(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】N相電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 11/225 20160101AFI20230926BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20230926BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H02K11/225
G01D5/245 110A
G01D5/245 110Z
H02K21/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518189
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021075933
(87)【国際公開番号】W WO2022063772
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ-エスエヌエール ルルモン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ボワシエール,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ベルマン ノエル,カンタン
【テーマコード(参考)】
2F077
5H611
5H621
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077AA41
2F077AA46
2F077CC02
2F077NN02
2F077PP12
2F077PP14
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB07
5H611PP07
5H611QQ01
5H611RR01
5H611UA04
5H621BB09
5H621BB10
5H621HH03
(57)【要約】
本発明は、N相電気機械に関する。当該N相電気機械は、固定部材に対して運動するように装着された可動部材(1)と、前記可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目を決定するためのシステムと、情報の前記項目によって管理される電力供給システム(2)と、を備える。前記決定システムは、磁気トラックを有するエンコーダ(3)を備え、前記固定部材は、1相当たり少なくとも1つの伝導性コイルを備えるアーマチュア(7)を有し、複数の前記コイルは、前記トラックに磁気的に結合されており、前記アーマチュア(7)は、複数のパッド(8)の周りにそれぞれコイルが配置された当該複数のパッド(8)を有し、複数の前記パッドの各々は、複数の前記コイル(9)への電力の供給によって、前記エンコーダ(3)が運動し、および/または、前記エンコーダ(3)の運動によって、電力が複数の前記コイル(9)に供給されるように、前記コイルと前記エンコーダ(3)との間の磁束が方向付けられるよう、複数の凹部によって離隔した複数の歯を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対して運動するように装着された可動部材(1)と、
前記可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目を決定するためのシステムと、
情報の前記項目によって管理される電力供給システム(2)と、
を備える、N相電気機械であって、
前記決定システムは、
前記可動部材(1)に固定されたエンコーダ(3)であって、当該可動部材の運動を表す信号を生成することができるエンコーダ(3)と、
前記固定部材に固定されたセンサ(4)であって、前記エンコーダによって生成される前記信号を読み取ることによって情報の前記項目を決定することができるセンサ(4)と、
を備え、
前記エンコーダは、擬似正弦磁場を送出するように配置された幅L
pを有するN極およびS極(6)の一連のn
pp個の対によって形成された磁気トラック(5)を有し、
前記固定部材は、1相当たり少なくとも1つの伝導性コイル(9)を備える強磁性材料から作製されたアーマチュア(7)を有し、
複数の前記コイルは、前記エンコーダ(3)の前記トラック(5)に磁気的に結合されるとともに、前記電力供給システム(2)に電気的に接続されており、
前記アーマチュア(7)は、複数のパッド(8)の周りにそれぞれコイル(9)が配置された当該複数のパッド(8)を有する、N相電気機械において、
複数の前記パッドは、前記磁気トラック(5)に対向して配置された自由表面を各々有するとともに、前記エンコーダ(3)との境界領域に突出しており、
前記自由表面は、幅L
eを有する複数の凹部(11)によって離隔した幅L
dを有する複数の歯(10)を有し、
前記幅L
dおよび/または前記幅L
eは、N*L
pに対するそれらの比率が偶数または偶数の逆数のいずれでもないようになっており、これにより、複数の前記コイル(9)への電力の供給によって、前記エンコーダ(3)が運動し、および/または、前記エンコーダ(3)の運動によって、電力が複数の前記コイル(9)に供給されるよう、前記コイル(9)と前記エンコーダ(3)との間の磁束が方向付けられることを特徴とする、N相電気機械。
【請求項2】
前記エンコーダ(3)は、回転可能に装着された可動部材(1)に固定された環状磁気トラック(5)を有し、
1つの相の前記コイル(9)は、
N=2の場合は、90°/N*n
ppと270°/N*n
ppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
N>2の場合は、270°/N*n
ppと450°/N*n
ppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
別の相のコイル(9)の幾何学的中心から角度方向に離隔した幾何学的中心を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
1つの相のコイル(9)の前記幾何学的中心は、
N=2の場合は、135°/N*n
ppと225°/N*n
ppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、特に、180°/N*n
ppのオーダーの角度の整数倍の角度だけ、
N>2の場合は、315°/N*n
ppと405°/N*n
ppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、特に、360°/N*n
ppのオーダーの角度の整数倍の角度だけ、
別の相のコイル(9)の前記幾何学的中心から角度方向に離隔していることを特徴とする、請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記エンコーダ(3)は、並進可能に装着された可動部材(1)に固定された線形磁気トラック(5)を有し、
1つの相の前記コイル(9)は、
N=2の場合は、0.5L
p/N*2n
ppと1.5L
p/N*2n
ppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、
N>2の場合は、L
p/N*n
ppと3L
p/N*n
ppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、
別の相のコイル(9)の幾何学的中心から直線方向に離隔した幾何学的中心を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項5】
1つの相のコイル(9)の前記幾何学的中心は、
N=2の場合は、0.75L
p/N*2n
ppと1.25L
p/N*2n
ppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、特に、L
p/N*2n
ppのオーダーの距離の整数倍の距離だけ、
N>2の場合は、1.5L
p/N*n
ppと2.5L
p/N*n
ppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、特に、2L
p/N*n
ppのオーダーの距離の整数倍の距離だけ、
別の相のコイル(9)の前記幾何学的中心から直線方向に離隔していることを特徴とする、請求項4に記載の電気機械。
【請求項6】
前記エンコーダ(3)の複数の磁極(6)の各々の前記幅L
pは、0.5mm~20mmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記エンコーダ(3)の複数の磁極(6)の対の数n
ppは、2以上であり、特に、6より大きいことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項8】
前記センサ(4)は、前記エンコーダ(3)の前記磁気トラック(5)から一定の読み取り距離に配置された少なくとも2つの感知素子を備え、
複数の前記素子の各々は、前記トラックによって送出される前記場に応じた信号を発するように適合されており、
前記決定システムは、
同一の振幅を有する直角位相の2つの信号であって、各々が前記磁場を表す2つの信号を供給するように構成された、複数の前記感知素子が発する複数の前記信号を処理するための装置と、
直角位相の複数の前記信号から、前記可動部材(1)の運動に関する情報の前記項目を計算するための装置と、
を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項9】
前記計算装置は、前記エンコーダ(3)の運動に関する情報の前記項目の分解能を増大させることを可能にする補間手段を備えることを特徴とする、請求項8に記載の電気機械。
【請求項10】
1電気相当たり複数のコイル(9)‐パッド(8)アセンブリを備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項11】
プリント回路(12)を備え、
前記プリント回路(12)が前記アーマチュア(7)上に軸方向に積み重ねられてステータが形成されており、
ロータを形成する前記エンコーダ(3)は、前記プリント回路の上に軸方向に配置されて軸方向磁束機械を形成しており、
前記センサ(4)は、前記エンコーダによって送出される情報の前記項目を軸方向に読み取ることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項12】
複数の前記コイル(9)の各々は、少なくとも1つの伝導性ターン(13)を含むプリント回路(12)の複数の層から形成されており、
複数の前記ターンは、複数の前記コイル(9)が形成されるように互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項13】
複数の前記歯(10)の前記幅L
dは、複数の前記凹部(11)の前記幅L
eと同様であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項14】
複数の前記歯(10)の前記幅L
dのN*L
pに対する比率および/または複数の前記凹部(11)の前記幅L
eのN*L
pに対する比率は、±40%の製造許容差内において、単位または分数であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項15】
複数の前記凹部(11)は、複数の前記歯(10)の前記幅L
d以上の深さを有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項16】
前記センサ(4)および複数の前記コイル(9)は、プリント回路(12)の表面に設置されていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項17】
前記電力供給システム(2)は、前記可動部材(1)の運動を駆動するために、および/または、複数の前記コイル(9)を介してその電力供給を制御するために、前記決定システムによって送出される情報の前記項目を用いることができることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、N相電気機械に関する。当該N相電気機械は、固定部材に対して運動するように装着された可動部材と、前記可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目を決定するためのシステムと、情報の前記項目によって管理される電力供給システムと、を備える。
【0002】
特定の一用途では、例えば自動車の運転支援ユニットに属する装置が電動化されるように、当該機械は、前記可動部材の運動を生じるよう、電力供給される。別の一用途では、当該機械は、システムに電力供給することができるように、前記可動部材の運動によって電気を発生させる。
【0003】
特に、永久磁石同期電動機(permanent magnet synchronous electric motor)タイプの電気機械が知られている。この場合において、前記固定部材は、1相当たり少なくとも1つの伝導性コイルを備える強磁性材料から作製されたアーマチュアを有し、前記可動部材は、1相当たり少なくとも1つの永久磁石とともに運動するように固定されている。
【0004】
このタイプの電気機械では、特に、モータ機械の電源(電力供給)を駆動することができるように、および/または、発電機によって供給される電気を制御することができるように、前記可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目(例えば、その位置、その速さ、その加速度またはその運動方向等のパラメータ)を、リアルタイムに最適な信頼性で知ることが望ましい場合があるだろう。
【0005】
そのようにするために、決定システムが取り付けられた電気機械が知られている。当該決定システムは、前記可動部材に固定されたエンコーダであって、当該可動部材の運動を表す信号を生成することができるエンコーダと、前記固定部材に固定されたセンサであって、前記エンコーダによって生成される前記信号を読み取ることによって情報の前記項目を決定することができるセンサと、を備える。
【0006】
情報の決定された前記項目の最適な分解能を可能にする一実施形態によれば、前記エンコーダは、擬似正弦磁場(pseudo-sinusoidal magnetic field)を送出するように配置されたN極およびS極の一連の対によって形成された磁気トラックを有し、前記センサは、前記エンコーダの前記磁気トラックから一定の読み取り距離(reading distance)に配置された少なくとも2つの感知素子を備える。
【0007】
それでもやはり、かかるエンコーダは、前記電気機械の複数の磁石から分離しており、情報の決定された前記項目による前記電力供給システムの良好な管理には、特に、当該機械の磁場がゼロと交わるときに前記センサの電気的位置の測定を調整することによる、または、これらの2つの位置間の角度差を決定することによる、当該機械の前記可動部材のインデキシング(indexing)が必要となる。
【0008】
さらに、前記電気機械の運動と、運動に係る情報の前記項目の決定とは、2つの別個の機能であり、公知のソリューションでは、別々の部品の2つのセットを有することが必要となる。このことは、コンパクトさには不利である。
【0009】
本発明は、特に、次の電気機械を提供することによって、従来技術の課題を解決することを目的とする。この電気機械では、電力供給の機能と、可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目の決定の機能とが共同で実行され、その結果、特に、当該決定を可能にするエンコーダによる可動部材のインデキシングが回避される。
【0010】
この目的のために、本発明は、固定部材に対して運動するように装着された可動部材と、前記可動部材の運動に関する情報の少なくとも1つの項目を決定するためのシステムと、情報の前記項目によって管理される電力供給システムと、を備える、N相電気機械であって、前記決定システムは、前記可動部材に固定されたエンコーダであって、当該可動部材の運動を表す信号を生成することができるエンコーダと、前記固定部材に固定されたセンサであって、前記エンコーダによって生成される前記信号を読み取ることによって情報の前記項目を決定することができるセンサと、を備え、前記エンコーダは、擬似正弦磁場を送出するように配置された幅Lpを有するN極およびS極の一連のnpp個の対によって形成された磁気トラックを有し、前記固定部材は、1相当たり少なくとも1つの伝導性コイルを備える強磁性材料から作製されたアーマチュアを有し、複数の前記コイルは、前記エンコーダの前記トラックに磁気的に結合されるとともに、前記電力供給システムに電気的に接続されており、前記アーマチュアは、複数のパッドの周りにそれぞれコイルが配置された当該複数のパッドを有し、複数の前記パッドは、前記磁気トラックに対向して配置された自由表面(free surface)を各々有するとともに、前記エンコーダとの境界領域(interface)に突出しており、前記自由表面は、幅Leを有する複数の凹部によって離隔した幅Ldを有する複数の歯を有し、前記幅Ldおよび/または前記幅Leは、複数の前記コイルへの電力の供給によって、前記エンコーダが運動し、および/または、前記エンコーダの運動によって、電力が複数の前記コイルに供給されるように、前記コイルと前記エンコーダとの間の磁束が方向付けられるよう、N*Lpに対するそれらの比率が偶数または偶数の逆数のいずれでもないようになっている、N相電気機械を提供する。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる以下の説明において、明らかになるだろう。
-
図1aおよび
図1bは、本発明の一実施形態に係る電気機械の構成要素の分解概略図である;
-
図2は、
図1aおよび
図1bに係る電気機械の構成要素の上面視による概略図である;
-
図3aおよび
図3bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る電気機械のためのコイルを示す;
-
図4は、本発明に係る電気機械におけるアーマチュアに対するエンコーダの構成を示す。
【0012】
これらの図を参照すると、固定部材に対して運動するように装着された可動部材1を備えるN相電気機械が記載されている。Nは、1より大きい整数であり、N相電気機械は、特に、2相電気機械または3相電気機械に関する。
【0013】
一用途によれば、例えば自動車の運転支援ユニットに属する装置が電動化されるように、当該機械は、可動部材1の運動を生じるよう、電力供給される。特に、電気機械は、永久磁石同期電動機から構成されてもよい。別の一用途では、当該機械は、可動部材1の運動によって電気を発生させる。
【0014】
電気機械は、電力供給システム2を備える。電力供給システム2は、
-モータ機械の場合にあっては、可動部材1の運動を、特にトルクおよび運動の速さに関して制御することができるように管理され、および/または、
-発電機の場合にあっては、その電力供給を、特に生成される電圧の周波数に関して制御するように管理される。
【0015】
そのようにするために、電気機械は、可動部材1の運動に関する情報の少なくとも1つの項目を決定するためのシステムを備え、当該システムは、特に、前記可動部材の位置に関する情報の前記項目を送出するように構成されており、情報の前記項目は、電力供給システム2によって、その管理のために用いられる。情報の決定された項目はまた、可動部材1の速さ、加速度および/または運動方向に関するものであってもよい。
【0016】
決定システムは、可動部材1とともに運動するように固定されたエンコーダ3であって、当該可動部材1の運動を表す信号を生成することができるたエンコーダ3と、前記固定部材に固定されたセンサ4であって、前記エンコーダによって生成される前記信号を読み取ることによって情報の前記項目を決定することができるセンサ4と、を備える。
【0017】
情報の決定された前記項目の最適な分解能を可能にする一実施形態によれば、エンコーダ3は、擬似正弦磁場を送出するように配置された幅Lpを有するN極およびS極6の一連のnpp個の対によって形成された磁気トラック5を有し、センサ4は、エンコーダ3の磁気トラック5から一定の読み取り距離に配置された少なくとも2つの感知素子を備える。
【0018】
特に文献EP-1 403 622から知られる一実施形態によれば、エンコーダ3は、特に絶対位置に係る情報の項目の決定を可能にする二次磁気トラックを有してもよい。特に、エンコーダのデュアルトラック(dual-track)の性質によって、モータの磁極の一対ごとに基準パルスを生成することが可能になる。これにより、その駆動がより容易になる。
【0019】
例えば、エンコーダ3は、複数の磁極6が磁石上に形成された当該磁石によって形成され、特に、少なくとも1つの磁気トラック5を形成することによって形成される。特に、前記磁石は、例えばプラスチック材料またはエラストマー材料をベースとして作製されたマトリクス(matrix)を含んでもよい。当該マトリクス中では、磁性粒子、特に、NdFeB等の希土類粒子またはフェライト粒子が分散していてもよい。これらは、一連の磁極6に従って磁化されている。
【0020】
有利には、情報の送出された前記項目の分解能に関しては、エンコーダ3の複数の磁極6の各々の幅Lpは、0.5mm~20mmであり、エンコーダ3の複数の磁極6の対の数nppは、2以上であり、特に、6より大きくてもよい。図示の実施形態では、N極およびS極6の36個の対によって、エンコーダ3の磁気トラック5が形成されている。
【0021】
センサ4の複数の感知素子の各々は、トラック5によって送出される場に応じた信号を発することができ、前記決定システムは、
-同一の振幅を有する直角位相の2つの信号であって、各々が前記磁場を表す2つの信号を供給するように構成された、複数の前記感知素子が発する複数の前記信号を処理するための装置と、
-直角位相の複数の前記信号から、前記可動部材1の運動に関する情報の前記項目を計算するための装置と、
を備える。
【0022】
一実施形態によれば、文献WO-2006/064169には、同一の振幅を有する直角位相のそれぞれSINおよびCOSの2つの信号であって、各々、トラック5によって送出される磁場を表す2つの信号を送出するように構成されたセンサ4が記載されている。
【0023】
特に、センサ4は、特に感磁プローブ(例えば、ホール効果プローブ)、および/または、トンネル効果磁気抵抗(tunnel effect magnetoresistor:TMR)、異方性磁気抵抗(anisotropic magnetoresistor:AMR)もしくは巨大磁気抵抗(giant magnetoresistor:GMR)に基づくプローブの中から選択された、少なくとも1つの感知素子を備えてもよい。
【0024】
さらに、計算装置は、エンコーダ3の運動に関する情報の前記項目の分解能を増大させることを可能にする補間手段を備えてもよい。
【0025】
前記固定部材は、複数のパッド8を有する強磁性材料から作製されたアーマチュア7を有し、複数の前記パッドは、磁気トラック5に対向して配置された自由表面を各々有するとともに、エンコーダ3との境界領域に突出している。特に、複数のパッド8は、アーマチュア7と一体の強磁性ピース(片)として作製される。複数のパッド8の自由表面とエンコーダ3のトラック5との間のエアギャップ距離は、フェライト系磁石では、1mmを上限とするオーダーである。また、希土類系磁石では、最大で10mmであり得る。
【0026】
アーマチュア7は、パッド8の周りに配置された、1相当たり少なくとも1つの伝導性コイル9を備え、複数の前記コイルは、エンコーダ3のトラック5に磁気的に結合されるとともに、電力供給システム2に電気的に接続されている。このため、エンコーダ3は、特に磁束を送出することによって、電気機械の動作のための永久磁石として使用される。これにより、同一の手段により、電力供給の機能および可動部材1の運動に関する情報の少なくとも1つの項目の決定の機能の達成を組み合わせることが可能になる。さらに、エンコーダ3が二次磁気トラックを有する場合には、当該二次磁気トラックもまた、当該機械の動作に関与する。
【0027】
1電気相当たり1つのコイル9と1つのパッド8とが設けられてもよい。別の一実施形態によれば、1電気相当たり複数のコイル9‐パッド8アセンブリが設けられてもよい。
【0028】
図示の実施形態によれば、エンコーダ3は、回転可能に装着された可動部材1に固定された環状磁気トラック5を有する。特に、複数の相の複数のコイル9は、直列および/または並列に電気的に接続されるとともに、エンコーダ3のトラック5の周りに互い違いに角度方向に分布してもよい。1つの相の複数のコイル9の幾何学的中心は、360°/N*nppのオーダーの角度の整数倍の角度だけ、角度方向に離隔していることが有利である。
【0029】
図示の実施形態では、電気機械は、2つの相を有し、1相当たり2つのコイル9‐パッド8アセンブリを有する。1つの相の複数のコイル9は、互いに他方から実質的に180°のところに配置されている。
【0030】
電力供給システム2の標準的な管理による電気機械の動作が可能となるように、1つの相のコイル9の幾何学的中心は、
N=2の場合は、90°/N*nppと270°/N*nppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
N>2の場合は、270°/N*nppと450°/N*nppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
別の相のコイル9の幾何学的中心から角度方向に離隔している。
【0031】
特に、1つの相のコイル9の幾何学的中心は、
N=2の場合は、135°/N*nppと225°/N*nppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
N>2の場合は、315°/N*nppと405°/N*nppとの間に含まれる角度の整数倍の角度だけ、
別の相のコイル9の幾何学的中心から角度方向に離隔している。
【0032】
一実施形態によれば、1つの相のコイル9の幾何学的中心は、
N=2の場合は、180°/N*nppのオーダーの角度の整数倍の角度だけ、
N>2の場合は、360°/N*nppのオーダーの角度の整数倍の角度だけ、
±50%の角度許容差(angle tolerance)で、別の相のコイル9の幾何学的中心から角度方向に離隔している。
【0033】
図示の実施形態では、それぞれ1つの相の複数のコイル9は、互いにその他のコイルから約90°(より具体的には、82.5°)のところに配置されており、その結果、磁気トラック5の周りに、第1の相のコイル9、他の相のコイル9、第1の相のコイル9、他の相のコイル9の互い違いの連続が形成されている。
【0034】
別の一実施形態によれば、エンコーダ3は、並進可能に装着された可動部材1に固定された線形磁気トラック5を有し、
1つの相のコイル9は、
N=2の場合は、0.5Lp/N*2nppと1.5Lp/N*2nppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、
N>2の場合は、Lp/N*nppと3Lp/N*nppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、
別の相のコイル9の幾何学的中心から直線方向に離隔した幾何学的中心を有する。
【0035】
特に、1つの相のコイル9の幾何学的中心は、
N=2の場合は、0.75Lp/N*2nppと1.25Lp/N*2nppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、特に、Lp/N*2nppのオーダーの距離の整数倍の距離だけ、
N>2の場合は、1.5Lp/N*nppと2.5Lp/N*nppとの間に含まれる距離の整数倍の距離だけ、特に、2Lp/N*nppのオーダーの距離の整数倍の距離だけ、
別の相のコイル9の幾何学的中心から直線方向に離隔している。
【0036】
図4を参照すると、複数のパッド8の各々の自由表面は、幅L
eを有する複数の凹部11によって離隔した幅L
dを有する複数の歯10を有し、幅L
dおよび/または幅L
eは、複数のコイル9への電力の供給によって、エンコーダ3が運動し、および/または、エンコーダ3の運動によって、電力が複数のコイル9に供給されるように、コイル9とエンコーダ3との間の磁束が方向付けられるよう、N*L
pに対するそれらの比率が偶数または偶数の逆数のいずれでもない(すなわち、L
e/N*L
ppまたはL
d/N*L
ppの比率が、2、4...に等しくなく、かつ、1/2、1/4、...に等しくない)ようになっている。
【0037】
特に、歯10は、連続的に、同一の極性を有する磁極6に対向して、磁束を導く。これにより、アーマチュア7と可動部材1に固定されたエンコーダ3との間に相対運動の力が生じる。この力によって、モータ機械において前記可動部材の運動が生じ、または、発電機のコイル9に電流が生じる。
【0038】
したがって、これらの歯10‐凹部11アセンブリが存在することで、電気機械の動作に有用な磁束密度が増大する。その結果、運動に係る情報の決定された項目の分解能にとって十分に低減した幅Lpを有する複数の磁極6を使用できるようになる。これは、情報の前記項目の決定を可能にするエンコーダ3によって当該機械の磁気動作が与えられるため、機械的インデキシングの必要なくそのようになる。
【0039】
複数の歯10の幅Ldは、複数の凹部11の幅Leと同様であることが有利である。さらに、複数の歯10の幅LdのN*Lpに対する比率および/または複数の凹部11の幅LeのN*Lpに対する比率は、±40%の製造許容差(manufacturing tolerance)内において、単位(unitary)または分数(fractional)であってもよい。
【0040】
可動部材1の運動のトルクに反するトルクの生成を制限するために、複数の凹部11の深さは、特に歯10の幅Ld以上とすることにより、できるだけ大きくした方がよい。製造上の制約を考慮すると、凹部11の深さは、歯10の幅Ldの大きさのオーダーであってもよい。
【0041】
有利な一実施形態によれば、複数のコイル9の各々は、少なくとも1つの伝導性ターン(巻き)13を含むプリント回路12の複数の層によって形成されており、複数の前記ターンが互いに接続されて、複数のコイル9が形成されている。その結果、コイル9の有する厚さは、特に同等のパワーを有する機械の銅線による従来の巻線と比較して、低減されている。このことは、当該機械のコンパクトさにとって有利となる。さらに、銅線を巻くための特別な機械が必要であることに比べて、巻線のロバストネスが大きくなり、組立てが簡略化される。
【0042】
特に、12個のターン13の20個の層12が各々、実装されてもよい。
図3aは、直列に接続された複数のターン13の接続部14を備えるコイル9を形成する2つのターン13の2つの層12を概略的に示す。
図3bは、並列に接続された複数のターン13の複数の接続部15を備えるコイル9を形成する2つのターン13の2つの層12を表す。
【0043】
有利には、決定システム、ならびに、可動部材1を駆動するための、および/または、電力供給を制御するためのシステムは、当該機械のステータのプリント回路12上に統合されてもよい。これにより、サイズを大幅に節約し、外部駆動システムへの接続の必要性を無くすことができる。
【0044】
図面を参照すると、プリント回路12は、パッド8がそれぞれ配置される複数の開口部16を有する。特に、アーマチュア7は、パッド8がプレート17の表面に形成される当該プレート17を有する。複数のコイル9は、特に、複数のパッド8の各々が1つのコイル9の中央に延在するように設けることによって、パッド8の周りにそれぞれ配置される。
【0045】
この実施形態では、プリント回路12をアーマチュア7の上にコンパクトに軸方向に積み重ねて当該機械のステータを形成することができる。ロータを形成するエンコーダ3は、プリント回路の上に軸方向に配置されて軸方向磁束機械を形成している。センサ4は、エンコーダによって送出される情報の前記項目を軸方向に読み取る。
【0046】
特に、軸方向磁気トラック5を有するエンコーダ3は、半径方向読み取りによるその等価物よりも、製造が単純である。有利には、エンコーダ3は、エラストフェライト(elasto-ferrite)またはプラストフェライト(plasto-ferrite)から作製される。これにより、複数の磁極6の対の数を用途に応じて迅速に選択するという、大きなフレキシビリティを有することができるようになる。
【0047】
さらに、
図1は、プレート17の開口部17aおよびプリント回路12の開口部12aを通過させる、可動部材1の2つのベアリングによる回転可能な装着を表す。2つのベアリングはそれぞれ、インテグレーションベル(integration bell)19によって担持される下側ベアリング18と、エンコーダキャリア21に装着される上側ベアリング20と、である。
【0048】
センサ4および複数のコイル9は、前記センサの複数の感知素子と複数の前記コイルとの間の相対位置が定められるように、特にプリント回路12によって形成された、共通の支持体の表面に設置されることが有利である。特に、センサ4および複数のコイル9は、特にプリント回路12の製造が容易となるように、エンコーダ3の表面に対して平行な、同一の平面内に配置されてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、当該機械のロータは、積み重ねられた複数のエンコーダ3を備えてもよく、ステータは、送出されるトルクが増大するように、プリント回路12上に複数の巻線を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1a】本発明の一実施形態に係る電気機械の構成要素の分解概略図である。
【
図1b】本発明の一実施形態に係る電気機械の構成要素の分解概略図である。
【
図2】
図1aおよび
図1bに係る電気機械の構成要素の上面視による概略図である。
【
図3a】本発明の一実施形態に係る電気機械のためのコイルを示す。
【
図3b】本発明の一実施形態に係る電気機械のためのコイルを示す。
【
図4】本発明に係る電気機械におけるアーマチュアに対するエンコーダの構成を示す。
【国際調査報告】