
図6D
図6E
図6F
図6G
【国際調査報告】