IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オター プロシーナ リミテッドの特許一覧

特表2023-541669アルツハイマー病の処置のためのβ-アミロイドワクチン
<>
  • 特表-アルツハイマー病の処置のためのβ-アミロイドワクチン 図1
  • 特表-アルツハイマー病の処置のためのβ-アミロイドワクチン 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】アルツハイマー病の処置のためのβ-アミロイドワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230926BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230926BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230926BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230926BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230926BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230926BHJP
   C07K 7/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N15/12
A61K39/39
A61K39/385
A61K38/08
A61K38/06
A61K38/07
A61P37/04
A61P25/28
A61K9/127
A61K47/65
A61K47/02
A61K47/46
A61K47/42
A61K47/62
A61K31/7105
A61K31/711
A61K39/00 Z
A61K47/68
A61K47/55
A61K48/00
C07K7/04 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517697
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021033180
(87)【国際公開番号】W WO2022060424
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/079,806
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522452503
【氏名又は名称】オター プロシーナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バーバー, ロビン
(72)【発明者】
【氏名】キニー, ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ザーゴ, ワーグナー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA19
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC06
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA15
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA42
4C084CA18
4C084CA59
4C084DC50
4C084MA17
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZB091
4C084ZB092
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB11
4C085CC31
4C085CC32
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF03
4C085FF11
4C085FF18
4C085FF20
4C085FF24
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA24
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZB09
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA31
4H045FA33
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、アミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを含むペプチド組成物および免疫療法組成物を提供する。本開示は、対象におけるアルツハイマー病またはベータ-アミロイド沈着を伴う他の疾患を処置するまたはその予防をもたらす方法も提供し、アルツハイマー病またはアミロイド-ベータ蓄積を含む他の疾患を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象において、沈着物を取り除く、Aβの凝集を阻害または低減する、ニューロンによる取り込みを遮断する、およびアミロイドを取り除く方法を含む。本方法は、アミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを含む組成物をそのような患者に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号01の残基1~10由来または配列番号01の残基12~25由来の3~10アミノ酸を含むペプチド。
【請求項2】
配列番号02~配列番号37または配列番号41~配列番号96のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号01の残基1~7由来である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号01の残基12~24由来、または残基12~23由来、または残基12~22由来、または残基13~25由来、または残基13~24由来、または残基13~23由来、または残基13~22由来、または残基14~25由来、または残基14~24由来、または残基14~23由来、または残基14~22由来、または残基15~25由来、または残基15~24由来、または残基15~23由来、または残基15~22由来である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号05~配列番号09、配列番号13~配列番号16、配列番号20~配列番号22、配列番号26、配列番号27または配列番号31のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号01の残基2~8由来である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
配列番号12~配列番号16、配列番号19~配列番号22、配列番号25~配列番号27、配列番号30、配列番号31または配列番号34のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
配列番号2~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
C末端に-RRをさらに含む、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
DAEFRHDRR(配列番号101)のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
C末端システインをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
AEFRHDSGC(配列番号38)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
DAEFRHDC(配列番号39)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項14】
QKLVFFAEC(配列番号40)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項15】
DAEFRHD(配列番号05)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項16】
EFRHDSG(配列番号18)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
AEFRHDS(配列番号12)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項18】
構造:
[第1のペプチド]-[リンカー1]-[第2のペプチド]-[リンカー2]-[Cys]
(ここで、前記第1のペプチドは、請求項1に記載のペプチドであり、前記第2のペプチドは、請求項1に記載の同じまたは異なるペプチドであり、リンカー1、リンカー2および[Cys]のそれぞれは、必要に応じて存在し、リンカー1およびリンカー2は、同じまたは異なり得る)
を含むペプチド。
【請求項19】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号01の残基1~10由来の3~10アミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項20】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号01の残基1~10由来の3~10アミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項21】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号01の残基12~25由来の3~10アミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項22】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号01の残基12~25由来の3~10アミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項23】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号02~配列番号39からなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項24】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号02~配列番号39からなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項25】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号40~配列番号96からなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項26】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号40~配列番号96からなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項27】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号01の残基1~10由来の3~10アミノ酸を含み、他のペプチドが、配列番号01の残基12~25由来の3~10アミノ酸を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項28】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号02~配列番号39からなる群から選択され、他のペプチドが、配列番号40~配列番号96からなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項29】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号02~配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項30】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号02~配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項31】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドのうちの少なくとも1つが、請求項8に記載のペプチドからなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項32】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、請求項8に記載のペプチドからなる群から選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項33】
前記第1のペプチドまたは前記第2のペプチドが、配列番号101である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項34】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドの両方が、配列番号101である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項35】
前記第1のペプチドおよび前記第2のペプチドが、配列番号02~配列番号96および配列番号101からなる群からそれぞれ選択される、請求項18に記載のペプチド。
【請求項36】
前記ペプチドのC末端部分にリンカーをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載のペプチド。
【請求項37】
前記リンカーが、アミノ酸配列を含む、請求項36に記載のペプチド。
【請求項38】
前記リンカーが、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、AGAG(配列番号99)、GG、GGG、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチド。
【請求項39】
前記リンカーが、C末端システイン(C)をさらに含む、請求項38に記載のペプチド。
【請求項40】
前記ペプチドが、N末端にブロックされたアミンをさらに含む、請求項38に記載のペプチド。
【請求項41】
前記第1のリンカーが、切断可能リンカーである、請求項18に記載のペプチド。
【請求項42】
請求項1~41のいずれかに記載のペプチドのうちの1つまたは複数を含む、免疫療法組成物。
【請求項43】
前記1つまたは複数のペプチドが、前記ペプチドのC末端部分に担体へのリンカーをさらに含む、請求項42に記載の免疫療法組成物。
【請求項44】
前記リンカーが、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、AGAG(配列番号99)、GG、GGG、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の免疫療法組成物。
【請求項45】
前記担体が、血清アルブミン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、ジフテリア毒素の遺伝子改変された交差反応物質(CRM)、CRM197、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)およびH.influenzaeタンパク質D(HiD)、rEPA(Pseudomonas aeruginosa外毒素A)、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、ならびにフラジェリンを含む、請求項43または44のいずれかに記載の免疫療法組成物。
【請求項46】
前記担体が、CRM197である、請求項45に記載の免疫療法組成物。
【請求項47】
前記担体が、ジフテリアトキソイドである、請求項45に記載の免疫療法組成物。
【請求項48】
少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤をさらに含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の免疫療法組成物。
【請求項49】
多重抗原提示システム(MAP)をさらに含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の免疫療法組成物。
【請求項50】
前記MAPが、Lys系樹状足場、ヘルパーT細胞エピトープ、免疫刺激性親油性部分、細胞透過性ペプチド、ラジカル誘導重合、抗原提示プラットフォームとしての自己組織化ナノ粒子、および金ナノ粒子のうちの1つまたは複数を含む、請求項49に記載の免疫療法組成物。
【請求項51】
(a)請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチドのうちの1つもしくは複数、または(b)請求項42~50のいずれかに記載の免疫療法組成物、および少なくとも1種のアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項52】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)、QS-21、TQL1055、QS-18、QS-17、QS-7、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、水中油型エマルジョン(スクアレンまたはピーナッツ油など)、CpG、ポリグルタミン酸、ポリリシン、AddaVax(商標)、MF59(登録商標)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記アジュバントが、QS-21またはTQL1055である、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記アジュバントが、MPLである、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記アジュバントが、MPLおよびQS-21の組合せまたはMPLおよびTQL1055の組合せである、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記アジュバントが、リポソーム製剤を含む、請求項51~55のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記組成物が、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤を含む、請求項51~56のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項58】
多重抗原提示システム(MAP)を含む、請求項51~56のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記MAPが、Lys系樹状足場、ヘルパーT細胞エピトープ、免疫刺激性親油性部分、細胞透過性ペプチド、ラジカル誘導重合、抗原提示プラットフォームとしての自己組織化ナノ粒子、および金ナノ粒子のうちの1つまたは複数を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
請求項1~41のいずれか一項に記載のペプチドまたは請求項42~50に記載の免疫療法組成物をコードする核酸配列を含む核酸。
【請求項61】
請求項60に記載の核酸、および少なくとも1種のアジュバントを含む核酸免疫療法組成物。
【請求項62】
対象におけるアルツハイマー病を処置するまたはその予防をもたらす方法であって、請求項42~50のいずれかに記載の免疫療法組成物または請求項51~59のいずれかに記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項63】
アルツハイマー病を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象におけるAβの凝集を阻害または低減する方法であって、請求項42~50のいずれかに記載の免疫療法組成物または請求項51~59のいずれかに記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項64】
対象におけるアルツハイマー病を処置するまたはその予防をもたらす方法であって、請求項60または請求項61に記載の核酸免疫療法組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項65】
アルツハイマー病を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象におけるAβの凝集を阻害または低減する方法であって、請求項60または請求項61に記載の核酸免疫療法組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項66】
前記投与することを、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回または少なくとも6回繰り返すことをさらに含む、請求項62~65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
約14日、または約21日~約28日、または約3か月ごと、または約半年ごと、または約1年ごとの間隔で前記投与することを繰り返すことをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
動物における免疫応答を誘導する方法であって、Aβに特異的に結合する抗体を含む免疫応答を生成するのに有効なレジメンで、請求項1~41に記載のポリペプチド、請求項42~50に記載の免疫療法組成物、請求項51~59に記載の医薬組成物、または請求項60もしくは請求項61に記載の核酸免疫療法組成物のうちのいずれか1つを前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項69】
前記免疫応答が、Aβに特異的に結合する抗体を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記免疫応答を前記誘導することが、AβのN末端領域に特異的に結合する抗体を含む、請求項68または69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
請求項42~50のいずれかに記載の免疫療法組成物を含む免疫キット。
【請求項72】
アジュバントをさらに含む、請求項71に記載のキット。
【請求項73】
前記免疫療法組成物が、第1の容器中にあり、前記アジュバントが、第2の容器中にある、請求項72に記載のキット。
【請求項74】
請求項60または請求項61に記載の核酸免疫療法組成物を含むキット。
【請求項75】
アジュバントをさらに含む、請求項74に記載のキット。
【請求項76】
前記核酸が、第1の容器中にあり、前記アジュバントが、第2の容器中にある、請求項75に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月17日に出願された米国仮特許出願番号第63/079,806号の利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の陳述
コンピューター可読形態の配列表を、電子提出により本出願とともに出願し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表は、2021年5月18日に作成され、「20-1083-WO_Sequence-Listing_ST25.txt」というファイル名を有し、18kbのサイズであるファイルに含まれる。
【0003】
分野
本開示は、免疫学および薬の技術分野、特に、アルツハイマー病およびタンパク質ミスフォールディングの他の疾患の処置に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
アルツハイマー病(AD)は、老人性認知症をもたらす進行性疾患である。大まかに言えば、この疾患は、老齢(65歳以上)で起こる遅発性、および老齢期よりかなり前、すなわち、35~60歳に発生する早発性の2つカテゴリーに分類される。両方の種類の疾患では、病理は同じであるが、異常性は、より早い年齢で開始する症例において、より深刻かつ広がる傾向がある。この疾患は、神経原線維変化および老人斑の脳における少なくとも2つの種類の病変によって特徴付けられる。老人斑(すなわち、アミロイド斑)は、脳組織の切片の顕微鏡解析によって可視化される中央での細胞外アミロイド沈着全体にわたる最大で150μmの不規則な神経網の領域である。中枢神経系内でのアミロイド斑の蓄積は、ダウン症候群および他の認知障害の脳アミロイド血管症(CAA)、ならびに眼疾患の加齢黄斑変性にも関連する。
【0005】
斑の主な構成成分は、Aβまたはβ-アミロイドペプチドと称されるペプチドである。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)という名称のより長い膜貫通糖タンパク質の38~43アミノ酸の4kDaの内部断片である。異なる分泌酵素によるAPPのタンパク質分解プロセシングの結果として、Aβは、40アミノ酸長の短形態および42~43アミノ酸長の範囲の長形態の両方で主に見出される。APPの疎水性膜貫通ドメインの部分は、Aβのカルボキシ末端で見られ、特に長形態の場合において、斑に凝集するAβの能力の主な原因であり得る。脳におけるアミロイド斑の蓄積は、最終的に、ニューロン細胞死をもたらす。この種類の神経劣化に関連する認知症状および身体症状は、アルツハイマー病を特徴付ける。
【0006】
したがって、アルツハイマー病の防止または処置のための新たな治療および試薬、特に、患者に存在するAβに対する免疫応答を引き起こすことができる治療および試薬についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
一部の実施形態では、開示は、配列番号01の残基1~10または残基12~25由来の3~10アミノ酸を含む1つまたは複数のペプチドを対象とする。例えば、ペプチドは、配列番号02~配列番号96のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号01の残基1~7、および必要に応じて、C末端システイン由来であり、例として、配列番号05~配列番号09、配列番号13~配列番号16、配列番号20~配列番号22、配列番号26、配列番号27または配列番号31のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、本開示は、例えば、配列番号12~配列番号16、配列番号19~配列番号22、配列番号25~配列番号27、配列番号30、配列番号31または配列番号34のいずれか1つを含む、配列番号01の残基2~8、および必要に応じて、C末端システイン由来のペプチドを対象とする。一部の実施形態では、本開示は、配列番号01の残基12~24由来、または残基12~23由来、または残基12~22由来、または残基13~25由来、または残基13~24由来、または残基13~23由来、または残基13~22由来、または残基14~25由来、または残基14~24由来、または残基14~23由来、または残基14~22由来、または残基15~25由来、または残基15~24由来、または残基15~23由来、または残基15~22由来のペプチドを対象とする。実施形態のそれぞれでは、ペプチドは、C末端システインを含んでいてもよい。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、構造:[第1のペプチド]-[リンカー1]-[第2のペプチド]-[リンカー2]-[Cys](ここで、第1のペプチドおよび第2のペプチドは同じまたは異なり、例えば、配列番号01、配列番号02~配列番号96の残基1~10由来の3~10アミノ酸、残基12~25由来の3~10アミノ酸、および末端に付け加えられた-RRジペプチド配列を有する同様の配列(例えば、配列番号101)を含む)のペプチドを対象とする。加えて、リンカー1およびリンカー2は、同じまたは異なっていてもよい。
【0009】
一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチドのC末端部分に、リンカー、例えば、担体へのリンカーを含んでいてもよく、これは、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、AGAG(配列番号99)、GG、GGG、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)のアミノ酸配列を含んでいてもよい。一部の実施形態では、担体へのリンカーは、存在する場合、C末端システイン(C)を含んでいてもよい。例えば、ポリペプチドは、DAEFRHD-XXC(配列番号05)またはDAEFRHDRR-XXC(配列番号101)のアミノ酸配列を含んでいてもよく、ここで、XXおよびCは、独立して必要に応じて存在し、存在する場合、XXは、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、AGAG(配列番号99)、GG、GGG、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)であり得る。一部の実施形態では、ペプチドは、N末端にブロックされたアミンをさらに含む。
【0010】
他の実施形態では、本開示は、本開示のポリペプチドを含む免疫療法組成物であって、ポリペプチドが担体に連結されていてもよい、免疫療法組成物を対象とする。担体は、血清アルブミン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、ジフテリア毒素の遺伝子改変された交差反応物質(CRM)、CRM197、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)およびH.influenzaeタンパク質D(HiD)、rEPA(Pseudomonas aeruginosa外毒素A)、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、ならびにフラジェリンを含んでいてもよい。
【0011】
他の実施形態では、本開示は、本開示のポリペプチドおよび/または免疫療法組成物を含み、少なくとも1種のアジュバントを含む医薬組成物を対象とする。アジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)およびその合成アナログ、QS-21、QS-18、QS-17、QS-7、TQL1055、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、水中油型エマルジョン(スクアレンまたはピーナッツ油など)、CpG、ポリグルタミン酸、ポリリシン、AddaVax(商標)、MF59(登録商標)、およびそれらの組合せであってもよい。加えて、製剤は、リポソーム製剤、希釈剤、または多重抗原提示システム(MAP)のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。MAPは、Lys系樹状足場(Lys-based dendritic scaffold)、ヘルパーT細胞エピトープ、免疫刺激性親油性部分、細胞透過性ペプチド、ラジカル誘導重合、抗原提示プラットフォームとしての自己組織化ナノ粒子、および金ナノ粒子のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0012】
本開示の実施形態は、本開示のポリペプチドおよび免疫療法組成物をコードする核酸配列も対象とする。核酸は、核酸および少なくとも1種のアジュバントを含む核酸免疫療法組成物に含まれていてもよい。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、対象におけるアルツハイマー病を処置するまたはその予防をもたらすための方法、ならびにアルツハイマー病を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象におけるAβの凝集を阻害または低減するための方法を対象とする。方法は、本開示の免疫療法組成物、核酸免疫療法組成物または医薬製剤を対象に投与することを含む。
【0014】
本開示の方法は、前記投与することを、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回または少なくとも6回繰り返すことを含んでいてもよく、約月2回、約21日~約28日、約3か月ごと、約半年ごとまたは約1年ごとの間隔で前記投与することを繰り返すことを含んでいてもよい。
【0015】
またさらに、本開示の方法は、動物における免疫応答を誘導することを対象とする。方法は、Aβに特異的に結合する抗体を含む免疫応答を生成するのに有効なレジメンで、本開示のポリペプチド、免疫療法組成物、医薬製剤または核酸免疫療法組成物を動物に投与することを含む。免疫応答は、AβのN末端領域に特異的に結合する抗体を含んでいてもよい。
【0016】
他の実施形態では、本開示は、本開示の免疫療法組成物を含み、アジュバントを含んでいてもよい免疫キットを対象とし、ここで、免疫療法組成物は、第1の容器中にあってもよく、アジュバントは、第2の容器であってもよい。
【0017】
またさらに、本開示は、本開示の核酸免疫療法組成物を含み、アジュバントを含んでいてもよいキットを対象とする。核酸は、第1の容器中にあってもよく、アジュバントは、第2の容器中にあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、アミロイドベータ単一ペプチド免疫原のQKLVFFAEC(配列番号40)およびDAEFRHDC(配列番号39)に対するモルモット血清の力価を比較する実験の結果を示す。全ての免疫原は、マレイミド活性化CRM197担体へのカップリングのためにC末端システインを含んでいた。QS21は、AddaVaxスクアレン系水中油型ナノエマルジョンにおいて、アジュバントとして利用された。
【0019】
図2図2は、アミロイドベータ単一ペプチド免疫原のAEFRHDSGC(配列番号38)およびDAEFRHDC(配列番号39)に対するマウス血清の力価を測定する実験の結果を示す。ペプチドは、N末端システインを介してマレイミド活性化CRM197担体にカップリングされていた。QS21は、アジュバントとして使用された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明
本開示は、アミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを含むペプチド組成物および免疫療法組成物を提供する。本開示は、対象におけるアルツハイマー病またはベータ-アミロイド沈着を伴う他の疾患を処置するまたはその予防をもたらす方法も提供し、アルツハイマー病またはアミロイド-ベータ蓄積を含む他の疾患を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象において、沈着物を取り除くおよびその形成を防止する、Aβの凝集を阻害または低減する、ニューロンによるAβの結合および/または取り込みを遮断する、細胞間のAβ種の伝達を阻害する、ならびに脳領域間の病理の伝播を阻害する方法を含む。本方法は、アミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを含む組成物をそのような患者に投与することを含む。
【0021】
いくつかの用語を下記に定義する。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、その混合物を含めて、複数の化合物を含み得る。
【0022】
文脈から別段明らかでない限り、「約」という用語は、ごくわずかな変動、例えば、述べられた値の測定の誤差の標準的な限度(例えば、SEM)内の値を包含する。例えば、本明細書で使用される「約」という用語は、測定可能な値、例えば、パラメーター、量、時間的な期間に言及する場合、規定の値のおよび規定の値から+/-10%もしくはそれ未満、+/-5%もしくはそれ未満、または+/-1%もしくはそれ未満(or less or less)の変動を包含し得る。値の範囲の指定は、範囲内または範囲を定義するすべての整数、および範囲内の整数によって定義されるすべての下位範囲を含む。本明細書で使用される場合、統計学的有意性は、p≦0.05を意味する。
【0023】
1つまたは複数の列挙された要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含んでいてもよい。例えば、ポリペプチド配列を「含む(comprises)」または「含む(includes)」組成物は、配列を単独でまたは他の配列もしくは成分と組み合わせて含有していてもよい。
【0024】
対象が、少なくとも1つの公知のリスク因子(例えば、年齢、遺伝的、生化学的、家族歴および状況曝露)を有し、リスク因子がない個体よりも疾患を発生する統計的に有意に高いリスクでそのリスク因子を有する個体が置かれている場合、個体は、疾患の増加したリスクがある。
【0025】
「患者」という用語は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含み、処置ナイーブ対象を含む。本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、処置が所望される任意の単一の対象を指し、他の哺乳動物対象、例えば、ヒト、ウシ、イヌ、モルモット、ウサギなどを含む。疾患の任意の臨床徴候を示していない臨床研究試験に関与する任意の対象、または疫学的研究に関与する対象、または対照として使用される対象も、対象として含まれることが意図される。
【0026】
「疾患」という用語は、生理学的機能を損なう任意の異常な状態を指す。この用語は、病因の性質に関わりなく、生理学的機能が損なわれる任意の障害、疾病、異常性、病理、病気、状態または症候群を包含して広く使用される。
【0027】
「症状」という用語は、対象によって知覚される歩行の変化などの疾患の主観的証拠を指す。「徴候」は、医師によって観察される疾患の客観的証拠を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「処置する」および「処置」という用語は、疾患に関連する1つもしくは複数の症状もしくは作用の軽減または寛解、疾患の1つもしくは複数の症状もしくは作用の開始の防止、阻害または遅延、疾患の1つもしくは複数の症状もしくは作用の重症度または頻度を低下させること、および/あるいは、本明細書に記載される所望の転帰の増加またはその方向に向かわせることを指す。
【0029】
「防止」、「防止する」または「防止すること」という用語は、本明細書で使用される場合、既に存在するAβ病理を伴うまたは伴わない疾患の開始前に本開示のペプチドまたは免疫療法組成物を対象と接触させ(例えば、投与し)(一次および二次予防)、それによって、対象がペプチドまたは免疫療法組成物と接触していない場合と比較して、臨床症状の開始を遅延させることおよび/または疾患の開始後の疾患の症状を軽減することを指し、疾患の開始を完全に抑制することは指さない。一部の場合では、防止は、本開示のペプチドまたは免疫療法組成物の投与後の限られた時間の間に起こり得る。他の場合では、防止は、本開示のペプチドまたは免疫療法組成物を投与することを含む処置レジメンの期間の間に起こり得る。
【0030】
「低減」、「低減する」または「低減すること」という用語は、本明細書で使用される場合、対象または対象の組織に存在するAβおよび/またはタウの量を減少させること、あるいは対象または対象の組織に存在するAβの量の増加を抑制することを指し、これは、対象または対象の組織に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量を減少させること、あるいはその増加を抑制すること(例えば、増加の速度を減少させること)を包含する。ある特定の実施形態では、対象に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量の減少、あるいはその増加の抑制(例えば、増加の速度を減少させること)は、対象の中枢神経系(CNS)に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量を指す。ある特定の実施形態では、対象に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量の減少、あるいはその増加の抑制(例えば、増加の速度を減少させること)は、対象の末梢(例えば、末梢循環系)に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量を指す。ある特定の実施形態では、対象に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量の減少、あるいはその増加の抑制(例えば、増加の速度を減少させること)は、対象の脳に存在する、蓄積した、凝集した、または沈着したAβの量を指す。一部の実施形態では、低減されるAβは、Aβ(例えば、β-アミロイドペプチド(Aβ)の細胞外の斑の沈着、神経突起性アミロイド斑)の病理学的形態である。さらに他の実施形態では、神経変性疾患および/またはβ-アミロイドパチーの病理学的指標が減少される。
【0031】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、B細胞および/もしくはT細胞が応答する抗原上の部位、または抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸から、またはタンパク質の三次フォールディングによって並置された非連続アミノ酸からの両方で形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露において保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理において失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間コンフォメーションで少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10アミノ酸を含む。エピトープの空間コンフォメーションを決定する方法としては、例えば、x線結晶学および2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed. (1996)を参照されたい。
【0032】
「免疫原性剤」または「免疫原」または「抗原」は、必要に応じてアジュバントと併せて、動物への投与の際に、それ自身またはそれ自身の改変/処理バージョンに対する免疫応答を誘導することができる。「免疫原性剤」または「免疫原」または「抗原」という用語は、適切な量(「免疫学的有効量」)で投与された場合に「抗原性」または「免疫原性」である、すなわち、細胞性免疫応答および/もしくは体液性免疫応答を誘導する、誘発する、増大させるまたはブーストすることができ、その応答の産物(T細胞、抗体)によって認識されることができる、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む化合物または組成物を指す。免疫原は、ペプチド、または2つもしくはそれよりも多くのペプチドの組合せであり得、これは、直鎖状または空間コンフォメーションで少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10アミノ酸を含む。免疫原は、単独で、または別の物質(1回またはいくつかの間隔にわたって投与され得る)と組み合わせて、もしくはそれに連結されて、もしくはそれと融合されて与えられる場合に有効であり得る。免疫原性剤または免疫原は、本明細書に記載される担体に連結されている抗原ペプチドまたはポリペプチドを含み得る。
【0033】
抗原ペプチドまたはポリペプチドをコードするDNAまたはRNAなどの核酸は、コードされたポリペプチドが、DNAまたはRNAの投与後にin vivoで発現されるので、「DNA[またはRNA]免疫原」と称される。ペプチドまたはポリペプチドは、ワクチンベクターから組換え的に発現され得、このワクチンベクターは、プロモーターに作動可能に連結されたペプチドまたはポリペプチドコード配列を含むネイキッドDNAまたはRNA、例えば、本明細書に記載される発現ベクターまたはカセットであり得る。
【0034】
「アジュバント」という用語は、抗原と合わせて投与された場合に、抗原に対する免疫応答を増大させるが、単独で投与された場合に、抗原に対する免疫応答を生じさせない、化合物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、B細胞および/またはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を含むいくつかの製造業者ニズムによって免疫応答を増大させることができる。アジュバントは、天然化合物、天然化合物の改変バージョンもしくは誘導体、または合成化合物であってもよい。
【0035】
「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書で互換的に使用され、2個またはそれよりも多くの連続アミノ酸の鎖を指す。もし区別が行われる場合、区別が行われるときに、文脈は、意味を明確にする。例えば、本明細書に記載される2つまたはそれよりも多くのペプチドが接続されて、二量体または多量体ペプチドになる場合、ポリペプチドは、「ポリ」または「2つ以上」のペプチドを示すために使用され得る。
【0036】
「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、アジュバントまたは補助剤が、医薬製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに実質的に有害ではないことを意味する。
【0037】
「免疫療法」または「免疫応答」という用語は、レシピエントにおけるAβペプチドに対する有益な体液性応答(抗体が媒介する)および/または細胞性応答(抗原特異的T細胞またはそれらの分泌産物によって媒介される)の発生を指す。そのような応答は、免疫原(例えば、Aβペプチド)の投与によって誘導される能動的応答であり得る。細胞性免疫応答は、クラスIまたはクラスII MHC分子に関連するポリペプチドエピトープの提示によって誘発されて、抗原特異的CD4ヘルパーT細胞および/またはCD8細胞傷害性T細胞を活性化する。応答は、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、星状膠細胞、ミクログリア細胞、好酸球、または自然免疫の他の構成要素の活性化も含み得る。細胞媒介免疫応答の存在は、増殖アッセイ(CD4T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって決定することができる。免疫原の保護効果または治療効果に対する体液性応答および細胞性応答の相対的な寄与は、免疫された同系動物から抗体およびT細胞を別々に単離すること、および第2の対象において保護効果または治療効果を測定することによって区別することができる。
【0038】
アミロイドベータ(Aβ)
【0039】
Aβ(本明細書でベータアミロイドペプチドまたはAベータとも称される)ペプチドは、APPの38~43アミノ酸の約4kDaの内部断片(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43)である。Aβ40は、例えば、APPの残基672~711からなり、Aβ42は、APPの残基673~713からなる。in vivoまたはin situでの異なる分泌酵素によるAPPのタンパク質分解プロセシングの結果として、Aβは、40アミノ酸長の「短形態」および42~43アミノ酸長の範囲の「長形態」の両方で見出される。エピトープまたは抗原決定基は、本明細書に記載される場合、AβペプチドのN末端内に位置し、Aβのアミノ酸1~10内の残基、例えば、Aβ42の残基1~3、1~4、1~5、1~6、1~7または3~7由来の残基を含む。エピトープまたは抗原決定基の追加の例としては、Aβの残基2~4、2~5、2~6、2~7もしくは2~8、Aβの残基3~5、3~6、3~7、3~8もしくは3~9、またはAβ42の残基4~7、4~8、4~9もしくは4~10が挙げられる。エピトープまたは抗原決定基は、本明細書に記載される場合、Aβペプチドの中央領域中にも位置し、Aβのアミノ酸残基12~25内、残基12~24内、残基12~23内、残基12~22内、残基13~25内、残基13~24内、残基13~23内、残基13~22内、残基14~25内、残基14~24内、残基14~23内、残基14~22内、残基15~25内、残基15~24内、残基15~23内または残基15~22の残基を含む。例えば、Aβ42の残基12~17、12~18、12~19、12~20、12~21、13~17、13~18、13~19、13~20、13~21、13~22、14~17、14~18、14~19、14~20、14~21、14~22、14~23、15~17、15~18、15~19、15~20、15~21、15~22、15~23または15~24由来である。エピトープまたは抗原決定基の追加の例としては、Aβ42の残基16~18、16~19、16~20、16~21、16~22、16~23、16~24、16~25、17~19、17~20、17~21、17~22、17~23、17~24または17~25が挙げられる。エピトープまたは抗原決定基の他の例としては、Aβ42の残基18~20、18~21、18~22、18~23、18~24、18~25、19~21、19~22、19~23、19~24、19~25、20~22、20~23、20~24、20~25、21~23、21~24または21~25が挙げられる。Aβは、アルツハイマー病の特徴的な斑の主な構成要素である。Aβは、ベータセクレターゼおよびガンマセクレターゼと称される2つの酵素によるより大きなタンパク質のAPPのプロセシングによって生じる。アルツハイマー病に関連するAPPにおける公知の変異は、ベータセクレターゼもしくはガンマセクレターゼの部位に近接して、またはAβ内で起こる。APPの疎水性膜貫通ドメインの部分は、Aβのカルボキシ末端で見られ、特に長形態の場合において、斑に凝集するAβの能力の主な原因であり得る。脳におけるアミロイド斑の蓄積は、最終的に、ニューロン細胞死をもたらす。この種類の神経劣化に関連する身体症状は、アルツハイマー病を特徴付ける。
【0040】
ペプチド免疫原
【0041】
能動免疫のために使用される薬剤は、患者において免疫応答を誘導することができ、免疫療法としての機能を果たすことができる。能動免疫のために使用される薬剤は、例えば、実験動物においてモノクローナル抗体を生じさせるために使用される同じ種類の免疫原であり得、Aβペプチドの領域由来の3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個、またはそれよりも多くの連続アミノ酸を含んでいてもよい。
【0042】
本開示の一部の実施形態では、免疫原は、Aβ(配列番号01)のN末端配列の残基1~10由来の3~10アミノ酸を含むAβペプチドを含み得る。本開示の一部の実施形態では、免疫原は、Aβ(配列番号01)の残基12~25由来の3~10アミノ酸を含むAβペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ペプチドは、リン酸化されていない。一部の実施形態では、ペプチドは、セリン(S)、トレオニン(T)および/またはチロシン(Y)リン酸化部位でリン酸化されている。本明細書に記載したペプチドの実施形態のそれぞれにおいて、ペプチドは列挙された配列を含み得るか、それからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0043】
本開示の一部の実施形態では、Aβペプチド免疫原は、DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号01)の残基1~10または残基12~25由来の3~10アミノ酸を含み得る。例えば、Aβペプチドは、以下:
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
を含む。
【0044】
一部の実施形態では、Aβペプチドは、DAEFRHD(配列番号05)、AEFRHDS(配列番号12)またはEFRHDSG(配列番号18)である。それぞれのAβ配列は、必要に応じて、例えば、AEFRHDSGC(配列番号38)、DAEFRHDC(配列番号39)およびQKLVFFAEC(配列番号40)のようにC末端システインをさらに含む。これらの実施形態のそれぞれにおいて、ペプチドは、列挙された配列を含み、それからなり、またはそれから本質的になってよい。
【0045】
一部の実施形態では、配列番号1~配列番号96に記載されるAβペプチドは、N末端、C末端、またはその両方の末端に、アルギニン-アルギニンジペプチド(RR)をさらに含む。例えば、配列番号101(DAEFRHDRR)は、C末端に-RRジペプチドを有するDAEFRHD(配列番号05)から構成される。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書に記載される免疫原は、ポリペプチドのC末端部分またはN末端部分にリンカー(例えば、担体へのリンカー)をさらに含む。一部の実施形態では、リンカーは、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、AGAG(配列番号99)、GG、GGG、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)を含むアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、C末端システインをさらに含み、リンカーを含む一部の実施形態は、リンカーのC末端にC末端システインをさらに含む。一部の実施形態では、ペプチドは、N末端システインをさらに含み、リンカーを含む一部の実施形態は、リンカーのN末端にN末端システインをさらに含む。一部の実施形態では、免疫原ペプチドは、N末端にブロックされたアミンをさらに含む。
【0047】
一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くのAβペプチドは、連結されて、Aβポリペプチドを形成する。1つまたは複数のAβペプチドは、ペプチド内リンカーによって連結され得、このリンカーは、上記および本明細書に記載される通りである。例えば、ポリペプチドリンカーは、第1のペプチドのC末端と第2のペプチドのN末端との間に位置している。ペプチド内リンカーありまたはなしで、Aβポリペプチドは、任意の順序で配置され得る。例えば、特定のAβペプチド(「Aβ1」)は、デュアルAβポリペプチドのN末端部分に配置されてもよく、同じまたは異なるAβペプチド(この例について、異なるAβの「Aβ2」)は、デュアルポリペプチドのC末端部分に配置されてもよい。または、この例におけるAβペプチドは、逆の方向で配置され得る(Aβ1に対してN末端にAβ2)。本明細書での第1のペプチドまたは第2のペプチドへの言及は、免疫原の2つ以上のAβペプチドを含む実施形態におけるAβペプチドの順序を示唆することを意図するものではない。
【0048】
加えて、AβペプチドまたはAβポリペプチドのN末端またはC末端部分のいずれかは、ペプチドまたはポリペプチドを担体にコンジュゲートするためのリンカーを含むことができ、このリンカーは、上記および本明細書に記載される通りである。一部の実施形態では、リンカーを含むAβペプチドまたはポリペプチドは、リンカーのC末端またはN末端にC末端システインをさらに含む。一部の実施形態では、免疫原ペプチドは、N末端にブロックされたアミンをさらに含む。一部の実施形態では、AβペプチドまたはAβポリペプチドのいずれかは、リンカーなしでC末端システインを含んでいてもよい。
【0049】
Aβペプチドが連結されて、Aβポリペプチドを形成する場合、リンカーは、切断可能リンカーであってもよい。本明細書で使用される場合、「切断可能リンカー」という用語は、切断によって(例えば、エンドペプチダーゼ、プロテアーゼ、低pH、または抗原提示細胞内もしくはその周囲で起こり得る任意の他の手段によって)、Aβポリペプチドを、互いから分離するのを促進するか、またはそうでなければ互いからの分離に対して感受性をより強くし、それによって、そのような切断可能リンカーを欠く同等のペプチドよりも抗原提示細胞によってプロセシングされる、抗原ペプチド間の任意のリンカーを指す。一部の実施形態では、切断可能リンカーは、プロテアーゼ感受性のジペプチドまたはオリゴペプチド切断可能リンカーである。ある特定の実施形態では、切断可能リンカーは、プロテアーゼのトリプシンファミリーのプロテアーゼによる切断に対して感受性がある。一部の実施形態では、切断可能リンカーは、アルギニン-アルギニン(Arg-Arg)、アルギニン-アルギニン-バリン-アルギニン(Arg-Val-Arg-Arg;配列番号97)、Gly-Ala-Gly-Ala(配列番号98)、Ala-Gly-Ala-Gly(配列番号99)、Lys-Gly-Lys-Gly(配列番号100)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、バリン-アルギニン(Val-Arg)、バリン-リシン(Val-Lys)、バリン-アラニン(Val-Ala)およびフェニルアラニン-リシン(Phe-Lys)を含むアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、切断可能リンカーは、アルギニン-アルギニン(Arg-Arg)である。
【0050】
一部の実施形態では、リンカーは、約1~10アミノ酸、約1~9アミノ酸、約1~8アミノ酸、約1~7アミノ酸、約1~6アミノ酸、約1~5アミノ酸、約1~4アミノ酸、約1~3アミノ酸、約2アミノ酸または1アミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーは、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸または10アミノ酸である。
【0051】
一部の実施形態では、リンカーのアミノ酸組成は、天然のマルチドメインタンパク質において見出されるリンカーの組成を模倣することができ、ここで、ある特定のアミノ酸は、全タンパク質におけるそれらの存在量と比較して、天然リンカーにおいて大きな比率を占めるか、低い比率を占めるか、または同等である。例えば、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アスパラギン酸(Asp)、リシン(Lys)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、アルギニン(Arg)、フェニルアラニン(Phe)、グルタミン酸(Glu)およびアラニン(Ala)は、天然リンカーにおいて大きな比率を占める。対照的に、イソロイシン(Ile)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)およびシステイン(Cys)は、低い比率を占める。一般に、大きな比率を占めるアミノ酸は、極性の非荷電または荷電残基であり、これは、天然にコードされるアミノ酸の約50%を占め、Pro、ThrおよびGlnは、天然リンカーのために最も好ましいアミノ酸であった。例えば、Chen, X. et al., "Fusion Protein Linkers: Property, Design and Functionality" Adv Drug Deliv Rev., 15; 65(10): 1357-1369 (2013)を参照されたい。
【0052】
一部の実施形態では、リンカーのアミノ酸組成は、組換えタンパク質において一般に見出されるリンカーの組成を模倣することができ、これは、一般に、可撓性リンカーまたは剛性リンカーとして分類され得る。例えば、組換えタンパク質において見出される可撓性リンカーは、一般に、小型の非極性(例えば、Gly)または極性(例えば、SerまたはThr)アミノ酸から構成され、その小さなサイズが、可撓性を提供し、機能性ドメインを接続する可動性を可能にする。例えば、SerまたはThrの組み込みは、水分子と水素結合を形成することによって、水溶液中でリンカーの安定性を維持することができ、したがって、リンカーと免疫原との間の相互作用を低減することができる。一部の実施形態では、リンカーは、GlyおよびSer残基のストレッチを含む(「GS」リンカー)。広く使用される可撓性リンカーの例は、(Gly-Gly-Ser)n、(Gly-Gly-Gly-Ser)nまたは(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nであり、ここで、n=1~3である。コピー数「n」を調整することで、機能性免疫原ドメインの十分な分離を達成するようにリンカーを最適化して、例えば、免疫原性応答を最大化することができる。多くの他の可撓性リンカーが、本明細書で使用され得る組換え融合タンパク質のために設計されている。一部の実施形態では、リンカーは、GlyおよびSerなどの小型または極性アミノ酸がリッチであり得るが、ThrおよびAlaなどのさらなるアミノ酸も含有して、可撓性を維持するだけでなく、LysおよびGluなどの極性アミノ酸は、溶解性を改善する。例えば、Chen, X. et al., Adv Drug Deliv Rev., 15; 65(10): 1357-1369 (2013)を参照されたい。
【0053】
本開示の一部の実施形態では、Aβポリペプチドは、DAEFRHD(配列番号05)、DAEFRHDRR(配列番号101)、EFRHDSG(配列番号18)、AEFRHDS(配列番号12)またはQKLVFFAE(配列番号61)から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、ここで、XXは、必要に応じて配列番号05、101、12もしくは18のC末端に付け加えられ、システインは、必要に応じて配列番号05、101、12もしくは18のC末端に付け加えられるか、またはXXが存在する場合、XXのC末端に付け加えられる。XXは、同じまたは異なるアミノ酸であり得、一部の実施形態では、AA、AAA、KK、KKK、SS、SSS、GGおよびGGGである。加えて、XXは、AGAG(配列番号99)、GAGA(配列番号98)およびKGKG(配列番号100)を表していてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、デュアルAβポリペプチドは、N末端からC末端に、以下の通りである:
[第1のペプチド]-[リンカー1]-[第2のペプチド]-[リンカー2]-[Cys]、または
[Cys]-[リンカー1]-[第1のペプチド]-[リンカー2]-[第2のペプチド]
(ここで、第1のペプチドはAβペプチドであり、第2のペプチドは同じまたは異なるAβペプチドであり、リンカー1、リンカー2および[Cys]のそれぞれは、必要に応じて存在する)。一部の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドの両方は、配列番号01の残基1~10由来であり、同じまたは異なっていてもよい。一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドの両方は、配列番号01の残基12~25由来であり、同じまたは異なっていてもよい。一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのいずれかは、配列番号01の残基1~10由来であり、他のペプチドは、配列番号01の残基12~25由来である。一部の実施形態では、リンカー1およびリンカー2は、同じまたは異なっていてもよい。
【0055】
一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのうちの少なくとも1つは、配列番号02~配列番号39から選択され、一部の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドの両方は、配列番号02~配列番号39から選択される。一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのうちの少なくとも1つは、配列番号40~配列番号96から選択され、一部の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドの両方は、配列番号40~配列番号96から選択される。一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのいずれかは、配列番号02~配列番号39および配列番号101から選択され、他のペプチドは、配列番号40~配列番号96および配列番号101から選択される。一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのいずれかは、それぞれ、N末端またはC末端にRR-または-RRをさらに含む、配列番号02~配列番号96に記載のペプチドを含む。一部の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドの両方は、それぞれ、N末端またはC末端にRR-または-RRジペプチドをさらに含む、配列番号02~配列番号96に記載のペプチドを含む。一部の実施形態では、-RRジペプチドは、C末端にある。
【0056】
一部の実施形態では、第1のペプチドまたは第2のペプチドのそれぞれは、それぞれ、N末端またはC末端にRR-または-RRをさらに含む、配列番号01の残基1~10、または配列番号01の残基12~25、または配列番号02~配列番号96のうちの1つ、または配列番号101、または配列番号02~配列番号96に記載のペプチドを含む。
【0057】
Aβペプチドの非限定的な例としては、配列番号02~配列番号96が挙げられ、同様に、配列は、C末端システインまたはC末端-RRジペプチド、例えば、配列番号101をさらに含む。
【0058】
ペプチド-担体免疫原
【0059】
Aβペプチド(およびそのポリペプチド)は、本開示に従って、免疫原である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドは、好適な担体に連結されて、免疫応答の誘発を助けることができる。したがって、本開示の1つまたは複数のペプチドおよびポリペプチドは、担体に連結することができる。例えば、Aβペプチドは、上記および本明細書に記載されるリンカーありまたはなしで、担体に、ならびに必要に応じて、リンカーのC末端のC末端システインに、およびリンカーが存在しない場合、ペプチドのC末端に、連結されていてもよい。例えば、それぞれのAβペプチドまたはポリペプチドは、スペーサーアミノ酸(例えば、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly、Ala-Ala、Ala-Ala-Ala、Lys-Lys、Lys-Lys-Lys、Ser-Ser、Ser-Ser-Ser、Gly-Ala-Gly-Ala(配列番号98)、Ala-Gly-Ala-Gly(配列番号99)またはLys-Gly-Lys-Gly(配列番号100))ありまたはなしで、担体に、および必要に応じて、C末端システインまたはN末端システインに連結されて、ペプチドと担体との間にリンカーを提供してもよい。
【0060】
好適な担体としては、限定されるものではないが、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、または他の病原性細菌、例えば、ジフテリア(例えば、CRM197)、E.coli、コレラもしくはH.pylori由来のトキソイド、あるいは弱毒化毒素誘導体が挙げられる。T細胞エピトープも好適な担体分子である。一部のコンジュゲートは、本発明のペプチド免疫原を免疫刺激ポリマー分子(例えば、トリパルミトイル-S-グリセリンシステイン(Pam3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)またはグルカン(β1-2ポリマー))、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-1アルファおよびβペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)およびケモカイン(例えば、MIP1-αおよびβ、ならびにRANTES)に連結することによって、形成することができる。さらなる担体としては、ウイルス様粒子が挙げられる。一部の組成物では、免疫原性ペプチドも、化学架橋によって担体に連結することができる。免疫原を担体に連結するための技法としては、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を使用するジスルフィド連結の形成が挙げられる(ペプチドがスルフヒドリル基を欠く場合、これは、システイン残基の付加によって提供され得る)。これらの試薬は、それら自身とあるタンパク質上のペプチドシステイン残基との間にジスルフィド連結、およびリシン上のイプシロン-アミノまたは他のアミノ酸中の他の遊離アミノ基を通したアミド連結を作り出す。一部の実施形態では、化学架橋は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルおよびブロモアセチル反応性基を介したアミンからスルフヒドリルへのコンジュゲーションのための短い(6.2オングストローム)の架橋剤であるSBAP(スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート)の使用を含むことができる。各種のそのようなジスルフィド/アミド形成剤は、Jansen et al., "Immunotoxins: Hybrid Molecules Combining High Specificity and Potent Cytotoxicity" Immunological Reviews 62:185-216 (February 1982)によって記載されている。他の二官能性カップリング剤は、ジスルフィド連結よりもむしろチオエーテルを形成する。多くのこれらのチオ-エーテル形成剤は、市販されており、6-マレイミドカプロン酸、2-ブロモ酢酸および2-ヨード酢酸、4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸の反応性エステルが挙げられる。カルボキシル基は、それらをスクシンイミドまたは1-ヒドロキシル-2-ニトロ-4-スルホン酸、ナトリウム塩と混合することによって活性化することができる。シュードビリオンまたはウイルス由来粒子とも呼ばれるウイルス様粒子(VLP)は、in vivoで定義された球対称のVLPに自己組織化できるウイルスのカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質の複数のコピーから構成されるサブユニット構造を表す(Powilleit, et al., (2007) PLoS ONE 2(5):e415)。あるいは、ペプチド免疫原は、MHCクラスII分子の大部分に結合することができる少なくとも1つの人工T細胞エピトープ、例えば、汎DRエピトープ(「PADRE」)に連結することができる。汎DR結合ペプチド(PADRE)は、US5,736,142号、WO95/07707号およびAlexander, et al, Immunity, 1:751-761 (1994)に記載されている。
【0061】
能動免疫原は、免疫原の複数のコピーが単一の共有結合性分子として担体上に存在する多量体形態で存在し得る。一部の実施形態では、担体は、さまざまな形態のAβペプチドを含む。例えば、免疫原のAβペプチドは、異なるAβ抗原を異なる順序で有するペプチドを含むことができ、またはペプチド内リンカーおよび/または担体へのリンカーありまたはなしで存在していてもよい。
【0062】
一部の組成物では、免疫原性ペプチドはまた、担体との融合タンパク質として発現され得る。ある特定の組成物では、免疫原性ペプチドは、担体と、アミノ末端、カルボキシル末端または内部で連結することができる。一部の組成物では、担体は、CRM197である。一部の組成物では、担体は、ジフテリアトキソイドである。
【0063】
核酸
【0064】
本開示は、本明細書に開示されるアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドのいずれかをコードする核酸をさらに提供する。本明細書に開示される核酸免疫療法組成物は、本明細書に開示される1つまたは複数のアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドをコードする核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。例えば、Aβペプチドは、3~10アミノ酸残基長であって、配列番号01の最初の10個のN末端残基由来または配列番号01の残基12~25由来である配列を含む。したがって、非限定的な例として、配列番号2~96および101のいずれかをコードする1つまたは複数の核酸は、本開示の免疫原および医薬組成物の構成要素を提供する。同じく、1つまたは複数の核酸は、RR-N末端または-RR C末端のジペプチドを有する配列番号2~96のいずれかをコードしてもよい。ある特定の実施形態では、ペプチド配列は、本明細書に記載される担体へのリンカーおよびNまたはC末端システインもコードし得る同じまたは別々の核酸配列によってコードされてもよい。加えて、単一の核酸配列が2つ以上のAβペプチドをコードする場合、配列は、本明細書に記載されるリンカーまたは切断可能リンカーもコードしてもよい。
【0065】
免疫原をコードし、ワクチンとして使用されるDNAなどの核酸は、コードされたポリペプチドがDNAの投与後にin vivoで発現されるので、「DNA免疫原」または「DNAワクチン」と称され得る。DNAワクチンは、目的のタンパク質をコードするDNAをベクター(プラスミドまたはウイルス)に組み込むこと、ベクターを対象に投与すること、およびベクターが投与されて、対象の免疫系が刺激される対象において目的のタンパク質を発現させることによって、それらが対象においてコードする目的のタンパク質に対する抗体を誘導することが意図される。DNAワクチンは、投与後長期間にわたり対象の身体中に残り、コードされたタンパク質をゆっくりと産生し続ける。このようにして、過剰の免疫応答を回避することができる。DNAワクチンは、遺伝子操作技法を使用して改変することもできる。必要に応じて、そのような核酸は、シグナルペプチドをさらにコードし、ペプチドに連結されたシグナルペプチドとともに発現され得る。核酸のコード配列は、調節配列と作動可能に連結されて、コード配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナルなどの発現を確実にすることができる。Aβをコードする核酸は、単離された形態で生じ得るか、または1つもしくは複数のベクターにクローニングされ得る。核酸は、例えば、固体状態の合成または重複するオリゴヌクレオチドのPCRによって合成することができる。リンカーおよび/または切断可能リンカーありおよびなし、ならびにタンパク質系担体ありまたはなしのAβペプチドまたはAβポリペプチドをコードする核酸は、例えば発現ベクター内で、1つの連続核酸として接続され得る。
【0066】
DNAは、RNAよりも安定であるが、いくつかの潜在的な安全性のリスク、例えば、抗DNA抗体の誘導を含み、したがって、一部の実施形態では、核酸は、RNAであり得る。免疫原をコードし、ワクチンとして使用されるRNA核酸は、コードされたポリペプチドがRNAの投与後にin vivoで発現されるので、「RNA免疫原」または「RNAワクチン」または「mRNAワクチン」と称され得る。リボ核酸(RNA)ワクチンは、対象の細胞機構を安全に誘導して、目的の1つまたは複数のポリペプチドを産生することができる。一部の実施形態では、RNAワクチンは、非複製性mRNA(メッセンジャーRNA)またはウイルス由来の自己増幅性RNAであり得る。mRNA系ワクチンは、目的の抗原をコードし、5’および3’非翻訳領域(UTR)を含有するが、自己増幅性RNAは、抗原だけでなく、細胞内RNA増幅および豊富なタンパク質発現を可能にするウイルス複製機構もコードする。in vitro転写されたmRNAは、T7、T3またはSp6ファージRNAポリメラーゼを使用して、線状DNA鋳型から産生され得る。得られる産物は、5’-および3’-UTR配列、5’キャップならびにポリ(A)テールに隣接する本明細書に開示される目的のペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含有し得る。一部の実施形態では、RNAワクチンは、トランス増幅性RNA(例えば、Beissert et al., Molecular Therapy January 2020 28(1):119-128を参照されたい)を含むことができる。ある特定の実施形態では、RNAワクチンは、本明細書に開示されるAβペプチドおよびタウペプチドをコードし、特に未成熟抗原提示細胞などの細胞に移入される場合、Aβおよびタウペプチドを発現することができる。RNAはまた、免疫刺激エレメントなどの他のポリペプチド配列をコードする配列を含有していてもよい。一部の実施形態では、RNAワクチンのRNAは、改変されたRNAであり得る。RNAの文脈における「改変された」という用語は、RNA中に天然に存在しないRNAの任意の改変を含むことができる。例えば、改変されたRNAは、5’-キャップを有するRNAを指し得るが、しかしながら、RNAは、さらなる改変を含んでいてもよい。5’-キャップは、それらに結合した場合にRNAを安定化する能力を持つように改変することができる。ある特定の実施形態では、さらなる改変は、天然に存在するポリ(A)テールの伸長もしくは切断、または5’-または3’-非翻訳領域(UTR)の変更であってもよい。一部の実施形態では、RNA、例えばまたはmRNAワクチンは、対象において抗原特異的免疫応答を生じるように、有効量で製剤化される。例えば、RNAワクチン製剤は、Aβおよびタウ抗原に対する対象の体液性免疫系および/または細胞性免疫系を刺激するために、対象に投与され、したがって、1種または複数のアジュバント、希釈剤、担体および/または賦形剤をさらに含んでいてもよく、Aβおよびタウ抗原に対する保護的なおよび/または治療的な免疫反応を誘発するために、任意の好適な経路で対象に適用される。
【0067】
そのすべてが参照により本明細書に組み込まれる分子生物学の一般方法を開示する基本テキストとしては、Sambrook, J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;Ausubel, F M et al. Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, Wiley-Interscience, New York(現行版);Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);Glover, D M, ed, DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II, IRL Press, 1985;Albers, B. et al., Molecular Biology of the Cell, 2nd Ed., Garland Publishing, Inc., New York, N.Y. (1989);Watson, J D et al., Recombinant DNA, 2nd Ed., Scientific American Books, New York, 1992;およびOld, R W et al., Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering, 2nd Ed., University of California Press, Berkeley, Calif. (1981)が挙げられる。
【0068】
例えば、配列における変異の発生、サブクローニング、プローブの標識、シークエンシング、ハイブリダイゼーションなどのような核酸の操作のための技法は、科学文献および特許文献に十分に記載されている。例えば、Sambrook, ed., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997);LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY: HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES, Part I. Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照されたい。
【0069】
核酸、ベクター、カプシド、ポリペプチドなどは、当業者に周知のいくつかの一般手段のいずれかによって分析および定量することができる。これらとしては、例えば、NMR、分光光度法、X線撮影、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)および超拡散クロマトグラフィー、さまざまな免疫学的方法、例えば、流体またはゲル沈降素反応、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、サザン解析、ノーザン解析、ドットブロット解析、ゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、RT-PCR、定量的PCR、他の核酸または標的またはシグナル増幅法、放射性標識、シンチレーション計数、ならびにアフィニティークロマトグラフィーなどの分析生化学法が挙げられる。
【0070】
医薬組成物
【0071】
本明細書に記載されるペプチドおよび免疫原のそれぞれは、薬学的に許容されるアジュバントおよび薬学的に許容される賦形剤とともに投与される医薬組成物中に存在し得る。アジュバントは、ペプチドが単独で使用された場合の状況と比べて、誘導される抗体の力価および/または誘導される抗体の結合親和性を増加させる。各種のアジュバントを、本開示の免疫原と組み合わせて使用して、免疫応答を誘発することができる。いくつかのアジュバントは、応答の質的形態に影響を及ぼす免疫原のコンフォメーション変化を引き起こすことなく、免疫原に対する内因性応答を増大させる。アジュバントは、天然化合物、天然化合物の改変バージョンもしくは誘導体、または合成化合物であってもよい。
【0072】
いくつかのアジュバントとしては、アルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL(商標))(GB2220211号(RIBI ImmunoChem Research Inc.、Hamilton、Montana、現在はCorixaの一部)を参照されたい)が挙げられる。本明細書で使用される場合、MPLは、MPLの天然バージョンおよび合成バージョンを指す。合成バージョンの例としては、PHAD(登録商標)、3D-PHAD(登録商標)および3D(6A)-PHAD(登録商標)(Avanti Polar Lipids(Croda)、Alabaster、Alabama)が挙げられる。
【0073】
QS-21は、南米で見出されたQuillaja Saponaria Molina樹の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドまたはサポニンである(Kensil et al., in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach (eds. Powell & Newman, Plenum Press, NY, 1995)を参照されたい)。QS-21製品としては、Stimulon(登録商標)(Antigenics,Inc.、New York、NY;現在はAgenus,Inc.Lexington、MA)およびQS-21ワクチンアジュバント(Desert King、San Diego、CA)が挙げられる。QS-21は、US5,057,540号およびUS8,034,348号において、開示され、特徴付けられ、評価されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、QS-21は、さまざまな投薬量で多数の臨床研究において評価されている。NCT00960531(clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT00960531)、Huell et al., Curr Alzheimer Res. 2017 Jul; 14(7): 696-708(ワクチンACC-001のさまざまな用量とともに50mcgのQS-21を評価);Gilman S, et al., "Clinical effects of Abeta immunization (AN1792) in patients with AD in an interrupted trial" Neurology. 2005 May 10; 64(9):1553-62;Wald A, et al., Safety and immunogenicity of long HSV-2 peptides complexed with rhHsc70 in HSV-2 seropositive persons Vaccine 2011 3;29(47):8520-8529;およびCunningham et al., Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older. NEJM. 2016 Sep 15;375(11):1019-32を参照されたい。QS-21は、SHINGRIXを含むFDAで承認されたワクチンにおいて使用されている。SHINGRIXは、50mcgのQS-21を含有する。ある特定の実施形態では、QS-21の量は、約10μg~約500μgである。
【0074】
TQL1055は、QS-21のアナログ(Adjuvance Technologies、Lincoln、NE)である。半合成TQL1055は、QS-21との比較において、高純度、増加した安定性、減少した局所耐容性、減少した全身耐容性を有するとして特徴付けられている。TQL1055は、US20180327436A1号、WO2018191598A1号、WO2018200656A1号およびWO2019079160A1号において、開示され、特徴付けられ、評価されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。US20180327436A1号は、20μgのQS-21よりも2.5倍超TQ1055が優れていたが、50μgのTQ1055に対する改善はなかったことを教示している。しかしながら、QS-21とは異なって、TQL1055用量の増加につれて、体重減少またはRBCの溶血のいずれかの増加はなかった。WO2018200656A1号は、TQ1055の最適量で、抗原の量を低下させ、優れた力価を達成することができることを教示している。ある特定の実施形態では、TQL1055の量は、約10μg~約500μgである。
【0075】
他のアジュバントは、必要に応じてモノホスホリルリピドA(Stoute et al., N. Engl. J. Med. 336, 86-91 (1997)を参照されたい)、プルロニック(登録商標)ポリマーおよび殺滅マイコバクテリアなどの免疫刺激剤と組み合わされた、水中油型エマルジョン(スクアレンまたはピーナッツ油など)である。Ribiアジュバントは、水中油型エマルジョンである。Ribiは、Tween(登録商標) 80を含有する食塩水と乳化された代謝可能油(スクアレン)を含有する。Ribiは、免疫刺激剤として作用する精製マイコバクテリア産物および細菌モノホスホリルリピドAも含有する。他のアジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド(WO98/40100号を参照されたい)、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-1アルファおよびβペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)、ケモカイン(例えば、MIP1-αおよびβ、ならびにRANTES)、サポニン、RNA、ならびに/またはTLRアゴニスト(例えば、MPLおよび合成MPL分子などのTLR4アゴニスト)、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、および他のTLRアゴニストであり得る。アジュバントは、活性薬剤との治療用組成物の構成要素として投与することができ、または治療剤の投与の前に、それとともに、もしくはその後に、別々に投与することができる。
【0076】
本開示のさまざまな実施形態では、アジュバントは、QS-21(Stimulon(商標))である。一部の組成物では、アジュバントは、MPLである。ある特定の実施形態では、MPLの量は、約10μg~約500μgである。一部の組成物では、アジュバントは、TQL1055である。ある特定の実施形態では、TQL1055の量は、約10μg~約500μgである。一部の組成物では、アジュバントは、QS21である。ある特定の実施形態では、QS21の量は、約10μg~約500μgである。一部の組成物では、アジュバントは、MPLおよびQS-21の組合せである。一部の組成物では、アジュバントは、MPLおよびTQL1055の組合せである。一部の組成物では、アジュバントは、リポソーム製剤にすることができる。
【0077】
加えて、本開示の一部の実施形態は、多重抗原提示システム(MAP)を含むことができる。多重抗原提示ペプチドワクチンシステムは、従来のワクチン(すなわち、生-弱毒化病原体、殺滅病原体、または不活性化病原体)、担体タンパク質および細胞傷害性アジュバントに関連する有害効果を回避するために開発された。2つの主要なアプローチを使用して、多重抗原提示ペプチドワクチンシステムが開発された:(1)機能性構成要素、例えば、T細胞エピトープ、細胞透過性ペプチドおよび親油性部分の付加;ならびに(2)サイズ規定ナノ材料、例えば、自己組織化ペプチド、非ペプチド性デンドリマーおよび金ナノ粒子を、抗原提示プラットフォームとして使用する合成アプローチ。多重抗原ペプチド(MAP)システムの使用は、サブユニットペプチドワクチンの、ときには不十分な免疫原性を改善することができる。MAPシステムでは、抗原ペプチドの複数のコピーは、非免疫原性Lys系樹状足場のa-およびε-アミノ基に同時に結合し、分解からの安定性を付与するのを助け、このようにして、小型抗原ペプチド単独と比較して、免疫細胞による分子認識およびより強い免疫応答の誘導を増強する。一部の組成物では、MAPは、Lys系樹状足場、ヘルパーT細胞エピトープ、免疫刺激性親油性部分、細胞透過性ペプチド、ラジカル誘導重合、抗原提示プラットフォームとしての自己組織化ナノ粒子、および金ナノ粒子のうちの1つまたは複数を含む。
【0078】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは無菌で、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投薬量)で提供することができる。医薬組成物は、1種または複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は、選択された投与の経路に依存する。注射のために、本開示のペプチドは、水溶液で、好ましくは、(注射の部位での不快感を低減するために)ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水もしくは酢酸緩衝液などの生理的に適合性の緩衝液中で製剤化することができる。溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、ペプチド組成物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリーの水で構成するための凍結乾燥形態であり得る。
【0079】
ペプチド(および必要に応じて、ペプチド(複数可)に融合された担体)は、ペプチド(複数可)をコードする核酸の形態で投与し、対象においてin situで発現させることもできる。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には、調節エレメント、例えば、対象の意図される標的細胞においてDNAセグメントの発現を可能にするプロモーターおよびエンハンサーに連結される。血液細胞における発現のために、免疫応答の誘導のために所望されるように、例えば、軽鎖または重鎖免疫グロブリン遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーエレメント、またはCMV主要中間初期プロモーターおよびエンハンサーが、発現を方向付けるために好適である。連結された調節エレメントおよびコード配列は、多くの場合、ベクターにクローニングされる。
【0080】
DNAおよびRNAは、ネイキッド形態で(すなわち、コロイド状材料または封入材料なしで)送達することができる。あるいは、レトロウイルス系(例えば、Boris-Lawrie and Teumin, Cur. Opin. Genet. Develop. 3, 102-109 (1993)を参照されたい);アデノウイルスベクター(例えば、Bett et al, J. Virol. 67(10), 591 1 (1993)を参照されたい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Zhou et al., J. Exp. Med. 179, 1867 (1994)を参照されたい);ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルスを含むポックスファミリー由来のウイルスベクター、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルスに由来するものなどのアルファウイルス属由来のウイルスベクター(例えば、Dubensky et al., J. Virol. 70, 508-519 (1996)を参照されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(US5,643,576号を参照されたい)、および水疱性口内炎ウイルス(WO96/34625号を参照されたい)などのラブドウイルス、ならびにパピローマウイルス(Ohe et al., Human Gene Therapy 6, 325-333 (1995);Wooら、WO94/12629号およびXiao & Brandsma, Nucleic Acids. Res. 24, 2620-2622 (1996))を含むいくつかのウイルスベクター系を使用することができる。
【0081】
免疫原をコードするDNAおよびRNA、またはそれを含有するベクターは、リポソーム、ナノ粒子またはリポタンパク質複合体にパッケージングすることができる。他の好適なポリマーとしては、例えば、プロタミンリポソーム、多糖粒子、カチオン性ナノエマルジョン、カチオン性ポリマー、カチオン性ポリマーリポソーム、カチオン性脂質ナノ粒子、カチオン性脂質、コレステロールナノ粒子、カチオン性脂質-コレステロール、PEGナノ粒子またはデンドリマーナノ粒子が挙げられる。さらなる好適な脂質および関連アナログは、US5,208,036号、US5,264,618号、US5,279,833号およびUS5,283,185号によって記載されており、これらのそれぞれは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。免疫原をコードするベクターおよびDNAは、微粒子担体に吸着または会合させることもでき、その例としては、ポリメチルメタクリレートポリマー、ならびにポリラクチドおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)(例えば、McGee et al., J. Micro Encap. 1997; 14(2):197-210を参照されたい)が挙げられる。
【0082】
薬学的に許容される担体組成物としては、限定されるものではないが、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ペトロラタム、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、および医薬添加剤として許容される界面活性剤を含む添加剤を含むことができる。
【0083】
処置に適する対象
【0084】
Aβ斑の存在は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知機能障害、脳アミロイド血管症、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン-ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒病、グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソニズム認知症複合体、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症、アルツハイマー病のレビー小体バリアント(LBVAD)、慢性外傷性脳症(CTE)、パーキンソン病、進行性核上麻痺(PSP)、萎縮型加齢黄斑変性(AMD)、および封入体筋炎を含むいくつかの疾患において見出されている。
【0085】
本開示の組成物および方法は、これらの疾患のいずれかの処置または予防において使用することができる。神経疾患とAβとの間の広範囲の関連のために、本開示の組成物および方法は、神経疾患なしの個体における平均値と比較して、(例えば、CSFにおける)Aβの上昇したレベルを示す任意の対象の処置または予防において使用することができる。本開示の組成物および方法は、神経疾患に関連するAβに変異を有する個体における神経疾患の処置または予防において使用することもできる。方法は、アルツハイマー病の処置または予防に特に好適である。
【0086】
処置に適する対象としては、疾患のリスクがあるが、症状を示していない個体、および現在症状を示している患者が挙げられ、疾患に対して以前に処置されていない処置ナイーブ対象を含む。疾患のリスクがある対象としては、高齢集団における対象、Aβ病理を有し、疾患の公知の遺伝的リスクを有する無症候性対象が挙げられる。そのような個体としては、この疾患を経験している親族を有する個体、およびそのリスクが遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーの解析によって決定されている個体が挙げられる。リスクの遺伝子マーカーとしては、Aβにおける変異、ならびに神経疾患に関連する他の遺伝子における変異が挙げられる。例えば、ヘテロ接合型のApoE4対立遺伝子、ましてやホモ接合型のApoE4対立遺伝子は、アルツハイマー病(AD)のリスクに関連する。アルツハイマー病のリスクの他のマーカーとしては、APP遺伝子における変異、特に、717位における変異、ならびにハーディ変異およびスウェーデン変異とそれぞれ称される670位および671位での変異、プレセニリン遺伝子PS1およびPS2における変異、AD、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症の家族歴が挙げられる。現在アルツハイマー病を患っている個体は、特徴的な認知症、および上記のリスク因子の存在から、PETイメージングによって認識することができる。加えて、いくつかの診断検査が、ADを有する個体を特定するために利用可能である。これらとしては、CSFもしくは血液のΑβ42レベルの測定が挙げられる。減少したΑβ42レベルだけでなく、上昇したAβ40および低減されたAβ42/Aβ40比は、ADの存在を示す。いくつかの変異、例えば、Ala30ProもしくはAla53Thr、またはロイシンリッチリピートキナーゼなどのパーキンソン病に関連する他の遺伝子(LRRK2またはPARK8)における変異は、パーキンソン病に関連する。対象はまた、DSM IV TRの基準によって、上記に言及された神経疾患のいずれかと診断され得る。
【0087】
無症候性対象では、処置は、任意の年齢(例えば、10、20、30、またはそれよりも上)で開始することができる。しかしながら、通常、対象が20、30、40、50、60、70、80または90歳に達するまで、処置を開始する必要はない。処置は、典型的には、一定の期間にわたって、複数回投薬を必要とする。処置は、経時的に抗体レベルをアッセイすることによってモニターすることができる。応答が低下すると、ブースター投薬が指示される。潜在的なダウン症候群患者の場合では、処置は、母親に治療剤を投与することによって出生前に、または出生直後に開始することができる。
【0088】
処置および使用の方法
【0089】
本開示は、アルツハイマー病を有するか、またはそれを発生するリスクがある対象におけるAβの凝集を阻害または低減する方法を提供する。方法は、本明細書に開示される組成物を対象に投与することを含む。治療有効量は、有効な期間に与えられる場合に、所望の免疫学的効果または臨床効果を達成する投薬量である。投薬量レジメンは、最適な治療応答を提供するために調整されてもよい。例えば、いくつかの分割用量が、設定された間隔で(例えば、毎週、毎月)投与されてもよく、または用量は、治療状況の緊急性によって示される通りに比例的に低減されてもよい。
【0090】
本明細書に記載される組成物(医薬組成物)は、アルツハイマー病を処置するまたはその予防および/もしくは防止をもたらすための方法において使用することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、対象におけるおよび/または対象の組織におけるAβを低減するための組成物を提供する。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、対象の脳におけるAβを低減するための組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物によって低減されるAβは、Aβ(例えば、β-アミロイドペプチド(Aβ)の細胞外の斑の沈着、神経突起性アミロイド斑)の病理学的形態である。さらに他の実施形態では、神経変性疾患および/またはβ-アミロイドパチーの病理学的指標は、免疫療法組成物によって減少される。
【0091】
予防的適用では、本明細書に記載される組成物は、疾患(例えば、アルツハイマー病)に罹患しやすいか、またはそうでなければそのリスクがある対象に、疾患のリスクを低減する、疾患の重症度を下げる、または疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症状の開始を遅延させるのに有効なレジメン(投与の用量、頻度および経路)で投与することができる。特に、レジメンは、Aβ斑形成を阻害もしくは遅延させる、ならびに/またはその毒性作用を阻害もしくは遅延させる、ならびに/または行動の欠陥の発生を阻害もしくは遅延させるのに有効である。治療的適用では、本明細書に記載される組成物は、疾患(例えば、アルツハイマー病)の疑いがある対象、または疾患を既に患っている患者に、疾患の少なくとも1つの徴候または症状を改善する、またはそのさらなる悪化を少なくとも阻害するのに有効なレジメン(投与の用量、頻度および経路)で投与される。特に、レジメンは、好ましくは、毒性および/あるいは行動の欠陥に関連するAβ斑のレベルのさらなる増加を低減または少なくとも阻害するのに有効である。
【0092】
処置された個体が、本発明の方法によって処置されていない同等の対象の対照集団における平均転帰よりも好ましい転帰を達成する場合に、あるいはより良好な転帰が、比較臨床試験(例えば、フェーズII、フェーズII/IIIまたはフェーズIII試験)において、対照対象に対する処置された対象においてp<0.05もしくは0.01、またはさらに0.001のレベルで実証される場合に、レジメンは、治療的または予防的に有効と考えられる。
【0093】
多くの異なる要因、例えば、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がApoEキャリアであるかどうか、患者がヒトまたは動物であるかどうか、投与される他の薬、および処置が予防的または治療的であるかどうかに応じて、有効用量は変わる。
【0094】
一部の実施形態では、有効量は、25μg~1000μg、または50μg~1000μgの総用量である。一部の実施形態では、有効量は、100μgの総用量である。一部の実施形態では、有効量は、合計で2回対象に投与される25μgの用量である。一部の実施形態では、有効量は、合計で2回対象に投与される100μgの用量である。一部の実施形態では、有効量は、合計で2回対象に投与される400μgの用量である。一部の実施形態では、有効量は、合計で2回対象に投与される500μgの用量である。一部の実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチンは、皮内注射、筋肉内注射によって、または鼻腔内投与によって、対象に投与される。
【0095】
一部の実施形態では、能動免疫療法のための薬剤の量は、患者あたり、1~1,000マイクログラム(μg)、または0.1~500μg、または10~500μg、または50~250μgまで変わり、ヒト投与のための注射あたり1~100μgまたは1~10μgであり得る。注射のタイミングは、1日に1回から、1週間に1回、1か月に1回、1年に1回、10年に1回まで非常に大きく変わり得る。典型的なレジメンは、免疫と、それに続く6週間間隔または2か月などの時間間隔でのブースター注射からなる。別のレジメンは、免疫と、それに続く1、2、3、4、5、6または12か月後の1回または複数回のブースター注射からなる。別のレジメンは、生涯にわたり、2か月ごとの注射を必然的に伴う。あるいは、ブースター注射は、免疫応答のモニタリングによって示されるように、不定期であり得る。投与の頻度は、副作用が臨床的に許容される範囲内である限り、1回または複数回であってもよい。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物または方法は、第1のペプチドおよび第2のペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つまたは複数のDNAまたはRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンを対象に投与することを含み、10μg/kg~400μg/kgの核酸ワクチンの投薬量が対象に投与される。一部の実施形態では、RNAポリヌクレオチドの投薬量は、用量あたり、1~5μg、5~10μg、10~15μg、15~20μg、10~25μg、20~25μg、20~50μg、30~50μg、40~50μg、40~60μg、60~80μg、60~100μg、50~100μg、80~120μg、40~120μg、40~150μg、50~150μg、50~200μg、80~200μg、100~200μg、120~250μg、150~250μg、180~280μg、200~300μg、50~300μg、80~300μg、100~300μg、40~300μg、50~350μg、100~350μg、200~350μg、300~350μg、320~400μg、40~380μg、40~100μg、100~400μg、200~400μgまたは300~400μgである。一部の実施形態では、核酸は、皮内注射または筋肉内注射によって対象に投与される。一部の実施形態では、核酸は、0日目に対象に投与される。一部の実施形態では、核酸の2回目の用量は、7日目、または14日目、または21日目に対象に投与される。
【0097】
本明細書に記載される組成物は、好ましくは、末梢経路(すなわち、投与される組成物が血液脳関門を通過し、脳、脊髄または眼における意図される部位に達して、頑強な免疫応答および/または誘導される抗体集団をもたらす経路)を介して投与される。末梢疾患のためには、誘導される抗体は、意図される末梢器官に達するように血管系から離れる。投与の経路としては、経口、皮下、鼻腔内、皮内または筋肉内が挙げられる。能動免疫のためのいくつかの経路は、皮下および筋肉内である。筋肉内投与および皮下投与は、単一の部位または複数の部位で行うことができる。筋肉内注射は、最も典型的には、腕または脚の筋肉に行われる。一部の方法では、薬剤は、沈着物が蓄積している特定の組織に直接注射される。
【0098】
投与される投薬の数は、より頑強な免疫応答(例えば、より高い力価)をもたらすように、調整することができる。
【0099】
免疫原をコードするDNAまたはRNAの有効量は、レシピエントの体重1キログラムあたり約1ナノグラム~約1グラム、または約0.1μg/kg~約10mg/kg、または約1μg/kg~約1mg/kgであり得る。内部投与のために好適な剤形は、好ましくは、単位あたり約0.1μg~100μgの活性成分を含有する(後者の用量範囲について)。活性成分は、組成物の総重量に基づいて、重量基準で0.5~95%まで変わり得る。あるいは、抗原がロードされた樹状細胞の有効用量は、約10~10個細胞である。免疫療法の当業者であれば、過度の実験なく、これらの用量を調整することが可能である。
【0100】
核酸組成物は、簡便な様式、例えば、簡便かつ有効な経路による注射で投与されてもよい。経路としては、限定されるものではないが、皮内「遺伝子銃」送達または筋肉内注射が挙げられ得る。改変された樹状細胞は、皮下、静脈内または筋肉内経路によって投与される。他の可能な経路としては、経口投与、髄腔内、吸入、経皮適用、または直腸投与が挙げられる。
【0101】
投与の経路に応じて、組成物は、酵素、酸、および化合物が不活性になり得る他の天然状態の作用から化合物を保護する材料でコーティングされていてもよい。したがって、その不活性化を防止する材料で組成物をコーティングすること、またはその材料とともに組成物を共投与することが必要であってもよい。例えば、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼの酵素阻害剤(例えば、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェートおよびトラジロール)、またはリポソーム(水中油中水型エマルジョンを含む)および従来のリポソーム(Strejan et al., J. Neuroimmunol 7:27, 1984)などの適切な担体中。
【0102】
本明細書に開示される免疫療法用組成物はまた、Aβの蓄積に関連する疾患のための他の処置、例えば、本明細書に開示されるAβエピトープのいずれかに特異的に結合する抗体などの抗Aβ抗体、アデュカヌマブ、または例えば、米国特許公開第2010/202968号および米国特許第8,906,367号に開示される抗体のいずれか、ABBV-8E12、ゴスラネマブ、ザゴテネマブ、RG-6100、BIIB076、またはWO2014/165271号、US10,501,531号、WO2017/191560号、US2019/0330314号、WO2017/191561号、US2019/0330316号、WO2017/191559号およびWO2018/204546号に開示される抗体のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。一部の併用療法の方法では、患者は、本明細書に開示される能動免疫療法の方法の前に、受動免疫療法を受ける。他の方法では、患者は、処置の同じ期間の間に、受動免疫療法および能動免疫療法を受ける。あるいは、患者は、受動免疫療法の前に、能動免疫療法を受けてもよい。組合せはまた、小分子治療および非免疫原性療法、例えば、RAZADYNE(登録商標)(ガランタミン)、EXELON(登録商標)(リバスチグミン)およびARICEPT(登録商標)(ドネペジル)、ならびに脳における神経細胞の機能を改善する他の組成物を含んでいてもよい。
【0103】
本開示の組成物は、本明細書に記載される処置レジメンのための医薬の製造において使用されてもよい。
【0104】
処置レジメン
【0105】
本明細書に開示される処置の方法の所望の転帰は、疾患および患者のプロファイルに従って変わり、当業者に決定可能である。所望の転帰としては、患者の健康状態の改善が挙げられる。一般に、所望の転帰としては、測定可能な指標、例えば、病原性アミロイド原線維の低減または排除、減少または阻害されたアミロイド凝集および/またはアミロイド原線維の沈着、ならびに病原性のおよび/または凝集したアミロイド原線維に対する増加した免疫応答が挙げられる。所望の転帰としては、アミロイド疾患の特異的な症状の寛解も挙げられる。本明細書で使用される場合、「改善する」、「増加する」または「低減する」などの相対的な用語は、対照、例えば、本明細書に記載される処置の開始前の同じ個体における測定値、または対照個体もしくは対照群における測定値と比べた値を示す。対照個体は、開示される製剤を使用して処置を受けていないが、処置されている個体とおよそ同じ年齢である(処置された個体および対照個体における疾患のステージが同等であることを確実にするため)、処置されている個体と同じアミロイド疾患に苦しむ個体である。あるいは、対照個体は、処置されている個体とおよそ同じ年齢である健康な個体である。治療に対する応答の変化または改善は、一般に、統計学的有意であり、有意であると見なされ得る0.1未満または0.1に等しい、0.05未満、0.01未満、0.005未満または0.001未満のp値によって記載される。
【0106】
対象の処置のための本明細書に開示される組成物の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるかどうか、あれば投与される他の薬、および処置が予防的または治療的であるかどうかを含む多くの異なる要因に応じて変わる。処置投薬量は、安全性および有効性を最適化するために用量設定することができる。免疫原の量は、アジュバントも投与されるかどうかにも依存し得、アジュバントの非存在下ではより高い投薬量が必要である。投与のための免疫原の量は、時には、患者あたり1~500μg、より一般的には、ヒト投与のための注射あたり5~500μgまで変わる。時折、投薬あたり1~2mgのより高い用量が使用される。典型的には、約10、20、50または100μgが、各ヒト投薬のために使用される。投薬のタイミングは、1日に1回から、1年に1回、10年に1回まで非常に大きく変わり得る。免疫原の投薬が与えられる任意の所与の日に、投薬量は、1μg/患者より高く、通常、アジュバントも投与される場合は10μg/患者より高く、アジュバントの非存在下では10μg/患者より高く、通常は、100μg/患者より高い。典型的なレジメンは、免疫と、それに続く6週間の間隔のブースター投薬からなる。別のレジメンは、免疫と、それに続く1、2、3、4、5、6または12か月後のブースター投薬からなる。別のレジメンは、生涯にわたり、2か月ごとの投薬を伴う。あるいは、ブースター投薬は、免疫応答のモニタリングによって示されるように、不定期であり得る。
【0107】
アルツハイマー病のための第2の処置、例えば、Razadyne(登録商標)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)およびAricept(登録商標)(ドネペジル)と組み合わせて投与される場合、第2の処置は、製品ラベルに従って、または本開示の組成物による処置を考慮して必要により、投与することができる。
【0108】
キット
【0109】
本開示は、本明細書に開示される組成物、および関連する材料、例えば、使用のための指示(例えば、添付文書)を含むキット(例えば、容器)をさらに提供する。使用のための指示は、例えば、組成物、および必要に応じて1つまたは複数の追加の薬剤の投与のための指示を含んでいてもよい。ペプチドおよび/または核酸組成物の容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)またはサブ単位用量であってもよい。
【0110】
添付文書は、適応症、用法、投薬量、投与、禁忌、および/またはそのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含む治療用製品の市販パッケージに習慣的に含まれる指示を指す。キットは、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などを含む第2の容器を含むこともできる。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む、商業的および使用者の観点から望まれる他の材料を含むこともできる。
【0111】
以下は、例証目的だけのために提供され、上記の広範な用語で記載された本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本開示において引用された全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
使用
【0113】
本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、免疫原および医薬組成物のそれぞれは、本明細書に記載される疾患のうちの1つまたは複数の処置における使用のためのものであってもよい。加えて、本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、免疫原および医薬組成物のそれぞれは、本明細書に記載される疾患のうちの1つまたは複数を処置するための方法における使用のためのものであってもよい。本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、免疫原および医薬組成物のそれぞれは、本明細書に記載される疾患のうちの1つまたは複数を処置するためまたはその処置における使用のための医薬を製造するための方法において使用されてもよい。
【0114】
本明細書において特定された全ての米国特許出願および国際特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0115】
(実施例1)
動物免疫
【0116】
雌スイスウェブスターマウスに、0日目、14日目、42日目および70日目に、100μlの試験物質を2つの部位に皮下注射した。試験物質を、25μgの試験免疫原、および200μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中の25μgのQS21アジュバントを混合することによって調製した。尾を傷つけ、50μlの血液を採取することによって、21日目、49日目および77日目にマウスから採血し、続いて血清に処理した。試験したペプチドには、AEFRHDSGC(配列番号38)およびDAEFRHDC(配列番号39)が含まれていた。免疫原は、1つのAβペプチド、C末端リンカーおよびC末端システインを含有し、C末端システインを介してマレイミド結合によってCRM-197とカップリングされていた。
【0117】
モルモットに、200μlのAddavax中、50μgの試験免疫原、25μgのQS21を、0日目、21日目、49日目、および77日目に筋肉内注射した。免疫の7日後に採血した。試験したペプチドには、DAEFRHDC(配列番号39)およびQKLVFFAEC(配列番号40)が含まれていた。免疫原は、再び、1つのAβペプチド、C末端リンカーおよびC末端システインを含有し、C末端システインを介してマレイミド結合によってCRM-197とカップリングされていた。
【0118】
雌モルモットは研究開始時に少なくとも5週齢であり、体重はほぼ350~500gであった。適切な動物舎ならびに動物の飼育および世話のための研究手順は、米国農務省(USDA)および国際実験動物管理評価・認定協会(Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)International)のガイドラインに従って、認証を受けた施設で行なった。
【0119】
免疫原の濃度は0.5mg/mlであった。試験免疫原のそれぞれの投与の前に、注射部位を可視化するために、それぞれの後肢の約3cmの区域を剃毛し、エタノールで拭った。それぞれの動物は、1注射あたりそれぞれ100μlで、2つの別々の部位に分割された200μl(0.25μg/μl)の試験免疫原用量を受けた(すなわち、動物は100μlのPBS中、50μgの免疫原+100μlのAddavax中、25μgのQS-21を受けた)。25G~27Gの針を後肢の筋肉内、約0.25~0.5cmの深さに挿入し、1部位あたり100μlで注射した。注射部位は1後肢あたり4つの別々の部位の間でそれぞれの投与を回転し、少なくとも2cm離した。
【0120】
(実施例2)
抗体力価の測定
【0121】
モルモットについて、1週目、4週目、8週目および12週目に1回の採取あたり250~350μlで頸静脈を介して、およびマウスについて、尾を傷つけることによって、1週目、3週目、7週目および11週目に1回の採血あたり50μlで、凝固活性剤チューブに全血試料を採取した。最終採血の週の終わりに心穿刺を介して最大体積の全血を凝固活性剤チューブに採取した。全ての血液試料は室温で30分を超えて凝血させ、周囲温度(約20~25℃)で、3,000RPMで10~15分、遠心分離し、血清上清を清潔な凍結バイアルに個別に移した。血清上清は-80℃(±12℃)で凍結保存した。
【0122】
Aβモルモットについての力価
【0123】
Aβ1~15およびAβ1~28を、いずれも本研究の異なる部分において用いた。これらはいずれも凝集物を形成しない。2μg/mlのAベータモノマーをPBS中100μl/ウェルでプレートにコーティングし、室温で一夜インキュベートした。プレートをPBS中1%BSAで1時間ブロッキングした。プレートを吸引し、A行に200μlのPBS Tween中0.1%BSAを加えた。カラム1に陰性モルモット血清を100倍希釈で加え、一方で行の残りは100倍希釈の試験血清を含んでいた。行をプレートの下でステップごとに50%で段階希釈して100倍~12800倍の希釈範囲とした。ウェルを室温で2時間インキュベートし、次いで洗浄した。0.1%BSA含有PBS Tween中、抗モルモットIgG HRPの5000倍希釈を調製し、次いで洗浄したウェルに100μlを加えた。試料を1時間インキュベートし、次いで洗浄した。Thermo-Fisher OPD錠剤を用い、10mlあたり1錠剤でOPD基質を調製した。Thermofisher基質緩衝液を10倍希釈で加え、各ウェルに100μlを加え、15分インキュベートした。50μlの2N HSOを加えて反応を停止させ、Molecular Devices Spectromaxにより490nmでプレートを読み取った。力価は最大ODの50%を与える希釈倍率として定義し、希釈倍率の間に入る場合には外挿した。
【0124】
Aβマウスについての力価
【0125】
2μg/mlの組換えAβをPBS中100μl/ウェルでプレートにコーティングし、室温で一夜インキュベートした。プレートをPBS中1%BSAで1時間ブロッキングした。プレートを吸引し、A行に200μlのPBS Tween中0.1%BSAを加えた。カラム1に陰性マウス血清を100倍希釈で加え、一方で行の残りは100倍希釈の試験血清を含んでいた。行をプレートの下でステップごとに50%で段階希釈して100倍~12800倍の希釈とした。ウェルを室温で2時間インキュベートし、次いで洗浄した。0.1%BSA含有PBS Tween中、抗マウスIgG HRPの5000倍希釈を調製し、次いで洗浄したウェルに100μlを加えた。反応混合物を1時間インキュベートし、洗浄した。ThermoFisher OPD錠剤を用い、10mlあたり1錠剤でOPD基質を調製した。ThermoFisher基質緩衝液を10倍希釈で加え、各ウェルに100μlを与え、15分インキュベートした。50μlの2N HSOを加えて反応を停止させ、Molecular Devices Spectromaxにより490nmでプレートを読み取った。力価は最大OD測定値の50%を与える希釈倍率として定義し、希釈倍率の間に入る場合には外挿した。
【0126】
上記のように免疫されたモルモットにおいて観察された抗体力価を表1に示す。免疫は、Addavax中のQS21を用いて行った。報告された力価は、3回目の注射後の採血についてである。これらの結果を図1に表す。
【表1】
【0127】
上記のように免疫されたマウスにおいて観察された抗体力価を表2に示す。免疫は、QS21を用いて行った。報告された力価は、3回目の注射後の採血についてである。これらの結果を図2に表す。
【表2】
【0128】
(実施例3)
本明細書で開示したワクチンで免疫したモルモット由来の血清によるアルツハイマー脳組織の染色
【0129】
新鮮凍結ヒト脳組織(約0.5g)の剖検ブロックを最適切断温度コンパウンド(OCTコンパウンド)中に包埋し、クライオスタットを用いて切断して10μmの切片を生成する。切片をアジ化ナトリウムの存在下、グルコースオキシダーゼおよびベータD-グルコースの溶液中に入れ、内因性ペルオキシダーゼをブロックする。組織切片が調製できれば、本明細書で開示したワクチンによって免疫したモルモット由来の特定したモルモット血清による染色を、2種の希釈(1:300および1:1500)で、ウサギ抗モルモット二次抗体およびDAKO DAB Detection Kitを用いて製造業者の指示に従って行う。染色は自動化されたLeica Bond Stainerを用いて処理する。結果は、本明細書で開示したワクチンで免疫したモルモット由来の血清が、アルツハイマー患者のヒト脳組織中のAβに特異的な抗体を含んでいるかを示している。
【0130】
本発明の種々の特定の実施形態を本明細書に記載したが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されず、当業者によって本発明の範囲および精神から逸脱することなく種々の変更または改変を本明細書に適用できることを理解されたい。
【0131】
本明細書に記載したペプチドの実施形態のそれぞれにおいて、ペプチドは列挙された配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなってよい。したがって、本明細書で開示したアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる組成物の一部であってよい以下の配列は、本開示に組み込まれる(表13参照)。
【表3-1】
【表3-2】
図1
図2
【配列表】
2023541669000001.app
【国際調査報告】