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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】歯列の動きを追跡する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61C7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575789
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021065401
(87)【国際公開番号】W WO2021250065
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】2006015
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519380842
【氏名又は名称】デンタル モニタリング
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ペリサード,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ギゼリンク,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ10
(57)【要約】
最新の患者の歯科的状況を解析することを意図されたニューラルネットワークを訓練する方法が開示されている。該方法は、A)歯体に並びに前記歯体に関連付けられた空間属性に関する履歴学習データベースを作成すること、ここで、前記履歴学習データベースは1,000以上の履歴レコードを含み、各履歴レコードは個々の履歴患者に関連し、該各履歴レコードは、前記履歴患者における前記歯体(「履歴歯体」と呼ばれる)を全て描写する履歴画像の1組、及び前記空間属性の為の値の1組を含む、前記履歴患者の為の空間情報(「履歴空間情報」と呼ばれる)の1つのアイテムを含む、B)入力として履歴画像の前記1組を及び出力として前記履歴空間情報を前記ニューラルネットワークに提供することによって、該ニューラルネットワークを訓練することの工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最新の患者の歯科的状況を解析することを意図されたニューラルネットワークを訓練する方法であって、
A)歯体に並びに前記歯体に関連付けられた空間属性に関する履歴学習データベースを作成すること、ここで、
前記履歴学習データベースは1,000以上の履歴レコードを含み、各履歴レコードは個々の履歴患者に関連し、該各履歴レコードは、
前記履歴患者における前記歯体(「履歴歯体」と呼ばれる)を全て描写する履歴画像の1組、及び
前記空間属性の為の値の1組を含む、前記履歴患者の為の空間情報(「履歴空間情報」と呼ばれる)の1つのアイテム
を含む、
B)入力として履歴画像の前記1組を及び出力として前記履歴空間情報を前記ニューラルネットワークに提供することによって、該ニューラルネットワークを訓練すること、ここで、前記空間属性が、三次元基準フレームにおける複数の変数の順序付けられたシーケンスを定義する、
の工程を含む、前記訓練する方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークが畳み込み型である、請求項1に記載の訓練する方法。
【請求項3】
前記空間属性が、
三次元基準フレームにおける前記歯体の特筆すべき1以上の点の位置;及び/又は
前記歯体の特筆すべき複数の点の間及び/又は前記歯体の特筆すべき1点と他の1点との間の1以上のベクトル
を定義する、請求項1又は2に記載の訓練する方法。
【請求項4】
前記歯体が、1本の歯、又は5本未満の歯の1組であり;及び/又は
前記空間属性が30未満の変数を含み;及び/又は
任意の履歴レコードの履歴画像の前記1組が2以上且つ30未満の履歴画像を含み;及び/又は
任意の履歴レコードの履歴画像の前記1組の各履歴画像が、2以上且つ30未満の潜在的角度を含む潜在的角度の1つのグループから選択される角度を有し;及び/又は
履歴画像の任意の1組の少なくとも3つの履歴画像が異なる角度を有する、
前記1~3のいずれか1項に記載の訓練する方法。
【請求項5】
前記履歴歯体が、所定数を有する歯又は所定数を有する歯を含む歯の1組及び前記歯に隣接する1つ又は2つの歯である、請求項1~4のいずれか1項に記載の訓練する方法。
【請求項6】
前記履歴画像が、トゥルーカラー写真であり、及び/又は歯科用リトラクターを図示しておらず、及び/又は口腔外である、請求項1~5のいずれか1項に記載の訓練する方法。
【請求項7】
最新の瞬間での患者(「最新の患者」と呼ばれる)の歯科的状況を解析する方法であって、
a)前記最新の瞬間の前に、ニューラルネットワークを、請求項1~6のいずれか1項に記載の訓練する方法に従って訓練すること;
b)前記最新の瞬間で、前記ニューラルネットワークに適合し並びに前記最新の患者の前記歯体(「最新の歯体」と呼ばれる)を描画するところの最新の画像の1組を、画像取得デバイスによって取得すること;
c)最新の画像の前記1組を前記ニューラルネットワークによって解析して、前記空間属性の為の値の1組を含む、前記最新の患者の為の空間情報(「最新の空間情報」と呼ばれる)の1つのアイテムを得ること
の工程を含む、前記解析する方法。
【請求項8】
前記最新の画像が、トゥルーカラー写真であり、及び/又は口腔外であり、及び/又は工程b)において、前記画像取得デバイスが携帯電話であり、及び/又は前記最新の患者が歯科用リトラクターを装着していない、請求項7に記載の解析する方法。
【請求項9】
工程b)において、前記最新の患者が歯科用リトラクターを装着している、請求項7又は8に記載の解析する方法。
【請求項10】
工程a)において、異なる歯体及び/又は異なる空間属性に関連するという点で異なるところの個々の履歴学習データベースで複数のニューラルネットワークが訓練されて、複数の特化されたニューラルネットワークを得る;
工程b)において、最新の画像が取得され、そして、前記複数の特化されたニューラルネットワークのそれぞれの特化されたニューラルネットワークの為に、最新の画像の1組が前記最新の画像から作成される;
工程c)において、最新の画像の複数の前記組のそれぞれが、対応する特化されたニューラルネットワークによって解析されて、空間情報の複数の最新のアイテムを得る
請求項7~9のいずれか1項に記載の解析する方法。
【請求項11】
工程a)において、各履歴学習データベースが、前記履歴学習データベースに固有の番号を有する歯、又は前記履歴学習データベースに固有である前記グループの前記歯の番号を有する複数の歯のグループに関する、請求項10に記載の解析する方法。
【請求項12】
前記最新の空間情報は、目的が達成されたかどうかを評価する為に及び/又は前記最新の瞬間での前記最新の患者の前記歯科的状況と、前記目的の達成との差を測定する為に使用され、ここで、前記目的が、下記の目的のうちから選択される:
前記最新の患者は、犬歯の為にクラス1の咬合を達成する;
前記最新の患者は、臼歯の為にクラス1の咬合を達成する;
前記最新の患者の前方部分の空間が閉じている;
前記最新の患者の歯の抜歯に起因する空間が閉じている;
前記最新の患者が、通常の水平の張り出しを有する;
前記最新の患者が、通常の垂直の張り出しを有する;
前記最新の患者の上側槽弓及び下側槽弓の切端間セクターがオフセットされていないこと;
前記最新の患者が、該患者の頭部の矢状面に相対的な下側槽弓及び/又は上側槽弓の横方向のオフセットがないこと;
前記最新の患者が、前記下側槽弓に相対的な前記上側槽弓の横方向オフセットを有していないこと;
前記最新の患者によって装着される歯列矯正器具が、該最新の患者の歯の位置を変更するようにもはや作用しない;
上側槽弓及び/又は下側槽弓の最後の2回のチェックの間に、最新の患者の歯の動きが全く検出されていない又は限定的にしか検出されていない;
前記最新の患者の全ての乳歯が脱落している;
側方開咬部の欠如;
後方開咬部の欠如;
前方開咬部の欠如;
前方逆関節の欠如;
後方逆関節の欠如;
叢生の改善;
凹みの安定;
閉塞性海綿状脳症;
粘膜の凹凸の不存在、
請求項7~11のいずれか1項に記載の解析する方法。
【請求項13】
前方の最新の瞬間と、該前方の最新の瞬間の後の後方の最新の瞬間との間の動きの量を決定する方法であって、
1)請求項7~10のいずれか1項に記載の解析方法を前方の最新の瞬間に実施して、空間情報の前方の最新のアイテムを得ること;
2)請求項7~10のいずれか1項に記載の解析方法を後方の最新の瞬間に実施して、空間情報の後方の最新のアイテムを得ること;
3)該前方の最新の空間情報と該後方の最新の空間情報とを比較して、該前方の最新の瞬間と該後方の最新の瞬間との間の動きの量を得ること;
4)任意的に、該動きの量を、前記最新の患者に及び/又は歯科医療従事者に提示すること
の工程を含む、前記方法。
【請求項14】
前記動きの量が、前記最新の歯体の1以上の点の、及び/又は前記最新の歯体の複数の点を結ぶ1以上のベクトルの、若しくは前記最新の歯体の1以上の点と前記最新の患者の前記口腔の1以上の他の点とを結ぶ1以上のベクトルの、前記前方の最新の瞬間と前記後方の最新の瞬間との間の、並進による及び/又は回転による動きの振幅及び/又は速度を定義する、請求項13に記載の決定する方法。
【請求項15】
工程3)において、前記動きの量が閾値と比較され、そして、前記動きの量と前記閾値との差に応じて、
前記最新の患者によって装着された歯科矯正器具の有効指数;及び/又は
前記最新の患者によって行われた歯科矯正処置によって予め定められた状況、又は前記最新の患者によって行われた歯科矯正処置から結果として生じる状況、又は歯科矯正処置とは無関係に、歯科医療従事者によって定められた状況、を有する前記最新の患者の歯科的状況の適合指数
が決定される、請求項13又は14に記載の決定する方法。
【請求項16】
前記有効指数及び/又は前記適合指数がグラフの形態で提示される、請求項13~15のいずれか1項に記載の決定する方法。
【請求項17】
歯の位置又は形状、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開の速度、を検出若しくは評価すること;及び/又は、
歯科矯正器具の位置若しくは形状、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開の速度を検出又は評価すること;及び/又は
2つの日付の間で患者の歯の形状の展開を測定すること;及び/又は
歯学
の為の請求項7~12のいずれか1項に記載の解析方法又は請求項13~16のいずれか1項に記載の決定方法の使用方法。
【請求項18】
歯の萌出を監視すること;及び/又は、
歯の再発位置又は異常な位置を検出すること;及び/又は、
歯の摩耗を検出すること;及び/又は、
2本以上の歯の間の空間の開閉を監視すること;及び/又は、
歯の咬合の安定若しくは修正を監視すること;及び/又は、
所定の位置への歯の動きを監視すること;及び/又は、
リングの剥離若しくは歯列矯正アライナーの剥離を検出又は評価すること;
歯科矯正医又は歯科医との予約日を最適化すること;及び/又は、
能動的歯科矯正処置の有効性を評価すること;及び/又は、
能動的歯科矯正器具の活性を測定すること;及び/又は、
受動的歯科矯正器具の効果の喪失を測定すること;及び/又は、
歯における衝撃の発生によって分けられた2つの日付の間、又は睡眠時無呼吸症候群の処置の為に意図された歯科機器の使用によって分けられた2つの日付の間、又は患者の口腔内の移植物の発生によって分けられた2つの日付の間で患者の歯の形状の展開を測定すること
の為の請求項17に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の歯科的状況を解析することを意図されたニューラルネットワークを訓練する方法に、そのように訓練された該ニューラルネットワークを実装する患者の歯科的状況を解析する方法に、及び歯体(dental body)の動きの量を決定する方法に、特に能動的歯科矯正器具(active orthodontic appliance)の活性(activity)又は受動的矯正器具(passive orthodontic appliance)の効果の喪失を監視する方法に、関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、歯科矯正処置の前、その間又はその後に、患者の歯科的状況を遠隔で監視する方法を開発した。これらの方法は、最新の瞬間に患者が該患者の携帯電話によって撮影された写真と、該患者の歯槽弓(dental arcade)のうちの少なくとも1つの歯列の3次元デジタルモデルのビューとを比較することに依存する。
【0003】
より特には、歯槽弓の初期モデルは慣用的には3Dスキャナーで瞬時に作成され、そして次に、歯モデルに分割される。患者が写真を撮影した後、該初期モデルは、写真に最も合致する為に該歯モデルを動かすことによって変形される。このようにして得られた該初期モデルと該変形モデルとの比較は、初期状態からの歯の動きに関する情報を提供する。該初期モデルは非常に精密である故に、同じことが有利には、該変形モデルの場合にも当てはまり、それ故に、該比較から結果として得られる情報についても当てはまる。
【0004】
これらの方法は、特に国際特許出願番号PCT/EP2015/074868号又は国際特許出願番号PCT/EP2015/074859号に記載されている。
【0005】
特に歯のモデルを動かす為には、かなりの計算リソースを必要とする。典型的には、数時間のコンピュータ処理が、歯科的状況を評価する為に必要とされる。
【0006】
その上、これらの方法は、該初期モデルの作成を必要とし、それ故に、該患者は歯科矯正医まで足を運び、3Dスキャナーを使用する必要がある。この手順は高価であり、並びに該患者にとって不快なものである。
【0007】
それ故に、患者の遠隔監視を可能にし且つ前述されたデメリットを有しない方法の為の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、これらの要求に少なくとも部分的に対応することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、最新の患者の歯科的状況を解析することを意図されたニューラルネットワークを訓練する方法を提案し、該方法は、
A)歯体に、例えば13番の歯、並びに該歯体に関連付けられた空間属性、例えば13番の歯の重心、に関する履歴学習データベースを作成すること、ここで、;
該履歴学習データベースは1,000以上の履歴レコードを含み、各履歴レコードは個々の履歴患者に関連し、該各履歴レコードは、
該履歴患者における該歯体(「履歴歯体」と呼ばれる)を全て描写する履歴画像の1組、及び
該空間属性の為の値(すなわち、考慮される例において、該履歴患者の為の該13番の歯の重心の位置を決定する値)の1組を含む、該履歴患者の為の空間情報(「履歴空間情報」と呼ばれる)の1つのアイテム(item)、
を含む、
B)入力として履歴画像の該1組を及び出力として該履歴空間情報を該ニューラルネットワークに提供することによって、該ニューラルネットワークを訓練すること
の工程を含む。
【0010】
従って、訓練後、該ニューラルネットワークは、該履歴学習データベースの履歴画像の該組と互換性があり、入力として該ニューラルネットワークに入力される、最新の画像の1組の為の空間情報の最新のアイテムを決定することが可能である。
【0011】
好ましくは、該履歴学習データベースは、正確な歯体の為に及び限られた変数を有する空間属性の為に特化されており、このことにより、その性能能力が向上される。好ましくは、それにもかかわらず、履歴画像の数は限定されており、このことにより、特化されたニューラルネットワークは、それを多くの画像を供給すること無しにその後に使用されることを可能にする。
【0012】
本発明に従う訓練方法は好ましくは、下記の任意の特徴のうちの1以上を有する:
-該ニューラルネットワークが、畳み込み型(CNN,「畳み込み型ニューラルネットワーク」(Convolutional Neural Network)である);
-該空間属性は、
-三次元基準フレームにおける該歯体の特筆すべき1以上の点の位置、例えば、考慮される患者の歯槽弓に相対的に又は考慮される患者の歯の点に相対的に固定される、三次元基準フレームにおける該歯体の特筆すべき1以上の点の位置;及び/又は
-該歯体の特筆すべき複数の点の間及び/又は該歯体の特筆すべき1点と他の1点、特には該考慮される患者の特筆すべき1つの点、好ましくは該考慮される患者の口腔の特筆すべき1つの点、との間の1以上のベクトル、
を定義する;
-該歯体が、1本の歯、又は5本未満の歯、好ましくは4本未満の歯、の1組であり;
-該履歴歯体が、所定番号を有する1つの歯、又は所定番号を有する1つの歯を含む複数の歯の1組、及び該1つの歯に隣接する1つ若しくは2つの歯;
-該空間属性が、30未満、好ましくは20未満、好ましくは10未満、の変数を含み;
-任意の履歴レコードの履歴画像の該1組が、2以上、好ましくは3以上、好ましくは5以上、好ましくは6以上、及び/又は30未満、好ましくは20未満、好ましくは15未満、好ましくは10未満、の履歴画像を含み;
-任意の履歴レコードの履歴画像の該1組の各履歴画像が、2以上、好ましくは4以上、好ましくは4以上、及び/又は30未満、好ましくは20未満、好ましくは10未満、の潜在的角度を含む潜在的角度の1つのグループ、又は標準的な角度から選択される角度で取得される;
-履歴画像の任意の1組のうちの少なくとも3つの履歴画像、好ましくは履歴画像の任意の1組のうちの全ての履歴画像、が異なる角度で取得される;
-該履歴画像が、ヒトの目によって知覚されることができる歯科の場面を描いたトゥルーカラー写真であり、及び/又は歯科用リトラクターを描いておらず、及び/又は口腔外である;
-該履歴画像が、該履歴患者から様々な距離で取得され、次に、該履歴画像が描く該歯体の周りで切り取られている。
【0013】
従って、本発明は、最新の瞬間での患者(「最新の患者」と呼ばれる)の歯科的状況を解析する方法に関し、該方法は、
a)該最新の瞬間の前に、ニューラルネットワークを、本発明に従う訓練方法に従って訓練すること;
b)該最新の瞬間で、該ニューラルネットワークに適合し並びに該最新の患者の該歯体(「最新の歯体」と呼ばれる)を描画するところの最新の画像の1組を、画像取得デバイスによって取得すること;
c)最新の画像の該1組を該ニューラルネットワークによって解析して、該空間属性の為の値の1組を含む、該最新の患者の為の空間情報(「最新の空間情報」と呼ばれる)の1つのアイテムを得ること
の工程を含む。
【0014】
歯科シーンの画像、例えば写真、は、この歯科シーンを平面に投影した結果である。該歯科シーンの歯体の、該画像上の描写の解析は、この歯体の形状が既知である場合に、又は描写され且つこの歯体にリンクされているところの該歯科シーンの別のオブジェクトの形状が既知である場合に、空間情報を提供することができる。しかしながら、一般的に、患者の歯体、特に歯、の形状は、知られていない。それ故に、歯科シーンの画像の単純な解析は一般的に、信頼できる空間情報が歯体の為に決定されることを可能にしない。
【0015】
3Dスキャナーの原理に従うと、同じ歯科シーンの幾つかの画像を解析することにより、該歯科シーンの歯体の形状が知られていない場合であっても、該歯体に関する正確な空間情報を提供することが可能である。しかしながら、該画像上で該歯体を認識すること及び複数の該画像を比較することは、長く且つコストのかかる動作を必要とする。
【0016】
本明細書の残りの部分を通じて更に詳細に見られたであろう通り、そして全く予想外に、本発明者等は、ニューラルネットワークを使用することにより、単純な画像から、特に写真から、空間情報が非常に良好な正確さで得られることを可能にすることを発見した。特に、患者の歯槽弓の3次元モデルに頼ること無しに、空間情報における誤差が1mm未満、0.5mm未満、更には0.3mm未満、であることができることを発見したことは驚くことであった。そのような正確さは、実は、本発明以前は、複雑な処理、例えば3Dスキャナーを用いた処理、を行わない限り、画像のみから達成することは不可能であると考えられていた。特に、写真、例えば患者自身によって撮影された簡単な写真、を用いて達成することは不可能であると考えられていた。
【0017】
最新の患者が歯科用リトラクターを着用しておらず、且つ携帯電話をサポート上、例えば三脚上、に固定される必要がない場合であっても、単純な携帯電話で特別な注意を払うこと無しに画像が撮影されている場合であっても、テストは最新の空間情報が信頼できることを示した。
【0018】
その上、これまでは、数時間のコンピュータ処理がそれぞれの歯科的状況を評価する為に必要とされていたが、本発明に従う方法は、数秒で空間情報の最新のアイテムが取得されることを可能にする。
【0019】
最後に、最新の患者は、もはや歯科医療従事者まで足を運ぶ必要はない。それ故に、該解析方法は、歯科医療従事者との接触とは無関係に、携帯電話を持っているいかなる人によっても実施されることができる。
【0020】
本発明に従う解析方法は好ましくは、下記の任意の特徴のうちの1以上を有する:
-該画像取得デバイスが携帯電話であり;
-該最新の画像はトゥルーカラー写真であり、該トゥルーカラー写真は、人の目によって認識されることができる歯科シーンを描写している;
-該最新の患者は、工程b)において、歯科用リトラクターを装着していない;
-該最新の画像が、口腔外である;
-該最新の画像が、該最新の患者から様々な距離で取得され、次に、該最新の画像が描く該歯体の周りで切り取られている。
【0021】
好ましくは、工程a)において、異なる歯体及び/又は異なる空間属性に関連するという点で異なるところの個々の履歴学習データベースで複数のニューラルネットワークが訓練されて、複数の特化されたニューラルネットワークを得る;
工程b)において、最新の画像が取得され、そして、該複数の特化されたニューラルネットワークのそれぞれの特化されたニューラルネットワークの為に、最新の画像の1組が該最新の画像から作成される;
工程c)において、最新の画像の複数の該組のそれぞれが、対応する特化されたニューラルネットワークによって解析されて、空間情報の複数の最新のアイテムを得る、ここで、それは、静的情報として一般的に言われることができる。
【0022】
好ましくは、各履歴学習データベースは、該履歴学習データベースに固有の番号を有する歯、又は該履歴学習データベースに固有である該グループの該歯の番号を有する複数の歯のグループに関する。
【0023】
好ましくは、該空間属性は、全ての該履歴学習データベースについて同じである。
【0024】
該解析方法は、複数の歯体が、歯体ごとに、該歯体に固有のニューラルネットワークを用いて解析されることを可能にする。従って、該最新の空間情報は、正確且つ実質的なものである。
【0025】
従って、本発明は、非常に広い応用分野を開拓する。
【0026】
特に有利な様式において、本発明に従う解析方法は、最近の異なる瞬間に、複数回実施されることができる。
【0027】
本発明は特に、「前方の」最新の瞬間と、該前方の最新の瞬間の後の「後方の」最新の瞬間との間の動きの量を決定する方法に関し、該方法は、
1)本発明に従う解析方法を前方の最新の瞬間に実施して、空間情報の「前方の」最新のアイテム、又はより一般的には、情報の静的な「前方の」アイテムを得ること;
2)本発明に従う解析方法を後方の最新の瞬間に実施して、空間情報の「後方の」最新のアイテム、又はより一般的には、情報の静的な「後方の」アイテムを得ること;
3)該前方の最新の空間情報と該後方の最新の空間情報とを比較して、より一般的には、該静的な前方の最新の空間情報と該静的な後方の最新の空間情報とを比較して、該前方の最新の瞬間と該後方の最新の瞬間との間の動きの量を得ること、ここで、該比較は特に、該前方の最新の空間情報と該後方の最新の空間情報との間(又は、より一般的には該前方の静的情報と該後方の静的情報との間)の差を見つけること、及び任意的に、該前方の最新の瞬間と該後方の最新の瞬間との間の時間間隔によって該差を分割することを含む;
4)好ましくは、該動きの量を、例えばパーソナルコンピュータ又は携帯電話の画面上で該最新の患者に及び/又は歯科医療従事者に提示すること
の工程を含む。
【0028】
本発明に従う決定する方法が好ましくは、下記の任意の特徴のうちの1以上を有する:
-該動きの量が、該最新の歯体の1以上の点の、及び/又は該最新の歯体の複数の点を結ぶ1以上のベクトルの、若しくは該最新の歯体の1以上の点と該最新の患者の該口腔の1以上の他の点とを結ぶ1以上のベクトルの、該前方の最新の瞬間と該後方の最新の瞬間との間の、並進による及び/又は回転による動きの振幅及び/又は速度を定義する;
-工程3)において、該動きの量が閾値と比較され、そして、該動きの量と該閾値との差に応じて、下記が決定される:
-該最新の患者によって装着された歯科矯正器具の有効指数(activity index);及び/又は
-該最新の患者によって行われた歯科矯正処置によって予め定められた状況、又は該最新の患者によって行われた歯科矯正処置から結果として生じる状況、又は歯科矯正処置とは無関係に、歯科医療従事者によって定められた状況、例えば該最新の患者の正常である定義された状況、を有する該最新の患者の歯科的状況の適合指数;
-該有効指数及び/又は該適合指数が、グラフの形態で提示される;
-該有効指数及び/又は該適合指数が、画面上に、例えばコンピュータ又は携帯電話の画面上に、提示される。
【0029】
好ましくは、上記されているように、複数のニューラルネットワークが、それぞれの歯又は歯のグループに特化されており、ここで、各ニューラルネットワークは、例えばそれに固有の番号を有する歯に特化されている。
【0030】
従って、本発明に従う決定する方法は、各歯体の為にそれに固有であるニューラルネットワークを用いて、幾つかの歯体の経時的展開化を解析することを可能にする。従って、該動きの量は、正確且つ実質的である。動きのこれらの全ての量は一般的に、動的情報として認定されることができる。
【0031】
好ましい実施態様において、該特化は、歯の種類毎である。例えば、或るニューラルネットワークは犬歯の為に特化されることができ、別のネットワークは切歯に特化されることができ、第3のニューラルネットワークは臼歯に特化されることができる、等である。
【0032】
該特化は、歯の番号毎にされることができる。例えば、或るニューラルネットワークは13番の歯に特化されることができ、別のネットワークは14番の歯に特化されることができ、第3のニューラルネットワークは15番の歯に特化されることができる、等である。
【0033】
本発明に従う該解析方法及び該決定方法は特に、
-歯の位置若しくは形状、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開の速度を検出若しくは評価すること;特には、
-治療前の期間、すなわち、歯科矯正処置に先立つ期間において;
-何らの歯科矯正処置も行われていない場合に、特に、歯の萌出を監視する為に、又は歯の再発位置若しくは異常な位置を検出する為に、又は歯の摩耗、例えば歯ぎしりによる歯の摩耗、を検出する為に、又は2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に、又は咬合の安定若しくは修正を監視する為に;
-歯科矯正処置の文脈において、特に、所定の位置への、特に歯の改善された位置への、歯の動きを監視する為に、又は歯の萌出を監視する為に、又は例えば歯科インプラントを取り付ける為に適した空間を作る為に、2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に;及び/又は、
-歯科矯正器具の位置若しくは形状、特には歯科矯正器具の異常な位置若しくは形状、例えばリングの剥離若しくは歯列矯正アライナーの剥離、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開の速度を検出又は評価すること
の為に、特には、
-歯科矯正医又は歯科医との予約日を最適化すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正処置の有効性(effectiveness)を評価すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正器具の活性(activity)を測定すること;及び/又は、
-受動的歯科矯正器具の効果の喪失を測定すること;及び/又は、
-歯学;及び/又は、
-2つの日付の間、例えば処置前の間の2つの日付の間、特に少なくとも1つの歯の位置及び/又は形状を変えたと思われる事象によって分けられた2つの日付の間、例えば、該歯における衝撃の発生によって分けられた2つの日付の間、若しくは好ましくない効果をもたらすことができる歯科機器、例えば睡眠時無呼吸症候群の処置の為に意図された歯科機器、の使用によって分けられた2つの日付の間、又は患者の口腔内の移植物、特に歯周移植物、特に歯肉移植物、の発生によって分けられた2つの日付の間で患者の歯の形状の展開を測定すること
の為に使用されることができる。
【0034】
工程A)及びB)、及び/又は工程a)及びc)、及び/又は工程1)~工程3)(工程bを除く)が好ましくは、コンピュータによって実施される。本発明はまた、
工程A)及びB)、及び/又は工程a)及びc)、及び/又は工程1)~工程3)(工程bを除く)を実装する為のプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム;
そのようなプログラムが記録されたコンピュータ媒体、例えばメモリ又はCD-ROM;及び、
そのようなプログラムが読み込まれたコンピュータ
に関する。
【0035】
定義
【0036】
語「患者」は、本発明に従う方法が実施されるあらゆる人を意味すると理解され、この人が病気であるか又は歯科矯正処置を受けているか否かを問わない。
【0037】
「歯科矯正処置」は、歯槽弓の構成を変更すること(能動的歯科矯正処置)又は歯槽弓の構成を維持することを目的とした処置の全部又は一部であり、特に能動的歯科矯正処置の終了後に行われるもの(受動的矯正処置)をいう。
【0038】
「歯科矯正器具」は、患者によって装着される器具、又は患者によって装着されることを意図されている器具である。歯科矯正器具は、治療的又は予防的治療の為だけでなく、審美的治療の為にまた意図されることができる。歯列矯正器具は特に、アーチ型及び歯列矯正器具、又は歯列矯正アライナー、又はキャリエールモーションタイプ(Carriere Motion type)の補助器具であることができる。そのようなアライナーは、それが固定されているところの該槽弓の連続する歯に沿うように延在する。それは一般的に、「U」形状のチャネルを規定する。歯列矯正器具の構成は特に、歯へのその取り付けを確実にするためだけでなく、歯の所望の目標位置の機能としてまた決定されることができる。より具体的には、該形状は、使用位置において、該歯列矯正器具が、治療された歯をそれらの目標位置に向かって動かす傾向のある力(能動的歯列矯正器具)、又はこの目標位置において歯を保持する傾向のある力(受動的歯列矯正器具、又は「リテーナ」(retainer))を及ぼすように決定される。
【0039】
「歯科的状況」は、或る瞬間での患者の歯槽弓に関する特徴の1組、例えば、この瞬間での歯の位置、それらの形状、歯列矯正器具の位置等を定義する。これらの特徴はまた、該槽弓の一般的な形状に、及び/又は患者の他の歯槽弓に相対的なその配置、特に「閉ざされた口」(closed mouth)の位置における配置に関連することができる。
【0040】
語「槽弓」(arcade)又は「歯槽弓」(dental arcade)は、歯槽弓の全て又はその一部を意味することが理解される。従って、語「槽弓の画像」は、該槽弓の全部又はその一部の2次元描写を意味することが理解される。
【0041】
国際歯科連盟の国際規約(the international convention of the International Dental Federation)に従うと、歯槽弓の各歯は、予め定められた番号を有する。この規約で定められた歯の番号が図7において示されている。
【0042】
「シーン」は、同時に観察されることができる要素の1組によって形成される。「デンタルシーン」(dental scene)は、患者の口腔内にある少なくとも1つの歯体を含むシーンである。
【0043】
「特筆すべき点」(noteworthy point)は、例えば、歯の頂点又は尖端、歯間接触点、すなわち隣接する歯との歯、例えば歯の切縁の中位点若しくは遠位点、又は歯冠の中心点、すなわち「重心」(barycenter)、を識別されることができるところの歯科シーンの点である。
【0044】
語「歯体」(dental body)は、口腔内において識別されることができる要素、例えば、歯、複数の歯の1組、例えば、隣接する歯の対又は3つの組、歯肉又は歯槽弓によって支持されることを意図された装置、特に、歯科矯正器具、クラウン、インプラント、ブリッジ、又はファセットを意味すると理解される。該歯体はまた、前述された要素のサブセット、例えば、決められた番号を有する歯、又は2つ、3つ、若しくは3超の隣接する歯の1組であり、ここで、該1組の歯が決められた番号を有する。
【0045】
歯体の位置は、それが治療上又は審美上の基準に適合しない場合、「異常」である。
【0046】
語「画像」は、2次元のデジタル描写、例えば写真又はフィルムから取り出した画像、を意味すると理解される。画像は、複数の画素で構成される。
【0047】
「角度」(angulation)は、画像を取得する場合に、患者に相対的な画像取得デバイスの光軸の方位(orientation)である。拡大解釈すれば、画像がこの角度で取得された場合に、該角度を「示す」又は「有する」、又は該角度に「関連付けられている」。
【0048】
画像の「歯領域」(tooth zone)は、歯を排他的に描写する該画像の部分、すなわち、この画像上でこの歯のプロファイルに従う部分、である。言い換えれば、該画像上の該歯の描写は、歯領域の実質的に100%を描写する。
【0049】
語「モデル」は、「3D」モデルと呼ばれるデジタル3次元モデルを意味すると理解される。モデルは、ボクセル(voxels)の1組で構成される。「歯のモデル」は、1本の歯の3次元デジタルモデルである。語「槽弓の画像」又は「槽弓のモデル」はそれぞれ、該槽弓の全部又はその一部の二次元又は三次元における描写を意味すると理解される。
【0050】
3Dスキャナー又は「スキャナー」は、歯又は歯槽弓のモデルを得る為の周知の装置である。それは、構造化された光を慣用的に使用し、並びに、異なる複数の画像とこれらの複数の画像上の特定の点のマッチングとに基づいて、3Dモデルを形成することができる。
【0051】
本発明に従う方法は、画像の取得を除き、コンピュータによって、好ましくは専らコンピュータによって実施される。語「コンピュータ」は、コンピュータ処理能力を有する、複数の機械の1組を包含する任意の電子装置を意味すると理解される。該コンピュータは、ユーザから離れたサーバであることができ、例えば、該コンピュータは、「クラウド」ベースであることができる。好ましくは、該コンピュータは、携帯電話である。
【0052】
慣用的に、コンピュータは特に、プロセッサ、メモリ、ヒューマンマシンインタフェース(慣用的には、画面を含む)、インターネットを介して、Wi-Fiを介して、Bluetooth登録商標を介して又は電話網を介して通信する為のモジュールを備えている。本発明の方法を実装するように構成されたソフトウェアは、該コンピュータのメモリ内にロードされる。該コンピュータはまた、プリンターを接続されることができる。
【0053】
「第1の」、「第2の」、「最新の」(updated)、「履歴の」、「前方の」、「後方の」、「静的な」、「動的な」は、明確さの為に使用されている。
【0054】
「前方の」及び「後方の」は、経時的に連続した瞬間である。
【0055】
「最新の」患者は、歯科的状況が評価されることが意図されている患者である。「履歴」患者は、対応する履歴記録を有する患者である。
【0056】
「空間属性」は、空間情報のアイテムの構造を指定する汎称である。それは、三次元基準フレーム、例えば、正規直交基準フレーム(orthonormal reference frame)、例えば、14番の歯について:の変数の順序付きシーケンス(重心の横座標;重心の縦座標;重心のアプリケート(applicate of the barycenter))を定義する。該三次元基準フレームは、考慮される患者に相対的に、例えば患者の口腔の中心に相対的に、決定される。該三次元基準フレームは好ましくは、該考慮される患者に相対的に又は該考慮される患者の一部に相対的に固定される。該基準フレームの原点は特に、口腔の中心であることができる。
【0057】
特に、該三次元基準フレームは、画像を取得する際に、画像取得デバイスの位置及び方位(orientation)に依存しない。
【0058】
空間情報のアイテムの1以上の値は、常にゼロであることができる。例えば、該空間属性が、該三次元基準フレームのX軸に沿って、歯科シーンの特筆すべき点の横軸を決定する為に使用される場合、この横軸の値のみがゼロでない。代替的には、値が常にゼロでない。
【0059】
空間情報のアイテムは、取得条件が不明であるところの画像の観察のみから推論されることができない。特に、例えば、患者から所定の距離にある支持体上に固定されていない携帯電話、例えば、患者に支承されている携帯電話、又はそのような支持体上に固定されているが方位が変更されることができる携帯電話、で取得された、考慮される歯体に相対的な方位及び距離が不明である画像取得デバイスによる単一の取得画像の観察のみから、それは推測されることはできない。
【0060】
このように、画像は、画像の平面における「表面」の情報、例えば、該画像の二次元基準フレームにおける該画像上に描かれた歯の特定の点の位置、を提供する。空間情報のアイテムは、該画像の平面に相対的な奥行き情報を提供する。該画像上に描かれた歯の特定の点の位置の例において、空間情報は、この点が画像上だけでなく、該画像の平面に対して垂直な奥行きの方向にまた位置付けされることを可能にするこの点の座標を提供する。
【0061】
履歴空間情報は、例えば、該履歴空間情報が1本の歯の特筆すべき2つの点の間の距離、又は1本の歯の特筆すべき点と他の1本の歯の特筆すべき点、例えば、隣接する他の1本の歯の特筆すべき点、との間の距離を表す場合に、相対的であることができる。
【0062】
空間情報のアイテムは、空間属性の出現である。例えば、(2;3;1.5)は、患者「Mr Martin」の14番の歯の重心の位置を定義することができる。これは、最新の患者に関連付けられているか又は履歴に関連付けられているかに従って、「最新の」(updated)又は「履歴」(historical)と云われる。
【0063】
「前方の」及び「後方の」は、時間的に連続した瞬間である。
【0064】
「歯体」は、汎称であり、例えば、14番の歯を指定する。「最新の歯体」及び「履歴歯体」はそれぞれ、最新の患者と履歴患者とにおける該歯体の出現である。例えば、患者「Mr Martin」の14番の歯は、最新の歯体であることができる。
【0065】
「垂直」、「水平」、「右」、「左」、「水平」、「前」(in front of)又は「正面」(frontal)、「後方」、「上」、「下」は、患者が垂直方向に直立していることを云う。
【0066】
情報は、最新の1つの瞬間での分析結果であるか又は連続した複数の最新の瞬間での分析結果であるかに従って、「静的」又は「動的」である。
【0067】
「包含する」又は「含む」又は「有する」は、特に断らない限り、非限定的な様式で理解されるべきである。
【0068】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明を読み且つ添付の図面を参照することに応じて、より明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、本発明に従うニューラルネットワークを訓練する為の方法が複数回実施され、それぞれが歯体及び/又は空間情報のアイテムに特化したニューラルネットワークの1組を得る方法を模式的に示す。
図2図2は、本発明に従う解析方法が、その都度異なる特化されたニューラルネットワークで複数回実施される方法を模式的に示す。
図3図3は、最新の歯体の動きの量を決定する方法の様々な工程を模式的に示す。
図4図4は、本発明に従う動きの量を決定する方法が、各回で異なる特化されたニューラルネットワークを用いて複数回、2つの異なる瞬間で実施されて、複雑且つ正確な動的情報を得ることを模式的に示す。
図5図5は、歯領域を分離する為の処理を行った後の、最新の画像の1組の例である。
図6図6は、本発明に従って得られた空間情報の最新のアイテムの精度を示すグラフである。
図7図7は、歯科分野において使用される歯の番号を示す。
図8図8は、適合指数のグラフ化表現である。
【0070】
様々な図を通じて、同一の参照符号は、類似又は同一のオブジェクトを示す為に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明に従う訓練方法が、図1において示されている。
【0072】
ニューラルネットワーク
工程a)において、該ニューラルネットワークは好ましくは、画像の分類の為に特化されている。
【0073】
好ましくは、該ニューラルネットワークは、畳み込み型ニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)であり、好ましくは下記のニューラルネットワークのうちから選択される:
-AlexNet (2012);
-ZF Net (2013);
-VGG Net (2014);
-GoogleNet (2015);
-Microsoft ResNet (2015);
-Caffe:BAIR Reference CaffeNet, BAIR AlexNet;
-Torch;
-VGG_CNN_S,VGG_CNN_M,VGG_CNN_M_2048,VGG_CNN_M_1024,VGG_CNN_M_128,VGG_CNN_F,VGG ILSVRC-2014 16-layer,VGG ILSVRC-2014 19-layer,Network-in-Network (Imagenet & CIFAR-10);
-Google:Inception (V3,V4)。
【0074】
好ましくは、Jie Hu等、“Squeeze-and-Excitation Networks”,arXiv:1709.01507v4 [cs.CV],16 May 2019によって記載された「スクイズアンドエキサイト」(SE:squeeze-and-excitation)処理ブロックが、CNN畳み込み型演算子に追加される。より好ましくは、該ニューラルネットワークは、SEブロックを有するVGG型である。
【0075】
運用するためには、慣用的に、所望の機能に適合した履歴学習データベースに基づいて、「ディープラーニング」と呼ばれる学習プロセスを用いて、方位ニューラルネットワーク(orientation neural network)が訓練されなければならない。
【0076】
履歴学習データベース
ニューラルネットワークを訓練することは、当業者に十分に知られているプロセスである。それは、入力データと出力データとをそれぞれ含む複数の履歴レコードを含む履歴学習データベースを該ニューラルネットワークに提示することを含む。
【0077】
従って、該ニューラルネットワークは、入力データと出力データとを「一致させる」こと、すなわち互いに繋ぎ合わせることを学習する。
【0078】
最新の画像の1組から、これらの画像上に描かれた最新の歯体に関する空間情報の最新のアイテム、例えば、これらの画像上に描かれた歯の構成に関する空間情報、を評価することを学習する為に、該履歴学習データベースは好ましくは、それぞれが含む履歴レコードの1組から構成され、各履歴レコードは、下記を含む;
-「履歴的な」患者の「履歴的な」歯体、好ましくはこの患者の少なくとも1つの歯を描く写真、を全て描く「履歴的な」画像の1組;
-履歴画像の該1組の歴史的記述子、ここで、該記述子は、該履歴画像に描かれた履歴歯体に関する履歴空間情報のアイテムを含む。
【0079】
好ましくは、該履歴学習データベースは、1,000以上、5,000以上、好ましくは10,000以上、好ましくは30,000以上、好ましくは50,000以上、好ましくは100,000以上の履歴レコードを含む。レコードの数が多いほど、該ニューラルネットワークの解析能力が良くなる。履歴レコードの数は、慣用的には、10,000,000未満又は1,000,000未満である。
【0080】
該履歴レコードは、個々の履歴患者にそれぞれ関連付けられている。
【0081】
履歴画像
履歴画像の組は、考慮される履歴レコードにかかわらず、同じ数の履歴画像を全て含む。この数は好ましくは、1、2、4、5以上であり、及び/又は100、50、20、15又は10未満であり、好ましくは5~15である。
【0082】
1つの実施態様において、この数は3であり、ここで、3つの履歴画像は異なる角度を有する。
【0083】
該履歴画像は、画像取得デバイス、好ましくは、携帯電話、「接続型」カメラ、「スマート」ウォッチ、タブレット、又はパーソナルコンピュータ、固定式コンピュータ若しくはポータブルコンピュータの中から選択される画像取得デバイス、であって、画像取得システム、例えばウェブカメラ又はカメラ、を備えている上記画像取得デバイスによって取得される。
【0084】
該履歴画像は好ましくは、携帯電話で撮影された写真である。
【0085】
好ましくは、各履歴画像は、写真であるか、又はフィルムから抽出された画像である。好ましくは、それはカラーであり、好ましくはトゥルーカラーである。好ましくは、該画像取得デバイスのオペレータによって見られるように、実質的に歯科場面を描写し、特に同じ色で描写する。
【0086】
該履歴画像は好ましくは口腔外画像であり、すなわち、これらの画像を取得する為の装置は、該履歴患者の口腔内に導入されない。
【0087】
より好ましくは、履歴画像を取得する為の装置は、該履歴患者の口から5cm以上、8cm以上、又は10cm以上離れており、このことにより、該画像取得デバイスの光学系への水蒸気の凝縮が回避され、焦点合わせを容易にする。その上、好ましくは、該画像取得デバイス、特に携帯電話、は、履歴画像を取得する為の何らの特定の光学系を備えられておらず、このことにより、該画像取得デバイスと取得中の履歴患者の口との間の分離の故に特に可能である。
【0088】
1つの実施態様において、該履歴患者は、該履歴患者の歯をよりよく露出させる為に、歯科用リトラクターを装着する。該リトラクターは、慣用的なリトラクターの特徴を有することができる。好ましくは、リトラクター開口部の周りに延在するリムを備えており、該履歴患者の唇が、該リトラクター開口部を通じて該履歴患者の歯を露出しながらその上に載ることができるように配置される。好ましくは、該リトラクターは、履歴画像を取得する為の装置が、リトラクター開口部を通じて、口腔の底部に配置された歯、例えば臼歯、の前庭面(vestibular surfaces)の写真を取得することができるように、頬を分離する為のブラケットを備えている。
【0089】
好ましい実施態様において、歯科用リトラクターは使用されない。事実、テストは、リトラクター無しで撮影された写真は一般的に、本発明に従う方法を実施する為に十分であることを示す。もちろん、必要であれば、該履歴患者は、例えば、指又はスプーンで頬又は唇を離さなければならない場合がありうる。
【0090】
履歴レコードの全ての履歴画像は、該レコードに関連付けられた該履歴患者の同じ歯体、例えば該履歴患者の切歯、を少なくとも部分的に描写する。
【0091】
履歴画像は、特に1以上の歯が描かれていることができる。好ましくは、該履歴画像は、該履歴患者の数本の歯と歯肉の少なくとも一部、又は唇若しくは鼻を描写することができる。
【0092】
履歴記録の履歴画像は、同じ履歴歯体を全て描写しているが、好ましくは、異なる角度で、すなわち、該履歴画像が該履歴患者の口腔に相対的に画像取得デバイスの異なる方位で取得されたものである。例えば、履歴レコードはそれぞれ、「正面図」、「右正面図」、「右図」、「左正面図」、「左図」、及び「底面図」として見られる同一の歯を描写する6つの履歴画像を含むことができる。
【0093】
履歴レコードの該履歴画像の角度は好ましくは、考慮される履歴レコードに関係無しに、同じ履歴歯体に、例えば歯の同じ種類に、関する全ての履歴レコードについて、例えば、切歯に関する全ての履歴レコードについて、例えば、同じ歯番号について、例えば、右上切歯に関する全ての履歴レコードについて、実質的に同一である。
【0094】
履歴レコードは、同じ角度で1以上の履歴画像を含むことができる。
【0095】
本発明に従う方法の履歴画像並びに最新の画像を取得する場合、角度を制限されないレベルの精度で定義されることができる。しかしながら、テストは、角度を非常に正確に定義される必要がないことを示されていた。それ故に、有利なことに、これらの画像の取得は、該画像取得デバイスのオペレータの事前の訓練を必要としない。該履歴画像は、最新の画像と同様に、例えば、簡単な携帯電話を用いて、最小限のケアで取得されることができる。
【0096】
好ましい実施態様において、角度は、非常に一般的に定義される。例えば、該角度は、該角度の「正面図」、「右面図」、「右正面図」、「左面図」、「左正面図」、「底面図」、「正面底面図」、「上面図」、「正面上面図」からなる潜在的角度の1つのグループから選択されることができる。
【0097】
該角度は、「自然な」基準フレームに相対的に、すなわち、該患者が該画像取得デバイスを知覚する方法の関数として、定義されることができる。この基準フレームにおいて、該角度は、例えば、以下の角度からなる潜在的角度の1つのグループから選択される。
咬合面上において、
-該画像取得デバイスの光軸が、咬合面と正中矢状面との交点で直線と実質的に一致する場合を「正面図」;
-該画像取得デバイスの光軸が実質的に咬合面内にあり、並びに正中矢状面に垂直であり、該画像取得デバイスが該患者の右側にある場合の「右側図」;
-該画像取得デバイスの光軸が実質的に咬合面内にあり、並びに正中矢状面に垂直であり、該画像取得デバイスが該患者の左側にある場合の「左側図」;
正中矢状面において、
-該画像取得デバイスの光軸が実質的に正中矢状面にあり、並びに咬合面に対して垂直であり、該画像取得デバイスが該患者の上方にある場合の「上面図」;
-該画像取得デバイスの光軸が実質的に正中矢状面にあり、並びに咬合面に対して垂直であり、該画像取得デバイスが該患者の下方にある場合の「底面図」。
【0098】
該角度は、より正確に定義されることができる。特に、上記の各角度について、該画像取得デバイスの光軸は、咬合面又は正中矢状面にある。例えば、下記の角度を追加することが可能である:
-正中矢状面に相対的に45°で傾き、咬合面と正中矢状面との交点の直線を含む「右前」及び「左前」の2つの面のうちの1つにおいて、右前及び右図、右前及び左図、左前及び右図、並びに左前及び左図;又は、
-咬合面に相対的に45°で傾き、咬合面と前方境界面(frontal plane)に対して平行な面との交点で口腔の中心を通る直線を含む「咬合上面」及び「咬合底面」のうちの1つにおいて、咬合上面及び正面図;又は、
-光軸が、「右前」及び「左前」の2つの面のうちの1つから選択される第1の面と、「咬合上面」面及び「咬合底面」面の2つの面のうちの1つから選択される第2の面との交点にある場合。
【0099】
好ましくは、該角度は、上記に挙げられた角度からなる潜在的角度の1つのグループから選択される。
【0100】
好ましくは、該角度は、それにもかかわらず、該歯体の関数として決定される。例えば、該歯体が、1つの歯又は複数の歯のグループである場合、角度は好ましくは、該1つの歯又は該複数の歯の数の関数として固定される。口の構成は、実際には、同じ角度が全ての歯の為に使用されることを必ずしも可能にしない。
【0101】
しかしながら、同じ角度が、異なる2つの歯体、例えば切歯及び犬歯、の為に使用される場合があることができる。
【0102】
履歴画像を取得する際の取得デバイスの正確な位置決めは必要でない。従って、該履歴画像は、口からの異なる距離で取得されることができる。履歴歯体、例えば歯、が、考慮される履歴画像に依存して、及び/又は考慮される履歴レコードに依存して、訓練されたニューラルネットワークの性能能力が有意な様式で実質的に影響を受けること無しに、異なるスケールで描かれることが出来ることをテストは示す。
【0103】
しかしながら、好ましくは、該画像取得デバイスが、履歴患者の身体上に支承されて配置される支持体上に固定され、好ましくは、該履歴患者の口内に導入される。該支持体が剛体である場合、それは有利には、該画像取得デバイスと該履歴患者の口との間に所定の距離を課す。それによって、該ニューラルネットワークの性能能力が向上される。
【0104】
好ましくは、該支持体は、慣用的な歯科用リトラクターを支持する。そのような歯科リトラクターは慣用的に、リトラクター開口部の周りに延在するリムを備えており、並びに該履歴患者の唇が、該リトラクター開口部を通じて患者の歯を露出しながらその上に載ることができるように配置されている。
【0105】
好ましくは、2017年10月10日に出願された欧州特許出願第17,306,361.1号に記載されているような画像キャプチャデバイスが使用される。
【0106】
その上、好ましくは、該履歴画像は、履歴レコード内に組み込まれる前に切り取られる。「クロッピング」(Cropping)又は「再カッティング」(re-cutting)は、そこから関連する部分を分ける為に画像をトリミングすること、次に、寸法を正規化することを含む慣用的な操作である。好ましくは、該履歴画像は、履歴歯体を分ける為に、すなわち、実質的に履歴歯体のみを描写する為に、トリミングされる。再カッティングは、手動で、又は以下に説明されているように、コンピュータによって、特にこの目的のために訓練されたニューラルネットワークによって、実施されることができる。該履歴画像の再カッティングは、訓練されたニューラルネットワークの性能能力をかなり向上させる。
【0107】
テストはまた、上記に示されているように、角度が正確に設定される必要がないことを示している。
【0108】
履歴歯体及び特化
該歯体は特には、1本の歯、又は複数の歯の1組、又は歯槽弓であることができる。好ましくは、該歯体は、様々な履歴レコードの間でその形状の多様性を制限するように選択される。該歯体は好ましくは、歯の特定の種類、又は特定の番号を有する歯である。
【0109】
「履歴」歯体は、考慮された履歴患者の特定の症例における歯体のことである。言い換えれば、該履歴学習データベースにおいて、全ての履歴歯体は、学習データベースに関連付けられた歯体の特定の発生例である。
【0110】
好ましくは、該学習データベース、それ故に該ニューラルネットワークは、特定の番号を有する歯の為にのみ特化される。例えば、それらは、右上の切歯に特化される。次に、ある履歴レコードの全ての履歴画像全ては、同じ履歴歯を描き、この履歴レコードの該履歴空間情報は、この履歴歯に関連し、そして、該学習データベースの全ての履歴歯は、同じ番号を使用する。このように、歯の番号の為に該ニューラルネットワークを特化させることは、その効率を大幅に向上させる。
【0111】
このようにして特化された幾つかのニューラルネットワークが好ましくは訓練され、ここで、各ニューラルネットワークは、歯の種類又は歯の番号に専用の履歴学習データベースを用いて訓練される。従って、有利には、歯科的状況の解析は、最新の患者の各歯の為に、対応する歯のタイプ又は歯の番号の為に、特化されたニューラルネットワークを実装することができる。
【0112】
履歴記述子
履歴画像の1組の履歴記述は、履歴空間情報のアイテム、すなわち空間属性の変数の為の値の1組、を含み、ここで、これらの値は、該履歴画像に描かれた該履歴歯体に関する。定義によれば、空間属性は、空間の3次元に対応する少なくとも3つの変数を含む。それ故に、該空間情報は、該空間属性の少なくとも3つの個々の変数の為の少なくとも3つの値の1組である。
【0113】
該空間属性は、該1組の全ての履歴画像についてだけでなく、全ての履歴レコードについてまた同じである。
【0114】
該空間属性は特に、
-1以上の歯体の空間及び/又は1以上の歯体部分の空間における1以上の位置;及び/又は
-1以上の歯体の空間及び/又は1つの歯体の1以上の部分の空間における1以上の方位方向(orientation direction);及び/又は
-1以上の歯体の空間及び/又は1以上の歯体部分の空間における1以上の方位コース(orientation course)
を定義することができる:
【0115】
1つの該歯体の1つの該部分は例えば、
-1以上の点、例えば、該歯体が1つの歯である場合、隣接する歯との接触点、又は該歯の重心;及び/又は
-1以上の列、例えば、該歯体が1つの歯である場合、隣接する歯又は該歯の歯縁(an edge of a cusp)との間の分離列;及び/又は
-この歯体の1以上の表面
であることができる。
【0116】
特に、該空間属性(xA,yA,zA,xB,yB及びzB)が、2つの点(xA,yA及びzA)と(xB,yB及びzB)の為の位置をそれぞれ順序付けられた様式で(点Bの位置の前に、点の位置がAである)定義する場合、それは間接的に、方位方向、方位コース及び距離を定義する。それが3つの点の為の位置を定義し、並びにこれらの位置が順序付けられている場合、それは間接的に3つの方位方向、それ故に、これらの方向のペアの間の角度、これらの方向のそれぞれに沿った方位コース、及び3つの距離、を定義する。
【0117】
例えば、第一の歯の重心位置と、該第一の歯の左隣の歯の重心位置を定義する場合、空間属性はこれらの重心の位置を直接的に定義するだけでなく、これらの点を結ぶ直線の方位方向、第一重心から第二重心への方位コース、並びにこれらの重心の間の距離をまた間接的に定義する。
【0118】
空間属性は、該患者に相対的に固定された三次元基準フレームにおいて、例えば、その原点が、考慮される患者の口腔の中心にあり、横軸が水平で且つ正面に向かって配向され、縦軸が水平で且つ右に向かって配向され、並びにアプリケート軸(applicate axis)が垂直で且つ上向きに配向されているところの絶対位置を定義することができる。それはまた、2点間のベクトル、すなわち、別の1点に相対的な1点の相対的な位置、を定義することができる。例えば、該空間属性は、(xB-xA,yB-yA,zB-zA)、すなわち、点Aに相対的な点Bの相対的な位置、を提供することができる。
【0119】
従って、該空間情報は、特定の歯科的状況における絶対位置若しくは相対位置、及び/又は方位方向及び/又は方位コース、及び/又は距離を定義することができる。
【0120】
履歴レコードの履歴空間情報を決定することは、何らの問題も生じない。それは、例えば、手動又はコンピュータによる任意の手段によって決定されることができ、特に、履歴患者から、又は該履歴患者の歯の石膏模型から、又は考慮される歯を支える該歯槽弓のデジタル3次元モデルから、測定を行うことによって、決定されることができる。
【0121】
好ましくは、該空間属性は、30未満の変数、好ましくは20未満の変数、好ましくは10未満の変数、好ましくは5未満の変数、好ましくは4未満の変数、を定義する。訓練されたニューラルネットワークの有効性が向上される。
【0122】
1つの実施態様において、該空間属性は、該歯体、好ましくは特定の番号を有する歯の特筆すべき点の1以上、好ましくは2以上、及び/又は5未満、好ましくは4未満、についての空間における位置を定義する。歯に関連する履歴空間情報を限られた数の点に限定することにより、該ニューラルネットワークの効率がかなり改善される。
【0123】
工程b)において、該ニューラルネットワークは、履歴レコード、より具体的には入力として履歴画像の組、出力として履歴空間情報を逐次提示することによって、履歴学習データベースを用いて訓練される。
【0124】
従って、入力として提示された履歴画像の1組に類似した画像の1組から、空間情報の対応するアイテムを出力として提供することを学習する。特に、このように訓練された後、該ニューラルネットワークは、「最新の」瞬間に、「最新の」患者の「最新の」歯体に関する「最新の」空間情報を提供することができる。それ故に、最新の空間情報は、最新の患者の歯科的状況を解析する為に、単独で又は他の情報と組み合わせて使用されることができる。本発明に従う解析方法は、図2に示されているように、工程a)~工程c)を含む。
【0125】
従って、このように訓練された該ニューラルネットワークは、該履歴学習データベースの履歴画像の組と互換性のある、任意の最新の患者において撮影され且つそれに入力として提示される最新の画像の1組の為に空間情報の最新のアイテムを決定することができる。
【0126】
工程a)は、上記の工程A)及び工程B)を実行することを含む。
【0127】
工程b)において、最新の患者の最新の歯体、好ましくは最新の歯、を描写する最新の画像の1組が、画像取得デバイスによって、最新の瞬間に取得される。
【0128】
該最新の瞬間は、
-何らの歯科矯正処置とは関係なく、例えば、各患者が自分の携帯電話でいつでも自分の歯科的状況を監視することができるようにすること;
-能動的歯科矯正処置中;
-受動的歯科矯正処置後、特に受動的歯科矯正処置中
であることができる。
【0129】
該解析方は特に、能動的歯科矯正処置の進捗を監視する為に、能動的歯科矯正処置中に実施されることができ、ここで、最新の瞬間は好ましくは、最新の患者の歯の位置を修正することを意図された能動的歯科矯正器具、例えば、歯列矯正アライナー(すなわち、「アライナー」)又は歯列矯正アーチ、を装着してから3ヶ月未満、2ヶ月未満、及び/又は1週間以上、好ましくは2週間以上、後である。
【0130】
該解析方法はまた、歯の位置が不利に進展しない(「再発」)ことを確認する為に、歯科矯正処置後に実施されることができる。次に、該最新の瞬間は好ましくは、能動的歯科矯正処置の完了後に、或る位置に歯を保持することを意図された受動的歯列矯正器具(「リテーナー」と呼ばれる)が装着されてから3ヶ月未満、2ヶ月未満、及び/又は1週間以上、好ましくは2週間以上、後である。
【0131】
該最新の画像は好ましくは、口腔外である。
【0132】
好ましくは、該最新の画像は、写真又はフィルムから抽出された画像である。それらは好ましくは、カラーであり、好ましくは、トゥルーカラーである。好ましくは、それらは、該画像取得デバイスのオペレータによって見られるように、実質的に歯槽弓を描写する。
【0133】
1つの実施態様において、該最新の患者は、歯をよりよく露出させるために、歯科用リトラクターを装着する。しかしながら、好ましくは、歯科用リトラクターは使用されない。もちろん、必要に応じて、最新の患者は、例えば、指を用いて若しくは又はスプーンを用いて、又はこの目的の為に適した他の器具を用いて、頬若しくは唇を空間的に離す必要がありうる。
【0134】
最新の画像は、1以上の歯を描写することができる。好ましくは、該最新の画像は、患者の歯肉の少なくとも一部、又は唇若しくは鼻でさえも描写する。
【0135】
該最新の画像の全てが、ニューラルネットワークに適合されていなければならない、すなわち、それらと互換性がなければならない。言い換えれば、該最新の画像の全ては、それが履歴レコードの為に使用された可能性があったものでなければならない。
【0136】
最新の画像の数は、履歴レコードの履歴画像の数と同じであることが好ましい。
【0137】
該最新の画像は、該履歴画像と同じ歯体、例えば14番の歯、を描写していなければならない。
【0138】
該最新の画像の角度は好ましくは、任意の履歴レコードの履歴画像の角度と同様又は近い。
【0139】
一般的に、該最新の画像は、該ニューラルネットワークを訓練する為に使用される履歴画像と類似していなければならない。例えば、これらの履歴画像が、履歴患者それ自身が、可変距離で、例えば、自分の口から10~50cmの距離で、おおよその角度で(例えば、「正面図」として、又は「右図」として)一般的に撮影された口腔外写真である場合に、好ましくは、該最新の画像はまたこれらの撮影条件の下で撮影された写真である。該履歴画像が歯科用リトラクターで撮影された図を描写している場合、それは好ましくは、最新の画像についても同じである。
【0140】
該最新の画像は、画像取得デバイスによって取得され、該画像取得デバイスは、好ましくは該履歴画像を取得する為に使用された画像取得デバイスと同一であることができ又は異なることができ、好ましくは、同じ種類の画像取得デバイスである。
【0141】
画像取得システム、例えばウェブカメラ又はカメラ、を含む、携帯電話、「接続型」カメラ、「スマート」ウォッチ、タブレット、又はパーソナルコンピュータ、固定式コンピュータ若しくはポータブルコンピュータの中から選択されることが好ましい。好ましくは、該画像取得デバイスは、携帯電話である。好ましくは、該画像取得デバイス、特に携帯電話、は、最新の画像を取得する為の何らの特定の光学系を備えていない。
【0142】
より好ましくは、最新の画像を取得する為に、最新の画像を取得する為のデバイスは、最新の患者の口から5cm以上、8cm以上、又は10cm以上でさえ、及び/又は50cm未満、離される。有利には、この距離は、正確に設定される必要はない。
【0143】
しかしながら、好ましくは、該履歴画像と同様に、該最新の画像は、履歴学習データベースを用いて訓練されるニューラルネットワークに入力されるところの最新の画像の該1組に組み込まれる前に「クロッピングされる」(又は「再カッティング」される)。好ましくは、該最新の歯体を分ける為に、すなわち、最新の歯体のみを実質的に描写する為に、最新の画像がトリミングされる。再カッティングは、手動で、又は、好ましくはコンピュータによって、特にこの目的の為に訓練されたニューラルネットワークによって実施されることができる。
【0144】
特に、ニューラルネットワークは、画像上の歯体を同定する為に、例えば、歯領域を同定する為に、訓練されることができる。「歯体を同定する」為のそのようなニューラルネットワークが、本明細書の以下において記載されている。最新の画像をクロッピングする為に、最新の歯体が単に、このニューラルネットワークで同定される必要があり、この画像上で同定された歯体を含むことができる最小の長方形が、カットを定義する為にこの長方形の内部のみを保持するように定義される必要があり、そして次に、最新の画像の1組内に組み込まれるべき最新の画像を定義する為に、カットの寸法が正規化される必要がある。最新の画像に関係無しに、矩形の縦横比が実質的に常に同じである場合には、画像を取得する為の条件が類似している可能性が高く、それは有利である。該カットの寸法を正規化することは、全ての最新の画像が同じ寸法を有するように、これらの寸法を調整することを含む。好ましくは、履歴画像の再カッティングの動作は、最新の画像の動作と同様であり、従って、これらの画像の寸法及び画素数が同様又は実質的に同一である。
【0145】
該履歴画像及び該最新の画像を再カッティングすることは、訓練されたニューラルネットワークの性能を大幅に向上する。
【0146】
該画像取得デバイスは、好ましくは最新の患者である操作者又は該最新の患者の近親者である操作者によって使用されるが、これは、任意の他の人、特に歯科医又は歯科矯正医又は介護者であることができる。好ましくは、該最新の画像は、該最新の患者によって取得される。
【0147】
好ましくは、該最新の画像は、支持体を使用すること無しに、地面に支えられ、並びに画像取得デバイスを固定すること無しに、特に三脚無しに、取得される。
【0148】
しかしながら、1つの実施態様において、該画像取得デバイスは、該履歴患者の身体上に支承されて配置されている支持体に取り付けられ、好ましくは該履歴患者の口の中に部分的に導入される。該支持体が剛体である場合、それは有利には、該画像取得デバイスと該最新の患者の口との間に所定の距離を課す。それによって、ニューラルネットワークの性能能力が向上される。
【0149】
好ましくは、該支持体は、慣用的な歯科用リトラクターを支持する。そのような歯科リトラクターは、慣用的にリトラクター開口部の周りに延在するリムを備えており、最新の患者の唇が、該リトラクター開口部を通じて該最新の患者の歯を露出しながらその上に載ることができるように配置されている。
【0150】
好ましくは、2017年10月10日に出願された欧州特許出願第17,306,361.1号に記載されているような画像キャプチャデバイスが使用される。
【0151】
取得中の最新の画像の該1組の構成
より好ましくは、オペレータは、工程b)の間、好ましくはリアルタイムで、該画像取得デバイスを所定の角度で方向付けるように、及び/又は好ましくは、様々な角度で所定数の画像を撮影するように、及び/又は画像取得デバイスを必要な角度で方向付けるようにガイドされる。
【0152】
このため、工程b)中にオンボード制御を提供する為に、すなわち最新の画像の数及び/又は角度及び/又は品質が満足できるものであることを確認する為に該画像取得デバイス内にアプリケーション(application)がロードされることが好ましい。
【0153】
該アプリケーションは特に、最新の画像を取得する前に、最新の患者に相対的に画像取得デバイスのおおよその位置決めを容易にするフールプルーフ手段(fool-proofing means)を実装することができる。
【0154】
該フールプルーフ手段は特に、画像取得デバイスの画面上に表示すること並びにオペレータがこの画面上に表示された最新の患者の部分、例えば、歯、歯肉、唇のプロファイル若しくは顔のプロファイル、と一致させなければならないことの基準、例えば重ね合わせる基準、を含むことができる。
【0155】
該基準は、例えば、幾何学的形状、例えば、1つの点、1つ以上の線、例えば、平行線、星、円、楕円、正多角形、特に正方形、長方形若しくは菱形又はこれらの1以上の形状のうちの任意の1以上の組合せであることができる。該1以上の基準は、好ましくは、該画面上に「固定」されている、すなわち、それらは該画像取得デバイスが動いているときに画面上で動かない。
【0156】
該基準は例えば、歯が最新の患者によって一緒にクランプされたときの上の歯と下の歯との間の水平ジョイントの画面上の描写の一般的な方向と一致するように意図された水平線、及び/又は上の2つの切歯の間の垂直ジョイントの描写と一致するように意図された垂直線からなることが可能である。該基準は例えば、最新の患者の両目の該画面上の描写の上に配置されるべき2つの円によって形成することができる。該基準は、例えば、最新の患者の口又は顔の該画面上の描写の周りの配置されるべき楕円によって形成されることができる。
【0157】
「該患者の一部」はまた、最新の患者によって装着される支持体、例えば、歯科用リトラクターによって若しくは該最新の患者によって咬まれる部分によって支持されるものであることができる。
【0158】
該アプリケーションはまた、メッセージ、例えば、「右の写真を撮ってください」、「もっと高く」、「もっと低く」、をアナウンスすること若しくは画面上に表示することによって、又は、画像取得デバイスの向きが改善されるにつれて周波数が増加する一連のビープ音を発することによって、オペレータが該画像取得デバイスの角度を変更することを助けることができる。この目的の為に、該画像取得デバイスの画面に表示された画像をリアルタイムで解析し、特に歯体が描かれているかを判断し、好ましくは、角度が適切であるかをチェックしなければならない。
【0159】
画像中のオブジェクトを検出する為のアルゴリズムは、当業者に周知であり、並びに表示された画像中の歯体を検索する為に使用されることができる。好ましくは、例えば、ニューラルネットワークが、歯体を識別する為に、好ましくは下記の「オブジェクト検出ネットワーク」(Object Detection Networks)の中から選択される歯体を識別する為に、使用される:
-R-CNN (2013);
-SSD (Single Shot MultiBox Detector:Object Detection Network),Faster R-CNN (Faster Region-based Convolutional Network method:Object Detection Network);
-Faster R-CNN (2015);
-SSD (2015);
-RCF (Richer Convolutional Features for Edge Detection) (2017)。
【0160】
画像中の歯体、例えば、決められた番号を有する歯、を検出する為のニューラルネットワークを訓練することは、当業者にとって何ら問題ではない。特に、該ニューラルネットワークは、入力として画像が提供され、並びに出力として、歯体の存在又は不存在に関連する情報が提供される。
【0161】
下記の記事は、特に検出及びセグメント化を扱っている:<https://arxiv.org/pdf/1405.0312.pdf>。
【0162】
1つの実施態様において、該ニューラルネットワークは、1,000件以上、好ましくは10,000件以上、のレコードの1組からなる学習データベースを用いて訓練され、各レコードは、
-歯体を描写する領域(zone)を含む画像であって、例えば、決定された番号を有する歯に関する少なくとも1つの歯領域を含む、該画像;
-該画像上の歯体が描かれている該領域を同定する該画像の記述
を含む。
【0163】
訓練の間、該ニューラルネットワークに、入力として各画像が供給され、一方、関連付けられた記述子が該ニューラルネットワークからの出力として供給される。
【0164】
従って、該訓練の完了に応じて、該ニューラルネットワークは、入力として該ニューラルネットワークに供給される画像において、歯体を描いている領域、例えば、歯領域、を決定することができる。
【0165】
図5は、このようにして訓練されたニューラルネットワークで処理された後に、異なる角度で撮影された最新の画像の1組を表す。
【0166】
該角度また、この目的の為に訓練されたニューラルネットワークによって同定されることができる。該ニューラルネットワークは好ましくは、CNNの中から選択され、ここで、該ニューラルネットワークの最終層は、回帰を動作させる。
【0167】
該ニューラルネットワークは、1,000件以上、好ましくは10,000件以上、のレコードの1組からなる学習データベースを用いて訓練され、各レコードは、
-歯体を描写する領域(zone)を含む画像であって、例えば、決定された番号を有する歯に関する少なくとも1つの歯領域を含む、該画像;
-該画像上の角度を同定する該画像の記述子
を含む。
【0168】
訓練の間、該ニューラルネットワークに、入力として各画像が供給され、一方、関連付けられた記述子が該ニューラルネットワークからの出力として供給される。
【0169】
従って、該訓練の完了に応じて、該ニューラルネットワークは、入力として該ニューラルネットワークに供給される画像の角度を決定することができる。
【0170】
好ましくは、該アプリケーションは、所定の角度の1組と、所定の角度毎に、取得されるべき最新の画像の数を定義する。該アプリケーションが起動されるときに、工程b)において、該アプリケーションは好ましくは、リアルタイムで、
-現在の瞬間に、該画像取得デバイスの画面上に表示された画像、すなわち「現在の画像」、を解析して、歯体が描かれているか、好ましくは該画像取得デバイスの角度、すなわち「現在の角度」、を決定すること;
-歯体が描かれている場合、好ましくは、現在の角度が現在の要件に適合している場合、すなわち、現在の瞬間に、最新の画像を現在の角度で取得することが依然として必要である場合、オペレータによって又は自動的に該取得をトリガーすること;
-さもなければ、好ましくは、該オペレータが画像取得デバイスの角度を修正するようにオペレータに通知すること、又は、追加の最新の画像を取得する必要がなくなった場合に、工程b)で終了すること
の工程を実行する。
【0171】
好ましい実施態様において、該取得は、表示された画像が歯体を描写し、角度が画像取得デバイスによって承認されるとすぐに、自動的に、すなわち、オペレータの動作無しに、トリガーされる。
【0172】
該オペレータを誘導する為に、該画像取得デバイスによって書面及び/又はボイスメッセージが発せられることができる。例えば、該画像取得デバイスは、「正面の写真を撮ってください」とアナウンスし、向きが許容可能であること、又は逆に該画像取得デバイスが写真を撮り直す必要があることを該オペレータに通知する信号を発することができる。
【0173】
取得処理の終了は、該画像取得デバイスによって口頭でアナウンスされてもよいし、又は画面上の表示によってアナウンスされてもよい。
【0174】
最新の画像を取得する際に該オペレータを誘導することは有利には、訓練済ニューラルネットワークの為に直ちに適している最新の画像の1組が形成されることを可能にする。
【0175】
取得後の最新の画像の該1組の構成
最新の画像の該1組はまた、最新の画像を取得した後、最新の歯体を所望の角度で描写する最新の画像の十分な数を選択することによって、部分的又は全体的に形成されることができる。
【0176】
最新の画像が、最新の歯体の為に、例えば歯の番号の為に、特化された最新の画像の1組に属することができるかを判断することは、この最新の画像がこの最新の歯体、例えばこの番号を有する歯、を描いているかを確認すること、好ましくは、角度が適切であるかを確認すること、を含む。
【0177】
該選択は、特に所望の角度が大まかである場合には、手動で選択されることができる。例えば、正面図の写真、口開けの右図写真、口開けの左図写真、口閉じの右図写真、口閉じの左図写真、を撮影することは容易である。
【0178】
該最新の画像はまた、コンピュータによって選択されることができる。ニューラルネットワーク、例えば、画像を取得する為に上述されたニューラルネットワーク、が使用されることができる。歯体の同定及び/又は角度の決定がまた、慣用的な画像解析を用いて行われることができるが、そのような解析は時間がかかる。
【0179】
最新の画像が歯体を或る角度で描写し並びに最新の画像の1組がこの角度の為に追加の最新の画像をまだ必要とする場合に、最新の画像が該組に追加される。
【0180】
該最新の画像が歯体を所望の角度で描写しているが、それが余分である場合、例えば、それが当該他の最新の画像よりも該歯体のよりも多くの表面積を描写する故により高品質である場合も、特化された組中に存在する他の最新の画像を置き換えることができる。
【0181】
工程c)において、工程b)において形成された最新の画像の該1組が、工程a)において訓練されたニューラルネットワーク内に入力される。
【0182】
これに対して、該ニューラルネットワークは、最新の歯体に関する最新の空間情報を提供する。
【0183】
異なるニューラルネットワークでの複数回の実行
該ニューラルネットワークは好ましくは、限定された歯体、例えば、決定された数を有する歯、の為に特化され、並びに該空間属性は好ましくは、限定された数の変数を含む。次に、好ましくは、該解析方法は、考慮された歯体及び/又は考慮された空間属性を毎回修正することによって、最新の瞬間に複数回実行される。
【0184】
従って、決定された該最新の空間情報の全ては、「静的情報」と呼ばれる。これにより、最新の患者の歯科的状況の詳細な分析が、特化されたニューラルネットワークへ再依存を掛け合わせることによって得られることを可能にする。
【0185】
好ましい実施態様において、工程a)において、幾つかの特化されたニューラルネットワークが訓練され、ここで、各ニューラルネットワークは、歯体に対して特化されており、好ましくは、個々の歯の種類又は歯の番号の為に特化されている。好ましくは、次に、工程b)において、特化されたニューラルネットワークの各々の為に適した「特化された」最新の画像の組を形成する為に十分である数の最新の画像が取得される。
【0186】
好ましくは、該最新の画像は全て、実質的に同時に取得される。必要に応じて、取得された最新の画像のバッチは、それらが属することができる1つ以上の特化された1以上の組を同定する為に解析される。
【0187】
静的情報は、強化されることができる。例えば、中央の歯、左の歯及び右の歯からなる隣接する歯の3つの組の各一つについて、中央の歯が左と右の歯との間にある場合、該解析方法は、これらの歯を支える歯槽弓に相対的に固定されている基準フレームにおける歯の重心の位置を決定するように実施されることができる。これら3つの位置の1組が静的情報である。この静的情報を強化する為に、3つの位置から、中央の歯の重心を共通の原点として、それぞれ左右の歯の重心を通る2つの直線セグメントによって形成される角度を決定することが可能である。一方で、中央の歯の重心と、他方で左の歯の重心又は右の歯の重心との間の距離がまた決定されることができる。
【0188】
該解析方法は、考慮された空間属性をその都度変更することによって、複数回実行されることができる。例えば、該解析方法は、歯と第1の隣接歯との接触点の位置を決定し、次に該歯と第2の隣接歯との接触点の位置を決定する為に実施されることができる。これらの2つの位置を定義する座標の1組は、静的情報である。
【0189】
該解析方法は好ましくは、考慮された歯体又は考慮された空間属性をその都度修正することによって、複数回実行される。例えば、中央の歯、左の歯及び右の歯からなる隣接する歯の3つの組が考慮され、ここで、中央の歯が左と右の歯との間にあり、該解析方法は、これらの歯を支える歯槽弓に相対的に固定された基準フレームにおいて、該左の歯の重心の位置、次に該右の歯の重心の位置を決定し、次に該中央の歯の該左歯との接触点の位置、次に該中央の歯の該右歯との接触点の位置を決定するように連続して実施されることが可能である。
【0190】
このようにして得られた静的情報を強化する為に、例えば、左右の歯の2つの重心を結ぶ直線に並びに中央の歯の左右の歯との2つの接触点をそれぞれ結ぶ直線に垂直な2つの平面の間の角度が測定されることができる。従って、この角度は、左右の歯に相対的に中央の歯の向きに関連する情報を提供する。
【0191】
静的情報の使用
該 静的情報は、最新の患者の歯科的状況を評価する為に使用されることができる。
【0192】
特に、最新の歯体が、所定の空間の領域に属する位置にあるかどうか、特に、例えば、許容されると考えられる予め定義された位置の1組を定義する領域に属しているかどうか、を評価する為に使用されることができる。例えば、そのような領域は、歯又は歯の特筆すべき点の周囲に定義されることができ、従って、歯がこの領域から部分的にでさえ離れる場合に又は該特筆すべき点がこの領域から離れる場合に、歯科的状況が異常であると見なされる。そのような領域はまた、歯列矯正器具又は歯列矯正器具の特筆すべき点の周囲に定義されることができ、従って、該歯列矯正器具がこの領域から部分的にでさえ離れる場合に又は該特筆すべき点がこの領域から離れる場合に、歯科的状況が異常であると見なされる。
【0193】
該静的情報は、最新の歯体が、所定の方位の1組に属する方位、特に、許容されると考えられる方位の1組を定義する方位の1組に属する方位、を有するかを評価する為に使用されうる。特に、歯の方位は、該歯の特筆すべき点、例えば該歯の重心、を通る2つの直線によって形成される角度によって定義されることができ、ここで、該2つの直線のうちの第1は、歯の右側、好ましくは該歯に隣接する歯、の特筆すべき点、例えば重心、を通過し、並びに該2つの直線のうちの第2は、歯の左側、好ましくは該歯に隣接する歯、の特筆すべき点、例えば重心、を通過する。
【0194】
該静的情報はまた、最新の歯体の特筆すべき点と、該最新の歯体を支持する歯槽弓の別の特筆すべき点との間の距離を評価する為に、例えば、歯の重心と当該歯に隣接する歯の重心との間の距離が、所定の距離範囲、特に許容されることができると考えられる距離の1組、に属している場合に評価する為に、使用されることができる。
【0195】
静的情報のアイテムの為に定義される領域の制限又は静的情報のアイテムの為に定義される許容範囲の制限、すなわち「静的制約」、は好ましくは、歯科医療従事者によって定義される。
【0196】
該静的情報は特に、最新の患者の歯科的状況が異常となったかを判断する為に使用されることができる。例えば、再発を検出する為に、該静的制約は、歯科矯正処置の完了時に、歯科的状況に対応させることができ、任意的な許容マージンを有するすることができる。
【0197】
該静的情報は、最新の患者の第2の歯槽弓に対する最新の患者の第1の歯槽弓の位置を決定する為に、特には、垂直又は水平の張り出し(overhang)の存在を検出及び/又は評価する為に、特には、該張り出しが異常である場合に、使用されることができる。
【0198】
歯科矯正処置をモニタリングする場合、該静的制約は、最新の瞬間に又は歯科矯正処置の完了時に予想される歯科的状況に対応することができ、任意的に許容マージンを有するすることができる。
【0199】
何らの処置も行われない場合、該静的な制約は、正常とみなされる歯科的状況の1組を定義することができる。
【0200】
1つの実施態様において、該静的な制約は、最新の患者に依存せず、すなわち、患者グループのどの患者にも適用可能である。従って、それらは、標準、すなわち「標準セットアップ」(standard set-up)、を形成する。
【0201】
好ましくは、該標準は、病態に及び/又は歯科矯正処置の種類に及び/又は、共通の特徴を共有する患者のグループに、例えば、同じ年齢層及び/又は同じ性別に属する患者のグループに、固有である。該標準は、特に槽弓形状(arcade shape)を決定することができる。
【0202】
該標準は特には、治療の完了時又は最新の瞬間に歯科的状況を定義することができる。
【0203】
特に、静的制約が尊重されない場合、例えば、該静的情報から決定される位置、方位及び/又は距離が許容されない場合、メッセージを最新の患者に及び/又は歯科医療従事者に知らせる為に、該メッセージが該最新の患者に及び/又は該歯科医療従事者に送信されることができる。
【0204】
該静的情報は、グラフの形態で表示されることができる。
【0205】
例えば、該静的情報は、コンピュータの画面上又は携帯電話の画面上に提示されることができる。
【0206】
例えば、該グラフは、各歯の位置の、予め定められた位置との、例えば最新の瞬間の予め定められた位置との、適合性を表す適合指数に依存する色で歯を表すことができる。例えば、歯が暗いほど、その位置が予め定義された位置から遠くなる。
【0207】
該静的情報は特に、
-歯の位置若しくは形状、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開の速度を検出又は評価すること:特には、
-治療前の期間、すなわち、歯科矯正処置に先立つ期間において;
-何らの歯科矯正処置も行われていない場合に、特に、歯の萌出を監視する為に、又は歯の再発位置若しくは異常な位置を検出する為に、又は歯の摩耗、例えば歯ぎしりによる歯の摩耗、を検出する為に、又は2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に、又は咬合の安定若しくは修正を監視する為に;
-歯科矯正処置の文脈において、特に、所定の位置への、特に歯の改善された位置への、歯の動きを監視する為に、又は歯の萌出を監視する為に、又は例えば歯科インプラントを取り付ける為に適した空間を作る為に、2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に;及び/又は、
-歯科矯正器具の位置若しくは形状、特には歯科矯正器具の異常な位置若しくは形状、例えばリングの剥離若しくは歯列矯正アライナーの剥離、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開の速度を検出又は評価すること
の為に、特には、
-歯科矯正医又は歯科医との予約日を最適化すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正処置の有効性(effectiveness)を評価すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正器具の活性(activity)を測定すること;及び/又は、
-受動的歯科矯正器具の効果の喪失を測定すること;及び/又は、
-歯学;及び/又は、
-2つの日付の間、例えば処置前の間の2つの日付の間、特に少なくとも1つの歯の位置及び/又は形状を変えたと思われる事象によって分けられた2つの日付の間、例えば、該歯における衝撃の発生によって分けられた2つの日付の間、若しくは好ましくない効果をもたらすことができる歯科機器、例えば睡眠時無呼吸症候群の処置の為に意図された歯科機器、の使用によって分けられた2つの日付の間、又は患者の口腔内の移植物、特に歯周移植物、特に歯肉移植物、の発生によって分けられた2つの日付の間で患者の歯の形状の展開を測定すること
の為に使用されることができる。
【0208】
該静的情報が展開を評価する為に使用される場合、本発明に従う方法に頼ること無しに、最新の瞬間の前の瞬間に、定義された状況と比較されることができる。例えば、該静的情報が歯の位置又は形状の展開を評価する為に使用される場合、工程a)~工程c)を実施すること無しに、この予め定められた歯の位置又は形状と比較されることができ、ここで、該位置又は形状は例えば、処置の開始時又は処置の中間瞬間に予め定義されたものである。
【0209】
異なる最新の瞬間での複数回実行:動きの量
本発明に従う解析方法はまた、図3において示されているように、異なる「前方の」及び「後方の」の最新の瞬間に、1以上の回実施されることができる。
【0210】
前方の最新の瞬間に得られた「前方」最新の空間情報(すなわち、静的情報)を、後方の最新の瞬間に得られた「後方の」最新の空間情報(すなわち、それぞれ静的情報とともに)と比較することによって、展開がこれらの2つの最新の瞬間の間で決定されることができることを可能にする。この展開は2つの最新の瞬間の間の時間間隔にもたらされ、該展開は、この展開の速度が決定されることを可能にする。
【0211】
語「動きの量」は、そのような比較から直接的に又は間接的に結果として得られる情報を云う。
【0212】
該動きの量は特に、2つの最新の瞬間の間の注目すべき点特筆すべき点の動きであることができ、又はこの動きをこれら2つの最新の瞬間の時間間隔で割ることによって、これらの最新の瞬間の間の平均動き速度であることができる。
【0213】
従って、本発明は、工程1)~工程3)、及び任意的に、工程4)を含む、最新の患者の歯体の動きの量を決定する為の方法に関する。
【0214】
工程1)において、本発明に従う解析方法が、前方の最新の瞬間に実行され、最新の歯体に関する前方の空間情報を得る。
【0215】
該前方の最新の瞬間は例えば、能動的歯科矯正器具又は受動的歯科矯正器具、例えば、歯列矯正アライナー、歯列矯正アーチ又はリテーナ、を装着した後、3ヶ月未満、2ヶ月未満、1ヶ月未満、1週間未満、2日未満、であることができる。
【0216】
本発明に従う該解析方法は、上述されているように、所望の前方の静的情報の機能として、複数回実施されることができる。
【0217】
工程2)において、本発明に従う同じ解析方法が、後方の最新の瞬間に実施されて、後方の空間情報を得る。それ故に、後方の空間情報は、前方の瞬間に実施された解析方法と同じ最新の歯体及び同じ空間属性に関連する。
【0218】
該後方の最新の瞬間は好ましくは、該前方の最新の瞬間よりも2週間以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上若しくは6ヶ月以上、及び/又は5年未満、3年未満若しくは1年未満、遅いものである。
【0219】
工程2)において、工程1)と同じ1以上ニューラルネットワークが使用される。それ故に、工程a)は必要でない。
【0220】
本発明に従う解析方法が、工程1)において複数回実施されている場合は、工程2)における場合にも同様に、該前方の静的情報と同等である静的情報の後方のアイテムを得る。
【0221】
工程3)において、前方の空間情報と後方の空間情報とが比較されて、動きの量を決定する。
【0222】
前方空間情報と後方の空間情報とは、例えば差分の観点において互いに比較されることができる値である。
【0223】
例えば、前方の空間情報及び後方の空間情報が、歯槽弓に相対的な固定された基準フレームにおけるそれぞれ前方の最新の瞬間t1及び後方の最新の瞬間t2の歯の重心の座標(x1,y1及びz1)及び(x2,y2及びz2)で構成されている場合に、(x2-x1)2+(y2-y1)2+(z2-z1)2の平方根は、この重心によってカバーされる距離が前方の最新の瞬間t1と後方の最新の瞬間t2との間で評価されることを可能にする。
【0224】
比較の結果は、1以上の値で構成されることができる。例えば、空間属性が(x';y';z';x'';y'';z'')であり、ここで、(x';y';z')及び(x'';y'';z'')はそれぞれ、三次元基準フレーム、例えば、正規直交基準フレーム、すなわち(Ox; Oy;Oz)における1つの歯の2つの特筆すべき点、すなわちP'とP''の位置であるところの状況を考慮すると、原点は例えば、この歯を支える歯槽弓の中心である。前方空間情報及び後方の空間情報がそれぞれ(x1';y1';z1';x1'';y1'';z1'')及び(x2';y2';z2';x2'';y2'';z2'')と表記される場合、以下の通りである:
-x1',y1',z1'は、前方の最新の瞬間での点P'の座標x,y及びzの値(例えば、mm単位);
-x2',y2',z2'は、後方の最新の瞬間での点P''の座標x,y及びzの値(例えば、mm単位);
-x1'',y1'',z1''は、前方の最新の瞬間での点P''の座標x,y及びzの値(例えば、mm単位);
-x2'',y2'',z2''は、後方の最新の瞬間での点P''の座標x,y及びzの値(例えば、mm単位)。
【0225】
次に、該比較結果は、例えば、上記で求められた前方の最新の瞬間t1と後方の最新の瞬間t2との間の、点P'によりカバーされる距離及び点P''によりカバーされる距離(比較の結果は2値)、又は、これら2つの距離の算術平均(比較結果は1値)であることができる。
【0226】
工程4)において、好ましくは、該動きの量は、例えば、最新の患者の及び/又は歯科医療従事者のパーソナルコンピュータの画面又は携帯電話の画面上に存在する。
【0227】
図4において示されているように、工程1)及び工程2)は、最新の歯体及び/又は解析方法の空間属性を毎回修正することによって、複数回実施されることができる。例えば、それらはそれぞれ、最新の患者の複数の歯について繰り返されることができる。工程3)において、工程1)及び工程2)の各組について得られた最新の前方の空間情報と最新の後方の空間情報とが比較されることができる。工程1)及び工程2)の異なる組について得られた最新の前方の空間情報及び後方の空間情報はまた、改善された情報を得る為に組み合わせられることができる。
【0228】
語「動的情報」は一般的に、工程1)~工程3)の1回又は複数回の実施によって直接的に又は間接的に結果として得られる全ての情報を云い、ここで、各回は、前方の最新の瞬間t1及び後方の最新の瞬間t2である。
【0229】
動的情報の使用
該動的情報は、最新の患者の歯科的状況の展開を評価する為に使用されることができる。
【0230】
最新の歯体の特筆すべき点の、並進による又は回転による動き速度が、予め定義された速度の1組、例えば許容されることができると考えられる速度の1組、を定義する値の範囲内にあるかを評価する為に使用されることができる。
【0231】
該動的情報は、能動的歯科矯正処置の動態が予想される動態に準拠しているか、すなわち歯が歯科矯正処置に従う速度で動くか、を評価する為に使用されることができる。
【0232】
動的情報の為に定義される許容範囲の制限、すなわち「動的制約」、は好ましくは、歯科医療従事者によって定義される。
【0233】
該動的情報は、グラフの形態で表示されることができる。
【0234】
例えば、該動的情報、コンピュータの画面上又は携帯電話の画面上に提示されることができる。
【0235】
好ましくは、該グラフは、工程1)~工程3)の1回又は複数回の実施によって直接的に又は間接的に結果として得られる全ての情報を要約し、ここで、各回は、前方の最新の瞬間t1及び後方の最新の瞬間t2である。
【0236】
例えば、図8において、最新の患者によって経験される歯科矯正処置の文脈において、各歯の動きの速度が予め定められた速度に適合していることを表す適合指数の関数として、歯が着色付されるであろう。
【0237】
該動的情報の使用は一般的に、静的情報の使用よりも簡単である。例えば、歯の特筆すべき点が異常に動いたかを判断することは、空間におけるこの点の位置が異常であるかを判断するよりも一般的に容易である。
【0238】
例えば、再発を検出する為に、該動的制約は、歯の重心の為に、許可された動きマージンに対応することができる。歯科矯正処置を監視するために、動的ストレスは、2つの歯が互いに向かって又は離れて動くことを確認する為に、別の歯に相対的な或る歯の動きの過程(これらの歯の間の距離における減少又は増加)に対応することができる。該動的制約はまた、歯列矯正器具の活動を確認する為に、該歯列矯正器具の動きの速度又は該歯列矯正器具が作用する歯の点の動きの速度の為の閾値に対応することができる。
【0239】
該動的情報はまた、1本の歯又は複数の歯の1組の形状の展開を測定する為に使用されることができる。
【0240】
従って、該動的情報は特に、
-歯の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯の位置若しくは形状の展開の速度を検出若しくは評価すること;特には、
-治療前の期間、すなわち、歯科矯正処置に先立つ期間において;
-何らの歯科矯正処置も行われていない場合に、特に、歯の萌出を監視する為に、又は歯の再発位置若しくは異常な位置を検出する為に、又は歯の摩耗、例えば歯ぎしりによる歯の摩耗、を検出する為に、又は2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に、又は咬合の安定若しくは修正を監視する為に;
-歯科矯正処置の文脈において、特に、所定の位置への、特に歯の改善された位置への、歯の動きを監視する為に、又は歯の萌出を監視する為に、又は例えば歯科インプラントを取り付ける為に適した空間を作る為に、2本の歯若しくは3本以上の歯の間、特に隣接する2本の歯の間、の空間の開閉を監視する為に;及び/又は、
-歯科矯正器具の位置若しくは形状、特には歯科矯正器具の異常な位置若しくは形状、例えばリングの剥離若しくは歯列矯正アライナーの剥離、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開、及び/又は歯科矯正器具の位置若しくは形状の展開の速度を検出又は評価すること
の為に、特には、
-歯科矯正医又は歯科医との予約日を最適化すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正処置の有効性(effectiveness)を評価すること;及び/又は、
-能動的歯科矯正器具の活性(activity)を測定すること;及び/又は、
-受動的歯科矯正器具の効果の喪失を測定すること;及び/又は、
-歯学;及び/又は
-2つの日付の間、例えば処置前の間の2つの日付の間、特に少なくとも1つの歯の位置及び/又は形状を変えたと思われる事象によって分けられた2つの日付の間、例えば、該歯における衝撃の発生によって分けられた2つの日付の間、若しくは好ましくない効果をもたらすことができる歯科機器、例えば睡眠時無呼吸症候群の処置の為に意図された歯科機器、の使用によって分けられた2つの日付の間、又は患者の口腔内の移植物、特に歯周移植物、特に歯肉移植物、の発生によって分けられた2つの日付の間で患者の歯の形状の展開を測定すること
の為に使用されることができる。
【0241】
特に、該動的制約が尊重されない場合、例えば、該動的情報から決定される歯の特筆すべき点の動きの振幅及び/又は速度及び/又は方向が許容されない場合、メッセージを最新の患者に及び/又は歯科医療従事者に知らせる為に、該メッセージが該最新の患者に及び/又は該歯科医療従事者に送信されることができる。
【0242】
1つの実施態様において、該静的情報及び/又は該動的情報は、目的が達成されたかを評価する為に、及び/又は最新の瞬間での最新の患者の歯科的状況と目的の達成との間の差を測定する為に使用される。
【0243】
該目的は好ましくは、下記の目的のうちから選択される:
-該最新の患者は、犬歯の為にクラス1の咬合を達成する;
-該最新の患者は、臼歯の為にクラス1の咬合を達成する;
-該最新の患者の前方部分(anterior sector)の空間が閉じている;
-該最新の患者の歯の抜歯に起因する空間が閉じている;
-該最新の患者が、通常の水平の張り出し(normal horizontal overhang)、すなわち「上歯突き出し」(overjet)、好ましくは、1~3mmの通常の水平の張り出しを有し;
-該最新の患者が、通常の垂直の張り出し(normal vertical overhang)、すなわち「過蓋咬合」(overbite)、好ましくは1~3mmの通常の垂直の張り出しを有し;
-該最新の患者の上側槽弓(upper arcade)及び下側槽弓(lower arcade)の切端間セクター(inter-incisal sectors)がオフセットされていないこと;
-該最新の患者が、該患者の頭部の矢状面(sagittal plane)に相対的な下側槽弓及び/又は上側槽弓の横方向のオフセットがないこと;
-該最新の患者が、該下側槽弓に相対的な該上側槽弓の横方向オフセットを有していないこと;
-該最新の患者によって装着される歯列矯正器具、例えば歯列矯正アーチ及び/又は歯列矯正アライナー及び/又は補助器具が、受動的であり、すなわち、該最新の患者の歯の位置を変更するようにもはや作用しない;
-上側槽弓及び/又は下側槽弓の最後の2回のチェックの間に、最新の患者の歯の動きが全く検出されていない又は限定的にしか検出されていない、好ましくは、該最新の患者の歯の動きが検出されていない;
-該最新の患者の全ての乳歯が脱落している;
-側方開咬(lateral open bite)の欠如(側方開咬の閉鎖);
-後方開咬部の欠如;
-前方開咬部の欠如;
-前方逆関節の欠如;
-後方逆関節の欠如;
-叢生の改善;
-凹みの安定;
-閉塞性海綿状脳症;
-粘膜の凹凸の不存在。
【0244】
実施例
【0245】
1つの例において、考慮される歯体は、決定された種類又は番号を有する2つの歯の組、例えば、13番の歯(右上の犬歯)及び隣接する14番の歯(右上の第1小臼歯)、である。空間属性は、13番の歯の重心と14番の歯の重心を結ぶベクトルの為の座標、すなわちパラメータ(X,Y,Z)、の3つ組である。それ故に、該空間情報は、これらの座標の値のトリプレットによって形成される。
【0246】
該空間情報は、直交基準フレーム(Ox;Oy;Oz)に相対的に測定され、その原点Oは、考慮される患者の上側歯槽弓の中心である。
【0247】
工程a)において、10万件の履歴レコードを含む履歴学習データベースが作成される。
【0248】
該履歴画像は全て、トゥルーカラーで、リトラクター無しで撮影され、そして次にクロッピングされた口腔外写真である。
【0249】
該写真は、ほとんどの場合、個人のカメラ、一般的には携帯電話、時には歯科医療従事者のカメラ、で撮影されている。これらは、履歴患者から様々な距離で撮影され、次に、好ましくは、考慮された履歴画像に関係無しに、13番と14番の歯のサイズが実質的に同じになるようにクロッピングされた。
【0250】
任意の履歴レコードは、4枚の履歴画像の1組を含み、該4枚の履歴画像の1組は、履歴患者の13番の歯と14番の歯を全て描き、並びにそれらの角度がそれぞれ(咬合面において)「正面図」、「上面図」、「右面図」、「右正面図」である。
【0251】
履歴レコードの履歴空間情報は、ベクトル(Xi,Yi,Zi)で構成される。言い換えれば、13番の歯の重心から、軸Oxに沿って値Xi、軸Oyに沿って値Yi、次に、軸Ozに沿って値Ziの順に動きすることにより、14番の歯の重心に到達する。各レコードの履歴空間情報は、3Dスキャナーで作成された履歴患者の歯槽弓の3次元モデルから手動で決定される。
【0252】
工程b)において、ニューラルネットワークCNN、例えばGoogleNet (2015)、は、訓練の為に使用された履歴画像の組に類似する最新の画像の1組に基づいて、13番の歯の重心と14番の歯の重心との間のベクトルを決定することができるように、履歴学習データベースを用いて訓練される。
【0253】
工程b)において、最新の患者、例えば、何らの歯科矯正処置の予定がなく且つリテーナを装着していない患者、が前方の最新の瞬間t1で考慮される。該最新の患者は、工程b)及び工程c)を実行することができるアプリケーションをダウンロードした携帯電話を持っている。該最新の患者は、該最新の患者の13番の歯と14番の歯に関する歯科的状況を確認することを望んでおり、そして、該患者はこのアプリケーションを起動する。
【0254】
該アプリケーションは、顔携帯電話のカメラを起動し、そして、該最新の患者が、これらの2本の歯を上記の「正面図」、「上面図」、「右面図」、「右正面図」の角度で撮影した4枚の写真を取得するように誘導する。
【0255】
次に、該アプリケーションは、該最新の患者から様々な距離で撮影されたこれらの写真を、13番の歯と14番の歯の大きさが該最新の画像に関係無しに実質的に同じであり、履歴画像のこれらの歯の大きさと実質的に同一になるようにクロッピングする。
【0256】
次に、該アプリケーションは、4つの最新の画像全てを、訓練されたニューラルネットワークに入力する。この訓練されたニューラルネットワークは、該アプリケーション内に統合されることができ、又は該携帯電話からリモートにあるコンピュータ上に搭載されることができ、後者の場合に、該携帯電話は4つの最新の画像をリモートコンピュータに送信して、該4つの最新の画像を、訓練されたニューラルネットワーク内に入力する。
【0257】
工程c)において、これら4つの最新の画像のみに基づいて、該訓練されたニューラルネットワークは、好ましくは120秒未満で、60秒未満で、40秒未満で、20秒未満で、10秒未満で、又は5秒未満で、空間情報の最新のアイテムを提供する。空間情報の該最新のアイテムは、ベクトル(Xa,Ya,Za)であり、その原点Oが最新の患者上側歯槽弓の中心にある正規直交基準フレーム(Ox;Oy;Oz)において、最新の患者の13番の歯の重心が該最新の患者の14番の歯の重心に接続することを可能にする。
【0258】
該ベクトル(Xa,Ya,Za)は、予め設定された静的な制約と比較されることができる情報の静的なアイテムである。例えば、|Xa|<Sxであるか、及び/又は、|Ya|<Syであるか、及び/又は|Za|<Szであるかを確認することが可能であり、ここで、Sx,Sy,Szは閾値であり、例えば、0.5mm、0.7mm及び0.3mmである。例えば、|Xa|+|Ya|+|Za|<Sであるかを確認することがまた可能であり、ここで、Sは閾値である。例えば|Xa|>Sxである故に制約が尊重されない場合、メッセージが該最新の患者にそれらを通知する為に送信される。例えば、該最新の患者に歯科医療従事者に連絡をするように求めるメッセージが、自分の携帯電話の画面上に表示される。
【0259】
該ニューラルネットワークがリモートコンピュータ内にある場合、該コンピュータは、該最新の空間情報及び/又は該メッセージを該アプリケーションに送信する。
【0260】
該最新の患者は、例えば、前方の最新の瞬間t2、例えば前方の最新の瞬間から1ヶ月後、同じ工程(アプリケーションの起動、写真の撮影、及びそれらを、訓練されたニューラルネットワークへ入力)を実行することができる。
【0261】
本発明のこの第2の実施の実装の為に、該アプリケーションは、後方の最新の瞬間に得られた静的情報、すなわちベクトル(Xa',Ya',Za')、を前方の最新の瞬間と同様に解析することができるだけでなく、該前方の最新の瞬間に得られた静的情報、すなわちベクトル(Xa,Ya,Za)、と比較することがまたできる。それは、例えば、下記の動きの量を決定することができる:|Xa'-Xa|,|Ya'-Ya|,|Za'-Za|,|Xa'-Xa|+|Ya'-Ya|+|Za'-Za|,|Xa'-Xa|/(t2-t1),|Ya'-Ya|/(t2-t1),|Za'-Za|/(t2-t1)、又は(|Xa'-Xa|+|Ya'-Ya|+|Za'-Za|)/(t2-t1)。
【0262】
動きのこれらの量は、13番の歯と14番の歯に関する歯科的状況の経時的展開、より具体的には、14番の歯に対する13番の歯の相対的な動き、を有利に教示するところの動的情報を形成する。それ故に、上記の動きのこれらの量は、静的情報を補完する。
【0263】
該動的情報は、予め定義された動的制約と比較されることができる。例えば、|Xa'-Xa|/(t2-t1)<Vx、|Ya'-Ya|/(t2-t1)<Vy、|Za'-Za|/(t2-t1)<Vzであるか、又は、(|Xa'-Xa|+|Ya'-Ya|+|Za'-Za|)/(t2-t1)<Vであるかを確認することが可能であり、ここで、Vx、Vy、Vz及びVが、例えば、閾値0.1mm/月、0.2mm/月、0.1mm/月及び0.3mm/月をそれぞれ示す。制約が尊重されない場合、メッセージが、該最新の患者に通知する為に送信される。例えば、メッセージが該最新の患者の携帯電話の画面上に表示され、該最新の患者に歯科医療従事者に連絡するように促す。
【0264】
該ニューラルネットワークがリモートコンピュータ内にある場合、該コンピュータは、該最新の空間情報及び/又は該動的情報のうちの全部若しくは一部及び/又は該メッセージを該アプリケーションに送信する。
【0265】
好ましくは、該最新の患者は、自分の歯槽弓の歯の全ての対(1番の歯と2番の歯、2番の歯と3番の歯等)について上述された操作を実施する。歯の各対について、該アプリケーションは好ましくは、歯の考慮された対の為に予め定義された異なる角度で撮影された十分な写真を提供する為の特化された手順を実行する。歯の決定された対の為の写真は、歯のこの対の為に特化されたニューラルネットワーク内に入力される。
【0266】
1つの実施態様において、該動的情報は、能動的歯科矯正器具の有効性、すなわち「活性」、すなわち最新の瞬間に歯槽弓に作用するその能力、を測定する為に使用される。例えば、歯の動きの速度は、歯科矯正器具が有効であり続けるかどうか(これらの速度が閾値よりも大きい場合、例えば、0.1mm/月で)、従って、該歯科矯正器具が変更又は修正される必要があるかを決定する為に、及び/又は歯科医療従事者との予約が必要であるかを決定する為に使用されることができる。適切な場合、書面又は口頭のメッセージが最新の患者に及び/又は歯科医療従事者に送信される。
【0267】
実施例
図6は、本発明に従う方法の実装の例を図示する。日付は横軸である。縦軸は、患者の下顎槽弓の全ての歯の為に、全方向における動きの蓄積をミリメートル単位で提供する。
【0268】
実線の曲線は、「実際の」展開を表す。この曲線を決定する為に、患者の歯槽弓のデジタル3次元モデルは最初に、3Dスキャナーで生成される。次に、国際特許出願PCT/EP2015/074859号に記載されている方法を実施することによって異なる瞬間に観察された歯の配置に対応するように変形される。この曲線の各点は、数時間のコンピュータ処理を要する。
【0269】
破線の曲線は、本発明に従って決定された展開を表す。この曲線の各点は、数秒のコンピュータ処理のみを要する。
【0270】
非常に驚くべきことに、該破線の曲線は該実線の曲線に非常によく追従していることがわかる。それ故に、非常に迅速に計算できるにもかかわらず、実際の展開をリアルに表す。
【0271】
今や明らかなように、本発明は、患者の口腔の容積における位置、距離、方位方向、又は方位コースを決定する為の解決策を提供する。この解決策は、迅速で、信頼性が高く、且つ限られた計算資源しか必要としない。
【0272】
特に、アプリケーションが携帯電話にダウンロードされることで、数秒のうちに実装されることができる。
【0273】
加えて、それは、典型的には0.3mm以下の精度で正確な情報を提供する。
【0274】
最後に、患者自身の携帯電話によって該患者によって撮影された簡単な口腔外写真から、特に気を使うこと無しに並びに事前に作成された何らの3Dモデルを必要とすること無しに実施されることができる。
【0275】
従って、本発明は、能動歯科矯正処置又は受動的歯科矯正処置の間だけでなく、何らの歯科矯正処置も行われていない場合でも、歯科医療従事者に以前に会ったことがない場合でさえも、あらゆる人の歯科的状況が評価されることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】