(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】原動機付き車両におけるデータ伝達のためのシステム、原動機付き車両及び方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/40 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573279
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021074695
(87)【国際公開番号】W WO2022058216
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】102020124549.1
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】チャマス・モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ブルマー・フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケラーマン・ヘルムート
【テーマコード(参考)】
5K032
【Fターム(参考)】
5K032AA04
5K032AA09
5K032BA06
5K032DA01
5K032DB24
(57)【要約】
【課題】LINバスを有するローカルネットワーク制御機器を制御する信号の伝達について改善されたコンセプトを提供する。
【解決手段】原動機付き車両におけるデータ伝達のためのシステム10が、第1のLINマスタ11a及び第2のLINマスタ11bが形成された中央制御機器11と、第1のデータ接続部13を用いて中央制御機器11と接続されたゾーン制御モジュール12と、該ゾーン制御モジュール12と接続されたLINバス14とを含んでおり、LINバス14に接続された第1のLINスレーブ15aが第1のLINマスタ11aに割り当てられており、LINバス14に接続された第2のLINスレーブ15bが第2のLINマスタ11bに割り当てられている。さらに、データを伝達する方法が提案されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機付き車両におけるデータ伝達のためのシステム(10)であって、該システム(10)が、
少なくとも1つの第1のLINマスタ(11a)及び第2のLINマスタ(11b)が形成された中央制御機器(11)と、
第1のデータ接続部(13)を用いて中央制御機器(11)と接続されたゾーン制御モジュール(12,ZM
1)と、
該ゾーン制御モジュール(12,ZM
1)と接続されたLINバス(14,34
1)と
を含んでおり、
LINバス(14,34
1)に接続された第1のLINスレーブ(15a)が第1のLINマスタ(11a)に割り当てられており、
LINバス(14,34
1)に接続された第2のLINスレーブ(15b)が第2のLINマスタ(11b)に割り当てられている
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
第1のデータ接続部(13,33)を介して中央制御機器(11,31)に接続された少なくとも1つの別のゾーン制御モジュール(ZM
2)と、
別のゾーン制御モジュール(ZM
2)に接続された少なくとも1つの別のLINバス(34
2)と
を更に含み、
第1のLINマスタ(11a)に割り当てられた、及び/又は第2のLINマスタ(11b)に割り当てられた少なくとも1つのLINスレーブ(15a,15b)が、別のゾーン制御モジュール(ZM
2)の別のLINバス(34
2)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
それぞれ、ゾーン制御モジュール(12,ZM
1,ZM
2)の各LINバス(14,34
1,34
2)に接続されたLINスレーブ(15a,15b)に向けられた、第1のデータ接続部(13)を介して伝達されるLINマスタ(11a,11b)のヘッダのみをフィルタするように、ゾーン制御モジュール(12,ZM
1,ZM
2)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
ちょうど1つのLINバス(14)がゾーン制御モジュール(12)に接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
ゾーン制御モジュール(12)において受信される第1のLINマスタ(11a)及び第2のLINマスタ(11b)のヘッダがどのような時間的な順序でゾーン制御モジュール(12)からLINバス(14)へ伝達されるかを通信動作に従って制御するように、ゾーン制御モジュール(12)が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
LINマスタ(11a,11b)が、LINスレーブ(15a,15b)からLINバス(14)、ゾーン制御モジュール(12)及び第1のデータ接続部(13)を介してLINマスタ(11a,11b)へ伝達される、最後に送信されたヘッダに対応するレスポンスを受信しない限り、別のヘッダを送信しない、同期した伝達を通信動作が規定することを特徴とする請求項5に記載のシステム(10)。
【請求項7】
LINマスタ(11a,11b)が最後に送信されたヘッダに対応するレスポンスをまだ受信していない場合に、別のヘッダを送信する非同期の伝達を通信動作が規定し、LINマスタ(11a,11b)においてヘッダへのレスポンスの割り当てが可能となるように、ゾーン制御モジュール(12)が、レスポンスを関連するヘッダ又は関連するヘッダIDと共に第1のデータ接続部(13)を介してLINマスタ(11a,11b)へ伝達することを特徴とする請求項5に記載のシステム(10)。
【請求項8】
システム(10,30,40)が、中央制御機器(11)における複数のLINマスタ(11a,11b,M
LINx)と、それぞれLINバス(34
1,34
2,34
3,34
4)を有する複数のゾーン制御モジュール(ZM
1,ZM
2,ZM
3,ZM
4)とを備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム(10,30,40)。
【請求項9】
システム(10)のLINバス(34
1,34
2,34
3,34
4)の数がシステム(10)のLINマスタ(M
LIN1,M
LIN2,M
LINx)の数よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載のシステム(10)。
【請求項10】
LINマスタ(11a,11b)によって受信されるヘッダを、LINバス(14)が該ヘッダの伝達のために利用可能となるまで中間メモリすることができるように、ゾーン制御モジュール(12)が中間メモリ部(55)を備えていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
LINバス(14)及び/又は第1のデータ接続部(13)についてのエラー情報を中央制御機器(11)のLINマスタ(11a,11b)へ送信するようにゾーン制御モジュール(12)が形成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項12】
中央制御機器(11)とゾーン制御モジュールの間での第1のデータ接続部のデータ伝達速度がLINバス(14)のデータ伝達速度よりも大きいことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項13】
第1のデータ接続部(13)が、イーサネット標準、CAN標準、FlexRay標準、無線に基づく伝達標準、PCI-Express標準又はホームネットワーク標準に従い形成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項14】
LINマスタ(11a,11b)及び/又はLINスレーブ(15a,15b)が、このために用いられるマイクロコントローラにおいてハードウェア支援されて形成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項15】
LINバス(14)を介したフレームの伝達のための所定のタイムスロット(80)の継続時間内に、LINバスを介したフレームと、フレームに対応するヘッダ情報及びレスポンス情報とを、第1のデータ接続部を介して伝達するようにシステム(10)が形成されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項16】
少なくとも2つのLINマスタ(11a,11b)のヘッダ情報を、共通のデータパケットにおいて第1のデータ接続部を介して送信するようにシステムが形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項17】
ゾーン制御モジュール(12)には更にレガシーバス及び/又は対応する制御機器を有する離散信号ラインが接続されており、及び/又はシステム(10)が、レガシーバス及び/又は対応する制御機器を有する離散信号ラインを有する別のゾーン制御モジュールを備えており、レガシーバスの情報を第1のデータ接続部(13)を介して中央制御機器(11)へ伝達するようにシステムが形成されていることを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項18】
システム(10)の少なくとも2つのゾーン制御モジュール(ZM
1,ZM
2)が原動機付き車両のそれぞれ異なるゾーンに配置されていることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載のシステム(10)を有する原動機付き車両。
【請求項19】
共通のLINバス(14)に接続された、少なくとも1つの第1のLINスレーブ(15a)及び第2のLINスレーブ(15b)を制御する方法(20)であって、該方法(20)が、
第1のヘッダ情報を、共通のLINバス(14)を介して第1のLINマスタ(11a)から第1のLINスレーブ(15a)へ送信すること(21)、
第2のヘッダ情報を、共通のLINバス(14)を介して第2のLINマスタ(11b)から第2のLINスレーブ(15b)へ送信すること(22)、
第1のLINマスタ(11a)において、第1のヘッダ情報に対応する第1のLINスレーブ(15a)のレスポンス情報を受信すること(23)、及び
第2のLINマスタ(11b)において、第2のヘッダ情報に対応する第2のLINスレーブ(15b)のレスポンス情報を受信すること(24)
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は、原動機付き車両におけるデータ伝達のためのシステムに関するものである。システムは、中央制御機器及び少なくとも1つの別の制御モジュールを含んでいる。システムは、レガシーバス、特にLINバスを介して機器を制御するように形成されている。別の実施例は、原動機付き車両と、LINバスに接続されたLINスレーブを制御する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原動機付き車両においては、原動機付き車両の様々な機器がデータ接続部又はバスシステムを介して制御される。原動機付き車両において用いられる公知のバスは、例えばLIN(Local Interconnect Network)バス、CAN(Controller Area Network)バス又はFlexRayバスであり、さらに、ケーブルハーネスにおける離散信号も車両全体を通して伝達されることが可能である。バスは、通常、機能的に構成されており、すなわち、共通の機能を示す制御機器が共に1つのバスに接続される。
【0003】
LINシステムは、1つのマスタ(LINマスタ)と、1つ又は複数のスレーブ(LINスレーブ)で構成される。マスタは、例えば、例えばブリッジとしてLINをCANバスへ接続することが可能なマイクロコントローラとして形成されている。マスタは、通知の最初、いわゆるヘッダを送信することで、LINにおいて、(例えばしっかりと設定された)全ての通知の時間的な順序を特定する。したがって、1つ又は複数のLINスレーブは、LINバスシリアルを介してLINマスタに接続されている。伝達プロトコルは、LINマスタからLINスレーブへのヘッダの送信を規定する。ここで言及されるLINスレーブは、ヘッダに応答して、設定されたタイムスロット(例えばLINバスにおける5ms又は10msサイクル)内でレスポンスをLINマスタへ返信する。ヘッダ及びレスポンスは、設定されたタイムスロットの継続時間内に送信される1つのフレームとしてまとめられる。
【0004】
異なる機能の複数の機器又はスレーブを制御する制御機器においては、伝達ケーブルとして車両におけるワイヤハーネス又はケーブルハーネスに配置されている、ますます数が多くなるLINバスが、LINバスの仕様において原動機付き車両において必要とされる。多くのLINバスにより、ケーブルハーネスの周囲又は断面が大きくなり得るため、ケーブルハーネスを原動機付き車両の制限された空間に格納することが困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、例えば車両において、レガシーバス又は離散信号ライン、特にLINバスを有するローカルネットワーク制御機器、特にスレーブを制御する信号の伝達について、改善されたコンセプトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、独立請求項の態様に従い解決される。別の有利な実施形態は、従属請求項、以下の説明において、及び図面に関連して説明される。
【0007】
対応して、原動機付き車両におけるデータ伝達のためのシステムが提案される。システムは中央制御機器を含んでおり、当該中央制御機器には、少なくとも1つの第1のLINマスタ11a及び第2のLINマスタが形成されている。システムは更に少なくとも1つのゾーン制御モジュールを含んでおり、当該ゾーン制御モジュールは、第1のデータ接続部を用いて中央制御機器に接続されている。システムは更に(例えばシステムの第2のデータ接続部として)LINバスを含んでおり、当該LINバスはゾーン制御モジュールに接続されている。LINバスに接続された第1のLINスレーブは第1のLINマスタに割り当てられ、LINバスに接続された第2のLINスレーブは第2のLINマスタに割り当てられるように構成されている。
【0008】
したがって、システムにより、異なるLINマスタに割り当てられた2つのLINスレーブが共通のLINバスを使用することができることが可能となる。これにより、他のシステムとは対照的に少なくとも1つのLINバスを省略することができ、これにより、例えばLINバスに必要なケーブルを削減することが可能である。例えば、複数のLINマスタも中央制御機器に配置されることができ、当該LINマスタは、それぞれ割り当てられた複数のLINスレーブを共通のLINバスにおいて制御することが可能である。他のシステムとは対照的に、例えば、それぞれ個別のLINマスタについて別々のLINバスを提供する必要がない。
【0009】
第1のデータ接続部を用いることで、中央制御機器からゾーン制御モジュールへのデータ伝達をより効率的に構成することが可能となり得る。例えば、LINバス自体は中央制御機器まで延びる必要はない。例えば、その代わりに、第1のデータ接続部を用いることができ、当該第1のデータ接続部を介して、LIN情報のほかに他の信号又は情報が伝達される(例えば一般的な車載ネットワーク接続;例えばイーサネット接続又はCAN接続)。第1のデータ接続部を介したデータ伝達は、車両において、より高い効率(例えばLINバスデータ伝達に比してより大きなデータ伝達速度)で全体として低減されたケーブル要求につながり得る。
【0010】
以下においても例示的に示されたLINバス技術での構成に代えて、ゾーン制御モジュールにおいて、LINバスに代えて、又はこれに加えて他のレガシーバス(例えばCANバス及び/又はFlexRayバス)及び/又は離散信号ラインも接続されることが可能である。そして、中央制御機器には、対応して、LINマスタに代えて、又はLINマスタに加えて、例えば、各制御機器の信号を受信し、及び各制御機器へ信号を送信するモジュールを設けることが可能である。
【0011】
このようにして、異なる種類のバスシステムを中央制御機器に機能的に統合することが可能であり得る。異なる技術間での互換性を可能とするために、ゾーン制御モジュールは、例えば、レガシーバスと第1のデータ接続部(例えばイーサネット接続)の間のゲートウェイとして動作することができる。特に、提案されるシステムにより、各信号(例えばCAN/FlexRay/LIN/など)のバックボーントンネルを第1のデータ接続部(例えばイーサネット)を介して可能とするとともにフレキシブルな、例えばゾーン化されたシステムを可能とすることができるように、適宜のレガシーバスをゾーン制御モジュールに接続することが可能となり得る。
【0012】
一態様によれば、システムが第1のデータ接続部を介して中央制御機器に接続された少なくとも1つの別のゾーン制御モジュールを含むように構成されている。また、少なくとも1つのレガシーバス、特にLINバスが設けられており、当該バスは、別のゾーン制御モジュールに接続されている。このとき、別のゾーン制御モジュールの別のLINバスには、第1のLINマスタ及び/又は第2のLINマスタに割り当てられた少なくとも1つのLINスレーブが接続されるように構成されている。
【0013】
したがって、システムは、例えば1つ又は複数のゾーンをもって例えばゾーン式に形成されることができ、当該ゾーンには、レガシーバス、特にシステムのLINバス(例えば異なるLINマスタによって共通に使用されるLINバス)が分配して配置されている。対応して、2つ以上のゾーン制御モジュールをシステムに設けることが可能である。複数のゾーン制御モジュールの第1のデータ接続部の共通の使用により、第1のデータ接続部を介したデータ伝達の効率を更に高めることが可能である。例えば、中央制御機器とゾーン制御モジュールの間でLIN情報(例えばヘッダ情報及び/又はレスポンス情報)を伝達するのに、複数のLINバスの代わりに第1のデータ接続部で十分であり得る。
【0014】
異なるLINバスには、例えば、所定のLINマスタに割り当てられた各LINバススレーブを接続することが可能である。このとき、ゾーンコンセプトは、物理的に非常に長いLINバスについての大きなケーブル要求を省略することが可能である。その代わり、LINマスタは、有利には、異なるローカルなLINバスにおけるそのLINスレーブを制御することが可能である。このとき、ローカルな、又はゾーンのLINバスの合計の物理的な全長は、例えば、第1のデータ接続部の使用により、他のLINシステムにおいて必要となるLINバスの物理的な全長に比して低減されることが可能である。
【0015】
例えば、それぞれ、ゾーン制御モジュールの各LINバスに接続されたLINスレーブに向けられた、第1のデータ接続部を介して伝達されるLINマスタのヘッダのみをフィルタするように、ゾーン制御モジュールが形成されているように構成することが可能である。例えば、第1のデータ接続部を介して、システムのLINスレーブについてのヘッダ又はヘッダ情報を伝達することが可能である。フィルタによって、所定のゾーン制御モジュールのLINバスへの伝達のために特定されていないヘッダ情報が当該所定のゾーン制御モジュールあるいは所定のゾーン制御モジュール内の信号分岐部から受け取られることを回避することが可能である。
【0016】
また、ゾーン制御モジュール(例えばゾーン制御モジュールのフィルタ)が二重の通知、例えば冗長的に送信されたヘッダもフィルタするように形成されるように構成することが可能である。これにより、LINバスのバス負荷を低減することが可能である。なぜなら、冗長性を回避することができ、したがって、わずかな通知をLINバスを介して送信する必要があるためである。LINバスの共通の使用により、場合によっては、レスポンス情報の伝達時に遅延することがあり、その結果、ヘッダ情報が二重に送信され得る。冗長的な情報をフィルタすることは、複数のLINマスタによって共通に用いられるLINバスを有するシステムにおいて利点を有し得る。なぜなら、複数のマスタによりLINバスの伝達容量に留意する必要があるためである。
【0017】
例えば、ちょうど1つのLINバスがゾーン制御モジュールに接続されるように構成することが可能である。他のコンセプトとは対照的に、LINバスの共通の使用により、例えば、異なるLINマスタのLINスレーブについてそれぞれ別々のLINバスを提供する必要がない。ゾーン制御モジュールごとにちょうど1つのLINバスを用いることで、例えば、システムのゾーンにおけるLINバスについてのケーブル要求を低減することが可能である。
【0018】
例えば、通信動作に従い(例えば伝達プロトコルに従い、例えばデータの伝達のための制御に従い)、第1のLINマスタ及び第2のLINマスタの受信されたヘッダがゾーン制御モジュールにおけるどのような時間的な順序でゾーン制御モジュールからLINバスへ伝達されるかを制御するようにゾーン制御モジュールが形成されるように構成することが可能である。複数のLINマスタのLIN情報の共通のデータ伝達により、例えば、第1のデータ接続部及び/又はLINバスを介したデータ伝達についての適切なスケジューリングを提供する必要がある。通信動作は、例えば同期して、又は非同期に規定されることが可能である。
【0019】
一例によれば、LINマスタが、LINスレーブからLINバス、ゾーン制御モジュール及び第1のデータ接続部を介してLINマスタへ伝達される、最後に送信されたヘッダに対応するレスポンスを受信しない限り、別のヘッダを送信しない、同期した伝達を通信動作が規定するように構成することが可能である。例えば、第1のLINマスタは、第1のデータ接続部を介して中央制御機器とゾーン制御モジュールの間で第1のヘッダ情報を送信し、第1のヘッダ情報に対応するレスポンス情報が第1のデータ接続部を介して中央制御機器において受信されたときに初めて後続の第2のヘッダ情報を送信する。
【0020】
例えば、第1のゾーン制御モジュールのLINスレーブへのデータ伝達のための当該同期した通信動作を設定することが可能である。例えば、第1のゾーン制御モジュールからのLINスレーブのレスポンス情報がまだ受信されていない場合には、LINマスタは、第1のヘッダ情報を既に第2のゾーン制御モジュールへ送信することがあり得る。各ゾーン制御モジュールのための同期したデータ伝達により、各ゾーン制御モジュールにおけるLINバスの過負荷を回避することが可能である。しかし、ヘッダ情報が第2のゾーン制御モジュールへ送信されれば、これは、第1のゾーン制御モジュールのLINバスのバス負荷に関するものではない。
【0021】
例えば、これに代えて、LINマスタが、最後に送信されたヘッダに対応するレスポンスをまだ受信していないときでも、別のヘッダを送信する、非同期の伝達を通信動作が規定するように構成することが可能である。このとき、LINマスタにおいてヘッダへのレスポンスの割り当てを可能とするために、ゾーン制御モジュールが、関連するヘッダ(例えば関連するヘッダID;例えばヘッダID及び/又はProtected Identifier(保護された識別子) PID)と共にレスポンスを第1のデータ接続部を介してLINマスタへ伝達するように構成することが可能である。
【0022】
非同期の通信動作は、例えば、LINスレーブへのヘッダ情報のフレキシブルな伝達を許容し得る。例えば、複数のLINマスタがヘッダ情報を同時にゾーン制御モジュールへ送信する場合には、全てのヘッダ情報が共通のLINバスを介して伝達されるまで所定の時間がかかり得る(例えば、まだ処理されるべきヘッダ情報は、LINバスを介した伝達までゾーン制御モジュールのメモリにおいて中間メモリされることが可能である。これについては、後述の説明を参照のこと。)。当該時間においてLINマスタがヘッダ情報をより高い優先順位で送信したい場合には、LINマスタは、同期した伝達動作に従い、以前のレスポンス情報を受け取るまで待機する必要がある。これに対して、非同期の伝達動作は、例えばヘッダ情報の優先順位付けを可能とすることができる。例えば、LINマスタは、以前の(又は以前の複数の)ヘッダ情報に対するレスポンス情報を受信する前に、例えばより高い優先度を有するヘッダ情報をゾーン制御モジュールへ送信することが可能である。ゾーン制御モジュールにおける伝達制御(例えばスケジューリング)は、例えばより高い優先度を有するヘッダ情報を好ましくはLINバスへ伝達することができる。したがって、例えば、共通に用いられるLINバスにおいても、バス負荷時には、優先されるヘッダ情報を優先順位付けして伝達することができるとともに、このような重要なヘッダ情報の伝達時間を短縮することが可能である。
【0023】
例えば、システムが、中央制御機器における複数のLINマスタと、それぞれLINバスを有する複数のゾーン制御モジュールとを備えるように構成することが可能である。システムは、例えば、第1のデータ接続部を使用することで、設定におけるフレキシビリティを有することが可能である。したがって、ゾーン制御モジュール及び/又はLINマスタの数は、それぞれ必要な用途に合わせて選択されることが可能である。
【0024】
特に、システムのゾーン制御モジュールにおけるLINバスの数がシステムのLINマスタの数よりも大きいように構成することが可能である。これにより、例えば、個々のLINバスの伝達容量の過負荷のリスクを低減することが可能である。例えば、LINマスタのLINスレーブを異なるLINバスにおいて分配して配置することが可能である。これにより、LINマスタによるLINバスの時間的に分配された使用を得ることができ、その結果、少なくとも平均においてLINバスの可用性が他のLINマスタの情報の伝達についても存在する。LINマスタに比して大きな数のLINバスにより、例えば、LINバスの伝達容量に関するバッファを提供することができ、当該バッファは、例えば、LINマスタによるLINバスの使用が均等に分配してなされない場合に必要となり得る。
【0025】
一実施例によれば、ヘッダの伝達のために設けられたLINバスが利用可能であるまでLINマスタによって受信されたヘッダを中間メモリすることができるように、ゾーン制御モジュールが中間メモリ部(例えばスケジュールモジュール)を有するよう構成することが可能である。上述のとおり、LINバスの共通の使用により、LINバスの伝達容量の一時的な過負荷に至ることがある。当該過負荷は、中間メモリ部によって防止されることが可能である。制御ユニット(例えばディスパッチャ)は、中間メモリ部に蓄積されたヘッダ情報がLINバスにおいて伝達される順序を決定することが可能である。伝達は、上述のように、例えば同期して、又は非同期に行われることができる。制御ユニットは、中間メモリ部に存在する冗長的な通知を消去するように形成されることができ、その結果、例えば、バス負荷が同一の通知の繰り返しの伝達によって不必要に高められることがない。
【0026】
例えば、さらに、LINバス及び/又は第1のデータ接続部についてのエラー情報を中央制御機器のLINマスタへ送信するようにゾーン制御モジュールが形成されるように構成することが可能である。これにより、提案されるゾーンシステムにおいても従来のLINエラーマネジメントを用いることができることを可能とし得る。これにより、他のLINシステムに対する提案されるシステムの互換性を得ることが可能である。例えば、LINスレーブから送信されるエラー情報を割り当てられたLINマスタにおいて利用可能とすることが必要である。提案されるゾーン制御モジュールは、エラー情報をLINマスタへ更に伝達することができるように、例えば各エラー情報を第1のデータ接続部のデータフォーマットへ埋め込むことが可能である。
【0027】
例えば、中央制御機器とゾーン制御モジュールの間での第1のデータ接続部のデータ伝達速度がLINバスのデータ伝達速度よりも大きいように構成することが可能である。
【0028】
LINバスに比して大きな第1のデータ接続部のデータ伝達速度により、(LINバスを介してヘッダとして送信するための)ヘッダ情報と、(例えばLINバスを介してレスポンスとして送信された)レスポンス情報とを中央制御機器とゾーン制御モジュールの間でより迅速に交換することが可能となり得る。これにより、複数のゾーン制御モジュールを1つの中央制御機器に接続することが可能となり得る。例えば、LINバスの所定のタイムスロット(例えば所定の5msのスロット又は10msのスロット)の間に複数のヘッダ情報を第1のデータ接続部を介して送信することが可能である。このことは、例えば、中央制御機器の各LINマスタによって制御される複数のLINスレーブがゾーン制御モジュールのLINバスに接続されていれば有利であり得る。
【0029】
したがって、提案されるシステムにより、例えば、LINバスを介して伝達されるべきLINマスタの情報をまずはより迅速な接続部を介してゾーン制御モジュールへ送信することが可能となり、そこから情報が更により緩慢なLINバスへ伝達される。したがって、従来のシステムとは対照的に、LINマスタを、ゾーン制御モジュールにおいて直接的にではなく、別々の中央制御機器に配置するように構成されている。
【0030】
より迅速な第1のデータ接続部を用いることで、従来のシステムとは対照的に、中央制御機器とゾーン制御モジュールの間で例えば複数のLINバスの複数の伝達ケーブルを省略することが可能である。なぜなら、複数のLINバスのヘッダ情報及びレスポンス情報は、例えば第1のデータ接続部の共通の伝達ケーブルを介して伝達されることができるためである。このことは、例えば、このとき第1のデータ接続部を介した伝達時に時間遅延を引き起こすことなく行われることができる。例えば、第1のデータ接続部を用いることで、有利には中央制御機器とゾーン制御モジュールの間のケーブルハーネスを縮小(ケーブルハーネスの例えばより小さな直径又はより小さな断面積)することが可能である。
【0031】
一実施例によれば、第1のデータ接続部のデータ伝達速度は、LINバスのデータ伝達速度の少なくとも10倍(又は20倍又は50倍)に相当するように構成されている。第1のデータ接続部を介したこのようにより迅速なデータ伝達速度によって、例えば、中央制御機器に配置されたLINマスタを用いて大きな数のLINバスを動作させることが可能となる。例えば、第1のデータ接続部を介した伝達時のクラッシュ又は遅延に至ることなく、例えば、別の情報(例えば追加的な、及び/又はヘッダ情報及びレスポンス情報とは異なる情報)を第1のデータ接続部を介して伝達することも可能となり得る。
【0032】
例えば、第1のデータ接続部は、イーサネット標準、CAN標準、FlexRay標準、無線に基づく伝達標準(例えばWLAN、4G、5G又はBluetooth)、PCI-Express標準又はホームネットワーク標準(例えばホームグリッド-G.hn)に従い形成されることが可能である。当該標準の使用により、第1のデータ接続部の必要なデータ伝達速度を可能とすることができる。
【0033】
一実施例によれば、LINマスタ及び/又はLINスレーブがこのために用いられるマイクロコントローラにおいてハードウェア支援されて形成されるように構成されている。一般的に、機能は、ソフトウェアを用いて、又は所定のハードウェアブロックを用いてマイクロコントローラへ移転されることが可能である。ソフトウェアソリューションは、よりフレキシブルに変更可能であるか、又は複数の機能を実行することが可能であるという利点を有することができ、これに対して、一度実行される物理的なハードウェアブロックは、それぞれ設定された機能についてのみ用いられることが可能である。このために、ハードウェア支援された構成においては、例えば、必要な実行時間をより正確に遵守することが可能である(例えばプロセス継続時間をより良好に計画することができる)。なぜなら、例えばその他のプロセスにより(例えばソフトウェアソリューションの場合のように)実行が遅延し得るためである。
【0034】
LIN情報(例えばフレーム;例えばヘッダ及びレスポンス)の伝達時には、LIN伝達標準に従いそれぞれ1つの公差時間が設定されている。このとき、実際に必要な伝達時間(例えば最大のヘッダ伝達継続時間)は、通常の伝達継続時間よりも40%まで大きいことがあり得る。したがって、効果的な伝達機構により予定される公差時間が不要である場合には、が固定されたタイムスロット(例えば5ms又は10msのスロット)の設定された使用においては、LINバスを介して伝達時に、フレームのタイムスロットにおいて空きのタイムフレームが生じる。LINマスタ及び/又はLINスレーブの実行のためにハードウェア支援されたマイクロコントローラを用いる場合には、通常の伝達時間が遵守されるか、又は少なくとも予定される全体の公差時間が不要であることを達成することが可能である。したがって、LINバスのタイムスロットにおける不要な公差時間(例えばタイムフレーム)は、他の態様で活用されることが可能である。
【0035】
ハードウェア支援されたマイクロコントローラによって、LINバスにおける設定されたタイムフレーム(公差時間)が不要となるということを高い安全性をもって達成することが可能である。当該タイムフレームにおいては、有利には、例えばLINバスにおける設定されたサイクルが遅延することなく、LINマスタからの、又はLINマスタへの第1のデータ接続部を介したヘッダ情報及び/又はレスポンス情報の伝達を行うことが可能である。LINスタックハードウェアサポートを有する現代のマイクロコントローラにLIN機能を実装する場合には、例えば、タイミングにおける40%許容差又は公差時間が不要であるか、又は完全には必要とされない。当該時間は、例えば(例えば第1のデータ接続部を介してヘッダ情報及び/又はレスポンス情報を)トンネルさせるために用いられることができる。利用可能な空きのタイムフレームは、例えば、スロット継続時間(すなわち係数140%が乗算されたヘッダ及びレスポンスの公称伝達時間)からヘッダ及びレスポンスの公称伝達時間(例えば最大の公差時間)を減算した長さを有している。しかし、LINマスタからの、又はLINマスタへの第1のデータ接続部を介したヘッダ情報及び/又はレスポンス情報の伝達のために、例えば、第1のデータ接続部のデータ伝達速度に依存してより短い(例えば最大の公差時間よりも短い)タイムフレームでも十分であり得る。
【0036】
ハードウェア支援されたマイクロコントローラに代えて、又はこれに加えて、空きのタイムフレームの可用性は、例えば、ソフトウェアソリューションを用いても、高性能な演算ユニット又はソフトウェアソリューションのためのみに提供される演算ユニットにおいてより良好に保証されることが可能である。
【0037】
例えば、提案されるシステムを用いて、LINバスの設定されたタイムスロット内で第1のデータ接続部を介して(例えばLINバスに割り当てられたLINマスタからの、又は当該LINマスタへの)情報も伝達することが可能となり得る。
【0038】
一実施例によれば、LINバスを介したフレーム(すなわちLINバスを介して伝達されるヘッダ及びレスポンス)の伝達のための所定の公称タイムスロットの継続時間内に、LINバスを介したフレームと、フレームに対応するヘッダ情報及びレスポンス情報とを、第1のデータ接続部を介して伝達するようにシステムが形成されるように構成されている。換言すれば、LIN伝達標準を規定する不必要な公差時間は、(例えばバックボーンバスと呼ぶことができる)第1のデータ接続部を介したヘッダ情報及び/又はレスポンス情報の伝達(例えばトンネル)のために用いられることが可能である。これにより、各ヘッダ情報及び/又はレスポンス情報がLINバスにおけるタイムスロットの継続時間中に、中央制御機器に配置されたLINマスタから、又は当該LINマスタへ伝達されることが可能となり得る。
【0039】
例えば、ヘッダ情報は、第1のデータ接続部を介した送信時に第1のデータ接続部の標準のデータパケットに埋め込まれるように構成されている。第1のデータ接続部は、例えばCANバスであってよく、ヘッダ情報はCANフレームに埋め込まれることが可能である。対応して、レスポンス情報も、用いられる標準の各データパケットに埋め込まれることが可能である。有利には、第1のデータ接続部を介して伝達時にデータパケットの長さが可変であれば、ヘッダ情報及び/又はレスポンス情報を伝達可能なできる限り小さなフレームサイズ(例えば第1のデータ接続部の標準の最小の利用可能なフレームサイズ)を選択することが可能である。
【0040】
例えば、第1のデータ接続部としてイーサネット接続を用いることができ、ヘッダ情報及び/又はレスポンス情報は、イーサネット接続を介した伝達時に64バイトイーサネットフレームに埋め込まれることが可能である。利点は、ヘッダ情報及びレスポンス情報が(例えばマスタ自体がデータを送信する場合に)それぞれ完全に64バイトイーサネットフレームにおいて伝達されることができるとともに、第1のデータ接続部を介した伝達時間を非常に短くすることができるということであり得る。例えば、最大10Mbit/sをもったイーサネット接続を用いることが可能である。なぜなら、これにより十分迅速なデータ伝達が可能となり、及び/又は第1のデータ接続部の経済的な設定が可能となり得るためである。
【0041】
例えば、中央制御機器における異なるLINマスタの複数のヘッダ情報を1つの通知において共通に伝達することが可能である。例えば、2つ(又は3つ以上)のヘッダを1つの共通なデータパケットにおいて第1のデータ接続部を介して送信することができる。
【0042】
開示の別の態様はシステムに関するものであり、当該システムでは、ゾーン制御モジュールには、LINバスのほかに少なくとも1つの別のレガシーバス及び/又は追加的に対応する制御機器を有する離散信号ラインが接続されている。これに代えて、又はこれに加えて、システムは、レガシーバス及び/又は対応する制御機器を有する離散信号ラインをもった別のゾーン制御モジュールを備えることができる。このとき、システムは、レガシーバス及び/又は離散信号ラインの情報を第1のデータ接続部を介して中央制御機器に伝達するように形成されている。
【0043】
自動車分野では通常既に車両範囲で長く用いられているCANバス、LINバス、FlexRayバス、離散信号を有するバス、I2Cバス又はこれらに類するもののようなバスがレガシーバスと呼ばれる。したがって、例えば、ゾーン制御モジュールには、LINバスと、対応するCAN制御機器を有するCANバスとが接続されるように構成されることが可能である。
【0044】
レガシーバス又は離散信号ラインの各情報は、第1のデータ接続部のデータパケットへパックされて送信されることが可能である(例えばイーサネットフレームへ埋め込まれることができ、したがって、第1のデータ接続部を介して伝達されることが可能である)。このとき、ゾーン制御モジュールを用いて、イーサネット通信プロトコルについての固有の(例えば仮想の)MACアドレスをレガシーバスにおける各制御機器に割り当てることが可能であり得る。
【0045】
したがって、システムにより、異なるレガシーバスをゾーン制御モジュールを介してフレキシブルな態様でバックボーンバス、例えばイーサネット接続部へ接続することを可能とすることができ、ゾーン制御モジュールにより、第1のデータ接続部(例えばイーサネット)を介した伝達のために、レガシーバスの制御機器の情報の抽出が可能となる。これにより、有利には、提案されたゾーンシステムをよりフレキシブルに異なるバスタイプの統合のために利用することが可能となり得る。第1のデータ接続部の使用は、例えば、各レガシーバスのケーブル要求も低減することが可能である。
【0046】
1つの態様は、上述の説明又は後述の説明によるシステムを有する原動機付き車両に関するものである。特に、システムの少なくとも2つのゾーン制御モジュールが原動機付き車両の異なるゾーンに配置されるように構成されている。これに代えて、原動機付き車両のシステムは、1つのみのゾーンを備えることもでき、この場合、例えば、異なるLINマスタに割り当てられた複数のLINスレーブをシステムのゾーン制御モジュールに接続された共通のLINバス(又は複数のLINバス)に接続することが可能である。例えばシステムの異なるゾーンにおける1つ又は複数のLINバスを提供することで、及び/又は第1のデータ接続部を介した、トンネルされたデータ伝達を提供することで、他のLINバスシステムとは対照的に、例えば必要なケーブル長さ又は必要なケーブル要求を低減することが可能である。したがって、原動機付き車両におけるシステムのケーブルの敷設を単純化することができ、及び/又はシステムのコストを低減することができる。
【0047】
例えば、第1のデータ接続部の伝達ケーブル及び/又はLINバスの伝達ケーブルが原動機付き車両の車両ピラーによってガイドされるように構成することが可能である。第1のデータ接続部の伝達ケーブル(例えばCANバス又はイーサネットのケーブル)が車両ピラーによってガイドされる場合には、例えば、車両ピラーにおける複数のLINバスケーブルを省略することが可能である。例えば、システムにより、システムの全てのLINバスケーブルが車両ピラーによってガイドされる必要はなく、車両ピラーにおけるLINバスケーブルの数を限定することが可能となり得る。このことは、有利には、例えば車両ピラーを通るケーブルハーネスのより容易な案内につながり得る。
【0048】
これに代えて、提案されるシステムは、例えば他の車両(例えば航空機又は船舶)においても、及び一般的にローカルネットワークにおいて(例えば、例えばホームグリッド標準によって規定されるようなスマートホーム機器又はホームネットワーク)も用いられることが可能である。
【0049】
1つの態様は、共通のLINバスに接続された少なくとも1つの第1のLINスレーブ及び第2のLINスレーブを制御する方法に関するものである。方法は、第1のLINマスタから第1のLINスレーブへ共通のLINバスを介して第1のヘッダ情報を送信することと、第2のLINマスタから第2のLINスレーブへ共通のLINバスを介して第2のヘッダ情報を送信することとを含んでいる。
【0050】
また、方法は、LINスレーブの、第1のヘッダ情報に対応するレスポンス情報を第1のLINマスタにおいて受信することと、第2のLINスレーブの、第2のヘッダ情報に対応するレスポンス情報を第2のLINマスタにおいて受信することとを含んでいる。
【0051】
方法により、1つの共通のLINバスを2つ以上のLINマスタに用いることが可能となる。LINバスにおいてデータ伝達するための他の方法では、LINマスタごとに別々のLINバスを提供することができる。これにより、複数のLINバスに対して必要なケーブルの量は、他のコンセプトにおいては非常に大きくなり得る。これに対して、提案される方法によれば、各LINマスタは別々のLINバスを必要としないため、ケーブルを削減することが可能となる。方法は、LINマスタが例えば割り当てられたLINスレーブへ連続的に情報(例えばヘッダID及び/又はデータ部分)を送信しない場合には、LINマスタのLINスレーブが、異なる共通のLINバスに配置されており、及び/又はシステムにおいてわずかなバス負荷で使用されるゾーンシステムにおいて用いられることが可能である。例えば、LIN伝達方法においてそれぞれデータ伝達のために設定されたタイムスロットを用いるシステムのために方法を用いる場合には、LINバス容量の過負荷を生じさせることなく、方法を実施することが可能である。
【0052】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。特に、原動機付き車両及び方法は、提案されるシステムに関連して説明したような特徴を有することが可能である。記載される実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述若しくは後述(例えば
図1~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0053】
以下に、添付の図面を参照して実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】中央制御機器及びゾーン制御モジュールを有するシステムの概略的な一例を示す図である。
【
図2】第1のLINスレーブと第2のLINスレーブを制御する方法のフローチャートを示す図である。
【
図3】4つのゾーン制御モジュール及び3つのLINマスタを有するゾーンシステムの概略的な一例を示す図である。
【
図4】2つのLINバスに接続されたゾーン制御モジュールを有するシステムの概略的な一例を示す図である。
【
図5a】同期動作を伴うゾーンシステムにおけるデータ伝達の一例を示す図である。
【
図5b】同期動作を伴うゾーンシステムにおけるデータ伝達の一例を示す図である。
【
図6】非同期動作におけるゾーンシステムでのデータ伝達の一例を示す図である。
【
図7】複数のLINバスを有する従来のシステムの一例を示す図である。
【
図8】バックボーンバスとしての第1のデータ接続部を介したトンネルを用いてヘッダ情報及びレスポンス情報を伝達する一例を示す図である。
【
図9】時間オフセットを用いつつ第1のデータ接続部を介して、複数のフレームを複数のLINバスへ伝達する一例を示す図である。
【
図10】中央制御機器と、複数の異なるレガシーバスが接続されたゾーン制御モジュールとを有するシステムの概略的な一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
いくつかの実施例が図示された添付の図面を参照しつつ異なる実施例を詳細に説明する。各図では、ライン、層及び/又は領域の厚さ寸法は、分かりやすさのために誇張して図示されていることがある。いくつかのみの例示的な実施例を示す添付の図面の以下の説明では、同一の符号は、同一又は同様の構成要素を示し得る。
【0056】
他の要素と「結合」又は「接続」されると表される要素は、他の要素と直接結合又は接続されることができるか、又はこれらの間に要素が存在することが可能である。特に規定しない限り、ここで用いられる全ての用語(技術的な用語及び学術的な用語を含む)は、実施例が属する分野における当業者が帰する同一の意味を有している。
【0057】
図1には、例えば原動機付き車両におけるデータ伝達のための例示的なシステム10が概略的に示されている。システム10は中央制御機器11を含んでおり、当該中央制御機器には、少なくとも1つの第1のLINマスタ11a及び第2のLINマスタ11bが形成されている。システム10は更にゾーン制御モジュール12を含んでおり、当該ゾーン制御モジュールは、第1のデータ接続部13を用いて中央制御機器11に接続されている。システム10は更にLINバス14を含んでおり、当該LINバスはゾーン制御モジュール12に接続されている。ここで、LINバス14に接続された第1のLINスレーブ15aは第1のLINマスタ11aに割り当てられており、LINバス14に接続された第2のLINスレーブ15bは第2のLINマスタ11bに割り当てられている。システム10は、例えば原動機付き車両において用いられることが可能である。
【0058】
提案されるシステム10を用いて異なるマスタ11a,11bのスレーブ15a,15bを共通のLINバス14に配置することが可能であるため、システム10は、LINバスについてのケーブルの必要性を低減することを可能とし得る。例えば、第1のデータ接続部13の使用によりシステム10のLINバスのゾーン化を可能とすることができ、例えば、それぞれ第1のデータ接続部13を介して中央制御機器(例えば統合プラットフォーム)に接続されたそれぞれ1つのLINバスを必要なゾーンにおいてのみ配置することが可能となり得る。したがって、同時にLINシステムを分散あるいはゾーン化させつつLINマスタの集中化(集約化)を可能とすることができる。
【0059】
LINバス14よりも大きなデータ伝達速度を有する第1のデータ接続部13を提供することで、例えば、LINバスの伝達ケーブルをそれぞれ個別に対応するLINマスタ11a,11bを有する中央制御機器11へ延ばす必要なく、ゾーン制御モジュール12において別のLINバスを接続することが可能となり得る。これにより、システム10により、複数のLINバスの使用に際してケーブルの必要性を低減することが可能となり得る。LIN情報、特に各LINバスから中央制御機器11における関連するLINマスタへのヘッダ情報及びレスポンス情報をトンネルするために、例えば、第1のデータ接続部13は、中央のデータ接続部(例えば中央のバス又はバックボーンバス;例えばイーサネット接続又はCANバス)として用いられることが可能である。
【0060】
これに代えて、LINバスに代えて、第1のデータ接続部13よりも小さなデータ伝達速度を有する他のバスシステムを提供することも可能である。
【0061】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図1に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述若しくは後述(例えば
図2~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0062】
図2には、第1のLINスレーブと第2のLINスレーブを制御する(作動させる)方法20のフローチャートが示されている。方法20は、第1のLINマスタから第1のLINスレーブへ共通のLINバスを介して第1のヘッダ情報を送信すること21と、第2のLINマスタから第2のLINスレーブへ共通のLINバスを介して第2のヘッダ情報を送信すること22とを含んでいる。また、方法20は、LINスレーブの、第1のヘッダ情報に対応するレスポンス情報を第1のLINマスタにおいて受信すること23と、第2のLINスレーブの、第2のヘッダ情報に対応するレスポンス情報を第2のLINマスタにおいて受信すること24とを含んでいる。
【0063】
例えば、提案されるコンセプトによる方法は、ごく一般的に、LINマスタからLINスレーブへ送信される情報がヘッダ(例えば識別子)及び/又は内容(例えばデータ割合)を含むことを規定することが可能である。したがって、方法によれば、例えばコマンド情報もLINマスタからLINスレーブへ送信されることが可能である。
【0064】
有利には、本発明によれば、例えば、2つ以上の異なるマスタに割り当てられた複数のスレーブを1つのバス、例えばLINバスにおいて動作させることを可能とすることができる。このようにして、物理的に必要なケーブル長さを低減することを可能とすることができ、このことは、特に制限された構造空間を有する車両において特に有利である。
【0065】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図2に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1)若しくは後述(例えば
図3~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0066】
図3には、4つのゾーン制御モジュールZM
1~ZM
4を有するゾーンシステム30の概略的な一例が示されている。ゾーン制御モジュールZM
1~ZM
4は、第1のデータ接続部33、例えばイーサネット接続部を用いてシステム30の中央制御機器31に接続されている。各ゾーン制御モジュールZM
1~ZM
4には、それぞれ1つのLINバス34
1~34
4(例えばゾーンLINバス)が配置されている。各ゾーンLINバス34
1~34
4には、異なるLINマスタM
LIN1~M
LINxに割り当てられている複数のLINスレーブS
LIN1~S
LINxを接続することが可能である。LINマスタM
LIN1~M
LINxは、中央制御機器31に配置されている。LINバス34
1には、例えば、第1のLINマスタM
LIN1に割り当てられた第1のLINスレーブS
LIN1が接続されており、また、第2のLINマスタM
LIN2に割り当てられた第2のLINスレーブS
LIN2が接続されており、また、別の、例えば第3のLINマスタM
LINxに割り当てられた別のLINスレーブS
LINxが接続されている。それぞれ他のLINバスにおけるスレーブもマスタに割り当てられている。割り当てられたスレーブを有するマスタは例えば機能的なLINバスを形成し、LINスレーブは、物理的に配分されて各ゾーンLINバスに接続されている。システム30の全てのマスタは、中央制御機器31に配置されることが可能である。
【0067】
したがって、例えば機能的なLINバスが1つのLINマスタのLINスレーブのみを有している一方、ゾーンLINバスはシステムの1つのゾーンにおいて異なるLINマスタのLINスレーブを接続するという点で、ゾーンLINバスは機能的なLINバスとは異なっている。例えば、4つのゾーンを有するシステム31には、ちょうど3つのLINマスタが存在し得る。なぜなら、これに基づき、4つのLINバスのバス負荷に関する利点を得ることができるためである。
【0068】
ゾーンシステム31を用いることで、例えば、車両におけるケーブルハーネスをよりスリムに形成することが可能である。このとき、ゾーンは、バックボーンバス(例えば第1のデータ接続部31)によって接続されている。LIN、CAN及びFlexRayのようなバスは、いわゆるゾーンモジュール(例えばゾーン制御モジュールZM1~ZM4)にドッキングする。他のコンセプト、例えば原動機付き車両のケーブルハーネスにおいて用いられる、機能的に体系づけられ、それぞれ別々に車両全体を通って延びるLINバス。他のコンセプトでは、ケーブルハーネスが太く重くなることがあり、高いコストの原因となる。各LINバスは、他のコンセプトに従い、車両全体を通して別々に延びている。
【0069】
1つのゾーン制御モジュールZM1~ZM4には、それぞれちょうど1つのLINバスを接続することができるか、又はこれに代えて複数のLINバスを接続することが可能である。例えば、2つの第1のゾーン制御モジュールZM1及びZM2においては、それぞれ1つのLINバスを接続することができ、2つの別のゾーン制御モジュールZM3及びZM4にはそれぞれ2つのLINバスを接続することが可能である。これにより、システムのより大きなフレキシビリティを得ることができる。例えば、該当するゾーンのLINスレーブにより多くの数のLIN情報が送信されるべき場合には、1つのゾーン制御モジュールにおける2つのLINバスを用いることが可能である。これにより、例えばLINバスの過負荷を回避することができる。
【0070】
システム31は、第1のデータ接続部33及びLINバスのゾーン化を介したLIN情報のトンネルの態様を含んでいる。ゾーン化においては、バスへのLINスレーブへの新たな割り当てが行われ、その結果、複数のLINマスタが(機能的に)同一の物理的なLINバスへ(ゾーン式に)アクセス可能である。LIN情報のトンネルは、適切なシステム設計においては不要な、用いられていない余裕時間(例えば公差時間)に基づきLINプロトコルにおいて行われることができる。特に、LIN情報は、LINフレーム内のLINバスのプロトコルのインターフレームスペースにおいて、第1のデータ接続部33を介して、LINマスタから、又はLINマスタへ送信されることが可能である。
【0071】
以下においても
図4に示されているように、
図3のゾーン制御モジュールにおいても、2つ以上のLINバスを接続することが可能である。例えば、ゾーン制御モジュールのうち2つには(
図3に示されているように)それぞれちょうど1つのLINバスを接続することができ、他のゾーン制御モジュールのうち2つには(例えば
図4に示されているように)それぞれ2つのLINバスを接続することが可能である。
【0072】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図3に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図2)若しくは後述(例えば
図4~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0073】
図4には、2つのLINバス44a,44bが接続されたゾーン制御モジュールZMを有するシステム40の概略的な一例が示されている。モジュール制御プラットフォーム(modular control platform)MCP(例えば高統合プラットフォーム;例えば中央制御機器)には、2つ以上のマスタM1,M2が配置されている。第1のデータ接続部43は、モジュール制御プラットフォームMCPをゾーンモジュールZM(例えばゾーン統合モジュール;例えばゾーン制御機器)に接続している。
【0074】
第1のLINバス44aにおいても、また第2のLINバス44bにおいても、各スレーブS1,S2が接続されており、当該スレーブは、モジュール制御プラットフォームMCPにおける第1のマスタM1あるいは第2のマスタM2に割り当てられている。ゾーン制御モジュールZMでは第1又は第2のLINバス44a,44bについてのLIN情報が受信されるため、どのLIN情報がいつゾーン制御モジュールZMから各LINバス44a,44bへ伝達されるかを制御するディスパッチャ装置Dがゾーン制御モジュールZMに設けられている。例えば、ディスパッチャ装置Dにはゾーン制御モジュールZMのLINバス44a,44bごとに別々のディスパッチャ及び/又は別の要素を設けることが可能である(例えば
図5aにも図示されるような第1のデータ接続部からLINバスへの伝達分岐部の要素;例えばフィルタ及び/又はキュー及び/又は送信モジュール/受信モジュール)。分割されたゾーンLINバスを有する、提案されるコンセプトによれば、例えばマスタにおける時間的な制約の解除と、いわば動的なスケジュール表としてのキューを有するゾーンLINバスについてのディスパッチャの導入とが設定されている。
【0075】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図4に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図3)若しくは後述(例えば
図5a~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0076】
図5a,
図5bには、同期動作におけるゾーン化されたシステム50におけるデータ伝達の一例が示されている。ゾーン化されたシステム50は中央制御機器51及びゾーン制御モジュール52を含んでおり、当該中央制御機器及びゾーン制御モジュールは、第1のデータ接続部53を介して接続されている。中央制御機器51には第1のLINマスタM
Aが形成されており、当該第1のLINマスタは、タイムプロトコル(例えばLINスケジュールテーブル)に従いLIN情報A(例えばヘッダ及びデータ情報)を送信する。対応して、タイムプロトコルに従いLIN情報B(例えばヘッダ及びデータ情報)を送信する第2のLINマスタM
Bと、タイムプロトコル(例えばスケジュール)に従いLIN情報C(例えばヘッダ及びデータ情報)を送信する第3のLINマスタM
Cとが形成されている。LIN情報は、中央制御機器51を介して第1のデータ接続部53へ伝達されることが可能である。タイムプロトコルは、例えば、通常の場合には、LIN情報A,B,Cを5~10msのタイムスロットにおいて送信されるように設定されることが可能である。
【0077】
示されたゾーンモジュール52は、ゾーンLINバス58のための信号処理分岐部を示している。信号分岐部は、フィルタ54と、LINバススケジュールモジュール55と、ディスパッチャ56と、送信/受信モジュール57(例えばトランシーバ、例えば物理的なバスドライバ)とを含んでおり、ヘッダ情報は、信号分岐部を介してデータ接続部53とゾーンLINバス58の間で交換されることが可能である。また、別の信号分岐部の別のフィルタ54a,54bが図示されており、当該フィルタは、同様にゾーン制御モジュール52に接続され得る別の(
図5aでは不図示)ゾーンLINバスへ延びる(つながる)ことが可能である。
【0078】
同期動作は、以前に送信されたヘッダ情報について対応するLINスレーブのレスポンス情報をLINマスタが受け取った場合にのみ、当該LINマスタMA,MB,MCが別のヘッダ情報を送信するようになっている。これにより、スケジュールモジュール55でのキューにおいてマスタMA,MB,MCごとのヘッダが最大限存在し得ることを達成することができる(例えば、キューにおいて第1のLINマスタMAのヘッダ情報Aと、第2のLINマスタMBのヘッダ情報Bと、第3のLINマスタMCのヘッダ情報Cとが存在し得る)。
【0079】
例えば3つのLINマスタのうち1つのみがヘッド情報を送信する場合には、対応するレスポンス情報は、設定されたタイムスロット内で、第1のデータ接続部53を介して、設けられたLINスレーブへゾーンLINバス58において送信されることができるとともに、対応するレスポンス情報は、第1のデータ接続部53を介して再びLINマスタへ返信されることが可能である。
【0080】
スケジュールモジュール55におけるキューの機能(例えば中間メモリ部)により、3つ全てのLINマスタMA,MB,MCが同時にヘッダ情報A,B,Cを送信する場合には、当該ヘッダ情報を中間メモリすることが可能となるとともに、LINバスが使用可能であれば伝達プロトコルに従いLINバス58へ送信することが可能となる。
【0081】
LINマスタの元の機能的なスケジュールは、(例えば統合プラットフォームに)集中化させて実行されることができるとともに、例えばソフトウェア実行として並行して実行されることが可能である。LINマスタは、第1のデータ接続部53(例えばバックボーンバス)を介してLINヘッダをトンネルさせることができるが(Txモード)、ヘッダに対するレスポンスを受け取るまでスケジュールを停止させることがある。異なるLINマスタのLINヘッダは、時間的に分類されてRxバッファ(例えばゾーン制御モジュール52の中間メモリ部)へメモリされることが可能である。Rxバッファからの最も古いヘッダの送信(例えばファーストイン・ファーストアウト(FIFO)原理)を例えばディスパッチャ56を用いてバッファから行うことが可能である。ヘッダのレスポンスが完全かつ精確に物理的なLINバスへ伝達されると、レスポンスは、バックボーンバスを介して各マスタへ送信されることが可能である。
【0082】
図5bには、3つ全てのマスタM
A,M
B,M
Cが同時に各LIN情報A,B,Cを第1のデータ接続部53を介してゾーンモジュール52へ送信する場合の時間推移が概略的に示されている。LIN情報CをLINバス58へ伝達するために、ディスパッチャ56がまずはLIN情報Cをキューから選択することが図示されている。そこでは、接続されたLINスレーブ15がLIN情報(例えばヘッダ情報)Cを処理し、(レスポンス情報として)LINマスタM
Cへ返信する。このために、LINプロトコルのタイムスロット(例えば10ms)に対応し得る継続時間t1を設定することが可能である。LINバスが例えば第1のLIN情報Aの伝達後のタイムスロットにおいて空いていれば、第2のLIN情報Bは、ディスパッチャ56からLINバス58へ伝達されることが可能である。対応して、LINバスが例えば第2のLIN情報Bの伝達後のタイムスロットにおいて空いていれば、第3のLIN情報Aは、ディスパッチャ56からLINバス58へ伝達されることが可能である。
【0083】
したがって、この例では、ヘッダのクラッシュが生じる同期した伝達のワーストケースが示されている。ここでは、3つのヘッダが同時に送信される。第1のマスタMAのヘッダに対する応答は、ゾーンLIN58において2つのタイムスロットだけ遅延する。第2のマスタMBのヘッダに対する応答はゾーンLINにおいて2つのタイムスロットだけ遅延する一方、第3のマスタMCのヘッダはすぐに処理されることが可能である。これに対応して、統合プラットフォームにおけるマスタ及び背後の機能は、応答における散発的な遅延に対処するように形成されている。マスタについては、例えば元のLINタイムスロット(例えば5msスロット又は10msスロット)への編み接続を解除することも可能である。キューは、同期動作において、マスタの数よりも長くなるように形成されることができる(例えば相応に小さな中間メモリ部で十分であり得る;例えば中間メモリ部の容量を、最大で、システムのLINマスタの数に対応するヘッダ情報についての数を中間メモリすることができるように形成することができる;例えば、ディスパッチャにおける時間遅延を補整することができるように、中間メモリ部に予備を設けることが可能である。)。
【0084】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図5a、
図5bに示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図4)若しくは後述(例えば
図6~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0085】
図6には、同期動作におけるゾーン化されたシステム50におけるデータ伝達の一例が示されている。同期動作とは対照的に、LINマスタがLINヘッダを第1のデータ接続部53(例えば送信動作Txにおけるバックボーンバス)を介してトンネルすることができるが、別のLIN情報を送信するまで各LINスレーブのレスポンス(Rx)を待たないように構成されている。ここでは予期できない順序があり得るため、ヘッダ情報へのレスポンス情報の割り当てのために、レスポンスがヘッダIDと共にバックボーンバスを介して各マスタへ返信されるように構成されることが可能である。
【0086】
非同期動作においては、(例えばスケジュールモジュール55における)キューは、参加者(関与するもの)の数より大きくてもよい(例えば、それぞれ複数のLIN情報A(例えば2つ又は3つ以上)及び複数のLIN情報B,Cを中間メモリすることが可能である。)。システム50は、例えば、平均でゾーンLINバスについての許容バス負荷を超過しないように設定されることが可能である。許容バス負荷については、100%より小さな限界を設定することができる(例えば、90%より小さく、80%より小さく、又は70%より小さい。)。
【0087】
ゾーンLINバスのバス負荷は、システムへの影響を有し得る。通常の負荷(例えばバス負荷<95%)では、キューが過密とならないこと、サイクル時間が平均でほぼ機能的なメインスケジュールのサイクル時間であること、システムが同期される必要がないことを達成することができる。必要であれば、LINバスが一時的に過負荷されないように、例えば、スケジュールモジュールにおいて待機時間を挿入することが可能である。これにより、例えば、サイクル時間が平均でより小さな変動をもって維持され得ることを達成可能である。例えばバス負荷>95%での大きな負荷においては、例えば、二重の通知をキューから排除するとともに、過密を回避するために、アルゴリズムの利用を設定することが可能である。システムは、物理的なLINバス(例えばゾーンLINバス58)においてわずかにしかデッドタイムが生じないように形成されることが可能である。システムが同期する必要がないようにすることができ、例えば、サイクル時間がより大きな変動を受ける。
【0088】
同期したTx/Rx動作(
図5a、
図5b参照)を、柔軟性をもった動作と呼ぶことができる。このとき、例えば二重に占められたPIDがゾーンLINバスシステムにおいて許容されないゾーンLINノード配置が設定されている。バスにおけるデッドタイム及び一時的な過負荷を防止するために、スケジュールを互いに調整することが可能である。例えば、自己同期化を用いることが可能である。これに対して、非同期のTx/Rx動作において新たな機能タイミングを設定することが可能である。ゾーンLINノード配置においては、例えば二重に占められたPIDをゾーンLINバスシステムにおいて許容することはできず、バス負荷は、例えばタイミング要求の遵守に大きな影響を有する。
【0089】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図6に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図5b)若しくは後述(例えば
図7~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0090】
図7には、従来技術による、複数のLINバス140,140b,140nを有する従来のシステムの一例が示されている。LINバス140,140b,140nは全て1つの制御機器110に直接接続されており、当該制御機器では、それぞれバスに割り当てられたLINマスタ110a,110b,110nが配置されている。これにより、提案される、データ接続部13を有するゾーン化されたシステム10とは対照的に、それぞれ追加的なLINバスを有する伝達ケーブルについての要求が高まる。なぜなら、複数のLINバスのための共通の伝達ケーブルを用いることができないためである。また、従来技術によれば、各LINマスタに対して別々のLINバスを用いる必要がある。
【0091】
図8には、第1のデータ接続部13(例えばCANバス又はイーサネット接続;
図8の上半部参照)及びLINバスを介したヘッダ情報H及びレスポンス情報Rの伝達の一例が示されている。LINバス14(
図8の下半部参照)を介してヘッダ(ヘッダ情報H)及びレスポンス又はスレーブレスポンス(レスポンス情報R)を伝達するために、タイムスロット80が用いられる。タイムスロット80の図示の長さは、単に例示的なものであり、例えば図示の10msに代えて5ms又は他の継続時間であってもよい。
【0092】
分かるように、タイムスロット80の第1の部分がLINバス14を介したヘッダ情報H及びレスポンス情報Rを伝達するのに十分であり、その結果、次のタイムスロットの始まりまでの空きのタイムフレーム81が生じるとともに例えば利用されることが可能である。例えば、タイムフレーム81の継続時間は、タイムスロット80の約33%(例えば、タイムスロット80の継続時間の最大40%及び/少なくとも20%)である。LIN伝達標準に規定された公差時間がLINフレームの伝達について不要であるときには、空きのタイムフレーム81を提供することが可能である。
【0093】
LINバス14を介して情報伝達がなされない空きのタイムフレーム81は、レスポンス情報Rを第1のデータ接続部13を介して中央制御機器におけるLINマスタへ戻るように伝達するのに用いられることが可能である(例えばレスポンス情報Rのトンネル)。また、次のタイムスロットにおいてLINバス14を介してLINマスタからゾーン制御モジュールへのヘッダを伝達するための別のヘッダ情報Hn+1を第1のデータ接続部13を介して伝達することが可能である。相応して、タイムスロット80の図示のLINフレームについてのヘッダ情報Rは、以前のタイムスロットの空きのタイムフレームにおいて伝達されている(タイムスロット80の始まりの時間的に前の第1のデータ接続部13におけるヘッダ情報H参照)。したがって、第1のデータ接続部13を介したヘッダ情報Hの送信の開始から第1のデータ接続部13を介した関連するレスポンス情報Rの受信の終了までの継続時間は、タイムスロット80の継続時間よりもわずかな継続時間において行われることが可能である。
【0094】
例えば、LINバス(例えばLINフレーム)を介したヘッダ情報及びレスポンス情報の伝達のために、所定のタイムスロットを用いることが可能である(例えばLIN伝達に従い設定された5ms又は10msのスロット)。また、タイムスロットに保持されたタイムフレーム内にレスポンス情報及び/又は別のヘッダ情報が第1のデータ接続部を介して送信されるように構成されている。タイムフレームの可用性は、LIN標準に従いタイムスロットにおいて保持される公差時間がLINバスにおける伝達には不要であることにより可能となり得る。このことは、例えば上述のようにLINマスタ及び/又はLINスレーブの構成におけるハードウェアに基づくマイクロコントローラを用いることで達成され得る。
【0095】
例えば、タイムスロットの始めにヘッダがLINバスにおいて伝達されるようにすることが可能である。そのため、空きのタイムフレームは、タイムスロットの最後において提供されることが可能である。タイムスロット内でのタイムフレームの時間的な到達前に、レスポンスは、LINバスを介してゾーン制御モジュールにおいて受信されることができ、その結果、空きのタイムフレームでは、対応するレスポンス情報を第1のデータ接続部を介してLINマスタへ送信することが可能である。これにつづくタイムスロットにおいて対応して次のヘッダをLINバスを介して送信することができるように、
図8に図示されているように、例えば、タイムフレーム内で、これにつづくタイムスロットについてのヘッダ情報も、第1のデータ接続部を介してゾーン制御モジュールへ送信される。したがって、全体として、フレーム(例えばLINバスフレーム)のヘッダ情報及びレスポンス情報を(例えばLINバスにおける実際のタイムスロットに対してずれた)タイムスロットの設定された継続時間内で第1のデータ接続部を介してLINマスタから送信され、再びLINマスタにおいて受信することが可能である。これにより、第1のデータ接続部を用いる場合にも、LINスレーブの制御時の時間遅延を回避することができる。
【0096】
一実施例によれば、保持される継続時間が少なくとも0.2ms(又は少なくとも0.5ms、少なくとも1ms、少なくとも1.5ms又は少なくとも2ms)の継続時間及び/又は最大で5ms(又は最大で4ms又は最大で3.5ms)の継続時間を有するように構成されている。当該時間内に、例えばヘッダ情報及び/又はレスポンス情報を、第1のデータ接続部を介して中央制御機器とゾーン制御モジュールの間で伝達することが可能である。
【0097】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図8に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図7)若しくは後述(例えば
図9~
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0098】
図9には、複数のフレームf
1,f
2,f
3を、時間オフセットt
offを用いつつ第1のデータ接続部13を介して複数のLINバス14,44a,44bへ伝達する1つの例が示されている。時間オフセットt
offは、例えば、第1のヘッダ情報Hの始めと次のヘッダ情報H
2の始めの間の継続時間を記述することが可能である。例えば、第1のデータ接続部13を介したヘッダ情報の伝達は50~60μs継続することがあり、時間オフセットt
offは100μsとなり得る。例えば、時間オフセットt
offは、ヘッダ情報Hの伝達の終わりとヘッダ情報H2の伝達の始まりの間の継続時間を規定することができ、例えば10μsより長く、及び/又は50μsより短くてよい。
【0099】
ヘッダ情報H,H2,H3は、異なるLINマスタから第1のデータ接続部13を介してそれぞれLINマスタに割り当てられた異なるLINバス14,44a,44bへ順に送信される。例えば、ヘッダ情報H,H2,H3は、個々のLINマスタからそれぞれ異なるゾーン制御モジュールへ、又は1つのゾーン制御モジュールへ送信されることも可能である(例えば、1つのゾーン制御モジュールに複数のLINバス及び/又はLINマスタに割り当てられたLINスレーブに接続することが可能である;例えば、ヘッダ情報H,H2,H3は、ゾーン制御モジュールの中間メモリ部においてLINバスを介した伝達まで中間メモリされることが可能である。)。分かるように、LINバス14,44a,44bを介した、フレームf1,f2,f3のより緩慢なデータ伝達は、第1のデータ接続部13を介したヘッダ情報及びレスポンス情報のデータ伝達よりも長い必要がある。そのため、第1のデータ接続部13を介した第1のLINマスタからの第1のヘッダ情報Hの送信後に、別のヘッダ情報H2,H3などを、例えばフレームf1がLINバス14を介して伝達される限り、別のLINマスタから送信することが可能である。例えば、共通のデータ接続部13を介して送信され得るヘッダ情報H,H2,H3などの最大限可能な数は、データ伝達速度及び/又は時間オフセットtoff及び/又はフレームf1の継続時間に依存し得る。例えば、第1のデータ接続部13を介したヘッダ情報とレスポンス情報の継続的に交互の伝達が達成されるように、例えば、時間オフセットtoffは、2つの連続するヘッダ情報の送信の間にそれぞれ1つのレスポンス情報が第1のデータ接続部13を介して伝達されることができるように選択されることができる。
【0100】
オフセットtoffでのLINマスタの同期化は、例えば、バックボーンバス(例えば第1のデータ接続部13)におけるクラッシュのないスケジューリングを可能とし得る。例えば、LINバス14,44a,44bのタイムスロットは、それぞれ時間オフセットだけずらして配置される。同期化あるいは時間オフセットの使用により、第1のデータ接続部13におけるクラッシュが生じることなく、複数のLINマスタが、次に、割り当てられたLINバス14,44a,44bについての後続のLINフレームの別のヘッダを第1のデータ接続部13を介して送信することができることが可能となり得る。
【0101】
一実施例によれば、方法は、中央制御機器の第2のLINマスタから第1のデータ接続部を介して第2のヘッダ情報を送信することを含むようになっている。このとき、2つのヘッダ情報の送信は、例えば、第1のデータ接続部のデータ伝達速度に依存して選択される時間オフセットをもって時間をずらして行われる。
【0102】
第1のヘッダ情報は、例えば、第1のLINバスにおいてLINスレーブへ送信され、時間がずらされた第2のヘッダ情報は、同一の第1のLINバスにおいて、又はこれに代えて(例えば同一又は他のゾーン制御モジュールに接続された)第2のLINバスにおいてLINスレーブへ送信される。第1のデータ接続部のデータ伝達速度がLINバスのデータ伝達速度よりも大きいことにより、両ヘッダ情報を共通のデータラインにおいて伝達することが可能である。時間オフセットを用いることで、第1のデータ接続部におけるヘッダ情報のクラッシュを回避することが可能である。
【0103】
例えば、第1のデータ接続部を介した2つのヘッダ情報の伝達の間で少なくとも20μs(又は少なくとも50μs又は少なくとも100μs)の継続時間の時間オフセットを選択することが可能である。例えば、第1のデータ接続部を介した各LINマスタへの戻るような各レスポンス情報の伝達が後続のヘッダ情報とのクラッシュなしに第1のデータ接続部において行われることができるように時間オフセットを選択することも可能である。これにより、例えばクラッシュによる待ち時間を回避することができる。
【0104】
したがって、例えば、一般的に、バックボーンバス(例えば第1のデータ接続部13、例えばCANバス又はイーサネット接続)を介したLINバス14のトンネルのためのコンセプトに関する。ケーブルハーネスを例えば細く、安価で、及び/又はより良好に自動的に製造することができるように、1つ又は複数のバックボーンバス(例えば第1のデータ接続部)を採用することができ、当該バックボーンバスを介して、例えばLIN、CAN、FlexRayのようなバス及び離散信号がトンネルされることが可能である。
【0105】
このとき、特にLIN仕様において存在する公差を活用することが可能である。当該公差(例えば空きのタイムフレーム51)は、ハードウェアLINロジックをもった(例えばハードウェア支援された)現代の使用可能なマイクロコントローラ(μC)においては、例えばLINバスではもはや不要である。共通にトンネルされるべきLINバスのLINマスタの時間オフセットとの同期を行うことが可能である。例えば、LINバスのトンネルのために時間バッファ(例えばタイムフレーム51)が提供される。複数のLINバスが同一のバックボーンバスにおいてトンネルされる場合には、提案されるコンセプトを用いてクラッシュを回避することが可能である。例えば、複数のLINバスを中央制御機器からリア制御機器及び/又はルーフ制御機器へ延ばすことが可能である。
【0106】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図9に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図8)若しくは後述(例えば
図10)の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0107】
図10には、中央制御機器91と、複数の異なるレガシーバスが接続されたゾーン制御モジュール92とを有するシステム90の概略的な一例が示されている。ゾーン制御モジュール92は、効率的なデータ接続(例えばレガシーバスを介すよりも迅速なデータ伝達)のために第1のデータ接続部93を介して中央制御機器91に接続されている。
【0108】
ゾーン制御モジュール92には、第1のレガシーバス94a及び第2のレガシーバス92b(又はこれに代えて離散信号ライン92b)が接続されている。第1のレガシーバス92aは例えばLINバスであってよく、第2のレガシーバス92は例えばCANバスであってよい。レガシーバス94a,94bの制御機器がそれぞれ情報を中央制御機器91へ送信可能であること、及び当該中央制御機器から受信可能であること(例えば中央制御機器91におけるLINマスタとLINバス94aにおけるLINスレーブの間の通信)が第1のデータ接続部93を介して可能となり得る。
【0109】
例えば、2つのゾーン制御モジュールを有するシステム90においては、両ゾーン制御モジュールにそれぞれ複数のバスを接続することができ、例えば、第1のゾーン制御モジュールにはLINバス、CANバス及びFlexRayバスを接続することができ、第2のゾーン制御モジュールにはLINバス、CANバス及びゾーンイーサネット接続部を接続することができる。中央制御機器91において全ての機能を束ねることにより、そこでは、ハイレベルの機能性を可能とすることが可能である(例えばservice oriented architecture(サービス指向アーキテクチャ)SOA)。システム90は、中央制御機器91を介して例えば効率的にバックエンドに接続されることができ(例えばワイヤレス)、その結果、共通のバックエンド接続は、ゾーン制御モジュールのバスにおける個々の制御機器の全ての機能について十分であり得る。
【0110】
第1のデータ接続部(例えばバックボーンバス)とのゾーン制御モジュールの組合せによって、今日のレガシー機能をそのレガシー制御機器(例えばLIN制御機器又はCAN制御機器)と共に比較的わずかな手間でゾーン物理車載ネットワークアーキテクチャへ変換することが可能となる。ケーブルハーネスが例えば自動化された製造可能であり得るため、コスト上の利点が得られる。システムにより、高いスケーラビリティ及びフレキシビリティが可能となり得る。例えばミックスモード及び離散信号バスをゾーン制御モジュールに共通に接続することが可能である。換言すれば、「All IP」(オールIP)及び「Service Oritented Architecture」の中央ドッキングポイントは、バックボーンバスを介してソフトウェアの世界からレガシーの世界へ(信号に基づき)行うことができ、その結果、車両分野の古い技術を現代の技術に結び付けることが可能である。
【0111】
図10に提案されたシステム90は、例えば、原動機付き車両において、レガシー抽象化及びバックボーンバスを有するゾーン車載ネットワークについて用いられることが可能である。このようにして、例えば、異なる複数の電気構成要素/電子構成要素を(例えばイーサネット接続を有する)現代の車載ネットワークに統合することが可能である。図示のシステム90では、ゾーン制御モジュール92は、例えばレガシー抽象化スイッチと呼ばれることが可能である(例えば異なるレガシーバスのためのユニバーサルゲートウェイ)。構成可能なゾーン制御モジュール92を用いることが可能であること、実際に用いられるレガシーバス94a,94bに応じて相応にプログラムされることができること(例えば、相応のソフトウェア設定を介して、各レガシーバス94a,94bのためのゲートウェイとしての動作が可能となり得る)が利点であり得る。このようなユニバーサルなゾーン制御モジュール92は、様々な配置において用いられることが可能であり、これにより、例えばコスト削減が生じ得るという利点を有し得る。
【0112】
更なる詳細及び態様は、上述又は後述の実施例に関連して言及されている。
図10に示された実施例は、提案されるコンセプト又は1つ若しくは複数の上述(例えば
図1~
図9)若しくは後述の実施例に関連して言及される1つ又は複数の態様に対応する、1つ又は複数のオプションの追加的な特徴を有することができる。
【0113】
LIN仕様に従うエラー診断の減速に従い得る提示されたシステム及び方法におけるエラー診断に関して、第1のデータ接続部を介してエラー情報も伝達するように構成することが可能である。各LINノードは、例えば独自に(ゾーン)LINバスにおけるエラー認識についての診断を行う。エラー評価は、中央でマスタによって行われる。マスタは、例えばバスにおいて共に読み取り、バスにおける全ての通信を評価する。スレーブは、例えばバスにおいて共に読み取り、それ自体が送信及び受信した全ての通知を評価し、スレーブにより、無制限のフレームのエラービット内でのペイロード(レスポンス)におけるエラー状態の伝達が可能となる。マスタは、例えばスレーブのエラービットを評価する。エラー認識は、スレーブにおいて、例えばゾーン化とは無関係にスレーブレスポンスにおけるペイロードを介して行われる。マスタについてのエラー認識は、例えばゾーン化時にディスパッチャによって受け継がれ、別々の状態通知ごとに中央LINマスタへ伝達される。システムはエラー診断のために形成されることができ、その結果、LINマスタは、統合プラットフォーム(例えば中央制御機器)において、バックボーン通信(例えば第1のデータ接続部を介した通信)の状態/ステータスを通知され得るか、あるいは通知することが可能である。
【0114】
提案された態様は、原動機付き車両における機能的なLINバスアーキテクチャのゾーン化に関するものである。他のLINシステムとは対照的に、異なるLINマスタのLINスレーブがゾーンLINバスを共有するように構成されることができ、その結果、例えば、分配されたLINスレーブを有するシステムを、LINバスについてのわずかなケーブル要求において実現することが可能である。このとき、例えば、車両における複数の通信バスを他のコンセプトによる制御機器の機能的な接続から制御機器のゾーン接続へ切り換えられ、このことは、ケーブルハーネスの低減及び/又はフレキシビリティの向上につながり得る。特に、LINバスの接続のためのコンセプトが提案される。
【国際調査報告】