(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(54)【発明の名称】撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
G02B13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518243
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 CN2021120141
(87)【国際公開番号】W WO2022068678
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011062860.X
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517372494
【氏名又は名称】維沃移動通信有限公司
【氏名又は名称原語表記】VIVO MOBILE COMMUNICATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1, vivo Road, Chang’an, Dongguan,Guangdong 523863, China
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】孔 ▲徳▼卿
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087NA14
2H087RA43
2H087RA44
2H087RA46
2H087UA01
(57)【要約】
本願は、感光性チップと、第1レンズ機構と、第2レンズ機構と、フィルタとを備える撮像装置であって、第1レンズ機構は、感光性チップと第2レンズ機構との間に設けられ、第2レンズ機構は、屈折・回折レンズ及び屈折率補償層を含み、屈折率補償層と屈折・回折レンズが積層され、感光性チップへの光の投射方向に屈折・回折レンズ及び第1レンズ機構が順に設けられ、フィルタは、感光性チップと第1レンズ機構との間に位置し、第2レンズ機構を通過した周囲光は、屈折・回折レンズで屈折・回折されることができ、屈折・回折された周囲光は、第1レンズ機構及びフィルタを順に通過して感光性チップに投射されることができる撮像装置を開示する。本願は、電子機器をさらに開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性チップ(100)と、第1レンズ機構(200)と、第2レンズ機構(300)と、フィルタ(400)とを備える撮像装置であって、前記第1レンズ機構(200)は、前記感光性チップ(100)と前記第2レンズ機構(300)との間に設けられ、前記第2レンズ機構(300)は、屈折・回折レンズ(310)及び屈折率補償層(320)を含み、前記屈折率補償層(320)と前記屈折・回折レンズ(310)が積層され、前記感光性チップ(100)への光の投射方向に前記屈折・回折レンズ(310)及び前記第1レンズ機構(200)が順に設けられ、前記フィルタ(400)は、前記感光性チップ(100)と前記第1レンズ機構(200)との間に位置し、前記第2レンズ機構(300)を通過した周囲光は、前記屈折・回折レンズ(310)で屈折・回折されることができ、屈折・回折された前記周囲光は、前記第1レンズ機構(200)及び前記フィルタ(400)を順に通過して前記感光性チップ(100)に投射されることができる撮像装置。
【請求項2】
前記屈折・回折レンズ(310)は、光学プラスチック構造部材であり、前記屈折率補償層(320)は、光インプリントレジスト層である請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光学プラスチック構造部材と前記光インプリントレジスト層の屈折率の差Δnは、0<Δn<0.3RIUを満たす請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記屈折率補償層(320)は、屈折率が1.3RIUより大きく1.9RIUより小さく、又は、厚さが0.005mmより大きく0.06mmより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記屈折・回折レンズ(310)の屈折率は、1.3IRUより大きく1.9RIUより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記屈折・回折レンズ(310)は、中心の厚さが0.2mmより大きく0.6mmより小さく、エッジの厚さが0.1mmより大きく0.5mmより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記屈折・回折レンズ(310)は、同心状に配置された複数の回折突起(312)を含み、隣接する2つの前記回折突起(312)の先端間の距離は、前記回折突起(312)の中心から離れる径方向に漸減する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
隣接する2つの前記回折突起(312)の先端間の距離は、1μmより大きく300μmより小さい請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記回折突起(312)の高さは、0.5μmより大きく40μmより小さい請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記屈折・回折レンズ(310)は、ベース層(311)をさらに含み、前記回折突起(312)は、前記ベース層(311)に設けられた請求項7に記載の撮像装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の撮像装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2020年9月30日に中国特許庁に出願された出願番号が202011062860.Xで、発明の名称が「撮像装置及び電子機器」である中国特許出願の優先権を主張し、この出願の全ての内容は引用により本発明に組み込まれる。
【0002】
本願は、通信機器の技術分野に属し、具体的に、撮像装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
電子機器は、通常、撮像装置が搭載されて撮像機能を実現する。ユーザの撮影ニーズが高まるにつれて、撮像装置のパフォーマンスは常に最適化されている。イメージング品質を高めるために、電子機器に搭載される撮像装置のサイズは益々大きくなり、より良好な光学パフォーマンスを実現できるようになる。
【0004】
電子機器は、薄型・軽量化する傾向にあり、その厚さを自在に増やすことが困難となることが知られている。このような場合、撮像装置の大型化は、電子機器の薄型・軽量化の要求と矛盾し、より優れたパフォーマンスの撮像装置を電子機器に搭載することが困難となり、明らかに、電子機器のパフォーマンスに影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例は、背景技術における電子機器の厚さと撮像装置のサイズの矛盾を解決できる撮像装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術課題を解決するために、本願は以下のように実現される。
【0007】
第1側面において、本願の実施例は、感光性チップと、第1レンズ機構と、第2レンズ機構と、フィルタとを備える撮像装置であって、前記第1レンズ機構は、前記感光性チップと前記第2レンズ機構との間に設けられ、前記第2レンズ機構は、屈折・回折レンズ及び屈折率補償層を含み、前記屈折率補償層と前記屈折・回折レンズが積層され、前記感光性チップへの光の投射方向に前記屈折・回折レンズ及び前記第1レンズ機構が順に設けられ、前記フィルタは、前記感光性チップと前記第1レンズ機構との間に位置し、前記第2レンズ機構を通過した周囲光は、前記屈折・回折レンズで屈折・回折されることができ、屈折・回折された前記周囲光は、前記第1レンズ機構及び前記フィルタを順に通過して前記感光性チップに投射されることができる撮像装置を開示する。
【0008】
第2側面において、本願の実施例は、上記の撮像装置を備える電子機器を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本願は、上記の技術的解決手段により以下の有益な効果を達成することができる。
【0010】
本願の実施例で開示される撮像装置では、背景技術における撮像装置の構造を改良することにより、第2レンズ機構は、屈折・回折レンズ及び屈折率補償層を含み、屈折率補償層と屈折・回折レンズが積層される。屈折率補償層は、回折面の屈折率差を小さくするためのものである。周囲光が屈折・回折レンズを通過する際に、屈折・回折レンズによって回折による色収差と屈折による色収差を互いに相殺することができる。感光性チップへの光の投射方向に屈折・回折レンズ及び第1レンズ機構が順に設けられ、第2レンズ機構を通過した周囲光は、屈折・回折レンズで屈折・回折されることができ、屈折・回折された周囲光は、第1レンズ機構で投射された後、フィルタによってフィルタリングされ、最終的に感光性チップに投射され、感光性チップのイメージングを実現することができる。
【0011】
それから分かるように、本願の実施例で開示される撮像装置は、第2レンズ機構が設けられることにより、レンズの一部が屈折・回折レンズに交換される。屈折・回折レンズが色収差を解消できるので、撮像装置に色収差を解消するためのレンズを別途備える必要がなくなり、このような構造によって、撮像装置は、色収差を解消してイメージング品質を確保できながら、撮像装置のレンズの数を減らすことができ、さらに、撮像モジュールのサイズを小さくでき、最終的に撮像装置のサイズと電子機器の厚さの矛盾を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の実施例で開示される第1の撮像装置の構造模式図である。
【
図2】本願の実施例で開示される第1の撮像装置における第2レンズ機構の部分構造模式図である。
【
図3】本願の実施例で開示される第2の撮像装置の構造模式図である。
【
図4】本願の実施例で開示される第2の撮像装置における第2レンズ機構の部分構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術的解決手段を明確に、完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本願の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得られた他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものとする。
【0014】
本願の明細書及び特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」等は、特定の順序又は先後順序を記述するためのものではなく、類似する対象を区別するためのものである。このように使用される用語は、本願の実施例をここで図示又は説明する以外の順番で実施できるように、場合によっては互換してもよく、「第1」、「第2」等によって区別される対象は、一般的に同じ種類に属し、対象の個数が限定されるものではなく、例えば、第1対象は、1つであってもよく、複数であってもよいことを理解すべきである。また、明細書及び請求項において、「及び/又は」は、接続される対象のうちの少なくとも一つを表し、符号の「/」は、一般的に前後の関連する対象が「又は」の関係にあることを表す。
【0015】
以下、図面を参照し、具体的な実施例及びその適用シナリオにより、本願の実施例で提供される撮像装置を詳しく説明する。
【0016】
図1~
図4に示すように、本願の実施例は、感光性チップ100と、第1レンズ機構200と、第2レンズ機構300と、フィルタ400とを備える撮像装置を開示する。
【0017】
感光性チップ100は、撮像装置におけるイメージングするための部材である。具体的な撮影過程で、撮影対象物で反射された周囲光は、最終的に感光性チップ100に投射されることができ、感光性チップ100の感光面は、光信号を光信号に対応する電気信号に変換することでイメージングの目的を達成することができる。通常、感光性チップ100は、CCD(Charge Coupled Device,電荷結合)素子であってもよく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor,相補型金属酸化物半導体)デバイスであってもよい。本願の実施例では、感光性チップ100の具体的な種類が限定されない。
【0018】
第1レンズ機構200及び第2レンズ機構300は、ともに配光デバイスである。通常、撮像装置は、カメラホルダーを含んでもよい。第1レンズ機構200及び第2レンズ機構300は、ともに撮像装置のカメラの鏡筒に取り付けられ、次に、カメラをカメラホルダーに取り付けることにより、第1レンズ機構200及び第2レンズ機構300の取り付けを実現する。
【0019】
本願の実施例では、第1レンズ機構200は、例えば凸レンズ、凹レンズなどの一般的なレンズを含んでもよい。本願の実施例では、第1レンズ機構200に含まれるレンズの具体的な種類及び数が限定されない。任意の解決手段では、第1レンズ機構200は、レンズホルダー210と、少なくとも2つの第3レンズ220とを含んでもよく、少なくとも2つの第3レンズ220がレンズホルダー210に取り付けられることにより、予め組み立てた後に一体的に取り付けることが容易になる。
【0020】
第1レンズ機構200は、感光性チップ100と第2レンズ機構300との間に設けられ、第1レンズ機構200及び第2レンズ機構300は、投射された光を処理するためのものであり、第2レンズ機構300は、屈折・回折レンズ310及び屈折率補償層320を含み、屈折率補償層320と屈折・回折レンズ310が積層され、屈折率補償層320は、回折面の屈折率差を小さくして屈折効果を向上させるためのものである。感光性チップ100への光の投射方向に屈折・回折レンズ310及び第1レンズ機構200が順に設けられた。
【0021】
屈折・回折レンズ310は、通過した周囲光を屈折及び回折させることができ、屈折及び回折の原理から分かるように、周囲光の屈折及び回折の過程では、いずれも色収差が発生する。屈折・回折レンズ310が周囲光を屈折させながら回折させることができるため、屈折・回折レンズ310による周囲光の回折によって発生する色収差と周囲光の屈折によって発生する色収差が互いに相殺され、撮影過程で周囲光によって発生する色収差を緩和し、さらに解消することができる。
【0022】
フィルタ400は、感光性チップ100と第1レンズ機構200との間に位置し、第1レンズ機構200を通過した周囲光は、フィルタ400によってフィルタリングしてから感光性チップ100に投射されることができる。フィルタ400は、撮像装置の撮影過程での干渉光をフィルタリングすることができる。フィルタ400には様々な種類があってもよく、任意の解決手段では、フィルタ400は、第1レンズ機構200を通過した周囲光における赤外光を吸収して撮像装置のイメージング効果を良好にすることができる赤外フィルタであってもよい。
【0023】
具体的な作業中に、第2レンズ機構300を通過した周囲光は、屈折・回折レンズ310で屈折・回折されることができ、屈折・回折された周囲光は、第1レンズ機構200及びフィルタ400を順に通過して感光性チップ100に投射されることができる。
【0024】
本願の実施例では、屈折・回折レンズ310は、周囲光を回折させる役割を果たすことができる回折構造を有する。具体的に、回折構造は、屈折・回折レンズ310の一方の側に位置してもよく、具体的に、屈折・回折レンズ310の像側に位置してもよく、屈折・回折レンズ310の物体側に位置してもよい。もちろん、回折構造は、周囲光の回折に影響を与えなければ、屈折・回折レンズ310の内部に位置してもよい。本願では、屈折・回折レンズ310における回折構造の具体的な位置が限定されない。
【0025】
本願の実施例で開示される撮像装置では、背景技術における撮像装置の構造を改良することにより、第2レンズ機構300は、屈折・回折レンズ310及び屈折率補償層320を含み、屈折率補償層320と屈折・回折レンズ310が積層される。屈折率補償層320は、回折面の屈折率差を小さくして屈折効果を向上させるためのものである。周囲光が屈折・回折レンズ310を通過する際に、屈折・回折レンズ310によって回折による色収差と屈折による色収差を互いに相殺することができる。感光性チップ100への光の投射方向に屈折・回折レンズ310及び第1レンズ機構200が順に設けられ、第2レンズ機構300を通過した周囲光は、屈折・回折レンズ310で屈折・回折されることができ、屈折・回折された周囲光は、第1レンズ機構200で投射された後、フィルタ400によってフィルタリングされ、最終的に感光性チップ100に投射され、感光性チップ100のイメージングを実現することができる。
【0026】
それから分かるように、本願の実施例で開示される撮像装置は、第2レンズ機構300が設けられることにより、レンズの一部が屈折・回折レンズ310に交換される。屈折・回折レンズ310が色収差を解消できるので、撮像装置に色収差を解消するためのレンズを別途備える必要がなくなり、このような構造によって、撮像装置は、色収差を解消してイメージング品質を確保できながら、撮像装置のレンズの数を減らすことができ、さらに、撮像モジュールのサイズを小さくでき、最終的に撮像装置のサイズと電子機器の厚さの矛盾を解決できる。
【0027】
本願の実施例では、屈折・回折レンズ310には様々な材質があり、任意の解決手段では、屈折・回折レンズ310は、ガラス材質で作製され、このような場合、屈折・回折レンズ310はガラス構造部材である。別の任意の解決手段では、屈折・回折レンズ310は、光学プラスチックで作製されてもよく、このような場合、屈折・回折レンズ310は光学プラスチック構造部材である。光学プラスチックが軽量であるため、屈折・回折レンズ310の質量を減らすのに役立ち、さらに、撮像モジュールのカメラの質量を減らすのに役立つ。撮像装置がズームモータを含む場合、ズームモータはカメラの移動を駆動できる。カメラの質量を減らすことができるため、撮像モジュールに高出力のズームモータを備える必要がなく、さらに、撮像装置のコストを削減するのに役立つだけでなく、エネルギー消費を削減することができる。
【0028】
光学プラスチック構造部材は、射出成形で加工することができ、射出成形によって、屈折・回折レンズ310の加工が比較的簡単になり、大量生産に一層適し、加工コストが低くなる。本願の実施例では、光学プラスチックには、例えばPC(Polycarbonate,ポリカーボネイト)、COC(Cyclic Oleflns Copolymet,シクロオレフィン類共重合体)、COP(Cycio Olefins Polymer,シクロオレフィン重合体)等の様々な種類があってもよい。本願の実施例では、光学プラスチックの具体的な種類が特に限定されない。
【0029】
屈折率補償層320は光インプリントレジスト層であってもよい。光インプリントレジスト層は、回折面の屈折率差を小さくでき、製造工程において可塑性がよく、さらに、製造プロセスの難易度を下げることができる。光インプリントレジスト層には様々な材質があり、良好な効果を達成するために、任意の解決手段では、光インプリントレジスト層は、UV(紫外光)硬化型インプリントレジストであってもよく、熱硬化性インプリントレジストであってもよい。
【0030】
上記のように、屈折率補償層320と屈折・回折レンズ310が積層されており、薄い光インプリントレジスト層の構造を光学プラスチック構造部材に追加することにより、2つの材料が接合された後に熱膨張係数の違いによって引き起こされる剥離や反りの問題を効果的に回避することができ、さらに、第2レンズ機構300の構造を比較的安定させる。
【0031】
また、第2レンズ機構300における屈折・回折効果を良好にするために、光学プラスチック構造部材と光インプリントレジスト層の屈折率の差Δnは、0<Δn<0.3RIU(RIU,Refractive index unit,屈折率単位)を満たすことができる。
【0032】
本願の実施例では、屈折率補償層320は、屈折率niが1.3RIUより大きく1.9RIUより小さくてもよく、又は、厚さh2が0.005mmより大きく0.06mmより小さくてもよい。このような屈折率の範囲及び厚さの範囲にある屈折率補償層320は、回折面の屈折率を効果的に低減でき、屈折による色収差と回折による色収差を互いに大幅に相殺することができ、撮像装置のイメージング効果が良好になる。
【0033】
屈折・回折レンズ310の屈折率npは、1.3RIUより大きく1.9RIUより小さくてもよい。このような屈折率の範囲にある屈折・回折レンズ310は、投射された周囲光が通過する際に、良好な屈折効果を得ることができ、回折による色収差を屈折による色収差でよく相殺することができ、最終的に、良好なイメージング品質を得ることができる。
【0034】
屈折・回折レンズ310は、中心の厚さh1cが0.2mmより大きく0.6mmより小さく、エッジの厚さが0.1mmより大きく0.5mmより小さくてもよい。屈折・回折レンズ310の中心の厚さh1cがエッジの厚さよりも大きい場合、より顕著な屈折効果を得ることができる。なお、屈折・回折レンズ310の中心の厚さh1cは、屈折・回折レンズ310の中心軸(即ち、屈折・回折レンズ310の光軸)箇所における厚さとして考えることができ、屈折・回折レンズ310のエッジの厚さは、屈折・回折レンズ310の円形エッジにおける厚さとして考えることができる。
【0035】
本願の実施例では、屈折・回折レンズ310は、同心状に配置された回折突起312を含み、同心状に配置された複数の回折突起312で屈折・回折レンズ310の回折構造が構成されている。任意の解決手段では、回折突起312は、第1レンズ機構200に向けてもよく、周囲光が屈折・回折レンズ310を通過する際に屈折面で屈折されてから回折突起312で回折され、屈折と回折による色収差を互いに相殺するという目的を達成する。なお、屈折面は、屈折・回折レンズ310における回折突起312と反対側の表面、即ち、後述する第1表面311aを指す。もちろん、周囲光は、
図4に示すように回折突起312で回折されてから屈折面で屈折されてもよい。
【0036】
更なる技術的解決手段では、屈折率補償層320は、物体面の側に近くてもよく、像面の側に近くてもよい。具体的に、周囲光は、屈折・回折レンズ310を通過する際には、まず回折突起312で回折され、次に屈折率補償層320によって処理されるか、又は、まず屈折率補償層320を通過し、屈折率補償層320により周囲光の屈折率を低下させ、その後、回折突起312で回折される。本願の実施例では、屈折率補償層320の位置が限定されない。
【0037】
本願の実施例では、同心状に配置された複数の回折突起312により、屈折・回折レンズ310で構成された回折構造を千鳥状の構造にすることができる。任意の解決手段では、隣接する2つの回折突起312の先端間の距離(即ち、回折構造のサイクルΛ)は、屈折・回折レンズ310の中心から離れる径方向に漸減し、さらに、回折構造のサイクルΛは、回折構造の中心から回折構造のエッジに向かって漸減する。屈折・回折レンズ310は、円形のレンズであり、複数の回折突起312は、同心状に配置された環状突起である。
【0038】
更なる技術的解決手段では、隣接する2つの回折突起312の先端間の距離(回折構造のサイクルΛと等しい)は、1μmより大きく300μmより小さくなってもよい。なお、回折突起312は、根元及び頂部を有し、回折突起312の頂部は回折突起312の先端であり、回折突起312の根元は回折突起312の底端である。テストしたところ、上記の隣接する2つの回折突起312の先端間の距離により、回折効果を良好に確保することができ、屈折による色収差を回折による色収差で相殺するのに役立つ。
【0039】
また、回折突起312の高さhdは、0.5μmより大きく40μmより小さくなってもよく、テストしたところ、上記の回折突起312の高さにより、回折効果を良好に確保することができる。なお、回折突起312の高さは、回折突起312の底端から先端の方向におけるサイズを指す。具体的に、回折突起312の高さは、屈折・回折レンズ310の中心から離れる径方向に漸減又は増加してもよい。もちろん、屈折・回折レンズ310の全ての回折突起312の高さは、等しくなってあってもよい。
【0040】
本願の実施例では、屈折・回折レンズ310はベース層311をさらに含み、回折突起312はベース層311に設けられた。ベース層311の回折突起312と反対側の表面は、第1表面311aであり、第1表面311aは、平面、球面又は非球面であってもよく、具体的な表面の種類は、必要に応じて最適化して決定することができる。本願の実施例では、第1表面311aの具体的な表面の種類が限定されない。ベース層311の回折突起312と反対側の表面が球面又は非球面である場合、屈折・回折レンズ310の屈折効果をさらに最適化することができる。
【0041】
ベース層311は、回折突起312の配置の基礎とすることができ、回折突起312の強度を高めることができ、破損しにくくなる。同時に、ベース層311はまた、回折突起312の成型を容易にする。もちろん、ベース層311は、光透過性材料であってもよく、それによって周囲光の通過を確保することができる。具体的に、ベース層311は、材質が回折突起312と同じであり、ともにガラス材質、光学プラスチック等の材料で作製することができる。
【0042】
具体的な実施形態では、第1表面311aが非球面である場合、第1表面311aの非球面の方程式は、以下の式(1)に示すとおりである。
【0043】
【数1】
式(1)中、cは、第1表面311aの曲率、Kは円錐定数、A
2nは2n乗の非球面係数、rは光軸からの周囲光の距離であり、本明細書における光軸は、屈折・回折レンズ310の光軸を指し、x
rは第1表面311aの各点と基面との間の距離であり、当該基面は、第1表面311aの中心を通り光軸と垂直な面であり、当該距離は光軸方向における距離である。
【0044】
別の具体的な実施形態では、ベース層311の回折突起312を支持するための表面は、第2表面311bであり、第2表面311bは、回折構造の基準面であり、平面、球面又は非球面であってもよい。同様に、本願の実施例では、第2表面311bの具体的な表面の種類が限定されない。全ての回折突起312の先端が位置する表面は第3表面311cであり、回折突起312の高さは、第2表面311bと第3表面311cとの間の距離として考えることができる。
【0045】
第2表面311bが非球面である場合、回折構造の表面の種類の方程式は、以下の式(2)に示すとおりである。
【0046】
【数2】
式(2)中、x
dは、回折構造の基準面から回折構造の各点の距離であり、当該距離は光軸方向における距離であり、cは第2表面311bの曲率、Kは円錐定数、A
2nは2n乗の非球面係数、rは光軸からの周囲光の距離、nは、回折構造に含まれる屈折・回折レンズ310の中心からエッジまで数える回折輪帯の数、即ち、回折突起312の数であり、回折突起312が環状突起である場合、環状突起は回折輪帯であり、h
dは、スカラー回折理論により算出された回折突起312の高さ、即ち、第3表面311cと第2表面311bとの間の距離であり、0.1μm<h
d<30μmとなり、φは、回折構造の回折によって生じる光路であり、以下の式(3)から算出できる。
【0047】
【数3】
式(3)、C
2nは2n乗の位相係数、λは周囲光の波長、rは光軸からの周囲光の距離である。
【0048】
本願の実施例では、回折構造の1次回折は、イメージングのための回折次数であり、それ以外の次数の回折光はグレアとなり、イメージングに悪影響を与える。1次回折の効率を最大化してグレア現象を低減するために、回折構造の高さhdは、光学プラスチック構造部材と光インプリントレジスト層の屈折率差Δnに従ってスカラー回折理論により最適化して決定し、当該回折構造の高さは回折突起312の高さである。
【0049】
また、屈折・回折レンズ310は、一体射出成形構造であってもよい。製造工程において、まず、光学プラスチック構造部材を射出成形し、一方の側の回折構造を一緒に射出成形する。その後、エンボス技術により、UV硬化型インプリントレジストを回折構造にエンボスする。それによって、製造プロセスの難易度を下げるとともに、1次回折の効率を効果的に高めることができる。
【0050】
本願の実施例で開示される撮像装置では、屈折・回折レンズ310を含むレンズの総数Nは、4≦N≦9を満たすことができる。ここで、全てのレンズの全てのミラーには、少なくとも4つの非球面が含まれる。本願の実施例で開示される撮像装置は、複数の屈折・回折レンズ310を含んでもよく、屈折・回折レンズ310は、周囲光の投射方向に順に設けられ、複数回の屈折・回折を実現し、色収差をよりよく解消するという目的を達成する。本願の実施例では、屈折・回折レンズ310の具体的な数が限定されない。
【0051】
本願の実施例で開示される撮像装置に基づいて、本願の実施例は、上記の撮像装置を備える電子機器を開示する。
【0052】
電子機器には、例えばスマートフォン、マイクロ撮影装置、ARデバイス等の様々な種類がある。本願の実施例では、電子機器の具体的な種類が限定されない。
【0053】
以上、図面を参照しながら本願の実施例を説明したが、本願は上記の具体的な実施形態に限定されず、上記の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、限定的なものではなく、本願の示唆をもとに、当業者が本願の趣旨及び特許請求の保護範囲から逸脱することなくなし得る様々な形態は、いずれも本願の保護範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0054】
100 感光性チップ
200 第1レンズ機構
210 レンズホルダー
220 第3レンズ
300 第2レンズ機構
310 屈折・回折レンズ
311 ベース層
311a 第1表面
311b 第2表面
311c 第3表面
312 回折突起
320 屈折率補償層
400 フィルタ
【手続補正書】
【提出日】2023-03-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性チップ(100)と、第1レンズ機構(200)と、第2レンズ機構(300)と、フィルタ(400)とを備える撮像装置であって、前記第1レンズ機構(200)は、前記感光性チップ(100)と前記第2レンズ機構(300)との間に設けられ、前記第2レンズ機構(300)は、屈折・回折レンズ(310)及び屈折率補償層(320)を含み、前記屈折率補償層(320)と前記屈折・回折レンズ(310)が積層され、前記感光性チップ(100)への光の投射方向に前記屈折・回折レンズ(310)及び前記第1レンズ機構(200)が順に設けられ、前記フィルタ(400)は、前記感光性チップ(100)と前記第1レンズ機構(200)との間に位置し、前記第2レンズ機構(300)を通過した周囲光は、前記屈折・回折レンズ(310)で屈折・回折されることができ、屈折・回折された前記周囲光は、前記第1レンズ機構(200)及び前記フィルタ(400)を順に通過して前記感光性チップ(100)に投射されることができる
、ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記屈折・回折レンズ(310)は、光学プラスチック構造部材であり、前記屈折率補償層(320)は、光インプリントレジスト層である請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光学プラスチック構造部材と前記光インプリントレジスト層の屈折率の差Δnは、0<Δn<0.3RIUを満たす請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記屈折率補償層(320)は、屈折率が1.3RIUより大きく1.9RIUより小さく、又は、厚さが0.005mmより大きく0.06mmより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記屈折・回折レンズ(310)の屈折率は、1.3IRUより大きく1.9RIUより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記屈折・回折レンズ(310)は、中心の厚さが0.2mmより大きく0.6mmより小さく、エッジの厚さが0.1mmより大きく0.5mmより小さい請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記屈折・回折レンズ(310)は、同心状に配置された複数の回折突起(312)を含み、隣接する2つの前記回折突起(312)の先端間の距離は、前記回折突起(312)の中心から離れる径方向に漸減する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
隣接する2つの前記回折突起(312)の先端間の距離は、1μmより大きく300μmより小さい請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記回折突起(312)の高さは、0.5μmより大きく40μmより小さい請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記屈折・回折レンズ(310)は、ベース層(311)をさらに含み、前記回折突起(312)は、前記ベース層(311)に設けられた請求項7に記載の撮像装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の撮像装置を備える
、ことを特徴とする電子機器。
【国際調査報告】