(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】表示パネルの製造方法及び乾燥設備
(51)【国際特許分類】
H10K 71/40 20230101AFI20230927BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230927BHJP
H10K 50/805 20230101ALI20230927BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20230927BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20230927BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20230927BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20230927BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H10K71/40
H10K50/10
H10K50/805
H10K59/12
H10K71/13
H10K71/60
H10K50/81
G09F9/00 338
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553021
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2021115394
(87)【国際公開番号】W WO2023019635
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110947664.9
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519182202
【氏名又は名称】深▲セン▼市▲華▼星光▲電▼半▲導▼体▲顕▼示技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 金陽
(72)【発明者】
【氏名】陳 黎▲セン▼
(72)【発明者】
【氏名】石 志清
【テーマコード(参考)】
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD70
3K107DD87
3K107DD89
3K107EE03
3K107FF00
3K107FF04
3K107FF15
3K107GG08
3K107GG24
3K107GG26
3K107GG28
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
本発明は、表示パネルの製造方法及び乾燥設備を提供する。本発明に係る表示パネルの製造方法は、ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することにより、乾燥段階の電界により発光機能層溶液を乾燥させる。ピクセル電極層における乾燥段階の電界により発光機能層溶液中の荷電基を固定することで、溶媒揮発時に荷電基の移動が抑制され、膜厚が均一な発光機能層が得られ、これにより、コーヒーステイン現象の発生が防止され、高品質の薄膜が得られる。乾燥段階の電界により荷電基を固定することで、溶媒の揮発過程において吸気を厳しく制御することなく乾燥処理できるので、真空乾燥のプロセスが大幅に簡略化され、加工効率が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を提供することと、
前記基材にピクセル電極層を配置することと、
乾燥すべき基板が形成されるように、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することと、
前記乾燥すべき基板をチャンバーの中に移動することと、
前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することと、
前記乾燥すべき基板を乾燥させることと、
前記乾燥段階の電界において、前記発光機能層溶液の中の溶媒が排出されるように、前記チャンバーを吸気し、発光機能層を形成することと、
を備える、
表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記チャンバーの中には、導電性部材が配置され、
前記導電性部材は、第1導電部と第2導電部とを備え、
前記ピクセル電極層は、間隔をおいて配置された第1電極部と第2電極部とを含み、
前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することは、
前記第1導電部と前記第1電極部とを接続し、前記第2導電部と前記第2電極部とを接続するステップと、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に電圧差が形成されることで前記第1電極部と前記第2電極部の間に前記乾燥段階の電界が形成されるように、第1電圧を第1導電部に印加し、且つ第2電圧を第2導電部に印加するステップと、
を備える、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記電圧差は、1ボルトから500ボルトである、
請求項2に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記電圧差は、5ボルトから200ボルトである、
請求項2に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記乾燥段階の電界の電界強度は、0.01ボルト/マイクロメートルから100ボルト/マイクロメートルである、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、
前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、
前記ピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極に発光機能層溶液を印刷するステップと、
を備える、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、
前記ピクセル電極は、m行×n列のサブピクセル電極を含み、且つ、隣接する2つの前記サブピクセル電極の間に隙間があり、ここで、mとnは1以上の正の整数であり、且つmとnの値は同時に1に等しくなく、
前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、
前記サブピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極に発光機能層溶液を印刷するステップと、
を備える、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記基材を提供した後、
前記基材に複数の薄膜トランジスタを配置するステップをさらに備え、
前記薄膜トランジスタが前記サブピクセル電極に電気的に接続され、
各前記薄膜トランジスタは、それぞれ1行の前記サブピクセル電極の電圧を制御し、或いは、各前記薄膜トランジスタは、それぞれ1列の前記サブピクセル電極の電圧を制御し、或いは、各前記薄膜トランジスタは、それぞれ1つの前記サブピクセル電極の電圧を制御し、前記薄膜トランジスタが、前記サブピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するように、前記サブピクセル電極の間に形成された電圧差を制御する、
請求項7に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記サブピクセル電極と前記サブピクセル電極の間の隙間の距離は、1μmから10μmである、
請求項7に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、
電界電極層と前記ピクセル電極層が絶縁して配置されるように、前記基材に前記電界電極層を配置するステップと、
前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を印刷するステップと、
を備える、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界を形成することは、
前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に電圧差が形成されることで前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界が形成されるように、第1電圧を前記ピクセル電極層に印加し、第2電圧を前記電界電極層に印加するステップを備える、
請求項10に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、前記基材にピクセル電極層を配置した後、
前記ピクセル電極層の前記基材から離間する側に、それぞれ前記ピクセル電極に対応する複数の開口部が配置されるピクセル定義層を配置するステップをさらに備える、
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記ピクセル定義層の前記基材に近接する側は、親液性であり、
前記ピクセル定義層の前記基材から離間する側は、撥液性である、
請求項12に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項14】
乾燥すべき基板の乾燥処理に用いられる乾燥設備であって、
前記乾燥すべき基板は、基材と、ピクセル電極層と、発光機能層溶液と、を備え、前記ピクセル電極層は、前記基材に配置され、前記発光機能層溶液は、前記ピクセル電極層に配置され、
前記乾燥設備は、
チャンバーと、
前記チャンバーに配置され、前記チャンバーを吸気するための吸気部材と、
前記チャンバーの中に配置され、前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界が形成されるように、前記ピクセル電極層に電気的に接続されることに用いられる導電性部材と、
を備える、
乾燥設備。
【請求項15】
前記導電性部材は、少なくとも第1導電部と第2導電部と、を備え、
前記ピクセル電極層は、間隔をおいて配置された第1電極部と第2電極部を含み、
前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界が形成されるように、前記第1導電部が前記第1電極部に接続され、前記第2導電部が前記第2電極部に接続される、
請求項14に記載の乾燥設備。
【請求項16】
前記導電性部材には、電気接続部材が設けられ、
前記導電性部材は、前記電気接続部材と可動に接続され、
前記導電性部材は、前記電気接続部材を介して前記ピクセル電極層に接触する、
請求項15に記載の乾燥設備。
【請求項17】
前記乾燥設備は、前記乾燥すべき基板を加熱するための乾燥部材をさらに含む請求項15に記載の乾燥設備。
【請求項18】
前記乾燥部材は、風力乾燥部材を備える、
請求項17に記載の乾燥設備。
【請求項19】
前記乾燥部材は、加熱部材を備える、
請求項18に記載の乾燥設備。
【請求項20】
前記加熱部材は、加熱板であり、
前記加熱板は、前記チャンバーの底部に設けられ、
前記加熱板は、前記導電性部材の下方に配置される、
請求項19に記載の乾燥設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示の技術分野に関し、具体的に表示パネルの製造方法及び乾燥設備に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷技術により製造された有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode,OLED)ディスプレイは、中サイズのOLED分野において小規模の商業化が達成されている。本発明者らは、従来技術を研究や実施したところ、インクジェット印刷の際に溶媒を揮発させる必要があることを見出した。このため、真空乾燥や加熱などの方法で溶媒を除去する必要がある。品質の良い薄膜を得るためには、複雑なプログラム式の吸気工程が必要であり、溶媒揮発時のコーヒーステイン現象を抑制するために、特殊な溶媒を選択する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、電界支援による発光機能層の乾燥を実現し、発光機能層においてコーヒーステイン現象の発生を防止することができる表示パネルの製造方法及び乾燥設備を提供する。
【0004】
本発明の実施例は、
基材を提供することと、
前記基材にピクセル電極層を配置することと、
乾燥すべき基板が形成されるように、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することと、
前記乾燥すべき基板をチャンバーの中に移動することと、
前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することと、
前記乾燥すべき基板を乾燥させることと、
前記乾燥段階の電界において、前記発光機能層溶液中の溶媒が排出されるように、前記チャンバーを吸気し、発光機能層を形成することと、を備える表示パネルの製造方法を提供する。
【0005】
本発明のいくつかの実施例において、前記チャンバーの中には、導電性部材が配置され、前記導電性部材は、第1導電部と第2導電部とを備え、前記ピクセル電極層は、間隔をおいて配置された第1電極部と第2電極部とを含み、
前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することは、
前記第1導電部と前記第1電極部とを接続し、前記第2導電部と前記第2電極部とを接続するステップと、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に電圧差が形成されることで前記第1電極部と前記第2電極部の間に前記乾燥段階の電界が形成されるように、第1電圧を第1導電部に印加し、且つ第2電圧を第2導電部に印加するステップと、を備える。
【0006】
本発明のいくつかの実施例において、前記電圧差は、1ボルトから500ボルトである。
【0007】
本発明のいくつかの実施例において、前記電圧差は、5ボルトから200ボルトである。
【0008】
本発明のいくつかの実施例において、前記乾燥段階の電界の電界強度は、0.01ボルト/マイクロメートルから100ボルト/マイクロメートルである。
【0009】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を印刷することは、
前記ピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を印刷するステップと、を備える。
【0010】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、前記ピクセル電極は、m行×n列のサブピクセル電極を含み、且つ、隣接する2つの前記サブピクセル電極の間に隙間があり、ここで、mとnは1以上の正の整数であり、且つmとnの値は同時に1に等しくなく、
前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、
前記サブピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極に発光機能層溶液を印刷するステップと、を備える。
【0011】
本発明のいくつかの実施例において、前記基材を提供した後、
前記基材に複数の薄膜トランジスタ装置を配置するステップをさらに備え、前記薄膜トランジスタ装置が前記サブピクセル電極層に電気的に接続され、
各前記薄膜トランジスタ装置は、それぞれ1行の前記サブピクセル電極の電圧を制御し、或いは、各前記薄膜トランジスタ装置は、それぞれ1列の前記サブピクセル電極の電圧を制御し、或いは、各前記薄膜トランジスタは、それぞれ1つの前記サブピクセル電極の電圧を制御し、前記薄膜トランジスタ装置が、前記サブピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成するように、前記サブピクセル電極の間に形成された電圧差を制御する。
【0012】
本発明のいくつかの実施例において、前記サブピクセル電極と前記サブピクセル電極の間の隙間の距離は、1μmから10μmである。
【0013】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、
電界電極層と前記ピクセル電極層が絶縁して配置されるように、前記基材に電界電極層を配置するステップと、
前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界を形成するステップと、
前記印刷段階の電界の作用において、前記ピクセル電極層に発光機能層溶液を印刷するステップと、を備える。
【0014】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界を形成することは、
前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に電圧差が形成されることで前記ピクセル電極層と前記電界電極層の間に印刷段階の電界が形成されるように、第1電圧を前記ピクセル電極層に印加し、第2電圧を前記電極層に印加するステップを備える。
【0015】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、前記基材にピクセル電極層を複数配置した後、
前記ピクセル電極層の前記基材から離間する側に、それぞれ前記ピクセル電極に対応する複数の開口部が配置されるピクセル定義層を配置するステップをさらに備える。
【0016】
本発明のいくつかの実施例において、前記ピクセル定義層の前記基材に近接する側は、親液性であり、前記ピクセル定義層の前記基材から離間する側は、撥液性である。
【0017】
したがって、本発明の実施例はさらに、乾燥すべき基板の乾燥処理に用いられる乾燥設備を提供し、前記乾燥すべき基板は、基材と、ピクセル電極層と、発光機能層溶液と、を備え、前記ピクセル電極層は、前記基材に配置され、前記発光機能層溶液は、前記ピクセル電極層に配置され、前記乾燥設備は、
チャンバーと、
前記チャンバーに配置され、前記チャンバーを吸気するための吸気部材と、
前記チャンバーの中に配置され、前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界が形成されるように、前記ピクセル電極層に電気的に接続されることに用いられる導電性部材と、を備える。
【0018】
本発明のいくつかの実施例において、前記導電性部材は、少なくとも第1導電部と第2導電部と、を備え、前記ピクセル電極層は、間隔をおいて配置された第1電極部と第2電極部を含み、前記ピクセル電極層に乾燥段階の電界が形成されるように、前記第1導電部が前記第1電極部に接続され、前記第2導電部が前記第2電極部に接続される。
【0019】
本発明のいくつかの実施例において、前記導電性部材には、電気接続部材が設けられ、前記導電性部材は、前記電気接続部材と可動に接続され、前記導電性部材は、前記電気接続部材を介して前記ピクセル電極層に接触する。
【0020】
本発明のいくつかの実施例において、前記乾燥設備は、前記乾燥すべき基板を加熱するための乾燥部材をさらに含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施例において、前記乾燥部材は、風力乾燥部材を備える。
【0022】
本発明のいくつかの実施例において、前記乾燥部材は、加熱部材を備える。
【0023】
本発明のいくつかの実施例において、前記加熱部材は、加熱板であり、前記加熱板は、前記チャンバーの底部に設けられ、前記加熱板は、前記導電性部材の下方に配置される。
【0024】
本発明は、下記の有益な効果を奏する。
本発明に係る表示パネルの製造方法は、ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することにより、乾燥段階の電界の作用により発光機能層溶液を乾燥させる。ピクセル電極層における乾燥段階の電界により発光機能層溶液中の荷電基を固定することで、溶媒揮発時に溶媒に伴う荷電基の移動が抑制され、膜厚が均一な発光機能層が得られ、これにより、コーヒーステイン現象の発生が防止され、高品質の薄膜が得られる。乾燥段階の電界により荷電基を固定することで、溶媒の揮発過程において吸気を厳しく制御することなく乾燥処理できるので、真空乾燥のプロセスが大幅に簡略化され、加工効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施例の技術的手段をより明確に説明するために、以下の実施例の説明で必要となる添付図面を簡単に紹介し、以下の説明における図面は、本発明の幾つかの実施例に過ぎなく、当業者にとっては創造的努力なしにこれらの図面から他の図面を導き出すこともできることは明らかである。
【0026】
【
図1】本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法で形成されたピクセル回路を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法でピクセル電極層の間に生じる電界を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法でピクセル電極層と電界電極層との間に生じる電界を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法で乾燥時に形成された電界を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施例に係る乾燥設備の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的手段を明確かつ完全に説明するが、説明した実施例は本発明の実施例のすべてではなく、単に実施例の一部であることは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的努力なしに取得したすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属している。また、ここで記載する具体的な実施形態は本発明を説明や解釈するためのものであり、本発明を限定するためのものではないことは理解されたい。本発明において、反対の説明がなされない場合、「上」及び「下」などの使用される方向語は、通常、装置が実際に使用されている状態又は稼働している状態における上及び下を意味し、具体的に添付図面における図面方向であるが、「内」及び「外」は、装置の輪郭について示すものである。
【0028】
本発明の実施例は、表示パネルの製造方法及び乾燥設備を提供する。以下、それぞれについて詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明順序は、実施例の好ましい順序を限定するものではない。
【0029】
図1を参照して、
図1は本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法のフローチャートである。本発明に係る表示パネルの製造方法は、具体的にステップ11~ステップ17を含む。
【0030】
ステップ11:基材を提供する。
【0031】
基材は、このタッチ電極構造を載置するためのベース部材である。例えば、基材は、ガラス、有機ガラス、機能性ガラス(sensor glass)、硬質絶縁膜、軟質絶縁膜又はフレキシブル基板であってもよい。
【0032】
機能性ガラスは、極薄ガラスに透明金属酸化物導電膜をスパッタリング法によりめっきし、高温アニール処理して得られるものである。フレキシブル基板に用いられる材料は、ポリマー材料である。具体的には、フレキシブル基板に用いられる材料は、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)であってもよい。ポリマー材料は、柔軟性、耐衝撃性に優れ、軽量で、フレキシブル表示パネルに適用される。ポリイミドは、良好な耐熱性及び安定性を実現できる。
【0033】
基材を提供した後に、ピクセル電極層に電気的に接続される薄膜トランジスタ装置を基材に複数配置するステップをさらに備える。薄膜トランジスタ装置は、ピクセル電極層の電圧を制御することができる。
【0034】
ステップ12:基材にピクセル電極層を配置する。
【0035】
具体的には、蒸着法により基材にピクセル電極層を配置することができ、ピクセル電極層は、金属と透明金属酸化物との積層又は透明金属酸化物を用いて形成される。ピクセル電極層は、グラフェン材料、金属材料、遷移金属カルコゲン化合物等の材料を用いてもよい。
【0036】
具体的には、遷移金属硫化物は、硫化モリブデン(MoS2)、セレン化モリブデン(MoSe2)、硫化タングステン(WS2)又はセレン化タングステン(WSe2)を含む。
【0037】
透明金属酸化物層に用いられる材料は、インジウムガリウム亜鉛酸化物、インジウム亜鉛スズ酸化物、インジウムガリウム亜鉛スズ酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、インジウムアルミニウム亜鉛酸化物、インジウムガリウムスズ酸化物又はアンチモンスズ酸化物のいずれかを含む。これらの材料は、優れた導電性と透明性を有するとともに、表示パネル全体の厚さに影響を与えないように厚さが薄い。また、人体に有害な電子放射や紫外光、赤外光を減らすことができる。
【0038】
金属層に用いられる材料は、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、タングステン又はチタンのいずれかである。金属は、導電性に優れ、コストが安く、陽極の導電性を確保するとともに製造コストを削減することができる。
【0039】
一実施例において、ピクセル電極層は、インジウムスズ酸化物/銀/インジウムスズ酸化物を積層することにより形成される。
【0040】
なお、ピクセル電極層は、発光素子の陽極又は陰極であってもよい。本発明では、ピクセル電極層が陽極である場合を例に挙げて説明する。
【0041】
ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、基材にピクセル電極層を複数配置した後、
ピクセル電極層の基材から離間する側にピクセル定義層を配置するステップをさらに備える。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、ピクセル定義層の基材に近接する側は、親液性であり、ピクセル定義層の基材から離間する側は、撥液性である。
【0043】
親液性とは、材料表面が液状媒質によって容易に濡れたり溶けたりすることをいう。撥液性(疎液性ともいう)とは、親液性と逆に、材料表面が液状媒質によって濡れたり溶けたりすることが困難であることをいう。材料表面の親液性及び撥液性は、主にその表面構造や官能基の性質により決定される。本発明では、製造プロセスパラメータを調整することによってピクセル定義層の親液性・撥液性を変更調整することができる。例えば、現像処理及び硬化処理のパラメータを調整することにより、ピクセル定義層の親液性・撥液性を変更調整することができる。このようにピクセル定義層を配置することにより、異なる印刷プロセス、インクの種類及び膜層の厚さに対応することができ、ピクセル定義層を異なる表示パネルの要求に容易に合致させることができる。
【0044】
具体的には、ピクセル定義層の厚さは、材料の親液性・撥液性に影響を与え、例えば、撥液材料がとても薄い場合には、撥液性を有しない。また、材料を酸素(O2)又は窒素(N2)プラズマ処理することで撥液性から親液性に変更することができ、材料をフッ素(F)プラズマ処理することで親液性から撥液性に変更することができる。
【0045】
それぞれピクセル電極に対応する複数の開口部がピクセル定義層に設けられる。
【0046】
ピクセル定義層に開口部を設けるには、エッチング法を用いることができる。具体的には、ウェットエッチング又はドライエッチングを用いることができる。さらに、化学エッチング、電解エッチング、イオンビームスパッタエッチング、プラズマエッチング又は反応性イオンエッチング等の方法を用いることができる。具体的な配置方法は、当該技術分野の一般的な技術手段であるため、ここでその説明を省略する。
【0047】
ステップ13:乾燥すべき基板が形成されるように、ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成する。
【0048】
なお、発光機能層は、基板から離間する方向に積層して設けられた正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層を含んでいてもよい。正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及びそれらの積層構造は、当業者に周知技術であるため、ここでその説明を省略する。いくつかの実施例において、発光機能層は、正孔阻止層及び電子阻止層をさらに含んでもよい。したがって、本発明における発光機能層溶液は、上記のいずれの膜層の印刷溶液であってもよい。
【0049】
具体的には、正孔注入層溶液、正孔輸送層溶液、発光機能層溶液、電子輸送層溶液又は電子注入層溶液をピクセル電極層に印刷する。発光機能層を印刷する方法は、成膜領域を精密に制御することができ、材料を節約し、コストを削減し、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0050】
ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、ステップ131及びステップ132を含む。
【0051】
ステップ131:ピクセル電極同士の間に印刷段階の電界を形成する。
【0052】
具体的には、ピクセル電極層に通電して、ピクセル電極層の間に電圧差が形成されることで、ピクセル電極層の間に印刷段階の電界が形成される。
【0053】
表示パネルにおいて、通常、ピクセル回路を作製し、その後、発光素子を作製する。以下、
図2に示すピクセル回路を例に説明する。ピクセル回路は、駆動トランジスタT1、スイッチングトランジスタT2及び保持容量Cを含む。駆動トランジスタT1の入力端子が電源電圧VDDに接続される。駆動トランジスタT1の出力端子がピクセル電極層、即ち
図2に示す発光素子OLEDのアノードに接続される。駆動トランジスタT1の制御端子が第1ノードQに接続される。スイッチングトランジスタT2の入力端子がデータ信号Dataに接続される。スイッチングトランジスタT2の出力端子が第1ノードQに接続される。スイッチングトランジスタの制御端子が走査信号Scanに接続される。保持容量Cの第1端子が第1ノードQに接続され、保持容量Cの第2端子が接地される。
【0054】
本発明は、異なるピクセル電極に異なるデータ信号Dataを入力することにより、ピクセル電極を異なる電位にすることができる。これにより、ピクセル電極の間に電圧差が形成されることで、ピクセル電極の間に印刷段階の電界が形成される。
【0055】
ステップ132:印刷段階の電界の作用において、ピクセル電極に発光機能層溶液を印刷する。
【0056】
具体的には、
図3を参照して、
図3は本発明の実施例に係るピクセル電極の間に生じる印刷段階の電界を示す概略図である。本実施例において、発光機能層3は、印刷段階の電界の作用により印刷するものである。ピクセル電極層2において、ピクセル電極の間に形成される印刷段階の電界は、水平成分と垂直成分とを有する。印刷段階の電界の垂直成分が、発光機能層3溶液中の荷電基3aにピクセル電極層2への付着力を与え、印刷時に発光機能層3溶液中の荷電基3aのピクセル電極層2への付着を促進する。
【0057】
なお、上記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、いずれも電界下で印刷することができる。印刷の際に、ピクセル電極層とピクセル電極層との間の電圧差を調整することによって、異なる膜層の印刷要件を対応することができる。
【0058】
ピクセル電極層2にピクセル定義層4及び開口部4aを設けることにより、発光機能層3溶液のオーバーフローをうまく防止することができる。又は、ピクセル電極層2を2つの電極に分割し、さらにピクセル電極層2に発光機能層3を収容するためのピクセル定義層4を設ける。勿論、印刷段階の電界の作用において発光機能層3溶液を印刷する際に、ピクセル定義層4及び開口部4aを設けなくてもよい。発光機能層3溶液を印刷する際に、ピクセル電極層2間に印刷段階の電界が形成されるからである。即ち、印刷段階の電界を形成する正極及び負極がピクセル電極層2に存在するため、印刷段階の電界の作用により、発光機能層3溶液をパターン化されたピクセル電極層2に正確に堆積させることができる。したがって、ピクセル定義層4の作製を省略し、プロセスを簡略化することができる。なお、発光機能層3溶液中の荷電基が正に帯電している場合に、発光機能層3を堆積する必要があるピクセル電極層2は、負極であり、逆も同様である。
【0059】
ピクセル電極層は、複数のピクセル電極を含み、ピクセル電極は、m行×n列のサブピクセル電極を含み、且つ、隣接する2つのサブピクセル電極の間に隙間がある。ここで、mとnは1以上の正の整数であり、且つmとnの値は同時に1に等しくない。
【0060】
なお、ピクセル電極を適宜分割し、分割領域面積のサブピクセル面積全体における占有率が制御可能である。このため、1ピクセル電極をm行×n列のサブピクセル電極2aに分けて、発光効果に影響を与えない。例えば、mを2とし、nを2とすることを例として、ピクセル電極を2×2の4つのサブピクセル電極に分割する。
【0061】
具体的には、エッチングによりピクセル電極を分割することができる。製造プロセスが許容される場合に、レーザー割断法などを用いてもよい。ピクセル電極層を分割した後、フォトレジストやパッシベーション材料で充填し、上層の堆積薄膜で全面堆積時に充填してもよい。
【0062】
サブピクセル電極とサブピクセル電極との間の隙間の距離は、1μmから10μmである。具体的には、サブピクセル電極とサブピクセル電極との間の隙間の距離は、1μm、2μm、3μm、5μm、7μm、8μm、9μm又は10μmである。サブピクセル電極の間隙距離を1μm~10μmとすることで、製造工程の精度要件及び発光効果を両立させることができる。
【0063】
ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、サブピクセル電極とサブピクセル電極との間に印刷段階の電界を形成するステップを含む。
【0064】
各薄膜トランジスタ素子は、それぞれ1行のサブピクセル電極の電圧を制御するか、又は、それぞれ1列のサブピクセル電極の電圧を制御するか、又は、それぞれ1つのサブピクセル電極の電圧を制御する。サブピクセル電極とサブピクセル電極との間に電圧差が形成される。
【0065】
各薄膜トランジスタ素子は、それぞれ1行のサブピクセル電極の電圧を制御するか又は1列のサブピクセル電極の電圧を制御することにより、サブピクセルに高電位・低電位を形成することができる。行列間の高電位・低電位によりサブピクセル電極とサブピクセル電極との間に電圧差が形成されて、電界が形成される。サブピクセル電極の間の電界強度が大きく、発光機能層3の印刷プロセスを補助するのに十分な電界力を提供することができる。また、この方式は、必要とする薄膜トランジスタ素子が少なく、製造の難度及び精度を低減させることができる。
【0066】
各薄膜トランジスタ装置は、それぞれ1行のサブピクセル電極の電圧を制御するか、又は、それぞれ1列のサブピクセル電極の電圧を制御するか、又は、それぞれ1つのサブピクセル電極の電圧を制御する。
【0067】
各薄膜トランジスタ素子は、それぞれ1行のサブピクセル電極の電圧を制御するか又はそれぞれ1列のサブピクセル電極の電圧を制御することにより、サブピクセルに高電位・低電位を形成することができる。行列間の高電位・低電位によりサブピクセル電極とサブピクセル電極との間に電圧差が形成されて、印刷段階の電界が形成される。サブピクセル電極の間の電界強度が大きく、発光機能層の印刷プロセスを補助するのに十分な電界力を提供することができる。また、この方式は、必要とする薄膜トランジスタ素子が少なく、製造の難度及び精度を低減させることができる。
【0068】
これにより、サブピクセルに高電位と低電位とを形成することができる。行列間の高電位・低電位によりサブピクセル電極とサブピクセル電極との間に電圧差が形成されることで、電界が形成される。サブピクセル電極の間の電界強度が大きく、発光機能層の印刷プロセスを補助するのに十分な電界力を提供することができる。また、この方式は、必要とする薄膜トランジスタ素子が少なく、製造の難度及び精度を低減させることができる。
【0069】
各薄膜トランジスタ素子は、サブピクセル電極とサブピクセル電極との間に電圧差が形成されるように、それぞれ1つのサブピクセル電極の電圧を制御する。これにより、サブピクセル内の電位差及び印刷段階の電界を細かく調整することができる。
【0070】
ピクセル電極層に発光機能層溶液を形成することは、ステップ13A~ステップ13Cを含む。
【0071】
ステップ13A:電界電極層とピクセル電極層が絶縁して配置されるように、基材に電界電極層を配置する。
【0072】
絶縁配置とは、ピクセル電極層と電界電極層との間に間隔があることをいう。いくつかの実施例において、ピクセル電極層と電界電極層との間には、パッシベーション層、層間絶縁層又はバッファ層などの無機膜層が設けられて絶縁している。具体的な配置方式は、具体的な表示パネルに応じて適宜変更することができ、ここでその説明を省略する。
【0073】
なお、本発明に係るピクセル電極層と電界電極層とが基材に設けられているとは、ピクセル電極層と電界電極層とが基材の同じ側に設けられていることを意味する。ピクセル電極層と電界電極層とが基材の表面に近接して設けられることを限定するものではない。
【0074】
ステップ13B:ピクセル電極層と電界電極層の間に印刷段階の電界を形成する。
【0075】
図4を参照して、
図4は本発明の実施例に係るピクセル電極層と電界電極層との間に生じる印刷段階の電界を示す概略図である。印刷段階の電界は図中の破線で示される。ピクセル電極層2と電界電極層5に通電して、ピクセル電極層2と電界電極層5との間に電圧差が形成されることで、ピクセル電極層2と電界電極層5との間に印刷段階の電界が形成される。具体的には、第1電圧をピクセル電極層2に印加し、第2電圧を電界電極層5に印加する。ピクセル電極層2と電界電極層5との間に電圧差が形成されることで、ピクセル電極層2と電界電極層5との間に印刷段階の電界が形成される。
【0076】
具体的には、電界電極層5が信号配線層又は補助電極層であってもよい。信号配線層は、ピクセル回路にデータ信号を入力するためのデータ信号配線層であってもよい。信号配線層は、ピクセル電極層との間に電圧差を形成できるのであれば、ピクセル回路における任意の他の配線であってもよい。補助電極層は、平面カソードに接続されることで、平面カソードの電圧降下現象を低減させる。
【0077】
ステップ13C:印刷段階の電界の作用において、ピクセル電極層に発光機能層溶液を印刷する。
【0078】
発光機能層溶液を印刷する方法は、ここでその説明を省略する。
【0079】
ステップ14:乾燥すべき基板をチャンバーの中に移動する。
【0080】
発光機能層溶液を印刷した後、発光機能層溶液に対して平坦化処理を行う。乾燥すべき基板をチャンバーの中に移動する。
【0081】
ステップ15:ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成する。
【0082】
具体的には、
図5を参照して、
図5は本発明の実施例に係る乾燥時に形成された乾燥段階の電界を示す概略図である。ピクセル電極層2が基材1に設けられる。乾燥すべき基板のピクセル電極層2の両端に通電し、ピクセル電極層2の両端に電圧差が形成されることで、ピクセル電極層2に水平電界が形成される。乾燥段階の電界は図中の破線で示される。ピクセル電極層2に形成される乾燥段階の電界は、水平成分と垂直成分とを有する。電界の垂直成分が、発光機能層3溶液中の荷電基にピクセル電極層2への付着力を与える。
【0083】
チャンバーの中に導電性部材が設けられる。ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成するステップは、導電性部材とピクセル電極層とを接続することを含む。導電性部材に通電することで、ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成する。
【0084】
導電性部材は、第1導電部と第2導電部とを備え、ピクセル電極層は、間隔をおいて配置された第1電極部と第2電極部とを含む。ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成するステップは、具体的にステップ151~ステップ152を含む。
【0085】
ステップ151:前記第1導電部と前記第1電極部とを接続し、前記第2導電部と前記第2電極部とを接続する。
【0086】
ステップ152:第1電極部と第2電極部との間に電圧差が形成されることでピクセル電極層に乾燥段階の電界が形成されるように、第1電圧を第1導電部に印加して、第2電圧を第2導電部に印加する。
【0087】
本発明のいくつかの実施例において、電圧差は、1ボルトから500ボルト(V)である。さらに、電圧差は5V~200Vである。電圧差は1V、5V、10V、15V、20V、25V、50V、100V、150V、200V、300V、400V、450V又は500Vであってもよい。したがって、本発明のいくつかの実施例において、乾燥段階の電界の電界強度は、0.01ボルト/マイクロメートルから100ボルト/マイクロメートル(V/μm)である。具体的には、乾燥段階の電界の電界強度は0.01V/μm、0.05V/μm、0.1V/μm、0.5V/μm、1V/μm、5V/μm、10V/μm、15V/μm、20V/μm、25V/μm、50V/μm、55V/μm、60V/μm、75V/μm、80V/μm、85V/μm、90V/μm、95V/μm又は100V/μmであってもよい。勿論、乾燥段階の電界強度は上記挙げられた数値に限定されるものではない。同様に、印刷段階の電界の電圧差や電界強度も上記数値範囲にしてもよいので、ここでその説明を省略する。
【0088】
電圧差が大きすぎると、静電爆発が生じる恐れがある。一方、電圧差が小さすぎると、生じる乾燥段階の電界が弱く、十分な電界力を付与できず、発光機能層溶液中の帯電性粒子をピクセル電極層に固定できず、溶媒分離後の発光機能層の膜層均一性に影響を与える恐れがある。したがって、適切な電界強度は、0.01ボルト/マイクロメートル~100ボルト/マイクロメートル(V/μm)の範囲である。
【0089】
なお、上記実施例では、ピクセル電極層を電極として、ピクセル電極層に乾燥段階の電界を発生させる方法について説明した。いくつかの実施例において、さらに電界を印加する方法を用いてピクセル電極層に電界を発生させてもよい。例えば、ピクセル電極層の左右両側に電極を印加して水平電界を形成する。又は、ピクセル電極層の上下両側に電極を印加して垂直電界を形成する。本発明は、乾燥段階の電界の発生方式について制限をしない。
【0090】
ステップ16:乾燥すべき基板を乾燥させる。
【0091】
具体的には、乾燥すべき基板を乾燥させる方法は、チャンバーの中に負圧環境を形成することを含む。又は、乾燥すべき基板を加熱する。
【0092】
液体化合物の沸点は圧力と密接に関係している。圧力が低下すると、液体の沸騰温度が低下し、即ち沸点が低下する。そのため、負圧環境下において、発光機能層溶液中の溶媒の沸点を低下させることができる。また、印刷する発光層溶液の沸点が高い場合に、溶媒の揮発が遅くなる。このため、真空乾燥法を用いて溶媒の大部分を除去する必要がある。したがって、真空乾燥法により、発光機能層溶液中の溶媒をよりよく除去することができる。
【0093】
乾燥すべき基板を加熱して溶媒を蒸発させることができる。又は、チャンバー内の圧力を低下させながら、乾燥すべき基板を加熱する。沸点の高い溶媒については、単に吸気処理を行うだけで溶媒を完全に揮発させて吸引しきれない。これにより、吸気しながら乾燥すべき基板を加熱することができる。この方法は、減圧蒸留の原理を利用して溶媒を分離するものであり、溶質の熱安定性が悪い発光機能層溶液に特に適用される。具体的には、吸気しながらチャンバーを加熱することで、低い温度で溶媒を蒸発させることができ、溶質への影響が少ない。本発明において、発光機能層中の材料は、高温下で長時間放置するのに適さない。したがって、このような減圧蒸留方法を用いて溶媒を低温で分離することにより、発光機能層材料の損傷を防止することもできる。
【0094】
ステップ17:乾燥段階の電界において、発光機能層溶液の中の溶媒が排出されるように、チャンバーを吸引し、発光機能層を形成する。
【0095】
本発明において、乾燥段階の電界下でチャンバーを吸気する。このように、乾燥段階の電界の垂直成分が、発光機能層溶液中の荷電基にピクセル電極層への付着力を与える。したがって、真空乾燥の際に、乾燥段階の電界を利用して発光機能層中の荷電基を固定することができ、溶媒の揮発時の溶媒の移動による荷電基の移動を抑制し、膜厚が均一な発光機能層薄膜を得、コーヒーステインの発生を防止することができる。
【0096】
本発明に係る表示パネルの製造方法は、ピクセル電極層に乾燥段階の電界を形成することにより、乾燥段階の電界により発光機能層溶液を乾燥させる。ピクセル電極層における乾燥段階の電界により発光機能層溶液中の荷電基を固定することで、溶媒揮発時に溶媒に伴う荷電基の移動が抑制され、膜厚が均一な発光機能層が得られ、これにより、コーヒーステイン現象の発生が防止され、高品質の薄膜が得られる。乾燥段階の電界により荷電基を固定することで、溶媒の揮発過程において吸気を厳しく制御することなく乾燥処理できるので、真空乾燥のプロセスが大幅に簡略化され、加工効率が向上する。
【0097】
また、本発明に係る表示パネルの製造方法は、発光機能層を印刷する時に印刷段階の電界を印加することもでき、印刷段階の電界の作用において、発光機能層の堆積を補助し、発光機能層をより均一に堆積させ、コーヒーステイン現象を防止することができる。
【0098】
図6を参照して、
図6は本発明の実施例に係る乾燥設備の構造概略図である。本発明に係る乾燥設備100は、乾燥すべき基板の乾燥処理に用いられるものである。乾燥設備100は発光機能層3を印刷した後の乾燥処理に用いられ、乾燥すべき基板は、基材1と、ピクセル電極層2と、発光機能層3溶液と、を備える。ピクセル電極層2が基材に設けられる。発光機能層3溶液がピクセル電極層2に設けられる。なお、乾燥設備100は、他の印刷された膜層の乾燥にも用いられてもよい。
【0099】
乾燥設備は、チャンバー101、吸気部材102及び導電性部材103を備える。吸気部材102がチャンバー101に配置される。吸気部材102がチャンバー101を吸気するためのものである。導電性部材103がチャンバー101の中に配置される。導電性部材103がピクセル電極層2に乾燥段階の電界が形成されるように、ピクセル電極層2に電気的に接続される。
【0100】
本発明に係る乾燥設備100は、様々なナノ膜層の乾燥に用いられる。具体的には、溶質は、無機ナノ粒子、貴金属ナノ粒子、コロイドナノシート、及びコロイドナノ棒状ナノ膜層の1種上の組み合わせである。さらに、ナノ粒子は、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化カドミウム(CdS)、二酸化チタン(TiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化スズ(SnO)及び酸化亜鉛(ZnO)の1種以上の組み合わせであってもよい。
【0101】
本発明において、発光機能層3溶液中の溶質は、量子ドット材料であってもよい。具体的には、量子ドット材料の発光コア材料は、ZnCdSe2、InP、Cd2SSe、CdSe、Cd2SeTe及びInAsの1種以上の組み合わせである。量子ドット材料の無機保護シェル材料は、CdS、ZnSe、ZnCdS2、ZnS、ZnOの1種以上の組み合わせである。量子ドット材料は、ヒドロゲル充填量子ドット構造、CdSe-SiO2量子ドット及びペロブスカイト量子ドットを更に含んでもよい。量子ドット材料の表面配位子は、アミン、酸、チオール及び有機リンの1種以上の組み合わせを含む。発光機能層3溶液中の溶媒は、無色透明で低沸点の有機又は無機溶媒であってもよい。例えば、溶媒は、脱イオン水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、石油エーテル又はn-ヘキサンの1種以上の組み合わせであってもよい。
【0102】
なお、本発明におけるチャンバー101は、閉鎖チャンバーであり、底部のみに開口部が設けられ、頂部には吸気部材102が設けられる。チャンバー101を設けることにより、乾燥過程においてピクセル電極層2及び発光機能層3の溶液を保護し、塵埃やほこりを防止し、不純物粒子の進入を防止することができる。なお、本発明におけるチャンバー101は、閉鎖されていないチャンバーとして提供されてもよく、本発明は、これに限定されないことを理解されたい。チャンバー101は透明なチャンバーであり、乾燥の際に溶媒の揮発を監視するのに便利である。
【0103】
吸気部材102がチャンバー101の頂部に配置される。又は、吸気部材102がチャンバー101の側壁又は底部にさらに配置されてもよい。本発明における吸気部材102は、発光機能層3溶液中から蒸発した溶媒を吸引するためのものである。加熱条件下で溶媒を蒸発させると、蒸発した溶媒が加熱されて上方に排出される。そのため、吸気部材102をチャンバー101の頂部に設けることで、蒸発した溶媒をよりよく吸引することができる。吸気部材102は、チャンバー101の側壁又は底部に設けられることで、溶媒が蒸発する位置に近接して吸気することができ、吸気部材102のパワー及び吸気強度への要求を低減させることができる。
【0104】
図5及び
図6を同時に参照されたい。導電性部材103は、少なくとも第1導電部103aと第2導電部103bと、を備える。ピクセル電極層2は、間隔をおいて配置された第1電極部21と第2電極部22とを含む。ピクセル電極層に電界が形成されるように、第1導電部103a及び第2導電部103bがピクセル電極層の両端に接続される。なお、第1導電部103a及び第2導電部103bは、それぞれ複数設けられていてもよい。また、第1導電部103aと第2導電部103bの数は、同じであっても異なっていてもよい。
図6に示すように、第1導電部103aと第2導電部103bとの数が同じであり、第1導電部103aと第2導電部103bとは対称に配置される。
【0105】
本発明に係るピクセル電極層2は、特殊なパターン設計を行うことができる。即ち、ピクセル電極層2は、発光機能層3が設けられていない両端領域において対称構造とされている。第1導電部103aと第2導電部103bとは、それぞれピクセル電極層2の両端の対称構造に接続されて、水平電極対を形成し、ピクセル電極層2に均一な水平電界を形成する。ピクセル電極層2は、互いに絶縁された2つのインターディジタル型電極として形成されてもよいが、インターディジタル型電極にピクセル定義層4を配置してピクセル電極層2をパターニングする。また、ピクセル電極層2は、全面パターン電極であってもよい。本発明は、ピクセル電極層2のパターニングについて制限をしない。
【0106】
本発明における導電性部材103は、チャンバー101の内部と外部とを連通することができる。外部の制御装置(図示せず)によって、導電性部材103に印加する電圧の大きさを制御する。第1導電部103aと第2導電部103bとにそれぞれハイレベルとローレベルとを印加して、ピクセル電極層2の両端に電圧差を生じさせる。又は、導電性部材103は、チャンバー101の内部に設けられ、導電性部材103に接続されるリード線がチャンバーの内外部に連通する。
【0107】
導電性部材103は、導電性ピラーであってもよい。導電性ピラーは、チャンバー101の底部に設けられ、チャンバー101の外部の回路に連通する。外部接続回路は、導電性ピラーがピクセル電極層2に伝達する電圧を制御することができる。また、導電性部材103を柱状にすることにより、導電性部材103を安定化して、伝送電流を均一にすることができる。勿論、導電性部材103は、他の形状であってもよく、これに限定されるものではない。
【0108】
導電性部材103には、電気接続部材104が設けられる。導電性部材103は、チャンバーに固定されており、大きさの異なる乾燥すべき基板を、導電性部材103の位置に合わせることが困難であるため、導電性部材103が電気接続部材104と可動に接続され、電気接続部材104を介してピクセル電極層2に接触する。電気接続部材104を設けることにより、ピクセル電極層2における電界をより制御することができる。一方、乾燥過程において、電界方向及び電界強度を容易に調整するように、複数の第1導電部103aと第2導電部103bとピクセル電極層2との電気的接続を調整することができる。一方、乾燥させる基板中の発光機能層3の溶液の溶媒を吸引し終えた後、制御装置により電気接続部材104とピクセル電極層2との接続を切断し、乾燥後の基板をチャンバー101から取り出すように制御してもよい。その後、次の乾燥すべき基板をチャンバー101に搬送して、制御装置により電気接続部材104とピクセル電極層2との電気的接続を制御する。
【0109】
具体的には、電気接続部材104は、プローブであってもよい。まず、プローブを上昇させ、乾燥すべき基板をチャンバー101に搬入した後、プローブを落とし、導電性部材103がプローブを介してピクセル電極層2と電気的に接続される。発光機能層3溶液中の溶媒の乾燥が終了すると、再びプローブを上昇させ、チャンバー101から基板を搬出するという往復動作を行う。導電性部材103は固定されているため、様々なピクセル電極層2のサイズに対応できず、プローブを設けることにより、大きさや、形状の異なるピクセル電極層2を接続することができ、乾燥設備100の適用に有利である。
【0110】
具体的には、プローブは、導電性部材103とピクセル電極層2との異なる間隔に対応するように、導電性部材103で伸縮することができる。
【0111】
乾燥設備100は、乾燥部材105をさらに含む。乾燥部材105は、チャンバー101を乾燥させるためのものである。乾燥部材105は、風力乾燥部材又は加熱部材であってもよく、勿論、上記の例に限定されない。例えば、沸点の高い溶媒については、単に吸気処理を行うだけで溶媒を完全に揮発させて吸引しきれない。これにより、吸気しながらチャンバー101を加熱することができる。この方法は、減圧蒸留の原理を利用して溶媒を分離するものであり、溶質の熱安定性が悪い発光機能層3溶液に特に適用される。吸気しながらチャンバー101を加熱することで、低い温度で溶媒を蒸発させることができ、溶質への影響が少ない。本発明において、発光機能層3中の材料は、高温下で長時間放置するのに適さない。したがって、このような減圧蒸留方法を用いて溶媒を低温で分離することにより、発光機能層材料の損傷を防止することもできる。
【0112】
具体的には、加熱部材は、チャンバー101の底部に設けられる加熱板である。加熱板を用いてチャンバー101の底部に設置してチャンバー101を加熱することにより、加熱板の位置が発光機能層3溶液に近接して、より良好に熱伝導を行うことができる。また、加熱板は、発光機能層3溶液を均一に加熱することができ、ピクセル電極層2における各箇所の発光機能層3溶液を同時に揮発させることができる。加熱板は、チャンバー101の外部に設けられてもよいし、チャンバー101の底板として直接作製してもよい。加熱板の温度は、沸点の異なる溶媒に対応できるように調整可能である。加熱部材は、湯浴加熱部材、油浴加熱部材又はヒーター線などであってもよく、チャンバー101の底部、側壁又はチャンバー101の周りに配置されてもよく、本発明はこれに限定されないことを理解されたい。
【0113】
具体的には、加熱板は、チャンバー101の底部の外側に配置されてもよく、又は、チャンバー101の底部として直接使用され、他の側壁及びトップキャップと共にチャンバー101を形成してもよい。なお、加熱板をチャンバー101の底部として直接設ける場合に、加熱板が導電性部材103と間隔をあけて設けられる。例えば、導電性部材103がチャンバー101の側壁に配置される。又は、チャンバー101内には、加熱板の上方に断熱板が設けられる。その後、この断熱板に導電性部材103を配置し、導電性部材103が電気接続部材を介してピクセル電極層2と接続される。
【0114】
本発明に係る乾燥設備100は、チャンバー101、吸気部材102及び導電性部材103を備える。導電性部材103を介してピクセル電極層2に接続され、ピクセル電極層2に電界が形成される。発光機能層3溶液を乾燥させるときに、ピクセル電極層2における電界により発光機能層3溶液中の荷電基が固定されるように、チャンバー101を吸気する。これにより、溶媒揮発時に荷電基の移動が抑制され、膜厚が均一な発光機能層3が得られ、これにより、コーヒーステイン現象の発生が防止される。電界により荷電基を固定することで、溶媒の揮発過程において吸気を厳しく制御することなく乾燥設備100を用いて乾燥処理できるので、真空乾燥のプロセスが大幅に簡略化され、加工効率が向上する。
【0115】
以上、本発明の実施例に係る表示パネルの製造方法及び乾燥設備について詳細に説明したが、本明細書では具体的な実施例を用いて本発明の原理及び実施形態について説明し、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核心的な思想を理解するためのものに過ぎず、一方、当業者であれば、本発明の構想に基づき、具体的な実施形態及び適用範囲に変更を加えることがあり、要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【国際調査報告】