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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】炭化ケイ素ウェーハの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20230926BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230926BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230926BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C30B29/36 A
H01L21/302 105A
H01L21/20
C30B25/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518122
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 GB2021052423
(87)【国際公開番号】W WO2022058743
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】2014733.6
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】マザムト サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ラブデー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クック マイケル
【テーマコード(参考)】
4G077
5F004
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DB01
4G077ED04
4G077ED06
4G077HA12
4G077TK01
4G077TK10
4G077TK13
5F004AA16
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA23
5F004DA26
5F004DB00
5F004EA38
5F152LL02
5F152LM08
5F152LN04
5F152MM18
5F152NN05
5F152NQ02
(57)【要約】
【課題】本発明は、その後にエピタキシャル成長させるための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本方法は、(a)炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の支持テーブル上に、支持テーブルから遠位の炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように載置するステップと、(b)プラズマ処理チャンバ内に水素分子H2を含むエッチングガス混合物の流れを構築するステップと、(c)プラズマ処理チャンバ内でエッチングガス混合物からプラズマを生成し、プラズマを用いてウェーハのマスクされていない表面をエッチングして、マスクされていない表面の粗さを低減するようにするステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法であって、
(a)支持テーブルから遠位の前記炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように前記炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の前記支持テーブル上に載置するステップと、
(b)前記プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するステップであって、前記エッチングガス混合物が水素分子H2を含む、ステップと、
(c)前記プラズマ処理チャンバ内で前記エッチングガス混合物からプラズマを発生させ、前記プラズマを用いて前記炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、前記マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記エッチングガス混合物が更に希ガスを含み、好ましくは、前記エッチングガス混合物中のH2と前記希ガスの比が、5:1~1.5:1の範囲、最も好ましくは4.5:1~2:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希ガスが28より大きい原子量を有し、好ましくは前記希ガスがアルゴンArである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチングガス混合物の5%~40%が前記希ガスからなり、好ましくは10%~35%、より好ましくは15%~30%である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチングガス混合物が更に、前記プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように各々が構成された1又は2以上のフッ素含有ガスを含み、好ましくは前記各フッ素含有ガスが、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3、及び分子フッ素F2の何れかである、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチングガス混合物中のH2と前記フッ素含有ガスの比が、100:1~5:1の範囲、好ましくは50:1~20:1の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチングガス混合物の少なくとも20%がH2からなり、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%である、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチングガス混合物が基本的にSF6、H2及びArからなり、好ましくはSF6:H2:Arの比が約1:40:10である、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)の間、前記プラズマ処理チャンバ内の圧力が、1~20ミリトール(mTorr)の範囲、好ましくは4~6mTorrの範囲、より好ましくは約5mTorrの値に制御される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマが、1000~3000ワット(W)の範囲、好ましくは2000~3000Wの範囲、より好ましくは約2500Wのプラズマ出力で生成される、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)において、エッチングが15~25分、好ましくは約20分間行われる、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)が更に、前記基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを含み、好ましくは前記バイアス電圧は、200~1200Wの範囲、より好ましくは800~1200Wの範囲、最も好ましくは約1000Wの電力を有する、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法であって、
(a)支持テーブルから遠位の前記炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように前記炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の前記支持テーブル上に載置するステップと、
(b)前記プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するプロセスであって、前記エッチングガス混合物が、
プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように構成された1又は2以上のフッ素含有ガスと、
1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又は1又は2以上のポリマー形成ヒドロフルオロカーボンと、
を含む、ステップと、
(c)前記プラズマ処理チャンバ内で前記エッチングガス混合物からプラズマを発生させ、前記プラズマを用いて、前記炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、前記マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記1又は2以上のフッ素含有ガスは、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3、及び分子フッ素F2のうちの1又は2以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボンが、オクタフルオロシクロブタンc-C48を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
1又は2以上のポリマー形成ヒドロフルオロカーボンが、トリフルオロメタンCHF3を含む、請求項13~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチングガス混合物中の前記フッ素含有ガスと前記ポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとの比が、15:1~3:1の範囲、好ましくは約7:1である、請求項13~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記エッチングガス混合物の少なくとも90%が、フッ素含有ガスと1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとからなり、好ましくは前記エッチングガス混合物の少なくとも95%、より好ましくは前記エッチングガス混合物の実質的に全てが、フッ素含有ガスと1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとからなる、請求項13~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(c)の間、前記プラズマ処理チャンバ内の圧力が、1~20mTorrの範囲、好ましくは2~6mTorrの範囲、最も好ましくは約3mTorrの値に制御される、請求項13~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記プラズマが、2600~3800Wの範囲、より好ましくは約3200Wのプラズマ出力で生成される、請求項13~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップ(c)において、前記エッチングが5~15分、好ましくは約10分間行われる、請求項13~20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(c)において、前記基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを更に含み、好ましくは前記バイアス電圧は、100~1200Wの範囲、好ましくは640~960Wの範囲、より好ましくは約800Wの電力を有する、請求項13~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法であって、
(a)支持テーブルから遠位の前記炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように前記炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の前記支持テーブル上に載置するステップと、
(b)前記プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するステップであって、前記エッチングガス混合物が、少なくとも臭化水素、HBr及び酸素O2を含む、ステップと、
(c)前記プラズマ処理チャンバ内で前記エッチングガス混合物からプラズマを発生させ、前記プラズマを用いて前記炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、前記マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記エッチングガス混合物の少なくとも40%がHBrからなり、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エッチングガス混合物中のHBr:O2の比が、3:1~1.5:1の範囲、より好ましくは約2:1である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記エッチングガス混合物が更に、臭素を含まない1又は2以上のハロゲン含有ガスを含む、請求項23~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記1又は2以上のハロゲン含有ガスが、前記プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように各々が構成された1又は2以上のフッ素含有ガスを含み、好ましくは前記各フッ素含有ガスが、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3及び分子フッ素F2の何れか1項である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エッチングガス混合物中のHBrと前記フッ素含有ガスの比が、100:1~2:1の範囲、好ましくは約7:1~3:1の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エッチングガス混合物が基本的にSF6、O2及びHBrからなり、SF6:O2:HBrの比が約1:1:4又は6:4:1である、請求項23~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップ(c)の間、前記プラズマの圧力が、5~20ミリトール(mTorr)の範囲、好ましくは12~18mTorrの範囲、最も好ましくは約15mTorrの値に制御される、請求項23~29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記プラズマが、2400~3600Wの範囲、最も好ましくは約3000Wのプラズマ出力で生成される、請求項23~30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ステップ(c)において、エッチングが5分から15分、好ましくは約10分間行われる、請求項23~31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ステップ(c)が更に、前記基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを含み、好ましくは前記バイアス電圧は、100~1200Wの範囲、好ましくは320~480Wの範囲、最も好ましくは約400Wの電力を有する、請求項23~32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ステップ(c)の後に、
(d)前記ウェーハのための前記エッチングされた表面上に材料のエピタキシャル層を成長させるステップを更に含む、請求項1~33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記ステップ(c)と前記ステップ(d)の間で、前記ウェーハを前記プラズマ処理チャンバから取り出して、エピタキシャル成長のためのチャンバ内に載置し、前記ステップ(d)は、前記ウェーハがエピタキシャル成長のため前記チャンバ内にある間に実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ステップ(d)が、
(d1)前記プラズマ処理チャンバから前記プラズマを排気するステップと、
(d2)前記ウェーハをエピタキシャル成長チャンバに移送するステップと、
(d3)前記エピタキシャル成長チャンバへの蒸気の流れを構築して、前記材料のエピタキシャル層を成長させるようにするステップと、
を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記蒸気は、前記炭化ケイ素ウェーハのエッチングされた表面上で形成するのに適した材料及び/又は1又は2以上の前駆体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エピタキシャル成長チャンバ及び前記プラズマ処理チャンバが、単一のプラズマ処理ツールによって構成される、請求項34~37の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ステップ(c)において、前記プロセスは、前記ウェーハのマスクされていない表面のブランケットエッチングを実行するように制御される、請求項1~38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ウェーハが、少なくとも100ミリメートル、好ましくは少なくとも150ミリメートル、より好ましくは少なくとも200ミリメートルの直径を有する少なくとも円形のマスクされていない領域を含む、請求項1~39の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ステップ(a)の前に、SiC結晶から前記ウェーハをスライスするステップを更に含む、請求項1~40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記SiC結晶から前記ウェーハをスライスするステップと前記ステップ(a)の間に、前記ウェーハが化学機械研磨を受けない、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ウェーハは、前記マスクされていない面がシリコン面であるように配向される、請求項1~42の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記炭化ケイ素ウェーハが、非エピタキシャル成長炭化ケイ素を含み、前記ステップ(c)においてエッチングされた前記表面が、非エピタキシャル成長の炭化ケイ素のものである、請求項1~43の何れか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ステップ(c)が、前記ウェーハを冷却するように、前記基板テーブルに近接した前記ウェーハの表面にヘリウムを送達するステップを更に含み、好ましくは前記ヘリウムは、1~10Torrの範囲の圧力、最も好ましくは約2Torrの圧力で送達される、請求項1~44の何れか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ステップ(c)の間、前記基板テーブルの温度は、5~30セ氏温度(℃)の範囲、好ましくは15~25℃の範囲、最も好ましくは約20℃の値に制御される、請求項1~45の何れか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ステップ(c)において、前記プラズマが、誘導結合プラズマ源によって生成される、請求項1~46の何れか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ステップ(c)において、前記マスクされていない表面の粗さは、少なくとも60%低減される、請求項1~47の何れか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ステップ(c)の間に、前記マスクされていない表面の粗さは、1nm以下に低減される、請求項1~48の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ステップ(a)において、前記マスクされていない表面が、少なくとも1nm、好ましくは1~100nmの範囲、より好ましくは1~10nmの範囲の粗さを有する、請求項1~49の何れか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ステップ(c)が
(c1)第1の時間期間にわたって第1の電力P1で前記基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップと、
(c2)前記ステップ(c1)の後、第2の時間期間にわって第2の電力P2で前記基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップであって、前記P2が、前記P1より小さく、好ましくは前記P1の0.5倍より小さい、ステップと、
を含む、請求項1~50の何れか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記P2が50~200Wの範囲にある、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の時間期間が、2分~10分の範囲にある、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記ステップ(c2)の間に、前記エッチングによって、前記マスクされていない表面から2~10nmの厚さの層が除去される、請求項51~53の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長させるための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)結晶は、例えば、高い熱伝導率及び耐腐食性など、半導体デバイスの構成にとって魅力的な選択肢となる様々な物理的特性を有する。特に近年では、電気自動車などの環境保全技術の発達により、SiCウェーハの需要の高まりにつながっている。
【0003】
SiCウェーハの表面上でエピタキシャル成長を行うためには、表面の粗さ(本明細書では算術平均粗さRaと定義する)が極めて小さいことが必要とされ、典型的には3ナノメートル(nm)を遙かに下回り、好ましくは1nm未満、より好ましくは0.5nm未満である。SiCウェーハは、典型的には、例えば融液からの成長によって得られた大きな結晶インゴットからセグメントをスライスすることによって得られる。スライスは、必要な厚さにラッピングされ、次に機械的に研磨されてスライス表面の粗さが低減され、この機械的研磨ステップは、典型的には、表面粗さを約100~150nmの範囲の初期値から、5~10nmの範囲にまで低減する。粗さをエピタキシャル成長に好適な値まで更に低減するために、典型的には、その後で化学機械研磨(CMP)ステップが行われる。CMPプロセスでは、研磨剤と、ウェーハの表面を化学的にエッチングすることができる1又は2以上の腐食性化合物とを含有するスラリーでウェーハの表面を研磨することを含む。
【0004】
SiCウェーハの従来の製造プロセスに伴う問題は、上記の様々な段階に時間がかかり、従って、生産速度が制限されることである。特にCMPステップは、複雑になり、腐食性物質が必然的に取り込まれることに起因して、ウェーハの表面及び下層の結晶構造を損傷するリスクを招く。従って、これらの制限を克服するSiCウェーハの製造方法に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/073006号
【特許文献2】国際公開第2010/100425号
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法を提供し、本方法は、(a)支持テーブルから遠位の炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の支持テーブル上に載置するステップと、(b)プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するステップであって、エッチングガス混合物が水素分子H2を含む、ステップと、(c)プラズマ処理チャンバ内でエッチングガス混合物からプラズマを発生させ、プラズマを用いて炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、を含む。
【0007】
驚くべきことに、H2を含むエッチングガスから発生されるプラズマを用いてSiCウェーハの表面をエッチングすると、ウェーハの表面粗さを初期値から、エッチングされた表面を後続の処理なしでエピタキシャル成長に使用できるように十分に小さな値まで低減することができることが発見された。本発明は、これによって、ウェーハを化学機械的に研磨する必要性を排除し、従って、エピタキシャル成長に適したSiCウェーハの製造のためのより迅速で経済的なプロセスを提供する。
【0008】
1~10nmのスケールでの表面プロファイルの変動の多くは、表面又はその近傍に欠陥、例えばパイプ、らせん転位、刃状転位、及び空孔が存在することに起因している。本発明者らは、H2を含むエッチングガス混合物から発生されるプラズマは、このような欠陥及び周囲の均一な結晶構造を同様の速度でエッチングする傾向があり、これにより、表面プロファイルの変動を増幅することなく欠陥を含む材料の層を除去できることを見出した。理論に束縛されることを望まないが、ウェーハの表面へのH2分子及び/又は水素ラジカルの吸着は、プラズマからのイオンがウェーハの表面と衝突する際にプラズマからのイオンによって生成されるスパッタリング収率を、表面とイオンとの間の入射角に依存する様式で変化させること、及び結果として生じるエッチングが、ウェーハ表面の、ウェーハの公称平面に対して非平行の角度で配向された部分を優先させることになることが示唆されている。このように、水素は、ウェーハのマスクされていない表面の公称平面内にある表面部分のエッチングを緩和する効果を有し、表面プロファイルの不規則性の除去に有利である。
【0009】
上述したように、SiCウェーハは、支持テーブルの遠位のマスクされていない表面を有するように配置される。ここで「マスクされていない」とは、当該表面が、ウェーハに集積回路などの構造をエッチングするために設けられるような、パターン付きマスクによって覆われていないことを意味する。言い換えれば、このプロセスは、実質的に表面全体にわたる後続のエピタキシャル成長のためにウェーハ表面を作製するものであり、それ自体がパターンを導入しないので、ウェーハの関連する表面上のどこにもマスクが配置されていない。留意すべきは、ウェーハの表面は、必ずしも完全に覆われていない訳ではなく、例えば、支持テーブルから遠位の表面の一部は、ウェーハを所定位置に保持するためのクランプによって覆うことができるが、表面のほとんど又は全てが(少なくともステップ(c)全体を通して)覆われておらず、表面の実質的に全てがプラズマへの均一な曝露度を受けるようにすることが好ましい。
【0010】
好ましい実施構成では、エッチングガス混合物は更に、希ガス、好ましくはアルゴンArを含み、好ましくは、エッチングガス混合物中のH2と希ガスの比は、5:1~1.5:1の範囲、好ましくは4.5:1~2:1の範囲にある。イオン化した希ガス、特にアルゴンは、SiC格子の化学結合を破断することによって、プラズマ中の水素ラジカルなどの反応性種とウェーハ表面との相互作用を促進する。また、希ガスイオンとウェーハ表面との衝突により、表面からの材料のスパッタリングによるエッチングを支援する。上記の比は、ウェーハのエッチングされた表面の粗さの有意な低減を達成することが分かっているので、これに応じてプロセスに特に適していることが見出されている。アルゴンなどの希ガスがエッチングガス混合物中に存在する場合、好ましくは、エッチングガス混合物の5%~40%が希ガスからなり、より好ましくは10%~35%、最も好ましくは15%~30%である。この場合も同様に、これらの量で存在するアルゴンなどの希ガスを含むエッチングガスは、ウェーハのエッチングされた表面の粗さの大幅な低減を達成することが見出されている。希ガスがエッチングガス混合物中に存在する場合、衝撃を与える希ガスイオンの質量が、約28の原子量を有するスパッタリングされているSi原子の質量以上であるときに、スパッタリング作用が大きく向上することが見出されている。従って、特に好ましい実施構成では、希ガスは、28以上の原子量を有し、最も好ましくは、希ガスはアルゴンArである。上述のように、アルゴンは、特に効果的であることが判明しているが、28より大きい原子量を有する他の希ガス(例えばクリプトン及びキセノン)も好適である。
【0011】
好ましい実施構成では、エッチングガス混合物は更に、プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように各々が構成された1又は2以上のフッ素含有ガスを含み、好ましくは、各フッ素含有ガスは、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3及び分子フッ素F2のうちの1つである。「フッ素含有ガス」とは、プラズマ中に存在するときに解離して、遊離した原子状フッ素をプラズマ中に放出するようなガスを意味する。このようなガスは、トレンチ及びメサなどの垂直方向の特徴をエッチングするのに適していると広く考えられるが、本発明者らは、驚くべきことに、上記で定義した方法を実行する際に、エッチングガス混合物中にフッ素含有ガスが存在すると、SiCウェーハのエッチング表面の粗さの低減を達成できることを見出した。上記で説明したように、エッチングガス混合物中にH2が存在することにより、スパッタ収率が、ウェーハの公称平面に対して非平行な表面のエッチングを促進するように、入射イオンの軌道とこれが衝突するSiCウェーハの表面部分との間の角度に伴って変化することが示唆される。この効果は、エッチングガス混合物中にエッチャントとして作用するフッ素含有ガスが存在することによって増強されると考えられる。特に、SF6を含むエッチングガス混合物は、エッチングされた表面の粗さの大幅な低減を達成することが実証されている。フッ素含有ガスが存在する場合、エッチングガス混合物中のH2とフッ素含有ガスの比は、好ましくは100:1~5:1の範囲、好ましくは50:1~20:1の範囲にある。これらの組成物は、エッチングされたウェーハ表面の粗さを低減させるのに特に効果的であることが判明している。より一般的には、フッ素含有ガスがエッチングガス混合物中に存在する場合、混合物中にフッ素含有ガスより多くのH2が存在することが好ましい。これらの組成物は、一般に、フッ素含有ガスのエッチング効果から恩恵を受けながら、エッチングされた表面の表面粗さの良好な低減を達成することが見出されている。
【0012】
有利には、エッチングガス混合物の少なくとも20%がH2からなり、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%とすることができる。水素がこれらのレベルで存在するエッチングガス混合物は、エッチングされた表面の表面粗さの特に大きな低減を達成することが判明している。
【0013】
特に好ましい実施形態では、エッチングガス混合物は、基本的にSF6、H2及びArからなり、好ましくは、SF6:H2:Arの比は、約1:40:10である。本発明の第1の態様による方法は、これらの化合物のみを含有するエッチングガス混合物を用いて表面粗さの所望の低減を達成することが実証されており、これらの実施形態では、約1:40:10の特定の組成が、最良の結果を達成することが判明している。勿論、他の種は、所望の結果を達成する方法の能力を含むことなく、微量レベルで偶発的に存在することができる。約1:40:10とは、この比率の各部分が記載値の20%以内、好ましくは10%以内であることを意味する。
【0014】
好ましい実施構成では、ステップ(c)の間、プラズマ処理チャンバ内の圧力は、1~20ミリトール(mTorr)の範囲、好ましくは4~6mTorrの範囲、より好ましくは約5mTorrの値に制御される。表面粗さの最大の低減は、これらの条件下で観察されている。これらの範囲の圧力下でステップ(c)を実行することは、混合ガス中に希ガス(特に、アルゴンなどの原子量28以上のもの)が存在する場合に特に有益であることが判明している。これらの低圧下では、チャンバ内のプラズマが十分に希薄化され、希ガスイオンがプラズマ内の他の種によって実質的に阻害されることなく、ウェーハの表面から材料に爆撃を与えてスパッタすることができると考えられる。これにより、混合物中のH2によって促進される角度依存のエッチング(上述したような)が効果的に進行し、エッチングされるマスクされていない表面全体にわたって高いレベルの平滑化が生じることが保証される。
【0015】
プラズマは、好ましくは1000~3000ワット(W)の範囲、好ましくは2000~3000Wの範囲、より好ましくは約2500Wのプラズマ出力で発生させる。
【0016】
有利には、ステップ(c)において、エッチングは、15分~25分の間、好ましくは約20分間実施することができる。本発明の第1の態様による方法の一部として実行される場合、この持続時間のエッチングによって、SiCウェーハの表面粗さをエピタキシャル成長に適した値まで低減できることが見出された。
【0017】
好ましくは、ステップ(c)は更に、基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを含み、好ましくは、バイアス電圧は、200~1200Wの範囲、より好ましくは800~1200Wの範囲、最も好ましくは約1000Wの電力を有する。これは、マスクされていない表面の粗さの低減を達成しながら、エッチング速度を高める(従って、ウェーハをエピタキシャル成長に作製できる速度を高める)ことが見出されている。
【0018】
本発明の第2の態様は、後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法を提供し、本方法は:(a)支持テーブルから遠位の炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の支持テーブル上に載置するステップと、(b)プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するプロセスであって、エッチングガス混合物が、プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように構成された1又は2以上のフッ素含有ガスと、1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又は1又は2以上のポリマー形成ヒドロフルオロカーボンと、を含む、ステップと、(c)プラズマ処理チャンバ内でエッチングガス混合物からプラズマを発生させ、プラズマを用いて、炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、を含む。
【0019】
本発明の第2の態様の本方法は、エッチングガス混合物が、1又は2以上のフッ素含有ガスと1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボンとのみを含むという点で、第1の態様によって提供される方法とは異なっている。第1の態様の方法と同様に、本発明の第2の態様の方法は、SiCウェーハの表面粗さを、エピタキシャル成長を行うのに十分に低い値まで低減できることが分かっており、CMPプロセスを行う必要性を排除する。これらの結果が得られるメカニズムは、第1の態様に関して上記で概説したものと同様であるが、ポリマー形成フルオロカーボン及び/又はヒドロフルオロカーボンが、ウェーハの公称平面と非平行に位置する表面部分のエッチングを促進する際に水素に取って代わると考えられる。「ポリマー形成(ヒドロ)フルオロカーボン」とは、プラズマ中に存在すると、SiCウェーハの表面にポリマー層を形成することができる(ヒドロ)フルオロカーボンを意味する。これらの化合物は、他のガスを添加しなければプラズマ中でポリマーを形成することができないCF4のようなフッ素含有ガスとは区別される。
【0020】
第2の態様による方法におけるフッ素含有ガスの効果は、本発明の第1の態様を参照して上述したものと同様であり、すなわち、エッチング剤としてのこれらの挙動は、その公称平面に対して非平行であるウェーハ表面の部分を選択的に攻撃することにつながるような方法で、SiCウェーハの表面上のポリマー層の存在によって影響を受けると考えられる。
【0021】
1又は2以上のフッ素含有ガスは、有利には、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3、及び分子状フッ素F2のうちの1又は2以上を含むことができる。
【0022】
オクタフルオロシクロブタンc-C48、及びトリフルオロメタンCHF3は、それぞれ、本発明の第2の態様による方法を実行するのに適していることが判明したフルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンの例である。好ましい実施形態において、エッチングガス混合物は、これらの化合物の一方又は両方(及び任意選択的に他のフルオロカーボン及び/又はヒドロフルオロカーボン)を含む。
【0023】
有利には、エッチングガス混合物中のフッ素含有ガスとポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとの比は、15:1~3:1の範囲、好ましくは約7:1とすることができる。これは、フルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンがそれぞれ個別に存在するのではなく、フルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンの全ての合計がこれらのレベルで存在することを意味する。この組成のエッチングガスは、SiCウェーハの表面粗さを低減するのに特に効果的であることが分かっている。
【0024】
好ましくは、エッチングガス混合物の少なくとも90%が、フッ素含有ガスと1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとからなり、好ましくは少なくとも95%、より好ましくはエッチングガス混合物の実質的に全てがフッ素含有ガスと1又は2以上のポリマー形成フルオロカーボン及び/又はポリマー形成ヒドロフルオロカーボンとからなる。必要な表面粗さの低減を達成するために、エッチングガス混合物中に他の種が存在する必要はないが、エッチングガス混合物の実質的に全てがこれらの物質を含む場合でも、微量の他の種が存在することができることが判明している。
【0025】
好ましい実施形態では、ステップ(c)の間、プラズマ処理チャンバ内の圧力は、1~20mTorrの範囲、好ましくは2~6mTorrの範囲、最も好ましくは約3mTorrの値に制御される。この範囲の圧力値で、表面粗さの大幅な低減が達成されている。
【0026】
好ましくは、プラズマは、2600~3800Wの範囲、より好ましくは約3200Wのプラズマ出力で生成される。
【0027】
有利には、ステップ(c)において、エッチングは、5~15分、好ましくは約10分間行われる。この範囲の持続時間でエッチングすることによって、SiCウェーハの表面をエピタキシャル成長のために十分に平滑にできることが見出された。
【0028】
好ましくは、ステップ(c)は更に、基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを含み、好ましくは、バイアス電圧は、100~1200Wの範囲、好ましくは640~960Wの範囲、より好ましくは約800Wの電力を有する。
【0029】
本発明の第3の態様は、後続のエピタキシャル成長のための炭化ケイ素ウェーハを作製する方法を提供し、本方法は、(a)支持テーブルから遠位の炭化ケイ素ウェーハの表面がマスクされていないように炭化ケイ素ウェーハをプラズマ処理チャンバ内の支持テーブル上に載置するステップと、(b)プラズマ処理チャンバ内へのエッチングガス混合物の流れを構築するステップであって、エッチングガス混合物が、少なくとも臭化水素、HBr及び酸素O2を含む、ステップと、(c)プラズマ処理チャンバ内でエッチングガス混合物からプラズマを発生させ、プラズマを用いて炭化ケイ素ウェーハのマスクされていない表面をエッチングし、マスクされていない表面の粗さを低減するステップと、を含む。
【0030】
本方法は、本発明の第1及び第2の態様の方法と同様に、SiCウェーハの表面粗さを初期値から、エピタキシャル成長を行うことができるレベルまで低下させることができることが判明している。この場合、エッチングガス混合物の必須成分は、臭化水素と酸素である。臭化水素は、上述の本発明の第1の態様における水素の役割に類似した、すなわち、マスクされていない表面の公称平面内にあるウェーハの部分のエッチングを緩和する役割を果たすと考えられる。酸素は、ウェーハのマスクされていない表面から材料を除去するプラズマの能力を高めることが分かっており、臭化水素と組み合わせて存在する場合、マスクされていない表面の公称平面の外にある表面の特徴を優先的にエッチングすると考えられる。
【0031】
HBrがエッチングガス混合物中に大きなレベルで存在する場合に最良の結果が得られることが判明しているので、好ましくは、エッチングガス混合物の少なくとも40%がHBrからなり、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%がHBrからなる。
【0032】
好ましい実施構成では、エッチングガス混合物中のHBr:O2の比は、3:1~1.5:1の範囲であり、より好ましくは約2:1である。ウェーハの表面から材料を除去するプラズマの能力に対するO2の増強効果は、これらの組成物で特に強いことが判明している。
【0033】
エッチングガス混合物は更に、好ましくは、臭素を含まない1又は2以上のハロゲン含有ガスを含む。以下により詳細に説明するように、これらは、フッ素含有ガス又は他のハロゲン化水素(例えばHCI)のような他のハロゲン含有ガスとすることができる。しかしながら、特に好ましい実施構成では、1又は2以上のハロゲン含有ガスは、プラズマ状態時にフッ素ラジカルを放出するように各々が構成された1又は2以上のフッ素含有ガスを含み、好ましくは、各フッ素含有ガスは、六フッ化硫黄SF6、四フッ化炭素CF4、三フッ化窒素NF3及び分子フッ素F2の何れかである。ここでのこれらの化合物の効果は、本発明の第1及び第2の態様の関連で上述したものと同様であると考えられ、すなわち、マスクされていない表面の公称平面の外にある表面の部分からの材料の除去を優先する方法で、SiCウェーハの表面をエッチングすることである。好ましくは、エッチングガス混合物中のHBrとフッ素含有ガスの比は、100:1~2:1の範囲、より好ましくは7:1~3:1の範囲にある。これは、エッチングされた表面の粗さを最も効果的に低減できることが分かっている。
【0034】
好ましい実施構成では、エッチングガス混合物は、基本的にSF6、O2及びHBrからなり、SF6:O2:HBrの比は、約1:1:4又は1:4:6であり、望ましい結果を得るために他の種が存在する必要がなく、これらの比が特に有効であると判明している。しかしながら、他の種は、達成された結果の品質を著しく低下させることなく、微量レベルで存在することができることは理解されるであろう。
【0035】
好ましくは、ステップ(c)の間、プラズマの圧力は、5~20ミリトール(mTorr)の範囲、好ましくは12~18mTorrの範囲、最も好ましくは約15mTorrの値に制御される。これらの値は、本発明の第3の態様による方法を実行するために最も適していることが判明している。
【0036】
好ましくは、プラズマは、2400~3600Wの範囲、最も好ましくは約3000Wのプラズマ出力で生成される。
【0037】
第3の態様の好ましい実施形態では、ステップ(c)において、エッチングは5分から15分の間、好ましくは約10分間行われる。この時間は、エピタキシャル成長のための表面を作製するのに十分であることが判明している。
【0038】
好ましくは、ステップ(c)は更に、基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップを含み、好ましくは、バイアス電圧は、100~1200Wの範囲、好ましくは320~480Wの範囲、最も好ましくは約400Wの電力を有する。上述のように、基板テーブルをバイアスすることによりエッチング速度が向上し、これらの値は、マスクされていない表面の粗さを低減するのを達成しながらなされることが分かっている。
【0039】
以上の議論では、3つのプロセスについて、それぞれに特有の好ましい特徴及びパラメータと共に紹介してきた。ここで、上記3つの方法の一部として実施することができる、更なる好ましい特徴を記載する。
【0040】
上記本発明の3つの態様の各々による方法において、ステップ(a)の間、マスクされていない表面は、好ましくは少なくとも1nm、好ましくは少なくとも3nm、より好ましくは少なくとも5nmの粗さを有する。上記の方法は、エピタキシャル成長のために、これらの範囲内の初期粗さ値を有するSiCウェーハの表面を作製することが可能であることが判明している。しかしながら、他の実施形態では、ステップ(a)の間のマスクされていない表面の粗さは、この範囲内の初期粗さ値を有する表面についても粗さの低減が達成されているので、1nm未満とすることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明によって提供される方法は、エピタキシャル層の成長のためにSiCウェーハのエッチング表面を作製することが可能である。このため、好ましくは、本方法は、ステップ(c)の後に:(d)ウェーハのためのエッチングされた表面上に材料のエピタキシャル層を成長させるステップを含む。
【0042】
幾つかの好ましい実施構成では、ステップ(c)と(d)の間に、ウェーハは、プラズマ処理チャンバから取り出され、エピタキシャル成長用のチャンバ内に載置され、ステップ(d)は、ウェーハがエピタキシャル成長用のチャンバ内にある間に行われる。このように、エピタキシャル成長は、エッチングを行うチャンバとは異なるチャンバで行われる。これらのステップの各々を実行するのに適した別個の装置は容易に入手可能であるので、これらの実施形態は、従来の機器で実行することができるという点で有利である。従って、特に好ましい実施構成では、ステップ(d)は、(d1)プラズマ処理チャンバからプラズマを排気するステップと、(d2)ウェーハをエピタキシャル成長チャンバに移送するステップと、(d3)材料のエピタキシャル層を成長させるようにエピタキシャル成長チャンバに蒸気の流れを構築するステップとを含む。これらの実施形態では、蒸気は、炭化ケイ素ウェーハのエッチングされた表面上で形成するのに適した材料及び/又は1又は2以上の前駆体を含むことができる。材料及び/又は前駆体は、エピタキシャル層がSiCの層となるように選択することができる。ステップ(d3)は、電子デバイス及び他のこのような製品の製造に適した一連のエピタキシャル層を成長させるために、同じ又は異なる材料/前駆体を用いて繰り返すことができる。特に好ましい実施形態では、エピタキシャル成長チャンバとプラズマ処理チャンバは、単一のプラズマ処理ツールによって構成される。これにより、長距離の取り扱い又は運搬をすることなく、ウェーハをプラズマ処理チャンバとエピタキシャル成長チャンバとの間で搬送することができ、搬送中にエッチング面が損傷するリスクを最小化することになる。
【0043】
代替の実施構成では、エッチングステップ(c)とエピタキシャル成長ステップ(d)は、別々の処理ツールで、潜在的には異なる場所及び異なるエンティティによっても実施することができる。例えば、エッチングプロセス(c)はウェーハ製造業者によって実施することができ、後続のエピタキシャル成長プロセスは、ウェーハ製造業者からウェーハを調達したデバイス製造業者によって実施することができる。
【0044】
上述の方法の全てにおいて、プロセスは、好ましくは、ウェーハのマスクされていない表面のブランケットエッチングを実行するように制御される。ブランケットエッチングは、マスクされていない表面の実質的に全てが同じ程度の処理を受けるものであり、本発明では、エッチングされた表面全体に均一なレベルの粗さがもたらされることになる。従って、ブランケットエッチングを行うことにより、エピタキシャル成長のために広い面積を作製することができる。
【0045】
好ましい実施形態では、ウェーハのマスクされていない表面は、少なくとも100ミリメートル、好ましくは少なくとも150ミリメートル、より好ましくは少なくとも200ミリメートルの直径を有する円形のマスクされていない領域を含む。このことは、表面のマスクされていない領域内に、この最小横方向寸法の直径を有する円形ゾーンを特定することが可能であり、その中に上記の種類のマスクが存在しないことを意味する。しかしながら、マスクされていない領域の実際の周縁は、潜在的に円形ではない可能性があることは理解されるであろう(ただし、これは、完全にマスクされていない円形ウェーハがエッチングされている好ましい例においてはそうなるので)。典型的には、この最小寸法は、ウェーハの直径に対応し、例えば、円形のマスクされていない表面の場合、上記で言及される直径は、単に円の直径であり、正方形の表面の場合、これは正方形の辺の長さである。矩形のマスクされていない表面では、この直径は、矩形の2つの辺の長さのうち小さい方である。この概念上の円形領域のより大きな直径は、典型的には、ウェーハの表面上のより大きな領域がエッチングステップによるエピタキシャル成長のために作製されることを意味し、本発明による方法は、上記の範囲の最小寸法を有するSiCウェーハのマスクされていない領域を成功裏に作製できることが実証されている。
【0046】
幾つかの好ましい実施構成では、本方法は、ステップ(a)の前に、ウェーハをSiC結晶からスライスするステップを含む。これらの実施構成において、ウェーハは、好ましくは、ウェーハをSiC結晶からスライスするステップとステップ(a)との間で化学機械研磨(CMP)に供されることはない。以上説明したように、本発明の第1、第2及び第3の態様による方法は、化学機械研磨を必要とせずに、その上にエピタキシャル成長するためのSiCウェーハの表面を作製することができるので、このようなプロセスが行われないことが好ましい。これは、CMPに関与する腐食性物質がウェーハの表面及び/又は下層の結晶構造を損傷するリスクを排除するため、有利である。
【0047】
有利には、ウェーハは、マスクされていない面がシリコン面であるように配向される。これは、SiCウェーハの少なくとも1つの表面が(炭素とは対照的に)シリコン原子で終端されるような方向で、より大きな結晶からSiCウェーハをスライスすることによって達成することができる。本発明の方法は、マスクされていない表面がシリコン面である場合に特に効果的であることが判明している。
【0048】
好ましくは、炭化ケイ素ウェーハは、非エピタキシャル成長炭化ケイ素を含み、ステップ(c)でエッチングされる表面は、非エピタキシャル成長炭化ケイ素である。上述のように、これは、例えば、融液から成長させることができるより大きな結晶インゴットからウェーハをスライスすることによって達成することができる。
【0049】
好ましい実施構成では、ステップ(c)は更に、ウェーハを冷却するように、基板テーブルに近接するウェーハの表面にヘリウムを送達するステップを含み、好ましくは、ヘリウムは、1~10Torrの範囲、最も好ましくは約2Torrの圧力で送達される。この特徴は、「ヘリウム裏面冷却」と呼ばれることもあり、例えば、プラズマからの熱によって引き起こされる熱応力によってウェーハが損傷しないことを保証する。また、ウェーハの表面における条件がマスクされていない表面全体にわたって均一であることを保証し、その結果、プラズマによる処理の程度を促進させる。多くの実施形態において、ウェーハは、基板テーブルに近接する表面がマスクされていない表面とほぼ平行になるような形状にされ、この場合、これは、ウェーハのマスクされていない表面の特に均一な冷却につながる。
【0050】
好ましくは、ステップ(c)の間、基板テーブルの温度は、5~30セ氏温度(℃)の範囲、好ましくは15~25℃の範囲の値、最も好ましくは約20℃の値に制御される。これは、例えば流体の再循環によって、又は他の何れかの冷却プロセスによって達成することができ、その例は周知である。この場合も同様に、これにより、ウェーハが熱で損傷を受けるのを防ぎ、マスクされていない表面全体にわたって均一な処理を保証することができる。
【0051】
ステップ(c)において、プラズマは、有利には、誘導結合プラズマ源によって生成することができる。しかしながら、プラズマは、容量結合プラズマ源のような代替源によって生成されてもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の第1、第2及び第3の態様による方法は、ウェーハのマスクされていない表面の粗さを実質的に低減することが見出されているので、好ましくは、マスクされていない表面の粗さは、少なくとも60%低減される。更に、マスクされていない表面の粗さは、好ましくは3nm以下、より好ましくは1nm以下、更により好ましくは0.5nm以下に低減され、これにより、エピタキシャル成長に特に適した表面となる。
【0053】
好ましい実施構成では、ステップ(a)において、マスクされていない表面は、1~100nmの範囲内、好ましくは1~10nmの範囲の粗さRaを有する。更に、幾つかの好ましい実施構成では、ステップ(a)におけるマスクされていない表面の粗さは、少なくとも5nmとすることができる。開示された方法は、これらの範囲の初期粗さ値を有する表面からエピタキシャル成長するのに適した表面を作製することが可能であることが見出されている。
【0054】
有利には、ステップ(c)は更に、(c1)第1の時間期間にわたって第1の電力P1で基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップと、(c2)ステップ(c1)の後、第2の時間期間にわって第2の電力P2で基板テーブルにバイアス電圧を印加するステップであって、P2が、P1より小さく、好ましくはP1の0.5倍より小さい、ステップと、を含む。エッチングステップの終了時に一定期間バイアス電力を下げることにより、表面に衝突するイオンによって運ばれる典型的なエネルギー量が低減され、その結果、各衝突によって除去される材料が少なくなる。ステップ(c1)の終了時に、表面の粗さはその初期値から低減されているので、ステップ(c2)では、高エネルギーイオンによる表面の損傷のリスクを低減しながら表面に残る典型的には小さい収差を除去することができる。ステップ(c2)は、「ソフトランディング」ステップと呼ぶことができる。高エネルギー衝突による損傷の影響が緩和される「ソフトランディング」は、ステップ(c)の最後の部分の間に、周期的な原子層エッチング(ALE)プロセス、好ましくはマスクされていない表面から少なくとも1nmの厚さの層を除去するように制御されるものを実行することによっても達成することができる。これは、約5サイクルの原子層エッチングプロセスを実行することによって達成することができる。ALEプロセスは、基板テーブルバイアスが低減した後に、ステップ(c2)の代替として、又はステップ(c2)に追加して実行することができる。
【0055】
好ましくは、P2は50~200Wの範囲にあり、及び/又は第2の時間機関は2~10分の範囲にある。これらのパラメータは、ステップ(c2)における表面の特に効果的な平滑化を達成することが判明している。
【0056】
好ましい実施構成では、ステップ(c2)の間に、エッチングによってマスクされていない表面から2~10nmの厚さの層が除去される。これは、上記のように、2~10分の範囲の時間周期を有するソフトランディングステップによって達成することができる。
【0057】
本発明の態様による方法の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の第1、第2及び第3の態様による方法を実施するように適合された例示的な表面処理ツールを概略的に示している。
図2】本発明の実施形態によるプロセスの一例を示す図である。
図3(a)】本発明の実施形態による、作製とその後のエピタキシャル成長の異なる段階での炭化ケイ素ウェーハの例図である。
図3(b)】本発明の実施形態による、作製とその後のエピタキシャル成長の異なる段階での炭化ケイ素ウェーハの例図である。
図3(c)】本発明の実施形態による、作製とその後のエピタキシャル成長の異なる段階での炭化ケイ素ウェーハの例図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、現在開示されている方法を実施するのに適したプラズマ処理ツールの一例を示す。プラズマ処理ツール1は、使用時に炭化ケイ素(SiC)ウェーハ30が載置されるプラズマ処理チャンバ2を備える。エッチングを行うために、1又は2以上のガスを含むエッチングガス混合物が、プラズマ処理チャンバ2に導入され、所望のエッチング機構を達成するための条件が制御される。チャンバ内のプロセスパラメータは、少なくとも1つの(より典型的には複数の)デバイスのセットによって制御されて調整することができ、その例が図1に概略的に示されている。この例では、ツール1は、プラズマ処理チャンバ2に第1及び第2の入力ガスG1及びG2をそれぞれ供給するための2つの入力ガス供給部4(a)及び4(b)を備える。本発明の幾つかの実施形態は、2よりも多いガスを含むエッチングガス混合物を採用しており、プラズマ処理ツール1は、エッチングガス混合物の成分ガスのそれぞれを供給するように各々が構成された何れかの数のガス供給部を有することができる点は理解されるであろう。チャンバ2への各ガスの流入は、バルブ6(a)及び6(b)並びにそれぞれの質量流量コントローラ(図示せず)によって制御される。この場合も同様に、エッチングガス混合物によって2よりも多いガスが含まれる場合には、追加の質量流量コントローラを設けてもよい。未反応の入力ガス及び何れかの反応生成物を含む排出ガスは、ダクト7及び関連のポンプ8を介してプラズマ処理チャンバ2から除去され、ポンプ8は通常、チャンバ内の圧力を真空に近い条件にまで低下させることが可能である。チャンバ圧力は、排気ポンプシステム、特にポンプ速度及びチャンバからポンプまでのポンプラインの「コンダクタンス」(これは、ポンプラインの幾何形状に関連する要因である)によって主要部分にて決定されることになる。しかしながら、処理中にプラズマが生成されたとき、及び/又はエッチング(又は後述するような実際に蒸着)が起こったときに、チャンバ内部でガス種が失われるか又は生成される可能性があり、これにより圧力に影響を与える。このような変動を調整するために、当該技術分野で知られているように、好ましくは自動圧力制御バルブ8aが提供される。バルブ8aは、ポンプラインのコンダクタンスを変化させ、これにより、プラズマが衝突して材料がエッチングされるときに、チャンバ圧力を所望のレベルで実質的に一定に維持することができる。
【0060】
プラズマ処理ツール1は、放電によりプラズマ処理チャンバ内にプラズマを発生させるためのプラズマ源を備える。ここでは、プラズマ源は、プラズマ処理チャンバ2を囲むコイル9を含む誘導結合型プラズマ源として描かれており、RFマッチングユニット11を介して電源10からRF電力が供給される。RFマッチングユニット11は、電源からプラズマへの電力の伝達効率を最大にするために、プラズマのインピーダンスをRF電源10のインピーダンスに整合させるように構成されている。適切なマッチングユニットの例は、国際公開第2010/073006号に開示されている。容量結合プラズマ(CCP)又はマイクロ波プラズマ源のような他のタイプのプラズマ源を代わりに使用することもできる。
【0061】
ウェーハ30は、使用時に基板テーブル14上に搭載される。以下に説明するように、バイアス電圧が使用中に基板30に印加され、これは、電圧源12を基板テーブル14に接続することによって達成される。RF電源12が使用される場合、電源12から基板テーブル14への電力の良好な結合を保証するために、好ましくは、自動インピーダンス整合ユニット(AMU)を提供することができる。ツール1は更に、基板の処理温度を調整するためのヒータ及び/又は冷却システムなどの温度制御ユニット16を含むことができる(プラズマ処理チャンバ及びプラズマ源の加熱及び/又は冷却のための追加のデバイスを設けて、プロセス制御を支援し、及び/又はハードウェア安定性を維持することができる)。例えば、主としてエッチングが実施される場合、ウェーハ30に冷却剤が供給され、イオン衝突中及び/又は発熱化学反応中に基板に伝達されるかなりの量のエネルギーが基板温度の望ましくない上昇を引き起こすのを防ぐことができる。冷却剤は、例えばヘリウムとすることができ、基板テーブル14に近接するウェーハ30の表面30bに供給することができる。好ましくは、ヘリウムは、約2Torrの圧力で表面30bに供給される。
【0062】
上記で説明したように、本発明の幾つかの実施形態は、エッチングステップの後に、ウェーハ30の表面30a上にエピタキシャル層を成長させるステップを含む。このステップは、ガス供給部4(a)、4(b)が、ウェーハの表面上にエピタキシャル層を形成するのに適した材料及び/又は前駆体を供給するように構成されたプラズマ処理ツール1を使用して実行することができる。勿論、エピタキシャル層を成長させる他の方法も、これらの実施形態で採用することができる。
【0063】
デバイスは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などのコントローラ20からの命令で動作する。場合によっては、2以上のコントローラを設けることができ、各コントローラは、デバイスの1つ又はサブセットを制御する。コントローラはまた、ユーザからの入力を受け取り及び/又は出力を返すためのコンピュータワークステーション25などのユーザインタフェースデバイスに接続される。
【0064】
図1では、様々なデバイスとコントローラ20との間のデータ接続が破線で示されている。実際には、CANbusブリッジのようなネットワークとして実装することができ、このネットワークは、デバイスの各々並びにユーザインタフェース25への接続を有する。バスは、典型的には、シリアルデータチャネル(RS485など)のような1又は2以上のデータチャネルと、オプションとして1又は2以上の電力チャネルとを含む、複数のネットワークチャネルを備える。コントローラ20は、バスを介してコマンドを送出し、その各コマンドは、デバイスの1又は2以上にアドレス指定され、当該デバイスが実施すべき1又は2以上のプロセスパラメータに関する命令を含む。デバイスを制御するためのコマンドの送出に使用できるネットワークプロトコルの例は、国際公開第2010/100425号に示されている。勿論、当業者には理解できるように、他の多くのネットワーク実装が可能である。
【0065】
図2は、本発明の第1、第2及び第3の態様による、SiCウェーハを作製し、その上に後続のエピタキシャル成長を行う方法を示している。本方法は、図1の例示的なプラズマ処理ツール1を参照して説明されるが、同じ方法が他の装置で実施できることは理解されるであろう。
【0066】
ステップ201では、図1に示すように、プラズマ処理チャンバ2内の基板テーブル14上にSiCウェーハ30を載置する。SiCウェーハ30は、好ましくはSiCのみからなるが、例えばドーパントのような何らかの不純物が存在してもよい。ウェーハ30のSiCは、好ましくは非エピタキシャル成長し、例えば融液から成長することができる。SiCウェーハ30は、基板テーブル14から遠位の表面30aがマスクされていないように、すなわち、プラズマ処理チャンバ2内でプラズマが生成されたときに、表面30aの実質的に全てがプラズマに露出されるようなパターン付きフォトレジスト層などのマスクによって覆われないように、基板テーブル14上に位置付けられる。通常、ウェーハ30は、より大きな円筒形インゴットからスライスすることによって得られた、薄いディスクの形状となる。このようにして製造されたウェーハは、通常、100~200ミリメートル(mm)の範囲の直径と200~700ミクロン(pm)の範囲の厚さとを有する。ステップ201の間、マスクされていない表面30aの算術平均粗さは、好ましくは少なくとも1nmであり、好ましくはまた100nm未満、より好ましくは10nm未満である。この範囲の粗さ値は、上記で説明したように機械的に研磨された(化学機械的に研磨されていない)ウェーハの典型である。
【0067】
ウェーハ30が基板テーブル14上に載置されると、ステップ203で、ガス源4(a),4(b)からチャンバ内へのエッチングガス混合物の流れが構築され、次にステップ205で、誘導結合プラズマ源への電力供給によりこの混合物からプラズマが発生する。ステップ203でどのガスを供給されるかは、本発明の第1、第2及び第3の態様のうちどれが実行されているかに依存し、本発明の各態様を実施するのに適したエッチングガス混合物の詳細な例は、他の関連プロセスパラメータと共に後で説明する。概略の例によってこれを説明すると、本発明の第2の態様による方法の実施形態は、ステップ203の間に、1つのガス供給部4(a)からSF6などのフッ素含有ガスを、第2のガス供給部4(b)からCHF3などのポリマー形成ヒドロフルオロカーボンを供給するステップを含むことができる。
【0068】
プラズマがプラズマ源によって持続される限り、プラズマは、ウェーハ30のマスクされていない表面30aをエッチングする。表面30aがマスクされていないので、エッチングは、マスクされていない表面30aにわたって実質的に均一な方法で起こり、従って、ブランケットエッチングと記述することができる。プラズマは、所定の時間期間、典型的には約10~20分の範囲内でプラズマ源によって持続することができる。この時間期間中、上述したプラズマ処理ツールの特徴を用いて、基板テーブルバイアス電力、コイル9によって供給されるプラズマ出力、プラズマ処理チャンバ2内の圧力、及びウェーハ30の温度などのパラメータを制御することができる。任意選択的に、プラズマがチャンバ内に存在する間、基板テーブル14は、電圧でバイアスすることができる。従って、ステップ207(これは、破線で表される、任意選択である)において、プラズマ源がプラズマに電力を供給し続けている間に、バイアスが第1の電力P1で基板テーブル14に印加される。同じ電力P1がエッチングの持続期間中維持されるが、幾つかの好ましい実施構成では、上述のように、バイアス電力はエッチングの最終部分に対して低減される場合もある。従って、本方法は、任意選択的に、任意ステップ209の間にバイアス電力をP1よりも低い値、好ましくはP1の半分未満の値まで低減することを含むことができる。例えば、典型的には、P1は400~1000Wの範囲にあり、P2は50~200Wの範囲にある。低減されたバイアス電力P2は、好ましくは1~5分の範囲の時間期間持続し、エッチングの総持続時間は、上述のように10~20分の範囲にある。
【0069】
エッチングが必要な時間量だけ実行されると、ステップ211でプラズマを消滅させることができる。これは、プラズマ処理チャンバ2からエッチングガス混合物を排気することによって、及び/又はプラズマ源のコイル9への電力供給をオフにすることによって達成することができる。任意選択的に、次にステップ213において、エッチングされた表面上にエピタキシャル層213を成長させることができる。上述のように、これは、作製されたウェーハ30をエピタキシャル成長用のチャンバに移送することによって実行することができ、このチャンバは、エッチングが行われたのと同じプラズマ処理ツール1の一部として提供される別のチャンバ、又は完全に別のデバイスの一部とすることができる。このステップは、必ずしも先行するステップと同じエンティティによって、及び/又は同じ装置、施設、又はサイトにおいて実行される訳ではない点に留意されたい。例えば、ウェーハ30は、ウェーハの製造業者によってステップ201~211により作製され、その後、エピタキシャル成長ステップ213を実行する顧客に出荷することができる。本発明による方法は、SiCウェーハ30の表面粗さをエピタキシャル成長を行うのに適した値まで低減することができるので、ステップ211とステップ213の間(又は実際に他の何れかの時間)に化学機械研磨ステップを実行する必要はない。エピタキシャル層は、SiCの層、又はSiC表面上にエピタキシャル層を形成することができる何れかの他の材料とすることができる。このプロセスは、同じ材料及び/又は異なる材料の追加のエピタキシャル層を形成するステップを含み、これをエッチングして、トランジスタ及びダイオードなどのデバイスを製造することができる。
【0070】
図3(a)~(c)は、本発明による作製の様々な段階におけるSiCウェーハ30の断面図である。図3(a)は、例えば図2の方法のステップ201の間のエッチング前のウェーハ30を示す。エピタキシャル成長のために作製される表面30aは、ウェーハ30のスライス、ラッピング及び研磨によって引き起こされた損傷及び/又は表面30aにおける欠陥の存在の結果とすることができる、隆起及び窪み(ただし、これらはかなり誇張されており、ウェーハ30の厚さに対して縮尺通りではない)を有する起伏のあるプロファイルを有することが分かる。この図面の破線は、表面30aの算術平均粗さRaを示しており、これは、実線で示される表面の公称面からの実際の表面プロファイルの平均偏差である。Raは、ウェーハが本発明によってエッチングに晒される前に、典型的には1~100nm、好ましくは1~10nmの範囲にある。更に、幾つかの実施形態では、Raは、エッチングが行われる前に少なくとも5nmとすることができる。簡単にするために、表面30bのプロファイルは、ここでは図示されていないが、この表面は、表面30aと同じ処理を受けたという条件下で、典型的には同様の粗さを有することになることは理解されるであろう。好ましくは、エッチングされるべき表面30aは、Si面、すなわち、Si原子の層にて終端する面である。これは、単に、結晶が製造される際に、ウェーハ30の平面が、結晶格子の結晶軸に対して好適に配向されることを確保することによって達成することができる。
【0071】
図3(b)は、本発明による方法の間、例えば図2の例示的な方法のステップ211の間又はその後にエッチングされた後のウェーハ30を示す。エッチングされた表面30a′の表面粗さRaは、初期値Raよりかなり小さいことが分かる。上述のように、Raは、好ましくは3nm未満、より好ましくは1nm未満、なおより好ましくは0.5nm未満である。
【0072】
図3(c)は、本発明の幾つかの実施形態において、例えば図2のプロセスにおけるステップ213の間に行われるように、エッチングされた表面30a′上にエピタキシャル層31が成長した後のウェーハ30を示す。
【0073】
ここで、本発明の第1、第2及び第3の態様の各々についての実施形態による方法によって達成されたSiCウェーハの表面粗さの低減を示す実験結果と、これらの結果が達成されたプロセスパラメータとを示す。これらをそれぞれプロセス1、2、3として参照する。各プロセスにおいて、図2のプロセスのステップ201、203、205は、エッチングされる前と後のマスクされていない表面30aの算術平均粗さが測定されたSiCウェーハ30を用いて行われた。使用したSiCウェーハ30は、物理的気相輸送によって製造され、100~150nmの範囲の直径を有し、エッチングされた表面30aは、Si面及びC面の両方(すなわち、Si原子及びC原子それぞれで終端する面)を含んでいた。
【0074】
実験パラメータ及び得られた結果は、表1(a)と表1(b)、表2(a)と表2(b)、及び表3(a)と表3(b)のペアで示されている。各表は、エッチングガス混合物中のガスがプラズマ処理チャンバ2に導入される流量(標準立方センチメートル/分(seem))、プラズマ処理チャンバ2内部のプラズマの圧力、プラズマ源のコイル9に供給される電力が記載されており、各プロセスに対する基板テーブル14に印加されたバイアスの電力とエッチングの時間期間は、ステップ201のエッチング前のマスクされていない表面30aの算術平均粗さRa及びステップ211のエッチング後の同表面の算術平均粗さRaの測定値と共に、これらの表に記載されている。プロセス1、2及び3の各々において、ウェーハ30及び基板テーブル14がエッチング中に望ましくない高温に加熱されないように、基板テーブルに近接するウェーハ30の表面30bに(裏面冷却構成で)2Torrの圧力でヘリウムが供給された。例示的なプロセス1、2及び3について、プラズマ処理チャンバ2内の圧力、コイル9に供給される電力、基板テーブルに印加されるバイアス電力及びヘリウムの圧力の値は各々、エピタキシャル成長に対してSiCウェーハ30の表面30aを成功裏に作製しながら、本明細書で述べた値の少なくとも±20%だけ変化することができることが判明している。
【0075】
表1(a)及び表1(b)は、本発明の第1の態様の実施形態に従って各々行われた2つの実験、すなわち、実験番号1及び2について上記の実験パラメータと得られた結果とを示している。これらのプロセスのうちの1つでは、H2及びArのみから構成されるエッチングガス混合物が使用され、他の2つでは、エッチングガス混合物は、H2、SF6及びArから構成されていた。上述のように、本発明の第1の態様は、エッチングガス混合物中にH2が存在することのみを必要とするが、SF6のようなフッ素含有ガス及びArのような希ガスの両方は、好ましい添加剤である。
【0076】
表1(a)
【0077】
表1(b)
【0078】
表2(a)及び表2(b)は、本発明の第2の態様の実施形態に従って行われた2つの実験、すなわち、実験番号3及び4について上記の実験パラメータと得られた結果とを示している。これらのプロセスで使用されたエッチングガス混合物は、CHF3及びSF6から構成されていた。これらの例示的なプロセスでは、1つのヒドロフルオロカーボン及び1つのフッ素含有ガスのみが、エッチングガス混合物中に存在した。しかしながら、何れかの数の他のフルオロカーボン及び/又はヒドロフルオロカーボンが、この実施構成のために選択されたCHF3の代替物又は追加として提供することができる。また、SF6以外の他のフッ素含有ガスも利用することができる。
【0079】
表2(a)
【0080】
表2(b)
【0081】
表3(a)及び表3(b)は、本発明の第3の態様の実施形態に従って行われた3つの実験、すなわち、実験5及び実験6について上記の実験パラメータと得られた結果とを示している。これらのプロセスで使用されたエッチングガス混合物は、HBr、O2及びSF6から構成されていた。上述のように、本発明の第3の態様を実行するためのエッチングガス混合物の必須成分は、HBrとO2だけであるが、SF6のようなフッ素含有ガスの存在は好ましい。
【0082】
表3(a)
【0083】
表3(b)
【0084】
実験1~6を実施するのに使用された例示的なプロセスの各々は、エッチング表面30aの表面粗さをエピタキシャル成長に適した値まで低減し、ひいては表面30aをその後に続くエピタキシャル成長に成功裏に作製したことが分かる。
【符号の説明】
【0085】
30 ウェーハ
30a 表面
30b 表面
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
【国際調査報告】